09/12/24 第4回へき地保健医療対策検討会議事録 第4回 へき地保健医療対策検討会【議事録】 日時:平成21年12月24日(木) 13:00〜16:31 場所:三田共用会議所3階 大会議室 ○馬場医療確保対策専門官:ただ今から第4回へき地保健医療対策検討会を開催い たします。委員の皆様方には、本日、大変お忙しい中ご出席を賜りまして誠に ありがとうございます。本日は、全委員にご出席をいただいております。また、 へき地における看護職の課題についてプレゼンテーションをしていただくため、 参考人として日本ルーラルナーシング学会理事で自治医科大学看護学部教授で いらっしゃる春山早苗先生にお越しをいただいております。  あと、注意事項ですけれども、マイクですけれども、皆さんの前にマイクが ございますけれども、少し大きなボタンを押していただきましてお話しいただ けたらと思います。また、お話が終わりましたら、このマイクの前のボタンを また押して、消えたことを確認していただけたらと存じます。  以降の進行は梶井座長にお願いいたします。 ○梶井座長:皆様こんにちは。今日は12月24日という、なかなか皆様動きにくいと きに設定させていただきまして、誠に申しわけございませんでした。ただ、今 日であれば皆様がおそろいいただけるということもありまして、大変ご無理申 し上げてしまいました。  さて、議論を重ねてきたんですけれども、いよいよ検討会の報告書の骨格を 取りまとめていく時期となりました。今日は、いつもに比べて時間も3時間と、 長時間の議論の時間をいただいております。何とぞよろしくお願いいたします。  では、事務局から今日の資料のご確認をお願いいたします。 ○馬場医療確保対策専門官:では、資料の確認をさせていただきます。  資料1が、前回、第3回会合の議事概要となっております。  資料2が、検討会報告書の骨子(案)となっております。これは、前回まで の論点整理を、最終的な報告書の形をイメージして、項目の整理、並べ替え等 を行ったものであります。前回、第3回でいただきましたご意見も反映させて いただいております。  資料3以降は、本日プレゼンテーションをいただく先生方の資料でございま す。資料3がへき地勤務医師のキャリアデザインに関する厚生労働科学研究班 資料、資料4がへき地医療拠点病院の在り方に関する澤田委員提出資料、資料 5がへき地における歯科の課題に関する角町委員提出資料、資料6がへき地に おける看護職の課題に関する春山参考人ご提出の資料、資料7が遠隔医療に関 する村瀬委員提出資料となっております。 ○梶井座長:そうしますと、お手元にございます資料2の骨子(案)に今日の議論 の内容を加えまして、検討会報告書がつくられると考えればよろしいでしょう か。  それでは、事務局より資料2の説明をお願いいたしたいと思います。 ○馬場医療確保対策専門官:まず、資料2の前に、資料1のほうから説明させてい ただけたらと存じます。  資料1は、先ほど申し上げましたとおり、前回10月30日に行いました第3回 の議事概要からとってきたものでございます。意見交換されました要旨につい て、まず、こちらのほうからご紹介させていただきます。  まず、「論点整理・へき地医療支援機構について」でございますけれども、 澤田委員、梶井座長から、へき地医療支援機構は、そういった医師についての 医局機能を持つことが必要ではないか、また、公務員化して、へき地医療支援 機構という集団組織を背景に派遣されるという仕組みをつくってはどうか、ま た、地域医療に関するデータバンク的な役割も求められると思うと、こういっ たご意見がございました。  また、前田委員ですけれども、このご意見に賛成された上で、キャリア形成 面や卒前・卒後教育において築かれる師弟関係において適切な動機づけができ る、そういう器として、卒前教育において大学と機構が連携すれば非常によい 体制ができるのではないか、こういったご意見がございました。  また、梶井座長よりも、地域医療のデータを構築し、解析することが非常に 重要。  また、中村委員でございますけれども、専任担当官については、まず専任担 当官の定義をはっきりと決め、その上で専任担当官を配置できないなら、兼任 担当官でカバーするとか、兼任担当官を複数配置するとかで対応することを認 めてもよいではないかというようなご意見もございました。  また、最後に吉新委員ですけれども、都道府県によって機構の状況は様々な ので、余りきっちりと定義づけしてしまうと、柔軟に対応できなくなるのでは ないかという意見もございました。  次に、前野委員と吉新委員のプレゼンテーションを踏まえての全体討論、こ こで前野委員のポイント、また、吉新委員のポイントはそれぞれここに挙げさ せていただきまして、次に吉新委員のお話がございました。へき地にずっと長 くいると戻るところがなくなったり、非常に貢献度が高いのに評価されない、 そうではなく、それが次の昇進につながるように戻れる組織なり病院なりがあ ることは非常に重要だと思う。  また、現在のへき地医療支援機構も含めて、へき地医療を担う組織というの は非常にあいまいで、どこまでの範囲がへき地医療を担っている人たちなのか 自体も余り明確ではない。支援機構というのは実際中身がない。キャリアパス なんかはなくて、本人任せなのが実態で、その辺をきちんと中身のあるしっか りとした骨太の組織をつくって、そこにいろいろな機能を乗せて継続的な活動 を常にしている組織をつくらなければいけない。へき地に実際に身をゆだねて、 そこで一生を終わるのだとなるためには、大変な決意が必要である。後任が来 るまでやめられないというとんでもない覚悟をしないとへき地医療に携われな い。この壁の高さと、さらに評価されないというのがある。安心して一生を託 していいんだよと言えるようなへき地のネットワークを日本にちゃんとつくら なければいけない、こういったご意見がございました。  また、澤田委員のご意見ですけれども、へき地医療拠点病院の指定要件につ いて見直すべきではないか。例えば、総合医がいて、臨床研修病院であること を要件として位置づけるような指定基準の見直しや在り方の見直し、また、指 定されることによってメリットを受けられるようにこの検討会で何らかの案を 提示できないか、こういったご意見もございました。  角町委員ですけれども、また、連携をしっかりととり、そこにへき地も組み 込むという体制でないといけない。単なる医師のとり合いになってはへき地は 負けてしまう、こういった意見もございました。  次に、へき地勤務医のキャリアパスですけれども、中村委員からですけれど も、ある程度へき地勤務をした後、どこかのポストに戻り、さらに希望すれば、 またへき地勤務に戻れるというサイクルを示すことができれば、へき地勤務医 になるのによほどの覚悟を示さなくてもよくなり、なり手も増えると思う、そ ういった意見もございました。  また、最後には、梶井座長からも、総合医の育成は重要であるという意見が ございました。  これらを元に、次の資料2のほうに移っていただきますと、先ほどの、今ま での論点整理と前回の議論を合わせて、前回の報告書、第10次報告書を参考に 細かい項目をつくり、この項目ごとに整理させていただくと以下のようになり ます。  まず、1の「はじめに」と2の「近年のへき地・離島保健医療を取り巻く状 況の変化」、これがございまして、これはまた後でまとめさせていただくので すけれども、その後に3の「へき地等における医療提供体制を構築する各主体 の役割」、これをまず6つの項目を挙げさせていただきました。(1)から (6)までですけれども、都道府県、市町村、国、大学、学会等、住民側に求 められる意識と、この項目を挙げさせていただきました。  次に、4の「へき地保健医療対策に関する今後の具体的支援方策」について は、まず1つ目にこの(1)ですけれども、新たなへき地医療支援機構の構築 について、以下の項目、1)から5)まで、まず、1)の位置づけについて、 専任担当官の在り方について、次に新たな支援機構の役割について、へき地医 療支援機構に対する評価について、5)が新たなへき地医療支援機構に対する 支援方策について、この5つの点についてまとめさせていただきました。  次に、2つ目の(2)ですけれども、「へき地医療への動機付けとキャリア パスの構築」を挙げさせていただきまして、この前段のへき地医療の動機付け の在り方について、これが1)、後半の2)として、キャリアパスの構築につ いては、これはア、イ、ウと3点挙げさせていただきまして、キャリアパスの 在り方について、キャリアを評価する仕組みについて、また、その他というこ の3つの項目をつくらせていただきました。  また、両括弧のほうに戻りますけれども、(3)「へき地等における医療提 供体制に対する支援」として、これを1)の「へき地医療拠点病院の見直しと 新たな支援方策について」「へき地診療所に対する支援について」「ITによ る診療支援について」「ドクターヘリの活用について」「その他」と、この5 項目を挙げさせていただきました。また、(4)、(5)と「へき地等におけ る歯科医療体制について」、また「へき地等の医療機関に従事するコメディカ ルについて」と続きまして、最後に5の「おわりに」、このように構成をさせ ていただいたところでございます。  以上でございます。 ○梶井座長:ありがとうございました。この報告書の骨子を見ますと、これまで論 点整理をしながら、皆様の意見をいろいろ言っていただきながらやってきたわ けですけれども、項目によっては、かなり出尽くしたというような内容もござ いますし、まだまだそうじゃないと、もう少し膨らませていかなければならな いというような項目も見受けられます。いずれにしましても、これまで十分に まだ議論が行われていなかったところに関しましては、この後プレゼンテーシ ョンをしていただく予定でありますが、この段階でご意見がございます方いら っしゃいますでしょうか。 ○高野委員:時々しか出てこなくて申しわけないんですが、この中で、各都道府県 の役割の中で、どうしても都道府県の財政力の差によって公平、不公平の差が 多いんじゃないかというふうに我々は考えます。それについては、もう少し国 の関与が必要なんじゃないかということで、何かそういう文言が入らないかと いうことをちょっとご提案したいと思うんです。 ○梶井座長:例えば具体的に国の関与と申しますと、何か……。 ○高野委員:例えば、医師の配置基準とか指針とか、そういう形で、それぞれの都 道府県が一定の基準の下に公平な医師確保と派遣、それから、地域の人たちが 医療を受けられるような仕組みができないかというふうに考えるんですが、い かがでしょう。 ○梶井座長:医師の配置基準という問題が出ましたけれども、この点についていか がでしょうか。三阪委員、どうぞ。 ○三阪委員:今、予算の話が出ましたが、これは非常に僕も大きな問題だと思って います。拠点病院の要件の問題がいろいろ出てまいりましたが、要件を満たし ていくにはそれなりの投資が必要だと思います。  私ども拠点病院ですが、へき地に派遣すると出来高制でかかった費用だけ入 るという仕組み、これだと、組織にへき地の支援をするための意識付けが難し いと思います。  例えば当初のがん拠点病院は、その手挙げしたところは初年度のみお金がお りるという政策で開始されました。しかしながら手を挙げる施設があまりなか った。今は名称も変更され、がん診療連携拠点病院に手挙げをすると毎年お金 がおりるわけです。例えば今年度はたしか各拠点病院に2,200万円ずつおりて いたと記憶しております。そうしますと多くの施設が手を挙げました。がん診 療連携拠点病院も二次医療圏に1つというのを目安に国は設定しておりまして、 へき地拠点病院の考えと非常によく似ていると思っています。  私も今がん診療に身を置いていますが、やはりそこにお金がおりるというこ とで、その組織が非常に前向きになる。要件の中には、こういうがん認定看護 師を置きなさい、あるいは、相談室をつくりなさいとか、あとは腫瘍の専門医 を置きなさいというような、そういう要件があって、やはりお金がおりるもの ですから、この二、三年、一気にそういう役割や癌診療が医療者に浸透してき て、強化されていくのを肌で感じるんです。  そうなってくると、二次医療機関に1つずつというのは最初にへき地拠点病 院も発想としてあったと思うんですが、要件を満たすような予算をつけないと なかなか話が進まないのではないかと思っています。そういう予算の配分が今 後どうなるかというのも同時並行で施設が前向きに取り組む予算をつけないと システムは動かないだろうという印象を持っております。すみません。ちょっ とわき道にそれたかもしれません。 ○梶井座長:いいえ、わき道ではございません。実は、今の先生のご発言は、この 後、澤田委員のほうから、へき地医療拠点病院の在り方に関してプレゼンテー ションがございますので、その後、三阪先生初め、皆様のご意見をさらに膨ら ませていただければというふうに思います。  さて、予算のところはそこでも出てくると思うんですけれども、もう一つ、 医師の配置基準、これは大変大きな問題になろうかと思うんですけれども、こ の点についていかがでしょうか。高野委員にお聞きいたしますけれども、これ は計画配置にもつながることでしょうか。 ○高野委員:本当のことを言えば、そういうふうに国が具体的にその医師の派遣に まで踏み込んでいただかないと、なかなか今の状態を解決するわけにはいかん だろうと。今おっしゃられたように予算の問題も一つの非常に大きな方向性を 示す大事な話ではあると思うんですが、どうしても都道府県の力の、財政力の 問題によって、あるいは為政者の考え方によって、同じ国民でありながら差が あるんじゃないかというふうなことを感じたものですから申し上げたんです。 ○梶井座長:ありがとうございました。今のご発言をまた踏まえながら、先ほどお 示しいただいた骨子についてはまた後で議論したいと思います。  そのほかございませんでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。  それでは、前回より議論が続いていますへき地勤務医のキャリアデザインの 在り方について、これからプレゼンテーションしていただきたいと思います。  実は、これは前回にもお話がありました厚生労働科学研究班の中で、こうい う研究を鈴川委員のほうが班長となっておやりになっておられました。鈴川委 員のほうからそのご報告をいただければと思います。よろしくお願いいたしま す。 ○鈴川委員:自治医大の鈴川です。よろしくお願いします。  資料3に沿って説明させていただきたいと思います。今お話しいただいたと おりで、資料3、めくっていただきますと、研究班の班員の名前が書いてあり ますが、へき地を抱えた地区の委員の意見を吸い上げてお話をさせていただけ ればというふうに思っております。今回のこの検討会に向けて、この研究班で キャリアデザイン、それからへき地勤務の評価について提言を何かしてほしい んだというお話で、みんなで検討をした結果であります。  まず、一つはキャリアデザイン、これは研究班の中でいつも話題になること ですけれども、今まではキャリアデザインといっても、どちらかというと、余 りないというのが一般的で、キャリアデザインとして有名なのは、医局、教授 をトップとしたピラミッドを僕たちは今まで頭に描いてくることが多かったわ けですけれども、それがへき地に行く場合にはなかなかそういうデザインを描 きにくい。とりあえず自分がこれからどうなるのかというイメージを持たずに 現場に行く、非常に不安である。帰属意識がなかなか持てないじゃないか、そ ういうことに関して何か案はないのか、皆さんどう考えるのかというような話 を研究班の中でずっとやってきました。  そして、その研究班の中で幾つか代表的なものを参考にしたらどうかという 話が出たものをとりあえず資料の3−(1)、(2)、(3)として取り上げてみました。 もちろん、ほかにも、ほかの県の方の意見も聞いた上での話であります。自治 医大の制度ができる前から、長崎県では、へき地、離島に勤務する医師の養成 システムというのがありましたし、特徴的な高知県、今、澤田先生がいらっし ゃるから私が言うのもちょっと申しわけないかもしれないんですけれども、自 治医大の卒業生が中心になって新たなシステムをつくってきたという高知県、 それから県立病院を中心にして、義務後も勤務を続けている自治医大卒業生が 多いと言われている新潟県、この3つをそこに図としてかかせていただきまし た。  長崎と高知については、既にCD−ROM等でお渡ししてありますけれども、 まず、長崎のお話で3ページ目になります。3−(1)、長崎県の離島医療体系図 というのが上のほうに載っております。長崎県のシステムは、離島の診療所、 離島に存在する病院から国立長崎医療センター、離島医療圏組合、離島・へき 地医療支援センター等の行政機関、それから長崎大学、このような機関が有機 的に連合して、医師の臨床研修、それからへき地勤務、生涯研修などを、こう いう複数の組織がまとまって和をつくった上でマネジメントをしているという ふうにすごく大ざっぱなまとめをすると言えるかというふうに思います。  一番上の黒いところに長崎県、それから左側に長崎大学、それから国立長崎 医療センターが並んでいて、その下の医療政策課と、それから医療組合、それ から平成16年からは離島・へき地支援センターですけれども、それができる前 から医療圏組合と、こういう形で組織の和をつくって、主に義務内の方が多い と思いますけれども、このような離島の診療所、それからへき地の拠点病院に 勤務をすることと、それから長崎大学、国立長崎医療センターとの連携をとり ながら、へき地医療を見ていくというシステムがもう既にでき上がっていたと いうようなイメージを描いています。  一方、高知県、その下に書いてありますけれども、これは澤田先生からの資 料ですけれども、自治医科大学生が中心、そのほかにも高知大学の方も含めて、 その3つのオレンジ色というか肌色というか、囲んだ中で高知諸診医会という システムをつくったところがみそだと思うんですけれども、そういう組織と、 それから高知県という県、それから各市町村、この3つの三者でマネジメント をしている。このような組織を新たにつくり上げてマネジメントしていこうと、 そこで勤務場所、それから後期研修を含む医師の研修、そういうものもこの三 者でマネジメントしていこうというような人の和というんでしょうか、そうい うものをつくって、へき地の医療を見ていきましょうというようなシステムが でき上がっているというふうに考えました。  その裏を見ていただくと、新潟なんですけれども、新潟は、言葉がいいかど うかは別として、古典的な医局人事によるへき地医師配置と勝手に書かせてい ただいているんですが、これは新潟大学の総合地域医療学講座の井口先生のご 協力を得て作成した図になります。これは、新潟県の場合には、自治医大の卒 業生はほとんどの方が新潟大学に入局をするというところがほかの県とはかな り違う。ほかの県でもあるんですけれども、多くの方が新潟の場合は入局する。 その後、全国的には医局の崩壊とかあるんですけれども、それでも新潟県は現 在でもしっかりした組織の力が残っている。  それは、そこにキーパーソンと書いた方が、新潟大学と新潟県の間、現在は 福祉保健部を中心として県と大学の間をうまく調整することによって派遣先を きちんと確保している。自治医大の人だけでなく、自治医大以外の医局員も同 じようにへき地にある関連病院に派遣されていますけれども、自治医大の人も 多くはこれに沿って、自治医大の人のほうが、よりへき地に行っているという 話は聞きますけれども、新潟県の県立病院等を中心にして多くの方が派遣され ている。これが現在でもきちんと生きているというのは、お話を聞く限りでは、 キーパーソンがきちんと力を持って全体を統一して見ている、それで、このキ ーパーソンの元で県庁の調整が行われていて、大学から県立病院への医師の派 遣が行われている。指導力がしっかりした、いい指導力があればこのようなシ ステムができているというようなニュアンスにとらえました。特徴は、自治医 大卒業生が新潟大学に入局していること、義務年限終了を待って大学で研究を 行って学位を取得する、そういうようなこともありますし、専門医の資格を得 るということもできる。それから、義務後も医局の人事で県内のへき地医療機 関に赴任して、その後、キャリアデザインの最終段階としては中小の県立病院 の病院長職とか、そのようなものが考えられているというようなシステムがあ ると。  このシステムが成功した理由というのも考えたんですけれども、キーパーソ ンが非常に強い力を持っていて、これが自治医大卒業生ではないんですけれど も、新潟大学内部の方で、それがちょうど自治医大の考えと、例えば自治医大 建学の精神みたいなものと非常に似た形で考えていただくことができて、それ を自治医大卒業生に非常に理解があって、県庁との強いつながりでこれが成り 立っているのではないかというように、図になるもの3つに関しては、どうし てこの3つの県は割合うまくいっていると言われているのだろうかということ をちょっと考察してみました。  これを踏まえた後で、先ほどの研究班の各班員に、それぞれどのようなキャ リアパスを自分たちで、自分たちがへき地に行く若い医者だとしたら、どのよ うなキャリアパスになったら行く気になるだろうかと、どういうのがいいんだ ろうかというのをいろいろな立場から話を聞いて、その結果をその3−(4)とい う、新しく作った図ですので違和感はあるかもしれませんけれども、私たちの 研究班の提言という形で、キャリアパスというのは今までなかなか世の中にな かったものなんですけれども、一つの案として、研究班の案として見ていただ ければというふうに思います。  これらを踏まえまして、3本柱のキャリアデザインモデルをつくってみまし た。赤系統はへき地診療所等、青系統がへき地医療拠点病院等を示しており、 緑系統が大学等をあらわしているというふうに考えてください。  骨子は、この3つの間を自由に、自由にというんでしょうか、かなり自由な 形で行き来しながらキャリアアップを図って、一生、例えば65歳ででき上がり というんでしょうか、そこまでの間、どのように自分は勤めていくのだろうか というモデルを考えてみたらどうかというのが一番の基本であります。  医師を育てる、医学生を育てるのは、一応、大学が基本ですので、大学の下 は薄緑色で少し延ばしてあります。この小さな丸が、丸というか円柱が1年だ と思って見てください。左下の緑のほうの下に入学と卒業がありますが、ここ が6年間ありまして、この間は有機的に診療所、それからへき地拠点病院等と 連絡をとりながら学習の場をつくっていくというのはそれでよろしいと思うん ですけれども、その後、先ほどからいろいろお話が出てきたように、大学にい ったん戻ったらへき地に戻れなくなるとか、へき地に行くと一生そこにいない といけないのではないかというようなことに関しては、このモデルに入ってい る限りは、へき地に行きました、その後また自分としてはこういうところにつ いて特に勉強してみたいのでと、または、こういうところで臓器別の専門の資 格を取ってみたいというようなことについても満たせるように、大学なり拠点 病院にもう一度戻っても、へき地のキャリアは消えないというような形で、こ の3つの間を移動しながらキャリアアップを常に行っていくというシステムが できたら、今現在抱えている、へき地等で勤務されている方の不安を和らげる ことができるのではないかというふうに考えました。このシステムをうまく動 かす基本として、その下に、丸が書いてあって、ちょっと赤っぽい中に「へき 地保健医療対策協議会」というのがあって、その下に「へき地医療支援機構」 というのを書きました。  この支援機構が、3つの柱を支えている大学と診療所等、それからへき地拠 点病院等とが一堂に会して集まれるような、話合いができるような協議会、そ ういうものをへき地医療支援機構が指導することによって、このキャリアアッ プを、デザイン全体をきちんと見ていく、そういうシステムができるべきだろ うというふうに考えました。このキャリアデザインで働く間は、身分的にはず っと保障される。つまり、どこどこで年金が切れるとか、そういうようなこと ではなくて、常に自分の、それぞれ機関は違う、いろいろな診療所もあれば大 学もありますけれども、身分が保障されて公的年金も継続されるべきであると いうように、勝手な意見かもしれませんけれども、そのように考えると、へき 地に行くという医師の期待は大きくなるのではないかと思いました。  そのほかに、端のほうに書いてある特徴的なところを簡単に、これは私たち の研究班の中から入れてほしいという希望で出たものをそれぞれ四角の中に入 れてあります。例えば、最初の10年間でへき地医療の専門医、この話は後でし ますけれども、へき地医療に関係する専門医が取得できるように考えましょう。 それから、大学における学位というのを取得を希望する人がいらっしゃれば、 それについても学費の援助等で支援をしたらどうか、それから、臓器別の専門 医の取得を希望する、これも認めたらどうかというふうに一応考えました。も ちろん、学位といっても、DNAの研究で試験管を振ってということのイメー ジよりは、へき地、地域医療に関する社会学的な研究について、ぜひ専門的に やってほしいという意見は出ていますけれども、どちらにしても、そういうこ とができるように、へき地等の診療所にいると学位はとれない、専門医はとれ ない、何々はできないというのではなくて、できるよというシステムをつくれ るようにしたらどうかというふうに考えました。  このキャリアデザインをある程度満たした人たちは、大学であれば地域医療 学講座等の教授とか部長、拠点病院等であればその支援病院の部長とか院長、 それからへき地診療所では当然ながら所長、そういったものに優先してなれる というようなインセンティブを考えるべきではないか。それから、この話、こ れはキャリアデザインのモデルですけれども、これと、それから今からお話し する評価の話とがどうしても密接に関係しますので、とりあえず3本柱で移動 しながら、自分のキャリアを磨いていくというモデルを考えたというところで、 その先に進めさせていただきたいと思います。  6ページ、7ページは、これをつくるに当たっていろいろ議論が出たときに 私が最初に書いた説明文ですので、これは後で興味があれば見ていただければ と思いますので、これを飛ばしまして8ページに行かせていただきたいと思い ます。  へき地に勤務する医師の評価、評価という言葉にはいろいろあって、一つは、 へき地医療の専門医として認定するという意味の評価、それからへき地に行っ たことを重く見て、それに対して何かインセンティブを与えたらどうかという ことの評価という言葉がちょっとダブるところがありますので、2つに分けて 説明させていただきたいと思います。  まず、この8ページの図の左側の大きな四角、へき地に勤務する医師、これ には何らかの形で専門医制度をつくる、へき地医療専門医(仮称)でもいいん ですけれども、名前はともかくとして、そういうのをつくる方向がやはりいい のではないかというのが私たちの研究班からの提言です。  それには、この話はまた後でちょっと出ますけれども、専門医の認定の条件 としては、まず能力がきちんとあるということが認定されること及びへき地で の経験があるということの2つを持って、何らかの公的な組織が認定するべき だと。まず、そのような認定される医師が存在するべきだというふうに考えま した。  今度は、その認定する主体、お医者さんがどこに勤めるかということで、そ れは先ほどの3本の柱から言うと、へき地の診療所、黄色になっていますが、 それから拠点病院、緑色になっています。それから明るい黄色の大学等という ところで働いたときに、どのようにそれぞれのインセンティブが、それぞれの 診療所等でこのようなお医者さんが、つまりへき地医療専門医が働くことによ って、それぞれの立場でどのようなメリットがあるかということを、今度はメ リットという意味での評価をそこに書いてみました。へき地等の診療所では、 このような専門医が診療する場合には、例えば診療報酬を上乗せする等のメリ ットを与えるべきではないか。へき地医療専門医のための常勤医師の転用、診 療報酬の上乗せもあって定員を確保し、都道府県あるいは全国で統一された報 酬及び待遇が保障されれば、医師は安心して赴任することができ、勤務の交代 というのも円滑にできて、診療の質の継続性が保たれるのではないか、つまり 医師も安心して赴任することができるというようなメリットがあるのではない かというふうに考えました。  拠点病院または基幹病院に対しては、このような専門医をある程度の一定数 確保するということに対して、補助金を交付することはできないか。交付する ことによって専門医を採用するためのインセンティブとならないかということ を考えました。例えば、医師の定数の確保には、へき地医療のための、へき地 医療を支援するへき地医療支援部等を必ず設置しなさい、そうして、設置する ことによって、その部分に関しては定員を確保し、このような専門医を登用す るというふうにしていくべきではないかというふうに考えます。こうしてへき 地医療支援病院に勤務した専門医というのは、自分自身も臨床能力を磨くこと ができますし、病院としてもこのようなへき地医療拠点病院であれば、専門に 偏らない診療を行うことが必要だと思いますので、医師不足できちんと、今の 医師不足の一端は、自分が専門医だからといってほかの科の医療を全く見ない というところも一因だと思いますので、そういうことも含めて、医師不足に対 して、医師を確保するメリットにつながるのではないかというふうに考えまし た。  大学等については、学生教育とか研究によって情報を発信してほしい、地域 医療学系の講座を設置してほしいというふうに考えます。このへき地医療講座 等には、先ほどの専門医を教授とか准教授または委員として採用してほしいと いうふうに考えますし、先ほどの大学院の進学等であれば、それに対して何ら かの援助をしてでも、このようなへき地医療専門医を使っていただきたいとい うふうに思います。総合的な医療に関わる人材の育成というのは、今後は大学 といえども絶対必要だというふうに考えます。特に地域枠等で学生を入れてい ますけれども、専門的なもの、非常に細かな専門分野の話と、それから医師を やっていく上で、特に地域で採用されて、その地域の医療を見ていく医師に対 してきちんとした教育をしていくために、へき地医療専門医というのが必要で あるというような位置づけにするべきだというふうに考えます。  それで、その下のほうに、国としてのとかいろいろ書いてありますが、上記 のシステムを円滑に運営するには、国の積極的な関与を受けたへき地医療支援 機構またはへき地保健医療対策協議会が重要な役割を果たすべきだと考えます。  もちろん、それには、その大前提として国民全体が総合的な医療というもの の重要性についてきちんと理解をしていただく。これは文科省も含めて、もっ ともっと医師というのは一体何なのかというところについて国として啓発をし ていただきたいというふうに私たちの研究班では提案したいと思います。  最後に、ちょっとめくっていただいて、じゃ、へき地医療の専門医と言うけ れども、そんなに簡単じゃないだろうということで、どうやってつくったらい いでしょうかというようなことについて何か意見を出しなさいということなの で、最後の9ページの表になります。  5つぐらいに、とりあえずAからEまでに分けてみて、それぞれどんな弱点、 長所があるかを検討してみました。私たちの研究班の中では、そのAのへき地 医療保健専門医というのを、それと、先ほどの認定された施設での臨床研修と か一定期間のへき地・離島研究を認定するというのですけれども、それに対し ては、へき地医療支援機構等を全国的な組織にしてつくったらどうかというふ うにとりあえずは考えたんですが、そのような例えば全国へき地医療支援機構 会議みたいなものでは、なかなか専門医をつくるという組織にはなり得ないと いうようなお話もあったというところで、その辺が課題になりました。  Bの各大学における個別の認定というのは、例えば教職の免許のように、各 大学でそれぞれの教職課程というのがあれば、それで認定していいよというこ とになるんですけれども、自治医大は、確かにへき地医療、地域医療の授業が 90コマだったか、非常にたくさんあるのは事実ですけれども、それを各大学、 現在、地域枠のある大学で、新たにそれを90コマ作るというのが現実問題とし て可能なのか、また、そういうのを作ってしまうと、実際に今へき地枠のある 大学で、地域枠の方とそうでない方との授業が別になってしまうぐらい今の医 学生には選択という枠がほとんどありませんので、必修ばかりあるところで、 さらに加えて90単位というのは非常にきつい話だというふうに思います。  それから、自治医大生にとっては、このようにただ言われても、卒業したイ コール何とかの資格というのでは、自分たちに何かメリットがあるんですかと いうことになりかねないというのがBについてのちょっと問題点だと思います。  それから、もう一つは産業医というのがあるじゃないか。産業医と同じよう に認定医をつくったらどうかというようなお話もありました。産業医というの は非常に特殊な資格だというふうに思いますけれども、逆に、これは地域のへ き地で実際に現在診療されている方に対してこのようなものをもしつくったと して、この認定を持っていないと地域では働けないのというふうに言われると、 産業医とはちょっとそこが違うかなと。現在でも、既にへき地等で働いている 方とどうやってこれを区分けするんだという話になって、これも難しいかなと いうふうに思いました。  それから、骨子案ではプライマリーケア等の三学会というのに入ったらどう かというのが一つ昔からよく出てくる案ですけれども、気になっているのは、 三学会が合同して求めている総合医というものと私たちが考えているへき地で 勤務をする総合医というものが全く同じなんだろうかということに関しては、 いろいろ疑問があるというふうに言っている方が多かったという結果です。  最後の、それでは新たなへき地医療学会でもつくったらどうですかというよ うなことを、もちろんそういうのは可能性はあるんですけれども、今からつく るんですかというような話になります。そこで、我々としては、AとEを合体 させたような形で、支援機構の全国組織、これを何らかの形で学会等の大きな 組織に考えていって、そこで専門医等をつくったらどうかというようなことを 我々の提言として出したらどうかということで最後の話をまとめたところです。  長くなってしまいましたけれども、ご報告いたします。 ○梶井座長:ありがとうございました。鈴川研究班から、鈴川委員にご報告いただ きました。2つの大きな提案があったと思います。キャリアパスとかキャリア デザインは当初からいろいろ議論を積み上げてきましたけれども、今日は非常 にそれに対する具体的なご提案であろうかというふうに思います。これから皆 様のご意見あるいはご質問等をお受けしながら進めていきたいと思いますけれ ども、1つは、へき地に勤務する医師のキャリアデザインのモデルということ でありましたし、それからもう一つはへき地医療専門医制度についてであった と思います。  最初に、キャリアデザインモデルについてご意見いただければと思います。 いかがでしょうか。前田委員、どうぞ。 ○前田委員:まず、大学院の件についてちょっとお尋ねしたいんですが、10年目以 降に大学院を学位取得に入るという件ですが、これはいろいろな大学でいろい ろな取組がなされていると思うんです。長崎大学では社会人大学院制度もあり ますし、そういったものを活用すれば、地域に勤めながら大学院を卒業できる という制度があります。ですから、もうちょっとこれをフレキシブルに考えて もいいのかなというふうに正直思います。  それと、もう一つ、これが大学院教育になじむかどうかは議論が多いところ ですが、e-learningみたいなことが最近叫ばれています。こういったのが今後 発達していきますと、もちろん10年とかっちり切らなくてもいけそうな気がす るんです。いかがでしょうか。 ○鈴川委員:これは全くのモデルですので、それからどのように逸脱するかは皆さ んのこれからの考え方次第で、それからIT化等を含めたe-learningがもっと もっと盛んになれば日本の国が変わっていくと思いますので、それはそれで柔 軟に動けばいいと思います。 ○梶井座長:そのほかいかがでしょうか。中村委員、どうぞ。 ○中村委員:これは非常にすばらしい図で、ありがとうございました。  一つ、私の場合は初期研修2年と後期研修の2年以外は全部今の診療所です ので、こういったキャリアデザインに当てはまらないんですが、目の前にいら っしゃる奥野先生は、恐らく独自で大学に行ったり、またへき地に戻ったり、 大学に行ったりということをやっていらして、澤田先生とか、あと同じ高知の 家庭医療学講座教授の阿波谷先生は、もしかしたらこういったデザインの中で 動かれたのかもしれません。そういった具体例を二、三名、名前を伏せてでも 出していただくと、何かもっとイメージしやすいかと思いました。 ○鈴川委員:ありがとうございます。これをつくったときには、だれかを思いつい てこれを入れたわけではないんですけれども、みんなのいろいろな意見が出た もののハイブリッドがこうなって、ちょっと理想的過ぎるかもしれません。だ けれども、実際にもし奥野先生等が私がとおっしゃってくださるのであれば、 非常に私としてもありがたい。 ○梶井座長:奥野委員、いかがでしょうか。 ○奥野委員:実は、三重県のほうでも同じようなことを考えておりまして、図はう まくこちらのほうができているなという気はするんですけれども、例えば、自 分が医師になってから40年間をどういうふうに過ごすかというのを、住宅のデ ザイン、建て売りの住宅を買いに行くときは、最近は、骨格が決まっていて、 中のデザインはいろいろなものを取り入れて、それで家を組み立てていくとい う、そういうものがあるんですけれども、我々の場合は、医師としていろいろ な生き方がある、例えば、診療所の長い人もあれば、病院に行ってから研修す る、あるいは子育てに専念するのでそのときには少しお休み、あるいは非常勤 のような形でやるというふうないろいろな形があるんですけれども、その中で 背骨をここでは、年金等のことで、私は公務員という表現をするんですけれど も、公務員としてつくり上げて、この40年間の中を、いろいろなプランを、そ の時々のニーズとか変化に応じて入れていくというふうなプランを立てていま す。絵としてはこちらのほうがいいかなと思うんですけれども、非常に近いも のがあるというふうにこれを見て感じました。 ○梶井座長:ありがとうございました。村瀬委員、どうぞ。 ○村瀬委員:大変興味深くお話を聞かせていただきました。奥野委員からお話がご ざいましたのは、地方公務員として身分保障をした上でのキャリアパスという ことかなと伺いました。この話の中で、鈴川委員からお話がございましたのは、 新たに身分保障の制度をつくるということでしょうか。 ○鈴川委員:現在、公務員で、例えば自治医大生であれば9年間が保障されている ということだと思うんです。その後の保障は原則的にはない県のほうが多い。 それではなかなか地域等で安心して医師をやっていくことは難しいのではない かということを考えると、そこの部分に関しては新たに考えざるを得ない。も ちろん、じゃ予算はどうするんだとか、もし言われれば、今のところは、私に はそれにこたえる財源はないんですけれども、ただ、このようなことを考えな くちゃいけないだろうという意味で提言はさせていただいているつもりです。 ○村瀬委員:お話を聞かせていただいて、これがうまく動くためには、どこか軸に なる身分保障をされているところがあって、そこを中心に他の2カ所へ出てい くということが、多分、働いている先生方には一番安心感があるように思いま す。そうでないと、個別に3カ所に交渉しながらということで、今、成功され ている先生方は、そういった能力がおありになる方だと思いますが、多くの方 にこういうところに入っていただくと、最終的にその人事調整をどこで行うか という形になってきて、そこが一番の身分保障のよりどころになると考えます。 もちろん、地方公務員という考え方もあると思いますし、自治医科大学の9年 間を例えば18年間とか27年間のパスに延ばすという考え方もあるでしょうし、 協議会というところが新たな医局のように、ドクタープールとして機能すると いうこともあると思いますが、最終的には、どこか一つ核になる組織、委託す る組織をつくって、そこを共同で運用するということを合意形成する必要があ るかなという印象を持ちました。 ○鈴川委員:ありがとうございます。全く村瀬先生がおっしゃるとおりで、それの 核となるものとして、とりあえず、そこの図の一番下のところのへき地医療支 援機構の力をきちんとすることと、それから三者との協議会がきちんとできて、 どういう形でもいいですけれども、そこの下の丸の部分を中心とした辺りが、 全体を、人事を含めてキャリアアップを考えていく組織として中心にならない といけないだろうと、こういうものをつくらないといけないだろうという提案 です。 ○梶井座長:ありがとうございました。今の話に関しまして、前回、へき地医療支 援機構がプール機能をきちっと持つと、そして、実効性あるものにしていくと いうような方向で一つまとまったかのように思っておりますので、まさに今の 鈴川委員のご発言は前回のものと一致した発言ではないかというふうに思いま すが、そのほかいかがでしょうか。吉新委員、どうぞ。 ○吉新委員:へき地医療のモデルとして僕はおもしろいと思います。しかし、こん なことをやったらへき地の仕組みが、がたがたにならないかなという心配もあ ります。医師の身分は公務員です。自治体病院の医師不足等を見ていますと、 やはり公務員では運営に自由度が低いとか、勤務について指揮命令系統が実際 のニーズをうまく把握していないという不満が非常にドクターたちにあって、 あと、行政というのはボリュームのある業務をどうしても果たさなくちゃいけ ないわけですけれども、それに対して定数など人員の手当てが少ない場合には、 たとえばある医師は週に2回も3回も当直しなければならないという大変な状 況に置かれて、結果として、とても十分な活動ができない業務量についていけ なくなり、サボタージュになるんだと思うんです。  ですから、要するにボリュームに見合った医師を供給できる体力がないと難 しいと思うので、医師の供給計画は確認しないといけないのかなと思います、 あと、このキャリア自体、僕は実際と違うと思うんです。医師として唯一の研 修のチャンスというのは初期研修と後期研修なんで、研修は質量ともは徹底的 に手厚くして、医師同士がお互い認められる一定の基準をクリアしてから地域 に出るべきで、不十分な状況で地域に出ていいんだよ、あとは生涯教育でやれ ばいいじゃないかということは、医師を生涯というスパンで見た場合に殺しち ゃうことになるんじゃないかなという心配があります。ですから、ある程度の レベルの研修病院でで、ある一定以上の期間、ある程度のレベルの内容の研修 を受けた、修了しましたよということを早いうちにしてあげないと、研修の不 全感が残り、へき地に安心していられないと思います。こういう積み木のよう な机上の仕組みで研修はどこかでやりたいようにやればいいというのは、僕は 反対というか、あり得ないと思っております。以上です。 ○梶井座長:ありがとうございました。繰り返しになりますけれども、初期・後期 研修の確保、保障を明確にすると。 ○吉新委員:初期研修、後期研修は決められたところできちんとした期間をやって、 一人前だということを、きちんとへき地に行く前にしないと僕はいけないいう ことです。 ○梶井座長:ありがとうございます。そうしますと、この鈴川班のモデルに関して、 その後は、先生、どうお考えですか。 ○吉新委員:ある程度の人数の集団になった場合にはとてもおもしろいと思います。 この集団が機能すればへき地医療にとって強力な味方になります。ただ、現実 的には相当な人員がないと、人事で研修や勤務の序列を決めたりするときに、 担当する人はご苦労なさると思います。特に行政の場合には、これから透明性 が求められますので、A病院にしようかB病院にしようかという問題が起きる でしょう。 ○梶井座長:当検討会として、こういうことを提案していくということを盛り込ん でいくということについてはどうですか。 ○吉新委員:仕組みの検討は価値があると思いますが、これが本当に現実に動いて いる医療の現場で認められるのには、モデル的にやってみて例えば先ほどの高 知県とか長崎なんかでやってみるのはいいと思いますが、これを一気に全国に というのはちょっと難しいんじゃないかなと思います。 ○梶井座長:皆様、いかがでしょうか。木村委員、どうぞ。 ○木村委員:私はこれに賛成なんですけれども、確かに47都道府県それぞれ温度差 といいましょうか、状況に違いがございますので、できるところからやってい かれればと思います。恐らくここにいる三重、島根、高知なんていうのはやっ ぱり医師が不足していて困ったところが多いので、結果的には奨学金ですとか 地域枠とか、そういう人たちがこういう中に入っていくんじゃないかなという ふうな気がします。  身分保障のことが出ましたけれども、今、我々のところでも地域医療再生計 画の中で、例えば後期研修医を県職員として正規雇用しようというふうな案も 考えたんですけれども、若い人たち、初期研修医さん等に聞いてみますと、今 もらうお金はやっぱり多いほうがいいわけですが、あまり身分保障のことは言 わないんです。なので、そこに若いころからこだわらなくてもよろしいのかな と。例えば県職員として採用してローテートしていくというふうなことも必ず しも必要ないと考えます。これは一つのモデルであって、いろいろなハードル はあると思いますけれども、私はいいんじゃないかなと思っています。我々も こういったところを目指して今やっているところです。以上です。 ○梶井座長:そうしますと、今お二方の委員の意見をまとめますと、初期・後期研 修を明確に行うと、そして実力をつける、それから、基本的にはこういうよう な一つのモデルを示しながら各県でキャリアデザインを示していくということ でございましょうか。そのほかの委員の方、ございませんでしょうか。 ○澁谷委員:すみません。質問ですが、新潟県のモデルだと、これはへき地だけで はなくて、中小規模の県立病院というようなところ、関連病院に勤務というよ うなところにも矢印が行っていますけれども、先日、新潟県が、順天堂大学に、 新潟県の地域に今後勤務をしてくれるということを前提で契約をした、という ことを伺ったんですけれども、そうなりますと、例えば、この新潟県の図で言 うと、へき地医療も全体の中で考えて新潟大学が調整をしているという、そう いうとらえ方でとらえていいんでしょうか。  今、研究班で示されているキャリアデザインのモデルと、例えば新潟県の場 合は、決定的な違いというのはどこにあるんでしょうか。つまり、新潟県が、 ここからキャリアデザインのモデルに移行するようなことを考えるとすると、 それは何が決定的に違ってくる、何が困るのかということです。つまり、全国 にはいろいろな条件のところがあって、このキャリアモデルを考えるとすると、 自分のところと何が決定的に違うのだ、というところが明確になった方がいい と思うんですけれども、へき地以外のところの、要するに医師の確保という全 体の問題の中で各都道府県が考えている、そういう部分のニュアンスがこのキ ャリアデザインのモデルにはあるんでしょうかどうでしょうか。 ○梶井座長:鈴川委員、いかがでしょうか。 ○鈴川委員:ありがとうございます。これは新潟県をどうするというようなことで 話をちょっと言っていたわけではありませんので、個々のは必ずしも分かりま せんけれども、新潟の特徴は、やっぱりこのキーパーソンという人が大学と新 潟県とを両方とも見ているという立場の人が一人いると、または、いたという んでしょうか。それが、現在は保健部というところで調整という、そういう流 れになっているという歴史的なものなんだと思うんですが、そういうように一 人の人がちょうど非常にうまく動いたのでできたんだ。  でも、今後は、現在、今動いているのをこっちに変えなさいというふうな意 味でそのモデルを出してきたわけではないと思っております。ただ、何もモデ ルのないところもありますので、そういうところに対してこういうのも提案を したいんだということを言ったまでで、新潟県がこれに変えなさいということ を言うつもりではありません。  ただ、違うところは、やっぱり私としては地域医療を見ていく基本的なもの として支援機構等をやはり大事にした、そういうところに移行していくのがい いのかなと、キーパーソンだけで、その人が例えば何か変化したらそれで急激 に変わってしまうようなのはやっぱり危ないかなというふうにも思いますので、 現時点はいいですけれども、公的なところがきちんと全体を見ていくというシ ステムに今後はしたほうがいいのではないかという意味では変えていく必要は あるかなとは思いますけれども、今の新潟県を変えなさいという、そういう提 案をしているつもりではないと思います。 ○澁谷委員:それはそうだと思いますので、こういうキャリアデザインのモデルを 全国に示す場合に、それぞれの都道府県は今自分のところの現状を考えて、こ のモデルに例えば近づけるとか、あるいはそのいいところを取り入れるという ことを考えたときに、どういうところがそれぞれにポイントになって改良して いったらいいかという、それを知りたかったので、それを示していただければ、 別に新潟県のことを言っているわけではないです。 ○梶井座長:ありがとうございました。先ほど中村委員のほうから、いろいろな人 を見ていると、振り返ってみるとキャリアデザインがやっぱりできていた人は 満足しているということで、多分、そういうキャリアデザインをつくろう、あ るいはだれかが設定したじゃなくて、結果としてできたということかなという ふうに思います。そういうことを一つ明確に各県がしていかれれば、より皆さ んのモチベーション、インセンティブにつながっていくんじゃないかというこ とかなというふうに思います。そういう意味では、先ほど来出ていますこのキ ャリアデザインモデルが全てではなくて、こういうことを参考に各県で取り組 んでいただいて明確にお示しいただくということなのかなというふうに思いま すが、よろしいでしょうか。  また、お時間をとりたいと思いますけれども、次に、もう一つ大きなご提案 がされました。これは第2回目とのときに三阪委員のほうから出されたことと も相通ずるところがあると思うんですけれども、へき地医療専門医についての ご提案です。これについて皆様のご意見をお願いしたいと思います。澤田委員、 どうぞ。 ○澤田委員:これまでの臨床研修制度というのは、やはり専門医養成のためのカリ キュラムが中心であり、前回の検討会でも発言した通り、総合医やプライマリ ・ケアを目指そうとする医師が、どういったカリキュラムに基づいて育成・教 育がなされ、どのような形で地域医療の第一線に送り出していくのかが重要で す。これからの時代は総合医を育てていくためのカリキュラムや派遣のシステ ムを、これまで以上に発展・充実させていくことが求められる時代になってく ると考えています。  海外では、「総合医というものが専門医と同等な社会的認知がある」と言う よりもむしろ、「総合医はまさに専門医の一つである」という国もあるわけで す。鈴川先生からご提案いただいた「へき地医療専門医」に対して、私は、あ る意味では「総合医として一定の評価を受けた資格・称号」といったようなイ メージを抱きました。いわゆるGP(General Practitioner)、ジェネラリス ト(総合医)が持つ、生活に密着した医療に対するスペシャリティーに対し て、社会的認知や評価を与えるという性格をもった名称であって、現場に関わ る者として大変心強く感じました。ただ、ジェネラリストとしては、へき地だ けでなく、都市部で開業されている先生方も数多くいるわけで、そのために、 あえて「へき地」という名称を付けて対象を限定されている配慮についてもよ く分かりました。  今後、へき地で勤務したということが、その医師にとって何らかのインセン ティブや社会的な評価につながるようにするためには、名称はどういう形にな るかは分かりませんが、「私はGPです」と堂々と自己紹介ができて、かつG Pに対しても社会的な認知がきちっとなされているような、そういう時代にな って欲しいと思っています。ですから、こういった形で、鈴川先生からご提案 いただいた名称を含めて、GPに対する一定の評価を込めた名称については、 是非これから前向きに推進していただきたいと希望します。  総合医というもののステータスというか位置づけについてですが、どうも日 本のこれまでの歴史的背景を見てみますと、「専門医志向もしくは、専門医が 総合医に優る」というような位置づけになっているように思います。専門医と いうのは、大病院で病床数や症例数が多くて、スタッフも充実していて…、そ ういった施設でなければ専門性は発揮できないと考える医師がほとんどだと思 います。このまま専門医の養成を続けていくとすれば、当然ながら医師は都市 部に偏在するわけで、結局のところ、この専門医偏重の流れこそが、昨今の医 師・診療科の偏在や医療崩壊の原因になっていると思うのです。  現状のままでいくと、へき地も含めて、郡部や地方の医療機関では患者数も 少なくて、高齢者が多くて、スタッフも不足している…そういったところから は、若い医師がどんどん離れてしまって、都市部の大病院により集中していく だけだと思います。ですので、逆に言えばこういったへき地医療専門医のよう な資格をもつ医師に、何らかのステータスやインセンティブが与えられて、社 会的な評価が得られるようになれば、これまでの流れとは逆に、若い医師や学 生さんたちがGPになることを目指していくようになり、医師や診療科の偏在 や医師不足も解消されていくのではと考えております。 ○梶井座長:ありがとうございました。中村委員、どうぞ。 ○中村委員:今、総合医というものが何を指しているのかというのは、何か分かっ たようで分からないような感じなんです。僕自身が思う分類は4つあります。  1つは北米型ERで、全ての疾患あるいは外傷の初期治療をやるタイプの医 師です。それから2番目はジェネラルインターナルメディスン、総合内科医、 3番目がファミリーメディスンを行うクリニック型家庭医、4番目が、僕と同 じへき地・離島型総合医です。これが恐らく鈴川先生が言われるそのへき地医 療専門医と似たようなタイプになると思います。  北米型のER医というのは、確かに総合的に外傷から疾患から初期診療をや るんですが、慢性疾患は余り診ません。総合内科医は、内科ですから外傷とか 整形疾患は診ないです。クリニック型の家庭医は、検査手技とか治療手技は余 りこだわらない人が多い傾向にあります。へき地・離島型総合医というのは、 全世代にわたる予防から看取りまで全てを扱う意味で本当の総合医だと思いま す。それを専門医と表現するのか総合医と表現するのか、ここはきっちりやっ た方がよくて、僕は総合医のほうがいいと思います。 ○梶井座長:ありがとうございました。そのほかいかがでしょうか。三阪先生。 ○梶井座長:どうぞ、はい。 ○吉新委員:このままでは箔がつかないというか、Prestigeがちょっと低いんじゃ ないかなと思うんです。中村先生が言われたようなオールラウンドというか、 ジェネラリストとして非常にレベルが高いという意味ではいいと思うんですけ れども、「へき地」とつくと、やっぱり何か、昔、自治医大でも、へき地とい うのは差別用語だから「地域」にしようじゃないかという話があったり、やっ ぱり国の委員会がへき地だからいいんじゃないかという話もあったりしたこと があるんですけれども、一時、正確には覚えていませんけれども、多分、昭和 60年ぐらいに「へき地」は差別用語だというのが新聞に載ったようなこともあ ったと思います。ある意味では、積極的でいいと思うんですけれども、勇猛果 敢で結構なんだけれども、ちょっとPrestigeが低いのかなという感じがして、 何かほかの大きなジャンルの中の一部という意味ではいいと思うんですけれど も、「へき地」という言葉が、ぽんと突出するのは余りよくないんじゃないか なと思います。個人的な意識ですが。 ○梶井座長:具体的に何かご提案ありますか。 ○吉新委員: 僕は先ほどの中村先生のおっしゃった方法でいいと思うんですけれ ども、先日フィラデルフィアのトーマスジェファーソン大学でGIMを2日ほ ど見せてもらいましたが。へき地医療とGIMは違うなという感じでした。む しろ西海岸のファミリーメディスンのほうが非常に日本のへき地医療に近いと 思います。  ただ、日本の場合、医者が一人でぽつんと、しかも、事務員さんとナースと 3人でいるという状況で、アメリカのへき地の施設には3倍、4倍のスタッフ がいるんで、同じようなへき地でも、ちょっと日本のドクターは非常に孤独で、 気の毒だなと思うんです。先ほどのへき地医療支援機構のシステムの中の一部 となれば、考え方が変えられると思います。今みたいな単独でクリニックに3 人、医者とナースと事務が張りついているというのは早く解除していただけれ ば、Prestigeの高いドクターとしていられるんだと思うんです。やっぱり「へ き地」というといかにもリソースが少ない中で滅私奉公で頑張っているという 意味があるんで、ちょっとその辺、総合的に考えるべきだと思います。 ○梶井座長:今出ましたのは「へき地」とするか「地域」とするか、はたまた「専 門医」とするか「総合医」とするか、こういうようなところでのご議論だと思 いますけれども、これについていかがでしょうか。畠山委員、どうぞ。 ○畠山委員:ちょっと違う視点から、「総合医」あるいは「専門医」、我々の視点 から、ちょっと違う視点でお話をさせていただきたいと思います。  私は、この行政に関わる前、製造業に関わっておりまして、今で言うと物づ くり産業、そういうところにおりまして、そこの中でロボットあるいは生産設 備の設計をずっとやっておりました。今、日本で、昭和の40年代後半から一気 に経済力がついてきた。その中には製造業が占める影響の割合が大きかったと 思いますけれども、いろいろ製造業が世界に冠たる位置づけになるというのは、 いろいろな要素があると思いますけれども、その中で、今お話を伺っていて、 どうも総合医と専門医と何かつながるところがあるなと思って伺っていました ので、それでお話をしたいんですが、日本の製造業が伸びた中で、見えない部 分で、製造業の中にPM班、それからBM班というのが大体大手企業さんには あります。  PMか、あるいはBMかというところもあると思いますけれども、一つはP M、これはPrimary Maintenance、それからBMはBreakdown Maintenanceとい うことで、そういうのが製造業の中でかなり大きな要素を占めております。  PMというのは、私のイメージでは総合医、医療業界の中で言うとPMは総 合医、それからBreakdown、BMは専門医、何かそんなイメージで今伺ってい たんですけれども、日本にあるいろいろな設備機械、これの寿命を延ばす、こ れがPM班の大きな役目であります。それから、その生産設備がBreakdownを したときには、専門的な方々がそのメンテナンスに当たるというので Breakdownです。  今伺っていて、総合医あるいは専門医というお話がありましたけれども、ど ちらでも私はいいんだろうと思いますが、まさに地方が今地域医療に求めてお りますのは総合医。総合医が私どもが最も必要なまさにキーパーソンでありま す。例えば、先ほどの物づくりでお話をしたのは、PMとBMに携わる技術屋 さん、そこには一切違いがございません。ステータスは同じでございます。  私はちょっと医療業界は分かりませんが、どうしても総合医と専門医では多 少その位置づけが違うのかなと思いますが、これは同じレベルである必要があ ると思いますが、その上には、物づくりでは研究所という別のものがあります。 これが、現場で言いますと、これは同じステータス、同じレベルではないかな と思いますが、その辺もへき地医療に関わるドクターの志にはステータスをも う一回、位置づけをきちんと考えている必要があるのかなと思って今伺ったと ころです。 ○梶井座長:製造業のPMとBMという話は確かにおっしゃるとおりだと思います。 先ほどはすみません。三阪委員、手を挙げておられましたけれども、いかがで しょう。 ○三阪委員:鈴川先生、非常によくまとめていただいてありがとうございます。と いうのは、以前、私がへき地医療支援機構の専門担当官をやっているときも、 同じような形でちょっとこういうのを考えていたことがありまして、こういう 感じでディスカッションした記憶がございます。  今、ちょっと専門医とか、そのように議論がちょっと特化していると思いま す。この前お話ししたんですが、我々が現場で悩んでいるのは、へき地・離島 医療、その支援の必要性や担い手がどういう人か周りの医療者が認識できにく い状況が何とかならないかと。それで、医療現場で地域医療であったり地域連 携を担う役割を持った医師がいるそういう医師が認識できないというのが非常 に問題だと思います。  その延長上で、そういう医師が意欲を持って働くにはというところに、専門 医制度とかもあるのだと思うんです。医療者に、どう地域医療、へき地医療と いうのを認識してもらうかというのが非常に現場で重要だと思っています。  例えば鹿児島県の医療者でも、一体、鹿児島県に保健所が幾つあって、へき 地拠点病院というのが幾つあって、あるいはがん診療連携拠点病院というのが どういうところがやって、どのように医者が偏在しているというのは、鹿児島 の中で働いている医療者もさっぱり知らないんです。鹿児島県の地域医療検定 みたいなのをつくって、地元の医療の問題を認識してもらうことも必要でしょ う。まずは地域の医療現場でディスカッションにすら全くならない状況を打破 したい。開業医の先生を含めて、地域に根差して医療をやっている方はいっぱ いいらっしゃって、そういう方々を掘り起こしたりとか認識していただくとい うのがまずは大事、キャリアパスを積んで専門家にならないといけないという よりは、地域にはこういう医療者がいるんですよというのをまずは地域の医療 者に認識してもらう仕組みも検討し、その延長上にこの専門医があるような気 はしています。 ○梶井座長:鈴川委員、いかがでしょうか。 ○鈴川委員:ありがとうございます。専門医という名前がいいのか、へき地医がい いのか、これは当然ながら物すごい議論があったところですので、皆さんと全 く同じです。  僕は別な言葉をたしか使っていたように思うんですけれども、一応、専門医 というのが分かりやすいので、ここは専門医にしましたけれども、澤田先生が おっしゃっていたとおりで、やっぱりきちんと患者さんを現場で診てくださる、 そういう日本の医療の基本だと実は僕は思うんです。  三阪先生がおっしゃったように、確かに医療者の中で、僕たちの仲間の中で も認識度が低いんです。眼科の専門医には相談するけれども、地域のこういう 専門医に相談するということは今のところ大学で余りないんじゃないかと思う んです。そういう意味で、僕たちの意識の改革もしていかないといけない。さ っきちょっと言ったのは、国民の意識改革もしていかないといけないんじゃな いか、それは、やっぱり地域のお医者さんというのがいかに大事か、日本のセ ーフティーネットなんじゃないか、そのくらいのことを国としてもっともっと 言ってほしい。  その上で、こういうへき地医療というんでしょうか、現場で患者さんのため にそこにいていつも働いていらっしゃる、何でも診てくださる、そして、ちゃ んと高度医療についても理解があって、いざとなればちゃんと大学病院でも面 倒を見れるんだと、そういう流れのちゃんと分かった人がその地域で一番重要 な医師であるということを何とか国民の認識に持っていくというのを一方でぜ ひやりながら、今、先生のおっしゃったとおりで、専門医がいいのか、もう一 度また考えないといけないと思いますけれども、何とか医、いいお医者さんと いう、そういうのが出てくるようなネーミングがあれば、ぜひそれでやってい ただきたいなと思っています。 ○梶井座長:ありがとうございました。奥野委員、どうぞ。 ○奥野委員:専門ということに関してお話をしますと、私は小さな離島に17年おり まして、神島というところにおりまして、最後のころに使ったのは、私の専門 は神島ですという表現を使いました。  つまり、今は、医者としての技量であるとか能力であるとか、そういうもの を基本にして総合とかというのを考えているのもあるんですけれども、もう少 し違う角度として、僕はこの地域を一番知っている医者だよと。日本で一番私 はこの地域を知っているから、私の専門はここですというふうなその地域とい う角度で見ていただくというのも一つの方法かなというふうに思います。です から、例えば中村先生は、私の専門は名田庄村ですと言っていただくというふ うな、割とぴったり表現するわけです。  ですから、そういうふうな、自分たちはその地域を一番知っていて、その中 身を知っているということは、行政も福祉も介護も医療も住民の人たちの性格 も、いろいろなことをみんな含めて一番知っているのが自分だと、だから私の 専門はその丸々ですと、それが一つの自分のその総合医といいますか、どうい う表現をするか知れませんけれども、一つの基準になるというふうにも、そう いう角度も考えていただきたいなというふうに思います。 ○梶井座長:いろいろご議論あろうかと思いますけれども、基本的には、皆様、こ ういうような専門医あるいは総合医を認定するということにはご異論なさそう ですので、どういう名称で報告書に盛り込ませていただくかはともかくとして、 例えばへき地医療専門医かへき地医療総合医とか、この点に関してはよろしい でしょうか。前野委員、どうぞ。 ○前野委員:日本には専門医を標榜する制度は、数多くあります。端から見ると、 一般的にいわば、仲間内の顕彰的なものが少なくなく、実際の手技が伴わない 形で認定している問題は、指摘されているとおりだと思います。その中で、プ ライマリケア学会系の3学会が合併して、家庭医の認定制度をスタートさせた ことは一つの前進と考えます。そこに、新たに「へき地医療専門医」とか「へ き地医療総合医」を認定するのは、果たしていかがなのかなという気もします。  家庭医と、へき地専門医は、専門性において同一ではないかもしれないけれ ども、大きく変わるものでもないと思います。むしろ両者が包含するような形 での在り方で大きくとらえたほうがいいのではないか。やっと家庭医ができた ばかりで、まだまだ試行段階にあります。そこに意見を述べ、へき地医療の要 素を加味する形で模索できないものでしょうか。その方が専門医としてのステ ータスも高まるのではないか、患者サイドからしても、小規模な専門医がたく さん混在していては認知できず、それぞれが標榜しても何が何だか分からない という感じになりはしないかなという危惧を感じます。 ○梶井座長:ありがとうございます。今の前野委員のご意見も非常に大切な視点で あろうというふうに思います。いずれにしましても、こういうことをやはり検 討は行っていくということが必要かと思いますけれども、よろしいでしょうか。  非常に大切な議論だったと思います。  あと、その専門医あるいは認定医の認定について、幾つかの方法を5つ、A からEまでお示ししていただいていますけれども、これも、ここでいずれかと いうことを決められるものではないと思いますので、こういうことを含めて検 討ということでよろしいでしょうか。よろしいでしょうか。鈴川委員、どうで しょう。この報告書にどういう形で盛り込むかという問題もありましょうけれ ども、そこの点についてはどういうふうにお考えでしょうか。 ○鈴川委員:方向性だけ、少なくとも。名前はともかく。それから、もちろん3学 会の話も、これも当然議論したわけですから、私たち、いろいろな意見が出た。 でも、今、前野先生がおっしゃったのも当然頭にはありながら、でもというよ うなところで出てきたところでもありますので、方向性として何かつくる、も し皆さんが本当に3学会のでぴったりいくよということであれば、それはそれ でいいと思いますけれども、梶井先生含め、皆さんのご意見を併せて、でも、 やはり何か欲しいなというのは、研究班の中で皆さんが、やはりあるべきじゃ ないのかというふうには言っていた意見ですので、何らかの形で実現したいな と思っておりますが。 ○梶井座長:そうしますと、この件に関しましては設置の方向で検討を行うという ことでよろしいでしょうか。 ○吉新委員:それは、これがないとへき地に行けないというのではなくて、むしろ 称号みたいな形で終わったらいただけるという感じなんですか、へき地の一定 期間勤務が条件となる。 ○梶井座長:そうだと思います。 ○吉新委員:そうですよね。ですから、一定期間が終わったら専門医と称されると いう認識で、その前の部分は3学会の認定を持っている方がへき地に一定期間 行って、帰ってきたときに専門医になるという話でよろしいですか。 ○鈴川委員:その前が3学会で行くかどうかはちょっとまたよく知りませんけれど も、卒業したら認定しちゃうとか、そんな話を考えているわけではないですし、 もちろんいろいろな考え方はあるだろうというふうに思いますけれども…… ○吉新委員:この委員会として結論づけた場合に、ある程度の具体的なことは問わ れると思うんですね。今日初めてへき地医療専門医という表現を見たので、こ れはいいとか悪いとかという議論よりも、少し慎重になられたほうがいいんじ ゃないかなと思う。これがないと何かいけないみたいなことになっちゃうとま た問題だと思いますし、国民の人たちが納得してもらえる、みんなが分かりや すいというようなことであればいいんですけれども、排他的になるようなこと では決していけないと思いますし。 ○鈴川委員:それはもちろん吉新先生おっしゃったとおりだと思いますし、私のイ メージでは、それをどう決めるかは別として、ある程度のへき地勤務もした後 で、ある程度のちゃんと知識等があることがどこかで認定された上で、かつ、 勤務の経験があるということをもって認定されるべきだろうというふうに思っ ております。 ○梶井座長:内田委員、どうぞ。 ○内田委員:私も前野委員や吉新先生のご意見にかなり近いという認識でいますが、 この専門医制度というのは、日本の制度自体がかなり整理されていないところ があって、幾つかの側面があるというふうに思っています。  その中で最も重要なのは、質の担保といいますか、レベルを上げるというと ころが本来の目的とするところではないかというふうに思っていますが、日本 でしばしばあるのは、学会の認定医、専門医を増やしていくというところで、 社会的な背景は余り配慮しないで、それはその学会の先生方のステータスにな るとか、あるいは処遇の改善につながるとか、そういうふうなことも今後の方 向性としては出てくるのかもしれないというふうに思っていますが、一番原点 は、やはりその質の担保をするということと患者、市民に分かりやすい制度で なければいけないというところを感じます。  そこで、今日の委員会も、この検討会の委員の先生方のメンバーは、ほとん どがへき地医療に現場で従事されている先生方が関わっていらっしゃる。その 意見が非常に前面に出てくるという背景も考えますと、ここでそのへき地医療 専門医というものを果たしてつくっても、それが本当にうまく機能するのか、 理解いただけるのかという危惧はあります。先ほど前野委員もおっしゃったよ うな専門医の制度が非常に乱立している中で、国民に理解いただけるのかなと いうところもありますし、実際に、そのへき地で診療に従事されている方が、 その資格がなくて従事されているケースが、今の鈴川先生のお話だとあり得る わけで、そういう場合の住民たちの理解というのはどうなるんだろうという気 もちょっとしないでもないですし、その辺の整理、方向性としてこれを本当に この委員会として報告書に盛り込むという方向性については、もう一度お考え いただいたほうがいいのかなと。あるいは、両論併記にするのかなと、そうい う留意点もあるんだよというようなことを併記していただくか、そういうとこ ろがちょっとあったほうがいいのかなと。 ○梶井座長:なかなかこれは、どちらという、現時点では結論が出ないかもしれま せんけれども、すみません、最後にもう一度皆様にご意見をお聞きしたいと思 います。  というところで、その間にまたほかの議論もしながら、このことを考えてい ただきながら、最後にもう一度議論したいと思います。よろしゅうございます でしょうか。  時間がちょっと押してきておりますけれども、次の澤田委員のへき地拠点病 院の在り方に移らせていただきたいと思います。澤田委員にご発表いただきま して、皆様の中でご議論していただいて、その後、少し休憩をいたしたいと思 います。それでは、澤田委員、お願いします。 ○澤田委員:それでは、資料4をご覧ください。これまでの計画では、へき地医療 拠点病院の指定を受けていても、実際に代診とか医師派遣等のへき地医療支援 実績がない、または、ほとんど実績がないという医療機関もあって、このまま 今の指定要件をずっと続けていくというのはいかがなものかと考えました。し かしながら、現実問題として、これらの医療機関では地域医療を担う医師不足 が顕著になっており、医師を派遣するどころか、自らの医療機能を維持するだ けで精いっぱいの状況であるという現実があります。  これらの医療機関に求められる医師としては、保健福祉分野をも視野に入れ て、幅広く診療ができる病院GPや診療所GPをどのように育成・教育してい くかは、今後の地域医療における医師確保の観点からも大変重要な課題だと思 います。  私は、次期計画の中で、へき地医療拠点病院というものをGPの育成・教育 のコア施設として位置づけるべきではないかと考えています。将来的に医学生 や研修医が総合医を目指すためには、へき地医療拠点病院で一定の研修を積む ことが必要十分条件になるぐらいの社会的認知・評価を持った指定要件になる ことを目標にできればと考えます。  その「指定要件の見直し」についてですが、IとIIというふうに2つの指定 に大きく分類します。Iについては、原則的に医師の派遣実績がまずあるこ と、もう一つはGP、総合医の育成・教育の機能を有すること、これを条件に 付加します。そして、このIに関しては、更に地域性や病床規模によって3群 に分類をします。  IIを設定したのは、Iの指定要件には必ずしも当てはまらないが、都道府県 として、やはり従来どおり、拠点病院として指定したいというところは多分に あると思います。逆に、これを契機に、拠点病院の看板を外したいと言われて も困りますので、やはり現行の運営費補助金等のメリットだけでも残したいと いうところには、II指定を残しておくようにします。これは都道府県の考え方 次第となりますが、こちらは実績というよりも、従来どおり、その肩書とか補 助金が中心であるものをIIに区分するということです。  先にも述べましたが、専門医教育というのは、やはり大病院とか大学病院と いった病床規模や症例数、診療科数が必要であり、これらの病院が中心になる のは皆さんも納得のところだと思います。では、GPを育てるところというの は大病院なのかと聞かれた場合に、実際はそうではないのでは・・と考えていま す。私は、GPを今後どういうふうに育てていくかを考えた場合に、こういっ たへき地医療拠点病院をGP教育のコアとして位置づけし、しかも、このIの 指定を受けたところにはそれ相応のメリットが与えられるということが大事で はないかと思います。このメリットについては後述します。  従来までの指定要件では、500床以上の病院から30床規模の病院まで十把一 からげで、「同じ指定要件で全てを認定する」こと自体に、かなり無理があっ たのではないかと考えております。例えば、500床規模の病院だとプログラム をつくるような病院であり、そこは管理型臨床研修病院の指定を受けるところ なのですが、200床前後だと研修協力病院であったり、30床規模の病院であれ ば研修協力施設であったりと様々です。  続いて、メリットについてですが、このI指定を受けることに対しては、あ くまで案としてですが、やはり何といっても大きいのが診療報酬上のメリッ ト、評価を是非検討して欲しいということがあります。例えば、臨床研修指定 病院とか地域医療指定病院であれば入院診療加算というものが認められていま すが、私が例として書いたのは、そのへき地診療所等から紹介された患者を拠 点病院の医師が診察すると加算があるなどといった形で、もう少し手厚いメリ ットがあればと考えます。  もう一つは、やはり国としてGPの育成・教育に適した医療機関であるとい うことが明確になるようアピールをいただく、または、そういう位置づけとし て医療計画等で明示していくことも大切だと思います。そういうことで地域枠 出身の学生が、将来地域医療を目指したい、へき地医療をやりたいなどと希望 するときに、これらの病院に安心して飛び込んでいけるようになると思いま す。それが鈴川先生の提案されたキャリアパスのイメージにもつながっていく のだと考えます。ですが、現実問題としては、これらのコアとなるべき病院 が、いま本当に足腰の弱い病院になっているわけです。ですから、こういった 病院に対しては、国としても是非とも手厚い支援をお願いしたいと希望しま す。  もう一つは、指定取得を推進させるために、指導医の給与を補助するとかの 案も挙げております。ただ、その指導医については、病院が適当に認定すると いうことになると困りますので、指導医の指定にも一定の基準を設ける必要が あると思っております。  より有利な運営費補助金をということで、へき地支援実績があって、総合医 教育をしっかりやっているということが実績としてあれば、補助額も大きくな るということはやはり必要だと考えます。この他にも臨床研修関連での補助金 もありますから、これについても、Iの指定を持っているということで、より インセンティブが与えられるようにして欲しいと思います。  また、病院の中でGPとして勤務する医師が、日常診療や日常業務をストッ プして代診に行くわけで、診療所で代診をして帰ると、病院では自分の業務が そのまま残っていることがほとんどです。そういったことに対しても、一定の インセンティブが与えられるように配慮をお願いしたいと思います。例えばで すが、医療機関が別途そういうものに手当などを支給していれば、それに対し て補助金による手当てがなされるといったような形でもよいのではないでしょ うか。また、医師を派遣する病院に対しても医師を1人不在にするわけですか ら、それなりの休業補償についても検討されるべきだと考えます。  最後になりますが、この指定要件の見直しは、あくまでも地域の医療機関に とってそれ相応のメリットがないと話になりません。これがまず大前提となり ます。より魅力的なものにするため、指定によるメリットについては、引き続 き更なる検討を要すると思います。また、病院規模や地域性によって3群に類 別された各々の指定要件に関して、医師派遣実績、GP(総合医)の育成・教 育機能以外にも様々な条件があると思います。そういった条件について、どの ようなものを付加していくかについても、これから詳細に検討していくべきだ と考えております。以上です。 ○梶井座長:貴重なご提案ありがとうございました。この点について、何かご意見 ございますでしょうか。吉新委員、どうぞ。 ○吉新委員:たぶん、へき地中核病院は年間130回の無医地区の巡回診療をやると、 補助金と一定の施設整備ですとか、あと、医師とナースの人件費などの経費が 出るという仕組みです。それと、第8次のときに、代診を出すかわりに医者を 出しましょうというへき地医療支援病院ができて、これは第9次のときに、へ き地中核病院、無医地区と、あと、へき地に代診を出す拠点病院というのをま とめて、へき地医療拠点病院群ができました。  ですから、へき地医療支援病院とへき地中核病院を一体にしたのがへき地医 療拠点病院群で、活動内容によって補助しましょうということになりました。 ですから、今、澤田先生がおっしゃたことは、8次、9次、10次というつなが りから来ると、わかりにくい。病院群をひとつにまとめられましたが澤田先生、 その辺は意識されて書いたんでしょうか。 ○澤田委員:一応そういった意味で、あまり一変に指定基準を変更してしまうと混 乱は避けられないと思うので、やはり従来までの指定基準もやはりIIという指 定で残しておくことにしています。でも、これまでと明らかに違う点は、支援 実績があるだけではなく、総合医教育の実績というものを入れたところがポイ ントとなっています。特にI指定については、それ相応のメリット、従来以上 のメリットが得られるようにしたいと考えております。 ○吉新委員:アメリカでは標準的なレジデント教育を行っているかどうかプログラ ムをチェックするところがあって、例えば、条件を満たしていないと研修病院 の指定を外されたりすると聞いています。だから、ちゃんとしたスタンダード を守っていればいいと思いますが、それだけでも大変な作業だと思うんですけ れども、きちんとレジデント教育を行っているかどうかというのをどういうふ うに判定されるんですか。 ○澤田委員:判定については、「地域保健・医療」研修でのへき地医療機関への研 修医派遣実績や受け入れ実績などで評価することなどを検討しています。私 は、この検討会で、へき地医療拠点病院の担う役割として総合医教育を位置づ けることは重要だと考えておりまして、生活を支えていく医療に携わることの 多い地域の病院で総合医を育てるためのカリキュラムなどが標準化され、こう いった教育の重要性を勘案して、各都道府県の次期医療計画のなかで、拠点病 院を充実させようという動きにつながっていけばいいなと考えています。 ○吉新委員:いいなということは僕も分かるんですけれども、補助金と表裏一体な ので、運用が難しい。あと、研修の認定の部分で、非常にレベルの高い、関心 の高い病院はやると思うんですけれども、右へ倣えして、二次中核病院ごとに、 二次医療圏ごとに全部これができちゃって本当にいいのかなと。要するに、条 件だけ満たせばもらうことができる。だから、一生懸命やっているところもそ うでもないところも同じになっちゃうようなことであれば、問題ではないかと 思います。 ○澤田委員:ご指摘の通りで、各都道府県の医療対策協議会とか、へき地医療支援 機構とかが関与する形で、Iの認定に関してはしっかりとした指定基準という ものを各都道府県で設定しておく必要があると思います。手を挙げた病院に対 して、全てがIとして認定されるわけにはいきません。そのためにも支援機構 などが各都道府県の担当者としっかり連携して、大学とか医師会なども巻き込 んで支援実績や教育に関する評価をきちんとやれるようにしていく必要がある と思います。しかも、以前の検討会において、その実績一覧を見たときに、拠 点病院としてほとんどへき地医療支援の機能を果たしてないような病院にも同 等の補助金が交付されているということに、私は疑問を感じました。  やはりその実績というものを一つはきちんと評価していく必要があるという ことが一つ、もう一つはGP教育ということで、私自身は大学病院とか500床 以上の病床規模の病院、ここで言うIcに相当する病院では、本来はGP教育 をおこなうのは難しいのではないかと考えます。ですので、より住民に身近で 生活の見える医療、地域包括ケアなどを実践できる病院こそがGPの教育機関 となるべきで、今の日本において、そのコアになれる病院群としては、やはり へき地医療拠点病院が最も適していると考えます。そのためにも、ご提案した I指定については、これまで以上にメリットのあるものにしていかないと、今 までの10次までとほとんど流れが変わっていかないのでは…というのが私の 考えです。 ○梶井座長:評価についてはもう以前から出ていますけれども、きちっとやっぱり 評価していかなければならないだろうと。しかも、全国的に皆さんが一堂に会 した上で実績報告等を行いながらお互いに評価していくというような意見も出 ていまして、そういうようなことも盛り込まれると思いますけれども、吉新委 員、いかがでしょうか、今の澤田委員のご説明については。 ○吉新委員:精神的には分かるんですけれども、本当にそのCriteriaを満たしてい るかどうかという作業は膨大で、今、先生がおっしゃったように、医師会や大 学と相談すればいいといいますが、本当にできるのか心配です。先ほど、地域 なり国民が、へき地医療のことというのは余り詳しくないと話がありましたが、 その大学だとか県の医師会とか、へき地医療を巡る各論はご存じないと思うん です。そういうところで二次医療圏全てに同じように、補助金なり交付金が出 てしまう。簡単に物事が進むのは危険だなと僕は思いますけれども。 ○梶井座長:少なくとも、これは拠点病院に関しての見直しというのは必要なよう に思うんですけれども、その際にどういう方向で見直していくかということで しょうね。 ○吉新委員:やはり無医地区の巡回診療ですと、常勤の医師がいない出張診療所と か、幾つかのへき地医療で優先順位の高い事業があると思うんです。ですから、 もちろん離島の診療所ですとか、遠隔地公共交通機関のほとんど恩恵に浴する ことができない山間へき地だとか、そういったところに中核病院、拠点病院か ら巡回診療するとか、事業ごとに細かな基準でやってもらいたいなと思います。  今までは、補助金の形式を満たせばよいという意味で悪用みたいなところが あったと聞いています。貴重な補助金を一生懸命やったところにきちんと届く ような仕組みを本当につくれるのかいなという思いがありまして、ですから、 ハードルはしっかり、評価できるような仕組みをつくらないと、みんなで悪平 等で共倒れしてしまいます。現在の仕組みがいいのかどうかということも含め て検討しないといけないと思います。 ○梶井座長:ありがとうございます。以前から、全国的な組織といったのは、へき 地医療支援機構が一堂に会してということでありますけれども、評価を含めて、 へき地医療拠点病院の評価及び見直しを行うということでよろしいでしょうか。 いかがでしょうか。内田委員、どうぞ。 ○内田委員:私はその意見でよろしいと思うんですけれども、ちょっと先生方にお 聞きしたいんですけれども、直近の医療従事者実態調査では、この2年間で 8,000人強増えて、3.3%ぐらい増えているという話ですよね。ただ、特に先生 方の現場では、医者が増えているという実感はまず全くないだろうという印象 を持っています。  その一番大きな原因は、この中で議論されているまさにその課題だというふ うに思うんですが、キャリアパスがしっかりできていないとか、あるいはその 処遇の問題であるとか、いろいろあるんだと思うんですが、やはり私は診療報 酬で手当てしても到底間に合わないような、医療機関の体力がないというとこ ろも非常に大きいんじゃないかというふうに思っています。  そこは補助金と診療報酬との兼ね合いで、特にこういう社会的な医療、政策 的な医療に関しては、きちっとした評価の上で、きちっと補助金をつけるとい う明らかな方向性が出されないと、なかなかいい医療をあまねく提供するとい う体制はできていかないというふうに感じているんですけれども。 ○梶井座長:ありがとうございました。補助金がつくということは、評価もきっち りやっていくということにもつながりますね、先生。ということで、見直し、 評価、それから補助金の問題、これを……。はい、どうぞ。 ○神野委員:医療確保については、私自身は担当ではないのですが、北海道で地域 医師確保をしている立場から、是非発言するよう託されましたので申し上げま すが、今、へき地医療拠点病院の問題が議論されていますが、そこを支えてい く手だての一つになる提案ということで申し上げますと、平成19年の第5次医 療法改正で新しく社会医療法人という法人ができているということですが、こ れは都道府県知事が認定することになっておりまして、その要件の一つに、へ き地医療に対してある一定期間支援を行った場合、社会医療法人の指定を受け ることができるようですが、その支援先としては、へき地診療所に対しての支 援のみというところで枠が決まっているということです。実際には、へき地診 療所だけでなく、へき地医療拠点病院、例えば総合診療を100床未満で担って いるようなへき地にある小規模病院への応援をしたいけれども、この制度の要 件の対象にならないため、今後へき地診療拠点病院への支援を行う場合も対象 として認めてもらえないか、社会医療法人の基準についての見直しができない かという意見を発言させていただきます。 ○梶井座長:貴重なご意見ありがとうございました。ちょっとここの場でそれにつ いて提案するのは少し難しいのかなというふうに思いますが、いかがでしょう。 ○神野委員:いえ、一応発言させていただくというところで、よろしいです。 ○梶井座長:承りました。それでは、時間が随分押してしまっていますけれども、 ここで、3時10分まで休憩させていただきたいと思います。 〔休憩〕 ○梶井座長:それでは、時間となりましたので、始めさせていただきたいと思いま す。  最初に皆様にお断りしておかなければならないんですけれども、今のペース でいきますと、3時間いただいたんですけれども、それでは終わりそうにござ いません。できるだけオーバーしないようにとは思いますけれども、ただ、そ れで議論が余り出ないようでは困ると思います。いずれにしましても、今日が こういう議論の場としては一応締めとなります。次回は報告書についてのご議 論だというふうに思いますけれども、そのときでもまた意見を言っていただけ ればとは思うんですけれども、ぜひ活発に後半も進めていきたいと思います。 よろしくお願いいたします。  それでは、論点の中に盛り込まれていたへき地における歯科の課題について でありますけれども、角町委員からプレゼンテーションをお願いいたしたいと 思います。よろしくお願いします。 ○角町委員:ただ今非常に熱い議論が続きましたので、歯科の話題について話をさ せていただきます。少し和らいだ議論になればと思いますので、頭を冷やしな がらお伺いいただければと思います。  私は、日本歯科医師会に所属をしております。本日は、ご提示しております 8枚の図表を用いて説明をさせていただきたいと思っています。とりあえず、 初めてのことなので、記録をまとめてきましたので、文章を読むようにして、 できるだけ時間内に終わりたいと思います。  私の臨床活動の拠点というのは、離島が多い長崎県でございます。開業の傍 ら、30年近く県内で地域医療の充実や地域保健活動に携わってきました。その 巡回診療や住民健診などの経験から、離島での生活の大変さを実感いたしまし た。そのとき経験したことですが、台風の進路が急に変わったために、当初予 定していた活動ができずに、島での当時のスケジュールを大幅に変更せざるを 得ないということになりました。その翌日、台風が通過しても波が高く、船が 出せないため、島から帰ることもできないという経験でした。晴れているのに なぜ船が出ないのかとぼやきながらも、離島の生活の大変さを体で体験したわ けです。このような経験から、離島やへき地における歯科保健や医療活動の充 実を図ることの大変さを痛感しました。それ以来、小離島の医療活動を少しで も本土並みに近づけるために、廃車になる巡回診療車の無償払い下げなどを長 崎県にお願いしたり、関係機関と折衝し、住民の歯科医療環境改善のために巡 回診療車の歯科医療機器の整備充実などに奔走したことを覚えています。この ような経験から、立ち遅れが目立つ離島や中山間地域といったへき地で生活さ れる住民の方々の口腔の健康に関わる課題である歯科保健医療の充実について、 何とかしなければいけないというふうに考えるようになりました。そのような 視点で、今回は、委員の先生方に、本日表題に掲げました件につきましてご検 討いただきたいと思っております。  まず、我が国におけるへき地の歯科の現状です。平成16年度の厚生労働省の 無歯科医地区調査の結果では、全国の無歯科医地区数は1,046カ所、また、そ こで生活する住民の数は29万5,480人となっております。また、へき地ネット のデータベース等によると、全国のへき地医療拠点病院の数は43都道府県で 263施設ですが、このうち歯科を標榜しているへき地医療拠点病院は30都道府 県に73施設しかありません。また、へき地医療診療所は47都道府県に1,063施 設ありますが、ここでも歯科を標榜しているへき地医療診療所は23都道府県で 66施設しかありません。つまり、現在の都道府県において整備されているへき 地医療拠点病院やへき地医療診療所における歯科医療の提供体制は必ずしも十 分なものではありません。そのため、へき地における住民の生活面での安心・ 安全を支える上で口腔の保健医療福祉に関わる環境整備、すなわちへき地医療 拠点病院及びへき地医療診療所に歯科の標榜ができる体制を構築することは、 へき地における歯科医療提供体制の充実を図る上で重要な課題と考えています。  2つ目、医科歯科連携の重要性。今日、我が国の高齢化の進行は、地域によ って高齢者の増加率は異なっていますが、そのスピードに関わらず加齢によっ て住民が抱え持つ健康問題は、へき地も都市部も変わらないと思います。お話 をしてきましたとおり、へき地で生活する住民の方々への歯科医療の提供は十 分でないため、歯科疾患の早期の段階から適切な診断や加療を行うことが困難 な場合があり、中には重篤な事態に陥る場合もあります。歯科医療の提供体制 が十分でないへき地にあっては、加齢や障害によって起こる身体機能低下、そ の延長線上にある口腔機能の廃用、そして、誤嚥性肺炎等の致命的な問題を引 き起こすことにもつながっています。これらの問題は適切なケア等の供給がな ければ避けることができません。  しかし、必要な施設や人材が十分でなく、医療連携がとられていないへき地 では、必要な医療であっても、それを受けることができません。また、その状 況を当たり前のように住民が受け入れざるを得ないという実態は決して見逃す ことはできません。我が国は、どのような環境にあっても、人々はひとしく医 療を受ける権利を有していると思います。何とか知恵を出し合って、可能な限 り、へき地住民の方に光が当たるような歯科医療提供のための地域連携ができ る環境づくりへの努力が必要と考えます。  教育の問題です。へき地医療に関わる歯科教育に関する問題。へき地の住民 の生活や高齢化が進行することを考えると、歯科関係者の関わりの必要性がこ れまで以上に大きくなりつつあると思います。歯科医療提供体制が十分でない へき地に歯科医師を派遣するという体制づくりを考えるとき、歯科医療を担う 人材の育成・確保は重要な課題です。  しかし、新しい歯科医師を養成する歯学教育課程の中では、へき地医療につ いて十分な環境づくりができていません。平成19年度に改定されました歯学教 育モデル・コア・カリキュラムでは、歯学教育における地域医療などへの歯科 の関わりについて、保健・医療・福祉制度に関わる一般到達目標の中で、地域 医療に求められる歯科医師の役割と機能及び体制など地域医療の在り方を概要 できること、また、地域における保健・医療・福祉・介護の分野間の連携及び 他職種間の連携の必要性について説明できるということを求めています。  しかし、最近の歯科大学の教授要綱の中では、必ずしもそれがへき地医療の 歯科保健という形に特化できているという状態ではありません。そういう面で は、これらの強化を今後考えなければいけないと思います。また、へき地出身 の歯科医師への教育支援としての奨学金の充実など、人材の育成・確保に必要 な支援体制の充実も求められると思います。次は、事例の中で実態を少しご説 明したいと思います。  事例に即して、へき地における歯科医療の提供体制の現状と課題についてご 説明します。事例1は中山間地域の例です。今回は都道府県歯科医師会から情 報提供をいただきました。中でも、山口、島根、高知、愛知などにおいて、無 歯科医地区の増加が見受けられました。これらの地区の増加の原因としては、 歯科医療機関の廃止、交通の便の悪化、地区区分の変更などが挙げられました。 これらの事象は、へき地という地理的な特徴や人口減少などの問題に起因して いるようでした。そして、十分な医療環境の整備ができにくい中山間地域では、 その対応を巡回診療車や訪問診療によって対応しており、そのための機器整備 に追われているような状況がうかがえました。このため、中山間地域における 限られた医療資源の中では、へき地医療支援機構の機能強化やへき地拠点病院 の機能面での整備・強化を図り、地域の必要に応じた歯科医療連携がスムーズ に行えるような体制整備、仕組みづくりが必要ではないかと思います。  次は島根県における県民残存歯数調査でございます。平成13年度の結果で、 残存歯数が少ない市町村は、中山間地域や歯科医療機関が少ない地域に多く見 られるようです。また、この傾向は平成17年度の結果でも同様で、残存歯が少 ない地域は島根県の中央部、いわゆる山間部に集中していました。逆に残存歯 の多い地区は、平成17年度の調査結果から、成人歯科保健事業を実施している 地区が多いということも示されています。これらのことから、地域住民の歯科 保健医療向上には中山間地域における歯科医療供給体制の整備や同地域におけ る歯科保健事業が極めて重要であると考えます。  次は離島の例でございます。私が活動しております長崎県では、齋藤、林田、 長崎大学の先生方ですけれども、その先生方によって興味深い調査結果が示さ れました。それは、長崎県の五島列島にある福江島の東約20キロ、五島灘に浮 かぶ椛島で平成21年5月14日、15日に実施された健康調査において、歯科健診 を受けた40歳以上の71名、男性26名、女性45名に対して聞き取りによって行わ れた住民歯科医療ニーズの調査の結果です。  この島の人口は約230名で、歯科医院はなく、いわゆる無歯科医地区に該当 します。島の人口はゼロ歳から14歳までの学齢期の占める割合がわずか5.9%、 15歳から64歳までの生産人口が占める割合は37.4%、65歳以上の高齢人口の占 める割合が56.7%で、全国平均と比較しても極端に高齢化が進行した島と言え ます。  医療を受けるためには、隣接する福江島にある五島市、これは旧福江市です けれども、そこまで行かなければなりません。フェリーでは約30分の域なんで すけれども、海の状況によっては当然治療に出かけることができませんし、ま た、治療に出かけても、その日のうちに帰れないで、2日も3日もその場所に とどまらなければいけないという環境です。  このような結果から、具体的には、島の医療ニーズとして歯科医院がなくて 困ったという住民が8割でした。また、3割の住民は歯がなくなっても我慢す るという状況でした。また、中でも特記すべきは、4割の住民が、本来であれ ば継続治療によって残せる歯についても、治療回数を減らすために抜歯を行っ た経験があるということでした。我が国の国民は、ひとしく医療を受ける権利 を有しているはずですが、へき地という地理的なハンディを持つ環境のために、 適切な医療を受けることができないとすれば、それは大きな問題と考えます。 へき地の健康の保持は、離島という環境の中で、大変深刻な状況と言えるので はないでしょうか。  一方、この件に関して、住民の6割が歯科の巡回診療を希望されていました。 その理由としては、私どもの住む長崎県の巡回歯科診療の対象者が障害者に限 定しており、離島住民であっても巡回診療を受けることができないということ がその背景にありました。この巡回診療に関しても、昭和60年から長崎県の委 託事業として県歯科医師会が受託して行っているわけですけれども、県の受託 費だけでは必要な経費、歯科医師1名、歯科助手2から3名、運転手1名の体 制を賄うことができないために、本県歯科医師会としてもテダシをして実施し ているのが現状でした。さらに、歯科治療は1回で終わらず数回の受診が必要 な場合がありますが、巡回診療では長期間に1カ所にとどまることができない ために、その後の継続的な受診や定期管理においてはどうしても近隣の歯科医 院の協力が不可欠です。しかし、これまでお話ししたような状況から分かるよ うに、地理的な制約から、治療の継続や定期管理が困難な場合がしばしば見受 けられることを申し添えておきたいと思います。  そういうことのまとめを、ここに記載しているとおりですので、読んでみた いと思います。  今回、歯科医の立場でへき地における歯科医療の提供体制の課題について意 見を述べる機会をいただきました。私は今回のヒアリングで委員の皆様方にお 伝えしたいことは次の3つでございます。  1つは、へき地支援機構の強化の中で、口腔の問題について具体的な対応が できるような方向付けをすべきということです。例えば、へき地医療支援機構 において、口腔の問題について医科との連携を含め、コーディネートできる機 能を充実させるべきだと考えます。  2番目に、歯科医師の教育において、へき地医療に対する教育目標が明確で ありません。そのため、へき地医療に関わる課題を教育カリキュラムの中で位 置付けるべきだと考えています。併せて、自治体などから、奨学金制度の支援 要件などにもへき地に関する事項を加えていくことも必要ではないかと思いま す。  3番目、へき地医療を支えるへき地医療拠点病院の機能の中に、へき地住民 の口腔機能の管理などを支援してもらえるような機能を強化して、へき地住民 の必要に応じたへき地の医療拠点病院等から歯科医師を派遣するなどの機能強 化ということも必要だと考えます。  以上の3点ですが、今回のへき地医療検討会の中で住民の方々の安心・安全 な生活を支援するという観点から、委員の先生方に山間地域や離島というへき 地の歯科医療の提供体制の課題についてご理解をいただき、全国のへき地の歯 科の課題が少しでも解決できるようにご検討をお願いしたいと思っています。 これは個人的な思いなんですけれども、実は私自身が訪問の現場で、様々な口 の問題でトラブルを抱え、そして亡くなっていく人、あるいは生活の質が著し く低下する人々をたくさん見ております。そういう事実認識に立つと、これら 口から起こる問題によって、住民方々の生活の質の低下に関わる問題を次の時 代に引き継ぐことのないように何とかして解決していきたいと思っています。 よろしくお願いしたいと思います。以上です。 ○梶井座長:へき地の歯科の問題を明確にご発表いただきました。ただ今のご発表 について、ご意見ございますでしょうか。  先ほど、中村委員、帰られたんですけれども、私のところにメモをお寄せに なっておられます。歯科と医科との連携の重要性ということで、最近の事例を 書いておられますが、ここでは割愛させていただきますけれども、歯の問題、 歯科の問題を内科的問題のように誤ってしまうことは少なくないように思いま すと。それを踏まえて、やはり歯科との連携が重要であるというふうに申し送 って帰られました。こうやって取り上げてみますと、本当に私自身も大事だと 思いますし、日ごろの診療においても、私もそのように感じております。いか がでしょうか。はい、どうぞ。 ○神野委員:私も保健師として、かつてへき地の村を家庭訪問したときに、この村 の人はどうしてこんなに歯がないのだろうと感じたことがございまして、やは り齲歯予防や歯周病予防というのは、予防的な対策を進めるということが、へ き地においてはより一層必要だなというふうに思っているところなので、保健 活動と歯科医療が十分連携をして、予防活動の推進を是非進めるべきと思って おります。 ○梶井座長:神野委員も同意見のご様子でございます。そうしますと、ここによく まとめていただいていますけれども、まとめの1番は、2番、3番に関わって いくかなというふうに思いますけれども、そうしますと、歯科医師の教育にお いて、へき地医療に関わる問題を教育カリキュラムの中に位置付けると、これ は医学部のほうでもそういうような意見が以前にこの会でも出ておりましたの で、これを盛り込ませていただくということでよろしいでしょうか。それから、 3番の、これは小さい字で書かれたほうの、へき地住民の必要に応じ、へき地 医療拠点病院等から歯科医師を派遣するなどの機能を強化する、この点を盛り 込ませていただいてはいかがでしょうか。 ○角町委員:ずっとこの検討会の資料をめくっておりましたけれども、なかなか明 確にその辺の指摘がありませんでしたので、今回そういうふうにしていただく と幸いでございます。ありがとうございます。 ○梶井座長:皆様よろしいでしょうか。それでは、次に進ませていただきたいと思 います。看護職の課題については、今日、自治医科大学の春山教授が参考人と してお越しになっておられます。春山参考人からプレゼンテーションをいただ きたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○春山参考人:自治医科大学看護学部の春山と申します。2005年に発会しました日 本ルーラルナーシング学会という学会の理事も務めております。今日は資料6 のほうを用いまして、へき地看護に従事する看護職の確保・定着のための提言 ということでお話をさせていただきたいと思います。  まず、へき地で働く看護職の調査というものは、25年以上前に駐在保健師の 活動を対象としたものが数件、それから、最近では都道府県単位のへき地看護 活動や人材育成に焦点を当てたものが幾つかあるのみです。そこで、自治医科 大学看護学部の地域看護学担当教員により、2003年と2008年にへき地診療所看 護職を対象とした全国調査を実施いたしました。そこにお示ししてありますよ うに、回収率は十分高いとは言えませんが、ほかに調査がないことから、参考 になると考え、へき地診療所看護職の特徴、それから看護活動の特徴、看護活 動における問題や課題を述べさせていただきたいと思います。  まず、1ページ目ですけれども、へき地診療所で働く看護職の年代は、全国 看護師就業者の年代と比べますと、40から50代が多く、最高年齢は70代です。  2枚目をご覧ください。看護師と准看護師の割合ですが、正看護師が2008年 の調査では65%であり、これは全国病院看護師就業者における割合よりも低く、 全国の診療所看護師就業者における割合よりも高いという状況です。下の図で す。現在の診療所における勤務年数ですが、5年未満の者が約4分の1、20年 以上の者が約3割という状況です。  3枚目をご覧ください。約9割は既婚者で、約8割は診療所所在の市町村に 居住しています。2008年回答者の約7割は勤務診療所所在の市町村または近隣 市町村の出身者でした。一方、派遣は1割に満たないぐらいです。下の図です が、診療所の常勤職員数です。常勤看護師がゼロ人という診療所が1割強、常 勤医師ゼロ人というところが約2割、常勤事務職ゼロ人が4割弱、他の常勤医 療従事者は8割以上はゼロ人という状況です。常勤看護師ゼロ人の診療所は、 常勤看護師が確保できず非常勤看護師で対応している可能性があると思います。 また、医師も同様だと思いますけれども、常勤医師や事務職、他の常勤医療従 事者がいない場合には、それらの職種の役割を補う多様な役割が看護職に求め られることが考えられます。  次をご覧ください。へき地診療所における看護活動の特徴です。実施率の高 いものは、一番上に2つ挙げておりますが、往診や外来での診察の介助や処置 等、診療の補助があります。次の2つ目の図からですが、医師不在時の応急処 置や初期対応、電話相談、それから往診以外でも患者宅を訪問して健康・生活 状況を把握していたり、受診手段などの援助をしていたりという「多様なアプ ローチによる外来看護活動」がありました。  また、3つ目の図ですが、救急搬送時の初期対応や付き添い、搬送先の病院 への状況報告など「救急対応」があったり、それから4つ目の図の「在宅介護 家族への支援」、そして、5つ目の図の「住民ネットや地域資源のアセスメン トに基づく関係機関との連携・調整」といった看護活動がありました。また、 一番下の図ですが、実施率は高くありませんが、診療所の看護職の中には「健 康増進や疾病予防のための教室の企画・開催」までしている者がいるというと ころに注目すべきではないかと思います。  このように、診療の補助のみならず、外来患者への療養支援、救急対応、介 護支援、そして疾病予防や健康増進といった多様な看護活動が、ジェネラリス トとして看護活動が、看護職に求められておりますし、それを、その地域の社 会資源や人と人とのつながりをとらえながら看護活動を展開している点がへき 地診療所における看護活動の特徴だと思います。全てではありませんけれども、 診療所によっては、医師は派遣で数年で交代ということもありますが、看護師 は、先ほどお示ししましたように、そこに在住している看護師が定着して働い ている場合が多いという特徴があります。交代する医師のつなぎの役割や医師 の不在時の対応など、看護職は医師とうまく役割分担しながら地域医療を支え ていると思います。多様な業務が求められる中、准看護師が3から4割の現状 もあるわけですが、へき地診療所で働く看護職が、看護としての役割をよく発 揮できるよう支援することが、やはりその地域に住む住民への安心・安全な医 療にもつながると思いますし、医師の働きやすさにもつながると考えます。定 着しているといっても、いつかは交代しなければならず、常勤看護師がいない 診療所など、確保が難しい地域も見受けられますので、へき地診療所で働く看 護職をどう育成、つくっていくかということをやはり考えていくことが重要で あると考えます。  次のページをご覧ください。5ページ目です。へき地診療所看護活動におけ る問題や課題は大きく3つ挙げられます。まずは、看護や医療に関する最新の 情報が入ってこない、研修・研さんの機会が不十分である、看護活動に関して 困ったときに頼りにできる人がいないといった「研修・研さんの機会やサポー ト・連携の少なさ」、2点目は、休暇が思うようにとれない、仕事に見合った 給料をもらっていない、仕事に追われて必要だと思う看護援助ができないとい う「仕事の対価の不十分さや看護職としての役割の発揮しにくさ」、そして3 点目は、担当専門外の仕事をしなければならない、自分の時間を使って仕事を しなければならないといった「看護業務とそれ以外の業務、仕事と生活の境界 のあいまいさ」です。  次のページをご覧ください。次の調査は、2005年に行いました9つの離島に おける保健師として勤務経験のある者27名への調査結果から示したものです。 離島勤務経験のある保健師が考える保健師の確保・定着のための条件として調 べた結果を参考にお示ししました。  この中で、対象者が絶対必要、かなり必要と考えた割合が高かったのは、 「保健師活動に対する役場の理解」、「業務時情報交換できるIT設備があ る」、「自己研さんの機会がある」、「研修参加に対する職場の理解がある」、 「保健師活動を確認評価してくれる人が島外にいる」、「内地保健師との給料 の格差がない」などです。  最後のページをお願いしたいと思います。Vのところです。以上を踏まえま して、大きく3点、確保・定着のための提言ということでお話しさせていただ きたいと思います。まず、1つ目ですけれども、へき地看護に従事する看護職 の実態がきちんと明らかになっていないということがあると思います。今私が お話ししましたのはへき地診療所の状況ですけれども、これ以外に、へき地を カバーしているへき地医療拠点病院の看護職の確保や看護に関わる実態を示す データがあれば、より問題が明らかになると思われますが、そのような調査が 実施されていないので、明確とは言えない現状があります。  ですけれども、前回の検討会で示されておりましたへき地医療拠点病院の意 見の中にも、少なからず、看護師の確保や支援の問題は出ておりました。それ から、私の大学の看護学生の実習や研修先の病院でも、全て多少なりともその ような問題を抱えていることから、恐らく、恐らくというか問題があると思い ますが、それが明確になっていません。人確法に基づいて各都道府県は看護師 の需給対策に取り組まれています。都道府県内の地域性というものを考慮して 取り組まれている都道府県もありますが、そうではなく都道府県全体として一 律にとらえておりますと、へき地看護に従事する看護職の問題というのは見え にくいということがありますので、へき地等地域性に関わる問題が有るのか、 無いのかということを、まず明確にするということが重要ではないかと思いま す。  2点目は、へき地看護に従事する看護職の育成と確保ということについてで す。自治医科大学医学部では都道府県単位できちんと人づくりを行って成果を 上げてきていると思いますが、看護職も同様で、都道府県単位の人材育成が必 要であると考えます。各県には、今や都道府県立の看護系大学や看護学校とい うものがあって、それらの学校の使命は、各都道府県で看護が十分行き届いて いないところや、人材や支援が必要なところに対して寄与していく役割がある と思います。その役割を強化していくこと、それから学生が離島・山村等にお ける看護に関心を持ち、将来も含めて働いてみたいと思えるような教育が必要 だと考えます。  また、マンパワー不足を補うということのみならず、キャリア開発・支援を 視野に入れた人事交流や派遣制度等の仕組みづくりができないかということで す。自治医科大学附属病院の看護部では、地域医療振興協会の依頼を受けて、 へき地医療拠点病院等に毎年二、三十人の看護職を派遣していますけれども、 それはマンパワーということだけではなくて、働いている看護職の看護実践能 力にも寄与しているということが、添付資料につけさせていただきましたが、 看護部長の研究等で明らかになっております。看護職の間でも、へき地看護や 医療資源の少ない地域での看護活動は余り知られておりません。都道府県看護 協会や各地域でネットワーク組織をつくって、へき地看護活動について知った り体験できるPR拠点をつくって、現職場での退職を検討している者などが自 分のキャリアパスを見直す機会、つまり、今の病院では働けないけれども、地 域病院だったらもしかして働けるかもしれないというような、そういう機会を つくって、その結果、へき地看護への従事につながるとよいのではないかと思 います。  最後の3点目は、やはり確保と支援は両輪として考えていく必要があると考 えておりまして、都道府県単位のへき地看護に従事する看護職への支援体制の 確立というものを挙げさせていただきました。支援の内容としては、女性が多 いですから、何かあったときに代替の看護師が確保できるであるとか、育児休 暇、介護休暇がとりやすいですとか、そういったことも関連しますが、「働き やすさを向上するための支援」、それから「看護職としての専門性を維持・向 上するための支援」、そして、「看護実践をしている上での、今の問題・課題 を解決して、よりよい看護活動が展開できるための支援」ということが重要に なってくると思います。  支援策の一案として、都道府県担当部署あるいはへき地医療支援機構が中心 となって、まず、へき地といっても離島や山村、いろいろありますので、各都 道府県単位で支援ニーズの明確化と支援方法を検討して、支援を実施していく ということが大事だと思います。  ITを活用した支援の検討ということも重要でしょうし、ITを活用すると しても、支援においてはへき地で働く看護職の状況や看護活動を共有できてい ること、一方通行的な知識や情報の入手だけではなくて、看護活動について考 え、話し合ったり、その成果や課題を確認しあったりするような相互的なコミ ュニケーションによる支援を基盤にしてITも活用していくということがとて も重要なのではないかと思っています。  連携協力機関としては、各都道府県の状況によっても違うと思いますが、看 護協会、看護系大学、へき地医療拠点病院、そして、私たち日本ルーラルナー シング学会でも、へき地で働く看護職の支援のために設立したという発会の趣 旨もありますので、そういった支援をどのような体制で進めていけるか、準備 検討しているところです。  それから、市町村保健師や国保連合会保健師との連携の促進や、それから、 どこかに集めて集合研修ということでは、なかなか支援が難しいへき地の状況 がありますので、専門看護師や認定看護師、へき地看護経験者等の人材を生か した支援者登録制度といったものを設けて、へき地に出向いていろいろな支援 ができるような仕組みをつくるといいのではないかというふうに思います。以 上です。 ○梶井座長:ありがとうございます。非常に的を射たといいましょうか、データを お示しいただいて、その後にご提言をいただきました。  ご意見ございませんでしょうか。はい、どうぞ。 ○神野委員:春山先生、ありがとうございました。本当にへき地における看護につ いて特化したデータといいますか、これまで実態を十分に北海道としてもまと めてこなかったなということを先生のご発表を聞きながら思いました。 前に も申し上げましたが、平成18年の診療報酬改定で、大規模病院が7対1入院基 本料にするために看護師を大量に募集をしたため、地方の病院に影響が出てい るというご指摘が、各地方の自治体から出されているわけですけれども、保健 師、助産師、看護師には、就業届というのが2年に1回ごとに行われておりま して、直近のデータでは、平成20年の12月末と2年前の平成18年末を比較しま すと、北海道は二次医療圏が21カ所ありますが、そのうち8圏域の看護職員の 数が減りました。ですので、全体としては増加していますが、都市部が増加し、 3分の1強を占める、地方の医療圏の看護職員数が減っているという実態が見 えてまいりました。診療所からは、「看護師が1人辞めるために夜勤体制がで きないので、有床診療所を無床化しなければいけないので何とかしてほしい」 とか、あるいは、「このままいくと病院を診療所にしなければいけないので、 看護師を地元で探してもいないので、何とか北海道として探してほしい」とい うような要望が何件も来ております。  都道府県にはナースセンターが設置され、ナースバンクという制度がござい まして、求人と求職の無料職業紹介をしているんですが、そこに登録されてい る求職者の要件を満たすような条件のところがなかなかありません。 その背 景を見ますと、地方が非常に財政難ということで、市町村の職員の給与が下が っております。1割、2割下がっておりまして、看護職員などの専門職も、国 保病院等に勤めておられる方の職員の給与も下がっていると。そうすると、こ の間求人では、勤務経験10年の方で基本給が18万という募集が出ておりました。 そういう給与で、へき地に就業しますという看護師はおりません。そういった 意味で、非常に経済の問題とも大きく関わると思います。 地方の医療を支え ていくための看護職員への何らかの国の支援がないと、今後ますますこの傾向 は強くなっていくのかなというふうに思っております。 病院の病床数が 削減されれば、病院の看護師数も減っていってよいはずと思うんですけれども、 その一方、今度は在宅看護がもっと充実していかなければならないという問題 がございまして、それでは訪問看護が充実できているのかというと、地方にな るほど訪問看護ステーションは経営難で、遠いところに少ない人数で経営しな ければいけませんので、赤字になるという問題があって、やはりトータルで看 護職員の確保ということについての何らかの地方への支援が必要になってくる というふうに思っております。 ○梶井座長:ありがとうございました。そのほかいかがでしょうか。土屋委員、ど うぞ。 ○土屋委員:本当によくまとめられていて、すごくうれしく思いました。私は、実 際にここのへき地診療所看護活動における問題や課題と挙げていただいたこと を、へき地というほどではないのですが、私の働いているところも田舎ですの で、ここに問題や課題と挙げられたものをほとんど毎日のように感じながら働 いてきた看護師の一人です。  じゃ、どうすればいいのかというようなことで、県のほうのどんなふうなと いう話もちょっとお聞きしたところ、女性であるがためということはないんで しょうけれども、やっぱり居住地にいる診療所に勤めるという形が多いとか、 訪問看護ステーションはその中でというようなことであるので、田舎、へき地 はやっぱり人口が少ない中には潜在看護師もいないという状況があって、なか なか確保は本当に難しいというようなお話でした。  私らも、訪問看護ステーションをやっていて、病院の内科なら内科、外科な ら外科病棟に勤めている看護師なんかよりも、総合的にいろいろ知っていない とできない部分がかなりありまして、求められるものが多いので、先ほどの総 合医じゃないんですけれども、本当に研修は必要なことで、私たちも不安があ るので、市民病院辺りに交渉して、その交流研修を1週間ぐらいずつ、お互い にどちらも理解しようというようなことでやりましたけれども、そうすると、 それだけでも私、少し余裕になるかなというのがありましたので、そういうと ころに、田舎やらのへき地やら、離島はちょっとよく分からないんですが、働 く看護師を一人でも多くするために、先ほど医師のところで出たキャリアデザ インのモデルのようなものが応用できないかなというふうにちょっと思ったわ けです。  ただ、男性の看護師も大分増えたんですけれども、まだまだ女性がほとんど で多いので、なかなか難しいところもあるかとは思うんです。結婚、出産、子 育てというようなことがあるので、難しいところは多いんですけれども、でも、 応用できるところはあるかなというふうに思って、この定着のための提言と挙 げていただいたここにちょっと通じるのかなと思いました。 ○梶井座長:ありがとうございました。本当によくまとめていただけたと思います。 やはり実際にへき地で診療に携わっておられる看護職の方々をお一人お一人ど うサポートしていくかという、今の土屋委員のお話にもありましたように、こ れは研修であったり、実際に休みがとりたくてもとれないとか、そういう部分 は非常に大切だと思います。そのほかにも、全体でどういうふうにとらえてい くか、そのシステムをどういうふうにしていくかということをおまとめいただ いておりますけれども、この部分も非常に大切かというふうに思います。吉新 委員、どうぞ。 ○吉新委員: Nurse Practitionerは医師が十分対応できない診療所や出先の訪問 看護活動とか、クリニックが閉まっている時間に、処方したり処置をある程度 やっているようです。実際、相当ご自分一人でどんどん家々を回られますし、 訪問看護でしょうけれども、例えば、日本でも医者を置かない、人口300人以 下の離島では、へき地保健指導所を設置することになっています。ナースがそ こに住んでいて、遠隔の画像で医師の指示をもらったり、処置や処方もしてい ることは実態だと思うんです。  私もナースと医師と事務だけの診療所に五、六年勤務したことがありますけ れども、実際、自分が診療所にいないとき薬を出してもらうこともありました。 日曜日に処置が必要であればお願いしたりすることがあります。医者が不在時 処置ですとか処方ができるようにはならないんでしょうか。 ○梶井座長:はい、どうぞ。 ○春山参考人:できるできないは厚生労働省の方に聞いていただきたいと思います が、今日お話しした調査とは別の調査で、医師のいない離島も含めて、へき地 診療所において医師と看護師がどのように役割分担をしているのかという調査 をしました。その結果では、現在、事前指示、包括指示が認められているので、 その現行法の範囲内で、医師が不在であっても、医療サービスが確保されるよ う看護師と医師でうまく役割分担なされていました。以上です。 ○吉新委員:そこはちゃんとしないと教育もできないと思うんです。想定されない ことを教育するということもあり得ないと思うんですが、ちゃんと教育なり訓 練なり、処置の方法とかできるのであれば、実技もできるのであればとっても いいと思います。 ○梶井座長:それも明確にするということでしょうか。ありがとうございました。  それでは、看護職の課題についてはこれで終わりたいと思います。  約束の時間にだんだんと迫ってまいりましたけれども、先ほどお話ししまし たように、少し延長させていただきたいと思います。もう帰りのチケット等購 入しておられて、遠方にお帰りになられる方もあると思います。次回は2月2 5日木曜日の13時からということで、後でまたご説明がある予定ですけれど も、予めご説明申し上げておきます。場所は未定でございますが、これもご連 絡はあります。ということで、また議事録等をお読みになられて、不明なとこ ろは問い合わせていただければというふうに思います。  ということで、誠に申しわけございません。続けていきたいと思います。村 瀬委員のほうから、遠隔医療について今日は資料をプレゼンテーションをお願 いしたいと思います。 ○村瀬委員:資料にある事例のお話からさせていただきます。4ページに、参考資 料「遠隔医療の活用事例」と書いてございます。1から11の事例がありますが、 後で確認しておいていただきたいのが下線の引いてある部分で、この部分につ いては、遠隔医療に診療報酬の請求が認められている部分です。一部には、診 療報酬が認められているというのが、ここの4ページのポイントです。  5ページ以降に、その内容が簡単にまとめてあります。5ページの上の(1)と (2)、両者とも高血圧の管理の例です。上は、病院が中心になって在宅の患者さ んの高血圧管理を行っており、下は、全国的にも珍しいのですが、町が主体と なって住民の健康指導を行っている、保健センター、保健師さんが中心になっ ての健康管理指導です。  それから、6ページ、7ページに、それぞれ、糖尿病、ぜんそく患者、それ から心臓病の不整脈等を中心にした管理、在宅酸素療法、呼吸器障害の患者さ ん指導の例です。それぞれ在宅の患者さんの健康状態を遠隔医療機器を用いて モニターをして、その結果に対して医師が直接指導をしています。  8ページの6、7については、看護師、助産師が中心になっているもので、 6については、訪問看護の際にテレビ電話を使って医師が指導を行うという形 態になっています。なかなか医師の往診が難しいところを訪問看護を充実させ ることで対応するという事例です。7は、産科医が少なくて診療が難しいとい う部分を、助産師さんが機器を用いて妊婦のモニターを行い、そのデータを産 科医が見て指導を行うということで、妊婦の健康管理を行っています。  9ページ、10ページについては、医師間の、医師同士の連携です。8は電子 カルテを用いて情報を共有しています。9については、眼科の画像、専門医が 眼底画像を見ることによって指導を行うというものです。10ページの10、11、 これは全国的にかなり広がっています。10については、放射線画像を専門医に 送って診断を仰ぎ、その診断結果を基に病院、診療所の医師が患者を診断し指 導するというものです。11については、術中迅速診断を行う病理医が非常に少 ないということで、顕微鏡の画像を病理の専門医に送り、その診断により、手 術の適応を決めるというものです。  それから、冊子を1冊つけさせていただきました。これは、厚生労働省から 研究費をいただいて調査研究を行ったその中の一部抜粋でありますけれども、 ここの52ページのところに、健康管理コンタクトセンターのサービス、2006年 のフィンランドの状況についてまとめさせていただきました。日本国内でも、 いろいろな形で健康保健関連のコールセンターの取り組みが進んでいますが、 この52ページに書かせていただいたフィンランドでは、国土が日本とほぼ同じ、 それに対して人口が520万人しかいないという地域におけるヘルスケアをどう 組み立てるかということで、このコールセンター、コンタクトセンターとも言 いますが、それが非常にうまく機能しているという実例です。こういった事例 を踏まえまして、2ページへ、もう一度戻っていただけますでしょうか、2ペ ージに今日のお話の内容をまとめさせていただきました。  まず最初に、1のところ、遠隔医療ですが、医師法第20条に、要するに患者 さんを直接診ないで診断とか治療とかしていいかどうかと医師法20条の関連で すが、これについては、遠隔医療は、直ちに無診察診療には当たらないという ことが、1997年に厚生労働省通知で出ております。これを基礎として遠隔医療 がゆっくりと広がっているという状態であります。  医療の高度化と効率化をどう組み合わせるかということを考えると、やはり ITをうまく活用するしか方法がないだろうというのが、遠隔医療導入の大き な動機付けの一つになっているということでございます。  2の先ほどご説明させていただきました事例ですけれども、大きく分けます と対象1と対象2に分かれます。対象1は、在宅の患者さんに直接健康管理を 行うもので、この対象1の中に、医師が直接指導する場合と保健師あるいは助 産師、看護師が指導するものがさらに含まれるということになります。  対象2については、これは基本的に医師同士の診療支援ということで、特に 1人で診療をされているような先生方について、専門医がどのように支援を行 えるかという観点での画像診断等の診療支援の仕組みになっております。  この3のところ、へき地医療拠点病院においても、この医師に対する支援と いうのは一つの要件として入っており、目的の中に、遠隔診療等の診療支援事 業が実施可能な病院をということで定められております。ただ、実施件数のほ うを見ますと、ここの検討会でも出ておりましたけれども、263施設中38例が 遠隔医療実施という回答になっておりました。現在でもまだ14.4%にとどまり ますので、今後のさらなる活用が期待されます。  IT自体は便利なものではありますが、実際問題、活用するに当たって、一 つは診療報酬上の問題、もう一つはやはりマンパワーをどう確保するかという ことが非常に大事で、へき地医療拠点病院自体でマンパワーが十分確保できな い状態で、遠隔医療に人を割く余裕があるかどうかというのは極めて大きな問 題かと思います。  そういった観点を踏まえて、地域の住民の健康管理をどのように行うかとい うのが、4の遠隔医療支援クラウドの提案でございます。これについては、3 ページの図にまとめさせていただきました。(1)でバイタルデータを測定し、セ ンターへ在宅医療の相談を行います。健康管理デバイスを用いてこのデータを 送ると、それに対して、在宅遠隔医療支援コールセンターで相談を行い、その 相談内容については、きちんと記録を残して回答します。この内容を自動的に 医師にメールで提供することによって、回答の質をさらに向上させるというこ とを書いたものです。  この提案の中心は、なかなか各地域でマンパワーを確保することが難しいと いうことに対して、地域の住民の健康管理を在宅遠隔医療コールセンターに集 約してはどうかということであります。それぞれ各地で、例えば保健センター 等でほぼ同じようなモデルで健康指導を行っているところがありますが、やは りそれなりに利用者数が十分確保できないと、システムの維持費とか人件費が 出なくて、非常に大変だということもありますので、全国を対象としたセンタ ーを設けることによって、各地の要望に応えようということです。一方で、全 国規模でのセンターとなると、地域の細かな住民のニーズに応えることが難し くなりますので、地域に精通されている先生方の監修を受けるという仕組みに して、集中化をしながらも、それぞれの地域のニーズに十分応えられるような 体制をつくるということを考えてはどうかということです。  ここでクラウドという言葉を使わせていただきましたのは、ちょうどこのデ ータベースですけれども、システムが雲の上にあるかのごとく、どこからでも 自由に使えるという意味で、今クラウドという言葉が使われるようになってき ています。これまでですと、病院ごととか、あるいは保健センターごとに1台 ずつこういう機器が設置されて、それに対するシステムの管理が必要でしたが、 現在はクラウドという考え方で、どこかにサーバーを置いて、それを全国で共 通で利用するということがIT利用の新しい考え方になってきています。  同じようなことがフィンランドで実際に既に行われており、右の上の5に書 きましたが、ここで蓄えられた統計情報から地域のニーズをリアルタイムに把 握して施策に活用することが行われており、それぞれの地域における住民のニ ーズを解析しながら医療の充実を行っています。今後、各地で遠隔医療の整備 等が進められていくと思いますが、へき地医療全体を国としてどうデザインす るかということの中に、各地に任せるということだけではなくて、全国的にど ういうふうに共通のインフラを整備するかということが、一つの考え方として 必要ではないかということでご提案させていただきました。以上です。 ○梶井座長:ありがとうございました。ご質問、ご意見ございませんでしょうか。   これは、前回の検討会の報告書にも、この遠隔医療の部分は活用、整備すると いうふうに盛り込まれているんですけれども、今の村瀬委員のご発表ですと、 実施比率が14.4%と、まだまだだということのようです。ただし、地域によっ てどういうふうな形でそれを導入しているかに関しては様々ですよね。  それで、最後にクラウドの提案というのがありましたけれども、これはでき るだけ標準化した形でというような形でお話しされましたけれども、これもす ぐに全てというわけにはいかないと思いますので、前回の報告書に盛り込まれ たことをより具体化して、今日お示ししていただきましたこのクラウドの部分 あるいはほかの利用の仕方についてもいろいろご提示、ご示唆いただきました ので、こういう具体的な方策を盛り込みながら報告書に書かせていただくとい うことでよろしいでしょうか。  ありがとうございました。それでは、もう一度最後の議論を詰めたいと思い ます。資料2のこの検討会の報告書骨子(案)のところをご覧ください。大分、 今日、議論を深めていただきまして、かなりまだ不十分だったところが煮詰ま ってきたといいましょうか、盛り込まれるような内容になってきたと思います。 ちょっと流してみたいと思いますけれども、3の(1)の都道府県の役割とし て求められることはもうかなり出てまいりました。(2)の市町村(へき地を 有する)の役割として求められることということで、こういうような努力をす ることが必要ということで、少し漠然としたような感じではありますけれども、 ここについてもう少し何か盛り込むべきことございましたら。どうぞ、内藤委 員。 ○内藤委員:この報告書骨子(案)、これを検討するに当たって、ちょっとこの3 以外の部分で先に申し上げたいと思います。  これまで各委員の議論の中で、実はへき地医療という言葉と、それから地域 医療という言葉が、皆さん方、非常に混在して使われているように思います。 この部分が実は非常に大きな問題点になってくるのかなと私自身は考えており ます。これまで、第10次までの50年間の間に、このへき地医療、つまりへき地 診療所を含むそういったいわゆる診療所あるいはへき地の地域にある病院に対 する人の充足を含めたへき地医療については、非常に大きな進歩があったよう に私自身は考えております。  一方で、昨今言われております地域医療の崩壊という言葉に代表されるよう な地域医療というのは、これはへき地も含む、そういったへき地医療を支える 病院群も含んだ地域医療機能の確保が困難になっている状態だと思っておりま す。この辺のへき地医療と地域医療の言葉の定義と申しますか、地域医療とい うのはへき地医療も包含したもう少し幅広い言葉であろうと思います。それか ら、各大学である一定の地域医療に関する講座の設置というのが、現在、準備 が進められております。恐らく、各都道府県には地域医療再生計画に基づきま して、全ての大学に地域医療学講座ができると思います。現在、準備をされて いるところを見ますと、へき地医療学講座と銘打っているのは、私が調べた範 囲では1大学のみでございます。そういった面で、へき地医療と地域医療をや はり言葉の使い方として少し考えておく必要があるのかなと思います。  それから、第2点目でございますけれども、これが骨子(案)の都道府県の 役割、それから市町村の役割というところに関係する部分でございますけれど も、市町村が大きな役割をするというのは実際のところ難しい部分がございま して、これは都道府県の役割が非常に大きな部分を占めると思います。へき地 医療を含む地域医療確保についても、これは大学に設置される地域医療学講座 と連携をしつつ、そういった役割を求められると思っております。  今回、第11次のへき地保健医療計画を策定するに当たって、私、一つ申し上 げておきたいのは、各都道府県には全て保健医療計画が定められてございます。 その中には、へき地医療として詳しく定めている都道府県もございます。一方 で、地域医療の確保という形でのへき地医療を含んだ地域医療確保について言 及している都道府県も少なくないわけでございます。  今回、へき地保健医療対策検討会においての議論の中で、この保健医療計画 との整合性をどう担保していくのか、これが実は一番大きな問題ではないかと 思っております。やはりへき地保健医療対策を含む地域医療対策は都道府県が 主体になってすべきものと思います。医療法にも定められておりますけれども、 各都道府県には既に医療対策協議会も設置されて、それが医師確保を含む地域 医療機能確保の定められた協議会の場であると思っておりますので、もちろん、 へき地医療支援機構や拠点病院をより充実したものにしていくというのは当然 でございますけれども、やはり都道府県の役割というのを再度認識しておく必 要があるのかなというのが私の意見でございます。 以上でございます。 ○梶井座長:重要な指摘、ありがとうございました。保健医療計画とへき地医療計 画との関係について、多分これは、この検討会の報告書が出た後に、各都道府 県がへき地医療計画を…。はい、吉新委員、どうぞ。 ○吉新委員:たぶん、各都道府県の医療計画で、へき地医療は第7次までは任意的 記載事項だったんです、へき地のことは。第8次に必ず書く記載事項になりま した。ご存じのようにほとんどへき地には各都道府県の医療計画で配慮がない ということで支援機構ができたと私は認識しています。 ○梶井座長:ありがとうございました。それで、必ずしもへき地医療計画がきちっ と出されていないというのが現状なんです。ですから、11次に向けては、きち っとこの報告書をお送りして、どういう項目に関してということもきちっと指 導していただきながら全都道府県からご提出を願うと、まずそこが第一だと思 います。  それから、協議会でということでしたけれども、この4回の議論を踏まえま すと、やはり実効性のある組織が必要であろうと。そのために、この検討会と してはへき地医療支援機構を明確に位置づけて、そこに実効性を持たせるよう にしようではないかと、そこに医師のプールとか派遣とか、そういうようなこ とをということで議論してきたかのように思います。もちろん、協議会との連 携は今日の澤田委員の説明にもありましたとおりでございます。ということで、 どうでしょうか、内藤委員。 ○内藤委員:1つだけ気になるのが、澤田委員がへき地医療対策協議会という位置 づけをされておられたと思うんです。違いましたでしょうか。 ○澤田委員:先ほど発言したのは、医療法で定められた各都道府県で設置すべき医 療対策協議会のことです。 ○内藤委員:いや、こちらには、資料には、へき地医療対策協議会になっていたん じゃ……、ごめんなさい。 ○澤田委員:鈴川先生の提出された資料の中に記載されていた名称ですね。 ○内藤委員:そうですね。 ○澤田委員:へき地保健医療対策協議会、これは鈴川先生がイメージされた名前だ と思います。 ○内藤委員:だから、私、ごっちゃにしていて申しわけございません。鈴川先生の ほうが書かれた資料の中にもへき地保健医療対策協議会と、これは一昨年、各 都道府県には医療法に定められた医療対策協議会が設置をされておるわけです。 これは、地域医療確保のための義務的な部分を持っているわけで、もしそれが 仮にへき地医療対策を含む地域医療対策に対して機能を発揮していないという ことであれば、これは問題がいささか変わってくるのかなと。やはりへき地医 療対策というのも、これは地域医療対策の一つでございますから、この辺につ いて余り屋上屋を重ねるとか相対するという形になると、これは一元的な管理 運営ができにくいのではないかと心配をいたします。 ○梶井座長:何かご意見ございませんでしょうか。少なくとも協議会との関係性に ついても以前からご議論になっていますけれども、全く別個のことではなくて、 支援機構を支援する組織としてきちっと挙がっていたように思いますし、そこ の中で議論がされて、支援機構の実際の活動が行われるというふうに私自身は この今までの議論を通して考えていますけれども、いかがでしょう、内藤委員、 その点については。 ○内藤委員:それでよろしいかと思います。 ○梶井座長:そうすると、組織と実効性ある活動の場というのが明確になってこよ うかと思います。ありがとうございました。  確かに、これからへき地医療を考える上でも、自治体単位というのは、地方 自治体、公共団体でというのはなかなか難しくなってくると思うんです。そう いう意味での一自治体で、一市町村で解決できる問題、そこのところを超えて いるような感じはいたしますけれども、そういうような地域の枠組みをもう一 回見直していく、見直していかなくても、多分、結果として見直さざるを得な い状況が今来ていると思います。実際に市町村としていろいろ活動しておられ るところもあります。  以前にこの検討会でちょっと私お話ししましたけれども、筑波ですと、市町 村が独自に大学と提携しておられると。そして、医師を派遣してもらうような システムがつくられていたり、福井のほうですと、中村先生は帰られましたけ れども、1つの町が寄附講座をつくっておられるとか、いろいろな事例があり ます。そういうことも踏まえながら、市町村の役割というところを少し盛り込 ませていただければというふうに思います。  それから、ずっといきまして、国の役割、大学の役割として求められること、 これは確認ですけれども、大学の医学教育において、モデル・コア・カリキュ ラムにへき地のことも教育するようにということになっておりますが、その中 にへき地医療支援機構の仕組みに関しても盛り込んでもらうというご意見が出 ていましたけれども、よろしいでしょうか、これは。これは確認です。  それから、3ページのところで、支援機構の役割についてということで、医 局的な機能としてドクタープール機能というところで、今日もちょっと出てい たかと思いますけれども、例えば自治医大の卒業生とか、あるいは就学資金を 借りた医師がこれからどんどん出ますけれども、その中で多分へき地というこ とで約束している医師もいようかと思います。そういう医師はへき地医療支援 機構に属するというようなご意見が出ていましたけれども、そこはどうでしょ うか。内藤委員、どうぞ。 ○内藤委員:その辺も都道府県によってこれは違うと思います。ある点では、そう いったものを県と大学と連携する中で、この医療対策協議会、こういったもの に持たせようというところも、地域もございますし、また、一方、あるところ では、地域医療学講座、ここに対してそういうドクタープール機能を持たせよ うというところもございますし、これは各都道府県によって、これは一律では ございませんので、ここでへき地医療支援機構にこれを義務づけるような形と いうのは少し理解が得られにくい部分もあるのかなという感じがいたします。 ○梶井座長:これは確認させていただいたということなんですけれども、ドクター プール機能というのに関してはよろしいでしょうか。次のキャリアパスのとこ ろでは一つのモデルをお示しするということでしたけれども、今のプールにつ いての考え方も一つのモデルとしてお示ししていくという位置づけになります でしょうか。  それから、先ほど議論を最後に先送りいたしましたけれども、へき地医療専 門医、これをどうするかということです。ずっと4回にわたっていろいろ議論 してきまして、いろいろ周辺の状況を勘案しなければならないんですけれども、 やはり一つ設置の方向で検討を行うというような内容で盛り込んでいただけれ ばと思うんですけれども、いかがでしょうか。はい、吉新委員。 ○吉新委員:この報告会の報告というのは、これで都道府県に流れるわけですね。 そうすると、都道府県にへき地への専門医をつくるのが望ましいということで いくのか、つくってくれというふうにいくのか、よく分からない。結局、国の 動きになるんだと思います。本来、この検討委員会の結果は、都道府県に、こ の事業は、補助金がつきますよということで誘導するわけですから、へき地医 療専門医ということを今回出して、それが中途半端になっちゃいますと、問題 だとなる。各都道府県の判断になるわけです。ですから、結局何か宙に浮いち ゃうような形になるんで、本当にこの検討委員会で提案すべきことなのかは、 疑問です。県によって、秋田県は通るけど、岩手県は通らなかったなんてこと になると、ここの性質上、そういうことだと僕は思うんです。各都道府県の判 断でこの仕組みをとれるかどうかということになるわけですから、実現可能な んでしょうか。それとあと、厚生省で今まで多分麻酔科だけだったと思うんで すけれども、そういう専門家の。 ○梶井座長:お願いいたします。 ○新村指導課長:幾つかの角度でお話しする必要があるかもしれませんけれども、 まずこの検討会の報告書をどうとらえるかだと思うんですが、検討会で仮にそ の専門医のことで合意が得られたとして、それを書かれるというのは、検討会 の委員の合意としてあり得ると思いますが、ただ、それを行政で受け取った場 合に対応できるかという問題は非常に大きな問題として残ります。  先生おっしゃったように、麻酔科は標榜医ですか、一つ何かそういった経緯 もあって特別にあるんだと思いますが、ほかの専門医については一切そういう 公的なものとしてはなっていないという中で、総合医だけ位置付けられるかと いう問題はございますので、この1ページにも、これまでの議論を踏まえて、 国の役割として総合医を国が推進ということを書いてありますが、ここまでの 言葉であれば、何を推進するかというのは余りはっきりしていませんし、ここ までの言葉であればまだしも、具体的に専門医とか総合医とかいったようなも のを仮にこの検討会で出されたとしても、受け止めた場合に、行政として対応 はなかなか具体的に考えにくいとか、あるいは難しいということはございます。  それからもう一つは、先生方で少し意見が違う、あるいはニュアンスが違う という場合に、無理に1つにまとめるということもちょっとリスクがあるかな と。特に、何人かもうお帰りになっていらっしゃいますので、次回、できれば 報告書(案)の形でお出ししたいと思いますけれども、意見がきちっと合意が とれていない部分については、両論併記するなり意見を羅列するなり、幾つか お出しして、再度この点についてはご議論いただきたいなと思っております。 それから、それ以外の部分についても、もうお帰りになった先生もいらっしゃ りますので、事務局からまた通知をさせていただいて、文書なりメモでご意見 いただくなり、この文章の修正をいただくなりさせていただいて、もうちょっ と時間も過ぎておりますので、そういったことでやらせていただければありが たいなと思っておりますが。 ○梶井座長:ありがとうございます。ということで、次回、まとめ案についてのま た議論があろうかと思いますので、そこで最終的にこの検討会としての結論を 出させていただくということでよろしいでしょうか。  大分時間が超過してしまいまして申しわけございませんでした。そうしまし たら、今日の議論はこれで終わらせていただきたいと思います。次回の検討会 について、事務局のほうからお願いいたします。 ○馬場医療確保対策専門官:長時間にわたりありがとうございました。先ほど梶井 先生からご連絡がありましたとおり、次回は2月25日木曜日の13時から開 催いたしますが、まだ開催場所は未定でございます。また、これに関しては開 催通知で正式にご連絡を申し上げます。  なお、本日の議事録については、前回と同様に、委員各位のご確認をいただ いた上で厚生労働省のホームページに掲載させていただきます。ありがとうご ざいました。 ○梶井座長:長時間にわたりありがとうございました。どうぞお気をつけてお帰り ください。 (了) 照会先:厚生労働省医政局指導課    救急・周産期医療等対策室    助成係長 田川 幸太 電話:03−5253−1111(2550)