09/12/21 第8回チーム医療の推進に関する検討会議事録 第8回チーム医療の推進に関する検討会 日時 平成21年12月21日(月) 15:00〜17:00 場所 厚生労働省専用第18〜20会議室                                         ○永井座長  それでは時間になりましたので、第8回「チーム医療の推進に関する検討会」 を始めさせていただきます。先生方には、お忙しいところお集まりいただき ましてありがとうございます。  最初に、事務局から委員の出欠状況、本日お越しいただいている先生方の ご紹介、資料の確認をお願いします。 ○石川(義)補佐  事務局です。本日は、加藤委員からご欠席と連絡を受けております。それ から海辺委員が遅れられているようです。本日ですが、チーム医療の推進に 関する話題提供をお願いしております、国立病院機構理事長の矢崎義雄先生、 大分県立看護科学大学学長の草間朋子先生、東京大学大学院医学系研究科准 教授の森田啓行先生、東京大学大学院医学系研究科教授の山田芳嗣先生、チ ーム医療推進協議会代表の北村善明先生にお越しをいただいております。  ここでカメラの方は一旦ご退出をお願いします。  それでは、お手元の資料の確認をお願いします。まず議事次第、それから 委員名簿、座席表を最初にお付けをしております。資料1としまして、矢崎先 生配付資料。資料2は(1)と(2)に分かれておりまして、草間先生配付資料。さら に、「診療看護師とは?」という名前のパンフレットについてもご提出をいた だいております。資料3としまして、森田先生配付資料。資料4としまして、 山田先生配付資料。資料5は、(1)と(2)に分かれておりまして、北村先生配付資 料となっております。さらに参考資料1としまして、第5回「チーム医療の推 進に関する検討会」の議事録。それから、本日ですけれども、参考資料2につ きましては「これまでの主な議論について」ということで、本日なかなか時 間がございませんのでご紹介は省かせていただきますけれども、ご参考とし て、議論の一助として、これまでの主な議論について整理をしたものをお付 けしている次第です。以上です。 ○永井座長  ありがとうございます。それでは議事に入ります。今日は5人の先生方から 話題提供をいただきます。最初に、「国立病院機構の高度実践看護師につい て」、矢崎義雄先生。次いで、大分県立看護科学大学の草間朋子先生から「診 療看護師の活躍の可能性について」。その後、東京大学大学院の森田先生から 「米国におけるNP・PAの現状視察について」。山田芳嗣先生から、「周術期の チーム医療の推進について」。最後に、チーム医療推進協議会の北村善明先生 から「チーム医療推進協議会について」。5人の先生方から各10分でお話を伺 います。それでは早速ですが、矢崎先生よろしくお願いします。 ○矢崎先生  矢崎です。それでは、資料に沿ってご説明したいと思います。まず最初に、 各国の医療提供体制の比較です。人口千人当たりの医師数、日本はOECDでは 下位にあるということですが、ご覧のように、イギリス、アメリカとほぼ同 じレベルであって、ドイツ、フランスが多くて、ギリシャ、イタリアなどは もっと多いというに注目してください。ただ、日本の大きな問題は、病床百 床当たりの医師数が極めて低いということであります。  次の頁の表は、医師需給の検討会の資料ですが、その当時既に病院の医師 数は医師が48時間勤務であると5万6,000人不足している報告しています。こ れ以後病院医師数が増えないと、高齢化で入院患者数が増える一方であると ころから、乖離がますます開いてくるのではないかということです。逆に人 口が減ってきますので、外来患者数は減る傾向にありますので、むしろ診療 所医師は過剰になってくるのではないか。  次のは、大学の医局アンケートで、いちばん右側の欄は、大学医局が医師 不足と感じているのはいつ頃からということで、このように、明らかに2001 年からです。臨床研修必修化は2004年ですので、もうその前から不足感が生 じています。それは、1999年に手術取り違え事件などショッキングな事件が あって、医療不信ということなどがあって、医療評価のパラダイムシフトが 起こって、従来のパターナリズムからインフォームド・コンセントの充実と か、医療安全対策などで、多くの人手を必要とするようになったので、大学 の医局ももうその前から医師不足感があった。  次のは、外国と日本の大きな急性期総合病院との人員の比較です。ご覧の ように、医師数、看護職ともに数分の1、あるいは10分の1以下という、こう いう高度先進医療でも、労働集約型に我が国ではなっていない。  次に、「病院医師業務の課題」とありますが、従来外科の医師が一人前にな るには、まず雑巾がけから始めろということで、手術の周辺的な業務をやら されている。したがって、専門医療のスキルアップの機会が乏しくて、十分 な手術症例がつかめないまま行ってしまう。それを改善するには、専門能力 の高いコメディカルスタッフを育成して、医師のスキルアップおよび病院の 医療の質と生産性を格段に向上させる必要があるのではないかということで あります。  それから例えば、これは外国と日本のER(救急室)の問題ですが、外国は ナースが主力でやっております。ナースは交代制勤務ですから、日本のよう なレジデントを中心とした無理な体制ではなくなるということになります。  それから、看護職の業務に関してで、これはほかの資料にもありますが、 フランスと日本はよく似た状況にありますけれども、動脈血採血とか、そう いうことはできません。また、フランスは、高度な資格でいろいろな医療行 為ができる。  次はアメリカです。アメリカは州によってものすごく違います。コロラド とかミネソタみたいな、非常に広大な領域がある所では、在宅医療を中心と したナースプラクティショナーです。それと、カルフォルニアとかニューヨ ークは、どちらかというと、病院の中の医療に対応しているということであ ります。  下の「チーム医療・役割分担のイメージ」で、大きなブルーの四角は、病 院で、勤務医が行っている業務でありまして、このブルーの業務がものすご く増えている。それは医療そのものが高度、複雑化して、業務そのものが拡 大しています。その上に、先ほど述べました医療評価のパラダイムシフトが 生じて、インフォームド・コンセントの徹底とか、医療安全の確保、そのほ かには、例えば種々の民間の医療保険の申請書など、事務量も圧倒的に増加 している現状があります。そのほとんどが勤務医、特に若い医師に負わされ てきました。これでは医師の過重労働、それからリスクなどの過大で病院離 れというのは当然に生じてくる。さらに前に述べましたように、外科などの 領域では旧態依然の教育が行われているのではないか。したがいまして、ど んどん拡大する一方の医師の業務を、看護職とか事務職などでスリムにする 必要が絶対に必要だということであります。  最後の「チーム医療推進に関する課題」です。1)は医師の包括的指示と看 護職の自己裁量権。これは一様には言えない。医療現場との関係で定まって くるのではないか。あるいは、在宅医療の領域、あるいは病院の領域、病院 の中でも手術室とか救急室、あるいは病棟でそれぞれ裁量権の範囲が変わっ てくると思います。包括指示の内容も変わってくると思います。2番目に、ど のような教育を受ければ、何が可能かということを、これからやっていかな ければならないのではないか。ただ、これは理念先行ということは危険であ って、ステップごとに検証し、安全を確認するとともに、患者国民のコンセ ンサスを得ながら信頼関係を築いて職務拡大ということを考えていかなけれ ばならないと思います。  2)高度診療能力を有する人材の育成と資格の認定です。このような高度な 診療能力を有する人材は、やはり大学院教育が必要ではないか。それから、 修得すべきスキルの選定があるのではないか。来年4月、私どもで開校します 新構想の看護大学および大学院の教育カリキュラムについては、私の資料の 最後に添付しております。資格の認定は、やはり第三者機関で公平に行うべ きであって、これはやはり医師の専門医制度でも学会が認定するということ に大きな課題がありますので、やはり最初から第三者機関の認定が必要では ないか。それには、教育内容で、臨床教育の充実、実習の場の確保が大きな 課題であります。ただ、現場で現在活躍されている看護職の方もおられます ので、基準を決めて経過措置として、資格を認定することときにそういう認 定もあってもいいのではないか。実は私は、内科で経過措置で試験を受けず に認定医になっていますけれども、そういう措置も必要である。  それから、Physician assistantというのは、新しい職種を作るという外科 系の先生方に意見がございます。やはりそういうのは、nurse practitioner とか、アメリカのPhysician assistant(PA)は、それぞれ長い経緯の下で、 利害関係者で随分議論があったのですが、タネを大切に育てて、教育環境を 整えて、アメリカでは現状のように、非常に看護職とかPAが活躍している現 場になっている。ですからそれは、やはりまず制度を作ることだけではなく て、長い経緯でステップバイステップで検証しながら進めていくというのが 重要ではないかということです。以上です。 ○永井座長  ありがとうございました。また後ほどご質問があろうかと思いますが、ま ずは残りの先生方にご報告をお願いしたいと思います。  次が、大分県立看護科学大学の草間先生からお願いいたします。         ○草間先生  本日は、このチーム医療推進の検討会で、ナースプラクティショナーの話 をさせていただく機会を設けていただきまして、ありがとうございます。資 料2-(1)に沿ってご説明させていただきます。  まず、パワーポイント1を見ていただきます。本日ご提案させていただきま すナースプラクティショナーですけれども、このチーム医療、まさに患者を 中心としまして、専門性をそれぞれ発揮していくという中で、現行の保健医 療を取り巻く環境を考えた場合には、既存の医療スタッフ、ピンクで書いて あります医療スタッフでは解決できない問題がたくさん山積みされていると いうことです。それでここの下にも書きましたように、対象者に対して看護 ケアだけではなく、医療的介入もできるプライマリケアを担当できる診療看 護師(ナースプラクティショナー)のことを一応国民の皆様にわかるように ということで、日本語では「診療看護師」と訳させていただくことにしてお ります。診療看護師、新たな看護師の裁量範囲を拡大した形のナースプラク ティショナーという、新しい職種の検討をお願いしたいということでご提案 させていただきます。  次の頁です。新しい職種、特に新しい職種の業務、あるいは裁量範囲を広 げるに当たりましては、既にここのチーム医療検討会でも、さまざまなこと が看護職等が行っているではないかということで、既に行われていることが たくさん報告されておりますけれども、私は業務拡大、あるいは裁量範囲の 拡大に当たりましては、現在行っているからいいというのではなくて、現場 で何が求められているかということを、はっきりニーズを把握した上で、求 められていることが教育体制、あるいは資格等の制度と結び付けて、本当に 実施できるかどうかということで検討していく必要があると考えております。 それで、次の3頁にありますように、本日はこの4つについてご報告させてい ただきます。  5頁目です。私ども、大分県立看護科学大学が養成しておりますナースプラ クティショナー、すなわち診療看護師です。なぜ始めたかということですが、 医療を取り巻く環境が大変大きく変化してきている。これは、医療の保健サ ービスの受け手の側から見た場合。あるいは医療・保健サービスの提供側か ら見た場合にも、医師法、あるいは保助看法ができた昭和23年に比べますと、 もう格段の変化が起こっているということです。  次の6頁です。医療を取り巻く環境が、昭和20年代、あるいは30年代とどう 変わったかということで、診断の領域、あるいは治療の領域、あるいは医療 従事者がどう変わったかということで、ブルーで示している所が昭和20年代、 現在を右側に示させていただいております。医療・保健を取り巻く環境とい うのは大変大きく変わってきているということです。  7にもありますように、看護大学、看護教育も大変高度化しておりまして、 看護大学も現在179校あります。看護大学が増加するとともに、看護系大学も 大変急激に増加してきまして、現在修士課程を持っている大学が117校ありま す。これは平成20年ですが、現在は定員で見ますと、1900人がおりますけれ ども、必ずしも修士課程は定員を充足していないという現状にあります。  そういう中で、8頁です。なぜ私どもの大学がNPの養成を開始したかという ことです。まずこれは、国民、あるいは医療領域のニーズが大変高いと判断 したからです。例えば、大分等では無医地区がありまして、無医地区の解消 が必要であるとか、あるいは3分診療で、高齢者が大変待たされて十分な診療 を受けていないとか、あるいは在宅診療の促進が言われているにもかかわら ず、必ずしも効率的に行われていないという状況があるということ。先ほど もご説明しましたように、一方では看護系大学の修士課程が大変増えてきて いて、定員が充足していない。そういう中で、修士課程の教育の明確化、あ るいは実質化ということが必要ではないかと考えまして、看護職の能力、あ るいは看護教育をきっちり活用すべきであると考えて、教育を始めたところ です。  9頁です。私どもの大学では、大学院は2つのコースに分けまして、研究者・ 教育者養成コースと、実践者養成コースの2つに分けております。実践者養成 コースのほうでは、助産学とナースプラクティショナー(NP)と管理者、こ の3つのスキルを増強するような形の教育を、平成20年、昨年から開始してお ります。  10頁です。私どもの大学がNPを開始するまでに、どれだけのことをしてき たかということをここにまとめさせていただいております。始める前の平成 17年に、12人の教員からなるNPプロジェクトチームを立ち上げまして検討を 進めてきました。その中で、下から2行目に書いてありますけれども、12人の 教員全員を海外に1カ月ずつ研修に出しまして、それでアメリカのNPが実際に どういう活動をしているか、あるいは教育の現場を見てきまして、それで日 本でもNP教育というのは必要であり、始めるべきだという結論に達しまして、 平成20年4月に教育をスタートさせていただいたところです。  11頁です。私どもの大学で始めましたナースプラクティショナーは、老年 のNPです。というのは、特に大分県の事情等を考えて、老年のNPを立ち上げ させていただいたわけです。老年のNPに関しましては、高血圧、糖尿病、COPD 等の慢性疾患の患者さんとか、あるいは軽微な症状を持つ患者さんに対して、 包括的な健康アセスメントを実施でき、必要な場合には、医療的な介入も行 うことができる診療看護師という形で養成を始めております。診療看護師 (NP)に必要とされる能力としましては、ここにあります7つの能力を考えて おります。この7つの能力の中で特に重視されますのは、いままでの看護教育 の中で不足しておりました全体の検査も含めまして、包括的な健康アセスメ ントができる能力、それと医療的介入も行うということで、簡単な処方もで きるように考えておりますので、医療的な処置ができる実践能力を育てよう ということにしております。したがいまして、特に3P(Physical Assessment、 Pharmacology、Pathophysiology)、この3つの能力を身に付けることに大変力 を入れております。後でもご説明させていただきますけれども、2年間でこれ を中心としたカリュキラムを組ませていただいております。  12頁です。実際にNPがどういう場所で働くかということです。これは現場 のニーズ等を考慮させていただきまして、こういう形にしております。特に 訪問看護ステーションとか、あるいは3分診療を解消するという意味では、一 般病院の外来等でも働き、あるいは老健施設等でもNPがいることによって医 療処置ができるようにと考えております。  13頁は、先ほど言いました7つの能力を身に付けるための、私どものカリュ キラムを示しております。必須項目の中で、特に3つのPをお話ししましたけ れども、3つのPに関しましては、全て必須科目にしております。看護に関す る能力は、既に5年の経験がある人たちを入学させておりますので、全て選択 科目にしております。修士コースですので、研究能力も付けるということで、 トータル43単位以上で、その中で14単位以上の実施を含むことを必須として おります。  次の頁です。一応きっちり国民の皆様にこれを評価していただかなければ いけないので、こういう課程で学生を評価することにしております。先ほど 矢崎先生からも第三者機関というようなお話がありましたけれども、修了時 の試験は、きっちり現在NP協議会というのを立ち上げておりますけれども、 ここで最終的には試験を実施しようと考えております。  16頁です。現在どういう形で働くかというのを分りやすく示しております。 現行法令では、医師法、あるいは保助看法の37条で、全ての医療行為、専門 性の低いところから高いところまで含めまして、医師でなければできないよ うになっているわけですけれども、NPを導入することによって、プライマリ ケアに相当する所はNPが担当し、医師は医師でなければできない専門性の高 いところをやっていただくという必要があるのではないかと考えております。 既存のCNS(専門看護師)とどこが違うかということですけれども、NPは、先 ほどからご説明させていただいているように、簡単な医療処置ができること を目的としております。それに対しまして、CNSに関しましては、ここにあり ます実践、相談以降の6つの能力を備えている専門家を育てることにしており まして、まさに看護サービスをより深めていこうということで、CNSに関して は、もう10年以上経験があるわけですけれども、裁量範囲の拡大を目指して いませんでしたので、現行法令の中で活躍できるようになっております。  次の頁です。CNSとNPの違いを、ちょっとシステマチックに書かせていただ きました。CNSの場合は、看護ケアをさらに深めていくということで、現在10 個の領域があります。それに対してNPは、裁量範囲を広げていくということ で、横の方向に拡大を目指しておりまして、これに関しましては、法令等の 改正が必要ということになってきます。  NPを実現するためにはどうしたらいいかということですけれども、まさに 安心と安全の医療を提供していくためには、「安全」であるためには系統的な 教育が必要であり、「安心」であるためには信頼関係の構築が必要であり、そ のためには制度的なシステムをきっちりしていただくということが必要と考 えております。  それで、いま私のほうの大学では、診療看護師の教育を始めたわけですけ れども、実現に向けては、エンドユーザーである国民の理解を得るというこ とと、看護界の合意形成、あるいは他職種の理解、あるいは制度化のための 行政の理解を得ることが必要と考えております。  次の頁です。例えば、国民がNPに関してどう思っているかということを、 これはナーシングプラザという所が今年の9月に2000人を対象にして調査を していただいたものです。ブルーの所がNPが必要だと思うと。  あるいはその下は、24時間NPが関われば安心ができるかどうかということ でお見せしております。赤い所とブルーの所がそれぞれ大変必要だというよ うな答をしていただいているところです。  24頁です。これは医師を対象にしまして、私どもは現在特区を提案してい るわけです。現在私どもの大学で申請しております特区をNPがやることに賛 成か反対かということで、勤務医の先生方と開業医の先生方を対象に調査を させていただきました。  その結果、本当は13項目全部をやったので、13項目全部についてお見せす ればいいわけですけれども、ちょっと時間の関係でいくつかお示ししてあり ます。このブルーの部分が、NPのやることに対して賛成であるということで す。例えば、インフルエンザワクチンの投与等については、90%以上の勤務 医の方、あるいは80%の開業医の先生方が賛成してくださっているというと ころです。  26頁です。NPの養成教育の標準化等のために、現在日本NP協議会というの を立ち上げてやっておりますので、是非ホームページ等を見ていただきたい と思います。  現在27頁から29頁にありますように、私ども3回にわたりまして、制度化に 向けてどうしていくかということで、私どもにできることは特区の提案くら いしかできないだろうと考えまして、現在3回にわたりまして特区の提案をさ せていただいております。今年いちばん最近提案させていただきました特区 の提案につきまして、(1)から(18)に付けさせていただいております。資料2-(2) は6月に出しました特区が厚労省との関係でどういうやりとりがあったかと いうことで出させていただいているものです。  最後の頁です。本日はNPということで、裁量範囲の拡大を提案させていた だいたわけです。今年の7月に保助看法が変わりまして、保健師、助産師の教 育も養育期間が2倍になりましたので、助産師、保健師に関しましても、是非 効率的な医療を進めていくために裁量範囲の拡大というのを検討していただ く必要があるのではないかと考えております。  このチーム医療推進に是非お願いしたいのは、今日NPを取り上げていただ いたわけですけれども、規制改革会議のほうからもNPに関しましては、第三 次答申以降、NPが必要であるということは再三にわたって提案されているわ けですので、是非このチーム医療推進の検討会の中で、NPを取り上げていた だくことを改めてお願いして終わりとしたいと思います。どうもありがとう ございました。 ○永井座長  ありがとうございました。続いて、東京大学の森田先生、お願いします。 ○森田先生  東京大学大学院医学系研究科の森田啓行です。よろしくお願いいたします。 私は11月12日、13日の両日にわたり、座長を務めておられる永井良三先生と ともに、米国におけるNP/PAの現状視察を行いましたので、その要点を資料3 に沿って報告させていただきます。 ☆スライド 私が視察したのはCedars-Sinai Medical Center、カリフォルニ ア州のロサンゼルス市に位置する病院で、UCLA(University of California Los Angeles)校と提携している、臨床のアクティビティの非常に高い病院です。 780床の一般病床と150床のICU病床を抱えており、外来患者数は年間35万人、 入院患者数は年間6万人となっております。在籍する医師数が2,000人、ナー スが2,300人。その中でNP64名、PA35名が勤務しております。 ☆スライド 次の頁にNP/PAが複数名在籍している勤務科をリストアップし ました。NPは小児科の11名を筆頭にして、外科、放射線科、麻酔科、内科と 各科満遍なく分布しているのに対して、PAは多くは外科勤務であるというこ とがわかります。NP、PAの順にそのエッセンスに関してご説明したいと思い ます。これはCedars-Sinai Medical Centerの看護部長と、実際に勤務してい るNP/PA並びにその他のスタッフにインタビューした情報、及び紹介されたデ ータ・文献などをもとにまとめたものです。 ☆スライド まず、Nurse Practitionerの説明から入ります。Nurse Practitionerというのは高度な教育を受け、臨床トレーニングを受けた認定 看護師であって、医療行為を行うことをライセンスされた医療専門職で「診 療看護師」という訳を当てられることがあります。全米で約14万人がライセ ンスを保持しています。州の法律であるNursing Practice Act(NPA)に基づ いて、教育プログラムの認定、免許の発行、職務の規定などが行われており ます。 ☆スライド NPの養成教育は、ナースのライセンス取得後、看護系大学院で のNP養成コース教育を2年受けて、NPの修士号を取得すれば国家試験を取得す る試験に臨むことができます。現在、全米には325に及ぶNPの養成コースがあ って、全米で教育カリキュラムの統一が行われております。このNP養成コー スの1年目は基礎科目が中心で、医師とNPが教官を務めた講義形式の授業が 500時間行われます。2年目は病院でのローテーションが500〜700時間義務づ けられていて、医師とNPによる指導の下、患者を診て診断、治療決定を行う というプロセスで教育が進められています。患者教育、予防、診断、治療に 重点が置かれた教育なのですが、簡単な縫合であるとか婦人科の内診なども、 医師の監督下で実習が行われているということです。こちらに学費なども示 ましたが、奨学金制度や病院での学資の支援なども充実しているようで、毎 年全米では約6,000人のNPが誕生しているということです。その資格認定を受 けて、免許を発行するのは各州で、州をまたいで、例えば住所が変わったと きにその州間での互換性もあるということです。更新は5年に1回行われます。 150単位のContinuing Education Unit、生涯教育が必要だということです。 ☆スライド 次はNPの職務に関してです。職務内容は州法を反映させた上で、 病院ごとにきちんとしたプロトコールとして定められておりますが、現実的 にはSupervising doctorとのコミュニケーションを取りつつ、独立して職務 を行っているというのが実態です。ここに記載しましたように、病歴を聴取 して、患者を診察して、検査が必要と判断して、オーダーして実施して、そ の結果を判断して診断する、そして治療、薬剤処方、疾病の管理、患者教育。 このようなものをNPが担なっているということです。Supervising doctorと 話し合うことで、かなりの手技も可能ということで、このCedars-Sinai Hospitalではないですが、例えば循環器内科勤務のNP、そして心臓カテーテ ル検査を行っているNPも存在する。それも病院のルール上は問題なく実施可 能ということです。  処方に関しましては、こちらに記しましたがNPの資格取得後、実際に Supervising doctorの監督下での処方経験、それから取得時の許可を得た上 でFurnising number、DEA numberという2つの資格を取得することによって、 ほとんどの薬剤をNP本人のサインで処方可能ということです。NPに支払われ る処方料は、ドクターに支払われる処方料の85%ということがカリフォルニ ア州では明記されています。NPは原則的に開業権を持っているわけですが、 個人開業しているNPは全米NPの4%にすぎないということも伺いました。 ☆スライド その職務の責任の所在ですが、NPにとっての上司は誰かという ことで聞きましたら、病院長と看護部長だということでした。いずれも任免 権を有するということ、医療事故があったときは両者に報告の義務があると いうこと。それから、当然のことながら自分自身の責任でもあるので、NPは 必ず医療過誤保険に加入しているということです。Cedars-Sinai Medical Centerの場合のそのガイドラインについて詳しくお聞きしたところ、NPがや ってはいけないこととして、死亡宣告と入退院の指示をしてはいけないとい うことが定められているようですが、これは病院によってバラツキがあるよ うです。  勤務形態及び年収は、この病院の場合は勤務は8時から夕方の5時で、週休2 日で夜勤はないということですが、これも病院によってルールはまちまちと いうことです。NPは全米に14万人以上いて、約3分の2はプライマリーケアに 従事しています。平均年収は8万ドル以上。NPに支払われる診療報酬額は、医 師に支払われるDoctor Feeの85%ということが各州で守られているようです。 ☆スライド 次に、NPからPAに話を進めたいと思います。PAというのは Physician Assistantのことですが、医師のSupervisionの下、医療行為を行 うことをライセンスされた医療専門職と定義されていまして、全米で約8万 5,000人がそのライセンスを所持しています。これも州の法律である Physician Assistant Practice Actに基づいて免許の発行、職務の規定が行 われているということです。 ☆スライド PAの養成教育は、大学卒業後にMedical School及び提携病院で2 年間のPAの養成コースの教育を受けるということで、全米には現在148の公認 プログラムが存在するということです。こちらも1年目は基礎科目中心の講義 形式授業が1,000時間、2年目は医師による指導の下、10科目にわたるローテ ーションが合計2,000時間以上ということで、診断・治療・手術手技を含むジ ェネラリスト教育が行われるということです。この養成コースが修了したあ と、NCCPAという国家試験の合格が必要です。毎年5,000名のPAが誕生してい るということです。  免許の発行は各州が行い、州間での互換性もあるということです。免許更 新の要件として、2年ごとに100時間以上のContinuing Medical Education、 生涯教育を受講することと、6年ごとに再試験に合格することとなっておりま す。 ☆スライド PAの職務に関して簡単にご説明します。こちらも職務内容は州 法を反映させた上で、病院ごとに文書によるプロトコールとして定められて おりますが、医師とのコミュニケーションを取りながら、PAの経験能力の範 囲内で行うというのが実情です。検査の実行、結果の解釈、病歴の聴取、診 断、治療、術前術後の管理、手術の助手、指示書の記載、カルテの記載、同 意の取得、カウンセリング、処方、専門医への紹介などをPAが担っておりま す。患者を診るときは、医師がそばにいること、または電話連絡が取れる所 にいることということが、ほとんどの州で義務づけられております。カルテ にはPA本人が、自分のサインとSupervising doctorの名前を記載することが カリフォルニア州では義務づけられているようです。また、PAがカルテを記 載した場合、30日以内にSupervising doctorによるチェックとカウンターサ インがカリフォルニア州では必要ということでした。  処方に関しても文書によるガイドラインがあって、それを遵守して行えば、 DEA numberという資格を取ってそれを持っているPAならば、PA単独での新規 処方も可能でして、いちいち医師に個別チェックされることは不要なのです が、カリフォルニア州ではPAが処方した場合には、1週間以内に医師によるカ ルテチェックが義務づけられているということでした。PAに支払われる処方 料は、医師に支払われる処方料の85%と規定されています。PAはNPと異なり、 開業権を持たないということが明記されています。 ☆スライド その責任の所在ですが、PAが行った医療行為に関するトラブル、 処方に関するトラブルは、PA本人だけではなくてSupervising doctorにも責 任が生じる。当然PA本人の責任も生じますので医療過誤保険に必ず加入して いるということです。その下にPAの実数及び勤務先、年収を示しました。全 米に8万5,000人のPAライセンス保持者が存在して、26%がfamily medicine、 次いで25%が外科、16%が内科、11%が救急と続いています。医師が経営す るクリニックで医師とともに働くというケースが約40%といちばん多く、約 35%は病院勤務で、やはり外科や救急が中心で、あとはICUの管理などが多い ということでした。PAの平均年収は8万6,000ドル以上で、PAに支払われる診 療報酬額はDoctor Feeの85%ということです。 ☆スライド 最後に若干の考察を加えました。NP/PAにはレジデントのような 小刻みなローテーションがないということから、現場における診療の継続性 という点で非常に優れているのではないかということです。必ずしも医師の 数が不足していることを補うだけではなくて、患者本位の質の高いチーム医 療の実践を考えたときに、非常に重要な役割を果たすのではないか。言い換 えますと、患者にとっては医師に対してよりも、NPに対してのほうがコミュ ニケーションを取りやすいというメリットもあるようです。  また、医師に比べてNPのほうがきめ細やかなサービスを患者に提供できる ので、患者の満足度は一般にNP導入によってアップするとされております。 診療アウトカムに関する研究報告も数多く見られておりますが、NP/PA制度を 導入しても質は低下しないという報告がほとんどで、平均入院日数が短縮し た、あるいは、再入院率の低下が見られたという報告も散見されております。 ☆スライド 医師に比べてNP/PAのほうが給与水準が低いので、病院の経営面 でのメリットは大きいのではないかという話も聞きました。医師に比べて NP/PAのほうが教育養成コストが安上がりである、あるいは、養成の期間が短 くて済むという議論もありましたが、これに関しては質を担保する必要があ って、養成教育にかかる制度設計というのが非常に大きな検討課題です。米 国でもこの「質を担保する」という努力を継続的に行っているということが わかりました。経済的なモチベーションもさることながら、チーム医療の一 員としてのプロフェッショナルであるというように認められることが、非常 に働きがいにつながっている、裁量権があるということがやりがいにつなが っているという意見も聞きました。  最後に強調したいのは、現場でのルールの読み替えで乗り切っているとい うわけではなくて、しっかりした個別の根拠法が存在する。教育システムが 存在してカリキュラムの標準化、系統的な教育体制の維持に努めていること がわかりました。その一方で現場では、裁量権を適切に生かした運用が行わ れているという印象を強く受けました。以上です。 ○永井座長  ありがとうございました。続きまして、山田先生お願いします。 ○山田先生  周術期のチーム医療の推進という観点から説明させていただきます。私は 日本麻酔科学会の副理事長としての立場で、麻酔科学会の意見として述べさ せていただきたいと思います。時間枠がはっきりしませんでしたので、用意 したスライド枚数が少し多くなっておりますので、全部をご説明するという わけではなく、取捨選択して、なるべく10分で説明を終わらせていただきた いと思います。  周術期あるいは手術室の中の医療ということですが、医療職の間でもその 現場の状況を具体的に認知しづらいという面があります。例えば外科系ある いは麻酔科は、日常手術室で勤務しているので実体験としてよく知っている わけですが、内科系の先生などは、実態の面ではやはりわかりにくい面があ るかなということがありまして、そういう面についても少し触れさせていた だきたいと思いますし、麻酔科学会の立場で述べますので、麻酔科の観点に 焦点を絞って説明します。いま、チーム医療の推進という話、あるいは業務 拡大の話は非常に大きな話題として続いているわけですが、論点が少し混乱 しているかのように思います。 ☆スライド まず、医療職の不足、医療確保という観点から話は始まったか なと思いますが、手術室においては外科医が足りない。現在はまだいいので すが、外科医の養成には非常に年月がかかるので、このままいくと10年後に は大変なことになるだろうということがあります。麻酔科医が足りない。こ れはそれより先立って起こったのですが、実はここ2、3年は増加傾向にある のではないかというのが当事者の感覚です。手術室の看護師が足りない。こ れもずっと続いてきている問題です。特に7対1看護が始まってから、病棟に はたくさん優先的に配置されるのですが、その分、手術室に配置される看護 師の数が削られるという状況があります。  こういったマンパワー不足の中で、解決のために何ができるかというとこ ろで行われてきた話が、職種間の業務の委譲というか、あるいは、ある職種 の業務拡大ということで検討されてきたわけですが、その内容には大きく2つ あります。1つは看護師の業務拡大。これは現行法の中で、業務をしながらや っていくということが前提にありますので、On-the-Job Trainingで何らかの 研修を受講して、何らかの認定をするというような流れです。もう1つは、こ れは全く新たな、その中間的な職種を新設するということで、これがすでに 話題になりましたがNurse Practitioner、あるいはPhysician Assistant、麻 酔科の立場で言えば麻酔看護師です。これには当然のことですが、いままで にも述べたようなしっかりと標準化されたシステム、それから検証等が必要 で、新たな教育・実習機関の設置という大きな課題が横たわっているわけで す。 ☆スライド ちょっと根本的な理念にふれますと、このチーム医療と業務拡 大というのは、似ている面はあるけれど、実はかなり違うコンセプトだと私 は思うのです。チームというのは相互に協力し合い補完しながら、共通のゴ ールを達成し合う有機的な集合体です。これは業務拡大で単純にいうところ の、業務の一部を切り取って他職種にゆだねる、お任せするようなものでは ないということで大きく違う。翻って手術室の中を見てみますと、手術室の 中の環境は、東大病院でもそうですが、外科医も麻酔科医も看護師も、長年 のメンタリティというのがある、チーム医療を推進していくにはそのメンタ ルカルチャーを大きく変えなければ、いい意味でのチーム医療の推進はでき ないのではないか。長年の経験からそういう思いがあります。特に麻酔科は、 大きな病院では麻酔のマンパワーがもともと、研修医も含めてありますので、 すべての業務を麻酔科だけで完結してしまう、独立分業的な性格が強いとい うようなメンタルカルチャーがあります。こういったところを変えなくては いけない。 ☆スライド 日本麻酔科学会としてはこういった状況を考慮し、紆余曲折は あったのですが、集約してきたところは、では、次のことを提案しよう。そ れが周術期管理チーム構想で、その中に含まれる大きなものとして周術期管 理看護師ということがあります。その提言に至たった経緯と、現在までの成 果と、今後やっていこうとしている展開についてこれから説明します。 ☆スライド 具体的な事例として、手術室でよく起こることですが危機的な 出血。手術中の出血が突然起こることがあります。これは、その中にも書い てありますが、大野病院事件は非常に有名な事件です。この事件の裁判は終 わったわけですが、この11月に医療問題弁護団から、事故調査が不十分であ るということで関連の3団体に対して、事故調査を進める要望書が提出されて いる状況で、手術中発生した危機的出血に対する対応を、どのように適切に やっているかというのは非常に大きな課題です。麻酔科学会で長年続けてい る手術麻酔関連偶発症調査においても、手術中の心停止の1/3の原因になって いるということで、この問題には院内輸血体制の整備とともに、実際に起こ ったときの一連の行為ですね。指揮命令系統の確立、循環管理、補充療法、 輸血供給体制、こういったものをどのように適正に整備するかという大きな 問題があって、その中で、誰が何を知るべきで、誰が何をすべきか。この辺 がちっともはっきりしていないというような手術室の中の状況が問題です。 ☆スライド わかりやすい、日常的に起こるような一般の手術室の状況事例 を1つ挙げてみました。62歳の男性が出前の配達のバイクで事故を起こして、 下腿骨骨折で病院に搬送されて、緊急手術になった事例です。ちょっとシナ リオ的に書いてあるのですが、あとで読んでください。見ていただきたいの は、この人は初期の簡単な判断では足の骨折だけだと思われたのですが、実 は内臓の出血があって、その手術の途中でだんだん緊急的な状況になってい くというシナリオです。突然、想定しなかった輸血が必要になったわけです が、その輸血を確保して入れるというときに、麻酔科医とそれを担当した看 護師の間で、普通はどういう会話がなされるのかという、比較的ありがちな 会話なのですが、いかにそのコミュニケーションが成立しにくいかが、その 手術室の中にあるかということがおわかりになるかと思います。ルーチンで やっていることはうまくいくのですが、こういった危機的な状態になったと きにしっかり即座にコミュニケーションを成立させて、迅速な対応をすると いうのがいかに難しいかということがわかる事例になっています。 ☆スライド 13頁にいって、先ほど言いましたように、比較的長い期間をか けて麻酔科学会は、その周術期管理チーム構想というのを進めてきたわけで すが、これには歴史的な経緯があります。まず、2005年に麻酔科医のマンパ ワー不足が社会的な問題になって、これに対して麻酔科学会として提言を出 す必要があった。どういう対策が取れるかということがその提言としてまと められたわけです。 ☆スライド ただ、その後も麻酔科医の不足の声は消えなかった。基本的な データをお示しします。これは特に新しいものでもない、確認のデータなの ですが、現在麻酔科医は、いわゆる厚労省資格の標榜医が1万7,000人、麻酔 科学会の会員が約1万人、麻酔科学会の専門医が6,000人という構造になって います。 ☆スライド 実際の手術室の麻酔業務を担当している割合が、大学病院と一 般病院に分けて書いてありますが、現在の具体的な割合の変化は別としてこ ういった構造になっています。麻酔科医の不足を強めた大きな原因は、大学 病院の中では、臨床研修制度によってこの研修医の部分が落ちてしまった、 これを全面的にカバーする必要が出てきた。一般病院では、外科系の医師が、 その麻酔のリスクに対する責任が明確になってきたということと、外科自体 も忙しくなってきたということで、この外科系医師の30%の部分が縮小して きて、ここをカバーする必要が出てきたということが、直接的な不足原因の 大きなものです。 ☆スライド 次に国際的な比較をしますと、これも有名な表ですが、日本の 麻酔科医はもともと少なくて、国際平均よりもずっと少ない、米国と比べる と日本の麻酔科医数は0.4ということになります。これを踏まえて現在の状況 はどうか。つい先日、厚労省の平成20年の医師調査概況が発表されたのです が、主たる業務として従事している麻酔科医数が7,063名で、2年前の平成18 年調査の6,200名より大幅に増加している、800名増加した。ちなみに平成16 年から平成18年の調査は臨床研修制度導入の影響もあって、逆に6,400名から 200名減少しています。これが先ほど、麻酔科医は順調に少し増えてきたので はないかという現場の感覚があるということを申し上げたのですが、それを 裏付ける力強い数字になっています。ということで、年間約400名ペースの増 加がありますので、この状況を維持できれば麻酔科マンパワーの確保は順調 に改善して、周術期医療の質と安全を高めることに大きく寄与すると期待で きます。ただ重要なのは、このマンパワーを教育・育成しているのは大学病 院と地域の中核病院ですので、この教育研修が重要だということで、その役 割は極めて重要なものだと再認識する必要があります。 ☆スライド ただ、麻酔科が置かれている状況を、今後の改善の方向性でと らえたとしても、全く問題がないというわけではなく、一部で不適切な事態 も起こっています。この不適切な事態というのは、実は数の問題というより も、適正な麻酔科医の供給体制がないということのほうがより大きな問題で、 今後の重要な課題は、適正な麻酔科医の供給体制を全国を見込むような形で、 どのようにして構築、整備することができるだろうか。この仕組みを新たに 作る必要があるかなということで、麻酔科学会としても実効性のあるような 仕組作りを検討していきたいと考えています。 ☆スライド 歴史のほうに戻ります。2008年に経済財政諮問会議あるいは医 療確保のビジョン等で、麻酔科医不足に対し麻酔専門看護師の導入とか歯科 医師の麻酔、あるいは標榜許可制の規制緩和等の提案がされたわけですが、 これは麻酔科にとって大きなインパクトでして、逆にこれを機にもっと真剣 に、より迅速にやっていこうということで取組みを強化してまいりました。 ということで、周術期管理チーム構想、チーム医療として、麻酔科と協働し て周術期医療をやっていくチームメンバーを作っていく、育てていこうとい うことで関連諸団体、日本外科学会、日本手術看護学会、薬剤師会、臨床工 学医師会等々にも働きかけを始めていまに至っているわけです。実はすでに 東邦大学でモデルケースとしてOn-the-Job Trainingで看護師を、教育研修が できるかどうかやってみたのです。残念ながら、このプレリミナリーなトラ イアルは失敗に終わりました。  その失敗を分析して何が原因だったのか、それが20頁の「目標の曖昧さ」 「教材の不備」「評価法の不備」「認定手段の不備」ということで、この辺の 問題の対策を立てて、現在、教科書と試験問題の作成をいまやっています。 原稿はほぼ全部集まったのですが、600頁ぐらいの周術期全体をカバーするよ うな教科書を作る。しかも、これは実効性のあるものでなければいけないの で、教科書の作成者は50施設ぐらい、日本中にまたがっています。麻酔科学 会の総力をあげてやっていますので、実質的に1カ月の執筆期間だったのです が、もうすでに原稿が90%集まって、予定どおり来年の5月にはこの教科書が できて、非常に重要な役割を果たすだろう。それと同時に、2,000問ぐらいの Self-assessment testを作成しておりまして、これでもって評価もできるよ うな仕組みを作っていこうということです。 ☆スライド もう1つ話題を提供して終わりとします。いまNPあるいはPAと関 連して、米国の看護麻酔師の話があるかと思います。これはスライド23番で す。米国だけ非常に特殊な状況で、資格としては看護学士で、米国正看護師 の免許を持っていて、急性期ケアで臨床経験が1年以上。比較的優秀な成績で あれば入学に有利で、修士課程として教育して、養成期間は24〜36カ月、卒 業後国家試験が行われる、講義内容はそこにあるようなもの、どちらかとい うと医者と同じような講義内容で、特に麻酔科に特化したような内容ですね。 しかも驚くべきは麻酔臨床実習で、それは実際に800例近くの麻酔をかけると いうような実習が行われる。日本ではちょっと実現は考えにくいような教育 内容です。 ☆スライド 米国型の看護麻酔師については、これは世界的にも唯一の例外 で、米国での麻酔は、1800年代に看護麻酔師のほうから始まったのです。そ のあとでPhysician Anesthetistができたという特異な歴史があったもので、 いまでも実際の人数の割合は、麻酔科医よりも看護麻酔師のほうが多い。各 国に麻酔看護師はあるのですが、ほかの諸外国においては、麻酔科医の指導 監督のもとで麻酔業務に従事するということで、独立したクリティカルな役 割を果たす米国型の看護麻酔師は非常に特殊なものです。この形の看護麻酔 師については、非現実的なので麻酔科学会としてははっきりと反対です。  PAの中での麻酔看護師については、これはいろいろな問題があるし、メリ ット・デメリットがあるかと思いますので、外科学会等々と協同して検討を 重ねていこうということです。  30頁以降を見ていただきたいのですが、もしいろいろな要件が保たれ、達 成できたとすると、麻酔科医が専権でやるべきことはそうは多くなくて、「術 中」のところに書いてある「麻酔状態や全身状態の総合的診断と対応内容の 決定、発生した病態の診断と治療の決定」。これは医者の基本的な部分である 診断と治療の部分だけが、医師側だけのものとして残ると。あとの部分は前 提があれば一緒にやることはすべて可能であるという考え方で、「術後」につ いても全く同じです。  最後の頁ですが、まとめますと、日本外科学会、日本手術看護学会及び看 護協会には、いま麻酔科学会が周手術期管理チーム構想を地道に進めている わけです。これは麻酔科学会だけの問題ではなくて、是非一緒に協同してや っていきたいと考えており、適宜協議は進めているわけですが、この方向性 をさらに強めていきたいと考えております。同じく、薬剤師会、臨床工学技 士会等の関連諸団体にも参加する形で進めていきたいと思っております。  基本的には、この案は新たな研修機関を新設するものではなく、教育は On-the-Job Trainingの形で考えておりますし、活用は各施設の状況に合わせ たものになると。ただ、この形で運用しても短期的に麻酔科医のマンパワー はうまく使えば10〜20%の効率化は図れると予測されます。ということで、 診療報酬の裏づけとしては、結局どういう職種があるかよりもマンパワーの 数自体が要るのだと。チーム医療をやっていく上でも、もともとの基本構成 要素のマンパワーがなければ絵に描いた餅になります。だから、例えば手術 室の看護師さんの配置を増やしてほしいし、それを支援する診療報酬の裏づ けを要望したいということです。以上です。 ○永井座長  ありがとうございました。最後に、北村先生、お願いします。 ○北村先生  初めに、チーム医療推進協議会としてチーム医療に関して説明する場を与 えていただきましたことに感謝いたします。最初にこの協議会について少し 説明し、その後に協議会に参加している専門職の現状について説明をさせて いただきます。 ☆スライド チーム医療推進協議会は、患者が満足できる最良の医療を提供 するためのチーム医療の推進のため、スライド2のように医療関係職種12団体 並びに日本病院会、患者会、さらにメディアを含めて発足しました。 ☆スライド スライド3ですが、この協議会の目的は、『ひとりひとりの患者 さんに対してメディカルスタッフがそれぞれの職種を尊重し、さらに専門性 を高めて、それを発揮しながら患者が満足できる最良の医療を提供する』。そ のような体制を推進し全国に普及することであり、その結果、患者さんにと っては医療に対する悩みや心配を相談できるスタッフの数が増え、医療に対 する安心と満足とが高まり、もっと楽に、そして積極的に治療に参加できる 環境となるとしています。 ☆スライド 協議会の活動内容については、スライド4、5にあるように全国 の医療現場の現状と課題の調査・分析をすることによって、チーム医療の現 状と問題点を検討し、協議会としての報告と提言を行うことです。 ☆スライド 次に、スライド6のとおり、準備会、検討会、また各職種のプレ ゼンテーションを通して、各医療専門職の課題が抽出されました。また、専 門職同士のお互いの業務の内容、役割などを知ることができました。チーム 医療を進める上での課題として、人員数や適正配置、資格法の中のほかの医 療職種との連携条項の有無など、職種により法制度上の役割や業務の解釈の 違い、各々の専門技術やチーム医療に対する評価の有無の3点に集約されまし た。 ☆スライド 問題の解決のための方策等については、スライド7〜9のとおり で、そのまとめがスライド10のとおりです。 ☆スライド チーム医療推進の必要条件としては、スライド11ですが、院内 のチーム医療に対する体制を整備すること、チーム医療を進めていくために は、責任の所在をはっきりさせるため、チームリーダーの必要性があります。 チームリーダーが医師以外の場合、医師の協力と理解も必要です。さらに、 チームとして患者情報等の共有化を確立する必要があり、チームに参加して いるメンバーの意識改革とそれぞれの専門性、知識・技術の向上・高揚も必 要です。 ☆スライド スライド12に、代表的なチーム医療の構成職種の例を挙げてい ます。医療機関において、チーム医療はさまざまな業務分野、診療分野にお いて実施されており、患者さんにとってより良い医療が行われております。 この構成職種については、医療機関により構成に加わる職種もさまざまであ り、その医療機関でいちばん患者にとって良い医療ができることが重要とな ってくると思います。 ☆スライド 次に、各医療職種について説明します。スライド13から16まで がソーシャルワーカーの説明です。ソーシャルワーカーは、さまざまな診療・ 治療場面で心理・社会的問題を抱える患者・家族や退院困難ケースなどを担 当し、相談援助を提供しております。特に救急の現場では、身元不明・キー パーソン不在/疎遠/高齢者の患者への対応、医療費支払困難、外国人、自殺 を企てた患者、治療拒否などの患者に対して、医療スタッフと協同して患者 を支援し、より良い医療を行えるよう努めています。 ☆スライド ソーシャルワーカーの果たす役割は、患者・家族とスタッフの 間の理解促進、基本的な人権の擁護、心理・社会的状況の理解と医療スタッ フへの伝達、さらに地域連携まで含まれております。 ☆スライド また、ソーシャルワーカーは他病院や施設のソーシャルワーカ ーと連携し、支援を行っています。 ☆スライド 現状では転院支援や地域連携だけに期待される傾向があります が、病院には多くのチームが存在し、その1つひとつに関わりを持っておりま す。配置人数は病院によってまちまちで、行える業務もまちまちな状態です。 ソーシャルワーカーの役割について、チームのメンバーの理解が必要です。 また、チームアプローチのためには適切なチームが必要です。 ☆スライド スライド17です。次に、リンパドレナージセラピストの課題と 現状です。がん術後後遺症及び原発性に発症するリンパ浮腫患者に対し、保 存的治療を行っております。現在、このような疾患に対する治療法がないと いう通念認識により、要望に応えられる医療体制が確立されておらず、治療 とケアが遅れ、患者は余儀なく重症化するということもあります。現在この セラピストの絶対数が不足しており、また医療技術評価の対象外のため、医 療機関にて技術習得者の活用・雇用が困難な状況となっております。現在セ ラピストとして781名を輩出しております。そのうち医師12名、看護師499名、 理学療法士37名、作業療法士6名、あん摩マッサージ師228名です。 ☆スライド リンパドレナージセラピストの活動内容と役割ですが、スライ ド18に主な活動内容とその役割を挙げています。 ☆スライド スライド19に、対象患者に対する治療前・治療後の効果を示し ています。早期からの適切な診断及び個別に応じた治療・指導により、重症 化のリスクを回避できるようになります。この療法の普及には、医療リンパ ドレナージセラピストの育成及び質の担保と、この療法の技術をさらに評価 される必要があります。患者のQOL、ADLの向上には、チーム医療の一員とし てセラピストの存在がさらに評価される必要があります。 ☆スライド 次に、スライド21から栄養士の医療機関における役割です。チ ーム医療の一員として参画するためには、管理栄養士の役割の明確化と体制 の整備が必要と考えます。 ☆スライド スライド23ですが、管理栄養士のチーム医療への参画率は年々 増加してきております。栄養の専門家としてすべてのチームに参画すること が、患者のQOLを上げることにつながります。 ☆スライド スライド24が、チーム医療に関わることによるメリットです。 術前からの栄養管理による予後の改善、重症化への防止、患者ケアにおける 患者・家族の満足度の向上などがみられ、さらに個人に対応した食事形態、 内容の提案及び変更など、栄養管理業務を行うことにより医師・看護師の栄 養・食事に関する業務の軽減につながります。低栄養患者への早期介入や患 者個々に対する栄養管理を行うことによる入院期間の短縮も図られます。人 員確保や質の担保が必要なことは、管理栄養士の課題への対応としても必要 なことは言うまでもありません。 ☆スライド 次に、言語聴覚士ですが、言葉によるコミュニケーションに問 題がある方の支援だけでなく、摂食・嚥下の問題のある患者にも専門的に対 応しています。スライド25に、チーム医療に参画するための課題を挙げてい ます。言語聴覚士は絶対数が少ないため、看護や介護、障害福祉領域に従事 する人が少なく、医療現場では脳血管疾患などのリハビリのみ位置づけがあ り、回復期リハビリ病棟では必置となっておりません。言語聴覚士は、脳卒 中後の失語症、聴覚障害、言葉の発達の遅れ、声や発音の障害に対し検査・ 評価を実施し、必要に応じて訓練、指導、助言、その他の援助を行います。 このような活動は医療チームの一員として行っていますが、実施上の課題と して臨床上の質を担保するための業務体制の確立が必要であること、また嚥 下訓練は、特に訪問の場合には訓練前後の吸引などのケアが必要であり、高 いリスクを伴います。教育の質の向上と臨床実習の充実が必要となってきて おります。 ☆スライド スライド29が細胞検査士です。細胞検査士は、臨床検査技師の 免許取得後、認定試験に合格した者に与えられます。がん細胞を探し出す仕 事をしています。現在学会から認定されている有資格者数は6,465名です。 ☆スライド 細胞検査士については、細胞診断部門の設置化など診療体制の 整備が必要になってきています。スライド31のとおり、4年に1度の資格更新 で国際試験も実施されております。専門職としての専門技術に対する評価が ないことも課題の1つです。 ☆スライド 次に、日本作業療法士会です。作業療法士は、対象者の生活自 立支援と主体的な作業活動獲得、家族への関わりを含めた治療・指導・援助 を行っております。現在、作業療法士は医療職という認識から、保健、福祉 領域への配置が進んでおりません。医療領域への人数を増加していますが、1 名職場が圧倒的に多いことから、十分な役割を果たしていないという現状で す。 ☆スライド スライド35、36ですが、作業療法は障害のある者のみが対象で あり、予防や二次的障害の観点が含まれていないことなどがあり、作業療法 を十分に活用していないことが挙げられます。作業療法士としては、チーム 医療における回復段階における関わり、ADLや職業訓練、退院前の生活技能訓 練、小児に対する運動・知的発達訓練や心身の健康増進、予防などの業務を 行っておりますが、まだまだ十分とは言えません。 ☆スライド スライド37から診療情報管理士です。診療情報管理士は、各職 種がチーム医療を行うために共有する情報を整理し、利用可能な状態を維 持・管理します。また、救急医療や医療安全、緩和ケア、栄養管理や糖尿病 療養など専門分野のチーム情報を管理し、活動を行うために必要な情報を提 供していくことです。例えば、救急であれば外傷分類の登録、医療安全であ れば検証のための記録、診療記録の提出と分析、緩和ケアであればがん登録、 栄養管理や糖尿病であれば治療の基準となるリスクを測る検査値の情報を管 理することになります。 ○永井座長  むしろ、いま何が問題なのかを教えていただけますか。どういう仕事をさ れているかは大体わかりますので。 ○北村先生  問題点はいちばん最初に説明したとおりですが、現状的に法的にやれない 形もありますので、その内容についても説明させていただきます。 ☆スライド スライド40に診療記録の管理、監査、DPC、データベースマネジ メントといったいろいろな仕事がありますが、なかなかそこまで入っていけ ないということです。 ☆スライド スライド41から病院薬剤師です。この40年間で、調剤室での調 剤業務から病棟における患者指導医やチームの一員としての薬物療法業務へ と変わってきて、質・量とも3倍となってきております。 ☆スライド スライド43が主な病棟業務です。今後、病棟業務が病院薬剤師 の中心業務となって、病棟常勤による業務の推進を図ることができ、これら の業務を行うことで薬物療法の安全性の向上と薬剤の適正使用の推進を図る ことによって、勤務医の負担を軽減することができます。 ☆スライド チーム医療における薬剤師の役割と今後の課題を、スライド44 に示しております。医師・薬剤師などが事前に作成した標準的プロトコール に基づいて、専門性の高い薬剤師による薬物療法マネジメントを、全国的普 及に向けて環境整備、人材育成を進めていく必要があります。 ☆スライド スライド45が診療放射線技師の課題です。いまの診療放射線技 師を取り巻く課題として、医療技術の急速な進歩に対して教育内容が対応し きれていなくなってきております。 ☆スライド スライド47ですが、チーム医療の現場はがん医療、特に高精度 かつ最先端の放射線照射を実施する放射線治療の現場、救急医療、医療機器、 医療安全の管理です。 ☆スライド スライド48ですが、放射線技師の医師、ほかの職種との役割分 担という観点から、現在画像確認や画像チェック等の検像作業の画像読影、 放射線被曝の相談、放射性医薬品の調製(ミルキング)、これは現状でも99% 診療放射線技師が行っておりますが、薬剤師との関係です。また、撮影時に 機器と同期するために必要なCT、MRI検査等における造影剤の注入、造影剤注 入後の抜針、業務範囲の見直しによって、医師やほかの医療職種との業務の 一部分担が可能となります。 ☆スライド 次に、理学療法士です。リハビリはもともとチーム医療で実践 していくものであって、亜急性期のリハビリが手厚いかどうかでその後の後 遺症によるADLがどのぐらい向上できたかが決まるとされております。手厚く リハビリをすることが良いということ、また、できるだけマンツーマンが効 果的です。そのため、人手が必要となります。リハビリ分野でのチーム医療 の評価は、現在リハビリテーション総合計画評価料が算定されています。 ☆スライド スライド50に、今後の課題として関連法の改定。 ☆スライド 51の2.に「臨床業務の改善」を挙げています。吸引リハビリ等 での窒息時の緊急対応としての吸引などは未承認となっており、改善が必要 なことの1つです。 ☆スライド 最後に、日本臨床工学技士会の説明です。臨床工学技士は、医 療機器管理において全国の30%の施設にしか配置されていないため、医師及 び医療関係職との役割分担の推進がされておりません。また、現在の医療機 器安全管理料では臨床工学技士1名の雇用も困難であり、人工腎臓、麻酔費器 が除外されているため、安全確保が困難な状況です。 ☆スライド スライド56ですが、現在の業務の実態と業務指針の整合性が図 られれば、さらにチーム医療としての業務に参画可能となります。例えば、 呼吸療法における人工呼吸器装着時の、痰などの吸引、すでに留置されてい るカテーテルからの採血などが挙げられます。さらに、「立会い」規制に伴う ペースメーカ外来では、埋込式ペースメーカの記載がなく、早急な改善が必 要です。  このように、多くの職種が医療施設でその専門性を活かして業務を行って いますが、人員数や適正配置の問題、法制度上の役割や業務の解釈、専門技 術やチーム医療に対する評価が低いことから、十分に医療技術を発揮できな い状況にあります。各医療職種が実際に現場で担っている業務が、法制上の 範囲や解釈が変わることによって正当化されれば、さらに役割分担が明確化 され、チーム医療に貢献できることとなります。また、人員配置の見直しに より、チーム医療を実施できる体制が整備され、チーム医療を行う上での養 成教育が、卒前・卒後教育の充実、専門職としての技術に対する正当な評価 によって、患者にとって必要な、良い医療が実践されることになります。  5-(2)の資料は、朝日新聞に今年の1月から連載されている「私のがん対策〜 患者を支える人々〜」です。資料は11月までのもので、来年の3月まで連載が 予定されています。長くなりましたが、11職種の説明をするとういことでお 許しいただければありがたいと思います。 ○永井座長  ありがとうございました。時間も押していますので、自由にご質問、ご意 見をいただければと思います。どなたからでも結構ですので、よろしくお願 いします。 ○井上委員  さまざまなヒアリングの専門的なお話を伺って、だいぶ見えてきたことが ありました。検討会の流れの中で申し上げる部分もあって、今日のプレゼン ターの方には申し訳ないところもあるかもしれませんが、チーム医療という、 どういう絵を描いていいかわかりませんが、大きな円だとすると、1つには医 師がいままでのチーム医療のリーダーとしてやっていた部分と、直接には看 護師との間に非常に隙間が空いていて、そこを埋める必要が医師不足という 背景に出てきて、それを看護師の側からいくと専門看護師といったところで 埋めていきたいと。看護師の側から見ると、高度実践看護師であったりNPで あったり、それが医師の側から見るとおそらくPAに見えるのだろうと思いま す。いままでないものは新しく法改正して新たに作る必要があるかと思うの ですが、130万人いる看護師集団としては、いままでの実績、教育、200の看 護系大学、120の看護系大学院の中で担っていきたいということなのです。  そういう中で1つどうしても申し上げておきたいところは、麻酔科学会につ いて、周手術期の看護師の教育の必要性をお感じになって計画してくださっ たのはとてもすばらしいことだろうと思うのですが、これはOn-the-Job Trainingでは無理だと思いますし、こういう形ではなくてきちんと大学院教 育にしなければ、大変禍根を残すと思うのです。むしろ大学院教育で、現行 の役割拡大化、新しい職種にしても、そういう人たちが現場に出てからの On-the-Job Trainingに位置づけて頂きたい。いくら教科書を作っても、医師 の仕事の傍らでのそれは無理だと思います。また、看護系大学院を母体とす るならば、これはいまの看護教員だけでは無理です。こちらからお願いする のではなくて、隙間の職種を埋めるわけですから、看護師と医師、医学が力 を合わせて、両方から歩み寄って作る形にしないと無理だと思いますので、 森田先生が言われたように制度設計の基本理念を出しあい、是非大学院教育 で進めて欲しい。そういうところで当然法改正も必要になってくると思うの ですが、その流れで是非話を進めていただきたい。医師と看護師の隙間に関 してはそう思います。  他のさまざまな医療職種に関しては、これはあるほうが絶対に医療の質は 上がる。でも、いろいろな法的な裏づけとか報酬がいかに不十分であるのか が、何回かの検討会で明らかになってきたのではないかと思います。 ○山田先生  全くそのとおりで、時間がなかったので混乱しない説明の仕方ができなか った部分もあるのですが、新たに何かを作っているわけではなくて、いまま で必要だったものをいまになって作っている面が、この教科書作成にはあり ます。例に出した、突然比較的簡単に見えた外傷の患者さんで、手術室に入 ったら実はお腹の中に出血があったのだといった場合に、どんな混乱が現状 でも、比較的慣れた所でも生じているのかと。読んでいただけばわかります が、通常の状態の輸血の手順と緊急対応のときの輸血の手順と、これは例で すので細かく挙げていますが、この1つひとつに対してあらかじめ一致した見 解が持てていない状況があるのです。そういったいわゆる基礎的な、基盤的 な知識をまとめてみようというのがこのプロジェクトです。これはいま麻酔 科学会が作っていますが、誰かが始めなくてはいけなかったことなのでやっ ている面があるのですが、一緒になって作っていこうということで、まずは 今年、来年に第1版を作って、一緒に改訂を続けていこうと考える最初の核に なるものなのです。  On-the-Job Trainingと言うとがっちりしたもののように聞こえますが、こ れは言ってみれば通常業務の中での連携を図る日常的な試みみたいなもので、 それに標準化されたものがあってやれていけばより効率が上がるし、それを 全国的にやりましょうという形で進めているところが、いま予定として固ま っている部分です。そのあとについては、逆に麻酔科学会としても本当はも っとガチッとしたというか、先の先まで決めたものを設計したかったのです が、そんなことをやっても、とうていいま井上先生が言われたみたいに不適 切だということで、まず手前の部分で計画の具体化した部分を止めてあると。 だから、我々が決めるわけではなくて、関係者の間全体でどういう形でやっ ていくかについては、もっとしっかりしたやり方で、しっかりした教育機関 などを使ってやっていったほうがいいというぐらいに賛同していただけるの であれば、そういう方向に持っていきますし、そのときには主体者は我々で はなくて、看護側の方々だと考えています。 ○永井座長  矢崎先生に、大学院看護学研究科カリキュラムという構想についてお聞き したいのですが、いま主体は国立病院機構とどこかの学校で一緒にやってい こうということでしょうか。教育はどういう人がするのでしょうか。 ○矢崎先生  教育はすべて我々がやると。 ○永井座長  医師と看護師が共同で。 ○矢崎先生 はい。この領域は、看護職でまだ教育できる人がいませんので、 医師が主体となって実習や教育をするということです。そういう人がしっか り生まれれば、そういう方に委譲していこうと思っております。 ○坂本委員  矢崎先生のご発表を聞かせていただきましてありがとうございました。大 変共感致しました。最後の「検討課題」と書かれている所ですが、「包括的指 示」は、やりながらいろいろなことはある程度お互いに関係性を持ちながら1 つひとつ実践を積んでいこうという考え方でいくのか、それとも、ある程度 公的にこのようなところまではして良い、と最終的には持っていくのか、お 考えを聞かせていただけますでしょうか。 ○矢崎先生  医師の包括的指示には先ほど申し上げたいろいろな範囲があって、例えば フランスの看護麻酔師ですが、フランスとアメリカではものすごく違います。 フランスでは直接的な、至近距離に医師がいるというのが前提条件です。ア メリカは自由にできると。そのように国によって違いますので、我々として はまだ何もそういう条件が整っていないので、現行法の中で可能な限りの領 域のものはすべて看護職に教育して、1つひとつ安全性を確かめながらそれを 業務拡大していこうということで、最終的に私どもは国立病院機構の中で看 護師さんの資格認定を行って、医療事故の対応もすべて我々が責任を持って やると。将来的には、ある程度国民・患者さんのコンセンサスを得られれば 少し医師法と保助看法を見直すということで、私どもは即新しい職種を作る という段階にはまだ至っていないと思います。 ○島崎委員  いまのお話に関連して、草間先生にお伺いしたいことがあります。私は決 してNPを否定しているわけではないということをあらかじめ申しげた上でお 伺いします。資料の17頁で、医薬品の処方や検査オーダーができるというこ とが書かれています。この場合、一定の大学院教育を受けたキャリアを持っ ている看護師については、現在の保助看法上の診療の補助の範囲を解釈によ って拡大することによるという方法では足りないのかということです。もっ とストレートに言えば、ここで「法令等の改正が必要だ」とおっしゃってい る意味は、「准医師」と言うと語弊があるかもしれませんが、NPというインデ ィペンデントな職種を作るべきだということをおっしゃっているのでしょう か、その点をお伺いしたいと思います。 ○草間先生  まさにいまの先生のご質問はポイントでして、現行法令の中で診療の補助 行為を拡大してやればいいではないかということですが、いま私どもが考え ているのは、少なくとも将来的にそうしてほしいということでお話しますと、 診療の補助行為を拡大することになっても、保助看法の37条にありますよう に、すべての診療の補助行為は医師の指示がないとできないことになってお ります。そのときに無医地区とか、医師の指示が得られないと診療の補助行 為ができないということではなく、少なくともすべての医療行為ではなくて、 限定的な大学院の2年間で教育を受けてそこでできることに関しては、そうい う意味ではいちばん最初のスライドでお示ししたように、できることに関し ては、医師の指示がなくても看護師の判断でできるようにということで、新 たな職種をと考えているところです。  だから、診療の補助行為の拡大解釈でということになりますと、保助看法 の37条がありますので、常に医師の指示が必要ということになってきます。 先ほど矢崎先生が言われたように、現行法令の中では包括的指示とか事前指 示の形で、いずれにしても指示を得ないとできないことになっているので、 少なくとも大学院でこれから教育しようとしている部分に関しては、医師の 指示がなくてもできるようにしてほしい。そういう意味では、大学院できっ ちり教育を受けた方たちについては、新たな職種という形で認めてほしいと いうことでご提案しております。 ○島崎委員  重ねてお考えを確認したいのですが、先ほど矢崎先生がおっしゃったよう に、指示と言っても横に付いていて個別に指示することから、いまおっしゃ ったように包括的な指示、あるいは事前包括指示と言ってもいいかもしれま せんが、相当広範な形態があります。つまり、広い意味で医師のスーパーバ イズの下に置かれていますが、そうではなく、NPは自主裁量権を持ってやり たいというのが先生のお考えだと理解してよろしいでしょうか。 ○草間先生  是非そのように理解していただきたいと思います。少なくとも看護職の視 点から考えたときに、看護職の自立もこれからの看護職、特に看護職に優秀 な人材を集めておくためにも、あるいは中堅看護師の離職等を防止するため にも、看護職が自立する、すなわち自分で判断でき、責任を持ってできる形 にしておくことが大変重要ではないかと思っております。現在アメリカで、 日本人でNPを取って働いている方たちも結構おられるわけです。そういう方 たちに伺いますと、日本の看護職でいることによって行き詰まりを感じて、 アメリカに行ってNPを取って活躍している方たちがたくさんいるわけですの で、そういった人材流出を防ぐとか、あるいは看護職の自立ということで、 自立した職業であるというのは大変重要なことではないかと思ってこのよう な提案をさせていただいております。 ○川嶋委員  草間先生に同じ看護職として、私は数十年来看護の自立ということを言い 続けてきているので、診療看護師というのは従来の保助看法で診療の補助業 務と療養上の世話と2つあって、どちらも看護業務ですから推進しなければい けないのですが、特に草間先生が提案していらっしゃることは、より医師に 近づいた、医師法との関係での診療業務に偏った、いみじくも「診療看護師」 という言葉に表現されていると思うのですが、そちらに近寄ることのほうが 自立という考えはいかがかと思うのです。つまり、本当に看護全体を考える としたら、看護独自の方向に進化する方向もすごく重要ではないかと思うの です。  先ほど、臨床経験が5年あるから、NPの教育の中には看護学のあれは必修で はなくて選択であるとおっしゃったのですが、現在5年間の臨床経験を持って いる人たちが本当に一人前に働けるかというと、そこも疑義があります。私 は、草間先生が看護全体の視野に立って、看護学の学長でいらっしゃるので、 看護というのをどのようにお考えになっているのかを伺いたいと思います。 ○草間先生  最初にも申し上げたように、医療・保健を取り巻く環境は大変変わってき ております。特に高齢社会を迎えた現在、高齢者にどういう疾病が多いかと いうと、ご承知のように6〜7割が生活習慣病で亡くなっていく世の中です。 そういう中で生活習慣病の方たちにケアをしましょうといったときに、何が 大切かというと、生活指導と同時に薬物の処方等も必要なわけです。そうい った方たちをトータルに診て差し上げましょうといったときに、いまの看護 職ですと生活指導しかできない、薬の処方はできない状況です。例えば、遠 隔地にいる方たちで高血圧や糖尿病で療養している方たちを、頻回に訪問で きる診療看護師が診てあげることによって、1人の患者さんをトータルに診て あげるという点では、患者さんの側から見ると、まさに利便性の良い医療を 受けられることになるかと思います。  先ほどもお話しましたように、医療・保健、特に医療はプライマリケアか らものすごく高度な医療まであるわけで、そこのすべてにわたって私どもに やらせてほしいというのではなくて、少なくともプライマリケアの部分は診 療看護師がどうでしょうかということです。もちろん、看護独自の進化を遂 げることも大変重要なことで、看護独自の進化を遂げましょう、あるいは深 くやりましょうと、これがまさに10年以上前に始まっている専門看護師とい う形で、専門看護師の方たちはより看護を深めていきましょうということで、 すでにCNSの形で300数人の方たちが資格を持ってやっているわけです。そう いう意味で、大学院で教育する方たちが1つは看護をより進化させる、1つは いまの医療・保健の状況でカバーできるように、プライマリケアの部分につ いてはやっていきましょうと考えているわけです。 ○西澤委員  草間先生、簡単に、そのようなNPとプライマリケア医と、1人の患者さんに 両方要ると思うのですが、その役割分担はどのようにすればいいでしょうか。 ○草間先生  総合診療医とナースプラクティショナーでしょうか。総合診療医の先生方 とナースプラクティショナーは、常に連携を図っていかなければいけないと 考えております。例えば、慢性期のNPを育てたことによって開業医の先生と 訪問看護ステーション等で働くNPとが協同することによって、場合によって は24時間在宅診療がより推進できるのではないかと考えております。私は、 総合診療医の先生方のほうが医学をきっちり学んでいて、幅広くやっておら れるわけですので、常にNPと総合診療医の先生方とは協力して、連携を図り ながらやっていかなければいけないと思っております。 ○西澤委員  聞いていると、どうもプライマリケアに関しては、NPがやれば全部できて、 プライマリケア医が必要ないように見えてしまうので、その辺りをもう少し 詳しく、今日でなくても結構ですから出していただいて、ここでの議論の1つ の材料にさせていただければと思います。 ○草間先生  わかりました。 ○山本信夫委員  どなたにということではないのですが、指示が発生しないと仕事ができな いということで独立性がないというお話なのですが、その視点からのみ見れ ば、医療の世界では薬剤師は最も独立性がなくて、処方せんと指示がないと 何もできません。しかし、医療全体を見わたせば、薬剤師が関わる部分はた くさんあるわけで、井上先生がおっしゃったように、教育も6年制になりまし たし、そういった意味では基本的な教育が進んでいます。しかしながら、矢 崎先生のお話の中にも、いつも薬剤師が出てこなくて、忘れられているのか、 悲しいなと思いつつ、提案はできるよと。例えば、処方設計は看護師の方で もいいではないかというご意見もありますが、我々はすでにそうした提案は やっているわけで、そういったところはお目にとまらないのかなと少し残念 に思いました。また、森田先生が海外に行かれてアメリカで調べた際に、ナ ースプラクティショナーがPAの仕事をされていても、薬剤師は何をしている のかということがまったく出てこない状態の中で、ただ議論をされるのは若 干悲しい気がします。もし資料があるのであればお出しいただきたいと思い ます。  もう1点、先ほど山田先生のお話の中で、これは業務の取り合いではなくう まくシェアすることだ、それぞれの新しい職務を作ることではないというお 話がありました。まさにチームの根幹をお示しになって、実はもう少し先が あるのだというお話ですが、少なくともOn-the-Job Trainingをする上では、 基本的な教育をしながらトレーニングした上で仕事ができるのだろうと思い ます。補完する業務であれば、先ほど北村先生のお話の中に病院薬剤師の話 が出ていましたが、提案の範囲でとどまっていますが、少し遠慮がちに書い たのかなと思っております。今日の朝日新聞を見ると、薬剤師の役割がいく つかかなり明確に記事にされています。少なくとも薬に関して言えば薬剤師 なりがきちんと関わることが安全なのだという考え方だと思います。ここで の議論はそれぞれの専門性を発揮して、それぞれの領域をうまくシェアする ことで医療の質を上げていこうという議論で、それがチーム医療であるなら ば、新しい職種を作ることも大事ですが、その前にいまできるそれらの職種 がどう連携をした中でそれぞれの役割を発揮できるか、その中で、例えば法 的な課題をどうするかという問題があるならば、その法的な部分を議論しな くてはいけませんが、少なくともできる部分、あるいはすでにやっている部 分をもう少し明確に整理した上で、なおぶつかるのであれば、法的な整理を していただくなりの必要があります。頭からできないとかできるとか、これ を作りたい、ああしたいということであれば、薬剤師としては医薬品に関し て言えば専門性は高く、ここにお集まりの方々の中では医薬品に関する知識 は、私どもがいちばんあると思っておりますので、その領域までも薬剤師に に任せず、要らないのだと言われてしまうことにはいささか納得しかねます。  そういうことで考えてみれば、このチームの議論はたぶんそういう議論だ と思いますので、是非そういった議論で議論をした上で、それぞれできるこ とを並べてということが大事なのではないかと思っております。 ○永井座長  いまのご意見について、お答えは何かありますか。 ○矢崎先生  名前が出たので。私ども国立病院機構は、チーム医療の促進ということで 患者さんの目から欠けている所はないかということをきちんと検討して、協 同作業が進んでいます。特に薬剤師の方とか栄養士の方、NSTなどは我々は高 く評価してやっていますので、無視しているのではありません。今日、いま 問題にしているのは、患者さんの目から見ると看護職にやってもらったほう がいいような医療行為があるのではないか。これは病院の中ではこういうこ と、在宅医療ではこういうことということで議論を詰めていかないといけな いのではないかという提案でして、別に薬剤師さんを無視したとか、そうい うことではありませんので、よろしくお願いします。 ○北村先生  チーム医療推進協議会はこの検討会のために作ったのではなく、チーム医 療をいかに進めていくか、専門性をいかに発揮してやっていくかということ で、いろいろ皆さんから協会の意見を聞くと、専門性を活かすためにはグレ ーゾーンがあるのです。法律の枠内、医師の指示の下とか、ほとんどの職種 が「医師の指示の下」となっているのです。その中での範囲でやっている。 ただ、グレーゾーンでいまも認められていないのだけれど、実際は仕事をや っているものが各協会ともかなりあるということを解決しない限り、積極的 にはそこに入っていけないなと思っております。 ○永井座長  1つはマンパワーの問題があります。診療報酬が抑えられていて人件費を出 せないと、そこを何とかしてほしいという声が当然あると思うのですが、そ れはいかがですか。 ○北村先生  それについては、すべての職種については一人職場というのがかなり多い わけです。協会によっては、職種によっては一人職場が7割ぐらいということ もあるわけです。そういう所ではなかなか関わっていけないという話も、い ろいろ所から出ております。 ○羽生田委員  まさにいまお話になっているチーム医療の推進ということで議論している わけですが、永井座長が言われたように、チーム医療自体が診療報酬上の評 価がほとんどない状況ですので、そういったことがきちんとしていなければ 進まないだろうと。いままでヒアリングした方々は、チーム医療をこうやっ ていますと。できている所ばかりをヒアリングしているわけですので、そう いう中では新しい職種とかいう話も当然出てくるだろうと思うのですが、ま ずはチーム医療をもっと全国に普及させていくことが必要であろうと考えて います。  その中から、草間先生なども言われたように、新しい職種でいわゆる保助 看法から出た形で何かができるという、独立的な裁量権が必要だといったと きに、1人の患者さんに対してそれぞれの職種が行った場合に責任の所在はど うなのかというのが、私にはどうやっても理解できないのです。1人の患者さ んに対して誰かが責任を持つことが必要であろうということと、プライマリ ケアに連携が必要だというのと独立性ということとどのようにつながるのか が、私にはどうしても理解できないのです。どこまでが包括指示なのか、か なり範囲が広いので、その中で独立的な裁量権まで含めた包括指示というの があり得るのではないかといつも考えているのですが、「独立と連携」につい て私は疑問を持っております。草間先生がいま言われた、プライマリケアで 独立していると言いながら連携が必要だという、その辺の整合性が私にはよ くわからないのです。 ○草間先生  独立と連携というのは、少しベクトルが違う方向になると思っております。 連携というのは、プライマリケアで連携が必要ないということは、私はない と思うのです。患者さんの視点から見たときに、24時間どうカバーしてくだ さるかということはすごく大事なことなのだろうと思うのです。そういった ときに、いまの総合診療医だけで24時間カバーできるかというと、なかなか 難しい。あるいは、病診連携でどう図っていくかといったときに、連携を図 っていきましょうということなのではないかと思います。  それに対して独立は、独立というよりも自律(オートノミー)と考えてい ただきたいのですが、自ら判断し、自ら責任を持って、誰が責任を持つかと いったときに、自ら判断し、自分が責任を持ってやったことに関しては、こ れからお願いしている診療看護師が持つというのは当然のことなのだろうと 思うので。 ○羽生田委員  現実にそこの責任だけで済むのでしょうか。そこだけでは済まないと思う のです。連携して、医師も見ていて、看護師も見て、独立した裁量権という のはもちろんいいですよ。裁量権を持つと言っても連携の中での裁量権であ って、そういう意味では、診療看護師が出来て、その行為自体の責任を持つ のはいいですが、総合的にチーム医療の中では誰かが最終責任を取らなけれ ばいけないと私は思っています。 ○海辺委員  先ほどの草間先生のご発表を伺って、少々違和感を覚えたというか、これ までの議論からすると少し飛躍しすぎかなと感じた部分がありました。とい うのは、助産師さんなど何十年もずっと脈々とある職種でも、まだできない というか、何となく怖々やっている行為があるというところの整備もまだま まならないのに、8カード目の中で「無医地域解消」というのが出てきている のですが、これは現状の日本の医療制度の中ではいくら何でも、かなり先の お話なのかなという印象を持ちました。将来的にそういう方向にいつか行く ということは良いとしても、ここ数年の中ではまだ対応は不可能ではないか なという印象を持ちました。無医地域解消のためのナースプラクティショナ ーというところまでいきますと、まだ制度や政策できちんと決定したあと動 く部分かなと思いました。  話は変わるのですが、これまでの議論の中では、森田先生の発表の12カー ド目で「ルールの読み替えで乗り切っているのではなく、個別の根拠法が存 在する」というのは、日本が非常に欠けている部分だから絶対に必要だと思 います。これまでの第7回までの議論も踏まえて、できるところから必要な部 分をやっていかなければいけないのではないかという印象を持ちました。第4 回のときの吉田先生の発表だったと思いますが、急性期の医療の受皿として 亜急性期の病院がというお話が出たときに、大熊委員が急性期医療から在宅 とシフトするはずではないのかという議論が出たときに、いま在宅のほうに すぐ行かれないのなら、そのための体制とかフォローアップができないから、 次に体制が整っている病院に回さざるを得ないということが日本の中である と、今回の矢崎先生の資料では、1頁目で日本、ドイツ、フランス、イギリス、 アメリカという横並びの比較があったら、そういう部分がきちんと整わない から、日本の場合はいつまで経っても解消しない問題があるのだなと非常に 感じました。いろいろな方々のご意見を一旦ちゃんと整理しないと、いつま で経っても議論が回ってしまうのではないかという印象を持ちました。  先ほどの羽生田先生のお話ですと、普及が先なのか整備が先なのかという 問題もあるかなと思います。チーム医療の推進の知名度を上げることが先と いうご議論ももちろんあるかと思うのですが、まず法整備が必要な部分も非 常にあったなということも感じまして、その整理を1回しないと話がばらける ばかりで、先に進まないような印象を持ちました。 ○永井座長  いま情報収集しているわけで、次回からまとめに入っていきます。現実は こういういろいろな問題点の循環になっているわけです。何か1つの原因があ るわけではなくて、あらゆることが絡み合っているというのが委員の先生方 におわかりになっていただければ、それは非常に大きな進歩だと思います。 その上でどうするか、結局鶏が先か卵が先かみたいな部分があちこちにある わけです。そういう現実を踏まえて次回以降議論を整理しますが、その上で どうするのだと、現実的な第一歩をどうするかというのが、今回の委員会の 報告書になるだろうと思います。それでは、手短にお願いします。 ○海辺委員  先ほど川嶋先生と草間先生のお話の中であった、看護の部分とワンステッ プ進んだナースプラクティショナーのご議論を伺っていて思ったのが、私が アメリカでM. D. Andersonのナースプラクティショナーの方のお話を伺った ときに、ナースプラクティショナーの方が、いろいろな処方ができるように なって、より患者さんが待たされたり悩んだりする時間が短くて済むように なったことは、私は良いことだと思っていると。ただ、ナースプラクティシ ョナーになったからといって、患者さんがそこにあるビスケットの缶を取っ て頂戴と言われたときに、取ってあげなくなるわけではないと。いままでと 同じようにビスケットの缶は取ってあげていますよと。要するに、ナースプ ラクティショナーの資格を取ったからといって、いままでしていたナースの 仕事をしなくなるということでは決してないと、私は思っているのです。 ○永井座長  宮村委員が退出されるということで、手短にお願いします。 ○宮村委員  本当に簡単です。大変参考になる会に出させていただきまして、また来年 までということですが、いま薬剤師会の山本委員が薬剤師が忘れられている とおっしゃっていましたが、無視されているとか、そういうことを言えば歯 科などはずっと無視されっ放しなわけです。でも、私はここは常識的に患者 さんを中心にして、病院なり在宅でどういうチームを組むのだと思っていま す。いままででも我々がと言おうと思っても、そこはとても難しいと。我々 が歯科がいますよということは言えなかったのです。それぞれに歯科があり ますよと言えるけれど、患者を中心にしたチーム医療ですので、そういうス タンスでいなければならないとすれば、歯科のことを言わなかったのは間違 っていたかなと思いますが、そうではないと思います。今後本当に歯科が要 ると思ったときに発言させていただきますので、皆さん来年までお元気で。 ○川嶋委員  森田先生がアメリカでPAとNPの視察をしていらっしゃいました。私は、チ ーム医療の推進はあくまで患者中心でと思っているのです。座長がしばしば おっしゃっている診療報酬絡みで質問したいのです。NPが処方した場合も診 療行為をした場合も医師の85%ということで、私はアメリカのNPが非常に推 進したのは、医療費削減に非常に貢献したからではないかという認識を持っ ているのですが、その辺の情報は収集していらっしゃったでしょうか。 ○森田先生  診療報酬とか処方料の件に関しては、カリフォルニア州の場合は85%です が、州によっては全く同じ額が支払われる州もあると聞きました。Doctor's FeeとかPA、NPに対して支払われるフィーに関しての情報収集は、これ以上の ものはできておりません。 ○川嶋委員  どのぐらい削減したかという資料は、まだ。 ○森田先生  まだ入手できておりません。 ○坂本委員  森田先生に1つお聞きしてから、包括指示のことについてお話しさせていた だきたいのですが、アメリカのNPというのは、基本的には包括指示なわけで すよね。ある程度取り決められたものだけはしてよい、ということなのです よね。 ○森田先生  病院ごとに文書によるプロトコールは確定したものがありますが、いわゆ る包括指示という理解で大体合っていると思います。 ○坂本委員  草間先生のお話しされたNPについても、これから議論をしていくべきだと 思います。というのは、先ほど山田先生もおっしゃったように、医療の提供 体制は変わってきていると思いますので、そこは積極的にやっていくべきだ と思うのです。しかし、例えば患者の排便コントロールをナースがするため にその薬剤等を使っていいよ、という包括指示があればすぐ使えるのですが、 その都度医師に確認するという、連絡をとるという手間については大変苦労 が多いということです。すぐNPの議論をするべきだろうと思いますが、さし あたって包括指示の下、ある程度の行為に関しては裁量権の範囲を決めなが ら、どこまで裁量権を与えていくかは継続して議論していくべきだと思いま す。NPという名前が日本の中にも入ってきて、まだ定義もはっきりしていま せん。しかし、いままでの状況で、医療提供体制を少し変えていかなければ なりません。その点からも、議論するべきだと思っております。 ○竹股委員  話の流れがずれてしまったので、別の話になるのですが、先ほど連携の話 が出たのですが、たぶん来年から、いま数年の間にどうするかという問題と、 これから先どうするかという問題と、2つ時期があると思うのです。いま私ど もが話し合っているのは、直近ではともかく国民の医療ニーズに対して十分 我々医療者が応え切れていない現状があって、その元が医師が足りないとか ナースが足りないというところが非常に大きく取り上げられているわけです。  それに対して、もっと現実的なレベルでどうするのかと。誰がやるのか、 どのようにやるのか、どういう質の担保をするのかという話になってきてい るのだろうと思うのです。連携という問題は、とりあえず直近でいまある職 種の人たち、薬剤師さんも含めてあらゆる職種がどのようにいまある力を出 し合って、先ほど2割とか3割とか、もしかしたらもって効率的な医療ができ るのではないかという視点が1つあると思うのです。これはもっと具体的なレ ベルで、どの職種がいまどういう場面でどういうことができるのか、いまの 法律の範囲の中で考えていくことがいままでたくさん出てきました。  もう1つは、草間先生のお話になるのですが、これから18歳年齢がどんどん 減る、しかし高齢化が進む。こうなってくると、どんなに我々が頑張っても 人が足りないのです。たぶん、医師たちがどんなに頑張っても足りないので す。私どもの病院は急性期ですが、私たちは経験的にこれだけの包括指示の オンパレードです。包括指示とは何かというと、いわゆるガイドラインに近 いものがあるのです。個別の患者様ではなくて、一般論として出すこともあ るのです。ですから、そうなってきたときに、私たちは将来を見越して、多 くの力のある人たちを医療の現場に引き込まなければいけないといったとき に、看護職がもっと多くの裁量を担って、高齢化の中で必要のあるレベルの ニーズを満たすことは非常に有要なのではないかと思っております。 ○太田委員  もう時間なので、取り下げてもいいのですが、資格を持っているから法的 責任はそれぞれの資格の者が取るのはいいにしても、チームで医療をやって いる以上、チームの道義的責任があると思うのです。そこは医者も取るよと いう雰囲気ではないかと思うので、チーム医療推進協議会には医者も歯科医 師も顔が見えないのがちょっと、ということです。 ○永井座長 よろしいでしょうか。大体時間になったのですが、事務局から 今後の進め方等についてお願いします。 ○石川(義)補佐  ありがとうございました。次回の日程ですが、本年はこれでおしまいで、 次回は来年1月21日(木)15時から17時、場所はいまのところ未定ですので、 また追ってご連絡いたします。良いお年を、よろしくお願いします。 ○永井座長  ヒアリングは今日までということですね。次回以降はまとめに入っていく と。そのときに、少し全体像の話をしたいと思います。今日の矢崎先生のお 話の最初のスライドにもありますが、これは職種間の分担と連携だけではな くて、医療機関の分担と連携の話が背景にあるのだと思うのです。それがな いところで職種間で連携したり分担しても、たぶんうまくいかないだろうと。 大きなサイクルと小さなサイクル、いろいろなことがあって、まさにどこか1 つの原因で問題が起こっているわけではないのだと思います。それを踏まえ ながら、とりあえずどうするか、短期的な提言と中長期的な提言ということ で年度内にまとめたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。  それでは、参考人の先生方、本日は誠にありがとうございました。これで 終了させていただきます。 -了- (照会先) 厚生労働省医政局医事課 石川義浩、石川典子 (代表)03−5253−1111(内線2564、内線2563)