09/10/30 第3回へき地保健医療対策検討会議事録 第3回 へき地保健医療対策検討会【議事録】 日時 平成21年10月30日(金) 15:00〜 場所 全国都市会館第1会議室 ○馬場医療確保対策専門官:定刻となりました。ただいまから、第3回「へき地保健 医療対策検討会」を開催いたします。委員の皆様方には、本日大変お忙しい中ご 出席賜りまして、誠にありがとうございます。    前回までご欠席だった委員のご紹介をいたします。全国離島振興協議会会長新 潟県佐度市長の高野宏一郎委員です。 ○高野委員:佐度市長の高野です。全国離島振興協議会の会長もさせていただいてい ます。誠に申し訳ありません。前2回欠席させてもらいました。よろしくお願い いたします。 ○馬場医療確保対策専門官:ありがとうございました。なお、本日は内田健夫委員か ら、ご都合によりご欠席の連絡をいただいています。以降の進行は梶井座長にお 願いいたします。 ○梶井座長:本日もよろしくお願いいたします。事務局から資料のご説明をお願いい たします。 ○馬場医療確保対策専門官:資料1が前回の第2回検討会の議事要旨(案)、資料2-1 が前回の検討会の内容を踏まえた論点整理の修正案、資料2-2がこれまでの議論 等を踏まえたへき地医療支援機構の役割について考えるための資料となってい ます。資料3は前野委員提出資料です。併せて冊子もお配りしています。資料4 が吉新委員提出資料、資料5が梶井座長提出資料です。    さらに参考資料として、参考資料1が前回検討会の議事録、参考資料2は前回 検討会で配付させていただいたへき地医療に関する現況調査の資料のセット版 となっています。参考資料2は前回と同じものを再配という形になりますが、随 時ご活用いただければと思います。 ○梶井座長:まず、議題1の「論点整理について」事務局からご説明をお願いいたし ます。 ○馬場医療確保対策専門官:資料1ですが、先ほどご案内申し上げましたとおり、第 2回のへき地保健医療対策検討会の要旨です。こちらは、前回皆様に意見交換し ていただいたことをコンパクトにまとめさせていただいたものです。    資料2-1は、へき地検討会における論点整理で、前回第2回の会合の議論を踏 まえた修正案です。    こちらを簡単にまとめさせていただきます。論点1の「医師の育成過程等にお けるへき地医療の動機付けのあり方等について検討していくことが必要」と。論 点1に関しては、地域枠、奨学金枠の学生に関する記述に加えて、これ以降もそ うですが、下線を引かせていただいたところが前回第2回の内容を追加させてい ただいたところです。それに加えて、卒前カリキュラム、卒後総合医としての認 定医制度の拡充などを入れさせていただいています。    論点2は「へき地医療支援機構の強化」についてです。こちらは機構の役割と 位置づけ、特に位置づけとしてキャリアパスやドクタープールについて、また専 任担当官のあり方や勤務内容、また各都道府県の改善策の策定や、先進事例を参 考にした改善策の策定や国のフォローアップの仕組み等々について書かせてい ただきました。    論点3は、「安心して勤務・生活できるキャリアパスの構築」です。こちらは、 勤務体制の構築に加えて、勤務評価の仕組みづくり、市町村のかかわり等につい て書かせていただいています。論点4「へき地医療を支えるへき地医療拠点病院 等への支援」です。論点5は「その他の事項」としてまとめさせていただいてい ます。    資料2-2は、へき地医療支援機構が設置された第9次計画の策定通知をもとに 前回の議論などを加えて、先ほどと同じように下線部分をいろいろ書き加えさせ ていただいて、議論のもとになるように、頭の体操のためにまとめさせていただ きました。    簡単ですが、論点整理案及び支援機構の役割等に関する資料のご説明をさせて いただきました。 ○梶井座長:どうもありがとうございました。ただいまご説明がありましたように、 前回第2回会合の議論を踏まえた修正案、「へき地検討会における論点整理」を お示しいただきました。    前回は、この論点の中でも特に論点2の「へき地医療支援機構の強化」につい て随分ご議論いただいて、だいぶ骨組みが固まってきたようには思います。今日 は、そのほか論点1とか論点3論点4のほうにあとでご議論を深めていただきた いと思いますが、前回の論点2の「へき地医療支援機構」についてもう少し何か ご意見を伺えればと思います。先ほどの説明で、地域医療支援機構、へき地医療 支援機構について非常に分かりやすく、皆様に配付資料、資料2-2をお示しして いただいています。こういうようなことも踏まえながら、少しの時間ご議論いた だければと思います。いかがでしょうか。 ○澤田委員:地域枠等、医師養成奨学資金を受給する学生さんが、将来的に産婦人科 や小児科、救急、脳外科などの特定診療科に進む場合の受け皿は、それぞれ専門 の医局が存在するので、さほど問題にはなりませんが、彼らが地域医療とか総合 診療、プライマリケアを目指す場合、現時点では、その受け皿となる医局が存在 しないケースが多いと思います。その場合、支援機構などが都道府県と連携する 形で、管理型病院の指定を受けたへき地医療拠点病院の総合診療科などを拠点と して受け入れができるような形、地域医療や総合診療に特化した、いわゆる「医 局」的機能を持つ組織づくりが今後求められるのではないかと思います。そのほ か、支援機構として積極的に地域に出向いて、現場の情報収集や地域医療ニーズ などの把握について積極的に努め、地域医療のデータバンク的な役割を果たすこ とも併せて求められるのではないかと考えています。 ○梶井座長:ありがとうございました。ただいま、このへき地医療支援機構が、いわ ゆる医局的な機能をもってはどうかというお話、地域医療のデータバンクを構築 するという役割があってもいいのではないか、というご意見だったと思います。 この2点について皆様のご意見を伺えればと思います。いかがでしょうか。 ○鈴川委員:どなたもおっしゃらないのですが、医局制度に対して、国がどういう方 向で動かしているのかがすごく気になります。どっちかと言えば、医局崩壊を望 んでいらっしゃったようなところがあるわけです。その弊害が出てきているとこ ろを見越したうえでのいまの発言であって、かつ、それを支援機構とどのように タイアップしてやっていくかという積極的な意味で捉えていかないと、ただ医局 を作ればいいというものでは当然ないと澤田委員も思っていらっしゃると思う のですが、その医局のよかったところを、そのままどこかの大学を作るのでは元 の木阿弥と言われてもよくないので、新しい枠組みと言うのでしょうか、どのよ うな対策をとればいいのか、支援機構を中心とした集まりと言うのでしょうか、 その中で話し合える場所をきちんとつくっていく。昔の医局的ないいところをそ の中に取り込んだシステムを作っていくという意味の発言ではないかと解釈し たのですが、いかがでしょうか。 ○澤田委員:そのとおりです。昔の医局制度に戻ろうという回帰論ではなくて、あく まで前向きで、かつ都道府県と連携する新しい形を前提とした「医局」的機能を イメージしています。従来までの臨床研修制度では、スペシャリスト養成が主体 のプログラムが中心でしたが、これからはジェネラリストを育成・教育していく ための研修プログラムや、その受け皿となる病院求められる時代になってくると 考えていますが、残念ながら、それらはまだまだ少ないように感じています。ジ ェネラリスト育成・教育のコアとなる病院は、やはりへき地医療拠点病院の指定 を受けた管理型病院が最適であり、これらの病院がイニシアティブをとって、将 来的に地域医療やプライマリケアを目指す学生や研修医を集めて、しっかりと教 育していくことが求められます。その点からも、都道府県とコアになる病院とを つなぐパイプ役として支援機構の存在は欠かせないと考えています。 ○梶井座長:澤田委員にお聞きしたいのですが、そうやって育てますと、先ほどの支 援機構の資料の役割のところに、「ドクタープール機能」が7番目にありますが、 例えば、そういう人たちのその後のかかわりは、どうお考えでしょうか。 ○澤田委員:一般的に若い医師達は、一定の経験を積むまではなかなか自信も持てず、 帰属意識が高い傾向があります。「医局」という言い方には少し語弊があるかも 知れませんが、そういった「医局」的機能を持った組織の一員として地域に派遣 されるということであれば、大きな安心感があり連帯感ももてるのではないかと 思います。しかも、その組織が都道府県などと連携し、県職員など公務員として の身分を有して派遣されれば一定の身分保証も得られます。地域の第一線に派遣 されますと、ライフサイクルの中で何年後かには、家族の都合などで都市部に戻 らなければならない時期も必ずやって来るわけですが、その場合に、きちっと次 の医師にバトンタッチができる仕組みが重要となります。組織対応でなく単独で 行くとなると、その点が非常に難しいわけです。こういった「医局」的機能を有 する組織を背景として地域に派遣するシステムづくりについて、管理型病院が個 別に実施するにはハードルが高いため、やはり都道府県や支援機構などが関与し ていく必要があると考えています。 ○梶井座長:そうしますと、鈴川委員がおっしゃったように、旧来の医局というイメ ージでなくて、仮にと言いましょうか、そういうように皆さんが集って、そうい う支援をしたり、お互いをサポートしたりというイメージでしょうか。 ○澤田委員:はい、そうです。 ○梶井座長:ありがとうございました。いまのお話は、卒前の話ではありませんでし たが、おそらく卒前から卒後のそういう地域医療に将来かかわる、あるいはそう いう総合医を目標とする教育あるいは研修に関して強く深くかかわっていくこ とと、もう一つはプール、その中でお互いがサポートし合うという2つの側面が あったかのように思うのですが、卒前、卒後の教育について、前田委員、いかが でしょうか。 ○前田委員:私も、「医局」という言葉は不適切か分かりませんが、「医局的な機能」 を有するのは私は大賛成です。医局の機能を考えてみますと、まず、これまで専 門医としての教育、スキルアップといった場であって、研究の場であって、心理 的な拠であったわけです。それから、キャリア形成で、キャリアをサポートして いた側面があります。もう一つ重要な点は、卒前の教育に非常に深くかかわって、 卒前から卒後にかけて専門協翼して師弟関係が結ばれていったところがありま す。    ですから、地域医療に興味がある学生というのは、そんなに少なくないと私は 思っています。それをいかに適切に教育と言いますか、そのためには、やはり卒 前から地域医療教育に関与する必要性があると思います。そういう場としては、 へき地医療支援機構が卒前のほうから関与していただいて、大学教育と連携して いただければ非常にいい体制ができるのではないかと思います。 ○梶井座長:ありがとうございました。いわゆる医局的な役割、機能をもってもらう と、そこに将来、地域の中で医療をやりたい人たちも集まって来るのではないか というようなお話でした。確かに、教育とか地域の研究に携わりたいという人た ちもいるかもしれませんし、キャリアの形成、心理的サポート。 ○前田委員:すみません。言い忘れました。全国的に地域枠の学生さんが増えてきま した。その地域枠の学生さんにどういったプログラムを課すかという具体的な教 育方針がまだ全国的に模索段階にあるのです。ですから、いまの段階であるから こそ、地域医療に経験のある方に入っていただいて、そのプログラムを具体化し ていただくのは非常に重要だと思います。 ○梶井座長:非常に具体的なご提案があったと思いますが、そのほかありませんか。   それでは、この卒前、卒後の教育研修、いわゆるドクタープールと言うと、ちょ っとこれはまたイメージが違うかもしれませんが、そういう旧来の医局的な役割 を担うことを一つ盛り込むということでよろしいですか。何か、いやいや、そう ではないという方はいらっしゃいますか。 (異議なし) ○梶井座長:澤田委員からもう一つ出ていました。地域医療のデータを構築していく ことについてはいかがでしょうか。やはりイメージだけで地域医療にアプローチ するよりも、そういうデータをきちっと構築して、解析して、客観的な判断に基 づいてということもこれから非常に大事になってこようかと思いますが、このあ たりはいかがでしょうか。奥野委員いかがでしょうか。 ○奥野委員:データという意味では、ずっと以前に全国へき地の診療所のデータ等を とったことがあります。全国の平均的なことが明らかになったのですが、自分が 県のへき地の担当になりまして、実に県内のへき地の医療機関のデータが何もな いことが歴然としました。例えば、その医師の給与、住宅、勤務状況、月に何回 当直するのだといったのは、次から来ていただく人にそういう情報を与えるとい う単純なこともできませんでした。    ただ、その一つの原因は、自治医科大学の卒業生がずっと継続して勤務したも のですから、そういうことがもう口伝えと言いますか、自動的に伝わっていて、 それで当り前のようになっていたということですが、いま改めて考えますと、非 常に大事なことです。    市町村に対しても、例えば、そういうデータを出していただくという意味は、 毎年毎年、特に自治医大の卒業生の場合は、継続してやっていくことがもう前提 になっています。そうしますと、市町村がなかなか努力をしなくなります。例え ば、すごく分かりやすい例を言いますと、4月で交代した時に、医師住宅が、前 の医師の荷物がそのままになっていて、掃除もされていなかった状況もあるわけ です。    つまり、市町村は毎年毎年この医師を自分たちの診療所とか小さな病院の状況 を改めてちゃんと見直して、それを、例えばそのデータバンクに上げていくため にも必要ではないかというふうにも思います。以上です。 ○梶井座長:ありがとうございました。今日は医局的な機能、地域のデータの構築の 意見が出ましたが、そのほかにありませんか。 ○角町委員:5番目の論点の整理の時に出て来る話になろうかと思いますが、医師の 確保と同じように、当然、歯科医師の派遣にかかわっても、そういうことが当然 言えてくると思いますので、是非、そういう一角にそういう内容を記載してもら うとありがたいと思います。ただ、それだけです。 ○梶井座長:ありがとうございました。医師のみならず、医療従事者全体ということ です。 ○中村委員:「専任担当官」という言葉がありますが、実は専任してない所がほとん どです。都道府県によっては、へき地診療所を支援するはずの病院のほうも医師 不足という所もありますから、それで仕方がないと思うのです。    ただし、その「専任担当官」の定義をきちっと決めないと、「専任」と言いな がら他の仕事を「兼任」しているのに、それでいて同じ額の補助金がいくのはち ょっと問題だと思います。    ですから、例えば週何回、あるいは年間何回か、へき地診療所を支援しなけれ ば「専任担当官」とは言わないというような定義づけが必要だと思います。「専 任」で駄目だったら、「兼任」という言葉で置き換えて、「専任」「兼任」の二本 立てにしたほうがいいと私は考えています。 ○梶井座長:中村委員ご欠席の時に「専任担当官は複数でも」というご意見が出てい まして、その点についてちょっとお聞かせいただければと思います。 ○中村委員:例えば、専任担当官1名と兼任担当官1名がいてもいいし、あるいは兼 任担当官2名のほうが都合がよい都道府県もあるかもしれません。そのあたりを、 各都道府県の事情に応じて、フレキシブルにやったほうがいいと思います。 ○梶井座長:専任担当官と兼任担当官を明確にすべきではないかというご意見です。 ○吉新委員:支援機構自体がファンクションなのです。皆で議論して、その県に合っ た仕組みを作ることなので、いま中村委員がおっしゃったように、いろいろな運 用の仕方があると思いますが、例えば北海道では、いま1,000名医者が足りない というのです。岩手県の知事さんは、数百人足りないとおっしゃっています。結 局、県で状況が違います。ある程度代診の確保は簡単にできるような地域もある と、同じへき地で聞いていますので、これをこの委員会で決めるのはちょっとお かしいのではないかと、地域、地域にもいろいろあるのだと思います。    支援機構といっても、非常に大きな絵で捉えている県もあれば、何か専任担当 官そのものが支援機構だみたいなところがあります。もちろん、スタンダードな データセット、先ほど奥野委員がおっしゃったようなことは必要だとは思います すが、どうなのでしょうか、あまりきっちり検討会として方針を出すのは、ちょ っと本来の支援機構の動きをかえって逆に難しくしてしまうのではないかと私 は思います。ただ、支援機構があまりにも曖昧だということは、もう皆さんもよ くお分かりのとおりです。 ○梶井座長:ありがとうございました。いまの吉新委員のご意見についていかがでし ょうか。多分、都道府県によって全然求められるもの、ニーズが違うと思います。 そこで支援機構がどういう役割、ボリュームも質もそうだと思うのですが、その 時に、多分いま出ているのは、こういう役割をもってもらうと、非常に支援機構 の位置づけが明確になるのかなということではないかと思うのです。そのほかい かがでしょうか。    だいぶ支援機構については、前回と今日議論を進めてきました。9次から始ま って10次、今度の11次とさらに支援機構の役割を明確にして、より実のある活 動をやってもらおうということで議論してきましたが、とりあえずこのあたりで 支援機構の議論は一段落させていただいてよろしいですか。また、これからもい ろいろご意見があろうと思いますが、その都度おっしゃっていただければと思い ます。    論点整理の2で支援機構についていろいろ話をしてきたのですが、今日は、論 点の4「へき地医療を支えるへき地医療拠点病院等への支援」、論点1の医師の 育成にかかわる問題、論点3の「安心して勤務・生活できるキャリアパスの構築」 についてご議論していただければと思います。    ご議論の前に、今日はお2人の委員のプレゼンテーションをまずお聞きして、 それから話に入りたいと思います。最初に前野委員にお願いします。よろしくお 願いします。 ○前野委員:近年、へき地医療を支えてきた地域医療自体が弱体化しており、それを 踏まえて論議をする必要があると前回、お話をしました。実際に「医療崩壊」と 言われるほど、医療機関と患者双方から悲鳴に近い声が聞こえてきます。これは 我が国における医療の構造的な疲弊の現れで、従来の継ぎ接ぎ的な改造、改善で は立ち行かなくなっています。    読売新聞は昨秋、高齢社会に相応しい新しい医療システムの方策を考えようと、 医療改革提言をしました。それをまとめたものが、お手元にある小冊子です。こ の作業に参加した経験から、梶井座長が「保健医療のあり方について私見を述べ てもよい」というお許しを得ましたので、議論の材料として、しばしお時間をい ただきます。    まず、「へき地医療」を支える地域医療が弱体化している現状で。昨年の段階 で、地域の中核的な病院など500箇所で診療科が閉鎖され、大学医局の70%が 3,000医療機関に対して医師の派遣を制限しています。これにより中核的病院の 窮状が、へき地医療にもしわ寄せが起きているようです。    医師不足をもたらした原因として、04年から始まった新臨床研修制度(初期 研修)が挙げられていますが、これは、きっかけに過ぎないと考えます。複合的 な要因が医師不足をもたらしているのであって、日本社会の高齢化が背景にあり ます。高齢者人口は、国民皆保険が始まった1961年当時5.7%だったのが、昨 年には22.1%と4倍近くになっています。社会の高齢化が進めば、当然、医療ニ ーズが高まります。    医療の専門分化や、医師業務の拡大、先進諸国で医師数が決して多くない中、 反対に病床・病院数が多いという点もあると思います。また若者の職業意識の変 化と言いますか、大都会・専門医志向が強く、地方を敬遠し、待遇とか訴訟リス クなどから特定の診療科を避ける傾向が、地域の中核的病院の医師不足を起こし ていると思います。    現象面では、地域と診療科の2つの偏在が起きています。すべての診療科の医 師が足りないわけではありません。へき地医療を拡充するためには、中核的な病 院が直面している問題を解消することが不可欠です。    資料は、日本と欧米諸国の病院との国際比較、さらに都道府県別にみた人口10 万人対医師数で、地域間の偏在を示すものです。診療科ではとりわけ産科医が減 少しています。毎年4,000名程度医師の増員がされているのですが、産科・産婦 人科の医師が減っています。    国際的にみて、日本では医師がそんなに足りないのかという資料が次にありま すが、確かにOECDの中では少ない。イギリス、アメリカが人口1,000人当た り各2.5人と2.4人、対する日本は今2.2人とされ、極端に少ない訳ではないよ うです。しかし、病床数が圧倒的に多いわけです。少ない医師が数多くの病床を 見ている実態があります。    「へき地医療拠点病院の立て直し」に参ります。目下、最大の課題は、医師不 足の解消と、安定した医療供給体制の確立だと思います。まず医師不足を解消す るための緊急対策としては、若手医師の計画配置があります。既に専門の診療科 に勤務するベテラン医師がほかの地域や診療科に移るのは現実的ではありませ ん。そこで初期研修を終え、さらに専門医を目指す若い医師が3年から5年の後 期研修を受ける際、研修先を自由選択に任せるのではなく、都道府県、診療ごと にある程度の定員枠を設けてバランスよく配置するのが現実的ではないでしょ うか。それによって大学病院や基幹病院の人手が満たされることで、そこにおら れる中堅医師を過疎地域に派遣する余裕も生じます。    救急医療のたらい回しが問題化していますが、開業医の先生も病院救急に積極 的に参加すべきではないでしょうか。本来なら地域の開業医が診るべき軽症患者 も、病院に集中している実情があります。特に小児科が目立つようですが、開業 医の先生が交代で地域の基幹病院に詰めて、軽症患者に当たることで、救急医の 軽減が図られるのではないかと思います。    長中期的に見た場合、ある程度の医師養成数の増加は必要と思います。でも先 頃、厚労省の「安心と希望の医療確保ビジョン」で1.5倍にする、としましたが、 医師の養成には長い期間を要し、医師そのものを増やせば、それで解決するでし ょうか。むしろ養成の方法だと思います。    医師を増やすとしても、地方の医大・医学部で入学定員の地元枠拡大が大切だ と思います。地元枠と言いますと、地元に残ることを条件にした制度を考えがち ですが、そのような縛りを課さない地域枠でもよろしいのではないでしょうか。 地元で生まれ育ち、地域の高校を卒業した学生を優先して入れる制度です。自分 の故郷で医療に専念する割合は、他の県、特に都市部から来た医学生が残るより 高いと思います。例えが悪いのですが、都市部から来た医大生の認識は、自動車 教習所の合宿のようだとも言われます。医師免許さえ取れば、またそれぞれ戻っ て行ってしまう。それではいくら学生数を増やしても、地域医療の貢献にはなり ません。思い切った地域枠を設けるべきではないでしょうか。地域に残ることを 前提にした奨学金制度もありますが、地元に根差した医療の重要性を学ぶ医学教 育により自発的な志を培う必要があるのではないかと思います。    それ以外にも医局に代わる医師配置機関の創設とか、女性医師、看護師の働き やすい環境作りと、方策はさまざまあります。医師業務の一部を移すことで、医 師の業務の軽減等を図り、医師本来の業務に専念してもらうことも、具体策とし て可能ではないでしょうか。    次に、「へき地勤務医等のキャリアパス」についてですが、まず「医療は公共 財」という認識に立つべきです。医師のモチベーションの維持を図って、やる気、 意欲を高めると同時に、国民、住民に医療の大切さを認識していく世論形成が必 要です。    先ほど澤田委員が言われたことと非常に似ているのですが、医療機関の役割分 担と連携の強化が欠かせません。へき地医療に携わる医師の声を聞くと、いちば んの問題は孤立感だという気がします。自分一人が孤軍奮闘することで、医学・ 医療の進歩から隔絶するむなしさに襲われる医療者が少なくないようです。地域 の医療機関全体としてへき地医療を組み込んだ役割分担と連携強化を図ること が必要です。    具体的には、研修制度とか、複数スタッフによるバックアップ体制の充実、医 学部教育において、地域医療、地域医学の部分をもっと拡充しなければいけない。 それは必ずしも地域枠の学生だけではなく、全学生を対象とした地域医療の講座 を充実させる必要があります。そのためには、指導者の育成も非常に大事です。    近年、病院勤務医が開業されるケースが増えていますが、いままで専門医であ った医師が急に総合医になるというのはなかなか難しいものもあるでしょう。一 定程度、研修を受けることを開業の条件にするのも検討する必要があるのではな いかと思います。    また、総合医(家庭医)の資格化と言いますか、高い技量を習得し、維持する 意味で、実質的な資格制度が創設されると、よろしいと思います。    最後は、「課題としての提案」をします。前回もお話しましたが、07年に医療 法の改正で、都道府県に大学、基幹病院、自治体などによる調整機関「地域医療 対策協議会(地対協)」の設置が義務づけられました。これに住民・患者側代表 らも入れて拡充する形で、医師派遣・調整を担う第三者機関として運用するのは いかがでしょうか。当然、へき地医療支援機構と連携を図り、開かれた形で地域 医療のあり方を考えていくべきではないかと思います。  最後にもう一つ。地域に若い医師を配置する点ですが、あくまでも初期研修を 一通り終えた後期研修の時点です。医師の希望をできるだけ生かす形で数年間、 地域に分散することは、若い医師の社会的使命感を認識する機会にもなります。 もちろん同時に地域の研修病院の充実を図っていくことは当然です。    一応、以上、雑駁な説明になりましたが、終わらせていただきます。 ○梶井座長:はい、ありがとうございました。続きまして、吉新委員からのプレゼン テーションをお願いいたします。 ○吉新委員:資料4でございます。全部で16枚でございまして、10分以内に何とか プレゼンテーションを終わりたいのですが、13分ぐらいかかるかもしれません ので、よろしくお願いいたします。それでは始めたいと思います。    先ほどの論点整理のところから、論点3の「キャリアパス」と、論点4「拠点 病院への支援」について、これらを解決する提案をしてみたいと思います。    小さい写真ですけれども、協会の後期研修医の3カ月実習を行うオレゴン州の へき地の現地診療所です。こちらは、日本のへき地の診療所と違いまして、たく さんのスタッフがいるということで驚いたところでございます。私どもの地域医 療振興協会、次の頁へ行きますけれども、へき地医療の確保と質の向上を図りも って地域の振興を図るということを設立の趣旨としております。へき地医療は、 医師や看護師確保と同義語と言われていますけれども、マンパワーの確保しやす い都市部と過疎地の人事ローテーションを行うことで確保して、村おこし、地域 おこしを雇用意欲の高い保健・医療・福祉で行おうとするものであります。自治 医大卒業生が中心になりまして昭和61年に誕生した特例公益法人であります。 協会は、地域医療研修センターと総合診療科(総合医)がエンジンです。医師は 現在581名、研修医は5年で176人が入職しましたけれども、現在修了者20名 を加えて110名となっております。初期研修2年の内6カ月、後期研修3年の内 9カ月、第一線医療機関での勤務と研修を行っています。平成20年度、協会全 体のへき地の支援は14名の常勤派遣を合わせまして、協会内外で延べ1万500 日でございました。    赤い字の、来年以降運営開始見込みの3施設を加えますと、現在協会の施設は、 病院が20、過疎地の医療と介護を合わせました複合施設が8、へき地診療所が 10カ所、へき地医療支援センターが4カ所、合計45カ所になります。ほとんど が公設民営で、病床数は全体で4,000床、入所定数が1,045となります。へき地 も都会の施設も両方ありまして、施設間を総合医がローテートすることで、医師 不足を解消しようとしています。医師確保や勤務を調整する担当会議がありまし て、会議は月2に回行われております。    次の頁をお願いします。協会のへき地医療・支援事業としましては、ご覧のよ うに、間接、直接様々な支援事業が行われています。支援事業の中には、組織内 の合意形成というのが最も重要な事業でございまして、よくワークショップです とか研修センター内での研修会が行われています。写真は、オレゴン健康科学大 学のへき地巡回診療車です。米国では、州立大学が、へき地そのものを医療を担 っているというところでございます。    さて、次の頁をお願いします。協会の施設の多くは、自治体病院の施設の公設 民営ですけれども、この写真は協会のRFO、年金・福祉施設整理機構からの受 託施設、東京都の北区赤羽にあります、国設民営の東京北社会保険病院でござい ます。へき地の経験のある医師が指導医となりまして総合医を育成する地域医療 研修センター、救急・総合診療科が特徴でございまして、院内の救急ですとか、 合併症の多い患者の診療、初診患者の診療を担っています。元来、社会保険病院 は全国組織として地域医療支援を行うなど、当院だけではなく、ネットワークを 通じて様々な総合支援の仕組ができています。当院も、他の社会保険病院同様、 RFOに出資され、現在売却を待っているところですが、売却されなければ、公 的病院として存続すると伺っています。また、これはお願いなのですけれども、 できれば、へき地医療支援の施設には、資産の譲渡の場合、固定資産税等での税 制等で、できれば社会医療法人並みに、公益法人にも軽減税率といいますか、課 税を軽減していただければと思っております。    次の頁をお願いします。当院を協会が受託する際に最重要としたのは、へき地 医療の支援であります。左の棒グラフは、北社保の5年間の支援のグラフです。 昨年は、協会内外に医師が3,025日、看護師が803日、コ・メディカルが707 日のへき地医療支援を行いました。産婦人科では、小笠原村、神津島村区の院内 の職員宿舎、保育園を使いました島嶼の出産支援を行っております。    次の頁をお願いします。さて、本日のテーマに戻ります。論点3での「安心し て勤務・生活できるキャリアパスの構築」というところです。その中の「へき地 勤務医の子育て、家族支援などを考慮に入れたキャリアデザインの策定」につい てです。結論を言いますと、へき地医療を担う医師組織の育成と運営ができると いうことが重要だと思います。昔から「へき地の医師は、30代は自己の能力に 悩み、40代は子弟の教育に悩み、50代は自己の老後に悩む、いつも拘束され、 冠婚葬祭もままならない」といわれています。ライフサイクルに見合ったきめ細 やかな人事実現のためには、人事のできる仲間のいる組織が必要だと思います。 「休みが取れない代診もない」、これらも、「支援機構の充実、代診組織・プール」 といった、ドクタープールといった機能を有する人事のできる組織が必要だと思 います。    また、公務員と非公務員といった「身分上の制約」が邪魔になることがへき地 においてはよくあります。このためには、機関決定すれば医師が動けるような「へ き地医療を担う全国的なネットワーク組織」の職員であることが望ましいと思い ます。へき地の医療を担う医師の組織があれば、へき地の経験や勤務を生かして ネットワークや研修センター等での昇進も道が可能となり、へき地の医師として だけではなくて、都市部や病院のポストが用意されて、より、へき地を支援する 機構は盤石になることが期待できます。    次のスライドです。次の論点、「へき地での勤務に偏らないようにするための 体制整備(拠点病院等を中心としたローテート方式等)」についてです。これも 同じ結論ですが、へき地には総合医に特化した医師グループを有する研修病院が 必要だということです。ただし、都市部と地域での勤務では特殊な仕掛けが必要 だと思います。へき地医療支援機構が運営する等、このローテーションを理解し ている機能を持った病院の確保が必要です。へき地から病院へ戻る、しかし枠が ない、ということがよく問題になります。そこで、病院に救急・総合診療科や臨 床研修センター(地域枠の学生向け)があれば、ローテートは容易でしょう。救 急・総合診療科の活動内容とへき地の活動は極めて類似しています。救急・総合 診療科に対する病院の専門各科の理解も重要です。また、研修病院であれば、総 合医の基礎の上に専門医を目指すことも可能です。また、ローテートには、へき 地から病院、そしてまた再びへき地へと転勤してもずっと借りられる、家族が残 れる住宅の確保が重要です。やはり、この点でも、へき地医療支援機構が運営す る一定規模の研修機能を持った病院とポストがあればよいと思います。    3点目の「勤務体制の中で休暇が臨機応変に取得できる体制の構築」ですが、 この点も、へき地の支援機構が、へき地の人事ローテーションの中枢となる救 急・総合診療科のある病院を確保する、総合医の育成のできる研修センターの機 能を持つというような組織があれば、きめ細かな人事ができるのではないかとい うふうに思っています。    次の頁をお願いします。さて、論点4です。ここでは、「へき地医療を支える へき地医療拠点病院等への支援」についてです。「へき地診療所を支えるへき地 医療拠点病院等地域の中核的な病院を地域全体で支援する具体的な仕組みにつ いて検討していくことが必要である」ということで、医師派遣での動機付けとい うことですが、とにかく現在の問題は、地域全体に医者がいないということが問 題であります。短期的には何とかなっても、中長期的には極めて厳しい問題です。    1つアイデアがあります。へき地医療拠点病院の1つとして国が検討している 「(仮称)独立行政法人地域医療機能推進機構」、つまり現在の社会保険病院の活 用はどうでしょうか。また、医師不足に悩む臨床研修病院クラスの自治体病院の 活用もあります。これらをネットワーク化し、全国の地域医療を担うように手伝 ってもらうことも大変有効だと思います。    これらの施設の運営をへき地医療支援機構が行い、ドクタープールを運営し、 救急総合診療科、地域医療研修センターを設置し、地域医療支援のネットワーク を構築し、地域枠の若い医師等の受け皿となり、仲間を増やしていけば、担当す る地域の病院もへき地も一気に元気になると考えます。    次をお願いします。そこで提案ですが、国が現在検討している社会保険病院、 厚生年金病院を「(仮称)独立行政法人地域医療機能推進機構」に改組するとい うことですが、更に一歩踏み込んで、へき地医療支援、看護師、医師確保を目的 としたへき地医療支援機構を拡大させ、病院ネットワークの中核として位置付け、 活用してはいかがでしょうか。また、私どもの協会の受託している東京北社会保 険病院も是非運営に参画したいと考えています。    この組織の特徴は、へき地医療支援機構を有し、総合医を養成し、全国の医師 不足、地域医療不足の解消を目指すということでございます。即ち社会保険病院 に全国ネットとしてのへき地医療支援機構機能を加える。具体的には、人事・代 診のプールとしてへき地医療の勤務を評価する、ドクタープールを運営するよう な人事を行う。    2番目、教育・診療として救急・総合診療科を持つ、そして地域医療研修セン ターとして総合医の養成を行うというものです。へき地の勤務、経験を生かして ネットワークや研修センター等での昇進の道も開かれ、へき地の医師だけではな く、いろいろな人生が用意され、へき地医療の医師を取り巻く環境が盤石になる と思います。    次の頁をお願いします。この案の提案理由は、医師の養成が医科大学の臓器別 の専門講座を中心で行われてきました。総合医の養成、専門医中心の大学病院で は養成はなかなか上手く行かないだろうということがあります。2番目に、へき 地医療支援機構、現在ありますけれども、それ自体があまりにもひ弱で脆弱でご ざいます。人事組織、医師研修、指揮命令系統が極めてあいまいで資源に乏しい と。このままでは苦しいでしょうし、すぐ改善するものでもないと思います。ま た、へき地に従事してもポストも限られて、へき地以外になかなか道がありませ ん。そういう意味で仕組みを充実させ、拡大させるという発想が必要だと思いま す。    3番目、へき地の持つ不便さ、生活格差、毎回検討会で話されることですけれ ども、医者の世界では、へき地に勤務したということが評価されることはまずあ りません。へき地医療を担う医師の集団、お互いに評価できる独自の集団が必要 でございます。    4番目、医科大学、地域の病院、各自治体病院等には大きな壁がある。支援は、 都道府県をまず超えない、拠点病院機能は、上を向いた、大学から見た拠点でご ざいまして、(ここの「下」と書いてあるのを消して欲しいのですけども)、地域 を必ずしも拠点病院は向いていないということです。更に、最近は病院のランキ ングですとか、自治体病院の経営改革プラン、医師不足ということで、尚更、病 院自体が自己目的化しまして、他の地域の支援など今後もとっても無理だという ふうに思います。    提案の背景、ここに書いてありますけども、先ほど前野委員からも出ましたよ うに、やはり医療というのは、安全・安心のsocial securityそのものだと、それ を確保することがこの委員会には求められているのだと思います。ところが、医 師確保は、とにかく今までは都道府県がその責任の中心というふうに伺ってます けども、都道府県自身が、いま医師不足に困っているというような現実がありま す。    3番目の、総合医の推進というのもよく言われますけれども、欧米のように、 専門医を、定数を設けて、専門医の数を制限しているというようなことが我が国 では行われていませんので、専門として総合医を確立するためには、しっかりと した研修仕組みと専門性の1つとしてのアイデンティティの確立をしなくてはい けないと思います。また、総合医を目指す学生は多いのですけれども、実際問題、 受け皿がなくて、途中で別の診療科を選ぶというようなことが私どもよく目にす ることです。    4番目、今後も地域間、医療格差は解消しないでしょう。いま、へき地医療に 重きを置いた、そこに価値を見出す組織、文化を持つ集団を育てる必要があると 思います。    5番目、地域枠の医学生を作っても、従来の組織に依存する方法では現在の医 師不足は解消しないと思います。先ほど言いましたけれども、北海道では1千名、 岩手県では数百名というふうに医師不足が深刻だということを聞きます。これか ら誕生する地域枠の学生を受けとめる組織が必要です。    6番目、全国ネットで医師養成、派遣、支援できる組織は、現在の社会保険病 院以外にはなかなか見当たらないと思います。本来、医療は2次医療圏、都道府 県単位で動いて参りました。これを超えるような組織が必要です。社会保険病院 は公的医療機関としての派遣の文化がありますし、マグネット病院も多く、医師 確保がより容易になると考えます。    論題に参ります。次の頁です。都道府県、つまり支援機構、地元医科大学、自 治医大や地域医療振興協会、医師会等、背景の違う組織が合意して運営できるの か、病院の壁、地域の壁を超えて運営できるか、そういう体制が取れるかという ことが課題だと思います。支援機構のプロパーの医師と大学の派遣の専門医との 協調が確保されるか。    2番目、医師派遣・代診等の運用、財政支援についての全国一律でない、柔軟 な運用も解決しなくてはいけません。院内で専門診療との対立が起きやすくなり ますので、救急・総合診療科、地域医療研修センターを、院内での棲み分けに関 して理解が得られるかというような問題もあります。    さて、私は、この検討会に4回目の委員として加わっていますけれども、これ まで、10次までのへき地医療政策を振り返ってみますと、始めの頃、昭和30年 代は、まず、人口規模ですとか離島でのへき地の区分がなされて、その区分に沿 って診療所、住宅、病院等、インフラの整備がなされてきました。昭和50年代 は、へき地中核病院の整備による診療体制が確立しまして、無医地区、へき地巡 回診療が開始されました。第9次では、へき地医療支援機構で支援や運営の一元 化、この頃同時に、代診制度ですとかITについての充実支援が確保されて参り ました。しかし、医師不足についてはなかなか解消しなくて、これに対する対策 は、義務年限を設けての誘導であったり、ヒューマニズムの喚起型、あくまで一 個人に配慮して誘導する、無医地区を解消するということが、これまで、このへ き地医療検討会の、保健医療検討会の議題だったと思います。最近では、出産、 育児というようなライフサイクルにまで細やかな施策を検討していますけれど も、もうこれでは限界があると言うよりも、現在、それどころではなくて、へき 地医療を支援する拠点病院群までが深刻な医師不足にあえいでいます。そういう 意味では、Medically Under-Servedというのをへき地医療の概念とすると、日 本中、標準以下のへき地だらけというようにも考えられます。我が国の現状を見 据えたへき地医療の確保に特化した固有の集団、病院ネットワークが必要だと思 います。やはり、寄せ集めでは限界があるのだと思います。    最後ですが、この1年間、協会には全国100件の自治体の施設から医療の相談 がありました。知事さんも副知事さんも市町村長も、皆、医師確保で頭を痛めて います。それぞれ大きな問題を抱えていますが、いずれも基本は医師不足、医療 機関の経営問題等、大変深刻です。へき地ではなく、元来、へき地を支援するへ き地医療拠点病院にも医者がいません。現在の各都道府県のへき地医療支援機構 では、あまりにも資源も仕組みも脆弱過ぎます。社会保険病院の改革で、へき地 医療支援機構に是非、地域医療研修センター、救急・総合診療科、そして医師の 人事の機能を持った全国ネットワークの病院機能を持つようにさせていただき たいと思います。手をこまねいているのではなく、何とかしないと、地域の存廃 という根幹にかかわる問題になるのではないかと大変心配しています。ちょっと 発表に時間がかかり過ぎました。申し訳ありませんでした。 ○梶井座長:どうもありがとうございました。ただいま、お二人の委員からプレゼン テーションしていただきました。最初に、医療改革提言をお作りになられたこと から、そういうことを背景に、いまの地域医療、へき地医療についての総論的な お話、さらにこの中からのご提案を前野委員からはいただきました。それと、こ れまでのへき地保健医療計画に関わってこられた、あるいはその分析等を通して 吉新委員からは、いま、この検討会で何を検討すべきか。非常に具体的なご提案、 ご提言をされたと思います。それを進めるための諸課題についてもお示しいただ きました。この二人のお話を踏まえながら、残りの時間、皆様とご議論したいと 思います。    3つの論点整理に関わる議論をお話していました。3つ同時にでもいいし、た ぶん1つの論点整理をしながら、それぞれ別の方向の議論もあると思いますが、 最初に論点4「へき地医療を支えるへき地医療拠点病院等への支援」について、 皆様とご議論を進めていきたいと思います。お二人の資料で前野委員のご提案に は、へき地医療拠点病院の立て直しという最後から3枚目の資料があります。吉 新委員のご提案は論点4以降でしょうか、へき地医療拠点病院についてのご提案 がなされています。    皆様、いかがでしょうか。各項目についてというよりも、皆様のご意見をまず 伺いたいと思います。 ○内藤委員:私からは、へき地医療拠点病院の問題について触れさせていただきたい と思います。いわゆるへき地中核病院、へき地医療拠点病院の70%を超える部 分が、実は自治体病院です。そういった病院の70%以上が赤字で財政的に非常 に脆弱な状況にあるということです。1つは財政の問題、経営の問題です。もう 1つは、これまでほとんどすべての人が触れておられる医師不足の問題がありま す。    私ども全国自治体病院協議会で、もう少し調べてみますと、実はそういった中 でも、いわゆる200床以下の中小病院が、非常に深刻な状況になっていることが わかってきました。200床以下の自治体病院に関して言えば、ほぼすべてが医師 不足に悩んでいます。200床以下の中小病院の20%が、いわゆる標準医師数を確 保できない標欠病院となっています。そういった200床以下の病院でも、へき地 中核病院の役割を果たしている病院がたくさんあります。この200床以下の中小 病院の問題を解決しないと、地域医療を支えることはできないと考えていますの で、私ども全国自治体病院協議会では、中小病院問題委員会を設置し、現在、ど のような救済策というか方策で医師確保を図り、そして経営的にも安定した姿が 出せるのか。こういった点を現在、検討しているところです。是非、いわゆる中 小病院の問題というのも、論点に取り上げていただければと考えています。 ○梶井座長:ありがとうございました。中小病院の問題も取り上げてほしいというこ とでした。そのほか、いかがでしょうか。 ○澤田委員:へき地医療拠点病院は、第9次へき地保健医療計画で新たな概念として 打ち出されましたが、実際的には過去のへき地中核病院の指定要件からほとんど 内容の見直しはなく、へき地支援実績等についても十分な評価がなされないまま 10次の計画まで来た印象があります。そういった拠点病院の指定用件について、 そろそろ見直しの時期にきているのではないかと私は考えます。ただ、このへき 地医療拠点病院の指定が、医療機関にとって今一つメリットが感じられないとい う点が気にかかります。例えば地域医療支援病院や救急救命センター、地域診療 がん拠点病院といった指定は、各病院がこぞって、その指定を取ろうと一生懸命 努力をするわけですが、残念ながらへき地医療拠点病院の指定に関してはそこま での気概が感じられません。しかもこの指定を受けている病院のほとんどは、医 師確保に難渋し、かつ財政的にも非常に厳しい状況におかれた自治体病院が多く、 そのなかでへき地支援のために医師を派遣せよといっても、現実的には相当厳し いものがあります。そのため、是非とも次期計画では、このへき地医療拠点病院 の指定基準、もしくは現在の指定そのものの見直しについてもご検討いただけれ ばと思います。  そして、総合医の養成・教育やへき地・離島医療機関での地域医療研修の実施、 へき地支援実績など、幾つかの項目を指定要件に織り交ぜるなどして、新たにへ き地医療拠点病院を指定し、代わりに、この指定を受ける病院が診療報酬や臨床 研修制度などに関連する非常に大きなメリットを受けられるような取り組みに ついて、是非この検討会でも議論をお願いしたい。 ○梶井座長:ありがとうございます。そのほか、いかがでしょうか。 ○神野委員:前野委員も吉新委員も、看護職の確保に少し触れていただいて大変うれ しく思ったところです。先ほど内藤委員からも、いま自治体病院の経営が非常に 悪化していて、200床未満の中小病院では特に大変な状況にあるという報告があ ったと思いますが、この経営には、看護職員の確保の問題が非常にネックになっ ているのは、よくご存じだと思います。平成18年の診療報酬改定で7対1入院 基本料が設けられ、200〜500床の大きな都市部にある病院が、准看護師ではな く看護師の確保に非常に奮闘し、地方からこういう所に流れました。本来であれ ば地方の病院に就業するはずの新人看護師が、都市部の大規模病院に100人、150 人と就職し、地方の自治体病院に大きな影響が出ていると北海道でも聞いており ます。    今まで1回目から本日までの議論の中心は、どうしても医師確保です。医師が いないと医療が始まらないので当然なのですが、へき地医療の問題を考えていく ときに、角町委員から歯科の分野についてのご発言にもありましたように、チー ム医療ということも言われていますから、医師の確保をどうしていくかだけでな く、それ以外の看護職員、薬剤師、あるいはインフルエンザがいま流行していま すけれども、保健分野とどのような連携をしていくか。そういったトータルなこ とを考えていく必要性があると考えています。 ○梶井座長:ありがとうございます。神野委員がおっしゃるとおりだと思います。実 は次回のこの検討会で、いまご指摘のあった部分については時間を設けて、じっ くり検討させていただくことになっています。今日、そちらにも入り込めばいい のですが、時間も限られていますので、次回に深めさせていただければと思いま す。よろしくお願いします。    お二人の委員から、いろいろなご提案をしていただきましたが、拠点病院につ いては当初、澤田委員から、いわゆる医師を育成したりプールしたり、そういう 組織化をしていくべきではないかということが出ていました。さらに踏み込んで、 その組織化のときに総合診療科を有する臨床研修病院、中核的病院との連携が出 ていましたが、吉新委員から、拠点病院をへき地医療支援機構と一体化してはど うかという提案が出ました。その中で社会保険病院の活用という非常に具体的な お話が出ました。その一方、内藤委員からは、いわゆる地域の中核的な役割を担 っている病院の7割は自治体病院で、その7割は200床未満であり、その病院が いま非常に悲鳴をあげている現状も提示され、両方を検討しておく必要があるの ではないかと思うのですが、これについてのご意見を伺いたいと思います。いか がでしょうか。 ○吉新委員:本当に深刻な状況だと思いますが、この論点3のへき地の医師のキャリ アパスを考えたときに、へき地にずっと長くいると戻る所がなくなったり、非常 に貢献度が高いのに評価されない。そこの地域ではもちろん評価されますけれど も、自分の働く場所を変えるときには開業したり、今までのアクティビティとは 全然違う道を選ばなければいけないことが、へき地の医師の場合はあると思いま す。そうではなく、それが次の昇進につながるように、研修センターの部長にな ったり総合診療科の診療責任者になったり、日本の地域医療を一生懸命やってく れた人が、戻れる組織なり病院なりがあること。へき地医療というのは非常に幅 広い分野を内蔵していますので、そういうところで昇進の道が開かれていること は極めて重要だと思います。    現在のへき地医療支援機構も含めて、へき地医療を担う組織というのは非常に 曖昧ですし、自治体ごとに分かれてしまっていたり、連携も有るのか無いのかわ かりません。どこまでの範囲がへき地医療を担っている人たちなのか自体も、あ まり明確ではないと思います。そういう意味では実体がないのではないか。本当 は支援機構というのは中村先生に言わせれば兼任かもしれませんが、蓋を開ける と実際は中身がない。キャリアパスなんかはなくて本人任せなのが実態だと思い ます。これでは社会の要請に応えるにはとても歯が立たないし太刀打ちできない。 きちんと中身のある、しっかりとした骨太の組織を作って、そこにいろいろな機 能を乗せて継続的な活動を常にしている、ゴーイング・コンサーンとして社会か らも認知されている、そういうしっかりとした基盤を持つ組織を作らなければい けないと思います。ただ言葉だけ「へき地医療支援機構」ということで踊ってし まうと、実態がないような感じですから、もう少ししっかりした組織にする必要 があると思います。    そういう中、200床以下の自治体病院を助ける、社会保険病院を活用する。そ ういう自分たちの昇進の道とか、いろいろな形でその組織内で活動できることが わかれば、たくさんのドクターもそうですし、若い人たちも安心してその組織に 身を委ねて頑張っていただけるのではないかと思います。 ○梶井座長:とても広がりのあるお話で、資料の最後のほうに、今までは個人へのア プローチだったと吉新委員はお書きになっていて、確かにそうだろうと思います。 今までもそうだし今もそうだと思いますので、それを組織として具体的な方策を 練っていく。澤田委員から、拠点病院の見直しをもう一度してはどうかとありま した。そのときに人がいなくて大変な状況の拠点病院が、拠点病院としての機能 を果たし得るのは非常に困難だろうと、そういう言い方は非常に厳しい言い方か もしれません。ですから、そこに人が集まるようにするにはどうしたらいいか。 あるいは拠点病院としてのメリットを活かしながら、拠点病院が充実していくこ ともひとつあるでしょうし、より拠点病院を先鋭化して、吉新委員が提案された ように、本当に充実した組織のネットワークの中心となるような拠点病院を作っ ていく。そこからへき地診療所だけでなく、人材難で喘いでいる地域の中核病院 も支援していく。そういう考え方もあろうかなと思って、いまお聞きしていまし た。吉新委員、どうでしょうか。 ○吉新委員:よく言われているように医師の偏在が問題なのです。絶対数の不足では 必ずしもないと思います。我々はへき地にいろいろな形態で何らかの関与をして いると思いますが、へき地に実際に身を委ねて、そこで一生を終わるのだとなる ためには大変な決意が必要です。後任が来るまで辞められないのがへき地医療だ と言う人もいます。とてもいい定義だと思いますが、とんでもない覚悟をしない とへき地医療に携われない。この壁の高さと、さらに評価されないというのがあ ります。ただ、ボリューム的には非常に大きな人を必要とする組織で、それが偏 在していてこっちを振り向いてもらえない。これを何とか振り向いてもらって、 「安心して一生を託していいんだよ」と言えるようなへき地のネットワークを、 日本にちゃんと作らないといけないと思います。第10次までは、バラマキ型の 誘導的な施策だったのですが、かなり強制的な意味も込めて、しっかりとした医 師の供給と教育、そして一生を委ねていいよというような組織を作っていくこと が、今回、この11次の責務なのではないかと私は思っています。 ○梶井座長:ありがとうございました。いかがでしょうか。 ○内藤委員:へき地医療拠点病院が、へき地医療支援だけではなくて、ほとんどの地 域の保健医療計画に定められた4疾病5事業の担い手でもあるわけです。したが って、このへき地医療拠点病院はしっかりしたテコ入れをする。人、物、金をし っかり都道府県単位でやっていく必要があるのではないかと思います。ですから、 これまで出ていますように、ただ闇雲にどこでもいいから拠点病院にしていくの ではなく、拠点病院にするからには、そういった役割が担える体制を、都道府県 がしっかりとやっていくべきだと思います。 ○梶井座長:拠点病院と支援機構の役割、あり方が、だんだんと皆様のご意見の中で 明確になりつつありますが、いかがでしょうか。11次の計画に向けて吉新委員か らご提案がありましたように、より具体的なものを是非、この検討会でまとめ上 げていければと思っていますので、皆さんのご意見を是非伺いたいと思います。 ○角町委員:一般的なことで、具体的に数字を把握しているわけではありませんが、 へき地診療等に関わる部分で例えば後方支援病院とか、あるいは中核、あるいは へき地の診療所や前線病院等々いろいろあると思います。そういう病院群間の連 携が本当にしっかりしているのか気になります。    もう1つは人が足りないということ。当然足りなくなっていくと思いますけれ ども、我が国の人口構成から考えた場合に、これから一層そういう状況が深刻に なってくると思いますので、連携等に関わる仕組みを、へき地の部分までしっか り組んでいくことをしていかないと、取合いになったときに負けてしまうと思い ます。それではへき地に住む人たちの生活を守れないと思いますので、その辺の 機能が本当にしっかりしているかどうかも検証する必要があるのではないかと 思います。一般的な話で申し訳ありません。そういうふうに思います。 ○梶井座長:ありがとうございました。 ○澁谷委員:先ほど来出ていますけれども、へき地の医療拠点病院というのは地域の 中で考えても、地域医療を担う非常に重要な病院なのです。自治体の経営改善計 画をそれぞれの自治体病院が作ったのですが、そういうものの医療圏域内での調 整は保健所がしています。しかし、もう少し広い視点から都道府県単位で全体を 見た調整が必要です。確かに新人の研修医の先生たちは新しいシステムで、自分 たちで病院を選んでということなのですが、以前からいる先生たちは、それぞれ の出身大学と地域の病院とのつながりが依然あるわけです。そういうことも考え ると、都道府県単位で全体の医療を見た中で、大学病院や第三者が公平に見て人 の遣り繰りの調整ができるような、そういう協議会のようなものが都道府県に1 つずつ必要ではないか。その中に、へき地医療ということも含めて重点的に考え てもらう。へき地医療の拠点病院ということで重視して調整してもらう。そうい うものを設置しないと、地域ごとでの連携調整というのは、ある程度医療圏か、 医療圏をもう少し越したぐらいの範囲でできるかもしれませんが、それ以上の調 整は都道府県の責任で、しかも大学病院を巻き込んだ形でやる仕組みが必要では ないかと思います。 ○梶井座長:ありがとうございました。まだ議論していただきたいと思いますが、か なり教育やキャリアパスの話にも入っています。実は資料を用意しました。資料 5をご覧ください。先ほど来出ていますように、へき地に一生勤務して、そこで 一生をという形もあるのですが、うまくバトンタッチされて、そういう中で継続 性も生まれてくると思います。その時には1年なら1年行って、その後、必ず次 の人が来るとか、そういうことも必要だろうと先ほどの吉新委員のお話で思いま した。    これは自治医科大学の卒業生のコホート研究をした結果です。へき地医師の特 徴をみています。自治医科大学の場合、義務年限が基本的には卒業後9年間あり ます。「義務年限後もへき地経験あり」と「義務後も長期へき地勤務あり」で、 長期とは、9年間の義務年限が終了した後も自主的に6年以上、へき地にいて医 療を経験したことを示します。義務年限後のへき地勤務の経験について2つの群 に分けていますが、どういう結果かと言うと、いちばん下の「専門分野」をご覧 ください。へき地に長期間勤務した経験のある人たちは、総合医と非総合医を比 べて総合医のほうが32倍なのです。この総合医というのは、厚生労働省が拠点 病院群あるいはへき地診療所のアンケートを取ったときに、一般内科医、総合内 科医、一般医、総合医、家庭医が必要だというアンケートの記載がありました。 ここで私たちが言っている総合医というのは、一般内科医、一般外科医、小児科 医、総合診療医、全科診療医など、総合性の高い分野の医師を示しています。義 務年限後、長期にわたらないへき地勤務経験者でも、総合医のほうが7.6倍にな っています。    そのほか青印の所を見ていただくと、出身高校は、私立の出身者のほうが国公 立に対して0.56倍です。つまり負の相関になっています。出身地がへき地の人 たちのほうが1.89倍、長期の場合でも1.9倍と、へき地出身者のほうがとどまっ ている率が高いです。そのほか入学時の成績、卒業時の順位は関係ないというこ とが出ています。    裏面をご覧ください。これはまた別の調査ですが、へき地の医師が重視してい る事柄を問うています。これはどういう数値かというと、分子に非常に重視する 及び重視する人数、分母に全く重視しない、あるいは重視しない人たちの人数が 入って、その係数を出したものです。上位5番までを見ると、1番が行政の姿勢 です。120と非常に高い係数になっています。次が医療スタッフ、事務スタッフ、 医療機器、後方病院等々と続いています。    では実際に満足しているのは何かということで、満足度は先ほどと同じような 感じで係数は「非常に満足」「満足」の人たちが分子に、そして分母に「非常に 不満」「不満」の人たちの人数が入っています。上位5番を見ていただくと、1 番目を除いて後方病院、医療スタッフ、事務スタッフ、医療機器は上位にそのま ま位置しています。つまりこのあたりは重視していて、しかもそれがある程度満 足のいくものであるということです。いちばん満足度の低いところを見ていただ くと、重視している項目のトップになっている行政の姿勢が最下位になっている。 これでどうということではないのですが、こういうような調査結果を皆様にご提 示します。    いま拠点病院のことが明確になって、煮詰められつつありますが、社会保険病 院という非常に具体的な名称が出ています。これはあくまでも1つの例としてと いうことで、吉新委員、よろしいですか。 ○吉新委員:これは、国がこれから検討しようということなので、私が言う立場では ないのですが、もし可能であればチャンスかなという感じがしています。もちろ ん厚労省の偉い人がやるので、私が言うことではないですけれども。 ○唐澤審議官:お話だけお願いして、お答えもしないというわけにもいきませんので、 一言だけ申し上げさせていただきます。吉新先生もご承知だと思いますが、いま、 ちょうど法案の検討をしているところです。大変興味深いご提案をいただきまし たが、この法律の中でどこまでそういう事柄を取り扱えるかは、ちょっとまだわ かりません。経過が非常に政治的なプロセスを経てきましたので、こういう経過 を辿ってきましたが、ただ、吉新先生がお話のように、こういう新しい機構を作 って、この病院を活用していこうという方向はほぼ固まりましたので、それをど ういう形で活かして使っていくのかが、これからの議論です。設立までには少し 期間もあると思いますので、こちらのほうでもそのまま取り入れられるかどうか は別にして、この関係で重要な課題としてご指摘をいただくことは、できるので はないかと思っています。    もう1点、私のほうからお話を申し上げたいと思っていたのは、先生方からい ろいろなご提言をいただいた問題は、まさに我が国の医療提供体制が直面してい る問題の本質的な問題と全部つながっているわけです。内藤先生からもお話のあ った200床未満の地方の中小病院を、どういうふうな位置づけにしていくか。特 に我が国の医療提供体制全体の中でどういう位置づけにしていくかは、へき地医 療の支援の足腰とも非常に重要な関係があります。あるいは人的要件、物的要件 をどう考えていくか。中医協は今日の午前中に復活しましたが、診療報酬の議論 も始まりますので、そういう中でもご議論を続けさせていただきたいと思ってい ます。 ○梶井座長:ありがとうございました。グッとまた深まったように思います。今まで のご議論は、拠点病院あるいは支援機構も一体化したような議論になっているか と思います。各都道府県の中でその位置づけを明確に、そして重点的に整備し強 化していく。その中で医師の育成、派遣、キャリアパスを、そこが示していくと いった議論になっているかと思います。    キャリアパスは言葉としてはよく使われますが、むしろ自分の将来がどうなっ ていくか。そのキャリアデザインというか将来が見えるという意味で、少しご議 論を深めていただきたいと思います。吉新委員がおっしゃったように、そこにい たら最終的にそこの長になれるとか、そういうこともあろうかと思いますが、自 分自身のホームベースがここにあって、そこから、先ほど内藤委員がおっしゃっ たような中小の病院、あるいは診療所に行って、またそこに帰って来る。さらに、 ある時には大学病院等で研修を受けるチャンスも設ける。そういうキャリアデザ インがひとつ見えてくると、非常にわかりやすいのかなと思いますが、いかがで しょうか。今はへき地へ行ったら後任が来るまでそこにいるということで、非常 に先が見えない。医師としてのキャリアデザインだけでなく、自分自身のライフ プランもなかなか立てにくい現状もあろうかと思います。このあたりについては 皆様、どうお考えでしょうか。17年間にわたって地域の第一線でやっておられ る中村委員、このあたりはいかがですか。 ○中村委員:まさに後任がいないから逃げられないのと、テレビ番組「プロフェッシ ョナル仕事の流儀」に出てしまってから、ますます離れづらくなってしまったと いうのが、いまの私の状況です(笑)。自治医大のいいところは、9年間の義務年 限内で、へき地診療所へ行くことを片道切符にしなかったことです。ただ、義務 年限を終わった後にへき地診療所に行くとなると、それが片道切符になってしま うことが非常に多いので、相当の覚悟を決めないとへき地には行けない状況です。 私も義務年限終了後、再び診療所へ行くときには、相当な覚悟でもって行きまし た。    その後、どこに戻るのかというと、本当に戻る所がないのです。吉新委員が言 われたような再研修したりする機関があればいいのですが、現在のところ私にと っては、そういった再研修の機関も機会もないのです。へき地診療所を何年か経 験された医師の中には、その後に病院の総合診療科に勤めたり、大学のような教 育機関に行ったり、あるいは中小病院の総合医になったりする方もいるみたいで すが、それでまたその気になったら診療所に戻れるようなサイクルの例、つまり キャリアデザインを示せるといいですね。そうなれば、それほどの覚悟を決めな くても、若い人たちがへき地診療所に勤務してくれる可能性は高まると思います。 ○梶井座長:いかがでしょうか。 ○奥野委員:1つの話として聞いていただきたいのですが、最近の若い学生と若い研 修医に「公務員の医者になれるのですか」と聞かれたのです。実は我々が想像し ている以上に今の若い医師は、まず初期の臨床研修のときにマッチングというチ ャレンジをし、それからまた後期研修でチャレンジをし、またその5年目にどこ に行くかをすべて自分で決めていかないといけない状況にあるわけです。例えば いま2年目の人は来年4月で3年目になり、いま何をしようか考えている時期で すが、そういう人たちに聞いても、「4年目、5年目を考えるのが精いっぱいで、 その先はとてもじゃないけど考えられない」とか、「どう考えていいかわからな い」と言われたのです。    県で考えているのは、当たり前のようですけれども、公務員の医者になろうと いう触れ込みで若い人たちにアピールしてみようかと。つまり、公という背骨を 持つわけです。その途中、へき地にも行き、研修もし、子どもが大きくなったら 大きな病院へも行き、途中で開業したくなったらそれをパッと切ることができる。 だけども背骨があるよという仕組みです。実は行政の立場で言うと、そういうも のは今まであって、実際にできるような形もいろいろな県であると思いますが、 そこがうまくアピールできていないので、もう少しスマートにする。    昔、公務員の医師というと公衆衛生といった頭があって、いま議論していただ いているような診療所や病院、研修を散りばめていけるイメージがないわけです。 ですから改めてもう一度、公というものを若い人たちにアピールすると、そうい った一定期間の定着の可能性が大きくなってくるのではないかと思います。 ○梶井座長:ありがとうございました。以前、へき地に勤務している医師に、そこに 定着しているかどうかの調査をしました。そうすると74%の医師は派遣なので す。ちょうど新医師臨床研修制度が始まる前に調査したのですが、今はどうかと いうと、派遣ですから後任は大学からまた別の人が来る、そういうひとつの担保 はあったと思います。必ずしもその担保が担保どおりにならない場合もあったか もしれませんが、そういうことで以前はかなりへき地の医師の確保がなされてい た。それがいまは医局が非常に力がなくなり、そういうことができなくなった。 そうすると、いまお話に出ているような先が見えない状況で、特に若い医師が何 か踏ん切るときに、そういう先が見えないと非常に不安になると思います。以前 はそういうことはなかったということでなく、以前と今は違うということで、そ この部分をどういうふうにキャリアデザインするか。いま奥野委員がおっしゃっ たように、確かに公を求める若い医師は多いと思います。そのあたりをどういう ふうに保証してあげるのか、指し示してあげるかというのは大きな問題だろうと 思います。    ここで、受入れのほうの市町村として、どういうふうにそのあたりをお考えか、 高野委員からお話いただければと思いますが、いかがでしょうか。 ○高野委員:初めて出させていただいたので、よくわからないのですが、私どもの所 も合併をして5年経ちました。神田医師は佐渡にもお出でになられて、神田さん のほうがよくご存じだと思いますが、両津市と相川町が病院を持っていますけれ ども、御多分に洩れず医師が非常に少なく、自治医科大学のお医者さんには本当 にお世話になっています。    先ほど、自治体の有り様によって定着の度合いも違うと言われて、そのとおり だと思いました。あちこち歩いてどのように対話したらいいのか苦労しているわ けですが、いずれにしても何も申し上げるようなことはないですけれども、心か ら医師を大事にしようという住民の意思を、そのままきっちり、そのお医者さん に差し上げる姿勢が非常に大事ではないかと思っています。ではそれが十分でき ているかというと、なかなかそうもいかないのですが、厚生連の拠点病院と言わ れる佐渡病院が真ん中にあって、ちょうどいま移設、新設の時期を迎えています。 恥ずかしい話ですが、その新築のときにかなりの金額を拠出することを行政で決 めて、反面、昔からの2つの市立病院のお医者さんがかなり動揺しました。つま り統合するのではないかということで不安な気持を与えたのです。そんなことは ありませんので強く否定して、不安がないようにしようと頑張っているのですが、 いずれにしても自治体の有り様として、その病院やお医者さんに対する支えが必 要なことは十分にわかります。    ただ述べるだけで申し訳ないのですが、島であるということでへき地ではあり ますが、喜んでいただいているところもたくさんあります。良いところは良いと ころで一生懸命支える手立てをとっていきたいと思っています。内容は何もない のですが、よろしくお願いします。 ○梶井座長:ありがとうございました。いまと同じ質問ですが、畠山委員、いかがで すか。 ○畠山委員:地方では、あるいは都会もそうかもしれませんが、結婚したときに「嫁 をもらった」という言い方をします。いまそういう時代ではない、大きく時代は 変わったということで、「お嫁さんにお出でをいただいた」というスタンスが必 要ではないかと思います。これはお医者さんの世界にも言えます。いま町民病院 では5名の常勤医がおられます。5名の常勤医には、私ども行政もそうですし住 民もそうですが、お出でをいただいたというスタンスで、そういうステージの中 で医療従事者の皆さんも含めて、そういう接し方をしています。    実は来週もあるドクターのスカウトに行く予定になっているのですが、このと きにいつも申し上げるのは、地域医療は地域福祉と大きく関わり、地域福祉は一 人ひとりのいい状態をみんなで支えること、これが地域福祉で、それを担ってい る地域医療が地域福祉の要のキーになるところです。地域医療は地域福祉の要で あると、この辺をお話申し上げながら営業に全国を走り回っているのです。これ はそのドクターお一人ではなくて、みんなで支え、みんなで成長する、そんな仕 組みが地域医療で、へき地医療の中では特に必要なのではないかという思いで進 めているところです。 ○梶井座長:ありがとうございました。 ○村瀬委員:いま、へき地に限らず地域医療の現状は非常に厳しい状態で、先生方も そうでしょうけれども、厳しい中、なぜこんな大変な事をしているのだろうと自 問されることも多いと思います。そのときの結論は、自分自身がやりたいからや っているということなのだろうと思うのです。そういったときに、医局というの はある部分、強制力を持つ組織だったわけで、それがうまくいっていたときは強 制的に動くということだったわけですけれども、そうではなくて自分自身が望む 医療をやりたいというところで、医局から離れることもあったわけです。    現在、医局の強制力が弱まってどうなっているかというと、個人、個人の先生 方の自己責任が相対的に非常に重くなってきていて、医局がカバーしていた部分 を自分自身で判断して何事も決めなければならない。そうなってくると小児科や 産婦人科はリスクが非常に高いところなので、やりたいと思っても簡単にできな い状況なのだろうと思います。    前野委員の提言を読ませていただき、なるほど、もっともだと思うのですが、 少し違和感を感じたのは、それぞれの先生が自己責任でリスクを回避していると ころを、もう一度強制力を持たせることによって、元の姿に戻そうという印象が あって、医局自体の力をもう一度強くしようというのも、そういう流れなのかな と思います。    ただ、必要なことは強制するのではなくて、個人、個人の先生方を支援するの が大事な考え方であり、へき地の先生がライフデザインの中で困っている部分を どうするかが大事です。そういう観点で見たときに、「へき地医療支援機構の役 割」のところの(12)で「就職の紹介斡旋」とありますが、へき地で働いている皆さ んの就職支援の際に、へき地から離れる場合にも本気になって支援していただか ないと、いけないのかなと思います。別のへき地をあっせんするとか、へき地勤 務を辞めさせないような形で支援するということでは、この機構自体が、先生方 にとっては選ぶのにリスクの高い組織になってしまいます。    産婦人科、小児科の例でも、訴訟のリスクがなくなるとか支援体制があれば、 産科や小児科をやりたいと思っている先生方がいっぱいいるのと同じように、へ き地へ行きたいと思っている先生方は非常に多いわけですから、本当にその方の 不安をなくしていく、ライフデザインを作り上げていくのを助けるという意味で の支援機構の活用を、もう一度考える時期にきているのではないかという印象を 受けました。 ○梶井座長:ありがとうございました。 ○木村委員:いまの委員のお話も踏まえて、論点3のキャリアパスの構築と論点4の 拠点病院の支援と、2つのところを重ねた話をさせていただきます。島根県では 地域医療支援会議という名前で、全国的に言われている地域医療対策会議を開い ています。これは各病院からの要望に基づき、自治医科大学の義務年限内の卒業 生の派遣を調整していますが、その人数は高々10数名です。今後、我々が考え ているのは奨学金を貸与した方や、地域枠推薦等で医師となった人たちもその中 に入れていく。それによって、いま小規模拠点病院は非常に疲弊していますが、 これは必ずしも自治体病院ばかりでなく、済生会でもいいし日赤でもいいと思っ ていますが、そういったところの支援とともに、これがある意味では、へき地医 療を担っていくドクターのキャリアパスにもなっていくのではないかと思って います。これは従来の医局派遣のような、さらに言えば我々少し前の自治医科大 学の卒業医師で、ここしかないよみたいな人事にはならないと思っています。少 し緩やかな中で、本人の希望も聞くマッチングのような仕組みでやっていこうと 考えているわけです。    そのときに思うのは、その病院が困っているから手を挙げるわけですが、困っ ているから手を挙げるだけでは医師は来ないので、その病院にどういう魅力があ るかということも作っていただかなければいけないし、我々も魅力づくりについ ても支援しています。医師が来れば診療報酬も上がるわけですが、おそらく、「困 っているから来てください、この科は空いていますよ、是非、お願いします」と 言われると、我々の世代だったら、そんなに困っているのだったら、行って一肌 脱ごうという気持ちになったのかもしれませんが、いまの若い人たちはなかなか そうはならないと思っています。そういう意味で、支援機構がコーディネートし て、必ずしも奨学金の貸与を受けた医師等だけではなく、登録して手を挙げた人 たちにそこに入っていただき、ローテーション勤務できるようになればいいので はないかと考えています。それにしても、拠点病院への支援は、かなり大事なこ とだと思っています。 ○梶井座長:ありがとうございました。病院、診療所の魅力、地域の魅力ということ にもなろうかと思いますが、今日は青森から対馬委員が来ておられます。住民の 目から見た、あるいは住民の側から感じられることという意味で、ご意見を賜り たいと思います。 ○対馬委員:私たちは地域医療研究会というのを立ち上げていて、実はこの研究会と いうのは県に何かをお願いするとか、病院にお願いするという目的ではなく、地 域医療のことをみんなでもっとわかり合おうという意識改革のために立ち上げ たものです。そういった中で中核病院がいま建設されます。5つの自治体病院が 加わっていて、その中にもへき地拠点病院が1つ入っています。一緒に治療した 人たちの中でへき地拠点病院のある所から通院していた方に「いま、病院はこう いう状態(産科診療の取りやめや、常勤医が確保できない)で大変だね」と言っ たら、「いやあ、私は車で五所川原のこの病院に来るから、そんなに大して思っ ていないんですよ」という意見がきたときに、「えっ、これって、こういう考え でいいのか」と思ったのです。「自分のお父さんやお母さん、おじいちゃん、お ばあちゃんが通うとなったらどうする?」と言ったら、「それは困るわね」とい う話になって、やはり住民の意識改革がすごく必要だなと思いました。    いま中核病院が建設されて、そこから今度は医師が派遣されていくわけですが、 派遣されても、そこの病院に行った先生に温かい態度で接してあげないと、また (医師が)行きたくなくなるという悪循環が出てきます。そういったためにフォ ーラムを開いて、今まで中核病院を建てるといっても、どういうふうに建てるの かはあまり住民に明かされていなかったのでが、私たちが行政にお願いして、何 とかこの計画を住民に教えてください、どういう状況になって、どうなったのか というのをお願いして、今年の2月にフォーラムを開きました。そうしたら、こ ういうふうに情報公開してくれたのは初めてと言っていいぐらいだったという 意見がすごく多くて、いまの「中核病院の進捗状況も何とか教えてください、で きる範囲でいいですから」ということで行政の方にお願いして、また11月28日 に住民フォーラムを開きます。住民がどういった状況にあるのかが分からないと、 本気になって考えないと思うのです。そういった意味で、いま私たちはそういう ことに取り組んでいるという状況です。 ○梶井座長:ありがとうございました。今日は非常に活発なご議論で、論点4のへき 地医療を支えるへき地医療拠点病院について、さらに論点3のキャリアパス、キ ャリアデザインのところまで非常に深く議論ができたのではないかと思います。 今日は実は論点1の医師の育成についても予定ではあったのですが、ここについ ては従前から事あるごとに触れられていたと思います。吉新委員のご発表にも総 合医という言葉が出てきましたし、先ほど私が示したデータにも、いわゆる総合 医の話が出てきました。これから総合医をどういうふうに育成していくか。これ は診療所だけでなく、内藤委員がおっしゃった中小の自治体病院を強化していく という意味でも、総合医は不可欠だろうと思います。ここはどうでしょうか。 ○奥野委員:いま、私も小さな自治体病院で医師不足に喘いでいるのですが、そんな 中でも若い先生方はとても頼もしくて、年間20人の臨床研修医を受け入れ、学 生たちの実習も受け入れています。とても大変なのですが、みんな頑張ってやっ てくれているわけです。昨日、その研修の発表会があったのですが、そのときに 若い研修医が計らずも、「先生、教育のある所に人は集まります」と言ってくれ ました。それは、へき地や地域医療を実際に教えることができる、あるいは体験 することができるのは小さな病院であり診療所であると思います。そこで研修を 充実させるのはなかなか難しいのですが、少ない人数で、なおかつ少ない資源で も実際に教育をやっているし、もっともっとサポートできる方法を考えられない かというのが、ひとつの提案です。    例えば、現に小さい病院をサポートしている大きな病院から、医師が来て講義 をしてくれるのです。あるいは1週間まるまる来てもらって、ずっと居座ってい ただいて講義していただくとか、あるいは長期に2カ月、3カ月来ていただいて 戦力としてもやっていただくとか、こちらから外へ出て研修を受けに行くのは、 人材が少ないのでなかなか難しいところがありますので、また皆さんのお知恵を 拝借していきたい。小さな所で地域も学べるけれども、その中で気づいたこと、 例えばスペシャルな部分は学べない。行って学びたいけどできないから来てもら うとか、何か違う方法があればできるのではないか。    そんなことを考えていただきたいのと、地域や診療所や小さな病院で教育した ことの評価を、ちゃんとしていただきたい。あるいは地域でもやっていいのだと いうこと。うちの小さな病院は管理型の研修病院で、3年間、マッチングでゼロ だったものですから落とされ、図らずも今回、協力型になってしまったのです。 1人でもいいから1年目の先生が来るように、こつこつやってきたのですが駄目 になってしまった。だけど復活を願うわけです。というのは、小さな病院に1人 でも1年目の医師が来てくれることはとてもうれしいことなのです。ですから、 それを頑張ってやらせてもらえるような仕組みは残しておいてほしい。そのため には、これとこれをやっておかないと駄目ですよと言われれば、我々は頑張って やるので、そういった教育をすることの誇りとか、小さな病院でもやってよかっ たのだとみんなが共有できるような仕組みやアイデアを、是非教えていただきた いと思います。 ○梶井座長:ありがとうございました。大体時間となりました。今日は文部科学省の 医学教育課からお出でいただいています。この論点1については卒前の医学教育 から、そういう地域医療についての教育を、どう進めていくかの部分は非常に大 切ではないかと思います。医学教育課としてどのようにお考えなのか、一言お聞 かせいただければと思います。 ○文部科学省高等教育局医学教育課:これまでの議論を拝聴させていただいて、私ど ももこの地域医療の教育の重要性は、改めて痛感するところでございます。医学 教育におきましては、これまで大学のご協力によってある意味、最低限の基準と してのモデル校カリキュラムがあって、その中に地域医療という項目があります。 モデル校カリキュラムそのものはある意味、医師国家試験の出題基準ともリンク するところも多分にあり、大綱的なものではありますが、現実にカリキュラムと は別として、各大学とも昨今、医学部の定員を増やしていくにあたり、地域枠な りの形で増やしていくとともに、その地域医療の教育を充実していくことも私ど もは求めています。    そうした中で、大学病院で行われている臨床実習、臨床教育だけではなく、そ の地域の病院などの力を借りて行っていくことは、大きな方向性としてはかなり 進展して、我々も口酸っぱくいろいろな所で申し上げているところです。そうし た方向は皆様方のご議論とも共感を持って受けとめているところです。今後のこ の検討会での議論の中で、私どもは何ができるかを考えていきたいと思います。 ○梶井座長:ありがとうございました。ちょうど時間となりました。皆様のいろいろ なご意見をお出しいただいて、今日は非常に充実した議論の展開ができたと思い ます。本当にありがとうございました。次回の検討会においては、論点5がまだ 残っています。歯科の領域の問題、看護、遠隔医療等について、議論を発展させ ていかなければならないと思いますので、何卒よろしくお願いします。次回以降 のスケジュールについて事務局からご報告をお願いします。 ○馬場医療確保対策専門官:ありがとうございました。次回の検討会ですが、既に調 整させていただきましたとおり、12月24日(木)、午後1時から開催します。 場所は厚生労働省のある霞ヶ関の中央合同庁舎第5号館会議室を予定しています。 これにつきましては開催通知にて正式にご案内申し上げます。なお本日の議事録 については前回と同様に、委員各位のご確認をいただいた上で厚生労働省のホー ムページに掲載させていただきます。 ○梶井座長:ありがとうございました。本日も長時間にわたり、ご議論ありがとうご ざいました。4回以降も是非、よろしくお願いします。以上をもちまして終わり とさせていただきたいと思います。 (了) 照会先:厚生労働省医政局指導課      救急・周産期医療等対策室      助成係長 田川 幸太 電 話:03−5253−1111(2550)