09/10/16 第2回臓器提供に係る意思表示・小児からの臓器提供等に関する作業班議事録 第2回 臓器提供に係る意思表示・小児からの臓器提供等に関する作業班 日時 平成21年10月16日(金) 15:00〜 場所 厚生労働省省議室 ○長岡補佐 定刻になりましたので、ただいまより第2回「臓器提供に係る意思表示・小 児からの臓器提供等に関する作業班」を開催させていただきます。議事に先立ちまして資 料の確認をさせていただきます。本日は、前回と基本的には変わっておりませんが、資料 1「臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律の概要」、資料2-1「厚生科学審議会疾 病対策部会臓器移植委員会について」、資料2-2「改正法の施行に向けた検討課題及び検討 体制について」、資料3-1「親族への優先提供とレシピエント選択基準の関係について」、 資料3-2「心臓移植希望者(レシピエント)選択基準」、資料4「親族への優先提供の意思 表示について」、これは本日の議論に使いますが、一部修正した部分がありますので、後ほ ど説明させていただきます。参考資料として3枚あります。1つ目は「親族の範囲につい て」、2つ目は「脳死した者の身体からの臓器提供の標準的なフローチャート」、3つ目は「第 1回(10月1日開催)における主な御意見」です。いま確認した資料のほかに、第1回の 参考資料をファイルに綴じて、各班員の机に置いておりますので、議論の際にご活用いた だければと思います。以降の議事進行は新美班長にお願いいたします。 ○新美班長 皆さん、お忙しいところをお集まりいただきましてありがとうございます。 第2回ということで、前回の続きの議論を始めます。前回の作業班においては、法改正の 内容確認等を行った上で、親族優先提供に関する課題として、まずレシピエント選択基準 の関係について議論をしていただきました。その後、親族への優先提供の意思表示につい て議論を始めたところですが、それらの検討課題のうち、表示内容に関する部分の議論に 入るところで終了したかと記憶しております。  そこで、本日は前回の議論の続きということで、表示内容に関する部分から議論を始め、 その後で親族の範囲、親族の確認方法についてもご議論をいただきます。移植のコーディ ネートの現場でどうなっているか、先ほどフローチャートの紹介がありましたが、そうい うところをきちんと押さえておく必要があるということで、本日は参考人として、日本臓 器移植ネットワーク東日本支部のコーディネーターである芦刈淳太郎さんと、大宮かおり さんにご参加いただいております。実際の現場からのご意見をいただければと思います。  議事に入ります。親族優先提供に関する検討課題のうちの、表示内容に関する部分につ いて議論いたします。前回と議論が多少重複するかと思いますが、資料4の3枚目につい て事務局から説明をお願いいたします。 ○長岡補佐 前回と重複しますが、資料4の3枚目の「表示内容について」をご説明いた します。親族優先提供の意思表示について規定した、第6条の2の規定にあたって、提供 先は親族に限定する意思など、親族への優先提供に付随して示された意思についてどのよ うに扱うか検討する必要があるということでまとめたものです。3つのケースについて想 定していますので、これらについて検討をお願いいたします。順にご紹介いたします。  1番目は、臓器提供の意思表示と併せて、特定の親族へ提供する意思及び親族間で優先 順位を付けた意思が示されていた場合、これらについては親族優先提供の意思についてど のように解釈して取り扱っていくか、ということが課題になるかと思います。  2番目は、臓器提供の意思表示と併せて、優先とならない範囲の親族への優先提供の意 思が示されていた場合。これについても、親族優先提供の意思についてどのように取り扱 っていくか、どのように解釈していくかという問題が生じるかと思います。  3番目は、親族以外には提供しない、親族に限定して提供するといった意思が示されて いた場合です。これは、現行法の下では、提供先を指定した場合については、有効な意思 表示とはせず、提供を見合わせるということでガイドラインでの定めを置いているところ です。これについては、その下にある1)2)の2点から議論をお願いいたします。具体的に は1)第6条の2の親族への優先提供の意思についてどのように取り扱うべきか。2)第6条 第1項の臓器提供の意思、これは第三者に対する提供意思ですが、これについてどのよう に取り扱うべきか。  「また」以下は、今回新たに付け加えた論点です。親族優先提供の表示を行いうる年齢 等について、どのように取り扱うかという問題です。以下の2点について想定しておりま すので検討をお願いいたします。4番のところで、親族優先提供に係る意思表示が可能と なる年齢についてはどのように考えるのか。5番目は、親族優先提供に係る意思表示に基 づき臓器提供を受けることが可能となる年齢についてご議論をお願いいたします。※は現 行の取扱いです。1つ目は、現行ガイドラインでは、書面による(第三者への提供の)意 思表示ができる年齢として、15歳以上の者の意思表示を有効なものとして取り扱っている ということ。もう1つは、現行制度のレシピエント側の部分ですが、レシピエントとなる 者の年齢については特に定めがないということです。以上ご議論をよろしくお願いいたし ます。 ○新美班長 前回の議論の流れということもありますが、前回、いま指摘していただいた テーマについて、各班員はどういう議論をしていたのかを簡単に振り返って紹介していた だきます。 ○峯村室長 前回の議論についてです。表示内容について、優先提供の意思が親族間で順 位付けをされていたような場合について、それは認めるのかどうかということについての 意見が出されました。また、優先とならない範囲の親族の場合についてはどうするのか。 例えば、親族の範囲とは別の方の指定があった場合に、それを無効とするのかどうか。親 族以外には提供しないと限定的に、誰以外には提供したくないという意思が示された場合 に、それをどのように取り扱うのか。様々な意見が出されたと私どもでは理解しておりま す。  若干補足して説明いたしますと、1番目の特定親族への提供の意思というのは、例えば 自分の親族の誰々と具体的に名前を指定したり、子どもならば長男という形での指定がさ れている場合。親族間での優先順位というのは、第1順位として子どもの長男、第2順位 は配偶者という形で優先順位を付けた場合の意思表示についてどのように取り扱うのかと いうことです。  2番目の、優先とならない範囲の親族への提供の意思ということで、仮に親子と配偶者 というような決め方で、親族の範囲がされていた場合に、おじさんとか、優先とはならな い範囲の親族の意思表示がカード等に示されていた場合にどのように考えるのか。また、 限定的な提供というのは、子どもにのみ提供するという意思表示がされていた場合にどの ような取扱いをするのかということです。それぞれについて、どのように考えていくのか ということになろうかと思います。 ○新美班長 前回は議論が行ったり来たり錯綜して、なかなか焦点が1カ所に集まらなか ったこともあり、どういう議論になったのかを簡単に紹介していただきました。本日は、 前回の議論の繰り返しということにはならないと思いますが、前回の議論を踏まえた上で、 一つずつこの作業班での見解を収斂させていきたいと存じます。  第1に、前回の議論で親族優先という意思はどのように表すべきかと。要するに固有名 詞でいくのか、親族というザクッとした指定でいいのかということで、お互いの認識が少 しずつ違っていたといいますか、噛み合わなかったところがありますけれども、大体前回 の親族優先の意思表示というのは、親族という表示でいいのではないかという議論が多か ったように思いますが、その点についてご意見をいただければと思います。 ○水野班員 この間もそのように申し上げましたけれども、受け手が期待している状況に なったことにより、本当に根底的にパラダイムの転換が起こっておりますので、売買であ るとか、なりすましであるとか、偽造であるとか、変造であるとか、非常に危険な状況が 生じてしまっています。その危険性をいくらかでも減ずるためには、固有名詞ではなくて、 親族という形の意思表示だけしか形式的に認めない、ということにしたほうがその危険性 は少なくとも随分減って、そして親族の中で医学的な緊急度合によって決まっていくほう がいいと思います。 ○新美班長 ただいま、先回の議論でいちばんの中心であった、親族間の骨肉の争いを少 しでも避けることが大事だ、ということで水野さんからご指摘がありましたが、それを少 しでも緩くするため、避けるためと同時に、これはもう1つ事務局からも出たと思います が、公平な取り扱いというもう一方での要請もありますので、親族優先は認めるとしても、 親族という形での優先の意思表示はどうかということだと思います。ほかに、これについ てはそうでもなさそうだ、あるいは賛成だのいずれでも結構ですのでご意見をいただきた いと思います。 ○町野班員 私は賛成です。確認ですけれども、もしその考え方を採るとなると、例えば 特定の人に指定したときについて、これは親族優先提供の意思表示がなかったと扱うわけ ではなくて、一般的に親族優先提供の意思表示があったと解釈するということでよろしい ですね。それを水野先生にお伺いします。 ○新美班長 表示は、親族として駄目だというのは言っていても、例えば私と水野さんが 家族だとしたら、水野紀子と書いてあって、私の名前が出ていなくても、これは2人に対 して、親族に対して優先提供の意思として認めてもいいかどうか。 ○水野班員 実体法的な家族として、それが可能であるということならばそうすればいい なと思います。難しい問題なので私もいろいろ考えてみたのですが、親族提供の一部有効 を認めるかとか、あるいはそこの部分が無効なので、いわば親族提供部分だけは全部無効 と考えて、一般的な提供意思だけ土台のものを有効にすると考えてみるかとか、いろいろ 考えてみたのですが、実体法的に悩ましい解釈論になるところがあると思います。オプト アウトの意思に通じてしまうような意思であるとすると、その意思はある程度尊重しなけ ればいけないという配慮があります。 ○町野班員 結局その辺はまだ迷っているということですか。 ○水野班員 正直申し上げると、ちょっと迷っているところです。手続的な問題と非常に 連関をしてきているところがあります。親族提供の意思の部分は、少なくとも手続的にハ ードルを高くしたいと考えております。それをうんとハードルを高くして、登録をして、 例えばネットで登録をして、さらに確認をするという手続を噛ませていくことにいたしま すと、そこで親族一般でないと駄目だというように、手続的にそれに乗っていないものは すべて駄目だと。もし言えるとすれば、自動的にそこで絞れてくるだろうと思います。 ○町野班員 これは、かなり最初から決めておかなければいけないです。例えば、奥さん をAという指定をした、奥さんにあげるということを言っていたときに、Aという指定は 無効だと言って、しかし親族の中に登録している人がいなかった。Aという人しかいなか ったというときには、結局Aに提供することを認めるかどうかということにかかるわけで す。親族優先提供を全部ノーとしてしまって、一般の提供意思だけだと解釈するというの は、そこまでする必要はないのではないかと思います。その点で、親族優先提供の意思と しては有効であると考えざるを得ないと思いますが、それだと具合悪いでしょうか。 ○水野班員 どういう形でその意思が表示されていたかということにこだわっていて心配 しております。つまり、ネットできちんとした本人の意思確認だという形で登録ができて いて、それはおそらく親族一般という形でしか受け付けないのだと思うのです。それに乗 らずに、奥さんの名前だけを書いた私的なものが出てきたときに、それが本人の意思と言 えるかという問題が重なって考えられてきてしまいますので、もし本当に本人の意思であ ることが確実ならば、確かに奥さんしかいないということならば認めてあげるのに何の支 障もないわけです。それは、果たして本当に本人が残したものなのかということの確認が 正規の手続でないとすると非常に難しいことになり、それがいろいろ問題を生ずるのでは ないかと危惧しているわけです。 ○新美班長 いまのご議論は、どちらかというと、限定で親族だけというのと似たような 指示の仕方ですよね。要するに、親族以外には提供しないというのと、親族のうちのこの 者だけにしか提供しないというのと似ているわけです。その辺は、コーディネーターの現 場ではどのような説明をすることになりそうなのか、こんなふうになりそうだということ で事情がわかりましたらご意見をいただけますか。 ○芦刈参考人 実際に親族優先提供の意思表示を持っている方が、その情報をいただいた ときに、我々がご家族に説明するのは、第三者に対する提供の意思を本人は持っていると いうことで、その上で親族を優先されれば限定ではなくて、その中で親族が優先的に選ば れればその意思は尊重されるということで、その中での家族の同意ということになります。 そこで、まず限定的なものに関しては、家族に関してこの人でないと提供しないというこ とであれば、その時点で同意はできないというような説明はできようかと思います。現実 的にそういう運用になっていくかと思います。  先ほど町野先生がおっしゃったような事例の場合ですと、逆に誰々に、奥さんに、Aさ んにということを指定した場合にそれが無効で、一般的な臓器提供の意思表示という捉え 方をしてしまうと、そのご家族に納得できる説明は非常にしにくいです。Aさんしか臓器 不全で移植を必要な人は家族にはいなくて、その人に指定している。もちろん医学的な条 件は一致しないといけないと思いますけれども、そこは現実的にAさんに移植をするとい うのが妥当なのではないかと思います。 ○新美班長 いまの説明を受けていかがでしょうか。いま町野先生が出したのは、家族が 複数レシピエント登録しているというのが前提としてはまず第一ですね。 ○町野班員 ちょっと違います。 ○新美班長 1人だけでもということですか。 ○町野班員 この件は事務局と整理をさせていただきたいと思うのですが、いまは親族の うちの特定の人に対して優先提供するという意思表示があったということを前提にした上 で、いまのようにその方しか登録をしていなかったというときに、それをノーとしてしま うかという話が1つあって、それはノーとすべきではないだろうと私は思うのです。それ は、いまコーディネートの方が言われたこととおそらく一致するだろうと思うのです。  そして複数の人が、例えばほかの親族の人がその中に登録していたというときには、特 定の人に優先提供させるということではなくて、やはりその中で順位を決めて、名前がな かった人は、親族が優先されるということであれば、そちらのほうからいくのがあれであ ると。  そして、誰も登録している人がいなかった、その中に該当者がいなかったという場合、 例えばAさんを指定したのですけれども、その方はもう亡くなっていたとかいろいろなこ とがある。あるいは医学的な適用のところでそれが外れてしまうというときについて、そ れでは提供の意思表示がなかったとして扱っていいかというと、それはそうでないだろう。 それは、提供の意思表示があったとして扱うということでいいだろう。類型としてはその ようになると、私は皆さんのご意見を聞いていてそのように理解したのですが、それで正 しいかどうか、よろしいかどうかという話です。 ○峯村室長 基本的には町野先生の考え方で、整理で間違いないのではないかという感じ はしております。事務局の見解としては、少なくとも特定の親族を指定する場合と、限定 の場合とは分けて考えなければいけないと思うのですが、指定するということについては 法律に明文の規定もありませんし、移植機会の公平性という観点から見ても、その関係に も配慮するということを考えると、親族への優先提供という範囲にとどまっているのでは ないか。特定親族の指定までは認めない趣旨ではないかと解するのが妥当ではないかと思 います。  実際に、いま町野先生がおっしゃった場合分けの場合ですが、1人特定の指定があった 場合には無効という扱いにするのではなくて、親族優先提供という趣旨をできるだけ尊重 して、そういう意思があったという理解で選択の手続のほうに入っていく。例えば、複数 名おられたような場合や、順位付けがあった場合についても、それは無効という扱いには せずに、親族ということで一律に扱うという形で、あとはレシピエントの選択基準に従っ て優先順位付けを行っていくことになろうかと思います。  基本的に、平成16年のときには記載不備の関係について、この作業班で議論させていた だいた経緯があります。その際にも、できるだけ提供意思を広く認めるような形で運用し ていこうという方向であったかと思います。ドナーカードに何も書かれていなくて、親族 というふうにしか書いていなくても、そもそも一般的に第三者への提供意思があって、そ の上で親族への提供意思があるのだと取り扱っていくというのは、これまでの整理の延長 線上の考え方なのではないかと事務局としては考えています。したがって、優先提供の家 族が医学的適用の問題等で、その方に行かないような実態があって、親族への提供ができ ない場合については、第三者への意思が示されているということを前提に、家族のご意見 を伺うことになろうかと思います。 ○長岡補佐 1点補足させていただきます。先ほどご指摘がありました、どなたか1人が 指定されているような優先提供の意思表示がある。ただし、レシピエント登録はその親族 の範囲の中で2人あった、というケースもあろうかと思います。この場合も、先ほどの法 律の解釈からすると、親族への優先提供の意思があったということにまず解釈するのが相 当ではないかと考えますので、その2人から、レシピエントの選択基準に従って、適合条 件と優先順位付けを見て、最終的には順位を決めていくことになるのがよいのではないか ということで考えているところです。 ○丸山班員 国会での議論をテレビ・ビデオで見ているときに抱いたイメージとかなり違 うように思います。8年ほど前に起きた事例で、あのときは本人の意思を、遺族が表明さ れたと伝え聞いているのですが、その本人の意思は、親族にあげたいということだったの でしょうか、それともあの人とあの人が腎臓病を患っているからということだったのでし ょうか。また、それ以前のネットワークのプラクティスだと、死体ドナーが出て、2腎移 植可能な場合、ドナーが親族の範囲内の人に提供する意思を表明していた場合には、1腎 を親族に、残りをネットワークにという扱いをしていたとネットワークの方から聞いたこ とがあります。  そういうときに、親族という形で提供先の希望が表明されるものか、あまり昔のことま で遡るのはなにかと思うのですが、親族という言い方で提供先を表明するというのは、ち ょっとイメージできないのです。具体的に何々さんが心臓病を患っているので、あるいは 移植を必要としているのであげたいというのはイメージできるのですけれども、抽象的に 親族にという希望というのはちょっとイメージが湧かないので、過去にどのようなものだ ったか、というのを把握されていれば教えていただければと思います。 ○新美班長 その点についてはフォローできていますか。 ○芦刈参考人 私は、実際にその事例にかかわっていて、ご家族と話をさせていただきま した。事務局にお聞きしますけれども、ここはオープンな場ということですね。 ○長岡補佐 はい。 ○芦刈参考人 過去の報告の中で、どこまで公表されているのかというところは記憶にあ りませんので、どこまでお答えしてよろしいのかはっきりしません。その内容に関しての お答えは記憶の中にありますが、それはどのようにしたらよろしいでしょうか。 ○新美班長 いまのご質問は一般からすると、親族を一般に優先提供したいという意思表 示があったかどうかぐらいでも差し支えありますか。 ○大宮参考人 いま丸山先生がおっしゃいましたように、意思表示をする立場としては、 やはり身内に病を患った方がおられて、その人に提供したいという意思のほうが、書く側 としてはそういう思いで書かれるのかと思います。これまでネットワークのほうに寄せら れた親族提供の意思に関しては、限定した誰々に提供したいという思いで連絡されてきた 方のほうが多いです。書く立場としては、もし現時点で身内に病気を患った者がいなけれ ば、将来的に身内で移植を必要とする人が現れた場合のために、親族にと大雑把に書く可 能性があるかと思うのです。いま現在、親族提供を希望したいと言っている方については、 誰々にという意思表示が明確であることのほうが多いような気がします。 ○新美班長 現にレシピエント登録しているかどうかによってだいぶ違うということです か。あるいは、そういう臓器の疾患にかかっているかどうかということですか。 ○手嶋班員 私は水野先生のように、親族という形で記載されるほうが適切なのではない かと思います。確かに、現在そのような形で書く方が多いというのは事実としてあるにし ても、これから新しい制度として始めようということであれば、意思表示のやり方をしっ かりと流れとして作り上げておけば、紛争が生じる可能性は事前に小さくすることができ ると思います。現にやっているかやっていないかということ、あるいは一般的にそのよう な形でやっているのではないかということと、これから制度を作っていくということとは ある程度分けて考えることができるのではないかと考えます。 ○丸山班員 お尋ねした趣旨は、制度を作るということもあるのですが、国会の議論を踏 まえて、国会で議決され、成立した法律ですので、国会で議論される際にどういうイメー ジで、親族への優先提供が考えられていたか。それと大きく異なるイメージのものを、そ の制度が望ましいと、紛争が回避できるというだけで作るというのは、この委員会は白地 で望ましい制度を作っているわけではないので、できないのではないか。白地であれば、 委員のマジョリティの意見に沿って、親族への優先提供を認めない方向で制度を構築する のではないかと思うのですが、国会の意思で、親族への優先提供が、法律の条文の形で定 められているので、その際に立法者、提案者の念頭に置かれたところから外れるのは難し いところがあるのではないか、という趣旨でお尋ねしたものです。法律の条文を踏まえて、 立法者の意思、考えられたことを踏まえてというところを離れてはいけないのではないか という趣旨です。 ○新美班長 いまの議論は、どういう表示をさせるのかという議論と、現にこういう表示 があった場合にどうしようか、という議論がちょっと混在していると思います。手嶋さん のご意見だと、例えばカードの書式においては、親族という欄だけ作っておいたらいいの ではないか。それにもかかわらず、誰それという名前が書かれていたらどうするか。これ は、ちょっと場面が違うように思います。いま話していたのは、カードの形式などを問題 にせず、例えば親族優先提供したいけれども、そのときに名前が、あるいはこういう順序 でやってほしいという記載があったらどうしようか、という議論だったと思うのです。  この点についてコーディネーターの人に伺いたいのは、そういう記載があった場合でも、 遺族の方たちとやり取りをして、どういう趣旨ですかということを聞くと思うのですが、 そういうことはありませんか。 ○芦刈参考人 それは、実際にご家族の方に、本人はどういう意図があって記載したのか ということは、いまの法律の中でも確認を必ずします。本人が、どういう趣旨で意思表示 をしたのかということです。 ○新美班長 それが、この人でなければいけない、ほかは駄目だという趣旨だったのかと いうのと、順序が付いているけれども、それは一応書いただけで、ほかの順序でも構わな いという趣旨なのかは、遺族の方とのやり取りで大体決まってくるという理解でよろしい でしょうか。 ○芦刈参考人 はい、そうです。それは聞き取りをします。 ○新美班長 いまのような実情を踏まえた上でいかがでしょうか。 ○本山班員 1つ確認させていただきます。先ほど長岡補佐が言ったことに関連してです が、もしレシピエント登録をしている親族が2人いるとして、それで親族優先なのだから となったときに、まずこの2人についてだけこの選択基準に当たるかどうかというのを考 えるのですか。それとも、レシピエント登録されている方全員の中に、その2人も入れた 上でシャッフルして優先順位を付けていくということなのですか。私は、てっきり後者だ と思っていたのですが、先ほどの説明では、まず2人について比べて、医学適用を見るみ たいに聞こえたのですが。 ○長岡補佐 先ほどのはかなりレアケースだと思いますが、通常親族優先提供の意思を表 示する場合は、確かに特定の親族を念頭に置いて書くケースもあるかと正直思います。そ の場合に、実際にレシピエント登録されている方、その親族の範囲内にいる方が2〜3人い たという場合ですと、親族優先提供の意思は有効だろうということで考えます。  その場合、前回の議論でレシピエント選択基準との関係をご議論いただきました。その 中で、親族はほかの第三者より上位に来るということで、優先順位がいちばん上に来ると いうことでご議論いただいたかと思います。第1位の方が3人並ぶことになりますが、そ のレシピエント選択基準を使えば、誰が優先されるかは決まっていくのではなかろうか、 ということで先ほどご説明させていただきました。 ○本山班員 そういう形になると、臓器移植という制度が親族間のやり取りのためだけに 使われるというイメージが出てきてしまうと思うのです。それがいいことなのかどうか疑 問に思うのです。 ○新美班長 それは、現実には親族優先提供の制度を入れた、という法律ができてしまっ たものですから、それをいまさら駄目だと言うわけにはいかないというのは理解しておか なければいけないと思います。先回申し上げましたように、我々のティーワールは親族優 先提供という枠組みができた中でどうするかという議論ですから、本山さんの議論は、こ こではひっくり返すようなことになるのでちょっと問題はあろうかと思います。ただ、そ ういう懸念をどこまで小さいものというか、抑えられるかという議論はしておく必要はあ ろうかと思います。 ○水野班員 その関連ですが、本山先生のおっしゃったことに基本的には共感しています。 国会で議論されたことを前提にせざるを得ないのですが、この親族提供意思を重視すると いうのが、どれだけ危ないことを、いろいろなことを引き起こすのかということについて、 十分納得の上で国会の審議ができたとも思われませんので、少なくともそのことの弊害が 最小限になるように企画をしなくてはならないと思います。  先ほど、コーディネーターの方から、現場の空気などを教わったわけですが、それこそ 遺言法の大前提として、残っている者に、死者がどういうつもりだったか、ということを 聞くほど危ないことはないので、それはいかようにでも証言はできてまいります。そうい うことを聞いてということで運用しては、現場の混乱はとんでもないものになるだろうと 思いますので、死者の意思については、非常にきちんとした手続を踏んで残された親族提 供意思というものだけを優先する、という形でなければ回らないだろうと思います。 ○新美班長 その辺についてはいかがですか。 ○町野班員 丸山さんの言われたことというのは、特定の親族に対する提供の意思という のもOKとして扱うということも考えられないかという話ですよね。 ○丸山班員 そうです。 ○町野班員 ですから、それがいちばん最初の入口のところで、そうではないというとこ ろから始まったために、このことはやはり議論はしなければいけない話です。国会の意思 がどうかということについては、おそらく事務局から答えがあるだろうと思いますけれど も、不明と言わざるを得ないのだろうと思います。ところどころに出ているのは、非常に 近しい間の関係において、いわば生命の点についてやり取りといいますか、助け合いをす るということが出ている。それを提案された人の中には、いくつかの理由が併存している わけです。親族だったら提供してもいいや、という人も多いだろうということも1つの理 由になって、提供意思を増やそうという意図もあっただろうと思います。  しかし、これをどれほど重視すべきかいろいろな議論はありますけれども、国会意思だ けで決められる問題ではといいますか、そもそもそれはわからないところがありますから、 そういうことだろうと思います。私の考え方としては、皆さんのご議論のように、親族優 先提供を認める以上は、弊害と言ってはなんですけれども、本人の選択権で他人にあげら れるという制度ではなくて、先ほどのように助け合いといいますか、近いところでの助け 合いを優先させるという考え方で考えるならば、特定の人への提供というのはやはり認め るべきでないと思います。 ○新美班長 特定人の名前が出てきたら認めるべきではない、というところにつながりそ うですか。それとも、それは広く親族全般に対する提供というふうに解するかということ ですか。 ○町野班員 それが、私がいちばん最初に確認したところで、そうだということだと思い ます。 ○新美班長 私が申し上げているのは、そのときに最後のビートは遺族が持っているわけ ですよね。そうすると、この人でなければやらないという反応は当然出てくるわけです。 ですから、やはり遺族との間のいろいろなコミュニケーションというのはどうしても、最 後はそこが決め手になるのではないかという気はするのですが、その辺はいかがでしょう か。 ○水野班員 遺族のビートの問題についても、ここでも大きなパラダイム転換が起きてし まっています。いままでは、遺族を非常に広くとっていて、そこのところに来たどなたか が反対するということであれば、それはもう駄目だということにしたわけです。今回は、 具体的な受け手が待っているところで、これだけ広く不特定の遺族のビートを認めること の問題というのもすごく生じてきてしまいます。  例えば、今回親族の範囲をかなり制限的にとらえるということで、そして息子がレシピ エントなので、お父さんが親族にということで残したときに、そのお父さんと昔から仲の 悪かった兄弟が、おじさんか何かがビートを行使したということですと、いままでだった ら問題なくそれはあげられませんね、ということで駄目になったわけです。今回は、お父 さんが死んで、自分に残してくれたと思っていた息子は、おじさんの反対で受けられない ということになります。そういうことで、いままで非常に幅広い遺族のビートを認めてき ましたけれども、具体的な受け手がそれによって誰もショックを受けなかったから問題な かったのですが、この場面も変わってきてしまいます。それまでも、おそらく国会では意 識されずに議論をされたのだと思います。 ○丸山班員 いまおっしゃった、遺族は拒むことができるというのは、現行のガイドライ ンだと、直系の二親等内の者及び同居する者ですから、おじさんが同居していない限り拒 否権を発動できないはずです。 ○水野班員 私の理解では、そのときに遺族としてお見舞いに来られた方のうちで反対が あるときにはやめていたと理解しておりましたが、事務局に確認していただいてもいいの ですけれども。 ○峯村室長 事務局から補足ですが、ガイドラインの中で、遺族及び家族の範囲、脳死判 定、臓器提供、摘出に係る同意の範囲を決めています。原則として、丸山先生からお話が ありましたとおり、直系の二親等内の親族と配偶者、それと同居の親族の承諾を得る。そ の上で喪主又は祭祀主宰者がその遺族の承諾意思の総意を取りまとめていくという扱いに なっております。  ただし、当然それで硬直的な規定にしているわけではありません。ただし書きとして、 前記の範囲外の親族から臓器提供に対する異論が出された場合には、その状況等を把握し、 慎重に判断するという規定が設けられておりますので、いま水野先生がおっしゃったよう に、例えばおじさんなり、これに属さない親族の方から非常に強い異論が出された場合に は、その異論について対象ではないということではなくて、慎重に判断をする。現場の取 扱いとしては、そういう異論が出て、同意に至る過程の中で議論された場合については、 提供を取りやめるという場合のほうが多いと伺っています。 ○新美班長 現場のほうから、ネットワークの人はどうですか。 ○芦刈参考人 いま事務局から説明がありましたように、原則はその範囲の中で祭祀主宰 者、喪主が取りまとめることになっています。実際におじが反対するというような状況で あれば、そこは祭祀主宰者に、おじの意見を含めてどう判断するかを確認しながら、強く 反対している場合は進めるかどうかは非常に難しくなってくると思います。反対はしない けれども、賛成はしないというような状況であれば、祭祀主宰者の判断によって進めるこ ともあります。 ○丸山班員 ありがとうございました。 ○新美班長 実情はわかっていただけたかと思います。それを踏まえた上でどうするかと いうことです。いま出てきたように、遺族の意見を聞くということは、そういう意味では 非常に揺らぎが大きくなる危険もあるということです。意思表示をどう解するかというの は、どう詰めていくかという議論と、もう1つは肯定的にこういう記載があったら、こう 読むのだと決めてしまうという手もないわけではない。 ○町野班員 私は、決めるべきではないと思います。確認しなければいけないのは、この ときに親族優先提供の意思表示があって、そのような親族が登録されていて、適用し得る ときでも、それは遺族が反対したらできないということはまず確認済みだと思います。 ○新美班長 それはそうです。 ○町野班員 それをどのようにしてまとめるかということについては、いまお話になられ たように、かなり現場できちんと議論といいますか、それはありました。ここで明らかに することはできないようないろいろな事例があるだろうと思いますけれども、遠くの親戚 の1人が反対したら直ちに駄目になるわけではなくて、それがどのようにして話がまとま っていくかということです。  そこは、臓器移植コーディネーターの方が、おかしな意思決定というか、変なふうにな らないように努力しておりますから、私は親族の提供についても、これで大丈夫ではない かと思っております。だから、こういうときはこうすべきだ、ということを決めると、ま た現場でかなり大変なことになると思います。いまのやり方でいって大丈夫ではないかと 思います。そう言いますと、新美さん辺りは、いままで大丈夫だったからといって、これ から大丈夫だという保証はないと言うでしょう。現場のほうからはものを言いにくいだろ うと思いますけれども、いろいろ伺っている限りでは、これからも大丈夫だろうという認 識を私は持っています。 ○新美班長 第三者に提供するかどうかという範囲と、親族の誰に与えるかということと はかなり様相が違うので、それでもコーディネーターは現場で十分対応可能であるかどう か、ということが1つ大きなポイントだと思います。相当大きなワークロードがかかって くることになるのだろうという気がすることはするのです。 ○丸山班員 フォローが十分できていないのですが、先ほどの親族特定人については認め ない、ということをいま決めつつあるのですか。 ○新美班長 特定人と書いてあっても、親族全般だとか、それはそう書いてあったら無効 にしてしまうかという議論です。町野さんは、特定人があっても、親族の優先提供だと。 ○町野班員 いや、私ので大体皆さん、もしそういう考えをとるなら、それで確認された と私は理解したのです。もしあれだったらもう一回確認してください。 ○丸山班員 反対論を述べていいですか。河野議員の発言として、ドナーとなる方が生前 に書面で、本人が脳死となったときに、臓器を提供するという意思を明確にし、なおかつ 一親等、親又は子、あるいは配偶者の中で、レシピエント登録を既に済ませている者を指 定している場合に限り、親族の優先提供ができるというふうになっておりますので、本人 の意思がなかったときに、残った遺族が決めるというものでもありませんし、レシピエン トとなれるのは、レシピエント登録をしている一親等又は配偶者に限るということになっ ております、と記憶されています。  この文章を私が読むと、やはり特定の者が指定される、ということを念頭に置いてこの 規定が設けられているのではないかと思います。ですから、特定の人の指定を認めないと いうことには反対したいと思います。 ○本山班員 水野先生が、冒頭に親族という表示でいいのではないかというお話をされま した。むしろ、その親族の範囲をどうするのかということと深くかかわっていると思いま す。親族というのは非常に広いわけです。この後、事実婚だとか、養子をどうするかとい う話が出てきますけれども、つまり簡単に親族関係を作ることができるといったことを考 えると、やはりある程度親族の範囲も限定するし、名宛人も限定されるべきなのではない かと私も考えております。例えば、子どものうちでレシピエント登録をしているこの人と いうほうがすっきりとして、争いも少なくて済むのかと想像しています。 ○新美班長 いまのお話で、確かに河野議員の意見はそうなのですけれども、それは既に レシピエント登録している人がいる場合の話で、これから出てきた場合にどうするのかと いうことになると、少し網をかぶせておかないとまずいのだろうと思います。そのときに 1人しか書いていなかったらどうするのか。 ○水野班員 私も、河野議員の発言が根拠になるのかと思っていたのはその部分ではなく て、親族の範囲を非常に限定的に発言しておられましたので、それは頼りになるのかとい う気はしておりました。民法上の親族の規定の由来などをお話すると長すぎますから端折 りますけれども、いろいろな経緯で、ともかく非常に幅広くかけてある概念です。親族と いう概念によって、何らかの人々を特定することはほとんど不可能な、非常に広範囲の、 意味のない規定になっております。ですから、その中身で愛着があるようなということに なると、河野議員が国会で話されたような、非常に限られた範囲、配偶者と親子という範 囲を親族とするのだろうと私は考えながら、これまでの議論をしてまいりましたが、それ が違うのだということになると、まただいぶ話は変わってくるかという気がいたします。 民法典上の親族概念を利用して、親族優先原則ということになりますと、相当異質なこと になってくるという気がいたします。そこは議論の前提としてコンセンサスができていな い。 ○丸山班員 いまは親族の範囲の議論をするつもりはなくて、先ほど読みましたところか らわかりますように、配偶者と一親等内の者ということで想定して言っているのです。こ こでは、その範囲を絞る立論をしているのではなくて、問題がないということを主張され ている部分で、先ほど言ったような言葉が用いられているということです。ですから、ご 指摘のところとはちょっと外れるのではないかと考えます。 ○町野班員 私も、いまの部分は水野先生と同じように読みました。前のほうでは一応議 論はありますけれども、力点はむしろおしまいのほうにあったと思います。議論の仕方と しては、指定したという言葉が出てくるというだけで、河野議員をここに呼んでもう一度 聞くかという話か、あるいは国会議員全員を呼んできて、どういうつもりでこれに賛成し たのかと聞くか、ということではないと思います。私が読んだときには、素直に前のほう に重点があるよりは、後のほうだという具合に読みました。だけど、それは見方の相違で す。  したがって、立法意思を云々するというのは、特に国会議員の1人の発言だけですべて があるわけではない。2人でもいいですし、2〜3人でもいいですけれども、基本的に私は 先ほど丸山さんが言われた基本は指摘としてあり得る話だろうと思います。ただ、国会で の議論はこれについてあまり詳しくやられたとは思いませんけれども、大体の議論として は、かつて行っていたような、誰かに指定したら、そちらでOKというような考え方からは 離れつつあるという感じが私はしたわけです。特に前のときにはいろいろな事例があって、 河野議員が言っているような親子とか、夫婦とか、そういう近いところばかりではなくて、 親族のある範囲まで認めていたこともあって、しかも指定したほうの人にやっていたとい うことがあります。こういうやり方はおそらくとりたくはないという意識が国会の中には 一般的にあったのではないかと思います。この見方というのは、かなり一方的なものの見 方だと言われるかもしれませんけれども、いろいろな所の議論を聞いていると、どうもそ ういう感じがいたします。 ○新美班長 いまの議論としては、丸山さんから出たところで、親族という範囲はいろい ろあると思いますけれども、そういう形での優先提供の意思表示というもののほかに、特 定人を名指しで優先提供というのもあるのではないかというご意見です。私は、それがあ ったから駄目だというのではなくて、それで第2のレシピエント登録が親族の中に出てき たら、その場合に両者を優劣付けてやるのかという問題がいちばん大変な問題ではないの かという気がするのです。その場合も、丸山さんの意見で、特定された人が優先して、後 から登録された人は駄目ということになるのですか。 ○丸山班員 特定の人が名指しされていればその人が優先される。親族という表示がなさ れれば、それはドナー本人のご意思ですから、親族というグループで理解したらいいと思 いますが、表示の仕方にそのまま従えばいいのではないかと思っております。 ○新美班長 親族の中に複数のレシピエントが登録されていた場合に、順序をつけて優先 提供をするという意思が表わされたらどうなりますか。 ○丸山班員 表示された意思として、親族だけではなくて。 ○新美班長 第1位、第2位というのはあり得るのですか。 ○丸山班員 それは長男、次男、3男という順番でとか。それはそれに従うのがドナー本 人の意思を生かす6条の2に適合した解釈だと思います。 ○新美班長 いかがでしょうか。そういうご意見だったということです。 ○大宮参考人 あくまでもご家族と係っている立場から話をさせていただきますが、本人 の意思表示としては、先ほど申しましたように、やはりこの人にという意思が強いように 思います。また、親族という大きな枠で括った場合に、その中に優先順位をつけるときの ご家族の心情のほうがとても負担なように思います。家族性の病気の方もおられますので、 その中で、では長男と次男と、どちらを優先させてあげたらいいのかを判断することが、 ご家族にとってまた親族にとって大きな負担であり、どちらかを選んだことによるレシピ エント側の負担、またそれを判断したご家族の負担というのも非常に大きいと思いますの で、むしろ限定をされたほうが、基本的にはどちらも生かすという幅広い捉え方のほうが いいと思うのですが、本人の意思を最大限尊重する、かつ、ご家族がその意思を判断する に足りる状況ということであれば、限定した指定のほうがご家族の負担が少ないのかなと 考えます。 ○新美班長 ご家族の負担ということを考えると、複数であるということと、あと医学的 にどちらがより良いかという選択の仕方、医の側でやるということもあるのですが、それ はあまり期待できないですか。 ○大宮参考人 複数いた場合に、もちろん医学的な条件で順位づけをされたほうが、ご家 族にとっては規定されたルールで決められたことだからという納得ができると思うのです が、そうではなかった場合、同列に並んだ場合には、どちらを優先するかを判断するとき のご家族の心労はとても大きいように思います。 ○新美班長 この点は前に事務局と話をしたときには、優先提供を受けるところで、レシ ピエント登録が複数いたら、先ほど説明があったように医学的な適用の良否で決めるとい うことでしたが、それも同等だと困るということですね。 ○大宮参考人 そのときはご家族が判断せざるを得ないとは思うのですが、どちらか限定 した者がよくて、親族という大きな枠でなければ駄目ということではないほうがいいのか なと思います。 ○新美班長 そうすると複数のレシピエント登録がある中で、この人だけだというドナー の意思があったら、それによってしまったほうが現場としてはやりやすいと。 ○大宮参考人 ただ、そうではない場合もありますので、幅広く捉えた考え方のほうがい いのかなと思います。 ○新美班長 だいぶ難しい問題になってきましたが、いまは基本的には皆さんの意見とし ては、家族あるいは親族に優先提供だということで、そういう表示を認めるというのはい いのですが、特定人でもよろしいという意見も出てきたわけです。ただ、特定人の場合に その特定人だけ優先提供だという意思を認めるかどうかということで、丸山さんはそれが いいと、表示されている人だけが優先提供の対象だということなのですが、この辺はいか がでしょうか。 ○峯村室長 先ほどの大宮コーディネーターのご説明に補足なのですが、レシピエントの 登録基準に従って仮に選定をしていく場合、適用の条件がクリアをして、その中で複数の 方がどちらも対象としておられる場合には、そのあとの優先順位づけで優先順位は確実に 決まりますので、同点決勝ということはないと理解をしています。 ○新美班長 そうすると登録されたレシピエント、優先提供の対象でも、必ず適用の優劣 はつくことができるということですね。同点ということはない。すると、同点ということ はないということは、医学的に順序は劣位であっても特定人の指定があったら、それはそ の指定に従うべきだというのが丸山説ということになりますね。 ○水野班員 前回申し上げたことの繰り返しになるのですが、死者がその特定人をどうい う形で残しているのかという、先ほどからコーディネーターの方のご発言なども、死者の 意思は自明であるというように伺えたのですが、死者の意思ほどわからないものはなくて、 そして偽造も変造も出てきますし、成りすましてカードを残した、書面を残したというの も出てまいりますし、それは本当に危ないものです。  それが特定人を名指しているときは、さらに危険性は非常に高くなりますので、もしそ れが一般的な親族の中でも医学的に順位によって決まるということになると、程度問題で はあるのですが、そのことの危うさは少し厳重だろうと思います。ですから常にどういう 形でその意思を確認するのかという手続問題と重なって議論をされることになりますので、 いまは丸山先生のご議論を入れるとすると、よほど厳しい手続を入れて、そしてかつその 厳しい手続で確実に本人がこの特定の人をというのを残された段階で、本人確認をしてと いう形になるのと。それで初めてぎりぎり認められるかなという気がしております。です から意思の確認の仕方と登録の仕方とパラレルに論じなくてはならない部分があって、な かなか悩ましいという気がいたします。 ○丸山班員 発言の機会を得たみたいで、その点については前回水野先生が提案された登 録などのやり方を用いることができれば望ましいと思います。しかし、法律の条文にある 「併せて」というのが、それでドネーションと併せて親族を優先してですから、併せてと いうのがドネーションについてはカードでして、提供先については登録まで求めるという のが読めれば、厳格な枠をはめるというのは、私は全然異論はありません。  ○町野班員 私は意思表示の正確性といいますか、それについての確認の方法の問題とこ れとは分けなければいけないという具合に思います。これはあとで議論をしなければいけ ないのですが、もし仮に登録制を設けても、それが本当に本人の意思であるかどうかとい う問題は最後までついて回ります。したがって、ここのところでは本人の意思がどこにあ るかということをわかるものと前提とした上で、それで原理としてどのように考えるべき か。そして、そのようなことで枠組みを考えたときについて、実際に現場でこれでやって いけるかどうかというのは次の問題だろうと思います。私は原理論の問題としては、やは り丸山さんの言われることに反対でございます。   現在の考え方というのは、私はそうではないかと思いますが、好きな人にあげるという 考え方ではもうできていないのだろうという具合に思います。ですからその点で現実に私 は反対ですから、もともとこういう法律はよくないのだと前から言いましたが、けれども 法律が出来たわけですから、それだったら、その中でいまのような解釈をするということ だろうと思います。特定の誰かを選んで、Aという人を選んでやっていいと、親族の中で もほかの人にはもういかないよと。それはやはりおかしい考えだと私は思います。 ○水野班員 私も基本的にはいま町野先生がおっしゃったように、特定の人を名指すとい う制度を認めるべきではないと考えております。それから先ほどの発言が誤解を招くとい けないのですが、手続をきちんとすれば丸山先生の案がアッサブルであるという趣旨では なくて、一般であるとしても、町野先生の言われたように、あるいは私が考えますように 親族一般の中での優先性、医学的な優先性だけで決めるという立場に立ちましても、親族 優先の意思というものは、やはりきちんとした登録システムに乗せないと危ないと思って おります。 ○新美班長 いかがでしょうか。丸山さんどうぞ。 ○丸山班員 いま町野先生が最後におっしゃったところは、私は譲ってもいいと思ってい るところなのですが、私が譲れないのは特定人が表示されていて、その人が優先第1位に ならないというのはおかしいということで、町野先生が最後におっしゃった特定人が名指 しされていて、その人が駄目な場合、総じてその配偶者と一親等内にもう1人患者がいら っしゃるといふのは希有なことだと思いますが、そういう場合についてはその人を対象に するというのは認めても差し支えない。進んで認める必要はないと思いますが、町野先生 が最後におっしゃったような認めないことで、お名前が挙がっていない方が泣くというこ とは、そこまで強く求める気持ちはないというか、そこは譲っていいかなと思っておりま す。  繰り返しになって恐縮ですが、お名前が挙がっていればその人に優先提供してほしいと いうのが明確な形で書かれていれば、先ほど町野先生がおっしゃったように、証拠の点で 問題がなければ、ドナーの生前の意思はこういう法律に基づいて書かれたということで、 生かしてあげたいと思います。 ○新美班長 意見はだいぶ出てきたのですが、基本的には特定人の指定があった場合でも、 一応親族提供の意思表示としては有効に扱う。ただ、希有な事例だけれども特定人を登録 していた、それから指定されていない家族もまた登録されていたときにどうするかという 問題が出てくる。これを全くイコールでレシピエント選択基準でやるべきだという意見と、 そこでもなおかつ順位をつけるべきかという議論で、丸山さんはやはり順位をつけるべき だということになるのですか。 ○丸山班員 そういう形でなるべく扱ってあげたい。 ○新美班長 町野先生はそうでもなかろうという。 ○町野班員 そうでもなかろうではなくて、それに反対だということです。 ○新美班長 反対だということですね。この辺が非常に難しいところで、意見が分かれて いますが、その辺はほかの先生方はいかがでしょうか。 ○水野班員 私は町野説に従います。 ○新美班長 ほかの方はいかがでしょうか。これは多数決で決めるわけではないのですが、 大体大勢の意見はどうなっているか。手嶋さんいかがですか。 ○手嶋班員 これは結局移植機会の公平上の特例ということですから、現状とあまり変わ らないような形で制限的にいくのがいいと思っておりますので、町野先生のお考えに賛同 したいと思っています。 ○新美班長 本山さんはいかがですか。 ○本山班員 特定されていることの重みというか、逆に言うと今度、家族に臓器移植とい う制度が喜んで受け入れてもらえないと、死者の意思を無視してまでということになって しまうのは、むしろマイナスなのではないかというふうにも思えるので、やはり特定がさ れている以上、それをないものとして扱うということは、親族が優先されるというか、親 族一般が優先されるというのは、ちょっと苦しいのではないかという気がします。 ○新美班長 それは丸山説に賛成。 ○本山班員 どちらかといえばですね。 ○新美班長 これはここでどちらかに決めるというわけではありません。私も申し上げま すと、私もどちらかというと特定人への提供というのはあまり好ましくない、やはり親族 間での公平というのは保ったほうがいいだろうという気がします。ですから、そういう意 味では町野説に賛成ということになると思います。これは大体意見としてこういう方向で ということで、最終的には両論併記になるかもしれませんが、まずそこを抑えておきたい と思います。 ○丸山班員 いま班長のおっしゃった、望ましくないで決めていい問題ではないというの が1つ。白地で決められる問題ではないというのが1つあります。それから先ほど手嶋先 生がおっしゃった、これまでとあまり変わらないというのは、これまでと変えたいから提 案者の方はこういう規定を入れたので、そこは考え方が少し違うのではないかということ も指摘しておきたいと思います。 ○新美班長 わかりました。この辺の議論はこれぐらいで。 ○町野班員 どのように決まるかは別として、いちばん大変なのは現場なので、これ事前 にといいますか、多くの人たちに提供できるというのはこういう趣旨だということをやっ ておかないと、やはり誰々さんにあげたいと、これはたくさん出てきて、例えばここの意 見だと、これは意味をなさないのだよと、親族しか意味をなさないのだよということにな ると、かなり大変なことになると思いますので、法律の施行の前にその点についての周知 といいますか、それは必ず必要だろうと私は思います。 ○新美班長 あともう1つ、これはまさに現実ですが、レシピエント登録をしている人、 誰か特定の名前で出て、この人に優先提供したいというときに、その人がレシピエント登 録をされているかどうかは簡単に検索できるのですが、他に親族にいるかという検索は可 能ですか。このドナーの親族で他にレシピエントがいるかどうかが検索できるかどうか。 ○芦刈参考人 その方の他に登録されている方の名前がわからないと検索できないのです。 ○新美班長 要するに遺族の人がレシピエント登録している人はこれだと言われたら、そ れしか検索できないわけですね。 ○芦刈参考人 現実はそうです。 ○新美班長 複数いたとしてもわからない。 ○芦刈参考人 はい。 ○新美班長 そういう現実もあるとすると、検索できなければ結局、特定人がなされたの と同じような状態は出てくるわけですね。 ○丸山班員 実際は国会での提案者がおっしゃっている配偶者と一親等に限れば、いまの 多数意見と私の意見とあまり実益はない、複数の患者がいらっしゃるというのは、それほ ど多くないことだとは思いますね。 ○手嶋班員 立法者意思を最大限尊重して、現状を変えたいからその方向で解するべきで あるというご議論が提案されましたが、若干反論しておきたいのです。たとえ立法者の意 思がそういう形で表明されているのであれ、既にいくつか懸念も同時にその後の議論で出 てきているというところで、現状から大きく変えないという理解の下に、方向性を考える のも、それはそれなりに全く根拠のないことではないのではないかと一応思いますので、 一言申し上げておきたいと思います。 ○新美班長 これ以上やると最初に戻ってしまいますのでまとめていきますと、一応親族 優先の意思というのは、親族という形での表示と、それから希有な事例だけれども、特定 人で指定しても無効とはしない。ただ、その特定人に限って優先提供をするのか、それ以 外の親族にも同じチャンスを与えるかということで意見が分かれて、特定人だけを優先し て扱うのは数からしたら少数になって、家族全体が同レベルでということに、一応議論と してはおさまってきた。これは最後どうするかというのは、最終的な我々のまとめをする ときに議論することになると思いますが、一応そういうふうに現時点ではとりまとめてお きたいと思います。  その次ですが、範囲外の親族を指定した場合、例えば親子と夫婦だけだということにし たけれども、おじさんを指定したとかいう形で、範囲外の親族を指定した場合には、これ は前回の議論では親族優先の意思表示としては効果をもたないと、第三者への提供意思は あると見てどうかということで、大体そういう議論があったかと思いますが、その辺につ いてはいかがでしょうか。そういう扱いでよろしいでしょうか。範囲外の指定をしている けれども、それは優先適用の効果は認めない、第三者提供の効果だけ認めるということで、 これは大体おさまっていたように思いますが、それはご確認いただけるということでよろ しいでしょうか。 ○町野班員 もちろんそれで結構だと思いますが、形式的にいうと、この場合1号の意思 表示があったと見るということですね。 ○新美班長 そうです。 ○町野班員 意思不明ではなくて1号意思を。実際上の影響はあまりないと思います。 ○新美班長 続きましてもう1つは親族限定、ほかにはあげないよという意思表示をどう 見るかということですが、この点については意見が分かれていたかと思います。親族限定 だから、それがたまたまピッタリとレシピエント選択基準で当てはまってくると、これは 認めることになるのかということになりそうですが、そもそも親族の限定だということに なると、レシピエント選択基準を適用することはできないのですね。要するにレシピエン トの優劣を決める基準として、親族優先の規定が入ってくるというのが第1回目で決まっ たわけです。レシピエントの選択すら許さないという意思表示になってしまうような気が するのですが、この辺はどういうふうに皆さんお考えなのか、ご意見をいただきたいと思 います。 ○本山班員 親族に困っている人がいたらあげたい、でも、ほかの人にはあげたくないと いうのは、たぶん意思表示としてあり得ると思うのです。ですから、もしそれが明確な形 で示されていたら、しかも親族にレシピエントがいないということであれば、その提供の 意思はないということで空振りに終わるというふうに私は。 ○新美班長 レシピエントがいるいないの問題以前に、そもそもレシピエントの選択基準 の当てはめる前提として出てこないのではないかということですが、その辺はいかがでし ょうか。 ○本山班員 そうですね。ですからそれは提供の意思がないということ。  ○新美班長 提供の意思がないというふうにも言えそうなのですが、いやいや、提供の意 思は認めて第三者への提供を認めてもいいのではないかとか、あるいは親族がたまたま登 録をしていたらそれに移植してもいいのではないかという議論もあり得ると思うのですが、 これはなかなか悩ましい問題で、まさに移植医療をどう見るかという問題にも絡むと思い ますが、ご意見はいかがでしょうか。 ○水野班員 これが非常に私は悩んでしまいまして、当初は土台となっているのが第三者 提供意思の上に、それが前提としてもちろんある。その上でプラスの条件として親族提供 意思を乗せることができるかどうか。そのオプションがつけられるかどうかだけの話だと 考えて、オプションの部分が駄目になったら土台に戻ると一度考えてみたのですが、やは り親族以外にはあげたくないというのは、オプトアウトなのではないかという気がし始め ました。そうすると、そのオプトアウトの意思というのは、認めざるを得ないかなという ふうに、まただんだん揺れてまいりました。  先ほどからの議論の中で、丸山先生が「死者の自己決定」と言われまして、自己決定に 従う形で、できるだけ生かすという議論をされたのですが、これは私の専門民法です。民 法の立場から言いますと、死者には意思はないというのが原則です。生者の自己決定、生 者の意思というものは非常に重いのですが、死んでしまった人間は意思を持たなくて、そ こは大きな線が引かれていて、ただ、我々の制度設計の中で死者が何らかの意思表示を残 していたときに、我々がそれをどこまで受け入れてあげるかというのが、例えば遺言でも 遺言事項というように法定されたもの以外のものを残していても、そんなものは全部無視 されてしまいます。だから死者の意思と生者の意思は大きく線を引かなくてはならないの で、死者の自己決定をできるだけ叶えてあげるという理屈は通らないと私は思いますが、 ただ、オプトアウトという意思は、制度として我々がかなり尊重しなくてはいけないかな という気がしておりまして、そこで実は悩んでしまっていますので、ほかの先生方のご意 見を伺いたいと思います。 ○町野班員 悩まれている上で私もさらに考えさせられています。前段に言われたことを 民法では「死者の自己決定権というのは基本的にないのだ、生者と違うのだ」と、それは 民法の常識だろうと思いますが、刑法でもこれは常識です。医事法ではもしかしたらこれ が常識ではない、そういうあれなのです。その点はあとでもう1回出てくるだろうと思い ますが、水野先生に確認したいのは、もしいま例えば親族にだけ優先提供をしたいという 意思がはっきり示されていたときについては、その親族がその中に登録をして、しかも適 用していたときについても、それは最初からアウトがあるということで見るのでしょうか。 つまり、それは移植できないということなのでしょうか。これ皆さんの頭の中にあるのは、 これ空振りで、結局親族にしか提供しないといっているのに親族がいなかったときどうす るかということを議論されています。  もし、水野先生のご意見ですと、親族にしか提供しないということを言っているという のは、一般的にそれ以外の人には提供をしないという、第三者提供の意思についてはアウ トだということですから、土台がなくなって上に乗っているものも一遍になくなることに なって、このときも提供できないということになるのが、私は筋道だと思うし、私はそれ でいいのだなという具合に実は思っています。  これもかなり悩みましたが、おそらくそうだろうと思います。それは提供の意思が本人 が言っている以上認めろという議論ではなくて、ある意味で第三者へ提供するという、い わば共愛の精神をもっていて、いま流行の言葉で友愛の精神をもっていて、その上でさら に、その中でこちらに優先してもらいたいという。基礎となる友愛の精神が欠けている意 思は駄目だというのが現行法の考え方ではないだろうか。そして、私はそのように考えま すが、水野先生はそこまでのお考えでしょうか。 ○水野班員 つまり親族だけにしかあげないというような意思表示は認めないという、そ れは非常にすっきりはしていると思います。 ○町野班員 すっきりとしていると言われると、私は自信が歪むのですが、私はこれが正 しいと思います。 ○新美班長 いまのご議論は、「だけ」というのが明確であるという話なのですが、現場で はそういった何々だけという表示について、遺族とやりとりをして、「第三者でもかまいま せんよ」という可能性は感じ取れますでしょうか、いかがですか。そういうことは現実に はないと思いますが、現場でやりとりをしていて、そういうような話は出てくるでしょう か。 ○芦刈参考人 本人の意思表示が限定的に書かれている中で、まず基礎の部分として第三 者への提供が前提であって、万が一、優先的に親族が挙がってくればということを説明し た上で、家族は「では、そうしましょう」と判断をして承諾する可能性は当然ありますが、 ただ、その前提として本人の意思表示がそれで有効なのかどうかというのは、また別の問 題だとは思います。 ○新美班長 解釈テクニックとしては、第三者提供については、意思が不明確だという処 理をして、遺族の判断で提供するという可能性としては残る。このいただいた資料の中で 3頁目の※は、この内容のガイドラインがいまあるということですか。 ○長岡補佐 現在では提供先を指定した場合には、有効な意思表示とは取り扱わない。こ れは第三者提供が現在の法律では大原則ですので、どなたかを指定するという意思表示は 認めないということで、ガイドラインとして取り扱っているということです。  今般の法律改正において、6条の2の形で資料4の1枚目に付けてありますが、こちらで も、まず第三者提供の意思のところの第6条の1号は特段変わっていない。それに付け加 えられる形で、優先提供の意思表示の規定が設けられている。6条の1号の意思表示があ って、それに併せて親族に対して優先的な提供意思をお示しすることができるということ で、今回法律が改正されているという理解をしています。  いまのお話ですと、例えば第三者への提供が拒否だということがわかる事例になります と、第三者への大本の提供意思というものもありませんので、親族への優先提供の意思も やはりないのではないかというような解釈が、1つ成り立ち得るのかなということで考え ています。しかし、バリエーションとしては明らかに提供意思がないという方は、こちら でいいと思うのですが、例えば長男にあげたいとしか書いてないとかいう場合ですと、例 えば6条の1号の意思を理解した上で、6条の2の優先提供意思を表示したという余地もあ るのかなと思うのですが、拒否が推定されるという、先ほど本山先生からご指摘があった ような事例については、やはり大本の意思表示がないのかなということで考えているとこ ろでございます。 ○町野班員 確認ですが、意思表示がないばかりではなくて、アウトだということでしょ う。  ○長岡補佐 そうです。 ○町野班員 結局、現在のここにあるガイドラインと同じ趣旨になるわけですね。  ○長岡補佐 はい、おっしゃるとおりです。 ○町野班員 その限りでは、現在の運用の仕方を変えるものではないということですね。 ○長岡補佐 はい。 ○丸山班員 理論的には説明できるかもしれませんが、普通の者が想定されるのと違う方 向にいっているような感じがしますので、あまり発言したくなかったのですが、先ほどの 町野先生がおっしゃった共愛の精神に基づく制度だから、それに基づかない形でドネーシ ョンがなされると効力が認められない、6条1項の枠組みに入らないから効力はないとい うのはおかしいと思います。第6条と第6条の2を読んでそういうふうな理解をする人は、 セオリストの町野先生と水野先生などの法律学者に限定されるのではないかと思います。  結論からいうと、特定の人以外の者には提供をしたくないということであれば、その特 定の人に提供されるか、その人がレシピエントとしてもらえないということであれば、提 供はレシピエントがいないというので、摘出しても甲斐のないことで無効というのが普通 の読み方だと思うのですが、先ほどの共愛の精神の枠組みがなければ、この6条1項の提 供意思を認めないというのは、そういう見方もできるでしょうけれども、そういう見方を しないこともできるので、そういう見方をしない立場で6条の2が入ったというふうに私 などは捉えるのです。  ですから、1つの見方ですべてシャープに割り切ると。これまで町野先生は臓器移植委 員会でずっとそれで立論をされてきましたが、国会でA案とB案の中で6条の2が含まれ、 それなりの賛同を集めてきたということであれば、その理解を容認する。なるべくドナー となる道筋を減らさない解釈が、今後のことを考えても重要ではないかと思いますし、意 思表示をされた本人、意思表示をなさるときは生前なのですが、これは法律行為ではない から意思表示と言わないという注意は受けなければならないかもしれませんが、本人の希 望を生かしてあげたいと思います。 ○新美班長 ほかにいかがでしょうか。根っこが駄目なら全部駄目という議論と、やはり そういった特定人だけというのも生かしたらどうかという意見ですが、ほかにご意見ござ いますか。 ○水野班員 あまりこれ一緒になって議論していてもと思ったのですが、町野先生のお考 えに私はかなり引かれております。このことがなぜいままでこれだけ匿名で、そして、ヨ ーロッパ諸国などでも相対であげることを封じてきたかというのは、それだけの重さと必 然性があったということなのだと思います。通常のもののやりとり、贈与ではなくて、人 間の生体を脳死状態で臓器移植をすることが、それが特定の者を目指して「あなたにあげ る」という形のものを入れてしまったときに起こるものすごい弊害のリスクがあります。  それを考えたが故に、全体の友愛の精神でということで、はじめて可能になって制度化 されてきたという、そこのリスクを十分にわかっていないで、どうも相手によって親族優 先が入ったのかなという気がしているぐらいなので、これは素朴に読むと、そういうこと を可能にしようというのではなくて、臓器移植というものの制度設計全体がはらんでいる リスクを考慮しながら、なぜそれが友愛のということで匿名でという形で、専ら医学的な レシピエントの基準だけで行われてきたのかということのリスクを、町野先生などはよく おわかりなわけですが、それをそう簡単に崩してしまうのは、とても危ないという気がい たします。 ○丸山班員 そういうリスクが存在しないとは言わないのですが、それならそれに対応す る制度を作ればいいので、それがあるから元からそのタイプの意思表示をすべて無効にす ることで対応するというのは、8年前の十何例目の事例の際に、町野先生の主張が結局は 委員会を制してガイドラインの1つに含められたのですが、おそらくこの6条の2という のは、その反作用だと思うのです。  それまで2腎のうちの1腎が本人の意思があれば親族にいっていたのが、それでできな くなった。それを改めようというのでその6条の2を設けられた、あるいは提案され、賛 成された方がそれに伴う危険、リスクを十分わきまえていなかったというのであれば、そ れでそのタイプの意思を全部否定するのではなくて、可能な限りの対応を尽して、なかな か言葉は難しいですが、私はあの「自己決定」という言葉はあまり最近使わないようにし ているので、本人の希望・意思を生かしてあげる、満たしてあげるという扱いを工夫する のが、法律が既に制定された後その運用を決める委員会の下部の作業部会の役割ではない かと思うのです。 ○新美班長 いまの丸山さんのお話もわからないわけではないのですが、従前の扱いの2 腎のうちの1腎は親族に優先提供するというのは、それはそれでいいのですが、この「だ け」というのは独占してしまうことを認めるわけで、そのうちの延長線上にあるというロ ジックとは少し違うように思いますね。 ○丸山班員 それはそうなのですが、そのときに問題となって、私も1回呼ばれて臓器移 植委員会で発言したのですが、そのタイプのドネーションの意思を生前に表明されたドナ ーの方について、適切な親族レシピエントがいないというので、意思を無効にした場合に おいてもドナーのプールというのは特に減らないのですね。むしろ親族にだけあげたいと 言っていて亡くなった方で、その親族、一親等、配偶者に適切なレシピエントがいないと いうことで、第三者にネットワークを通して回すということであれば、私などから見ます と、本人の意思を超えて1人ドナーが増えたということになってしまうのではないかと思 います。 ○新美班長 そうすると基本的には、何々だけで限定してやるという意思表示は認めない ということですね。要するに何々に限るといっても、それは単なる親族優先提供の意思表 示と読み替える。限定という意思表示は読み替えてしまいますよという提案ですね。そこ まではいかない。 ○丸山班員 いま私はその趣旨で極端に言うと、最初の話に戻りますが、特定の人が明示 されてドネーションがなされて、レシピエントとして名指しされた、あるいは親族と表示 された方がいなければ、ドネーションは実際上空振りというか、意味がないという扱いに するということだけです。 ○新美班長 そうすると第三者にも回らない。 ○丸山班員 回らない。それは回すとすると、先ほど言いましたように、本人の希望を超 えて、第三者に提供するドナーを1人増やすことになると私などは考えます。 ○新美班長 最後のところがよくわからないのですが。 ○丸山班員 1人、親族にしかあげないと。親族にあげられるのならばあげたい。第三者 にはあげたくないというつもりで意思表示をなさった方が1人いらっしゃって、その人が 亡くなって、適切なレシピエントたる親族がいないときには、本人は第三者にはあげたく ないというつもりだったので、ネットワークを通した不特定の第三者に対する臓器の配分 には乗らないということだけです。 ○新美班長 それはドナーとして増えたわけでも何でもない。 ○丸山班員 だから、町野先生がそのご意見一本ではないかもしれませんが、少しおっし ゃった、もし特定人あるいは親族にレシピエントとして適切な方がいらっしゃらなければ、 ネットワークを通して第三者一般に配分されるという考えはないということです。 ○新美班長 いかがでしょうか。 ○町野班員 いちばん最後の例は、私はその趣旨で言ったつもりはないのですが、前のと きの話は別ですが。 ○新美班長 あとほかにご意見、これをあまりやるとあれですが、限定するというときに は、水野先生はちょっと悩んでいらっしゃるというので、町野先生はもう土台がなくなる から初めから全部この提供の意思表示がないと。優先提供ではなくて臓器の提供そのもの の拒絶と同じように扱ってよろしいということなのですが、それに対して丸山さんは可能 なかぎり生かすべきであり、特定人だけへの提供でも認めるべきだという意見だと思いま すが、この点についてどうぞ。 ○町野班員 問題はいくつかあると思うので、いちばん最初に確認させてもらった話で、 水野先生は全く同じではないというのは私はわかっていますが、私は親族にだけ提供をす るという意思表示があったときについて、仮にその親族がいたとしても、もう駄目だと。 そして、そこから先へは回らない。それに対して親族への提供を認めるというのは、特定 の人について認めると。そのときに空振りでいなかったときについては、私はそのときは 当然駄目なのですが、そのときにネットワークに回すのを認めるかという話ですね。それ が2番目の考え方だろうと思います。  3番目は丸山先生、もう1人しか認めない。それが本人の意思だという考え方ですから、 丸山さんのは私とは逆の意味で非常に徹底していますが、だから、逆の意味でそれぞれ不 当だと言いあうようなことですが、そういうことです。 ○新美班長 いまの町野さんの整理でよろしいかと思いますが、もう1つはいまの議論と 絡む、先ほど言ったように脳死の方の臓器を本人が排他的にコントロールできるというと ころまでいくのか。ご本人の意思をどこまで尊重すべきなのか、社会がどう扱うべきかと いう問題だと思うのです。 ○町野班員 すみません。脳死だけではないということ、心臓死もそうです。 ○新美班長 しかし、基本的にはいまいったような死体からの臓器について、誰に、要す るに全く私権と同じように排他的なコントロールを認めるべきなのか、社会がどう対応す るべきかというところに大きく分かれてくると思うのです。  丸山さんはどちらかというと、ご本人の希望に添うだけだと言いながら、基本的には排 他的なコントロールを認めていいではないかというところに、結論的には落ち着く。町野 先生はむしろ社会全体の対応の問題だから、個人が排他的にコントロールするのは認めな いというところだと思うのですね。これはどちらも理屈としては割り切れると思うのです が、それをこの中でどういうふうに考えていくかということだと思うのです。町野さんが お示しになった第二の折衷的な説で、理論的には中途半端だと言われる可能性もあります が、その可能性もないわけではないと思いますが、いかがでしょうか。  先ほど私が言ったのは、何々だけという限定なんていうのははじめから読み飛ばしてし まえと、単なる優先提供の話だと読んでしまえという、いわば強権的な解釈もあり得るの ではないかということは、中間の道をと思ったのです。 ○町野班員 それはおそらく丸山さんも反対されることだと思います。本人の「ノー」と いうのがこれだけ明らかなときに提供させることは、私もそれは認められない。 ○新美班長 私がそこで申し上げるのは、コーディネーターが話をしていく中で、絶対に これ限定だけですよという町野説を出して、一切提供しませんと。レシピエント選択基準 にも当てはめませんといったら遺族がどう反応するかでしょうね。その辺は感触としてい かがですか。 ○芦刈参考人 それはご家族の立場から見ると、受け入れられないではないかと思います。 説明も私どもとしては現実は非常にやりにくいです。ただ、6条の2にあるように、親族 への優先提供は臓器提供への意思表示に併せてということが前提であると、これは法律で もう既に定められている内容であるという前提に立つのであれば、それは非常にしにくい ですが、そういった説明は家族にせざるを得ないのかなとは思います。 ○新美班長 そのときの反応いかんで別れていくことになるのですかね。現場のいまのお 話を伺うと、法律で提供の意思と優先提供の意思とはセットになっていますよと、第三者 にいくことも前提で、その中での優先だということは説明をせざるを得ないわけですね。 そのときに第三者は初めから嫌だというと、もう提供の意思がないことになりますよとい う説明をしたあと、遺族の方がどう反応するかということになろうかと思うのですが、現 場と現実にはそこで別れるのでしょうね。やはり一切嫌だという人も出てくるし、第三者 へもいいですけれども、とにかく家族へという対応も出てくるだろうと思うのですが、そ の辺はどうですか。理論的には中途半端ではないかというかもしれませんが、ダイナミズ ムを考えると、そういうプロセスもあるかなと思うのです。 ○町野班員 いまのお答えにありましたとおり、そういうプロセスは私は好ましくないと 思うのです。やはりどちらかに決めておかないと現場では動けないという話だろうと思い ます。 ○新美班長 すると限定があったら、一切扱わないということになるということなのです が。 ○町野班員 だからその限定があればという話です。そうではないという具合にするかと いうことを決めておかなければいけないので、現場がどちらに動くかによって、移植をし てもいいか駄目かと、そういう話になるわけです。 ○新美班長 ただ、限定の意思が明確かどうかというのは、ご本人がどういうつもりだっ たのか、遺族に話を聞かないとわからないだろうと思うのです。 ○水野班員 それはちょっと考えにくいですが、どういう意思表示の仕方をするかという 手続論はいま別にするというご議論ですから、仮定のことであらゆる意思表示のものがき ちんと残り得るということで、自分はこの親族にだけあげたい、それ以外の他人には一切 やりたくないと明示的に書かれている意思が確実に残っているという前提での議論ですの で、そういうのが確実に残っていたときに丸山先生は、そのとおりにしてあげようという ご判断で、町野先生はそのようなものは土台が駄目なのだからオプトアウトだというふう に考えられて、新美先生はその人にあげられなければ第三者にいく。そして、そのような 本人の意思とは多少違うのだけれどもその部分の安全性を、先ほど新美先生のご発言は、 そのような曖昧なことをというふうに町野先生が受け止められましたが、遺族のビートで 担保する、危険を担保するというご提案だと解すれば、これはあり得るかなと思います。 遺族が判断して決めるというのは、ご本人がどう望んでいたかということを決めるのでは なくて、本人ははっきりそう書いていた。そして、その人にあげられない。したがって、 遺言の解釈としては第三者にいくことになるのだと読んでしまう。しかし、そのことのリ スクについては、遺族の拒否権によって担保するという制度設計というのは、考えられな いことはないと思います。  私はいちばん最初の判断はそちらのほうだったのですが、でもやはりそれはオプトアウ トだなというので、またオプトアウトをそうしてより実体法的に読むことには無理がある かなと、遺族の拒否権で担保するにしても、意思表示の解釈としては少し無理があるかな というので悩みはじめたというところです。 ○新美班長 この辺について手嶋さんはいかがですか。 ○手嶋班員 どうもありがとうございます。いまのご議論をずっと伺っていて、立場をは っきり決めかねるなという感じをしながら、答えを出せるのかなと考えておりました。た だ、やはり移植医療というものが全体のネットワークなしではいまやたちいかないという 状況がある中で、移植機会の公平性をある程度考えていかざるを得ないということだろう と思います。そうであればドナーとなる方の意思を最大限尊重することは、態度としては あり得るとしても、どこかで社会との接点を考えていかざるを得ないのではないかとは思 います。  そういう点で提供の意思が特定の方についてのみという状況にあるときに、それは基本 的には考慮、あまり尊重されるべきでない側面もあるように思っていると、そのようなと ころです。 ○新美班長 そうすると根っこからなしにしちゃってもかまわないということですね。本 山さんいかがですか。 ○本山班員 大変悩んでいるのですが、中間的な道は私もないのではないかと思っていま す。どちらかではないかと思います。 ○新美班長 これも最終段階で、またご議論いただくことになると思いますが、一応大勢 は、根っこからなくなってしまう、限定は認めないという意見で、丸山さんのように、あ るいは私のようになんとか生かす道はないか、徹底的に生かせというのが丸山さんで、中 途半端な生かし方を提案したのは私ですが、いずれも単独説ということで、ここでは抑え ておきたいです。再チャレンジは次の機会に。 ○丸山班員 先ほどから「最大限」とか「徹底的」とかいわれていますが、私のいうのは、 「できるだけ」という雰囲気なのですが。 ○新美班長 わかりました。別段、丸山さんの1つのレッテルを張っているのを祭り上げ るわけではないですが、議論の対立軸として出しただけです。  この問題ばかりを議論してきたのですが、年齢等については、提供の意思表示は15歳で あることは変わらないので、優先提供についてはそれと合わせるかどうかですが、いまま ではほとんど同じような、それでいいではないかという暗黙の了解があったような気がし たのですが、何かほかにご意見はありますか。提供の意思表示と優先提供は、揃えるとい うことでいいですか。あと、受ける側のレシピエントについては、特に年齢制限は法律に も何もないですが、これは設ける必要があるかどうかというのが第一です。受けるレシピ エントが意思表示できなければ、親権者なり何なりが代わって意思表示をすることは通常 の医療と同じだと思いますが、その点についてご意見がありましたらよろしくお願いしま す。レシピエントの意思表示ができないから移植できないといったら大問題になってしま う気がするので、これは保護者、親権者に委ねるということでいいのではないかと思いま すが、この辺はいかがですか。                  (異議なし) ○新美班長 ご了解いただいているということで、よろしいでしょうか。随分意思表示の 表示のことでご議論いただきましたが、いままでのところをまとめていただけますか。 ○峯村室長 まず、特定親族の関係ですが、親族優先の意思については「親族」と表示す ることを原則とするという委員の先生方の意見が多かったところですが、一方で個別に特 定の指定をして、意思表示をすることを認めるべきであるという意見があったと思ってい ます。範囲外の指定の件については、親族優先提供の意思は無効であると解さざるを得な いのですが、土台となる提供意思は有効であるということで、第三者への提供の過程を考 えるという意見で、概ね先生方の意見が示されたと考えています。  限定の提供については、さまざまな議論がされたわけですが、もともと提供意思自体が もうないのだということで、親族だけに提供するという限定提供の意思表示については、 第三者への提供意思もないし、親族優先提供意思もないと解するという意見が多数あった のですが、一方でそういう提供意思といったものについても生かすべきである、認めるべ きであるという意見。あるいは遺族との関係で、そこは判断をして、第三者提供への道筋 といったものを考えるべきであるという意見も一方ではあったということです。また、年 齢については移植について、親族優先提供の意思表示ができる年齢としては、そもそも臓 器提供の意思表示と同様に15歳以上の意思表示を有効とする。また、レシピエントとなる 方の年齢については、特段それについて制限は設けないという結論だったと理解していま す。 ○新美班長 ありがとうございます。例によって、司会の不手際で1つ目の問題だけで予 定された時間を過ぎようとしていますが、あと少し延長させていただきたいと思います。  今度は親族の範囲ということで、先回以来陰に陽に出てきて議論されていて、暗黙の了 解があるかないかのような状況ですので、これは事務局の説明もごくごく簡単にしていた だいて議論に入っていきたいと思いますので、議論のきっかけを作る意味で、事務局から ご説明いただきたいと思います。 ○長岡補佐 資料4の4頁目と、参考資料で親族の範囲を記しましたカラーの横長の紙が あるかと思いますので、そちらをご覧ください。  親族の範囲Iを参考資料で記したものは、民法の第725条に規定されている親族の範囲 です。具体的には六親等内の血族、配偶者、三親等内の姻族ということとなっています。2 番目は、提案者答弁のご紹介です。下線部のみを読み上げますが、「レシピエントとなれる のはレシピエント登録をしている一親等又は配偶者に限る」という見解が示されていると いうことです。次に、現在生体移植で親族に対する提供が行われるケースがありますが、 これを日本移植学会の倫理指針からご紹介します。親族とは、六親等内の血族、配偶者と 三親等内の姻族を指すものとするとされていまして、民法の725条、こちらの絵と全く同 じ範囲ということとなっています。これらを踏まえまして、臓器移植法における親族の範 囲をどのように考えるのかということで、ご議論いただきたいと思います。以上です。 ○新美班長 ありがとうございます。図を見ながらご議論いただいたほうがいいかと思い ます。図でいきますと、一応河野議員の意見からいくと、本人、配偶者と一親等内にある 親子だけというのが議員の提案趣旨だったと思いますが、これよりも広げるべきであると いう立論をされる方、あるいはそれでいいのだという立論をされる方、その辺がまず議論 の分かれ目だろうと思いますが、どちらの立場でも結構ですので、ご意見をいただきたい と思います。生体間の移植と同じように、民法の規定と同じようにしてしまえという意見 がもしもありましたら、どうぞいただきたいと思います。 ○丸山班員 基本的なところは、河野太郎議員の意見を踏まえて、いまおっしゃった配偶 者、一親等でいいと思います。しかし、前回も言ったことですが、そういうふうに限定し て、それ以外の兄弟とかが、あとでこのガイドラインはおかしい、自分の権利を奪ったと いうことで責任を問われる可能性はないものでしょうか。これこそ、民法あるいは日本法 の解釈論をなさっている方に、条文は親族と定めていて、その適用は大幅に狭いですよね。 そういう運用で構わないものかというところを確認させていただければと思います。 ○新美班長 いかがでしょうか。 ○大宮参考人 これまで臓器移植ネットワークに寄せられた親族提供の指定先というのは、 兄弟というのも非常に多いですが、この中に含まれない理由や、それに足りる何かを教え ていただければと思います。 ○新美班長 兄弟間の移植というのも認めていいのではないかという例が多いということ ですね。この点について、それも踏まえてご意見がありましたら。まず丸山さんのほうか ら出た、きちんと法律に親族と書いてあって限定して、そのあと責任追及されてディフェ ンドできるかどうかという、法律家としてごくごく全うなご疑問ですが、これにどなたか 答えていただけますか。水野さん、お願いします。 ○水野班員 この親族という規定の成立ちをざっとご覧いただきましても、ほとんど直系 ですとこの世に同時にいることはあり得ないという、非常に幅広いものになっています。 この第725条のルーツは、もともとヨーロッパ法の相続権の規定から来るもので、ヨーロ ッパ法の相続権はできるだけ相続人の範囲を広く取りまして、相続人なしということをし ないようにというので、ドイツ法などは無限相続で無限に広がりますが、フランス法はそ れをもう少し狭めていて、そこがルーツです。そして第725条の親族一般というものはも のすごく広範囲ですから、それを主語にした条文というのは民法典の中にいくつかありま すが、ほとんど利害関係人誰でもいいというのと、同義の条文しかあり得ません。つまり、 親族に何らかの主体を限定する意味を持たすには、第725条の範囲は広すぎます。  戦前は家制度の家族会の親族会の範囲をこの中から選ぶというもので、ある程度意味が ありましたが、現行の中に残っている親族というのは例えば重婚の取消権とか、親権喪失 の申立権とか、公権力の発動を利害関係人が促す場面でしか使われていません。そして、 具体的に親族の範囲内に何らかの権利があるようなときに、親族という概念は広すぎて使 えない概念です。常に、何親等内の親族というふうに、さらにその上に制限をかけた上で ないと、法律の条文としては使いものにならないものですから、生体間移植のときに本当 ならばもう少し区切ったほうがよかったと思います。だから、合理的に第725条の親族と いうのを何らかの権利を与えて使おうとするのであれば、その範囲を狭めざるを得ないも のだという議論が当然できると思います。これをどこまで狭めるということを、どのよう に正当化するかというのはなかなか難しいところですが、立法者意思というので狭めると っかかりがあるとすれば、親子と配偶者というのは妥当な線であろうと思います。 ○町野班員 質問ですが、現在の法律の中で、ここでは何親等内とか、これに限るという ような親族に限定を加えた上で規定しているものの例がありましたら、お教えいただきた いです。 ○水野班員 それは直系の親族だけに限るとか、同居の親族に限るとか、そのような縛り 方というものの民法典の規定はあります。 ○本山班員 成年後見の申立は、四親等内の親族となっていますよね。 ○新美班長 それは、一応限定するときは、明文で書いてあることは書いてあります。た だ、それは条文で限定していないから、それより狭い運用をしたときに責任を問われるか という問題になると思います。 ○町野班員 責任は、いずれにしても問われる可能性があるので、法律の議論としてはこ の法律、つまり今回の改正臓器移植法による親族というのは、こういうものだという前提 でなければ駄目ですね。運用で、親族というのは広いけれども、ガイドラインではこうし ましょうというのだったら完全な法律違反ですから、それはできない話ですよね。 ○新美班長 ただ、問題はこれがあったときに、どこまで確認していくのかという難しい 問題はありますね。 ○町野班員 確認の仕方をそちらのほうで伺ったらいいと思いますが、おそらく配偶者と 一親等なら確認は容易だろうと思いますが、もしこれをもう少し広げていったときはどう なるかという話ですよね。確認のときに何か手間取ることがあるかとか、そういう話だろ うと思います。 ○新美班長 先ほどの話からいくと、兄弟までは可能ですか。 ○芦刈参考人 実際の確認の方法ですが、公的書類ということになりますと、たとえ親子 でも配偶者でも住民票を取るとか、戸籍謄本、抄本を取ることになりますと、その時間帯 によってとか連休中とかの問題が出てきますので、どういう確認方法を取るかにもつなが ってくるかと思います。それと、兄弟・姉妹と親子、配偶者の確認については、戸籍まで いかないといけない可能性というのが、兄弟が成人して独立していれば高くなってきます。 そうなりますと例えば東京の病院に入院して、そこに集まっているのに新潟から取り寄せ ないといけないとか、北海道から取り寄せないといけないということがかなり発生してく る可能性はありますので、時間的な問題と現実的にその手続を取れるかという問題が実際 に絡んでいきます。 ○新美班長 ありがとうございます。 ○手嶋班員 先ほどのお話で、兄弟間で移植をしていただきたいというニーズが結構ある とお伺いしましたが、ほかに例えばここで一親等又は配偶者に限定するという結果になっ たとして、以後の議論になると思いますが、養子だったらいいということになったら、一 親等になるために養子縁組をする可能性が今後生じるようなぐらい、非常にいただきたい というニーズは高いものなのでしょうか。教えていただければ。仮定の上に仮定を乗せて いる話なので、答えにくいと思いますが。 ○芦刈参考人 この制度をよく知っている者であれば、それは当然可能になってくるでし ょうし、それを考える方が出てくる可能性があります。非常に限られた時間の中で、急遽 にやるということも出てくる可能性はあると思います。ただ、制度をよく知らないと難し いのかなとは思います。 ○峯村室長 事務局として、先ほど水野先生等から出た話に関連しまして、お示しした資 料では民法上の親族の範囲を外延としてお示ししているわけですが、臓器移植法の原則で ある移植機会の公平性の特色化という理解の下で、それを狭めていくことができるのかど うか。そういうことが一応含まれているのかどうかということをまず前提として、どこか らスタートして広げるのか。いわば最初の単位というか、そこについて例えば家族という か、そういった単位でどうしてどのようなものがあって、そこからどこら辺までを増やし て広げていくことで考えていくプロセスを取った場合に、いちばんコアになるところの家 族の法律関係にどのようなものがあるかを含めて、ご教授いただけましたらありがたいと 思っています。 ○新美班長 これは家族法の専門家が2人いらっしゃいますので、家族というものをどう 捉えていくべきかというお話だと思います。実は、いまあった話の裏には、血のつながり のあるのはいいけれども、配偶者は駄目よという意見もあると聞いていますので、そうい う話でいいのか、あるいは家族というもので命のやり取りを認めることになるのか、ある 意味で優先提供の根本問題に触れるところでもありますので、どうぞ水野さんから家族と はこんなものだということがあったら、お話いただきたいと思います。 ○水野班員 家族の定義は誰にもできないというのが、現在の家族法学のコンセンサスで す。戦前の場合には戸籍を基にした家という1つの家族があったわけですが、それを否定 されたあと現在、家族の定義というのは不可能だということになっています。そして民法 典は、家族の中核である配偶者、夫婦の関係と親子の関係をメインに定めるというのが、 現在の家族というものについての切緊のプロセス方法ですから、親子関係と配偶者関係と いう形で迫っていくというのは十分ありだと思います。  それから、民法学者としては、いつも民法は市民法の基本法だと言っていますが、親族 概念というのは常にどこでも、親族というのは民法の親族がイコールで適用されなくては ならないとは思いません。つまり、この法律上の親族の定義はこうであるということはあ り得る。それは、イコール民法の親族とはまた違う、何々法上の親族はこういう概念、民 法上の親族はこういう概念という切り分け方は、解釈論として十分なり得るだろうと思い ます。 ○新美班長 ありがとうございます。本山さんはどうですか。 ○本山班員 私自身、範囲を狭く考えることには非常にシンパシーを持っていますが、町 野先生のご指摘のように、この法律では「家族」という言葉と「遺族」という言葉と「親 族」という言葉が使われているわけです。家族と遺族については範囲はわからないけれど も、ガイドラインのほうでこの程度だろうということが言われている。一方、親族につい ては民法上のはっきりとした定義があるといったときに、使い分けをしているところを追 及されると非常に困ったことになる。これは使い分けした以上、民法の親族を念頭に置い た規定ではないのかというふうに取られてしまうのは十分あり得ると思っています。その 一方で、立法者意思ということからすると、これは非常に限定されているのだということ をガイドラインのような形で限定をかけることが本当にできるのかどうか。そういうこと をしてしまっていいのかどうかというのは悩ましいのではないかと考えています。  ただ私自身は、これはあとでもお話に出てくると思いますが、例えば養子縁組を使って しまえば、実際には兄弟でも祖父と孫でも、実際に子という範囲に入れてしまう親子とい う範囲を作ってしまうことができることを考えると、結局養子を使うとせっかく限定した ことの意味が失われてしまうと思っているので、むしろそういうところも制限していって、 親族という範囲を非常に狭く、現在なんとなくコンセンサスとしてある配偶者、親子間ぐ らいに限定する理屈をうまく見付けることができるのかどうかというのを考えてみたいと 思います。 ○新美班長 いまお二方のご意見を受けて、ほかにご意見がありましたら。私も水野さん のご意見と同じように、ここでは優先提供に相応しいものが親族として何かという、目的 論的に決めていけばいいのではないかと思います。家族とか遺族とか言っているけれども、 それはそれぞれのコンテキストでの家族とか遺族という言葉の使われ方ですから、ここで は優先提供を受ける親族とは何かということを議論していけば、そんなに心配しなくても いいのではないかという気はします。民法の第725条に合わせる必然性はないのではない かと思いますが、こういう意見も含めて何かご意見がありましたら。 ○町野班員 気になるのは、これは法律ではないですが、移植学会の倫理指針が生体移植 について親族という言葉を使って、完全に民法にそれを移しているということです。した がって、生体移植のときのドナー、レシピエント関係をここに限定することと、親族提供 のときに非常に狭くすることが、いったい整合的かという議論は民法の解釈の問題だけで はなくて、それは必ず出てきます。だから、そのときのことを考えておかなければ、いず れにせよ心配は残るので安心はできないと思いますが、そのことは考えておかなければい けないだろうと思います。生体移植のときというのは、親族というのはそこまで広く取っ ていいかがかなり問題ではありますが、親族の間で臓器のやり取りがされることについて は、おそらく経済的なインセンティブが働く度合が少ないだろうということで、まず枠を かけているという話です。臓器移植法のほうは経済的な問題ではなくて、立法者の意思に 従うと親子とか兄弟と非常に近い関係で、命のやり取りと言っては何ですが、生命につい て助け合うことでしか説明できないのではないかと思いますし、もしそのような考え方を 取ると非常に近い関係に限るべきだと。おそらく、一緒に生きている共同体みたいなあれ ですから、共に生きるというあれに限られることになるのではないかと思います。 ○新美班長 ありがとうございます。ほかにご意見はありますか。 ○芦刈参考人 一親等・配偶者、親子・配偶者という範囲に限定するということであれば、 それはそれでいいのですが、実際に現場の家族のニーズとしては兄弟・姉妹ということが あります。その中で、兄弟・姉妹はなぜ駄目なのかということを合理的に説明をして、家 族が納得ができることが必要になってきますが、その点を是非教えていただきたいです。 ○新美班長 兄弟・姉妹を排除する理由というのはなかなか難しいということだと思いま すが、その点についてはいかがでしょうか。 ○町野班員 私は、いまのように本当に2人で一心同体で生きていく関係に限ったのでは ないかという話だと思います。親族というのを非常に広いことを考えていたのは、昔は考 え方としてもっと広かったということではないかと思います。いまは、非常に小さい単位 というものについてだけそう考えて、これだったら問題ないという考えなのではないかと 思いますが、そこは民法の先生にお伺いするしかない。 ○新美班長 確かに兄弟間、特に幼い子の兄弟間というのはあり得る話の気はします。例 えば双子のときにはあり得ることですが。 ○水野班員 私も、兄弟というのは線を引くのはなかなか苦しい。養子は認めるべきでは ないと思っています。親子ですが、日本の養子法というのは非常に間口が広いので、養子 という枠組を使っていろいろなことができて、いろいろなことをして、例えば同性婚にも 養子縁組が使われますし、それ以外にもさまざまな目的で養子というのは使われますから、 養子を認めてしまいますと臓器売買に大きく近づくと思いますので、養子は反対ですが、 兄弟・姉妹に広げたいというご意見が強いようでしたら、そちらのほうがまだましという 気がします。 ○峯村室長 事務局からですが、いま養子の話も少し出ていることも踏まえまして、もし 差し支えなければ養子と事実婚の論点も併せて紹介させていただいて、ご議論いただけれ ばと思っています。 ○新美班長 それでは、その点の論点を紹介してください。 ○長岡補佐 4頁のIIが「養子」、5頁のIIが「事実婚」となっていますので紹介したいと 思います。まず養子の部分ですが、民法上の養子がどのような扱いとなっているかという のが1番目です。民法上、養子は、養子縁組の日から嫡出子の身分を取得して、養親及び その血族との間においては、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずることとされてい ます。また、特別養子縁組というのがありますが、これにあっては、養子と実方の父母及 び血族との親族関係は、特別養子縁組によって終了する。すなわち、実際の生みの親との 関係は切れまして、養子縁組先の親との血族関係というものが生ずることになっています。  これを踏まえまして、2番目の「臓器移植法における養子の取扱いについて」ですが、 この趣旨が提案者の答弁によりますと、「生活をともにしていく中で強い信頼と情をはぐく んできた家族には少しでも長く生きてもらいたいと願うことは人が持つ自然の感情として 十分理解できる」ということで答弁がなされていますが、これを踏まえまして、臓器移植 法の親族への優先提供における養子についてはどう考えるのか、というご議論をいただき たいと思います。  次は事実婚です。同じように、まず「民法における事実婚の取扱いについて」の説明を しますと、法律婚の効果の中でこちらに5つ挙げています。同居・協力・扶助義務、貞操 義務、婚姻費用分担義務、日常家事債務の連帯責任、夫婦別産制と帰属不明財産の共有推 定といったものなど、夫婦の実質というものがあれば保障する必要があるというような効 果を認めているということです。他方、取引の安全等を考慮して、画一的に決まる必要の あるようなもの。具体的にはここに6つ挙げていますが、氏の変更、成年擬制、子の嫡出 性、親権の所在、姻族関係の発生、相続権といったものについては画一的に決まる必要が あるということで、事実婚には認めていないという扱いになっています。これを踏まえま して2番目にありますように、先ほどの答弁そのものを書いていますが、こういった答弁 を踏まえまして、親族への優先提供における事実婚の扱いについてどう考えるのかという ことで、ご議論をお願いしたいと思うところです。以上です。 ○新美班長 ありがとうございます。やや論点が広がりましたが絡んでいますので、養子 も事実婚の問題についてもご議論いただきたいと思います。水野さんは養子は反対だとい うことですが、特別養子はどうしますか。 ○水野班員 特別養子は非常に要件が厳しくて、幼い子どもを実子にする。そして、実親 との関係を完全に切ってしまいます。実親との関係を完全に切るというのが一般養子との 大きな差ですが、審判によって形成されるものですので、特別養子についてはあまり心配 はないと思います。 ○新美班長 養子でも、特別養子は実子と扱って構わないと。 ○水野班員 実子と扱って大丈夫だと思います。 ○新美班長 この点についてどうでしょうか。 ○本山班員 私も全く同じ意見です。通常の普通養子は認めない。 ○丸山班員 いまの点は異論ないですが、一歩進めてややこしい話になるかもしれません が、移植目的で結婚するというのはどうなのでしょうか。患者が70歳で、その人が別の姓 の25歳の方と結婚してというような場合は、普通養子と同じような心配はないというふう に理解していいのか。そのあたりの説明も用意しておいたほうがいいかなと思います。 ○水野班員 それは非常に難しい点ですが、在留資格を取得する目的の婚姻というのとパ ラレルになってくるかと思います。その婚姻が、本当に夫婦になるという意思がなくて、 いわば仮装であるということになると婚姻としては認められないことになりますが、非常 に難しいのは、そのような仮装婚であることが移植の現場でわかるかどうかということで す。 ○丸山班員 いま年齢を飛躍させて言ったのですが、60歳代の患者と30歳代のドナーと なる可能性、生体移植で移植学会の基準を満たすために結婚をというような事例がありま したもので、そこでいま水野先生がおっしゃったように仮装であるという証明が難しいの です。どうしたものかと頭を抱えたことがあったので、何かいい対応があれば。逆に言う と、このままですと普通養子は認めずに、法律婚は認めるということになりますが、その 年齢差が特に非常に離れている場合に、現場がなんとか対応する必要が出てきますので、 そのあたりがどうなるのだろうというのが心配であります。 ○水野班員 1つの方策ですが、立法者意思がともかく非常に親しく、「生活をともにして いく中で強い信頼と情をはぐくんできた家族」という定義から言いますと、婚姻の期間を かけてしまう手はあるかと思います。一定の婚姻期間を経ている夫婦でなければ駄目だ、 という要件をかける手はあるとは思います。 ○本山班員 私も、1つは共同生活の期間みたいなものがあるのと、もう1つ考えたのは レシピエント登録の前に、婚姻していることがあるのではないかと思います。つまり、レ シピエント登録しても、なかなかドナーが出てこない。だから、婚姻して手配するのだと いうことを阻むために、もともと婚姻していて病気になってレシピエント登録した場合の もともと婚姻している配偶者であれば、それはOKといった分け方はできるのではないかと 思います。つまり、要はいつ婚姻したのかというのは戸籍を見ればわかるわけですよね。 それから、レシピエント登録をいつしたのかというのはネットワークなどでわかるわけで すから、そこで判断するのもあり得るのかなと思いました。 ○手嶋班員 婚姻期間なり、婚姻期間を入れるというのはよくわかりますが、かなり長い こと事実婚が続いていて、法律婚にあったのはごく最近というパターンをどうするのかと いう話は、たぶんそのご提案からは若干なお検討の余地があるように思いますが、その点 についてはいかがでしょうか。 ○水野班員 事実婚について、まず認めるか、認めないかということはありますが、事実 婚について認めるという選択肢も十分にあり得ると思います。事実婚にこそ、同居期間と いうもののしっかりしたある種の立証を求めないと、法律婚の場合、少なくとも戸籍に婚 姻歴が付いてしまうというデメリットは、移植を受けられるためならばたやすく乗り越え るのかもしれませんが、事実婚の場合ですとそれすらないことになりますので、かつ事実 婚というのは非常に曖昧。これも余計なことになってしまいますが、民法における事実婚 の取扱いについてここに書いていただいたのは、現在の通説的なものではあります。ただ、 事実婚の扱いについては、現在の学説で非常に激しく対立して流動的になっていまして、 かつてはこの判例通説が確立したころの事実婚というのは、足入れ婚とか戦前の家制度の 下で、法定推定家督相続人同士でないと、法定推定家督相続人同士、後取り同士は結婚で きなかったものですから、そのような気の毒なケースというのを念頭に置いて、こういう 解釈論が出来上がってきたのです。現在では2つに分かれていまして、一方ではいまは婚 姻意思そのものがない人々にそういう障害はなくなっているのに、なぜ婚姻の効果を強制 するのか。それはおかしいのではないかという議論があり、もう片方では夫婦同時共生を 取っているときに別氏選択をする人々は事実婚たらざるを得ないので、そのような事実婚 には昔と同じように事実婚としての法律行為に近い効果を与えるべきだというふうに、三 つ巴になって、かなり議論が分かれている状態です。  現実の下級審の判例などは、内縁準婚理論というのが通説的なものですが、事実婚をで きるだけ婚姻に準じて扱うという内縁準婚理論が、下級審などではかなり流動化して、あ まりにも幅広く適用されていまして、例えばこれは内縁だということで保護が認められた。 でも、どうも実態はお妾さんというケースで、本妻さんがたまたまその直前に死んでくれ たので、内縁だといって主張してきたケースとか、下級審には随分そういうものでも認め られてしまっているケースがあります。そういう意味で、判例法上の事実婚の扱いという のは外延が広くなっていて、こういうものとして扱うときには相当要件をかけて、特に現 場ですから、「私は事実婚配偶者でした」といって名乗り出てきた人をレシピエントとして 受けられる人として認めてしまったら、混乱の極みになると思いますので、事実婚を認め る場合には、住民票で何年も一緒に暮らしていることが立証できるというような場合に限 定していく必要があるだろうと思います。 ○新美班長 いまのご意見ですが、ただ現実に優先提供する現場で、そういうことが要求 できるかどうかですね。そういう確認の。 ○水野班員 それは意思の登録に連動させて、それを前提に、そのときにも完璧な事実婚 配偶者であるということを立証させて登録をするのとセットでないと、なかなか事実婚の 問題は難しいだろうと思います。 ○本山班員 コーディネーターの方に伺います。いまの移植の現場でガイドラインの言う ところの配偶者には、事実婚というのは含めているものなのでしょうか。遺族及び家族の 範囲というときに。 ○芦刈参考人 これに関しては配偶者ということですので、事実婚は入っていません。 ○新美班長 よろしいでしょうか。いまの話をしていきますと、水野さんから明確に出て いない養子は、特別養子を除いては排除したらどうかという提案がありますが、この点に ついてご意見がありましたらお願いします。 ○水野班員 もし認めるべきだというご意見があるのだったら、共同生活の要件をかける べきだろう。共同生活ないし少なくとも相当の年限は、養子であるという要件をかけるべ きだと思います。そうでなければ、これは臓器売買に大きな道を開いてしまうことになる と思います。 ○新美班長 いかがでしょうか。町野さん、どうぞ。 ○町野班員 裁判に、要するに家裁の許可の代諾養子縁組を含めることは不可能でしょう か。 ○水野班員 未成年の養子。 ○町野班員 代諾養子縁組。 ○水野班員 それは若干悩ましいところはありますが、子どもの福祉というのが要件にな っていまして、代諾養子の場合には実親との関係が切れませんので、そのほうが子どもの 福祉になることになりますと、家庭裁判所は認めます。そもそも代諾養子の家裁の許可制 度が戦後に入ったのは、減少養子という形で売ってしまうようなケースを封じるためにと いうことでしたから、特別養子のような厳しい要件による許可審判ではないので、私は危 惧が残ります。 ○本山班員 おそらく、いま代諾の縁組というのは、ほとんど連れ子なんかの場合に使わ れているだろうと思いますが、離婚して子連れで再婚する。その子どもと再婚相手の間の 縁組みを、母親と母親は代諾することになるわけですよね。ただ、もちろんその場合にそ のあとずっと仲良く生活して、何十年も経って養父が臓器が必要な状況になったというこ とを考えると、一律に養子だから駄目だというのは確かに疑問が出てくる可能性はあると 思います。 ○水野班員 町野先生のご質問は、一般養子の代諾養子が通常の一般養子の枠組で、おそ らく未成年者の連れ子のような場合は家裁の許可は要りませんよね。家裁の許可が必要な ケースというご趣旨ですね。 ○町野班員 ……。 ○峯村室長 養子の範囲について、事務局が大体外延として考えているのは、実子がいち ばん結び付きが強いのですが、その次が特別養子縁組になるのであろう。いまお話があっ たとおり、未成年養子の中で家裁の許可が必要なもの、代諾養子縁組のものがあるのでは ないか。そのほかに、家裁の許可が必要ない未成年養子がある。再婚相手の連れ子のよう な場合です。あとは、その下に成年養子のようなものがあるのではないかと考えています が、その範囲でどこら辺を考えるか。家裁の許可があるのは、未成年養子の……そういう 制度がありまして、より家裁が完全に非常に強くコミットするのは特別養子縁組になりま すが、通常の血族間での養子縁組ですと、許可の要らない未成年養子という届出だけとい う形になります。先ほどの連れ子の場合もそうですが、そういった場合はどう扱うのか。 さらには成年養子をどう扱うのか。そんな形で、線引きをどのような理屈で考えていくの かということで、ご議論をお願いできればと思います。 ○新美班長 いかがでしょうか。養子というのは、本当に水野さんがおっしゃるように多 様な目的のためになされますので、どこかで紛れ込む可能性が高い。臓器売買に近いよう な形での養子縁組がなされることが高い。私は、裁判所がコミットしているのならば大丈 夫かと思っていますが、水野さんの話を聞くとそこまでは考えていないというお話なので、 ちょっと私も悩み始めたところです。そういう意味では、特別養子縁組に限るというご意 見も相当程度合理性があるなという気はしますが、ほかにご意見がありましたら。 ○芦刈参考人 現場で限られた時間の中で、どういった養子なのかということを確認する 状況を考えますと、非常に細かく分かれて、手続にこういう書類が必要、ここをこういう ふうに確認しないといけない。例えば、共同生活を確認しないといけないとなりますと、 こういう書類が必要。こういうものが必要というのを限られた時間の中で、いかにそれを 入手できるかというのは非常に困難になってきますので、できるだけそういった意味でシ ンプルにしていただくというのが、非常にありがたいと思います。 ○新美班長 そうすると、養子を認める人も同居期間というか、そういうことは入れない ほうがよろしいと。もっとバッサリと、あとで住民票なり戸籍を取り寄せて、養子である ことがわかるならそこで切って欲しいし、そうでなくて養子は駄目だということなら、そ れはそれで切って欲しいというご趣旨ですね。 ○芦刈参考人 はい。 ○長岡補佐 特別養子縁組の場合ですと、おそらく戸籍謄本、抄本を取った場合には、長 男、長女という形で書かれるかと思います。それ以外の養子については、養子又は養女と いう形で書かれますので、それは裁判所の許可があろうがなかろうが、たしかそのような 形になっていたかと思います。これが1点です。  もう1点は、家裁の許可がある、なしという部分ですが、他人の子を自らの養子にした いという場合には、家裁の許可が要ることは間違いないことだと思いますが、自分のお孫 さんとか先ほどの連れ子さんの場合は、自らの直系卑属という形になりますので、この場 合には許可が必ずしも必要でなかったかと思いますが、ここの点についてはいかがでしょ うか。ここは許可は要らずに、直系卑属については届出ということで大丈夫だったと思い ますが、そうしますといまのお話ですと少しずれてきてしまうのかなと。ほかの方のお子 さんを自らの養子にしたい場合には家裁の許可がありますので、これは認めますとなりま すが、例えば連れ子を養子にしたい場合は届出だけで大丈夫ということになりますし、い まの基準の家裁の許可というところで線を引くと、その方は入らないことになります。そ こは少し危惧するところです。 ○新美班長 いかがでしょうか。養子については、特別養子縁組を除いては消極説のほう がいまのところ強そうに思いますが、ここではそういう方向でとりあえず押さえておくと いうことでよろしいでしょうか。これはここで決定というわけではありませんが、一応そ ういう方向でまとめます。事実婚についてはどうしますか。確かに、法律婚か事実婚かと いうのはそう簡単には線引きができませんよというのはおっしゃるとおりですが、私は先 ほどありましたように、移植コーディネートの現場で明確なメルクマールがないような親 族範囲の確定の仕方というのは、大変な困難を強いることになるだろうという気がします ので、基本的には配偶者を含めるならばということですね。配偶者を含めないという見解 もあることはありますが、含めるとするならば法律婚に限定するという意見でいいのでは ないかと思いますが、その辺の皆さんのご意見はいかがでしょうか。 ○本山班員 私は新美先生と同じで、確認が困難であるということが非常に大きいと思っ ています。それから少なくとも、いまの社会では婚姻届を出すこと自体は非常に簡単に出 せるわけですので、事実婚というのは基本的に認めないということでいいのではないかと 考えています。 ○新美班長 加えて、水野さんの登録制度の中でやればいいのではないかというのですが、 登録でそこまで細かく調べられないのではないかということもあるものですから、法律的 にバッサリと決められるほうがいいのではないかということで、事実婚を排除したらとい う意見なのですが、いかがですか。 ○水野班員 それが大勢であれば、私は全然反対するものではありませんが、ただ現在の トレンドは、別姓当事者間に福島瑞穂大臣などが、これをなぜ法律婚と同視しないかとい うようなご批判はきっと来ると思います。 ○新美班長 それは重々了解しています。いま言ったように、実務の運用からいっても難 しかろうという観点ですね。決して、法律上の地位を差別するわけではないということは きちんと押さえておいたほうがいいと思います。あとは、ほかにご意見はありますか。事 実婚については、いま言ったようにこれも大体方向としては法律婚に限るという方向で、 とりあえず意見は収斂しつつあるということで押さえておいてよろしいでしょうか。  最初に戻りまして、親子、配偶者に限るということでいいのか、兄弟を入れるべきかど うか。兄弟まで広げたらということで、それ以上に広げたらという意見はなかったように 思いますが、その辺はいかがでしょうか。 ○手嶋班員 先ほど来のご議論を伺っていますと、立法時の提案が非常に重視される。一 親等又は配偶者に限定するというふうな明確な答弁がされているところで、兄弟・姉妹ま で広げることは、この委員会で可能と考えてよろしいでしょうか。それを確認させていた だいた上のほうがよろしいのかなと思いますので、質問させていただきます。 ○新美班長 いかがですか。これは冒頭に確認したのですが、重要な資料としては扱うけ れども、これにガチガチに固められるわけではない。だから、ここでどうしても一親等又 は配偶者に限ることについて、我々が兄弟まで広げたほうが、河野議員の趣旨としては命 の受け渡しというか、強いつながりのある家族共同体の中での受け渡しということですか ら、兄弟を含めてもいいではないかということで意見がまとまるならば、それはそれでこ の作業班で提案しても構わないと思います。親子、配偶者に限るという趣旨から見て、兄 弟まで広げるだけの合理性ないしは相当性があるかということだと思います。 ○峯村室長 国会での議論でも、親族の範囲等の細目についてはガイドラインで決めてい ただく。これは、そういう点で運用に関わる事項ですのでガイドラインに記載するわけで すが、その手続として臓器移植委員会で意見を伺うことになっています。臓器移植委員会 からこの作業班に、論点の整理ということで指示があったわけですので、この作業班でご 議論いただくことは差し支えないと考えています。 ○新美班長 いかがでしょうか。兄弟まで含めたらどうかという具体的な提案で、兄弟ま で広げる方向で、一応議論の方向性としては是認するということでよろしいでしょうか。 兄弟・姉妹までは、ちょっと無理というご意見の方は。 ○丸山班員 なかなか私の考えも理解してもらいにくいかもしれないのですが、親族への 優先提供というのは容認はされるべきだと思いますが、推奨はされるべきでないというの が私の考えですので、範囲はなるべく狭くということで、最初に述べられた配偶者と一親 等で限定するのがよろしいのではないかと思います。 ○新美班長 それは、優先提供そのものが極めて例外的だから広げるべきではないという 基本的なスタンスの問題になると思います。ほかにご意見はありますか。 ○手嶋班員 中間的な案ですが、兄弟・姉妹でも本当に密接な家族の世界についてのみ認 めるということであれば、例えば未成年の兄弟・姉妹間についてのみ認めるという方向も あるかなと考えますが、そういう可能性はいかがですか。 ○新美班長 その辺についてのご意見がありましたら。 ○町野班員 兄弟と書いてあるのに、法律の解釈として、それが可能ですかね。まさに行 政が決めたということでしかないですね。かなり難しいように思います。 ○峯村室長 事務局としても、そこはなかなか難しいところかなと思いますのと、提案者 意思を前提にした場合に兄弟までを含める、広げるという議論をするときに、その考え方 の理屈は必要になるのかなと思っています。 ○長岡補佐 補足をいいですか。提案者意思ということで、ご答弁をまた少し紹介したい と思います。親子又は配偶者という形で絞るのはなぜかという答弁の中で、まず移植の公 平性というものに少し例外を設けることになるということで、これはかなり厳しい枠をは める必要があるだろうということです。もう1点は、家族の情というものは理解ができる。 この両者を考え合わせた上で、一親等プラス配偶者ということで、その中に限り心情を考 えて認める。もう一方で、それ以上枠を広げることは公平性の観点から、現在ではあまり よろしくないという答弁もありまして、提案者自体も何人かいらっしゃるので、僅かにお 立場が違うところはありますが、1つのものとしてはこのような厳しい枠というお考えを 示されている提案者もいらっしゃるということです。兄弟という議論が出たかと思います が、その場合はある程度の理由づけと申しましょうか、こういう理由でいまの移植の公平 性、家族の情というものを考え合わせた上で、兄弟であればこういう理屈で認められ得る のではないかという形で、再度臓器移植委員会に上げてまたご議論いただいて、パブリッ クコメントなどを経た上で、最終的に決定すべきことになるかと思います。その点では、 理由づけというのがかなり重要になってくるのかなとは思います。以上です。 ○新美班長 ありがとうございます。ほかに、いまの点を踏まえてご意見はありますか。 ○町野班員 どちらに決めるべきかという問題は確かにありますが、問題なのは親族優先 提供の意思があったときに、それを遺族の側がノーということは非常に難しい話ですよね。 いわゆる、安全弁としてそれが働くことはないということだと思います。これは、通常の オプトインの場合についても、本人がイエスと言っている以上は基本的に認めるべきでは ないかとするのが通常なので、その限りでは確かに何回も繰り返されていますように、親 族優先提供を認めたということは、かなり問題のあることなのです。その中でどう考える かで、このときおそらくは家族によるノーとビートによって拒絶することはまず期待はし ないほうがいいと思います。最初からきちんと決めておいたほうがいいだろうと思います。 ○丸山班員 先ほどからお二人の方がおっしゃった未成年者の兄弟というイメージですが、 第6条の2は本人提供の場合ですから、15歳以上のドナーということになるので、本当に 小さい兄弟間でのやり取り、臓器の提供、移植というのは出てこないのではないかなとい うことを指摘させていただければと思います。たぶん、それでいいのですね。 ○新美班長 提供表示を書面に書いていて、そこの書面に同時に書いていなければいけな いということですから、15歳以上でなければこれはできないと。 ○丸山班員 その書面にあります。 ○新美班長 あとでね。少なくとも、優先提供の表示は15歳以上でなければできない。 ○芦刈参考人 親子、配偶者に限るという形で決めるということであれば、それはそれで 決まり事としてはいいと思いますが、例えば22歳がバイクの事故で脳死になった。親族提 供の意思表示があった。弟が心臓移植が必要だという場面で、親族提供をしたいという事 例があったときに、我々コーディネーターとしてその家族に「できないですよ」というこ とをきちんと説明をしないといけない。自分がその場面に入っていくことを想像したら、 もちろん考え方としてはわかりますが、公平性、厳しい枠をはめて、ただ家族の心情を考 えると親子、配偶者に限って認めるということは説明はできますが、家族が本当にそれで 納得できるのかというと、私自身はそういった説明をして家族の了解を得る自信というの が正直ないです。あえて、もうそこまでに限定したという明確な理由が、最終的には納得 は得られないかもしれないですが、家族に説明できるものがあれば、この範囲内という限 定にすることに関しては異論はありません。 ○新美班長 いまの現場の実情をお話いただきました。この点についてはどうでしょうか。 河野議員の説明の例ですが、これは法案として親族と書いた上で一親等又は配偶者という 説明をしたのか、法案のときに一親等の親族又は配偶者という表現をされていたのか、ど ちらですか。 ○峯村室長 法案の際に親族と書かれていて、提案者説明のときにその親族の範囲につい て、別の場合においては一親等という言い方をしていますが、親子及び配偶者という考え 方を示されているということです。 ○丸山班員 河野太郎議員が関わる発言ではなかったと思いますが、質問者のほうが、提 案者の言うように、配偶者、一親等に限るのであれば、なぜその文言を使わないのか。親 族という広く理解され得る言葉を使うのかという質問が出されています。それに対して提 案者のほうは、臓器移植法のほかの部分で、遺族、家族という広い外延を持つ言葉が使わ れているので、このような言葉を使ったと。私はこの理屈は説得的でないと思いますが、 そういう説明がなされていますので、意図的に一親等、配偶者に限ると考えながら、親族 という言葉が使われたと思います。 ○新美班長 ありがとうございます。兄弟を含めるかどうかはまだ詰まっていませんが、 大方の議論としては兄弟は難しいのではないかという意見が強いように思います。その程 度は半々ぐらいかまだ決まっていませんが、その辺は今日は留保しておきたいと思います。 あったように、一親等と配偶者という範囲にコアとしては決めておくということでよろし いでしょうか。この点については、ご了解いただいているということでよろしいでしょう か。 ○町野班員 私は、実はよくわからないところがあります。先ほどコーディネーターの方 が言われたのは、かなり大きなポイントなので、法律はこうなのだ、立法者はこうなのだ、 こう決めたのだということだけで通る話かということですよね。これをやりますとかなり 大変で、おそらくコーディネーターの方から私は賛成をもらったことはないので、かなり 大変だった記憶がありますので、再びそれを繰り返さないといけないと思います。ここで は簡単に言いますと、本来的には死後の臓器というのは皆さんのものなのだということで 出来上がっているのが現在の法律だと思います。したがって先ほどのように、誰かに提供 する、誰かにしか提供しないというのは認めるべきではないという考え方になるわけで、 その考え方を共有してくれるかどうかという話です。そして、そのときに臓器移植法がで きる前の脳死臨調のときの考え方の3本目の柱である、死体臓器についての公平、公正な 分配というのは、かなり重いものだったということです。それが、ある範囲で何か例外を 作る。私はこれは反対だったのですが、例外を作るのは非常に強いようなものに限るべき だということしかないだろうと思いますが、これはおそらく遺族とかご家族とか、そうい う立場から一遍に理解することはかなり難しいものだろうと思いますが、最低限コーディ ネーターの方には賛成しなくてもいいけれども、理解だけはしていただきたいと思います。 ○芦刈参考人 おっしゃることはよくわかりますし、公平、公正にこの移植医療は進めて いかなければいけないという原則は、当然私どもは理解してやっていますが、実際に現場 に立ったら非常に困るなというのが正直なところです。 ○新美班長 もし先ほどの例でいきますと、兄弟が臓器移植を受けるのが必要だ、優先提 供できませんといったら、親としてはノーという可能性は高いと思いますが、その辺は感 触としてはいかがですか。 ○芦刈参考人 当然ノーでしょうし、その場面で。 ○新美班長 第三者にということはなかなかいかない。 ○芦刈参考人 おそらくそれはいかないです。その脳死の患者も亡くし、もしかしたら移 植を必要な患者も亡くすという状況によりますが、非常に心情的には辛い場面でしょう。 ○新美班長 この兄弟の点については、先ほどまだ結論の方向性が出ていないとまとめさ せていただいたのは、現場の意見も我々はもう少しきちんと考えておく必要があるだろう ということで、少しペンディングにさせていただいたので、皆さんがお帰りになって、今 日は予定を1時間も過ぎているので頭をクールダウンしていただいたあとで考えていただ きたいと思います。  あと、確認の方法について、少し論点ということで事務局のほうでご意見があれば伺い たいと思います。 ○長岡補佐 最後の6頁目を簡単に説明して、今日は終わりということだと思いますが、 親族の確認方法です。1の生体移植。かなり端折って説明をしますが、現在は本人確認、 親族関係の確認は公的証明書で行うことを原則としていまして、それによることができな い場合は倫理委員会等において、関係書類に基づいて確認という定めとなっています。な お、その公的証明書といいますのは、通知によりまして戸籍抄本、先ほど来から出ている 住民票又は世帯単位の保険証とされています。これを踏まえ、臓器移植法において、まず は公的証明書における親族関係の確認が必要ではないかということです。また、公的証明 書が入手できない場合というものがありますが、この場合は親族の確認の手続として何か 考えられる方法はないのかということで、ご議論いただきたいということです。以上です。 ○新美班長 ありがとうございます。論点としては公的証明書が原則だけれども、それは まず確認していただいてよろしいかということと、それが取り寄せられない現場の実情を どうやってカバーするかということですが、前段の原則公的証明書というのはいかがです か。 ○丸山班員 生体間移植の場合の現場の体験談を聞きますと、これで親族関係は確認でき ますが、替玉でないかどうかは戸籍を見ても、住民票を見ても確認できないですから、写 真がいちばん手軽だろうと思いますが、免許証等での確認というのも不可欠ではないかと 思います。 ○新美班長 ありがとうございます。確かに関係を表す書面はあるけれども、それが本人 かどうかというのは証明がなかなか難しい。 ○町野班員 生体移植の場合とは基本的に違うと思います。生体移植の場合はこのガイド ラインの中にありますとおり、「親族に提供する場合には」と書いてありますが、親族以外 にやってはいけないということは現在の法律にはないのです。ただ、それをしているのが 日本移植学会の倫理指針でやっているだけということが1つですよね。  もう1つは、生体移植の場合は時間的な余裕がかなりあるという話です。ところが、脳 死臓器移植を中心としたそれらのものにはあまりないですから、この2つを同じように議 論することはできないだろうと思います。ただ、このときに先ほど話にありましたように、 むしろ替玉とかがかなり問題だったわけです。そのことでこれを作られたということです から、参考にはなりますが、特別に議論することはできないように思います。そう言いま すと、ますます公的な書面、現場の安定性というのを確保することになってくるのではな いかという議論はあります。 ○新美班長 確かに、やれるかどうかということは別として、本人確認が難しいという問 題があるのが共通していることは言えるかと思います。それを踏まえた上で、本人確認を どうするかという議論は、今後大きな論点として出てくると思います。基本的には公的証 明書を取りますが、いま言った保険証とか何かだけでいいのかどうか、あるいは、現実に はそれ以外は取れないということを踏まえて、本人確認の手法を今後どう考えていくかと いうことかと思います。ですから、取れない場合にどうするかということの議論を次回に していただくことにしたいと思います。  中身について、司会の度々の不手際で申し訳ありませんが、今日はこれくらいで閉じさ せていただきたいと思います。事務的な連絡を事務局からよろしくお願いします。 ○峯村室長 次回以降の日程については、各委員の日程を調整させていただきまして、決 まり次第文書でご連絡を差し上げます。お忙しいところ恐縮ですが、日程の確保方よろし くお願いしたいと思っています。次回はある程度、今日及び第1回の議論を踏まえて私ど もで整理をして、議論を深めていく形で考えていきたいと思いますので、よろしくお願い します。 ○新美班長 ありがとうございます。また事務局からいくつか論点別にご意見ということ で、メールなどでお伺いすることもあろうかと思いますので、是非よろしくお願いします。 そのことが、我々の班の会議の促進になると同時に、議論が深まって余計時間がかかると いうことになるかもしれませんが、是非ともよろしくお願いしたいと思います。司会の不 手際、重ね重ねお詫びいたします。どうも、今日はありがとうございました。 【照会先】  厚生労働省健康局疾病対策課臓器移植対策室  代表 : 03(5253)1111  内線 : 2366 ・ 2365