09/10/15 第4回新たな治験活性化5カ年計画の中間見直しに関する検討会議事録 第4回 新たな治験活性化5カ年計画の中間見直しに関する検討会       日時 平成21年10月15日(木)       10:00〜          場所 中央合同庁舎第4号館全省庁共用123会議室 ○楠岡座長 定刻となりましたので、「第4回新たな治験活性化5カ年計画の中間見直しに関 する検討会」を始めさせていただきます。本日は、ご多忙の中お集まりいただきましてありがと うございます。最初に、事務局より本日の出席の確認をお願いします。 ○治験推進室長 それでは、出席の確認をさせていただきます。本日は、佐藤敏彦構成員、 辻本好子構成員がご欠席というご連絡をいただいております。掛江構成員が少し遅れている ようですが、ご欠席という連絡はいただいておりませんので、しばらくしてからいらっしゃるかと思 います。また、いつもどおり厚労省、あるいは文科省の関係課より出席をしております。 ○楠岡座長 ありがとうございました。続きまして、配付資料の確認をお願いします。 ○治験推進室長 まず番号のないものですが、「議事次第」「座席表」です。資料番号を振って いるものですが、資料1「治験の効果的・効率的な実施のために」、資料2「ネットワーク利用 経験のある5社へのヒアリング結果に基づく提案」、資料3、日本製薬工業協会からご提出い ただいた資料「治験の効率的な実施のための方策」、資料4、伊藤構成員に作成をいただい た資料で「国立病院機構本部におけるネットワークを活用した治験へのとりくみ」です。また、 参考資料として、前回の第3回の資料の中から「治験の効率化等に関するWGの検討結果」 も、構成員の皆様のお手元にはご用意しております。傍聴の方々には配付しておりません。  なお、参考資料集として紙ファイルの資料をお配りしております。毎度のお願いですが、こ の資料は各回共通ですので、お持ち帰りにならないようにお願いします。先ほどの前回の資 料と参考資料については、当省の当該ホームページに検討会の頁がありますので、そこをご 覧いただきながら適宜ダウンロードいただければと思います。以上、過不足等ありましたらお 知らせいただくようお願いします。 ○楠岡座長 ありがとうございます。よろしいでしょうか。  それでは、早速本日の議題に入ります。本日の議題は、「症例集積向上のための取組」と なっております。前回の第3回では、5カ年計画のアクションプラン4の「治験の効率的実施及 び企業負担の軽減について」に関して、コスト・スピード・質についてWGでの検討結果の報 告を受け、議論をしていただきました。その中で、スピードに関してはかなりのところまで来てい るのではないかということです。質についてはいまのところ特に大きな問題はないという結論で す。コストが残った問題としてあるということが1つの結果になるかと思います。コストを高くして いる原因の1つとして、従来から言われているように、症例集積性が必ずしも高くないことが1 つの大きな問題ではないかということが指摘されております。症例集積性をどのように捉え、そ れをどのようにして上げていくかは非常に大きな問題で、その方法としてもいろいろ議論がある かと思います。また、現在の5カ年計画の中でも、症例集積性を高めることが1つの大きな目 標に当てられている状況です。  本日は、この5カ年計画の中で残り2年半になりましたが、特に症例集積性を上げていくこ とに関して、どのように取り組んでいくかという具体的な提案についてご議論を進めていただき たいと思います。議論のスタートにあたって、事務局から本日の議論に関連する現状につい て調査していただいたので、そのご説明をお願いします。 ○治験推進室長 資料1と、別途構成員の先生方にだけお配りしている前回の第3回の資料 を併せてご覧ください。「新たな治験活性化5カ年計画」のアクションプランの4点目ですが、 その中には治験の効率的な実施が挙げられております。これはいわゆる症例集積性の向上 や事務手続の効率化等を図りながら、治験の効率的な実施を進めていくというアクションプラ ンになっていたかと思います。一方で、2頁ですが、前回ご報告したWGの検討結果の2.の中 で、「症例集積性が必ずしも高くないことによる影響に関して、スピードについては医療機関 及び治験依頼者の双方の努力により治験全体への影響が抑えられるものの、症例集積性が 向上するよう今後とも取組が継続される必要がある」という検討結果をお出しいただいておりま す。  この中で、治験の効率的な実施のためにいかにすべきかという点について、事務局といた しましては2つのポイントに絞って、本日ご議論いただければと思っております。本日の資料1 ですが、1点目として、症例集積性の向上についてご議論いただければと思います。この中に は医療機関での症例増加、例えば治験が大規模化している、あるいは患者数、審査側の大 規模なデータの要求等に伴い被験者数が増加しているといったことに対応するために、医療 機関での症例数を増加させる必要性が出てきているかと思います。また、大規模な、あるいは 被験者数を向上させることに関しては1医療機関では賄い切れないときには、複数の医療機 関全体で多数症例の確保が必要ではないかと。このような問題意識を持っておりますので、 まず症例集積性の向上についてご議論いただければと思います。  もう1つ、症例が集積、あるいは複数の医療機関に跨ると、事務的な業務の効率化といっ たことが避けて通れません。例えば、作業プロセスの整備を図ることによって作業自体の全体 的な効率化を図る必要があるのではないか。あるいは、IRBを一元化することによって医療機 関の作業を集約できるのではないか。このようなことが必要ではないかと事務局側も考えてお りますので、この事務的業務の効率化について、2つ目のご議論をいただければと思います。  ただ、その中で症例集積性の向上、あるいは事務的な業務の効率化は、個々の医療機 関における取組と全体的な取組を分けて考えないと混乱する可能性もありますので、私どもと してもこの2つの論点、個々における取組はいかにすべきか、全体での取組はいかにすべき かと、このような4つのマトリックスに分けてご議論いただければありがたいと思っております。  なお、この議論に先立ち、これまで中核・拠点医療機関等協議会、いわゆる中核病院・拠 点医療機関(TR)、このそれぞれの機関の現在の集積性等について併せて補足でご説明しま す。 ○事務局 続けて説明申し上げます。次の頁に症例集積性のデータをお示ししました。これは 第1回の検討会でもお示ししたグラフです。第1回の際にはこのグラフに対して、SMO協会の 田代構成員から中核・拠点が実施するような治験は一部難易度が高いものや、SMOが支援 して実施するクリニックを中心とした治験とは治験の種類も異なるので、個々の医療機関にお ける症例数も異なるのではないか。数値で評価することが適切か、というご意見もいただきまし たが、中核・拠点の中での推移を見るためのデータとして改めてお示しいたしました。  中核・拠点が担っている治験の種類は、ここ数年でそう大きく変わっているものではありま せん。難易度の高いと言われた治験を継続して実施している中でも、5カ年計画に書かれて いるように個々の医療機関における集積性向上が求められているわけですが、この中央値を ご覧になるとわかるように、症例集積性の向上はまだ図られているとは言えないという現状があ る。そういった意味で、1つの現状を表す指標としてお示ししました。もちろん、これをSMOの 各社が支援しているクリニックの治験と比較するとまた別の見方ができるとは思いますが、ここ では中核・拠点における推移ということでお示ししております。  もう1枚、先ほど室長から説明させていただきましたもう1つの議論のポイントとして、事務的 業務の効率化に関しまして、治験依頼者の訪問先のグラフをお示しいたしました。複数回医 療機関を訪問することにより、治験依頼者へ負担が生じているというご指摘がありますので、 その点について、中核・拠点における治験依頼者の訪問箇所をお示しいたしました。資料の 上部に一般的な治験の流れをお示ししました。申請からIRB開催、IRB結果通知から契約と いう流れに続き、治験薬搬入後、症例登録が開始されるという流れです。青い部分が完全に 事務的な部分で、黄色い部分が症例を登録して治験を実施していく段階、緑はその準備段 階ということで、両方が関係するような段階という形で色分けしております。  下のグラフですが、左側のグラフは青い部分、申請から契約までの間に、治験依頼者が医 療機関の中でどこに訪問する必要があるのかを示したものです。これは複数回答ですが、ここ にお示ししたような部署に訪問する必要があるということです。治験実施の責任者である治験 責任医師の所に説明に行かれるのは当然のこととして考えられると思いますが、それ以外にも 検査部門や会計の部門、薬剤科等にも足を運ぶ必要がある医療機関もあるということが示さ れています。契約から治験開始までの中では、契約が締結され、治験開始までに各種関係 者に説明をしていく段階、「キックオフミーティング」などと呼ばれる説明会を開催する段階で、 ここにお示ししたような部門にも足を運ぶ必要があるということが示されております。  併せて、本日グラフのご用意はないのですが、参考資料4「平成19年度の中核病院・拠 点医療機関を対象とした基盤整備状況調査の報告書」のQ5、26頁をご覧ください。先ほど のグラフでお示ししたのはさまざまな部門に直接メーカーが足を運ぶ必要があるということをお 示ししましたが、ここには、治験手続に要する最低訪問回数ということで、手続のために何回 依頼者が医療機関に足を運んでいるのかをお示ししたグラフです。上が平成18年度、5カ年 計画の取組前の状況で、下が平成19年度、1年目の取組の結果となっています。最大の数 を見ると、IRB開催までに最大7回訪問しなければいけない医療機関もあったということです が、そういった飛び抜けて多く足を運んでいただくことは減ってきていることがこの結果からわ かります。平成20年度の結果もいま解析中ですが、さらに若干少なくなってきている傾向はあ ります。以上、事務的業務の効率化を示すデータをご紹介しました。 ○楠岡座長 ありがとうございました。ネットワークとか医療機関での共通作業の集約化に関す る個々のことに関しては、別途資料の提供をいただいているわけですが、まずここまでのところ で、最初に佐藤室長からのお話にもあった症例集積性の向上、あるいは事務的業務の効率 化に関しての医療機関ごと、あるいは取組の全体像的なものに関して、何かご意見がありまし たら先にお伺いしたいと思います。 ○荒川構成員 今日の議論の中に当然出てくると思うのですが、先ほど田代構成員のご意見と してありましたように、疾患によってどこに症例が集まるかは違います。例えば、小児の領域は 小児の領域のネットワーク、いわゆるその領域のネットワーク、あるいは地域のネットワーク、い ろいろなパターンがあり得ますので、一概にネットワークと考えるのではなく、希少な疾患、ある いは特殊な領域はその領域別のネットワークがあってもいいのだろうと思います。また、地域 性がある所は地域のネットワーク。それも、場合によってはヘビーな検査があるようでしたらクリ ニックを巻き込んで、浜松聖隷病院等でやっていらっしゃるように病棟貸しとか、より治験に入 りやすい環境の整備ということがあると思うのです。ですから押し並べて考えるのではなくて、そ の領域ごとの特殊性をある程度勘案してやっていくべきではないかと思っています。 ○楠岡座長 ありがとうございました。いきなりネットワークの話になってしまいましたが、もともとこ の5カ年計画を作るときも、症例集積性をどのように高めるかがいちばんキーであろうと。ただ、 そのときに日本のいまの現状から見て、例えば治験をする病院を特定して、その病院以外は 治験をするな、治験を受けたい人はそこへ行けというシステムを取ることは実際できないわけ ですし、病院を統廃合して2,000床や3,000床の韓国などにあるような大きな病院に仕立て上 げて、そこでやるのもいまの日本の現状ではとても無理である。したがって、具体的な手段とし ていちばん現実性が高いのは、ネットワークを構成してバーチャルな大規模病院を作るという のが1つの考え方ではないかということで、いまの5カ年計画の中でもネットワークはかなり大き なウエイトを占めていると思います。  この2年半ネットワークに関していろいろやってきて、1回目でもネットワークについてかなり いろいろご議論いただいたわけですが、この2年間の結果を踏まえてネットワーク以外で症例 集積性を高める方法はないのだろうかと。あまりにもネットワークに目が行きすぎて、ネットワー ク以外が落ちているのではないかということも少し検討しておかなければいけない点かと思いま すが、その点に関して何かございますか。 ○荒川構成員 先ほどの件は、治験活性化5カ年計画の前のWGや検討会の中で、すでに報 告書に書いてあることだったのです。もう1つのポイントは、いま感じているのは病院の中の協 力体制という問題が非常に大きくなってきて、いわゆる診療科を跨ぐような治験が非常に増え てきています。ニッチな領域とかいろいろな領域が出てきていますので、改めて病院長を含め 病院の協力が得られやすい体制に関して、もう1度考えておかなくてはいけないだろうと思い ます。以前は地域毎の連絡協議会があって、今回それを少し衣替えしたのですが、逆にそこ の部分が手薄になってきたような気がしています。 ○楠岡座長 それは別の表現をすると、病院全体でもっと症例が引き受けられるはずなのだけ れど、どこか病院内にボトルネックがあって、そこが制限になってしまうというか、そういう現実も あるということですか。 ○荒川構成員 いろいろな方のご意見が私の所にも入ってきているのですが、我々治験管理室 とか、そういう所がいくら頑張っても、いま国立大学もかなり診療の実績が求められる時代にな っていますので、そういう中で中央診療部門とかその他の診療科とか、診療科を跨いだ症例 集積ということを考えた場合には、なかなか厳しい環境になってきています。ですから、そういう 面で改めてもう1度その辺の協力を得られやすい環境を作っていくことが必要だと思います。  間接経費の使われ方に関して、どうしても大学や病院の考え方がもともとありますので、治 験だけ特別扱いしてもらえるかという問題があります。ですから、その辺の理解も得られやすい ような行政側からのプッシュも必要かとは思っています。 ○楠岡座長 非常にざっくばらんな表現をすると、治験を引き受けた科の業績にはなっている けれど、協力した科の業績にはなっていないという面とか、それに見合った経済的なり何らか のインセンティブの配分がうまくいっていない状況もあるということですね。ほかにございます か。 ○作広構成員 資料1の3頁のデータについてコメントします。左側の治験の申請から契約まで、 スポンサーがどういうプレイヤーに面会しているかという図なのですが、CRCとの面談が少ない ことが少し気になったのです。我々が効率的に治験を進める上で、申請からIRBまでの間に その計画、いわゆるプロトコールの説明と、その施設での実施可能性をよく吟味する。そうす れば、後々IRB以下がスムーズにいくと考えておりますので、この辺り、治験管理室、責任医 師、CRC、ケースによっては臨床検査部門が一堂に会してディスカッションをしたほうが効率 的に進むであろうと考えております。 ○楠岡座長 榎本委員、CRCの立場でいかがですか。 ○榎本構成員 この表のご説明なのですが、当院、中核・拠点になっているような病院は、いち ばん初めの治験事務局または治験管理室の中にCRCがスタッフとして入っているのです。う ちは治験事務局とCRCの面談は同じという解釈で、反対に効率的に事務局に来たらCRC に会うという解釈でいるのです。これは分け方として治験管理室と言ってしまうとCRCもここに 入っているので、当院はこの設問に回答するときにCRCではなく治験管理室にポイントを入 れました。治験事務局とCRCとが治験依頼者に対し別々に対応する施設とそうでない施設と あるので、たぶん事務局並みにCRCとは綿密に会っている施設が多いかと思います。 ○楠岡座長 いまの榎本構成員のご説明のとおりだと思います。いわゆる治験管理室という所 で一元的にやっている所と、まだそこまではいっていなくて、事務局イコールCRCなので、 CRCという形で表現がされているような所、また、いまはだいぶ少なくなっていると思いますが、 事務局面談以外にCRC面談を別途請求する施設もかつてはありましたので、その名残など が残っているのかもしれないと思います。  いちばんの目標としては、作広構成員がおっしゃるように、治験管理室もしくは事務局で一 元的にやっていただく面談で済めばいいのですが、中にはほかの部門にも行ってくれというこ とを要求される所とか、まだ一元化が十分でない所もあるかと思います。それは、平成20年度 でCRCの部分が減ってきていたり、その分治験管理室の部分が伸びたりしているのは、たぶ んそういう一元化が進んでいる影響だと思います。この数値だけでは読み取りにくいところもあ るとは思いますが、作広構成員が心配されるようなことは、現実的にはいまのところ特に中核・ 拠点病院ではあまり起こってはいないのではないかと思います。ほかにございますか。 ○榎本構成員 いまお話がありました症例集積性の件なのですが、先ほどネットワークのお話が 荒川構成員からありましたので、個々の医療機関における取組ということで1つお話します。 最近、当院で治験に参加できる患者さんがどれぐらいいるかという製薬企業の施設調査を受 けました。その企業のモニターの方は日本中を回って、少し難しい試験だったので、ある程度 症例数を確保しようと、多くの症例数を入れられる施設を探しているとお聞きしました。当院で もいま検討していますのが、被験者候補となる患者層、病気や患者数をどのように企業に伝 えていくかということで、これが重要だと思っています。各病院のホームページにボンと公開し てしまうと、別な用途に使用されてしまったり、患者を切り売りするみたいな、倫理面などが懸 念されるということで、なかなかそこまで踏み切れない施設が多いかと思います。  半面、欧米などでは、このような情報を簡単に製薬企業が入手できると聞いたことがありま す。日本でも倫理面や個人情報などを確保した上で、そこに小林構成員がいらっしゃいます が、例えば日本医師会治験促進センターの大規模治験ネットワークなど、積極的に治験を やりたいという施設が、そういった情報をデータベース化して登録できるような状況をある程度 作っていただけると、治験を実施する企業に、どの病院にどういう患者さんがどのくらいいるか の情報を適正に提供できることで、集積性、スピード、コスト的なものが大幅に改善できるのか なと思っています。そういったことができないかなと考えています。 ○楠岡座長 現に各病院で持っておられる症例の概要を外部公開するということで、いわゆる 従来からあるデータベースという考え方ですが、これは後の議論で取り上げたいと思います。 ほかにはよろしいですか。 ○一木構成員 今、色々な領域の試験をCROで引き受けているのですが、この資料について 最初に後澤さんから説明があったときに、私は感覚的に違うのではないかとお話したことがあ ったと思います。試験がだんだん難しくなってきているということが1つあって、非常に煩雑にな っているためにマンパワーが足らない。試験によっては、インベスティゲーターの先生は症例 を入れたいのだけれど、例えば検査部、ほかの部門がボトルネックになって入れられない。今、 現実にやっている試験などでも、その科の先生は入れられると言うのですが、検査が追いつ かないのです。4週に一度ずつ検査していかないといけない、しかも2年間やっていかなけれ ばいけないとなると、全体のパワーを考えると日常臨床に支障を来す部分もあって、どこかで 臨床試験用のマンパワーと日常臨床のマンパワーという形で少し考えをシフトさせないと、い まの日常臨床の枠の中でその中にすべてを入れてさらに上げましょうとなると、各先生方のパ ワーも不足してきます。  もう1つは、たくさん入れていただける施設は確かにありがたいのですが、そこのCRCの人 たちは数が限られているものですから、疲弊していくわけです。そうすると、グローバル治験な どですと、ビジットしてから何日以内に全部データをEDCにインプットしなければいけないとい うように全部規制されていますので、10例や20例になると追いつかなくなるのです。その辺り のほかの要素も少し加味して、インセンティブまたはマンパワーを供給できる形にして増やして いくほうが現実的ではないかと思うのです。特にグローバル治験が多くなってから、検体の処 理、検査の搬送、EDCの問題、英語の問題、CRCの抱えている方の実際のワークロードが 多すぎるというのも、解決してあげなければいけないポイントではあるのではないかと思います。 ○楠岡座長 その点に関して、何回か前に榎本構成員から、いまの5カ年計画でCRCが担当 するプロトコール数の目標を出しているのですが、グローバル化してそれは大変ではないかと、 もう少し考える必要があるという指摘があったのが1つと、もう1つは検査等がボトルネックにな っている場合は本当に難しい問題で、人だけの問題であれば一時的な雇用が取れるシステ ムがあれば可能なのですが、機器が絡んでくると、その治験の間だけ1台増やすことができる 機械ならばいいのですが、それがなかなか難しい。また、グローバルですとこの機械で測ってく ださいというのが治験ごとにあって、治験管理室に心電計が何台も保管されるという問題が出 てきたりということもあるので、それも1つ新たなボトルネックとして考えていかないといけない。 特に2年前はあまり考えていなかったグローバルの問題も絡んできて、考えなければいけない 問題かと思います。 ○山本(晴)構成員 同じようなことなのですが、機器だけの問題ではなくて、循環器系でしたら、 入院して生理機能のような検査になると、1時間ぐらいずっと誰か医者が付かないといけないと か、CRCでは駄目だとか、技師を必ず確保しなければいけない。逆に、病院自体は経営のた めに、特に臨床検査部門等がどんどん厳しくなっていっているのです。そうすると、その治験 が走っている間だけ人が雇えるかというと、技師もある程度熟練した人がやっているわけです から、簡単にその辺の人をバイトで雇ってくることも難しいわけです。これもここで解決できる問 題ではないのですが、集積性の話になってくると、結局日本の病院の医療制度がすでに医療 だけでも疲弊しているところに、この上治験の集積性を高めろという話をただ持ってくるだけで は、みんなやる気がなくなってしまうと。  CRCはまだ治験をやらなければいけないという使命を感じてやっていただけますが、病院 の普通の医療部門の医療職は診療のほうがウエイトが高いわけですし、治験で儲かると言っ てもせいぜい高がしれているわけです。病院の予算の何割かを儲けているようなことはないと 思うのです。当院だってたぶん数%しかないですから。病院全体の会計から見たときの治験 の割合はごく小さなものですので、逆に言うと病院の経営陣が治験を切り捨てて診療を効率 化して診療をやるほうが、病院はうまくいくという考え方もあるわけです。どのように治験をやる ことが病院にとっても良いことだという絶対的なインセンティブが、いまはないと思うのです。 ○荒川構成員 前回のときに最後に少し申し上げましたが、コストの面で考えると、今回の症例 集積数もありますが、いちばん大きいと感じているのはデザインの問題だと思うのです。先ほど のケースも非常に縛られるケースが多くなってきたということですが、それと同時にあまりフェー ズに応じたデザインではないのではないかという気がしています。いまグローバルにはリスクベ ースのデザインというか、もう少し後期のフェーズになってくると、データポイントの取り方やデー タの項目の取り方も軽くしていったほうがより効率的になると。  私どもの施設の実績でいくと、治験の数は新規で年間大体40〜50件ということでずっと維 持していますが、モニタリングの数からいくといまだに右肩上がりなのです。これはなぜかという ところを、考えるとデザインそのものにいろいろ問題があって、モニタリング効率もちっとも上が らない状況になっているのです。そうすると、モニターのコストやいろいろなことを考えると、 CRCのコストもそうですが、もっとデザインを軽くしていかないと大幅なカットは難しいのではな いかという気がしています。 ○楠岡座長 デザインについて、作広構成員から何かコメントはありますか。 ○作広構成員 以前の協議会でもお話したところですが、探索的試験、検証的試験で当然デ ザインは変わってくるわけです。探索的試験のときに得られた情報をベースに、この検査はも ういいだろうとか、そういうことを検証的試験のデザインに反映すべきです。それは自ずと被験 者の負担軽減というか、被験者のことを考えた上でも当然あるべきであろうと、我々企業も認 識しております。 ○ 楠岡座長 モニタリングというか、SDVに関してもいま必ずしも全例ではなくて、ケースによって はサンプリングして行っているということも聞いていますが、その辺はだいぶ進んでいるのでしょ うか。 ○作広構成員 実際各企業にアンケート調査をしたことはまだないのですが、これに関しては前 回のときも議論があったかと思いますが、医療機関における品質管理の体制も、当然今後や っていただきたい。それが進んでいったならば、我々のサンプリングSDVも可能であろうと。だ から、いまの現状で我々がすぐサンプリングSDVをできるかどうかはクエスチョンかと思います。 これに関しては行政、医療機関、スポンサーの三者で議論をして、質のことも議論をしていく べきかと思います。 ○楠岡座長 少し効率化のところに入りましたが、伊藤構成員、いかがでしょうか。 ○伊藤構成員 先ほど山本構成員から、あまり治験をやる施設のメリットがないというお話があり ましたが、いちばん気になるのは、治験をやったり臨床研究をやる施設であることが誇りでなけ ればいけないのだろうと思います。あとでお話するべきかなと思っておりましたが、国立病院機 構は病院としてのインセンティブを付けておりますし、治験の収支差についても投資枠、病院 として医療機械を買っていいような形にしていますし、個人としての業績とか臨床研究センタ ー、臨床研究部としての評価もしています。まずは医療機関サイドというか、経営をされる方々 に治験・臨床研究をすることはそれなりの価値があることだと認識してもらう努力を、ほかの医 療機関でもされるほうがいいのではないかと思います。  今回ネットワーク以外での症例集積性ということですが、従来ネットワークというのは、治験 をできる医療機関が束になって症例集積性を高めるという話が多かったかと思いますが、過 去の例から言うとそれがなかなかうまく動いていない。それよりは、いくつかの試験で私どもも動 いているのは、クリニックの先生方から該当する患者さんのご紹介をいただく、要するに病-診 連携、もしくは病-病連携の形での治験があってしかるべきかなと、そちらのほうが効率的に動 くのではないかと思います。 ○山本(晴)構成員 機構の努力というか、成果についてはみんなが認めるところだと思うのです が、残念ながらそういうスケールメリットがあるためにできることだと思います。単一の病院でで きるかというと、それはまた別問題だろうと思います。もう1つは、もちろん病院はプライドを持っ てやるべきだと思いますし、ナショ・センはみんなそういうつもりでやっていると思いますが、本 当に効率化とか集積性から見たら、患者が多い所でやればいい。それはどこかというと、私の 病院のある大阪の北摂で考えれば市民病院です。国病の大阪医療センターとか阪大病院と か国循よりも、たぶんその辺の市民病院を2つか3つ合わせたほうがよほど患者数が多いの で、そちらでやったほうが本当はいいのではないかと。ただ、そちらは忙しすぎて、いまから立 ち上げるというメリットをみんな感じていないのです。ですから、病院が持っている集積性と外か ら客観的に見た集積性は少し違うのではないかという気がします。  スケールメリットを活かすのであれば、国病機構のように1つの経営母体でいくつかあるとい うのであれば、例えば幸い民営化されることのなくなった社会保険系の病院とか労災の病院と か、そういう所でもっとやれば日本全体の症例集積性は上がると思います。ただ、ここの中核・ 拠点は最初そういうことを全く考えずに集めていますから、この中核・拠点を使って集積性を 上げるのは難しいのではないかという気がします。 ○楠岡座長 ネットワークの話になってしまいますが、確かに治験ができると言うと語弊がありま すが実施可能な病院と、忙しすぎて患者はいるのだけれどできない病院とのドッキングという か、パートナーシップを取ってやると。先ほど伊藤構成員から「病-診連携」というお話がありま したが、病-病連携もあってもいいかもしれないというところもあると思います。ネットワークという のもあとで議論が出るかと思いますが、従来の固定的なネットワーク以外のことも少し考えてい く必要もあるかと思います。ほかに、症例集積性あるいは効率化に関して何かございますか。 ○渡邉構成員 先ほど伊藤構成員がおっしゃったように、治験を行うことが医師の務めであり、 新しい医療を作っていくことも医師の務めであるという事を医学部時代から教育していく事が 非常に重要だと思います。また、ネットワークに関しては、患者数が少ない希少疾患で、逆に 治験のスピードが非常に速いということがあり、その理由として、治験に参加する医師同士の コミュニケーションが非常に密であることが挙げられます。機関ごとのネットワークとともに、例え ば研究会とか学会を起点とした医師間のネットワークの構築もこれから活きてくるのではない かと考えます。 ○楠岡座長 少し戻りますが、病院が治験あるいは臨床試験、臨床研究を行っていくことの意 味を広く国民の方々に認識していただいて、そういうことができる病院が、普通のしていない病 院よりもワンランク上と言うと語弊がありますが、また少し違う使命を持って取り組んでいるとい うことを認識していただくように、啓発につなげるところがあるかと思います。マスコミで良い病 院などのリストアップがあるのですが、その中で臨床試験をどれだけやっているかとか、治験を どれだけやっているかは1つも項目として取り上げられたことがなくて、手術をいくらやっている とか、そういうことで判断しているので、質の高い臨床試験に参加していて、きちんとした成績 を出しているところをうまくアピールしていく必要がある。今回の中核・拠点もそういうことになっ ているとは思うのですが、それがまだ十分浸透していないところはあるかと思います。  もう1つ、インセンティブというわけではないのですが、そうやって治験を頑張っている所へ どのように還元していくかということで、確かにステータスとして認めていくのも1つですが、もう1 つ経営的な面もあります。いまのところ治験に関して病院側で持出しになるところは、幸い依 頼者の非常に厚いご理解でそこまではいっていないわけですが、臨床試験などはほとんど病 院の中で手弁当でやっている状況があるので、その辺をどうするか。1つは診療報酬上に、 臨床研修の病院は、入院日の1日目だけだったかと思いますが、少し点数が付くのです。患 者の立場からすると、研修医に診てもらってなぜ高く払わなければいけないのかと、臨床研究 に協力しながらさらにお金をたくさん払うとはどういうことかという意見もあるかもしれませんが、 臨床研修ができる病院は研修医もいる代わりに指導医もきちんといて、それなりの体制が整っ ているきちんとした病院であることに対する評価という考え方もできるかと思います。だから、そ ういう病院であるということで、患者さんにも少し多く払っていただいていると。患者はそういうこ とをあまり認識せずに受診されているところはあるかと思いますが。治験と診療報酬は必ずしも うまく結びつくとは思いませんが、何かそのような形である一定数の治験を行うとか、臨床試験 を行っている、これは定義が難しいですし、どう線を引くかは難しいですが、何かそのような形 である意味広く世間に認められるようなことを進めていくことが、これは効率化とは違いますが、 それが集積性を上げることにつながるかもしれませんし、基本的な活性化につながるところが あるかもしれないと思います。 ○田代構成員 もう答えが複数の構成員から出ていると思うのですが、念のために。SMOとして 医療施設を支援している経験から言いますと、うまくいっていると言われている、いわゆる依頼 者から見て、優良な治験施設と言われている所は、間違いなく評価の仕組みがしっかりしてい るのです。先ほど来インセンティブの問題が出ていたと思いますが、インセンティブというのは おそらく2つあって、いま話に出ている金銭的なものと、先生方の研究活動をどう評価するか、 その両方の評価システムがうまく仕組みとして出来上がっている所、そういう施設でしかうまく 回っていないと思います。あまり断言してはいけないのですが、おそらくそうだろうと。ここに出て きておられる施設の構成員の方々は、当然治験を非常に熱心にやっておられるのですが、先 ほど山本構成員からもあったように、病院経営にとって治験は必ずしも重要でないとお考えの 経営者もおられる。そういう施設は、病院全体のベクトルが治験に合っていないということだと 思うのです。そうすると、その中で治験をやっておられる方々は非常に苦労されていると思い ます。  繰り返しになりますが、我々SMOが支援している所は、いかにして病院全体のベクトルを治 験に協力的にしていただくかという活動をしているわけです。まずは評価の仕組みをしっかり 病院で作っていただく。それが出来上がってはじめて、先ほど国立病院機構の伊藤構成員 からありましたように、それなりの実績が出せるということではないかと思います。 ○楠岡座長 ありがとうございました。内部の評価と外部の評価を両方やっていくということです ね。ほかにご意見はよろしいですか。  それでは、用意していただいている資料のネットワークに関するところ、資料2と資料3に関 してですが、まず資料2について事務局からご説明をお願いします。 ○事務局 ネットワークについて、第1回目にもさまざまなお立場からご意見をいただきました。 その際には、「ネットワーク」という言葉が何を指すのかも明確でなかったこともありますが、実 際いくつかの意見では、「ネットワーク」と言葉で患者の紹介を意味するのであれば、医療機 関間の競合等が障害になって現実的には難しいのではないかという意見もいただきました。さ まざまなご意見がある中で、実際ネットワークに関してのご要望は、製薬企業など業界の方々 から届いているわけですが、実際にネットワークを使われた治験依頼者がネットワークに対して どのような魅力を感じているか、何を期待しているのかがわからないと、どういう方向を目指して いいのかも不明確かと考え、事務局では、治験の依頼にあたりネットワークを利用した経験が ある会社にヒアリングを行いました。  実際にネットワークを利用したことのある会社は、まだ数多くあるわけでもなく、その経験を 話していただける会社を見つけることも難しい状況でした。いくつか経験のある企業の中から、 こんかいヒアリングにご協力いただいた5社の意見をまとめてお示しいたしました。ここで言う 「ネットワーク」はどのようなことを求めているのかという話から入ったわけですが、この各企業が 共通しておっしゃっていたことを1枚にまとめました。「ネットワーク」という言葉は、もちろん治験 をやる実施医療機関のグループを指すわけですが、そこで最も求めたいことは情報公開でし た。企業側として治験を依頼するときにネットワーク全体、もしくはネットワークに参加している 各機関の被験者候補となり得る患者層について、どのような疾患のどういった患者が何人ぐ らいいるのかという情報、ここに頼めばそういった患者を何人ぐらい集められるかという予想を 立てられる情報が明らかになっていることが最も重要だということでした。  ネットワーク側から治験を任せてほしいと、逆にこの企業にプロモーションがあるそうなので すが、そのときにどんな治験でもやりますというネットワークもあるとのことです。企業としては、 そのように何でもやることは必要ではなくて、具体的にどのような疾患に強くて、どのような領 域であればこのネットワークでできるという具体的な情報が提供できることが重要であるとのこと でした。1機関でどれだけということだけではなくて、グループでどれだけ候補がいる、ネットワ ークの中にどの領域で治験ができる、例えば糖尿病で治験ができる医療機関がネットワーク 内に何機関あって、そこに何人患者がいますという情報がほしいと言っています。同様に、過 去そのネットワークを通じて依頼したときに、どのような治験でどれだけ実績を上げることがで きた、例えば契約に対してどれだけ患者を集めることができたという実績についても、情報公 開されることをネットワークに求めているということです。  また、症例集積性ではなく事務の効率化の部分になりますが、ネットワークを通じてその傘 下にいる医療機関すべてにおける治験依頼者と医療機関側の業務の役割分担がどのように なっているのか、どのような手順において治験が動かされていくのかという情報公開もしていた だきたいということでした。また、これは当然のことではあるのですが、各機関の設備整備状況、 IT化などについても、インターネットが使える環境にあると言っても、実際現場に行ってみたら メーカー側が使えるような機能がないということもよくある話らしいので、具体的な整備状況に ついて、行ってみなければわからない状況ではなく、事前に情報公開されることが求められる ということです。  次に、実施可能な被験者数の確度の高い回答ができるということを求めていました。これは、 先ほどの被験者候補となる患者層の把握と共通するのですが、例えばネットワークの中心を 担う事務局なり本部なりと言われる所に問合せをすれば、個別の治験でこのような選択基準、 除外基準で治験を考えているという施設調査をした際に、具体的に正確な数を回答できるこ とが求められるということです。最初にお話ししたことは、ネットワークの中にどのような患者層 がどの程度いるかを常日頃アップデートして情報公開してほしいということでしたが、個別な治 験に関しても計画を踏まえた具体的な回答をすることが求められるということです。ここまでが、 主に症例集積に関係するところです。  まずはそのネットワークにおいて症例を集めてほしいということでした。先ほどスケールメリッ トという言葉も出ておりましたが、スケールメリットを活かしてある程度の症例を集めてほしいとい う意見です。  事務的な業務の効率化という面では、現在ほぼすべての医療機関において自施設設置 のIRBを利用している状況にありますが、それをネットワーク内で共通して一括開催、一元化 するということを大変期待しているというご意見でした。  ここまでが、治験の依頼から開始までのことです。多くのネットワークでは、医療機関を紹介 して治験が動き始めた後は各医療機関に進捗は任せるということがよくあるとのことで、治験 実施中の進捗管理もネットワークにおいて実施してほしいということでした。ネットワーク事務局 が積極的なイニシアティブを発揮すること、つまりネットワーク事務局が各医療機関に対して、 例えば契約達成についても強力に指導をするとか、何か障害が起きたときに積極的に問題 解決に当たるとか、本部の強い機能が期待されるということでした。  ネットワークを通じて、スケールメリットを活かしてある程度の症例数を集めたいということが いちばんの目的ではあるのですが、そのときにネットワーク全体でその目標を達成してもらえる ように、臨機応変な対応もしてもらえるのがありがたいということでした。例えば、ネットワーク中 の10病院で契約したのであれば、1機関症例が集まりにくい所があれば、ほかの医療機関で その分頑張って症例を集めて、ネットワーク全体として契約をした症例数を集めるという臨機 応変な対応も事務局で管理してほしいという意見が聞かれました。これはネットワークということ でいただいたご意見ですが、症例集積性ということでは、各医療機関についても同様の機能 が備われば、当然ながらその医療機関には依頼したいと考えるということで、各社共通してご 提供いただいたポイントでした。以上です。 ○楠岡座長 ありがとうございました。ただいまは資料説明に対して、何かご質問等ございます か。 ○荒川構成員 若干コメントなのですが、情報公開などは、私どもはアライアンスなどでも積極 的にやっているのですが、どうしても開発のほうのブームというか、例えば糖尿病の疾患ですと、 最近ではDPP-4阻害薬とかインクレチンとかその辺を各社一同競ってやりますので、糖尿病 での治験の数は一気に膨らむのです。ところが、すでにかなり下火になってきていますので、 そうすると過去の実績が必ずしも次の治験につながっていないという実感があるのです。  いま感じているのは、非常にニッチな領域の治験が多くなってきて、生活習慣病という観点 からは、大きなものはいまのところあまりないのです。むしろ大手の会社は各社がんの領域にど んどんシフトされていて、マルチキナーゼ阻害剤とか、いまそういうところにワーッと来ています。 ですから、私どもの所も抗がん剤の治験の比率が非常に高くなっています。そういうブームが あるので、これはもちろん参考にはなりますが、それがそのまま次の治験につながっていくわけ ではないような気がしています。 ○治験推進室長 いまの荒川構成員のコメントに対してですが、ネットワークの中で対象疾患は あまり高度な疾患とか特定の疾患に限ってという整理は、逆に今回はしておりません。当然そ の中に、例えば、がんみたいな、がん、小児みたいな高度なものにおけるネットワークのあり方 と、生活習慣病みたいな短期間で一気にやってしまうようなものはあると思うのですが、その中 でこれは過去にいろいろな疾患の中で依頼者がネットワーク自体、このネットワークというのは あくまでも実施医療機関の集合体として考えたときに、やった経験に基づいて、こういうものが あれば、そのネットワークに頼みやすい、ネットワークをもっと活用しやすい。そういう観点でどう いう要望があるかということでまとめました。ですから、これは全体的な話ですが、もし疾患ディ ペンドであれば、当然この中でまた別のものが出てくるかもしれないので、そこは整理してお考 えいただければありがたいのです。 ○榎本構成員 この資料は非常に分かりやすいです。題目としては「ネットワークに求めること」 と書いてありますが、特に情報公開に関しては、一医療機関でもできることですし、ネットワー クとして束ねた所でもできることです。ここの辺を適正に公表することで依頼者が適正な施設 を早く、コストをかけずに選べるという意味では、ネットワークとしてだけでなく、非常によい情報 だと思います。 ○新井構成員 医療機器治験の場合は手技が結果に大きく影響するので、逆に過去の実績 とかも。例えば循環器のステントをするのだったら、そういったステントを過去にどれだけ使って いるといった過去の実績にはものすごく興味があるのです。医薬品とはちょっと違うようなところ があるので、情報公開で、患者が何人いるとか、過去の実績は非常に有用な情報になると思 うのです。いろいろなネットワークがあるのですが、果たしてそのネットワークがどういった医療 機器で過去に治験を実施したかを、何か共通なホームページみたいなものに出していただけ るとありがたいのです。例えば厚労省の治験のホームページがあると思うので、あそこに登録し て、そこに行けば、どこにいったらいいとか、何か共通の情報提供の場があればありがたいと 思うのです。  医療機器治験の場合、特に眼科関係では、必ずしも中核病院でやるかと言ったら、そうで はなしに、クリニック系のところに行く。透析でしたら透析専門の病院に行ったりするので、必 ずしも大手の病院でやるとは限らない。過去の実績を中心に各企業が探してやっているという のが現状なのです。 ○楠岡座長 ネットワークの登録というのも1つの考え方ですが、ネットワークによっては、あまり 発信力の強くないところもあるし、実力はあるが発信力がないというところもあると思います。こ れはあくまでもネットワークの任意登録であって義務づけるものではないのですが、そこに行け ばそれぞれのネットワークを参照できるような一覧みたいなものがどこかで見られるようであれ ばいい。いままで知られていなかったネットワークの中でも実績のある所もあるかもしれません ので、そういうこともお考えいただければよいかと思います。 ○荒川構成員 いま新井構成員がおっしゃったことについて、実は、日米の医療機器の “Harmonization By Doing”という取組みがあります。それは日米のレギュラトリーとアカデミアと インダストリーの6者で組んで循環器領域を中心にやっているものなのですが、その中にWG がいくつかあって、インフラストラクチャーに関しては私が日本側のチェアをしています。もちろ ん、いろいろな所と話をしているのですが、医療機器インダストリー側の要望は、サイトがあまり にも限られている。いつも固定のところばかりでやっていると。  その中で話してきたのは、ある程度学会主導で、インターベンション学会、その他いろいろ なところを通じてもう少し幅を広げたほうがいいのではないかということです。あまりにも限られて いるので、過去の実績だけだと、どうしても固定のところにいつも集中して、そこのところにコン ペティターも一緒に来てしまうという状況になっているのです。ですから、そこはもう少し別の考 え方をして、技術が主導であれば、学会等の援助ももう少し広げていくとか、そういうことは必 要だと思っています。 ○小林構成員 この前の議論について、治験促進センターの取組みも含めて回答を紹介させ ていただきたいのです。私は、榎本構成員から被験者候補のデータベースでメッセージを頂 戴しました。新井構成員がいま言われたように、過去の実績ということで特に寄与はあるのか もしれませんが、過去の実績がよかったから今回やる治験がいいのかというとそこは必ずしもそ うではないのです。今回の資料2の2つ目の◇にある、いまからやる治験の具体的な候補者 数が具体的にどれぐらいいるのかという調査は、我々のほうで構築している大規模治験ネット ワーク、それがここで言っている「ネットワーク」とは違うのかもしれませんが、そこにいまからやり たい治験のプロトコールの概略を提示しつつ、これに該当する被験者数がどれぐらいいるの かと聞いています。それ以前に、この治験をやりたいかどうか。やりたくない人たちに頼むより は、やりたい人たちにやってもらったほうがいいというところもありますので、やりたくて、やれる 所で患者さんがどれぐらいいるかという調査を、製薬企業の治験実施医療機関のための調査、 という形で我々のほうで協力をしてすでにやっています。さらに拡大して、データベースの拡 大・発展というところがあれば、そこは相談しながら考えていければと思います。  今ほど楠岡座長が言われたように、ネットワークの発信力不足というところも確かにあると思 うのです。私どもも治験の事業を始めて6年ぐらい経ちますが、途中3年間、各地の、国病の ネットワークも含めて、どちらかと言うと、地域的なネットワークの支援を行ってまいりました。そ こがすべてうまくいっているかというと、残念ながら、そうではないのですが、そこをどうしていくか というのは今も考えているところです。  いま現在は我々のほうからの資金的な支援はしておりませんで、むしろ情報のやり取りとい う部分になっております。毎年1回、約20ぐらいのネットワークを集めた治験ネットワークフォ ーラムというものを開催して、そこで各ネットワークの取組みや実績の紹介をしてもらいつつ、フ ロアには依頼者となる方々にもお越しいただいて意見交換と個別の面会をするという形の取 組みを、次回は11月11日に開催します。今年が3回目で、毎年約100名程度の参加者が 来ています。それが日常定常的にデータベースのような形の一覧にはなっておりませんが、そ ういったイベントの情報を基にそういったものを公開していく、というところではネットワーク側も 合意が得られると思いますので、考えていければと思います。 ○掛江構成員 1つ先生方に質問させていただきたい点があります。情報公開とおっしゃったと きに、この公開というのは、例えば企業であるとか治験をされる側への情報公開という意味な のか、社会全体に対する公開、要は被験者や被験者候補者も含めた一般の方も含む公開 なのかという点が私自身よくわからなかったので、その辺りは少し整理して教えてほしいので す。  なぜこんなことを申し上げるかと申しますと、先ほど榎本構成員もおっしゃいましたが、患者 さんの数をお知らせして効率的に進めるというのはすごくいいことだと思う一方で、何となく患 者さんを商品リスト化して出していくみたいな感覚も、逆の見方をすると、あるわけです。そうい ったところに対して、企業と病院との間だけの効率化という目線でなくて、被験者さんという別 の視点も入れた効率化という形で検討をしていく必要もあるのかなと思います。  どういう情報をどこまでデータベース化する想定での議論であるのかがよく分からない部分 があるのですが、患者さんにも、どこの病院でどういう治験をしているか、さらに、どこの病院に どういう患者さんがおられるのかという情報は普通の診療を受ける病院を選ぶためにも非常に 重要ですから、そういった情報が患者さんたちも見られる、そして、治験をたくさんやっている 病院を選んで、もしチャンスがあれば治験に参加したいと思う方は、自ら自律的に患者さんが 被験者になるつもりでそこを選んで受診するという治験促進もあるかと思います。そのような患 者さんに対する啓発的な観点、患者の自発的な行動に対する選択するための情報という観 点からも、情報公開していただけるのであれば非常に素晴らしいと思います。 ○榎本構成員 いまのお話は私もずっと悩んでいるところです。まずは治験をきちんとやるため に、当院にどういう患者さんがどれだけいるかという情報を製薬企業との間で交換する。いま 当院でも、患者さんに適正な情報を届けるという意味で、当院で実施している治験をホーム ページに載せております。そうしますと、去年は20人ぐらいの患者さんからメールや電話をい ただいて、治験に入りたいので詳しく聞きたいというお話がありました。そういう患者さんは、第 I相希望の方もいらっしゃいますが、本当に病気で悩んでおられて、いろいろなホームページ を見てお電話をくださる方もいらっしゃるのです。そういった方は、きっといろいろな病院のホ ームページを見られていると思うのです。ですけれども、例えば先ほどあった、厚生労働省の 治験のホームページや医師会の治験促進センターのホームページなど1カ所に行けば、どこ の施設でどういう治験をやっているか。どの施設というのはなくても、どういう治験を日本でやっ ているかという情報が一元管理されることで患者さんにも情報提供できますし、製薬企業の方 にもそういった情報提供ができるような環境が整うのです。一施設だけで患者さんの情報を公 開しても非効率的ですし、個人情報とか倫理面のことがありますので、そういうものを日本とし て構築していければいいのかなと考えます。 ○治験推進室長 掛江構成員にコメントさせていただきます。今回の資料は、製薬企業(治験 依頼者)が日本全国に存在するいろいろなネットワークを使った経験から、依頼者の立場で、 こういう情報があればネットワークを選択するのに役立つとか、こういう情報があるとネットワーク を利用しやすいとかという観点でヒアリングをさせていただきました。「情報公開」という言葉自 体が先生をコンフューズさせてしまったのかもしれませんが、ネットワーク側からすると、依頼者 が何で自分たちに依頼をしてこないのだろうというときに、こういうものをきちんと自ら発信すると、 依頼者は、なるほど、こういうところはこういうことをやっているのだなということが分かるだろう。 下のほうは、それなりの機能をちゃんとやっていれば、依頼者は、逆に頼みやすい環境にある という判断をするのではないかと、そういう意味で資料を作らせていただきました。  先ほど掛江先生が言われた一般の方向けということですが、2回目のこの検討会の中で、 より分かりやすい情報発信の仕方という議論をいたしました。我々としても、そのときにだいぶ 宿題をいただきましたので、その部分については並行して、今後どうするかといったところを中 間見直しの最後までにいろいろとまとめたいと思いますが、今回の議論は、一義的には、依頼 者がネットワークをどう見ているか、あるいは、どういうことを要求しているか、どういう情報が欲 しいかという観点でペーパーを作ったのです。 ○掛江構成員 室長がおっしゃることは非常によく理解しているつもりです。私はこの資料につ いてどうこうと言うつもりは全くなくて、おっしゃるとおり、資料は依頼者側がネットワークに…と いうことで作成されていることは理解しているのです。ただ、この委員会の席で先生方がご議 論されている中で、情報の公開というところがどういう次元のことまで含めておっしゃっているの かというところを伺いたかったのです。  以前、一般の方向けの治験情報の公開について議論をしたことは私も記憶しているので すが、いま申し上げたかったのは、依頼者側が知りたい情報、つまり被験者候補となる診療を 受けている患者数の話になってきて、以前の議論は進行中の治験の情報公開の話までで、 患者数の件までは含まれていなかったと思います。そこは治験の効率化という意味だけでは なくて、診療機関を選ぶ患者さんのための情報という別の側面からも非常に有意義なので、 効率化の議論の具現化の中で一緒に取り扱っていただけたらいい、そういう意見でした。 ○山本(晴)構成員 情報公開は治験の切り口から見るべきではなくて、医療施設が自分の成 績を公開するという観点でやるべきです。例えば、私の専門領域である脳血管の領域で言え ば、頸動脈の内膜剥離術は、年間に最低でも50例ぐらいやっていないとオペ成績が安定し ないと言われています。基本的には、手術件数が何件あるか、それを何人でやっているか、そ して、その手術成績が何か。例えば脳動脈瘤の手術も、未破裂と破裂をどれだけやっていて、 それぞれの成績がどうであるか、このぐらいの成績が病院の成績を表すというものをアカデミッ クに公開するのが病院の責務だろうと。ですから、どちらかというと、主要な病院をざぁっとネッ トで見たときに、治験依頼者がどこの病院の成績も見られる。それは患者も見ているし、依頼 者も見ている。それと個々の治験ごとの被験者候補数というのはまた別の話であって、本当に 依頼するか、仮契約を結ぶか結ばないかというときに、プロトコールごとに、このぐらいの人が いくらいるか。それは公開ではなくて、契約を結ぶか結ばないかというビジネスの上でやること だと思いますので、そこは別だと思います。 ○佐藤(裕)構成員 実効性を考えて整理すると3つあると思います。1つはいま山本構成員が おっしゃったように、各施設別の手術成績を公開すること、それが治験と全く別に必要なこと として行われることで、それが患者に関しても、紹介する医療機関から見ても、学会レベルから 見ても必要なことです。  2つ目は、進行中の治験に関して被験者を募集すること。当院ではこういう治験をやってい ます、という案内を被験者候補に対して行うことです。3つ目は、いま山本構成員がおっしゃっ たとおり、ここで出ている組入れ予測をするための情報が早目に、正確に欲しいという依頼者 側の希望に対してどのように答えるかということです。これはウェブでやってもよろしいわけです が、そのときに何々病の患者が何人というデータだけあっても何にも意味がないので、実際は プロトコールの概要ぐらいは出来上がっていて、それに見合う患者が何人いるか、新患は何 人かということを知りたいのに違いないのです。そうすると、最低限の守秘契約があって、プロト コール概要をいただいて、それに見合う患者は何人であると返事して、それで初めて成立す ることですから、それもウェブを用いながらできないことはないと思います。契約した上でパスワ ードを発行して「開いていますから見てください」ということはあるだろうと思います。ですから、 その3つを分ければ整理がつくのだろうと思うのです。 ○山本(精)構成員 初めの見直しの検討会のときにも同じ議論があったと思うのですが、私は ネットワークについてあまり知らないのです。そのときも素人意見を言って、皆さんはどう思った のかなと思ったのですが。  まず、今日の議論を聞いていて、ネットワークに何が問題があるのかが全然分からなかった ということがあります。初めは「ネットワークがうまくいっていないのだったら、やめたらどうです か」と言ったら皆さんの怒りを買ったのですけれど。今回も、ネットワークを使ったことがある所 を探すのが大変ということは変わっていないということで、結局何が問題なのかというところを明 らかにすることだと思うのです。今回のこの結果は「ネットワークに求めること」だったのですが、 ネットワーク側が治験依頼者に求めることというのが何なのかよく分からないのです。そこはどう なのですか。そういうことは分かるのですか。ネットワーク側は治験に来てほしい、来てほしいと 思っているのに来てくれないという話なのか、来てもさっきの話で、いろいろ問題があるから、こ ういうところを改善してくれたら我々でもできるのだろうという話なのか。治験依頼者側がこうい うことを改善してくれたら、もっとできるのだけれどというような状況なのか。あるいは、全然来な いけれど来てくださいという話なのか。その辺りはどうなのですか。 ○楠岡座長 ネットワークを経験している方というと、伊藤構成員しかいらっしゃらないのですが。 ○伊藤構成員 それでは資料4を説明させていただきます。NHOは昨年の11月からCRB(中 央の治験審査委員会)を開かせていただいております。度々お話をしておりますが、 “Institutional”ではなくて“Central”なのでCRBといっているのです。やっているメンバーはそ こに書かれている組織図のとおりで、研究課の下に治験推進室があります。厚労省にも同じ 名前のものがありますが、うちのほうが早く始めさせていただいたところです。  現在のことを言うと、そこには室長として薬剤師の者が1名、専門職が4名、薬剤師が2名、 看護職が2名。主査として、専門職よりもう少し若い人、看護師と薬剤師が1名ずつ、事務が 2名、事務補助が2名おります。そこでは国立病院機構の治験についての取りまとめをしてお ります。中央治験審査委員会は、主に専門職が1名、主査が1名、それから事務の補佐員と 3名が主立ってやっています。  国立病院機構の本部でどの程度やっているのかという話なのですが、3枚目のスライドをご 覧いただきますとお分かりのように、昨年は少し落ち込みました。今年も、このまま落ち込むの ではないかと心配をしておりましたが、9月現在で19年度比を少し上回るところまで行きました ので、お蔭さまで、昨年の落ち込みは帳消しにできそうです。しかしこの中で、売上げベース で申し上げますと、本部を紹介しているのが約23%、あとの75%に関しては各施設で取って きたものです。本部からの紹介とか、CRBという治験の全体でやっているものは昨年が17%ぐ らいでしたので徐々に増えていて、中央集権を進めています。  CRCの定員化についてですが、145病院の中で、60数施設に150名ぐらいの定員化した CRC、それから非常勤のCRCとして200名前後おりますので、約400名弱の体制で国立病 院機構としては運営しております。  実は、本部紹介の治験は施設に対して大変評判が悪いのです。まずはコストが低い。「5 カ年計画」に見合うような形にということでコストを低くしているところもあって、施設が独自で契 約する所よりも低いというところがあります。それから、本部から四の五の言われてうっとうしいの で嫌だということで大変評判が悪いので、あまり大手の施設を束ねてやっているということでは ありません。  昨年のスライドをご覧ください。昨年の11月に最初にスタートいたしまして、それから今まで に国際共同治験を14件、国内治験を12件、医師主導治験、これはみんなワクチンなのです が、それを5件、計31件やらせていただきました。  CRBの参加医療機関は延べ151件になります。1施設1プロトコールでやっておりますと、 こうなります。中には10数施設をまとめて1回の倫理審査委員会でということもありますので、 こういう数になっております。  中央治験審査委員会というのは良さそうに見えるのですが、実は、とんでもない落とし穴が あります。うちの中央治験審査委員会の委員には大変厳しい人が多く、途中で何か差出し直 しとかというケースがあると、治験プロトコールの半分が1カ月遅れて「どうしてくれるんだ」とね じ込まれたということもありますので、まとめることが果たして正しいかどうかというのは結構難し いという問題がございます。  次の頁に実際の審議件数があります。各月どんなものかという新規の課題からいうと、多く て5件ぐらいです。東大のように40件とかある所ほど新規の課題はいまだに来ておりませんが、 こういった形で進捗しております。継続審議は月々に増えてきておりまして、これがちょっと重 たくなってきているところです。  諸手続に関してどの程度早くなるのかということですが、スライドの7枚目に書いたとおりで す。毎月やっておりますし、全体として、できるだけ早くということでやっておりますので、中央 値、最頻値。最短値は本当に短いものはございますが、平均値を提示いたしました。最長の ところは恥ずかしいので出してないので、推して知るべしということです。最頻値と平均値を見 ていただくと、「治験薬の搬入」〜「FPI」までの時間について施設ごとと比較してみたものがあ るのですが、中央でやっても、現在の段階では著しく早くなってはおりません。  全体としてまとめてやることについての意義ですが、実は、医師主導の治験でH1N1のワク チン治験を国立病院機構でやらせていただいているということは報道でご存じかと思います。 具体的な日付で申し上げますと、8月6日に治験薬提供者と契約をし、8月11日にIRBを 出し、8月13日に治験届を出しました。8月28日にキックオフ・ミーティングをし、9月15日前 後に治験薬が搬入され、9月17日に投与を開始いたしました。そして、たぶん今日か明日ぐ らいには1回目の接種の結果を皆様方に公表できるという形になっています。このようなことが 私どものネットワークを最大限に活かした治験のあり方だろうと思うところです。 ○楠岡座長 山本(精)構成員からの質問で、ネットワーク側から依頼者へ希望することというの は何かございますか。 ○伊藤構成員 依頼者に関しては、あまり過度に期待をされてもスピードがそれほど著しく速く なってはいないのです。それから、CROと間違える企業の方もときどきいらっしゃって、預けれ ば、あとは勝手にやってくれるのだろうと。しかし、いま人数をお示ししたとおりで、CROほど人 数がいるわけではありませんので、そこら辺の過度の期待はご容赦いただきたいと思うのです。 そうは言っても、シングルの医療機関として見たときの数にまでは至ってはいませんので、もう 少し上昇の余地があるのかなと見ています。 ○楠岡座長 私も見ていまして、先ほどの、ネットワーク経験企業5社からのヒアリングにあるよう な内容を国立病院機構でやっている、中央が関与するやり方ということでここに挙がっている ようなことが結構あったわけです。しかし、CRBがスタートしてからは、特にCRBの事務局、要 するに通常のIRB事務局に相当するところが相当な業務量をこなすことになる。例えば10の 施設が参加すると、10施設分の説明文書があるわけで、これは全部同じというわけにはいか ない。各施設のいろいろな事情もありまして、少しずつ変わります。ですから、それを取りまとめ てIRBに出さないといけないとか、IRBを開催するまでのところですごい作業量が発生して、 依頼者からすると非常に効率的だけれども、実施する側は、かなりマンパワーがないと、なか なかだと。そして、どこか1施設が遅れると、それで全部が駄目になってしまうという危険性もあ るわけで、そうすると進捗管理なども相当しっかりしないといけないということになります。実際に 経験してノウハウも機構本部が蓄積されているので、またそれも参考にさせていただくのは非 常に重要なことかと思います。ほかにございますか。 ○田代構成員 いまの伊藤構成員の話を聞きましたら、SMOにとっては強烈なコンペティター で、SMO協会に入っていただきたいぐらいです。  ネットワークに依頼者が求めている条件というのは、今まさにSMOが依頼者から求められて いることそのままです。SMOも全国のネットワークの支援を多数やっているわけです。先ほど 山本(精)構成員が、ネットワーク側から依頼者に対して何かあるのかという話があったのです が、ネットワークを作られたところは、とにかく治験をやりたい、仕事をくださいという姿勢を強く 持っておられます。そして、支援をしているSMOに対しては、治験を何とか持ってきてくれとい う話をされます。ところが、うまくいっているネットワークのほうが数としては少ないだろうと思いま す、感覚的なものですが。それはどうしてかといいますと、治験はやりたいとおっしゃるのです が、治験依頼者が依頼することを阻害するようなルールがたくさんあるのです。ですから、実は 矛盾しているのです。そういうところで依頼者がある程度納得するような仕組みを作っておられ るところには依頼が来ているということになります。では、どこがいけないのか。例えばここに書 いてあるような、依頼者が求める、依頼したいと思わせるような環境整備ができていないネット ワークが多いのではないかと感じています。  先ほど情報公開のことでいろいろ話が広がったのですが、情報公開と言ってしまうと広がっ てしまいますので、施設選定に必要な情報の提供というふうに絞れば納得できるのではない か。そして、まさにSMOがいま持っている機能がネットワークの必要条件で、これをやっている ので、SMOに今、お手伝いしろという依頼が来ている、そう理解しています。 ○楠岡座長 資料3は両方に関わってくるところですが、ここは製薬協のほうから説明していた だきます。 ○作広構成員 資料3について説明させていただきます。2頁は資料1と同じようなスライドです が、「治験の効率的な実施に向けて」ということでは大きく2つのことが考えられ、それがブルー の□です。1つが「症例集積性の向上」、それともう一つが「事務的業務の効率化」です。  症例集積性の向上に関しましては、個々の医療機関での症例増加、これは各医療機関 の努力になろうかと思います。もう1つの手法として、複数医療機関としての多数症例の確保、 これがいわゆるネットワーク機能の強化になろうかと思います。  一方、事務的業務の効率化に関しましては、作業自体の効率化。これは個々の医療機関 での努力でやっていただくことになろうかと思います。それから、医療機関共通作業の集約。 これがネットワーク機能の強化に該当し、効率的な実施に向けては2つの方策があろうかと思 いますが、これからの資料は、その1つの方策であるネットワーク機能について少しコメントをさ せていただきたいと思います。  3頁には、ネットワークが持つべき機能、我々が備えていただきたい機能ということで4つ大 きく書かせていただきました。これは先ほど来から議論がありました資料2と似通った内容です。 当然のことながら、これは依頼者の考えですので、同じような内容になっているものと思いま す。  1番目は、参加医療機関を管理できる事務局の設置。ネットワークを構築する上で、事務 局は必須かと思います。  では、この事務局の機能としてどういうものが必要なのか。いわゆるネットワークとしてのハブ 機能ですが、1つが、各医療機関の被験者数の把握。それから、実施可能な医療機関の把 握。要はプロトコールのクライテリアに合致した患者さんがどのくらいいらっしゃるのか、またそ の医療機関がその治験を実施できる設備等が整っているかどうか。これについて我々は、別 にウェブ上でなくても、迅速に調査ができるシステムが確立していればよろしいかと考えており ます。  3つ目は実施状況の把握。これは症例組入れや逸脱の有無等を事務局が把握し、改善 措置の実施をしていただくことでネットワーク内の情報の共有化にもなろうかと思います。  4つ目は、参加医療機関での相互活用可能な支援スタッフ(CRC、L-DM等)の配置。例 えばネットワークの中でCRCのいない施設があったら、それはこの事務局から派遣するという ように共有すべきではなかろうかという提案です。  5つ目は、参加医療機関の医師・支援スタッフ等の人材育成・教育研修。この教育研修 には、個々の治験の実施方法の研修も含まれます。また、これは3つ目に書きました、逸脱の 有無と改善措置の実施にも通ずることかと思います。  大きな2つ目が同一IRBでの一括審査、いわゆるc-IRBです。  3つ目が、実施医療機関の設備の共同利用です。これはどういうことかと言いますと、ネット ワークの中で該当する患者さんはいる。だけれど、うちの施設では設備がないので、今回の治 験には参加できない、という場合は、自分の患者さんとともに他の実施できるネットワーク内の 医療機関で治験を実施することも考えていいのではなかろうか。  4つ目は、患者紹介等による実施医療機関への症例の集中化、大きく4つ提言させてい ただきます。  4頁です。いま4つ提案をさせていただきましたが、なぜ依頼者はこのようなネットワークを 提案するのか、具体的にどういう効果があるのかということで少し書かせていただきました。ま ず大きな1つ目は、参加医療機関を管理できる事務局の設置です。これに関しましては、い ままでの議論のとおりに、実施医療機関の調査・選定の効率化・迅速化につながるものと考え ております。あとの3つのポツですが、これらに関しては、要は医療機関におけるプロセスやデ ータの品質管理の実施はデータの質の向上につながると考えております。それによってモニタ リングの効率化、いわゆるサンプリングSDVが実施可能にもなろうかと考えました。  5頁はc-IRBの話です。ここはIRB審査内容の一貫性の向上とIRB審査業務の効率化・ 集約。ここは依頼者ばかりでなく、先ほど伊藤先生から、事務局は大変であるというお話を伺 いましたが、個々の医療機関に関しては効率化になろうかと考えております。  次の2つの■は、症例数の増加や症例集積性の向上につながるであろうと考えたことで す。  6頁はまとめです。要は、これらネットワークの機能を強化することによって医療機関、スポ ンサー相互のパフォーマンスの向上につながるであろう。ひいては、5カ年計画の目標である 治験期間の短縮、コストの削減に通じると考えております。  7頁です。ネットワークと依頼者は言うけれども、その形態はということで2つのものを示しま した。1つ目が、症例の少ない特定疾患集積を目的としたネットワークです。例えば、症例が 集まりにくい小児、癌、難病等の特定疾患に関するネットワーク、それがまず考えられるだろう と思います。  8頁はもう1つのネットワークの形態として、いわゆる生活習慣病、これがいい表現かどうか 分かりませんが、大規模に症例集積をすることを目的としたネットワークです。これに関しては 現在、SMOによる小規模医療機関の組織化が進行し、依頼者も依頼しているところです。も う1つが病-病、病-診連携が進んでいる医療機関によるネットワークです。このネットワークに 関しては、例えば1つのネットワークに10施設が参加しているとしたら、今回の治験には全施 設が参加するという場合もあろうかと思いますし、今回のトライアルはこのネットワークの中で5 つの施設が参加する。他の5つの施設は患者紹介等もするというようなこともあろうかと思いま す。  ピンクの所にはそのほかに、同一設置の母体または同一系列の医療機関による全国型。 これは日本地図の中で少し丸が大きく、緑のヒゲが伸びているもの。これはイメージして書いた ものなのですが、あとは地域医療機関による地方型、こういうものも当然考えられるわけです。 現在我々が治験を依頼するに当たり、単独のネットワークで予定症例数を確保できるようなス ケールメリットが必要です。地方型ネットワークに関しては、そういうメリットがないと依頼者も依 頼しにくいのが現状です。  最後の頁には大きく2つ書かせていただきました。「医療機関におけるネットワーク機能を 評価し、既に機能している施設を充実強化するため、これら施設への支援に限定する」。ここ れは国などの行政が医療機関に対して支援している厚労科研費とか補助金、そういうものを それぞれの施設等に、メリハリのある支援をすべきではないかという提言です。  次の●は必要な予算ということで4つ、事務経費、人件費等が必要であると書きましたが、 国が支援する場合、こういうことも考慮すべきではないだろうかということです。また、国の経費 というのはパイが決まっておりますので、各ネットワークは自分自身でもこういう費用を確保しな ければならないのではなかろうかと思います。 ○楠岡座長 いまの作広構成員の発表では、製薬協(依頼者)としてはこれからネットワークに 期待するところも大きくて、そこへかなり重点的な投資みたいなものも必要である、そうお考え であると解釈していいのでしょうか。それとも、これはあくまで現状分析であって、次は必ずしも この延長上とは限らないということなのか。その辺のご意見はいかがでしょうか。 ○作広構成員 そういうネットワーク機能を備えているならば、依頼者は当然依頼しに行くと考 えています。 ○楠岡座長 それが今なかなかできていかない理由としては、どのようなものがありますか。依頼 者の側から見て、いかがですか。 ○作広構成員 いままでも、依頼者がネットワーク機能としてこういうものを持っていただきたいと いうことをネットワークまたは医療機関とディスカッションする機会があまりなかったのかもしれま せん。 ○小林構成員 いまの作広構成員の、例えば症例が少ない特定疾患領域を目的としたネットワ ーク、これをもし企業治験でということであれば、喜ぶ人はたくさんいるのだろうと思うのです。  もう1つは、実際に症例数が少ないところは企業がやらないので医師主導という枠組みを 我々も動かしていますが、特定疾患のようなネットワークはその都度その都度作っていくわけ です。まさに医師主導はそういう手法でやっております。確かに企業治験でこれをやるのは大 変だろうなという疾患もすごく多いです。全部が全部うまくいっているわけではないのですが、 思ったよりはうまく医療機関同士の情報交換ができています。あとは、患者さんがいる所すべ てを実施医療機関にするわけにはいかないので、そういった意味では、病-病連携といいます か、医者同士のやり取りで患者を紹介してもらうという形で、比較的施設数を増やさず、症例 組入れという形でやっていく。これも立派なネットワークの一形態かと思っています。  前半では、各地のネットワークの機能強化というお話だったと思います。我々のほうも、先 ほど紹介したように、3年間に約20のネットワークの支援をやってきまして、大学が設置したも のもあれば、都道府県のものもあれば、各地の医師会のものも多いわけです。特に、医師会 のネットワークでは苦労していることも多いです。  例えば、GCPとの絡みでここに書いてあることが全部同時にできない事情があります。GCP の条文だったか、運用通知だったか、また表現を正確に覚えていないので申し訳ないのです が、IRBの設置者がやっていいことと悪いことというのがある。例えば医師会のネットワークであ れば、IRBの設置者は○○県医師会長という人がなる。そして、そこに事務局を置いて、まさ にここに出ているような、CRCをあちこちに配置できるように抱えましょうというようなことも考えた のですが、実際GCPの中には、IRBの設置者はSMO的な業務をしてはいけない、そこを同 時に同じ設置者がやってはいけないということなので、設置者を変えてやろうとか、ひと工夫が 要る部分があるのです。そこはGCPの表現ぶりを考えていただいて、こういったところの取組 みが素直にやれるような形に改善する余地はまだまだあると思っておりますので、1つの問題 提起としてお話させていただきました。 ○榎本構成員 いま作広構成員の話を受けてなのですが、当日本大学でも、非常に遅まきな がら、附属の3病院の病院長会議の中で、治験や臨床研究に関する連絡会を立ち上げて、 情報の共有やSOPとか書式の統一、それから業務の効率化を行うということがつい最近決定 しました。このような取組みを進めるに当たって、各施設の進捗とか、キーステーションになるよ うなメインの事務局の業務が非常に増大することが予測されます。当院のような拠点病院や 中核病院、大きな病院がたぶんその役割を担っていくことになるのかなと思われますが、いま のところ私の施設でも、ノウハウとかそういった方式を全く持っていない状況です。このようなキ ーステーションになる医療機関同士の情報交換や、すでに実績のある国立病院機構の伊藤 先生のところからご指導や情報提供をいただいた上で、より効率的に大きい病院もネットワー ク化していくことが必要であり、たぶん進んでいくのかなと思います。これら大規模な治験のネ ットワーク化はまだまだ始まったばかりですので、あと2年間の5カ年計画の中で実績を出せる かなというのは不安な部分もあります。事務局ですとマンパワーとか費用、ここにもあるように、 予算が非常に必要となってきますので、国のサポートとか、そういったことが今後の計画で必 要かなということを痛感します。 ○田代構成員 先ほどネットワークがなぜうまく動かないかというような話があったのですが、一 言で言うと、汗をかく人がいないネットワークが多いと私は思います。先ほど伊藤構成員の発 表の中にも、事務局ではものすごい作業が発生しているというお話がありましたが、ネットワー クを動かすためには、そういうところで施設の間を埋める作業をする人たちの労力が要るわけ で、それを持たないネットワークはうまく動かない。作広構成員からの発表資料の3頁「ネットワ ーク機能の強化方策」に出してある項目、これはまさにSMOが持っている機能の一部なので す。上から順番に、事務局要員を持っていますし、会社によってはSMAと称してやっていま す。それからCRCを抱えております。それから下のほうで、同一IRBでの一括審査、これもま さに今SMOが契約している施設に対しては、c-IRBに依頼してもいいという施設しか依頼して こないのです。ですから、それが条件であるということです。おそらく、今後は同一プロトコール でのc-IRBという流れになるのではないか、そんな話まで今、相談としては来ています。  この頁の中でSMOがチャレンジしてうまくいっていないのはいちばん下の、患者紹介等によ る実施医療機関への症例の集中化、これはなかなかうまくいっていないのではないかと思いま す。これは医療機関同士の、紹介したときのインセンティブの問題とか、患者がちゃんと戻っ てくるのかとか。そんな違う要素がありますので、ここがうまくいっていないのではないかと思いま す。  7〜8頁に「ネットワークの形態」という所があるのです。特に8頁の図を見ていただくと分か るように、ネットワークと言うと、さも何10施設とかと大きなものが必要だというイメージが沸くの ですが、我々SMOが最初にやることは、1地域に3施設、同じ領域の施設を3施設、治験協 力機関として協力をいただく。そうすると、依頼者がそこにモニタリングに行くときに、1施設10 症例だとすると30症例の契約がそこでできるわけです。ですから、最低でも3施設ぐらい。 我々の会社の中では、勝手にユニットと呼んでいますが、そういうものもネットワークの1つの単 位ではないかと思います。それをつないでいくと、それが10施設あるいは30施設になってくる のではないかと思いますが、それでも、間で汗をかく人といいますか、動く役割の人たちがちゃ んといないと動かない。  9頁の「ネットワークの構築」の「必要な予算」で、事務経費、人件費、システム整備費、教 育・研修費と書いてあるのですが、SMOの宣伝をしておきますと、これは今SMOが持っている 機能なのです。ですから、新たに立ち上げていただくのもいいのですが、いま実際に動いてい るSMOをうまい具合に、利用できるところを利用していただくというのも1つの手ではないか。  山口大学で4月に発表された内容の中に、SMOを汗をかく所に配置して、山口大学中心 の1つのネットワークをというような発表があったと思いますが、ああいうものも1つの見本になる のではないかと感じています。 ○楠岡座長 1つお伺いしたいのは、ネットワーク事務局機能だけを担う業務をSMOで引き受 けられるところもあり得るということですか。 ○田代構成員 はい、実際に事務局だけを引き受けている業務もあります。 ○楠岡座長 ネットワークにも事務局機能などで汗をかく人というのが要る。地域にこういうネット ワークを作らないといけないということを考えておられる人、それから、そういうものがあれば参 加したいと思っている医療機関はあっても、実際には、それぞれがインベスティゲーターであ ったりCRCであったりしますので、なかなかそこまではいかず、結果的にもやもや感が募ってい るのだけれども、結晶化しないようなものもないわけではないので、そういうものを支援するとい うのは、1つ良いきっかけになるとおもいます。最後に製薬協からご提案のあったところは、す でにあるものを充実化するということもありましたけれども、そういう、もやもや感があるようなとこ ろを支援するのも1つあると思います。  ただ、前回、日本医師会治験促進センターが中心になってやっていただいたように、公募 したときに、応募は来るのだけれども、十分マチュアーしていなかったために結果的に続かな いというものも今までの経験の中ではあるので、どれだけ実現性が高いかをどう見極めていく かというのもこれから問題になってくるかもしれません。 ○作広構成員 いま田代構成員が言われましたけれども、例えば3施設とか5施設が地方で作 られると、8頁にも書いたように、地方型に関してはスケールメリットが必要なので、そういうネッ トワークであるならば、我々はたぶん依頼しに行かないので無駄な汗になってしまうかと思いま すが。 ○田代構成員 最小単位として1地域に30例とか50例の契約ができるということでしたら、依 頼者は依頼してきています。SMOは、それを全国でいくつかに束ねているのです。今ある例 は生活習慣病のような種類ですが、数百症例を1社とか2社に依頼しに来るのですが、これ は1つの地域で数百と取っているわけではないのです。1つの地域では数十症例可能なユニ ットを持っていて、全国のいくつかのユニットを合わせて1つのSMOで数百症例ができますと いうことで、これもまた、間にSMOを入れたネットワークである、そんな意味です。 ○新井構成員 田代構成員がおっしゃったことは「治験活性化5カ年計画」を組むときの中でも、 うまくいっているネットワークにはどういう要素があるかということで実際に調査に行っていただ いて、それを引っ張る人材がいるかどうか、やる気があるかどうかです。どこも利益追求でやっ ている所ではないので、そういう中でもやっていただけるような、引っ張る人がいる所がうまくい っているという要素があるのです。単にお金を配ればうまくいくという要素ではないので、その 辺をしっかり認識してやっていかないと、お金を配っても無駄に消えてしまうという実態があると 思います。  もう1つ考えておかなくてはいけないのは、いまグローバル・トライアルの比率がどんどん増 えていく中で、施設数も限られてくるわけです。そうすると、ネットワークの中でも本当に1施設 とか2施設しか選ばれないという実態があるので、そういう中で、本当にネットワークに何を期 待するかということをよく考えておかなくてはいけないのです。グローバルに見れば、日本は、 日本の支社がある場合はそこがリージョナルなコーディネーティングセンターになって更にや っていくわけです。ですから、その下に更にネットワークを置くと、何段にもハブを置くことにな るので、それが本当に効率的なやり方かどうかというのはよく考えておかなくてはいけけないの です。施設数がある程度あるならば、できるだけ間には置かないでやる。いまモニタリングなど は、EDCを使ってグローバルにやっているわけです。間に置かないことがこれからの本当の効 率性になってくるので、ネットワークに何を期待するかをよく整理しないといけない時代だと思 っています。 ○一木構成員 これは中間見直しなので、これからゴールに向けて1つだけお願いを申し上げ たいのです。私たちはCROですから、直接ネットワークはありませんが、アメリカのネットワーク とかスタディーグループを見ていて思うことがあります。できれば、この5カ年がゴールするまで の間にそれぞれのグループがやった中で、監査報告書(オーディットレポート)とか内部査察 をやって、どうだったのかという、きちっとしたレポートを上げてもらうということは大切なのではな いかと思います。いくつの試験をやって、何例入れましたということではなくて、実際にグルー プ内の相互監査とか相互査察をやって、どうだったのだと言う評価も大切と思います。クォリテ ィーを保持できるということが証明されれば、製薬会社もグループを使っていこうという気持に もう少し動いていくのではないかと思うのです。しかし、現状ではそこがないのです。もう一度モ ニターを据えなければいけないのだったら、直接モニターに依頼しても一緒だよという感覚が どうしても残るのです。2年近くありますし、その間にオーディットレポートとかインスペクションレ ポート、そういうものを取り揃えていって、結果どうだったのかというような評価をされるのもいい のではないかと思った次第です。 ○楠岡座長 オーディットの対象というのは。 ○一木構成員 やっている試験の中で実際に逸脱がないのか、そのネットワークの中の人、相 互ドクターがインスペクションに行って、インスペクションをやってみて、GCP上問題がなかった かどうか、そういうことをきちっと保証していくことが必要なのではないかと思うのです。 ○楠岡座長 おっしゃる意味が理解しにくいのは、いまネットワークそのものがあまり数もないし、 形成過程という中で、ネットワークをオーディットするということですか。 ○一木構成員 そうではないのです。これは山本先生に話してもらったほうがいいかもしれませ ん。 ○山本構成員 実際にオーディットすることによってどのくらいのパフォーマンスがあるかというこ とをきっちり見せることによって、頼んでも大丈夫であるということを見せる。グループとしてきっ ちりしていることを、症例スピードだけではなくて、いろいろな面から見せるという意味ではない かと思います。 ○一木構成員 グループが中で。例えばいま、がん関係ですと、いくつかのグループが相互に やっていますが、GOGならGOGというグループの中でドクターが相互施設のインスペクション をきちんとやって、オーディットレポートを出して、グループでやった仕事に関して問題ないとい う保証をしていく。アメリカでは、SWOGなどでも、みんなが毎年レポートを出すことによって、 企業に対して、うちはこれだけのクォリティーで、これだけのことをやれるから、うちに頼んでくだ さいということの保証みたいなことをしているのです。 ○楠岡座長 いまJCOGというのがありましたが、JCOGのように、グループとしてある程度活動が あって、かつ内部オーディットをしてレポートが出せるグループがある。一方、確かにネットワー クグループとしては今あるのだけれども、非常に緩い形で、まだやっと事務局が置かれた程度 で、ネットワークとしての活動もこれからの途上という所ではなかなかオーディットまで行かない ので、オーディットはしたくてもできないというグループもありえる。そういう形で結果を公表して いってほしい、そういうご意見ですか。 ○一木構成員 それも1つの評価ではないか。ネットワークをボトムアップさせていくための1つ の評価ではあるのではないかと思うのです。 ○楠岡座長 内部監査ができるぐらいのグループであれば、これは非常に良いグループである のは間違いないのですが、現状としては、まず、それができるぐらいのグループを作られるかど うかというのがいま喫緊の問題になっているところです。、そういうのを出せるところは出してほし い、それは確かに要望ですし、方向としてはそれがいいと思うのですが、そこを必ずということ になってしまうと、とてもそこまで行かない所がほとんどではないかと思います。ですから、2年半 後のゴールとして、そういうことが可能なグループがいくつ出来るかというぐらいのところかなとい う気はするのですが、いかがでしょうか。 ○一木構成員 ごもっともだと思います。ただ、目指すところは、そこに持っていかないと単なる グループにすぎない。これではネットワークを作った意味がない。投資して物を刈り取るのであ れば、1ランク上のものが出てきて、そこに頼めば、きちっと全部できるから、ハイコストであって も1つのものが出来ていくという次のステップに。できない所もあるでしょうし、できる所もあるで しょうと言うと、できる所はきちっとオーソライズしていくことも必要なのではないかと思うのです。 ○楠岡座長 要するに、ネットワークなりグループの1つの到達目標としてそれを示して、できる 所はそれをどんどん公表していってもらう、そういうことなのですね。ただ、そこをゴールにして 実際にそれができる所というと、JCOGも全部が全部オーディットしているわけではないですし、 国立病院機構も、業務監査としてのオーディットはありますが、治験の実際のオーディットに 関してはあまりやっていないようです。 ○伊藤構成員 治験と臨床研究を分けないと厳しいのではないでしょうか。治験は企業がオー ディットをやっているという理解だろうと思いますし。そちらのほうは、例えば、うちが本部として 企業の方と守秘義務契約を結んでいれば、それはオーディットに入れるでしょうけれど、そう でないとオーディットに入れないと思うので、難しいのではないかと思いますが。 ○楠岡座長 時間の関係もありますし、新たな問題として提案がありましたので、事務局で検討 していただいて次につなげていきたいと思います。 ○山本(精)構成員 いま内部オーディットと言われました。オーディットをやっている実際の経 験からして、確かに、そこまでやっとできるようになったという感じはあるのですが、実際にやっ てみると、もっと良いことがあるのです。もっと早い時期から、そんなにハードルを上げないで相 互監査というか、何らかの形でお互いピアに回るということをすると、それぞれがどういうふうに やっているかが見られたりすることもあるのです。ですから、最終目標というよりも、グループ全 体のインセンティブを上げたり質を上げたりする1つの活動として導入していくというふうに考え れば使える。非常に有力な手段になり得るとは思います。 ○楠岡座長 その意見には賛成です。よろしいでしょうか。 ○伊藤構成員 各ネットワークで医師主導治験をやってしまうのがいちばん簡単なのです。そう すると、どこの施設のクォリティーが高いかというのがお互いに分かるのです。ですから、いま一 木構成員が言われたところを目標にするのであれば、各ネットワークで医師主導治験を何本 か走らせろという目標にすれば動くのではないかという気がしました。 ○楠岡座長 出発点とゴールが逆転しました。ネットワークを作ることがこの5カ年計画の目的で はなくて、症例集積性を高める一つの手段としてネットワークがあるのです。  今日の議論のまとめですが、ネットワークにはかなり難しい問題点はいろいろある。ただ、今 後症例集積性を上げる手段、代替案も具体的なものがない現状ではネットワークを進めてい かざるを得ない。そのときに、ネットワークを形成する上で、田代構成員をはじめ数人の委員 から、いくつかの問題点が指摘されました。それから、実際にネットワークが出来てきたときの ゴールとしては、いま一木構成員がおっしゃったような、質をきっちり担保していくようなことが 必要であるだろう。そういうものに関して依頼者側も期待するところは大きいし、できれば、そう いうところに重点的に投資を考える、今日のご議論は、大体そういうところだったと思います。  あとは効率化の点に関して1つどうしても考えておかなければいけないのは、あまりにも効率 化、効率化というと、前回のスピードのところでもありましたが、安全性とか信頼性のところとの 齟齬が出てくるといけないのです。これは今日十分に議論ができませんでしたが、もし何かご 意見があれば、後ほどメールなりで出していただいて、次回は取りまとめに入ることになります が、その中で少し取り上げていきたいと思います。非常に活発なご議論をいただきまして、予 定の時間を過ぎまして申し訳ございません。本日の意見交換は以上とさせていただきたいと 思います。今日のご意見をまとめさせていただきまして、次回までに事務局のほうで整理し、 最終的には前回お出ししたようなワークシートにまとめていくような形になると思いますので、よ ろしくお願いいたします。  今後強化する取組みに見合う人材の確保というような点がいままで抜けていました。また、 ずっと治験が中心になっておりまして、臨床研究推進全体に対する議論が少なかったと思い ますので、これに関して次回、取りまとめ案の中でご検討いただきたいと思います。最後に事 務局から何かご連絡がありましたら、よろしくお願いいたします。 ○治験推進室長 長時間のご議論、ありがとうございました。次回と次々回の日程についてご連 絡を申し上げます。次回は第5回ですが、10月28日(水)の15時から開催させていただきた いと存じます。場所は永田町にある全国都市会館です。ちょっと遠くて申し訳ございませんが、 よろしくお願いいたします。それから第6回、最終回は、当初は11月末までにということでした が、どうしても日程の調整がつきませんで、12月1日(火)午前10時から開催させていただき ます。場所につきましては後日ご連絡を申し上げます。  いま先生方にお配りしておりますのは、5カ年の計画本文と進捗状況、検討結果の一覧で す。計画本文だけを前回は入れましたが、その後進捗状況について、各先生方からご意見 を頂戴しました。進捗状況まで入れてありますが、漏れがないかどうかだけを今一度ご確認い ただいて、もしありましたら事務局までご連絡をいただければと思います。  本日の議事録は、作成次第先生方にご確認をお願いし、その後公開をさせていただきた いと存じます。  それから、検討会の報告書の最終確認を第6回の12月1日の会議で確認をさせていた だきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。以上です。 ○楠岡座長 以上をもちまして「第4回新たな治験活性化5カ年計画の中間見直しに関する検 討会」を終了させていただきます。長時間どうもありがとうございました。 照会先 厚生労働省医政局研究開発振興課 治験推進室 後澤 03−5253−1111(内線:4165)