09/10/01 第6回医療機器の流通改善に関する懇談会議事録 第6回医療機器の流通改善に関する懇談会議事録 日時:平成21年10月1日(木)10:00〜11:57 場所:グランドアーク半蔵門 「光の間」                         (照会先) 医政局経済課 安東 03-5253-1111(2536) ○安東流通指導官 定刻となりましたので、ただいまから第6回医療機器の流通改善に関する懇談会を開催さ せていただきます。 初めに委員の出欠状況でございますが、本日は日本歯科医師会理事の中谷譲二様、全日本 病院協会常任理事の中村康彦様からご欠席の連絡をいただいております。また、飯沼様は 所用により早めに退出されるそうでございます。まだ何人か来られていない方もいらっし ゃいますが、遅れていらっしゃると思います。 更に、本日は前回に続きまして、医療機関のシステム化に係わっておられる方をお招きし ておりますのでご紹介いたします。 アクセンチュア株式会社の公共サービスグループ・システムインテグレーション&テクノ ロジー本部パートナーの井形繁雄様。また、医療機器のコード化の海外事例等についてと いうことで、流通システム開発センターの医療情報システム調査団団長でいらっしゃいま すNTT東日本関東病院院長の落合慈之様、団員として同行されました流通システム開発 センター国際部次長の黒澤康雄様でございます。よろしくお願いいたします。 最後に、事務局に異動がございましたのでご紹介いたします。7月の人事異動で医政局長 が阿曽沼慎司に変わりました。本日は所用のため欠席させていただきますことをご了承く ださい。また、8月の人事異動で参りました経済課医療機器政策室長の池田千絵子でござ います。 続きまして、本日の資料の確認をさせていただきます。議事次第、座席図、懇談会名簿と 続きまして、資料1として「医療安全の徹底的追求のためのバーコード活用と情報システ ムについて」。資料2「欧米医療機器業界のコード化の取組み」。資料2の追加として 「医療機関のIT化の事例その他−バーコードの利用ユーザーとして−」。資料3「ヒア リングで指摘された現状と問題点等」。資料3の追加として、「ヒアリングを踏まえたG S1コードの評価と検討すべき事項(事務局メモ)」。資料4「第5回医療機器の流通改 善に関する懇談会の発言について」。これらをお手元に配布しておりますのでご確認くだ さい。 それでは、以降の議事進行につきましては、嶋口座長にお願いいたしたいと思いますの で、よろしくお願いいたします。 ○嶋口座長 嶋口でございます。よろしくお願いします。 それでは、本日の議題に早速入りたいと思います。 前回の懇談会では、医療機器のコード化を実践されているメーカー、卸、医療機関の代表 するお三方から現場での状況をお伺いしたわけでございますが、今回も引き続き現場で関 わっていらっしゃる方々から状況をお伺いしたいという、どちらかと言うと情報収集の懇 談会になります。そして、その後で医療機関のコード化の海外事情等についても、日本と の比較を含めてお聞きしたいと思っております。 なお、いつもそうですが、時間の関係上、それぞれのスピーカーの方に一通りご説明をい ただいた上で、全体を通してご議論をいただこうと思っております。質問やご意見等につ きましては、皆様のご説明が終わりました後にまとめてお願いできればありがたいと思っ ておりますのでよろしくお願いいたします。もし、その都度疑問点がございましたらメモ をちょっと取っておいていただいて、後で一括して質疑とディスカッションをしたい、そ ういうふうに考えております。 それでは、先ほどご紹介いただきましたように、最初に医療機関のIT化の事例につきま して、井形様からご説明をお願いしたいと思います。井形様、よろしくお願いいたしま す。 ○井形氏 アクセンチュア株式会社の井形でございます。本日はこのような機会をいただきまして、 誠にありがとうございます。着席してお話しさせていただきます。 ○嶋口座長 はい、お願いいたします。資料1ですね。 ○井形氏 はい、本日は医療機関の流通改善に関する懇談会ということで、主にバーコードを中心と して医療機関のIT化にバーコードをどういうふうに運用していくかというテーマを授か っているわけですが、私は直近では山形県様の3病院の情報化の仕事をさせていただいて おります。そちらに導入を予定しておりますシステムをできるだけ具体的に事例をまじえ ながら、バーコードを使ってどのように病院様の経営改善と医療安全をどのように目指し 追求しているかという事例のご紹介をしたいと思います。それによって、バーコードを医 療機関で活用するということがどのように進展していくヒントになるかという議論ができ ればいいと思っております。 スライドの1ページをご覧いただきたいのですが、まず現状認識といたしましては、医療 機関におきますバーコードの利用のシーン、場面は極めて限定的であると思っておりま す。我々ITに関わる者、それから物流に携わっている方にとっては、もちろん在庫管理 という意味での検品時のGS1の使用であるとかありますが、実際、事務の方はもちろ ん、医療従事者の方の目から見ても、業者さんの納入時点でのGS1−128での検品は 今でも可能であり、バーコード活用のメリットといえるでしょう。員数管理もできるし在 庫管理にもつながる。 しかしながら、その後は点々と破線で矢印を出していますけれども、バーコードを使った 運用というのは途切れてしまって、やっているのは主に入院患者さんに限定して、病棟 で、例えば患者のリストバンドと注射のラベルを照合する、そういったいわゆる3点確認 というのですが、これだけをやっている。ここまでやっているという言い方もできるかも しれませんが、非常に限定的な使われ方だというふうに私は認識しております。 そういった中でバーコードを活用して医療安全の追求、経営改善等の話を、例えば看護師 様とお話しする際は、具体的に本当にこういうふうな台詞が出るかどうかは分かりません けれども、顔色をおうかがいしますと「バーコードを使って何が便利になるの」と。それ から、僕らが例えばGTINとかSGTINとか、そういった言い方をすると「そんなカ タカナを言われてもまったくわからない」、海外ではもうやっているよと言っても「海外 のことなんて分からないわ」という顔をされる。それから何にも増して、「作業が増える のは絶対にいや」という感じのご様子でございます。これが医療機関におけるバーコード の利用状況の実態と私は考えてございます。 続きまして2ページ目です。若輩者でありながら非常に僭越な言い方をしてしまうのです が、バーコードを医療機関にどうやってもっとたくさん使っていただくかという観点で言 いますと、このままでは非常に難しいのではないかと感じるところもございます。 看護師さんの言葉を代弁している感じですけれども、手間がかかるだけで役に立たないと 言ってしまう現場の方もいらっしゃいます。けれども一方、コンサルタントは原価計算と かコスト削減に使えるだろうという言い方をします。これは医療従事者の方、先生方、看 護師さん達のモチベーションにはつながりにくいのではないかと私は感じるところがござ います。なので経営という観点で目的の利用をうたうことのみでバーコードの運用が徹底 できるのだろうかと最近は疑問に思うところが多ございます。 3ページに進みますけれども、バーコードの普及を妨げる最大の障壁といたしましては、 先ほど申し上げました3点確認の限界にあるように思います。現時点ではこの3点確認が 病棟業務のバーコード利用の中心です。PDAを使って看護師さんがリストバンドを読む 本人確認。それから薬、注射、点滴のボトルを読むものの確認。両者が一致した。それか ら自分自身を読む、私は誰ですよという、そういった3点確認というのは医療安全上意味 があるとは言い難いと考えております。 理由としましては、3点とは、まず自分自身、私がやりました。それから患者さん。私は 井形と言いますが、井形という患者本人ですねと。これは後でも言いますけれども、非常 に変な言い方をしますけれども、宅配便のお届け印と一緒で、本当に井形さんですよねと いう、本人が「はい」と言う代わりにリストバンドを読むという、そういったものです。 それから、物、薬剤についても、ある薬品の個品ではなくて、個品という意味は例えばこ れがペットボトルだとすると、ペットボトルの「お〜いお茶」と言うのは薬品の一種です が、同じ「お〜いお茶」であってもキャップがあいたものと新品のものというのは明らか に別なわけで、そこは個品管理されなければいけないと思いますが、そういう個品管理は されずに「お〜いお茶」であるという、注射であるという、そこの確認だけの3点確認し かできていない。 最大の問題は、PDAでバーコードを読み取っても表示上は○、○というのはOK、注射 していいよということですが、実際は×、NGということがあることです。というのは、 最近は平均在院日数が非常に短くなるというのが流れでありまして、つまり急性期の患者 さんが非常に多い。急性期の患者さんが多いということは指示変更が多い。オーダーの変 更が非常に多いという前提で我々は業務システムを作らなくてはいけません。なので患者 さんに注射の針を入れる寸前まで指示変更の可能性があります。用法用量等の変更です。 その指示変更が実際に患者さんの体内に入る薬、つまり、注射にかかわるものである場合 は大きな問題になります。そこに入る直前までの変更を確実に受け止める仕組みでないと 本当に○とは言えないわけです。となるとPDAで○といっても、看護師さんは常に疑心 暗鬼で、本当にそうなのか、本当に変更はないのか、ということで、これは病院さんの運 用はいろいろですけれど、もう一度紙をチェックしたり確認をする。二度手間が発生して います。 だとするとシステムとして全く信用といいますか信頼されていないと言わざるを得ないわ けですし、結局ラベルチェック、指差し確認等を看護師さんはしますので、負荷は高いま ま、システムは百パーセント信用できないとなりますと、どういう意味があるのかなとい う、そういうシステムを作ったというトライは評価されますが、そういうシステムでよか ったのかなという疑問はわいてございます。これがバーコードを医療安全という観点での 普及に使う、それの進展を妨げる最大の障壁と考えてございます。 4ページです。3点確認に対しまして5つのRight、5Rightsという言い方が一般的にご ざいます。正しい患者、正しい薬剤、正しい分量、正しい経路、正しい時間、この5つが きちんと確認されて初めて本当に○、あるいは×というシステムの結果を踏まえて、看護 師さんがそれを信頼して患者さんに実際処置ができるというふうに考えてございます。 これと3点確認を比較しますと正しい患者かどうかというのは、○です。同じです。正し い薬剤という観点では△というふうに思いました。といいますのは、先ほども言いました けれども、薬品種としては確認できますけれども、その個品といいますかロットが本当に 安全か、そこは確認できない。一般的な今までの3点確認の仕組みは、です。実現できて いるところは多分少ないといいますか、まだないのかな。PMDA、医薬品医療機器総合 機構さんの副作用DBにその場でアクセスして、本当に副作用情報がないか確認して実際 に処置できるというふうになるのが理想ですけれども、そこまでは行けていないので、こ こは△かなと思いました。それから正しい分量、経路、時間につきましては、直前の指示 変更というのに対応できないということ、それからこういったオーダーの情報をPDAで 確認するという運用ができているところが少ないので、この資料では、「できない」とス トレートに書かせていただいております。それなので現状では多く入っています医療情報 システムにおけるリスクマネジメントシステムといわれている3点確認、これはソリュー ションとしては不十分ではないかなと考えております。これは我々が言うというあれでは なくて、病院様、看護師さんが日々実感されているという事実でございます。 5ページです。これは若干古いです。2000年以前のものですが、5Rightsのそれぞれの確 認、認証につきましてどのようなエラーが多かったかという論文です。まず言えることは 患者の取り違え、3点確認で唯一○が付いている患者の取り違えです。このエラーは、こ れはアメリカの例ですけれどもなかった。たまたまこのときの調査ではなかったというこ とですが、いずれにしても非常に低い。3点確認では○なのですが、その○の患者取り違 えというのは、ほとんどないに等しい結果が出ています。 一方、時間の間違い、薬剤の間違い、投与量の間違い、これは多いと書かれておりまし て、3点確認ではできないとしました5つのうちの3つ、この正しさというのが確認でき ない。なので3点確認自体非常に問題があるという証明になるのかなと思いました。 続きまして6ページです。私の私見も入っていますが、バーコードを医療機関に普及させ て、たくさん活用していただくという方法論といいますか、観点ですが、やはり医療安全 にフォーカスしてバーコードの運用をしっかりと考えていくのが大事ではないかと改めて 思っております。医療安全という観点では誰しもここに異論を挟む方は私も含めていない と思っています。私もひとの親ですが、自分の子どもが患者だったらどういう運用をされ ている病院さんにかかりたいかなというのを常に考えますと、バーコードを使って徹底的 に医療安全を追求している病院さんに自分の子どもを任せたいと思ってしまいます。 そういう病院はどういう運用をしているかといいますと、できればシリアル化された、も のを個体として、個品として管理できるような運用を実現し、医療安全が最高レベルで担 保されているという病院があれば、そこに預けたいと思います。看護師さんたちも、PD A、バーコードリーダー、そこに○と表示されたら絶対に信用して措置できる、そういっ た信頼感のあるシステムが必要です。もちろん×であったら絶対に×。×であったら絶対 に×という意味は、要するに直前の指示変更。1秒前までの指示変更もとらまえて、問題 があったら確実に処置を中止できるというシステムが望まれております。 そのような理想型のシステムが本当にあるのかと誰しも思います。ここから先は本当に僣 越ですが、私どもが山形県様で取り組ませていただいております事例でございます。 ExcAliberという電子カルテのシステムでございます。POASの概念で作ったもので す。これまでA病院様であるとか、数病院に入っているシステムでございます。 ExcAliberの前身のLEAF、リーフという名称で入っているシステムでございます。こ れは1件の事故も起こさない。1件の事故もというのは、母数はいろいろ言い方はありま すが、1万人患者さんがいた場合に1万人のうち、1人は事故があってもいいという発想 は絶対にしない。経営学的に言うと、聞きかじりですが、車を1万台造って1台不良品が あるというのは、これは経営工学的には正しいそうです。1万分の9,999の品質OKとい うためのコストと、最後の1台まで不具合を出さないというコストは同じだそうでござい まして、有名な言い方ですが生産管理についてとはそのようなことが言える。しかし、医 療におきましては私の子どもが1万分の1になっては絶対いけないわけです。1万人いて も、100万人でも言い方は同じですが、1人たりとも、1件たりとも事故を起こさないと いうことを目指して検討していく思想を持ったシステムでございます。 8ページをご覧下さい。シンプルな表ですが、これで、ExcAliberと一般的な電子カルテ システムを比較いたします。軸としては情報とプロセスとモノ。情報というのは最新性が あるか。先ほど来、何回も申し上げておりますオーダーが最新か、指示変更があった場 合、それが1秒前であってもつかまえられているかということです。 プロセスというのは、例えば薬を投与する、注射するに当たってオーダーが出て、調剤さ れて、処方監査があって、混注があって、実施。そのステップ、ステップが確実にこなさ れて、飛ばされることなく、もちろん逆転することなくやられているかというチェックが 本当にできているのか。それからモノにつきましては、トレーサビリティが確実に担保さ れているか。そういう観点ですね。我々は設定者、軸ですので、ExcAliberについては全 部○。一般的な電子カルテシステムにつきましては情報の最新性という観点でいきます と、ちょっと技術的な言い方になってしまいますが、ExcAliberにつきましてはデータベ ースが1個しかない、といいますかデータのコピーをしない。オーダーの発信元から受取 先にデータのコピーがない。一般的なカルテではおそらく電文形式ですので、電文形式と いいますのは、その一瞬一瞬コピーが発生します。なので先ほど来申し上げております が、1秒前の指示変更も絶対につかまえろという要件があった場合、おそらく他の電子カ ルテシステムでは1秒だと多分躊躇されると思います。多分2秒でも同じ。データのコピ ーが発生するというので、電文ですから一瞬ではありますが、そのときのネットワークの 状態であるとか、いろいろな要因が重なりますと、数秒からひょっとしたら10秒のタイム ラグがあるかもしれない。そのタイムラグがひょっとしたら私の子どもに何か悪いことが あるかもしれないと思いますと、情報の最新性については非常に気を付けるべきは安全度 についての軸であると考えております。 それからプロセスの逆転を絶対に許さないということにつきましても、ExcAliberはプロ セス制御という言い方をしていますが、逆転や例外指令を絶対に許さない。そういったコ ントロールをしてございます。 一般的なカルテについては、おそらくこれは実施についてのフラッグ管理だけなので、飛 ばしてしまっても、私が知っている限りで特段そこでアラーム等が出るというふうには限 らないという状態であると聞いてございます。 ものにつきましても、ExcAliberはリアルタイムのトレーサビリティが担保されている。 他のカルテについては基本的には事後記録です。やったことが記録されていくということ ですので、トレーサビリティとは違うのかなと考えております。 それぞれについて9ページ以降でどういうことなのかを解説差し上げたいと思ったのです が、今日私が確認を怠っておきまして、プロジェクターを使って、パワーポイントのスラ イドショーでやろうと思って動画にしていたのですが、ごめんなさい、9ページと10ペー ジは何のことか全く分からない絵になっております。 つまりPOAS(ExcAliber)というのはいわゆる完全ウェブ型というアーキテクチャでご ざいます。システムの話ですが、お二人の先生がある患者さん、井形という患者のカルテ の情報に同時にアクセスして、もちろん同じアイテムを触るのは無理ですが、井形という 患者のカルテを2人同時に開いて、同時に修正しても、それができる。しかしながら他の 大手のカルテだと、患者さんのカルテを開いたら基本的にロックされて触れないというこ とが一般的でございます。それを悲観的ロックという言い方をしますが、全体を押さえて しまうということです。ExcAliberは楽観的なロックといいまして、レコードのアイテム 1個の同時更新はできませんが、同時にカルテを触れる。 理由といたしましては、OrderDBとシステムのクライアントの間のセッションが、その瞬 間瞬間しか接続しませんので占用しない、そういった絵をアニメーションで描いてあった ら分かりやすかったのですが、そういった概念で作っているということをご理解くださ い。これがリアルタイム処理でございます。 それから11ページと12ページがドクターのオーダーから投与までのプロセス制御でござ います。これもアニメーションだったら分かりやすいのですが、指示から調剤、監査、混 注、投与の開始、投与終了までプロセスを1個1個POASというマネジメントのサーバ ーが登録して管理しておりまして、この逆転であるとか、抜け飛び、これは絶対に許され ないということになっております。 12ページが今申し上げました混注を飛ばした場合です。調剤が終わって、その後混注を飛 ばしてしまって投与開始しようとしても確実にストップがかかる、こういった仕組みが非 常に重要と考えておりまして実装してございます。 これが先ほど特徴の2番目で申し上げましたプロセス制御です。最後にもののトレーサビ リティでございます。これはA病院では、処方監査時点からバーコードを活用することに より個品という状態を作りだしています。 ロットAが副作用を起こす薬剤です。ロットAが事故を起こす薬剤です。そのロットAの バーコードと上の方の小さい四角のバーコード、これはオーダー情報、ラベルというふう に考えていただくと、処方監査の時点でオーダーという医学情報とロットAの薬剤という もの、これを一致させます。情物一致、情報と物を一致させて、情物一致の状態にしまし て、ロットAという一括りの固まりですが、ロットAのこの薬品を10月1日の夕方に投与 するという情報を紐付けることによって、これが個品になります。この個品というこの状 態で混注して、ときにはラベルをボトルに貼りまして、ロットAが中に入っているボトル だよという状態で実施にいく。 これが実施されたとき、資料上では患者が赤色になっています。これは、事故が起こった 状態を表現しています。不幸なことですが、1件目の事故患者さんへの事故を防ぐことは できません。情報がありませんので。なので、1件目の事故は不幸なことなのですが、2 件目は絶対に防ぎたい、止めたいという発想です。なので2段目のロットBは省略します が、同じく3段目のロットAにつきましては実施の直前でNGが出る、止まる。1件目は 不幸にしてしょうがないけれども、2件目は絶対に水際で止めたい、そういう発想でやっ ているのがA病院でございます。バーコードはGS1−128で、ロット管理ですが、医 学情報たるオーダーを紐付けることによって個品管理を実現しているという例でございま す。 対比するためにB病院です。なぜ対比しているかといいますと、両方とも同じタイトルの システムが入ってございます。なので対比しています。ちょっと運用の仕方が違う。B病 院の場合は、処方監査時点でITのチェックがされていないため、情物一致状態になって いるとはいえません。なので混注を実施するときに、先ほど3点確認といいましたが、こ の薬品をこの患者に投与するという、そうした関係性までは担保されていますが、その薬 品が正しいといいますか、事故薬品でないかどうかというチェックまではできていない。 そういうことでA病院のフローと違うのは3段目です。1件目が不幸にして事故が起こり ました後も2件目も止めることは残念ながらできない、そういった例でございます。 まとめますと、私見をまじえて生意気なことを言いましたが、シリアルのバーコードが入 りますと、医療安全は最高レベルに近づいていくというふうに思います。現状はGS1− 128で運用されていますが、そこにはロットの情報と有効期限等が入ってございます が、それを今、運用で個品にしていますが、シリアルのバーコード、例えばSGTINが 卸さんのところから貼られてくることによりまして、病院さんのラベルの貼り替え、ダブ ルチェック等の手間隙がなくなってまいります。このことによりまして看護師さん、事務 の方の業務量が格段に減りまして、医療安全を追求していくことによって、結果的に同時 に業務の効率化が実現される。手間隙がなくなることによって便利さが実感されて、普及 につながる、そういった好循環が期待されるのではないかと思ってございます。 以上でございます。30分ということで駆け足でしたが、以上で説明を終わります。 ○嶋口座長 井形様、どうもありがとうございました。いろいろ質問があるかもしれませんが、後で一 括して受けたいと思いますが、一つ確認ですが、POASの略は何の略ですか。 ○井形氏 Point of Act Systemです。 ○嶋口座長 はい、分かりました。ポイント・オブ・アクト・システム、これがExcAliberというもの ですね。 それでは、医療機器におけるコード化の海外事情等について、落合様と黒澤様からご説明 いただきたいと思います。落合様は追加資料の方で、黒澤様は資料2に基づいてこれから ご説明いただきます。よろしくお願いいたします。 ○落合氏 NTT東日本関東病院の落合です。こういうバーコード等に関しては全くの素人でありま して、このような席にお招きいただきまして責任を感じているところであります。先日、 黒澤さんとともに海外視察ということで、それに参加させていただきました。向こうの事 情等の詳細は後ほど黒澤さんの方から紹介をしていただこうと思います。私はこの会の安 東さんから海外事情の紹介もさることながら、実際に医療機関で使っている事例ととも に、このページの2枚目、下にありますが、ページ番号が振ってなくて申し訳ございませ ん。医療機関でバーコード利用になぜ関心がないのか。なぜメリットがないと感じている のか。どうすれば医療機関がバーコード利用システムの導入に向けて動けるのか。その要 件は何か、そのような視点で多少の見解を述べてもらえないかというリクエストを受けま した。それで私どもの病院の事情、そしてまたそこにおける問題点等を多少海外との比較 をまじえながら説明させていただこうと思います。 私の話は、今、私の前にご説明のありました井形さんとは真っ向対立するところが多々あ ります。後でどういう点で違うかということもご質問があれば、そのときにお話をさせて いただきたいと思います。 ページを捲ってください。医療機関かにおけるバーコード利用ということで、確かに3点 確認というシステムではありますが、私どもの病院で行われている事例をまず簡単に写真 ですけれどもご説明申し上げます。 確かに誰が行ったかということは、右上の写真にありますように、その職員のネームプレ ートに付いているバーコードで行える。また、左側の上の写真のように誰に何々を行った かというのは患者さんに付いているバーコードで行える。この2点は間違いなく確認をさ れます。 それから、そういうことだけでも随分病院の中の能率は上がるわけです。右下の写真はい わゆる点滴のインフューザーであります。こういうものは病院の中では中央管理がなされ ていて、ME、メディカル・エンジニアリングの部屋がこういうものを管理している。そ して、これを使用した後に、次回にもまた流量が正しく作動するかという機能あるいは修 理ということを含めてME部でメンテされているわけです。そこから病院の中にデリバー されています。そのデリバーされているときにどこの誰がそれを借りて持っていった。そ して、それがいつ返品されたか。そして、更にそれがどのようなメンテナンスが行われた かということはバーコード管理によって極めて明確に行われています。 また左下の方の写真は、私どもの手術部における滅菌供給部の実態を示しています。手術 機器にそれぞれUDIといいますか、こういう個別に固体を識別するためのバーコードを 刻印しておくことによって手術のときの滅菌業務、特に組立作業が非常に能率的に行え て、今日、手術の件数を増やさなければいけないとか、看護師の専門業務でない部分は外 部委託した方がよいと言われている時代においては、非常に能率性を高めている。また、 手術機器のセットというものは過剰セットであることが多いのです。例えばピンセットと か、ペアンというものを1つのセットに何本入れればよいかというようなときに、手術中 に落とすこともある。あるいはうんぬんということになると、どうしても余裕をみたくて 非常に多くの数を入れています。 ところが実際は使ってみた後で、手術が終わった後で、その機械が本当に使われたどうか という履歴が残る。それらを全部統合していけば、実際はいつも30本用意していた機械も 15本ですむ。そうなると30本用意しながら、毎回毎回滅菌していたものが本当は15本で いい。そうなると1つひとつの機械の寿命ということも延長できるし、滅菌にかかる手間 も減るというような意味におけるコストダウンということができます。そのような意味で 非常に大きなメリットを得ています。 また、これは外来の患者さんを中心にして、下の写真ですが、朝、採血にみえる患者さ ん、そのときの採血管には患者さんのIDが分かるようなバーコード利用が行われていま す。 次のページを見てください。これは患者さんの処方箋で、打ち出された処方箋が出ると薬 剤部でいわゆる粉薬、それの調剤の一部をお見せしているところです。ここでも処方箋の 上にバーコードが出ていて、このバーコードによって誰にどの薬が出たかということが読 み込まれています。このバーコードを左の○の中にあるバーコードリーダーに読ませる と、瞬時にしてその下にある秤はどういうものをどれだけ入れればいいかということを感 知している。そして薬剤師が薬を持って、この薬の底にまたバーコードといいますか、こ れはRFIDですが、それが貼り付けられていて、これを左下のRFIDリーダーで読ま せると、この薬が今の処方箋と違う薬を出したという場合にはここでノーがかかる。これ が正しい場合にはイエスという信号が出て、この薬をこの秤に乗せていく、必要な量まで 薬を乗せたところでチンとなるという具合に非常に能率的かつ安全に行われるというシス テムとして働いています。 しかし、これらはいずれもある意味で院内で開発をして行っているバーコードということ になるのかもしれません。流通のメーカーあるいは製薬会社等から発生しているバーコー ドとの関連性という点ではもう少し議論を進めなければいけない点を感じています。 バーコード管理の意味ということで、私どもの病院の実際からしますと、職員は無言の安 心、確信というものを感じています。患者を取り違えていない。扱っているものが間違っ ていないということは大きなストレスからの開放になっています。 そして併せて、そのことが誰がいつ何をだれにという記録がおのずと残るということで、 いざ事が発生したときのトレーサビリティということの準備はできています。それから、 そういうことに伴う作業能率の向上ということ全体が患者安全という視点において非常に 有用であると私は考えています。 ですが、当院の病棟の現状ということをお見せしたいと思います。これはまた外国との対 比ということにもなります。病棟には、病棟常備薬というものが置かれています。これは 何の目的に置くかというと、ふいに入院された患者さんがおられたり、あるいは急に発生 した症状に対して、この薬をすぐ使わなければいけないというために、常に病棟に置いて あるものです。 これらは使わないことが原則の中で置かれていますから使用期限の管理であるということ が非常に大きな問題になります。そして、それを幾つ置いておけば病院全体にとっての経 済性なのかというようなことが非常に大きな問題になります。ついつい、これも安全より も安心という気分が働きますから、多くの病棟が過剰在庫という形になって、多くのもの が使われないうちに使用期限切れになる。いくつ先入れ先出しをしようということを指導 しても、それが守られていても期限切れが起きてくるということが実態としてはゼロにな りません。そういうような現状を何とか解決したいと思っています。 これは救急カートというものをどの病棟にも置いていますが、その中身についても事情は 同じであります。 また、患者さんの入院処方というので例えば5日分という単位で、複数日処方という形で 病棟に薬局から運ばれてきます。それを看護師は袋から出して、毎回毎回朝の分、昼の 分、夜の分というふうに取り揃えて患者さんに1つひとつ渡すということをしています。 そのときに看護師は細かい1つひとつになっている薬を見て、これが本当に処方箋のどの 薬なのかということを見ながら合わせていくということをやっていて、これは非常な手間 であります。 採血標本管理については先ほど外来の絵が出ましたので飛ばさせていただきます。 このような現状を何とか解決できないかというのが私どもの病院が当面している課題であ ります。次のページの上の写真は病棟における常備薬を置いている棚であります。この棚 の中を見ると、このような引き出しになっていまして、そこに幾つものものが入っている ことが分かると思います。これらが全部使用期限が管理されて、何個置いてあるのが適当 であるかというようなことというのは、病棟の看護長あるいは主任さん、あるいは看護師 たちの経験によっているというのがどの病院における場合も実態であって、これらの至適 管理が行われることが病院にとっては重要であります。 私たちの病院は多少これに対する工夫を始めようとしていて、下の写真のように上の写真 に比べると、これはちゃんと枠といいますか、順番が狂わないような形でこの中にきちん と置くことによって先入れ先出し管理ができるようにしようということをまた新たに始め ているわけです。ここでメーカーの方にお願いをしたいのは、メーカーから発行されてく る薬というのが1つひとつの最小単位が10本とか20本です。病棟に実際に置く薬は常備 薬として何かあったときに必要で置く薬ですから、せいぜい1本か2本あればいいことが 多いわけで、せいぜい3本です。そういうものを置くのに、これが10本単位でもって来る と、しかも極めて高い薬というような場合には、非常の過剰在庫を抱えるということにな ります。メーカーで包装の最小単位についてもう少し工夫をしていただけたらなというこ とを感じています。 次のページを見てください。このように病棟には入院患者さんの1人に対して、こんなに たくさんの薬が袋に入って来るわけです。これをその棚の上にありますように朝、昼、夕 というように看護師がいちいち出しては整えて、そして患者さんに渡すというような非常 に大変な手間をしています。これがもう少し何とかならないか。これに関しては欧米では 別の仕掛けがありました。これはあとで黒澤さんが説明をしてくださると思います。 下は救急カートです。このように薬以外にも電池とかそういうものが入っていて、こうい うものに関しても電池の使用期限が正しいのかどうかということが常に管理できて、至適 在庫はどの程度であるかということが病院にとっては喫緊の課題になっております。 次のページをお願いします。医療機器、薬剤の流通改善ということから見た場合に、これ はどこにも出てくる図だと思いますが、メーカー→流通→医療機関という関係があって、 メーカーの場合には機器のメーカー、薬剤のメーカー、それぞれその会社の中では研究・ 開発・製造ということが行われている。更に流通を通してディーラーあるいは卸の方を通 して医療機関に来る。この医療機関の前にはSPDということが介在することもあるかと 思いますが、医療機関の中では使用あるいは消費されていくわけです。 この三つのセクションというのは、それぞれ閉じたセクションとも言えるわけで、それぞ れがその閉じたセクションの中で都合のいいバーコード管理ということを行ってなってい るわけですが、ぜひこれが一元化できないかというのは大きな思いであります。 しかし、三者それぞれの思いがあって、メーカーであれば生産は大量、最終的に行われる のはロット管理でいいのかな。流通の方にしてみると、外箱表示、中箱表示というような ことになりますが、病院の方になってみますと使用は1本単位、1個単位になるわけで、 外箱とか中箱にいくら表示があっても病棟在庫という話になったときには、非常に実際的 ではない。そこは何とかならないかというように思います。 究極の目的というのは、メーカーにおかれても患者さんの安全ということであるはずであ ります。それに伴って、そのための効率的な流通はどうあるべきかという発想ということ が一番重要なのではないかと考えます。そのためにはバーコードは手段ではありますが、 目的ではありません。ほかにいい方法、ほかにもっとよい組み合わせがあるならば、それ を採用するべきだと思います。そこで重要なことは情報、その質が活用されるということ になるのだと考えています。 医療機関におけるバーコード利用ということは、前に開原先生がこの席で発表されておら れたようですが、いわゆる病院の中というのは材料部、経理部、看護部という形になって いて、バーコードを使えば発注の合理化、在庫の適正化、それから病院長・事務長からす れば無駄な使用の排除、使用消費の把握ということができる。病院全体の経営の合理化に つながる。そして実際にフェイス・トゥ・フェイスで患者さんと病院のインターフェイス であるところの看護部ということになると使用時点の誤りが防止できる。あるいは、滅菌 供給部には先ほど申し上げたような能力の向上ということができるという意味で、大いに 期待ができる。私はそのとおりだと思っています。 でも、欧米とどういう点で違ったかということを申し上げると、欧米でもバーコードを使 った流通ということに関しては非常に意見が多くありました。イギリスでは購買庁という ところがまとめて買いたい。まとめて買いたいために各病院が出してくる希望が同じ薬に ついても名前の呼び方がいちいち違う。それでは困るのでバーコードで統一してくれない かというような意味でのインセンティブが大きく働いているようでした。 また独、仏、米とも病院がそういうものを購入するのに際して何とか安く買えないかとい う意味でのインセンティブが働いて、そこにGPOというものが存在しているようであり ました。外国の事情はそういう意味では上からの改革というところがあると思います。い かに安く買うかという意味であります。日本の事情はまたちょっと違うのではないかと思 って、後で申し上げたいと思います。 もう一つ向こうで違うのは薬剤師という存在は権限が非常に大きくて守備範囲が違いま す。向こうの薬剤師さんは薬剤のみならず医療材料、医療機器まで、いわゆる院内物流を すべて管理する人が薬剤師というような立場のように思われました。 そして、そのほかに実際の薬にタッチするような人は薬剤助手というか、そういう方がた くさん存在していて、薬剤師が日本のようにいちいち処方箋に従って薬棚から袋に詰めて いるという仕事はしていない。そういう点が違っていたと思います。  また病棟の常備薬、入院処方箋の管理については日本のように複数日処方ではなくて、 電子収納庫というものを置いて、1日処方が実行されています。日本のように病院の中央 の薬局から中央集権で各病棟に払いだしているのではなくて、各病棟に地方分権的に置い てあって、そこから安全に取り出せるような方法が備わっていました。  私が一番見たかったのは、病院の安全という意味での看護師の実際業務でした。それは 今回の視察では残念ながら十分に見ることができませんでした。それで当院の看護師の業 務の実際というものがどういうことかをご説明申し上げて、ここにご参集の皆様がそれな らこういう工夫をされたらいいよ。あるいは病院に行ってもう少し実態を見てみたいとい うふうに思っていただけたら幸いに思っています。  看護師の実際業務の中の点滴をどうやっているかということをお話しします。まず医師 によって処方が発行されます。薬剤師がその処方が適当であるかどうかを監査して、調剤 をします。この時点で例えば患者さんがアレルギーがあるとか、あるいは医療情報に基づ いてこの薬は最近どうだということがもしあれば、一応チェックされているわけです。そ してオートピッキングマシーンで処方に従って1トレーに1患者分が翌1日分、薬剤・処 方箋・注射ラベルという形で用意されます。そして、それを専用運搬車で病棟ごとに運 ぶ。翌日分を前の日の夕方に用意をしています。  そして翌日といいますか、その日の夜からですが、看護師の実際の業務が始まります。 最初の1行目に「メーカー」と書いてありますが、これを消してください。準夜のナース あるいは遅出のナースによる翌日使用分の確認ということがまず行われます。  この下に薬局から運んでこられた1つひとつのトレーがあります。こういうもので運ば れてきたのを準夜のナースが、ワークシートというものを打ち出して、正しい薬剤が運ば れてきているのかなということの確認をしています。そして、当日になるといよいよその 当日、実際に患者さんのところへ薬を持っていく、注射をしに行くナースの活動ですが、 まず自分のバーコードリーダーを立ち上げます。自分のネームプレートを読ませてもよい し、IDを打ち込んでもよい。そして、その次にワークシートと薬剤、注射ラベルをナー ス2人で照合します。  ページを捲っていただきますと、上の図がそういうことになります。その下がこのワー クシートというものを示しています。これを見て、このワークシートで8項目、患者の氏 名、日付、いつ投与するか、薬剤名、投与量、どういう投与をするか。皮下注だ、筋注 だ、静注だ。それから投与経路。投与経路というのは点滴されている患者さんにおいては 瓶の中に入れるのか、管から側管注をするかということです。それから投与速度、この8 項目を確認します。そして、注射ラベルのバーコードをもう一度ここで読み込みます。こ のバーコードはその日にもう一度打ち出すものですから、最新の指示に基づいているこ と、正しい薬であることをここでもう一度確認します。ですから、今、指示が変わったと いう場合には、ここでチェックされます。  それから先ほどの井形さんには口を差し挟んで申し訳ないのですが、1秒前、2秒前に 変わったことまでチェックできる必要はあるかといったら、それは私は医療職の常識とし て、今変えたといったら、それは口頭で伝えるのが当然であって、そこまで機械に頼るべ きことであるのかなというふうに思っています。  それから、その次にミキシングをして、注射ラベルをそこに添付します。注射ラベルに 添付した図が患者さんの手と点滴の瓶が写っている、そのあと2ページ目の写真です。こ ういうふうになって、そこに用意されたものが正しいものであるということが分かり、正 しい患者さんに投与されるということになります。  ベッドサイドに持参したときに患者に挨拶をし、注射について説明があったか。そうい うことを患者さんに聞いた上でお名前は、そしてバーコードで確認をもう一度して、患者 のネームバンドを読み込んで、用意した薬剤について注射ラベルのバーコードをもう一度 読み込む。そうすると誰がいつ、それを開始したか。加えて、この患者さんには500cc入 るということで、その日のイン、アウトといいますか、患者さんの輸液量のどれだけいく ということも出るし、その日にコストが発生したということもここで押さえられるという ことになります。そして点滴の終了後にはまた注射ラベルのバーコードの読み込み、誰が それを回収してきたかということが登録されるということが行われています。  こういうことが行われることによって看護師は夜、夜中に1人で勤務をしているときに も非常に安心だということを言っているということは一番最初に申し上げたとおりであり ます。しかし、実際にこれを脇で見ていると非常に大変であります。なぜかというと、寝 ている患者さんにバーコードリーダーで読むと言ってもリストバンドを読むのも実は簡単 ではありません。患者さんの中にはなぜ寝ている最中に起こされて、いちいちそんなこと を確認されるのかと言う人もいます。そういう中でやっているわけです。  また、バーコードリーダーそのものがまだまだ未完成といいますか、重くて大きくて、 看護師さんが持って歩くには容易ではありません。それを持った上で、更にもう一つ点滴 瓶を持ってということは大変なことであります。また性能的にもパッと1回当てて瞬時に 読めるということがいつも行われているようにも見えませんでした。  一見、このシステムは完ぺきなシステムのように思えますが、実は1つ重大な問題がこ こに隠されています。持ってきた注射ラベル、次の次のページを見てください。この生理 食塩水とセフタジジムという薬が写っている写真を見ていただきたいのですが、ここには 製造メーカーからのバーコードが付いています。しかし、このバーコードは病院では利用 されていません。つまり生理食塩水といって、これを持ってきていますが、ナースがこれ を間違えてソリターという別の瓶を用意して貼ったとしても、これは間違いに気づかない ということが起き得るわけです。そのための薬の確認ということをしていて、あくまで2 人で確認していますが、それをバーコードなどを当てることによって、その確認結果が確 かに正しいのだということが言えればいいわけですが、「正しいよね」「うん、正しい」 という2人の確認しかできないんです。現物が本当にオリジナルそのものであるという保 証といいますか、それはこのシステムではできない。  それから、この生理食塩水の中に左の薬を混ぜるわけですけれども、その結果でき上が ったものは何であるかということは、次のページの患者さんのところの点滴の瓶にかざし てある、それに書いてあることで確認ができるわけですが、これもあとで書き足したもの であります。誰かがもし間違えてこの中に入れていたら、つまり今、私の病院では点滴を 作るナースと、それを実行するナースが同じ人ということを原則にしていますので、そこ の間違いは起きにくいわけですけれども、より能率を考えるならば、別の人が用意してお いて、それを持っていけばいい、別の人が点滴をしに行ってもいいようなシステムにでき れば、より能率的です。そのときにこの中身が正しいのかなといったときには、生食の中 にAとBとCという薬が入っているということが一発でピッと分かるというようなことが もう1回確認できるような方法があると便利ですが、そういうものはまだできていないと いうことだと思っています。  次へ進ませてください。どうすれば医療機関がという問題で、私は先ほど欧米を見てい て、バーコードの利用というのは欧米では政府とか上の方から主導されているけれども、 日本は違うのではないかと私は思います。いわゆるスーパーで売っている食品、中国から 餃子騒ぎその他があっても日本人のメンタリティというのは賞味期限とか生産者、生産地 の吟味ということが主婦の得意技であります。こういうことからすれば病院において服用 している薬や使用している医療機器のルーツ、使用期限、そんなことをあなたは知らない でいいんですかということは国民に言うべきだと思います。そういうムーブメントを起こ すことがこういうバーコード利用ということが起こる、非常に大きな力になるのではない かと私は思います。  そしてメーカーでは大箱とか中箱とか表示されますが、実際の消費の現場は1個1個な んだということに対する、何とか工夫を皆さんが考えていただきたい。それに対して病院 が自分たちの工夫で新たにバーコードを作ったり貼ったりしているということは、先ほど ご指摘があったように非常に手間隙のかかることであって、またそこに間違いが入り込む 理由でもあると思います。  それから法律の柔軟な運用をというのは、例えば先ほどのこの電子収納庫という、ヨー ロッパ、アメリカで見た非常に便利なものがありましたが、噂によりますとここに麻薬を 入れることは日本では駄目だと言われているそうです。なぜかと言うと麻薬取締法によっ て麻薬はそれ専用の金庫で格納することというルールになっているから、専用の金庫でな いものに入れるのは罷りならないということで、麻薬の専用金庫以上にセキュリティの高 いものであっても使ってはいけない。  あるいは日本では薬剤師はその助手ということは駄目で、薬に触れるのは薬剤師だけと いうことになっている。そういうような法律の柔軟な運用ができないのか。  それから、私どもの病院においても非常に不安なのですが、先行するものを裏切らない でほしいんです。例えば日赤で輸血のための血液のパックがあります。あれが来年からせ っかく今付いているバーコードの仕様が変わるそうです。そうすると私どもの病院に入っ ているバーコードリーダーではもう読めないんです。また改めて設備投資をしなければい けないのか。ぜひこういうものは決めていただいたら、それでもってずっと進んでいただ かないと困る。  同じような思いは電子診療録を普及させるためにという結果、電子診療録が入っている 病院は明細の見えるレセプトを発行することによって患者さんから15円いただけるという ような施策が行われましたが、私たちの病院は明細の入っている領収書を発行していたの ですが、その施策が執行されたときには十何項目を示すことを必要とされました。私たち のところも十何項目入っていたのですが、1項目が余分なもので、1項目が不足していま した。その結果、それではだめだと言われて、全部仕様を変えさせられる。プログラムも 全部作り変えなければいけなくて、1人15円回収できた分のお値段ではとてもではないけ れども間に合わないというようなことでした。  それから、日本でもイギリスの購買局のような共同購買の知恵というようなことはし て、そうすることによってバーコード利用ということに是非是非つなげていっていただき たいと思っています。病院としては、また、こういうことをしているような病院に対して は加算であるとか、評価であるとか、そういうことをしてもらえないかというふうにも思 っています。そうなればまた医療機関での利用が進むのではないかと考えています。  私が思うことは、病院には入院した患者さんというのがおられます。入院から退院ま で、その間に薬が投与されたり、検査が行われたりという、魚の親骨に対して小骨の部分 のいろいろなことが行われる。これらが全部バーコードによって患者さんに使われたもの に関しては、こういう情報として全部上がる。そして患者さんにした説明とか、手術の内 容とか、そういうことに関しては電子診療録に記録されるということが行われ、なおかつ 国の施策によって社会保障番号のように患者さんが全部同じ番号で統一できる、日本中ど この患者さんも1人ひとり識別できるということになれば、1年間あるいは1日にかかる 医療費、実態は何ということが全て把握できるという時代が来るのだと思います。以上で す。 ○嶋口座長  落合様、どうもありがとうございました。続きまして黒澤様よりお話しいただきたいと 思います。どうもありがとうございます。 ○黒澤氏  ご紹介いただきました流通システム開発センターの黒澤でございます。今日はたくさん の方々にお集まりいただきまして、大変ありがとうございます。時間が押しておりますの で、私の資料でございますが、若干割愛してご紹介したいと思います。  今日は欧米における製品識別のためのコード体系について、またバーコードが世界の主 要国でどのように利用されているのか、さらに日本の医療機器業界全体が取り組んでいる コードの標準化やバーコードの状況と海外動向とを相対比較できるように、一部海外事例 を入れてご説明させていただきます。  それではこの3ページの「はじめに」に書いてありますが、あくまで業界の皆様方に基 礎的資料を提供させていただくという主旨でコード化、標準化というテーマでご紹介した いと思います。  まず、欧米先進国のうちイギリスの取組みをご紹介します。先ほどNTT東日本関東病 院落合院長先生からもご紹介のとおり、イギリスは国民皆保険制度を採用しております。 イギリス厚生省では患者安全あるいは医療ミス防止、業務改善を推進するという視点か ら、厚生大臣の直属組織として「Quality Strategy Team医療品質向上戦略チーム」が 2005年に設置され活動しております。このチームは2007年2月に医療機器の製品識別を 通して患者安全、医療ミス防止、業務改善を実現したいという強い情熱、意志の下にガイ ドライン「コーディング・フォー・サクセス(成功するコード化)」を作成しております。 その名称がまさに本懇談会のテーマと同じであり、成功するコーディング、成功するコー ド化の在り方というガイドラインを、義務ではありませんが厚生省ガイドラインとして推 奨をしております。  そこにうたわれておりますものは、国内と同じでございますが、GS1−128バーコ ードを使うということがあります。もちろん医薬品に関しては、既にそれ以前より日本で 言うJANコード、ヨーロッパではEANと言ったりしますが、標準バーコードが表示さ れております。2007年の2月から厚生省の推奨策が開始され、まだ経過時間がわずかです ので、医療機器のバーコード表示はまだ100%ではありません。わずか2年経過というこ となので、イギリス国内では大体40%程度の表示率でございます。  今申し上げたCoding for Successですが、次のページにDepartment of Health(厚生 省)という表紙を載せてあります。ここにはイギリス国内、特にイングランドでの取り組み 事例として病院の事例が多数掲載されています。単なるガイドラインではなくて具体的な 運用手引書として広く病院の現場で利用されることを想定して、取組事例、メリット、課 題点、これからのプロジェクト等を掲載しております。  厚生省の下に保険支払機関のナショナルヘルスサービス(NHS)があり、診療報酬費用はこ のNHS経由で支払われます。6ページにございますように国民医療保障制度として、患者 負担は98%が無料、2%が有料という内訳になっています。  2007年のイギリスの人口は約6,500万人で、日本の半分ですが、国民医療費は日本の34 兆円に対してイギリスは20兆円という規模になっております。これをGDPに対する一人 当たりの医療費に変換比較しますと、イギリスは8.3%で我が国の8%より医療費はある意 味潤沢ということで国際データが出ております。  そういうことで7ページにありますように、国民の医療費負担に対する理解はたいへん 進んでいるということです。現在労働党政権は医療従事者を増員しておりますし、またこ のNHSに対する予算も棒グラフで見るように伸びております。つまり労働党政権は過去 の政策を転換して、医療の質の向上に取り組んでいるということでございます。  今年2009年の事業予算も同様に伸びるのかということについては手元に資料がありませ んが、この世界同時不況下であっても全体的に事業予算は同規模で推移するものと思われ ます。  ナショナルヘルスサービスは8ページにございますように傘下に購買供給庁が組織さ れ、共同購買を行い加盟している医療機関に医薬品・医療機器を供給しています。これは 国全体、国家レベルで購買をするということであり、厚生省の実働部隊と記載されていま すが、NHSという旗印の下に参画している500以上の医療関連施設に医療資材全体を供 給しております。  また、NHSは医療機関に設備や各種機器も提供してございます。建物の設計から始まっ て設備関連も担当しています。さらに医師・看護婦の人事異動も対応しております。  要点は、掲載の3つ目である「資源を共通化して重複を排除し効率を図るために製品及 びサービスを標準化している」ということでございます。  年間購買予算が約4兆円ですが、4兆円をすべて国家レベルで購入するのではなくて、 地方分権という視点からそれぞれのトラスト組織の中で3兆円余りを地域契約していると いうことでございます。またイングランド内に7つの物流センターがあり医療機関への納 品業務を行なっています。購買アイテムは約2万6,000点あります。1日500以上の医療 施設から注文情報が物流センターに約6万件届き、1日に約1,200件の配送を行っていま す。  次のページ、これが共同購買を実施しているイングランド内の医療機関の所在地図で す。共同購買をNHSとこの購買供給庁が病院とスクラムを組んで取り入れているという ことでございます。地図の中央、イングランド中部やウェールズは色分けの通り共同購買 に早くから先駆的に取り組んでいます。さらに厚生省及びNHSは医療機関における機械 化及び自動化を推進しております。例えばロンドンのチャリングクロス病院では、抗癌剤 の人体被爆という問題があるため、写真のようなロボットシステムを使っています。ご想 像しにくいと思いますが、ヒトの腕と同じような動きをする多関節アームロボットがあり 調剤調合をしております。  つまり、「人ができることは人にしてもらい、機械ができることは機械にさせる」とい うことでございます。先ほど発表された落合先生とも連動しますが、いわゆる医療スタッ フに対する作業の負荷を軽減するということが1つ。それから薬剤師に対する人体被爆被 を防止するということでございます。記載のとおり、多関節アームロボットは1日24時間 働き、また1週間7日働くということです。  調合調剤業務においては、シリアル番号、つまり1つ1つ違う番号を各製品アイテムに ラベル表示して管理しております。チャリングクロス病院がイギリスで多関節アームロボ ットの導入第1号だそうです。  次のページには、部屋が2つに仕切られ、被ばくしないように隔離壁があります。もち ろん抗癌剤に限らず、その他の薬剤も対応できます。  輸液バック、注射容器、注射シリンジ等もありまして、シリアル番号でラベル管理でき るようになっております。  自動化、機械化の2番目の事例はローヤルフリー病院です。12ページにありますよう に、鋼製器具に対する感染防止のために2次元シンボルを器具に表示してシリアル番号管 理をしています。クロイツフェルト・ヤコブ病その他感染の防止という視点で、1985年以 降、狂牛病という世界的な感染がございました関係もあり、国民の感染防止意識は高いと いうことでございます。鋼製器具には1つ1つ違う番号が刻印された2次元シンボルのデ ータマトリックスが表示されています。  ここで大事なのは、ローヤルフリー病院の中央材料部長さんが言っておられましたが、 「手術後の鋼製器具の感染リスクが将来にわたって存在するのなら、我々はリスク回避の ために機材のトレーサビリティをデータマトリックスを用いてトレーサビリティ管理す る」という方針です。2次元シンボルによるトレーサビリティ管理はイングランドの約30 病院で稼働しております。これはMeditrack社という刻印業者から聞きました。  鋼製器具のデータマトリックスを読み取ることで使用回数がわかりますので、磨耗した 度合い、耐用回数、買い換え時期、予算手配の時期などのデータが簡単に捕捉できるよう になります。  それから中央材料部です。器材セットにバーコードが付き、器材全体をシリアル番号で 管理しております。この478710というのがシリアル番号でございます。  その他、14ページにはマンチェスター小児科病院の写真、ここでも器材のシリアル管理 を行なっています。  NHSは薬剤の取り出しロボットを導入しています。15ページです。薬剤についても薬 剤師さんが走り回って保管棚から取り出すという労働から解放されておりまして、写真の ようなピッキングロボットが稼働しています。ピッキングロボットと言ってもイメージで きにくいのですが、16ページの左にあるように壁一面、天井まで1,200の小さい棚があ り、ここに個包装パッケージが保管されます。X軸とY軸に動く座標ロボットによってパ ッケージが収納され、取り出しされます。取り出されたパッケージは右上の写真のよう に、天井にある自動搬送コンベアを通って処方監査のためのカウンターに移動します。カ ウンターの先には外来薬局カウンターがあります。このように自動化システムによって、 薬剤師さんの労働負担は非常に少ないということでございます。正に機械ができることは 機械に、人間ができることは人間にさせるということの具体例です。薬剤師の地位も含め て非常に人に優しい装置になっています。  次に4事例目、こちらも落合先生から既にご紹介済みですが、病棟に設置されている材 料、薬剤の電子収納庫です。冷蔵庫のような構造ですが、認証された人がキー操作を使っ て指定された棚が自動的に開き、そこから薬剤を取り出す仕組みになっています。何が新 しいのかという事ですが、単なる引き出しではなくて薬剤の出入りがデータとして裏付け られ、管理されているということでございます。電子収納庫はもちろんGS1標準バーコー ドの読み取り機能もありますが、この病院では手作業でやっております。  それから18ページです。病棟における材料、薬剤の保管システムです。壁一面全部が棚 になっています。棚といっても中央にコンピュータがあり、バーコードリーダーや手操作 によって薬剤の出し入れが管理できます。指定された引き出しのみが開き、取出し作業ミ スを最小限に留めています。補充も同様に可能です。  それから18ページの下です。これは患者様対応のキャスター付薬剤収納庫です。患者別 に分割された引き出しが写真矢印で記載されております。薬剤が収納されて病棟に移動し て処方してデータ確認するということです。上部がパソコンで下の方は引き出しです。   次の19ページです。これも処方監査のために薬剤師さんの目の前にロボットが薬剤を1 患者単位でトレーに取り出します。患者投薬データ、薬剤の現品、伝票データ、この3点 が照合できるようになっています。  現在はGS1−128バーコードではなくEAN13バーコードが利用されています。有 効期限情報やロット番号は先ほどの取り出しロボットで管理されています。  現在ナショナルヘルスサービスが情報管理システムで課題点としていることは、20ペー ジにありますように、自動機器を稼働させるための医薬品や医療機器の製品マスターデー タの整備ということです。製品マスターデータの整備に力を入れています。  21ページです。取組みのまとめです。1つは共同購買を国レベルで実施するというこ と。2つ目は国が自動化機械化を病院に推奨しているということ。3つ目は感染症対策と して鋼製器具に2次元シンボルを刻印表示して、資産管理やトレーサビリティ管理を推進 しているということがまとめです。  それから、ドイツの事例を紹介します。こちらはデータのみご紹介いたします。医療機 器に関しましてはGS1−128バーコードが40%〜50%程度表示されています。ただ し、それらは中箱・外箱での表示で本体表示はわずかです。医療現場での安全確保やトレ ーサビリティ管理のためには、本体に表示されていない限りは何の意味もないわけですの で、これからの取組み課題ということでございます。  医薬品に関しましてはドイツ国内ではPZNという7桁のコードが、いわゆる薬事承認 番号として機能しております。大手の医薬品卸売業ではバーコード利用事例があります。  23ページには今回、訪問したデュッセルドルフ大学病院での情報携帯端末を利用する写 真が載っております。  フランスについても同様データのみご紹介します。医療機器全体に関しましては標準バ ーコードの表示は4割〜5割程度です。ただ、そこにも書いていますが、あくまで義務化 でなくても医療機器メーカーはスマートですので自主的に表示対応を進めているというこ とが1つポイントだと思います。薬剤に関してはCIPというコードがございます。  医療機関では、線を引いてますように鋼製器具のレーザー刻印によるトレーサビリティ 管理事例があります。  次の25ページです。この写真のようにトレーサビリティ管理をしております。いわゆる 指示伝票のバーコードを読み取っているところです。  器具本体に関しましては27ページ写真にございますように、これは器具の把手部分です が、2次元シンボルの中にGS1の製品コードとシリアル番号が入っております。滅菌管 理を含め、トレーサビリティ、備品管理を実現するための管理です。ヨーロッパ全体の滅 菌トレーサビリティ実績はやはりイギリス、フランスが突出しております。  スイスの例ですがこちらもデータのみ紹介します。スイスではGS1−128バーコー ド表示は全体の7割〜8割ということです。薬事規制がなくてもメーカーが自主的に表示 対応している点が特徴です。利用事例に関しては特にございませんでした。  それから29ページのカナダの状況です。カナダはアメリカのFDAの規制に連鎖、呼応 し、FDAが求めている医療機器に対するユニークデバイス識別の法制化の準備を現在進 めております。カナダ厚生省傘下にございますヘルス・カナダという組織や業界団体が製 品コードの標準化、場所・事業所識別コードの標準化、製品マスターデータの同期化とい うことを推進しております。  30ページです。アメリカでは医療ITに関して、オバマ政権の下で200億ドルの緊急予 算が施行されております。特に医療ITを構築するための基盤となる全米情報ネットワー クを構築するために、システム開発メーカーなど業界は活性化しております。  製造業、卸販売業、医療機関それぞれで「患者安全」のための取組みイメージが違いま すが、アメリカでは患者安全の実現に対する強い意志が共有され、そこに齟齬はないとい うことでございまして、利害が一致しているということを言っています。  バーコード表示は、全米調査というのは国がまだ実施してませんが、推計ではGS1標 準バーコードが3割、4割程度です。医薬品は既にUPCコード、日本のJANコードに 相当するバーコードが表示されています。それから米国でもRSSバーコードというのが あり、このRSSバーコードを合わせると約8割という状況です。  ユニークデバイス識別については、31ページにありますように米国医療機器メーカー団 体であるAdvaMedが2009年6月開催のGS1ヘルスケア国際会議においてUDIの業界全体 の導入に対して我々は既に準備を終えているとの宣言をしております。AdvaMedの発表者 のちょうど真正面にFDA医療機器管理センター長が座っておられましたが、既に法制化 対応準備をしているというのがこの演題にも書いてございます。  次に32ページです。製品識別コードという呼び名はアメリカではGTIN(ジーティン) と呼称しています。このGTINの利用導入を医療機器メーカー業界が一致して2012年末 までに達成しようと計画しています。  アメリカ医療機関でも共同購買の利用がありますので、病院、施設を唯一の番号で特定 し正確かつ迅速な発注、納品、支払い業務を実現するために場所・事業所識別コードであ るGLN(グローバルロケーションナンバー)をメーカー、卸販売業、医療機関が導入を推 進しています。既に約14万ヶ所の医療施設がそれぞれのGLNを取得しています。アメリ カの医療施設はもちろん14万ヶ所以上ありますので、全ての医療施設でGLNを2010年 末までに取得することを目標に利用推進活動が進められています。場所・事業所識別コー ドであるGLNの利用や導入は日本の業界には未だありません。  33ページです。今申し上げたようにFDAが先導して医療機器のユニークデバイス識別 を推進しています。しかし、元よりFDAがこの推進役ではありません。医療機器を使用 する医療現場の方々によってユニークデバイス識別の立法化が実現したのです。アメリカ 病院協会、看護師協会、整形外科医師会、カソリックヘルス協会、退役軍人病院協会、そ の他共同購買の全国組織等、計41の業界団体が2006年当時、アメリカ連邦議会の議員を 動かし、議員がユニークデバイス識別の推奨書簡をFDAに送付しました。FDAだけが 推進しているわけではありません。ユーザー主導で連邦議員が動き、そして行政サイドの FDAが動き法制化が実現したということをぜひご記憶いただきたいと思っております。 ここでは詳しくユニークデバイス識別に関してのFDAの取組みを紹介していますので、 後ほどお読みいただきたいと思います。この法制化に関しては、39ページにございますよ うに2010年春に第一次規制が予定され、その後4ヵ年程かけてリスク区分毎に強制法規の 対応が予定されています。日本から輸出される医療機器についても、その販売先がメリカ 国内であれば規制表示の対象となります。  時間の関係で以上で終了します。ありがとうございました。 ○嶋口座長  黒澤様、どうもありがとうございました。英、独、仏、スイス、カナダ、米国と非常に 広い分野にわたっての海外の状況をご説明いただきました。本来ならばここで意見交換を する予定でございましたが、時間が大分押してしまい、本日は会場その他の関係で12時ま でに終わらなければならないそうです。大変恐縮ですが、今日はどちらかというといろい ろな状況を実態お聞きしたということにさせていただきまして、この後、事務局の方でこ れまでの何回かの懇談会の成果を踏まえまして、今後の方針について少しご説明いただき たいと思います。15分ぐらいかかると思いますが、よろしくお願いいたします。 ○安東流通指導官  では、簡単に説明させていただきます。資料3をご覧いただきたいと思います。今まで の流改懇で出た意見を分野ごと、内容ごとにまとめております。コード貼付利用について は、メーカー側は進んできていると感じている一方で、医療機関では利用面で使いにくさ があり、使用単位での貼付が進んでいくことが望ましいと言われております。  またデータベース登録については、メーカーには網羅性、精確性、迅速性の確保。また バーコード貼付と登録はセットで考えることが望まれております。  医療機関はデータベースに利用価値のある項目の追加を望んでいるようです。また、デ ータベースの信頼性に疑問があるとの意見もありました。  トレーサビリティについては、バーコードはトレーサビリティに有効であるとの認識は メーカー、卸、医療機関の三者とも共有をしているようでございます。  また、業務効率、電子商取引についてはメーカー、卸では普及も見られ、業務改善の効 果を実感してはいますが、医療機関ではあまり普及しておりません。  医療安全については、バーコードを利用して安全性が高まるということの認識は共有さ れております。なお業務の負荷、また財政負担の面からどこまでやるか、どの機器まで貼 付するかということが課題としてあります。  その他としては、メーカー、卸、医療機関の三者を連携させて医療全体を網羅する中で 無駄を省き、安全性を高めながら効率化していくという方向性は共有化されております。  希望、要望としてはシステムの導入、改修に当たっての新たなコスト発生の対応、また コード変換システムの作成についての指導等が上げられております。  資料については以上です。 ○嶋口座長  どうもありがとうございました。それでは木下課長の方から。 ○木下経済課長  追加をしてもう1枚ブルーの横長のがございます。時間が押して恐縮でございますが、 これまで3回にわたりましてヒアリングという形でそれぞれメーカー、卸の方、医療機関 の方々、今日もシステム開発の立場からの方、医療機関という形でお聞きした中で、主立 ったポイント、今意見どういうのがあったのかご紹介しましたが、それを集約化したもの でございます。絵で見ていただきますと、今の状況はどうかといいますと、メーカーさん はGS1−128でコード番号を付与している状況、これは保険医療材料を中心としてお ります。そのメーカーの貼付しているバーコードに関して、現在、データベース登録機関 としてMEDISというのがあります。大体60万アイテムぐらい登録しているという状況 がご報告あったわけであります。そのデータベースに関しては物流を担っている卸さん は、今160業者ぐらいあります。基本的にはダウンロードされているということでござい ます。ただ、その際に卸さんがこれまでの報告でも独自のコードをお持ちでございます。 管理コードをお持ちでございますから、基本的にはデータベースのMEDISのデータベ ースから卸独自のコードに変換をしているというのが現在の実態だということでございま す。  医療機関に関して言えば、データベース登録機関そのままGS1のコードをダウンロー ドしている医療機関は380医療機関ございます。仮に病院だけだとしますと8,500余りの 医療機関の380と、4%ぐらいという形になりますので、その他の医療機関はコード番号 をお持ちでございますが、必ずしも直接ダウンロードされていないという状況になってい ます。  では何をやっているかというと、卸さんから医療機関に物流でお流しする医療材料につ きましては、医療機関がまた独自のコード番号をお持ちで、それに変換しているというこ とになります。基本的には例えば医療機関で病院情報システムを構築しますときに、ベン ダーさんが具体的にお作りになるわけでありますが、その際にデータベース登録機関のデ ータをダウンロードした場合においても、いったん読み替えて、別のテーブルにして医療 機関のコードに合わせていく、こういう作業が行われているのがかなり多いということで ございます。したがってメーカーから卸、医療機関という全体の一気通貫、これまでの本 日の意見発表の中からもございましたように一気通貫のシステムが望ましいということ で、一気通貫にはなっていますが、コードの変換が2回されているというところが1つ実 態がございまして、GS1そのもの、裸の形で医療機関はそのままつながっているわけで はないということでございます。  そこでメーカーさん、卸さん、医療機関それぞれご意見がある中で一気通貫に関しては 皆様方比較的ご意見としては必要性はあるけれども、ただ例えば医療機関においても独自 のコードできちっとGS1に読み替えられるのであれば、逆に言うとメーカーまでたどれ るので、トレーサビリティあるいは医療安全の観点からもある程度可能ではないか、こう いうご指摘がありまして、いわゆる物流での在庫管理、製品管理上の問題はないのではな いかという点もございます。  ただ、仮に全てGS1で統一して読み替えしないということになりますと、医療機関の 欄に書いてありますとおり、現在、変更するということになります。システム変更になり ますので、それに伴う財政負担の問題とか、そういう問題をどうするのかという点がござ います。  それから、そもそもMEDIS、医療機関の一番下にありますが、ここのデータベース の使用については現場の意向が十分に反映されていないのではないか、こういう意見も出 ておりまして、基本的には商品コード、それから有効期限、あるいは製造番号という形の 3つの情報があるわけであります。これに加えてやはりプラスαのもう少し使いやすさで すとか、あるいは直ちに、先ほど60万アイテムの登録がありましたが、医療機関に使いた いという材料に関して、必ずしも登録がない場合には使い勝手が悪い、こういうことこの ご意見もございます。そういう問題点をどうクリアするのかという点が意見として出され ております。  裏側に、ちょっと見ていただきますと、データベース機関、MEDISに関してはまず 承認をされた医療材料等がきちっとコードの付与と同時に登録をしないと十分に使いこな せないということでございます。  それから、MEDISのデータベースは逐次登録をされるのであれば、最新情報が常に つながっている、もしダウンロードされているのであれば医療機関に情報が流れるように なっているということでございます。  それから、ちなみに社会保険診療報酬支払基金に関しては、審査にMEDISのデータ ベースを利用するということが22年度から決まっているようでございます。  以上のようないろいろなご指摘、ご意見を踏まえたときに、ちょっと整理したものが次 のところであります。1つは、コード化に関して在庫管理をはじめとして経営管理だけの ツールを基本としつつも、誰がいつ、どこで使用したかという問題。それから、書いてお りませんが、どの製造ラインで、いつ作ったのか、そういうことも含めてトレーサビリテ ィをしっかりする。あるいは医療安全の観点から有効なツールであるという認識に立っ て、これからも進めるかどうかという点。  それから2つ目が今のお話ですが、そういう認識はあるけれども、ダイレクトなGS1 コードへの移行ということについては、どこまでやるのかどうか。それは費用対効果の問 題もあって、どういうプロセスで進めるべきかということであります。  それから病院情報システム、あるいは卸の情報システムについて、既にお持ちなわけで ありますが、仮に現在のものを変えるというのは先ほどの費用対効果の問題があります が、今後、ベンダーさんとして開発をするという場合にベンダーさんがGS1コードを認 識して、そこを使うということになれば、やはり協力がどうしても必要でありますが、そ のような辺りをどう考えるかということです。  それから、GS1コードに関しての付加価値としての情報については、これからどう考 えるか。それからユーザーへの意向反映、こんなようなことがこれまでのご意見から抽出 できるかなと思っております。本日のご意見の中からやはりバーコードの貼付の単位の意 見、発表者の中からございましたので、例えば単位をどうするか。箱単位ではなくて、も う少し1品1品ごとに貼付をするということで、より有効性が高まる。こういうご意見も ございます。そういったことも含めて、今後の議論をする際の参考として整理したもので ございます。以上でございます。 ○嶋口座長  どうもありがとうございました。今日は大変盛りだくさんだったものですから、大分時 間が押しましたが、本日、最初に井形様から医療安全の徹底的追求のためのバーコード活 用と情報システムについて。その後で、NTT東日本関東病院の落合様から医療機関の中 のIT機関の事例とその他ということでご自分の医療機関の中での経験を踏まえてお話し いただきました。さらに、黒澤様からは欧米医療機器業界のコード化の取組ということで お話をいただいたわけでございます。黒澤様のお話は大分時間が押してしまって、私の方 からメモを入れて、恐縮ですが少し短縮していただけませんかとお願いしてしまったので すが、資料を拝見しますと相当詳細に事実が書いてありますので、委員の皆様にはそこの ところをしっかり見て確認していただければと思います。  以上を踏まえまして、一応これまでヒアリングの中でどういうことが指摘されてきたか ということを現状と問題点という形で今、経済課の安東さんからまとめていただいたわけ でございます。これも細かい資料として出ておりますが、これまでの議論をかなり要領よ くまとめているかな、という感じがします。  最後に、ただいま、木下課長からこういうヒアリングをベースにしてGS1コードの評 価と検討すべき今後の課題ということで、事務局のメモを今ご発表いただいたわけでござ います。各々がかなり要領よくご説明いただいたのですが、細かい点についてはまた資料 のところをしっかり確認していただければありがたいと思います。  ほとんど時間がなくなったのですが、1つ2つぐらいなら何とか、どうしてもこの面に ついてご質問しておきたいというのがございましたらお受けしてもと思いますが、いかが でしょうか。  よろしいでしょうか。  あまり細かい点について、また質問が出ても時間がかかってしまいます。それでは今日 はどちらかというと全体の状況について、過去数回のものの延長の中で更に新しい情報を 我々は確認したということで終わりたいと思います。  事務局から今後の進め方についてご指摘をいただけばありがたいと思います。 ○安東流通指導官  今後の予定ですが、提言の準備作業を嶋口座長、三村座長代理の指導の下、事務局で適 宜参考人からの意見を聴取しつつ進めることを提案させていただきます。どうしたら関係 者がバーコードを活用して効率化を図れるか。また、どのような方法が一番効果的である か等を検討し、提言のたたき台を作成する作業であります。ここでたたき台を作りまし て、次回の流改懇に出したいと考えております。以上でございます。 ○嶋口座長  いろいろなお立場の方々を委員としている懇談会でございますので、なかなか1つ方向 を出すのが難しいところもありますが、そうかと言ってヒアリングをずっと重ねて、その ままいくというわけにもなかなかいきませんので、今、事務局から座長の私と座長代理の 三村先生を交えて、今までのヒアリングの状況を踏まえて事務局案を次回に出す。それを ベースにして議論していきたい、そういうご提案をいただきましたが、よろしゅうござい ますか。  ありがとうございます。それでは、ご承認いただいたということで、そのような形で進 めたいと思います。  最後になりますが、前回の流通改善に関する懇談会に関する発言について訂正があると いうことで、JIRAの南さんから発言要望がございました。短時間で恐縮でございます がよろしくお願いします。 ○南委員  簡単にお願いを申し上げます。前回の発言に誤りがあるとの指摘を受けましたので、議 事録を抜粋して置いておりますが、ちょっと読みますと、「メーカーに対して法的に決ま っておりますので」という発言と、次のページになりますが、「例えば10年間はメーカー で保管しておきなさいとか、そういった法的に定まっておりますので」という発言をいた しましたが、そこのところを前者の方は、「製造業表示規約第5条等で家電等はあるよう ですが、医療機関分野の方には、目的が異なりますので保管の条項はなく医療機器につい てはメーカーの自主基準によりそれぞれが決定しておりますが」。  後者の方は、「例えば身近な冷蔵庫ですと9年間は補修用性能部品の保有期間となって いるようですが、医療機器についてはメーカーの自主基準で、保管等を実施しています が」、こういうふうに訂正していただきたいと思います。  医療等に関係する法律等には自明のことですが、法の目的第1条に保健衛生向上とか国 民の健康というふうにうたっておりますので、部品の供給などはそういうところにはない ものと、そういうふうにお願いいたします。どうもありがとうございます。 ○嶋口座長  どうもありがとうございました。  それでは、後半の方が大分駆け足になってしまって、しかも大切なお時間を割いていた だいた委員の方々になかなか発言する機会がなくて、大変申し訳ございませんでした。こ れは座長の責任でございますが、お許しください。  先ほど事務局からお話がございましたように、これから少しまとめの方向、まとめと言 ってもどのぐらいのまとめかというのはなかなか難しいのですが、ロードマップみたいな ものを含めて事務局と相談しながら、そのたたき台を作って、それを次回の中でお示しを して、また委員の先生方にもんでいただく、こういう形にしたいと思っております。よろ しくお願いいたします。  今日はお三方の先生、本当にすばらしいお話をいただきまして、時間がちょっと足りな かったようで申し訳ございませんでした。ありがとうございました。 ○落合氏  是非現場を見に来ていただきたいと思います、お一人ひとりに。いつでも対応させてい ただきますから。看護師さんたちがどんな苦労をしているのか、薬剤師がどうしているか を見ていただくと実際の作業に導入できるのかどうかということが分かると思います。い くら机上の空論で語っても大変だと思うので、是非見に来ていただきたいと思います。 ○嶋口座長  どうもありがとうございました。  それでは、以上でございます。 −了−