09/09/15 第2回化学物質のリスク評価に係る企画検討会議事録           第2回化学物質のリスク評価に係る企画検討会    日時 平成21年9月15日(火)        14:00〜    場所 経済産業省別館10階共用1036会議室 (担当)厚生労働省労働基準局安全衛生部                化学物質対策課化学物質評価室 井上 〒100−8916 東京都千代田区霞が関1−2−2                TEL 03-5253-1111(内線5518)                 FAX 03-3502-1598 ○長山情報管理官 本日は大変お忙しい中をご参集いただきまして、誠にありがとうござい ます。定刻となりましたので、ただいまより「第2回化学物質のリスク評価に係る企画検討 会」を開催いたします。進行については櫻井座長にお願いいたします。 ○櫻井座長 議事進行を務めますので、ご協力のほどよろしくお願いいたします。今日はリ スク評価企画検討会の第2回です。リスク評価対象物質・案件の選定という議題になるわけ ですが、最初に、事務局から本日の議事予定及び資料の確認をお願いいたします。 ○長山情報管理官 本日の議事及び出席の皆様のご紹介をいたします。お手元の配付資料の うち、座席表の次に「企画検討会(第2回)」という1枚紙がありますが、本日予定の議事 としては、(1)リスク評価対象物質・案件の選定について、(2)労働分野におけるリスクコミ ュニケーションのあり方について、(3)その他となっております。また、本日ご出席の皆様 は、配付資料一覧の次に参集者名簿を付けております。なお、名古屋委員からは事前に本日 ご欠席との連絡を承っております。また、事務局のほうで前回以降に異動のあった者のみ紹 介させていただきます。化学物質対策課長の半田です。少々遅れているようですが、環境改 善室長は亀澤に代わりましたのでご報告いたします。  次に、資料の確認をいたします。まず、企画検討会の議事次第の1枚紙がありまして、次 に配付資料一覧があります。これに沿って付けておりますが、参集者名簿がございます。ま た、議事に沿った形で資料は順番を並べ替えてあります。資料1-1は選定の考え方(案)、 資料1-2は選定基準概念図(案)、参考1は選定に係る検討資料、参考2は報告対象物の選 定経緯についてです。資料2-1は物質・案件一覧、資料2-2は物質・案件の選定手順、参考 3はリスク評価候補物質・案件についての意見公募要領として、パブリックコメントの要領 を付けております。資料3-1からはアンケート結果等、リスクコミュニケーション等ですが、 7月29日に行われた意見交換会、リスクコミュニケーションで使った資料、各種パンフレ ットを付けております。最後に、資料4は今後の検討予定となっております。 ○櫻井座長 資料はお手元にお揃いのようですので、先へ進みます。最初に、「リスク評価 対象物質・案件の選定について」の審議を行います。前回の審議では選定基準のたたき台に ついて検討を行い、いろいろ意見を出していただきました。再度各委員の意見を聴取するこ とになっており、事務局には意見聴取の結果を踏まえてお手元の「リスク評価対象物質・案 件の選定の考え方(案)」として作成していただきました。これについての説明をお願いい たします。 ○島田化学物質評価室長 資料1-1では考え方、その考え方を概念図として落としたものが 資料1-2です。バックグラウンドとして作成したものが参考1で、以上3つの資料に基づい て説明いたします。まず、参考1は「リスク評価対象物質の選定にかかる検討資料」ですが、 あくまでも参考として事務局が作ったもので、これに基づいて説明をいたします。合わせて、 参考2としてこれまでのリスク評価対象、ここではリスク評価のツールとして「有害物ばく 露作業報告制度及び報告対象物の選定経緯について」ということで前回の資料を付けており ますが、過去のものをご覧いただく場合はこれと見比べていただきたいと思います。  参考1ですが、1つは有害性の「重篤度」と「確からしさ」の2つを組み合わせて作図し ております。右のカラーで作りました資料は横軸が確からしさです。IARC(国際がん研究 機関)やEUで作成された有害性、特に発がん性に関する確からしさを示すリストを基に、 これまで発がん性物質の選定に当たってきたわけですが、今後の話として、その他にもいろ いろ情報があるといったことを書いております。例えば確からしさの部分では、EUやEU 以外のその他の国際機関、あるいは外国政府においても有害性に関する指摘が出ているので 3番目の矢印を付けております。そのほかに、学術論文、科学論文の中で有害性の指摘がさ れているようなものも当然あります。そういったレベルで論文化されていないものでも、社 会的な関心の拡大ということでさまざまなところで問題が取り上げられているものもあり ますから、確からしさの観点では非常に低いのですが、世の中の関心事にはなっているとい うことです。  一方、縦軸は毒性の重篤性を示したものです。現在までやってきたものは、職業がんがい ちばん問題であるということで、重篤性の中でもトップに「発がん性」を入れましたが、そ のほかに「生殖毒性」や「神経毒性」などといったものも低濃度レベルで起こる問題として 重篤な病気あるいは労災を引き起こしますので、2つ目に入れております。その他の慢性毒 性としては「呼吸器感作性」「重度の皮膚感作性」、例えば呼吸器感作性では、ぜん息などを 起こすような物質、皮膚に対して感作性を及ぼす物質もありますので、そういったものにつ いてのグラフになっております。これまで対象としてきたものは白い丸がかかっている部分 ですが、主に発がん性に対応してきており、確からしさという情報の選択の面ではIARC の1Aから2Bまでの物質、EUではEUの1、2といった物質で、今後は少し広げたほうが いいのではないかということです。  左には文章で書いてありますが、1の(1)にあるように、これまでIARC、EUの発がん性 の確度の高いものを選んできたが、それについては既にリスク評価に着手済みなので、現在、 一部評価を継続しているものもありますが、着手といたしました。今後のリスク評価の対象 物質としては、先ほど申し上げたように、IARC、EU以外での発がん性が指摘されている 物質、特別則の対象となっているその他の健康障害についても対象を広げていくことが重要 ではないかということです。  (3)として、特別則での対策が想定される毒性としては前回議論していただきまして、生 殖毒性あるいは神経毒性といったものについても対象としていくべきではないかというこ とでした。その際には以下の考慮が妥当ではないかといったことも意見としていただきまし た。まず、国内外の規制濃度あるいは許容濃度といったものが設定されているが、これらを 根拠として挙げている毒性の中にも問題があるものもあるのではないか。2点目として、国 際機関、外国政府の情報、科学論文等においてヒトまたは動物の実験により、これらの毒性 が確認されているものについても対象としていく必要があるのではないか。それらの場合、 発がん性との比較の中で発がんの実質安全量、つまり発がんの場合は閾値がないことがある ので、どんなに濃度が低くても問題はあるわけですが、実質的な安全量と比べて、癌の安全 量よりもっと低い濃度レベルで問題が起きている他の毒性といったものは、当然対象として いかないと問題が起きるのではないかということです。  その他、特に労働ばく露という局面では、体の中に蓄積性を有するような物質については、 特に要注意です。これは物質そのものが特定の病気を起こすというよりは、蓄積することに よって問題を起こす、例えば紛じんなどといったものがあることも着眼点としており、「蓄 積性の粒子状物質が肺に蓄積することにより肺疾患の原因となる場合が多く、リスク評価対 象の選定においても重視する必要がある」としております。また、蓄積性の観点からの対象 の選定の指標として、例えば生物学的半減期やオクタノール・水分配係数を挙げておりまし て、特に人間の体の脂肪分に蓄積するものがあることから、オクタノール・水分配係数等が 指標になるのではないかということです。  (5)としては非可逆性の毒性を有するもの、いわゆる後遺症が残るものについては重篤な ものとして判断していく必要があるため、優先的にリスク評価をする必要性が高いというこ とです。なお、ここでは急性毒性を視野に入れておりませんが、急性毒性については、死に 至るものから軽度のものまでいろいろあり、その重篤性については、ばく露量、部位、範囲 等により変動するため、この場での誤解を避けるため、あえて表記しませんでした。急性毒 性のリスクについては、いわゆる毒性学的、あるいは代謝の面で検討するというよりは、む しろ、爆発や漏洩といった事故の確率に関連して問題が起きてくるものだろうといった視点 を注記させていただきました。  裏面に移り、これはこれまでもばく露評価あるいはリスク評価の対象のものについて規定 してきたものですが、右手のグラフの横軸については、「ばく露の可能性」ということで指 標を取っております。縦軸は「管理レベル」です。現在まで対応している物質のうち、ある 特定の物質については、それを使っているものはすべてその物質を対象としていこうという ことで始まっているように、白抜きの「これまでのリスク評価の対象物」については横長の 枠に囲っております。これはばく露の可能性という意味で、例えば粉じん、蒸気、ガスなど といったものに限定して対応しているのではなく、物質全体を着眼点として対象に選んでお りますので、場合によっては塊状の物質、ペレット状の比較的大きな塊で、吸入などの問題 がないものも入れてしまっている状況がありますから、ばく露の可能性からすると、すべて 横に寝たグラフというか枠になっているということです。縦の管理レベルですが、基本的に はこれまで法規制がされているものについてはリスク評価を見送るという形になっており ました。併せてMSDSですが、文書の交付、安全に関するデータシート自体がないと、事 業者が自ら扱っていることを認識できないという手続上の問題もあって、リスク評価の対象 物はMSDSの対象物であるとしておりました。  今後のことですが、ピンクの部分をご覧ください。ばく露の可能性の観点からすると、ば く露の低いもののうち、そのような使用しかないものについては外していくべきではないか としております。法規制との関係では、例えば法規制がかかっていても多少見直しが必要な ものもありますので、ピンクの部分の枠については、法規制がかかっていてもその対象とす ることを意思表示しております。併せてMSDSというデータシートがなくても、情報提供 はできるだろうと考えますと、今後の情報提供として、例えば前頁に出ていたような世の中 で心配が募っているものとか、情報の提供によって適切な対応ができるものにあっては、こ のリスク評価の中で情報提供のために対応していくことも可能ではないかとしております。  左をご覧ください。(1)については既に説明したとおりですが、MSDSについてと法規制 の関係については少し見直していこうということです。(2)についても同様に、現在の法規 制に見直しが必要なものについてはリスク評価の対象にしていくとしております。(3)の物 理学的性状については、先ほど述べたように、ばく露の可能性について事前に情報を取って 限定をかけていくことが可能だとしております。特に、視点としてばく露の可能性あるいは 有害性に関しては、蒸気圧が高い物質や粒子径の小さな物質などについてはばく露リスクが 高いと考えられます。分子量の点から見ていくと、分子量の小さな物質は化学的活性が高く、 生体、特に細胞の中に取り込まれやすいので、このようなものについては優先的にリスク評 価をしていく必要があるのではないかということです。また、作業によっては非意図的に有 害物が発生する場合があることから、これまで取扱い、製造といったことで対応してきたも のではありますが、非意図的に出てくるような物質についても、必要があればリスク評価の 対象としていく必要があると考えております。  (5)ですが、労働者のばく露については特に国が行うばく露評価あるいはリスク評価とい うことですので、当然その影響力というものを勘案していかなければいけないと考えており ます。1つの事業場で起こったものは1つの事業場の中で対応できるものもあるということ であれば、それについては個別の指導で対応するということですから、国のリスク評価とし ては当該化学物質を扱っている事業場数、リスク評価の波及効果の範囲を考慮する必要があ ると。環境ばく露とは異なり、生産量、輸入量がそのままリスクの変動に影響を及ぼすわけ ではありませんが、使用している事業場数が多いか、少ないかを判断する上で、生産量、輸 入量といったものを指標として活用することは妥当ではないかということです。.  (6)として、MSDSの交付対象物質でないと有害物ばく露作業報告を活用することは困難 だという認識に対しては、そのとおりではありますが、先ほど申し上げたような情報提供と いったことであれば、有害性の評価を先行して実施することが可能ではないかと思われます ので、そのようなものについても対応していけることが必要ではないかということです。  以上のような検討を踏まえて作りましたのが、資料1-1の「リスク評価対象物質・案件の 選定の考え方」です。1は今後のリスク評価の対象物、案件で、案件とは対象物質名を指定 できないもの、あるいは指定して対応することが適当でないものについては案件として整理 するということです。対象物質・案件については(1)〜(3)のいずれかに該当するものの中か ら選定するものといたします。(1)は重篤な有害性を有する又は、有するおそれのある化学 物質・案件として、以下に該当するものを選ぶこととします。アとして、有害性に係る(ア) 〜(エ)の情報において、以下の(1)〜(5)に掲げる重篤な有害性があるか、又はあることが示 唆される化学物質・案件であるかということです。  情報については、(ア)として、国際機関又は外国政府の有害性に係る分類・情報、(イ) として、国内外の産業衛生に係る学会等における有害性に係る分類・情報、(ウ)として、 国内外の主要な学術誌に掲載された論文。主要学術誌に関しては、論文としての信頼性がい ろいろ取り沙汰されますが、主要な学術誌に掲載されたものについては、その信頼性に関し て審査が行われていることから、主要な学術誌ということで限定をかけております。(エ) は国が実施した吸入ばく露試験、国に届け出られた有害性調査の結果で、国が実施している ものについても、その情報を利用してリスク評価をしていくということです。  対象とする重篤な有害性としては、(1)発がん性、これはいままでと同等です。(2)生殖毒性。 (3)神経毒性。(4)ヒトの生体で蓄積性(生物学的半減期が長い)があり、蓄積することにより 疾病(慢性肺障害等)を発生する毒性。(5)その他ヒトに対して非可逆性の障害を発生させる 毒性で、後遺症が発生するようなものということです。  なお、有害性の程度が低く、この場合はばく露限界値等の閾値が大きいもの、それに加え て、当該物質の物理的性状から見て、ばく露程度が低いと判断されるもの、例えばガス、紛 じん、ミスト以外の性状のものについては、リスク評価の対象から除外して差し支えないも のとしております。  イとして、実際に労働に伴う疾病が発生しているものを入れておりますが、労働に伴う疾 病に関する次の(ア)(イ)の情報において、化学物質による疾病が増加し、又は増加する おそれが示唆される化学物質又は案件としております。(ア)は労働災害の発生等に係る情 報、(イ)は大学、医療機関又は国の試験研究機関に所属する有識者からの疾病の発生に係 る情報ということですが、特に国の試験研究機関というのは、現在は独立行政法人となって いるものもありますので、当然それは入るという理解です。  (2)は国内における健康障害防止措置等に関する次のア、イの情報において、当該措置に ついて問題が生じている、又は生じるおそれが示唆される化学物質・案件ということです。 アは労働安全衛生に係る行政機関からの情報、イは労働安全衛生団体等からの情報、特にば く露防止措置がうまくいっていないといった情報があれば、それに関する評価をしていく必 要があるというのが(2)です。  (3)は国内において、有害性に係る懸念・不安が広がっているものとして、次のア、イに 該当する化学物質・案件ということで、アはパブリックコメントその他でリスク評価の要望 が高かったもの、イとして、最近マスコミ等において取り上げられる頻度の高いもの。なお 書きとして、当該条件に該当するものについては、有害性評価を先行して実施し、労働者等 に対して正確な情報を提供するものとする。ただし(1)に該当するもの、リスク評価の対象 となるものについては、この限りではないとしております。  次頁の2は、先ほどの検討資料の裏面に関する部分です。以下の(1)(2)に該当する場合に あっては、対象物質・案件から除外するものとする。ただし、対策の見直しが必要なものに ついてはこの限りではないとしております。(1)として、国内における製造、取扱いがない、 あるいは化審法等で使用が禁止されているものについては、問題がある場合であっても国内 においてはほとんど影響がないことが判断できますので、取扱いがない場合やわずかである 場合はこれを除外することとしております。(2)として、既に法令等により適切な対策が講 じられている場合で、これまでもその対応をしてきて、適切に対応されていることを前提と して、リスク評価の対象から除外することとしております。  3は、リスク評価の円滑な推進のため、リスク評価対象物質・案件数を絞り込む場合にあ っては、委員の皆様のような専門家の意見を踏まえ、有害性の確度の高いもの、有害性の程 度、物理的性状等から見たリスクの高いもの、対象物質を取り扱う事業場、労働者数から見 た影響度の大きいものを優先的に選定することとしております。このあと、リスク評価のた めに「有害物ばく露作業報告」を事業者、企業へ求めていくという観点もありますので、過 度の負担をかけることがないよう物質数についても適正なものにする必要があるというこ とです。その際、優先的に選定する順位としてはここに掲げたようなものがあります。  4として、なお書きで、労働安全衛生法において文書(MSDS)の交付、表示(ラベリン グ)の対象となっていないため、事業者が取り扱った製品に対象物質が含まれているか否か を確認できない場合等、ばく露調査を実施する上で支障が生じる場合については、MSDS の交付あるいは表示の対象となった段階で、リスク評価の対象とすることとする。実質的に 対象とするものとして、これらのものを前提とするということです。ただし、上記1の(3) ですが、先ほどの情報提供の必要なものについては、これに限らず有害性評価を先行して実 施し、情報の提供を行うものとするとまとめております。ご検討をお願いいたします。 ○櫻井座長 ひと通り必要な説明が終わりましたが、この選定の考え方についてご質問、ご 意見等があればお願いいたします。 ○小泉委員 確認で、発がん性以外の毒性として生殖毒性が取り上げられているのですが、 これは胎児に対する影響も含むという理解でよろしいでしょうか。胎児への影響、つまり次 世代影響ということです。例えば、生殖毒性と言うと不妊を考えると思うのですが、そうで はなくて、子どもに異常が起こるということも含むのかどうかということです。 ○島田化学物質評価室長 こちらで議論していただき、生殖毒性について入れたほうがいい ということですので、先生方にご議論いただければということではありますが、生殖毒性の 場合は次世代への影響といったものは当然入っております。私ども事務局としての理解は、 そのようなもので重篤なものがあれば、当然対応するということです。 ○山口委員 追加ですが、あくまでもGHS分類が前提になると思います。GHS分類上、 データの提供ができるものでないと、やはり危険なものとして判断できませんから、いま言 ったような状況がGHSに間違いなく反映されているのであれば、よろしいと思います。 ○櫻井座長 その他何かあればお願いいたします。 ○清水委員 私が今まで経験してきたことですが、職業がん予防の観点から変異原性試験、 つまりAmes試験をして強陽性になったものを、さらに染色体異常の試験をして強くなった ものについて生産量、ばく露対象人数、労働者数等を考慮して、平成6年ごろから既存物質 等に係る変異原性評価に関する調査委員会というのを旧労働省でやっていたのです。これは 中災防のバイオアッセイ研究所が事務局としてやっていたのですが、そのような中で危険性 の高いものは管理1と分類して、通知物質として評価しました。その物質数がどのぐらいあ ったか記憶が定かではないのですが、バイオアッセイ研究所にその控えが全部あると思いま す。そのようなものはこの中でどこに分類したらよろしいのでしょうか。 ○島田化学物質評価室長 私どもの分類の関係では、(1)のアの(エ)に、国が実施した吸 入ばく露試験、国に届け出られた有害性調査の結果等の情報などといったところから物質を 選定していく中で考えさせていただいております。 ○山口委員 追加ですが、ただいまのお話の物質に関しては、一応取扱いの指針等が国から 出されて管理はされている状態にありますので、それに対して何か不備があるようならば必 要でしょうが、一律にやる必要はないのではないかと思います。その辺の状況を見て、リス クが高いと判断したときにやるべきではないかと思います。 ○櫻井座長 ただいまのことに関して1つ。この「リスク評価対象物質・案件の選定の考え 方(案)」の文言上で気にかかる点は、裏の3の有害性の確度の高さについてです。括弧書 きで「なお、1の(1)のアについては(ア)から(エ)の順に有害性の確度が低いと考えら れる」としていますが、1のアの(エ)の国が実施した吸入ばく露試験や国に届け出られた 有害性調査の結果が、いちばん確度が低いところに位置づけられているのはなぜだろうと思 う人が多いと思うのです。これはヒトに対する有害性という点から見ると、(エ)はすべて 動物実験またはAmes試験、インビトロの試験からくるもので、ヒトに対する有害性という 点では確度が低いと判断しているということを分かってもらう必要があると思うのです。 ○島田化学物質評価室長 いま座長が言われた点は、他の委員の方々からも同じように指摘 されました。座長のお手元にあるものはその調整をしたときのものでして、現在は(ア)〜 (エ)の部分は括弧書きを外しております。最新バージョンではその部分だけ抜けておりま す。 ○櫻井座長 そうですね。一歩先んじて昨日いただいた資料ですのでそれが入っておりまし たが、抜かしていただいたのですね。 ○島田化学物質評価室長 同様のご意見をいただきましたので、その部分については外して おります。 ○櫻井座長 それにしても、ヒトに対する重篤な有害性といったことは入れたほうがいいの ではないかという気がするのですが、いかがでしょうか。 ○山口委員 そうです。労働安全衛生をあくまでも目的ということですから。 ○櫻井座長 常に動物実験のデータとヒトのデータのギャップというものに最大限に、業務 がいつも集中するものですから。例えば、表側の1の(1)の「重篤な有害性を有する又は」 の前に、「ヒトに対する」というのを入れたらどうかという私の提案ですが、よろしいでし ょうか。委員の皆様からはご同意いただいているようです。そこへ1つ入れておけばいいの かなと。裏面の3の2行目にも「有害性の確度の高いもの」というのがありますが、ここに も「ヒトに対する」と入れましょうか。私としては以上です。 ○山口委員 1つ確認ですが、(1)の「神経毒性」は(1)にあるように、あくまでも「重篤な 有害性を有する又は、有するおそれのある化学物質」ということで、神経毒性に関しても重 篤なものから軽度のものまであると思います。これは重篤な有害性があると考えられる神経 毒性という解釈でよろしいですね。 ○島田化学物質評価室長 もちろん、この場で先生方に決めていただくものですが、神経毒 性に単純な有機溶媒に対する中毒のようなものが入るかと言うと、私どももそのようなもの は入るとは思っておりません。 ○櫻井座長 急性ばく露における麻酔作用のようなものですね。 ○島田化学物質評価室長 そのようなものは入らないと理解しております。 ○櫻井座長 かなり慢性で、非可逆性とか重いものだけを考えているわけですが、それが字 面に出ていないですね。発がん性だけは何か別格で、国際的にも世の中でもとかく別格に扱 われていますが、生殖発生毒性あるいは神経毒性は、単にそれがあるというだけではこの条 件に当てはまるとは私どもは考えませんが、この表面に書き込むかどうか、そこまではよろ しいですか。他に何かあればお願いいたします。特段、追加のご意見はないようですので、 先ほど申し上げた「ヒトに対する」ということだけ修正していただきまして、この考え方で よろしいでしょうか。                   (了承) ○櫻井座長 一応お認めいただいたということで今後進めさせていただきます。 ○山口委員 確認したいのですが、選定の考え方の承認というのは、参考1の説明資料を含 めてということでしょうか。1だけを見た場合、やはり説明が足りない部分があるので、あ くまでセットとして、優先は資料1-1という考え方ということで。 ○島田化学物質評価室長 参考のほうはあくまでもご検討いただくための説明の資料です ので、今回承認いただいているものは資料1-1と理解しております。 ○櫻井座長 参考1は細かく書いてありますが、細かく見ると何か修正しなければならない 点があるかもしれません。 ○山口委員 資料1-1だと説明が足りない部分があります。 ○櫻井座長 一方だけではそうですね。これは入れておいたほうがいいというお考えのとこ ろはありますか。 ○堀口委員 参考1はおもてに出ないということですが、裏面の図の管理レベルとばく露の 可能性の縦軸と横軸のグラフで、ピンクの部分は今後のリスク評価対象物ですから、これま でのリスク評価の対象はピンクの部分から少し外れますよね。そうすると、外れたところま では知らないよというイメージを思わせるとあまり良くないので、「今後の情報提供」の所 に、外れてはいるが情報は提供するという意味合いを持たせるような感じに。 ○島田化学物質評価室長 わかりました。いまの白い部分は、本来、紫が入ってくる部分で はないかというご指摘ですか。 ○堀口委員 はい。 ○島田化学物質評価室長 承知しました。 ○堀口委員 評価しなくなったからもう全然知らない、安全だとも言えないので、知らない と言うよりは、何かあったときにはきちんとインフォメーションを出しますという意味合い を持たせておくと、削除されることについては異論が出ないと思います。 ○山口委員 削除の必要はないと思いますが、基本的な考え方がどちらかということをはっ きりさせないと、こちらの説明だけでは、例えば、ただ神経毒性とだけ書いておりますから、 重篤という意味が少し足りないとか、説明としてはわかるのですが、両方を理解してやらな いと、片一方だけでは不足な部分があるのです。2つをきちんと解釈してということであれ ばよろしいのですが。 ○島田化学物質評価室長 あくまでもこの企画の検討会で決めていただくという趣旨です し、事務局の資料をご承認いただくという趣旨ではありませんから、ご自由にご意見を言っ ていただければ結構です。 ○堀口委員 それならば図表というかグラフがあるほうが、このような1枚紙が出ていたと きには普通の方はよく見てくれると思います。 ○島田化学物質評価室長 これが表に出ないということではなくて、今回の承認の対象は資 料1-1です。参考資料については、この場で提出した資料としてホームページ等に掲載する ことになります。 ○櫻井座長 これまで全部ホームページに出ますね。 ○島田化学物質評価室長 もしホームページに掲載するのは不適切だというものがあった ら、教えていただければ問題を解決した上で公表したいと思います。 ○櫻井座長 参考1について修正等のご意見があれば、今日はもう時間がありませんから個 別に事務局のほうに出していただきたいと思います。 ○島田化学物質評価室長 お知らせいただければ、適宜させていただきます。 ○櫻井座長 私も相談に乗らせていただき、修正するということにしたいと思います。資料 1-1、参考1、2までについてはよろしいですね。                   (了承) ○櫻井座長 それでは次の議題であるリスク評価対象物質・案件に移ります。これは前回承 認いただいた選定手順に基づき、事務局がパブリックコメントを実施し、リスク評価関係検 討会の専門家の意見を募集、労働災害に係る行政部局等からも提案を募集し、その一覧を作 成したものです。説明をお願いいたします。 ○長山情報管理官 資料2-1の「リスク評価候補物質・案件一覧」に沿って説明いたします。 全体で物質の案件が44件、その他の意見2件、計46件ありますので、10件ずつ区切って 説明いたしまして、議論をいただいてから次の10件という形で進めたいと思います。表の 左には通し番号が書いてあり、次に物質・案件名、その物質を候補とした提案理由が書いて あります。また、提案者が専門家であったり、パブリックコメントであったりと、出所も書 いてあります。参考情報として、事務局が調べられる範囲でMSDSの表現等から有害情報 や用途の例、また、既にMSDSの対象になっている物質かどうかなどといったものについ ての情報を書かせていただきました。いちばん右側には事務局側の方針案として、こういっ た方向でどうかといった案を示しております。  まず1〜10を説明いたします。1の「2-アミノエタノール」は専門家から提案され、気道 及び皮膚感作性が問題となり、神経毒性・生殖毒性・感作性を有するという物質です。用途 の例にもあるようにかなり広く使われており、生産量もかなり多い物質です。また、有害性 情報の中でも肝臓や腎臓など、その他の障害も見受けられます。この物質についての現状の 規制としては、名称通知物質、MSDSの対象物質になっており、事務局の案としては、こ れらの毒性、MSDS対象、量からして、リスク評価の対象とするということで挙げており ます。  2の「インジウム」も専門家からの提案があったもので、肺に対する強い毒性があり、非 可逆性の肺障害を発生させた経緯があるという物質です。規制・評価にあるように、MSDS の対象となっておりまして、「平成21年度初期リスク評価実施中」と書いてありますが、 平成21年度のばく露報告対象物質となっております。インジウム及びその化合物は2B、 りん化インジウムが2Aで平成21年度の対象物質としておりますので、右に書いてあると おり、現在リスク評価中の物質となっております。  3の「エチレンクロロヒドリン」ですが、MSDSの区分は発がん性が区分1、生殖細胞変 異原性及び生殖毒性が区分2になっていることから、候補になると考えられるということで 提案された物質です。生殖毒性、呼吸器等への影響があり、有害性があります。用途の例と しては医薬品、染料など、さまざまな用途で使われておりまして、輸入量、製造量もある程 度の量がございます。こちらについてもMSDS対象物質となっておりますので、リスク評 価の対象とすることで挙げております。  4の「キシレン」ですが、提案理由としては発がん性ではなく、ヒトに対する神経影響が 生じることが確認されていることから提案されております。キシレンは溶剤・溶媒としてか なり多用に使われており、そういったリスクが生じる可能性が考えられることから提案され た物質です。右から3番目の規制にあるように、MSDSの対象になっていることと合わせ て、有機則において、キシレンは第2種有機溶剤としても規制の対象となっております。現 在、規制され、コントロールされている状況にある物質であるという意味から、事務局の案 としては、第2種の有機溶剤に指定されていることもあるので、いま現在はリスク評価の必 要性は低いのですが、引き続きその他の情報を収集していきたいということで挙げておりま す。  5の「グルタルアルデヒド」ですが、提案理由は感作性物質ということで英国でも掲載さ れていることと、通達等において、ばく露による健康障害防止についても指導しているとい う物質であり、労働災害の報告もあることから提案されております。この物質は中枢神経の 障害、皮膚関係に対しての影響があります。規制としてはMSDSの対象物質となっている とともに、変異原性が認められた既存化学物質にも分類されており、使用量もある程度見込 まれることから、今回リスク評価対象物質として挙げております。  6の「六価クロム」は呼吸器系に癌を生じるとか、特に皮膚や粘膜などに皮膚炎、腫瘍の 原因になるということで、昔から鼻に対する影響があったとされている物質です。このよう なリスクを生じる可能性が考えられるということから提案を受けたものです。規制としては MSDSの対象となっているとともに、いま特化則でも規制の措置がされており、同じくコ ントロールされていることから、現時点で即評価の必要性は低いのですが、引き続き情報収 集したいということで挙げております。  7は「1,2-ジブロモエタン」、EDBです。提案理由としては発がん性があることから英国 で掲載されているということです。有害性のところにも書いてあるとおり、IARCでもグル ープ2Aに分類されているとともに、さまざまな有害性が確認されております。規制として はMSDS対象物質であること、いちばん下に「平成21年度初期リスク評価実施中」とある とおり、既に平成20年度ばく露報告対象物質に分類されており、現在リスク評価中ですの で、引き続きリスク評価を行うということで提案しております。  4頁の8は「N,N-ジメチルアセトアミド」、DMAです。提案理由としては臓器、特に肝 毒性や生殖毒性を示すが、リスクの詳細は不明となっております。有害性を見ると、生殖能 への影響のおそれ、長期または反復ばく露による肝臓への障害といったことがMSDSにも 記載されております。用途ですが、各種溶媒という形で使われており、液体であり、使用量 もある程度見込まれる物質です。有機則のジメチルホルムにかなり近い物質ではないかとい ったことでも挙げられます。こちらもMSDSの対象となっていることから、案としてはリ スク評価の対象とするということです。  次の9と10は一緒に説明いたします。どちらも人造鉱物繊維として分類されており、い わゆる石綿の代替物として用いられておりますが、MSDSにも分類されております。人造 鉱物繊維にはロックウール、グラスウール、セラミックファイバー、マイクログラスファイ バーといろいろな種類がありますが、そのようなものがMSDSの対象になっており、ガラ ス長繊維はMSDSから外れていますが、そういった対象となっております。今回はその中 でセラミックファイバーとマイクログラスファイバーの2つについて、IARCでは2Bの評 価分類になっていることから提案を受けております。ちなみに、ロックウール、グラスウー ルなど、さらに多量に使われているものがありますが、IARCでは3の区分となっておりま す。今回は2Bの物2つの提案を受けました。セラミックファイバーはACGIHでもこのよ うな濃度が設定されておりますし、業界でも自主管理基準で行われていますが、そのような 物を調査してはどうかということ、マイクログラスファイバーについては、かなり特殊な用 途に限定されているが、ばく露の可能性が考えられるので、いまのうちに検討しておいたら どうかということで、ご提案を受けています。どちらも有害性としては2Bで、MSDSの対 象です。セラミックファイバーは炉の耐火・断熱材に使われたり、10のマイクログラスフ ァイバーは濾過フィルターなどに使われています。  生産量については、セラミックファイバーはある程度の生産量が見込まれて、事業場数も ある程度見込まれるので、案としてはセラミックファイバーはリスク評価の対象としていま す。10のマイクログラスファイバーは特殊な用途であって、国内での取扱い事業場は非常 に少ないことから、こちらは情報収集を行い、リスク評価の必要性を検討するという形で進 めてはどうかとしています。 ○櫻井座長 1番から10番までの説明がありました。いかがでしょうか。 ○山口委員 5番に関しては規制で、「変異原性が認められた既存化学物質」ということで、 管理の指針の通達は出ているわけですよね。 ○櫻井座長 そうです。 ○山口委員 それですので、即評価というよりもう少し調査して、使用実態を把握してから ではどうなのでしょうか。  用途を見ますと、皮革なめし剤とありますので、管理がどうなのかなという部分があるの ですが、用途的にばく露が多いような使われ方があると思われるのですか。 ○櫻井座長 よく使われているのは医療機関ですよね。 ○島田化学物質評価室長 1つは医療用器具の消毒のために使われます。ものによっては、 インフルエンザなどの問題となるような細菌感染があった場合に、院内を燻蒸するといった 用途があるようです。 ○櫻井座長 特に、すでに平成17年に「医療機関におけるグルタルアルデヒドによる労働 者の健康障害防止について」という通達が出ているのです。 ○漆原委員 前回お聞きしたときに、年間にできる物質の上限、キャパシティーはどうして もあると思うのですが、ここの案で「リスク評価対象とする」と書かれているのは、その数 を予め考慮に入れつつ出したものなのでしょうか。それともほかの意図があって、評価をす るという物質になっているのでしょうか。 ○島田化学物質評価室長 物質の数については、まだケアをしていません。先生方なり、こ のリスク評価に関するリスク評価検討会、実際のマネージメントに関する検討会の先生方か ら出てきたものを、すべてこちらに挙げています。事務局で、数を考慮するという配慮はし ていませんので、自由にご議論いただければと思います。 ○櫻井座長 結果としては10前後しか評価の案にはなっていないので、増やすも減らすも 自由だというスタンスだと思います。 ○清水委員 この物質は感作性もありますよね。 ○櫻井座長 あります。 ○清水委員 それも評価の対象として考えるべきですか。 ○櫻井座長 感作性については、先ほどの考え方のところでは特に挙げていないのですが、 発がん性とか、生殖毒性とか。 ○清水委員 (エ)の(5)に入るのでしょうか。非可逆性障害と。 ○櫻井座長 それも入るかもしれません。(1)のイの(イ)で、「大学、医療機関、又は国の 試験研究機関に所属する有識者からの疾病の発生にかかる情報」とか。 ○山口委員 現実に労災適用があるということですよね。 ○櫻井座長 労災もあったのでしょうね。(1)の最初のほうでリストアップされていないか ら除外する、という考え方ではないと私は見ています。  これは皆さんで決めることだと思いますが、上のほうの(1)は、ほかの情報がないときに 粛々と優先順位から決めていく場合の考え方だと理解できると思っています。ですから、感 作性は除外していないのです。グルタルアルデヒドは調べてからとしますか。 ○山口委員 現実に労働災害があって、かなりばく露の多い使われ方が想定されるので、や ってもいいのかなと。 ○櫻井座長 ホルムアルデヒドに似た感じですね。何となく、やったほうがいいのではない かというご意見が多いように思います。ほかにはいかがでしょうか。 ○山口委員 9番のセラミックファイバーですが、このセラミックファイバーの物質の組成 というか、範囲がどういったものかというのは特定されているのですか。というのは、表現 が曖昧なのと、ばく露作業報告の連絡がいったときに、どこまでかよくわからないのです。 「○○とその化合物」という表現があったときに、その化合物がどういった化合物なのかを ある程度明らかにしてもらわないと、報告を出す側が混乱すると協会の会員からも声があり まして、物質としてある程度明らかな形にしていただければよろしいかと思います。 ○島田化学物質評価室長 物理的性状については、そこにあるようなものをセラミックファ イバーあるいはマイクログラスファイバーと呼んでいるようです。約3μmの比較的細い繊 維径を持ち、長さが30〜150μmということです。 ○山口委員 ということは、ある程度の大まかな化学物質はわかるのでしょうが、化学物質 名ではなくて形状的な部分からきているということでしょうか。 ○島田化学物質評価室長 我々も専門ではないのですが、このような定義がなされているこ とは理解しています。 ○櫻井座長 セラミックファイバーはかなりの種類があるのですが、全部一括して同様に取 り扱っていいかという点だと思うのです。 ○山口委員 どの程度の広がりがあるかなのですが。 ○櫻井座長 セラミックファイバーについてきちんと情報収集をした上で、列挙すべきもの は列挙すると。 ○山口委員 除外すべきものは除外するとはっきりしていただければ。 ○櫻井座長 除外するべきものがある可能性はあります。 ○長山情報管理官 その報告のときに、報告者がわかるような形でと。 ○山口委員 そうですね。 ○櫻井座長 ほかによろしければ先に進みます。11番から20番をお願いします。 ○長山情報管理官 11は「タリウムとその水溶性化合物」です。用途はかなり限定されて いますが、生殖毒性等が高いということで提案を受けています。また、その他の消化器系、 循環器系への有害性もMSDS等にも書かれています。MSDSの対象にもなっています。取 扱い量もそれほど多くはありませんが、ある程度は見込まれるということで、リスク評価の 対象として挙げています。  12番は「2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-1,4-ジオキシン」です。これはいわゆるダイオキ シンということで、発がん性があり、IARCもグループ1となっています。MSDSの対象に もなっていますが、すでにダイオキシンとして捉えていて、安衛法でも指導しているところ です。また、他の法令でも禁止物質として厳しくされていますので、このリスク評価のスキ ームでの評価の必要性は低いとしています。  13は「トルエン」です。発がん性ではないけれども、神経影響が生じることが確認され ており、可能性が考えられるということで、提案を受けています。いろいろと有害性もあり、 用途も広く、MSDSの対象物質です。トルエンもキシレン同様、有機則の第2種有機溶剤 等に指定されており、コントロールされているので、いま現在リスク評価の必要性は低いの ですが、引き続き情報収集をするとしています。  14と15は、どちらも砒素関係です。14は「ガリウム砒素」、15は「アルシン」です。 どちらについてもIARCのグループ1でMSDSの対象物質です。平成19年度のリスク評価 物質として、一度リスク評価を行っています。平成19年度に亜砒酸を除く砒素の関係のリ スク評価をした際に、この2種類については、適切な管理がなされている条件においてはリ スクが低いと評価され、その後の規則改正においても、この2種類は除くとして整理してい ます。  ただ、今回の提案理由として、ガリウム砒素といったものの中で、レアメタルとして再生 する作業過程でのばく露も懸念されるのではないかということです。こちらは一度リスク評 価は実施済みですが、管理状況が不明な再生作業等があることを踏まえ、この2種類につい ては情報収集を行っていくとしています。  なお書きにもあるように、微量なばく露を計測する手法として、バイオマーカーの活用を 検討するとしています。これについては、ガリウム砒素などは気中濃度がかなり低く設定さ れていて、指標として難しい部分もありますので、尿中の代謝物濃度などで測ることを検討 してはどうかということです。提案者からもそういった話がありますので、その方向で当面 検討を進めたいと思います。  7頁です。16の「フッ化ビニル」です。IARCも2Bから2Aに昇格して、発がん性あり に分類されているということです。MSDS対象で、平成19年度にリスク評価物質として評 価を行っていて、リスク評価済みとして整理しています。  17の「フッ化ナトリウム」です。生殖毒性等毒性が高いということです。生殖毒性のみ ならず、さまざまな臓器への障害もあります。いろいろと広い用途で使われていることから も、リスク評価をすべきではないかというご提案を受けています。MSDSの対象ともなっ ており、ある程度の量も見込まれることから、リスク評価対象としてはということで挙げて います。  8頁です。18の「ブロモエチレン」です。こちらもIARCは2Aで、評価してはどうかと いう提案を受けています。こちらも同様に2Aで、MSDS対象物質で、既に平成19年度リ スク評価物質として評価をしていますので、評価済みとして整理しています。  19の「2-ブロモプロパン」です。フロン系の代替物質で、かなり強い生殖毒性を有して います。使用は1-ブロモプロパンに移行していると思われますが、調査してはどうかとい う提案を受けています。生殖毒性、血液への障害などの有害性を有するもので、MSDS対 象物質でもあり、ある程度の量も見込まれます。また、合成の原料として使われているとい うことで、リスク評価の対象として挙げています。  20は「メチレンビス(4,1-フェニレン)=ジイソシアネート」、別名はMDIと言われている ものです。こちらはトリレンジイソシアネートと並んで、呼吸器感作性を有し、進行性の肺 機能低下が起こることも懸念され、リスク評価を行ってはどうかと提案を受けています。こ ちらについてもMSDS対象物質で、変異原性を認められています。使われている量も多く 見込まれるので、今回リスク評価の対象として挙げています。 ○櫻井座長 いかがでしょうか。 ○山口委員 19番、20番も、同じように変異原性が認められた既存化学物質となっていま すが、今回この物質が3つあります。これの評価結果を見て、こういったガイドラインが出 ているにもかかわらず徹底していないということであれば、こういう物質に挙げられていて も何か考えなければいけないですし、この3つの評価の結果、きちんとやられていたという ことであれば、今後こういった物質についてあまり考えなくてもいいのではないかというこ とで。ここを頭に入れてやっていただければ、今後の評価対象物質を選ぶときの参考にでき るのではないかと思います。 ○島田化学物質評価室長 事務局として申し上げますと、変異原性が認められた既存化学物 質というのは、法令による規制というものではなく、ある種の行政指導の観点でやらせてい ただいています。そのような範疇の対応でいいかどうかのご議論をいただければと思います。 ○櫻井座長 この結果を見て、その評価ができるという、いいポイントについてご発言いた だきました。そういうことも念頭に置いておきたいと思います。ほかにはよろしゅうござい ますか。次に進みます。 ○長山情報管理官 9頁です。21の「りん化水素」、いわゆるホスフィンです。燻蒸剤、半 導体のドーピングガスに使われています。こちらも有害性としては神経性、臓器への障害の 影響があります。MSDSの対象物質で、ある程度の量も見込まれることから、リスク評価 の対象として挙げています。  22は「N-メチル-2-ピロリドン」です。ジメチルホルムアミドの代替溶剤としての使用が 広まっています。動物実験で生殖毒性が見られ、有害性の報告がなされています。生産量は ある程度あるのですが、MSDSの現行の対象とはなっていません。パブリックコメントも やっていますが、現行はそういった形で、MSDSが付いた状態で取り扱われていないので、 MSDSが作成された段階で改めて検討を行うと整理しています。  23は「フッ化スルフリル」です。用途は文化財の燻蒸剤などです。中枢神経の障害を起 こす有害性が確認されています。こちらもMSDSに現行では規定されていないので、これ もMSDSが作成された段階で改めて検討を行うとしています。  10頁です。24の「4,4-イソプロピリデンジフェノール」、いわゆるビスフェノールAと いうものです。成体への生殖影響は事実上はなしとされているが、次世代影響等に対し海外 でも評価の見直しの動きもあることから、提案がなされています。そのほかにも、臓器障害 のおそれなどの有害性も挙げられています。こちらも現行ではMSDSに整理されていない ので、MSDSが作成された段階で検討を行うとしています。  25は「臭化n-プロピル」です。19番の2-ブロモプロパンからこちらの1-ブロモプロパ ンに移行しているという物質で、今後使われていくことが見込まれるのでご提案がありまし た。生産量はある程度あるのですが、MSDSに現行で整理されていないことから、MSDS が作成された段階で検討をするとしています。  26は「ビスマス及びその化合物」です。生殖能、胎児への影響のおそれの疑い、中枢神 経系への障害ということで、提案がなされています。使用量はある程度ありますが、現行は MSDSに整理されていないということで、MSDSが作成された段階で改めて検討するとし ています。  27は「セロソルブ類」です。括弧書きの中でも4種類挙げています。提案理由として神 経毒性・生殖毒性・感作性を有する物質として挙げられています。かなり多様な用途として 使われています。MSDS対象物質で、有機則第2種有機溶剤としてこの4種類が書かれて、 現行法令でコントロールされていることから、現在の評価の必要性は低いけれども、引き続 き情報収集をするとしています。  28は「アカネ色素成分」です。ルシジンなどを書いています。赤の色素として、食品添 加物として使われていたものですが、動物実験での発がん性が認められたことから、食品で も禁止されている物質として挙げられています。そのようなものも評価の対象としてはどう かと提案されています。MSDSは作成されていませんし、添加物としては使用禁止ですの で、使用の実態などを業界からヒアリングを行うなど、情報収集を行う形で当面進めたいと 思っています。  12頁です。29番は物質そのものではなく案件です。国際機関において、既に生殖毒性、 神経毒性について分類されていて、その中で特に有害性が高いと整理されている案件を考え てはどうかということです。GHSやACGIHで整理されている物質のうち特に高いもの、 GHSでいう区分1のものなどの中から、優先的に評価するものがあるのではないかという ことで、提案を受けています。事務局の案として、特にその中でも優先的に評価すべきもの があるのではないか、そういったものはリスク評価対象としてはどうかということで挙げて います。  30番です。先ほど清水委員からもありましたが、変異原性試験のAmes試験結果におい て、過去に問題物質として評価された物質の中から選んではどうかということで、過去の委 員会において染色体異常試験を行って、特に問題とされる物質として整理されたものの中か ら、今後、候補として取り上げるのがいいのではないかということで提案を受けたものです。 事務局でも、どのようにやっていくかは、その辺の情報を収集して、その中からリスク評価 の必要性を検討して進めてはどうかと考えています。 ○櫻井座長 21番から30番まで、いかがでしょうか。よろしければ先に進めます。 ○長山情報管理官 31番です。免疫抑制作用を有するバイオ医薬品の原料として提案があ りました。医薬品として患者に影響を及ぼす際に、作業者の免疫にも影響を及ぼすおそれが あるのではないか、がんの発生の増加の報告があるということで、提案がなされています。 特に免疫関係になりますので、その辺りの情報収集を引き続き行い、免疫に関係するリスク 評価の手法はどういった形がいいのかを検討することで、当面は進めてはどうかと整理して います。  32番は「ナノマテリアル」です。いまいろいろとナノマテリアルは進められていますが、 体内の動態など不明な点があるので、こういったものを考えてはどうかと提案がなされてい ます。厚生労働省においてもナノマテリアルの検討会を行い、今年の3月に報告書を取りま とめて行政指導を行っている最中です。また、そちらについてもバイオなどでも、ナノマテ リアルそのものについて調査試験を実施している状況ですので、引き続きそういった試験等 を行い、情報収集を行っていくとしています。  33番は「オイルミスト」です。切削などをする中でオイルを使います。その中で精製度 の低いオイルは発がん性ありで、IARCも評価しています。いろいろな物質が混ざっていて 難しい物質で、まだ情報も取れていない段階ですので、情報収集を行い、評価の必要性を検 討していきたいとしています。  34番は「アルセノベタイン」、「アルセノシュガー」です。これはいままでと少し違って、 これらそのものというより、砒素のばく露評価を行うに当たっては、職業性ばく露とともに 食事由来性の砒素が入ってきます。アルセノベタインは魚介類由来で、ヒジキなどの天然物 に入っているもので、そういったものの評価に当たって区別する必要があるのではないかと いう提案です。こちらについても、砒素のばく露の評価手法、由来などをつかめていません ので、その辺りの情報収集を引き続きしていきたいと整理しています。  14頁です。35番から39番は同じ部類です。OECDのSIAM(高生産量化学物質の初期 評価)の中で、人に対し有害で、労働ばく露調査が望ましいと整理されているものがありま す。こちらに5物質があり、現時点でばく露情報がないということで、こういうものも考え てはどうかと挙げられています。こちらについてもMSDSで整理されていませんので、引 き続き情報収集を行って、リスク評価の必要性を検討していくとしています。  40番です。提案の中に「リスクコミュニケーション」と書いていますが、7月29日のリ スコミの意見交換会の中で話があったものを挙げています。その中で、シリカを用いたサン ドブラスト作業は先進国では禁止されているのですが、日本では規制がないという意見が出 され、こちらに掲げています。現行法も粉じん則などありますが、今後とも情報収集を行い、 リスク評価の必要性を検討してはどうかとしています。 ○櫻井座長 31番から40番までいかがでしょうか。直ちにリスク評価とはいかずに、いろ いろ情報収集をしなければならない状況です。よろしゅうございますか。次に進みます。 ○長山情報管理官 41番は「有鉛塗料」です。これもリスクコミュニケーションの中で意 見があったものです。鉛塗料については、欧米やシンガポールで禁止されているけれども日 本では規制がないということで、建物の壁に塗られていたり、いろいろ使われているという ことで、こういうご意見が出されています。こちらについても引き続き情報収集を行い、海 外の動向等も踏まえ、リスク評価の必要性を検討したいと思います。  42は「テトラクロルエチレン」、43は「トリクロルエチレン」です。提案にGHSと書い てあります。どちらも有機則で規制されています。ただ、有機則で規制されているもののう ち、国際的に発がん性が指摘されているものもありまして、そのうち発がん性の1Bに分類 されているものが2物質あります。そういうものをどうするかということで挙げています。 直ちにリスク評価というより、これまでの法規制の見直しも含めて、有機則で国際的に分類 されているものをどうするかということで、今後とも必要性を検討する形で整理しています。  44番はパブリックコメントで物質名を挙げられたものです。「アンチモン及びその化合 物」です。粉体など、どのような状況で使われているかによっても、評価が必要だというこ とで提案を受けております。こちらはIARCで2Bとなっていて、MSDS対象で、平成21 年度ばく露報告の対象物質です。現在、平成21年度有害性評価、測定法の検討を実施して いるので、リスク評価中として整理しています。  「その他の御意見」として、全般的な形で意見を受けたものを紹介します。ばく露を受け る作業者の保護措置の区分による評価を行う必要があり、さまざまな措置についてリスク区 分が明確になっていると実施が確実にできるのではないかというご意見です。次の頁です。 案件の2として、平成21年度候補物質とか、平成18年度以降にいろいろと物質をやって おり、発がん性は、1Aから2A、2Bと、徐々に低いほうにいっており、危険性ということ でやっているが、安全性の評価、ここまでは安全に使えるという面も考えるべきではないか、 こういったご意見をいただいています。 ○櫻井座長 いかがでしょうか。41番以降についてコメント、意見はございますか。 ○堀口委員 このリスク評価をすることによって、物質を取り扱う人々の健康の話だと思う のですが、パブコメの中身を読んでいると、労働のことだけではなくて、その物質そのもの が体に影響があるという視点だけを言っている人と、労働の環境を考えて言っている人がい ます。  例えばフッ化ナトリウムはWHOにおいてはリスク評価をしていて、虫歯予防にはいい ものとされているし、逆にビスフェノールAはすでにリスク評価が終わっていて、虫歯に なったときの歯と同じ色の詰め物として、10年ぐらい前まで入っていましたが、発がん性 があるということでなくしてしまいました。そういうことで、労働環境とは別のところでさ れているものもあるので、おもてに出すときに気をつけないと、いろいろと混乱が出るので はないかと思います。特に40番に近づくにつれ、そのようなイメージがあります。物質の 後半にいくにしたがって、作業環境のことを言っている方と、健康被害に視点をあてた文言 が出てくる方が多いイメージがあるので。 ○櫻井座長 若干そのようなものがあるかもしれませんね。 ○堀口委員 何のためのリスク評価なのかを、メッセージとして最初に言っていただくこと が重要かなと思います。そうでないと、アカネ色素の部分にも食らい付いてこられる方がた くさんいるかなと思います。 ○吉田委員 いまのご意見と関連します。有鉛塗料ということで書かれていますが、鉛の高 感受性集団は、子どもということはよく知られていますし、塗料を舐めるとかいうことでは アメリカで言われていますが、これは労働の環境で起こることなのでしょうか。蓄電池を造 る作業者の健康というならわかります。そういった意味でいうと、おっしゃるように後半が ずれを生じてきている感じは持ちました。 ○櫻井座長 リスクコミュニケーションの場でこのことをおっしゃったのは、労働衛生の専 門家なのです。あの人の頭にあったのは労働の場でこのような問題が出ているというご意見 だったのです。本当にそれがあったのかということで、情報収集になっていると理解してい ます。 ○吉田委員 そこは否定するものではありません。 ○櫻井座長 ほかにございますか。これで一通りの検討をしていただきまして、リスク評価 の対象とする物質が10種類、あと29番の案件で、国際機関において、既に生殖毒性、神 経毒性に分類され、特に有害性が高いとされている案件については、優先的に評価すべき物 質を取り上げてリスク評価するという方向性が案として示されていて、それを今年度中に進 めることになる可能性があると。事務局でいろいろと算段されて、次年度は予算などの絡み で、10だけではなく、もう少し付け加えてご検討されると思いますが。 ○島田化学物質評価室長 29番をご提案いただき、事務局で調べたところ、GHSの区分は 「区分の1」の中に、1A、1Bとありますが、1Aだけでも10数種あります。1Bまで入れ ると数十あるので、それ全体を評価の対象にするのは難しいと思いますので、優先順位とい う形で処理させていただこうかと思います。いずれにしても、またご報告させていただきま す。 ○櫻井座長 この会は開けないとしても、案を作られましたら、ご意見をいただくことにな りますか。 ○島田化学物質評価室長 先生方にはまずご相談をさせていただきます。それと、次回には ご報告させていただきます。 ○吉田委員 ここで見る限りは蒸気圧と融点、沸点くらいなのですが、オクタノール/水分 配係数などは簡単に調べられると思う。ばく露を考える上での情報が少ないと思うので、情 報収集の中に追加していただければと思います。 ○島田化学物質評価室長 承知しました。情報収集ということでご判断いただいたものにつ いては、すべて次回というわけにはいきませんが、できた段階でご報告をさせていただきま す。それから化審法の関係で、オクタノール・水分配係数は広範な物質で評価されているの で、そういった情報なども含めてご提供させていただきます。 ○櫻井座長 次に「リスク評価対象物質・案件の選定手順」です。 ○島田化学物質評価室長 選定手順については、前回ご報告させていただいていますので、 資料2-2、今後の有害物ばく露作業報告の手続きに入らさせていただきます。平成22年度 の報告対象期間に対して、実際には平成23年の1月から3月の段階で報告をいただきます。 ガイドラインに基づいて、今後は事後の作業について報告をいただきます。平成23年の1 月から3月に、報告対象物については報告をいただきます。実際には平成23年度に評価の 対象になってきます。 ○櫻井座長 以上のような手順で、事務局で手続きを進めていただきますが、節目、節目で、 この検討会にご報告をいただきますよう、よろしくお願いします。 ○島田化学物質評価室長 了解しました。今後ともよろしくお願いします。 ○櫻井座長 次に、「労働分野におけるリスクコミュニケーションのあり方」に移ります。 資料3の説明をお願いします。 ○井上労働衛生専門官 資料3-1です。7月29日(水)に、化学物質による労働者の健康 障害防止に関する意見交換会を開催しましたので、その概要のご報告をします。  7月29日のリスクコミュニケーションにおいて、資料3-1の議事次第にあるように、(2) 「化学物質のリスク評価に関する情報提供」として、4者からご説明いただいています。櫻 井委員、当課課長の半田、日化協の山口委員、エクソンモービルの橋本委員から、それぞれ のテーマについて、情報提供いただいたところです。  その後、意見交換を行いました。コーディネーターは、今日ご出席の堀口委員に務めてい ただきました。パネリストは上記4者の情報提供者に加えて、中央労働災害防止協会の棗田 補佐、厚生労働省からは島田が参加しています。  次の頁で概要を説明します。当日の資料は厚生労働省のインターネットで公開しておりま すし、時間の問題もありまして、机上配付だけにさせていただいています。ご了承いただき たいと思います。  資料3-1の2枚目の意見交換の内容です。いくつかやり取りがありまして、まずQ1です。 今後のリスク評価、またその選定基準はどうかの質問に対して、今後も優先順位を付けてリ スク評価を行うこと、発がん性物質のリスク評価は概ね終了したことをご報告しています。  Q5以下については、エクソンモービルの橋本委員に対して、リスクアセスメントを行う 際のコストが莫大であるという質問には、コストはそれほどかからない、作業を観察し、必 要なものについて測定を行う定量評価を行えばいいという話があり、個人ばく露測定はパッ シブサンプラーを使用すれば難しくなく、定性的判断ができていれば測定回数は少なくてよ いという話も出ました。  次の頁です。こちらも主にエクソンモービルの橋本委員に関係する意見がありました。 Q6では、リスク評価の国際標準はあるのかという質問がありました。これについては国際 的に共通であるということです。また、厚生労働省からは、ばく露評価ガイドラインをまと めて、昨日から厚生労働省のホームページで意見募集を始めたところです。  Q7以下についても、エクソンモービルのばく露測定の取組状況について、個別にやり取 りがありましたが、割愛させていただきます。  次の頁です。Q17です。こちらは先ほども説明しましたが、橋本委員の説明の中で、日 本は衛生対策が遅れているとあったが、具体的にはどうなのかとありました。橋本委員から は、海外の同僚と話をしていると、日本の対策の遅れを感じるということ。例1として、鉛 塗料は欧米やシンガポールでは禁止されているけれども、日本では規制はなく、塗料の4 分の1は有鉛である。例2として、シリカを用いたサンドブラスト作業は先進国では禁止さ れているけれども、日本では規制がない。例3として、欧米では呼吸用保護具の防護係数が 定められているが、日本では定められておらず、日本では呼吸用保護具のフィットテストが 普及していない、というご指摘がありました。その他、Q19以下については、当日参加の フロアーからの追加質問で、海外の査察制度についてのご質問がありました。  いちばん下の2行に、このリスクコミュニケーション開催におけるアンケート調査結果を 別添に取りまとめています。全体的に申しますと、非常に評判はよかったです。逆に、時間 的に物足りなかったという意見もあるところで、東京方面だけではなくて、関西方面など、 全国的に行ってほしいということがありました。また、個別の事業場の紹介をもう少し取り 入れてほしいという前向きな意見が多数を占めていました。併せてコーディネーターの司会 進行も大変よかったということも含めて、リスクコミュニケーション全体については、非常 にいい評価を得られたと考えています。概要については以上です。 ○櫻井座長 当日ご出席いただいて、参加していただいた委員の中で、山口委員、私、堀口 委員、それぞれご感想でもと思うのですが、山口委員からいかがでしょうか。 ○山口委員 会員に聞くと、リスクコミュニケーションの議論が少なくて、制度の説明の部 分が多かったのではないかという印象を持たれた方もいるようです。ただ、こういったこと をやっていかないと前に進みませんので、これからこういった場を設けて、少しでも労働現 場のリスクの削減に関して理解を深めてもらえばと思います。 ○櫻井座長 半田課長もご出席でしたが、いかがでしょうか。 ○半田化学物質対策課長 大変有意義なお話を聞かせていただきました。特に、現場の使用 実態について、新しい知見を得られましたので、大変有益だったと考えています。 ○櫻井座長 私もスピーカーもやり、いろいろと質問にも答えましたが、参加者は比較的高 いレベルが集まっていましたので、やや特殊かもしれません。非常に熱心なので、もっと時 間があればなおよかったかなと思います。ただ、予想される参加者によって、やり方を変え るのだろうなと。今後のやり方はいつも同じではないだろうなという気はしました。全部コ ーディネートして、大変うまくやっていただきましたが、堀口委員はいかがでしたか。 ○堀口委員 時間的には、あれ以上長くなると辛いと思います。1から学びたい人たちの場 合には、意見交換よりは講習会形式があって、講習会を何度も受けて、現場でどうしたらい いのかということで悩んでいる方にとっては、ディスカッションが重要になってくると思い ました。  ただ、たくさんの質問が出ましたので、皆さんいろいろと現場でお困りで出てきたのかな という気がしました。拙い司会でしたが、お世話になりました。 ○櫻井座長 いままでのことで、ほかの委員からコメントはありますか。よろしゅうござい ますか。ただいまの内容も含めて、今後のあり方について、リスコミの専門家の視点から、 堀口先生のご意見をもう一度お伺いしておきます。 ○堀口委員 伝え方を間違えると、委員の先生方の意図が上手に伝わらないと、先生方にも 不愉快な思いになると思いますので、検討されたことが、そのものがわかりやすく表に出て いくことが、いちばん大事なのかなと思います。 ○櫻井座長 ほかに何かご意見等がありますか。リスクコミュニケーションも今後いろいろ とご計画があるようで、それについての意見交換も時間があればやりたいという予定でした が、司会の不手際でだいぶ後ろへずれてしまいました。今日はさまざまな有益なご意見をい ただきまして、ありがとうございました。幸い次回の検討会では、リスクコミュニケーショ ンのあり方をさらに検討する予定もあるようですので、そちらに譲るとして、これで終わり としますが、今後の予定を事務局からお願いします。 ○長山情報管理官 資料4です。次回の第3回は今年の11月に、国の行うがん原性試験に ついてのご議論をいただきます。第4回は平成22年3月にリスク評価の実績及び評価の方 針についてということで考えています。また追って調整させていただきます。 ○櫻井座長 これで閉会とします。ありがとうございました。