09/09/11 第1回児童福祉施設における食事の提供及び栄養管理に関する研究会議事録 第1回児童福祉施設における食事の提供及び栄養管理に関する研究会 議事録 日時:2009年9月11日(金) 10:00〜12:00 場所: 厚生労働省 専用第16会議室(13階) 出席者:  委員   吉池座長、荒木委員、釘宮委員、堤委員、林委員、政安委員  厚生労働省   宮嵜母子保健課長、今村課長補佐、森岡課長補佐、須永係長   度会総務課長補佐、天野保育指導専門官、前河児童福祉専門官   青木障害福祉専門官(社会・援護局障害保健福祉部) 次第:1. 開会      挨拶      座長選出    2. 議題      (1)児童福祉施設における食事の提供及び栄養管理に関する                          検討のねらいについて      (2)児童福祉施設における食事の提供及び栄養管理に関する                          現状と課題について      (3)その他    3. 閉会 資料:  資料1 児童福祉施設における食事の提供及び栄養管理に関する研究会開催要綱  資料2 児童福祉施設における食事の提供及び栄養管理に関する検討のねらい  資料3 児童福祉施設における食事の提供及び栄養管理に関する現状と課題       [1]児童福祉施設の食事計画等の栄養管理の実態に関する調査研究                              (堤委員ご提供資料)       [2]衛生管理の視点からみた児童福祉施設における食事提供について                              (荒木委員ご提供資料)       [3]保育園の現状                (林委員ご提供資料)       [4]児童養護施設における食事の提供及び栄養管理に関する現状と課題                              (釘宮委員ご提供資料)       [5]児童福祉施設における食事の提供及び栄養管理に関する現状と課題等        について                  (政安委員ご提供資料)  参考資料1  児童福祉施設における給食業務に関する援助及び指導について  参考資料2  児童福祉施設における「食事摂取基準」を活用した食事計画について  参考資料3  日本人の食事摂取基準(2010年版)(抄) 「総論」「乳児・小児」  参考資料4  大量調理施設衛生管理マニュアル  参考資料5  児童福祉施設等における衛生管理の改善充実及び食中毒発生の         予防について  参考資料6  乳児用調製粉乳の安全な調乳、保存及び取扱いに関するガイドライン  参考資料7  保育所保育指針  参考資料8  栄養マネジメント加算及び経口移行加算等に関する事務処理手順例         及び様式例の提示について  参考資料9  地域で生活する障害児(者)の食生活・栄養支援に関する調査研究事業         報告書 議事: ○事務局  ただ今から「第1回児童福祉施設における食事の提供及び栄養管理に関する研究会」を開 催いたします。委員の皆さまには、ご多忙のところをご出席いただき、ありがとうございま す。  座長選出までの間、母子保健課長補佐をしております森岡が司会を務めさせていただきま す。よろしくお願いいたします。  はじめに、開催に当たりまして、母子保健課長の宮嵜からご挨拶申し上げます。 ○宮嵜母子保健課長  皆さま、おはようございます。母子保健課長の宮嵜でございます。会議の開催に当たりま して、一言ご挨拶申し上げます。  本日はお忙しい中をお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。委員の先生方 におかれましては、平素から母子保健あるいは児童福祉の推進にご理解を賜り、またお力添 えいただいておりますことを、この場をお借りして御礼申し上げます。  児童福祉施設における食事は、入所されている子どもたちの健全な発育・発達と健康の維 持・増進の基盤となることはもちろんでございますが、さらに望ましい食生活習慣の形成を 図るという意味でも大変重要な役割を担っていると思っております。近年、食育推進基本計 画におきまして、保育所等における食育の推進が盛り込まれまして、保育所保育指針に食育 が位置付けられているということもございます。また、日本人の食事摂取基準は今般改定さ れました。児童福祉施設での食を取り巻く状況というものが大きく変わってきております。 こうしたことから、児童福祉施設での食事の提供の留意点について検討していくことが必要 だと考えているところでございます。  本研究会におきましては、子どもの健やかな発育・発達を支援する観点から、食事の提供 において留意が必要な点について、先生方にご検討いただければと考えております。それぞ れご専門の立場から、奇譚のないご意見をいただきますようにお願い申し上げまして、簡単 でございますがご挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○事務局  それでは、委員の先生方をご紹介させていただきます。  東海大学海洋学部教授の荒木惠美子先生でございます。 ○荒木委員  よろしくお願いいたします。 ○事務局  社会福祉法人お告げのフランシスコ姉妹会 児童養護施設聖フランシスコ子供寮施設長の 釘宮禮子先生でございます。 ○釘宮委員  よろしくお願いいたします。 ○事務局  社会福祉法人恩賜財団母子愛育会 日本子ども家庭総合研究所栄養担当部長の堤ちはる先 生でございます。 ○堤委員  よろしくお願いいたします。 ○事務局  鳩の森愛の詩あすなろ保育園長の林和恵先生でございます。 ○林委員  よろしくお願いいたします。 ○事務局  社団法人日本栄養士会全国福祉栄養士協議会協議会長の政安静子先生でございます。 ○政安委員  よろしくお願いいたします。 ○事務局  青森県立保健大学健康科学部教授の吉池信男先生でございます。 ○吉池委員  よろしくお願いします。 ○事務局  なお、本日は女子栄養大学教授の石田裕美先生、財団法人児童育成協会こどもの城小児保 健部技術主任の太田百合子先生につきましては、ご欠席との連絡をいただいております。  続きまして、事務局を紹介させていただきます。  雇用均等・児童家庭局母子保健課の今村課長補佐でございます。 ○今村課長補佐  今村です。よろしくお願いします。 ○事務局  総務課の度会課長補佐でございます。 ○度会課長補佐  度会です。よろしくお願いします。 ○事務局  保育課の天野保育指導専門官でございます。 ○天野保育指導専門官  天野でございます。よろしくお願いします。 ○事務局  家庭福祉課の前河児童福祉専門官でございます。 ○前河児童福祉専門官  前河でございます。よろしくお願いいたします。 ○事務局  社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課の青木障害福祉専門官は少し遅れてまいります。  それでは、まずはじめに、座長の選出をお願いいたします。資料1として付けさせていた だいています開催要綱の2.構成の(2)「研究会に座長を置き、構成員の互選により定める」 という規定に従いまして、座長を構成員の互選により決めたいと思います。  座長の立候補やご推薦はございますでしょうか。 (政安委員 挙手) ○事務局  政安委員、お願いします。 ○政安委員  吉池委員にお願いしたいと思います。 ○事務局  ただ今、政安委員より青森県立保健大学の吉池委員をご推薦いただきましたが、ご意見等 がございますでしょうか。  ないようでございましたら、ご賛同いただいたということで、青森県立保健大学の吉池教 授に座長をお願いしたいと思います。  それでは、吉池委員には座長席へ移動をお願いいたします。  座長より、一言お願いいたします。 ○吉池座長  座長にご指名いただきまして、ありがとうございます。いろいろな施設がありますが、そ こで役に立つ、また昨今ですので、科学的根拠に基づけるところはできるだけ基づいたもの にしていきたいと思いますので、どうぞ皆さま、よろしくご協力をお願いいたします。 ○事務局  それでは、この後の議事進行は座長にお願いいたします。 ○吉池座長  今日は、盛りだくさんの内容が予定されているようですので、早速始めさせていただきま す。  まず、資料の確認を事務局からお願いいたします。 ○事務局  それでは、お手元にお配りしております資料の確認をお願いいたします。最初に議事次第、 座席表がございます。それから資料1〜3、参考資料としまして1〜9がございます。参考資 料の9は番号は振っておりませんが、「調査研究事業の報告書」という冊子となっておりま す。それ以外の資料といたしまして、本日、政安委員から委員のみの配布といたしまして、 封筒でいただいております資料を机上に置かせていただいております。  資料の不足はございませんでしょうか。不足がありましたら、事務局までお願いいたしま す。 ○吉池座長  資料の確認はよろしいようですので、早速議題に入りたいと思います。議題(1)の本研究 会開催の概要について、事務局から説明をお願いしたいと思います。 ○事務局  それでは、資料1、2に基づきまして説明させていただきます。資料1をご覧ください。 この研究会の開催要綱を記してございます。  1.の「目的」です。児童福祉施設における食事は子どもの健全な発育・発達および健康 の維持・増進の基盤であるとともに、望ましい食生活習慣の形成を図るなど、その果たす役 割は極めて大きくなっております。  児童福祉施設における子どもの発育・発達を視野に入れた具体的な食事計画の作成や評価 など、食事摂取基準も踏まえた栄養管理の手法について、専門家により十分に検討を行う必 要があると考えられます。また、児童福祉施設の特徴を踏まえた衛生管理の留意点や食育の 観点からの食事の提供の留意点などについても検討が必要となっております。  このため、雇用均等・児童家庭局母子保健課長が栄養に関する学識経験者・実務者等に参 集を求めまして、子どもの健やかな発育・発達を支援する観点から、児童福祉施設における 食事の提供および栄養管理のあり方について、検討を行うことといたしました。  2.の「構成」については、先ほど(2)のところを申し上げましたが、構成員については別 紙のとおりということで、次のページは研究会の名簿となっております。  それから、3.の本研究会の「検討事項」ですけれども、食事摂取基準を活用した食事計 画の作成、実施、評価など具体的な栄養管理手法などについて。それから、衛生管理や食育 の観点からの食事の提供の留意点などについて検討いただきたいと考えております。  4.の「運営」ですけれども、この研究会は公開としておりまして、研究会の下に必要に 応じワーキンググループを開催することができることとしております。  この他、要綱に定めるもの以外のものに関しましては、研究会の運営に関し必要な事項は、 座長が母子保健課長と協議の上定めることとしております。  それでは資料2に移りまして、本研究会の「検討のねらい」というところを説明させてい ただきます。まず「背景」ですけれども、「児童福祉施設における『食事摂取基準』を活用 した食事計画について」ということで、母子保健課長通知が平成17年3月に出ております。 これは参考資料2としてお付けしております。この通知については、「食事摂取基準」を活 用した食事計画の基本的な考え方や食事計画の策定、実施に当たっての留意点を示している ところです。それから、平成17年3月以降の動きですけれども、平成17年6月には「食 育基本法」が制定されまして、平成18年3月には「食育推進基本計画」が策定されている ところでございます。「保育所保育指針」も改定されまして「食育」についても明記されて いるところです。また、「日本人の食事摂取基準」が改定されておりまして、平成21年5 月に公表されて平成22年4月から使用されることが予定されております。課長通知の発出 後に、このような動きがあったわけですけれども、新たな食事摂取基準を用いて今後、食事 計画を作成していくに当たり、現在の課長通知にこれらの事項を盛り込みたいと母子保健課 としては考えております。  それから、「検討のねらい」に移りますけれども、そこに二点記していますように、児童 福祉施設における子どもの発育・発達を視野に入れた具体的な食事計画の作成や評価など、 食事摂取基準も踏まえた栄養管理の手法について、専門家により十分に検討を行い整理する ことが一つのポイントです。もう一つとして児童福祉施設の特徴を踏まえた衛生管理の留意 点や食育の観点からの食事の提供の留意点などについて、各施設の特性も踏まえた検討を行 っていきたいと考えております。  この研究会のアウトプットですけれども、「児童福祉施設における食事の提供ガイド」を 作成したいと考えております。そのポイントにつきましては、平成17年3月の母子保健課 長通知を改正いたしまして盛り込みたいと考えております。また、全体部分の提供ガイドは 全国に配付させていただきたいと考えております。  以上でございます。 ○吉池座長  ただ今、ご説明いただきましたが、委員の先生方、何かご質問がありますでしょうか。  私の理解では、平成17年3月にできた食事摂取基準を、施設でどのように活用するかと いうことで、その後5年間で随分といろいろな議論、整理もされてきて、食事摂取基準も5 年後の改定が行われたので、これらを統合して、より具体的なガイドとしてまとめるという ことが、この研究会に期待されているところだと理解しています。そのコンテンツとして、 資料2で栄養管理、衛生管理、さらに食育的な視点があり、これから委員の先生方にそれぞ れの分野でプレゼンテーションしていただく「現状と課題」を踏まえて、このガイドをどの ような形で構成していくかのアウトラインをつくるところまでが本日の研究会の目的であ ると理解しておりますが、いかがでしょうか。  後ほど議論をする時間は取れると思いますので、そのときに不明な点についてはお聞きい ただくとして、議題2に移りたいと思います。委員の先生方には、事前に事務局からお願い していると思いますが、児童福祉施設における食事の提供および栄養管理に関して、現状と 課題について、大体1人5〜6分でお話しいただきたいと思います。個々の質問は、最後に まとめて質問・総合討論という形にしたいと思いますので、順次ご説明をお願いしたいと思 います。  まず最初に、「児童福祉施設の食事計画等の栄養管理の実態に関する調査研究」について、 堤委員からどうぞよろしくお願いします。 ○堤委員  それでは、昨年度、母子保健課の推薦を受けまして、こども未来財団の児童関連サービス 調査研究等事業で行いました研究の概要をお示しさせていただきたいと思います。この研究 は、本研究会座長の吉池先生と委員の太田先生にも分担研究者として参画していただきまし た。資料3-[1]をご覧下さい。この研究は三つのパートから成っており、最初が保育所につ いての研究です。二つ目が乳児院に対しての食事についてのアンケート調査です。三つ目が どのような食事が提供されているかということを現地で調査したものです。その概要を本日、 ご紹介させていただきたいと思います。  2枚目に移ります。市区町村の児童福祉担当主管課への保育所担当の管理栄養士や栄養士 の配置の有無によりサービスの提供が随分違ってくるのではないかと考えましたので、現状 を見てみました。「専任」というのは、管理栄養士・栄養士いずれかがいるというもので、 それは27%。「兼任」というのは、児童福祉担当主管課に管理栄養士・栄養士はいるのです が、他の仕事もやっているというもので、それは11%、「その他」というのは、児童福祉担 当主管課にはいないけれども、保育所を担当しているのが11%ということで、いずれを合 算しても50%程度しか保育所担当の管理栄養士や栄養士がいないという現状が明らかにさ れました。  続いて3ページ目ですが、本日、後ろの方に参考資料1として付けられており、先ほど座 長からの説明もありました「児童福祉施設における給食業務に関する援助及び指導につい て」というものが平成17年に厚生労働省から通知として出されています。それが一体どの くらい達成されているのかということを児童福祉担当主管課の担当者に調査してみました。 栄養士の配置「あり」と「なし」で色分けしておりますが、ここでご覧いただきたいのは、 下から四つ目の「個々人の発育、栄養状態を基に給与栄養量の目標設定、食事計画の立案」、 そのすぐ下ですが「子どもの発育、栄養状態の把握・評価、調理と提供評価による食事計画 の改善」、この部分は比較的、栄養士の配置のあり・なしにかかわらず低いことが示されま した。一方で、その下にある食事内容や環境への配慮等、あるいは衛生的なこと、その二つ などは比較的、よくなされているということです。この結果から、栄養管理の実施が十分で はないということが、明らかにされました。  続きまして、先ほどは児童福祉担当主管課に調査させていただいたのですが、今度は保育 所を対象に調査をさせていただきました。同じく参考資料2に挙げてある母子保健課長通知 を、どれぐらい達成しているかを示したものです。少し見にくいのですが、一番右端にある 「90%以上」のところの長さにご注目いただきたいと思います。例えば、先ほどもありま したが、一番下の「衛生的・安全な給食の運営」は90%以上達成していると答えている方 たちが80%以上いるのです。ですから、これは達成度が高いことになります。一方で、上 から二つ目の「個々人の状況に基づいた食事計画」は25%程度しか達成されていません。 また、上から四つ目「表1」というのは食事摂取基準の中の表ですが、「表1を参考とし個 人を対象とすることを基本とする」というところで、全体は何となく見ているけれども、そ の子どもに応じた栄養管理はあまり達成していないという状況が、この表から見てとれまし た。  その下ですが、これは保育所の公立と私立、それぞれ栄養士の配置のあり・なしで、それ ぞれの栄養管理がどのようになっているかを調査したものです。ここではピンク色で塗って ある所にご注目下さい。私立は栄養士の配置のあり・なしにかかわらず、例えば「給食形態 として行っているもの」では、調乳や冷凍・冷蔵母乳あるいは離乳食など完全給食のサービ スが公立に比べて非常に良いということがわかりました。しかし、栄養士の配置がない所も ありますので、この辺り、サービスは提供しても、中身については今後、検討しなければい けないのではないかと思います。  5ページにまいります。これは先ほどの表の続きですが、公立と私立で課長通知がどれだ け達成されているかを見たものです。数字が高いほど達成度が高いということになりますが、 公立に比べて私立の方が優位に低くなっているものがあります。また、私立の上から二つ目 1の(2)ですが「個々人の状況等に基づいた食事計画」というのは、公立は80%、70%達成 できているのに、ここは栄養士がいてもいなくても70%ということで、公立に比べて少し 低くなっているということで、やはり私立の場合は、一生懸命サービスを提供していますが、 個々人に応じたサービスはどうなのかというところが少し疑問です。その下ですが、これも 私立の場合は例えば2の(1)「適当な給与栄養量の目標の設定」、2の(3)「定期的な身長・体 重の計測・観察・評価」なども公立と比べて低いので、私立の保育所は数多くありますが、 その辺りを支援する必要があるのではないかということが示されました。続きまして、これ も同じ表の続きですが、食事計画を実施する上で目標の到達度はどのようになっている、あ るいは子どもの特性に応じたことがどれだけなされているかを見たところ、やはり公立に比 べて私立は達成度が低いということが示されました。  続きまして、今度は乳児院の栄養管理の状況について、ご紹介したいと思います。乳児院 は全国に121施設あります。7ページにお示ししました食事の個別配慮をしていますかと聞 いた結果は、「全員に対して」と「必要な子どもにだけ」を合わせて、95%ぐらいが個別配 慮していると答えています。その次を見ていただきますと、食事の個別対応では、個別に配 慮しているが、ではそれを給食計画へフィードバックしていますかと聞くと、先ほどは98% が配慮していると言ったのですが、それが給食計画へのフィードバックは85%程度でした。 つまり、約15%の施設がそれを給食計画にフィードバックしていないという状況がありま した。  次に移ります。例えば乳児に与えるミルクや離乳食の開始時期が誰によって判断されてい るかを見ますと、乳児院の場合は看護師と保育士が多いです。保育士と管理栄養士は同じぐ らいですが、看護師・保育士が寄与する度合いが高いので、今回ガイドをつくるときには、 やはり栄養のことだから栄養士向けにというよりは他の職種も使えるものをつくる必要が あるのではないかということが考えられます。  それから、「個人別盛り付け量の調整者」というのも、もちろん管理栄養士・栄養士も多 いのですが、保育士も同じぐらいやっています。例えば幼児の主食・副食では管理栄養士と 同じ程度、盛り付け量を調整しております。ですから、保育士にも栄養管理をある程度理解 していただく必要があると思います。  続いて9ページにまいります。「喫食量の定期的な調査」をしていますかと聞きますと、 8、9割が「している」と答えてはおります。その下を見ていただくと、「その結果の評価を していますか」すなわち、調査はしているのだけれども、それを評価して活用しているかに ついては、2、3割が評価をしていなかったり、食事の改善に生かしていないという状況が 見てとれます。ここから、調査のやりっ放しという状況が見てとれます。  続いて10ページです。子ども一人一人の食事中の様子を観察しているかというと、10% 程度がしていないという状況です。また、一人一人の子どもへの配慮をしているかについて は、「食事中の様子を記録して、その後の食事計画に生かしているか」の問いに対して、「し ていない」が10%程度ありました。  続いて11ページの「身体状況の把握」についてです。定期的に把握している所が95%と、 非常に高いのです。ところが、その下の「身体計測の結果を栄養士が知っていますか」とい うと2割ぐらいは「知らない」と答えています。つまり、栄養管理を主にするであろう栄養 士が、それを知らないという状況がありました。そして、その身体状況の調査結果を食事計 画に活かしているかについては、15%は活かしていない、つまり、測りっ放しという状況 が見てとれます。  続いて、近年、児童福祉施設で非常に問題になっているのが、被虐待児が増えていること です。被虐待児に対して配慮しているのが75%ですが、逆を言うと約4分の1が配慮して いない状況でした。何について配慮しているかというと、食事量や食環境について配慮して いました。  続きまして、13ページにまいります。乳児院の栄養管理で食育にどのように取り組んで いるかを見ますと、13ページの下の表ですが、クッキング保育や食物に触れるとか収穫体 験など、非常に熱心に取り組んでいます。また、毎日の生活の基盤が施設ですので、生活全 般で家庭的な雰囲気を大切にしている、あるいはしたいという回答が大変多かったです。  続いて14ページです。これは実際にある施設で食事調査を行わせていただいた結果です。 14ページの下を見ていただきますと、1.5〜2.5歳の子どもに白飯をどれぐらい盛り付けて いるかを見ますと、赤いラインがありますが、これはその施設の栄養士がこの年代では80 グラムが、食事摂取基準から計算すると適切な量としているのを示すラインです。しかし、 それが実際に盛り付けをする保育士に伝わっていない状況があります。そして最初の盛り付 け量とおかわりを含めると、10人の子どもを観察させていただいたのですが、これだけ大 きな差がありました。続いて、同じように2.5歳以上の子どもたちを見ても、やはりばらつ いていました。保育士の先生方は個人個人に対応して、この子どもはたくさん食べるから、 あるいは、この子どもは活動量が多いからということで、個別対応してくださっています。 ここで数字がばらついていること、つまり栄養士の想定する80グラムよりも多い、あるい は少ないことがいけないのではないと考えます。個別対応しているからそれは良いことなの ですが、この80グラムというのが一応この年代では食事摂取基準から計算されている量で すということが現場の保育士に伝わっていない状況。また、保育士が12人の子どもたちに それぞれどの位の量を盛り付けているのかが、食事を提供している栄養士に伝わっていない 状況がありました。  まとめです。先ほどの児童福祉担当主管課と保育所の職員は、食事摂取基準そのものにつ いての理解があまり深くなく、食品といった「物」への対応はしていても一人ずつ異なり、 また常に変化している「人」への対応が十分ではない状況が示されました。また、「人」へ の対応が行われていても、個人一人一人への対応ができていないことが明らかにされました。 これらの状況の改善には以下のことが提言されるのではないかと考えます。「栄養アセスメ ント結果の活用」、「栄養管理の評価の再確認の必要性」、「児童福祉担当主管課、保育所 への栄養士の配置の促進」ということです。また今後、給食の外部委託の増加が予想されま すので、それへの対応も必要ではないかと考えます。  続いて16ページは乳児院のまとめです。栄養計画はほとんどの施設で作成され、他職種、 特に栄養士、看護師、保育士の3職種が関与する割合が非常に高かったです。体調不良時等 への個別対応も非常によくなされていました。一方、問題点として挙げられるのは、栄養士 の関与は給食施設内の厨房内にとどまっていることが多く、食堂や居室で行われている個別 対応に関しての実態把握は十分ではありませんでした。また、被虐待児へのよりきめ細かい 対応も今後求められるかと思います。  このまとめの3番については、乳児院に関してのことです。これは保育所等でも言えるこ とかと思いますが、食事の状況、喫食量や発育・発達状況などの観察・把握・評価に関して、 栄養士の関与が他職種に比べて低く、PDCAサイクルが円滑にまわっていないことが明ら かにされました。  最後の17ページです。今後の課題としては、身長・体重の計測は保育所あるいは乳児院 ではほとんどの所で実施されていました。それによって栄養状態の評価やアセスメントがな され、給与栄養目標量の算出がなされていて、それに基づいて献立が作成され、食事の提供 が行われています。ところが、赤いラインで示しましたけれども、食事を提供しますと、残 食量の調査や嗜好調査をします。そして、このおかずはあまり食べなかったから、次からこ れはやめましょうというような献立や調理の評価をして、また食事の提供に戻ってくること が多いようです。本来、食事の提供をしたら、もちろん残食量調査等をすることは望ましい ことですが、それを定期的なアセスメントにつなげて、また身長・体重の計測値に戻って、 そしてまた栄養状態のアセスメントにつなげていくというPDCAサイクルを回さなければ いけないのに、どうも食事の提供から残食量と嗜好の調査、そして献立、調理の評価で、赤 いラインがくるくると回ってしまっている。そのような状況が強く見られました。以上、長 くなりましたけれども、説明を終わりにさせていただきます。 ○吉池座長  ありがとうございました。  続きまして「衛生管理の視点からみた児童福祉施設における食事提供について」です。荒 木委員にお願いいたします。プロジェクターを使ってご説明をお願いいたします。 ○荒木委員  お待たせいたしました。私は東海大学海洋学部水産学科に今年の春から勤務しております が、それまでは財団法人日本食品分析センターというところで、食品の分析や食品の安全性 に関する、皆さまご存じのHACCPというシステムをわが国に普及させるための仕事を十 数年やってまいりました。今日は児童福祉施設における衛生的、安全な食品の提供というこ とでお話をさせていただこうと思います。資料はお手元にお配りしていますが、たまたま今、 事件が起きておりますので、少しそれも引用しながらお話をしたいと思います。  まず、食品の安全性を脅かすような物質または食品の状態のことをハザードといいます。 食品安全ハザード。日本語ですと、ハザードは危害要因と訳されております。危害というの はハームですから、けがやおなかを壊す方で、ハザードはそれをもたらすものということに なっています。そして、食品安全ハザードというのは発生することが当然予測されるもの。 これは英語だと、reasonably likely to occurということになります。reasonablyとlikely があって、非常にわかりにくいのですが、ないこともあるかもしれないけれども、あっても 不思議はないというもののことをいいます。食品安全ハザードは、生物的なもの、化学的な もの、物理的なものという大きく三つのグループに分けられておりまして、実際は病原細菌 やウイルスによるものが多いのですが、化学的なハザードも毒性が高いので注目されていま す。去年の事故米でありましたアフラトキシンや、死んでしまうかもしれないフグ毒、最近 では化学的なハザードとしてアレルゲンが含まれております。  これは平成20年度の食中毒統計から持ってきたものですが、昨年を見ますとカンピロバ クター・ジェジュニ、カンピロバクター・コリが事件数ではもっとも多く、患者数としては ノロウイルスによる食中毒がもっとも多くなっております。相当良くなってきているかと思 っていたのですが、ここにきて腸管出血性大腸菌O-157の事故が起きているということで す。  平成20年度の食品の食中毒細菌の汚染実態調査が公表されておりますので、ちょうどこ れを準備したところであの事件になりました。これを見ていただきますと、今回の牛のさい ころステーキの結着肉は、厚生労働省と地方で検査した結果ですが、146検体を検査して大 腸菌の検出率が70.5%です。70%は出てくる。そしてサルモネラも0.7%出てくる、これが reasonably likely to occurなのです。いるかもしれないけれども、いないかもしれない。 けれども、いる確率は高いというものです。従って、肉には大腸菌がいてもおかしくない。 ここでは腸管出血性大腸菌は出ておりませんけれども、いても一向に不思議はない。  その中で今、問題になっておりますのはカンピロバクターですが、これは鶏肉などが中心 ですけれども、20%以上の保菌率を持っていますから鶏の料理は確実に加熱するというこ とと、交差汚染させないということがとても重要であるということがわかります。今、事件 でも肉の検査をした保健所の結果では、70%ぐらい大腸菌が出てくるという話なのですが、 なるほどと思います。ですから、今まで事故が起きなかった方が不思議というか、ラッキー ということです。そういうものであれば、中身まできちんと加熱しなければいけないという ことになります。  この食品安全ハザードを管理する仕組みとして、コーデックス(国際食品規格委員会)がガ イドラインを示しているのがHACCPです。Hazard Analysis and Critical Control Point を我が国では危害分析および重要管理点と訳しているのですが、Hazard Analysisですから、 実は危害要因分析に基づく重要管理点といった方が正解なのですが、固有名詞化しておりま すので、「危害分析に基づく重要管理点」といわれております。  HACCPの目的というのは、いるかもしれない、いないかもしれない。しかし、いてもお かしくないというハザードを、作った製品の100%をコントロールするというものです。で すから、清涼飲料水であれば1日100万本、あるいはワンバッチであれば1キロあるいは 10キロ、20キロという単位です。そのハザードコントロールは、その大事なCCPという 工程を、今作っているそこでモニタリングしないと適切に加熱できたかどうかがわからない という性質のものです。これをモニタリングする。温度を測る、あるいは時間を計るという ようなことをします。  しかし、出来上がった製品の安全性は、実は100%でありません。それは昨日まで大丈夫 だと思っていたものが、そんなことがあるのかということになるからです。この資料にもあ りますように、粉ミルクのエンテロバクター・サカザキの問題は、専門家はいろいろと議論 をしておりましたけれども、溶かす温度を上げるという話は寝耳に水というか、知らなかっ た方もいるかもしれません。ですから、保障する安全性は100%ではない。  もう一つは、実は単独では機能しない。スタンドアローンではないということです。その 工程をモニタリングしますから、その前提となっている一般的衛生管理が不適合だと安全に は物は作れない。その代表としては、これからノロウイルスによる食中毒が増える時期にな りますが、それが第1位に挙げられるものかと思います。  細菌性食中毒予防の三原則は、「付けない」「増やさない」、昔は「殺す」と言ったのです が、殺すというのはいかがな言葉かということで、最近では「付けない」「増やさない」「や っつける」と言っております。これをもう少し科学的に考えるとどうかというと、「付けな い」ということは汚染させないということで、一般的衛生管理、すなわち機械や器具などの 洗浄や殺菌や従事者の衛生管理をするということ。「増やさない」ということは、低温に管 理する、あるいは高い温度で管理する、それからpHや水分活性などを、菌を増やさない条 件に持っていくということ。「やっつける」というのは殺菌するということですが、これも 加熱や殺菌条件の温度と時間の組み合わせです。ただ温度を上げればよいということではな いということです。この狙った細菌をやっつけるためにはこの温度。ただ上げれば、ただま ずくなるばかりです。  このようなHACCPの思想を農場から食卓までということで、厚生労働省では「家庭で できる食中毒予防の6つのポイント」をガイドとして示しておりまして、「宇宙食から生ま れた衛生管理」というタイトルが付いています。これが確かにHACCPだと思うのは、家 庭の料理を1〜6までのプロセスに分けております。「食品の購入」「家庭での保存」「下準 備」「調理」「食事」そして「残った食品」です。いわば原料の評価と工程の評価というのは、 HACCPのHazard Analysisのところですから、まさにHACCP方式が入っております。 工程のところでは、「付けない」「増やさない」「やっつける」が大事になってきますが、「付 けない」はわかりやすいのです。衛生的にやりましょうと。それから「やっつける」も加熱 をしましょうということではわかるのですが、「増やさない」というのがわからないのです。  このガイドから私が素直に子どもに返ってといいますか、不思議だと思うところだけ少し ピックアップしてきました。購入したら寄り道せず、まっすぐ帰ろう。「寄り道」とは、ど れぐらいのことを言うのだろうか。マイナス15度でも細菌は死なない、早めに使い切ろう。 「早め」とは、どれぐらいだろうか。料理途中で室温に放置すると細菌が増殖する。途中で やめるときには冷蔵庫に入れよう。「放置する」とは、どれぐらいか。中心部の温度が75 度で1分。これはO-157対策ですけれども、では温度が高くなれば85度でも、90度でも よいのかとなると、先ほど申し上げたようにどんどんとまずくなっていくわけです。本当か なという話です。それから、調理前後の食品は室温に長く放置してはいけない。これも「長 く」とはどれぐらいだろうか。残った食品は早く冷えるように小分けして保存しよう。この 「小分けして早く冷やす」というのは、ウェルシュ菌の増殖を防ぐ、あるいはセレウス菌な どの芽胞菌を制御しようということなのですが、「早く冷えるように」というのは、どれぐ らいで冷やしたらよいのだろうか。温度と時間の組み合わせのことに関しては、わが国のさ まざまなガイドラインではまだデータとして少ないのです。HACCPでも大事なのは温度管 理ということで、国際的に見ても幾つかガイドラインが出てまいりましたので、この辺りに 科学的な根拠を入れてあげたらよいのではないかと思っております。それをきちんとしてお かないと、お刺身を持って帰れなくなってしまうのです。氷を乗せて帰りなさい、7度以下 にしなさいということになるわけですが、では、持って帰ってきたら食べてはいけないのか しらという話になるのです。それが心配だったら、お刺身を食べるのは冷蔵庫の中に入って 食べるのかということになってしまいます。非常に合理的ではないので、そこをもう少しわ かりやすくしてあげたらよいのではないかと思っています。  私は専門にしておりますが、食品の安全というのは目立ったら駄目なのです。目立ったと きは事件が起きているということですから、ひそかに隠れてきちんとしておかなければいけ ないというものですし、食品の品質というのは栄養やおいしさがありますが、今ここで求め ているのは食事という、もっと大きな場としての食の提供ということですから、その真ん中 にある衛生と安全に関してはHACCPを活用していただけるとありがたいです。それが食 育にもつながっていくのではないかと思っています。以上です。 ○吉池座長  ありがとうございました。お二人の委員方には本ガイドラインの両輪となる栄養管理と衛 生管理について、専門的な立場からご説明いただきました。  続きまして、各現場での現状と課題ということで、最初に保育所の状況について、林委員 にご説明をお願いいたします。よろしくお願いします。 ○林委員  おはようございます。本当に大変な委員方の中に入って大変緊張しております。私が何を 伝えたらよいのかと今、本当に頭の中がいっぱいになっております。保育園の中身を少しお 話しできたらと思っております。私たちの「鳩の森愛の詩あすなろ保育園」は横浜にありま す。姉妹園である「鳩の森愛の詩保育園」は25年前からありまして、そこから分かれまし て8年目の「鳩の森愛の詩あすなろ保育園」ということになっています。  今のお話を聞いていて、先に食育のことについて少しお話しさせていただいた方がよいか と思ったのですけれども、私たちは25年前から食事は保育の一環ということを言っており ました。ですから、栄養士だからこうだ、保育士だからこうだという一線があるわけではな く、いつも一緒にいろいろなことをやってきたのです。それこそ職員みんなで荒馬踊りを踊 っているのですけれども、荒馬踊りの研修に行くというと栄養士も調理師も行きます。みん なで参加して保育のことを学ぶということをしています。逆に後で出てきますけれども、食 材を現地に行って視察するときは、保育士も一緒に行って、そこで一緒に観察するというこ とをずっとやってきたものですから、本当に給食室と保育がいつも一体で運営しているのが 鳩の森愛の詩あすなろ保育園だということを前提にお話しさせていただきたいと思いまし た。  私たちの園は横浜駅から電車に乗って20分ぐらいの弥生台という所にあります。駅を降 りて保育園まで2〜3分という利便性もあって、都心に通勤する父親や母親も多くいます。 子どもたちを取り巻く状況を少しお話ししますと、やはり、この長引く不況の中で父親や母 親の労働時間が延びていると、このごろつくづく感じます。母親たちの話を聞くと、職場で 一緒に働いていた人が辞めたけれども、その補充がなく、やはり今いる人数でその持ってい た仕事をやり切らなければいけないので、本当は保育園に早くお迎えに来たいけれども、来 られないでいるという意見が本当に多くあります。それに伴って、結局母親たちの労働時間 が延びますから、当然、子どもたちの保育時間も延びるということになっています。  18時半以降に迎えに来る子どもたちには、おにぎりやお好み焼き、ホットケーキなど、 大体1日の栄養摂取量の10%ぐらいを目安に軽食を出しています。私どもの園は20時まで の保育をしているものですから、お迎えが19時以降にかかる子どもたちに関しては夕食を 出しています。その夕食も大体1日の30%ぐらいを目安に出しています。それを見てみる と、やはり年々保育園の食事に対する比重が本当に高くなっているという現状があります。 朝食に関しては、今年は本当に驚いているのですけれども、パンと牛乳を超えて、これ1 本で1食分というゼリーのようなものが売っていますよね。それを食べてくる子どもが出て きています。昔はゼリーと書いてあると、私たちはカップのゼリーを想定したのですが、そ うではなくてチューブに入ったものを食べてくる。では、それはどうなのだろうと私たちの 中でも今、驚いているところです。  保育園では、そのような状況にある子どもたちに何を大事にしていったらよいのかという 話をしまして、このことは大事にしていこうという三つぐらいをいつも頭に置いています。 一つ目は日本人の体に合った和食にこだわって、米飯をはじめとした素材のおいしさを伝え ていくことが大事だと思っております。先ほどもお話ししたのですが、山形県から有機胚芽 米を取っているものですから、お米はその胚芽米を使っています。そして、給食に提供する 野菜は全部有機野菜を使っています。そのためにニンジンなども全部皮ごと調理するという 形で、香りなどが残せるような調理法をしています。年に数回、職員が、それこそ栄養士と 保育士とみんなで現地に行って、そこで育っているお米の話を聞いたり、野菜の話を聞いた りして、そこでできているものをいただくのですが、本当においしいのです。調理を複雑に しているかというと、全然複雑ではなくて、ゆでただけや、だしと薄味で煮てあるだけです けれども、とてもおいしくて、やはりこの味をぜひ子どもたちに伝えたいと思っています。  一つ、いつも笑う話があるのですけれども、ちょうどおろ抜きニンジンをたくさんいただ いてきまして、それを子どもたちに見せて、これをそのまま食べられるという話をして、細 く切ってみんなで食べたのです。そうしたら子どもたちがとてもおいしい、おいしいと言っ てボリボリと食べていて、お迎えに来た母親に「保育園のニンジンがすごくおいしかったか ら、ニンジンを買って帰りたい」と言って、帰りにスーパーに寄って買って、母親と一緒に 食べたら、「このニンジンじゃない、保育園と同じニンジンを買ってほしい」と言われたと。 その話を聞いても子どもたちの味覚はものすごい、この時期の味覚は本当に大事だとあらた めてそのときに感じました。  加えて、やはり和食というのは根菜をよく噛んだりしますし、箸を使います。手指の発達 を考えても本当に脳への影響は大きいので、とても和食は大事だと思っています。  そして行事食や伝統食をやはり伝えていきたいと思いました。資料の4枚目ですけれども、 一部ですがこのようなメニューを出していますというものを作りました。この「もりもりバ ーガー」の話をさせていただきたいと思うのですけれども、日ごろから運動会に向けて、今、 この子は跳び箱を頑張っている、今日は飛べたなど、いろいろなことが給食室の中に伝わり ます。そこで、給食室の職員も、私たちも何か応援するものを作りたいと、生まれたのが「も りもりバーガー」なのです。ですから、運動会の前日に出てくるメニューです。パンから全 部保育園で作る、本当に手作りのハンバーガーなのです。某会社のハンバーガーをたくさん 食べている子どもたちもいますが、このハンバーガーを食べたら、このハンバーガーはとて もおいしいと。やはり味覚はすごいと、子どもたちが判断するのはすごいと。しかしパンか らすべて手作りしたハンバーガーは本当に幸せ、こうした味を子どもたちに伝えていきたい と思っています。  二つ目は、物の成り立ちを知ることがとても大事だと今思います。10年ぐらい前から、 魚は切り身が泳いでいる、ゴボウやニンジンは細くて短くて、どうもきんぴらゴボウのイメ ージがゴボウやニンジンの形につながっているという話を聞いて、やはり実際の経験がない 中での知識を、本当に実体験していくことが大事だと思っています。そのために野菜の栽培 や、子どもたちが実際に調理活動をしています。調理活動のときの衛生管理については、ご く一般的なことですが、1週間のスケジュールを見通しながら、この日はみんなで何か作ろ うね、例えばお団子を作る日だというと、前々からみんなの気持ちを高めていくのですけれ ども、前日、明日はお団子を作るから、つめを切ってこようという話をして、まずそこは家 と連携を取りながらつめを切ってきてもらうということをします。その後に自分で持ってき たエプロンを着けてウキウキした形で身支度を調えます。調理前の手洗いはいつもの手洗い とは違うと、職員が丁寧に手首の方まで洗うことを実際に見せて、最後に消毒液に手を浸け て、調理に向かうということをしています。基本的には2歳の後半ぐらいからお団子作りを するのですけれども、最初のうちは形作ったものを目の前で火に入れて、火を通した物を食 べるというメニューづくりをしています。  それから三つ目としては、仲間と一緒に食べる楽しさを十分に味わえるのが保育園だと思 っています。個食が増えていると言われていますが、私どもの園の子どもたちもそうだと思 います。忙しい中で母親たちが別のことをしながら「食べていなさい」と、結局個食で食べ ているのだろうという実態が見えますので、せめて保育園にいるときぐらい、みんなで食べ るとおいしいということをたくさん経験してもらいたいと思っています。隣でもりもり食べ ている子どもを見ると、自分はこれを食べたことがないからと思っていたり、これは少し苦 手と思っていることでも、隣の子の勢いで少し食べてみようかなと気持ちが変化して、友達 に励まされてお皿がピカピカになるということも大事かな、集団で食べる楽しさを分かち合 いたいと思っています。  課題ですけれども、忙しい中で、中食も否定できないのですけれども、こんなに簡単にで きるメニュー。例えば、ゆでたらこのようになるでしょう、そこにゴマをかければ大丈夫な ど、本当に簡単なメニューを、保育園で経験している味を食卓にも伝えたいと思って、簡単 なメニューを家庭にも紹介したいと思います。  もう一つ、私は朝食のことがあらためて考えさせられています。幸い年長組になると自分 たちでお米をとぎます。資料の2枚目でお米をといでいる姿があると思いますけれども、毎 日順番にお米当番がお米をといで掛けているのです。ですから大体年長になると、家に帰っ てお米をといで掛けるということまではできますので、あと何か少しあったら、朝ご飯が忙 しいときにも抜いていくのではなくて、何かで食べていくことができるのではないかと思っ ています。たまたまその日に跳び箱をやっていたときだったのですけれども、今まで飛べな かった子どもが飛べて、「今日は何を食べてきたの」と言ったときに、「納豆ご飯を食べてき た」と言ったら、「そうか、やっぱり納豆を食べてきたから力が出るんだ」という話から、 「やっぱり朝は納豆だよね」と言って、そこから今、朝は納豆ご飯というブームが生まれて います。これが小学校に行っても、そうやって子どもたちが食べて行けることにつながれば よいと思っています。あらためてこの研究会に参加させていただいて、摂取量のことを振り 返ってみたら、保育園の昼食とおやつで40%、夕食で30%。すると朝は30%食べてこな くてはいけないことになるのだと改めて思って、果たして食べてはいるけれども、量の問題 はどうなのだろうと考えさせられました。そのことは継続して私たちも考えていかなければ いけないと今、思っています。管理栄養士が全部成長曲線を付けていますので、そういう点 では今のところ極端に下がっている子どもはいませんので、それなりに栄養は摂れていると は思いますが、朝食のことはこれからの課題だと思いました。そのようなところです。あり がとうございました。 ○吉池座長  どうもありがとうございました。続きまして、児童養護施設での現状と課題について、釘 宮委員にお願いします。 ○釘宮委員  私も学者ではありませんので、児童養護施設における子どもたちの歴史をお話しすればと、 一応ここの資料になっています。児童養護施設は今は被虐待の子どもたちがほとんど100% です。ネグレクトの子どもたち。乳児院を省きまして、その子たちが施設に来るまでまとも な食事をしてきた子は一人もいません。歯が全部むし歯だったり、全く噛めなかったり、好 き嫌いが多かったりします。養護施設というのは心を育てて体を育てる所です。全国に養護 施設がありますが、全国の養護施設の形態はさまざまです。国もなるべく小規模化というこ とで動いていますが、まだまだ大舎制のところが多くて、子供寮も昔は80人の児童を同じ 食堂で、同じ食事時間で、同じように食べさせていました。そこで起こってくることは、先 ほどおっしゃいましたが、学校で絵を描いてもらうと真っ白なりんごを書いたり、ジャガイ モは切ったジャガイモを書いたり、これでは駄目だというので、おひつを出して、何を出し てということをやってきました。  大舎制のプラス面というのは管理ができます。でも管理があまりできますと、軍隊と同じ ようになって、軍隊の中でご飯を食べているような形になって、一人一人に応じた温かみと いうことが全く無視された中で子どもは食べていきます。職員の配置は少なくて済みますし、 大きな行事などもできて、立派な行事の写真ができますが、でも果たしてそれがというとこ ろがありまして、子供寮も16年前に建て替えをして小舎になりました。調理も3年くらい 前から完全に全部部屋の中で朝昼晩を作ります。大舎だったとき、遠足のお弁当がありまし た。これは見た目もとてもよくて、「こういうのを持って行けて、うれしいでしょう」と言っ たら、子どもが「うれしくない」と言ったのです。「こんないいお弁当を皆持ってこないと思 うよ」と言ったら、「だって皆同じだもの。私たちは全員同じ弁当を持っていく。これは少し もうれしくない」と。それを聞いて、私はまだ大舎でしたけれども、せめて遠足のお弁当は 一人一人全部希望を聞いたのです。20人以上いますので大変なので好きなものと嫌いなも のだけを書いてもらって、おにぎりも何を入れてほしいかを全部書いてもらって、全員それ に合わせて作ったのです。それには子どもも喜びましたが、一番びっくりしたのは学校の先 生でした。せめて運動会と遠足、修学旅行に持っていく捨て弁とか、そういうものはとにか く子どもの希望を全部聞いています。  朝ごはんだけは部屋の方でということで、それも全員の希望を聞いて。その当時、朝ごは んを残す子どもたちが施設で多かったのです。ある施設は朝ごはんがあったら、それをその ままぼんとゴミ箱に捨てるような子どもがいたくらいだったのです。でも朝ごはんは全員一 人一人希望を聞きました。大体チャーハンがいい子はチャーハン。パン、サンドウィッチ。 全員の希望を聞いて、わずか6人くらいですので、とにかく朝は全員の希望を聞いたら、好 きなものが出てくるので、捨てる子どもは誰もいません。しっかり食べて行きます。  そのようなことで、やはり子どもに合わせなければいけないのだということがあって、小 舎になりまして朝から晩まで全部部屋で作ります。そうすると最初の1年くらいは包丁の取 り合いです。手伝わせて、手伝わせて、手伝わせてと。においが全く違いますので。全く隠 れた所での調理はにおいがありません。出来上がったものは同じでも、それは違うのです。 「ただいま」と帰ってきて、今日はカレーだとか、今日は何だというにおいとトントンとい う音。「火加減を見ておいてちょうだい」とか、電話で忙しいときは、「お米をといでおいて」 というような、日常生活で何気なく行っていること、それが自立につながるということ。自 立プログラムを作らなくても、それが子どもたちの自立につながっていく。味見をすると言 って横に来る子どもに味見をさせたりとか、今日学校でこんなことがあったよと話しながら、 調理しているのを見る日常の何気ない行動の中に自立への準備が入ってくるのではないか ということを痛感しています。  小舎制のマイナス面は、作る職員によって調理の個人差が出てきます。研修もするのです が難しいです。今の若い方たちはインスタントを使い慣れていますので、それも難しいこと で、切ること一つにしても、本当に個人差がある。調理の上手な職員のところは本当におい しく、その差をどう埋めるのかが一つの課題です。  小さいころに覚えた味は大きくなっても追求する。先ほどおっしゃいましたが、これは「お いしい」という子どもの言葉を聞くために、それと食材選びは当時から栄養士が自分の足で 歩いて、アジはこのお店、これはこのお店。一つ一つお店。良いもので安いものでというの で、それは今も継続しています。子どもたちは良い食材を使っていますので、舌も肥えてい ます。ですから、変なものが入るとすぐ、先ほどおっしゃいましたが、全く同じです。だし も全部こちらで、それも業務用のカツオでとっていますので、新人の職員がだしをとろうも のなら、「今日は何でだしをとった。これは違うだろう。インスタント?」。私たちではわか らないのですが、本当にそうです。入所後、朝は必ずご飯を食べる子ども。また、そういう ものを一切受け付けない子どもというのは、入る前の食生活なのです。そうすると小さいと きに覚えた味というのは、子どもが結婚後に自分の子どもにその味を提供すると思います。 そうしたら今きちんとした味を教えておかないと、大きくなったときには遅いということで す。  もう一つは「子どもの食生活と人格形成」ということで、一時、子供寮は荒れました。も のすごく荒れたときがあって、めちゃくちゃに荒れた時代というのは、子どもたちの食生活 がめちゃくちゃです。そのとき口にするものは、コカコーラ、ガム、ポテトチップ、インス タントラーメン。それ以外は一切食べません。ですから、変な話ですが、インスタントラー メンをダンボール1箱全部あげたり、ガムを1箱全部あげたこともありますが、それがだん だん心が落ち着いてくると野菜を食べるようになり、煮物を食べるようになり、変わってき ます。今まで絶対に肉しか食べなかった子どもが、ある日煮物を食べるようになる。ある日、 魚を食べるようになるということは、その子の心が大きく変わったことの一つの証ですので、 私たちは子どもにこれを食べなさいと言って無理やり食べさせたりはしません。「せめて一 口は食べなさい」という指導はします。でも、その変化がとても大きいです。それと好き嫌 いがものすごく多い子どもは、人に対する好き嫌いも多いです。あの人が嫌い。この人が嫌 い。この人はむかつく。ですから、好き嫌いがなくなってくるということは、その子どもの 心も大きくなって社会性が出てきたということなので、食生活はイコール人格とものすごく 密接な関係があると思います。  それから、私たちはなるべく冷凍食品を使いません。インスタント食品も同じです。食材 を選んで薄味を心がけます。そうすると子どもの心は本当に落ち着いてきますし、今が食生 活を見直していく大事なときかなと思っています。  これからの課題として、施設に来る子どもは赤ちゃんのときに虐待を受けた、無視された 子どもが多いのです。赤ちゃんのときは皆の注目を浴びる時期です。子どもがはいはいをし たら、うわーと父親、祖父母も皆喜んで赤ちゃんに目をそそぎます。皆の注目を浴びるとき に無視された子どもたちは、「私だけ」というのがものすごく大きいのです。「私だけにして もらったこと」というのが。それをしていかないと、子どもの心のケアができませんので、 食生活の中で「あなただけ」をどれだけやっていけるのか。それはこちらが面倒がらなけれ ば、いくらでもできることなので、ご飯の好きな子に毎朝ご飯を用意してあげる。その子が 怒った時に、「でも私はこうやってあなたのためにご飯をいつも用意しているよ」と言える もの。そういうものをどれだけ準備していけるか。  それから「おふくろの味」をどれだけ定着させるか。本当においしい食事をしていると、 無断外泊した子どもまで帰ってきます。「どうして帰ってきたの」と聞くと、「ここのご飯が 食べたかった」と。ですから、下手な説教をするよりも、おいしい食事を提供していれば、 外泊している子どももここを卒業した子どもも全部帰ってきます。ここの食事を食べたかっ た。卒業旅行に行ったどこのホテルの食事よりも、ここの食事がおいしかった。そのような ものを提供していくことが大事だと思いました。以上です。 ○吉池座長  どうもありがとうございました。続きまして、福祉関連の施設の栄養士を代表するお立場 として、政安委員からご説明をお願いします。 ○政安委員  それでは、私は管理栄養士・栄養士という立場で、児童福祉施設、乳児院、保育所、児童 養護施設それから障害児施設等主な施設が挙げられますが、その中で保育所と児童養護施設 と障害児施設について調査研究等もしていますところからお話しさせていただきます。  「保育所における現状と課題」として資料3−[5]に示していますが、平成16年、18年に 調査をした経過もありまして、管理栄養士配置と未配置では、栄養管理に差があることがお ぼろげながらわかっています。その中でも、子どもの発達・発育に応じた食育を展開するこ とに関しても、堤委員からも話がありました個々のニーズに応じた子ども一人一人の栄養管 理の面からも業務を遂行されているかというところが今、まさに重要とされているところで す。保育所保育指針にも書いてありますが、体調不良の子どもや病気回復期の子ども、さら に食物アレルギー、何らかの障害のある子どもに対する連携も大事だということで、会とし ては栄養士の立場から普及を図っているところですが、実際の食事提供の場面では、先ほど もお話に出ていましたが、どうしても一元管理、一つの献立で一律管理という形でされてい る所が多いということがあります。実際には個々のアセスメントをして、計画を立てて、実 施して、評価という流れを求められている中で、実施の段階で一元管理がなされている率が 高いということが反省点と思っていますし、実際にこのようなことを総括した指導という形 で、食育を基本としたプログラムを作り、研修会等では実践・効果の評価までには至ってい ませんが、その実践を普及したいということでやっています。  そのような中で、研修会等に参加した管理栄養士・栄養士から出ている課題は、朝食欠食 児童です。先ほど林委員からも出ていましたが、朝食欠食と長期時間保育の中で、いろいろ な問題が生じてきている。その中でも果たして夕食まで提供したからよいのかという点で、 家庭力を弱めることも懸念されるのではないかという声も挙がってきています。その一方で は、園庭開放等で保育所に通っていない家庭で養育されている母親と児童が保育園に遊びに 来る中で、食に対する不安を抱えている保護者が結構多いということがわかってきています。 また、食体験という視点から、先ほど林委員からも出ていましたが、調理保育、クッキング 保育という形で、各園で取組がなされていますが、衛生面に配慮した安全・安心という食事 提供はもちろんですが、そこを保育士または園児にどのように啓発・普及していくかが大き な課題となっています。  そのようなことから、今後も個々の心身状況やニーズに応じた食事の提供や栄養管理、調 理保育における衛生管理も含めたマニュアル等があればさらに指導がしやすいし、研修等で の普及が図れるのではないかと思っています。  続いて、「児童養護施設における現状と課題」ですが、平成20年度に児童養護施設にお ける食生活に関する実態調査、全数調査をしました。児童養護施設全施設にお配りしたとこ ろ回答率は63.8%という結果ですが、入所前の食生活の把握は40.6%。多分この把握のし にくいところは、先ほども出ていました被虐待児ということで把握がしにくいところがある のではないかと思っています。身体状況の把握においては、健康診断や身体計測で約6〜7 割という状況でした。これらの状況を活用して給与栄養目標量、食事摂取基準等の作成・検 討で7割の方が活用されていますし、または食事支援計画作成に3割の方が活用されている という現状でした。その中でも、児童養護施設で自立支援計画を立てていると思いますが、 そこに食事に関する内容が含まれているかどうかという問いかけに対しては4割。食育計画 を新たに作成しているところが3割弱でした。その中にもアレルギーや偏食という食事に配 慮が必要な人がいることがわかりました。実態としてはアレルギーが約8割。偏食が2割強 となっています。また、先ほどから話題になっています小舎制等においても衛生管理はとて も大事になってくると思います。荒木委員のおっしゃるように、肉料理の調理の仕方とか、 いろいろな情報を提供していかなければいけないと思っていますが、実際には給食室が使う 衛生管理のマニュアルが7割。小舎制のように家庭という形で、給食室以外では1割強か2 割くらいにおいて衛生管理マニュアルがあったという情報を得ています。  平成20年10月に報告された社会的養護施設に関する実態調査の中間報告で見たところ、 就職に伴う独立が6割だったので、その6割の方たちが自活していけるようにという考えの 下に、「児童養護施設における『食生活の自立支援マニュアル』」を作ろうということで、本 日「委員限り」でお配りしています試作版を作りました。これに関しては、乳児から高校生 までの食育を系統立てて計画し、健康で健やかにより良い生活ができるようにという視点を 基に作っていますが、まだ試作版ということで、これからさらに検討していかなければいけ ないと思っています。さらに、独立していく児童に向けて高校生をターゲットに食育という ことをきちんとして、自ら食事を作って生活をできるようなことを願って「高校生のための 『自立支援に向けた食育プログラム』」も今回作っています。それを基にモデル事業をさせ ていただいて、モデル事業を実施した管理栄養士・栄養士から今年の8月に児童養護施設の 管理栄養士・栄養士を集めて東京で研修会を開催してご紹介させていただきました。その中 で、児童養護施設の管理栄養士・栄養士に『自立支援に向けた食育プログラム』を使っても う少し実施していただき、それを反映した形で、食育プログラムを完成できたら大変ありが たいと思っていますし、その検証もしていきたいと思っています。  最後に「障害児施設における現状と課題」ですが、厚い冊子でお配りしています平成20 年度の障害者保健福祉推進事業等で、実際に地域で生活する障害児の食生活・栄養支援に関 する調査研究を行いました。あくまでも通園施設に通っている児童を調査対象にした結果で すので、原疾患は自閉症児が約5割、精神遅滞が2割くらいの割合でした。その中の少数の 調査結果ですが、「太っている」より「やせている」割合が多かったというのが現状です。 ということは、自閉症児というところが少し関係しているのではないかと感じていますが、 その中でも食行動と照らし合わせると、よく噛まない子どもの方が肥満傾向にあって、便秘 がある子どもの方がやせている傾向にあることが分かりました。実際には障害児入所施設に おける実態調査も併せてやらないと、障害児全体の傾向はわからないのではないかという結 果になっています。この調査のモデル事業をしたときに、保護者からさまざまな食行動や食 生活に関する問題点等が挙げられ、相談を受けたわけですが、障害児に特有な育ちや発育を 支援していく必要があるのではないかということが示唆されました。一方では、障害児が在 宅から特別支援学校に通っているその一方では、施設から通っているということがあります。 施設から通っている障害児が学校との役割の中で、どのようにされているかの実態調査もあ まりされていないことから、今回は、その調査もさせていただいたところ、施設と学校との 間での情報が共有化されていないこと、それぞれ独自に身長・体重などいろいろな状況を見 ながら個別管理をしている状況がありました。それぞれに行っている方針がどこかで食い違 ったりしないこと、お互いに連携することにより相乗効果があることも考えてモデル事業を 行い、このモデル事業を踏まえて、「食生活・栄養サマリー」等情報交換ができるようなサマ リーを試作しました。今後は今年の4月から導入された栄養ケア・マネジメントの手法を、 しっかりと現場の管理栄養士・栄養士に伝えながら、導入を進めて行きたいと思いますし、 障害児施設にいる管理栄養士と特別支援学校との連携強化を図りながら、健やかで明るい活 動的な生活ができるように支援できたらよいと思っているところです。以上、簡単に説明し ました。ありがとうございます。 ○吉池座長  ありがとうございました。最後に、今回「食事摂取基準」が改定されまして、その活用に ついて簡単に私から説明します。参考資料2をまずご覧ください。先ほど、堤委員からは、 この平成17年3月の2005年版の食事摂取基準を各施設へどう適用・活用するかという目 標が示されて、それの実施状況についてご報告がありました。2010年版になりましても、 基本的な考え方は2005年版と大きくは変わりませんので、特に保育所での活用・適用状況 で個人に対する対応、また栄養アセスメントと食事提供のつながり、PDCAサイクルとし ての流れが十分ではないことにつきましては、今回も引き続いての課題と言えると思います。 このモニタリングにつきましては、2010年版のライフステージ別のところ、少し飛んで恐 縮ですが、278ページです。これは後でご覧いただければと思いますが、参考資料3に、2010 年版の食事摂取基準の概要がありまして、続いてライフステージ別も含めて、かなりの枚数 がありますが、278ページに乳幼児期・小児期における活用ということが書いてあります。 特に成長曲線に当てはめてモニタリングをし、食事の提供量を個人にできるだけ合わせて調 整をしていくことの重要性が述べられているところです。そういう意味で、食事摂取基準の 適用・活用につきましては、堤委員が最後にまとめられた図のサイクルをきちんと回すこと に尽きると思います。  そのようなことで、私からの説明は終わりにしたいと思いますが、それぞれご説明いただ いたことについて、ご質問等がありますでしょうか。議論を整理しながら、不明な点につい てはどんどんお聞きいただきたいと思います。残り30分で委員の先生方のご発言を踏まえ ながら、このガイドラインの骨子をどうするかの整理をしなければいけませんので、私も委 員の先生方の話を伺いながら手を動かしていたのは、それを作らないと今日は終われないの で、作業をしていました。  冒頭で事務局から説明いただきました資料2をもう一度ご覧ください。事務局からの説明 資料と併せてご覧いただきたいのですが、先ほど私が両輪と言いましたものが、栄養管理と 衛生管理があるということで、主に施設内で給食の提供、食事の提供という具体的な事柄が あり、プラス栄養ケア・マネジメントを各施設でやっていかなければいけない訳です。ここ で考えなければいけない施設としては、保育所、乳児院、児童養護施設、障害児施設があり、 衛生管理のところは各施設共通の部分が多いと思いますが、栄養ケア・マネジメントについ ては、それぞれの利用者の特性であり、例えば保育所であれば1食プラスアルファの提供と いうことで、この辺の仕切りが変わってくることが、やや事を複雑にしていると思います。  もう一つ、「食育」というパートがありましたが、私は委員の先生方のお話などを伺いな がら、ここは「食を通じた支援(食育の視点から)」とした方がよいかなと考えて整理をして みました。といいますのは、事務局の資料をご覧になっていただいても、「食育」という枠 の中で書かれているものに本人への自立支援もあり、先ほど釘宮委員また政安委員からお話 があったように、自立支援をどう進めるかというのは非常に大きなポイントだろうと思って います。また、障害児施設や保育所の保護者も含めると、保護者への支援というのも大事な 要素になってきます。そのような支援の中で食育の視点を入れていくのではということで、 整理しました。これらはもちろんお互いにつながるものですが、このような大枠を考えなが ら、そしてご意見をいただきながら、骨子として何を入れるかの整理をしていきたいと思っ ています。  まず「栄養管理」についてですが、食事摂取基準があり、それから事務局の紙には入って いませんけれども、「授乳・離乳の支援ガイド」があります。これらをどう具体化させるか ということだと思いますが、堤委員にまたご発言をお願いしたいと思います。  堤委員のお話を伺うと、とにかく栄養アセスメント→食事計画→というPDCAサイクル にまだ問題があるということに尽きる、現実的にどこまでやるかはともかくとして、このよ うな食事計画・実施・評価に関して、具体的にどのような栄養管理をしてくるのかというこ とかと思います。先ほど、釘宮委員から「管理」というと軍隊のようというイメージもある と言う話もありましたが、ここで言う栄養管理はいわゆる軍隊の「管理的」なものではなく て、どちらかというと個々人に合わせてきめ細かく栄養ケア・マネジメントをするという意 味のものです。「管理」という言葉があまり良くないのかもしれませんが、一応そういうこ とを視点とした栄養管理ということで考えていただきたいと思います。  その中で、具体的に個別的な配慮、発育・発達モニタリングを含む、また特殊な状況にあ る子どもたちへの配慮ということで、幾つか出されていたと思います。まずこの「栄養管理」 の部分について、このようなことが必要ではないかということを、堤委員のコメントも含め てご意見をいただければと思います。 ○堤委員  項目としてはこれで十分であると思います。ただ、これは各論になってしまうのかもしれ ませんけれども、先ほども少し申し上げましたが、栄養士だけではなく、保育士が関与して いる部分が非常に大きいのです。また、保育士以外の例えば児童養護施設の場合には、児童 指導員も関与している場合が多いので、その方たちも理解できるような書きぶりにする必要 があると思います。そして、私が調査させていただいた乳児院等では、保育士が子どもの栄 養管理を栄養士以上にやっている部分もありますので、保育士と栄養士の連携という部分を やはり特に強調することが重要であると考えます。そして、現場で子どもに接している人を 十分に活用しながら、栄養管理の部分は栄養士が中心となって、連携を取りながらやってい く必要があると思います。以上です。 ○吉池座長  そうしますと、施設内でのシステム、特に連携を想定したことについても、概念ではなく、 より具体的なことを書くということですね。 ○堤委員  はい。 ○吉池座長  「食事摂取基準」とのかかわりの中で、どこまで細かいことが書けるのかというのは、時 間的なことも含めて悩むところですが、その辺は堤委員あるいは政安委員、いかがですか。 ○政安委員  先ほどから出ています食事提供の部分で、実際にアセスメントして計画を立てるけれども、 実施の部分でなかなかやり切れないというところが、現場の栄養士や保育士に理解できない 部分ではないかということです。そこを階層的にどうするか、年齢ごとにどうするかといっ た事例的なことをもう少し盛り込めれば、実践として使えるのではないかという気がします。 ○吉池座長  それから、事務局に伺えばよいのかもしれないのですが、対象児を広げて考えて、障害児 施設といったときに、対象を考えると、いわゆる栄養ケア・マネジメントそもそもが随分違 ってくると思います。そこまで踏み込むのはあまり現実的ではないけれども、ある程度想定 しながらどのような考えで進めればよいのかを少し確認させていただければと思います。い かがですか。 ○事務局  栄養ケア・マネジメントについては、各施設によりその取組状況が大きく異なってくると 思いますので、各施設で取り組めることを踏まえながら、その状況に応じて行っていくよう な形が望ましいと思います。まさに、堤委員がおっしゃったようなPDCAサイクルを取り 入れ、踏まえながら、よりそのようなことに近付けるような形で、それは施設の状況や実情 に応じて行っていければよいのではないかと考えます。 ○吉池座長  ありがとうございます。他に、何かありますか。次は「衛生管理」へまいりたいと思いま す。荒木委員からは大変わかりやすいお話をいただいたのですが、私は専門外で図にあまり 書き込みが出来なかったのです。基本的にはご説明いただいたHACCPシステムの温度・ 時間管理等に、プラス一般的衛生管理で、これは一般論としては「大量調理施設衛生管理マ ニュアル」に書かれているようなところを、いかに小規模な施設などでも適用するかという 整理かと思っているのですが、その辺はいかがですか。 ○荒木委員  「大量調理施設衛生管理マニュアル」は、何しろボリュームも大量で、なかなか読みこな すことが難しくて、一般的衛生管理の要素とCCPで管理する要素を分けずに入れているの です。それをここがCCPなのだということを、少し説明して差し上げるとよいかと思いま す。実は、そういうグループに問われて、一言一句の振り分けの作業を前にやったことがあ るのですけれども、「だから、こういうことが要求されているのだ」ということを理解して いただきました。  それから、最大の問題は、記録付けです。HACCPプランも一般的衛生管理プログラムも、 どちらも日常のモニタリングと検証を要求するので、どうしても記録が必要なのですけれど も、調理施設ではなかなか記録までというのは、限定をかけないと気の毒だと思います。そ のためには、どこまでやってもらうのかということを考えなければいけないと思います。例 えば、レストランでもHACCPをやっている所がありまして、調理人がこれでOKという ところでサンプリングして微生物の検査をすると、加熱の指標である大腸菌群は陰性になる のですけれども、「少し待ってください」と言って、その前のところでサンプリングすると 陽性と出てくるのです。ですから、きちんと技術力のある人であれば、出来ていることを納 得してもらう。そして、いつも同じように管理してもらうということで、記録をどこまで付 けてもらうか、いちいち付けさせるというわけにもいかないと思います。そこは少し考慮す る必要があるかと思います。嫌がられない程度の記録にするということです。 ○吉池座長  給食の実際の管理の場におられた政安委員は、いかがですか。 ○政安委員  荒木委員に、ぜひお願いしたいことがあります。クッキング保育、調理保育の場面でも、 「危険だからやらない」と「危険だけれど重要だからやる」とのどちらかに完全に分かれて いて、やっていない所の管理栄養士が非常に悩んでいます。衛生管理的なところで線引きで き、ここまでならやっても大丈夫なのだというものを示すことができれば、どこの園でも取 り組めるのではないかと思いますので、ぜひその辺をお願いしたいと思います。また、調理 の現場では皆さん記録で悩まされています。とはいえ、いざ何か起こったときには困るので、 起きたときに対応できるような最低限の記録を示せたらありがたいと思っています。よろし くお願いします。 ○荒木委員  記録のポイントとしては、一般的衛生管理プログラムというのは、よくGood Manufacturing Practice(GMP)というのですが、その発想は常にきれいであること、ピカ ピカであることを要求しているので、結局、駄目だという事実が隠れてしまうのです。手を 洗ったことやサニテーションをかけたというのも、やったという記録になってしまって、そ れには×が付いてこないのです。今、HACCPと一般的衛生管理プログラムが有効に機能す るためには、駄目なときの記録をきちんと残せるということです。ですから、PDCAサイ クルでいくと、チェックの記録を残しなさいということです。Doの記録はどこまで行って も○ばかりですから、そのチェックをどれぐらいの頻度でやるのかというのは、実は、その 組織のレベルによって違ってくるのです。きちんとできている所は、たまにでも良いと思う のです。検証型でも良いと思うのですが、そうでない所は、ずっとモニタリングしなければ いけないということです。そうはなりたくないと思います。そこは少し工夫が要ると思いま す。 ○吉池座長  ありがとうございます。それから、私が少し気になっていることとしては、先ほど荒木委 員がエンテロバクター・サカザキの例を上げてくださいました。また母乳ということでは、 「授乳・離乳の支援ガイド」では、冷蔵あるいは冷凍母乳を使って、できるだけ母乳栄養を 進めていく道も考えようということが出ていたと思います。そうしたときに、これは栄養管 理でもあり、衛生管理でもあり、またある意味では保護者への支援ということになるのです が、乳汁栄養に関する衛生管理を、何らかの形で含めるということについて、ご意見はいか がですか。 ○荒木委員  それであれば、エンテロバクター・サカザキの専門の先生にも少し手伝っていただくなり していった方が良いと思います。食中毒細菌それぞれにご専門がいらっしゃいますので、あ まり総論的なところでは危険があるかと思います。そういうことになると、結局ざっくりと しか書けないというのが現状になると思いますけれども、一歩踏み込んで適切な方に手伝っ ていただくことが必要かもしれません。 ○吉池座長  どこまで各論に踏み込むかというのは、すべてに通じるところですので、問題意識として 乳汁栄養に関する衛生管理も頭の中に入れながら、どこまで書くか、それを含めるかという ことは、また後の検討とさせていただきたいと思います。  他に、「衛生管理」について、何かありますか。最近、保育所などでも、子どもたちが調 理体験をするなど、調理場以外のところで、いろいろと食材を扱い、食べるわけです。その 辺、衛生管理上、お困りになっていることなどはありませんか。 ○林委員  そうですね。やはり、食材管理というのは、給食室に預かってもらうということはもちろ んありますし、あとは、粉など比較的常温で使える物が中心になっているということも、現 実的にはあります。あと、温度管理などはやはり給食室との連携で、私たちはいつもやって いるというのが実態です。器具などについてもです。だからこそ、先ほど出た栄養士と保育 士の連携が非常に大事で、お互いにそのことの意味がわからないと、なぜそのようなことを するのかというところに、つながっていかないと思っています。 ○吉池座長  今回の範囲かどうかはわかりませんけれど、いくらきれいに作っても、子どもの手が汚け れば元も子もないので、その辺を、実務的に何か整理が必要かどうかということ。現実的に この範囲なのかは、また検討しなければいけないと思いますが、体験あるいは調理実習など で、調理室以外、管理された所以外で、調理がなされ食べるということも機会としては少な くないと思いますので、その辺も問題意識としては入れておきたいと思います。  他に、「衛生管理」で何かありますか。  食を通じた支援、特に本人への自立支援ということについては、具体的にお話もいただき 大事なことだろうと思っています。総論の話で済むのか、具体的にどこまで書ける準備状況 にあるのか、また現場としてどこまでが求められているのかということについて、少しご意 見をいただきたいと思いますが、いかがですか。  釘宮委員からは、先進的な取組状況のお話しをいただいたと思いますが、施設によってま ちまちではないかと。そうしたときに、あまり取り組まれていない施設に、何かお伝えして プラスになるような中身とは何でしょうか。 ○釘宮委員  本当に難しいことです。グループホームが今、これだけできている中で、グループホーム の中の調理の衛生管理をどうするのかということも大きな問題です。大舎制の中で養護施設 をやっているのは、全国的にはかなりあるのではないでしょうか。その中で、どれだけ子ど もの個に応えていけるかというのは、先ほどのせめてお弁当のとき、それから最初にやった のはコンロを持ってきて、朝ご飯だけはゆで卵もできれば卵焼きもできるという創意工夫と いいますか、それを大舎制の中でどこまでできるかということです。あと、カレーだったら 2種類作る、玉ネギの嫌いな子どもは玉ネギを抜いた料理を何か考えるというような大舎制 の中でできることです。それがひいては「私を大事にしてくれた」ということに子どもはつ ながっていくので、虐待を受けた子どもたちには絶対に大事なことです。その辺が難しいか と思いますが、でも、そこは何とか工夫してやるのが、子どもを中心に考えていくことでは ないかと思います。 ○吉池座長  衛生管理についても、大舎制とグループホームを分けて考えなければいけない、また食育 的な観点からも少しアプローチが違ってくるということで、ますます複雑になってきますが、 その辺、政安委員は、いがかですか。 ○政安委員  今、大舎制のお話が出ましたが、私たちの調査では約63.8%が担当区の大舎制で行われ ているという結果が出ています。その中で高校を卒業して独立して就職活動をするためには、 きちんと自分で調理して生活できるようなスタイルをつくっていかないと、やはり不安であ るという管理栄養士や栄養士からの声は大きいところがあります。食に対する興味や関心に ついては、自分の好きな物を食べることに対する興味はあるけれども、調理などに対する興 味や関心は割と希薄だという声も上がっていますので、そのような視点を持ったマニュアル を作り、展開活動ができたらよいのではないかと思っています。特に、児童養護施設は、 41人以上は栄養士配置という最低基準があり、栄養士が配置されている施設が多いと思い ますので、そのようなところを十分にご活用いただいて、3年ぐらいかけて、高校生の自立 に向けた、しっかりとしたプログラムができれば、社会に出ていっても自ら健康的な生活が 営めるのではないかと考えていますので、ぜひそのマニュアルを作るときにご協力いただけ ればと思っています。 ○釘宮委員  でも、実際問題、子どもたちは高校を出て働きますと、早番だと本当に朝早く起きて働い て、自分の成育史を背負いながら、社会の中で働いて、人間関係をうまくやっていくだけで も精一杯なのです。そこで、帰ってきて、なおかつ、自分で調理などはできないのではない かと思います。このようなことを言ってはいけないのですが、マニュアルがあったとしても、 実際にそれを活用する子どもが何人いるかということを考えたときに、虐待を受けた子ども は感情のコントロールが難しい子どもが多いので、例えば会社へ行ってけんかしてきました、 明日から会社へ行けませんということになったら、そこでなおかつ、自分で調理してという ことは難しいと思います。自立した子どもに、これを作りなさいと言っても、頭ではわかっ ていても、子どもたちは働いて本当にくたくたです。大学に進学したとしても、その中で働 きながら学校へ行ってというので、朝ご飯を食べない子どもが多いのではないかと思います。 食生活はがらりと変わります。 ○荒木委員  私は、この10年ほど食品製造業の企業の現場に入るということをやっていましたので、 ファストフードのお弁当などもどのように作られているのかというのは、夜中の現場も見て います。今、普通の家庭が調理するよりは、よほど丁寧です。泥付きのゴボウから調理しま す。ですから、買ってくる物、出来合いの物が駄目というのは、今、社会として成り立たな いわけです。そのようなものを買ってきたときに、どのような組み合わせにすれば、その< コマ>がうまくできるのかというようなことを、わかってもらって、うまく使ってもらうと いうことです。当然、添加物もある程度のものが入っていなければ物が成立しないものもた くさんあるわけですから、食のリテラシーのようなものを育てられたらよいと思います。 ○政安委員  私どもが考えているのは、過去に障害児の調査研究費をいただいて、「らくらく食生活サ ポートマニュアル」をカラー版で作らせていただきました。吉池座長にも手伝っていただい て作ったわけですが、やはり加工品もどうやってチョイスして組み合わせて食べるかとか、 加工品を使ってどうプラス・ワンしたら、より良い食生活ができるなどの簡単なカラーの冊 子を作っています。そのような視点で今回の食育プログラムも、チェックは食事バランスガ イドを使って、簡単に主食・主菜・副菜・果物と牛乳がそろった食事になっているかという ことを考えようということで、すべて調理してやりましょうというスタンスではなく、後で ご覧になっていただければわかると思いますが、いつも考えているよりも少しプラス・アル ファで、健康を考えて食事をしていただきたいという視点で、やはりマニュアルは作るべき ではないかということを考え、そのようなシステムで取り組んでいます。 ○吉池座長  ありがとうございます。イメージとしては、本人に対して、あれしろ、これしろではなく、 施設の中で自立に向けたステップ・バイ・ステップの中で、こういう施設でこういうことが できますという風に、緩やかにあまり欲張らずにやっていくということになるかと思います。  それから、「保護者への支援」についてですが、障害者・障害児のところについては、栄 養ケア・マネジメントと同じで、少し特殊な状況になると思いますので、これはこのような 支援も大事だというぐらいのことにして、主には保育所の中で、保護者にこのような支援も できるのではないかという辺りが中心になるのではないかと思っています。もちろん、この ような支援が地域とのかかわり、例えば地産地消他、地域のコミュニティとのかかわりとい うことも含めて、大枠を整理していくのだろうと思っています。  一応、三つの大枠について、ご意見をいただいたわけですが、このような枠で具体的にワ ーキンググループにお願いして、次の作業を進めていくということでよろしいですか。  ありがとうございます。それでは、今回の議論をもう少し整理して、ワーキンググループ を立ち上げ、具体的な中身を詰めていきたいと思っています。また、このワーキンググルー プのメンバーと開催については、事務局と協議の上で進めさせていただきたいと考えていま すが、お任せいただいてよろしいですか。  ありがとうございます。それでは、予定された議事については以上ですが、その他に委員 からご発言があれば、お願いしたいと思います。何かありますか。  それでは、定刻になりましたので、本日の会議を踏まえて、さらにご意見等がありました ら、事務局まで直接メールなどでご連絡ください。  最後に、閉会に当たり、事務局から一言お願いします。 ○事務局  吉池座長、ガイドの構成要素の整理等を、ありがとうございました。ワーキンググループ の開催・人選については、吉池座長と協議の上、進めていきます。なお、ワーキンググルー プの取りまとめは年内を目途に考えています。取りまとめた時点で、2回目を開催させてい ただきたいと考えています。  本日は、お忙しいところをお集まりいただき、また、貴重なご意見をいただき、誠にあり がとうございました。  それでは、これをもちまして、「第1回児童福祉施設における食事の提供及び栄養管理に 関する研究会」を閉会します。どうも、ありがとうございました。 照会先:厚生労働省雇用均等・児童家庭局     母子保健課     03−5253−1111(代)     (内線:7934・7936)