09/08/27 第17回医薬品・医療機器等対策部会議事録 第17回 医薬品・医療機器等対策部会 日時 平成21年8月27日(木)     16:00〜17:30      場所 東海大学校友会館「望星の間」 ○事務局 ただいまから第17回医薬品・医療機器等対策部会を開会します。本日の部会は、 従来の取扱いと同様、公開で行うこととしております。カメラ撮りは議事に入るまで とさせていただきますので、マスコミ関係者の方々におかれましては、ご理解とご協 力のほどをよろしくお願いします。  本日ご出席の委員の先生方におかれましては、ご多用のところご出席いただき、誠 にありがとうございます。本日は本部会委員14名中、11名の出席をもちまして、部会 を開催させていただきます。なお、石川委員、木村委員、原田委員からは欠席との連 絡をいただいております。木下委員は少し遅れるとの連絡をいただいています。  前回の部会以降、委員の変更がありましたので、五十音順でご紹介します。本部会 より新たにご就任いただきました東京女子医科大学先端生命医科学研究所教授の 伊関洋委員です。日本歯科医師会の稲垣委員に代わりまして、中尾薫委員です。な お、当部会発足時より部会長をお務めいただきました櫻井委員は、ご都合により前回 部会をもちまして委員をご退任となっています。  事務局に変更がありましたので、紹介させていただきます。医薬食品局安全対策課 安全使用推進室の佐藤大作室長です。医政局総務課医療安全推進室の佐々木昌 弘室長が出席予定でしたが、本日は公務により代理で望月主査が出席しております。 また、岸田審議官は、本日公務のため欠席となっています。  次に、これまで部会長を務めていただいておりました櫻井委員の退任に伴い、新部 会長の選出に入らせていただきます。本部会はその設置要綱において、部会長は委 員の互選により定めることと規定されています。どなたか委員の先生方、ご推薦はご ざいますか。 ○土屋委員  この部会の当初から委員をなさっていまして、非常に造詣も深い外委員を推薦しま す。 ○事務局  ただいま土屋委員より、外委員に部会長をお願いしたい旨のご提案がありましたが、 いかがでしょうか。 (異議なし) ○事務局  皆様のご賛同をいただきましたので、外委員に部会長をお願いいたします。外委員 には部会長席への移動をお願いします。この先の議事進行は部会長にお願いします。 よろしくお願いします。 ○外部会長 力不足ですが、部会長を務めさせていただきます外です。どうぞ皆様の ご協力をよろしくお願いいたします。  議事に入ります。最初に資料の説明を事務局からお願いします。 ○事務局  配付資料の確認をします。一番上に「第17回議事次第」があります。1枚めくってい ただくと「配付資料一覧」、次が「委員名簿」です。  資料1「第27・28・29回医薬品ヒヤリ・ハット事例等収集結果」、資料2「医薬品の販 売名の類似性等による医療事故防止対策について」、資料3「第27・28・29回医療機 器ヒヤリ・ハット事例等収集結果」、資料4-1「人工呼吸器呼吸回路における気道内圧 モニター用チューブに係る添付文書の自主点検等について」、資料4-2「PMDA医療 安全情報『人工呼吸器の取扱い時の注意について(その2)』」、参考資料として当部 会の設置要綱が付いています。資料は以上です。過不足等がありましたらお申し付け ください。 ○外部会長  今日は検討事項が2つ、報告事項が「その他」となっています。 検討事項1「第27・28・29回医薬品ヒヤリ・ハット事例等収集結果について」です。事務 局から説明をお願いします。 ○事務局  資料1です。本報告書は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構が、医薬品の使 用方法及び名称・包装等の物的要因の観点から、財団法人日本医療機能評価機構 がHP等で公開している、医療事故情報収集等事業の第14回、第15回、第16回の 報告書の中にある「ヒヤリ・ハット事例記述情報」及び「医療事故事例」の概要につい て報告したものです。なお、第27回ヒヤリ・ハット事例は報告書の14回に掲載されて いて、順に第28回ヒヤリ・ハット事例は第15回報告書、第29回ヒヤリ・ハット事例は 第16回報告書に掲載されています。内容は別添の1、2、3、4です。また、通し番号と して、別添には右下に縦向きに通し番号が打ってあります。  次の頁です。今回のヒヤリ・ハット事例等の報告の内容です。第14回報告書の医療 事故関係については、平成20年4月1日から6月30日の間に報告された事例、ヒ ヤリ・ハットの関係については、平成20年2月19日から平成20年5月12日の間に 報告された事例です。以下、第15回、第16回となっておりまして、医療事故は平成 20年12月31日までに報告された事例です。ヒヤリ・ハット関係については平成20年 11月10日までに報告された事例です。医薬品に起因するヒヤリ・ハット等の事例につ いて、医薬品の使用方法及び名称、包装等の観点から、安全管理対策に関する専門 的な検討を行うため、各医療関係職能団体代表等の委員から構成される総合機構で の医薬品・医療機器安全使用対策検討会で検討した内容を報告いただいたものです。 今回の調査報告によると、報告書中の記述情報は、全例で361例でした。  次の頁です。「医薬品の安全使用に関して製造販売業者等による対策が必要又は 可能と考えられた事例」「製造販売業者等により既に対策が取られているもの、もしく は対策を既に検討中の事例」「ヒューマンエラーやヒューマンファクターに起因すると 考えられた事例」「情報不足等のため製造販売業者による対策が困難と考えられた 事例」の4つに分けて、各報告書中の件数を掲げた表です。今回、医薬品の安全使 用に関して、製造販売業者等による対策が必要又は可能と考えられた事例は、3件 でした。また、製造販売業者等により既に対策が取られているもの、もしくは対策を既 に検討中の事例は8件、ヒューマンエラーやヒューマンファクターに起因すると考えら れた事例は309件、情報不足のため製造販売業者による対策が困難と考えられた事 例は41件でした。  検討結果の調査については、別添1をご覧ください。1頁です。第16回の事故事例 として報告された事例で、羊水検査の前処置として、ストック薬より子宮収縮抑制薬で あるウテメリンを内服させるべきところ、同じ引出しにあった子宮収縮薬のメテナリン を投与させてしまった事例です。ウテメリンとメテナリンの名称類似性については、通 知により医療機関に一層の注意喚起をしており、製造販売業者においても、誤用防 止のために製品に関する情報提供及び表示の変更等を実施しているところですが、 注射製剤を含めて、繰り返し同様の事例が報告されていまして、両薬剤は逆の薬理 作用を有することから重大な健康被害を生じる可能性があること、また企業において は患者の安全を最優先に考えた医療安全を確保するための積極的な取組みが求め られていることから、対策が必要と分類されています。  次頁の1番は第14回のヒヤリ・ハット事例で報告されたもので、注射オーダーにお いて、タキソールをオーダーすべきところ、タキソテールをオーダーしてしまった事例で す。その下の2番で、第16回ヒヤリ・ハット事例においても、同様にタキソールが正し いところ、ワークシートには「タキソテール」と誤って記載されていたため、タキソテール が指示受けされた事例です。いずれも使用前には訂正され、事故には至らなかったヒ ヤリ・ハット事例となっています。タキソールとタキソテールの名称類似性についても、 医療機関に一層の注意を喚起し、製造販売業者においても、誤用防止のために製品 に関する情報提供及び表示の変更等を実施しているところですが、過去より死亡を含 む事例が繰り返し報告されており、先頭3文字が同一で、入力時のミスや記載間違い に起因していること、また企業においては患者の安全を最優先に考えた医療安全を 確保するための積極的な取組みが求められていることから、対策が必要と分類され ています。システム上の工夫のほか、名称の変更も必要であると考えられる調査結果 となっています。  3頁の1番、第14回の事故事例として報告された事例で、手術室でポピヨドン液を 用いて、綿球により術野の消毒を行った際、消毒部位にポピヨドン液の泡立ちと綿球 の崩れによる糸くずの皮膚付着が発生したことから、手術室内で調査をしたところ、 界面活性剤を含むポピヨドンスクラブを誤って使用していたことが判明した事例です。 現在ポピヨドンスクラブの製造販売業者において、当該製品の表示、包装の変更を検 討中とのことですので、対策を検討中との分類がされています。  2番は第16回の事故事例として報告された事例で、当直医がサクシゾンを入力する ため、検索に「サクシ」と入力し、表示されたサクシンをサクシゾンと勘違いしてオーダ ーがされ、投与されたことから患者が死亡に至った事例です。サクシンに関しては名 称変更が承認され、新販売名による出荷が始まっていることから、既に対策が取られ ているものとの分類がされています。詳細は後ほど資料2で説明します。  4頁の1番です。第15回のヒヤリ・ハット事例で報告された事例で、化学療法におい て輸液ポンプの流量と予定量を逆に設定してしまった事例です。輸液ポンプに関して は、入力間違いを容易に発見できるよう、流量及び予定量の入力画面を独立表示と すること及び入力間違いを防止するために、設定した予定量よりも流量が大きい場合 には、一時停止の機能を搭載すること等の事故防止対策措置を講じていることから、 既に対策が取られているとの分類がされています。  5頁の2番は第14回のヒヤリ・ハット事例で報告されたもので、モダシンを静脈注射 後、バンコマイシンを点滴投与したところ、終了後にルートが白濁していることに気づ いた事例です。現在モダシンの製造販売業者により、配合変化に関する添付文書の 改訂を検討中であることから、対策を既に検討中と分類されております。  3番は第14回のヒヤリ・ハット事例で報告された事例で、アルコール禁忌の患者に 対し、タキソテールをアルコールを含まない溶解方法を選択すべきところ、添付の 13%アルコール溶解液を用いて混合して、患者本人が容器に貼り付いているアルコ ールが含まれている旨の注意ラベルにより気がついたという事例です。  4番は第16回ヒヤリ・ハット事例で報告された事例です。アルコール過敏の患者に 対し、手術室においてタキソテールを投与する指示があったが、タキソテールに付属 の溶解液を注射用水と思い込み、確認せずに溶解した事例で、注入後に血圧低下、 皮膚発赤が見られた事例です。タキソテールの製造販売業者は、添付溶解液にエタ ノールが含有されていることについて、添付文書等で注意喚起を行っており、アルコー ル過敏症患者の場合の調整法についても情報提供を実施しているところであり、既に 対策が取られているものと分類されています。  6頁の5番は第16回ヒヤリ・ハット事例で報告された事例で、患者の自己血を返血 する際に、指示量と積算量を逆にセットした事例です。こちらも先ほどの輸液ポンプの 対策と同様でして、既に対策が取られていると分類されています。  6番は第16回ヒヤリ・ハット事例で報告されたもので、輸血開始後輸血セットの滴下 筒内で血液が伝い落ち、滴下が数えられない状態となった事例です。当該事象の使 用機種については、機構での調査の結果、テルモ社製の製品において同様の事例が 収集されており、滴下筒の長さを変更するなどにより、当該事象の再発防止対策が実 施されていることから、既に対策が取られているものと分類されています。ヒューマン エラーやヒューマンファクターに起因すると考えられた事例に関しては、時間の関係で 割愛させていただきます。  115頁の「情報不足等のため製造販売業者による対策が困難と考えられた事例(事 故事例『薬剤』)」です。1番目の「事例概要」としては、残量が1,000mlあった輸液が50 分間で空になっていたとの内容で、原因等の詳細が不明であり、検討困難と考えられ たものです。  2番目は、輸液の流量が指示量と異なっていたとのことですが、詳細不明のため、 検討困難と考えられた事例です。  3番目は輸液が短時間に大量投与された事例ですが、詳細不明のため検討困難と 考えられた事例です。  116頁の4番は、医薬品の副作用症状が報告されているので、今回の検討対象か ら除外しています。  5番から9番にかけては、薬剤の血管外漏出事例です。手技を含めた原因等、詳細 が不明なため検討困難と考えられた事例です。以下30番まで、医薬品の副作用症状 報告、もしくは薬剤の血管外漏出事例です。  123頁の31、32番は、患者による向精神薬の過剰服用の疑いです。こちらも詳細不 明のため検討困難と考えられた事例です。  124頁からは、「情報不足等のため製造販売業者による対策が困難と考えられた事 例(ヒヤリ・ハット事例『薬剤』)」です。1番はヘパリンロック用の薬剤に関する記述で すが、詳細不明のため検討困難と考えられた事例です。2番は輸血、3番、4番は輸 液が急速に滴下された事例ですが、詳細不明なため検討困難と考えられた事例です。 5番は血管外漏出事例であり、同様に検討困難と考えられた事例です。  127頁の1番は、オーダリングシステムで警告が出たにもかかわらず薬剤が発行さ れたとのことで、システム上の不具合の可能性も含め、詳細が不明なため検討困難 と考えられた事例です。2番はオメプラールと他剤との配合変化の可能性があります が、詳細不明であり検討困難と考えられた事例です。  128頁の1番は、輸血にかかわる院内ルールの問題であり、検討困難と考えられた 事例です。2番は、輸血のオーダーシステムの不具合とのことですが、詳細不明につ き検討困難と考えられた事例です。資料1については以上です。  続いて資料2です。「医薬品の販売名の類似性等による医療事故防止対策につい て」です。先ほど説明しましたとおり、今回も医薬品の名称類似性に起因している事例 が複数ありましたので、これまでの取組み等をまとめた資料となっています。  次の頁です。1「医薬品販売名の類似性による医療事故防止に関する通知につい て」となります。4番目にある平成20年12月4日付の通知に関しては、「サクシン」に よる死亡事故を受けて発出された通知です。これらの通知に基づき、各製造販売業 者による、容器・包装の改善や医療機関、薬局への情報提供及び医療機関・薬局で の取違え防止の取組みを依頼しています。  2「サクシンの販売名変更経緯」です。平成20年11月徳島県内の病院において、採 用されていないサクシゾンを処方する目的で、サクシンをサクシゾンと思い込み、誤使 用したことによる医療事故が発生しました。この事例は先ほどの報告と同じものです が、この死亡事故を受け、製造販売業者による情報提供、注意喚起の実施とともに、 誤って投与されることでより重篤な転帰が考えられるサクシンの名称を変更する方針 を決定しまして、8月24日より、新販売名「スキサメトニウム注」にて出荷が開始され ているところです。資料には「予定」と書かれていますが、既に発売が開始されていま す。  3「その他」として、平成15年に発出した「医療機関における医療事故防止対策の強 化について」の別添1の(1)の1と2において、薬剤の名称類似性等が指摘されている 医薬品の組合せについて、事故防止対策の一層の徹底について、各製造販売業者 に申し入れているところです。  15頁から19頁は、サクシン注射液からスキサメトニウム注への販売名変更に際し、 製造販売業者が各医療機関宛てに配付した情報提供文書です。  20頁は、先月読売新聞夕刊に掲載された記事です。「誤投薬防止のため薬名が変 更された」との内容ですが、併せて類似名称による取違えが報告されている、他の医 薬品の組合せについても掲載されています。  21頁からは、名称類似が指摘されている医薬品の組合せに関して、各製造販売業 者が各医療機関宛てに配付している注意喚起文書です。  21頁から23頁は、アマリールとアルマールの組合せです。両薬剤を対比させた注 意喚起文書を、医師・薬剤師向け雑誌に掲載するとともに、各医療機関宛てに情報 提供をしています。  23頁は、アマリールのPTPシートに「糖尿病用薬」という薬効を明示する表示がされ ています。24頁から26頁は、タキソールとタキソテールの組合せです。両薬剤を対比 させた下敷を各医療機関宛てに提供するとともに、一般名をより強調して表示するこ とで、取違え防止を促す表示の改善が図られていますが、死亡事故を含む事例が繰 り返し報告されています。類似名称に関する注意喚起を継続的に行うとともに、一般 名処方やレジメ入力を医療機関に提案するなどの対応を行っている、との報告を受 けています。  27、28頁は、ノルバスクとノルバデックスの組合せです。ノルバスクのPTPシートの 裏面に効能・効果の記載がなされています。注意喚起文書はそれぞれ作成され、各 医療機関宛てに情報提供されています。ノルバデックスに関しては、抗がん剤である ことから、がん告知の観点から、PTPシートへの効能・効果の記載はされていません。  29、30頁はアロテックとアレロックの組合せです。注意喚起文書をそれぞれに作成 し、各医療機関宛てに情報提供されています。  31から34頁は、ウテメリンとメテナリンの組合せです。薬効及び薬剤名を大きく表示 することで注意喚起を図るとともに、両薬剤を対比させた注意喚起文書を各医療機関 宛てに情報伝達しています。また、今回の事故事例を含め、これまでに数件の報告が あることから、今般両社協議の上で、メテナリンの名称を変更する方針を決めたとの 報告を受けています。現在は、新販売名への移行準備計画を立案していただいてい るところです。  35から37頁はテグレトールとテオドールの組合せです。両薬剤を対比させた注意喚 起文書を、各医療機関宛てに情報伝達しています。  38、39頁はプルゼニドとプレドニンの組合せです。両薬剤を対比させた注意喚起文 書を各医療機関宛てに情報伝達、プルゼニドのPTPシートに「緩下剤」と薬効を表示、 プレドニンのPTPシートにはシートごとの新バーコード表示対応を準備中との報告を 受けています。資料2については以上です。 ○外部会長  いま議題の1番目の医薬品に関係するヒヤリ・ハット事例報告、検討内容等が示さ れました。ヒヤリ・ハットだけではなくて、事故事例も報告がありました。特に患者が死 亡する事故として、サクシゾンとサクシンの取違えです。随分以前から、この薬剤につ いては注意喚起されてきたところですが、残念ながらこのようなことが実際に起きたこ とを受けて、今回は製薬会社のほうで、サクシンは名称を変更したということです。ヒ ヤリ・ハット事例等を含め、以前から挙げている危険な薬剤について、相変わらず報 告されている現状です。今回のヒヤリ・ハット事例、あるいは対策等について、ご意見 があればお願いします。 ○土屋委員  名称について、タキソールとタキソテール、サクシンとサクシゾンといったものは昔か ら言われていて、既存のものについて名前を変えなかった1つの理由に、心理学の先 生が、「それは一時的に忘れているだけで何かのときに思い出すのだ。だから変える ことだけが対策ではない」と言われて、それを事実上裏付けるような事故がキシロカイ ンで起きたのです。キシロカインの2%と10%のときに、2%をリドクイックという採用品 に変え、10%はキシロカインのままにしました。これは製薬会社が名前を変えたので はなくて、病院として対策を取って、名前を変えたもので採用しようということでした。と ころが、急患が来たときに、つい先生が「キシロカイン」と言ってしまったために、結果 としてキシロカインの10%がスルーしてしまって、死亡事故になったものでした。本当 にそのようなことがあるということを実感しました。ただ、結果としてキシロカインは 10%がなくなるということがあってからは、もうそういう話はなくなったということもありま す。  それから、今回サクシンとサクシゾンというのは、私どもにとっても、その後特にヒヤ リ・ハット報告で聞いたことがなかったものですから、もう止めることができているのか なと思っていたのですが、今回当該病院の報告書を見ると、病院の中で何回か起き ていたという報告があります。そうなると、やはりそうだったのかということと同時に、こ ういうときに我々としては、最初から極端な例を出すということではなくて、まず第1段 階の対策を取って、事故を防ごうということでやってきて、ただその後ずっと続いてい る、あるいは死亡事故のような重大な事故が起きたものについては、名前を変えなく てはいけない時期に入っているのではないかと思います。第1段階の手当てはもう済 んだけれども、いま相変わらず起きているということは、そこまでやらなくてはいけない ことを示しているのではないかと思います。  もちろん厚労省に、特許庁が認めた商標を医療安全で取り消すという権限はないの だと思いますが、医療安全のために、平成14年に出た医療安全推進総合対策にお いても、製薬企業はそのようなことを避けるように努力するのが責務と役割だと謳わ れているので、それを考えれば、そのような強制力がないにせよ、製薬企業はそうい う対応を取るべきではないかということです。  資料には「名称の変更が必要であると考える」と書いてありますが、そういったように 全く逆の作用がある、あるいは片方がハイリスク薬で死亡事故につながるような場合 は、名称変更を考えることをそろそろ打ち出さなくてはいけないのではないかと考えま す。 ○外部会長  この点を含めてご意見はございますか。 ○安全使用推進室長  今回はサクシンに関しては、このように思い切ったというか、製薬会社も死亡例が出 たということで、市場からその名前をなくすという決定をしました。ただ、これがいまお 話にあったように、臨床現場で徹底するのは時間が必要かと思います。そういう時間 の中で、事故がないことを祈るわけです。  ただ、実際には今日挙げているヒヤリ・ハット事例では、注目すべきところでは、タキ ソールとタキソテール、ウテメリンとメテナリンの2つで、この2つが重大な事故につな がりかねないリスクを含んでいます。そして、いつもここに挙がってきます。いま土屋 委員が言われたように、もっと強い力で変更というのも必要かと思っています。 ○安全対策課長  いまご指摘のあったように、度重なる対策を講じ、現場にもいろいろな要請を繰り返 しやってきていても、取違えが起こることが確認されているものについては、さらに名 称の変更を強く要請するという方針で臨んできています。  今回タキソールとタキソテールに関しては、まだその段階に至っていませんが、ウテ ナリンとメテナリンに関してはメテナリンの販売名を変更するということで、既に企業と しては決定したという報告を受けているので、2つのケースのうちの1つは、販売名の 変更で踏み出すことが決定していることをご紹介します。  2つの組合せを、どのような形で販売名を変えていくのかに関しては、両方とも変え たほうがいいという考え方もあります。ただ、間違えのパターンによって、よりリスクの 高いほうを変えれば一歩前進ではないかということで、そのような形で、2つの会社が 相談をした結果として、そういう折合いを付けたケースもあるわけです。サクシンの場 合は、サクシンがものすごく危ないので、そちらが変えるということで、2つの会社の間 で合意が得られたということです。ウテメリンとメテナリンに関しては、これも両社で協 議をした結果で、メテナリンの方を変更することで話は付いているということです。  ただ、タキソールとタキソテールに関しては、どちらかだけ変えるのがいいかに関し ては、我々も考えているところですが、方針としてはまだ立っていません。ただ、両方 の企業に対して、名称変更を真剣に考えてくださいという要請をしているところです。  これまで再三こういった薬剤に関して、識別性を高める努力、それから、一般名で院 内で処方指示をすることについて、かなり要請をしてきている実態もあります。現在そ れが現場でどのくらい普及しているのかをきちんと調査したいという申し出も受けてい ます。その結果、現場に負担もかけていますが、かなり対応が進んでいる状況であれ ば、それを1つの根拠として、それでもリスクが残る部分についてどう対応するか。そ こを検討することも1つの対応として考えられると思っています。  現状としては、販売名の変更というオプションも考慮に入れて検討するという回答を 会社からは受けている状況です。ここ数年の間の現場における各種の対策が、どのく らい進展しているかの具体的な確認もしていく中で、販売名変更のオプションについて、 行うとすれば具体的にどのようなやり方をするのが一番問題が少ないのかについて、 それなりに準備も必要だと考えています。今回販売名変更の方針を決めたメテナリン も、現場に十分なお知らせをし、準備をした上で、変更を行うことが必要と考えていま す。販売名を急に変えるとかえって危険だというのは、土屋先生からの話にもありまし たように十分な準備が必要と思っています。いずれにしても、見通しをきちんと立てて 対応するように、我々としては各社に強く繰り返し要請していく方針です。  今回、さらに1件ですが具体的に販売名変更に踏み込んだケースが出てきたという 途中経過です。 ○木下委員  この問題は、このままでいいということにはならないと思います。いろいろな事実関 係があり、土屋先生から縷々お話をいただきました。経過はあると思いますが、メーカ ー側としてはかなりの負担となることは当然だと思います。  これだけ世の中が医療安全に関心を持ち、こういった資料まで提出し、このような委 員会を作り、検討し、出た結果について、何の手も打たずに、ただ注意しろでは済み ません。類似した名称に対しては、どちらがどうすべきだという問題はあると思います が、企業責任として、これは委員会云々ではなくて、国民の考え方としても、放置はで きないことだと思います。  その意味では医療界にとって、このまま放置しておけというのは通らないと思います。 各論的にどうしていくかという問題は、ステップはあるかと思いますが、基本的にはメ ーカーでも真剣に考えて動くことは必要ですので、医療界としてはそれを支持して、少 しでも悪い条件を取っていくべきです。最後は使う者の資質や注意深さもありますが、 可及的要件を取っていくことは必要であると思うので、その視点でお考えになればと 思います。  このような委員会は、強制力は持たないわけですが、方向性を示すことは大事だと 思います。委員の方で、その必要はないというご意見があれば、伺いたいと思います し、なければ、方向性はいま座長がお話になったものだと私は思います。 ○外部会長  今回挙がっている薬に関しては、もう平成15年にこのような通知が出ているわけで す。特に高リスク薬ということで列挙されている数品目に関して、数年前からアラーム を発してきています。このときはウテメリンとメテナリンに関しては、当委員会から何度 か改善点を考慮するようにという話もあったのですが、「困難だ」という返事をいただ いていました。  ところがここにきて、やっとメテナリンが名称変更へ動き出しました。もちろんそれは 一歩前進ということになるのですが、この数年間で間違えられた患者も多いわけです。 そうやって赤ちゃんの命が揺れ動いたであろう。そのことを思うと、ここまでくるのは時 間がかかったと思います。  そういう意味で、もう1つの大きなリスク薬である、タキソテールとタキソールについて も、臨床現場で間違えば、患者の命が本当に危ない目に遭わされる薬ですので、いま 木下委員からもあったように、単に見過ごすという形では対応できないと思っています。 強い力で、患者の命を考える厚生労働省として、対策を取ってほしいと思います。 ○土屋委員  先ほどのどちらを変えるかという話ですが、ウテナリンとメテナリンの話で気になる のは、片方しかなくなると、片方がないので選んだのだと、例えば今回のサクシンとサ クシゾンというのは、それぞれの病院が対応を取って、片方をやめたらやめた薬が違 っていたという事例ですので、全く逆のものについて、片方を変えるから一件落着とす るかどうかについては疑問があります。  そういった意味で、どちらを変えるかはいろいろあると思いますが、こういうことがあ ると、その品目の採用をやめるという対策を取る病院があります。しかし、本当の原 因は違うことにあったのに、それで対策を取ったと思う気持が新たな誘因になるわけ です。ですから、そういったときに根本的に絶対安全を考えると、そこは両方のところ が多いのではないかという気がします。  順番はあるし、もちろん今回、日病薬も看護協会もそうだと思いますが、サクシンの 名前が変わったことについては、このような対応をとるようにという通知を出していま すし、いまは徹底する方法は、医薬品安全管理責任者というものができたので、明確 に通知を徹底していくというやり方があると思うので、昔とは違って、そういう意味での 医療機関側の体制もできているので、きちんと決めるべきだと思います。  もう1点です。新しく出る後発品は一般名ということに決まっているのですが、後発品 のブランド名が残っています。それがために、例えばアルマトールという薬があって、 いままでアマリールとアルマールは間違えたけれども、アルダクトンAの後発品なので すが、アルマトールを出そうとして「アマリール」と書いて、死亡事故になったということ が発生しています。  そうすると、後発品のブランド名を本当に認めていくべきかという問題があるのです。 例えばリチームという薬があります。「私はリチームを飲んでいます」と聞いたら、医療 関係者は炭酸リチウムのことかと思うのですが、これは塩化リゾチームの「ゾ」を抜い て「リチーム」という商品名なのです。  このように、後発品というのは、いままではあまり使われていなかったので安全だっ たのですが、国の後発品推進策のために、いまどんどん変えなければいけなくなって います。ということは、後発品のブランド名のために、新たに起きる事故というのは、 後発品で1文字違いというのがたくさんあるのです。そうすると、これの対策として、後 発品は一般名のみにするというようなルールを決めることは、これだけ後発品を推進 するのであれば、これから発生するであろう事故を予め防止しておかないといけない のではないかという気がして、同時にそういうことの対策を取ることも必要だと思いま す。 ○望月委員  以前座長だった櫻井先生が、医療事故対策のときに、いつも最終的にはもう少しハ イテクを利用したほうがいいとおっしゃっていました。できることとできないことがある かとは思うのですが、いまオーダリング、電子カルテがかなり普及しているので、適応 症でチェックをしていけるものは、それを利用することも可能になるのかなと思います。 ただ、緊急時に使うような薬物の場合、いちいちそうしたオーダリングを利用しない形 で薬剤が投与されていくことがあるので、そこはまた考えておかなければいけないこと なのかなと思いますが、もう少しオーダリングシステムを利用して電子カルテの情報を うまく使って、事故防止に役立てていくこともあっていいのかなと思います。  もう1点は、先ほど名称が変更になった直後が危ないとありました。私も、まさにそう だと思いました。私はいま大学の教員になっておりまして、随分現場を離れております。 サクシンのケースについて、おそらくスキサメトニウムとオーダーされても、商品名の 世界から一気に一般名の世界に変わることで、私はサクシンかサクシゾンか、頭の中 が混乱するのではないかと思います。過去の言葉が想起されるというのは、本当にそ うだなと思いました。  そこで、1つ思ったのは、タキソールとタキソテールのところで、現在わりとレジメン管 理の上で使われている言葉としては、「パクリタキセル」「ドセタキセル」という言葉がよ く使われていて、おそらく学会関係でも、そちらの用語で発表等をされ、院内でのカン ファレンス等々でも、そちらを使うようになってきているのではないかと思います。  院内でのチャートなどのところで、どのような薬の名称で会話がなされていくかという のも、非常に重要なところで、医療関係者が名称が変わったことを意識して、言葉を 発するときにも、そちらを用語として使っていくような形にしないと、文字面だけでは定 着していかないということもあるのではないかと思います。 ○外部会長  名称は刷り込まれていますので、サクシンというのが麻酔科医の頭から消えるのは 数年以上かかるのではないかと思います。そういう意味で、移行期の危険性は十分 に考えておかなければいけないだろうと思います。医薬品に関して、ほかに何かござ いますか。 ○目黒委員  6頁の第16回の輸血の開始の事例について、点滴筒の中を壁を伝ってしまうから、 輸血の滴数をカウントできないとあります。これはテルモ社製の製品に関して、同様の 事例が収集されているということで、メーカーの対応策が実施されることが書かれてい ます。事務局に伺いますが、これはテルモ社だけの話で、他社ではそのようなことは ないのでしょうか。 ○事務局  総合機構からお答えします。この事例を各社に調査したところ、テルモ社がこの事 例を経験しておりまして、点滴筒の口の長さを長く改良したということです。この報告 時期からも、テルモ社が収集した症例と近似しており、この報告事例はテルモ社の事 例だと考えています。  他社にも同様事例の確認をしましたが、こういった血液が縁を伝ってしまうというケ ースは、報告されていないということでした。また、他社の点滴筒の長さについてです が、テルモ社が異常に短かったということも確認しております。しかしながら、今後も同 様事例の情報について収集をしていくところです。 ○目黒委員  わかりました。 ○土屋委員  名称変更のときに、新たなブランド名を付けることのないことを確認したいと思いま す。そのルールとしては、一般名に戻すということで、たくさんブランド名をつくってしま うと、変換ミスなどが起きますので、絶対に変わらない一般名に戻すことが必要だと思 います。 ○部会長  よろしいでしょうか。医薬品のヒヤリ・ハット事例については、これで終わります。  議事の2に移ります。「第27・28・29回医療機器ヒヤリ・ハット事例等収集結果につ いて」です。事務局から説明をお願いします。 ○事務局  資料3をご覧ください。こちらは先ほどの医薬品と同様、第27回、第28回、第29 回の医療機器ヒヤリ・ハット事例等収集結果です。報告書で言いますと、第14回、第 15回、第16回になります。次の頁にいくと、報告内容として、第14回から第16回の 報告書の医療事故については、平成20年4月1日から12月31日までに報告され た事例です。ヒヤリ・ハット関係については、平成20年2月19日から11月10日まで に報告された事例です。検討方法については、医療機器に起因するヒヤリ・ハット等 の事例について、医療機器としての観点から、安全管理対策に関する専門的な検討 を行うため、各医療関係の職能団体、学識経験者等の代表から構成される総合機構 の医薬品・医療機器安全使用対策検討会において、医療機器の物的要因に対する 安全管理対策について検討されたものです。今回の調査報告によりますと、報告書 中の記述情報は全例で62例でした。  次の頁です。医療機器の安全使用に関して製造販売業者等による対策が必要又は 可能と考えられた事例は1件でした。製造販売業者等により既に対策が取られている もの、もしくは対策を既に検討中の事例は8件でした。ヒューマンエラーやヒューマンフ ァクターに起因すると考えられた事例が47件でした。情報不足等のため製造販売業 者による対策が困難と考えられた事例は6件でした。  医療機器の安全使用に関して製造販売業者等による対策が必要又は可能と考えら れた事例は、気道内圧モニター用チューブへの水分貯留による気道内圧誤測定事例 です。資料は別添の1頁です。こちらは第16回のヒヤリ・ハット事例です。設定した圧 がかかっていたにもかかわらず、圧センサーの水滴確認が不十分であったために、 それ以上の圧をかけてしまうおそれのあった事例です。気道内圧モニター用チューブ を有する人工呼吸回路では、当該ラインに水分が貯留することにより、気道内圧を誤 測定するリスクがあることから、安全使用対策が必要と分類されております。  製造販売業者等により既に対策が取られているもの、もしくは対策を既に検討中の 事例として、2頁をご覧ください。1番は第14回の事故事例として報告されたものです。 加温加湿器を使用する人工呼吸回路に人工鼻を接続したことにより、呼気抵抗の増 加による呼吸障害を起こした事例です。人工鼻と加温加湿器の併用に関しては、通 知等により注意喚起を実施し、添付文書改訂も行われていることから、既に対策が取 られていると分類されております。  2番は第16回の事故事例として報告されたものです。人工呼吸回路にジャクソンリ ース回路を接続後、人工鼻を接続したことから、患者が換気不能状態から気胸となっ た事例です。ジャクソンリース回路と人工鼻の併用に関しては、既に同様の事例が過 去にも発生しており、当該ジャクソンリース回路は平成13年から平成14年にかけて、 メーカーによる自主回収が行われていましたが、今回、回収対象製品による事故が 発生したため、改めて医療機関への通知による注意喚起を行っており、また関係企 業に対して、東京都より回収命令が出されているところから既に対策が取られている と分類されています。  続いて3番、第16回の事故事例として報告された事例です。人工呼吸器回路の水 抜きを行い、再装着した際にウォータートラップが緩んでいたことから呼吸状態が悪 化した事例です。人工呼吸器回路内のウォータートラップの取扱いに関しましては、通 知により注意喚起等を実施しているところから、既に対策が取られていると分類され ています。  4番、同じく第16回の事故事例として報告された事例です。人工呼吸器により、呼吸 管理を行っている患者が訪室時の呼びかけに反応がなく、回路に水滴が多く付着して いた事例です。当該事例については、当該企業による検証の結果、当該事象の再現 はなく、機器に故障等がないことが確認されています。呼気弁キャリブレーションを適 切に行うこと及び呼吸回路内の水分を適切に排水することについては、添付文書等 で注意喚起済みであることから既に対策を取られていると分類されています。  4頁目1番、ヒヤリ・ハット事例として報告された事例です。呼吸器の始業前点検時 に普段は点灯しないランプがすべて点灯する等の現象が起こり、リセットボタンを押し ても復旧しなかった事例です。製造販売業者による検証の結果、当該事象は再現さ れず問題は確認できなかった事例ではありますが、オーバーホールが実施されてい ます。  2番、ウォータートラップの水を廃棄後にパッキンが半分脱落していた事例です。ウ ォータートラップの品質上の問題から当該企業により、自主回収が実施されていま す。  3番、加温加湿器の水を補給した後、回路が加温加湿器本体に接続されていないこ とが発見された事例です。当該事例については、通知により加温加湿器に給水する 際にガスポートを使用することを禁止する旨の添付文書改訂が行われています。  4番、人工呼吸器アラームが鳴っており、パネルと呼吸器本体の間より白煙が上が っていた事例です。当該企業の検証の結果、電源基盤上のハンダ付け不良によるも のと判明しており、自主回収が実施されています。  以上、1から4番までは既に対策が取られているとの分類がされています。別添3 の「ヒューマンエラーやヒューマンファクターに起因すると考えられた事例」と別添4「情 報不足のため製造販売業者による検討対策が困難と考えられた事例」につきまして は、時間の関係で割愛します。資料3については以上です。  続きまして、資料4-1ですが、こちらは「人工呼吸器呼吸回路における気道内圧モ ニター用チューブに係る添付文書の自主点検等」についてです。先ほど、報告しまし た安全使用対策が必要と分類されました呼吸回路に付属する気道内圧モニター用チ ューブに水滴がたまり、圧センサーが感知不良を起こしたヒヤリ・ハット事例を受けま して、気道内圧チューブを有する呼吸回路及びそれらを一部構成品に含む人工呼吸 器の添付文書において、気道内圧チューブへの水分貯留による気道内圧の誤測定 のリスクや気道内圧チューブに係る管理上の注意事項等を周知する必要があること から当該製造販売業者に対して、添付文書にそのような注意事項が記載されている か等の自主点検を求め、結果に応じて添付文書の改訂を求める通知となっていまし て、8月25日に発出しました。  資料4-2は、カラー刷りのPMDA医療安全情報です。「人工呼吸器の取扱い時の注 意について(その2)」として、1月に続きまして、人工呼吸器の取扱い時の注意喚起を しています。  1番として、「気道内圧チューブ取扱い時の留意点について」。低圧アラームや高圧 アラーム等が鳴ったときは、気道内圧チューブが水分により閉塞している可能性があ る旨を情報提供しています。気道内圧チューブが水分で閉塞しないように、(1)「水分 が流れ込まないように気道内圧チューブの差込口が常に上になるようにすること」、 (2)「気道内圧チューブ内に水分が見られた場合には速やかに取り除くこと」と注意を 喚起しています。  2頁、2番として「加温加湿器の取扱い時の注意点について」。加温加湿器チャンバ への給水については、ガスポートから行わない旨、注意喚起をしています。3頁「繰り 返し報告されているその他の事例」といたしまして、人工呼吸器に関連した確認してい ただきたいポイントをわかりやすく示したものです。資料4については以上です。 ○外部会長  医療機器の事故事例、そしてヒヤリ・ハット事例の収集結果及び検討内容について いま説明がありました。見ていただければわかるように、圧倒的に人工呼吸器関連の 報告が相次いでいます。幸い死亡例については、ここには出ていませんが、気胸を発 生したと以前から指摘されたジャクソンリース回路が未だ現場では使用されていたと。 しかも、以前は小児用の気管カニューレとの誤接続で患者が死亡することがありまし たけれども、今回は人工鼻でしたか。思わぬ接続が可能になってそこで換気ができな くなって気胸を作ってしまったという残念な事例も報告されています。もう、対策は取ら れているわけですけれど、現場ではまだジャクソンリースがこういうふうに使われてい ることがわかった次第です。  今回の報告ならびに検討内容について委員の方々からご意見をお願いいたしま す。 ○目黒委員  今回人工呼吸器が多く、PMDAのほうからも安全性情報を出して対応をしていただ いているわけです。その辺のところは、皆さんホームページを見ていただいたりするの は非常にいいことだと思います。ただ、今回PMDAの会議でも話したのですけれども、 今回の圧チューブ取扱い、留意点については、圧チューブだけではなく、機械側につ いているフィルターも水分を含むと圧力をおかしくしてしまう。要するに圧力の変化に 追従できなかったり、圧力がかかってくると異常な値になってしまうということがあるの で、その辺の記載が少しあってほしかったという気がしています。  あとは、人工呼吸器も壊れるという前提にたって、故障する機械もありますので、壊 れてしまって動かなくなるという、あるいは煙が出たということもあるので、私たちも看 護師さんたちに説明するときに「機械は壊れるということを前提に考えてください」と話 をしているのです。壊れてしまったときの代替えができる、あるいは対応できるような 対策というのは常日頃取ってもらうような形でいてもらわないと大きな事故につながっ てしまうことになると思います。  今後とも、人工呼吸器に関してはいろいろ事例が出てくるかと思うのですけれども、 やはりその都度、いろいろ問題点を抽出して対応策を取っていかざるを得ないような 気がしています。以上です。 ○永池委員  資料4-2に対してです。PMDAからの医療安全情報で解決策として、気道内圧チュ ーブの取扱い時の留意点として正しい向きを明示していることは適切なことであると思 いますが、更に加えて言いますと、接続部位の機材の工夫によって常に正しい向きに しか接続できないというような何らかの工夫は取れるものなのでしょうか。この点につ いてお尋ねしたいと同時に、もし可能であれば次の対策としてはそうしたことを検討し ていただけないでしょうかという提案です。 ○外部会長  いまのご意見、目黒委員は実際に使われていると思うのですけれども、いかがです か。 ○目黒委員  接続の向きを明示するような形という。 ○永池委員  接続部位の工夫によって、上向きにしか接続できないような何らかの機具の工夫が できないでしょうか。難しいのでしょうか。 ○目黒委員  それについては、私が答えるというよりも、例えばこちらのほうからそういうふうな向 きにしか入らないような、要するに行政の指導なのか、あるいはメーカーに対してのこ この委員会から出た。 ○永池委員  要望ということです。 ○目黒委員  要望というものを各企業に挙げてもらうという形しかないのかなという気がしますけ れども。 ○永池委員  もし、それが可能であればそのように提案をしていただきたいという要望です。 ○事務局  ただいまの要望につきましては本日、業界団体の石川委員は欠席ですが、医療機 器の工業会のほうにそういった製品の開発ができないか申し伝えたいと思います。 ○永池委員  よろしくお願いします。 ○外部会長  いま、できればその方向で解決できればと思うのですけれども、実際にはこの図か らさっきの透明の部分のL字コネクターは自由に取り替えられるようになっているので すね。ですから、これを固定すれば可能かなと思うのですが、固定することのマイナス が生じてくるので、ここがやはり自由に取り外せるということが利点だし、ここにたぶん 人工鼻とかいろいろなものが接続可能にもなっていることもあります。ですから、そこ を固定すれば常時、上向きにというようなことも1つ不可能ではないかなと思うのです が、そのことに伴うマイナスもあるような気がします。あとは検討するということでいか がでしょうか。  ほかにいかがでしょうか。人工呼吸器の関しては、もうこれもずいぶん前から話題に なっています。そして、新聞報道でも毎年必ず出てくるのが接続外れによって患者さん が死亡したというような報告で、今年になってもかなり続いて発生しているというふうに 思っています。今回の事例に関してもそういうことはヒューマンエラーのほうで挙げら れていると思います。接続忘れ、看護師が実際にそういう仕事に携わるわけですけれ ども、気管内吸引とかいろいろな作業で接続を1回外して、それを再接続するのを忘 れてしまった。アラームが鳴っているのを切っていたとか気付かなかったという事例が 実際にはあります。  それは、ヒューマンエラーということでそちらのほうでのいろいろな検討が重ねられて いるのではないかと思いますけれども、ものとしては改善と言いましょうか難しい側面 があると思いますけれども、実際にこういう人工呼吸器というのは、本当に生命維持 装置でありまして、つけられている患者さんはそれが外れたり詰ったり、作動しなくな ってしまうともう命にかかわるというので、非常に重要な生命維持装置なのです。医療 現場では以前は集中治療室にほぼ限定されていた使用法が実際には病棟レベル、 あるいは在宅レベルで使われるようになりました。このリスクの高い医療機器がいろ いろな現場で使われるようになっただけに、こういうヒヤリ・ハットや医療事故もなかな か発生が防げない状況になっているのかと私は思っています。  今回は、特に人工鼻と加温加湿器、あるいは気道内圧チューブすべて水分の貯留 の関係で起きています。やはり、これに対する抜本的なというか、もっと基本的な解決 策はないかと私は思います。今回のこの資料4-2の2頁、3頁等を見ましても、こうい う加温加湿器のいろいろな接続に関して問題が生じやすい場所が実際にあるわけで す。しかも、水を1回1回入れなければいけない。これは、エタノールの事故が以前あ りましたけれども、そういうことは論外としましても、いつもこういうリスクを背負ってい る機器がここにあるというのは何か問題が解決しにくい状況があるのかと思っていま す。  医療現場では、例えば私たちの病院ではなるべくもう加温加湿器は使わない。ほと んどの患者さんが使わなくていい状況なのです。ただ、長期人工呼吸管理をするとか、 どうしても加湿が必要な患者さんはいますけれども、なるべく使わないですむ方向へも っていけないか。それは、人工鼻の改良でそういうことが可能になっていくのではない かと思います。  ですから、短期あるいは長期間でない患者さんについては、人工鼻を推奨するとか 何か別の方向で方向性が出てくれば少しこういうリスクも減るのではないかと私は思 っています。その辺は、学会とか厚生労働省では何か話ありますか。 ○安全使用推進室長  医療機器の使い方という部分で、医療の中での位置付けというところも当然あると 思いますので、いまの座長からのご指摘も踏まえて少し学会ともいろいろと相談しな がら対応していきたいと考えております。 ○外部会長  今回、人工呼吸器関連のヒヤリ・ハットが多かったのですけれども、これも含めてそ れ以外の件について何か委員の方からご意見ありますか。 ○望月委員  私は、医療機器は専門ではございませんので、本当に素人的に今回の事故事例、 あるいはヒヤリ・ハットの事例を拝見していて、ヒューマンエラーの理由が気になりまし た。ここはヒューマンエラーは議論するアイテムではないかもしれないのですが、ヒュ ーマンエラーの理由に、もちろん確認が不足していたというのは多いのですけれども、 それと同じくらいに知識が不足していたとか知識が誤っていたという表現が結構出て きたのですね。いまの人工呼吸器のこの取扱い時の注意という資料の4-2を見てもと ても取扱いが複雑でチェックポイントがたくさんあって、知識が不足していたとか知識 が誤ってしまう可能性はすごく秘められていると思いまして、そういうところの対策はヒ ューマンエラーのほうの部会のほうでは、何かご検討されているのですか。 ○外部会長  非常に重要なご指摘だと思うのですが。 ○安全使用推進室長  ヒューマンエラーの関係もやっているほうの事務局と少し相談していまのご指摘につ いても考えさせていただこうと思っています。ありがとうございます。 ○目黒委員  以前の会議でもいろいろお話しているのですが、いまのご指摘のとおり人工呼吸器 の場合には、パラメーターを設定するものがたくさんあったりする。そういうこともあっ て、特殊な知識もないと使えない部分もありまして、例えば私の知り得る限りではアメ リカでは特定の使うことが決められている場所で使うとか、それから、呼吸療法認定 士の方がおられまして、そういう方々が看護師さんと一緒に人工呼吸器を実際に扱う ことになっているところもあると。ですので、やはり日本のように例えば内科、外科いろ いろな病棟があるのですが、そういうところに人工呼吸器が散在して置かれている状 況では、同じような事故が繰り返し起こるのではないかということを以前も言っていま す。  ここは物の部会なので対応策としては機械側からしかものを見れないのですけれど も、そういうふうなシステム全体を含めた形での検討が必要だと以前から思っていま す。以上、伝えたいことです。 ○寺井委員   私もいまの目黒委員のご意見には賛成です。1箇所に集めるというのもずいぶん難し い時代になってきて、さまざまな病棟で人工呼吸器の患者さんがいらっしゃるというの は部会長も先ほどおっしゃっていたと思います。臨床工学士の方が、人工呼吸器を装 着している患者さんには必ずラウンドをするとか巡回をするとかということが、ずいぶ ん安全につながっていると思います。当院でも、PMDAの情報にあるように気道内圧 チューブの差込口に関する注意等は、もう数年前から臨床工学士の人が朝晩回って 注意をしたり、人工呼吸器にテプラを張ったりというようなことをしていまして、こうした インシデントが少なくなっています。そういった臨床工学士の方の人工呼吸器装着の 患者さんへの関与をもっと進めていくということを委員会でも方向性として強く示してい ただくことで変わることも多くあると思います。  もう1つ、ウォータートラップに関してです。今回も事例として挙がっていて、事務局の 方からはもう対策済みのこととしてご報告がありました。けれども、対策といってもシー ルを貼るようになったという注意喚起です。例えば回転ドアですとすぐに調査がされて 安全な回転ドアを使うようにといったような試みがされ、対策が取られると思います。 ウォータートラップも緩んだり外れたりしやすいものは、物の改善も必要ではないかと 思います。フォローしていただき、再発が続くようでありましたら、物の具体的改善を 進めていただくよう要望したいと思います。 ○外部会長  ありがとうございます。ほかに委員の方から何かコメントありますか。伊関委員が今 日初めてですけれども、何か全体として何かありますか。 ○伊関委員  私は、いま早稲田大学と一緒に、TWInsで医療工学とか医療機器の研究開発をして います。やはり何にでも使えるようになっていると緊急には使いにくいことが多い。一 旦リセットするような仕組みとか、すぐ最低限の機能を維持できるような仕組みに変え ていくとか根本的な変更を加えることをしない限り、たぶん事故は発生すると思いま す。  それから、民間の病院でいろいろとディスカッションするのですが、やはり教育、特に レスピレータの取扱いの教育を徹底しなければやはり同じヒューマンファクターに起因 するエラーが必ず起こるので、確かに機器の対策も必要なのですが、人材の教育対 策も必要ではないかと思います。  あと、特に緊急時に、人が足りないときには機器の取り扱いの未熟な看護師さんと かいる場合も当然あるので、機器取り扱いの教育のことをもっと言わないと、たぶん 機器の対策だけでコントロールしてもだめではないかといつも思っています。 ○外部会長  他の委員の方で追加発言はありますか。よろしいですか。  今回のヒヤリ・ハット事例が多く挙がりましたけれども、医薬品も医療機器も含めて ほぼ8割程度がヒューマンファクターに関するものということで、この件についてはや はりこの委員会にも是非そちらの委員会からどういう意見が出て、いまどういうふうに 動いているのだということもお示していただければというふうに思っています。せっかく、 物やこういう医薬品のほうから貴重な意見が出ているわけですから、それを厚生労働 省のほうでももう1回、こちらのほうへフィードバッックするようにしていただければと思 います。ほかによろしいですか。  それでは、検討事項1、2が終わりましたので、報告事項に入りたいと思います。そ の他ということで事務局から何かありますか。 ○事務局  事務局からは、平成21年6月24日に財団法人日本医療機能評価機構から医療事 故情報等収集事業第17回報告書が評価機構ホームページで公表されています。公 表の際は医政局総務課長及び医薬食品局安全対策課長の連名通知で都道府県始 め、関係団体等へ報告書の公表を連絡すると共に同様の事例の再発防止及び発生 の未然防止のために報告書の内容を確認の上、共有すべき医療事故情報等の内容 に留意されると共に、注意喚起を促すよう周知を依頼しています。  この第17回報告書中のヒヤリ・ハット事例記述情報等の中から、独立行政法人医 薬品医療機器総合機構が医薬品医療機器に起因する観点から専門的な評価、対策 の検討を加えた報告書を次回の部会で審議いただきたいと思います。以上です。 ○外部会長  いまの報告がありました医療機能評価機構で挙がったいろいろな事例についての 検討を次回の部会で行っていただきたいということでした。  今日、予定されていた事項については、これで終わりますけれども、そのほかに委 員の方々から何かご意見、ご発言はありますか。 ○土屋委員  今日、木村委員がいらっしゃらないのですけれども、薬局のヒヤリ・ハット報告制度 が始まって、いま少しずつ集まっているところだと思うのですけれども、いずれそれは 同じようなスタイルでここに挙がってくるとか、そういうような形なのですか。 ○安全使用推進室長  薬局のヒヤリ・ハット報告はいま積極的に取り組んでいただいているということなの ですけど、その取扱いがまだ実はまだ明確に決まっているわけではありません。少し、 今日お休みですけれども、委員とご相談させていただこうと思っています。 ○土屋委員  医療機関のヒヤリ・ハット報告が機能評価へ移って、前にPMDAでやっていたときに は、ヒヤリ・ハットも全件のデータが出ていたのが機能評価へ移ってから全件が出なく なったということがあって、薬局のヒヤリ・ハットは最初から全件をダウンロードができ ないのですけれども、公開しています。そういう意味で言うと、早い段階で見つけること ができるということがあるので、あそこのデータをどうやって利用していくかというのは 今後の公開データ、ラインリストになっていますので、その辺をうまく利用していくと早く やれるのかというような気がしますので。 ○木下委員  データを細かく見ていないのですけれども、例えば別添の4の話で、細かく見れば大 変大事な情報がたくさん入っています。例えば造影CTでは意外と、この資料は何年 間分なのか1年間分なのかわかりませんが、アナフィラキシーショックが同じ薬剤でこ んなに頻度が高く発生しています。つまり何を言いたいかと申しますと、データのまと め方なのですが、例えば造影剤検査での問題としてこの内容を分類していただけない でしょうか。さらに薬剤が漏れることは意外と多いわけでして、漏れれば問題が起こる のは当たり前の話なのですが、こういうのも整理して薬剤漏れの表題をつけて内容を まとめて欲しいと思います。  先ほどどなたかからお話がありましたけれども、どうやってデータをフィードバックさ せていくかということが重要で、私たちだけ知っていても始まりません。私はこういう委 員会に出たときに自分のところに持ち帰って、どうやって会員とか医師のみんなに伝 えるかということをいつも考えていますから、もっと整理していただきたいと思います。 もらう以上は我々、持ち帰ってすぐ使えるように使いやすくしていただきたいと思いま す。 ○外部会長  貴重なご意見ありがとうございます。よろしいですか。ほかにご意見ありますか。今 日、予定していた事項はすべて終了となります。事務局から何かありますか。 ○事務局  次回の部会開催の予定につきましては、委員の先生方の日程を調整し、ご連絡さ せていただきます。また、本日の議事録につきましては後日、送付させていただきま すので、内容のご確認をお願いいたします。なお、修正ご確認いただいた後は厚生労 働省のホームページに掲載しますので、よろしくお願いします。以上です。 ○外部会長  それでは、今日の部会を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。 照会先 医薬食品局安全対策課安全使用推進室 電話 03-5253-1111(内線2751)