09/08/19 第4回新人看護職員研修に関する検討会議事録                             第4回 新人看護職員研修に関する検討会          日時 平成21年8月19日(水)          15:00〜17:00          場所 厚生労働省17階専用第21会議室 ○島田課長補佐 それでは定刻となりましたので、ただいまより「第4回新人看護職員研修に 関する検討会」を開催いたします。委員の方々におかれましては、ご多用のところ、当検討会 にご出席いただきまして、誠にありがとうございます。まず委員の出席状況を申し上げます。 本日は、北村委員よりご欠席の連絡をいただいています。上泉委員におかれましては、少し遅 れるという連絡をいただいています。海辺委員におかれましてはご連絡がないのですが、おそ らくこちらに向かっておられるところかと思いますので、お越しいただけるものと思っていま す。また本日は、新人看護職員研修の現状について話題提供をしていただくために、株式会社 日立製作所小平記念東京日立病院の田中看護科長様にお越しいただいています。よろしくお願 いいたします。  続いて、7月24日付けで事務局に人事異動がありましたので、紹介させていただきます。い ま公務で少し遅れていますが、医政局長の阿曽沼慎司に交代しました。続いて、配付資料の確 認をします。検討会の議事次第、その下に資料1「新人看護師研修ガイドラインに関する主な 意見」、資料2「西澤委員資料」、資料3「小平記念東京日立病院田中看護科長資料」、資料4「教 育担当者研修に関する論点等について(案)」、資料5「坂本委員資料」、そして参考資料として 「新人看護職員研修に関する調査」のお願いの写しをお配りしています。以上、乱丁、落丁等 がありましたら、事務局にお申し付けください。それでは、石垣座長、議事の進行をよろしく お願いします。 ○石垣座長 皆さん、こんにちは。お暑い中お集まりいただきましてありがとうございます。 本日も活発な議論をよろしくお願いしたいと思います。議事に先立ちまして、まず資料1につ いて、事務局から説明をお願いします。 ○島田課長補佐 資料1は、「新人看護師研修ガイドラインに関する主な意見」で、前回までの 委員の方々からのご意見をガイドライン素案の枠組みに従ってまとめています。それぞれ、い ままで示している項目に沿ってまとめていますが、斜めの文字になっているところについては、 前回の検討会でいただいた意見を追加した形でまとめています。以上です。 ○石垣座長 資料1の事務局の説明について、何かご質問やご意見はありますか。このまま進 めてもよろしいですか。それでは、本日は議事次第にありますが、「規模に応じた多様な研修実 施のあり方について」、それから「教育担当者の研修について」の検討を行う予定になっていま す。まず最初に、「規模に応じた多様な研修実施のあり方について」です。第1回のこの検討会 で、小規模病院の新人看護職員研修の実態を把握する必要があるというご意見をいただきまし た。西澤委員にお願いして、新人看護職員研修に関する調査をお願いしましたが、その結果に ついて、本日西澤委員に報告していただきたいと思います。 ○西澤委員 新人看護職員研修に関する調査を行いましたので、その結果を発表したいと思い ます。資料2と、参考資料1を両方ご参照ください。この参考資料は、私の名前で全日本病院 協会の会員病院宛に調査の依頼を行った分です。1、2頁が調査表です。この調査表に、各病院 が返答してきたものをまとめたものが、資料2です。  調査期間ですが、6月15日〜26日の間です。対象は、全日本病院協会の会員病院2,277病院 に調査をしました。回答者は、各病院の看護部門長です。回答病院は、814病院ですので、用 紙を配付した病院に対する比は、35.8%です。  病院の概要ですが、規模別です。回答していただいた病院は、20〜49床が43病院、50〜99 床が189病院、100〜199床が321病院、200〜499床が227病院、500床以上が34病院、合計814 病院となっています。回答していただいた病院に対するそれぞれの割合が、次に書いてあると おり5.3、23.2等々です。また、私たちの会員病院の中で、病床ごとの数はどれだけかという ことで、参考としてその横に会員病院数と書いてありますが、私たちの会員病院で49床未満は 206病院、50〜99床は664病院等々です。その次の割合は、規模別の会員病院に対する割合で す。ですから、49床未満の病院が206病院あって、そのうちの43件が報告していただいたとい うことで20.9%、50〜99床では28.5%、100〜199床は40.7%、200〜499床は44.3%、500床 以上は45.3%の回答率となっています。  こういうことで、今回のこの調査表の規模別でいうと、いちばん多いのは100〜199床となっ ていますが、逆に会員病院の割合で見ると、小規模のほうが回答率が低く、100床未満では20% 台で、大病院になるほど回答率が高いということです。この辺りも、あとで結果を見るときの 1つの参考ではないかと思っています。大病院ほどきちんと回答してくださったということは、 こういう体制が取れていて、おそらく回答していただけなかった所はなかなか体制が取れてい ないと読めます。ですから、例えば規模の少ない所で回答をいただいた所は、そういう中でも かなり積極的に行っている所だという認識をしていただければと思っています。  次に病床区分です。一般病床のみが251病院、一般病床を含むケアミックスが378病院、一 般病床のない病院がその下の療養、精神が152病院、その他というのは不明な病院です。それ から、過去3年間に新人看護職員の採用のあった施設は、685でした。即ち、回答をいただい た814病院のうち685病院が、過去3年間に新人看護職員の採用があったということです。そ れぞれのパーセント、回答をいただいた病院に対する割合が、横に書いてあります。  2頁は問2の答えですが、新人看護職員の研修についてという内容で、いくつか質問をして います。まず「平成20年度の新規採用看護職員について教えてください」です。これは、新卒 と既卒の方、両方を聞いています。書いてありますとおり、平成20年4月1日採用が、新卒で 実務経験なしが4,223人、新卒だが実務経験ありが427人、それから4月2日以降の1年間に 採用した者が、実務経験なし387人、実務経験ありが225人となっています。  右のほうは既卒です。平成20年3月以前に卒業した者の採用は、平成20年4月1日で実務 経験なしが136人、実務経験ありが1,712人、それから4月2日以降1年間で実務経験なしが 155人、実務経験ありが6,944人ということで、明らかに4月1日採用では新卒の実務経験なし の採用が圧倒的に多くて、それ以降では実務経験があってしかも新卒ではないという人の採用 が多いというような傾向が出ています。それぞれの人数が下に書いてありまして、新卒と既卒 の割合が、37%と63%となっています。  その下は、新規採用看護職員の採用日と実務経験の有無別の割合を出しています。新卒、既 卒とも、トータルを100%とした中での割合を書いています。これを見ますと、先ほどの繰り 返しになりますが、新卒では4月1日採用の実務経験なしの人が80.3%で大多数、既卒では実 務経験ありの中途採用が77.6%と出ています。その中で、「新人看護職員」の研修対象として いる施設、要するに新人看護職員の研修を行っている施設で取りまして、下のような数字が出 ています。新卒の実務経験なしと書いた病院は74.8%で、ここがいちばん大きいということで、 そういう所ではいちばん研修をされているという資料です。逆に、実務経験がありで既卒の新 人看護職員としての研修は、15.8%と少ないということにもなっています。  その下は、すべての病院の平成20年度の新規採用看護職員数です。これは、単純に人数で割 って書いていますので、ご覧ください。これは、病院の規模が多ければ多い、少なければ少な いということで、その横に書いてありますとおり、当然99床未満では4人以下ですし、200床 になるともっとたくさんの人を採用しているという、当たり前のデータです。  次の頁では、「新人看護職員研修の実施状況」を聞きました。実施している所では、583件で 85.1%です。これは、過去3年間に新卒の採用をしている病院の中での割合です。これも規模 別に見ますと、やはり99床未満は80.5%、100〜199床は83%、200床以上は90.2%というよ うに、実施している病院は規模が多いほうが行っているというデータがあります。その下は、 期間です。これは、それぞれ3〜6カ月、7〜12カ月のところに山があります。これも、若干大 型の病院のほうが長い期間行っている傾向があるのではないかと思っています。それから体制 についてですが、プリセプター、ローテーション、チーム指導体制等は、それぞれの件数、割 合です。  次に「教育責任者を配置しているか」ですが、全体では「専任」が14.6%、「兼任」が67.6%、 「配置していない」所は17.2%です。これもやはり規模で見ますと、有意差が出ています。「専 任」では99床未満は4.1%、100〜199床未満は11.4%、200床以上は25.3%と、規模が大きい ほど専任で行っているということです。「兼任」のほうは、あまり規模別の差はないと出ていま す。それから「配置していない」では、やはり小さい所は専任、兼任でも配置していない所は 多くなっています。  病棟や外来などの各部署での担当者も、同じように聞いてみましたが、「専任」の所では99 床未満は0ということで、大型のほうに若干いるということです。これも「兼任」のほうは、 60〜74%以内ですが、これは規模での有意差があると見ています。それと「配置していない」 という所でも、小さい所ほど配置していないというような回答が出ています。  次の頁は、それぞれの「研修を企画する組織があるか」という質問をしましたが、全体では 91.2%ということで、かなりの割合であると思っています。これも、小さい所では80.5%、200 床以上では97.6%と、やはり大きい所ほどきちんとした組織があるという傾向です。それと、 「ない」という所では、99床未満が18.9%ということで、これはやはり小さい所はなかなか研 修は行っているといっても、このように組織立ててはできていないということだと思います。  次に、7)「研修内容別の研修方法」ということで、それぞれ看護職員としての必要な基本姿 勢や、臨床実践の看護技術、薬品、医療安全等を取ってみましたが、やはりこれで見ると上位 の3つ「院内全体」「配属の部署単位」「業務を通して」の3カ所に、それぞれどの項目を見て も多く集まっているなと感じています。以下は省略させていただきます。  5頁は、平成16年3月に出された厚生労働省の「新人看護職員の臨床実践能力の向上に関す る検討会報告書」を知っているかということで、69.5%、70%ぐらいは知っているということ です。これも、やはり規模での差があるなと思っています。しかしながら、なかなか小さい所 も頑張っているなと、私はもう少し低いかなと思いましたが、回答をいただいた病院では頑張 っているなと思います。それでも、規模別の差はかなりあるということです。  それから「これに基づいて行っているか」というところでは、これは知っているという中で の比率ですが、知っていて「行っている」が64%です。これは、全体的にもう少し知っている のなら使っていただいたほうがというような気がしています。これも、やはり100床未満は 49.1%しかできないと。知っていながら半分しかできていないのは、何らかの理由があるのか なと思っています。200床以上では、80%ぐらいはできているということです。  次は、「評価表があるか」です。これも、全体は87.7%、それぞれの規模でいうと82.8%、 87.8%、91%と、これも規模での差があります。それから「担当者の教育をどうしているか」で すが、これも全体で同じ傾向だと思いますが、やはり看護協会、医師会、あるいはいろいろな 企業などでの研修に出している所が半数近くあり、それプラス院内研修の組合わせということ で、やはりなかなか単独でということよりも、いろいろな機会を利用して行っているというよ うな傾向が出ています。  次は「他施設の研修に参加するなど他施設を利用した研修を行っているか」です。「行ってい る」が24.7%で、4分の1ぐらいが行っているということです。それから、「過去に行ったこと がある」が10%で、合わせると35%ぐらいになります。これも規模別では、「行っている」と いうことでは規模が大きいほど多いのですが、「過去に行ったことがある」という所では逆の傾 向がありまして、これは有意差なのかどうかは、このデータだけではわからないと思っていま す。以上が設問です。  6頁には、「困っていること、改善したいこと」ということで、自由記載欄を書きました。こ れは、主な意見の抜粋です。回答していただいた病院のほとんどがくださったので、全部貴重 な意見だと思いますが、今回特徴的だったものだけ発表させていただきます。49床未満では、 看護師が少ない。当然のことですが、全体の看護師が少ないので時間をかけられない。要する に、仕事が大変で研修まで時間を割けないという意見が非常に多かったです。それから、指導 者の不足もあります。やはり、研修担当という専任ではなかなか置けないという事情があるの で、このようなものが出ているのではないかと思います。  99床未満も、ある程度似た内容ですが、やはり人員不足や仕事が忙しいのでできないという ことで、似たような意見が書いてあります。少し規模が上がると、きちんとしたガイドライン が欲しいとか、プログラムがないということで、行うが何らかの環境整備のほうに少し目が向 くようになっているのかなと思っています。100〜199床は、さらに進みまして、マニュアルづ くりやプログラムにいま取り組んでいるがなかなかできないという辺りで、より積極性が見ら れているかと思います。ただし、指導者側の看護レベルの問題等々も書いてあります。  7頁に移りますが、200〜499床は、こちらのほうはかなり体制が取れているが、それでもや はり人員は不足で、これはすべての規模に共通しています。一方では、いろいろな制度や研修 に対する補助のほうをさらに要求している意見が多かったです。500床以上も大体同じですが、 7対1を取るための人員確保に支障があるという辺りで、これはたしか研修を病棟以外で行っ たときに時間内にカウントできないということで、診療報酬の算定上の問題を書いている病院 が結構ありました。これは中医協のほうの議論で、少し緩めていただければもっといいのでは ないかと思っています。  あとは、共通して、やはり新人に教育・指導するための人的余裕がないことと、片方では新 人看護職員の接遇がされていないというような問題点、あるいは卒前教育というか基礎教育に 対する不満といった辺りも、意見が見られました。共通して言いますと、指導者の質と量の問 題、それから新人看護職員の問題、もう1つは環境整備、設備や資金等に対する要望の3つに 分けられると思っています。  全体として私の予想以上に、小さい病院が頑張っているなと思いました。ただ、これは非常 に大まかなもので内容はわからないので、行っているけれども、大きい所と同じように行って いるとは思いませんので、その辺りは今後もう少しきちんとした調査なり議論なりが必要だと 考えています。以上です。 ○石垣座長 ありがとうございました。議論は、このあとの田中看護科長の発表が終わってか らしていただきます。ただいまの発表についての質問がありましたらお受けしたいのですが、 いかがですか。それでは、田中科長の発表が終わったあとに、質問や議論を含めて行っていき たいと思います。本日は、小平記念東京日立病院看護局の責任者でいらっしゃいます、田中看 護科長様にお出でいただきました。新人看護師の少ない施設の新人看護師研修の現状と課題に ついて、話題提供をしていただきたいと思います。どうぞ、よろしくお願いします。 ○田中参考人 ご紹介いただきました田中です。よろしくお願いします。小平記念東京日立病 院における新人看護師研修の現状と課題について、ご報告します。  病院の概要です。当院は、日立製作所の企業立病院ですが、日立関係者以外にも開かれた病 院であり、受診者の約8割は地域住民の方です。近隣には、大学病院が集中した地域にありま す。小規模ながら、11診療科を標榜する急性期病院で、東京都二次救急指定機関にもなってい ます。病床数は126床で、外来患者数は1日約500名です。職員226名のうち、看護職員は96 名です。平均職員の平均年齢は35歳、平均経験年数は10年、平均在職年数は4年です。  次に、ここ数年の新人看護師の採用状況をご説明します。2005年度までは、毎年2〜3名の 新人看護師を採用していましたが、2006年度から年間0〜1名に減少しました。これは、当院 を希望する新人看護師が減ったこと、及び指導する看護師の不足により受入れが困難になった ことの2点が、主な原因と考えています。  次に、新人看護師の教育体制についてご説明します。当院は、新人看護師の到達目標を、「基 本的看護知識・技術・態度が安全・確実に実施できること」と「チーム医療を理解し、看護チ ームの一員としての役割を認識できること」の2点を、1年間で習得することを目標にしてい ます。また、新人の支援体制として、プリセプターシップ制を導入しています。さらに、教育 委員会が中心になり、研修の企画運営を行っています。しかし、当院規模の病院では、専任の 教育担当者が設けられないため、看護師長1名と主任看護師5名で業務を兼任しながら、研修 の企画運営を行っています。  次に、新人看護師研修の具体的内容についてご説明します。新人研修の詳細な年間スケジュ ールは最後の頁にありますので、お手元の資料をご覧ください。新人看護師対象の研修は、院 内研修と院外研修を行っています。院内研修として、プリセプターが中心のOJTと、教育委員 会が中心の集合教育があります。教育委員会が行う院内研修は、配付資料の2「新人看護師の 院内・院外研修について」の項目をご覧ください。  以前は看護記録と基本的看護技術の項目は、入職時の集合教育で行っていましたが、2008年 度以降、入職者が1人のため、所属部署に委譲しています。入職後3〜6カ月目の研修は、看護 師としての基本的態度の習得を目標として、人への関心に関する研修を行っています。院外研 修は、より専門的知識の習得を図るため、看護協会などで企画した研修のほかに、文京分会、 近隣の大学病院などの研修に積極的な参加を促しています。こうした院外研修と院内研修の選 別基準としては、直接患者様に接する部分は、院内のOJTを通じて行います。そのほかに、当 院で新人看護師の成長に必要な研修は、教育委員会が中心になり実施しています。  これらの新人看護師研修の評価方法は、評価リストとパーソナルファイルにより行っていま す。新人看護師に対しては、評価リストを用いて看護技術や知識の習得をチェックしています。 しかし、全項目を網羅するには範囲が広く、習得できない項目も多くあり、現在見直しを行っ ているところです。  また、看護職員全員に対する評価方法として、パーソナルファイルがあります。これは当院 独自のもので、在職中のキャリアファイルとなります。特徴として、院外研修に参加したとき の資料やレポートのファイリングや、態度評価表・能力評価表、目標管理といったものを1冊 のファイルで自己管理し、上長との面接時に利用しています。  以上で説明しました当院の新人看護師研修の問題点は、以下のようなことが挙げられます。1 つ目は、ここ数年、新人看護師の入職が少なく、教育委員会で企画立案した院内教育プログラ ムの研修が実施できないことです。2つ目は、当院で行っている院内教育体制が、新人看護師 の成長能力に合っているのか、他の施設と比較できていないことです。本当にこの教育プログ ラムで良いのか、求めるスピードが速すぎるのかなどの検証ができていません。今年度4月に 入職した新人看護師は、単位と比べて負担が大きいという理由で退職しました。  3つ目は、専任の教育担当者がいないことです。当院の規模では、専任の教育担当者が設置 できないため、日常業務を行いながら、教育委員の仕事を行っています。これは、看護スタッ フにとって大きな負担となっています。4つ目は、教育を企画運営する人に対する研修が、あ まりないことです。教育指導者に対する教育の必要性は感じていても、実際は十分な研修がな されていません。このため、教育担当スタッフはそれぞれ工夫しながら、独学で対応していま す。これら3、4の問題によるスタッフへの過大な負担なため、「必ずしも新人看護師を受入れ なくてもよいのではないか」という意見も出ています。  こうした当院の現状から、今後検討会に期待することは3つあります。1つ目は、標準的な 研修プログラムや指導要領の策定です。標準的研修プログラムがあると、それに基づいて教育 プログラムを作成し、実施することができます。また、指導する側にとって指導要領があると、 それを拠り所として指導できるため、精神的安心に繋がっていくと思います。ただ、標準的研 修プログラムの内容があまりにも高度で期間が長ければ、当院のような規模の病院では実施で きなくなる恐れがあります。その解決の1つの手段として、新人看護師研修を同規模病院と共 同で実施することが考えられます。同規模の病院が共同で研修を行うことで、1病院の負担の 軽減が期待でき、院内教育体制の評価や、院内教育プログラムの検証にも繋がっていくと思い ます。  さらに、研修の一部を教育プログラムが確立している大学病院などに協力してもらうことに より、より一層教育担当者の負担の軽減に繋がると思います。  3つ目は、教育担当者に対する教育、研修の場を増やしてほしいことです。現在は、日本看 護協会が行っている3日間の研修に参加しているのみです。新人を組織全体で育てるためには、 指導者側の能力向上が必要です。そのため、指導者が参加する研修を計画的に実施していただ きたいと思います。以上で、当院における新人看護師研修についての報告を終了させていただ きます。ご静聴ありがとうございました。 ○石垣座長 ありがとうございました。ただいまの田中看護科長のご発表について、ご質問ご ざいますか。 ○福井委員 質問ですが、教育を企画運営する人の研修は看護協会が行っているけれど、さら に必要という意味ですか。それとも違った種類のものが必要という意味でしょうか。 ○田中参考人 例えばいま3日間の研修があるのですが、それではやはり足りなくて、例えば 段階的に何日間か行ってほしいということです。 ○福井委員 それではいまやっているものは、あまり計画的ではない。 ○田中参考人 いや、大まかで3日間ではとても習得できないのではないかということです。 ○石垣座長 よろしいですか。 ○坂本委員 4頁のいちばん上なのですが、院外研修で2009年度に文京分会、近隣の大学病院 の企画する研修に参加というのは、どういうシステムで参加されたのですか。 ○田中参考人 システム。 ○坂本委員 どういうお互いの関係性というか。 ○田中参考人 文京分会は、文京区にうちが位置しているもので、そこのほうから案内されて 出てくるものと、大学病院の研修はファックスでいろいろ回ってくるのですが、それをみんな に回覧して、プリセプターとか、看護師長とかと検討して、これは出たほうがいいということ で。 ○坂本委員 それは、系統的に出たほうがいいということではなくて、来たものについては、 これは出たほうがいいと選んでいるわけですか。 ○田中参考人 はい、そうです。 ○坂本委員 わかりました。 ○石垣座長 ほかにございますか。2頁で新人看護師の採用状況というのがありますが、定着 なのですけれども、例えば2004、2005年に合計して5名の方を採用しておられます。この方た ちは、定着しておられますか。 ○田中参考人 内訳は育児・産休中の人、退職した方もいて、半分半分ぐらいです。 ○石垣座長 ありがとうございました。お2人の先生方からのご報告で、新人看護師が少ない 施設でも、何らかの研修は実施されているということがわかりました。しかし採用が少ないた めに、研修が企画されにくいこと、人出不足で指導者の確保や体制づくりが十分できないこと、 そのような現状をご発表いただきましたが、いまのお二方の先生方のご発表で、こういう状況 の中で、具体的にどう工夫すると小規模の施設においても研修が行えるのかということ、研修 をやっておられるところでもそれを強化するというのができるのか。そしてこれらをガイドラ インに示すにはどのようにしたらいいのかということをご議論いただきたいと思いますが、よ ろしくお願いいたします。 ○羽生田委員 西澤委員の発表でも、アンケート調査に回答されている所は、研修をやってい る割合が高いということがありまして、特に小規模ほどきちっとした研修がされていない。新 人が入って何もしないということはたぶんあり得ないだろうと思うのですけれども、システマ ティックにきちっとやられているかというのは、規模が大きい所ほど人材も豊富ですからでき ると思うのですけれども。田中参考人の日立病院についても、規模の割にはきちっとやられて いると思いましたが、最低という言い方はおかしいのですが、卒業して約5万人出た人たち、 全員が受けられるためにはどこまでどうあるべきかというのがまず最低ラインとしてあるべき であって、その後病院の規模とか、本人のやる気の問題も含めて、その上にどう積み上げてい くかということになると思うのです。  もう1つは3月の看護国家試験に合格しても、実際に看護業務ができるのは免許が来てから ということですから、約1カ月後なのです。そうしなければ看護業務ができませんから、それ までの間にできること、それまでの間にやることというのをまず最低ラインとして抑えなけれ ばいけないだろうと思います。それにはこの日立にもありますけれども、医療安全や看護倫理 であるとか、あるいは接偶であるとか、学校のときにもちろん基礎教育でやられたことを、い よいよ資格を取ってやる前に押えてやる、もう一度改めて教育をする。これは集合教育という 形で座学でいいと思うのです。それが済んだ後に免許がきて、初めて看護業務に就くわけです から、それからスタートラインと考えて、個々の研修、到達目標をどう掲げるか。この委員会 の最初のときにも申し上げたのですが、きちっとしたシステムでできる病院というのは、ある 程度の規模があって、人材が豊富でなければできない。新人が入るところというのは、病院だ けではありませんから、診療所もあれば施設もある。そういう人たちが自分でどういう目標を 持ってやれるか、それをこういう形で示すということが、まずこの委員会で必要だろうと思っ ています。  もう1つは、それについてはいわゆる看護基礎教育のときに、わざわざ到達目標を作ってや る。あれは学生だからここまでという、1から4段階ぐらいの到達目標があって、知識として 理解できるという所から、実際に1人でできるというところまであるわけですよね。それを学 生だからここまででいいという到達目標ですから、それをそのまま継続して看護師の免許を取 ったから1人で実施できるという最終目標にどれだけ伸ばしていけるか、到達度を上げていけ るかという継続性のほうが必要だろうということで、研修手帳というのは、いまの日立病院で もありましたが、卒業した全員にその研修手帳が渡って、到達目標が学生のときからの連続で あって、資格を取った上でどこまで自分で上げていけるか。  私は資格というのは周りがどうこう言うよりは、自分が自覚をしてどこまで伸ばしていくか という気持ちがなければ、どう研修システムを組んでやっても無理だと思うのです。ですから 自分でそういうものをもらって、この到達目標をどこまで自分で到達していこうかというとこ ろを一つひとつチェックしながら自己評価を中心にやって、それを周りの研修を担当する人た ちや看護部長がチェックをしていくということで、そうすると教育から連続しての資格を取っ てからの研修につながる。  もう1つは病院としてのきちっとした新人教育というものが、その到達目標がシステマティ ックでなくても、その診療所ではこれしかできないけれども、ここは別のところで、その地域 で、いま文京区にあるというお話でしたが、そういったものに自分から進んでそこへ行って、 自分で覚えたということをチェックしていくというようなシステムで、全員がまず受けられる 体制をきちんとしていただく。  そしてその上で、病院によってはそれ以上のところをどうやって積み上げていくかというと ころの2段階か3段階でもいいのですが、そういうふうにしていかないと、全員が同じスター トラインの目標を持てないのではないかという心配をしてしまうのです。立派なところはきち っと立派にやっていますので、そういうものはもちろん、今後のカリキュラムの中での参考と はしますが、まず新人が、どんなところでも自分できちっとした到達目標を持ってやれるかと いうところに、どれだけ力を貸して上げられるかというところがスタートラインではないかな と思っていますので、私の意見ですがよろしくお願いします。 ○石垣座長 ありがとうございました。いかがでしょうか。 ○海辺委員 私はデータというか、西澤先生がやってくださったアンケートに基づいての発言 です。まずこちらで見させていただいて、非常に単純計算なのですが、会員病院で20〜49床の ところが206病院あって、アンケートに答えてくださった所だからざっくりした数字になりま すが、最後のほうに、平均して、新人看護職員の採用数が1.1ということだから、大体206施 設だと200人ちょっとということで、そのように計算していくと、50〜99床のところでは、新 人看護師が2,000弱ぐらい199の所で大体3,000人弱。それ以上の次のクラスのところだと 5,700人ぐらいで、500床以上の所が大体1,300人というような計算ができまして、そうすると、 49床以下の所は新人が非常に少ないところになるし、やはり教育を担当する人員の確保の点で 非常に難しいだろうと考えられますので、まずそこには新人さんはとりあえず最初の1年はい かないという選択肢があってもいいのかなと思いました。  あとはそれ以上の規模の50床以上のところは、相当数の方を確保されて、一生懸命試行錯誤 をされている現状があるということで、先ほどの田中先生のご発表を聞いていると、問題・課 題と解決方法はすべておっしゃっているなと感じました。ですので、すべてを一つの病院でや るということではなく、同じぐらいの規模の病院が連携して、ここの部分はうちの病院は得意 ですから見ますし、この部分はお宅の病院でお願いしますみたいなことをしていかれるような システムを、どうやってここで作っていかれるかというお話ができると、だいぶ問題解決にな るのかなと伺ったのですが。かなり素人が外側から見ただけの話ですけれど。 ○石垣座長 ありがとうございます。 ○坂本委員 日立病院のお話を伺って、西澤委員のデータを見ると、やはり新人研修だけを単 独で動かすのではなくて、羽生田委員もおっしゃられたように、私は全部つながっていかせる というか、それが必要で、大病院だから良い研修が受けられるということはもちろんあるかも わかりませんが、すべてが根拠に基づいて、どうして新人が段階的にこうやっているのだとい うことが、全部わかるということが、まず必要かなと思います。というのは、西澤委員が出さ れた内容、意見などを見ていると、やはりその支えになるものがほしいというようなところが あったり、それを作ることによって人出不足を少しカバーできると思うのです。  そういう意味では、基礎教育の実地実習から、到達目標、羽生田委員が言われたように、い ま103項目がありますが、ある程度1年だったら半年ぐらいはどこまでを絞るかとか、そのあ とは自分でノートを持たせて、自分でどのようにそれを獲得していくかというような、段階的 な、全部つながっているようなものを作られれば、どこで働いていようが理解ができると思う のです。教える人もたしかに理解しないと、自分がいつもバラバラなことをやっているという イメージがすごくあって、それは大変不安になるので、このガイドラインに期待したいことは、 全部がつながっているということが見えるような、それを是非作りたいなと思います。 ○石垣座長 そうですね。今日はまさしくその具体的な内容をご議論いただきたいと思ってお ります。考え方としては、いま羽生田委員や坂本委員がおっしゃったようなことが基本になる と思います。 ○坂本委員 ちょっともう1つ。病院を見ていると、ものすごく教えている病院もあるのです が、私はいろいろな先生と話をしていると、すべてを教える、経験させるということに意味が あるのかどうかというのがあって、それが本当に必要なのかということを、根拠を持って、そ れを絞っていくというのが、私は重要であって、いま往々にしてもういろいろなことを経験さ せるということの動きもありますので、それに拍車をかけるようなガイドラインではなくて、 根本的なものを押さえていくというようなやり方であればいいのではないでしょうか。 ○石垣座長 はい、何を教えればどんなことが身に付けば、ほかのことに応用できるかという、 そこをはっきりさせるというのは、非常に大事なことだと思います。ガイドラインにはすべて を盛り込むことはできませんので。 ○上泉委員 人員不足というのがこれは規模に限らず、どういうところでもあるのかなと思い ました。特に4月から新採用者が入ったにしても、即入院基本料の看護職の算定数の中に組み 込まれてしまうということがあるものですから、診療報酬上の何かしらの猶予対策、もしくは 異動だとか退職の3月ではなく、もう少しあとの5月か6月にするような、4月5月の2カ月ぐ らいでもよろしいかと思いますが、その間のプラスで人員を確保するような、何かしら対策が 必要ではないだろうかと思います。  人材については、協会がやっているような研修を活用するという方策があるのかなと思うの ですが、何かしら人員確保の対策が必要ではないかと思います。 ○石垣座長 その問題についてはたぶん診療報酬のほうだと思いますが、現場としては切実な 願いだと思います。また中医協に関係のある先生方に頑張っていただいて、実態を是非聞きた いと思います。いまの小規模病院の規模というのも大事ですが、きっと採用人数に関係がある のだと思います。必ずしも中規模病院がたくさん新人を採用しているのかというと、そうでは ない現状もありますので、少ない新人を採用した中で、効果的な研修をする。いわゆる新人看 護研修の均てん化と申しましょうか、どこに就職してもある程度のレベルの教育が受けられる という。先ほど坂本委員がおっしゃいましたように、すべてを網羅するわけにはいきませんの で、何をどのようにこのガイドラインに盛り込むことが効果的で皆さんのお役に立つのかとい うことですが。 ○村上委員 いま田中参考人からお話を伺って、その病院にとって1人が大切な新人が、早く に辞める理由が、たぶん耐えられない何か、いろいろな理由があると思うのですが、職務に耐 えられない何かがあるのだと。たぶんガイドラインの中に盛り込むものとしては、案外緊急的、 安全、注射とか、技術的なことについては結構学ぶものがそこそこの施設でも作っていると思 うのですが、問題である耐えられないというところは、たぶん看護の基本的なケアのところが 1人でできないために、教えてもらえない、多忙、教える指導者がいないということが、たぶ ん現実にあるのではないかなと、ちょっと想像します。 ○田中参考人 この4月に入職された人は、1年間に一人立ちできるということを目標におい ているので、3カ月目に、何も大きな問題がない患者さん2人と、予定入院の患者さんのアナ ムネを取るということを、その看護婦とプリセプターと一緒にやっていたのですが、一緒に卒 業したほかの施設の人は1人しか受持ちを持たないのに、自分のところではそれが3人という のは早すぎるのではないかというように言われ、ただ、ほかのところはどうなのかというのは、 私どものところでは把握できていなかった。受け持ちを1人にするということは、1年間での 一人立ちというのは無理だということで、本人にうちではそういうことはできないということ の話をして、退職という形にはなってしまったのですが。 ○坂本委員 それって何かすべて自分がある意味では楽をしてやっていくというのを良しとす る文化ですよね。 ○田中参考人 そうですね。 ○坂本委員 だから3人受け持ったら嬉しいというように、よくできたというように思ってい かなければいけないのに、何で3人のほうは損で1人のほうが得だという発想をするのだろう。 ○田中参考人 その新人の方ですか。 ○坂本委員 そういう傾向があるのですよ。 ○田中参考人 その子だけかもしれないのですが、自分が基準で、周りの人やそのためにプリ セプターとか一緒にかかわっている人が、自分の仕事を抱えながら仕事をしていて、彼女に教 えて、そのあと自分の仕事をして終わって帰るのが毎日9時、10時なのですよ。そういうこと をさておいて、自分は大変というのを主張されてしまい、現場のスタッフは私たちがやってい たことは何だったのだろうかということをすごく言っている。私はどっちを取るといったら、 やはり現場にいる人たちを取りたいという思いがあって、その人たちの大変さというのもすご くよくわかるので、その子だけが問題なのか、私にはちょっとわからなかったのですが。 ○坂本委員 私はこの教育が間違っていると思うのです。というのは、いちばん最初に福井先 生と話したときに、ドクターは病棟に行ってやりすぎて困っている。ナースはできないできな いとビビッている。どこが違うのだろうという話をしました。おおくのことを 短期間に詰め込みすぎているのではないかという気がしているのです。新人教育のところは、 少し絞って、これだけはやったという達成感を味わせるようにしていかないといけないのかな という気がするのですが、それはいかがですか。 ○田中参考人 そうですね。少しずつ少しずつというのは、本人と常に話をしながら、毎日振 り返りをしながら、ではどうしようかという話をして、決してこちらサイド本位で進めたわけ ではないのですが、かなり辛かったというので、最後には母親が出てこられてしまって、どう しようもないので、本人がいちばん望むようにということと、私たちがここまではできるけれ どもこれ以上は無理だという話合いの元で退職という形になったのですが。 ○石垣座長 はい、いまの事例は1人のナースの話ではありますが、現場にいらっしゃる方は、 かなりそうだなという実感もおありだと思います。新人看護師の基礎教育を終えた人たちの背 景ということもいまのお一人の人に代表されるような、側面もありますので、坂本委員のおっ しゃったように、ゆっくりゆっくりとできるところと、少しお尻を叩かなければいけないこと もあると思うのです。いずれにしても、先ほどおっしゃってくださった達成感をどうやって維 持しながら育てていけるかということを、どのように盛り込んだらいいのでしょう。 ○村上委員 質問させていただいたのですが、いま1人の採用で1人の方が退職されたという 状況のお話を聞いたのですが、例えば複数、10人とか20人で入るところでも、それと同じよ うな状況で退職をしていくわけです。これはたぶん、これから教える人にどのような教育をし なければいけないかということと関連してくるのですが、いまどきの若者の気質とよく言われ るのですが、どんな時代でもそれはあって、学校で学んだ教育が継続ができない環境、それが 耐えられない。実習したところにいけばそれはそれで、そうはいかないので、いろいろな所に 就職するのですが、それが現状だと思うのです。  早いところで8月ぐらいには、かなり辞めるという実状もありますので、そういうことから、 ガイドラインを作るときに、ガイドラインがモデルとしてあって、指導者が上手にそれを使い ながら、特に患者さんを何名持たすかという前に、いま医療を取り巻く環境がどんなものかと いうことも、本当は動向のようなものも入れて教えていかないと、学生はほとんど見えていな いというのが現状なのです。特に高度な医療環境は見えていないのです。だんだんひどくなっ ているかなと思うので、指導者側の研修もどうあるべきかということを、ちょっと考えるべき ではないかなと思います。 ○石垣座長 教育担当者に関しては、また後ほど話したいと思います。 ○庄野委員 つながりというところが非常に大きなポイントかなと思うのですが、ガイドライ ンが出来上がったというところで、予測なのですが、例えばそれを新人本人にも示す。もちろ ん臨床側、指導者側にも示す。もう1つ大事なのは、いま皆さんのご意見を伺っていて、学生 さんにも示すと。そういうところで、つながりという部分が、いきなり新人になったときにガ イドラインでこうだというのではなくて、学生のときから示すというのが非常に大事なのかな と思いました。というのは、先ほど田中先生の新人さんのところと、当院もよく似た現象がも ちろんありまして、30人ぐらいの新人が、1年間ローテーションしながら研修を進めるのです が、最近、就職説明会に大学や学校に出向いたときに、臨床研修を徳島日赤はしていますよね という質問が学生さんのほうからあるのですが、では受持ち患者を1年間持たなくていいので すよねという質問がよくございます。もちろん持ちます。それは1人ですよねという意見も中 にはあるのですが、そこで1人であれば、学生実習の基礎の段階で、それと一緒ですよねと。  5月になればもちろん免許がありますので、免許を持って臨床研修をするということは、ベ ッドサイドで患者さんを受け持ちながら、1対1の学生のときの免許がない時点とは全然違う と。そこで免許が持ったからできる臨床研修であってというところ、それが1名という発想が、 非常に、いまどの就職説明会に行っても1名と。そこの部分はつながりという部分にかえって くるのですが、大学の基礎教育の時点から、1名ではないということは十分に理解してもらっ て入ってくることが大事かと思っています。 ○石垣座長 ご存じかと思いますが、この4月から始まった新カリキュラムは、学生のときも 複数の患者を受け持たせること、また患者の24時間の生活を見る体験をすることが望ましいと か、学内において侵襲の大きい技術のシミュレーションや、機械を導入して実際に操作するこ とが望ましいというのが盛り込まれました。この新しいカリキュラムがどのような成果を出す かも、今後見ておかなければいけないところです。つながりというのは大事なことだと思いま す。 ○福井委員 いまほとんどの大学では1人の患者しか受け持ちませんが、複数の患者を受け持 つのが望ましいというのは、同時期に1人という意味ですか、卒業までに1人ということです か。 ○石垣座長 1回の実習に1人です。 ○福井委員 何回実習するのですか。 ○石垣座長 例えば成人、小児とか。成人でも、内科、外科といくのだと思います。3週間の 実習で1人の患者を受け持つのは普通だと思いますが、いかがでしょうか。 ○上泉委員 1日実習に出ますと、その日は受け持ちは1人というのがほとんどかと思います。 ○福井委員 1人だけ受け持っていたら暇で仕方ないのではないですか。 ○上泉委員 その点は複数を受け持つことが始まっていますし、夜勤の実習も始まっています。 ○西澤委員 新人看護師の研修よりも、基礎教育の問題になってきたと思います。あまりそち らにいってもと思いますが、基礎教育のほうに問題があれば、こちらでいくら作っても意味が ないということなので、ここでは当然のことながら新人看護職員の研修を議論しますが、同時 に基礎教育にも何らかのメッセージを出すことは是非やっていただきたいと思います。  いま医療崩壊で、特に病院の勤務医が疲弊してやめていきます。これもある意味で似たよう な状況があって、いまの若者の気質というのがあります。いままで甘やかされてたのが急に急 性期の病院に行って働いたら、パニックに陥るのです。  看護師を見ていると同じで、学生時代に甘やかされて、現場に来た途端に何だこれはという ことでみんな逃げて、そうすると、いまの急性期の病院から新人看護師がいなくなって、中堅 だけになって、疲弊してやめていくということで、いまの医師の状態と同じことが起きるので はないかと懸念します。そういう意味では、ここでトータル的なことを見直さないといけない と思います。今日は大学の先生方もいらっしゃるので、その辺りは現場の方々と協力して、何 とか守っていくという形で、その中の一部として、新人研修が大事だという位置づけで議論し たいと思いました。 ○石垣座長 いま厚生労働省のほかの検討会でも、基礎教育について取り組んでいると思いま すが、前回の検討会でその一部の資料が、技術について、基礎教育ではここまで到達、卒後1 年ではここまでというような、つながりがよく見える表を出していただきました。これも1つ の参考になります。いま基礎教育もいろいろと頑張っていると思います。 ○野村看護課長 いま座長からお話があったのは、看護の基礎教育の内容と方法に関する検討 会も同時平行で走っています。前回に新人と基礎教育のつながりの表を出しましたが、同じも のを教育内容のほうの検討会でも出して、新人とのつながりを意識した上で、基礎教育の議論 もしてもらうこととしています。  どこかの時点で、そのつなぎを具体的に議論したほうがいいということがありましたら、そ ういった場も考えたいと思いますし、例えば石垣座長に教育内容の検討会にご出席いただいて、 こちらの意向を伝えてもらうとか、いろいろな形が取れるかと思います。  教育内容の検討会はいまワーキンググループに入って、内容を詰めようというところです。 連携を取りながらやっていただければと思います。 ○上泉委員 新人教育では、到達目標を明確に示して、新卒者そのものが自分でゴールを設定 して、自分で規律してそこに向かってやっていくことを周りが支援していかないと、教育の研 修の方法は様々にあっていいと思うので、到達目標と、何をいつの時点で獲得しなければいけ ないかを明確に示すこと、それがいちばん中心になるのではないかと思います。 ○石垣座長 到達目標の設定についてはこれまでもご意見をいただいておりますが、お2人の ご報告を踏まえますと、例えば採用人数が1人ですと、ほかに話し合ったり、比較したり悩み を話したりする人がいないということは、新人にとっては辛い状況なのではないかということ が考えられます。そうすると、先ほどご提案のあった多施設間、同じような施設間でするとか、 研修がきちんと行われるところで一時期研修をさせてもらうことも、1つの方法としてご提案 されました。それをするときに、どのような工夫、つながり、たまたま文京区というのはある かもしれませんが、そのようなものを持っているところはそう多くはないかもしれません。多 施設やほかの研修機関を活用して研修を行うことに対して、ご意見はございますか。 ○庄野委員 集合教育に関しては可能な部分が大きいという感じはしています。徳島県でも数 年前から、主立った各施設で1年間でしている教育研修を県が取りまとめて、それを診療所も 含めた県下すべての病院に、こういう研修がどこそこであるということをファックスをするの です。個人医院の方もそれを見て、例えば新人の集合研修であれば、いついつ徳島日赤へ行き たいとか、そのようなシステムがあります。  5年ぐらいは経っているのですが、あまり利用されない状況がありまして、個々の施設、そ の方の希望するものがないとか、受入施設側の人数制限、平日であれば休めない、特に規模の 小さいところは休めない、日時的なものに制限があって、利用しにくい部分はあるのですが、 システムとしてはあります。 ○上泉委員 地域支援病院が地域の中核として周辺の病院の人たちに声を掛けて、さまざまな 研修をやっていることはあるのですが、その辺をもう少しシステマチックにしていく方法はあ るのかなと思います。 ○石垣座長 地域支援病院ですか。 ○上泉委員 地域中核病院ですね。どこかに研修に行くといっても、どのぐらいのエリアでそ のシステムを作ったらいいのかというのが問題になってくると思います。行くまでに時間がか かったりすると、これもなかなか実現できないと思います。2次医療圏では大きすぎるのかと か、何かしらエリアを限定して、そこの中核病院を中心にした研修のシステムを作ると。 ○福井委員 私もそれには賛成で、聖路加国際病院でもそれに近いことを行っています。患者 をやり取りする、ほかの病院や開業している先生のところの看護部の方々と一緒にミーティン グをしたり、場合によっては聖路加に勉強に来てもらったりしています。実際に患者をやり取 りするという関係の中で、複数の医療機関が研修のような形のものを作れば、いろいろな意味 でモチベーションが上がるのではないかと思います。 ○坂本委員 研修システムの例としては、ガイドラインに書き込めますよね。 ○石垣座長 そういう方法もあるということは当然書き込めると思います。 ○坂本委員 私はそれでいいと思います。  先ほど3人を受け持つのがどうだという話がありましたが、ここはすごく気になるところで す。新人も教える人たちも何か支えがないで、不安なのだとも思えます。つなぐものというの は、口頭でつなぐだけではなくて、到達目標は明確にすることもつなぐことだと思います。  もう1つつなぐものとしては、自分自身をつなぐものがないと思うのです。教えられること ばかりでよくわからない、そうなれば全体的には統合されづらい。4頁の日立病院のパーソナ ルファイルというのは大変いいと思います。このようなものをもって、自己とのつなぎです。 自分はいままでどこまでやれたのか、この病院はこういうタイプだからここについては弱いけ れども、看護協会などでやるならそこに行っていいという上司からの指導があれば、そういう ところに行って研修をうけ、終了書をもらってくるとか、そのようなもので、自分の心の不安 定さをきちんと支えるものをお互いに作っていくと、加点制というか一つひとつプラスしてい くことに喜びを見出すようなやり方を意図的にやることが重要だと思います。遭遇することが 不安ということだと、いくら作ってもうまくいかないような気がするのです。だから、そこを うまく考えて今度のガイドラインに盛り込めればいいと思います。 ○石垣座長 以前に北村委員からポートフォリオの話が出ました。そのような考え方もあると いうことをご提案いただきましたが、そのようなものですね。個人個人のポートフォリオです ね。 ○羽生田委員 医師の場合には卒後研修という形で、地元で研修をするのがいちばん多いので すが、日本中にどのような研修会があると通知を出しているわけですから、自分の県に限らず に、この人の話が聞きたいといえば、そちらに出かけていくというシステムになっているので、 そのような面としてのつながりはできているのです。  看護師の新人研修として、いちばん中心になるのは、自分の出た学校です。その地域に就職 すれば、それが使えるのですが、いろいろな地域でつながりを作っていく中心であるのは、看 護学校が使っている実習施設である病院です。これが中心になっていくと思います。その辺で、 いま言われたような到達目標を、ここではできないけれども、こっちだったらできるというも のを広げていけば、かなりその辺は連携が取れていくのではないかと思います。  もう1つは、卒業した時点で、すでに全員のレベルがばらばらだということです。この人は ここまでできる、この人はここまでできないというレベルがばらばらですので、自分自身のス タートラインがどこかをまず把握する、それは学生時代の教育で、どこまで自分ができている のかの自己評価をして、ここは得意、ここは全然できない、その評価によって、いいところは 伸ばしてやるし、駄目なところは研修して到達度を上げていこうと。そのような形で、それぞ れの人がスタートラインが違うと思っています。その辺をどうフォローできるかが大切かと思 います。個々のモチベーションを上げてやる、それをどれだけフォローできるかが主になるの かなと思っています。 ○石垣座長 ご発表の中にも、小規模の施設でも研修が行われるようにするというのはありま したが、何か目安になるものがほしいということと、そういうものがあれば人員不足の助けに なるのではないか。それから、多施設で合同でするという提案をいくつかいただきました。到 達目標に関しては、これからまた議論を深めていかなければならないのですが、平成16年3月 に出した到達目標と指導指針の概略ではありますが、今回これをある程度参考にしながら、こ れをどこででもやれるような具体的なものにしていく。考え方の方針としては、これが参考に なると思います。  到達目標をどこに置くかは、これから議論を深めていかなければいけませんが、まだまだご 意見はあると思いますが、時間が限られています。この件に関してのご意見やご提案を事務局 にお出しいただければ、ありがたく思います。今日はもう1つ議論があるので、そちらに移ら せて頂きます。  次の「教育担当者研修について」です。事務局から資料の説明をお願いします。 ○島田課長補佐 資料4です。「教育担当者研修に関する論点等について(案)」としています。 まず、今回教育担当者研修をご議論いただくに当たり、教育担当者の定義を確認したいと思い まして、1「教育担当者とは」とまとめています。この検討会の第2回で用語の定義をお示しし ましたが、再度ここでお示ししています。教育担当者とは、「病棟や外来、手術室など各部署で 新人研修の運営を中心となって行い、また実地指導者への助言及び指導等を行う者」と定義し てはどうかと考えています。ここでご検討いただきます論点としては、2「教育担当者は、どの ような能力を身につけることが必要か。そのためにはどのような研修が必要か」です。以上で す。 ○石垣座長 引き続き、厚生労働省の新人看護師臨床実践能力向上推進事業、厚生科学研究で 担当されていた坂本委員に、教育担当者研修についての話題提供をお願いします。 ○坂本委員 資料5をご覧ください。22施設の報告書から、教育担当者研修の実際というとこ ろでピックアップしました。1頁のいちばん上です。研修時間を拾ってみると、21時間〜120 時間というばらつきがありました。しかし、その中では40時間台が多くありました。研修期間 は20日から12カ月です。運営方法としては、単独施設で実施しているものと、他施設との合 同実施、継続的に1カ月ごとにやっている、そのようなものを3つぐらい拾ってみました。ス タイルとしては、短期集中型、分散型、継続的に委員会活動を使いながらやっている、この3 つとさせていただきます。まだいろいろありますが、特徴的な3つを選ばせていただきました。  A病院は単独で行っているところです。360床、33名の対象者がいますが、新人看護師が23 名です。4月から3月までの間に線を3本引いていますが、これは1つの線で描けなかっただけ で、1本の線と見ていただければと思います。1本にできないので分けてみましたら、技術と管 理的側面に分けられたものと、それに当てはまらないものは上の線に乗せています。ただ、1 本で4月から3月までの経過です。「2」というのは2時間ということで、集合研修でやっていま す。4、5月が新人のオリエンテーション準備、新人との交流をして、5月の下には、医療機器 の取扱い、急変時の看護、看護診断・看護過程を続けて、9月には中間報告があります。その 間にシミュレーション研修が入り、事故防止、シミュレーション研修の2番が行われて、3月 に最終評価に入ります。管理的側面は、その間に、リーダーシップと人材育成が入っています。  B病院は短期で行っています。ここは153床から682床の8施設で、34名の新人について連 携して、集めて行っています。集合研修ですので、24時間と10時間で、4日間と人間関係2日 で行っています。1日8時間ではなくて6時間ぐらいでやっているので、4日間になります。継 続教育の本質と実践というところで、まだ中身は全部出していませんが、教育の基礎知識、担 当者の心構えと役割、現任教育の在り方等は行います。集合研修をしたあとは、持ち帰って、 自部署の教育計画立案と実施を行います。最後の12月に実践内容の発表と意見交換を行ってい ます。  C病院の研修対象者は16名です。ここは新人看護師は45名入ってきます。680床で、合計35 時間です。教育担当者会議を兼ねた研修というところで、月1回の会議を研修に使っています。 上の赤い丸が教育担当者の研修です。5月が教育担当者の役割、看護師のキャリア、6月の新人 研修の評価、現任教育について、キャリア支援、厚生労働省の考え方、教育システム、教育評 価、新人の技術実践状況、次年度の技術研修の理解等を行っています。  その下の「新人教育担当」というのは、実地指導者というか、新人に直接かかわっている人 たちの研修も入っていますが、ここでの用語の説明での「教育担当」とは、上の赤丸の教育担 当者です。参考に、下の新人にかかわる人たちの教育も挙げておきました。  次に「教育担当者研修の到達目標」です。これは22施設の報告書より抜粋しました。教える 人たちが、何をもって教えるところに行き着いたと考えているのかを拾いました。まずは教育 担当者としての能力の育成ということで、何を能力としているかです。新人看護師育成に必要 な知識・技術・態度の修得です。この3つはいろいろなところで使われているようなことが出 ています。具体的に1つずつ下ろしてみます。  「知識」というのは一体何を言っているのか。ここに出てくる言葉は加工はしておらず、そ のまま貼り付けています。新人に必要な知識は、新人看護職員をめぐる現状と課題を理解する。 例えばどのような新人のタイプかというような、抱えている課題等を理解する。教育計画を理 解する。担当者の役割を理解できる。厚生労働省の「新人看護職員研修到達目標及び指導指針」 の概要が理解できる。教授法に関する基本的知識を理解する。技術・記録・医療安全に関する 知識を深める。主に組織の役割として押さえておくというところだと思っています。  「技術」です。技術教育になると思いますが、具体的な指導方法、評価方法を習得する、年 間教育計画が立案できる、意図的、段階的、系統的な指導を行う、新人看護師一人ひとりの能 力を評価する、一人ひとりの実践力に合った指導をする、看護技術、看護記録の指導力を高め る、自己の課題を明確にするといったところがあります。  「態度」です。新人をどのように認めていくかだと思います。新人看護師の心理的安定をは かり、自己の目標・課題を達成していけるよう支援できる、学習者と良好な関係を築くことが できる、新人看護師の自律を支援する、相手を尊重した態度で指導する、コーチングマインド を修得する、同僚の能力を引き出しながら関わる意図的継続的に関わる教育的な資質を向上さ せる。同僚にまで及んで、どのように関わっていけるかということで、自分1人が浮いてしま わないようなこともきちんとしなくてはいけません。  このようなことで、わかりづらい言葉もありますが、主立ったところということで、知識・ 技術・態度を挙げてみました。  表1ですが、(1)から(8)まで項目があります。「教育担当者研修における教育内容の現状」とい うことで、どのようなことを行っているかです。この(1)から(8)は、私がやっている研究グルー プの中でも8項目を作りました。なぜかと言うと、一つひとつ読み解いていくと、何をやって いるのかさっぱりわからないというところがありまして、1つのカテゴリーに分けて拾ってい くことをやりました分けることができたので、このような形にしています。まださらにあるの ではないかと言われれば、あるかもしれません。  対象の理解の中にはいくつかの項目があるので、見ていただくとわかりますが、集中してい るのは先ほど拾ったところにもあると思うので、これについては読んでいただくといいのかな と思います。以上です。 ○石垣座長 いま教育担当者研修モデルとして行っている施設の分析を発表していただきまし た。これらをガイドラインにどのように示していけばいいかについて、ご意見をいただきたい と思います。 ○福井委員 資料4と坂本委員が発表されたこととの間に、少し内容が違うところがあるよう に聞こえます。資料4では、「教育担当者」というのは、運営を中心となって行って、実地指導 者への助言及び指導等を行うとされています。坂本委員のお話は、実地指導の役割も教育担当 者が担っているように聞こえます。つまり、教育担当者と実地指導者の仕分けはどこでされる のでしょうか。 ○坂本委員 難しいのです。先ほどの西澤委員の中にもありましたが、病棟とか外来とか、兼 任していることになってきますと、この人たちをはっきりと分けて、教育担当者がいつも全体 を見ているということではなく、OJTではかかわっていっているのだと私たちは理解しました。 ○福井委員 そうなると、教育担当者以外に、たくさん実地指導者がいるわけですね。 ○坂本委員 そうです。 ○福井委員 その実地指導者はどのような能力を持つべきかについては、別個に定義や研修が 行われるのでしょうか。 ○坂本委員 今回私が皆様にお示しすることは、教育担当者として運営したり、実地指導者に いろいろなことを教える中で、モデル事業の中でそれを抽出したので、プリセプターのような 形で直接かかわっている人たちについては、若干混じっていることはありますが、今回はここ には挙げていません。 ○福井委員 先ほどの到達目標の中に、実際は直接新人看護師に教える項目なども入っていま すから、そのようなものも入れて「教育担当者」と呼ぶのか。実地指導者がどこを担当するの か。オーバーラップしてわかりにくいのですが。 ○坂本委員 前に漫画の入った表がありましたが、あれは入っていましたか。 ○島田課長補佐 それは第2回の資料3になります。 ○坂本委員 いまお話をしている方は、この中のグループの中の師長や主任と入っている方の ことです。福井委員がおっしゃられたような実地指導者については、混じっていることもあり ますが、これについては取り上げていないことになります。 ○野村看護課長 坂本先生に分析をお願いしているのは、モデル事業として行った新人看護師 の臨床実践能力向上推進事業の22病院のもので、これをどのような対象に対してやっていたか というのは、きちんとした整理をした上でやってはいないので、、実は混在している可能性はあ ります。それですので、福井先生がお感じのように、このレベルではないというのは、その点 かなと思います。そこは整理しきれないのだと思います。 ○福井委員 医師のことを言って申し訳ないのですが、医師のほうは指導医養成のための講習 会を延々とやってきて、最低16時間の講習を3万人くらいに受けてもらっています。それに加 えて数年前から、医療研修推進財団を主として、毎年300人を対象にしたプログラム責任者講 習会を行っています。プログラム責任者も研修医を教えますが、プログラム全体を見渡す運営 能力とは一体何なのかについて、直接指導医を教える医師のためのプログラムとは全く違った カリキュラムを作って、その講習会を数年前から行っているのです。何となくごちゃごちゃに なっているようですので、教育担当者の能力と実地指導者の能力を分けて考えたほうがいいの ではないかという意見です。 ○石垣座長 そうですね。 ○坂本委員 私たちも22を選ぶのにすごく苦労しているというか、若干聞き取りもしているの ですが、そこに書かれていることしか読み取れません。本当にばらばらです。  なぜ最初に表をお見せしたかというと、固まっているところもあるけれども、ある意味では 統制が取れずにやっているところもあることをお見せしたかったのです。  福井委員がおっしゃられるように、私もこの中の漫画にもあるように、その上にまた教育指 導者たちがいて、その人たちも同じようなことをしているので、課題はそこにもあるような気 がします。 ○石垣座長 平成16年に出した指導指針の中の「研修体制の整備」で、企画運営する人たちの 整備と実地指導者の整備を2つに分けて書いてあります。基本的にはそのような形で、全体を 企画する人、直接新人にOJTで教える人という分け方を、進めていくというのはいかがでしょ うか。 ○坂本委員 普通に進めていくということではなくて、今回皆さんに説明するときに用いたの は、運営の人と、実地指導者、直接かかわっている人たちにどのように指導しているかという 人たちを、できるだけ網の目で掬い上げて、今日ここにお見せしたというところだけです。 ○羽生田委員 医師の研修病院はあるレベル以上という施設基準なりがきっちりとあって、指 導体制があってやっていますから、いま福井先生の言われたような形ができるのですが、いま の看護職員の教育担当者について選んだ22施設は、小さな所から大きな所まであって、人員と してもそれぞれ分けて置けるほどの人員のない所から、全部きちんと置けるような所まで、そ れぞれ混ざっているのだと思うのです。現状がこうだという報告で、ここから何を考えるかと いうスタートラインということで、医師の研修制度とは違うという話については、違って当然 と言えば当然なのです。  いま聞いていて感じたのは、今後の教員の在り方検討会の委員会、いまの教育現場と臨床現 場の違いが辞める原因ではないかという議論がされたときに、学生の能力を上げるのにいちば ん必要なのは、指導者のレベルだということを私も随分言っていました。看護学校あるいは大 学も含めて、教育者の資質向上をどうするかという検討会をやっています。いまの話は、その 辺とつながる部分がかなりあるという理解でいいのですか。違う部分はあると思うのですが。 ○坂本委員 福井先生がおっしゃられたように、システムをきちんと組まなければいけない、 環境をきちんと整えなければいけないというのは1つあると思います。ただ、実践はやってき ていても、教え方をちゃんと学んでいません。教え方をどのように学んでいくかは重要なこと で、そこが課題として田中先生のところにもあると思いますが、課題だと思います。  だから、研修医のところで徹底してそれをやったということですが、私は看護のほうも是非 そうしたいと思います。忙しいとか忙しくないという問題ではないような気がします。 ○福井委員 教育担当者というのは、実地指導者として経験のある人でなければなれないはず です。そうでないと実際に実地指導者が何をしているかわからず、とても担当者にはなれない はずです。そこは二段構えにしないとまずいと私は思います。 ○石垣座長 先ほどの「規模に応じた多様な研修実施の在り方」というところにも関係するの ですが、小規模施設でも行えるようにということでは、新人研修が企画されにくいという問題 と、人員不足で指導者の確保や体制づくりというのがありました。企画ができないということ では、ある程度指針でモデルを示していく方法も1つだと思いますが、いかがでしょうか。 ○坂本委員 どこの病院もみんな同じことで、一生懸命作り上げても時間の無駄だと思うので す。指針になるものを示して、それを自分の病院の特徴で付け加えていくようなやり方がいい と思います。みんなで同じような努力をしなくてもいいような形がいいと思います。ただ、そ れにはどのように絞り込むかと、評価をどのようにするかが重要で、ただやる方法だけを示す のではなくて、評価するポイントも入ればいいかなと思っています。 ○石垣座長 それは研修のモデルもそうですし、教育担当者のモデルも同じことが言えますね。 ○坂本委員 教育担当者がどのようなプログラムを作るかも、プログラムを作って、ある程度 見せていくというやり方も1つだと思います。  評価する方法も、例えば大病院の評価の仕方とか、いろいろな評価の仕方があると思います。 ワンパターンでなくても、どこがポイントであるかを示していくとか、全部の流れにおいて、 ある程度どの病院でも使えるようなもののポイントは外さないというやり方がいいと思います。 ○石垣座長 この2つの議題はかなり関連しているのですが、教育担当者もいろいろな看護協 会で主催しているところで受けるというのもそうですが、多施設間で共同で行う、あるいは単 科病院が増えたので、そのような単科病院が集まってやるとか、1つの施設で完結するのは難 しいところがたくさんあるので、その辺の提案をどう盛り込んでいったらいいかということも あると思います。 ○羽生田委員 実際に教育担当者の研修にしても、人員的に十分なところのほうが少ないわけ ですから、なかなか出て行けません。中規模以下の施設ではそこまでの人的余裕がないのです。 それですから、出て行かなくてもできる方法も考えていかなければいけないのではないかと思 うのです。  看護教員の在り方の中では、専任養成講習会というのがあるわけですが、それを通信の形で 受けることができないか。以前に1回やったことがあるのですが、希望者が少なくなって消滅 してしまいました。私は通信を使った看護教育の専任等の研修と。  専任教員の場合、ほとんどが学校に勤務してから研修に行くのです。そうすると、8カ月い なくなるので、学校も大変なのです。将来教育をしたい人たちは、病院の中にもたくさんいる わけですから、そういう人たちが、自分が働きながら、こういった研修を受けられるような、 通信教育も1つの方法としてやらないと、数が増えていかないと思います。そういった研修自 体の在り方も含めて検討していただければと思います。通信教育は同じ部分があって、かなり 使えると思います。 ○石垣座長 同じ部分というのは何ですか。 ○羽生田委員 看護教員の資質向上のための研修と、専任教員養成の通信教育等々も、これと かなり一致する部分があるのではないかと思っています。○海辺委員 羽生田先生に対抗して しまうかもしれないのですが、私も患者会をやっていますと、相対的に自分が何をしているの かを知る機会はすごく大事だなと感じることが多くあります。それですので、先ほどの小規模 な病院ですと、新人看護職員が1人ぼっちであったり、教育なさる方々もそれぞれ孤独であっ たりということだと、自分自身が本当に大変だという状況に陥っているときに、同じような立 場にいるというのが全くいない環境は非常に辛いだろうなと思います。ある程度連携して、同 じような立場の人が集まって、同じ目線で語れるという時間は必要なのではないかと感じます。  私自身は看護職ではありませんが、勤めておりましたときには、新人のときには新人教育を 受けたり、その後も必要に応じて、出張の形で1、2日講習を受けに行ったり、という教育を受 けました。看護の現場は本当に人が足りない中ではあるのですが、新人も、教育担当者も、1 日、2日だけは出してあげて、同じ立場の人たちが語り合える環境は確保していかないと辛い のではないかと思います。  同じような立場でも、本当に辛くて孤独だと思っていた人が、同じ人たちに巡り会っただけ で、また活力をもってやっていかれるということがあると思いますので、研修によって集まれ る環境は今後非常に求められるのではないかと感じました。  また患者会活動に照らし合わせてとなりますと、患者会活動は基本的にボランティアですの で、本当に行き詰まって嫌になってしまうと、みんな立ち去って行きます。いまそれは医療の 現場にも起こっていることかと思います。ボランティアは恋するような感じがないとできない のだということがありますが、恋するように看護師として働くというのはプロですから、ちょ っと違うのかなとは思いますが、自分自身が辛いからといって立ち去ってしまうことによって、 その現場がどうなるのかを常に意識できるような、あなたは新人で、あなた自身が私たちのお 荷物のように思っているかもしれないけれども、そうではなくて、すごく大事な人として育て ているから、辛いことがあっても立ち去らないでほしいと、本当にあなたは大切なのだという ことがわかるようになるといいのかなと思います。  あとは、こちらにいらっしゃる先生方はプロとしてのプライドをお持ちだと思うので、やっ ていくうちにプロとしてのプライドも植え付けていかれればと思います。それはマニュアルに するには難しいと思いますが、マニュアルにはできないのだけれども、ベースにはプロとして のプライドを持っていただけるようなものになるといいと感じました。 ○羽生田委員 新人教育を通信でというのではなくて、新人を教える立場の人を通信教育とい う話をさせていただきました。通信教育も通信だけではなくて、必ずスクーリングなどで集ま るときがあります。そういった意味では、新人は通信で勉強しろということではなく、教育担 当者を研修するには通信でもできる方法を考えていただければということです。いまの同じ立 場の方が集まるという話はよくわかります。 ○庄野委員 バランスだと思います。必要なものはグループワークや対面で知って、一緒にや ってもらって、スクーリング的にする。そうでないものは自宅でインターネットなどでのEラ ーニングであるとか、通信教育を使う。  私も医師会のリスクマネージャの1年間の通信教育を受けたことがあるのですが、自宅で自 分の時間を使ってできるので、すごくメリットもあります。教わる項目によって住み分けをす ればいいのかなと思います。  徳島県の例を出して申し訳ないのですが、中央へ集まるとなると、端のほうから行くと2時 間くらいかかります。アクセスがよくないという地域の現状もあるので、この辺りは項目によ って織り込んでいけばすごく助かると思います。 ○坂本委員 研修医の教育担当者というのは、国から1人誰かを決めろということで決まって いるのですよね。 ○福井委員 プログラム責任者、研修管理委員会の委員長というのがあって、3段階になって います。 ○坂本委員 これだけ教育担当者を研修しようと言っているならば、教育担当者は忙しくてで きないといって、兼任の人が多いです。兼任でもいいから、とにかくそういうものを置きなさ いというところで、その人たちにということで、通信もあり、いろいろな方法があるというこ とになっていくと、ちゃんとシステムになっていくのですが、病院で勝手に決めろという話に なっていくと、それは不安定になってきますので、そこら辺も決めていくべきだと思います。 ○石垣座長 ガイドラインがどのように作られるかがいちばん大事なところです。今回も非常 に感じたのですが、研修に出たほうがいい、研修をしたほうがいいと言っても、看護管理者の トップの考え方あるいは組織文化の考え方で、いくら出してもそれが活用されなければならな いし、本当に活用してほしい人たちに手が届くようにするには、出来上がったときに、トップ の人たちの講習会を徹底的にしないと、いいものを作っても普及しないということがあります。  それにしても、中身を作ることがまず出発ですので、規模に応じて、どの施設でもできると いう研修のプログラムと、そのプログラムを作っていく人たちをどのように教育したらいいか。 今日は大きなテーマを2つ同時に話していただきましたが、その基になるのはプログラムだと 思いますので、そのことも含めてご意見があれば出していただきたいと思います。 ○村上委員 私も現場にいて思ったのは、到達目標の職員として必要な基本姿勢で、いろいろ なことをたくさんプログラムに入れるのですが、新人が患者のようになっている、新人のケア をしなければいけないという内容がとても大きいのです。学校の中で、対象となる人の理解は 教えるのでしょうけれども、現場に入ってきた途端に患者になっているような新人がたくさん います。そこの辺りのプログラムをどのように構築したらいいのか。  確かに新人は自分が担当のケースを持って、本当にケアを通して、その人の退院あるいは退 院後までフォローできたときには、すごく達成感を持つ、そこが到達目標になるのだと思いま す。そういうことを全体を通して、教育担当者がそこの意味、先ほど福井委員がおっしゃった のは、実践者が教育担当者になるという意味が、そこがすごく大事だと思うのです。私も現場 にいて、いまも辞める人の話を聞く度に、自分がケアする対象が見えていない。専門職として の自立をどう図るかを、どこかに具体的な形で入れていかないと、技術的なことのケアは教え ることはあるのですが、むしろそのようなことで離職していく、病気になっていく新人を目の 当たりにしますので、そこをプログラムの中にアイディアを入れたほうがいいかと感じました。 ○石垣座長 福井先生、何かございますか。 ○福井委員 先ほどの話から言うと、最も必要なのは、「日本全国で最低このようなものが必要 だ」という新人看護師のためのプログラムを作ることだと思います。  次に必要なのは、実地指導者をどうやって養成するかということです。病院の規模にかなり の差があるということでしたら、最低その2つが必要です。教育担当者に相当する役割は、小 さな規模のところは看護部長が果たすことでできると思いますし、規模の大きな病院では教育 担当者を別個に置くことも可能だと思います。 ○上泉委員 私もいま福井先生に賛成です。まずは実地指導者を育成していきます。新卒者が 1人であれば、1人の実地指導者があれば十分にやっていけますし、西澤先生の調査を拝見して も、かなりのところで研修計画は作っておられるので、プログラムを作ることについては、か なりの部分で浸透しているのではないかと思います。むしろ実地指導者の教育に力を入れたら どうかと思います。  もう1点は、新卒者は1カ月ぐらい前までは学生ですので、それが4月から仕事人に変わり ます。その辺の転換をうまく自覚していけるようなかかわりが必要だと思います。  基礎教育のモデルをあまり使わないほうがいいと思います。基礎教育というのは、モデルを 参考にすると、結果的にまた受持ちは1人だけで何カ月間かを過ごしてしまうことになりかね ないと思いますので、基礎教育と仕事人として学ぶことは全く違うことだという考えの下に、 新人研修を作っていくのがいいのではないかと思いました。 ○福井委員 先ほど海辺委員が言われたことですが、医師は1つのプログラムに1人の研修医 を募集することはしないことになっています。つまり、複数の研修医を採るということです。 研修医が1人だけになると、いろいろな意味で孤立していい結果にならないことは昔からわか っていることですから、できるだけ複数で採ります。ただ、2人募集したのだけれども、結果 的に1人しか応募がなかったときには、それは認めるようになっているようですが、複数とい うのは非常に重要だと思います。 ○石垣座長 そういうことから考えると、1人しか採用できないところは非常にハンディがあ って、新人にもハンディがあるということです。 ○坂本委員 到達目標とか、基礎との関連性があるのですが、もう1つは実地指導者に対して もそうなのですが、いま実地指導者が病棟の中でグルグル回って、自分も疲れている状況があ ります。この間もプリセプターがうまくいかないという話がありました。  彼女たちにわかってもらう方法というのは、評価をどのようにして、できたかできていない かを、ただ何かができたというだけで見ていくのか、ここまでできたらすごくいいという状況 で、その中身をどのように教える技術をやるかについては、評価という項目を明確に出してい くのも1つだと思います。いままでのガイドラインは、どのように評価するのかはまだ出てい ないので、そこも明確に出すといいと思います。  もう1つは、サポートしていくシステムも、看護部長と看護師の関係の中で病院全体でサポ ートしていくシステムをとっている傾向が増えてきたと思います。さらにこれを院長先生やド クターやコメディカルの人たちも、全員でやっていくという仕組みも必要だと思います。それ も是非入れていただきたいと思います。 ○西澤委員 先ほど福井先生から複数が望ましいとありました。医師の場合は全部自分でやる とか、ほとんど単独でやることが多いのですが、看護師は何十人かの中の1人なのです。だか ら、孤立感ということでは、医師とは少し違うのではないかと思います。  中小病院では、1人でも入っていただければありがたいし、組織として育てるということで は、若干違うと思うので、その辺りは考慮しながら、その代わり、そこの病院だけに、常にい ればいろいろな閉塞感もあると思いますから、あるところは共同でということで、そこら辺は 補填して、それによって1人であっても、たくさんの仲間の中でやっているという意識を持つ、 そのようなやり方をしていただいたほうがいいと思います。 ○石垣座長 7月9日に成立した卒後研修の努力義務がありますが、施設も本人もということ ですが、努力義務というのはどのような意味を持っているのでしょうか。 ○野村看護課長 義務との違いということですと、義務になるとすべての人がやらねばならな いとなりますが、そうではないということです。新人看護師はそれを受けるように努めなけれ ばいけないということで、研修の機会があれば努力するということだと思います。  雇用者側にも義務がかかっていますので、雇用者側もそれを準備することの努力が必要だと いうことです。その両者の努力義務がマッチしたところで、実際ができるということです。  いずれにしても、すべてやらねばならないということではないのですが、それができる環境 を整えていくということです。 ○石垣座長 このガイドラインが実施する時期と、努力義務が施行される時期とは、全く出発 が同じなので、両者をマッチさせながら内容を具体的に進めたいと思います。  今日は2つの重要な議題についての議論が十分ではありませんでした。是非ご提案を事務局 にしていただきたいと思います。次回以降の日程について事務局からお願いします。 ○島田課長補佐 次回は9月18日(金)の17時半から開催する予定です。次回も教育担当者 の研修についてはご議論いただく予定です。検討会の開催場所は決まり次第ご連絡させていた だきます。よろしくお願いします。 ○石垣座長 本日はこれで閉会します。長時間にわたってありがとうございました。 照会先 厚生労働省看護課 島田(4167) 杉田(2598)