09/08/06 第22回今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会議事録  第22回 今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会(議事録) 1.日時:平成21年8月6日(木) 15:30〜18:00 2.場所:航空会館 大ホール 3.出席構成員:   樋口座長、伊澤構成員、伊藤構成員、上ノ山構成員、大塚構成員、小川構成員、   門屋構成員、坂元構成員、佐藤構成員、品川構成員、末安構成員、田尾構成員、   高橋構成員、寺谷構成員、長尾構成員、中島構成員、広田構成員、町野構成員、   三上構成員、山根構成員、良田構成員   厚生労働省: 木倉障害保健福祉部長、藤井企画課長、福田精神・障害保健課長、 塚本障害保健対策指導官、林課長補佐、野崎課長補佐、伊藤課長補佐 4.議事  ○ 精神医療の質の向上について  ○ 早期発見・早期支援のための普及啓発について(調査の報告)  ○ これまでの検討会における議論の整理 5.議事内容 ○樋口座長  それでは、定刻になりましたので、ただいまより第22回の「今後の精神保健医療福祉のあり方 に関する検討会」を開催させていただきます。  構成員の皆様におかれましては、御多忙のところ、また今日は特に暑い中を御参集いただきま して、ありがとうございます。  それでは、本日の構成員の出欠状況について、事務局よりお願いいたします。 ○野崎課長補佐  それでは、本日の出欠状況等について御報告いたします。  本日、谷畑構成員、長野構成員、野沢構成員より御欠席との御連絡をいただいております。ま た、町野構成員におかれましては、若干遅れて見えられる模様でございます。  本日の出欠状況等については以上でございます。 ○樋口座長  ありがとうございます。  それでは、早速議事に入りたいと思いますが、本日のテーマはお手元の議事次第にございます ように3つ書かれております。  最初に「○ 精神医療の質の向上について」でございます。  2つ目に「○ 早期発見・早期支援のための普及啓発について(調査の報告)」でございます。  3つ目に「○ これまでの検討会における議論の整理」でございます。  前半は最初の2つをまとめて説明をいただきまして、その後、御議論をいただきまして、後半 はこれまでの検討会の議論をいよいよ整理するという段階でございますので、それについて議論 の時間を設けさせていただきたいと思います。  それでは、まず「○ 精神医療の質の向上について」と「○ 早期発見・早期支援のための普 及啓発について(調査の報告)」の2つについての説明をお願いいたします。 ○林課長補佐  それでは、資料1に基づいて、まず御説明をさせていただきます。  1枚おめくりいただきますと、論点整理の中に精神医療の質の向上についてという論点がござ いまして、薬物療法の在り方や精神疾患に関する研究開発の推進を含め、その他精神医療の質の 向上の観点から必要な取組みについて更に検討を行うべきではないかという論点がございます。  質の向上については、例えばこれまで人員基準の向上といったことも含めてさまざまな観点か ら御議論をいただいておりますけれども、本日は残された部分ということで、特に薬物療法の在 り方、研究開発の推進などの部分について資料としてまとめさせていただいております。  3ページが精神医療の質の向上についての研究以外の部分でございます。  4ページ「統合失調症患者に対する抗精神病薬併用投与に関する国際比較」でございますけれ ども、この調査によりますと、我が国においては単剤の投与の方が十数パーセントである一方で、 3剤以上投与されている方が半数程度いらっしゃるということで、これは他の国と比べるとかな り特殊な状況であるということでございます。  5ページ「統合失調症入院患者の抗精神病薬投与量国際比較」でございますけれども、クロル プロマジン換算で我が国では1日当たり1,000mg程度であるところ、諸外国では数百mg以下と いうことで、これもかなり離れているという実態でございます。  6ページは、抗精神病薬ではなく抗うつ薬の多剤併用の実態調査でございますけれども、上か ら3列が我が国のデータでございます。2割から3割強の方が多剤併用されているということで、 これも諸外国と比べて高い数字となっております。  7ページは社会医療診療行為別調査です。これはレセプトから見た処方薬剤数の種類の数でご ざいます。これは当該疾患に関する薬の投与以外の合併症等に対する薬も含めた数字でございま すけれども、統合失調症は左側の真ん中辺りにあるとおり、1人当たり7.68種類程度の薬が投与 されているということでございます。  左側の下の方ですが、認知症については5.96。  気分障害については、5剤程度といった状況でございます。  8ページでございますが、分布を見ますと、統合失調症に関しては10種類以上投与されている 方も30%近くいらっしゃるという状況でございます。  9ページが抗精神病薬の組み合わせに関する英国のNICEのガイドラインを抜粋したもので ございますけれども、効果が上がるということを支持する証拠はほとんどないといった記述がご ざいます。  抗精神病薬を組み合わせることは高用量になり、副作用のリスクを上げるといったこと。また、 抗精神病薬の切り替えは追加よりも精神症状の改善にまさるといった研究の報告がございます。  例えば真ん中の表でございますけれども、抗精神病薬の追加と切り替えを比較すると、陽性症 状については切り替えの方が有意に症状を改善する。陰性症状については、有意差はないものの 切り替えの方が少しよい結果になっております。また逆の変化についても、抗精神病薬の追加よ りも切り替えの方がよいというデータになっております。  下は我が国におけるデータでございますけれども、単剤投与を受けているものの方が多剤・大 量投与を受けているものよりも、入院中の症状の改善が良好であったといったデータもございま す。  10ページが診療報酬上の誘導についてでございますけれども、現在、特定抗精神病薬治療管理 に関する加算というものがございまして「概要」のところに掲げてあるような投与を受けている 方につきましては、入院料に1日つき10点を加算するという決まりがございます。  精神科救急病棟、精神科急性期治療病棟、精神科療養病棟等に入院されている方の4割程度の 方が、この加算を算定していらっしゃるということでございます。  一方、その加算が導入されたときに、その影響に関するアンケート調査を行ったところ、処方 の行動に関する影響という意味では変わらないという病院からの御回答も相当多かったというこ とでございます。  11ページからは、精神療法に関する資料でございます。11ページの資料は以前にもお示しいた しておりますが「気分障害に対する精神療法の実施状況」でございまして、支持的精神療法は多 くの医療機関で行われている一方、認知行動療法については半数程度の医療機関で実施されてい るという状況。  下の方は「精神科における精神療法の実施状況」でございまして、自らその実施状況が十分で ないと評価されている医療機関が38%程度あったということでございます。  12ページは、認知行動療法の効果について薬物療法と比較したものでございますが、認知行動 療法単独でも薬物療法に匹敵する程度の効果があること、また、薬物療法単独と比べて、認知行 動療法との併用は治療効果がまさっているといったデータが出ております。  13ページは、米国における精神療法の医師に対する研修がどのように行われているかという資 料でございますが、支持的精神療法、精神力動的精神療法、認知行動療法が必須カリキュラムと なっております。  上級セラピストへの陪席、プロセスノート、録音テープ、録画ビデオを利用したスーパービジ ョン等による研修を実施する。  こういった評価についても標準化が進められているということでございます。  14ページが我が国の専門医研修プログラムとの比較でございますが、我が国においては専門研 修プログラムの中で、精神療法については幾つかの行動目標が示されております。支持的精神療 法については施行できるという目標になっているのに対して、力動的精神療法については経験す る、認知行動療法等については理解できるという行動目標になっております。  米国のプログラムについては、先ほど申し上げたとおりでございます。  15ページからは精神医療におけるガイドラインについての資料でございます。国内で作成され た精神医療におけるガイドラインは、ここにお示しするようなものがございますが、作成主体が かなりいろいろであるといったこと。そして、またその普及が余り進んでいないといった課題が あると認識しております。  16ページは、御参考までに米国における治療ガイドラインの状況でございますけれども、米国 精神医学会が体系的にガイドラインを作成しているということです。  17ページの英国については、政府の機関が体系的にガイドラインを作成するといったことが行 われております。  18ページからは医療の質の評価についてでございます。構造(Structure)の評価、過程(Process) の評価、成果(Outcome)の評価、大きく分けて3つの評価手法があるということが言われます。  19ページにございますように、最近ではアウトカムの評価やプロセスの評価をより重視し、ま たそのときに数値の指標、クリニカルインディケーターを用いて評価をするといったような趨勢 となってきております。  精神科医療につきましても例外ではございませんで、20ページにありますように、海外、OE CD、オーストラリア、米国、ヨーロッパ等において精神科医療のクオリティーインディケータ ーが作成され、それに基づいた評価がなされるようになってきております。  21ページからは、オーストラリアにおける事例でございますが、診断、身体所見の評価、処方 パターン等のさまざまな領域にわたって基準となる数値、どういう数値をとるかということが定 められておりまして、それに基づいて評価することになっております。  例でございますけれども、22ページにありますように、例えば大量に抗精神病薬を投与されて いるかどうか。これをクロルプロマジン換算で1,000mgを超える経口投与の入院患者数が経口投 与を受けている全入院患者数の何%を占めるかといったデータ、こういったものを測定し公開す ることで改善につなげているという例でございます。  23ページは隔離に関するインディケーターでございますけれども、一番上にありますように、 入院患者数に占める隔離を受けた患者さんの割合であるとか、あるいは下にありますように隔離 を受けた患者さんに占める複数回隔離された患者さん、あるいは4時間を超えて隔離された患者 さんといったさまざまなインディケーターがとられているという例でございます。  24ページは我が国の精神科救急病棟におけるクリニカルインディケーターの収集の事例でござ いまして、現在、国立精神・神経センターや精神科救急学会等が精神科救急に関する臨床の質の 管理をするために、ここに掲げておりますようなデータをデータベース化するという試みを行っ ていらっしゃるところでございます。  25ページからは情報公開に関する話題でございますけれども、現在「医療に関して広告可能な 主な事項」としては、ここに掲げているようなものがございます。  26ページですが、医療機能情報提供制度というものが平成19年4月1日に施行されておりまし て、医療機関は医療機能に関する一定の情報について都道府県に報告することが義務化されてお ります。また、都道府県はここで集約した情報をインターネット等でわかりやすく提供すること になっております。既にこの制度は動いておりまして、インターネット等で各医療機関の情報を 検索することができる仕組みになっております。  どんな情報を提供することになっているかというのが27ページにございますが、公表の対象と なる事項としては「第一 管理、運営及びサービス等に関する事項」あるいは「第二 提供サー ビスや医療連携体制に関する事項」で、例えば精神保健指定医がいらっしゃるかどうかとか、保 護室があるかどうか、「11)対応できる疾患・治療内容」として、厚生労働大臣が定めるもの、右 の四角に囲んであるような領域の治療に対応できるかどうかといったもの、「第三 医療の実績、 結果等に関する事項」の中では、例えば看護師の配置状況であるとか、治療の結果の事業、患者 数、平均在院日数といったものについて報告をし、これが公表されることになっております。  28ページからは、精神科の専門医制度あるいは医師だけではなく医療従事者の研修等に関する 資料でございます。  まず精神科の専門医制度でございますけれども、平成21年度から正式に開始されるということ で、レポートを提出し、筆記試験、面接試験を行い、認定をすることになっております。  また、その前提として、5年以上の経験があり、学会の施設委員会が認定した研修施設で研修 手帳に沿って項目のうちの60%以上がB以上の評価を受けているといった要件が必要となります。 平成17年度から過渡的に認定が行われておりまして、既に5年を超えて経験をしていらっしゃる 方の中から面接等で8,880人が合格している状況でございます。  研修プログラムの内容としては、29ページにございますように、実際はもっと詳細に定められ ておりますけれども、こういった総論的な内容を各医療機関で研修をしていただき、各医療機関 が評価するという形になっております。  また、経験すべき疾患(病名)、治療場面、治療形態等についても定めがあるということでござ います。  30ページは御参考に米国における研修制度でございまして、これは日本でいうと専門医制度に 当たる初期研修制度、後期研修、医学部を卒業して医師となってから最初の4年間の研修プログ ラムでございますけれども、標準的なプログラムとしては、我が国と大きく違うところは、例え ば児童思春期/物質依存といったプログラムがほぼ必須のものとして入っているというところで ございます。  31ページはコメディカルを対象とした精神科領域の教育・研修制度でございますが、看護師、 准看護師を対象とした研修制度として、認定看護師、専門看護師の制度、精神保健福祉士を対象 とした教育研究制度、作業療法士を対象とした教育研究制度等として、こういったものがござい ます。  32ページはここまでの資料のまとめでございます。  「現状と課題」として、精神科薬を用いた標準的でない治療(多剤・大量投与、長期少量投与、 多剤・少量投与、依存性薬物の長期処方等)について、その有効性等を懸念する指摘がある。特 に抗精神病薬の多剤・大量投与は、単剤投与と比較した有効性が明らかでない一方で、副作用の リスクが高まるとされているが、我が国では依然として諸外国よりも頻繁に実施されている。  認知行動療法等の精神療法については、薬物療法と比較した効果が明らかになりつつあるもの もあるが、精神科医師がその実践のために技術を習得する方法が必ずしも明確でないなど、普及 が進んでいない。  精神科における診療ガイドラインは、我が国でもさまざまな主体により作成されているものの、 その多くは十分に普及していない。  診療のプロセス・アウトカムを評価し、改善を図るために、諸外国でクリニカルインディケー ターを収集・公開する取組みが行われつつあり、我が国でも研究が行われている。  精神科専門医の制度が今年度より正式に開始されるなど、精神科医の養成の充実が図られてい るが、具体的な研修体制や研修方法については各研修機関に委ねられる部分が大きいほか、精神 療法、児童思春期精神医学など、現状では、研修機関や指導者等の研修体制を十分に確保しにく い領域もある。  医師以外の医療従事者についても、職能団体に等において資質の向上のためのさまざまな研修 機会が設けられている。  このような「現状と課題」を踏まえまして、33ページにありますような「検討」の方向性を掲 げさせていただいております。  精神科の治療には個人差が大きいものの、難治例や特殊例以外では、まずは標準的な治療が実 施されるように促すべきではないか。  このため、精神科医療におけるガイドラインの作成や普及を進めるべきではないか。  患者等への診療ガイドラインの公開等により、精神科で行われる医療の概要について、患者等 にわかりやすい情報提供を進めるべきではないか。  特に統合失調症に対する抗精神病薬の多剤・大量投与については、改善を図るため、投与状況 の情報公開や、単剤投与や切り替えへの評価等について検討するべきではないか。  薬物療法の適正化や行動制限の最小化を始めとした、精神科医療の質の向上に資するよう、実 用的なクリニカルインディケーターの開発を進めるとともに、インディケーターの情報公開を進 めるべきではないか。  精神科医の質の確保のためには、精神科領域における専門医制度の定着を図るとともに、精神 療法、児童思春期精神医療等を含め、研修内容や手法の明確化や、研修体制の確保、研修内容の 充実を図るよう、学会や医療関係者と連携して取り組むべきではないか。  医師以外の医療従事者についても、精神科医療の質の向上や、入院医療中心から地域生活中心 の医療提供体制への転換を図り、精神障害者の地域生活を支える観点から、関係者と連携して、 資質の向上のための研修等を一層推進すべきではないか。  以上のようにまとめさせていただきました。  34ページは「[2]研究開発の推進について」でございます。  35ページは「精神保健医療福祉に関連する厚生労働省の研究事業」でございますけれども、ま ず厚生労働科学研究費補助金の中では、こころの健康科学研究事業がございまして、この中では 精神疾患の疫学研究、病因・病態の解明、予防、診断、治療法等の研究・開発が行われているほ か、新たな行政課題への研究的な対応が行われております。  また精神疾患だけではなく、神経・筋疾患についてもこの研究事業の中で併せて取り組んでお ります。  障害保健福祉総合研究事業というものがございまして、これは身体、知的、精神及び障害全般 に関するさまざまな研究開発を行っておるものでございまして、この中でも精神障害に取り組ん でおります。  このほか、国立精神・神経センターの精神・神経疾患研究委託費によっても、精神・神経疾患 に関する研究を行っております。  36ページは予算額の推移でございまして、左側がこころの健康科学研究事業と障害保健福祉総 合研究の研究費の中から、精神疾患、精神障害に関連するものを抜き出したものでございますけ れども、平成14年ごろまで研究費が伸びてきまして、その後、ほぼ毎年10億円内外のところで 推移しているところでございます。  右側は御参考までに厚生労働科学研究費全体、省全体の研究費でございますけれども、これに ついても平成14年ごろまで伸びてきた以降、400億から今年は少し伸びて480億ぐらいになって おりますけれども、こういったところで推移をしてございます。  37ページは主な研究課題の例として、こころの科学研究事業で行っている研究課題の幾つかを 挙げさせていただいておりますが「実態の解明」から「診断・治療法の開発」「診断・治療法の確 立」「政策への展開」に至るまで、さまざまな研究課題について取り組んでいきたいというところ でございます。  38ページが研究の具体的な内容と成果の例でございますけれども、左側の診断の部分について は、DNAチップを用いたうつ病の診断指標の作成であるとか、脳画像の検査に基づく診断の補 助の方法を見出すといったことで研究が行われております。  真ん中の列が治療法の開発、確立という部分でございますけれども、精神科薬物療法アルゴリ ズムであるとか、精神療法、リワークプログラムといったものについての臨床研究が行われてお りまして、効果があるかどうかを実証するということが行われております。  右側については、更に政策に近いところで、特に自殺予防の研究を挙げさせていただいており ますが、自殺未遂者や自死遺族のケアについてのガイドラインを作成したり、自殺対策のための 戦略研究の中で臨床研究を行って、それを政策に生かしていく、こういった活用がなされており ます。  39ページは研究についてのまとめでございますが「現状と課題」といたしまして、精神疾患の 国民における疾病負荷は大きく、治療法の開発等に向けた研究への期待は大きい。  厚生労働省における精神疾患関連の研究費は、平成14年ごろまで大幅に増額したが、近年はほ ぼ横ばいの傾向となっている。  統合失調症、うつ病、発達障害、自殺等さまざまな疾患等について、病態の解明、診断・治療 法の開発・確立、精神保健医療福祉施策の立案に関する研究等、幅広い領域にわたる研究が行わ れており、近年は研究課題数が増加する傾向にある。  政府の研究費は、近年は全体として横ばい傾向にあり、競争的に研究資源の獲得を図るために は、より大きな成果が上がるよう効果的に研究を行う必要がある。  こういった状況を踏まえまして、右側でございますけれども、精神保健医療福祉施策の改革を 強力に推進するため、施策の企画、立案、検証等に資する調査研究については、確実な実施を図 るべきではないか。  国民の疾病負荷の低減に資するよう、精神疾患の病態の解明とともに、診断・治療法に関する 研究を競争的資金を活用して活発に行うべきではないか。特に治療法の確立や医療水準の向上に 資するよう、質の高い臨床研究を推進するべきではないか。  このため、精神疾患に関する研究費の確保に一層努めるとともに、国立精神・神経センター等 の基幹的な研究機関を最大限に活用しつつ、研究の推進を図るべきではないか。  以上が資料1でございます。  続いて、資料2もざっと説明をさせていただきます。早期発見・早期支援のための普及啓発に ついて行いました調査について、ここで御報告をさせていただきます。  2ページ目が論点整理でございますけれども、普及啓発の論点の中で、特に今日話題とさせて いただきたいのは、精神疾患の早期発見・早期対応による重症化の防止を図ることを念頭に置い ての普及啓発方策という部分でございます。  個別の論点の中では、3ページにありますように、早期対応の観点からの普及啓発については、 学齢期等の若者とそれを取り巻くものを重要なターゲットとして位置づけ、学校教育分野との連 携や必要なサービスの確保を図りつつ、重点的に行うといった論点整理がなされております。  4ページにありますように、前日16回の検討会で御検討いただいた際にも、こういった部分に ついて適切なメッセージと媒体による普及啓発を行ってはどうかという議論の論点となっており ましたけれども、適切なメッセージ、媒体について研究するための調査を行った報告をさせてい ただきます。  5ページが普及啓発事業の概要でございます。  上の段につきましては、今、論点整理の部分で御説明したとおりでございますけれども、平成 20年度精神障害の正しい理解のための普及啓発事業の中で、[1][2][3]の調査が実施されました。早 期発見・対応に影響を与える要因の特定、普及啓発のターゲットごとに最適なメディアミックス、 コンテンツに関する調査、この2つを本日御報告させていただきます。  [3]の精神疾患の報道状況に関する調査につきましては、同じ事業の中で行われましたけれども、 既に第16回の検討会において御報告をさせていただいております。  6ページが今日御報告する調査の実施方法でございますが、まず1つ目は全国の若年者とその 親御さんに調査票をお渡ししまして御記入いただいたものでございますけれども、この中で精神 疾患に対するとりえ方や態度等と精神の不調を感じた際にとる行動等を調査いたしまして、その 関連を分析するということを行っております。  その結果を踏まえてさまざまなメッセージを作成した上で、そのメッセージが若年者あるいは 御両親に見ていただいた際にどのような印象をもたらすかということについて調査をしたものが 調査2でございます。  調査1の具体的な結果として、7ページにお示しをいたしておりますが、若年者の結果として、 どのような考えと専門の医療機関や相談機関に相談しようという考えに関連があるかということ を調査したものでございます。  専門の医療機関や相談機関に相談しようという考えを持っている人は、その背景としてどんな 考えを持っているかということを聞いたものでございますけれども、受診や相談にポジティブな 影響を与える要因としては、家族や友人に受診を勧められれば受診をしたいという考えを持って いる方、また医療機関や相談機関に行けば解決する、薬を飲めば解決する、専門家に相談すれば 解決するといったように、受診をすることについて利益があると思っていらっしゃるような方、 自分で解決するしかない、家族や友達に相談しながら自分で解決できるという考えを持っていら っしゃる方は、自分が心の不調の際に専門の医療機関や相談機関に相談しようという考えを持ち やすいということが示されました。  また逆に、受診を周りに知られて変に思われないか心配であるとか、施設や専門家を探したり 予約したりするのが面倒、遠いと面倒といった考え、学校を続けて休んでいるのでやばいといっ た考え、専門機関に困っていることを相談するとか治療を行う場所といったように、今、比較的 パターンアナリスティックな考えを持っていらっしゃるような場合は、受診や相談にネガティブ な印象があるということでございます。  また、だれもがなる可能性があると思うという考えについても同じ調査の中で聞いております けれども、こういった考えを持っているかどうかについては、受診をしたいと思うかどうかの影 響はほとんどなかったということでございます。  この調査を踏まえて、右側に書いてありますような要因が意思決定に影響を及ぼしていたわけ でございますけれども、それをさまざまなメッセージとして作成して、調査2の中で何人かの方 に見ていただいて、そのメッセージを見ることで医療機関にかかりたくなると思うかどうかとい ったことを調べる調査を行いました。  その結果として、比較的受診を促すという意味で伝わりやすいメッセージとして抽出されたも のが結果に出てきているものでございます。受診行動の利益や専門機関のポジティブイメージを 訴えかけるようなメッセージ、具体的な事例としては、下の資格に囲んでおりますけれども、こ のようなメッセージを伝えていくことで受診を促進する、あるいは相談を促進することができる のではないかというような結果でございます。  同じ調査を9ページ、若年者の親にも行っておりまして、こちらの方では家族や友人に受診を 勧められれば受診させたい、医療機関・相談機関に行けば解決する、疲れやストレスからくるも の、受診が周りの人の間で大ごとになるのが嫌といった考え、あるいは専門家の行うカウンセリ ングや相談を信用するといったとらえ方をされている方は受診させたいと思う可能性が高いとい うこと。  逆に下に掲げておりますように、だれに相談しなくても自分で解決できる、時間が経てば落ち 着く、受診で周りに迷惑をかけるのが嫌、気の持ちよう、施設や専門家が遠いと面倒、専門機関 に対するイメージが暗い、重いといったイメージを持っていらっしゃる方は、受診や相談をする 傾向が低いということ。  また、だれもがなる可能性があると思うかどうかについては、親の間でも受診行動への影響の 関連は比較的薄いといったことが示されました。  それを踏まえて、さまざまなメッセージを作成して、その印象を調べておりますけれども、そ の結果として、受診行動の利益を訴えていくことが受診を促すためによいのではないかという調 査結果になっております。  11ページは併せて行われました普及啓発において活用すべき媒体についての調査でございまし て、若年者や若年者の親がどういった媒体から健康情報を受けているかという調査でございます。 共通してニュース番組や健康番組、インターネット、家族、友達等から情報を得ているというこ とがわかったほか、若年者においては学校の授業や学校からのお知らせ、担任の先生から情報を 得る可能性が親よりも高く、また携帯電話についても親より活用されているということ。親につ いては、新聞であるとか市区町村の広報やお知らせ、専門家からの情報を若年者よりも多く入手 されているということでございました。  12ページは「本事業からの示唆」でございますけれども、精神疾患はだれもがかかり得る病気 であるというメッセージ自体は受診行動との直接的な関連が低いという可能性が示唆されました。  最適な個別のメッセージ、ターゲットごとのメディア接触の特性等についても、今、申し上げ ましたような示唆を得たということでございます。  13ページが全体のまとめでございまして、若年者、若年者の親の受診や相談に影響を与える要 因を今回調査した上で、それらを広報した場合の変容の可能性やメッセージの受け入れやすさな どを考慮して、伝えるべき主なメッセージとして幾つかのことが抽出されました。  今後このような調査結果も踏まえて、普及啓発の具体的方法を検討、実施し、効果を検証して いくことが必要ではないかと考えております。  資料の御説明は以上でございます。 ○樋口座長  どうもありがとうございました。  ただいま大きく分けると2つ、精神医療の質の向上についてということと、終わりの方で早期 発見・早期支援のための普及啓発についての調査結果の報告をいただきました。これからおよそ 60分程度これに関しての質疑の時間をとりたいと思っております。どのテーマからでも結構でご ざいます。御発言ください。いかがでしょうか。  小川構成員、どうぞ。 ○小川構成員  お手元に『東京精神病院事情(ありのまま)』という青い分厚い本が置いてあります。東京精神 医療人権センター、東京都地域精神医療業務研究会編ということでまとめたものでございます。 2003年ということでちょっと古いのですが、東京都が各病院から集めた統計をまとめたものと各 病院にアンケートの依頼をして回答がきたもの、そして、訪問調査に協力できるという病院には 調査員が訪問して、いろいろと病院の情報を収集したということで、それも併せてまとめたもの でございます。  ごらんになっていただくと、統計の数字をレーダーチャートにとして回転率とか1年未満の在 院者率、3年以上の在任者率、スタッフの1人当たりベッド数とか、そういった指標を定めて各 病院の評価をしております。統計から出された評価だけではなくて、訪問調査員が委員長や看護 部長などにインタビュー、聞き取りをした結果も含めてコメントを載せてあるものでございまし て、質の向上ということで今日テーマがございましたので、参考までに配付いたしました。  詳しくは後ほど電車等の中でお読みいただきたいと思いますけれども、医療は社会的共通資本 であるということが言われております。税金とか保険料が投入をされて医療が提供されていると いうことでございます。  また、先の医療法の改正では、国民にわかりやすい医療計画を策定するということで、4疾病 5事業について、例えば脳卒中になったときには、自分がどういう医療機関にかかっていくのか、 あるいは回復期あるいは在宅までのプロセスが県によってはわかるという計画をつくっていくよ うな方向がございます。  また、今日も資料にございましたとおり、都道府県による情報提供制度がスタートしておりま す。実際にホームページ上で自分が精神科にかかりたい、あるいは家族が精神科にかかりたいと 思ってホームページを見ても、どういう医療が提供されているのかということははっきり言って 全くわからないのが現状だと思います。そこで、こういう市民の立場からの病院の評価、こうい う取組みがなされているということを是非知っていただきたいと思います。  質の向上ということですから、今の病院あるいは精神医療の質がどうなのかということがきち っと評価をされないといけないと思います。こちらの『東京精神病院事情(ありのまま)』という のは、それにチャレンジをした1つの取組みでございます。  後ろの方に精神病院の統計が載っておりますけれども、例えば生活保護の方が非常に多い病院 があったり、極めて高い死亡率の病院もあるということが、この統計からわかっております。あ るいは訪問調査のアンケートや聞き取りによって、病院がどういう医療を提供しようとしている のかという病院の姿勢、方針ということも、結構多くのことがわかっております。ただ、これは ある一面というか、統計上の数字でございますので、単純に死亡率がどうだからどうだというこ とで断定はできないわけですけれども、ある程度参考にはなると思っております。  これはその取組みの紹介でございます。  あと、私の意見でございますけれども、今、急性期の医療ではDPCというものが導入されて おります。実施支払制度に直結する、しないという問題はあるとは思いますけれども、そういう DPCの取組みを支払いとはまた別の問題として考えてもいいのかもしれません。一般医療の中 ではDPCの取組みがございますので、そこは1つ検討をしていってもいいと思っております。  また『東京精神病院事情(ありのまま)』の取組みに関連してですけれども、私は精神医療の専 門家がこれまでの努力をしてきた一定の限界というのがあったのではないかと思っております。 そういう意味では、当事者の方々も一緒になって力を合わせていけるような体制を考えていって いいと思っています。前回も発言がございましたけれども、海外では公的な枠組みでトレーニン グを回復者の方々にして、アドボケートをしていく仕組みがございます。そういった取組みを日 本においても是非前向きに検討していっていいのではないかと思います。  専門家が専門的な立場から退院を促進していくという努力も勿論必要ですし、一方で本人の自 己決定、当事者同時の支援ということで自己決定を支援していく。そういう取組みも必要ではな いかと思います。当事者が元気になるということは、今後の日本の精神医療の取組みを進めてい く大きな力になっていくのではないかと思っておりますので、是非そういう活動を進めていって いただければと思っています。  退院促進事業のきっかけとなった大阪の取組みもまさに当事者の皆さん方が病院を訪問して、 患者さんたちと面会をして、そして、いろいろフォローしていったり、あるいは病院のトイレに 鍵をつけてほしいとか、そういうことも含めていろいろと改善の要望をしていったという経過が ございます。やはり国民にわかりやすい医療といいましょうか、公開された病院にしていくこと も非常に重要でして、その取組みの一環として患者さんの回復者によるアドボケートというもの を是非お願いしたいと思います。  もう一つは、保健師、助産師、看護師法の改正がございまして、看護師等に卒後研修が努力義 務化されました。新卒だけではなくて、障害教育の中で精神科の問題あるいは認知症の問題を教 育していく、更に質の向上を図っていくという取組みも今後求められていくと思っております。 それは精神障害の方が精神科の方の病院だけではなくて、一般医療を利用していくということで す。そういう意味からも、精神科に勤める看護師さんだけではなくて、一般医療に勤める看護師 さんたちも認知症のことや統合失調症のことなどを障害教育の中できちっと学んでいくような取 組みも今後必要ではないかと思っております。  最後に以前も私がお話しましたけれども、長期入院をきちっと制限するといいましょうか、そ ういう取組みを是非進めていただきたいと思っております。治療のガイドラインの話が今日出さ れておりましたけれども、治療の有効性、効果と入院が長期化することの弊害、そのことをきち っと真正面から考えていくべきだと思っております。そういう意味で、治療のガイドラインの中 で入院期間についての議論をしていただくことも必要でしょうし、また仕組みとして、例えば1 年を超える入院をどういうふうに考えていくのかということを是非仕組みとしても検討していく 必要性はあると思っております。  『東京精神病院事情(ありのまま)』の中でも、長期入院というのはどのぐらいの期間なのかと いうアンケートをしております。1年以上と答えている病院もございますし、3年以上、5年以 上とか、長期入院に対する認識が各病院ごとにまちまちだということもこの調査から出ておりま すけれども、やはり治療上の効果と入院期間が長期化することによる弊害を真正面からきちっと 議論する必要性があると思っております。  済みません、長くなりましたが、以上でございます。 ○樋口座長  ほかにございますか。田尾構成員、どうぞ。 ○田尾構成員  今回最初に処方の問題が出ていますが、私はこの世界に入った当初から、2剤、3剤を初診の 患者さんに処方するのを見て、どうしてカクテルにするのだろう。これでは何が効いているのか わからないのではないかと思ったものです。今、改めてその感覚がよみがえってきます。自分の 処方行為を一つひとつ確認していくことをせずに、習慣とか勘に頼った処方を続けることの問題 をどのように改善するのか。もし医師の自発的な改善を待つならば、例えば学校教育で徹底して 単剤から始めるように教えていく。あるいは資料にありますが、精神神経学会の専門医制度の教 育に中で、きちんと位置付けていってもらうような方法をとっていく必要があるかと思われます。 専門職の自発性が信じられないのだったら、行政誘導で単剤処方に対して加算をつけるぐらいの ことをすれば少しは進むのではないかと思います。全体に薬物の量を少なくする処方行為を一般 化させて、諸外国と比べて薬剤の絶対量の多い日本の医療を私は早急に改善すべきだと思います。 薬を飲まさせる患者さんの負担を考えると、本当に深刻な問題だと思います。  私は経験上、慢性の統合失調症の患者さんが短命だと感じています。突然死もありますし、肝 機能障害などの問題もありますし、死に至る要因はいろいろありますが、それと薬物との関係が あるというデータも見解も見たことも聞いたこともありませんが、大量投与されている人たちの 体の負担は十分に考えられることだと思います。ましては副作用もあります。お医者さんたちは この問題をもう少し深刻に、真摯に受け止めてほしいと思っています。  それ以外でも、今回の資料では日本の精神医療は医師の資質についても、医療のクオリティー についても十分ではない、改善する余地が多々あるというデータになっています。事実そのとお りだと思うのですが、どこから手をつけたらいいのか。  例えば12ページ、13ページ、14ページにあります認知行動療法などアメリカの教育との比較 ですけれども、力動的精神療法や認知行動療法を医者が学んでも、それを実行する時間がありま せん。外来3分診療というのが今の日本の実態です。患者さんの数をこなさなければ収入には結 び付かないです。これを改善するにはどうしたらいいのか。例えばイギリスはDo処方(今まで と代わりのない処方内容の場合のこと)は看護師ができると聞いています。医師に診療行為にも っと時間を割けるような仕組みをつくれないものでしょうか。あるいは認知行動療法などは、イ ギリスでは心理士を中心にしたコメディカルができるようになっています。現在、日本では臨床 心理士の資格化問題がまだ解決していません。精神医療の質を上げるためには、臨床心理士を精 神科医療、保険のチームに加えることは非常に大切なことだと思います。これも一刻も早く解決 しなければならないことだと思っています。  昨日、うちの利用者が医療機関はオリコンランキングの上位のところを探して行ったというこ とを言っていました。ほかの利用者に対して、セカンドオピニオンを受けるように勧めていまし た。これは小川構成員がおっしゃったこととも関係しますけれども、医療は医者から賜るもので はなくて、自分たちが選ぶものだという意識を患者さんや家族が持てるように、病気についても、 医療内容についても、当事者が勉強できる機会をもっと増やす必要があると思います。当事者に 自分たちのサービスを選ぶ力をつくっていくべきだと思います。消費者が賢くなることで、医療 の質を上げざるを得なくなっていくような流れをつくるべきだと考えています。  それから、早期の資料があるので、これも少し言わせていただきたいのですけれども、早期支 援のための普及啓発について、私たちは今プロジェクトの事業で早期支援を始めて、教育関係機 関を回り始めていますが、やはり非常にハードルが高くて難しい側面はありますけれども、学校 現場が確実に困っているということも実感しています。教員が子どもの問題を感じていても、ど のように親に話していくかが大きな課題だと言っています。まず親が子どものメンタルの問題を 否認している。あるいは親自身にメンタルの問題があって、十分に理解してくれないなどという 状況がある。教員として対処ができないという状況があるようです。教員への教育、啓発、支援、 家族への教育、啓発、支援、勿論当事者に対してですけれども、できることはいろいろあるとい うのが実感です。  大きく国民を対象にした啓発活動は当然大切ですけれども、私たちも自分たちの地域で積み上 げていけること、できることが今たくさんあるんだと感じています。早期支援、早期関連につい てはまだまだ手つかずの分野であるという印象です。これからこの分野での仕事を実践していく ことの重要性をひしひしと感じています。  以上です。 ○樋口座長  ありがとうございました。  良田構成員、お願いします。 ○良田構成員  私は数日前に広島県の家族会に行ってきまして、検討会に出ていると言いましたら、是非検討 会で言ってくださいと頼まれましたものですから、今日はちょうどいいぴったりのテーマなので、 お二人の御家族の方から言われたことを御紹介したいと思います。  1つは、お一人の方は15年間ぐらい子どもさんが医療にかかっているんだけれども、今の先生 にかかって3年ぐらいで非常に満足しておられますけれども、その前の13年間、診断がわかりに くい面もあったんだと思いますが、診断をつけるまでのプロセスと投薬についての説明が全然な くて、勿論聞いても答えてもらえなくて、非常に苦しんだ時期が13年間あった。13年間の苦しみ を忘れられない。是非こういうことがほかの人に起こらないようにしてほしいということが1つ ありました。  もう一つは、ずっと外に出られなくて家に引きこもっている子どもさんを持っている親御さん なんですが、先生になかなかうちから出られないということを3年間訴えているんだけれども、 ずっとお薬が変わらないそうです。先生はうちでおとなしくしているんだからいいのではないか とおっしゃるそうです。治療の目標はおとなしくしているからいいという方向性にするのか、ほ んのちょっとでも社会に参加することに向けるのかによって、治療は随分違ってくるという思い がして、親としては非常に悩ましい状態に現在もあるということです。  こういう現実を皆さんに伝えてほしいということがあるわけですが、それをどういうふうにし たらいいのかということについては、お一人お一人のドクターのことでもありますし、そうでな いドクターの方もたくさんいらっしゃるので、みんながそうだというわけではないんですけれど も、改善していかなければならない部分だろうと私は思います。  今日の資料の精神科の専門医制度のところで、33ページのまとめのところですけれども、専門 医制度の定着を図るということはとてもいいと思います。研修体制の確保等は研修内容の充実を 図るように、学会や医療関係者と連携して取り組むべきではないかとされていまして、学会や医 療関係者も勿論大事なんですけれども、是非家族や当事者、利用者の側の意見も十分取り入れて いただけるような取組みをしていただきたいと希望したいと思います。  以上でございます。 ○樋口座長  ありがとうございました。  ほかにはいかがでしょうか。大塚構成員、どうぞ。 ○大塚構成員  今回、医療の質の向上についてというテーマで、資料のウェートとして、薬のことについて焦 点が当たっていたことについては最初戸惑いも感じたのですが、田尾さんもおっしゃるように、 従来から言われていたことですが、日本の多剤投与の実態が国民に明らかになることはいいこと だと思います。しかし、そこにとどまらずに、なぜ日本が諸外国に比べてこういう状況になって いるのかという要因分析や改善策が必要だと思っています。また、資料の中にも幾つかありまし たが、単剤化に向けて切り替えをした事例の周知というものが、もう少し図られるといいと思い ます。  日本の多剤投与の背景を考えると、いろいろなことを考えてしまうわけですが、現場の実践の 体験の中で少し思うことを言いますと、先ほど田尾さんがDo処方と言われて、すごく懐かしく 思ったんですが、先生方の中には処方変更に対する抵抗感をお持ちだったりとか、実際にお薬が どういうふうに生活の中で効いているかということの処方の効果とか影響について、きちっと認 識されないまま、認識する機会がないまま、材料がないまま診察室の中だけで処方が決まってい くということもあるのではないかと感じています。  一方で当事者にお話を聞きますと、この薬は合わない気がして飲んでいないんだ、捨てている みたいな場面などもよく見聞きをするわけですけれども、それを先生と相談しようといっても、 実際にはなかなか相談が進んでいないという現状もあったりするわけです。そういうことを考え ると、やはり日常生活や社会生活の維持、向上のための処方であったほしいと思いますので、医 療としては生活の侵襲は最低限にして、実際の効果は最大限にというところを目標にして、生活 と処方との関係をもう少しどういった形で取り入れられるかということを検討していただく、そ んなことが改善策の1つだと感じます。  精神療法の在り方について、各種ガイドラインのことが出ていました。これは心のバリアフリ ー宣言のときにも感じたことですが、そういう宣言とかガイドラインなどが出されたことはよく 見聞きするんですけれども、その直後に関係者とか周辺にそういうものが出されたことを知って いますかと聞くと、知っているという答えが余り返ってこないんです。バリアフリー宣言のとき には、本当にそうでした。そういうことを考えると、つくるまでの過程もとても大事ですが、つ くられたものがいかに活用されるか、効果を上げていくかということがとても重要だと考えます ので、活用の普及についての工夫をもう少し図らないといけないと思います。  併せて、クリニカルインディケーター、ちょっと難しい言葉ですが、そういう指標を考えると きに、アウトカムの重要性だけではなく、小川構成員も言われましたが、実際にどういう診療が 提供されているかというプロセスとか中身とか、そういうところの技術やツールがどう活用され ているかということも併せて、特に有効だったもの、優れたものについての周知、事例の共有、 普及とか制度化ということが必要だろうと思います。そのためには、今日持ってきていただいた 『東京精神病院事情(ありのまま)』に現されているような医療の考え方とか姿勢も含めて、もう 少し明らかになることが大事だと思っています。  それと、良田さんと同じ意見ですが、研修のところで、前回広田さんから利用者の体調に配慮 した活用の仕方を考えてほしいというお話がありましたけれども、そこを配慮しつつも、やはり 国や都道府県がやる研修に当事者や家族の方が講師とかゲストスピーカーになるような、そんな プログラムの組み方を考えていただけるといいと思っています。  以上です。 ○樋口座長  伊藤構成員、どうぞ。 ○伊藤構成員  医療の質の向上を考えていく上で、最低基準の設定や診療報酬の評価、また精神科医療審査会 の創設など政府の役割が大きいということを忘れてはいけません。  その上で、現代的な意味で医療の質の向上を推進するか。だれが行うかという点でありますが、 大きく国際的に3つの団体があります。  1つは医療提供者です。これは学会などの学術団体であったり、病院や診療所などの医療提供 者が自主的に質を向上していくという方法であります。  もう一つは、第三者による評価によって質を向上していく方法です。  3つ目は、情報公開をできるだけ進め、患者さんが選べるようにしていくという方法です。  先ほど小川構成員から御紹介いただいた『東京精神病院事情(ありのまま)』、また大阪での活 動は、ある意味で純粋に第三者の評価です。今後は、さらに様々な立場から医療の質を評価して いく仕組みができていくと思います。  ただ、10年ほど前にJAMAという医学雑誌に、医療の質に関する情報の公表が誰にインパクト があるかという研究の総説が掲載されていました。その結論は、情報公開は医療提供者にもっと もインパクトがあるというものでした。医療提供者側が活用しやすい情報の提供を促進していく 必要があると考えられます。  その意味で、医療提供者への医療の質の情報提供について、まだ紹介されていないわが国での 取り組みを補足します。『東京精神病院事情(ありのまま)』ができた1989年と同じ頃、当時の日 本精神病院協会の病院管理委員会がお互いの病院を訪問し、お互いの病院の改善について話し合 う「ピュアレビュー」という活動を始めました。現在まで活発に続けている都道府県支部があり ます。また、この活動で開発された評価基準は、1995年に設立された日本医療機能評価機構の評 価基準に大いに参考にされました。機構は、厚生労働省と日本医師会、その他様々な団体によっ て設立された第三者による評価団体ですが、性格的にはピュアレビュー的な側面があります。  先ほど説明がありましたとおり、2000年に入り、日本精神科救急学会が評価活動を開始しまし た。精神科救急病棟に入院した患者さんの特性や医療内容を毎年調査して各病院にフィードバッ クをしています。近くウェブでの入力する方法も検討していると聞いています。  国立病院機構では、会員病院における医療の質を測定するための臨床指標、クリニカルインデ ィケーターの測定を始めています。  診療所の関係では、大量服薬による自殺未遂者へのケアの質的向上に資するために、地域連携 による質向上のプログラムの検討をされていて、大変期待をしています。  以上のように、様々な取り組みが始まっており、今後は従来の指標を改定し、プロセスの内容 やアウトカムを加味した指標が組み込まれていくことが考えられます。  医療の質の測定と改善は、入院医療を中心に始まりました。保健福祉施設におきましても、同 様の活動が根づいていくことが求められていくと思います。もし5年後に同様の検討会が開催さ れるのであれば、精神保健医療福祉における医療の質に関する資料に基づいた議論がなされるこ とを願います。 ○樋口座長  ありがとうございました。  門屋構成員、どうぞ。 ○門屋構成員  質の問題とは今日のテーマでありましょうが、この検討会全体に流れるテーマだろうと思って いまして、前回、私は精神保健福祉法のことで発言をしなかったわけですけれども、精神保健福 祉法そのものが結果的に現状の精神医療全体、精神保健福祉全体を招いていると思っていますの で、精神保健福祉法そのものの検討が別にあるとお聞きましたので、そこに期待をしているとい うことをまず最初に申し上げておきたいとおりますも。  私は今のお話あるいは小川構成員の話も含めて、実は1988年に日本PSW協会の編集委員長を していまして、そこで是非日本にペーシングとアドボカシーの制度を紹介したいということで、 初めて特集を組みました。カリフォルニアとカナダに2名の方に行っていただいて、その報告を 書いていただいたわけです。知的障害と精神障害の精神病院の中でのアドボカシー、アドボケー トの活動について、あるいは制度について紹介をしたわけです。  私はこの間ずっとこの検討会の中で聞いていて、前回は審査会の話もありましたけれども、私 は外に何らかの力を持つ機関がなければだめだろうと最近は強く思っています。しかし、新たに つくるものかということに関しては、新たにつくらなくてもできる範囲がまだあると言われたこ とが昨年ありました。これは全国保健所長会議の中で、厚労省の退院促進のプロジェクトで話を 頼まれて参加したときに、保健所長の先生方が毎年やっている指導監視の中で、何でこんなに長 期に入院しているということについて指摘できないんだろうか。あるいは何でこんなに大量な投 薬をすることが必要なのか。こういったことについて、今の法律の中でできるのではないかとい うことを発言なさっていたんです。現状の中で、そういうチェックをすることの機能をもう少し きちっと考えるべきだと思っています。  質が担保されるためには、勿論今日の御説明のあったさまざまな専門職の中あるいは病院の中 での課題はたくさんありましょうけれども、当事者たるユーザーの方々がどんなふうに評価して いるのか。私たちから言えば、日常生活の中で生活のしづらさの一部は、薬剤によって引き起こ されていることもたくさんありまして、先ほどの薬を飲まないという人にもたくさん出会うわけ です。私たち30〜40人のケアマネージメントで支えている人たちについては、マネージャーが外 来受診のときに一緒に外来に本人と行って、当然主治医と相談するわけです。こういったことを しないと、本人たちの生活のしづらさというものは改善されていかないことも、現に我々は経験 を積み重ねてきているわけです。こういうことはどこの病院でも受け入れてくれるかというと、 そうではないということも事実であります。  精神医療の質も今日のようなデータだけを見ますと、全体の平均的なことがとられてしまうわ けでして、私は医療の質はかなりいいところと悪いところが拡散してしまったと認識しておりま して、この拡散が大変問題なんだと思います。こういう言い方は失礼ですが、ある一定の地域の 中にいい病院も悪い病院もあって、ユーザーが選択できるのであればいいけれども、そうでない 地域の方が圧倒的に多いわけでして、そういう意味での一定の基準を国の方で設けて、これ以上 問題があることについて検討する、この人が何で長期に入院しているかということについて検討 の俎上に上げるという作業は、今の行政の中でもできるのではないかと思っています。そんな仕 組みをつくらないと、一定の水準の質の担保はできないと思っていますので、是非御検討いただ きたいと思います。 ○樋口座長  広田構成員、どうぞ。 ○広田構成員  『読売新聞』を私の資料として出させていただいていますけれど、精神科の薬の使い方という ところに、施設差ということで、上から3段目に今回の調査では精神科医が多い施設が入院患者 に出す薬の量が少なく、人数が少ない施設では薬の量が多い傾向も見られたと出ているんです。  この間、私はずっと精神病床を削減して、他科並みのマンパワーをつけて、安心して利用でき る精神医療にして、それに見合う診療報酬にしてくださいという発言をしています。いわゆる専 門家のハローワークというぐらい、次から次へとこんなことをやりたい、あんなことをやったら どうかということで、今の政治家、いろんな党がこの国はお金があると言っていますが、私は大 方の国民と同じようにないだろうと思っていますから、なるべくお金を使わないでどういうふう にやっていったらいいかということを考えながら発言しています。いわゆる専門家のハローワー クになっている中で、医者だけはなぜか本音を発言されない。本音を発言されないで、陰で厚生 労働省を脅しているか、政治家のところに行っているか私は探偵ではないからわかりませんけれ ど、本当にここの検討会で本音を言っていただきたい。  今日も私は午前中に、県内の精神病院の院長の何人かに電話しました。私は6年前に骨折して、 フィットネスクラブに行くようになって、うちにいても大体10回ぐらい熱いシャワーを浴びてい るんです。そうすると、クーラーをかけなくても熱いシャワーを浴びて出てくるから、外の温度 の方が涼しく感じるし、健康にもいい。  前に言いましたけれど、うつ病だった15歳の少女が「薬漬けはだめです」ということでフィッ トネスクラブで治しているんです。田尾さんの思いはわかるし、田尾さんをすごく尊敬している けれど、私のすぐ近くにも中学校がありますが、私は自分の世界のことを中学校や学校に行って 宣伝はできない。なぜなら、安心して利用できる精神医療がない中で、被害者を出してしまった ら、人様の人生の責任取れない。自分の人生さえ台無しにしたんだから。まあ、だから、今日が ありますけれども。  そういう中で、本当に言っていただきたいといいながら、結局この場に来て本音で言っている のは私ぐらいで、業界のハローワークにしなければならない人たちには、団体の背景があるんだ ろうと最近は思っています。そういう意味で考えると、シンプルに病床を削減して、マンパワー をつけて、診療報酬をつける。そういうことにして、国民の精神医療に、普通の医療にしてほし い。  今の門屋さんのお話とか小川さんのお話で、確かにアドボケートがあります。私もそういう仲 間を尊敬しています。でも、ほかの医療と同じようにするときに、また20年前ごろから始まった アドボカシー、アドボケイトなのだと思います。それで、何々精神医療人権センター、アドボケ イトと言ったら病院に入れ、入院患者のお見舞い客だと言ったら入れないという精神医療はおか しいと思います。そういうところに出会った瞬間に、国民はこれは違うと思います。  先ほど蒲原さんが見えたから、厚労省は夜10時まで冷房をつけてくださいと言いました。私は 昨日11時まで記者クラブに行って新聞を読んでいたんです。残っていた記者たちと話して、「10 時までにしてもらいたい」と言ったら、「私たちもしてもらいたいです」というから、「あなたた ちの力でしたら」という話をしていたんです。  たまたま8月22日、23日に、農協観光というところが長野県のメルパルク長野で、地域医療研 究会というものを2日間にわたって行うんです。ここに私は行ってきます。行って、厚生労働省 の医政局医事課医師臨床研修推進室長という人が見えますので、どのぐらい精神のことを知って いますかとこの人にお話を伺うのもいいし、ほかの集まっている医療関係者に精神のことを御存 じですかと聞いていくだけで、すなわち、啓発、教育、研修になります。そんなことは先ほどか ら当事者があそこでもやれる、ここでもやれるということで、いっぱいやれますし、厚生労働省 もそうです。  前回か前々回、末安さんが言ってくださったけれども、あのとき私はほかの意見があったから、 末安さんに否定的なことを言っていましたけれど、厚生労働省も当事者の職員を雇用すればいい し、当事者の方はカミングアウトすればいいし、関係者でもいっぱい当事者の方がいらっしゃる から、そういう人がカミングアウトして、自分たちが名乗らないで、患者にだけクローズ、オー プンと言うけれど、みんなが名乗りやすくして、名乗りたい人が名乗ったときに不利益を被らな いのが障害者権利条約だと思います。いかに普通にするか。  それには、木倉さんは広田さん何度もやめてくれと思うかもしれないけれど、やはり謝罪なん です。謝罪があって隔離収容施策の総決算をして、方向転換しますということを言って、今日野 沢さんが見えていないから非常に残念なんですけれど、啓発というのはいわゆる早期支援とか早 期治療の啓発ではなくて、一般に啓発するといったら、マスコミがライシャワー事件の昔から、 精神障害者と呼ばれる人が犯罪を起こすとそれを書き立てるわけだから、マスコミが。NHK、 新聞協会の加盟社100ぐらい、民放労連、全社の解説員が出てきて謝罪する。今まで済みません。 事件報道で精神科の患者さんが入院していたとか、通院していたと報道してきましたが、それが どのぐらい精神障害者と呼ばれる人たちの人権を侵害し、家族の人生まで不幸に巻き込んだと思 わせてきたということをやれば、お金はかからない。野沢さんは毎日新聞の社説で書く。私は神 奈川新聞に行って社説を書いている人におたくも書いてと言う。こういうことは、この辺の人が 新聞社周りをして社説で書いてと言えば、お金を書けないで済む。  お話を伺っていくと、この業界は周りを巻き込んでいくのが好きなんです。徳川幕府ではない けれど、精神の業界を広げるのではなくて開国です。今年で横浜市が開港150周年で、中田宏さ んは辞職しましたけれど。国民のために開国するということです。  この間はある病院の看護師さんに「太陽も見られないようなせつないのはどうなのか」と言っ たら、人手がないという話になった。そこで言われました。病床削減、「人手を増やすのはいいけ れど、広田さん、間違えなく点数が上がらない」と。ここなんです。厚生労働省も頑張って、私 たちも頑張る。そういうふうにして、精神障害者とか精神科を特別にしないで、町の中で普通に 暮らしているときに、精神科の病院に安心してかかりに行けるようにする。  それと、前に自殺を止めるために内科に行ったときに2,000円もらって紹介するというシステム をお話されていましたね。それで私は思ったんです。人が具合悪くなったときに、開業医に行く わけです。うつ病の2,000円をもらう話ばかりではなくて、例えば統合失調症のことをほかの医者 が知っておけば、これはうちではなくて、せっかく来ていただきましたけれども、精神科に行っ たらいかがですかとか、心療内科に行ったらいかがですかというふうに、医療機関のところで紹 介して、それだけの話です。  たまたまある人が、私が外来に座っていたら、耳が聞こえなくなったと言っていました。耳鼻 科とかあちこちに行ってきた。どこに行っても治らなかったけれど、最後に内科の先生が試しに 精神科に行ったらどうですかと言ったら、これが当たって、抗うつ薬を飲んだら耳が聞こえるよ うになったということなんです。そういう意味で、是非いろんな医療機関が精神の病のことを覚 えて、精神に行ったらいかがですかと、お金を取らないで行けるようにしていただきたい。三上 さん、気軽に行けるようにすればいいと思うんです。  それと、上ノ山先生に、何度もいつも発言して申し訳ないんですが、クリニックの医者は精神 保健指定医だけではなくて、精神保健指定医を持っていない人も、入院している患者さんの状態 を知るべきです。だから、年間何時間ということで、定期的に精神科病院に泊まり込みで研修の もいいですね。  私は生活保護制度を使ってますが、ここに来てお金を返しています。社会貢献しましょうとい うことで、夜中の2時までパトロールして、行った先で広田和子さんあてに電話がかかってきて、 ここにいらっしゃる皆さんが知っているよりもっとはるかに大変で、薬を出し過ぎているために ほかの医者に紹介すると、「薬と薬がけんかしていた」というんです。薬と薬がけんかしていて、 その人が寝られなくなっている。  話を戻すと、私はフィットネスクラブに行っていることによって薬を減らしてきています。20 日間、ユーロジンという眠剤を切ったんです。最初2錠から始めて、だんだん減らして切ったら 禁断症状が出て、6月6日ここで検討会が終わったら、吐いて貧血を起こして倒れそうになって、 タクシーで帰ったんです。私も多量・多剤です。そういう薬の中で、切るときに物すごいエネル ギーを使いながら、これはどうなってしまったんだろうか。知らない人だったら内科に行くぐら いの禁断症状を起こしますから、本当にここは初診のところで何とかしないと、広田和子みたい な、ちょっとこの業界で有名な人だってそういう被害に遭っています。  それと、本当にインフォームドコンセントが行われていないし、いろんな形で研究されるのは 結構なんですけれど、特化して精神分裂症とやるんですが、1人の患者に医者が変わるごとにい ろんな病名がつきます。だから、正しい診断ができるような研究をしていただきたいし、正しい 診断をつけたときに、きちんとそれをインフォームドコンセントするだけの時間がとれるように していただきたい。ここは点数なのかもしれない。医者が患者にわかりやすく前向きに言うべき です。  それと、是非当事者というか本人をいろんなところに登用する。先ほど大塚さんが当事者が体 調を崩すと言われたのは、あれは田尾さんが発言した精神医療審査会の話の中で、地方自治体は 精神保健福祉審議会等であっても、本音を発言する委員を外すから、外されたときに自殺とか体 調を崩すとかいろんなことが出てくるんです。そういうリスクを考えたときに、厚生労働省は度 量があると思います。地方自治体はそれだけの度胸もなければ覚悟もない。そういう中に当事者 を入れても、アリバイづくりだけで終わってしまうと思います。こういうところに出てきたとき に話せる雰囲気があって、そして、その人が孤立しないような、ある意味では自殺を防ぐのは孤 立に強くなることですけれど、そういういろんな問題が絡み合っています。  来年は2010年ですから、精神科医療が特別な医療ではなく普通の医療で、当たり前に地域医療 の中に精神医療も入ってくるということを願っております。そういう意味で、この記事を是非お 読みいただいて、なるほど、医者が多いところは薬も少ないんだということで、その辺の本音は ここに何人かいらっしゃる医者がきちんと言う。陰でごちゃごちゃやっていないでということで、 よろしくお願いします。 ○樋口座長  どうもありがとうございました。  後半はかなり時間が必要だろうと思いますので、できれば簡潔に御発言いただきたいと思いま す。  佐藤構成員、どうぞ。 ○佐藤構成員  抗精神薬を処方する立場から一言発言させていただきます。  多剤併用ということが問題になっていますけれども、処方する立場からいいますと、保険の審 査会などでは1つの薬に関しては最大投与量が決まっていて、それを超えると割と認められない という歯止めがかかっているんですけれども、同系統の薬であっても2剤、3剤を処方しても、 何のおとがめもないわけです。おとがめがないですから、自然と剤数が増えていく人もいる。た だ、7剤以上になると少し点数が下がるという若干のことはありますけれども、大勢に影響がな いのでそういうふうになってしまうんでしょう。  最初の方の国際比較のところで、英米系は単剤系が多いです。日本は多剤併用になっています けれども、この辺の薬剤費といいますか、医療費の支払いの仕組みというかガイドライン、制限 に何らかの違いがあるのではないかと思うんですけれども、この辺について事務局あるいは伊藤 弘人先生は御存じですか。この辺りでコメントがございましたら、お願いします。 ○伊藤構成員  支払い方式も違うでしょうし、例えばアメリカですとガイドラインに基づいた医療かどうかは、 保険会社から求められています。 ○広田構成員  もうちょっと大きい声で言ってください。聞こえません。 ○伊藤構成員  聞こえますでしょうか。よろしいですか。 ○広田構成員  OKです。 ○伊藤構成員  アメリカであれば、推奨されている処方になっているかどうかを保険会社がかなり厳しくチェ ックをします。 ○佐藤構成員  その辺のチェックは全く働いていないと思います。我々のところでもお薬を大量に飲んで運ば れてくる患者さんがたくさんいますし、中には1日30錠とか50錠処方されて、同じような薬が 何種類も処方されている方がたくさんいらっしゃるんです。その辺は、ガイドラインをつくった り、医師の善意だけに任せてもうまくいかない感じがしますから、何らかの多剤併用に関する診 療報酬上あるいは行政上のチェックを決めないとうまくいかないという感じがします。 ○樋口座長  山根構成員、どうぞ。 ○山根構成員  質の向上や普及啓発ということについてですが、医学科の学生をはじめいろいろな職種の教育 に当たりながら臨床に携わっていて、一般の医療と同じように(精神科医療でも)専門職が勤務 していけるためには、マンパワーの問題は大きいと感じています。優秀な学生がかなりほかのと ころ(精神科医療以外)に行ってしまう。  これは、大学だから特にそうなのかもしれませんが、医学科全体や医師の間でも、精神科に対 する偏見があり、それが大きく影響しているように思います。専門家自身が精神疾患に対する知 識が十分ない。精神医療がどういう形で行われているのか。ましてやリハビリテーションに関し ては、医学科の基礎教育にもほとんどないのです。リハビリテーション医学という整形外科のリ ハビリテーションは多少ありますけれども、精神科においてはリハビリテーションという概念す ら十分教育されていないのが現状です。  そういう中で、卒後、精神科に行くのは、非常に熱意のある方か「でもしか」のどちらか。悪 い言葉ですが、そういう人たちに、卒後教育をしなければいけないということは大変なことだと 思います。抜本的に解決しようとすると、今の臨床の問題もこうして議論することも必要ですが、 卒前教育の在り方ということをもう一遍考えていただきたいと思います。これは厚労省の問題で はないですが、この国の問題として考えれば、卒前教育をどうするのか、普及啓発そのものに対 するバリアもその辺に大きく起因するのではないかという思いがあります。  将来、医師になる学生や精神科医療に関与してもらいたい学生たちが、精神疾患に対して理解 がない、理解がないだけならともかく偏見を持っている。精神科領域に進みたいという気持ちを あまり持たれないことを、とても残念に思います。簡単なことではないでしょうが、卒前の教育、 卒後の教育をどうするかということを併せて検討しないと、対処療法的に終わってしまうのでは ないかと思います。この「あり方等」をどうするかという検討委員会で考えたことが対処療法で 終わってしまっては、抜本的な改善にならないのではないかという気がします。  それと、多くの専門職種が生まれましたが、相互にそれぞれの役割をほとんど知らずに卒業し ていきます。この辺りについても、卒後に研修ができるのかというと難しいですし、先ほど精神 療法の話が出ましたけれども、教育をほとんど受けてないまま、たまたま診察で面接をしたこと を精神療法といって点数につけるかどうかということを研修医たちは悩んでいるのに出合います。 きちんと研修を受けたある先生もいらっしゃる中で、多くの医師の卵たちがそういうところで悩 んでいる。この辺を何とかしないといけない。  私はその方面の教育には直接当たっていないので、これは医師のみなさんの御意見を伺うしか ないのですが、そういうことを感じながら、今、教育と臨床の場にいます。 ○樋口座長  中島構成員、どうぞ。 ○中島構成員  皆さんおっしゃっていたことなので余り言いませんけれども、1つは多剤併用の問題です。こ の点については、要するに1人の医師あるいは1人の医療従事者が見なければいけない患者数が 多過ぎるということが最も大きな問題ですから、48対1という医療法上の精神科の区別をなくす ということが第一の目標だろうと思います。十分にゆとりをもって患者さんを診ることができれ ば、生活の質に焦点を当てて処方するということは当たり前のことですから、医者ならだれでも 考えていることです。それを考えていないというのは誤解であります。何にも考えていない人が いることはいるんですけれどもね。  もう一つ、治療ガイドラインについてなんですけれども、治療ガイドラインをマニュアル化し ないということは是非気をつけておかないといけないと思います。今の若い人はマニュアルが大 好きです。何も考えないで、自分というものをしっかり確立できていないのに、マニュアルだけ に頼る。これは精神科の治療にはなりません。この点を1つ御理解いただきたい。  それから、一番大切なのは、クリニカルインディケーターをきちんと評価できるようにしてお く。これをネット上でどんどん公表していくことが、ユーザー側からの病院の選別を進めること になると思いますので、その辺に一番力を入れてやっていただきたいと思います。  以上です。 ○樋口座長  長尾構成員、どうぞ。 ○長尾構成員  大体皆さん言われたので同じようなことになると思いますけれども、先ほど中島構成員が言わ れたようなガイドラインというのは1つの指標ではあるんですけれども、それが硬直化しては絶 対にいかぬというのは私も思うところで、ある指針はあっても、それをもう少しフレキシブルに 使えるような形でやっておかないと、治療が硬直化して、よりよい医療がなされなくなる可能性 があるということを言いたいと思います。  確かに多剤投与というのはできるだけ少なくしていく。少ない量でいい効果が表れるというの は当然のことですし、そういう方向ではいっているんですけれども、幾つかの多剤投与になった 経緯というのがあって、すべての多剤投与を完全に否定するのかということになると、ある程度 併用せざるを得ないということも勿論あるし、樋口先生は恐らく御存じでしょうけれども、ある 部分は欧米でも併用療法の有効性が出てきているということもあると思いますので、そういうも ののエビデンスというものをきちっと出しながらやっていく。  今の常識は10年後の非常識ということもあり得る話ですから、そういういろいろなエビデンス に基づいたものをきちっと出していくことは必要だろうと思いますし、我々も外来などでインフ ォームドコンセントをしたり、できるだけ治療についての説明をし、薬をここまで出して、次に 効かなければこれにしますという方向では話はしていきますけれども、そういったものをやる得 る時間も必要だということです。そのためには、以前も出ましたけれども、我々の雑務をできる だけ減らしてほしい。書類書きもできるだけ減らしてほしい、簡便にしてほしいということを是 非ともお願いしたいと思います。  それから、医療機関の評価ということは、先ほど伊藤先生にも話していただきましたけれども、 日精協の方もそういうピアレビューなどをやっていますし、医療評価機構としてある程度受診し ている病院も結構増えています。ただ、医療評価機構がすべて医療の質を評価しているかという と、そうではない部分もあるので、そういうことはもう少し進めていかなければいけないと思っ ております。  先ほど山根構成員が言われた卒前、卒後教育ですが、やはり一般医に対しての精神科の教育、 研修というのは必要なので、今回、臨床研修の見直しによって精神科が一応土俵際で残りました けれども、必須の項目から外された。入院の項目にだけ幾つか残りましたけれども、一般医の精 神科に対する偏見の打破、精神疾患に対する理解のためには非常に大事なことなので、これは厚 労省を挙げてもっと進めていただくようにお願いしたいと思います。  以上です。 ○樋口座長  ありがとうございました。  最後に末安構成員、上ノ山構成員ということでお願いします。 ○末安構成員  私は1点だけです。33ページに「精神科医療の質の向上について」の「検討」がありまして、 私は前から言っていますことと今のお話を聞いていて少し混乱していることがあるのではないか と思います。それは精神科医療におけるガイドラインの作成や普及を進めるべきではないか。患 者等への診療ガイドラインの公開等によって、精神科で行われる医療の概要について、患者等に わかりやすい情報提供を進めるべきではないかと言っているわけなので、前に省からお話があっ たんですけれども、治療のガイドラインについては、学会マターだ。つまり、純粋に医学的に考 えるべきではないのかということがこの間言われてきていますし、そこにエビデンスが必要なん ですというお話になっているんですけれども、国民が必要だと言っているのは、広田さんもずっ と言っていらっしゃるけれども、入院しなければいけないかどうかとか、入院し続けなければい けないかどうかというガイドラインが知りたいんです。  私ども看護師は、入院が決定してきて、患者さんが入ってこられるところからお付き合いをす ることが多いんですけれども、実はその前に外来ですごく困っていらっしゃる御家族や御本人が おられて、その方に介入すべきかどうかということを考えているわけです。その場合、介入の基 に何があるかというと、入院してでも治療をした方がいいのがどうかということです。入院しな いともっと悪くなる、もっと苦しくなってしまうのではないかということを経験則でわかってい るから御提案するんです。そこですごくずれが生じるわけです。  これは前にも言ったんですけれども、厚生労働省が通信、面会の自由について通知を出されて いて、もう15年ぐらい使っているんですけれども、そのときには携帯もないし、パソコンでメー ルする人はほとんどいなかったわけです。でも、今、精神病院に入院してこられる方は大体携帯 を持ってこられるわけです。パソコンを持ってこられて、通信をしたいという方もおられる。そ のことがすごく摩擦になる。何が言いたいかというと、そのときに入院する人には携帯やパソコ ンのメール通信は要らないのか。あるいはそれは治療を阻害するものだ。今どう考えますか。そ れぞれの医療機関が考えるだけではなくて、厚生労働省は国民の健康を考える立場から、通信、 面会の自由を15年以上前に通知で出しているけれども、そのとおりで考えているのか。そうだと したら、憲法違反をしてはいけないと書いてあるわけなので、それは容認しないといけないわけ です。そういう指導をかけなければいけないんです。  ですから、治療のレベルのガイドラインの必要性や数量化するということも非常に重要なんで すけれども、国民が一番知りたいのは、困ったときに入院した方がいいかどうかということを自 分で判断できなかったら、だれに聞いたらいいのか、どこに相談したらいいのか。具体的なこと はネットにはないのかということだと思います。  国民の意識を調べるといういろんなデータをとっているんですけれども、最も困っていらっし ゃることは何かというのは、今の段階ではこれだということをみんなが考えられればいいんです けれども、できなければ役所が指標を出して、国民を守るということをしないといけないのでは ないかと思っております。 ○樋口座長  上ノ山構成員、どうぞ。 ○上ノ山構成員  簡単に申し上げます。  多剤併用とかそういう問題に関して、本来ならば学会で話すようなことをこの場で話されてい るということに若干違和感を感じたりするんですけれども、非常に重要な問題なので取り上げて いただいてよかったと思います。  どうして多剤になるかということなんですけれども、精神科医がたくさん出すということもあ るんですが、内科の先生方がどんどん薬を追加されて、どうしても病気が治らないからといって 専門医の方にリファーされたりするわけです。そのときに我々がすることは、薬の整理なんです。 精神科に行ってよくなったというのは、お薬を減らしていって良くなったということが非常に多 いんです。これは精神科医だけの問題ではなくて、医療界全体の問題かもしれませんけれども、 現状はそういうことだということを1つ御理解していただきたいということです。  学会でこういう問題に関してちゃんとしたガイドラインがあればということなんですけれども、 仮につくられたとしても、我々の世代は余り信用しないといいますか、例えばSSRIなどがで きたときに、大学の先生方がこの薬は画期的だからといってお勧めになられたんですけれども、 そのときには、今、問題になっているような退薬症状やアクティベーションの問題などは言われ なくて、薬屋さんの言うままに宣伝されているようなところがあって、学会のガイドラインもど ちらかというと薬屋のラインに乗っているのではないかという不信感も我々の世代にはまだある んです。たがら、そういうガイドラインをつくるところの権威といいますか、そういうものがも う一つない。だから、それに従ってやっていこうという気になかなかならない。  ところが、最近の若い先生方は見事に単剤でやっておられます。これでもかというぐらいに単 剤でどんどん増やしていかれますので、逆に言えばすごく不安感を感じます。こちら側が入院を 紹介して、病院に行って入院された方で、受け持ちになられた先生が非常に若い先生で、帰って こられたときには処方ががらっと変わっていて単剤になって帰ってこられるんですけれども、そ れがよくなっているかというとそうではなくて、またそのことによるアカシジアなどの副作用を こちらの外来で対応していなければいけないという問題があります。だから、そういう意味で、 単剤の中身をもう少しチェックしていくような必要もあろうかと思います。  厚労省は第2世代の抗精神病薬を宣伝するかのような診療報酬にしてしまいましたけれども、 もし将来このとこによって、抗精神病薬を飲んだために糖尿病になってしまったということで国 家賠償を請求されたらどうなるんだろうかと逆に私は心配したりします。つまり、そういう形で 薬屋さんにおどらされて現在の精神医療施策が進んでいかないようにお願いしたいと思います。  特に最近は新しい注射薬ということで、恐ろしく高い薬が出ています。これが地域医療を充実 させて、患者さんとのアドヒアランスを向上させていくということで非常に宣伝されていますけ れども、例えばハロマンスだと3,000円程度のお薬が2万円だとか、あるいは月に2回打ちますか ら5万円というお薬になっています。 ○中島構成員  簡潔にお願いします。 ○上ノ山構成員  そういうことで、お薬屋さんに対するチェックというものができるような学会機能、あるいは 専門家の機能が必要になってくるのではないかと思います。  それから、もう一つ大事なことで、認知行動療法がいいかのような文章が出ているんですけれ ども、これも定義がはっきりしないんです。認知行動療法の定義のないままこれが進められると いう形の議論はちょっと注意しておかなければいけないと思います。結局そういうことを教育す るところが全然ない。  先ほど来出ていますけれども、精神療法ないしは心理社会的な治療というものに対して教育す る教授がどこにもいない。そういう中で、臨床の医師たちが育ってきているということで、そう いう現状の中で認知行動療法などと言われても、例えば今、私が認知行動療法をやっていると言 えば、そのままやっていることになってしまいます。そういう状況なわけです。だから、そうい う定義、クライテリアがはっきりしないといけないということと、それに対する権威性が必要で あろうと思います。  以上です。 ○樋口座長  ありがとうございました。  それでは、前半の議論はここで終了させていただきまして、この後はこれまでの検討会におけ る議論の整理でございますので、まず資料3について、事務局からの簡単に説明をお願いしたい と思います。 ○野崎課長補佐  それでは、資料3に基づきまして、観点に説明を差し上げたいと思います。  大きく3つございます。  一番下に付いているのが論点整理で、第15回以降の議論に関係する部分を抜き出したものとな っております。  横書きのものが2つ付いております。厚い方は15回から20回までの検討会における主な意見 として、各構成員に御確認いただきまして、これまで事務局としてお示しした検討の方向性とそ れに対応するような主な意見をまとめてございます。  もう一つ、薄い方でございますけれども、これまで検討会の中で、あるべき姿についての議論 をすべきだといったような御意見をいただきました。それにつきまして、我々事務局といたしま しては、昨年9月におまとめいただきました論点整理に基づいて、ひと通り議論をしてきたと考 えておりまして、それを対応表としてまとめさせていただいております。  今回、特に厚い資料で、これまで事務局としてお示しした論点について、まだ御発言いただい ていない内容等がございましたら、それを御発言いただいて、これでいただいた意見の中にもあ りましたあるべき姿ということも含めまして、最後、報告書の議論の中で御議論いただければと 考えております。今日いただいた御意見、これまでの15回から20回までの御意見を踏まえまし て、次回以降、報告書の御議論をいただきたいと思います。報告書の原案を作成した上で、その 御議論をいただきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。  以上でございます。 ○樋口座長  ありがとうございました。  それでは、今の説明にありましたように、これまでお出しいただきました御意見がそこに整理 されておりまして、今日はここに書かれていないものであるとか、修正が必要であると思われる ところについて御意見をいただきたいと思います。  これはかなりのボリュームがございまして、約1時間ぐらいの時間が残っているだけでござい ますので、ここからの議論はこれまでの御意見をいただいてという先ほどの議論とは少し変えて、 ポイントを絞って、ここの点、この意見についてこう追加する、こう修正するという具体的なと ころをお示しいただきたい。そうでないと、単純に平均して、お一人様2分ぐらいしか発言時間 がない状況でございますので、簡潔にそこを御指摘いただく。そして、繰り返しになるところは 避けていただくということでございます。  お手元にある資料は、最初のところから、精神科救急医療から始まりまして、大体◆で示され ているものがございますが、どれに限ってとしていますと時間がなくなりますので、大ざっぱに 区切りまして、およそ前半と後半ぐらいに分けて御意見をいただこうかと思います。前半という のは、21ページのところまでで、次のところから認知症が始まりますので、認知症の前ぐらいま でのところを前半として、そこに追加の御発言をいただくということで、その後、後半というこ とにします。必ずしもそれにすべて厳密に縛ることはいたしませんので、後ほどまた前に戻って いただいても結構でございますが、とりあえず21ページぐらいまでのところの追加発言をいただ きたいと思います。よろしくお願いします。  門屋構成員からいきましょう。どうぞ。 ○門屋構成員  15回の時点で、医療の中のケアマネージメントとACTということについて発言をさせていた だいておりますけれども、ちょっと繰り返しになります。 ○樋口座長  具体的にはどこのページですか。7ページ辺りですか。 ○門屋構成員  7ページ以降のことなんですけれども、私はケアマネージメントというものの位置づけを医療 の中で位置づけるというよりは、生活、要するに人生の中で病気を抱えながら生きていくという ことの質を高めていくためには、ケアマネージメントという方法も支援の仕方の1つの方法だと 思っています。そのときには生活ということですので、地域の生活支援の中にその方法論がある ということについて位置づけるべきで、医療の中に位置づけるのではなくて、生活の中の一部と して医療が活用されるということをはっきりとさせておいてほしいと思っています。医療がどの ように連携するか、協力するかということの視点で書かれることは構わないんですが、これだけ を取り上げられますと、医療の中でしか、あるいは医療が率先して行うものという位置づけは少々 誤解を招くのではないかという意味で、そのことだけを申し上げておきたいと思います。 ○樋口座長  品川構成員、どうぞ。 ○品川構成員  門屋構成員と関連したところで6ページなんですが、やはり私もこの資料を見まして、ケアマ ネージメントのことに関して、いま一つ訴えが弱いのではないかと思っております。相談支援事 業者がケアマネージメントを行えば、本当は地域移行というものがスムーズに行えると考えてい ます。地域の受け皿ということがよく問題になっていますけれども、ケアマネージメント体制が 動き始めたら、それもすべて有効に進むと思います。  今は大きなケアマネ体制づくりにとりかかっておりますが、小さなケアマネ、個々のケアマネ ージメントの体制も動き始めなければ、車の両輪のように一緒に動き始めなければケアマネージ メント体制の確立はできないと思います。  それと、ここで地域移行支援という言葉がよく出てくるんですけれども、これは長期入院の患 者さんではなく、家族だけで支えられている地域で暮らしている方や社会資源の利用もなく引き こもり状態の方がこれらの地域での生活を続けられるための支援というのが、このケアマネージ メントシステムだと思っております。 ○樋口座長  ありがとうございました。  ほかにはいかがでしょうか。末安構成員、どうぞ。 ○末安構成員  18ページから身体合併症と21ページの総合病院精神科の在り方についてなんですけれども、1 つは総合病院精神科が重要だということは繰り返しこの中でも出てきているんですが、実際には 省の方で把握されていると思いますけれども、総合病院もしくは大学病院精神科病棟の閉鎖ある いは縮小というのが著しいスピードで進んでおります。中島先生もお話になったかと思いますけ れども、県立病院、公立病院、そのスピードは惨憺たる状況としか言えないようなことがありま す。  勿論いわゆる総合病院、大学病院に精神科の病床があった方が、患者さんが最初にアクセスす るのにもいいというレベルのこともございますけれども、それと同時に、その前のところにあり ます合併症医療を行うに当たって、合併症医療のシステムは各県も非常に努力されておりますし、 単科精神病医療の中に合併症医療を充実するということと、近隣の一般化医療のところとの協力 関係を非常に緻密にというか、熱心につくり上げられているところもあるんですけれども、残念 ながら、精神障害者の方たちの高齢化はそれを追い越す勢いがございまして、私は前の発言の中 では、療養病床にそういう方たちが結構入っていらして、医療費が丸められているので、単価が 高い鎮痛系の薬が使われなかったり、本来は引き続き治療薬を投与しなければならないのに抑制 されている現実が起こっています。これは2つの方向があります。  1つは、精神障害者の中で高齢者の方の合併症医療、単に合併症医療ではなくて、そこを綿密 に見ていくべきではないか。漠然と合併症医療というのではなくて、高齢化に伴う合併症医療に ついて統計もきちんと使って把握して進めていくべきではないかと思いますのと、やはり総合病 院に一定の役割、合併症医療を担うという役割を国家政策で進めることによって、病床を復活し ていく。つまり、一言で言えば、単価が安いから病床閉鎖になっています。ですから、その単価 の問題をクリアーすることも、現実問題としてやっていただきたい。  その場合、療養病床の方もそうですし、総合病院の方もそうなんですけれども、病棟1単位を 何床でとらえるかということです。これも国家政策でやるべきだと思います。無理があるならば ユニットということを考えて、高齢者の方でできることが精神科ではなぜできないのかというこ とも考えるべきだと思いますし、全体を動かすのが難しければ、個別に考えていくということで す。それは永遠に続けろということではないですので、向こう5年間とか10年間の次元で考えて いってもいいことだと思います。それぐらい丁寧に医療をやっていただきたい。高齢の精神障害 者の方たちを大事にするということも含めて、それは同時にそこで働く医療従事者を大事にする ことでもあるので、そのことを進めていただきたいと思っております。 ○樋口座長  山根構成員、どうぞ。 ○山根構成員  今のことに関連してですが、総合病院の中における精神科医療というのは、決して精神疾患に 対する医療だけではありません。合併症を含めた包括的な医療と同時に、精神科医療の持つリエ ゾン機能ということをきちんと打ち出していく必要があると思います。特にそれぞれ専門分化し ていく中で、我々のところではがん病棟が始まりますが、そこでの早期リハビリテーションとい うことになると、リエゾン機能抜きには考えられません。そのときに精神科医療の持っている技 術、知識が生かさせると思います。  しかし、今のようなマンパワーだと精神疾患に対する治療そのものに手がとられて、リエゾン どころではないというのが現状です。大学だから多少人員に余裕があるのでできていますが、そ ういう意味合いでの精神科医療の役割を見直すことが、普及啓発という、精神疾患に対する誤解 を改善していく役割になるのだろうと思います。 ○樋口座長  広田構成員、どうぞ。 ○広田構成員  2ページ目の下から3つ目の○で「ソフト救急でも精神保健指定医が必要だが」のところに「ハ ード救急だけでなく」を加筆です。そして「不足しているので、確保できる施策化」です。いろ んな内容については前に話しています。  これから、4ページです。PSWのことで救急のところで話していますが、宿泊研修だけでは なく、先日ある大会に勉強に行っていまいりましたけれど、何で精神保健福祉士の質が低いのか というと、いわゆる教員の質が低かったということがよくわかりました。教員に当事者を入れる ということでお願いします。  21ページです。総合病院のところでは時間がないのではしょりますが、一番下から2つ目です けれど、広田構成員とあります。「どんな病気になっても、どんなけがをしても、安心してその人 が必要…」というところに、総合病院が既に16対1の医師の配置になっているにもかかわらず、 安くて、全国的に精神は総合病院の中で嫌がられています。先ほどの偏見とか理解がないのでは なくて、嫌がられているわけだから、嫌がられている原因を取り除くために16対1になっている 総合病院の精神科の点数を引き上げること。  以上です。 ○樋口座長  ありがとうございました。  ほかにはいかがでしょうか。伊澤構成員、どうぞ。 ○伊澤構成員  普及啓発に関するところなんですけれども、ページでいうと16ページです。社会的偏見とか差 別の目を早くつむという観点から、学校教育現場におけるプログラムの実施というのは非常に大 事だと認識しております。  昨年8月にこの検討会でも紹介がありましたけれども、イーライリリーが統合失調症の方々に どう接するかみたいなことを含めたビジュアル教材を作成したというお話がありました。それを 試行的に中高生を対象とした授業を行ったところ、受講前と受講後では非常に大きく感想が変わ ったそうです。優しい心を持って支えることが大事だということが寄せられていたり、そういう 意味では視覚、ビジュアルで訴えていくことの浸透力や効果は非常に有用だと思います。そうい うことを手立てとして、もっと教育現場で生かす方向性を強く持つべきだと思います。  同時に、以前田尾構成員問題おっしゃっていましたし、ここの中にも書かれておりますけれど も、要するに出前とか出張の講演や講座は、当事者や関係者が教育現場に出向いていって、そこ で生の声を伝える、現状をお伝えする機会を意識的に持っていく必要性があるのではないかと思 います。  地域では教育委員会のバリアが強くて、なかなか活動がしづらいというところも当然あるんで すけれども、それは大もとになっている文科省と厚生労働行政がしっかり意見の調整、突合する という大きく背景をつくり出していかないと、その辺は現場では動けない。そこはしっかりおり 込んでいく必要性があるのではないかと思います。行政セクションを超えた共同体制をしっかり つくることが大事だと思います。  それから、資料17ページに地域移行の観点で、普及啓発のところを記述した部分があるんです けれども、一般社会への普及を図っていくときに、情報の発信の媒体をどうするかというところ は絶えずいろんな議論がありますけれども、そのインパクトツールとして着目していただきたい のは、普通の町中に設置されている社会資源というか、作業所とか支援センターになりますけれ ども、そういうところをもっと有効に活用していく手立てがあるのではないかと思っております。  実際、既にいろんな営みが行われていて、日常的には団体の機関誌やニュースレターなどをこ さえて地域に配付したり、非日常的には季節の行事やイベント、市民祭りに参加してブースを構 えて物品販売などを中心としながらも、活動紹介や精神保健福祉の情報発信をしているという実 情もあります。その辺の情報発信力を普通の町中に存在している事業所がしっかり担っていくと いうことは、市民感覚に訴えていくという観点からもとても大事だと思っております。その辺が よけいやりやすくなるような条件整備を念頭に置きながら進んでいければいいと思います。  もうちょっと言うと、そういったことをおり込みながら実践していない事業所があるのであれ ば、ある意味では社会的使命としてきっちり課していくような、そういう強さを持った流れもつ くっていく必要性があるのではないかと思います。  以上です。 ○樋口座長  ありがとうございました。  ほかにはいかがですか。広田構成員、どうぞ。 ○広田構成員  啓発のところで、本人が名乗ったときに、非常にポジティブな名乗り方をすれば相手側も印象 をよくしますけれども、ネガティブに名乗ると非常にネガティブになりますから、本人、家族、 関係者の自己啓発というか、流行の最先端の精神疾患ですとか、流行の最先端の精神疾患の家族 です、流行の最先端の人たちと関わる仕事ですということをやればいいと思います。 ○樋口座長  ほかにはいかがでしょうか。坂元構成員、どうぞ。 ○坂元構成員  10ページの保健所というものの在り方なんですが、これは広田構成員も言ったと思いますが、 自治体によって非常に様々であります。例えば横浜みたいに360万で1か所しかないというとこ ろもありますが、保健所の所管地域は自治体により本当に様々であります。 ○広田構成員  18か所です。 ○坂元構成員  1か所なんです。行政上は1か所です。大阪市も多分そうだと思います。  そこには、保健所というものが自治体によって所管する地域や機能が様々になっている問題が あります。この資料の中に保健所の機能と一言で書かれても、ほとんど実情にあっていないとこ ろもあります。精神保健福祉と保健所の機能のあり方をもう一度整理しないと、自治体も対応に 困ると思います。保健所の数が減ったのは、厚生労働省が保健所の数が多過ぎるということで、 人口35万当たりに1つぐらいでいいと言い出したのが発端で、それに対して自治体の方も待っ ていましたとばかりに保健所を真っ先に組織再編の対象にして、どんどん数を減らしていってし まったということも聞いております。そこには其々の自治体なりの理由はあったと思うんですけ れども、今では現実に保健所というものは人口単位から見たら、自治体によって本当に様々であ ります。精神保健福祉センターと保健所の機能と一言で言っても簡単ではないと思います。一度 保健所における精神保健業務を自治体ごとに整理しないと、実際に自治体によって実情がかなり 異なってしまっている実情を、是非厚生労働省の方に整理していただきたいと思います。 ○樋口座長  田尾構成員、どうぞ。 ○田尾構成員  11ページの訪問看護についてなんですけれども、この前、言いそびれたんですが、病院からの 訪問看護は除外してもらっていいんですけれども、ステーションからの訪問看護を相談支援事業 の相談支援員がマネージメントするサービスとして、その中に位置づけられないかと思っていま す。相談支援事業のサービスの利用計画は、現在、自立支援法のサービスを中心に作成すること になっていますけれども、ステーションの訪問看護師も利用者についてのほかとの連携や情報を 必要としています。ただ、それを独自に行っていくのは非常に負担が大きいと思います。ですの で、そのコーディネートの相談支援事業の中で行っていくのが私はふさわしいのではないかと思 います。恐らく地域へ出てくる訪問看護師さんたちもやりやすく、地域がうまく機能するような 形になるのではないかと思っています。  それから、先ほど門屋構成員や品川構成員もおっしゃいましたけれども、ケアマネージメント についてです。私たちの事業所は委託は受けていないんですけれども、昨年度の国のサービス利 用計画作成がうそのように、利用ニーズがあるということを、今、痛感しています。この事業で どんなことができるのかというようなことが知られていない。高齢だとケアマネージャーを通し てサービス利用を受けるということは当たり前になっていますけれども、今の障害では何をして くれるのか、どんなことなのか、みんなよくわかっていないという状況があるように思います。  私たちがこの事業をやってみて、一番時間がかかるのはサービス利用計画をつくることではな くて、つくれるようになる関係をつくるところなんです。そこまでが一番時間と労力がかかると 思っているんですけれども、そういうことも含めて、この事業がもう少し皆さんに浸透するよう になるといいと思っています。  以上です。 ○樋口座長  上ノ山構成員、どうぞ。 ○上ノ山構成員  田尾さん、今のことで質問です。相談支援事業と訪問看護ステーションとの関係をもうちょっ とわかるように教えていただけますか。 ○田尾構成員  ステーションの訪問看護というのは、病院から依頼を受けて訪問看護をして、その結果を病院 に返すという形になっています。だけれども、実際にその人の訪問看護があった方がいいのでは ないかというニーズや判断というのは、地域側で起こってくることが多いと思います。例えば私 たちがこの人を訪問看護に入れたいけれども、病院からの訪問看護では遠いからステーションを 使いたいということで出てくることが多いんです。病院は遠くへ退院した人の訪問看護や地域の 生活まで、正直言って積極的に見ようという感じではないと思います。むしろ、地域で一緒に存 在している私たちがこの人を訪問看護でフォローしてほしい。そうであれば、地域の相談支援事 業、ケアマネージメントの中に包括して見ていく方が、その人の地域生活の支援がしやすくので はないかということです。 ○上ノ山構成員  田尾さんのおっしゃっていることで、以前、私も危機介入のことでお話をしたことがあるんで すけれども、基本的には8ページのところです。厚生労働省あるいは公的な機関が責任を持って メンタルヘルスの問題に取り組んでいく姿勢をまず明確にすべきではないかということで、たと えば危機介入に関するシステムについてどのようなことを想定しているのかということを明らか にしてもらわないと困ります。私がこの検討会に期待しているのはそこで、こういう新しいシス テムができましたということを、是非結論として出るような方向に持っていってほしいと思いま す。  そのときには、田尾さんは地域で何万人に何件ぐらいの危機介入チームがあったらいいという ことを御提案されていましたけれども、私もそのように思いますし、その場合には、できたら保 健所などを中心にそういうチームができていくとう形ができればいいと思います。  もう一つは、ベッド削減の問題との関連でいいますと、やはり公的病院が自分たちのベッドを どのように削減するかという道筋をはっきりさせていく必要があると思います。これはベッド削 減という意味だけではなくて、機能の分化、強化ということになりまして、今、持っている人員 を地域に配置して、危機介入チームあるいは早期支援チームとして組織し直すという形になるか と思うので、かなり大きな改革になるかと思います。そういう積極的な提案を含んだとりまとめ にしてほしいと思います。  以上です。 ○樋口座長  できるだけ具体的にこういうところをここに加えてくださいという提案にしていただきたいで す。今のは一般論のお話になってしまっているので、できるだけそうしてください。今の御発言 は結構ですけれどもね。皆さんもそういうふうにお願いします。  小川構成員、どうぞ。 ○小川構成員  障害者権利条約の関係で、日本政府が批准に向けて動いていると思いますが、その関係で多少 遅れている精神保健福祉施策を制度上変える必要性があるのかないのかということは、もう少し 議論していいと思っています。  例えば過去にも発言ましたけれども、19ページの身体合併症医療のところでも、ある人は一般 病床で医療を受けられる。だけれども、同じ糖尿病であっても、精神病床で同じレベルの医療が 受けられているかというと、そこは問題が多々あったりします。  要するに権利条約、どのような疾患や障害を持っていても、同じ医療を受けられるということ でいうと、いろんな問題があるのかないのかはきちっと再点検する必要性があると思います。  以上です。 ○樋口座長  三上構成員、どうぞ。 ○三上構成員  早く認知症の方にいってもらいたいと思っているんですけれども、先ほど訪問看護の話があり ましたので、少し意見を申し上げます。  精神科訪問看護につきましては、さまざま難しい問題がありますけれども、今、田尾構成員か らステーションでいく方がうまくいくのではないかというお話がございましたが、医療機関から 行く精神科訪問看護とステーションの訪問看護の実態はかなり違っていると思います。やはり重 度の方は医療機関から直接行っている方が多くて、2人ではなくて3人、4人でかなり多くのス タッフを連れて行っている場合が結構多いということです。  また、医師の指示書なしに訪問看護ステーションが独自に訪問看護を行うということはやはり 危険が伴うので、ここは形としてはケアカンファランス等が十分に行われるようなシステムを充 実していくという方向で進める方が大切で、今、田尾さんがおっしゃったことも意見に出たこと がありますけれども、そういった方向にしていただきたいと思います。 ○樋口座長  田尾構成員、どうぞ。 ○田尾構成員  今のことは誤解だと思います。私はステーションの訪問看護の方がうまくいくとは思っていま せん。ただ、医療機関からの訪問看護は近隣でないと行ってくれないんです。遠くの方に退院し た人たちに関しては、どうしてもステーションを使わざるを得ないということを申し上げたんで す。  それと、勿論医師の指示書は必要だと思っています。 ○三上構成員  この話は精神科訪問看護に関する検討会等でも出たのですが、遠くの場合といっても、いわゆ る何百kmというわけではなくて、十数kmの範囲を想定しているというのがその中の意見で出て きましたので、医療機関が全然ないところでの訪問看護をお願いするという話なんですけれども、 例えば5万人などのある一定の都市の近隣というところで、行こうと思えば30〜40分でも行ける 程度のところだけれども、少し遠いのでステーションにお願いしたいという形だったと思います。 北海道の例などでいろいろと出たことがあるんですけれども、数百kmという話ではないという ことでした。 ○樋口座長  中島構成員、どうぞ。 ○中島構成員  精神科救急のところなんですけれども、救急体制について現在一般医療と精神科医療の整合性 がきちんととれていない。これは地域医療計画の中へ精神科についてもきちんと入れるというこ とです。これは入れられている都道府県もありますが、入っていないところも結構多いんです。 ですから、これは厚労省の方からきちんと入れるように指導をしていただきたいということを1 項目追加してください。 ○樋口座長  前半はよろしいですか。高橋構成員、どうぞ。 ○高橋構成員  8ページのACTのところですけれども、多分、山根構成員の意見の中に実際にACTを試み て、不足していると思うのはショートステイなど入院にまで至らなくても少し休める場所があれ ばいい。地域の中のシステムとして整備すべきという御意見があって、私もそのとおりだと思い ます。  実際に私の施設でショートステイが2部屋あるんですが、自立支援法に移行してからほとんど 利用がなくなったんです。というのは、システムが変わって、障害程度区分の認定を受けないと 市町村は給付決定を出したがらないというところがあって、ショートステイの利用が想定される 例というのは、緊急避難的なことや急に冠婚葬祭であったりとか、そういうものが発生して利用 したいということがあるんです。すぐに利用できるとなっているんですが、多分、市町村の判断 になってしまっているものですから、実際に給付決定が下りるのに1週間、2週間待たないとい けないということで、結果的にどうなるかというと、社会的再入院というか、そういった形で病 院に入院してしまうというケースが結構見られるので、その辺りは少しシステムをきちんと市町 村の方に指導するとか、もっとやわらかくする形に変えると、もう少しここは動いてくるのでは ないかと思います。  それと同時に、ショートステイを退院促進事業などでも利用できるようにするとか、あとショ ートステイというわざわざそういった部屋を確保しなくても、例えば生活訓練施設とか入所型の 施設で空き部屋がある場合は、それもショートとして使っていいとか、よくわかりませんけれど も、そういった柔軟な対応ができると、もう少しこの辺りは動いてくると思いますので、意見と して述べさせていただきたいと思います。 ○樋口座長  ありがとうございました。  御発言いただきますけれども、時間の関係もありますので、この後は後半も含めてお願いいた します。前半に戻っていただいても結構ですが、後半も含めて御発言いただきます。  大塚構成員、どうぞ。 ○大塚構成員  4ページの3つ目の○のところですけれども「○ 一般救命救急に是非ソーシャルワーク機能 を置いてほしい」と私の発言がありますが、下には長尾先生や長野先生の御批判もありますけれ ども、追加をしていていただきたいと思います。「一般救命救急に自殺予防対策とか児童虐待防止 などの課題に資することが可能なように、社会的な背景や生活アセスメントができ、適切な連携 が可能な視点でソーシャルワーク機能を置いてほしい」ということを追加してほしいのが1点で す。  ページ数は申し上げられませんし、ケアマネのところで、門屋さんや田尾さんが言われたこと と重なりますけれども、ケアマネージメントが生活全般についてのマネージメントをするという ことに関しては、是非マネージメントをするサービス資源の中に医療保健の資源も活用できるよ うな形を考えてほしい。  一方で、医療機関内で提供するサービスのマネージメントについては、是非多職種チームでし っかりとチーム医療を提供する観点からの医療機関内マネージメントの在り方、定期的にケアカ ンファレンス等をしていくという仕組や仕掛けを、是非診療報酬で誘導してほしいということを 盛り込んでいただければと思います。 ○樋口座長  ありがとうございました。  三上構成員、どうぞ。 ○三上構成員  22ページのところで、下の枠の認知症の有病率云々と精神病床あるいは介護施設の入所機能の 必要量の検討の部分で、さまざまなことが言われておりまして、認知症に対しまして、精神病床 を入院機能として使うかどうかについては、これから議論をする必要があると思いますけれども、 基本的にはある病床を有効に使うのがいいのではないかというのが私の意見でございます。  特にこれから高齢化が進むわけですけれども、その中で認知症の数は非常に増えてまいります。 現在でも日常生活自立度3以上の方は100万人おられまして、これが将来200万人になる。100万 人のうちの30万人が自宅におられて、残りの70万人はグループホームや老健施設あるいは精神 病床等に入院、入所されているという実態でございます。これから独居率が非常に増えてまいり ます。高齢者の4分の1以上が独居あるいは2分の1が老老世帯ということで、家族介護という のが全く期待できない状況になる中で、やはりどこかに入院、入所する施設が必要であるという ことは確実であります。  日常生活自立度3以上の認知症患者さんは200万人に増えることが予想されておりますが、居 宅できる方は現在の30万人より増えることはないと思いますので、恐らく170〜180万人は施設 か入院を必要とするのではないか。その中で現在ある精神病床を統合失調症だけを対象に削減し ろという話はちょっと待っていただいて、今ある施設、精神病床を認知症対応で使っていただけ ればと考えます。  特に精神病床は15対1を基本的な看護単位でやっておりますけれども、今、認知症を中心に見 ておられるところも大体それぐらいで十分見られる範囲ではないかと思いますし、現在の精神病 床の機能で認知症を見るということを十分に検討していただければと思います。  以上です。 ○樋口座長  ほかにはいかがでしょうか。田尾構成員、どうぞ。 ○田尾構成員  29ページの気分障害についてです。私たち自立支援法のサービスの中で、うつの復職支援を始 めたんですけれども、非常にニーズが高いと感じています。うつあるいは気分障害に特化した地 域のサービスはほとんどありません。でも、この疾患は、この新聞では90万、100万近いと言わ れています。早期の支援も同じですけれども、医療にかかり服薬するだけでは実際の回復には至 りにくいです。真に社会的なサービスあるいは就労支援といった具体的なサービスが大切になる だろうと思います。うつの人たちに対してそうしたサービスをこれからもっとつくっていくこと が必要であると思います。  29ページの「検討の方向性」の中に、認知行動療法についても書いてありますけれども、認知 行動療法なども事業所でやることは十分に可能だと思いますので、そういうことをこれからもっ と進めていく、結果を出していくことを目指してもらいたいと思います。 ○樋口座長  ほかにはいかがでしょうか。伊藤構成員、どうぞ。 ○伊藤構成員  具体的には38ページの精神科医療機関における従事者の確保についてのところです。意見とし まして、いわゆる認知症の入院医療の仕組みは、これまでの精神科の入院医療に追加する役割な のではないかと思います。入院医療に携わってきた職員を活用して、地域での医療を推進すると いう方向の検討が必要であり、加えて認知症の入院医療の検討が加わるのではないかと考えてい ます。 ○樋口座長  門屋構成員、どうぞ。 ○門屋構成員  32ページの上ノ山先生の御意見は「○ 精神科特例に関してきちんと見直すスケジュールを教 えてほしい」という質問になっていますけれども、これは少なくとも最大の期限できれば、向こ う10年以内に特例はなくすという宣言を厚労省がなさって、取り組むべきスケジュールをきちん と決めていく。ですから、特例というのは特別にその時代にやむを得ずつくったものということ ですから、広田さんもよく言っているように、普通の医療に戻してくれというということについ ての担保はちゃんとした方がいいと思いますので、このことだけは是非お願いしたいと思います。 ○樋口座長  末安構成員、どうぞ。 ○末安構成員  今の門屋さんのお話のある意味続きなんですけれども、22ページ、23ページの認知症のところ で、今日、長野先生がおいでなっていないのであれですが、あと伊藤構成員も先ほど言われまし たけれども、現行の精神保健福祉法と診療報酬体系の中で認知症の患者さんを見ていくことの危 うさということを看護師の立場では感じます。  例えば門屋さんからは普通の医療にというお話がありましたけれども、ベッドの数です。診療 報酬上60床でやっているところが、今どんなに苦労しているかは言うまでもなくおわかりになっ ていると思いますけれども、ときにはそれを超える病床で精神科医療を展開しているところに認 知症の患者さんと精神保健福祉法で治療が必要な方たちが混在していくという状況をどう考えて いくのかというと、先ほど三上構成員が15対1でとおっしゃられましたけれども、60床で15対 1と考えるのか、例えば30で床15対1もしくは13対1という最低のラインの看護体制で行って いくのかということは全く別な次元の問題になります。  つまり、現行法といっているのは、診療報酬で人員体制だけではなくて、隔離身体拘束の指示 の問題も既に出てきていますけれども、認知症の方を外すべきだという御意見も出ていましたが、 現行の精神保健福祉法の中でやる場合、それが技術的に可能なのかどうかとか、あるいは精神症 状のある方と認知症の方と純粋に症状を診断するということで見たら、何が違うのか。何が違う のかというのはケアをしていく点では隔離や拘束の問題も併せて考えていかないと、単に現在最 も問題だから入れていくということ、認知症の方を入院させていくというふうには単純にはなら ないのではないかと思います。 ○樋口座長  広田構成員、どうぞ。 ○広田構成員  4ページ目ですけれど、上から2つ目、話し相手がいれば何とかなる相談支援事業がメインで あるというのはおかしいというのは、ずって思っています。本人がコミュニケーション能力をつ ければ、いろんな人と話ができる。そういう場合に相談員がよく抱え込んでいますが、ここはピ ュアサポートとかピアサポーターとか、ピアカウンセリングという言葉が出てきたんですが、全 体的に行政も医療従事者も福祉従事者、すべての関係者が本人のピアサポート、ピアカウンセリ ング、家族のピアカウンセリング、ピアサポートの効果の可能性を信じるということがいろんな ところに入ってくればいいと思っています。  たまたまこの間病院に行って社会的入院の患者さんに会いましたが、この方はむしろ院内デイ ケアから開始した方がいいのではないかと思いました。ですから、そういう場合、院内デイケア からスタートできることが認められるようなことも入院患者にとっては必要だと思います。  それから、友人が言っていました。私が前回病棟を縮小して、空いた病床を国及び地方に一旦 借り上げて、通院患者と入院患者が交流できるようなピアサポーターがいいといったら、「広田さ ん、精神病院はそこまで口を出してくる。絶対に出させてはいけない、管理させてはいけない」 と言っていたんですけれど、そういう意味でいうと、何でそんなにケアマネージメントなどをご ちゃごちゃ言っているんだ。所得の保証だと言っていました。私は日医と日精協との闘いになる んだと臨んできましたけれど、まさにそうだと思います。是非認知症を空きベッドで埋めるよう な施策を打ってはいけない。認知症の社会的入院を精神科に置いてはいけない。  それをやっているうちは、国民から日本の精神科医療は困ったときには、精神病者監護法以来、 近代国家になるに従って、精神病院に閉じ込めて、町の中をきれいにする。そういう役割をとっ てきた。今度は認知症かということになりますから、是非そこはやめていただきたい。 ○樋口座長  三上構成員、どうぞ。 ○三上構成員  今、精神病床で認知症の患者を受け入れるということに対する問題提起がございましたけれど も、それならばどうするのかということです。一旦精神病床を削減した上で、認知症を受け入れ る施設をまたつくるということも1つの手かもしれませんが、これは非常に資源の無駄遣いでは ないかと思うので、有効利用していただいたらどうか。それを考えてください。単に削減するだ けではなくて、これから増えてくる認知症への受け皿のニーズに対してどう応えるかということ です。  精神病床というのは、基本的に15対1ではまだ足らないという話もございますが、現在、認知 症を受け入れているところは、グループホームと老人保健施設の専門と特養と精神病床ですから、 その中で15対1というのは一番手厚い看護体制になりますので、それで受けたらどうかというこ とを申し上げているだけでございます。 ○樋口座長  小川構成員、どうぞ。 ○小川構成員  15対1が手厚い配置だという話ですけれども、それはあれですね。 ○三上構成員  いわゆる受けているグループホーム等の中での話です。 ○小川構成員  例えば特別養護老人ホームでも3対1なわけです。実質配置は15対1。例えば45人の入所者 がいて、3人のスタッフがいるということです。大体日中の活動を充実させようと思いますので、 夜間は3人ではなくて2人とかそういうことで配置するわけです。15対1というのは、45人に3 人です。45人に3人ですけれども、日中活動を充実させるということで、日中を5人にして夜間 は2人にするということで、施設は大体やるわけです。そうすると、例えば夜間にのどにつまら せるとか、あるいはトイレに誘導するとかおむつを交換するとか、食事の介助をするとか、本当 にひどい状況なんです。  特別養護老人ホームでもそうですし、グループホームでもそうですし、実際問題まだマンパワ ーは足りないです。15対1というと、そうかと思うんですけれども、実際の場面を想像してみて ください。本当にそれが手厚いというか、それが標準的な今の基準になっていますけれども、特 別養護老人ホームのベッド数に応じて基準があるわけですけれども、100床で大体3対1で、要す るに40年以上基準は変わっていないんです。特別養護老人ホームもそうですし、身障の施設もそ うです。40年以上前から全然基準が変わっていない。ユニットケアの場合は2対1になっていま すけれども、それでもワンフロア1人とかで、夜間などはツーフロアかけ持ちで1人とか、そう いうことも生じているわけです。例えばのどに詰まらせる、誤嚥の場合、対応できないんです。 そこは現場の状況我々是非想像してみてください。  以上です。 ○樋口座長  その議論は尽きないところがあるんですけれども、今のことに関してございますか。坂元構成 員、どうぞ。 ○坂元構成員  例えば介護施設に認知症の方が簡単に入れるかというと、特別養護老人ホーム入所の1年〜2 年待ちという現状が事実としてあるということです。ひどいケースの場合家族だけで本当に看れ るのかという現状があります。  ただ、そういう意味で、三上構成員は精神病床を有効的な利用をするべきではないかと言った と思われるので、決して昔の意味での精神病院の長期入院ということではなくて、今ある施設を もうちょっと有効利用できないかというのは、現実の介護施設の待ち時間等を考えていくと、喫 緊の問題ではないかと私も思います。  それから、もう一つは介護施設と医療施設の価格差です。こういう厳然たる利用者側を阻むも のがあるという事実を考えると、そこは考えなければならない問題だと思います。私は必ずしも 認知症を精神科病棟で扱うことが、いわゆる昔の精神病患者の長期入院の延長であるとは思って おりません。しか入院のは仕組やシステムを変えるという必要性があります。認知症の治療を専 門に扱うシステムを構築して、どういうふうにやったらきちんとした認知症を扱って、治療をや っていけるかという仕組みを考えていくという観点からの精神科病床の有効利用の問題ではない かという気がします。 ○樋口座長  ちょっと待ってください。今、議論になり始めていまして、議論をやったら幾らでもできるん です。ただ、今回は認知症についての議論がここに出されていて、それぞれの構成員からコメン トが出されています。その中でも議論が分かれているところで、それを、今、一本化するという のはとても難しい話なので、今までに出た認知症に関して過不足のあるところについて意見出し をしていただくというところにとどめたいんです。ですから、そういうことで、今これをどうす る、こうするという議論を始めると、これは1時間、2時間では済まない議論になりますので、 そこのところはよく御理解いただきたいと思います。この中身で追加すべきところをいただきた いと思います。  いかがでしょうか。大塚構成員、どうぞ。 ○大塚構成員  議論の要求はとどめて、33ページのところですが、今の議論と関連します。つまり、高齢精神 障害者や認知症の方々の問題について検討する課題については、病状の管理の問題と生活支援の 問題と住まいの場ということがあると思います。一番下のところに大塚の発言が書いてあります が、是非「老健局、国交省、こちらの精神障害保健課で課題の整理を共同で行っていただきたい。 それで整理された課題をお示しいただきたい」と追加させてください。 ○樋口座長  ほかにございますか。長尾構成員、どうぞ。 ○長尾構成員  認知症の問題は22年度までに検討を行うということになっているので、あえて言いません。  デイケアについては27ページから28ページですが、デイケアは今も厳然として入院防止とか、 さまざまな機能を果たしているわけで、次にもありますように、社会資源が十分でない中でデイ ケアが果たしている機能というのは大きいと言わざるを得ませんし、今の時点でこれをサービス に置き替えてやっていくということについては、問題があるということをもう一度強調しておき たいと思います。  それから、42ページですが、居住系サービスの確保についてということで、このときも居住系 サービスが随分伸びているという話でしたが、あれは本当に事実なのかということをお尋ねしま したが、やはり実感として伸びているというあれはありませんし、今後どんどん充実して伸びて いくのではないかということも書かれていますけれども、グループホーム、ケアホームがこれか ら本当に増えていくのかというのは疑問点があります。  もう一つ、精神の場合、小規模のグループホーム、ケアホームで地域生活が担保できるのかと いうと、これも非常に難しい部分があって、やはり現在もグループホームに出ている人もADL やIDLの低下が現実問題として起こってきている部分がある。そういった人たちがグループホ ームにずっといられるかというと、なかなかこれも難しくなってきている現実が出てきています。 そういう場合、もう少し地域でサポートできるような、24時間体制でケアできるような体制のと ころもあるべきだ。もう少し規模を大きくしながらも、そこで体制がとれるようなことも本当は 考えるべきではないかということもありますし、そういう面も追加していただければと思います。 ○樋口座長  広田構成員、どうぞ。 ○広田構成員  認知症は負けそうな勢いで、22年度にそちらができてしまうわけですか。 ○樋口座長  22年に調査の結果が出るということです。 ○広田構成員  要するにごみ箱のようなことはやめてほしいし、社会が困っているから何とかしてやるという 前に、精神疾患を治さないで何ができるんだ。何を任せられるんだと思います。だから、先ほど 言ったとおりです。社会的入院者を抱え込まないでということです。  それと、啓発と精神科救急に関わりますけれども、全国どの自治体でも精神の医療も救急車で 行きたい。  先ほど坂元さんも保健所の話をされたけれど、ちょうど今、全世界でインフルエンザがはやっ てきて、すごくいいタイミングだと思います。地方自治体が24時間やっている。あれをあのまま やった方がいいと思います。私は救急隊の現場、警察の現場、交番の現場を夜中の2時まで見て いますけれど、いろいろどうにもならなくていろんなことが起きていますから、是非そういう警 察、消防以外の行政が24時間やった方がいいということ。  それから、先ほどACTの延長線上でショートステイの話が出てきましたけれど、是非本人の 立場からも家族のレスパイトケアが必要だと思います。家族がレスパイトすることによって、本 人も家族もよくなる。これがここに入るかどうかはわかりませんけれど、何でもかんでも本人を 救急車に乗せるとか、何でもかんでも本人を警察にというのではなくて、家庭内暴力の相談を受 けて行きますけれど、何とか話して帰ってきた後、「広田さんが来ているときはいい子でいて」と なってまた始まるから、そのときに本人が行くと言ったらショートステイに緊急で行って、本人 が家にしがみついたら、家族がどこかに行く。そんなものがあればいいと思います。 ○樋口座長  佐藤構成員、どうぞ。 ○佐藤構成員  34ページのところに関係してくるんでしょうけれども、精神保健医療福祉も高齢者福祉も根本 的な組み直しというか、見直しが必要です。そうしますと、今ある施設をいかに使い回していく かという観点ではなくて、やはり必要なものはしっかりつくる。何兆円もかかる話ではないわけ ですから、ちゃんと予算を立ててつくるべきものはしっかりつくって、不必要な時代遅れになっ たものはある程度整理していく。あるいはほかに転用していくということをちゃんとやらないと、 単に今あるものを使い回していくというと、余り発展性がなくなってしまうので、必要なものは ちゃんとつくるということです。34ページのところに関連してくるんでしょうけれども、そうい うところにつけ加えていただきたいと思います。 ○樋口座長  伊澤構成員、どうぞ。 ○伊澤構成員  先ほど長尾構成員が後段でおっしゃった高齢化に伴って身体機能の低下の中で、グループホー ム、ケアホームに長居ができるんだろうかということです。現状の現場体制では不十分というこ とを非常に強く感じております。したがいまして、グループホーム、ケアホームの現場マンパワ ーの拡充とともに、いわゆるナーシングハウスのような手厚さを持った居住サービスというもの も開発していかなければいけないのではないかというのが1点です。  もう一つ、42ページにグループホーム、ケアホームのことが書かれておりますけれども、前に もちょっとお話したグループホーム、ケアホームのとらえが自立支援法的なとらえと消防法的な とらえと建築基準法上のとらえとまちまちだったりするわけなんです。例えば建築基準法上では 寄宿舎というとらえがあったりとか、消防法の関係でいうと、防火設備の観点からなんですけれ ども、長屋という扱いになる一部グループホームがあったりとか、そういう点では本当にまちま ちです。そして、翻って考えてみると、施設なのか住居なのかというところがわかりにくくなっ ている。  そういう意味では、国交省、総務省の消防庁、厚労省の間でしっかりとした見解の一致を施し ていただかないと、あるいは対応の一律化、明瞭化がないと、存在自体があやふやという感じが いたしますので、その辺はよろしくお願いしたいと思います。 ○樋口座長  広田さん、ちょっと待ってください。  伊藤構成員、どうぞ。 ○伊藤構成員  32ページの中の○を1つ加えていただきたいと思います。「医療費の関係から、現在65歳未満 の患者に支出されている医療費は、人口減少率を調整しつつ、これからの65歳未満への保健医療 福祉の向上のために活用されるべきではないか」と加えていただきたくお願いいたします。 ○樋口座長  中島構成員、どうぞ。 ○中島構成員  どこに入れたらいいかよくわからないんですけれども、議論を聞いていて、どうも老い、年を とったことによって起こってくる自然な現象、生理的な現象と病気というものが混同されて話が 進んでいるような気がします。年をとれば若干の認知症は出てまいります。 ○広田構成員  あなたもね。 ○中島構成員  もう既に出ておるけれども、腰が痛くなったり、いろんな問題が起こるわけです。これはでき るだけ自然な形でケアしていく。  一方、病気に対して、病院とか医療は絞っていくべきだ。この点を明確にしておかないと、話 がややこしくなると思いますので、どこかへちょっと入れておいてください。 ○樋口座長  広田構成員、どうぞ。 ○広田構成員  うつのところで、何ページかに予防と出てくるんですけれど、今日は長野構成員がいないんで すが、すべての精神疾患をやっていますから、すべての精神疾患に関する予防を。  フィットネスと何度も言いますけれど、高齢者がいっぱい来ています。合言葉は後期高齢者医 療を使わないで健康保持。予防にまさることはないわけです。  テレビでスポットをやるとか、先ほどの新聞の社説ではないけれど、いろんなことをやって、 いかに病人にならないように一人ひとりが健康管理をするか。何度も言うけれど、厚労省自ら10 時まで冷房を入れて仕事を減らすとかいろんな工夫をして、社会全体が見直されるときだと思い ます。 ○樋口座長  末安構成員、どうぞ。 ○末安構成員  今までちょっとなかった点で1点ございます。早期発見・早期支援の学童期等の若年層とそれ を取り巻く対象としてという、資料2の今後の検討の方向と、今、検討している要点の10ページ の未受診者や受診中断者のところとの関係で、私はオーストラリアのことしか詳しくわからない んですけれども、文部科学省と今後若年の方たち、あるいは学童期、教育期の人たちに何らかの アクションを起こしていくということを考えなければいけないのかもしれません。チェックはで きるんですけれども、チェックした後はどうするかという問題も、当たり前ですが、持っていな い。ただ、発見するということだけだと、誤解を受ける言い方かもしれませんけれども、患者探 しみたいな感じになる。そういう誤解を国民から受けるような方法論ではない明確なものをつく っていく必要があるのではないかと思いますので、早期発見システムをつくるということは、早 期発見した後にどうするかということが同時に提示されて、安心感を与えながら進めることが必 要だから、それを是非やっていただきたい。  私の案としては、今、訪問看護ステーションが全国に6,000か所あるんですけれども、精神科を 1回でもやったというところは、前にたしか資料で半分ぐらいということだったと思います。1990 年に老人福祉法関連8法ができるときに、訪問看護ステーションができたと思います。そのとき の議論は、看護師さんたちが病院の外に出てきて何をやるんだという話だったんです。伊藤さん が課長をやっていらっしゃいましたけれども、そういう議論がありました。看護師さんに本当に できるのか。  それから、2000年の介護保険のときにグループホームをつくろうということを、98年ぐらいか らモデル事業を提案させていただいてやったときも、素人に認知症の年寄りが見られるのか。本 当にできるのかという議論がありました。それを制度化していくという経過の中で、そういう討 論がありました。  それぞれ10年、20年と経ってきて、現場は本当に少ない人数で、ステーションなども最低2.5 人でやっているわけですから、何とか自分たちで持ちこたえながら、困っている人たちや病人を 支えていこうという活動をやっていらっしゃるわけです。多分硬いモデルを考えたら本当にでき るのかとか、病院で培ったものや福祉施設で経験してきたものが地域の中で埋没しないのかとい うとらえ方はあると思うんですけれども、実際にはその人たちはその人たちの責任で役割を果た してきていると思います。  ですから、そういう人たちがうまく使われているかどうか。もっとうまく使って、もっと資本 も投入して、その人たちが生き生きと学校にも入っていけるとか、先ほど医師の指示の問題があ りましたけれども、医師の指示も重要だと思うけれども、必要な人はだれだということの判断は その地域の行政の方やワーカーや看護の人たちが一緒になって考えていくというシステムをここ で新しくつくり出すということも必要なのではないか。だれが1人だけの責任ということでケア や治療はできないのではないかと思いますので、それを是非加えてほしいと思います。 ○樋口座長  広田さん、ちょっと待ってください。  全体として、今、3時間近くなりつつありますので、6時半までで終了にしたいと思います。 あと9分です。  簡潔にお願いします。 ○広田構成員  学校に入っていくことに対して、前回出した資料は一部80円でしたけれど、あの中に書いてあ りますが、神奈川県立精神保健福祉センターの人たちが、私のことを躁状態だとか、妄想だと言 っていたんです。精神の世界というのは人のことを個性で見るよりも病状に見てしまうことがあ ります。自分たちが相手の許容を超えたときに、そういうことがあるんです。一般の人から、私 はこの63年の生涯の中で妄想なんて言われたことは一度もないし、躁状態とも言われないし、知 らない幸せはいっぱいあるんです。自分たちがあかにまみれた姿で学校に行って、選別するとい うのはやめた方がいい。それより来た人を治した方がいい。来た人がよかったと思えば、宣伝に 行かなくても来るんです。そういうところに行かなくても、栄養で治るとか、今いろんな本が出 ていますから、やめましょう。業界のおじさんやおばさんの宣伝をやめた方がいい。 ○樋口座長  ほかにございますか。門屋構成員、どうぞ。 ○門屋構成員  また総論的なことなんですが、やはり途中で議論になりました。私はこれで課題はたくさん見 えたと思うんですけれども、こういう課題は今までの検討会でも、前回の検討会でも出されてい るんです。繰り返されていることが非常に多いと思います。  もっと具体的に展望を持つような個別の検討といいますか、そういうものが開かれるべきだと 思いますので、希望というか、そういうものが必要なんだ。例えば認知症の問題であったり、病 床を削減するということについて、精神病院の在り方でも構わないんですが、課題は別としても、 そういうものを是非望みたいということと、その中に先ほど特例のことも申し上げましたけれど も、この検討会で大変驚いたのは、97対3の1兆8,863億と501億の財源配分といいますか、財 源の使い方だと思います。私は財源の問題についても、きちっとどこかで議論するようなものが あるべきだと実は思っています。医療にそれだけ必要ならば、地域にはもっと必要な部分もある わけで、501億とはとても思えないんです。そこのところを検討することを是非書いていただきた いと思っています。 ○樋口座長  ほかにはいかがでしょうか。良田構成員、どうぞ。 ○良田構成員  門屋構成員にとても広いことを言っていだたいたのに、随分小さなことを言って大変恐縮なん ですけれども、最近、歯医者さんのことで相談を受けることがとても多いんです。今まで余り歯 科のことは出てこなかったんですけれども、やはり歯を悪くする方が多くて、歯の健康が維持さ れていないんです。家族も当事者もとても困っているし、歯科の先生も理解のない方が多いので、 どんどん具合が悪くなってしまうということがありますので、どこに入るのかわからないんです が、どこかに歯科との連携、歯科医の理解、地域の普及というものも入れておいていただけたら と思います。  以上です。 ○樋口座長  ありがとうございました。  あと残すところ5分でございますが、特につけ加えることございませんでしょうか。  どうもありがとうございました。時間となりましたので、本日はこの辺りで終了といたします が、事務局から次回のアナウンスをお願いします。 ○野崎課長補佐  次回、第23回ですが、現時点では9月10日の10時から12時半で予定しております。場所は現 在調整中でございますので、正式な御連絡はまた追って差し上げたいと思います。よろしくお願 いいたします。  以上です。 ○樋口座長  本日は大変お忙しい中、長時間にわたり御議論いただきましてありがとうございました。これ で第22回の「今後の精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」を閉会といたします。どうもお 疲れ様でした。     【照会先】  厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部  精神・障害保健課企画法令係  電話:03-5253-1111(内線3055、2297)