09/07/23 第10回高度医療評価会議議事録 第10回 高度医療評価会議 (1)日時:平成21年7月23日(木) 13:00〜14:30 (2)場所:虎ノ門パストラル 新館5階 ミモザ (3)出席者:猿田座長、山口座長代理、飯沼構成員、伊藤構成員、        竹内構成員、川上構成員、佐藤構成員、柴田構成員、        関原構成員、藤原構成員、村上構成員、田島構成員 出口技術委員        (事務局)        医政局研究開発振興課長        医政局研究開発振興課治験推進室長   他 (4)議 題 1 国内外ともに未承認の医薬品・医療機器を用いる医療技術を評価する際の 観点について(案) 2 新規申請技術(1・4月受付分)の評価結果等について 3 追加協力医療機関(6月受付分)について 4 その他 (5)議事録:以下 ○猿田座長  時間になりましたので、第10回高度医療評価会議を始めます。委員の先生におかれまし ては、大変暑い中をご出席いただきまして、どうもありがとうございます。  本日は技術委員として、出口先生にお見えになっていただいています。構成員の金子先生、 田上先生、山本先生からは、ご欠席の連絡をいただいています。  まず配付資料の確認をお願いします。 ○事務局  配付資料の確認をします。ホチキス止めをしているものが2つありまして、まず、そのう ちの「第10回高度医療評価会議議事次第」をご覧ください。1頁目は議事次第です。座席 表、開催要綱、構成員名簿と、こちらはいつもの資料となっています。次の頁が、資料1 です。それから資料2-1から評価表が続いて、今回は申請数が多くて資料4まであります。 それから参考資料1「高度医療評価制度の概要」、参考資料2「第3項先進医療技術及び医 療機関一覧」、参考資料3「高度医療に係る申請等の取扱い及び実施上の留意事項について」 となっています。  本日はお手元にドッチファイルと普通の紙のファイルがあります。紙のファイルは、本日 ご審議いただく久留米大学附属病院からの申請書と参考資料です。青いドッチファイルは、 全部で8つありますが、ペプチドワクチンに関する申請です。それに関しての申請資料と、 製品の概要やいままでの臨床試験のプロトコールなど、追加でお送りいただいた資料をまと めています。本日の資料は以上です。  引き続き審査案件の確認をいたします。資料2-1をご覧ください。本日検討対象となるの は、整理番号006個人に適切なワクチン選択技術を用いるがんペプチドワクチン療法です。 医薬品・医療機器情報として、株式会社グリーンペプタイド、実施機関は久留米大学附属病 院です。  資料3-1です。4月に申請のあった整理番号009から、011、012、013、014と、全部で 8つの申請です。医薬品・医療機器情報として、オンコセラピーサイエンス株式会社で、実 施機関は表にあるとおりです。  検討対象となる医薬品、機器の製造販売企業または競合企業に関し、特別に関与するよう な事例はありませんでしょうか。                  (特になし) ○事務局  ないようですので、該当なしということで進めさせていただきます。よろしくお願いしま す。 ○猿田座長  議事に入ります。1番目の議題は前回も検討していただきましたが、「国内外ともに未承 認の医薬品・医療機器を評価する際の観点について」です。事務局から説明をお願いします。 ○事務局  資料1「国内外ともに未承認の医薬品・医療機器を用いる医療技術を評価する際の観点に ついて(案)」です。前回及び前々回の高度医療評価会議において、これまで申請案件のな かった、国内外問わず未承認であるというような医薬品・医療機器を用いる新規技術の評価 の観点について、ご議論をいただいたところです。そして、前回の第9回会議においては、 猿田座長よりご提示いただいた整理ペーパーを基に、前回のご議論、その後に事務局にちょ うだいしたご意見を加味しまして、今回最終案として、こちらの資料1にまとめています。 内容を読み上げさせていただきます。  高度医療評価会議において、国内外ともに未承認の医薬品・医療機器を用いる医療技術の 評価の際には、原則として以下のすべての要件を満たされていることが必要であるとする。 I.国内外ともに未承認の医薬品・医療機器を用いる新規技術を評価する際にとくに必要と する要件。1.有効な代替治療法のない疾患を対象としていること。2.関係法令又は指針(GCP もしくは該当する臨床研究指針など)を遵守のもとに行われた、数例以上の自施設での臨床 使用実績があり、かつ1症例ごとに十分な検討がなされていること。3.使用する試験薬又は 試験製品の品質を担保するため、試験薬もしくは試験製品の概要書が提出されていること。 具体的には薬理毒性、薬物動態及び薬物代謝、又は非臨床試験の成績、又は先行する臨床試 験のデータ等を記載。  II.高度医療評価制度に申請されるすべての医療技術に求められる要件ではあるが、国内 外ともに未承認の医薬品・医療機器を用いる新規技術については特に厳密に考慮されるべき 要件。4.高度医療評価技術のプロトコールが単なる未承認製品の試用にとどまらず、当該臨 床試験を実施した結果、被験製品の有効性及び安全性について科学的なエビデンスが得られ ること、又は次に行われるべき治験、もしくはさらなる臨床試験の試験計画の設定根拠とな るエビデンスを作り出せる設計となっていること。5.高度医療として行われる臨床研究は、 医師が主体となって計画・実施されるものであること。  III.国内外ともに未承認の医薬品・医療機器を用いる新規技術の採択後に求められる要件。 6.安全性・有効性が確立しておらず、その評価が特に不足した医療技術であることに鑑み、 定期的に試験結果を報告し、試験の継続の可否について高度医療評価会議の判断を仰ぐこと。 7.高度医療技術の評価期間中(実施中)は、当該高度医療技術については、実施医療機関(協 力医療機関を含む)は高度医療評価会議で承認された試験計画以外に実施しないこと。 ○猿田座長  この前の会議でご検討いただいたものですが、強いて言えば、Iの2の「数例以上の実施 例」というのは、各技術によってかなり差が出てくると思いますが、いろいろなものがある のでこのような表現にさせていただきました。あとは大体皆様方にご議論いただいたところ ですが、加えたほうがいい、訂正したほうがいいところがありましたら、ご発言をお願いし ます。 ○関原構成員  「原則として要件を満たす必要がある」となっています。原則だから例外はあるが、Iは 「特に必要とする」とあり、絶対条件だという理解でいいのですか。 ○事務局  「原則」という言葉になってしまいましたが、症例ごとの事情に加味してということで、 基本的にこれがまず必要条件だということです。 ○関原構成員  そうすると、今日挙がっている話でいくつか見たのですが、予防のためというのは治療で はないから、絶対条件として駄目になってしまうという理解でいいのですね。 ○事務局  それも含めてご議論いただければと思っています。 ○山口座長代理  予防でも、すごく頻度が低いものに関しては問題にならないと思うのですが、頻度が高い ものの場合には、このような技術が導入されてもいいと思うのです。それは頻度によると思 います。  ものすごく頻度が低いのに、極めて緊急に必要だというものが出てきたときには、否定的 になりますが、極めて高率に新しいがんができるとか、そのようなものの予防薬が出てきた ら、それは緊急の課題だと思うので、個人的には採択すべきだと思います。いちばん最初に 「原則として以下のすべて」と書いてあるので、ここでそのようなことが認められたら認め るべきであって、それを最初から門前払いにすると、この会議の意味がなくなるのではない かと思います。 ○事務局  「特に」と付けたのは、この高度医療評価制度において、適用外であるとか、海外ですで に承認があると、いろいろとカテゴリー分けができると思いますが、その中で、今回は特に 海外でも国内でも未承認であるという意味を込めて、付けさせていただきました。 ○柴田構成員  Iの3について、試験薬であることとか、試験製品概要書が提出されることを要件にされ ています。この試験薬、試験製品概要書を作る主体は、基本的に単施設で開発されているも のであれば申請者自身だと思いますが、今回出ているように、ものとしては共通していて、 外部にそれを作っている方がいるようなものとか、それをいろいろなところでやっているけ れども、そこの一部の施設が申請するという場合では、この書類を作る主体が変わってくる のではないかと思うのです。  あるいは少し違った切口でお話をすると、日本全国のいろいろなところで平行して研究が 進められていて、その中の一部からここに申請が上がってきたケースを想定します。例えば よその施設で重篤な有害事象、致死的な有害事象が出たときに、ここに上がってきている施 設ではそのような情報が入ってこないこともあり得ると思うのですが、そのようなものに対 してどう考えるのか。そういうものに対する対応策として、試験薬概要書、製品概要書の提 出を求めているのでしょうか。 ○猿田座長  確かにそのようなことはあり得ますね。 ○事務局  そうですね。 ○猿田座長  柴田先生、そういう場合にはどうしたらいいですか。 ○柴田構成員  申請される方が、いずれの形にせよその書類を持っておかないといけないのは当然だと思 うので、出てくるものに必要であるというのは、この条件を満たす上で出していただくべき だと思います。誰が主体になって作るかはケース・バイ・ケースになるとは思いますが、絶 対に出してもらうべきだというのは、ここに書いてあるとおりだと思います。  もう1つのほうは懸念がありまして、似たような研究はされていて、全く違うものであれ ば構わないと思うのですが、同じものを一部の施設では申請して、一部の施設では申請せず に行っていて、それが全く情報が流通しないような形で行われているときに、何か問題が起 こるのではないかという懸念があります。例えば製薬企業であれば、製薬企業がそれを取り まとめるという、中心的な役割を果たす人がいるわけですが、このように製薬企業のような ものがないときに、どうすればいいのかは確認が必要だと思います。  逆に、それは製薬企業でない形でやることに意義があることも考えると、製薬企業と同じ ようなことを要求するのは難しいところもあるかもしれませんが、ある程度の努力義務、あ るいは同じものを使っているのであれば、相互に情報交換をするようにお願いするとか、す べり止めの何らかの手立ては必要ではないかと思います。 ○猿田座長  今日もこれからいろいろな議論がありますが、私どもが審査をするとき、情報をどうやっ て捉えるかでものすごく苦労したのです。 ○事務局  ただいまご指摘の点ですが、いまお答えできるアイディアがないのですが、その辺も含め てご意見をいただきながらという形なのですが、また事例が出てきたときに、ケース・バイ・ ケースでいろいろなものが出てくる可能性もあるので、その都度ご相談をさせていただけれ ばと思っています。 ○猿田座長  柴田先生からいただいたことは、こちらでも検討させていただきます。 ○伊藤構成員  7のところですが、高度医療をやっている機関では試験計画以外にはやってはいけないと いうと、逆に2の自施設の臨床使用経験してはいけないような文言になっているので、ここ をどうにかしないといけないと思いました。実際に今日評価しなければいけない案件で、計 画が出てきて領域についても、「高度医療で申請する予定です」に近いようなものがあった りするので、1つ領域で高度医療が通ってしまうと、例えばがん腫を広げる研究を7の項目 は封じるような書き振りになっていないのか、という懸念があります。 ○事務局  基本的には同じ適応症と同じものを使う場合で、7で申し上げているのは、その適応症に 対して、そのものを使うものに限定したつもりの記述でして、例えばほかのがん腫、ほかの 適応症に関しては駄目ですとまでは踏み込んでいないということです。 ○山口座長代理  言いたいことはよくわかるのですが、この文章をこのまま読むとわからないので、いまお っしゃられたことは皆さん理解しているのですが、もう少し明確にしたほうがいいと思いま す。 ○事務局  わかりました。意図が明確になるような形にいたします。 ○山口座長代理  伊藤先生がおっしゃるように、これだとその薬が係る試験は全部駄目という感じになりま すね。そうではないわけですよね。 ○事務局  はい。 ○山口座長代理  それをわかるようにご検討いただければと思います。 ○事務局  わかりました。 ○村上構成員  Iの1〜3については特段のコメントはありません。IIの4、5についてコメントいたし ます。  IIの4について、まず、「被験製品の有効性及び安全性について科学的なエビデンスが得 られること」という条件が付いています。これは適応拡大例において、高度医療でエビデン スを作って、そのエビデンスに基づいて2課長通知のもと、薬事承認を図ることを想定され ての文書だと考えますが、この文書のままであると、国内外未承認の医療技術も、こういっ た形で薬事承認が取れるようにも読めます。少なくとも、国内外未承認のものは、治験をや らないことには薬事承認をされないことが前提であると理解しているので、この文章は変え る必要があると思います。変えるとすれば、「科学的なエビデンスが得られること」の前に、 「薬事承認につながる」とか、そういった枕詞を入れていただければ、国内外未承認の薬の 場合は、高度医療で安全性、有効性のエビデンスを作ったところで薬事承認されませんので、 国内外未承認の医療技術は、この要件には当てはまらないと判断できることから、その枕詞 を付けていただきたいのが1つです。  2点目です。その次の文章で、「又は次に行われるべき治験」まではいいのですが、「もし くはさらなる臨床試験の試験計画」とありますが、これであるならば、国内外未承認の医療 技術を、治験をせずにどんどん高度医療でどんどんつないでいくことを認めることになりか ねないので、「もしくは」から「臨床試験の試験」まで切っていただいたほうがいいのでは ないでしょうか。「次に行われるべき治験計画の設定根拠となるエビデンスを」というよう に次のフェーズをはっきりと示し、治験を早くやってくださいということを明確にするのも 1つかと思っています。  最後ですが、IIの5の文章です。企業主導の治験でないものが高度医療に出てくるわけで すから、理由の如何に係らず、結果として、医師が主体となって臨床研究されるものを対象 にするというのは、これは当たり前のことであって、何ら要件になっていないと思います。 「治験が計画あるいは実施できない正当な理由がある」という趣旨がもともとあっての文章 だと思うので、その趣旨をはっきりと加えたほうがいいのではないかと考えます。 ○事務局  書き換えさせていただいて、ご提示させていただければと思います。 ○猿田座長  ほかによろしければ、また文書を直させていただいて、場合によっては先生方に回させて いただきますので、おかしい箇所があればご指摘ください。事務局はそれでよろしいですか。 ○事務局  早急に先生方にはご提示させていただきます。よろしくお願いします。 ○猿田座長  それでは「国内外ともに未承認の医薬品・医療機器を用いる医療技術を評価する際の観点 について(案)」については、もう1回直させていただくことにします。 ○研究開発振興課長  いまご相談しました観点について、細かい文章についてはまた事務局で検討して、必要が あれば修正することにさせていただいて、考え方についてはご了解いただいたと理解してよ ろしいでしょうか。 ○猿田座長  結構です。 ○研究開発振興課長  わかりました。 ○猿田座長  審査に入ります。整理番号006の評価についてです。伊藤先生からご説明をお願いしま す。 ○伊藤構成員  「個人に適切なワクチン選択技術を用いるがんペプチドワクチン療法」ということで、久 留米大学附属病院から出ているものです。再発の前立腺がん及び神経膠芽腫に対して、12 種類のがんペプチドワクチン候補の中から、がんの免疫状態に適したものを最大の4種類を 選んで投与することで、がん細胞に対する特異免疫を賦活させる技術ということで申請され ているものです。  資料を拝見しますと、2つ、前立腺がんと神経膠芽腫がありまして、いくつかの問題点が あろうかと思っています。資料をご覧いただくとわかりますが、同意に関する手続、同意説 明文書については田島先生からご説明いただくと思っていますが、私も読んでいまして、同 意説明文書はもう少しきちんとしたほうがいいと思いました。とりわけ医師が会社を設立し、 その会社がいろいろな形で関与しているので、利害を明確にしないといけないのかと思いま した。  同時に、被験者の負担額で、今週になって気が付いた点ですが、HLA-A24の型で適合し なければ、この薬は有効ではないということなのですが、HLA-A24を測定することの負担 についての記載がないことです。治療薬だけでなく、診断とか、投与に至る過程もきちんと しなければいけないと思いました。  もっと大きな問題ですが、資料を見せていただきますと、前立腺がんを適応にするものに ついて、PSAの減少が見られる症例が報告され、有効性を示唆するものだろうと思ってい ます。ただ、併用薬の影響で、よりPSAが下がっているように見える点も考慮すると、有 効だと言い切っていいかも疑問に思われる点もあります。バイオマーカーがある、前立腺が んに関しては、私どもも外部の方々にこの資料から見て、明らかに無効であると言い切るの は難しい、と言うと語弊があるかもしれませんが、説明しうるデータだと拝見しました。  しかし、神経膠芽腫について、提出された論文がオープン試験で、RECISTで見ると、 25例に投与されて、評価されたのが18例で、3例だけが有効というレベルですので、この 会議で有効であると認めるのはいかがなものかというのが、率直な結論です。  それですので、前立腺がんのほうに関しては試験を進めていただいて、HLA-A24でない 方、ワクチンの適応にならない方を対象にして、比較をするという試験計画が提出されてい るので、そういった試験計画に基づいて行われた成績が出てくれば、有効性についてもう少 しきちんとした判定ができると思ったので、そちらに向けての話を進めていただければと思 いました。以上です。 ○猿田座長  実施体制と技術に関しては読ませていただきましたが、いま伊藤先生からお話がありまし たように、前立腺がんに関しては、こういった技術において安全性はものすごく重要ですが、 それとともに効果の面で、どういうところで評価していいかというのは非常に難しかったの ですが、出口先生がいらしていますがPSAという値で見て、伊藤先生からお話がありまし たが、ある程度の判定をしていいのかということで、安全性は問題ないということであれば、 前立腺に関しては、それで効果としてある程度取れるということで、伊藤先生にも「一部適」 を申し上げたのはそういうことです。  それから、ここの施設においてはCOEの施設として、長年こういった方向で研究をされ て、また臨床的にもやってこられていることはよくわかるので、その点でこの施設の体制、 先生方の体制はいいだろうということで「適」とさせていただいて、評価に関してはまず通 してと考えて「一部適」、特に神経膠芽腫に関しては、効果の判定ということで、いま伊藤 先生がおっしゃられたように3例だけの有効性ということで、その有効性の評価の問題もす っきりしないということで、私も同じ意見で、前立腺がんのほうは「一部適」とさせていた だいた次第です。田島先生からお願いします。 ○田島構成員  同意に係る手続と同意文書については、このままでは「不適」ですが、訂正していただけ れば「適」としてよいと考えています。  同意文書を拝見すると、治療法及び臨床試験の目的の説明が一般人を対象にしたものとし ては非常に分かりにくいものとなっています。治療実績・効果の説明も具体性に欠けている という問題点もありましたので、この辺は訂正していただきたいと考えています。また、他 の治療方法について説明している書き振りになっている部分についても、本試験に代わるも のの説明とは言いがたいように思うので、この辺も検討していただきたいと思っています。  患者相談の対応については、試験責任者の連絡先と氏名は書かれていますが、これでは連 絡が取りにくいと思うので、不十分と考えています。利害の衝突について具体的な記載がな いので、不明確です。内容ばかりでなく、説明文書の文書自体に、用語の不統一や意味不明 な表現があるので、そういった点を含めて、全体的に文章を精査して書き直していただく必 要があると考えています。  以上のような問題点を基に、次の4つの点を改めていただければ、「適」としてよいと判 断しています。1番の治療方法及び臨床試験の目的については、一般の方に分かりやすい記 載にしていただきたいわけですが、この大学の先端癌治療研究センターのHPの中で、この がんワクチンの臨床試験の項目を読むと、これは一般人に分かりやすい記載になっていたの で、このような書き方で、一般人が理解することを念頭に置いて、分かりやすく説明した内 容に書き換えていただきたいと思います。  治療実績と効果については、抽象的な記載があるのみなのですが、過去の試験例数、効果 のあった症例数、腫瘍の縮小割合、生存延長期間数を、できれば具体的に書いていただきた い。特に前立腺がんについては高齢者が対象ということであれば、その費用対効果について、 患者が判断する必要性が高まるので、この効果についての検討材料を提供する必要性は高い と思います。  2番目の患者相談の対応としては、担当医師1名のみでは必要なときに連絡が付かず、ま た多忙で時間が取れない可能性も高いので、患者がいつでも連絡を取れる事務局の窓口も設 ける必要があると考えています。  3つ目に、臨床試験の実施者の1人である伊藤恭吾医師が、使用ワクチンを製造販売する (株)グリーンペプタイドの代表者かつ株主であるほか、研究事務局及び研究者の中に2 名の同社株主が加わっている点に利益相反の可能性があるので、この臨床試験が、ワクチン を販売して会社や株主、役員が利益を上げることを目的としたものでないことが分かるよう に、会社の収益や利益配分の内容を含めて具体的に本試験との関係を説明していただきたい と思います。4つ目は、文章の具体的な問題点について書いていますが、省略します。 ○猿田座長  いまの先生のコメントは別紙にまとめていただいているとおりです。いまお話のあったこ とで、利益相反の問題、患者相談の件、そういったことを手直ししていただくということで す。先生方のご意見を伺います。前立腺と神経膠芽腫と2つ出てきて、前立腺のほうに関し てはある程度の有効性が読み取れること、安全性も大丈夫だろうと。出口先生から何かござ いますか。 ○出口技術委員  十分に見ているわけではないのですが、PSAに関しては、バイオマーカーとしてはいち ばん優秀ではないかと思っています。それを評価していただくのはありがたいと思います。 ○猿田座長  あとは伊藤先生の言われたHLAのことですね。 ○藤原構成員  神経膠芽腫について、伊藤先生は18分の3で有効性は高くないとおっしゃいましたが、 神経膠芽腫の方はそもそも薬が効きません。海外で昔承認されて、日本では最近承認された テモドロマイドという薬は、奏効率も20とか30ではないという段階の薬です。神経膠芽 腫の患者数は少ないですし、18分の3あるいは25分の3というのはかなりのパーセンテー ジかと思うので、ご再考をされたらどうかなと思いました。 ○猿田座長  確かに伊藤先生のおっしゃっているのは、オープン試験で判定の基準がもう1つ。どうで すか伊藤先生。 ○伊藤構成員  確かにglioblastomaの病気のことを考えればという思いもあるのですが、ここに出され ている資料で、隔週に打った人と比べて毎週のほうがいいとか、中の比較で有効だとか、組 織の中に実際にその抗体が検出されたとか、傍証だけで有効性を主張されているように見え るので、対照群を置いた形での評価をしないと難しいと思います。診断を疑うわけではない のですが、これだけの資料で、自然経過によりいいと言い切れるかどうかの証明ではないの ではないかと思いました。 ○藤原構成員  はい。そう思います。ただ、グリーンペプタイドはほかにも治験などをやられている可能 性もあって、全体像を見た中で、資料10にクリニカル・キャンサーリサーチで、すでに何 例か投与された経験があるにもかかわらず、さらに高度医療を申請してくるのが不思議で、 それならもう治験などのほうにいっていただいて、先ほど伊藤先生のおっしゃっていたよう にきちんと絞って開発するのが筋かなと思います。そこが私は疑問なので、その辺について、 まだクリニカル・キャンサーリサーチの症例だけでは治験にいくには不十分なデータで、今 回高度医療でやったあとに治験を組むというロードマップがはっきりしてくれば、わりと安 心して出せるのですが、久留米大学の場合は報道もたくさんされて、がんワクチン外来を開 いたはいいけれども、患者が殺倒してすぐに閉じた。あれは経費がすごくかかるので、例え ば高度医療評価の中で合法的に混合診療をやって、経費負担を患者や研究者がシェアしなが ら、診療を続けていくためにこの申請をされているのであれば、そちらはあまりよくないか なという気もしています。その全体像が見えない中で。 ○猿田座長  有効性の評価ということで、どうしてももう1つ読み切れないところがありました。前立 腺のほうはPSAなど、はっきり読み切れるところが出たものですから。ほかにご意見はご ざいますか。 ○柴田構成員  最終的な判断についてはコメントはありませんが、ここに出てくる話の中で注意しなけれ ばいけない点があるので、発言します。HLA-A24陽性の患者を対象にするもので、比較対 照としては、同時期に久留米大学に来た患者を対照とすると書いてあります。サンプルサイ ズの設計のところに、本剤群と比較対照群の構成割合を2対3とした理由として、陽性の方 の割合がそれに対応するからであるということです。このものについては、私は文献を確認 できなかったので、決定的なことは言えませんが、一般的にバイオマーカーを使ってサブグ ループを作るときに、バイオマーカーの陽性と陰性の間での治療効果の比較をするというの は、間違いです。それなので、それをやるのは非常に危険です。  本来やるべきは、バイオマーカーが同じ陽性の人同士で、治療した人と治療していない人 を比較しないといけません。なぜかというと、バイオマーカーの陽性と陰性の間で、患者の 予後が変わることはよく起こることだからです。それなので、その点に注意して結果を評価 していただくということであれば、差し支えないと思いますが、その辺は個別化医療などを 評価しようとするときに、よく使われてしまう間違った解析方法なので、そういうことで誤 解されるとか、結果が発表されたときに変な誤解をされることがないように、解析していた だくように伝えていただければと思います。 ○伊藤構成員  ご指摘よくわかりました。気が付いてはおりますが、RCTをするのは医療として大変か なということで次善の策。少なくとも対照群のない形での設計よりは、まだわかるのかなと。 ○柴田構成員  もしそうするのであれば、陽性の方と陰性の方で予後が変わらないというデータを出した 上で、その試験を評価すべきです。つまり、治療していない患者の中で、陽性の方と陰性の 方で予後は違わないので、この結果も陽性の方と陰性の方を比較してみたという話であれば 筋は通りますが、現時点で陽性の方と陰性の方の予後が一緒なのか、一緒でないのかすらも 確認されていないので、まずそこはすべきだと思います。  伊藤先生がおっしゃるように、ここでランダム化比較試験をするのは無理だと。それはそ れでおっしゃるとおりだと思いますが、ランダム化比較試験ができないから観察研究の方法 を使おうというのであれば、観察研究の方法を間違って使ってしまっては意味がないので、 そこはきちんと押さえておいていただきたいという趣旨です。 ○猿田座長  確かに有効性のところは、非常に判断が難しかったのです。どうやってこのような場合に 有効性を判断するのかということで、ついPSAを参考にしました。その辺りは少し検討さ せていただいてと。ほかにございますか。 ○村上構成員  久留米大学では、いままでいろいろな研究を非常に丁寧にされていて、着実に成果を上げ てこられました。今後は、臨床試験をされて、最終的には薬事承認を取っていかないといけ ないわけですが、このようなテーラーメイド型の医薬品が、どのような治験結果に基づいて 薬事承認されるのかを想定するに、非常に難しい事例だと考えているところです。そこで、 どのようにすれば最終的な薬事承認につながっていけるのかを教えていただきたいと思い ます。何通りものすごい数のカクテルが生まれるわけで、それに対応するのは大変ですが、 だからといってペプチド12種類を1種類ずついちいち治験をやっていくのも大変なわけで す。治験をやらずに、こういったデータで薬事承認が取れるという話であれば、また別なの ですが。 ○猿田座長  なかなか読みが難しいと思います。まず高度医療のほうでかなり。 ○治験推進室長  審査当局ではないので、具体的にこうやるべしという考えはないかと思います。ただ、基 本的な考え方自体は、それぞれのペプチドが1成分という考え方に立つと思います。そこを どう組み合わせて、あるいはどのようなデザインでやるのかは、おそらくPMDAの治験相 談の中で具体化をしていく必要が出てくるのかなと思っています。 ○村上構成員  同時進行でPMDAと相談されながら、この高度医療のデータを活用していただきたい。 ○猿田座長  実際にはPMDAにかなり相談に行っているのです。 ○治験推進室長  今日はPMDAも同席しているので、今日の議論はしっかりと耳に残っていると思います。 ○猿田座長  ほかのペプチドワクチンのことがありますが、久留米大学の案件に関しては、もちろん文 章や問題点を直させていただきますが、前立腺は認めて、神経膠芽腫は「否」とさせていた だいてよろしいですか。 ○山口座長代理  先ほど伊藤先生がおっしゃっていましたが、前立腺に対する効果ですが、これは抗がん剤 を併用しています。その中でマーカーが下がったのがあるのはよくわかりました。抗がん剤 を一緒に使っていないと効果はないのですか。 ○伊藤構成員  一件下がったのがこんなに効くのかと思ったら抗がん剤を併用していたのですが、試験結 果には複数が混在しています。現在提出されているプロトコールは単独で行う試験計画だっ たので、それでいいのかなと。このプロトコールでの結果がでてこないと評価が難しいと思 っています。 ○山口座長代理  抗がん剤と一緒にやっているのだから、一緒にやるというのだったら話はわかるのですが、 そういうペーパーがなくて、ここにパブリッシュされているのは併用したものが出ています。 ○伊藤構成員  両方あります。 ○山口座長代理  何かインパクトが低いというか、全く別なものを2つ足して、いいでしょうと片方をやる というのはいかがなものでしょうか。このあともずっと一緒の問題なので。 ○猿田座長  そうなのです。 ○山口座長代理  ですから私の希望は、有効性に関しては我々みんなが納得したわけではないので、厳密に それを評価できるようなことを整えない限りは駄目だということは念押ししておかないと まずいと思います。 ○伊藤構成員  ここで言わなくてはいけないのは、対照群を置いて、有効性が評価されるような形になら ないと、広く使われるような情報になりませんよとは伝えなければいけないことだと思いま すが、芽がありそうなものを拾うというのは、高度医療の基本的な考え方だと思っています。 治験の審査で、このデータで薬事承認が取れるかと言われたら、ノーだと皆さん感じている と思っています。 ○山口座長代理  わかりました。 ○猿田座長  そこで大事なのは安全性で、少なくとも安全性は確保されていると。いろいろな議論があ るかと思いますが、ずっと同じような問題が出てきます。ここでは一応、前立腺のほうは認 めさせていただくことで、ご了承いただきたいと思います。  次に移ります。続いて4月受付分の新規申請です。まず、009-1と009-2の評価です。川 上先生からお願いします。 ○川上構成員  009-1と009-2を併せて報告します。009-1が進行性膀胱がんに対する腫瘍特異的ペプチ ドワクチン療法で、009-2が再発予防を目的とした膀胱がんに対する腫瘍特異的ペプチドワ クチン療法で、ともに岩手医科大学附属病院からの申請です。技術に関しては、クラスI抗 原のHLA-A*2402型の拘束性のエピトープであるMPHOSPH1及びDEPCD1由来のペプ チドワクチンということで、これは009-1と009-2ともに同じものを使っています。  まず009-1です。実施体制は、いままでの報告として、当該施設で臨床研究を6例した ということです。これが前治療として放射線治療が行われていたり、ゲムシタビンで SD(stable disease)だったり、PD(progressive disease)だったり、ばらばらなのです。こう いったもののあとで評価を行って、6例のうち3例が効いているという結果が書かれていま す。これが既存治療と比べて、患者の生存期間を延長し、医療に資しているのかを鑑みると、 あまりにも根拠が薄いのではないかと考えます。倫理的なところについては、あとで佐藤先 生からお願いします。  プロトコールに関して、いまお話をしたようなことが懸念されています。評価項目は、1 が生存期間の延長、2が免疫学的評価として、ペプチド、特異的なCTLが利用できるかで す。これは先ほど柴田先生がお話になったように、バイオマーカーが本当に有効性を示すか どうかのバリデートがされていない中で、ここだけを見るようになってはいけないと思って います。  総評としては、ペプチドワクチンというのは世界中で1つも承認されていません。そうい った中で、6例中3例に効いたということで、しかも前治療はばらばらで、対照群もなく、 治験でなく高度医療を行うのが本当に正しいのかというのが1点です。  ほかにも、先ほど議論のあった資料1の観点についてで、I-3で試験薬概要書、試験製 品概要書は提出されていて、その中で薬理毒性、薬物動態、薬物代謝、非臨床試験成績とい うことも書いていますが、そういったデータは提出されていないようにお見受けしました。 ペプチド自体の安全性自体は確認しましたが、この部分の非臨床試験の項目は薄弱と考えま す。そのようなことが主なこととなります。  非常に悩みました。がんワクチンを日本初の技術として実施するのは非常に重要なことで すし、大学教授として、私はがんワクチンをアメリカ時代に複数審査してきましたが、何百 例、何千例とpivot al trial、phase III trialをしないと承認されない。しかも、それでも1 度も承認されていません。そのような中で、これを混合診療で許していいのかどうか。もし、 これが本当に素晴らしいものだということを認識しているのであれば、私だったら治験でや ります。そのようにして、きちんと承認への道筋を付けます。それが1点です。  2点目として、1国民として進行がんを本当に救えるのかということを考えたときに、ペ プチドの評価が6例の中から進んでいって、治験をしないと評価のゴールもないという中で、 これを認めるというのは、少し懸念が残るという意味で、ある意味では断腸の思いで「不適」 としました。これが009-1です。 ○山口座長代理  いま川上先生からお話のあったとおりですが、最初の進行性膀胱がんのほうについてで、 6例を見せていただきましたが、数も数ですが、クオリティーにも問題があります。放射線 治療が行われて、SD(stable disease)だったという判断ですが、そのようなものは資料とし て載っていないために、判断のしようがなくて、一体どこでどのようにそうやって判断した のかわからないということがありました。結局そういう効果のせいだったのではないかと、 穿った見方もできないわけではありません。  ただ、この前に審査されたもののことから考えると、評価が十分ではないけれども、可能 性があるのであれば何例かを厳密に見て、やってもらったらいいのではないかということで す。20例ぐらいきちんと見て、本当に効果があるのかどうか。その結果を我々が見て、こ れはすごいからもっとやったほうがいいのか判断すればいいのではないかと思います。基本 的には川上先生のおっしゃるとおりです。科学者としては認めるには十分でないと思います が、患者の気持に立てば、そういうものを試してみてもいいのではないかと思います。ただ しそれは科学的に、厳密な監視のもとに行われるべきだと思います。 ○猿田座長  出口先生、いかがでしょうか。 ○出口技術委員  この新規腫瘍抗原が高頻度に膀胱がんに出ると。正常組織では出ないということになって、 かなり特異性が高いのではないかというのが第1点です。  それから、確かに前治療をいろいろやっているのですが、画像診断で、かなりネクローシ スに陥った部分がはっきりと見えたこと、対象患者が標準の治療でほとんど効かないという ものに限っていることから考えて、臨床現場としては認めてあげたいような、応援演説をし たいような気持です。 ○佐藤構成員  別の観点からですが、全体的に患者にとって情報が少ないように感じました。これは先ほ どの久留米大学のときの田島先生のコメントの1点目と同じなのですが、この治療法を受け たときに期待される効果が載っていない。それは6例しかやっていないので、データとして 出せないということもあるのかもしれませんが、それならそのように書くべきだと思います。 それが1点です。  それから、研究計画や方法については、見せてくれと言えば見せてもらえることになって いるのですが、「問題のない限り」という留保が付いていて、これが何を意味するのかよく わからないということがありました。  これは009-2についてのみですが、009-1の説明文書には、がんのペプチドワクチンにつ いての説明があって、その説明をするための図も付いているのですが、009-2にはその文書 がなくて図だけがあるので、がんのペプチドワクチンの説明が必要だということと、図が完 全に浮いていると感じました。 ○猿田座長  細かいことはこれから議論させていただきますが、総括的に見ると、確かに患者のことを 考えれば許可したいけれども、評価の問題、6例だけということもあって、難しいというこ とです。 ○関原構成員  患者の話が出たので、私の例を申し上げます。免疫療法、ワクチンというのは昔から結構 ありまして、これを受けたい患者は代替手段がないということで、放っておけば駄目になる ということですから、これに対する期待はものすごく大きいわけです。  私自身も1987年に、LAK療法というのが新聞に出まして、某国立大学の教授がこれで がんが消えたと学会でも発表がありまして、どうしてもやって欲しいと私は頼み込みまして、 国立がんセンターでLAKのリンパ球を増やして、それを冷凍保存して、再々発した時使う ということで、ものすごく期待したのですが、数年後には実は全く効果なし、ということに なりました。私はがんの治療というのはそういうものだと思うのです。したがって、むしろ 期待は期待としても、ここはクールにやらないと。むしろ期待を裏切ると、がんの医療全体 に対する信頼の問題にもかかわる話になるのではないかと思います。  それから、国民の1人として最終的に保険適用になったときに、自分が全てお金を出すわ けではない、これは他人のお金でやるわけです。ものすごく医療費を払って、高度医療は使 うわけだから、本当に効果があって、これしかないというのならいいのだけれども、これを どんどんやるということは、国民の医療費が嵩み、ほかの治療にも大きな制約になる、マク ロ的に見たらそういうエコノミクスの話でもあるので、そこら辺も踏まえて対応を考えない と、最終的に国民の期待することにならないのではないかと私は期待します。とにかく免疫 治療というワクチンの話は、期待がものすごく大きいのです。 ○猿田座長  非常に貴重なご意見で、おっしゃるとおりだと思うのです。ですから、ここはこことして の判断をちゃんとさせていただきたいと思います。川上先生、続けて009-2の。 ○川上構成員  続けて009-2のほうで。先ほどの009-1と先ほど申し上げた同じ新規の腫瘍抗原を用い たエピトープペプチドで、今回はプロトコールとしては再発予防を目的としているというこ とです。  いままでの臨床経験としては、40例の対象患者に治療をしてというふうに報告があった のですが、実際にあとから送られてきた資料を見ますと、17例のみに評価がされていると。 17例のうち17%に再発を認めているということでして、いままでの既存治療と言われるも のが、BCGの膀胱内注入療法で、非再発率が70%で、70%対83%。しかし、しかも症例 数は17例ということが、本当に統計学的にパワーがあるのか、と少し疑問の中で審査を始 めました。  先ほどとも随分かぶるのですが、そういった再発予防でいままで既存治療として認められ ているものがある中で、それを上回るものの効果を出すための評価として、これがコントロ ール対照群がないというのが、本当に正しいのかという実験計画に対しては、先ほどのもの よりも強く疑念があり、これは「不適」ということにしたところです。 ○猿田座長  山口先生、お願いします。 ○山口座長代理  これは先ほどの予防に係ってくるわけですが、これは患者にとっては本当に大変な問題で はまだなくて、これは私もあまり読んでいて魅力的だとは感じませんでした。BCGの治療 法でも結構コントロールできますし、ほかの治療法でも早期のものはコントロールできるわ けですから、いまこれが採用されないと非常に苦しむ患者がいるというものではないように 思うので、もう少しこれはご検討いただいたほうがいいのではないかと思います。評価がま だまだ少な過ぎるので、十分やられてからのほうがいいと思いました。 ○猿田座長  出口先生、お願いできますか。 ○出口技術員  いまの山口先生がおっしゃったとおりだと私も思います。BCGはかなり腫瘍予防の効果 もあるので、そのエビデンスはあるので、そういう意味ではこれは治験に持っていってやっ てもらったほうがいいのではないかと思う例だと私も思います。 ○猿田座長  一応、009-2に関しては、BCGのほかの療法での効果がある程度期待できるということ と、もう1つ効果の面で出されたデータだけではどうも不十分だということで、001に比べ てさらにこちらのほうは不適であると思います。ですから、一応、これからあとほかまでや ってから総合的に議論いただきますが、009-1と2に関しては、1は患者の要望に対しても 考えられるけれども、一応ここでは2の状況ということで処理して、総合的には次に議論し ていただくということにします。  続いて整理番号011及び012、この評価、これは村上先生に担当していただきます。よろ しくお願いします。 ○村上構成員  申請番号011、012の話をします。011は山口大学、岡先生からの申請、012は近畿大学、 奥野先生からの申請で、ともに大腸がんを対象としたがんのペプチドワクチンに関する申請 です。共通する部分もあるので、まずその部分を話した後、個別の評価結果を述べたいと思 います。  本申請は、先ほどの申請とも同じくがん組織に高率に発現する、この場合は大腸がんです が、抗原ペプチド、あるいは腫瘍新生血管内皮に高率に発現するペプチドを複数用いたワク チンのカクテル療法です。  申請番号012の近畿大学では、大腸がんの腫瘍細胞特異的ペプチドであるRNF「リング・ フィンガー・プロテイン」43というのとTOMM34の2種類を使用して行われています。 一方で、山口大学は、この2種類に加えて大腸がんの腫瘍細胞特異的ペプチドであるKOC1 というのと、腫瘍新生血管内皮の特異的ペプチドであるVEGF受容体1,2を用いた計5種 類のカクテル療法です。ですから、両施設の差としては、使うペプチドの数が違うというこ とです。  これらの製造に関しては、先ほどからの申請と同じで、オンコセラピー・サイエンス社が、 国外企業へ製造を委託し、それを輸入して、研究実施機関に提供するという形態になってい ます。提供された実施医療機関の医師および機関の長が、その品質管理の責任を持つことで 新規医療技術が管理されるという形になっています。なお、使用に当たりましては、先ほど からとすべて同じですが、アジュバントである不完全フロイントアジュバントと一緒にして、 両鼠径部あるいは腋下部に投与されます。このアジュバントは、GMPグレードのものを、 ペプチド同様、オンコセラピー・サイエンス社が購入した後、研究機関へ提供されることに なります。以上が、共通部分です。  各論に入りますが、まず011の山口大学の申請です。いままでの研究成果としては、フ ェーズIの臨床試験が実施されています。18例を対象にしてデータが得られており、安全 性の情報に関しては、特段の有害事象は認められていません。一方で臨床効果ですが、実施 計画等に少し記載されていますが、それ以外にも発表スライド等を詳細に見ました。18例 中7例に腫瘍抑制効果が得られたということです、その中で1例CRの症例が得られていま す。また、抗がん剤の上乗せ効果によって予後が延長したというような症例、あるいはペプ チドによってプレコンディショニング効果と呼んでいいのでしょうか、抗がん剤が効かなか った症例にペプチドを投与することによって、抗がん剤の効果がまた得られたといった症例 もあったということから、大変期待の持てる治療方法ではないかと、そのように考えている ところです。  ただ、先ほどのフェーズIでは、転移性大腸がんで、標準治療で効果が得られなかったも のを対象にしたということですが、今回の申請は、治療、切除不能の大腸がん、そこまでは ほぼ同じですが、化学療法の未治療症例が対象になっています。この化学療法の未治療症例 に対して標準的化学療法であるmodified FOLFOX6のレジュメの上にペプチドを投与し、 ペプチドの上乗せ効果を期待するものです。厳密に言いますと、いままで治療成績のデータ が得られた研究計画とは、対象、あるいは治療方法が同等でないので、使用実績が十分ある かというと、少しクェッションマークになるだろうと思います。  研究計画のほうも、ほかの申請と同じですが、HLA-A24拘束性の陽性群と陰性群に分け てデータを見比べるということですが、陰性群のデータがない中で比較検討はできないとい った問題等もあります。  そういうことを踏まえて評価表をご覧ください。「実施体制の評価について」ですが、こ れに関しては、今回申請の対象症例となる未治療群に対する抗がん剤との併用に関するデー タは、十分ではないですが、難治性の進行大腸がんに関する治療効果に関しては、いくつか の症例で認められているということで、「医療技術の有用性等」も含めて「適」としていま す。あとで山口先生からコメントをいただければと思います。  「倫理的視点からの評価について」は、表のとおり4点ばかり田島先生からコメントをい ただいていますが、評価の結果は「適」です。  次に、「プロトコールの評価について」ですが、「安全性情報」、「治療計画の内容」、「有効 性の評価方法」、「モニタリング」、「重篤な事態が生じた場合の対処方法」、「記録の取扱い及 び管理」、「個人情報の保護」の項目を、「不適」としています。「治療計画の内容」以外につ いては、適切な体制を整えていただいて、それを文書としてきちんと記述していただければ、 それでよろしいかと思います。ただ、「治療計画の内容」に関しては、先ほどからの議論も ありますが、今後の治験にどのようにデータが活用されるのかといった点を踏まえて、もう 一度再考をお願いしたいと考えている次第です。本件は、最終的には治験を実施して薬事承 認を取っていかないといけない医療技術だと認識しているからです。それを迅速に効率よく 進めるためには、しっかりとした開発戦略に基づく必要があります。その中での高度医療の 役割というものを関係者の方々でもう一度しっかりと議論していただくのがいちばん大切 ではないかと考えています。非常にプロミシングな医療技術故に、その点は是非お願いした く思っています。  そういうことで最後の総評をご覧ください。一応、「条件付き適」という評価にしました。 ただ、この医療技術は国内・海外未承認薬ですので、早期薬事承認取得の観点からは、治験 の実施を優先することをお勧めしたいと思います。これを高度医療として実施することを認 めるに当たっては、1〜4のことを、少し厳しめに書いておりますが、何とか満足していた だければと思っています。いままでのフェーズIの試験で経験されておられる「進行・再発 症例で標準治療の効果が得られなかったもの」に対象を絞ることが1点目です。2点目は、 先ほども述べましたが、治験の計画に活用できる臨床データを取得する観点から、高度医療 実施計画の目的や方法を再検討していただきたいということ。3点目は、引き受け企業等、 この場合はオンコセラピー・サイエンス社になると思うのですが、薬事承認を取得するまで のロードマップをしっかりと明示していただくこと。最後に、試験物概要書に基づいて、提 供をされる未承認薬等の品質確保等が確認できることです。以上が011の説明です。  012は、近畿大学の申請です。こちらもフェーズIの試験が実施されており、2種類のペ プチドワクチン並びに経口化学療法であるUFTとUZELの併用療法を19例の切除不能の 進行再発大腸がんに対して行われました。安全性の情報に関しては、UFTあるいはUZEL によると説明がつく有害事象が認められたということですが、ペプチドによる特段の有害事 象はなかったということです。一方で、臨床効果については、2コース投与された症例8例 中6例がSDであったということです。今回のケースでは、CR症例は得られていませんが、 全体的には期待が持てる治療法と考えているところです。ただ、今回の申請が、大腸がん術 後患者(ステージIII大腸がん根治術後)の患者を対象として、標準治療法への上乗せ効果を 見るというものであり、それに関する臨床効果を示すデータはいまのところ一切示されてい ません。  そういう観点から評価をしました。「実施体制の評価について」は、「実施医療機関の体制」 の所を「不適」にしていますが、これは試験薬を管理する体制に関しての記述が不十分だっ たからです。「医療技術の有用性等」については、術後の補助療法としての臨床効果を示す データがなく、進行大腸がんに対する有用性や成熟度がもう少し確立してから試みるべきで あろうということで、山口先生からもコメントをいただいています。あとでお話していただ ければと思います。  「倫理的観点からの評価について」は、田島先生から「不適」ということで、コメントを 2ついただいています。またあとでご説明していただければと思います。  あと、「プロトコールの評価について」も、011の山口大学の申請とほとんど同じですが、 特に「治療計画の内容」に関しては、治験への橋渡しを意識していただき、再検討する必要 があると考えているところです。  最後、総評をご覧いただきたいと思います。今回の申請に関しては、国内・海外未承認薬 であって、手術後の補助療法としての臨床効果を示すデータが少ない、乏しいという点、早 期薬事承認取得の観点から、大腸がんを対象とした開発中の類似ペプチドワクチンに関して は、ある所は5種類、ある所は2種類というのでなく、一本化するほうがいいのではないか という点、治験の計画への活用を見据えた高度医療実施計画への変更が必要である点から、 総合評価を「不適」としました。 ○猿田座長  山口先生、簡単にお願いします。 ○山口座長代理  基本的には村上先生のおっしゃるとおりです。011は、私はこのケースでは抗がん剤と一 緒に上乗せを見るということで、現実的だと思います。というのは、実際にかなり有効な抗 がん剤があるわけですから、それを抜きで純粋にあくまでもペプチドの効果を見るというの は、患者にとって大変不利益なことなので、こういう試みはやってもいいのではないかと思 いました。  012は、先ほどおっしゃいましたように、こういう補助化学療法の効果を120例で見る ということ自体がそもそもナンセンスで、これは011の結果を見てからやられるべきだと 思いました。 ○猿田座長  田島先生、コメントをどうぞ。 ○田島構成員  011で「適」とはしているのですが、コメントの所に「文字が小さくて読みにくい」と記 載していますが、これは撤回します。画面の添付ファイルで開いたときの打ち出した方が小 さくなっていたようで、今回の資料で拝見した限りは、これで問題ないと思います。  012ですが、高度医療実施申請書には補償は「有」、保険加入には「無」とされているに も拘らず、説明文書では、補償がない場合があるということと、保険による賠償がなされる 場合があるといった記載がされていますので、これは矛盾していますから、きちっとどちら を直されるのかわかりませんが、ここを訂正していただく必要があると思います。  患者相談等の対応についての情報として、責任管理者の医師名と医学部代表番号と思しき 電話番号のみですが、これでは不十分と思いますので、患者が容易にアクセスできる相談先 を設けていただきたいと思います。 ○猿田座長  いま詳細にご議論いただきましたが、結局、011は一応この形で許可をしていいのではな いかと思います。もちろん条件付きでプロトコールその他に直していただくことですが。 012に関しては、いま村上先生、山口先生から技術面、効果面に関しても問題があるという ことで、田島先生からも倫理的な面からも問題があるということで、これは「不適」ではな いかということで意見をいただきました。一応、後ほど総括して議論します。一応そういう 形です。もう1つ最後の所です。今度は013-1から013-2、014-1、014-2ということで、 これは4つになりますが、藤原先生から総括的によろしくお願いします。 ○藤原構成員  013-1と013-2は山梨大学の附属病院から、014-1と014-2は近畿大学の附属病院からそ れぞれの申請で、すべて食道がんを対象にしたものです。お手元の資料3-6からの所です。 それぞれ実施体制の所は猿田先生にご評価いただいて、倫理的な観点の所は田島先生にご評 価いただいているものですが、この4つの申請をまとめて、私が担当した食道がんの部分の がんワクチン臨床試険の共通の問題点というのを、資料3-6の2頁のコメント欄のいちばん 上に書いています。  1つ目は、先ほど前半の議論の中で柴田委員もおっしゃっていた所ですが、シングルアー ムのトライアルではありますが、非HLA-A*2402群とHLA-A*2402群との間で、予後の差 を最終的に見て有効性の判断をしていきましょうという記載があり、これに関してはもとも とHLA-A*2402群と非HLA-A*2402群の予後の差がはっきりしない中で、比較対照として それを述べて、この試験が終わったあとに有効性を述べるのはナンセンスであるというのが 1つです。  2つ目は、これは両施設とも申請書に加えて事務局にお願いして、倫理審査委員会に申請 したプロトコールも取り寄せて拝見したのですが、各施設の倫理審査委員会に出しているプ ロトコールは、いずれも多施設共同研究、これは東大医科研の中村祐輔先生のホームページ に行っていただくと、がんワクチン療法のサイトがありますので、そこに載っている施設で すが、その10施設程度の所が参画する試験ですが、今回の高度医療の申請では、単施設の パターンで申請してこられて、非常にサンプルサイズがそれで大きいので、一施設で食道が んを短期間に集められるのかが心配で、実際のプロトコールを見たら、多施設共同研究にな っていたので、症例数の設定が単施設でやるには厳しいでしょうというところもあります。  3番目が、先ほどから村上先生もおっしゃっていましたが、すでにオンコセラピー・サイ エンスが進行膵がんで、国内では進行膵がんを対象にしたプラセボ対象の比較試験をやって いらっしゃいますし、海外でもたぶんグラクソスミスクラインとか、ドイツのメルクとかが、 非小細胞肺がんを対象にした大規模なプラセボ比較の術後のアジュバンドでのこういうペ プチドワクチンの意義を検証するような試験をやっている中で、あえてオンコセラピー・サ イエンスがこういうがん腫について高度医療評価でやるという道理がはっきりしないと。試 験でやったり高度医療評価でやったり、すでに全国各地で普通の大学の研究費でやっている、 公費でやっているように思われるのですが、臨床研究も多数行われている中で、あえてこれ を高度医療評価として申請してくる道理は何でしょうかということをお聞きしたかったと いうのがあります。  4番目は、これも先ほど伊藤先生もおっしゃっていましたが、一連のタイピングの費用の 出所がはっきりしないので、オンコセラピー・サイエンスが出しているのではないだろうね というのを確認したいというのがあったというのが、全体、この4つの申請を見てのコメン トです。  個別には、また資料3-6に戻っていただいて、これはあとから猿田先生と田島先生に補足 でお願いしたいと思うのですが、実施体制については、いちばん懸念したのは、がんは私は 診療としてやって、いろいろな所から噂とかいろいろ聞くので、本当にペプチドワクチンは 安全かというところも懸念するところもあって、このプロトコールを見てみると、どうも安 全性に関する評価を情報、全国、あるいはこの高度医療評価会議が共有するところに少し懸 念があって、できれば改正倫理指針、臨床研究倫理指針に則る感じで、なるべく有害事象は すべて報告して、それをみんなで検証できる体制にしてほしいというのがありました。特に こういう進行食道がんなどの場合は、余後が非常に悪くて、最後の最後の手段としてワクチ ンを投与する人がいて、ここに書いてある、投与してからプロトコール治療30日以内と、 早期死亡とよく言いますが、やってしまって1カ月も経たないうちに亡くなってしまったと。 主治医は「それは原病による死亡です」と言うことが多いのですが、あとからよく見てみる と、それはペプチドワクチンが悪さをしたかもしれないということもあり、それは広く症例 を集めてみないとわからないので、原病死も含めて早期死亡は情報を共有してほしいという ので、こういうコメントを入れています。  2頁、個別の問題点です。近畿大学の場合と症例適格基準とか適切に書いてある所が多か ったのですが、山梨大学の場合は、被験者の適格基準とか選定方法は非常にあいまいで、最 後のとどめとしていつも書いてあるのは、「試験責任医師や分担医師の裁量に委ねる」とい う言葉が入っているのです。要は何でも入れられますよという記載をしているので、これは 臨床試験ではないでしょうというのが明らかなところなので、通すのであれば是正してほし いというところがあります。  あと、「標準治療」とよく書いてあるのですが、私どもは多施設共同研究をやっていて、 他施設にサイトビジットに行くと、適切な標準治療が入らず、進行食道がんと言われて、新 しい療法を試されたりとか、そういう人は結構隠れていたりするので、その辺が第三者の目 に触れない所で行われる医療は非常に心配なところがあるので、症例適格基準はかなり明示 的に書いておかないと、ここにも書いたように標準治療を患者が受けなくて、「これはいい 治療ですよ」と無意識に誘導されて、ペプチドワクチンの投与を受ける可能性を危惧しまし た。  2つ目、これは治療計画、「タイピングによるランダム化、二重盲目、多施設共同研究」 ここだけに「多施設共同研究」という言葉が入っていて、意味はわからなかったのですが、 実際の施設に提出されたプロトコールを見ると多施設共同研究だったので、ようやくなるほ どと分かったし、中村先生のサイトを見て、10施設あって、その10施設はそのまま載って いるのだ、この10施設でやるのだというのがわかったので、シングルインシュティテュー トでやるシングルアーム・トライアルなのか、あるいは多施設共同研究でやる試験かという ことは、明確に申請書にも書いてほしいと感じました。  次に有効性の評価です。TTFとか、PFSというふうに再発エンドポイントに、再発のポ イントをエンドポイントにして評価されているのですが、ここも非常に大きな問題があり、 通常、こういう再発を判断する場合には、何週間ぐらいの周期で外来に来てもらうかとか、 何週間ぐらいの周期でCTとか超音波をやるかと、非常に事細かく決めないと、3カ月に1 度患者が来るのと1カ月に1度患者が来るのでは、再発を見つけるタイミングが2カ月も違 いますので、非常に試験が終わったあとにクリニカルの問題になるのですが、その辺が全く 記載されてないという大きな欠点もこのプロトコールにはありました。というのがこの進行 食道がんでの問題点の主な所です。猿田先生と田島先生に何か。 ○猿田座長  いまお話のありましたように、1は実はスーパー特区で中村先生が組まれた所に入ってい るのです。その中で個別に出してこられているというところで、いま藤原先生がおっしゃっ たとおりのことです。実際、あと、私はどうしても有効性のところの判断がもうひとつすっ きりしないということで、「一部適」という形にしたということです。スーパー特区に入っ ている、中村先生の班として入っているということで、施設としては大丈夫だということで、 そういった形で施設は一応可としたのですが、結局、有効性の判定が私にはどうもすっきり しないというところです。田島先生、いかがですか。 ○田島構成員  013-1、014-1にすべて共通するコメントにしていますが、これも補償と保険加入の高度 医療実施申請書と同意書の記載内容に矛盾があるので、見直しが必要ということと、患者相 談対応について情報が不十分であると、体制も不十分であるというところを指摘しています。 ○藤原構成員  総合評価です。最初の資料3-6の13-1の総合評価ですが、確かな進行食道がんでいろい ろな治療を行ったあとにこういうものが効果がある、期待が持てるかどうかは、これは非常 に望むところです。実際、山梨大学のグループが『キャンサー・サイエンス』という日本が ん学会の学術雑誌の今年8月号にパブリケーションしており、その中に効果があった事例が フィギュアで載っていました。確かに効いているのです。効いているのですが、トリッキー なのは、「CR」というふうに論文中には書いてあるのですが、それは肝臓のCTの場所だけ のCRで、ほかに肺、脳、骨など、その辺りがPDという増悪したのか、そのままstable なのか、全然記載がなくて、肝臓の病変は消えましたというのをCRとして判定しており、 それは金科玉条の如く述べられているのですが、たぶん効くのだろうと。効く部分もあるの だろうというのはわかるのですが、絶対効かないとは言えないので、では治療提携の機会と それをちゃんと科学的に評価するためには、高度医療評価の中で評価するのが適切だろうと 私は判断して、この進行食道がんについては条件付き適で、先ほど申したいろいろなプロト コールの不備は是正していただいて、なおかつ中村先生の関与されている10施設は全部共 同プロトコールで白黒付けてくださいというのが判定です。  以降の013-2、014-1、014-2はすべて再発予防の治療法で、これは従前からの皆さま方 のご議論にもあるところも踏まえて「不適」とし、その最後の理由が、3-7だと3頁に書い てあります。コメント欄で「適」の理由として私は書いたのですが、手術後の再発予防を目 的とした臨床試験でペプチドワクチンの有用性を検証するのには、プラセボ対象のランダム 化比較試験のみが適切であると。すでにオンコセラピー・サイエンスもプラセボ対象をやっ ているし、世界のほかの会社もプラセボ対象で再発予防の効果を見ている中で、あえて高度 医療療法下でこの試験をやる必要はないと思い、13-2、14-1、14-2はプラセボ対象で大き な比較試験でやっていただけるのであればいいという判断にしました。 ○猿田座長  いまお話がありましたようにいろいろな問題点があり、結局、最初の所だけが一応条件付 きで「適」にして、あと013-2、014-1、014-2のものに関しては再発防止ということで、 いまおっしゃられたようにプラセボとの比較、そういったことはやるべきではないかという ことで、これは「不適」という形で、一応、今日掛けたのは以上です。いろいろな効果の判 定の問題、このような点で議論があるかと思うのですが、総括的に是非ご意見をいただきた いと思うのですが、よろしくお願いします。 ○藤原構成員  ほかのネットでいろいろ見ていて、先ほど猿田先生もおっしゃったスーパー特区でがんワ クチンの特区をやっている中で、ほかにも胃がん、大腸がん、尿路上皮がんなど、全国各地 でやっていらっしゃるのですね。それをもしやるのだったら、進行がんに限って多施設共同 研究で症例数をきちっと絞って、1年なり2年なりの期間できちっと症例を集積して、効く、 効かないのをはっきりさせてあげたほうが、患者のためにも白黒がはっきり見えていいのか というのが、全部見た感想です。 ○猿田座長  おっしゃるとおりです。中村先生が組まれたスーパー特区の班は、かなり大きく全国の施 設が入っていますから、おっしゃられたとおりそういった形でいくのが本当は筋かと思うの ですが、時間がかかるかもしれませんが。あちらは国のお金として出ていますが、こういっ た形での患者一部負担、一部保険という形ではないということです。総括的にあと何か。ど うぞ。 ○川上構成員  全体についていまお話を伺い、私のところは膀胱がんだったわけですが、食道がんと大腸 がんも含めて今日初めて思うのが、いま藤原先生の言ったのと私も全く同じ意見ですが、進 行がんでこれはいい、これは駄目というのが、本当にこの会議として正しいことかと思うの です。これは国民の保険を使ってやるものですから、我々ではなくてちゃんと役所の人に決 めていただきたいと、こういうふうに思っているのです。  ただ、そうは言いながら、科学的には私は先ほど言ったことが正しいと思っています。ま た、大腸がんや食道がんに比べて、膀胱癌についてはしっかりしたプロトコールもないので す。プロトコールを出されていない中でこれに公的資金をという話になるとどうかというの がある。とは言いながらも、先ほど藤原先生がおっしゃったように、しっかりやるのであれ ば、スーパー特区関係もあるし、固型がんで集積して、みなで横並びというかしっかりとや ってくださいということが必要かと思います。とは言いながらも、オンコセラピー・サイエ ンスは治験をやっているわけですね。 ○猿田座長  山口先生、どうですか。 ○山口座長代理  今日、皆さんのご意見を伺って、大体一致しているのだということを痛感しました。ここ は素晴らしくエビデンスがあるわけではない。ただ、こういう状況なので一部やってもいい のだけれども、予防や補助化学療法、補助療法としての評価は基本的なデザインが不十分な ものは望ましくない、というのは皆さんのコモンセンスだったと思ってホッとしました。 ○猿田座長  これはどう持っていったらいいですか。何かありませんか、先生。 ○山口座長代理  プロトコールがないということで、患者数がフェーズIIというか、フィーズビルティスタ ディーとして見ていく場合には、そこまで前の情報はないのではないかということを非常に 感じ、今日ご判断されたので、私はいいのかという気がしました。 ○猿田座長  あと村上先生、どうですか。 ○村上構成員  009から014までは、最終的にどこが引き受け企業になるかというと、オンコセラピー・ サイエンス社が第1候補として特定できること、しかもスーパー特区で、国が開発を推進し ようとしている医療技術であることから、こういったペプチドワクチンを早く薬事承認に持 っていくためにはどうすればいいかということを、(企業も入れて、)どこかちゃんとした組 織をつくって議論していただいたほうが早いのではないかと思います。疾患ごとに個別対応 するよりは、(横並びで)ペプチドワクチンをどのように薬事承認に繋げるかを検討すると いう先ほどの藤原先生、川上先生のご意見に賛成です。 ○猿田座長  いちばん重要なことは、患者にとってみると方法がないということで、少しでも効果的な ものであれば、私どもとしてもサポートしてあげたいということは一番にあるのですが、一 方ではある程度しっかりとここでの国としての判断ですから、そこはちゃんとしなくてはい けないと思っているのです。  先ほどいろいろ議論していただいて、これだけの中で結局条件付きでというのは、先ほど の011のほうの上の大腸がんに対するペプチドワクチンの所が条件付きです。山口大学の もので一応「適」としていいかということと、013-1の進行食道がんに対するペプチドワク チン療法、これで山梨大学はこれは条件付きで「適」としていいかということと、あとは一 応全部「不適」ということですが、この2つの「条件付き適」をここで認めていいかどうか ということですが、そのあたりのところでご意見をいただけないですか。いまの2つに関し ては、プロトコール、その他しっかりもう1回していただければ、ある程度の報告は出てい ます。有効性も何とか読みきれるということですが、その点に絞ってご意見をいただけます か。どうですか、山口先生。 ○山口座長代理  それでいいと思います。自分の所だけが、自分たちがいいと思っている人たちが自分たち だけで評価するのではなくて、こういう高度医療で一応採用されて、厳しい目で見て、国民 にこの成果が本当にどうかということを示すことは大いに意義があると思うのです。 したがって、この2つに関しては私もやってみていいのではないかと思います。ただし、厳 密な評価という条件付きでです。 ○猿田座長  条件付きでですね。山口先生からそういうご意見ですが、村上先生、藤原先生、伊藤先生、 よろしいですか。 ○伊藤構成員  早目に条件をクリアしているかどうか、資料を作っていただいて、皆さんの所に見せてい ただいた上で先進医療に提示していただく方が戻ってくる可能性が少なくなると思います。 期待をされている患者たちもいらっしゃると思いますので、一刻も早く先に進める方向を考 えたらいかがかと思います。 ○柴田構成員  2点確認したいと思います。1つは、先ほど藤原先生のお話にもあったのですが、多施設 臨床試験として組まれているものの一部だけが抜き出されて申請されているケースがあっ たなどという話があったと思うのですが、そういう場合は多施設臨床試験全体として有効性、 安全性を評価することを計画になっている以上、抜き出した部分だけが、将来、例えばここ に上がってきても、評価のしようがないと思うのですが、そういうものは、本来そういう出 し方でよいのかが疑問に思いました。ですので、その単施設の中で評価されてということが 前提であるという理解でよろしいのですね。  2点目は、安全性の扱いの話です。冒頭にもお話しましたが、ばらばらにやってしまうこ とによって、本来、統一的に取りまとめてくれる方がいれば、ちゃんと伝わったであろう情 報が伝わらなくなってしまっては、このようなものをせっかくやって患者に使っていただけ るようになったとしても、それはボタンの掛け違いが起こって不幸になりますので、例えば いま申請書をずうっと見てみますと、予測される安全性情報の所に書いてあるものについて は、ほぼ横並びで書いてあるようですが、横並びプラス実施施設での経験という書き方にな っていますが、横並びの部分においてもちょっと書きぶりが違う部分がある気がするものも ありますし、こういうものはまだどこでも承認されてないものですし、本来、治験であれば もう少し厳密にやられているものでもあるので、こういうもので、例えばここでいう評価会 議で○を出す段階で一読の、例えばよその施設で問題が起こってないかを確認していただい て、問題なかったというのをその施設の申請者の方に責任を持って確認していただくように した上で評価をするとか、あるいは後に区切りをつけて、ここでもう一度改めて評価する際 にも、その段階でもう一度関連する所に調査していただいて、結果を上げていただくとか、 そういう仕組みをしておくほうがいいのではないかと思ったのですが。 ○猿田座長  いま先生がおっしゃった、特に1の問題に関しては、私はスーパー特区で中村先生が組ん できた、あれだけ全国的に各種のがんに対してやっていますから、本当はあれが全部走って くださって、統一的な見解が得られると思っております。問題はどのぐらい結論が出るまで に時間がかかるかですね。ほとんど全部入っていますから、そういった形でやっていただけ れば、本来ならいいけれども、高度医療の方に出てきてしまったわけです。いちばん困った のはそこです。おそらく厚労省側も困ったと思うのです。今回、実際に拝見してプロトコー ルも様々ですし、効果に関しても、安全性に関しても、非常に判断しにくいわけです。です から、いろいろな資料を当たってみてなかなか判定しきれなかったことは事実です。  そういったことでここで結論を出すとすれば、山口先生がおっしゃったように、とりあえ ず一部条件付きで許可せざるを得ないのかと思っています。と、中村先生がスーパー特区と してしっかりまとめていらっしゃいますから、本来はそれだと思うのですが、どう判断して いいかは難しいのです。ただ、委員会としてこれだけ出てきたものですから、今日決めた一 部修正して「適」としたものをやってもらうのだったら、まあいいのかなというのが、個人 的な意見も入ってしまうかもしれませんが、私の考えです。  この会議で議論したものは先進医療に回りますから、先進医療の先生方がどう判断するか ですね。これもまた私は読みきれません。先進医療の方でもう少し保険に近づいたところで 議論することになると思いますから。結局今日のところは、009-1から014-2までに関して は、もう1回001の条件付きということと、013-1、これを一応条件付きとして、プロトコ ールなど計画を直していただくことで認めていただいたこと。                  (異議なし) ○猿田座長  どうもありがとうございました。今日のがんペプチドの所の評価に関しては以上です。そ の、事務局からよろしくお願いします。 ○事務局  時間も少し超過していますので、手短に説明します。議題3「追加協力医療機関について」 です。資料4、いちばん最後の頁です。6月に受け付けた2つの技術に関して、右にある2 つの施設から追加協力医療機関としての申請が出てきています。いずれも施設要件等を照ら し合わせて事務局で判断をしましたので、今後、追加の手続を行うことを報告します。 ○猿田座長  よろしいですか。もしよろしければ、そういう形で決めます。あと次回に関しては、日程 はこれからですね。 ○事務局  はい、これから調整するので、またよろしくお願い申し上げます。議事録に関しても、ま たいつもどおり作成次第、先生方にご確認をお願いし、その後公開しますので、併せてよろ しくお願いします。 ○猿田座長  少し時間が過きてしまいましたが、先生方、今日はご協力をありがとうございました。こ れで第10回高度医療評価会議を終わります。 照会先 厚生労働省医政局研究開発振興課 TEL 03−5253−1111 高度医療係 松本 内線2589