09/07/09 第1回職場における受動喫煙防止対策に関する検討会議事録 第1回職場における受動喫煙防止対策に関する検討会 議事録 1.日時及び場所   平成21年7月9日(木)10:00〜   中央合同庁舎第7号館(13F)共用第1特別会議室 2.出席委員(11名) ◎相澤 好治(座長)、漆原 肇、鍵 直樹、沢田 純一、武田 繁夫、土肥 誠太郎、内藤  恵、中原 富美子、福島 葉子、三柴 丈典、望月 友美子(50音順、敬称略)   欠席委員   なし 3.行政機関出席者 金子 順一(労働基準局長)、尾澤 英夫(安全衛生部長)、木暮 康二(計画課長)、鈴木 幸 雄(労働衛生課長)、半田 有通(環境改善室長)、奥村 伸人(副主任中央労働衛生専門官)、 徳田 剛(副主任中央労働衛生専門官)、関 英一(健康局生活習慣病対策室長) 他    4.議題   1.職場における受動喫煙防止対策の現状及び問題点について   2.その他 5.備考   本検討会は、公開で開催された。 (※累乗については、「m^3」のように「^」で表記している。) ○奥村副主任中央労働衛生専門官 それではただいまから、第1回「職場における受動喫煙防止 対策に関する検討会」を開催いたします。  本日はお忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます。座長が選出されるまでの間、事 務局で進行させていただきます、奥村と申します。  本日の検討会は公開で行われ、議事録は厚生労働省のホームページで公開されることとなって おります。初めに、労働基準局の金子局長から、一言御挨拶申し上げます。 ○金子労働基準局長 おはようございます。労働基準局長の金子です。座ったままお話をさせて いただきます。お許しいただきたいと思います。  今日は進行のほうから話がありましたように、職場における受動喫煙の問題について、更に一 段進んだ対策が必要ではないかという問題意識をもっておりまして、そのことについて御検討い ただきたいということで、御参集いただいたわけであります。  御案内かと思いますが、今、労働安全衛生行政のほうの受動喫煙対策と申しますと、快適職場 の形成というアプローチで、一定の分煙対策などを取らせていただいておりますが、これは平成4 年以降こういった対策を取っているわけですが、この間、たばこをめぐる問題は大変大きく変化 をしてまいりました。働く人たちの意識も変わってきていると思います。  それからなによりも平成17年2月、WHOのたばこ規制枠組条約が発効いたしました。そうした ことで、国民の皆さんのたばこに関する受動喫煙の問題に関心が高くなっていると、こういう状 況にあると思います。そうした折でございますので、この機会に職場における受動喫煙について、 さらに対策を御検討いただけないかということでお集りを頂いたわけです。  いわば今までが、先ほど申しましたように快適職場の形成、言葉が適切かどうかわかりません けれども、アメニティーという観点で対策が行われていたわけですが、今度はその対策の切り口 と言いますかアプローチを一歩進めまして、受動喫煙による健康障害をどう防止していくか、こ ういう安全衛生行政の本筋の対策と言いますか、そういった観点から何がなし得るかという辺り について御検討いただきたいと思います。私から申し上げるまでもないのですが、たばこを巡る 問題は大変複雑な難しい問題をはらんでおります。それだけになかなか御検討いただくことも御 苦労が多いと思いますし、我々も一生懸命努力をさせていただきたいと思いますが、どうかよい 御議論をしていただきまして、結果をおまとめいただければと思っております。その結果を踏ま え、我々といたしましても必要な施策に当然つなげていくと、そういうことを前提にしながら考 えていきたいと思っております。開会に当たりまして、一言、お願いかたがた御挨拶を申し上げ る次第です。どうぞよろしくお願いいたします。 ○奥村副主任中央労働衛生専門官 次に、各委員の御紹介をいたします。資料1-2の委員名簿を 御覧ください。  まず、北里大学医学部長の相澤好治委員です。日本労働組合総連合会総合労働局雇用法制対策 局部長の漆原肇委員です。国立保健医療科学院都市環境室長の鍵直樹委員です。(株)三越日本橋 本店業務推進部営業人事担当課長の沢田純一委員です。三菱化学(株)人事部健康支援センター グループマネージャーの武田繁夫委員です。三井化学(株)本社健康管理室長統括産業医の土肥 誠太郎委員ですが、今遅れているようです。慶應義塾大学法学部教授の内藤恵委員です。(株)富 士通ソーシャルサイエンスラボラトリ主任の中原富美子委員です。日本サービス・流通労働組合 連合政策局部長の福島葉子委員です。近畿大学法学部准教授の三柴丈典委員です。国立がんセン ター研究所たばこ政策研究プロジェクトリーダーの望月友美子委員です。  引続き、厚生労働職員を御紹介いたします。先ほど御挨拶申しました金子労働基準局長です。 尾澤安全衛生部長です。木暮計画課長です。鈴木労働衛生課長です。半田環境改善室長です。環 境改善室の徳田副主任中央労働衛生専門官です。健康局生活習慣病対策室より関室長です。最後 に、私は環境改善室の副主任中央労働衛生専門官の奥村です。ただいま、土肥委員がお見えにな りましたので御紹介いたします。  続きまして、資料の確認をいたします。資料1-1〜資料4まで。1-1「職場における受動喫煙防 止対策に関する検討会開催要綱(案)」です。資料1-2「職場における受動喫煙防止対策に関する 検討会委員名簿」。資料1-3「職場における受動喫煙防止対策に関する検討会の開催予定について (案)」です。  資料2-1-1「職場における喫煙対策に係る法令等」、資料2-1-2「健康増進法と労働安全衛生法 による受動喫煙防止対策の関係」です。  資料2-1-3「職場における喫煙対策の経緯」です。  資料2-2「諸外国の職場における受動喫煙防止に係る規制の概要」です。  資料3-1「職場における喫煙対策の実態」です。10頁〜14頁まであります。  資料3-2「受動喫煙をめぐる訴訟の動向」です。  資料4「職場における受動喫煙防止対策のあり方に係る論点(たたき台)」です。  続きまして、参考資料1「関係法令」です。  参考資料2「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針」です。  参考資料3「職場における喫煙対策のためのガイドライン」です。  参考資料4「『職場における喫煙対策のためのガイドライン』に基づく対策の推進について」で す。  参考資料5「受動喫煙防止対策のあり方に関する検討会報告書」です。  参考資料6「たばこの規制に関する世界保健機構枠組条約(要点)」です。  参考資料7「たばこ規制枠組条約第8条履行のためのガイドライン(骨子)」です。  参考資料8「職場における喫煙対策の実施状況について」アンケート調査結果報告書(抜粋)(平 成19年度厚生労働省委託事業)です。  落丁等がございましたら、お気づきになりしだい事務局にお知らせください。  議事に入る前に資料1-1の本検討会の開催要綱について、尾澤安全衛生部長から説明がありま す。 ○尾澤安全衛生部長 それでは、資料1-1「検討会開催要綱」ですが、まず、目的は先ほど局長か ら挨拶の中にもございましたように、我が国におけます職場における受動喫煙防止対策につきま しては、平成4年以降、快適職場形成の一環ということで対策を進めてまいりました。そうした 中で、WHOたばこ規制枠組条約への我が国の署名・条約の発効など、こうした環境の変化があると いうことで、今後労働者の健康障害の防止の観点から事業者の責任において、どう取り組んでい けばいいかということについて検討を行うものです。  検討事項としては、2の「労働安全衛生法に基づく受動喫煙防止対策の基本的考え方について」 ということで、受動喫煙対策を健康障害防止の観点から事業者の責任として整理するということ について御議論いただきたいと思います。その上で(2)にありますように、具体的な受動喫煙防止 措置のあり方について、1つは、喫煙を制限する空間的な範囲の問題。それから、喫煙制限につい ての労働者・関係者への周知のあり方について。そして3つ目に、顧客が喫煙する職場というの があります。こうした所における受動喫煙防止の対策のあり方について。(3)その他で、地域保 健における受動喫煙防止対策との連携、あるいはこうした対策を進める上においての支援につい てということ、これらが検討事項として考えられるものです。  検討会委員は先ほど御紹介があったところであります。  4「その他」としまして、本検討会には座長を置き、議事を整理する。必要に応じてお願いして おります委員の方以外の関係者方々の出席を依頼する。(3)としまして、この検討会は原則とし て公開するということですが、検討に当たりまして、関係者からのヒアリング等が予定された場 合に、ここにありますように、特定の個人のプライバシー、企業のノウハウ等に係る事案を取り 扱う際には非公開とすることができるというものです。以上、本検討会に当たっての進め方の問 題ですが、なお、受動喫煙による健康障害の有無につきましては、基本的には健康障害があるか ないかについては既に結論が出ているという立場で、その上で職場の受動喫煙による健康リスク をいかに低減させるかという観点から御議論をお願いしたいと考えておりますので、どうぞよろ しくお願いいたします。以上でございます。 ○奥村副主任中央労働衛生専門官 御意見、御質問がございましたらよろしくお願いいたします。  それでは資料1-1ですが、お手元の(案)を取って、正しい開催要綱として取り扱いいただき たいと思います。ありがとうございました。  開催要綱4(1)に記載されているとおり、本検討会には座長を置くことになっております。事務 局からは労働衛生、公衆衛生が御専門であります相澤先生に座長をお願いしたいと存じます。各 委員の皆様、いかがでしょうか。                  (異議なし) ○奥村副主任中央労働衛生専門官 ありがとうございます。それでは相澤委員に座長をお願いし ます。この後の進行につきましては相澤座長にお願いいたします。 ○相澤座長 それでは御指名でございますので、座長を務めさせていただきたいと思います。皆 様方の活発な御議論を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。  それでは議事に入ります。まず議題1の「職場における受動喫煙防止対策の現状及び問題点に ついて」です。事務局から資料1から3にかけて順次説明をお願いいたします。 ○徳田副主任中央労働衛生専門官 まず資料の5頁の資料1-3を御覧ください。当検討会の開催 予定についてお示ししております。第1回目が21年7月ということで、本日ですが、受動喫煙防 止対策の現状と問題点として、後ほど資料を使いながら説明をさせていただきまして、これに関 して各委員から御意見を頂きたいと考えております。  第2回が8月。2回目以降は大体月に1回のペースで開催をさせていただきたいと考えておりま す。8月の2回目については各委員に既に日程の調整をさせていただいており、この会議の終わり に改めて申し上げますけれども、8月の下旬に予定しております。第1回の議論を踏まえ、論点を 整理させていただき、お示ししたいと考えております。  第3回目は9月に、顧客にサービスを提供する業種とか、あるいはたばこの製造販売等を行う 企業等からヒアリングを行うことを予定しております。  第4回目は10月ですが、3回目で終われなかったものに続き、ヒアリングを行うと同時に、検 討会の報告の素案について事務局からお示しして、これについて御意見を伺いたいと考ええてお ります。  第5回目は予備日としておりますが、おそらく開催の必要があるだろうということで、ここで もさらに検討会の報告について詰めた御意見を伺いたいと考えております。事務局としては、以 上のような開催予定を組んでおります。どうぞよろしくお願いいたします。 ○相澤座長 それでは6頁以降の資料について御説明をお願いいたします。 ○徳田副主任中央労働衛生専門官 まず資料2-1-1ですが、これまでの職場における喫煙対策に 係る法令等についてお示ししたものです。まず安衛法ですが、第71条の2には、事業者は、事業 所における安全衛生の水準の向上を図るため、快適な職場環境を形成するように努めなければな らない、と規定されており、この規定に基づいて現行の喫煙対策について、快適な職場環境形成 の一環として行われているところであります。  同じく安衛法の71条の3ですが、ここには大臣が指針を公表するとされており、この条文を根 拠として次の四角の枠にあります「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関す る指針」、これにおいて快適な空気環境を維持管理するための措置として必要に応じ、作業場内に おける喫煙場所を指定する等の喫煙対策を講ずるとされているところです。またこの告示を根拠 として、職場における喫煙対策のガイドラインが平成8年に策定され、15年に改正をされており ます。平成8年の策定時点では、時間帯を定めて禁煙とする時間分煙も喫煙対策の1つとして提 案しておりましたが、喫煙コーナーの設置も喫煙室と同列で示されていたところです。  その後15年に改正され、空間分煙で、かつ可能な限り喫煙室を設置するとともに、喫煙室等か ら非喫煙場所へのたばこの煙や臭いの漏れを防止するため、その境界において、喫煙室等へ向か う気流の風速について、健康局から示された「分煙効果判定基準」を参考に、0.2m/secと定めた ところです。また一番下の枠になりますが、平成17年に安全衛生部長通達を出し、喫煙室の設置 等喫煙場所の確保等が困難な場合には、全面禁煙を勧奨するよう指示をしまして、現在こういっ た通達に基づいて指導を行っているところです。  次に7頁、資料2-1-2「健康増進法と労働安全衛生法による受動喫煙防止対策の関係」を示した ものです。現在の受動喫煙防止対策が公衆衛生分野では健康増進法により、施設管理者に措置が 義務づけられており、職域については、労働安全衛生法により事業者の責務として措置が義務づ けられていることを図示したものです。左半分が健康増進法、右半分が安衛法関係を示しており、 それぞれ二重線と、太い実線でその守備範囲を示しております。  健康増進法関係については健康局の所管となっておりますが、この法第25条に受動喫煙防止に 係る規定があり、条文はその資料の左下の枠内に示しておりますが、多数の者が利用する施設を 管理する者は、受動喫煙を防止するために必要な措置を講ずるよう努めなければならないと規定 されており、その対象として、事務所も列挙されております。このことから、限られた人数の労 働者しか入らない事務所等は、健康増進法の適用は受けないということになります。なお健康局 において、今年3月に検討会の報告書が出されており、上の四角のマスキングがしてある部分の、 基本的な方向性として、多数の者が利用する公共的な空間については原則として全面禁煙である べき、という報告がなされております。  一方で、労働安全衛生法関係ですが、先ほど資料でも御説明しましたが、ガイドラインに基づ いて、事業者に指導を行ってきたところで、快適職場の形成に関する根拠条文は法にはあります が、受動喫煙そのものについては法令に明記された規定はありません。この図の中央付近に示し ております、多数の者が利用する施設であり労働者が働く職場でもある場所については、2つの法 の適用があって受動喫煙防止が取り組まれているところです。  次の8頁は資料2-1-3です。これまでの職場における喫煙対策について、安衛法関係、健康増 進法関係と、WHOを含めた経緯を示したものです。一番左の列の労働安全衛生法関係では、平成4 年の快適職場指針からはじまり、かなり早い時期から対策に着手してきたところであります。先 ほど御説明したとおりですが、ガイドライン等はこれまで受動喫煙に対する社会的な認識の変化 等に応じて指導の内容を改定してきたところです。健康増進法関係の最近の動きとして、先ほど も説明しましたが、本年3月、受動喫煙防止対策のあり方に関する検討会の報告が出されており ます。  WHO関係では、平成15年に条約が採択され、翌16年に我が国もこれを承認し、翌17年に批准 国が40ヶ国に達しておりますので、これにより2月に効力が発生をしております。  続いて9頁の資料2-2です。我が国における対策はこれまで述べてきたとおりですが、諸外国 における、職場における喫煙に対する規制の状況について、平成19年度に中災防に委託し、調査 した報告書を中心に取りまとめたものです。時間がありませんので一つひとつ詳しく見ていくこ とができないのですが、例えばフランスですが、多数の者が共用する場所においては喫煙者専用 スペースを除き、喫煙は禁止されていると規定されており、同様にドイツ、カナダ、米国の多く の州では喫煙室の設置を認め、それ以外の場所では禁煙とされております。イングランドでは衛 生法によって、囲われた公共の場と職場において原則喫煙禁止とされており、米国のニューヨー ク州では建物内では喫煙が禁止となっており、職場を原則として全面禁煙とされているところで す。諸外国についてはこういった状況になります。  引き続き、10頁、資料3-1は労働者の健康状況調査を中災防に委託して行った、委託研究の報 告を基に、職場の喫煙対策の実態についてまとめたものです。労働者健康状況調査は常用労働者 が10人以上の約14,000事業所を対象としておりまして、中災防の委託調査研究については、労 働者が10人以上で、約2,200事業所を対象に行ったものです。この頁の上の折れ線グラフでは、 事業所における喫煙対策の取組み状況について、平成9年からの推移で、19年のところを見ます と、何らかの喫煙対策に取り組んでいる事業所が75.5%です。事業所全体を禁煙にしている事業 所は下から2つ目になりますが、18.4%と、確実に増加はしております。しかしながら下のグラ フでは、「他人のたばこの影響を受けている」と、アンケートに回答している労働者の割合を示し たもので、職場で他人のたばこの煙を吸入することがある労働者の割合は14年と比べて、19年は 減少はしているものの全体で約7割に達しております。  同じ調査で次の11頁を御覧ください。職場で喫煙に関して不快に感じたり、体調が悪くなるこ とがあるかという問の回答ですが、非喫煙者では実線の円で囲ってありますが、約4割の方がそ ういう経験があると回答しております。  この中段の表ですが、喫煙対策として職場に何らかの改善を望む労働者が全体の92.2%に達し ており、職場での喫煙対策が不十分であることを示しております。しかし全面禁煙を望む労働者 は24%。喫煙室または喫煙コーナーを設けてそれ以外を禁煙とすることを望む労働者が54.1%と なっており、前者のほうが低くなっております。これは喫煙者にも配慮しつつ、確実な空間分煙 が望まれていることを示していると考えております。  一番下の表は喫煙対策として、事業所全体を禁煙にしている所、それと喫煙室を設け、それ以 外を禁煙にしている所、どちらの対策も講じていない事業所を規模別に見たものです。喫煙室を 設置している事業所は規模が大きいほど多くなっております。一方で、全面禁煙にしている事業 所は逆に規模が小さいほど多くなる傾向が見られます。これは喫煙室を設けることが小規模事業 所ほど負担になっているということが原因の1つと考えております。また、いずれの対策も取り 組んでいない事業所について、右側の列ですが、100人未満の事業所で全体の約5割を占めている という状況です。  次の12頁に、今の100人未満の事業所が約5割を占めていると申しましたが、それが全体でど のくらい占めるのかを参考として下に円グラフで示しております。これが我が国の全従業者数別 の割合を示したものです。色付けしたのが100人未満の事業所で勤めている労働者の割合で、全 体の74%に上っております。上の棒グラフは喫煙対策に取り組んでいない理由を複数回答で挙げ てもらったものですが、事業所内の合意が得られていないとか、喫煙室等を設けるスペースがな い、どのように取り組めばよいかわからないといった項目が多くの事業所が挙げております。職 場に関する状況は以上です。  13頁には、資料3-2として、受動喫煙をめぐる訴訟の動向ということで、社会的な動きとして の訴訟の関連情報を参考として示しております。その13頁のほうは、職場の受動喫煙に関する裁 判で、被害を訴える労働者がはじめて勝訴をした平成16年の江戸川区の職員の事件です。内容に ついては、原告が健康被害の疑いがあって、江戸川区は健康状態の悪化を招かないように必要な 措置を講ずるべきであったのに、職場の喫煙を放置したというもので、5万円の賠償を命じられ、 区は控訴しなかったために判決が確定したものであります。  次の14頁は新聞の切り抜きですが、今年の4月に札幌地裁における和解の事案で、化学物質過 敏症の職員が、受動喫煙が原因として分煙を要望したのですが、会社側から解雇されて、不当解 雇だとして訴え、700万円で和解が成立したという内容のものです。  以上、受動喫煙対策に係る現状を、14頁までの資料を基に説明いたしました。 ○相澤座長 はい、ありがとうございました。ただいま事務局から職場における受動喫煙防止対 策の現状、問題点等について御説明がありました。御質問あるいは御意見を頂ければと思います が、いかがでしょうか。 ○沢田委員 先ほどの説明の2-1-3の健康増進法関係の一番下に、検討会はもうすでにやったと いうような内容が記載してあるのですが、この内容の公表、報告書の公表というのはどのような 内容でしょうか、ここには載っていないと思うのですが、どうなのでしょうか。 ○徳田副主任中央労働衛生専門官 参考資料5としてその報告書をお付けしてあります。すでに インターネット等でも公表しておりますが、その25頁に健康局で行った検討会の最終報告書を資 料としてお付けしております。 ○沢田委員 はい、わかりました。 ○相澤座長 ほかには何か御意見ありませんでしょうか。 ○土肥委員 今回の検討会の中で、喫煙のリスクがあるというのが前提でよろしいかと思います。 どの程度のリスクだという認識を共有した上でこの議論を進めるのかというのは、論点が分かれ るかもしれないと思いますが、化学物質による健康障害を防止するという観点からいくと、やは り、リスクがどの程度だという認識で、このリスクを管理していこうかということを考えるべき かと思うのです。その点は何かコンセンサスがあるのか、ないのかということを教えていただき たいと思います。 ○半田環境改善室長 ただいまの御指摘ですが、私ども、この受動喫煙の健康リスクとしては、 例えばがんの問題とか、心筋梗塞、脳梗塞などが言われていることは承知しております。ただ、 「どういったリスクを、どの程度まで下げることを目標とする」ということは、おっしゃるとお り、化学物質対策ではそういったやり方をしているのですが、このたばこの問題に関してはその あたりに非常に難しい部分がありますので、とにかく私どもとしましては、「受動喫煙を被ること を少しでも減らしていく、実現可能な範囲内でリスクを低減させる」ということで、御検討いた だきたいと考えておりまして、どのリスクをどの辺まで下げるという、こういう定量的な検討で はなく、現状から見て少しでも健康リスクを可能な範囲で下げる方法。こういうことを御検討い ただきたいと考えております。 ○土肥委員 わかりました。 ○相澤座長 受動喫煙のリスクはある、健康障害のリスクはあるという、そういう前提でという ことです。ほかには何かありませんか。 ○望月委員 受動喫煙防止対策のあり方に関する検討会の現状認識の所に、これは同じ厚生労働 省の報告書として触れられている、おそらくここがベースラインになるのではないかと思います。 ○相澤座長 この点はよろしいですね。皆さんそういう認識、前提でこの委員会が始まっており ますので。  ほかにはいかがでしょうか。今職場では75%ぐらいの所では取り組んでいるのだけれども、労 働者のほうから見ると、6割から7割の人が何らかのばく露を受けている、また、不快に感じる人 たちも多いということです。よろしいでしょうか。いかがでしょう。三柴委員、今いろいろ文献 等を調べられておりますが、何か追加等ありますか。 ○三柴委員 今のところはまだありません。 ○相澤座長 よろしいでしょうか。それでは次のところに移らせていただきます。資料4につい て事務局から説明をお願いいたします。これは「職場における受動喫煙防止対策のあり方に係る 論点」ということです。 ○半田環境改善室長 資料4について御説明をさせていただきます。先生方に御議論いただきま すにあたり、少し論点を整理しました。これを参考としていただきまして、私どもは先生方に御 検討いただきました結果を、真摯に受け止めて対策をつくっていきたいと思っております。その 議論をうまくまとめていくための参考ということで御理解いただければと思います。先ほど要綱 の御説明で部長からも申し上げましたように、「受動喫煙の健康リスクを少しでも低減させる、そ のために具体的にどういうことができるか」ということで御検討をお願いしたいと考えておりま す。  一歩でも半歩でも前へ進めたいと考えているわけですが、まず論点1です。先ほど資料2など を使って、これまでどういう対策を講じてきたかという御説明をしました。これまでは快適職場 形成の一環ということで、行政指導ベースで進めてきたわけです。先ほど徳田のほうから御説明 しましたように、これは一定の効果もありましたが、同時に限界も感じられている。特に実際の 職場の喫煙対策に何らかの不満、あるいは希望を持っている労働者が、かなり高い割合で存在し ているということは、そういうことだろうと思っております。そういうことで論点の(1)に書いて ある趣旨は、これまでの自主的な取組み、行政主導ベースで自主的な取組みで行ってきたガイド ラインをさらに一歩進めて、安全衛生法の本筋の中で取り組んでいきたい。そういうことについ てどうだろうかということです。  (2)は、先ほど来お話しておりますが、労働安全衛生法の体系というのは基本的には、健康障害 の原因となる有害物質について、その物質あるいは取り扱う作業を限定して規制の対象としてお ります。そういった意味で、このたばこというのは業務と直接関係があるのかないのか、たばこ の場合は一部のメーカーを除けば、喫煙は業務ではありません。労働者の嗜好として喫煙されて いるもので、業務と直接関係ないという点では、従来の有害物のばく露防止対策とは違っている と考えられます。しかしながら先ほどの、労働者の皆さんが職場の対策になお不満をお持ちだと いうことからもわかりますように、この職場の対策というのは、事業者の関与がなければ対策は 進みにくいという点では同様です。そういう点においては、これは安全衛生法の体系の中で措置 できるものだと私どもは考えているわけです。  論点1はそもそも論ですが、まずこういったところについて、先生方で御議論、御確認を頂き たい。こういったところが出発点になり、その上で具体的な方策について論点2、論点3で御議論 をお願いしたいと考えております。  この職場の問題を考えますときに、必ずぶつかる難しい問題が、顧客がいらっしゃる、いわゆ る客商売の事業ですが、そういったことを考えます前に、まず一般的な職場の基本原則と言いま すか、「一般論」、そういったことについて論点2で御議論いただきたいと思っております。しか るのちに一般原則・基本原則はこうであるけれども、そこにお客様がいらっしゃるような商売ビ ジネス、そういったところで、どういうふうに取り組んだらいいだろうかということを、さらに 論点3で御議論いただきたいと、こういう構成にしております。  論点2ですが、(1)の職場において喫煙を制限する空間的な範囲。これはもう少し平たく申しま すと、職場全体を禁煙にするのか、あるいは喫煙室を設けて、その範囲内で喫煙を認めるという ことでやっていくのか、また、喫煙室を認めるとした場合にその換気、空気中の有害物質の濃度 などの要件をどうするのか。こういったことについて御議論いただこうと思っております。(1)は、 具体的なばく露防止措置についての御議論ということです。  (2)は、そういったばく露防止措置、喫煙制限等を行うにあたって、労働者・関係者にどのよう に周知していくのか。こういったことについて御議論いただきたいと考えております。  論点2はこの職場での一般原則・基本原則ということです。  論点3はそういった基本原則・一般原則を、お客様がいらっしゃるような職場でどういうふう に適用していくのか。論点3では、たばこの煙が存在する場所に労働者が立ち入ることがある事 業場における、顧客の喫煙と労働者保護のあり方。いささか持って回ったような言い方ですが、 簡単に申しますと、労使以外のお客様がいらっしゃるような職場。飲食店とかホテル、そういっ た所では論点2で整理していただいた一般原則を、どのように適用していったらいいだろうかと いうことで御議論いただければと思っております。  一般的にいって、お客様がいらっしゃる職場、飲食店などなどですが、これについては、そう いう顧客に対して事業者の責任において何かをやっていただくということを、労働安全衛生法の 体系の中でお願いする、これはいささか無理があろうかと思っております。ただ、その中でも、 例えばその喫煙空間をきちんと分煙するというようなこと、あるいは、その喫煙空間内の換気量 を適切に保つというようなこと、あるいは、そこに立ち入る労働者の皆さんの時間を、一定程度 以下に抑えるようにしていただくなどなどによって、健康リスクを少しでも低減させることは可 能ではないかと考えておりまして、論点3の所では冒頭に申し上げましたように、健康リスクを 可能な限り低減させていくという観点で御検討いただければと思っております。  論点4の(1)は「地域保健における受動喫煙防止対策との連携」と書いてありますが、その趣旨 は、事業場内での喫煙対策が講じられますと、職場での喫煙ができないということになってくる 可能性が高くなってまいります。その結果、労働者が、例えば近くの公園に集まって喫煙すると いったことも考えられます。公衆衛生を所管する地域保健、こことの連携なども重要になってく ると考えられますが、そういった、どのような連携を行っていくべきかというようなことを、御 議論していただくことを想定しております。  (2)「受動喫煙防止対策に関する支援」。これに関しましては、喫煙室を設けることにした場合に その維持管理、これにはノウハウや費用が必要です。関係情報の入手が困難であったり、経営基 盤の弱い小規模事業場といった所で実効を上げるためにはどういった支援が必要なのか。そうい ったことも御議論いただきたいと考えております。  (3)「喫煙による健康障害に係る教育」、受動喫煙防止対策がなぜ必要なのか、健康への影響など の知識を労働者の皆さんにきちんとお伝えする。こういったことが重要ではないかと考えており まして、そういった項目を設けさせていただいております。  以上が私どもが御用意した論点、たたき台として資料4を御説明いたしました。 ○相澤座長 ありがとうございました。事務局で用意していただきましたたたき台、論点1から4 までありますが、1から順番で御議論いただければと思います。1が、労働安全衛生法に基づく労 働者の受動喫煙防止措置の現行のガイドラインで、その効果と限界について御議論いただいて、 それから一般的な、事業者が製造等で発生する有害物のばく露と職場での受動喫煙防止、これは 少し違うわけですが、その辺についての御議論を頂ければと思います。いかがでしょうか。 ○望月委員 論点1の(2)です。先ほどの土肥委員の質問とも関連してちょっと問題提起というか、 質問させていただきます。有害物質のばく露と考えますと、受動喫煙の問題も全く同じで、対物 保健的に見れば、その発生源が人間であろうとガスの蒸気であろうと、ものは同じなのですね。 どこが違うかというと、人が、喫煙に関しては嗜好という考え方の中に今押し込めているからで あって、アプローチとしては、そのリスクの大きさとか含まれている様々な物質については、全 く同じ場合もあるし、あるいは、通常の職場におけるたばこ由来の有害物質のばく露の状況でも、 更に甚大である場合もあるかもしれない。そうすると、その相違点はと言った場合に、喫煙者の 行動として出てくるということだけになるのではないかと、単純に思ってしまうのです。それは、 私は労働衛生全体の考え方というのが、まだよくわからない部分があるので、業務と関連づける というところだけで整理してしまって、本当にいいものかどうなのか。リスクの大きさについて も、本当は徹底的に共有した上で、たばこだけは特別にするのだとどこかで考えるのか、その辺 の、そもそも論なので大変申し訳ないのですが、一番大事なところではないのかなと思ってあえ て申し上げさせていただきました。 ○相澤座長 ありがとうございました。大変大事なことで、発生源がどこにあるかということで すね。人であるか装置であるかの違いで、本質的には同じだと。いかがでしょうか、これについ ては。武田委員、どうでしょうか。 ○武田委員 通常ですと、職場での有害物の発生というと、事業活動に伴って出てくるわけです が、喫煙の場合は従業員の嗜好品によって出てきます。ただ、そういう職場を提供しているのが 事業者だとすれば、やはり事業者としても、何らかの対応が必要だということは認識しています。 ○相澤座長 これはいかがでしょうか。 ○沢田委員 私の所は百貨店ですので、この喫煙については、大きな問題としては考えておりま す。実際に日本橋の店舗の中には、派遣社員といわれる方も含めて6,000名以上の方々が働いて おります。この資料だと喫煙率が24、25%ということですので、大体1,500人ぐらいの人が吸っ ているだろうと単純に考えますと、受動喫煙とか禁煙、分煙ということについても、会社として かなりの取組みをせざるを得ないと考えています。5、6年前までは、分煙というものに対しては かなり取組みは弱い現状でした。4、5年前、新しく建物を建て替えるときにあわせて喫煙室を、 分煙という形を完全にやっていこうという取組みが会社の中で始まりまして、現状としては、受 動喫煙を防止する形で実際にやっております。  今日たまたま1階の喫茶室へ行ってみましたら、喫煙室が奥にあって、部屋は別になっていま すが、入り口は開いています。これは完全な分煙にはなっていないわけですが、今は一応、入り 口も閉鎖するという形でやっています。そうは言っても外に換気をする、吸煙の設備を完璧にで きない状況もありますので、ある程度の狭い喫煙室の中で10人、20人がたばこを吸いますと、完 全に吸いきれないものですから、その人たち、自分たちの健康ということもありますが、設備的 なものの対応が遅れている部分も考えています。  今後はやはり、受動喫煙は取り組むべき重要課題とは思いますので、もう少しその設備投資を するべきなのか、逆に、もっと禁煙ということをやるべきなのか、今いろいろ検討するところに 入ってきています。設備投資はかなりかかります。それから、私は福利厚生等々やっております ので、健康ということを前提に、喫煙者の健康ということもあるわけです。禁煙者のことを考え て受動喫煙防止というのもありますが、喫煙者に対する健康というのはやはり、きちんとした排 煙ができている中で吸うのであればまだいいですが、吸いながらもほかの人の煙を吸ってしまう という、それだけの多人数の方もいるという部分で、どういうふうに健康、その障害を本人たち に訴えて、禁煙を勧めていくかということも考えていかなければいけないだろうと思っています。  実は百貨店では、ちょっと禁煙とは別ですが、以前に簡易包装、完全包装を簡易包装にしたと きに、お客様からかなり抵抗がありましたね。三越の包装紙が上にかぶさるだけですから。これ が環境保全だとかリサイクルだとか、そういう環境問題を国が取り上げて、公的な部分でコマー シャルをしたり、テレビで放映したり新聞で流したりということがあって、それが追い風でやっ ていて、お客様に御理解を頂いたというような経緯で、今は当たり前の時代になっています。  ですからこの禁煙ということについても、最近の、JRのホームが全部禁煙になったとか、どこ そこが全部禁煙になったということが追い風になってきていることは間違いありません。ですか らそういった形の、公的な部分がもう少し大きく持ち上げられて、取り上げられて発表されてく れば、百貨店としてもいろいろな部分で、禁煙とか分煙とか、喫煙室を縮小して。禁煙をしたい というのが一番ですが、そういった部分を押し進めることが、やりやすくなってくるだろうとは 考えております。ですから是非こういう機会では、そういう方向に持っていければ会社として、 企業としては取組みがしやすくなるかなと。ただし、喫煙者をゼロにというのは無理だと思って います。相当数おりますから、やはりそれは、どこまでできるかという部分では、喫煙ルームを 完璧につくるということだろうと。今の状況としては、喫煙をして分煙を徹底するということが、 現状ではできるところではないかと考えておりますので、それ以上、もっと、どこまで進むかと いうのは、ちょっと検討しなければいけないところかなという状況ですね。 ○相澤座長 ありがとうございました。喫煙室のきちんとした整備、機能的にもですね。整備を するということで、分煙を図るということを進められたいということです。いかがでしょうか。 ほかの御意見ありませんでしょうか。土肥委員、何か。 ○土肥委員 論点1の(2)の考え方は、現状は、労働者がばく露することは、当然労働安全衛生法 の概念として考えるということでしょう。誰がどこで、煙が出ようが、労働者が働く場所でばく 露を受けることは、労働安全衛生法の中で考えることだと思います。 ○半田環境改善室長 ということで私どもは整理しておりますが、そのあたりについて合意を頂 きたいということです。資料2-1-2、7頁の右下に労働安全衛生法の条文を御紹介しておりますが、 通常、先ほど土肥委員がおっしゃった有害物質の対策、特定の化学物質の対策といったものは、 この第22条に基づいて省令で定めているところです。「事業者は、次の健康障害を防止するため に必要な措置を講じなければならない」ということで、原材料、ガス、蒸気、紛じん云々と書い てありまして、武田委員からもお話がありましたが、その事業に伴ういわゆる作業の中で取り扱 う有害物質、そういったものからの防止ということでやっているのですね。だからそういったも のには、直接にはこの同僚の吸うたばこというのは当たらないだろうと。同じ職場で、ほかの労 働者が吸うたばこが、この第22条の第1で言っている「原材料」云々といったものに当てはまら ないであろうと私どもは考えております。 ○土肥委員 当てはまらないということですか。 ○半田環境改善室長 当てはまらないと見ていますが、その下の第23条においては、「事業者は、 労働者を就業させる建設物その他作業場について」とあって、「換気、採光、照明、保温、保湿、 休養、避難」云々、「その他労働者の健康、風紀及び生命の保持のため必要な措置を講じなければ ならない」という規定がありますので、これに基づいて事務所則などが定められております。そ のようなことで、オフィスの換気、照明などといったものが定められております。このようなラ インの中でたばこ対策と言いますか、受動喫煙防止対策を措置していくことは可能であろうと考 えております。  ただ、それにしても従来の安全衛生法の守備範囲を少し広げるように見える部分もありますの で、この辺りについて事務局が考えているように、第23条等を根拠として、安全衛生法等の体系 の中に事業者責任として受動喫煙防止対策をきちんと位置づけていくことで進めたい、このよう なことでよろしいですかということの合意を頂きたいということで、このところを論点として整 理したわけです。 ○土肥委員 わかりました。もう1つ質問があります。一般的な住環境の整備を目指しているの が事務所則だと思うのですが、事務所則との関係を考えると、喫煙の煙というものはどのような 関係を考えればよろしいのでしょうか。事業から発生するものではないというのは当然そうだと 思うのですが、事務所則そのものは、通常働く人すべての環境を快適にするための規則の一部だ と理解しておりましたので、それとの関係で煙というものを考えると、どのような整理になるの かと思ったのです。 ○半田環境改善室長 御質問の趣旨とは違っているかもしれませんが、事務所則の根拠となって いるのは第23条なので、これと同様に受動喫煙対策も快適なのかなと理解しているということで す。 ○土肥委員 了解いたしました。 ○相澤座長 他の委員の方々からはいかがですか。今までの御意見ですと、事業活動によって生 じたものと、労働者から発生する受動喫煙は同じように考えていい。その根拠は労働安全衛生法 第23条であるということですが、これについて何かあればお願いいたします。 ○内藤委員 専門家というわけではないですが、私自身、個人的には先ほど望月委員が言われた ように感じます。おそらく問題というのは、労働安全衛生法の場合は労働者と使用者との間の契 約云々というよりは、まさに国家的な施策として使用者に対して何を義務づけるかということで あり、逆に言えば、それに対して罰則をもって、いわば強制する法ですので、どうしてもその部 分で抑制的なディフィニション、定義を立てざるを得ないというところだったのだと思うのです。 ただいま厚生労働省サイドから説明があったように、第22条の解釈として、ここにまで喫煙の煙 が入るかどうかというのは、たぶん議論の余地があるのだと思うのです。今の話ですと第23条で、 今風な言い方をすると使用者の職場環境の配慮というか、義務といった形で捉えることが可能で はないかと考えますが、いかがでしょうか。 ○三柴委員 おっしゃるように、第22条は受動喫煙問題には適用がちょっと難しい条文だと思い ます。もともと旧労基法の第42条に基がある条文で、設備や原材料を危害防止の対象として規制 していくというところに大本がありますので、ちょっときついだろうと。そこで第23条が問題に なってくるのですが、これを考えるときに本当に難しいのは、1つには安衛法の規制のあり方が民 事にどのような影響を与えるかということを射程に入れながら考えないといけないということが あって、これまでの受動喫煙の裁判例だと、要は第23条を根拠に受動喫煙被害を主張してきた例 はいくつかあったのですが、裁判所はそれを認めていないのです。  他方、裁判例は受動喫煙被害の一般的なリスクがあることについては慢性影響を含めて認めて きた、特に最近は認めるようになってきたのですが、訴えてきた人に個別的な被害があったかと いうと、そこはさほどのものはないと否定しているのです。また、職業病認定対策室やこの問題 に詳しい弁護士の方に確認したところ、今の段階では受動喫煙被害を労災認定した例はないよう です。最新のデータは知らないのですが、少し前にお聞きしたところではないようなのです。そ のようなことを踏まえながら、民事への影響も踏まえながらどのような規制のあり方が適当か、 法の淵源ということも考えながら、安衛法の体系も考えながらどうすべきかということは非常に 悩ましいところで、本当に頭を抱えながら何をどう発言したものかと悩んでおります。 ○漆原委員 基礎的なところで申し訳ないのですが、第23条の最初に「建設物その他の作業場」 とありますが、事業場ではなく作業場というのは、具体的にどこまでのものをイメージするもの なのでしょうか。例えば、車両とか、そういったところは全部入って作業場と。事業場でなく、 あえて作業場にした意義とは何かを聞かせていただければと思います。 ○半田環境改善室長 労働安全衛生法が適用になるこれ以外の就労場としては、構内とか屋外作 業場などもありますが、これを定めたときには囲われている、いわゆる屋内作業場を念頭に置い ていたのだろうと思います。お答になったかどうかわかりませんが。 ○相澤座長 よろしいですか。屋外も含めてということのようですが。その他、何か御意見があ ればお願いいたします。 ○武田委員 第22条第1項の原材料等による健康障害の防止より、第23条の建設物等の作業場 について必要な措置を講ずるというほうが、今の時点では現実的ではないかと考えています。 ○相澤座長 また後でも御意見を頂きますが、論点2に移りたいと思います。職場における基本 的な受動喫煙防止対策について、(1)は喫煙を制限する空間的な範囲ということで、全面禁煙とす るのか、あるいは喫煙室を設置する方法を可能とするのかということです。(2)は喫煙制限につい ての労働者・関係者への周知方法についてで、禁煙区域などといった標識を表示すべきかどうか ということです。これについて何かあればお願いいたします。 ○鍵委員 論点1の(1)にも関わるかもしれないのですが、喫煙対策の場面のガイドラインで、喫 煙室から事務空間のたばこ煙の移流を防止していることを確認するという方法で、粉じん計ある いは一酸化炭素、風速を測るということなのですが、もう1つは、たばこと健康リスクとの兼ね 合いもあるのですが、これで果たしてどのぐらい流入というか、たばこの煙を許していいものか どうか、それとも、全く許してはいけない、ゼロだと。しかし、ゼロであるためには、このガイ ドラインの測定方法ではその証明をするのはなかなか難しいということがあります。測定方法か ら考え出すと私も答はないのですが、そことの絡みで考えていただくといいのではないかという 感じがしました。 ○相澤座長 どのぐらいの濃度まではいいのかということが参考資料3の15頁にあります。浮遊 紛じんが0.15mg/m^3以下、COが10ppm以下、気流が0.2m/s以上、風向きは非喫煙場所から喫 煙室等に向かう方向ということです。 ○鍵委員 例えばこの浮遊紛じんですと、たばこを吸わない空間で0.15mg/m^3というのは非常 に高い濃度であると考えております。通常は紛じん計でも0.01mgとか0.02mgぐらいしか検出し ないのですが、そこで0.15mgまで認めるというのは、若干漏れている、漏れていないと言うと、 漏入しているというか、そのように私は判断してしまいますので、もともとある濃度に対してど のぐらい上がったか、上積みされた分がたばこ煙かどうかはわかりませんが、そのような評価方 法もあるのかなと。もしかしたら、評価方法自体を変えていただくというのも1つあるのではな いかという気がしました。ここでは気流で一応境界面で0.2m、非喫煙場所から喫煙室に向かう空 気というのを設けていますが、これも果たして0.2mがいいのかどうか。これが出た後、いろいろ 議論があったようですが、この風速でいくと、換気、排気の設備も非常に大きなものが必要にな ってくることもあり、どこまで許していただくというか、これも健康リスクとの兼ね合いになる と思いますが、その辺のノウハウと言いますか、各事業所でどう対策を取っていくのかというこ とにも関わってくるような気がいたします。 ○相澤座長 0.15mgはたしか事務所則の基準ですから、これ以下にするというのは、また反対が。 ○鍵委員 そうですね。ですから、どこがたばこによって上積みされた分かが明確になるような 方法がいいのではないかと思います。 ○相澤座長 たばこ特異的な物質を測るとか、そのようなことですね。 ○鍵委員 はい。ただ、測定は簡便に越したことはないので、その辺の兼ね合いもあると思いま す。 ○相澤座長 今のところ、喫煙室の中については全くないのですね。 ○鍵委員 喫煙室の中もこの数字であるべきということだと思います。 ○相澤座長 このレベルが健康障害のリスクにどのような影響を与えるかということですね。 ○望月委員 この分煙の基準は当時の保健医療局が2002年に作ったものです。私はそれに全くタ ッチはしていませんが、その前の予算要求の段階で検討しかけたときには、こういったものは逆 に想定していなかったので、おそらく当時のベストアベイラブルなものとして出てきたと思うの です。それは労働分野の粉じんとCOが、健康分野に入ってきたものですが、今仕分けの中では、 これは健康局のだと押し戻されているようですね。しかしそもそもこの基準が本当に適当なもの か、もちろんこの場で議論するとか作ることまではないということは承知していますが、これが 健康障害の起こらないレベルという考え方でも全くなかったと思うので、こういったものの基準 が出てきた過程というものも、並行して委員が勉強しながら、もし何らかの基準的なものが必要 だとしたら、どういったものが求められるのか。あるいは今PM2.5など新しい手法も出てきてい るのでたばこに特異的なものではありませんが、簡便なものが必要かもしれず、やはり、リスク をどうマネジメントしていくかという問題でもあると思いますので、並行して事務局に資料を出 していただくこともあり得るかもしれませんし、委員としてそういったところにも関わっていき たいと思っております。 ○相澤座長 半田室長、この点はいかがでしょうか。 ○半田環境改善室長 ここは委員の皆様の御意見を真摯に受け止めて対処していきたいと思って おりますが、この基準を見直すということになりますと、事の経緯はいろいろあったにしても、 健康局との十分な調整も必要になってきますので、皆様の御議論を踏まえて、可能な範囲で対処 していきたいと思います。 ○相澤座長 (1)については、全面禁煙とするか、いろいろ基準はあるかもしれないが、喫煙室を 可能とするのかという論点ですが、これについてはいかがですか。 ○沢田委員 私どもの会社の建物は、本館とは別に別館というのがありまして、ある1棟を全面 禁煙にしました。もともとは外への出入口に灰皿があって、喫煙者は職場を抜けてそこに行って 吸っていたのですが、そこもなくなってしまいまして、建物1棟が全部禁煙になりました。理想 は食事休憩のときに吸うだけで我慢できればいいのですが、どうしているのか、本当に1日中吸 わないのかと聞いてみると、中には建物から抜け出して、先ほど公園という話がありましたが、 先の先の道路のほうまで行き、吸える所を探すというのです。例えばコンビニの前に置いてある 灰皿を探すとか、そういった所に流れて行ってしまう、現状はそうです。どちらがいいかはわか りませんが、全面禁煙というのは、喫煙者が職場から離れて行ってしまうようなことにもなりか ねないかなと。弊社としては、そのような場所の設置はする必要があるだろうと思っております。 ただし、排煙の設備をきちっとできるかどうか。今は建物の中に休憩室を作っても、窓は開けら れません。窓が開けられて換気扇があれば、設備投資なしで簡単にできますが、今は開けられま せんので、どうしても天井から吸い込む、または吸煙器を床に置くことで二重に煙を吸う確率を 高くしようとしていますが、設備投資のほうがなかなか追いつかないというのが現状なのです。 やはり、現状では喫煙室はある程度やむを得ないかなと思います。 ○武田委員 20代、30代の喫煙率が高いことを考えると、確かに屋内を全面禁煙にできれば一番 いいのですが、現時点ではそのような多くの喫煙者がいることを考えると、屋内に一定の喫煙で きる場所は残しておきたいと思います。 ○土肥委員 私どもはメーカーですので非常に広い敷地を持っておりまして、建物も非常に大き いわけですから、そこをすべて禁煙にするというのは大変難しい手法と思います。ただ、受動喫 煙を防止するという観点からは、基本的に建物が禁煙であっても適当だと。ただ、どうしてもそ れができない場合、ある一定の喫煙空間を設けるような考え方もあり得るかなと考えております。 ○相澤座長 中原委員はいかがですか。 ○中原委員 職場の中で分煙対策を衛生委員会等で話し合って進めてきたときに、喫煙者と吸わ ない人が共存するというところで話し合ったのですが、結果的には喫煙室を設けるということ、 その喫煙室も時間を区切って使用するということになりました。私は保健師ですが、健康という 立場からすると、健康も守りたい、快適職場もつくりたいということで、ガイドラインがあって よかった、まずはこのガイドラインに沿って喫煙室を作ればいいと。そして、作ったのですが、 実際のところは測定の方法、産業保健推進センターからようやく機械を借りて調べてみましたら、 基準を全然満たしていなかったのです。今の会社の広さの中で作るとなると、規模的にもかなり 無理があって、大勢の喫煙者がそこに入るとなると相当汚れた空気になります。強制排気をする ための設備と言っても、借りているビルですので限度があるのです。お金をかけると言っても費 用がかかることなのでできないし、ビル会社からも許可が下りない。そうであれば、全面禁煙が いいなとは個人的に思っていて、この機会にそうなればありがたいと思っています。  もう1つ、全面禁煙にした場合、確かに建物の外にたばこを吸いに行く人は見かけますから、 それも困ったなと思うのですが、建物のすぐ近くで吸っている人もいて、そこからまた入り込ん でくるということもあるのです。もし、全面禁煙にして建物を禁煙にするとしたら、どの程度の ところまでを禁煙とするか。外国ではある程度の距離を決めて、そこから外はオーケーだが、何 メートル以内はいけない、建物とみなして禁煙にしているといったことも聞きますので、全面禁 煙にするとしたら、そのようなことを詳しく決めなくてはいけないと。また、もし分煙をするの であれば、専門家がいる会社ばかりではないと思いますので、測定の仕方を簡便に、わかるよう にするとか、総務や施設担当者がその辺をもう少し意識して取り組めるようなサポートもないと、 推進していくのは非常に難しいと思っています。 ○相澤座長 禁煙区域などの表示は必要でしょうか。 ○中原委員 必要だと思います。御近所からも迷惑だという話があったらしいです。 ○福島委員 私どもの職場では専ら分煙がきっちりできております。個人的な感覚になりますが、 以前のように時間帯を設けて禁煙というのは、その時間を外して入っても、やはりたばこのにお いがして、吸わない人にとっては大変不快でもあるし、空気自体も汚れているだろうということ もあります。先ほども少し話がありましたが、たばこを吸う人もほかの人の煙は吸いたくないと いうことがあるのです。やはり、ほかの人の煙は体にも悪そうだし、確かに、においもよくない ということがあるので、場所を分ける分煙自体は随分受け入れられているのではないかと感じて おります。  吸う人はたばこを吸うために職場を何回も離れるので、1日のうちでたばこを吸っている時間の ほうが長いのではないかとひやかされるような人もいたりすると、仕事の面でも指導のようなこ ともしなければいけない部分があるのかなと思っております。先ほど話があった、たばこを減ら すとか禁煙をするなどといったことも、変な言い方ですが、ある程度常識の範囲でたばこを吸う ということを、吸わない者としても認めてあげたい気がしているのですが、やはり節度というも のをもう少し身に付けていただくことができれば、分煙した部屋の中でもお互いに気持よくでき るのではないかと思っております。  ですから全面禁煙に関しても、吸う人ができるだけ程度をわきまえて吸うことができるように なった上で、分煙というのが一番望ましいのかなと。実は私の職場のそばにも全面禁煙の大きな ビルがあるのですが、20階以上あるのでしょうが、みんな上から下りてきて前の通りで吸ってい て、それこそ多いときは30人ぐらいいます。中に入っている会社は何種類かあるので、どこの会 社の人と特定はできないのですが、あそこのビルの管理者は基本的に無責任だなという気分にど うしてもなってしまいますから、全面禁煙も言うべくして難しいかな、何かうまく共存するよう なことをやっていかないといけないかなと個人的には思っております。 ○相澤座長 全面禁煙が望ましいが、現段階では喫煙室の整備が第一歩、今のところはそんな感 じでしょうか。 ○望月委員 日本は進んだ国に比べれば10年、20年遅れていますが、やはり過渡的な問題だと思 うのです。喫煙率が高いのは事実ですが、職場が禁煙になったり、吸える所がなくなったことが 動機づけとなって、今度は禁煙したいというように流れていくと思います。分煙あるいは喫煙室 を設けるというのは恒久的な措置ということではなしに、次のステップへの一時的なものと位置 づけると、事業者が取り組めない理由として、合意が得られないとか、設備投資をしなければい けないといったことがネックになっているわけですので、逆に次のステップがあるということに なれば、一足飛びにそちらを選択する所もあるだろうと思います。  また、後に関係してくると思うのですが、支援というものをどのように考えるか。個人に対し ての支援なのか、事業者に対しての支援なのか、もう少し広い意味での支援なのかといったとこ ろも踏まえて、施策というのはセットで動いていくものだと思うので、受動喫煙政策とともに、 禁煙したい人には支援するという部分もあれば、福利厚生の点からサポートも得られるだろうし、 何よりもコスト、先ほど喫煙者の健康そのものと言われましたが、喫煙者本人の健康被害によっ て医療費も発生してきますから、もう少し総合的に考えていくと、中での合意というものも得ら れやすいのではないかと思います。 ○相澤座長 現実的な対応ということで、現段階では喫煙室を認めていくということではないか と思います。個室、あるいは全員がたばこを吸うような場合はどうしますか。大学の教授室など というのは結構吸っていますね。個室だったらと思いますが、人が入ってきますから、そのよう なのはどうでしょうか。 ○内藤委員 個人的なことを申し上げますと、私はたばこを吸ったこともありませんし、両親も 夫も誰も吸わないという環境におりますが、慶應大学は非常に古い建物なものですから、個室の 脇が全部スリットになっておりまして、今座長が言われたように、個室になっているとすべてが 廊下に漏れ出すという構造なのです。近くにヘビースモーカーの先生がいらっしゃると、何と言 いますか。実は、私は自分自身のスリットの所を全部石膏ボードで覆ってしまい、煙が入らない ようにして個人的分煙をしているのですが、おっしゃるとおり、職場環境として、個室であった としても他者への影響というのはあり得る、そういった場面もあるかなと感じております。それ をどのような形で法規制できるかという点については、いかんせん難しいことがあるかと思いま す。 ○漆原委員 質問ばかりで申し訳ないのですが、11頁の下に、事務所全体を禁煙にしているとい うのと、何も対策を講じていないという表がありますが、産業別に見ることができるものがあれ ばいいなと思います。例えば、お客が来る事業場とそうでない所とか、ことによったら屋外など、 そのようなことによってこれはどう違うのか。あるいはそういった開きよりも事業規模のほうが 大きくて、それで全面禁煙にしているとか、もし、それがわかれば教えていただきたいと思いま す。 ○相澤座長 これはいかがでしょうか。そのようなデータベースが取れますか。 ○半田環境改善室長 データはありますので、整理して次回にでも御報告させていただきたいと 思います。 ○相澤座長 よろしくお願いいたします。論点2についてはよろしいですか。御議論いただきま して、どうもありがとうございます。次に、論点3は、たばこの煙の存在する場所に労働者が立 ち入ることのある事業場における顧客の喫煙と労働者保護のあり方ということです。今までは労 働者が喫煙している場合、それを受動喫煙するということでしたが、この論点は、特にデパート 等、お客がたばこを吸う場合はどうしたらいいかという大変難しい問題ですが、いかがでしょう か。 ○沢田委員 建物の中の売場はすべて禁煙なのは当然のことで、売場の中に喫煙場所というのも ありません。現在は、お客様に吸っていただく場所としては屋上に1カ所、外の駐車場を出た所、 要は外ですが、外の部分に1カ所あり、店内の2カ所はいつでも吸える所です。それ以外に、大 きいレストラン等々はすべて禁煙にしていますが、喫茶店の中には喫煙できる所があります。そ のうちの1カ所は囲って個室になっておりますので、一応分煙という形にはなっております。お 客様同士であれば受動喫煙ということはないですが、従業員については、配膳の者は吸っている 所に多少は入らざるを得ないですし、お客様に対してマスクを付けて入るわけにはいきませんの で、どうしても多少の受動喫煙は出てきてしまうということはあります。その他の喫茶店では食 事時間は禁煙とか、ある一定の時間は喫煙などと時間を決めて分けている所もありますが、やは り従業員が喫煙時間帯、または喫煙の部屋に入るときにどうしても受動喫煙が発生してしまうと いうことがあります。屋上は特にないのですが、駐車場の外にある喫煙場所については、その近 場を従業員が行ったり来たりする場合は、多少煙が流れてくるということはあり得ます。受動喫 煙については、お客様同士はあまりないようですが、従業員に対してはどのような形で対応する かということは考える必要があると思っております。 ○相澤座長 顧客の喫煙に対して、労働安全衛生法で制限するということはなかなか難しいわけ ですね。 ○望月委員 三柴委員にお聞きしたいのですが、資料2-2の9頁のドイツの職場に関する命令の 中に、括弧書きで「ただし接客業の使用者は保護義務が減免」とあります。これはおそらく今の 議論と関連すると思いますが、どのようなことでしょうか。 ○三柴委員 ドイツでは、原則的な規定とあわせ、事業の性質や労働の種類に照らして、可能な 限りで保護措置をとる義務を負うという特則があるということです。ドイツ以外についていえば、 飲食・サービス業で、逆に喫煙を厳しくしている所もあるのですが、緩めている所もあって、そ こは大きな意味での価値判断と言いますか、国ごとの方針の違いというのは、州も含めてあると 思います。ドイツの場合はそのような形で緩めています。 ○望月委員 それは誰が判断するのですか。政府ですか、それともコンサルテーションなどの場 に労使両方が関わって合意形成されていったのですか。 ○三柴委員 特則ですので、職場に関する命令というのは下位の、つまり法律の下にある命令と いう形ですので、その策定に当たったのは労働社会省だと思います。そして、各事業所ごとに従 業員代表委員会がある場合には、それと使用者の共同決定によっても解釈の基準が設定されます し、それがなければ使用者自身の判断に委ねられます。また、各事業場で合法性監督を行うのは、 日本では労働基準監督署などに当たり、各州の所管する営業監督ですので、そこも1次的な判断 の主体といえます。けれども、例えば2006年のベルリンの労働裁判所の判決で、この規則が根拠 として参照された判例が出ておりまして、カジノで働くルーレット台の主任が健康被害を理由に 禁煙職場への異動を求めたという事案だったのですが、この特則があるからということで請求棄 却という判断が出ているのです。そのような意味では、最終的には裁判所がその規則がどう使わ れるか、命令がどう使われるかについて判断することになります。 ○望月委員 「ただし接客業」と特別に出しているわけですね。接客業の様態が他の業種と違う からということになるのですか。 ○三柴委員 結局、先ほど来議論があるように、国情もあると思いますが、現実にある程度はた ばこの煙に触れざるを得ない職場、避けることが難しいところがあって、そこを一律に強制して しまうのはどうかという判断が、国や州によってはあるということです。私のつたない理解では、 そもそも日本の安衛法の体系というのも、実情からボトムアップで論じるほうと言えるように思 います。ですから、実効的に受動喫煙防止を進めていく中で、どこからどう進めていくのがいい かということを現実に即して議論しないといけないところがあるので、日本の国情はこうだから、 あまり一律的な規制を上からかけてしまうのはどうかといった議論は、外国の例を参照してもで きると思っています。 ○相澤座長 接客業の場合は難しいでしょうね。規模が大きい所ですと、先ほどの三越のように できるかもしれませんが、小さい所だと難しいところがあると思います。これは大変難しい問題 だと思います。お客がたばこを吸っている所に労働者が入っていくわけで、まさか防毒マスクを していくわけにもいかないですしね。 ○沢田委員 例えば、従業員の喫煙休憩室を掃除する従業員はどうするのかという問題もありま す。喫煙者であれば大して気になりませんが、喫煙しない清掃の係もおりますから、もしそのよ うな者が来た場合については、是非マスク等を着用して入るようにと。これはやむを得ないこと で、どうしても喫煙室の灰皿の吸殻処理とか清掃などは清掃としてありますし、終日煙に満たさ れている部屋ですから、そういった配慮は構わないと。ただ、お客の立場として考えたら、配膳 の者がマスクをして配膳をする、コーヒーを持ってくるというのは現実としてできないことです。 これは配慮というか、受動喫煙をしないうちに速やかに出てくるぐらいのことかなと思いますが、 その程度の状況が現実だと思います。 ○土肥委員 何らかのばく露防止対策をとるべきだという所はそうでもないのですが、ただ、非 常に換気が悪い状況で働かせるなど、接客業においても、従業員が入ってきたときに健康リスク が非常に高まるような環境でないような方向性にきちんと導くガイドラインなり、何かを作って おかないと、単純に接客業だからいいよ、という話ではないと思いますので、そこら辺はきちっ と分けて論じるべきではないかと思います。 ○相澤座長 その他、いかがですか。先ほどの顧客に限らず、労働者に対しても禁煙区域とか、 あるいは喫煙室など、特に禁煙の所ですが、そういったものの表示はどのようにしたらいいかと いう議論が抜けていました。論点2の(2)ですが、これについてはいかがでしょうか。今は病院な どは禁煙と書いてありますが、学校も一応書いてはありますか。 ○内藤委員 大学という極めて特殊な空間ですので、大きな掲示が出ていたかどうかは記憶が定 かでないのですが、例の健康増進法ができたときに、それなりの通知というか通達が学内に回り ました。研究室の例を申し上げますと、先ほどお話しましたように、公共の場と私的な個室のよ うな部分とが分かれている構造ですので、一応、建物全体として公共の場での喫煙は不可という ことになりました。ただ、先ほど来多くの委員からあるように、慶應義塾の場合は、たまたま研 究者に喫煙者が大変多かったからかもしれませんが、研究棟の出口のすぐ外に喫煙所が設けられ、 皆さんそこで吸っているというのが現状だと理解しております。公共の建物及び会議室その他は 一応全面禁煙と言いますか、そのような形に制度上はされております。 ○相澤座長 工場などはどうですか。 ○武田委員 工場の中は喫煙できる場所以外は全て禁煙です。 ○相澤座長 別に表示はしてなくてもですか。 ○武田委員 喫煙できる所が表示されているという感じです。 ○土肥委員 大体そうですね。 ○相澤座長 次に、その他ということで論点4です。(1)「地域保健における受動喫煙防止対策と の連携」、あるいは(2)の「受動喫煙防止対策に関する支援について」、(3)は「喫煙による健康障害 に関わる教育について」ということですが、これらについて何か御意見があればお願いいたしま す。先ほど望月委員から防止対策について、いろいろ支援を一緒にやったほうがいいというお話 がありましたが、いかがでしょうか。教育は随分やっていますね。 ○望月委員 (2)の支援ですが、いろいろな意味の支援があると思います。財政的な支援ですぐ想 像してしまうのは、分煙にするための財政的な措置とかで、逆に禁煙にするほうがいいのだと、 そちらのインセンティブというものもあってもいいかなと思うのです。具体的にどのようなもの がと言ったら詰まってしまいますが。誰がそのコストを負担するかということもありますが、と ても大きなことであるし、それによって将来的なベネフィットがあるのであれば十分な投資です が、そうではない無駄な投資というものもあるかもしれないので、このように何らかの規制をす るときには、そういったインパクトというものもマクロでやるのか、ミクロでやるのかは別とし ても、どのような形で試算できるかわかりませんが、いずれにしても何らかの予算がどこかで動 くだろうと。また、周知と言っても、その場での周知だけでなく、害に関しても周知の方法、例 えば啓発キャンペーンのようなものも並行してやっていくことは、次のステップとして非常に大 事だと思います。  先ほどのドイツと日本のたばこ解釈を総合的に評価するなどという、ちょっと大胆な試みをや ったことがあるのですが、例えばイギリスはいろいろな意味で満点に近く、研究班でやってみた ら、日本は27点、ドイツは37点と、どちらもかなり低かったのです。いろいろな対策の凸凹は あるのですが、パブリックキャンペーンの予算がないと0点なのです。もしかすると、受動喫煙 対策だけでなく、たばこ対策についてもまだまだ理解が進まない。その根底には、意外とたばこ の害について本当には知らない、あるいは諸外国で徹底的にやっているほどの予算や情報提供の 仕方が不足しているのではないかと思うのです。  まず、それが充実した上で、次のステップが社会の合意形成としてどこまでリスクを減らして いくかということで進めやすくなるかなと思います。ドイツはヨーロッパの中ではかなり点が低 いほうですが、さらに低い日本をどこまで引き上げられるかということもありまして、支援の中 にはいろいろなプログラムがあると思いますが、どうしてもお金が伴ってくるものですし、それ を事業者が自ら提供してやるのか、国からの支援もあるのか、あるいは喫煙者個人が汚染者負担 のような形でやるのだということも大事ではないかと思います。やはり、プログラムを動かして いくためには、お金は付きものだと思います。 ○相澤座長 これは厚生労働省に対する要望でもあります。全体的に特別に御意見がありました らお願いしたいのですが、論点1、2、3、4と、よろしいでしょうか。 ○武田委員 論点1の「ガイドラインによる自主的取組みの効果と限界」にもあるのですが、ガ イドラインが出されて喫煙室の設置など事業場で取り組みが進んだ部分もありますが、職場の空 気環境の測定の実施率などがそれほど高くないところを見ると、ガイドラインだけでは難しい面 もあるかなと思います。ただ、規則で定められたらいいのかと言うと、今望月委員が言われたよ うに、規則ができても国民の合意形成ができていないと、なかなか進んでいかないと思います。 厚生労働省や、事業場でどれぐらいできるかわからないのですが、やはりそういったキャンペー ンも併せて行って、安全衛生の分野では安全文化の醸成と言うのですが、喫煙に関する考え方の 醸成も一方でやっていくべきだと思います。 ○相澤座長 大変いい御意見を頂きましてありがとうございます。他の委員の方から何かあれば お願いいたします。貴重な御意見をたくさん頂きましたので、以上で議題1を終えたいと思いま す。その他、事務局から何かあればお願いいたします。 ○奥村副主任中央労働衛生専門官 次回の検討会についてですが、事前に日程調整させていただ きました。8月27日(木)、13時30分から15時30分にて開催いたしますので、よろしくお願い いたします。場所は追って御連絡いたします。 ○相澤座長 本日は大変有益な御議論を頂きまして、長時間にわたり、ありがとうございました。 以上で本日の検討会を終了いたします。 (照会先)  厚生労働省労働基準局安全衛生部  労働衛生課環境改善室  03−5253−1111(内線5506)