09/07/09 第3回 「新人看護職員研修に関する検討会」議事録           第3回 「新人看護職員研修に関する検討会」                     日時 平成21年7月9日(木)                        17:30〜20:00                     場所 厚生労働省専用第21会議室 ○島田課長補佐 ただいまより、第3回「新人看護職員研修に関する検討会」を開催しま す。委員の先生方におかれましては、ご多用のところ、当検討会にご出席いただきまして 誠にありがとうございます。初めに看護課長の野村より1点、ご報告をさせていただきま す。 ○野村看護課長 国会に関することですが、本日、衆議院の本会議で「保健師助産師看護 師法等の一部を改正する法律案」が可決成立いたしました。この法律案につきましては、 この検討会の冒頭、局長の挨拶の中にもございましたが、改正案の中に、新人看護職員研 修の努力義務の規定が盛り込まれるといった内容の改正案でございます。こういった法律 が通ったということで、この検討会の任務もますます重要になると思っています。どうぞ よろしくお願いしたいと思います。 ○島田課長補佐 続きまして、7月1日付で事務局に人事異動がございましたので報告さ せていただきます。ただいま所用により若干遅れていますが、大地直美看護職員確保対策 官が着任いたしました。後ほど参加させていただきます。なお本日、医政局長及び総務課 長は所用により欠席させていただいています。  次に配布資料の確認をさせていただきます。議事次第の下に、資料1は「新人看護師研 修ガイドラインに関する主な意見」、資料2は「第3回新人看護職員研修に関する検討会論 点(案)」、資料3は到達目標で猪又委員の資料ですが、第2回検討会でお出しした資料を もう一度お示ししています。資料4は同じく第2回検討会でお出しした坂本委員の資料で す。資料5は到達目標に関する資料です。資料6は研修方法に関して上泉委員からの資料 です。以上です。途中でも結構ですので、乱丁、落丁などがありましたら事務局のほうに お申し付けください。それでは座長、議事の進行をよろしくお願いします。 ○石垣座長 本日も活発な議論をよろしくお願いします。議事にありますように、本日は 新人看護職員研修の到達目標と評価、新人看護職員研修の研修方法についての検討を行う 予定になっています。今回は2時間半を予定していますが、前回、積み残しをしましたの で、到達目標、評価方法、評価のフィードバック、研修方法という4つのテーマを議論し ていただくことになっていますので、よろしくお願いします。  早速、議事に移りたいと思います。初めに、新人看護職員研修の到達目標と評価方法に ついてです。この議題について前回、猪又委員と坂本委員が話題提供してくださいました。 時間の都合上、十分に議論できませんでしたので、前回、お示しいただいた資料を先ほど 課長補佐から提示していただきましたけれども、到達目標について、これまで出された意 見と論点の案について、事務局から簡単にご説明をお願いします。 ○島田課長補佐 資料3、4ですが、前回、猪又委員には資料3をお使いいただきまして、 新人看護師技術チェックリストをお示しいただき、ご発表いただきました。資料4ですが、 坂本委員には平成20年度の新人看護師研修モデル事業のデータを、今年度の厚生科学研究 で分析をお願いしておりますので、そういった材料をお出しいただきながら、新人看護師 研修の到達目標の現状について、比較などをお示しいただいて情報提供していただいたと ころです。  続きまして資料1ですが、新人看護師研修ガイドラインに関する先生方の主な意見を、 今回もこのような形でまとめさせていただきました。資料1の1枚目はガイドラインの素 案ということでお示ししていますが、真ん中辺の2.の3)に、初回のガイドライン素案でお 示しした研修方法の中で、例ということでローテーション方式、プリセプター体制などを お示ししていましたが、これはこれまでの議論などを踏まえ、今後修正していく可能性が あるだろうと事務局で考えていますので、ここでは消しているところです。 3頁の2.の2)は、到達目標のところで出された意見をまとめていて、いただいているご 意見としては、看護技術の達成度について、いつまでの期間で何パーセントの看護師が達 成するのを目標とするのか、整理する必要があるというご意見です。到達目標に関して認 識を合わせる必要がある。何ができるようになったか、目標にしていくのか。あるいは何 かを乗り越えたり、対処できる能力を身に付けていくような目標にしていくのか。何かを させることをゴールの設定にしてしまいがちである。研修場所によって習得できる技術が 異なるため、どんな項目をガイドラインに盛り込むのか検討が必要である。こういったご 意見をいただいているところです。  資料2ですが、本日、ご議論いただく論点を論点(案)としてお示ししています。先ほ ど座長から、本日、議論すべきことが幾つかあるということでしたが、まず初めにご議論 いただくところを、この資料2でご説明したいと思います。「到達目標」のところですけれ ども、論点としては、ガイドラインで何をどの程度示すべきかということで、下に4つほ ど挙げています。どのような項目の設定にするのか。どの程度詳細にガイドラインとして お示しするのか。難易度をどう設定するのか。そして到達目標を各施設で検討する上で留 意することは何かといったことを、論点として案をお示ししているところです。以上です。   ○石垣座長 ありがとうございました。最初のテーマである「到達目標」に入りたいと思 います。この到達目標については、いまご説明があったようにガイドラインでは到達目標 として、何をどの程度示すべきかということを検討してまいりたいと思います。事務局の ほうで検討する上で資料を作っていますので、それについて説明していただきます。 ○島田課長補佐 資料5を説明させていただきます。本日、到達目標に関してご議論いた だきますので、そのたたき台と言いますか、事務局のほうで資料を準備させていただきま した。まず資料5の1頁目の下に2とありますが、ここでお示ししていますのは、前回、 前々回で新人看護師研修と基礎教育とのつながりは、どういうふうに考えたらいいのか、 ご意見としてありましたので、その関連性をイメージとしてお示ししました。この図はバ ケツを底から見たような図になっていて、底の部分には国家試験受験資格要件として、い わば基礎教育で学ぶべき事項ということで示しています。その中には要素として、真ん中 にあります「基本姿勢と態度」、その周りに「技術的側面」を位置づけ、それから「管理的 側面」です。この態度、技術的側面、管理的側面の3つの要素で、看護師国家試験受験資 格として学ぶべき事項を整理とすると、新人看護職員研修の到達目標は、その上のほうの 輪に示していますが、新人看護職員研修は、同じような構成要素で看護師に必要な知識、 技術が構成されるとするならば、そことの間を新人看護職員研修を行うことにより、新人 研修を終えた後の到達目標に到達する。そのような関係性があるのではないかということ でイメージをお示ししています。  次の頁ですが、細かいもので恐縮ですけれども表をお付けしています。これは、いま申 し上げた新人看護職員研修と基礎教育との関係性について、到達度という観点でまとめて 関連性をお示ししたものです。左側の「卒業時」という細かな項目と、到達度をI〜IVで 示していますが、これらについては平成20年度に看護課長通知でお示しをしているもので す。卒業時にはこれらの項目について、それぞれ知識としてわかる、演習で実施できる、 教員指導の下で実施できる、単独で実施できるというように、それぞれの到達度がこうい うものであることが望ましいとしてお示ししています。  それに対して新人看護職員研修は、同じような枠組みについて、例えば卒業時にIVのレ ベルであった者は、新人研修を終えた後にはIIまで到達してほしいとか、こういった関連 性にあるのではないかということをイメージとしてお示ししたものです。右側の新人看護 師研修の修了時での到達度のI、IIのレベルについては、今回、この資料を作る段階で事 務局が暫定的にお示ししたもので、これは何かの形で決まっているというものではありま せん。あくまでもイメージとして関係性を見ていただく観点で作ったものです。  次に、4.と書いてあるところは、平成16年3月に新人看護職員研修の臨床実践能力の向 上に関する検討会の報告書として、お出ししたものからの抜粋です。新人看護職員研修到 達目標と研修指導指針を、その時にお示ししているところですが、その前提として、この 6個の項目についてお示ししているものです。本日のご議論に関係するところとして4、5 にアンダーラインをしていますが、4.にありますように「到達目標及び指導指針の内容は、 新人看護職員研修として実施されるべき基本事項として提示するものであり、各施設の多 様性を踏まえつつ、できる限り広く活用できるよう考慮した」。さらに2行下ですが、「さ らに、到達目標は、新人看護職員の受けた教育課程や教育内容、個人の資質等の背景を加 味し、各施設で適宜、調整を行うことを想定した」として作っているものです。5.にあり ますが、「各部署に特有な疾患とその症状及び治療・薬剤・検査・処置の理解と看護ケアに 関する到達目標は、各施設において設定することを想定した」として、平成16年3月報告 ではお出ししているところです。こういったことも踏まえていただきながら、本日、ご議 論いただければと考えています。  5以降ですが、各施設で到達目標を設定する際に、どういったプロセスで、どういった 設定の仕方があるかを例としてお示ししています。5の設定のプロセスですが、各施設で は到達目標を設定する上で考慮することとして、病院の規模、病院の機能、病院あるいは 看護部の理念、看護職員の構成、新人を支える体制がどうなっているか、研修にかけられ る時間・予算はどうなっているか、目指す看護師像(どんな新人に育ってほしいのか)と いったことを考慮した上で、到達目標を設定するのではないかと考えています。  到達目標を検討する手順ですが、項目をどうするのか、その項目の詳細さはどうするの か、難易度はどのように設定するのか、到達時期はどう設定するのかといった手順を踏ん で検討するものと考えてまとめました。  6ですが、到達目標における項目の設定例はどのようなものがあるか示しています。先 ほど申し上げたように、自施設の特性を踏まえて各施設が設定するということで、A、B、C の3つの例を示しています。例えばB病院の例で申し上げると、この病院では平成16年に 検討会報告でお示しした到達目標と同じ項目で設定しています。A病院はそれよりも少な い項目ですし、C病院はもう少し多い項目で設定しています。自施設のそれぞれの特性を 踏まえた上で、こういったものを設定するのではないかと思います。  7ですが、例えば「車椅子による移送」という項目を捉えたときに、その項目の詳細さ はどのように設定できるかということで、3つの例をお示ししました。パターンIは「車 椅子による移送」という項目のみで到達目標を設定する例です。パターンIIは少し項目を 細分化し、ここでは5つ示しています。パターンIIIは移送という行為の手順を踏む形で到 達目標の項目を設定しています。  8ですが、それぞれ難易度の設定例もここで示しています。「車椅子による移送」という 項目を設定したときに、ここでは難易度が異なるものとしてI〜IIIを示していますが、タ イプIのように、状態が安定している患者さんを難易度として設定する所もあると思いま すし、タイプIIIのようにもっと重症あるいは急変の恐れのある患者さんを設定して、これ も各施設の医療状況などを勘案した上で、こういった設定の仕方もあるということで例を お示ししています。  9ですが、先ほど申し上げたように、どのくらい詳細な項目を設定するのか、どのくら いの難易度の項目とするのかも踏まえ、到達時期としては、これもそれぞれの病院での示 し方があるのではないかということで、ここでは車椅子による移送について○病院と△病 院の2つの例を示しています。○病院では、1年間かけて重症患者の移送が安全にできる ところまでを、段階的に到達目標を設定する。あるいは△病院のように、1年間かけたと ころで、ボディメカニクスの原理・原則を述べることができる。危険の回避が出来、安全 に対する留意事項がわかるといったところを到達目標として、この時期にというふうに設 定する所もあろうということで例を示しました。  10ですが、いま○病院、△病院というのをお示ししました。それぞれの提示例としては、 こういったものがあろうかということで、「車椅子の準備ができる」を1か月まで、以下、 4つの項目を3か月まで、そしていちばん下にある「重症患者の移送が安全にできる」を1 年まで、を示しました。こういう例があるのではないかということでお示ししました。  11ですが、こういった設定例がいろいろある中で、ガイドラインとしては到達目標をど う示すのかということで、事務局として3つの案をここで示しています。案1ですが、ガ イドラインでは到達目標を各施設で検討するための考え方の道筋を記載し、項目、詳細さ、 難易度、到達時期の設定例、到達目標の例を示すことも、やり方としてあるのではないか として案1で示しています。  案2ですが、到達目標を各施設で検討するための考え方の道筋を記載した上で、いずれ の施設でも共通する項目について、標準的な到達目標を示す案を案2としています。ただ、 この際には決めるべきこととして、共通とする項目を何とするか。標準とする難易度はど うするのか。標準とする到達時期をいつと設定するのかを決めた上で、ガイドラインとし てお示しすることが必要かと考えています。  案3は、到達目標を各施設で検討するための考え方の道筋を記載した上で、すべての項 目について到達目標を示す案もあるとして示しています。ただし、この際には決めるべき こととして、すべての項目における詳細項目をどう設定するのか。すべての詳細項目ごと の到達時期をどのように設定するのかをすべて決めた上で、ガイドラインとしてお示しす ることが必要になると考えています。以上です。 ○石垣座長 ありがとうございました。これから資料2の最初の論点に沿って議論を進め ていきますが、最終的にガイドラインでは、到達目標として何をどの程度示すべきかとい う結論に到達するように議論を進めていきたいと思います。議論を進めていくにあたり、 臨床の場では、具体的にこういう到達目標を決めながら進めているわけですが、具体的な 例としてご意見をいただきたいのです。熊谷委員は実際にご自身の病院で到達目標を設定 されるときに、どのような検討をされたのでしょうか。 ○熊谷委員 私どもでは、まず新人の看護職員が離職をしないで働き続けられるようにと いうことも念頭に入れながら、1年経っても看護師を続けていく能力、意思が続けられる ような、そんな1年間になるようにということで考えていきました。  到達目標というのをどう捉えたかというと、新人看護職員が身に付けてほしい資質や能 力の具体的な水準と考えました。そのときに留意したこととしては、努力によって到達が 可能であるレベルであることと、新人看護師自身、指導する者が、何がどうできるように 努力すればいいのかが、分かるようにしていくことを原則的に考えました。  具体的な例を少しお話させていただくと、新人さんの新人期を1年間と捉え、1年目の 目標を、「日常生活援助のための基本的技術、態度を身に付け、ベッドサイドケアが安全に 実施できる。指導を受けながら受持ち患者に対して個別性のある看護を検討、実践できる」 というところに置き、そのために看護技術の研修、フィジカルアセスメントの研修を段階 的に組んでいく、そういうやり方をしています。  その中の特に看護技術に焦点を当ててお話させていただくと、項目ごとに到達目標と、 いつまでにどの技術をという段階が組まれていて、チェックリスト方式のマニュアルを作 成してやっています。新人期が1年目であるということから、その技術すべてについては 概ね安全、安楽に実施できるというところを目標に置いて考えました。  新人期の到達目標なので、先ほど申し上げた1年時の到達目標があって、その下に経験 させたい看護の項目の目標を置き、それぞれに対して評価可能なチェックリスト型のマニ ュアルを作成しているのが、いまの方法です。その中で資料2の中にありますように、い つまでにどの程度できるかという点については、お薬を例にとると、例えば自分でお薬が 飲める患者さんの経口については概ね3カ月、麻痺があって飲みにくい患者さんについて は6カ月というように、難易度と時期を設定して考えています。大体、その基準はどんな ところで決めたのかというと、1つは基礎教育から連動して、先ほどの事務局案の資料に ありましたように、最初は自分でできる患者さんですが、それが何か障害や治療の制限に よって、かなり介助が要るという1つのライン、もう1つは、臨床ですので夜勤導入が非 常に大きなポイントです。うちでは夜勤を大体3カ月目ぐらいから導入していますので、 ひとつ3カ月という区切りをもって、そんなふうに目標を設定して考えています。  チェックリスト式のマニュアルですが、どうしてそういうものを使っているかというと、 新人が何をどのように行えばいいかが新人自身にわかりやすいということ。そのことによ って、これからどう頑張っていけばいいのか。課題は何なのかがよく分かるようになるメ リットもありますし、指導する指導者が、どう教えていけばいいのか、何を経験させてあ げればいいのか、指導計画を立てるのにも非常に有効だということで、そんな方式をとっ ています。 ○石垣座長 ありがとうございました。先ほど事務局から提案された到達目標に関する案 と、熊谷委員が実際に臨床でなさっていることを踏まえて、皆さんからご質問、ご意見 をいただきたいのですが、いかがですか。 ○福井委員 違うことですけど、最初に説明があったように法律が通ったことについて どれくらいの期間とか、どういうサポートをするとか、決まっているのでしょうか。 どういう枠組みで考えたらいいのか、よく分からないのですが。 ○野村看護課長 この新人看護職員研修の関係のことに限ってということで、よろしいで しょうか。実際の法律では、保健師助産師看護師法で改正がされたところがあります。そ こについてですが、免許を受けた後も臨床研修、その他の研修を受け、その資質の向上を 図るよう努めなければならないという、本人に対しての規定が入りました。  他に「看護師等の人材確保の促進に関する法律案」も改正されています。ここでは、1 つは国の責務として看護師等の研修を明記すること。人材確保法の中に「国の責務」「病院 等の開設者の責務」「看護師等の責務」と分かれて責務がそれぞれ書かれていて、そこにこ の関係のことが追記されています。その国の責務の中にも看護師等の研修といったことが 明記されますし、病院等の開設者の責務の中にも、新規採用看護師等に対する臨床研修そ の他の研修を実施すること。看護師等が自発的に研修を受けるための配慮が、法律に書か れてたということです。看護師等の責務は保助看法等にも研修を受けることが明記されて おり、すべて努力義務ですが、こういう形で規定されているところです。施行期日ですが、 平成22年4月1日、来年の4月1日が施行期日になっています。 ○石垣座長 福井委員、よろしいですか。 ○福井委員 この内容の話の前に、前回話し合ったかどうか忘れたのですが、どれくらい の期間を考えているのでしたか。 ○石垣座長 期間とおっしゃいますと。 ○福井委員 例えば6カ月なのか、1年なのか、ガイドラインというか、到達目標を考え る上で。 ○石垣座長 新人研修の期間。 ○福井委員 ええ。それがはっきりしないと、なかなか内容を盛り込むのは難しいのでは ないかと思います。 ○石垣座長 これについて、看護側の人たちは何かご意見がありますか。坂本委員、いか がですか。 ○坂本委員 この前、少しそのお話が出たように記憶しているのですが、何となく終わっ てしまったような気がしたのです。一応、私が調べたある病院では13週を研修期間として いますけれども、3カ月、6カ月、1年という所がありましたね。だから何年にしましょう という話は、ここである程度は決めてよろしいのではないでしょうか。 ○石垣座長 このことについて、ご意見はありますか。新人研修の期間をどのように設定 するかということです。 ○羽生田委員 通常、4月から新人が入って来るわけですから、次の新人が入って来るま での期間と考えるのが妥当かなと考えますので、1年ということです。もう1つは、資料5 の大きい紙に細かく到達目標がありますけれど、これは左側が卒業時ですよね。卒業時の アンケートの結果から、かなり「できない」という結果があったように思います。ですか ら新人看護師研修のスタートは、この卒業時の到達がまず第一歩であって、スタート時点 が全員違うから、できていること、できていないことが全部一緒である必要はない。全部 一緒の基礎的な研修は必要であると思いますが、個々の研修については卒業時点の到達度 が全然違うわけですから、自分の到達度がスタート時点で、そこからいかに自分が到達度 を上げていくかになるのだろうと考えています。だから全員が全員、同じものでスタート しているのではないと私は思っています。 ○石垣座長 いま、期間としては1年が妥当だろうというご意見と、卒業時点での到達度 に変化があるので一律である必要はないというご意見でしたが、いかがでしょうか。 ○村上委員 いまのご意見ですと個々となりますよね。そうした場合、たくさんの新採用 者を教育していくときに、個々のレベルで期間を決めるとかなり煩雑になるかなと思うの で、3カ月なら3カ月までにあるラインを揃えて、初回の技術の到達をどこまでにするか ラインを決めて、その後、残りで個別性を配慮し、ある程度揃えてプランを立てないと大 変かなという感じもあります。 ○石垣座長 いかがですか ○坂本委員 そうだと思います。だから入って来たときに同じ到達目標を持つのですが、 そのときに1年生の例えば採血という行為を見ていくと、本当にできない人と、数回すれ ばできるようになる人と、そこでどういう基礎教育の中でやってきたか見えたりするわけ です。それを踏まえて今度は1つのものを持ちますけれども、おそらく進捗度というか、 その人のやれるようになっていく速度や状況はすべて違うと思います。そこを全員がみん な同じように足を揃えて並んで行くのではなくて、それを踏まえた上でひとつの到達目標 を作っておき、相互の中で到達させていくことを踏まえておかないと、本当にロボットの ように「新人研修です、ここまでです」ということは、中身的には無理だと思います。し かし、何らかのものがないと、それを見る状況はできませんので、そこは作ってもいいの ではないか。ただ、考え方としては全部違うというところも踏まえておかないといけない と思います。 ○石垣座長 たぶんこれはOJTのレベルだと思います。これまでも、OJTではプリセプタ ーや、その他の指導者が付いて、個々の新人看護師教育のレディネスを確かめながら次の ステップに進んでいくことを大事にしようというご意見が大勢でした。このOJTにおいて は、かなり個別の教育がなされているのでないかと思います。 ○上泉委員 私も期間としては、羽生田委員のおっしゃった1年が妥当だと思います。と いうのは、次がもう入って来ますので、2年目になったら、少なくとも1人で担当を持っ てやれるようになっておかなければと思います。だから、そこが1年間のゴールではない かと思います。その病棟なら病棟でルーティンに発生する業務は、1人でできるようにす るというのが最低のゴールではないかと思います。ただ、突発的な出来事、急変、あるい は大変困難なケース、新しいケースといったところについては、まだ指導なり助言をもっ てやることになろうかと思いますが、ルーティンのことは2年目の最初には1人でできる。 そこまでするのが新人研修のゴールではないかと思いました。 ○石垣座長 ありがとうございます この到達目標をガイドラインに盛り込むときに、ど のような項目を、どの程度詳細に、難易度をどういうふうに設定するかも含めて、考えな ければいけないわけですけれども、事務局からの提案の5頁にある、到達目標を設定する 上で考慮することというのは、たぶん到達目標を明示するときに、これらのことはきちん と押さえた上で次の検討手順に入るのだと思いますが、いかがですか。事務局の案は、平 成16年の報告書を基にしてできています。これは臨床実践能力の構造ですから、看護師で ある限りずっと継続して進めていくのですが、そのうちの1年目ではどこまでというと ころを、今回、議論していただきたいわけです。いかがでしょうか。  例えば、どういう方針でこのガイドラインを示していくかということでは、ご意見がご ざいますか。事務局で示した案の11頁に案が3つあります。考え方の道筋を記載して、到 達時期の設定、到達目標の例を出すというのが1つ目です。2つ目は標準的な到達目標、1 つのモデルを示すということ。3つ目は、すべての項目について到達目標を示す。この3 つの案が提示されていますが、これも含めて、それから先ほど熊谷委員から、ご自分の施 設でなさっている考え方、実践の内容なども話していただきました。 ○坂本委員 複雑にしていくと、いろいろな施設でやらなくてはいけないので難しいと思 うのですが、わかりやすいところからいけば、この3つの案のドーナツの中に態度、技術 的側面、管理的側面とありますが、態度ということが入ってくると大変難しくなるので、 私はこの技術的側面は、どの程度入れるかは別として、項目を選ぶときの1つの方向性と しては、この技術的側面のところをメインにしつつ、管理的側面も少し入れながらしたら いいのではないかと思います。 ○石垣座長 そうですね。例えば技術的側面にすると、技術と言ってもたくさんの技術が あります。この項目をどのように設定するのかも、議論いただきたいところなのですが、 いかがでしょうか。 ○羽生田委員 学生時代の到達目標がありますが、学生時代には実際に手を出してできる ものが限られているわけです。その上での到達目標があるわけで、そうすると、いわゆる 知識としてわかるという到達目標が、看護師の免許を取ったときには実際に実践できると いうことになる。ですから学生のときの到達目標は、免許を取った後に実際にできるとい うことでの到達目標で、変わりはないのだろうと思っているのです。学生のときの到達目 標は全国一律に出ているわけですから、それが実際に免許を取った後に本当に自分ででき るようになる。できるように資格を取ったわけですから、それが実際にできるようになる かどうかというところが大変重要だろうと思います。項目としては非常に多いのですが、 ずっと見る限りでは、ほとんどは必要な項目であると思いますし、実際の業務の中では、 このことはほとんど出てくるものですから、学生のときに手が出せなかったものが、免許 を取ったからできるようになるという考え方で、私はいいのかなと思ったのです。 ○石垣座長 先生がおっしゃるのは、すべての項目に関して研修修了時の1年が終わると きに、ある程度できるようになる。そういうことを目指したほうがいいというお考えです か。いかがでしょうか。 ○海辺委員 いま、羽生田先生がおっしゃったとおりだと思います。あまりガイドライン が細かすぎても、見ただけで使えないという感じになろうかと思いますが、あまりに大ざ っぱすぎても、せっかく作ったのに意味をなさなくなってしまうので、ある程度最終的な 到達ラインを、羽生田先生がおっしゃったようなところに設定して、いつの時期までに大 体このぐらいできていれば、最終的にこの時期までには全部終わるだろうというものとセ ットになった形で、例えば到達時期の設定例が難易度と組み合わせてなっている、こうい う形のものだと非常に使いやすい印象を受けました。  あと難易度の設定例のところでは、例えばタイプIIIという感じだと、逆にすべての新人 が1年間でこういうケースに遭遇するかというと、たぶんあまりない。そういうあまりな いのを設定しても、あまり意味がなかったりしてしまうと思うので、先ほど上泉委員がお っしゃったように、1年後にルーティンができるようになるというところを目標として、 このように組んでいけば非常に使いやすいものになるのではないか。そういう印象を持ち ました。あと患者側からの視点から言うと、適切なタイミングでちょっとしたことをいろ いろやっていただくことにより、いろいろな合併症を引き起こすのを避けられる。そうい うことが患者には多いと思いますので、そういう部分に関しても現場の中で知識とリンク するようになっていくといいと思いました。 ○石垣座長 現実的な問題として、臨床の委員の皆さんはどのようにお考えでしょうか。 ○猪又委員 第2回のときにお話をさせていただいたのですが、1年間で基礎教育のとこ ろに挙がっている技術が、すべて出来るようになるのは確かに理想的ではあると思います しかし、現実問題として資料3に出しましたように、これは当院の例で、たぶんそんなに 変わらないだろうと思いますが、指導があればできるという状況に80%が達しない現実が あるであるというところでは、最終的には2年くらいはかかると思います。 もし期間を1年とするならば、技術であれば少し絞る必要があるのが現実かなと思います。 ただ、すべての技術を習得させるということであれば、今度は逆にローテーション研修 などの形にある程度変えなければいけないところがあると思います。 ただ、ローテーション研修になると、ある程度いろいろな科を持っている病院でないとで きない研修の形になってしまいすから、私はある程度、技術に関しても絞る必要があると 考えています。 ○庄野委員 研修期間に関しては先ほどから議論が出ていますが、一般的に1年が妥当で あるというのは私も賛成です。というのは、社会的にも新人と言えば1年間というのが頭 にイメージされていることが非常に多いのと、その中でも傾斜配分というか、前半の時期 は覚える項目がたくさんあって、社会科の部分も非常に大変な時期であるので、本人たち も努力するのが濃厚な時期ではあると思いますし、だんだん少なくなってくるとしても、1 年ぐらいが、いちばん目安とすればいいのではないかと思っています。  それと、いまローテーションの話が出ましたが、当院も1年間のローテーションをして います。メリットは非常に多いのですが、実際的に先ほど猪又委員がおっしゃったように、 全部の項目を網羅するのは、現実的には1年間のローテーションでも無理な部分がありま す。これは7年間してきて絶対揃わない部分なのですが、1年間で脳外科、内科、外科、 手術室等、全ての部署を網羅するのは無理なので、それは2年目以降ということで補充し ているというか、追加しています。 ローテーションも議論の中に入ってくるとは思いますが、指導者側、病棟側のところの 指導レベルというか、その人個人の1年間を捉えたときに前後の積上げの状態、今後の目 指す状態というのは、個々のラインで見ないと効果が出にくい。指導者側の負担は、1年 間同じ部署にいることよりも、少し指導者への教育というあたりでは力を入れなければい けないかなと思います。  3点目ですが、先ほど到達目標の項目ということが話題に出ていました。すべての項目 を全部提示しても、なかなか使っていただけないとなれば絵に描いた餅ではないですが、 資料をいただいてもというところが現実的にはあると思いますので、ある程度標準的に、 どのような施設でも重要で、かつ使っていただけることを念頭に置くと、先ほど坂本先生 がおっしゃった看護技術の中でも、特に基礎教育の中では、例えば薬剤であれば知識の部 分は習っているけれど、実際には免許がないので実施できない部分がある。インシデント を17%ぐらい新人が起こしているというデータもありますので、そこの部分は質を保証す るという意味で、薬剤という関わりの部分は1つ必ず盛り込めばいいという意見は持って います。  もう1つは、先ほど意見が出ました患者さんへのコミュニケーション技術であるとか、 予測した判断というあたりも含め、それを視野に入れながらルーティンの項目に関して、1 年目には1人でルーティンの業務ができるというあたりが、妥当な点かなとは考えていま す。 ○石垣座長 ありがとうございます。この到達目標については、まだまだ議論を続けてい かなければいけないのですが、研修期間としては1年ぐらいが妥当だろうと。臨床側の実 際にやっている委員の方たちからは、全部をするのは望ましいけれども、それをすべてガ イドラインに盛り込むのはどうかということ。ある程度絞ってモデルを示したほうが、い いのではないかというご意見をいただきました。  詳細さとか難易度に関しては、先ほど事務局から多少例を示していただいたわけですが、 これらのことを参考にしながら、どのような到達目標にするかについて、次のテーマに進 ませていただきたいと思います。十分ではありませんので、また改めてご意見を伺うこと になると思います。 次は評価方法です。評価方法について論点(案)で出ていますが、 事務局から説明していただけますか。 ○島田課長補佐 資料1、2で説明させていただきます。資料1の前回までの主な意見のと ころですが、評価方法のところでは5頁の5)でまとめています。 斜めの字になっているのが第2回のときのご意見です。それ以外は第1回のときのご意見 ということでまとめています。施設間での相互のピュアレビューという方法もある。さま ざまなチェックリストを利用する評価方法があるのではないか。下のほうで、評価の方法 は他者評価、自己評価があるといったご意見をいただいているところです。  資料2に、本日ご議論いただきたい論点をお示ししています。評価方法について2つ目 の項目で示していますが、「ガイドラインで何をどの程度示すべきか」ということで、評価 者は誰とするのか、評価時期をいつとするのか、どのような評価基準とするのか、評価方 法を各施設で検討する上で留意することは何か等を、論点の案としてお示ししています。 以上です。 ○石垣座長 ありがとうございました。ガイドラインとして何をどの程度示すべきかとい うことについて、ご意見をいただきたいのですが、先ほど猪又委員と坂本委員の資料3、 資料4も参考にして、ご意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。 ○北村委員 事務局から少し評価のあり方について、わかりやすく勉強してこいと実は宿 題を言われていますので、ここでちょっと整理したいと思います。評価のコメントに関し てもいろいろな評価が乱れ飛んでいますので、蛇足かもしれませんが少し整理したいと思 います。  いちばん分かりやすい評価で言えば、1年間という議論がいまありましたし、到達目標 ということがありましたが、研修が修了したことを国が認知して修了証というのは出すの でしょうか。もしそうならば、1年間やったら常にみんなに出すのでしょうか。あるいは 到達目標の資料にあるように、全部達している項目はなくて、20%ぐらいしか達成してい ない項目もあるのですが、何項目を達成したら出すのでしょうか。項目を絞ったらいいと いうのであれば、もし絞ったときに優秀な人が3カ月で全部オーケーになったと、そした らその人に3カ月で修了証を渡していいのでしょうか。このようなことが大前提の疑問に あって、それで話を聞いていただきたいと思います。  まず評価に関しては、誰が誰を評価するかということがあります。一般的には指導者が 新人を評価するということが考えられますが、国家試験のように国あるいは県、あるいは 第三者が新人を評価するということがあります。逆に、新人が1年でちゃんと終われない のは指導者が悪い。あるいは指導システムが悪いという考えもあるので、新人が指導者を 評価することも大事です。うちのプリセプターが教育を全く関知していないから、私がち ゃんとした研修を受けられなかったという意見がありますので、新人が指導者を評価する。 あるいは病院そのもの、研修システムを新人が評価する。あるいは研修システムを指導者 が評価する。あるいは第三者が研修システムを評価するという考えがあります。最後に言 った第三者がシステムを評価する場合は、病院の認定機構と同じように、この病院は新人 研修の病院として、適切な研修システムを持っていることを認めるということで、ある意 味でそれをやっておかないと、病床数が19床の病院で新人研修が終わりましたというのも、 500床の病院でやったのも、みんな同じかということがありますので、この病院のシステ ムを誰かが認証するということは大事なことで、これも評価に入ってきます。これが誰が 何を評価するかという論点です。  もう1つは、評価のタイミングです。あとでフィードバックというのが出てきますが、 福井先生を前に言うのも恐縮ですけれども、評価には2種類あって、「総括評価」と言って 研修修了と認めていいかという最後にやる評価と、研修の途中で「あなたは安全マインド がなっていないので、ここのところを注意しなさい」というような指導的な評価、「形成的 評価」と呼んでいますが、この2つがあります。  このガイドラインでどこを決めるのか。当然、総括評価は決めないと、どこで研修修了 と言っていいかわかりません。ただ、形成的評価を3カ月ごとにやる、毎週やる、半年ご とにやるとか、そこまで決めるか。フィードバックはどうするのかという次の項目に関係 すると、形成的評価のタイミングを指導することもあるとは思います。  3点目の論点は、評価項目の質を整理することです。何かと言うと、プロセス評価とア ウトカム評価です。病院評価機構の項目には「病院に理念がある」というのが入っていま す。これはまさにプロセス評価で、理念があるから患者さんの病気が治る確率が高いかど うかは誰もわかりません。ただ、医師の場合に、2年間研修したら医師になるだろうとか、 そのようなプロセスを踏んでおけば○というのがプロセス評価です。アウトカム評価は、 何々がてきる、患者の満足度が上がる、オペの成功率が上がるとか、事が終わってから評 価しないとわからないものです。  その特徴は、プロセス評価については、プロセスがなっていない場合はすぐに直せます。 理念がない病院であれば理念を作ればいいですし、3カ月ごとの評価がされていないとい う、プロセスが悪いという場合は、プロセスをよくすればいいのです。しかし、それがア ウトカムにつながるかどうかはわかりません。  一方アウトカム評価は、患者の満足度が低いとなれば上げるのですが、どこをどうすれ ば上がるかはわかりません。それですから、1年間の研修の終わった新人を評価したとき に、アウトカムとしてなっていないとなったときに、アウトカム評価だけでやっていると、 今後どこを直していいのかがわからないのです。調べてみたら、うちに入ってくる段階で レベルが低かったというようなことになってしまうので、そこでいかに研修を一生懸命や っても、アウトカム評価だけであれば、プロセスの改善にはなかなか通じません。ですか ら、このプロセス評価とアウトカム評価のバランスをしっかりと見てほしいと思います。  参考までにですが、医師の場合は研修期間が2年となっていて、2年を終わらないと修 了証はいただけませんし、中身も、内科6カ月、救急3カ月、外科3カ月というように、 中の時間的な割振りを満たしていないと、修了になりません。  さらに経験目標がありまして、疾患数が100くらいありまして、その7割を経験してい ないと修了になりません。さらに、医者としてのプロフェッショナリズム、態度です。指 導者から見て、それがなっていないとなれば、そこが曖昧なのですが、ほかの病院を紹介 するなりはありますが、修了させられません。このように時間というプロセス、経験目標 というアウトカム、印象に近いような態度の評価の3点をもって、修了にしています。  今度はこんなに厳しくやる必要はないとは思っていますが、修了を考える上で、何を満 たせば修了とするのかから考えていく必要があるのではないかということです。宿題で評 価の論点を整理をしましたら、このようなところになりました。 ○石垣座長 いま北村委員から評価の基本的な項目と、フィードバックも含めてのお話を いただきました。先ほどの事務局からの案、いまの北村委員からのお話を踏まえて、いか がでしょうか。 ○上泉委員 いま医師の臨床研修のお話がありましたが、2年で修了証をもらえない場合 はどうなるのでしょうか。 ○北村委員 あとで福井先生に追加していただきたいと思いますが、例えば期間中に妊娠 出産したり、病気になったりして、期間が足りない人については、期間を満たすまで引き 続き同じ病院で行います。経験症例が足りない人については、経験症例数を満たすまで延 ばして行います。態度がよくないので、この病院では医師としては認められないとした場 合、病院と研修医の折合いの問題もあるので、一般的に違う病院を紹介しています。研修 医と相談して、うちでは駄目なので、中断ということでほかの病院でやってほしいと。研 修病院はそこまでは責任を持っていただきます。責任を持てない場合は、医政局、地方の ところと相談してやってほしいと。  その心は、研修病院として手を挙げたということは、採用した人を一人前の医師にでき るということを言っていますので、自分が採用し、一人前にできないとなれば、その責任 の一端はその病院にあるということですので、その病院がある程度フォローすることにな ります。 ○福井委員 あと2つの場合があります。研修医が法律を守れない場合と、患者に危 害を与える可能性が高い場合には、その病院の責任で修了証を出さなくてもいいとしてい ます。それ以外の場合は、期間や到達目標の項目を満たしていれば、できるだけ認定する ようにとのことです。厚生労働省としてはできるだけ修了認定を出すように、と のメッセージを強く伝えています。 ○石垣座長 その評価方法と評価の仕方については、どのように考えていきましょうか。 ○福井委員 あまり流れを変えてしまうと申し訳ないので、医師については、指導医養成 のワークショップを行って、日本全国ですがカリキュラムの考え方や言葉を、かなり統一 してきました。ここにきて看護の分野で違う言葉を使うと、すごく混乱すると思います。 30年以上にわたって医学教育学会の先生方が導入してきた、指導医養成講習会の言葉と統 一してもらえればありがたいです。 ○石垣座長 例えばどのようなものでしょうか。 ○福井委員 例えば「到達目標」の次にくるのは、どのような方法で教えるかという「方 略」です。方略というのは単なる研修方法だけではなくて、どこで、誰が、どのようにな ど、細かないろいろなことも含める言葉です。  3番目にくるのが「評価」です。評価はいろいろな側面から評価されます。評価も到達 目標が行動そのものを言っているのか、知識を言っているのかによって、評価方法は全然 違ってきます。連動する言葉なのです。目標が、態度、知識、技術のどれを言っているの かによって、評価方法もかなり絞られてきます。ですから、この5年間で医師のほうでは 教育に係るボキャブラリーがようやく広まったので、それを統一する方向で考えていただ ければありがたいと思います。 ○石垣座長 いかがでしょうか。 ○海辺委員 いまのお話は非常にいいと思いました。看護職の方も将来的なステップアッ プなど、いろいろなことが視野に入ってきたときに、指導医の言葉とマッチしていたほう がいいだろうと思います。なるべくその方向でいくほうが混乱もなくていいのではないか と、部外者として思いました。  ただ、現場で使い慣れた言葉がありますから、福井先生から「5年をかけて整えていっ た」という言葉があったように、長いスパンで整えていくということで、すぐにこうしな ければいけないということではないと思います。  あと、第三者がシステムを評価することは重要だと思います。研修システム自体を評価 することは大切だと感じました。それは大切な新人の1年間を、大切に育てていただける 環境が最低限整っていることも必要だと思います。どのくらいの人数が、どのような規模 の病院にいるのかがある程度はっきりすると、もっとその方向性も定まっていくのかと思 っています。指導者自体も評価されることも大事かと感じますが、それには指導者自体が 燃え尽きないような、きちんとしたバックアップ体制も必要だと感じました。 ○坂本委員 指導者自身が燃え尽きるのは、おそらく教え方がわかりづらいのだと思いま す。言葉を統一できるかどうかはわかりませんが、できるだけそのような形でいかれれば いいと思います。  福井先生に教えていただきたいのですが、例えばブルーのところにネブライザーの実習 をできるというところがあるのですが、そのような状況のときなら、例えば医師ならどの ようなことを書かれているのでしょうか。 ○福井委員 例えば、中心静脈ラインを入れることができるという手技的なことがあった としますと、その評価は観察記録です。病棟で実際にやっているところを見て、何の援助 もなく、自分でできるようになっているかどうかを観察して記録でします。それから、目 眩の患者の鑑別診断ができるという目標であれば、行動でもある程度はわかりますが、こ れは知識面ですので、紙に書いてもらうか、口で言ってもらうことで、その知識を持って いるかを第三者が評価できます。このように、認知レベルなのか、手技なのか、態度的な  側面なのかによって、評価方法が決まっています。 ○坂本委員 そうすると、例えば指導者側のものがあって、新人はこのようなことをしな さいというものがあるとして、方略的なものは教える側が持つということですか。 ○福井委員 目標自体は、双方が共通認識を持っているべきです。あくまでも新人ナース ができるようになる、知っているという目標があって、それをどのような方法でチェック するかは指導者側も知っているし、新人ナースもどのような方法で評価されるかは知って いなくてはなりません。オープンに、双方が共通認識を持つべきだと思います。 ○北村委員 補足します。国立大学ではコンピュータを使ったチェック方法を使っていま す。そのときは自己評価をしてもらって、例えば中心静脈を「自分で入れられる」「大変う まく入れられる」。患者とのコミュニケーションをしっかり取れるかというのは、自己評価 で「できる」と。それが記入された段階で、上の者がそれを追認して「できる」とします。 ところが、自己評価の低い人のほうが、実際はうまいのです。自己評価で「できる」とな っている人について、あとで評価者がやると、そこに乖離があったりします。自己評価と 指導者の評価を使うというのも、1つの手です。 ○坂本委員 すごくよくわかりました。 ○石垣座長 評価も重要なテーマで、北村委員、福井委員から、本質的なご発言がありま した。医師は義務としての臨床研修で、国がバックアップしています。当然のことながら、 それはある水準を満たさないと修了証書は出ません。専門職としてのナースも、いずれは そのようなところを目指さなければならないと思っていますし、福井委員がおっしゃった ように、できれば共通言語で研修を組めたら、もっと効率的にできるのではないかと思い ます。  しかし、看護師の卒後研修の現状は、まだまだ十分ではない中、模索しながらやってい ます。今回国会で法案が成立して、努力義務ではありますが、これは大変な進歩だと思い ます。今後それがどのように展開していくかが課題になると思います。  現時点では、これまでに資料の中にもあるように、評価は自己評価と他者評価で、他者 評価も部署の長あるいは教育全体に責任を持つ人というように、何段階にも分けて評価す るわけです。あと評価の時期も、就職時のレベルを見ながら、1カ月、3カ月、6カ月、1 年というように、ある程度目標を決めていると思います。  モデルにも示しましたが、基準が、「1人でできる」「指導者の下でできる」「できない」 「経験したことがない」ということで、一般的な評価をしていると思います。今後、北村 委員がご提示なさった第三者評価という方法は、施設として教育を充実していくためにも、 インセンティブになりますよね。まず、その出発として、このガイドラインでは規模に関 わらずどんな病院でも実現可能というようなものを目指したい。 国としては、どこの施設でもある程度の新人が育つような環境を作りたいというのが目標 ですので、現状を踏まえつつ、実現可能な評価方法を今後考えていきたいものです。  先ほど北村委員からフィードバックの方法についても多少述べていただきましたが、事 務局からフィードバックについても案を説明していただけますか。 ○島田課長補佐 フィードバックについては、いままで先生方からいただいたご意見はお まとめしていませんので、資料2の論点の案を説明します。先ほど来ご意見の中にも出て いましたが、資料2の3つ目です。  評価のフィードバック方法としては、新人看護師個人へのフィードバック方法をどうす るのかということと、研修プログラムへのフィードバック方法はどのようなものがあるの かといった論点があると考えています。 ○石垣座長 それを含めて、先ほどは新人からのフィードバックということも述べられて いました。 ○庄野委員 評価のフィードバックの考え方の1つだとは思うのですが、私は評価につい てはすべてオープンにすべきだと考えています。本人のための評価が基本的にはあるので、 なぜ評価をするのかというところに返っていくのですが、新人本人が、いまできないこと が次にはできるようになる、あるいは知らないことが次にはわかるようになるという、1 つのきっかけとしての評価だと思いますので、それが自己評価であったり、他者評価であ ったり、あるいは逆方向からの評価という考え方が、1つ大きくあるのではないかと思っ ています。  研修システムの評価にしても、技術や態度の評価にしても、シンプルにしたほうが使い やすいとは思うのですが、自己評価は自分の基準でしますので、評価が高かったり低かっ たりと、部署によってばらばらになる傾向があると思います。そういう意味で、目標によ るとは思うのですが、必ず到達できるようになる項目について、例えば技術などについて は、チェックリストで標準的、客観的にする。あと態度など、目で見て評価がしにくい部 分については、多側面の評価、いろいろな方面から評価するというのが、その項目につい ては必要であると考えているところです。 ○石垣座長 評価というのは教育的でなければいけないというのがありますね。 ○庄野委員 そうですね。プラスのフィードバックが基本かと思います。 ○石垣座長 看護の委員の皆さんにお伺いしますが、個人の評価あるいは研修プログラム 全体の評価は、具体的にどのようにやっているのでしょうか。 ○猪又委員 新人個人個人の評価については、技術のは前回提出したチェックリストに沿 ってしまいますが、実際には、到達目標、それに対してどのような学習方略があるか。そ れでどこができるようになるか、あるいは何が言えるかということについて、1年後の評 価表があるので、それを新人、指導者、病棟の管理者がともに話し合って、どこまでで きたかを確認し合う形で行っています。 先ほど庄野委員もおっしゃっていましたが、基本的にできた、できないではなくて、励 ます、エンカレッジをいちばん大事にしているところですので、ここは足りないけれども、 ここはできているということで、その新人の強みの部分を確認し合う形での評価を行って います。 ○石垣座長 研修プログラムについてはどうでしょうか。 ○猪又委員 研修プログラムの評価は、新人が研修に参加したことによってどのくらい変 わったかを、指導者として参加する者たちがその場で評価をすることと、新人そのものに プログラムを評価してもらうことがあります。それから、いろいろなプログラムがありま すが、技術は、中央で研修を行って、そのあと病棟でこのチェックリストを基にして実施 をしなさいという形での研修を行っているので、それが終わった段階で最終的にチェック リストに評価します。チェックリストの構成の中で、安全面に関して重要だと思われるも のに関しては、何々ができたということではなくて、そのプロセスを評価するような項目 を載せているので、最終的にその技術のプロセスがきちんとできているかを評価していま す。 ○福井委員 教育学の考え方・用語に、則ったほうがいいと思います。ここで言われている 「研修プログラム」は何を指しているのでしょうか。 ○石垣座長 1年目の新人看護師が次のステップに進む、あるいは将来的に専門職として 育っていくために、どのように新人看護師を育てようとするか、そのために研修計画を立 てるのですが。 ○福井委員 研修の一連の計画書というのは、教育学では「カリキュラム」と言います。 最近、医師の研修では、それを「プログラム」と呼ぼうとしています。つまり「カリキュ ラム」なり「プログラム」という言葉が指すのは、目標、方略、評価の3つが入ったもの ということになります。もし資料1の全体を扱うのがガイドラインで、指針として出すと いう意味のガイドラインということであれば、資料1「新人看護師研修」の2.の「研修構 成」の部分が、プログラムなりカリキュラムに当たる全体像だと思うのですが、ここには 全然「研修プログラム」という言葉は出てこなくて、途中の論点で「プログラム」という 言葉が出てきていて、何を指しているのかがわからない。 ○石垣座長 いま猪又委員がおっしゃったことは、新人看護師の研修体制全体のことで、 行動評価とプログラムの評価という意味ですね。評価とフィードバックというのは、表裏 一体のものだと思うのですが。 ○坂本委員 研修体制というのは、わかっているつもりで、わかっていないところが出て くるので、用語をどのように考えていくかは、作りながらいったほうがいいかもしれませ ん。 ○石垣座長 そうですね。 ○村上委員 私が新人の助産師の実践能力向上のモデル事業に参加したときに、新人助産 師の何を到達目標に置くかというのは、3カ月で安全を含めた正常なお産が1人でできる、 という大きな目標がありました。そのために、何をどのように実施させるかを明確にしま した。3カ月経って、その新人助産師が夜勤に入れる、少し補佐は必要かもしれませんが、 正常なお産ができるという目標がありました。  小さなものをたくさん積み重ねていくと、大きな目標を達成できないことがあるのです。 今回やりやすかったのは、3カ月経ったら自立して、チームとして夜勤に入れるのだとい う目標があったから、とてもやりやすかったので、3カ月で人員も確保して、具体的なプ ログラムを入れて、1週間目、2週間目あるいは2カ月、3カ月と、研修の技術項目及び知 識を入れていたのです。  そのときの達成度は、各助産師が自分のCDに技術項目、知識も入れて、努力義務を書い ていく。何回経験して、1人でできるようになった、今日はまだ指導を仰がないといけな いと、個人で報告させていくシステムをとりました。それが、一人ひとりがどうしたらい いかというのがわかりやすいと思うので、そういうことを考えると、新人が道筋をどのよ うに付けて、組まれたプログラムをこなしていくか。その道筋が明確になるようなことを してあげないと、目標に到達しないと思います。3カ月に到達した時点で、現場の教育担 当者、実施責任者、看護部の教育責任者で評価をして、院長から認定を出していただきま す。それで厚生労働省にそれを出したと思います。  それが1つの自分の自信につながることがあるので、先ほど上泉委員が言われたように、 ルーティンなもの、安全、快適、この基本は忘れないことが大事かと実践して思っていま す。1年のプログラムで、そういう形のものにできないかなと考えています。 ○羽生田委員 先ほど申し上げた到達目標が学生のときからの連続だという、この評価に ついては、私は自己評価が基本だと思っています。それをプリセプターなり指導をする人 が、それを補佐するというか、評価には加わってもいいのですが。  上泉委員の言われたルーティンというのは、全国どこでもできるもの、そこだけは最初 にやらなければいけないというものは、そこであって、そのあとの到達目標がそれぞれ細 かくあるのは、学生のときからの看護師としての自覚と教育の結果であって、私はこれは 基本的な自己評価で、自分はできないからやろうという意欲があれば、どんどん進んでい くし、意欲のない人は進みません。  ただ、全国に新人の看護師が毎年約5万人出るわけです。その全部を猪又委員の言われ たようなシステムでやることは、ほとんど不可能なわけです。ですから、最初のルーティ ンのところはここ、ここはどこでもできる。グループでやってもいい。それを押さえると いうことと、それぞれの到達目標は、学生のときにある目標が免許を取ったときになくな るはずがないので、その延長線上で考えていただくという意味で、私は申し上げました。 ○石垣座長 そうですね。 ○熊谷委員 ガイドラインの意味は、いま先生がおっしゃったようなところにあるのだろ うと思っています。あとは病院が求めるレベルがあるので、そこは病院の裁量でやるのが いちばんいいのではないかと思っています。  あとは用語についてですが、統一したほうがいいと思ったのは、例えば私の認識では、 評価のフィードバックとありましたが、評価というのはフィードバックのためにあるので はないかと思っていて、ランク付けではなくて、また頑張れるように、そういうもののた めに評価をしたり、何を頑張ればいいかを確認するためにやる、そもそもフィードバック が前提になっているものだと思っていたので、そういった用語の統一も必要なのだなと思 いました。  ルーティンというのをどう捉えるかで、最低限というところでは、基礎教育でやってい ること。臨床教育でもう一回考え直したときに、やはり中身は同じなのです。そこがどう 違うかといったときに、実際をしたことがないというところをつなげてあげることが臨床 研修だと考えたときに、いままで事務局に資料で出していただいた、新人が乖離を多く感 じている技術、非常にリスキーな技術などを、ポイントを挙げて整理をしていくと、有効 活用ができて、プラス裁量もあるかなと思っています。 ○石垣座長 事務局の示した到達目標の5頁に、「目標設定のプロセス」というのがありま す。目標設定の上で考慮することというのは、先ほど北村委員がおっしゃったプロセスだ と思います。ここのプロセスで、病院や看護部の理念、どのような新人に育ってほしいか。 まずここをしっかりと押さえるところから出発することと、アウトカムとして目に見える 技術、態度も含まれますが、その両方を合わせてガイドラインには盛り込まなければいけ ないと思うのですが。アウトカムを何で評価するかです。いま熊谷委員がおっしゃったよ うに、どこででもしなければいけないし、リスクの多い、あるいは学生のときには全く実 践できなかった代表的な技術について、モデルを提示するという案はどうですかというこ とでしたが。 ○上泉委員 ルーティンと申し上げた中に技術の部分もあるのですが、指針の表3に、「管 理的側面についての到達目標」というのが何項目かあります。「安全管理」「情報管理」「業 務管理」といった項目ですが、こちらも大事で、むしろこちらのほうがどこでもしなけれ ばいけない、獲得しなければいけない管理的側面の到達目標ではないかと思います。 この点についてもゴールとして含めていったほうがいいと思います。 ○石垣座長 今回は技術に限ったわけではなくて、平成16年に出した報告書が、より 具体的に実践できるようにという、バージョンアップのつもりでいます。ですから、当然 管理的なこと、職員として必要な「基本姿勢と態度」も含めていきます。  この「管理的側面」というのは、「看護を行う」ことに付随してくることですから、その ような視点で新人のときから教えていかなければいけない側面だろうと思います。1つの 技術をするときに、コスト管理、物品管理、安全管理、情報管理などは当然伴ってくるこ とですから、このような視点は必要だと思います。 ○福井委員 参考までに。医師の研修は、到達目標を一般目標と行動目標の2つに考えて 作っています。一般目標は数行で、村上先生がおっしゃったように、正常に分娩ができる ようになる、このカリキュラムを修了したらこのようになるという抽象的な目標を書きま す。そして、それを達成するために、必要な知識、技術、態度を書き出していきます。そ のような2段階になっています。大きな目標を示すと具体的な知識、技術など項目を挙げ やすくなるのではないかと思います。 ○石垣座長 わかりました。看護も、GIO/SBOの考えとしては、そのような考え方でやっ ていると思います。具体例をお示しして考えていくということなのですが。 ○坂本委員 資料5ですが、学生時と新人研修修了時というのは、関連づけて、ここの13 項目は技術のところですが、これはすごく関連性がわかります。  新人研修時に「経管栄養」といったときに、モデルの人形でやっていたり、知識を蓄え た状況で学生が卒業してきますが、本当の患者のときにそれがどのようにできるようにな るかを作っていけば、病院側も、それを見たらどこまでのことをやろうとしていたか。そ れから受け持ったときも、できるできないは個別にあるとしても、こういうことは学んで いるのだなというのはよくわかるので、これをもう少し具体的に使いながら、管理的側面 を入れながら、やっていければいいのではないかと思います。 ○石垣座長 まさしくそう思います。これがあることで、臨床の人たちは随分考え方が変 わるというか、そうだったのか、と思えるようになると思います。  評価とフィードバックについて、いろいろとご意見をいただきました。それから、私た ちの使う用語が、必ずしも共通ではないかもしれないので、用語の定義もきちんと定めな がら進めていきたいと思います。 ○熊谷委員 1つよろしいでしょうか。いまの福井先生のご質問にあるように、整理がう まくできていないのかなと思ったのは、1年間とした場合に、1年間でどのような看護師に なればいいのか、どのような資質を望むのかということがあって、それが先生のおっしゃ る、医学教育で言えば一般目標になって、そのためにはどのようなことを経験させていく のかという行動目標を整理して、その行動目標の一部のモデルとして、この13項目をご提 示していく。その構成としては、一つひとつに方略があり、評価がありということで、ま ず1年間でどのようなところを目指すのかの共通理解が、すごく重要なのかと思いました。 いかがでしょうか。 ○石垣座長 貴重な意見をありがとうございます。 ○北村委員 混乱するかと思ってあえて言わなかったのですが、評価方法で1つ提案があ ります。それはポートフォリオ評価というものです。バインダーのイメージで、そこにレ ポートをどんどん突っ込んでいきます。そして1年間終わったときに、それを評価に使う というイメージです。お産を3例したというより、何々産で、出血量がどれだけで、どの ように回復したというレポートをきちんと挟んでいく。  いまはコンピユータ時代ですので、小さなUSBのチップにも入りますので、将来その看 護師が新人研修だけでなく、リクルートして、ステップアップしていく、あるいは大学院 や専門看護師にいく上でも、自分の生涯においてどのような症例を経験した、何人のお産 を取り上げたなどをずっと積み重ねていく習慣を、せっかくですから付けていただいたら、 理想的だなと。いまこの段階で言うには先走りかもしれませんが、そのような、自分の経 験したことを生涯にわたって積み重ねていく仕掛けも評価に中に入れていただいたらいい と思います。 ○石垣座長 自分自身の成長の過程がわかったり、課題が見つかったりということですね。 ○北村委員 そうです。 ○石垣座長 本日は4つの項目についてご議論いただきたいのですが、評価とフィードバ ックについては本当に重要なことですので、まだまだ議論を続けていきたいところですが、 また私がお預りさせていただいて、最後のところを進めていってもよろしいでしょうか。 また到達目標評価に戻ることは構いませんので、最後の看護師研修の研修方法について、 これまで出された意見と、論点の案について、事務局からご説明いただきます。 ○島田課長補佐 資料1です。これまでいただいたご意見の中から、研修方法にかかわる ところとして、4頁の3)「研修方法」で、ご意見をいただいているものです。  ご意見としては、「たくさん例を挙げて、研修方法は実施施設が選べるようにすることが 必要ではないか」、「ガイドラインの中の到達目標と研修方法の分類の検討が必要ではない か」、「集合研修とOJTについては個々の病院によって異なるが、何月目にこういうものと いうような、いろいろなやり方があるのではないか」。それ以降のご意見としては、研修方 法とその適用性といったところでのご意見をいただいています。  資料2で、本日ご議論いただきたい論点の案をお示ししています。4つ目の「研修方法・ 体制」で、ガイドラインで研修方法についてどの程度示すべきか、どのような研修方法が あるか、現場での研修方法や体制、具体的な演習の方法といったところでどのようなもの があるか。  それぞれ実施するための条件として、適用性はどのようなものがあるか。例えば新人看 護職員の数、教育担当者の数、研修場所や環境、物品、予算、時間といったものが、どう いった適用性でできるのかということがあります。  プログラムとしてどのように編成するのかということで、研修方法の選択、組合せ、実 施時期についても、論点としてあろうかと思っています。 ○石垣座長 研修方法については、これまでも委員の方々からたくさんの意見をいただい ていますが、上泉委員に資料を提出していただいているので、上泉委員からご説明いただ けますか。 ○上泉委員 「習得方法」という名前ですが、現場教育、集合教育、個人学習という3つ の方法が、こちらの指導指針に書かれていました。資料6の1枚目は、現場教育の方法で、 2、3頁は集合教育と個人学習の方法をまとめました。  1頁から説明します。調査によると約80%の施設が、プリセプターシップという方法を 用いていると報告されています。 これは新人1人に対して、決められた、経験のある先輩看護師が、マンツーマンで、ある 一定期間のオリエンテーションを担当します。このマンツーマンというのは同じ勤務をす ることになっています。同じ勤務ですので、そう長いことはできませんので、期間には限 界があります。ただ、この方法については、我が国の報告ではさまざまな捉え方があって、 この言葉の定義が統一されていないところです。新人のペースに合わせて、並びに新人自 らが自分の計画を主体的に作っていく、それを支援するという方法で、このプリセプター シップが採られています。先ほど来ある、個人によるスタートライン時の能力の違い、あ るいは学習していく進度の違いに合わせてできるということで、これが採られているのか と思います。  その他、インターンシップとか、さまざまあります。補助アサイメント(coassignment) という方法ですが、これは新人と先輩がペアで患者を受け持つやり方です。プリセプター との違いは、その日その日で担当する先輩が異なることです。この方法もかなり採られて いるようです。  それから、チューターやメンターは、どちらかというと決められた相談相手を置いて、 新人にとってさまざまに起こってくる問題に対して相談をするといったことで、結果から すると、これらの方法が組み合わされて、現場の教育が行われているということです。主 なものとしては、プリセプターシップとコアサインメント、それとチューター、相談相手 を置くといったことが組み合わされているようです。  その裏の頁です。集合教育も臨床新人看護師研修の中で行われているので、その方法を まとめました。講義などもありますが、ロールプレイ、シミュレーション、グループワー ク、課題学習を基に自分の学んだことをプレゼンテーションするという方法が採られてい ます。デモンストレーションは多く用いられているということです。  このようなさまざまな方法がありますが、どのような組合せが一般的かとか、対象によ る違い、また教育指導環境による違いでどれがいいかについては、分析することができま せんで、本日は方法をお示しするだけになりました。 ○石垣座長 現場ではいろいろ工夫をしながら、研修方法や体制を考えているわけですが、 研修方法や体制というのは、いまの上泉委員のご説明にもありましたが、施設の状況によ っても左右されるところが大きいのではないかと思います。いまの上泉委員の案も含めて、 この論点に沿って委員の方々のご意見をいただけますか。 ○村上委員 すごく重要なことは、いつも思うのですが、注射1つにしても、技術を学ぶ ときにそのことだけを学ぶのではなくて、指導者側の人格、人柄、思い、優しさなどを含 めて学んでいるので、それで嫌になったり、勇気が湧いたり、看護師になろうと。結構大 きな要素として、人間的要素というのがあります。プリセプター制を採るのか、メンター を採るのかは大きい、誰に当たるかも大きいと思います。看護の技術はたくさんあるので すが、一人ひとりを見ていったときに、指導者から受ける影響はとても大きいし、ともに 時間を過ごす人といつもいれば、たとえつらくても、その人の考え方が1つの技術を学ぶ ときに付いてくると思うのです。そういう意味で大変なのですが、どうしても人が要るな と。基本的な、初回のところでは大事かなと常日頃から感じていました。 ○石垣座長 これまでも「教育担当者の研修も考えていかなければいけない」というご意 見が出ていますので、いまの村上委員がおっしゃったことはとても重要なことだと思いま す。 ○庄野委員 「現場での研修方法と体制」のところです。いま上泉委員から、いろいろな 方法のご提示をいただきまして、少し整理された思いではあるのですが、言葉がたくさん 定義とともに使われているというのが現状です。もし盛り込んでいくとすれば、用語の定 義ではないですが、ある程度多くの病院で採られている方法、プラスアルファはできると しても、それに応じた言葉を標準的に入れ込んでいったほうがいいのかなと思っています。 実際に現場を知っている者としても、ああ、これだけあったのだ、ということを、整理す ると同時に思いましたので。  例えば研修方法であれば、大きくは集合研修と機会教育(OJT)になってくるとは思います し、それが目的によって方法を選んでいくということはあると思います。講義であるとか 演習であるとか、ロールプレイ、シミュレーション、デモンストレーション、プラスアル ファできるとしても、現場で使われているような方法を基本的なラインとして取り上げて いったほうがなじみやすいのではないかと思います。 ○石垣座長 西澤委員や羽生田委員は、必ずしも研修体制が十分でない所で育っている状 況もいろいろご存じかと思うのですが、そういうことも踏まえてご意見はありますか。 ○西澤委員 いままで議論をしていて、当然、卒前教育だけでは不十分だということで研 修が大変重要なことだと考えて参加しております。 ただ、議論を聞いていて、最初から何となく違和感があったのですが、最初からいままで の議論の積重ねの中で、何か形が決まっていて、どうも議論に入りづらいなと感じており ます。何なのかなと思っていたのですが、最初から固まりすぎているのかなと。例えば、1 つの例で、評価方法を取ってもほど北村委員がおっしゃったように、評価というのは誰が 誰をするのかということなど、いろいろな問題があるのですが、ここで書いているのは、 評価者はあくまでも現場でやっている先生方であって、されるのは新人看護師ということ で、固定した議論になっている。 福井委員からも、考え方として教育論から見るともっとあるのではないかと言われまし たが、そういう議論今回なかったのかなと。それはいままでの流れで、看護の中ではで きているということなのかなと思いましたが、私たちが外から入ると、ちょっと違和感を 感じたということです。大事なことなのでもっと北村委員やあるいは福井委員のおっしゃ ったことを若干織り込んだ中で組み立てると、もう少しきれいな、外から見てもわかるよ うな議論になるし、いいものができるのではないかと思います。  私はいろいろな委員会に参加してきて、医師臨床研修にもずっと絡んでいて、医師の臨 床研修制度が始まってすごく変わりました。そこではみんながいい研修をやろうというこ とで、研修するほうの評価が非常にされることによって変わってきたということがありま す。今回は、少しそういう視点が抜けていると思います。そのようなことでは、医師の臨 床研修でやった5年間の経験がすごく役に立つので、そこでは北村委員、福井委員のご意 見が参考になると思います。もちろん、片方では法で制度化されたもので、こちらは違う ということもありますが、同じ研修ということではかなり役に立つので、そういうものを 入れればもっといいものに膨らむのかなという思いで聞いておりました。 ○石垣座長 ありがとうございます。これは決して形にはまったものが先にありきではな くて、一応例示はしていますが、その中で自由にご意見をいただきたいと思います。 ○坂本委員 プリセプターシップが80%と言われたのですが、基本的には成功しているの でしょうか。 ○上泉委員 実態を見ますと、同じ勤務をしている所はほとんどありませんで、1対1で 相談相手がいるのが現状のようです。それを見ますと、成功しているかどうかということ にはっきりお答えできませんが、現状に合わせてアレンジしている、どちらかというと プリセプターシップよりはチューター制度に近い形が取られているのかと思います。その 結果、実際に入職し立てのころに責任をもって指導する人がいなくなってしまっているこ とが生じている点では、プリセプターシップはひょっとしたら失敗ということになるかも しれません。ただ、本来のプリセプターの意図に立ち戻るならば、可能性としてはあるの ではないかと思っておりますが、現状は大変厳しいものがあると思います。 ○石垣座長 坂本委員の感触としてはいかがですか。 ○坂本委員 私は、プリセプターが本当に疲弊しているというか、共倒れというのを病院 の中でも経験してきましたので、何かいい方法はないかなとは思っているのです。だから、 是非医師の先生方から、もっと緩やかにしつつ、いつも見ている指導者が作れればいいな と思っているのですが、いかがでしょうか。 ○北村委員 医師はあまりプリセプターという名前を使っていなくて、指導医という形で 一緒の仕事をすることもないし、マンツーマンであったり患者ごとに違っていたり、いろ いろな形態があるのでわかりません。  元に戻って、ガイドラインで研修の習得方法をどこまで書くかに関して、極めて個人的 な意見ですが、ガイドラインというのは登るべき山を見せるのであって、登り方はそれこ そ病院の個性そのものですので、その登り方は病院の規模や教育スタッフの数、質等で決 めればいいことなので、ガイドラインに載せるとしてもアペンディクスというか、付録で こういう方法があると。そして、その利点・欠点等を並べて、それを各病院の自主的判断 と責任で選びなさいと。場合によっては、指導者研修のところで適切な選び方、あるいは 利点・欠点をよく理解した人が指導者になってほしいということを述べればいいのであっ て、ガイドラインそのものにこの方法がいいですよとか、これはあまりお勧めではないと か、そういうことは必要ないと思うのです。 ○福井委員 全く同じ感触で、これだけ言葉が並ぶと、教え方を勉強するのに疲れてしま うのではないかでしょうか。例えば、OJTのやり方をいろいろ書いてあるのだと思います。 一般的に、患者さんのケアを実際にやりながら学ぶスタイルをOJTと言って、ごくおおざ っぱに言うとその中に3段階あります。 本当の初心者のときには、指導者がほとんどそばに付いてやり方を見せながら示さなくて はなりません。その次の段階は実際にやってもらう、そばに付いているだけ。第3段階は、 そばには付かないで難しい問題だと思ったら報告してもらう。能力があるかによによって どれぐらい期間がかかるかは、人によって全然違うわけです。おそらく、そこは個別に教 える者でしか判断できないことですので、その中のやり方の一つがプリセプターシップで あったり、インターンシップであったり、名前はたくさんありますが、現場ではあまり知 らなくてもいい名前がたくさんあるのではないかと思います。 ○石垣座長 そうですね。全くそのとおりだと思います。 ○上泉委員 知らなくていいかもしれませんが、このように名前を使って外に出している 以上、その定義がさまざまであるということはさらに混乱を招くことが懸念されます。そ ういうこともあって、一応ここに示しました。実際にこの名前の捉え方については本当に さまざまで、定義が混乱していると思います。ですので、これをどのようにしなさいと言 うつもりは全くありませんで、北村委員がおっしゃったように、アペンディクスでよろし いかと思います。ただ、何か表現するとしたらしっかりした定義のもとに言わないと、そ れこそ福井委員がおっしゃっているように、用語の使い方が混乱するだろうという思いで これを書きました。  また、裏の頁は基礎教育や学校教育の方法論が全部入っておりますので、多少臨床での 研修には不向きなものもあるかと思います。その辺はもう少し整理していけるかと思いま す。 ○熊谷委員 私は、臨床現場の新人の臨床研修なので、学校教育との違いはどこかという と、現場教育のそこの部分だと思っているのです。そこが基礎教育と全然違うところで、 先ほどから出ているように、例えば静脈注射などを新人の習熟の過程とか、どのようにや っているかを自分の所で見ると、最初は見せる。もちろんシミュレーションでやって、そ の次は一緒に来てもらって一連を見せる。その次に「やってごらん」と言って、やってい る所のそばに付いている。そのときに、危なそうだったら手を添えてあげるとか、その次 には「1人でやってきてごらん」という段階があって、むしろどんな研修方法かと言った ときに、ちょうど資料5に出ているような階段状のOJTを示していくことが、ガイドライ ンでどんな施設でも標準的にこのように研修を進めるといいよというのは、OJTのやり方 を指し示していくことかなと思います。また、こういう方法もあるというのは、先ほどか ら出ているように、用語と教育方法を参考資料として出していくことには大変賛成です。 ○坂本委員 これだけ出していただいて、よくわかったということではよかったのですが、 プリセプターシップが80%やっているという報告を受けましたが、例えば医師の教育方法 は、指導者を決めてその人が責任を持って、いろいろな所で何かをしているときにはすべ てに関与するわけではないとおっしゃいました。では、なぜ看護師がこのようにプリセプ ター、プリセプターと言って、マンツーマンで教える方法をずっと取っていったのか、取 らざるを得ない状況だったのかを知りたいのです。というのは、そもそもの何かがあって、 医師とナースの教育の方法が、指導者は置いておいて、昔はある程度誰が教えてくれるの かは、関わった人が教えてくれるということで経験してきましたが、なぜこのように付い て回って教えるようになっていったかを知っておかないと、私も方法を示す必要はないと 思いますが、何で80%がプリセプターという名前でやっているのかということが気になっ ているのです。 ○上泉委員 私の理解ですが、看護という仕事はかなり現場に依存しているというか、慣 れていかなければいけないところがあるわけですし、技術だけスポッとどこかに避けて、 それだけ学べば仕事ができるかというと、そうでもない。チーム医療でもありますし、そ の病棟をマネージしていく役割もある。となると、現場でそこに慣れていく意味で、もと もとのプリセプターの意味である世話人という役割が必要だったのではないか。それは技 術指導だけでなく、仕事の仕方、あるいは新人ですので初めて仕事をするわけですから、 仕事人として一体どういう心構えでやっていったらいいかとか、仕事人としての価値観と いったことも含めて、総合的に世話人という役割が必要だったのではないかと思っていま す。そのために、一緒に仕事をするということで役割モデルになったり、その人の後ろ姿 を見て学ぶということで看護の仕事を学んでいくということが必要だったために、プリセ プターシップが用いられたのではないだろうかと思っています。 ○石垣座長 上泉委員がおっしゃったことはまさしくそうで、プリセプターシップの背景 に、基礎教育と臨床現場との乖離があると思います。看護基礎教育のカリキュラムの改正 のたびに臨床実習の時間が減少し、同時に医療の場も在院期間の短縮、高齢化や重症化、 個人情報の保護に関することなど、学生が適切な患者を受け持つことが困難になってきた と。そのような背景があって、しっかり新人をサポートする人が必要だったということで す。一部の病院では3年未満のナースが5割を占めるなど経験の少ない人によって支えら れているという現状もありますから、3年目はまだ十分ではないけれど、1年目を指導しな ければいけないという状況もあって、坂本委員がおっしゃったようにプリセプターがこけ てしまうこともあり、いまプリセプター制度が見直されているのではないでしょうか。 ○坂本委員 病床数が少ない病院も多い病院も、指導者は置かないといけないのではない かと思うのです。ただ、付録として付けるのは、モデルとして付けていいと思うのですが、 自分の病院に合わなくてもそれをやらざるを得ない、やらなくてはいけないのだと思って いくとお互いに大変疲弊しますので、そこをどう示すかは、指導者は役割として名前を決 めてくださいという意味ではやらないといけないと思いますが、OJTの方法はあまり詳細 に述べる必要はないのではないかと、いまのところは考えています。 ○石垣座長 おっしゃるように、今後いろいろな規模の施設でどのように活用してもらえ るようなものを作るかとか、教える人をどうサポートするかが、これからこの検討会の大 きな議論の対象になると思うのですが、医師の場合、指導医は特定の資格があるのでしょ うか。 ○北村委員 まず、プリセプターがなぜ医師にないのかなと思ったら、似た言葉があって、 「屋根瓦方式」といいます。英語がないのですが、プリセプターが流行ったのは英語でカ タカナだったからだと思うのです。おしゃれな感じがするのですが、医者の場合は屋根瓦 方式ということで、ださいのです。でも、1つ利点は、プリセプターの上にもう1人誰か がいるというイメージがあります。プリセプターの場合は3年生が1年生を教える。それ で終わりですから、その3年生を誰が教えるというのがないですが、屋根瓦方式だったら その上にもまた指導医がいるみたいな感じが見えて、いいような気がします。是非、屋根 瓦方式も看護で使っていただいたらいいと思います。 ○石垣座長 平成16年の報告書には、屋根瓦方式を強調しておりますね。 ○北村委員 そうしたら、この表にも是非入れていただいて。医師の指導医は、厚生労働 省が30時間の研修を受けた人に医政局長の判子をついた「指導研修修了書」を渡していま す。最初は努力義務で、その人たちが研修医5人に1人の割合でいることという努力義務 だったのですが、今回の改定でmust(ねばならない)と。各診療科に1人はほしいという ことと、人数的には5人に1人の割合で指導医を置くこと、その人は厚生労働省が決めた 一定のプログラムの研修を受けた人ということで、皆さん研修を受けに行くのが大変で、2 泊3日ということで、随分日本中で大騒ぎして受け取っている状況です。 ○石垣座長 指導医になったら、何か特別の手当があるのですか。 ○北村委員 東大病院は全くありませんが、先生の所はどうですか。 ○福井委員 手当を出しています。 ○石垣座長 施設によって違うことですね。 ○上泉委員 屋根瓦方式がようやくわかりましたので、よかったです。どういうことなの かと思って質問しました。 ○福井委員 屋根瓦方式とプリセプターシップは、厳密には違うと思います。プリセプタ ーはアメリカの病院などではいまでも使っていて、研修医や、学生を教えるときの教師と いう意味だけで使っています。屋根瓦方式というのはたった1人の人が教えるのでは なくて、その上に何重にも教師がいる場合にしか使わない言葉だと思います。どちらかと いうと、臨床の現場で具体的なことを教えるのがプリセプター(Preceptor)で、自分の人生 の方向を決めたり、人生相談も含めて相談するような人をメンター(Mentor)と言います。 なお、上泉委員が話をされた3頁のオスキー(OSCE)は、評価方法であって学習方法ではあ りません。 ○石垣座長 ありがとうございます。いずれにしても、現場教育の仕方をガイドライ ンに盛り込むのは難しいのですが、どういう形でこれを盛り込んでいくかは今後の議論の ところだと思います。現場教育を充実させるためには、指導者を育成するという視点が組 織に必要で、組織の文化というか、人を育てる文化がいずれにしても出発なのだと思いま す。 ○庄野委員 いま石垣座長がおっしゃったように、組織の文化というか、指導者だけが研 修に行って帰ってきてその部分だけ受け持つという分割されたものではなくて、屋根瓦方 式で指導することもそうだし、個々の施設の中でどのような新人を育てたいかという姿勢 が、組織として、病院として非常に大事だと思っています。そこが根本になければ、いく らいい研修方法やプログラムや、プリセプターが、いい人がと言っても、なかなか育って いかないと思いますので、どこを評価するとかではないのですが、そこは重点的に前提と して押さえておくべきもの、あるべき姿だと思います。 ○石垣座長 新人の研修を考えるときにいつも思うのですが、新人だけが対象であるはず はあり得ないのです。その組織が人をどう育てるかという考え方や、組織の構成員に対し て、教育をどのように考えてそれを実施しているかということが大事なのだと思います。 なぜなら新人は臨床で医師や薬剤師、栄養士等さまざまな職種と関わりながら育っている わけですから。 ○海辺委員 素朴な疑問なのですが、何となく感じるのが、医師の教育の場合は医師の教 育を請け負っている院長先生なども全部医師で、自分も新人の時代を経てきているからこ そ、こういうものがあったらいいのではないかとか、こういうものがいまの時代に合って いるのではないかとか、いろいろな感性が働くかと思うのですが、病院の方針やいろいろ なことの決定権をお持ちなのは医師なのに、看護職のいろいろな現場を請け負っていらっ しゃるのは看護職の方だというところが、ちょっと違う感じがあるのかなと。うまく説明 できないのですが、要するにそれは基礎教育の部分から常に存在して発生している問題で、 医師を育成するのは、文部科学省が大学病院を受け持っていますが、そもそも看護師は3 年制の専門学校だったら厚生労働省の管轄の専門学校を出ているけれど、4年制だったら 文部科学省のカリキュラムに沿ってという、いろいろなところがばらけて複雑な中で、常 に現場がこうだから現場主義みたいなところでやっていかなければいけないところで、い つまで経っても同じ枠から出られないという感じの印象を、私はいつも外側から伺ってい て思うのです。その辺に関しては、看護職の場合、いま指導医的なものを作っていくこと が全く議論にもなっていないというか、あるといいなというレベルであって、具体的にそ ういうことを検討して作っていきましょうというところまでまだ来ていないので、そのよ うな中でガイドラインを作るのは非常に難しいという印象を持っております。 ○西澤委員 外から見るとそうだと言われると辛いのですが、実際はそんなに、医師の場 合は院長が医者だからどうこうということはないと思います。医師だって、教育にしたら 臨床研修制度はまだ始まって5年です。それまではきちんとした研修制度もなく、指導者 というのも5年前にできたばかりです。看護の場合はこれからいろいろな形を作っていこ うという段階だと思います。  もう1つは、看護師たちは非常にまじめなのです。まじめだから、ここにいらっしゃる 方々もそうですが、新人看護師の教育は私たちがしなければならないとやってしまって、 変にプレッシャーをかけていると。医師の臨床研修も、決して病院の中の医師だけでやっ ているのではなくて、いろいろな職種に協力いただいてやっているということであれば、 今回も文書に書かないまでも、新人看護師の研修も組織全体で育てることは必要なので、 そのために私などはここにいるのではないかと思います。そういうことでは、お互いにも っと意見交換等しながら、いい方法を取っていければと思っています。医師、看護師に限 らず、すべての職種の方々は、私たち医療機関にとっては大事な医療主権と言ったら語弊 がありますが、持っていますので、これからは本当にいい病院になるためには、いい職員 を作るためにはきちんとした研修をやると。これは全職種すべてしなければならないと思 いますが、よろしくお願いします。 ○熊谷委員 いまおっしゃったことは、非常に嬉しいなと思いました。いままではこんな ことは努力義務になっていなくて、各病院の看護師が必死になってやっていたことが、こ のように皆でやろうという努力義務に認めていただいたことによって、組織としてこれに 取り組んでいけることはすごく意味があって、だからこそガイドラインの形で出すことに すごく意味があるのだなと思ってやっているのです。  質問なのですが、先ほどから出ている、看護師の教育だとプリセプターみたいな人がい て手厚くやったりしているのですが、医師は臨床研修制度が始まって、指導医の先生がい る中でやっていて、よく看護師で新人が辞めて適応障害になる現実があるのですが、先生 方は適応障害になったり、医者を辞めたくなってしまうといったケースはあるのでしょう か。 ○福井委員 施設によってだいぶ違うと思うのですが、聖路加国際病院などでも3、4年ト レーニングを受けて、そのあと全く異なるMBAに行ったりと、臨床から離れていく人は以 前と比べると増えているような印象はあります。 病院全体の文化の話とも関わりますが、西澤委員がおっしゃったように、ナースと研修医 が一緒に勉強してもらう機会をたくさん持てると思うのです。レクチャーもそうですが、 聖路加国際病院では静脈注射についてはナースのほうがいいプログラムを持っているので、 そちらに研修医を出席させたり、そのように全体像を見渡すことが非常に重要だと思って います。私たちの所では教育研修部という部署を設けて、医師、ナース、コメディカル、 薬剤師、事務と、全職域の教育を5年前からやり始めたのですが、そうすると共通部分が たくさんあって、自分たちだけでやらなければという意識を持たなくてもいい部分がかな りあるような印象を持っています。 ○石垣座長 そして、その中でパートナーシップの姿勢が育つのでしょう。 ○熊谷委員 先生の病院のように、私どもも総合教育部を持っていて、最初から入ったと きに多職種でやっています。そうすると、チーム医療ということがよくわかってきて、そ れぞれの独自性と、いわゆるどこで連携していくのか。うちも採血などはナースが医者に 教えるほうがうまいので、そんなこともやったりして、非常に意味があることなのだなと 思っています。 ○石垣座長 ありがとうございます。議論はだんだん核心に入ってきたのですが、今日は 2時間半という長い時間ご参加いただきました。最後に、前回の検討会以降WGを作ってい ろいろなことを相談しましたので、そのご報告をしたいと思います。  第2回の検討会以降WGを設置して、技術指導の具体例について検討を行ってきました。 構成メンバーは、猪又委員、熊谷委員、庄野委員、私が加わって、本日から村上委員と上 泉委員にも参加していただきました。それは基礎教育とのつながりをもっと強化したり、 小さな施設の状況を加味しながら考えようという意図でした。第1回のWGでは与薬に絞っ て、内服薬、静脈注射、輸液、シリンジポンプについて、それぞれの委員が手分けをして 指導例について検討しました。本日、この検討会の前にWGを開いたのですが、与薬の指導 例についてさらに検討を深め、もう1つ看護本来の役割である療養所の世話ということで、 移乗、移送についてそれをどのように作っていくか、それも条件のある人たちの移送をど うするかということについて検討を行いました。  WGは本日で終わったわけですが、これまでの、特に本日の会議の議論を踏まえて、各委 員で継続して分担して作業を行うことになっております。作った技術指導の具体例は、9 月の検討会ぐらいまでに提示してご議論いただくことになろうかと思います。1つのモデ ルを示すことの意味とか、こういう形でいいのかということを、委員の皆様に是非議論し ていただきたいと思います。何かそのWGの活動についてご質問やご意見はありますか。  それでは、ちょうど8時になりましたので、本日はこれで終了したいと思います。大変 活発なご議論をいただきました。座長預りがいくつかありましたが、今日いただいたご意 見を整理しながらやっていきたいと思いますので、よろしくお願いします。次回以降の日 程について、事務局からお願いします。 ○島田課長補佐 次回は8月19日(水)15時からの開催を予定しております。場所等に つきましては別途ご案内しますので、よろしくお願いします。 ○石垣座長 ありがとうございます。それでは、本日はこれで閉会したいと思います。ご 苦労さまでした。   照会先:厚生労働省医政局看護課  杉田 ・ 島田 内線2595・4167 48