第1回国民健康保険における保健事業等の今後の展開に関する懇談会  日 時:平成21年4月30日(木)14:00〜16:00  場 所:厚生労働省2階 共用第6会議室 ○和田専門官  本日はご苦労様でございます。若干時間が早いですけれども、皆様方お集まりになりま したので、ただ今から第1回国民健康保険における保健事業等の今後の展開に関する懇談 会を開催させていただきます。  皆様方におかれましては、ご多忙にも関わらず当懇談会にご出席いただきまして、誠に ありがとうございます。  開会に当たりまして、国民健康保険課長の武田よりご挨拶申し上げます。 ○武田国民健康保険課長  国民健康保険課長の武田でございます。本日はお忙しい中、また、連休が始まる前のご 予定のおありになろうかという時期に、それからまた、現在、公衆衛生関係では世界的な インフルエンザの問題もございまして、何かと騒がしい時期になってしまいましたけれど も、本懇談会にご出席いただきまして誠にありがとうございます。国民健康保険における 保健事業等の今後の展開に関する懇談会が開催されるにあたりまして、私からご挨拶申し 上げたいと思います。  今回、これまで住民の命と健康を守るということで、まちを挙げて取り組んでこられま した市町村長の方々、それから、各市町村におきまして、住民の健康のために活躍されて こられた保健師の方々、それから、本日ご欠席ではありますけれども、日本医師会の内田 先生、それから、医療保険における保健事業についてご造詣の深い各先生方、また、国保 を支えていただいております国保中央会、国診協の先生方に、私どもからお声掛けをさせ ていただきまして、今後の保健事業についての懇談をさせていただきたいというお話を申 し上げましたところ、皆様方から大変快くご了解いただきまして、本日、第1回の会合を 開いたわけでございます。この場を借りまして、各先生方に心から感謝を申し上げたいと 思います。また、伊藤先生には座長を快くお引き受けいただきましたことに感謝申し上げ たいと思います。  本日は、国民健康保健事業に長きにわたり携わってこられた大坂先生、辻先生をお招き しておりまして、お二方より貴重なお話をお伺いすることにしております。両先生、どう もありがとうございます。  さて、国民健康保険は、制度創設時から保険給付の確保とともに保健事業の推進に取り 組んでまいりました。国民健康保険制度は、旧法は昭和13年でございまして、昨年70周年 という節目を迎えております。この間、我が国の医療保険、それから、医療保険の中でも 保険給付と保健事業は車の両輪として取り組んでこられたということでございまして、中 でも保健事業は国保の重要な柱ということで、各地域においてきめ細かな創意工夫を生か した、また、地域の実情を踏まえた取組が展開されてきたものと承知しているところでご ざいます。  こうした中で、予防の重視及び医療費適正化の観点から、糖尿病等の生活習慣病の予防 対策として実施された特定健診・特定保健指導は早や1年が経過しております。各市町村 におかれましては、初年度ということもあり昨年度は何かとご苦労いただいたものと思っ ておりますけれども、一方、これまで行われてきた他の保健事業や今後やっていかなけれ ばならない新たな保健事業が、必ずしも手が回っていないのではないかということについ ては、少々危惧をいたしているところでございます。本懇談会におきましては、限られた 財源を有効に活用するための保健事業としてどのようなことが考えられるか、これまで進 めてきた国保のヘルスアップ事業というものに代わる、あるいは、これを超過し発展させ るような事業の展開というのはどのようなものがあるのかなど、今後の保健事業の在り方 を展望したご意見をいただければ幸いであると考えているところでございます。  また、国保直診施設は、国保にとって大事な財産であるとともに、地域における重要な 社会資源となっております。昨今、公立病院改革など国保直診施設を取り巻く状況は大変 厳しくなっておりますけれども、国保直診の理念である地域包括ケアを通じて、被保険者 をはじめとした地域住民の生活を支えてきたことは、大変大きな功績であると認識してお ります。今後、少子高齢化の進展を考えれば、保健・医療・福祉の連携は大変重要かつ不 可欠のものとなってくるものでありますので、国保直診の果たすべき機能や役割について も、ますます充実強化が求められている状況ではないかと考えております。  一方、地域住民の健康を守る観点から活動・展開してまいりました市町村保健師の存在 は、国保にとりましても大変大きなものでございます。国保の保健師から衛生部門への一 元化という保健師をめぐる歴史的経緯もございましたけれども、今後の保健事業を進めて いく上では欠くことのできない人的資源であることは疑いの入れざるところであると思い ます。こうした保健師の役割も大変重要になってくると思います。そのため、各市町村に おきまして、この育成・確保をどうやっていくのかという点も大変重要になってくるので はないかと思っております。  いろいろ申し上げましたが、本日お集まりの先生方におかれましては、これまでも国民 健康保険に対して様々な角度から応援をしていただいておりますけれども、この機会に忌 憚のないご議論をいただきまして、今後の国保の保健事業の展開について一定の方向性が 出せますよう、お力添えをお願いしたいと思います。  以上、長くなりましたが、第1回目の懇談会の開催にあたりましての私の挨拶とさせて いただきたいと思います。どうもありがとうございました。 ○和田専門官  それでは、初回ということでありますので、お集まりいただいた皆様方のご紹介をさせ ていただきたいと思います。本日お配りしております資料に懇談会名簿がございますので、 ご参照いただければと思います。  まずは、座長をお願いしております、社団法人全国社会保険協会連合会理事長の伊藤雅 治様でございます。  続きまして、五十音順でご紹介をさせていただきます。  都道府県在宅保健師全国連絡会会長の池田信子様でございます。  北海道奈井江町、町長の北良治様でございます。  山口県柳井市前市長の河内山哲朗様でございます。  埼玉県東松山市市長の坂本祐之輔様でございます。  社団法人国民健康保険中央会理事の田中一哉様でございます。  高知県梼原町保健福祉支援センター参事の西村みずえ様でございます。  社団法人全国国民健康保険診療施設協議会会長の冨永芳徳様でございます。  北海道大学大学院医学研究科教授の前沢政次様でございます。  最後でございますが、産業医科大学医学部公衆衛生学教室教授の松田晋也様でございま す。  なお、本日、社団法人日本医師会常任理事の内田健夫様におかれましては、ご欠席とい う連絡をいただいております。  また、本日お話をいただきます参考人の方をご紹介させていただきます。  まず、全国市町村保健活動協議会常任理事の大坂多恵子様でございます。  続いて、東京大学高齢社会総合研究機構教授の辻哲夫様でございます。  続いて、本懇談会の事務局の紹介をさせていただきます。  まず、私は、厚生労働省保健局国民健康保険課保健事業推進専門官の和田と申します。 よろしくお願いします。  続きまして、同じく国民健康保険課課長補佐の熊澤でございます。  同じく国民健康保険課在宅医療・健康管理技術推進専門官の掛川でございます。  どうぞよろしくお願いいたします。  それでは、以降の議事進行につきましては、伊藤座長にお願いしたいと思います。  どうぞよろしくお願いします。 ○伊藤座長  それでは、ご指名をいただきましたので、議事進行役を務めさせていただきます。皆様 方のご協力をいただきながら、円滑に本懇談会を進めていきたいと思っておりますので、 どうかよろしくお願いいたします。  本日の議題は、「国保被保険者の状況と市町村国保の保健事業の現状について」及び 「市町村国保の保健事業の歩みと医療制度改革について」でございます。  議事次第に沿って進めてまいりたいと思います。  まずは、事務局から資料の確認と、本懇談会の設置目的と概要につきまして、ご説明を いただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。 ○和田専門官  それでは、お手元にお配りいたしました資料の確認をお願いしたいと思います。  まず、議事次第がございます。そのあとに、懇談会の概要、参加者名簿、座席表がござ いまして、そのあと、次の資料がございます。資料1としまして、国民健康保険法につい て、資料2が国民健康保険制度の現状、横のパワーポイントの資料でございます。そのあ とに、参考人の方からの説明資料をクリップ止めにしておりますけれども、大坂先生がレ ジュメと参考資料、辻先生がレジュメと別紙資料と参考資料という3枚のセットになって おります。  もう一つ、『多様化する市町村保健事業における保健師の在り方に関する調査報告書』 という冊子を資料としてつけさせていただいております。  以上でございますが.不足や落丁等ございましたら、事務局にお申し出でいただきたい と思います。いかがでしょうか。  よろしいでしょうか。  特になければ、引き続きまして、懇談会の概要についてご説明させていただきたいと思 います。お配りした資料に「国民健康保険における保健事業等の今後の展開に関する懇談 会について(概要)」という資料がございまして、趣旨と内容について記述しております。  趣旨、目的でございますが、これまで国民健康保険においては、様々な保健事業に取り 組んできましたけれども、平成14年度からは生活習慣病の一次予防に重点を置き、国保ヘ ルスアップモデル事業を展開してきました。医療制度改革による特定健診・特定保健指導 も施行から1年を経過いたしましたが、今後の保健事業の新たな取組が求められる時期で あると考えております。  また、少子・高齢化の進展に伴い、被保険者の健康の確保という観点からも、保健と医 療・福祉の連携はますます重要となってくると思います。  このため、本懇談会を立ち上げまして、皆様からご意見を頂戴し、今後の方向性を取り まとめていきたいと考えているところでございます。  懇談内容といたしまして、国保ヘルスアップ事業の今後の展開、保健と医療と福祉の連 携、国保直診施設の果たすべき役割ということで、3点ほど示させていただいております が、こういったものを中心にご意見等をいただければと思っております。  よろしくお願いいたします。 ○伊藤座長  どうもありがとうございました。  続きまして、資料1と資料2について説明をお願いします。 ○和田専門官  それでは、続きまして、事務局から資料1と資料2の説明をさせていただきます。資料 1は主に国民健康保険法の法令関係でございます。資料2は国民健康保険制度を取り巻く 現状を資料でお示ししているものであります。  資料1は、昭和13年の国民健康保険制度の創設当時の条文でございます。ここにもあり ますように、「保険給付とともにその健康の保持増進に資するため」というような文言で、 創設当時から国民健康保険法において保健事業をうたっております。  2ページをお開きいただきたいと思います。こちらが現行法でございまして、82条に 「特定健康診査等を行うものとするほか」ということで、「その他の被保険者の健康の保 持増進のために必要な事業を行うように努めなければならない」ということで、保健事業 に積極的に取り組むよう条文の中でも規定されております。  続いて、3ページ目以降は、健康増進法の制定を受けまして、国保として示しました保 健事業の実施等に関する指針でございます。6ページ目まで指針を抜粋した概要版を示し ておりますので、ご覧いただければと思います。6ページ目では保健事業の内容について 触れております。これは健康診査から訪問指導まで項目だけ列挙しておりますけれども、 この上に、「本指針は重点的に実施すべき保健事業を示すものであり、以下の項目以外で も、保険者独自の創意工夫により健康増進及び疾病予防の観点から、よりよい保健事業を 展開することを期待するものであること。」というような記述になっております。  こういったことが法令上で、国保として保健事業を規定するものでございます。  続いて、資料2の説明をさせていただきますが、時間の関係もありまして、要点を絞っ た形での説明ということで進めさせていただきたいと思います。  資料2の1ページから5ページ目までは国保を取り巻く状況でございます。  まず1ページ目は、国民健康保険の被保険者の推移ということで、これまでの推移をグ ラフで示してあります。若人よりも退職者や老人の割合が多いということになっておりま す。  2ページ目では、世帯主の職業別世帯構成割合の推移をグラフで示しております。こち らをご覧いただきますと、自営業者の割合は年々減ってきておりまして、無職の方が増加 しているという傾向がうかがえます。  おめくりいただきまして、3ページ目は他の健康保険と市町村国保との比較でございま す。市町村国保のほうをご覧いただきますと、他の保険に比べまして加入者平均年齢は 55.2歳と高くなっておりますし、1世帯当たり年間所得では131万と低くなっており、1人 当たりの診療費で見ますと17.7万円と、他の医療保険よりも高くなっているという状況で ございます。  4ページ目をおめくりいただきたいと思います。総人口に占める国保被保険者の割合を 年齢分布で見たものでございます。60歳までは全体に比べると、国保の割合はさほど比重 が高くないですけれども、60歳を過ぎますととたんに国保の割合が高くなっていくといっ た状況がここでうかがえるかと思います。  続いて、5ページ目は、国保の収支状況、財政状況についてお示ししたものでございま す。収入、支出のちょっと下に単年度収支差引額というのがございます。18年度の実績で 見ましてもマイナスとなっておりますし、19年度の見込でも▲1,269億ということで赤字が 見込まれております。19年度見込でございますと、国保保険者においては7割強が単年度 収支で赤字が見込まれているといった状況でございます。  6ページ目は、その中で保健事業の占める割合の推移でございます。保健事業費でご覧 いただきますと、これまで400億程度が支出されてきております。保険料収入と比較します と1%強は確保されているという形です。被保険者1人当たりで換算しますと、1,000円前 後が保健事業費に使われていると、計算上そういうことになっております。  7ページ目は、保健事業に対する助成の内容でございます。ハード部門としては、国保 の直診施設の整備を中心に助成しており、ソフト部門、運営に関しましては、国保ヘルス アップ事業を主とした各種保健事業に対する運営費に対して助成を行っているという内容 になっております。  続きまして、8ページ目から20ページぐらいまで、市町村国保における保健事業の歩み ということで、これまでの歴史等を記述しております。  8ページをご覧いただきたいと思いますけれども、制度創設時の昭和13年につきまして は、公衆衛生活動を基盤とした保健事業ということで取り組まれてきております。  また、昭和53年の健康づくり運動を目指していく時期から以降の保健事業の歩みを示し ておりますけれども、昭和53年においては保健師の衛生部門への一元化というのがござい ます。  昭和57年以降は、老人保健法の制定、ゴールドプランの策定がありまして、成人病予防 を中心とした総合的な保健事業の展開に取り組んでまいりました。  平成12年は、介護保険法の制定がありまして、在宅医療の推進と、直診の保健事業の一 層の充実が図られてきております。  平成14年以降で見ますと、健康増進法の制定がございまして、この時期から生活習慣病 の一次予防の重視ということで、国保ヘルスアップモデル事業の実施がなされてきており ます。  それから、昨年、平成20年は医療制度改革により特定健診・保健指導の実施が医療保険 者に義務化されたというような流れになっております。  9ページ、10ページ目は、それをさらに詳細にしたものでございますので、またご覧い ただければと思っております。  11ページ以降は、国保として取り組みを進めてまいりました保健事業でございますけれ ども、まず、昭和58年の老人保健法の制定を背景としまして、ヘルスパイオニアタウン事 業を実施してきております。実施事業の内容は、11ページの2の(1)に主な事業内容を 列挙しております。  12ページ目は、毎年申請していただき、市町村保険者の指定をしてきておりますけれど も、その数の推移でございます。あとは、内容の例でございます。平成7年度からヘルス パイオニアタウン事業を「国保総合健康づくり推進事業」という名称に改め移行しており ます。より効果の高い事業に焦点を絞っていったということであります。  13ページにその概要を書いております。事業内容は、1の(2)に列挙しているような、 健康まつり等の事業の推進をしてきております。  14ページは、毎年の新規指定市町村の数でございます。平成7年から10年ほど、国民健 康保険総合健康づくり推進事業を実施してきております。  おめくりいただきまして、15ページは、健康増進法の制定を背景としまして、生活習慣 病予防ということで、平成14年度から国保ヘルスアップモデル事業を展開してきておりま す。14年度から16年度まで全国33カ所の市町村に実施していただきました。それを受けま して、平成17年度、18年度においては、一般事業化いたしまして、平成17年度で41市町村、 18年度で343市町村に実施していただいております。  16ページが、国保ヘルスアップ事業の変遷でございます。平成19年度におきましては、 20年度から特定健診・保健指導が始まるということでありましたので、特定保健指導の実 施に向けた準備事業というふうに位置付けて実施を促進してまいりました。649という、3 分の1程度の市町村で実施させていただいております。  この後、平成20年度になりますと、特定健診・保健指導は義務化されて、そこに国庫補 助がつきますので、それ以外のところで推進していくような形で国保ヘルスアップ事業を 継続して実施しております。1つは、先駆的・モデル的な事業ということで、特定健診・ 保健指導をより効果的に実施するための先駆的な取組をした市町村に対しての事業、2点 目としては受診勧奨者のための訪問指導事業、3点目としては早期介入の保健指導事業と いったことで、それぞれAでは64市町村、Bでは90市町村に実施していただいております。  17ページ、18ページは、その市町村名を上げておりますので、ご覧いただければと思い ます。  続いて、19ページ、20ページは、就業保健師の年次推移ということでございます。まず、 19ページ目はグラフにしておりまして、一番上の赤いところが保健所と市町村の合計数で ございます。だんだん増えてきているのが分かるかと思います。次の黄色いところが市町 村の保健師さんの数でございまして、赤いところが52年で切れております。上から3つ目 の折れ線でございますけれども、これが市町村国保にいた保健師さんで、53年度に衛生に 一元化しましたので、以降は市町村として数をとっているということになっております。 2つ目の青い線は病院・診療所の保健師さんで、さほど数は変わってないというような状 況でございます。  その実際の数が20ページに記述しておりますので、ご覧いただければと思います。平成 18年度では市町村保健師さんの数は2万3,455人となっております。  続いて、21ページ、22ページは、年末に市町村国保の保健事業に関する調査を行いまし て、20年度に実施されているものを見ております。これをご覧いただきますと、特定健診 ・保健指導が始まった影響だと思いますけれども、多いところが、健診未受診者へのアプ ローチが半分ぐらいありまして、真ん中ぐらいの重複受診者・多受診者への訪問指導とい うのも半分ぐらいやっております。あとは、特定保健指導対象者予備群に対する保健指導 が39%、それから、ポピュレーションアプローチと一体的に実施していると思われますが、 一般健康相談、一般健康教育の割合が、保険者で実施している保健事業の割合としては多 くなっているということが、調査結果としてあらわれております。  また、22ページでは、特定健診に関わる調査もしておりますが、これはあくまで途中経 過でございまして、平成20年11月末時点でございます。右側をご覧いただきますと、特定 健診の受診率は、あくまで平均でございますが、全体の28.8%実施されているというよう な結果が出ております。  続きまして、23ページは、特定健診・保健指導に併せまして、別に市町村国保の検討会 を設けております。伊藤座長にこの検討会の座長もお願いしておりますけれども、その下 に2つワーキングを立ち上げて事業を実施しております。1つは、円滑な特定健診・保健 指導実施のための具体的方策を検討するワーキンググループ、もう一つは、特定保健指導 の対象ではありませんけれども、服薬治療を開始している者に対する保健指導の効果に関 するワーキンググループ。それぞれ22年度まで事業を行い、検討会でさらに議論を深めて いくということでやっております。  24ページから27ページ目まで、国民健康保険直営診療施設についてということで資料を つけさせていただきます。24ページ目では、その設置目的と設置数の推移を示しておりま す。不採算地域、医療機関の整備が不十分な地域など、その地域の被保険者が療養の給付 を受けることが困難な地域において設置されてきたという経緯がございます。  25ページでは、国民健康保険総合保健施設についてということで、保健・医療・福祉サ ービスを総合的に行う拠点としてこれまで設置を進めてきました。現在74の施設がござい ます。  その設置をしている市町村名を26ページに載せておりますので、ご覧いただければと思 います。  最後に、27ページでございますが、国診協におきましては、地域医療、地域包括ケアの 推進とか、高齢者等の健康増進、福祉の向上等に関する調査研究を行っておりまして、参 考に平成20年度で行った事業名を記述させていただいております。  以上が国保直診施設の紹介でございます。  駆け足で申しわけございませんでしたけれども、資料1、資料2の説明とさせていただ きます。以上でございます。 ○伊藤座長  どうもありがとうございました。  国保保健事業の歴史等につきましては、この後、参考人の方からのお話の中にもあると 思いますが、ただ今事務局からのご説明に対しまして、ご質問等ございましたら、ご発言 いただきたいと思います。 ○田中委員  時間の関係で説明がなされた部分があろうかと思いますけれども、これは協議会とか研 究会ではなくて懇談会ということですね。ということは、研究協議というか、一定の報告 書を取りまとめるというような形なのか、要するに懇談して、課長のこれからのいろいろ なご判断の材料にするという感じなのかということが1つと、この開催頻度ですね。そう いったことについてご説明いただければ。 ○伊藤座長  国保課、お願いします。 ○武田国民健康保険課長  この懇談会全体の今後の運営についてのご質問をいただきまして。今回、懇談会を開催 するに当たり考えましたことは、国保の保健事業と言いましても、保健師の活動もあれば、 国保直診もありますし、さらに保健・医療・福祉の連携ということを考えますと、他の要 素も入ってまいります。また、個々の被保険者に対するサービスだけではなくて、住民全 体の意識を変えていくということになりますと、まちづくりのような観点にもなってくる と思います。  大変発展性のある広いテーマでございますので、ぜひいろいろな角度から忌憚のないご 意見をいただきたい。その上で、ある程度共通の理解が得られるのであれば、それを、報 告書になるのか、何なのか分かりませんが、形にしていただければ、来年以降の私どもの 補助事業その他の行政施策にも反映をしていけるかというふうに考えております。したが いまして、基本的にはいろいろなご意見をいただきたいということでございますけれども、 できましたらば、年内に3〜4回のご議論をいただいた上で、何かまとめさせていただけ ればありがたいというふうに考えているところでございます。 ○伊藤座長  田中委員、よろしいですか。 ○田中委員  はい、ありがとうございます。 ○伊藤座長  その他、いかがでしょうか。  それでは、また質疑の中でご発言いただきたいと思います。  それでは、予定どおり参考人の大坂先生よりお話いただきたいと思います。時間は20分 から25分ぐらいでお願いいたします。 ○大坂参考人  ただ今ご紹介にあずかりました全保協の大坂多恵子でございます。第1回の懇談会に参 考人として呼んでいただきましたことを深く感謝申し上げます。  私が厚生省に入省いたしましたのは昭和34年の8月でございます。その前の年に国保法 ができました。入省いたしましてから、23年間勤務いたし、一番長いのが保険局の医療課 でございましたが、国保課兼務ということでございました。最後に公衆衛生局の保健指導 室に移りました。  今日は2つ資料がございます。1つはレジュメ的なもの、もう一つは参考資料となって おりますので、それをご覧になっていただきたいと思います。この話をしますのに、20分 から25分ということでございますので、3点に絞ってお話させていただきたいと思ってお ります。  第1点は、ここに書いておりますように、国保保健婦のことだけではありませんが、保 健師の名称と定義、業務でございます。これについて詳しくお話していると時間がござい ませんので、この辺は省略させていただきながらお話させていただきます。第2点は、国 保保健婦としての活動について。特に二局長四課長通知というものがございますが、それ についてお話をさせていただきます。第3点目は、保健師の現在の問題点と、それに対す る私の意見。それから、時間があればの話でございますが、事例2つを紹介させていただ きたいと思っております。  それでは、レジュメに沿って、保健師活動の歴史ということでございますが、保健婦と 呼ばせていただきます。保健婦の名称ができたのが、昭和12年に保健所職員として保健婦 を置くとなっております。その後、昭和16年(1941年)、保健婦規則で、保健婦の免許を 持っている者ということです。  また、規則が20年に改正されまして、その14条で保健婦の業務がはっきりいたしました。 それはどういうものかというと、ここに書いてあります6点でございます。衛生思想の涵 養の指導、疾病の予防の指導、母性又は乳幼児の補導、栄養の指導、傷病者の療養の指導、 その他の保健衛生の指導というふうになっております。  23年に保健婦助産婦看護婦法というのができました。いわゆる保助看法と言っているも のでございますが、この法律では保健婦とは何か、「保健婦とは厚生大臣の免許を受けて 保健指導に従事する女子をいう」とあり、もちろん国家試験を受けてということになって おります。  その次がちょっと問題がございますので、ここを少し詳しくお話させていただきたいと 思います。5番の保健所長の指示についてというところでございます。保健所長の指示と いうのは、保健婦助産婦看護婦法の36条に「保健婦は、その業務に関して、就業地を所管 する保健所長の指示を受けたとき、それに従わなければならない」とございます。このこ とは、さらに昭和26年の通達でもはっきりさせてあるわけでございます。そのことにつき ましては、後で申し上げたいと思っております。  それから、数の推移でございます。資料をご覧いただきたいと思います。ちょっと大雑 把な資料でございますが、資料1、昭和21年末と25年末、市町村(国保を含む)保健婦は 7,717人いました。25年になりまして4,920人。これは、戦後、男性が復員し、保健婦が結 婚されたということが言えるのではないかと思います。保健所のほうはこのとおりです。  それから、先ほどお話がございましたので、2枚目の40年以降の資料は省略させていた だきます。ご覧になっていただきたいと思います。ただ、ここで言えますのは、53年に健 康づくりということで、国保の保健師が市町村に移管された。そのとき、国保保健婦約 6,000人、市町村の衛生には1,000人おりました。7,226人ですが、これを見てみますと、あ まり増えなかったものが、市町村の衛生と一緒になりまして、非常に増えまして、現在2 万3,455人ということでございます。  戻りまして、3の国保保健婦と保健所保健婦の問題点でございます。このことにつきま しては、先ほど保健所長の指示ということがございましたが、いつしか保健所長の指示が 保健所の婦長の指示になり、ひいては管内の保健婦から市町村の国保の保健婦は指示をも らうというふうになりまして、いつの間にか上下関係ができたのです。 次に、市町村の 委任事務、市町村が行わなければならない公衆衛生行政事務、例えば予防接種とか結核検 診、これらを国保保健婦が行うことが当たり前とされておりました。しかし、これにつき ましては、国保の保健婦は月の20日、25日ぐらい、予防接種などに使われていたという現 実がございました。この辺を何とか是正しなければならないということで、昭和33年に国 保法ができましたから、この辺から国保の保健婦として何をすべきかという事で、公衆衛 生局と保険局が話合いを続けていたわけでございます。私が34年に入りましたときには、 話合いがつかなくて物別れに終わったと聞いております。私が入ったときに当時の医療保 険課長さんから、「おまえさんは両方のことを知っているから、国保のほうも公衆衛生の ほうもよく話合いをして、通知がきちっとできるように」と厳命されたわけでございます。  保健婦に関するところは公衆衛生と保険の二局でございますが、保険局に所属している 課は国保課、医療課。私は医療課に所属しておりました。それから、公衆衛生のほうの保 健所課、それに看護課でございますが、その4つで話合って決めなければならないのでは ないかと。私の下にいた同僚と日夜いろいろな話をして、どうしても分からないと。通知 をつくるためには、現地の様子を聞くべきではないかということで、この4課がそろって、 埼玉と千葉に行きました。そして、その後話合いの下にでき上がったのがこの二局長四課 長通知でございます。  二局長通知は、資料3をご覧いただければと思います。ちょっと字が細かくて分かりづ らいところがあるかと思いますが、左側が局長通知、右側が課長通知でございます。これ は昭和35年5月20日にできました。これを取り上げていると時間がなくなりますので、省 略いたしますが、私なりに7項目に分けて概要を申し上げたいと思います。それがレジュ メに書いてございます。二局長四課長通知の概要でございます。  1つは、市町村の自治の尊重ということでございます。国民健康保険ができましてから、 保険者の自主性を尊重すべきであるということです。  2番目が保健婦の担当人口を3,500人にしたこと。それまで市町村の場合には、農村と 2,000人、都市は3,000人だったのですが、とても絶対数が足りないということで3,500人と。 いろいろな見地から計算いたしました。  3番目が大事なことなのですが、活動の優先順位を決めたということでございます。資 料3の課長通知の第2の4で、「保健所からの国民健康保険の保健婦に関する連絡は、保 険者を通じて行うようにすること。」と。今までは保健所から国保保健婦直接指導を行っ ていたものを、保険者を通じて行うというふうにいたしました。  それから、第5は大変論議があったところでございますが、「公衆衛生等の行政事務は、 それぞれの担当機関、部課等で処理すべきものであるから、公衆衛生行政機関は、国保の 保健婦がその本来の業務を実施するのに支障を生ぜしめないこと」。これは月のうち20日 も予防接種にとられているということについて何とか解決したいということでつくられた ものでございます。これにつきましては、公衆衛生局から「こんなことを出されたのでは、 公衆衛生が混乱を来す」という話までございましたが、筋は筋だということで通したわけ でございます。  優先順位は後ほどお話したいと思います。  4の都道府県担当課に指導保健婦を設置。これも民生部に置くとされたということでご ざいます。指導保健婦は、「指導」とはなっていますが、世話役というふうな形で置かれ たということで、指導保健婦は地域を回ってお世話役をしたり、区・町長さんに会って仲 介をしたりということでございます。  それから、5番目のところで飛ばしましたが、予防接種等公衆衛生事務と国保保健施設 との関係を明らかにしたこと。  6番目は、国保保健婦と保健所との協力関係でございますが、今までのように保健所に 全部保健婦を集めるのではなくて、1保健所1市町村という段階での共同保健計画をつく るようにということでございます。  次に7番目、質の向上ということですが、国保ではレセプトが疾病統計を作成して、そ の中から問題点、そして、地区診断をしたり、それに基づいて健康教育とか家庭訪問、総 合地区活動をしたりする、そういうことが保健婦の仕事であるということから、これは国 保課で努力していただいたのですが、社会保険大学校がございまして、夏休みの明いてい る期間を使って、一般の保健婦は6日間、指導保健婦は4日間、ちょっと間は重なります が、研修をしまして、国保の疾病統計のとり方、それから、レセプトの読み方、そういう ものを徹底して教育したということがございます。  次に、レジュメの二局長四課長通知の2、通知によってもたらされたものということで ございます。国保の保健婦補助金が保健所と同額になったこと。21年から補助金が交付さ れております。しかし、4分の1でございます。額にすると非常に安くて、千何百円と、 それも年間でございます。保健婦補助金制度は昭和21年に出され、それが昭和34年になっ ても11万円何がしで我慢させられた。保健所は33万円ぐらいでございます。それをこの通 知によって大蔵省に要求いたしましても、国保の保健婦は何をしている、衛生の仕事しか してないじゃないか、国保の仕事をしていれば補助金は出してあげる。だけど、してない のだから駄目だということを言われ続けました。  この通知によって国保の保健婦は何をすべきかということがはっきりいたしましたので、 一躍3倍に増えた。これは私どもの力だけではなくて、国保中央会、国保連合会が随分押 してくださいました。真夜中に大蔵省に行きまして、実情を聞いてもらったりしながら、 最後に「大坂さん、どれくらい上げたらいいですか」と。「私じゃありません、全国の国 保の保健婦が喜びますから、ぜひ保健所並みにしてください」と。それで、皆さんの後押 しもありまして、一挙に3倍になったということでございます。3倍上がったことは、昭 和53年に移ったときにもすんなりと、あまり両者の補助金の差もなく移れたのではないか と思うわけでございます。  それから、指導保健婦さんが一生懸命やってくださった。また、保健所との関係も、二 局長四課長通知が出てから保健所との関係がよくなったこと。それから、ありがたいこと には、次にございますが、国保課の関係でございます。国保課が保健婦に対してどういう ふうにしてくださったかということでございますが、レジュメの3、国民健康保険が国保 保健婦に対して補助事業を行ったこと。まず、保健婦ステーションということで、昭和47 年に厚生科学研究でいただきまして、国保保健婦ステーションということで、岡山大の青 山英康先生に委員長になっていただきまして研究いたしました。  その結果、48年から52年まで続いておりますが、8カ所、保健婦のステーションが出来 ました。ステーションというのはなぜかというと、国保の保健婦は訪問鞄しか持っており ません。そういうことで、保健婦は相談に来ても役所の片隅で相談をするということで、 保健婦の城がなかったわけでございます。私どもが考えていますステーションというのは、 あくまでも地域活動をするためのものであると、列車の通らないステーションはないのだ ということで保健婦ステーションをつくってもらいました。そこで成人病予防やら、もち ろん母子もいたしましたが、老人保健、リハビリテーション、そういうのは、体育館を借 りたりせずに、ステーションでできることになったわけでございます。  次に、2番目は保健婦専用の機動力、小型自動車を1年に100台、これを10年間続けると いうことです。これは非常に喜ばれました。これも大蔵省に行きますと、当時、誰も車を 持っていない時代ですから、誰が車を運転できるのか、運転手がいるのかと。それまで保 健婦は自転車ですが、坂道などは登りが大変なので、自分でバイクを買って訪問していた。 そうしたら関節炎になったと。やっぱり自動車だというので、自費で車を求めていた。保 健婦が、地区活動をするためには車が必要だということで、国保課で保健婦専用車の補助 金をとっていただきました。  次に繰出金でございますが、今まで衛生のほうの関係の仕事をしていたものですから、 これは衛生の仕事であるといったものの、やっぱり国保としてはしなければならない。し たときに、予防接種、集団検診というものに裏付けがございません。それで自治省の地方 交付税の中の基準財政需用額から国保会計に繰出をしていただきました。保健婦が行うと きには人口10万の市町村で約50万の繰出金を交付税の中からもらったということでござい ます。  4番目として、調整交付金の活用でございます。これは、二局長四課長通知がちょっと 古くなりましたので、52年に補足、補強という意味で通知が出ております。資料4でござ います。それに基づいて国保保健婦の活動指針が出されたわけでございます。この指針に 基づいて、全国で模範になるような効果的な活動を行っている市町村に調整交付金による 助成措置をいたしましょうと、言ってくださって、保健婦がそれを活用しておりました。 52年まで続いておりますが、52年度で20都道府県の70保険者から申請がありまして、その うちの32市町村を選定しまして、1,475万円が交付されて、非常に喜ばれております。これ が先ほどお話のあったヘルスパイオニアタウン、それから、ヘルスアップ事業の基になっ たのではないかと理解しています。  時間がだんだんなくなってきましたので、国保保健婦の問題点としまして、全国市町村 保健活動協議会(全保協)が5年ごとに調査をしておりましたが、このところ3年ごとに いたしております。これも、資料7にございますので、後でご覧いただければと思います が、ここで問題になったのは、「私は多くの地域住民から頼りにされているかどうか」と いうのが15%しかありません。自分で書くものですから、遠慮したのかもしれませんが。  保健師として求められている、国からも求められている仕事としては、レジュメのVの 2に書いてございます。保健師の悩みとしましては、地域に出る機会がなくなったとか、 専門性が生かされないとか、新人教育ができないとか、便利屋になったとか、いろいろと ございます。この意識調査を見ると明らかに質の低下がうかがわれるのですが、これに対 してどういうふうに考えたらいいか。これは、目標をきちっと定める、健康な市町村の実 現ということで、国保のレセプトを生かして、どういう病気が多いのか、医者にどのよう な病気でかかっているのか、地区調査、地区診断を基に、その市町村の持つ住民のニード を知ることが大事だと考えます。  そして、この優先順位をどれに基づいて考えるかというと、二局長四課長通知で言って いました4つの観点があるのではないかと。1つは、地域的要求度の高い、ニードの高い もの、2番目には予防が可能なもの、3番目には置かれている市町村、自治体の技術能力 から見て解決できるもの、4番目に保険財政の合理化に寄与する。この4つを考えて優先 順位を決めるべきではないか。保健師はほとんど公務員でございますので、組織的に動か なければならない。1人で動くのではなくて、レセプトが武器でございますので、市町村 の上司、首長さんに理解をしてもらって、国保連合会と一緒になって、そして、応援して もらって、健康なまちづくりを目指すべきではないかと思っております。  本日は初めての会合にお招きいただきまして、この会合もそういう意味で開かれたので はないかと期待しながら終りにいたします。長くなりまして、すみません。 ○伊藤座長  大坂先生、どうもありがとうございました。  引き続き、辻先生からお話をいただきまして、その後、質問を含めて意見交換、ディス カッションをさせていただきたいと思います。  それでは、辻先生、よろしくお願いします。 ○辻参考人  ご紹介いただきました辻でございます。私は、国保課長をかつてやらせていただきまし て、国保は関係者の強い思いのこもった制度であると思いまして、それ以来思い入れを持 ってまいりました関係上、こうしてお話させていただくことを大変光栄に思います。  今のお話の流れからいって、大坂先生のおっしゃったその後の流れを、私が経験したこ とを通して、問題提起させていただきたいと思います。保健所系統の公衆衛生と言われる 仕事と、国保課の保健事業という仕事の2系列が、いろいろな交わり方をして本日に至っ た、その前段階のお話があったわけですけれども、国保には国保の仕事があるからという ことで、国保の保健事業を進めてほしいと。私が国保課長をやっていたときは、保健師さ んはいらっしゃいませんでしたね。ですから、市町村の保健師さんとの接点というのは、 日常の業務の中ではなかなか感じられないというところまで遠ざかっておりました。  そういうような状況で、一方において国保は国保で保健事業が必要だということをやっ てきたわけですが、歴史を紐解いて、こうしてお伺いすると、国保は国保で仕事をしなけ ればならないと、いろいろな苦労をしてきているんですね。そういう中で調整交付金とい うのは非常に大きな役割を果たしまして、昭和50年代中後半以降でしょうか、額が増えて いきます。そういう中で、ヘルスパイオニアタウン事業を行いまして、通達の概要も説明 されましたけれども、非常に画期的ですね。国保のおおらかさというのが私は非常に好き なんですけれども、創意工夫を凝らして健康づくりの仕事を精いっぱいやってくれと、マ ンネリは駄目だと、創造的にやってくれということで、思い思いに住民のためにやってほ しいという非常におおらかな通知で、これは市町村を大変元気付けたと感じました。  国保自身が健康づくりをするというのは大切だという中で、二課長通知を出していただ きまして。事務局に添えていただいておりますけれども、今までの確認をしたわけです。 私が課長に着任させていただいたのは平成2年ごろでしたけれども、平成3年に二課長通 知を出しています。国保の系統で仕事をしていただいているという実感がつかめないんで すね。そういう意味で市町村の保健師さんも国保のために仕事をしてくださいね、気合を 入れてくださいねということですね。  それでこういう国保課長通知を、当時、健康局になっていましたでしょうか、担当課長 とで同時に出してもらって、お願いしますということで。国保連も、平成2年の段階では 保健師がまだ十何人だったのではないでしょうか。十何県しかいなかったんですね。これ は駄目だと、国保の仕事をしていただくのに、国保連がかかわって大いに国保の仕事を市 町村の保健師さんにやってもらわなきゃいかんということで、国保連合会に保健師を置い ていただくということを一生懸命言いました。ともかく保健師さんが大事だということを やりました。そういう姿勢を国が示しながらヘルスパイオニアタウン事業といった事業を、 細かいことを言わない、住民のためにやってくださいと、こういう事業をやってきた。  「パートU」という言葉が出ているんですけれども、平成2年ごろになりますと、国保 の対象はお年寄りが非常に多いんですね。したがって、健康づくりも大事だけれども、高 齢者が長期入院しない、在宅ケアをやって、在宅でその人らしい生活をすることによって、 結果として長期入院しないことが医療費の適正化になる。そういう意味で、ゴールドプラ ンを推進しようと。もっといえば、ゴールドプランというのは寝たきり予防という考え方 から入っておりまして、寝たきりを予防すれば、入院も少ないし、医療費も少ないと。  そういう考え方に立って、まちづくり、意識啓発として、市町村の事業で、健康づくり に加えて高齢時の寝たきり予防、あるいは、在宅ケアの推進について、まちづくりの市民 啓発運動をやってほしいと。やり方としては、パートTのおおらかなやり方でいいと。し かし、中身は、若い人だけではなくてお年寄りの、いわば寝たきり予防と地域ケアシステ ムのまちづくりだと。したがって、やり方は一緒だけれども、考え方をお年寄りにも目を 向けて対応していく。だから、ヘルスパイオニアタウン事業の第2部だというので、「パ ートU」と名付けて、それが現在の国保総合事業に移行してきているという歴史を持って おります。  一方において、国保直診施設が、私は平成2年に課長をやらせていただきましたけれど も、当時非常に大きな力をもちまして、かの有名なみつぎ病院で山口先生が寝たきりゼロ 作戦というのをおやりになって、寝たきりは予防できるということを、国保直診を中心に 展開したんですね。それが全国に発展していって、寝たきり予防と、在宅リハをやるとか、 いろいろなことを国保直診が中心になってやりまして、いわば予防と治療と地域ケアとい う、地域包括ケアという概念を、直診施設が中心になって打ち出しているという大変輝か しい時代でありました。そういう形で国保直診施設が時代の先取りをするという役割を果 たし、それが全国に広がっていったということを印象的に記憶しております。  後で申しますけれども、国保は、医療費をどう制御するかという考え方からも、必死に 時代の先取りをしているわけですね。そういう意味では、生活習慣病予防をその次にやら なくてはいけないということで、ヘルスアップ事業ということで、今でいえば特定健診・ 保健指導の保健指導のノウハウが医療費の適正化に効果が上がるように、国保のフィール ドでモデルをつくり上げていこうという事業をやったのが、ヘルスアップ事業だと思いま す。そういう形で、生活習慣病対策にもう一遍目を戻して、しかも今でいう特定健診・保 健指導の方法論を国保自らが提案するという、時代に不可欠な仕事を自分で立ち上げてや っていくという仕事をしてきた。  そういうような仕事は、基本的には調整交付金という政策手法によってリードしたんで すね。国の流れとして、国が補助金で地方にいろいろなことをしてもらうというのはもう やめたほうがいいということで、国の補助金をどんどん減らしていく方向で、公衆衛生行 政が国の指導機能のツール、政策ツールを失っていくわけですね。そういう中で国保は、 国保財政の安定化という観点からの調整交付金で時代を先取りする政策をやることができ たという歴史を持っております。そのことは今も大変重要なものだと思っています。  そういう中で、レジュメの6ですけれども、介護保険が導入されまして、平成17年の改 革で相当はっきりした介護保険サイドの考え方も出ました。それが別紙資料の1ページの 高齢者介護施策の現状と課題というペーパーです。予防政策を強調したんですね。平成2 年、私が課長をやらせていただいた時代というのはまだ寝たきり予防だったんです。今で 言えば要介護4とか5になるのを、もっと手前にしようと。特養しか行くところがない、 あるいは、入院しか行くところがないということでない状態に戻そうということだったん ですが、平成17年の発想というのは介護予防、要介護1になるのをもっと手前で防ごうと いうふうに、予防思想がどんどん前へ進んでいったんですね。  それはどういうことかというと、このペーパーの(1)の2つ目の○にありますように、 「体力をつける」「口と歯の健康を守る」「健康的に食べる」と。当たり前のことですけ れども、特に一人暮らし老人とか、退院後にこういう状態になりやすいわけですので、こ のときの生活の仕方をレベルダウンしないように維持してもらうと。要するに、お薬を飲 んでもらうかということではなくて、ライフスタイルを、行動を、活力が落ちないように 維持してもらうというのが予防だという政策に変わっていったわけです。それはどういう ことかというと、住民の意識や暮らし方や住民の常識を変えていくということです。まち の考え方を変えるということです。例えば、栄養水準が落ちたらばあっと弱りますので、 食事をいかに維持するのか、いかに弱っていくのを防ぐのか。こういうことが介護予防に なると。  もう一つは、地域ケア体制の整備と書いておりますけれども、一言で言えば、右側にあ りますように、小規模多機能型。大きな施設に入ると、そこで自分の生活を失っていって 弱っていく、それは決して幸せではない。施設が悪いという意味ではありませんけれども、 地域でその人らしく生活をし続けるのが、一番その人が弱らない道であって、認知症など も一番安定していると。今で言う行動障害というのは起こりにくいというのが分かってき たわけです。  そういう意味では、地域で暮らし続けるシステムを地域でつくろうと、そういうふうな 考え方が介護保険で出ました。これを総括すると、病気になった、倒れた、お薬を飲もう、 入院させようという流れから、病気にならないように予防しよう、あるいは、残念ながら 体は弱っていくけれども、なるべく弱らないようにライフスタイルを整えていこうと、そ して、弱っても地域の中で生活し続けるようにシステムを変えていこうと。こういうふう に前倒しの政策に変わっていったわけです。何が言いたいかというと、病院に行った以降 よりも、病院に行く前の政策をきちっとやる。それこそまちづくりですよ。そこに国保の 大きな役割があるということを私は言いたいと思います。  国保で当面どうするかという意味で、2の医療制度改革と生活習慣病予防(介護予防) の戦略的展開と書いてありますけれども、生活習慣病予防のロジックというのは非常に明 確になりました。次のページをご覧いただきたいと思います。この絵がかけるようになる のに、省内では3年ぐらいかかったと思うんですけれども、最初はシンドローム・エック スという、メタボリック・シンドロームという概念がまだはっきりしていなかったんです ね。肥満症、糖尿病、高血圧症、高脂血症というのは同根らしいと、みんな同じ経過をた どるねと言っていたんですが、今は内臓脂肪症候群ということで、メタボリック・シンド ロームという生活習慣病の共通因子が分かった。  皆さん専門家がいっぱいですから、説明は要らないと思いますけれども、生活習慣病進 行の共通因子を予防するためには、1に運動、歩くこと、2にダイエット。運動は内臓脂 肪を減らすと同時に代謝を促進する。筋肉を動かすことによって代謝を促進するので、1 は運動だと。基本的には歩くことだと。そして正しいダイエットだと。  そして、ここの箱で言えば下の2つ目の箱が発症ですね、ここで薬を飲むと。発症して、 そのまま放っておいたら重症化して、結果、トラブルが起こって、発作を起こして入院し て、要介護になっていくと。この2つ目の箱にいくのを抑えれば、通常は3つ目の箱へい かない。3つ目の箱は大変医療費がかかって生活の質が落ちる、そして要介護になってい く。したがって、この2つ目の箱にいくのを止める、戻す、遅らす。これをやれば医療費 はよりかかりにくく、生活の質は落ちず、また要介護にもならない、こういうことですね。 したがって、2つ目の箱へいくのを抑えるというのは、総力を挙げてやる価値がある政策 であるということを、今回の医療制度改革で位置付けて、特定健診・保健指導という形に なったわけです。  私がここで強調したいことは、ポピュレーションアプローチと言われる地域の住民啓発 が大事だということでございます。卑近な表現をとりますと、検診で引っかかって、保健 師さんに「あなた、このままだと大変なことになりますよ」と言われるとします。「しか し、僕の友だちは同じような状態だけれども、お酒も飲んでいるし運動もしてないよ」と いう人がぽろぽろ出てきたら、いくら保健師さんが頑張ったってなかなか動かないですよ。 だけど、地域の中で、学校から帰ってきたお子さんが「お父さん、太るって怖いらしい よ」と真顔で言うとか、奥様が地域の集まりで聞いてきて、「心配ですよ」と言ったら、 行動変容につながりやすいと思います。  事ほど左様に、社会全体を啓発するということと、検診して、ハイリスクグループのコ ントロールをするというのを、いわばパッケージでやるという強い政策意思が必要なわけ です。そして、介護予防も、一番良いのは要介護にならないことですよ。そしたらいかに 生活を整えるのかと。お年寄りが食事の手抜きを始めたら危ないよ、食べる力を失うとい うのはすごく生活の質が落ちるので、食べる力をつけるためには、口内のケアは大切です よと、こういうことを地域の住民が知っているかどうかですよ。それを地域の住民に啓発 するというのが国保の大きな仕事ではないかということを言いたいわけです。  要するに、お医者さんにかかる前に生活指導をするという文化を、戦後、国保は育てて きたわけです、保健師さんを通して。その文化をもう一度、国保は自己確認して、基本的 な生活習慣病予防、介護予防のポピュレーションアプローチは国保がやりますと、そのぐ らいの勢いで国保かやるべきだと思います。その理由は、医療費が増えるという大変な苦 しみを国保は味わっているわけです。市町村長ないしは経験者がたくさんお出でですけれ ども、私は常々市町村の国保担当者の顔を見たら心から頭を下げました。こんなしんどい 制度はない、これを守っていただいているんだと。したがって、医療費を何とか正しく適 正化したいと本気で思っているわけです。  もし2つ目の箱にいかないと3つ目の箱にいかないということで、これによって医療費 が適正化するというのは最も良いことですよ。住民は幸せになる、医療費の伸びは落ちる ということです。これは一番やらなきゃいけないことで、保健師さんあるいは一般行政の 力でできるわけです。したがって、一般行政や保健師さんの力と言いましょうか、地域住 民でできることをやるという運動論を、国保がこれから歯を食いしばってやっていくべき だし、また、その動機付けを国保は持っていると。保健師行政にはいろいろなニーズが出 てきます。後でお話しますけれども、いろいろな時代のニーズがあるので、保健師行政そ のものが大変なんですけれども、それはそれとして、国保でやらなければいけないことは 国保でやるということで、そこの役割を国保が市町村段階で担うべきだと。  私は「国民健康保険」と書いていますけれども、よく言ったものだと思うんですね。国 民医療保険とは書いてないわけです。健康保険と書いてある。住民に健康になってほしい という夢を持った制度なんですね。したがって、保険者は住民を健康にして、なるべく正 しく病気にかからなくて、医療のお世話に正しくならなくて、医療費が適正にできると。 そしてまた、病気になったとしても、「1に運動、2に食事」を併用すれば、お薬ではで きないことはできます。やせて高血圧になったときには体重の落としようがないですから、 あとは歩くしかないんですね。だけど、薬を飲むのと歩くのとを併用したらすごく良いそ うです。  そういう行動変容の部分は地域行政あるいは地域の保険者がやるということで、保険者 がそういうところをやっていくことが必要だと思います。そういう意味で、そこに投資を するのは意味のあることなんだというコンセンサスを保険者と地域住民は持っていってほ しい。国保の保健事業の規模がウエートとしては落ちておりますけれども、私は非常に心 配です。いわば正しく住民を幸せにして医療費を減らそうという考え方である程度投資し 続けないと、途中でおりたら効果は上がらないです。これをやり続けた地域がやらなかっ た地域に比べて、明確に大きく差が出るのはある程度先ですが、ここでご覧いただいたよ うに、3つ目の箱にいかないか遅れるかによって大きな医療費が動くわけです。したがっ て、これをやり抜くということが必要です。そこのところを国保に思いを定めてやってい ただきたいというのが私の願いであります。  それから、今後の展望ということですが、それでも年をとれば人間は弱っていきます、 死に向かっていきます。その中で生活を支える医療というのが必要になる。死亡者数はこ れから年間110万人が170万人弱まで、ものすごい勢いで増えていきます。そういう中で病 院死亡率は80%強、本当に大丈夫でしょうか。それが「大丈夫でしょうか」だからではな くて、本来、生活の場で最後まで頑張り抜けるというのが正しい老いではないか。病院で 必要な治療が終わったら生活の場に戻って自分の生活を最後まで守りたい、これは住民の 願いだと思います。  そういうふうに考えると在宅医療をこれから進める、そして、生活の場に医師が往診に 来る、訪問看護が来る。自宅だけではないですよ。個室の特養とかケアハウスとか、グル ープホームとか、自分の生活の場に医療や看護が来て、そこで自分らしく老いていく。こ ういう方向が介護保険から出ておりますので、これをこれから目指すべきだというのは日 本の医療制度改革の大眼目でございます。今から20年で後期高齢者は倍増します。したが って、今から5年、10年、15年の単位でこのことをやらなければ、老いの姿というのは日 本でどうなるんでしょうか。  それを考えますと、在宅医療を、地域ケアと言いますか、介護保険とパッケージにどう していくのか。そのときに診療所の役割が重要なんですね。地域の中で地域医療をやって いる診療所が在宅医療に行けないのかと。別紙の3枚目の資料を見ていただきたいと思い ます。今までは病院あるいは老健施設、特養と一生懸命つくってきたわけですけれども、 地域の最前線に在宅療養支援診療所という診療所を置いて、そこと介護保険の在宅ケアシ ステムをリンキングさせて、自宅だけではなく住まい系のサービスを含めた高齢者の生活 の場に出向いていくというシステムを展望することと、介護型療養病床の廃止とがマッチ していくわけですね。そういう方向を目指すということでございます。  そういう方向を目指す上で、国保が生活習慣病の予防、介護予防と合わせて何をするの かというのが次の展望でございます。今後の展望の2)をご覧いただきたいんですが、広 い意味での住民啓発は常に保険者の大きな仕事なんですね。これからは医療のかかり方が 重要になるわけです。例えば、発作を起こして入院すると、急性期の治療と言いますか、 手術をしたりする。そのときにどこまできちんとリハビリが行われているか。そして、高 齢者の場合は多くは急性期のリハだけでは日常生活能力は戻らないので、回復期のリハビ リテーションを受ける必要がある。急性期の最初に担ぎ込まれた病院では車椅子までだっ たけれども、杖歩行まで戻れる人については回復期のリハビリテーションを受けているの か、その後、地域に帰ってどういう医療が受けられるのか。  こういう本来の医療のかかり方を知っていれば、住民も病気になってもその後の生活が 展望できます。だけど、知らないと、病院に担ぎ込まれた、退院してくださいと言われた、 車椅子で帰って来た、パニックだ、また入院だ施設だと、それでいろいろな混乱が起こる わけですが、本来どういうふうに医療を受けるべきなんでしょう、できたらこういう医療 にしましょうねという、住民啓発をすることがこれから非常に重要なことです。保険者は 被保険者から保険料をとって医療の費用を出すというだけではなくて、被保険者のエージ ェンシー、代理人としてどういうふうなかかり方がいいんでしょうか、どういうふうにし ていったらいいんでしょうかというふうなことを地域の中で語るという、地域啓発力とい うものが国保には重要ではないかと。  国保でそういうことができる人は保健師さんなんですね。そういう意味で保健師さんに 頑張っていただきたいということを言いたいわけです。そして、保健師さんについては、 市町村の公衆衛生行政と国保保健事業との役割分担というのはある程度見えてきている。 今の生活習慣病予防とか医療のかかり方というのは国保でやる。だけど、公衆衛生行政と 言いましょうか、一般行政では、昔は精神保健が出てきて、障害児の早期療育が出てきて、 認知症が出てきて、今は虐待をやっているというふうに、時代時代のニーズをこなしてい かなければいけないということですので、それはそれで必要ですけれども、国保は国保で 自分の守りをきちっと固める。そういう意味で国保における保健師の活動。そして、身分 は一元化でいいですよ。だけど、国保特会における保健師の役割をきちっと位置付けてい ただきたいと思います。  それからもう一つ、直診施設ですね。どっちかというと病院が中心で包括ケアをやって きましたけれども、在宅医療というと診療所なんですね。理想的には午前中外来、午後往 診・在宅医療という診療所のモデルを、もう一遍直診でできないのか。そして、午前中外 来というスタイルはいわゆる家庭医ですね、プライマリケアをやると。今、プライマリケ アをやらざるを得ないし、やっているところはへき地だと思うんです。今のプライマリケ アの原型というのは日本ではへき地にあると思うんですね。そこに国保直診が多いわけで す。  したがって、在宅医療とプライマリケアをやる国保直診を国保が育てて、日本の新しい 医療モデルをつくれないのかというのが、私の直診への大きな期待です。包括ケアという 概念ができたので、あとは在宅医療とプライマリケアですね、午前中の包括的な医療の担 い手、こういうようなところを直診にやっていただきたいと思います。国保が常に時代の パイオニアを築いてきたと思っておりまして、ぜひ頑張っていただきたい。  短時間で早口だったことをお許しください。以上です。 ○伊藤座長  大坂先生、辻先生、どうもありがとうございました。  あと30分ほど時間がございますので、最初にお2人の参考人に対するご質問等を承りま して、それが一段落いたしましたら、本日は第1回目ということでございますので、今後 の課題というか、どういう課題があるか、課題の抽出という観点から、委員の皆様方にご 発言いただきたいと考えております。  それでは、最初にお2人の参考人のご発表に対しましてご質問等があれば承りたいと思 います。  どうぞ。 ○河内山委員  大坂先生、辻先生のお話を聞きまして、改めて国保の果たすべき役割の大きさと、今後 の日本のためにどう展開していったらいいかという、ヒントをいっぱいいただいたような 気がいたします。私も16年間市長をやりまして、この間、健康づくりというのは市町村長 の市民、町民、村民との関係で言いますと、最終的には幸せな人生、辻先生が言われたよ うに最後がどういうふうな姿であるかというのは、その方の人生を考える上で非常に大事 なので、総合的に地域の中でたくさん課題はありますけれども、幸せをどうやってつくっ ていくかという意味では医療・保健・福祉は非常に重要だと思い続けて仕事をしてまいり ました。  そういう中で、辻先生が途中でちょっとお触れになった国民健康保険であって国民医療 保険ではないと。もっと言うと国民疾病保険という観点からしますと、多くの心あるお医 者さん方、あるいは、医療関係者はよくお分かりなんですけれども、まだまだ予防あるい は、今日のテーマであります保健というようなことの意味合いとか、そこに財源をあてて いくという意味でのコンセンサスというか、医療関係者全体の意識の統一というのはまだ できていないと思うんです。その点について、今後の課題とも関係するんですけれども、 両先生に今までのご経験で、保健師さんに対する、今日は多くの期待とか役割についてお 話がございましたけれども、その他医療関係者が今後の国保の展開を考える上でどうある べきかということについて、お考えをお聞かせいただければと思います。 ○伊藤座長  では、辻さんのほうからどうぞ。 ○辻参考人  財源について、予防に振り向けにくいと。これは本当に心配いたしております。生活習 慣病予防というのは、このメカニズムは分かったので、さっきの絵で1つ目の箱から2つ 目の箱へいかないことがポイントだということ。それがひいては高齢期の増悪ですね、病 気がもっと悪くなるのを防ぐことになるから、将来の財政効果はもっと高いはずだという グラフをかいて、もし反論があったらしてください。というのは、時系列データは完全に 得られてないですから。私はそう言いました。しかし、 私が言いたいのは、エビデンスがないと政策はやってはいけないという話がよくあります けれども、これだけの基本的な構造が分かれば、きちっとこれをやるべきだということ。  それからもう一つ、これをやるのは国民の幸せのためにやるからですよ。これを後らせ たら血管が破れないから、脳梗塞や心筋梗塞も起こることが後れるということは分かって いるわけですから、それに投資をするという価値判断を、エビデンスが見えないから駄目 だというのではなくて、そのようなことに投資する価値があるというコンセンサスは得ら れる。それは、今、先生がおっしゃった住民の幸せを確保したいという確信だと思うんで すよ。そのような意味で、予防についてもっと財源をシェアするというコンセンサスを国 保で運動論として起こしていただきたいと思います。昔は「3%運動」ということで、保 健事業に1%というのがようやくだったんですが、もっと思い切った投資をというのを運 動論として掲げていただければと思います。 ○伊藤座長  ありがとうございました。  大坂さん、ございますか。 ○大坂参考人  臨床を経験している保健師は違いますけれども、そういった医療現場の経験のない保健 師もいますから、お医者さんとどういうふうにつながっていくかということについての話 合いが足りないのではないかなと思うんです。それは、寝たきりを起こしていくというこ とにつきまして、香川県の牟礼町でやっていた事例がございます。人口1万人ぐらいのと ころで二百何十人の寝たきりの人がいる。脳卒中の後遺症が一番多いんですけれども、そ の他リウマチとかいろいろある。それを起こしていこうと思うと医者から反対される。  それでどういうふうにしたかと言いますと、石川県の鳴和の社会保険病院の院長さんが 地域医療をよく考えていらっしゃった。また、入退院基準をつくっていらして、3カ月以 上入院したら出てもらうと。女の人なら、その当時は、ミシンがけができる、料理が片手 でできるというふうな訓練をしているのを見まして、これを保健婦に勉強させたいという ことで、そこで実習をさせたんです。そして、修了証書をもらいまして、お医者さんのと ころに行きました。その後の医師の協力もあり、寝たきりを起こす運動を始めたという経 緯がございます。  保健師なりに医療をどういうふうにしていくかというのは、地域のお医者さんとの協力 が必要ではないかと考えます。 ○伊藤座長  ありがとうございました。  鳴和病院というのは金沢の社会病院ですか。 ○大坂参考人  そうです、石川県金沢市の社会保険病院です。 ○田中委員  ご苦労さまでございました。いろいろありがとうございました。  大坂先生と辻先生に一点ずつ。大坂先生のお話の中で参考資料にアンケートがありまし たね。保健師の問題は非常に大きな問題だと思っているんですが。9ページの右上のほう の8)で「あなたはほぼ毎日地域に出向いて仕事をしているか」というところですね。本 来、保健師はそうあるべきだと思うんだけれども、「思う」と回答した保健師の割合が 16.5%と。84%程度は地域に出ていないというふうに感じていると。  このことと、次の10ページの左のほうの6)、「私は多くの地域住民から頼りにされて いると思うか」ということで、「思う」と答えた人が15.1%。ここをあまり関連付けてし ゃべったらいけないと思いますけれども、地域に出て活動している人の割合と、信頼され ているという人の割合が近似する数値だというところ、ここについて、大坂先生、最近の 保健師の日常業務の有り様をご承知だと思いますけれども、デスクワークが非常に多くな っていると。住民の中に出ていくというのが1〜2割の事態になっていると聞いています けれども、このことは関係があるとお思いになるのかどうか。そこだけ。  辻先生には、これからの議論で非常に大事だと思うのは、地域住民の幸せというものに ついては国保も当然考えなければいけないわけですけれども、国保が先陣切って地域住民 の幸せを担えというような話、そこまではおっしゃらなかったかもしれませんが、気持ち を込めたご発言があったんですけれども、国保のおおらかさというのは非常に大事だと思 うんです、実践していく上で。ただ、国保の被保険者責任というのは当然果たさなければ いけないけれども、地域住民責任まで考えなければいけないのか、そこはどういうことな のかと。国保と市町村ということをきれいに整理してかからないと、我々がそういう思い でやっても、市町村の他のセクションが「そんなこと余計なことだ」ということにもなり かねないので、そこら辺りについてどういうふうにどういうふうにお考えなのかと。  その二点をお願いします。 ○伊藤座長  それでは、まだご発言したい方がいらっしゃると思うので、できるだけ簡潔にお願いし たいと思います。  大坂さんのほうからお願いします。 ○大坂参考人  地域に出ていないことと、信頼されていないことは、関連があります。地域に出るため にも、私は優先順位をつけて仕事をやるべきだと考えます。  もう一つは、保健師一人では駄目です。組織と言いますか、長野県がやったような保健 指導員の組織だとが、地域現職と一緒になって行わないと、保健師一人の力は弱いです。 ○伊藤座長  辻さん、お願いします。 ○辻参考人  何でも国保が頑張れば世の中よくなるという言い方に聞こえたとしたら、それは私の言 い過ぎだと思います。ただ、私は2つのことを言いたいんです。1つは、今、大坂先生の おっしゃったことで、本席にはお出でになっていないかもしれませんが、保健指導室長の 仕事なんでしょうか、保健師さんを一元化した以上は、保健師さんの仕事の優先順位をつ ける必要かあると。そこのところをきちっと整理する。本当は市町村ごとにやったらいい んですけれども、国でも、ガイドラインをつくる仕事が残っていますから、そこをちゃん と議論すべきだということがどこかで言いたかったことです。  これが1つ目。2つ目は、それはそれとして、国保は一番真剣に医療費と国民の健康の ことを考えざるを得ないわけですよね。私も国保課長をやって本当に市町村長に頭を下げ ました。だれが一番中心になるのかというと、国保を担当する市町村長は、財源調達で議 会でいろいろ指摘されながら、経営者として国保を成り立たさなければいけない。そうい うところは時代のあるべき方向を生み出すエネルギーを持っているわけですね。そういう 意味で、ちょっと言い過ぎかもけれども、国保にはそういうリアリズムがあるので、リア リズムを持ったところが時代を先取りするというのが世の常ではないかという意味で期待 を申し上げました。 ○伊藤座長  どうもありがとうございました。  その他、委員の方、いかがでしょうか。前沢先生、どうぞ。 ○前沢委員  大坂先生のレジュメの2ページ目に通知の概要とありまして、「市町村自治の尊重と自 主制の尊重」と書いてありまして、自主性の「せい」という字はこういう「制」ではなく て、性質の「性」でいいんですよね。 ○大坂参考人  そうでございます。 ○前沢委員  大きな制度の意味ではないんですね。これが一番上に掲げられているんですけれども、 先ほど地域に出向かない保健師のお話が田中さんからありまして、市町村の保健師、私も 8年間、涌谷町で働いて、当時、「ああせいこうせいの厚生省」と言われていて、厚生省 からの指示が余りにも多すぎて、それに忙殺されて、地域の保健ニーズは何なのか、どん な疾病が多いのかという地域のニーズを把握する自主的な仕事ができないでみんな悩んで いましたね。特に非常に残念だったのは、保健師が奮闘していたにも拘らず一般の住民か ら信頼がないだけではなくて、行政の事務職員たちからも保健師への信頼が当時は薄かっ たんですね。何でだろうと思いまして。  私は医者をしておりましたので、予防を啓発しようと思って、そのまま住民の方にやっ ているときはみんなあまり聞いてくれなかったんですね。ただ、病院がスタートして臨床 をやって、毎日7人ぐらい救急患者がきて、我々は24時間365日救急をやりますよというス タンスで直診の医師をしておりました。そうこうしているうちに、住民の方々が健康教室 に行って話を聞いてくれるようになったというところがありますので、保健師さんだけの 力でこうせいああせいというのはなかなか難しいので、医師の積極的な参加によって住民 の意識が変わりやすくなってくるのではないかというような印象を持っているんですけれ ども、その辺いかがでございましょうか。 ○伊藤座長  大坂さん、お願いします。 ○大坂参考人  住民の意識を変えるのは一人では駄目です。医師、それから、町長さんにどういうふう に考えていただくか、保健婦の技量ということが求められるのではないかと思います。  私がうれしかったのは、辻先生が今おっしゃった、厚生省がきちっと優先順位の考え方 を知らせ、地域に出られるような指針なりを今こそ出してもらいたい。難しいことではな くて、分かりやすいものを出してほしいと思っております。 ○前沢委員  そこのところは業務の指示ではなくて、技術論、方法論をきちっと国は最低レベルのと ころを伝えるというのが厚労省の一番の仕事なのではないかと思うんですけれども、それ が大分誤解されているところがありましたね。  それから、保健師さんたちがなぜ信頼されていないのかというと、臨床的なコミュニケ ーションが住民ととれていませんので、住民の心情に寄り添えない。少し臨床の腕を磨い てもらうためにも、保健師たちにも救急の当直をさせたんですね。保健所からはお叱りを 受けましたけれども、それによってコミュニケーションと相互理解が随分変わったように 思うんですね。ですから、そういう工夫も直診自体がしていかないといけないだろうと思 ってやっておりました。 ○大坂参考人  ありがとうございます。 ○伊藤座長  それでは、この後、今後の課題という視点に関連いたしまして、ぜひご発言いただきた いと思います。もちろんお2人の参考人に対するご質問でも結構でございますが、今後の 課題という視点に関しまして、ぜひご意見をお伺いしたいと思います。いかがでしょうか。 ○冨永委員  私、国民健康保険診療施設の立場から少し申し上げたいと思います。今、辻先生がおっ しゃいましたように、寝たきりゼロ作戦からゴールドプラン、新ゴールドプラン、それか ら、介護保険等にも国保直診は非常に深く関わってまいりまして、国保直診の設置市町村 では、未設置市町村と比べて医療費が安くなっています。私は滋賀県におりますけれども、 滋賀県の国保連合会の事業として平成15年に行った国保直診設置市町村と未設置市町村の 国保の医療費、老人医療費の比較調査では、1人当たり8万2,917円安くなっておりますの で、国保の被保険者の人数を掛けますと、滋賀県の国保直診設置市町村での財政効果は24 億円あるということになっています。滋賀県は医療費が今でも全国平均より低くなってい ます。ですから、全国平均に直しますと、49億円の財政効果があるということになってお ります。したがいまして、辻先生がおっしゃいましたような国保直診は健康づくり、予防 に力を入れていますので、その効果があるのだろうということが言えるかと思います。  一方、生活習慣病といわれる糖尿病の調査を滋賀医大の公衆衛生学教室の協力を得て滋 賀県の医師会がやりました。「市町村国保における特定健診・保健指導に関する検討会」 に資料を一部お持ちしています。滋賀県全県下で病院、診療所合わせて糖尿病の調査をし ました。第1回調査と、それから5年後に2回やりました。そうしますと特に診療所、診 療所というのは開業の先生が多いわけですけれども、そこへ行っている方は糖尿病がむし ろ悪化している。ヘモグロビンA1cも随分上がっているという結果が出ています。その 結論は保健指導が必要だろうということになりました。薬を飲み、医師の治療だけでは駄 目で、医師の力には限界があるということで、保健師さん、看護師さん等の保健指導が必 要だろうという結論であります。そういうことで、治療中の人に対する重症化予防の意味 でも保健指導というのは非常に大事だろうと思っておりますし、今後、私たちも国保直診 が頑張っていかなければいけないと思っておりますが、先ほどおっしゃいましたように、 これには首長さんのご理解がないとなかなかできないと思っております。  と言いますのは、辻先生も診療所が大事だよとおっしゃいましたけれども、今の若い医 師は都会志向であり、田舎へ行きたがらない傾向にあります。それは、今、医学部の入試 が難しいということもありまして、都会の出身者が医学部へ行く割合が昔と比べて非常に 増えています。都会から田舎の医学部に行っても帰ってくる。これは新聞紙上でよくご存 じだと思いますが、そういう状況で国保直診では医師確保、特に医師、看護師確保が非常 に困難を極めております。また、公立みつぎ総合病院のように直診自体、市町村の役場と 一体となってやっているところは保健師をたくさん採用しておられますけれども、一般の 病院、診療所では保健師もなかなか採用できないという状況なので、今後の課題としては、 市町村の国保の保健師さんと国保直診がいかに連携していくかということが、特定健診・ 特定保健指導の面でも大事だろうと。あるいは、治療中の人に対しても大事だろうと思っ ております。  そういう意味で首長さんのご理解・ご指導が重要であると考えております。 ○伊藤座長  どうもありがとうございました。  どうぞ。 ○北委員  今、市長、町長の姿勢が非常に大事だと、全くそのとおりだと思います。私どももそう いうふうに思っております。私のところだけが積極的にやっているというわけではありま せんが、健康づくりというのはあくまでも地域づくり、まちづくりであるという認識に、 みんながどういうふうに立っていくか。そういうことが大切ではないかと思うわけでござ います。私どもの事例として、先ほどちょっとお話しましたけれども、包括的な保健と医 療との推進モデル事業ということで、小児期からの生活習慣病予防をモデル的にやらせて いただきました。この取組が、子どもさんを持っている親だけではなく、町民全体に広が りつつあるということを申し上げたいと。  どういうことかと言いますと、病診連携推進事業ということで、子どもさんたちの小児 期からの健康づくりと言いますか、健康チェック等を含めて学校と協調しながらやらせて いただきました。ただ、学校医の人たちもいまして、郡教組などに大分言われまして、学 校への関係もあるからな、何でそこまで入り込むんだと。しかし、子どもさんたちが健康 で暮らすことが何よりも地域づくりで大切なことだと、これは親たちも願っていることだ ということを理解していただきながら。  また、子どもの健康となりますと、親たちは目を輝かせて人が変わったようにチェック してデータを出してきまして、糖尿病の予備群的な子どもたちが非常に多くいまして、私 どももびっくりしました。家庭の料理そのものもお母さんたちは変えていかざるを得ない。 旦那の健康はさておいてと。これを言ったら怒られるんですけれども。そうすると家庭全 体が影響を受けまして、私どもとしても小児期からの生活習慣病予防事業、町内、小学校 3年生から高校生まで対象として検診事業をやりまして、保護者、地域との健康意識の普 及につながっています。  運動指導事業については、それぞれの特性、状態に適した運動プログラムを作成いたし まして、かかりつけ医が運動指導表として提示しながら、医療と保健の包括的視点に立っ た運動を実施いたします。私どもは空知郡なんですが、視察が多くて、今まさに特定健診 ・特定保健指導をやろうという雰囲気になっています。去年から始まっているわけでござ いますけれども、そういうことが一点。  それから、私どもの町はそれを発展させて、地元開業医、病院医師及び保健師、先ほど から保健師の連携ということが言われていますが、実施体制づくり。特定健診等懇談会を 設置いたしまして、定期的に開催いたしました。これは19年に設置されまして、この内容 についてはお互いに協議しながら進んできております。ですから、先ほどから指摘がござ いますように、市町村長の考え方、理念が大切なことであって、私どもはかかりつけ医制 度をとらせていただいて、病院と一体になっているのが事実でございますけれども、それ が予防ということで、医師だけでなく、開業医の先生方も全体にそれを取り組んでいただ く。こういう形で推し進めようとしております。  幸いにして、特定健診も数多く出てまいりました。データにしてもまあまあ出てまいり ますけれども、非常によかったのではないかなと。そういうことを含めてまちぐるみで、 どういうふうに予防活動を含めて、先ほど辻先生からお話があったように、住民が幸せを どうつくっていくか。それが医療費抑制に結果として出てくる、こういうことが本当の意 味の政策になる。ただ頭から医療費抑制のために、あれも抑える、これも抑えるというこ とではなかなか住民合意を得られないですから、そういう形をとっていくことが大切では ないかなと思います。  以上でございます。 ○伊藤座長  それでは、時間の関係で最後に、池田さんお願いします。 ○池田委員  これから活動していくときに、私は在宅保健師としてボランティアをやっていて思うん ですが、何か一つするにしても地域の人とともに話合う場を持っていきますと、今、市長 さんがおっしゃられたような健康づくりのまちづくりへの発展というのはかなり大切なも のだと思っております。そういうことをつくるためには、実施体制をつくるときに、地域 の特性のあるものを住民も一緒に入れた話合いの場でつくっていく。  それから、もう一つは、国保連の補助金をいただいて、地域の地域診断事業の応援をし たんですが、そのときに市町村の課長さんが国保の医療費はこんなに市の財政を圧迫して いる、このままでいくともっとひどくなる。だから「健康日本21」というところで住民 の力をここに出せないだろうかと言いましたら、住民の方たち、特に男性の方たちがその ことに目覚めて、自分たちでできることは自分たちでやる、やれないことは市町村に頼め ばいいんだというところまで発展して、今、非常にいい健康づくり事業に取り組んでいる んですね。国保の財政の大変なことも住民とともに問題を共有していく。そういうことが とても大事なことなのではないかなと思います。  また、保健・医療・福祉の連携の大事さ、加えて、在宅保健師のように他の社会資源も いっぱいありますので、そういった社会資源をどう活用していくか。今の保健師さんたち を見ておりますと、大変気の毒で、保健師の数は減って、特に事務職も減って、今まで事 務職がやっていた事務量も全て自分たちの肩にのしかかってきている。そういう状況の中 で、保健師への期待のほうが大きくなりますと、歯車は回らないんですね。そういったと きには仕組みを変えるしかないなと思うんですが、いかに社会資源を活用していくか、そ の仕組みをつくり出していくのがこれからの大事なポイントになってくるのではないかな と思っております。 ○伊藤座長  それでは、簡単にお願いします。 ○坂本委員  東松山市は、埼玉県のほぼ中央に位置しております東松山市です。人口9万人のまちで す。辻先生がおっしゃったとおり、住民が幸せになり、医療費が落ちる、これに尽きると 私も思っておりますけれども、そのためには市町村財政で国保がものすごく大変です。議 会で国保税の税率改正をするたびに討論がある。しかしながら、私は埼玉県700万県民で国 保をやるべきだと思っています。市町村の時代ではないと、絶対にそう思っておりますけ れども、そうならない。そういう中で、そういうものを一つ一つクリアしていくこと。  また、私どもに市民病院がありますけれども、研修医制度のために、これは国が悪いん ですが、あんなものができたおかげで30人いた医師が9人になろうとして、自治体病院が 崩壊しそうになった。今、14人で夜間救急を再開しようとして、ものすごく要望があって、 こちらも頑張っておりますけれども、こういった制度を国で一生懸命変えていただく。国 会議員の先生に言っておりますけれども、そういったことをしっかりと行っていく中で、 私たちは市町村長にもっと勉強していただく。今言ったように、住民が幸せになり、医療 費が落ちるということは、例えばまちづくり全体のことは市町村長が一番よく知っており ますから、どういうノウハウや資源があるかということ。  そしてまた、医師会の先生方が地域医療に本当に根ざしていただけるような制度、そう いったものをもう一回原点に立ち返えるような流れを起こせないか。また、今言ったよう に住民、多くの集会所でお年寄りや障害のある方たちにどうやってケアや支援ができるか というシステムを構築していかなければいけないと思っています。  ですから、何回も言いますように、医療費を下げて、住民が幸せになる方法というのは、 市町村長が保健師の数を増やして、そしてまた、そういう活動がいかに住民の幸せに貢献 できるかということを、この面からもっと認識してもらう方法を模索することも必要では ないかと思っております。  以上です。 ○伊藤座長  どうもありがとうございました。  まだご発言いただいていない委員の方もいらっしゃいますが、予定している時間がきま したので、この辺で本日は終了させていただきたいと思います。  事務局から何かありますか。 ○和田専門官  伊藤座長、どうもありがとうございました。また、参考人の大坂先生、辻先生におかれ ましては、ご多忙にも関わらず貴重なお話をどうもありがとうございました。  次回の懇談会につきましては、市町村での保健事業の取組などもお聞きできればと考え ておりますが、日程としましては6月下旬から7月上旬で調整をさせていただきたいと考 えております。またご案内をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたし ます。  本日は、ご多忙にも関わらず当懇談会にご出席いただき、誠にありがとうございました。  以上でございます。 ○伊藤座長  どうもありがとうございました。 それでは、第1回目を終了させていただきたいと思います。       照会先:厚生労働省保険局国民健康保険課施設係           (代)03−5253−1111(内線)3255