09/04/10 第2回重篤な小児患者に対する救急医療体制の検討会議事録         第2回 重篤な小児患者に対する救急医療体制検討会 日時 平成21年4月10日(金) 15:00〜 場所 厚生労働省 省議室(9階) ○大内専門官 定刻になりましたので、第2回重篤な小児患者に対する救急医療体制の検 討会を開催します。メンバーの皆様におかれましては、ご多忙中のところご出席いただき まして、誠にありがとうございます。  なお、本日は田中裕委員よりご欠席との連絡をいただいております。初めに前回ご出席 いただいていない委員をご紹介させていただきます。日本医師会常任理事の石井委員です。 続いて、総務省消防庁には、オブザーバーとして参加していただいております。  まずお手元の資料の確認をします。上から順に1枚ずつになっているのが、座席表、議 事次第、開催要綱、その裏側にメンバー表です。  次に、右上に資料番号があるのが、2枚セットの資料1、1枚紙の資料2、2枚セットの資 料3です。参考資料は右に「参考資料」とありまして、参考資料1、参考資料2、参考資料 3、参考資料4、参考資料5、参考資料6、そして横向きの参考資料7です。最後に阪井先生 からご提出いただいた資料があります。資料の欠落等がありましたら、事務局までお知ら せください。  なお、もしカメラ等がございましたら、ここまででお願いします。議事に入りたいと思 います。中澤座長、よろしくお願いします。 ○座長(中澤) 前回の第1回に引き続いて、第2回の重篤な小児患者に対する救急医療体 制の検討会を開催します。最初に、前回の議事のサマリーについて確認しますので、事務 局からお願いします。 ○大内専門官 資料1についてご説明します。第1回の検討では、3人の委員からご発表い ただきました。全部をお読みすることはできませんので、ざっと申し上げます。山田委員 からは、救命救急センターにおける小児救急医療の現状について、日本救急医学会の平成 19年調査結果に基づき、ご発表いただいています。  その中で、90%の救命救急センターが、小児を24時間365日受け入れているというよう なことをご報告いただき、最後の・ですが、看護単位が独立して、8床以上の小児専用のICU を「1型PICU」としてはどうか。また、救命救急センター内で、小児が優先的に利用でき る2床程度のICUを「2型PICU」としてはどうかというご提言をいただきました。  また、植田委員からは、静岡県立こども病院に設置された12床のPICUの現状をご報告 いただきました。PICUへの入室患者の内訳、また設置のために必要な支援、人的要件等に ついて、おまとめいただきました。また、市川委員からは、救命救急センター併設の小児 救急センターの現状について、ご発表いただいております。  次の頁です。委員の皆様からいただいた意見を記していまして、そのうちの一部をご紹 介します。最初の○の「小児の救命救急医療の位置づけ」の2つ目の・で、「小児の初期、 二次、三次救急医療というのは車の両輪のようなもので、全体がうまく回らなければ、三 次のみが回ることはできない」。  次の○の「PICUを整備する施設について」の2つ目の・です。「救命救急センターの機 能には施設による違いが大きいので、小児を受け入れてくれる施設を選んで育てていけば いいのではないか」。  その次の○の「PICUを担うマンパワーについて」の3つ目の・ですが、「PICUの要件 として各専門医の人数等を規定されると、現在苦しい中で協力して不足を補っている施設 にとって、逆効果になるのではないか」。  その次の○の「PICUへの重篤な小児患者の集約について」の1つ目の・で、「PICUと して患者を多く診ている施設の救命率は高い。重篤な小児患者の数は少ないので、できる だけ集約することが大切」。  最後に「今後の整備の方向性について」の2つ目の・で、「今できることと、将来ある べき姿を分けて考え、ロードマップを作成すればいいのではないか」というようなご意見 をいただいております。資料1については以上です。 ○座長 資料1にご発言の趣旨が書かれていますが、ご訂正の委員、あるいはこれを発言 したのだけれども、記録に残しておいてほしいという方がおられましたら、おっしゃって いただければと思います。いかがでしょうか。 ○市川委員 小児人口2万人の地域となっていますが、これは間違いで、12万人、10万人 の地域ということで、訂正していただきたいです。 ○大内専門官 すみませんでした。 ○座長 ほかにございますか。もしあれば、後ほど直接連絡をいただければと思います。  次に移ります。本日の議題についてと、もう1つは、今日は非常にたくさんの資料をお 配りいただいていますが、すべて関連がありますので、ご説明をいただいて、それから議 論に入ります。事務局から、資料2以下のご説明をお願いします。 ○大内専門官 資料2「重篤な小児患者に対応する病床の要件について(案)」です。初め の○の「入室対象児について」です。もしこのような病床が整備されたならば、どのよう な小児が入室するのか。その点のご議論をいただきたいと考えています。(1)は対象となる 年齢、(2)は疾患による区分、(3)はすでに入院中の患者についてのご議論です。  2番目の○は「求められる機能について」です。入室対象児の部分と重複するところもあ りますが、(1)は診療領域に関すること、(2)は診療時間に関すること、(3)は医療スタッフ に対する教育機能に関することです。(4)の「その他」は自由にご意見を賜りたいと考えて います。  続いて「設置する場について」です。山田委員よりご提言をいただいた部分もあります が、その1つ前の段階として、どういった病院に、どのような機能の、どういった病床が 必要なのかということを、ご自由にご議論いただきたいと考えています。  最後に「必要な医療スタッフについて」です。非常に平たい言い方をさせていただけれ ば、どういうドクターがいればこういった高次な集中治療、救急医療が可能なのかという ようなこと、ナースについて、コメディカルについてのご意見を賜りたいと考えています。  続いて参考資料1です。これは日本小児科学会と、日本集中治療医学会による「小児集 中治療部設置のための指針-2007年3月-」というものです。添付しました。  参考資料2は「救急医療対策事業実施要綱」の中から、救命救急センターに関する部分 を抜粋したもので、その中で、救命救急センターに小児救急専門病床を設置する場合につ いて記載した部分には、下線を付しています。  お戻りいただいて、資料3「小児の救命救急医療体制の整備のあり方について(議論のた たき台)」です。地域において、初期から高次までの小児救急医療を切れ目なく提供し、 かつ、小児の救急医療全体の質を向上させるような整備のあり方について、ご議論いただ きたいと考えています。  3「課題の抽出」ですが、地域の実情に応じて、救命救急医療についても受け皿を整備す る必要があるのではないか。2番目ですが、そのためには小児医療、一般救急医療とも連携 したネットワークを地域に形成することが必要ではないか。  これにつきまして、資料3-(2)として、イメージ図を描いています。矢印は重篤な小児患 者の流れです。☆が救命救急センター、□は小児専門病院を示しています。もちろん、地 域の中にはほかにたくさんの医療機関があるわけですが、イメージということで、救命救 急センターと小児専門病院を記しています。  どういったイメージかと申しますと、地域Aをご覧ください。まず、小児専門病院と救 命救急センターですが、小児専門病院が真ん中の□で1つありまして、救命救急センター は☆となって5カ所あります。そのような地域において、小児専門病院に小児集中治療病 床を整備、また、右下にある救命救急センターに小児集中治療病床を整備したというイメ ージです。  いちばん下の「事故現場」で、重篤な小児患者が発生したと考えますと、通常いちばん 近くの、左の救命救急センターに運ばれるわけですが、そのほかに小児集中治療病床を持 っている小児専門病院、もしくは救命救急センターにも運ばれるかもしれないということ で、3方向に矢印を付しています。  そして、いちばん最初に運ばれるかもしれない救命救急センターには、小児集中治療病 床がないという設定で考えますと、初期治療後、もしかすると必要に応じて、小児集中治 療病床のある小児専門病院もしくは救命救急センターへ転送になるかもしれないといった イメージです。  地域Bについては、小児専門病院がない地域で、救命救急センターが5つあって、その うちの2つに小児集中治療病床を整備した場合のイメージです。  地域Cは、小児専門病院が非常に救急を積極的にやってくださっているということで、 そこに小児集中治療病床を整備したというイメージです。もちろんイメージは書き切れな いのですが、例示として3つほど出させていただきました。  前の頁にお戻りいただきます。「課題の抽出」の3つ目の○です。「小児の救急患者に 対応する一方、既に入院中の重症患者に対しても、質の高い集中治療を必要に応じて提供 することが可能にならないか」。  4番目の○で、「整備された小児救急医療体制に基づく医療計画の見直し、住民への周知 が必要ではないか」。  続いて、皆様にご検討いただきたいポイントを、5つ提示させていただきます。そして、 参考資料がたくさんありますので、併せてご説明します。最初の○で「小児救急と一般救 急との連携強化」です。これの参考資料として、参考資料3は救命救急センターの一覧で すが、その中に、(ドクターヘリ・ドクターカー・小児救急専門病床の設置状況)を併せ て記しています。  続いて参考資料4です。これはいわゆる小児病院と言っていいかと思いますが、「日本 小児総合医療施設協議会会員施設一覧」です。その日本小児総合医療施設協議会のホーム ページより転載させていただいています。29の施設の一覧ですが、右のいちばん端に型と いうことで、1、2、3という数字が書いてありますが、それについての説明は、裏側のいち ばん下で、「1型 独立病院型」、「2型 小児病棟・療養型」、「3型 小児病棟型」、独立 した病院ではないけれども、複数の病棟群に小児病床が集約的に配置されているという説 明が付してあります。  資料3にお戻りいただいて、「検討事項」の2番目の○で「小児救急とメディカルコント ロール協議会との連携強化」です。これについては、参考資料5で、東京消防庁メディカ ルコントロール協議会救急処置基準委員会ワーキンググループから資料をいただいていま す。この部分については、このあと有賀先生よりご発言をいただきます。  また資料3「検討事項」の3番目の○で、「地域における搬送及び受入れルールの策定」 についてです。先ほどのメディカルコントロール協議会とも関連する事項ではありますが、 事務局では参考資料6を用意しています。これは、今度審議される予定になっている消防 法の一部を改正する法律案の概要です。  いちばん上の四角に囲われた3行部分に要約があります。「都道府県が傷病者の搬送及 び受入れの実施基準を定めるとともに、当該実施基準に関し意見を聴くため、消防機関、 医療機関等を構成員とする協議会を設置する等の改正を行う」となっています。  資料3にお戻りいただきます。「検討事項」の4番目の○で、「小児救急の核となる医療 機関へのアクセスの確保」です。これについて事務局でご用意したのが、参考資料7です。 「救急医療用ヘリコプターの導入促進に係る諸課題に関する検討会 報告書概要」です。 また、裏側には、平成21年3月31日現在のドクターヘリの導入状況が示してありまして、 16道府県にて導入されているという状況です。  資料3の「検討事項」のいちばん下の○で、「重篤な小児患者に対応できる病床の必要 数の算定」です。これについては、あとで阪井委員からご発表いただきます。事務局から は以上です。 ○座長 膨大な資料で、お目通しはなかなかかなわないところですが、時間がある時にお 目通しください。この会では議論を深めたいので、先に進めます。  資料2と資料3というのがありますが、その順番に沿って議論を進める予定でしたが、体 制が先にないとうまく話が進みません。それから個々の問題を考えます。  座長として基本的な姿勢を確認しておきます。この検討会は救急救命あるいは三次医療、 あるいはここでテーマとしている重篤な小児患者の医療提供を集中的に議論する場で、一 次、二次との関連が集中的に議論できないのが残念ですが、その点をお含みおきを願いま す。  第2点は、外来機能の充実は当然ですが、そのあとの治療ということで、集中治療、重 症治療がどのように行われるべきかということが、大きな議論のテーマになると思います。  3点目として、既存のものを規制するのではなくて、育てる視点が必要だと思います。で すからいま頑張っておられるところをこうあるべきだ、ここに当てはまらないとそこはや めるべきだというつもりは全くありません。育てていくのだ、それは少し時間のかかるこ とですから、同時に即効性のある部分を提言していくことが、私たちには求められている のではないかということで、方向性を示して、実現可能な地域や施設からモデル化的に、 これでご議論願ったことを開始していければいいのかなと思っています。  話題として、最初に体制そのものを議論していくことが必要なわけです。前回ご議論い ただいた中で、1型、2型という話がありました。言葉遣いはいろいろと問題があるかもし れませんが、基本のコンセプトとして、例えば成育あるいは静岡の例が示されました、非 常に高度な救急からの集中治療が行われているわけですけれども、八幡病院の例でも示さ れました。ここも非常にいい三次医療をやっているわけですが、市川委員から、「それで もさらなる高次医療が砦として必要だ」ということが述べられました。すなわち、三次対 応医療機関の中でも、役割に違いがあるのではないかということが考えられますのでそう いうことを踏まえながら、この体制整備についてのご議論をいただきたいと思います。  有賀委員のご発言の前に確認しておきたいことがあります。それは、前回山田委員から 出された1型、2型、あるいはそういうコンセプトに関して、もう一度山田委員から、簡略 にご説明を願えればと思います。よろしくお願いします。 ○山田委員 はい。PICUの1型、2型について申し上げます。1型というのは、あくまでも、 1小児科と看護単位を独立して有する。これは現実問題としては、小児病院、こども病院が 中心になると思います。そこで展開される医療です。それは院外発生、院内発生を、とも に包括したようなPICUを想定すると。  2型に関しては、いま実際に小児を扱っている救命救急センターで、優先して小児を診る 病床を、2床程度救命センターに設置するということで、1型と2型は全く別ものではなし に、当然その間の連携は必要である。初期のスタビライゼーションを行って、2型から1型 へ搬送する場合もある。さらに高次医療を求める場合は、2型よりも1型のほうが、現実的 に経験数、治療成績などもいい。それは論文的にも日本医大北総病院のほうからも、そう いうデータが出ています。  そういったことで、1型、2型というのは、いまの状況からいって、お互いに補完し合い ながら進めていく必要があるのではないかということで、2つの型を提案させていただきま した。以上です。 ○座長 このことをもう一度確認をしておきます。先生方、名前は別として、こういう基 本的なコンセプトはいいかどうかということを、ご発言があればお受けします。なければ、 こういうコンセプトで進んでいいのだという解釈でよろしゅうございますか。 ○阪井委員 いまの山田委員のお話しに2つコメントします。1つは、1型の話で「独立し た看護単位と独立した小児科」とありましたが、看護単位を独立するのはそうだと思いま すが、独立した小児科ではなくて、小児科の枠ではないのです。私とか植田先生、宮坂先 生がやっているのは、小児科ではなくて小児医療だと思っています。  つまり、従来の小児科というのは小児内科です。そうではなくて、外傷の患者とか、術 後の患者、中毒の患者、さまざまな患者がいます。あとで話をする機会があると思います が、そういうものを扱うのが小児ICUで、そこにいる専属医が小児集中治療医ということ です。  2つ目のコメントは、「治療成績がいい」「レベルがいい」というのは、非常に微妙な表 現だと思うのですが、日本医大千葉北総から出た論文というのは、少なくともあそこの日 本医大の救命センターで、従来どおり、ドクターヘリで現場からつれてきて、そのまま子 どもの患者を救命センターのICUで診ていた場合よりも、初期治療をした後に私のところ に運んでいただいたほうがよかったと思います。そういうことです。それは両方が連携し たら非常によかったという意味で、どちらが治療設備がいいとかという話ではないと思い ます。あとでまたそれは詳しく申し上げます。 ○座長 そのほかにございますか。 ○石井委員 1回目は欠席しましたので、そのせいもあるのだと思うのですが、いきなり「こ うあるべきだ」というものを2つに分類して、深めていくというやり方は、現場のニーズ がどこにあるかというベースがなくてシステム論から入るという、そういうシステム論は 危ういという印象があります。  やはり現場のニーズというのは、国民からのニーズも含めてですけれども、それに対応 するにはどうしたらいいのか、どれがいちばん効率的かという議論は、どこかに必要だと 思いますので、これが結論の第1項ということではなくて、こういうことをベースに話し 合うということなら異論はありませんが、これがありきで始まるということであれば違和 感があります。 ○山田委員 この議論は突然出てきたのではなくて、前回も発表させていただきました。 小児科学会の小児救急委員会でも、高次医療をどうするかといういろいろな議論がありま した。  実際問題、いま阪井委員からも出ましたように、まだ小児のプリベンタブル・デスがあ るのではないか。それを救うためにどうしたらいいのかということで、小児病院等で集中 治療を行って救命するという考え方が1つです。  もう1つは、実際に重篤患者が発症したときに、直近の病院、特に救命センターに運ん で初期対応をどうするかという問題です。  その2つの問題があって、搬送すればいいということですが、ここにあるようにヘリ搬 送はまだ十分ではありませんし、地上の搬送もまだ十分ではない。そういったことから、 直近の救命センターでまず対応する必要があるのではないか。  そういったところから、いま2つのタイプに分けるべきではないか。また、小児病院も 非常に地域格差、病院による格差があって、積極的に救急医療に対してやっていこうとい う病院と、まだまだそういう気運がないところがあるので、いまの現実で、いま石井委員 がおっしゃったように、本当の国民のニーズに応えるためには、やはり2型のものも必要 なのではないかということで、2型というのが出てきたという背景があります。以上です。 ○座長 冒頭にも話をしましたが、こうあるべきだ、あるいはこういうふうに育てるとい う視点ということを、もう一度繰り返させていただきます。前回のご発表あるいは山田委 員のいまのご発言もありますように、これは国民のニーズを我々なりに汲み取った結果と して、こういうことが出ていることを、ご了解いただきたいと思います。  それでは、救急体制にかかわって、いまの1型、2型にしても、先ほどの阪井委員のご発 言でもありました連携ということ、これは病院間の連携でしたが、現場との連携というこ とで、資料5が配られていますが、それを基に、メディカルコントロール協議会で、救急 処置基準委員会の委員長をしておられます有賀委員にお話をいただきます。よろしくお願 いします。 ○有賀委員 昭和医大の有賀と申します。今日の重篤な小児患者に対する救急医療体制の 検討という中で、少し現場的な話を織り込みながら考えを述べてほしい、ということもあ りましたので、急遽参考資料5を用意しました。  参考資料5の最初の頁は0頁で、これは私が今朝方、事務局にお送りしました、私のしゃ べろうとすることのレジメです。1頁、2頁、3頁と、後ろにホチキスで止まっていますが、 これはいま発言された阪井先生も交えて、1頁のいちばん上にありますが、東京都メディカ ルコントロール協議会の処置基準委員会の中で、小児の救命センターなどへの搬送につい ての議論をしようではないかと。ここに「非外傷」とありますが、おそらく外傷も含めた 形での広い議論になるのではないかと思いますが、いずれにしても、東京ではそのような 議論を始めようということで、そのための資料が、1、2、3、4、5、6とあります。  結論的には、1が、緊急性ということを軸に、きちんと患者を運ばないと悲しい結果にな ってしまう子どもたちが多いのだと。だから、こういう形ででも、少し運び方についての 作法を変えたいと。  2、3、4、5、7頁は、従前から東京消防庁が、処置基準委員会という名前ができるもっと 昔から、乳幼児の観察とか、小さな子たちをどのように見ながら運ぶかについての決めご とです。  2頁を見ていただくと、乳幼児の観察カードの中に「外見」というのがありまして、高度 の黄疸とか紫斑とか、3頁の上のほうには「粘血便」「黒色便」とあります。おそらく、緊 急度、重症度がわかりやすくきちんと分けられながら議論する前の、歴史的な、そういう 状況を背負って今日に至っているという状況があります。それで、東京では成育医療セン ターのスタッフが、非常にアクティブに、子どもについての搬送や治療についての発言を されてきましたので、このワーキンググループで是非やっていこうと。  実は、このように救急隊が現場で患者を拾って、どこへ運んでいくかという議論を詰め るのは、同時進行的に、運ばれる医療施設のキャラクターをそれなりに議論することにな ると思われます。そういう意味では表裏一体というか、同じような議論をしていかなくて はいけないということがあります。おそらく石井先生が、突然1も2もなかろうという話を おっしゃったのは、確かに言われてみればそのとおりで、最初に1ありき、最初に2ありき と言っても、頭の中で一生懸命整理しながら、あそこは阪井先生のところは1だなとか、 そのように思うのが関の山で、東京ではいま言ったように、何となく1や2が浮かぶのです が、地域にいけば、一体何のことだという話も十分にあり得るわけです。  参考資料5の最初の頁だけ手短に説明しますが、いま言ったように、大きいI、II、III があります。大きいIが総論的な話で、IIがそれぞれの地域はどうなのか、IIIは検討会の 全体の流れとしてはこうなのではないかという提案のようなものです。  大きいIのところに、MC体制とある。これはあまり馴染のない先生方からすると、一体 何なのかということになるので、少し説明をします。溝口先生から出てきている、参考資 料6の「消防法の一部を改正する法律案の概要」というのがありますが、ここにある四角 の中の3行目にある協議会というのは、すでに協議会をやっているところでは、メディカ ルコントロール協議会と呼びながらしているところが多いです。  そこの協議会は何をしているかというと、もともとの正味の仕事は、救急隊員または救 急救命士の作業の質をよくしようということです。気管挿管ができたほうがいいというこ とがあれば、気管挿管をどのように具体的にやらせるか。やらせた後にそれを検証して、 もっとこのようにしたらいいのではないかということで、そのようなことをMC協議会で やっているわけです。  MC協議会の中には、私のように処置基準委員会、つまり救急隊員がどのような判断をし て、どのような作業をするかということの作法を決めるところと、そのあとの事後検証委 員会があります。事後検証委員会で新しいプロトコールを作れとなれば、それを処置基準 委員会で具体化する。すると、今度はそれを教育しないといけませんから、教育に関する 委員会という形で、いくつかの委員会がMC協議会の下にぶら下がっています。  1)にありますが、例えば脳卒中に関して言いますと、MC協議会のほうは、救急隊員によ る脳卒中の観察や判断、シンシナティーのプレホスピタルのスケールだとか、川崎医大の プレホスピタルのスケールなどを使って、判断の方法についてのルールを決めていきます。  ルールを決めて、見たら判断して、次にどうするかという話になってきたときには、今 度は医療施設です。それは救急医療体制です。東京でいうと、東京都救急医療対策協議会 です。その中に、脳卒中の急性期の連携に関することの話があって、例えばt-PAの使用可 能な施設について、手を挙げていただいて、認定をして、それをきちんとリスティングし て公表します。そして、その病院それぞれに、日割りとか時間割りのカレンダーを作って いただきます。そのカレンダーを消防本部がもらって、そして搬送します。このような話 です。産科もそうなのです。重症度や緊急度の観察や判断、これは妊婦さんの判断になり ますが、そのような判断をした後、予めいただいたカレンダーに従って搬送するという話 になるわけです。  では(2)施設の準備とありますが例えば昭和大の救命センターと、産科の先生方がどのよ うに連携するか。場合によっては脳卒中ということもありますから、脳外科がどう連携す るのか、麻酔科はどうするのか、その他術後のICUをどうするのか。場合によっては、産 科に戻るのであれば、そのベッドはどうかということで、その辺のことを準備するわけで す。そして、それを行政がある程度認定したとすると、それでもって、今日はどこ、明日 はどことカレンダーを作ります。  患者を運ぶということから言いますと、自宅から運ぶ、産科のクリニックから運ぶ、病 院から運ぶ場合があります。いま言った病院から運ぶにしても、昭和大学まで運ぶ途中に、 ほかに救命センターがあったときにどうするか。遠くの昭和大学に運ぶよりは、新宿で患 者を降ろせという話がありますので、途中で救命センターへ降ろすなどの搬送のルールを 決めます。  したがって、MC協議会によるMC体制と、ここで議論されているような1型、2型とい う医療を提供する体制とは、いま言ったように表裏一体の関係になるわけです。くだんの 小児に関して言うと、東京では、こういうことで子どもが比較的悲しい目に遭っているの で、是非救急隊としてはしっかりと運ぼうではないか。昔の運ぶルールではきちんと運ば れていない可能性が高いので、この際もうちょっと緊急性をきちんとさせた形で運ぼうで はないか。  まだ決まってはいませんが、いまの資料の最後の8頁に、「小児重症度判断基準」とあ ります。重症度と書いていますが、従来の言葉でいう重症度で、これから変えていこうと いうことでいけば緊急度の判断基準です。右側が現行のそれで、左側が阪井先生たちが出 しているものです。これから先は、これを少し揉みながら決めていくということで、小児 の厳しい患者を運ぶことを考えたいと。  運びたいという話が出てきたときに、同時にどうなるかというと、運び先になります。 東京では、MC協議会の処置基準委員会でのワーキンググループが、ある程度考え方をまと めつつあるという状況なので、ここから先はどうなるかわかりませんが、おそらく医師会 を含めた施設面での協議になりますと、おそらく救命救急センターが、そういう意味では PICU2型になるのでしょうか。私は「水準2」と書いています。水準1は阪井先生のところ しかないと思うので。そういう意味で、そこら辺をどうするのか。もし水準2だとすると、 小児科の先生方や他の診療科の先生方は、どのように動くのか。中毒が来たときに、私た ちと小児科の先生はどうするのかもありますし、全体として総合診療をどのようにしてい くかという話になるのだと思います。  そのときには、必ず病院の中の一般ICU、救命救急センターのICU、病院の中のCCUそ の他たくさんありますので、そういう意味では、ストラクチャーとプロセスに関する議論 は、各施設において行われるだろうと。各施設で行われる中でエッセンスが出てきたとき に、そのエッセンスを使って、(1)(2)を合作させて、新しい形で運ぼうという話になるのだ と思います。  そうなりますと、先ほど石井先生が言われたように、突然出てきたという話ではなくて、 患者を抱えてしまった側が、次に運びたいという話がいきますので、順番に話が上がって いくのだろうと。だから、最初から、空から天孫降臨のように下りてくるのではなくて、 下から上がっていくような形で、施設のキャラクターなり景色なりがまとまってくるので はないかと考える次第です。  したがって、IIにあるように、搬送のルールを決めるという話は、患者の行き先である 受け手です。私はよくピッチャーとキャッチャーと言いますが、総務省のピッチャー側が 搬送のルールを決めたところで、キャッチャーがいないと野球になりませんから、そうす るとキャッチャーはどうするか。これはもう地域ごとにかなり違うはずです。都市部と田 園地帯の違いもあります。  田園地帯にある千葉北総病院も、PICU1型ということを考えたときには、ヘリで東京ま で運んで来ると。これが正直なところだと思います。  地べたを運ぶ救急車と、空を飛ぶヘリコプターの話がどうなるのか。東京から出発する とすると、東京型のドクターヘリというのは、東京消防庁が一括的にやろうと言っていま すから、子どもに関してどう運ぶのかは、これから議論されるのだと思います。  小児科の施設の集中化も、おそらく避けて通れない問題です。これは今回に関してのみ を言ってもこうなるでしょうし、そうでなくて全体から見ても、こうなるのだろうという 話だと思います。これは地域ごとの状況になりますから、ここではエッセンスとしての議 論ができるのだ思いますから、地域に下りていったときには、それぞれの地域の状況があ りますので、いま言った積み上げながら話をしていくことは当たり前でしょうが、いずれ にしても地域になりますので、その地域でうまくやろうという話です。  したがって、検討会は問題点をいままでのように整理されてきて、これから先はMCを どう利用するか。溝口先生がそこに座っておられますので、そういう意味では、この会で 消防法の改正も含めて、地域医療の全体、いま言った、うんとうまくやっているMC協議 会もあるし、うまくいっていないMC協議会もあるということで、総務省で全体としての 質をコントロールするために消防法を改正していったと私は理解しています。そういう意 味では、そのことが上手にいけば、その暁にはこの手の話はうまく乗れるのではないかと 想像します。  MCの話は、先ほど話をしたように、運び手がいたときには必ずキャッチャーがいなけれ ばいけないので、キャッチャーについては完全にストラクチャーの整備をどうするかとい うことです。これは人もそうですし、箱もそうです。箱や人が十二分にいるかどうかとい う話の次には工夫の世界になってくると思いますので、2)と3)は工夫の世界の議論になる と思う次第です。MCの話を主にということで事務局から言われましたので、このようにま とめました。あと何かありましたらご質問ください。以上です。 ○座長 ただいまのお話は、最後におっしゃいましたように、運び側と受入れ側というこ とでうまくお話ができたと思います。このことに関して、まずルール作りをしようではな いか。これに関しても地域差、温度差があるということですが、こういうもので、東京で もMCとの連携がうまくいっていると考えていいのでしょうか。 ○有賀委員 いま言った東京消防庁。東京には消防本部が厳格に言うと6つあります。島 が3つと、稲城と東久留米です。6つの消防本部がどうするかという話を、全体としてMC でやるというのが筋は筋ですが、基本的には東京消防庁に右に倣えということがあります。  東京消防庁そのものも、まだ子どもに関して、阪井先生たちが、1の頁にあるような、こ のようなのがいいのではないかということで、コンセンサスが得られている状況ではあり ません。ですから、まだ子どもが寂しいことになっている可能性はあります。どのくらい あるかは私はよくわかりません。ですから、そういう意味で、うまくいっているかという と、うまくいこうとしているという話です。  この運び手のほうのルールが決まると、自動的にキャッチャーが身構えないといけませ んから、そうなると東京の阪井先生のところも含めた救命救急センターなど、おそらく子 どもで一生懸命やっている集中治療を持っているようなところは、先ほどの脳卒中もそう ですが、日勤帯はいいけれども夜は駄目とか、そういうことはあるのかもしれません。そ のようなところも含めて、場合によっては救命センター以外の施設も参入する可能性はあ ってもいいのではないかと思いますが、いずれにしても、運び手が、こんなものをこの水 準以上のところへ運びたいというメッセージを出せば、受け手側してはそれを受けて、何 らかの形で体制を整えていかなければいけないと思います。それは脳卒中もそうでしたし、 産科もそうだったという話になりますので、本件もそうであろうという感じです。 ○座長 委員の中には地域からおいでの方がおられますが、どなたかご自分の地域で、MC あるいはMC協議会との連携で、このような点が問題である、あるいはここを工夫してう まくいっているという話がありましたら、お出しください。市川委員のところはいかがで しょうか。 ○市川委員 地域のMCに小児科医が入っていないという弱点はありますが、少なくとも 機能別の医療を救急隊が把握していて、少なくとも北九州地区では問題なく搬送は行われ ています。事故外傷は我々のところに来ますが、循環器疾患はK病院に行くという形の住 み分けはMCの中で行われて、完成していると考えています。 ○座長 MCで小児科医がいないとしても、そのような住み分けがうまくいっているという ことは、これからも必要だろうという理解だと思います。 ○有賀委員 産科のときもそうだったのですが、ぜひ産科、小児科の先生方にMC体制に 入っていただいて、一緒にMC全体を支えていくような仕組みに参画していただきたいと いう話をしています。  産科救急に関連したところでは、新生児を診る小児科学の先生方と、産科学の先生方に は、入っていただくのは決まっています。今回のことに関して言えば、阪井先生はワーキ ンググループにも入っていますので、論理的には自動的に組み込まれてしまう運命をたど ることになると思いますので、よろしくお願いします。 ○石井委員 MCに関連して、1つは先ほどのスケールの大きさが、という議論と関連して 申し上げますと、テーマのすべての重篤な小児患者をどう選ぶかというのが、いちばん大 きな命題なわけです。  すべてといった場合に、小児の患者というのは夥しい数です。その母集団から、それが 全国に、時間帯でディストリビュートしているのから、最後のコアの重篤な、真に必要な 医療をどうやって速やかに提供するかという裾野は、実に広い話なのだと思うのです。そ れがまず第1点です。  もう1つは、乳幼児となりますと、周産期医療との連携が、必ず1つのラインとして特徴 的なものになるのではないかと思います。ですから、いわゆるネットワークの中でも、そ のライン1本は太い線で引っ張っておかないといけないとは思います。  もう1つは、すべての患者に最上の医療を提供しようとすると、いままで日本の文化の 中であったことは、1つは階層化した中で順番に上げていって、最後に適切なところにいこ うと。それをやると、今度はアクセスタイムだとか、セレクション、マッチングの問題が 生じているというのが、今日的な問題です。  そうなると、それを解決するにはどうするか。オールアクセプトの部分をどこかに持つ か、それに近いもの、各二次医療圏につくるかというのが、今日的なテーマになっている わけです。ER型と言うか、どう言うかはいろいろありますから、そういうことがあります。  もう1点言わなければいけないのは、集約化といった場合には、総論は皆さん賛成なの です。どの分野にいっても賛成なのです。ところが、各論になると、しからばこの地域か ら専門家がいなくなりますという話が出た瞬間に、今度は騒然となるのです。各論はほと んど反対で、集約化された地域は全員賛成で、その周りのドーナツの残りの部分は全員反 対という構造が成り立つのです。それが2極化でやっているときも同じなのです。  周産期医療の場合だと、宮崎モデルというのは、そういう意味で総合というものを持た ない、2つの中規模の並立状態がうまく機能しているというモデルがあります。  ですから、専門家の先生方の議論の中で、1つと2つで、ドクターの数とベッド数がこう だとおっしゃっていますが、夥しいアクセスにどう応える、どこまでのものを想定されて いるのか。それとも全部、最初の直接の搬送をお断りされるようなモデルで考えているの か。ここのところは押さえておかないと、その周辺領域の組み方が違うと思うのです。も しそういうことがわかっているのだったら教えてください。 ○座長 どなたかご発言はありますか。 ○有賀委員 これはたぶん阪井先生がお話になったほうがいいと思いますが、阪井先生の 参考資料5の1頁に「全身状態と身体所見」とか、「バイタルサインと瞳孔所見」とありま すが、基本的には資料2にある「求められる機能」にある、(1)診療領域を問わず、すべて の重篤な小児患者に対して、「重篤な」と書いてありますので、黄疸で重篤なとか、下血 で重篤なとか、そこら辺が入ってきて重症度と緊急度とが混乱してしまったという歴史が あるので、「重篤な」という話も、場合によっては「超緊急的な」という形で置き換えた ほうがいいのかもしれません。小児の患者をグルッと投網で拾うような意味ではなくて、1 頁にあるStep1、Step2に書いてあるような、救命救急センターに運ぶべきだと阪井先生た ちが思うようなもの、そういうものを当面の対象にしていると私は理解しています。阪井 先生、フォローしていただけますか。 ○阪井委員 全くおっしゃるとおりです。緊急度というところを持ち出そうというか、救 急の世界では当たり前のことだと思いますが、小児では、いままで重篤な疾患かどうかと か、喘息に関しては三次救急まで受けられるとか、そういう議論があったのです。だから、 非常に変なことになっていたので、緊急度の高いものをどうやって選ぶかという視点で話 をしていて、これは私は日本以外の国では、どこでもそうやっていると思っています。 ○石井委員 要するに緊急の小児の患者は全部診るということですが、それはどこでセレ クトするのでしょうか。 ○有賀委員 だから、それを東京では消防本部が責任をもって、然るべきところへ運ぼう という議論をMC協議会の中で始めたという話です。  だから、どれぐらいの患者がこれから出てくるだろうという話は、阪井先生のほうで計 算があるのだとは思いますが、いずれにしても、いまそのようなルールで運ばれていない ので、そのようなルールで運ぶことを決めていけば、参考資料5の1頁にあるような患者が どのくらいいて、救命センターにどのくらい、または阪井先生のところへどのくらいとい うことで、議論ができるということになるのです。  ですから、黄疸がとても大変な重篤な患者というのとか粘血便が出ていて大変だという 話ではないということです。 ○石井委員 あまり各論にいってしまうと。 ○有賀委員 各論ではなくて、ここで言っている重篤な小児患者に関する救急医療の整備 というのは、もともとそのようなところから出発したということです。 ○石井委員 ですから、例えば救急車を呼んだら、そこでセレクションが利くと。では、 救急車を呼ばないとそこには行けないのか。 ○有賀委員 それは産科のときと同じように議論をすればよいと思います。まずは尋常で はないと思って、お母さんたちが呼ぶだろうということをアプリオリに考えて出発してい ます。お母さんが子どもを抱えて飛び込む症例があることは百も承知です。それはそれと して、この話が決着したら、また考えればいいのではないかと私は思っています。 ○石井委員 逆だと思います。そういうものをアクセプトする施設として考えるのか、そ れともそうでないのか。 ○有賀委員 いやいや、だから先生、そういう意味では、どこにでもお母さん、お父さん は子どもを抱えて飛び込むわけです。その次に阪井先生の所へ行く、有賀の所に行くとい う話はあるわけです。 ○石井委員 だからダイレクトには受けない。 ○有賀委員 ダイレクトに来てもいいですけれども。 ○石井委員 来てもいい。 ○有賀委員 それは、例えば私たちの昭和大学にダイレクトに来たら、有賀たちが面倒を 見る患者さんなのかということを、そこでトリアージすればいいだけの話ですから。 ○石井委員 そこでね。 ○有賀委員 ええ。 ○座長 入口の1つとして救急車があり、いまの子どもだとダイレクトも1つの入口だし、 いくつかの入口が重篤な場合はあると思います。 ○石井委員 そうですけど。 ○座長 それで受けた医療機関で本当に重篤で、三次の医療が必要かどうかを判断して、 その施設が適切であればそこで診るだろうし、そうでなければ阪井先生や植田先生の所に 送るだろうという、こういう道筋ができないかご議論いただいているわけですが、地域の ところで渡部委員、どうぞ。 ○渡部委員 石井先生は今回いらしたばかりなので、PICU1型、2型の話は唐突に見えたと 思うのです。私の理解は、小児を一次、二次、三次で分けて、三次救急医療をやっていま したけれども、それでは院外発生の外傷の患者が救えなかったということなのです。です から、今の三次医療では救えていないので、その三次を3の1と3の2に分けて、3の2を 新たに作ろうという形で私は思っているのです。  3の2はPICUの1型に当たっていて、広域で外傷患者をすぐに受け入れる小児集中治療 の専用施設であって、3の1はPICUの2型に当たっていて、従来の三次救急医療体制、救 命救急センター内の小児ICUベッドですが、それを否定している訳ではありません。パッ と当てはめたと先生は思ったのでしょうが、そうではないと私は認識しています。 ○座長 ありがとうございました。宮坂先生、何かご発言はございますか。 ○宮坂委員 石井先生のように思うのも理解できるのです。子どもは一次、二次、三次と 分けられないという現実があって、そのために長野ではどうしているかというと、とにか く長野には一次、二次、三次に関係なくこども病院が1つあって、それが今回の1月、2月 も含めた成育医療センターみたいな形で静岡も同じですが、その下に5つか6つぐらいの基 幹病院があり、さらに一般があるという形が浸透していますから、とにかく困ったらこど も病院に運んで来る。そのときには直接来てもいいし救急車でもいいし、とにかくいつで も来られるし絶対断らない。そういう形ができつつありますので、大きくは日本全国がそ ういうふうになればいいと思います。  ただ、今日もスタートの段階で中澤座長がおっしゃったように、既存のシステムでこれ から育てていくという前提もありますので、山田先生からあった2つに分けるというのは、 結果的に妥当かなという気がします。いずれにしても一次から三次まで分けて、これはこ こに行くという形がとれないという前提は、一応、あるのだと思っています。 ○座長 ありがとうございました。このお話をしますといつも議論になるお話で、これは 常に並行して議論を進めていかないといけない部分だろうと思います。患者さんが救急難 民ということで、いま難民という言葉が流行っていますけれども、そういう形にならない ようなシステム、かつ、とても重症で命に関わる患者がうまく助けられるようなシステム ということを念頭に置いて、この検討会では冒頭にもお話したように、いちばん上の部分 だけを集中的にやろうということ。切り離せないのは分かっていますけれども、そういう ことをご理解願いたいと思います。  いま、ICUの話、PICUの話が少し出てきましたので、ここで阪井委員に、少しスライド を使った上で説明をいただきたいと思います。よろしくお願いします。                 (スライド開始) ○阪井委員 今日の話ですが、大内専門官から「一体、お前の言っているPICUは、日本で 何床ぐらいあったらいいのか。必要な数はどれぐらいだ」という話がありましたので、そ れを軸に考えました。その数は「阪井委員提出資料」の14頁の上半分にあるように、最後 のスライドとして後で出しますが、「わが国に必要なPICU病床数(2)」と書いてあります。 そのいちばん下の行の「PICU病床数は、430床」というのが、今日の私の返事です。  このPICUというのは、山田先生がおっしゃっている1型に相当するのだろうと思います。 それは今から詳しく話します。それがないと430の意味も出てきませんので、言い換えれ ば、2型PICUというのはPICUの中に入れていないという文脈での話です。詳しくは今か ら申し上げます。 ☆スライド 今日の話の内容ですが、わが国の小児医療体制の特徴ということです。その 特徴の上に、重症患者を救命するための方策というのをお話します。PICUの意義、PICU の規模と診療と質の関係、次にPICU病床の数ですが、現状としてアメリカ合衆国、オース トラリア、ニュージーランドの現状の報告がありますので、これをお話させていただき、 最後に日本での推計として幾つぐらい必要かという話になります。 ☆スライド わが国の小児医療体制の特徴として、私は「広く、薄く」ということだと思 っています。例えば小児科を取り上げた場合、病院の小児科というのは「一人医長」で1 人しか小児科医がいない。その人が医長であり医員であって何でもやる。要するに小児科 医が1人しかいない小児科が実は最も多いのです。ですから小児科の専門医でしょうけれ ども1人で何ができるか、当然限度があります。  新生児科(NICU)を見た場合も、日本のNICUは非常にレベルが高いということになって いますが、実際、新生児の死亡数は少ない。世界的に見ても非常によろしいのですが、現 場は3床のNICUが最も多い。先ほどの一人医長の小児科と似ています。なぜ3床かという と、診療報酬上、看護師1人で3人まで見られる1:3となっているからです。看護師も数多 くいない現状で、新生児もそんなにたくさん来ないだろうということもあり、大規模なも のを作るよりも自分の所に1つ作る。先ほど石井先生がおっしゃったような総論賛成、各 論反対みたいな感じがありますが、3床ばかりです。しかしながら、いま新生児学会では、 3床のNICUは診療の質がよくないから、それをもっと集めて大きい規模にしたほうが、診 療の質が上がるという明らかなデータが出ていて、そういうふうに変えつつある。これは 非常に皆さんは苦労されたと思います。  小児心臓外科で、子どもの先天性心疾患の外科治療を見た場合に、日本でそれを専門的 にやっている施設、例えば日本で手術をいちばん数多くやっているのは榊原記念病院だと 思いますが、年間の小児心臓外科の手術件数が500例余りです。欧米の、例えばボストン の小児病院が年間1,100ぐらいです。ヒューストンが1,400、中国の上海は1,700となって いますが、日本でいちばん多いと言われる所の2倍以上の手術をやっているわけで、いか に「広く、薄く」かということが分かります。こういう先端的な医療でさえもそうです。  その結果、重症患者に対応できない。経験や知見が集積しない。医師の過剰な労働時間 や疲弊を招いて、ますます経験や知見が集積しないし、重症患者に対応できないとなると 思います。 ☆スライド 中澤先生をはじめ、私も入れていただいた小児科学会の「小児医療供給提供 体制の改革に向けて」というプロジェクトチームで作った図を、私が一部変えさせていた だきました。基本的には集約化、重点化なのですが、人口が300〜500万に1カ所、小児医 療の中核病院をつくる。200〜300万と最初言っていましたが、私は300〜500万だと思って います。その理由は今から申し上げます。救命救急センターが入っていなかったので、小 児学会内部で話をしていましたし、当然これを加えなければというので書き加えました。 それでヘリコプターを書き加えたのですが、これが私の改変です。要するに救命センター と連携し、あるいは第一線で頑張っておられる小児科を中心としたやや小さめの総合病院 と連携して、小児医療の中核病院が救命を行おうという発想です。 ☆スライド 実際、先ほどちょっと申し上げた、日本医大千葉北総病院の益子先生の所と 提携させていただいて、これが約60kmの所にありますが、ここからドクターヘリを使って 搬送するようにしました。 ☆スライド タイトルが、「小児重症患者の救命には小児集中治療施設への患者集約が必 要である」と、言いたいことをそのままタイトルにしましたが、日本医大の救命センター の武井先生が書いてくださった論文が、昨年の日本救急医学会の最優秀論文に選ばれまし た。 ☆スライド 従来、日本医大の千葉北総は、大人が30に対して子どもが1ぐらいの救命セ ンターだと思いますが、どこの救命センターでもたぶんそうだと思います。大人中心の所 で子どもの救命救急患者をずっと診ているICU群は、予測死亡率24.5%に対して実死亡率 27.3%であったけれども、最初に救命センターで初期治療をしていただき、その後、ドクタ ーヘリでPICUに運んだケースに関しては、予測死亡率29.6%で、やや重症の患者さんが来 ておられましたけど、幸い実死亡率がよかったということ。こういうのをオーダーするこ とができました。こうでなければ運ぶ意味がありませんし、こうでなければPICUの存在意 義がないわけです。これは、前回のこの検討会で植田先生が力説してくださったところで す。 ☆スライド 小児重症患者を救命するためには、中核病院での小児医療資源の重点化・集 約化が必要だと思います。ヘリコプターを利用した広域の搬送システムで、初期治療の得 意な救命救急センターと連携し、搬送の得意な所と連携して、小児の中核病院を作ってい けばどうかと考えます。 ☆スライド PICUの意義ですが、これも前回、植田先生がおっしゃったように、小児重症 患者の“最後の砦”であるということで、当たり前のことです。これがなければ意味がな いわけです。有賀先生のおっしゃるキャッチャーということだと思います。 ☆スライド しかし、それだけでなく、ちょっと違った面もあります。ここでわかりやす くNICU(新生児ICU)と比べてみると、宮坂先生なんか使われたスライドですけれども、 新生児ICUは新生児内科であり、未熟児に対する対応がいちばんの旗頭です。したがって 比較的均一な疾患で、年齢層は全部未熟児、新生児です。内科疾患、呼吸管理が中心で、 感染免疫上、閉鎖的環境にならざるを得ない。 ☆スライド それに対してPICUは、さまざまな分野、さまざまな領域、さまざまな科が関 係するという意味で、多様な疾患、雑多な年齢層で、疾患や年齢に応じたアプローチがあ りますし、積極的に呼吸・循環管理、外科的処置もする。開放的環境であって、こういう 所に専門の医師を備えていく。まだ日本ではこれからですが、こういうところを育ててい けば欧米のように救命率を上げられると思っています。 ☆スライド “最後の砦”ということ以外に、卒後教育の場として子どもの心肺蘇生や子 どもの呼吸循環管理、子どもの看取りの医療が非常に日本では遅れていますが、成人に比 べて数少ない患者を集約し、そこで教育をするのは当然の方法であると思います。 ☆スライド 患者家族への精神的サポートで、救命医療と看取りの医療は表裏ですから、 いま日本救急医学会が中心となって看取り、終末期医療という、一見、救急と相反するよ うな話を有賀先生が進めてくださり、非常にうまくいっていると私は思っていますが、子 どものほうでなかなかそういう議論が出てこないのは、何を隠そう、子どものほうはこう いう場がないことが大きいと思います。 ☆スライド 小児の領域では、特に遺伝子、分子生物レベルの研究が盛んですが、もっと 大きな意味での生理学の研究がなされていません。したがって子どもに適した新しい治療 手段が必要です。人工呼吸器1つとっても子どものものがなかなかできない時代ですが、 これもPICUが十分できていないということだと思います。 ☆スライド アメリカの調査では、2005年、257施設を対象にした全国調査をしています。 PICUの病床数は中央値が12床で、成人ICUと同じスペースでやっている。同居している 所が6%以下です。6床以下のPICUではベッドに対する医師・看護師の数がいちばん大き い。これは当然で、6床以下であってもPICUと言うからには当然、医師も看護師もいます。 要するに規模を大きくしたほうが効率的に人を使える。呼吸不全や腎不全に対する対応が 不十分であったということ。 ☆スライド このようなものを持っている。人工呼吸器はどこも持っているけれども、子 ども用の透析やHemofiltration、あるいは二酸化窒素吸入療法などは、PICUと称していても 4分の3ぐらいの所にしかなかったという全国調査です。 ☆スライド 米国では非常にたくさんのPICUを作った反省があり、何とかこれを集約化し ようとして、PICUの規模と診療の質に関係があるのではないかということで、16施設で 2000年に発表されたデータでは、年間の入院患者数を100人増やすと死亡率で5%下げられ ると。5%というのは10%の死亡率が5%になるということではなく、10%の死亡率が9.5 %になるということです。200人増えると10%の死亡が9%になる。こういうデータが出て います。 ☆スライド これはその時のスタディのPICUのベッドの数です。いちばん小さいのが4、 いちばん大きいのが20、中央値が12です。年間1,000例ぐらいの入院があったり、少ない 所は150です。 ☆スライド 死亡率は数パーセントです。10%弱ぐらいの所から2%の所とさまざまです が、外科の患者さん、術後の患者さんが3分の1、4分の1、半分とか占めている。ICUの 患者さんが1割とか2割とか、多少違いますけど、こういう方をすべて診ているPICUとい う意味です。 ☆スライド さらにスタディを5年後に別の15施設でやったところ、大きければ大きいほ どいいというものでもなく、中から大規模ぐらいの所がいちばんいいということです。 ☆スライド 横軸が年間の入院患者数、1,000人、2,000人とあります。縦軸が死亡率で4 %、5%とあります。直線で回帰すると越えなくなりますが、実は2次曲線のほうがより良 くフィットするというのが出ています。そうすると年間入院数が1,400〜1,500あたりが、 いちばんよさそうな感じがします。国立成育医療センターが去年は829ぐらいでしたから、 この辺です。うちが多少大きいと言われますが、世界のレベルから見たらこんなものだと いうことがわかります。 ☆スライド オーストラリアとニュージーランドが非常にいいデータを出していますの で、少し紹介して終わります。 ☆スライド オーストラリアやニュージーランドが非常にうまくできていると思うのは、 これは各州ですが、例えばシドニーのあるニューサウスウェールズ州とか、こういう各州 によって小児人口1,000に対して、PICUに何人の子どもが入院するか。非常にばらつきが ない数字になっていて、うまく地域別にやっている感じがします。 ☆スライド 全部合わせたデータとしては、年齢層は1歳以下が多い、2歳以下が多い、大 体この辺です。中央値が1歳ぐらいです。 ☆スライド どこからPICUに入って来るか。救急から入って来るのが17%ぐらい、病棟 から来るのが15%ぐらい、手術場から来るのが40%ぐらい、こんな感じになっています。 エレクティブというのは、「入るよ」と言われてから6時間ぐらいまで待っているもので、 もともと予定された術後も含めてですが、それが4割ぐらいで、6時間以内、つまり緊急で 来るのがこれぐらいになっています。そういうのを全部入れてみるICUという意味です。 ☆スライド どんな患者さんが来るのかというと、診断別に書くと呼吸、神経、外傷など、 ありとあらゆる患者さんがいる。子どもの特徴として、大人の救命救急センターでは外傷、 中毒、脳血管障害、心血管障害など、比較的決まったところだと思いますが、子どもの場 合はさまざまなものが来ますし、当然、心臓外科の術後なども入っているわけです。 ☆スライド こういうことで、どれぐらいの医療費を使っているか。アメリカはご承知の ように対GDP比で14〜15%と、ものすごいお金を使っている。いま新しい大統領が少し変 えようとしていますが、オーストラリアは実は日本とほとんど同じグループで、対GDP比 で8%台のところにいます。日本がここでオーストラリアがこの辺ですから、ほとんど同じ グループです。こういうふうにやっていて、そんなに医療費がかかっているわけでもない ような感じがします。 ☆スライド 数ですが、これは93年にオーストラリアの先生が言っていたデータで、アメ リカでは小児人口2万にPICU1床、オーストラリアは6万に1床と3倍ぐらい違うわけで す。そうすると日本で15歳以下が1,850万人ぐらいですから、米国基準で考えたら日本全 体で925床、オーストラリア基準で言ったら308床とずいぶん違います。 ☆スライド 先ほどのよくまとまっていた2004年のデータを基に、オーストラリア、ニュ ージーランドの小児人口が500万ぐらいで、PICU入院が年間7,000人ぐらいでしたから、 それを日本の小児人口で割り返すと、PICU入院は2万5,484人ぐらいになります。うちの 国立成育医療センターのICUが看護師7人夜勤ですので、世界標準から見ると実質14床で す。表向き20床と言いますけど、実際は14床で動かしているというわけです。うちは去年、 年間829人の入院がありましたから、同じ入院基準でやるとすると430床あればいいとなり ます。以上です。                 (スライド終了) ○座長 ありがとうございました。アメリカ、オーストラリアのデータを引きながらでし た。PICUの中にはエマージェンシールームからと、院内からということでのデータであっ たと思います。ここで山田委員にPICUの利用実態について調査いただいていますから、数 分でお願いしたいと思います。 ○山田委員 調査といったものと言えないと思いますが、実は1日でいろいろな所に電話 をして、どの程度PICUを持っておられて、年間総入院患者数と、その中で院外と院内のも の、そしていまどんな問題点があるか、その点について電話で聴き取りをしました。その 報告をします。  これは、いま阪井委員が言われたように、日本での年間2万5,000ほどということなので すが、この前お話しましたように、小児の1〜4歳が1,000に対して1.2の死亡率で、OECD では21位と非常に低い。それを詳しく死亡小票で調べてみると、小さな施設で集中治療を あまり受けないで亡くなってしまっている。外傷とか外因系の疾患ですら救命救急センタ ーに運ばれるのは高々4割です。本当にわからないところで亡くなっている。死亡を少なく するにはメディカルコントロールと、先ほどからお話があるように受け皿としてのハード の充足が非常に大事になってきます。そういったことから調べてみました。  成育に関しては阪井先生がおっしゃったように829で、院外が182、転院が128、院内発 生が647、急変したというのが20%です。それ以外は予定手術です。問題としては後方病 床の不足、年齢のキャリーオーバーの問題を抱えておられます。  静岡県立こども病院は、この前植田先生が発表されたように、年間では488で院外が206、 院内が282となっています。兵庫県立こども病院はパーキングを潰して新たに救急病床を 建てました。PICUは4床でHCU6床です。年間で見ると総入院が275名、院外が、これは 外のものを専属でつくっているわけですから255が院外発生、院内は20で院内にも術後の PICUはあります。  問題は後方病床です。神戸大学の准教授だった者が「きずな」という施設を造って、そ こではすべてPICUで、呼吸管理が長くなって気管切開とかがとれない方を全部受け皿とし てやる。常に20人ぐらい呼吸管理の方がおられるという施設です。そこへどんどん、いわ ゆるバックベッドとして患者を搬送する。ないしは「しあわせの村」というのが神戸にあ りますが、いわゆる後方病床としての2つの施設がかなり働いていたのですが、最近では 満床になってきて、本当の意味で受けたくてもPICUの患者を受けられない状況が出てきて いる。  埼玉県立小児医療センターに関しては、先ほどから出ているように大きなPICUを作りま しょうという話が出たのですが、総論賛成、各論反対ということで、結局、話がまとまら ない。大体、年間300例ぐらいあるけれども、詳しいことはわかりませんということです。 PICUはほとんどオペ後に使われている。ただ、各地の救命救急センターからの搬送依頼、 受入依頼が結構あると言っています。  長野は私は分かりませんが、宮坂先生がいま、在宅呼吸器療法とかレスパイト入院を積 極的になさっていますから、そういうバックベッドの問題も解決の方向に進んでおられる のではないかと思います。名古屋の大府にある所は救急対応は全くされていない。夜間は 一切受けていないし、脳外科がないので受けられないということで、あと5年ぐらいを目 処に整備していくと言っておられます。  沖縄県立南部医療センター・こども医療センターは、年間総入院患者数は361、院外が 116、院内発生245、心臓血管外科のオペが非常に多い。やはり同じく沖縄でも後方ベッド がない。沖縄の事情からすると在宅人工呼吸、レスパイト入院等はできていない。その余 裕がないとセンター長は言っておられました。  こういったことで、私が調べたのはほんのわずかなのですが、こういう小児病院の間に も非常に格差がある。ものすごくアクティブにされている所と、一切しませんという所が ある。いま挙げた所以外では香川が少しやっておられるようですが、それ以外はあまり積 極的な取組みは、資金の問題、人の問題でできていない。  そういう格差の問題と、もう1つは後方ベッドの問題がかなり大きな問題になってきて います。小児病院をベースにするようなICUにしてもこれだけの問題がある。さらに救命 救急センターのところはまだ十分できていませんが、今後、重篤小児が救命救急センター にどれだけ入院しているかを、明らかにしていく必要があるのではないかと思います。ざ っとしたことで申し訳ありませんが、これだけのデータがありました。 ○座長 ありがとうございました。主に小児病院、小児医療施設ということだったと思い ます。後方ベッドのことは常に問題になっていると思います。この点に関してご発言をお 願いします。 ○宮坂委員 後方ベッドの前に、長野の大体の概算ですが、8床のICUで年間に350人程度 の入院で、約100人が外部からの搬送、残りが内部からです。おおよそ3分の1が外部、3 分の2が内部という感じです。外部に関しては必ず救急車の搬入患者もいますが原則うち の病院から迎えに行くことにしています。いわゆる外傷で飛び込んで来るというのは、信 州大学の救命救急センターがありますので、そんなに数は多くないです。うちは原則誰も 断りはしないのですが、基本的にMCの関係でそちらに行くと。そうでなくても外部がこ れだけいるということになっています。  もう1つは長期の患者さんのことですが、これはどちらかというと、新生児病床を有効 に使おうというところからスタートして、新生児は後方搬送が周辺の病院とうまくいって いるのですが、それでもだんだんいっぱいになってくるということがあります。うちの病 院の中で半年を超えて入院している方が、約20%ぐらいになった段階で、長期の患者さん をなるべく積極的に自宅にお帰しするようにしています。それが小児医療の本来の形です。 治療の初めの段階から、お子さんの属する場所は、病院内ではなくて本来社会なのですと いうお話をすることにしています。現在、在宅移行支援病床11床ですが、要するに長期の 患者さんの病棟というよりは、ここを介して社会に患者さんが帰って行く。また在宅に帰 ってから何か問題があったときには、いつでも帰って来られるよという安心感を与える目 的で、それが今年の2月からスタートしています。NICUがいっぱいになって、搬入を断る ということもありませんし、小児ICUも、そこがいっぱいだから断るということは基本的 にない形になっています。 ○座長 ありがとうございました。大きな問題があったかと思います。今回、積極的にや られている先生方の施設において非常に利用度が増えていて、それでおそらく患者さんが 集中して、バックアップベッドの問題になっている可能性があるのではないかと考えます。 この点は非常に大きな問題で本当はこの点もご議論いただきたいのですが、時間の関係も ありますし、まずその前に、いま阪井委員からお示しいただいた日本で430ぐらい、ある いはもう少し見積っても500ぐらいのベッドということですが、このベッドをどういうふ うに使っていくか、事務局からお出しいただいた資料2に沿って少し議論を進めてまいり たいと思います。  資料2をご覧いただくと、入室対象患者ということで、年齢に関してはPICU、NICU、あ るいは成人のICUというふうに分けると、小児ということになるのでしょうけれども、こ の辺のところのご意見というのがありますか。と申しますのは、救急の中には私ども小児 科から見ますと、キャリーオーバーとして小児特有の病気が思春期あたりに悪くなってく るというので、救急に飛び込むということもあり得るわけです。この点も踏まえてお願い します。 ○総務省消防庁 オブザーバーの立場から恐縮ですが、先ほど有賀先生から名前をいただ きましたけれども、私、溝口と申します。イメージの共有のために教えていただきたいと 思います。阪井委員提出資料の2頁ですが、人口300〜500万に1ということで小児医療中 核病院となっています。このイメージを少し共有させていただきたいと思っているのです が、人口300万となると、それに達する都道府県というのは非常に限られてくることにな ります。すなわち都道府県という枠を超えて、集約化を図らないといけないという風景を 頭に描いて、議論が進められるという理解でいいのか、確認させていただきたいと思いま した。  おそらく数だけで言うと、日本で25〜40ぐらいの施設ができて、1施設当たりがPICU の1型となるのでしょうか。10〜20床弱ぐらいの話になるのかなと思って拝聴していまし た。参考までに人口300万となると、茨城県、京都、広島ぐらいの話になり、例えば福岡 でおそらく600万いかないぐらいですから1つか2つできるか。東京などを念頭に置くと化 け物のような人数ですので、そこでは議論できるのでしょうけれども、ほかでは3都道府 県一緒とかでないと、こういった施設はできないというイメージを前提に議論が進められ るのかどうなのか。それを確認したいと思いまして発言させていただきました。 ○座長 阪井委員、何かありますか。 ○阪井委員 全くおっしゃるとおりです。広域です。県とか全く関係ない。それぐらい集 めないと成り立たない医療だと思います。 ○座長 座長から発言させていただくと、冒頭にお話しましたように、非常に高度な集中 治療をするのはそういう形であり得るだろうと思います。あるいはそのほうが効率がいい だろうというのは、いまの成績等をお示しいただいたわけですが、では現実的にいまの日 本の政治状況あるいは医療状況を考えて、すぐに一度に3つの県を一緒にやるかというと、 そこまでは飛べないのだろうと私は思っています。ですから、そこで段階を踏んでという ことを冒頭にお話して、今できること、将来はこういう方向に向くんだよという方向を念 頭に置いて議論願いたいと思います。  そういう意味では、県境を跨いで、いい医療機関が2つ並んでいような所がときどき見 られますが、そういう所で県庁所在地に、そこから延々と運ぶということが果たして適切 かどうか。そういうところからご議論願えればと思っています。 ○石井委員 先ほど来、これは質疑が必要だと思って聞いていました。念のために申し上 げますが、私はドクターヘリの普及法案には積極的に参画しましたし、こういう集約化の トレンドというのは当然あり得るべきことだと思うのですが、ただ、例えばニュージーラ ンドという国は、この中にある百科事典を見ましたら人口368万、4大都市に50%の人口集 中です。オーストラリアは都市人口が85%です。この間、オーストラリアに行きましたが、 ほとんど砂漠か森で、人が住んでいるゾーンは非常に小さい。そういう集約的な国家と、 日本のように従来、ばらついたようなディストリビューションの国を、地域医療という形 でどうやって取り上げていくかというトレンドとは、少しモデルが離れているのではない かという気がします。  もう1つ、アメリカも同様です。アメリカでは地域医療という概念、コミュニティ・ヘ ルスというのが何を指しているのか、なかなか通じません。素晴らしい病院はありますし パフォーマンスはすごい。しかしながら、その地域のレベルが平準化して非常にレベルア ップされているかというと、必ずしもそうではない。それがあの国の特徴ですから、日本 の現状に当てはめる場合、何か1つフィルターをかけた上でやらないといけないと思いま す。  その上で先ほどの数の問題も、430床で計算してみますと、500万人単位だとすれば21 施設くらい、300万で数えると33施設くらいです。ドクターヘリの普及は是非お願いした いと、いろいろ進めているのですが、まだ全国はカバーされてません。しかもドクターヘ リは夜や悪天候の問題、それから人数が複数以上になった場合にどうするかという問題に は、答えがまだ出ていないわけです。だから、そういうものがあればという絵を描きなが ら2頁の下の絵を見ると、そうなったらいいなと全く同感ですが、例えばこの5年でそれが 実現するかと言われれば、私はできないのではないかと思っています。 ○座長 それも冒頭にお話しましたように、これは、こういうふうな道筋、方向に向かう のだということであって、5年後、3年後にこれをやらなくてはいけないというご議論をい ただいているわけではないということを、もう一度確認したいと思います。 ○石井委員 ですから、そうであれば「あるべき論」のもう1つとして、近未来はどうす るのだという議論がそれに付いてこないと、こうでないから日本は駄目だという非常に単 純な結論になってしまうだけではないか。 ○座長 そういう議論をしているつもりはありません。 ○石井委員 いずれ近未来の話は、この後に期待できるということでいいのですか。 ○座長 これから出てくるわけです。 ○杉本委員 少し議論の中で整理しておいてほしいのですが、このテーマは重篤な小児患 者に対する救急医療体制という形になっていますね。「重篤な小児患者」ということがメ インなのか、あるいは「救急医療体制」というものがメインなのか、そこを少し分けてお かないと、いまのPICUの話も重篤という意味合いでは、PICUで重症患者を診ましょうと、 救命救急センターで重症患者を診ましょうと、これはよく似ているのです。やっている内 容もよく似ています。ただ、救急というのは突発性がまずある。緊急性がある。先ほど阪 井委員がおっしゃいましたが、その重篤度というのは一緒だけど、救急医療というのは基 本的には突発して、かつ緊急を必要とする。だからそれをどういう体制をとってやろうか という問題になってくるけど、いまの例えば3県に1つぐらいとになると、搬送距離から考 えたら緊急性の話は全然別の話になってしまう。  先ほどの日本医大の千葉北総病院の場合も、要するに先生の所は他へ運べる患者さんと 運ばなかった患者さんと、そこの選択はどうされたのか。全くアットランダムにやられた とは私には到底思えない。おそらくそういう所へ運ぶほうが、ふさわしいだろうと思う患 者さんを運んでいるけれど、そうでなく運んでも、これは無理だねという患者さんはそこ で診ていることもあるから、単純に死亡率がどうだというのは非常にアンフェアになって しまうと思います。  いずれにしても、このPICUの問題はいまも出ていますが、私自身、救急医療体制という 中で考えていたのは、まず突発した場合で、その患者さんをどうするのかというものだと 思ったのですが、そういうものでいいのか。あるいはそれぞれの病院に入っていて意識が 悪くなってきた場合に、運んで来ようというものなのか。要するに時間的な余裕があって 運んで来る。患者の搬送もそれで設定して、いい時間に送りましょうと準備してできる。 これでは全然違う話になってしまう。その2つを分けておかないと。どこに焦点を当てる かを確認してください。 ○座長 ありがとうございます。阪井委員、何かご発言はありますか。 ○阪井委員 杉本さんがおっしゃっているポイントについては、PICUというのは集中治療 ですから救急の後に引き続くもので、救急も含めてもいいかもしれませんが、あくまでも 私は県を超えてという話をしているわけですから、落ち着かせてその後の話です。だから 救急も含めますし、基本的なところは、そうでなければそんな広い範囲にいかない。オー ストラリア、ニュージーランドは、ご存じのとおり広い国ですし、アメリカだってそうで す。そういう所でできている医療なのだから、日本は距離としてはそんなに大したことは ないと私は思います。  日本医大の千葉北総病院ですが、あのデータはヒストリカル・コントロールというか、 うちと提携する前と提携した後を比べているのです。うちのほうに来るのがより重症度が 高かったとなっているので、出してもいいかなと思ったのです。 ○杉本委員 実際にこの検討会で問題とするのは、どこに問題の焦点を絞られるのか。要 するに院内で術後の患者さんですね、お話を聞いていると小児の重症患者の管理システム で、それは術後であってもいいだろうし何でもいい。そういうものの話をしようとしてい るのか、あるいは重篤な小児救急患者の話をするのか。どこに焦点を当てるのかは明確に しておく必要がある。それは分けられないのだと、オーバーラップしないと体制的、人員 的なこともあるというのだったら、それはそれでもいいのですが、そこのところをコンセ ンサスを得ておかないとイメージが全く違ってくるのではないかと思います。 ○座長 ありがとうございます。それは既に私が、ある程度この流れで説明できていると 思っていたものですから、おそらく説明を省いていたのかもしれません。切り口としては 救急であるのですが、いまのお話のように院内発生であっても集中治療が必要になってく る。入口として救急も受け入れるし院内救急ということで、いまお話いただいたようにあ る程度マンパワー、設備の面で制限がありますので、そういうものをいかにうまく使って いくか。  それで1型、2型というお話が出てきたのは、いますぐに阪井委員の所あるいは植田委員 の所のようなものができるとは思っていませんし、実際に出来上がったところで、各都道 府県でそれが必要なのか、維持できるのか。2型と言われているもので1回、スタビライゼ ーションを起こさせて、そこから送っていくのはどうなのだろうか。そういうことで考え て話を進めさせていただこうと思っています。 ○杉本委員 そうなってくると比較的話は簡単なことであって、いま言っているような形 で突発して起こってきた患者さん、要するに現場から直接医療機関に運ばないといけない ものだったら、救命救急センターも当然対象になるのでしょうけれども、そうでなく院内 発生が云々というものだったら、基本的にはPICUという形で、そちらのほうは小児の専門 で扱われているのだから、それはそこだけの話として扱われたほうが、おそらく話はスム ーズだと思います。  救急医療を考えるときに、基本的にはどこへ運ぶというのは比較的わかりやすいです。 まず小児であるということで、年齢だけで対象がわかります。外因なのか内因なのかで搬 送先は区別しやすい。救急で現場から運ぶということで周りには非常にわかりやすい。と ころが、院内発生のICU云々となってくると別の話になってくるから、そこは分けて議論 されたほうがしやすいだろうと思います。 ○座長 山田先生、何かありますか。 ○山田委員 この問題は非常に本質的で、1型、2型というのが決して各論でないというこ とは、ここにかなリクローズアップしてきたと思います。1型というのは小児医療をどうす るかという問題であって、2型というのはそれだけでなくて小児救急医療、さらに成人のと いうか、杉本先生、有賀先生がなさっている全体の救急医療の中で小児をどう診るのか。2 つの視点の折衷案として1型、2型が出ているわけです。  2型は現実問題として、いま2型を作らないと1歳から4歳の死亡率は下げられないとい うことで2型を作る。1型をいま積極的にされている所は、さらにそれを強力に進める。そ うすることが相まって、これはどちらだけがいいという意味では決してないと思います。 私はそれは並行でいくべきだと思うし、だけど救急医療という視点に立てば2型が現実的 な問題ではないかと思います。 ○座長 ほかにございますか。 ○石井委員 阪井先生のお答えは、学会の答弁としてはそれでいいでしょうが、もう1回 言いますけれども、地域医療という概念で言えば、そういうふうに片方を切って捨てるよ うなロジックを使いますと切られた国民がいるわけです。地域医療はすべて平準化させた いという願いから始まっているわけです。それで国民皆保険というものが1961年に成立し 歴史を刻んでいるわけですから、その中にトップレベルのものを加えたいというお気持は わかりますが、切って捨てないでください。  例えば千葉の例で言えば、具体的には言いたくなかったのですが、北総病院のある東京 側の房総半島の医療と反対側の医療と、いろいろな問題があるということは聞いているわ けです。それをどうやって平準化するかという議論も同時にないと、東京都の真ん中が尖 ればみんなハッピーになると、それは無理なのです。そこだけはご理解いただけませんか。 そういう意味ではオーストラリア、ニュージーランドの医療モデルそのものを持って来て は日本ではうまくいかない。そういうゾーンが非常に大きく出るということは指摘したい と思います。 ○阿真委員 人口が、ニュージーランドやオーストラリアはそれだけ集中しているという ことで、人口が集中しているのであれば州ごとにばらつきが出てくると思いますが、州ご とに絞るとかでばらつきが全然ないので、アイデアとしては学ぶべきものがあるのではな いかと思います。きちんと各州なり各地域に1つずつ重点的なものがあるということで、 それはうまくいっていると思っていいのでしょうか。 ○阪井委員 それは私のポイントです。 ○石井委員 そうなると、州と言った場合に日本は道州制がまだありませんので、各県と いうレベルが1つの行政単位なのです。あとは今のところ全部フラットな関係です。首都 圏というのはちょっとまた別の立上げになっていますが、そういうものを取り払えば、そ ういうことになっているのです。そのときに有る県と無い県をここで作りましょうという 議論をしたときには、先ほど埼玉の話でしたか、各論はまとまらなかったということは大 いにあり得る話なので、それは考えながら進めないといけない。 ○座長 それはまた繰り返しますけれども、いまの話と先の話ということで、道州制の話 も入れてはいますが、いますぐに道州制になるとは思っていませんので、ある意味、県の 中でアクセスできるシステムが作れるか。しかもある程度高度な医療ができる施設を作っ ていくか。いまそういうものが欠けているところがあり、統計上、OECDの中で1歳ないし 4歳の死亡率が下から3番目でしたか、アメリカは自殺が多いので自殺を除くとアメリカの 下にいってしまうぐらいの話で、そういうものをどうにか解決しようと。ある意味では石 井委員が言われているように、地域を考えながらどうやって高度な医療を提供するかを、 いまご議論いただいているわけで、その骨格の部分を今までお話いただいたと思います。 これからは地域に下りて、どういうことができるのかをご議論いただきたいと思っていま す。 ○有賀委員 全くそのとおりなので、何も廃藩置県の次にどうするのかを決めないとこの 手の話は決着が付かないとは思わないのです。MC協議会だって3つの県に跨ってやってい る所があります。だから事これに関しては、例えば岐阜県と何県と何県でやってみようで はないかという話があってもいいわけですし、北海道だって6つぐらいの医療圏になって いるでしょうか。だけど地域、地域においてはそれなりのことを考えてやっていくことに なります。都道府県ということでお金の流れができていることはありますから、先生のお っしゃることはそれなりに理解はしますが、それで子どもが死に続けていいのかという話 にはなりませんので、「坂の上の雲」でも、走らなければいけないときは走らなければい けないと私は思います。是非、これはどんな困難があっても子どもさんたちを助けようと 思ったら、やるしかないと思います。 ○阿真委員 国民の一人として思うことは、都道府県にいま既にきちんとしたものがあっ て、それが3都道府県に1個になってしまうのだったら、なくなってしまう側は切り捨てら れた感はあると思います。でもそれぞれの県に十分なものが全然ないですよね。その中で3 都道府県に1個でも十分なものができるのだったら、国民は切り捨てられるのではなくて、 それで命が助かると私は思います。 ○有賀委員 だから、そのときにえらい遠くに行くとなっても、確かにえらい遠くかもし れないけど、死ぬよりいいだろうという話かも知れない。それなら、夜、どうやってヘリ コプターを飛ばすか、天候の悪いときどうするか。国民の命を守るのが行政ですから、夜 になったから飛ばないとかでなく、どうやったら飛ばせるのかと考える。夜だって飛行機 は飛んでいますよね。軍隊のヘリコプターは飛んでいるわけですから、そういうことを皆 さんが考えてくだされば、みんなハッピーになるという話です。 ○宮坂委員 東京に長くいて、それから信州に行っていろいろ感じていることですが、長 野県は人口220万人で1つのこども病院があり、もちろん長野県の中に住んでいると長野県 のお城の中だけしか見ないような感覚ですけど、決してそうではなく、山梨県や新潟から も来るような形になっています。どちらかというと中澤先生が初めにおっしゃったように、 これは将来の方向を決めるものとして、将来に禍根を残すような形にはしたくない。現在、 日本の病院の中で起きているのは、例えば子どもの2床のICUを作ったら、外科ICU、内 科ICU、心臓ICUというふうに、ただでさえ少ない小児科医が分散してしまうことが病院 の中でもありますし、地域でも、地域の限られた医療資源を有効に使っていこうというメ ッセージを国民に出して、おらが町にICUではなく、3つの県でも一緒になってやるのがい いと、そういうメッセージが出る結論になればいいと思っています。 ○上野委員 重篤な小児患者の死因の大きな部分に外因性のものがあります。先ほどの阪 井先生からの発表で、PICUというのは重症の患者さんをどうやって管理するかということ だと感じます。ですから受け皿として、小児病院にあるPICUだけでいいのかというディス カッションはもっと深められて、2型のPICUというのは、どういう施設に、どういう患者 さんを診るドクターがいればいいのか、そのディスカッションを深めていかなけれは結論 は出ないのではないかという感じがします。  具体的に言うと、小児外傷患者を診ようとしている救命救急センターというのは、そん なにたくさんないのではないかと感じます。参考資料の3にたくさんの救命救急センター がありますが、それと例えば小児外科医が勤務して小児外傷や熱傷を受け入れているとい う施設は一致していません。したがって、小児救急患者を喜んで診る、ウェルカムする施 設はどこかというところをディスカッションしていかないと、その2型のPICUは何である べきかの結論は出ないのではないかと感じます。 ○杉本委員 それは誤解だと思います。救命救急センターで外傷とか外因は、1歳であろう が何カ月であろうが必ず診ています。それは診るのが当たり前であって、普通は救命救急 センターとしてちゃんと機能している所は、どこも診ています。あえて言えば外因性の救 急に関して、小児外科医、小児科医はほとんど関与してこなかったというのが正しくて、 これはすべて救命救急センターの医師たちが診てきました。だから、ごく一部の小児外科 の中で小児外傷を診ている人はいるでしょうけれども、それは圧倒的に稀と言うべきだろ うと思います。 ○山田委員 これは本当に救急をどうするかということなのです。皆さん、いろいろな立 場の人がここでいろいろ発言しているわけなので、その立場によって救急というのは自分 のイメージで描いておられる。私はいま成人をちょっとだけ診させてもらっていて、小児 も30数年やってきていますが、現場で診ている人、小児病院で診ている人、大学で診てい る人で全部違うのです。ひとつ言えることは、小児だけをよくしても日本の救急医療のレ ベルは決して上がらないと思います。それは、あくまでも小児の領域ではある程度救命で きるかもしれない。だけど突発的に起きることに対する緊急性の対応ということを考えて、 そういうシステムは非常に大事だと思います。  1型、2型と言ったときに2つの視点があると言いましたが、みんなが両方の視点をクロ スオーバーしないと、うまくいかないと思います。1型が絶対いいんだというだけでなく、 2型の人は1型を理解し、1型の所に主に従事している人は2型も見ていく。そうしないと 全体のレベルが上がっていかないのではないかと思います。だからコラボレートして成人 とももう少ししないと、ただでさえ少ない小児科医をそっちに差し向けるのはナンセンス だという意見も、確かにあるかもしれないけれども、我々は今まで関与してこなかったこ とに対しても反省をもって見ていかなければいけないと感じています。 ○上野委員 杉本委員からご指摘がありましたが、決して救命救急センターの先生方が小 児を診ていないと言ったつもりはありません。このリストと小児外科学会が持っているア ンケート結果で、小児外傷を診ている施設がずれているということで、小児外科の医師で も外傷を診たり熱傷を診たりしている所があるわけですから、それが充実している所が、 もしPICUという名前を付けるのだったらば、そういう施設としてふさわしいのではないか と感じているということです。 ○座長 時間も迫っていますが、実は今日の予定は、いまも少しお話がありましたように 入院の対象や求められる機能、どういう場所にということも議論いただくはずだったので すが、本質のお話がありましたので、少しそれに時間をかけさせていただきました。次回 は今日の議論を踏まえて、先ほどお話があったように、具体的な話に踏み込んでいく必要 があると思います。 ○有賀委員 最後にというか最初にというか、いまの杉本先生のご発言にありましたよう に、日本救急医学会の会員で、救急医療を専従的にやっているドクターが頑張っている救 命センターでは、基本的は杉本先生が言ったとおりなのです。そうでない救命センターが あることも実は事実です。だからこれをバッと見て、私たちがすべての救命センターの代 表だと言おうとしているわけではなく、日本救急医学会で頑張っている人たちがいる救命 救急センターにおいては、杉本先生が言ったとおりです。  ただ、そういう所に届く、例えば交通外傷の子はいいのですが、残念ながら届かない子 がいるということがあるので、だからMCで運ぶルールを考えましょうと言ったのが、阪 井先生たちの提案で、それは全くそのとおりだ、それで是非いこうではないかと言ったの が、私たちのMC協議会の考え方なのです。ですから、診ている人は「俺は診ている」と 言うのですが、小児外科の医師がみんな診ているか。うちの小児外科なんかそのような体 制にない。そういうことでいけば、診ている人は診ていると言ってもいいのですが、誰か らも診られずに死んでいる人がいると阪井先生が言うから、だったらやろうではないかと なるわけです。聞いてみたらそのとおりだと思うから、これはやるしかないのです。だか ら、やっている人は「やっている」でいいのです。  なぜこうなるかというと、MC協議会の中の救急隊の搬送の基準を変えていけば、必ず受 ける患者さんがどんな患者さんか分かるという話です。だから、これは先生、アウトペイ シャントへのインテンシブケアができる施設を先に決めることを、まずは決めておかない といけない。小児専門病院が救急医療に比較的のんきだった時代があったわけですね、成 育医療センターも。 ○阪井委員 今でもそうです。 ○有賀委員 そういうことがあるので、これは最初から杉本先生が言われたみたいに、救 急医療の話を最初に出して、そこで救われていない人をどうするかという話をして、それ に合わせてストラクチャーを作っていく話をする。そのときに地域地域の事情があるとい う話だと理解しないといけない。この手の話はそういうことです。 ○座長 ありがとうございます。今日、そこまでいく予定だったのですが、本質論のとこ ろで座長のまずさで進みませんでした。資料2のところに書いてあります3番目の○のとこ ろにはそういうことがありますし、実はお配りいただいた参考資料の中には小児病院は1 つも入っていないのです。阪井先生の所ですら入っていないわけですから、そういうこと の中でこの検討会を通して、そういうことの必要性も訴えていかないといけないと考えて います。  座長がうまく運べなくて時間がなくなってしまいました。資料2に関しましては今日の ご議論を踏まえて、次回に持ち越したいと思いますが、ご意見を予め賜りますと議論がも う少し煮詰ってスムーズに進むかと思いますので、ご意見のある方は是非、事務局にご意 見をお寄せいただければと思います。この1点、1点についてご意見をいただだければあり がたいと思っています。皆さん方、お忙しい中をお集まりいただいて、少し今日はまとま りのないお話でしたけど、方向性ははっきりと見えてきたのではないかと私は思いますの で、これを踏まえて次の議論にしたいと思います。議論に関しましてはこれをもちまして 終了とさせていただきたいと思います。事務局から連絡事項ということで、次回の開催等 についてご案内いただければと思います。よろしくお願いします。 ○大内専門官 次回の検討会は4月23日(木)、10時から、この場所で予定しています。 また第4回検討会につきましては5月と考えていますので、日程調整のほうを改めてご連絡 させていただきます。よろしくお願いします。 ○座長 それでは、第2回の重篤な小児患者に対する救急医療体制の検討会を、これで終 了させていただきます。各委員の方々には熱心なご議論、長時間ありがとうございました。 (照会先) 厚生労働省医政局指導課 医療確保対策専門官 大内 (代)03-5253-1111(内線4134)