09/03/26 第6回介護予防継続的評価分析等検討会議事録 第6回介護予防継続的評価分析等検討会議事録 1.日時・場所 平成21年3月26日(木)14:00〜15:56 全国都市会館第2会議室 2.出席委員  石田、植田、大川、大久保、大渕、坂元、杉山、          高橋、丹後、辻、の各委員(岩越、鈴木、津下委員は欠席) 3.議題  (1)介護予防施策導入に伴う費用対効果分析について  (2)属性・介護予防サービス利用と介護予防に係る各種指標の推移との関連の分析について  (3)介護予防の有効性等の評価に関する取りまとめについて ○天本課長補佐 それでは、定刻となりましたので、まだ高橋委員は御出席いただいておりませんが、第6 回「介護予防継続的評価分析等検討会」を開催いたします。  本日の委員の御出席状況でございますが、鈴木委員、津下委員、岩越委員から欠席の御連絡をいただいて おります。  それでは、辻座長、議事進行をお願いいたします。 ○辻座長 それでは、最初に事務局から資料の確認をお願いいたします。 ○天本課長補佐 かしこまりました。それでは、お手元のクリップどめの資料の御確認をさせていただきま す。座席表の次に議事次第がございます。議事次第の次に資料一覧がございまして、おめくりいただくと委 員の名簿の一覧がございます。  資料1という1枚紙がございまして「前回の分析と今回(取りまとめ)の分析との関係について」。  資料2は「介護予防施策導入に伴う費用対効果分析について(取りまとめ)(案)」。  資料3は「属性・介護予防サービス利用と介護予防に係る各種指標の推移との関連の分析について(取り まとめ)(案)」  資料4は「介護予防の有効性等の評価に関する取りまとめについて(案)」。  参考資料1としまして「介護予防サービスの費用対効果分析について」という資料を大久保委員から御提 出いただいております。  最後に製本のものですが「介護予防事業等の効果に関する総合的評価・分析に関する研究 報告書」とい うことで参考資料2としていただいております。  以上でございます。  もしお手元の資料に不足や落丁等がございましたら、事務局までお願いいたします。よろしいでしょうか。 ○辻座長 それでは、議題に入りたいと思います。まず、最初に本日の検討内容について確認をしたいと思 います。  資料1、横長の紙をごらんください。今回の検討会では属性等と各種指標の推移との関連についての分析、 費用対効果分析の2点について検討しているわけでございますけれども、それぞれにつきまして左側に前回、 右側に今回という形でまとめてございます。  属性等と各種指標の推移との関連についての分析につきましては、前回、総論と各論の運動器のサービス 内容による各種指標の推移について御報告いただいたわけですけれども、今回は右側に書いていますように すべての各論領域につきまして、サービス内容による各種指標の推移、属性による各種指標の推移について 御報告したいと考えております。  費用対効果分析につきましても、前回の検討会では予防給付について結果を算出いたしまして、特定高齢 者施策につきましては費用対効果分析の考え方の整理ということで委員の皆様方から御了解いただきまし たけれども、今回はこの特定高齢者施策につきましてもその結果を算出するということでございます。  それでは、議題「(1)介護予防施策導入に伴う費用対効果分析について」に入らせていただきます。  前回の検討会での議論を踏まえまして、大久保委員より参考資料1を御提出いただきました。その内容を 踏まえまして、私も含めまして数名の委員で事前に検討を行わせていただきまして、本検討会に資料2とし てまとめてございます。この資料につきまして大久保委員から御説明いただこうと思います。  では、よろしくお願いします。 ○大久保委員 大久保委員 それでは、費用対効果について、今日が最終回でございますので最終的な結果 について御説明をしたいと思います。  今、座長からお話がありましたように、参考資料1というもので文章として示されておりますが、資料2 に図表できれいにまとまっておりますので、資料2をごらんになっていただければと思います。前回までの ことに若干触れますけれども、主に前回から今回の間にできた結果について御報告をしたいと思います。  1ページ目ですが、これもおさらいですけれども、費用効果分析の基本的な考え方ということであります。 効果を縦軸に費用を横軸にとった場合、平面で言いますと第1象限と第3象限に入っている場合は、第1象 限というのは効果がプラスで費用がマイナスということ、第3象限というのは効果がマイナスで費用がプラ スということで、この2つに当てはまった場合は費用対効果比を出すまでもなく第1象限の場合は優れた施 策であるということ、第3象限の場合は全く採用する値のないものだということがわかります。  一方、第2象限、第4象限につきましては、第2象限は費用がプラスで効果もプラスということ、第4象 限は効果がマイナスで費用もマイナスということでありますが、ここの2つに入ったところに関しましては 費用対効果比を出してそれが妥当かどうかというものでその施策の判断をするということになります。  結論から申し上げますと、今回お示ししているのは◎の第1象限に入ったということが結果としてわかっ たところであります。またこれは後ほど計算結果等を示したいと思います。  2ページ目、効果につきましては何回も触れておりますけれども、介護度が悪化する者が何人減少するか、 その程度を効果として見るということであります。  3ページ目、費用についてはそれぞれの介護度をベースに介護度に応じた単価をかけて費用を計算すると いったことが基本的な考え方であります。そういった基本的な考え方を基に具体的に計算をしました。  4ページ目、新予防給付の費用対効果について御説明します。効果につきましては、導入前は1,000人に 対して389人が悪化する。これに対して導入後は、234人の悪化者数で155人の減少は統計的に有意差を 持って成果が出たということであります。したがって、効果については確定しております。  5ページ目は費用についてですが、費用について求めるデータも前回御説明しておりますけれども、ここ に書いてありますようなデータを使うということであります。  前回は特定高齢者1人当たりに係る費用に関してどのような計算をしたらいいかということの御意見を 賜り了解をいただいたものですから、それに基づいて計算をしていきました。前回了解をいただいた考え方 というのは、6ページ目、7ページ目、8ページ目に示されております。  8ページ目をごらんになっていただければと思いますが、特定高齢者施策(介護予防事業)につきまして は、ポピュレーションアプローチとハイリスクアプローチがあるわけですけれども、導入後についてはこれ らが分離をして1人当たりの単価というのは計算できますが、導入前についてはこれらを分離して計算する ことが不可能であるということで、このままでは対等な比較ができないことになってしまいます。それで8 ページ目の下に書いてあるような方法でトータルの費用を予防給付を受けていない人で割るというやり方 で計算するというところまで御了解をいただいたところであります。  この結果につきましては、この考え方に沿って計算をしますと、参考資料1の一番最後の別紙と書いてあ るところをごらんになっていただければと思います。  「高齢者1人当たりにかかる費用単価の算出方法について」ということでありまして、読ませていただき ます。  「継続的評価分析支援事業に参加している83市町村の平成17年度における介護予防・地域支え合い事業 の事業費を、同83市町村の高齢者人口(要介護認定者を除く)で除した」ということであります。  具体的な数字はその下に書いてありますが、平成17年度の83市町村の介護予防・地域支え合い事業費 は約46億円。それに対して要介護者を除く83市町村の高齢者人口は約242万人であります。人口をこの 事業費で割った値が1,911円になります。これは1年間の費用ですので、これを1か月に戻しますと159 円という形になります。  なお、導入前には老人保健事業、検診事業等もあるわけですけれども、これらを含めるということです。 今回のベースケースとしてはこれらを含めた計算ではありませんが、これらを含めると、1人当たりの費用 は159から580円になります。これは一応参考として記載させております。  導入後の費用単価について同じような考え方で計算をしますと、具体的数値は書いてありますが、平成 19年度の83市町村の地域支援事業は34億9,000万円。生活機能評価事業費は27億6,000万。合わせて大 体62億6,000万というところであります。これを19年度の83市町村の要介護者を除く約270万人の高齢 者人口で割りますと、1人当たり2,288円。単価として月当たりにして191円という形になります。この 159円、191円というのを今回の費用として採用したところであります。  この数値を使うとどのようになるかということは資料2の9ページ目になります。そこに費用単価の一覧、 リストがあります。導入前、導入後と比較しておりますが、導入前の一般高齢者と特定高齢者は先ほど申し 上げた159円。導入後は191円になります。以下、要支援(1)、要支援2、要介護1〜5につきまして は、レセプトのデータをとったわけでありますが、要支援(1)が3万900円。要介護1が8万1,800円と なっております。導入後につきましては、同じく2万8,700円、4万8,800円となっておるわけでございま す。  この単価を基にしてそれぞれの介護度別の人・月をかけ合わすことによって費用の合計ができるというこ とになります。これも前回でお話ししましたけれども、12か月間観察した要支援者の分布でありますけれ ども、基のデータは1万2,000人・月おりますと要支援(1)が1万1、要介護1が1,743となるわけです。 これは一般高齢者と特定高齢者でレセプトデータをとっておりますので数は入ってきませんので、ここの数 を導入後に観察された148、14という数字と全く同じものを一応当てはめてみたところであります。  この148、14というのは、導入後の数字をそのまま前に当てはめたわけですが、先ほど効果のところで お話ししましたように新予防給付(要支援1)の場合はかなり悪化者数が減っておりますので、恐らくこの 148、14というは前のデータとしてはもっと小さい数値になるということが予想されますが、ここでは前に とってある程度有利な数値を設定して5とイーブンな数字を入れたところであります。  こういったような形です。若干前に有利な状況を設定して比較をしますと、そこに(3)で書いてありま すが施策導入に伴う増分費用として、導入前の費用は1万2,000日・月当たり4億9,000万。導入後は3億 8,000万になります。差し引き1億600万余りの費用の節約ということが示されたところです。  ですから、介護悪化者を減らすという効果があって、かつ費用が減るということですので、1ページ目に あります第1象限のところにここが当てはまったということになるわけであります。  ただ、ここで前回も少しお話ししましたが、導入前と後の単価をごらんになっていただけると、導入後の 単価の方が低くなっておりますので、この1億600万円余りの節約分というのは、実は単に前後で単価が減 った分の影響ではないかということも考えられますので、下の「2.施策導入前後で費用単価が変わらなか ったと仮定した場合の増分費用について」計算をしてみたところです。  前後で全く費用が変わらなかったという前提の下で計算をしますと、前は4億9,000万、後は4億2,000 万。差し引き6,600万の費用の節約がここでも生じております。したがって、1億600万余りの費用の節約 というのは、単に単価が安くなったから単価の方を引き下げたからということではなく、介護度がいい方向 に向かっていたためだということがここで示されたわけであります。これは10ページ目でまとめてありま す。  予防給付(要支援1)についての分析についてとりあえずお話ししました。  次に特定高齢者施策の費用対効果ということでお話しをさせていただきます。11ページ目ですが、特定 高齢者施策は特定高齢者の基準が変化をしましたので、旧基準と新基準2つの効果について測定しましたけ れども、費用効果分析については新基準の方で進めていきたいと思います。  新基準におきましては、悪化者が56人出ていることに対して、施策導入後は49人、7人の減少というこ とで、これは統計的に有意差がありませんでしたけれども、結果としては悪化者数が減っているという結果 になっております。  12ページは先ほど介護予防の施策で説明した費用のリストが書いてあります。  13ページ目に実際の単価、介護区分の分布を示しております。単価の一覧表は先ほど示した予防給付の ときの単価とほぼ同じですけれども、若干違うのは対象としている年度を比較対照群と合わせておりますの で少し違いますが、基本的にほとんど変わっておりません。  1万2,000人・月をフォローしたときの分布というのは、そこに書いてありますように導入前は一般高齢 者が1,680、特定高齢者が9,994、要支援が60、以下要介護28まで続いております。導入後につきまして は、一般高齢者は951、特定高齢者1万887という形で48、12と続いているわけです。これらの分布にそ れぞれの単価をかけ合せますと、導入前にかかった費用というのは4,100万円。そして導入後は2,100万円 ということになりまして、差し引き1,990万ほどの費用の減少になったわけです。したがって、効果があっ てかつ費用もマイナスということになりましたので、1ページ目でお示しした第1象限のところに特定高齢 者施策も入っているということであります。  ちなみに、先ほど老人保健事業を含めると1人当たりの単価が159円から580円になるわけですけれど も、この値を入れますと節約分は更に500万円ほど増えると推計され、節約は増えるということになります。  同じように単価の減の影響を排除するために単価を統一した結果をその下の表で示しております。これに よりますと、導入前は4,100万円、導入後は2,200万。差し引き1,900万の費用節約ということになりまし て、やはりこれも単価の減少によってできたのではなくて、介護度が改善、いい方にシフトしたことによる 結果が示されたわけであります。今、申し上げたお話は14ページ目に記載されているとおりであります。  以上のことからまとめますと、新予防給付(要支援1)、そして特定高齢者施策については費用対効果分 析を行ったところ、両施策とも施策導入前後において効果がプラスであり、費用がマイナスだということで す。したがって、両施策とも費用対効果の観点から優れたものであるということが示されたわけであります。  次に、参考として新予防給付の要支援2の場合についてお話しをしたいと思います。16ページ目をごら んになっていただければと思います。ここで今までと違って少し注意していただかなければいけないのは、 真ん中の○のところに書いてありますが「新予防給付導入前の要介護1と導入後の要支援2を同等の状態と 仮定した上で分析を行った」ということであります。実際は全く違っているわけではありませんが少し違っ ておりますけれども、同じだと仮定を置いた場合の結果を示しております。  そうしますと、導入前は悪化者が1,000人に対して250人、導入後は250人が67人、183人減ったとい うことであります。これは統計的有意差を持っての減少であります。同じように単価をかけますと、結果だ けを申し上げますと17ページですが、節約は4億3,900万円の節約。単価減による影響を排除して計算し ますと8,400万円の減少ということで、要支援2については一定の注意点はありますけれども、そういうこ とを考慮しないといけませんが、要支援2につきましても費用の節約の可能性が示されたということであり ます。  以上、私からは説明を終わらせていただきます。 ○辻座長 ありがとうございました。「介護予防施策導入に伴う費用対効果分析について」ということで、 最初に基本的な考え方をおさらいいただきまして、その後、新予防給付の要支援1、今回の宿題になってお りました特定高齢者施策の費用対効果、参考として要支援2ということについてそれぞれ御報告いただきま した。  すべて共通して費用は減り、効果は上がるというのは、要するに悪化者を減らすことができているという ことで、非常に費用対効果という点でも優れているという結論だったかと理解いたしましたが、委員の先生 方から何か御質問、御意見はございますでしょうか。  高橋先生、どうぞ。 ○高橋委員 大久保先生の発表の話ではないのですが教えていただきたいことがございまして、支援事業に 参加していただいた83市町村に大変御努力をいただいたと思うんですが、実は教えていただきたいのは、 要支援の場合はメインがデイサービスですね。デイならばデイケアなどはたしか前の改正で改善率の高いと ころへ若干単価をとプレミアムを付けました。  ということは、要支援の場合、恐らくここのメインディッシュはデイですから、それに訪問介護が松竹梅 とごく一定の手続というのは基本メニューですから、そうすると、その地域で報酬上デイでの改善加算をも らっているところはどのくらいあって、これは非常に難しい質問を承知で言っているんですが、それ以外の 地域は福岡辺りでいくとどうも1%程度しかないみたいで、要するに何を申し上げたいかというと、ここで の新予防給付の効果というのは少なくともデイでやっているサービスの効果があると観測的に推計できる わけです。  とすれば、当然改善加算が有意に高いはずだと一般化できるのかできないか。というのは、それはここの 市町村の代表性の問題を考えるとかなり改善加算の比率を皆さんとってくださればということも含めて、あ る種の市町村の特性を表す、平たく言えばここは頑張ってくださったので効果が出ているけれども、はっき り言ってデイは多分旧態依然のデイが非常に多いわけですね。老人福祉センターにした方がいいのではない かと思うようなデイも決して少なくないわけで、そういう意味ではそこら辺の議論が技術的には大変難しい のを承知で質問しております。  この83市町村の代表性の問題は前から申し上げていますが、一般化する場合にそこら辺の問題を何かの 形で配慮して比較する必要があるのではないかということを考えたものですから、大久保先生の大変緻密な 推計の上に、若干そういう御質問をさせていただきたく思います。難しいのは承知でございます。 ○鈴木老人保健課長 ありがとうございます。今、御質問がありましたのは、介護給付の中で要支援者に対 して18年度介護報酬改定の中で事業所評価加算というのを言わば試行的に、トライアル的に入れました。 これはどういうものかと言いますと、今まさに高橋先生がおっしゃったように、デイサービスとか、デイケ アの予防型にこられた場合に、状態がよくなるようなある意味で言うと非常に質の高いサービスを行ってい る事業所については評価をして加算をしましょうというものだったんです。  2点ありますが、1つは83市町村はどうかということについては申し訳ありません。今、手元にデータ がないのでそれはまた別途調べさせていただいて、また後ほどやりたいと思います。  もう一つは、今の評価の仕組みというのが改善をかなり重く評価をしていて継続はそれほどでもなかった ので、実際、21年度の介護報酬改定に関わる調査の中で、やはり事業所の中からもう少し改善だけではな くて、継続、同じ状態を維持するということも評価をしてほしいということがありましたので、実は事業所 評価加算の算定式というのがありますけれども、それをもう少し維持継続することも重視をしてやるという ことにしていますから、高橋先生の御発言の中にあった、もしかすると実際一生懸命やっているところより は実際に加算を得っているところは少ないのではないかということについては、もう少し広目にしっかりと れるようにはさせていただいたということであります。済みません、今、データはありません。 ○高橋委員 難しい質問を承知で言っておりますので。 ○辻座長 ありがとうございました。ほかにどなたかございますか。  石田先生、自治体の立場から何かコメントはありますか。 ○石田委員 非常に興味ある結果が出たんだろうと思います。現場の感覚からすると、給付の制約と言うん でしょうか、例えば地域支援事業費というのは給付費の一定割合とキャップがある程度かかっているわけで、 そうした制度的な給付総額の制約ということはこの分析の中では何か考慮したのか、あるいはする必要がな いのかという点についてお考えがあればお聞きしたいと思います。  それは1人当たりの給付費を考える上で、現場感覚とすると自治体に当てはめてみたときに給付総額のボ リューム感と対事業者のボリューム感というのは非常に密接な関係があるものですから、そういった観点で 質問させていただきたいと思います。 ○辻座長 大久保先生、何かございますか。 ○大久保委員 済みません。私も詳しく十分質問の内容を理解しているわけではないので、十分答えられな いかもしれません。これは実際費用がどれぐらいかかったかということを基に単純にと言いますか、純粋に 計算をしていまして、先生がお話しされたような観点というのは特に意識しておりません。それは特に現時 点では含める必要もないのかと思っていましたが、またいろいろと十分質問の内容を理解した上で考えさせ ていただきます。 ○辻座長 何かほかにありますか。課長、お願いします。 ○鈴木老人保健課長 地域支援事業という特定高齢者を対象とするような事業、予防給付は給付でございま すのであくまで給付の範囲内にやっていただければいいんですが、地域支援事業の中に入っている特定高齢 者事業というのは、保険者の方の中で給付総額の3%という枠中で予算をつくっていただいて、その範囲内 でやっていただくということになっていますので、恐らく今の石田委員の質問は3%上限と言いながら、例 えば2%でやっているところと2.5%でやっているところで違いがあるのかという御質問だったと思うんで す。  実際上、予算の多寡については今回、残念ながら検討はできませんでした。ただ、大久保委員がおっしゃ ったように、実際に使っておられる額については出しましたので、そういう意味では予算の額と実際の状況 というのはそれぞれ相関があると思います。  後で申し上げようと思いましたけれども、この事業そのもの自体は今年度で終了ですが、いずれにしろ4 月以降もいつかそれ以外にも積み残しがありますので、検討させていただく中で今の石田委員の御指摘は重 く受け止めたいと思っているところです。 ○辻座長 よろしいですか。 ○石田委員 はい。 ○辻座長 ほかにどなたかございますか。  丹後委員、どうぞ。 ○丹後委員 費用に関して全く素人なので、勝手な質問なんです。一般的に言いまして、いわゆるこの施策 導入費というのは全くなければいいんですけれども、施策導入費というのがあれば導入前はそんなものはか からないわけですね。導入することによって予算をつくってわっとかけるという一般的なイメージが私には あるんですけれども、それはもしあるとすれば考慮に入れなくていいんですかという素朴な質問です。 ○辻座長 どうぞ。 ○大久保委員 先生御指摘のとおり、導入するために一定の費用、予算がかかったのであればそれは加えな ければいけないかと思いますが、多分そういうものも含んだデータとして解析をしていると私としては思っ ています。 ○丹後委員 ただ表現として、3ページにある費用の考え方の中で個人的にかかっている費用しか考えてい ないという。要支援の者が1人1か月当たりにかかる費用、単価という形で表現がされているので、これを 見る限りは私が質問したような内容が加味されている雰囲気ではない。どうも前と後を見たときに同じ形で 書かれていますから、施策導入の上乗せ分というようなイメージのものが加算されていないイメージを受け るんですけれども、いかがでしょう。 ○大久保委員 例えば市町村で導入のための人員を増やしたとか、建物をつくったとかといった給付費以外 の費用があるのではないかということですか。 ○丹後委員 全く素人ですので、こういう施策を導入するということによって何らかのお金がかかるのでは ないかと一般的にイメージがあるんですけれども、そんなものは全くないというのであれば別に必要はない とは思うんです。 ○高橋委員 それは介護報酬で反映されていますから、例えば何とかマシンを買ってもある種の減価償却で 介護費に入っていますので、要するに税金を投入した事業だと導入費はあるけれども、新予防給付の方はほ とんど考慮しなくていいと私は理解しているんです。税金だと特別に予算を付けて購入費をあれするとかは あると思う。それは立ち上がり費用と言う。だけれども、報酬の場合は多分減価償却で落ちていきますから、 余りそこら辺までは介護報酬で反映されているわけだから問題ないと思います。事業所が別に補助金か何か をとったり、設備投資をしていればまた別です。 ○辻座長 どうぞ。 ○鈴木老人保健課長 整理をさせていただくと、恐らく新予防給付の要支援者に対するものと特定高齢者と いうものに対する2つがあると思うんです。要支援者に対する予防給付は高橋先生がおっしゃったとおりで、 新しい費用というのはすべて給付の中に入ってしまっていますから、それはまさにこの考え方に整理をされ ます。  ただし、特定高齢者の方は、石田課長が先ほど言われたように特定高齢者施策のお金というのがあります から、実際に給付でどのぐらいかかったかというお金に加えて、まさに先生がおっしゃるようにプラスαの 費用がありますから、ここの中の表現ぶりはあれですけれども、それはきちっと今回入れて特定高齢者の方 は計算をいたしましたので、そこは多分過不足なくできていると思います。 ○辻座長 よろしいでしょうか。 ○丹後委員 はい。 ○辻座長 ほかにどなたかございますか。  前回の検討会でもどなたか御質問をされてお答えいただいたのですけれども、今回、大久保先生が出され た御報告では、1,000人の人を1年間追跡したら幾らかかるかということを介護予防施策導入前後で比べて 費用が幾ら減ったというお話ですが、現実の日本全国の数百万人の方が実際に介護保険を受けられて、特定 高齢者、要支援それぞれの介護予防サービスを利用されるわけですけれども、今回の数字を日本の現状に当 てはめてみたらどれくらいの規模、何億円ぐらいの費用減少という話になって、それは介護保険財政全体の 何%ぐらいなのかということについてもし試算しておられたら、お出しいただければと思うのですが。 ○大久保委員 わかりました。前回同じような御質問を受けましたので、一応ラフな計算ですがさせていた だきました。まず、要支援1の方は大体32万人ほどの利用者がおりますので、1,000人当たり1億700万 を32万人に引き延ばしますと、約340億円の費用の節減という試算ができます。  要支援2につきまして、若干先ほど述べましたような注意が必要ですけれども、この結果を単純に引き伸 ばしますと、これは35万人の利用者が今おりますので、これを1,000人辺りで4億4,000万ほどの節約が ありますので35万人に引き延ばすと1,540億円ぐらいの節約になります。  特定高齢者につきましては、特定高齢者の参加人数の把握というのは必ずしも単純ではないんですけれど も、ある資料によりますと、8か月間に参加した延べではなく実人数で約8万人がおります。これは実人数 なので単純に8万をかけるわけにはいかないんですけれども、8万人で引き伸ばすと大体16億。8か月で 8万人なので低く見積もって月1万人ですので、1万人にすると大体2億円という形になります。ですから、 これら3つは特定高齢者施策はほかのものと比べてけた数が低いので余り影響はないんですが、この3つを 合わせますと大体1,880億円ぐらいの節約という形になります。これは単純に引き延ばした形です。  現在の介護に使っている給付費が6兆4,700億円ぐらい。地域支援事業で255億ほど使っております。ト ータルで約6兆5,000億円の予算規模になっています。ですから、この6兆5,000億円と先ほど申し上げま した1,880億円の比率、割合は、大体3%弱ということで、ここも大胆に言えば新しい施策を導入したこと によって約3%の予算の節約ができたのではないかということであります。 ○辻座長 ありがとうございました。これも含めましてどなたか御意見とか御質問はありますでしょうか。  自治体の立場として坂元先生、何かありますでしょうか。 ○坂元委員 大久保先生から3%という概算意見をいただいたんですけれども、先ほど石田委員もおっしゃ ったように、やはり自治体で出している給付費の枠が違うので一概には言えないと思うんですが、我々が1 つ感心を持っているのは、これ以外の効果というのをどうやって計っていくかということです。  例えば予防事業に参加した人の医療費に対する効果というのを見られないかということを市でも調査で きないだろうかとの考えも出されております。当然健康状態がよくなれば予測として医者に行く回数が少な いだろうと思われます。なぜかと言うと医療費の単価の方がはるかに高いんです。むしろそういう効果を見 られないかということを内部で方法を検討してみたいと思っております。方法的には受けた人の国民保険の レセプトをチェックできればよいのですが、その辺の方法を考えてみたいと思っております。 ○辻座長 ありがとうございます。  大久保委員、どうぞ。 ○大久保委員 大変興味深い御指摘。75歳以上の平均医療費は恐らく80万ぐらいだと思いますけれども、 それと比べると介護の方は安いんですが、こちらで節約できても向こうで増えているということはあっては ならないところで、それはトータルで機会があったらそういうお仕事もしてみたいと思います。 ○辻座長 高橋委員、どうぞ。 ○高橋委員 今の御指摘は大変重要だと私は思っていて、要するに1次波及効果と2次波及効果という問題 で、これは是非将来の研究は少しスキームをきちんと設定される必要かがあると思います。  もう一つは、いわゆるいい介護予防と悪い介護予防がもしかしたらあるかと思っているんです。やはりモ チベーションの開発だと思うんです。これははっきり言って測定できませんが、最近の議論ではパットナム という人がソーシャルキャピタル(社会関係資本)という言い方でいろんな測定の議論をしているので、こ れは社会関係資本の開発に介護予防は絶対つながるんです。さまざまな人間関係がこういうプログラムを通 じてある種の指標化しづらい波及効果だと思うのですが、そういうことを配慮してやって典型的なのが有名 な水際だと思っているんです。一つひとつのデータを拝見すると本当にすごいです。  そういうものと従来型では大分。それでもそれは先ほどの単価でわかるわけですが、そういうことを含め てそういう議論も実はあって、これは直接効果ではないけれども、将来の介護のパターンを変えていく可能 性のある勧誘だと思いますのでそういうことがあるかもしれないというか、そういうことをきちんと分析す べきだと、これはもしかしたら石田さんのやっておられる例のボランティアももしかしたらそういう議論と 絡むはずで、それはエビデンスがとれればいいけれども、エビデンスがとれなければ道楽ですから、そうい う意味でそういう含みを持った今後の検討課題みたいなものを是非書いておいていただく必要があるので はないかと思う。  どうも世の中重くしてもらわなければ困ると思っている人が多過ぎるので、そうではなくて、改善するの はいいんだという文化を保健課長が御指導なさった例の話も大体重くして給付をたくさんとりたいという 従来型の福祉の文化、悪い意味の社会福祉の文化の人たちが大きな文句を言っていると私は思いますので、 改善することは非常にQOLを変えるんだという、これは前から大川先生がおっしゃっていることですがそ ういう議論への目配りを是非問題意識として、これは難しい話でございますけれども、指摘をしておきたい と思います。 ○辻座長 どうぞ。 ○石田委員 私も本当に同感なんです。今、稲城市でやっている介護支援ボランティアという制度ですけれ ども、実は介護予防の卒業生が担い手としていろいろ支援に振り向いてくれる。少なくとも社会参加活動と いう位置づけになるんだろうと思いますが、そういった介護予防の対象者となるような人たちがむしろ社会 参加の担い手としてなるというのは非常に効果が高くて、地域力も高まると思っています。  そういった人たちにアンケートを取ってみると、半分の方が元気になったと答えているんです。肉体的な 元気というのもさることながら、本人が意を持って活動されるということを支援するということにもつなが るので、是非こういった現実的な対費用効果に加えて、社会参加する高齢者に対する評価軸と言うんでしょ うか、評価指標というものを是非今後の検討課題にしていただけるとありがたいと思います。  本当に地域は高齢者が支えるという時代になってきていますので、そういった意味では高齢者を応援する という観点が必要だろうと思います。 ○辻座長 ありがとうございました。今の先生方の御意見を伺って思い出していたのは、介護予防を導入す るころ、今から3年前、4年前ぐらいの議論でよく言われたことですが、介護予防というのは介護保険財政 をよくするために嫌がるお年寄りに無理矢理筋トレさせるという話ではないんだということです。むしろ介 護予防を通じて生きがいを取り戻していただく、もう一度自分らしい生活を取り戻していただく、それを応 援するのが介護予防なのだということです。その結果、心身がよくなって介護保険の給付費が減ればそれで いいではないかという話が当時されていたわけです。まさに今のお話は、介護予防を通じてどのような波及 効果があったのか、それは個人としての波及効果だけではなくてソーシャルキャピタルと申しますか、地域 づくりも含めてコミュニティー全体にどういう波及効果があるのかといったところまで、当初から目指して いたわけです。ですから、そういったことも指標にしてモニタリングを続けていかなければいけないという ことを思った次第です。どうもありがとうございました。ほかにどなたか御意見はありますでしょうか。  丹後先生、どうぞ。 ○丹後委員 今の御議論はまさに費用対効果のときに効果をどう考えるかということに関して、既に大分前 に去年からいろいろ議論をして、結局今回はこういう形にしようと決めていると思うんです。したがって、 今のような議論をきちんと書いておいて、ここで今回はこういう形でまとめたんだということがわかるよう な文章化をしていただければいいと思います。 ○辻座長 わかりました。後で事務局と相談しながら是非そのようにさせていただきたいと思います。どう もありがとうございます。  この費用対効果につきまして最後にお一人、お二人何かありましたらお受けして次に移ろうと思うんです が、どなたかございますでしょうか。よろしいでしょうか。  それでは、後で戻る時間もあると思いますけれども、議題(2)に移らせていただきます。議題(2)は 「属性・介護予防サービス利用と介護予防に係る各種指標の推移との関連の分析について」ということであ ります。議題1と同様に検討会の委員を含めまして検討の分析を行いましたので、その結果につきまして資 料3に基づきまして基本的には私の方から、そして運動器、栄養、口腔の各分野につきましては、本日御出 席の大渕委員、杉山委員、植田委員それぞれの先生方に詳しく分析していただきましたので、そこにつきま しては御説明いただきたいと思います。  それでは、資料3をごらんください。これも12月の検討会のものは一部残しまして、その上に新しいも のを載せたという形になっていますので、少しおさらいになります。1ページは、要介護度の悪化という観 点で見ると新予防給付と特定高齢者ではこれくらいの効果があったということで、先ほどの大久保先生の御 報告でもありましたが、新予防給付、特定高齢者施策ともに介護予防のヒストリカルコントロール、導入前 と比べると悪化を減少させることができ、介護予防の効果というものが認められたということであります。  2ページは、どう分析するかということですが「今回の分析イメージ」ということで、要介護度等の維持 改善のオッズ比を比べていきたいということを前回お話ししたわけであります。  3ページは対象者の内訳であります。1万9,827名を最終的に登録いたしまして、そのうち除外基準があ りまして、今回の分析対象者は9,105名ということでありました。  4ページは「分析に当たっての課題」ということで、中断した人あるいは登録終了時点でも継続中の方々 をどう扱いするかということで、これは前回詳しく申し上げましたので、結果だけ申し上げますが、途中で 中断した方についても最後のデータをもって12か月後のデータとみなすとして、それでほとんど問題がな いということはデータに基づいて御紹介したわけであります。  7ページは「分析に当たっての課題」といたしまして、サービスの種類です。どのようなサービスを使っ ているかということを説明変数と用いてよいかということですが、前回は矢印の下の全対象者について分析 を行ってみた結果、受けるサービスの違いによって対象者の属性が大きく異なっているので、サービスの種 類を説明変数として用いることは適当ではないということを御報告しました。 そうは言っても、サービス利用の有無について全く無視するわけにもいかないだろうということで、むしろ 個別分野ではそういったことを考えても、大きな問題はないだろうということをこれから申し上げたいと思 います。  個別分野の分析では、分野ごとにリスクの高い者に限定されているわけです。つまり、基本チェックリス トで各プログラムの基準に該当する方に限定して分析を行っておりますので、その対象者の中でサービスを 使った人と使わなかった人たちとの間での基本属性の差というものは、対象者全体での場合に比べると勿論 ないわけではないですけれども、それほど大きくはない。ということで、各プログラムのハイ・リスク者に 限定してサービス利用の有無を説明変数に基づいて分析をして一定の結論にすることは可能ではなかろう かと言うわけです。とは言いながら、ランダム化比較試験ではありませんので、あまり断定的なことは言わ ずに十分解釈に注意しながら議論を行っていきたいということは言うまでもありません。  その細かいところは8ページにありますけれども、後でごらんいただければと思います。  9ページは「基本的な集計結果について」ということで、これは12月の検討会でお出ししたことのアッ プデートです。最終的なデータとしてつけ加えたということであります。最新版ですので、ごらんいただけ ればと思います。  3枚めくっていただきますと「属性・介護予防サービス利用と介護予防に係る各種指標の推移との関連の 分析結果について(ロジスティック回帰分析の結果)」ということが書いてございます。これから総論とい たしまして全体のデータと、各論といたしまして6事業ごとの結果が出るわけですが、12ページの「分析 方法について」をごらんください。  まず、四角の下に全体の分析というものと、各分野ごとの分析というものが書いてございます。ここを少 し詳しくごらんいただきたいのですが、全体の分析と言いますのは14ページから出てくる総論(1)〜(3)の3 枚紙です。これはすべての方々を対象にいたしまして、維持・改善のオッズ比を比べたものであります。そ れに対して各分野ごとの分析と言いますのは、運動器の機能向上でありますとか、口腔機能ですとかといっ た分野ごとです。  (1)といたしましては、サービス対象者と考えられるリスクの高い者。具体的には基本チェックリストで各 項目の特定高齢者の候補者の基準を満たす者がリスクの高い者といたしまして、その方々に分析対象を限定 いたしまして、その後改善したかどうかということを見た。  もう一つの分析といたしましては、サービスの種類でありますとか、頻度、回数、時間あるいは行ったサ ービスの内容といったものがその後の機能等の推移とどのような関連があるかを明らかにするということ を目的としておりましたので、具体的にこれはサービス利用者に限定いたしまして、そういったものを見た ということであります。  したがいまして、全体の分析というものはすべての方を対象としますので、そもそもそういった特性の違 い、バイアスといったものを相当反映している部分があるということで、サービス利用については具体的に 言及いたしませんが、各分野ごとについてはそういったバイアスの程度はゼロではありませんが前者にくら べるとそれなりに少ないだろうということで一定程度の考察を行ったということであります。  13ページでは運動器の機能向上の指標の分類ということが書いています。  14ページは、総論(1)(2)(3)ということで簡単に私から御説明いたします。これは実は前回の12月の検討会 でも出ているものでありますけれども、要介護度、基本チェックリストの区分、認知高齢者の日常生活自立 度、障害高齢者の日常生活自立度、主観的健康度、SF8は生活の指数の指標でありますが、身体面のトー タルスコア、サマリースコアと精神面のサマリースコアの7つの指標について、もともと対象者の個人特性 がどのような関連を持っていたかということを見ますと、例えば一番左の年齢を見ていきますと0.95と書 いていますが、この0.95といいますのは年齢が1歳上がるごとに要介護度が維持改善されるオッズ比が 0.95倍、5%ずつ下がる。つまり高齢になるほど維持改善は難しい。逆にいうと、ここに書いていますが年 齢は若年であるほど維持・改善しやすいということがあります。当然と言えば当然です。  独居者は維持・改善しやすい。これは独居であるということが、ある程度の生活機能の低下があってもそ れなりに独居でいられるというレベルの高さなのか、あるいは同じレベルであっても独居者の方がいろいろ 自分で頑張らなければいけないこともあって、アクティビティーを高く維持しているのか、その辺の理由に ついてはまだわからないのであります。  さらに、ふだんの生活の中で役割のある方は維持・改善しやすい。  15ページは認知的活動が活発な人は維持・改善しやすい。認知的活動と言いますのは、テレビを見ると か、ラジオを聞く、新聞を読む、雑誌を読む、本を読む、トランプ、麻雀などゲームをするといったものの 頻度を積み上げているわけですけれども、こういった頻度の高い方ほど維持・改善の確率は高いということ です。  3つ目、疾患の既往歴で見ますと、さまざまな疾患の既往歴がその後の推移に大きな影響を及ぼしている。 脳血管疾患の既往歴のない方では維持・改善がしやすいということと、関節疾患では、要介護度やSF8の 精神面のサマリースコアをごらんいただきますと、要支援者では関節疾患のない方が維持・改善は少ない。 関節疾患の既往歴のある方がむしろ維持・改善しやすいというデータになっておりまして、この辺の解釈に は我々も頭を悩ませているところであります。  そういったところが総論でありまして、それ以降が17ページは運動器ということで5枚ございますので、 これにつきまして大渕先生から御説明いただきたいと思います。 ○大渕委員 それでは、引き続きまして運動器の機能向上の各論について御説明させていただきます。17 ページをごらんください。  先ほど先生から説明がありましたように、基本チェックリストで運動器関連項目の5項目のうち3項目以 上に該当する者を対象として今後の分析をしております。年齢は若年であるほど改善しやすいとかといった 属性については、辻座長からお話しいただいたのと同じでございます。  18ページ、要支援者に対する介護予防通所介護(運動器の機能向上サービス)の実施者は改善しやすい ということで、表の右側のところ、介護予防通所介護を実施されている方は1.35倍改善の確率が高いとい うことが出ております。ただし、この解釈につきましては一定の制限があるということは先ほどの説明のと おりでございます。  19ページ、ここからが具体的な運動器の機能向上の中身と効果の関係、あるいは属性の関係について調 べたものでございます。運動器の機能向上の具体的な中身は、マシンによる筋力増強、マシンによらない金 属増強、持久性訓練、日常生活に関わる訓練、レクリエーション・ゲームというものが中身になります。こ れらを必要に応じて単独でやったり、組み合わせたりしてやるわけでございますが、それぞれについてさま ざまな指標の維持・改善確率というものを求めたものがこの表になっております。  運動器に関わる指標というのは先ほど資料が入っておりましたけれども、まず最初の基本調査のときのデ ータを基にして性別と特定高齢者か要支援者かは別にしまして、5分野を求めまして、レベルを決定いたし ます。一番低い方が1、一番高い方が5という形です。それぞれの項目がいい方に移動したか、悪い方に移 動したか、維持したかということで今後の解析をしております。  こうして見ていただきますと、運動器に関わる指標はマシンによる、またはマシンによらない筋力増強、 持久性訓練及び日常生活に関わる訓練で日々改善しやすいということで、それは前回のものに比べましてデ ータ数が増えたせいか、有意になっている者が多くなったということでございます。  20ページをごらんください。実施回数につきましては、一定の回数以上の場合で維持改善しやすいとい うことで、ざっと見た感じですと週1回未満よりも週1回以上、週2回以上と回数が増えるにしたがって維 持・改善の確率が高いと見えます。特に特定高齢者の通常歩行というところでございます。ただ、これは余 りはっきりしておりません。  次です。1回の実施時間については特定高齢者も要支援者も同じ傾向がありまして、特定高齢者では実施 時間が1時間以上の場合に要介護度の維持・改善のオッズ比は高いということです。  要支援者では、30分以上1時間未満はTUGで、1時間以上2時間未満で片足立ち時間というところで オッズ比が1より大ということなので、30分以上で2時間未満ぐらいのところが至適なレベルというのが あるのかと見えます。  21ページをごらんください。今度はそれぞれのサービスと属性の関係を見ましてどういう対象の方々が 例えばマシンによる筋力増強を使った場合に効果をより得やすいのかという観点で解析を書いてみました。 そこを読み上げさせていただきます。  脳血管疾患の既往がない者では、マシンによる筋力増強訓練で維持・改善しやすい。  認知症の既往がない者では、日常生活動作に関わる訓練で維持・改善しやすい。  認知機能が低下していない者では、マシンによらない筋力増強訓練が維持・改善しやすい。  認知的活動の得点の高い者(認知的活動が活発な者)では、日常生活動作に関する訓練及びレクリエーシ ョン・ゲームで維持・改善しやすい。  要支援者よりも特定高齢者の方が、すべてのサービス内容で維持・改善しやすいという傾向が出ておりま す。  例えば使い分けでこれはどんな形で考えるかと言いますと、認知機能が低下している人にみんなでやるよ うな体操をやると言ってもなかなかついてこられないという場合であれば、マシンによる筋力増強をしたり という選択がある。あるいは脳血管疾患でマシンに乗ることは難しいという方もいらっしゃいます。そうい う方については逆にマシンに乗らない筋力増強訓練でやるといった形で、対象者の属性に応じたサービス提 供ということが今回の分析で見えてきたということが結論でございます。  以上です。 ○辻座長 ありがとうございました。それでは、栄養改善を杉山先生、お願いします。 ○杉山委員 続きまして、栄養改善について御報告させていただきます。栄養に関わるリスクが高い者、す なわち特定高齢者では基本チェックリストの栄養関連の2項目中2項目、要支援者では2項目のいずれかが 該当する者が対象となっておりまして、BMIと体重増加率の分析ではBMI18.5未満の者について行って おります。また、食事摂取量につきましても分析しておりまして、これは食事摂取量70%以下の者を不良 者として分析しています。  改善しやすい属性につきましては表をごらんいただきますとおり、特定高齢者では女性の方がBMIの改 善のオッズ比が有意に1未満でしたので、男性の方が改善しやすいということが言えます。  また、要支援者では、基本チェックリスト得点が低い、つまり生活機能程度が高いほど改善しやすいとい う結果でございました。  23ページ、疾患等との関係でございますけれども、ここでは認知症の既往歴のない者及び高齢による衰 弱の既往歴のない者では改善しやすい。特に特定高齢者では高齢による衰弱の既往歴のない者、要支援者で は認知症の既往歴がない者ということになりました。  また、栄養改善サービスの利用による改善のオッズ比に違いがないかを見てみたのですけれども、これは 有意なオッズ比は算出されませんでした。運動と口腔と同じように具体的なサービス内容については、デー タ数が極めて少なくて、この分析を実施することができませんでした。  それゆえ、栄養改善の今後の課題は、とにかく実施件数を増やしていくことが重要なことでございまして、 これについては、このたびの改正で予防給付においては、栄養改善加算の介護給付と一体化した単価の増額、 低栄養状態がある者、あるいはその恐れのある者の把握基準の明確化や、帳票様式例の削減ということが行 われてきております。また、専門職団体である日本栄養士会によっても、3月より研修がとり行われ、栄養 ケアステーションも機能するところでございます。  ですから、各地域において介護予防事業や高齢者ケア体制とともに推進できる高齢者の「食べること」を支 援する体制づくりの一環として、本サ−ビスが総合的にとにかく推進されませんと、次回の評価にも耐えら れないということでございますので、栄養専門職の1人としてもまた関連者たちとも一緒に推進して参りた いと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○辻座長 ありがとうございました。  それでは、口腔機能の向上を植田先生、お願いします。 ○植田委員 口腔機能向上に関しましてよろしくお願いいたします。24ページを参照ください。  対象はここに記してございますとおり、口腔機能に関わるリスクが高い(基本チェックリスト上で口腔関 連の3項目中2項目以上該当する)人ということと、もう一つはかみ締めが片方だけ、あるいはどちらもで きないといったことを対象にした特定高齢者、要支援者の分析ということになります。  これに関しましては基本チェックリストの得点が低い人、いわゆる得点が低いということは機能が高いと いうこと。もう一つは認知的活動の得点が高い人ということであり、総論の傾向と同じで、このような機能 が比較的高い人ほど結果として改善という結果が出やすいといったことでございます。  25ページ、対象は今、申し上げたのと同じですが、これに関しましては介護通所の、いわゆるデイケア、 デイサービスで口腔機能の向上サービスを受けている人は改善しやすいという結果が出ております。そもそ も口腔機能向上に関しまして事業が展開される、されないというのは、サービスを受けるに当たって専門職 の介入というところが大きなターニングポイントになっており、専門職が介入した場合には、サービス提供 が行われやすく、結果としてこのとおり機能の改善傾向が得られるといったことになっています。  26ページ、実際その中身たるもので専門職による個別的サービスにおいて、どのような形の提供が能率 的なものかといったことで見ますと、実施時間が10分以上30分未満に対しては維持・改善しやすいといっ た傾向がございます。特に今回は対象項目が義歯の汚れなどとしています。これに関しましては清掃が必要 な人ということでありますから、重度化傾向の人であるとおもわれます。ここには特に専門職たる部分の介 入というものが必要になると解釈できます。  先ほどの見解で、今回の費用対効果の中にも1次波及、2次波及という言葉がありましたが、エピソード 的な話にはなりますけれども、やはり口腔機能の専門職の介入が行われることによってサービスを提供する 側も受ける側も、介護そのものの質的向上、活性化というものが認められるようです。それが果たして先ほ どの話のように医療費の方にどう波及していくかといったことにも今後検討させていただきたいと思いま す。  現時点では、歯科衛生士をはじめとする口腔機能の専門職がどのような形でこの制度の中に導入、および 配置することができるのか、具体的に検討しているといったところでございます。  以上です。 ○辻座長 ありがとうございました。それでは、閉じこもり、認知症、うつの各予防支援につきまして私か らまとめて御報告いたします。  27ページをごらんください。「閉じこもり予防・支援(1)」と書いているものです。対象者は全数の中か ら基本チェックリストで閉じこもり関連の項目が該当する方、週1回以上外出するかということで「いいえ」 と答えた方と、去年と比べて外出回数が減ったかと聞かれて「はい」と答えた人、または日中主に過ごす場 所が自宅敷地内という方を対象にした上で分析しております。  それぞれの項目について改善のオッズ比が高いものは、ふだんの過ごし方でもともと役割があるという方 はその後も改善しやすい。困ったときの相談相手、体の具合が悪いときに病院に連れて行ってくれる人がい る方は改善をしやすい。この辺のソーシャルサポート、社会的支援という辺が非常に重要な影響を持ってい る。そういった意味で、ふだんの生活に役割を持たせる、あるいは相談できる環境を整備するということが 重要なのではないかと思ったわけであります。  更に28ページをごらんいただきますと、基本的なバックグラウンドといたしましては基本チェックリス トの得点が低い、1つの生活機能でありますけれども、その程度が高いという方では改善しやすい。認知的 な活動が活発な人では改善のオッズが高いので、このようなことを日ごろから対応していくということも重 要なのでないだろうかと思ったわけです。  29ページをごらんください。これは各サービスの利用状況とその後の閉じこもり指標の改善との関連を 見たものでありますけれども、通所サービスを受けている方で改善しやすいということで、赤と言いますか、 オレンジ色と言いますか、そういった色で塗っているのが、有意に改善のオッズ比を高めているものという ことになります。特定高齢者の基本チェックリストでは通所型の介護予防で、要支援者では介護予防の通所 介護、通所リハという中身が書いているわけですけれども、運動器の機能向上ということになります。  ですから、特にサービスの中でも運動器の機能向上サービスあるいはアクティビティーサービスを使って いる方で改善のオッズ比が有意に1を上回っているということであります。  訪問サービスを受けている方では改善しにくい、例えば左側の特定高齢者の基本チェックリスト、週1回 以上外出するかどうかで言いますと、訪問型の介護予防事業を受けている方では0.22で有意に改善のオッ ズ比が下がっているわけであります。  通所に通うようになれば必ず週1回以上は外出しますので改善の基準を満たしてしまう。そういう意味で は当然だろうという話もあるわけですが、その一方でなぜ訪問のアプローチを受けた方でこういった改善が 少ないのかということについては、そこにも書いていますが、そもそも生活機能等の状態が悪いために訪問 しか受けられないという可能性がありますので、軽々に訪問を受けている人は改善しにくい、通所を受けて いる人だと改善しやすいから訪問をやめて全部通所にしてしまえというような乱暴な議論は慎重に考えな ければいけないのではないか。むしろそれぞれのレベルに応じて、今後もう少しきめの細かい分析、評価を していきたいと考えております。  30ページをごらんいただきますと、認知症の予防・支援であります。年齢は若年であるほど改善しやす い。先ほどもありましたけれども、独居者では改善しやすい。基本チェックリストが低い人ほど改善しやす い。認知機能が低下していない者あるいは認知的活動の得点が高い人ほど改善しやすい。これはほとんどほ かのものとも共通するものであります。  (2)をごらんいただきますと、サービスの利用との関係を見ております。赤が付いておりますのが有意に改 善してオッズを高めているものですけれども、特定高齢者で運動器の機能向上を利用している方、口腔機能 の向上を利用している方で、有意に基本チェックリストの認知関連項目の改善のオッズ比が上がっていたと いうことです。  その一方で幾つか訪問型中心に青が出てきているわけですけれども、こういう事実はあったということに とどめたいと思うのですが、今後その要因などについて調べてみたいと思います。  ただ、欧米の研究などを見ておりますと、軽度の認知機能低下がある方々に、運動トレーニング、レクリ エーション的な運動トレーニングをすることによって認知機能が改善した。あるいは長期間、3〜5年認知 機能を追跡していくと、コントロール群、何もしなかった群に比べて認知機能低下のスピードが鈍いという データも出ておりますので、今回のような運動機能の機能向上を受けた方などで改善したということは欧米 でのランダム化比較試験のデータと比べても矛盾しない。そういったことで今後これからも検討が必要では ないかと思った次第であります。  うつ予防・支援をごらんいただきますと、ふだんの過ごし方で役割がある方は改善をしやすい、もう一つ、 日常生活を支援してくれる方、あるいは具合が悪いときに病院に連れて行ってくれる方がいる方では改善し やすいということがありまして、特に高齢者のうつの発症においては、ソーシャルサポートがある人に比べ てない方ではうつの発生数が高いというデータが既に出ておりました。今回、ソーシャルサポートがある方 では改善しやすいということが出たわけです。まさにソーシャルサポートの重要性が示されています。先ほ どもお話が出ましたが、地域づくり、ソーシャルキャピタルといったものが、具体的に個人的なレベルに還 元しますと、ソーシャルサポートの多寡ということになってくるわけです。そういうことが回り回ってうつ 予防にも関わっていくということが示されたのではないかと考えております。  33ページ、実際に受けたサービスとの関係で見ておりますと、特定高齢者の一番下をごらんいただきま すと、うつ予防・支援を受けた方では1.5倍、2.7倍という形で、有意ではありませんが改善率が高いとい うことがあります。 一番右側の赤で書いていますのが要支援者のGDS15の得点が運動器の機能向上を受けた方で1.83倍有意 に改善しているということです。ただ、その改善度はGDSの点数に依存するものであって、このGDSの 点数が11点、軽度の方では下に書いていますが、運動器の機能向上の改善するオッズ比が2.59。それに対 しまして12点以上になりますと1.52ということで改善率は低いということであります。何が言いたいかと 言いますと、うつ状態の方で運動機能向上サービスを受けて改善するという方は、どちらかというと軽度の うつ状態の方ではないかということです。  これにつきましても欧米のデータあるいは日本でもこれまでたくさん出ておりますけれども、うつの方々 に運動トレーニング、作業療法、レクリエーション療法といったことをすれば症状が改善するというデータ が多数ありますので、このようなこととも関連があるのではないかと思うわけであります。  以上、まとめが34〜35ページに書いてありますけれども、1つだけ申し上げたいのは、一番最初に書い ていますが、2行目「主な結果は、以下のとおりであった。ただし、今回分析を行ったデータは、保健医療 技術を評価するための最も妥当な方法であるランダム化比較試験(RCT)」はとれませんでしたので、勿 論これは制度として始まっているものでありますので、それを受けない方というものを研究目的のためにつ くることは社会的にあるいは倫理的に許されない話ですので、RCTという形で現在動いているサービスの 評価をすることはできませんので、次善の策として前向きコホート研究の手法で行ったわけであります。 そういった意味では先ほどから申し上げますように、得られてきた結果が本当にサービスの効果として考え られるべきものなのか、あるいは利用者の特性を反映しているだけなのか、その辺の解釈が非常に難しいの で、ある程度慎重でなければいけないということであります。  そういった意味でこの下に左側、右側で矢印を書いていますけれども、基本的には左側はそういった事実 が観察されたということで、右側にはそういったところからこういうメッセージを発することは可能かと考 えているのですが、できるだけ私どもとしては慎重にお出ししたつもりでありますが、その辺も含めて先生 方から御意見をいただきたいと思います。  以上であります。御意見、御質問をいただきたいと思います。  石田先生、どうぞ。 ○石田委員 今回の結果も現場感覚からすると非常によくわかると思います。例えば運動器の場合、はっき りと状態が悪い人に介入すると確かに効果があるということはよくわかると思うんです。一方で、比較的元 気だった人に対して介入すれば更に元気になるといった意味で効果があるとちゃんとデータとして出たと いうことは非常にわかりやすいと思います。  いわゆるこういったサービスについては、介入の方法だと思うんですけれども、特定高齢者、ある意味で は十把一からげではなくて、サービス介入の時期というものは、例えば認知機能が非常に高い段階から介入 した方が効果はあるというのもどうも見えてきたと思いますし、先ほど言いましたように特定の運動器など については目に見える形で介入すべき時期というのがわかるといった意味では、特定高齢者の把握の時期と か、時点というものも場合によっては一律である必要があるかどうかということにもなるかもしれないと、 これは現場感覚で思うんです。  そういった意味では自治体の把握の方法について多少弾力的な方法も今後は考えてもいいのかと思いま す。特に栄養改善などについては、私どもの現場感覚では長い期間介入した方がどうも効果があるという感 じがしますし、ある程度具合が悪くなった人たちを急に発見して介入してもそれほど効果がないのかといっ た観点では非常に現場感覚に合うと思います。 ○辻座長 ありがとうございます。今の石田先生の御意見ですけれども、何かありますか。  高橋先生、どうぞ。 ○高橋委員 このファインディングスは石田さんがおっしゃったように我々の経験的にわかっていること と本当に違和感がないのでとても面白かったんです。問題は共変関係を因果関係にしてそれを更に目的と推 量に持っていくところのステップが非常に慎重であるというのはまさにそういうことだと思いますが、是非 こういうファインディングスを現場のいろいろな方にお返ししてそれをどう解釈するかという議論を深め ていただくと、それがいわゆる統計的なデータと実践上のファインディングスを結び付けていくということ になるかと思うので是非そこら辺を配慮していただきたいということと、訪問介護の話はある意味では大変 面白く伺いました。  はっきり言って、訪問介護のところはレベルが違うんだと思っていて、政策的な経緯もそうですね。そう すると、訪問介護の介護予防とは何かという議論を実は現場は従来型のお世話型介護なんです。だから、有 意な相関がないということがある意味では想像できる。  しかし、現実にそういうことに寄与する活動をされている方もいるわけで、そういうサービスモデルとい うか、それが訪問介護について確立していないんだと思うんです。デイの方はそういう機能をきちんと対応 させて専門性を入れられますからいいんですが、訪問介護の場合はホームヘルパーさんの資質にかかってい るということがあって、それははっきり言って管理されていないわけですから、この結果というのは納得す る結果でございましたので、感想として一言添えます。 ○辻座長 どうぞ。 ○大渕委員 運動器の機能向上のところで申し上げたいんですけれども、前回、この介護予防重視型システ ムに入るときには、各市町村等でやられている、あるいは予防給付でやられている事業を中心にして、その 中身については余り議論をしないで予防型にみんなで目先を変えていこうという議論だったと思います。  今回こうしたデータが出てくることによって、やはり時間が関係したりだとか、サービスを提供する方法 によって影響があったりだとかということが、高橋先生が御指摘の訪問と通所の違いというのもわかってき ましたので、だからといってこれは何々をやりなさいという話ではないですけれども、中身をもう一段今回 見直していただいて、やはり目的に合致しているかどうか、そのために必要な時間がとられているかどうか、 そしてアウトカムを明確にしているかどうか、これは是非確認してくださいと強いメッセージを出していた だければと思っています。  今後についてなんですけれども、やはりいろいろな観察型研究で言われているように、認知機能について、 抑うつ傾向について運動器の機能向上というものがある程度の効果があるということがこのデータでも示 されたわけでございます。ですから、運動器の機能向上の範疇においても、そういったところを目標にした サービスの提供の在り方というのはどういうことなのかとか、まずもう一段掘り下げて勉強させていただけ ればと感じたところでございます。  以上です。 ○辻座長 ありがとうございました。  丹後先生、どうぞ。 ○丹後委員 少し水をかけるようで申し訳ないんですが、現場の方が非常に納得する結果だということでそ れは非常にうれしい結果だと思うんですけれども、今回いろいろリグレッションでやったアウトカムとして、 いわゆるここで言う維持・改善です。これは費用対効果で使っている維持・改善と同じバリアブルですね。  ということは、要するに維持改善というのはある意味で費用対効果の場合にはどういう理由であっても維 持・改善することが重要なのであるからということでやったわけですけれども、今回、いろんな原因と結果、 共変量の関係を調べるときに、維持・改善というのはジェネラルなデスと同じなんです。全身に対してどう いうのが効いているのかということを議論しているのであって、死因別の死亡に関する議論がなされていな い。  つまり原因別の、維持・改善についてもいろんな維持・改善があるはずなんです。そこに踏み込まないと、 ジェネラルな死亡で、勿論いろんな方がいろんな理由で維持・改善するわけです。それをまず今回は全く無 視して、とにかくジェネラルな死亡としてとらえてどういう要因が効いているかということを議論している んですけれども、それは当然参加されている人々の特性によってがらっと変わってしまう要因がかなりあり ますから、別にこれを否定するわけではなくて、次のステップとしては当然維持・改善の種類、もう少しそ こをきちんと分けて、例えば脳血管とか、虚血性だとか、そういうところに関してどういった運動器が影響 しているかということをしていかないと、よりきちんとした有用なエビデンスが出てこないのではないかと いうコメントです。 ○辻座長 ありがとうございました。維持・改善ということのとらえ方は費用対効果と同じではないかとい う話だったのですが、費用対効果と同じものは要介護度だけです。それ以外の基本チェックリスト区分です とか、主観的健康度などに関しては費用対効果に一切含まれていませんので。 ○丹後委員 アウトカムとしては維持・改善を使っているわけですね。そこは変わらないわけですね。 ○辻座長 維持・改善はそうです。ただ、要介護度の維持・改善とか、基本チェックリストの維持・改善と か、いろんなアウトカム指標をたくさん持っています。 先ほどの先生の死因別というのは割とそれに近いのかと聞いていたんですが、例えば19ページの運動器の 機能向上などをごらんいただきますと、アウトカム指標としていろんなものがあるんです。要介護度だけで はなくて、基本チェックリストの区分とか、主観的健康度とか、あと右4つはかなり要素的な運動機能です。  これを見て特徴的だと思うのは、歩行時間とかが改善されていても、必ずしもそれが要介護度とか基本チ ェックに反映されていないということです。それは人間行動のヒエラルキーのレベルの差として考えるべき なのか、あるいは要介護度などの改善にはもう少し時間がかかるということなのか分かりませんが、そうい った意味で、ある程度死因別、死亡に立ち入った感じはあるんですけれども、いかがでしょうか。 ○丹後委員 そうすると、すべての要介護と基本チェックリスト以外に関しては同じような意味で、いわゆ る維持・改善という形でカテゴライズするということですね。 ○辻座長 そうです。 ○丹後委員 わかりました。 ○辻座長 ただ、すごく重要な話ですので、これは本当に最終データセットができて2か月ぐらいのものを 必死になってやっただけですので、これから細かいところをいろいろやっていきたいと思いますので、また 先生からも御意見をいただきたいと思いますし、何よりも1つざっくりと全体像を出しただけですので、例 えば先ほど高橋先生からお話がありましたように、訪問介護は本当にどうなんだという話になったときに、 83か所すべてで訪問介護をしている人が落ちているかというと必ずしもそうではないわけです。よくなっ ているセンターもあり、変わらないセンターもあり、ほとんど落ちているセンターもあり、センターによっ て差があるはずです。 そういった地域差を出すことによって、すごく改善している人が多いところとそうではないところを比べて みて、なにが違うのか。それは統計的な数字だけではなくて、場合によっては訪問してヒアリングなどが必 要になってくると思うんですけれども、その辺の細かい調査をして分析を深めることで、十把一からげにこ のサービスは良いとか悪いとかと言うのではなくて、このサービスをこういうふうにするといいのではない か、こういうところは悪いのではないかということを浮かび上がらせるようなことをこれからしてみたいと 考えています。  ほかには何かありますか。  どうぞ。 ○丹後委員 もう一点、コメントしなかったんですけれども、皆さんから報告していただいて、先ほど出た 83施設ごとにやられているのはデータとしてまとめられているわけですね。 ○辻座長 全部まとめられています。 ○丹後委員 つまりばっとやってしまったわけですね。それは基本的に大分前にお話ししたかと思うんです が、クラスターな話なものですから、クラスター要因を考えたリグレッションをしないと、非常に有意な結 果がたくさん出やすいんです。  ですから、クラスターとデータの解析という形で評価されると、もう少し本当のことが出てくる可能性が ある。 ○辻座長 ありがとうございます。ほかにどなたかございますか。  どうぞ。 ○坂元委員 これは質問ですけれども、日常生活を支援してくれる、具合が悪いときに病院に連れて行って くれる人がいる者は改善しやすいというのは、早く病院に連れていくという意味なのか、周りにサポートが いる人がいるという意味なのでしょうか。  なぜかというと、こういうのは非常に自治体のサービスでどう使えるかという、例えば今どの自治体も救 急車の出動回数が増えてしまって非常に困っていると思います。特に独居の老人とか、不安もあるとは思い ますが、非常に軽症でも直に救急車を呼ぶ場合が多いという問題もあるようです。今、川崎市ではサポート 救急というサービスを行っております。つまりそういう人には自宅までタクシーで行ってもらうような案内 サービスのことです。この文章の意味はどういうことなのか、もしある程度推測でも結構ですから教えてい ただきたいと思います。 ○辻座長 これは何が改善かというと、基本的にうつならばうつの改善、閉じこもりならば閉じこもりの改 善でありまして、全般的な機能の改善とか、そういったものではないです。例えば32ページをごらんいた だきますと、具合が悪いときに病院に連れて行ってくれる人がいない人に比べている人、それも基本チェッ クリストのうつ関連5項目の5項目中2項目以上該当するのが外れる割合が、つまりうつ関連5項目の回答 が改善するオッズ比の2.4倍、GDS15の得点が改善するオッズが7.9倍ということで、かなり閉じこもり とか、うつとか、そういったものをスペシフィックに見ての話です。  もう一つ、具合が悪いときに病院に連れて行ってくれる人というのは、救急隊員が含まれるかというと、 それは多分想定していないだろうと思うんです。むしろ、ソーシャルサポート、社会的な支援ですので、御 家族、お友達、そういうインフォーマルなサポートということで、今はやりの自助、互助、共助、公助みた いな言い方をすると、そういった制度的な共助、公助ではなくて、むしろ自助、互助レベルでのインフォー マルな部分でのサポートネットワークがあるかないかという話ではないかと理解しています。  高橋先生、どうぞ。 ○高橋委員 今の辻先生の御説明でよろしいかと思いますが、やはりインプリケーションを考えると疑似相 関の可能性があるんです。今の話はソーシャルサポートが本当の変数で、それがたまたまこういう形で現れ ているというモデルですから、そこら辺は本当に慎重に解釈して、これがそのまま施策の話だと言って救急 車に乗せるようにしようというばかな話にすぐ世の中的にはなるのです。理解度という意味で非常に問題が ある。そこら辺は是非うまくソフィスティケートをしたというか、きちんと真意を伝えていただきたいと思 います。 ○辻座長 どうぞ。 ○石田委員 そういった意味で、例えばふだんの過ごし方で役割があるものは改善しやすいとか、幾つかポ イントがあるんです。サービスそのものではないんです。そういった意味では、社会との関係性を持つとい う意味だろうと思うんですが、全般にこういった状態に対しての改善傾向をもたらすんだというような示唆 ができていいのかと思うのが1つです。 ○辻座長 おっしゃるとおりです。 ○丹後委員 今のいろんな方々の意見を総合すると、やはり因果関係というよりはアソシエーションの話で すので、こういうのが改善しやすいという表現はかなり誤解を生むような気がします。あくまで関連性があ るという形でとめておかないと、今、先生方が言われたようないろんな誤解、ひとり歩きがするような気が します。表現でどちらが先かわからない部分があるかもしれない。 ○辻座長 わかりました。その辺は最終的な案をとりまとめるときに少し検討したいと思います。ほかにど なたかございますか。  大渕委員、どうぞ。 ○大渕委員 役割のことについてはとても大事だと思っていまして、運動器のマニュアルを今年改訂させて いただいているんですけれども、その中でも明確に書いてあることが、特定高齢者についてはよくなって改 善するということ。一般高齢者については、サービスを受ける人がサービスの提供者になろうということで、 やはり介護予防事業の中で役割を持たせるということも十分可能なので、そのモデルについて我々もいろい ろ紹介をしているんですけれども、そういう形で皆さんに理解していただいて、これが例えば役割がないか らもうだめだと思わないで、介護予防事業の中で役割をつくっていくんだという目標に是非していただけれ ばと思うんです。 ○辻座長 どうぞ。 ○坂元委員 あと一点だけ質問なんですけれども、栄養改善のところで、特定高齢者は男性の方が改善しや すいというのはどのように考えられるかもしおわかりになればお教えいただきたいと思います。 ○杉山委員 これは事例研究を通して感じていることでいいですか。 ○坂元委員 はい。 ○杉山委員 事例研究からみてみますと、一人暮らしの男性で食事づくりが全くわからないという人たちが 結構いらっしゃいます。あるいは配偶者と死別して食事をどうしたらよいのかという方もいらっしゃいます。 栄養改善では、管理栄養士がその人にあった簡便な食事づくりを教えます。例えば電気釜にスイッチを入れ るとか、電子レンジの使い方であったりします。そうすると御飯が食べられ、食事ができるようになります ので、低栄養状態の改善が非常に短期3か月、6か月でみられます。ただ、長期的になるとわかりませんけ れども、男性の栄養改善の対象者には、このような方が多いと言えます。 ○高橋委員 大昔に川崎でひとり暮らし老人対策をやったことがあります。本当に私ども経験がどんぴしゃ りではないですか。自らを省みますとわかる話で、もともと女性の場合は栄養についてはレベル4ですね。 男の場合は大体生活技術が少なくともある年齢まではありませんから、そうすると、ここだとドラマティッ クな改善があるということですね。これはもう明らかに因果関係として読めるデータだと思いました。蛇足 でございます。 ○辻座長 よろしいですか。大川先生、何かありますか。何でも結構です。 ○大川委員 恐らく報告書をおつくりになって、データがいろんなところで今後活用されることになるので しょう。最後のまとめのところでいろいろと出してございますけれども、まず効果があるかないかというこ と、改善したかということは先ほども御質問、御意見がありましたが、何をもって維持・改善としたのかを きちんとしておき、要介護度と例えば5mの最大の歩行速度というのは全く違う次元のことですからそこは 厳密にしていただく必要があると思います。きちんと報告書を見ればわかることでも、まとめの表だけで現 場の方たちは判断なさることもあると思うので、せっかくこれだけの検討をしていただきましたから、厳密 に何の効果がどうであったというところはわかりやすく提示していただいた方がよろしいのではないかと 思います。  まとめの表の右側の矢印の先に、だから何が重要だとか、何とかした方がいいという内容も、辻先生はか なり丁寧に御説明をいただきまして、ほかのデータからも考えての結論だということがわかるのですが、こ れも非常に短絡的に判断される危険性があるので気をつけた方がいいのではないかと思います。  次ですが、たくさんのデータを細かく分析していただいたのですが、今後にも関係して分析の仕方につい ての意見です。1つは効果の判定を何でするのかということがあり、今回はまず第1段階でこれをなさった と思います。  先ほども御意見がありましたように、介護予防がスタートしたときには本当の生活機能ということで心身 機能だけでなく、活動、参加という具体的な困っていらっしゃる生活行為、社会的な役割、楽しみというと ころまで向上させようというのがスタートだったわけですが、そこまではまだ時間的なこともあって十分な 分析がされていませんので、次の段階としてはやはりそういうところを見るべきではないかと思います。  例えば先ほど歩行のことを申し上げましたが、歩行のスピードではなくて、実生活上の屋外歩行がどうな ったのか、自宅内の歩行がどういうふうな状況になったのかという具体的な生活の活動レベルのところをき ちんと評価をすべきではないかと思います。勿論、参加というのは非常に大事なレベルですから是非見てい ただければと思います。  もう一つですけれども、今回のデータの見方なんですけれども、今回示されたことについて効果があった というのは確かだと思います。でも、それは現状の介護予防の今のプログラムの中での効果であって、だか らこれでこれ以上よくならないというわけではないので、効果がなかった人たちはなぜ効果がなかったのか、 その人たちの効果を上げるにはどうしたらいいのかということも考えるべきだと思います。ただし、勿論費 用対効果を考えたり、めり張りはつけなければいけないと思いますけれども、あと少しこれだけきちんケア プランを立てればもっと変わったはずなのにというところはまだあると思うんです。  ですから、非常に改善しにくいような人もいるし、プログラムをほんの少しだけ変えればよくなる人たち もいるでしょうから、そういう観点でも検討すべきではないかと思います。  それにも関係することですが、今回主な検討をした特定の介護予防のメニューがあり、御努力なさってい る先生方はここの委員の中にいらっしゃるわけですけれども、やはりケアプランが問題で、もっと改善でき る余地があるのではないか、高橋先生もおっしゃったように、特定のメニュー以外の実際のサービスの提供 の内容をもっとよりよくするという議論が介護予防のあり方を検討した一番最初にあったわけです。ただ昔 のことを振り返れと言っているわけではなくて、介護予防の原点で理念としてきちんとした議論の中で問題 意識を持ったところは、今後も生かしていただくべきところは生かしていただく必要があると思います。  ですから、ケアプランの在り方であるとか、具体的なサービスの中での内容をもっと介護予防という観点 からもう一回見直すということも、今回の特定のメニュー中心の分析とは別個のこととしてきちんとやる必 要があると思います。特定のメニュー以外の観点から努力していらっしゃる方たちもたくさんいらっしゃる と思うんですけれども、その努力は今回は余り評価のシステムがなかったといえます。今後それも評価でき るようにしていくべきなのかと思いました。  以上です。 ○辻座長 ありがとうございました。何か課長からありますか。よろしいですか。 ○鈴木老人保健課長 また最後に申し上げたいと思いますけれども、御指摘がありました、確かに私の感覚 からすると36ページにわたるすごく大規模な調査を83市町村で相当の人数の方に3か月ごとにやっていた だいたというのは、今回大変御苦労をいただいて分析していただいた、例えば費用対効果と一部の属性と指 標の変化というのがありますが、実はまだまだ恐らく宝の山が幾つも眠っていて、まさに先生方がおっしゃ るようにクラスターで分析してみるとか、市町村ごとにやってみるとか、規模でやってみるとか、方法でや ってみるとか、いろんな切り方をするとより今のレベルからアップするためのさまざまなかぎが隠されてい ると思いますから、それをまた今後もいい文書を検討させていただければと思います。 ○辻座長 それでは、大分時間も迫ってまいりましたので、資料3は「属性・介護予防サービス利用と介護 予防に係る各種指標の推移との関連の分析について(取りまとめ)(案)」と書いておりますし、また先ほ ど申し上げるのを忘れていたんですが、資料2も「介護予防施策導入に伴う費用対効果分析について(取り まとめ)(案)」と書いています。これは最終案でございまして、今日の先生方の御意見で多少修正しなけ ればいけないところもあると聞きながら考えておったんですが、最終的な大筋はOKをいただいたと思いま す。文言の整理、もう少しわかりやすくする、あるいは慎重に書くというところを含めて多少直しが必要だ と思うのですが、これにつきまして座長である私と事務局に御一任いただいてよろしいでしょうか。 (「異議なし」と声あり) ○辻座長 どうもありがとうございます。それでは、次に議題(3)の「介護予防の有効性当の評価に関す る取りまとめについて」というところに移らせていただきます。  とりまとめ資料をつくってみましたので、事務局から資料4を読み上げていただきます。 ○天本課長補佐 かしこまりました。それでは、資料4「介護予防の有効性等の評価に関する取りまとめに ついて(案)」ということで簡単に御説明申し上げます。  3枚にわたってございますが、まず1つ目として、検討の経緯について書いております。こちらには改正 介護保険法が平成17年に成立した折に、附則に費用に対する効果、つまり費用対効果等の観点から検討を 行って、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとするという規定が盛り込まれましたので、その後、 継続的評価分析支援事業及び本検討会を立ち上げた上で長い期間、多い回数にわたって定量的な効果に関す る分析、費用対効果の分析、あとは先ほど御発表いただきました属性・介護予防サービスの利用と介護予防 に係る各種指標の推移との関連の分析を行ってきたということが書かれております。  2番目として、こちらは第4回、昨年の5月だと覚えておりますが、介護予防の定量的な効果に関する分 析を行っていただきまして、新予防給付については統計学的に有意な介護予防効果が認められ、そして特定 高齢者施策についても統計学的に有意でないものの効果が認められたということを結論とさせていただき ました。  2枚目にまいりますが、本日も、前回、今回で分析を行っていただきましたが、費用対効果分析につきま しては新予防給付、特定高齢者施策、両施策とも費用対効果の観点から優れたものであると判断されたとさ れております。その両施策とも費用単価が変わらなかったと仮定しても結果として優れたものであると判断 されたわけですので、恐らく介護予防効果によるものであろうということで結論づけていただきました。  4番目として、属性等と介護予防に係る各種指標の推移との関連の分析について先ほど初めの部分の2枚 紙でまとめていただきましたが、各分析の結果としてメッセージの部分を御発表いただいたと思っておりま す。  5番目に今後の有効性等の評価についてということでこちらを読ませていただきます。  「平成18年度より開始された継続的評価分析支援事業のデータは、介護予防継続的評価分析等検討会に おいて分析され、特定高齢者施策及び新予防給付は、ともに、定量的な介護予防効果が算出され、費用対効 果分析では優れたものと判断された。また、属性等と各種指標の推移との関連も明らかになり、今後、更に 効果的・効率的な介護予防サービスが展開されるための基礎的な知見が収集された」。   検討会において、特定高齢者の定量的介護予防効果を算出するに当たってはということで、こちらは第 5回の検討会のときにいろいろ御指摘いただきました。今後、定量的な介護予防効果を算出するに当たって の注意事項が書かれております。  「したがって、今後、介護予防の有効性等を評価するに当たっては、(1)コントロール群と調査対象群の属 性の違い、(2)統計学的な有意差があった場合にこれを検出できるだけの対象、コントロール群の規模、(3)デ ータ収集の頻度や複数年に渡る予防効果の算出を考慮しつつ、適切なデザインによる調査研究を新たに実施 する必要があると考えられる。  上記の論点等を踏まえ、厚生労働省では、平成21年度より、介護予防実態調査分析支援事業を実施する こととなっており、当事業では、継続的評価分析等事業で得られた成果等を踏まえ、より高い効果が見込ま れる介護予防事業のモデル事業を、全国約90市町村で実施し、併せて当該サービスを受けた高齢者の状態 等を定期的に調査し、その効果等について検証を行うこととしている」としております。  以上でございます。  ○辻座長 これまで本検討会は、改正介護保険法の附則の規定に基づきまして、十分な時間をかけて相当 詳細な分析を行ってきました。計6回にわたり皆様から精力的な御意見をいただくことができました。  今、事務局で読み上げましたとおり、予防給付及び特定高齢者施策につきましては、改正介護保険法の附 則の規定を十分に達成できたのではないかと考えております。また、これらの結果は、今後国や市町村等が 更に効果的、効率的な介護予防サービスを展開する上での貴重な基礎資料となるものと思います。  今後につきましては、平成21年度より、厚生労働省ではモデル事業を実施、データを収集及び分析を行 うということを先ほど言っておりましたので、その中で本検討会の議論の中で明らかになったデータ収集や 分析についての留意事項について御対応いただきたいと思っております。  以上が本検討会のとりまとめとなりますけれども、委員の先生方から何か御意見、御質問がありましたら いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。  坂元委員、どうぞ。 ○坂元委員 つまらないことかもしれませんが、しばしば表現で問題になると思われるのが、例えばまとめ の中の「ふだんの生活に役割を持たせる」という文言がありますが、問題になるのは一体誰が誰に持たせる のかということです。こういうことを言うと、場合によっては「役割を持たせる」という表現は押し付けが ましい言い方ではないかととられることもあるかと思います。何々を整備するとか、サポート体制を整える というのは行政の仕事でいいとは思いますが、ここの表現がひどく受身的に「持たせる」という表現になっ ているので主体が誰なのかと思いました。 ○辻座長 非常に大事な御指摘だと思います。どうもありがとうございました。 特に4の属性・介護予防サービス利用とどうのこうのの分析についての細かいところは、相当今日の御意見 を踏まえて変わると思います。特に何々が重要だとか、何が改善したんだとか、その辺は少し詳しく書いて、 恐らく多くの方はここしか読まないと思いますので、誤解のないようにわかりやすく正確にしたいと思いま す。  ほかに何かございますか。  高橋委員、どうぞ。 ○高橋委員 とてもとっぴなことを言って申し訳ないんですが、介護予防というのは日本語としてはやはり おかしいですね。要介護あるいは予防介護という言い方があるという。これは制度として普及してしまった のでこれはしようがないんだけれども、日本語を若干気にする人間にとっては当初から引っかかり続けてい まして、どこかで誤りを改めるにはばかれなかれという気はいたしますという感想でございます。済みませ ん。  ○辻座長 ほかにどなたかございますか。よろしいでしょうか。  それでは、先ほど申し上げましたような字句の修正の上で最終的なとりまとめとさせていただきますが、 これにつきましても私座長と事務局に御一任いただければと思います。よろしいでしょうか。 (「異議なし」と声あり) ○辻座長 それでは、以上をもちまして本検討会において必要な検討事項はすべて終了したということであ りますので、本検討会は今回をもって最終回といたしたいと思います。委員の先生方、長期間にわたるこれ までの熱心な御議論、本当にありがとうございました。 以上でございます。  事務局からお願いします。 ○鈴木老人保健課長 それでは、最後でございますので、私から一言申し上げたいと思います。平成18年 12月以来、6回にわたり大変お忙しい中、先生方においでいただきまして、また活発に御議論いただき、 誠にありがとうございました。  また、先ほど来、座長からもございましたけれども、私どもとして是非お詫びをしなければいけないと思 っておりますのは、学問的には必ずしも万全ではない状態で事業が既に始まっていて、かつ対照としてもな かなかとるのが難しい、データにも制約があるという中で、国会からもいただいた宿題を何とかお答えでき るように御努力をいただきましたこと、大変ありがとうございました。  先ほど来、先生方からいただいている、まだまだこれについては分析の仕方、分析の追加等々で得られる 教訓があるのではないかという言葉もありました。事務局からも御説明させていただきましたけれども、4 月以降も少し装いを変えますが、同じようにモデル事業としてより要介護状態の予防に資するような方法論、 取組み方というのができないのかということでまた検討させていただきたいと思います。  また先生方にお世話になることがあるかと思いますが、どうぞよろしくお願いをしたいと思います。大変 ありがとうございました。 ○天本課長補佐 それでは、以上をもちまして第6回の検討会を終了させていただきます。ありがとうござ いました。 <照会先>  厚生労働省老健局老人保健課 介護予防係   電話:03(5253)1111 内線3946