09/03/04 第1回重篤な小児患者に対する救急医療体制の検討会議事録         第1回重篤な小児患者に対する救急医療体制の検討会      日時 平成21年3月4日(水)       15:30〜      場所 中央合同庁舎7号館903会議室 ○大内専門官 定刻になりましたので、ただいまから「重篤な小児患者に対する救急医療 体制の検討会」を開催いたします。メンバーの皆様におかれましては、ご多忙中のところ ご出席いただきまして誠にありがとうございます。私は厚生労働省医政局指導課の大内と 申します。  まず、本検討会のメンバーの皆様をご紹介申し上げます、50音順で申し上げます。「知 ろう!小児医療 守ろう!子ども達」の会代表阿真京子委員、昭和大学医学部救急医学講座 教授有賀徹委員。日本医師会常任理事石井正三委員は本日ご欠席です。北九州市立八幡病 院副院長、同小児救急センター長市川光太郎委員、静岡県立こども病院小児集中治療セン ターセンター長植田育也委員、東海大学医学部小児外科学教授、日本小児外科学会小児救 急検討委員会担当理事上野滋委員、国立成育医療センター総合診療部部長阪井裕一委員、 大阪大学医学部救急医学教授杉本壽委員、順天堂大学医学部救急災害医学教授田中裕委員、 総合南東北病院小児・生涯心臓疾患研究所所長、日本小児科学会小児救急委員会委員長中 澤誠委員、長野県立こども病院院長宮坂勝之委員、順天堂大学浦安病院救急診療科教授山 田至康委員、土浦協同病院小児科部長、日本小児科医会小児救急医療委員会委員長渡部誠 一委員です。続いてオブザーバーをご紹介いたします。総務省消防庁救急企画室の松野様 です。次に事務局をご紹介いたします。厚生労働省医政局指導課長の三浦、指導課医師確 保等地域医療対策室長の武田、雇用均等・児童家庭局母子保健課課長補佐の小林です。続 きまして、事務局を代表しまして、医政局指導課長の三浦からご挨拶申し上げます。 ○指導課長(三浦) 医政局の指導課長でございます。本日は大変ご多忙のところ、重篤 な小児患者に対する救急医療体制の検討会にご参集いただきまして、誠にありがとうござ います。第1回の検討会ですので、開催に当たりましてご挨拶を申し上げます。  厚生労働省ではこれまで病院群輪番制方式によりまして、小児患者を受け入れる病院を 支援する小児救急医療支援事業、また常時小児患者を受け入れる病院を支援する小児救急 医療拠点病院運営事業、小児救急電話相談事業などによりまして、小児救急医療体制のう ち、初期救急と第二次救急医療を中心として、体制の整備をしてきたところでございます。  しかしながら、重篤な小児救急患者の救命率を向上させるためには、さらなる小児救急 体制の整備も必要ではないかと考えておりまして、本検討会を開催し、必要な方策等につ いてご検討いただくこととしました。また、救急医療全般にかかわる体制確保の方向性に つきましては、これまでこの検討会の親会議に相当します「救急医療の今後のあり方に関 する検討会」においてご検討いただいていまして、昨年7月に中間取りまとめをしていた だきました。その中で小児疾患等の特定の診療領域を専門とする医療機関の位置づけにつ いて、今後さらに検討が必要であるというご指摘をいただいたところでございまして、本 検討会ではそのことも踏まえて、重篤な小児救急患者を受け入れる体制整備の方向性など についてご議論いただきたいと考えています。  なお厚生労働省では、昨年11月より「周産期医療と救急医療の確保と連携に関する懇談 会」を開催いたしまして、周産期領域の救急医療体制についても検討してきたところです。 この懇談会のご意見として、周産期救急と一般救急との連携の重要性を含めて、大変活発 なご議論をいただいたところですが、周産期のみならず、小児領域の救急医療体制につい ても、一般救急との連携も重要な課題ではないかと考えておりまして、この点につきまし ても本検討会で活発なご議論をいただきたいと考えています。  私どもの考え方といたしましては、この検討会ではおおむね5月末までを目途としまし て、一定の結論を取りまとめていただきたいと考えています。期間的には大変短い期間で すが、委員の皆様方には何とぞ率直なご意見をいただきますようにお願い申し上げます。 以上簡単ではございますが、私のご挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いい たします。 ○大内専門官 続きまして、座長の選出を行います。事務局としましては、日本小児科学 会小児救急委員会の委員長であります、中澤先生にお願いしたいと思いますが、いかがで しょうか。                   (異議なし) ○大内専門官 ありがとうございます。では座長を中澤先生にお願いいたします。中澤先 生、座長席にご移動ください。  それでは中澤座長より、一言ご挨拶をお願いいたします。 ○中澤座長 ただいま座長のご指命をいただきました中澤でございます。座って挨拶をさ せていただきたいと思いますのでご了承いただきたいと思います。  ただいま三浦課長からもご指摘がありましたように、いろいろな問題が小児救急の中に はございます。ご存じのように、すでに、1歳ないし4歳の死亡が先進国では高い水準に あることが報告されていますし、厚生労働省研究班で、その死亡場所を調べたところ、半 数以上が比較的規模の小さな施設、すなわちICU等々の集中治療ができないような施設で 亡くなられています。当然亡くなるということに関しまして、その前に集中治療が必要な わけで、この適正化によって、ある意味では汚点としての死亡率の高さを減らせるのでは ないかと期待しているわけです。  今日の議題にありますのは、救急体制ということではありますが、実はこの死亡の中の 約1/3は外因性死亡で、2/3が内因性死亡であるということが結果として出ています。そう いうことも含めて、やはり重症な患者、重篤な小児患者をいかに助けていくかということ が問われていると思います。  救急に関しましては、当然小児の場合は、初期から高次医療までの連続性ということが 重要であります。すべての段階でまだ不十分です。二次医療までに関しては、これまでい ろいろな議論がなされております。いま三浦課長がおっしゃられたような輪番制や中核病 院の整備などがなされてきたわけですが、実は三次、あるいは小児の救命救急に関しては、 全くといっていいほど未整備であったわけです。従来の小児救命救急センターの中で、小 児への対応がわずかばかり、個人的あるいは施設ベースの努力でなされてきましたので、 その面を多少なりとも制度化していくということが、私はこの検討会の大きな役割ではな いかと考えております。  三次の部分、あるいは救命救急施設の充実がとりもなおさず実はいま疲弊を来たしてい る二次医療の負担を減らしてくる。全体の医療の質を高めるということにつながるのでは ないかと考えています。  我が国の状況を見ますと、あるいは世界的に共通かもしれませんけれども、小児に限っ たときには、救命救急あるいは高次医療のニーズあるいはそれを支えるマンパワー、医療 経済などから、我が国において、いろいろな点を考慮して、どのような重篤小児に対する 医療が適正であるか考えていただくということになると思います。こういうことを念頭に おきまして、これから何回か検討会を重ねていただくわけですが、それぞれの立場から忌 憚のないご意見やご議論をいただきたいと思います。三浦課長がおっしゃったように、良 い提案をして、できればそれを制度化させたいということが、私どもの希望でもあります ので、先生方にはよろしくお願いいたしたいと思います。 ○大内専門官 ありがとうございました。以降の議事進行を中澤座長にお願いしたいと存 じます。中澤座長、よろしくお願いいたします。 ○中澤座長 それでは議事次第に従いまして議事を進めてまいりたいと思います。議事に 入る前に、事務局のほうから資料の確認をお願いいたします。 ○大内専門官 それでは資料の確認をさせていただきます。まず、議事次第の1枚紙、資 料1は開催要綱、別紙にメンバー表、資料2は「小児救急医療体制の整備状況について」、 資料3は「今後の検討課題等について(案)」となっております。参考資料1は「救急医 療の今後のあり方に関する検討会」の中間取りまとめ、参考資料2は「第3回救急医療の 今後のあり方に関する検討会」の資料からの抜粋、参考資料3は「平成21年度小児救急医 療体制整備予算」です。続きまして3人の委員の先生から資料をご提出いただいておりま す。山田委員から「救命救急センターにおける小児救急医療の現状」、植田委員から「PICU 〜小児救急最後の砦」、市川委員から「集中治療を要した救急症例の検討」をいただいて おります。皆様ご確認いただきまして、もし資料の欠落等がありましたら事務局にお申し 出ください。  なお、撮影はここまででお願いいたします。また、本研究会の議事と会議資料は原則公 開とさせていただきます。 ○中澤座長 ありがとうございました。それでは議事に移らさせていただきます。本検討 会で発言されます場合、いまお話のように、これを録音してあとで議事として起こすもの ですから、挙手をしていただいて私が指命いたしますので、お名前をおっしゃって発言を していただきたいと思います。論点によっては、私のほうからご指命をさせていただくこ ともありますので、どうぞ忌憚のないご発言をお願いしたいと思います。  それでは、いまご紹介がありましたお三方のご発表の前に、事務局から資料のご説明を お願いいたします。 ○大内専門官 資料1に基づき説明させていただきます。「開催要綱」です。本検討会の 趣旨ですが、小児救急医療体制については、初期救急及び二次救急において、小児患者に 特化した体制が整備されてきたところですが、さらに重篤な小児患者を救命するための体 制の強化が求められておりますので、そのような体制のあり方を検討していただくもので す。また、この会の位置づけですが、指導課長による救急医療の今後のあり方に関する検 討会の作業部会となっております。以上です。 ○中澤座長 ありがとうございました。続きまして、資料2、参考資料1、2、3のご説明 をお願いいたします。 ○大内専門官 資料2に基づき、小児救急医療体制の整備状況についてご説明させていた だきます。1枚おめくりいただいて、救急医療体系図をご覧ください。左側に大人の救急 患者の流れを、右側に子どもの救急患者の流れを示しています。上から2列目が二次救急 医療で、小児に関しては小児救急医療支援事業が144地区、小児救急医療拠点病院が29 カ所整備されております。その上の救命救急医療につきましては、未熟児等は総合もしく は地域の周産期母子医療センターにおいて対処されますが、小児は救命救急センターが全 国で214カ所整備されておりますので、そちらでご対応いただく体系図となっております。  2「集中治療室等の整備状況」ですが、(1)ICUは全国670施設に5,453床、NICUは全国 280施設に2,341床整備されております。なおこれは平成17年の結果です。  資料2-(3)の上の表をご覧ください。救命救急センターのうち、小児救急専門病床がある とお答えいただいた救命救急センターは、全国で6施設でございまして、その病床の総数 は19床でした。同じ頁の下の表をご覧ください。これは小児総合医療施設協議会の調査結 果です。小児専門病院の中で、独立したPICUがあるとお答えいただいた施設が15施設、 PICUがない施設が11施設、無回答が3施設でした。PICUがある15施設の病床の内訳を その下段の表に示してあります。「術後患者用病床のみある」という施設が3施設で16 床、「重症・救急患者用病床のみあり」が6施設で65床、「それぞれの病床がある」が3 施設で、術後用が36床、重症・救急用が20床、「区分がない」という施設が3施設で合 計23床でございました。すべてを合計いたしますと160床となっております。  資料2-(4)をご覧ください。医政局指導課長通知で「小児医療の体制構築に係る指針」で す。下の4-2「小児の救命救急医療を担う機能」をご覧ください。小児の救命救急医療を 担う医療機関はPICUを運営することが望ましいとされております。資料2については以 上です。  参考資料1「救急医療の今後のあり方に関する検討会」の中間取りまとめについては、 小児に関係する部分に下線を付してありますので、あとでご参照ください。  参考資料2は、第3回の検討会の中で、特に小児もしくはほかの専門病院の位置づけに ついて、ご議論いただいた部分の抜粋です。  参考資料3は「平成21年度小児救急医療体制の整備に関連する予算(案)」で、特に(2) (3)(4)をご参照ください。以上でございます。 ○中澤座長 ありがとうございました。ただいま駆け足でしたけれども、これまで資料に 沿ってご説明いただきました。最初に今後の開催要綱ということで、主な検討事項等をご 説明いただいたわけですけれども、これまでに関してどなたかご質問はございますでしょ うか。討議をあとにとっておきたいと思いますので、これに関してご質問ということでお 受けしたいと思いますがいかがでしょうか。少し早目に進めますと、あとで討議の時間が 十分取れますので、ご自由にご発言願いたいと思います。  私自身の個人的な見解としましては、基本的にこの主な検討事項に沿うということでし ょうけれども、やはり(1)がいちばん大事なものであろうと思いますので、できればかなり の時間をここに割きたいと考えております。  ご質問がないようですので、資料をまたお読みいただいて、後日でもご質問があれば事 務局からお答えできると思いますので、先に進めさせていただきたいと思います。  それでは、これからお三方の委員の方々に、ご経験、あるいは委員の関係の調査等をご 発表いただいて、私たちの今後の議論の1つの基にしたいと思います。それでは、救命救 急センターにおける小児救命救急医療についてということで、山田委員からご説明を願い たいと思います。時間的に15分を予定しておりますし、討論の時間を十分に取りたいので、 これからご発表の方は時間をお守りいただきたいと思います。それでは山田委員よろしく お願いします。 ○山田委員 救命センターにおける小児救急医療の現状についてお話をしたいと思いま す。小児の救急医療は車の両輪のように、一次、二次と三次があるわけですが、今回は三 次についてお話いたします。  先ほどからここで話題に上っていますが、新生児死亡はOECDの中で1位なのに、1〜4 歳だけが非常に低く、世界21位だと。これは何故かということで、やはり重篤小児の対応 がまずいのではないかということが浮かんできます。これについてお話します。  これは昨年11月26日の朝日新聞の記事です。ここに委員の植田先生や成育の阪井先生 の所の話題が載っていますが、特にこれでも、1〜4歳死亡が主要国中3位だと、非常に高 いということで、小児のICUの必要性、そして、ちょっと見えにくいのですが、2007年に 小児のICUの基準を作られています。そういうものがあることが新聞に公表されていて、 我々はそれを基にしてこれから構築していく必要があるのではないかと思います。  これは1〜4歳の死亡の場所、どこで亡くなっているか、2年間の調査、死亡小票を起こ して調べたものです。ここにあるように、2年間に病院内死亡で約1,900名が亡くなって いますが、そのうち、全死亡の1/6にあたる314名がその方だけしか亡くなっていない施 設で亡くなっています。そして、その施設は全体の施設の中で、病院が647カ所ある中で 314カ所と、ほぼ半数の場所になっていると。要するに、小さな規模で子どもが亡くなっ ている事実が明らかになっています。  これは小児科学会の中で、研修指定病院の有無を見たものです。薄いほうが、指定があ る、研修医がそこで教育を受けている病院で、濃いほうが指定のないものですが、やはり 規模の小さい所です。それを見ても、内因系もそうですが、特に外因系で、小さい施設で の死亡が軒並み多いことがわかります。これは同じく場所、救命センターがあるかないか です。救命センターがどうかを見ますと、濃いほうが救命センターがあって、薄いほうは ないのですが、外因性の病気ですら、一般の救命センターのような集中治療ができない所 で亡くなっているケースが多い、ということが明らかになります。  この辺のことを簡単にまとめると、1〜4歳の小児死亡は小さな施設で、十分な集中治療 を受けることなく亡くなっています。やはりこれはPICUのようなハードがあって、そこ にスタッフがいて、集中治療を行う必要があるのではないかということが言えます。  もう1つ、PICUを有効に活用するためには地域のメディカルコントロール、重篤小児 が搬送システムに入っていかなければいけない、ということが言えると思います。そして、 先ほど座長のほうからありましたが、1/3は外因性であると。内因性ばかりやっても、や はり外因性も含めて死亡を減らしていく必要があるので、外傷をはじめとする中毒とか、 いろいろな外因性の疾患にも対応する必要があるのではないか、だからこそ新しいシステ ムが必要だと。  救命センターにおけるいくつかのアンケート調査が、平成10年から19年までの10年間 に行われました。今日ご報告するのは、平成19年に日本救急医学会の小児救急特別委員会 が行ったものですが、その前に10年の推移を見てみると、PICUがほとんど増えていない ことがわかります。さらに、小児を診る専従医というか、主に小児科医ですが、このアン ケートでは少し高めですが、その比率もほとんど少数であることが伺えます。  これが、アンケートの数値の部分をまず先にという話です。小児の受診患者は半数のセ ンターは年間2,400人以下、1日に直すと6.5人ぐらいの患者しか受け入れていないと、救 命センターは非常に少ない数しか小児を扱っていないことがわかります。小児患者の総受 診者数は成人の約16%で、成人に比べてかなり軽い者が多いのですが、重症者は少ないで す。成人に比べて、入院数は11%、約1割で、救急車搬入になってくるとさらに減って5 %、CPAに至っては成人の2.3%と、CPAが非常に少ないこともわかります。さらに、救 命センターですので、入院における内因性疾患と外因性疾患の比は1対1.7と、外因性が 多くなっています。ICU入室に関しては成人の2.4%で、平均すると年間14件ぐらいしか なく、転送の経験も20%ぐらいになっていることがわかります。  そして、細かいことですが、1次、2次に対してどう対応しているかを聞いてみると、1 次から3次までに対応しているのが約半数で51%、2次、3次、ある程度高次に対応して いるのが35%、トータル約86%の施設が小児の救急に対応していると答えています。その 時間帯は、24時間対応しているのが87%、看護師によるトリアージ体制を敷いているのが 約2割、さらに、外来で小児専用の診療ブースがあるかどうかを聞いてみると、軽いもの や中等症のもの、重症用、決めていないもの、それらを全部含めると約4割の施設で小児 の外来ブースがあることになります。  小児患者の初療は誰が診るのかを聞いてみますと、軽症の場合は、当然指導医がつきま すが、初期の研修医、小児科医が多く、それに少し救急医が加わります。中等症から重症 になると初期研修医の比率は当然下がります。小児科医の比率が上がり、さらに救急医の 比率も上がるようになります。それ以外、内科医などのローテーターも診療に参加してい ます。センターの専従医に小児関係の有資格者はいますかということに対してはPALSの プロバイダーがいちばん多くて、小児科の専門医、小児外科の専門医等になっています。  時間外における重症児への小児科医の対応はどうかと聞いてみますと、ほぼ7割近い所 が対応していると答えられて、その中で、センター内に医師が常駐しているかどうかを聞 いてみると、5%ぐらいしか常駐していない、ほとんどがセンター外、これはまた後で図で 示しますが、そういった体制が多いです。要するに、小児科医の常勤医が救命センターに いない現実が明らかになります。小児外科に対しては、約6割が対応していますが、小児 外科医はたかだか16%で、それ以外の外科医が多いことがわかります。さらに、救命セン ターだから、当然利用可能なICU病床はあるわけなのですが、アンケートで約9割の所が あると答えています。我々がいちばん知りたかったのは、小児が優先的に利用可能なICU、 PICUと訳すこともできるかと思いますが、それがあると答えられたのはたかだか20%で、 後でまた問題になってきますが、アンケートではそう答えられています。  そして、普通、調査ではこの程度しか聞けないのですが、実際に症例を仮定して、こう いう症例があったときはどう対応されているかを聞いてみました。まず、虐待を伺わせる ような8カ月の頭蓋内出血、CPAOAの溺水、痙攣重積、喘息の重積発作、腹部の外傷、 こういったものについて、電話応需はどうか、搬入時はどうか、どこに収容するか、何科 が対応するかと聞いてみました。それはここに示していますが、頭蓋内出血はほとんどが 救急医が対応していると、ただ、内因性の疾患になってくると小児科医も応需に少し参加 していることが明らかです。搬入時、あまり言葉はよくないですが、どうしても受入れが 不可能な状況はどういうものかを聞いてみました。ほとんどが受入れ拒否なし、ほぼ9割、 みんな受けますという答えなのですが、どうしても受け入れられないその理由は、頭蓋内 出血とか痙攣重積の場合は、8カ月とか3歳だからというように、年齢が小さいからお断 りしていると、ここに挙がっています。それ以外はどこでもそうですが、Ope室、外科医 の都合、麻酔科医の都合、病室が満床だとか、ICUがないとか、ベッドがないということ で断っていることがわかります。  どこに収容するか。これは非常に大事になってきますが、頭蓋内出血とか溺水、腹部外 傷は成人のICUに収容するケースが多く、内因性の痙攣重積、喘息重積発作は本院の小児 病棟に収容するケースが多いです。ただここで、救急救命センター内のPICUに収容する と答えたのは大体2%です。ということは、20%あるとおっしゃるのですが、実際にはこ の程度しか使われていないことが伺われます。  診療科。これは専門、当該科が分かれてきます。内因性は小児科が多くなるし、また、 頭蓋内出血等では脳外科と救急診療科が多くなり、腹部外傷では救急診療科と外科が多く なるといったことが伺えます。  これらからまとめてみますと、小児救急の9割の施設が24時間365日体制で稼働してい ると。そして、看護トリアージの実施とか小児診療ブースは2、3割あります。初療医は小 児科医で過半数、中等症から重症例では救急医の比率が増加している、連携がここに見ら れると。重症児への小児科医の時間外対応は67%、センター専従の小児科医のいる施設は たかだか5%しかない、小児外科はそれよりもさらに少なくなって、たかだか16%である と。資格はPALS、小児科専門医、小児外科専門医。  そして、優先的な利用のICUは、たかだか20%だと。計算式がありますが、20%、これ は後で、報告が書いてあります。北九州市立八幡病院の調査から、大体人口100万規模、2 万5,000の外来で、1.6〜1.7ぐらいの稼働率ということで、仮に2床とした場合、それを 200人、14になるかもしれませんが、約80床。こういった、全国の救命センターで、2床 を子どもが使えるようなICUがあれば、かなりの病床が、80床程度利用できるのではない かということです。そして、重症の小児では成人ICUに収容される率が高く、救命センタ ーの成人ICU80床程度がPICUの不足をカバーすることになり、小児施設のみならず救命 センターへのPICUの設置も、現実的に検討すべきではないかと思われます。  ここからは当施設のことについてお話させていただきます。当施設は新型の救命救急セ ンター、15床のICUを有しているわけですが、その中で、小児救急のチーム、小児科医の 常勤が2名で、一般救急と共に活動しています。そして、できるだけ協働を旨として活動 しています。  救急患者ですが、これは平成18年度とちょっと古くなっていて、2万1,000人ほどで、 成人が1万8,000人、小児が3,000人、入院が3,033人、そのうちICUは628.2人、救急車 は5,200台入っています。その中で、小児の3次はどうかと見ますと、病院自体は653床 で、3次の患者全体が1,000名ほどなのですが、小児が38名で3.6%、男女比があまりな く、男児は21、女児は17、内因性疾患、外因性疾患、共にほぼ同数で19例です。また、 拡張型心筋症、SIDS、間質性肺炎、脳の動静脈奇形、いろいろな内因性疾患。それから、 これは外来死亡も含めているのですが、転倒・転落、交通事故、それに中毒があります。  腹部の外傷ですが、鈍的外傷に絞ってみると、1年少しの間に9例のケースがあります。 TAEというか、栓塞をする必要、止血の必要があったのは一例ありますが、大体保存で軽 快退院しているケースが多く、中には摂食障害の子どもがいたり、ADHDの子どもがいた り、ここで救急医と小児科医のいいコラボレートができているケースがあります。  これも2年にわたるのですが、中毒について。アセトアミノフェンとかベンゾジアゼピ ンの中毒が多いのですが、例の毒入り餃子事件のメタミドホスのケースもここにあります。 年に3例か4例の子どもの中毒例も受診されていることが明らかです。  救命センターとして歩き始めて日が浅いので、統計的な数値をまだ十分出せないのです が、成人救急の中でこれからどう小児を組み立てていくかを検討していきたいと考えます。 いまの実態についていままでお話しまして、これから展望というか方向性についてお話し ます。小児科学会は小児医療の提供体制の改革を目指して、地域小児科センター病院、中 核病院と、そういう構想を立てました。そして、集約化、重点化を目的として、病院と人 の集約化を図っています。そして、子ども病院とか大学病院にあたる大きい所を中核病院 として、そこにPICUを設置することを考えています。  PICUに関して、厚生労働省の数字と違いますが、2008年には18施設、120床、専属医 師は30数名です。埼玉医大の桜井らが、小児人口4万人に対して1ベッドが必要だという ことです。米国は2万人に対して1ベッドですが、ヨーロッパは4万人に対して1ベッド です。我が国もヨーロッパの数値を基にすると、小児人口4万人に1床だと全国では487 床、約500床です。いまあるのは120床で、まだ20%に満たないという現状があります。 そして、集中治療専門医の数の少なさも明らかになっています。  小児科学会が、中核病院等に小児救命救急センターを置こうではないかということで、 いろいろな医療体制を想定しています。組織、人員、スタッフのマンパワーをどう配置す るかが検討されました。その具体的なものですが、小児科学会の案では、小児の救命救急 センターという所には、外来部門として小児の救急部、そして、そこから連続性につなが っていく、入院部門としての小児の集中治療部と、その中にPICUを置こうという考えが あります。最近の新聞にもありました。2007年3月に日本集中治療医学会と日本小児科学 会が連名で、PICU設置のために指針を出しました。これは非常に詳しいもので、精緻な 基準なのですが、それをベースにして設置の状況を検討していく必要があるかと思います。  いま、私たち小児科学会の救急委員会の中でいろいろ検討していますが、PICUにはや はり形が2つあるのではないかと。1型というのは先ほどの指針にもあるように、きちっ としたもの、最低8床、そして、小児に限定した1看護単位を持つと。専従医がいて、看 護単位も独立する。ただし、これはどこにでもすぐ設置できるものではありません。もっ と現実的な考え方とすれば、2型のほうが有用ではないだろうか。救命救急センターを設 置して、2床程度で、成人と共用して、小児が優先的に使えるようなものを2型と考えま す。それも想定して、非常に詳しいです。また、手元資料で見ていただけたらと思います が、細かい配置も考えています。こういったことで、非常にPICUの重要性、必要性を評 価している状況です。  先ほど言いましたように、PICUには1型と2型とがあります。1型は施設によっていろ いろ違うので、PICUを1つにまとめるのは非常に意味のあることですが、それはCCU、 心臓のICUに関してだけは分離したほうがいいのではないかという考えもあります。また、 ある地方では、待機的なICUと緊急的なICU、いわゆる、救急に使うICUと術後のICU を分ければいいのではないかという考えもあります。一方、2型に関しては、救命センタ ーに設置するわけですが、常勤の小児科医がいる所といない所とあって、いる所は最低2 名は必要である、1人いてもなかなかできない。そして、ER型で、この場合はある程度受 入れを広く。そして、先ほどの調査で2,400人と出てきたのですが、3,000人ぐらいが必要 なのではないかと考えています。先ほどの図式からしますと、小児患者が来ると、大体重 症であったら、まず救急医が初療を行って、そして、本院の小児科医に連絡をして、小児 科医が現場に駆けつけて、一緒にコラボレートするパターンが一般的です。いま当院では、 常勤の小児科医2名が最初から救急医と一緒になって救命に当たるシステムをとっていま す。まだほんの2名と僅かですが、これはもう少し大きく育てていきたいと思います。  最後から2番目のスライドです。小児の救急医療においては、集約化、重点化がどんど ん進んで、まず第1段階。これはもう本当にミニマムリクワイアメントだと思いますが、 さらに、外傷・中毒にも対応するという、成育や北九州等では日常化しています。さらに、 私たちが目指しているのは、成人の救急のトレーニングを受けて、自分の専門は小児だと いう人を育成していきたいと、私たちはそういうような方向でやっていきたいと考えてい ます。  結語です。救命救急センターにおける、重篤小児の救急医療体制の確保のために、実際 に、救命センターに常勤医がいて、全国で何カ所か、ある程度アクティビィティがある所 をモデル事業にして、検討してみる必要があるのではないかと考えます。さらに、重篤小 児の救急対応にはPICUの存在が欠かせない。これは当たり前のことです。そして、これ は1型と2型に分かれます。さらに、初めのほうで少し触れましたが、病院前救急である メディカルコントロール、こういったものも非常に重要なので、そこへ小児の救急をやっ ている人たちの積極的な参加が必要ではないかという問題です。  以上です。ご清聴ありがとうございました。 ○中沢座長 ありがとうございました。ただいまのご発表に特定するご質問があれば、1 方、お2人方お取りしたいと思いますが、いかがでしょうか。大丈夫でしょうか。それで は、時間を節約したいので、次のご発表をいただきたいと思います。  続きまして、小児専門病院のICUということで、植田委員にご発表をお願いします。 ○植田委員 静岡のこども病院の集中治療センターの植田と申します。いま山田委員の発 表にあった、1型のPICUに当たるものですが、実は2年かけてこれをやってまいりまし た。現状の報告といった発表をしたいと思います。これは先ほども出ていましたが、1〜4 歳の子どもの死亡率が先進国の標準と比べても高いと、ここだけ突出しているというお話 です。この話は繰返しになるので端折ります。  米国はいちばん悪いですが、これは他殺が多いのです。他殺を抜くと、実は日本がワー ストワンレベルです。ただ、その話をしますと、日本は新生児の死亡率が世界一低いので、 それが年齢1〜4歳へキャリーオーバーされて、それで亡くなっている、それで死亡率が高 いのだと言われてしまうこともあります。ですが、よくよく内容を見てみると、周産期に 発生した病態はこのうち僅か1.5%です。それからもう1つ。では、同じく新生児の死亡 率が非常に低いスウェーデンやオーストリアはどうかというと、スウェーデンはPICU発 祥の地でもあるのですが、これは1〜4歳に持ち越されて死亡率が上がることはないです。 やはり1〜4歳の後の年齢でも世界のトップレベルを維持しています。これは何だろう。実 はPICUで診療していますと、先天奇形・染色体異常で亡くなる方は1〜4歳で18%あり ます。そういう方が肺炎になって入院してきて、一生懸命管理して、また人工呼吸を離脱 して家へ帰れると、QOLも高められると。こういうことができれば、やはり1〜4歳の死 亡率は軽減できるのではないかと考えています。以上です。  ですから、このスライドで、NICUがテイクケアする部分はここです。それから、成人 のICUがテイクケアする部分はここです。最後に、PICUが面倒を見る部分はここである と考えています。  そのPICUをめぐる話題が1つあって、先ほど山田委員がおっしゃっていた、1型と2 型はどちらがいいのかという所に踏み込んでお話したいと思います。小児病院型なのか、 救命センター併設型なのか。私のやっている、小児病院型のPICUの利点といいますと、 これは基本的にすべてのサイズの小児に制限なく、検査、治療、看護、すべてが提供でき ます。ですから、数カ月のベビー、3、4kgという方にも、すぐに体外循環、人工心肺に回 しましょうで、20分ぐらいで確立できる医療はあるというところです。ですから、大きめ の小児だけではなく、生まれたてから1カ月、2カ月、3カ月、非常に幼弱な乳児に対して も同じレベルの集中治療が提供できるのが利点だと思います。  もう1つ、欠点というと、ある意味で救急のメンタリティーが欠如している。静岡のこ ども病院も一昨年で開院30年になりましたが、それまでは慢性疾患の療養病院であること がメインで、こういう所に救急を持ち込むことはなかなか大変です。それからもう1つ、 いままで小児科医は外傷は診ないということで背を向けてきたわけですが、そういうこと をやってきていた子ども病院に果たして外傷を含む外因性疾患を診られるのか、というこ ともパラダイムの1つになってくると思います。  では、このS県の場合。真ん中にK病院、これは子ども病院です。東にJ病院とありま す。これはドクターヘリを持っています。M病院というのが西にあります。これもドクタ ーヘリを持っています。県に2つドクターヘリがあります。それからもう1つ、医科大学 が1台あります。さて、これぐらいの医療機関がある所ですが。K病院は、エクモ(体外 循環)、血液浄化はどんなサイズでもいいけれども、救急は・・・。次、J病院です。救 急搬送は任せてくれ、ただ、小児は診るけど、ちょっとなあ・・。M病院。やはり同じよ うに、救急搬送は任せてくれ、ただ、小児の最重症になるとちょっとなあ・・。それから、 大学は・・・。で、K病院にPICUを作って、それで、これは広域ですから。広域圏から ドクターヘリにお手伝いしていただいて、小児の重症患者を集めることをやっています。  静岡の現状をお話したいと思います。県立こども病院の小児集中治療センターは現在12 床あります。集中治療加算がとれているのは、看護師の都合で4床となります。医者の数 はありまして、常勤医11名、非常勤医3名、14名の医者で、12時間単位のシフト制で、2 交替で勤務しています。基本的に、この小児集中治療医は専門医として診療に当たってい ます。看護師も3交替で入っています。  対象とする疾患群ですが、術後管理も一緒のICUでやっていて、術前術後の主要臓器不 全、これを1つ診ています。それから、静岡県全域の小児の3次救命救急です。内因性、 外因性を問わずにです。それから、院内の患者の急変重症も診ています。それから、地域 の救急車、私もMC協議会、県、それから、静岡市域の委員にさせていただきまして、そ ことよく話し合った末、3次救急と思われる小児、また、こども病院が最寄りである、あ るいは他院で受入れが困難である、というものに関しては救急車も積極的に受けて救急を やっていくということをやり始めました。  これが2008年、1年間の診療実績をまとめたものですが、年間500例弱の入室です。5 割弱ぐらいは術後管理をしています。それでもやはり、3次救急にあたる所は4割ちょっ とあって、年間200例以上あります。それから、他病棟も救急ですし、手術も、救急外来 へ来てすぐ手術室に行くような症例もありますから、大体半分以上、6割ぐらいは救急患 者と考えています。それから、広域搬送が必要なので、小児を乗せたドクターヘリが80 回飛来しています。それから、ドクターヘリが飛ばないときはドクターカーによって迎え 搬送していますので、これも50例ぐらいあります。  その200数名の院外3次救急患者、小児の救命救急、3次救急患者になるわけですが、 この傷病詳細は、1/3が外因性で、外傷も大体50例近くありました。それから、内因系が 140とその2/3で、これは呼吸器系、神経系、消化器系といろいろです。重症の肺炎、喉 頭蓋炎、脳炎・脳症というような小児の内因性の病気の重症を診ています。1/3は外因性、 2/3が内因性という結果です。  これはうれしかった1つの救命例です。去年の1月2日に愛知県の山間部、長野県境に 近い所で、氷の張った池に転落して、心肺停止が大体10〜30分と予測されていますが、そ のお子さんが心肺停止で発見されて当院に搬送され、脳低温療法等を施行して、元気に歩 いて帰れたという事例もあります。これは広域連携の非常にいい例であったと思います。 現場はこの辺で、非常に近くの病院へ運ぶにも1時間、2時間はかかってしまう。愛知県 にはもちろんドクターヘリがあるのですが、そのとき愛知県のドクターヘリが他事案で出 ておりまして、愛知県のドクターヘリと浜松の聖隷三方原病院のドクターヘリと提携して おりますので、代わりに出てくれということで飛び立ちました。  それ以前から聖隷三方原病院と我々の間はホットラインで結ばれており、電話がかかっ てくれば二つ返事で患者を受けるという体制が整っていましたので、浜松のヘリが愛知県 内のどこへ搬送しようかと探すよりも、電話が来ましたので、我々は1月2日に、どうぞ と言って受けました。  これは現場でドクターが時間がかかっているのですが、それを除けば大体1時間以内に PICUに収容できたと。いままでの実績では、静岡県内どこからでも、現場の救急隊は各 地から20分でドクターヘリのドクターの治療が始まって、1時間以内にはPICUに収容し て集中治療を始めております。  今度は、外傷診療がどうなのかというお話をしようと思います。外傷診療をよくご存じ の方には釈迦に説法で申し訳ありませんが、外傷というのは、いままでわからない病気だ とか、わからない外傷というのはなくて、どこにどういう病気があるか、どういう外傷が あるかというのは調べていけば必ずわかってきます。そうすると、外傷の重傷度というの はスコアリングができるのです。外傷を診ている施設同士の客観的評価もできるというこ とです。うちで開設以来経験した50例の小児外傷についてインジュリー・シビリティスコ ア、外傷の重傷度スコアを取ってみますと、平均値が15ということです。これは救命救急 センター、成人の施設の中で平均値ぐらいということです。こども病院で子どもばかりを 集めたが、特に軽傷ばかり診ているというわけではない。これが大体15、16以上だと重傷 になってくる。これが16から24、25から35、36以上という、半分弱ぐらいはいわゆる重 傷外傷のカテゴリーに入る患者さんという結果です。  これはその外傷のインジュリー・シビリティスコア、重傷度からTRISS法というのを用 いると、予測救命率。その患者さんがどれくらいの確からしさで救命できるか、というこ とが数値としてわかるのです。下の軸が救命率、これは患者さんです。救命率は9割とか 10割とか、もちろんちゃんと助けなければいけません。予測死亡率0.5というところにラ インがありますが、予測救命率50%を超えている人が死んでしまうといけない。本来、救 命されるべき患者さんが死んでしまったということになるので、これは外傷診療の質が悪 いということになってしまうのです。当院の50例の経験を分けてみますと、亡くなった方 が2名おりまして、1人亡くなったのは予測生存率が20%、30%と、非常に重傷な方でし た。  もう1人亡くなった方が50%超で1人いらっしゃるのですが、これは頭部だけの単独外 傷で、そうしますとスコアが低くなってしまいますので、重傷度、死亡率としては低くな るのですが、来たときから全体的な脳浮腫で、瞳孔も散大しておりほぼ救命できない。実 際、こういうことを評価する場合には、こういう患者さんは除かれる例ではあるのです。  そういうことを勘案しますと、決してこども病院で外傷診療をやり始めて、本来、助か るべき小児を失っている。そういうマイナスの面は、おそらくいままでのところは出てい ないという考え方をしております。  先ほどもお話したPICUをめぐるパラダイムですが、小児病院型PICUの欠点は、救急 メンタリティーの欠如ということです。2年ぐらいやりましたが、年間200名超の3次救 急患者を見ております。やればできるじゃないかということです。  もう1つは、外傷を含む外因性疾患を果たして見られるのかという疑問に関しては、小 児の外傷を年間50名以上、重傷を半分ぐらい見ています。大きな救命センター、成人の救 命センターはもっとたくさん外傷を見るわけですが、15歳未満の小児の数として50とい うのは、そんなに少なくはないと見ています。その中で、いわゆるプリベンタブル・トラ ウマ・デスと言いますが、ちゃんと診療していれば救えた小児が亡くなっていたというよ うなことは、おそらくないと言っていいだろう。この辺についても手前味噌ですが、いい 線いっているのではないかというところでご報告したいと思います。  少し話題を変えて、PICUを作りました、専門医、医者も十数名います、いろいろな病 気を診ますと、何かいいことあるのと言われてしまいます。NICUならば新生児死亡率と いうのがその県に置かれて、プレとポストで如実に下がったということで、これはいいと 言われますが、PICUではいま申し上げたように、いろいろな疾患を診ますから、なかな かNとして統計学的に有意なデータは出てこないのです。ただ、そうも言ってられないの で、少しそういうデータを出すように努力をしております。  これは私が前任地の長野県立こども病院のときにやっていた小児の脳炎・脳症、いわゆ るインフルエンザ脳症という重症な疾患に対して、PICUで集中治療をして、その結果を ランダマイズドコントロールスタディするのは難しいのですが、それ以前の集中治療室が ないときに、病棟で管理していた脳炎・脳症の患者さんと予後がどう違ったのかというこ とを検討していました。  いま申し上げたとおり、脳炎・脳症に対して、PICUで集中治療を施行した分と、過去 の入院患者で、スコアリングで重傷度を揃えて、それを対照群として抽出して、その2群 の予後を比較をしました。  これがPICUで治療した群です。これが対照群としてピックアップした症例です。PELOD スコアというのは小児の分野で、重傷度を示すものです。重傷度としてはほぼ等しくて有 意差はありません。それから算出される予測死亡率。先ほどの外傷と同じような方法でや るわけですが、これはむしろPICU治療群のほうが予測死亡率が高い。両方に有意な差は ないと1治療群と対照群と予想しました。  3者併用群というのは、こちらのほうで軽度後遺症とか軽快という方が3名、重度後遺 症の中でも比較的軽傷の方が2名。これぐらいのバラつきであり、対照群の患者さんはほ ぼ重度後遺症という方で、その中でももっとも重傷で、自発呼吸が出なくて人工呼吸機を 離せない状態になってしまった人も2名いる。この2群に対して、PICUで治療した脳炎 ・脳症のほうが予後はいいであろうという結果が出ております。  ほかにもいろいろなことを調べたのですが、人工呼吸期間はやはりPICUでやったほう が12日、対照群では104日というふうに違いが出ております。これはバラつきが多いので 有意差はありません。有意差があったのは入院期間で、PICUで治療するとトータルの入 院期間が大体49日。いままでは300日と膨大に入院しております。医療費もPICUで集中 治療すると360万円。対照群でずっと入院していると1,000万円。これも有意差はないの ですが傾向が出ております。  脳低温療法をやったPICUで治療した入院患者さん5名は全員生存して、3例は軽度後 遺症から軽快といい結果を見ております。当院の過去の症例と比較すると、予後の有意な 改善を認められます。入院期間や入院費用も短縮、減少されるという結果が出ております。  いままでのは内因性の疾患がPICUで良くなるのではないかというプリミティブなデー タです。次は外因性の疾患がどうかということです。これについては、日本救急医学会雑 誌に出ていた日本医大の北総医療センターと成育医療センターのPICUとのコラボレーシ ョンと言いますか、その結果で、皆さんもご存じと思いますので端折ります。  日本医大の北総医療センターに入ってきた小児外傷患者のうち、数名選んだ症例を成育 医療センターPICUのほうに運んで集中治療を続けている。もちろん、北総のほうで診ら れる小児患者もいると。それをどういうふうに予測死亡率、実死亡率が経過したかという のが、このデータです。いちばん右側は、先ほどもTRISS法と言いましたが、予測死亡率 と実死亡率。n、ほとんど有意差はないというところで、同じぐらいいっていると。  ただ、PICUに運んだより重傷で、より小児集中治療が必要で運んだはずですが、そち らのほうは如実に予測死亡率よりも実死亡率のほうが下回っているということで、外傷を 小児病院型PICUに運んでも予後は改善するのだという結果が出ています。  これは我々も駆け出しですので、なかなかデータが出ないのですが、静岡県の小児死亡 数がどれぐらい変わったか少し検討してみました。我々のPICUができたのは2007年6月 ですから、この年度の中で6カ月ぐらい稼働しています。前年度の2006年度というのは、 静岡県の小児死亡、これは1歳から5歳未満まで149名でしたが、これが126名で20%弱 ぐらい減っております。面白いことに、こども病院で亡くなった方は変わっていないので す。ですから、我々はこれをやり始めて、我々の所でも確かに12名亡くなり、これは大変 なことです。ただ、我々がやった分だけここに上積みされているわけではなくて、全体の 傾向としては低下している中で、この病院の中で別に増えているわけではないと言います と、この分を我々が吸収することによって多少はなくなっていますが、静岡県の小児死亡 率に対してインパクトがあるのではないかと。これはまだ半年の稼働ですから、今度2008 年度のデータをいただくことになってますが、これから数年間これを検討し、過去も数年 間検討すると、有意にPICUが静岡県の小児死亡数を減らせるのではないかというデータ がひょっとしたら出るかもしれない。  いま申し上げたように、PICUがもたらす医学的エビデンスは何かというお話ですが、 内因性疾患、外因性疾患ともに治療成績が向上するのではないかという国内のエビデンス もだんだん出てきております。カバーする医療圏で小児死亡が減少するトレンドが見られ ている。これをもう少し検討していくと、有意に減少させるというようになります。これ が全国的に整備されてくれば全国の小児死亡の減少、1歳から4歳までの小児死亡の減少 が達成できるのではないかと考えております。  ここで設立や運営をめぐる諸問題についてお話させていただきます。設立に際してのキ ーポイントは、まず政策医療という部分があります。行政の理解と、政策化というのが必 要だと思います。静岡県は静岡県の保健医療計画の中に、こども病院に小児三次救急をす る中核センターを作るということを数年前に明示して、それに基づいてこれをやってきま した。もちろん病院は赤字経営になりますから、その分の会計負担金、交付金をいただい た上でのことになります。  もう1つは、ここでもお願いしておきたいことは、小児集中治療加算というのを実現し ていきたい。いつまでも交付金や負担金で赤字が出るのは当然で、それを補いますという 形ではなかなか立ち行かないと思います。私のこども病院も4月から独立行政法人化して、 いつまでもこの援助が続くとは限らないという状況です。是非、小児集中治療加算という ものを実現していただきたいと、現場の者からお願いしたいと思います。  施設としては、専門診療の可能なハードは必要です。先ほども申し上げましたが、小児 病院の売りとしては、すべてのサイズにいつでも対応可能な高度医療を行うということで すので、これは非常にお金のかかるものです。  そのすべてのサイズに対応可能かということをお話します。これは人工呼吸をするとき に気道の確保に使う気管チューブです。これをまず入れて人工呼吸につないで、集中治療 の第1歩が始まるわけです。これは全部で20種類ぐらいありますが、うちのユニットには 全部取り揃えてあります。NICUをやるには、この3つだけがあればいいのです。これが あればサイズが足ります。赤ちゃんだけ診ればいいわけです。成人のICUでは、この辺の いちばん太いほうさえあれば運用できます。ただ、PICUでは小さな赤ちゃんから、大人 サイズの小児まで来ますので、これが全部必要になってくる。そうしますと、年間500と、 そんなにべらぼうに何千人も来るわけではないので、これが次々と日切れになって無駄に なっていくという現状があります。一事が万事、いろいろな所に入れるチューブ、カテー テル類、すべてこういうふうに取り揃えて、その中でいくつも日切れになっていくという ように、非常に無駄が多いということは事実としてあります。  すべてのサイズに対応可能な医療ということで、気管支鏡をやっている所をご覧いただ きたいと思います。この内視鏡は気管内に入れるのですが、径が1.8ミリという内視鏡で、 市販されているものよりも価格が2割ぐらい高いです。動かすのも1ミリ、2ミリで、こ れをやるのは難しいので、1人専門に麻酔をやる医者が付いて、かつ、指導医と研修医で オン・ザ・ジョブ・トレーニングでやりながら見ていくわけです。非常に手がかかります。 この子は気管軟化症で気管切開になったのです。このように、私はここにおりまして指導 して、やっている人間が1人。それから、もう1人専任で麻酔医を付けるという形でやっ ております。これで取れる保険点数は900点で9,000円ということで、なかなか厳しいと ころがあります。  いま申し上げたみたいに、施設としてはすべてのサイズに対応可能なものが必要ですの で、非常にお金もかかってしまう。そういう意味合いでも、小児集中治療加算を何とか実 現していただきたい。コストに見合う保険診療ができれば、政策医療でなくても公的病院 でも、今後このPICUという分野に参入は可能ではないかと思います。  ほかにもいろいろ細かいところがあります。設立のためのキーポイントとしては、病院 と院長が各科、各部門に協力しろよということを強力に言ってもらうとか、リーダーとし て小児集中治療の専門医が必要です。ただ、まだ日本でこの専門診療を研修できる施設は 少ないので、私も含めて海外で勉強して資格を取るのが主流です。ただ、いつまでも外国 産というわけにはいきませんので、今後は国産の小児集中治療専門医を養成していかなけ ればいけない。スタッフ医師も数多くいります。24時間カバー、いつでも受け入れなけれ ばいけません。それから看護、検査、放射線、薬剤、これもすべて同じことが言えます。  それを運営していくためには、3つのキーポイントがあります。24時間、365日、いつ でも受け入れますよという体制。それから広域になりますので、人口が200万人、300万 人、400万人とカバーしますので、広域のドクターヘリを利用したり、ドクターカーを利 用したりして、広域から患者を搬送してこなければいけません。  もう1つは、わざわざ遠くまで送るほどそんなに診療の質がいいのか、という疑問が出 てきますので、いまお示ししたような診療の質が確保できますよということを少しずつエ ビデンスとして発信していかなければいけないと思います。  この辺は端折ります。ドクターヘリの搬送の様子です。このように県の東と西のドクタ ーヘリの基地病院、ドクターヘリに協力していただきまして、まず、病院内や病院外で起 きた緊急事態をトリアージ。これは具合悪いぞということで、まずPALS、それからJATEC というような処理をした上で緊急搬送をして救命治療につなげる。いわゆる救命の連鎖で す。ここに投資して、集中した病院を作る変わりに、広い範囲から素早くここへ運ぶとい うシステム自体を作らなければ稼働しないということです。  最後になりますが、いわば小児救急の最後の砦です。この救命の連鎖の一部、いちばん 最後のところです。1番は予防ですが、まずは早期発見して、早く搬送して、救命治療に つなげる。これができることによって、PICUだけではなくて全体の連鎖ができることに よって、小児の救命ができると思っております。以上です。ありがとうございました。 ○中澤座長 ありがとうございました。多少時間が押しておりますが、どなたかご質問は ありますか。 ○宮坂委員 長野の宮坂です。静岡のこども病院で12床の小児ICUで加算を取っている のは4床だけです。実際、看護師さんは4人夜勤をしているので、取ろうと思ったらもっ と取れるのだと思うのですが理由は何でしょうか。 ○植田委員 12床で4人夜勤だと、12床で全部ICUにすると6人夜勤になります。 ○宮坂委員 やり方はいろいろあるのに、どうしてそういうやり方をするのかということ で、これ以上はできないという計算ですか。 ○植田委員 いま夜は4人入っており、ICUのほうは2対1になるので。 ○宮坂委員 だから、8床をICUにするというのは。 ○植田委員 ダウンサイズすることはできます。ですから、いまはこれが何となく不合理 な感じに動いていますので、今度は思い切ってダウンサイズにして8床にしようかとか、 やはり、HCU的な病床も必要だから12床のほうがいいのではないかとか、いま議論をし ていて非常に難しいです。 ○宮坂委員 質問だけです。わかりました。 ○中澤座長 あとは私からですが、先生の所には常勤の医者が11名おりますが、これはす べて常勤なのか、あるいはほかの小児科の専門の科からローテーションを何カ月かに区切 って、あるいは何年間かに区切ってやってこられているのか。 ○植田委員 これはうちの科の常勤で、そのままです。ほかの所属はないです。 ○田中委員 順天堂の田中です。2点お聞きします。スタッフが10数人ということですが、 キャリアパスといいますか、例えば救急専門医の資格をお持ちの方がいらっしゃるとか、 あるいは救命センターでのトレーニングを何年間か積まれた方がいらっしゃるかどうかと いう点はいかがですか。 ○植田委員 初期は立ち上げメンバーでしたので、腕に覚えのある者を集めてもらいまし た。例えば、10年選手であれば5年間小児科をやり、5年間は成人の救命救急医療をやり、 救急専門医を取っている者が3名おります。 ○田中委員 集約化してうまくいっている地域の例を見せていただきましたが、例えば、 ドクターヘリをうまく駆使できないような地域は日本全国では多いと思うのですが、そう いう所で集約化を考えたときに、やはりなかなか難しい点があるのかと思いますが、その 辺りはいかがですか。 ○植田委員 その辺も難しくて、設立のキーポイントの中のうち、やはり地域に応じて陸 路の搬送をいかにうまくやるか。ドクターカーを使っていくことが1つの方策になると思 います。もっと病院が多くて、いろいろな所で引っ張り合うような所では、どうすればい いのか。これも非常に大きな問題になっていくと思います。1つは、どうしても中等度の 田舎のモデルとして、恵まれている状況ではあったと思います。 ○中澤座長 ありがとうございました。広域の搬送に関しては、おそらく後に議論になる と思いますので、またそのときによろしくお願いします。続きまして、「中核病院におけ る小児の集中治療」ということで、市川委員にお願いします。 ○市川委員 北九州市立八幡病院小児救急センターの市川です。地方の救命救急センター に小児救急センターを独立させたというか、特化したということで、地方での中核病院と ご紹介いただきましたが、中核病院、かつ救命センターでの小児集中治療の現況をお話さ せていただきます。  小児救急センターがどうしてできたのか、大内先生からお話するように言われましたの で、昭和53年に救命センターができて、そこで内科、外科、脳外科、小児科と救急4科と いう形で配属を受けます。病棟を増築して、ICUが6床から9床になって、救急病棟を50 床いただいて、ここで各科が利用する。  当然ながら、救命センターをやっていますと、小児科の飛び込みがどんどん増えるとい うことで、1995年に北九州市立第2夜間・休日急患センターの初期部門を併設となり、八 幡のスタッフで運営する。そこで、初期から3次までの一体化の施設になることができた ということです。2003年に半数以上が小児科ということもあって、小児部門を独立させて、 小児救急センターをやり、スタッフだけは増えましたが、施設機能、看護体制は従来のま まという形で、いままで推移してきています。  昨年の実績は小児科の受診者数は4万8,000人、時間内が2万人、時間外が2万8,000 人、入院数は3,300人、ICUの入室者が29名という状況です。  我々の所に来られるのはほとんどプレホスピタルで、院内発生のICU入室者はほとんど いないということでご了解をいただければと思います。  平成15年から平成18年の4年間の平均は、当時は年間受診者数は4.5万人ぐらいで、 救急外来者数は2.5万人、入院が2,600名です。このように4年間で80名ぐらいのICU収 容例があります。  プレホスピタルというところでやった除外症例は、ロイケミとか固形腫瘍の治療中の血 液浄化とか、そういうのを除いて、純粋に救急外来から入って来る、あるいは24時間以内 にICUに入れざるを得なかった症例の平均は年間17例。年齢的には1カ月から5歳ぐら いまでがいちばんピークになっています。  男女比は43対25で、若干男性が多いということになります。ICUの入室期間は意外と 短い。平均すると3日ぐらいで済む症例が多いということになります。  そこで病床利用率を計算しますと、平成15年は57。これは小児のICUを1床として57 %の利用率と計算しました。4床あれば、57割る4ということで14%となります。そうい う形で計算すると、これは大体60%ないと採算が取れないと言われていますが、1床でも 57%ぐらいにしかなりません。  北九州市の人口は約100万人、小児人口は15万人、時間外の小児科での受診者数は、大 きな病院も含めて7万人。そのうち2.5万人がうちに来ています。そこから計算しますと、 子ども人口15万人で、北九州全体でのICU入室が必要な患児というのは約50名です。病 床の利用率としては、最大10床前後。病床利用率は103病床数%ということで、1床で103 %、3床で34%。これは先ほど山田委員からも出ていましたが、子ども人口4万人に1床 という計算からいくと、ちょうど3、4床当たりで確かに院外の分はカバーできるというこ とになりますが、カバーしても利用率が25%から34%ぐらいになります。  どういうのが入室しているかというと、外傷、CPA、痙攣、脳炎・脳症、呼吸器疾患等 々です。外傷は3分の1強ぐらいです。先ほどのPELOD scoreですが、死亡率の予測です が、これは何を言いたいかといいますと、我々を2型のPICUと考えれば、1型のPICUと 連携をとらないとやっていけないということをお示ししたいのです。外傷のPELOD score で11とかしかない人が死亡する現状があります。ここは早く見極めて、より高度な集中治 療の所に転送する、搬送することが必要になります。  外傷の内訳としては、頭部外傷が非常に多い。しかも、いわゆる多発ではなくて、単発 の外傷が多いのが子どもの特徴だと思います。  我々の所で扱った外傷症例の先ほどの植田委員のISSは21.8です。生存率としては95 %ですが、生命予後はいいのですが、頭が多いので高次脳機能障害とか、そういうダメー ジを持つ子どもさんは少なくないというのが我々の印象です。  早くリハビリを始めないといけないということで、リハビリ施設と連携したICUが必要 だろう。外傷をする限り、そういうふうに思っています。  ほかのPELOD scoreは、いわゆるCPOAというのは高くなって死亡する。あるいは重傷 の後遺症が残るのは致し方ない部分があります。痙攣では全然問題はありませんが、脳炎 ・脳症、先ほどの植田先生の成績はすごくいいのですが、11とか、やや低いスコアで少し 死亡している。こういう症例を我々のような2型のPICU機能しかない所で診れるかどう かという、そこの見極めをしなければいけないと感じます。  呼吸器疾患では、例外的な死亡例が1例入っています。その他、分類できないもので、 EBVウィルスの劇症肝炎も、いわゆる肝移殖に持っていかないといけない症例が亡くなる ということがありますので、そういうところをいかに1型と連携することが大事というこ とです。これは2型と言いますか、救命センターで小児ICUを扱うというのも、私は不可 欠だと思いますが、これは本丸のPICUがあって、砦の我々が動けるというシステムが必 要だろうと感じます。以上です。 ○中澤座長 市川委員、どうもありがとうございました。ただいまのご発表に関して、ど なたかご質問はありますか。最後のほうには、今後の検討の方向までお示しいただきまし た。ご発表はここまでにして終わらせていただきたいと思います。続きまして、ただいま のご発表を踏まえて、今後はどういう議論をしていくかということで、検討課題の案につ いて、事務局からご提案があります。それに関して、大内専門官からご説明をいただいて、 その後、本日はフリーディスカッションにしたいと思います。大内専門官、ご説明をよろ しくお願いします。 ○大内専門官 資料3をご覧ください。1枚紙です。「今後の検討課題等について(案)」。 1.小児の救命救急医療におけるPICUの必要性について。集中治療室以外の病棟において、 重篤な小児患者が人工呼吸等の集中治療を受けている現状についてどう考えるか。救命救 急センター専用のICUにおいて、重篤な小児患者が成人と混在して集中治療を受けている 現状についてどう考えるか。  2.小児の救命救急医療を強化する方策について。重篤な小児救急患者について、集中治 療が必要な患者と、術後管理が必要な患者等を同一のPICUにおいて治療する場合、又は それぞれ別のPICUにおいて治療する場合のいずれが適切と考えるか。重篤な小児患者に 対して、集中治療を提供できる体制を整えている救命救急センター、小児専門病院、中核 病院、それぞれにおけるPICUの整備のあり方をどう考えるか。重篤な小児救急患者に適 切な医療を提供するため、小児科・小児外科・救急科・麻酔科・外科等の複数診療科間の 連携をどう進めるか。  3.小児の救命救急医療と地域の一般小児医療との連携。患者の重症度、緊急度に応じて、 適切な医療が提供されるよう、小児救命救急を担当する医療機関と、一般の救急医療機関、 消防機関、メディカルコントロール協議会との連携をどう進めるか。PICU等から退院す るに当たり、引き続き地域においても療養・療育が必要な小児患者を支援する体制につい てどう考えるか。県域を超えた広域連携のあり方についてどう進めるか。  4.PICUの整備について。PICUの要件をどう考えるか。地域の実情に応じたPICUの整 備のあり方をどう考えるか。PICUの運用に必要な医療スタッフの養成をどう進めるか。 以上です。 ○中澤座長 ありがとうございました。本日のご発表の中にも、これに関連したことがた くさん出てきたと思います。これから委員の方々にご議論、あるいはご提案をいただいて、 それを今後の検討課題としていきたいと思います。1番に関しては、私が大内専門官と打 ち合わせをした中で、私どもからすれば、子どものICUは当然必要なんだろうということ は、ある意味で常識的だったのです。  もう1つは、救命救急センターのICUにおいても子どもが混在しているということは、 私たちも存じ上げているわけですが、実は、これをある意味では政治、あるいは国民に知 らしめるためには、まず、私たちの中では常識的なことをもう一度確認したいということ で、これを挙げておりますので、その点をお含みおきの上、先生方の自由なご発言をお願 いしたいと思います。特別にテーマは決めませんが、どうぞどなたでも結構ですので、ご 発言があれば挙手を願いします。 ○阪井委員 成育医療センターの阪井です。3人の先生方のご発表は素晴らしかったと思 います。それに付け加えて、まとめてというか、私の考えも含めてコメントしたいと思い ます。  何よりもポイントは重点化、集約化と思います。なぜならば、対象としている重篤な子 どもの患者というのは非常に少ない。先ほど山田先生のデータでも、救命救急センターの 子どもの心肺停止が全心肺停止の2.3%と言うと、40分の1以下ですよね。  例えば具体的に言うと、救命救急センターが40あったら、小児の救命救急センターは1 つという割合です。そういう患者を対象にしているわけですから、何にも増して重点化、 集約化が必要だと思います。それをサポートする話を2点申し上げます。  それを実現するためにロードマップ、道程として1型、2型と分けるのは悪いことはな い。私は良い方向だと思います。あくまでも目指すところは、重点化、集約化。2つポイ ントを言いますと、最後の砦とおっしゃった1型の小児ICUというのは、先進国では普通 の形だと思います。彼らはものすごく集約化が進んでいるとは言っても、数を多く診てい るICUのほうは成績が良い、生存率が良いというデータが出ています。そのカットオフラ イン、ベッド数でいくと15床ぐらいだと思います。年間1,000名の入院がないと、十分な 質を維持できない。それ以上になると、それに比例して質が上がるというデータが出てい ます。  北米は日本とは懸け離れて集約化が進んだ国とは言っても、しかし私たちの成育医療セ ンターのベッドが20とは言っておりますが、7人夜勤ですから、1対2という看護です。1 人の看護師が2人の患者までは診ると考えたら、せいぜい14床です。年間入院数が800 余ですから、1,000までいかないのです。  植田先生の素晴らしいICUも、4人夜勤とおっしゃいましたから、実際は8床です。年 間500人ですから、北米で言われている最低限の半分ぐらいなのです。一生懸命頑張って いる植田先生とか、うちのような所でも、北米の先進国の質を担保するというところまで にはまだ至っていないという現状はあります。そういう現状を踏まえて、議論するべきだ と思います。  2型のほうにしても、30人、40人大人の患者さんが来て、初めて1人子どもが心肺停止 の方が来るという状況下に作るPICUですから、山田先生の意図かどうか私はわからない のですが、現状を鑑みて2型も作るべきだと私は聞こえたのですが、そうではなくて、積 極的にいまの救命救急センターの良いところを活かすという発想と集約化していく。つま り、いまの日本の救命センターが素晴らしいと思うのは2点あると思います。ダメージ・ コントロール・サージェリーに代表されるような外傷の急性期に対する対応がすぐできる。 外傷外科医がいる。これは私たちのような小児病院にはないことなのです。  もう1つは、ドクターヘリを持っているように現場と直結している。これも私たち小児 病院ではなかなか得られないことです。特に、前者に関しては、ある一定の数の患者さん が来ないとスキルを維持できませんから、私が聞いているところでは、日本の救命センタ ーでもなかなかダメージ・コントロール・サージェリーの数が減ってきて、スキルを維持 するのに非常に苦労しておられると聞いております。そういう救命センター自身も集約化 が必要なのかもしれませんが、そういう良さを活かしてPICUを作る、2型を作るという 発想のほうが、私はより積極的に子どもを救っていこうという文脈からは望ましいし、2 型の質を維持するためにはよいかと思います。間違っても3型、4型と作らないことだと 思います。以上です。 ○中澤座長 ありがとうございました。これはおそらく今後の議論の核心に触れるものだ と思います。ほかにどなたかご発言はありませんか。 ○杉本委員 議論の前に少し確認しておきたいのですが、いまおっしゃっているPICUを 施設として作るのは、それは別として、小児の集中治療医という方が日本にはどの程度い らっしゃるのか。あるいはその資格要件として、はっきりとこうだというものがあるのか どうか。それをまず教えていただければと思います。 ○阪井委員 資格要件としては、日本集中治療学会の専門医、あるいは日本小児科学会の 専門医、日本麻酔科学会の専門指導医、そういうことだと思います。それ以上はないです。 日本小児集中治療研究会というのを1984年からやっておりますが、そこで別に資格を出す とか、そういうことはないです。ただ、年間500〜600人の医者を集めるぐらいの関心を呼 んでいるグループではあります。  そういうものに該当する者が何人ぐらいいるかというと、もちろん日本集中治療学会の 専門医が全部小児集中治療をやっているわけではなくて、ごく一部ですし、日本小児科学 会の専門医のほとんどがいわゆる小児内科の先生でしょうから、植田先生のような方とい うのは、日本でいま現在10数名だと思います。たぶん、私より宮坂先生のほうが詳しいと 思います。 ○中澤座長 宮坂委員、その点に関してお願いします。 ○宮坂委員 いま阪井委員が言ったこととほとんど同じです。たぶん、植田先生と、私た ちみたいなレベルとは違って、もう少しその下でトレーニングを受けた人たちも含めて、 おそらく100人まではとてもいかなくて、何十人という単位だと思います。  資格に関しては、阪井委員がおっしゃったとおり、現在はいろいろな専門医の背景でや っているということで、小児集中治療の専門医というものはないです。私は1984年から小 児集中治療研究会を始めていますが、医者が600〜700人ぐらい毎年集まるぐらい関心は高 いです。ただ、今日のいわゆる1型と言われる小児ICUの数というのは、今日の発表にも あるように、まだあまりたくさんはないです。やはり、先ほど阪井委員がおっしゃったよ うに、ポイントは集約化と重点化ということで、これがスキルの維持にも、質の維持にも、 医療経済的にもおそらく大事なことですので、ここを中心にこれからディスカッションを していただければと思います。 ○中澤座長 追加ですが、小児科学会の役割をしている身分として、小児科学会の中にい ま現在やっとサブスペシャリティーのボードを作ろうかという話が進行しています。その 中に、小児の集中治療医、あるいは小児の救急医というものが考えられ始めているわけで すが、まだ資格として成立はしていません。 ○杉本委員 なぜそういう質問をしたかというと、救急医療というのは非常に現実的な問 題で、10年待ってやろうかというわけにはいかない。いま目の前で起こっていることに対 して、どう対処するかということになってくるから、実際にマンパワーとしてどの程度の 人がいらっしゃるか、ということからまずは考えていかなければいけない。将来的にはど ういうところを目指すかというのは、次の議論として置いたほうがいいと思います。  ただ、現実のマンパワーで、どういう形でやるかというものの見方をしたほうが、いま の小児の重篤な救急患者に対して少しでもいい医療を提供しようというものの見方という のは、そのほうがいいのではないかと思ったものですから、少しお話をお聞きした次第で す。 ○中澤座長 ありがとうございました。 ○宮坂委員 長野の宮坂です。1つ追加の情報ですが、先ほどの発表の中にあったPALS、 大人で言うとACLSに相当するものですが、これが今日現在、いわゆるPALSプロバイダ ーは日本全国に3,700人おります。 ○中澤座長 ありがとうございました。それでは有賀委員、どうぞ。 ○有賀委員 昭和医大の有賀です。市川先生のご発表の中でチラッと出てきたと思うので すが、1型と2型に関連して質問します。とりあえず2型は、より高度な1型に場合によ っては助けてもらうという位置づけでいいのではないかとおっしゃっている。そういう意 味では、私は2型の中で働いているということで、1型の施設、例えば阪井先生の所が近 くにあるのですが、私たちが受けて、とりあえず治療をし始めて、そして阪井先生の所へ 運んだほうが治療成績はたぶん良くなるだろうと。そういうふうな文脈でおっしゃってい るのですか。その辺をもう1度教えていただけますか。  例えば、脳外傷というのは、むしろ、おそらく私のほうで診たほうがいいのかなとは思 いながら聞いてはいたのですが、全体がそうだという話と、個別的な話とはたぶん違うの ではないかと思いますのでご説明ください。 ○市川委員 先生がおっしゃるとおりで、当然そこの救命センターで小児科が頑張って、2 型的なPICUをやっているとしても、本院といいますか、本救命センターがすごく脳外科 が強ければ、そこで当然診ていけるということがありますので、それは機能別にという意 味も含めてです。ただ、PCPSに回すにしろ、いわゆる小児集中専門医がいる1型とのタ イアップ、可能であればそこから出前してもらってもいいし、逆に、患者を搬送してもい いのですが、2型をやっていく上では、そういう連携が必要だろうと。そういう意味です。 ○有賀委員 わかりました。そうすると、いまの杉本先生の話とも少し連動するのですが、 現在あるとりあえずのラインアップと、いずれはというラインアップを考えていったとき に、いまもそういうふうな形での連携を多少頭の中に入れながら、医療資源をどういうふ うに集約化するか、または状況によって配分するかを考えたほうがいいということですよ ね。 ○市川委員 はい。 ○有賀委員 わかりました。 ○中澤座長 この1型、2型というのは、小児科学会の救急委員会で言葉が出てきたので、 その辺りを少し、山田委員にご説明をお願いしたいと思います。 ○山田委員 順天堂大学の山田です。1型、2型という分け方は、私たちよりも20年ぐら い先をいっている北米でも、これはかなり問題になっていて、2003年の調査のデータがあ るのですが、5,000カ所ほど調査したところ、小児を対象として、9割が2型で診て診療さ れているわけです。9%ぐらいが1型、小児病院等の専門施設で診ている。  当然、治療成績は1型のほうがいいということです。これはそれだけの人、物、金をそ こに投下してやっていくわけですから、クオリティが上がっていくのは当然です。ただし、 それを全国的に見て、搬送というものがいろいろ出てきます。北米ではレベル1、レベル2 と言って、機能分けにしています。私たちはそこまでまだ整っていないときに、機能は分 けられないだろうと。  当面の問題として、これを考えてみても、小児施設で静岡とか、成育とかのようにやれ る所がない現実で、アメリカですらそんな状態です。やはり、まず最初にファーストタッ チを行って、そこでできるだけの集中治療を行う。スタビライゼーションをして、そこで 完結する場合も当然あるし、できない場合はヘリ搬送なり、いろいろな搬送ということが 出てくるのだろうと。決して、当面の問題としてというやり方ではなくて、実際、面とし て考えた場合、そうすることがいちばん小児の救命にとってはプラスではないかと。そう いうことで、小児科学会、救急委員会の中では、1型、2型としようと。当然、1型にもい ろいろなタイプがあるし、2型にも本当の方向性をきっちり見定めた2型があるのかどう か。決して、当座だけではないと。そのベースには、ハードだけではなくソフトがあると。 教育ソフトがないと、これは共通のものですから、いまはっきり言って大きな問題は、成 人と小児がどうコラボレイトするかです。そこには共通言語が十分にない。得意な分野は やっているが、本当の意味での土台、共通部分がない。  いまの杉本委員のご質問ですが、集中治療の専門医というより、いまはまず第1歩とし て小児救急の専門医の制度を作っていこうではないかと。ここの委員の何人かがそういう ふうなカリキュラムを作って、それに合ったテキスト作りをして、少しずつ進めていこう と。それが現実的に小児の救急、さらに集中治療という領域に特化していってもいいと思 います。みんながまず共通のものを持って、やっていこうというのがいまの動きです。以 上です。 ○中澤座長 ありがとうございました。有賀先生、どうぞ。 ○有賀委員 山田先生の従来からのお考えの中に、今日はたぶんクリティカル・ケアの話 なので1型、2型という話で空中戦のようになっていますが、もともとベーシックなもっ と広い話でいきますと、先生ご自身は小児救急の中に救急医学会などで活躍しているER フィジシャンを入れて、融合するような形がいいのではないかというようなことをときど きおっしゃいますし、書いておられますよね。その話といまのお話はどんなふうに関係す るのですか。または関係しないのですか。 ○山田委員 救急というのは車の両輪ですので、今日ははっきり言って高次救急であると。 しかし、もう一方の車輪が回らないと、高次救急だけ回ってもしようがないので、もう一 方の車輪の中にERフィジシャンも入ってくるし、その中からさらに高次をなさる方が出 てきてもいいと考えられます。 ○中澤座長 ありがとうございました。杉本委員、どうぞ。 ○杉本委員 これからこの会議を続けていく上で、是非とも整理しておいてほしいと思う のですが、PICUについておっしゃっているのが、施設としてのPICUが必要なのか、ある いはPICUを診るマンパワーとしてのものを含んでの話なのか、その辺は少し整理してお かないと、それぞれ使っている意味がだいぶ違ってくるのかなと思うところがあるのです。  というのは、再度聞いていたら、私は小児の集中治療医というのはNICUの小児、新生 児科と同じような形の方が、比較的決まった方がいらっしゃるかなと思ったのですが、先 ほどの説明を聞いていたら、これは小児科医とプラス、例えば大人を含めて診るICUの医 師が診ても、マンパワーとしては済むのか、あるいは小児科医であって、かつ、集中治療 医であるという方が診るのが必要なのか。そこを少し整理しておかないと、みんなの頭の 中でそれぞれが違う話になってしまうわけです。  もう1つは、山田委員がおっしゃっているような形での小児救急全体の話として考える のか、あるいは小児の重篤なものだけの話として考えるのか、そこも少し整理しておく必 要があるだろうと思います。  最後の一点としては、先ほど来、救命救急センターの話が出てきていますが、救命救急 センターの施設によって、収容している患者さんが1次から三次までやられているものも あれば、全く三次に特化している所もありますし、外因性ばかりやられている所もありま すし、非常にバラつきがありますので、救命センターと言っても、決して決まったパター ンではないよということは、皆さん共通認識として議論をしていただいたほうが、現実的 な話になるのではないかと思います。 ○中澤座長 ありがとうございました。いま実はその話を発言しようかと思っていました。 今後の方針として、いまは入口の救命救急センターの話がありましたが、そのあと、ICU に患者さんが移っていくわけですが、いま杉本委員がおっしゃったように、その人たちが どういう人なのだろうかということが、おそらく今後の議論のテーマになってくるだろう と思います。  そのときに今日の検討課題等についてということで、大人と一緒でいいのかという話が 疑問として起こってくる。それもマンパワーとの関係があって成り立つことだろうと思い ます。将来的には、理想的には、おそらくロードマップの一部であって、将来的には集約 化、重点化ということで非常にきれいな地図が書けるということは、理想には思います。 当面、いま解決する問題は何かということで、私が申し上げたいのは、いま解決する問題 が将来の解決に邪魔になるようなシステムは提案したくない。将来につながるようなシス テムを提案していきたいということが、この検討会の趣旨だと思います。  そういうことで、座長の不手際で時間が押してまいりました。最後にお一方、お二方、 ご発言がありましたらお受けします。上野委員、どうぞ。 ○上野委員 東海大学の上野です。我々の施設は救命救急センターを有しておりまして、 成人の方を中心に診る救急医と小児科、小児外科医が合同で当直体制、あるいはオンコー ル体制をとって、小児を診ているという立場で小児救急医療をやっております。  先ほど杉本委員からお話があったように、重症の小児救急患者さんを診るのには、PICU があるから診られるという印象は私自身は思っておりません。小児外科医にアンケートを 取りますと、小児外傷患者を受け入れているという小児外科学会のいわゆる認定施設の施 設は85%以上。外科系の小児救急をとっている施設の95%以上がみんな受け入れていると いう現状にあります。それはPICUがあるからとか、その病院のシステムがこういうこと であるからやるというわけではないのではないかと私自身は感じます。  PICUの必要性と言うときの受け皿は、各施設がそれぞれに得意な分野、人員の配置と いうのがあるわけですから、ソフトランディングができるような小児を診る整備を政策、 あるいは仕組みとして作っていただくのがソフトランディングをする方法の1つではない かと感じます。ですから、PICUがこうでなくてはいけないと言われると、例えば我々の 施設でそれを作れと言われると、小児科医の先生方のマンパワー、小児外科医のマンパワ ー、現実に診ている小児外傷患者の半数以上は脳神経外科、整形外科のドクターで、我々 の施設には小児の専門の人がいないわけですから、それをどのようにしてカバーするか考 えていかないと、効果的な仕組みにはならないのではないかと感じながら議論を聞いてお りました。 ○中澤座長 ありがとうございました。もうお一方、渡部委員、どうぞ。 ○渡部委員 いままでのお話を聞いてまして、問題はいまの2型という、救命救急センタ ーは杉本委員がおっしゃったように、非常に格差があって、レベルの高いもの、低いもの があるということです。実際起きているのは、そういう所は小さいお子さんを断るという ことで、いま1歳〜4歳の死亡率が高いわけですから、いまの救命救急センターの中で、 本当に小児を診て、絶対に断らない施設を選んで育てていく。その施設は市川委員がおっ しゃったように、必ず重症であれば、1型にすぐ連携してつなぐことができるとか、そう いう施設を育てていければ救命率が上がるのではないかと考えました。 ○中澤座長 ありがとうございました。ご議論は尽きないと思いますが、この議論がおそ らく今後の主な議論になってくると思います。最後に阿真さん、何かありますか。 ○阿真委員 静岡の件で1つだけお聞きします。具体的に助かった患者さんの例を聞いて、 すごく嬉しくお話をお聞きしました。1年半ぐらい前ですが、実際に私たちの会にコンタ クトしてきた保健師さんとお母さんがいらして、御前崎の方だったのですが、生後8カ月 で下痢・嘔吐で、3人目であったこともあって、家で待ち過ぎてしまい最初自家用車で行 って、行った先に小児科医がいなくて、そこから救急車で搬送になって40分ぐらいかかっ て、結局、その中で亡くなったということがあったのです。御前崎にはいま小児科医が夜 間はいないということで、どんなふうにしたらこれを助けられたのだろうかと。お母さん たちでできることは何かあるかという話だったのです。  それとは別にして、そこから時間が経って、ドクターヘリがこれだけ整備されて、例え ばいまだったら、御前崎にもドクターヘリが飛んで、すぐに静岡県立こども病院に行くと いうものが出来上がっていると考えていいのですか。 ○植田委員 昼間はドクターヘリが現場からそういう患者さんをピックアップして、うち へ飛んできます。ただ、夜間はいま運行していませんので、夜間はこれができません。そ ういう事案に関しては、救急車がその患者さんを収容して心肺蘇生等をやりながら、こち らへ向かってきて、こちらのドクターカーが御前崎へ出向いて、おそらく1時間はかかる と思いますが、それは受け入れがなければしようがないので、どこかでランデブーをして ドッキングして、そこで我々の集中治療の搬送チームがその患者さんを受け取って、そこ で治療をしながらPICUへ運ぶということをやっています。実際、御前崎での事案はない ですが、御殿場や伊豆のほうでは、昼間はもちろんヘリを第1選択します。ヘリだと10 分で来てしまいますが、夜や悪天候でヘリが飛ばないときは、こちらから出ながら向こう からも出て、どこか途中のインターチェンジか何かでランデブーして連れて帰ってくる、 ということは実際やっております。ですから、何とかしてうちへ運ぼうという努力はして おります。 ○阿真委員 ありがとうございました。 ○中澤座長 ありがとうございました。これは主な検討事項の中にあるように、やはり広 域の連携ということ、あるいはメディカルコントロール協議会との連携という議論のどこ かで入ってくると思いますので、またそのときにご議論をいただきたいと思います。予定 していた時間となりましたので、第1回目の検討会はここで終了させていただきます。座 長の不手際で時間が押してしまって、十分のご討論をいただけなかったことをお詫び申し 上げます。それでは事務局から、今後のスケジュールについてお話をお願いします。 ○大内専門官 次回の検討会は4月中旬を目処に日程調整をさせていただきたいと思いま す。ご協力のほどよろしくお願いいたします。 ○中澤座長 先生方には忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございました。こ れをもちまして本日の検討会を終了させていただきます。 (照会先) 厚生労働省医政局指導課 医療確保対策専門官 大内 (代)03-5253-1111(内線4134)