09/02/24 第5回高齢者医療制度に関する検討会議事録 平成21年2月24日 高齢者医療制度に関する検討会   第5回議事録 (1)日時    平成21年2月24日(火)18:00〜19:30 (2)場所    厚生労働省 省議室 (3)出席者   岩村委員、岩本委員、川渕委員、権丈委員、        塩川座長、樋口委員、宮武委員、山崎委員        舛添厚生労働大臣        <事務局> 水田保険局長、榮畑審議官、神田総務課長、吉岡保険局高齢者医療課長 武田保険局国民健康保険課長、田河保険局保険課長、佐藤保険局医療課長、 村山保険局調査課長、大西保険局総務課医療費適正化対策推進室長、 (4)議事内容 ○吉岡課長 委員の皆様には、御多忙のところお集まりいただき、誠にありがとうございま す。  定刻になりましたので、ただいまより、第5回「高齢者医療制度に関する検討会」を開催 いたします。  本日は、大熊委員が遅れて御到着されます。また、大臣も6時まで国会審議が入っており ますので、遅れて到 着する予定でございます。  それでは、議事進行につきまして、塩川座長にお願いいたします。 ○塩川座長 本日は、お集まりいただき、御苦労様でございます。第5回目の検討会を開催 いたしたいと存じま す。  先ほど吉岡課長が言っておりましたが、大臣は遅ればせでございますが、到着いたしまし たら、御挨拶いただ きたいと思っております。  前回の検討会におきまして、項目ごとの議論が一巡いたしました。前回も御案内したとお り、事務局においてこ れまでの議論を整理したものを用意しておりますので、本日は総括的に議論を進めていきた いと思います。  吉岡課長から、配付いたしました資料の大枠について、御説明いただきたいと思います。 ○吉岡課長 お手元の資料でございますが、まず、右上に「資料1」と付した論点整理の資 料でございます。右 側がこれまでの各委員からいただいた御意見、それを踏まえまして、左側に論点整理という ことで整理をしたもの でございます。  資料の内容につきましては、あらかじめ委員の先生方にはお配りさせていただいておりま すので、説明は省略 させていただきますが、資料の構成だけ御確認いただきたいと思います。  1、2ページ目が、見直しの基本的な考え方、進め方という総論部分でございます。  3ページ目が、財源の在り方についての論点整理でございます。  4、5ページ目が、年齢で区分すること、制度の建て方、名称などについてでございます。  6、7ページ目が、保険料の算定方法・支払い方法についてでございます。  8、9ページ目が、運営主体についての整理でございます。  最後10ページ目が、医療サービスについてということで、それぞれ論点整理をいたした ものでございます。  次に資料2、本日の議題に関する参考資料でございます。  まず、資料の前半部分は、検討会への提出を御依頼いただいた資料12点でございます。 お求めいただいた資 料はさまざまございましたが、可能な範囲でとりまとめさせていただいたところでございま す。  また、委員のお求めによりまして、前回提出した資料も一部改めて添付させていただいて いるところでございま す。  後半部分は論点整理に関係する資料ということで、6点添付させていただいております。 内容については、省略 させていただきます。  このほか、岩本委員、川渕委員から、それぞれ資料の提出をいただいております。  資料については、以上でございます。よろしくお願いいたします。 ○塩川座長 大体あらかじめ説明いたしましたように、先生方要求の資料は出してきたと思 っております。  それでは、各委員から直接御質問、御意見をいろいろ承りたいと思います。よろしくお願 いします。  権丈委員、どうぞ。 ○権丈委員 私がお願いしました資料がはじめの方に載っておりますので、まず説明させて いただきます。  昨日、年金部会を終えて50.2%の所得代替率について一言コメントをお願いしますと言 われ、一言でできるか と言って帰ってきたんですけれども、今日は時間をいただけるようですので、医療の方はし っかりと説明させてい ただきます。  まず、私がお願いした資料の中で、資料I−(5)からいきたいと思います。ここには、健 康保険組合の保険料率 一覧がありまして、保険料率の低い方から10組合、高い方から10組合をリストアップし ていただいております。  低い方になりますと、医療保険として支払っているのが3.12%です。低い方から10番目 が4.5%。高い方にな りますと、一番高いのが9.62%で、高い方から10番目が9.536%です。要するに、同じ健 康保険組合の中でも、 保険料率の最低と最高では3倍以上の差があるんですね。まず、こういうことを議論の前提 にして話しをさせても らいます。そして、なぜこんなに保険料率に差があるのかということを考えていただきたい と思います。  どうしてそんなに差が出るのかというと、所得に関係なく医療ニーズというのは発生しま すので、みんな同じよう に医療費がかかると考えていけば、まず所得が高ければ保険料率は下がります。そして、後 期は頭割りで負担 しましょう、前期は高齢者が全国平均いると想定した方法で財政調整しましょうという形で やっているので、後期 も前期も、高齢者医療に要する保険料率は所得が高くなれば下がり、所得が低くなれば保険 料率が上がるとい う状況になっています。  だから、保険料率の差を説明する際に、よく言われる保険者機能というものが一体どの程 度効いているのかと いうことになりますと、やはりこの差の主因は所得と年齢だろうと思います。そして65歳 未満の人でも、慶應とか だったらば若い看護師さん、私学共済とかだったら保母さんとか、医療費をあまり使わず、 しかも被扶養家族をも たない人たちが大勢いるわけで、そういう人たちが多いところは、やはり医療費が低くなる ので、保険料率が下 がってきます。例えば慶應だったらば、4.7%の保険料率になっています。これはやはり所 得が他の産業と比べ れば若干ですが高く、かつ看護師さんなど医療費を余り使わない若い人が多いということが 影響しています。  まず、そういうことを押さえていただきたい。だから、保険者の努力ではなかなか調整が きかないところは、制度 的に調整していいのではないかと思います。自分の努力でどうしようもないところは、ある 程度調整していいので はないかということは、岩本先生とか私は同じように考えていると思います。  次に考えていただきたいことが、資料Iー(4)で、日本の保険料率です。例えばここだと、 政府管掌健康保険の保 険料率が8.2%、フランスの被用者保険だと13.85%、ドイツだと14.6%。やはりこういう ことも日本の医療財政を 考えていくときには知っておいた方がいいだろうと思い、事務局に準備することをお願いい たしました。  昔から、医療保険財政が赤字になったという新聞記事が出ると、私はついつい保険料率を 上げれば解決するの にということを言ってしまうのは、日本の被用者保険の医療保険料率は低い、特に健保組合 には、相当低い保険 料率しか負担していないところがあるという認識があったからです。     先ほどのところに付け加えますと、GDPに占める社会保険料収入の割合は、年金、医療 をはじめとした社会 保険すべてを含めた形でいいますと、日本が10.1、ドイツが13.9、フランスが16.3という 形で、日本はかなり低い 水準にあります。そういうところも、日本の医療保険のあり方を考える際には前提に置いて いただければと思いま す。  そこで、資料I−(1)に入りたいと思います。これは以前説明したデータでして、なかな か御理解いただいていな かったようなので、再び今日も準備してもらいました。  前期高齢者医療制度は、5ページの資料I−(2)参考資料を見てほしいと思います。政管 健保、組合健保、国保 などの各健康保険組合は、全国平均の高齢者加入率だとして、その頭割りで医療費を拠出し ましょうという仕組 みになっています。そういう仕組みになっているんだけれども、それは各保険者の中の高齢 者の数しかカウントし ていないんです。だから、各保険者の所得というのは考慮しておりません。したがって、所 得が低いところは保険 料率が高く、所得が高いところは保険料率が高くなるという形で保険料率に差が出ます。所 得と保険料率の関係 が、逆だったら良いのですけど、所得が低いほど保険料率が高くなるというのはいただけま せん。  そのあたりについて、5ページで、被用者保険の支払基金に払ったお金を総報酬で割った ら何%になるのかと いうのを計算してもらったのが、この値になります。そうすると、給料に対して1.7%の保 険料率を払えば、前期高 齢者にかかる医療費は全部賄うことができる。高所得グループであれ、低所得グループであ れ1.7%でいいよと いう仕組みになります。  次にお願いしたのが、前期高齢者の財政調整の仕組みを75歳以上にも拡大した場合には、 一体どうなるかと いうことをお願いしております。前期高齢者医療制度の財政調整の仕組みを拡大したらどん なことが起こるかとい うことを計算してもらうと、被用者保険全体に3.3%の保険料率をかければよいということ になります。そうすると、 低所得グループも高所得グループもそういうふうにすればよい。  先ほどの慶應健保だったらば4.7%の保険料率を払っています。その中で前期、後期のと ころに納付金として 1.793%を払っているんですけれども、この1.793が3.3に入れ替わる形になります。そう するとトータルは4.7%で なくて、6.207%になります。そういうことを慶應健保の理事会で冗談みたいに話をすると、 みんなは社会保障だ から仕方ないよなぁといって納得してくれる。ところが、これが健保連とかいう運動体にな っていくと、いつの間に か断固反対になっていきまして、そこら辺は、政策形成過程の研究対象として非常に面白い と思っています。  そして、今回お願いしたことは、前期高齢者医療給付費に定率5割の国庫負担を導入した ら、一体どうなるの かという試算です。前回、例えば資料I−(2)参考資料の5ページのところで、支払基金に 直接ダイレクトに国庫負 担を導入することを健保連は考えているんだろうという話をしまして、それでは国保に関し ては何の役にも立たな い、健保連はそういう貪欲シナリオを考えているのではないかという話をしておりましたら ば、翌日健保連から、 違いますよというメールが来まして、全部に広く国庫負担を導入するということで、国保に も恩恵がある形で考え ていますという連絡が来ました。したがって、今日はそういう形で試算してもらっています。  ただ、そういうふうにすると、新たに定率国庫負担という形で、右側の2.4兆円が必要に なります。我々が知り たいことは、新たに投入されることになる2.4兆円のおかげで国保の保険料がどのぐらい減 るのか、保険料負担 がどのぐらい変わるのかということを知りたいんですが、2.4兆円のうちの0.5兆円は国保 の保険料に回るという 試算になっています。2.4兆円のうちの0.5兆円を、そういう額しか回らないと見るか、そ ういう額も回ると見るかは、 皆さんに御判断いただきたい。とにかく、健保連はそういうことを考えられているというこ とです。  今は前期に国庫負担を投入してもらうという話をしましたけれども、国庫負担を高齢者医 療制度に投入するもう 一つの方法は、前期高齢者を長寿医療制度と同じような財政調整方式にすることです。これ を行えば、どんなこと が起こるのかということを計算してもらいました。岩本先生がこの前そういう質問もされて いたと思いますし、大臣 案もこの方法に近いと思います。図の上にある現状では、5.2兆円で前期が賄われています。 下の方でも5.2兆 円が賄われていて、そこで定率負担として2.4兆円が入ってくる形になります。  ここで重要なところは、前期高齢者の保険料2割というところです。前期高齢者保険料2 割の中身といいますの は、下の方に、きっとこういうことになっているはずだから明確に書いてくださいというお 願いしている四角に入って いる文章です。  「協会健保、組合健保、国保等の各制度の保険料は、現行制度ではそれぞれの制度に加入 している前期高齢 者の保険料を含むが、長寿医療制度と同様の仕組みとした場合、前期高齢者の保険料は先当 てされるため各 制度の保険料は65歳未満の者の保険料のみとなる」。わからなかったら、後で質問を受け ます。そして、現行制 度において前期高齢者約1,400万人(平成21年度予算案ベース)は、協会健保に170万人 (12%)、組合健保、 共済等に90万人(7%)、国保に1,160万人(82%)が加入していて、その人たちが前期 高齢者の保険料を負担 しているわけです。  したがって、右側から2番目にある1.0兆円という額は、この人たちが負担している額と 考えていいです。この 1.0兆円の中身はどうかというと、国保82%の人とか、みんなが同じ額を負担していると考 えれば、1.0兆円の中 の80%の0.8兆円は、実は国保の保険料として入ってくるんですね。したがって、国保の ところの保険料1.0とい うものが0.2になっています。けれども、これに0.8を足し合わせる形になります。  したがって、前期高齢者の医療制度を長寿医療制度と同様の仕組みにした場合の財源構成 の変化というもの を考えていくときに、我々が関心ある国保の保険料負担というものがどの程度変化するのか というと、国庫負担 の2.4兆円が入ったときに、国保の国庫負担は、実は全く変わらないといいますか、ほとん ど変わらないという結 果になるわけです。  いろんな形で国庫負担の充て方があると思います。そういうことを考えていくときに、今 後出てくるだろう案は、 ここで提示した一方の極から他方の極までの幅の中のどこかに収まると思います。  この前も言ったことですけど、岩本先生がおっしゃるように、全年齢を対象とした財政調 整というのは、やはり 合理性を持っている。それが政治的に非常に難しいというのであれば、65歳以上だけを対 象として、所得割でや っていくという考え方というのは、かなり合理性を持っていると思います。そして川渕先生 がこの前関心があると おっしゃっていた、低所得グループであるために保険料率が高くなっている。したがって、 それが協会健保などに 逃げていこうとしている、脱退してやめていこうとしている。そうした流れを食い止めるた めにも、少し組合健保の 中で高所得グループが助けてあげ、低所得者グループの保険料率を下げて、より多くの人た ちに組合健保のメリ ットを享受してもらうという仕組みにすることは、ひとつの解として十分にあり得るのでは ないかと考えています。  同時に、健保連というのはどういう関心を持っているかというと、私が思うに、恐らく被 保険者数とか、被保険者 の数に関心があると思いますので、わたくしがここで示した高齢者医療に要する医療費を被 保険者の中では所 得割で負担して、健保組合の解散を防ぐという考え方は、健保連の視点からみてもそんなに 抵抗がある考え方 ではないのではないか。  こういうことをいろいろ考えていくと、実は被用者保険というのは一枚岩ではないのでは ないか。だから、低所得 グループを救うため高所得グループが負担するという、被用者保険の中での所得の再分配の 強化という考え方 は、この前も言ったように、一元化とか健保組合の解体論と闘っている健保連あるいは被用 者保険グループにと って、兵法でいう戦のときの「逃げ口」として、意識されるのではないかとも思っておりま す。  どうもありがとうございました。 ○塩川座長 先にお答えして、その後、大臣の御挨拶にしますか。大臣に先に挨拶してもら いますか。  では、お願いします。 ○舛添厚生労働大臣 予算委員会に出ていたものですから、遅くなりまして済みません。  今日は、お集まりいただき、ありがとうございます。いろんな論点も大体一巡して、今日 また更に議論を深めた いということで、資料を御用意させていただいているところです。  与党におきましても、プロジェクトチームが見直しの議論を始めていますし、自民党の医 療委員会、公明党の医 療制度委員会の場においても議論が始まっております。本核的な議論を皆さんとともにこの 場でも展開していき、 1つの制度設計の方向を見出せればと思っておりますので、どうか忌憚のない御意見を賜れ ればと思います。  以上でございます。ありがとうございます。 ○塩川座長 では、権丈先生は、意見だけでいいんですか。 ○権丈委員 はい、意見だけです。 ○塩川座長 それでは、今、手を挙げられたのは宮武先生ですか。 ○宮武委員 ほかに御質問が今あれば、お先にどうぞ。 ○塩川座長 では、岩本先生、どうぞ。 ○岩本委員 資料I−(2)のところは、前期高齢者の医療費に定率公費を5割入れるという シミュレーションになっ ているんですけれども、ここでの議論として、改革の方向性として、そういう案を具体的に 考えるとなると、そういう 財源はどうするのか、非常に大きな問題が出てくると思います。実現可能性として公費負担 の総額というのは、 現行制度から余り考えないものとして制度改革を考えるのか、新たに公費負担を入れるのか というところの判断 は、非常に重要だと思われます。私としては、なかなか公費負担を入れるというのは、大き な決断になってくるの で、難しいかなという思いもあるんですが、権丈先生としては、公費負担を入れるべしとい うお考えであるんでしょ うか。 ○権丈委員 資料I−(2)の2つというのは、世間でいろいろ議論されている、何のために 公費負担を入れるのか ということが明確になるように試算してみましょうということを明確にするためにお願い したところです。そこで例え ば2.4兆円というもので非常に財政的に苦しい国保の保険料が1.0〜0.5兆円浮く。そのた めに2.4兆円を入れる ということになりますね。本当にそれは支持されるのだろうか。  ほかのところと比べても、組合健保から被用者保険の保険料率はかなり低いなというのが ありますね。だから それは支持されるのだろうか。それは一応示しておきますよ。  もう一つ。前期高齢者に後期高齢者の財政調整方法というものを適用するというのも、や はり世の中で議論さ れていたりします。何のために2.4兆円を入れるのかというと、国保から見ると、1.0兆円 の保険料が変わった後 も1.0兆円なんですね。何のためにこれを入れるのだろうかということがやはり見えていた 方がいいでしょうという ことで、私はお願いしました。  だから、私が支持する、支持しないではなくて、いろんなバリエーションを見ていけば、 私は基本的に後ろの方 のI−(2)というのは考えていなかったので、以前の資料I−(1)は選択肢として考えられる のではないかということ で、資料I−(1)ということです。2.4兆円と両方全部入れてしまうと、2.4兆円から全部く るわけなんですが、この財 源があったら、何かほかのことに使いたいなという気がしないでもないです。 ○塩川座長 宮武先生、どうぞ。 ○宮武委員 少し議論をさかのぼって考えてみたいのですが、後期高齢者医療制度の是非と いうか、見直しを考 えるときに、実はそれは地域保険というものが本当に持続可能なのかどうかというところに 焦点を当てて議論をし ていかないと、大局を誤るのではないかと思っております。  現実には、後期高齢者医療制度が発足することで、市町村の国民健康保険は74歳以下の 方の地域保険とな った。75歳以上の新しい後期高齢者医療制度ができて、同じ県内に2つの地域保険が併存 してあるという状況 になったんですね。それが是とするのか、非とするのかという議論は、やはりしていかなけ ればいけないのかなと 思っております。  74歳以下になった市町村国民健康保険が非常に安泰で、十分にやっていけるのであれば、 それは言うことは ないのですが、どう考えても先行き運営が難しくなるだろうと思います。確かに平成の大合 併で3,200あった市町 村が1,800まで減ったわけですけれども、現実問題として、加入者5,000人未満という市町 村国保が今でも3割 強を占めているわけでありますし、しかも一般財源を充当しても、なおかつ6割ぐらいの市 町村国保が赤字である わけですね。そういう意味では、市町村国保というものをどうやって立て直していくのかと いうことも含めて、検討 していかなければいけないわけですね。  後期高齢者医療制度を包含した形の保険国保にする、しないは別にして、既に高知県は研 究会をつくって、県 単位で広域連合をつくって、新たな保険者を創り、運営していかないと先行きはないという 一定の提案をしており ます。  最近、京都府知事も県が財政責任を免れるべきではないという形で、県が直接運営するこ とを視野に入れた形 の発言をしています。一方で、市長会などは、最終的な着地点は別なのですけれども、市長 会、町村長会として は、市町村国保を県単位に再編成していきたいという意向を持っておられて、それは国保が ずっと言っておられる 一元化、一本化への布石ではあるんですが、同床異夢であったとしても市町村国保ではもた ないという考え方を 示しておられます。  その中で後期高齢者医療制度の在り方を考えるときに、今、権丈委員がおっしゃったよう に、どんな形で包含す る方法があるのか。保険者は県単位で広域連合を組んでやるのか、あるいは直接都道府県が 保険者になるの か。財政構造としては、今の高齢者医療制度の財政構造をそのままにして、県単位の国民健 康保険に吸収合 併をするという方法もあるわけですね。その場合に、65〜74歳未満の前期高齢者の財政調 整、言ってみれば老 人保険方式ですね。それで済むのかどうか。その1つの方式として、今、権丈さんの要請で 一定の仮定を置いた 上で、その効果について資料を出している。  次は、一気に原則65歳以上に対して財政調整を投入していく。そうすると、確かに介護 保険との整合性もある わけですが、現実には65歳以上人口が非常に膨大になって、2,600万人ぐらいが対象にな った財政調整を行う わけでありますので、そのときに一体どういう負担区分でこれを整理するのかというのは、 相当重い課題になって、 公費のかなりの投入が必要であろうと思います。これも今回出てきた中で、一定程度読める わけですね。  そんな形で議論を進めていった方がいいのかなと思っておりまして、あえて私なりのまと め方をいたしました。 ○塩川座長 そのほかございますか。  川渕先生、どうぞ。 ○川渕委員 私は、前回の検討会でいろんな質問をしまして、事務局の方が困っていますが、 私が聞くと答えて いただけるそうなのです。  権丈先生の案は、非常にチャレンジングでいい部分もあると思うんですけれども、結局、 先ほど岩本さんがおっ しゃったように、やはり公費の2.4兆円をどうするのかという、あるべき論とある論に行き 着くと思います。  前回、健保組合で8.2ポイントという、今、協会健保の保険料率を上回っている組合は幾 つあるんですかと聞い たら、一番直近の概況では、253あることがわかったんです。ポイントは、253の人たちを 一体どうするのかだと思 います。  舛添大臣の案もそうなんですけれども、結局最終的には助け合いの精神でやってきた国民 皆保険制度の中で、 健保組合の存在をどう考えるかということです。というのは、長寿医療制度と国保と合併す るときに、結局健保連 というか、1,500ある健康組合はどうするのかをあまり議論していないからです。そこで例 えば8.2%を上回る健保 組合に公費を入れたら幾らぐらいになるのかなというラフな試算を頼んだ次第です。ただ、 今日、ここに資料がな いのは、私がここで聞くことになっているからです。聞いたら答えていただけるんでしたね。 お願いします。 ○塩川座長 どうぞ。 ○村山課長 先生がおっしゃった健保組合の253とは違いますけれども、予算におきまし て8.2%を上回っている 組合が仮に解散したとした場合、協会健保の方にいくことになりますが、協会健保の方では、 国庫負担が付いて おりますので、その健保組合が解散したことによって、どのぐらい国庫負担が増えるかとい うことについて、前回 お尋ねしたということで申し上げますと、この場合は組合の数は予算の数ですので271と いうことになりますけれ ども、その組合が解散した場合には、国庫負担としては750億円の増になるでしょうとい う計算をしております。 ○川渕委員 750億円もかかるというのか、750億円程度で収まるのかという話なんですね。 私もこれをどう考え ればいいのかよくわかりません。つまり、先ほどの権丈先生の案で、例えば2.4兆円が出て きたんだけれども、 問題は一体どなたがどう負担するのか。750億円ぐらいだったら、何とかなるのかなと思い つつ、今、世の中は景 気が悪いですから、厳しいでしょうか。しかし、今は253ですけれども、どんどん解散し て協会健保に移る組合が 増えてくると、やはり抜本的な見直しをやった方がいいのではないか。 ○権丈委員 遠慮しながら言っているから伝わらないのかなと思うんだけれども、資料I− (2)とか、今日新たに出 した国庫負担の充て方の結果、あるいは国庫負担を投入するという選択肢は考えなくていい ということです。だか ら、この前言った被用者保険の中で応能負担にしましょうということでもう十分だと。そし て、そこで8.2%以上の 保険料率を払っている253あるようなところの保険料率を随分と引き下げることができる。 したがって、それは何 によって引き下げることができるかというと、高所得健康保険組合の負担が高まることによ って引き下げることが できるという話が基本的なメインストリームで、先ほどの慶應の例も入れたところでいうと、 4.7%が6.2%ぐらいに なる。それでいいではないかという話なわけです。  そうすると、脱退して協会健保の方に行きたいと思っている人たちが一歩とどまって、福 利厚生としてかなりい い自分たちの独自の給付を展開することができるような組合健保にとどまりながら、しかも 組合健保そのものは 数が減らない。非保険者が減らないんだから、健保連とかそういうところまでが、どうもこ れは反対はしないだろう というところを見越した上で、第1回目か第2回目のところで、資料I−(1)というものを お願いしている。  ところが世の中では、国庫負担を導入してどうのこうのとかいう議論が余りにも多い。そ して、東京フォーラムと かで国庫負担導入とかの決議大会とかいろいろやっていて、そんな金があるんだったら医療 に使えよと私は言っ ていたんですけれども、そういうことをいろいろやっていることが、実際どういうふうに、 何のために国庫負担を入れ るのかというのを明確にしようということで、この前お願いして、今日ここに出したように、 全くと言っていいほど国 保を救うことには役に立っていないね、立たないねということを示したので、資料I−(2) の今日お願いしたところは、 考えなくていいです。 ○塩川座長 岩本先生、どうぞ。 ○岩本委員 私も1枚資料を出しておりますけれども、これは事務局の資料IIの23ペー ジに関係するものです。 ○塩川座長 資料IIですか。 ○岩本委員 資料IIの23ページです。右側に資料II−(3)と書いてあります。  これは、長寿医療制度は、現在保険料が応能分と応益分から成っておりますが、応益分を 廃止して、すべて所 得割でやったらどういうふうになるのかというシミュレーションを示しているものです。こ の図が示しているメッセー ジというのは、そういうことは無理ですよということを言いたいんだろうと思います。  というのは、色の付いたものが改革してすべてを所得割した場合の保険料なんですけれど も、傾きが非常に急 になるということで、458万円で賦課限度額が50万円に達してしまうということです。こ うすると、年金収入が458 万円の人。数字が書いていないのでよくわかりませんけれども、保険料の負担は4割ぐらい は上がるんでしょうか ねということになるわけです。  年金収入が広い範囲にわたって生じるんですけれども、何でこうなるかといいますと、年 金収入が低い人のとこ ろから余り取れていない。年金が低い人が保険料を負担しなくなるということです。下の方 が153万円から始まる んでしょうか。年金収入が153万円を超える人から、所得割の保険料を払い始めるために、 傾きが18%という高 い率になるということになっているわけです。  私は、前から均等割を廃止して、所得割の方に統一してはどうかということを言っていた んですけれども、その 意図といいますのは、こういう形ではなくて、もう少し年金収入が低い人にも負担してもら って、そうすれば風向き がもう少し緩やかになるし、賦課限度額の到達するところも、もう少し年金収入の上の人に なるのではないかとい うことで、具体的に153万円よりも低い人のところから取れるような、そういった新しい 所得割の考え方でシミュレ ーションをお願いする資料を出したんです。  事前に資料をいただいて、資料提出依頼を出した後に、事務局から連絡がありまして、こ れを計算するに当たっ ては、年金収入の非常に細かいデータが必要なんだけれども、それを把握していないという ことでございました。 もし私の説明が間違っていたら、後で訂正いただきたいと思います。  所得割を課している旧ただし書き方式の所得のデータは持っているんですけれども、その 計算の更に前の段階 のものがないがために、私の出したものが計算できません。  私が考えていたのは、年金収入が例えば80万円以下の人も保険料を払わざるを得ないと いう批判をあびてい るので、その低所得者の方がいかに負担できる範囲内で、無理なく負担していただくものは どういうものかという ことをいろいろと考えようという趣旨で出したんですけれども、計算できないということに なると、データが別途そろ えればできるとは思うんですが、すぐには無理だと思いますので、一旦この資料提出依頼と いうのは、出しただけ で、できないということで構いませんけれども、これでいいのかなというのは、また課題と して残ると思います。  要するに、低所得者の配慮をいろいろとしようと思っても、データがないのでは、わから ないところに目をつぶっ てえいやーとやってしまうということになる。また制度変更をすると、何が起こるかわから ないということでは、非常 に制度設計が難しいし、危険だと思います。  ですから、この辺りは、この状況では手を触れにくいということが言えると思いますし、 更に言えば、それでいい のかという課題が残るということですので、まずこのことを申し上げたいと思います。  あとは、こちらの方でまとめる段階にきているのかなということで、資料Iが出たんだと 思います。ただ、資料Iの 論点整理を見ていても、ではどう改革していくのかということが余り見えてこないように思 います。具体像が浮か ばないように思います。そこのところをどう詰めていくのかということについて、少しお話 ししたいと思います。  導入当初は非常に批判をあびたんですけれども、1年近くたったところで、メディアはほ かの話題をいろいろと追 いかけていて、余りこの後期高齢者医療制度の不満とかが今の時期大きく取り上げることは 少なくなっているよ うに思います。単にニュースバリューがなくなったのか、不満はあるんだけれどもたまって いるのか、それともなれ てしまったのか。その辺りのところをどう把握していいのかという問題がひとつあると思い ます。  もう一つは、ヒアリングでも意見が出ましたけれども、余り再三いじらないでくれという ことがあるわけであります。 今回もしすぐ手直しするとすると、それをまたすぐ手直しすることはとてもできないという ことは、やはり改変する場 合も慎重にやらなければいけなくて、そういうためのシミュレーションというのは、念には 念を入れてやっていった 方がいいと思います。権丈先生が出された依頼に基づくシミュレーションに加えて、更にも し制度変更をするので あれば、丁寧にいろんなことをやらなければいけないと思います。  あと、議論が高齢者医療制度だけではなくて、国保の改革をも巻き込んでいるように思い ます。そうすると、国 保の改革をこの場でえいやーという形で決めていく形になることに関しては、かなり慎重に 議論しなければいけな いだろうということを指摘したいと思います。  以上でございます。 ○塩川座長 山崎委員、どうぞ。 ○山崎委員 今の岩本委員と同じようなことを考えておりまして、私からも発言させていた だきます。  施行時に随分混乱、騒動のようなものがあったわけですが、今はかなり鎮静化していると 思います。つまり、施 行時の事務レベルでの混乱は、一応落ち着いて、収拾したと思いますし、かなり情緒的、感 情的な議論がありま したけれども、その部分もかなり収まっていると私は思います。その辺で何か世論調査のよ うなものがあれば、お 示しいただきたいということでございます。  私は、市町村関係者の方々と話し合う機会がいろいろあるのでございますが、とにかく制 度の頻繁な改正は困 ると。いろいろ問題があることはわかっているけれども、一旦10年もかけて議論をして、 お互いに妥協してここに たどり着いたんだから、やはりしばらくは続けようではないかという声が支配的であります。 私自身もそのように思 いまして、手直しをすれば、微調整が差し当たっての手直しかなと思いますが、いずれにし ても、高齢者医療制 度を導入するに当たっての混乱から教訓を得るとすれば、十分時間をかける必要があり、十 分な周知期間を置く 必要がある。そして、多くの人の理解を得た上で、本核的な改革に着手するなら着手すべき だと思います。それ が1点です。  もう一つ、老健法は意外によくできていたというのは、専門家はみんなそう思っているわ けでございますが、そ れにもかかわらず、老健法を廃止せよという声が大きくなった一番の主導力は、やはり健康 保険組合だったろうと 思います。ですから、つぶしたのはだれかといえば、健康保険組合の運動だったんだろうと 思います。かれらにと っては、これが成果だったのだろうと思います。  老健法時代、あるいは新たな高齢者医療制度になってからも、拠出金が非常に増加するこ とを問題にされてい るのですが、先ほど来出ていますように、一律に増加しているのではないんですね。一番わ かりやすいのは、高 齢者を多く抱えている企業が増加しないということです。高齢者を余り抱えていないところ が持ち出している。  ですから、拠出金の負担増が嫌なら高齢者を雇いなさいという単純なことなんですね。で すから、高齢者の医療 をだれが支えるかといったときに、帰結として、高齢者を余り抱えていないグループが応分 の負担をしてくださいと いうのは、当たり前のことです。これは現在のシステムです。  それから、もう一つ。拠出金の負担割合が非常に高くなっているということですけれども、 一律ではないというこ とですね。拠出金の負担割合が6割を超えるようなところもある一方で、3割にも満たない 組合もあるわけですね。 それは先ほど来ありますように、負担能力を一切調整していないということなのでございま す。  結局、今の健康保険組合というのは、企業と運命共同体でありまして、衰退企業において は所得が伸びない、 若い人は採用できない、高齢者が多い、したがって医療費が高く扶養率は高いといったよう なところは、非常に 負担が重くなっているはずでございます。それでいいんだろうかということでございます。 企業が苦しくなれば、健 康保険組合も苦しくなるということでいいんだろうか。これは企業の福利厚生部門だと考え れば、運命共同体で すが、あくまでも公の法人をつくって、社会保障の一環として健康保険組合が存立している わけでありまして、や はり基本は社会連帯に置いていただかないといけないということでございます。  それにもかかわらず、今までの経緯がありますから、いきなり完全なリスク構造調整をせ よとは言いませんが、 実は今、健康保険組合の間で細々とではございますが、財政窮迫組合等に対する交付金交付 事業を行っている わけでございまして、これはたしか昭和50年代に入ってからでございますが、健康保険組 合がたしか最初は自 主的に始めたことでありまして、それがその後法定化されて現在に至っていると思うんです が、手がかりはそん なところにあるのかなと思います。ですから、自主的な事業としてでも苦しくなっていく企 業の組合を支えるという 努力を、組合主義を推進するという観点からも進めてほしいと思います。それが1つです。  それから、今の前期高齢者医療というのは、退職者医療を引き継いだ部分が相当あります。 退職者医療という のは、もともと報酬比例でありまして、ここには一切国庫負担もなかったわけです。ですか ら、そういう健保連が自 ら自主的に財政調整事業を細々とではあるけれども、おやりになっているというのが1つの 手がかりであるし、退 職者医療がもともと完全な応能負担であったということも手がかりになって、私の言ってい るようなこと、あるいは 権丈さんたちも言っていることは、経緯からしても、決して唐突な提案でもないと思います。  以上でございます。 ○塩川座長 それでは、権丈委員、どうぞ。 ○権丈委員 今、山崎先生が、老人保健制度はそんなに悪い制度ではなかったとおっしゃっ ていまして、結構、 専門家はみんなそう思っていたんですね。この老健制度に抵抗したのが、健保組合で、あそ こがずっと廃止運動 を行ってきた。75歳での独立型で、各保険者の費用負担は頭割り、しかも国庫負担が5割 も入る後期高齢者医 療制度みたいなものができて健保連は大喜びするという状況になる。だけど先ほども言った ように、後期高齢者 医療制度の財政方式は、被用者保険が得をする制度なんですね。後期高齢者医療制度ができ ただけだと、国保 が大変な目に遭うから、かつての老健制度と同じ財政調整が65歳まで下ろされる、前期高 齢者医療制度が組 み込まれていったわけです。前期高齢者医療制度の財政効果について、組合健保は余り読ん でいなかったと思 います。ただ、これを組み込まないと、国保が絶対にもたないから、後期高齢者医療制度の 創設とバランスをとる ために前期が組み込まれたわけで、その中身は、老健制度なわけです。  だから、4月のはじめから高齢者医療制度が大騒ぎされていく中で、野党が、年金記録問 題にかこつけて年金 天引きがはじまる4.15ショックとか騒ぎ、新聞はわりと冷静でしたがテレビが大騒ぎして いたんですけれども、そ れは私が議論する話ではないなと思って勝手にやってくださいという感じでした。  ただ、幾つかの健保組合が解散して、協会健保に移らざるを得なくなってくるというのは、 やはり前期の影響な んですね。そこをどうにか均していく方法を考えようと思って、退職者医療制度の財政調整 制度をそこに組み込む という形で、このIで出している資料をお願いしているわけです。ですから、どれも特別に 唐突なわけではない。こ れまであった部品の良いところを全部を組み合わせていって試算をおねがいしているわけ です。  そして4月以降の動きとしては、野党が言うように、2008年4月からはじまった高齢者 医療制度を全部なくし てしまって、それ以前の老健制度にするという議論も出てきたわけですけど、私が言ってい たのは、せっかく老健 の財政調整を65歳まで下ろしてきているんだから、これを利用しないというか、このチャ ンスを捨てることはない だろうということでした。制度というのは、右に行ったり、左に行ったりしながら、いい方 向に進むんだから、長所を 生かしていきましょうというのが、この前期の財政調整方法を75歳以上まで適用するとい う試算をお願いしていっ た経緯になります。  ただ、1点。後期高齢者医療制度の非常にいいところは、個人単位にしたから、みんなが 保険料を払うことにな ったわけです。一方で裕福な家族で子どもの被扶養者家族になって保険料を払わなかった人 がいて、他方では 単身で非常に貧しく苦しい人が保険料を払わなければいけないというのはどう考えてもよ くない。そこで、割増保 険料という被扶養家族を1人自分のところの、例えば慶應健保で私のところの親を被扶養者 として登録しますと いったらば、個別に割増保険料はいくらになるかを第3回の検討会で試算してもらったわけ です。すると、組合健 保では0.7%、協会健保では1.0%と試算されたわけです。  この割り増し保険料率を払うという仕組みを組み込んだ形で、以前の老健よりもいい制度 ができるのならば、こ の1年間ぐらいのどさくさというか、騒動はかえってよかったと思うんです。  そして、山崎先生がおっしゃったように、この前も世論調査をやっていましたけれども、 結構後期高齢者とか、そ ういう当事者たちが、この制度はそんなに悪くないという状況になってきている。だから、 外観は何も変わらない。 中身の財政方式を変えるだけという形で、今、利用している人たちの負担が急激に増えるわ けでもないという、非 常にモデレートな改革案しかわたくしは言っておりませんので、先生方と同じような意見だ と思います。 ○塩川座長 山崎先生、どうぞ。 ○山崎委員 ついでに補足します。  前期高齢者医療に公費を入れるということにつきましては、仮に将来そういうことがあり 得るとしても、優先順位 としては、社会保障の中では相当後ではないかなという気がします。差し当たっては、基礎 年金の2分の1の国 庫負担の安定財源を確保するということでしょう。それから、少子化問題の本格的な取組み の方が、はるかに優 先すると思っております。  以上です。 ○塩川座長 樋口先生、どうぞ。 ○樋口委員 私も、後期高齢者医療制度が個人単位になったということについては、大変評 価しておりまして、 ほとんどすべての人が年金をもらっている以上、広く浅く一定の負担をしていくという在り 方は、決して悪いことで はないどころか、将来の社会保障の在り方だと思っております。  ただ、あれだけいろいろな問題が起こってきて、そして単に感情的とばかり決めつけるこ とのできない、反対の 声が各所からあがりました。一方で感情というのは大事なことでもございます。それが今の 時点で、今度は市町 村が余り変えないでくれと言っているから、そちらに合わせて今回の制度は余り変えないで おこうという結論だと したら、この検討会の一員として、余り賛成はできないわけでございます。  さまざまな問題が出ておりますけれども、今まで出ていなかった問題で1つ言うとすると、 企業の問題が出てき ました。私も政府が主宰するこの席に座る以上、野党が言うように、全部今の後期高齢者医 療制度をつぶして、 元の老建制度に戻れという結論は、ここでは絶対に出せないということは、勿論自覚して来 ております。一定の 意見を言わせていただきたい。その上で、もしかしたら、全体から言えば微調整かもしれな いけれども、あのとき の国民の怒りとか、不本意な問題点をある程度聞いていただいて、なぜ失敗したか、なぜあ んなに問題になった かということをやはり反省して、きちんと取組み直さなければいけないと思っておりますし、 私も結論としては、短 期的には微調整の結論しか出せないだろうと思います。  同時にせっかくのことでございますから、長期的にはこれだけ高齢者が増えていく中で、 前期高齢者を含むの か、後期高齢者だけなのか、高齢者の医療制度という点について、問題の出てきたことは全 部整理して、健保組 合の議論に手を突っ込むということではなくても、国保の問題にしろ、出てきたことは長期 的なビジョンとして、私 どもとして、やはり提言できた方がいいなと思っております。  そういう意味でいいますと、例えば今、企業で、同じ厚生労働省の労働部局の発表による と、65歳以上の雇用 は順調に進んでおりますし、70歳以上の人を雇用する企業も顕著に増えております。私見 でございますけれども、 恐らく権丈先生も同じだと思いますけれども、社会保障国民会議が第1部会を年金と雇用と を合わせた1つの部 会にしたことは、大正解だと思っています。日本は今、世界でまれな国になってしまってお りまして、今ごろ高齢 者が21.5%という国がもうちょっとあるかと思っていたら、本当にないんですね。日本だ けです。しかも右肩上がり で高齢者が増えていく国などというのは、他にほとんど皆無に近いです。  ということは何かといったら、他の国はもう少し子どもが生まれている。そのおかげで、 デンマーク、スウェーデン という、日本よりはるかに高齢化していた国の高齢化率が今15〜18%ぐらいで、高値安定 の数字を示すようにな っています。  ですから、私は少子化対策とはあえて言いません。国民挙げての子育て支援応援団をつく ろうと思って、今、一 生懸命やっているところなのです。でも、今、人が生まれて一人前になるのに26歳までか かるという計算だそう で、26年を待っているのは大変なことなのです。ですから、私たちはしばらく世界未曾有 の少子高齢社会に耐え ていく覚悟をしなければならないので、それは何かといったら、塩川先生を見本にして、や はり幾つになっても働 こうと思う人は働ける場をつくらなければいけない。それでやはり税金なり、保険料を払え る高齢者にしていかな ければならない。  だから未来形で見るならば、企業に働く高齢者は増えます。増やさなければいけないんで す。そうなったときに、 一体医療保険制度はどうするのかという辺りも、もう一つお考えにお入れくださいまして、 御検討いただくように、 よろしくお願いします。 ○塩川座長 権丈先生、どうぞ。 ○権丈委員 本当に言葉とは難しいなと思うんですが、老健制度はそういうところを組み込 んだ形にはなっている と思うんですね。その老健制度を75歳から65歳まで下ろすということ、結果的に私が言 っていることはそうなん ですけれども、そして費用負担は退職者医療制度の方法でいいではないかということを言っ ているわけです。こ の改革の方向は、先ほども山崎先生がおっしゃっていた健康保険組合の運動の力にある面背 いていることなん ですね。だから、私のいう改革案はある側面から見れば、とんでもない抜本改革です。  私は国民が納得する費用負担の制度とかいうのはないだろうというのがあって、費用負担、 これは分配問題で、 ゼロサムの問題だから、当事者達に納得してもらうことなどできるはずがなく、私はマキャ ベリなどが好きで表現 が彼流になって申し訳ないけど、こういう問題は費用負担の当事者達にどうすれば諦めても らえるかという視点 が必要になる。いろんな紆余曲折を経ながら、こういう高齢者医療費の被用者保険負担分を 応能負担するという ところで落ち着いてくれば、これからの高齢化に耐え得る医療保険制度ができると思い、あ る側面から見れば、と んでもない、今までの力関係では絶対できなかったことが、昨年に前期高齢者医療制度をつ くってくださったおか げで、結果的に可能になってくるというような、そういう状況にあるのではないかと思って いるわけです。そして、 野党のいうような老健制度に戻せとか、75歳とかそこら辺だけを財政調整する制度に戻せ というのは、私からす るともったいなさ過ぎる。と同時に、そういう野党のいう案の方が下位にくるというか、質 が悪い改革案だと思って おります。 ○塩川座長 川渕先生、どうぞ。 ○川渕委員 今日は、負担の話が多いなと思っています。負担の見返りとして給付の話があ ると思うのです。今 日の資料がもったいないので、10ページからの資料I−(7)を厚生労働省に代わって私が説 明します。  まずは、お年よりと若い人で医療費にどれぐらいの差があるかと。権丈先生は、若い人の 方の医療費が足りな いという話でしたけれども、ドイツは3.7倍、日本は4.2倍ということで、日本が高いとい うことですね。  そこで、今日、川渕資料をあえて付けました。うちの大学院生がぎりぎりまでやってくれ たので差し替えが出ま したが、患者さんの個表データを使って、統計分析しますと、興味深い結果が出ました。本 分野ではDPCという 入院医療費のデータを106病院から貸していただいています。厚労省にいきますと1,400 ぐらいの病院データが あるんですが、なかなか我々はそこにアクセスできないので、独自にやっています。  ポイントは「果たして、後期高齢者の方が医療費が高いのか?」ということです。分析モ デルは割愛しますけれ ども、結論は2つです。先ほどありましたように、高齢者になると医療費が高いのかという 話と、もう一つは、前回 も言ったけれども、亡くなられた方の医療費はどうかいうことです。  下から5行目ぐらいに結論がありますけれども、死亡症例については、75歳以上と75 歳未満で分けてやってみ ますと、脳梗塞については後期高齢者が高い。しかし、肺がんと心筋梗塞については、むし ろ低いということがわ かってまいりました。  もう一つは、後期高齢者について、亡くなった方と死亡していない方とを分けてみますと、 肺がんと脳梗塞の方 が高かったが、心筋梗塞はそうでもない。  何を言いたいかというと、医療費分析には疾患特性を考慮に入れていないといけないとい うことです。府川さん の論文は今日の関連資料の14ページ目にあります。  この研究に文句をつけるわけではないんですけれども、一方で、いわゆる疾患特性を余り 当時は考えておられ なかったのかなと思います。ただ、そういうデータも当時はなかったので、仕方ないところ もあります。最近こういう データが出てきましたので、当局も是非、活用下さい。それにしても、後期高齢者の医療費 が高い脳梗塞をどう 考えればいいのか。富山県の救急の話が前回樋口先生から出ましたので、私は富山出身なの で、富山の救急 医療について見える化してみました。私の配付資料の巻末に、富山県のデータが載っていま す。また、今日の事 務局の資料の中にも、救急の医療のデータがあります。結局今、どんどんお年よりの救急搬 送が増えているよう です。  ただ、悲しいかな、医療機関と消防庁とをリンクしたデータがないんです。そこで総務省 と厚生労働省でもうちょ っとこれから密接にやればいいのではないかと思ったら、担当課から、これからやっていき ますということなので、 私は安心しています。  多分、将来的に保険料の引き上げは避けられないと思いますが、その身返りとして、一体 全体どんな医療、特 に後期高齢者はどんな医療が受けられるかという説明が、必要ではないかと思います。前回 も私は問題発言をし たんですが、例の6,000円ぽっきりという点数(後期高齢者診療料)がありますね。今日も その点数の解説が厚 労省の配付資料の13ページ目に付いているんですけれども、1994年から2002年9月まで 存在した老人慢性 疾患外来総合診療料と何がどう違うか。後者は1回735点ということで、月2回まで取れ たんですけれども、これ が600点になってしまった。ただ、解説を読むと、いろいろ違うんだということが書いて ありますが、この違い、庶 民はわかりますかね。  総合的に診る医者という考えはいいんですけれども、そういう医師を果たして確保できる かどうか。日本人は熱 しやすく冷めやすいんですが、やはり後期高齢者の医療の在り方というもの、一体全体負担 に対してどんな見返 りがあるかということをウォッチする必要があるのではないかと思います。  関連資料の12ページにあるように、これから調査するんだと、患者満足度スタディもや るんだということなので、 これは鋭意御発表いただきたいと思います。ただ、私がびっくりしたのは、1ページ前にあ る後期高齢者診療料 の届出状況です。これを見て愕然としたのは、届出件数は、確かに日本全国9,478件あるん ですけれども、青森 県はゼロ、秋田県は2件となっていることですね。こういう県は、後期高齢者の保険料率が 安いのかなと思ったら、 そうでもないようです。  本検討会に来ていただいた高知県とか福岡県の届出状況を見ますと、全然違いますね。「医 療制度は国民す べからく平等」となっていますのでこういうところはなるべく標準化していただきたいなと 思います。繰り返しますが 負担と給付の関係は、もうちょっと見える化する必要があるのではないかなと思います。  以上であります。 ○塩川座長 どうもありがとうございました。  大臣はまた国会に用足しに行きましたので、出て行きましたが、時間はございますので、 続けたいと思います。  宮武先生、どうぞ。 ○宮武委員 権丈さんに確認したいんですが、再三言っている65歳まで、言わば財政調整 を広げていくというの は、今の後期高齢者医療制度を県単位の国保の中に入れ込んだ上で65歳以上を調整してい くという意味です か。 ○権丈委員 それはずっとそのように言っています。今ある広域連合も、利用できるのであ れば、あの単位を利 用できないだろうかということは、ずっと尾辻元大臣と『東洋経済』で対談したときから言 っております。 ○宮武委員 それで安心しました。  やはり、今の世論の風が当初よりも少し和らいだとか、そういうことは関係ないですね。 やはり社会保険の原 理・原則というものは、きちんと守っていかなければいけないわけで、75歳という年齢だ けで一律に線引きをして、 強制移住させるという仕組みそのものが、本来の社会保障の原理・原則に外れていると思い ます。それがまさに 一律激しい批判をあびて、今も根強い反発が残っているし、このまま続けていけば、必ずま た批判が再燃すると 思っています。  そうでありますから、同じ県内に2つの地域保険があるような状況は、早く是正した方が いい。それは早急にで きる問題ではなく、中長期的な目標であるにしても、それはやるべきだし、現実問題として、 今の市町村国民健 康保険は、リスクを分散する母集団としても成り立たないような規模のところがどんどん増 えているわけです。こ れは早く手を打たないと、国民皆保険の言わば支えである市町村国保が崩壊をしてしまう。 そんな危機感を持っ ているので、是非大枠のところは、そういう形で意見が集約できればありがたいなと思って います。  そして、公費の投入方法については、別に財政調整として公費を投入する方法だけではな くて、国保に対する 国庫負担の投入を上げる方法もある。公費が直接に国保財政を助ける仕組みになるわけです から、そんな方法 も視野に入れた上で、私は県単位への集約を提案しました。  もう一つ。川渕さんの御意見の中で、素人なので私なりに申し上げたいのは、今、ここで は制度の枠組みにつ いての論議をしているわけですが、その枠組みの中でどういう医療サービス内容を提供して いくのかということは、 やはり付随してどうしても触れていかなければいけない問題だと思うんですね。  そういう意味では、今回の批判は、新しい仕組みができたけれども、それに伴って何か新 しいサービスがあった のか。どうもそれぞれが年寄りの医療費を押さえつけるような仕組みだけではないのかとい う批判をあびたわけ でありますので、そこもやはり是正していかなければいけないわけで、一般的な救急医療の 今の窮状について、 医師不足について、あるいは後期高齢者診療医療に代用されるような、後期高齢者にふさわ しい触れ込みであ った診療を具体的にどうやって肉付けしていくのか、そのこともやはり触れていかなければ いけないだろうと思っ ています。  以上であります。 ○塩川座長 7時半までやりますから、岩村先生、御意見ありませんか。 ○岩村委員 しばらく出ていなかったので、大変申し訳なかったんですが、私自身は、多分 最初の2回目ぐらいに 出たときに申し上げたとおり、短期的な問題を解決するということと、長期的に議論すべき ことというのは分けた方 がいいのではないかということを申し上げました。そういう意味では、慎重な立場をもとも と申し上げてきたつもり でおります。  今回の長寿医療制度について言えば、やはり微調整はしつつ、まずとにかく制度の安定化 というのを第一に図 るべきだろうと思っていますし、先ほど山崎先生なども御指摘されたように、やはり頻繁に 制度改正をやると、そ れだけまた混乱を引き起こすし、実際に事務を担当している市町村なども疲弊をし、更に実 は対象となっている被 保険者である高齢者自身も再度混乱するということになって、少なくとも余り関係当事者に とっていいことは起き ないのではないかと思っております。  ただ、それとは別に長期的に、特に国保、前期高齢者、後期高齢者の関係をどういうふう に整理していくのか。 とりわけ、国保の問題をどうするかということについては、やはりどういう方向性を見つめ ながらという議論はある と思いますけれども、そこについては、やはり議論していく必要はあるだろうと思います。 ほかの先生方もおっしゃ るとおり、現在の市町村単位でこのまま維持していくこと自体は、恐らくかなり難しくなっ てきていて、やはりもう 少し広域化して、運営主体というのを考えていかなければいけないということは、そういう 方向になるだろうし、そ もそも恐らく、前回の一連の医療保険の改正のときも、そういうことを視野に入れながら議 論してきたと思っていま す。  もう一つ、組合健保をどうするかというのは非常に難しい問題で、一方では、やはり1つ の企業の中で医療保険 を運営しつつ、他方で従業員の福利厚生というのを担っているという部分があるので、これ をすべて一概に否定し てしまってというのは、実際上かなり難しいだろうと思います。そうだとすると、やはり政 治的には非常に困難が 伴うんだろうと思いますけれども、もう少し健康保険組合側にも応分の負担をしていただく ということについて、や はり議論をしていただく必要もあるだろうし、そういう議論ができるような下地なり環境づ くり、あるいは議論の土 俵というものを設定していくことをこれから少しずつ考えていく必要があるのかなと、私自 身は思っております。  大変簡単ですけれども、以上です。 ○塩川座長 権丈先生、どうぞ。 ○権丈委員 先ほどの宮武先生の話のところと関わるんですけれども、老健制度は、ほかの いろんな医療保険 に入っていながら、老健制度に二重国籍として加入し、この老健制度の枠内で財政調整して きたわけです。みん な今までの保険に入っているという老健制度のときにも、財政調整はある年齢以上を対象と してきたんですが、 その年齢区分を問題視されることはなかったわけです。これを75歳の独立制度にしてしま ったというところが、や はり大きな反発を呼ぶと同時に、そこから先の診療報酬とか、いろんな医療政策の中で、そ こだけ下げていくとい うような、非常に危ない状況になるのではないかということを心配しておりました。だから 今回言っていることは、 65歳からも今までと同じ医療保険に入っている。何も65歳になったからと言って、今まで 加入していた保険から 無理矢理脱退させるわけではない。これまでの保険に入っていながら、二重国籍としての老 健制度というものを 65歳のところまで持ってきたという仕組みなので、私は年齢で区切るという意識は全くな いですね。65歳以上の 高齢者医療制度とセットにして言ってきたのは、65歳になって、年金受給年齢になれば、 自己負担は所得が高 かろうが、低かろうが1割でいいではないかというサービスとセット、あるいはそういう当 たり前のことだと思うんで すが、そのための財政調整というか、みんなで助け合っていこうよという、そういう仕組み をイメージしている。そう いうイメージでやっていこうではないかという話が、私のベースにある。  そして65歳以上の人たちの所得が高かろうが、低かろうが全員1割の自己負担でいいと いう社会をつくるため には、大体7,400億円ぐらいかかるという試算をしてもらったわけです。消費税では0.3% ですね。0.3%の消費税 を我々が若いときからそれをずっと払っておけば、65歳になっても自己負担が1割でいい というのならば、若いと きから払っていても良いではないかというものとセットとして、65歳以上の高齢者医療制 度の話をしているわけで す。  65歳以降は今までの老健制度みたいに、今まで入っていた保険にずっと入っていながら 財政調整だけをして いく。その内部の被用者保険のところだけは、所得が高い保険者グループから低い保険者グ ループに所得の再 分配を行うようにする。退職者医療制度もそうした仕組みでしたし、基礎年金の財源調達と いうのも、同じ方法な んですね。そういう形でいいのではないですか。  ただ、65歳未満のところは、やはり自分のところの福利厚生としてしっかりやってもら うというのは、各組合健保 にお願いしますという話になっていくことなので、この前の4月のところの感情的なねじれ といいますか、いろいろ なもつれみたいなものは、かなりこれで解きほぐすことができるのではないかと思っており ます。  そして、地域医療のところも、市町村ではなくて、いろんな広域という形で考えていくの もいい。ただ、今、市町 村でもかなり再保険制度を設けているので、そんなに財政単位が小さいからといって財政的 に危ないかというと、 そこら辺の危機感は、私はほかの人と違うかもしれないんですが、ただ、地域医療計画を作 成しているのが都道 府県単位になってくるし、宮武先生がおっしゃるように、今や国保と後期高齢者医療制度が 市町村と広域連合と いう二重構造になっている。これを統一するという方向性としては、初めに大臣がおっしゃ ったような形で、都道府 県単位に持ち込んでいくというのは、いろんな意味でメリットはあるので、その方向で考え ましょうということです。  それともう一つ。国庫負担を入れるときに、財政調整制度の中に国庫負担を入れるという ことは、国保の保険料 をほとんど軽減しないということを今日お話ししました。これを国保の中にダイレクトに投 入して、低所得者の保険 料を軽減するという形で低所得者対策として集中的に国庫負担を投入するとかいうのでし たら、私は大いに支持 するとも言ってきたわけです。  そして、私が最後に皆さんにわかっていただきたい、記憶していただきたいのは、資料I −(5)とI−(4)というのが、 この国の保険財政の現状であるということです。ほかの国と比べて、医療保険料率、被用者 保険の保険料率は 物すごく低いということ。そして、その被用者保険の中でも所得の違いによって、保険料率 が物すごく高いところと 低いところまで差があり、その格差は3倍以上であるということは、国民の常識にしていた だければと思っており ます。この辺りのところは、私は医療のみならず財政全体の問題を考えていくときに、まず 大前提に置いてもらい たいと思っています。 ○塩川座長 山崎先生、どうぞ。 ○山崎委員 資料について若干コメントしておきます。資料I−Fの日本とドイツにおける 老人と若人の1人当たり 医療費ですが、私はこれを見て、同じ65歳以上で比較すると、日本が4.2で、ドイツが3.7 倍というのは、ほとん ど差がないと読みました。日本が若干高い部分は、社会的入院だとか、いろいろとその辺で 説明できるのかと思 いました。いい資料を出していただいたと思います。ただ、ドイツ以外がどうかというのも あれば、調べていただき たいというのが1つです。  20ページ、資料II−(1)でございますが、我々介護保険を一方でにらんでいる者にとっ ては、なぜ高齢者と現役 の負担の構成がこのようになるのかなというのがちょっとわからないです。介護保険では、 高齢者の割合が増え、 若年者の割合が減る。それに応じて、そのままストレートに負担割合が変わっていくわけで すが、後期高齢者に ついては2分の1しか調整していないんですね。  ただ、介護保険と違うのは、介護保険は事実上すべて高齢者の介護費用ですが、医療保険 は、若い世代は高 齢者を支えつつ、自らの医療費の負担もしているわけでございまして、その辺の仕分けをし た上で説明していた だいた方が理解できるのかなと思います。  それから、国保の問題あるいは国保の保険者の問題に議論が移っているのでございますが、 私はもともと市町 村国保のままで高齢者医療を市町村が引受けてもらうのが一番自然だと思っておりました が、市町村がどうして も高齢者を引き受けるのは嫌だという中で、最終的に市長会の提案だったと聞いております が、広域連合という 形で引受けようという英断をしていただいたのは、非常に感謝しております。もしこの英断 がなければ、18年改正 はなかったと思います。つまり、その場合、結果的に老健制度が今も残っているんだろうと 思います。それぐらい 大きな英断だったと思います。  ただ、これは突如として提案されて、ほとんど審議会で議論する間もなく実行に移された わけでございまして、 そういう意味では、いろいろ問題を残してきていて、見直しの余地はあるのかなと思います。 一般論としていえば、 もっと当時者の声を聞くような、そういう意味では保険者機能を発揮できるような改善が差 し当たって必要なのか なという感じがいたします。  問題は、国保の問題です。確かに宮武委員がおっしゃるように、同じ県の中に市町村とい う保険者と広域連合 という保険者があって、結果的に途中で保険者が分かれるというのが現在の問題なんですが、 国保の問題という のは、財政の問題と事務の問題を分けて考えるべきだと思います。これは前回も言っていま す。小規模保険者で リスクの分散を図れないというのであれば、まさに共同事業や再保険を本格化すればいいこ とであります。  小規模市町村では、高齢者が多いあるいは低所得者が多いというのであれば、制度間調整 や調整交付金でき ちんと対応すればいいわけでございます。これはいつも岩本委員がおっしゃっているわけで ございます。  これは調査課がいつも医療費マップを出しておられますが、昔と変わらなければ、年齢構 成の違いを補正した 実質医療費の実態というものは町村部が低いんです。医療の供給が相当整っている都市部の 方が高いんです。 つまり、医療費は町村部の方が低い。大都市部の方が高い。それから、収納率は町村が高く て、都市部が低い んです。つまり、構造的な問題である所得だとか年齢の問題をきちんと手当すれば、そして 再保険・共同事業等 によってリスク分散機能も強化すれば、むしろ町村国保の方が健全経営が可能だと思います。  仮に全県1区の保険者になれば、医療費が高く、収納率が低い都市と医療費が低く、収納 率が高い町村部の 財政が1つになるんですね。この問題をクリアーしようとすると、結局都道府県単位を前提 とすると、分賦金方式 のようなものにならざるを得ないんだろうと思います。  いずれにしても、財政の問題というのは、いろいろ工夫の余地があって、しかも一本にす ることは決していいこと ではないと私は思います。  問題は、やはり行政力の問題、事務の問題でございまして、これは市町村合併が十分に進 まなかったというこ とによって残されている国保に限らない、零細な市町村全般な問題だろうと思います。こう いう市町村合併から取 り残された行政力の乏しい市町村をどうするかということになると、これはむしろそういっ たところで、まず県の出 番があるのではないかと思いますし、あるいは広域化というのがテーマになるのではないか なと思います。私は 神奈川県に住んでいるからかもわかりませんが、神奈川県庁の役割というのは、横浜や川崎 ややがて政令市に なる相模原を相手にすることではないと思っているんです。本当に行政力が乏しい、つまり 人がいない市町村に 対しては、やはりきちんと県が支援してやらなければいけないし、まさに広域的な対応を考 えなければいけないと 思っております。  以上でございます。 ○塩川座長 樋口先生、どうぞ。 ○樋口委員 私も先ほど山崎委員が言われました資料I−Fの日本とドイツの比較に関し ましては、平均寿命の 違いを思ったら、多少上かもしれないけれどという程度で、それほど違わないんだなという ことを思いました。それ なのにどうして日本だけが年寄りに医療費がかかり過ぎると言って、75歳で線を引くのか。 少しドイツの医療制 度と照らし合わせて、まさに社会保障でどうして線を引いていくのかということへの明確な お答えをやはりおつくり になった側から伺いたいなと思いました。  それから、資料I−(8)でございますけれども、後期高齢者診療料の届出状況ついて(速 報値)とございますが、 日付を見ると昨年の5月1日と、速報と呼ぶには誠に古い数値でございます。高齢者医療制 度のように今注目を 集めている制度については、恐らく厚労省さんは、昨年10月ぐらいの速報値をお持ちなの ではないでしょうか。あ ったらお出しいただきたいですし、あるいは傾向としてぐらいでも結構ですから、すっと上 向いているよとか、横這 いだとか、そういうものがあったら教えていただきたいです。  もしも昨年5月1日現在のような数値が足踏みしているとしたら、委員の皆様の中にも、 発足当初に比べればず っと鎮静化してきて、このままでいいのではないかというご意見もあると存じますが、あえ て言わせていだきま す。  今回の制度は、財政調整、あえて言えば、後期高齢者に対する医療費削減、少なくとも抑 制ということの大目 的で始められたはずです。その目玉である主治医制度、後期高齢者診療料などが普及しない から沈静化してい るとあえて言いたいです。  私の同級生はみんな後期高齢者です。結局、私の知る限り、私も含めて、前と同じ診療を 受けております。この 登録をいたしておりません。自分が今までかかっていた医者に行って、少し金のある人は3 割払って受診してい ます。最初の怒りが納まったのは、はっきり言って、少し所得の高い人が保険料を高くを取 られることを諦めたの です。早い話が私です。  これもまた不公平で、私は20年間の大学教授時代を除きまして、その前も大学定年以降 も、日本文芸美術協 会国民健康保険組合のメンバーでございました。私の所得は、去年もおととしもそれほど変 わっていないはずで ございますが、何と日本文芸美術協会では、保険料を18万ぐらいしか払っていませんでし た。それが今回年収 600万円以上ということで、私などはほんの僅か出るだけで、上限の50万円をお支払する のです。後期高齢者 医療保険料の上限は50万ですね。国保の上限はたしか58万です。ですから、国保の時代 の最高の所得の組 合員に比べると、これでも8万円減っているのですね。  だから、後期高齢者医療制度すら金持ち優遇だと批判なさる方もいます。なぜならば、国 保のときよりも8万円 上限額が減っているからだとおっしゃるんですけれども、私の場合は3倍払うのですよ。気 がついたら滞納してい て、この前慌てて振替で完納してきました。やはり文芸美術協会はベストセラー、ミリオン セラー会員がいっぱい いて、そういう人がたくさん払ってくれるから、私のようなしがない物書きが恩恵を受けて、 安くていられるという、 まさに保険組合の当たり前の原理が働いています。  これと同じことで、ある県の医師会の75歳以上の先生方が物すごく怒っているんです。 これはやはり医師会も、 1つの医療という専門家の医師国保組合というのがあって、そこもたくさんもうけていらっ しゃる方があるから、75 歳以上の医療の先生方が十数万で済んでいたのだと思うんです。世代間の不公平があります。 ○宮武委員 公費補助も受けておられるんです。 ○樋口委員 そうなんです。だから、こういう不公平をこのまま認めていいのかと思います。 私もそんな不公平な 恩恵を受けていると思わなかったですからね。今度を見て、えらいこっちゃと思います。そ れで諦めました。という のは、所得があるから払うのですから、これは塩川先生に見習って、私は潔く払います。  それにしても、言ってみれば専門家集団が1つの国保組合をつくって、それが一般の国保 と、そしてまた後期高 齢者医療の保険料とがこんな不公平がある状態をそのままにしておいていいんですかとい うことが、私はやはり 御議論いただきたいと思っております。    それから、後期高齢者医療制度は、本当の焦点は、金の取り方とか、天引きということは さることながら、本当 は後期高齢者には実は若年世代と別件の医療提供システムにしますよ、ということです。高 齢者はこれでいいん ですよという形で1ヶ月6,000円ですか。私は6,000円では何もできないと思っているので すけれども、本当にい いならいいですよ。6,000円がもう少し1万円に上がればいいことになるのか、あるいは2 万円まで認める制度が できるのかどうか。だけど、これが実はろくに普及していないから、みんな黙っているだけ ではないかと思うのです けれども、直近の私の意見を覆す資料がございましたら、お見せいただきたいと存じます。 ○塩川座長 どうぞ。 ○佐藤課長 医療課長でございます。冒頭にありました御質問に対してお答えいたします。  結論を申しますと、平成20年7月1日が最新のものでございまして、5月の全国の届出 でいうと9,478だったも のが、7月1日には9,563になっております。  届出というのは、10とか20とかいう数ではなくて、一般論としては、7月1日付ぐらい で1年に1回調査をしてい るということですから、ここでいう速報値は7月に大体正式な報告をするのですが、それに 対する速報という意味 でございます。  それから、追加をしておきますと、後期高齢者診療料という名前は、余りにも大きな名前 なので、後期高齢者と 言われる方、すべからくこの診療料の対象になるのではないかとか、あるいはあらゆる医療 機関が後期高齢者 診療料を算定すると、もしかすると思っているかもしれませんが、後期高齢者診療料だけで 後期高齢者の医療が 行われているわけではなくて、後期高齢者診療料はある届出をした医療機関が、ある特定の 患者さんに着目をし て、総合的な管理をなさったときにのみ算定をしていただく。比較的限られた医療機関にお ける限られた方の診 療に関わる診療料です。これ以外にも、たくさんの処置料や検査料など、いろんなものでで き上がっておりまして、 後期高齢者が全部こういう形で包括をされているというわけではないということだけは、補 足させていただきま す。 ○塩川座長 もう時間がまいりましたが、川渕先生、どうぞ。 ○川渕委員 言いたいことは二つです。一つは前回、聞いたことですが、やはり療養病床再 編の問題や、リハビ リの区分が未だくすぶっていると思います。ですから、また再燃する可能性があると思いま す。介護保険と医療 保険の関係で療養病床も2タイプあるし、リハビリも維持期と急性期・回復期とで介護保険 と医療保険に分かれ ています。次回か何かにまた国の考えをお聞きしたいと思います。  あともう一つ、昨日年金推計が出ました。いろいろ批判もありますけれども、私はああい う推計を医療、介護でも やったらいいなと思うんです。というのは厚労省の方は、医療・保険料について将来推計を 公式にやったことがな いとおっしゃるのですが、こうした推計は将来不安を払拭する上で不可欠だと思うからです。  ただ、年金と違うのは、先ほど樋口委員がおっしゃったように、例えば年金だったら、た くさん年金保険料を払っ ていると、そこそこ返ってくるが、医療の場合は現物給付ですから、お金のある人の給付が 増えるわけではない という点。  いずれにしても、医療と介護の整合性が必要だと前からずっと言っているんですけれども、 せっかく65歳でもう 一回やるんだったら、介護保険と整合性のある制度につくり変えたら、雨降って地固まるの ではないかなと思い ます。  以上です。 ○塩川座長 どうも諸先生方、大変勉強していただきまして、有益な議論を展開していただ きました。  もう一度総括的なこの会合を持ちたいと思っております。できるだけ早くやりたいと思っ ていまして、3月の中旬 ごろには予定してみたいと思っておりますので、その際はよろしくお願いいたします。  党の方も相当熱心に討議しておるようでございます。いずれはまた調整も必要だろうと思 います。その2点につ いては、わかりません。しかし、本日行った総合議論というものは、もう一度やっていただ くということで、お知らせ しておきたいと思います。  今日は本当に御苦労様でございました。ありがとうございました。 照会先 保険局高齢者医療課 企画法令係     (代)03−5253−1111(内線)3199