09/02/18 第6回臨床研修制度のあり方等に関する検討会議事録        第6回臨床研修制度のあり方等に関する検討会                  日時 平成21年2月18日(水)                        17:00〜                  場所 文部科学省3階3F1特別会議室 ○高久座長 ただいまから、第6回臨床研修制度のあり方等に関する検討会を 開催いたします。本日はご多忙のところ、お集まりいただきましてありがとう ございました。本日は取りまとめに向けてのご議論をしていただきたいと思い ますので、よろしくお願いいたします。予定は2時間後の19時までとなってい ますので、ご協力お願いいたします。最初に、両大臣がご出席ですので、まず 塩谷大臣のほうからご挨拶をお願いします。 ○塩谷文部科学大臣 本日は委員の先生方、本当にご苦労様でございます。昨 年の9月から6回にわたり、熱心に臨床研修の見直しについてのご議論をいた だきまして、誠にありがとうございます。今日はそのまとめをしていただくと いうことですが、我々与党内でもいろいろな議連ができたり、先生方のいろい ろなご意見を聞き、実際の現状も踏まえて、何とかこの見直しをしていかなけ ればなりません。  私どもとしても厚生労働省と協力をして、しっかりと対応してきたわけです。 特に医師不足とそれに伴ういろいろな事故等も具体的に出ている中で、専門的 な立場からどうあるべきかということで、この検討会を進めてまいったわけで す。本日ご提言いただく内容については、基本的には研修期間を2年というこ とで、その中での内容として、いまの現状により合って、しっかりと緊急的に 対応できるような状況をつくっていただくことで、先生方のこの議論に対して 心から感謝を申し上げる次第でございます。  特に文部科学省としましては、卒前の研修内容、医学教育の検討について、 これからしっかりと対応していかなければならないと思っております。そうい う点においては、やはり地域医療機関と自治体等と十分に連携しつつ、特に大 学病院の役割というのは、改めてその役割が重要だと思っております。何とい っても地域の医療の担い手として能力はもとより、その志ともども、しっかり とした医師を育てていきたいと思っております。同時に、我が省では「地域医 療の最後の砦」という言い方をしておりますが、しっかりと責任を持って十分 な機能を果たしていくことも含めて、今後の医療政策の中で大学病院のあり方 を、改めてしっかり確立して取り組んでまいりたいと思っております。  いずれにしても、医療については国民の安心という点で、非常に大きな部分 を担っております。厚生労働省と協力をして、国民に対して明確な、そして安 心できる政策を打ち立てて実行してまいりたいと思います。最後までご協力を よろしくお願い申し上げまして、ご挨拶とさせていただきます。どうも今日は ありがとうございます。 ○高久座長 どうもありがとうございました。それでは舛添大臣、よろしくお 願いします。 ○舛添厚生労働大臣 皆さんお忙しいところ、お集まりいただきましてどうも ありがとうございます。6回にわたり、本当に熱心にご討議いただきましてあり がとうございます。私自身、いろいろな医療関係の方、また教育関係の方々に お会いするたびに、「この新しい臨床研修制度をどう思いますか」という意見を 聞いております。この前の日曜日も和歌山へ行きまして、和歌山県立大学の方々 ともお話をいたしました。和歌山県は地域医療に対して、比較的派遣機能もき ちんと持っておられるし、相当頑張っておられるなという気がいたしました。  そういう中で、やはり広くいろいろなことを学ぶということは悪いことでは ありませんから、いま行われている新しい臨床研修制度では、いいところは残 していくと。ただ逆に、自分は小児科医になるとか、外科医になるというのが 最初から決まっている方々に対しては、ほかの科類に対して、どうしても熱心 さに欠けるというような問題も、皆さんからご指摘いただいたところです。い い理念はきちんと残した上で、いま言ったようなさまざまなご要望に対して、 どこまで弾力的に対応できるかということが、一つの問題であろうかと思って おります。  与党の中でも、先ほど塩谷大臣がおっしゃったように、一つの検討会が設け られております。私どもは「安心と希望の医療ビジョン」で、例えば医師の養 成数を今年は700人増やすという大きな政策転換をさせていただきました。そ れに対して、長期的にはそれで結構だろうけれども、短期的にどうするのかと いう声があります。今、さまざまな一次補正、二次補正についての審議をして おりますし、本予算でも、短期的な施策もたくさんのメニューを並べてありま す。そういう中で、この臨床研修制度にいくつかの問題があるのではないかと いう意見もありますが、かといって直ちに2年を1年にして、一気に8,000人 増えますから、これは大変素晴らしい案ですということにはならないだろうと 思います。ただ、そういう問題意識を持っておられる方々に対して、これはこ うですよ、それは誤解ですよというように、やはりきちんとお答えする必要が あると思うし、そういう方々がおっしゃっていることで当たっていることがあ れば、それはそれで対応しないといけないと思います。  本当にご熱心な議論をいただいておりまして、今日は大きな方向性について、 ある程度の取りまとめをいただいた上で、今後また細かく具体的な詰めをやっ ていきますので、今後ともそういう大きな方向性の下で、皆さん方のご協力を お願いしたいと思います。今日はたたき台の案が出ると思います。さらによく するために、どうぞ遠慮なくご意見をいただければと思っておりますので、よ ろしくお願いいたします。ありがとうございます。 ○高久座長 どうもありがとうございました。両大臣は公務のために、途中で ご退席になられます。ご了承いただきたいと思います。  それでは資料の確認を、事務局のほうからよろしくお願いします。 ○田原医師臨床研修推進室長 資料の確認の前に、報道の方については、ここ でカメラの方の退室をお願いいたします。まず、出欠状況について報告いたし ます。本日は全委員が出席です。  それでは資料の確認です。議事次第が1枚あって、名簿、座席表があります。 資料1として、「臨床研修制度等に関する意見の取りまとめ(案)」があります。 参考資料1として、嘉山委員提出の資料があります。参考資料2として、この 検討会のこれまでの主な意見があります。それでは座長、引き続きよろしくお 願いいたします。 ○高久座長 本日の議題は、医師臨床研修制度に関する議論の取りまとめの案 についてとなっています。議事の進め方ですが、はじめに取りまとめ案につい て事務局から説明をしてもらい、その後にこの案について、委員の方々から忌 憚のないご意見をお伺いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 では事務局のほうから、この案についての説明をしていただけますか。 ○田原医師臨床研修推進室長 それでは資料1、「臨床研修制度等に関する意見 の取りまとめ(案)」をご説明いたします。1頁ですが、この取りまとめ(案) については、これまでの検討会でのご議論を踏まえて、座長、副座長とご相談 して用意したものです。1の「はじめに」については、この検討会の開催と検討 の経緯を書いております。2の「臨床研修制度導入以降の状況」については、各 項目のさまざまなよい点について書いております。  また、今後対応していくべき点として、(1)では、病院の個性や指導上の工夫 を活かした特色ある研修を展開していく上で、研修プログラムの基準の見直し が求められているということ。(2)では、将来のキャリア等にかかわらず、多く の診療科での研修を一律に課すことなどで、研修医のモチベーションを損なっ たり、専門的な研修への円滑な接続への妨げとなる面があるということ。(3)で は、医学部教育改革の動向と臨床研修制度が十分に連動しておらず、双方の教 育研修内容の間で調整が必要となっているということ。(4)では、受け入れの指 導体制等に格差を生じており、臨床研修医の質の一層の向上が求められている ということ。(5)では、臨床研修制度の導入以降、大学病院の若手医師が実質的 に不足する状況となり、大学病院の医師派遣機能が低下して、地域における医 師不足問題が顕在化・加速するきっかけとなったということ。(6)では、研修医 の募集定員について、総数や地域別にほとんど調整が行われていないことから、 研修希望者の1.3倍を超える規模まで拡大し、研修医が都市部に集中する傾向が 続いているということ。(7)では、研修医の処遇内容に結果的に違いが生じてお り、研修制度の本来の趣旨に照らして、不適切に高額な処遇の事例が見られる ことを挙げております。  このような状況を踏まえて、3の「制度の見直しに当たっての基本的な考え方」 としては、医師としての人格のかん養、基本的な診療能力の習得という制度の 基本理念及びそれを具体化した到達目標を前提として、当面、以下の基本的な 考え方に立って制度を見直すべきであるとしております。具体的には(1)として、 研修医の将来のキャリア等への円滑な接続が図られ、各病院の個性や工夫を活 かした特色ある研修が可能となるよう、研修プログラムを弾力化する。(2)とし て、医学部教育改革の動向や専門医制度の検討の動向等を踏まえ、卒前・卒後 の一貫した医師養成を目指して、臨床研修の質の向上や学部教育のさらなる充 実を図る。(3)として、医師の地域偏在への対応、大学病院等の医師派遣養成機 能の強化、さらに研修の質の一層の向上等の観点から、研修医の募集定員や受 入病院のあり方を見直すというのが、基本的な考え方です。  これらの基本的な考え方に立ち、4の「臨床研修制度等を見直しの方向」とし て、(1)が「研修プログラムの弾力化」です。必修の診療科は内科6カ月以上、 救急3カ月以上にとどめること。(2)では、従来必修とされていた外科、麻酔科、 小児科、産婦人科、精神科については、新たに選択必修と位置づけ、各研修医 が1もしくは2の診療科を選択する。(3)では、こういった選択必修の診療科に ついては、受入病院のほうで各診療科のプログラムを必ず用意し、受け持ちの 入院患者さんについて指導できる体制を確保すること。(4)では、基本的な研修 を1年間として、2年目からは将来のキャリアに応じた診療科における研修を行 うことができるようにすること、研修を開始するときに将来のキャリアに応じ た診療科における研修を行った後に、内科、救急などの基本的な研修を行うこ とも可能とすること、また現在行われているような、いわゆるスーパーローテ ートの研修についても、実施できる取扱いとすること。次の○ですが、一定規 模以上の病院については、小児科、産科などの医師不足の診療科の医師になる ことを希望する研修医を対象とした研修プログラムを用意していただく、また、 研修2年目には、十分な指導体制の下で、地域医療研修を1カ月以上必修とす ること。  4頁の到達目標については、研修医の到達度を客観的に評価する仕組みを工夫 することと、今後の医学的知見・技術の進歩、疾病構造の変化、卒前教育や臨 床研修の改善状況等に対応しながら、適切に見直すシステムを構築すること。 こういったプログラムの弾力化に合わせて、研修の質を確保するため、指導体 制などについて受入病院を第三者的に評価する体制を構築するということです。 以上が研修プログラムの弾力化です。  (2)の「募集定員や受入病院のあり方の見直し」については、○の1番目とし て、研修希望者に見合った募集定員の総枠を設定することと、研修医の地理的 な適正配置を誘導するため、都道府県別の募集定員の上限を設定すること。○ の2番目として、各病院の募集定員は、過去の研修医の受入実績、医師派遣実 績も勘案した上で、その都道府県の募集定員の上限と、必要な調整を行って設 定する。その結果、募集定員を大幅に削減するような場合などは、一定期間の 経過措置を設け、地域の実情等を考慮した、きめ細かな対応に配慮します。次 の○が、研修プログラムの選択です。研修希望者が選択をする場合においては、 受入病院が公表している研修プログラムを、研修希望者が全国規模で選択でき るようにするもので、これは現在の取扱いと変わりません。  また、次の○にありますように、研修プログラムを管理する病院の基準を、 指導体制などで病院の水準規模の面で基準を強化すること、地域の中核病院を 中心とした臨床研修病院群の形成を推進すること。こういった基準の強化等の 結果、管理型臨床研修病院の指定取り消しの対象となる場合などについては、 一定期間の経過措置を設け、地域の実情等を考慮したキメ細かな対応に配慮す るものです。研修医の処遇については、この制度の趣旨を著しく逸脱するよう な不適切な事例については、その是正を誘導するための一定の措置を講じます。  (3)が、「関連する制度等の見直し」です。臨床実習を始める医学生の質を担保 するために、大学の共用試験の合格水準を標準化することと、全人的医療を進 めるための臨床実習の充実を図るなど、医学教育のカリキュラムの見直しを行 うこと、また医学部卒業生の地域定着も促進するため、医学部入学における地 域枠の一層の拡大を進めること。○の3番目として、臨床研修終了後の専門性 を高める研修、いわゆる高機能研修です。こういうものについては医師の診療 科偏在の是正を図る、あるいは医師のキャリアパスが明確となるように見直し ていく。次の○については、こういった卒前の臨床実習の充実の状況を踏まえ ながら、医学生の医行為の取扱いや国家試験の内容を見直す。その次の○です が、大学病院等による医師派遣機能を、開かれたシステムとして再構築するこ と。そして、こういった臨床研修制度等の見直しに伴い、研修指導体制の充実 など、優れた医師養成に必要な予算の拡充を図るということ。こういったこと を関連する制度等の見直しとして整理しております。  最後に、5の「おわりに」として、今回の見直しの結果、地域医療の確保や研 修医の診療能力にどのような効果、影響があったか、継続的に検証いたしまし て、5年後を目途に、改めて制度の見直しについて検討する必要があるというこ とを書いております。また、医師不足問題への対応は、臨床研修制度の見直し だけでは不十分で、医師養成の拡大など、関連する対策の一層の強化を強く望 むということも書いております。制度の見直しについてはこういったところで すが、最後に「病院関係者がこういった見直しの趣旨を踏まえて、臨床研修の 充実に取り組んで、国民の期待に応えることを期待する」ということで結んで おります。 ○高久座長 臨床研修の内容から募集のあり方まで、基本的な考え方をご説明 いただきました。この内容について、ご議論をいただきたいと思います。最初 はどの問題でもいいので、ご意見を言っていただければと思います。ご意見の ある方はご遠慮なくどうぞ。  3頁の4の(1)の「研修プログラムの弾力化」の中で、2番目の項目で新たに選 択必修という科目を設けて、そこから各研修医が1ないし2の診療科を選択す ることとなっています。これにはもちろん個人の問題、希望や指定病院の指導 体制の問題もあると思います。私は期間の問題はまた別にして、個人的には2 つぐらいのほうが良いのではないかと思っています。これについて、何かご意 見はおありでしょうか。 ○福井委員 3頁の選択必修の中から、各研修医が1ないし2ということですが、 これは最低1という意味でしょうか。それとも2を強く進めるという意味でし ょうか。もし最低1であれば、「最低1」という書き方をすべきで、非常に曖昧 な書き方だと思います。それが1つ目です。  2つ目が、この会議でも何度か指摘されましたが、状況認識として1頁の(2) に、1カ月単位の研修が続くことが、研修医のモチベーションを損なうというの があります。もし本当にこれが正しければ、3頁の「研修プログラムの弾力化」 で、地域医療研修を1カ月でもいいとするのは、論理矛盾です。選択必修の期 間が全く指定されていないことも、非常におかしいです。もし1頁の1カ月単 位の研修が続くことが、研修医のモチベーションを損なうというのが皆さんの 認識であれば、ここを例えば3カ月以上にするとか、そのようにしないとおか しい。  もう1つ、最後の5頁の○の上から3つ目です。「医師の診療科偏在の是正を 図り、医師のキャリアパスが明確となるように見直す」ということですが、こ のことについては、私がいちばん最初の会議で申し上げました。いろいろな診 療科の専門医の必要数を算定することから始めていただかないと、何が偏在な のかわからないと思います。どうにか「各領域の専門医の必要数の算定に基づ いて」という文言を、入れていただけないかと思います。 ○高久座長 地域医療実習については1カ月以上となっていますので、必ずし も1カ月とは限っていないと思います。 ○福井委員 しかし1カ月を許すということですよね。 ○高久座長 1カ月以上ということです。 ○大熊委員 4の(1)「研修プログラムの弾力化」について、意見を申し上げた いと思います。(1)の2つ目の○ですが、1か2の診療科というよりは、せめて2 つ以上とか。というのは、仮に2カ月ずつやったとしても6個は取れますし、3 カ月でも4個はできるわけです。1か2というのは、数として少なすぎると思い ます。小児科は救急の中でできると言われたりしますが、虐待されて飛び込ん で来る小児科の子供はともかく、一般的に救急の所に小児科は来ません。そう いうことで、少なくとも「2以上の」としたほうがいいと思います。小さい子が 「僕はお肉嫌い」とか「野菜いや」などと言っても、それを「よしよし」と言 ってしまったら、いい子には育たないわけです。もともと、なぜこの臨床研修 制度というのができたかという原点に戻れば、しっかりした土台があってこそ、 専門性が発揮できると思います。  3つ目の○に「受け持ちの入院患者さんについて指導できる体制」とあります が、例えば精神科などにおいては、無理に入院患者さんを持つ必要はなくて、 むしろ外来の患者さんを担当したほうが、後々の専門科に進んだときに役に立 つだろうと思います。入院患者さんというのは、専門コースに入ってからでも いいのではないかと思います。  最後の○の「研修2年目に十分な指導体制の下で」というのは、この間申し 上げたことを反映してくださってうれしいのですが、「地域の第一線の病院、診 療所において研修を行う地域医療研修」という言い方では曖昧だと思います。 「地域医療」と言うときに皆さんが思い浮かべているイメージは、非常に違っ ています。単に過疎地の小さな病院に行けば、それが地域医療かというと、そ うではない。  私はたまたま、高久座長がお書きになったものを発見しました。その中に、「在 宅医療というのは、外来と入院に続く第3の医療であって、それは外来や入院 と全く異なるものである、なぜかというと在宅医療は患者さん宅へ出かけて行 き、まさに患者さんの生活の場で実施される。しかも在宅医療は医師、看護師 のみならず、歯科医師、保健師、理学療法士、栄養士、ケアマネージャー、ホ ームヘルパーなど、さまざまな人が職種を越えて、多職種連携の下でチームケ アをする」とありました。これらは6年間の医学教育の中では、なかなか体験 できないことです。病院の中にいる患者さんと自宅にいる患者さんとは全く違 ったように見えるというのは、実際に病院から在宅に移った看護師も医師も、 皆さんそういうようにおっしゃいます。そういうわけで「地域の第一線の病院、 診療所」の前に、「在宅医療を担う第一線の病院、診療所において」というのを 入れていただいて、やはり2カ月以上にしていただきたいと思います。  この項目の次の頁に行きますと、「受入病院を第三者的に評価し、その経過を フィードバックする体制を構築する」というのがあります。それを誰にやって もらうかというのは、立場によって違うと思うのです。厚生労働省には折角、 地方厚生局というものがあって、そこには臨床研修専門官という方が置かれて いるくらいですから、この方たちをもっと評価してあげて、働きがいのある厚 生労働省に医師が入ると、医療の質の向上にこんなにも役立てるというように、 希望が持てるような役割を持たせてあげたらいいのではないかと思います。 ○高久座長 私はそんなに立派なことを書いた記憶はないのですが、引用して いただきまして、どうもありがとうございました。最後におっしゃった「受入 病院を第三者的に評価し、その結果をフィードバック」の評価のほうは、いま 岩崎先生の臨床研修評価機構なども候補になると考えています。 ○大熊委員 フィードバックというところがあったものですから、評価しっぱ なしではなくて、そこへ出向いてちゃんとフィードバックをする。岩崎先生の 所以外にもと思います。 ○永井委員 私自身、スーパーローテートで臨床研修をさせていただいて、非 常によかったと思います。いま、私の徳島県立中央病院の回っている研修医や スタッフに比べると、やはりスーパーローテートはとてもよかったという評価 をしております。ただし、そういうことで臨床研修制度の水準が上がったとい うのは、福井委員がエビデンスを見ていただいて、それも実感されていること ですが、この制度の光と影の部分で最初にご指摘されたように、私たちも県立 病院ですから、地域にある県立病院は医師不足という現状があります。その中 で誰のための改革か、何のための改革かというのは、やはりもう一度しっかり 認識しておかなくてはいけません。  そこで、確認しておきたいことが1つあります。3頁の上のほうの(3)の3行目 に、「大学病院等の医師派遣・養成機能の強化」というのが示されております。 それに関連して、5頁の(3)の「関連する制度等の見直し」の5つ目の○で、「大 学病院などによる医師派遣機能を、地域の関係者の意向が十分反映された開か れたシステムとして再構築する」という部分が今回ここに加わって、とてもよ かったと思っています。この「開かれたシステム」という言葉の意味合いとい うのは、いままで大学の中だけで決められてきた部分が大きい医師派遣システ ムを、地域の中の全体の最適化をいろいろ考えた上で、大学以外の行政や地域 の方々の意見を反映した上で決めていくということを、「開かれたシステム」と いうように理解してよろしいのでしょうか。 ○高久座長 私はまさしくそのとおりだと考えています。当然、地域の行政や 大学病院、医師会などの関係者が話し合う派遣システムが必要だと考えていま す。飯沼委員、日本医師会の提案もそうでしたね。 ○飯沼委員 そうです。 ○嘉山委員 今回、資料を出させていただいたのですが、卒後臨床研修制度の 前の日本の医師の教育は、そんなに悪かったのかということが検証されないで これが始まったわけです。私の参考資料の最初に書いてあるように、「日本国民 のためのより良い医学教育創設」というのは、これからつくらなければいけな いという意味です。そのときに我々が考えなければいけないのは、各病院の利 権やある団体組織の思惑ではなくて、患者さん中心の教育をしなければいけな いということです。今回の卒後研修制度も、ある理念でお作りになったので、 いま永井委員がおっしゃったように、スーパーローテートをやって非常によか ったところがあるというのは、確かに事実だと思います。  しかしながらその結果、大熊委員がおっしゃったように、日本の医師が全部 在宅医療をやるような制度、在宅医療しかできないような医師になってしまっ てもいいかというところがあったので、いろいろ問題が出てきていると思いま す。私の資料の12を見ていただきますと、従来は卒業してすぐにプライマリ・ ケアへも行ったのです。ですから永井委員のように、スーパーローテートを回 った先生もいたわけです。私の資料の24にありますように、米国の研修制度と いうのは、卒後すぐに専門医にマッチングして、基礎研究者に行ったり行政官 になったりというのが従来だったわけです。  今回のプライマリ・ケアのみ行う制度で何がいちばん問題かというと、プラ イマリ・ケアだけを全員に強制的にやってしまったために、科の偏在などが起 きたことです。先ほど、地方の医師の医療の崩壊が顕在化したというのがあり ましたが、もう1つは、ある1つの制度だけで全部を直すのは無理だというの がよくわかるように、この制度のために高度医療の崩壊と医学研究の崩壊が同 時に起きているわけです。どういうことかというと、14頁を見ていただくと分 かりますように、東京大学ですら基礎研究者が全く減少してしまっています。 もちろんプライマリ・ケアをどこかでやらなければいけないことは間違いない のですが、東京大学の基礎研究者は去年が1人、一昨年がゼロです。ある制度 を見た場合にある面からだけ見ていると、とんでもない結果になり、いま永井 委員がおっしゃったように影が出てしまったわけです。ですから、この検討会 ではその影を何とかしなければなりません。  プライマリ・ケアをやりながらやっていかなければいけないというのは、私 も大前提だと思います。大熊委員は「在宅医療」とおっしゃいますが、日本の 医師が全員、在宅医療だけしかできない医師になってしまっても困ります。や はり日本の医学部を卒業した8,000人、9,000人は世界の医学界、医療界、ある いは患者さんのためにならないと。研究をするのも、それは全部患者さんのた めです。そういうことができなければ駄目です。  16頁にあるのは『New England Journal of Medicine』で、どのぐらい採択 されているかということです。この『New England Journal of Medicine』に載 ると、明日から医療の内容が変わってしまうほどです。例えば、昔ですと頭の 手術をしていたのが、頭を手術しなくてもコイルで全部できてしまうから、そ ちらのほうに全部流れてしまうというようにコンセプトが変わるような、医療 に関しては非常に大きな影響力のある雑誌です。この制度が始まってから、2006 年は採択がゼロです。  ある一面から見ると、確かに福井委員がおっしゃるように、プライマリ・ケ アができるようになったというのは私も正しいと思います。それはできるよう になったでしょう、2年間もプライマリ・ケアしかしていないのですから。我々 が2年間脳外科を教えられれば、卒業生全員、日本の医師は脳外科ができるよ うになります。人間というのはもっと多面的にものを見ていかなければ、ある 制度がほかのものを全部壊してしまうということが、私は前提だと思います。  その後の高度医療についても、18頁から見ていただくと分かりますが、大学 が困難な症例の治療を行っているのです。我々は一度も口を開いたことはあり ませんが、大学以外の所ではずっと診断困難で、例えばがんであれば、すごく 大きくなってから我々の所へ送られてくるということが、これを見ても明らか なのです。難易度の高いものはどこでやっているかというと、ほとんどが大学 でやっているのです。先ほど大学への医師がというのがありましたが、それも 大学のエゴではないのです。確かに在宅医療の心優しい医師も必要ではありま すが、こういう制度を採ったために、そういう影が出たことを何とか直さなけ ればいけないということで、ここで修正をかけていくことが必要だと思います。  あと、委員がおっしゃった「医師の派遣」という言葉ですが、大学が派遣を したことはありません。派遣業でやると逮捕されますから、派遣では一度もお 金をもらっていません。あれは「適正配置」と言ってください。山形大学では 今から5年前に、行政の人も入って、県民も入って、関連病院の院長も入って、 医師の適正配置をやっています。ですから委員がおっしゃるようなことは、も う実際にやれるのです。ある病院のエゴのために、うちの病院へ何々の医師が ほしいということではなくて、本当に国民のために今回、ここで医学教育の新 しいものを。ある病院に医師がいなくても隣の病院に循環器の先生がいれば、 患者さんとしてはそこにかかればいいわけです。この検討会でベッド数を何と かとか、私の所にいろいろな団体からいっぱい来ています。医学教育の質の向 上と、いま患者さんが困っている科の偏在と、適正な医師の配置がないわけで すから、私はあえてすべての利権と思惑を考えないで、それを修正するような 卒後研修をこの検討会で何とかしなければならないと思います。  私のスライドで言いますと、このままでいくと日本の医学はどうなるかとい うと、もちろん難しいものは全くできなくなります。23にあるように、従来は 何とかお金もかけないで、日本の医師の生涯教育をやってきたわけです。在宅 が悪いと言っているわけではないのですが、このままでいくと常にスキルフル なもの、あるいは高度研究、医学研究がダウンヒルになってしまうので、ここ を防がなければならないと考えます。  これを今すぐにというのは無理です。塩谷文部科学大臣もいらっしゃいます ので、私の提案としては25にありますように、プライマリ・ケアを学部の中で やる。もう実際にやっている所もあります。いまの卒後臨床研修制度を強制的 にやるよりは、学部の中でやってしまえば26にあるように、欧米のようにプラ イマリ・ケアも学部教育の中に取り込めます。そうすれば卒後に科の偏在もな く、基礎研究者も出すことができますので、こういうような流れでこの検討会 の結論をまとめていただければと思います。  今日、両大臣がいらっしゃいますが、27、28以降に書いてありますように、 医学・医療を取り巻くことは国家の大問題です。与党としてもいろいろお考え でしょうけれども、医療費はビリから何番目です。これは3大新聞が一切書い てくれないので、何度も繰り返しますが、国内総生産に占める学校教育費が、 ビリから26位に上がってきました。3年ぐらい前までは29位だったのです。 GDPが下がったので比率で上がっただけで、うれしいことではなくて、教育費 も26位です。さらに高等教育費はもっと低いのです。これは与党にお願いとい うか、お国にお願いしなければならないのですが、やはりこの辺を考えないと、 こういうことは全部解決しません。  最後のほうで田原室長がおっしゃったことが、今回のあれに書いてあります が、奨学金にしても欧米と全く違うところは、日本はローンなのです。つまり 返さなければいけないということで、供与というものはないのです。そういう 教育環境の中で医師を教育していくわけですから、そういうことも全部勘案し ながらディスカッションしないと、ただ単にプライマリ・ケアをいかに獲得さ せるかだけでは、日本の将来の医学・医療が患者さんのためには全くならない と考えておりますので、高久座長にはその辺をご配慮願います。座長がご出身 の東京大学ですら、基礎研究者がいなくなっております。実は、いま論文を出 しているのは30代の研究者です。若い研究者は、この5年間でほとんど入って いません。  私は「産業」という言葉はあまり好きではないのですが、こういう社会福祉 が発展すれば雇用にもつながります。もっと言えば、舛添大臣がおっしゃった 安心と安全を国民が獲得できるようにすれば、内需の拡大にもつながると思い ますので、そういう総合的な視点からこの制度を見直していただければと思い ます。先ほど福井委員が、プライマリ・ケアだけに目をやって、内科6カ月、 救急3カ月で、「もう1、2科増やせ」とおっしゃいましたが、参考人の京都大 学の平出先生がおっしゃった、実際に1カ月ではモチベーションが上がらない というのは、自分が行く気のない科に1カ月回された場合は、モチベーション がないということです。行く気になっていけば、1カ月でも大丈夫です。ですか ら高久座長がおっしゃったように、地域医療に本当に興味があれば、1カ月でも 十分だと私は考えます。この辺は田原室長が作った内容でいいのではないかと 私は考えます。 ○西澤委員 嘉山委員の、国は教育にもっと金を出せという意見は大賛成です。 是非、お願いしたいと思っています。  それ以外の所で、データの読み方についてです。いま研究者数の推移を見て、 本当にびっくりしています。臨床研修は平成16年から始まったのですが、その 前辺りから減ってきているということになると、もっとほかの要因があるので はないか。すべてが初期臨床研修のせいだとするのは、ちょっと違うのではな いかと思います。これは厚生労働省のほう、あるいは文部科学省のほうで少し 分析していただければと思っております。  それと、臨床研修の2年間でプライマリ・ケアばかりやって、すべてプライ マリ・ケア医を育てようとしているように嘉山委員はおっしゃいますが、そう ではありません。やはり専門医になるためにも、そういう基礎的なことが必要 で、2年間やっていただきたいということで、その辺りは誤解なきようにと思っ ております。また、地方に行く医師を育てようということだけでもありません。 ただ、いまの専門医教育だけでは、どうしても地方に行く方が少ないし、専門 医教育を受けた方が地方に行こうと思っても、小さい病院ではなかなか自分の 専門的な知識だけではできないこともある。そういう辺りでできた制度だとい うことも、ご理解いただければと思います。  これは1つ、私の意見です。3頁ですが、いろいろなアンケート等を見ても、 2年間のプログラムでやっていることに関して、臨床研修病院や多くの病院団体 等々でも評価が結構高いということを踏まえますと、見直しをする場合でも4 の項目の○の5番目にある、「現在行われているような多くの診療科をローテー トする研修も、引き続き各病院の判断で実施できることとする」ようにプログ ラムを大幅に変えて、現在のプログラムも少し残すように見えるのですが、私 としてはこれを最初の○に持ってきて、原則的にはこうであるけれど、ほかの プログラムも認めるというように順序を変えていただいたほうが、流れとして はいいのではないかと思っています。 ○高久座長 大熊委員がおっしゃったように、名前は「地域医療研修」ですが、 今まではちゃんとやっている所と、保健所に行ったり適当にやっている所があ って、実際には地域医療研修の内容が問題だと思っていました。今度、矢崎先 生が医療研究会で地域医療研修をどういうようにするかというシンポジウムを 開かれるということを、プログラムで拝見いたしました。そのときに是非よく 議論していただいて、どういう有効な地域医療研修をやるべきか、また結果を 教えていただければと思います。よろしくお願いします。ほかにどなたかどう ぞ。 ○齋藤委員 2頁の「見直しに当たっての基本的な考え方」ですが、先ほど話題 に出た(3)の「医師の地域偏在への対応」云々についてです。今まで何度も議論 されているように、初期の臨床研修だけを見直しても、地域偏在はなくならな いわけです。やはりその後の後期研修も視野に入れないと、とても直らない。 というのは、現在でも2年間終わった後の後期研修、いわゆる専門研修は大都 市の一部の病院に集中しているからです。ここには幸い、全国医学部長・病院 長会議の重要なメンバーもおられますので、大学の間で調整をお願いしたい。 例えば後期研修で1つの大学が150人とか200人も採らないようにするとか、 そういうことをしないと、たとえ2年間地域の病院に張り付けても、2年が終わ ったら、すぐみんな東京へ行ってしまう、大阪へ行ってしまうということが起 こると具合が悪いのではないでしょうか。  その意味で今の所と、5頁の「関連する制度等の見直し」の中に、臨床研修後 の専門研修医が大都市に集中しすぎる傾向を是正する方策を考える、というこ とも入れていただいたほうが、この検討会の趣旨が医師不足にも対応するとい うことなので、まとめとしてより充実すると思います。 ○武藤委員 各論的で細かくなりますが、期間のことです。1年目は内科、救急 だけれども、両方とも6カ月以上、3カ月以上だと3カ月余ってしまうのです。 それから2年目も、少なくとも2つ選んで、その期間は何も書いていないとい うことになると、随分不明な部分ができてしまいます。ここら辺はもう少しき ちんとしたほうがいいのではないかというのが、私の1つの意見です。  もう1つは、ちょっと話が飛びますが、実は以前、規模の小さな病床数の少 ない病院は外すべきだという話が出ていました。3頁の下から2番目に、「一定 規模以上の病院は」となっていますが、この「一定規模以上」がそこに当たる のかどうかということが1つです。  もう1つは、小さくて全体をやるというのは確かに問題ですが、例えば小さ くても小児科だけに突出している、あるいは産科だけに突出している病院もあ るわけです。そういう特殊性を考えますと、単純に病床数だけでカットオフラ インを決めるのは問題があります。クオリティーを考慮したあれがあるという ことを、どこかにきちんと書いておいていただいたほうがよろしいのではない かと思います。 ○高久座長 内科のほうは「原則として1年目に実施する」と書いてあるので すが、ご意見の中には、1年目に全部半年来られたら内科も大変だから、2年目 に少しいたほうが、2年目の研修医が1年目の研修医を教えることができるので、 必ずしも全員が1年目とする必要もないのではないかというご意見もあったの で、「原則として」という言葉を入れさせていただいたと理解しております。 ○小川(彰)委員 折角「研修プログラムの弾力化」ということで、これが目 玉商品になっているわけですから、あまり細かい所、何カ月以上で何科はもっ と必修ということをまた事細かに決めれば、元と全く同じことになってしまい ます。そういう意味では今回、大変難しいディスカッションをここまでまとめ ていただいた座長と座長代理のお二人には、大変敬意を表したいと思います。  もう1点申し上げたいのは、先ほど齋藤委員から、全国医学部長・病院長会 議がもうちょっと頑張れという大変心強いご指摘をいただきまして、ありがと うございました。今、ある方々は幻想を持っておられます。それは2年間の臨 床研修制度に乗っかって2年間の研修をすれば、一生使いものになる知識と技 術と技能を持った医師がもう担保されるとお考えになっている方が、いらっし ゃるように私は思います。そうではなくて、1頁の2の(3)に、「医学部教育改革 の動向と臨床研修制度が十分に連動しておらず」ということが述べられており ます。それから2頁のいちばん下に、「医学部教育改革の動向や専門医制度の検 討の動向等を踏まえ、卒前・卒後の一貫した医師養成を目指して、さらなる充 実を図らなければならない」ということが述べられています。  そして5頁の「関連する制度等の見直し」が、非常に大事な所です。臨床実 習だけがそういうものではないという皆様の認識であれば、それは非常に正当 な認識だと思います。だとすれば、卒前と臨床実習と医学生涯教育を見越した、 全体的な医学生涯教育に立脚した制度等の見直しを根本的に図ることが、やは りこの中に盛られていないと片手落ちではないかと思います。是非「医学生涯 教育」という言葉を入れていただければいいのではないかと思っております。 よろしくお願いいたします。 ○能勢委員 ある程度大学を代表して来ているような雰囲気もありますので。 医師の養成については、とりあえず医学部の医学生の教育から始まっておりま す。臨床研修制度の各1年、2年の話だけを抽出してされると、どうも全体の流 れとして整合性が取れません。いま小川委員が言われたところの結論はそこに くるわけです。医学教育においては、あまりにも膨大になる教育の中身を、コ ア・カリキュラムである程度まとめました。これも大議論になりました。  臨床実習においては、それぞれの診療科の臨床を回るようなことが、ほとん どの大学で行われておりますが、この長さについても誰も統一したわけではあ りません。そして、その中でいろいろな議論がありました。皮膚科は全疾患を 診る科だから、皮膚科を知らない医師をつくるのはけしからんという議論まで 出てきました。しかし何科が大切かという議論をやっても結論を得るのは困難 です。ただコア・カリキュラムというものをつくって、これだけは医学教育の 中に入れようということで、ベースになる知識をここである程度全国的に一致 しました。それをCBTでやり、OSCEで確認いたしました。今はOSCEも社 団法人医療系大学間共用試験実施評価機構(CATO)来ていて、昔の面接試験と は雲泥の差の内容のものをやっております。当然、これで医師免許を与えても いいぐらいのレベルのものをやっているわけです。それを踏まえて、医師免許 を取った後にやる臨床研修と、それ以前にやる臨床実習との兼合いを考えなが らやっていくのが、いちばんいい医師を養成することになるでしょう。  それから医師の養成と、いわゆる適正配置についてです。例えば今、よく医 学研究の問題が出てきますが、昔から減ってきており、これをどうするかとい うのが根本的な問題です。要するに、医学部の大学院制度の問題です。これも 次期中期計画には見直しになるだろうと思っていますが、大学院の定員は軒並 み割れておりますので、この問題も触れておかなければいけません。  いずれにしても適正配置が、今までのような医局制度では駄目だということ であれば、今のような形でオープンにして、地域の方々にも参加していただい て、どのように派遣するかということになります。最後は個人の意思を無視し てでも命令で配置するかという議論が、やはり何となく流れているのですが、 これは今のいろいろな制度の中では無理だろうと思います。やはり人を選ぶだ ろう。そして医師だけが田舎に行かなければならないという雰囲気が出てくる のですが、我々地方大学におりますと、町全体が過疎ですから、過疎対策は過 疎地域への医師派遣をすればよいという考え方のみでは解決しません。ですか ら、そういう議論なのか、それとも今の日本の体制を維持するようなことで、 ちゃんとやるのかということはあるわけで、その中に在宅医療という限られた 医療の中身が入ります。  これは私は何回も言い続けているのですが、そういうことでフレームワーク として、この検討会は文部科学省と厚生労働省が一緒の場所に就いて、とりあ えず一貫して医師養成を考えるようになったことは大変うれしいことです。今 まではどうしても話が途切れるところがありました。ですから、このフレーム ワークで十分だと思います。しかし、一つひとつについて具体的に何らかの形 の審議会なり検討会を作りながら、この機会に充実していくことが大事だと思 います。ですから、今後はこれをどうやって充実するかという議論が、また別 の所でされることを期待しています。  1つだけ付け加えますが、大学による研修医の手当を、是非舛添大臣には是非 上げていただきますように。文部科学省もそうで、両方です。これがいま最大 のネックになっております。 ○高久座長 研修医もそうですが、指導医の待遇をという話は前に出ましたね。 ○能勢委員 それから指導医の質についても、この間むつ総合病院の先生がお いでになりましたが、指導医を誰が養成するのかということを考えなければい けません。大学は適正配置、派遣という言葉で呼んでおりますが、派遣をずっ とやってまいりました。ところが、いまの大学以外の指定されている研修病院 が、派遣機能を持っているかということが1つ課題です。大学がいなくなった ら、受け取るだけで派遣できないかという議論はあると思いますので、これに ついては、さらに検討していただきたい。自分の所で抱え込んでしまわないで、 どこで養成してもいいのです。大学病院でもいいし、研修指定病院でもいいの ですが、配置、派遣するということは、大から小へという考え方がなければい けないと思っております。どのようにしてやるかを述べると長くなりますので、 それぞれの所で検討していただければと思います。 ○高久座長 事務局に伺いますが、5頁のいちばん上の「関連する制度等の見直 し」の最初の行に「大学の共用試験の合格水準を標準化するとともに」とあり ますが、いまはだいぶ標準化してきました。初めのころは遠慮して各大学の配 慮に任せてきたのですが、このごろは共用試験に通らないと臨床実習に行かせ ないようになったので、標準化してきつつあると思います。これで見ると、ま だしていないような感じになっているものですから、検討してみてください。  ○新木医学教育課長 座長が言われるように、共用試験については、これに通 ることを前提にしておりますが、ここで書かれているのは共用試験のまだ合格 水準に若干ばらつきがあるというところを問題意識として書かれているという ことです。 ○嘉山委員 いまのことについてですが、CBTの合格水準を標準化するという ことは、アメリカのステップ2と同じにするということですか。そこは非常に 大きな問題ですよ。 ○新木医学教育課長 その具体的な進め方については、現在、大学が独自にど のように水準を決めるかやっております。また高久座長の共用試験機構とも十 分話をする必要があろうかと思っております。いずれにしろ、若干のばらつき をどう考えていくのか。これはもう少し修飾させるべきではないかというご意 見がありましたので、それをここで。ただ、それを国が認定するかどうか、米 国のような形にするかどうかは、まだその先の話だと思います。 ○嘉山委員 ただ、ここに文言として「標準化するとともに」と書き込まれる と、実質はステップ2を、今回、文部科学省と厚生労働省の両大臣がお出にな っているので、認めるということに等しいと解釈できるのです。ここはあまり リジッドに書かないほうがいいような気がします。この文言であれば、ステッ プ2の実質化ですよ。座学は終わって、倫理感も持たせて、患者さんを診察さ せるという国家資格と同じだと考えざるを得ないのですが、そういう解釈でい いですか。 ○新木医学教育課長 まだステップ2と同じようにするというところまで決め ているわけではありませんし、そこまでやれと、この検討会で提言をいただい ているとは思っておりません。そこの部分をこれから検討すべきだというご提 言だと思っております。 ○嘉山委員 ということは、もう少し文章をルーズにしないと、これは堅すぎ るのではないかと思います。  あと国家統制をあまりにもしてしまうと、舛添大臣が最初に言われたように、 教育の中に入り込むと、各大学は学生の質も違うし、一編の通達だけでボンと やってしまうと、いろいろなことが起きます。その辺を今までの我々の反省も 含めて、いまお話させていただいたのです。  地域定着を図るために地域の枠の一層の拡大を進めるというのも、地方の大 学で、うちは一切やっていないのです。やっていないにもかかわらず、いちば ん残っています。それは教育を一生懸命やっているからという自慢話みたいに 聞こえてしまうと申し訳ないのですが、そうではなくて、地域枠をやると、利 権になってしまうのです。  利権というのはどういうことかというと、受験生の利権でもあるし、それを 決定する人間の利権にもなり得るのです。あと学生の質は間違いなく下がりま す。これはエビデンスです。したがって、地域枠をやるというのはすごくイー ジーで、地域の医師の定着を促すためにはイージーなやり方に見えますが、後々 考えると、患者さんからは質の担保をしなかったということで、各地区に任せ るという表現でいいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。  その次の「診療科偏在の是正を図り」と書いてありますが、これは舛添ビジ ョンの中で、ドクターズフィーとか、インセンティブをこの中に入れて、科の 是正を修正するというのがありましたので、もう少し具体的に書いていただけ たらと思います。  その次の次の○の「大学病院等による医師派遣」とありますが、派遣と絶対 に書かないでください。適正配置なのです。派遣と書きますと、先生も逮捕さ れます。大学は派遣業をやっているわけではなく、適正配置をやってきたわけ で、うちなどは蔵王協議会というのを使って、関連病院長も入り、県民も入っ て、第三者が入って教授のエゴも聞かない、病院のエゴも聞かない。それで配 置していますから、医師配置機能ということで、あるいは循環型の教育の機能 の2つを大学は担っているわけですから、循環型の教育機能と医師適正配置と いうように文章を直していただければと思います。 ○高久座長 何かご意見ありますか。 ○矢崎委員 この研修制度が出来上がったときに、16,000名の身分保証と処遇 を保証するというのは、ものすごく大きな費用が必要であったのです。それが できたのは世論の力が大きかったと思います。ですから、研修プログラムの弾 力化、それのメイン見直しが、いま必要であることは十分承知していますが、 その質の担保というか説明責任が当然伴うと思います。  そういう意味で、4頁の○の2つ目に「受入病院を第三者的に評価し、その結 果をフィードバックする」というのは、絶対に説明責任の1つですし、もう1 つは到達目標というのがあります。この到達目標をしっかり評価するシステム がないと説明責任が果たせないのではないか。二本立で1つは指導医を含めた プログラムの評価をしっかりする。もう1つは個々の研修医をしっかり評価す るシステムです。これは大学と研修病院とが共同して、何かシステムを作るこ とで、プログラムの弾力化のときの説明責任が果たせるので、もう1つのほう もこの中に加えていただければ、大変ありがたいと思います。  ○高久座長 ここには「研修医の到達度等」という言葉が入っています。です から、第三者的な評価をする中には、指導体制と研修内容と研修の到達度も一 緒に評価してフィードバックと書いてあるのですが、これは一緒でもできない ことはないのではないでしょうか。 ○矢崎委員 おっしゃられるとおりで、その辺をちょっと。これを読みますと、 受入病院を第三者評価と。いま第三者評価はプログラムとか、そういう病院と しての機能を評価しているので、個々の研修医を評価するのは病院だと思いま すので、先生のおっしゃるように受入病院の中にそういうことがしっかり入っ ていればよろしいかと思います。 ○舛添厚生労働大臣 嘉山委員の地域枠での水準が確実に下がるということで、 実は日曜日に和歌山県立大学の状況を見てきたら、地域枠はあるのですが、ま さに下がらないために全国から募集する。和歌山県の子どもたちだけを対象に したら下がってしまいます。しかし、全国からその枠に来てもらうということ で、それは阻止しているということなので、どういう工夫をするかということ にもかかわると思います。そういう報告を受けましたので1例として。 ○嘉山委員 和歌山の件は私も存じていまして、そのようだったらいいのです が、その県からというと、絶対下がってしまうので、その辺は文章を変えてい ただければいいと思います。 ○能勢委員 関連ですが、地域枠については、国大協からもお願いして、もっ と増やしてくれということで上げております。これは大学とか地域によっても 違うでしょうが、地元の行政が、自分たちの医療をどれだけ確保できるかとい うことで一生懸命自分の所で予算化して自活していこうとしています。そのた めに大学の力を借りようということで地域枠を作っております。これが定員内 か定員外かという議論はありましたが、奨学金も与えるものと与えないものと か、いろいろなものがありますし、嘉山委員が言われた和歌山の例もあります から、どんな形の地域枠でもいいと思います。これからだと6年先になります が、それでもなおかつ地域に定着する方法を、将来を見込んでやろうという制 度ですから、是非続けていただきたいと思います。レベルについては、医師国 家試験をパスしなければいけませんから、これで確保できると思っております ので、よろしくお願いします。 ○吉村委員 最初に大熊委員が、選択必修を2科目以上と言われましたが、初 期研修というのは医師の養成の1つのプロセスですので、これだけで何かを完 成しようとすると、なかなか難しいと思います。いまお話がありましたように、 卒前の実習や生涯研修を通していろいろなことを研修していかなければいけな いのではないかと思います。  実は免許をもらって医師になったときがいちばんモチベーションが高いわけ です。ようやく医師免許を取った、こういう医師になりたいというときに、2年 間グルグル回っているうちにモチベーションが落ちてしまうというのは、非常 に大きな問題だと思います。ですから、なるべく必修部分を少なくして、モチ ベーションに応じてキャリアに応じた弾力的なプログラムにしましょうという のが、今回の見直しの1つの趣旨ではないかと思います。あまりこれを増やし てしまうと、あれも入れる、これも入れるということになって収拾がつかなく なってしまうのではないかと思います。  それから内科が必修に入っていますが、これは臓器別の内科ではなくて、全 身を診たり病歴をとったり、点滴をしたり、採血したりとかということがある と思いますが、そういう基本的な診療の技能を付ける。それから救急も、当然 小児を含めた一次救急が中心であろう。二次の例えば脳卒中とか、心筋梗塞の 患者さんが来たときに、処理をして、どこに送るかということがわかる。もう1 つは、地域医療研修というのはコモンディジーズに対応できるような医師を作 りたいという、その3つぐらいは是非やろうと。そのほかはキャリアに応じて やっていこうということではないかと思います。  施設のことですが、4頁に規模のことが書いてあります。もちろん私は初期に 続いて後期の研修が一貫してできる施設でないといけないと思います。という のは、都心部の結構大きな病院でも、初期はたくさん採っておいて、3年目は3 人とか、5人とか非常に絞ってしまうことがありますが、3年目に放り出されて しまったような医師が、何か中途半端な、専門医でもないし、総合医でもない しということが増えてくることが非常に心配されます。ですから、一貫して後 期研修のできる施設ということになりますと、一定の規模の、指導医もいて、 機器・設備も整っていて、患者さんも多いということが必要だと思います。  ただ、総合医の養成ということになりますと、必ずしもそんなに大病院では なくて、200とか、300でしっかりと後期の総合医のプログラムを持っている所 などが落ちないように、是非ご配慮いただきたいと思います。  もう1つは、大学の研修医が減ったのですが、研修医だけを見ていると、毎 年研修医ですが、それが3年なり5年経つと、それぞれスタッフになって、大 学をまた支えてくれるわけです。そこが非常に枯渇しています。それに伴って 中堅の所もだんだん辞めていったり、非常に危機に陥っていますから、大学の 研修医を充実させることも、日本の医療の根幹を支えるためには必要ではない かと思っております。 ○大熊委員 何人かの方が名前を出してくださったので、そのことだけ申し上 げたいと思います。この2年間だけで一人前の医師になれるという誤解がある がと小川先生が言われましたが、そうではなくて、最初から脳外科をやったと すると、鉛筆みたいなものでズーッとやって、非常にグラグラしてしまうわけ ですから、ここの土台の2年間をしっかりやると、あとの脳外科医でも眼科医 でも、そのときにいい医師になれるのだということを申し上げております。  在宅というのはコモンディジーズだとおっしゃいましたが、先ほどの高久座 長の論文を引用して申し上げたように、コモンディジーズのことではなくて、 先生方は古い教育を受けておられるから経験がないと思いますが、病院にやっ て来る患者さんは、医師の前で裸になって恐縮しているわけです。それぞれの 家に行くと、いろいろな生活背景が見えてきて、そこにお客さんとして医師が 行く、それが在宅医療を学ぶということのいちばん大事なことで、そこで地域 医療というホヤホヤとした表現ではなくて、在宅にいる患者さんの所へ出向く という意味を込めてほしいと申し上げました。  それから吉村委員が言われたコモンディジーズから言いますと、初期の研修 においては、先ほど武藤委員が言われたように、大規模な病院ではなく、むし ろ小規模な病院のほうが向いていたりするわけです。あまり大きいと科が細か く分かれていますので、4頁の研修の質の向上のために規模の面で基準を強化す るというときに、ぐぐれも大規模が良しとしないようにお願いしたいと思いま す。  たびたび大学病院等の派遣とか、そういうことが出てくるのですが、これは 配置と言っても配置するというのは強制的に置くことを言うわけで、未だに派 遣業が頭におありなのかなと。ときどき新聞などには、派遣業者、医療に恐ろ しいお金のやり取りのことなどが明るみに出たりするわけです。それは横に置 いておいて、育てた人を外へ出していくという機能は大学病院等というのでは なくて、あらゆる所に大学病院等として、研修病院を下に置いてその他のよう にしています。大学病院及び研修病院というように、4頁にも、度々「大学病院 等」というのが出てきますが、これは「大学病院、ならびに研修病院」と書き 改めていただきたいと思います。 ○高久座長 大臣がご退席になられますので、一言お願いいたします。 ○舛添厚生労働大臣 残念ながら、そろそろ行かなければいけません。塩谷大 臣が先に出られましたので、最終的には両大臣間のいろいろな意見調整もあり ますが、とりあえず今までの感想めいたことと、今後のことについて申し上げ て退室したいと思います。  私が大学で教えているときは、教養課程に本籍がありましたが、東大法学部 の大学院まで見ていて、また教養学部の国際関係も見ていたときに、今日のよ うな議論を聞いていると、教養課程というのは、いいのか悪いのかというのを 聞いているような、ちょっと違うのですがそういう感じがしました。つまり、 そんな教養課程などは最初からロースクール、法学部でやったほうがいいので はないかと思いながら、しかし、ローヤーになるにしても、歴史を知る、自然 科学も知ることだって役立つかもしれないという議論と若干かかわるかなと思 いながら、プライマリー・ケアーについては、なかなか結論が出にくいと思い ました。  能勢学長がおっしゃったと思いますが、折角両省でやっているので、今回は 研修制度の見直しということですが、医師をどう育てるかという大きな理念の 中に位置づけるということを、高久座長、是非どこかで謳っていただきたい。 なぜ両大臣がいるかということで、今後とも、これをきっかけとして、まさに 卒前・卒後を2つの省でバラバラでやっているということでは、国民のために はならないので、連携を今後とも両省でさらに強めていきたいと思います。例 えば、介護ロボットなどになると、経済産業省と一緒にやっています。経済産 業省と薬などでは一緒にやらなけはいけないこともあるので、政府全体でやる ためには、省庁の壁をなくしたいと思いますので、そういう思いを申し上げて おきたいと思います。  それから皆さん方のご意見を聞いていますと、例えば、選択肢は1個がいい のか、2つでなければいけないのか、どちらが正しいのかというのは、若干私も 判断しかねるし、学生の立場によっても違うと思います。大きな方向づけを出 して、例えば、これについてはさらに議論が必要だという形で残していただい て、それは今後の具体化作業の中で詰めていって、学生の意見もあると思いま す。そういう形でおやりになったらいかがかということと、1つの方向というか、 がんじがらめにするのではなく、例えば、こういう意見もありました、こうい う意見もありました、という裁判の判決でいうと、少数意見的なものもフット ノート的に書くのも1つかなという感じがしています。  最大の問題は政府、国家が地域枠の問題のように、地方自治体もそうですが、 例えばある意味で枠を決める、悪い言葉でいえば統制する。どこまでそれが許 されるのか、許されるとすると、どういう理念とどういう説得があるのかとい うことがあるのだろうと思います。それは日本国憲法のことを言えば、職業選 択の自由もあるし、住居を選ぶ自由もあります。医師になろうが、鳥取が嫌で 東京に住むという人を、鳥取の方がとどめるというのは、憲法上は違反するの ですが、いまの医療崩壊と言われる現状を見たときに、公共の福祉みたいな観 点から、こういうところまではいいだろうと。そうすると、例えば地域枠など の問題はコンペティションが必ずそこに入ってくる。例えば地域のタックスペ イヤーが出す奨学金なら、地域に還元するということで1つの論理が成り立つ わけです。  私も統制というのは自由な社会でできるだけ避けたいという思いはあります が、どこまでが国民が納得できるか。これは最終的には国民のコンセンサスが 必要なので、そういう非常に難しい問題もありますが、いまの私の感想めいた ことを、できればすべてクリアできるような形のおまとめをいただけるとあり がたいのです。これは高望みかもしれません。あとは高久座長以下、皆さん方 にお任せします。  ただ、今回こういう形で皆さん方にご議論いただいたことで、メディアの皆 さん方もきちんと報道してくださったりしていることもあって、国民がこうい う問題に対する関心を持たれている。一定以上の方だと研修という話になると 「白い巨塔」の話が今でも出てきます。そうすると、国民に医師の養成がいか に大切かということは墨東病院の話、救急医療の話もあるので、かなり広まっ てきていると思いますから、最後は国民的な議論につなげればということを希 望しまして、途中で退席しますが、あとは座長、よろしくお願いします。どう か皆さん、よろしくお願いします。                (舛添厚生労働大臣退室) ○高久座長 それでは、まだ時間がありますので、どなたかご意見をお願いし ます。 ○辻本委員 患者の立場として見直しのまとめについて少し触れさせていただ くことと、私の理解を助けていただきたくて質問をします。  1つは、基本理念も到達目標も変えないまま、それを前提として今後に備えて いくということ、1年だけではなく、2年ということが確保できたということは、 ありがたいなと思って読んでいます。もっと言えば、研修医の受入病院の病院 ごとの個性、地域性に則ったプログラムがいま以上に柔軟になっていけるので はないかと、患者としても期待が持てる方向も、とてもありがたいと思いまし た。また病床数で枠を決めるのではない、症例数というように謳っていただい ているというところで、私なりの納得をさせていただいて読んでいます。  ところで、4頁の(2)の4つ目の項目の中で「大学病院など地域の中核病院を 中心とした臨床研修病院群の形成を推進する。その結果、管理型臨床研修病院 の指定取り消しの対象となる場合などについて」と書いてあるのは、どのよう に理解すればいいのか、どなたか分かるように教えていただきたいと思います。 ○田原医師臨床研修推進室長 研修プログラムを管理する病院について、さま ざまな基準を強化した場合に、管理型の臨床研修病院の基準を満たさなくなっ てしまうということが、もしあった場合に、病床数という話は出ておりません でしたが、例えば、500床以上でなければ臨床研修病院ではないというルールを 作った場合に、それ以下の場合でも、その地域の実情や研修医の受入れの実績 などを見て、一定の経過措置を設けてはどうだろうかという考え方です。 ○辻本委員 ということは、今後そこが500床以下は受入病院ではないという 方向に、議論を進めていく可能性もありますよ、というように理解すべきなの でしょうか。  ○田原医師臨床研修推進室長 病床数について、例を出したのは適当でなかっ たかと思いますが、わかりやすい例として申し上げたのです。症例数等あるい は指導体制等などでそういう基準を設けた場合に、その基準を満たさなくなっ てしまったときに、研修医が2名とか、3名いる。過去もずっとそういう実績が ある場合に、すぐさま取り消しをするのか、それとも何年間か経過措置を設け て取消しをするという形にするのか、そのための項目です。 ○辻本委員 くどいようですが、以前、福井委員のご意見で、ベッド数での制 限ということを反対なさったあとに、中小の病院のほうが研修医の満足度が高 いという具体的なご意見がありました。そうすると、患者の立場で何を期待で きるか、受入病院のさらなる努力、もっと地域性とか、その病院の個性的なプ ログラムが期待できると受け止めている中で、いまのお話が私の中で結び付か ないのですが。 ○高久座長 ベッド数ではなくて、むしろプログラムの内容でしょう。特にプ ログラムの内容によっては研修医が来なくなるとか。病院の規模の問題ではな くて、あくまでもプログラムの問題だと私は理解しています。 ○嘉山委員 矢崎委員が先ほど卒後研修制度というのは、国民が財政的なもの も含めて、かなり後押ししたということだったのですが、それは基本的には、 当時、医療事故がかなり報道されていて、先生もそのときの委員でした。患者 さん取違い事件などがあって、そのときに日本の医学教育がちゃんとしていな いのではないかということで、特にプライマリー・ケアがという話だったので す。  私の資料の5頁に書いてありますが、これはプライマリー・ケアができなか ったから起きた医療事故ではなくて、かえって専門医の事故なのです。ですか ら、あのときに風が吹いてしまったので、日本人がよく戦前からやる、空気で 日本の医学教育はまずいということで、一気にこの制度を作ってしまったので はないかと未だに思っています。それはあまりにも自虐的になりすぎているの ではないかと思います。  確かにプライマリー・ケアは必要なので、これはいいきっかけになったと思 いますが、大学も含めて反省材料がたくさん出てきました。ただし、プライマ リー・ケアができれば医療事故がなくなるわけではないということは重ねてお 話しておきたいと思います。  11ですが、辻本先生も小さな病院の医師のほうが満足度が高いと。これは本 人の自己満足で、患者さんの自己満足ではないのです。その辺を間違えてはい けません。11にあるように500ベッド以下の1,807人はほとんどが自己評価で す。EPOCと言って、公的なUMINに出して、若い研修医がどこまでできるよ うになったかという外部評価を、していない人たちが1,807人います。例えば、 非常にイージーな所に行って、「僕はすごく満足だよ」と言っているのは、患者 さんのためのいい教育制度ではなく、かえって研修医が「いやあ、大変だ」と いうほうがいい教育内容かもしれません。それは当然のことです。  齋藤委員が前に「小さな病院でもすごいのがいるよ」と言われたのですが、 標準的にはいません。たまにいるだけです。ですから、そこは間違ってはいけ ません。1,807人は自己評価ですから、そこをマスメディアの方々も誤解しない でください。例えば、大熊委員の得意技で、私たちを叩くときは「医者が勝手 に満足してやっているじゃないか」と言ったとか、言わないとかと言っている のと同じことを、若い人だと許してしまって、我々大学人は許さないという非 常に論理的な破綻があることを、いまディスカッションしているのだというこ とを認識していただきたいと思います。  私が言いたいことは、ベッド数だけで全部を決めるわけではないが、ベッド 数が少ない所には指導をする医師の数も少ないわけで、それこそすべてのいろ いろなジェネラルのコモンディジーズが見られるなどという人、全員がいるわ けではない。医師の人数が少ないわけですから、この辺はある程度考慮しない と、少ベッドの病院は全部駄目だというつもりは全くありませんが、熱意があ って、非常に能力があって、診断力もある、臨床力もあるという先生がおられ る病院もあると思いますから、タスキ掛けでやっていただければいいわけです が、基本的には制度は標準を見て作らなければなりませんから、特別にこうい う病院にいい人がいるということで制度を作ってはいけません。それは制度で はなく、でたらめです。これはベッド数、症例数でもいいのですが、あるいは 矢崎委員が言われたような指導者の数でも構いませんが、ある程度の基準は設 けないと国民にとっての医学教育の質は担保できないのではないかと思います。 その辺は高久座長、よろしくお願いします。 ○福井委員 質問ですが、先生のスライドの11枚目で病床数の少ない所の研修 医は自己評価で、病床数の多い所は自己評価ではないというデータがあるので しょうか。 ○嘉山委員 あります。私が最初のデータで出ました。 ○福井委員 自己評価ではないというのはどのようにするのでしょうか。 ○嘉山委員 自分でできた、できないを評価している民間の評価票を使ってい て、EPOCを使っていないということです。データを出ましたからご覧になっ てください。 ○福井委員 大多数の病院ではEPOCのプリントアウトを使うなり、到達目標 の項目を同じように使って評価していますので、それは間違っていると思いま す。 ○嘉山委員 私は前にも出していますから、見ていただければと思います。 ○高久座長 その議論はまたあとで。私からの提案ですが、3頁の研修プログラ ムの弾力化で、福井委員からは選択必修は1と言われたのですが、大熊委員か らは2以上と言われました。私の所にもいろいろなことを言ってこられる専門 家の先生もおられて、私としては2にしていただければありがたいです。期限 は必ずしも3カ月でなくてもよくて、熱心にやれば選択は十分目標に到達がで きると思います。先ほど大臣はここをはっきり議論しておけと言われたのです が、できれば2にしていただいたけるとありがたいです。 ○福井委員 私は決して1にしてくださいという意味で言ったのではなく、1 なのか2なのかを明確にしたほうがいいのではないかと申し上げました。 ○能勢委員 これ「以上」を付けないのですか。 ○高久座長 自由に選択はできるのです。「以上」よいかな。 ○能勢委員 要するに、上の外科、麻酔科にこだわるのですか。 ○高久座長 これらの科は今まで選択ではなくて必修だったものですから、そ れを選択にしたから、2つぐらいはないとと思っただけです。あまり多くなると 選択必修の意味がなくなってくるから、やはり自由度を考えると2つぐらいが。 あとは自分で必要と思えばいくらでも選べると思ったからです。 ○嘉山委員 それに関連してですが、外科と書いてあるときに、一般消化器外 科のことを指しているのですか。 ○高久座長 一般外科でしょうね。 ○嘉山委員 内科と同じように臓器別、腎臓内科、肝臓内科、血液内科となっ てしまうと、内科ではなくて、臓器ですよね。ですから、一般内科というのは、 一般的には消化器内科を指すことが多いので、そうなると消化器だけしか診ら れないことになってしまうのです。厚生労働省はずっと消化器外科だけだと制 限してきましたよね。最近はちょっと弾力化していただけたのですが、中身は 外科系であればいいわけですね。 ○田原医師臨床研修推進室長 一般的な消化器外科だと思っておりますが、外 科を選択して研修をしていただく。そのうちの選択する1つの診療科として外 科を設けているという意味で、外科が整形外科あるいは脳外科だということは、 病院のほうで決めていただくことだと思います。一般的には消化器外科だと考 えています。 ○武藤委員 外科学会が中心になって専門医制度ができています。それは二階 建方式と言って、一応一般外科が2年あって、その上に消化器外科とか心臓外 科とかの専門を選ぶことになっています。結局、症例としては消化器外科がい ちばん多いので、一般外科といっても消化器外科のように見えますが、一応ロ ーテーションしてほかの所も回る。その中には脳外科は入っていません。脳外 科は神経科のほうに入っています。一応そういう形になっているので、それに 則ってやればいいのではないかと思います。 ○嘉山委員 しつこいのですが、私の21を見てもらいたいのです。つまり、こ れは現場からの声で、私は脳外科なので自分のことは本当は言いたくなくて、 ずっと黙っていたのですが、現場が混乱するといけないので、お話させていた だきます。  総務省消防庁の平成20年度の救急救助の現況の脳疾患(脳卒中)は、重症の 所で見るといちばん多いのです。つまり、もちろん外科系としては消化器も多 いのですが、実際に最初に初期研修で行って、救急当直をした場合に、救急車 で運ばれてくる患者さんで、いちばん多いのは脳卒中です。日本の場合は脳卒 中内科と脳卒中外科が下がっていますが、緊急性があるのは手術になります。 ですから、ここは前の制度のときにも田原さんにも言っていたと思うので、あ まりリジッドにしてほしくないのです。消化器外科だけなら消化外科としてし まうと、現場が混乱するので、各病院で決めていただいて結構だという外口局 長の案でやったほうがいいのではないかと思います。 ○高久座長 本来ならば内科も総合内科でやるべきなのです。総合外科的な所 があれば、そこがいちばん良いと思います。  これは細かいことですが、嘉山委員が地域枠の一層の拡大というのに反対な らば、地域枠の有効な活用というのは。 ○徳永高等教育局長 それは地域枠などの取組ということでよろしいでしょう か。 ○永井委員 いま嘉山委員がご指摘のとおり、うちも救命救急センターがあり ますが、脳外科の先生に非常に活躍していただいています。ですから、今回の 趣旨は救急を3カ月以上という形で、そこで脳卒中の初動に関する部分を、是 非、救急のオン・ザ・ジョブで勉強してほしいという趣旨だろうと思いますの で、そこに脳外科の専門の先生が救急に積極的にかかわりながら、若手を指導 していただけたらと私は理解しています。  嘉山先生がおっしゃられたように、これが何のための制度の改革かというと、 間違いなく国民の理解を得るための制度の改革ということであれば、余計に病 床数にこだわるのではなく、むしろ研修医の先ほど言われた評価、ちゃんとし た研修ができたか、ちゃんとした研修プログラムを作って、それを日々研修を しているかという研修病院の評価をしっかりして、それをオープンにすること によって説明制責任に代わるのではないか。ですから、初めに研修医のための 自己満足で満足度が高いのではなく、国民が満足度が高い医師の育成であれば、 その到達目標ですし、その研修病院の要綱なので、そこをちゃんと評価して説 明責任を果たしていくということでいかがかと思います。そこは確かにいま足 りない部分だろうと思いますので、是非充実させていただければと思っていま す。 ○吉村委員 いまのことにも関連するのですが、初期研修だけの評価にとどま らないで、後期の専門研修のプログラムにつながるような施設を、是非確保し てほしいと思っています。  もう1つは、3頁のいちばん下に「地域の第一線の病院、診療所」と書いてあ るのですが、診療所というのは開業の先生のことでしょうか。 ○高久座長 そうだと思います。 ○吉村委員 では、どちらでもいいと。 ○高久座長 はい。 ○能勢委員 ちょっと細かな話になってきたのですが、大学の診療科のあり方 について議論するときに、この案にある内科というのも、総合内科という診療 科を作るかどうかで、何のことだということで議論が始まるのです。ほとんど いまの大学の内科というのは、「臓器」という2文字が上に付いています。その ことを勘案しながら、それぞれの病院がやればいい。これは決めてもとても無 理だなと。外科もそうだろうと思います。 ○高久座長 それは勘案しながら、各病院でやらないと現状ではおっしゃとお り、無理だと思います。 ○能勢委員 内科も外科も結局はそういうことですね。 ○武藤委員 前回は、私は救急を非常に強調して、3カ月ではなく、6カ月ぐら いと言いましたら、高久座長に「もちますかね」と言われて引っ込めたのです が、救急がいちばん重要だという今も意見は変えるつもりはありません。  ただ、日本の医療あるいは医学教育は根本的に救急医療に対してそっぽを向 いてきたという歴史があって、いまいろいろな所で発展してきていますが、む しろ一般病院のほうが、優れた機能を持っています。救急がちゃんとしていれ ば、そこに若い医師を放りこめばいろいろなことを覚えるのです。それは決し て楽な状況ではありません。つらくてたまらないからこんなのはやめたいと。 しかし、実際には勉強になるのです。  『ER』というテレビドラマがあります。あれはドラマになりすぎてしまって いますが、救急の現場はああいうので臨床的には大変勉強になるのです。現状 では救急をやると言っても、きちんとできる場所と、そうではない場所があり ます。しかし、もっと救急をきちんとやることが非常に重要なので、大学病院 の卒前教育と、卒後教育の中で救急にもっときちんと手当をすることが重要で す。一般の方が安心して医療にかかりたいというのは、実は救急の場合が多い す。そこを理解していただいて、今後の宿題として、5年後に救急病院で研修の 支点になるものが増えたかどうかを検証していただきたいし、いまのに倍にな れば、もっと教育の実が上がると思います。 ○高久座長 大学病院は、長い間救命救急センターになれなかった。ですから、 武藤委員と全く逆のことをやってきたことになると思います。 ○福井委員 1頁の真ん中付近2の「臨床研修制度導入以降の状況」のすぐ下の 行に「医師としての人格のかん養と基本的な診療能力の修得を」という言葉が あります。同じことが2頁の下から8行目にもありますが、ここは基本的な診 療能力ではなく、「幅広い基本的な診療能力」としていただけないかと思います。  と言いますのは、この新しい制度にするときのディスカッションが始まった ころ、いろいろな事例が出されて、卒後早い時期から幅の狭い臨床しかやって ないドクターのこういう事例があった、ああいう事例があったという話があり ました。例えば、2年目に呼吸器の症状を訴えてある病院に行ったら、自分は血 液の勉強だけしかやっていないからと言って断られたというような事例があっ たために「幅広い基本的な診療能力を」という言葉が入ったという経緯があり ますので、できるだけそのようにお願いしたいと思います。 ○高久座長 この前のときには、少し延びるかもしれないと申し上げたのです が、私もだいぶ疲れてまいりまして、そろそろ議論を終わらせていただきたい と思います。今日はいろいろご議論をいただきましたので、それをまとめて、 皆さん方にお送りして、ご意見をいただいてという形でとりまとめたいと思い ます。実際の細かいことはこれからあとの問題になると思いますので、とりま とめの線に沿ったもの、しかも今日のご意見を入れたものを作ってお送りいた しますので、本日はこのぐらいで終わらせていただければと思います。 ○田原医師臨床研修推進室長 大きな方向性については、細かい表現あるいは 追加することはあるかもしれませんが、大体大きな方向性についてはこの案で よろしいかということだけを確認をさせていただいて、あと細かい表現、ある いはいただいたご意見については反映して、座長と相談した上で、各委員にご 相談して、最終的にとりまめるという手続でよろしいでしょうか。 ○高久座長 そういうことでよろしいでしょうか。どうもありがとうございま した。 ○田原医師臨床研修推進室長 どうもありがとうございました。 照会先:厚生労働省医政局医事課                             医師臨床研修推進室                         内線4123 内線2567                       (代表)03−5253−1111                        (直通)03−3595−2275