09/02/10 第6回今後の労働関係法制度をめぐる教育の在り方に関する研究会議事録 2月27日時点 (関係者確認後)      第6回今後の労働関係法制度をめぐる教育の在り方に関する研究会                     日時 平成21年2月10日(火)                        15:00〜                     場所 厚生労働省共用第6会議室(2階) ○佐藤座長 ただいまから、第6回今後の労働関係法制度をめぐる教育の在り方に関す る研究会を始めます。お忙しいところご出席いただき、ありがとうございます。昨年8 月に開催して以来、半年にわたってご議論いただいた研究会ですが、本日取りまとめが できればと思っています。なお、本日は両角委員と文部科学省の担当の方からご欠席と いう連絡をいただいております。前回に引き続き、実態調査を担当された株式会社イン テージの土屋薫さんに、開催要綱の規定に基づいてご出席いただいております。まずは 事務局から配付資料の確認と補足説明をお願いいたします。 ○田平室長補佐 本日の資料ですが、資料1、資料2-1、資料2-2という3種類の資料 があります。資料1は、「労働関係法制度の知識の理解状況に関する調査報告書(案)」 です。前回の研究会で提示させていただいた資料にいただいたご意見を踏まえ修正を行 っております。修正箇所についてはこの後、土屋さんから補足していただきたいと考え ております。  資料2-1は、本研究会の報告書案となっております。これまでの議論を踏まえ事務局 にて作成しております。これについては後ほどご説明させていただきますので、お気付 きの点等がございましたら、意見交換の場でご議論いただければと考えております。  資料2-2は、報告書に添付予定の参考資料集となっております。参考資料集のうち、 これまでの研究会で既に提出済みの資料である参考資料集の資料1-5、資料2-1、資料 2-2と本日の研究会で資料1として案を配付している調査報告書、これは参考資料集の 資料3にしたいと考えておりますが、これらについては省略させていただいております。 ○佐藤座長 事務局からご紹介がありましたように、資料1は修正していただいている ということですので、インテージの土屋さんからその点をご説明いただければと思いま す。 ○土屋 前回から加筆した所を順番にご説明させていただきます。5頁から「回答者の 属性」ということで、基本的な情報ではありますが、一通りの属性を「学生・生徒編」 および「社会人編」というように掲載しております。なお、冒頭にお断りさせていただ きますが、前回までは「学生編」という言い方でご説明しておりましたが、「学生・生徒 編」という表現のほうが、より適切だろうというご指摘をいただきましたので、基本的 に該当箇所は「学生・生徒編」ということに修正しております。ただグラフ内の表記は、 少し文字が多くなるという点もありましたので、グラフ内は「学生編」という表記で統 一させていただいております。  5頁から11頁に、属性について記載しております。お時間のあるときにお目通しいた だければと思います。  では早速、内容について加筆した箇所をご説明させていただきます。13頁の「学生・ 生徒編」の「基本属性分析」です。佐藤座長より、就職する学生と進学する学生の違い について触れておいたほうがいいのではないか、というご意見をいただいて加筆したの が右下のグラフです。高校生で就職する学生は今回30サンプルしかデータがありませ んでしたので、残念ながら有意な差を出すことは難しかったわけですが、データとして は掲載させていただいております。実は就職する学生のほうが若干、理解度レベル1の 割合が多いという傾向が見て取れるかと思います。  続いて15頁をご覧ください。こちらは1頁丸々追加で差込みをした頁です。前回原 委員から、高校生から大学生になるに従い理解度レベルが上がるであろうと思われるか ら、理解度レベル別の分析は難しくても、高校生と大学生を比較することで理解度の進 捗状況や経験の違い、また、問題に対してどういう対処をしたかという違いが見て取れ るのではないかというご意見をいただいたので、分析をしました。その結果、上の段が 高校生のグラフ、下の段が大学生のグラフとなっております。高校生から大学生になる につれて、理解度レベルの高い者の割合が上がっておりますが、大学生になると「実際 の労働条件が募集や面接で提示された条件と違う」や「就業規則がいつでも確認できる ようになっていない」ということを経験した者の割合が高くなっていることがわかりま した。また、問題に対する対処行動として、高校生の時点では「友人に相談した」割合 が3割で最も多くなっていますが、大学生になるとその割合が下がって、「上司」や「イ ンターネットで調べた」という行動が見られるようになっていることがわかりました。  次に17頁を開いてください。こちらの質問は今回、13の項目にわたって、さまざま なプログラムや授業を受けたか受けないかということと、理解度の違いを分析していた 箇所ですが、前回座長から、いくつかの項目をグルーピングして分析してはいかがかと いうご意見をいただきました。分析の結果が17頁下の2つのグラフです。今回のグル ーピングについては、さまざま検討したのですが、最終的には、労働関係法に関する授 業を受講した経験があるかないか、将来の自分の働き方について考えさせるような授業 を受けた経験があるかないか、また、就職活動に関する実務についてのプログラムを受 けた経験があるかないかという、3つのグループに分けて分析を行いました。  17頁の中段に、グルーピングの方法について記載させていただいております。複数の 項目のうちどれか1つでも受講した経験があれば「あり」としています。そして1つも なければ、「なし」としてグルーピングをした上で、理解力の差を分析いたしました。そ の結果、高校時代にどのような授業を受けたかという観点で分析した場合には、労働関 係法制度に関する授業を受講したかどうかで、理解度に差があることが分かりました。 また、将来の働き方の検討や就職活動に関する授業の経験は、理解度の差について特に 傾向を示しませんでした。  大学生等に対して、高校時代にどのような授業を受けたかという分析では、特に傾向 は出ませんでしたが、大学生になったときに大学で受けた授業という観点で同様の括り で分析をしたところ、将来の働き方の検討に関する授業を受けたか受けていないかで、 差があるということが分かりました。  続いて22頁の部分です。こちらは特に新しくグラフやデータを起こしたわけではな いのですが、佐藤座長から、管理職に関しては全体の他の層に比べれば理解度は高いけ れども、管理職であるにもかかわらず、この程度の理解レベルだということは、きちん と記載をしておいたほうがいいのではなかろうかというご指摘をいただきましたので、 文章を加筆しております。  次に、26頁です。26頁は不安度の高低と理解レベルを分析した結果です。この部分 に関しては、座長から、正規と非正規を分けてデータをおさえたほうがいいのではない かとご指摘をいただいたので加筆しました。加筆したグラフが、右下のグラフです。「特 にない」という回答の棒グラフが、下から2つ目にあります。不安に思った項目は「特 にない」と答えている人が非正規の方のほうでかなり多いのです。確かに、この内容を よく見てみますと、非正規の方に当てはまらないような項目も、選択肢の中にかなり含 まれております。「福利厚生が低下する」と言われても、もともと非正規の方に福利厚生 がなければ、低下するという不安を感じないのは当然のことですので、そういった傾向 も若干念頭に置いてみる必要があるのではないかと思います。  しかし、「人員削減が実施される」という、非正規の方にとって最も深刻であろう点に 関しても、正社員の方のほうが人員削減の実施に対する不安をいだいているという結果 がわかりました。  それから29頁にも加筆があります。こちらは原委員から、公的機関へ相談した割合 が少ないという点についても触れておいたほうがいいのではないか、というご指摘をい ただいたところに準じて若干文章を加筆させていただいております。不当な扱いを受け た場合に、「何もしなかった」という人が最も多く、その次が「転職した」「辞めた」と いう結果ですが、残念ながら公的機関への相談というのは、非常に少ないというところ を加筆しております。  なお、先ほどの29頁で、「何もしなかった」と答えた人の状況を理解度別に分析した ほうがいいのではないかというご指摘がありましたが、その点についてはデータに有意 な差が出なかったので、掲載を割愛させていただいております。以上が前回のご指摘を 踏まえて追加した箇所です。最後に、全体のデータについての集計表を付け加えさせて いただいております。 ○佐藤座長 どうもありがとうございました。サンプルは少ないのですが、高校生で就 職と進学を分けると、就職者のほうが理解度が低いとか、高校段階での労働法関係の講 義をきちんとやることはすごく大事だとか、いくつか大事な点も出ていますので、そう いう点は報告書にも書いていただいていると思います。いまのご説明について、ご質問 なりご意見はありますか。 (意見なし) ○佐藤座長 よろしいですか。  研究会で皆様に責任を持っていただくのは報告書です。この調査報告書案は資料とい うことでご理解いただければと思います。それでは今日の本題の議事に入りたいと思い ます。まず事務局から、「今後の労働関係法制度をめぐる教育の在り方に関する研究会報 告書(案)」と、報告書の添付予定の参考資料についてご説明いただければと思います。 ○田平室長補佐 まず、これまでの経緯についてです。先行研究・先行調査の内容や、 本研究会におけるこれまでのヒアリング、いま補足していただいた実態調査の結果など を踏まえ、前回の研究会においてこれまでの議論を整理させていただいたところです。 それに基づいて議論を行っていただいて、前回のご議論とその後の委員の皆様からのご 指摘等も踏まえて報告書(案)を作成いたしました。  まず、報告書(案)の構成です。本体と参考資料集からなる形の報告書にしたいと考 えております。いまからご説明させていただく資料2-1は報告書本体の案です。資料2-2 が参考資料集の案です。先ほどの調査報告書案は参考資料集の中に入れようと思ってお ります。  報告書本体のほうですが、まず問題意識を記載した「はじめに」以下、大きく2つに 分かれております。Iとして「労働関係法制度についての教育に関する現状」、IIとして 「労働関係法制度をめぐる教育に関する今後の方向性」を示しております。Iの「労働 関係法制度についての教育に関する現状」については、先行調査研究、研究会でのヒア リングの内容、調査結果といったものから伺うことができる「労働関係法制度について の理解の状況」と、研究会でのヒアリングの中で紹介された学校、NPO法人、労使、行 政の取組状況と課題について示した、「労働関係法制度をめぐる教育の取組状況と課題」 の2つからなっております。この整理については前回の研究会において問題意識の部分 と現状分析の部分の整理が必要ではないかというご指摘がありましたので、そのご指摘 を踏まえた形にしております。  IIの「労働関係法制度をめぐる教育に関する今後の方向性」については、1の「基本 的考え方」において、学校教育の場、企業と家庭、地域社会等、これらのいずれの場に おいても必要とされる基本的な考え方、すなわち労働関係は労働者と使用者の契約に基 づくものであること、労使双方に権利と義務が生じるものであること、現実の職場にお いてトラフルを未然に防ぐ、または円滑に解決するためには、社会生活のルールやマナ ーを遵守することや上司・同僚と十分にコミュニケーションを図る能力を身に付けるこ とが重要であること、といった基本的な考え方を記載しております。これも前回の研究 会でのご指摘を踏まえたものです。  こうした「基本的考え方」の下に、研究会におけるヒアリングと委員の皆様からいた だいたご意見等を踏まえて、2.「労働関係法制度をめぐる教育の在り方」として、(1) 学校教育の場、(2)企業等、(3)家庭や地域社会における教育等の在り方について整理を行 っております。また、(4)の労働関係法制度をめぐる教育の充実に向けた環境の整備にお いて、行政による支援策等について整理を行っております。前回ご提示いたしました「こ れまでの議論の整理」では、「基本的考え方」の後に「付与すべき知識等」を記載し、そ の後に学校在学中、労働現場、その他あらゆる段階での教育の在り方の大きな方向性を 示して、その後に具体的な提言として、行政等が対応すべき取組みについて書くように しようという話をしていたところです。しかし前回の研究会で、「付与すべき知識等」に ついては、置かれている状況や段階ごとに異なり、タイミングが重要だというご指摘が ありましたので、そういったご指摘を踏まえて整理し直しております。  学校在学中、労働現場、その他という分け方についても、企業や組合の整理をどうす るのかといったご指摘がありました。そういったご指摘も踏まえて、学校教育の場、企 業等、家庭や地域社会という整理を行わせていただいております。その上で「労働関係 法制度をめぐる教育の充実に向けた環境の整備」という形で整理を行っております。ま た、当初は教育の在り方の方向性を示した上で、具体的な提言として行政等が対応すべ き取組みについて書こう、というような話をしておりましたが、どこからどこまでを具 体的な対応として書いたらいいかについて、前回の研究会でも、具体的なご指摘もそん なにございませんでしたので、今回は特に分けずに、重要な課題としてすべてまとめて 書くという形にしました。  それから、前回の研究会で、労働関係法令が複雑化しているというご指摘がありまし た。そのご指摘につきましても、最後に記載させていただいております。  また、参考資料の件では、ハンドブックや教材等のリストを掲載すべきというご指摘 がありました。参考資料に掲載しておりますが、いろいろ検討した結果、ホームページ にアクセスできるものはアクセス先を書き、できないものはコピーを添付するという形 にしています。ただ、載せる範囲については、差し支えない範囲で幅広めにというご指 摘もあり、検討してみたのですが、載せる範囲につきましては、整理の難しいところが ありますので、今回は本研究会で言及のあったものという整理をさせていただきたいと 考えております。以上が大体の骨組みです。  それでは資料2−1の報告書(案)をご覧ください。まず2頁の「はじめに」で、基 本的な問題意識を書かせていただいております。戦後我が国において、憲法によって労 働三権が保障され、労働組合法、労働基準法の制定をはじめとして、労働法制がされる ことにより、労働者はさまざまな権利を享受し、法制度を基にした権利が確保されるよ うに取り組まれてきたということが書いてあります。  最近の状況を見ますと、非正規労働者の趨勢的な増加や就業形態の多様化、労働組合 の推定組織率の低下など、労働者の職業生活に影響を及ぼすような環境が大きく変化し ています。  そういう状況の下で、労働関係法制度をめぐる知識、特に労働者の権利の認知度が全 般的に低いという、さまざまな調査結果が出ているという状況があります。特に相対的 に低い労働条件で働いている人、将来的にそういう条件になる可能性の高い人ほど、権 利を理解していない可能性が高いというご指摘があり、対策が必要ではないかという状 況にあります。そういう認識の下で、本当に労働者の権利を知っておく必要のある方た ちに、知識が十分に行き渡る必要があるのではないか、そのための教育の重要性が各方 面から指摘されています。これは国民生活審議会や経済財政諮問会議の専門調査会など でも指摘されているということですので、報告書案の後に別添3として資料を付けてお ります。  そういう指摘がなされている中で、この研究会でも労働をめぐる権利・義務に関する 教育の意義・課題、それから実効的な教育の在り方について、総合的な検討を行おうと いうことで、この研究会を開いていただいているという状況です。そこで現状の認識で すが、3頁の「先行調査・研究における指摘」で、労働者の基本的な権利の理解度・認 知度は高くない状況にあるということで、1の(1)の最初のパラグラフで、様々な調査を 引用させていただいております。それから、属性別に認知度に違いが見られるという特 徴もあります。4頁では、本当に知識を必要としている人と知っている人との間で、知 識のミスマッチがあり、先ほど「はじめに」の部分で述べましたが、相対的に低い労働 条件で働いている可能性の高い労働者、将来的に相対的に低い労働条件になる可能性が 高い人ほど、必要な知識を理解していない可能性が高いというご指摘もあります。  その次も、これまでの研究会の中で委員の皆さまからいろいろとご指摘をいただいて いるところで、労働者の権利を知っていることが権利を守るための行動に直結するとは 限らないというご指摘です。労働者の権利が実際に守られるためには、法律で定められ るだけでなく、まずは労働者自身が自分の権利について理解し、その上で権利を行使で きなかった場合や不利益な取扱いを受けた際に、それが違法であることにまず気付くこ と、気付いてその権利を行使する手段を活用できることが重要だというご指摘です。そ の次の所にも、「先行研究では」として、「労働者の権利を「知っている」ことが「行動」 に直結するとは必ずしも言えないが、意識や考え方には影響を与えている可能性が高い」 ということで、やはり十分に法律等を知ってもらって、意識や考え方を自らの手で身に 付けていただくことが重要ではないかというご指摘だったかと思います。  それから4頁で、「研究会を通じて指摘された問題点等」があります。ヒアリングな どを通じて、連合総研の調査や総合労働相談コーナーの相談実績、東京労働局からの相 談現場の実情ということで、5頁に労働相談の現場における傾向が指摘されています。 例えば、非正規雇用のほうが労働関係法制度に関する基本的な知識について理解してい ないとか、労働条件が明確にされていないことによって生ずるトラブルが多いとか、こ ういうご指摘がございます。  (2)の最後に、「加えて」と書いてありまして、そもそもトラブルにあった際の的確な 相談先を知らない方が多いというご指摘もなされています。  次に、5頁の後半の(3)「実態調査の実施」です。先ほど土屋さんからもご報告いただ いた調査結果ですが、学生・生徒と社会人の状況、それから学生・生徒と社会人の比較 ということで、基本的に調査結果のほうに書いてあった見出しの部分を抜き出したよう な形になっております。ここで調査結果の概要を記載させていただいております。  8頁が、2の「労働関係法制度をめぐる教育の取組状況と課題」ということで、研究 会におけるヒアリング等で入手した取組状況と課題を書かせていただいております。ま ず「学校教育の場における取組と課題」です。研究会における田奈高等学校の吉田先生 のヒアリングの際に出てきた話として、例えばフリーターの権利やトラブルに遭った際 の対処法を重視した教え方への転換といった話、生徒にとって卒業後や就職後の話はま だ先の話であって、自らの問題としては捉えづらい、身近な例や分かりやすさを旨とし た教え方を工夫しているというような話をしていただいたので、そのことについて記載 いたしました。また、先生のヒアリングの中でご指摘いただいた課題として、授業で教 えても権利としては十分に認識されていない、労働関係法制度やトラブルが起きた際の 相談先に関する知識について、十分に与えられる機会が多くないといった指摘もなされ ております。  (2)が「NPO法人の取組と課題」です。これについては職場の権利教育ネットワーク や人材フォーラムからヒアリングを行っております。人材フォーラムでは、実効的な教 育を実施するために知ってもらうべき内容を最低限に絞って、生徒等に関心を持っても らえるような工夫を凝らしているとか、労働者を雇用することにより会社側がどのよう な負担をしているか等についての理解を深めさせることによって、会社側の考え方を踏 まえた上で、コミュニケーションを図ることの重要性を教えるような工夫も行っている、 というような工夫の例が紹介されたところです。ただ課題としては、同じ団体の活動で あっても学校や先生の温度差により、成果にも差が出るところが課題だという指摘もな されております。  それから(3)の「労使の取組と課題」です。労働組合の取組の実情として、各産業 別や単一組合ごとに、組合員に対して法律や労働条件の基礎知識といった労働法教育を 実施しているということです。また、大学における寄付講座の実施、地域や学校等と連 携しながらの各種講座・セミナー・研修も実施しているというご報告をいただいており ます。企業側についてもフォーラムを行ったり、一般社員に対して就業規則に基づく知 識教育に加え、コミュニケーションや職場規律等も重視した取組を実施したり、労働法 制度という意味で言うと、一般社員というよりは、むしろ管理職に対しては人事労務管 理という観点から、より厳格に法的・制度的枠組の知識等を付与する教育を行っている、 というようなお話を聞かせていただきました。  (4)の「行政の取組と課題」について、地方公共団体における取組としては、NPO 法人や大学などとの連携の下でセミナーを開催したり、経営者・人事労務担当者向けの セミナーを実施したりしています。また、労働相談を実施している所もあるという話が ありました。厚生労働省においては、各都道府県労働局との連携の下に、ホームページ での情報提供、総合労働相談コーナー、労働基準監督署、ハローワーク等の窓口での労 働に関する相談、それから就職を希望する高校2年生、3年生を対象とした高校生就職 ガイダンスの実施、就職後に必要な労働関係法令の基礎知識についての情報提供、キャ リア探索プログラムを全国のハローワークで実施しているという話がありました。行政 の課題としては、行政としてもさまざまな取組を行っているが、必ずしも支援が必要な 方に行き届いていないのではないかという点が指摘されています。特にわかりやすく情 報を提供する機能が不十分であり、学校を卒業後就職した者に対する相談窓口、必要な 情報にアクセスできる環境の整備が十分でないといったご指摘をいただいているところ です。  12頁以降は「今後の方向性」です。11頁までが現状の部分でしたが、これからが今 後の方向性を示した部分です。これは大きく2つに分かれています。まず1の「基本的 考え方」です。先ほどの説明の中で申し上げた「基本的考え方」は、まず契約に基づく ものであること、契約に基づくということは、権利と同時に義務も発生するということ、 そういう権利が保障されているが、義務も負ってそれをきちんと守らないといけないと いうこと、それと同時にトラブルの未然防止やトラブルが発生した際の円滑な解決とい うときには、社会生活のルールやマナーを遵守するとともに、上司や同僚などとのコミ ュニケーションを図る能力を身に付けることも重要だろうということです。これも各委 員からご指摘いただいた非常に重要なポイントだと思っております。権利や義務につい ての知識と社会性・コミュニケーション能力が両輪として効果的に機能すること、その バランスが不可欠だというご指摘が、ほぼすべての先生方から出ていたかと思っており ますので、これを基本的な考え方として位置づけております。  その「基本的考え方」の下に、各段階でどのような教育を行っていけばいいかという のが、2の「労働関係法制度をめぐる教育の在り方」ということで、14頁以降にありま す。まず(1)が、学校教育の場における教育の支援の在り方です。ここでは学校の自主性 を尊重する必要があるだろうということが書いてあります。それから、労働関係法制度 に関する知識が広く認知されることが必要だろう、広く認知されるためには、やはり会 社ごとといった単位ではなくて、学校で教えていただくことが非常に重要ではないかと いうことで、各学校でその実情に応じて、公民等の教科のほかに、キャリア教育・進路 指導の中で提供されることが効果的ではないかということが書いてあります。ここで厚 生労働省、文部科学省がしっかりと連携していくべきではないかというご指摘を受けて いたかと思います。  ここでもタイミングが重要で、どの段階でどういうことを教えればいいかというご指 摘があったわけです。まず、実際に働き始めた直後の労働現場での教育も重要ですが、 やはり児童・生徒等の生きる力を育むことを目指す小学校や中学校といった各学校段階 に応じて、知識の付与を行うことが期待されています。小学校の段階では、基本的な生 活習慣、社会生活上の決まりを身に付けていただく必要があるだろう、勤労の尊さ・生 産の喜びを体得することを教えることが重要ではないかということです。  中学校の段階では、人間が本来、社会的存在であることに着目していただき、社会生 活における物事の決定の仕方、きまりの意義について考えていただく、契約の重要性と それを守ることの意義、個人の責任などについて気付いていただくことが重要だという ことです。もうすでに取り組んでいらっしゃる学校はかなり多いと思いますが、キャリ ア教育などを通して望ましい勤労観・職業観を育成していただくことが望ましいのでは ないだろうかということです。  それから、働くことに関する興味・関心・現実感が湧いて、ようやく働くことについ ての問題意識が出てくる時期、職業の選択や就職活動をする時期、あるいはアルバイト を経験する時期などに、基礎的な知識が提供される必要が高くなっています。そういっ た知識を的確に理解できる時期でもあるという観点から、法律やそれに基づくさまざま な制度については、むしろ小中よりも高校や大学を主な対象にすることが適当ではない かというご指摘がありました。進路選択、就職に向けたガイダンスをはじめとして、就 職内定者向けのセミナー等の場において、基礎的な知識が提供されることが効果的では ないかということです。  また、学校教育の段階においては、労働関係法制度に関する知識を網羅的に付与する ことは、現実的ではないのではないかということで、基本的な考え方を教えるべきとい うことです。「基本的考え方」にありましたが、労働関係は労使間の合意に基づき成立す る私法上の契約であること、契約内容についても合意によって決定されることが基本と いうこと、一方、労働者と使用者の間では、一般に対等な立場で合意することが難しい ので、労働者の権利を保護するために、各種の労働関係法令が設けられているというこ と、労働組合を通して労使が対等な立場で交渉し、労働条件を決定できるように、憲法 などによって労働三権が保障されていることなどを、よりわかりやすく教えることが有 効ではないか、その中で例えば給与や賞与、退職金などの具体的な労働契約の内容など についても教えることも有効ではないかというご指摘がありました。  そのほかに職業選択、就職活動に必要な事項などについての知識、求人票の見方など、 現実的なところについても教えることが重要ではないか、就職直前の段階になると、さ らに細かな知識を教えることも有効になってくるだろうということで、15頁の注18の 下のほうに、労働組合に関することや労働時間に関することなど、具体的に書いてあり ます。こういった労働法に基づく権利・義務に関する基本的な知識を付与することが、 生徒等の職業人・社会人としての自立を促進するために効果的ではないか、相談窓口に ついてもしっかり教えておくことが必要ではないか、企業側の負担を知っていただくこ とも、企業の立場に立つという視点から重要だろうというご指摘もあったかと思います。  そうした労働関係法制度に関する教育を効果的に行うためには、よりわかりやすくす る必要があるだろう、理解しやすく、関心を持ちやすくする必要があるだろうというこ とで、視覚的な教材を使う、チェックリストを使う、Q&A方式を使うといった工夫をす る必要があるだろう、職場見学・職業体験など、企業等での現場での実際の体験が活か されるような工夫も必要だろうということ、教える側にいかに教えるかというところも 重要ではないかということで、指導方法のマニュアルの作成や研修の実施も重要ではな いかというご指摘がありました。  また、ハードルはなかなか高いのかもしれませんが、NPO法人の例で出てきた専門家 講師派遣のためのネットワーク形成や、データベース整備も必要ではないかというご指 摘もあったところです。さらに、現在、就職希望の高校生を対象に行われている就職ガ イダンスに ついても、引き続き有効な取組だと考えられますので、これを効果的に実 施していくことが重要ではないか、学校現場で労働行政の専門家を活用していただくこ とも有効ではないか、やはりトラブルがあった場合に解決するためには、的確な相談窓 口を知っていただくことが重要ですので、そういうつなぎをしていただくことも重要で はないかというご指摘もあったかと思います。  16頁の(2)が、「企業等における労働関係法制度をめぐる教育の在り方」です。やはり 労働者にとって基本的な知識を習得していただくことは、労働者個々人にとっても非常 に重要なことですが、企業にとっても重要ではないかという視点を書いております。そ れから労働組合の役割として、労働者を教育する機関としての機能も発揮させていると いうことで、その取組みを引き続き充実していただくことも重要ではないかということ です。セミナー・講座等の実施も、さらに充実していただければということです。経営 者側についても、研修等のあらゆる機会を捉えて、労働にかかわる権利・義務、ルール を社内で積極的に教育する機会を設けていただければということ、会社での役割・立場 に応じて対応していただく必要があるのではないか、トラブルが発生した場合は、やは り事業主側の知識不足もあるのではないかというご指摘がありましたので、事業主等へ の基本的知識の付与が、さらに重要となっているということです。これもやはり的確な タイミングが重要だというご指摘がありましたので、状況に応じて付与する必要がある ということです。  17頁の第3パラグラフの「なお」の部分ですが、コンビニや居酒屋などで若いうちか ら店長として、アルバイト等の労務管理を任される方が増加しているという状況を踏ま えて、学生アルバイトの主要な就業先という状況でもありますので、早い段階で労務管 理に対応できる知識を身に付けることが重要ではないかというご議論や、労使ともに最 低限必要な知識について周知徹底をするためには、関係機関の連携が必要で、いろいろ なセミナーなどを通じて知識を付与する必要があるのではないかというご指摘もありま した。  (3)が、「家庭や地域社会における労働関係法制度をめぐる教育の在り方」です。まず 学校や企業等について効果的な教育が行われるためには、やはり社会生活のルールやマ ナーが備わっていることが前提で、家庭や地域社会というものの役割も非常に重要では ないか、実態調査でも出ておりましたが、家族や友だちと仕事や働くことについて話を する生徒等や新聞の政治欄、経済欄を読む生徒等ほど知識の理解度が高いという状況が 見られますので、そういったところに鑑みると、やはり家庭でいろいろな話をしたり、 ニュースを一緒に見るということが重要ではないか、親が仕事について話をするような 機会があればいいのではないか、というようなことを書いております。  ただ、この点については、現実には、なかなかそういう機会がないのではないか、特 に平日、家庭で子どもと過ごす時間が十分に取れない状況も見られるということで、や はり仕事と生活の調和を図っていくことも重要ではないかというご指摘をいただいてお ります。それから、パートやアルバイトとして就職した場合とか、労働組合のない企業 に就職した場合などについては、その企業内での知識の付与というのがなかなか難しい ので、地域における講座やセミナーが活用されることが重要ではないか、そういった取 組を支援することが望まれるのではないかというご指摘もございました。  さらに、18頁が行政機関の連携という観点から、例えば母子健康手帳の交付とか両親 学級といったものの際に、少し時間を取っていただいて、ハローワークの説明や復帰の 際の支援策などについての説明も望まれるというような話がありました。  19頁が、「環境の整備」です。労働者にとって関係施策、相談窓口の状況がわかりに くいので、わかりやすい、利用しやすいようにする必要があるだろうということで、そ ういう体制整備が必要ではないかというご指摘です。例えば情報提供機能の充実という 点では、関係行政機関のホームページの見直しが必要ではないかということです。  それからチェックリストやQ&Aという形で、興味を持っていただくような情報提供 の方法も必要ではないか、また、ここに書いてある「高校生就職スタートブック」「ポケ ット労働法」という話が、この研究会の中でも出ましたので、こういうものを活用する とか、わかりやすいものを作っていき、それを通じて周知していくことが重要ではない か、情報提供だけではなくて相談も重要ですので、相談体制機能の充実のために、総合 労働相談コーナーの機能強化、何よりも相談機関間の連携の強化が重要ではないか、都 道府県労働局を中心にして、労働相談体制を整備していく必要があるのではないか、教 育の成果で知識等を理解していても、実際に働く現場でそれが保障されていないという 現実を目の当たりにする学生たちにとっては、なかなか権利主張もできないとか、それ が現実だと諦めてしまうというご指摘もありますので、そういった悪しき労働関係が根 づかないように、企業においても労働関係法制度の遵守を徹底することが重要だという こと、労働行政としても労働関係法制度の遵守に向けて、監督指導を徹底することも重 要ではないかというご指摘もございました。  最後に、前回のご指摘を踏まえ、「近年は新たな立法や法改正が頻繁に行われ、労働法 令の数が増加し、その内容も複雑なものになっているという状況を踏まえ、労働法令自 体を国民にわかりやすいものにしていく努力が望まれる」という内容をここに書かせて いただいております。 ○佐藤座長 ここでの調査やヒアリングだけではなくて、研究会での議論もかなり組み 込んでいただいているのではないかと思います。大きく2部構成になっておりますので、 まず「労働関係法制度についての教育に関する現状」について、それから「労働関係法 制度をめぐる教育に関する今後の方向性」についてのご意見というようにさせていただ きます。細かい誤字や言葉の使い方もあると思いますが、そういうものは後で時間があ れば議論するということで、まずは大きく変更したり、ご意見があればお願いします。 ○田平室長補佐 まず両角委員のご意見を先にご紹介させていただきます。本日、出席 できないということで、両角委員からご意見をいただいております。13頁と15頁の部 分です。まず13頁の4行目、「ただし、使用者による」の部分です。「使用者による懲 解・解雇、損害賠償請求などは、法令や判令法理で定められた要件を満たすことが必要 であり、そうでない場合には裁判で違法とされる」というように表現を変えたらどうか、 というご指摘です。  2点目が、「労働者は、法律や契約で保証された」という部分です。これは「保証」で はなく「保障」でして、事務局のミスです。申し訳ございません。  それから15頁の7行目、「わかりやすく教えることも有効である」と書いていたとこ ろを、「が有効である」とする。この3点です。 ○佐藤座長 これは修正していただくということでよろしいですね。 (異議なし) ○佐藤座長 それでは11頁まででお気付きの点があればどうぞ。 ○上西委員 後ろのほうにもかかわるのですが、労働法制度に対する認識が低いことが、 なぜ問題かということが、あまりはっきり書いていないような気がしています。まず認 知度が低いという現状があり、次に認知度が低いのは困るという話が漠然とあって、そ れから権利が守られるためには、という話になっているのですが、認知度が低いがゆえ に、どういう問題があるのかというのが抜け落ちているのではないか。労働相談件数が 増えているという現状があり、また、実施した調査の中では社会人の約7割が、不当な 扱いを受けたことがあり、かつそれに対して何もできない、何もしなかったという人が 多いという現状があり、さらに、19頁のいちばん最後には、知識等を理解しても、働く 現場ではそれが保障されていない現実を目の当たりにすることが多いというような現状 があったりするわけです。そのあたりをあまりはっきり書いていないので、これでいい のだろうかという疑問があるのです。 ○佐藤座長 どうしましょうか。3頁や4頁にも、ある程度書かれているのです。例え ばここには、育児休業制度が取れるということを知っているのは4割と書かれています。 なぜ育児休業を取らなかったのかというと、他の調査では、就業規則に規定されていな かったので取れないと思ったから取らなかったということもあります。権利を知らない と行使できないという話は書いてあるけれども、どこかにまとめて書きますか。 ○上西委員 知らないと行使できないと同時に、知らないがゆえに知らないことにつけ 込まれるということもあるかと思います。 ○佐藤座長 そういうこともありますね。ですから知らないと行使できないし、知らな いと問題とも思わないから、つけ込まれていると気付かないわけですよ。そういうこと は書いてあるけれども、まとめてどこかに書いたほうがいいかということですね。 ○原委員 4頁の2段落目に書いてあると思うのですが、不十分ですか。 ○上西委員 ですから、権利が実際に守られるためにはという背後には、それが必ずし も守られていない現状があるわけです。 ○原委員 ここは形だけが述べられていて、実態は反映されていないわけです。 ○上西委員 もし理想的な労働環境があれば権利について必ずしも知らなくてもいいわ けではないですか。なぜ知らなければいけないかというと、理想的な労働環境でないか らだという大前提のところが、あまり書かれていない気がするのです。そもそも、なぜ こういう研究会を開かなければいけなかったのかについてもっと書く必要があるのでは ないかということです。 ○佐藤座長 もし書くとすれば「はじめに」ですね。 ○上西委員 そうですね。 ○佐藤座長 1つには、知らないと行使できないということですよね。あとは、知らな いと問題があるとも思わない。つまり使用者側がすべて労働関係法制度を守っているな らいいけれども、そうでない場合もあるという上で、知らないと問題とも思わないとい うことですよね。そういうことを「はじめに」に少し書きますか。 ○上西委員 そうですね。「はじめに」の「近年」の段落辺りですよね。 ○田平室長補佐 書くとしたら、その後の「こうした状況を踏まえ」の辺りかなという 気がします。 ○佐藤座長 そうですね。 ○田平室長補佐 「こうした状況を踏まえ、・・・高まっている」と「また」の間に入れる とよいのではないかという気がします。 ○佐藤座長 具体的な内容は後ろのほうに書いてありますから、それを参考に書き込む ようにしましょう。 ○田平室長補佐 多少重複感はありますが、4頁に書いてある内容を書き込むような形 ではないかと思います。 ○佐藤座長 では、そういうように工夫して下さい。途中、ばらばらに書くと変な感じ ですから、本人も知る努力をするが、なぜ知るための情報提供をしなければいけないか ということを、もう少し書いていただくようにしましょう。 ○田平室長補佐 今のご指摘につきましては、そういう形で記載することにしたいと思 います。 ○佐藤座長 もう1つ、先ほどの複雑というところにかかわりますが、使用者側に悪意 があるわけではないけれど、やはり労働者側だけでなく使用者側も両方とも知らないと いうことがあるのです。それは少しわかるようにするようにしましょう。ほかに11頁 まででありますか。いいですか。  これは言葉の使い方ですが、8頁の下に、「教員の特殊性に鑑み、教員には」と書いて あります。ここは特に公立高校についてですよね。公立高校の教員の場合、一般労働者 と適用関係法令が違うということがわかるように直していただいたほうがといいかと思 います。「教員の特殊性」と言うと、仕事が特殊という話になってしまいます。つまり労 働関係法令の適用関係が違うから、自分に適用されていることと、生徒が民間企業に行 った場合は違うということがわかるような形にしてほしいのです。  正直言って私も、そこはあまり詳しく知らないのです。地方公務員と同じような形に なるのでしょうか。残業のところなど違うと聞いたことがあります。たしか産前・産後 休業などは有給だったように思います。民間は無給で代わりに健保から6割が出ますが、 公務員は確か給料が出るはずです。そういうものが違ったりするのです。育児休業も公 務員の場合、3歳まで取れるのではないですか。そういうように相当違う部分が大きい のです。「注」か何かでもいいと思うので、わかるような文章にしていただいて書いては どうかと思います。  IIのほうは少しブロックに分けて、まず「基本的考え方」からご意見をいただきたい と思います。ここも書き方が難しいと思ったのですが、社会性とコミュニケーションの 両方が大事だということで、前回の案よりはわかりやすく書いていただいたように思い ます。まず「基本的考え方」について、ご意見はございませんか。 ○上西委員 13頁の「既に述べたように」の段落はいいと思うのです。知識を知ってい るだけでは不十分で、それを実際に活かすための能力を持っていなければいけない、そ うであってこそ、初めて権利が行使できるというのはいいのですが、「そのためには社会 生活のルール、基本的生活態度、マナー、コミュニケーション能力」というのが、そう なのかなと思うのです。さらにその下を見ると、「他者との良好な人間関係の構築や、集 団への適応力など」と書いてあって、だんだん「あるべき柔順な労働者像」みたいな話 になってしまっています。  権利を行使するというのは、かなり勇気の要ることですよね。実際に提示された労働 条件と違うことをさせられているとか、残業代が払われないというときに、「職場の和を 乱さない」ということを考えると、1人で我慢するということになってしまいますよね。 そうではなくて、権利を行使するというのは、ある意味でその場の雰囲気を破らなけれ ばいけないわけです。それはここで言う「コミュニケーション能力」や「社会性」「マナ ー」「集団への適応」という言葉で表されるものではなくて、もう少し「課題解決能力」 というようなことではないでしょうか。  一方で、労働者側にコミュニケーション能力が欠けているがゆえに、トラブルがこじ れていくというような話も出ていました。もちろん社会性やコミュニケーション能力の 重要性もあるのでしょうけれども、どうも「きちんとした労働者」でなければいけない という方向に報告書が流れている気がして、ここのところがすごく気になったのです。 それは次の14頁にもつながります。14頁の「小中学校段階では」という所も、やはり 「基本的な生活習慣」「社会生活上の決まり」「勤労観」「職業観」という言葉があります。 そういうものが身に付いていれば権利が行使できるのかというと、そこはちょっと違う のではないかと思います。 ○田平室長補佐 先に14頁のほうからお話させていただきます。おそらく小学校、中 学校の段階では、職業観というところが重要になってきて、その後の権利行使というと ころになると、高校以降で学ぶ、労働法制度についての知識ということになるのではな いかと思います。そこで13頁ですが、これまでの議論の中で、どちらかというと両輪 というような話がしばしば出ていたので、こういう書き方にさせていただいているので す。問題解決能力というところを書くとすると、ちょっと工夫しないといけないのでは ないかと思います。 ○上西委員 両輪であるのは両輪だと思うのです。両輪の知識でないもう片方が何かと いうことなのです。 ○田平室長補佐 行動することができる力ということですね。そこをここに書き加えて いくというイメージですか。 ○上西委員 そうですね。14頁についても、確かに小中学校では勤労観、職業観とか、 社会の中で自分が基本的に生きていける力だと思うのですが、その上で知識を得て、で は現状があるべき姿でなかった場合、それに対して自分が働きかけていく力というのは、 高校段階でさらにプラスアルファー、必要になってくるはずですよね。単に知識だけで はなくて。 ○田平室長補佐 その辺りは、トラブルが起きた際の相談窓口の情報などが、1つある かと思います。 ○上西委員 いや、情報ではなくて。例えば情報があれば、それに自分からアクセスで きる力とか、自分側から行動が起こせる力ですよね。 ○佐藤座長 13頁の「既に」というところに書いてあるように思います。最後は「紛争 の防止や解決に向けて、適切な行動を取る能力」となっていますね。ですから、ここの 中身が単にコミュニケーション能力だけではないでしょう。なので、コミュニケーショ ン能力が必要ないと言っているわけではなく、「両輪」というように使わないで、知識や コミュニケーション能力や、問題解決能力と並べてしまいますか。ここは、「適切な行動」 の中身の説明でしょうから、その部分を膨らませていただく。また、「両輪」というのを 落として、3つにしてしまう。 ○田平室長補佐 ここはワーディングとしては、佐藤一郎委員のワーディングを使って おります。内容的には問題ないかと思いますので、佐藤一郎委員がいらっしゃってから、 ご意見を伺えればと思います。先ほどと同じように課題解決能力、行動力の部分を入れ るべく、修文の工夫をしてみようと思います。 ○佐藤座長 やはり、問題があるということを、その職場で理解してもらうことも大事 ですが、理解してもらえるとは限らない、それでは、理解してもらえない場合にどうす るかが重要です。行動を起こすかどうかは本人の判断だけど、解決するためには行動を 起こさなければならない。 ○荒井策評価審議官 社会的に考えていくと、何か問題が生じたときには、おかしいこ とはおかしいときちんと言わなければいけないでしょうし、そのためには当然、組織化 していかなければいけないことになるでしょう。また、当然、コミュニケーション能力 は必要だけれども、それ以外に行動する力も必要ですし、会社で行動してうまくいかな ければ、労働基準監督署へ行くことなどが必要でしょう。監督署の立場からいえば、労 働法というのは、刑法のように当然に反規範的だということにはならない世界だから、 結局ある程度個別の事情を聞かなければ労働法関係の違法があるかどうか判断できない。 そのため、労働者の皆様にも勉強してもらって、行動してもらうことが重要である。ま た、監督署において、すべての問題を把握することは難しいということもある。犯罪が 起きたことは比較的みんなわかるから、犯罪が何件起きたというのはよくわかるかもし れないが、労働法関係の違反というのは、これはおそらく、どのくらいなのかわからな い状況の中で、1つひとつ違反があるかどうかを判断していくという方法をとっていま すから、それをうまく機能させるためには当然、被害に遭っている人が、そういうこと がありますということを、監督署に情報として提供していただく必要があるわけです。 そういった意味でおっしゃることはよくわかりますので、そういう観点を入れた修文に していただければと思います。 ○上西委員 工夫していただければと思います。 ○佐藤座長 では少しずつ先にいきます。まず学校現場、次に企業等ということで、中 に労使を入れ込んであるという書き方です。あと、家庭や地域社会と、そういうことが 進むような全体の環境整備というように書き分けていただいています。 ○増田委員 18頁の「家庭や地域社会における労働関係法制度をめぐる教育の在り方」 のところで、「ただし、ワークライフバランスを推進していくことが重要である」という ことを入れていただいたので、収まりはつくのだろうと思うのですが、「親から働くこと の意味や仕事のやりがいを教わる」ということについては、良い家庭環境を想定しすぎ ているように感じます。現状で言うと、例えば、息子はフリーターで親父はリストラさ れ、明日から食う所がないというような家庭観もあるのではないですか。このような家 庭環境の人のほうが、労働法制度に関する知識や活用能力がないためにさらに不利な状 況に陥っているということです。「親の責任」や「家庭の責任」については、もう少し多 様な家庭観の中から考えるべきではないでしょうか。家庭教育や社会教育というような イメージを持ったほうが理解しやすいと思います。 ○田平室長補佐 そこはそういうご指摘もいただいておりましたので、「期待される」と いう、多小弱い表現にさせていただいております。いずれも、「つながっていくことが期 待される」とか「重要な役割を果たすことが期待される」ということで記載しておりま す。できる家庭においては、という意味を込めています。 ○佐藤座長 確かに難しいですよね。こういうことができないのかという家庭が増えて いるのは事実ですよね。だから書き方としては、できる家庭はやってもらおうという趣 旨ですよね。 ○田平室長補佐 はい、すべての家庭でできるというような話ではないと思いますので。 ○佐藤座長 だからどう書くかですね。できないような家庭があるのも事実なのだけど、 だからと言って家庭について書かないというのもどうかと思います。大事なのも事実で すので。 ○田平室長補佐 家庭はやはり大事だと思います。 ○佐藤座長 大事なのも事実なので、工夫して書いていただいていると思います。 ○原委員 全体的によくわからなかったのが13頁です。先ほど上西委員からご指摘が あったところですが、ここは修文がなされるということですが、知識とコミュニケーシ ョン能力に加え、これから行動力などがいろいろ加筆されるのだと思うのですが、そう したことが諸々重なり合って、効果的に機能していく。それを受けて14頁以降の内容 になっているのですが、例えば(1)や(2)で、特に、知識の付与についての提言はたくさん なされています。しかしその他の部分は、コミュニケーション能力や、今後加えられる であろう行動力についてのところは書かれていません。無理矢理考えれば、(3)の18頁 以降の箇所が、そこに気配りをされた記述なのかなと理解したのですが、そうするとち ょっと、問題意識とそれに基づく提言とが、ちょっと離れているかなという感じがして います。  そんなにいい対案があるわけではないのですが、学校教育の場で、行動が起こせるよ うな何かロールプレイ形式の授業や、職場についてであれば、普段からのコミュニケー ションが大事であり、何かを言われて受けとめて、かつ労働者側も伝えるというような、 そうしたことがコミュニケーションというのであれば、コミュニケーションについて、 普段から職場の風通しのよさを維持するというような話とか、そういったことがちょっ と書かれていたらいいのかなあというか、かけ離れた感じがなくなるのかなあという感 想を持ちました。 ○佐藤座長 13頁の所で、自分の意見をちゃんと主張するとか相手の話を聞けるとか、 課題をして行動を起こすというのは、たぶん、労働問題だけに関わることではないので すね、働くことに伴うトラブルを解消したりすることだけのためにやるものではないか ら、「基本的考え方」の部分で、コミュニケーション能力や、上西委員が言ったような問 題解決能力について、これは必要ですよということを書くようにしてはどうか。コミュ ニケーションや問題解決能力については、労働問題を解決するためだけではなくて、学 校でも企業でもやらなくてはいけないわけですよね。ただ、コミュニケーション能力、 問題解決能力みたいなことは、知識を付与するということとはちょっと別の話だから、 書くとすれば13頁の部分に書いてはどうか。このことだけで何かプログラムを組み教 育しろということが、得策かどうかということには議論の余地がある。 ○上西委員 関連して、先ほど14頁の所で、高校・大学段階については、知識の話し か書いてないというのはどうなのだろうという話をしたのですが、8頁を見ると、高校 の実践例ということで、「フリーターの権利、トラブルにあった際の対処法を重視した教 え方に転換している」と書いてあります。だから、単に知識だけではなくて、その知識 と自分の経験を照らし合わせて、これはどうなのだろかうと判断をして、おかしいと思 ったら、どう対処したらいいかというところまでをこの高校はやっているわけですよね。 そういうような、知識を具体的に活かす対処法みたいなことを14頁に盛り込んでいた だいてもいいのではないでしょうか。相談窓口はここにありますという情報提供だけで はなくて、何かあったらここに相談しましょう、相談できるようになろうという話にま でもう少し踏み込んでもいいのではないでしょうか。 ○佐藤座長 知識と問題に直面したときにどこに相談すればよいかというのは、やはり 情報なのですよ。提供された知識をうまく使いこなすかどうかということは、別の話だ ろうと思っています。それは広く別のところで、労働問題を解決するということだけで はなくて、もう少し幅広い事項として教育してもらうことが重要ではないか。知識とい うときは、労働法の知識だけではなくて、相談先等についても教えたほうがいいと思う。 知識について書かれているが、相談窓口等も含めた幅広い知識ではなく、狭い知識にな っている感じがするので、修正してはどうか。企業の場合も同じく、労働法の知識だけ ではなく広く教えたほうがいいと思う。知識と、それに照らして問題があったときにど ういう行動の取り方があるのか、また相談先があるかは、教えるほうがいいと思う。知 識も広めにしたほうがいいかな。どうですか、狭くなってしまっているかな。13頁に書 いたほうがいいか、それもやはり12頁のところを修文したほうがいいのかな。 ○田平室長補佐 基本的な考え方なのでやはり、13頁かと思っております。 ○佐藤座長 単に労働法の権利に関する知識だけではなく、権利が侵害された場合や、 行使するときの相談先とか、そのツールみたいなものも含めて情報提供つもりではいる わけでしょう。 ○田平室長補佐 基本的にはやはり情報提供になってしまうのかなと思っています。 ○佐藤座長 それは情報提供でいいと思いますよ。 ○原委員 情報提供についてはしっかり書き込まれていると思うのですが、個人が伝え る能力を持つとか、行動を起こせる能力をどうやって高めていくかといったことについ ては、記載はされてないのかなと思いました。 ○佐藤座長 そこを書くかどうかは検討の余地がある。必要だと書くだけにするという 方法もあります。 ○田平室長補佐 学校教育の現場や企業の現場でそういうことをどのように教えるかを 書くというのは、ちょっと難しいかなと思いました。 ○佐藤座長 だから必要性は書いておいて、それをどうするかは、今回のことだけでは なく広くやっておかなければいけないことだと思います。もちろん今回のも1つ、きっ かけではあると思いますが。 ○原委員 「両輪」だと書いてあるのに、片輪についてしか書かれていないので疑問に 感じましたので、もし報告書の中で片方しか取り扱わないのであれば、そういう書きぶ りにしてはどうかと思うのです。 ○佐藤座長 だからこれ、知識でしょう。知識もかなり広く、広い意味で、権利だけで はなくて相談窓口等に関する知識については、後ろの「労働関係法制度をめぐる教育の 在り方」のところで書くようにする。他方、コミュニケーション能力と問題解決能力に ついては、教育現場の学校や企業等で他のことも含めてやる必要があるというような書 き方にしてしまうというのが私の整理です。だから、コミュニケーション能力や問題解 決能力自体については直接は触れない。コミュニケーション能力とか問題解決能力は必 要だけれども、これはある意味、広い意味で、生きていく上で必要なのですよね。だか らそれは、教育現場なり企業の現場でやる必要はあるのだけれど、それ自体についての 教育方法なり育成方法については、ここでは触れないようにしてはどうでしょうか。 ○上西委員 そうするのであれば、18頁に、家庭が社会生活のルールやコミュニケーシ ョン能力を養えと書いているところが、ちょっと突出している気がします。学校の役割 は書いていないのに、家庭の役割だけ書いてあるというのはちょっとおかしな気がしま す。 ○増田委員 13頁の「そのためには」という部分では、マナーやコミュニケーション能 力ということが、権利主張を逆転した論になっているのではないですか。問題解決能力 というような、幅広い意味で表現したほうがすっきりするのではないですか。 ○原委員 この文章を読んだときに、権利を履行するだけではなくて、義務も果たさな ければいけないのですよということを強調したいのかなと思って読んだのです。 ○増田委員 それを強調しすぎることは問題です。この研究会がなぜあるのかという意 味を考えると、やはり、不幸を被る者がいるからです。不幸を被る者は異議申立てをす るとか、あるいは、労働組合で団結して闘うとか、そういうことがない限り、救済され ないのですよね。それをマナーやコミュニケーション能力に矮小化してしまうような表 現になっていると思います。 ○原委員 言われてみたらそうだなと思いました。書き方の問題かなと思うのですが、 おっしゃる意味はよくわかります。 ○佐藤座長 そうすると、もし13頁を整理するとなると、家庭の箇所を少し削るので すね。要らないものは落とす。そういう意味では、落としてしまうというのは1つかも しれないですね。どう書くかですね。 ○鯨井政策企画官 情報と、知識だけではなくてコミュニケーション能力などの角度は 必要だと思います。必要性だけ指摘して、具体的な取組みについては、労働法だけが問 題ではないので、そこについてはあまり具体的に言及しないという感じで書いてはどう でしょうか。 ○佐藤座長 そうすると家庭のところがやや広いというご指摘があったので、ちょっと そこは修正したほうがいいかもしれません。ただ家庭の役割は重要なので、やや広がっ ているところをちょっとスリム化してすり落とすということを検討してみてください、 うまくいくかどうかですね。 ○田平室長補佐 はい。修正等を考えてみますので、ご相談させてください。 ○佐藤座長 ほかには何かありますか。 ○増田委員 19頁の「情報提供機能及び相談体制機能の充実」と、「労働法令をわかり やすいものにしていく」という意味で、これまでの研究会で言い落ちていたと思うこと は、例えば、現在起こっている大きな問題で、外国人労働者について、特にペルーやブ ラジル等のニューカマーという人たちについての問題があります。ハローワーク等の各 窓口では、スペイン語やボルトガル語等でパンフレットの作成などを行っています。例 えば視覚障害者に対して、点字の出版物を作成するといった努力は、やはり行政には求 められるものだと思います。この研究会自体の問題意識とは違うかもしれませんが、で きればそういうことも視野に入れて、今後の労働法制に対するいろいろなことを進めて いただきたいなと思っております。 ○佐藤座長 いまみたいなのは労働法制だけでなくすべてですよね。だから例えばホー ムページなども、音声で読み上げるようなものを作っているとか、いろいろやっていま すよね。それも、厚生労働省としてやらなければいけないことがあると思うのですが、 今回は含めなくてもいいのではないかと思います。大事ではないという意味ではないで すよ。ですから、ホームページの作り方でも、いま英語もあるのかよくわからないけれ ど、それがいいかという議論もあるし、視覚障害の人などには、企業等では音で出した り、グラフィックの工夫やインターフェイスなどいろいろなやり方を講じていますよね。 それは大事だと思います。  ほかにはいかがですか。「はじめに」の所で、なぜ今回のテーマが重要なのか、働く人 たちにとってということを、わかるように書かせていただくということ、あとは、知識 について、狭義の知識と広義の知識があって、狭義は権利のところだけれど、もう少し 広く、問題があったときの課題解決の方法とか相談先みたいなことを含めたものを提供 するということ、それにあわせてコミュニケーション能力とか課題解決、行動能力みた いなものが大事だということをIIの1に書いていただくことなどがご意見として出てき たかと思います。ただ、下のコミュニケーション能力や課題解決の2つについては、そ れは家庭とか学校教育、企業等の場で、ある面で社会人として生きていく上で必要なも のとして当然きっちりとやってもらう。今回は、狭義の知識ともう少し広義の知識、そ このところの付与の仕方について整理したというような形に整理するということでいか がですか。ですから、そういう意味ではちょっと書き込みすぎているところ、足りない ところがありますので、すぎているところは削り、足りないところは足すというような 形にする。 ○上西委員 別の話ですが、報告書本体が公開されるときは、実態調査報告書もホーム ページで公開されるのですか。 ○田平室長補佐 セットになる予定です。先ほど申し上げたように、参考資料の中に入 れる予定です。 ○上西委員 それは是非そうして下さい。従来の研究会だと、調査結果があっても、詳 細なことがわからないで、表だけが出てくるといったことがありました。これだと調査 票もありますしクロス集計もありますので、わかりやすいです。こういう研究会のとき に、いつも、きちんとした調査報告書もつけていただけるとありがたいです。 ○佐藤座長 ところどころに、第○回研究会資料や研究会報告と注釈が記載されている 場合がございますが、ホームページに載っていると書いてはどうですか。つまり、高校 の取組については、もっと詳しいものがホームページに載っているのですよね。そうい う情報を記載してはどうですか。 ○田平室長補佐 各回の資料はホームページに載っております。 ○佐藤座長 そうですよね。それがわかるように注に、何回の資料とか書いてあるから、 ホームページにあるとわかるようにしたらどうでしょう。 ○田平室長補佐 そうすると、例えばアドレスを書いて、そこからすぐ入れるようにす るとか、いろいろ工夫してみます。 ○佐藤座長 報告書には、エッセンスだけしか載っていませんが、ヒアリングで大事な お話もあったので、工夫していただきたい。 ○田平室長補佐 はい。 ○佐藤座長 資料にはアンケート調査も載るという形になります。佐藤委員、何かござ いますが。 ○佐藤委員 すみません、遅くなりました。いただいた文書に基づいていくつかご意見 を申し上げていますので、そこで私の意見はとりあえず、すべてだと思っています。 ○佐藤座長 狭義の権利に対する知識と、あとは、その周辺と言いますか、それを知っ て、これが問題だと思ったときに、どこに相談に行ったらいいか、どう行動をとったら いいかというのが広義の知識だとすると、それを知っているだけでは駄目で、やはりコ ミュニケーション能力ともう1つ、問題解決能力を加えようということになりました。 ただ、後者2つについては、どう教育するかというのは今回の報告書では触れずに、そ れは学校教育や企業、家庭それぞれに任せる。あるいは本人も別にやるということで、 基本的には狭義・広義の知識を、学校なり家庭や企業や地域で、働いている人たちにど う情報提供するかということを整理する。そういう意味で、「両輪」という言葉はちょっ と整理したほうがいいのではないかと思っています。 ○佐藤委員 そうですね。「両輪」にしてしまうと片方がない状態になってしまいますね。 ○佐藤座長 ええ。ですからそこはちょっと修正してはどうかと思っています。そうい うことをいま議論していました。  それでは、大体よろしいですね。今後の進め方は、今日のご意見を踏まえたものを整 理していただく。それを皆さんに見ていただくようにして、それでまたご意見があった ときの調整は、事務局と私にお任せいただく。つまり、もう一度見ていただきます。そ れで、さらにご意見があると思うのです。そうすると多少の意見の食い違いがあったり するかもわかりませんが、私のところで調整可能だと私が判断した場合は、私と事務局 で調整して確定版を作成させていただければと思います。ご意見については、再度確認 させていただきますが、いかがですか、そういう形を取らせていただいてもよろしいで しょうか。 (異議なし) ○佐藤座長 はい。それでは、スケジュール的にはどんな感じになるのですか。 ○田平室長補佐 今週中には今日の修正を反映したものを送付したいと思います。 ○佐藤座長 それでは、今週中ぐらいに今日のリバイスが届きますので、よく確認して いただければと思います。4、5日でご回答いただいて、そのあとは事務局と調整されて いただいて確定版を作らせていただく。そのあとの公表の手続についてはあとで事務局 から説明していただきます。  それでは一応そういう形にしたいと思います。今日のご意見を踏まえて、最終報告案 を確定させていただくということにさせていただければと思います。あとは事務的なこ とをお願いします。 ○田平室長補佐 先ほどの調査報告書の関係ですが、参考資料として報告書本体に添付 する予定のですが、調査報告書は調査報告書として別途公表したいと思っております。 本研究会の報告書では、調査票までは参考資料として添付したいと思っておりますが、 後ろの集計の部分は別途にするか検討中です。 ○佐藤座長 印刷物としてはという意味ですか。 ○田平室長補佐 そうです。調査のほうも調査として報告書を出したいので、そのまま 出してしまうと、別途にする意味がなくなってしまいます。その辺は事務的な話ですの で、整理をさせていただければと思います。 ○佐藤座長 いずれにしても両方とも公開される、ただワンセットの報告書かどうかは わからないということですね。 ○田平室長補佐 そうです。そのあたりの公開の仕方は検討中です。 ○佐藤座長 上西委員、そういうことのようです。そうしますと、時期的にはいつごろ を考えたらよろしいですか。 ○田平室長補佐 本日の議論を踏まえると、微修正というよりは、多少修正があるかと 思います。当初は、一週間以内ぐらいには公表したいと思っていたのですが、2月中を メドに、ホームページ上で公表させていただければと考えております。ですから、短期 間での調整をお願いすることになり、皆様にはご迷惑をおかけするかもしれませんが、 ご協力いただければ助かります、よろしくお願いします。議事録についてはまた、いつ もどおり公開という形になりますので、また皆さんにご確認いただいてから公表させて いただければと思っています。こちらもご協力よろしくお願いします。 ○佐藤座長 そういうことで進めさせていただければと思います。見ていただくときは、 細かいところも含めてご意見をいただければと思います。本日言い残したことがあれば 紙を置いていっていただいても結構ですし、また誤字や表現についてもご意見をいただ ければと思います。あとは事務局側で反映させていただくことになるかと思います。  今日は非常に大事なご意見を伺いました。趣旨は皆さん共通だと思いますので、それ を活かせるような形で修正していただければと思います。  それでは、まだ取りまとめの作業は残っていますが、研究会としては今日が最後とい うことですので、荒井政策評価審議官から皆様にご挨拶いただけるということです。よ ろしくお願いします。 ○荒井政策評価審議官 本研究会は、8月に第1回の研究会が開催されてから約半年間 6回にわたりご議論をいただきました。活発なご議論ありがとうございました。非常に 実りある研究会になったと思います。  労働組合の推定組織率が2割を切る中で、非正規の雇用が3分の1をこえてしまって いる。また、この非正規の方々も、昔のようなパートとは違った形で、まさに、自分の 生活を維持するという形になっております。そういう意味では、自分で自分を守らなけ ればいけない人が非常に増えているように思います。このような状況の中では、労働法 制を知るということに極めて重要な意味があるように思います。労働者の働き方が非常 に多岐にわたる中で、どういう形で対応していくかという困難はあったと思います。そ ういう意味では、全体像を捉えることが難しい中、ご議論をいただき、本日、まだ完成 品ではありませんが大まかな方向性がとりまとまりました。方向性については、これま でいただいた議論や今日の議論を踏まえて、緊急に取りまとめを行いたいと思います。  その過程の中では、文部科学省とも、さまざまなルートを使いながら、連携していき たいと思っております。  また、この研究会報告を具体化する中で、問題点があればその問題点を踏まえ、また、 さらに新しい問題が出てくればそういったことも踏まえながら、それは中長期の課題に なると思いますが、着実に進めていきたいと思います。  それから広報の仕方について、新しい法制度をわかりやすくというお話がありました が、実はいま厚生労働省全体としては、例の後期高齢者医療の問題を出発点にして、国 民に十分にわかりやすい情報提供を実施することを検討しています。国民に知らせると いう観点についても1つの大きなテーマになっていて、わかりやすい、国民の視点に立 った広報を実施していくということで、現在、どうすべきか議論をしていまして、その 一環としてホームページの在り方についても議論をしています。先ほど、音声というお 話がありましたが、今日からユーチューブで、最初は大臣ですが、音声で政策の説明を します。また、厚生労働省の政策を示すということをやっていまして、これから順次、 原則課室長クラス以上で、テーマごとに、画面を通し口頭で説明するということになり ます。そういうこともやっていきたいと思います。  それから、法制度の在り方につきましても、わかりやすく説明するということを今ま でもやってきたと思うのですが、これからも、その問題点や反省点を踏まえながらやっ ていきたいと思っております。ホームページの在り方もいま議論しておりまして、いか にわかりやすく使っていただくか、すなわち、国民の皆さんが見られたときに、すぐに、 ここをクリックすれば自分の情報が取れるということがわかるように少しでもわかりや すいようにするというような議論を内部でやっております。また外の方々にも、その点 を十分にご議論していただいているところです。そういうことも含みながら、今後、こ の報告書に記載されたことを着実に実行していきたいと思います。また今後ともご指導、 ご教示のほどお願いいたします。どうもありがとうございました。 ○佐藤座長 それではまだ宿題がありますが、一応、研究会としては今日で終わりにさ せていただいて、あと、改定版が届くと思いますので、時間をかけてゆっくり見ていた だいて、ご意見を伺えればと思います。熱心にご議論いただいてありがとうございまし た。 照会先:厚生労働省政策統括官付労働政策担当参事官室企画第二係(7992)