09/02/04 第9回労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会議事録 第9回労働・雇用分野における障害者権利条約のあり方に関する研究会  議事録 1 日時   平成21年2月4日(水)13:30〜15:30 2 場所  厚生労働省共用第7会議室(5階) 3 議題   主な論点ごとの検討   第1 基本的枠組み   第2 障害を理由とする差別の禁止 4 資料   資料1 これまでの整理   資料2 主な論点ごとの検討   参考資料1 雇用及び職業についての差別待遇に関する条約(第111 号)について  冒頭:事務局説明 ○座長  ありがとうございました。それでは、今日は先ほど申しましたように、基 本的な枠組みの部分と障害を理由とする差別の禁止の部分について、前回に も増して深く議論していただければと思います。何でも結構ですので、どう ぞ。まず、最初は前回私がこういうことを言ったのに、それが書かれていな いとか、間違えて書いてあるみたいなことがあれば、それをお聞きします。 なさそうですね。それでは、ご意見をお願いいたします。では、松井委員ど うぞ。 ○松井委員  雇用率を巡る問題ですけれども、この論点整理がされている中で、下から3 つ目の、雇用率を上げるべきではないかという意見はかなり広くあると思う のです。特に、現在はご承知のように、精神障害の方については、カウント はされるけれども、義務化はされていないという状況になっていますが、今 回の条約批准に関連して、そこまで一手に行くべきではないかという意見も あると思うのですね。ですから、とりあえずは身体、知的、精神、さらにそ れに含まれていない方々、今回議論になっているように、例えば、いわゆる 障害があるとみなされる、あるいは家族に障害があるために不利益を被って いる人たちも現実にいるので、もちろん、いきなりそこまでは広げられない にしても、精神の方、あるいは発達障害という方を含めると、おそらく今の 1.8ではなくて、どれぐらいそれをカウントするか分かりませんけれども、少 なくとも3%ぐらいは妥当ではないかというふうに思うのですが、要するにポ イントは、精神をこの際きちんと位置づけるようにすべきではないかという ことです。 ○川崎委員  松井先生ありがとうございます。実は、これは後から主張しなければと思 っていたことなんですけれども、やはりずっと知的、身体での雇用率制度で あったわけで、ここでやはり三障害一元化というような問題もありますので、 この精神の義務化ということは是非とも私たちは盛り込んでいただきたいと 思っております。以上です。 ○今井委員  この部分(資料1「これまでの整理」)でございますけれども、2つありま して、1頁下から3つ目の文章だと、最後が、「意見もあった」となっていま すが、私の記憶では、大半の方がそうではなかったかと思うので、この表現 は適切ではなくて、意見が多かったというふうに是非変えていただきたいと 思います。それに反する意見は一つも出なかったと記憶しております。  それからもう1つは、発達障害を、精神障害の中に入れるというのではな くて、1つの障害の分野として捉えるか、もしくは全体として、障害名をな くするというのか、どちらかでお願いしたいと考えております。 ○座長  どうぞ。 ○松井委員  合理的配慮を巡っての議論ですけれども、諸外国を見ても、基本的に障害 者雇用を進める上において、それほど実際には費用はかからないというか、 だから、これまでは割合慣れていないというか、雇用していない事業主につ いては、障害者雇用に伴って、かなりいろいろ負担が伴うので、ですから、 そこはできるだけ避けたいという意見が多いと思いますけれども、例えば、 アメリカにしても、あるいはイギリスなんかにしても、実際には平均すれば、 数百ドル程度の問題であって、そんなに大袈裟に構える必要はないのではな いかということがあると思います。そういう意味では、今回、合理的配慮が 入ることによって、むしろ益々一層大変だということになりかねないので、 そこは、やっぱり教育というか、実際がどうなのかということをきちんとP Rする必要があるのではないかと思います。もちろん、中にはかなり費用が かかることもあり得るでしょうけれども、少なくともそういうケースについ ては、然るべく、例えば、それは納付金に基づく財源が適当かどうか分かり ませんけれども、少なくともそれは事業主の一方的な負担で対応するという のではなくて、やはり、事業主が対応できるようなサポートをきちんとする という形で、それは、既にフランス、ドイツを見ても、そういう形でやって いますので、そこは常識的な範囲で対応できるような仕組みをきちんとつく っていくということが望ましいと思います。 ○今井委員  今のご意見とも少し関係するかと思うのですが、資料1の基本的枠組みの 枠組みというのは、この権利条約、特に合理的配慮を法体系の中でどういう 位置づけで、どういう狙いでやっていくのかというところが必要だと思うの です。これまでの議論でも、差別禁止がまずあって、その差別の構成要件の1 つとしての合理的配慮の否定というとらえかたがあります。確かに国連権利 条約の中にもそのような文言があります。しかし、そういう、どちらかとい うとネガティブな意味というよりも、今先生がおっしゃったように、第1回 の時でしたか、ご報告があったと思うのですが、むしろ、社会参加なんだと。 社会に参画するのに、障害者の場合には合理的配慮が行われることにより、 より一層加速されるんだということ。この研究レポート(「障害者雇用に関す る合理的配慮に関する研究」)にもよく書かれているんですが、配慮のある形 を求めるというよりも、アプローチの方法、効果的な合理的配慮の内容を、 雇用側も、障害者の側も、互いに歩み寄って求めていく1つのアプローチの 方法だとしています。それを促進するのは法的にどうしたらいいかと捉える のか、差別禁止ということで捉えるのか。結果として随分意味合いが違って くるのではないかと思っていたんです。ただし、今回は合理的配慮のことを 集中的に議論する場ではないということなので、できれば、その部分を次回 なりに議論するか、そこは非常に重要な問題だと思っています。 ○座長  今の今井委員のお話しは、非常に重要な基本的な見方の問題だから、基本 的な枠組みのところで、きちんとそういうことを明記しておいたことも含め てですね。 ○今井委員  そうですね。その考えを明記する。似たようなことを前回花井委員の方か らもお話しがあったと思います。育児・介護休業法では、必ずしも差別とい う概念ではなくて、具体的な配慮の内容が法で決まり、各会社がその法に沿 って、休暇を社内規定化していると思うのですそういうことが行われて、出 産・育児でも雇用がが継続されるということが保障されているわけです。そ う考えてみますと、もちろん合理的な内容が障害者とは別ですけれども、法 的な対応として、必ずしも差別禁止の方でやられてはなかったんだなと、改 めて考えました。そこを、他の委員の皆さんはどうお考えになるのか。その 合理的配慮について、あくまで差別禁止のことだけで捉えるのかどうか。こ この会議は、主に合理的配慮を中心的に議論しようということで最初スター トしたようなところがあったものですから。 ○高齢・障害者雇用対策部長  よろしいですか。今日は岩村先生がおられませんけれども、今おっしゃっ た部分というのは、この問題を考えていく場合に、2つの切り口があると思 います。1つは今、今井さんがおっしゃったように、障害をもっている部分 について、いろんな形で配慮する。要するに合理的配慮を提供する。それに よって、きちんとした形で、障害を持っている方が働けるようにする。これ は、そっちの面からのアプローチとしては、重要な考え方だと思います。た だ、一方で、では差別禁止という概念は要らないかというか、それはそうで はなくて、合理的配慮をする、しないに拘わらず、とにかく障害をもってい るから雇わない、こういう方は雇わないとか、ということ自体が、ないわけ ではない。だから、そこは、善意なものとして、合理的配慮だけ考えればい いということではなくて、やっぱり、障害がないから雇いませんとか何とか という部分も、ちゃんとなくしていくという、基本的な法制は必要ではない か。これは、今、育児・介護休業の話をされましたけれども、例えば、男女 の性による差別をどうするか。やっぱり、そこは、女性が育児とかの部分で、 女性と男性の機能の違いというところだけ配慮すれば済むかというと、必ず しもそうではなくて、我が国の社会において、女性であるということだけで、 いろいろな形で雇用の関係で差別された部分がある。すると、それをなくす ためには、差別禁止という部分もやる中で、働きやすくするために、別途、 育児休業法とかがある。そこは、そういうことだと思うのです。ですから、 障害者の問題を捉える場合に、これは差別禁止は離れてと言ってしまうと、 やっぱり、それでは済まないのではないか。それから、条約との対応という 意味においても、やっぱり、差別はちゃんと禁止しろということになってい ますから、その枠組みは、そこは前提とした上で、その合理的配慮をしない ことを差別というのか、差別を禁止した上で、合理的配慮を進めるような形 で枠組みを仕組むのか。そういう議論はあり得るのかなというふうに思いま す。 ○今井委員  私も同じ意見なんです。つまり、合理的配慮を差別禁止との関係で捉えな いでよいとは思っていないのです。ですから、二本立てが要るだろうと思い ます。今日は、そのうちの片方を議論しましょうということだったら、それ で賛成です。一方、社会参加促進としての合理的配慮というのを中心的に議 論するという時間も設けていただけたらというふうに思います。二本立てが 要るんではないかと私も思います。 ○座長  今井さんのお考えですと、差別禁止のための合理的配慮というのは、何と いうか、最低基準、そんな感じですかね。さらに、そこから、ちょっと結果 が違うだろうとおっしゃったので、出口がどういうふうに違うんだろうかと、 いろいろイメージを想像していたんです。 ○今井委員  前回の議論にもありましたが、差別禁止というと、やれ係争問題だという ことで、裁判に訴えるという方向に行くと、特に、発達障害の人、あるいは 精神の方もそうかも知れませんが、やはり外見上障害が分からないので、意 図的ではない攻撃を当事者にしてしまうことがあるわけです。一例を言えば、 「1年も経っても、まだそんな仕事をしているのか。そんなことでは首にな るぞ」と言われると、当事者によっては、首になるというふうに理解し、励 ましとはとらない。人によってはそういうことを、配慮してしゃべらなけれ ばいけないわけですけれども、決してそういうのは、即裁判だとか、訴える ぞという話ではなくて、互いに歩み寄り、互いに解決策を見出していく。そ れを促進する法的バックアップが必要だというふうに思っているんです。 ○松井委員  ご承知のように、障害の定義について、私も発言していますけれども、従 来であれば、機能障害と訳し、本人の努力で克服すべき問題であるというふ うに、まだまだ一般にはそういうふうに理解されていると思うのですね。そ ういう意味では、この条約でいっているように、環境の制約による相互作用 であるという。だから、その環境制約というか、社会の側がそういうふうに 制限してきた部分について、あまり焦点が当てられていなかった。ですから、 そういう意味では、この条約の差別禁止の部分というのは、かなり社会に対 する教育的な視点があると思うのです。ですから、そういう意味では、やは り、合理的配慮についても、従来社会の側がやってこなかったことに対して、 きちんと対応するということを明らかにするという意味で、意味があるので はないかと思っています。 ○座長  この「配慮」というのは、英語では何でしたっけ。アコモデーション accommodation ですか。ちょっと日本語の配慮とニュアンスが違うな。 ○松井委員  ですから、人によっては、やっぱり配慮というのは、上から下にというか、 そういう対等の立場での配慮というのは、普通は言わないですよね。だから、 人によっては、配慮ではなくて、便宜供与の方がよいのではないかという人 もいます。 ○今井委員  英国では、一種のアジャストメント adjustment、合理的調整と呼んでいま すね。英国自閉症協会の方も。 ○座長  他にどうでしょうか。どうぞ。 ○笹川委員  前回欠席しましたので、ダブルこともあるかと思いますけれども、まず、 法定雇用率の問題です。先ほど松井委員から3%ぐらいというご意見が出まし たけれども、何れにしても、今の1.8%というのは、大変低いと思います。で すから、まずこの法定雇用率を高めるということが1つあるかと思います。  それから、これまでの意見でも出ておりますけれども、法定雇用率の中身 の問題です。今はただ単に雇用率で出しておりますけれども、その中身が、 例えば身体障害者、その中でも、視覚、聴覚、肢体、内部というようなもの があります。そういう部分がほとんど分からない。そういう状態で、ただ雇 用率を論じても、意味がない。明確にその辺が出せなければおかしいと思う んですね。私どもの団体では、再三このことは主張してきているんですけれ ども、未だにその点が明確にできません。何故できないのか、我々としては 理解できません。この辺は、やはり、今後の対策として明確にしていく必要 があるのではないか。  それから、ダブルカウントの問題ですけれども、これは、雇用率を上げる という意味ではいいかも知れませんけれども、実際上の雇用という面から見 ますと、重度の障害者というのは、結局は敬遠されてしまうという結果にな っております。例えば、両上肢がない方ですとか、全盲の者とかは、雇う方 からすれば、当然一番敬遠しやすい、せざるを得ない者かも知れませんけれ ども、ダブルカウントがあるために、その人たちはほとんど雇用に繋がらな いという実態があります。ですから、この辺は、やはり、もっと検討する必 要があるんではないかと思います。是非、その辺も、今後十分検討をお願い したいと思います。  それから、雇用率の中で、先般、ある会合で質問をしたんですけれども、 地方公共団体の雇用率の問題です。障害者基本法の中では、地方公共団体は 積極的に障害者を優先的に採用すべきだという項目がありますけれども、確 かに雇用率は達成しているようでございます。しかし、その中身がまた全然 分からない。その中に、重度障害者がどの程度、何パーセント雇用されてい るか。この辺は全く不明確ですから、そういう意味からすると、やはり合理 的配慮、平等な雇用という点から、いろいろな問題があるのではないかとい うふうに思います。以上です。 ○座長  どうぞ。 ○小野氏(森委員代理)  代理で出席している日身連の小野ですけれども、今、笹川さんの方から意 見があったのはよく分かるんですけれども、よく昔から障害者の雇用を伸ば すためには、法定雇用率を上げろという議論がありました。ここにも何人か 専門家の方がいると思うんですけれども、歴史の中では、25%ぐらい雇用率 をかけた時代もあったんですね。第一次世界大戦と第二次世界大戦の間です。 それから、戦後においても、フランスなんかは10%を出して、あまりにも高 いので、ある時、80年代から、4%、5%、6%と上げていったんですね。でも、 なかなかうまくいかないわけですよ。まして、今1.8でも、この30年ぐらい なかなかうまくいっていないのに、ただ雇用率を上げるということだけが、 果たして障害者雇用促進のためにインセンティブになるかといったら、これ は非常に疑問だと思います。  変な言い方をしますと、そういうことをやると、行政の方に怒られてしま いますけれども、お金だけ貯まってしまう可能性があるんですね。実際には そうならないと思うのですけれども、理論的に言うと、そういうことが起こ ってきて、率は上がらない、お金だけ貯まる。すると、国会でワンワンやら れるわけですよ。我々も経験があるんですけれども、これをどうにかして吐 き出して、障害者を雇用するような助成金をつくれとか、支給金を作れとい うのが来るわけです。何回もそれをやった歴史が我々にはあるわけです。そ れでもまだこういう状態なんですから、確かに低いかも知れない。だけど、 それを今の現状のやり方でもって、1.8を変えるというのは難しい。だから、 1.8はそれなりの日本的な、理論的な根拠があって作った数字なんですね。と ころが、ヨーロッパの場合には、あんまり根拠はないんですよ。大体10人に 1人ぐらいだろうといってやったんですよ。そういうところですからね。だ から、単に皆さんのお話しを聞くと、ヨーロッパの雇用率は割と高い。それ に比して、日本は低いんじゃないか。それはちょっとおかしい。日本より低 い国はたくさんあります。0.5だとか、1.0だとか。そういう国も途上国には たくさんあるわけですね。だから、それはどうやって決めているのか知りま せんけれども、我が国においては、少なくとも一般労働市場の状況と等しく するようなという前提の下に作った数字なのであって、それなりの合理性は あると思うのですね。だけども、なかなか達成できないというのは難しい。 だから、それは法定雇用率を上げるだけがインセンティブになるとは私は思 いませんし、むしろそういうことをやるならば、今度は能力開発の問題が出 てくると思うのです。それを上げたのはいいが、それを充足するために、能 力のある人たちをどういうふうに育成していくかという問題は解決できたか。 我々がやってきた歴史の中で、それはなかなか解決できない。今でもこうい う状況なわけです。だから、私はそれは簡単にはできないと思います。  それから、もう1つ、ダブルカウントというのが、重度障害者を雇用する ことに対して、マイナスに作用しているんではないかという話でしたけれど も、私はそうではないと思います。大体、今まで私たちの見てきたところで は、雇用調整が起こった時に、一番初めに退職させられるのは一般の人です。 次が、割合と軽い障害をもった人。重度の障害者の方は最後に残るわけです ね。そういう意味では、重度の障害者に対して、雇用していくというための1 つのインセンティブになっているのではないかと思うので、ただ、ダブルカ ウントが1人の人間を2人に勘定するのはおかしいとか、そういう議論もあ るかも知れないですけれども、もっと違った意味から考えるべきだと思いま す。そしたら、逆に言うと、精神障害の方々を0.5にカウントするのは何だ という議論に対して、明確に答えができるかどうかということだと思うので すね。ですから、そういうことを総合的に考えると、やっぱり、あんまり雇 用率の数字をいじってもどうしようもないので、やっぱり1つは能力の開発 ということを本当に考えるかどうかです。私なんか見ていますと、結構難し いんじゃないかと思うんですね。極論すれば、人間の能力は無限だというこ とをよく言うんですけれど、これは何と言ったらいいか、収斂していくとこ ろがあるんですね。そうだったら、それがないのか。その議論は全然ないわ けですよ。どんどんどんどん無限というのはいくらでも続くわけですからね。 ちょっとでも進めば無限だというのか、それとも、極限値がある無限なのか どうかということがあります。議論しないまま、ただ能力というのは、開発 すれば無限に進むものだという、そういう言語だけが動いてしまって、人間 の可能性はそういうものだというふうに信じていますけれども、それはあま りにも現実的ではないと思います。  ちょっと言葉がきついかも知れないですけれども、私は現実的には、雇用 率の問題も然り。ダブルカウントの問題も然り。それよりも大切なのは、能 力開発というのは、果たして本当にどのぐらい可能なのか。これははっきり すべきですね。駄目なら、駄目という問題が出てきてもいいと思うのです。 これは、例えば、私がいくら名コーチについて、100メートル駆けても、10 秒フラットでは駆けられないのと同じものであって、人間にはやっぱり備わ った能力というものがあります。もし、それを外すというのなら、労働力を 相対的評価とするのか、絶対評価とするのかという、一番労働のギリギリの ところを議論しないと駄目だと思います。それを議論した上だったら、いろ んな議論が出てくると思いますけれども、我々はやっぱり成果主義の下で、 相対評価をやらざるを得ないという経済情勢の中で近代というのは動いてき ていますから、そういうところから抜け出す道があるならばいいですけれど も、そうでないと、この議論はいくらやっても、もう前からやっていますけ れども、なかなか解決できないと思います。ちょっと話が長すぎてすみませ んでした。 ○座長  どうぞ。 ○笹川委員  今の議論を聞いていますと、つまり重度障害者はもう働く場がなくてもい いということなんでしょうか。私たちは、働きたい者は働こうということで 運動をしてきているわけですけれども、能力がないから、それはもう切り捨 てだということでいいんですか。 ○座長  小野さんはそういうことを言われているのではないというふうに私は思い ますけれども。 ○笹川委員  重度障害者の雇用についてはどうなんですか。 ○小野氏(森委員代理)  答えていいですか。重度障害者の方も能力があって、勤めている方もたく さんいらっしゃいます。それは、きちんとした技法があって、働く力がつく ということならば、これは働くことは全然問題ない。権利として当然だと思 います。やっぱりそれでも駄目だという人は出てきますよね。だから、それ はまた違ったサービスでやらなければいけないということも考えなければい けないということを言いたいだけなんです。ただ、働く、働くといっても、 いろんな働き方があるわけですから、一般の企業で雇用として働くという働 き方と、そうでない働き方がある。そうでない働き方をした場合には、もち ろん生活をしていくために十分な稼得能力がないとしたら、それは違ったと ころで補填するとか、何かそういうふうにやらないといけないだろうという のは分かりますけれども、全部働くというところから得るということは難し い方は、やっぱりいるんじゃないか。それを言っているだけです。それをど ういうふうにやっているかというのは、きちんとやってきているけれども、 なかなか゜難しいのではないかなというのが、この30年ぐらいの歴史ではな いかと思っているんです。それだけで、働いてはいけないというようなこと は、私は思いませんし、働けるようなうまい仕事、能力開発があれば、働く ことは当然の権利ですから、働いて当然だと思いますし、権利を主張しても いいと思っております。 ○座長  今日のテーマからすると、小野さんが今おっしゃられた能力開発によって 能力が上がるということがありますけれども、もう1つは、実は職業の場で の能力というのは、合理的な配慮の程度によって変動するということが前提 なんですよね。ですから、今日は実際に職業の場で発揮される能力のレベル というのは、職業訓練でどうなるかというものと、もう1つは、環境条件と いっていいんですが、合理的配慮の程度によって実は動くんだということが テーマになっているかと思うので、合理的配慮も忘れて欲しくないなと思い ながら、小野さんの話を聞いていました。どうぞ。 ○平田氏(田中委員代理)  ちょっとお伺いしたいんですけれども、一番最初の枠組みのところに、全 体像というところにありますけれども、障害を理由とする差別の禁止という ことで、国内法制において位置づけることが必要であるという意見が大勢で あって、現行の雇用率制度は有効であり、その差別禁止の枠組みとは矛盾し ないというふうにあります。ただ、そうなんでしょうけれども、本当に差別 の禁止ということで、こういうアプローチでいくのであれば、雇用率制度と いうのは不要になるというのがベーシックな考え方なのか、そうではなくて、 多分今の制度は、割当義務をかけて、一定程度という、そういう違うアプロ ーチをとっているんだと思うんです。そこは、私の理解が間違っていたら指 摘していただきたいんですけれども、政策的支援が必要という意味で、他の 分野の女性の問題ですとか、若年者については、事業主に何か努力してくだ さいという義務をかけているように思っています。雇ってくださいという意 味で。それから、高齢者については、企業に措置義務というんですか、制度 を入れてくださいと、それから、女性差別については機会均等法で禁止なん ですかね。そういういろんなアプローチをとっていると思います。ここで議 論をしている時に、本当に差別禁止というアプローチでいくのであれば、雇 用率制度はも要らないのかというように、入り口のところで見ているので、 そこは結果はもう問わないということで、そういう捉え方でいいのかどうか ということです。  それから、ちょっと別の観点なんですけれども、障害者雇用率制度につい て、関連する事項ということで、いろんな意見があって整理されているんで しょうけれども、法定雇用率の引き上げという指摘もありますけれども、そ ういうことも含めて、この場では議論をしなければいけないのか。差別を禁 止するために、法定雇用率を引き上げる。そういう考え方もあるのかどうか。 ちょっと教えていただければと思います。 ○高齢・障害者雇用対策部長  差別禁止型の法制度、法制度にするかどうかということはありますけれど も、国連権利条約においては、差別を禁止して、かつ合理的配慮も提供する 中で、障害者の型が障害をもっていても働けるような社会をつくりましょう というのが、これが基本的なテーゼだろうと思います。この部分だけから見 ると、現在の我が国の法定雇用率制度は、なくてはならないということには なっていません。ただ、国連権利条約の読み方としては、積極的な是正措置 についてはやってもいい。やってもいいということは、我が国の状況を踏ま えて、国連権利条約に合うような形での法制度は作った上で、積極的な是正 措置を必要とするかどうか。これは議論だろうと思っています。ただ、差別 禁止型法制を作ったら、必ず法定雇用率制度があってはならないということ にはなっていません。それは、我が国の現状の下でどう判断するか。事務局 で今回の整理で出させていただいたのは、今までのご議論を聞いていると、 国連権利条約に合うような形での差別禁止と、合理的配慮の提供という枠組 みは作るべきだというのは、大体の皆さんの意見だったように思いました。 そういう中で、法定雇用率をどうするかという議論はありましたけれども、 法定雇用率そのものをなくすべきだということは、遠い将来はどうするかと いうのはあるかも知れませんけれども、現状において法定雇用率制度をなく すべきだというご意見はほとんどなかったと思ったので、こういうまとめ方 をさせていただきました。  ただ、ご異論があって、研究会のまとめるのにそうでないというのであれ ば、それを踏まえた形になりますが、私どもの今までの捉え方としては、そ ういうふうに思っています。その際に、もう1つの問題として、法定雇用率 制度を残すとして、法定雇用率制度の在り方をどう変えるかという議論は当 然あり得るだろうと思います。これは、国連権利条約を批准するために、絶 対ここで変えなければいけないわけでもないですが、同時にやるかどうか、 いろんなことはあると思いますけれども、せっかく議論しているわけですか ら、議論があればここでしていただくというのは意味があると思っています。  ついでに、先ほど笹川さんや小野さんからのご意見もあったので、ちょっ と法定雇用率制度そのものについて、私どもの捉え方を申し上げます。例え ば、フランスの5%、ドイツの6%という数字というのは、はっきり言って、 数字の根拠をそれぞれの国に聞いてもよく分からない。特に、フランスの法 制度は、もともとは戦争未亡人対策の中で、実はものすごく高かった。対象 者も戦争未亡人がメインで、障害者も入っているというところから、だんだ ん戦争未亡人がいなくなる中で、障害者対応になってきた。このような歴史 的経緯があるのは事実でありまして、そういう中で数字が決まっております。 我が国の場合には、そうではなくて、全ての労働者、失業者を含めた働きた い方、これは健常者、障害者を含めたそういう方々、それから、障害をもっ ている方のうち、現に働いている方とか、働きたいということを希望されて いる方、この両方の割合を元に数字を出してきています。ですから、率を上 げるという議論をする場合には、例えば精神障害、発達障害等、今対象にな っていないところまでウイングを広げれば、この計算式の中で上がるという 考え方がある。ただ、それは、どこまでを対象にした上で、どこまで上げる かという議論だろうと思っています。それから、もう1つは、促進的な意味 で、現実にそういう数字よりは少し高めの数字を飛び越えて出すということ が絶対ないわけではないと思いますが、そうした場合には、企業側が雇おう としても、その時点で働くことを希望している障害をもった方がいないとい うことになると、その数字は絶対達成不可能な数字ということになってしま うという問題があります。ですから、そこのところをどう考えるか。もちろ ん、この数字というのは、いろんな合理的配慮がされたり、いろんな能力開 発がされれば、働きたい、働ける障害者の方が増えてくれば、固定的に1.8 というふうに捉えるということではないと思いますが、現在の企業社会との 関係の中でどう捉えるかという問題があると思います。  それから、重度障害者について、ちょっと我々事務局と笹川さんと捉え方 が違うので、ここだけちょっと言わせていただきたいのですが、我々ハロー ワークでいろいろ就職指導している場合には、むしろ重度障害、例えば全盲 の方はダブルカウントで、こちらの障害の方はシングルカウントですといっ た場合、もちろん受け入れ側のいろんな要素はありますけれども、この方で あれば、ダブルカウントになるんだったら、むしろダブルカウント制度があ るが故に、重度障害の方の就職が実現するというケースの方が多いというふ うに我々は捉えております。例えば、同じ視力の障害の方で、弱視の方と全 盲の方がいて、普通に考えれば、弱視の方が就職しやすい。ただ、企業から すれば、弱視の方だと2人雇って、全盲の方だと1人雇う。雇用率としては 同じ。ですから、ダブルカウントがあるために、弱視の方よりは全盲の方の 方を選ぶというケースは出てくるというように、現実的な機能にはなってい ると思っています。ちょっと捉え方が違っていればまた言っていただければ いいと思いますが、ハローワークの現場の状況としてはそういうふうに思っ ていますので、その辺をちょっとつけ加えさせていただきます。 ○(大久保委員?)  今この文章の中で、差別禁止の枠組みと矛盾しないという表現がありまし た。表現だけでいうと、確かにおっしゃるとおり、何故あえてこれを入れる のかなと、ちょっと気にし過ぎているのではないか。確かに雇用率制度に対 して、差別というか、そういう考え方もないことはないわけです。また、1.8 でいいのか、何故1.8というものを設けるんだという考え方も片方であるか も知れない。だけど、問題なのは、そういうことではなくて、これを積極的 差別是正措置という考え方、つまり、いくらかでも差別というものを解消し ていこうという意味の有効な施策として皆さんが考えているということだと 思うのです。そういうことでいけば、先ほどの1.8というのも、上げるべき だというより、いわゆる実効性ある措置として、どのぐらいのパーセントが いいのか。あまり高すぎると企業がかえって嫌になってしまうかも知れない。 非常に実現しやすい数字にしたりする。あと、さっき言った精神障害の方も 含んでいくというのは、私は賛成です。特に、今回、雇用促進法が改正され て、短時間労働も一応カウントするということになりました。そうすると、 やはり精神障害の方もそういう意味では、雇用しやすい。いわゆる片方の条 件をつくっていく。つまり、こういう合わせ業の中で、おそらくこの雇用率 制度が生きていくものだということで、何パーセントにしろとかということ よりも、一番ベターな実効性ある形に工夫してもっていく。今回の中小企業 に対する予算措置そのものがそうですよね。こういうのも当然そこに入って いくということで理解すればいいのかなと思っています。  それと、合理的配慮という先ほどの言葉で、捉え方をプラスでとるか、マ イナスでとるかというか、裏表で議論されていました。やっぱり最も重要と いうか、議論する上で課題なのは、前に松井先生がおっしゃったように、合 理的配慮というのは個人々々のニーズというか、こういうものをベースにし て、今回の権利条約で考えられている。この辺のところが単純な制度、仕組 みというところと違う。つまり、企業に求められるものとした時に、これを 具体的にどういうふうに対応していくのか。この個人的ニーズというのをど ういうふうに考えるのかというところが、大きな課題かなと思います。 ○松井委員  先ほど部長の方から詳しく説明があったのですが、差別禁止法の法律では 必ず特別の措置については、逆差別はないというか、機会均等だけだと実行 は上がらない。例えば、アメリカにしても、あるいはイギリスにしても、そ ういう形できていますけれども、実際に障害者雇用の実態はそれほど改善さ れていない。そういう意味で、いわゆる補足的というか、やっぱり差別禁止 だけではいかないということで、そういう積極的措置という形でなされてい るわけです。ただ、先ほども意見が出ましたように、日本は非常に厳密にと いうか、現在は1.8でやっているわけですけれども、なかなかそこはクリア されない。普通、例えば、企業が未達成の場合については、例えば3年間で 達成すべく採用計画を作るわけですけれども、それを厳密にやれば、当然3 年間でクリアするわけです。そういう意味で、何故それがクリアできないの か。だから、そういう意味で、いわゆる鞭だけでは、行政的なパニッシュメ ントだけではいかない。やはり、事業主が自らきちんと取り組むような、そ ういうことをいかにエンカレッジできるのかという、両方があると思います。 それにしても、今の1.8については、私も1.8はかなり低いと思うのですが、 それさえクリアできていない原因というのは、一体何なのか。例えば、さっ きの小野さんの話に関連するか分かりませんけれども、企業の方から言わせ れば、タマがないというか、雇いたくても雇う人がいないというようなこと がよく言われます。しかし、十分教育なり、訓練なりをして、きちんと本人 が対等に競争できるような仕組みになっているかというと、そのようになっ ていないということもあります。そういう意味で、本当に何が事実なのか。 では、そこを踏まえて、何がなされなければならないのか。どういう取り組 みをしなければいけないかというか、そういうことについても、本当はいろ いろ議論しなければいけないのではないかと思いますが、とりあえず問題点 だけにしておきます。 ○座長  何れにしても、この資料1で、今ここで議論になっているのは、雇用率制 度で、積極的是正措置に当たるとの意見が大勢であったと書いてあることに ついては、今お話しを聞いていると、やっぱり大勢であったということです ね。あとは、1.8がいいかどうかとか、その政策的な有効性はどうかとか、い ろいろ細部にわたってはありますけれども、基本は積極的差別是正措置に当 たるということなんですけど、一番最初問題提起された平田さん、いいです か。大勢であったということなんです。 ○今井委員  雇用率制度について、小野さん並びに平田さんからお話しがありましたが、 では現実はどうかというと、例えば発達障害者の雇用を喚起するための講演 会を企業の人事や労政担当の方向けにやって、アンケートをとると、ここに 来られた動機は雇用率達成ですよ。間違いなくそうなんです。ですから、雇 用率達成は有効に効いているんです。小野さん、そういうことです。  それで、1.8%が低いかどうかです。私は低いと思います。それを急に6% にしろとは申し上げませんが、今回もちょっと企業の範囲を増やすとかされ ました。その反応が明確に現場に現れていますよ。雇わなければいけないと。 急に数字を大きくするのは難しいが、厚労省さんも大変上手なので、うまく 妥協点を見出しながらやっていくということだと思います。雇用側の動機と いうのは、やっぱりそこにあるというふうに私も思います。  それから、これは小野さんと意見が違うんですが、雇用率の数字を上げて も能力がないから雇用促進に効果的でないかのようなニュアンスで私は聞き ましたけれども、そんなことはありません。能力がないからではなくて、う まい機会が与えられないからなんです。 ○小野氏(森委員代理)  私も分かるんですよ。だけども、なかなか職域が見つからないという現実 があるというのも事実なんです。だから、例えば、AさんならAさんがいて、 どういう仕事を与えたらいいか、やってもらったらいいか、探しても探して も見つからない。そういうことに努力されている事業主の方もたくさんいま す。その挙げ句であって、初めから、重いから駄目ですと、切ってしまう人 もいるかも知れませんけれども、今や国際障害者年あり、何々年ありで、実 のところ、障害者雇用に対する理解はかなり進んでいると思うのです。だけ ど、やっぱり自分の企業にとってふさわしい人がいないという理由で、どう しても雇えませんという事情が出てくるのはあるんじゃないかと思うのです ね。これは、私はちょっと違った立場なんですけれども、企業も我々と一緒 の社会に共存している1つの人格なんですよ。だから、我々は別にそちらの 側から発言しなくてもいいんだと言われればそれっきりです。企業もそうい う意味で、私は前に日身連でも議論したことがあるんですけれども、経営に 携わっている企業の経営者は、変な話ですけれども、株主に対してやっぱり 一定の責任があるわけです。それを無視してまでも障害をもっている人を雇 用して、自分の会社を赤字経営にすることはしない。急に赤字経営になると は思いませんけれど、非常に悪い例ですけれど、仮にそういうことがあった とすれば、そういうことがないようにすることが、やはり経営者としての役 割ですから、それは頑張るということがあってもしようがない。おっしゃっ ているのは、多分、折り合いをもっとしっかりつけなさいというご提言だろ うと思うんです。だから、私の感じでは、そんなに皆さん、無視していない で、かなり努力してくださっていると思います。 ○川崎委員  私はさっき小野さんのお話しを伺って、では能力のない障害者は何もでき ないのかと、最初受け取りました。しかし、私どもは精神障害者の団体です が、今まで能力があった人が病気を発症したために、今までの能力が発揮で きなくなっていて、しかし、それはある程度のサポートをしながら、少しず つそれが回復できていけるというのが障害者ではないかと思うのです。です から、能力開発校に行って、ちゃんと能力をもってきて、さあ来い、と企業 に構えられては、ほとんどの障害者がなかなか雇用の機会に恵まれません。 例えば、精神の人でいいますと、今まではコンピュータ会社のところで素晴 らしい仕事をしていた人が、できなくなって、それで、仕事を探していて、 結局お掃除の仕事です。お掃除の仕事ならあるんです。今言われたように、 仕事に職種がないというのは、ちょっとそれは、怒られるかも知れませんけ れども、企業側の傲慢とも取れてしまいます。今まで大学、大学院を出た精 神の人が、お掃除の仕事とか、トイレの仕事をしているんです。でも、それ でも一生懸命頑張っています。そういう事情も考慮いただきたいと思いまし た。以上です。 ○小野氏(森委員代理)  すみません。どうも。私にはそういうことは分かっていますから、承知の 上で言っているんであって、今の場合ですと、私は能力開発校へ行きなさい よというのではなくて、もっとマンツーマンのリワーク的なシステムもあり ますから、そういうような体制が今よりもっと良くなれば、そういう方も急 に職種を変換して、お掃除をやらなくても、あるサポートがあって、うまく やっていけば、元に戻れるし、元に戻れない場合でも、それに近いことはで きるだろうと思うのです。ただ、なかなかそういうノウハウが見つかってい ないというのが事実だという面も私は経験してきていますので、その辺がこ れからの課題ではないかと言っているだけで、やっぱり、今までの能力開発 には割とそういう面が欠けていたのかなという気がしますので、もし誤解し ていたらすみません。 ○座長  話題を変えようと思っているんだけれども。 ○今井委員  これは認識を変えていただかなければいけないと思うのです。それは、雇 用するノウハウ問題をいえば、ノウハウはないでしょう。ないからいいんだ という問題ではないんです。それは社員の中にもいろんな人がいます。いろ んな人を活かすには、ノウハウが必要です。妊娠している女性がいる時の配 慮すべきノウハウがわかっているのと同じように、障害がある人がいる時の ノウハウも必要ということです。ノウハウがないから進まないということで はなくて、いかにノウハウをつけるかということが、合理的配慮を定着化さ せることにつながると私は思います。  それから、これは重要な認識ですが、障害者雇用をしたから会社がつぶれ たという失敗経験は私は知りません。どの会社でそんなことがありましたか。 失敗した会社のほとんどはバブルに手を出したり、そうですよ。障害者をた くさん雇ったから、うちの会社はつぶれてしまったという事例が本当にある んですか。 ○小野氏(森委員代理)  僕はあるとは言っていませんよ。例えばの話ですよ。 ○今井委員  何故そういう仮定が必要なのかということなんです。論理上。論理構成上、 何故そのことが必要なんですか。 ○小野氏(森委員代理)  別に私は、A社がつぶれたとか、B社がつぶれたという話ではなくて、経 営をしている人にも会社を保持していく責任があるでしょうということを言 っているだけであって、別につぶれてしまったから障害者雇用が悪いとか、 そういうことを全然言っているのではありません。そういうような考え方で もって、経営者の立場というのはあるんじゃないでしょうか。私が言ってい るのはその程度です。 ○今井委員  そのとおりです。しかし、障害者雇用をこれだけ増やしたから、これだけ 収益が圧迫されたということを、株主総会で言うような経営者はいますか。 ということは、そんなことはほとんど影響していないんですよ。現時点のパ ーセントであれば。 ○小野氏(森委員代理)  でも、前に訴訟を起こしたことがありますよね。勝った負けたはちょっと 全部フォローしていませんけどね。あまりこういう議論してもしようがない んだけど、JALがやられたことがあったんですよ。JALの株主総会が、 障害者雇用をすることによって納付金を払っているんではないか。それは一 般の株主の利益に反するのではないかというので、訴訟を起こした。ちょっ と言い過ぎかも知れませんが、確かありましたよね。私もちょっときちんと フォローしていないので申し訳有りませんけど、ゼロということではないと いうことだけです。 ○今井委員  そんなこと、私も社長をやっていたから分かるけど、その種のことがゼロ ということはありませんから。いろんな考え方の株主さんはいらっしゃいま すから、そのことでびくびくするような話では全くないですよ。堂々と社長 が説明すればいいんですよ。 ○座長  私としてはですね。今何か、資料1の一頁目に集中しているので、実は2 ページ、3ページ目もご意見をいただきたいと思っているんですね。どうぞ、 松井委員。 ○松井委員  ここでも、1ページ、2ページ目にかかるんですけれども、いわゆる現在の 手帳制度というのは、機能障害に基づいて重度云々という形になっているの を、その職業能力に基づいた等級表をという意見もよくあります。これは、 厚労省も随分長くそういう職業能力をどう評価するかというか、どうそれで ランクづけるのかという研究も、かなりされてきているとは思います。しか し、例えばドイツはかつて一番最初は職業能力で重度といことを判定してい たわけですけれども、結局客観性というか、説明できない。それで、結局機 能障害に戻らざるを得なかったという実態がありますけれども、そういう意 味で、なかなか職業能力という場合、様々な場面があって、Aという職種に おいてはこのぐらいだけれども、別の職種においてはまた違う判定というか。 だから、そういう意味で、何か一つをすれば、それですぐに、あなたは50%、 70%というような形にはならない。そういう意味で、なかなか特定の部分に ついては、この仕事については、一般の人に対しては何パーセントだけどと いうような限定付きのものが出せるのか。しかも、それも結局、半年後、1 年後と変わっていくわけですから、そこをきちんとフォローできるような仕 組みまでできるんだろうか。そういう意味で、なかなか理屈としてはあった に越したことはないと思いますけれども、現実問題として、客観的にそれを 説明できるような仕組みをどう作るかというのは、容易なことではないと思 います。 ○座長  松井委員のポイントは、結局ずっと周り回って、やっぱり機能でみる以外 にないというお話しですか。今、いろいろお話しになったけど。 ○松井委員  いや、やっぱり機能だけではなくて、プラスアルファーが要ると思うんで すね。言いたいのは、恒久的な形の、あなたの能力は恒久的にこうであると いう形です。機能障害の場合は、ある意味では恒久的に言える場合がありま すけれども、しかし、職業に関しては、いわゆる一定の条件の中ではこうい う形のことはあり得るということです。だから、そこは全く無視していいと いうことではない。そこの見極めというか、機能障害プラスいわゆる環境な り、あるいは能力的な側面についても、客観的にどこでと言いにくいのは、 当然両方の要素というか、機能障害と能力面の両方を合わせてみる必要があ るんですけれども、そのための仕組みづくりをきちんとやらない限りは、な かなか有効性はないということです。 ○座長  何か論理的に考えると、今回は合理的配慮の問題を片方で考えて、合理的 配慮は人によっていろいろ違うから、要するに多様というのが入るわけです ね。多様ということを前提に職業能力でランクをつけようと思うと、極端な ことをいうと、一人ひとり、一つひとつずつ違うということですよね。そん なのは基準にならないから、ベースに帰ろう。ベースに帰ろうとすると、機 能で評価することになってくる。だから、論理的に職業能力で評価するとい うのは、非常に矛盾したことだなと思う。その多様性を前提にすると。それ でいこうとすると、我々は多様性をやめるといえば、話は別です。そうする と、合理的配慮の基本的な内容で、人によって配慮の内容が違うということ を否定しなければならない。そこを維持しようとすると、人によって違う。 それで職業能力を測る。そうすると、評価基準を無限に用意する。そうした 評価基準はあり得ない。しつこいようですけど、またベースに戻ろう。ベー スに戻ろうとすると、機能で評価するのと一緒ではないかということで、何 か職業能力で評価するというのは、合理的配慮なんかを片方に置くと、論理 的にあまり説得力がないような気がしているんですけど、いかがですかね。 ○大久保委員  大久保です。ちょっと整理したいんですが、まず障害者、あるいは障害と いうことを労働分野で考える場合、まず入り口があります。例えば採用とか です。こういうところの部分において、障害をもとに差別してはいけないと いう場合の障害をどう考えるか。これは別に雇用率制度とかと別に、切り放 すことは可能だと思うのです。そして、実際に雇用率制度や、そういう中で いう障害ということをどういうふうに考えるか。どういう対象にするか。そ れと、今おっしゃった、実際に一人ひとりの障害、こういう時のいわゆる職 業能力に関係する部分。こういうところの障害をどういうふうに考えるか。 おそらくちょっと性格が違うような感じがするんです。ですから、この辺の 議論を整理しないと、すごくこんがらがってきてしまう。  まず、さっぱりしたいのは入り口の部分です。入り口の部分では、別に雇 用率制度云々とか関係なく、つまりはっきり言えば、職業能力あるいは労働 能力も関係ないわけです。障害だけをもって、いわゆる差別するというのは おかしいということになるわけですから、この障害というのは、広く捉える ことができる可能性があるんですね。そして、雇用率制度とか、そういうの になると、いい悪いは別に、ある程度法律的にも概念がはっきりしている。 そういう形でないと、それこそ雇用率そのものが出せないということになり ますから、それはそういう形を用いるかも知れない。そして、最後に残った 一番難しいのが、その実際に現場で働いている方々のいわゆる障害に対して どのように考えるか。いわゆる職業能力あるいは労働能力です。この辺の評 価と、あと、事務局に聞きたいのですが、片方で、いわゆる最賃制から賃金 の減額制となりましたね。あの場合の労働能力という概念が一応ありました ね。その場合に、減額する場合、基準はどうなっているんですか。一応、あ るにはあるんですよね。 ○事務局  労働基準局でございます。正直なところ、最低賃金を直接担当していなく て申し訳ないのですけれども、この間変わった最低賃金法で今ご指摘があり ました、まさに減額特例ということで、要するに適用しないという意味では なくて、問題はその能力などに応じて、そこの程度というものをきちんと見 ていこうというものでございます。そこの見方に関しては、実際には確かい ろいろ評価するに当たっての考え方はあったと思うのですが、それについて は私自身ちょっと詳細に把握をしていないところなんですが、何れにしても、 多分今、大久保委員がおっしゃったように、障害についてどう配慮するかと いう時に、今の最低賃金の減額特例のところというのは、おそらくはこの能 力の問題なんでしょうけれども、確かに採用のものとはレベル感が違うよう に思えますので、そこの議論というのは、確かに整理としては要るのかなと 思います。直接お答えできなくて申し訳有りません。 ○座長  今の最低賃金に関してですか。どうぞ。 ○小野氏(森委員代理)  私は過去に最賃の適用除外をしてもらいたいという事業主がいて、どんな ふうにやるのか、立ち会ったことがあります。同じラインの人で、普通に働 いてる人がいます。その人と、そこに能力を測定してもらいたい人がいて、 作業をさせて、どのぐらいの遂行能力があるかでやっているのを見たことが あります。それで、例えば80%だったら最賃の80%ですよという形で、非常 に簡単といったら申し訳ないんですけれども、確かにこういう方法しかない のかなと思って見たことは1回だけあります。今は知りません。大分前の話 です。 ○座長  私は最低賃金の審議会にいるので、小野さんのおっしゃられたとおりです。 ですから、その時に、生産性の低さをどうやって測るかということがいろい ろあったとしても、言ってみれば、能力ではないです。アウトプットです。 アウトプットが少なければ、それに沿って減額してもいいということです。 ただ、全体的には、適用を厳しくしていますから、減額措置の対象者という のは非常に少ないです。詳しそうですから、どうぞ。 ○高齢・障害者雇用対策部長  詳しいというわけではないんですが、最賃の場合については、今、大久保 さんが言われた意味合いにおいては、要するに個別評価の話です。一人ひと りの能力を労働基準監督署において判断した上で減額の許可が出る。こうい うスタイルでございます。先ほど大久保さんが言われた話の中で、やはり法 定雇用率というのは、制度として運用しなければいけないので、今のものが 正しいかどうかは別にして、ある程度客観的な対象がないと、我々も運用で きませんし、企業の側も対応できないだろうと思います。  合理的配慮については、これは、この障害の人については必ずみんなそう だというのではないですし、就く仕事によっても違うので、これは個別評価 だろうと思っています。最賃はどちらかというと、個別評価の方に当たると いうことだろうと思っています。ですから、範囲その他という意味での考え 方とすれば、そういう整理ではないかと思っています。  2ページ目のところで、私ども全体の体制としては、要するに法定雇用率 という考え方よりも、もっと広く適用対象を捉えるべきだと皆さん方は思っ ておられると思ったので、2の最初のような捉え方でとりまとめをしてよろ しいかと思ったということと、ただ、後半といった場合にも、ではどの範囲 ということについては、少しご意見が違うところもあるかなと思ったので、 そこはもう少し議論があるのではないかと思っています。 ○松井委員  今、部長がおっしゃったように、合理的配慮というか、差別禁止の対象と いうものと、雇用率制度の対象というのは、やはり違うと思いますけれども、 しかし、全ての事業主を対象にするという場合に、先ほどの合理的配慮に伴 う経費の問題があります。大した金額でないにしても、かなり幅広くなりま すので、それに対して、必要な支援ですが、あくまで事業主の自助努力でや れという形には仕切れないでしょうから、だから、雇用率制度の対象でない 事業主まで含めて対象にする場合、そこの部分の財政的な支援がどういう枠 組みで可能なのかという問題にはなってくると思います。  それから、さっきの最賃の問題と、私が何回もここで話をしているように、 福祉的就労との問題に関わるんですけれども、減額措置という形でやるんで あれば、これは別に雇用契約はあろうがなかろうが、それは当てはめ得るの ではないか。だから、私が気にしているのは、結局、今の場合、福祉的就労 は雇用関係があるところ以外については、全く法的な網がかかっていない。 だから、例えば、5,000円払おうと、あるいは500円払おうと、それは施設 の経営者に委ねられている。だから、そこは本当に妥当なのかどうかという ところの、そこの検証はどこかでやる必要がある。だから、その減額につい て、例えば10%しか能力がないというのであれば、その標準の10%の賃金は 払えるようにというか、そこは何らかの形で、いわゆる福祉と雇用というふ うに分けるのではなくて、やっぱりどういうところで働こうと、そういうこ とはできるんではないか。  もう1つは、委員長ご存知のように、最賃の減額措置は全国で1,000何人 ぐらいでしょう。だから全然無視してもいい、何故そのぐらいの人数の人に そういう制度を置いておく必要があるのか。 ○座長  減額措置としてですか。他のケースもあります。 ○松井委員  なるほど。障害をもっている人にとつては、(減額措置は)本当にごくレア ケースであって。 ○座長  例えば、ヨーロッパなんかだと、最低賃金の減額対象というのは何十万と いると思いますよ。例えば、訓練中の人たちはみんな減額措置の対象だとか。 今おっしゃられたのは、この2ページ目のところで、部長もおっしゃられた けど、対象は障害者の範囲です。雇用率の範囲はいいんですよ。あれは積極 的是正措置だから。つまり、もう少し広めてというと、どうやるんですかね。 ○松井委員  ですから、それは(雇用だけでなく、いわゆる福祉的就労も含め)できる だけ幅広く捉えればいいと思います。(福祉的就労もカバーできるようにする ため)何かやらなければいけないでしょう。 ○今井委員  そこに戻る前に1ページのところで1件だけ、すぐ終わりますので。雇用 率制度について、きっと皆さん同じ意見だと思うのですが、「制度の位置づけ」 の2の方の、雇用率制度によって門戸が狭まったりという表現についてなん ですが、これはきっと雇用率制度そのものの問題ではなくて、最初にご説明 があったように、雇用率制度を個別に運用する時の問題で、職場の分離が定 着してはいけないということなので、「運用上」を一言入れられたらいいんじ ゃないでしょうか。  それから、今のおはなしの2ページのことなんですが、この障害者の範囲 は、雇用率制度の障害者の範囲と区別するのは、私もそうだと思うんです。 配慮の内容を細かく法令上明らかにするというよりも、障害がある人、ある いは今たまたま、うつとかその他で、従来の業務を遂行することが妨げられ るような条件ができた人とか、いろんなケースがあるので、むしろ、そうい う場合、どのように対応しようかという、配慮の内容を決めるのではなくて、 アプローチの方法を定めるということが可能であったら、それで、かなり実 際には救われるのではないかというふうに私は思います。 ○大久保委員  大久保です。そうですね。文言でこれを表現することも可能ですからね。 一定の支援が必要だとかですね。そういう形で表現してしまうことも可能で すね。これを具体的に何やかやということになると、法令上とか、仕組み上 とか、難病の方も含めてというようにと、どんどん広がっていくと、ちょっ ともれたりとか、いろいろかえって問題になるとかが出たりします。むしろ、 そういうふうな一定の支援が必要な人とかというふうにして、そして、その 解釈として、何とか等というふうに、よくやる手ですけれど、それをやって いくとかですね。だけど、ここはやっぱり本来、権利条約ということからし ても、対象は広いということはやはり意識すべきだと思いますね。 ○座長  大分2ページ目を言っていただきましたけれど、3ページ目はいいですか。 どうですか。 ○今井委員  ちょっといいですか。3ページ目の2行目です。この合理的配慮の否定と いう言葉なんですけれども、この表現で正しいし賛成なんですけれども、具 体的にいうと、雇用主が「おれの会社に合わせろ。おまえに合わせる気はな い」というようなことがいけないと言っているのであって、例えば、個別の 何か具体的な、個別の配慮について、「いや、それはできない」ということが、 全否定ではないんだろうと思うのです。つまり、合理的配慮をすること自体 を否定するということは、それは差別ですよということではないかと思うの ですね。 ○座長  今の今井さんの話は、要するに0か1の、0ということはいけないという 話でしょう。 ○今井委員  0か1かではいけないということです。 ○座長  すると、0.1、0.2、0.3、0.5というようにあるよね。 ○今井  そこは、可能かどうかという、歩み寄りの世界になってくるので、それは 第三者の意見を入れるとか、どう見ても、それはその程度のことはできるじ ゃないかとか。ある人は、蛍光灯だとどうしてもチカチカして、集中できな いので、直接目に入らないようにしてくれとか。それに対して、絶対そんな ことをする気はないとか。というようなことは行き過ぎだというようなこと は、やはり議論の中で、歩み寄ることではないかと私は思っているんですけ れど。 ○高齢・障害者雇用対策部長  後ろがなくて、ここだけ出していていたので、ちょっと意味合いがとりに くかったのかも知れませんが、ここで言っているのは、むしろ企業の方でそ れぞれ適切な合理的配慮を提供しなければいかんということが、条約上要請 されている。そのどういう合理的配慮が個々の段階で必要かということ自体 については、次回ご議論いただきますが、ただ、結局、我が国の社会なら、 我が国の社会において、その事業主に期待されているものを提供しないとい うのは、やっぱりいけませんよという意味なんです。だから、ここは合理的 配慮を最初から拒否するものがそうだという意味ではなくて、個別の状況の 下で、その事業主に期待されるものをしないと、やっぱりそれは差別ですよ ということを言いたかったのです。ちょっと文章がまずいかも知れませんが、 どちらかというと、そういう意味で書いたつもりです。 ○座長  そうすると、適切かどうか分かりませんが、ここの文章の気持ちは、合理 的な配慮を提供しないことがということですね。そういうことですね。 ○今井委員  今のことでいいですか。実際の募集の段階なんかを見ますと、会社全体で いろんなことを募集するんではなくて、職種限定で募集しますね。そうする と、ある荷物を持ち上げられなければならない。しかも、それは労働法規上 許されている重さの範囲内で。というようなことになると、その個別を見れ ば、一定のある人たちは適当でない労働力ということになる。そういうのを 全部積み上げていった時、結果として、その会社としては、障害者を雇用で きていないのと同じになってしまうというような場合もあり得ますね。だか ら、そういうのを具体的にどうするかとなると、なかなか難しい問題です。 職種別採用の場合には、全体としては合理的配慮をしていないのと、結果的 には同じになってしまう。 ○小野氏(森委員代理)  ちょっといいですか。合理的配慮というのは、今さら言ってもしようがな いんですけれども、これは訳がまずいんですね。というのは、日本人が合理 的といったときには、普通ラショナル rational で考えるわけですよ。だから、 フランスの訳を見ると、英語でいえばアプロプリエイト appropriate という 英語で使っていますよ。適切なという。あれの方が正しいんですよ。だから、 私は初めに出てきた時に、これはアプロプリエイトでやるべきだと言ったこ とがあるんですよ。合理的というと、こういう考えになってしまうんですよ。 ユニバーサルな考えであって、以前はみんなが分有していて、誰が考えても 同じだというのが、そういう考えの下の考えというのが、理性の問題だと思 うのですね。ところが、今やそういうグローバルとか、ユニバーサルの考え ではなくて、ローカルでいこうという。比喩的に言えば。そういう考えなん です。だから、今、今井さんがおっしゃったのは、ローカルの積み重ねをや っぱりやっていく以外にないと思うんです。それにいきなりユニバーサルな 文言を、特にこういう行政官庁から出てしまうと、分からなくなってしまう。 だから、その辺で、この合理的配慮というのはどういうものなのかというの を、実例で示すというのではなくて、簡単に言えば、これは常識でやってく れということなんだと思うのですよ。誰が考えても、そのぐらいのことはや ってあげなければいけない。だから、今おっしゃったように、例えば、こう いう業種には、これだけの力がないと上げられないというのは、これは例え ば、道具を使えば、重機か何かを使えばできるではないかと言われるかも知 れないけれども、そこまで要求されないんだったらば、やっぱり、これは無 理ですよというようなことは、合理的配慮を怠ったことにはならないんじゃ ないかと思うんです。だから、そういうものを積み重ねていかないと出てこ ないので、一般論として今我々が議論しようとしてしまうと、どうしてもそ こにぶつかってしまうと思う。だから、この概念は一体何なのかという、そ ういうような啓発が要るんではないでしょうか。ケースにぶつかった時に、 そこで初めて、これはどうとか。だって、地方によっても違うと思うんです ね。こういうような対応したのは、そこの地方にとっては、間違っていない けれども、違う地方に行けば、間違っているということは、日本の国の中だ ってあると思うんです。そういう時に、そこの住民が是認するならば、それ は配慮としては正しいし、それが是認できないのであったらば、おかしいと いうものであって、一般的に決めようというのが無理なんです。これは我々 もやりがちなんですけれども、全て日本人は平らな地面からできていると思 って仕事をやっていない。やっぱり坂あり、谷ありで、いろんな条件があり ますから、やって見て、だんだん出てくるものであって、基本的なところだ けをきちんと言っておいて、あとは応用問題です。そういうような気がしま す。 ○座長  委員の方たちからいろんな意見をいただいたんですが、事務局としては、 この辺りを議論しておいて欲しいみたいなところがあったらお聞きしておい たらいいかと思うのですが、いかがですか。なければなくていいですけれど も。気になっていて、ここだけは議論をして欲しいとか。 ○高齢・障害者雇用対策部長  第2のところでいくと、合理的配慮の中身とか、それを個別にどう考える かというのは、次回の議論なので、そこはむしろ次回にしていただいて、こ こでは、間接差別みたいなものをどう考えるか。それから、そうはいっても、 結局賃金その他というのは、働き方とか、働いた成果に応じて払うわけです から、障害があるから必ずいくらということではなくて、それぞれ毎に評価 した結果が賃金に反映しているということ。それはいいですよね。という部 分と、この2つを書いたのですが、この辺は概ねこれでよろしいかどうか。 何かご意見があれば伺っておければと思います。 ○座長  いかがですか。はい、どうぞ。 ○松井委員  ですから、差異があるのは当然だというふうには思いますけれども、ただ、 自動的に、例えば、よく、ほとんど嘱託以外には採用していないという実態 があるんですね。だから、そこはやっぱりきちんと見る必要があると思いま す。だから、当然嘱託になってしまうと、正社員との問題、もちろんこれは ワーキングプアの問題はまさにそうなんですけれども、そことリンクしてい る話だと思いますので、やっぱりそこはきちんと対応できるようなことを考 える必要はあるのではないかと思います。 ○座長  この文章でいくと、合理的配慮が提供された上で、労働能力が適切に評価 されたものであるならば、結果として、差が生じても差別には該当しない。 この文章ですね。今、松井委員が言われたのが入っている文章ですね。 ○高齢・障害者雇用対策部長  松井先生が言われた中で、もう1つ論点があるとすると、障害者は雇って いるけど、みんな嘱託だというような話をどう捉えるか、というのはあるん です。そこについて何かコメントがあれば、言っておいていただければと思 います。というか、業務の中身に応じて嘱託もあるというのはあると思う。 あまり個人的な意見を言ってはいけないのかも知れませんけれども、障害を もっている人は必ず嘱託でしか採用しないみたいなことをどう思われるかと いうことだと思うんです。 ○座長  でも、この文章はそういうのをもう排除しているんではないですか。この 文章自身が。僕はそう思っていました。 ○高齢・障害者雇用対策部長  そういう意味も込められているとは思っていますが、ちょっと松井先生が 少しそこをコメントされたので、あえて言っただけです。 ○松井委員  やはり、実態がよく分からないと。例えば今、28万なら28万雇用されて いる人たちが、実際にどういうふうなカテゴリーになっているかというのが 分かりませんけれども、少なくとも、日々雇用されていても、いわゆるフル タイムで働いていれば、これは常用労働者というように定義されているわけ ですよね。そういう意味では、同じ常用労働者なんだけれども、嘱託という か、いわゆる非正規社員かどうかによって、条件は随分違うのでしょうから、 そういう意味で、その人たちがどういう労働条件で雇用されているかという ことは、やはりきちんと見てやる必要はある。 ○座長  先ほどから私が読んだ文章は、厳密にいうと章がはっきりしなくて、結果 として差があって、結果として何の差かが分からないんですけれども、普通 に考えれば、労働条件とか、反対給付に差が生じないというのだから、賃金 もそうだし、雇用契約期間もそうだし、そういうところで差が生じないとい うふうに読むのが普通かなというふうに思います。ここで、賃金はそうだけ ど、雇用契約期間は違うとか。すると、福利厚生は違うのかとか。そういう 話になってきますので、そこがついていないということは、そういうことだ ろうなと、私は思っていましたけど。 ○今井委員  非常に重要な問題だと思うのですね。現実論として、何らかの差が生じる ということは、その会社が、いわゆる正社員であったら、勤務地については ほとんど文句を言わせないという会社もあります。でも、そうだと主治医か ら離れてしまって、自分にとって適切な医療を受けられないということにな れば、それはやり過ぎです。ただ、現実に障害者が雇われた場合、発達障害 の人でも、やはり嘱託が多いんですね。でも、一般社員だと、いろんなこと が要求されてしまう。差別に該当しないかどうかよりも、中間グレイドの働 き方、正社員なんだけども、同じことを要求されないような仕組みができな いかどうか。その代わり、その部分の減額はかまわない。転勤は私はできま せん。その代わり、昇進その他について、一般の同期入社の人に比べて遅れ ることについては容認しますというようなことの納得が、互いにできていく という仕組みが大事だろうと思うのですけど、この文章では、必ずしもそこ までは読みとれないので、うまい工夫はないのかと思います。 ○松井委員  現在の雇用率制度は結局あまりクォリティーというか、例えば、人数は分 かるけれども、では、どのポストというか、どのぐらいのランクで、どのぐ らい反映されているかというのは分からない。ですから、そういう意味では、 今回、募集からそれこそ解雇まで、一連の中で見るのであれば、やはり一本 の率だけではなくて、やはりそこをきちんと、ポジションに反映されている のかどうかというようなことも含めて検討する必要があるのではないかと思 いますが。 ○大久保委員  大久保です。今のところの文章ですけれども、つまり合理的配慮が提供さ れた上で、労働能力が適切に評価された場合、合理的配慮しか入っていない わけですけれども、その前提として重要な、いわゆる差別そのものとしての 労働条件、これが同一でというような前提みたいなものを入れれば、ここは 少しはっきりするんではないですか。だから、ここで合理的配慮しか言って いないわけですよね。だから、労働条件が同一でということです。さっきお っしゃった、いわゆる嘱託とかですね。だけど、その以前に差別があったら、 これはもうどうしようもないわけですから。まず、それが同等であってとい う意味では、労働条件という表現かなと思いますが、そういうのが同一で、 かつ合理的配慮が提供された上でと。そこで労働能力の差が出てくれば、こ れはいた仕方がない。というぐらいではないですか。 ○座長  先ほど、今井さんが言われた配置転換の問題で、全国的な異動ができない といった時に、おまえ全国異動だと言われれば、もう働くのは不可能ですよ ね。そういうのは、どこから考えても、雇う時の一種の合理的配慮じゃない かと思うんだけど。本当はね。だから、非常に短い文章ですけれども、いろ んなことが全部入っている。そういう時に、今井さんが言われたように、そ の合理的配慮をするつもりがないということは、完全に雇う気がないという ことですよ。 ○花井委員  転勤の話が出たので少し、発言いたします。雇用における男女の差別を検 討していた時に、「女性が転勤できないから一般職でいい、だから賃金が低く てもいい」という議論がずっとありました。総合職、一般職の振り分けがそ うでした。育児・介護を抱えている女性は転勤できない。結果として、圧倒 的な女性が一般職、男はほとんど総合職、これは差別なんだということにな ったと思います。ですから、今井さんが何度もおっしゃるように、折り合い というのがとても大切だと私も思います。しかし、障害者が全て嘱託、ある いは、全て契約社員であるとすれば、それはやはり差別なんじゃないかと思 います。その上で、単純化して言うと、総合職的なところに障害者が入って、 そこで合理的配慮がきちんと提供されて、それでもなおかつということは、 男女の場合とではないか。男の人が全部転勤できるとも思わない。問題は、 男の中にもそういう人がいるのに、最初から男は全国転勤だと決めたことに 問題があったとすれば、障害があるないという、その考え方を変えていくと いうことであれば、雇用される障害者が嘱託であるとすれば、それは差別と 言わざるを得ないのではないかと思います。その上で、どうしていくかとい うことの検討ではないか。ちょっと結論ではないんですけど、感想めいてい ますけれども。 ○座長  これも論理的な話で申し訳ないんですけれども、差別、差があるとか、差 別されたという時、相手がいるわけです。相手は誰ということなんですよね。 今おっしゃられたので、同じような仕事をして、同じような能力の人が、も しパートだったら、では、パートと一緒でいいという話になりますか。それ とも、そのパートの人が正社員と同じような仕事をしていた時に、今度、パ ートの賃金がおかしいとか。要するに、こっち側の制度がいい、悪いまで、 踏み込むケースと、いや、これはこれで横に置いておいて、同じようなこと をやっている人との、ここでいうと、差別があったとか、差があったとか。 という問題は、多分詰めて行くとそういう問題があって、今の花井委員の話 は、かなりこっちまで踏み込んでいるんだね。こっちが、元が悪いからと。 だから、なかなか、この差がという時、誰と比べるんだろうというのは、本 当は難しいかなと、ちょっと思いましたので。どうぞ。 ○平田氏(田中委員代理)  時間がないので、一言だけ申し上げておきたいと思います。間接差別なん ですけれども、前回、雇用均等法の改正の時に、少しというか、概念として 入ったんですね。その時に、すごく議論があって、難しいということで、や りとりをしていたと思いますので、ここには該当するのではないかとの意見 があったと、さらっと書いてありますけれども、結構難しい問題だなという ふうに思っておりますので、意見として申し上げておきたいと思います。 ○座長  はい、どうぞ。 ○松井委員  私が要求して出していただいたんですけれども、この雇用及び職業の差別 待遇に関する条約の中で、この第5条の2のところで、2行目のところに、 性、年齢、廃疾、世帯上の責任又は云々と書いてありますけれども、この廃 疾というのは、英語ではディスエイブルメント disablement というふうにな っているんですね。まさに障害なんですよ。だから、ある意味ではリンクし ているわけで、これが日本で批准できないのは、先ほど部長がおっしゃった ような、第1条で政治的見解云々が入っているからなのかも知れませんけれ ども、でも、実際には障害問題とも関係しているので、これがクリアできな いと、障害者権利条約もクリアできないのではないかというふうなニュアン スをもったものですから。 ○座長  今度、この資料の時には、ここにもアンダーラインを引いておきなさいと いうことで。それでは、大分意見をいただきましたので、事務局にまたもう1 度整理をしてもらって、次は後半をやりますけれども、もう1回ぐらい全体 をやりますよね。その時にもう1度議論をしていただくということにいたし たいと思います。  それでは、次回の日程等について、事務局からお願いをいたします。 ○事務局  事務局でございます。次回第10回は、本日に引き続きまして、今度は主な 論点の後半としまして、職場における合理的配慮、それから紛争解決手続き、 等々について、ご議論をいただくということを考えております。次回の日程 でございますが、3月2日の月曜日、16時から18時の予定でございます。 場所については、申し訳ございませんが、未定でございますので、速やかに 確定の上、改めてご連絡をいたします。以上です。 ○座長  それでは、終わりたいと思います。今日は大変熱心な議論をありがとうご ざいました。次回以降もよろしくお願いいたします。では、終わります。 【照会先】   厚生労働省職業安定局   高齢・障害者雇用対策部 障害者雇用対策課   電話 03−5253−1111(内線5855)