09/02/02 第5回臨床研修制度のあり方等に関する検討会議事録        第5回 臨床研修制度のあり方等に関する検討会         平成21年2月2日(月)             15:30〜17:30           文部科学省16階 16F特別会議室 【高久座長】  それではちょうど時間になりましたので、ただいまから第5回の臨床研修 制度のあり方等に関する検討会を開催いたします。本日はご多忙のところを、また、週の 初めにご参集いただきましてありがとうございました。  前回の検討会の後に、この臨床研修に関係する団体の方々からご意見を伺うことにいた しました。本日は各団体から寄せられた意見を踏まえて、まとめに向けてのご議論をいた だきたいと考えております。  それでは最初に、資料の確認を事務局からお願いします。 【田原医師臨床研修推進室長】  まず、委員の出欠状況でございますけれども、本日、 能勢委員が欠席でございます。  次に、資料の確認をいたします。報道の方はここで、カメラの方の退室をお願いします。 (カメラ退室) 【田原医師臨床研修推進室長】  資料は、「議事次第」、次に委員名簿、座席表がござい ます。続きまして、資料1といたしまして、「臨床研修制度見直しに対する関係団体からの 意見の概要」がございます。A3の1枚紙になっております。この意見そのものにつきまして は、一番最後のほうにございます別冊1にまとめております。戻りまして、資料2でござい ますけれども、「まとめの骨子(たたき台)」でございます。  それから参考資料1といたしまして、「これまでの検討会での主な意見」、参考資料2とし て、「臨床研修に関するアンケート調査」の集計結果でございます。これは前回示したもの から追加したものをまとめたものでございます。最終ページというか、A3で折り畳んでお りますけれども、ちょっと色刷りになっておりますが、卒業大学の都道府県が左側、それ から上のほうに初期研修病院の都道府県との関係、これを集計したものを追加しておりま す。これにつきましては質問があればご説明したいと思います。  別冊1は、先ほど申し上げました関係団体からの意見でございます。さらに別冊2と別冊3 は冊子になっておりまして、2つございます。これは福井委員からの調査報告書でございま して、前回検討会で紹介いたしました、研修医の能力の向上等に関する報告書としてまと めたものでございます。  不足資料、ご不明な点がございましたら、事務局までお知らせください。  それでは、高久座長、引き続きよろしくお願いいたします。 【高久座長】  皆さんのお手元に資料があると思います。  それでは議事に入ります。本日の議題でありますけれども、まず最初に、臨床研修制度 見直しに対する関係諸団体からの意見について、これは事務局のほうからまとめて説明を していただきたいと思います。次に、まとめの骨子(たたき台)は、未定稿ということで お手元にあると思います。  本日の議事の進め方でありますけれども、先ほど申しましたように、関係諸団体からの 意見については事務局から報告していただきまして、その報告の関係諸団体からのご意見 を踏まえて、まとめの骨子を事務局のほうと、私のほうも少し相談してつくりましたので、 これにつきましていろいろとご意見をお伺いして、できれば次回ぐらいには、このまとめ の骨子を中心とした報告の案をつくりたいと考えておりますので、よろしくお願いします。  最初に事務局のほうから、臨床研修制度見直しに対する関係団体からの意見の概要につ いて、よろしく説明をお願いします。 【田原医師臨床研修推進室長】  それでは、関係団体からの意見の概要についてご説明 をいたします。資料1、A3の1枚紙と、それから別冊1をごらんいただきたいと思います。  前回の検討会では、臨床研修に関係する団体にアンケート調査をするということになり まして、別冊1の表紙にありますように、全国医学部長病院長会議など、計8団体に意見照 会をしているところでございます。質問事項は、研修の内容・期間、あるいは募集定員及 びマッチングの方法でございます。質問とその回答につきましては、別冊1のほうを詳しく ごらんいただいてもよろしいのですが、全体を見ていただくために、A3の1枚紙を用意して おります。その概要について便宜的に事務局で整理をしておりますので、このA3の1枚紙で ご説明したいと思います。両論併記のものもございますので、そういう場合にはそのまま 書いております。  まず、大きな1の左側、研修の内容・期間でございます。そのうちの(1)、特に基本とな る診療科を研修する1年間を主体として、その後は将来専門とする診療科に対応するという ような方向性についてご質問しております。関係団体の意見を縦に整理しておりますけれ ども、2年間の研修期間という点につきましては、全団体が同様の意見でございます。卒前 教育を充実するという前提で研修期間を1年とするというような意見もございました。研修 内容につきましては、この2年間の研修期間のうち、1年目に基本の診療科、2年目に専門の 診療科あるいは選択がよいという意見と、現行のようなスーパーローテートがよいという 意見がございました。  続きまして、(2)でございます。その特に基本となる診療科として、内科・救急、小児 救急を含むということでございますが、これを必修することにつきましては賛成する意見 が多く、現行どおりの必修科目とすべきという意見もございます。  続きまして、(3)でございます。内科を6カ月以上とすることにつきましてでございます が、これは妥当、賛成という意見が多くなっております。また、6カ月以上ではなくて3カ 月以上、あるいは期間を定めることは避けるべきであるというような意見もございます。  続きまして、(4)でございます。救急を3カ月以上とすることにつきましては、全団体お おむね賛成でございました。研修期間でなく症例数で規定すべきという考えや、あるいは 麻酔を義務づけるというような意見もございました。  (5)でございます。地域医療を1カ月以上必修とすることについての質問でございます が、必修とすることにつきましては、全団体おおむね賛成だったと思います。また、期間 につきましては、1カ月以上というのが多いわけでございますけれども、一律1カ月という のには反対、あるいは短いという意見や、指導体制について不安があるというようなご意 見がございました。  (6)は、現行制度では必修となっております外科、小児科、産婦人科、精神科を選択必 修、または必修としないということについてお尋ねをしております。これにつきましては、 選択必修とすべき、あるいは必修としない、現行どおり必修とすべきというふうに意見が 分かれております。  (7)につきましては、基本となる内科や地域医療以外は1診療科3カ月以上とすることに ついて、つまり各診療科の研修の単位を原則3カ月以上とすることについてお尋ねをしてお ります。妥当、賛成というご意見が多くなっておりますけれども、2カ月以上とすべきだと いう意見や、期間は自由にすべきだというようなご意見もございました。  1の(8)でございます。これは研修を開始する時点におきまして、将来専門とする診療 科の研修も選択できるようにするということについてお尋ねをしております。これにつき ましては賛成が多くなっておりますけれども、一方で、2年の研修の終了後に専門科目を選 択すべきであるという意見もございました。  続きまして、大きな2番目の募集定員及びマッチングの方法についてお尋ねした項目でご ざいます。(1)といたしまして、都道府県別に募集定員の上限を設けることについてお尋 ねしておりますが、これは賛成あるいはやむを得ないという意見が多くなっておりますが、 反対あるいは必要ないという意見もございます。  (2)の全国マッチングを行うのがよいか、それとも地域マッチングを行うのがよいかと いうことにつきましては、全国的なマッチングがよいという意見、地域マッチングがよい という意見、それからこれはマッチングとは直接関係ございませんが、研修管理施設を絞 って募集定員を適正化するということで対応してはどうかというご意見がございました。  その他、若干これに関連してご意見が述べられておりますので、そこに記載しておりま す。  事務局からの説明は以上でございます。 【高久座長】  どうもありがとうございました。今、事務局のほうから、関係各団体か らの意見の概要について説明がありましたが、委員の中にはこれらの団体に関係しておら れる方がいらっしゃいますので、何か補足されることがありましたら、どうぞご遠慮なく お申しいただきたいと思います。一部は両論併記になっていますので、また後でいろいろ とご意見をいただければと思います。  次に、まとめの骨子(たたき台)について、これも事務局のほうから説明をお願いしま す。 【田原医師臨床研修推進室長】  それでは、資料2と右肩に書いてある、まとめの骨子(た たき台)でございます。これは検討会でのこれまでの議論、それから先ほどご説明いたし ました関係団体からのご意見を踏まえまして、事務局でたたき台として整理したものでご ざいます。  最初の1ページ目は課題ということで整理しております。こういう課題が見られるのでは ないかということで、本制度の導入をきっかけに地域の医師不足を招いたという点。  2番目は、研修医の募集定員の全国的な管理が行われていないということから、研修医の 都市部集中が助長されているという点。  ローテーション方式の導入によりまして、研修医の診療能力には一定の向上が見られる 一方で、研修医の意欲を損ねている面があるという点。  4番目には、医学部の教育の改革が進む一方で、医学部教育と臨床研修の内容に重複が見 られるという点。  その次には、受け入れ病院の規模や指導体制に格差を生じており、臨床研修の質の一層 の向上が求められているという点。  また、一定の処遇が確保されたことで、研修に専念できる環境が整ったけれども、給与 等が不適切に高額な事例も見られるという点でございます。  1枚めくっていただきまして、2ページでございます。そういう課題を踏まえまして、次 のような考え方を基本にして制度を見直してはどうかというところでございます。○1とい たしまして、「医師としての人格の涵養、基本的な診療能力の修得」という理念のもとで、 将来のキャリアへの円滑な接続が図られるように、研修プログラムの弾力化をする。  ○の2番目といたしまして、卒前・卒後の一貫した医師養成を目指して、臨床研修の質の 向上を図るということ。  ○3といたしまして、大学の医師派遣機能を再構築いたしまして、地域や診療科に必要な 医師を確保する観点から、研修医の募集定員や研修病院の指定基準を見直すということで、 医師不足への対応を図るというような考え方でございます。  具体的には、3の見直しの方向でございますけれども、まず、(1)プログラムの弾力化と いたしまして、必修の診療科は1年目の内科6カ月以上、救急、これは小児救急を含むとい うことでございますが、3カ月以上ということにとどめて、早い段階から将来のキャリアに 応じた研修を行うことができるようにするということにしてはどうか。  また、内科、救急以外で従来必修とされておりました外科、麻酔科、小児科、産婦人科、 精神科につきましても、選択して研修を行うことを誘導するような措置というのを考えて はどうか。  3番目といたしまして、研修開始時に将来のキャリアに応じた研修を一定期間行った後、 内科、救急の研修を行うということを可能にしてはどうか。  研修の2年目につきましては、地域医療の研修を1カ月以上必修としてはどうか。その研 修施設は地域の実情に応じて選定されるよう配慮するということにしてはどうか。  また、現在行われているようなスーパーローテートの研修でございますけれども、これ も引き続き実施できるようにしてはどうか。  小児科などの医師不足の診療科の医師の確保に資するために、一定規模以上の病院につ きましては、将来これらの専門医になることを希望する研修医を対象とした研修プログラ ムを用意するということにしてはどうか。  到達目標に対する研修医の到達度を評価する仕組みを工夫したり、あるいは到達目標そ のものについても必要な見直しを進めてはどうかということでございます。  (2)といたしまして、受け入れ病院の募集定員や基準の見直しとして、研修希望者に見 合った募集定員を設定するということと、都道府県別の募集定員の上限を新たに設けると いうことにしてはどうか。  今度は病院のほうの募集定員につきましては、過去の研修医の受け入れ実績を踏まえる という点と、それから大学の医師派遣の実績を勘案して、また、一番目に申し上げました 都道府県の募集定員の上限と調整を行って募集定員を設定するということにしてはどうか。  また3番目として、研修プログラムを管理する病院について、水準や規模の面で基準を強 化するということと、大学病院など地域の中核を担う病院を中心とした臨床研修病院群の 形成を推進してはどうか。  また、原則としてはそういう見直しであるけれども、一定期間の経過措置を設けてはど うか。  研修医の処遇につきましては、一定の抑制措置を講じてはどうかということでございま す。  また、臨床研修制度に関連いたします制度の見直しについては、○の1番目として、大学 で行われております共用試験の合格水準を標準化してはどうか。  また、医学教育のカリキュラムの見直しを行ってはどうか。  3番目として、臨床研修を終了した後の専門性を高める研修、いわゆる後期研修や、ある いは生涯教育のあり方につきまして、診療科偏在の是正を図る、医師のキャリアパスを明 確にするというような観点で見直してはどうか。  卒前の臨床実習の充実の状況を踏まえながら、医学生の医行為の取り扱いや国家試験の 内容を見直してはどうか。  最後になりますが、各大学病院による医師派遣機能を、地域の関係者の意向が十分反映 された、開かれたシステムとして再構築するようにしてはどうかということで、まとめの 骨子としてのたたき台をまとめました。本日のご意見を踏まえまして、また修正してまい りたいと思います。  以上でございます。 【高久座長】  どうもありがとうございました。まとめの骨子としてよくまとめていた だいたと思います。最初の1ページ目の課題につきましても、これは5年が経過して、以下 に述べるような課題があるのではないかということでして、おそらくあまり、ご異論はな いと思いますが、何かご意見はおありでしょうか。どうぞ、大熊委員。 【大熊委員】  この制度の導入がきっかけで地域の医師不足を招いたというのは、冒頭 に掲げるのにしては非常に事実に反していると思います。私はかなり長く医学記者をやっ てまいりましたけれども、もう50年ぐらい前から、いわゆる僻地に近いところの医師は不 足していたわけでして、別に今に始まったことではありません。  それから、医師が不足している一番の原因は、閣議決定によって医師を増やさないこと にしてしまった、むしろ減らしたということでありまして、舛添大臣がいらっしゃったこ とで閣議決定が外れたというのは大変進歩ですけれども、そういうことが一番であって、2 年間いなくなるわけですから、この臨床研修によって一時的にということはあったとして も、これが原因であるとは到底思えなくて、そのような事実誤認を冒頭に掲げるのは問題 があると思います。  それから3つ目のところで、研修がスーパーローテートすることによって、研修医の意欲 を損ねている面があるということですけれども、そもそもこの新臨床研修という制度がで きたのは、臓器を見て人間を見ないとか、病気を見て人間を見ないとか、そういう傾向が あることを何とかしようということで始まったわけで、最初からある臓器のことだけやり たいというような人こそ、むしろスーパーローテートのようなことで、幅広い見方をする 人を育てるということが大事だと思います。  一番下の給与が不適切に高額というのは、非常に不適切であればそれを抑えるというこ とは妥当かと思いますけれども、どうもこの課題というもののとらえ方が一面的であると 私は思いますが、ほかの先生はいかがでしょうか。 【高久座長】  この3番目に関しては、研修医の声を聞いてみますと、全然自分が興味が ない、全く行く気がないところにコアとしてどうしても回るということに関しては、非常 に意欲をそがれるという意見を聞いたことがあります。人によって随分違うと思います。 この面はあることは事実です。 【大熊委員】  あるということを否定しているのではなくて、そのように最初から視野 の狭いような人こそ、幅広い研修をすべきであると私は思います。新聞社の場合ですと、 支局で全部をやってからのほうが、後々専門記者になってからも伸びるということが伝統 的にわかっております。 【高久座長】  これは後の議論で出てくると思いますが、おそらく見直しのときには、 今のコアよりはもっと幅広くという意見が出てくる可能性があると思っています。現在で すとコアだけにかなり縛られてしまうものですから。最初の問題はいかがですか。これは 小川先生がご意見ありますか。 【小川彰委員】  小川でございますが、第1回目の本委員会の議事録にちゃんと載ってい ると思いますけれども、今の大熊委員のご発言は、そのときの意見を全く無視したものだ と思っています。今、一時的とおっしゃいましたけれども、これは永続的に1万5,000名の 医師が減ったままでずっと続くということでありますから、一時的では全くございません。 1万5,000名という臨床研修に入った方々は、医籍には登録される、そして臨床研修病院に はいる。だけども地域医療のバックアップの力にはなっていないということで、1万5,000 名でございますので、これは日本の医師数の中の7%が突然消えたと同じ状況をつくり出し たわけで、ずっと永劫続くわけです。そのときだけ1万5,000名減って戻っているわけでは ありませんから。これは簡単な算数でございます。 【大熊委員】  これは簡単な算数でありまして、最初の2年間は確かに1万数千人が減っ たでしょうけれども、その人たちは順々に押し出されてくるわけで、その1万数千人がハー メルンの笛吹き男に連れられて、どこかへ行っちゃうというわけではないので、この1万数 千人が消えてしまうというのは間違っていると思います。 【小川彰委員】  いや、そうではなくて、1万5,000名が減って、そのまままた毎年7,50 0名が増えていくわけですから、1万5,000名が減った分は、2年後に7,500名ずつまた増えて いきますけれども、1万5,000名の減りはずっと未来永劫続くということです。 【高久座長】  この文章はなかなか微妙な文章でして、1行目の「大学病院において、臨 床研修を受ける医師が大幅に減少した」ということは間違いない事実でして、減少したと いうことは若手医師が減少したということで、それから、病院によっていろいろ違います が、大学病院が担ってきた部分の医師派遣機能が低下したということも事実です。  地域の医師不足の原因がこれだけではないのですが、大学の医師派遣機能が低下したこ とが地域の医師不足の原因の一部であったことも間違いないです。だからここに言ってい ることは全部事実です。どうぞ、嘉山先生。 【嘉山委員】  以前から我々は医師不足だということは言っていたわけで、確かに大熊 先生のおっしゃることも、僻地の医師が足りなかったことは事実ですから、ここは招いた というよりは、顕在化したんですね。 【高久座長】  そうですね。 【嘉山委員】  ずっと足りなかったわけです。大熊先生の先ほどお話しになった中身、 新聞記者が何とかというのは昔の朝日でしょうから、それはまあいいとして、今の朝日は そんなに記者は勉強していません。ここにいたらごめんなさい、怒られちゃう。先生、顕 在化したというふうにお直しになったら、整合性がとれるんじゃないかと思います。 【高久座長】  よろしいでしょうか。 【小川座長代理】  私も大熊先生の意見に一部賛成で、そして嘉山先生の意見にも賛成 です。ポイントは、医師不足というのは昔からあったんです。もう閣議決定でそうなって、 客観的なエビデンスとして医師不足はあったわけです。それはやはり加えるとしたらそう いうことです。  それから、この制度の導入が諸悪すべてではないかもしれないけど、少なくともきっか けになってこういうことが顕在化したというのも間違いないことだと思います。大学病院 が従来担ってきた医師機能、派遣機能が低下し、地域の医師不足を招いたというのは、こ れはこれで私は事実としては正しいと思います。  それで2番目のところ、大熊先生が多分引っかかると思うんですが、大熊先生もたしかこ の議事録のところで発言されていますし、私も類似のことを前の前の会議で申し上げたん ですが、この研修医が始まってから全国的な管理が行われていないため、希望者の1.3倍を 超える規模となっているというのは確かなんです。  しかし研修医制度がスタートしたおかげで、「都市部に多くの研修病院があることと相 まって」、この辺はまだいいんですが、「研修医の都市部集中が助長されて」はいないんで す。これが意外な事実でして、むしろ東京と京都と大阪と福岡の研修医の数は減っている ということは案外なことだったと思うんです。しかしエビデンスベースとしてはそうなん です。  ただし、嘉山先生のおっしゃるように、一部の地域では医師不足が非常にシリアスなも のとなったというのもそうなんです。だからちょっとここは悩ましいところです。 【嘉山委員】  ちょっと今の小川先生のに反論したいんですが、最後のところの東京と 大阪と研修医が前より減っているというのは、私も正確な数字がわからないんですが。と いうのは、この研修制度が始まる前は、普通の医師として登録されちゃう人もかなり数が いたんです。国立病院とか、大学もそうなんですけれども、そういうところでは研修医と して正式に登録されていましたが、一般病院に入っちゃうと研修医としては登録されてい ないんです。研修制度が始まってからは、卒業生は全員2年間研修医として登録されている ので、正確な数字は出るんですけど、それ以前は正確な数字は出ないはずです。  例えば、正式な内科のお医者さんとして卒業後すぐに、要するに社会的な身分が出ちゃ った人もいるので、現在のように8,000人がどこに研修医としているというのはわからなか ったはずなんです。ですから、現時点とこの研修制度が始まる前の研修医の数を比べるの は、そんな簡単なことではないんじゃないかと思います。 【小川座長代理】  データのとり方は事務局に依頼したんですね。だから田原さんがこ れに答える立場にある。 【高久座長】  田原さん、どうですか。 【田原医師臨床研修推進室長】  我々のほうで研修医の数を把握している範囲では、平 成15年度の採用実績と、それから平成20年度の採用実績、以前の検討会でもお示ししてお りますが、そういうところを見ますと、例えば東京都では369ほど減っている、あるいは京 都では137減っているというような状況がございます。 【小川座長代理】  福岡もそうですね。 【田原医師臨床研修推進室長】  ええ、福岡も112ほど減っております。全体として431 減っておりますので、その点を勘案した上でご判断いただければと思っております。 【高久座長】  ですから、都市部となっていて大都市となっていない。そこのところを、 田原さん、うまく表現してください。 【田原医師臨床研修推進室長】  わかりました。 【大熊委員】  たびたび恐縮ですが、前のほうに、「もともと日本の医師数というのは国 際的に少なかった。さらに閣議決定によって枠がはめられてきた」、で、「きっかけとして 本制度」としたほうが、事の深刻さがわかるだろうと思います。 【高久座長】  わかりました。そういうふうに前のほうに入れさせていただきます。  実は今日の主なテーマは、この次の2ページのほうで、いろいろとご意見をいただきたい と思うのですが、最初に2ページ目の基本的な考え方の、まず1のほうは、もう少し研修プ ログラムを弾力化してはどうかという意見でして、これは後でまたご議論になると思いま す。  それからもう一つ、この2番目のほうと3番目、特に3番目の「研修医の募集定員や研修病 院の指定基準を見直すことにより、医師の地域偏在など医師不足への対応を図る」という 事はなかなか難しい問題です。いずれ何らかの形でここの委員会で議論をしなければなり ませんが、その前に1のほうの研修のプログラムのことについて、少しご議論をいただきた いと思います。  この3の見直しの方向の、「「2」の基本的な考え方に立ち、以下の方向で臨床研修制度等 を見直すこととしてはどうか」ということで、プログラムの弾力化ということです。  そこで1つ提案されていますのは、必修とする診療科については、地域医療実習は2年目 になっていますが、原則1年目として、それを内科6カ月、それから救急、小児救急も入れ るとなっていますが、小児救急を含めた救急を3カ月にして、各病院の判断で早い段階から 将来のキャリアに関係した科を選択して研修を行うことができるようにする。  最初に内科と小児を含めた救急を6カ月以上、3カ月以上にして、これは必修とするとい うことについて、今までの各団体からのご意見では、賛成とするご意見が非常に多かった と思います。  ただ実際に聞いてみますと、内科が、縦割りになっているところは6カ月が意外と難しい ところもあって、むしろ3カ月から6カ月にしたほうが良いんではないかというご意見と、 やっぱり内科はいろいろ工夫して6カ月は必修にすべきであるという両方の意見が、各団体、 それ以外の幾つかのグループから私のほうにも意見が寄せられました。それについてどな たかご意見はおありでしょうか。もしなければ、一応原則としては内科6カ月、救急は小児 救急含めて3カ月にして、これは必修にするということでよろしいでしょうか。  次の問題は、内科、救急以外で従来必修とされた科目、すなわち外科、麻酔科、小児科、 産婦人科、精神科について2つ考えがありまして、これらの科を選択にしてはどうかという こと。それは同時に選択にするとした場合に、1つ選択するのか、2つ選択するのか、3つ選 択するのかということがあると思います。  ただ、後のほうの議論で多くの団体から、1つの診療科は原則3カ月回るべきであるとい う意見が圧倒的に多かったと思います。2カ月という意見もありましたが、ほとんどの団体、 医学生、あるいは学会からも来ていますが、大体3カ月にすべきではないかと。ですから、 あんまり選択必修を多くすると、フレキシビリティーがなくなってしまいますので、選択 必修は1つか、多くて2つと考えていますが、この点についてはいかがでしょうか。  例えば、もし2つとるならば、外科系に行かれる方は当然麻酔科とか外科は行かれると思 うし、内科系の方には小児科、産婦人科、精神科をとられる方が多い。あるいは1つとるか どうかということで、この事はかなりカリキュラムの弾力化に関係があるものですから、 その点いかがでしょうか。どうぞ。 【西澤委員】  すいません、議論の進め方ですが、プログラムの弾力化というのはあく までも2の基本的な考え方にのっとってだと思うんですが、そこがまだ固まっていないんじ ゃないかなと私は思っております。その中ではなかなかこの細かいことまで議論するのは つらいのかなと。  例えば、臨床研修が始まったのはこの2の○1にありますとおり、このような理念のもと で行っているということで、更に2年間の研修での到達目標というのがあるわけです。それ を達成するためにどうしたらいいかということであって、ここであんまり何カ月だとか、 この科目は要る、要らないというのは、それによって到達目標が達成できるのかどうかと いうこととあわせて議論しなければおかしいんじゃないかという気がしますが、いかがで しょうか。 【高久座長】  おっしゃるとおりです。これで私も到達目標が達成できるかどうか、心 配な点があるのですが、しかし基本的に、もともとこの新しい臨床研修制度ができたとき には、プライマリ・ケアを習得させるということが一番大きな目的だったと思います。プ ライマリ・ケアの一番核となるのはやはり、内科と救急と地域医療ではないかと考えてい たものですから、そこを充実すれば、あとはある程度の到達目標は達成できるんじゃない かと甘く見ていたのですが、いかがでしょうか。どうぞ。 【吉村委員】  ただいまの座長のお話がございましたけど、外科は、例えば外科医にな るために外科の初期研修をやるのではなく、外科的な創の処置や基本的なことを見るとい うことであれば、一般の救急のほうがむしろ望ましいのではないでしょうか。 【高久座長】  救急ですね。 【吉村委員】  というのは、たとえ外科に3カ月行っても盲腸の手術ができるわけではあ りません。小児科も小児救急をしっかり勉強してもらうこと。小児科のほんとうのプロパ ーのお医者さんになるのでしたら、やはり小児科を3年とか5年とかやらないといけないと 思います。また、精神科や産婦人科は、やはり学生実習をもっと充実するとか、何か方法 があるんじゃないかなと思うんです。 【高久座長】  どうもありがとうございました。どうぞ、大熊委員。 【大熊委員】  たびたび恐縮です。この8つの団体からのを見ますと、大体今まで培った 2年間のものをよしとする人と、1年を核にしようというのが半々という感じですよね。そ れでここには出てきていませんけれども、高久先生とか外口さんのところには多分届いて いると思いますけれども、医学教育学会などからは、これまで培った2年間の研修プログラ ムというのをみだりに変更してもらっては困るということが、非常に理を尽くして書いて あります。  それからVHJという、非常に志高い病院の集まりでも同様のことを言ってきているわけで、 ここの表だけ見ると4対4みたいですけれども、もっと深くこういうことを考えていらっし ゃる医学教育学会とか、そういうところのことも勘案すると、直ちに1年を核にして2年は つけ足しみたいなほうに突き進んでいくというのはおかしいのではないか。  それから、これをなぜ見直すかというと、国民にとっていいようにということですから、 ここには医学部の方が非常に多くて、次に研修病院の方ですけれども、やっぱり国民の立 場から言うと、全人的に診ることのできるお医者さんが育ってくれればいいなということ で、医局に研修医が戻ってくるといいなとは別に国民は思っていないわけですので、その 点をお考えいただきたいと思います。 【高久座長】  プライマリ・ケアの基礎になる内科と救急というのをまず最初にやりま しょうということであって、決してほかのものを回らないということではないのです。私 はなるべく多くの科を若いときに回ったほうが、将来のためになると考えています。  ただ、内科と救急はプライマリ・ケアの基本となるものですから、そこだけは最初に回 って、あとは3カ月単位でなるべく多くの科を回るのが良いと考えていまして、医学教育学 会もそういうことを言っているのだと思います。  ただ、学会、人によっていろいろ考えがありまして、例えば、高齢者が多いのだから整 形外科を必ず回ってもらわなきゃ困る、精神科はうつ病が多いから必ず回って、いろいろ 御意見があるのですが、私はなるべく多くの科を回るということ、そして2年間を有効に使 うということを基本的な精神にすべきであると考えております。  嘉山先生、何かご意見ありますか。 【嘉山委員】  要するに医療をどうとらえているかが、ちょっとずれてというか、違う から、かみ合わないんじゃないかと思うんです。つまり医療は、例えば大熊先生あるいは 福井先生がおっしゃるようなプライマリ・ケアで、患者さんが来たときに、その患者さん は診断名が頭に張ってあるわけじゃないですから、それを鑑別するというのが一番まず大 事なんです。先生がおっしゃるように、ですからいろんなことを回るということはそうい うところで鑑別診断をすると。鑑別診断をする医師はもちろん一番最初の入り口ですから 大事なんですが、そこからトップランナーが治療しないと、今度は国民はまた納得しない んです。  つまりプライマリ・ケアというのは、鑑別診断がきちっとできて、急場、つまり心臓と 呼吸がきちっと管理できれば、あとは多分国民は、トップランナーに治療してもらいたい と思うはずです。それはもう間違いなく皆さんもそうだと思うんです。ですからそういう ことを勘案して、この研修の最初の1年、2年をやらないと。今これが問題になっているの は、トップランナーがこのままでいっちゃうと育たないよと。  つまりどういうことかというと、ずっとそのまま総合医、診断だけしていればいい、そ れで生活ができちゃうような医師のキャリアパスになりがち、また基礎研究にも全然回ら ないというのも高久先生も十分ご存じだと思いますけれども、要するにキャリアパスを非 常に閉ざしちゃったんです。西澤先生のような病院で難しいのもおやりになっていると思 いますが、例えば外科ですごく難しいやつをやる人間がどこで育つんだということが、こ の制度の観点。そういう制度、そういう医者をつくるための観点が抜けちゃったので。  ですから吉村先生が前におっしゃった、プライマリ・ケアにあまりにも偏り過ぎた中身 になってしまったので、今いろんな日本の医学、あるいは各国民が求めている医療の質が、 私は落ちてきているんじゃないかと思って、我々はいろんな意見を出しているんです。で すから大熊先生がおっしゃるような、総合医でみんな診られますよというお医者さんが、 一体どこまでトップの治療ができるか、そこがやっぱり問題だと思うんです。  ですからここは先生、私としては、弾力的というよりは救急だけでほんとうはいいんで はないかと思うぐらいです。それができれば国民の皆さんが、患者さんが来たときに鑑別 診断ができますから、急場はしのげる、命は助かるし、トップランナーの治療が受けられ るという制度になりますから。今一番問題になっているのは、例えば眼科の先生には申し わけないんですけど、眼科の先生は全身状態を診られない、あるいは鑑別できないという、 今までの教育の弊害があったわけです。それができるようにするためがこの制度だと思う んです。  この2年間が終われば、例えば田舎に行って、田舎のおじいちゃん、おばあちゃんを治せ るかといったら、総合医というのはそんな生易しいものではないと思っていますので。そ ういう医者をつくるわけではないわけですよね、高久先生。 【高久座長】  ええ。 【嘉山委員】  鑑別だったとしたら、私は短くて、救急だけでいいんじゃないかと思う んです。 【高久座長】  総合医という問題はまた別な問題で、土屋先生が議論されているようで すけれども、総合医の教育は基本的には後期研修なされるべきでして、この場は初期研修 の話になりますが、初期研修でも若いときには、なるべく多くの種類の病気の患者さんを を診たほうが、将来どういう分野に行くにしても良いと思います。日本で足りないのは、 嘉山先生のようにスーパースターの医師よりも、幅広い診療能力をもった医師だと思って います。  ただ、私は現在の1カ月という期間は、教室の習慣とか、要するになれるまでに1カ月終 わってしまって、身につかないという意見が非常に多かった。教室によって病歴の書き方 まで違うとかいろいろありますから、3カ月は必要ではないかなと。  そうすると、なるべく多くの科を回る必要があるけれども、又ある程度選択せざるを得 ないということと、それから選択した場合に多くの人は、将来専門にする診療科と関係が 深い診療科を3カ月単位で回ったほうが、本人もやりがいもあるし、それから教えるほうも やりがいがある。そう思ったのですが。 【嘉山委員】  いや、3カ月はいいと思います。3カ月回らないと教えるほうも教えられ るほうも。この前京都の平出さんがおっしゃったように、やっぱり今指導者に聞いてもす ごく短いと。1カ月だと、まず人間のコミュニケーションがとれないですよね。 【高久座長】  そうですか。 【嘉山委員】  ですからやっぱり3カ月ぐらいでやっと師弟関係、信頼関係、トラストが できるので、それはいいと思うんです。  あと先生、内科なんですが、またいつも内科のことを申し上げて申しわけありませんが、 例えば我々外科医が手術後に、大変な高齢者で、肺のほうもあれで心臓の病気も持ってい て、糖尿病も持っているときに、内科にお願いすると断られるんです。つまりもう腎臓な ら腎臓専門なので、すべては診られないと。内科がかえって非常に単一化しているので。 (舛添大臣入室・カメラ入室) 【高久座長】  わかりました。どうぞ、先生、お着きになって。 【舛添厚生労働大臣】  いえ、まだいいです。どうぞ。 【嘉山委員】  すいません。ですから、もしも内科というふうに国で決めてしまうと非 常にリジッドになって、弾力を持たせるんであれば。要するに私が言いたいのは、内科と 言わないで外科も入れて、獲得目標でプログラムを組んだらば、それでプライマリ・ケア が獲得できるわけですから、そのほうがいいので、内科だけにはしないほうがいいのでは ないかなと。 【高久座長】  内科だけにしないで、外科も必修に入れたほうがいいというお考えです ね。 【嘉山委員】  ええ。例えば器官切開一つにしても、外科系のほうがきちっとできると 思うんです。 【高久座長】  今、大臣が来られましたので、どうぞごあいさつをよろしくお願いしま す。 【舛添厚生労働大臣】  どうもすみません。本会議、予算委員会と続いていたものです から。で、またすぐ出ないといけないので、一言ごあいさつだけと思いまして。  毎回大変熱心なご議論、ありがとうございます。この臨床研修制度の見直しの問題はさ まざまな論点があり、さまざまなお考えがあるので、その中でたたき台をおつくりになる というのは、高久先生、小川先生、大変ご苦労だと思います。けれども、教育の質という こと、これはきちんと維持、向上をさらに進めていかないといけないという要請が片一方 でありますとともに、さまざまな今の制度へのご批判、また評価もいただいているところ でありますので、ほんとうに忌憚のない意見を述べていただいて、最終的には若いお医者 さんがどういう形で教育をされ、そして一人前のお医者になっていくかという、そのプロ セスで現場の声を聞こうということ、これはいろいろ声を聞いてきていますので、それが1 つあります。  それから、どこまで国がかかわっていくのかという、教育と国、教育と政府、こういう 大きなテーマも1つあると思います。  それから、いつも申し上げますように、国民というか、患者というか、チーム医療の話 にしても、今、看護師の面についても同じような検討会を行っていますけれども、医師に 代替して看護師がどこまでできるかという話をするときに、じゃ、そのチーム医療を受け る国民はどう思っているのかという視点が、どうしても医療提供者だけの話になると抜け てきてしまうので、その点も非常に重要な問題だと思います。 どういう形で結論を出すかというのは極めて難しいなという感じがしておりますので、今 日は一つのたたき台がここに出ておりますが、これからさらにまとめに向かっていろいろ ご議論があると思いますけれども、それで一つの完璧な案が出るのかなと思うのです。  つまり無理をして完璧な案を出すより、大体皆さん方のコンセンサスをいただいた上で、 さらに試行錯誤をやりながら進めていくということがないといけないんではないかなとい う感じがしております。  この検討会の最大の意味は、文部科学省と厚生労働省が合同でやっているというところ にありますので、卒前・卒後を含めて、教育、医者の養成というのはどうあるべきか、そ れは提供側から見てどうなのか、我々国民の受益する側から見てどうなのか、そういう総 合的な観点をぜひ忘れないでご議論をいただきたいと思っております。朝令暮改で制度を 簡単に見直すというのは問題もありますけれども、しかしながら、問題もあればこれはま た見直していくということがないといけないと思います。  この研修制度のせいで医師不足に拍車がかかったという意見もありますし、それはそれ でご批判も受けないといけないと思いますけれど、ただそれだけの論点だと、これまたい ろいろ問題もあると思います。これはもう皆さん方には釈迦に説法で、私が今申し上げた ことはすべておわかりになっていると思いますので、ぜひ徹底したご議論をいただければ ということを申し上げまして、ちょっとまたすぐ席を離れないといけないので、大変恐縮 でございますけれども、どうかよろしくお願い申し上げます。ありがとうございます。 (舛添大臣退室・カメラ退室) 【高久座長】  どうもありがとうございました。  今議論になっているのが、従来必修とされた科目を全部必修にするということは、カリ キュラムに柔軟性がなくなりますので、必修の選択を1つか2つにするかということについ てだと思います。  それからもう一つは、これは前のヒアリングのときにも長崎大学からご意見がありまし た、京都でもそうでしたけれども、自分の将来専門とする科を最初に回っていいのかどう かと。これには両方のご意見があって、それを最初に回らせるのは、本来のこの初期研修 の精神に反するのではないかというご意見と、モチベーションを高めるためには、最初に 自分の行きたいところを――これはおそらく3カ月だと思うのですけど――3カ月回った後 に、内科とか救急とかを回っていいんじゃないかという議論もあったと思います。  蒸し返しになりますが、選択必修を何科目にするかということと、それから最初に回る ということについて、それをオーケーとするかどうかについて、ご意見をいただければと 思うんです。どうぞ。 【福井委員】  ちょっとよろしいですか。直接そのテーマに関わるわけではありません が、私も一言申し上げておきたいと思います。議論が段階を踏んでいないものですから、 私自身、プログラムの弾力化の内容について、これがいい、あれがいいという判断のしよ うがないというのが正直なところです。西澤先生も触れられましたけれども、どういう医 師をつくろうと思っているのか、それを到達目標として記述して、その上での議論でない 限り、こういうローテーションについての議論は成り立たないと思います。到達目標はそ のままにしておいて、ローテーションだけ変えるというのは、判断のしようがないという のが正直なところです。検討会としては短期間で結論を出さなくてはならないということ で、何らかの方法で決めるのだろうとは思いますが、私にとっては正当な議論の仕方から ずれているように聞こえて仕方がないということだけ、ここで申し上げておきたいと思い ます。 【高久座長】  わかりました。今までのカリキュラムでは、到達目標が達成されていた のですね。今までのカリキュラムで。 【福井委員】  はい。ほとんど……。 【高久座長】  ほとんどですね。 【福井委員】  ええ。プログラムを修了した医師全員のデータではないんですけれども、 私たちが外部評価も含めて見たところでは、大体、到達目標は達成されていて、満足度も 高いし、臨床能力も旧制度のときと比べると著しく向上していました。少なくとも医師の 養成という観点からすると、そのようなデータに基づいて一体どこをどう変えればいいと いう結論が出てくるのか、申し訳ないけれど私にはよくわからない。 【高久座長】  そうですね。もともとこの見直しのときに、1つは、1カ月単位では見学 にとどまって、役に立たない、学生のときと同じであるという意見があったということと、 それからもう1つは、自分が全く行く気がないといったら変な話ですが、将来診ることは全 く考えられないような科を回っても、意欲がわかないという意見とか、そういう意見に対 して何とか対応しようという意見があって、そこで弾力化という意見が出てきたのだと思 います。それ以外に、さっきの議論にあったように、大学から人がいなくなったとか、偏 在の問題もありますけど、それはまた少し次元が違う問題で、やっぱりこの研修の内容を よくするためには、研修医がやりがいがあると感じる内容にする必要がある。  そういうことで、1カ月ではじゃなくて3カ月にしたらどうかとか、あるいはコアをあま り増やさなくて選択にしたらどうかということと、それから自分が将来専門にするところ に関係する科を選ぶようにしたほうが、モチベーションが上がるのではないかということ で、始まった訳です。ですから、確かに先生がおっしゃったように、標準到達目標そのも のを見直す必要が出てくるかもしれないのですが、今回は主に現在のカリキュラムの内容 に対する一部の不満を直そうという形で始まったと理解をしていました。 【齊藤委員】  よろしいですか。 【高久座長】  はい。 【齊藤委員】  5年前にスタートしたときに、1カ月ごとにローテーションするとか、細 かい運用にかなりリジッドな面があったので、研修医には多様な人がいるので、実際はう まく合わない人がいたと思います。それで今やろうとしていることは、メニューを多様化 して、いろいろな人にフレキシブルに合うようにしようということです。ただそれをあん まり自由にすると、基本的な骨格が失われる。問題は理念の中の「基本的な診療能力」の 範囲が人によって多分違うと思います。人によっては、例えばここにありますように、6 カ月以上の内科と救急を3カ月以上やれば、基本的な診療能力が修得できるという考え方と、 いや、そうじゃなくて精神科も小児科も産科も外科も回らないと習得できないという意見 と、両方あるのではないかと思います。 【高久座長】  どうぞ。 【福井委員】  もし現在使われている到達目標をそのまま使うとすると、例えば産婦人 科を回らないと、目標を達成することは不可能だと思います。ですから、そういう産婦人 科をローテーションしないところがそれでは出てきた場合にどうするのだろうと。修了認 定をしないという方向に行くのか、到達目標まで変えてしまって、国としてはこういうタ イプの医師をつくるように方針を変えましたということであれば、当然ローテーションの プログラムも変わってきていいと思うのですが、大もとのところを変えないでそのままや ってしまうと、おそらく修了認定されない人が出てくる可能性が高いのではないかと思い ますが。 【高久座長】  おっしゃるとおりだと思います。それで、その前に既に厚労省のほうで 手挙げ方式で大学の自由度を認めているの。 【福井委員】  いえ、あのときの省令ですか、通達では、たしか到達目標は堅持したま ま……。 【高久座長】  堅持したままですか。 【福井委員】  あれをクリアするという条件のもとで、かなりフレキシビリティーを認 めますということになったと理解していますけれども、いかがでしょう。 【高久座長】  そうなんですか。僕の考えは違いでした。 【田原医師臨床研修推進室長】  すいません、今の議論がということですか。 【高久座長】  いえ、そうじゃなくて。 【福井委員】  昨年の夏の。 【高久座長】  最初のときの到達目標を達成するとすれば、今のコアのところを全部回 らなきゃならない。全部回るとすれば、もし1カ月では足りないということで3カ月回ると なると、フレキシビリティーはなくなってしまう。選択をすると、到達目標は達成できな くなる。その前に厚労省のほうで各大学で手挙げ方式である程度自由度を認めたときに、 到達目標が達成できる範囲で自由度にしなさいと言ったのかどうか、僕はよく理解してい ませんでした。 【田原医師臨床研修推進室長】  昨年の8月に、大学病院で特別コースというのを設けて、 21年度からその研修プログラムを実施するという取り扱いをいたしましたけれども、それ は現在の到達目標を達成するということを前提にして……。 【高久座長】  前提にしてですね。 【田原医師臨床研修推進室長】  前提にして、内容の弾力化をやっております。これは 昨年の8月の特別コースのときの取り扱いでありまして、今回どういうふうにするのかとい うのは、またここでご議論いただければと思います。 【高久座長】  わかりました。失礼しました。 【小川彰委員】  その前提というのが、ニュアンスが違うんじゃなかったっけ、あのと きの。 【田原医師臨床研修推進室長】  いえ、文書にも到達目標を達成するということがあっ て、そしてプログラムの診療科の期間については、任意の期間にするとしております。 【高久座長】  私の認識間違いで、田原さんの言われるとおりだと思います。おそらく 厚生省としては、それを前提とせざるを得なかったと思います。ですから、今度もしこれ を変えるとすれば、そこを変えるか変えないかということも議論しなきゃ、当然……。 【西澤委員】  よろしいですか。 【高久座長】  はい、どうぞ、西澤先生。 【西澤委員】  私はこの検討会での議論の基本にあるところは、到達目標は変えないと いうことだと、ずっと思っておりました。到達目標を変えるとなると、確かに5年過ぎまし たけれども、もっと検証しなければならない。まだ5年終わったというだけで、十分な検証 がされないままで到達目標を変えるということは、ちょっと乱暴過ぎる。そういうことで は、この検討会ではあくまでも到達目標は今までどおりの範囲内ですべきだと考えており ます。 【高久座長】  わかりました。武藤先生、どうですか。 【武藤委員】  今のと関係しますけど、5年たって、ですから研修が終わって3年間は実 際に出て働いていますよね。例えば眼科に行った人、皮膚科に行った人、外科に行った人 といろいろいますけれども、実際にその人たちがこの教育を受けてどういうメリット、デ メリットがあったかという実態のことは何もわかりません。ほんとにプライマリ・ケアを できるようになっているのか、あるいは外科に行った人が精神科に行ってプラスになった のかどうかも全然わかっていないです。もうちょっとそういうのを、抜き出し調査でもい いですから、詳しく調べることが必要じゃないでしょうか。我々が言っていることは、全 部平均のアンケート調査でしか物事をわかっていないということです。そこら辺のあれは、 ちょっと足りないんじゃないかという気がします。 【高久座長】  どうぞ、嘉山先生。 【嘉山委員】  福井先生の考えてらっしゃる医者のレベルが低過ぎるんです。例えば、1 カ月も産婦人科を回って、この中でお産をやってもらう人はいますか。形だけです。よく わかりませんけど、我々現場にいる外科から見ると、回ってきても実際にそれが国民にど う還元されているのかというのを見ると、全然還元されていないんです。例えば先生のお っしゃるように、産婦人科をなぜ診る必要があるんだ、整形も必要だ。そしたら初期研修 だけで20年ぐらいかかっちゃう。精神科も入れなきゃいけない、全部、耳鼻科もこういう のが必要だと。  ですから私は、やっぱりほんとうに国民のためのプライマリ・ケアになるような、例え ば先生がおっしゃっている産科の1カ月間のあんなのというのは、実は学生時代に同じこと をやっているんです。ただ、最近のいろいろなことで、大学のほうは教官のほうが医療事 故につながってはいけない、国民を大事にしようというようなことがあって、あるいは日 本の国民ほど医療を育てようとしていない国民はないので、なかなか教育がやられないこ ともあって、医行為がなかなか進んでいないんです。平成3年に文部科学省がここまでちゃ んと医行為をしてもいいですよというのが出ているんですけど、それが実際はやられない。  高久先生がおやりになっているCBTの中でも、アドバンストOSCEで何とか少しでも進めよ うという努力をしていますが、なかなか社会的なバックグラウンドがあって進んでいない。 本来であれば、学部教育であのプライマリ・ケアの内容は、もうやられているんです。実 際に産婦人科を回っているんですから。ですから、僕は内容は関与してなかったんですが、 あの産婦人科の内容で1カ月をやるのであれば、すべてのことをやらなきゃいけなくなって しまうので、そうしたら10年かかるか20年かかるかわからないようなプライマリ・ケアに なってしまうんです。 【高久座長】  ただ、西澤委員がおっしゃるように、到達目標を変えないという前提で すと、今のプログラムをほとんど変える必要がないというと、この委員会そのものの意味 がない。 【小川座長代理】  論議されていることはよくわかりますが、しかし本質的に、もしそ うだとすれば、この委員会をやる必要はないということになると思うんです。臨床研修制 度を、やはり問題があるからここ5年たったときにつくった方々も見直さなきゃいけないと いうことで賛同されているわけですから。  ただ、こういうもののある1つの区切りとして、こういうコンクルージョンに達するまで の1つの試みとして、大学病院その他に対して弾力性のある、適用すると厚労省が決められ たときには、一応到達目標まで変えていいという話にはなっていないので、その到達目標 を達成するという範囲の中でおやりくださいということであったと思うんですが、今はや はり臨床研修制度をもう少しプラクティカルに、日本全体の医療の現場が乱れている、崩 壊しているという表現もあるんですが、そういうことも踏まえて臨床研修制度を何とか弾 力性のあるものに変えてみたい。  そしてそうすることによって、それを受ける医学生のモチベーションも高まってくるの ではないかということが参考人によっても述べられたわけですし、そういうことからここ の3、見直しの方向、これは事務局がまとめたので、私も各論的にはいろいろ言い出すとい っぱいあるんですが、しかしプログラムの弾力性、多様性という表現でもいいと思います が、1番の「国が必修として定める診療科は」云々、これを今高久座長は、内科なのでそう 思われたのだと思いますが、3カ月でいいのか6カ月でいいのか、この辺をディスカッショ ンしてくださいという話から始まったと思うんですけれども、内科、救急以外で従来必修 とされた科目についても、将来のキャリアに応じて選択して研修を行うことを誘導するよ うな処置を検討するという、ちょっとファジーですが、見直しの方向としてこういうのを 考えようと、皆さんが述べてきたのをまとめておられるわけです。  また、極端には2ページの一番下から2つ目があります。現在行われているような多くの 診療科を巡回する研修も、各病院の判断と、その病院の実力の特技の中でできるというの だったら引き続き実施できるようにして、大学によって、地域によって、あるいは地域の コア病院によって、またスタッフによって、いろいろなこともあるし、何よりも大事なの は社会のニーズとして、今、医療の現場がかなり乱れている。  その全くの原因ではないということにしても、この臨床研修制度は、あるノックスを与 えたということで、それを検証しているのがこの委員会でありまして、その目標は絶対に 変えないということでいきますと、じゃあ今までどおりやれば一番いいんじゃないか。さ らにコンプリートな形にするためには、2年を3年にしたらどうかとか、2年半にしたらいい かとか、そういう方向にまで進めて話に入っていくと、この限られた時間の中で、ある一 定の見解を示してほしいということには、そぐわなくなってくると思うんです。  この辺は、ここの弾力化とか多様性とか、かなり苦労されてまとめられているんだと思 いますが、私は来る前に議事録を参照してきましたけれども、確かにこういうことが皆さ んによって述べられているのは間違いないと認識しています。 【高久座長】  どうぞ、矢崎先生。 【矢崎委員】  5年前にこの制度が発足したときは、基本的な考え方の1を達成するため に、3本柱があったと思うんです。1つは目標を達成するためのカリキュラムをどうするか。 それから身分と処遇を保証して、研修に専念できるようなシステムをつくる。それから3 番目は到達目標を掲げたわけです。  もしカリキュラムを変えると、当然到達目標も考え直さないといけないのは必然です。 その当時は到達目標にランクをつけまして、入院患者を受け持って、主治医として対応し て報告を出しなさいというものが各診療科に入っているんです。そうしますと、必ず病棟 に行って患者さんを受け持たないといけない。そうすると、なかなか弾力化は難しくなる。 例えば、入院して患者を受け持って、報告を出さなければならない項目というのが、今は 相当な数があるわけです。だからそこをもう少し弾力化してやらない限り、カリキュラム の弾力化はできない。要するにカリキュラムと到達目標は1対1の関係があるので。ですか ら、Aランク、Bランクとあるんですが、入院患者を受け持たないといけないというAランク が、例えば精神科とか小児科とかありますから、それを必ず病棟に行って受け持たないと いけないので。  ですから到達目標全体を変えるというのは、やっぱりみんなこれが必要だということで 到達目標はできたので、例えば入院患者を受け持って報告しなさいというランクを、そう すればこんなに議論をやらなくても、ある程度カリキュラムが弾力性のあるものになりま すので、到達目標を全体的に変えるというのは、またどういう総合的診療能力かという議 論にもなりますので、そういうところでお考えいただいて、そしてプログラムはそれに沿 って弾力的につくるという考え方でお願いすればよろしいんじゃないかと思うんですが。 【小川座長代理】  大賛成です。 【高久座長】  そう言っていただくと非常にありがたいんですが、そうすると、むしろ 救急の分をもうちょっと増やす必要が出てくるかもしれません。例えば精神科救急とか、 あるいは産科を入れるとすれば、やっぱり何らかの形で到達目標を入れざるを得ないこと になります。そこのところは工夫をしていただくしかしようがないですかね。 【矢崎委員】  ですから、小児科、産科、精神科、この項目からAという項目を考慮して いただければ、例えば救急で産科も診られますし、それから小児も診られますし、そうい うプライマリ・ケアのものが、そこに全部入ってくると思うんです。 【高久座長】  地域医療の中でも入ってくる可能性はありますね。 【矢崎委員】  はい。ですから、そこをもし議論して整理していただければ。だから到 達目標の項目を削除するとか、そういうことでなく。 【高久座長】  ではなくて、内容の。  永井先生、どうぞ。 【永井委員】  私も、基本的に矢崎先生が今おっしゃられたことに賛成です。それから 大熊委員がおっしゃられたように、私も最初に言いましたけど、今、国民がどういう医者 を求めているかという部分に戻りますと、やはり救急の部分に不安がある。あるいは地方。 地域という言葉がちょっとこんがらがっているので、あえて地方と言いますけれども、地 方で安全な医療が保てるのかというところに対して不安がある。あるいは、これから高齢 化社会になって、認知症を含めて、いろいろな部分に対して不安がある。やはりそういう ものに対応できるような医師を求めているんだろうと思います。まさに嘉山先生が先ほど おっしゃられたように、内科といっても腎臓内科が専門なので、今までは診られないとい うタワーマンション型の専門医をつくってきたんじゃないかというところがあるので、そ れはやはりすそ野が広い形の医師を育てなくちゃいけないだろうと思っております。  これも齊藤先生が前に触れられたんですけれども、今の現状のシステムでも、選択がマ ックス8カ月とれる。それから今の特別プログラムでいっても、12カ月ある。ということは、 必修という要件の中で考えれば、たかだか12カ月から16カ月という非常に限られた中で、 先ほど国民が求めているような資質を持った医者を、いかにしっかり、ある意味で効率的 に育てていくかということになると、やはりプログラム自体はある程度弾力性を持って、 そして考えていかなくちゃいけないかなと。救急、地域のOJT、オン・ザ・ジョブ・トレー ニングで学べていける分野と、そうではない分野というのを考えていくとなると、やはり 外科、産科的な部分は、むしろ今の大学の特別プログラムみたいなものになじんでくるか なという気がします。  精神の部分は非常に難しい気がして、確かにうちの病院でも精神科救急をやっていて、 救急で学べる部分と、それからDVであるとか、チルドレン・アビュースであるとか、ある いは法が絡んだ問題という部分は、やっぱり医師はある程度知っておいていただかなくち ゃいけない。これを卒前でしっかりできるのであれば、その部分をしっかりやっていただ ければありがたいなと思っております。  ただ1つここで気がかりなのは、高久先生もおっしゃるんですけど、地域医療という部分 がやはり非常に漠然としていて、我々の中のイメージで随分違ったものになっているので はないか。研修医、あるいは指導医も、地域という部分がしっかり定義されなかったため に、非常に浮いたような期間になったところもある。ここは非常に重要な部分なので、じ ゃあ地域医療は何科に属すのか、あるいはそれは無床診療所でやるのか、有床診療所でや るのか、あるいは二次救急まで含めて100床ぐらいの地域の病院でやるのかというふうな中 によっても、全体のカリキュラム自体に影響してくると思うので、この地域が皆さんの中 でのイメージがしっかりしていない部分があるかと思うので、地域は科に属するのか、あ るいはどういう形で属するのか、責任はだれなのか、何をそこで学ぶのかという部分が、 もう少しはっきりイメージされる必要があるんじゃないかなという気がしますけど。 【高久座長】  おっしゃるとおりだと思います。私は、漠然と考えていたんですが、地 域の二次救急病院で実習をやればかなりの目標は達成できるわけです。入院しなくても、 入院患者を診なくていいというならば、精神科でも産科でもできると思いますので、そこ のところはここで議論をしても、なかなか皆さん具体的にイメージがわかないでしょうけ れども、指定をするときに、慎重に指定をしてもらうしかしようがないでしょうね。 【永井委員】  今までのこの議論のコンセンサスの中で、1カ月ぐらいの地域の中に保健 所に行ったりとか、あるいはそういうあいた部分はむしろやめて、その上でしっかり今問 題となっている地域医療そのものの中に、研修医も学んでいく部分をつくっていこうとい う部分がはっきりさえすれば、あとは県行政の単位でどういう形になるかというものも出 てくるかと思います。 【高久座長】  その議論は前にあったと思います。保健所じゃなくて、もっと第一線の 病院でということで。ただ、診療所がいいのか、あるいは第一線の病院の方がいいのかと いう議論はまだしていなかったと思います。  ほかにどなたか、どうぞ。 【大熊委員】  それで言いますと、やっぱりしっかりした指導医がいるような在宅ケア だと私はイメージしています。病院ではなくて、往診をしたり、訪問看護婦さんと一緒に しっかりやっている診療所の先生がどんどん増えていまして、今度は鹿児島で1,000人規模 の在宅医学会も開かれ、そこでは在宅専門医も育てるということを言っていますので、き のうか何かも、夜、「自宅で死にたい」というのがBS-hiで2時間ほどやっていましたけれど も、自宅にお医者さんが来てくれて、みとられるということができるような芽を。その場 合は、決してお医者がいないから研修医を1人よこしてくれみたいなことですと、とても患 者にとっては危険極まりないので、指導する方とペアであるということを必置にしていた だきたいと思います。 【高久座長】  はい、わかりました。どうもありがとうございました。 【辻本委員】  すみません。 【高久座長】  どうぞ。 【辻本委員】  よろしいでしょうか。到達目標という議論は、この制度がスタートする 前に、非常に緻密な作業の中で専門家の方たちが議論を尽くされておつくりになったもの だと思います。もちろん完璧なものではないとしても、それが長い医療の歴史の中からい えばわずか5年で右往左往してしまうということがほんとうにいいのかどうか。患者、国民 としては、そこをやはり冷静に受けとめていただきたいなという気持ちがございます。  先ほど永井委員がおっしゃったように、患者、国民のニーズというのは決して1つではな い。ほんとに語り出したら幾らも項目があるぐらい、多様なものを要求している。その多 様な患者のニーズにこたえてくれるお医者さんをつくるためにということでつくったのが 到達目標だと思うんです。その中で必要なことが、やっぱりプライマリということで、初 期診断をしっかりとできる人、そしてその後に、トップランナーと嘉山委員がおっしゃる、 そこにきちんとつなげる能力を持つ。そういうことをするために、この2年間のプログラム というものが吟味され、つくられた研修医受け入れ病院ごとの努力でと思います。ですか ら、それを安易に、研修医がやる気がないから、お客さんになって興味を失っているから というだけで、わがままな息子を甘やかすような親の議論だけで、簡単に変えていいもの かどうかということに、患者の立場としても非常に疑問に思います。  例えば、おもしろくない精神科に行って、最初はお客さんだったその研修医が、やはり 現場を見ることによって、他科紹介ということができる選択肢が増えた、精神を病む患者 さんのところから学ぶものが多かったという研修医の声を実際に聞いております。ですか ら、ほんとに何度も言いますけれども、研修医のやる気だけを支えようという話の通りの いいわかったふうな親になるだけで実質1年に短縮することでいいのかどうか、もう一度皆 さんで考えていただきたいということを、患者の立場としてお願いしておきたいと思いま す。 【嘉山委員】  先生、よろしいですか。 【高久座長】  はい、どうぞ、嘉山委員。 【嘉山委員】  辻本先生、我々のことを非常に善意に解釈していただいて、ありがとう ございます。これは端的なんです。皆さん病気になられておかしくなって、救急に来る患 者さんの半分は、脳卒中です。日本の脳卒中の7割は脳外科医が診ているんです。その脳外 科医がここに入っていないんです。僕はずっと、自分が脳外科医だから言いたくなかった んですけど、自分のところに利益誘導しているように思われるから。とんでもないプログ ラムですよ、これは。だって、皆さんが病気になって救急で行くのは、半分以上が脳卒中 で行くんですよ。  それを一番診ている脳外科が必修じゃないんです。国民で今、一番罹患率が高い疾患な わけです。それなのに入っていないので、専門家が練ってつくったと先生おっしゃって、 非常に信用していただいて結構だったんですけど、やっぱり現場に合っていないのは直す。 それこそ先生がおっしゃるような国民のためだと思いますから、矢崎先生がさっきおっし ゃったように、5年たったので、現場をもう1回見直して、現場に合わせて獲得目標とか、 そういうのを変えていかないと、混乱が起きるんじゃないかと思います。  その1つのいい例として、高知ではもう、高知医療センターという有名なところがありま すけど、あそこは脳卒中は脳外科が支えていたんですけど、崩壊しました。脳卒中の患者 さんは、意識障害があったり、言語障害が出たりしますから、声なき患者さんなんです。 先生がさっき言われた精神科の患者さんは、自分で先生に言えますけど、脳卒中の患者さ んは寝たきりになっちゃって言えないんです。だからサイレントマジョリティーになっち ゃっているんです。ですから、その辺のことをきちんと、このプログラムはそんなにコン プリートではないので、より一層国民のために変えましょうということは、やっぱりやっ ていかなきゃいけない我々の使命だと思っています。 【高久座長】  アンケートをいろいろな団体からとらせてもらいましたし、それからこ れ以外にも先ほど大熊委員からお話がありました医学教育学会とか、あるいは学生の有志 とか、いろいろな所から意見が出ていますが、ほとんど全員が3カ月でないと困るというこ とは言っています。それと、2年間というタイムフレームと、必修と、それをどう結びつけ るかというのに苦慮しているわけでして、それ以外の到達目標の件は、先ほど矢崎委員が おっしゃったような形で、カリキュラムを工夫することによって、基本的に変えないでで きるのではないかと思います。ですから、また議論を繰り返すようで申しわけありません が、先ほどから問題になっている5つの診療科の中の、必修を幾つにするかということを、 少しご議論いただきたいんです。 【小川彰委員】  先生。 【高久座長】  どうぞ。 【小川彰委員】  また総論のところに戻って申しわけないんですが、この委員会が立ち 上がったときに、厚生労働省と文部科学省と両大臣がいらっしゃってごあいさつをいただ いたわけですけれども、そのときに何をおっしゃったかというと、医療崩壊の状況にある んだと。慢性的な医師不足はあるけれども、だけどやはりその顕在化をさせたのは臨床研 修制度であるから、そういうことも含めて検討していただきたいということを言われたは ずです。これをもうお忘れになったのかなと。全部、この議論の中から医療崩壊がどこに いっちゃったのか。  皆さん、それは余裕があるんだったら、臨床研修制度を3年でも4年でもやればいいんで す。余裕がないから、そして医療崩壊になるから、あるいはついこの間東京の近くの銚子 の市民病院ですら、廃院に追い込まれた。今度、銚子の市民病院だけではなくて、その周 りの病院に患者さんが殺到することによって、倒れそうになっているという現状の中でど うすればいいかを議論しているんだということを、やっぱりもとに戻って考えていただか なければなりませんし、東京でたくさん、右側に行けば5分で大病院があって、左側に5分 行けば大病院があるところと違って、地方ではほんとに診療所が無償化されて、そして今 までの病院が来年には病院として成り立ち得ない状況にあるんだということを前提にして 考えていただかなければ、何のためにこの会をやっているのか、何でビジョンの会議であ れだけのことをやって、そしてこの会議が立ち上がったのか、全然わからないじゃないで すか。  やはりそういう基本的な医療崩壊の状況に、日本は今あるんだ、それを戻すためにはど うすればいいんだと。余裕があるんでしたら、2年の臨床研修をもっといっぱいやればいい でしょう。4年に増やせばいいでしょう。それは産婦人科も精神科もやったらいいでしょう。 それができないからこういう会議をやっているんだということを、何でおわかりにならな いのか、私は大変不満なんですが。 【高久座長】  あのビジョンの会は、医学生の数を増やすというのが最終的な結論だっ たと思うんですが、この研修医の制度の見直しのときには、確かに2年間であるために現場 のの医師が少なくなっているという議論もあった。ですから大臣みずから1年間ということ をおっしゃったんですが、私のところに寄せられている意見の95%ぐらいは、やはり2年間 研修をやるべきであると。1年間では困る。日本の医学教育の内容が非常に変わればまた話 は別ですが、現況では2年間どうしてもという意見が強くでて、2年間をベースにせざるを 得ないと思います。  それから何回も申し上げますように、内科と救急と地域保健は、すべての医師が経験を すべきものである。ほかの科についても、若いときにはなるべく多くの分野で多くの患者 さんを見たほうが、将来専門家になるにしても、総合医になるにしても、非常に大きな財 産になると思って、提案をしているわけですが、それと期間の問題があるので、行き詰ま って、皆さん方のご意見を聞いているわけです。  どうぞ。 【西澤委員】  今高久先生がおっしゃったことと同じだと思うんですけれども、やはり 今確かに医師不足で困っているのは、民間病院であり自治体病院であり地方の病院だと思 いますが、そのような病院団体から今回出た意見、例えば全国自治体病院協議会、あるい は全国国民健康保険診療施設協議会、こういうところからは、やっぱり2年間にしていただ きたいという意見が出ております。ほんとに困っている病院から逆に2年間の意見が起こ っています。  その意見の中にも書いてありますが、やはり医療の質を高めるのが大事なんだと。そう いうことで、卒前、卒後教育、それから前期、後期研修、全部合わせて1回考えて、質の高 い医者を育ててほしい。確かに数は不足しているのは問題だが、でもやはり質のいい臨床 医をつくることのほうが大事じゃないかということで、がまんするというか、そちらのほ うに重点を置きたいとの意見です。  それから四病院団体協議会、これは4つの病院団体の協議会で、全国で大体六千弱の病院 が加入している会ですが、同じように2年間にすべきだと。民間病院など医者の引き揚げに 遭って非常に苦労しているんですけれども、その中でもやはり臨床研修はよい臨床医を養 成することが目的であり、この目標達成といいましょうか、今までの実績では基本的診療 能力の達成は証明されており、2年間の研修が必要だということを書いています。医師が少 なく結構困っている病院が、できるだけよい臨床医を育てるためには、2年間の臨床研修が 必要だという意見です。そのことを踏まえて、また高久先生も今おっしゃってくださった ように議論していただければありがたいと思います。 【高久座長】  どうもありがとうございました。どうぞ、吉村先生。 【吉村委員】  今ご意見がありましたように、臨床研修というのは、いかによき臨床医 を養成するかということですよね。そうしますと、これはもちろん初期臨床研修だけでは なくて、当然後期の専門研修、それからもちろん卒前教育と、連続したものになるわけで すけど、その初期として2年間ぐるぐる回っていて、後期につながっていないというのが一 番問題だと思うんです。  本来、初期研修というのは基本的な診療能力を涵養するということですから、これは何 かというと、やはりプライマリ・ケアと言われている、一次救急の対応、それから二次救 急のトリアージの判断、それとコモンディジーズに対応できる。これが基本だと思います それ以外の、例えば、産科を回って、産科のお医者さんになるためにやっているわけでは ありませんので、それを考えれば、産科の初期研修は、卒前の学生実習と当然連携できる。  そして、さらにもっと大事なことは、後期研修でそれぞれの領域の専門医をいかに養成 するかであり、その基盤となるものを初期にやるかということですから、初期研修だけを 充実したからと言って、それでいい臨床医が育ったというのは、やはり何か片手落ちだは ないでしょうか。特に後期の専門研修の中に総合医もあるでしょうし、総合医というのは1 つの専門領域ですから、それとともに、内科も外科も耳鼻科も眼科も、すべての、いわゆ る各科の医師をきちんと養成することが必要で、そのためのバックボーンが初期臨床研修 です。ですから、一次、二次の救急、そしてコモンディジーズの対応とトリアージュがで きるということを目標に、必修科目としては、救急と内科、それと地域の一線病院での研 さんが必要ではないかと思います。 【高久座長】  どうもありがとうございました。ほかにどなたか。どうぞ。 【福井委員】  もともとのプログラムでも、8カ月間は自由に使えるわけでして、ほんと は8カ月間を使っていわゆる後期研修につなげるような、トータルとしての2年間にしても らえればということで、あれだけのフレキシビリティーを持ったカリキュラムをつくった はずなんです。8カ月では足りないというのが今のご意見だと思います。  それから2点ほど、1つはたたき台の2ページ、「プログラムの弾力化」の一番最後の白○、、 研修医の到達度を評価する仕組みにいて、今回ぜひ考えていただきたいのは、現在の修了 認定はだれも第三者評価しておりませんので、1人1人の研修医がどれくらい到達目標を達 成しているかというのは、実は誰も知りません。本人と病院側だけしか知りませんので、 せめてどこまで達成していて、修了証を出したのか明確にするべきです。医籍登録をする わりには、評価が非常に甘いシステムになっていますので、ぜひ修了認定の評価を客観的 に行う仕組みを考えていただきたい。  それから、5年たって今回のような見直しをしているわけですので、ここでプログラムを 変更したなら、また5年後には見直しをしていただきたい。 【高久座長】  そうですね。到達目標を立ててはいるけれども、客観的にはそれが達成 されているかどうかは見ていないということですね。現状ではそういう可能性があると思 います。そうするとまたどこかの財団の負担が非常に増える可能性がありますね。 【福井委員】  例えば厚生局にこれこれの資料を提出するとか、何かしらあまり負担に ならないような仕組みを考えてもらって。 【高久座長】  そうですね。 【嘉山委員】  先生、よろしいですか。 【高久座長】  どうぞ。 【嘉山委員】  もういっぱい議論をされて、先生もなかなかまとめるのに苦労されてい らっしゃると思うんですが、やっぱり作業工程をここら辺できちんと決めなきゃいけない んじゃないかと思うんです。この委員会ができたのは、幾らつくった人たちがこれは満点 だといっても、現実にいろいろな問題が起きてきているわけです。  それは、1つは地方の医師が少なくなったということは、もともと医師が少なかったので 顕在化したというだけなんですけれども、一番大きいのは、子供たちに科の偏在を起こさ せちゃったんです。例えば難しいところは全然行っていないことは現実ですよね。外科系 は全くほとんど入ってきていない。  これはなぜかというと、マッチングというのをやったときに、皆さんきれいごとで言っ ているけど、人間というのは、ある条件に置けばいろいろな考え方をするわけで、善人に もなるし、いろいろなのになるんです。マッチングをやるとき子供たちはどう考えるかと いうと、いろいろなのを調べるんです。自分の労働時間だとか、ライフスタイルがどうな るかとか。あれはマッチングでないと、ああいうことはやらなかったんです。そこでコン ピューターを開いて、例えばどこの大学のどこの条件がどうなっているとか、昔はそんな ことをやらないで、心臓外科に行きたいとか、そういうことで選んだんだけど、やっぱり マッチ、ITというのは、あのやり方は人間の脳みその構造を完全に変えたんです。そこの ところが一番、子供たち、つまり医学部の学生たちに、普通の社会人と同じような職業選 択をさせてしまったんです。  ですから東京にも集まりやすくなったし、あとはまた変なことを言うと変なことを言わ れても困るので、つまりイージーなところで、リスクの低いところで、インカムが多いと ころに集まる。これは間違いなくエビデンスです。科の偏在はそうなっていますから。こ ういうことをさせてしまったのは、僕は一番の臨床研修制度の、福井先生がおつくりにな ったプログラムなんかよりもずっと日本の医療崩壊を起こしてしまった原因じゃないかと 思っています。  それで、作業工程なんですけれども、若い医師をどうやって国民が安心してかかれるよ うな医師に育てるかという、今吉村先生がおっしゃったように、救急と、弾力化というの であれば、獲得目標を矢崎先生がおっしゃったように、やっぱりもう一度見直して、現場 で病院で患者さんが行ったときに、安心して最低限必要なものは何かというのをもう1回見 直す必要があると思うんです。お産を1カ月間見て、それで産科ができるようになるわけじ ゃないですから、その辺の獲得目標の見直しをかけてから、内科、外科、救急ということ ぐらいの枠組みで、先ほど、国家が教育に立ち入るのはいかがなものかということも考え ているということを舛添大臣がおっしゃったように、これは各医療人の自立性と自浄作用 で、ここはきちんとした若い医師を育てるということを我々は持たなきゃいけないので、 そのくらいの弾力化でいいんじゃないかと思うんです。ただし、矢崎先生がおっしゃった ような獲得目標だけはもう一度見直して、これだけは獲得目標にしてくださいよというこ とが、作業工程じゃないかと思うんです。つまり、獲得目標をもう1回見直して、それから あとは、1年でどういうプログラムを組むかは各現場がするということでいかがでしょうか。 【高久座長】  はい。 【矢崎委員】  すいません。 【高久座長】  はい、どうぞ。 【矢崎委員】  ちょっと私の発言が誤解を招くといけないんですが、基本的な診療能力 の修得ということで予算を取ってきて、これはものすごく財政支援をしている。公費で出 ているわけです。ですから、やっぱり国民の皆さんが納得できるような研修制度にしなき ゃ、辻本委員が言われたとおりです。そこで、基本的な診療能力の中身がどうかというの で、先ほど申し上げた到達目標が具体的な内容で、そのセットでなっているわけです。私 は、内容というのは項目を削除したりつけ加えたりというのではなくて、そこはもう一生 懸命議論した結果ですので、先ほど申し上げましたように、必ず入院患者を診て報告しな ければならないところを見直していただければということを提案したんです。  それで、ちょっと大胆な提案で申しわけないんですが、制度設計したときも、必修科目 がものすごく問題になって、議事録にありますように選択必修という考え方はどうでしょ うかといったときに、ものすごく反対があって必修科になってしまったんです。ですから、 乱暴な提案ですが、選択必修は1科目以上というのはどうでしょうか。全然とらないという のも最初の趣旨にもかかわってきますので、だから1科目、2科目とってもいい、3科目、人 によっては4科目とってもいいけれども、1科目ぐらいはその中で自分の関係のあるところ をしっかり勉強してくださいということで、カリキュラムの弾力化を図って、到達目標は 確実にクリアしてほしい。クリアのシステムもやっぱりちゃんと確立してほしい。今福井 先生が言われたようなところです。 【嘉山委員】  獲得目標はもちろん変えることはないんですけど、やっぱり優先度をつ けないと、多分全部入って……。 【矢崎委員】  それは、ですから申し上げたように、Aランクだけを考えていただきたい。 それであとはBランク、Cランクとありますから、それは私はあまり変える必要はないんじ ゃないかなと。Aランクがやっぱりカリキュラムの弾力化のときに一番問題になるので、そ こは議論していただいてまとめていただければと思います。 【嘉山委員】  ですから、獲得目標の重層化を図って、その中で必修とかを決めないと、 おかしなことになってしまうと思うんです。ですから先生がおっしゃったやつをまず決め て、その次にどういう科を回るかということを決めるのが作業工程だと思うんですけれど も。 【高久座長】  選択必修は、1はもちろん必要ですけど、私はせいぜい2ぐらい、1か2で いいんのではないかなと思ったのですが、武藤先生、どうですか。 【武藤委員】  私は、救急は3カ月じゃなくて6カ月ぐらいにするべきだと思うんです。 そうすると麻酔科も入るし、小児科も入るし、外科も入るし、それから産婦人科といって も中心は産科ですよね。 【高久座長】  救急、もちますかね、6カ月で。 【武藤委員】  いや、もつかもたないかは別にして、ほんとはそこが一番重要なことで す。先ほど辻本委員がおっしゃっていましたけれども、2年間研修すれば、いいプライマリ・ ケアのドクターができると思われているけれども、それはとんでもないことであって、2 年間でちゃんとできる医者はできません。これはあくまでもスタートラインであって、言 ってみれば助走なんです。それからホップ、ステップと飛んでいくわけでしょう。その助 走を長いことやろうということですから、最初のときにそんなにたくさん回って、それを 将来わたって生かすというわけにはいかない。だけど総合力に力がつくのは救急なんです。 救急というのは待ったなしですから、そのときに判断を間違えばアウト。それ以外のこと はまだ相談する暇があるんです。ですから救急だけはやっぱり必修にするべきだと思うん です。3カ月じゃ足りないです。 【高久座長】  確かにおっしゃるように、小児科の先生方も、小児を全部回らなくても、 小児救急は回してもらいたい、精神科の先生も精神救急ということをおっしゃるものです から、だから救急の時間をもう少し延ばすという考えはあると思います。それで、私もこ の前、専門家の下でぐるぐる回っても、プライマリ・ケアの教育にはならないというのが 私の考えでして、救急の場合は違うと思います。 【齊藤委員】  よろしいですか。 【高久座長】  どうぞ。 【齊藤委員】  今の期間に関してなんですけれども、そういう意味では下のほうの地域 医療も1カ月以上じゃなくて、3カ月以上にしたほうが、多分1カ月では名前を覚えて、病院 の施設がどうかというだけで終わりますから、そうしますと、これは3カ月としますと、も う既に内科6カ月、救急3カ月で1年ですよね。ですから先ほどの選択肢を2科目とれば半年 いくので、あとの半年はフリーと。 【高久座長】  全くそうするとフレキシビリティーがなくなってしまう。 【齊藤委員】  そうすると、選択は1科目でしょうかね。 【高久座長】  そろそろ時間になりましたので、どうぞ、田原さん。 【田原医師臨床研修推進室長】  プログラムのことばかりで、まだ時間がどうしてもと いうことであればあれなんですけれども、募集定員のほうについて、もしコメントがあれ ば……。 【高久座長】  どうぞ。 【田原医師臨床研修推進室長】  それについてお伺いしておいて、次に反映させたいと 思います。 【齊藤委員】  私はこの3ページ目の「受入病院の募集定員や基準の見直し」の上から3 つ目の○が気になります。ここでは何が書いてあるかといいますと、「研修の質の向上のた め、研修プログラムを管理する病院について」、つまり管理型の病院について、「水準・規 模の面で基準を強化するとともに」云々と書いてありますが、規模というのは、ベッド数 とかそういう物理的な意味だったらまずいんじゃないか。つまり、ベッド数などの規模は、 研修の質とは直接関係ない。少なくとも関係あるという証拠は乏しいので、むしろこれは 指導体制とか設備とか、そういう意味だったらわかりますが。ただ病院のサイズだけで足 切りをするというのは反対です。全国でこの制度が発足以来、営々として努力してきた中 小病院には、いい指導医がいて、一生懸命やっている病院があります。そのような人たち が大変がっかりすると思います。例えば300床以下はだめだとか、そういうことにしてしま うと。サイズだけで研修の質は決まらないということを言いたいと思います。 【永井委員】  つけ加えていいですか。 【高久座長】  どうぞ。 【永井委員】  おっしゃるように、先ほどの議論で、救急が大切であれば、年間の救急 の受け入れ数が何件以上という形の症例数(件数)がなければ、幾ら病床が多くても研修 医は経験できないので、病床だけという形ではなくて、今齊藤委員がおっしゃられたいろ いろな多面的な部分の配慮というのもお考えいただければと思います。 【高久座長】  ただ、関連病院でカバーをすることはできると思います。私が前にサン フランシスコに行ったときには、ほとんどすべての大学の学生は、救命救急センターに勉 強に来ていました。工夫の仕方がいろいろあると思いますけれども。ただ齊藤先生がおっ しゃったように、ベッド数だけで決めるのは非常に問題があると思います。 【齊藤委員】  しかも、いわゆるたすきがけというのは、あまり病院や研修医にとって は自主的で一貫性のある研修システムではないと思います。大学にとっては都合がいいか もしれませんが。たすきがけでなくて、やはり小さくてもちゃんと研修のできる病院は管 理型として認めるということは大事だと思います。 【福井委員】  私もベッド数での制限には反対です。どちらかというと、中小の病院で の研修のほうが研修医の満足度も高くて、いい研修をしているというデータが出ています ので、ベッド数での制限というのは、いろいろな意味で大きな問題になると思います。ぜ ひ考慮していただきたいと思います。 【高久座長】  私もいろいろまだご意見をお聞きしたいんですが、別な用事もあります のでこれで終わります。この次は2月18日ですね。 【田原医師臨床研修推進室長】  はい。次の日程でございますけれども、2月18日の17 時から文部科学省のほうで開催予定でございます。 【高久座長】  今日もいろいろな問題がたくさん出ました。私も自信がなくなりました。 一応17時から19時になっていますが、場合によってはサンドイッチか何か出してもらって、 後のほうを少し余裕をあけていただければと思います。私の不手際で今日は到達目標のこ ととかは議論できませんでしたので、次回は少し時間をかけたいと思います。5時から始め ることだけはご了承いただきたいと思います。 【田原医師臨床研修推進室長】  どうもありがとうございました。 【高久座長】  どうも。                         照会先:厚生労働省医政局医事課                             医師臨床研修推進室                         内線4123 内線2567                       (代表)03−5253−1111                        (直通)03−3595−2275