09/01/29 第3回肝機能障害の評価に関する検討会議事録 肝機能障害の評価に関する検討会(第3回)議事録  日   時:平成21年1月29日(木)14:00〜16:15  場   所:厚生労働省5階 共用第7会議室  出席構成員:柳澤座長、和泉構成員、岩谷構成員、兼松構成員、田中構成員、 林構成員、原構成員、八橋構成員 ○柳澤座長  それでは、定刻になりましたので、肝機能障害の評価に関する検討会の第3回を開催 いたしたいと思います。ちょうど皆様おそろいでございますので、本日もまたよろしく お願いいたします。  議事に入ります前に、事務局のほうから構成員の出席状況と資料についての確認をお 願いしたいと思います。 ○名越課長補佐  障害保健福祉部企画課の名越でございます。  お忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。  本日の出席状況でございますが、構成員の皆様全員のご出席をいただいているところ でございます。誠にありがとうございます。  事務局の企画課長が業務のため到着が遅れております。ご容赦いただきたいと思いま す。  本日の議題に関しまして、前回と同じく健康局総務課の宮崎健康対策推進官に出席を していただいております。よろしくお願いいたします。  続きまして、資料の確認をさせていただきます。お手元に議事次第がありまして、資 料1といたしまして、プレゼンテーションのハンドアウト「肝機能障害について(重症 の肝機能障害)」というのが資料1でついております。  続きまして、資料2「肝機能障害に関する論点整理」でございます。  参考資料といたしまして「障害者自立支援法のサービスの利用について」というパン フレットがついております。  あと、参考資料の1といたしまして「肝機能障害の評価に関する検討会構成員名簿」 と、2つ目に前回の検討会の議事録がついてございます。  以上、お手元にございますでしょうか。   ○柳澤座長  よろしいですか。ご苦労さまでした。  私のほうから追加させていただきますが、この検討会の構成員のメンバーの方には、 多分弁護団の加藤さんのほうから「肝硬変患者の生活実態について」というレポート が届いていると思いますが、これは第2回の検討会のときに患者団体の方々のヒアリ ングを行いましたけれども、そこで幾つかの質問も出まして、そういったものに対応 する形での患者さん及びご家族に対するヒアリングを行った、その結果をまとめてい ただいたものというふうに理解しております。この内容は大変貴重でありますので、 これからまた逐次拝読しながら、いろいろ審議の中で参考にさせていただきたいとい うふうに思いますので、よろしくお願いします。  それでは、これから議事に入らせていただきます。「肝機能障害について」という のが議事のテーマでございますけれども、議事の内容につきまして事務局のほうから 説明をいただきたいと思います。 ○名越課長補佐  座ったままで説明させていただきます。  本日の議事でありますけれども、まず初めに「重症の肝機能障害」につきまして兼 松構成員からプレゼンテーションいただきまして、その後、この重症の肝機能障害に つきまして全員で理解を深めるための質疑応答という時間を設けさせていただきたい と思います。  続きまして、第1回、第2回の検討会における議論を事務局のほうで論点整理とし てまとめたものを資料2として用意しております。それに加えまして、これまで説明 をしておりませんでした身体障害者のサービス等について、これもご説明させていた だく時間を設けさせていただき、後、議論という流れにさせていただきたいと思って おります。 ○柳澤座長  わかりました。よろしゅうございますでしょうか。  それでは、最初に「重症の肝機能障害について」ということで、兼松構成員のほう からのお話を伺いたいと思います。よろしくお願いします。 ○兼松構成員  長崎大学移植・消化器外科の兼松と申します。  今日は、肝機能障害について、特に重症の肝機能障害ということで、お話をさせて いただきます。  肝臓というのは、人の体の中で最も大きな臓器なんですけれども、そこには約500 種以上の機能を持つと言われております。大きく分けまして、これを物に例えますと、 例えば生産工場ですね。肝臓でたんぱくをつくって、胆汁を生産したりということで、 こういう生産工場の役割をいたします。それからもう一つは、解体工場ですね。解体 工場の役割もするんです。これは体の中でできたアンモニアとか、それから飲んだ薬 を分解したりするというのも肝臓の役割です。そのほかフィルター、これは体の中へ 入ってきた細菌や異物を排除しようとする役割もございます。  それからもう一つは倉庫の役割でありまして、ビタミンとか糖とか、これを一時的 に貯めておくというような役割があります。  肝臓病では症状が出ない場合があります。特に初期のころにはほとんど症状があり ません。  肝臓病が進むと疲れやすくなる、それから足がむくむ、こむら返りが起こりやすく なる、そして筋肉が落ちてくる。だんだんと歯茎から血が出たり、出血がしやすくな ったりというようなことが起こってまいります。  さらに進んでいきますと、腹水、肝不全、肝性脳症などの症状が起こってきます。  肝臓の病気の原因としては、ウイルス、アルコール、薬物、それから自己免疫疾患 などがあります。まず、急性肝炎で発生し、その一部が劇症肝炎といった急激な経過 をたどる肝炎の一つに陥ります。しかしながら、急性肝炎から慢性肝炎になる場合が あります。慢性肝炎というものになる場合があります。  ここのところで慢性肝炎をずっと繰り返していきますと、肝臓の細胞が壊れたり、 線維ができてきたりということの繰り返しで、だんだんと肝硬変になってくるわけで あります。肝硬変でも初期には肝臓の機能がうまく保たれているときはそれでもよろ しいんですが、だんだんとその機能が落ちてくると、非代償性肝硬変となり、この中 から肝臓がんが発生するということになります。  今回はC型肝炎ウイルスが問題になりますけれども、C型慢性肝炎ではどのような 症状が出るのかといいますと、これに特有なものはありません。  それから、C型肝炎の患者さんでは、糖尿病の合併率が、例えばB型肝炎ウイルス に感染した方よりも高い率で合併するといわれてます。それから、そのほかのリンパ 腫とか糸球体腎炎、心膜炎、心筋炎、甲状腺炎などが発生するということもあるとい うことです。  古くから、世界中で使われてきた肝障害度の評価の一つとしてChildの分類という のがございます。ここには、血清ビリルビン濃度、血清アルブミン濃度、それから腹 水、脳神経症状、栄養状態という、この5つの項目で、軽症、中等症、重症、すなわ ち、A、B、Cと表現されます。  ただし、最近はChild-Pugh分類が使用される頻度が増えています。以前、八橋構成 員が紹介されましたとおりです。それには栄養状態という項目はありませんで、あら たにプロトロンビン時間が入ってまいります。  肝臓病患者さんに対しては、規則正しい生活習慣の徹底、それから暴飲暴食を避け る、特に禁酒、禁煙といったことが大事になってまいります。それから食後の安静と か適度な運動、このようなことが肝臓病の一般に行われます診療上のアドバイスとい うことになるかと思います。  慢性肝障害に対する一般的治療といたしましては、生活指導、食事の指導とか運動 の指導、安静、入院、このようなことをしますし、それから肝機能の改善を目的とし たもの、これはグリチルリチン製剤を投与することがあります。  非常に重症の症状としまして、腹水、脳神経症状、肝性昏睡があります。腹水に関 しましては安静と食事療法ですね。栄養価のあるものをとってもらうというようなこ とも必要ですし、それから利尿薬、これを投与いたしまして、腹水を尿のほうに排出 するというようなことが行われます。その他、アルブミン製剤を投与して、腹水の軽 減を図ったり、どうしても腹水が、これがおさまらないときは腹水を穿刺したり、あ るいは腹水を静脈の中に返してやるような、こういうシャント手術を行ったりするこ ともあります。  脳神経症状としましては、原因の除去、これは特に便秘などをしますとアンモニア が増えたりしますので、その便秘を改善してやるというようなこと。それから食事、 たんぱくの制限です。薬物療法としましては抗生物質、ラクツロースの投与。それか ら分岐鎖アミノ酸製剤を使うことがあります。これがひどければ血漿交換も行われる ことがあります。  栄養としましては、高たんぱく食、アルブミン製剤、それから経腸・経静脈栄養等 々で栄養を補給してやるということが必要になる場合もあります。  ところが、ウイルス、特にC型肝炎ウイルスによります慢性肝障害例に対しまして は、一般的な治療とともにウイルス対策は必須であります。  現在、これはC型肝炎ウイルスの保有者というのは、日本では約170万人、全世界 では1億7,000万人とされています。いったん感染が起こりますと、その7割が慢性 化するということであります。それから、あと20年、30年たってまいりますと、年平 均0.5から7%に肝がんが発生するというようなことがありまして、C型肝炎ウイル ス陽性者の中から、肝硬変とか肝がんに進んでいくことが起こります。  C型肝炎につきまして、そのうち70%がHCVキャリアでありまして、このC型肝 炎ウイルスは一旦感染しますと、70%が持続感染し、10ないし30年という歳月を経ま して、慢性肝炎、肝硬変、そして肝がんを発生するというようになってまいります。 実際に、肝がんの患者さんの75ないし80%はHCVの陽性の患者さんということにな ります。  急性肝炎から年次ごとに1.2%ぐらいで線維化が肝臓に起こってくる。毎年線維化 が進み、肝硬変になり、そして肝がんになっていくパターンです。感染者は40代以上 の年齢層に多く見られます。そして、多くの人は感染の時期がはっきりいたしません。 ウイルスが発見される以前に輸血を受け感染する例もございます。  これがC型肝炎ウイルスを感染した後の自然経過であります。感染がまず起こりま す。一過性の感染で、そのまま治ってしまう方もおられます。これが約30%でありま す。しかしながら、軽い肝炎でずっと、ただ単にウイルスキャリアであればよろしい んですが、この中から約70%は慢性肝炎に移行します。そこのところで、インター フェロンで治療いたしますと、ある程度軽い肝炎の場合には、治癒が経過中にもたら されることがあります。  慢性肝炎になりましても、インターフェロンによる治療がうまくいきますと、軽い 肝炎に戻ったり、あるいはこの治癒というところまでいけるということがあります。 慢性肝炎の70%の方が、10年ぐらいの経過で肝硬変ということになってしまわれる ことがあります。この際にも、インターフェロンでうまく治療ができますと、慢性肝 炎のほうに戻すことができます。それ以上進んでまいりまして肝硬変になっていきま すと、なかなか元に戻るということは、これはほとんどないということでありまして、 20年ぐらいの経過をもちまして、また総合的には70%ぐらいの方に肝がんが発生して くるというようなことになってまいります。これがHCV感染の自然経過ということ であります。  既に今までもお話がありましたように、慢性C型肝炎に対しますインターフェロン 療法が進歩し、インターフェロン単独で24週、48週という治療が行われてきましたが、 その後、PEGインターフェロンが開発され、リバビリンという抗ウイルス薬が出て きまして、そのようなことを併用することによって、約50%ぐらいがウイルスがなく なってしまう時代になってまいりました。  しかしながら、肝硬変というところになりますと、インターフェロンの治療という のも限界があります。我が国のC型慢性肝炎の70%はgenotype 1bというなかなか治 療が困難なタイプが多いということでございます。  インターフェロン療法は、線維化は改善する例もあり、肝硬変に有効かもしれない。 それから、肝がん発生抑制の可能性もあることが期待されます。特にSVR、例では、 こういう効果が期待できるということでありますが、欧米の大規模試験の結果は相反 するものがありまして、肝硬変に対するインターフェロン治療が明らかに肝硬変に効 果があるとするエビデンスは、まだないというのが現状であります。  ただし、種々の肝硬変の患者さんにインターフェロンの治療を行った内科の先生の 経験では、このHCVが陰性化しなくても、長期間インターフェロンが使用できれば、 肝機能も改善し、患者さんのADL、生活の質も上がってくるように感じているとい うようなことの報告もございます。  治療とその後でありますが、PEGインターフェロン、リバビリン療法の導入によ り、非常に治療困難とされておりました1b型の高ウイルス群も、半数はSVRが得 られる時代となってきております。全体では70%がSVR可能ということでございま すが、一方では副作用が強いので、やはり新たな抗HCV薬の開発が期待されており ます。  本邦では、慢性C型肝炎患者は急速に高齢化しており、併用療法の無効例に加え適 用が困難な症例も増加しているということであります。さきもお話がありましたよう に、高齢者にはなかなかインターフェロンが効きにくいというようなこともございま すので、問題もまだ残っているということであります。  そこで、現在行われているのが肝臓移植という治療であります。肝臓の機能が低下 し、生命の維持が困難な状況となった末期肝疾患に対する治療法であります。現在の 医学をもってしても、ほかに治療法がない場合に、初めて肝臓移植という選択肢が出 てまいります。  肝臓移植には、脳死からの肝移植、生体部分肝移植という2つの方法があります。 生体部分肝移植というのは、健康な方から肝臓の一部を提供していただきます。  ここで一つ、こういう図式を書きましたが、ここに電池がありまして、正常なとこ ろはこれで、右と左の2つの電池がうまく接合しまして、ライトが光ります。ところ が、ここの肝臓が働くとなりますと、だんだんとこの光が弱くなります。そこで、こ こで2つの電池をとってしまいまして、1つの新しい電池を入れてやると、再びライ トが明るく灯ります。これが肝臓移植です。  1989年から始まりました日本の肝臓移植は、最近は年間500例以上が日本全国で行 われています。全体で4,000例を超えるぐらいのものが2006年までに行われたという ことであります。  ところが、これで見てみますと、アメリカ、ヨーロッパでは、ほとんど脳死からの 肝移植です。ところが、日本は、99%が生体肝移植です。わずか1%が脳死からの肝 移植です。これに対しまして、韓国も同様な傾向です。  日本の生体肝移植を受けた患者さんの生存率は、1年が90.6%、3年が82.8%、5 年が74.9%と報告されています。  これは、すべての病気の方で肝臓移植が必要になって行ったときの成績です。ここ で、C型肝炎ウイルス陽性患者さんに対する肝移植はどうかといいますと、日本で行 われた生体肝移植4,183例中、C型肝炎ウイルスを持った肝硬変に対する肝移植とい うのは293例。すなわち7.0%がC型肝炎の肝硬変の方に行われています。それから、 C型肝炎が陽性で肝がんがあったために移植をされた方が11.5%、479例になります。 そして、C型肝炎ウイルスが陽性の肝硬変の患者さんの移植成績は1年が75%、3年 が69.4%、5年が65.8%。肝がんを持っている場合にも、ほぼ同じような数字です。 しかしながら、先ほど出しました全症例での5年生存率が75%というところからしま すと、C型肝炎ウイルス陽性患者の成績は、やや低めということになります。  このことは、アメリカでも同様の傾向です。C型肝炎ウイルス陽性者と陰性者の移 植後の成績を比べると、約7%ぐらい、C型肝炎ウイルスを持っておられる方が5年 生存率で低くなっています。  これはなぜかと申しますと、C型肝炎ウイルス陽性者は、HCV−RNAが陽性の 場合には、移植をしました後、ほぼ全員にC型肝炎の再燃が起こります。これが一つ 大きな問題で、移植して、2日間ぐらいはウイルスが体の中から消えるんです。とこ ろが、その後から増えてきまして、大体1週間ぐらいしますと、このC型肝炎ウイル ス量が前と同じくらいに増えてくる。さらに悪いことに、それから後、非常な勢いで 増えてしまうんですね。これが非常に問題です。  それでは、ここで肝移植後の健康調査の結果を示します。手術前に、自分の状態が 非常によかったと言われる方はほとんどありません。それに対し、移植後には、全く 健康、ほぼ健康という方が約4分の3ぐらいに増えてまいります。私の経験でも、そ れまでずっと寝たきりだった人がお元気になって、就職をし、子供さんができたとい うようなこともおられます。  それに対し、社会復帰しているとは言えない方も約20%ぐらいにはあるかと思いま す。  これが移植の状態ですが、最後に、これは山口大学の井上教授がインターネットで 報告されたものを、井上教授のご了解を得まして、ご紹介しておきます。  アメリカと日本のC型肝炎の患者さんに生涯医療費というのを計算されたものがあ りました。35歳の患者さんを想定すると、平均余命はインターフェロンを投与した場 合は36.8年、投与しなければ34.3年となると。生活の質を調整した場合は、これが 31.7年と27.3年になるということでございます。すなわち、生涯医療費はインターフ ェロンを投与すると681万円、しないと775万円となり、投与しないほうが生涯医療費 は高くなる。インターフェロン療法を行って余命を1年伸ばすには120万かかる計算 になるんだそうです。治療費対効果が非常に高い。すなわちインターフェロンを使え ば、患者さんの生命を伸ばすということに非常に効果があるというようなことの報告 があります。  アメリカでの生涯医療費はC型肝炎患者さんで、肝移植が医療費の25%を占めてい ますが、日本の場合は肝がん治療が占める割合が高い、約20%だそうであります。肝 移植のみの費用、これは私どものデータで、井上先生のものではありませんけれども、 大体今のところ、私どもの経験ではドナー手術代も含めまして、一つの肝移植に850 万ぐらいの費用がかかっています。しかしながら、限度額認定制度がございますので、 これで患者さん自体にはご負担はそれほどかけずに肝移植が行われているというのが 現況かと思います。  以上、重症の肝機能障害ということについてご説明申し上げました。どうもありが とうございました。 ○柳澤座長  どうも兼松先生、ありがとうございました。それでは、どうぞ席のほうへお戻りく ださい。  肝機能障害についてということでございましたけれども、主としてC型肝炎から、 その経過、予後、そしてまたその治療法としてのインターフェロン療法、さらには肝 移植について、広範にお話いただきましたので、これから兼松構成員のお話に対しま しての質疑をいただきまして先へ進みたいと思います。どなたでも結構ですし、どの 点でも結構ですから、どうぞ構成員の方、ご質問あるいはご意見ございましたら。ど うぞ。 ○八橋構成員   長崎医療センターの八橋ですけれども、肝移植の保険適用のことについて少し教え ていただきたいと思います。 ○八橋構成員  肝機能がよく代償されている肝臓がんの場合は保険の適用は? ○兼松構成員  そうですね。非代償性肝硬変で肝細胞がんがある場合に保険適応となっています。 さらに肝細胞がんついてもミラノ基準を満たすことが保険適応となる条件です。 ○八橋構成員  分かりました。 ○柳澤座長  今の点ですけれども、肝がん、肝硬変に対する肝移植は、今はもう高度先進医療で はなくて、どこの施設が行っても保険は適用されるという状態ですか。 ○兼松構成員 そうなっています。ただしこの場合には条件がありまして、肝臓がん の進行度というのが基準の一つになっています。これは肝臓がんが1個で、そのサイ ズが最大級5センチ以内ということが一つ、それからもう一つは、3センチ以内のも のが3個以内、2個か3個、こういう状態で、しかも脈管にがんが浸潤してない、肝 臓の外にがんがない、こういう条件であればどこの施設でも保険適用とすることがで きます。 ○柳澤座長  ありがとうございます。  ほかにいかがでしょうが。はい、どうぞ。 ○岩谷構成員   岩谷です。例えば心臓病であればニューヨークハートアソシエーションの分類のよ うに機能評価と結びついた分類というのがあるのですけれども、この肝機能障害の場 合にはそういう機能分類はあるのでしょうか。そしてもしあれば、このChildの分類 とどういう対応関係になっているのか、そういうことがお分かりならば教えていただ きたいのですが。   ○兼松構成員  このChildの分類は、ずっと以前から使われてきた、世界共通の肝機能評価指標だ と思います。さらに最近ではchild-pugh分類が汎用される傾向となっています。 ○柳澤座長  ほかにいかがでしょうか。  それでは、一つ私からお伺いしたいのですが、進行した状態で中枢神経障害といい ますか、脳障害が出てくるということでありますが、私どもが知っておりますウイル ソン病とか、あるいはシトルリン血症であるとか、そういった代謝性の肝障害の場合 には、脳症というのは一過性に出てきて、それで治療するとよくなるということがあ りますが、確かにもう重症な肝性昏睡になってしまいますと、劇症肝炎などの場合に は予後が非常に悪いということのサインというふうに理解できるのですけれども、一 般に肝硬変から肝がんになって、非代償期に出てくるそういった意識障害というのは 可逆性というのはどの程度にあるのでしょうか。 ○兼松構成員  これも先生、大変難しいところで、特に劇症肝炎のときにそれをどう評価するのか というところが難しいというところになっております。今のところコーマグレードの 2になりますと、一応移植ということも考えていいだろうということで今やっており ます。もちろんその経過によって、それがいろんな治療への血漿交換をやったり、い ろんなことをやって、それがまた1に戻ったり0になったりすると、もちろんそれは そのままの保存的な治療が続けられるわけですけれども、そういう治療をやりまして もコーマグレードが2あるいは3になるということになってきますと、これは一応移 植というのも考えて、コーマグレードがそういうところで固定されるということにな ってくるのだと思います。ある程度のところまで行きますと、4ぐらいになってきま すと、それが可逆的にまた3に戻るかというのはなかなか難しいので、どこの段階で いろんな治療を新たに加えるか、これが非常に難しいポイントだと思います。 ○林構成員  ただ今の件ですけれども、急性の今お話なんですが、C型肝炎に伴う慢性の肝不全 だと基本的には可逆性だとお考えいただくほうがいいと思います。以前と違いまして、 かなり最近治療方法が進んできておりますので、昏睡になりましても適当な治療を行 うと意識はもとに戻るということのほうがもう圧倒的に多いと思います。 ○柳澤座長  ありがとうございました。  ほかにいかがでしょう。どうぞ。 ○岩谷構成員  肝移植後に抗免疫療法が当然必要になりますね。また肝移植の後にいろいろな合併 症が出ると聞いております。それらについて、主な合併症というのはどれぐらいのと きにどういうふうに、どれぐらいの頻度であらわれるかなどを教えて下さい。 ○兼松構成員  現在は、肝移植を行いますと直ちに免疫抑制剤を使用してまいります。これは、例 えばステロイドを使ったりというようなことで、術直後から半年間位使います。それ からFK506、タクロリムスという免疫抑制剤、これは生涯続けるということにな ります。ステロイドは半年前後までの、2つの免疫抑制剤で使うということになりま す。  合併症としましては、術後早期には出血や血管吻合の合併症などが起こる可能性が あります。それからやはり拒絶の問題であります。それを防ぐために免疫抑制剤を使 いますが、拒絶は術後早期から起こることもありますし、2,3年後に発生すること もあります。  一方、免疫抑制剤によって感染症にかかりやすくなるのも問題です。これは免疫抑 制剤を使っている限り、いつでも起こりうる合併症です。 ○柳澤座長  ほかにいかがでしょうか。 ○岩谷構成員  もう一つよろしいでしょうか。 ○柳澤座長  どうぞ。 ○岩谷構成員  これは主に障害という捉え方のほうからの質問です。最後から3枚目の「患者さん の暮らしぶり」というところに、「ほぼ健康」「全く健康」というような記載があり ますが、その健康の内容をもう少し詳しくお調べになっておられるのかどうか、それ を教えていただきたいのです。  つまり、健康と申しましても、本当に身体的な健康から社会的な健康から、いろい ろな面の健康があります。特に障害ということになりますと身体的な健康状態だけで はかることはできません。この調査の結果をもう少し詳しいのがあればお教えいただ ければありがたいのですが。 ○兼松構成員  ここで出しておりますデータは、そこにもありますように日本移植者協議会から出 されたもので、ちょっとこれ以上の細かい分析のところは私データとして持ち合わせ ておりません。 ○柳澤座長  今の点に関してですけれども、弁護団のほうからいただいた資料の文献にもありま すけれども、厚生労働省としての厚生科学研究の中で、慢性疾患、まあ特定疾患が主 だと思いますが、その患者さんのQOLをどう評価するかということで、京都大学の 福原教授が班長になって、何年間かそういう研究がなされましたけれども、まずそう いうところでイギリスでいろいろ開発されたような比較的簡単なQOLのクエスチョ ネアー、質問表などが有効であるというふうな評価がされていたというふうに私は記 憶しますけれども、何か先生方のこの肝障害の領域でそういうQOL評価というのは、 特になさっていらっしゃいますか。あるいはそういうふうな動きがありますでしょう か。 ○林構成員  実は余りn数の多いものはないと思いますが、最近インターフェロン治療の前後に、 そういう先ほど解説された指標を使ってどういうふうに変化するかという成績はかな り出てきております。ただ普通の慢性肝炎と肝硬変でn数が少ないスタディはありま すが、もう少し大きなスタディはまだないのではないかと思います。 ○柳澤座長  ありがとうございました。  どうぞ。   ○和泉構成員  内部障害の場合、感染症のある人に対する移植というのは基本的に慎重にやるわけ ですけれども、特に免疫抑制剤を使いますので、先ほども再現という問題も言われま したけれども、先生の成績を見ると結構感染されている方々に対する移植が多い。こ れはちょっと意外に私は感ずるのですけれども、その点はどういうふうにして適応を 決めておられるのでしょうか。この感染者であってもやる、この感染者ではやらない というようなことはあるのでしょうか。 ○兼松構成員  今までの肝移植の症例を見てみますと、こういう肝炎ウイルス陽性者は比較的少な かったのですが、ここ5年ぐらいでかなりの数が増えてきております。特に肝細胞が ん患者、それから肝炎ウイルス陽性患者、それから胆道閉鎖などの疾患が大体3分の 1ぐらいの割合となってます。とくに肝炎ウイルスを持っている方の移植例というの は年々増えてきております。  この際、肝炎ウイルスを持っておられるからということで何か適応に基準を設けて いるかということですが、これは設けてはおりません。ウイルスを持っておられても、 やはり一番基となりますのは、肝機能障害の重症度ということになります。 ○和泉構成員  そうすると、逆に移植後のウイルスの駆逐率というのはどれぐらいの成績になって きているのかということが知りたいところでありまして、その点いかがですか。 ○兼松構成員  ここは大変厳しい問題で、ほとんどの症例がまたウイルスの再感染、これを起こし ているというのが現状です。  それはなぜかと申しますと、移植後ですので免疫抑制剤を使っていたり、いろんな 病気の回復が遅れたりということで、PEGインターフェロンにしましてもリバビリ ンにしましても、通常使います量が使えないというようなこともあるわけですね。で すから半量にしたり、あるいはインターフェロンだけを使ったり、インターフェロン も半分にしたりしながら、いろいろ工夫して今やっているところです。まだそこの対 策、それからこれによってどれぐらいまで抑えることができるかというところまでは、 まだちょっとデータがそこまではそろってないのだろうと思います。 ○柳澤座長  ありがとうございました。  ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますか。 ○名越課長補佐  事務局から質問するのはちょっとどうかなとは思ったのですけれども、3枚目の 「HCV感染の自然経過」の図を提示していただいております。これは従来のHCV 感染の自然史を示す中で、近年インターフェロンがかなり効果的に使われるようにな ってきて、重い者でも慢性肝炎あるいはウイルスがとりあえず除去に近い状況になる というような成果を上げていると思うのですけれども、その効果が顕著にあらわれて 確認されてきたのは最近のことだというふうに思っております。いずれこのHCV感 染の自然経過が、どういうふうな変化をしていくのか、その見通しを先生方でお持ち でしたら教えていただけると助かるのです。これは兼松先生だけではなくて、肝臓の 専門家でいらっしゃる先生方にお伺いしたいと前々から思っていたことですので、も しコメント可能でしたらお願いをしたいと思います。 ○柳澤座長  いかがですか。 ○林構成員  ご指摘の点は非常に重要な点でございますけれども、今正確な数字は言えないと思 います。中等度の肝硬変までですとウイルスの排除が起こりますと、以前にもご説明 いたしましたように病気がどんどんよくなってまいりますので、それは病気の進行度 によって元に戻るスピードも異なりますので、実際C型肝炎の患者さんで治療をされ てウイルスの排除が起こった何%の方がどのレベルまで戻ったかについては今のとこ ろ正確な数字はないと思っております。  前に大阪で肝がんの発症率をずっと追っておりますけれども、C型の患者さんの肝 がんの発症率は年齢で調整しましても大体5年ぐらい前から男性については発症率が 下がってきています。ただこれが単に感染者が新規の感染がございませんので、年齢 が高くなることの影響だけなのか、いわゆる治療を行うことによってウイルスの排除 が起こったことが加味されているかについても、今のところ正確な分析をやる方法が ございませんので、なぜ肝がんの発症率が下がっているかについても正確な原因は、 今のところ推測の域を出ておりません。 ○柳澤座長  八橋構成員。 ○八橋構成員  C型肝炎の自然経過をまとめますと、一度慢性化したものは基本的にはウイルスが 自然に排除されることはなく、ほぼ一生持続的にウイルスを持ち続けるというふうに 考えられています。C型肝炎に持続感染したすべての方が肝硬変、肝がんになるわけ ではなく、ウイルスを持ったまま、そのまま天寿を全うされる方も決して少なくない ということがわかっています。  インターフェロンが出てきまして、慢性肝炎からのウイルス排除が初めて可能にな りました。10年以上前のインターフェロン治療法では10%とか20%の著効率であった ものが、今では50%は超えて、60-70%の方でウイルス排除が可能となっています。 それほど治療成績がよくなっています。  ウイルスが排除された場合は、それ以降の病気の進展は基本的には停止する、肝機 能が悪くなることはなくなります。ただ元の肝臓の状態に戻るかということに関して は、先ほど林委員が言われたように、まだ長期のデータが分かっていません。ただ、 治療前後の状態を確認された例では、わかりやすく表現すると、固い肝臓も時間とと もに柔らかくなっていくと言われています。  また、当院のデータによると、インターフェロン治療でウイルスが完全に駆除され た方では,肝がんに進展する確率が10分の1以下に低下する、という統計学なデータ を持ち合わせています。 ○柳澤座長  ありがとうございました。  兼松先生のほうは何か。よろしゅうございますか。 ○和泉構成員   ちょっといいですか。基本的にはそういう個別の成績を決めるものは、感染症の場 合にはウイルスに応答するT−cellの活性が決めているわけですけれども、この場合 もそういうふうに考えてよろしいわけですか。   ○八橋構成員  インターフェロンの効果でしょうか。 ○和泉構成員  そうじゃなくて、自然で決める……。 ○八橋構成員  それはわかってないですね。肝硬変、肝がんに進行する方と、全く病気が進まない 方との違いが、免疫学的、遺伝的に、HLAを含めてですけれども、規定されている かどうかは、明確にはわかってないと思います。 ○林構成員  これは感染症ですので、基本的には障害については先生ご指摘のように免疫反応の ところ、これはもう国際的にはほぼ認知されています。ただその障害の程度の強弱に よって病気の進行度が変わってまいりますので、障害の程度が強ければ目に見えて進 行していくのですが、障害の程度が軽いと病気の進行が余り認められません。だから C型ウイルスに感染しても、ALTが正常な無症候性のキャリアという方が以前おら れて、その方は病気が進行しないと従来言われていたのですけれども、実は肝機能が 正常の人でも、正確にずっとフォローしますと、実は線維化が進展していっています。 だから肝機能上に異常が出なくても、非常にマイルドな細胞障害が起こることによっ て、非常に時間はかかりますけれども、やはり病気は進行しているだろうと思ってい ますので、全然病気が進行しない人というのは、非常にマイナーなアプリシエーショ ンだろうと思います。 ○和泉構成員  そういたしますと、ここでの議論はやはりChildの分類でいうとCから議論すると いうのが合理性を持っているということなんでしょうか、対象となる方々は。 ○林構成員  それは今の話とはちょっと次元が違うかもわかりません。今のところ個々によって 病気の進行度には大きな差がありますが、先ほど兼松先生のスライドで健康だという と、何をもって健康だと言うかという議論がございましたけれども、その定義は変わ ってまいりますので、我々はいろんな医学的な処置をするためにChild分類を使って いますが、それはいろんな治療方法を決定するための手法に使っていますので、その 患者さんの肝硬変の障害を何をもって判定するかによってそこの考え方は変わってく るだろうと思います。 ○和泉構成員  多分後からも議論になると思うのですけれども、機能障害とChildの分類とが連動 してくれるかどうかということが……。 ○林構成員  そこが非常に重要な点だと思います。 ○和泉構成員  そこが論点になってこようかと思うので、あえて質問させていただきました。 ○柳澤座長  よろしゅうございますか。どうぞ。 ○原構成員  ウイルスの量はその進展に非常に相関しているのでしょうか。 ○林構成員  それは全然相関しておりません。ウイルス量が多い、少ないというのは病気の、肝 炎の程度も規定しておりませんし、病気の進行とも規定していません。先ほど言いま したようにウイルスはいるということが非常に重要で、いることに対して免疫反応が 起こるということがやはり病気の進行の規定をしていると思います。 ○原構成員  量的なものは関係してない。 ○林構成員  基本的にそのようにお考えいただいて、ただ、細胞障害が強く起こりますと相対的 にウイルス量は低くなる方もおられますので、全然関係がないとは言えない。大きく 言いますとウイルスの量が多いから病気が進行するとか、そういうことではございま せん。 ○原構成員  もう1点質問ですが、その脳症状のマーカーというのは今あるのでしょうか。いわ ゆるトキシン的なもので、例えばこういうのは一番相関しているというようなものは。 ○林構成員  これは以前、一番ポピュラーなものはアンモニアの濃度でやっていたのですが、実 はこの肝性脳症が起こる原因はかなり複雑な機構でして、アンモニアだけで規定され ているわけではないのですね。先ほども申しましたように肝性脳症の治療については 最近非常に進んでおりまして、慢性の肝性脳症についてはほぼ元に戻せる状況になっ ていますので、今のところは肝性脳症の指標に言える客観的な、何かアンモニアのよ うなものであらわせるかというと、あらわすことが不可能でございまして、やはり実 際にその脳症の程度を数値化するのが今のところ一番ポピュラーなやり方だと思いま す。 ○柳澤座長  アンモニアの後で低級脂肪酸が問題になりましたけれども、あれは今どういうふう に評価されていますか。 ○林構成員  それ以外でも幾つか言われているのですけれども、実際に肝性脳症の程度をあらわ す、数値化するものに使えるかというと、実際問題使っていないと思います。 ○柳澤座長  ありがとうございました。  ほかにございますでしょうか。病態、それから進行を決めるファクター、そして治 療といったような点で、兼松構成員のお話からいろいろご議論いただきましたが、少 し先に進ませていただきたいと思います。  次は、「肝機能障害に関する論点整理」ということで、主に法律的な従来の障害と、 それからそれに対応する対策というふうな点で、この肝機能障害ということについて のレポートを事務局のほうからお願いしたいと思います。  まず名越補佐のほうから。 ○名越課長補佐  資料2に基づきまして説明をさせていただこうと思います。繰り返しになりますが、 本検討会は薬害肝炎の訴訟等の経緯を踏まえまして、昨年の夏に厚生労働大臣がウイ ルス肝炎による肝機能障害のうち、身体障害として認められるものがあるかどうかと いうことについて検討するという趣旨で設置が決まったものでございますけれども、 肝機能障害と身体障害の関係について、基本的には一定の障害が存在して、それが固 定・永続し、日常生活活動に制限を加えているというのを基本的な身体障害の要件と しておりますので、 その要件に従って、これまでの議論をそこに当てはめていったときにどういう整理に なるのか、そのフレームを今回お示しをしているわけでございます。  一つ目に、「肝機能障害と身体障害の関係について」ということで1ページ目、2 ページ目のところでは「必要なサービスについて」とありますけれども、必要なサー ビスについては障害の要件とは関係あるものではありませんで、この間の第2回目の 会議のときのヒアリングでも出てまいりましたが、身体障害として認められた場合、 どういったサービスが活用できるのかといったところを今回まとめているというもの でございます。この論点整理の1の肝機能障害と身体障害の関係、それから2の必要 なサービスについての、軸が異なるものが並んでおりますので、あらかじめお断りを させていただきたいと思います。  1につきましては私、名越のほうから、2のほうにつきましては天田補佐から説明 をさせていただきたいと思います。  まず1のほうからですけれども、身体障害の要件につきまして、(1)として「一 定の障害が存在するか」、2つ目として「障害が、固定あるいは永続しているか」、 それから3つ目として「どのような日常生活活動の制限があるか」といったところを 示しています。  これまでの検討会では、構成員の先生方にはいろいろな発言をいただいております けれども、すべてを列記するというのではなくて、代表的なものだけシンプルにまと めております。これを補うものにつきましては、本日補足でご発言をいただければと いうふうに思っております。  まず最初の「障害が存在するか」というところの話から説明したいと思いますけれ ども、一定の肝機能障害を考えるに当たっては、障害の程度を評価する必要がござい ます。ここで順番が逆転しますけれども、2についてお話をさせていただきます。  3ページ目のところに参考資料1ということで、「肝機能障害の評価法」という資 料になっております。こちらをご覧いただければと思います。皆さん専門家でいらっ しゃいますので、細かい説明は割愛をいたしますけれども、これは「朝倉内科学」か ら抽出いたしました主な肝機能検査の目的と検査項目を示しております。血液検査の 項目です。肝細胞傷害をみる、胆汁うっ滞をみる、重症度をみる、慢性度をみる、が んについてのマーカー、それから原因検索のためのマーカーといったものが並んでお ります。  これでほぼ出尽くしているかなというふうに思っておりますが、この中で特に肝機 能障害の重さについて、どういったものを重視する必要があるのかといったところを ご示唆をいただくとともに、また抜けがありましたらご指摘をいただければというふ うに思います。  次のページ、例の2、これも「朝倉内科学」から引用しておりますけれども、肝機 能障害の進展の結果あらわれた症状として肝性脳症がありますけれども、その昏睡度 の分類であります。  ここでは肝性脳症というものを一つ具体的な症状として取り上げておりますけれど も、これ以外の肝障害の進展による症状、その重症の分類といったものがほかに考え られ得るのかどうかといったところも、お気づきの点がありましたらご発言をいただ ければというふうに考えております。  その次、「重症度の判定」で、今日何度もお話が出ておりますけれども、Child‐ Pughですね、新しいほうの分類を示しております。これは血液検査の項目と肝障害の 進展による症状の程度の組み合わせによる重症度の測定の方法というふうに解釈をし ておりまして、おのおのの項目の障害の重さの程度に対応するポイントがついており まして、その合算によってグレードAからCまで分類をしているということでありま す。最もポピュラーなものであるというご説明をこれまでいただいているところでは ありますが、これ以外に検査項目あるいは症状の程度などを用いた重症度分類として 留意すべきものがあるかどうかというところについてご意見があればいただきたいと いうふうに思っております。  続きまして、1ページ目に戻りまして(2)であります。「障害が、固定あるいは 永続しているといえるか」ということについてです。肝機能障害の場合、症状が出て くるに従って医療に関わるようになって治療を受けるということになり、幸運にして インターフェロンの効果があって症状が改善されればそれで問題ないわけですけれど も、次第に状態が悪くなってきた方が恐らく肝機能障害としての認定があり得るのか どうかというような議論になってくると思いますが、治療を行っている中である程度 の重症度をもって障害の永続・固定と判断することが果たして可能なものなんでしょ うか。先ほどもご議論ありましたけれども、さらにご発言、ここは話をしておくべき 点があるということでありましたらご示唆をいただければというふうに思います。固 定・永続というところで線が引けるのかどうかということです。  さらに、重症な肝機能障害を起こしている場合でも、ある程度重いものになっても 治療の結果改善するケースもまま見られるということでありますけれども、この点に ついていかに解釈するかというところも重要な論点になろうかというふうに思ってお ります。  以上、肝機能障害の、どういったものなのか、それから障害の固定・永続につきま して、今日ここで何か集約するというわけではありませんで、議論を深めていただく 発言をいただきたいというふうに思っております。  続いて、1ページめくりまして(3)ですけれども、「どのような日常生活活動の 制限があるか」ということですけれども、前回のヒアリングにおきまして、足がつり やすくなる、出血傾向があって血が止まらない、腹水がたまりやすくて非常に困る、 肝性脳症の発生というのが非常に恐ろしい、疲れやすいといった様々な悩みをご発言 いただいたところであります。これに加えまして、本日の兼松先生のプレゼンテーシ ョンや委員の先生方に届けられた薬害肝炎の原告弁護団の方々からの補足資料なども 通じまして、事務局としての日常生活活動としてどのようなものがあるのか、今後ま とめていきたいというふうに思っております。特にこういう点につきまして留意すべ き、日常生活活動を患者さんに対して説明あるいは療養指導する中で、こういう点に はとても気を使っているというような留意点がございましたら追加でご発言をいただ ければというふうに思っております。  以上、肝機能障害と身体障害の関係についてでありますけれども、今後さまざまな 議論をまとめていく上で、留意すべき点の落ちがないよう、幅広いご発言をいただき ますようお願いをしたいと思います。  続きまして、2つ目の「必要なサービス」につきましてですけれども、これも前回 のヒアリングにおいて、日常生活活動の困難とともに、どのようなサービスを必要と しているのかということについて、当事者、ご家族の方からお話を伺いました。主に 福祉サービスとして、在宅介護、その他自治体や公共交通機関が対応しているサービ スとして、交通費や医療費というような項目が上がっております。これまで障害者手 帳を取得することでどのようなサービスを受けることができるかということについて 説明をしておりませんでしたので、今回は障害者福祉の制度を中心にご説明をさせて いただく機会を設けさせていただきました。この後、天田補佐に交代をいたします。 ○天田課長補佐  企画課の天田でございます。よろしくお願いいたします。  それでは、お手元の参考2の資料をご覧をいただきたいと思います。「身体障害者 のための主な福祉サービス」としまして簡単にまとめさせていただいてございます。  第1回目の検討会におきまして、身体障害者手帳の制度の概要及びその根拠規定等 についてご説明しておりますが、本日はこの手帳が受けられることによる福祉サービ スということにつきまして、代表的な例をご説明をしたいと思っております。  歴史的には、身体障害者福祉法に基づき援護措置を行うという目的によりまして身 体障害者手帳制度ができているわけでございますが、平成18年4月に障害者自立支援 法がスタートいたしまして、知的障害、それから精神障害者を含めた3障害のサービ ス体系に大きく移行してございます。そういったことから、現在は身体障害者福祉法 によるサービスというよりは、主要なサービスについては障害者自立支援法によるサ ービスということになります。その他、身体障害者福祉法に残りました固有のサービ スがございます。ここまでがいわゆる法令上のサービスということになろうと思いま す。その他身体障害者手帳が交付された方に係るいわゆる各種援護措置といたしまし て、事業者による各種割引、それから税制上の優遇措置、それから自治体における単 独の事業による助成制度などなどもございます。そのうち一部をご紹介をさせていた だきたいと思います。  なお、注書きに記載いたしましたように、国、自治体、企業等、幅広くいろんな施 策についてご協力いただいているわけでございますが、実際の運用につきましてはそ れぞれ事業所、それから自治体によって様々な運用基準が設けられております。した がいまして、本日のご説明につきましては、この一部ということになりますので、詳 細につきましては、場合によりましては他省庁も所管しているところもございますの で、その他自治体窓口、事業者等にご照会をいただくという形で正確には把握してい ただくということになろうと思います。  まず第1点目の障害福祉サービスにつきましては、障害者自立支援法による給付と いう体系に移行してございます。詳細につきましてはパンフレットをご覧をいただき たいと思います。  開いていただきまして、3ページでございます。現在、大きなサービス体系の見直 しを進めまして3年目となっておりますが、いわゆる介護サービス、ホームヘルプ、 その他施設の入所、通所を通じたサービスなどにつきまして、大きな体系の見直しを させていただいてございます。  現在の仕組みにつきましては、この真ん中の図にございます自立支援給付といたし まして、介護給付、訓練等給付という大きなサービスの分類に分かれております。こ の介護給付につきましてはホームヘルプ、それから日中活動サービス、それから施設 入所支援などの、いわゆる介護を中心としたサービス分類、これを10類型に分けてご ざいます。  右側の訓練等給付でございますが、これにつきましては、生活訓練、機能訓練、そ れから就労支援などのサービスといたしまして、4類型に分けてございます。特にグ ループホーム、これは知的障害者、精神障害者に係るサービスとして今運用してござ いますが、これにつきましては、介護を主としたサービスにつきましては共同生活介 護、いわゆるケアホームという分類、従前のグループホームにつきましては共同生活 援助という形に分けさせていただいてございます。その詳細についてはまた次のペー ジでごらんいただきたいと思います。  3つ目のサービス類型といたしましては自立支援医療でございます。これも後ほど ご説明させていただきたいと思いますが、公費負担医療制度を身体障害者の更生医療、 それから児童福祉法による育成医療、それから精神保健福祉法による精神通院公費、 これを1本にまとめまして自立支援医療とさせていただいてございます。  4つ目が舗装具でございます。車いす、義肢、装具等の物品給付というものを行っ てございますが、これらにつきましては金銭給付事業といたしまして、合わせまして 自立支援給付とさせていただいております。これは全国どこでも一定の水準によるサ ービスが提供されるものという視点でまとめたものでございまして、在宅サービスを 含めまして、国の負担の義務化を図ったものでございます。  一方、その下の地域生活支援事業でございますが、これにつきましては、地方分権 推進の観点から、地方自治体の創意工夫により取組を進めるほうがよいだろうという 観点から分類しているものでございます。一部個別的なサービスとしての移動支援事 業とか、物品給付としての日常生活用具、それから視覚障害者、聴覚障害者等のコミ ュニケーション支援、こういったものがこの中に含まれます。これらにつきましては 国の裁量的経費という形で、自治体に対する助成事業により行ってございます。  さらに、都道府県の役割、それから市町村の役割も一応今回整理をさせていただき まして、基本的には市町村を中心としたサービス体系に移行してございます。都道府 県の役割といたしましては、専門性の高い相談、それから広域的な対応が必要な事業、 それから人材育成、こういったものを都道府県に担当していただきまして、市町村を 支援していく、そういう体制に組ましていただいてございます。  次のページ、4ページ、5ページが現在の福祉サービスの体系でございます。ヒア リングの際に介護についてのお話がございました。真ん中に新サービスとして分類し てございますが、介護給付といたしまして、居宅介護から重度障害者等包括支援、こ こまでがいわゆる訪問系のホームヘルプでございます。  自立支援法に基づきまして、今回重度障害者に対する特別のサービス体系を新たに 設けてございます。それが重度訪問介護、これが重度の肢体不自由者に係るロングの サービスでございます。3つ目が行動援護、これは精神障害者、知的障害者の方の中 で、自己判断能力が非常に制限されている方のいわゆる危険回避のサービス、これは 外出を伴うサービスを含めて提供するものでございます。それから重度障害者等包括 支援、これは介護の必要性の非常に高い重症心身障害、またはALSの障害程度が進 んだ方に対するサービスとして包括的に行う、このような体制で現在体系を分けてご ざいます。  施設の入所・通所系のサービスにつきましては、児童デイサービスから就労継続支 援まで、ここの分類がございます。  右側をご覧いただきますと、日中活動サービス、それから住まいの場の組み合わせ というものがございます。これは特に入所施設につきまして、パッケージのサービス でございましたが、これを日中活動の場、それから夜間のケアの場というふうに分け ることによりまして、様々なニーズに対応していこうというものでございます。この 中に日中活動については療養介護、これは医療と常時介護を必要とする方に係るサー ビスでございます。医療の必要性の薄い方、というより常時介護を必要とする方に係 る介護的なサービスが生活介護でございます。このような形で現在分類してございま す。  6ページ、7ページにつきましては、特にサービスとしまして移動に係るサービス がございます。それが地域生活支援事業の中の移動支援事業でございます。これが6 ページの図の市町村事業として位置付けているものでございます。  自立支援給付のうち障害福祉サービス、介護給付、それから訓練等給付に係る利用 の手続きの流れが8ページ、9ページでございます。これも自立支援法の施行に伴い まして統一的に運用させていただいているものでございますが、サービスの支給決定 のプロセスの中に、介護給付につきましては心身の状況に関する106項目のアセスメ ントを実施をする障害程度区分認定を行ってございます。これはコンピュータ判定に よりまして認定した後、二次判定、これは審査会による判定でございます。それに基 づきまして障害程度区分を認定する。ここはいわゆる介護保険における要介護認定に 非常に近いものの仕組みを導入させていただいたものでございます。さらに勘案事項 調査等を実施をいたしまして、サービスの利用意向の聴取を行った結果、その方に係 る必要なサービスを市町村において支給決定するという、こういう流れになってござ います。なお、障害程度区分認定につきましては、身体障害者手帳、1級から6級ま で機能障害により認定してございますが、この障害程度区分認定につきましては、心 身の状況に関する介護的な尺度によって認定してございますので、必ずしも一致する ものではございません。別な尺度による認定ということであります。  それから10ページ、11ページにつきましては、障害福祉サービスを利用する際に利 用者の方にご負担をいただく利用者負担に係るものでございます。介護保険と同じよ うに、原則的にはかかる経費の1割をご負担していただくということにしてございま すが、さらに、ご本人の負担に無理のない範囲で負担をしていただく中で制度全体を 支えていくというような社会連帯の考え方に基づいてこの仕組みを変えてございます が、11ページにはその基準につきまして上限額をあらわしてございます。これにつき ましてはまた後ほどごらんいただければと思いますが、非常に細かく配慮措置を加え てございます。サービスの利用状況、それから市町村民税の課税状況等によりまして 細かく分けてございますが、1割と申しましても、実際上現在は大体平均的には3% 程度のご負担をお願いしているという状況でございます。具体的な利用者負担の状況 については13ページ以降にちょっと例示をさせていただいております。  ここまでがいわゆる障害福祉サービスに係るサービスの内容と、それから利用手続 き、利用者負担の概要でございます。  16ページ、17ページが自立支援医療でございます。身体障害者に係る更生医療、こ れにつきましては、18年4月から自立支援医療といたしまして自立支援法のサービス に移行してございます。障害の除去または軽減が期待できる治療を対象として給付し ているものでございます。この考え方は、旧身体障害者福祉法の考え方と同様でござ います。  利用者負担につきましては、障害福祉サービスはまた別な観点での利用者負担の基 準を定めさせていただいております。健康保険の適用がある方については、その給付 が受けられた一部負担金相当分のうち、原則的に1割ご負担をしていただく。さらに 所得状況に応じた各般の軽減措置を設けているということでございます。  最後が舗装具でございます。これにつきましては主に肢体不自由それから聴覚障害、 視覚障害の方々に係る物品給付が中心でございます。代表的なものといたしまして義 肢、装具、車いす、補聴器などがこれに当たります。これにつきましても、これまで は現物給付という形をとっておりましたが、現在自立支援法の中のサービスといたし まして、費用を支給するという制度に改めてございます。  利用者負担につきましては19ページにございます。一応原則的に1割のご負担をお 願いしつつ、各般の軽減措置を講じているということでございます。  これまでは自立支援法に係る福祉サービスの例でございます。戻りまして参考2の 次のページをご覧をいただきたいと思います。  身体障害者福祉法に基づくサービスも一部残ってございます。これが代表的な例と いたしましては、身体障害者社会参加支援施設というものでございまして、これはい わゆる身体障害者福祉センターを中心といたしました、利用による施設でございます。 これは身体障害者手帳をお持ちであればどなたも利用ができるというものでございま すし、それから支給決定に当たってのプロセスというものはこの中は適用されません。  それから、視覚障害者の情報提供施設などがございますが、ここは日々通っていた だいて利用するというよりも、情報発信をするという施設の色彩が非常に強うござい ます。  その他身体障害者福祉法として残っております規定は、身体障害者更生相談所、そ れから身体障害者相談員、やむを得ない事由による福祉サービスの措置などの規定が 現在もこの身障法の中に規定されてございます。  その下、「その他の身体障害者に対する代表的なサービスの例」というものを挙げ させていただいておりますが、これはいわゆる大きく言いますと3つ目の類型になろ うかと思います。手帳を発行された方に係る事業者、それから自治体における各種の 割引措置等について例示をさせていただいたものでございます。  このうち、若干の補足をさせていただきますと、JR、いわゆる国鉄の運賃割引、 これは今現在はJR各社の割引になっておりますが、手帳の中に1級、2級という等 級とはまた別に、1種、2種という種別を付しまして、それにより割引を適用される という形になってございます。  それから、飛ばしまして公営住宅の優先入居の制度等も、これは運用させていただ いてございます。  それから税制上の特別措置といたしまして、所得税、住民税における障害者控除、 さらに身体障害者手帳の1級または2級の認定を受けられた方に係る特別障害者控除、 この控除額をさらに高めたものでございますが、そういった控除の制度がございます。  それから、いわゆる外出におけるサービスとして、事業者における運賃割引がござ いますが、その他地方自治体における福祉パスとかタクシーチケットの交付を行って いる例もございます。それからタクシー事業者における事業者割引といったものも実 施をされてございます。  そのほか、医療費の関係につきまして、先ほど自立支援医療をご説明いたしました が、その他各都道府県におきまして医療費の助成制度が実施をされております。概ね 重度障害者に係る一般医療の負担の軽減のための助成措置ということでございますが、 これはそれぞれ自治体において適用の内容が異なってございます。概ね身体障害者手 帳の1級または2級の方々を対象として、利用者負担の軽減がされている。負担の軽 減の内容につきましても各都道府県においてそれぞれ定めていただいているという状 況でございます。  非常に雑駁でございますが、以上でございます。 ○柳澤座長  ありがとうございました。  厚生労働省の名越補佐と天田補佐から、実際に肝機能障害の評価に当たっての留意 点、それからまた現在の法的なサポート体制、特に障害者自立支援法を中心としてお 話いただきました。  ここでは、確かに患者さんの状態をどうやって評価するのかということ、そしてそ の評価のグレードによってどういったサービスが必要なのかというふうなことがこれ からの検討課題になってくるということがありますので、まず、肝機能障害と身体障 害との関係についてということで論点が挙げられましたが、ほぼこの論点ということ でよろしいかと思いますので、それに沿った形で議論を進めていただきたいと思いま す。肝機能障害と身体障害の関係についてというのはかなり言葉としては象徴的な言 葉でありまして、肝機能障害というのは検査の上であらわれてくる障害であって、身 体障害というのはそういった肝臓の機能障害の結果あらわれてくる身体の、表にあら われてきてどなたでもわかるのが症状と言われているもので、そしてまた、医学的に 見て、外にあらわれてくるものをサイン、微候というふうに医学用語では分けており ますけれども、そういう身体的な症状、微候というのは何かということで、従来のい ろいろな特定疾患でのグレードを分けるものは、専ら身体機能の障害を基にして分け ていたということが、厚生労働省としての疾病についての重症度評価の基本になって いるということがあります。  しかし、肝機能障害の場合に、先ほどのレクチャーにもございましたけれども、ど ういうふうに評価していくのかということについて、少しざっくばらんに皆様方が持 っていらっしゃる重要な点あるいは問題点などについての指摘をいただいて議論を進 めたいと思います。  それで資料2の1の(1)ですか、「一定の障害が存在するか」それから「障害が 固定あるいは永続しているといえるか」、ちょっと抽象的なテーマになってしまって ご議論がしにくい点があるかと思いますけれども、先ほどのような重症度評価の問題、 それからまた法的なサポート体制の問題、そういったことを念頭に置いて少しご議論 いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。どういう点からでも結構であります けれども、障害をどういうふうに評価するのか、それからまた障害が固定あるいは永 続しているというのをどういうふうにして評価していくのか、あるいはまた肝機能障 害の実態としてはどういうものであるかというふうなことかと思いますが、どういう 形でも結構ですから、フリートーキングをしていただきたいと思います。はい、八橋 構成員。 ○八橋構成員  肝疾患患者さんの肝機能障害、身体障害ということに関して、自覚症状と他覚症状 に区分して、少しコメントしたいと思います。  慢性肝疾患の方の自覚症状として、一番頻度が高いものは易疲労感だろうと思いま す。体がだるいとか倦怠感という訴えが多いように思います。さらに病気が進行する と、腹水がたまるとか足がむくむということで歩きにくいとか、階段が上れないとか、 そういうふう具体的な症状が出てきます。全く歩くことができない状況ではないので すけれども、スムーズに歩行するには困難な状態にある。さらに病気が進行すると、 トイレまでは何とか起きられるけれども、一日中、寝たきりのような状態になります。  また慢性肝疾患の方は、不安感を感じられる方が多いような気がします。それは、 夜間の不眠症状として表れ、夜十分眠れないので疲れが回復せず、昼間も体調がすぐ れないという悪循環に入ります。不安感の評価というのは難しいのですけれども、肝 疾患患者さんは、精神的に悩んでおられる方が多く、不安感というのは肝疾患患者さ んの症状のひとつだと私は考えています。  他覚症状としては、肝疾患に特異的でかつ代表的な症状としては黄疸があります。 第三者の方が、目でみてわかるほどの黄疸のレベルは、顕性黄疸と表現されます。顕 性黄疸は、ビリルビンの数字で表現すると3.0以上と言われています。2.0台では我々 専門家でも診断できませんが、5.0の数字を越えると誰が見ても黄疸があるとわかり ます。Child-Pugh分類で表記されているビリルビンの数字の2.0とか3.0という数字は、 そういうレベルです。  腹水も、1リットルぐらいの腹水貯留の程度では、まず自覚的症状としては認識さ れません。腹水が貯留していることを認識するレベルとしては、2〜3リットルお腹 に水がたまっている状況と私は考えます。腹水の程度が中等度から高度というレベル は、3リットルとか5リットルといった量の腹水がたまっていると状況かと思います。 また、腹水貯留に前後して、下腿の浮腫、足がむくんでくるという症状が出現します。  脳症を早めに見つける方法としては、手と指を伸ばしていただくと指先がふるえる、 手がふるえるかどうか、振戦があるかどうかで、見つけることができます。そういう 姿勢をとっていただくことで、初めて肝性脳症の初期症状を見出すことができます。 こういう診察をおこないながら、他覚的に診断してゆきます。  Child-Pugh分類は世界的に認知され普及していますし、我々も日常診療の中で Child-Pugh分類を用いて肝疾患患者さんをスコアで何点か評価しています。誰がみて も肝不全の状態にある方をChild-Pugh分類を用いて表現すると10点以上のChild Cと なります。  ただ、Child-Pugh分類の特徴は、5つの項目を評価するため、ひとつひとつの症状 は、それほどでもない場合、中等度の場合でも合計すると10点、Child Cに計算でき るようになっています。たとえば、Child-Pugh分類で各項目のスコアが全て2点であ った場合でも10点になるのです。肝不全の初期段階、診察所見だけで肝不全とは診断 ができない、ちょうどボーダーラインの方でも、Child-Pugh分類を用いることで、肝 不全の初期段階と評価することができる、そういうメリットもChild-Pugh分類にはあ るのではないかと考えています。   ○柳澤座長  ありがとうございました。  ただ今の点について、それでは林構成員、何か。 ○林構成員  今のご説明で結構だと思いますけれども、肝機能障害については、計測上、急性期 の細胞死に伴うマーカーはあまり参考にならないということで、線維化が進展するこ とに伴ういろんな合成能低下を一番メルクマールにしていますので、参考の1の重症 度を見るという項目を使うのが恐らく一番いいだろうと思います。  その中で、このChild-Pughに使っているアルブミン、プロトロンビン、ビリルビン というのは割と安定した値ですので、この3つを使うというのは非常に妥当性がある だろうと思っています。あとのコレステロールとかコリンエステラーゼというのは測 定、コリンエステラーゼですと測定値にばらつきがあるということもございますし、 コレステロールはそれ以外の影響も受けますので、そういうことではこの重症度の判 断に、やはりアルブミンとプロトロンビンとビリルビンを使うというのは非常に妥当 性があるものではないかと思います。  自覚症状は先ほど八橋先生がおっしゃいましたように、ここに書いております以外 に、八橋先生のおっしゃる項目だと思います。問題は患者さんのほうが実際の生活上、 何が一番自分の生活上困られるかというのを何のマーカーで判定するかというのは、 非常に難しい問題ですし、非常に重要な問題だと我々も思っています。実際にこの Child-Pugh分類のグレードのCになりますと、実際患者さんの実生活上かなりの障害 があるというのは事実でございますし、実際何らかの手助けが必要だというのは、こ れはもうそのとおりだと思いますが、グレードのBぐらいのものの扱いをどうするか というのは非常に、何を持ってその患者さんの生活上の評価をするかでちょっと変わ ってくるところに入るのではないかと思っています。どうしても自覚症状のほうは数 値化ができないという難点がございますので、どうしても肝機能と明らかな症候を呈 するという以外に客観的な方策はないとは思っておりますが、それと実際の患者さん の訴えとの相関をどういう定量の数値であらわすかというのが非常に重要ではないか という気がいたします。 ○柳澤座長  ありがとうございました。  兼松先生のほうで何かございますか。 ○兼松構成員  やはりこういうときに指標にするためには、広く受け入れられているというような 指標を用いるということが一つ大事ではないかというふうに思います。そういう点か らいいますと、Child分類あるいはChild-Pugh分類というのは広く世界的にも受け入 れられているので、基準として用いやすいところではないかと思います。  そうした場合に、これの2つを考えた場合にどちらがいいのかということになりま すが、私としましては合成能が入っているChild-Pugh分類のほうが、よりこれは現時 点での正確な肝障害度の指標として使えるのではないかというような思いがあります。  特にグレードCのところは余り問題ないかと思いますが、グレードBのところ、そ れもグレードBの点数の高いほう、ここのところにグレーゾーンがあって、そこをい かにはっきりするかというのが一つポイントではないかと感じております。   ○柳澤座長  ありがとうございました。  大分機能検査の評価、それからまた他覚的な症候、そしてまた自覚的な障害の度合 いとどういうふうに対応させるかというふうな点がご専門の方から出されましたけれ ども、ほかにいかがでしょうか。どうぞ。 ○岩谷構成員  肝機能重症度がChild-PughとかChildでいいというのは同意できるわけですけれど も、それが身体活動の阻害とどう関係しているかということについて判断する場合に、 今までの実績に基づいた何か分類があるかということと、それによって、先ほど実際 に支援の内容が明らかにされたわけですけれども、支援を受けたときにどういうメリ ットが出てくるかというところがはっきりとイメージできません。林先生も随分お悩 みのように見えたのですけれども、ここがやはり非常に頭の痛い点です。 ○林構成員  先生のおっしゃるとおりだと思っております。ただ、現実にはそれをリンクさせる ものもございませんので、そこの評価をどうするかということが私も一番重要だと思 っていますし、一番難しい点だと思います。 ○岩谷構成員  肢体不自由については、ずっと昔からそういうことをずっと付け合わせてきました。 最近20年ぐらいの間に障害の程度というのはベーシックADLと、それからインスト ルメンタルADLというような種類の活動が独力でできるか、またはそのような日常 的な活動に介護が必要であるかどうかということをもって障害の程度を、測っていま す。障害の程度を測る手法がないわけではございません。例えば足がなくなった場合 に何が困るかというようなこともはっきりしているわけです。脊髄損傷になったとき にどれだけの介護が必要になるかとか、四肢麻痺になったときにどれだけの介助が必 要になるかというようなことは、これは各分野の専門家はそのことを患者さんと実に 長い関係を持ってそれを解明してきました。それをやっていただければ、他の障害と の整合性を整えることが可能になるとおもいます。今ある、ほかの障害の認定基準と 整合性をどうやってとるのかというところが一番問題じゃないかと私は考えています。 ○柳澤座長  ありがとうございました。  今の身体障害の場合には、実際に外へ出てくる機能というものがそのまま評価でき るという点があると思いますけれども、原構成員にお伺いしたいのですが、先生は腎 臓の専門家でいらして、腎障害の場合には恐らく検査値としてはクレアチニンとか、 基本的には腎血流でしょうかね。それを中心とした検査値と、それから実際にそうい った腎機能障害というのは透析をすれば改善をするということがあって、治療法とし てもかなり透析ということがはっきり確立されているわけですが、患者さんの側にと って、そういったクレアチニンの程度とか、そういう検査値であらわされる病的な状 態と、それから例えば透析をして検査値がよくなっても、本当に自覚的な症状とか、 あるいは活動性がどこまで回復できるかとか、そういう実際の身体機能との間の関係 を比較的よくご覧になっている領域だと思いますので、その辺のことをぜひ。 ○原構成員  内部障害からの身体障害という意味では、肝臓も内部障害ですので、腎臓と似てい る部分があるだろうと思います。腎不全の場合の身体障害者の適応を決める評価は、 大きく3つの点から点数化して決めてあります。 先生がおっしゃったように腎臓の機能、クレアチニンクリアランスだとか、糸球体濾 過量とか、客観的な残腎機能がどれぐらいあるかということです。  それからもう一つは腎不全に伴う臨床症状です。臨床症状では、やはり浮腫が出や すいとか、胸に水がたまるとか、いわゆる体液の貯留、それから貧血の程度、代謝性 のアシドーシスの程度、電解質の異常の程度など、検査所見や臨床症状では、7項目 のうち1項目で何点というもの、それからもう一つは、高度に日常生活に支障を来た す、などの日常生活の程度などで、総合的に評価をします。日常生活は、起居できな いレベルです。さらに身体障害者の適応をグレード分けしています。トータルで60点 以上だと1級に相当する。それからクレアチニン値がまだ高くはない、4ぐらいだけ れども、ほかのいろんな症状と合わせて身体障害者として3級とか4級とか、グレー ドを分けてあります。  肝疾患に関しましても、検査結果と、臨床症状それから身体活動性、日常生活度合 いですね、そういったものを組み合わせたトータルの点数にしないと難しいのではと 思います。実際には検査結果は悪いけれども、結構動ける方もいらっしゃいますし、 その反対もあると思うのです。  実際に透析に入って、導入時60点の人が透析治療を受けると何点になるかというの を見たことが以前にあるのです。90%近くが60点を維持しているというのが現状でし た。そういった意味で見ますと、肝臓の場合はリバーシブルの部分が脳神経症状の部 分かなと思って、実はさっき客観的なデータがあるのかどうかとうかがったのは、そ れも一つの指標として使えるかなと思ったのです。身体障害のいわゆる日常生活の活 動性と検査結果、症状、その3つを組み合わせたような点数制に持っていくほうが、 よりリライアビリティーがあるのではと思ったのです。  肝臓が悪い方の、いわゆる肝硬変の方の生活活動度、どういうふうに評価していい のか、それは肝臓科の先生がいろんな患者さんを診られて、どれぐらい動ける、動け ないというものを少し具体的なものであらわしていただいて、それに点数をつけると いうような形で持っていかれてはどうなのかなと思います。全てが1級になるのでは なくて、グレーゾーンのところは、例えば3級とか4級とか、そういう分類ですすめ られるのが良いのではということで伺っておりました。     ○柳澤座長  どうもありがとうございました。  今のお話のように、腎障害の場合には肝障害とかなり似ているような面があると思 いますけれども、一つ、どういうふうに考えたらいいのかということで肝臓の専門の 先生、あるいはほかの内部障害の先生にお伺いしたいのですが、多分肝障害の場合も 腎障害の場合も、運動がどういう影響をするのかということはかなり日常生活をどう いうふうに維持できるかということを考えると、大きな点だろうと思うのです。  例えば日常の通常の生活をすることによってそういった身体的な運動の負荷が腎機 能とか肝機能をどれだけ悪くさせるか、あるいは悪くさせないのか。その点を考慮し ていかないと、例えば高齢化が進んできますと、それだけで身体機能はどんどん、筋 肉の力は落ちてきますし、やせていきますし、神経機能も低下していきますし、そう いうものが二重、三重に加わって全体としての活動能力が低下するというのは、これ はいろいろな病気の領域で、特に慢性疾患の領域で既に問題になっているところなん ですけれども、その辺の問題というのは例えばどういうふうに評価の中に取り入れて いくのか、具体的にどういうふうに取り入れるかというのはさっきの議論でいいと思 うのですが、肝機能というか、肝機能障害の場合はいかがでしょうか、そういった日 常生活の運動というのがどのくらい負担になるのか、あるいはかえっていいのかとい う点は。林先生。 ○林構成員   これは少し最近考え方が変わってきておりまして、以前ですと肝臓が悪くなるとす ぐ休んでいただくということを非常に勧めておりましたけれども、実は先ほど先生お っしゃいましたように実は筋肉というのは非常に重要でございまして、やはり肝硬変 の患者さんで筋力を維持するというのは非常に重要だということが最近分かってきて います。そういう意味で我々も、以前のように疲労度が強いときに単純に休んでいる ことだけではだめだというふうに思っていまして、やはり筋力をどのように維持して いくかというのは非常に重要なファクターになってくると思っていますので、そこら 辺の評価をどうするかというのは、以前我々はそういうことを一切考慮に入れており ませんでしたけれども、それは当然考えなければならないだろうと思っています。  それから、いわゆる食後に横になりなさいという指導をしておりまして、最近それ は逆効果だということで食後に休むということも、よほど病気が進行しない限りそう いう指導もいたしませんし、そこは考え方が少し変わってきておりますので、その点 を考慮していただく必要があると思っています。 ○柳澤座長  ありがとうございました。  腎臓のほうはいかがですか、今の点。 ○原構成員  腎臓に関しても、昔は腎疾患と言われると、長期にベッド安静が指示されていまし たが、現在はもう特に安静ということを強く勧めておりません。ただ、筋力を低下し ない程度には身体を鍛えるというような表現の仕方をしていますし、透析に入ります とむしろ積極的に動いていただくというような方針をとっています。  透析に入る前のレベルだったらどうかといいますと、非常に高い山に登るとか、水 泳を激しくやるとか、そういったことでなければ、日常生活での軽い運動に関しては、 むしろ少し勧めております。それは林先生がおっしゃったように、やはり筋力低下を 防ぎたいということです。 ○柳澤座長  ありがとうございました。  いかがでしょうか。確かに先ほどからのご議論で、血液検査にあらわれる臨床検査 値と、それから身体的な症候、さらには患者さん自身の障害の自覚度合いというふう なものをどういうふうに評価していくのかということが重要だというふうなご意見を いただきましたが、その次に、障害が固定あるいは永続していると言えるかどうかと いうことは、これは現在問題となっている肝機能障害、特にC型肝炎による慢性肝炎、 そして肝硬変、肝がんといった、そういう経過の中で、障害の固定の度合いというこ とをどういうふうに位置付けるかということのご意見を伺いたいと思うのです。  これはご承知のように、身体障害者福祉法の場合には必ず障害のグレードというも のを定める上で、固定したということが条件になっているということがありますので、 その点について、肝機能障害の場合はどういうふうに捉えていったらよろしいのか、 まず林構成員からお願いできますか。 ○林構成員  恐らく今対象になっている肝機能障害の症状というのは固定しているものと考えて いただいていいと思っております。慢性肝炎だとウイルスの排除が起こると少しよく なるという話ですが、今のところ肝硬変で今議論しているような程度の人にはなかな か今の治療方法ではウイルスの排除を起こすのが難しゅうございますので、そういう 意味では症状は固定しているとお考えいただいていいと思います。  それで、進行の程度も、それほど急激に進行するというものもございませんので、 それはそういうふうにお考えいただいてもいいのではないかと思っています。 ○柳澤座長  ありがとうございます。  八橋委員、それから兼松委員も、それでよろしゅうございますか。 ○八橋構成員  肝機能障害の症状の固定に関して、ウイルス肝硬変ということを対象にする場合、 私はB型とC型と分けるべきではないかと考えます。  B型に関しては、抗ウイルス剤で劇的に改善することが珍しくありませんので、少 し時間経過をみながら、薬によって改善するかの見極め、評価が必要ではないか。一 方、C型に関しては、現時点ではウイルスを排除する、ないしウイルスの増殖を抑え るという確実な治療法がありませんので、基本的には改善することなく時間とともに 進行していくというふうに考えていいと思います。 ○柳澤座長  ありがとうございました。  兼松委員のほうから何かございますか。 ○兼松構成員  この場合、特に症状が問題になると思うのですけれども、こういう脳神経の症状と か、それから腹水、こういうところはある程度コントローラブルではありますけれど も、一度コントロールしたものがまた反復するというような状況、こういうふうなと きはある程度進んだ固定した状況というような指標になるのではないかと考えます。 ○柳澤座長  ありがとうございました。  現在の標準的な治療の段階では、この肝機能障害の場合には一応固定した状況とい うふうに捉えることができるだろうということがご専門の方々の一致したご意見だと いうふうに理解します。 ○岩谷構成員   固定の問題ですけれども、先生今おっしゃられたように、再発を繰り返すというの は、どれぐらいの周期でするのですか。 ○兼松構成員  これはまた病態にもよりますけれども、例えば腹水にしましても、腹水がたまった、 それで利尿剤にある程度反応したというところがありますけれども、それでまたたま ってくるというようなこともあるわけです。 ○岩谷構成員  どれぐらいの時間で。 ○兼松構成員  それは時間は、いつという……。 ○岩谷構成員  半年見たらいいのか、3カ月なのか1年なのかという問題になってくるのですけれ ども。 ○柳澤座長  恐らく今の問題は、非常に身体障害の場合は厳しく見ますと、6カ月間ほとんど症 状が固定しているというふうな状態で評価をするわけですけれども、内部障害の場合、 特に今の肝機能障害の場合には、私の理解では、多分意識障害が来りとか、あるいは いろんな、例えば風邪をひいたことによって肝臓としての症状が悪くなるとか、そう いうふうな全体としての経過の中でのアンジュレーションはあるにしても、一応は、 例えば6カ月間見たときにある程度、どの程度の状態であるかということは判断でき るだろうという、そういう意味で固定だというふうに理解したのですが、そのような ことでよろしゅうございますか。 ○林構成員  それで結構だと思います。ただ肝性脳症ですと、治療するとある程度コントロール はできますが、何か誘因があると脳症は悪化する。腹水も同じように、利尿剤を使う とコントロール可能なんですが、何か悪い影響が出てくると腹水は増えるということ で、治療には一応反応いたしますが、それはそれで症状がまるきりなくなっているわ けではございませんので、何か悪い影響が入ってくると当然のことながら症状が出て まいりますので、そういう意味で固定と考えていいのじゃないかと思います。 ○柳澤座長  ありがとうございました。  申しわけございません。4時までという予定なんですけれども、ちょっと私のほう の不手際もありまして、大分議論が途中でありますけれども、今日はどこまでやれば 事務局のほうとしては整理する上でいいですか。 ○名越課長補佐  切りのいいところまでやっていただければと思います。部屋自体はもう少し、時間 に余裕があります。 ○柳澤座長  わかりました。  それでは、皆さん方もご予定があると思いますので、一応症状固定のほうから次の 論点整理のところの2ページの上の「どのような日常生活活動の制限があるのか」と いうこと、これは先ほどからもいろいろご議論ございますけれども、これについて少 しディスカッションをして、本日はそこまでというふうにしたいと思いますが、事務 局のほうはそんなところでよろしいですか。 ○名越課長補佐  日常生活活動の制限について例示をしてありますけれども、これに関しましては、 新しく先生方のところに配られた原告弁護団からの意見書等も踏まえまして追加は可 能だと思いますが、これはというものがあえてありましたらここで提示していただけ ると、今後まとめていく上で参考となります。そういった感じで進めていただければ と思います。 ○柳澤座長  肝臓の専門家の構成員の方には特にお願いしたいと思いますが、そのほかの方々も ずっと身体障害に関しては専門的な立場でいろいろ活動なさっていらっしゃいますの で、全員の皆さんに今ここで出せるものがあれば出していただきたいと思います。ま た後で結構ですけれども、少しお調べいただきたいのは、恐らくこういった日常生活 活動の制限について、ある程度の点数評価というと言葉として誤解されるといけませ んけれども、やはり日常生活活動の制限も半定量化するということが、こういう病態、 あるいはまた法的なサポートをする上で非常に大事になってくると思うのですね。し たがいまして、QOLのクエチョネアーとか、いろんなものがありますけれども、こ の肝機能障害の患者さんについての日常生活活動の制限の評価といったようなことに ついて、これからの作業としてどういったことをしたらいいか、あるいはまた現在ど ういうものがあるのか、少しご議論いただきたいと思いますけれども、これもいかが でしょうか、お三方、肝臓の専門の先生のご意見を伺いたいと思います。  先ほどちょっと議論になった中では、特異的な肝機能障害としてのQOL評価の指 標とかチャートというのは余りないのだというようなお話だったと思いますが、そう いうことであるならば、ここに挙げられました例えばいろいろな訴えの中で、重視す べきものはどれであるかとか、あるいはこれ以外にも重視すべき日常生活活動の制限 というものがあるかどうか、そういった点でも結構ですけれども、少しお話いただけ ませんでしょうか。すみません、最初に年の功で林構成員からお願いします。 ○林構成員  先ほど八橋先生、これに不安の要因を加えていただいたらというのは、私もそれは そのとおりだと思っています。肝性脳症と腹水と出血傾向については半定量というの は割とやりやすい項目だと思います。易疲労性は一番難しいかなと思いますが、足が つりやすくなるというのもかなり患者さんの訴えの多い症候でございまして、実際に 生活する上ではかなり生活上の制限になることだと思っていますので、これ以外に先 ほどの筋力の低下に伴ういわゆる歩行障害とかいう分類としてこれを入れていただく というのは必要ではないかというふうに思っております。 ○柳澤座長 ありがとうございます。  八橋委員は追加するものはありますか。 ○八橋構成員  最初に自覚症状的なところを申しましたので、大体今、林委員が言われたのでいい のではないか。もちろん直接患者さんに聞くとまたいろいろ幾つか出てくるのかなと は思いますけれども、大まかに言うとこういうところかと思います。 ○柳澤座長  ありがとうございました。  兼松委員は何か。 ○兼松委員  私も歩行障害といいますか、これが大事だなと思います。もうベッドにずっといな ければならないのか、あるいは少し動けるかというところで、重要な項目だと思いま す。 ○柳澤座長  ありがとうございました。  ほかの委員の方は何かございますか。ご覧になっていて。 ○和泉構成員  あえて申し上げれば、患者さんの訴えを主体とする部分が重いですよね。これはな かなか難しい問題が生じてこないかという、私たちの場合ですと、自立した生活がで きない、介助が全く必要であるか、あるいはごく軽い日常的な生活はできているのか どうか、それから、家庭生活であれば大丈夫だ、社会に出ていける程度であるという、 こういう非常に分かりやすいところで線引きしているわけですよね。それに対してメ ッツということで裏付けするという、それをやっているわけですけれども、やはり実 際にやっていく場合にここはかなり注意いたしませんと難しい問題が、つまり公平性 が維持されるかということになろうかと思います。患者さん並びに患者さんの団体が 疾病負担の大きさを訴えられている、これは私たち実際に同意できる話なんですけれ ども、疾病負担の大きさを訴えられているのは必ずしもこのHCV感染ではないわけ で、実際にこの法律を適用して、それが少しでも軽減する方向、自立する方向になる ベクトルを与えるために幾つかの方策があるわけです。これを動員したときに、これ を適用して認定したときに、それが軽減する方向へ行くかどうかということに注目し た項目を設定しないと私は難しいことになるのじゃないか。内部障害をやっているも のですから余計そういう点を危惧しております。 ○柳澤座長  岩谷委員。 ○岩谷構成員  やはり公平性というものが担保されているということは重要です。医学的データで 示されれば納得しやすいのですが、行動の障害というものは、決して医学的な状況だ けで決まることはないわけです。この身体障害者福祉法という法律は、障害を軽くす ることを目的としたリハビリテーション法であります。障害に対して何らか軽くする ことによって、その方の能力が上がって、社会に出ていけるようになることを支援す るということを目的にしています。それは法律の基本で、今までそういう目的で施行 してきているわけであります。ですから、ここでそういう論理に乗らない場合には大 変困ったことになってしまいます。それで、我々も頭の中が大変混乱してしまうわけ です。  ですから、こういう身体障害、こういう障害、こういうようなディスアビリティー があって、これに対してこういう医学的介入、あるいはこういう介護、社会的な支援 サービスを利用できるようにすることによって、その人の社会的な活動性がこれだけ 上がるというようなモデルを示すことが必要になるのだと思います。  それからもう一つは、永続的な障害に対して何らかの意味で補償するという概念は この法律の中にはないのだと思います。その辺は、法は非常に冷たいと感じられ、医 者の立場と法律における公平性というところで常に迷うわけです。そのあたりのこと をぜひお考えいただいて、何らかのいい案を、だれにも納得していただけるようなも のをしていただきたいと思います。  それから尺度については、これは絶対に作ることができます。私たちはそういう疾 患特異的な患者立脚型QOL尺度を幾つもつくってきました。我々の経験に照らして、 やればできると申し上げたいのです。 ○柳澤座長  ありがとうございました。  この日常生活活動の制限があるかということで、論点として取り上げましたのは、 今和泉構成員、それから岩谷構成員がおっしゃいましたような問題点というのは十分 皆さん方もご理解されているところだと思いますし、ただやはり原告団のほうでなさ いましたアンケート調査の中では、これはまた当然のことなんですけれども、患者さ んは、例えばそんな医学的な指標よりはご自分の生活がどういうふうに大変であるの かということも訴えとしてお出しになっているわけで、それはそれとして、やはりそ ういうものを全くある意味で無視をして、ただ機能障害であるとか、現実に外にあら われてくる兆候だけを基にして評価をするのではないのだという意味で取り上げられ た面も強いのだろうと思いますし、こういった日常生活障害動作というのは患者さん の側の不自由さというのはやはり評価の中に取り入れていくべきであるということが 現在のこういった疾病の評価、重症度とか障害度の評価の中では当然取り入れるべき であろうというのが、この肝機能障害にかかわらず、全ての慢性疾患において言われ てきていることでありますので、やはり我々も現在の法律の中にそういうものが必ず しも入っていないということがあるにしても、それを何らかの形で配慮していくとい うことはこれからの検討課題だというふうに理解するということでよろしいかという ふうに思います。  そんなところでよろしいでしょうか。ちょっと途中ですけれども、先の課題として、 今日論点整理としてなされましたところ、天田さんがせっかく話していただいた法的 なもののところまでは入れませんでしたけれども、またこの次に少しその点の検討を 進めたいというふうに思います。  それでは、時間でございますので、今日はこのようなところで検討会は終わりにし たいと思いますが、次回の検討事項は、今日の残りの部分も含めてですけれども、事 務局のほうでどういうふうな予定であるかということをお話いただいて終わりにした いと思います。 ○名越課長補佐  それでは、次回につきましてですけれども、日程につきましては現在調整中でござ います。追って日時につきましてはお知らせをしたいと思っております。  次回の議題ですけれども、今日の兼松先生のお話も踏まえまして、今のフレームに 肉付けをしたものを提示をさせていただきまして、肝機能障害の要件についてさらに 議論を深めていきたいと思っています。  そのほか、これまで宿題となっていた医療費のデータ等につきましても、まとめる ことができましたら次回では出していきたいというふうに思っております。よろしく お願いいたします。 ○柳澤座長  じゃ、今日はこれでよろしゅうございますか。  それでは、どうも長時間ありがとうございました。 (了) 照会先 [肝機能障害の評価に関する検討会事務局] 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課指導係  TEL 03−5253−1111(内線3029)  FAX 03−3502−0892