09/01/28 第3回国立更生援護機関の今後のあり方に関する検討会議事録 第3回国立更生援護機関の今後のあり方に関する検討会(議事録) 日時:平成21年1月28日(水)14:30〜16:30 場所:厚生労働省共用第8会議室(6階) ○伊藤座長 それでは、定刻になりましたので、これから第3回の国立更生援護機関の 今後のあり方に関する検討会を始めたいと思います。  まず、事務局より、委員の出欠状況について御報告をお願いいたします。 ○難波施設管理室長 委員の出席状況ですが、本日は全員御出席でございます。なお、 小中委員、山崎委員が若干遅れるとのことであります。  以上でございます。 ○伊藤座長 続いて、事務局から資料の確認をお願いいたします。 ○難波施設管理室長 本日の資料ですが、資料1は「国立更生援護機関の役割及び機能 について【現状・課題及び論点(案)】」です。これは前回の会議資料と同様ですが、前 回は議論ができなかった11ページ以降について、本日御議論いただきたいと思ってお ります。  資料2として、「論点(案)を踏まえた各委員からの意見(P1〜10)」ということで、 前回の1ページから10ページまでの議論について、各委員から出された意見をまとめ させていただいております。  資料3として、「国立秩父学園における知的障害・発達障害児への支援の取り組みにつ いて」ということで資料を出していただいております。後ほど、高木園長から御説明い ただきたいと思っております。  以上です。 ○伊藤座長 ありがとうございました。  資料はおそろいでしょうか。  本日は、11ページ以降が中心的な議論になりますが、時間があれば前の方も含めて皆 さんからまた御議論いただいても結構だと思いますので、御意見をいただきたいと思い ます。  それでは、小中委員が到着されました。初めてですので、自己紹介をよろしくお願い します。 ○小中委員 遅れまして大変申し訳ございませんでした。全日本ろうあ連盟事務局長を 担当しております小中と申します。欠席が続きまして今回初めて出席させていただきま すが、よろしくお願いいたします。 ○伊藤座長 ありがとうございました。  それでは、議論に先立ちまして、国立秩父学園長の高木委員から、資料3に基づいて、 国立秩父学園における知的障害児・発達障害児への支援の取り組みについて、御説明を いただきたいと思います。  どうぞよろしくお願いします。 ○高木委員 よろしくお願いいたします。  前回にも紹介されましたように、秩父学園の構成は、知的障害児入所施設と医療部門 に加えて、学園附属児童保護指導員養成所と研修部門、平成12年に開設した発達障害 専門診療所及び外来養育部門で成り立っております。この複合機能を活用し、国立機関 の責務としての、「民間では処遇困難な事例の支援、調査研究のアプローチ」に努めてお り、「当事者と家族の円滑な地域生活を可能にする地域連携を基盤にした継続的な支援モ デル」を構築したいと考えております。  特に喫緊の課題としての発達障害に関して、現在、秩父学園においても、知的障害・ 発達障害児に対する支援を施行しています。秩父学園では、実際の支援の場である知的 障害児入所施設のほかに、発達診療所においては、地域生活を送る発達障害児童への支 援を施行しております。今回は、後者に関する紹介をいたします。  資料の1枚目を御覧いただきたいと思います。秩父学園における知的障害・発達障害 児への地域支援体制に関して図示しました。  秩父学園発達診療所では、発達障害専門診療と外来療育を並行して施行しております。 就学前から学童期の発達障害児を対象にした外来療育及び家族支援の提供だけでなく、 地域生活を支援する関連諸機関の連携を構築することを目的に、家庭や保育所、幼稚園、 学校へ支援者を派遣する訪問療育を行っております。派遣された場での直接支援及びス ーパービジョンを提供することで、支援のその場で、「支援の熟達者」を育成するという、 地域の支援を底上げしていくというコミュニティベースド・リハビリテーション (Community Based Rehabilitation)を目指しております。  なお、図1に提示された地域諸機関から受診者への照会を受けることで、発達障害に 関する地域支援ネットワークを構築していく方針です。後ほど、この地域連携による対 象児童の就学前療育と円滑な就学移行に関する学園事業を説明いたします。  また、国立諸機関との連携による調査研究として、国立障害者リハビリテーションセ ンターで施行されている発達障害青年期の円滑な地域生活移行への支援、就労への支援 体制整備のための地域完結型所沢モデルの構築において、発達診療所は登録機関として この研究と事業に参加しています。  また、国立精神・神経センター精神保健研究所部門とは、発達診療所受診者データを もとに早期の気づきと評定尺度による適正な評価、地域支援のモデル提示などの発達障 害に関する科学研究などを進めております。  以上の調査研究とともに、学園研修を通じて「直接支援の場における支援ノウハウの 蓄積と分析の結果」を情報提示し、同時に、発達障害情報センターとの連携において「適 正で望まれる支援情報」を全国へ発信できるように努力していく所存でございます。  なお、現時点の学園における緊急課題である「重度知的障害の円滑な地域移行」に関 しても、「どのような地域参加が当事者の穏やかな生活を確保し、地域の一員として当事 者が自己実現を可能にするか」を提示しながら、「当事者と家族が不在にならない調査研 究とモデル構築」に努力し、現在求められている支援と、それを可能にする体制を検討 しております。  資料の2枚目を御覧ください。障害を有した幼児に、各ライフステージに沿った継続 的で一貫した支援が不可欠であることは議論を待たないところです。しかし、この支援 の継続の重要性が自明の理となっているにもかかわらず、この点において現実ははなは だ困難であり、障害児保育・教育においていまだに大きな課題として残されています。 したがいまして、この課題解決に向けて全国モデルの提示という位置付けで、国立秩父 学園と所沢市の共同事業により、その支援システムモデルの開発を行い、全国の障害児 関係諸機関に情報発信を行っていく所存です。  先ほど述べました地域連携事業として、所沢市立松原学園と秩父学園との連携事業に ついて、具体的に説明いたします。  現在、松原学園に通園しながら発達診療所の外来療育を受けている複数の幼児がおり ます。このように、1人の幼児が複数の療育機関に所属することで支援方針が統一にな ること、そして、その先には、就学を境に、就学前療育が分断されてしまうこと、以上 の状況により、本人と家族の生活が混乱し、学童期の安定した生活が得られにくいとい う課題が生じてきます。  特に、自閉症例においてこの課題は彼らの将来の重大なリスクになります。人生で最 初の集団生活である幼児施設通園を円滑に進めるための環境設定と、そこで育まれるコ ミュニケーションへの育ちへの支援計画を、地域の複数の支援機関連携で検討し共有す ること、その先のライフステージである就学に切れ目なくつなげるための教育機関連携、 この2つの地域における支援連携は必須です。人生の初歩である幼児期の集団生活への 厚い支援を得ることで二次障害を防ぎ、円滑な学校生活と就労などの社会参加の実現を 可能にします。  以上のように、小児に対する地域の支援のネットワークを構築することは、当事者の 各ライフステージにおける社会生活の負担を軽減し、自己表現、自己決定の可能性を広 げていくものと考えております。  この共同事業の視点としては、以下の3点が考えられます。一つは、2つの就学前療 育専門機関による共通の個別療育計画の開発と統一した支援の実践。二つめは、障害を 有する児童の心の健康と円滑な地域生活を支えることを目的に、国立秩父学園(発達診 療所と外来療育が中心になりますが)これと松原学園が組織連携し、秩父学園で培った 医療的コンサルテーションと支援スキルを提供することで地域の支援者の育成を図るこ と。三つめは、就学前療育から学校教育、特別支援教育への円滑な支援の継続を可能に する。この3点が考えられます。  この事業における具体的な流れを示します。松原学園と秩父学園スタッフの共同会議 において、共通個別支援計画が立案され、必要なアイテムの開発を検討しながら2つの 学園間で組織連携支援体制を構築していきます。ここで検討・整理された情報は、この 事業に関連している地域諸機関(所沢市子ども支援課、学校教育課、教育センター、児 童相談所、松原学園、秩父学園)で構成された連絡支援会議で協議・検討されます。そ の後、就学準備としての就学引継ぎ会議(構成は、特別支援学校(学級)コーディネー ター及び連絡支援会議構成員です。)この会議が設けられ、ここで支援の引継ぎシステム の開発を試みていきます。この特別教育支援計画への引継ぎはこの事業のキーポイント でもあり、今後どのような関係諸機関とどのような方法でかかわるかを検討していきま す。医療・療育の場面で浮き彫りにされる地域生活の課題は、その地域の中でしか解決 できないことであり、この事業で整理される課題と対応は、地域の特殊性を超えてあら ゆる地域に共通するエッセンスが抽出されてくると推定しております。  さて、前回の検討会で指摘を受けました学園の努力課題の中に、今後の支援対象の拡 大として、強度行動障害が挙げられておりますが、ここで、現在の学園で施行されてい る支援内容を紹介いたします。  学園の支援特性は、知的障害療育であり、その中で強度行動障害を呈する自閉症への 直接支援を施行しています。平成12年に完全ユニット制構造を構想した自閉症所属寮 が完成しました。ここに居住することで、複数の小集団に分かれた生活が可能になり、 ユニット単位ごとに支援者を配置しています。居住構造というハード面の環境設定にお いて、「ユニット単位のチームアプローチによる支援」というソフト面を配慮する。この 設定による個別支援計画を円滑に実現して、居住者の落ち着いた生活と強度行動障害の 課題解決を図っています。  また、強度行動障害における社会性とコミュニケーションの障害に対してスモールス テップで支援することで、共同作業、マンツーマンからピアモデルを可能にしていきま す。このように、個別から集団活動移行を実現することで、被支援者の社会的相互作用 の芽を育んでいきます。  御紹介したように、強度行動障害の支援を従来から試みてはおりますが、今後一層の 努力が必要であり、対象者の拡大も課題と考えております。なお、現在の秩父学園の入 所要望の傾向としては、ネグレクト、虐待を受けた知的障害児童ケースが増大しており ます。現時点で4名の措置入所を受けています。  このように、児童福祉法による措置入所のニーズは年々拡大していくものと推定して おります。児童の安全確保としての立地構造上の環境条件においては、当学園は恵まれ ており、長年培ってきた知的障害への支援スキルを活用し、知的障害被虐待児への支援 治療的介入に関して、国立機関として更なる努力が必要と考えております。  御紹介しました秩父学園と所沢市の通園施設の連携事業ですが、埼玉県でも切れ目の ない支援と連携ということで、就学前、就学中、卒業後の就労支援アフターケアを含め てのグランドモデルが立ち上げられており、戸田市と本庄市が指定地域とされておりま す。対象者のニーズは、全国どこでも同じであり、全国様々な場所で、様々な努力が営 まれておりますが、これがばらばらになることなく、情報を交換し、共有し、そして、 国立機関としては、民間では困難である調査研究の形で提示していくことを秩父学園長 としては心がけております。どうぞ皆様、御指導と御協力をよろしくお願い申し上げま す。 ○伊藤座長 ありがとうございました。  ただいまの御説明に対しまして、何か御意見なり御質問なりがございますか。 ○箕輪委員 質問です。今、説明いただいた、2枚目にある連携事業等は、この後、障 害児関係施設に情報配信されるということですが、具体的にどういう形でしょうか。紙 で研究報告書が配られるだけなのか、それとも全国的に集まって、代表的なところでセ ミナーや研修会を開いて、その調査の研究結果をどう活かしていくかといったところま できちんと追った形で全国的にサポートされるのか、その辺りをお聞かせいただきたい と思います。  また、障害があるお子さんについて、早期発見と早期対応があちこちでうたわれてい ますが、その必要性を考えると、関係の障害児施設だけよりは、一般の地域の保育園や 幼稚園、小学校に関する部分で、保護者の方も含めた障害児の回りにいるお子さんやそ の家族の方への情報提供や教育、そうしたところも非常に重要だと思いますが、その辺 りは、今の御説明の中のどの辺りに含まれるのか教えていただきたいと思います。 ○高木委員 全体の形で、秩父学園の機能の中で述べたつもりです。この事業に関して の情報提供として、まず一つは、国立諸機関での科学研究の中で情報提供していくこと があります。調査研究として位置付けるということです。 ○箕輪委員 それは、紙か何かで、冊子でということですか。 ○高木委員 それもあります。それから、発達障害情報センターとの連携の上で部分的 な情報提供が可能になるかと思います。  足元のことではありますが、秩父学園の研修部門もこの範囲の中に入ると思います。 学園での事業、研究に関しては、研修部門を通して全国発信していくつもりです。  様々な方法があると思います。実は、所沢市と連携しているというのは、秩父学園が 所沢市に位置しているからです。支援というものは生活の中でしかあり得ない。そうで あれば、地域から離れて支援が存在するはずがありません。そういう意味で、私どもは、 地域の知的障害施設として、そのスキルを地域に提供していくという形でこの事業を考 えております。  これ(施行している地域連携)は、現在は所沢市だけですが、先ほどもお話ししたよ うに、埼玉県の中でもこういう事業が立ち上がっております。これらとどのように円滑 に連携して全国モデルとして提示していけるかということも私たちの課題だと思います。 情報提供と方法は、先ほどお話ししたようなことだけではなく、更に事業を進める段階 で拡大していくものだと思います。  これでよろしいでしょうか。 ○箕輪委員 では、具体的なことはこれからということでしょうか。その成果をうまく 活用していくという部分については、これからいろいろと具体的にということでしょう か。 ○高木委員 成果を活用していくということは、秩父学園の機能から言えば、情報発信 は一つのルーティンになっていると思いますので、現在は、お話ししたような形で考え ております。  改めてお話しする必要がないと言っては恐縮ですが、調査研究の結果を研修または情 報センターを通じて発信していく、また、科学研究と厚生労働省の関係で発信していく。 現在、国立機関ですので、多少、発信の方法も、最初は制限があるかもしれませんが、 これをきちんと整理して、何よりも地域に受け入れていただければ、情報発信の方法は 拡大していくものと思っております。  これでよろしいでしょうか。 ○箕輪委員 はい。 ○仁木委員 関連してお伺いします。  秩父学園のいろいろな成果をどのように全国に伝えていくかという問題ですが、高木 先生からお話がありましたように、秩父学園は、研修という一つのツールがありますの で、研修を通じて全国の施設の方々に発信するということは有力な手段だと思います。 それに関連して、強度行動障害について、これまでも取り組んでこられたけれども、な お一層の充実をということでしたが、そういう成果も、研修プログラムを通じて全国に 支援のノウハウをぜひ伝えていただきたいと思います。要するに、開発された技術・ノ ウハウを、全国へ技術移転を積極的に行っていただきたいということです。  関連して質問させていただきます。先ほどの松原学園との就学前の連携を学校にどう つなげていくかということで、これは大変意義がある取組だと思います。私は、教育と 福祉との連携も大切なことだと常日頃思っておりますが、就学後の学校と秩父学園との 間の連携については、どのように取り組んでおられるのかということをお聞かせいただ きたいと思います。  もう一つは、資料の1枚目で、発達障害情報センターとの連携ということがあります が、具体的には、この連携はどういう形でなされているのかということです。秩父学園 でいろいろ開発されたノウハウなどを発達障害情報センターの発信情報に逐次載せると いうことがなされているのかどうか。その辺りも教えていただきたいと思います。  以上です。 ○伊藤座長 今取り組んでいることと、これから行おうとしていることを分けてお話し いただけますか。 ○高木委員 情報発信に関してですか。 ○伊藤座長 今の質問に対してです。 ○高木委員 はい、わかりました。  それでは、後ろの質問から答えさせていただきます。1点目の発達障害情報センター に関して、秩父学園園長である私が発達障害運営会議等の構成メンバーの一人ですので、 これが一つの大きな鍵になると思います。それと、先ほどもお話ししたように、国立諸 機関で様々な科学研究や事業に秩父学園は関与しておりますので、このような情報も追 って、発達障害情報センターから提示できると思います。  発達障害情報センターに関しては、この程度でよろしいでしょうか。 ○仁木委員 はい。 ○高木委員 次の御質問ですが、「研修に関して」でしょうか。 ○仁木委員 就学後の教育との連携はどういう形になっているかということです。 ○高木委員 実は、それは、現在の大きな課題です。まず、教育と福祉の連携というこ とは、皆さんも御存知のように、理念としては構築されても、現実としていまだに円滑 に動いている状態ではないことは、全国の共通した課題かと思っております。今回、こ の事業を立ち上げた一つの目的は、私ども発達障害専門外来と外来療育部門においても、 この現場でこの課題に苦慮しております。そこで、「まず一緒に動いていってみよう」と いうところがあります。就学前療育を統一するという形が一つ。2つ目に、就学移行を 円滑に進めるということで、人の連携で教育部門に参入していくこと。その後、学校に 入ってからですが、これが大きな課題になります。ただ、秩父学園は、組織支援として、 学校に支援者を訪問させて、それぞれの課題を持つケースに関して、学校全体としての 組織支援を行っておりますので、これがこの際に結びついてくるであろうと期待してお ります。訪問療育も、個別が1つの学校組織を支援することになり、それが更に地域的 に拡大していくことを目指しております。 ○伊藤座長 ほかにどうぞ。 ○氏田委員 日本発達障害ネットワークの氏田です。  国立の施設の見直しの中で、今、秩父学園さんは知的障害児施設ということですが、 知的障害児・発達障害児への支援をというお話をいただきましたが、実際に私ども日本 発達障害ネットワークの当事者団体の会員を見ると、知的障害児の通園施設にだけいら っしゃる訳ではなくて、幼稚園や保育園で生活をされています。また医療現場でも発達 障害児の受診が大変増えておりますので、国の施設として、知的障害を伴わない発達障 害の子どもたちに対しての支援のあり方をどのように構築されようとされているのか、 質問させていただきたいと思います。 ○高木委員 ありがとうございます。これには、秩父学園の機能特性をお話ししなけれ ばならないと思います。秩父学園は、重度、最重度の知的障害の方々を対象に業務を執 行してまいりました。発達障害の支援は非常に幅広く膨大な量です。これを端から端ま で秩父学園が引き受けることは到底無理なことで、私たちの機能特性を生かした、非常 に困難なリスク、知的障害を合併した発達障害をお持ちの方たちにまず対応していく。 その中でのスキルが必ずや軽度の発達障害の方たちにもお役に立つたつことになるだろ うと思っております。現在、私たちが得手とするところから始めさせていただきたいと 思います。これからの事業の拡大に関しては、秩父学園だけではとてもできないことで すので、皆様の御指導と御協力をいただきたいと思います。また、御期待に添えるよう に精進いたします。  これでよろしいでしょうか。 ○氏田委員 私は家族の立場で参加させて頂いておりますが、自閉症が知的障害のひと つの個性であると思われていた時代が長く続き、知的障害への支援スキルで自閉症への 支援もできるという誤解が、自閉症をはじめとする発達障害を苦しめています。知的障 害に対する支援、知的障害に対するモデル事業や研究はとても大事だと思っていますが、 その延長線上で発達障害を考えることは大変難しいし、本人たちにとっての理解と支援 が遅れてしまうと思います。 ○伊藤座長 今のお話は、私もそのとおりだと思います。ですから、特に高機能の自閉 症児に関しては、知的障害とは別枠で考える必要があると思います。ただ、診ている方々 は、同じ人でもそれを別に考えるということで、仕組みとしては、知的障害の仕組みが それなりに使える。これは実態としてもそうだと思います。ただ、考え方としては、分 けて考える必要があるということだと思います。  特に、インクルージョンの地域の仕組みをつくるとすれば、それははっきりと、高機 能は高機能で考えなければいけない。施設対応では困難であると思います。  ほかにございますか。 ○岩谷委員 国立障害者リハビリテーションセンターの岩谷です。  医療と福祉の最も難しいところを担当され、大変御苦労しておられることについては 敬意を表したいと思います。  高木先生が今日お示しになられたのは、臨床的な研究機関をイメージされているので はないかと思いました。現状は、就学前の生活施設で通過型の施設ではないということ があると思います。今後、国の臨床研究機関としてどのように位置づけをお考えになっ ておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。 ○高木委員 ありがとうございました。現在、秩父学園の大きな課題は、園生の地域移 行の件です。有目的・有期限という形の在園がなかなか困難を来しております。それは、 今までの障害福祉の流れの中で生じてきた問題でもあるし、また、秩父学園の火急の課 題です。実際、現在お困りの方たちを、有目的・有期限という形で入所していただいて、 限られた期間の中で支援を提示し、そしてそれを地域生活に結びつけていくことを秩父 学園がしなければならないのですが、現在まだその件に関しては発展途上です。ますま す私どもが努力しなければならないという思いは強くありますが、現時点として、その 課題が残っております。継続して努力していくつもりです。  ただ、今回この事業を立ち上げたのは、地域生活を営む知的障害を伴う発達障害の方、 自閉症の方たちの地域生活と、就学前療育及び就学移行を円滑に進めて、次のライフス テージにつないでいくことを目指した、また、非常に限定的な試みです。ライフステー ジからすると小さな範囲の試みですが、これをすることで、地域連携という仕事の中の エッセンスがある程度抽出されてくるような試みにしたいと思っております。氏田先生 の御要望に関しては、現在全くお応えできていなくて恐縮ですが、現在のところ、秩父 学園の特性からしてここまでです。今後努力しまして、高機能の方たちに関しては、何 らかの形で秩父学園も尽力したいと思っております。  現在、関連した事業として一つあるのは、先ほどお示しした、国リハの事業である発 達障害青年期の方の地域生活、就労への支援という形で関わっております。微小な関わ り方で甚だ遺憾ですが、ここから更に伸ばしていければと思います。幼児に関しては、 現在お話ししたようなところまでの試みですが、更に精進したいと思いますので、どう ぞよろしくお願いいたします。 ○氏田委員 高木先生、ありがとうございます。私も、知的障害を伴う自閉症の息子が おります。これまでも強度行動障害を起こし本人も家族も疲弊してしまっているという 仲間たちをたくさん見てきました。その方たちの行動障害が改善されて、地域での生活 を続けるためには、出来るだけその方が住み慣れた、より近い地域でいろいろな支援が 組み立てられる必要があるだろうと思っています。きちんとしたモデルができていない ということで、秩父学園さんがこの間に取り組んでくださっていることに大変感謝して おりますが、具体的な成果にまでは十分に結びついていない状況であると感じています。  また、そういう意味から言いますと、国の中央にあっていろいろな影響を与えること が出来る秩父学園さんにはしっかりとした支援モデルを提示いただくとともに、自閉症 の施設に関しては、民間の入所施設も各地にたくさんありますので、そちらの活用など もお願いしたいと思います。また、実際に施設に入ると子どもたちは落ち着きますが、 そこから地域に移行していくところで多くの支援を必要としますので、支援体制の整備 とともに、地域移行に向けて支援ができる人材が育っていくようなフィールドワークの 場が必要です。このような人材育成について、秩父学園さんが今後の計画としてお考え であれば、ぜひお聞かせいただけるとありがたいと思います。 ○高木委員 ありがとうございます。御指摘のとおりでございます。私は、支援はハー ドではなくてソフト、支援者のあり方だと思っております。いかに社会的に成熟した支 援者を育てるかに尽きると思っております。秩父学園には研修部門があります。今のと ころ座講の方が多いのですが、できるだけ実習研修を増やし、秩父学園で培ったものを、 また更に高いものを目指すために、先生がおっしゃるように、民間の福祉諸機関にも御 協力いただいて、そこを目指したいと思います。  私も園長在任3年目ですが、この3年間訴えてきたことは、まさにおっしゃったその こと、支援者の成熟性です。これに関しては、御指摘について秩父学園全体で努力して いく所存です。どうぞよろしくお願いいたします。方法としては、今お話しした研修の 実習タイプの提示、または、私自身も理念としては紙の上で提示しているわけですが、 このことに関しても、先ほど御指摘いただいたように、紙だけではなく、何か生きた形 の情報発信を考えていかなければならないと思っています。そういう意味で、先ほどの 箕輪委員の御指摘は非常に勉強になりました。ありがとうございました。 ○伊藤座長 ほかにございますか。 ○仁木委員 先ほどから地域生活への移行という話がありまして、前回の資料にも地域 生活への移行が一つの課題であると書かれておりますが、秩父学園を利用されておられ る方というのは、かなり遠方からの方々が多いわけです。そういう中で、秩父学園から 即地域に移行することはなかなか難しいと思います。所沢出身の方であれば所沢の自分 の生まれ育った地域に戻るという形で即地域移行も可能でしょうが、所沢周辺の方ばか りではありません。だとすれば、秩父学園からすぐに地域へ移行するのではなくて、生 まれ育った地域の施設にまず戻るというか、秩父学園で培った支援のノウハウをその地 元の施設に伝えて、まずその施設に移って、そこから次のステップとして地域に移行す るという手法が有効ではないかと思います。 ○高木委員 ありがとうございます。現在、それも試みております。ただ、地域性に関 しては様々ですし、また、御家族のニーズと御本人の御要望が折り合わない場合もあり まして、こういうことはなかなか難しいと実感しております。  ただ、御指摘いただいたその方法に関しては、現在、努力中です。更なる努力を続け ていきたいと思いますので、また御指導をどうぞよろしくお願いいたします。 ○伊藤座長 ありがとうございました。秩父学園に関しては、とりあえずこのくらいで 議論を終わりたいと思います。  ただ、学校との連携は、私たちも20年来いろいろと苦労してきまして、ようやく最 近光が見えてきました。それは、学校側が、発達障害に対して関心を持ち始めたという ことが大きな原動力になっているのだろうと思います。その中で言えば、2つの方法が 必要だと思います。一つは、秩父学園で療育されてきたお子さんの学校移行のときのカ ンファレンス、学校の先生方と、そのケースを通したカンファレンス、これは実践され ていると思いますけれども、行うことが大事だと思います。  同時に、学校に派遣されている職員の方の学校派遣は別口で考えなければいけないも のであって、どうも、派遣した人は別のお子さんたち、すなわち自分たちの療育機関に は通って来なかったお子さんたちも含めて、そういうお子さんたちの学校の先生に対す るアドバイスが主要課題になっておりますので、そのことを担当する方は相当レベルが 高くないとうまくいかないということがあります。カンファレンスの方は、担当者が学 校の先生にお伝えしていく。そういう相互の乗り入れは非常に有効だと思います。これ は昔からしていることですが、学校側がなかなか乗ってこなかったということがありま すので、最近では、そこが少しうまくいってきているのではないかと思っております。 続いて、資料1の11ページ以降の議論をしたいと思います。どなたからでも結構です ので、どうぞ御自由に御発言いただければと思います。 ○黒澤委員 11ページですが、国立リハビリセンターは随分、人口構造や疾病構造で変 化してきているという印象を持っています。特に、上から3つ目、重度の肢体不自由者 へ利用対象を拡大していくということと、その下ですが、高年齢化傾向にあるというこ と、その他、障害がそれぞれ増えてきているということですね。当然のことながら、そ れは2つの面が出てくるわけで、一つは、医療保健と福祉の連携における成果支援とい うか、ケアという学問性が出てくるところですね。このところは、もちろん高齢者の方 で介護サービス計画などいろいろしていますが、どちらかというと、介護の学問水準と 技術水準は、老人に対するケアに重点があって、障害者の方々に対しては、バリエーシ ョンが多くあるため、この辺は介護福祉士の方も苦手にする方が多いですし、どうして いいのかが難しいわけです。  そういうことから言うと、就労支援が困難な方がいらっしゃる、生活ケアが大事にな ってくる、この辺を国立リハビリセンターが、伊東や別府の重度の機能を持っているわ けですから、後で出てくると思いますが、生活機能の持っている蓄積したノウハウをこ こにどういうふうに持ってくるか。恐らく、職員採用もそうした方々を採用しなければ 重篤な人を介護できないと思います。したがって、生活ケアの問題を将来のありようと してどう考えるのかということが、先ほど、全国発信の話が出まして、確かに所沢でや るのは一地域の方々を対象とすることが多いと思います。しかしながら、重度障害の方々 に対するケアをどうするかという問題については、やはり全国規模で行う価値があると 思います。それが一つです。  2つ目は、就労支援が難しい方について、地域でも障害者の計画を立てていますが、 厚労省の指針に基づく就労支援がなかなか達成できないという状況がだいぶありまして、 精神障害が特にそうです。知的障害、精神障害を含めた方々の就労支援が今どうなって いて、昔で言う職能訓練でしょうか、いわゆるプレボケーショナルなトレーニングが昔 はあったのですが、プレボケ・トレーニングだけではなくて、生活に移行するときの包 括的な相談業務をどう位置付けようとしているのかということを、是非、今後のリハビ リの方向性としてお伺いしたいと思います。 ○伊藤座長 江藤先生、お願いします。 ○江藤(オブザーバー) ただいまの黒澤先生の御発言のとおりで、障害者自立支援法 の指定施設として、平成18年から更生訓練所の方は活動しております。自立支援法で は、就労にかなりウエートが置かれていますので、私どものところでも、従来の第1ワ ーク、第2ワークといった編成を改めまして、なかなか急速にはモデルチェンジできな いのですが、作業系を6つに分けて、人員配置は、張りつけるというわけではなくてオ ーバーラップしながら就労のことにかかわるようになっております。  もう一つ、従来のありようですと、同じ敷地内に国立の職業リハセンターがあります ので、利用者の多くの方は職リハへの移行を望んでおられる方もおりますけれども、職 リハで採用していただけないような重度な方の取組を我々は今始めております。そして、 実際に地域のハローワークへ出ていっての就労、それから、就労の模擬職場というか、 職場実習を受け入れてくれる企業さんのところで、そうしたことをちょうど始めたとこ ろです。  それから、重度対応で、機能訓練の対象受入れ人数を20人から40人に増やして、頸 髄損傷を想定していますが、ケアが必要な方の生活訓練と、現段階ではまだ介護スタッ フをやっと採用していただいたところでまだまだですが、生活のサポート付で就労の訓 練までを行っていきたいと考えております。  重度に関しては、私どももこれからですが、そのように考えております。  プレボークの件に関しては、現代の職業のあり方に応じて、コンピュータを基本的に 使えるようにするとか、そういう訓練を含めて再編成したところです。 ○黒澤委員 将来方向に位置付けるということでよろしいですか。 ○江藤(オブザーバー) はい。現在の利用者の方は、高齢化もありますが、糖尿病を はじめ、かなり複雑な疾患を合併されている方が増えております。そうした方も含めて。 それから、実は、精神障害をベースに持っておられる方もかなり増えております。そう いう意味で、10月以来、障害者リハビリテーションセンターとしたところで、私どもは 将来的にそうした重度対応、あるいは、精神・知的も含めて対応できるように体制整備 を始めた段階です。 ○黒澤委員 ありがとうございました。結構でございます。 ○伊藤座長 ありがとうございました。ほかにございますか。 ○箕輪委員 11ページから順番に幾つかあります。まず、11ページの一番下、19年度 から3か年計画で実施されているものがあると思いますが、こちらについて、今日でな くても結構ですので、現状の進捗状況で何か御報告いただけるものがあれば、興味があ るので是非御報告いただきたいと思います。  それから、12ページには視力障害の方の話がいろいろ載っていますが、あはきの職業 について、拡大や確保ということがうたわれているものが多いのですが、実際に、あは き以外の部分での社会人の情報がどういうふうになっているのか。資料だと、15ページ になりますが、約3割の方が伝統的な職業として「あはき」に就かれているとあります が、それでは、ほかの7割の方はどういったものを求めているのか。また、御本人では なく、雇用する側が各地域の方で、全盲の方を含めて視力障害がある方にどういったこ とを求めているのかということの中で、今後、拡大されている方向が具体的にお聞きで きればと思っています。  14ページのところで、もう一度秩父学園への要望です。先ほど御意見も出ていました が、14ページに書かれている2つ目の事項では、国立の施設でありながら利用者の9割 が関東近辺となっているのは、先ほどから出ているような地域移行で、都道府県との連 携がとれていないのか、それとも、連携がとれているのに知られていないのでしょうか。 国リハは埼玉にありますので、東京、千葉くらいまでであれば、多分そのまま地域移行 は可能だと思い、関東近県の利用者が多いのではないでしょうか。やはり国立である以 上、全国からの受入れをする必要があると思います。そのためには都道府県との連携強 化がどのようになっていくのかがポイントなのかなと思っていますので、是非その辺り について伺いたいと思います。  2つ目にありますが、84%が年齢を超過されているということですが、こうした事業 所は全国的に多いと思います。30歳どころではなくて、本当に高齢化している施設も多 いと思うので、そうした意味では、大人の事業所なり地域なりに移行できていくところ は注目度も高いと思いますし、年齢プラス地域性がクリアできるような仕組みができ、 モデルを示していただければ、その事例を全国的に活用されることが可能になってくる と思います。そこはもう進めていらっしゃるのであればいいのですが、そうしたことを 今後考えていらっしゃるのであれば、両方をあわせて連携の仕方等について考えていた だければと思います。  以上です。 ○伊藤座長 ありがとうございました。 ○岩谷委員 モデル事業については学院長からお答えさせていただきます。  あはき以外の問題で、15ページのところですが、このことについては以前から長年に わたって御指摘をいただいております。企業において経験を持っている方たちが徐々に 視力を失っていくわけですから、私たちは、視力を失われても現在の仕事が続けられる ことが一番いいのではないかと思って、視力が低下していく段階で、何らかの代替手段 を身につけることによって仕事が続けられるのではないかと非常に強く考えています。 この点について、それは箕輪委員も御存知のように大変高い壁があって、それを果たし 得ないでおります。ですから、どうしても、視力を失われた方は最終的にはあはきに来 られるわけです。それ以前に何とか対応策を考えていくべきであろうと思っております。 我々も、視覚障害者の方たちに、コンピュータを使う技能を身につけていただいたり、 いろいろなことをしております。しかし、それがいくらできるようになっても、それが 現場で使えるような職業の場が用意されていないことは大きな問題と感じております。 ○伊藤座長 質問ですが、箕輪委員の質問の中にありました、残りの7割の方々の職業 について調査か何かありますか。 ○岩谷委員 すみません、それは手元に今データがありません。 ○難波施設管理室長 今資料を持ってきますが、身体障害者実態調査の中で、視覚障害 者の方々で仕事に就いている方の約3割があはきの仕事をしており、7割はサービスな どいろいろな職業に就いていますが、今、数字を持ってきますので、その際に御連絡さ せていただきたいと思います。 ○伊藤座長 ありがとうございます。  では、残りの質問について、どうぞ。 ○中島(オブザーバー) 国リハの中島です。11ページ最下段の青年期発達障害の事項 についてお答え申し上げます。  このモデル事業は、御指摘のとおり、平成19年度から3か年計画で実施しておりま す。昨年度初年度につきましては、どのような施設を使って患者・障害者の方のこの流 れをつくるかということと、実際にモデル事業に乗っていただく患者・障害者の方の選 抜に充てまして、先ほど、秩父学園の高木園長が述べられたように、埼玉県の発達障害 支援センターであるところのまほろばに通所している方の中から、この趣旨に合う方を 一定程度選抜しまして、そして、秩父学園の発達診療所で診断をつけ、その上で国リハ の更生訓練所で、黒澤委員がおっしゃるところのプレボケーショナル・トレーニング、 要するに、就労のためのトレーニング訓練を積んで、そして、実際に就労に至るという 経路をまずつくりました。その上で、その趣旨に添う方を選抜しました。  そして、平成20年度においては、実際に更生訓練所に入っていただき、現在、就労 のための訓練を積んでいるところです。来年度においては、実際のその方たちが職業に 就いていただいて地域の中に出ていただき、その上で、訓練の適正さ、この仕組みの適 正さについて検証し、最終的に考察を出すということで3年間の終了を目論んでおりま す。  以上です。 ○伊藤座長 ありがとうございました。  では、今の職業のことについて、いいですか。 ○難波施設管理室長 口頭で恐縮ですが、平成18年の身体障害者実態調査がありまし て、その中で視覚障害者の方で何らかの仕事に就いている方が約8万人いらして、その 3割があんまマッサージ、鍼灸師の仕事をしています。その次に多いのが、専門的技術 的職業ということで約1割。それから、農業、林業、漁業が約9%。そうしたところが 多い分野です。分布としては、そのような状況になっております。 ○伊藤座長 よろしいですか。  それでは、16ページの秩父学園の都道府県との連携について、高木先生からお願いし ます。 ○高木委員 箕輪委員が御指摘のとおりです。私も秩父学園が最も力を入れなければい けない事業だと思っております。  そこでですが、実は、現在、秩父学園の努力が足りない部分として、都道府県との連 携による魅力的な情報発信が、保護者の方にできていないのではないかと思っておりま す。もちろん、移行先の諸施設の情報、または、その後の地域生活に関しては、それな りの情報提供の努力をしておりますが、システムとしてまだ構築しておらず、これが現 在の課題であり、検討中です。  それと、ただ移ればいいというものではありません。御本人や御家族が、この移行こ そ、秩父学園よりも魅力的な選択であることを実感していただかなければなりません。 それは、先ほど話した魅力的な情報発信の提供もありますが、もう一つ、秩父学園側か らの厚いアフターケアだろうと思っております。これがまだできていません。これも検 討中です。  先ほど氏田先生の御指摘もありましたが、地域を駆けめぐる支援の手、これが国事業 の中で生かされればと思っております。現時点で一番欲しいのがマンパワーです。秩父 学園の業務をできるだけ効率化して、これに取り組めるように努力いたします。 ○伊藤座長 ありがとうございました。  ほかにございますか。 ○寺山委員 16ページの上の段、「重度センターについて」のところです。私も現在、 大学で、PT、OT、STなどのリハビリテーション関係の養成をしていますが、全国 にたくさんの臨床実習地を抱えておりまして、あちこちの現場を見させていただいてい ます。この頸髄損傷の方だけではないのですが、最近、病院に入院日数の短縮で、昔、 私どもが頸損をやっていたときには、長期にかかって職業リハビリテーションの前段階、 先ほど、プレボークという話がありましたけれども、プレボークのところまで病院の中 でできる体制でした。それが、今はそういうわけではなくて、平均在院日数は12.5日と か、20日とかいう中で、回復期までいても、頸髄損傷は、特にたくさんのリハビリテー ションサービスが必要な方はなかなか終わらなくて、ADLの一部が自立するくらいの ところで次に移行しなければならないということで、是非、その後を引き受けて系統的 に国リハが宣伝をして、むしろ、全国的に見ると、国リハでそんなことをやってくれる のかという病院施設が多いですので、その辺のPRを是非していただくといいのではな いかという御提案です。  それから、逆ですが、この短い入院日数の中で、急性期・回復期のリハ、特に回復期 リハの終盤のところで、病院で何を職リハの前段階としてするべきかという処方箋を、 基準をお示しいただくと、病院側としてもそれを受けて、あるいは、国の施設を利用し なくても、そこで地域の施設、就労施設へ移行できる可能性がある人もいらっしゃるか もしれないということで、双方向の連携というか、体系的な連携が必要だと、養成機関 の実習地の現状からそう思います。  以上です。 ○伊藤座長 あわせて私からも一言お願いをしておきたいと思います。16ページの2つ 目、今、寺山先生がおっしゃったところですが、その対象の中には若年の脳血管障害者 がいらっしゃいます。これは更生訓練をしていく上で、入院期間が短縮されているので、 身体障害者手帳が取得されないと福祉施設が利用できないわけですが、脳血管に関して は3カ月という規定があります。6カ月は外していただいたのですが、まだ3カ月が残 っております。これが残っているために、3カ月たたないと手帳の申請が出てきません。 これが認可されるのにどうしても1カ月くらいかかります。そうすると、4カ月たって から申請という話になります。また、お役所仕事ですから、これがなかなか先に進みま せんで、入るまでには5カ月、6カ月とかかってしまいます。  これは、今やMRIもCTもありますので、1カ月くらいのところで判定することは 可能だと思いますし、場合によっては、再認定する仕組みもありますから、そういう中 で、身障手帳の認定に関しても早くにする。3カ月という規定を外す方向もぜひ御検討 いただきたいと思います。  ほかにございますか。 ○岩谷委員 15ページの上の囲みの中で、揚げ足取りのようになって申し訳ないですが、 民間施設での取り組みが十分でない高次脳機能障害や発達障害等新たな障害分野に特化 した形でその取り組みを進める必要があると書いてあります。私たちは、これらに特化 するつもりは余りありません。それは広げていこうと思っていまして、これに特化する ことは余り考えていません。その辺、この論点の中で指摘させていただきたいと思いま す。 ○伊藤座長 要するに、この障害分野に集中するわけではないということですね。 ○岩谷委員 はい、そうです。 ○伊藤座長 それはそうだと思います。  とはいっても、高次脳機能障害、発達障害についてかなり重点的に取り組むというこ とですね。 ○岩谷委員 そうです。 ○伊藤座長 ほかにございますか。 ○東山委員 視覚障害者の職業対策の件ですが、岩谷先生がおっしゃるとおり、視覚障 害者の職業は大変難しいものがあります。これは御承知のとおりです。でも、現実問題 として、各視力障害センターの利用率は減少してきております。現在、あはき養成課程 ということで募集されていると思います。これからは、例えば、あはきを好まない視覚 障害者、あるいは、中途失明者で職場復帰を臨む方、これらの対策として、パソコン技 術とか事務系の職業訓練科目、ここら辺を御検討いただきたい。ましてや、労働サイド ですが、視覚障害者の職業訓練はほとんど実施されていないように聞いております。こ の点は、今後の各視力センターのあり方も踏まえて御検討いただければと考えておりま す。  以上です。 ○伊藤座長 事務局から何かありますか。 ○難波施設管理室長 一つは、いきなり職業的自立という観点ではなくて、当然のこと ながら、中途視覚障害者の日常生活訓練という形でされているわけですね。その中で、 少し職業的なものも含めてする方法も一つあるだろうと思いまして、そこら辺は今後の 検討課題として考えていきたいと思っています。 ○箕輪委員 今の意見に関連してですが、生まれながらにして全盲の方と、途中で糖尿 病や事故で失明した方にお会いしたことがあります。お二人とも、実際に企業の人事を 担当している方です。その方たちも、今のように、学生時代は、マッサージ、あはきを 選ばなかったため先生から嫌われて、非常につらい思いをしてきたと。大学生のサーク ルのような形でパソコンを学んで、今は普通のサラリーマンとして働くことができてい ると。このことを何とか若い、例えば盲学校に通っているような小さなお子さんにも伝 えたいけれども、そのすべがないそうです。盲学校卒業後に、2年間くらいあはきの訓 練をうける専門学校のようなしくみがあるのですが、その進路以外の、例えば事務系の 仕事をしたいと言ったら、先生から、「何てことだ、とんでもない」と言われてしまった と。それも本当に一部の話で、それ以外の人はとてもハッピーに過ごされているのかも しれないのですが、実際にあはき師として働いている事例はあまりにも有名なので、そ れ以外で働いている方の、ごく普通のサラリーマンのような人たちのインタビューとか、 そうした生の声を聞いていただく機会はあるのでしょうか。関係団体を介してだと、特 定の限られた情報になってしまう可能性があるので、今実際に働いている方が、幼いこ ろからどうして過ごしてきたのか、途中で転職した方であれば、どういう形で自分は今 ここにあるのかということを、生の声を広く集めていただくと、現在、私たちが考えて いるようなことのヒントになるのかなと思います。そうしたことはされていらっしゃる でしょうか。 ○伊藤座長 していませんよね。どうぞ。 ○柳澤委員 今のことに関係しますが、私はずっと長い間労災病院で、労働災害として のいろいろな障害からの職場復帰の問題、また、最近は、この会でも問題になるような、 例えば生活習慣病として、二次的な、糖尿病とかいろいろな合併症がくる場合、どうや って職場復帰をさせるかということが検討課題になって、検討をしている中で、ただい ま問題になりましたような、視力障害は現在は、総数からいけば糖尿病性が最も多くて、 その次が緑内障ですから、基本的には後天性になります。  結論から言うと、そうした視力障害が著しく進む前に、知的な機能を持った職業にき ちんと従事していた人に関しては、それは就職の場はかなり確保されるということがあ ります。しかし、すべてにそうした特殊な機能を持っていることを期待することはでき ませんので、私も、そのような、労災や勤労者医療のところでは、あはき師は議論の対 象にはならないような、そういう違った状況が、どういうふうにしてうまくある程度調 和するというか、整合性を持って国の施策としてできていくかということを、ぜひ検討 する必要があるだろうと思います。  それは、労働者健康福祉機構とか、ほかの独立行政法人や国立の高度医療専門センタ ーなどもありますし、そうしたところとの連携で今の問題は是非検討する必要が、これ からは出てくるだろうと思います。  以上です。 ○伊藤座長 事務局、よろしいですか。 ○山崎委員 聴覚障害や視覚障害の方々が、通常の高等教育に上がってくるまでの道筋 にはいろいろなバリアがあると思います。視覚障害の方々は横に連携されていて、前の ように点字に頼らなくても、いろいろな手法が新しくいっぱい開発されていますし、授 業の中でも、点字で試験を受けることももちろんできますが、それ以外の、今はDAISY が非常に盛んになっています。それから、私はボランティア活動のグループをずっと支 援してきているのでわかりますが、横の支援団体がすごく広がっています。DAISY化さ れて、これが国際的な横のつながりにもなってきていますし、そういう高等教育まで来 ている学生たちというのは、例えばラテン語とかスペイン語というようなことまでも全 部支援できるボランティア団体もたくさん育成されています。実際に大学に来て、また は、私は、大学院に来られた学生さんも教育したことがありますが、盲導犬を連れてで もみんな学校に来ます。  そういう意味では、いろいろなツールがあること、いろいろな支援団体があるという ことの情報も、これからは国立の機関なので、そういう横の学生団体の支援だったり、 あるいは、それをサポートするようないろいろな支援だったりというような情報も、冊 子になって出版されたり、文科省も、そういう障害がある学生たちの支援のためのお金 を各大学にも送ったりしています。  もちろん、それには限界があるのですが、限界があった後は、学生グループを育てて、 その学生グループがいろいろなサポートもするようなシステムもあって、そういう大学 で☆印が幾つもついているようなリストなどもありますよね。そういうものを学生たち に提供しながら、今は、変な言い方ですが、高等教育まで進める道はいろいろなバイパ スができていますから、そういう多様な情報をぜひ障害者にお届けいただくというよう なこと。実際に今度は、ボランティア団体は、学校に出かけていって、そして、学校の ドアを、こういうふうにしたらできますよというようなことも、学校を教育するという か、そういうところの団体もかなりたくさん出てきていますから、そういう情報が双方 向の情報になるように全国に発信されればと思います。DAISYのようなところは、ほか の国の情報も行ったり来たりができていますね。そういう支援もぜひお願いしたいと思 います。去年でしたか、日本でも国際会議を開きましたよね。 ○伊藤座長 ありがとうございました。あはき師以外を希望される方々について、少し 着目していただきたいということですね。 ○山崎委員 はい。そこにも情報を広げながら、いろいろなモデルをぜひ提供していた だければと思います。 ○伊藤座長 どうぞ。 ○氏田委員 前回頂戴した資料2の3ページ辺りになりますが、新たな障害分野におけ る福祉機器や支援技術等の研究開発を進めるために機能の強化が必要ではないかという ことが出ています。例えば、知的障害や発達障害などで言うと、コミュニケーション支 援のためのいろいろな器具や、今、山崎先生のお話を伺って思い出したのですが、例え ば着席することが大変困難な児童にとっての自助具や補助具のようなもの、教材や教具 もかなり進められていますので、そういうことも視点に入れていただけるとありがたい と思います。  それから、私ども日本発達障害ネットワークでは、現在、3,000人の会員アンケート を実施して集計中ですが、6割ちょっとが17歳までのお子さんをお持ちの御家族です。 その中で、やはり老後の不安が大変高く、40%近い数値が出ています。つまり、先ほど 11ページの青年期発達障害者の地域生活移行への支援に関するモデル事業の御説明を いただきましたが、就労するだけではなく、生活の支援、どんな暮らし方を望んでいて、 どういう形で地域に暮らしていくのかという視点で、成人期の青年たちの支援を幅広く 考えていただけるようなモデル事業の展開を是非お願いしたいと思います。 ○伊藤座長 ほかにございますか。 ○難波施設管理室長 補足いたします。リハビリテーションセンター自体が、発達障害 に関する事業をまだ全く展開していません。したがって、今、御指摘の点については、 例えば自立訓練的なものを取り入れるとか、今回のあり方の中で、そうした分野につい て拡大すべきであるとか、そうした御意見をいただけたらと思っております。 ○伊藤座長 ほかにございますか。 ○高木委員 私が述べることではないかもしれませんが、実は、国リハで施行されてい ます発達障害青年期の支援ですが、実際には、日常生活、更生訓練ですね。対人関係を 中心として日常生活のリズムを整えることから始まって、就労の準備状態をつくってい くことに更生訓練所では力点を置いております。そして、対象者の皆さんと御家族のニ ーズもそうです。この事業は、そういう意味では、非常に意義があるものだと思ってお りますので、分担研究者としても努力するつもりですが、皆様にも、この事業、科学研 究に関しては御理解をいただいて、御支援をいただければと思います。 ○伊藤座長 ほかにございますか。どうぞ。 ○黒澤委員 前回、どなたか忘れましたが、ケアマネージャーの研修をすべきではない かということで資料にも載っておりますが、ついこの間まで、埼玉県でセーフティネッ トワークを2年間ほど実施したときに、最大の問題は総合相談支援業務でした。つまり、 一貫して分断がない、発病から一貫した相談業務というものを、ある意味の専門的ノウ ハウを持った相談員の研修が必要ではないかということになりました。  私は、国立は、もちろん、今、相談判定会議があって、入所その他来られた方にして いますが、全国の方々に対して、これまで60年ほど築き上げてきた、視力もそうです が、重度も含めて、そういった積み上げたノウハウを更に研究して、いわゆる包括的な 支援業務がどういうものであるかということは、これは数量的エビデンスではないもの ですから、意外と難しいものです。ですから、これはやはり何らかの方向性の中に、そ うした研究なり、包括的相談業務のありようについて、私はきちんとした位置付けをす べきだと思います。答申の原案には、社会科学についてとだけ書いてあります。全部を 細かくは書けませんから理解しますが、どこに入れるのかということについては、私は、 位置付けをする必要があるのではないかと思っています。  以上です。 ○伊藤座長 私も全く同じ意見です。確かに、そういう相談業務、それから、先ほど先 生がおっしゃった障害者の生活ケア、これを行う専門家の育成もあわせて考えておく必 要があると思います。 ○山崎委員 私も黒澤委員の御発言は重大な御発言だと思います。というのは、地域包 括支援センターは全国にありまして、これの全国調査をしてみました。その後で、今度 は市区町村がどのようにそのことを位置付けているのかということも調べました。  私の領域で言うと、例えば、精神保健福祉士とか社会福祉士などの人たちがいますが、 それらがやはり英国と同じようにケアスタンダードがないわけです。そこで、今年から 全面的に研修プログラムも、教科書も、内容も全部変わりました。その流れの根本にな っているのは、今日のお話の中にありますように、障害がある方なら、その方個人と家 族とコミュニティを総合化してコラボレーションできる、そして、総合化できる相談体 制をつくることが今本当に必要です。そのことが、障害者の生活支援センターが地域に ありますが、先導的にそうしたモデルや研修のプログラムをぜひおつくりいただき、そ して、全人的にきちんと捉えられて、いわゆるバイオサイコソーシャルにできるような、 そういう相談体制を組んでいかないといけない。全国調査をしてみてつくづく思いまし た。  今度、厚労省はそこを位置付けまして、地域総合相談という考え方で前に出していま すから、ぜひこの領域でも、その考え方で少し研修なりモデルなりを積み上げていただ けるとありがたいと思います。もし必要であれば、調査結果をお示しします。 ○伊藤座長 ありがとうございました。  それでは、時間的に、11ページ以降だけではなく、前に戻って、全体で御自由に御発 言いただきたいと思います。 ○岩谷委員 私たちは、総合的なサービスということが重要であるということを目指し ているわけですが、山崎委員がおっしゃいましたように、バイオサイコソーシャルなモ デルでありまして、ややもすると、医療と福祉が切り離されてしまいます。やはりここ で先生方のお話は、ソーシャルなモデルの方にどうしても行きがちです。しかし、それ を本当に支えているのはメディカルなところですし、メディカルな診断、メディカルな 病態、そういうものがきちんとしない限り、その後にどういうサービスがロジカルなの かということは考えられないと思います。ですから、総合的ということを考えたとき、 メディカルな部門を充実していかなければいけないと思います。  その一つの例として、柳澤委員が先ほどお話しくださいましたが、生活習慣病という のは、障害を持つ方々にとって非常に重大です。なぜかというと、運動ができないから です。視覚障害者の方は、どうやったってそんなに運動ができません。脊損の方もでき ません。その人たちをどうやって動かして、どうするかということがなければ、我々の ところが成り立たないと思っております。  そのことについては、病院長、何かあったら追加していただければと思います。 ○赤居(オブザーバー) リハビリテーションの方から先生方に是非御理解いただきた いのは、私たちの回りにいる実際の方たちの大部分は、病名が1個という人はほとんど いなくなっています。ですから、よく、リハで診断がつくというのは、問題点リストが できるということで、場合によっては、あちらを立てればこちらが立たずというような ものばかりの中でやっています。だから、当然、物ごとがすべて重層的になってきてい て、そこにいる患者さんだけではなくて、その家族や回りにいらっしゃる人たち全部の 話し合いの中で何らかの解決を図ろうということなので、基本的には、特効薬はあり得 ないということと、我々の回りで今問題になっていることの多くは、進行して、大体は 治らないということが前提の上での議論であるということだけ、よろしくお願いしたい と思います。  ですから、脊髄損傷も、昔は若年者と高齢者で二方性と言っていたものが、今は高齢 者の一方性に変わりつつあります。ここにはお年というものが入ってきて非常に大変で す。それから、外傷性のものは数が減っていますが、そうではないものはどうなってい るのか今のところよくわからないということがあります。  それから、私どものところに来られる脊髄損傷の3割の方たちは精神科絡みです。飛 び下りたりした人たちなので、以前に比べると話はものすごく難しくなってきています。 何もなくて、若くて対麻痺だったら、私たちも入院は6週間で、車の運転まで全部済ん でオーケーです。でも、今はそんな人はまずいません。  というような状況ですので、とにかく複雑になっていることだけは強調して、発達障 害も恐らく、その病名でくくれるような人はごくわずかで、そこにはもっといろいろな 要素が絡んでいるのではないでしょうか。  ですから、複数の問題点、病名が一つではないということにどう対応していくかとい うことなので、話はだんだん複雑にならざるを得ないのではないかと考えております。 ですから、先ほどからの、病院での入院が長くなり、たくさんの方たちがどうしても沈 殿してしまうというのも、一つには、そういう状況があるからだろうと思います。シン プルな方たちはそこそこ解決しているのではないでしょうか。単純に目だけが悪いとい うことなら、何とかなってしまうのかもしれません。ですけれども、視覚障害とともに 内部疾患を持っているという話がどうなっていくかだろうという感じでお話を聞いてお ります。 ○伊藤座長 いずれにしても、総合的なリハビリテーションセンターというのは、医療 と福祉との連携と言われますが、医療がベースですね。予後診断を含めて、それがきち んと土台にならないと柱がまっすぐ立たないわけですから、福祉はその上に立って主役 を演じるけれども、それはあくまでも土台があっての話であることを前提にしてお考え いただきたいと思います。  ほかにございますか。 ○柳澤委員 前回の議論があったところだと思いますが、私は前回は欠席しましたので、 一つだけ、9ページの「4.リハビリテーションに関する情報の収集・提供及び企画・立 案機能」について意見を申し上げたいと思います。  私は、立場上、国立高度医療センター、つまり大きな病気に関するナショナルセンタ ーですが、その外部評価などをしていまして、現代において一番大事な事業の一つであ る情報の収集と発信が極めてプアにしかできていないことを痛感しております。まず、 そういうセンターを、昔の図書館と同じようなイメージでしか国は考えない。それは、 諸外国に比べると非常に遅れているところです。何度か、情報収集・発信センターをつ くる必要があると申し上げるのですが、国リハを中心したこの更生援護機関の場合も、 是非、情報の収集・発信のシステムをどうするかということを、従来にも増して重要で あるということで御検討いただきたいと思います。  それに関連して、最近知りましたのが、そうした情報センターをつくって、そこのセ ンターの専門スタッフが世界的な情報を集めるということは、当然、基本的な活動とし て大切ですが、それに加えて、ホームページの中にそうした情報の収集と発信をするよ うなシステムを別につくると、例えば、今日いろいろ議論になった教育の問題やソーシ ャルインクルージョンの問題などについてのモデル的な経験のデータがどんどん入って くるので、それは非常にいいと思います。そのようなあり方が、EUの労働安全衛生関 係のセンターの情報発信のシステムの一つとして位置付けられているという報告が昨年 ありました。それはやはり一つ大事なことではないかと思います。  組織として人員をそろえてワークアップすることは大切ですが、今のような時代にそ うたくさんの人を割けるということでもありませんので、むしろ、この国リハなら国リ ハの機能を明確に外に対して示した上でのボランティアというか、他からの情報の提供 を期待することは大事だと思いますので、その点だけ申し上げたいと思います。 ○伊藤座長 ありがとうございました。ほかにございますか。  諏訪委員、ありますか。 ○諏訪(オブザーバー) 研究所の諏訪です。今の情報発信機能についての御要望です が、私どもも、一つのモデルケースとして、発達障害情報センターというものを立ち上 げさせていただいたというか、厚労省から移管していただいて進めておりますけれども、 これもいわゆる第2世代の情報センターを狙っている。先ほどのお話で、図書館のよう なものが第1世代の情報センターですが、もっと能動的な情報センターをつくっていか なければいけないという話は考えております。  発達障害ということの次のステップとしては、障害情報センターというものを狙って いかなければいけないと思っております。その進め方に関しても、確かに今のネットワ ーク社会の中からいろいろな形で有用な情報を集める方法論、既にある情報を効果的に 分析する方法など、私の専門が情報処理ですので、そちらではデータマイニングなどの 技術が実際のアプリケーションの現場を探している状態で技術は進んでいるということ がありますので、そういうものも是非組み込みながら、第2世代の情報センターを進め ていきたいと思っております。  国リハの現状で言うと、どうも、設置法上、非常にシャビーな情報提供にとどまって いました。30年前、こういう施設ができた当時の情報に対する認識がそうでしたので、 この検討会の方で是非そういうことをプロモートするように御検討いただければ、我々 としても大いに取り組んでいきたいと考えております。 ○伊藤座長 ありがとうございました。ほかにございますか。 ○寺山委員 ターゲットは「重度」であるということで、国リハの対象となる重度とい うことですが、「重度」という言葉もあいまいというか、職業リハビリテーションの関係 で、高齢・障害者雇用支援機構での議論の「重度」と、国リハで言っている「重度」と は違うし、昔から、「重度」の中身が変遷してきていることは実感します。  それに、先ほどの赤居先生のお話で本当に実感したのですが、頸髄損傷が単純に重度 かというと、そうではない部分があって、重度重複と言えばいいのでしょうか、そうい うことでメディカルがあって、その上に社会的なリハビリテーションが成立するという お話を十分に理解していただくためにも、やはり「重度」の中身を、プラスアルファの 部分で、糖尿病があったり、心疾患があったり、がんを持っていたりとか、非常にオー ベスティであるとか、ものすごく複雑になってきていて、でも、時代の趨勢で国リハは このような複合疾患について、何とか就労支援や地域移行支援までがんばる処方箋が出 るんだよという話になれば、それがミッションだと思うので、その辺りのところを明快 にしていただくと伝わりやすいのかなという私の思いです。  以上です。 ○伊藤座長 「重度」のイメージですが、何かございますか。よろしいですか。  では、岩谷委員、どうぞ。 ○岩谷委員 7ページ、8ページの専門職員の人材育成についてです。実際に今ある学 院は、時代にマッチしないところが出てまいっております。その辺について、学院長か ら少し補足させていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。 ○伊藤座長 ほかになければ。よろしいですか。  では、どうぞ。 ○中島(オブザーバー) 学院は、7ページに記されているとおりの5学科を持ってお りまして、いずれも本邦初の学科です。その学科を設置した歴史的意義は、これまで十 分に果たしてきたところですけれども、歴史的にと申すとおり、実際に設置して、既に 国家資格あるいはそれに準じるものを3学科に付与した結果、民間等において多くの同 類の学科設置を見ておりますので、あるものは、半ば歴史的使命を終えているかのよう に見えるもの、あるいは、いつまでたってもなかなかその領域の事業の進捗を見ない学 科が混在している状況です。真剣に学院のあり方を問う時期が今来ていると思っており ます。  先般、ここの資料にもありますように、教育から研究まで担えるような人材養成を学 院は担いたいということを記したところ、果たしてそのような学生がいるのかという御 質問もありました。しかしながら、現実には、私どもの学院の学生はそのような学生ば かりです。日本を代表する学科です。  その現状にかんがみますと、これを活かさない手はありません。したがって、今、申 し上げたような研究あるいは教育界のリーダーを育成するような学院のあり方としては、 一つのものの考え方として、学院は今、厚生労働省の専修学校という位置付けになって おります。これが、専修学校を脱皮して大学校あるいは連携大学院のようなものに改組 することによって、新しい意義をこの学院に付与できるかどうかについて思慮している ところです。これはまた各委員の記憶にとどめていただき、あり方の一つとして御検討 いただければと思います。  以上です。 ○伊藤座長 ありがとうございました。  議事の進め方ですが、大体皆さんから御意見をいただいて、おおむねできたかなと思 っておりますが、17ページの「国立更生援護機関(8施設)の機能の一元化について」 に絞って、ここで御意見を少しいただきたいと思います。この方向性、この論点でよろ しいかどうかということです。 ○山崎委員 専門職員の人材育成機能というお話があったと思います。専門的な人材育 成の機能というのはどの方向に行くのかということで、専修学校に行くのか、あるいは、 連携大学院大学に行くのかというお話もありました。私どものような地方の公立大学だ けではなくて、今、理学療法士や作業療法士、看護師などの方々の養成をしている大学 は非常に増えてまいりました。専門学校だけではなく、大学もあります。こちらを卒業 した人たちが全国のいろいろなそういうところの教育機関に立って、こういう領域の専 門職としての後輩の指導をしていると思います。私どもの大学にも、こちらで教育を受 けられた方が何人もいらっしゃいます。  今、教育現場で、リハビリテーション領域の人材は必ずしも十分ではなく、これから も需要がたくさんある領域ですが、ある意味では、病院や施設だけではなく、地域移行 のお話がありましたが、これからは、急性期から慢性期の方々も、それから、先ほどか らお話がありますように、重複された障害を持った方もたくさんおられますし、重度化 したり、中途からなっているとなると、そういうものをきちんと踏まえて教育してくだ さるようなことが必要で、私は本当に緊急の課題だと思っています。  実際に私どもの大学院においでになるリハビリテーション関連の方も、現場でされて いたり、教育を担当している方がおいでになりますが、対人サービスですので、継続的 にずっと学習なさりたいわけです。そして、自分たちの力をつけていきたい。そういう 意味では、看護などであれば、看護I、看護II、看護IIIとか、専門領域でできるような 専門的な課題別研修などいろいろなコースが、生涯それができるようにきちんと保障さ れています。でも、リハビリテーションは、それぞれの当事者団体がかなり各県で研修 をしながらやっていらっしゃるので、できれば、そうした研修者を研修するというか、 そして、そういう生涯学習に連なるような人材を養成していただくことも、現場のこう した方の教育に当たっている者にとっては、今とても必要になってきているのではない かと思います。  それから、先ほど岩谷先生がおっしゃってくださったように、バイオサイコソーシャ ルな医療をモデルにしながら総合化していくというのは、今どこのこういう保健医療系 の大学でも、やはり全人的にコラボレーションできる人材でないと、地域に移行したと きにできないんですね。それで、各大学は今、連携教育あるいはコラボレーション教育、 マネジメント教育を必須に入れています。そうしないと、医療は医療、福祉は福祉にな ってしまいますので、この辺のことも含めて、人材を養成していただけるようにお願い するという意味では、地方との有機的な連携をもう少し書き足していただいて、継続的 に学習ができる体制ということも入れていただくとか、あるいは、それをできるだけ共 同・連携できるような人材を養成するようなことも含めてお考えいただきたいと思いま す。そうしないと、みんな穴を掘ってしまいます。自分の領域だけをするということで は、その先がなかなか見えません。その辺も含めて、是非人材養成にお力をかしていた だければと思います。そこを一言入れていただけるといいかなと思います。 ○難波施設管理室長 今、山崎先生が御指摘の点については、資料の8ページの一番下 の論点に関連するお話だろうと思います。全国からすべての人を研修するのは物理的に 無理なので、そうした指導者的な研修にも大きな重点を置いて実施すべきではないかと 考えております。 ○伊藤座長 ほかにどうぞ。 ○高木委員 今のお話のコラボレーションができる人材ということですが、特に医療従 事者、医師でこれができる人間を増やすことが現在の大きなニーズではないかと思って おります。  実は、秩父学園では、国の施策として、発達障害者支援センター職員の研修を請け負 っております。要望としてはケース検討が多いのでこれを実施しています。そのディス カッションの中で必ずつまずいてしまう場面は医療問題です。これに関して的確な答え を出していく医療従事者、医師が少ない。これは全国的なことだと思います。私もその 場にいて、大変なことだと思います。特に発達障害の場合は、もともとのお困りが、対 人相互関係、言語コミュニケーションに関する障害ですが、基盤に、人や状況に関する 不安・強迫性に関する障害がおありですので、これが不適切な環境の中で二次障害とし て精神疾患、うつ等の状態に移行していくことは少なくありません。それが行為障害と いう形になることもあります。  ということを考えれば医療の介入は大きなことであり、これらの対応に関して明確な 答えを一人で出すことはできないわけですから、医師が他の支援者と一緒に協議・検討 していくことを当たり前と考える、そういう医師を育成していく必要があるかと思いま す。現在の支援センターの困窮ぶりに関して、この救済があれば随分違ってくるのでは ないかと感じます。 ○伊藤座長 医師の育成に関しては、この会議ではどうにもならないのですが、厚労省 の中で、そういう話は是非、チャンスがあればしていただきたいと思います。 ○箕輪委員 17ページに出てきていますが、機能の一元化を進めていくと、恐らく、人 材の過不足が明確になってくると思います。今おっしゃられているのは人材不足につい てですが、逆に、例えば事務職の方など機能がダブって人材が余るかもしれません。そ うした辺りでの職員間の危機感のようなことを持たれてしまうと、うまくいくはずのも のもうまくいかなくなってしまうので、ダブっている機能を一元化することは大切です し、より専門的なものを目立たせるという部分があると思いますが、そのときに、今い る方たちの再活用、再配置のようなこともあわせてしっかり考えていることを示せば、 スムーズにいくかもしれません。その辺りが一つ心配です。  あと、職員の定員について、これは事情が詳しくわからないのですが、例えば、それ ぞれのところで直接雇用するプロパーの職員だけではなくて、出向や研修のような形で、 人材が交流できるようになると、お互いの強みはさらに強化され、人材の過不足感もな くなるのではないでしょうか。いきなり一元化をすることが困難な場合には、今いる人 たちの人材交流のようなところから始めていただくことも一つの方法として考えられる のではないかと思いました。  そのときに、「全国的な視点」が重要です。本当に全国の現場の事情を知っている方が 不足しているようであれば、正式職員ではなく期間限定の非常勤職員でもかまわないの で、プロジェクトチームのような形で推し進めていただければいいのかなと思いました。 ○伊藤座長 ありがとうございました。 ○柳澤委員 機能の一元化ということですが、むしろ、機能というよりは組織の問題に ついて少し申し上げたいと思います。  これだけの施設が統合されて、そして、それぞれが担っていたものを統括する形でう まく運営できることを我々は期待して、それでこういう一元化ということを考えるわけ です。私は、それは当然それでいいだろうと思いますが、問題は、先ほどからの議論で もいろいろ出てきましたように、かなり長い歴史の中では、それぞれが担っていた機能 が、アップツーデートではなくなったり、あるいは、既に解決されてしまったり。それ からまた、当然のことがら、新しい課題がどんどん出てくるわけで、実際の研究開発や 教育のあり方、要するに組織のあり方として、ぜひ、プロジェクト体制をつくって対応 するというあり方を組織の中にとり入れてほしいと思います。  今、理研がそれをして成功していますが、プロジェクト研究の問題点は、そこに参加 する一人一人が、パーマネントにそこにポストを持って一つの研究をずっと長くしてい るということではなくて、能力を持っている人間が、その能力をどういう形で発揮した いかというときにそこに集まって、5年なり何なり期限を決めて、プロジェクト研究を 行ったらそこで解散する。そういう形の人事交流が、日本の今までの制度の中では足り なかったものですからなかなか難しいとは思いますが、本当にこれだけ大きな組織を統 合して行うのであれば、是非そうしたプロジェクト研究の組織をつくるようにすること をお願いしたいと思います。 ○伊藤座長 ありがとうございました。そういうプロジェクトの中で、例えば秩父学園 の問題もそうですが、施設のあり方問題、これは古くなっている機構上の問題もいろい ろあると思います。ですから、周辺の法制度の整備もあわせて考えていく必要があるわ けで、そうしないと、がんじがらめで、施設運営が大変難しいということもあります。 そこまで含めた検討をお願いしたいと思います。  ほかにありますか。 ○仁木委員 16ページの一番下ですが、秩父学園のこれからのあり方として、強度行動 障害児や発達障害児等の入所対象の拡大を図る必要はないかということですが、その目 的はここには書かれていませんが、私は、強度行動障害や発達障害の支援のノウハウを 開発するというか、支援プログラムを開発するために、こういう人たちも受け入れる。 そして、支援のノウハウ、技法を全国に普及する。または、研修というツールを使って 全国の困っている施設にそういうノウハウを広げる。そういう目的において、この強度 行動障害や発達障害児を受け入れることは意味があるのではないかと思います。 ○伊藤座長 単に受け入れるわけではないですよという意味ですね。 ○仁木委員 はい。 ○伊藤座長 よろしいでしょうか。 ○氏田委員 入所していらっしゃるご本人たちの協力で、支援プログラムを検討してい くという形もあると思いますが、いろいろな形のトレーニング方法が実践されています。 例えば、在宅のご本人や家族が研修の場に出向いて協力するという形もありますので、 対象の拡大はぜひお願いしたいと思いますが、入所については、地域の民間施設の活用 も含めてご検討いただければありがたいです。 ○伊藤座長 ありがとうございました。大体出そろったと思いますが、最後にどうして もという方、いらっしゃいますか。 ○岩谷委員 いろいろな意見をいただきましてありがとうございました。我々は、これ からしっかり取り組んでいかなければいけないと考えております。私たちは、今のこう いう考えたことが、政策や施策において実現していく、または意見が活かされていく仕 組みがないと、何もできません。先生方にいろいろな御助言をいただきましたが、これ を現実のものとしていくには、センターとして、厚労省の施策にかなりいろいろな意見 を述べさせていただけるような仕組みと人材をもち、政策提言ができる組織となりたい ということが我々の強い希望です。それがないと、社会福祉、医療福祉、雇用という難 題に立ち向かうことができないと思っておりますので、その辺も是非御理解をいただき たいと思っております。  どうもありがとうございました。 ○伊藤座長 ありがとうございました。全国の同じような施設もありますので、それと の連携を含めて、国立センターでデータをきちんと取って、それを裏付けて政策に繁栄 していければよろしいかと思います。そのような努力をしていただきたいと思います。  それでは、予定の時間になりましたので、以上で第3回検討会を終了したいと思いま す。  事務局、よろしくお願いします。 ○難波施設管理室長 本日は、御熱心な御議論をいただきましてありがとうございまし た。次回の開催ですが、2月27日金曜日、午前10時から、場所は当会議室です。正式 な御通知は別途させていただきたいと考えております。  第5回ですが、第4回で全体のまとめの議論をしていただくわけですが、その議論の 状況によっては第5回目があると思います。仮に日にちを押さえていただきたいのは、 3月23日月曜日ないしは3月25日水曜日の午後、いずれかにしたいと考えております。  以上です。 ○伊藤座長 第5回目があるかもしれませんので、3月23日か25日を一応押さえてい ただきたいと思います。よろしいでしょうか。  それでは、どうもありがとうございました。これで本日の会議は終わります。 【照会先】  [国立更生援護機関の今後のあり方に関する検討会事務局]   厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部   企画課施設管理室指導係   電話:03-5253-1111(内線3085)