09/01/16 第10回医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会議事録     第10回医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会 開催日:平成21年1月16日(金) 場所:はあといん乃木坂 フルール 照会先:医薬食品局審査管理課  医療機器審査管理室 担当:田中・田畑   電話:03-5253-1111(内2787) ○北村座長 皆様、明けましておめでとうございます。第10回医療ニーズの高い医療 機器等の早期導入に関する検討会を始めたいと思います。  本日は、先生方の皆様、御多忙の中、お集まりいただきましてありがとうございます。  まず、出席確認と配付資料確認を事務局からお願いいたします。 ○事務局 はい、御説明申し上げます。  まず、本日御欠席の委員について御報告いたします。本日は、加納委員、四宮委員、 田野委員、千葉委員、中谷委員、渡辺委員が御欠席でございます。なお、土屋委員は、 30分から40分程度遅れてお見えでございます。また、平岡委員におかれましては途中 退席ということで事前に御報告をいただいております。  続きまして、本日の検討会に合わせまして、ワーキンググループの専門家として3名 の先生方にお見えいただいております。御紹介させていただきます。  虎の門病院脳神経血管内治療科部長、松丸祐司様でございます。  国立がんセンター中央病院第一領域外科部肝臓科医長、島田和明様でございます。  国立がんセンター中央病院放射線診断部長、荒井保明様でございます。  続きまして、配付資料の御確認をさせていただきます。  本日、机上に御用意させていただいております資料をご覧下さい。まず議事次第、座 席表、資料1として検討会の開催要領、資料2として委員名簿、資料3として検討会の 進め方、資料4としてワーキングの設置について、資料5としてワーキンググループ報 告書の「経皮経管的脳血栓回収用機器」、資料6としてワーキンググループ報告書の「血 管塞栓用ビーズ」、資料7として対象品目の現状でございます。  なお、資料7以降に2種類の資料を当日配付させていただいておりますけれども、こ れに関しては、前回の検討会で御評価いただきました頭蓋内動脈ステントについて事務 局より御報告事項がございますので、参考として2部付けさせていただいております。 まずワーキングの報告書と日本医師会の治験促進センターのホームページの資料でござ います。それとあわせて参考資料1として経皮経管的血栓回収用機器評価資料、参考資 料として血管塞栓用ビーズ評価資料を御用意させていただいております。  過不足等がありましたら、事務局までお申し出ください。  以上でございます。 ○北村座長 ありがとうございました。  それでは、早速、議事に入らせていただきます。  議事に入るに当たりまして、まず事務局から確認事項をお願いします。 ○事務局 本日の利害関係の確認をさせていただきたいと思います。この検討会の申し 合わせ事項として、検討会の委員は、検討品目に関して、関与または特別の利害関係を 有する場合は検討会の座長に申し出ること。関与がある場合には、当該品目について発 言することができないということで、最初に申し合わせをしていただいております。本 日、御審議いただきます経皮経管的脳血栓回収用機器、血管塞栓用ビーズの2品目につ いて、先生方に事前に確認させていただきましたが、特別の利害関係があるという御報 告はいただいておりませんので、御報告させていただきます。  以上でございます。 ○北村座長 ありがとうございました。  それでは、本日、2品目の審議をお願いするわけですが、事務局よりまず説明してい ただきたいと思います。よろしくお願いします。 ○事務局 御説明申し上げます。  本日の御審議の流れについてご説明申し上げます。初めに、前回御審議いただきまし た頭蓋内動脈ステントの治験実施状況について御報告させていただきます。続きまして、 今年度選定した8品目のうち経皮経管的脳血栓回収用機器及び血管塞栓用ビーズの2品 目の御審議をお願いいたします。本日審議予定の経皮経管的脳血栓回収用機器について は、主担当を虎ノ門病院脳神経血管内治療か部長の松丸祐司委員に、副担当を国立循環 器病センター臨床研究開発部臨床試験室長の山本晴子委員にお願いいたいいたしまして ワーキング報告書を御作成いただいております。本日は、松丸委員より御報告いただき ます。  続きまして、血管塞栓用ビーズについては、主担当を国立がんセンター中央病院第一 領域外科部肝臓科医長の島田和明委員に、副担当を国立がんセンター中央病院放射線診 断部長の荒井保明委員にお願いいたしましてワーキング報告書を御作成いただいており ます。本日は島田委員より御報告いただきます。  以上でございます。 ○北村座長 ありがとうございました。  前回御審議いただきました頭蓋内動脈ステントの早期導入をこの委員会でお認めいた だきまして、機構の方とも相談に入っていると思いますが、治験を実施することになっ たようで、その状況について御報告いただきたいと思います。よろしくお願いします。 ○松丸参考人 御報告申し上げます。  先般、御評価いただきました頭蓋内動脈ステントですが、前回の御報告の中で一種の 試験を検討されているということで、まずこの件について御報告したいと思います。先 ほど御説明申し上げました資料7以降の2つの資料を御覧いただきたいと思います。  まず、日本医師会の治験促進センターのホームページを打ち出した資料を御覧いただ きたいと思います。平成20年度新規採択課題として頭蓋内動脈拡張ステントの項目が あり、これが治験促進センターで採択されております。現在、この一種の治験に関して はプロトコールの作成をしており、現時点では治験は進んでいません。なお、この一種 の治験の担当の医師ですが、神戸市立医療センター中央市民病院脳神経外科脳卒中セン ターの坂井先生が御担当をされております。  以上です。 ○北村座長 ありがとうございました。何か御質問がございますか。  これは、機構の判断で、治験をどのような形でするかというディスカッションがあっ たのでしょうか。この委員会から推薦した器具について、どの程度治験をするのか。 ○医療機器審査管理室長 この間御議論いただきましたように、国内での一定の治験は 必要で、早期導入も望ましいけれども、治験の実施が現実的にできるのかというような お話だったと思います。確認したところ、今、御報告しましたように、日本医師会でも そうした御相談が進んでいるということで確認し、坂井先生が進めようとされている医 師主導治験については、機構ともプロトコールの内容についても御相談していただいて いると聞いております。 ○北村座長 どなたか御質問等がございますか。  座長から言うのもおかしいのですが、ボストン・サイエンティフィックジャパンとい う大きな会社ですね。それが、企業が治験をしなくて、医師主導で行うことになった背 景は何かありますか。 ○医療機器審査管理室長 会社からお聞きしておりますのは、会社としてももちろん日 本へのいろいろな分野の医療機器の開発を進めてくださっているわけですけれども、本 品の患者数が少ないこともありまして、会社の中での開発優先順位という点から、今す ぐに治験の開始ができる状況にはないというのが実情のようでございます。  坂井先生の医師主導治験がどの時点から進んできていたのか、申し訳ありませんが、 事務局としても、スタート時点のお話がどうであったのかまでお聞きしていませんけれ ども、既に医師会とは、プロトコールの策定研究ということで今年度は作業がかなり進 んできているようで、これが現実に実施されていけば早期に導入が実現できるのではな いかと考えております。 ○北村座長 大変結構なことでもあるのですが、早期導入した場合、1年以内の承認と いう方向ですが、どのくらい時間がかかる予定になっているのでしょうか。 ○医療機器審査管理室長 実際のかかる時期ははっきりしませんが、症例としては、14 例の治験計画を今立てておりまして、6カ月後の評価スケジュールまで組まれておりま すので、そういう意味では、順調にいっても、最後の評価の時期を考えると1年以上か かるのではないかと思われます。 ○北村座長 できるだけ早くできる形にしているのだろうと思います。 ○医療機器審査管理室長 ただ、ここで早期導入するべきと選定されても、1年以内に 承認ができるかどうかは定かではないので残念ですが、最後に御報告させていただきま すように、平成19年度に選定いただきました13品目のうちのかなりの部分が承認にこ ぎつけておりますけれども、実際には、例えば人工心臓についても申請にこぎつけてい ない品目もあります。とはいっても、より早く入口、出口に迎えるように、事務局とし てはサポートしていっているつもりでございます。 ○北村座長 よろしくお願いします。医師主導というのはいろいろ考えられてはいます が、実際に動いているのは大変少なく、難しい問題が多くあるようで、医薬食品局はも とより機構の方、あるいは、企業の器具の提供等も含めてスムーズに医師主導が進めら れて、この会の目的どおり1年、あるいは、少し延長するのは仕方がないとしても、速 やかに患者さんのために導入できることを期待したいと思います。  ほかに何か御意見がありますか。 ○佐藤委員 この件で前回少し議論があったと思いますが、医師主導治験で行う場合、 補償のところをどうするかということがあったと思います。これはクリアされたという 理解でよろしいですか。 ○医療機器審査管理室長 申し訳ありません、個別には確認していませんでしたが、医 師主導治験でも治験として実施しますので、そこの補償の部分についてはきちんと治験 対象者の患者さんに御説明できるように環境を整える必要がありますので、そこは行わ れると理解いただいて結構だと思います。 ○笠貫委員 医師主導型にするか、企業主導型にするかは非常に大事な問題で、先ほど の説明では、なぜボストンの企業主導型ではなくて医師主導型になったかが少し理解で きません。企業の考え方として、症例数が少ないので企業内の順番としては上位にない、 しかし、臨床現場では早期導入が望まれるというところのぎりぎりのせめぎ合いの話だ と思います。ここに機構としてどういう考え方で取り組んでいるかが明確でないと、こ の次からこういう問題が出たとき、企業サイドとしてはプライオリティが低く、臨床現 場では高いというときに、一方的に医師主導型になるのかというリスクがあります。  今の補償の問題もそうですが、経済的基盤も含めて、医師主導型治験は困難性を伴い ます。そのインフラ整備も必ずしもまだ十分とは言えない。我々医師サイドとしてはそ う思っているので、ここの機構としての、あるいは、厚労省側としてのきちんとした、 臨床現場のニーズと企業との意見が必ずしも一致しないときに、どういう姿勢で臨むの かということを確認しておきたいと思います。 ○北村座長 この委員会に機構の方は参加していますか。 ○医療機器審査管理室長 オブザーバーとして参加しておりますけれども、その点につ いての機構のスタンスと言われてもお答えできないだろうと思いますので、厚労省から、 お答えになるかどうかはわかりませんけれども、お話しさせていただくしかないかと思 います。  医師主導治験は、平成14年の法改正できちんと法律に位置付けられ、医師が治験を 実施し、その治験のデータで申請ができる道ができました。例えば、既に医薬品では事 例があると思いますが、企業になかなか治験いただけないような、例えば小児用の薬の 医師主導治験が進み、それをもとに承認を取っていくという道ができて、医薬品の分野 では実績が一つ、二つ出てきているのだろうと思いますが、機器の世界ではまだそうい うものがありません。今回のケースのように、企業の優先順位という点で、もう少し時 間をかければ日本に導入いただけるかもしれないけれども、医師主導治験で行うのか、 企業治験で行うのかというところについては、恐らく、医療側のニーズと会社側の優先 順位との間でのせめぎ合いで決まっていくのだろうと思います。  システムとして、そこに厚労省として入り込めるシステムが必ずしもありません。こ の検討会で、医療現場でニーズがあるということで、早期導入のために治験が必要であ れば、厚労省としては医政局とも協力しながら、企業を探し、企業に必要であれば治験 もお願いして早期導入に持っていこうということで、その枠組み自体が、そうしたアン メットなニーズに対して早く出口をつかまえるためのシステムとしてつくらせていただ いたと認識しております。  そういう中で、ニーズはあるけれども、実施してくれる会社がなかなかないというこ とで、これまではなかったものを、公募をかけて行ってきております。今回のケースが 選定された時点で、医師主導治験がもう走っていましたので、それを活用するのが一番 早いのではないかと事務局としても思っているのですが、企業治験をどうお願いするか は、医師主導治験がたまたま今回のケースはあったからよかったのかもしれませんけれ ども、なかったときにお願いしても誰も手を挙げてくれないときにはどうしていくのか というところが、多分一番難しい問題になるのかなと思っております。  アンメットなニーズを取り上げるこうした場でつかまえてから、国としては公募をか けて、お願いに働きかけをしていくということで、今後もそうした、治験が必要だけれ ども、企業のインセンティブとしては難しい品目については、できるだけ企業の皆様に 治験の実施も含めて国内の導入を、医政局の御協力もいただきながらお願いしていきた いと考えておりますが、それがいつまでも時間がかかるとすると、先生方が待ちきれな いということでこういう事態に至るケースもあるかもしれません。  ただ、それは、私個人としても、あまり正常なルートでもないだろうと思っておりま すので、日本への導入も、アメリカの開発なりヨーロッパの開発と同時に今後は検討い ただいて、共同の治験などをしながら、日本でも活用できるような、早期に導入できる ような形で開発を進めていただけるよう、開発の初めから日本を入れ込んだ開発ストラ テジを立てていただけるようにしていっていただきたいと思っております。  お答えにならないだろうとは思いますが。 ○北村座長 室長がおっしゃったとおりですが、なかなか微妙なところがこの委員会に 課せられた位置だと思います。目的は、早く日本の患者さんに治療ができるということ ですが、このような形式がどんどん普通になって、企業も、ここに任せて早期導入して もらうことでやってくれれば、公費を使った治験ででも進めてくれると思い込まないよ うにしていただきたいと思います。たまたま今回はそういう形になるわけで、これを成 功させてほしいと思いますが、大変微妙な状況があります。ハーモナイズした形で外国 と同時治験をと随分叫ばれて、もう4年ぐらいになりますかね。薬ではきちんとした事 例が出ているかもしれませんが、医療機器は何でも遅いですから、最悪でも、室長がお っしゃったような事態になることを期待して、この議論はここで終わらせていただいて よろしいですか。 ○吉田(茂)委員 ボストンにしてみれば、ヨーロッパでもアメリカでも承認されてい る機械を、日本で承認を取るためにまたお金を出せと言われたら、特に日本の企業では ないので嫌だと言うのは企業論理として当然だと思いますし、今、室長がおっしゃった ように、今回は医師主導治験という形で拾われたのでよかったのですが、これが医師主 導治験に手も挙がらないといったときに、欧米のデータでも承認するかどうかが、厚生 労働省に突き詰められてくると思います。そこのところまで踏み切るところがないと、 未承認のままで終わってしまうことになってしまいます。ですから、私たちの検討会で、 これはやはり日本にあった方がいいということについて、ある程度議論が尽くされたと きには、日本で治験が行われないとしても、外国のデータをうまく使って承認の方向に 持っていくように努力するとか、そういう方向が出ていると、安心していろいろ議論で きるのではないかと思います。その辺もよろしく考慮願えればと思います。 ○北村座長 今、吉田委員がおっしゃった件については、それは考えておられますよね。 そういう形で進んでいる、この委員会で既に承認になった部分もありますね。 ○医療機器審査管理室長 はい。 ○北村座長 いろいろ御議論ありがとうございました。  それでは、本日の検討品目に移らせていただきたいと思います。2つありますが、最 初は、経皮経管的脳血栓回収用機器の検討をさせていただきたいと思います。本日御説 明に来ていただきました松丸祐司参考人より、ワーキンググループリポートの説明をお 願いいたします。 ○松丸参考人 よろしくお願いします。  ワーキンググループ報告書の資料5を御覧いただきたいと思います。  医療機器の名称は「経皮経管的脳血栓回収用機器」です。対象疾患、使用目的は、頭 蓋内の血栓閉塞疾患に起因する急性虚血性脳卒中患者の血行再建を目的に使用します。 もう少し説明しますと、脳塞栓症に対する脳主幹動脈閉塞の患者の血栓を回収するデバ イスです。  検討医療機器名は2つありまして、一つがMerciリトリーバルシステム、輸入業者は センチュリーメディカル株式会社です。もう一つがPENUMBRA SYSTEM、輸入業者 はアドミス株式会社です。  外国の承認状況は、時期は違いますが、2つのデバイスとも米国、欧州におといて同 じ状況です。まずMerciリトリーバルシステムは、米国においては2004年8月11日に 510kを取得し、ヨーロッパでは2002年11月14日にCE-markを取得しています。現 在、アメリカ、オーストリー、フランス、ドイツ、スペイン、スウェーデン等で販売さ れております。  適応ですが、これもPENUMBRAと同じですが、少しわかりにくいところがあります けれども、米国においては、虚血性脳卒中の血栓を除去することによる脳動脈の血流再 開を目的に使用する(組織プラスミノーゲンアクチベーター(t-PA)の経静脈投与が適 応外またはt-PAの治療に失敗した患者が対象)。なお、脳動脈、末梢血管及び冠状動脈 の血管内治療における異物除去にも使用されるということです。後半の部分は、米国の 510k取得の際の条件だと思いますが、前半の部分はPENUMBRAと同じです。欧州に おいても同じです。  PENUMBRA SYSTEMは、米国において2007年、欧州において2006年、ともに取 得されておりまして、適応は、急性期脳梗塞患者のうち、発症から8時間以内の脳主幹 動脈閉塞(対象部位としては内頸動脈、中大脳動脈、M1及びM2部位、脳底動脈、椎 骨動脈)を来した患者に使用される。これはMerciの方も同じ適応です。Merciでは、 一部加えてあるとか、細かく説明してあるのは、t-PAの適応外の患者、逆に言うと、t-PA の適応のある患者はt-PAを使用しなさい、t-PAの適応外の患者と、t-PAをしたけれど も、再開通できなかった患者にも使用できるというように適応が定められています。  2ページに参りまして、「対象医療機器の概要」です。まずMerciの検討会向け資料 の1ページを御覧ください。Merciは3つのデバイスからなっていますが、これは血栓 を物理的に回収してくるものです。一つがリトリーバーです。これはガイドワイヤみた いなもので先端がコイル状に巻いてあるものです。もう一つがマイクロカテーテル。こ れがリトリーバーを血栓の部分まで持っていくものです。もう一つがバルーン付きのガ イドカテータルで、これはマイクロカテーテルを閉塞部位まで持っていくためのデバイ スです。この3つのデバイスから成っています。  更に、この資料の5ページを見ていただきたいのですが、実際にどのようにするかと いうと、先ほどのバルーン付きのガイディングカテーテルを閉塞した頸部の血管に留置 して、そこからマイクロカテーテルを塞栓の縁位の部分まで到達させて、そこでコイル になったリトリーバーを塞栓の縁位部で出します。そして、これを少しずつ引きながら 塞栓をキャッチし、次にガイドカテーテルについているバルーンを膨らませて血流を遮 断します。これは、回収中に塞栓が縁位に飛んでしまうことを防ぐためにもとの血管を 閉塞して、このまま塞栓をガイドカテーテルの中に引き込んでこようというシステムで す。  一方、PENUMBRA SYSTEMは、アドミスが作成した資料の4ページから6ページ を見ていただきたいと思います。こちらのデバイスは、同じく回収するものですが、吸 引して回収するデバイスです。これも3つのデバイスから成っているもので、4ページ にあるものが吸引ポンプです。もう一つが、5ページにあるもので、実際に塞栓を吸う カテーテル。もう一つが、6ページにあるもので、塞栓を破砕する、あるいは、カテー テル内で掃除するようなセパレータ、この3つのデバイスです。  これはどのようにするかというと、マイクロカテーテルを塞栓の中に入れて、吸引の ポンプにつないで吸引をかけます。ただ、吸引をかけるだけではカテーテルがすぐに詰 まってしまったり、吸引できない場合があるので、先ほど最後にお見せしたセパレータ を使って塞栓を破砕したり、マイクロカテーテルの中に入った塞栓を掃除するような形 で持続的に回収するというデバイスです。  このように、方法は違いますが、目的は同じデバイスです。  次に対象疾患です。脳卒中は、皆さん御存知のとおり、日本人の死因の中で第3位を 占めております。特に脳梗塞は、脳卒中の中の75%以上を占める疾患です。脳梗塞の病 型としては3つありまして、一つは軽症なラクナ梗塞、動脈硬化によって徐々に血管が 細くなる脳血栓症あるいはアテロン血栓症、もう一つが心臓でできた血栓が脳の太い血 管に詰まって脳梗塞を起こす脳塞栓症です。今回のデバイスの対象とする疾患は、脳梗 塞の中でも脳塞栓症です。脳塞栓症は、私たちの中では常識ですが、太い血管が詰まる ので、脳梗塞の中では一番重症です。転帰も悪くて、予後が不良な方、死亡する方は、 38.1%、20.2%と、3病型の中では一番悪いことが知られております。  本邦におけるこういう脳梗塞の超急性期治療としては、現在、t-PAを3時間以内の患 者には静注することが認可されて効果はあるのですが、問題は、発症から3時間以内に 投与しなければいけない。ということは、患者さんは、実際に発症してから1時間以内 くらいに来ていただかないと適応にならないということがあります。あとは、この薬の 作用として出血を起こすことがあるので適応が限られているということが問題でした。 ですから、実際にこのt-PA静注の恩恵を受けていただける患者さんが少ないことが問 題であり、そのほかの治療の選択肢が必要であるということです。  今回の2つの対象品目は、一つはワイヤーで捕捉する、もう一つは吸引によって除去 するというもので、機械的に血栓塊を除去するものですから、いわゆる脳血栓症には使 うことができます。適応は脳塞栓症に限られます。このデバイスの対象となる患者数を 推定することは難しいのですが、大雑把な推測では、年間の脳梗塞の発症患者が12万 人から25万人で、その4分の1が脳塞栓症と考えると、脳塞栓症は3万人から6万人。 発症後8時間以内に来院する患者が半分と考え、更にその10%が本品の適用となるとす ると、年間1,500人から3,000人くらいではないかと推測しました。現在、国内におい てt-PAの静脈内投与は毎月400例程度ですから年間で5,000件程度です。これと比較 して、対象患者が広くなることはあると思います。ただ、誰でもできるわけではないの でこれもまた難しいところですが、実施医や実施施設が増えれば適用患者はt-PAより も増える可能性があると思います。  医療上の有用性ですが、まずMerciリトリーバルシステムでは、新旧製品を用いた2 種類の臨床試験が米国において既に実施されております。一つはMERCI試験、もう一 つがMulti MERCI試験です。MERCI試験では、発症が8時間以内でt-PA静脈内投与 の適応外の患者が対象で、Multi MERCI試験では、これに加えて、t-PAを投与したが 再開通が得られなかったものも対象とします。 MERCI試験、Multi MERCI試験おのおのの血流再開通率は、48%と55%でした。ま た、服地的評価項目とした90日後のADLの自立の評価では、血流が再開した例では 46%、49%でしたが、不成功例では、おのおののスタディで10%、9.6%でした。90日 の死亡率は、血流の再開通例で31%、25%で、不成功例では54.2%、52%と、死亡率 あるいはADLの自立率ともに、再開通した方が非常によいということでした。  ただ、このスタディは、治療をしない対象部があるのではなく、その有効性を見るた めの対象部がなかなかないことが問題ですが、以前行われたPROACTIIスタディという、 これはウロキナーゼを局所投与する治療で、局所投与する群とヘパリンを投与するだけ の群の比較試験でしたが、ヘパリン投与群、要するに治療をしていない群とをコントロ ールにして比べてみると、数字上は、実は死亡率はMerciの方が高いという結果が出て これが問題となりました。  ただ、これに関しては、Merciの方の検討会向け資料の19ページを御覧いただきます と、解析すると、一つは対象群が随分違うことがあって、MERCIあるいはMulti MERCI 試験では、閉塞血管は、中大脳動脈だけではなくて内頸動脈や椎骨動脈、脳底動脈とい う、むしろ、中大脳動脈よりも重症の可能性がある患者さんを多く含んでいることと、 ライン時のNIHSSが8以上ということで上限を切っていない。要するに、PROACTII に関しては中大脳動脈の閉塞だけで上限を30に切っていますから、より重症の患者さ んが多く含まれているということです。その結果、背景を同一にしてみると、19ページ の表2ですが、90日後の死亡率はそう変わりがないというか、むしろよいですし、AD Lの自立度もPROACTIIよりもよいという結果が出ています。  以上、Merciの有用性です。  次のページはPENUMBRA SYSTEMについてです。これも海外について臨床試験が 行われています。血行の再建率は82%と非常に高く、これは部分再開通も含みますが、 90日後のADLの自立度は25%。死亡率は32%でした。これはこの一つだけでした。  現在、本邦での脳塞栓症超急性期の治療は、t-PAの静脈内投与による再開通両方のみ です。その問題点は、t-PAは血栓溶解剤であるため全身の出血性合併症を生じる可能性 があり、3時間以内の投与では脳出血の発生が高まり治療のメリットを相殺してしまう ことであります。そのため、発症3時間以内に投与を開始する必要があり、適応となる 患者は極めて限られていることが大きな問題です。これらの血栓回収デバイスを用いた 治療では、血栓の溶解剤を使用しないため、治療適応が発症後8時間以内まで拡大する ことができますので、時間的に静脈内t-PAが投与できない患者さんや、t-PAが出血の ため適応とならない患者さんにも治療の機械が増える可能性があることと、実際に塞栓 を直接回収するということで再開通率が高くなることが期待できると思います。  諸外国における使用状況ですが、Merciリトリーバルシステムは、2008年7月までに 米国で7,300例、欧州で500例の使用実績があります。PENUMBRA SYSTEMは、こ ちらの方が新しいデバイスですが、2008年10月現在までにカテーテルが1,176本、セ パレータが2,496本。米国では、カテーテルが950本、セパレータが1,550本というこ とです。  我が国における開発状況に関しては、四肢の血管や冠動脈に対する血栓除去用のカテ ーテルはありますが、脳に関してはありません。  検討結果ですが、脳塞栓症は、脳梗塞のうち最も重症な病型であり、急性期の速やか な血栓の除去がその後の予後を大きく左右します。T-PAの静脈内投与による血栓溶解療 法の適応にならない患者(例えば発症後3時間以上を経過した症例)や無効だった患者 にとっては、本対象品目による血栓除去が行えるとすれば極めて有用であり、速やかな 導入が望まれます。  導入に際しましては、急性期の脳塞栓症の病態や医療環境、治療予後における海外と 日本での差を慎重に検討した上で、米国で実施された臨床試験データの国内への外挿性 について検討する必要があると思います。  なお、良好な治療成績の担保には、適切な治療適応や治療手技、術後管理が重要であ り、多くの分野にわたる脳卒中治療医の総合的な連携と超急性期治療に対応できる施設 基準が必要であると思われます。各学会等の協力も得ながら、施設、使用者へのトレー ニング、対象患者の評価の統一化等、適正使用のためのガイドラインの策定が必要であ ると考えられます。  最後に、私は、この脳梗塞の急性期の治療に携わっておりますけれども、脳塞栓症の 患者さんが来ると現場は修羅場を迎えます。患者さんは、その治療ができず再開通でき ない場合は予後が非常に悪いことは明らかにわかっておりまして、t-PAの適用にならな い場合は、私は今、マイクロカテーテル等、普通のガイドワイヤを使って栓子を破砕し たり、ウロキナーゼを動注したりするわけですが、再開通できない場合も多いですし、 あるいは、出血を起こす場合も多くて、こういうデバイスがあれば救える患者さんが少 なからずいることは実感していますし、ニーズは非常に高いと思います。  もう一つ、感想として、脳塞栓症の患者さんはほとんどが意識障害があって来ますの で、患者さんとのコミュニケーションがとれないまま治療が始まっていくのですが、家 族の方に電話でいろいろな話をしながら進めますが、米国のデータを見ると、こういう 治験がこういう患者さんに対してできていることはすばらしいと思いますし、私たちが 日本に導入するときに、こういう患者さんを対象として治験ができるかどうかというと 自信がないと思います。  以上です。ありがとうございました。 ○北村座長 ありがとうございました、松丸先生。  それでは、今の御説明を踏まえて、御意見がございますか。  この2品目について、日本での経験がある人が少ないということでしょうか。 ○松丸参考人 少ないというか、ほとんどいないと思います。 ○北村座長 2品目あって、これは企業側の要望があれば拒否はできませんが、どちら がより優れているとか、どちらの方が使いやすいとか、何かありますか。吸引装置が違 うくらいで、あとはポーキングして取ってくるだけですので、そこはやはり2品目あっ た方がよいのか。やはり適応が違うのでしょうか。 ○松丸参考人 そうですね。やはり方法が違うので、2つあった方がいいと思います。  あと、どちらの方が優れているかというのは、私たちは経験がないのでわからないの ですが、Merciの方が少し前にスタートしていていろいろな報告があるので実績はよく わかっていますが、PENUMBRA SYSTEMの方は少し後ですが、データを見ると再開 通率が非常によいというデータがあります。ですから、どちらがいいかはわからないで すが、道具はあればあるほどいいというのが私どもの実感です。 ○北村座長 ありがとうございました。  御質問等はありませんか。 ○吉田(純)委員 脳梗塞の適応に関することですが、実際に効くのはラクナ梗塞が主 であります。主幹動脈に対してはあまり効かないと報告されています。そこでこうした デバイスは必要だと思います。日本の経管内治療学会では学会としてのトレーニングシ ステムがあると思いますが、こういう新しいものでは、適応はどうか、それは海外と同 じなのか、あるいは、どんな人がどこで使うか検討する必要があります。そして承認さ れた場合は、学会では、どういう形でこれがトライアルされていくのでしょうか。 ○松丸参考人 これはあくまでも道具ですので、それをどう使うかということが一番重 要だと思いますが、ある程度の技術を持った人がきちんとトレーニングを受けて使わな ければいけないと思います。ただ、脳卒中の急性期治療ということですので、逆に、使 える人を制限して、ある特定の少数の人しか使えない状況にしてしまっても患者さんの 治療のチャンスが減ってしまうのでこれは難しいと思いますが、私ども脳血管内治療学 会と脳卒中を広く扱っている内科の先生も含めてそれを検討して、技術がある人がトレ ーニングを受けて使えるようにするシステムがなければいけないと思います。 ○北村座長 ほかにどうぞ。 ○笠貫委員 これは緊急性があり、心原性脳梗塞の場合は致死的になることが高い。し かも、この場合には代替品がないので早期導入が必要だと思います。これは先ほどの機 械とは違いますが、代替性がないので緊急性を要するということで、海外のデータの外 挿性を検討すれば、導入ができるのではないかという感じを持ちました。  資料の「検討結果」のところで、海外と日本での差を慎重に検討した上で外挿性につ いて検討する必要があると結論づけていますが、心原性脳梗塞について、本当に海外と の差があるのですか。この場合には、外挿性について検討するということは、日本での 治験も必要だとお考えでしょうか。 ○松丸参考人 こういうふうに書きましたが、先生がおっしゃるとおり、実際は差はな いと思いますし、治験は、私の個人的な意見では必要ないと思います。ただ、市販後の 調査をきちんとして、日本での状況と米国での状況を比較して、問題点がないかを検討 する必要があると思います。先生がおっしゃるとおり、外国のデータをそのまま利用し て導入した方がよいと思います。 ○北村座長 この手技の習熟ですが、この機械を使う場合、例えば米国の企業は、技術 指導と講習を義務付けていますか。 ○松丸参考人 詳細はわかりません。 ○北村座長 例えばロボットには義務付けがありますね。これはカテーテル器具だから そういうものはないのでしょうか。 ○松丸参考人 ハンズオンまでは義務付けていると思います。実際のデバイスをモニタ ーで見ながら使うというハンズオンまではあると思います。 ○北村座長 そうすると、日本の企業は、その教育を担当できますか。厚労省の方は、 そういうことは義務付けられますか。 ○医療機器審査管理室長 これまでもトレーニングの重要な機器については、承認条件 としてそうしたトレーニングを十分に受けた先生が使えるように必要な措置を講じるこ とということで、そうしたトレーニングの提供を、学会の御協力もいただきながらでし ょうけれども、トレーニングを条件として付けることをしてきていますので、必要であ ればそういうことが可能かと思います。 ○北村座長 ありがとうございます。  ほかに御意見ありませんか。 ○笠貫委員 冠動脈の場合との整合性で考えると、冠動脈のような場合、普及の方が先 に進んでしまうと、後のきちんとしたフォローができません。先生が先ほどおっしゃっ たように、トレーニングの問題と、全症例登録を、適応の問題、その後のフォローにつ いて、学会等でのきちんとした最初からプロトコールで日本に導入することが安全対策 として大切かと思いました。その辺は、フォローについてどうしたらいいかということ までの御検討をなさったのでしょうか。 ○松丸参考人 そこまではしていないのですが、可能であれば、ある程度の期間は全例 の調査をした方がいいと思いますが、それが急性期の患者であることと、亡くなる患者 さんもいらっしゃいますし、そこら辺はどうなるか、具体的に考えてみなければいけな いと思います。 ○北村座長 これはディスポーザブルのカテーテル器具ですよね。ステントのように中 に残すことがないから。そういう場合に、市販後調査を企業に義務付けることができる といっても、予後等は患者情報になってしまうので、それを企業に義務付けることは難 しいですか。 ○医療機器審査管理室長 それは可能だと思います。もちろん学会の御協力もいただい て、使用いただく先生方の御理解を得て実施していくしかないと思いますが。 ○北村座長 不具合があれば、もちろん企業の責任ですが、これはディスポのカテーテ ルだから、体内に残るものがない場合でも、そういう形は義務付けられますか。 ○医療機器審査管理室長 はい。 ○北村座長 副作用ではなく、患者のフォローですが。 ○医療機器審査管理室長 はい。例えば「30日後の」とかいうことですね。 ○北村座長 学会と相談してもらわないとしようがないですね。 ○医療機器審査管理室長 ですから、現場の先生の御理解がないと、企業に言っても、 恐らく、企業としても、先生方の御理解と御協力がなければ、それ以上患者さんに企業 が直接、30日後、90日後にお元気ですかと行くわけにはいかないので、先生方の御協 力、学会がどのくらい御協力いただけるかだと思います。  ただ、先ほど先生がおっしゃいましたように、急性期の機器ですので、施設を限って しまって、そこでがっちりと市販後調査を行うことがいいのか、どう進めていけばいい のか、またよく考えさせていただきたいと思います。 ○北村座長 わかりました。 ○笠貫委員 安全対策としてフォローが大切です。特に新医療技術で、しかも、この検 討会で早期導入するというプロセスを経た機械については、学会で十分検討していただ いた上で、国がある期間という義務付けをきちんとした方がいいのではないかと思いま す。それが蓄積してきたところで、義務付けがなくなったときに、それをどこまで続け るかは、学会と厚労省で検討していただいてと思います。しかし、ここで新技術とした もので、治験なしといったときには、きちんとしたフォローを義務付けるという基本方 針を持っていただけたらと思います。 ○北村座長 そうですね。笠貫委員がおっしゃるとおり、そういうシステムとしても出 来上がってしまえばいいですね。  ほかに御意見ございますか。  それでは、松丸先生の御説明のとおり、早期導入する必要がある器具であるというこ とで、この2品目をこの委員会として推薦させていただきたいと思います。同時に、器 具の技術的習熟、あるいは、誰が行うか、専門医という必要性に絞るのか、施設はどう いう施設にするのか、例えばカテーテルを操る人、内科と外科の人が両方いるような施 設というような施設基準が必要かというようなことがあるかと思います。適応症も米国 と同じように3時間以後8時間までの人とか、そうしたものをどのようにするのかとい うガイドラインと施設基準、扱う専門医の基準、それを使った後の予後調整をどうする かということもあります。  こういう状況で治験もなしでというのは難しいという御意見がありましたが、治験症 例ゼロで行けるかどうかは機構と御相談いただきまして、少ない数ではなかなか難しい という御意見を承りましたので、そのかわり企業としても、市販後の調査を充実すると いうことであれば、これは学会に頼まないとできないだろうと思います。そうした資金 を企業が提供するという姿勢があってもいいのではないか、そういうシステムができて くれば、早期導入したけれども、市販後しっかりするから、そのための学会とのタイア ップした資金援助も企業はしましょうと。そのかわり、治験での億に近い金額を節約し て導入できるわけですから。そういうものができてくれば、笠貫委員がおっしゃったよ うなシステムがつくれるかもしれません。複数の学会で、脳卒中学会とか脳血管内治療 学会などが集まってコンセンサスをつくりながら早期導入を進めることになるかと思い ますが、それでよろしゅうございますか。 (「はい」の声あり) ○北村座長 ありがとうございました。その形で、行政と企業、学会と、3者をあわせ た協力体制で進めていき、早期導入を果たしたいということにさせていただきたいと思 います。  引き続きまして、血管塞栓用ビーズの検討ということで、検討していただきましたワ ーキングレポートの説明を島田先生からお願いいたします。 ○島田参考人 よろしくお願いいたします。私からは、血管塞栓用ビーズという薬に関 して、ワーキンググループの報告をさせていただきます。資料6を御覧ください。  対象疾患は、幹細胞がんを含めた多血性腫瘍です。また、子宮筋腫などの良性腫瘍も 対象疾患に含まれておりまして、これらに対して塞栓を行うというものです。当然、従 来から塞栓物質はあるのですが、従来のものより、より有効な効用が期待できるという ことで、今回、テーマに上がっております。  現在、検討の医療薬品名ですが、6種類あります。真ん中に書かれている球状塞栓物 質はまだ実験的な段階で開発中のものですが、あとの5つは海外でも使われているもの です。  外国の承認状況ですが、古くは1997年にマークを取得されているものから、大体2000 年辺りに広く海外で使用されております。適応疾患は、米国、欧州によって多少違いま すが、ほとんど血行性に富む腫瘍、肝臓がんや肉腫を含めた腫瘍、動静脈奇形、子宮筋 腫、この3つが主な適応疾患です。ですから、海外では、ここ10年で広く使われてい るものと考えていただいてよろしいかと思います。ただ、国内で開発中の球状塞栓物質 は海外の承認がありません。そのような状況です。  物質の概要ですが、小さな球状のもので、多少の差はありますが、大体同じような粒 子の大きさで、親水性、非吸収性の球状物質です。商品によって幾つかの規格がありま して、例えばEmbosphereのMicrospheresは、大きさが6規格あります。ほかのもの でも、3規格あるいは4規格、最後のものは7規格と、大きさが40μmから900μm程 度に分かれているので、粒子が均一で幾つかのサイズを選択できることが、今までには ない大きな特徴になっています。従来のものでは、大きさの均一性がないために使い勝 手がよくないということですので。ただ、これはものを詰める物質なので、粒子の大き さが均一で、かつ、種類があることが大きなメリットになるようです。  対象疾患に移らせていただきます。従来、一番多く塞栓療法が行われていった疾患は 幹細胞がんでした。日本では、幹細胞がんに対する治療実績も十分あり、手術、RFA に劣らず重要な治療法になっております。あとは、腎細胞がん、平滑筋肉腫等の血行性 に富む腫瘍に関しても、塞栓療法の有効性は十分に認められておりますので、塞栓療法 自体は問題ないものと思われます。ただ、子宮筋腫に関しては、日本ではまだ十分に塞 栓療法自体の実績がありませんが、現在、手術とホルモン療法がゴールドスタンダード になっておりますので、更にこういう子宮筋腫の塞栓療法が外国では良好であると言わ れていますが、どの疾患に、どういう病態に含まれていくのかということは今後も検討 していかなければならない問題だと思います。  あと、重要な疾患はAVMの動静脈奇形ですが、これは病気の頻度が低いことと、お 成し技術が大変なので、塞栓の中では症例数は少ないかもしれませんが、高度技術と塞 栓の方法を細かくコントロールしなければいけない技術的な面もあるかと思いますので、 やはりビーズのような調節性のきく塞栓物質を導入することが重要かと思われます。  そういうことで、この3つの大きな疾患に対しては、従来も塞栓療法はされてきたわ けで、従来のスフェレックスやジェルパートでは得られないような効果がこのビーズに よって得られるであろうことが期待されています。塞栓治療に関しては、従来、カテー テルが十分に調節性がないものだったのが、腫瘍近傍までカテーテルを持ってくること が可能になったので、粒子の大きさを選択的に使うことが意味があるようになってきた のではないかと思います。  医療上の有用性ですが、同じようなことの繰り返しになりますが、カテーテルを操作 して、より効果的な塞栓を行うことで、粒子の大きさを選択することが重要かと思いま す。  次に、諸外国の使用状況に関しても、先ほど述べましたように、従来から使われてお りますので、外国での状況に関してはあまり問題ないかと思います。  我が国における状況ですが、ビーズは、今は使われていません。  検討の結果ですが、肝臓がんに関しては、先ほども申しましたように、塞栓療法自体 はコンセンサスが得られておりますので、より有効で安全確実な抗がん治療ということ でビーズを導入したいということです。子宮筋腫に関しては、やはり侵襲がある手術よ りも有効な効果が得られれば、UAE等を導入することは、患者さんにとって一つの大 きなオプションになる可能性がありますし、子宮筋腫の患者さんは有病率も高いので、 この導入は非常に大きなインパクトがあるように思います。  最後になりますが、やはり塞栓療法自体は、ものをどう選ぶかを含めて技術的な面が 非常に大きいかと思います。IVRの専門医、それに準じた技術を持つ人たちがトレー ニングを積んだ上で、その治療に対する適応も十分に検討して行うことが重要であるこ とは論を待たないわけですが、導入した曉には、特にAVマルフォメーションのような ものに関しても、子宮筋腫に関しても、今後、調査は必要であろうと考えております。  簡単ですが、御報告させていただきました。 ○北村座長 ありがとうございました。  荒井参考人から追加することはありますか。 ○荒井参考人 特に大きなことではないのですが、この報告書の中にも書いてあります ように、血管塞栓術に関してだけ、簡単に追加させていただきます。  血管の流れを止めるのが血管塞栓術であることは、広義の意味では確かにそうですが、 実際、多血性腫瘍の塞栓術と申しますと、その腫瘍が内部で受け取っている血管に血が 行かないようにすることが基本です。完全に血管の中にこうしたものが詰まってしまっ た状態を想定していただければと思います。ですから、手前の血管を止めるということ ではありません。腫瘍の血管の中にまで入り込むだけの小ささであって、それが大小不 均一だと、平たく言うと、ダマになってしまって手前で止まってしまうという現象が頻 回に起こります。これまでの大きさが不均一なものでは、きちんと塞栓をしたくてもで きなかったのですが、同じようなものが大きさのものであれば、奥まで流れ込んで内部 の血管で止まる。そうした点で、大きさがある程度定まっていることが重要であるとい うことを追加させていただきます。 ○北村座長 ありがとうございました。  それでは、島田先生、6品目とおっしゃいましたが、5品目ではないですか。 ○島田参考人 5品目です。すみません。 ○北村座長 血流豊富な腫瘍に対する塞栓治療法について、いろいろな会社のものが5 種類ここに挙がっていますが、このビーズが我が国で使えていなかったことは驚きです。 日本で使われていたのは、澱粉粒子のジェルパート、スフェレックス、そうしたものと 比べて、この新しいものの効果はよくなりそうなことは十分に期待できるわけですね。 ○島田参考人 そうですね。正直申し上げて、どの粒子が一番腫瘍に効果があるかはな かなか難しいことで、大きなものが効く場合もありますし、小さなものがよいこともあ りますので、やはり選択できることがいいのと、塞栓療法のメリットは、ある程度、こ れがだめだったら次の大きさで試してみようということも可能になりますので。今だと ジェルフォームで、よければいいのですが、効かなかった場合、次はどうしようかとい ったときに、もうそこでストップしてしまうということがあります。ですから、大きな 粒子がだめだったら小さな粒子で詰めてみようとかいうことは、広まる可能性がありま すので、やはり腫瘍効果に関しては十分に期待できる可能性が高いかと思います。 ○北村座長 ありがとうございます。  それでは、委員の先生方からどうぞ。 ○吉田(茂)委員 大変ややこしい問題が幾つかあると思います。まず、事務局に質問 ですが、5品目あって、治験が必要ということになると、原則としては5種類の治験を しなければなりませんね。本当にしなければいけないのですか。 ○医療機器審査管理室長 はい。 ○吉田(茂)委員 もう一つは参考人に質問したいのですが、10年前から放っておかれ た理由は何ですか。アメリカで2000年に承認を受けているにもかかわらず日本に導入 されなかった背景が何かありますか。要するに、日本では要らないと判断したのかどう かを含めて、御存知であれば教えていただきたいと思います。  もう一つは、同じ肝臓がんでも、欧米と日本ではバックグラウンドが違いますね。C 型肝炎をベースにする日本の肝臓がんと、欧米の肝臓がんは、特にアメリカでは、ピル に由来するような肝臓がんもありますが、そうした場合、適応の名前は同じでも病態が かなり違うので、外国データの外挿性があるかどうかに関してお聞きしたい。  それから、最終的に本品を正確に評価するとしたら、やはりジェルフォーム等との比 較を、ランダマイズフェーズIIぐらいでいいと思いますが、10例・10例でも、20例・ 20例でもいいのですが、そういうことをする必要があるのか。それと、モデルフォーム でだめだった場合にのみこの薬を使うというようにするのか、その辺の現場の考え方に ついて、もしわかれば教えていただきたいと思います。 ○島田参考人 10年前からなぜ入っていなかったかというのは、ジェルフォームという ものが今までにありまして、十何年前ですと、カテーテルが7フレンチから6.5フレン チだったので、それに入れてやれば十分いいのかなと考えていたと思います。今は5.5 フレンチくらいの細いものになってきて、腫瘍に近いところまでカテーテルを進めるこ とができますので、粒子の大きさを選択する技術が上がってきました。それが日本の時 期の問題に入ってくるのかなというのが私の推測です。  あと、欧米といっても、肝臓がんはイタリアでは多いですし、アジアでも多いのです が、アメリカでは比較的少なく、ファイブロラメラのようなものがありますが、基本的 には、C型肝炎の問題がありますし、全世界的にC型肝炎の肝臓がんが増えていますの で、基本的には、欧米の肝臓がんと日本の肝臓がんが大きく違うということはないかと 思います。 ○吉田(茂)委員 例えば、ウイルスに絡まない、C型肝炎にインディペンデントな肝 臓がんが比較的多いですよね。日本の場合はほとんどC型ですが。その感染性の肝がん と、そうではない肝がんとは病態が違うのではないかと思うのですが。 ○島田参考人 例えば、ノンB、ノンCから出てきた肝臓がんは、背景の肝臓はいいも のが多いですが、肝臓自体がハイパーバスキュラと同じだと思います。 ○吉田(茂)委員 ハイパーバスキュラな所見自体は同じと考えてよろしいですか。 ○島田参考人 はい。病理組織学的な因子が背景の肝炎によって違うということはない かと思います。  あとは、5種類あると、どれがいいかということはほとんどわからなくて、大きさと、 材質もあまり関係ないかと思いますので、かえって、1種類だけ出てきてくれた方がよ かったのかなと思いますが。 ○荒井参考人 少し追加させていただきます。  実際には、国内でも早くから使いたいという要望を私どもはしていました。海外につ きましては、別に公に企業から聞いたわけではありませんが、個人的な関係で海外のメ ーカーに聞きますと、日本で承認を取るには相当なハードルがあって、かつ、そこへ入 れても、日本でどのくらい売れるかに関して確信が持てない。リサーチをしてもよくわ からない。だから、そういう企業から見ると、韓国、ヨーロッパ、アメリカでは売るけ ど、日本には、よほどいい機会があれば乗ろうかなというくらいの感覚で、かなり遠ざ けていたというのが正直な感覚のようです。  2番目の御指摘の肝炎ウィルスに関しては、今、島田先生からお話があったとおりで す。ただ、実際には、日本はほとんどがC型肝炎です。そして、これこそが昔、私ども が学校で習った時代のB型肝炎からくる、血管が太くてにょろにょろしているものと違 って、いわゆる「細かい血管がいっぱい入ってくる」ものなのです。このため、従来の ゼラチン型の、あるいは、大小不均一な塞栓物質でやると、手前の血管で止まってしま い、中の方に入っていかない。こうした場で不謹慎な発言かもしれませんが、パチンコ 玉と同じと考えて下さい。同じ大きさなのでジャラジャラとどこまでも入っていく感覚 と全く共通しています。大小不均一だと手前のところで詰まってしまうのですが、同じ 大きさのものばかりだとそのままずっと流れていくという感覚です。このため、かなり ファインな、細かな血管も詰めることができます。  吉田先生が御指摘のRCTの問題ですが、これは、つくる過程で、値段も相当差があ りますが、臨床現場としては効くことがまず第一です。現時点では、ゼラチンスポンジ 系、いわゆるジェルパートで、ヘパトーマを治療する場合、効かないと、後に続く治療 が全くない。しかし、そういう症例でも、こうしたビーズのやや小さなものを使うと、 それだけで壊死を起こすことは幾らでも報告されております。そうした点では、治療の 選択肢を増やすということで、必ずしも、最初からどっちが勝ったか負けたか、ファー ストチョイスはどっちだということを決めるのは、臨床的にもあまり大きな意味がない のではないかと認識しております。 ○北村座長 治験の必要性についても出ましたが、どうお考えでしょうか。5種類が別 個にあるとなると、それを課せば企業が絞られる可能性があって1品目になるかもしれ ませんが。  この5種類の素材はほとんど同じですか。 ○荒井参考人 素材的にも異なりますし、実際には、血管の中で大きさが少し変わると かいうことも含めて硬さもかなり異なりますので、全部をビーズで十把一絡げでひっく るめてしまうのは危険なくらいの違いがあると御理解いただいた方がよろしいと思いま す。 ○北村座長 大変難しい問題ですね。  どうぞ。 ○笠貫委員 私も、なぜ、これだけ世界で広がっていたものが日本に入らなかったのか、 最初に疑問に思いました。先ほどの説明の中で、早期導入が日本では難しいという問題 があったと荒井参考人からお話がありました。もう一つ、いわゆる5.5フレンチのカテ ーテルの導入が後れたことも一つの問題だとお聞きしました。そういう意味では、この 早期導入の検討会は非常に意味があると認識はいたしました。  多血性腫瘍という病態は適用として決まるということで理解したのですが、先ほどの 治験をどうするかというところで、「検討結果」で、「しかしながら、」の後で、ここの書 き方では、5品目の中で治験が必要なもの、必要ではないものとをワーキンググループ では区別したのかという文章にもなっています。例えば、FDAの承認、あるいは、欧 州のCE-markを取っているものについては治験は要らないというとらえ方なのか、そ れを取っていない場合には必要だと考えるのか。5品目の中で分けて考えられたのかど うかをお聞きしたいと思います。 ○荒井参考人 ワーキンググループとして具体的にどの品目についてということを分け たわけではありません。ただ、先ほど触れました、臨床的なデータが全然ないものにつ いては、かなりのデータが必要ではないかということを判断しています。そのほかにつ いては、そこまで私どもが口を突っ込むべきかどうかわかりませんが、いわゆる承認の 基準として、海外の文献があれば、それが前向きのスタディなのか、きちんとした承認 申請のためのトライアルなのか、あるいは、症例を集積した報告なのかということによ って、その判断は変わるのかもしれません。多分、それぞれの物質が持っている文献の 内容、そこで出してきたデータの重みによって扱いは変わるのではないかと認識してお ります。 ○笠貫委員 これでもし海外で承認を得ていて、しかも、十分な臨床の成績があって、 それが外挿に耐え得るものであるならば、日本での治験は必要ないのではないかという 感じがします。  そういう意味で、病態のところでは人種差があるかもしれませんが、この物質そのも のはないと思いますので、海外の成績をどう評価するかによって、治験はなくても可能 なのかなと思います。  その場合、承認後の一定期間の全症例調査と書いてありますが、その安全性をどう担 保するかということが大きいと思います。前の機械もそうですが、全症例登録は、ワー キンググループで、腫瘍の特殊性から見たビーズの血栓塞栓術、この有効性、安全性に ついて、何か特別なものを見てはどうかというプロトコールについての検討はなされた のでしょうか。 ○島田参考人 特にそこまで踏み込んだ議論はなかったのですが、先ほど申し上げまし たように、幹細胞がんに関しては、5種類のものがあっても、基本的に文献を読んでも、 そう差はないわけです。種類があるわりに、結局、メカニズムとしては兵糧攻めだけで すので、きちんと使われて安全性に問題がなければ、あえてそういう厳しい調査をする 必要はないのかなという印象を持っていました。  ただ、先ほども少し申し上げましたが、悪性疾患の幹細胞がんは塞栓療法が日本でも かなりされていまして、副作用、安全性に関しては注意深くされてきていますけれども、 やはりAVMとか子宮に関する問題は十分に練られていない部分がありますので、かえ って、そちらの取扱いの方が気になるところです。 ○笠貫委員 今のお答えは、全症例登録と書かれてあることは、むしろ、病態での適応 のところで、導入した後のフォローをきちんとした方がいいというお考えでしょうか。 ○荒井参考人 私からお答えさせていただきます。  笠貫先生が御指摘になられた全例調査の目的ですが、その中から、よりよい適応を見 つけるということではありません。同じ塞栓物質といっても、ビーズは従来のゼラチン スポンジ系のものとは扱いが完全に異なります。平たく申しますと、「私は塞栓術を今ま でに3,000例したことがある」という人であったとしても、今回、ビーズを使うことに なった場合には、また一から、塞栓術自体の概念も、手技も含めて学んでいただく必要 性があります。そうしないと、安全かつ有効に使えない物質であるという認識を持って いる訳です。そうした点で、「承認が出たから、買えば使える」ということではなくて、 施設基準、ガイドライン、いろいろな縛りが必要かもしれませんが、企業に対しても、 売った結果どうなったかということを充分に情報収集できるような体制を準備した上で 承認しなければいけないと考えた訳です。ですから、そうした意味で、押さえるという 意味での全例調査と御理解いただいた方がよろしいかと思います。 ○北村座長 ほかにありませんか。 ○吉田(茂)委員 そういうことであれば、やはりその5品目のうちから1品目ないし 2品目に限って、前提調査というか、どこが手を挙げるかわかりませんし、どこも手を 挙げないかもしれませんが、手を挙げる企業を探して、そこで治験のような形できちん とコントロールして、ビーズの安全性、日本人への外挿性、フィージビリティをきちん と見た上で、あとは同じという形で、随時入れていくという手順が必要ではないかと思 います。  5種類を、さあ使いなさいというようにいけば良いのですが。 ○北村座長 ほかに御意見ございますか。 ○梅田委員 我々は、肝臓がんに関してはずいぶん多くの症例を、ジェルフォームのス ポンジ例で持っていますね。確かに、体験的には有効であることはわかっていますが、 このビーズに関しては、日本ではまだデータが全然ないわけですね。これからやるとす れば、必ずそれを比較してやってほしい。というのは、臨床側として、やる場合にどれ がいいかということが決定するときに重要な要因になるわけですから、それを比べたデ ータをつくってほしいと思います。  例えば、サルコーマなどに関してはあまりありませんから、是非やっていただきたい と思いますけれども、HCCに関しては、従来の日本のものに比べて、よいものである ことを証明していただきたいと思います。 ○島田参考人 非常に重要な問題だと思います。従来、塞栓物質に対する比較はあまり ないのですが、何を混ぜるかということに関しては、従来からRCT等されてきていま して、どんな薬を混ぜたらいいのかということは検討されてきましたが、塞栓物質を変 えたらどっちが本当にいいかということは、まだわかっていないことです。要するに、 仮説で、こっちの方がいいだろうという段階だと思います。ですから、科学的な根拠に 基づいて、絶対にいいだろうということは、確かにおっしゃるとおり出ていませんので、 出す必要があるかなと思います。 ○吉田(茂)委員 梅田先生がおっしゃっていることで、同感だと思うのは、TAEは もう標準治療で、この標準治療が変わるというのはものすごく大きなインパクトになる し、しかも、日本全国で方法が変わるかもしれないということになります。そうすると、 影響がものすごく大きくなります。しかも、レアな疾患、あるいは、急性期の短い期間 でしか使えないものと違って、TAEは何回も治療しますし、一人の患者さんが、5回、 6回、7回と受ける治療ですよね。そういう形になりますと、実際のフィールドは大変 広くなりますので、えいやっと一刀両断にはいかない部分が相当あると思いますが。 ○島田参考人 確かにおっしゃるとおりですが、TAEのいいところは、吉田先生がお っしゃったように、繰り返してできるということが一つあります。最初に何をして、次 に何をして、どうやってという、薬の簡単な比較以外にも順番の問題、どれから入って いったらいいかとかいうことになってくると、学問的に興味がある部分はたくさん残さ れているけれども、現実的に治療をする際にどうするか。やはり導入されていないと比 較もしにくいということがありますし、現実的に、IVRの先生方はこれを使ってみて、 いいという感触はかなりあってのニードだと思いますので、それは科学的な根拠ではな いですが、やはり臨床現場で見て、これはかなりいいという感触があってのお話だと思 いますので、導入に関しては、積極的な方向に進みたいとう感じがあります。 ○荒井参考人 吉田先生の御意見に少し反論させていただきます。  肝臓がんに対する血管塞栓術を十把一絡げで標準的治療と言われてますが、RCTで レベルIAのエビデンスがあるとはいえ、実は、その塞栓の内容については、ビーズを 使ったものもあれば、ゼラチンスポンジを使ったものもあり、ごちゃ混ぜです。オーバ ーオールでメタ分析で一応結論が出たというレベルです。趨勢を見ますと、今どきゼラ チンスポンジをメインに使っているのは、アジアの国の一部と日本ということがあって、 先進国関係、いわゆる欧米ではビーズが主体になっております。  もちろん、どちらが本当に塞栓物質であるかは、臨床的には大変興味があるところで すが、これはいわゆる臨床におけるクリニカルクエスチョンであって、承認の段階で要 求するデータの内容ではないと思います。使用できなければ評価もできない訳で、使用 できる物品をより正常な状態に戻すというこの検討会の本来の目的に合わせ、まず導入 していただくことが先ではないか、と思う次第です。 ○北村座長 梅田先生がおっしゃったことも含めて、我が国が長らく使ってきた自前の 塞栓物質と、こういう新しい、経験がないけど、欧米では中心になっている塞栓物質を 比較するのは臨床研究であって、治験の中にその比較論を持ってくるのはなかなか難し いのだろうと思います。ですので、治験を実際に何例かでやって、その結果を日本人で の適性なり安全性を調べなさいというものがこういうもので要るのかどうかは疑問にも 思います。意見が、腫瘍専門家と、血管を詰めることの専門家と、いろいろと立場での 御意見が聞かれましたが、その辺をまとめてくれるいい意見を、笠貫先生からお願いし ます。 ○笠貫委員 北村座長がおっしゃったように、血栓塞栓術の中でビーズにするかどうか という議論よりは、ビーズを日本が10年も導入できなかったということで、まず早期 導入があり、その後、日本で使われていたゼラチンの方がいいのか、このビーズの方が いいのかは、臨床研究していただくことが妥当かと思いました。  先ほどの5.5フレンチのカテーテルを含めて、日本でそういう医療機器が早期導入で きなかったためにこういう問題が今生じていると思います。それと、治験をしない場合 には、5品目それぞれの世界のデータがどうかということは、きちんとした評価が必要 だと思います。それが前提条件としてまずあって、治験でしなくてもいい海外のデータ があり、日本で導入が後れていたものを日本に入れるときには、安全性担保のために全 症例登録を行うことが必要です。先ほどの座長のお話に感銘を受けましたが、その全症 例登録をするところに企業がどのように責任を持つかということは、是非ここで確認す る、あるいは、厚労省の方で進めていただきたいと思いました。  以上です。 ○北村座長 ほかに御意見がございますか。 ○吉田(茂)委員 私も笠貫先生がおっしゃるとおりでいいと思うし、私は別に反対し ているわけではありません。ただ、早期導入しましょうということで、ここでそうだそ うだとなっても、恐らく、次に機構に相談に行ったときに、こういうことをクリアしな ければいけないという話になるかもしれない。ということは、こっちも対応策を用意し ておかなければいけないですよね。こういう議論もあったけれども、この早期導入の検 討会では、例えば、これから機構と具体的なやり取りが出た場合に、いや、そういうこ とではなくてということを説明できるような議事録でもあれば、先生方の強い味方にな るのではないかということもあって、あえて議論させていただきました。  今、お話があったように、10年後れたことの理由などは、切実に、反省なりを含めて、 訴えて、それが早期導入の最大の柱であるというような論理の立て方が恐らく一番有効 だろうと思います。私は別に反対しているわけではないので、早期導入していただけれ ば大変いいと思います。 ○北村座長 ありがとうございました。  もう一つは、5品目出ていますが、外国のデータを尊重することもこの会の趣旨です が、その分析等々も踏まえる中で、治験という形はとっていないそうですが、510kとい うFDAの米国承認を取っているものが4品目、同時に、ヨーロッパのCE-markの取 得も4品目が取っています。1品目がいわゆる研究段階のデータで、臨床での成績が、 外国でも日本でもない状況です。この品目はどのように取り扱うかということも大事な 点だと思います。御意見ありますか。やはり臨床事例を待ってもらうのか、それとも、 同じようなものではないかという御意見もありますか。  一応、人での安全性というか、役に立つということは、4品目では、外国では成績が 出ていますね。1品目が、それがないということです。それを一緒にすることは確かに 問題もあろうかと思いますが、御意見を伺いたいと思います。 ○笠貫委員 先ほど荒井参考人がおっしゃったように、素材も硬さも違うとなると、全 部を一括してということではなくて、海外のデータがきちんと評価に耐えるものからま ず導入していただき、後発のものについては、海外のデータを見ながら進めるというこ とですね。研究段階のものをそのまま日本にというのは、時期を遅らせて、ビーズによ る血栓塞栓術について先行のビーズの導入をまず行い、日本の全症例登録でのあるデー タが出た時点で、その導入を考えてもよろしいのではないかと思います。やはり差別化 を図った方がいいかなと思います。 ○北村座長 ありがとうございました。  ほかに御意見ございますか。 ○吉田(茂)委員 日本化薬とかエーザイなど、日本の大手企業がざっと並んでいます が、企業の意向というか、企業本体が治験をするとか、こういう形で適応拡大に協力す るとか、そういうことは何か先生方に情報として入っているのでしょうか。それとも、 そういうようなところとはコンタクトしていないのですか。 ○荒井委員 特別なコンタクトというわけではありませんが、冒頭にお話ししましたよ うに、どちらかというと、輸入代理は国内企業がしていますが、海外の企業は、日本は 市場としては当分使えないということで、今までは目もくれていなかったものが、今回 のこのニーズのことで手を挙げてくれたという状況にあります。 ○吉田(茂)委員 わかりました。 ○北村座長 それでは、血管塞栓用ビーズのまとめに入らせていただきたいと思います。  5品目ということともう一つ、御議論があれば検討していただきたいのですが、適応 というものも領域が各科にわたっていますね。産婦人科、外科、泌尿器科、その適応は、 塞栓ということから考えると、多血性の腫瘍という一本くらいでまとまったほうがいい のかもしれません。それでよければ、適応症とか、施設基準とか、そうしたものが、多 領域横断的なガイドラインのようなものができるのであれば良いと思います。そして、 どういう人たちがチーム医療として行うべきなのかということとか。例えば、昨日、医 薬食品局の人と勉強させていただきましたが、子宮筋腫には500μ以上を使えというよ うなことがガイドラインに書いてありますので、ビーズの大きさをどのように選択する かということは各専門学会に任せればいいと思います。そうした横断的な指標を踏まえ て、治験をするならどのくらいやるのか、それは機構の考え方があるので、この場では 聞けませんので、治験が全くなしで承認するということもあり得るのかなという御意見 があったことだけここで述べさせていただきます。  一応、外国での実績のデータを持っている4品目について、今回は早期導入の検討に 入るよう、企業、厚労省、総合機構、学会が集まってまとめていただきたいと思います が、ほかに加えるべき点、重要な点がありますか。 ○佐藤委員 先ほど来、5つの組成等がかなり異なるということですが、もう一度確認 してみましたら、臨床データがない球状塞栓物質が、参考資料によると、同等性比較、 同一性の評価をしておりまして、そのものとHepaSphereの特性比較、これは既に臨床 のデータがあるものですが、組成、粒径、ほぼ同等です。テルモ・クリニカルサプライ 株式会社の資料を見ると、ほぼ同等ということでここに出してきたものだと思います。 こうしたデータがあっても、やはり欧米の認定あるいは臨床データがなければ難しいと いうことでよろしいでしょうか。 ○北村座長 今の時代ですので、動物実験から直接薬事承認は難しいと思いますけれども、 医薬食品局の方の専門の仕事ですから、人のデータがないけど、組成は同じ、大きさも ほぼ同じ、構造体の検討からだけで臨床テストが一切抜けるかどうかということが佐藤 先生の御質問だと思いますが、答えられますか。 ○医療機器審査管理室長 可能性としてはあるだろうと思います。一緒に行くかどうか はよくわかりませんが、どこまでそれぞれのデータがあるかですが、考え方としては、 いわゆるゾロ品になるのかどうかということかもしれませんので、先を走っているもの との同等性が非臨床的に確認できるものは、臨床試験なしに通常は承認を受けますので、 一般論で言えば、同等性が認められるものについては、臨床試験なしに承認というオプ ションはあると思います。ただ、この個別の製品についてはどうか、もう少し機構にも データを確認していただいて、可能なのかは検討したいと思います。 ○北村座長 医療機器のゾロ品があるのかどうか知りませんが、そういう表現をされま したので、少し時期を遅らせるか、検討を踏まえて、先行させるものは臨床データがそ ろっている4品目を推薦するという形です。 ○佐藤委員 私もその辺の考え方を知りたかったので質問させていただきました。 ○北村座長 ちなみに、このような塞栓物質に肝炎のときのドキソソルビシンをまくと、 これはドラッグデリバリーシステムとなって薬の方で検討するそうです。薬がついてい ないビーズだけは医療機器の方になるそうです。そういう種類分けをされているので、 今日はビーズ単独のものばかりですが。 ○笠貫委員 医療機器のゾロということに関心を持ちまして、表3を見ると、先ほど参 考人から、5品目の素材がみんな違うという話でしたが、材料組成を見ると全く同じで すね。ただ、包装形態とメッキが違うだけのときには、ゾロという考え方は、薬と医療 機器との整合性を図らなければいけないのですが、これについてはどうなのでしょうか。 先ほど、5品目はみんな素材が違うという話で我々は議論を進めているので、教えてい ただきたいと思います。 ○荒井参考人 少し細かなことになりますが、今、御指摘いただきましたテルモ、クリ ニカルサプライのものにつきましては、歴史的には、実はこれの大元をつくったのは日 本人です。それが日本ではものにならずに、海外に出ていって、HepaSphere Quadrospheaという名前で製品化され、それが今回、日本の企業が代理して導入されよ うとした訳です。同じような発想ですので、日本の別の企業、この場合は、テルモとク リニカルサプライですが、完璧に物性として同じかどうかは私も詳しくは知りませんが、 ほとんど似てはいると思われます。ですから、先ほど、ゾロという御指摘がありました が、どっちがゾロかわかりませんが、非常に類似したものであることは事実です。ただ、 唯一、ここで出てきた段階としては、臨床的なデータがあるものとないものというだけ の区別ではないかと認識しております。 ○北村委員 私も、これのオリジナルは日本の人たちだと聞きました。これが結果とし てこういう形になっている。同じことがいろいろな医療機器などにもありますね。薬で も。やはりこれはシステムが悪いからだと考えざるを得ないので、ここを改良して、日 本のアイデアでできたものが世界の市場に回るようにしないといけませんね。現在、そ れに努力されていることは事実ですが。  もしも、こういう品目が、先ほども笠貫委員がおっしゃったように、治験がなくて日 本に導入が可能になって売れていくとなったら、企業は是非、先ほどもありましたよう に、また、総合機構も、市販後調査をしっかり行うような資金提供をしていただきたい。 治験の資金提供ではなく、市販後のフォローを学会と一緒にするために、学会に資金提 供することを許可するとか、推奨するとか、そうしたシステムを是非にと思います。せ っかく機構の人達もオブザーバーで来ていただいておりますので、よろしく御検討くだ さい。  それでは、4品目をこの委員会では、機構、行政、企業との話し合いで持っていくと。 ただ、この委員会としては、今申しましたように、外国のデータをもう一度詳細に見て、 多少の差が出ても構わないし、治験が、これは必要、これは要らないという結果に、デ ータに基づいて機構が判断されたならば、それはそれでいいけれども、必ずしも治験が 必要ではないのではないかという意見もあったことを御記憶いただきたいと思います。 あとは、学会と相談して企業の資金が得られればよりよいのですが、適切な指標とガイ ドライン的なものの検討をお願いしたいと思います。  次に、事務局からの報告事項に移らせていただきます。  よろしくお願いします。 ○事務局 御説明申し上げます。  資料7を御覧ください。本検討会で御審議いただきまして、平成19年度、第1弾と して13品目、第2弾として4品目。平成20年度に8品目の御議論をいただきました。  まず、平成19年度の品目について御報告申し上げます。最初のページの一番下にあ ります胸郭不全症候群に用いるデバイスですが、シンセス株式会社に昨年12月に承認 を下ろしております。  1枚おめくりいただきまして、平成19年度の追加選定品目の一覧にあります迷走神 経刺激装置、これは難治性てんかんに使うペーシング用の機械ですが、本品目について は日本光電より昨年度末に申請がなされた状況でございます。  最後のページですが、平成20年度は、さきの検討会でも御報告させていただきまし た横隔神経ペースメーカ、抗ヘパリンPF4複合体抗体測定試薬につきましては、現在 も引き続き企業選定の対応をしている状況でございます。  したがいまして、平成19年度の第1弾で御評価いただきました13品目中9品目は承 認が下りた状況でございます。  以上でございます。 ○北村座長 ありがとうございます。皆さんの御努力の結果が、青い色で2ページにわ たって伸びてきていると思います。  これについての御質問はありますか。よろしゅうございますか。  それでは、以上で本日の審議事項と報告事項をほぼ終了いたしました。  次回の日程等について、事務局からお願いします。 ○事務局 長時間の御審議、ありがとうございます。  次回の日程ですけれども、先般、先生方に日程調整をお願いいたしまして、当方で取 りまとめた結果、3月26日の木曜日、16時より開催する予定でございます。なお、現 在、開催場所については検討中でありまして、場所を設定次第、後日御連絡させていた だきます。  また、本日の議事録につきましては、事務局での作業終了後、御確認のため各先生方 に御連絡申し上げますので、内容の御確認もあわせてよろしくお願い申し上げます。  以上でございます。 ○北村座長 ありがとうございました。  本日の議題はこれで終了いたしますが、何か最後におっしりたいことはございません か。よろしいでしょうか。  それでは、第10回医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会を終了さ せていただきます。どうもありがとうございました。