09/01/14 第8回労働・雇用分野における障害者権利条約への対応に関する研究会議事録 労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会(第8回)議事録 1 日時  平成21年1月14日(水)13:30〜15:30 2 場所  厚生労働省共用第7会議室(5階) 3 議題  (1)論点ごとの検討 4 資料  資料1 主な論点ごとの検討  資料2 委員・障害者団体からの主な意見(第4回〜第7回) ○座長  それでは時間になりましたので、第8回の労働・雇用分野における障害者権利条約へ の対応の在り方に関する研究会を開催いたします。本日は、笹川委員、森委員、田中委 員、岩村委員がご欠席です。なお、田中委員の代理として平田さんにご出席いただいて おりますので、よろしくお願いいたします。  さて、これまで第4回から前回の第7回まで、計4回にわたって障害者関係団体のヒア リングを行ってまいりました。そこで、ご意見とかご提言をいただきましたので、それ を元に検討事項毎に論点を整理するという作業を事務局にやっていただきました。今日 は、それに基づいて議論をしていきたいと思っております。いろんな論点がありますが、 今日は全体をざっと議論してみたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。 それでは、事務局から説明をお願いいたします。 ○事務局  事務局でございます。資料の1をご覧ください。今、座長からお話しがありましたよ うに、この資料につきましては、過去4回の障害者関係団体からのヒアリングでいろい ろお聴きしたご意見を、主な論点毎に分類といいますか、分けまして、概要を整理した ものでございます。なお、その意見の全体版といいますか、全文については資料2の方 で引用しておりますので、併せてご参照いただければと思います。  それでは、資料1に沿ってご説明いたします。  主な論点ということで、便宜的に大きく5つに分けております。第1としては、基本的 枠組み、第2としては、障害を理由とする差別の禁止、第3としまして、職場における合 理的配慮、第4の大きな論点として、権利保護あるいは紛争解決手続きの在り方、最後 に第5として、その他ということで、諸々のご意見を整理しておりますが、第1から順に ご説明をいたします。  第1は、基本的枠組みについてです。その中の1として枠組みの全体像でございます。 論点としましては、この労働・雇用分野における障害者権利条約への対応ということで、 どのように考えられるか。その際、既存の障害者雇用率制度をどのように位置づけるか。 という論点を書かせていただいております。  下の方に、参考として記載させていただいておりますが、これは4月に第1回研究会に おいて、事務局の方で、その時点で考えられる論点というものをいくつか整理して、抜 粋してつけさせていただいております。  ここで整理した論点についてでございますが、権利条約の中では合理的配慮の提供と いうのを締約国に求めており、合理的配慮の否定というのも、その差別、障害を理由と する差別の禁止に含まれるという定義があったところです。この、障害を理由とする差 別の禁止、それから合理的配慮との関係をどのように理解すべきか。あるいは、国内法 にどのように位置づけるか。という論点をその当時は整理しておりました。  これまでの、過去4回の研究会での主な意見として、3つほどピックアップしておりま す。1つ目としては、合理的配慮というものが主に取り上げられるわけですが、それだ けではなくて、条約の目的、あるいは障害の定義、19条の自立生活、あるいは差別の禁 止、モニタリング、差別の監視とか保護という部分ですが、こういったものと相互不可 分ではないかというご意見がございました。  あるいは、2つ目、3つ目ですが、雇用率制度との関係でご意見が2つ出ておりましたが、 現行の雇用割り当て制度あるいは納付金制度というものは、障害者雇用を現実的に確保 していく施策であって、いわゆる積極的な差別是正措置として考えられるのではないか。 3つ目としては、この差別禁止措置というものを労働関係法令の中で書くのか、あるいは 横断的な差別禁止法というものを設けるのかというようなご議論がありました。  2ページ目でございますが、2番として、差別禁止等の対象範囲ということでございま す。この差別禁止あるいはそれと一体的な合理的配慮という枠組みの対象となる障害者 の範囲あるいは事業主の範囲をどのように捉えるべきか。また、その対象となる雇用の 範囲というものをどのように捉えるべきか。というような論点があろうと思っておりま す。  これも参考のところを見ていただきますと、当時の論点整理としては、下線部にあり ますように、差別禁止の対象となる障害者の範囲をどのように設定する必要があるかと しております。つまり、フランスやドイツは雇用率制度とある程度連動させております が、アメリカではそのような形はとっていないというような状況がございます。あるい は、差別を禁止する事業主の範囲についても併せて検討する必要があるとしていますが、 これは逆に、アメリカでは15人以上の従業員を雇用している者と限定しておりますが、 フランスやドイツでは全ての使用者を対象としているということで、こういった論点が あるということでございます。もう1つが、3つ目のパラグラフですが、授産施設につい て、この条約にいう雇用の範囲としては、福祉的観点からサービスの提供の是非、内容 が定められる授産施設は含まれないと考えられるが、雇用契約を締結した上でサービス 提供がなされる就労継続支援A型についてはどのような形で適用できるか検討する必要 がある。こういった論点を当時整理しておりました。  これについて、今回の研究会を通じてのご意見として、5つ記載しております。最初 の4つは、1つ目が、この合理的配慮の対象となる障害者というのは雇用率の対象に限定 しないで、障害が理由で差別される人を全て対象にすべきではないかというご意見です。 2つ目も同様で、現行の障害者雇用促進法はどちらかというとアファーマティブアクシ ョン的なものであるので対象を絞るということは理論的に可能であるけれども、差別禁 止というのは条約上も全ての人を対象としておりますし、その対象範囲というのを特定 の障害者あるいは重度障害者に限定することはできないのではないかというご意見がご ざいました。3つ目はむしろ問題提起としてのご意見ですが、差別禁止の枠組みの対象 となる障害者の範囲を広く捉える場合に、その人が障害者であることをどのように判定 というか確定すべきなのかというご意見がありました。4つ目も問題提起としてのご意 見ですが、障害者本人が対象となることは当然としても、現在は治っているけれども、 過去に障害があったことにより差別的取り扱いを受けているような方、あるいは本人で はなく、家族の中に障害をもった方がいるような人、こういった人に対する差別という ものは禁止されるべきか、差別禁止の枠組みの対象となるべきかといった問題提起がご ざいました。最後の5つ目のご意見は、雇用の範囲についてのご意見として、条約の中 ではあらゆる雇用というふうに表現されていますが、一般就労と福祉的就労の垣根をな くしていくというのが条約の方向性ではないかというご意見で、仮に労働法上の雇用と いう枠があるにしても、その差別禁止というのは雇用分野だけではなくて、全分野に及 ぶので、その合理的配慮というのは福祉的就労にも及ぼすべきではないかというご意見 がございました。  続きまして、3ページ目でございます。第2の大きな論点としましては、障害を理由と する差別の禁止という論点でございます。その1として、「差別とは」と書いておりま すが、障害を理由とする差別とは何なのか。具体的には、間接差別が差別に当たるのか。 あるいは、労働能力の差異というか、区別といったものが差別に当たるのかどうか。 そういった論点でございます。  これも、当初の第1回の論点整理の参考のところを見ていただきますと、第2段落のと ころに、ちょっと下線部を引いておりませんが、間接差別については、このように書い ております。募集条件あるいは勤務条件等において、外見上は一見中立的でも、障害者 にとって相当の不利益を与えて、かつ、職務とは関連のない条件を設定するなど、合理 性のない条件等を設定するというようなもの。このようなものというのは、間接差別に 該当すると考えられる。けれども、何をもって合理性があるのかということについては、 整理が必要である。というような整理をしております。あるいは、「また」以降で、そ の能力に基づく差別に基づく関係についても一定の論点の整理をしておりますが、現実 に能力に基づいてある程度職務能力を評価して、結果として賃金でありますとか、勤務 条件が異なってしまうということがあるわけですけれども、その職務能力というものが、 賃金なり労働条件なりの重要な判断要素であることは間違いないので、合理的配慮がち ゃんとなされた上で、なおその職務能力に基づいて評価した時に差が出てしまうという ことまで否定するのは、適当ではないのではないか。というように、当時、そのような 整理をしております。  この研究会での主なご議論としては、4つ書かせていただきました。1つ目のご意見と しては、この差別類型ということですが、この権利条約の中では、(ア)直接差別、そ れから(イ)間接差別、そして、(ウ)合理的配慮をしない、という3つの差別類型が あるのではないかということです。さらに、この3つの類型が相互に重なり合う場合があ るので、合理的配慮をしないということも明確に差別であると位置づけなければならな いのではないかというご意見がありました。1つ飛ばして、3つ目のご意見として、これ は間接差別に関するご意見ですけれども、間接差別というのは条約で明文の規定はあり ませんが、あらゆる形態の差別という表現を使っておりますし、その効果を有するもの という書き方を条約の中ではしているので、間接差別も含まれることは異論がないので はないかというご意見がございました。それから、4つ目のご意見ですが、これは能力 に関する部分として、合理的配慮をしっかり提供した上で、労働能力と賃金の評価が真 に釣り合うのならば、その結果として格差があっても仕方がないが、問題はその労働能 力をどう評価するかということではないか。こういったご議論がありました。  4ページ目でございます。差別が禁止される事項ということで、雇用に関し差別が禁 止される事項というのは具体的にどのようなものであるか。その際、我が国の制度ある いは慣習等との関係をどう整理し、考えるかという論点でございます。  参考のところを見ていただきますと、条約では雇用に係る全ての事項に関する差別の 禁止といった表現があるわけですが、実際に我が国の制度あるいは慣習に照らしていろ いろな問題が生じるのではないかということで、2つ例を挙げております。1つは、募集 及び採用、2つ目が賃金・労働条件ということです。まず、採用に関しましては、我が 国では採用に関しては、事業主に広範な裁量があるというふうに考えられておりまして、 例えば、有名な性別による差別の禁止、あるいは最近の話ですが、年齢による差別の禁 止というものも法律上もございますけれども、厳密には、この募集・採用の機会につい ての差別を禁止するという書き方をしている例がございます。このように、事業主の裁 量があるということをどう整理するかという問題。あるいは、その採用については、差 別があったか否か、判定するのもまた難しい問題があるのですが、それだけではなくて、 仮に差別があったと認められたとしても、他に応募者がいるという中で、では、その当 該障害者を採用すべきなのかどうかというようなことを、どう判定していくのか、判断 するのかという意味での担保措置についても難しい面がある。同様に、賃金や労働条件 に関しても、海外の主要な国と比べて、賃金と職務内容との関係が必ずしも明確でない という中で、実際に障害を理由とした差別であるのか否かということを、どう判定、判 断するのか。こういうことをどう担保するのかという意味で、非常に難しい面があると いう論点をここに書かせていただいております。  研究会での主なご意見としては、5つ記載しております。最初の3つが採用関係で、後 の2つが処遇の関係です。採用の関係の主なご意見としては、1つ目として、採用差別に ついては立証の問題であるとか、事案への手当・対応が難しい面はあるが、立証できる ものまで排除すべきではないと条約でも明記されているので、それを除外することはで きないのではないか。採用はちゃんと差別の禁止の対象にすべきではないかというご意 見がありました。あるいは、具体例として、2つ書いてありますけれども、電話ができ ることを採用条件にしているような場合があるけれども、これは明らかな差別ではない かというご意見です。それから、採用時の評価において、本人の適性や能力ではなくて、 疾患名で判断する、それによる偏見で判断するという差別が見られるということ。特に、 健康診断による病気の把握というものも、結果として就職差別に繋がるおそれがあるの ではないかというご意見がありました。それから、これは処遇あるいは労働条件の関係 ですが、中途の視覚障害者について、在職途中で障害をもった以降に賃金を引き下げた り、あるいは解雇あるいは退職の勧奨をしたり、あるいは年金をもらった部分は賃金か ら差し引くというような行為は差別であって、禁止すべきではないかというご意見があ りました。最後に、これは勤務形態というべきかも知れませんが、障害者の場合はほと んど給料が年々上がらない、あるいはずっと臨時雇用のままであるといった事例がある けれども、これは能力の問題はあるにしても、人事方針としておかしいのではないかと いうご意見がございました。  続きまして、5ページでございます。大きな論点の3つ目の、職場における合理的配慮 ということで、1番が、合理的配慮の内容でございます。合理的配慮は個別性の強い概 念であるが、その基本的な内容をどのように捉えるべきかということでございまして、 ここはかなりご意見が多く出たところでございます。  主なご意見として、最初の3つは、やや総論的なものでございますが、合理的配慮は、 言葉としては新しいものであるが、社会的実態としては存在しており、いわばモラルか らルールに転化するというふうに考えられるのではないかというご意見です。あるいは、 合理的配慮を使用者の義務として捉えるのか、あるいは労働者の権利として捉えるのか といえば、民間企業には経営権あるいは株主への責務もあるので、まずは使用者の義務 というふうに捉えるべきではないかというご意見です。3つ目が、合理的配慮を本人の 要望を受けて、直ちに提供をできるようにすべきではないかといったようなご意見です。 これは発言者を記載し忘れておりますが、第4回で、全難聴の高岡さんからのご意見で ございます。  以下、合理的配慮の内容に関するご意見を非常にたくさん記載しておりますけれども、 1つ目のご意見としては、合理的配慮のポイントとしては、賃金補填あるいは人的支援、 あるいは医療、医療といいますのは、定期的な通院をしたり、有給休暇をとらせたりと いう意味での医療です。それから、施設、建物の配慮ではないかというご意見がござい ます。  以下、種別に特に重要な配慮ということで、6項目記載しておりますが、まず、精神 障害者の場合ということで、対人関係やコミュニケーションがうまくいかない、疲れや すい等の特性があるということで、グループ就労や短時間労働など、特性に配慮した仕 事の確保や職場環境の整備がその能力を引き出すことになるので、重要ではないかとい うご意見がございます。それから、視覚障害者にとっては、移動、文字処理、コミュニ ケーションが大変であるということで、これは補助機器だけでは無理で、人的な支援、 ヒューマンアシスタンスが必要ではないかというご意見がございました。次に、聴覚障 害者の関係ですが、就労した後に十分なコミュニケーション支援がないと離転職・昇進 差別に直面するということで、補聴器、補聴システムや要約筆記、手話通訳や会議での 情報保障等が必要ではないかというご意見がございました。次に、盲ろう者にとっては、 情報を得ること、コミュニケーションをとること、移動することの3つが困難であると いうことで、情報保障については、視覚障害者と同様、点字、拡大文字で情報が提供さ れること、コミュニケーションについては、聾・難聴の方と同様に、適切な通訳者や情 報提供者を配置することが必要であるというご意見がございました。次に、難病がある 人に関しては、雇用管理上の配慮として重要なものとして4つ挙げられておりまして、 1つ目が定期的な通院への配慮、2つ目が採用時や採用後の差別のない人事方針、3つ目 が休憩・休暇、あるいは疾患への配慮ということ、4つ目がフレックス勤務等の柔軟な 勤務体制、こういったものが必要ではないかというご意見がございました。次に、心臓 病等の内部障害者についても、通院のための休暇、あるいは血流が悪くならないようネ クタイをしない、あるいはフレックスタイムと在宅勤務といったことが必要ではないか というご意見がございました。  次の3つは、採用関係のご意見が並んでおりまして、民間企業もそうですが、公務員 試験でさえも採用試験の際に、コミュニケーション支援というものを要望してもつけら れないようなことがあるのはおかしいのではないかというご意見がございました。ある いは、その試験の際に、能力のない人に下駄をはかせるというような必要はないが、あ まりに長時間の試験は避けるでありますとか、休憩を間に入れるという形で、能力を正 しく判定できるような試験制度にすることが合理的配慮ではないかというご意見がござ いました。次は、採用試験ではないんですが、資格試験においても、やはり同じように 合理的配慮、例えば情報コミュニケーション、点字であるとか拡大文字という情報コミ ュニケーションや試験時間を伸ばすとか、そういう合理的配慮を講ずべきではないかと いうご意見がございました。  次の2つが、通勤への支援あるいは身体介助といった話でありますが、まず1つ目とし ては、通勤の際の移動支援あるいは身体的な介助等、こういったものは企業が行うべき 合理的配慮というよりは、むしろ自立支援法上のものにしていくべきではないかという ご意見がある一方で、次のご意見ではむしろ逆のベクトルで、例えば労災の対象として は通勤も入っているので、今後は通勤というものも職務と連動するのであるから、労働 政策で考えていくべきではないかというご意見もございました。  最後の2つは、相談あるいは苦情といったような側面としてのご意見ですが、1つとし ては、知的障害者の方が気楽に相談でき、あるいは苦情を訴えられるような窓口が必要 ではないかということです。現行の障害者職業生活相談員というものがありますが、こ の選任義務がない障害者5人未満の中小企業でも、相談・苦情受付の窓口を整備したり、 あるいは相談員の機能そのものを見直すことが必要ではないかというご意見がございま した。さらに、発達障害者の場合、障害特性が分かりにくいので、適切な変更・調整を 行えるスキルを持った身近なサポーター、つまりナチュラルサポーターというものを養 成する施策が必要ではないかといったご意見がございました。  次に、7ページ目でございますが、過度の負担という論点でございます。合理的配慮 の提供義務を負わない過度の負担となるのは、具体的にどの程度の負担なのか。また、 公的機関からの支援との関係をどのように考えるかという論点でございます。  まず、参考の方を見ていただきますと、4月の論点整理ではこのようなことを書いて おりまして、どのような配慮が過度の負担といえるかというのは、個々の事例によって 異なり、詳細な基準を設けることは困難であり、アメリカのように、判断基準を明確に するとともに、事例の蓄積を行っていくことが考えられる。さらに、下の下線部でござ いますが、この合理的配慮ということに関しては、仮にフランスのように過度の負担と いうものと公的機関からの助成・支援といったものを関連づけるとすると、現行の納付 金制度の在り方についても見直すことも必要である。こういった論点整理を行っており ました。  そして、研究会でのご議論としては、5つここにご紹介させていただいております。1 つ目のご意見としては、合理的配慮の基準としては、企業規模、業種、従業員数、環境 の特性、あるいは地域の文化・慣習を参考にして判断すべきではないかというご意見が ありました。2つ目は、過去の裁判例を見ると、会社の事業規模から見れば人員をやり くりできるとして、長期休職職員の解雇を無効とした裁判例がある一方、あるいは、実 際に治る見込みが立たない上に、事業規模も非常に小さいということで、解雇が適法と 認められたという事例があるので、事業規模というものをある程度考慮せざるを得ない のではないかというご意見がありました。それから、合理的配慮の基準として、低いレ ベルで過度の負担と認定されてしまうと、合理的配慮が役に立たなくなるので、極めて 困難な場合という形で定めるべきではないか。その際に、アメリカの雇用機会均等委員 会ガイドラインのような具体的な指針を作成するのがよいのではないか。こういったご 意見がございました。  それから、4つ目と5つ目は助成金との関連についてのご意見でしたが、現行の納付金 制度に基づく助成金は、合理的配慮をいわば具体化したものであって、今後も状況に応 じた助成措置の改正を行うことによって合理的配慮を実効あるものにしていくのがよい のではないかというご意見がありました。それから、現行の労働制度の補助金やサポー トには期限があるが、合理的配慮の前提の仕組みとして、期限を付けない制度を作って 欲しいというご意見がございました。  続きまして、8ページ目でございます。第4の権利保護(紛争解決手続)の在り方)とい うことでございますが、まず1番は、外部機関による紛争解決手続きということで、具 体的に差別があった場合に、裁判で争う以外に外部機関による何らかの紛争解決手続き が必要ではないかということでございます。  まず、参考を見ていただきますと、ここではアメリカとフランスの例を書いておりま すけれども、アメリカにおいては、裁判所に提訴する前にEEOC(雇用機会均等委員 会)への申立てをして、そのEEOCが、事業主に対し、調査をし、協議・調整・説得 を行うほか、あるいは、自ら提訴するというような手続きがございます。フランスにお いても、高等差別禁止平等機関というところが提訴を受けて、調停や和解金支払いの提 案・勧告を行うという手続きがございます。こういったことを踏まえた場合に、我が国 においても、差別があったか否かという具体的な差別事案に対しては、事業主がどのぐ らい合理的配慮を講ずべきであったかということを慎重に検討しながら、結果として、 差別があったかどうかを判断する必要があり、さらには、差別があったという場合には、 どのような措置を講ずべきか、解決策を講ずべきかということを判断するのが望ましい と考えられる。そういった場合に、具体的にどのような機関がこういったいわば調整的 な紛争処理手続きを担うべきかということは、さらに検討する必要があるというような 論点として提起をしていたところでございます。  この研究会においての主なご意見ということで、4つ記載しております。1つ目のご意 見としては、差別があっても個別に訴訟を起こさないと解決しないような仕組みは適切 ではなく、外部の機関に救済や是正、勧告を求められるような仕組みが必要ではないか というご意見です。あるいは、差別という違法の修復には、まず企業内で現行の職場定 着推進チームの権限を強めて、使用者、障害者、プラス第3者による組織で対応するの がよいのではないか。その上で、さらに紛争を処理する委員会というものを、国や行政 から独立した機関・第3者機関として作る必要があるのではないかというご意見がござ いました。3つ目、4つ目も同様のご意見ですが、行政救済手段がないので、行政機関に よる差別是正の勧告あるいは命令権限というものを付与されるべきではないかというご 意見がありました。あるいは、このような条約の実施状況を保護・監視する枠組みとい うのが条約の33条にございますが、こういったものとして、労働分野に限った仕組みと するのか、あるいは、包括的に全分野を包括的にやるのかという論点はあるが、独立し た機関を作る必要があるのではないかというご意見がございました。  次に、9ページ目でございます。2のガイドラインということですが、具体的紛争にな る前に、どのような合理的配慮が必要であるかということを予め明らかにしておくこと が、障害者、事業主双方にとって望ましいのではないかという論点でございます。意見 を3つ紹介しておりますが、どれも基本的にはガイドラインが必要ではないかというご 意見でございます。1つ目を例にとれば、何が差別なのか、何が合理的配慮なのかとい うことの物差しの法律的な基準を示すことが必要ではないかという形で、ガイドライン が必要ではないかというご意見がいくつか寄せられたところでございます。  最後に、11ページ、12ページで、その他の論点として、これは非常にたくさんのご意 見があったので、やや簡略にまとめたものでございます。簡単にいくつかご紹介いたし ますと、大きく障害の定義に関するご意見、つまりは職業能力に応じた障害等級を創設 すべきではないかといったようなご意見、あるいは、現行の雇用率制度に関するご意見 として、精神障害者の雇用義務化、あるいは障害種別の雇用率枠の設定といったご意見、 あるいは、3番目として、ダブルカウントで重度障害者を2人とカウントするダブルカウ ントを廃止すべきではないかというご意見や、実際にはそれは難しいのではないかとい ったご意見、これは両方ございました。  4番目として、福祉的就労や保護雇用に関するご意見として、例えば就労継続支援A 型事業については、雇用契約とサービス契約の二重契約で、賃金をもらいつつ、しかし 利用料が発生するということは是正すべきではないかといったようなご意見や、福祉的 就労が労働法令から除外されているのは問題ではないかというようなご意見もございま した。  5番目の特例子会社に関しましても、両論といいますか、方向性としては解消すべき ではないかというご意見がある一方で、すぐに否定するのは適切ではないというご意見、 一方で障害者がずっと固定的に働き続けるということは適当ではないのではないか。こ ういったご意見もございました。  6番として、就労支援策についても、様々なご意見がございましたが、例えば、助成 金の対象を追加して欲しい。あるいは、助成金の回数でありますとか、要件を緩和して 欲しいというご意見がございました。  7番のその他としては、訳の問題ですが、今、権利条約の仮訳というのが出ておりま すけれども、その訳のあり方についてのご意見でありますとか、最低賃金の適用除外、 減額許可、こういったものに関するご意見というものございました。  以上、非常に簡単ではございますが、過去4回の主なご意見についてご紹介をさせて いただきました。以上でございます。 ○座長  ありがとうございました。それでは、議論をしていただく前に、この資料で不明な点 がありましたら質問をしていただきましょうか。なければすぐに議論に入りたいと思い ますが、よろしいでしょうか。それでは、先ほども申しましたように、今日は全体的に 議論をしていただきたいと思っております。どの論点でも結構です。こういうのを入れ たらいいとか、あるいは、言ったはずなのに入っていないとか、そういうことがあった ら、何でも結構ですので、意見を出していただきたいと思います。どうぞ。 ○松井委員  議論に入る前に、1つ私が理解できないのは、直接この論点とは関係ないんですが、 1958年のILOの「雇用及び職業における差別待遇に関する条約」(第111号)があり ますが、日本はまだこれを批准しておりません。それが、何故批准されていないのかと いうことですが、次回で結構ですので、そのポイントを説明していただきたいというこ とです。  まず、2ページ目の差別禁止法の対象範囲ということで話をさせていただきたいんで すが、差別禁止法が対象とする障害者と、今の雇用促進法が対象とする障害者の範囲と いうのは、同じなのかどうかということです。例えば、雇用促進法が定義する障害者と いうのは、もちろん機能障害があるんだけれども、極めて、いわゆる職業生活、社会生 活にハンディがあるというふうな定義になっていると思います。すると、やはり通常の ベースではなかなか一般労働市場で競争しにくいので、ある意味で、特別の枠をはめる というふうな理解になっています。だから、そういう人を雇うことによって、決して物 理的なことだけでなくて、費用がかかるので、その費用について、企業間でお互いに負 担し合うという理解になっているのではないかと思います。この差別禁止法の対象にな っている方々は、少なくとも合理的配慮というか、ある一定の条件整備をすれば、能力 的に対等にやれる。つまり、スタートラインを一緒にすれば、あとは本人たちの努力に よって十分やっていけるというふうな考え方です。ですから、そういう意味で、雇用率 制度でこれまで規定されている人たちと、同じレベルで考えていいのかどうか。そこが 例えば納付金制度の根拠にもかなり響いてくる論理ではないだろうかという印象をもっ ています。そういう意味で、今度、差別の禁止の対象となることについてどう定義する のか。特に、障害者権利条約の障害者の定義というのは、インペアメントだけでなく、 いわゆる社会的なバリア、環境上あるいは制度上のバリアによって問題が生じているの で、社会の側の対応、それと合理的配慮がリンクしているわけです。だから、そこの、 いわゆる社会の側の対応責任というか、そういうものが定義の中にきちんと入ってこれ るような形にできるんだろうかということですが、そこは実はかなり難しい面があるの ではないかと思います。  それから、いわゆる仲裁機関というか、苦情処理の機関をいわゆる横断的な、例えば 障害者差別禁止法というような、あるいはこれまで人権擁護法案というものがありまし た。これはまだ日本の法律としてはありませんけれども、そういう障害者差別禁止法と いうような形で横断的にやるのか、あるいは人権擁護法というようなことで、あらゆる 差別に対応するものにするのかという議論はあると思います。これまでの人権擁護法案 では、労働審判制度の中で雇用上の障害者差別についても対応するという位置づけにな っていますが、私はそれができるのであれば、むしろそういう形の方がいいのではない かと思っています。その中の構成メンバーとして、当然労働法の専門家だけでなく、障 害者のことが分かる方もそのメンバーに入って調整できるような、そういう機能が果た せられれば、かなりのことまでやれるのではないかというふうに思います。  とりあえず、その2点について話しておきます。 ○座長  ありがとうございました。今の点について、事務局から何かありますか。お聞きして おけばよろしいですか。ILO条約については宿題という話でしたので、よろしくお願 いします。 ○高齢・障害者雇用対策部長  ILOについては次回にきちんと説明させていただきたいと思います。一度、委員の 先生の皆さん方のご意見をいただいて、その後、次回以降の論点の整理との関係で必要 があればコメントさせていただくということでいかがでしょうか。 ○座長  それでは、他にご意見をいただければと思います。どうぞ。 ○花井委員  第1の基本的枠組みの全体像というところでございます。私どもは国連の障害者権利 条約を早期批准するための国内整備を行うということであれば、雇用における障害を理 由とする差別を禁止する法律が必要だろうと考えます。その場合、現在の障害者雇用率 制度というのは、やはり積極的な差別是正措置として存続させることが、今の日本にと って一番ベターではないかと考えております。  それから、2つ目の、差別禁止等の対象範囲ですが、雇用における差別禁止というこ とであれば、対象となる障害者というのは、働くことを希望する障害者全てというふう にしてはどうかと考えております。  それから、事業主の範囲は、フランス、ドイツのように、全ての事業主を対象とすべ きだろうし、対象となる雇用というのも、これもやはり基本的には全ての雇用形態を対 象とすべきではないかと考えております。  それから、「障害を理由とする差別とは何か」いうのは、今後様々検討していく必要 があるだろうと考えております。それから、7ページの過度の負担のところでございます。 これにつきましては、合理的配慮というのを法律で概念規定をして、具体的な合理的な 配慮の内容については、指針等で定めるのが一番良いのではないかと考えております。 といいますのは、国連の女性差別撤廃条約の批准の過程を考える時に、男女雇用平等法 というものを求めてきました。結果として機会均等法というふうになっていますが、そ の詳細な差別の中身等については、指針あるいは省令で定めていることを考える時、繰 り返しますが、合理的配慮の概念を法律で定めて、内容については指針等で定めていく。 その指針等で定めた内容と、それを実行するためにどのぐらい費用がかかるのか、それ との見合いでの過度の負担ということを、様々な調査研究をしながら、少し時間をかけ て作ることが必要ではないかと考えております。ただ、この場合、主な意見の中にあり ますように、過度の負担を低いレベルに押さえてしまうと、合理的配慮があれば働ける はずの障害者が働けなくなるということも想定されます。障害者にとってどこまで用意 されれば働けるのか、それと事業主の過度の負担との見合いというのは、もう少し研究 を蓄積をしていく必要があるのではないかと考えております。  それから、最後の権利保護のところです。新たに機関をつくるのではなく、、年々受 件数が増加している労働審判制度を活用するとか、あるいは、先ほど松井先生がおっし ゃったように、人権擁護法案が再度提出の動きもあると聞いておりますが、その法律が 想定しました人権委員会で差別を救済していく。その中でも、労働における差別を救済 していくというように、今ある、あるいは可能性が近いようなところでの救済で、やは り迅速でなければいけないということを考えると、新たに三者機関をつくるのがいいの か、その辺はもう少し検討する必要があります。私どもはむしろ労働審判とか、人権委 員会を活用した方がいいのではないかというふうに考えております。  今日のところは以上です。 ○座長  他にいかがでしょうか。どうぞ。 ○今井委員  今井です。今のことにも関連しますが、8ページの紛争解決手続きについでです。紛 争となってしまうと、もう話は外部ということになってしまいます。本来の差別という のは、職場や雇用における問題なので、紛争に持ち込まないで収まるのが、本来の考え 方だろうと思うのです。当事者間で解決し、それでも解決しない場合に、初めて外部に 持ち込むのだと思います。この委員会の中でも、どなたかがおっしゃっていたと思いま すが、当事者というのは労働組合なのかもしれません。職場の中で自分が差別されてい るというのは、必ずしも直接雇用主や社長が差別するということだけではないわけです。 そういう問題を外部に持ち出すということ自体が、力の論理によってある人を守るため に誰かを悪者にしても、人を大切にするという心は生まれないというのが体験です。だ から、身近な当事者による問題解決を促進する枠組みもやはり必要なのではないか。名 案はないのですが、それを全て外部機関というと、むしろ逆行する場合もあると考えて おります。 ○花井委員  先生がおっしゃたのはそのとおりだと思っています。紛争が起こった場合にどう解決 するかという話で、当然その職場の中での労使の話し合いとか、あるいは差別を受けた 障害者が労働組合と相談するとか、様々な職場での解決の方法をとってなおかつ紛争が あった場合という意味だという理解です。 ○今井委員  それは私どもと同じ意見です。 ○松井委員  まさにそうだと思うのですけれども、一番難しいのは、合理的配慮です。この合理的 配慮というのは、基本的には本人が求めるわけです。もちろん、第三者が見て、こうい う配慮が必要だろうということはあったとしても、本当にそれが本人の求めていること なのかどうか。日本の職場環境の中では、やはりなかなか本当にこれは必要だというこ とを言って、それをサポートしてもらえるか。それが妥当なものであれば、ちゃんと本 人の希望に沿った形で対応できるか。そういうことはまさに外部でなくて、企業の中で、 そういうことにきちんと対応できるような仕組みをつくるということだと思います。だ から、それが単なる形式論ではなくて、本当に本人のためにきちんと有効に機能すると いうようなものというのは、一体どういうものなのかということです。そこは、十分検 討しないと、せっかく制度としてはつくっても、確かにあるんだけれども、実際には本 人のためには、あまり有効ではないということになりかねませんので、そこはおっしゃ るとおりだと思います。 ○座長  ありがとうございます。何かいいアイディアはないですか。 ○今井委員  経験上はパワーゲームになって、片方の傷つけられた方を守ろうとしたことが、片方 を傷つけたことで終わって、一体これは何だったのかというのが現実です。だから、き っとこれは法律とは違う仕組みが要るのかなと思います。現場にいるとそう感じます。 すみません、愚痴になってしまいまして。 ○松井委員  ですから、やっぱりどうしても解決できないところはきちんとやる。全てそんなこと をやれといっても、それは現実にできないでしょうから、そういうのが必要だと思いま す。  それから、福祉的就労の問題はなかなか難しい問題もあるんですけれども、この垣根 をとれという意味では、この中でも私は発言しましたが、言うならば、今、新しい自立 支援法の就労継続支援のB型というのは、ある意味ではブラックボックスになってしま っています。だから、労働法は全部適用しないまでも、本当にその人たちがやっている 仕事に見合った賃金がきちんと支払われているのかどうか。今のところ、例えば100円 払ったって、別に誰も文句は言えない。そこはやはりおかしいわけです。例えば、今度 は適用除外ではなくて、いわゆる率で見ますよね。だから、そこはたとえ福祉の場にあ っても、訓練ではなくて、いわゆる仕事をしているということであれば、それが妥当か どうかをチェックする第三者機関というか、そういうものは必要ではないのか。そうい う意味で、垣根をとれというのは、どこで仕事をしていようと、少なくともそれはメイ ンが働く、何らかの形で働いているのであれば、そこはやっぱりそういうチェックをす る必要はある。  実は、幾つかの国を調べましたら、例えば、アメリカなんかはそういうものは、州に よっては適用除外というか、あるいは減額措置はやらない。だから、そもそもそういう 劣等な労働条件でしか適用できないところはなくせというのが、基本のようです。例え ば、ニュージランドなんかも、一昨年できた法律では、そういういわゆる適用除外みた いなものは全部なくしていく、あるいは、そういう特別な働く場は基本的にはなくして いくという方向で対応するということです。しかし、全部なくなった場合に、これまで 働いていた人たちは全てそういう正規の雇用の場に行けるかというと、そうではないわ けでしょうから、そういうところに行けないまでも、ある程度の条件はカバーするとい う仕組みは検討していただきたいと思います。 ○座長  その点については、ここにも何カ所かで書いてあったかと思いますけれども、日本が 仕事で給料を払うという仕組みになっていないので、普通の健常者の正社員の中でも、 同じ仕事をやっていても賃金の違う人がごろごろいるので、日本の場合、なかなか難し いところですね。 ○松井委員  だから、何故その同一労働同一価値というか、それがないのか。それはもう国際的に は確立した概念です。それが次の宿題になっていますが。 ○座長  他にどうですか。どうぞ、大久保さん。 ○大久保委員  まず、この議論をしていく中で、ちょっと片方で考えていかなければいけないことと して、障害者基本法があります。障害者基本法の見直しということで、かなりこの議論 が進んで、動いていると思います。こちらから、課長さんも出られて、おそらく障害者 施策の推進課長会議という中で議論されていると思います。その障害者基本法との関連 ですが、その辺のところで、いいか悪いかということではなくて、どういうふうに整理 するかということです。つまり、障害者の定義、あるいは障害の定義、あと、そこで実 効性はないものの、差別禁止条項もあります。こういったことをどういうふうに考えて いくかということです。それと、こちらで今議論している内容です。この辺のところを やはり整合性をとりながら議論していかないと、どこまで話していいのかという感じが します。  それと、福祉的就労について松井先生からご指摘がありましたけれども、非常にこれ は難しい問題です。というのは、実態というか、現実の問題がありますから。そして、 私は授産会計では、収益が出たらそのまま還元みたいな考えだと思うのですけれども、 いかんせん、事業所の生産性というか、そういった能力の問題があります。その辺で、 工賃が1万円前後でうろうろしているという実態があります。そうすると、結局、所得 保障の問題として、賃金保障の問題があります。こういう形をとっている諸外国の例が ある。この辺をどう考えるか。こういうところの問題にも関連してくるかなと思います。 そして、就労継続B型だけではなくて、生活介護だって今は賃金をもらえるわけですね。 その辺の労働というのもどういうふうに考えるか。そうすると、所得保障の問題にだん だんなってきてしまいます。この辺の仕組みをどういうふうに考えるのかなというとこ ろまでいくのかなとまず思いました。 ○座長  はい、どうぞ。 ○今井委員  さっきの問題の整理なんですけれども、外部機関を否定しているわけではなくて、当 事者間の自浄作用による問題解決という二段構えが要るだろうということです。意見の 対立ではありません。  そこで、1つだけ、6ページの下の私が第5回のところで発言した要約として書いてあ るところですが、実は、このナチュラルサポーターの件は専門家を育成するということ ではありません。既にナチュラルサポーターというのは実際の職場の中におられます。 隠れた存在としていて、例えば、A君のために若干の時間をとられているということが 会社の中で公認されていなかったりする。ですから、決して新たに養成するというよう な意味ではなくて、それを助成するとか、何か育むとかというようなニュアンスで言っ たので、できればそういう表現として理解していただくと有り難いと思います。これは 要望です。 ○座長  今井さんがおっしゃられたナチュラルサポーターというのは職場内でのいろいろな問 題を未然に防ぐような一種の仕掛けのようなものの1つなんですね。 ○今井委員  精神障害の方とか発達障害の方でも、いろいろ見ますと、うまくいっているのは、そ ういう人がやっぱり周りにいて、2つの役割を果たしています。1つは、その人が差別か ら守っている。つまり、A君の横に別の人がいるから、何というんでしょうか、職場の 雰囲気が一方的に差別感にならない。どうしても世の中には差別したがる人もいますか ら、それの抑制力になったりしますし、もう1つは、今おっしゃったような具体的な簡 単な配慮を担っております。「彼にはちょっと無理だから、では私がちょっと電話をと るわ」とか、そういうことをやっているわけです。そういう二つの役割をやっている人 を私はナチュラルサポーターと呼んでいます。そういう存在は昔からいるわけですけれ ども、そういう方から言われるのは、そういう役割をやっているということを会社の中 で認めて欲しいということです。一定時間そういうことにとられているので、それを何 らかの形で、個人的な好意でやるということではなくて、会社の中の1つの役割として やっているというふうにしてもらいたい。だからこそ、自分が異動した時は、そのこと を次の人に申し送りたい。そういうふうにおっしゃっている人が多いですね。 ○座長  どうぞ。 ○川崎委員  私は精神障害者の家族という立場で出席させていただいております。実は精神の人の 雇用というか、一般就労というのは本当にわずかでございます。実際、事例としてなか なか上がっておりませんで、事例も少ないものですから、この委員会でも具体的にどの ようなことということをなかなかお話しができなかった状況であります。しかし、今回 私自身もこの委員会でいろいろ勉強させていただきました。これは権利条約における雇 用の問題ですけれども、やはり自立支援法の中でも福祉的就労に関する賃金の問題とか、 雇用の場でもいろいろと関係してくるところがあります。先ほど花井委員がおっしゃい ましたように、私も東京都の人権擁護委員をやっておりますけれども、その相談の内容 で、やはり精神の人の就労の差別ということもかなり上がってきておりますので、そう いうところの横との連携といいますか、情報交換を具体的にどのようにしていくか、ま た、その情報を得ながらでないと、なかなかここでの合理的配慮とか差別ということも 定義しづらいのではないか。私は全然専門でもないんですけれども、素人の考えで、ち ょっとそんなことを疑問に思ったということを申し上げます。 ○座長  どうぞ。 ○大久保委員  ちょつと気がついたので申し上げます。前に意見として申し上げておけばよかったの ですけれども、入り口の部分の議論になるのだと思いますが、結構重要な問題です。権 利条約とも当然関連してくるのですが、成年後見制度の被後見人と被保佐人というのは、 国家公務員法と地方公務員法で欠格条項に入っています。こういった問題というのは、 いわゆる基本的なところです。この辺のところは、こちらというより、総務省の管轄に なるかも知れませんけれども、いわゆるこの欠格条項というのはそういう意味でいえば、 かなり大きな問題かなという感じがします。この機会にちょっと心に留めておいていた だければと思っています。つまり、成年後見制度というのは、かつての禁治産制度とい う、いわゆる社会を守るというより、本人を守ろうというか、本人に着目して成年後見 制度という形をとったと思います。それが欠格条項という形で、未だにこういうふうに 存在しているというところは、問題かなと感じている次第です。 ○座長  平田さん、いかがですか。せっかくいらしたのですから、どうぞ遠慮なくご発言して ください。よろしいですか。今日は自由にいきましょう。どうぞ、松井委員。どうぞ。 ○松井委員  雇用率制度にもう一度戻りますけれども、日本は雇用率制度と納付金制度がセットに なっているわけですが、それについて出てくる助成金というのは、基本的には事業主に 対して提供されるという形になっています。それに対して、合理的配慮というのは、あ くまで個人に対してです。ですから、その事業主に対してなされたものが、例えば個人 が転職する場合にそれを持って行けるのかというと、それはあくまでA社に対して出し ているわけで、本人がたとえ転職するに当たってそれが有効であったとしても、現在の 仕組みの中ではおそらくそれは役に立たない。  それで、フランスは実態がどうなっているか分かりませんが、フランスの場合は納付 金で集めたお金で合理的配慮に必要な経費をカバーするということになっています。お そらく日本の今の1.8%という枠で考えれば、とてもでないけれども、それでは賄う事は 基本的に無理だと思います。ですから、別の税金を入れるということにならない限りは、 なかなか今の仕組みの中では難しいのではないかと思っています。  それと、もう1つは、今の制度の中で、例えば障害をもった人たちが自分の労働権と いうか、雇ってもらう権利の根拠として、今の法律は使えません。だから、そういう差 別禁止になった場合に、ちゃんと働けるという条件のある人であれば、その人の労働を きちんと保障するというか、要求して、その権利が充足されるような仕組みへの転換が 必要ではないか。そういう意味では、先ほど冒頭にちょっと言いましたが、今の法律の 理念というものと、かなり違ってくるのではないか。そういう意味で、例えば合理的配 慮に対する個人の権利として認めるということにすると、そこだけでは収まらない、全 体に関わってくる問題は当然あると思いますので、かなり大がかりな改正になるんでは ないかというふうに思います。あるいは、もちろんもっと別の判断で、そんな難しいこ とではなくて、こういうふうにすれば、そんなにややこしくなくできるということかも 分かりません。その辺が、この権利条約を考えた場合、どこまで変えなければいけない か。そこのところは、今、論点整理をしていただいて、いろいろポイントは分かりまし たけれども、それはある意味では氷山の一角であって、ベースとなるようなことまで含 めて、これが問題となるのかどうか。そこがちょっと分からない面があります。 ○座長  何かご意見がございますか。 ○高齢・障害者雇用対策部長  いくつかご意見が出ておりますので、次回以降、論点毎に議論していただく前提とし て少しお話しします。1つは何人かの委員の方からありましたけれども、紛争の予防及 び救済の部分で、紛争の場面だけを想定した論点になっていましたので、例えば個別紛 争処理の議論を労使を含めてした時のことを思い出しても、まず紛争というのは、企業 の外に出ないことが重要ではないかということで、企業内での苦情処理や、企業内での 紛争解決制度が一義的にあって、それが企業の中で収まらない場合に第三者で協議する。 その場合に、行政救済と司法救済がある。こういうことだったと記憶しています。した がって、1つの論点として、企業内における紛争予防や紛争解決というのは、外部に行 く前の論点として加えてご議論をいただきたいと思っています。  それから、外部救済制度をどうするかというのは、論点として考えていくということ はありますが、労働審判制の話もありましたし、一方で人権擁護法の際には、人権委員 会を新たにつくるという前提の下に議論しました。ただ、あの時の議論でも、企業内の 問題というのは、やはり労使が関与する形の制度の方がよいのではないかという議論が あって、前回政府提案した人権擁護法案の中では、全体は人権擁護委員会だけれども、 労働分野については、第一義的には労働局にある紛争調停委員会が対応して、最終的に は人権委員会にも行くというシステムになっています。障害者の場合、そういう部分に ついて、要するに企業の中という部分と、それから障害者全体の問題をどういうふうに 整理するか、これも論点の中で少しご議論をいただければと思っています。  それから、福祉的就労の部分については、縦割りではありませんので、ここでも議論 をいただければと思っていますが、一方では自立支援法をどうするかという議論とも密 接に関わりますので、ここでもご議論をいただきますけれども、それをどうやってこな していくかというのは、私どもの方でも検討させていただきたいと思います。論点とし ては入れながらやっていきたいと思っています。ただ、最低賃金等の問題を考えた場合 に、企業に雇用だといえば、ある程度最低賃金を払うことを前提として事業運営を考え てくださいと言えますけれども、福祉的ないろんなサービス提供の中で一部働いている といった場合に、必ず賃金を前提にした事業展開をやってくださいといった場合、それ ができなくなると、そういう場がなくなってしまう恐れもあります。そういうことも含 めて、少し論点を提示してご議論をいただくことかなと思っております。  それから、基本法の中で完全に差別禁止システムができるのであればともかく、基本 法は基本法としての性格がありますから、もちろんその検討状況や、そこでどうなって いるかということを見なければいけません。関わりがあるのも分かりますが、ある程度 雇用・労働分野では少なくともこういうシステムが必要だという議論がいただければと 思います。基本法の中で解決すればそれでいいことになると思いますし、あっちが決ま るまでこっちは議論は進めないということではなくて、雇用・労働分野でどういうもの が必要かという中身の方からまず議論していく。そして、どうしても法制度にした場合、 今の障害者雇用促進法と差別禁止法について、同じ法律の中で2つのシステムを書くの か、別々に法律を書くのか。これは、ある意味では整理の問題でありますので、むしろ どういうシステム、その中身でご議論いただければ幸いかなと思っております。  あと、納付金制度と合理的配慮との関わりで当然考えなければいけません。ただ、今 の納付金制度の納付金の額というのは、ご存知かと思いますけれども、現に企業がどう いう配慮をして、コストをかけているかという調査結果に基づいて額を決めているとい う制度です。全然違う制度にするというのももちろんありますけれども、合理的配慮で ここまで配慮しなければいけないというところで、ある程度企業のコストが上がってい けば、今のシステムの中においても、そういうことで上がっていけば、納付金の額が上 がっていくということが、内在的に含まれている制度であります。ただ、ここで大きく 変えるのだから、もっと違う制度にするというご議論も当然あると思います。そこはま た、論点として整理させていただきます。  何れにしても、そういうものを論点として、次回あるいは次々回ぐらいに整理をして、 ある程度ご意見が一致したものはそれとして、議論が分かれた部分については、こうい う議論があったという形の中で、中間的なとりまとめができればいいなと思っておりま す。さらに今日いろんなご意見をいただければ、それも含めて次回以降にご議論いただ けるように対応していきたいと思っております。 ○座長  他にいかがですか。どうぞ。 ○今井委員  障害者を守る、障害者を擁護するということと、障害を理由とする差別をなくすとい うのは、実践上は、随分違うというのが、実感です。  ある事例ですが、職場で同僚に明らかにアスペルガーの人がいる。公務員試験に受か ったからといって、仕事もできないのに通常職場にいるのは税金の無駄遣いである。彼 は障害者としていくべきであった。どう考えますかという問い合わせがありました。  つまり、障害を理由とする差別をなくそうというのと、障害者はどこか別の世界で幸 せに生きていくべきという話は、かなり違います。きっと基本は、人ではなく障害を理 由として差別することをなくそう、もっている力に応じて社会参加していこうというこ となんだけど、枠組みによっては、人を分けるということにつながってしまう。川向こ うに福祉村というのがあって、あなたたちはそこで生きてゆくべきであって、こちら側 に来るべきではない、という話になると、むしろこれは差別助長になってしまう。そう いうところが、基本を考える上で非常に重要だと思います。障害者とそうでない人を法 律で分け過ぎると、何だか泥沼に入っていってしまう。このことをどのように考えてい くかが難しい。悩みばかり言ってすみません。 ○座長  どうぞ。 ○松井委員  先ほどの、企業の中にどのような仕組みをつくるのかということですが、この中では、 例えば推進チームというような話があったり、障害者職業生活相談員というような仕組 みがあるわけです。私もこの中で既に発言しましたけれども、例えば、ドイツの場合は、 一応障害者代表というような位置づけをして、その方が、いうならば組合というか、そ ういう障害をもった仲間の従業員の代弁者としてそういう機能を果たしているわけです。 そういう形がいいのか、もっとナチュラルというか、あまりそういうきちんとした仕組 みでなくて、もう少し別の仕方もあるのかも知れません。何れにしても、そういう何ら かの代弁者機能というか、これは障害をもった従業員だけでなく、おそらく一般の従業 員の問題でもあるかも分かりませんが、企業の中にそのような苦情処理ができる仕組み があって、そこで発言しても、何らあとでしっぺ返しが来ないというものが、やはり設 置されていくことが現実的な対応ができるのではないか。それでいかない部分について は、先ほどもありましたように、そういう外部の苦情処理のための仕組みが備えられる ということが必要ではないかと思います。  それと、差別の種類として、直接差別、間接差別、合理的配慮というふうに、条約で はこの3つになっていますが、例えば、EUなんかは、これに加えてハラスメント、い うならば嫌がらせというのも入っています。先ほどの公務員の方の例も、ある意味でハ ラスメントになるのかも分かりませんが、そこの要素はかなり強いのではないか。だか ら、嫌がらせといいますか、そういうものも含めて差別のカテゴリーとして入れられる のかどうか。日本の場合、女性なんかの場合、それは入っているかどうかなんですが、 入っているんですね。そういう意味で、この中に、そういうものも含めて考えられると いいのではないかと思います。  それと、障害とは何かの中で、先ほど、例えば家族にいる場合に、その家族がどのよ うな目で見られるかとか、あるいは、過去において、例えば精神の場合のように、かつ て入院した経験があるために、現在は何でもなくても、そういう差別的な対応を受ける ということに加えて、例えば、アメリカのADAでは、あたかもそういうように障害が あるかのように見られるという人についても対象に含まれていますけれども、そこまで 入れるのかどうかという議論はあっていいかも知れません。 ○座長  ドイツの例なんですけれども、それは障害者の方の従業員代表みたいなのがあるとい うことなんですか。 ○松井委員  ドイツの法律では、日本と同じように、5人以上重度障害者を雇用している事業所に ついては、選挙でその代表を選ぶことになっています。ただし、必ずしもそれは障害当 事者だけでないようです。障害がなくても選ばれているようですけれども、基本的には 障害従業員の中で選挙で選ばれた方が代表ということで、例えば4年なら4年の任期の中 で、そういう役割を果たすという位置づけになっています。 ○座長  どうぞ。 ○大久保委員  今日は気がついたことを何でもということを前提にお話しします。なかなかこの合理 的配慮という言葉はまだピンとこないのですが、ちょっと感じたことは、いろいろな雇 用支援施策が行われている中で、1つの基本的な考え方として、職業リハビリテーショ ンという考え方があります。そういう中で、結局、合理的配慮というのは、つまり期限 を設けないのが合理的配慮なのかなと思いました。つまり、リハビリテーションの考え 方として、期限を設けるというのが前提ですよね。ということでいけば、合理的配慮と いうのは、期限を設けないのかなということをちょっと思いました。  それと、もう1つは、具体的に申し上げれば、私どもの中ではB型のジョブコーチが やはりどんどん増えて行くというのが非常に重要ではないかと考えています。これは、 これがリハビリテーションなのか、合理的配慮なのかということになってくるのでしょ うけれども、1つの合理的配慮ということでしょう。相談員もそうでしょうけれども、 こういう形の具体的なものが一つひとつ用意されていく。そして、この合理的配慮にと ってやはり重要なのは、当然企業だけでなく、公的支援が、この中で行われていくこと かなと思います。それと、過度の負担という問題が片方で当然あるわけです。やはり、 健全で、かつ活力ある企業活動ということを前提としなければいけない。企業活動が最 近は社会的存在としての企業という中で捉えていかなければいけないという流れでしょ うけれども、そこに、公的支援というものが行われ、おそらく具体的な合理的配慮とい うものが推進されていくのかなという感じをもちました。 ○座長  しつこいようですけれど、平田さんどうですか。せっかくいらしたのですから。どう ぞ、今井委員。 ○今井委員  思いつきで申し訳ありませんが、先程、当事者間による自浄作用の外部機関との関係 でいえば、外部機関に頼るということが自浄作用を阻害することがないようにするとい うことが、最低限要るのではないかと思います。つまり、外部機関が問題を取ったため に当事者間が動けなくなってしまって、県の何とか委員会とか、あるいは国の何とか委 員会が全部やってしまうと、結果的には当事者間の話し合いが進まない。結局、外部機 関による紛争解決ということは必要なんだけれども、それは当事者間の自浄作用を促進 するということを忘れないようにする仕組みというか、仕掛けがやっぱり要るんだろう と私は思っています。 ○座長  すると、何か、外部機関も判定だけではなくて、和解を促進するとか、調停するとか、 話し合いを促進するとか、そういう機能が必要だということですか。 ○今井委員  そうですね。どちらかというと、やはりパッと強い権限で、「こんな悪いことをやっ ているのか。世の中に公表してやる」とか、「こいつはとんでもないやつだ」というふ うになってくると、話がどんどん大きくなって、当事者間の問題解決がしにくくなる。 運用の問題なのかも知れません。 ○高齢・障害者雇用対策部長  私が意見を言うのがいいかどうか分かりませんけれども、日本に特殊かどうかは別に して、やはり紛争解決手段の議論をしていった際に、日本の場合、企業の外の機関に訴 えるとかした場合には、結局辞めざるを得ない場合が多いのではないか、労働審判制と か個別労働紛争解決制度というのがありますけれども、そういうところに行った場合に は、辞めることを前提に解決金をどうするかというような議論のケースが相当多いのは 事実です。一方で、障害者の方がどうやって働くかという場合には、辞めて解決金をも らうというのは本来的な姿ではなくて、むしろ働き続けるために企業がどういう配慮を するかです。そこはできれば企業の中で、まずこういう配慮がいいのではないかとか、 こういう配慮ならできるとか、そういうことをしていく。仮に外部から助けがあったと しても、働き続けられるようにする。要するに、争いになってしまったというよりは、 働き続けるために必要なやり方としてどういうことがあるかという、アドバイス型みた いなものを前提にしながら、どうしてもといった場合には、他の手段もありますよとい うような仕組みというのは、考えていく必要があるような気がします。どういうシステ ムがいいかはまたご議論いただければと思います。 ○座長  どうぞ。 ○大久保委員  ちょっと話が飛びますけれども、今、障害者虐待防止法案が現実に提案されようとい う動きがあります。当然これは労働・雇用分野との関連も出てきます。これは議員立法 でしたね。そうすると、労働・雇用分野との調整のところで、既に議論はされているの でしょうか。 ○事務局  事務局でございますが、虐待防止法の検討については、各党で議論はなされておるよ うです。ただ、おそらく条約との関連というよりは、いわゆる純然たる虐待事案があっ て、ではどうしようかということで、教育であるとか、こういう雇用も含めて、議論さ れているのだと思います。今までは子どもと高齢者の虐待防止法はあるけれども、障害 者がないということで、そういった議論が行われているとは聞いています。ただ、最近 はその動きがあまり感じられませんが、そういう動きは各党でやっているというふうに 聞いています。 ○座長  はい、どうぞ。 ○川崎委員  また私の感じでの話なんですけれども、実はこの障害を理由とする差別というのは、 結局障害者をちゃんと理解していないがために生ずる差別もあるのではないかと思いま す。私はこの合理的配慮の中に、やはり企業側で障害者を理解するという方向性が必要 なのではないかと感じています。ある日本の1つの企業の話をちょっと聞きまして、な るほどと思ったことがあります。そこでは、社員の中から障害者を支援しようという一 人の人の声がありまして、それに則って何人かが協力そして、それから、例えば精神の 場合ですと、精神保健福祉士の資格を取ろうとか、そういうことで、企業の中の職員が 一生懸命頑張って障害者の就労の支援をしているという話がありました。それは、企業 の中から障害者を理解していくことによって、特に精神はすごく分かりづらい障害なん ですけれども、例えば、知的とか身体の人にはこういうことをしてあげれば、こういう サポートがあれば、本当に能力が発揮できるというような、そういうような企業の取り 組みといいますか、そういうことを少ししていただけたらと思います。特に私は今、人 権擁護委員会の方から、精神障害のことが分からないから、ちょっと話して欲しいとい うような話もあるくらいです。そのように、これからは企業側が障害者を理解する姿勢 というのが必要なのかなという思いがちょっとあります。 ○座長  今、企業の管理者教育の中に、障害者についての教育というのはないでしょうね。 ○今井委員  今のことに関してなんですが、いわゆる座学で、誰から聞いて気がつく人もいるかも 知れないけれども、どうもそういうのは合わないんですね。この差別感とかについて、 どうも元々心理的に、人間にはみんな自分とは違う人に対して、下に見るか、上に見る かどっちかになって、対等というのが大変保ちにくいのだと思います。ですから、それ はやっぱり個別の中で、「それはお前、ちょっと言い過ぎではないか」とか、というよ うなことで、日常的なトレーニングというのか、そういうの促進すべきで、何か1回聞い たから、差別感のある人が、人に対する目線が下向きになりやすい人が、急に変わった りすることは、現実的にはどうもないように思いますが。 ○座長  でも、教育があったっていいでしょう。 ○今井委員  あったっていいと思います。 ○座長  どうぞ。 ○松井委員  この議論とは直接関係ないかも知れませんけれども、たまたま私が八王子市の障害福 祉計画の策定に関係していまして、その委員会には知的障害の当事者の方が2名入って おられます。そのために、やさしい表現をするとか、必ず事前にちゃんと勉強をしてか ら出ていただいて、分からないことについては、また後で説明するというか、そういう 形でやっています。ここで言いたいのは、知的障害を雇っている企業でそこまでの配慮 がされているのか。企業の中でいろいろ会議をやったり、あるいは、いろいろ研修をや ったりする場合に、知的障害をもった従業員がそういう会議に、何も全員ということで はなしに、少なくとも適格な方については、そういう配慮をすればちゃんと参加するこ とができます。八王子の場合、そういう会議の場でも知的障害の方が発言をします。そ ういう意味で、おそらく国の委員会にはそういう知的障害の方まで出て、それに必要な サポートまでしていないかも知れません。こういうことは、これからはやはり合理的配 慮という枠の中で考える必要があるのではないかと思います。 ○座長  どうぞ。 ○今井委員  現段階における雇用率制度と、あるいは特例子会社ということの積極的側面について、 区別しているという点では本来的ではないというのはあるんだけれども、積極的側面と いうことでは、実際に実践している姿から、やはり障害者に身近に接する社員が増える わけです。その人たちが、「何だ、働けるんじゃないか」という感覚ですね。そして、 それを次の別の社員に話すという、そういう効果は明らかにあるんです。ですから、や はり接する機会を増やすということが、結果として対等に扱っていくということに繋が っているので、それはそれとして効果を認めるべきではないかと私は現段階では思って います。 ○座長  先ほど今井さんが言われた話題との関連でいえば、座学の研修をやっているより、そ っちの方がずっと効果があるということですね。 ○今井委員  結論的にはものすごく理想のことを今言うよりも、考え方は理想なんだけれども、当 面今、日本でこのことをまずは解決していこうということが大事ではないかと思うので す。例えば、大手の企業だと、大体新卒優先ですね。労働能力ではなくて。ですから、 運が悪い時に卒業してしまうと、なかなか再チャレンジは難しいですね。それだって、 広い意味では差別ではないかということです。だけど、今そこに手をつけることが有効 かどうか、大きな山だと思います。ですから、今回の中で、当面どこに焦点を当ててや っていくことが有効かということを考えないと、理想論だけで走ってもなかなか難しい のかなというのが感想です。 ○座長  もう全て皆さん言い切りましたか。平田さん、どうですか。 ○平田氏(田中委員代理)  今日は代理ということもあるんですが、ちょっと勉強不足です。合理的配慮というと ころで、過度な負担というところが非常に気になっているというか、難しいなと思って います。先ほど、花井さんからもご指摘があって、その概念を法律で定めて、各論とい うか、具体的には省令・指針で定めていくということですね。すぐ思いつくのは、馴染 みのある男女雇用機会法とかがありますが、あそこでもちょっと難しかったなという思 い出というか、携わった立場として、難しいなと思っています。あと、そういうことか ら、現状は経済団体としても、障害者雇用の促進という観点では非常に大事だと思って います。ただ、先ほどご指摘にもありましたとおり、あまりリアリティーがないので、 接してみないと、なかなか分からない。男女差別であれば、半分かどうか分かりません けれども、かなりの率でいるということなので、よく分かるんですけれども、その辺を どうするか。現行の障害者雇用促進法で雇用の義務というのがあって、それをどう評価 するかということもあるのでしょうけれども、いろいろな企業がいろいろな形で頑張っ ています。そこを同じ方向性というか、何か逆の方に制度化していくというか、そうい うふうに行ってしまうと難しいのかなということです。ちょっと勉強が足りない中でこ の資料を見ていきますと、使用者の義務か労働者の権利かというような指摘もあります けれども、今その雇用義務という形でかかっているということを考えると、全部壊して 新しい制度をということももちろんあるのでしょうけれども、そういう方向での検討が いいのかなというふうに思っております。ここで止めたいと思いますけれども、各論に なったらもう少し考えてというか、意見を申し上げたいと思います。ありがとうござい ます。 ○座長  ありがとうございました。どうぞ。 ○今井委員  私も経営に参加していたこともあって思うのですが、雇用管理という概念があります が、合理的配慮とは雇用管理の中の義務だと思うのです。雇用管理にはいろいろ広い意 味がありますけれども、その中の一部に障害者の雇用管理があり、そこで、最低限これ は守ることが必要ですよという物差しを出すということではないかと私は理解していま す。 ○座長  今日は何でもいいから絞り出せと言われていますから、大変失礼をいたしました。そ れでは、一応議論していただきましたので、それをもう一度整理をしていただきまして、 さらに今後議論を深めたいと思います。それでは、今後の進め方について、事務局から お願いします。 ○事務局  事務局でございます。ただ今座長からお話しがありましたとおり、次回以降につきま しては、本日いただきました新たな論点でありますとか、ご意見をこの論点整理に追加 いたしまして、大きく分けて5項目の論点がございますが、論点毎に少しご議論をいた だくということで、2、3回ご議論をいただきたいと思います。そして、ある程度中間的 な整理というのを今後していきたいと考えております。この中間的な整理というものを、 できますれば労働政策審議会の障害者雇用分科会の方に報告したいと考えております。 次回につきましては、論点がいくつかある中の、第1の基本的な枠組み、第2の差別禁止、 障害を理由とする差別禁止という辺りについて、少し細かくご議論をいただくというよ うなことを考えております。  次回の日程ですが、2月4日(水)の14時から16時の予定でございます。場所について は、まだ未定でございますので、速やかに確定して、後日改めてご連絡をいたしたいと 思っております。 ○座長  それでは、今日議論していただいた内容を整理して、整理した資料を事前に皆さんに 送っていただけるわけですね。そうしたら、事前に勉強して、もう1度呼んでおいてい ただいて、そして議論をしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○松井委員  ちょっとよろしいでしょうか。中間ぐらいという話がございましたけれども、トータ ルでの見通しは、大体これぐらいまでには最終結論を得たいとか、そういう予定につい ては、今のところはっきりしていないのでしょうか。例えば、外務省なんかの感触では、 9月か10月頃には条約を批准するような感じがしますけれども、そうではなくて、それは もっと時間があって、十分まだまだ検討する必要があるところがあるということなんで しょうか。 ○高齢・障害者雇用対策部長  今考えておりますのは、中間的とりまとめを2月か3月、場合によっては4月に、要す るに論点毎に議論をして、中間とりまとめ全体についてもう1度ご議論が必要だという ことになれば3回になると思います。その上で、この研究会としての中間とりまとめを していただいた上で、法制度とかそういうものについては、少し審議会の方で議論をし ないと、多分法律を出していくという形になりませんので、そういう部分については、 できれば中間まとめを前提にした審議会の議論を始められればと思っています。  一方で、今のご議論を聴いていても、法的枠組みができたとして、省令になるかガイ ドラインになるかは別として、もう少し合理的配慮はどうかとか、そういう議論は必要 だというふうに感じております。そこは引き続き、法制度は法制度で、審議会という役 割分担の中で法制化に向けて議論を進めていく。一方で、それにまつわる具体化のため の議論については、もう少しここで議論していただいた上で進めていく。こういうこと かなと思っています。従って、2つ役割分担する形で議論を進めていくということで考 えているということでございます。 ○平田氏(田中委員代理)  中間まとめをして、1回分科会にそれを報告して、あとはそれぞれまたその役割に応 じて議論を進めていく。そういう考えでよろしいんですね。 ○花井委員  質問なんですけれども、そうしますと、合理的配慮の内容であるとか、あるいは障害 を理由とする差別の基準であるとか、あるいは今、雇用義務の対象となっているのがほ とんど手帳の保有者ということかと思うんですけれども、そうではなくて、国会で議論 になったように、労働能力を判断要素としていく何か検討をするような附帯決議がつい ているかと思うのですが、そういうことの検討なんかもここでやっていくというように 考えていた方がいいんですか。それはどうなんでしょうか。 ○高齢・障害者雇用対策部長  制度化するためには、やはり正式な審議会の方で議論しなければいけない事項になっ ていくと思います。従って、法制度の基本に関わるような部分については、どちらかと いえば審議会をメインにした議論にしていくべきではないかと思います。この場合は、 むしろより具体的な合理的配慮、あるいは、もちろん差別の中身ということもあります けれども、そういったところに、ウエイトを移していただく。できれば中間まとめの段 階で、ある程度今花井さんがおっしゃった点も含めて、この場での議論が集約できれば、 それを前提にして審議会ができますし、意見が分かれたり、緩やかな方向性だけであれ ば、それを前提にした議論というふうにならざるを得ないだろうと思っております。  正直言って、国連権利条約の政府全体の批准の時期等、必ずしも意思決定がないわけ でありますけれども、雇用の分野につきまして、あまりゆっくりやるということよりは、 必要な議論はできるだけ進めていきたいというふうに思っております。審議会を含めて 必要な役割分担の中で議論を進めさせていただきたいと思っています。今おっしゃった 点についても、あるいは両方で議論が出ても、それは仕方がないと思っていますけれど も、最終的に制度の議論は、最後はやはり審議会の中でできるだけコンセンサスが得ら れるということが重要だと思っております。 ○座長  よろしいでしょうか。それでは今日の研究会は終了いたします。ありがとうございま した。 【照会先】   厚生労働省職業安定局   高齢・障害者雇用対策部 障害者雇用対策課   電話 03−5253−1111(内線5855)