08/12/25 第1回職場における心理的負荷評価表の見直し等に関する検討会議事録 第1回職場における心理的負荷評価表の見直し等に関する検討会 1 開催日時及び場所  開催日時:平成20年12月25日(木) 午前10時00分から午前11時45 分まで  開催場所:中央合同庁舎第5号館 労働基準局第1会議室 2 出席者 医学専門家:岡崎祐士、黒木宣夫、夏目誠、山崎喜比古 厚生労働省:石井労災補償部長、新宅補償課長、絹谷職業病認定対策室長、 山口職業病認定対策室長補佐、宮村中央職業病認定調査官、 横田職業病認定業務第一係長 他 ○山口職業病認定対策室長補佐   ただいまから「第1回職場における心理的負荷評価表の見直し等に関する 検討会」を開催いたします。先生方におかれましては、御多忙中のところを 御出席いただきまして、誠にありがとうございます。会議を始めるに当たり、 事務局から資料の確認をいたします。  資料1は「職場における心理的負荷評価表の見直し等に関する検討会開催 要綱」、資料2は「精神障害等に係る労災補償状況」、資料3は「厚生労働省 が実施した委託研究の概要」です。これは平成14年度のストレス評価表の充 実強化に関する研究と、平成18年度の精神障害を引き起こすストレス調査に 関する研究の概要です。資料4は「ストレス調査に関する医学文献」のリス トです。資料5は「心理的負荷評価表の見直し等に係る論点について(案)」 です。そのほか、参考資料を2つ配布しています。  議事に入る前に、本検討会のメンバーの御紹介をいたします。東京都立松 沢病院院長の岡崎先生、東邦大学医療センター佐倉病院精神医学研究室教授 の黒木先生、大阪樟蔭女子大学大学院人間科学研究科臨床心理学専攻教授の 夏目先生、東京大学大学院医学系研究科准教授の山崎先生です。それでは開 催に当たりまして、事務局を代表して、労災補償部長の石井より御挨拶を申 し上げます。 ○石井労災補償部長  第1回の検討会の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。本日、 お集まりの先生方には、日頃から労災補償行政に大変御協力を賜っておりま すことを、この場を借りまして厚く御礼申し上げます。また、当検討会に御 参集いただいたことに対しましても、重ねて御礼を申し上げる次第です。  業務による心理的負荷を原因として、精神障害を発症し、あるいは自殺を したとする事案の労災認定については、平成11年9月に心理的負荷による精 神障害等に係る業務上外の判断指針を作成しまして、判断指針の別表1にあ る「職場における心理的負荷評価表」に基づき、業務上外の判断を行ってい るところです。精神障害等に係る労災補償の動向については、後ほど資料を もって御説明する予定ですが、判断指針策定後の平成12年度以降、労災請求 件数は、平成12年度と比べて約5倍、支給決定件数については約7倍と、い ずれも急増しております。平成19年度におきましては、支給決定件数が268 件となっている状況です。  一方、近年の職場を取り巻く状況を見ますと、企業における組織の再編、 あるいは人員削減の実施など、職場環境が急激に変化しており、第一線機関 での労災認定実務に際して、心理的負荷の評価が困難となる事案が、少なか らず、散見されるところです。この点につきましては、国会の場でも指摘を 受けており、現在の職場における心理的負荷評価表の中身を検証し、見直す べきは見直すとする答弁が当時の副大臣からなされているといった状況です。  こうした状況などを踏まえて、私どもとしては、多様な職場環境等に対応 した職場における心理的負荷評価表の見直しなどを行うことが、重要かつ急 務と認識をし、今般、こうした検討会を開催することになりました。この検 討会におきましては、心理的負荷評価表における具体的な出来事の追加、修 正などに関して、医学専門的な見地から、御検討をいただきたいと考えてい るところです。併せて、現行の判断指針の基本的な考え方などに関しても、 御意見を頂戴できればありがたいと考えております。  御参集の先生方におかれましては、本検討会の開催趣旨について御理解を 賜るとともに、忌憚のない活発な御議論、御検討を賜りますよう、お願い申 し上げる次第です。簡単ではありますが、第1回の検討会の開催に当たりま して、私の挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○山口職業病認定対策室長補佐   ここで本検討会の庶務を務める事務局を紹介いたします。労災補償部長の 石井、補償課長の新宅、職業病認定対策室長の絹谷、中央職業病認定調査官 の宮村、職業病認定業務第一係長の横田、私は室長補佐の山口です。よろし くお願いいたします。  続きまして、本検討会の座長についてお諮りしたいと思います。お手元の 開催要綱に従って、座長は互選によりお願いしたいと存じます。どなたか御 推薦等はありませんか。 ○黒木先生   岡崎先生を御推薦いたします。 ○山口職業病認定対策室長補佐  そのほか、御推薦等はありませんか。特段なければ岡崎先生に座長をお願 いしたいと思いますが、いかがですか。                 (了承) ○山口職業病認定対策室長補佐  皆様の御賛同を得ましたので、岡崎先生におかれましては、恐れ入ります が、座長席にお移りいただければと思います。座長に一言御挨拶をいただい た後、以降の議事運営をお願いいたします。 ○岡崎座長  検討会の先生方の御指示ですので、十分に務まるか自信はありませんが、 できるだけ検討会の目的が達成できるように努めていきたいと思います。ど うぞよろしくお願いします。  先ほど石井部長からお話がありましたが、目的は、心理的負荷評価表の見 直しでございます。国会でもご議論があるということですし、心理的負荷評 価表の見直しによって、より適切な評価がなされるようにしていくことが、 今回の検討会の主たる目的ではないかと理解しております。先生方、どうぞ よろしくお願いします。  それでは、議事に入ります。事務局から改めて本検討会の開催の趣旨や目 的等について御説明をお願いします。 ○山口職業病認定対策室長補佐  資料1の「開催要綱」に従って、御説明いたします。本検討会開催の趣旨・ 目的は、業務による心理的負荷を原因として、精神障害を発病し、あるいは 自殺したとする事案については、本日の参考資料2、平成11年9月に策定し た「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」に基づいて、 同判断指針の別表1、「職場における心理的負荷評価表」により、業務による 心理的負荷の強度等について評価し、業務上外の判断を行っているところで す。この判断指針策定以降、企業における組織の再編や人員の削減等の実施、 あるいは能力主義、成果主義に基づく賃金・処遇制度の導入等に伴う人事労 務管理の強化等が認められる中で、業務の集中化による心理的負荷、職場で のひどいいじめによる心理的負荷など、新たに心理的負荷が生ずる事案が認 識され、現行の心理的負荷評価表における具体的出来事への当てはめが困難 な事案が、少なからず見受けられております。  このような状況を踏まえて、厚生労働省では、平成14年度及び平成18年 度において、ストレス出来事の評価に関する委託研究を実施いたしました。 今般、これらの委託研究の結果に基づきまして、判断指針の別表1、職場にお ける心理的負荷評価表における業務上の具体的出来事等に関する検証・検討 を行うため、医学専門家の先生方に御参集をいただいて、本検討会を開催す ることとなりました。  主な検討事項は、職場における心理的負荷評価表には、具体的な出来事が 31項目ありますが、これを中心とした評価表の見直しとその他、関連する事 項についてです。  そのほかとして、本検討会は、原則公開とさせていただきます。本検討会 の開催要綱は、平成20年度12月10日から施行しております。簡単ではあり ますが、以上です。 ○岡崎座長  事務局から本検討会の開催の趣旨や目的等についてお話いただきました。 ただいまの御説明について、何か御意見等がございましたらお願いします。 よろしいでしょうか。そういう趣旨で、本検討会が開催されることについて、 先生方には御了承をいただいたと思います。  資料2から資料4まで続けて御説明をいただければと思います。資料2、精 神障害等の労災補償状況の推移について、平成14年度、平成18年度に行わ れた研究の結果というふうになると思いますが、事務局から御説明をお願い します。 ○横田職業病認定業務第一係長   資料2から資料4について、事務局から御説明します。資料2、精神障害 等の労災補償状況の推移について、1頁目、精神障害等の労災補償状況の推移 について掲載しております。精神障害の労災の補償状況については、労災請 求件数及び支給決定件数が共に増加している現状にあります。特に、判断指 針が策定された平成11年度から急速に増加しております。直近の平成19年 度では、判断指針が策定された平成11年度と比較し、労災請求件数が約6.1 倍となり、797件増加しました。支給決定件数が約19.1倍となり、254件の 増加となっております。1頁の下にグラフを付けております。  2頁目、現在の労災補償状況の業種別の傾向についてです。直近の平成19 年度のデータでは、業種別では「製造業」、「卸売・小売業」、「医療、福祉業」 の3業種の請求が多い状況です。支給決定件数で最も多いのは「製造業」の 59件、次いで「卸売・小売業」の41件となっております。  3頁目、職種別の傾向については、専門的・技術的職業従事者、事務従事者 の2業種の請求が多く、共に200件を上回る状況です。次いで生産工程・労 務作業者の191件の順となっております。支給決定件数については、専門的・ 技術的職業従事者が最も多く、前年度の60件から15件増加して75件となっ ており、続いて、生産工程・労務作業従事者、事務従事者の順に多い状況で す。  4頁目、年齢階層別の傾向については、精神障害は脳・心臓疾患と異なり、 30代の請求が最も多く、340件となっております。次いで40代、20代の順 に多い状況です。支給決定件数についても、同じく30代が最も多く、100件、 次いで20代の66件という現状です。  資料3、厚生労働省が実施した委託研究の概要についてです。判断指針策定 以後、企業における組織の再編や人員の削減の実施など、職場環境の急激な 変化が見られる中で、職場でのひどいいじめによる心理的負荷など、新たな 心理的負荷が生じる事案が認識され、心理的負荷の評価が困難となる事案が、 少なからず見受けられるところです。このため、厚生労働省では、平成14年 度にストレス評価表の充実強化に関する研究、平成18年度に精神障害を引き 起こすストレス調査に関する研究を、それぞれ実施しています。  1頁目、平成14年度の委託研究の概要です。平成14年度の委託研究では、 専門家により選定された91項目のストレッサーについて調査票を作成し、東 京、大阪、名古屋、福岡にまたがる7社、2,699名の労働者を対象に調査を実 施したものです。調査結果については、別紙1の3頁目、それぞれのストレ ッサーのストレス度、あるいは頻度といったものが報告されております。ま た、当該委託研究の報告書においては、頻度、ストレス度が共に高い職場関 連ストレッサーとして、嫌がらせ、いじめ、または暴行を受けたなどが報告 されております。  4頁目、平成18年度の委託研究については、同じく専門家により選定され た37項目のストレッサーについて調査票を作成し、東京を含む首都圏や、大 阪府、愛知県の7企業、3,854名の労働者を対象に調査を実施しております。 調査結果については、同じく別紙2の6頁目、それぞれ37項目ごとのストレ ッサーの強度、頻度等が報告されております。委託研究報告書の中では、頻 度、ストレス度が共に高いストレッサーとして、「上司からの強度の叱責を受 けた」、「職場でいじめ、嫌がらせを受けた」などが報告されております。  資料4、ストレス調査に関する医学文献については、ストレス調査に関する 国内外の医学文献について、事務局で事前に検索を行ったところです。判断 指針が策定された平成11年度以降の医学文献について、国内文献については、 CiNiiで「ストレス」、「ライフイベント」、「職場」の3つのキーワードで、ま た国外文献についてはMEDLINEで「ワーカー」、「ストレスフル」、「イベン ト」の3つのキーワードで検索を実施しました。その結果、国内文献につい ては、資料4に掲げる5文献が該当し、国外文献については42文献が該当し ております。  国内文献については、資料4のほかに、文献そのものをお手元にお配りし ております。国外文献については、今回は資料に付けておりませんが、後ほ ど事務局から42文献に係るサマリーを付したリストを別途お送りすることを 考えております。各先生に御検討をいただき、本検討会の検討に資する文献 と考えられるものであれば御要望をいただいて、当該文献について収集を事 務局で行った上で、次回の検討会で提出させていただきたいと考えておりま すので、よろしくお願いします。資料2から資料4の説明は以上です。 ○岡崎座長  資料2から資料4まで御説明いただきましたが、平成14年度と平成18年 度の研究の両方に御参加いただいている夏目先生から、追加して御説明をい ただければと思います。 ○夏目先生  平成14年度と平成18年度の主任研究者として調査研究を行ったのですが、 従来からストレス測定に関しては、さまざまな論文はあるのです。研究です から、1つか2つの企業に限定されているか、あるいは、メーカーだけ、サー ビス業だけというように業種限定が多いのです。  例えば、東京の研究者は東京周辺の企業が対象になるし、大阪の研究者は 大阪周辺という、地域性のバラつきが出るというのが従来の研究で、これは 致し方ないわけです。  国からの委託研究ですので、2つの研究に共通しているのは、全部で7社ず つ行っていることと、第2次産業、第3次産業、メーカー、サービス業、共 に網羅しているという点です。それから、従来の研究の対象人員は500名か ら1,200名ぐらいですが、平成14年度は2,699名、平成18年度は3,854名 と非常に多数の人数を対象にしている。東京、大阪、名古屋、平成14年度は 九州を入れていますが、一応全国をそれなりに網羅している。ですから、地 域の特殊性はそこで相殺されるだろうと見ております。  もう1点は、それぞれ論文を書くときは、研究者は自分の周辺の先生方と 当然、一緒に行うのですが、これに関しては、平成14年度の場合は、研究者 は23名と多数の方にお集まりいただきました。産業医、精神科医、心理の先 生などというように、さまざまな領域の先生方に協力をいただいて、最近は どのような新しいストレスがあるのか、挙げていただいた項目を中心にまと めていったところに特色があります。  平成18年度の場合は、労働衛生が少し抜けていましたので、高田勗先生が 日本産業精神保健学会の理事長ですから、高田先生に代表になっていただき、 御意見をいただいて、そのような形でまとめさせていただきました。言うな れば、全国規模で7社、第2次、第3次産業、しかも対象者は2,500名以上、 有力な研究者はほぼ網羅して行った調査研究であるというのが1つの特色だ と思います。  さらにもう1つ特色を付け加えれば、健常者を対象にしてストレス度を調 査する、あるいはストレス病になった人を対象にストレス度調査をするなど の方法があります。しかし健常者と病気になった人とではストレスの感じ方 が違うと思います。別々の研究はあるのですが、健常者とストレス病者を比 較対照したというのはかなり少ないと思います。平成14年度の場合は約210 名のストレス関連疾患者、平成18年度は115名のストレス疾患の方も対象に して、健常者と比較対照研究を行っている、というのが今回の大きな特色だ と思います。私はここまでできたということは、研究の意義が高いだろうと 思っております。以上です。 ○岡崎座長  どうもありがとうございました。事務局からの説明と、夏目先生からの追 加の御説明をいただきました。以上の御説明に基づいて、自由に御討論をい ただければと思います。資料2から資料4の内容について御討議ください。 ○夏目先生  発生頻度をどうするかというテーマも出てくると思うのです。「希にしか起 こらないものも入れるかどうか」というのは論点であると思うのですが、発 生頻度はある一定数あったほうが、労災評価には良いだろうと思います。し かし発生頻度は少ないが、そのかわり労働災害医学上問題点がある、あるい は社会的に見ても、意義が問われるというものは、仮に発生頻度が少なくて も、それは当然入れて検討したほうがいいと思います。 ○岡崎座長  項目ですね。頻度が低くても、それは項目の重要性を考えて、入れる入れ ないを決めたほうがいいということですね。 ○山崎先生  発生頻度ですか。 ○夏目先生  発生頻度ですね。要するに、アンケートで体験したかどうかということを 問うていますよね。 ○岡崎座長  その辺りに関連して、何かありませんか。どういう項目をストレス評価に 採用するかしないかというのはすごく重要なことですので。 ○山崎先生  たぶん、いまの時点での議論の中心にはならないと思いますが、次の議論 で問題になるとは思いますが、発生頻度が小さいのを入れたいのは重々わか るのですが、要するに、それが大体どこに位置するのかということについて、 再現性のあるというか、信頼性のあるデータが、これだけの規模の調査をや ったにもかかわらず、この数値に安定性があるとはなかなか信じにくいとい うことで、落としたという面もあるのです。 ○夏目先生  ですから、従来から論じられている範囲内でいいと思うのです。特に、際 立って珍しいものを入れようという意味ではなくて、妥当性があるという範 囲内で絞るが、「発生頻度が5%」とか言うようにある一定の所で切ってしま うと、そういうのは漏れ落ちる可能性があるから、そういうことです。 ○山崎先生  そうですね。それは非常に残念ですよね。私も同じです。それを何とか。 ○夏目先生  ある程度はそういうものを入れられるものがあれば、入れたほうがいいと 思います。例えば、従来の評価表でも、労働災害に出会ったとか、それを目 撃したとかありますよね。それはもともとそんなに発生頻度は高くないです が、盛り込んでいますので、その指針を続けていきたいということです。 ○山崎先生  趣旨に全然異論はないのですが、やはり、根拠というか、そういうのをき ちんと詰めていく必要はあると思います。 ○夏目先生  それは当然そうですね。 ○岡崎座長  強度のものというのは、そもそも定義からして、人生において、めったに 出会わない出来事という定義の中に含まれていることですので、低頻度のも のでも非常に重要なものがカテゴリーに入りやすいだろうと思います。夏目 先生がおっしゃるように、考慮するというのはよろしいかなと私も思ってお ります。  調査の男女比ですが、総数からすると女性の方が少し少な目というのは、 従業員の男女比を反映した数値でしょうか。 ○夏目先生  結局、依頼できる企業というのは限られて、企業としてみたら、このよう な研究を行う場合にかなり抵抗があるのは事実です。各研究班に入っていた だいた先生方が、何とか職場関係者を説得して、意義があるということを納 得してもらって行った研究ですので、こちらが強制的にやれるようなもので は、もともとないですよね。かなり、センシティブな問題を含んでいます。 そういう点では、依頼できる企業において最大限努力して、こういう結果が 得られた、ということで御理解していただいたらいいと思います。 ○岡崎座長  通常、そういう調査では、協力率に性差が避けられないのでしょうね。 ○夏目先生  例えば、いろいろな大学の先生方が研究発表をされていますが、それぞれ の先生方が使えるフィールドというのは限定されているわけです。その企業 と関係があり、信頼されているから、その企業で調査、研究ができます。そ うすると、圧倒的に男性が多い企業のほうが、むしろ研究発表が多いので、 男性だけに限定して報告を出すという所も結構あります。そう考えたならば、 ある程度の女性数が入ったというところで、一応できないかなと思います。 ○岡崎座長  数百人の方が参加しておりますしね。わかりました。 ○黒木先生  医療機関の調査がありますが、これはどういうものですか。 ○夏目先生  その先生にお願いして、その方が集められる範囲で集めてもらったら、こ ういう結果を得たと言うことです。 ○黒木先生  これは通院している患者さんに対して、どういうストレスがかかったかと いうことを洗ったということですか。 ○夏目先生  主に、通院している患者さんで、しんどくなった原因をいろいろ先生方が 聞かれて、その内容はその患者さんにとって、どの程度のストレス度があっ たかということです。患者さんから得られたデータということです。 ○黒木先生  それも一応含まれていると考えていいわけですね。 ○夏目先生  はい。それと健常者とどう違うか。よく言いますよね、健常な人が感じる ストレスの強さと、例えば、トラウマに遭った場合であれば、そのトラウマ に遭ったことに対して病気の人が感じる程度はかなり違いますよね。その辺 で、どれだけの開きがあるかというのも、今回の研究では見ていると御理解 いただければいいと思います。もちろん、これを医療機関にお願いするとき にかなり大変だったことは事実ですが、ご了解を得て、行ったということで す。 ○岡崎座長  この調査で、ストレス評価項目につきまして、非常にここは特徴的、ある いは予想に反した結果が出たとか、何か特徴がもしありましたら教えていた だければと思います。 ○夏目先生  資料3の6頁目の別紙2、これは平成18年度の委託研究報告書で、「会社 が倒産した」という項目があります。「会社が倒産した」というのは、実は、 私がかつて実施した健常者のストレス調査票が第1回目の判断指針の格付け 評価で一部引用されました。その当時「会社が倒産した」というのは、かな り点数は高かったのです。今回は6.50と、私としては予想外に低い数字が出 たというのは、めったに会社が倒産しない時代に比べて、会社がどんどん倒 産する時代になると、これだけ点数が下がるかなと。従来の研究と比較して、 ずれがあったということです。  もう1点は、2つの研究で共通しているのは、「嫌がらせやいじめとか、パ ワハラもあれば、職場の中のいろいろなことの出来事が絡んで、こういうよ うなことが新しいストレスだろう」と研究者からの指摘を受けて、それを行 ってみたら、やはり高い結果が出たというのが共通しています。あるいはモ ンスターペアレントとか、お客さんのことが、最近話題になっていますが、 それに類似した項目が既に平成14年度のときでも、「顧客からクレームを受 けた」というのが結構出ています。そういうのを見ると、時代の流れに即し たものが盛り込まれているのではないかと理解しています。  「会社の労務政策とか、能力主義、人事制度がどうのこうのとか、いまは 時代の急変であって、それも大事なことなのですが、それ自体は会社の経営 の方針ですので、それに対する評価というのは、我々はむしろしなくて、そ の制度によってしんどくなった人がいた場合、それにおいてのみストレス度 がどうかという観点で見ていくのがいいのではないか」と、研究班でディス カッションしたときはそういう意見が出ました。それが良い悪いということ を問うと妥当性が低くなりますので、会社の経営方針としておこなっている わけで、それに対して発生した事項について検討したと解釈しております。 ○岡崎座長  非常に特徴的なことだと思います。学校なんかでも、いじめ、心の中に内 化していくと言いますか、そういった事項が非常に高く出ると言われている ように思いますが、職場でもそういう傾向があるということでしょうか。  ストレス評価の項目を考える上で、いまのお話は重要なところだと思いま した。資料2から資料4に関しては、こんなところでよろしいですか。何か ほかにありませんか。何か文献的な知見等で、御紹介いただくようなことは ありますか。 ○夏目先生  いま、紹介された文献に、早稲田の小杉先生や大塚先生の国内の文献があ ります。平成14年度の研究班に早稲田の小杉教授がおられますので、早稲田 の考え方は、ここで反映されているだろうと思います。早稲田がライフイベ ントという生活上の出来事、あるいはイベントについてやってますので、そ この有力な先生方が、平成14年度のときには入っておりますので。 ○岡崎座長  平成14年度、平成18年度の研究班には、ほぼ国内の研究者の方々の意見 が反映されていると考えてよろしいというお話です。黒木先生、山崎先生、 よろしいですか。それでは、この10年間の労災補償状況、大規模な研究とし て出された平成14年度、平成18年度の研究の趣旨、あるいは結果の概要に ついて、先生方も既によくご存じだとは思いますが、ここで改めて報告、ま た御議論をいただいて、一応概要を了解いただいたということでよろしいか と思います。  本日の本題のほうは、そういったことを前提にして、職場における心理的 負荷評価表の見直しを主に検討するということになっております。どういう 項目を検討するかということが大事な問題です。それにつきまして、事務局 から資料5に「心理的負荷評価表の見直し等に係る論点」の整理をして提案 をしておりますので、その御報告をいただいて、そのあとはフリーにディス カッションして検討していきたいと思います。 ○山口職業病認定対策室長補佐  資料5に基づいて御説明します。これは本検討会の論点(案)ということ で、事務局からたたき台として出させていただいたものです。既に御議論を いただいている部分もあろうかと思いますが、大きく5点挙げております。  1点目、現時点における医学的知見から見た判断指針の合理性です。現時点 における医学的知見から見て、現行の判断指針は妥当なものであるか。判断 指針のほかに、判断基準となり得るものはあるのか、という観点から御意見 をいただければと考えております。  2点目、心理的負荷評価表に係る業務上の出来事の追加・修正です。心理的 負荷評価表の出来事として、追加または修正の対象とすべき項目は、勤労者 を対象に実施した平成14年度、平成18年度の委託研究結果によることが適 当であるか。委託研究結果により得られた93項目のうち、出来事の追加また は修正の対象とすべき項目の考え方。この2つの論点を挙げております。  3点目、「心理的負荷の強度を修正する視点」の見直しです。先ほど申し上 げた2点目の検討により、追加すべき事項が生じたら、その出来事に対応す る新たに修正する視点を追加するとともに、現行の出来事の修正する視点に ついても修正が必要かという観点から、御議論をいただければと思います。  4点目、「出来事に伴う変化等を検討する視点」の見直しです。出来事の状 況が持続する程度を検討する観点から、現行の検討する視点について修正等 を行うべきか。出来事に伴う変化等を的確に評価するため、現行の項目の例 示のみではなく、新たに具体的な評価のポイントを示すべきではないか。こ の2つの論点について挙げております。  出来事に伴う変化等を検討する視点については、主に慢性ストレスを評価 する観点から設けられておりますが、実際の運用に当たっては、分かりづら いという意見もありまして、より運用しやすいものにできないかという問題 意識を基に挙げた論点です。  5点目、そのほかとして、実施した研究結果を踏まえ、判断指針別表2、「職 場以外の心理的負荷評価表」についても見直しを行うべきではないかとの論 点を挙げております。論点(案)についての説明は以上です。 ○岡崎座長  5点に整理していただきましたが、そのとおりでございまして、本検討会は、 まず議論をする前提として、現在の判断指針が合理的で妥当なものであると いう前提に立たないと、検討の対象にはなりませんので、それをまず最初に 御確認をいただいて、本検討会の主たる議題の心理的負荷評価表の検討をし ていただきたいと思います。  判断指針システムの妥当性と申しますか、合理性について確認をいただい て、その上に立って、今回の主題である心理的負荷評価表の現状に合わせた 修正が必要かどうかを御検討いただきたいと思います。具体的には、その中 に含まれるライフイベントの追加・修正が必要であるということになると、 先ほどの平成14年度、18年度の委託研究結果の報告がありましたので、そ れを参考にして追加・修正をしたらどうかと思います。  また、強度を修正するという仕組みがありますので、その視点を見直す必 要があるかどうか。主に慢性性を評価することで設けられている変化等を検 討する視点の見直しが必要かどうか。あるいはどういうふうに見直したらい いかという論点です。あとは、その他ということで分けられるかと思います。 明解な論点の整理ではないかと思いますので、その順番で進めていきたいと 思います。まず、この判断指針の考え方、あるいは仕組みについて妥当かど うか御意見をいただいて、それを確認して次に進めていきたいと思います。 ○黒木先生  判断指針の合理性について発言させていただきます。非常に強いストレス が労働者にかかった場合、いわゆる脆弱性が低い、あるいはストレスに強い 人でも、もちろん精神疾患が発症し得る可能性はあるわけです。ストレスに 非常に弱い、脆弱性が高い人が、逆に小さな出来事で発症することもあるの で、この観点に立ってストレス強度を基本に作られた心理的負荷評価表は、 非常に妥当性が高いと思います。 ○夏目先生  判断指針については、山崎先生もメンバーに入っておられたと思いますが、 基本的に「医学モデルだ」と思います。「医学モデル」の中心になっているの は「ストレス脆弱性理論」です。そこで、「ストレスの程度」と「脆弱性、反 応性」という2つの軸をもとに作られている。その「反応性、脆弱性」とい うところに生物学的なものもしっかり盛り込まれている。これからの研究で、 その辺はある程度解明されてくる時代は来るだろうと思います。それが1つ 妥当性ということです。  診断基準としてWHO(世界保健機関)が作った国際疾病分類に準拠して診 断を付けているという点で、世界の流れを非常に汲んでいるし、厚生労働省 や精神神経学会でも使っていますから、医学モデルとして妥当であるという のが第1点です。  第2点は、「ストレスモデル」としてアメリカのNIOSH(国立労働安全衛 生研究所)のモデルを使っております。これは世界的にもNIOSHモデルが 一番よく使われているわけですし、妥当性、あるいは有効性が検証されてい るわけですから、そのモデルに則ってストレスを検討しているという点で、 妥当性があるのではないかと思います。  ストレス評価表に関しては、NIOSHのモデルを頭に描きながら、世界的に 広く使われているライフイベント法を採用して、それを中心に組み立ててい る。そういう点において、私としては「医学モデル」をしっかり踏まえてい る。それから、世界的に有効な「ストレスモデル」を踏まえている。なおか つ、ストレス評価表としては、妥当性が高いと言われているライフイベント 法を使っている。そういうところで従来の判断指針については、私個人とし ては、あるいは多くの方もそうですが、妥当性、合理性は高いと見ています。  黒木先生もいろいろな所で御発表されていますし、黒木先生が企画された 日本精神神経学会のシンポジウムで、労災のことをしましたよね。そこで、 労災のことが学会で、「この内容があまり妥当ではない」という意見は、たぶ ん、あまり出ていないと思います。日本精神神経学会という精神科医が1万 2,000人以上集まる権威がある学会において、しっかりシンポジウムは組まれ ているという点を御指摘したいと思います。  日本産業精神保健学会は黒木先生を中心にして、こういうことに関する委 員会を作って、いろいろな意見を出しておられます。その点で、妥当性は高 い。日本産業ストレス学会という学会がありますが、それも学会で労災認定 に関する特集号があります。それに対して、この内容がどうこうという意見 は出ていません。  日本産業ストレス学会と日本ストレス学会はストレスに関するかなり有力 な学会だと思います。日本ストレス学会でも、「労災のストレスの評価表」に 関する特別企画を組んでいますが、特に異論はないわけですし、各学会がそ のような特集号やシンポジウム、特別企画を組むということは、それなりに 関心も高いし、その内容について広く学会員にも知ってほしい、もし何か異 論があれば、そこで出してほしいということはあると思いますが、いずれも、 私が知る範囲内においては、それに対して大きな異議申立てがあったとは理 解していませんので、学会的にも、学問的領域においてはかなり認知が徹底 されてきつつあるのではないかと理解しています。 ○岡崎座長  詳しくありがとうございました。医学モデルの中で、ストレス脆弱性モデ ルというのが、一番広範な考え方を包摂をし、かつ、支持されている理論だ ろうと私も思っております。  そういった医学モデルに基づいて、具体的には国際的な機構であるとか、 国内的にも学会等で多くの異論がなくて、支持されているというお話をいた だいたと思います。 ○黒木先生  一番大事なことは、出来事を客観的に評価する。この視点が一番大事であ ろうと思います。これは臨床的にも治療を展開していく上で、大事なことで すが、判断指針のストレス評価は、ここを基本にしている点が、非常に重要 だと思います。 ○夏目先生  ライフイベントというのは、実際起こったことに対して評価するわけです から、個人が何か思ったというわけではなくて、誰が見てもそういう出来事 があったという、客観性が必ずそこにあるというのが、学問的に一番意義が ある。医学でも、心理学でも、やはり、客観性という裏打ちがないといけな いわけですから、誰が見てもそういうことは起こっているのだということは、 しっかり押さえられているところが、客観性であるし、学問的な基盤に立っ ているのではないかと思います。 ○岡崎座長  あえて申しますと、主観的な体験が個人によって違うではないかという御 意見も、おそらくあるだろうと思います。これは重要な考え方でもあると思 います。ただ、これは労災の補償のための判断指針ですので、私自身も臨床 をやっていて、個々の患者さんがどういうふうに体験されたかというのは非 常に重要ですが、その方に対する公的な補償ということを考えますと、やは り、客観的な説明性が同時に軸として考えられないといけないと考えます。 こういう平均的な人を対象にしてどういうストレスであるかを考え、かつ、 個別性を考えて修正をするというのが入っていますので、その両方が組み合 わされているシステムというのは、現状では一番説明性も高いものではない かと思います。 ○黒木先生  臨床的にも、例えば、病院における日常臨床で労働者に接するのと、企業 の中で産業医として労働者に接する場合とでは、ストレス評価は違ってきま す。つまり、病院では患者さん側からの言い分や主張からストレスを評価す ることになりますし、企業の中では会社の状況を把握した上で労働者にかか ったストレスを評価することになります。要するに、患者さんが言っている ことをまず受け止めますと、患者さんの個人の立場から、患者さんが、どう いうストレスを受けていたかという話がバーッと出てくるわけです。  しかし、実際には、企業の中で第三者がどう見ているか、あるいは家族が どう見ているか、これを総合してストレスを評価することが非常に大事なわ けです。そういった観点から、このストレスは客観的に評価するのは基本で あろうと思います。 ○山崎先生  ストレッサーというものを客観的に評価するというのは、具体的にどうい うことかということです。それを今回、従来の方式を踏襲して、結局、出来 事が及ぼすストレス度というのは、言ってみれば受け手の脆弱性との関係で、 いろいろなバリエーションが生まれるわけです。  しかし、その出来事が、少なくとも、一般的にはどの程度のストレスを人 間に与える可能性を持っているのだろうかというのはどうやって測定するか というと、これがえらく簡単になるわけですが、沢山のそれを経験した人た ちのストレス度の平均をとるという形で、その出来事が持っているポテンシ ャルというか、そういうものを見る。したがって、この出来事を経験してい るかどうかということで、その人がどの程度のストレス度を持つストレッサ ーにさらされたのかという判断をする方式を採っているわけです。そういう 意味で、客観的事実だと言える。  ですから、同じストレッサーにさらされながら、実際には、その時その人 にとって強烈な場合もあるし、その人にとってかなり軽いものもあるかもし れない。しかし、それは個々のケースの判断であって、それはそのことを問 題にすると、結局、この人にとってはこれは重大だったみたいなことを主張 しますと、主張し過ぎると、主張する側がどういう問題になってくるかと言 うと、この人は弱い人だということを強調することになるわけです。そうす ると、弱いことが原因でストレスがもたらされたみたいなことになると、強 度のストレッサーにさらしたという、そちら側が原因でなくなるという点で、 そこまで労災で救うかという、そちらの議論に入ってしまいます。やはり、 重要なのは、労災との関係ではその人がどの程度のストレス度を持っている ストレッサーにさらされたのかを判断するのが基本かなと思います。 ○夏目先生  あえて同じことを言うならば、自然科学的な方法をとれれば、客観性も再 現性もあるということになります。ところが、ストレス度の測定に関して、 確立された自然科学的な免疫学やカテコールアミンなどの測定とか、いろい ろ意見はあるのですが、いずれもまだ確定はされていないし、妥当性も検証 されていません。そういう方法は使うことはできないとするならば、山崎先 生がおっしゃったように、いろいろな調査研究をしながら行うしか、現段階 では方法はないということは広く一般的に知られている事実です。その方法 を使っているということは言えると思います。 ○黒木先生  臨床的には、いまおっしゃったストレスに弱いということだけではなくて、 やはり当人がどう感じた、あるいはどう解釈したかということが自分はスト レスを受けたという主張につながるわけです。だから、本人にしてみれば、 それは強いストレスだろうと思います。しかし、それを精神医学的に見ると、 これは本人の感じ方や捉え方や解釈の仕方に問題があって、そのストレスを 強く感じているということがあって、それはやはり客観的なストレスから逸 脱するわけです。  問題は労災であるかどうかということは、ストレスが本人に影響を与えて 精神障害が発症したということを、こちらは判断しなくてはいけないという 観点から、客観的な評価が非常に重要だということを私は言いたいです。 ○岡崎座長  非常に大事なところは、出尽くしたというか、議論いただいたかなと思い ますが、大体よろしいでしょうか。検討の対象とするこの判断指針について は、いまの考え方、システムが合理的で妥当であろうというような御意見が 支配的だったかと思いますが、そういったことを確認いただいたということ で、よろしいでしょうか。  その上に立ちまして、先ほど申し上げましたが、心理的な負荷評価表に係 る業務上の出来事の項目について、追加あるいは修正が必要かどうかの検討 に進んでいければと思います。では、そういうことで判断指針につきまして は当たり前のことかもしれませんが、現行のシステムが妥当であろうという ことを確認いただいたということで。ありがとうございました。  平成14年度と18年度の委託研究の御報告をいただいたのですが、それか ら文献のリストも、海外の文献については出ていませんが、また次回までに そういった情報も必要であれば、出てくると思います。そういったものを踏 まえまして、大体平成14年度、18年度は規模も一番大きいということもご ざいまして、地域性、あるいは会社、業種による偏りがないようなデザイン で行われた研究というふうに思います。その結果を主に参考にしながら、心 理的負荷評価表に係る業務上の出来事の修正の適否、あるいは修正するとし たら、あるいは追加するとしたら、どういう項目が必要かといったことの検 討に入るということで、今日はその内容の詳細はもちろん検討する時間はな いと思いますが、次回以降、そういった今後の作業方向でよろしいかという ことを御検討いただければと思います。  大体国内の文献に挙がっているような代表的な研究者の方々も、その研究 班に御参加いただいているようでございますし、その先生方の御意見も反映 した平成14年、18年度の結果だというふうに理解しています。どうも、そ れに対応するような大きな研究はほかにはなさそうでございますので、2番目 に先ほど論点として出されました平成14年度、18年度の委託研究結果を参 考にして進めるということです。それから委託研究結果では、93項目という 非常に多数の出来事が取り上げられて、それについて検討されていますので、 当然その項目を参照しながら、心理的負荷評価表の出来事の追加・修正をし ていくということになるかと思いますが、そういったことで御了解いただい たということでよろしいでしょうか。ありがとうございました。 ○黒木先生  出来事が多ければ多いほど、その人がどういうストレスにさらされて、精 神障害を発症するに至ったのかとの過程を検討できるので、やはり出来事の 追加・修正というのは必要だと思います。 ○夏目先生  結果的に考えたら、たぶんストレスというのは時代とともに変わってくる ことですね。変わっていくから、今回これを追加するわけですが、その後も、 また時代の変化とともに変わっていくので、ストレスの内容がどう時代とと もに変化するかという辺りは、重要な点だと思います。 ○岡崎座長  そうですね。 ○夏目先生  今回のアメリカで「リーマンショック」がありますから。そうすると、ま た新たなストレスが生じるということは当然出てきますので、時代とともに 変わっていく辺りの、視点を盛り込みながら行うのがポイントです。 ○岡崎座長  そうですね。ですから心理的負荷評価表の検討の前提みたいなものですが、 例えば何年に1回は見直さないと、やはり変わっていくものだということも、 平成14年度、18年度の研究の、先ほど御紹介いただいた会社の倒産、そう いったものに代表されるように、やはりストレス度が変わってくるわけです ので、時代とともに検討し、修正していくということが必要だということは 前提だと思います。  その上で、今回は平成14年度、18年度の委託研究の結果を参考にして、 追加・修正をしていくということになるかと思います。具体的には93項目の うちから、適切なものを採用していくわけですが、現状のもので明らかに不 適当というのがありましたら、それも検討の対象になるかと思います。そう いうことを御確認いただいたということで、先へ進ませていただきます。  その次は先ほど論点で御提案いただいた、心理的負荷の強度を修正する視 点というのが別表1にあるわけですが、それの見直しに移りたいとおもいま すが、その前に事務局から心理的負荷評価表に係る業務上の出来事の追加・ 修正について、次回に案を出していただくということになるかと思いますが、 その考え方、研究結果等の処理の仕方についての考え方を予告的に御報告い ただければと思います。 ○山口職業病認定対策室長補佐  これについて若干説明させていただいていいですか。この委託研究の結果 で、93項目ございますが、これにつきまして、また御議論いただくことにも なろうかと思いますが、考え方の方向について若干御説明をさせていただき ます。この93項目の中には、見ていただきましても、既に現行の判断指針の 中の既存の出来事に当てはめて評価できる内容のものもあります。必ずしも、 追加をする出来事としてなじまないといった項目もありまして、具体的に検 討の対象とする項目につきましては、一定の整理をする必要があると思われ ます。  したがいまして、事務局において一定の整理をさせていただいて、次回に 出来事の追加または修正の対象とすべき項目につきまして、事務局の案とい うか、たたき台というか、そういったものを提出させていただいて、詰めた 議論をしていただければ、御検討していただければと思っています。  つきましては、事務局におきまして、次の方向で整理をさせていただけれ ばと思っています。既に一部議論が出ているものもございますが、まず出来 事のストレス強度の整理ということです。現行の評価表のストレス強度、こ れは実は「I」「II」「III」の3段階でして、ストレス強度「I」は日常的に 経験する心理的ストレスで一般的に問題とならない程度のストレス、ストレ ス強度「III」は人生の中で、稀に経験することもある強い心理的ストレスと。 ストレス強度「II」はその中間に位置するストレスということです。  この平成14年度及び平成18年度の2つの委託研究結果は、現行の評価表 のストレス強度と評価方法が異なっていまして、整合性を図る必要があると 思われます。出来事のストレス強度につきまして、平成14年度の委託研究は 1〜4の4段階で評価をしています。具体的には「1」は全く負担ではなかっ た、「2」はあまり負担ではなかった、「3」はやや負担だった、「4」はかなり 負担だったというふうな評価ですが、この評価につきまして、平均を取りま して、2.49以下を日常的に経験する心理的ストレスと評価される「I」、2.50 〜3.49を「II」、3.5以上を人生の中で稀に経験することもある強い心理的ス トレスと評価される「III」とする。  平成18年度委託研究は0〜10の11段階評価でございまして、具体的には 「0」は全くストレスを感じなかった、「5」は中程度のストレスを感じた、「10」 は極めて強いストレスを感じたというふうな評価です。この評価について、 3.99以下を、4.0未満ですが、日常的に経験する心理的ストレスと評価される 「I」、4.0〜5.99、6未満ですが、それを「II」、6.0以上を人生の中で稀に経 験することもある強いストレスと評価される「III」とすると整理をさせてい ただきたいと思います。  次に本日の参考資料1として、前回の検討会の報告書の抜粋を配布してい ますが、平成11年度に判断指針を策定した際の「精神障害等の労災認定に係 る専門検討会」における考え方等を踏まえまして、この委託研究結果によっ て得られた93項目のうち、次の5つの項目に該当するものを、原則として除 外して整理させていただければと思っています。  参考資料1の報告書の5頁目、「職場のルールに基づいて一般的に行われて いる行為は業務によるストレス要因としては一般的には評価対象にならな い」とありまして、1つ目の事項として、同一事業場の労働者に共通する出来 事です。同じく、報告書の1頁では、「明らかに当事者個人の主観によるもの は、業務起因性の判断に当たって、個体側要因に含めて考えるべきである」 とありまして、2つ目の事項として、個人の主観により発生する出来事です。 3つ目の事項としまして、既存の出来事に当てはめ、評価できる内容のもので す。4つ目の事項としまして、出来事として評価できないような内容のもので す。5つ目の事項として先ほど議論がありましたが、頻度が低いものです。例 えば頻度が5%以下というふうなことを考えているわけですが、例外も当然あ り得るとは思っています。この5つの事項に該当するものにつきまして、原 則として除外をして、整理をさせていただければと思っています。また職場 以外のストレス評価表の出来事も同様の考え方で整理をさせていただければ と思います。以上の点につきまして、御議論、御検討いただければと思いま す。よろしくお願いいたします。 ○岡崎座長  どうもありがとうございました。いま心理的負荷評価表の平成14年度、18 年度の委託研究結果を参考にして見直すという場合に、次回の予告的な内容 になるかと思いますが、そういう方向で事務局としては整理をしたいという ことを御報告いただいたわけですが、その点に関しまして御意見をいただけ ればと思います。  今、5項目挙げられましたが、私は先ほども議論がありましたが、頻度が低 いから、重要でないというのは必ずしも言えないのではないかと思いまして、 お聞きしたのですが。やはりストレス強度が高いものは人生で稀に出会うよ うな、非常に強いストレスにさらされたという定義もございますし、そのこ とに関して、先ほど「例外もある」とおっしゃいましたが、そういったもの は1個1個評価をした上で採用すべきものは採用するという方向がよろしい のではないかと思いますが。一律に5%で切るということがないようにしたほ うがいいだろうと思います。ほかに何かございますか。 ○夏目先生  点数の決め方ですが、これは第1回目のときに作った基準をほぼ、こうい うものに援用したと。例えば6.0以上を「III」とするというのは、1回目の判 断指針を作ったときの内容をほぼ踏まえて、こういうふうにするということ ですか。 ○山口職業病認定対策室長補佐  具体的基準として、こういう形でということはございませんが、考え方と しまして、それを踏まえて整理をさせていただいたというふうにしています。 ○岡崎座長  この辺りは私がよく理解していないのだろうと思いますが、夏目先生、ス トレス強度の分布がございますね。 ○夏目先生  はい。 ○岡崎座長  そうすると、どこで強い、あるいは弱いというのを切ったらいいのかとい うのが難しい課題、問題としてあるのだろうと思います。 ○夏目先生  これはそんなに強いエビデンスがあって、決めたものでは多分ないだろう と個人的には思うのですね。最初ですから。前回、総合のときの決め方の場 合。 ○岡崎座長  現在の「I」、「II」、「III」というものですね。 ○山崎先生  ちょっと内部で少しだけ気になるのは、平成14年度の調査の際には、例え ばこの項目でいうと、56項目の中のストレス度3.0以上といったものを「強」 としていいのかという検討に上がるという意味で、56項目中の上位にそうい う意味で入ってくるのが6項目になります。1/9くらいの項目が入ってくる わけです。変な話ですが、資料3の6頁にあります平成18年度のほうの、会 社が倒産したというのは、少なくともストレス度ではトップですね。相対ト ップです。これは尺度の違いによるものなので、たぶん10点を期待していた のだと思いますが、少なくとも相対トップなのです。だけど、ここは先ほど の議論にも関連するのですが、実は会社が倒産したというのは平成14年度に もあって、平成14年度ではかなりどん尻に近いのです。そのくらい、先生が 先ほど御説明して下さったのとは逆の結果なのですが、そのくらい例数が少 ないと、どうしても、ある特定の外れ値みたいなものにかなり引っ張られて 平均が作られる。本当に1人をひょいと移動させただけで、0.1点は違ってく るわけです。だから、そういう意味で、例数が少ないときの評価はちょっと 慎重にしないといけないということが1つあります。例数が少ないものは入 れるべきではないという議論ではなくて、それの評価は慎重にしないといけ ないということです。  それと、もう1つはしたがって最初に返りますが、先ほど言いましたが1 /9がいわゆる強度の強いものとして検討されるみたいなものが平成14年、 平成18年は先ほどの基準でいうと、私の理解では、実際にはこれを検討した のは37。37のうちの6.0以上ということで、3項目が入るわけです。実際問 題、これは3/37ですから、1/10ぐらいですか。通常であれば、何分の1 というのはなるべく近くしたほうがいいというので、変な話で、かつ職場で 暴行を受けたというのがこれでもって外れていくわけですね。だけど、私は 思うのですが、同じ論理で、上位1/10を検討の対象にするというような意 味で、今回4番まで取ると。したがって5.90まで取るという、そういう分布 でもって揃えるという考え方を取ったほうがいいのかなというのが正直なと ころです。  そもそも切りがいいというのは、あまり理由にならなくて、むしろ項目の 中で、全体として項目はこの得点をやると、正規性を持っているはずなので、 やはり何分の1ということで、取るというような表記の仕方がいいのかなと いうのが正直なところです。 ○岡崎座長  多数でやりますと、ある程度の頻度があるものは正規分布するわけです。 分布を考慮するということですね。 ○山崎先生  基本的にはそういうことですね。現実に考えてみても、職場で嫌がらせ、 いじめを受けたに対して、職場で暴行を受けたというのは、0.8%で1%もな いというがゆえにこういうものに引っ張られて、出てくるのだと思いますが、 論理的に考えたら、嫌がらせ、いじめを受けた以上に暴行を受けるのも当然 得点は高いはずなんですね。高い人が多いはずなのです。だから、そういう ような意味で、4番まで入れる。それを5.90とした根拠は一体何かというこ とを、全体の項目数の中で10分の1程度ということで、何点以上を検討の対 象にしたというほうが、一応理にかなっているかなと思います。  そうしないと、片方を6.0で片一方を3.0で切っている根拠が、非常に数値 がきれいだという以上に変なのです。 ○黒木先生  基本的なことですが、この「ストレス度」というのはどうやって出したの でしたか。 ○夏目先生  今回のですか。 ○黒木先生  今回というか、平成14年度も含めて。 ○夏目先生  要するに例えば平成18年度でいけば、ゼロから10の間の点数を5点、4 点とつけますね。それを合算して、平均値を出します。 ○黒木先生  アンケートからということですね。 ○夏目先生  アンケートです。 ○黒木先生  だから、本人がつけたということですね。 ○夏目先生  そういうことになります。 ○黒木先生  そこを割り出したわけですね。 ○夏目先生  これも体験した人の点数になります。 ○黒木先生  だから、本人が感じたストレス度ということですね。 ○夏目先生  そうです。私が最初にやった研究というのは、「その人が体験していても、 していなくても、どう感じますか」というものでしたが、それのいいところ は、多人数の人が評価するから、かなり妥当性がある点数になるだろうとい う考え方があるわけです。  もう一点は「体験した人でないと、綿密に測かれないというふうに考えた 場合に体験した人のみの点数を出す」というのと、2つやり方があるのですね。 今回は多分体験した人だけの点数をやったから、人数が少ないところの場合 に先生が言ったみたいな要因が働いたのではないかと思います。 ○山崎先生  いずれにしても、体験した人がその出来事をどのくらいの範囲で理解する かという問題に関わりますので。 ○黒木先生  あくまでもこの評価表というか、評価というのは入口ですね。だから、個 別・個人がどういうふうに解釈をして、精神疾患発症につながったという材 料にするということでいいわけですね。 ○夏目先生  だから、あくまでも、評価表というのは、いうなれば目安でして、この評 価表を作ったからといって、それを労災認定のときに機械的に当てはめるわ けではなくて、3名の精神科医か心療内科医が労働局・労働基準監督署の職員 の持ってきた資料を基に、そこでどんな内容があったかということを、詳細 に検討して、最終的に判断をするわけです。だから、どうしてもこういうよ うなアンケートにした場合に先生がおっしゃるようなことは、当然入りうる わけです。でも、何らかの基準が必要だろうということで、一応機械的に算 出することでしかできないと思います。  でも、私が一番懸念していて、現実にうまく適応できたのは、労災のIII、 II、I(強、中、弱)をつけるときは、繰返しになりますが、3名の専門家と 事務局が綿密に示してきたデータを基にそこでディスカッションしながら、 具体的にいろいろなことを聞きながら、それで決めていますので、機械的に 決めているわけではないのです。どうもそこは誤解されるところがあるので す。ただ、多くの人を対象にして、大体どの程度のものかというのがなけれ ば、そもそものストレス強度の「強、中、弱」が決まらないから、こういう ような形で、決めていったということになります。 ○山崎先生  そもそも個々の出来事を見る視点というようなもので、実際にそれに対し てどういう状況の下で、その出来事が起こっているのかということが判断さ れるという仕組みに、一応評価表自体はなっているので。 ○黒木先生  そこでは修正ということが重要になっているということですね。 ○夏目先生  そうです。修正するという視点があるので、これが最も大事なことですね。 ○岡崎座長  いろいろ議論をいただきました。先ほど確認をいただいたことで、平成14 年度、18年度の委託研究の結果を主な参考にして、今後の心理的負荷評価表 の追加・修正を行っていくということと、いま御議論いただいたその強度を 修正をする、その点で先ほど分布等を参考にして、項目を検討し、さらにい ま御議論いただいたような形で修正する視点も御検討いただくという方向で いいのではないかというお話があったかと思います。何か、ほかにまた強度 を修正する視点について追加の御意見がございますでしょうか。次回までに、 事務局で先生方の御意見を整理してこの点についての事務局案も提案される 予定です。いま議論がありましたように項目をどう生かしていくかというこ とで、強度の修正の視点というのも、やはり大事なことだと思います。追加 の御意見、特になければ次回検討会でその点を検討するということで御確認 いただいてよろしいでしょうか。ありがとうございました。  次は4番目ですが、「出来事に伴う変化等を検討する視点」の見直しについ てはいかがでしょうか。出来事の状況が持続する程度を検討する観点から現 行の検討する視点についての修正等を行うべきかどうかということと、出来 事に伴う変化等を的確に評価するため、新たな具体的な評価のポイントを示 したほうがいいのではないかという、2点があるかと思います。 ○夏目先生  平成11年に作られ、しっかりしたものが出来たと思いますが、時代の変化 とともに修正の観点は変わると思います。例えば、正社員ばかり多かった時 代と、派遣社員とか、いろんな方が沢山混じった職場環境の変化、あるいは どんどん企業が合併したり、リストラがどんどん進行していく世の中におい ては、変化に対する修正の視点がある程度変わってくるのが1点です。もう1 つは、あのときは、まだ実施されていないという前提で作ったものですね。 今、各都道府県の労働局の専門部会でいろいろ検討してきますね。そこで、 多分いろいろな疑問点も出ていると思うので、そこをうまく合理的な形でま とめられたら、今後行政的な施行がしやすいのではないかというふうに思っ ています。 ○岡崎座長  はい、ほかにはございますか。具体的には変化等を検討する視点には仕事 の量の変化、仕事の質、責任の変化、仕事の裁量性の欠如、職場の物的、人 的環境の変化、会社の講じた支援の具体的内容とか実施時期等、その他派生 する変化といったような項目が挙げられています。全体にかなり抽象的な表 現ではありますが、こういったものも、やはり変化するということですね。 ○夏目先生   例えば、この「嫌がらせ、いじめ、または暴行を受けた」、暴行というのは 暴行を受けた社会的な事実があるからわかりやすいのですが、嫌がらせ、い じめというのは、まずどこで定義するのかという問題もあります。また、嫌 がらせが何回続いたのか、それとも3カ月の間ずっと続いていたのか、誰も 止めなかったか、止めたとか、あるいは相談室みたいなものが設けられてい るのか、設けられていないのかによっても違いますね。そんなことを加味し て、修正の視点を作っていくというのが一番妥当ではないか。言うならば、 嫌がらせとか、いじめというのは確かにあったといえばあったのだけれども、 学校内におけるいじめも一緒だと思いますが、それをどのような形で分かり やすく目に見えるようなものにしていくかは、非常に重要なことだと思うの です。  そこら辺は難しいとは思うのですが、それが変化とか、修正の視点で生か されれば、単に嫌がらせを受けたといったら、ストレスが強いというだけで はなくて、嫌がらせが持続して、なおかつ誰もサポートしないというような ことがあったから、ストレスが強いのだというのが、一番わかりやすい問題 だと思っています。 ○黒木先生  その辺の事実の捉え方が難しいのです。ある所で患者さんに暴行を受けた とかがありましても、でも誰も見ていない。その患者さんと本人しかいない ということになると、どういった状況なんだろうということになります。本 人はすぐに病院に行ったり、診断書をもらってくる。しかし、傷はないとい うことだと、事実はわからないということがありますね。だから、そこは第 三者の視点は非常に大事になってくると思います。  基本的には平成11年度の、この評価表の「出来事に伴う変化等を検討する 視点」というのは非常にポイントを得ていますし、これに基づいていろいろ な形で評価できるので、これがあることによって、例えば何か仕事でミスを して、長時間労働が恒常化しているとか、これも評価できるわけだし、こう いった視点は非常に重要だと思います。 ○岡崎座長  そうですね。これがあるために個別性の問題もきちんと組み入れられます し、大事な視点ではないかと思います。今後の修正といっても、多くはおそ らく充実させる方向での修正ではないかと思います。すべてそうですが、特 にここはそのような印象を受けております。わかりやすくするということは 大変大事なことですので、これにつきましても、事務局から次回以降に案を 出していただいて、検討することにしたいと思います。いま御意見をいただ きましたように非常に重要な視点ですので、これもまた分かりやすくしてい くということを含めまして、御検討をいただき、その方向で行っていくこと を了承いただいたということにさせていただければと思います。  最後ですが、今のは職場における心理的負荷評価表でしたが、職場以外の 負荷評価表というのも、別表2にございます。これにつきましても、やはり 検討していく必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。 ○夏目先生  たぶん職場以外というのは個人が多いから、職場ほど大きな変化はないと 思いますが、やはり時代とともにある程度変わりうるものもありますので、 それは当然追加しないと、バランスが取れませんので。 ○岡崎座長  はい。これはあまり御異議がないというか、当然だという先生方の御意見 のようですので、職場以外の心理的負荷評価表についても適切に見直しを行 って、必要があれば追加・修正をしていくということでよろしいでしょうか。 ○山崎先生  1つ質問があるのですが、職場以外の心理的負荷評価表の使い方に関しての 何か修正案といったようなものを検討されるのでしたか。使い方について 時々聞くのは。 ○岡崎座長  総合評価する際の。 ○山崎先生  はい。総合評価する際に最終的に労災の適用になるかどうかみたいな話で すので、これの比重が非常に大きい場合に、結局労災としては認めず、つま り労働との関連よりは、はるかに家庭との関連が強いみたいな形で、つまり 相殺する格好で使われているのか、それとも私などが知る限りにおいては、 ときどき仕事上の大変さが家庭の問題を引き起こすという形で、私たちの研 究の分野でスピルオーバーというのですが、要するにそういうのが持ち込ま れて、家庭のいろいろな不和みたいなものが起こってくる。 ○黒木先生  相殺ということではないのではないですか。あくまでも精神障害発症に関 して、例えば、業務上のいわゆる職場での出来事がどのように、非常に過重 性があるかどうかということだと思います。だから、発症要因として、職場 の問題が非常に大きければ、これは労災として認めるということになると思 うのです。極端な言い方をすると、家庭の問題があったとしても、職場の問 題が大きければ、これは労災として認めていくということでいいですよね。 ○岡崎座長  それは指針の中に載っていますね。そういうふうに明記されています。相 殺ではないですね。職場の起因性が十分に認められれば、それはもう職場以 外の要因が中等度、あるいは強い場合でも、例外的には認めるときがあると。 ○山崎先生  一応考量はされるわけですか。 ○黒木先生  もちろん。 ○山崎先生  私はそういう意味ではなくて、しばしば職場の問題こそ引き金となって起 こっている家庭の問題という理解は、職場起因性というものの評価を逆に言 うと、増やすことにつながってくるわけですが。そういうのが足りないので はないか、私の周辺では足りないのではないかという声がすごく聞かれてい まして、だからこちらに沢山丸がつくと、危ないというので主張しないとい う人がいますので。 ○黒木先生  そういかないと思いますね。だから、職場以外の問題というのは、例えば ギャンブルとか株とか、全く個人的にいろいろなことをやっている場合があ り、それが本人に大きなストレスを与えていて、本当はそれが主体的な原因 で自殺をしてしまったとか、そういう事例はあるわけです。そういう事実が 見えないと、これは職場が主体要因なのかということになるわけです。した がって、あらゆる角度からストレスを評価する必要が出てくると思います。 ○山崎先生  あまり機械的に比べるという形を使わないで。 ○黒木先生  相殺とか比べるというようなものではないと思います。 ○岡崎座長  そうですね。例えば帰宅時間がずっと遅くなっているために家庭内も不和 になっていったということもありうるわけなので、やはり職場の心理的負荷 評価が非常に強ければ、結果としてか、あるいは結果でないかもしれません が、職場以外の要因が強くても、職場起因性を認めるという考え方が今のシ ステムだろうと思います。先生がおっしゃるような事例は沢山ありますが、 それを判断していく視点はあります。 ○黒木先生  ポイントとしては例えば夫婦の問題は、どの時点からうまくいかなくなっ て、ストレスとして本人に影響を与えていたのかということで、これは職場 のストレスと同じで、例えば業務上の出来事があって、ここからは本人にと ってストレスに変わったという場合もあり、この辺を見比べながら、検討し ていくということが大事になってくると思います。 ○岡崎座長  大体、本日目的といたしました事項は概ね御検討いただいたということで よろしいでしょうか。次回以降の日程等につきまして、事務局からお願いし ます。 ○山口職業病認定対策室長補佐  本日御議論いただきました点を踏まえまして、次回検討会におきまして、 この心理的負荷評価表の見直しに係る事務局(案)、たたき台の提示をさせて いただいて、詳細な御議論をいただければと考えています。また次回検討会 の日程ですが、次回は1月開催を目途として、別途事務局から連絡をさせて いただいて、調整をさせていただければと考えていますので、よろしくお願 いをいたします。なお、次回以降さらに具体的な御検討をいただくわけです が、本検討会における検討結果につきましては、この検討会におきまして最 終的に報告書として取りまとめていただくということを考えています。以上 でございます。 ○岡崎座長  どうもありがとうございました。不慣れで滞ったところもございましたが、 先生方の御協力を得まして、一応本日の検討会の目的は達成したかと思いま す。ありがとうございました。事務局にお返します。 ○山口職業病認定対策室長補佐  どうもありがとうございました。これをもちまして、本日の検討会を終了 いたします。 照会先:労働基準局労災補償部補償課職業病認定対策室認定業務第一係 電話03-5253-1111(内線5570)