08/11/20 第2回周産期医療と救急医療の確保と連携に関する懇談会議事録 第2回 周産期医療と救急医療の確保と連携に関する懇談会 日時 平成20年11月20日(木) 18:00〜 場所 厚生労働省9階省議室 ○指導課長 ただいまより、第2回「周産期医療と救急医療の確保と連携に関する懇談 会」を開催いたします。本日はご多忙のところ、委員の皆様方、また参考人の皆様方に おかれましてはご参集いただきましてありがとうございます。  本日は、すべての委員がご出席です。初めに、前回ご出席いただいていない委員をご 紹介させていただきます。市立堺病院の横田順一郎副院長です。また、今回より順天堂 大学医学部産婦人科学木下勝之客員教授に委員としてご参加いただく予定ですが、若干 遅れて到着されるというご連絡をいただいております。また、川上委員も遅れて到着さ れるとのことです。  本日は、それぞれの地域の取組み事例についてヒアリングを予定しておりますので、 おいでいただいた参考人をご紹介させていただきます。日本助産師会の岡本喜代子副会 長です。広島県健康福祉局の迫井正深局長です。青森県立中央病院総合周産期母子医療 センター長の佐藤秀平先生です。  また、本日は、厚生労働省から前回の出席者に加え、渡辺副大臣にご出席いただいて おります。さらに、関係省庁から前回の出席者に加え、経済産業省の木村審議官にご出 席いただいております。なお、舛添厚生労働大臣は遅れて到着される予定です。  資料の確認と、簡単な説明をさせていただきます。座席表、議事次第、開催要綱、構 成員名簿です。資料1は、第1回懇談会の議事要旨で、現時点での案です。これについ てご意見がありましたら、後ほど事務局にお知らせください。資料2は、後ほどのご議 論の際の骨子案ということで、「今後の対策について」です。1番は、良好な実績を上 げている地域の救急搬送体制の例示。2番は、短期目標として実現可能な対策の検討と いうことで4項目並んでいます。資料3は、海野委員からご提出いただきました、日本 産科婦人科学会・日本救急医学会連名の提言です。資料4は、10月27日付で、各都道 府県に対して周産期母子医療センターの診療体制などについて、確認と改善の検討を要 請する通知を発出したところですが、その中でその状況についてご報告いただくことに なっておりました内容について、その概要を取りまとめたものです。資料4は、主に救 急医療情報システムの状況についての結果です。資料5は、同日付の連名通知の中で、 総合周産期医療ネットワークの実態などについて把握をすることになっておりましたが その結果です。周産期医療ネットワークに関する実態調査の結果の速報値ということで、 今後の精査の過程によってデータが一部修正される可能性があることをご留意いただけ ればと考えております。  参考資料1は、先般舛添厚生労働大臣と、この度の2事案のご家族の方々との話合い の際に、ご家族から申入れがあったものです。内容として4項目並んでおりますが、検 証、今後の政策への展開という申入れをいただいています。参考資料2以下は、周産期 医療システム整備指針です。以下それぞれの参考人、あるいは委員の皆様方からいただ いた提出資料です。  議事に入ります。以降の議事進行は岡井座長にお願いいたします。 ○岡井座長 第1回懇談会では、現状の救急医療体制、周産期医療体制の問題点等をご 指摘いただきました。本日はその対策として、できるだけ早くやるべきで実現可能な対 策についてご審議いただきます。前半部分は、それぞれの地域で体制を組んでシステム を運用していて、良好な成績を上げている地域の代表の方と助産師さんで救急の問題を 考えておられる方から、それぞれの地域でのやり方等のお話をいただき、その中から良 い点は大いに参考にさせてもらい、その後具体的な対策の検討に移りたいと思います。 最初に、岡本参考人からお話をいただきます。日本助産師会副会長でいらっしゃいます。 ○岡本参考人 資料としては、参考人のところの岡本分と、カラーで配っていただきま したがパワーポイントのコピー、それからブルーの助産師業務ガイドラインを配らせて いただきました。地域ということではなく、助産師会の場合は主に開業助産師と、お産 を扱う病院等の医療機関の連携ということについて、平成18年に医療法一部改正があり ましたので、その辺りの状況から連携等についてお話をさせていただきます。  カラーの資料をご覧ください。資料5を見ますと、助産所が周産期医療ネットワーク に組み込まれている率が、私が把握していたよりは格段に進んでいて30カ所、64%、こ のグラフとは逆転してかなり進行しています。助産所がネットワークに組み込まれてい ることが、私たち助産所の安全上の確保のためにはいちばんありがたい施策であると考 えております。残りの全自治体でされることを望んでおります。  医療法改正において、大きく助産所の安全性に関しては、第6条で安全管理というこ とで、感染防止などの管理が義務化されたこと。連携に関連した第19条では、嘱託医師 が産婦人科医師でなければいけないということと同時に、24時間緊急体制で対応可能な 母と子両方の施設、あるいは1カ所でできる所もありますが、その確保が義務化されま した。本年3月31日現在、分娩を扱う有床助産所、設備を持っている所が266カ所でし たが、皆様方のご協力のお蔭で全助産所がその確保をさせていただきました。  これを通じて、いままでの口頭での約束事がきちんと文書化が進み、連携が促進され たこと。助産所ではどういう症例を扱うか、どういうときに搬送しなければいけないか を決めた「助産所業務ガイドライン」(今回参考資料として配布しているもの)が各機 関に配られておりますので、助産所の業務内容をより把握していただけたのではないか と思います。  次の頁です。施行後の課題としては、昨今の産科医療事情から、近くに搬送先が確保 できにくいとか、もう1つは嘱託医師経由でないと搬送を受け入れてもらえないので後 手後手に回るということ。契約の期間の最短は6カ月、1年の所も結構多いので、すぐ 次の契約の時期が来て大変であるということ。上司の産科部長等が受けてくれているの ですが、スタッフの医師にはまだ伝わっていないというところ。第19条の適用外になっ ている自宅出産の無床助産所をどうするか、ということ等が課題としてあります。直接 搬送を受け入れていただきたいというのが、分娩を扱う助産所の切なる願いです。多く は受け入れていただいているのですが、まだそうなっていない所もあります。  もう1つ大事なのは、システムの整備だけではなくて、助産師の努力も大事なのです が、顔の見える関係の中で、症例検討会とか勉強会、あるいはフォローの後の話合いみ たいなところまでしっかりやっていくことが重要であると考えています。助産師会では、 助産所の安全性を最優先課題として、ガイドラインの見直しをはじめ、安全対策室を設 置等の取組みをしております。  そして、今後さらに勤務助産師も所属しておりますので、院内助産システムの拡大、 あるいは周産期医療ネットワーク・システムで札幌市が情報管理にうまく助産師を活用 していただいていますので、そのような所に助産師を組み入れていただくこと、また、 早期退院が増えておりますので、その後のフォローなどで助産師を活用していただけた らと思います。 ○岡井座長 ありがとうございました。大変要領よくご説明いただきました。周産期救 急搬送体制に関連するということで助産所からの搬送の問題に絞って、ここでご質問を お受けいたします。 ○有賀委員 一般の救急医療のことで勉強はしてきたのですが、助産師の方たちが自宅 であれ、ご自身の職場であれ、いざとなったときには嘱託で面倒をみていただいている 産科の先生経由で救急隊を要請する、というのが基本的なルールなのですか。 ○岡本参考人 いいえ、今回の医療法の改正において、それでは緊急のときに間に合わ ないので、そうでない場合も認めるというふうにしていただいているのですが、やはり 個々の先生の考え方がありまして、必ず嘱託医を通してくださいという所もまだありま す。 ○有賀委員 件の患者の搬送先の選定というのは、一般の救急医療においては救急隊又 は消防本部が選定のときに相当程度の意見を言うことがあります。助産師たちの中では、 その運び先はほとんど決まっていると考えていいのですか。 ○岡本参考人 嘱託医療機関に相談し、そこが満床であれば違う所を紹介していただき ます。あるいは、周産期医療ネットワークが整備されている所は、そのネットワークで 紹介していただく形になっています。 ○有賀委員 消防本部ではなくて、いまおっしゃったネットワークや嘱託の先生方のパ ーソナルコネクションが基本的なスキームだと思っていいのですね。 ○岡本参考人 はい、そうです。ただ、法律で決められた嘱託医療機関と相談するとい うことです。 ○岡井座長 ほかにないようでしたら、次に迫井参考人からお話を伺います。 ○迫井参考人 私どもの県で、現在運用されております医療情報ネットワークの概要の ご説明と、周産期医療の実情について、大きくこの2つについてご説明いたします。医 療情報ネットワークはいくつかコンテンツはあるのですが、今回の関連でいくと、救急 医療情報ネットは昭和55年から整備している内容と、平成9年から整備している周産期 医療情報ネットと大きく2つあります。  後ほど出てくるのですが、周産期医療情報ネットについては、搬送調整について実際 はあまり活用されていないのが実態です。救急医療に関しては、特に都市部で課題とな っておりますので、いろいろな修正を加えて、今回主にご紹介したい搬送システムを支 援する、「こまっTEL」システムをご紹介いたします。  2枚目のスライドですが、広島市都市部にはさまざまな施設がありますし、人口も多 いので搬送先調整が課題となっています。逆に都市部以外ですとどこに搬送するのか、 あるいはその地域における施設はどういう状況かということは、おおよそ地域において 把握されておりますので、搬送先の調整については事実上固定化されておりましてあま り問題になっておりません。  したがって、課題への対応については、都市部の救急において搬送先調整をどうやっ ていくのか支援システムが要る、ということで行ったのは項目の絞り込み、入力手順の 簡素化、それから「こまっTEL」という支援システムを導入しようということです。ち なみに周産期医療情報ネットワークについては活用方法を含めて見直しの段階に入って いて、今月末にも私どもの協議会で議論していただくことになっています。  3枚目のスライドですが、ネットの見直しについての考え方です。これは相当議論さ れていると思いますが、入力作業を軽減化しなければリアリティがないので、信頼性が 向上していないので使ってもらえないということが1点です。やはり、都市部で毎回毎 回個別に調整のお願いをするのにものすごく時間がかかるのをなんとかしたい。そこで 一斉要請が行えないのか、IT技術を使ってできないのかということになりました。  私ども地域の協議会で議論していただいた結論として、まず入力項目として、詳細の 48項目は必要ない、18項目にしましょうということ。それから、基本的に入力手順を毎 回毎回随時ということになるとなかなかできませんので、逆に、昼と夜の決まった体制 は自動的に毎回入っていき、変更があったときに入れる。体制としては、固定化した情 報は常に入っていて、違う体制を採ったときだけ入力するようにしていったほうが効率 的な入力ができるという見直しを行いました。実際問題としてパソコン入力はやりにく いので、専用端末のようなもので、タッチパネルを乗せたフレッツフォンを使いましょ うということで、端末機器を導入いたしました。それから「こまっTEL」という機能を 付加いたしました。  4枚目のスライドは、「こまっTEL」というシステムの概要です。まず、救急隊が携 帯電話のメール機能+ネットの閲覧機能を使い、複数の医療機関に一度に要請を出せる ようなシステムを導入しています。前提として、最初5回までは個別搬送の連絡を試み る。5回断われた場合には、経験的に5という数字が出ているのですが、それ以上はで きないということで、個別の搬送の調整は一旦やめて、「こまっTEL」という携帯に、 いまこういう患者がいます、受けてくれる所はありませんか、ということで一斉に送信 します。  そうすると、(2)のところで各医療機関には専用端末が置いてあります。これはタッチ パネルなので非常に入力しやすいです。そこがピッと鳴って、いまこういう要請があり ますというふうに連絡が入ります。そこで、各施設がそのときの状況に応じて、受けら れる、受けられないという返事をいたします。そうしますと、メール機能で救急隊の手 元の携帯に、受けられる施設はここで、どの施設だという情報が入ります。今度は(3)の ところで、個別に直接調整をして、最終的に具体的な調整で搬送調整を行います。この 運用は昨年8月から始めていて、まだ1年ちょっとです。数字的に事案の評価はできて いないのですが、現場の評価は非常に高いということと、多数回の搬送調整は少なくと も減少しています。  今回のテーマの2番目ですが、周産期の連携状況についてご説明いたします。広島県 は、こちらの委員でおられます循環器センターの池田先生が以前に集計されていたデー タを私どもは使わせていただいています。10年平均の妊産婦死亡率、周産期死亡率のい ずれも最も低いという状態がずっと続いていました。直近のデータは少し動いています。 我が県は、日本でいちばん安全にお産ができる県だと申し上げています。  その一方で従事医師数は必ずしも多くありません。6枚目のスライドですが、これは 中国・四国隣接9県の中で、産科のドクターは単位人口当たりいちばん低く、小児科の ドクターの数は単位人口当たり2番目ということで、決してマンパワーの点でそれが優 位になっているわけではなくて、逆に言いますとドクターの数を是非いただいて、もっ と安全で充実した医療をやっていきたいというのが現場の思いだと思います。むしろそ のネットワークといいますか、連携がうまくいっているからこそ、こういう成績になっ ているのだというのが現場の認識です。  それではどううまくいっているのか、というのが7番目のスライドです。現場のご意 見を総合しますと、大きく2つあります。最後の砦と俗に呼んでおりますが、総合周産 期母子医療センター、次のコマにありますが、県立広島病院と広島市民病院の2施設が 必ず受ける。基本的にどちらかが必ず受ける。連絡し合って、片方がどうしてもNICU がいっぱいであれば、反対側に受けてもらうか、それでも駄目なら、それぞれの地域に ある地域周産期母子センターと連携して必ず受けていただけるという体制を組んでいる ということです。  2番目のポツで、それが前提となって、他の産科医療機関はそれぞれの役割に専念で きる。もし何かあったときには、総合周産期センターが絶対に受けてくれるという信頼 感の下で運営されているということが大きく指摘されています。  下に書いてありますが、こういう前提となりますのは、広島県での物理的な広がりと、 医療従事者のコミュニティといいますか、マンパワーの数が比較的見渡しがきいて、先 ほどお話がありましたように顔が見える。個別のどこの病院の、どこの産科の部長はこ ういう方で、ということも含めて全部顔が見える。したがって、連携はフェイス・トゥ ー・フェイスでうまくいっています。俗に我々はベストサイズと呼んでおりますが、ベ ストサイズの医療コミュニティができているから、こういうことが可能になる。  こういうことが可能になるベストコミュニティなので、重点化・集約化については通 常なかなか難しいのですが、県全体でそういうことを少しずつ議論していって、広島県 にある呉地域では、3つの病院の分娩施設を2病院に集約していくという取組みも可能 になっているという状況です。簡単ですが以上です。 ○岡井座長 ありがとうございました。患者の搬送先を探すことが今回も大変問題にな っているわけですが、情報の伝達の迅速化について、広島でやっている例を具体的にい くつかお示しいただきました。あと、地域の体制等にもお話が及びましたけれども、今 回のテーマに関係のあることでご質問をお願いいたします。 ○海野委員 広島県は必ず受けるという仕組みでやっているということなのですが、私 が調査した結果では、47都道府県のうち、県内施設が必ず受け入れる形で周産期医療シ ステムを運用している所が25カ所あります。これは、大都市圏以外では結構やっている ことだということはあると思います。  1つお伺いしたいのですけれども、重点化・集約化の取組みで、集約化を呉でやろう としたときに、結構反対運動があったりしてご苦労されたと思うのです。実際に統計数 字が出ているのは平成19年までだと思います。今後、産科医があまり多くない、さらに 減っていくという厳しい状況の中で、この体制は維持できる見通しで県はいるのですか。 ○迫井参考人 維持できる見通しというよりは、維持していきたい、非常にクオリティ の高い周産期医療を維持していきたいという前提で、緊急避難的な意味も含めてさまざ ま取り組んでいます。いま、いみじくもおっしゃられたように、地域の人にとっては施 設を絞るというのは決して歓迎される話ではないのですが、やはり維持していくために はこういう対応がどうしても必要なのだということを理解しながらやっていくというの が実情です。決して楽観的な意味も含めて維持できるなどと思っているのではなくて、 なんとか維持していくためにやらなければいけないことをやっているという考え方で対 応しております。 ○岡井座長 いまのことで私も発言したいのですが、地域で完結させるシステム、その ために絶対に受ける、場合によったらベッドが満床でも受ける、医師がほかの手術にか かっていても受ける、というのも1つの考え方だと思うのです。それでうまくいくケー スもあるのですが、場合によったらいま海野先生からもありましたように、いまは隣の ほうが良い診療ができる体制があるとすれば、そちらへ行ったほうがいいという場合も あると思うのです。  大都市は状況が違うというお話が海野先生からありましたように、いくつも施設があ るので順番に探して、最後は責任の所が決まっていてそこが受けるシステムになってい るのです。しかし、ほかに良い所はないか探すのに時間がかかってしまう。それで私が 興味を持ったのは、一斉に探すというか、情報を流して、空いている所は返事をくれと いうやり方は難しくないように思うのだけれども、あまりやっていないのですか。 ○有賀委員 東京ではやっています。 ○岡井座長 周産期だけやっていないのかな。順番に探すので、そこのところでだいぶ 時間をロスしています。 ○有賀委員 いまおっしゃった、一気に探すというのは「こまっTEL」というものです よね。あれは一般の現場へ行かれた救急隊長が「こまっTEL」システムを使うというこ とですね。 ○迫井参考人 はい。 ○有賀委員 この会のテーマにおける質問をさせていただきます。有賀委員提出資料を 見てください。そこに広島のことがいくつか出ています。例えば15頁には、救急医療情 報システムを活用するのに必要な事項とありまして、広島県では確かにリアルタイムに 表示してほしいとか、一般的なことがそこに並んでいます。17頁には、広島市消防局で は、そうは言いながら基本的なルールは病院群の輪番制をやっています。19頁には、広 島市消防局では、いま言った「こまっTEL」を使って情報収集している。  22頁を見ますとわかりますように、広島市消防局においても、リアルタイムな情報更 新が欲しいと。朝と晩にはやっているけれども、その後も随時にはやっているけれども、 そうは言ってもやはりほかの所と同じようにリアルタイムではないのでなかなか使いに くいということがあるようです。本日のお話に関連して、産科の情報と一般の情報は、 広島の救急隊はどのように混ぜてうまくやっているかを教えてください。 ○迫井参考人 いまのご質問ですが、周産期については明らかに個別調整をしています。 それは、特定施設ということで限られていますので、搬送先の調整をするというのは個 別システムということなので、いまお話したのは一般救急とは少し違うかもしれません。 ○有賀委員 そうすると産科システムで探して、そして産科の妊婦にごくごく稀だけれ ども脳出血があったようなときには、その病院の中で脳外科の先生とうまくやってくれ という話でいいのですね。 ○迫井参考人 その病院ということもあるでしょうし、おそらく救急隊のほうでは明ら かに総合周産期の広島県立病院か広島市民病院のどちらかでもって搬送調整をするとい うことだと思います。  私の舌足らずだった点がありますので2点お話をさせていただきます。周産期は必ず 受けるという意味は、当該施設で必ず受けるという意味ではなくて、場合によって県立 病院も市民病院もNICUがいっぱいだったことがあります。報道していただいたケース もそうなのですが、広島市内にある別の地域周産期医療センターへの搬送も含め、その 搬送先の調整に責任を持つという意味です。ですから、当該施設で必ず全部やるのだと いう意味ではありません。一般救急についても、「こまっTEL」というのは支援システ ムであって、これに全部依拠するという意味ではない。これは消防局のほうから釘を差 して言っています。 ○有賀委員 ですから5回以上とか、大変困ってきたときに「こまっTEL」を使ってい るということですね。 ○迫井参考人 そうです。5回という意味は、最初かかりつけで1回、輪番病院の2つ で2回、残りの2回は輪番の待機病院の2回で合わせて5回。それをやって駄目だった ら、このシステムを使う。ただ、システムを使う5つも、救急隊は現場の救急車からの 搬送調整を続けるし、それからセンターの搬送調整も続ける。したがって、三本立てで 調整をして、いちばん早く調整できた所に行くという考え方です。 ○有賀委員 私の資料の16頁を見ますと、いま言った救急医療情報システムの利用状況 等も、情報システムそのものは特殊科目、例えばICUなどの特殊科目にはたぶん使って いるのだけれども、全体として主たる手段としては利用していないということになりま すよね。「こまっTEL」がいまどんどん進化している途中ですし、資料はその前だから 多少の時間的な差はあるにしてもです。たぶん、ここではどのように混ぜていくかとい う話だろうと思います。 ○岡井座長 周産期救急と一般の救急と別々に動いている所も結構あります。東京も現 実はそうです。これはなぜかといいますと、1つは相当医療内容の違いがあるというこ とです。周産期救急というのは、胎児・新生児救急が90%ぐらいです。NICUのベッド は普通のベッドと違って、人工呼吸器が付いた特別なベッドで、それがないと医療にな らないところがあります。だから、どうしてもNICUのベッドは必要条件になってくる というのが1つです。  それから、患者を送る出発点が、一般救急だと自宅で心筋梗塞で倒れたとかで消防庁 のほうへまず行きます。周産期救急ではそういうのは少なくて、一次診療機関とか開業 の先生からの搬送ですから、医師から医師へという格好で行くルートが中心になってい ます。消防庁のほうへ行って、そこから全部というふうにできてこなかった経緯があり ます。  いまの広島では、周産期救急でも消防署のほうに連絡して探してもらうのですか、そ れとも医師同士で顔が見えるのだから、あそこの病院へ電話をしようという形でやって いるのですか。いちばん最初のステップはどうなっていますか。 ○迫井参考人 個別ケースにもよると思いますが、基本的に医師同士でやっています。 ○岡井座長 それで駄目なときに、消防署のほうのネットワークを使うのですか。 ○迫井参考人 一般的にかかりつけなり、施設で搬送が課題になるのが前提です。例え ば事故に遭ったとか、突然倒れたというようなケースが問題になるのだろうと思うので すが、なかなかそういうケースは少ないということです。私も調べたのですが、運用実 績としてそういうケースはなかったということです。 ○杉本座長代理 基本的には同じことなのですけれども、妊産婦の救急、それからいつ も出産に伴うとは限らない場合、一般救急の中に救急医療情報ネットの中に入っていく のかどうか、それは全く分離して運用されているのか。基本的にいままで多くの所は分 離して運用されていますが、広島はどうされていますか。いまのお話だと、一般救急に 対しては「こまっTEL」というものと、もう1つ周産期は周産期で別に動いているとい う理解でいいのですか。 ○迫井参考人 そのとおりです。分離されているというふうに理解してください。 ○大野委員 2つ教えてください。最後の砦の2施設は必ず受けるということなのです けれども、もし私の立場でしたら、必ず受けていただくときに最初に電話をかけるので はないかと思います。例えば、1医療施設からの電話に最初から集中していくのが現状 なのか、そうではなくていくつかほかの所を当たって、最後の砦として総合周産期にか かってくるのかという現状を教えてください。  もう1つは、この2カ所は精神論ではなくて必ず受けるのだということは、例えば県 の行政と周産期医療協議会などと相談して決定して申し送っていることなのかどうかを 教えてください。 ○迫井参考人 前者は、実際に搬送できる先が限られております。具体的に広島市内で 言いますと、この2施設以外に地域周産期医療センター、民間の土谷病院の3施設にな りますので、事実上最終的な所を念頭に調整されているはずです。めったにはないので すが、2施設の総合周産期がどうしても受け入れられない場合にも、逆に今度は地域の 周産期を使ってというのは先ほどお話したとおりです。  2点目のご質問については、明らかに現場の方々の意識が、まずここで受けなければ どうするのだということでやっていますよ、ということをはっきりおっしゃっています。 これは、行政が音頭を取るまでもなく、現場の方々がそのような対応をされていて、表 現は悪いですが、それを後付けでこのような形を作っていったというのがフェアな言い 方なのかと理解しています。 ○岡井座長 まだまだご議論はあると思いますが、次に佐藤参考人からお願いいたしま す。 ○佐藤参考人 青森の現状ということでお話をいたします。ハンドアウトのほうにはス ライドのものはありません。書いた文章のほうしかありませんが、ハンドアウトのない ものはネットでご覧いただけるようになっていますので、後ほど県の周産期センターの ネットからリンクするようにしておきますのでよろしくお願いいたします。  本日私がお話したいことは、青森県で構築した周産期医療システムの概要、総合周産 期センターの現状と問題点、未来への提言ということでお話をいたします。青森県にお ける産婦人科医、特に産科医は平成20年になってから昭和53年の約半数ということで かなり減少しています。そのような中で産科医と新生児科医も絶対的に不足していて、 限られた人的資源の中で、最大限の医療を目指してシステムを構築しました。 周産期センターを中心とする周産期医療システムで、全国最低だった乳児死亡率を改善 したいということで始めています。また、脳血管疾患や心血管疾患は疾患ごとにあらか じめ搬送先を決めて対応しております。  青森県の特徴として、母体胎児新生児救急搬送マニュアルを作りました。その中には 共通の搬送様式、新生児も母体もと。それから死亡した症例に関しては、新生児・母体 とも登録事業という形で、搬送のデータ、死亡のデータを総合周産期で一括集約し、情 報委員会をつくって検討することにしております。青森県は狭いですけれども、それで も超緊急の対応ができるように4つの地域に分けて、その中核を成すのが総合周産期セ ンター1つで対応しています。  青森県の周産期システムのもう1つの特徴は、先ほど広島県からありましたが、周産 期医療情報システムを設置しています。県内の周産期医療施設から、IDとパスワードで アクセスすることができます。救急システムの中の1つの部門として、周産期に特化し たページを設けています。各診療の受入れ側の施設が、それぞれ受入れ可否の状態を示 していただいていますけれども、非常にシンプルに考えて作っています。応需情報に関 しては4段階で表示しています。これは非常に主観的ではあるのですけれども、入力す る側の負担は全く簡単です。そして何か変更のあるときに入力していただきます。細か な情報、それから院内の特別な情報に関しては、コメント欄に記入してもらうことで、 みんなの共有情報としようということにしています。  搬送先の選択方法は、まず日常業務として、搬送元は搬送先の情報を確認していただ くということと、搬送先の施設に電話で打診します。搬送先を迷うことがときどき起こ るのは当然ですから、そのような場合には総合周産期センターに相談することになりま す。それで、最終的には先ほどと同様に、総合周産期センターで受け入れる形にしてい ます。いわゆる周産期システムの中に掲示板機能を設けています。これは、すべての施 設が書き込み可能状態になっています。そこで幅広い情報を共有し、例えば各施設の診 療体制の変化、担当医の変更、搬送に関しての相談、治療方法に関する相談まで含めて、 各担当医師間のコミュニケーションツールとして、共通の理解の上での搬送依頼が可能 な状態になっています。実際に掲示板にはさまざまなことが書き込まれるのですが、そ れによって各担当医師のコミュニケーションの役に立っています。  それから、一遍に総合周産期だけに集中して搬送されると困りますので、あらかじめ 機能的な分担を決めています。先ほどお話をしたような形で決めていますが、総合周産 期にできるだけ重症例を集中させて、地域には軽症例をできるだけ流すような形になっ ています。当然、地域での受入れ困難例は総合周産期が受け入れます。  青森県では、脳血管疾患及び心血管外科疾患は、周産期システムの整備項目としても ともと最初から入れていました。ただ、県内の状況、院内の状況に鑑みて、疾患ごとの ルールを作り、脳血管疾患に関しては総合周産期、心血管疾患に関しては大学病院とい う形で受入れ先を分けています。総合周産期センターの問題点は非常に多くて、いまも 綱渡り的な状態でやっていますが、総合周産期の医師は周産期だけではなく、婦人科医 師を救急にも対応しています。  ほかの都道府県と比べても、青森県は産婦人科医、新生児科医が決定的に不足してい ますので、これも綱渡り的な現状の1つの理由になっています。そういうことで、総合 周産期センターは1人で当直している状態です。実際に産婦人科側のいまのセンターの 常勤は6名で、センター長を含めて平均7回から8回ぐらいの当直を行っています。6 名のうち4名は女性です。来年度は5名になるかもしれないということで、いまのとこ ろ悩みの種になっています。  新生児科医に関しては、常勤4〜5名のうち指導医が1名にもかかわらず、いちばんリ スクの高い新生児が集中することになっています。昨年あったのですけれども、結果的 には児の合併症、後遺症の増加につながっています。皆さんにお渡ししたハンドアウト には、NICUの網塚部長のほうから現状報告を掲載していますので是非お読みいただけ ればと思います。そのような形で私たちは工夫していましたけれども、いまも綱渡りの 状態でやっていますので、決してうまくいっている県とは言えないと思います。ただ、 10年間平均の妊産婦死亡に関しては、比較的いい数字だということでおそらく私たちの 県がここに呼ばれたのだと思います。  今後、周産期あるいは周産期の救急体制をつくるためには、やはり産婦人科医、小児 科医を増やす必要があると思います。あまり救急と関係ない話になってしまいますが、 産婦人科、小児科が魅力的な科になる必要があると思いますが、よく言われているよう に経済的な安定と、訴訟に縁遠い環境、あるいは仕事から得る充実感、満足感を得られ るようなシステムを作っていかなければならない。それから、現場にいる医師を支えて、 さらなる離脱を防ぐ配慮もしなければならないと思います。  私が最後に言いたいことは、若手の産科医に是非体得させたいのは、自然のお産とか 生命の尊さに対する感動を得られるような職場環境をつくってあげたいと思っていま す。困難な妊娠や分娩例であっても、母子共に乗り越え、出産後の母子のあたたかな愛 情の交流に立ち会える喜びを是非若い人たちにも伝えたいと思います。  もう1つは、異常に至ったらどう対処するかを考えるのは非常に大事なことなのです が、異常にならないように考えることも非常に大事ですので、自然分娩、正常分娩をも っと大切にすることがより重要なのではないかと考えています。産婦人科医の負担を軽 減して、産む人、家族、助産師、そして産科医の喜びと幸福につながるように青森県で は考えていきたいということです。以上です。 ○岡井座長 ありがとうございました。後半の医師不足の部分のディスカッションは今 度にさせていただきます。患者を搬送する体制に関しての質問等がありましたらお願い いたします。  機能的な分担をやっていて、地域のセンターと総合とで相当うまく棲み分けができて いるのですか。そういうふうにしたいという理想の話なのか、現実にうまくいっている のかどうなのでしょうか。 ○佐藤参考人 現実的に棲み分けされています。大体は1回のコールで搬送先が決まる ような形にいまのところはしています。 ○岡井座長 それは地域でいつも研修会とか勉強会をしているからだと思うのです。体 重が何グラム以下が予想されるときだけ総合にして、これぐらいのレベルの体重であれ ば地域にしましょうという話とか、母体であれば早期剥離でDICになっていれば総合だ けれども、剥離してすぐだったら地域とか、きちんと病態を分けて決めているわけです ね。 ○佐藤参考人 そうです。実際に28週、30週未満の症例に関して生まれそうな状況で あればすぐに総合に運んでいただきます。それから、母体ICUが必要な患者はもちろん 総合に運んでいただく形に棲み分けしています。 ○藤村委員 青森県は大変ご苦労されていて、新生児科は5名、それで先生の所のNICU は1,000g未満が年間に20人ぐらいは入っているのではないですか。 ○佐藤参考人 はい、20〜30名程度で年間推移しています。 ○藤村委員 そういう子どもが、5名の医師で当然毎晩夜勤に近い状態で、医師が365 日勤務を続けるのはちょっと危ない。赤ちゃんも危ないし、医師も危ない、本当にギリ ギリを超えているのではないかと思うのです。新生児科なり、産科なり、病院はどうい う対策をとろうとしているのですか。 ○佐藤参考人 やはり人を集めなければならないということは行政のほうにお願いしな ければ、いまのところ私たち現場の人間としては無理です。ですから、なんとかして何 らかのインセンティブを付けてもらうような形での対応がいちばん望ましいです。それ から、産科だけではなくて、NICUのほうの先生方にも、是非新生児の医療に関する魅 力を伝えてほしいし、やりがいも伝えてほしいとお願いしています。 ○岡井座長 藤村先生、それがものすごく大事なことであるのはわかっているのですが、 本日は体制の話に集中させていただきます。 ○有賀委員 一般救急から素朴な疑問なのですが、産科救急と新生児の救急という二本 立てでお話をされているのだと思ったのです。産む前は、もちろんお一方の妊婦ですが、 産んだ後は新生児とお母さんと2つになるわけです。新生児を治療する場所と、お母さ んがいる場所というのは、青森県においてはほとんど同じ場所と考えていいのですか、 それともかなり離れ離れになるケースがいっぱいあるのですか。 ○佐藤参考人 99%お母さんと赤ちゃんは一緒にしています。 ○有賀委員 しようがないので、新生児だけ別の所へ運ぶというようなこともあり得る わけですね。 ○佐藤参考人 あります。新生児外科的な疾患に関しては、一時的にお母さんと赤ちゃ んは別々になります。 ○有賀委員 外科のときだけなのですね。 ○佐藤参考人 はい。 ○岡井座長 まだご質問があるかと思いますが、次に池田先生からお願いいたします。 ○池田委員 3点お話いたします。わが国の妊産婦死亡の推移、都道府県別の妊産婦死 亡率と周産期死亡率、宮崎・大阪の周産期医療の地域化−成功の要因ということでお話 いたします。わが国の妊産婦死亡の推移ですが、1960年に自宅分娩と施設分娩がフィフ ティ・フィフティになりまして、それからは施設分娩に移りました。輸血体制が整備さ れた、厚労省を中心として周産期医療整備対策事業が1996年から始まったというところ で妊産婦死亡等は減少しています。  健やか親子21の目標で、2010年には2000年より半減させる。3.2というところは達 成不可能だと思われていました。しかし、次の頁で見ていただきますと、昨年は3.1で 達成してしまいました。これはなぜかということですが、我々の研究班も中心になって、 母体安全に関して社会に訴えていきました。そのときに大野病院、大淀病院、堀病院の ような事例が起きたことも大きな原因でないかと考えています。  次の頁ですが、世界でナンバー1ないしはベスト3に入るようになっております。た だ、ここで気をつけなければいけないのは、この数値は直接産科的死亡、特に出血を中 心としたような産科の病院で、脳出血や心臓病合併妊娠といったものは間接産科的死亡 といっておりますが取り漏れている可能性があります。最低35%は取り漏れていると考 えております。  次は、都道府県別の妊産婦死亡率と周産期死亡率の相関関係です。1995年から2004 年の10年間ということで、X軸が周産期死亡率です。5.93というところが10年間の平 均でしたので線を引いております。Y軸が妊産婦死亡率で、10年間の平均は1例出ます と大きく違いますので10年間で平均していますが、6.39が全国平均です。そうなりま すと両方とも良い県、両方とも悪い県、どちらかが良い県というところで、先ほど広島 の迫井先生がおっしゃったように、広島県は1995年から2004年ではベスト1でした。 周産期のインデックスというのは、その地域の頑張りが非常に現れる、救急の世界には ないような数値だと考えています。後で宮崎県で申しますが過去に最悪だったのが最良 になった事例もあります。医療現場にとって頑張りがいがある、特に地域ですが、その ような指標だと思っています。  ここで埼玉、千葉、茨城という所は、周産期死亡率も妊産婦死亡率も両方全国平均よ り悪いということで、次の頁でX軸が医師1人当たりの分娩数です。これは、その全出 産数を産婦人科医師1人で割ったものです。1人当たりのデューティですが、大体、産 婦人科1人が110名取らなければいけないことになります。Y軸に周産期死亡率を書い てみました。○を付けたのが中四国で、先ほどおっしゃったように、広島県は全国平均 の110より多いのに良いということです。これを128のところで切って見てみますと、 128人を超えると埼玉、茨城、滋賀、新潟、千葉、青森、奈良という所はすべて悪い。 この辺が人的なものの限界かと考えます。次の頁は妊産婦死亡ですが、妊産婦死亡では そのような傾向は見当たりませんでした。  次の円グラフが、中四国の成績が良い理由です。先ほどおっしゃったように、周産期 医療体制が整っているというのは、送る場所がすぐ決まっているということと、医師間 のコミュニケーション、電話の先に先生の顔が見えるというような状況です。  最後に宮崎県の周産期医療の地域化ということで、成功の要因を4つ書いておきまし た。この四角で囲ったものが特に重要だったと思いますので、まず2番からご説明いた します。私は、宮崎大学の国立大学病院の職員でしたが、文科省が、実際には兼業は駄 目だ。地域に出ていっては駄目だと言っていたのが、あるときから180度一転して、地 域医療の向上に貢献すべしということで、どんどん外に出なさいということになりまし た。  「緊急時に『診療の最大瞬間風速を上げる』地域体制」と書きましたのは、患者が移 動するよりも、医師が移動したほうが早い場合がありますので、兼業願いを出した上で すけれども、そこの地域の病院に行き、そして帝王切開をして、小さい赤ちゃんを連れ て帰るといったことをやってまいりました。そういった意味で、大阪のほうでは、それ をやっている病院もありますが、病院と病院との契約が必要です。ここは、国・地方自 治体・民間の勤務医の移動が非常に制限されていて、兼業禁止規定や、公務員専業規定 を整えていただければ、この辺りの医師の動きは滑かになるものだと思っています。  3番目に、「『ヒューマンネットワーク』形成の促進」というのは、先ほどの広島の 追加ということで発言させていただきます。周産期救急の場合は、救急搬送に関して救 急時のみの対策は初心者であり、松竹梅の搬送であれば梅です。松の搬送、上級者の搬 送はどうかというと、日ごろから搬送時以外に気を配る。どういうことかというと、多 胎とか子宮内発育遅延などはハイリスクで、実際に宮崎では、大学病院にいながらこの 施設に多胎がいるということがわかっていて、そしてこの施設に高血圧になりそうな人 がいるということがかなりわかっていて、そろそろ送ってくださいとか、この方は早産 や中毒症がなくなりましたからお返しするということがよく行われています。  4番の「バックトランスファー」というような、良くなった患者は地域ということも これに入るかと思います。しかし、これは100分の1県という、日本の人口の100分の 1という県が13あるらしいのですけれども、宮崎という小規模なものだからできたのか もわかりません。  1番目の「『地域マインド』を持った、医師の養成」というのは、先ほど佐藤先生が 言われましたけれども、夢を与えるということです。これは恩師の池ノ上先生も言われ ていましたけれども、5年も10年もかかるので速効のものではないように思います。  最後の頁で「大阪の成功の要因」です。宮崎から大阪ということで、大都市ですが、 援助システムは立派なものがあります。前回、藤村先生が30年の歴史と言われましたが、 確かにそのように感じました。平成19年11月から救急搬送コーディネーターを設置し、 ここがちょっと違うところだと思いますけれども、ベテラン産婦人科医師による運用開 始。いわゆるOBといった方をコーディネーターにしました。周産期はここでどこに送 るかとか、ここで自分が行くべきかとか、ここはどっちも受けるべきかとか、かなりコ ーディネーターに専門的な知識が必要だと思いますので、ここは医師がよりベターだと いうことで強調させていただきます。  その結果、病院探しに要した平均時間は50分から30分へ短縮しましたし、電話した 病院数は3.3カ所から2.6カ所に減少したということで効果が出ています。以上です。 ○岡井座長 いちばん最後の表ですが、50分から30分に短縮というのは、平均で見る と相当短くなっていますが、これは何年間でこうなったのですか。いつからいつ、どれ を比較してこれだけ短縮したのですか。 ○池田委員 昨年11月からこの10月ぐらいまでです。 ○岡井座長 1年間でここまで来たということですか。 ○池田委員 はい。 ○岡井座長 その前の50分というのは、どのぐらいの期間を取った平均なのですか。 ○池田委員 2、3年です。 ○岡井座長 それに貢献したのが、コーディネーターとして活躍したベテラン医師だ、 というのが先生の分析ですね。 ○池田委員 はい。 ○岡井座長 池田先生のお話にご質問がありましたらお受けいたします。 ○大野委員 このコーディネーターに非常に興味があるのですが、このコーディネータ ーはどこにいて、ずっと24時間頑張っているのか、あるいは何人ぐらいで運用している のかを教えてください。 ○池田委員 いる場所は、大阪府立母子保健センターにいることが多いのですけれども、 実際には自宅でポケットベル1つでいることも多いです。 ○大野委員 そこに電話がかかってきたときに、どのようなシステムを使って、自宅で いろいろコーディネートするのですか。 ○池田委員 ほとんど自分の施設に取ってしまいます。それで早くなっているのが多い です。 ○岡井座長 あまりシステマチックではないけれども、現実には搬送時間を短くするこ とには効果を上げているという認識ですね。 ○池田委員 しかもOBの先生ですので、後輩に言うと断りきれませんので、効果は絶 大です。 ○岡井座長 それが本当にベストなシステムかどうかはまだ議論があるところだと思い ます。先ほどもありましたけれども、救急事態になる前に予防して、本当の救急事態に なるケースを減らす努力も大事ですよね。搬送とは外れますけれども、搬送しなくては いけないケースそのものを減らしていく。 ○池田委員 産婦人科はその地域の中の文化センターでもあり、尼寺といいますか、駆 け込み寺でもあります。女性の一生というところの、その地域に根差したものですので、 そこで開業しておられる方は、非常に地域の信頼を得ておられます。そういう方と周産 期センターという二次、三次のものが日ごろから顔見知って、いろいろな症例検討会を するということは非常に効果があったと思います。 ○岡井座長 ヒアリングの最後になりますが、藤村先生からお願いいたします。 ○藤村委員 分厚い資料を準備しましたが、実際には真ん中のほうにパワーポイントの 図で説明させていただきます。私たちは、総合周産期母子医療センターネットワークを つくっていて、厚生労働科学研究班でいろいろまとめておりますので、それをそこに示 しております。  実際、私がご説明したいのは19頁をお開きください。ご承知のとおり、「総合周産期 母子医療センター」というのは産科部門と新生児部門からなっています。私は新生児部 門についての全国状況をお話します。2年前には約74施設、そのうち73施設が集まっ た、99%入った施設です。  19頁の下、左の図、横軸に「何年から認可されたか」というものがあります。まず、 非常に歴史が浅いということがおわかりだと思います。平成18年ごろに認可されたのが いちばんピークになっているわけです。すなわち、「総合周産期母子医療センター」の 歴史は、いま、やっと各都道府県に設置されるようになったということです。右側では、 全国の総合周産期母子医療センター、下が病院番号なのですが、新生児の搬送数をこう してヒストグラムで書きますと、同じ「総合周産期母子医療センター」と言ってもいか に搬送数が違うかということがおわかりだと思います。すなわち、大きい施設から小さ い施設まで集まっているということです。  20頁の上、「センターの概要・機能」についてまとめています。このデータでは61 の施設で、いま問題になっている地域の搬送情報システム、母体搬送は88%の地域であ る。新生児搬送は95%である。新生児の搬送患者数は平均53例、施設によっては年間 に426例搬送されています。  それから、92%の施設では新生児搬送を実施しています。実際、新生児科医が救急車 に乗って搬送するのが91%です。大体、救急車も自治体のものは使わないのが一般的、 自院救急車が7割です。ですから、この場でも「救急」がディスカッションされていま すが、かなり特殊な救急、「新生児緊急医療」と我々は呼んでいます。「新生児救急」 とは呼んでいません。  新生児の病床数の平均を載せています。NICUが12床、これは診療報酬認可病床で、 看護師や医師の数が決まっています。その他、その後方病床、グローイング・ケア・ユ ニット(GCU)これもまだ無呼吸を起こしたり、赤ちゃんもまだ1,000グラムちょっと、 退院などまだまだ先、そういうベッドです。合計で平均34床ぐらいあるということにな ります。「センターはお産がこれぐらいあって、産科医がこれぐらいいる」とそこに書 いてあります。  20頁の下は、少し小児科医の実体についてまとめています。横軸が小児科の専従医師 の数、縦軸が新生児、大体6人ぐらいが中央値かなと思います。それより少ないところ がかなりあるということが問題になります。21頁の上、医師の定数と欠員数をまとめて みました。新生児専従280名のうち、15%は欠員となっている。研修医は66名、29%が 欠員となっています。  ちなみに、新生児科医は小児科医から専門化していくことが一般的です。そうでない 場合もあるのですが、ともかく新生児集中治療を主としてやって、一部小児科をまだや っておられるというのが下の欄の左です。そこでも欠員が25%となっています。  最後に、この研究班でまとめた重要なことは、NICUの夜勤看護師の数が多いほど、 その施設の1,500グラム未満の死亡率が低い。すなわち、施設の規模が大きいほどアウ トカムが良い。先ほどの研究班の名前そのものがアウトカムを良くしたいという研究班 ですが、集約化が予後を改善してくるということがここで出てきています。次の頁では、 ちょっと古いデータですが我が国のNICUの実態、学会で調べたものがあります。保険 認可NICU病床が図の右の半分、横軸が保険認可病床の数、1床から3床、4床から6 床という病院がいかに多いかということです。ちなみに、総合周産期母子医療センター では9床以上が推奨されているわけですが、それに該当する施設は非常に少ない。研究 班からの提言は「医師の定数は非常に欠員が多い」、「これがきちんと確保できなけれ ば周産期医療」本体が危うくなる。次に分娩数が多い、夜勤看護師が多い施設ほど死亡 率は有意に低い。すなわち大規模で、かつ良質な体制を整備した場合、ハイリスク新生 児の生命予後はさらに改善するだろう。そういうことでまとめています。  次が大阪のご報告になります。23頁です。大阪ではNMCS(新生児診療相互援助シス テム)を30年前から自主的に作っています。いまで言うNGOです。そこにプロットし ていますように、大阪のそれは基幹病院と協力病院からなって、28施設で構成していま す。  次項で、一体、どのような患者を見ているのかを過去25年間のデータベースで見てい ます。そこに病名が並んでいます。上の横軸が出生体重です。右下の合計、5万5,000 人の患者がNICU28施設に25年間に入院した。その子供の全部の死亡率が4.9%です。 左側の病名を見ていただきますと、どの病気を取っても生命とかかわりのない病気はあ りません。きちんとした新生児集中医療が行われなければ、生命を失うか、重大な後遺 症が残る病気ばかりです。  大阪のシステムの目的ですが、「本会は中等度ないし高度の新生児診療を必要とする 新生児を、産科及びその他の出生施設からの要請に応じ、全数新生児診療施設に受け入 れる」。30年前、我々は初めから全数受け入れる。いま問題になっているものをこのシ ステム、事業の目標に掲げました。  次の頁、「中等度ないし高度の新生児を全数受け入れるため、情報サービス・協力が 行われる」とのことですが、どのように行われているのか。これは30年前から、そこに ありますように送院基準をまず作りました。このような赤ちゃんは絶対的に送ってくだ さいという場合と、該当症状を認めた場合、産科で治療ができるなら送る必要はありま せんが、それが出来ないならやはり新生児専門の施設に送ってください。これを、全部 の産婦人科に配付したわけです。  次頁、そこに紹介状があります。「産科及びその他の出生施設」の全部の施設に紹介 状を配付、赤ちゃんを紹介するときにはこれに書いていただく。あとでちょっと述べま すが、電話はかかりつけの小児科にされます。そこが情報入院というところです。現在、 病院の名前がずっと横に28施設並んでいます。上のボックス、「電話が入った施設」に チェックを入れます。「入院した施設」はチェックを下のほうに入れます。大阪では電 話を受けた施設と入院する施設が違うのが当たり前です。ですから、こういう点を最初 から勘定に入れた紹介情報入院用紙となっているわけです。  開業の先生方、産科の先生方は電話1本すればあとはその後で言います情報センター、 病院間でどこに入院するかを決定するわけです。産科からの患者転送依頼(電話)受理 窓口として、府立母子医療センターの新生児科、市立総合医療センターの新生児科に情 報センターを置いてます。  電話が入ってきた、その病院が入院を受け入れる場合は情報センターには電話がかか ってきません。その病院において自分のところが受け入れられない場合、府立母子医療 センター、市立総合医療センターのどちらかに電話をします。これを受けた場合、直ち に新生児科の医師が救急車に乗って出発します。  それと同時に、残ったもう1人の医師が入院場所の決定を行います。そのためには「大 阪周産期情報システム」を用いたインターネットシステムがありますので、それによっ て空床情報を検索し、当直医は電話によって空床のあるNICU、情報から受け取った患 者の疾患、重症度から「この病院が適切」と思える場所そして、空床があるところへ入 院依頼をします。  その場合、入院依頼を受けた医師は当然、お互い顔見知りの新生児科の医師同士とい うことです。「次の週には研究会があるから、その医師と顔を会わさないといけない」 とか、毎月研究会をやっていますので、「どうしてあのとき採ってくれなかったのか」 となりますから、多少採らないといけないかなというプレッシャーはかかるわけです。  そういうやり取りの中で、次の頁、「本会は新生児診療施設相互の交流と診療内容の 向上を図ること」で、医師同士の顔が見える関係の維持に貢献してきました。産科医と 新生児科医の交流も大事で、搬送するため産科に到着したときに産科の先生と新生児科 医が話をする。これで「新生児科の先生はこういう人」、「産科の先生はこういう人」 ということが搬送のときにお会いしてわかるわけです。次に、病院間の新生児の搬送は、 新生児科医同士が年10回の「症例検討会」等でいつも勉強会をしています。このような 自然な関係でやっているわけですが、実は組織もありまして、下にあるような運営委員 会というものを作ってこれを30年運用してきています。  次がデータベースを構築し、「調査・研究・教育・宣伝」に用います。28頁、入院場 所は病院によってこれだけ入院数に差がある。白いのが院内出生、黒いのが院外出生で す。白い部分、なぜ院内出生がここに入ってくるかというと、先ほどお話のようにこう いう施設はみんな胎児のリスクがあるから母体搬送されて、予めNICUがある病院にお 母さんが運ばれているからです。29頁の上、赤ちゃんが産まれたあとの病気の場合は新 生児搬送になります。大阪で30年間にどういう搬送をしているか。産科の先生が最初に NICUへ搬送し始めたわけですが、これが1980年代です。それから、だんだんと受け入 れ側の新生児科医が搬送するようになって、第三者搬送、先ほどの情報センターから出 た救急車が自分の病院には戻れないけれども、ほかの病院に送っていく。「三角搬送」 が大体3分の1を占めるようになっています。  29頁の下は「時間」です。これは省略します。大体、夜中も同じような活動をしてい ます。  30頁、大阪の救急医療システムを新生児でまとめますと、左の下、一般産婦人科が約 200あり、約7万のお産をしています。これには病院も含まれています。  産科で重症新生児が出生したら、近隣のNICUに電話をします。すなわち、その右に あるLevel-2、Level-3になります。Level-2のNICUは10カ所、高度なNICUは16カ所 あります。入院不可能の場合、入れる場合はここに入ったらいいわけです。入院不可能 の場合、情報センターにLevel-2ないし3の医師が電話をします。情報センターが入院 先を先ほどの「周産期情報ネットワーク」のシステム、インターネットシステムで検索 します。空床情報は毎朝10時に更新されることになっています。電話で医師同士が交渉 したあと、入院NICUを決定します。電話する前に、先ほど言いましたように既に搬送 チームは出発している。Level-4、最高度のNICUが先ほど言った2カ所です。  大阪の新生児集中治療施設が当面している課題としては1、2とあります。まず、 Level-4NICU病床が不足している。例えば、在胎26週以下とか、非常に小さな体重、600 グラムとか700グラムといった方は必ずLevel-4に入れることになっています。そうす ると、Level-4の患者は年に4人ぐらいしか1つのベッドを回転させることができません。 ものすごく入院期間が長いわけです。不足してきます、後方病床がいっぱいです。  2「新生児科医師の不足」、小児科医不足が新生児科医不足につながってきています。 医師の過重労働がますますそれに輪をかけている。ですから、大阪においても、システ ムはあってもNICU施設本体が崩壊の危機にあると言っても過言ではないと思います。 システムも大事ですが、施設をしっかり打ち立てないとシステムを組む個々の細胞が破 壊されていきます。早急に必要な対策は後方病床の確保です。いつも言われていますが、 これを具体的にやらないといけない。又、医師の労働条件を改善して、ここで働けると いうように医師の満足度を高めないといけないと思います。  大阪からの提言を31頁から3つほど。まず、「緊急情報処理と入院」については、大 都市の緊急医療は大規模専門医療施設が最難度の患者を即時受け入れるために、NICU 各施設間の補完関係が必要です。すなわち、軽い患者をLevel-4に取っていてはすぐに Level-4はいっぱいになってしまいます。Level-4の情報センターは当然自分の病院のベ ッドを知っていますから、自分の病院のベッドの占床率を見つつ、この患者はLevel-3 に送ろうとか判断しながらやっているわけです。すなわち、持ち駒を少なくとも10病院 ぐらいは持って、この患者はどこに入れようという判断をしながら当たっていくわけで す。その内容を助けるのが「情報ネットワーク」というインターネットシステムです。 緊急患者情報は近隣のNICUにまず入るというのが大事です。どこでも情報センターに 入れるというのは大阪ではやっていません。情報センターの電話番号自身は、開業の先 生には教えていないのです。Level-4のNICUが入院先を検索し交渉、搬送する。なお、 広域搬送協力も近畿でいま検討されつつあります。奈良、和歌山から大阪へ受け取るこ とが割と多かったのですが、最近徐々に各県自立されているということです。  次が「医師の労働条件の改善」です。これをやるためには、1.Level-3、4のNICUの 規模を大きくする必要があると思います。労働条件を確保しつつ、高度な医療が可能に なります。勤務新生児科の医師の満足度が高まり、少し医師が異動しても簡単には Level-3、4は崩壊しません。安定していく。ですから、規模を少し大きくしないといけ ない。  2.は特殊勤務をやっている新生児科にもう少し待遇改善をしないといけないのではな いか。夜中に平均3時間ぐらい、救急車に乗りながら搬送している医師の姿を見みて、 これに手当がいままで一切ないというのは不思議な世界だなと思います。  「深夜も続く集中治療」、新生児科医の医師は午前5時になっても6時になっても寝 ていないわけです。実はほとんど夜勤体制は取れていませんで、次の日、私どもの病院 でも昼までは働く。そういうことをせざるを得ない。2人当直ですから、とてもではな いが医師が足りないわけです。こういう人たちには繊細な医療行為をやってほしいので、 雑用をともかく省く支援が必要だと思います。  「後方病床の確保」、一般病院の小児科にインセンティブを与えてほしい。これは非 常に重要なので、いま診療報酬の話だとご理解いただくよりも政策医療だと思います。 政策的な点数を付けないといけないということで、実はNICUや後方病床、回復病床の 後ろにひかえている膨大な小児科病床にこういう子供を見ていただく。そのために、超 重症児管理料というものを設定してはどうか。また、療養機関でも、在宅医療をやって おられる方々の子供がレスパイトで入ってくるとき、やはり特別の政策的な点数を設定 してはどうか。              (スライド終了)  最後、スライドを作っていないのですが、いちばん重要な5つの政策的提言をさせて いただきます。「都道府県に総合周産期センター(NICU)の増床・増員計画の提出を求め てはどうか」、各都道府県で厚生労働省へNICU増床・増員計画を出してほしい。これ はいますぐにでも出来ると思います。もちろん、求めるだけでなしに与える必要がある と思いますが、それは今後の検討だと思います。  2は「新生児科医の勤務環境の改善」です。NICUに医師が絶対に必要ですから搬送手 当、深夜業務手当、医療秘書の配置といったものを新生児科にいますぐにやらないと、 非常に周産期医療が危なくなる。  あとは先程言いました、一般小児病床の超重症児管理料を設定する。それから在宅医 療です。家族が苦労している重症の子供でも在宅で頑張っている。そういう人を1カ月 に1週間ほど、病院に移してあげる。これを「レスパイト」と言います。レスパイトは いま診療報酬がもらえません。これは非常に非人道的な話だと思います。そういう子供 を病院に預かってあげるとき、「レスパイト入院管理料」を設定すべきではないか。最 後、ケア・コーディネーターは先ほどから出ています。以上です。 ○岡井座長 ありがとうございました。最後のご提言等は、この懇談会でも最後にまと め上げなければなりません。そのときに是非組み入れたいと思いますが、今日はその話 はちょっと置かせていただきます。田村委員、新生児のほうから追加などありますか。 今日の話、新生児搬送がだいぶ出ていましたが。  田村委員からお話があると思いますが、新生児搬送から母体搬送に移行するのが大阪 は遅れているのかなという印象を受けました。どうなのですか。 ○岡井座長 症例としては減っているのですか。 ○池田委員 いえ母体搬送もものすごく盛んです。 ○岡井座長 わかりました。田村委員、お願いします。 ○田村委員 今回、舛添大臣が成人の救急施設のない、母体の救命が担当できないよう な総合周産期センターは、「総合周産期センターの資格がない」という発言をされたか のようなマスコミ報道が昨日ありました。それに対して是非ここでそんな事は無いこと を確認をしたいと思います。  私の資料では、いちばん最後のほうに「長野県立こども病院」、これは海野委員と一 緒に私が10年ぐらい勤めた小児病院であります。その資料が35頁からあります。こど も病院が中心になって、そこに総合周産期センターができたという形の施設です。ただ、 日本で最初に総合周産期センターに指摘された1つが神奈川の小児医療センターにでき た総合周産期センターですから、歴史としては決して異例ではありません。  そこの治療成績が、35頁のところに書いてあります。総務省が各都道府県別に新生児 死亡率と乳児死亡率を過去10年間平均して評価しています。過去10年間のうち何年間 全国平均値よりも低かったという形で評価してみると、長野県はいちばん良い県と評価 されています。全部紹介する暇はありませんが、基本的には、こども病院の医師と看護 師が自分の所にあるNICU車に乗って、全県下どこでもいつでも依頼がある度に飛んで 行って、依頼元の病院で分娩立会いをして、赤ちゃんの状態が悪ければそのままこども 病院に運んだり、こども病院がいっぱいのときにはその他の地域周産期センターのとこ ろに赤ちゃんを運んでという、三角搬送をして、新生児搬送を全部コントロールしてい ます。それだけではなくて、長野県においては長野県こども病院の周産期センターが中 心になって、40頁、県下の周産期医療の関係者である産科医、小児科医、助産師、看護 師の育成を積極的に行っています。具体的には41頁のところに出ていますけれども、毎 月1回定期的に、県下の関係者たちを集めた周産期カンファランスを夜間に開いたり、 新生児の蘇生法を医療スタッフに修得させるための講習会を年に6回も行っています。 自施設だけではなくて県下の周産期医療に関わるスタッフの教育研修にも中心的な役割 を果たしています。その結果として、標準的な新生児の蘇生法の学会認定の講習会 (NCPR)を受けたスタッフの数を出生人口別当たりで見ると、長野県が全国でもトッ プという実績になっています(P43)。  障害を持って、人工呼吸器が外れなくて家にも帰せないためにNICUのベッドにたま り込んだ子供たちをどのように療育施設に移すかというところで、いま我々現場は非常 に悩んでいます。その辺についても、長野県こども病院の中に慢性の療育施設を併設し て、そういう子供たちも見るし、退院したあともフォローアップをしています(P43)。 そうした努力の結果として平成19年9月の総務省の行政評価局の報告では、過去10年 間とも県内の新生児の死亡率が全国の平均より低かったのは長野県だけだったという成 績を収めています(P45)。母体救急に対応できない総合周産期センターであっても、新 生児医療を日本でトップレベルのところに持っていくだけの活動をしているのだという ことは大臣にもしっかり認識して下さるようにお願いしたいと思います。 ○岡井座長 ありがとうございました。いまのご意見、大体ご理解いただいたと思いま す。藤村委員の最初のお話に対してご質問などありますか。搬送のシステムに関してで すが。よろしいですか。  ありがとうございました。いろいろな地域での取組み等を聞かせていただきました。 残った時間で話を進めたいのですが資料2のところ、IIとして「短期目標として実現可 能な対策の検討」、時間がありませんがこれを1つずつやりたいと思っています。その 前に、救急学会と産婦人科学会との作業部会で、全体としてこういうものという提言が 出ています。海野委員を中心にまとめてもらったのですが、それを簡単に海野委員から ご説明いただいてディスカッションに入りたいと思います。お願いします。 ○海野委員 資料3をご覧ください。「地域母体救命救急体制整備のための基本的枠組 の構築に関する提言」というものです。これはこの間も話題になっておりました、基本 的に我々の業界の中にある縦割り構造、それは行政の中にもあるわけです。周産期セン ターというのは、小児科と産科との間の垣根をできるだけなくそうという形で努力して、 整備してきたものだということが言えると思います。母体の救命救急に関しては産婦人 科、それから救命救急にかかる診療科との間の垣根を減らしていく必要がある。  ただ、お互いの領域があまりに忙しい。人もいないという状況ですし、何もしないで いると連携が悪いと言われる。その連携をそれぞれの段階で、それは国であり、都道府 県であり、地域であり、医療機関の中でありということになりますが、そこで関係を良 くしていく連携を良くしていくためのプロセス、手順書みたいなものを作ってみようと いうのがこの提言の基本的な考え方です。  2頁目に「検討すべき課題」があります。これはこのとおりやってくれということで はありません。こういうことをそれぞれの地域、それぞれの段階で検討されたらいかが でしょうかという趣旨です。まず縦割りの問題、行政に関しては母体救急担当部署の責 任体制というものを明確化していただきたいというのは、我々がどこに話していいかが いつも決まらない、すっきりしない状況で、政策が進まないことがあるという認識でい るからです。  それぞれの段階でいろいろなことを検討していかなければいけないのですが、1番は2 頁の真ん中辺にあります、まずは「都道府県における周産期医療関係者と救急医療関係 者の交流の促進」ということが必要である。これは放っておいたら出来ないということ で、行政にも力を出していただいて、会議体も含めて交流の促進策を図っていただきた い。その中で、それぞれの地域における実態をまず調査しながら現場の先生方が相互理 解を深めるような形で、顔の見える関係を作っていただくための施策ということになっ ています。  3頁目、施設内の連携ということもとても重要だと考えています。と申しますのは、 実際には総合周産期母子医療センターで救命救急センターがある病院は50ありますし、 地域周産期母子医療センターは75あります。こういうところの施設内連携を深めること は、短期的に母体救急対応の効率化につながるという認識です。  また、先ほど池田委員からお話があったかと思います。公務員医師の兼業禁止の専業 規定の問題、診療報酬上の問題によって実際、なかなか連携を深めることのインセンテ ィブが働かずにいるのではないかという認識の部分は、これは国の政策にご検討いただ く部分かと思います。そういうことを含めて、相互理解を深める中で都道府県のレベル で、それぞれの地域の実情に応じたシステムの構築を図っていただければどうか。その 手順を進めていただければ、比較的迅速にいまやれることはやれるだろう。そういう中 で、制度のことも検討を進めていただいたらどうかということです。 ○岡井座長 ありがとうございました。大臣がお見えになりましたので、一言だけご挨 拶をいただきます。そして、また、この議論を進めていきたいと思います。お願いしま す。 ○舛添厚生労働大臣 いろいろ公務が重なりまして遅くなりました。どうもすみません。 いまご提言をいただいているわけですが、入口の機能、出口の機能の両方を強化して、 本当に国民が安心できる形の周産期医療と救急医療の連携ということをやらないといけ ないと思います。引続き、皆様方に精力的に作業していただいて、きちんと政策の形で 実現するように努力してまいりたいと思います。よろしくお願いします。 ○岡井座長 ありがとうございました。司会の不手際で少し時間が押してきたのですが、 資料2に「今後の対策について」とあります。いま、いろいろなシステムの例示をいた だきました。IIの中の1.、これはいろいろな切り口があると思います。周産期医療と救 急医療の連携という中の1つの切り口として、患者の病態と受け入れ施設をうまくマッ チさせるということも大事な見方かと思います。先ほどもちょっとありましたけれども 病態を分類して、この病態であればこういう施設という形を決めたほうがいいのではな いか。施設の機能による分類、これは先ほど田村委員から言われたように、全部そろっ ていなければ総合ではないという形で指定を外していくという考えではなくて、この施 設は胎児新生児医療に対しては強いのだから、そういう患者は当然見る。もちろん医師 も充足させる、施設も充足させる。しかし、母体が本当に緊急な場合はこちらの施設と いう形で、整理をする必要があるのではないかと思います。  そのようなことを考えてII-1を書かせていただきました。これから議論していただく 前の叩き台として、いまお配りしました1枚の資料をご覧ください。実は今日、昭和大 学病院で救急センターと周産期医療センター合同の運営委員会で、これまでの患者の受 け入れの基準を変更することを正式に通しました。ここでは搬送される患者を3つの群 に分けています。前にも申しましたが、いままでは周産期の患者は母体の問題であって も胎児が悪くなることもあるので、とにかく総合周産期センターに送る。そのために、 母胎の問題でもNICUのベッドのあることが必要条件になっています。Cのほうに来る 状況では絶対必要条件になりますが、偶発合併症が問題のケース、例えばこの間の事例 のように脳の中に出血したような場合は、NICUがどうこうではなくて、必ず受け入れ て対応する。昭和大学は産科まで受け入れることが暫定的に決まりました。一般救急の ほうに最初に行くというのでもいいのですが、私達の地域は一次施設の産科の医師から 昭和大学の産科の医師に連絡を取って搬送することが多いものですから、暫定的にそう 決めました。  私が言いたいのは、病態に応じて受け入れ施設を指定するシステムに変えてはどうか ということです。前もお話しましたが、東京では総合周産期センターが9つあって、9 つがみんな全科そろっているかというと必ずしもそうではない。また、そろっていても 規模が小さくなっている。もっと集約化して数を減らしてもいいから、いま問題になっ ている左側のA、B、場合によったらAだけでもいいのですが、受けられるような体制 を別のシステムとして作る必要があるのではないかと思っているのです。そういうこと を提案として出しました。その辺についてのご意見等を聞かせていただければと思いま す。  理想的なことを言えば、大きな救急医療施設の中にどのようなものでも受けられ、周 産期もその中にもちろん入っているというのがいちばんいいので、これは将来日本とし ては目指してほしいと思います。ただし、すぐには出来ませんのでいまあるインフラを 利用するとすれば、資料のような分類をして対応するほうがいいかなと思っています。 いかがでしょうか。 ○杉本座長代理 非常に現実的なお話だと思います。実際にいま、そういう形で我々の ところは始めています。今日、1枚、実際の症例を示したものが資料としてあります。 ○岡井座長 杉本先生の参考資料があります。 ○杉本座長代理 1枚だけのものです。2007年から2008年の間、特に2003年と2004 年のころというのは、まだこれはそういうシステムとしてやろうとしていない。要する に周産期は周産期、母体は母体だけで産科でやってくださいという形でやっていた時代 です。ところが、2006年から新しく木村教授が就任されて、そういう形ではなくやはり 一緒にやったほうが、絶対効率がいいということで始めてきたわけです。そして、それ はいま、昭和大学でやられていることと同じように、受け入れはやはり産科医が受ける ほうがいいです。救命センターに直接というのももちろんかまいません。例えば、妊産 婦の外傷などは明らかに救命センターに直接来ますから、それはかまいません。やはり、 妊産婦が伴う疾病に関してはやはり産科医が受けたほうがいいと思います。我々のとこ ろもそうしています。その中で判断されて、これは救命センターにお願いという形で救 命センターが受け入れる。それは見ていただければわかりますように、2008年ぐらいに 急速にどんどん増えてきています。来ている症例の中に、確かに「ちょっと待ってよ」 というものもある。子宮外妊娠の出血、こういうものは昔から産科がやってこられたの ですが、そういうものもショック状態ということで入ってくることがある。だけど、現 実にはあまり困ることではないのです。そういう意味合いでは是非とも、いま昭和大学 で示されたシステムというのは実際に我々もいまそういう形でやっていますが、非常に 有効だと思います。それをすべて、周産期の病院が同じことをしろと言っても無理な話 であって、それぞれの役割がありますから。むしろ大学病院を代表として、周産期もや っている、救命センターもやっている、実際にこの中には循環器内科の医師も、あるい は脳卒中を専門にする医師も、脳外科医も含めての話で初めてできることですから、是 非とも1つの代表例としてこういうシステムをやることは、私自身は実際にやっていて 非常に有効であると思います。そういう意味では非常に現実的な、良い案ではないかと 思います。 ○岡井座長 ありがとうございます。 ○海野委員 私ども、北里大学病院も基本的には同じような仕組みでやっています。た だ、少し違うのは救急でも産科でも、どちらに連絡していただいても結構ですというこ とにしています。どちらでも判断して、お互い相談しなくてもとにかく受けるべきもの は受けて、それからお互い連絡し合うぐらいのスピードでやりましょうということで、 受けるのは救急のほうで一緒に受けるという形を取っています。  ただ、いま杉本先生がおっしゃられたような問題も、最近の一般病院の現場の状況は なかなか厳しくて、そういう状況はあり得ます。ただ、いずれにしても取らざるを得な いので、このままこうやって進めていくということでやっていけるのではないかとは思 っています。ただ、これはそれぞれの病院の機能、入口の機能ということになります。 やはり大事なのは、うちの病院はこうやっていますよという事を周りがみんなわかって いるということだと思います。それをわからないと、そのようにやれる病院とやれない 病院がありますから、そこがはっきりしないということも起こります。救急側は本当に みんな急いでいますから、その辺を全部わかるようにする。  もう1点、そう言ってもなかなか実際には取れていない所とか、機能しないというこ とが起こり得ます。実際の受け入れ実績もともに明らかにしていって、その地域の先生 方が評価しながらやれるような仕組みも必要なのではないかと思います。 ○岡井座長 ありがとうございます。 ○舛添厚生労働大臣 先般、墨東病院と杏林の妊婦の不幸な事例2件のご主人お2人が お見えになり、お会いしました。そのとき、いろいろなことを申し上げましたが、いま の話とのからみで、まさに医者ではない立場から言うと、例えば昭和大学でA、B、C と3つに分けられた。今回も吐き気がした、嘔吐があった、頭が痛い、病態判断ができ るのですかというのは両方で医者が言った・言わないの話になっている。それがまず疑 問である。  いまある施設や周産期センターをつぶせと言っているのではないけれども、国民の立 場からすると、大阪大学医学部、昭和大学、北里大学と全部大学病院、救急も両方そろ っている。ラスト・リゾートで、最後の砦の総合周産期センターというのはやはり救急 があるのが普通ではないかと思います。ですから、将来的にはそういう方向のほうが今 おっしゃったようにいいだろう。ただ、現状を駄目と言ってやめるのではなくて改善は するということです。  先般、沖縄に行きましてこどもセンターの先生たちに会ったら、自分らは一切どのよ うなことでも拒否しない。それは産科と小児科の話をずっと積み重ねてきたからだとい うことを言われた。そこから提案があったのはNICU、ユニットをどこかストックする 場所を設けてくれないかと。つまり、10ユニットあって11ユニット目が必要なときに、 ユニットがないからということはしない。しかし、受け入れて「もう1個NICUが要り ます」といったとき、1個急いで持ってきてくださいといってどこかにストック・ファ イリングして持ってきてくれれば拒否しない理由になるというご提案がありました。こ ういう点、どこかで皆さん方のお答えがあればと思います。私の発言が2人の旦那さん にお会いしたとき、若干誤解されているといけませんのでそのことも兼ねていま申し上 げました。以上です。 ○岡井座長 ありがとうございました。最初のお話、病態の判断が難しいと言われたの ですが、その通り本当に難しいのです。疾患というのは最初の症状が出てから、あとに なればなるほど診断が付きやすくなる。しかし、最初は難しい。それを判断するのはそ の人の診療能力であり、実力しかないのですが、私たち体制を考える立場からするとわ かりやすいマニュアルなり、ガイドラインを作るということも必要になってくるのでは ないかと思います。もちろん、医師の実力を付けるのは現場の教育でなくてはいけない。 それとは別に、システムの話になるとガイドラインが必要なのだろう。そうすると、こ こで今いちいち「こういう病態はどうこう」と議論する時間はありませんから、救急と 産科の作業部会にお願いして、ガイドラインを作ってもらったほうがいいと思います。 ○嘉山委員 いま、大臣が非常に大事なことをおっしゃいました。昭和大の話はちょっ と疑問なのです。なぜかというと、受け入れは産科医の判断と最初から決めているとこ ろ、もう少しフレキシブルにやったほうがいいのではないかと思うのです。いみじくも 判断するのは難しいというのは、電話を受けた科がAなのか、Bなのか、Cなのかがわ からないからいろいろな問題が起きているのです。 ○岡井座長 これは先生、申し訳ありませんがちょっと言わせてください。判断の前に 原則受け入れなのです。重症だったら、「受け入れますよ」と言って救急の先生に連絡 することをやるということです。 ○嘉山委員 今回の墨東の問題は、前回私が「システムのかけ間違え」とお話したのは、 要するに産科のネットワークだけを使ったために間違えるのではないかと言いました。 いま座長がおっしゃったように、患者が具合が悪いのがまず最初なのです。妊婦であろ うと何であろうと。それが妊娠に関係することであれば産科に行くし、頭の問題であれ ば頭、心臓であれば心臓に行くというのが最初の入口ではないか。救急の場合はそう思 います。その辺、これで乗り切れますか。 ○岡井座長 ですから、原則受け入れるのです。だけど、先ほど青森でしたか、軽い患 者が本来重症の人を見るためにわざわざ作ってある施設にたくさん来るようになると本 来の機能を果たせなくなる。ガイドラインがあって、「こういう人は」という形を作っ たほうがいいとは思っています。 ○嘉山委員 救急でなくてもいいのですが、受け入れの判断は病態に合わせた科の医者 も同時にというようにしないと、産科だけでやるというのは非常に。 ○岡井座長 わかりました、判断というのはちょっとまずいですね。原則受け入れで、 産科医師は受け入れたあとにいろいろな所に連絡したりとか、最初の窓口に当たるとい うことにします。 ○嘉山委員 もちろん、救急の医者もいろいろな医者がいますが、産科の医者もいろい ろな得意分野があるでしょうから、判断も幅を広げておいたほうがいいのではないでし ょうか。 ○岡井座長 わかりました、ありがとうございます。 ○杉本座長代理 先生のおっしゃるとおりです。例えば、いま出した表を見ていただい たらわかりますけれども、例えば12番目に「一過性半盲」云々とありますね。それと、 14番目の「意識障害」、「ストレス性精神病」というように、早く言えばこれはヒステ リーということになります。そういう症例も当然入ってくると思います。だけど、片方 でこういうものを絞り込んでしまうと、いまと同じで落ちてしまうものがあるのではな いか。 ○岡井座長 ある程度、幅は広げないと。 ○杉本座長代理 基本的には、危険性のあるものは受け入れるという前提でやっていた だく。もう1点、「前医」というところを見ていただいたらわかると思うのですが、日 本の場合はどこもそうなのですが、多くは現実の問題として周産期医療と一般救急とい うのはいままで全く別の系統で動かしてきましたから。 ○岡井座長 そうなのです。 ○杉本座長代理 それをみんな救急の施設で受けて、救急医がやろうというのは非常に 非現実的だと思います。やはり、周産期と一般救急が徐々に一緒になっていってという のがいいのではないか。 ○岡井座長 そうなのです。理想ですが難しい。 ○杉本座長代理 それは難しいですけどね。現実はやはり、まず接触面を広げていくと いうことをやっていく必要があると思います。一般には、妊産婦というのはほかの救急 と違って妊娠している、あるいは出産したということがわかっているわけですから、産 科の先生のところへ普通はすがることが多いから、そこを通じて。我々のところも実際 に産院から、あるいはいちばん下を見ていただいたらわかりますが、「腹部とか腰部の 打撲」とあります。これは妊娠が11週であるというだけで、こういう症例も救急隊は直 接連れてきますね。直接来ない場合もありますが、そういうものも当然含まれてくると いうように考えておかなければ。救急はそうですね。 ○有賀委員 議長がしゃべりにくいことをしゃべります。私たちの理解は、基本的には 坂大の症例と同じように、A、B、Cの前には産科の先生がいる。ほぼ、そういうような ものだなと思ってこの図を見ています。ファースト・コンタクトがもし救急隊であった とすればおそらくこうはならない、もうこれはわかっている。救急隊は私たちのほうに 言ってくるに決まっているのです。だから、いま言ったみたいに、産科がそうだと書い てあるので仕方ないのですが、ファースト・コンタクトがもし救急隊であったり、また は別の科の先生であれば別ルートで私たちのところに入ってくる。「原則受け入れ」と いう部分が極めてポイントで、結局、産科の先生はAでもBでもよくわからない、とに かく受けてしまえと。私たちが必ず助太刀に入るということを今日確認したという話な のです。暫定的にこうなっていますということを岡井座長も言っていますし、私らもそ う思っています。いずれ、いろいろな意味でのストラクチャーにしろ、プロセスなりが 改善された暁には、この図はおそらく進化して違う形になると思っています。 ○岡井座長 ありがとうございました。モディファイは当然します。今の現状からスタ ートということで。 ○横田委員 一般病院的な見方で少し話をさせていただきたいと思います。私の資料、 いちばん後ろになっていますが、いまいわゆる周産期の側面と救命救急の側面での話が ありました。私ども、自治体病院クラスで妊婦の急病を見ていると、1枚目のところに 書いていますのは、各科にヒアリングをしますと分娩数年間600である中で、例えば脳 外科の個人的な中ではあまり経験がない。だけど、循環器の先生に聞くと肺血栓塞栓症 というのは年に1、2例あって、それを転送させるのにしばしば苦労しますという話があ ります。そういうことをそこにちょっと書いています。  一方、私は救急専従でやってきた関係上、救命救急センターという側面だけでどうい う妊婦の急病の患者を取ってきたかというと、いま坂大の例とたがわない例のように、 かなりはっきりと病態が悪化したものだけを見ていることがわかります。ということは、 いまの話の中で、いわゆる妊婦が身体の具合が悪いと不調を訴えたときに、一見、初発 は軽症であって、例えば息苦しいということで循環器の先生が見られて、そのままずっ と産科のサポートをもらったりもらわなかったり見ているという現状が結構背景にはあ ります。その中で、病態が急性に悪くなっていった場合、どのシステムに乗せるかとい うことを今度は行政、国を含めて考えておかないといけない。いまはいわゆるパーソナ ル・コミュニケーション、あるいは大学のちょっとしたコネクションを利用して転送し ているという実態があります。  ということで、先ほど産婦人科学会と日本救急学会の提言の中にありましたように、1 つはもう少し急性期の疾患も広げて、循環器や脳血管障害も含めて実態がどうなってい るのかということを把握しないことには、軽症のままでとどまっていたら問題化しませ んけれども、病気そのものは非常に進展するものですから、その辺をちょっと整理する という意味において提言をさせていただきました。以上です。 ○岡井座長 ありがとうございました。そういう実態調査をやることも宿題の1つにな ると思います。日本の場合、妊産婦死亡1例取っても分析が不十分なところもあります。 たまたまうまく行ったからこのケースは大事に至らなかったという点もきちんと整理し て、それに対応する施設の規模や数が決まってきますので、分析しなければいけないこ とだと思います。ほかにございますか。 ○海野委員 機能分類の話、先ほど大臣がおっしゃられましたように、総合周産期母子 医療センターの中でいろいろな役割を果たさなければならない。役割がそれぞれ違って いて、みんな非常に大切な役割を果たしています。母体救命救急ということに関しては いままで機能が明示されていなかった。ですから、ネットワークの中で暗黙の了解でや ってきたというところがある。その辺、それぞれの県の周産期医療システムの中で明示 的に示して、現場の先生方もそこでスムースに対応できるようにする。  もう1つは待てるか待てないか、本当に急ぐのかという判断はやはりその現場で、一 次医療の現場で行われなければいけない。その部分の研修体制も問題をより良い方向に 持っていくにはどうしても必要なのだろうと思います。機能分類に関しては、私の今日 の資料の3頁目、上の段の「入口機能の強化をどのように改善するか」というところで 試しに書いてみました。いままでの施設基準のものというのは、胎児新生児救急対応に 関してはほぼ万全の体制なのです。それをまず基本として、それプラス母体救命救急に 対する対応を持っている所、それをN型に対してMN型みたいな形でわかりやすく示す ことで進めていけるのかなと思っています。 ○岡井座長 ありがとうございました。時間があまり残っていないのですが、いかがで しょうか。  1の「患者の病態と受入施設のマッチング」に関してはもう少し整理して、提言した いと思います。将来像もありますが、いまのインフラを利用して現状の中で体制を組み 直すとしたら、こうか、というのを、その次までに出すということで方向としてはよろ しいですか。反対の方はおられますか。 ○藤村委員 門外漢が申し上げるのもおかしいですが、どういう疾患を考えておられる かをやはりあげておいたほうがいいと思います。それがきちっとあがらずに、何か脳血 管障害とか、1つだけは出ているのですが。 ○岡井座長 それはやるのですが、一つ一つ疾患をあげていくと、結構大変ですよね。 だから作業部会のほうにお願いすることにします。  木下委員はいらしたばかりですが、だいたい議論の内容はおわかりだと思います。で はご発言をお願いします。 ○木下委員 まず委員がお作りになりましたABCの話で、考え方はやはり有賀委員や、 嘉山委員がおっしゃったように、現実的にはまずどんな症例でも受け入れるのが大前提 ですから、患者が来たならば、そこでこれは他科に相談すべき内容ということでしたら そこで分けるのが普通ですから、初めからカテゴライズするのは極めて難しいと思いま す。ですから、実はいままでは救急部にいくことは、そこに電話があったとしても、妊 娠しているとなるとそれは必ず産婦人科のほうに来ていたという事実です。現実的には、 どうやってまず受け入れるかというところから始まったときに、我々、例えば大学であ れば教授が絶対に受けろといえば従わざるを得ないということで、そういった姿勢が大 事だと思いますけれども、現実的に受けられないことがあるのですね。それはなぜかと いうと、1つはあまり問題にされておりませんが、うちはベットはいっぱいだというと ころが現実にあるのですね。どういうことかというと、例えば総合周産期センターであ っても、それは正常分娩を取らざるを得ないという現実がございます。だとするならば、 それでもって本当に満杯になってしまっており、とても入らない。それでもちゃんと大 学病院などでしたり、仮に地域周産期センターでもいいのですが、受け入れれば他科と 相談してやりますよ。というようなことで行かないかぎりは現実的ではないと思いまし て、その場合に、では正常分娩を取らないだけのベットにゆとりがあるかというと、な いです。大学病院に、必ず入れろときますから、そうするならば、せめて一床、二床必 ずああいうところにあるという空床的保障的な考え方もありだと思うのです。それは1 つのいちステーではなくて、2つ3つであるならば、1つのところが駄目ならもう1つと というようなことで、もちろんちゃんと保障されるかぎりにおいては空けておかなくて はいけないのですから、当然正常分娩は減ります、というぐらいの現実的な値を考えな いと、ただ議論だけしたのではあまり有効な話は出てこないと思います。その意味では、 私はもうちょっと現実的なほうがいいかと思います。 ○岡井座長 木下委員がいま言われたのは、この3のところに入っていることでまた議 論をさせていただきます。考え方として、総合周産期といっても新生児、胎児が中心で すから、そこは絶対に診る、しかしお母さんのほうに関してはもう少し別の態勢を取る 必要があるだろうと考えています。いまのところ全部一緒になっているので、行く施設 を探すのに時間がかかるという、最大の問題点が生じるわけです。時間がかかることを 短縮するために必要な次の議論をしたいと思います。  あと時間15分ぐらいかけて、情報の伝達のやり方とか、それをどう活用するかという 話をしたいのですが、先ほども一気に複数の連絡するというのがありました。そういう こともあるし、それからこれまでの成り立ってきた歴史的な経緯があり、周産期は自分 たちの医師同士で連絡するシステムを作っている。救急は消防署が中心になって情報を 流しているとか、そこを統合する必要が当然あるわけですが、その辺について何かご意 見とかありますか。 ○嘉山委員 今日の参考人のお話を伺ってても、やはり地方と首都圏と近畿圏は同じ問 題を抱えていますが、その他の中央都市とは全く違うのではないかと思います。それは 基本的に青森のお話もありましたが、私どもの山形もそうなのですが、その地区でヒュ ーマンネットワークができていて、なんとか受け入れていると、あるいは回す病院がな いものですから、そこで受けざるを得ないということがあります。そういうところで海 野委員の調査結果にもありますように、いわゆる診療拒否などは少ないので、そこはい まのネットワークを作り活用すればいいと思います。ただ、東京の場合には、といって 東京、近畿圏がなまけているというわけではなくて、瞬間的にある病院にわっというふ うに集まることがあり、ときどきそれが今回のようなことになったのではないかと思う ので、首都圏と、近畿圏のネットワークの構築は絶対必要だと思います。  難しいのですが、それをこの委員会で考えなければやった意味がないので、そのとき に、私この前ゾーンと言ったのですが、ゾーンを1つ考えることと、そのゾーンを超え てのネットワーク作りを皆さんから意見をいただいたらいいと思います。 ○岡井座長 先ほど阿真委員、何かご意見があるということでしたので、お願いいたし ます。 ○阿真委員 病態判断ができる、ということについて、その前に私たちがいままだ産科 のネットワークシステムがちゃんと機能してないような状態の中で、例えば妊娠してい るときに、頭がすごく痛かったときに産婦人科に行って、産婦人科のネットワークです ごく大変な思いをして、そういうところでするよりも、まずは救急車を呼んだほうがい いのか、そこに何か判断とかがあるなら、それをお母さんたちに提示して、そうやって 防げるものは防げると思うのです。 ○岡井座長 もちろん患者にもある程度自己的に判断してもらえるような、システムと か、そういうものがあるといいと思うのですが。 ○阿真委員 はい。必ず産婦人科に行った人は、一番ベストなのか、こういうケースは 救急車に乗ったほうがいいよというところがもしあれば教えていただきたいと思いま す。 ○岡井座長 難しいですけども、頭痛に関しては。 ○有賀委員 いまのお話は、やはり情報を整理整頓することについてのテーマを投げか けているのです。だから先ほど私が言ったみたいにファーストコンタクトがもし救急隊 であれば、おそらく救命救急のほうにきっと来るねという話と、ファーストコンタクト が産科の先生になると従来からある歴史的に積み上げてきたものを使うだろうと。だか ら多くの場合は阪大のようなことになると思うのですが、万が一のこともあれば、やは り救急隊に頼ったほうがいいのかしら、という話です。ですから、いま嘉山委員が東京 と、又は大都市圏と、地方とは多分違うだろうと、大都市圏においてはおそらく東京の ような救急隊のシステムも全県一区みたいな形で何とか構築できていて、多分大阪もそ うだと思うのですね。だけどもっと地方に行きますと、消防本部ごとに情報をもってい ますので、いま言ったようにお母さんが地元の救急隊を呼んだ。しかし地元の救急隊は 地元の消防本部の情報しかないので、隣町はどうする、隣町の隣の向うはどうするとい うような話になってきたときには、やはり産科の先生のほうがひょっとしたら手持ちの カードが多い可能性があるのです。そういう意味では嘉山委員が言われたみたいに、丁 寧な情報のシステムを考えなければいけないという話を、いま阿真委員がおっしゃった というように考えたほうがいいのではないかと思います。 ○阿真委員 ありがとうございました。 ○大野委員 まずいまのお話ですが、私、開業医ですからこういう電話をしょっちゅう 受けるのですね、例えば頭が痛くなりました、非常に痛いということで、まずはほとん どが私にかかってきます。夜だろうが何だろうが、かかりつけ医ですから、あるいはそ こまで余裕がない場合は救急隊を呼んじゃうケースがこの前もありました。その救急隊 はどこに電話するかというと、私に電話してきます。あなたのところにかかっている患 者はこうなのですが、あなたのところに行っていいですかと、ただ一次医療施設の産科 医で脳出血かもしれないといったら診れないわけですね。そうすると救急病院にやはり 行かないといけませんと、だけどそこでなかなか受け入れてもらえない、そこで診てい る妊婦ではないですから。なので私がそこに交渉して、電話をして受け入れをOK、産 科と救急科に、例えば市民病院のところをOKを取って、救急隊にまた電話をするとい うのもあります。だからほとんどのケースが、それが開業医であっても、頭痛であって もこっちへ求めてくるというのが多いです。 ○岡井座長 そうなんですね。妊娠した段階で分娩登録をされた患者は、何かあるとそ こにまず最初にコンタクトをするわけです。そこからスタートするから現状では産科が 窓口になっている。もちろん変えることはできますけどね。そこはおっしゃるとおりで す。だから妊娠しておられたら、どこかにかかっているわけですから、そこの先生のと ころにまず連絡をするというのが一番普通なやり方ですよね。 ○阿真委員 もちろんそのとおりです。 ○池田委員 救命救急と、周産期の一次、二次、三次の捉え方の違いが、大阪で実際に 会ってみて、話てみてわかったのですけれども、救命救急の場合は、院外の方の一次、 二次、三次というのはその重症度により一、二、三次といく。ところが周産期の場合は ほとんど99%の方が一次の先生に係っているわけですので、常に一次から二次、又一次 から三次といった、必ず一次にかかるというように、それを大野委員が言っておられる ことだと思います。そういうことがわかってまいりました。 ○大野委員 いまの件に関して私の資料をはしょって話をしますが、これは愛知県のす べての医療施設で行ったアンケート調査でありまして、この前も少し話しましたが、2 年間、13万分娩のうちで、5頁にあるように67%の分娩が開業医で行われています。開 業医が担当する分娩数が多いので当然なことですが、子癇54例のうちの21例(38%)、 脳出血9例のうちの3例(33%)が開業医で起きるのです。これは当然のことだとは思 いますが、例えば脳出血が大学病院で起きた場合には同じ施設内で迅速に対応できるか もしれませんが、一次医療施設で起きる脳出血がこんなに多くあり、いかにスムーズに 高次医療施設に搬送できるかが、本当のポイントだと思います。今回もそうですよね。 あとは資料を読んでいただければいいのですが、今お話した点をポイントとしていろい ろなことを考えていかなければいけないと思います。  愛知県の場合、一番最後のほうの15、16頁に地図を書きましたが、一次医療施設の医 者がどこに搬送を考えているかというと、ほとんどが地域周産期センター、総合周産期 センター大学病院です。ほとんどがそう答えています。この傾向は愛知県の特徴だと思 いますけれども、例えばこの地図で、いろいろな印があり、そこに向って線が伸びてい ます。これはいろいろな開業医から、どこに送ろうかとしているということで、ある程 度バランスよく医療、各医療圏の周産期センターに向っていっています。これを見てい ただくとわかるように、例えば東三河の東に近い方で、浜松に近いこの辺りは、産科施 設がどんどん減っていますので、ここの周産期施設はもう限界を超えている状態になり ます。ですから名古屋尾張地区でも総合周産期母子医療センターに過剰に集中している 傾向がありますが、県境周辺で周産期搬送体制が限界に近い状態になっている実情も、 施策を考えていく一つのたたき台にしてほしいと思います。広域援助システムとからん できますが、例えばこの東三河から浜松に医療センターはいっぱいあるわけで、それら 隣県高次医療施設へ一次医療施設が直接依頼できるかというと、周産期母子医療センタ ーをとおさないと頼みにくい状況がいまあります。そこら辺の問題、現場もあるいは総 合周産期のそれぞれに今度も懇談会をもつのですが、やはりわかっているのです。そこ ら辺も円滑にしていけるその越境広域連携に関する問題点については現場医師達もよく わかっているのです。この調査結果が円滑な広域連携が行われるためのたたき台になれ ばと思います。 ○岡井座長 ありがとうございました。時間が迫っておりますが、2の情報伝達のこと です。これは迅速化のためにいろいろ工夫しなさいという大臣のお話がこの前あったの ですけれども、3番目の搬送先をどう決めるかというのに、コーディネーターを配置し ようというお話が出ていました。この辺についてご意見がありましたらお願いします。 ○海野委員 池田委員は多分医者がやったほうがいいというお考えだと思うのですが、 私自身はその必要はないだろう、そのように考えています。というのは救急医療の分野 では救急隊や、その救急医療システムの中で、実際に搬送先決定を行っていると思いま すし。 ○岡井座長 ちょっとよろしいですか。救急も医者がついているのではないですか東京 は。 ○有賀委員 その医者がついている理由は、医行為を救命救急士がやるということのた めです。基本的には。その指示を与えるというのが本務です。だから搬送先の決定に関 して意見は言いますけれども。 ○岡井座長 なるほどわかりました。ありがとうございます。 ○海野委員 そういう状況が、ということを含めて、その専門家らになれば、別に医者 ではなくても相当のことができるということを考えれば、そうすることにより現場の周 産期センターの数少ない、医師はその診療に専念できるという、そのほうが結果はいい のではないかと思います。 ○岡井座長 池田委員は、いまのご意見に対してどうでしょうか。地方は顔が見えてい て、毎日話しているということがあるので東京とは違うのですよね。 ○池田委員 私は、この実際の現場でいかにうまく動かすかというオペレーションの話 をしていますので、海野委員のとあまり変わらないと思います。東京で実際にそういっ たメディカルコントロールでいろいろなお医者さんじゃない方の活用をしているという ことは非常にいいことだと思っていまして、それ医師か医師でないかはにはあまりこだ わってはおりません。 ○岡井座長 ありがとうございます。各総合周産期に、そういう人をつけ、そのための お金を出しますよという話があるのですが、これは救急患者の搬送を迅速にすることに 関しては、あまりいいシステムじゃないなと思います。やはりセンターで、地域の中心 になったところが担当して、いかに速く搬送先を決定するかを検討するほうがいいと思 うのですけれど、その辺はいかがですか。 ○海野委員 私もその辺は全くそのように思っております。センターでいま探すという ような周産期に関しては、神奈川と札幌で始まりましたが、札幌の話を聞いてみますと、 情報の集め方というのがとても特徴的だと思っています。センター側は助産師さんか、 看護師さんがやっているのですが、その病院に対して定期的に聞くので、要するに積極 的に情報を取ってくるというやり方をします。神奈川の場合は東京と同じで、入れるの ですが、ただそれってセンターが受け身ですよね。それで情報が確実性がというか、書 いてあるものに対してセンター側は確認ができないのです。ですからそういう意味では 最終的には人間が情報を取ってきて、確認しながらというネットワークを見ていくとい うコーディネーターが必要ではないかと思います。 ○岡井座長 札幌は10月にスタートしたばかりでこれからどうなるか、よければ大いに 取り入れたいと思います。他にいまの情報のセンター化、あるいはコーディネーターに 関してご意見等ございますか。 ○池田委員 OBが使えないかと思うのですね。 ○岡井座長 それは委員の持論ですね。私の考えでは、システムとして考えた場合どう かなと思うのです。委員のところはそういうことでうまくいっている、その地域はそれ でいいのですけれど。もちろんOBの能力なり、力をうまく活用するのもいいのですが、 システムの中に取り入れて、OBを使って、そこから命令すればよくいうことを聞くだ ろうというのは、ちょっと別の話かという気がしてならないのです。 ○池田委員 もっとOBで、大ものを。70歳以上とか、そういったようなことのイメー ジです。 ○岡井座長 そういう人にセンターで働いていただくと、相当高い給料を出して、コー ディネートしていただくと、そういうお話ですね。 ○池田委員 この前も言いましたけれども、センターに直接来ていただかなくて、ポケ ットベルひとつでオーガナイズしておりますので、別に、問題ないようには思っており ます、大阪の場合ですけれども。 ○舛添厚生労働大臣 コーディネーターの質の問題につきると思うので、年上のフィク サーみたいで全部自分の教え子で、お前こうしろとかいうのをわかってたりとか、それ から素人では駄目だと思いますから、助産師、看護師であるけれども、各地域はどうだ というのはその資格がなくてもわかる能力ある人もいるかもしれませんし、フェイス・ トゥー・フェイスで知っているほうがいいかもしれない。だから正に国民の立場から見 たら誰でもいいのかコーディネーターはということで、コーディネーターの質、その人 の力量により札幌がうまくいくかと、神奈川がうまくいくかとがあるので、あまりこう いうのに役所が資格制度で、これこれ資格がないといけないなどというようなやぼなこ とは言いませんが、コーディネーターの質により自分の命が助かるかどうかだったら、 これは非常に大事なのでそこのとこの要求みたいなものをちょっとつめていただければ ありがたいです。 ○岡井座長 はい、わかりました。宿題をいただきました。コーディネーターの要件で すね。理想的なことを言えばコーディネーターなどはいらないのがいいのですけれども、 そこへ行けば365日24時間絶対受けられる施設をつくること、これは大臣に将来の日本 の姿として、ぜひ目指していただきたい。それまでの間、コーディネーターが大事だと いうことになるので、そこはしっかりつめたいと思います。  そうすると、センター化と一般救急と周産期救急の情報を統合することには、異論の ある人はいませんよね。いかにそれを上手にコーディネートして、早く搬送先を探すか、 今日の議論をもう少し整理し、次のときには案を出させていただきたい、こう思います。  時間が20分ほどオーバーしていますが、次の回には残った先ほどの人員不足の問題と か、施設の規模の問題等を議論をして最後のまとめにしたいと思います。 ○田村委員 いまの情報センターのことですが、もちろん救急と周産期のネットワーク の両方の情報を統合することには異論ありません。ただそれを都道府県単位にとどめる ことに関しては、前回申しましたけれど賛成できません。先ほど青森県ではうまくいっ ていると皆さんおっしゃっていますが、そのうまくいっているという背景には、唯一の 総合周産期センターの新生児科医はたった5人しかおらず、しかもそのうち4人までは 1年未満のいわゆる研修医クラスの人なので、部長の網塚先生は、ほとんど月に半分ぐ らいは病院に泊まり込みをしているような状況でなんとかやっているわけです。そうい った自己犠牲でぎりぎりでやっているところをそのままにして、うまくいっているとい うことですべて受けるというようなことを簡単におっしゃっていただくと、これは大変 なことになります。せめて私はこのネットワークは都道府県にとどめるのではなくて、 前回のときも申しましたが、少なくとも総合周産期センターに関しては、国からも補助 金をいただいているわけですから、各都道府県民だけではなくて国民に対して責任があ るわけですので、その空床情報に関する情報ネットワークは都道府県内に留めるのでは なくて少なくとも道州制とか、関東圏とか、関西圏とかいうような形で広域で共有でき るようにしていただきたい。やはり関東圏とか、大阪圏で情報のコントロールセンター やネットワークを作るというようにしていただかないと、総合周産期センターの多い東 京だけはなんとかこれで護られるかもしれないけど、その周辺県は、いまよりもっと悲 惨な状況になりかねないのでよろしくお願いします。 ○岡井座長 はい、わかりました。地域完結がベストですが、そういかない場合もある し、そこで完結を無理にすることにより、かえって最善の医療が提供できないこともあ ります。成績が具体的によくならなければいけないわけですから、そういう意味ではむ しろダブルセットアップで完結を目指すのが良い、ただし状況に応じて広域ネットワー クの範囲は当然広げて考えると、そういう感じてよろしいですか。 ○田村委員 救急医療のネットワークというのが広域ではないので、そこは、そう簡単 にならないと思うのですが、これは消防庁の話になりますから。単純に一緒にやれるか どうかはそれぞれの地域のところで工夫が必要だと思います。 ○岡井座長 ありがとうございました。有賀委員、ポイントだけお願いします。 ○有賀委員 つまり救急医療情報システムは全県一区という形では必ずしも運営されて いない。私の資料の8頁を見ますと、補完的にやっているのを入れてもまだ半分いって ない。これは厚生労働省がデータを取ると都道府県にいきますので、あたかも都道府県 がそうなっていますよみたいになっていますけれども、総務省の消防庁からいくと全部 消防本部にいきますので、消防本部は、正直に答えるとここに書いてあるとおりです。 ですから、いま言った全県一区でやられている周産期のシステムと、合同できるのは大 きなところで合同することに関してはうまくいくけれども、地方は地方で上手にやって いかなくてはいけないことがきっとあると、先ほどからしていたわけです。 ○岡井座長 地方の特性に応じて具体的にやるのはそれぞれの地域の方々にお願いし て、ここは全体のグランドデザインを考えるところで、懇談会のメンバー皆さまのお知 恵をおかりして、いいものが提言できるように、国のデザインを考えていただきたいと いうことになると思います。  それではすみません時間がオーバーしてしまいましたが。 ○阿真委員 正直申し上げて、先生方皆さん、お母さんたちがどれほど不安を感じてい るかをご存知かと思いながら、今日は聞いていました。本当に多くのお母さんがものす ごく不安を感じています。昨日も、一昨日もお母さんたちに向けてお話する機会があり ましたけれども、これまで医療について私のところになど全く来なかったようなお母さ んですとか、本当に一般のお母さんがものすごく不安を感じていて、訴えてこられます。 けれども不安は不安として医療がいかに大切なものかということをみんなが気づいてい る大事な時期だと私は思っています。今回お話できなかったのですが、次回は私たちが できることということを考えて来ましたので、少しお時間をいただきたいと思います。 ○岡井座長 はい、わかりました。では次回お願いいたします。他の委員の方、ご意見 なければ。 ○岡本参考人 僅か1.2%の開業助産師ですけれども、この周産期ネットワークに関して は非常に私たちは重要なテーマと思っておりますので次のパラメディカルの活用のこと とかがありますので、できたらまた助産師を入れていただけたらと思っております。 ○岡井座長 ありがとうございました。それでは最後に、大臣からお願いいたします。 ○舛添厚生労働大臣 今日はありがとうございました。それでちょっと本題から外れる かもしれませんが、1つ、厚生労働次官経験者に、ああいう不幸なことが起こりまして、 今日皆さま方、入口でのセキュリティーチェックを含め、大変ご不便をおかけしている と思いますが、いま田村さんのお話にありましたように、こういうお産についての安心 ということ、私が医療ビジョンでも「安心と希望」というのを掲げ、いま介護について も同じことをやっています。一生懸命皆さんがいい提案をしてくださることが、この暗 い風潮を払いのけて、国民の安心を与える道だと思いますので、そういう特にこのいや な事件が起こり、暗い中ですから、ぜひ「安心と希望」がもてるように私も全力をあげ ますのでよろしくお願いします。  それから、二階大臣、麻生総理続けて非常に私から見ると好ましくない発言がござい ましたので、前者については謝罪し、撤回を国会でしております。今日は後者について も謝罪をなさっております。私は閣内にありますけれども、こういうことについてはき っちり、総理であっても苦言を呈するは呈するということでございますので、現実に実 績として、国民に安心を与えるような形にやらないといけないと思います。それから現 場のお医者さんがいかに苦労しているかは十分理解して、できるだけ現場に行きたいと 思っておりますので、ぜひそういうことで我が省を挙げてこの問題には頑張っていきた いと思いますので、他の政治家の発言を私が代わって謝罪するというわけにはまいりま せんですけれども、皆さま方に大変不愉快な思いをおかけしたことをお詫びいたします とともに、その分いい仕事をして国民のためになることを、皆さんの力を借りてやって 挽回したいと思いますのでよろしくお願いいたします。ありがとうございました。 ○指導課長 ありがとうございました。次回のこの会ですが、来週25日火曜日でござい ます。18時から、省内の会議室を予定しております。よろしくお願いします。 (照会先) 厚生労働省医政局指導課 課長補佐  中谷 (代)03-5253-1111(内線2554)