08/11/05 第1回周産期医療と救急医療の確保と連携に関する懇談会議事録        第1回周産期医療と救急医療の確保と連携に関する懇談会                    日時 平成20年11月5日(水)                       18:00〜                    場所 厚生労働省省議室9階 ○指導課長 ただいまより、「第1回周産期医療と救急医療の確保と連携に関する懇談 会」を開催させていただきます。委員の皆様におかれましては、本日は大変ご多忙のと ころをご参集いただきましてありがとうございます。  本日は第1回目の会合でございますので、まず委員の皆様をご紹介させていただきま す。初めに「知ろう!小児医療 守ろう!子供達」の会の阿真京子代表です。昭和大学医 学部救急医学 有賀徹教授です。国立循環器病センター周産期科 池田智明部長です。北 里大学産婦人科学 海野信也教授です。大野レディスクリニック 大野泰正院長です。岡 井崇 昭和大学医学部産婦人科学教授です。山形大学 嘉山孝正医学部長です。青梅市立 総合病院 川上正人救命救急センター長です。大阪大学医学部救急医学 杉本壽教授で す。埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センター 田村正徳センター長 です。大阪府立母子保健総合医療センター 藤村正哲総長です。このほか、本日はご欠席 ですが、市立堺病院 横田順一朗副院長も委員としてご参画いただくことになっておりま す。  厚生労働省からは、まず舛添厚生労働大臣です。戸井田厚生労働大臣政務官です。外 口医政局長です。村木雇用均等児童家庭局長です。以上です。  それでは開催にあたりまして、舛添厚生労働大臣からご挨拶をお願い申し上げます。 ○舛添厚生労働大臣 皆さんこんばんは。本日はご多忙のところを周産期医療と救急医 療の確保と連携に関する懇談会にご参集いただきまして、ありがとうございます。今日 は第1回会合ということでご挨拶を申し上げます。  先般、東京都において妊婦さんがお子様の顔を見ることなくお亡くなりになるという、 大変痛ましい事案がございました。そしてまた、昨日来杏林大学病院の件も報道されて おります。緊急医療と周産期医療の体制の連携をやらないといけないということを如実 に感じた次第であります。  先般、都立の墨東病院や江戸川の医師会を訪ねまして、いろいろこの方策について議 論をし、関係医療機関の実地調査も行ってまいりました。また、今回、昨日来の杏林大 医学部関連の件も、いま検証調査を行っているところですが、10月27日には都道府県 に対し、周産期母子医療センターの診療体制等の確認と改善の検討をするように通知を 出したところでございます。この問題の背景はやはり医師不足など、医療体制全体の問 題がありまして、この点については、今日ご参集の先生方の中にもメンバーの方がおら れますが、「安心と希望の医療確保ビジョン」という中で提言をし、その具体化作業を いま進めているところであります。  この2件の妊婦さんの脳出血というケースが続いて明らかになりましたが、周産期医 療と緊急医療の問題に焦点を置きまして、ご専門の先生方にお集まりいただき、また、 阿真さんに患者というか、国民の立場でご参加いただいておりますので、是非、いい連 携策を作りたいと思っております。すでに産婦人科学会緊急医療の学会の先生方の間で も、相当作業が進んでいるということを聞いておりますので、みんなの力を合わせてこ の問題の解決を図りたいと思います。12月までを目途に、集中的な審議をし、周産期の 緊急医療体制の強化を図りたいと思っております。  我々の組織も今日先ほどご案内がありましたように、医政局長の外口、雇用均等児童 家庭局長の村木と2人出てきております。ということは、この問題を2つの局が扱って いるということですから、我々も厚生労働省改革の一環として、この2つの組織をどの ように連携させるか。組織改革については厚生労働省の在り方に関する検討会を行って おります。そういう中で、国民のニーズに合った役所に変えていくということが大きな 改革の目的ですから、2つ離れて別の組織があることはあることで意味があるのですが、 今回のような問題として、私たちもやはり組織の改革をしないといけないと思いますの で、その点も含めて総合的な検討をいたしたいと思っております。  是非、委員の皆さん方にタブーのない形で忌憚のない意見をおっしゃっていただき、 そして、私や政務官がいる、また、役所の人間がいるということで、厚生労働省に遠慮 する必要は全くございません。国民のために何をやればいいか、そういう視点からこの 緊急医療と周産期医療との連携を図りたいと思います。どうか皆さんよろしくお願いい たします。ありがとうございます。 ○指導課長 それではここでカメラは退室をお願いいたします。まず初めに、お手元の 資料の確認をさせていただきたいと思います。第1回周産期医療と救急医療の確保と連 携に関する懇談会の座席表、また、第1回の議事次第。資料1が「開催要綱」です。資 料2が「東京都における妊婦死亡事案と対応について」、資料3が「通知の写し」。資 料4-1以下が嘉山委員からご提出いただいた資料で、枝番が付いた4-5までございます。 続きまして資料5は杉本委員から提出いただいた資料です。それに続きまして参考資料 1として東京都周産期医療協議会の資料がございます。参考資料2がございます。いま 申し上げた資料の中で欠けているものがございましたら、事務局までお申し出いただけ ればと思います。  続いてお手元の資料1の説明を、若干させていただきたいと思います。開催要綱です。 いま大臣からも説明がございましたとおり、この会の趣旨について周産期の救急医療体 制の充実が全国的に非常に重要になっていることから、妊産婦が安心して子どもを産み ・育てることができるように、早急に対策を講ずる必要があるということで、周産期の 救急医療体制の強化、また周産期医療と救急医療の確保と連携の在り方について検討を いただくということでございます。  検討スケジュールも大臣からお言葉がございましたとおり、12月中旬を目途に取りま とめる予定ということでございます。  続きまして、座長の選出をさせていただきたいと思います。事務局といたしましては、 岡井委員にお願いしてはどうかと存じますが、委員の皆様方いかがでございましょうか。                 (異議なし) ○指導課長 それでは賛同をいただきましたので、岡井委員に座長をお願いいたしたい と思います。続きまして座長代理の選出をさせていただきたいと思います。座長のご指 名により選出したいと思いますが、岡井座長、いかがでございましょうか。 ○岡井座長 これまでも産科医療と救急医療の連携に関することで、救急医療学会のほ うの窓口をしていただいております杉本先生にお願いしたいと思いますが、いかがでし ょうか。                 (異議なし) ○指導課長 それでは杉本委員に座長代理をお願いいたしたいと思います。岡井座長、 杉本座長代理におかれましては、それぞれ座長席、座長代理席にお移りいただきたいと 思います。  それでは、これより後は岡井座長に議事の進行をお願いいたしたいと存じます。座長、 よろしくお願い申し上げます。 ○岡井座長 昭和大学産婦人科の岡井でございます。ご指名いただきましたので、僭越 ではございますが座長の任を取らせていただきます。この会の趣旨、目的等につきまし ては、大臣自らご説明いただきましたとおりでございまして、何とかこの会でいい案を 作って、救急医療と周産期医療の問題解決に、少しでも役立つように全身全力でこの会 の座長を努めさせていただきたいと思っております。  先ほど厚労省の方からお聞きしましたところ、12月までの3回か4回の会合で周産期 医療と救急医療の連携に関するいい対策を提言してほしいということでしたので、本日 は現状どういう問題があるかということを委員の先生方からご指摘いただいて、それを 次回までに整理して、次回からはそれを解決するにはどういう方策があるのかを議論し たいと思います。もちろん根本的には長期にわたってやっていかなければ解決できない 問題もありますが、現状の中で対応できるのはどういうことか、そういうことを次回か らはやっていって、最後の段階できちんとこの会のまとめ、提言を提出させていただけ ればと考えておりますので、よろしくお願いします。  医療の現場では救急医療もそれなりに問題があります。周産期医療、中でも周産期救 急も問題は多くありますが、本日は特に両者の連携に関しての問題点をそれぞれの現場 からご指摘いただきたいと思います。この間、都立墨東病院の事例を受けまして、日本 産科婦人科学会として舛添大臣に緊急提言をさせていただいております。それはこの救 急医療等の連携の点でありまして、そのことを海野委員から簡単に説明していただいて、 その後ほかの先生方のご意見を聞きたいと思います。海野委員よろしくお願いします。 ○海野委員 北里大学の海野でございます。本日の参考資料2ですが、日本産科婦人科 学会理事長吉村名で舛添大臣に緊急宣言を10月31日にさせていただきました。これは 今回の事案を含めて母体救命救急というものに関して、私どもの認識としましては、や はり産科の問題と救急医療ということの中に、我々の心の中にずっと存在している縦割 というものがあって、それは国の段階、先ほど大臣のお話にもありましたように、国の 段階でも都道府県のレベルでも、学会でも医療機関でも各レベルで存在している。それ がちょうどその境界領域の母体救命救急ということに対する対策を、十分にできないも のにしている元なのではないかという認識です。その提言の1番はそこを何とかしよう ということが書いてあります。2番に関しては3番にもつながるところなのですが、救 急医療の分野、あるいは周産期医療の分野というのは、いま非常に勤務が過酷である、 あるいはなかなか人が足りないという現実があります。ですから、そこを含めてどうい う形での施策でそこを解決していくのかということになります。ただ、医療提供体制と いう観点で申しますと、救急医療にもいろいろな問題があるのかもしれないのですが、 周産期医療に関しては、周産期医療対策整備事業という形でいままで進めてきていただ いており、それなりの成果を上げてきているという認識です。  ただ、これは3頁の補足説明の(ウ)「周産期医療対策整備事業の見直し」という部 分に書いてありますが、この母体救急の問題、NICU不足の問題、さらに搬送の問題と いうことに関しては、すでに長年というか、このところずっと問題になっている懸案で ございます。それで、大変残念なことに今回のような事案が発生して、私ども当事者と しても、あるいはたぶん関係の部署としても非常に残念な結果になっているということ になるかと思います。  ですから、その辺のところを何とか解決の方向に向けていただきたい。そのために周 産期医療対策整備事業の基本的な見直しをご検討いただきたいということです。さらに これは短期中期的なことですが、長期的視野に立った検討として、すでにビジョン検討 会等で議論されている部分もあると思いますが、1つは絶対数の不足の中での過酷な勤 務とならざるを得ないような診療科における医師数の偏在の問題の解決に関する施策、 及び特に救急医療を担う医師医療機関の規模の適正配置の問題、さらに具体的な現場の 医師の過酷な勤務実態を解決するための方策等についても、長期的な視野も含めてご検 討いただきたいというのが、この緊急整備の内容です。  後ろのほうには実際に、たまたま産婦人科学会で調査を進めておりました病院の勤務 医の在院時間調査の結果等も載せております。これは出した後、だいぶ新聞の話題には なったのですが、実際にはほかの診療科の先生方も調べればこんなものだよ、あるいは もっとすごいよとおっしゃられると思うのです。ですから、これは1例であるとお考え いただいたほうがよろしいのかもしれないと思っています。 ○岡井座長 ありがとうございました。この件に対してのご質問は後の討論と本質的に いろいろ関係してきますので、後でやらせていただきますが、その前に、資料2と3を 先に説明していただくことになっていたのを飛ばしてしまいました。最初の資料2とい うのは、先ほどもお話がありました東京都の妊産婦さんが亡くなられたという事例のこ とです。これを簡単に説明していただきますか。ほとんどの方はご存じなのですが。 ○指導課長 先生方はよくご存じなので、改めて説明する必要はないのではないかと思 います。 ○岡井座長 ありがとうございます。このことを深く掘り下げるのが今回の目的ではあ りませんので。 ○有賀委員 よく知っていると言っても、報道をかいま見たり聞いたりということなの で、本当のことを実は知りません。 ○岡井座長 わかりました。知らない委員もいらっしゃるということですので、事務の ほうからご説明いただけますか。 ○指導課長 簡潔にご説明申し上げます。資料2ですが、10月4日にかかり付けの産婦 人科から患者の転院搬送の依頼に対し、都立墨東病院を含めて8つの医療機関に連絡し たものの、受入れ可能な病院が見つからず、最終的に都立墨東病院に再度要請し、入院 が行われたという件で、時系列的には資料2-1頁目に19時以降の事態の進行が記載され ているとおりです。これに関して本日、東京都で東京都周産期医療協議会が開かれまし て、参考資料1ですが、ここにおいて、参考資料の資料3にあります。「母体搬送事案 に係る医療機関への調査について」ということで、厚生労働省、総務省、消防庁と東京 都が協力しながら行ったものです。統一番号では6頁です。このような形で本日、東京 都において報告がなされ、議論が行われたと伺っております。  また、資料3ですが、これは今回の東京都の事案を受けまして、厚生労働省として当 面の対応を各都道府県にお願いしたもので、文章でいうと第2パラグラフにありますよ うに、周産期医療母子医療センターにおける診療体制の確保、院内の周産期医療部門と 救急医療部門の連携の確保、地域の医療機関との連携の確保等について、いろいろお願 いをしたところです。2頁目をめくりますと、それぞれのセンターにおいて1番目、改 善計画を作定していただく。あるいは2番目で周産期救急情報システムと救急医療情報 システムの運用についての改善を図っていただく。3番目で周産期医療体制の確保とし て、女性医師の復職研修の支援、さまざまな対策について検討をお願いするというよう なことで、厚生労働省の予算もありますので、それらの予算の活用を図りながら、実施 していただきたいというようなことについて、それぞれの都道府県にお願いした通知文 です。  また、別途置かれている本日付けの右肩に日付があります「9月の東京都における妊 婦事案について」は、報道が行われておりますので、それらの情報などを取りまとめて 時系列的に示したもので、9月22日調布市内のかかりつけ病院にお産のために入院され た妊婦がその後、体調をくずされて、杏林大学病院をはじめとする病院への入院の受入 れの要請が行われ、最終的には墨東病院に搬送されて、帝王切開術、あるいは開頭手術 が行われたというような流れです。おおむね以上のとおりです。 ○岡井座長 ありがとうございました。資料3までご説明いただきました。有賀委員、 いまの資料2の説明で、概要をつかんでいただければオーケーだと思うのですが、何か ご質問はございますか。 ○有賀委員 冒頭の資料2というのは、事案の経過ということで、地元の産婦人科によ るというのが最初の丸で、墨東病院における対応は以下のとおりとなっているのですが、 やり取りの具体的なことというのは、東京都の参考資料1の東京都の周産期医療協議会 というところをよく見ればわかるわけですね。 ○岡井座長 そこに書いてあります。この事例は、ここで徹底的に検証すると書いては ないので詳しいことは省略させていただきますが、いまの説明で先生がわからないのは、 なぜ患者さんの搬送先が決まるのに時間がかかったかというその辺ですか。 ○有賀委員 ですから、産科の救急といわゆる普通の救急医療のネットワークの連携の 部分だという話が冒頭からあるではないですか。だから、その連携の部分について、こ こがこうだったのではないかみたいな、ポイントがきちんとあるのではないかと思って お聞きしているのです。 ○岡井座長 はい、わかりました。その件に関して、今回の墨東病院の事例ではそれが 搬送するのに時間がかかったことのメインの原因ではないのです。ただ、そういうケー スがあったということで、これから母体救急の体制をしっかりとっていくには、救急と 周産期救急の連携がどうしても必要になるという意味で、特にこのことを今回のテーマ にしているのです。墨東病院の場合は産婦人科で本来2人当直しているべきところが、 医師不足ということで現実には1人しかいなかった。そこが根本的な問題になります。 ただし、先ほどからも説明があったように、これからは産科救急の側面からだけ見るの ではなくて、一般の救急のほうの先生たちと共同して連携してやっていくということの 必要性も、このケースから浮かび上がってきた1つの大事なポイントであるということ なのです。この答えでよろしいですか。 ○嘉山委員 いまの有賀先生の発言は非常に大事なことで、なぜかというと、先ほど大 臣がおっしゃったように、我々は縦社会でどうしてもやっているので、誰が受け取って、 どのような反応をしたかというのはネットワークを構築するのに非常に大事なわけで す。例えば、ここで地元の当直医とただ書いてありますが、何科の当直医だったのかと いうことは、私としてはネットワークを構築するときに大事だと思います。例えばこれ が耳鼻科の当直医だったのか、救急の当直医だったのか、産婦人科の当直医かでネット ワーク構築が全然違いますから、先ほど三浦課長が私のことを、ただ医学部長とおっし ゃったのですが、私は大学の救急部長で、脳外科でいまでも手術をしている現役の医者 ですから、そういうことをきちんと言ってもらわなくては困ります。そういう救急部長 の立場から見ると、誰がどういうようなネットワークをしたかが非常に大切で、今日こ の会はそういうことを打ち立てる、提言する会だと思うので、その辺はきちんと教えて いただかないと、何にも、ただ新聞報道程度で、我々専門家がこれからのディスカッシ ョンする意味がないと思います。 ○岡井座長 わかりました。こういうケースがあった場合に、最初にどこに話をもって いくのか、どの単位で責任をもって対応するのかというような話はこれからのディスカ ッションになりますが、墨東病院の場合はこれまでの周産期医療体制の中でやっている のです。最初の発端は一次医療機関、開業の先生の産婦人科医院のところで起こった。 そこの当直医が最初に、この患者は高次の医療施設に送る必要があると考えた。そのと きに現在の体制では妊娠している場合、お母さんはもちろん、お腹の赤ちゃんも同時に 助けようとします。2人助けるというのは基本的な考えですから、まず、周産期のネッ トワークに入っている施設に連絡をするということになっているわけです。ですから、 そこの地域の責任施設になっている墨東病院の産婦人科のほうに連絡がいったわけで す。そして、先ほど私が先生に説明したように医師不足のために1人しかいないという 現実がありました。それでほかの病院を探して、いろいろ当たったのですが、先ほども 言いましたように両方の命を救うということで、赤ちゃんの生まれた後のケアも重要に なりますので、新生児集中治療室NICUが必要になります。そこもきちんと管理できる ベッドがあって、また、一方でそれに対応するためには帝王切開で赤ちゃんを出すとい うことが必要になりますので、帝王切開ができる人員がいるかというようなことで探し ていくと、8施設に連絡したのですが、受けられる所がなくて、もう一度墨東に戻って きたという経過です。  その間に緊急度がどんどん上がってきて、病態が進行したわけです。そのことで墨東 はそれではというので受けることになったという、そういう経過なのです。受けた後は 脳外科の先生と連絡も付いて話合いの結果、赤ちゃんを先に出して、それからお母さん の手術をしようというそこの判断です。 ○嘉山委員 では墨東病院以外は全部産科のネットワークですか。 ○岡井座長 そうです。ですから、そこのところに母体救急の場合にどうするのか。い ままでは胎児がお腹にいるとどうしても母児医療のことを考えますので、そうしていま した。もし仮に先に救急にもっていって妊娠しているとなると、やはりそこからは妊娠 しているのだったら赤ちゃんも診れる施設でないと駄目ですよという話にもなります。 これからそういうことを深く議論して、いいシステムにしていきたいと思いますが、現 状はそういうことです。 ○有賀委員 いずれ大事な議論が展開すると思いますので、わからないうちに言ったほ うがわかりやすいと思うので。もし、産科の、つまりお腹が大きくて、妊娠の後期に入 っている患者がいて、その患者が足を折ったと。そのときにもまずは産科ないしNICU のある施設を探すかというような問題があるのですね。  だから、連携のときにやはり何がどうだったという話は、いいですけれども、いまの ような形で本当のことは一体何なのだということだけ、とりあえずは知っていたほうが いいのではないかと思います。 ○岡井座長 本当のことというのはどういうことですか。 ○有賀委員 つまり、なぜ頭と産科を同時に探そうとしなかったかという話です。 ○海野委員 では私が答えましょうか、いいですか。 ○岡井座長 先生も発言してもらってもいいですが。骨が折れたのであれば、すぐ胎児 に影響はないです。ただし、頭が痛いということになると、周産期医療の領域ではない かと考えるということです。もちろんいろいろな情報があって詳しく検討すれば、また 違う考えも出るのですが、私たちだと、まずあのケースは子癇前症を第一の可能性とし て考えます。そうすると、薬を使って痙攣を起きないようにしなくてはいけない、血圧 もコントロールしなくてはいけない。ですから、どうしても最初は産科になります。も ちろん病状が進んできて脳内出血の疑いが高いという判断になったときには、場合によ ったらお母さんのほうが先だから、胎児は次に考えようという判断になるかもしれませ ん。 ○有賀委員 つまりそういう痙攣をしているから聞いているのです。 ○岡井座長 ええ、だからこのケースはそういうことで、骨折とは話は違います。 ○有賀委員 わかりやすく言っただけです。 ○岡井座長 はい、わかりました。 ○海野委員 私もわかりやすく言いたいのですが、結局、初期症状で頭だとわかれば、 要するに現場の先生がそういう判断がある程度つけば、そういう両方で動き始めること にたぶんなったと。ただ、この段階では通常の周産救急の範囲なのではないかと判断し ているので、そちらが動き始めている。それで、途中で時間が経って、症状が進んでき て、これはそれどころではないという話になって、もう1回墨東に行ったときは、また 別の話になっています。ですから、それは状態がどんどん変わっていく中でそういうこ とが動き始めていたという、そして結果としてその症状ではみんな受けられないという 状況になってしまっていった。現場はそうだったということなのだと思います。 ○有賀委員 だから、報道でかいま見たり聞いたりするところによると、私みたいな意 見をそのまま言うということです。 ○岡井座長 ありがとうございます。先生が言われたことは大変大事で、先ほど嘉山先 生からもご指摘いただきました。たとえ妊娠していてもどういう症状であればどこに話 をもっていくのがいいのかというようなことも、この後整理してディスカッションしな くてはいけないということです。資料の説明はここまででいいですか。 ○阿真委員 1人の母親としてお聞きしたいのですが、これはもともと墨東病院にいて、 墨東病院の中で起こった出来事だったら助けられたケースなのでしょうか。 ○岡井座長 いや、それは分かりません。 ○阿真委員 搬送に問題があったのか、そこのところが見えないのですが。 ○岡井座長 ご質問の意味はわかります。これはなかなかお答えするのは難しいことで す。このケースはどのくらいの出血だったのかを脳外科の専門家が本当に検証しないと わからないことだと思いますが、頭の中に血管の病気があったことはわかっているよう なのですが、そういう場合に突然重大な出血を起こすわけですね。ただちに対応しても 助からないケースももちろんありますし、対応が速ければ助かるケースもあると思うの で、このケースがどっちだったかというのはわかりません。ただし、搬送に時間がかか ったという事実はあって、何とかそういうことを減らしていく対策が必要なのです。で ないと、これからいくらでもこういう問題は出てくると思いますので、それに対してし っかりした対応をとるように対策を立てておこうと言うことです。 ○嘉山委員 ちょっといいですか。私は脳外科の専門医なので、この前は外来で手術し て助けましたから。ちょっといま来る前に東大の脳外科の教授と話をしてきたのですが、 墨東は東大ですから、東大から脳外科にいっています。ですから、たぶん墨東にいた場 合は脳外科に相談したでしょうから、脳外科に伝わっていれば、受け取る可能性があり ました。墨東にいた場合ですが。ですから、今回のこの事例は2つ問題点があるのです。 つまり、誰かを責めるわけではないのですが、有賀先生がおっしゃったように、最初の 段階で判断をきちんとしていればということが1つ。あとはネットワークがどうして機 能しなかったのか、この2つがこの会議でこの事例を中心に語られていくことだと思い ます。あとは墨東にいれば脳外科がいましたから、たぶん相談すればすぐ対応できたと 思います。助かったかどうかはわかりません。病気がどの程度だかわからないので、い たからといって助けられるものではないですから。 ○岡井座長 墨東病院で発症していれば、速く対応できたことは間違いないですね。あ りがとうございました。この件、もしよろしければ次に進みたいのですが、どうしても ということがあればお願いします。よろしいですか。それでは嘉山先生から貴重な資料 を提出していただいております。いつも嘉山先生にはたくさんの資料を出していただい ているのですが、これを全部一つひとつ説明していただくと時間がかかりますので、特 に今日のテーマである周産期救急と一般の救急医療との連携ということに関しての重要 なポイントだけを、ご説明していただければありがたいのですが、よろしくお願いしま す。 ○嘉山委員 総務省の発表では、山形の妊婦の受入れ困難は0です。ここにある資料を 使って何とかネットワーク、もちろん絶対数は少ないのですが、やっているということ の資料ですので、その根幹はその地域で完結型でやるということを周知しているという ことです。あとはネットワークの場合に各々の病院の顔を作っていく。つまり、ITのネ ットワークでやってしまいますと、ホテルの空室があるないと同じようになって、非常 にそれは機械的になる可能性がある。ところが山形の場合は完結型でやっていますから、 電話で連絡して、本当はベッドはいっぱいなのですが、何とか空いている所に突っ込む ことができるのでというようなことを行う。山形の人口は東京都の10分の1なのですが、 東京都の場合は非常に難しい面が山ほどあると思うのですが、ガバナンスをきちんとや れば、そんなことはないよという資料です。あとで説明します。以上です。 ○岡井座長 ありがとうございました。また、詳しく説明していただくことがあるかと 思いますが、東京の場合に地域完結型にするのが大変難しいということは、実は東京の ほうの協議会でもディスカッションになりました。その話、地域完結のこともあとでも ディスカッションさせていただきたいと思います。  それでは嘉山先生の資料の説明ということではよろしいですかね。何かありますか。 今度は杉本先生からの資料です。お願いします。 ○杉本委員 それでは簡単に。基本的には医師不足という話が盛んにやられていて、医 師不足で物事が何か解決するような話になっています。実際ここのところ、かなりの資 料などから医師の数は確実に1頁目を見たらわかりますように、毎年4,000人ずつくら いずっと増えていっていますから、確実に医師は増えております。対10万人の人口比で 医師の数を見ても増えていますし、その医師たちはどこへいったのかというふうになっ てくると、これは勤務医が開業医にどんどんいっているのだろうということになるので す。  次の2頁目の下の段を見ていただいたらわかりますように、それぞれの年齢階層別に 見た勤務医の比率は、大体40歳代以上45歳まで、ですから卒業後20年ぐらいまでで、 まだ70%の方々が勤務医として勤務しているという形になっています。その中で、特に 開業という形を見てみると、4頁を見ていただきますと、いちばん高い棒ですね。これ は実は病院に勤務している医師の数です。これは2006年まで見たらわかりますように、 開業医はもちろん増えているのですが、勤務医も確実に増えている。勤務医がどんどん 開業していくから減っているわけではないというのは、その前の3頁のいちばん下のと ころ、色が変わって非常にわかりにくいのですが、これを見ていただきますとわかるよ うに、2000年、2002年、2004年、2006年と病院に勤務している医師の数ですが、ほぼ 60%ぴったりと言っていいくらいです。だから、病院勤務医は6割がずっと同じように 変わらずにやってきている。だから、勤務医が減って開業したからという話で済むもの ではないということはやはり理解しておく必要があると思うのです。  実際に診療科の分布が非常におかしくなっているのだろうという形で見ていますと、4 頁の下の欄がそうですが、1万30と書いてありますが、それは内科医の数なのです。内 科医が平成6年から18年の間に1万30人増えているのです。逆に下に1,765と書いて ありますが、それは外科医の数です。外科医はこのように急速に減っていっているのは 間違いないのです。外科医の数はこのようにずっと減ってきているのですが、不思議な ことに外科の救急医療が問題になることは、今まではなかったのです。先ほどの資料に もありましたが、麻酔科の医師が足らないと言っているのですが、麻酔科の数も、外科 の医師が減っているのに、その麻酔科の麻酔をかける医師の数はどんどん増えている。 次頁は小児科ですが、小児科も医師が足らないからこうなのではないかということです が、小児科医は減っていません、むしろ増えています。これは言い換えたら、次の7頁 の上を見ていただくとわかりますが、14歳以下の人口は少子・高齢化の典型的なもので すが、どんどん減ってきている。そういう形で小児科医が1人でどれだけの14歳以下の、 本当は18歳も診ていると思いますが、14歳以下の小児の患者数を対象数としているか というと、1995年から2005年までの10年間に1,450人から1,250人という形で、1人 当たりの小児科医が扱っている患者の数が減っているということになっています。  8頁はここの本論で産婦人科医の数です。これは確実に減っています。平成15年から がたがたがたと急速に減ってきています。ただし、同時に出生数が減っていますから、 下頁で見ていただくとわかりますように、90年から2005年までの15年間に1人当たり の産婦人科医が対象とすべき出生数はほぼ80人とぴたっと本当に不思議なくらい一緒 なのです。言い換えれば、考えようによっては非常に需要供給の関係をもっている中で、 医師たちがむしろどんどん増えたら減ってくるだろうというのでやっているのかなと思 うくらいに、実にうまく80でぴったり止まっているということになります。それなのに、 なぜ産婦人科医の問題、小児科医の問題になってきているのか。これは単に医師を増や しても駄目なのだということを意味しているのだろうと思います。  9頁です。医師国家試験の合格者の男女比率です。簡単に言えば女性が3分の1です。 アメリカは10年以上前に半分を超えていて、女性医がどんどん増えているのです。下の 欄の診療科別女性医師の割合の推移ということを見ていただいたらわかるのですが、科 によって随分と差がありまして平成8年から18年としていますが、眼科は女性が多いと いうのですが、ほとんどその比率は変わらないできているのです。産婦人科は女性の比 率がどんどん上がっているという形になっています。  10頁ですが、それぞれの科の女性医師の比率を年齢部門別に見たものです。20歳代の 産婦人科医の70%が女性という形になっています。それと同じように麻酔科医の数が増 えていると言いながら、麻酔科医がいないから手術ができないというような馬鹿なこと が起こっているのですが、それを見ていただいたらわかるように若い層では50%を超え て麻酔科医が女性である。そして、小児科医も同じように若い層で女性医師が50%以上 となっています。言い換えたら、女性の比率が非常に高いところが、特に若くて病院で 働かなくてはいけない女性たちが、増えていることが大きな問題として起こっているの です。やはりこのことを考えなければいけないのではないか。下の欄を見ていただいた らわかるように、皮膚科などはやはり女性医の比率が非常に高いのです。ところが皮膚 科はそんなに緊急に呼ばれることがない。だからそれでいけるのです。  たしか東京医大のイズミ先生という助教授の方が東京医大と川崎医大を卒業した女性 医師の調査をしていますが、実に10年以内に55%の人が離職してしまっているという 状態になっています。その原因は出産、あるいは育児で、特に妊娠と出産が多くて55% という状態になっています。それはなぜかというと、要するに非常に不規則な勤務であ る。いつ呼び出されるかわからないので、24時間いつも対応しないといけない。そうい う状態のままで女性の医師が多い所に同じようにやれよなどと言っても、それは無理だ ろうということになってきます。その人たちが働ける環境、働き続ける環境を作ること が、いまから医師を増やして693人と、もちろん増やす必要はあります。もっと増やさ ないといけないです。医師を増やしたらいいのですが、693人増やしていっても、7,500 人ぐらい増えている中では、1割の増加ではとうていその医師たちがまた一人前になる というのは卒業するまで6年かかります。それに研修医もあり、10年としても、例えば 早い話が卒業して4年目の医師に、今度も産婦人科で同じようなことが出てきましたが、 そういう医師に例えば私だったら、生命を任せるのはちょっと待ってと言いたくなりま すね。  そういうことを考えれば、一般に医師も、どの職業もそうですが、一人前というのは やはり10年かかります。ということは、いまから15年後にやっと、いま増やしていっ た人がフルに働けることになってくる。それではあまりにも遅過ぎる。だから、もっと 速効性のある形で、まず女性の医師が働ける環境を、これが比較的作りやすい。  もう1つは、医師の仕事があまりにも多すぎる。くだらないといったら語弊がありま すが、診断書のちょっとしたことを書けとか、事務がやればいいではないかというよう ないろいろなこと、こういうアンケートもたくさん回ってきますが、それもみんな医師 が書かないといけないといって回してくる。そういうことをできる人、あるいはいろい ろな処理、医療秘書とか、医師をサポートする人たち、こういう人だったら短期間で作 れる。そして、1人の医師を作るのは大体年間国の補助も入れて1,000万円ぐらい使っ ているだろうと思うのです。6年間で6,000万円使っている。それと比べるとそういう 人たちを育てるのは比較的安いお金で済むし、1人の医師の給料でおそらくその方だっ たら2人を雇うことができるわけですから、そういうことをやっていくことが、おそら くこの議論をする前に、共通の認識としてやっておかないと、何となく医師が足らない というところに、バーッと流れていってしまうと、物事を見間違えるのではないかとい う意味合いで、基本的なデータとして共通認識としておいたほうがいいのではないかと 思って少し整理したわけです。 ○岡井座長 ありがとうございました。医師不足の実態の分析ということで、大変貴重 なご意見をいただきました。そのことも別の研究班でやっていますので、また、そのと きにもご指摘、アドバイスをいただければと思います。  いまお話の中で出た小児科のことなのですが、小児科の先生が2人いらっしゃってい ます。できれば救急医療のことに係わることで、ご発言いただければありがたいと思い ます。 ○田村委員 杉本先生のこの資料は非常にいい資料だと思うのですが、後半のお話は全 面的に賛成です。しかし小児科医がむしろ増えているという話と、文献で産科が1人で 診る患者が減っているということについてコメントさせていただきます。まず、小児科 医からいきますと、同じ小児科医でも、先生のおっしゃるのは、もちろん女性医師が増 えたことでフルタイムで働ける医師が減ったという面もありますが、それ以上に小児救 急とか新生児医療のようなハードワークのところで働く医師が足らないのがいまの時点 の最大の問題です。現実問題としていまの新生児医療だけに関係しますと、確かにお産 の数はどんどん減っています。だけれども、1,500g未満の赤ちゃん−極低出生体重児と 言いますが−非常に小さな赤ちゃんが、新生児の中でどんどん増えています。こちらの 藤村先生がそういう統計を取っておられますが、この10年間で我々がNICUで収容しな ければいけないと考えるハイリスクの新生児は絶対数として1.5倍に増えているので す。それにもかかわらず、NICUで働く医師はむしろ減っている。先ほどおっしゃいま した産科の医師は1人当たりが診るお産の数は減っているかもしれませんが、そういう ハイリスク分娩で生まれる赤ちゃんが増えているのです。ですから、それを忘れて、た だ医師数だけを並べますと、この周産期医療の分野でなぜこのような問題が発生してい るのかというのが見えてこないので、ちょっとコメントさせていただきました。 ○杉本委員 先生がおっしゃるとおりなのです。私が言っているのは、この数字を示し たのは、これが真実を示しているのですよという意味ではないのです。これを前提に一 応考えましょう。だけど実際にそれは先生がおっしゃるとおりなのです。例えば産婦人 科1つにしても、産婦人科医数であり産科医数ではないです。産科はどんどんと辞めて 婦人科にのり換えていらっしゃる人がたくさんいらっしゃいます。だからそういう意味 合いでは、これはあくまでも数字でこうだけれども突っ込んだ議論はこの中でやってい くのだから真実が見えてくると。基本的なバックグラウンドという形でお話したわけで す。 ○岡井座長 ありがとうございました。杉本先生の言われたことも共通認識として持っ ていなければいけないし、田村先生のお話も重要なご指摘ですが、いよいよ時間もあり ませんので、今日は9時で終わらないければと考えていますので、実際の現場でいわゆ る救急医療と周産期医療との間の連携のことで、現実にこういうことが問題で、結果と して最善の医療を提供することができなかったとか、そういう事例があったら、是非具 体的な話をして頂ければと思います。現実にはたくさんあると思いますので、その辺の ところのお話をいただければと思います。 ○海野委員 私は今日、厚労省の会議なので、この周産期医療対策整備事業によって、 総合周産期母子医療センターをはじめとする周産期医療システムが構築されてきている わけですが、そこの問題点について少し意見を述べたいと思います。  総合周産期母子医療センターというものが母子の最後の砦みたいな形の表現を、報道 などでされていますが、実際に作られてきた経緯を考えると、そういうものでは全くあ りません。実際には総合周産期母子医療対策整備事業で主として行われていることは胎 児新生児救急に対応できる医療システムを作るということがいちばんの目的だとしか言 いようがない。実際には産科のほうでは母体救急の問題が非常に大きなこととしてある のだということは、ずっと言い続けているわけです。ただ、現実に周産期医療対策整備 事業の整備指針をご覧いただければわかりますが、周産期医療センターに例えば脳外科 がなければいけないとか、内科がなければいけないとか、そういうことは全く書かれて いません。書かれているのは産科がある、新生児科がある。あとは麻酔科がいる。麻酔 科は常勤である必要すらありません。要するにそういうような非常に限定的な条件で施 設基準を作ることによって、かろうじて施設基準をクリアして、周産期センターが整備 されてきたという経緯があります。  当直者がいろいろマスコミが調査して当直の人間が1人しかいない病床で総合周産期 がいくつある、何パーセントあるみたいな議論はされていますが、今回の墨東の事例は また別なのですが、大多数の総合周産期母子医療センターの半分以上は1人です。それ は当初、平成8年に事業がスタートしたときは2人いなさい。複数という規定があった のです。規定はありましたが、そうするとそれは非常に現場としてきついのです。大学 病院はできますが、普通の一般病院の産婦人科ではとうていできないような体制です。 それで、なかなか周産期医療システムを各県で整備することが難しかった。非常に進み が悪くて、それでまた現場でも作りたいのだけれども、この縛りがあったらとうていで きませんという声が上がりました。  それで、平成15年4月21日付で雇用均等児童家庭局長からの通知が出ておりまして、 その結果として、MFICU6床以下の比較的小さなということになりますが、周産期セン ターに関してはオンコールを置けば当直者が1人でよいという通知が出ています。それ に基づいてそれならできるということで、特に各県の県立中央病院みたいなところでの 整備が進んできた経緯があります。ただ、これは進んで本当によかったと私は思ってい るのですが、ただ、一方でそのために結局それぞれの周産期センターで産婦人科医を増 やそうという努力を、必ずしもしなくてもよくなってしまった。私はそれまでは長野県 の周産期センターで2人当直を組んでおりましたが、その通知が出て、病院のほうから 2人でなくてもよくなったのなら1人でいいと言われて、1人分しか当直料が出なくなり ました。ですから、1人の体制になって、私がオンコールに回ったので、給料が激減し ましたが、というようなことが現実に起こりました。ですから、これは1名なのはそれ ぞれの病院からそういう決まりになっているので仕方なく1名でやっている部分もある とご理解いただきたいと思います。  周産期対策事業で先ほど胎児新生児救急に対応のほうを優先すると申し上げました が、その中で母体救急対応の問題がどうしても、とにかく周産期センターを作るという ことで各県が努力をしています。結局そこの部分の配慮が遅れてしまっているという現 実があります。  もう1つの問題としては、周産期救急情報システムの問題です。今回も問題になって いますが、これに関しても整備指針をご覧いただけばわかりますが、「作ってください」 とは書いてありますが、それ以外のことは何も書いてありませんし、実際にほとんど機 能してない所が半分ぐらいです。実際にはあまり作ってもしょうがない所もあるのです。 受け入れることができる周産期センター相当の施設がごく限定的な地域がかなり多いで すから、そういう所では電話したほうがずっと早い。先ほど嘉山委員がおっしゃられた、 山形のようなやり方のほうが普通だということがあります。  さらにもう1点は、先ほど田村委員がおっしゃられた、NICUの病床が絶対的に足り ていない状況が長く放置されてきていると。それはもちろん構造的な問題はたくさんあ りますから簡単に解決する問題ではありませんが、いまの時点でもNICUを増やそうと いう方針が明確に出ているわけではないと思うのです。ですから、NICUの後方病床の 問題が明確になっていないと。そういう背景があり、産婦人科学会から基本的な見直し をしていただきたいという要望を出したという経緯です。 ○池田委員 海野委員に付け加えます。具体的な数を述べます。厚生労働科学研究の妊 産婦死亡の研究をしています。一昨年の総合周産期センターにアンケートをしたところ、 全国で10センターが今回のような母体救急に対応できないと答えています。8つの子供 医療センター的なものと2つの日赤センターです。その責任者の方が、これはどのよう にしたらいいかというところで、すべての方が自分の所で母体救急に対応できるものを つくるのは非現実的であり、そのようなものですから近くにある救急センター、大学病 院などと連携を取ってやりたいとおっしゃいました。  そのようなわけで昨年から大阪府におきまして、杉本委員をはじめとする5名の救急 の先生と7名の産婦人科のほうで、現場の医師がどう協力しているかの会議を数回行っ ています。その結果、2つの職種のターミノロジーがかなり大きく違う。羊水塞栓と申 しましても全く救急のほうで考えられる羊水塞栓ではありませんし、出血と言いまして も産婦人科でパッと出る出血ではなく、救急のほうではまた違ったイメージがあると。 ですから、このように大きな職種の考え方の違いがあるなと浮彫になったものですから、 実際に会ってお話しなければいけないという感を強くしたわけです。 ○岡井座長 あとで絞ってお話を聞こうと思っていたことです。 ○大野委員 私は名古屋大学で産科主任を含めた産科臨床を長くやっており、いまは開 業して5年になりますので、一次医療施設の院長をやっています。ほとんど1人で年間 550の分娩をやっており、今日も何とかやってきたという状況です。実は先日も同じよ うな事例があり、全く問題のない妊婦が陣痛発来できました。8cmぐらい子宮が開いて ほとんど生まれそうだというときに、急激に痙攣発作を起こし意識がなくなったと。赤 ちゃんも瀕死の状態になってしまい、そのとき私は、正直赤ちゃんをあきらめたのです。 お母さんも脳出血かもわからないから、死ぬかもしれないと本当に思ったのです。そこ で、すぐ近くの地域周産期母子医療センターに電話をしたら、満床であると断られた。 ところが、そことはパイプが強かったので、「何とか陣痛室でもいいから入れて欲しい」 と言って受けてくれました。幸い脳出血ではなく母子共に助かりました。我々一次医療 施設、いま私はここの分野をライフワークでやっているものですから、開業医はどうや って断られるか、まずは産科病棟が満床である、全館満床である、NICUが満床である、 脳外科・救急対応ができない、人手が足りない、大体そういうところだと思うのです。  もちろん、それぞれこれから掘り下げて議論していくことだと思いますが、1つ、今 日、実は資料として間に合わなかったのですが、私が今年の日本産婦人科学会シンポジ ウムのときに併せて愛知県の調査を行いました。産婦人科医会、その他の協力を得、愛 知県には166の分娩を取り扱う施設がありますが、そこにアンケート調査を行い、100 %の回収率を得ています。  先ほども海野委員が言われましたが、我々開業医は、何か危ないことがあったら総合 周産期センター、地域周産期母子医療センターが助けてくれると思って、門を叩くので す。愛知県内には、地域周産期センターが11、総合周産期センターが1、大学病院が分 院を含めて5、それ以外の総合病院が35、それ以外の開業医、合計166あります。とこ ろが地域周産期センターの1件は「脳出血、あるいはそれが疑われるものは全く受け入 れられません」と返答しています。ただ、それは先ほどのもともと周産期センターの成 り立ちのものがありますから、実はこの病院には脳外科がないのです。ところが、その ことは開業医は知らない。ですから、そこへ一生懸命送ろうとするのです。そこでタイ ムロスが生ずる。もし、そこに断られたということになると、例えば私1人で、分娩の 患者が痙攣している、そういう所に断られた。次にあたる余裕は全くないのです。です から、本当に切実な思いです。  それはこれから議論していくことになるのですが、周産期センターはERができる所 に周産期センターが入るべきだと私は思いますが、その情報の共有、情報システムを愛 知県は持っています。ですが、ホームページを開いてログインをしてやるのです。その ような余裕は現場にはないのです。それに、かなり頻回に更新はしてくれています。と ころが、○であっても断られます。ですから、ほとんどあまり意味がないということが 現実としてあります。また、愛知県でも、例えば未熟児センターがいっぱいで断られる ケースが多いのですが、総合周産期センターの場合はそれを理由にして断ることを許し ていない。ですから、満床であっても受けます。そういう病院とそうではない病院があ る。ただ、受ける病院は責任問題が出てきます。満床で受けてもし何かあったらどうな るのか。それに対して、院長裁量、部長裁量で行っているのが現実というところがあり ますから、そういう問題点、今度これは資料として提出させていただきますが、参考に して議論していただければと現場の声としては思います。 ○岡井座長 周産期救急となりますと、海野委員のお話にもあったし、いまの大野委員 のお話もあったように、最初の成り立ちは胎児、生まれた赤ちゃん、特に未熟児、早産 児の医療を中心に考えてきているのです。だから、根本的に母体の対応は遅れている現 実があったのです。妊産婦死亡のうちに産婦人科医だけで対応できて今だったら救える のも、かつてはかなりあったわけです。そのような例も最近は相当救ってきていまして、 妊産婦死亡率もうんと下がってきているわけです。その中で合併症があって妊産婦が亡 くなるという事例が、全体の中の%では増えてきているわけですので、そういう症例に 対する対応の重要性がかつてよりは上がってきたことがひとつ言えると思うのです。こ の会で本当にやりたいことは、そういう症例をどうするか、一般救急の先生方にも助け ていただいて、私らも協力をして、難しい妊婦の症例でも何とか助けていこうというこ とだと思うのです。池田委員に私から聞こうと思ったのは、先生は妊産婦死亡の集計を やっておられましたよね。 ○池田委員 はい。 ○岡井座長 私がいま話したことについて、最近の傾向の具体的なデータなどがあれば 教えていただきたいと思ったのです。 ○池田委員 2000年に厚労省発表、人口動態統計ですが、78名亡くなっておられます。 妊産婦死亡率は10万出産で表しますので、6.3%です。2010年までに半減するというも ので、2006年が54名亡くなって4.8%だったものですから、なかなか難しいとは思って いましたら、昨年は35名に激減し、率としては3.1%、半減をほぼ達成したと。これは 世界的に見ても、ベスト5に入るぐらいのいい数です。ただし、妊産婦死亡は実際の数 を表しているかどうかというところが、過少評価にどうしてもなりがちです。新生児死 亡でしたらそこで数は取れるのですが、例えば妊産婦死亡の定義としたら、分娩が終わ り42日とか1年など、そういったところで死亡診断書を書く方が、産婦人科の方でなけ れば妊娠のところがわからないといいますか、気づかずに書いてしまうかもしれない。 そういったことでアメリカ、イギリスはいろいろな試みをしており、これも厚労省の研 究でやらしていただきましたが、リンケイジを使いますと約35%ぐらい増えるだろう と。そうしても3.6や5というところで7ぐらいですので、これでもまだ先進諸国のト ップクラスではあるのですが、少なくとも35%は取り漏れをしているだろうと。そのほ とんどが間接妊産婦死亡と言いまして、脳血管障害、心疾患、このようなものですので、 委員がおっしゃいましたように、直接に出血、塞栓、高血圧症候群といったものはガク ッと下がっているのですが、いまは相対的にそういった脳出血、心疾患というのが浮か び上がってきているところです。 ○岡井座長 情報の話が出たのは大野委員からですか。情報をうまく活用する、情報の 質を高め、しかも広げてというのは、一般の救急の情報と産科、周産期救急の情報との ネットワークをつないで、それをいかに上手に活用するかもポイントになってくると思 うので、その件に関してご意見等がありましたらどうぞ。 ○田村委員 救急と周産期ネットワークの情報を結びつけることも非常に大事なことだ と思うのですが、周産期医療で特に赤ちゃんを診ている立場から言いますと、今回の墨 東での事件が我々にとって非常にショックだったのは、我々から見ると、ハイリスクの 分娩数あたり、総合周産期センターが9つもあってNICUのベッド数としては全国的に も非常に恵まれている東京ですら、受け入れ先が見つからずに最悪の事態を招くことが 起きたということです。  私が働く埼玉の例を出しますと、埼玉は分娩当たりの産婦人科の数、分娩数当たりの 新生児の数は、全国でも最低レベルです。東京が1,200万人に対して9ヶ所の総合周産 期センターがありますが、埼玉県には700万人の人口に対してたった1ヶ所の総合周産 期センターしかない。実際問題として、埼玉県のNICUに入らなくてはいけない赤ちゃ んの3割までが実は東京に送られ、それで何とかいままでしのいできていたわけです。 それが今回のようなことが起きますと、どういうことが予想されるかというと、東京都 がもっと敷居を高くし、他県からの母体・新生児搬送は受け入れられないことが危惧さ れます。それは埼玉県から見ると大変な破局の前触れです。我々の施設は総合周産期セ ンターでありながら59%の母体搬送をお断りしています。それは我々の計算では、埼玉 県では100床NICUが足りないのです。100床NICUが足りないために、母体搬送でお 受けしても、その赤ちゃんが生まれたときに受け入れられませんから、仕方ないので重 症の赤ちゃんは優先的に埼玉県の中で我々の施設で引きうけて、軽い患者は東京に送っ て受けていただいていたのです。  今回いろいろ悪者にされている墨東病院、広尾日赤は、我々側から見ると最後の頼み の綱で、埼玉がいっぱいのときにお電話をすると大抵受けてくださっていたことなので す。逆に言うと、今回もそういう所だからこそ、おそらく一次の産科クリニックの先生 がまず電話したのが墨東であり、広尾日赤であったのではないのでしょうか。たまたま それがいっぱいでお断りしたから今回悪者にされてしまった。このようなことが起きて しまうと、埼玉県の赤ちゃんたちは3割が行き場所がなくなってしまうのです。先ほど の情報ネットワークに関しても、埼玉県の中で我々は総合と地域で合計5ヶ所の周産期 センターでネットワークを持っています。しかし、いつもNICUのベッドは満床です。 ×(受け入れ不可)ですから、結局、情報ネットワークがあっても役に立たないわけで す。東京都は9ヶ所の総合周産期センターがあって、25ぐらいの地域周産期センターが ありますので、我々はそのまま情報を見ることができれば、○(受け入れ可))の付い ている病院に埼玉県の子どもを紹介することができるのですが、おそらく東京都はこの ような事件が起きたので、そのようなことは許してくれないのではないかと心配してい ます。私は埼玉県の医療福祉部にNICUの相互利用という政策協定を東京と結んでく れということをずっと言っていたのですが、それができなくなる。  だけど、総合周産期センターに関しては、これは国の補助金を戴いているわけですか ら、そのことを厚生労働省はしっかり強調していただいて、少なくとも総合周産期セン ターの空床情報に関しては全国どこからでもいい、少なくとも関東近辺では道州制の単 位の地域においては、共通して見られるようにしていただきたい。NICU不足はそれ ぞれの都道府県だけの中では解決できない問題になっているわけですから、国民の命を 預かるという観点から、少なくとも国民の税金を使って運営されている総合周産期セン ターに関しては、きちんとその情報をその都道府県内にとどまらず、他の都道府県の情 報ネットワークにもオープンにしていただきたいと、お願いします。 ○岡井座長 わかりました。少しローカルの話になりますが、埼玉から患者を東京に送 っておられて東京で引き受けている例がもちろんたくさんあります。そのことについて、 東京都は自分たちもいっぱいなのに、ほかの地域から受け入れるのはどうかという議論 もあったのですが、私たちの周産期医療協議会の結論では、そのような度量の狭いこと は言わないで、空いている限り入れましょうということになっています。ネットワーク をそこまで広げるかどうか、これについては議論が必要ですが、委員が心配されている 東京が他県からの搬送を受けなくなるのではないかということはまずないし、それに関 してはいままでどおりであると言えます。  もう1つ、満床であるのに受けるということは、私はセカンドベストだと思います。 ベストはベッドもきちんとあるし、対応できる医師がいる施設が受け入れるのだと思い ます。条件が整っていないと患者を受け入れても本当に最善の対応ができないのではな いかという考えがあるので、自分の所が駄目だったら次を探すという話になるのです。 地域で完結しているとそこしかないのだから、セカンドベストかサードベストかわから ないけれども、やるんだということでやっているわけで、本当にどちらがいいかは議論 しないといけないことです。何でも絶対に受けている所は、そちらのほうがいい場合も ありますし、東京のように環境が整っている所が、その時点であればそちらにするとい う方がいい場合もあると思います。もう1つ共通認識としてNICUが足りないことがあ げられました。これは絶対的に足りない。それも1つありました。海野委員、この話の 続きの発言ですか。 ○海野委員 いま岡井座長がお答えいただいたので助かったのですが、埼玉と神奈川も 全く同じ立場ですので、神奈川は全体の10%を東京にお願いしています。私どもがお願 いというか提案をずっとしているのは、これは先ほどお話がありましたように、首都圏 は1つの医療圏として考えないと、とても周産期救急、特に高次の周産期救急医療はで きないのではないかということです。そういう意味で、搬送システム、情報システムに 関して、広域のものを考えていただきたいということをずっと言っているのですが、こ れも都道府県単位の議論ではなかなか進まないことがありますので、これは国の段階で 何らかの検討をしていただきたいと思います。 ○藤村委員 大阪は新生児緊急搬送システム(新生児診療相互援助システム(Neonatal  Mutual Cooperation System;NMCS))を30年前にNICU病院が自主的に組織して現 在に至っています。この20年ほど断った例がないです。大阪では、原則として入院依頼 電話を受けたNICUが受入れできない場合、そのNICUから情報センターに連絡し、情 報センターが探すわけです。いまよく言われているコーディネーターの役を我々NICU の総合周産期部署の当直医が情報センターの役割を受け持ってやっているわけです。先 ほど「顔の見える関係」と言われましたが、インターネットを使う空床情報システムを 活用しつつその情報で電話をすると、言われたら受けなくては仕方ないかなというのが 大体受ける側のレスポンスです。だから、大阪はほとんどうまく行っているわけです。 私はそれで大阪は大丈夫だ、NICUのベッドも十分あるとか、そういうことを言いたい のではないのです。いかにシステムを柔らかく動かすかを考えないと、何かシステムで 絵としてできたら動くだろうと思うと間違いだろうと。大阪はダテに言っているのでは ないのです。30年ほとんど大きな問題なくやってきたのです。その実績を評価するとい うか学ぶのはある程度要ると思うのです。  我々自身もヒヤッとすることがどんどん減ってきているわけです。これはシステムと して動かせるのではないかと自信を持っています。例えば、連携がいまどこでも言われ ますよね。私らは連携という言葉の定義はよくわからないのです。我々が30年前に付け た名前は、「新生児診療相互援助システム」という名前です。相互援助です。助けると いう気持がなかったら動かない。それもタイトルに付けたわけです。これは杉本委員も いま副会長をされている大阪府医師会と協同で地域全体の医師組織としてもやろうとい うことで、そういう何か、先ほど地域完結型という言葉が出ましたが、そのソフトな面、 ローカルな面を少し出していくべきではないかという気もします。それがいままでの伺 った感想です。 ○嘉山委員 いまの続きですが、この事件は根本的に言うと私はシステムエラーだと思 っています。なぜかと言うと、この周産期母子センター、先ほど海野委員が生い立ちを お話になりましたが、これは現場を全く把握してない人間がつくったとしか考えられな い。あるいは医学を知らない人間がつくったとしか思えない。なぜかと言うと、産科し か見てないのです。つまり、命に関係するものをすべてそろえてないと、母子、NICU も含めて、先ほどお話にありましたように、周産期の妊婦の死亡の原因はいまや脳卒中 ですから、センターとしてそういうのがいないのも平気で指定しているのですから、こ れはシステムエラーです。センター側は現場に本当にいいのかどうかということを、大 臣がビジョンの会で「現場に即したネットワークの構築を目指しなさい」と言われたこ とは、まさにそのとおりで、そのシステムが今回破綻したのだと考えます。  これは母子センターだけで扱う患者ではなく、手前のことを言ってはまずいのですが、 私の資料の4-2ですが、これは救急で扱うべきだと思うのです。先ほど有賀委員がおっ しゃったように、三次救急は命に全部関係することを扱うので、そうすれば脳外科がい ない所を指定したりなどは絶対にしないし、妊婦でも急性腹症も起きるし、心臓の病気 も起きるわけで、最初に産婦人科の先生がいろいろな病気を診たときに、産科の周産期 母子センターに回すと思うのです。ですから、このセンター間をもう一度再考慮しない と、また同じ問題が起きます。それはなぜかと言うと、システム的に無理があったので す。  私がこれをつくったので、委員がおっしゃったように、うちの救急部は全員急患は受 けろということが原則になっているのです。なぜかと言うと、救急隊は受け取ってもら うことが仕事です。来てみて入院でベッドが満員かどうかは、そのとき判断すればいい わけです。先ほど産科の先生が脳卒中を想像しなかったとおっしゃいましたが、救急で 1回受け取り外来で診ますと、何も手術できなくてもいいのです。そのときに脳卒中か 子癇かは判断できますから、そのときにヒューマンネットワークを使って手術できる所 に送れば命は助かるのです。東京都は皆さん通いの医者が多いと思うのでなかなか大変 でしょうが、うちはまずは全員引き受けることにしているのです。そこで診断をきちっ とすることです。  4-2に書いてあるように、産科、脳外科、麻酔科、外科が入っている。なぜ救急にこ れほど入っているかというと、これは有賀委員はよくおわかりでしょうが、命に対応で きる科を入れない限り、周産母子だけでは無理だと思うので、ここも舛添委員会で提案 をすべきだと思うのです。我々はこの委員会で大臣に答申したいと思うのです。そうで ないと、今度の事件は脳外科がなければ、先ほど大野委員がおっしゃったように、脳外 科がないから受けられないということになりますので、もう1回このシステムを見直す べきだと思います。 ○岡井座長 システムの構造上の問題であることは確かです。少しだけ言わせてもらう と、周産期医療の重要なポイントがかつての状況と大きく変わってきたのです。それに 少し遅れて対応がずれてきているので、ここで一気に頑張ってやろうと、そういう話だ と理解してください。それで委員がご指摘いただいたことの中で大事なことは、救急医 療はその中にいろいろなものを全部含めたものではないといけないのではないかという ことだと思います。産科、新生児、脳外科、心臓、救急に全部きちんと入ったものがあ って、それで初めて365日、24時間受けられる。  そこで私が言いたいのは、施設の規模をある程度大きくしないと余裕が出ないと言う ことです。ベッドが満床となると、それはベストの対応ではないのです。医師が足りな い状況はベストではないのです。こちらで何か大事なことがあっても、次に来た患者さ んも受けられるという十分な余裕がある、そういうものを将来の理想の姿として描いて いかなくてはいけないのではないかと、そう思っているのです。 ○嘉山委員 センター化をするためには、十分な人数がいないと無理です。 ○岡井座長 それは、もちろんそうです。 ○嘉山委員 それはセンター化を簡単に言いますが、センター化をするためには十分な 人数がいて初めて成り立つことである。これはシステムとして当たり前です。それが人 数がいまは絶対数が少ないところで選択を無理やりやるから。大臣が前におっしゃった、 川越の産科のネットワークはうまくいっているよと。それと同じように、何も1つの病 院で完結しなくてもいいので、その地区のネットをつくればいいと思うのです。 ○岡井座長 本質的な問題なので議論を続けていくポイントですが、救急の現場で責任 者をしておられる青梅市立病院の川上先生からご意見があればお伺いしたいと思いま す。 ○川上委員 青梅市立総合病院の川上です。我々の所は東京の西多摩地区、山岳地帯の 所にあり、近隣の救命救急センターまで救急車でも30分、大学病院の分院でも30分以 上かかります。年間、分娩を1,000件ぐらい行い、小児救急をやり、救命救急センター をやりというところです。確かにシステムを構築するのは大切だと思うのですが、墨東 病院の場合、必要な科というと、脳外科、麻酔科、産科、小児科、場合によっては救急 科ということになりますが、この5つがそろってこそできることだったと思います。断 られたほかの病院も、通常だったら可能であったが、たまたまほかの症例が来たとか、 バックベッドがいっぱいだったとか、そういうことでお断りになったのだと思います。 東京自体の発生件数が多いということもあるのではないかと思います。本当に100%こ のような患者を救えるだけのシステム構築ができるのかと言われると、少し疑問があり ます。我々の所もNICUはありませんが、運べないからここで出産させましょうという 症例を受けて、小児科の先生方は頑張って新生児を診られています。それでも分娩が重 なったり、脳外科が手術中であったり、麻酔科が不在であったりなど、そういうことが ありますと断らざるを得ないということになります。東京都自体は、周産期にしても救 急に対しても、有賀委員に聞かれたらわかると思うのですが、情報のネットワークはそ こそこ出来ていて、情報端末も細かく分かれています。確かに産科○、小児科○、脳外 科○、手術○を選んだときに東京都内で可能な病院があるのか、たとえ1つだけあった としても、2つ目の症例が同時に起こった場合はどうするのかという議論が残ってしま うと思います。杉本委員がおっしゃられたように、結局いま必要で使える人を増やす、 特に女性医師を活用できるシステムを構築するのがいちばん効果的かと思います。その ためには、周産期、救急など、個別にお金を付けるよりは、正直なところ病院全体とし て収入が上がるようにしていただかないと。病院の収入が上がるほうに持っていってい ただければ、上がった分は当然頑張っている科にそれ相応に配分できるのではないかと 思います。 ○岡井座長 また別の側面からの意見が出ましたが、杉本委員、お願いします。 ○杉本委員 今日はフリーディスカッションだからあれですが、このことも含めて、実 は我々の所も大阪大学ですが、例えば産婦人科は産婦人科で起こったことは自分たちで 全部始末すると。いまの出産に伴ってもそうですね。こういうケースもありました。妊 婦さんがお腹を刺されてやってきましたが、産婦人科だけでやっている限りは、これは 不可能であって、全診療科が一緒にやらないと、これはできないです。実際、産科の新 しい教授が決まって、一緒に協働する形でやり始めました。先ほど委員は産科出血はこ うだとおっしゃったけれども、我々が見ていて、いや、それは出血性ショックに対する 概念は古いのではないかなどというものを含めて、これは悪い意味ではないのですが、 我々はそれを専門にやったているからそういうものを含めて、我々が介入することによ って随分違うこともあります。  ただ、そうやっていこうというときに、先ほど海野委員はおっしゃいましたが、役所 もそうだということですが、医学界は本当に縦割の世界で来ました。それをまず交じ合 わらないとできないと思うのです。例えば、我々の所はそういう形で産科の救急はいま まで産科で診ていたのですが、それは無理だから一緒にやろうというのでやってみて、 やってみるとこの1年間だけでも3例ぐらいが我々の所で受け取って、もちろん出産に 関しては産科が入るのですが、それを3回ぐらいは助かりました。いままでこれはどう してたのと言ったら、「それゃ先生死にますよ」などということを言うときも、重症管 理もそうですが、そういう意味合いでまず交じ合ってやる場所をつくる必要がある。い ま先生がおっしゃっていましたが、そのために大阪の場合は、救急災害部会を大阪府医 師会の中に持っているので、そこに行政も入っているし、救急も入っているし、精神科、 小児科など、そういうあらゆる人たち、あるいは地域も、もちろん医師会の先生は入っ ているのですが、これは30年ぐらいそういう中でディスカッションをずっとやってきて いるから、私は産科は関係ないですが、例えば産科のいまの状況はどうなっているか、 精神科の救急はどうなっているのかと、お互いにそういうディスカッションで、そうい う場所をつくる必要がある。  例えば、地域医療協議会という形はそれぞれつくられていると思うのですが、これは 全く機能しないと言っていいぐらい、それぞれの首長が出てこられる、あるいは医師会 の会長の先生が出てこられてやられているのだけれども、その方たちは現場を全くご存 じないから、おっしゃっていることが非常に表面的な言い方になってしまいますから、 そういう意味からいっても、是非とも、現場で働いている人たちが交じ合える場所をつ くってやっていくこと、これがまずはやることだと。  救命センター側の立場から言えば、産科救急で我々とか言いましたように、年間、1,000 例受けてるうちの3例ぐらいですから、それは我々にとっては大した問題ではないです。 もう1つは、産科救急の中で産科で起こる病態は、妊婦の生理的な反応は全く普通とは 違いますから、救急からやっている立場から見ると、非常に興味深く、これは是非とも やっていきたいと思っている面もありますし、それはそれほど難しい問題ではないです。  要は、いまも出ていましたが、周産期医療システムというものの中でものを考えて、 救命センターをやらないといけない。逆に、私は救急の代表というか担当者ということ で出ているのですが、日本救急医学会、救急医学、救命センターをやってもらっている 人たちも産科医も、産科の患者、妊産婦が倒れるのだったら、それは産科医もやりなさ いというところの両方です。産科の人たち、周産期をやられていた人たちもそうだろう し、救命救急をやってもらっている人たちも、その間の交じわりが全くクロスすること がなかったから、それをどうクロスするか、それはあまり難しくない。まずお互いに一 緒の場所を持ってディスカッションをやっていくということで、それほど難しくなく、 12月までというお話でしたが、方向としてはそれほど、先は比較的簡単に見えて。大阪 では、いま池田先生を中心にそれをどんどん進めようという形です。いま大阪大学でパ イロットスタディーをやっているのですが、それをもう少し広げていくことは、それほ ど難しくないことです。比較的簡単にゴールが見えることだと思います。そういう意味 合いでは12月までには実施可能です。  ただし、これは言っておきますが、こういう救急医療は、先ほど嘉山委員もおっしゃ っていましたが、地域によって随分違います。大阪でやっているシステムを東京に持っ てきたら、それでいいのというわけでは決してないと思います。東京では東京のシステ ムを考えなくてはいけない。山形県では山形県としての医療資源の中でどういうシステ ムをつくるかということを考えていくことは、愛知県もそうだと思いますが、それぞれ の所でどういうシステムをつくるか。共通の認識はあると思う。つくることは必要だと 思います。 ○阿真委員 先ほど外科医などの推移がありましたが、救急医の不足はよく報道などで 見ますが、全体で1,000人ぐらいしかいないというのを見ますが、実際、そこのところ はどうですか。 ○杉本委員 日本救急医学会の救急専門医は、いま500人ぐらいですか。 ○有賀委員 それは指導医です。いわゆる救急の専門医は、1年ぐらい前がたしか2,700 人ぐらいですから、いま3,000人ぐらいだと思います。 ○杉本委員 3,000人ぐらいです。ただし、誤解されていけないのは、救急医療は、産 婦人科、小児科、脳外科の先生の全員が参加しないとできないのです。救急医が3,000 人で日本で起っているおよそ2,400万件ぐらいの救急患者が発生しますが、それを3,000 人で診ることは、到底不可能なことであります。基本的には救急医療は、全診療科の者 たちが関与をしてやらないといけないから、どの医師もそれぞれの自分の専門性、自分 の能力などに応じてやっている。それで持っているのです。その中で特に重症救急とか、 あるいはERという言葉が非常に曖昧にいい加減に使われたようですが、そういう振り 分け的な、救急とか、そういうものを専門にやろうという医師たちが3,000人、それを 救急専門医と言っているのです。だから、救急医療センターでは医師全体でやっている という理解です。 ○有賀委員 追加です。救急の専門医が足りないという話をわかりやすく言いますと、 救急医療全体としては、そのようなものはほとんど役に立たないぐらいしか数はいない わけです。初期臨床研修制度があります。その臨床研修病院の数と実働として病院で働 いている救急科専門医の数が大体トントンです。つまり、どういうことかと言うと、救 急医療を体系的にもし臨床研修医に教えようと思ったときに、いまいる救急科専門医を バーッとばらまいたら、臨床研修病院に1人ずつかろうじているかいないかという程度 しかいないということになります。その程度しかいないと思う程度に足りないのだと。 ○杉本委員 足りないのはすでに圧倒的に足りない。だいぶ足りないというよりも、圧 倒的にいまいっても足りないです。いないのは間違いないです。 ○有賀委員 私らも着々と増えてはいます。少しずつ、女性ももちろんいます。そうい う方たちが一定の修練を積んで試験を受けてという形になっていると、最低5年ぐらい はかかりますから、そういう意味では、増えてはいますが、ゆっくりしか増えてないわ けです。いま言った状況になっていることになります。 ○阿真委員 医師と救急救命士との役割というのは。 ○有賀委員 いまおっしゃったのは救急救命士のことですか。 ○阿真委員 救急救命士です。 ○有賀委員 それは救急隊のことですね。 ○阿真委員 救急隊のことです。 ○有賀委員 救急隊は救急隊の別の国家資格でもって、医師の指示に従っていわゆる医 行為、点滴など、そういうことをやる方たちがいるということです。それは現場と搬送 途上において医療行為をすることになりますので、今回のこの件に関して直接的にはあ まり関係がない。少なくとも救急車の中で分娩してしまうお母さまもいますから、名前 を付けたのが救命士だという話もありますので、全く関係がないことはないと思います が、全体から見ると位置づけはそういうことだと思います。 ○岡井座長 最後に、また医師不足のほうに戻ってきた話になりましたが、根幹にその 問題があるのは事実で、それに対する対策としては、今年、医師を増やそうということ を厚労省は言ってくださって、その後実際に政策が出ました。まだ科による偏在、地域 による差などはあるのですが、それに対しても研究班をつくって検討して頂いておりま す。それはそれでやるとして、いまある現状の中で少しでもいい体制にならないか、少 しでも改良できないかということをいま私たちは議論しなくてはいけないのだと、その ように思っています。私が考えていたより話が広がってしまって、頭の中で問題点の整 理ができてないところもあるのですが、それだけこの問題は広い側面から見なくてはい けない問題であるし、根の深い問題だと思っています。  それでも進めなくてはいけませんので、次は何とか対策のほうに話を持っていきたい と思います。その話の最初の取っかかりに、いくつか地域の先生から言ってもらった、 うちはうまくいっているという、その例を挙げてもらおうかと思うのです。その地域で うまくいっているから、よそでもうまくいくとは限らないと思いますが、いい所を取り 上げて対策に活かすために、事務方と相談させていただいて、いくつかの地域からうま くいっている例を挙げてもらうことを次にやりたいと思います。 ○池田委員 私は宮崎県に長くおりましたので、これはうまくいっているなと思う例が ありました。 ○岡井座長 次でいいのですよ。次回に是非お願いします。場合によったら資料等もお 願いします。 ○有賀委員 積み残しになるといけないので短い時間で。資料3の厚生労働省医政局指 導課長・母子保健課長、先ほど厚生労働大臣がおっしゃった2本立ての文書の2頁を見 ますと記の2、「周産期救急情報システム及び救急医療情報システムの運用について」 と。「これらのシステムの運用状況を確認した上で必要があれば適切に改善するよう検 討を行うこと」、これは都道府県の主幹部長に言っているわけです。  例えば、これは東京都において周産期救急情報システム等ほぼ全県1区で情報を集約 することができる東京消防庁の救急情報システムの運用ということでいけば、多少のイ メージはあります。ただ、全国的な視野に立つと、救急医療情報システムは、確かに厚 生省が昭和50年代からたぶん整備している事業だと思いますが、地域は全県1区で情報 システムを集約するシステムには実はなってないです。消防そのものが救急医療情報シ ステムについては市町村消防がもともとですから、そういう意味ではこれをポンと都道 府県に投げて考えろとおっしゃってはいるのですが、どういうイメージをお考えになり ながら適切に改善するように検討せよとおっしゃったのか、よくわからないのです。救 急医療情報システムという厚生省がせっかくつくってくれた昭和50年代からの大きな お金を付けたものが、未だに日本全国としては普遍的なルールとして成り立っていない という中で、周産期の情報システムと2つの運用について適切に改善せよという話が、 私自身は、実はよくわからない。是非、この件を積み残ししないようにきちんとやって いただきたいと思います。これはおそらく厚生労働省と総務省とが連携しなくてはいけ ないテーマだと私は思います。 ○岡井座長 今いただきました問題は、対策を練ることの1つに入れて次以降に進めた いと思います。司会の不手際で予定の時間をオーバーしましたが、どうしてもこれだけ 言っておきたいという人がいれば、ご発言いただきたいと思います。 ○田村委員 周産期医療ネットワークシステムそのものは、日本で画期的なシステムだ と私は思います。これができてから約10年で、先ほどおっしゃいましたように、妊産婦 死亡が激減しただけではなくて、日本新生児医療の成績はいま世界でトップレベルです。 周産期センターのとりあえずの目標である安全でしかも子どもにとっても優しいお産を 提供する場所を保障するという意味では、周産期医療センターネットワークシステムは 非常にうまく行っていたのです。それがいきなりそこに脳外科、心臓外科と全部入れな いと総合周産期センターに認定できないなどということにされてしまうと大変困りま す。あくまで嘉山委員がおっしゃるシステムエラーはハードの問題ではなくて、むしろ 情報伝達不足というソフトの問題だという理解でいかないと、我々は現場で頑張ってい るほかの新生児医療の関係者に対して非常に申し訳ないので、一言追加発言しました。 ○岡井座長 ありがとうございました。最後に大臣からまとめのお言葉をお願いしたい と思います。 ○舛添厚生労働大臣 じっくり皆さんのお話をお伺いしました。私からその上で、これ は4つぐらいの問題点・テーマが出てきたので、それを今後深めていただきたい。1つ は、周産期センター、それは総合ももちろん併せてですが、その在り方をどうするか。 例えば、これは当直1人、2人の話は「望ましい」としか書いてないのです。だから、 これは望ましいではなくて義務だとしたほうがいいのか悪いのか。つまり、施設基準を 非常に厳しくする。それは金、予算、人などいろいろありますが、単純化して言うと、 そういう方向で持っていったほうがうまくいくのか。ところが、池田委員、藤村委員で すが大阪の例、宮崎の例をいま話そうとなさっていたし、嘉山委員は山形の例、宮崎は 最近できましたが周産期センターはない、山形はまだない。まだない所がうまくいって いて、ある所がなぜうまくいってないのだという話からすると、このように基準にして 箱ものをきれいにしても意味ないという意見にもなり得る。しかし、墨東病院の今回の 当直1人ではなくて2人いたらどうですかというのもあるのです。だから、両方のベク トルはどちらへ行くのかのをご議論していただきたい。  その絡みで2番目の問題は、杉山委員がおっしゃったか、地方のネットワークの核に なる協議会が機能していない。だから、大阪の知恵みたいなソフトがあるのかというこ とで、大阪でうまくいって東京でうまくいかないのはなぜかということを含めて、地方 のネットワークのつくり方です。これは縦割、先生、診療科ごともあるし、行政との関 係もあると思うので、地方のネットワークのつくり方、次回、池田委員が宮崎をおっし ゃるのはそれだと思います。  3番目はその中のまた別の問題、NICUの在り方ですが、先般、私、墨東病院を見に行 ったら、15ユニットありました。しかし、実際は12しか稼働していない。なぜか。看 護師がいないからです。看護師の数をこれで増やさないでユニットを持っていっても、 動かない箱になるだけです。それとともに、これは亀田総合病院に行ったときもそう感 じましたが、新生児の小児科、つまり小児科の先生もいるのでしょうが、新生児専門の 先生はどうすればもっと増やすことができるか。だから、先生と看護師ではなくて、ユ ニットをつくっても意味がないのです。これは田村委員がおっしゃったように、まさに 墨東はこのような何百グラムという赤ちゃんを関東一円から相当受け入れているので す。NICUをよく検討して、いろいろな予算措置をつくってユニットは増やすこともで きると思います。とにかく今年は文科省に出た新木課長が頑張って、700人ぐらい大し たことないとどなたかおっしゃったのですが、ここまで増やすだけでも大変だったので す。一応そこまで行きましたので、いまの看護師、新生児専門の医者、これをどうする かを問題提起しておきたいと思います。  4番目は、どなたがおっしゃったか、例えば、嘉山委員はこちらでオペをやっていて システムにログインして探すのは大変だと。病院内で携帯は使わないことになっている けれども、携帯Iモードでパッパッと使えるのだったら早いのではないかというので、 これは経産省とも含めて何かそういう探すシステムができるか。院内は携帯を使っては いけないので、これはどうするかわかりませんが、技術的に何か早く情報を探す。それ は先ほど有賀委員がおっしゃった2つの情報システムの間の連携でやる。ただ、素人の 私から言うと、現場をまだよく知らないかもしれませんが、私が千葉の消防を見たとき か、なぜこのようなものをまだデジタル化してないのかというのがあって、そのような ことは私のカーナビのほうがすごいのではないかと思ったりしたことがあるのです。 「それは、大臣金がないから」と言っていたけれども、そうすると一般のICとかいろい ろな技術の進歩に医学会は、いま言った周辺技術ですよ、医療技術ではなくて情報技術 については、十分吸収して活用してないのではないかというのがあるので、いま改革推 進室の中に各省から、総務省からもうちに来ていますから、それで連携を取らせますし、 いまあそこで聞いているのは、経産省から来ていますから、そういうこともできると思 います。  いま私がお伺いした4つぐらいのテーマが、大臣の立場として是非皆さんにお考えい ただいて、12月までにご回答いただく。その結果、行政は予算を付けるなり政策を具体 化するなりということなので、お願いします。少し長くなって恐縮ですが、よろしくお 願いします。 ○岡井座長 事務の方から案内等があればお願いします。 ○指導課長 次回の予定ですが、日程を調整し、追ってご連絡申し上げたいと思います。 ご議論いただきありがとうございました。 ○岡井座長 第1回はここで終了します。また引き続きよろしくお願いします。遅くま でどうもありがとうございました。 (照会先) 厚生労働省医政局指導課 課長補佐  中谷 (代)03-5253-1111(内線2554)