08/10/03 第2回今後の労働関係法制度をめぐる教育の在り方に関する研究会議事録 第2回今後の労働関係法制度をめぐる教育の在り方に関する研究会 日時 平成20年10月3日(金) 15:30〜17:30 場所 経済産業省別館1012会議室 ○佐藤座長 ただいまから、第2回「今後の労働関係法制度をめぐる教育の在り方に関 する研究会」を始めさせていただきます。お忙しい中ご出席いただき、ありがとうござ います。本日は、小野統括官と生田参事官が所用のため欠席と伺っております。また、 本日はオブザーバーとして、文部科学省初等・中等教育局教育課程課の冨森総括係長に ご出席いただいております。よろしくお願いします。両角委員におかれましては、前回 ご欠席で、本日ご出席いただいておりますので、簡単に自己紹介をお願いいたします。 ○両角委員 明治大学の両角でございます。前回はどうしても都合がつきませんで、初 回に欠席してしまいまして、大変申し訳ありませんでした。私の専門は労働法で、労働 法教育ということは専門に学んだことはありませんが、大学で労働法を学生たちに教え ていて、学生たちから相談を受けることなど、非常に重要なことだということは日常に 感じております。いろいろ勉強させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお 願いいたします。 ○佐藤座長 どうもありがとうございました。事務局から、配付資料の確認をお願いい たします。 ○田中室長補佐 議事次第の下に資料1として「ワークルールを生かす-NPO『職場の 権利教育ネットワーク』の立ち上げ」、資料2-1として「ろうどう法律基礎講座」、資料 2-2として「知っておこう!働くための法律知識」、資料3として「労働関係法制度の知 識の理解状況に関する調査研究について」です。その下の参考資料1-1、参考資料1-2 は道幸先生の関連の参考資料です。その下の北海道新聞の切り抜きが一番上に乗ってい るものも道幸先生のご説明の関連で、北海道の社会保険労務士会の活動についての資料 です。そのほかに、参考資料として蛇腹式の小冊子が2つと2つのNPO法人のパンフ レットを置いております。以上ですが、過不足等ありましたらお申し付けください。 ○佐藤座長 今日は議事が2つあります。1つは労働法教育について、具体的に取り組 んでおられるNPO法人からのヒアリング、もう1つは今後予定している実態調査につ いて、枠組みなり、大きな項目についてご意見を伺うという2つです。まず、前半の議 事から始めさせていただきます。2つの法人にお出でいただいています。まず、NPO法 人職場の権利教育ネットワークから道幸哲也代表理事、またNPO法人人財フォーラム から由比藤準治理事と鯉渕浩美理事にお越しいただいております。初めに、道幸代表理 事より、NPO法人職場の権利教育ネットワークの活動についてご説明いただいて、その あと質疑、意見交換をしたいと思います。それでは、よろしくお願いいたします。 ○道幸氏 いま紹介いただいたようにNPO法人職場の権利教育ネットワーク代表理事 なのですが、本業は北海道大学で労働法を教えております。去年の暮に法人を立ち上げ て、少しずつ仕事をやり始めているのですが、どれだけのことをやっているかというと、 いまひとつ頼りない状況ですので、むしろなぜこういう問題で立ち上げたかということ を中心に、かなり私的な思い入れもありますが、それを中心にお話させていただきたい と思います。資料は、レジュメでなくて文章にしておきました。  1頁で、自分なりの問題関心ということからお話をしたいと思います。私は北大で、 ずっと労働法、特に不当労働行為を研究しているのですが、プライバシーや労働契約に も興味を持っております。今日の参考資料として2つ、お手元にあると思いますが、労 働法教育の在り方、労働法を社会人にどう教えるか、さらにここにありませんが、『15 歳のワークルール』という、自分で言うのも何ですが、私としてはよくできたのではな いかと思っているのですが、最近、そういうやや実践的なこともやっているということ です。特に本との関係では、権利主張の基盤整備法理、季刊労働法207号に書いたので すが、労働法に関する教育が必要だということを、ある程度理論的にというか、これは 教育プロパーの問題ではなくて、労働法の理論で労働教育をどう位置づけるかというこ とについて書いています。特に最近、権利を主張するために労働契約法などの法律がで きています。それから、労働審判制度、労働局の個別労働あっせん制度など、システム はできています。しかし、法律や権利を実現するための基盤となる知識、もう1つ、こ れは私にはよくわからないのですが、知識だけでなくて気合いというか、気構えという こと、その2つをどう考えていくかという問題が残されているということで、いわば労 働法において権利をどう主張するかということについて、関連した裁判例や労働法の教 育に関連付けて検討しています。これはどちらかといえば、ややアカデミックな論文で す。  もう1つは、労働法教育の課題ということで、これは労働法教育を学校よりもロース クールまで含んだ全体的な教育で、どういう課題に直面しているかを検討しております。 これは、もしも興味がおありでしたら、あとで読んでいただきたいと思います。ほかの 分野でもそうですし、例えば法教育というのは最近流行りの論点ですが、特に労働法も 法教育の一環というよりも、いちばんの問題はやはりロースクール化なのです。つまり、 ロースクールができる前までは、労働法の大学の教官というのは、別に何をしても文句 を言われませんから各自、勝手に教えていた。ロースクールができたために、試験で評 価される。つまり、試験の合格者が出てくる。  それが全国的な評価の対象になることになると、結局、どう教えるか。これはロース クールでどう教えるかという問題があるのですが、少なくとも教育という問題について、 研究者が興味を持ったという点は、ロースクール化というのは結構大きな意味がある。 教育という点では、基本的にはロースクールの問題ですが、それと関連して学部、場合 によれば高校教育ということでも論じられております。そういう意味では、労働法学会 でも労働法の教育の在り方は、若干議論し始められているということです。それは個人 的な見解ですが。  次に、NPOを作った経緯をお話したいと思います。3頁ですが、北海道労働審議会と いうのがあって、これは知事の諮問機関です。(1)の「本道における個別的労使紛争解 決システムの整備について」は、北海道労働委員会で個別あっせん制度を導入するかと いうことを議論した委員会です。この委員会で導入を決めたわけですが、その際に最後 に個別的労使紛争の予防という観点からは、労働教育にも一層力を入れることが必要だ ということが書いてあります。これは私が審議会の会長で入れてもらったのですが、こ れからはこういうことが重要ではないかということです。  それを受けて、次に若者労働問題に対する検討を行うということです。この点につい ては、ここ数年、2000年になって以降、個別労使紛争の増加、ワーキングプアや格差問 題の発生ということで、特に若者労働問題に対する問題関心が非常に一般化してきまし た。ただ、正直に言って、道庁の担当部局たる経済部はそれほど熱心でありませんでし たし、組合、経営者もあまり熱心ではありませんでしたが、たまたま会長だったという ことで、これを検討した方がいいのではないかと言いましたが、労働経済部はノーと言 いまして、仕方がなくワーキンググループならばいいかといって、2003年3月にワー キンググループを立ち上げました。検討会議を8回開催したということです。  具体的には、北海道における労働教育の歴史、これは道庁の中に、当初は労働教育の 課があったとか、いろいろなことがわかりましたが、戦後すぐの労働教育から、どうい う教育がなされたかという歴史をフォローしました。それから、地方では東京都と長野 県が著名だということで、実態調査もしました。北海道の中学校、高校における労働教 育の現状、これは権利教育という意味では、労働教育全般ですね。労使団体における労 働教育の現状、関係団体からのヒアリング、労働協会等を行いました。それを踏まえて、 2005年3月に報告書を提出して、3点を指摘しました。1つは、職業教育に対する社会 全体としての取決めが必要ではないかということです。それから、インターシップの在 り方、これは特に高校、中学を検討する必要がある。最後は権利教育だということにつ いてです。  この過程で、次に労働教育専門部会という正式な部会を立ち上げるわけですが、この 過程で何が問題になったかを最初に言っておきます。いちばんの問題は、道庁も労使も 学校というか、道教委も、そういう問題意識がないということだけが、よくわかりまし た。  4頁ですが、その後ワーキンググループから専門部会を開いて、4回開催して、4点の 方向を示しました。これは前のワーキンググループとほぼ同じです。その一環としては、 学校教育における職場のルールの教育ということです。報告書を作成して、知事に建議 をしたということです。これは知事から諮問を受けていませんから、建議したことにな っています。  そこで、労働教育の在り方については、4頁の後半の部分に書いておきましたが、労 働教育の基本的な視点として3つあげています。まず、「就労前における勤労観・職業 観の育成」です。労働審議会というのは、先ほど申し上げたように、公労使三者の構成 でしたので、勤労観・職業観については、使用者団体も労働組合も非常に危機意識を持 っており、この点をどう育成するかを重視すべきだというのは、ほぼ共通の了解になり ました。2番目は、「地域社会全体で行う労働教育」です。労働教育の場合、地域は非常 に重要だという点も共通の了解になりました。3番目が「学校教育における働く際の権 利・義務に関するルール教育」です。この点については、中身の問題で興味深いものが あって、私はいろいろ苦労したのです。組合は、先ほど言ったように、少なくとも当初 はあまり熱心ではありませんでした。労働組合に対する教育は自分たちがやるとか、い ろいろ言っていましたが、そういう教育をしているのだったら、こういう体たらくはな いのではないかとかいろいろ言って、やはり教育の必要があるのではないかということ になりました。そういう意味では、労働サイドはあまり反対ではありません。むしろ問 題になっているのは、経営者サイドの方です。経営者サイドは2つの点を問題にしまし た。権利だけというのはやはりおかしいのだ。したがって、権利・義務という2つを教 えろという点が1つです。そのことについては、いろいろな議論をして、最終的には権 利・義務という表現をしました。その際、個人的には、権利は組合が教えて、義務は会 社が教えようと言ったのですが、なかなか納得してもらえなくて、「権利・義務」という 言葉を使いました。  もう1つは、原案で「ワークルール」という言葉を使ったところ、これは連合の言葉 だから駄目だと言われて、非常に長い「働く際の権利・義務に関するルール教育」とい う回りくどい表現になっています。権利教育については、4頁の下から3行目に書いて いるのですが、職場のルールを知る必要があるという点では、最終的に労使とも賛成を しました。ただ、温度差のようなものがあり、公側が強く言わない限りは、こういう問 題についてあまり興味を示していないということです。それから、私が非常に強く感じ たのは、教育サイドです。教育サイドというのは、先ほど言った教育委員会と、この過 程で北大の場合は教育学部の先生と接触したのですが、スクール・トゥー・ワーク、つ まり、仕事についての教育について、興味はあるけれども、ことルールとか権利となる と、あまり専門家もいなくて、よくわからないということです。だから、難しいな、誰 も興味を持っていないのかなと、ずっと感じていました。そのときのヒアリングについ て、ここに書いてあります。  ここで、あまり当てにならないなということで、どうしようかと考えました。5頁の (4)で道庁の経済部労働局雇用労政課では、一応こういう報告書がありましたから、「働 く若者ルールブック」というパンフレットを作成して配付しました。  そこで、知事に対してそういう報告書を作成しましたが、やはり自主的にやる必要が あるのだということで、NPOの立上げを図りました。その際、中心となったのが北大の 労働判例研究会です。これは研究者と弁護士と若干の社労士と大学院生が参加している のですが、そこが中心になった。なぜそこが中心になったかというと、そこしか知って いる人がいないということです。ただ、NPOを作るための定款、NPOの経営の問題と いうことで、連合にバックアップをしてくれという要請をして、連合がバックアップす ることになりました。理事は全員で10人いますが、連合から3人、研究者3人、教育 学部の先生が1人、弁護士2人、社労士1人ということです。そういう構成にしました。  6頁から7頁は、そのときの趣意書です。趣意書は、こんなものかということです。7 頁の最後で、「ワークルール教育を実現、支援するため」ということで、4点をこのNPO の目的としました。1つは専門家の派遣、いわゆる出前授業です。出前という言葉は良 くないと思っているのですが、出前授業ですね。それから、専門家のネットワークを形 成することです。人材のデータバンクを作ることです。2番目は、資料やテキストを作 成することです。これが案外重要だと思っています。3番目がワークルール教育の担い 手の教育・研修、これは特に学校の先生に対してですね。高校の先生を考える。4番目 は、労働に関する相談を行うことです。これは、今のところ全くやっていないというこ とです。その後、知事の認証を受けて、昨年10月の設立記念講演会で、熊沢先生にお 話を願ったということです。  NPOをどう運用しているかというと、これは去年の10月からほぼ1年やっています が、事務所の確保と事務局体制の整備、ホームページを作ったということです。もう1 つは、定例的な理事会と、これは2回やったのですが、高校の先生との研究会です。つ まり、我々は、研究者は多いのですが、高校の先生がいません。また、教育関係の人も いないということで、そういう意味では偏頗なグループで困ったなと思って、どうして も高校の実態がわからないというので、高校の先生で、こういう問題に興味がある先生 を一本釣りにして、いままで2回やっているのですが、研究会を2カ月に1回やろうと 考えています。この過程で、北海道の北教組という小・中、場合によっては高校の先生 もいますが、その組合、それから高教組に行って、組織改革を頼んだのですが、なかな か熱心ではない。あまり一緒にやりましょうということにはいきませんでした。  実際いまどうしているかというと、運営実績、これは大げさですが、1つは先生に一 定の研修をしています。2番目は、学生に対する活動として、「職場の変容と組合の役割」 について、主に派遣ユニオンの人から話を聞いたというのがあります。大学生といって も、労働法とか労働経済学、このような労働関係のゼミの所属者を対象にして、こうい う活動をしました。それから、対生徒、これは高校生です。何回か出前講座をして、私 も1回だけ行きました。組合を相手にしている活動としては、ユニオンスクールでの講 演をしています。  次に、運営上の課題ですが、1つは事務局体制をどう作るか。先ほどちょっと紹介が ありました、北海道の社労士会は、数年前から出前授業というのはかなりやっています。 それは社労士が何人か、溝板的な活動をして、高校に行って、校長と教頭先生にいろい ろお願いするというのをやりました。先ほど言ったように、学校サイドがこういうニー ズがあまりないということがあって、ちゃんとやるのは非常に難しい。たまたまそうい う特殊というか、熱心な人がいるから、多少うまくいっている、というのが社労士会の 活動です。そういう活動もありますから、我々も事務局体制を強化しています。これは 地労委とか組合のOBです。OBにボランティア活動をただでやってほしいということ をお願いしています。いまは2名ですが、何人かこれからやりたいという人が出てくる だろうと思っています。  2番目が一番の問題だと思うのですが、学校です。特に高校への働きかけは非常に難 しいです。だんだんわかったのは、これは当たり前かもしれませんが、学校行事が目白 押しのために、なかなか機会を持つのは難しいということです。それから、教育委員会 が熱心ではないということ。さらに、自分もやってよくわかったのですが、こういう高 校生を相手にする講演のスキルとか適切な教材はどういうものがあるか。それがいま緊 急の課題ではないかということです。  3つめは、学校が熱心でない場合には、学生を引き出すというか、この場合は高校生 ですが、学生を対象とした講演会の企画をしています。これは、ただ来いと言っても来 ませんから、高校教師との連携が重要です。高校の先生と連携をどうしていくかという のが、特に地方である場合は重要だと思いました。もう1つは、使用者サイドへの働き かけがどうしても弱い。これは賛助会員を増やすとか、経済的な問題もあるので考えて います。つまり、賛助会員になると、経営層はどういうメリットがあるかは、いまのと ころはっきりしませんから、これはこれから検討しようと思っています。  さらに、その六ですが、NPOだけではなくて弁護士会などとの連携も重要です。ただ、 札幌の場合は、札弁の中に雇用と労働に関する委員会があり、そこの中核的な弁護士が 理事になっている、講演は自分たちがやると言ってくれますから、その点ではやりやす いと思っています。  最後は、今後のあり方ですが、社会意識の高揚が重要だということです。正直言って、 なぜ社会がこの問題に興味がないのか、いまでも不思議です。特に学校の先生がこれほ どまでにこの問題に興味がないのかということを痛感しています。2番目は、ワークル ール教育自体の精緻化が必要であるということです。これは高度なという点ではなくて、 わかりやすく正確で、意味のある教育はどうすれば可能か。これは結構難しいので、私 は一応、労働学会の理事をやっているものですから、近いうちにミニシンポで一定の議 論をする必要があるのではないかと考えています。  3番目は、やはり権利教育の制度化は一定程度必要ではないか。カリキュラムを入れ るのは難しくても、進路指導とか、総合学習の中の1つのモデルとして作るとか、ある 種の括弧付きの義務化みたいなものは考える時期ではないか。特に我々は北海道、地域 にいると、文部科学省本体が何かを言わない限り、地方の教育委員会はほとんど動かな いということです。そのために、ある程度、全国的なレベルの制度化をする必要がある のではないかと考えました。以上をもちまして、半分は決意表明的な話なのですが、終 わりにします。 ○佐藤座長 労働者教育の取組み、NPO法人を立ち上げるまでの経緯、その必要性、取 組みの現状、課題について、的確にお話いただいて、どうもありがとうございます。私 も大事だなと思っていることに取り組まれて、非常に感銘を受けました。ご質問なり、 もう少し説明してほしいとか、ご意見でも構いませんので、どなたからでもどうぞ。 ○上西委員 高校の先生が、こういう問題に熱心でない、興味がないというのをもう少 しお伺いしたいのですが、労働法が難しくてよくわからないということもあるかもしれ ないのですが、どういうことなのでしょうか。彼らが教えている生徒が卒業したあとの 働き方に興味がないということなのか、そこで何か問題があるかもしれないという認識 がないということなのか、あるいは問題があってもしょうがないと思ってらっしゃるの か、もう少しどう興味がないのかというのをお伺いできないでしょうか。 ○道幸氏 私も調査したわけではないから、正確には言えませんが、個人的な体験で言 えば、NPOを作る過程で、何回か高校の先生を相手に講演に行ったことがあるのです。 1つは講演に行ったときの高校の先生の対応が、あまり熱心でない。私の言い方が悪か ったからというのがあるかもしれないけれども、つまりこういうニーズが非常にあって、 何かしなければ駄目かなという感じの議論があまりない。結局、個人的に集まってもら うよりも、先ほど言ったように組合で行って、まず組合の上のほうはあまり興味がない のです。面白いと思ったのは、むしろ家庭科の先生で興味を持った先生がいて、個別で いろいろな試みもしているとか、家庭科は結構できるのだということを言われて、それ は新鮮な驚きだったのです。まず、組合の組織としてはあまり熱心ではない。「是非、一 緒にやりましょう」となっても、数年間行ったのですが、あまり乗り気ではないという ことですね。  もう1つ、こんなこと言わないほうがいいかもしれないけれども、これをやると仕事 が増えると思っているのです。社会の先生だったら多少関係しますが、それ以外の先生 がたまたま進路指導をやっているとか、理科の先生が進路指導をやっていると、こんな 法律なんて勉強したくないなという感じなのですよね。社会の先生はこの問題に興味が あるかということになると、受験校ならこういうのはあまり必要ない。それから、私は 行きませんでしたが、小樽のある大学では高大連携というので、高校と大学が連携して、 労働部の先生が何回か教えに行ったというのです。でも、そのときの高校の先生の問題 関心は、労働三権について話してほしいとか、つまり受験の話をしてほしいのです。だ から、おそらく受験校では、受験のことについてのニーズがあるのであって、我々の問 題関心とは違う。むしろ受験校でないほうが熱心ではないかと思うのですが、そこでは ワークルールよりも就職させることが中心になったりして、全体的に余裕がない。正直 言ったら、余裕がないというのがいちばん大きな問題かなと思っているのです。  もう1つは、学校内で自由がないというか、あまり議論したり、組合の力も弱くなっ ていて、こういう問題に興味を示すとやはり偉くなれないのではないかとか、非常に他 事考慮的な世界があって、任意とかボランティアでこの問題をやるのは非常に難しい。 どこかある部分強制するシステムがない限りは難しいなと。 ○佐藤座長 先生の感触は、教員の組合の集まりでの感触ということですね。 ○道幸氏 はい。 ○佐藤座長 確かに先生からも指摘があったように、進学校と就職が多い学校では、就 職指導を担当して、たぶん温度差はあると思います。ご指摘のように、組織的にやらな いと、なかなか難しいと思います。 ○道幸氏 それから、進路指導の先生の研修会とか私の講演会のあとに、いろいろな先 生と話すと、やはり北海道は就職が悪いですから、権利教育とかそういう発想よりも、 どうしたらうちの子供を就職させられるかといった話になってしまう。先ほど言った広 い意味で余裕がないというのは、そこまで考えないということだと思います。 ○両角委員 高校生に対して、労働法とかワークルールの教育をするときに、やはり法 律上こういうことがあるというだけではなくて、先生も4頁でご指摘されていたように、 勤労観というか、職業観というか、そういうのがあって、その上に権利の知識が乗って くるのだと思うのです。具体的には、どういう勤労観というのか、職業観というのか、 そういうものを若い人、高校生に伝えていらっしゃるのか、あるいは伝えるべきだと考 えていらっしゃるのか、ちょっとお聞きしたいと思います。 ○道幸氏 それは難しくてわかりません。随分議論したのですが、特に40代以降の人 は重要だと認めつつ若い人に対する愚痴を言って終わりですね。なかなかどうすればい いかという決定打はない。ただ、これは私の個人的な考え方なのですが、勤労観がない 具体的な現れとしては、やはり退職が多いということがある。ただ、退職が多い理由の 1つは、ルールが守られていないからとか、そういう側面はあるのではないかという議 論はしました。ただ、生の形の勤労観を教えるというのは、これをやると消費の在り方 とか、コンビニとか、携帯電話とか、全部の問題に絡んで非常に難しいなと思う。それ ができるのだったら、あまり苦労しないかなと。  少なくとも我々は、ただルールを教えるということは、一種の人間関係を教える側面 がありますから、勤労観は、ある種のコミュニケーション能力とか人間関係の問題が中 核になります。そういう意味では、知識でなくて具体的にルールを教えることによって、 多様な立場とか、違う立場の人とちゃんと話すとか、そういうことをやると、勤労観の 形成に一定程度プラスになるのではないかと考えていますし、そういう議論はしました。 ただ、そのためには、人数を少なくし、時間を多く取ることが必要であり、また、高校 生なら高校生との信頼関係がある程度ないとやりにくいのです。そのためには、先ほど 言いましたように、信頼されている高校の先生と一緒でなければ、ちゃんとした教育は できないのではないかと思いました。 ○原委員 ニーズがないとか、関心があまり持たれないというお話が多々あったかと思 うのですが、先生のご活動を通じて、どこかニーズがあるなとお感じになった場所があ れば、ちょっと教えていただきたいというのが1点です。もう1つ、先生は北海道を中 心にご活動されているということで、これは北海道の経済情勢などに固有の結果、この ような反応になったのかとお考えか。つまり、これは北海道特有なのか、それとも全国 的にもこうしたことが言えるかということですが、印象で構わないので、感想を教えて いただければと思います。 ○道幸氏 後者については、東京みたいにたくさん人がいるとか、組合でもいろいろな 人がいると、やはり違う。北海道はちょうど中間的、地方でもないし、大都会でもない と。ただ、北海道は比較的、旧社会党が強い、産炭地もありましたからね。いまでも民 主党が強いところがありますから、ほかの地域よりはこういうのがやりやすいかなとい う感じはしています。一方で景気が悪くなっていますから、それどころでないという議 論があります。ただ、北海道独自の問題はあまりないのではないかと思っています。  最初の頃、いちばん興味を示したのはマスコミです。新聞社もテレビも来ました。だ から、マスコミはこういうニーズがあると思っているのではないかと思いますが、現場 が全然興味を示さない。もう1つ、ちょっと面白いなと思ったのは、専門学校とか、い わゆる短大の先生で職業指導的な先生は、比較的興味を示して、講演会で来てくれなど と言っています。だから、おそらく高校は難しくても、専門学校レベルは案外ニーズが あるのではないかという感じはしています。 ○佐藤座長 専門学校の生徒は就職するわけですからね。その就職との関係が結構大き いのかもわかりません。中学も、特に高校も、最近は就業意識啓発みたいな、キャリア 講義で一生懸命やるようになっていて、たぶんその中でこのワークルールがどう位置づ けられているかということだと思うのです。冨森さん、高校等の就業意識啓発教育の中 で、今回みたいなワークルールをどのような位置づけで教えろということになっている のか。その辺がわかれば、教えていただけるとありがたいのですけれども。 ○冨森係長 キャリア教育の資料は持ってきていないので。 ○佐藤座長 では、次回でも。 ○冨森係長 いまの就業意識啓発のですか。 ○佐藤座長 就業意識啓発みたいなものは、たぶん何かあるのだと思うのです。その中 に、いわゆるワークルールというか、労働者権利みたいなことを教えるのが組み込まれ ているのかどうなのか、もしわかるものがあればありがたいので、よろしくお願いしま す。 ○冨森係長 わかりました。 ○佐藤座長 いいですか。どうもありがとうございました。続きまして、先ほど現場で 教育する方法もニーズも、なかなか難しい面があるというお話があったのですが、具体 的にそういう取組みもやられているということで、NPO法人人財フォーラムのほうから、 ご説明していただきたいと思います。まず、由比藤さんから全体の活動についてご説明 いただいて、そのあと鯉渕さんから実際、高校等で教育したときの経験等をお話いただ けるということです。よろしくお願いいたします。 ○由比藤氏 それでは、いまから説明させてもらいます。人財フォーラム事務局の由比 藤と申します。 ○鯉渕氏 鯉渕です。よろしくお願いします。 ○由比藤氏 いままで私ども人財フォーラムが行ってきた、ろうどう法律基礎講座の説 明をさせていただきます。まず、簡単に人財フォーラムの紹介をさせていただきます。 お手元の三つ折りのパンフレットに詳細が書いてありますが、理事には主に地元静岡の 社会保険労務士、カウンセラー、そして人材会社のメンバーで構成されています。ミッ ションには、「人という「財=たから」を育て、働くことに夢を持てる社会をつくる」と 掲げ、人を中心に、地域、学校、企業、行政との協働事業として、主に若年者への就職 支援事業、労働法講座などを実施してきました。  こちらに、過去4年間実施した主な活動を挙げてあります。特に赤字で書いてある「ろ うどう法律基礎講座」は、人財フォーラムのミッションにもいちばん近い内容だと思い、 継続して現在も実施しております。「ろうどう法律基礎講座」では、お手元の蛇腹式のテ キスト、「知っておきたい労働基準法」、「知っておきたい労働法基礎知識」の2点を使 ってきました。ほかにサブテキストとして労働契約書等の資料や学校側の要望に応じ、 実際の求人票や給与明細なども資料として使い説明をしてきました。  この「知っておきたい」シリーズの特徴としては、1点目に労働法の必要最低限の内 容、入口としてこれだけは知っておいてほしい内容を選び、掲載しています。実際に、 表紙を除けば表裏で19項目になっています。2点目に、読んでもらう生徒に合わせた内 容、特にできるだけあまり難しい内容にしないようにということで、上から目線でなく、 高校生と同じ目線で、自分が高校生だったらどうだろうと考え、難しい法律用語は省き、 見やすくイラストを入れ、イラストを見れば、その内容がイメージできるといった点を 特徴としています。3点目に、この蛇腹式というスタイルは、後ほどお見せする映像に も少し出ていますが、講座を開催して生徒に渡すと、必ず生徒が広げて、興味深げに見 るのです。特に300名ほどの学校で実施すると、その光景は壮観で、それを見ていると とても面白いです。労働法というだけで難しいイメージがありますので、内容も含め、 この蛇腹式というスタイルにしたことで非常に関心を持ってもらえたということはよか ったのではないかと思っています。  いままで実施しました講座概要を、私のほうから説明します。内容の詳細については、 後ほど講師を務めた鯉渕から説明させていただきます。高校生に対して初めて実施した のは、平成17年の「知っておこう!働くための法律知識」という講座です。この講座 では、「知っておきたい労働基準法」をテキストとして使用しました。配付資料に平成 17年度資料として、その際の講座のパンフレットや講座で使用した○×クイズの資料を 入れてあります。この講座は学校への出前講座ではなかったため、正直なところ、企画 したものの高校生がどの程度集まってくれるのか、かなり不安ではありましたが、静岡 市内の職業高校に直接PRに行ったところ、進路指導に非常に熱心な先生にお会いでき、 その学校を含め数校から15名の生徒が集まり、実施するに至りました。この講座では、 予想以上に生徒が一生懸命聞いてくれたということで、正直言って驚きました。  平成18年には、「働く前に知っておきたい ろうどう法律基礎講座!」を実施しまし た。配付資料2の「平成18年度資料1」の中に、講座のパンフレット、出前講座を実施 した写真、資料等を入れてあります。この講座では、静岡県男女共同参画センターのパ ートナーシップ強化事業の一環で実施したため、労働基準法や男女雇用機会均等法、育 介法等も含めたテキストということで、「知っておきたい労働法基礎知識」をテキストに 使用しました。トータルで10校、約800名の生徒に出前講座を実施しました。この年 に実施した学校の中から、継続的に講座の依頼があり、現在でも毎年、講師派遣の依頼 がきて、延べ約1,000名の生徒に対し実施をしてきています。  昨年度は、行政からの受託事業枠がなかったため、テキストを配付できませんでした が、代わりに平成19年度資料にありますように、テキストの内容をパワーポイントに して、講座を実施しました。こちらのスライドのアンケートは、平成17年に初めて行 った講座で書いてもらったアンケートです。配付資料2の最後に一昨年、昨年のアンケ ートの抜粋も、一部入れてあります。アンケート結果から労働法教育の大切さがよくわ かるかと思います。この講座を通して感じたことは、まず学校では労働法の基本的なこ とが教えられていない、知っていても、試験に出るからという理由で、労働三法の名前 のみといったような現状でした。また、就職を控えた生徒には、講座の内容をかなり身 近に感じてもらい、本当に真剣に聞いてもらえました。進学する生徒でも、当時、ファ ーストフード店の30分未満残業切り捨ての問題がニュースにもなり、その辺を事例と して挙げながら、アルバイトでも残業もつきます、労災も使えるんですよ という話を すると、とても興味を持って聞いてもらえたようでした。  一昨年に実施した高校への出前講座の一部を映像で見ていただきたいと思います。何 分素人編集なので、見にくい点もあるかと思いますが、雰囲気などをつかんでいただけ たらと思いますので、ご覧ください。 (DVD開始) (DVD終了) ○鯉渕氏 話のプロでもないものですから上手に話せていないのですが、いまの映像で 何となく教室の雰囲気はおわかりいただけたかなと思います。広い講堂で話をすること もあるのですが、いまの1クラスの単位ぐらいでやったほうが生徒の反応もよかったか なというのと、こちらも話がしやすかったかなという感じはします。内容については、 かなり試行錯誤しながらやっています。全体の流れでは、放映したとおり、まずクイズ 形式で興味を持ってもらうのですが、○×クイズで答えてもらったり、資料にもパワー ポイントがあるのですが、労働法クイズで間違った求人、これはかなりひどい求人が書 いてあるのですが、実際はこんなのは出ないから大丈夫だよ、などという話もしたので す。これを見ながら、どこが間違っているかという話をしました。 ○佐藤座長 平成19年、資料3という資料ですね。 ○鯉渕氏 はい、一番上です。これで何が間違っているか考えてもらいながら、進めて いきました。それと併せて、先ほどスケッチブックが出てきたのですが、これも急に思 いつきで、ある朝、講座の前に慌てて作ったのです。ある女の子が面接に行って就職し たら、いろいろなトラブルに巻き込まれてしまったという内容をマンガにしたものです。 これは実際に自分が労働相談を受けた事例なのですが、これが意外と評判がよくて、生 徒のほうの反応がとてもよかったのですが、終わってみたら先生のほうからも反応がよ く、「これはすごくよかった、実際こんなことがあるんですね」という話をされました。  こんなトラブルがあります、ということを、よりイメージしてもらいやすいように、 スケッチブックを作っていったのですが、その後に具体的な法律、いまのトラブルの中 でどういう法律がかかわっていたのか、ということを解説していきました。この解説も、 資料3の中ほどにあるように、法律らしくするために第何条という表現にしてみました。 詳しくは説明しませんがこういう法律がありますよ、というところでとどめてあります。  この辺りまで話をすると、グッと話を聞いてくれるようになりますので、先ほども出 たのですが、そこからお給料の仕組みについての話を持っていきました。時間があれば、 実際、給与計算を自分たちでやってもらうなどということもできたのですが、時間が足 りないので、簡単に何が引かれているか。「社会保険料とか所得税とか引かれてるよ。手 取りがこんなに少なくなってしまうんだよ」という話をします。そこで「えっ、こんな に少なくなっちゃうの」という反応がすごく見てとれるのです。それと反対に、今度は、 みんなは減ってしまったのですが、会社のほうはどうなの?ということで、会社の負担 はもっと大きいという話をしました。そこにすごく差が生まれていることを知ってもら いたいと思い話しました。この話は全体を通して一番生徒の反応がいいというか、表情 を見ていると「ああ、そうなんだ」という顔をするので、こちらも話をしていて一番面 白いところではありました。  この話をしたところで、結局自分は少ないけれども、会社はすごく払っているという 意識の違いが生まれているよということから、労使の意識のずれがあっていろいろなト ラブルもあるということで、それをどうするかというとコミュニケーションが大事。結 局、会社の思っている気持をきちんと汲み取る。もちろん会社側もそうであってほしい のですが、相手の気持を想像することを少ししてもらいたいと思って、次にコミュニケ ーションの大事さについて話をしていきます。  インターンシップを行う学校からは、高校用求人票を実際に見ながら、説明もしまし た。求人票に書かれている項目が何を意味するかという一般的な話をしながら、あとは そこから何を考えて仕事を選ぶかということや、どういう会社でどういう仕事をしたい のかということを考えながら見てほしいという今後の仕事選びのきっかけになる話もし ています。  このような内容で労働法講座を実施していますが、依頼先の学校が就職が多いのか進 学校なのか、あとは内定者が実際にいまどのぐらいいるのか、女子生徒のみの学校もあ りますので学校によって少しずつ話の内容を変えて、より生徒に聞いてもらいたい、聞 きたいと思われる内容を選んで、毎回少しずつ構成を変えています。  内容の構成というか、資料を作るに当たって注意した点としては、先ほどお話もあり ましたが、権利だけでなく、義務についても話を必ず入れるということです。この義務 というのは、社会で役割、立場があることが第一で、もう少し時間があればコミュニケ ーションが重要だということを意識してもらうような二本立てで考えています。あとは、 労働法を説明しようとすると、法律なのでより正確に話をしたいと思うと、どうしても 難しくなっていってしまいます。特に私も仕事柄こういう例外もあるし、こういう例外 もあるし、と思うと、先ほども変形労働時間の事に触れかかってしまったのですが、あ れは本当はいらなかったと思います。専門的な内容はここでは必要ないのでなるべく省 いて、大原則のことだけを話をするようにしました。実際に自分が労働法を勉強したと きに、「これは面白いな」とか「そうなんだ」という感覚があったものですから、その感 覚を思い出して選んでみました。  もう1つは、優先順位を考えるのですが、実際に自分が実務に関わっていて、よく相 談を受けることや、労働基準協会連合会に労働条件相談センターがありますが、そこで 相談員も4年ほどやっていましたので、そのときに多い内容を統計を取り、参考にしま した。実際に相談が1番多いのは退職・解雇のあたりです。2番目が有給休暇です。有 給休暇も、働く前から休むことを教えてもどうかと思ったものですから、ここは時間に 余裕があるときには話をしました。  3番目が募集採用と労働条件の明示です。最初に労働条件をきちんと決めていない所 とか、そのあたりでとてもトラブルが多いというのを実感しているので、とにかくここ は外さないように、少し重点的に、働くときにはきちんと知っていてもらいたいという ことで、時間をかけて話をしています。とにかく募集に関しての相談がすごく多いので、 募集の広告を見て実際に働いたら全然違った。あの求人広告は嘘だとよく言うので、誘 引広告だという話もするのですが、それを知って求人票を見るのか、知らないのかとい うのはすごく大事なことだと思うので、せっかく素直な子たちが社会に出ていって、い きなりそういう詐欺みたいなことになって人間不信にでも陥ったりされてしまうと困り ます。 ○由比藤氏 いままで実施してきた講座等を通して、課題点などを最後にお話したと思 います。1点目に現在行われている若年者の就職支援事業やキャリア教育などの見直し が必要ではないかということです。少しおこがましいですが、本当に必要なことが違う のではないかと感じています。実際に人財フォーラムとしても、ジョブカフェや行政か らの受託事業等で若年者等の就職支援事業を実施してきました。また、キャリア教育の モデルと言われるような施設、学校も視察し、講座にも参加してきました。その中で、 本当にこれでいいのかなという矛盾も感じてきました。それぞれの年齢やレベルに応じ た労働法教育というのは絶対必要なことなので、就職支援事業と同列というのは実際な かなか難しいかもしれませんが、そこの辺を組み込んでいくべきではないかなと感じて います。  2点目は、費用です。講座を実施するにはテキスト代や講師代といった費用が最低限 かかります。1万円程度であれば、高校では外部講師を招くということで謝金の枠があ るようですが、例えば知っておきたいシリーズをテキストとして3年生全員300名に配 ってほしいということになると、どうしてもその費用は学校側からは予算がないから出 ない。本当はこの本を配ってあげて、なおかつパワーポイントを使う形をやりたいので すが、現実的には費用の点で無理だということになってしまっています。労働法講座が 重要だという仕組みができれば、公費として予算化され、継続して実施できる制度があ ればいいなと思っています。  3点目は意識改革が必要ではないかということです。現在、雇用多様化時代で3人に 1人が非正規社員と言われるように、決して非正規という働き方、フリーターが個人的 にはすべて悪いとは思っていません。ただ働き方にはそれぞれメリットやデメリットも あり、そこをしっかり説明してどんな立場でも労働法が権利としてあり、またそこに義 務もある。そういったことをしっかり伝えていけば、それほど道を間違うことはないの ではないかなと考えています。また、労働法講座以外でも、高校生インターンシップ推 進業務・中学生職場体験学習の関係等で学校を回ったりしています。普通高校の先生に お会いすると、労働法もそうですがインターンシップに関しても、はっきり言ってほと んど興味がない。とにかく、うちは進学100%だから関係ないという回答をする先生が いるのには正直驚きます。  先に述べた若年者就職支援事業もそうですが、何パーセント就職したといった就職率 を優先するような傾向があると感じています。実際には就職後のフォロー、就職したあ とのミスマッチ等でやめてしまうこともありますので、そういった中で労働法を知って いたら離職することにならなかった、そういったことを防げたこともあるのではないか と思っていますので、労働法教育が必要であるということを各方面に認識していただき たいと考えています。 ○鯉渕氏 現在、小中学校で職場見学とか職場体験を実際にやっていますが、どうして もそこだけで終わってしまっている感じがするので、それを高校、大学での労働法教育 や就職を意識したキャリア教育につなげていかなくてはいけない。分担しているのでは なくて、できれば定期的にとか年1回必ずやるのでもいいですから、そういう形でやっ ていけたらと思います。そのカリキュラムの中には何度もお話が出ていますが、権利と 義務とコミュニケーションの三本立てで考えてもらいたいと思います。最初は、私も権 利、義務だけでずっと話を考えていました。権利を知っても義務を知らなかったら役に 立たない人で終わってしまいますが、今度は権利と義務の両方を覚えたからどうかとい うと、コミュニケーション能力がないと結局全然役に立たないのです。二本立てという よりは三本立てで、常に考えていくことが大事かなと思っています。実際にいろいろト ラブルを見ていると、トラブルを大きくしてしまう人というのは、三本立てのバランス をすごくとれていない人かなという感じがしますから、是非そのあたりは心して三本立 てで作っていきたいなと思っています。  それを三本立てと考えると、当然のことながらほとんどの高校で1回50分1コマで 講座をやっていますが、実際に先生の話が入ると、いちばん短くて35分というケース もありました。できればまずは最初、50分が2コマから3コマぐらいはあれば少しゆっ くり話ができればいいかなということ、将来的にできればもう少し年間スケジュールと して定期的にできるような制度が整ってくるといいかなと思います。それに合わせて、 ただやるだけではなくて、講座をするほうも柔軟性を少し持って、どういう形でもその 学校に合わせて対応できるような、その都度話を変えていけるぐらいの余裕がこちらに も欲しいかなという感じはしています。  ここには書かなかったのですが、私のほうでもこれだけのことをやっても、どうして も1つ気になるのが企業側のモラルです。それを言ってしまうとまた話が戻ってしまう と思いますが、労働法教育を実際にきちんとした形でやるようになったときには、卒業 する生徒たちは、一律にそういう知識を持って卒業することを学校が企業のほうにきち んと発信しておかないといけないと思います。中にはよく勉強している人もいますが、 その人が少し何かを言うとうっとうしがられて、それが原因で解雇になってしまったと いう話も聞きます。そういうことがないように、企業がそういう人たちがこれから出て くるのだという心構えをしておいてもらえるように、こちらも積極的に発信をしていく ことが大事かなと思っています。 ○由比藤氏 以上です。 ○佐藤座長 具体的に、高校生等への教育を実践されていて、どんな工夫をされている か。これから何が課題かのご報告をどうもありがとうございました。この蛇腹の資料を 見せていただくと、17に先ほどの義務をどうイメージするかは別として、働くときの心 構えは入っていますね。そういう意味では、こういうものも一応大事ですよということ が入って作られているということなので、なるほどと思いました。  いまのご説明について、もう少し説明していただきたいとかご質問があれば、どなた からでもどうぞ。 ○佐藤委員 どうもありがとうございました。具体的で、大変よくわかりました。最後 に言われた点は一応私は企業側ですので、いろいろあるのも知っていますが、こういう 形で何回かやられて、継続的な要請がある学校あるいは組織があるというお話をされて いました。そうなりますと、使われる側もこれを何か大きな流れの中にビルトインをし て、たぶん労働法教育ということではなくて、働くということの中の1つとしてうまく 使われているから、継続的にお声をかけていられるのではないかなと思っていますが、 そこら辺の受け止める学校なり組織なりがもう少し広げて、これをうまく位置づけてい るような例があったら教えていただきたいです。 ○佐藤座長 繰り返し依頼する学校はどう組み込んでいるかということですね。何か全 体の中で、あるいは単発でただ頼んでいるだけかもわかりませんが、その辺はいかがで すか。 ○由比藤氏 実際には継続的に依頼のある学校は、総合学習の時間に組み込んで実施し ている状況のようです。11月に先ほど映像にも出た商業高校で実施するのですが、そ の学校では依頼をされる進路指導の先生が非常に意識が高い。初めて実施した平成17 年の講座のときに、ある学校にお世話になったのですが、その学校に翌年に伺うとその 先生が異動になっていまして、そうするとその学校の新任の進路指導の先生に話をして も、なかなか理解されない という状況でした。総合学習という枠はありますが、高校 では1年ほど前からすべてのカリキュラムが決まっているので、総合学習の時間に組み 込めるかどうかというのは、学校側もしくは担当の先生の裁量で決まってしまうという のが現状のようです。 ○佐藤座長 我々が議論するときに、特に高校等の学校教育でやってもらうことが大事 だといったときに、ほかのキャリア教育や就職支援みたいなものと、総合学習や普通の 授業にどう組み込むかということも少し議論したほうがいいかもわかりません。これは 単独というのではなくて、全体の中でどう組み込むというより効果的かということです。 ほかにありますか。 ○原委員 知っているということが必ずしも行動に結び付くとは限らないと思います。 この資料の中でも、就職後のフォローが大事だということが書かれていたのですが、こ うした出前講義をされて、その後就職後に役に立ったという事例があったりとか、何か アルバイト先で実はこうだったけれども、こうしたみたいな報告がもしあったら教えて いただきたいです。 ○鯉渕氏 まだ実際に卒業していない子もいます。ただ、終わったあとに質問がある人 と言うと、まずみんな手を挙げないのですが、では解散といってパラパラと帰っていく ときにパッパッと寄ってきて、「自分のお兄さんがこうなんだけど」とか、「うちのお父 さんは公務員だけれども、法律は労働基準法が適用なんですか」と聞いてきたり、と興 味の持っていき方はありますが、役に立つだろうという話までで、実際にそれが役に立 ったという話はまだちょっとわかりません。 ○由比藤氏 先ほど言ったように、体系的な形ではなく、はっきり言うといまはまだ単 発的な講座で終っています。学校側と連携して、いままで実施した約1,000名の生徒か らのアンケートはありますが、追跡調査みたいなところまではなかなかこちらも立ち入 れない部分もあります。そこまでできればもっと本当のニーズとか現状がつかめるのか なと思っています。 ○上西委員 質問というよりは感想ですが、権利と義務の教え方というのがとてもいい なと思いまして、きっちり義務を果たすことによって権利の主張ができる。権利だけで はなくて義務を負うというのは何か離れたものではなくて、働く側もきちんとルールに 則って働く。例えば時間にきちんと来る。働かせる側も、ルールに則って働かせるんだ よと。そういうふうに一体的に教えることができれば、権利ばかりを教えられては困る みたいなことにはたぶんならないので、そこの工夫の仕方はとても重要だなと思いまし た。 ○鯉渕氏 ただ、どうしても話をするときに1時間の中で権利の労働法だけで終わって しまうと、そこだけが印象に残ってしまうと、もし2回目に授業をやっても、そちらは 興味ないよということになる可能性はあるかなと思うので、なるべくセットで話ができ るような仕組を作っていきたいと思います。 ○両角委員 私も本当に高校生にお話をする上では、そういう話し方は大事だと思いま すが、ただ一方では労働法の見方をすると、例えば遅刻をしたら休みは取れないのかと か、具体的には本当はそこはうるさいことを言えれば切れているので、そこが少し難し い。高校生に対して話をするときに法学教育ではないので、キャリア教育というか職業 教育の側面もあると思うので、いまのようなお話の仕方が良いと思う反面、法的な権利 というのはそういうものなのだろうかという気も正直しなくはないです。 ○鯉渕氏 話をする中で、一応権利があって義務がといって、こういう権利があります よ、一応遅刻をしたら駄目だとか、そういう話もイラストを出してやったりもしていま すが、仮に権利を主張して、100%正しいことを言っているけれども、自分に落ち度が あったらそこはマイナスになるから、100%は主張できないよということも時間のある ところでは話をしています。 ○両角委員 現実には、きっとそのとおりだと思います。 ○佐藤座長 法律的に、理論的にすべていけばそうかもわからないけれども、他方で同 僚のサポートがあるかどうかも考えますよね。 ○原委員 先ほどの質問は、別に明示的に役に立ったという報告がなくても、絶対に就 職と潜在的に絶対役に立っていると思います。あとは、就職活動をする前にこうしたこ とをおっしゃることは非常に大事だと思いますが、就職してからこんなはずではなかっ たということが多々あると思います。人財フォーラムさんの活動として新入社員みたい な人たちに、こうした講座を提供することはされているのでしょうか。 ○由比藤氏 現実的にはできていません。もっと言えば、2006年に実施した講座も静岡 県内高校10校には実施できたのですが、こちらの広報不足なのかPR不足なのか、マス メディアに取り上げられることもなかったものですから、反応が学校だけで途切れてい ます。もっとこういったものを社会全体に広めていきたいと思っています。  知っておきたいシリーズがどういうところで売れているかというと、実際には高校の 講座等で使おうと制作したのですが、人材派遣会社が派遣スタッフ用に1,000冊購入、 労働組合が新しい専従者用として100冊購入、ある静岡の大手企業でも、新入社員教育 用にということ定期的に購入いただいている会社もあります。最低限こういった知識を 知って、困ったら先ほど言ったようにこういった所に相談をするとか、もっと自分が知 りたければ、専門書を買うなり専門家に聞くという形につなげていければと思っていま す。まだまだ活動を広げていきたいのですがこちらの力量不足というかPR不足がある というのが現状です。 ○佐藤座長 道幸先生も含めて、もしご質問があればせっかくの機会ですので。  いいですか。  道幸先生も由比藤さんも、お忙しいところどうもありがとうございました。  続きまして実態調査です。これは時間も限られていますので、一応どういうような枠 組でどういう調査を考えているかということをご説明いただいて、細かい点というか大 きな枠組としてご意見があれば伺うことになるかと思います。事務局から説明をいただ ければと思います。 ○田中室長補佐 資料3をご覧ください。前回の研究会において、実態調査を委託して 実施することとそのイメージについて簡単にご議論をいただきました。そのあと、原委 員と座長とも少しご相談しながら、調査項目の素案という形で作成したものです。  1頁の2.に、調査研究内容とありますが、調査は2つに分けて考えています。1つは、 15歳から24歳の学生生徒に対するもの。もう1つは、18歳から39歳の男女就業者を 対象とするものです。調査の手法はその上に書いてあるアンケート調査ですが、やり方 はまだ確定していませんで、例えば登録モニターに対する郵送やWebによる調査を想定 しています。また、必要有効回答数等が書いてありますが、この調査は民間に委託して 行うこととしていまして、現在ここに書いてあるようなことを最低限の内容としまして、 企画競争入札の手続をしています。  2頁からが調査表の素案という形で作ったもので、選択肢とか細かく詰まっていない ところがあります。どういう調査項目を考えているかを簡単にご説明します。1.は、先 ほど(1)(2)とありましたが、社会人調査が(2)の18歳から39歳の男女就業者に対する調査 票の素案です。属性としまして、問1から性別、年齢、就業状況。就業状況としては、 就労経験年数や就業形態、業種、職種、規模、賃金、労働組合の加入状況、役職。また、 婚姻状況や問5は世帯構成、問6は最終学歴、最後に転職の有無というものを考えてい ます。  Bからが、知識の認知状況などを聞くものです。問8は、労働者としての権利が守ら れていないと感じたことがあるか、ないか。問9は権利が侵害されたとしたら、どのよ うに行動すると思うかというような問を立てています。4頁のいちばん下の問10は、単 語としての認知状況を聞く問で、5頁のような単語について聞いたことがあるか、また は知っていますかという聞き方をしています。5頁の真ん中の問11は、単に言葉として 知っているかどうかだけではなくて、例えば下線部のような記述について、法律上問題 があるか、ないかというような形で、少し理解の状況を突っ込んで聞いてみてはどうか と考えています。  6頁のCです。悩みやトラブルの有無、働くことに関する悩みや勤務先とのトラブル を抱えているか、抱えていないかといったこと。真ん中ほどにDとありますが、現在の 勤務先や働き方についての不安の状況についての質問を、7頁の大体問19ぐらいまで項 目を並べています。最後の20〜22は性格が異なりますが、世帯の生活レベルや年休を 実際に取っているかどうかといったようなことを質問項目に入れています。以上が、就 業者に対する調査の項目として考えているものです。  8頁の2.以降は、学生生徒を対象とした調査項目です。属性は同じように、性別、年 齢、学課、学年、アルバイトの経験。アルバイトをしたことがある場合は、その業種。 問6は進路について進路希望を聞いています。また付問として、問6の1は就職が決ま っている場合の就職先、問7は世帯構成。9頁の下のBからは、知識の認知状況等など を聞くもので、10頁の問8は先ほどの社会人調査と同様に、聞いたことがあるか、知っ ていますかという問です。問8の1は、どこでその言葉を知ったか。問9は、社会人調 査と同様に、ここも理解の状況を少し突っ込んで聞いてはどうかと考えています。11頁 は、進路指導の状況や悩みやトラブルの有無についての質問です。問11は、働くこと に関しての悩みがある場合には、どこに相談しましたか、またはするつもりがあるかと いうことを聞いています。  12頁からが、学校や学校以外での普段の活動状況についての質問をいくつか考えてい ます。問12は、放課後や週末での行動。問13は、どれぐらいの時間学習しているのか ということ。問14は、アルバイトの労働時間等。問15は、このような項目について誰 とよく話をするか。問16は、将来の仕事に対する考え方というか、将来に向けて、い ま自分がどのように考えているか、当てはまるものに丸を付けてくださいというような もの。問17は、将来希望する働き方に関して、例えば30歳ごろにどのような働き方を していたいと思うかというもの。問18は、中学生の成績。問19は、高校の進学状況な どを聞いています。以上が項目としての素案ですが、先ほど冒頭に申し上げましたよう に、この調査は民間の調査会社に委託実施することを考えていまして、企画競争入札の 手続を行っています。実際、複数の企業から提案をいただいていますが、Web調査でや るのか郵送でやるのかによって、当然フォーマットも大きく変わってまいりますし、調 査項目についても実施していただく調査会社とも相談しながら、最終的には実施してい くことになるかと思います。以上です。 ○佐藤座長 どうもありがとうございました。調査の対象を社会人と学生という枠組に するということを踏まえ、就業者調査と学生生徒調査の枠組のバックグランドを押さえ た上で、どういう知識があるのかとか、知識を掘り下げて、本当にどこまで知っている のか、それをどこから得たのか、トラブルのときにどう解決するのかということを聞く ような形になっています。本日の段階では、大事な点が落ちているとか、これは要らな いとかを伺って、細かい選択肢はまた別に見る機会があると思いますので、まず大きな 枠組についてご意見を出していただく。ただ、膨大な調査票は作れませんので、自ずと 可能な範囲ということになって、優先順位を付けて調整させていただくことはあると思 いますが、その辺のご意見を伺えればと思います。 ○両角委員 調査は全く素人なので、むしろ教えていただきたくて伺いますが、例えば 3頁の問4、問5の社会人調査の婚姻状況とか世帯の家族人数というのは、一見あまり 関係がないような気がしますが、これは例えば家族がいれば家族から聞いて知っている かもしれないとか、そういう趣旨で設けてあるのでしょうか。 ○佐藤座長 今回の調査では、問4、問5は要らないかもしれないということですね。 ○両角委員 なぜ含まれているのかなと、ちょっと不思議に思ったのです。 ○佐藤座長 確かに、問4はいまのところは、特にある程度標準的な属性で入れた。確 かに、それは議論としてはあり得るかもわかりません。 ○両角委員 特に反対しているわけではありません。  ついでに問10ですが、項目は後で見るということなので、細かいことは後ほど検討 すればよいと思いますが、問10は特に重要なものというか、絶対これは知っておいて ほしいというものをここに上げているという趣旨でしょうか。 ○田中室長補佐 例えば、問10の1から5のようなものは、既存の先行研究にも取り 上げられていたようなものを、直接比較はできないですが、ここでも取り上げてみてい ます。基本的な権利に関するものと、相談先として代表的なものを並べてみています。 順番とか抜けているものとか、これは要らないのではないかというのはあるかもしれま せんのでご指摘いただければと思います。 ○両角委員 大事な、特に知っておいてもらいたいものをピックアップしてあるという ことですよね。 ○田中室長補佐 基本的な権利に関するものを並べています。 ○両角委員 わかりました。 ○原委員 個人的な感想ですが、問4と問5については社会調査でも当然入っているべ き項目だということと、就業関係の調査をするときはホームプロダクションとの関係が ありますので、女性の婚姻状況、子供を持っているかどうかということで、就業におい て不利な状況になるかも確認していく必要があって、知識についてもそうしたことがあ るかもしれないということで、これは必須の質問として、たぶん残したほうがいいかな と思っています。  問10についても、先ほど田中室長補佐からご説明がありましたが、日本における先 行研究との関係もありますし、先ほど単純に先行調査との比較ができないというお話が あったのですが、それはそうで、ただ海外との比較というのがもう1つの切り口として あるかなと思います。イギリスのほうで大きな調査がなされていまして、似たような質 問があるので、制度とか枠組が全然違うので比較はできないと思いますが、そうした可 能性も残したいと思って、こうした項目が入っているということです。何か付け加える 点があったら是非お願いします。 ○両角委員 細かい点はあるかもしれないですが、それはまたあとでよろしいですよね。 ○佐藤座長 そうですね。 ○両角委員 ありがとうございました。よくわかりました。 ○佐藤委員 就業者向けに聞かれている6、7頁は、ずっとDの項目があります。問13 や問14は、こういうことを思っている人はこういうことを知っている、知らないとか、 大体想像するに、不安感を持っているにもかかわらず知識が十分ではないので、対応が 必要になるということだと思いますが、問15から先はわりと今後の予見と何が関係を するのだろうかという印象を受けます。というのは、いま非常に景気の先行き良くない 時期にこれを聞けば、ここが過度に出てくるような感じがして、その中でこちらがこう だというのは、いまの状況だと少しきついのかなと思われる項目がいくつかあるのでは ないかと思います。そういう意味では、問20はなかなか難しい。これは、学生に聞い ているのと同じような趣旨で、たぶん聞かれていると思いますが、問20の15歳のころ というのは、学生に「あなたの家はどうですか」ということと同じように聞かれていま すが、そういう趣旨なら学生とバランスをとるということなのかなと理解をしますが、 正直なところ、パッと読むと答える側が戸惑うかなという気はします。  生徒向けのほうは、活動状況から本人像をあぶり出すということで、なかなか面白い 項目が並んでいるなと思います。ただし、最後のE「その他」は、どうしてもこういう 仕事をしているという雇用形態みたいな聞き方をするのですが、実際は働き方というの は形態のことを言うわけではなくて、働く目的みたいなこと、人の役に立ちたいとか金 儲けをしたいとか、本人がどういう気持を持っている人か、どういう知識状況にあるの かを言っているのであって、正社員になりたいとかフリーターがいいというのは、むし ろ勤めた人がそう思っていたり、我々が分析的にそう思うということであるので、学生 に聞くときは、正社員で働くのかアルバイトをしたいのかということよりも、どういう 人になりたいのかを聞いて、それとの関係を調整するほうが有効ではないかという参考 意見です。 ○上西委員 細かいこともいろいろありますが、大きなところで話をしたいと思います。 社会人調査と学生調査の両方とも、本人の属性とかその他的なところが多すぎて、むし ろ肝心な労働法の知識を持っているかとか使っているかが少ないなと思いますので、そ のあたりのバランスをまず考えたほうがいいだろうということ。  それから、労働法関係の知識の理解状況で絞らないほうがいいのではないかなと。先 ほど権利と義務とコミュニケーションみたいな話もありましたが、私が考えるのはそも そもワークルールを知っているかどうか、例えば、ここでいうと問11あたりです。こ れも、もう少し○×をバランス良く入れたほうがいいと思いますが、こういうものに対 する知識があるかどうかと、そういうワークルールは、あなたが働いているところで守 られているのかどうなのか。例えば、労働条件というのを書面で明示されたか。最初に 言われた条件と実際は違っていたかどうか。サービス残業があるのかどうか。就業規則 を読んだことがあるか、読めるか、どこにあるか分かっているか、というようなワーク ルールにまつわる実態というのをきちんと押さえたほうがいいと思います。そこを離れ て、何か抽象的なことを聞いても仕方がないと思います。  そういう実態と同時に、何か守られるべきものが守られていないときに、そういう状 況に自分が遭遇したときにどうしたか、誰かに相談したかとか、本やネットを調べたと か、何か行動に出たかどうか。労働法制度のなかでは、単に法律の最低基準が守られて いるかどうかだけではなくて、それぞれの職場の組合が労働条件を良くしていくことも 期待されているわけですよね。ですので、法に違反している、違反していないだけでは なくて、労働条件を良くしていくために自分たちで何らかの組合の活動なり、自分たち の非公式的な活動なりをしたことがあるかといったことも聞いてもいいのかなと思いま した。  高校生の調査に関しては、アルバイトをやっている人に関して聞いていることが少な いなと思って、アルバイトをやっている中で権利侵害のようなものがあったかどうか、 そういうときにどうしたか、というのも聞いたほうがいいと思いますし、そういうとこ ろで動けるかどうかということを知る上では、もう少し一般的に高校生活の中で何かト ラブルがあったときに、それを自分たちで解決しようとしたかいったことも聞いていく と、先ほどのコミュニケーション能力みたいなものを高校生がどれぐらい持っているの かが推し量れるのではないかなと思います。 ○佐藤座長 社会人の勤務先、学生であればアルバイト先で、そのワークルール等がど う確立しているかみたいなことも少し入れたほうがいいのではないかということですね。 ○上西委員 そうです。 ○佐藤座長 わかりました。反映できるかどうかは別として、今日はどんどん意見を出 していただきたいと思います。大事な点については優先順位を変えるということも考え ます。 ○増田委員 同じようなことですが、学生のB、学校や学校以外での活動状況というの が、全体の中で問12や問13が浮いていて、私としては必要性があまり感じられなくて、 先ほどありましたアルバイトでの状況などのほうを整理するならば、そのほうがいいの ではないかと思いました。 ○佐藤座長 これは、どういうネットワークなり交流がある人が知っているかを調べる ものですが、ただここまでやる必要があるかどうかは少し検討してみます。せっかくで すので、もし何かお気付きの点があればお願いします。 ○道幸氏 働いている人については、是非就業規則を見たことがあるかどうかを聞いて ください。 ○佐藤座長 別のところでの調査をみると、知らないとか、どこにあるかがわからない 人が驚くぐらい多いのは事実です。よろしいですか。  それでは、今日の道幸先生や由比藤さんたちのご報告を踏まえながら、調査で現状を 把握したいと思います。今日伺ったご意見はそれぞれ大事な点ですので、それをどこの 調査会社にお願いするかはまだ決まっていませんが、決まったらかなり具体的に調査票 を作るという細かい作業になりますので、私と原委員とで具体的な作業を行わせていた だく形で、ある程度実施前には見ていただくことにしたいと思います。具体的な調査票 設計のところは、ある面ではワーキンググループ的に進めるという形でよろしいでしょ うか。そういう形で進めて、ある程度まとまったところでメール等でお送りするという ことで、今度細かい点はいろいろな方にご意見を伺ったほうがいいと思いますので、ご 意見を伺って最終的には私のほうで調整することにさせていただければと思います。  ほかになければ、事務局から連絡事項をよろしくお願いします。 ○田中室長補佐 次回ですが、11月5日(水)午後4時から予定をしています。いまのと ころ、現場で労働相談を行っている方からのヒアリングを考えていますが、場所等も含 めまして詳細については、追ってご連絡させていただきます。また、本日の議事録は第 1回と同じようにご確認をいただいた上で、ホームページ上で公表したいと思いますの で、よろしくお願いします。 ○佐藤座長 それでは、第2回の研究会を終わります。本当に遠くからおいでいただい て、どうもありがとうございました。皆様、どうもありがとうございました。  照会先:厚生労働省政策統括官付労働政策担当参事官室 調整第二係(内線7992)