08/08/18 第5回発達障害者施策検討会議事録 1.日時:平成20年8月18日(月)14:00〜16:10 2.場所:中央合同庁舎第4号館共用108会議室 3.出席者構成員(敬称略)   市川宏伸(座長)、氏田照子、加我牧子、中川信子、山岡修、石井哲夫、 太田栄子、齋藤彰、田中尚樹(辻井正次代理)、 4.議事   ○発達障害者施策推進の今後の方向性について 5.配布資料 資料1 座席表 資料2 発達障害者支援の推進に係る検討会報告書(案)(朱書訂正版) 資料3 発達障害者支援の推進に係る検討会報告書(案)(訂正反映版) 参 考 発達障害者施策検討会開催要綱及び構成員等名簿 ○市川座長 それでは、定刻になりましたので、ただいまより第5回発達障害者施策検 討会を開催させていただきたいと思います。  各構成員の皆様、あるいは参考人の皆様におかれましては御多忙の中、または暑い中、 御出席いただきまして誠にありがとうございます。  では、事務局から本日の進め方、資料について御説明をお願いいたします。 ○事務局 委員の皆様におかれましては、大変お忙しいところ御出席いただきまして誠 にありがとうございます。事務局からも重ねてお礼申し上げます。  会議に先立ちまして、前回は所用により欠席いたしましたが、この度、7月11日付で 障害保健福祉部長に着任いたしました木倉が本日は出席しておりますので、一言ごあい さつさせていただきます。 ○木倉障害保健福祉部長 前回は失礼いたしました。7月の異動で障害保健福祉部長と なりました木倉敬之と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。  この会は全体では5回目ということでございますけれども、前回、今回と、また施策 全体の点検をお願いしております。  この発達障害者への支援につきましては、17年に法律が施行されて3年が経過をして います。ちょうど全体の見直しというときでもございます。そういう中で、各自治体の 方では発達障害者の支援センターの整備を始め、乳児期から成人期までライフステージ を通じたさまざまな支援体制の整備をお進めいただいておりますし、国の方でもこの検 討会でも御検討いただいたと聞いておりますが、支援のためのいろいろな研究開発など の事業を進めていただく。あるいは、発達障害者の情報センターというようなものを発 足させていただくというようなことの取組みを進めてまいっておるところでございます。  しかしながら、まだまだお一人おひとりのニーズに合った支援ができる状態にはなっ ていないということもあり、まだ課題も多いと認識しておるところでございます。  それから、7月には障害児の方の全般の施策につきましても検討会を別途お願いいた しまして御議論をいただいたところでございます。前回のときに、その概要の御報告を 簡単にさせていただいたと伺っておりますけれども、これは発達障害児への支援の対策 と共通するものも多い問題でございますので、十分連携をとってその施策の充実強化を 進めてまいりたいと思っております。  前回は全体の課題を整理いただき、今後の方向性の御議論をいただいたところでござ いますけれども、今回はそれを踏まえまして引き続き御意見をいただきまして、できま すれば支援策、今後の対応の方向性というものをおまとめいただければと考えておりま す。どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○事務局 では、本日の会議がございますが、岩谷構成員、小川構成員、近藤構成員、 杉山構成員、高山構成員、柘植構成員、服巻構成員、辻井参考人から欠席の御連絡をい ただいております。  なお、辻井参考人の代理として前回に引き続き、アスペ・エルデの会事務局長の田中 様の御出席をいただいております。よろしくお願いいたします。  次に、本日の進め方でございますが、本日は前回御了承いただいたとおり、前回の議 論を踏まえまして修正いたしました報告書案の変更部分について御意見を伺い、報告書 の取りまとめに向けての議論をお願いしたいと考えております。  また、時間配分でございますが、冒頭事務局より前回からの変更点などについて20 分ほどで御説明させていただいた後、御意見をいただくという方向で進めさせていただ きたいと思います。  次に配布資料についてですが、議事次第に配布資料の一覧を記載しておりますので御 確認いただけますでしょうか。資料の不足がございましたら、事務局の方にお申付けを いただきますようお願いいたします。  事務局からは以上でございます。 ○市川座長 資料の不足のある方はいらっしゃいますか。いらっしゃればお手を挙げて いただきたいと思います。  それでは、早速ですが、議事に移りたいと思います。まずは、報告書案について事務 局より御説明をお願いいたします。 ○日詰発達障害対策専門官 発達障害対策専門官の日詰と申します。私の方から報告さ せていただきます。  本日、皆様に見ていただきたい資料は、お手元の資料2については基本的には前回見 ていただいた資料について前回の御意見あるいは欠席の委員の方の御意見を踏まえて座 長と整理を行ったものについて修正部分が赤となっております。それが資料2となって います。それを踏まえたものが資料3になっております。見比べていただいて、御説明 していけばいいかと思います。両方見るのは多分手間だと思いますので、私の方でこの ような御意見、御指摘を踏まえて修正を行いましたということを口頭で御説明してまい りますので、資料3をごらんいただきながら筋を追っていただければと思います。  まず資料3に沿ってお話をしていきたいと思います。前回は課題の部分と対応の部分 の2つに分けて資料を用意しておりましたが、今回は報告書という形でまとめていくと いうことがありますので、それを一緒にした形で全体の構成を整えさせていただいてお ります。内容については先ほど申し上げましたように、各構成員から前回の検討会でい ただいた意見、それから前回欠席された構成員からの意見を踏まえて座長と相談の上、 整理を行ったものとなっております。  中身について、報告書としてのまとめをするということで体裁に関するもの、あるい は細かい文言について整理した部分もありますが、今日は時間も余りないことでもあり ますので、主な御指摘いただいた御意見を中心に御報告をしながら筋を追っていきたい と思っております。  まず、最初の目次のところです。前回は「はじめに」というのがありませんでしたけ れども、今回は報告書をつくるということを踏まえまして設けてあります。 2番については、前回と同様です。  それから、3番は支援における課題の部分です。これについても、前回と基本的には 同じような構成となっております。表記について若干まとめ方を変えてあります。  4番の「今後の対応の方向性について」、この部分については(3)の「調査・研究」 については前回の資料にはなかった項目ですが、前回の検討会の議論の中で発達障害に 関する研究体制について必要性を御指摘いただいた点を踏まえ、新たに追加をしており ます。  1枚おめくりください。「はじめに」については先ほども申し上げましたように、報告 書としてまとめを行う上でこれまでの発達障害についての取組みの背景についてまとめ たものとしてあります。これは新しく追加した部分ですので、読ませていただきます。 「1 はじめに  ○ 発達障害については、平成17年から施行されている発達障害者支援法によって、 発達障害者の自立と社会参加を目的として、都道府県・指定都市(以下、「都道府県等」 という。)への発達障害者支援センターの設置や発達障害情報センターの設置等様々な取 組みが行われてきたところであるが、同法の附則において、施行後3年を目途として見 直しを行うことが求められている。  ○ また、本年7月には、発達障害者の支援と関係の深い障害児全般の支援について、 障害保健福祉部長の私的検討会である「障害児支援の見直しに関する検討会」において、 今後の障害児支援のあるべき姿と具体的な施策に対する検討報告書がまとめられたとこ ろである。  ○ このような状況を踏まえ、本検討会では、発達障害者支援に係る発達障害者支援 法施行後の課題を整理した上で、「障害児支援の見直しに関する検討会」では議論されて いない発達障害者固有の課題について、今後の対応の方向の検討を行う、ここにその結 果を報告書としてまとめるものである。  ○ なお、本検討会においては、発達障害者支援法の制定の趣旨を踏まえ、発達障害 者支援法における「発達障害」の定義の範囲の中で検討を行った」。  こういうことが今回新たに加わっております。  次にまいります。2番のところについては、前回の検討会の中で基本的な考え方につ いてもきちんと発達障害者支援法の目指しているところを明確に書くべきであるという ことの御意見が出ておりました。そのような御指摘を踏まえ、発達障害者支援法の第1 条に示されている目的の部分を再確認できるようなまとめ方といたしました。これも、 追加されている部分だけ読みたいと思います。 「○ 発達障害者は、早期に気づき適切な対応を行うことで、一人一人の持っている能 力が発揮され、適切な人間関係を構築することによって二次的な障害の予防を行うこと が可能である。発達障害者支援法第1条においては、これを踏まえ「発達障害者の心理 機能の適正な発達及び円滑な社会生活の促進のために発達障害の症状の発現後できるだ け早期に発達支援を行うことが特に重要であることにかんがみ、発達障害を早期に発見 し、発達支援を行うことに関する国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、 学校教育における発達障害者への支援、発達障害者の就労の支援、発達障害者支援セン ターの指定等について定めることにより、発達障害者の自立及び社会参加に資するよう その生活全般にわたる支援を図り、もってその福祉の増進に寄与することを目的とする」 としている。」ということについて加えております。  それ以下の部分については、基本的には前回と同じ文言について若干整理を行ってい るものとしております。ここでは、基本的に早期の発見が重要であるということ、それ から一貫性が重要であるということを改めて認識するようなものとしておりますが、こ の辺について御指摘があれば御指摘をいただきたいと考えています。  以降、1ページから2ページにわたってア、イ、ウ、エに沿ってこれまでの施策はど んな領域で取り組んできたかということをまとめております。若干順番が違っている部 分もありますが、これは後ほど触れていきます対応の方向性のまとめ方に沿ったものと して整頓をしております。  次にまいります。2ページの14行の「3.発達障害者支援における課題」です。これ については前回もお示ししてありますが、前回は26行目以降の「当事者とその家族に対 する支援提供の流れに沿った課題」、それからもうちょっと先にいきますと4ページの 24行目の「発達障害者支援に関わる者の役割と課題」、そのような見方、観点で整頓す るというところにいきなり入っていたのですが、もう少しその観点について整頓をあら かじめ説明しておいた方がよいだろうということで、2ページ目の15行目から23行目 のところに課題についてどのような観点から整理を行ったかということについてまとめ てあります。そこについても追加となっていますので、読ませていただきます。 「発達障害者支援の基本的な考え方に基づいて、以下の2つの観点から発達障害者支援 に係る現在の課題を整理した。  ○当事者とその家族に対する支援提供の流れに沿った課題  一人一人の発達障害者とその家族に対して、発達障害に気づく段階から適切な支援を 受ける段階まで切れ目のない支援体制を整備することが大切であるとの観点  ○発達障害者支援に関わる者の役割と課題  様々な立場から関わる者の役割を整理し、一人一人に必要な支援が生活全般にわたる 領域から受けられるようにすることが大切であるとの観点」。  この2つの観点から、以下、整頓を行っております。整頓の中身については前回もご らんいただいてあるものですが、前回との修正点を中心に御説明してまいります。  まず「(1)当事者とその家族に対する支援提供の流れに沿った課題」の部分ですけれ ども、この部分については33行目以降の「気づきに関する課題」のところに出てきます。 前回では34行のところで「保育士」の後、「幼稚園及び学校」というのが抜けておりま して「教諭」という形になっていたのですけれども、並びからしてこのように加えるの がバランス的によいだろうということで加わっている部分があります。ほかにもいろい ろな職種が気づきには関わることになると思いますが、「等」の中にそれについて含めて あるというふうに御認識ください。  それから、次の39行目以降のところですけれども、「発達障害については、1歳6か 月児健診や3歳児健診などを契機に分かる場合が少なくない。健診時点では疑いにとど まる場合も含め、確実にフォローを行い、必要に応じて医療・保健・福祉等の専門機関 につないでいく体制を地域で作ることが必要である」。  この文の中で、前回の文章では41行目のところ、「医療・保健・福祉等」の「福祉」 しか書いていなかったんですけれども、御指摘がありまして、いろいろな部分でフォロ ーを行うという形で書いてあります。その後は、前回の文言自体の修正程度で内容的に は変わっておりません。  ずっといきまして、3ページの22行目以降のところです。これは「診断に関する課題」 の中の部分なんですけれども、22行目の「診断に関する課題」の2つ目の丸のところで す。ここについては、「診断後の家族に対する支援としては、まずは専門性を有する相談 機関・支援機関の専門性を向上させ、その家族が地域から社会的及び心理的に孤立しな いよう、様々な情報を提供し、地域において当事者及びその家族を支える仕組みを構築 することが必要である。また、既に発達障害遺児を育て、様々な経験のある親の話を聞 いたり、現に発達障害児を育てている親同士で相談や情報交換を行ったりするピア・カ ウンセリングやペアレントメンターも孤立化を防ぐ選択肢の一つとして活用すべきであ る」。  前回の資料では、診断後の支援としてピア・カウンセリングやペアレントメンターを 御紹介していたのですけれども、もう少し幅広く地域の支援として必要になるのではな いかという御指摘がありまして、このようにふくらませた形の表現といたしております。 その後は、前回と大体同じような表現になっております。  その次に、大きな変更点としましては4ページ目になります。4ページの5行目、「発 達障害の青年期・成人期における支援のうち、就労支援分野に関する支援手法の開発は 進みつつあるが、その開発・活用については更に推進することが必要である。また、就 労後、老年期までを視野に入れた社会生活の支援については未だ支援モデルが十分に開 発されていないため、重点的に開発することが必要である」。  前回、就労支援分野については進んでいるということだけが強調されて、課題として 余り挙げられておりませんでしたので、その課題の部分についても今回は触れることに しました。  それから、成人期・青年期のイメージなのですが、前回のこの会でもどれぐらいまで を含めて検討したらいいんだろうか、開発したらいいんだろうかという話が出ていまし た。老年期まで含めて生涯を通したトータルの支援ということを発達障害者支援法では 念頭に置いておりますので、トータルという意味では老年期まで含むのではないか。そ の部分についてまでこれからモデルの開発の検討に入れてもよいのではないかというこ とで付け加えてあります。  その次にまいります。「(2)発達障害者支援に関わる者の役割と課題」というところ に移ってまいります。29行目の右側の方ですが、「都道府県等」と「等」を加えてあり ます。これについては、政令市等の位置付けを明確にしたものです。  次に、34行目にまいります。これは、「直接処遇職員の役割と課題」というところに なります。前回に比べて加わっているものは、「ハローワーク、児童養護施設等の直接処 遇職員は」と、2つ具体的な資源の名前が加わっております。このほかにもたくさんい ろいろな直接処遇を行っている場所があるわけですけれども、実際に現在も対応が行わ れているということで、この部分については今後も重要ではないかということで加わっ ております。  次に46行目のところになりますけれども、ここにも具体的に発達障害の専門的な支援 を行う者の中で「障害児通園施設、児童デイサービス等」の直接処遇職員に対するバッ クアップを行っていく。障害児の支援の見直しの検討会でもここが検討されていますの で、そのような位置付けとして加えてあります。  次に、5ページにまいります。3行目から5行目にかけてですけれども、今、御説明 しています発達障害について専門的な支援を行う者の役割の中で、「そのためには、日頃 から適切な情報の収集や研修への参加を積極的に行うとともに、ケースカンファレンス の実施等により的確な助言をするための技術を高めることが必要である」。  前回は「的確な助言」というところにいきなりいっていたのですが、特に上下関係と いうことではなくてこれからはチームとしていろいろな役割分担を行いながら専門性を お互いに発揮していくことが重要ではないかということがありましたので、話し合いを 行いながらというニュアンスの内容のものに変えてあります。  次にまいります。次はずっといきまして、(エ)市町村、(オ)都道府県と、22行目か ら40行目までの自治体の役割の部分になります。この部分についてはかなり冗長な言い 方を前回しておりましたので、具体的に何をやるのかという業務が明確になるような整 頓を行っております。  都道府県においても同様であります。国においても、前回の書き方ではいろいろ混じ っていたのですけれども、具体的な整頓をもう一度し直した形で示してあります。  国にとっての役割は、加わった部分などあり、かなり整頓を行いましたのでもう一度 読ませていただきます。42行目からです。 「○ 発達障害者支援にとって必要となる支援手法等の開発や研究、専門的な人材の養 成、社会全体に対する発達障害の正しい理解の普及啓発を更に進めることが重要である。  ○ また、全国への情報発信の拠点となる発達障害情報センターや発達障害教育情報 センター等の基盤整備を行うことも必要である。  ○ 更に、地方自治体の取り組む発達障害者施策について、基本的な方針を示すとと もに、効果的な取組を行っている自治体の事例の紹介を行う等の対応も必要である。」と しました。  次に、6ページの4行目以降が「今後の対応の方向性」ということになっております。 これは前回資料の5ということで、今後の対応の方向性として皆さんに御検討いただい たものになります。これについては、基本的には文言の整頓が主になっておりますので 前回と変わっている部分は余りありませんけれども、(1)、(2)という並べ方について、 まず地域の体制づくりが必要で、その上で全国レベルでいろいろな支援手法の開発、ソ フトの開発ですとか調査研究とか人の養成とか情報提供も必要だろうという順番で若干 並べ替えを行っております。それが大きな変更点になるかと思います。  それから、若干付け加えたところとしては6ページの37行目になります。就労支援の 関係なんですけれども、37行目ところに「さらなる技法の開発等」ということで、先ほ ど申しましたが、就労支援について現時点のモデルで完成ということではなくて、これ からも更に開発を行っていくということについても触れておくことが必要だろうという ことで、この辺について追加となっております。  それから、「支援手法の開発」についての部分で6ページの46、47行目のところです。 「また、支援手法の中で十分に検討されていない分野についても、随時開発を行う必要 がある」。前回は幾つか例を挙げておいたのですが、それらの例にこだわらずさまざまな テーマがまだたくさんあるということで、幅広く解釈できる表現として対応の方向性を 整頓することにしております。  それから、(3)の「調査・研究」のところになります。これが最初に申し上げました ように、前回の検討会で御意見を踏まえて新たに追加した項目になります。「支援手法の 開発」という(2)で触れた部分が、実際の自治体等で取り組まれているものを集約し て全国に普及しようというものであるのに対して、こちらの(3)の「調査・研究」は 国レベルで行わなければならない基礎的な研究等も発達障害については重要であるとい うことを踏まえまして特に取り上げたものとなっております。これは追加したものです ので、読ませていただきます。 「ア 基本的考え方  ○ 発達障害者の実態把握や、発達障害の原因糾明、発達障害の診断及び治療、発達 障害者支援の方法等に関する必要な調査・研究を行うことが必要である。  イ 対応の方向性  ○ 発達障害の調査研究についての検討を行う場を設けたうえで、発達障害の調査・ 研究にとって重要な共通の評価尺度の開発、発達障害に関するデータベースの構築等に 取り組むとともに、不足している分野における調査・研究についても重点的に取り組む こと。」としております。  「(4)人材の育成」にまいります。人材の育成については26から30行目、特に28 行目のところで「一貫した支援を提供するための標準的なテキストやマニュアル作成」 というふうに書いてあります。  前回の検討会では、既にいろいろな分野では基礎的なテキストというよりも、各論に ついて必要な情報を提供していくべきではないかという御意見もありましたが、ここで はそのような先進的な情報とはまた別に、どの職種が関わる際にも共通の理解を持って 取り組むことができるようにするということが一貫性を保障していくという考え方から、 共通の視点を持てるテキストやマニュアルということを考えております。そういうこと で、その辺について若干説明は十分ではないかもしれないのですが、そのような意図と して起こしてありますということを御理解ください。  それから、次は「人材の育成」についてで40行目以降のところになります。 「○ 支援手法の開発の状況を踏まえ、発達障害の診断や診療を行う医師をはじめとし て専門的な支援を行う人材を養成する観点から、実際に発達障害の支援等に取り組んで いる施設等における実地研修のシステムづくりに取り組む。」ということが書いてありま す。この実地研修については、前回三重県の御報告にもありましたけれども、今後の人 材育成にとって大変重要なものというふうに我々も考えています。全国的にこれを行う ためにどのようなシステムで行うかということについて十分な準備が必要というふうに 考えておりますので、「システムづくり」と書かせていただいています。その辺が若干追 加となっているところです。  それから、「(5)情報提供・普及啓発」になります。これについては、1行目から若 干追加があります。読ませていただきます。 「○ 発達障害についての誤解や偏見から支援に結びつかない場合があること、発達障 害の相談窓口の情報周知が不十分なため相談につながっていない場合があること、発達 障害についての信頼のおる支援手法の判断が専門家以外では難しいこと、発達障害につ いての良いモデルを開発し実践しても情報が集約されていないためにそれらが広がって いない等の課題があることから、適切な情報の収集・分析を行った上で、受け手に合わ せた様々な方法を用いた信頼の置ける情報の提供が必要である」。  前回の検討会で、良い実践の情報の蓄積という部分も重要な役割としてよいのではな いかという御指摘がありましたので、それについて加えてあります。  その結果、「対応の方向性」の中でそのような点を踏まえての強化ということで触れて あります。「対応の方向性」については13、14行目のところに、前回はなかったのです けれども、「○ 地方自治体においても、発達障害者支援センターと連携し、相談資源の 情報等か提供できるように整備すること。」ということで、国レベルだけではなくて特に 相談資源などは地域でなければ把握できない部分がたくさんありますので、そのような ことも重要であるということで追加をしてあります。  最後になりますが、「おわりに」の部分については報告書としてまとめるということで 新たに追加してある部分ですので、ここも読ませていただきます。 「 今回の報告書においては、発達障害は、適切な対応を行うことで状態像が改善し、 一人一人の持つ能力を十分に発揮することができるものであるという視点の下に、いつ でもどこでも発達障害者に適切な対応が提供できるような社会の実現に向けて、個別の 支援計画に基づく地域の支援体制の強化を図ること、そのために必要となる支援手法の 開発や調査・研究、人材育成を行うこと、加えて社会全体に対する普及啓発を行い正し い理解を広げること等の施策を更に推進するための取組み案を整理した。  厚生労働省において、この検討結果を踏まえ、関係部局及び関係府省等との連携をよ り一層強化するとともに、引き続き発達障害のある当事者とその家族を支援していく具 体的な仕組みについて検討し、効果的な施策を実施していくことが不可欠である。  この報告書か、発達障害であっても誇りを持って生きられるような社会づくりに資す る契機となることを願うものである」。  以上、前回からの修正点を中心に御報告させていただきました。御議論をよろしくお 願いいたします。 ○市川座長 ありがとうございました。  それでは、報告書について御意見をいただきたいと思います。報告書については前回 にも御意見を伺いまして、皆様方の御意見を反映して修正しているところです。議論に ついては、まず資料の1から3までの項目と4から5までの項目に分けて行いたいと思 います。今のところ、時間的な配分としましては1から3について30分くらい、4と5 については50分くらいを予定しております。  なお、できるだけ多くの方々から御意見をいただくため、御発言は簡潔にしていただ ければと思います。また、できれば本日は最終的な取りまとめを行いたいと思いますの で、本日御発言いただく場合は具体的に資料の何ページの何行目に対してどのような御 意見かをわかりやすく御発言いただければ幸いです。  それでは、まず1から3までの項目について御意見のある方は御発言をお願いしたい と思います。  それでは、中川構成員どうぞ。 ○中川構成員 1ページの41行目、アの「地域支援体制の整備」というところですけれ ども、一番早期に発達障害かもしれないと気付く、気付かないという辺りはまだ発達障 害という範疇に入っていない部分で、子育て支援というところとの重なりがすごく強い と思いまして、以前から療育は注意深く配慮された子育てであるという言葉もあるとお り、子育て支援に連動しながら動いていくということを是非この辺りで書き込んでいた だけたらと思います。 ○市川座長 子育て支援との関係ということですね。これについて事務局の方から何か お考えはありますか。 ○福島精神・障害保健課長 確かに御指摘はそのとおりでありまして、資料の2ページ 目に例えば1歳半健診、3歳児健診のことも書いてありますけれども、実際には疑わし いと思われる場合も含めて今の点の御指摘はそのとおりでございます。もっとそれ以前 のところからの、多分子育て支援全体の基盤があって、そこに特に気になる子どもに対 する支援が乗ってくるんだろう。  ただ、そこはこの検討の場が発達障害に限定しているものですから、若干そういう視 点が必要であるということは我々も十分認識をしておりますから、書きぶりはまた座長 と相談させていただきながらそういうことのニュアンスが出るようにしていきたいと思 います。 ○市川座長 ただいまの御発言について、これに関係するものも、それ以外のものでも 結構ですので、どうぞ。  では、山岡構成員どうぞ。 ○山岡構成員 今の件は、障害児の支援に関わる検討会のところで既に気になるところ から今、中川先生がおっしゃったところの形がきちんとうたわれているので、それ以外 のところをうたっているものですから、ここではうたわなくてもいいのかなという気は しています。  それから、1ページのところで2点申し上げたいと思います。  1ページの19行目です。今回の検討会については発達障害者支援法が3年たったとき の見直しということで、発達障害者支援法施行時から発達障害者支援法で言う発達障害 の定義についてはちまたでいろいろと議論もされているところであります。  それで、この19行目、20行目に恐らく発達障害者支援法における発達障害の定義と いうものをそのまま維持することを前提に検討をするんだという気持ちが込められてい るかと思いますけれども、法律改正に伴う議論の中でいくと、もう少し踏み込めないか なと思います。例えば、今回「発達障害者支援法の制定の趣旨を踏まえ」以下のところ に、例えばこのような文言は追加できないかということです。発達障害者支援法には政 省令がくっ付いておりまして、それとセットで対象が決められていると思うんですけれ ども、「発達障害者支援法」だけを対象としても構わないんですが、「発達障害者支援法 で定められた発達障害の定義の範囲を維持することが適当と考え、この範囲で検討した」 とか、そういうような意思を入れられないかというのが1点です。  それから、2点目でありますが、2の25行目から27行目のところです。後段のとこ ろでは発達障害者支援法の第1条を運用していただいているんですけれども、前段の2 行がかなり違和感のある文章になっています。この2行ちょっとのところというのは、 基本的な考え方を検討会の報告書として唯一述べている大事なところでありますけれど も、二次障害の予防を行うことが目的のようになって終わっています。基本的にこの終 わり方がひとつおかしいなと思うところと、「発達障害者は」と始まっているのに対して 主語と述語が合っていません。それから、「一人一人の能力が発揮され」というところも、 障害者支援に使う言葉ではないです。基本的に一人一人の能力があってそれを発揮する というのであれば、発達支援とか、そういう観点が入っていないような文言のように思 います。  一部の発達障害の方については、例えばADHDであればリタリンを飲むことによっ て本来持っている能力が発揮できるとか、そういうことはあると思いますけれども、発 達障害者支援法の中でいきますと発達障害というのは発達期に起きる障害なので、基本 的には発達支援をしなくちゃいけないということが前提になっていると思うんです。  ですから、ここの文言は、修正案は一部事務局の方に御提案しているんですけれども、 見直していただきたいと思います。以上です。 ○市川座長 ただいま2点御指摘いただいたと思うのですが、1点目の方は、現行法定 義の範囲を維持するという視点を入れてほしいというような解釈でよろしいですか。 ○山岡構成員 はい。 ○市川座長 これについては、ほかの構成員の方から御意見等はございませんでしょう か。 ○加我構成員 発達障害の範囲に関して、私はこれでいいと思っているわけではないの ですけれども、支援法ができてわずか3年で変えてしまってはいけないという状況も理 解できますので、今回もこのような定義をしたということは言わざるを得ないかとは思 っています。  ですから、将来的には本来の発達障害、広い範囲をやはり考えて対応していかないと いけないと思います。特に自閉症、広汎性発達障害の方で知的障害のある方、ない方で の区別というか、差別が出てきてしまうのはいけないと思っています。 ○福島精神・障害保健課長 1点言いますと、この検討会における発達障害の議論をし た範囲はどこまでかということの明確化ということと、発達障害者支援法における定義 の話というのは、少し議論をしては違う視点だと思っております。  それで、法における定義の問題は実は議員立法によるものでございまして、これはほ かの先生方との御議論にお任せしないといけない領域だろうと思っております。それで、 この検討会における発達障害という、この場における議論の対象はだれか、どういう人 を対象にすべきか。その「すべき」ということについての表現ぶりは幾つかあってもい いと思います。  ですからこういうふうな表現になっているので、範囲の維持というものが法律におけ る書きぶりのことであるならば、そういう表現は少し踏み込み過ぎなのかなと思ってい ます。そこを制約することはこの会の任務ではないのではないかと思っております。  それから、山岡構成員の御指摘の2点目のところは確かに少し言葉が足りない。若干 簡略化し過ぎたところがあるようにも思います。この表現ぶりについて、特に2の1つ 目の丸の最初の1行目、2行目のところについてはまた座長とも御相談させていただき ながら、発達障害者に対する支援の基本的な理念とか考え方というものがもう少し明確 に出るような形で表現ぶりは修正をさせていただきたいと思っております。 ○市川座長 そういうことですので、検討会の中においてはというような前提でという ことで、山岡構成員よろしいですか。 ○山岡構成員 発達障害者支援法の附則にある「政府は」と書いてあるのは何を指すん ですか。政府というのは3つ、立法府、行政府、司法とありますけれども、「政府は検討 を行う」という「政府」はどこを指しているのでしょうか。議員立法だから議員の立法 府の方に任せるということですか。 ○福島精神・障害保健課長 多分、実際の法に基づく施策の施行状況であるとか、ある いはその進展の状況については私ども行政府がやはり考えるところだと思っております けれども、その上で、では範囲をどうするのかという問題になると、そこはこの法律が できた経緯から言ってもやはり立法府での御議論になるんだろうと思っております。  もちろんこの検討会で発達障害者支援法はこう定義しているけれども、定義について 更にこうすべきだという御意見、あるいはこういうことも視野に入れながら対象者を広 げていくべきだとか、そういう御議論があってもいいのかもしれませんが、この検討会 でのもともとの我々の任務としても施策の中身について議論をする。ちゃんと進展して いるかどうかということを御議論いただいて、足りないところについてこうすべきだと いう御指摘をいただきたいということで始めたものですから、そこは現行の法律の枠の 定義の範囲の中で議論いただくべきではないかということで、私ども事務局からも御提 案させていただき、その方向で議論いただいたと考えておりますので、この表現ぶりは 現行でいいのではないかと、今の原案のところでお願いできればと思っております。 ○山岡構成員 あとは座長にお任せします。 ○市川座長 ただいまの御説明について、ほかに構成員の方から御発言はございますで しょうか。よろしいですか。  それでは、2点目の件については今、課長の方から御説明があったのですが、それに ついてはほかに御発言等ございませんか。山岡構成員、今のことでよろしいですか。  それでは、ほかにございますか。石井参考人どうぞ。 ○石井参考人 前回いただいた資料を読んで今回は新しい資料も見ますと、最初の「検 討の背景」の「はじめに」というものは1項目抜けているんですね。自立と共生を理念 として共生社会の実現を目指しているというのは大変大事なイデオロギーで、これが実 は発達障害の中でも社会的な体制に入り切れない自閉症等の重要な問題だというふうに 認識しているんです。ですから、これをどうして落としたのかということをひとつお聞 きしたいということです。  それから、この発達障害者支援の考え方、取組みというところで35行目に「このこと を踏まえて、国及び自治体」云々として、「政府として以下の領域において施策を実施し てきたところである」ということがアからエまで読み込めるわけですが、実はこれは率 直に言ってどんなものであったかということについての意見とか反省というのがあって しかるべきではないかと考えるんですけれども、これはいかがでしょうか。  そして、特にその中でこれが先々にも影響してくると思いますけれども、2ページの 上から2行目に「客観的な検証」という言葉を使っています。これはかなり長期的な時 間的な経過を経た上で検討しなければならないことがたくさんあるということで、例え ば情報センターなどでも客観的に検証された技法の紹介などという言葉はよく使われる んですけれども、この辺のところの客観的な検証の意味というものを御説明いただきた いと思うことが2点目です。  それから、もう少し後になりますけれども、29行目の「切れ目なく必要な支援が提供 される」ということが大変大事なところなんですが、これについてのイメージが実は読 んでわかりにくいので、その辺のところを説明していただきたいと思います。以上、3 点です。 ○市川座長 それでは、この3点について事務局の方からお答えいただけますか。 ○福島精神・障害保健課長 自立的共生というキーワードはもちろん必要だということ は認識しておりますが、障害者基本法のところに書いてある言葉であります。それで、 「はじめに」のところはこの検討会の経緯のことを書いているものですから、この検討 会において、特に施策の見直しといいますか、再評価の部分を議論していただくという ことに重点を置いた文章にしたものですから、そこはこういうこととしております。  それで、御指摘のような視点というのは、多分2の「発達障害者支援の基本的考え方 と取組み」のところの最初に置くべきところだと考えております。それは、先ほど山岡 構成員からの御指摘もありましたし、そのことも踏まえてそこら辺の書きぶりはその趣 旨も踏まえたものにさせていただきたいと思っております。  それから、2点目のお話として2の基本的考え方、取組み全般としてこれは反省なり 評価がないのではないかということですが、3が課題ということで、課題とは何かとい う問題なのですが、現状とあるべき形のギャップのところで課題というものが設定され るわけですから、そこのところの現状認識はその中で含んでいるというふうに御理解い ただければありがたいと思います。  それで、2ページ目の2行目の「客観的な検証」ですが、本当の意味といいますか、 きちんとした長期の観察によって効果は検証しなければ、きちんとした研究に基づいた 評価をしなければいけない部分もありますけれども、ここではそのようなものというよ りも、もう少し専門家が集まってそれぞれのものについてディスカッションをし、コン センサスベースでもある程度客観的な検証と言えるのではないかと考えておりまして、 検証のレベル、エビデンスの強さというのはそれぞれあるわけですけれども、これは例 えばどういう具合のエビデンスでつくられたものかとか、どういうものによってつくら れたものかということも含めて、それぞれの手法が評価できる。外部の使う人がわかる ような形で提供できるというような意味合いで「客観的な検証」という言葉をここでは 使ったつもりではあります。若干わかりにくい表現であるとは思います。もう少しそこ ら辺は具体的に書かせていただきたいと思います。  それから、「切れ目なく必要な支援」という言葉は、ライフステージを通して一貫した 支援というのは字の見直しのところでも特に言われております。また、もともと発達障 害者支援のところではそのように同じ視点でずっと、従来がどちらかと言えばそれぞれ の関わった時期、あるいは関わった人によって違う視点で、あるいはぶつ切れるという 言葉は強過ぎるかもしれませんが、そういう人が多かったことの反省に立って、それを 同じ視点で、あるいは課題をずっと引き継ぎながらやっていく。そういう意味合いで使 っているものでございまして、これはこれまでの御議論の中では少なくともずっとこの メンバーではある程度合意ができているところかとは思っておりましたけれども、対外 的に説明をする、例えば、これを報告書で出すときにわかりにくいようであればもう少 しここは言葉を補足して今のような趣旨を踏まえたものにさせていただきたいと考えて おります。 ○石井参考人 ありがとうございました。 ○市川座長 ほかにはいかがでしょうか。  では、氏田構成員どうそ。 ○氏田構成員 全体的にいろいろな支援手法とかが書いてあるのでそのように理解でき るとは思うのですけれども、例えば3ページの46行目です。「これまでは、直接処遇職 員や専門的な支援を行う者がいかに支援を行うかといった視点からの支援手法の研究や 教育啓発が主であったが、今後は、当事者とその家族自身がその能力を高め問題を解決 できるようにすること、地域と当事者及びその家族を連携させることなどの視点からの 研究や普及啓発も必要である」とあります。ここの「当事者とその家族自身がその能力 を高め問題を解決できるようにすること」という記載ですが、本人の持っている能力を 高めて、周りからの不適切な対応で二次障害になったり、自分の力を発揮出来なかった りすることのないように、例えば、ソーシャル・スキル・トレーニングを行うとか、そ ういうイメージも文章から得られるところもあるのですけれども、これまでの自閉症の 長い歴史の中では、障害が外から見えにくいということもあり、怠けているのではない かとか、そういう形で状態像が理解されないところがあるので、もうちょっと細かく書 いていただきたい。もちろん本人も家族も能力を高めて問題を解決できるようにと思っ ていますが、まわりの障害特性への理解がなければうまくいかないというところで苦労 していることがあるので、言っていらっしゃることはわかるんですが、ちょっと家族と しては心配な感じがしました。 ○福島精神・障害保健課長 この部分というのは、どちらかというとエンパワーメント ということで、エンパワーメントと言うとなかなか言葉としてわかりにくいのでこうい う表現にしていますが、確かに御指摘のような部分は出てくるかもしれません。  例えば単にソーシャル・スキルのトレーニングをするとか、それだけではなくてもう ちょっと広範な意味合いで書いたつもりではあったんですが、もう少しそこら辺の言葉 は丁寧に補足できれば書かせていただきたいと思います。ソーシャル・スキルのレベル アップをするということはもちろん必要なことではありますけれども、それだけにとど まっているつもりではありませんので。 ○氏田構成員 それはすごくわかるんですけれども、ちょっと心配な気がしました。自 己肯定感が持てるような環境など、障害特性を理解した支援が生まれることを願ってい ます。苦労をしている本人や家族が多いので、よろしくお願いします。 ○加我構成員 先ほど中川先生の御発言にもありましたが、子育て支援、育児支援とい う立場から考えますと、2ページの39行から「1歳6か月健診や3歳児健診などを契機 に分かる場合が少なくない」という記述を強調しすぎるのは心配があります。健診を通 じて病気や発達の問題があるとわかったときに、この間から支援は診断治療支援一体の ものであると言っているのですが、支援ができないとか、しないということがあるので あれば、むしろ診断しない方がいいということも往々にしてあります。この点でのこ間 から診断治療支援は一体のものであると言っているのは、そういう意味もあります。  子どもたちや御家族とつき合っている立場から言いますと、定期健診などでわかる場 合もあるけれども、疑いにとどまる場合の診断を含めて、確実に御家族と子どもたちを 支援できる立場でひとまかせにしなでフォローしていくという責任感と責任をとれる体 制が必要です。  現実的には1歳6か月健診でわかるというよりは、集団活動が始まった保育園なり幼 稚園に入園後、あるいは学校に入って学業が始まってわかるものがたくさんあるわけで す。そういう方たちにとって見つかったときが治療支援の最適な時だというイメージを もう少し出すといいのではないかと思いました。それがライフステージにおいて切れの 目ない支援につながると思います。早期診断は確かにいいこともありますが、早期でな かったのではないかと思いこむことによる家族の負い目が非常に大きいこともしばしば 経験しておりますので、もうちょっと上手な書き方を工夫できるといいと思いました。  もう一つ、3ページの17行の「診断に関する課題」です。ここで書いていただいたこ とは本当にそのとおりだと思います。発達障害の診断や治療は当然ニーズも高いですし、 専門性も必要なので、それができる人、できる場を増やしていくということはとても大 事なことです。同時に診断が定量的にできるような研究も必要です。支援をする必要が ある人を本当に診断していくために状況や、病態、支援の必要性自体の診断をもう少し はっきりする必要があるかと思いました。  これが多分、調査や研究の必要性を入れていただいた理由だと思いますので良かった です。というのは、この検討会での検討の対象は発達障害者支援法に規定された発達障 害ですから、皆様もよくご存じの通り対象は一つの病気ではありません。相当違う対応 をしないといけない病気が含まれているということを考えますと、診断・治療研究の大 切さを指摘して書いておいていただくのは大切だと思っています。以上です。 ○市川座長 書き方の問題もございますし、障害児の支援の見直しに関する検討会で少 し出た部分もあると思うんです、何か事務局の方からお答えはございますか。 ○福島精神・障害保健課長 まず1点目の部分は確かにおっしゃるとおりで、健診で見 つかるものもあれば、もう少し後で見つかるものもあるわけですし、それは長期の集団 生活の中で顕在化していく。あるいは、そういう目でフォローアップすることによって きちんとわかってくるというのはそのとおりだと思います。  若干、時系列的に書いているものですからこうなっておりますけれども、気持ち的に は次の、例えば診断、全支援の話であるとか、あるいはその後フォローアップの問題と か、御指摘の部分は気持ちはこもってはいると思っているのですが、確かに健診がかな り強調されているような印象で取られると、これは読み手の側がどういうふうな印象を 持つかということが大きいものですから、そこは工夫をさせていただきたいと思います。 そういう視点は我々はもちろん持っておりますので、そこは考えさせていただきます。  それからもう一点、支援が必要な人は特にだれか、本当に診断が必要な人を診断すべ きという御指摘の部分ですが、この後ろの括弧書きのところには調査・研究、人材育成 と両方書いてありますけれども、調査・研究がもう少し進むことと多分裏腹だと思いま すので、そこは7ページ目の今後の「対応の方向性」辺りでもう少し具体的に書けるか どうかですが、ある程度ここの中でざっくり入ってはいるかとは思いますが、御指摘を 踏まえてそういう研究を我々はしていく必要があるというふうに認識しております。書 きぶりは、また座長と相談させていただきます。 ○市川座長 ほかに何か御意見、御質問等はございますか。  それでは、時間の関係もありますので、後半の4番、5番の方についても御意見を伺 い、その中で1番、3番に関係あることであれば御質問いただくということにしたいと 思いますが、よろしいでしょうか。  それでは、4番、5番を中心に御発言があればお願いいたします。参考人の方からも、 御質問をいただければと思います。  それでは、石井参考人お願いします。 ○石井参考人 余り整理されたものではありませんが、これは意見にもなるんですけれ ども、実際に現場で今、問題になっているのは、自閉症の人達には居場所がない人たち が多いんですね。学校を出て、就労もできない。そういうところの居場所の問題という のは、切れ目ない支援というきれいな言葉を使っています。その一つとして、学校から 社会に入ったときに発達障害者支援センターもあるじゃないかというけれども、あれは そんなに機能しないですね。  それで、私自身非常に疑問に思っているのは、最近、相談もやらないセンターが出て きたというようなことで、こういうことはありかなと。 ○市川座長 今の発言は、ページだとどの辺りでしょうか。 ○石井参考人 私はまとまっていなくて、例えば6ページ辺りなんですけれども、こう いう基本的な考え方として役割分担で個別の支援計画の作成と書いてありますね。そう いうのは全体を見渡した上で、例えば情報センターでその作成の仕方を整理してくださ るというふうにイメージしていいのか。そうだとするならば、調査というのは現状調査 をきちんとやった上で整理をしていただくということになるのか。調査というものが入 りましたから。  そんなことも考えながら今、申し上げたような現状の問題というものを、先ほど政府 は何をやったかということを考えた上で、切れ目ない支援を自閉症の人に行うために、 これをやはり書いていただきたいという思いがしたものですから申し上げて、大変くど くなりました。  ですから、例えば20行目にある「発達障害者への就労支援については、開発された支 援モデルに基づくプログラムの普及」と言うけれども、本当にこれで普及していいのか どうか。そういうプログラムができているのか。実際問題、我々は就労支援をしている ときの状況にあるので、考えてしまうわけです。長期的に見ると、形の決まったプログ ラムは、定着していかないんです。これから新たなSSTの開発とか、そういうものを 取り上げていくわけです。この文も、当然ながらそういうことも織り込んで読み込めな いことはないので、非常に好意的に見ていくと立派な文章でいろいろ、入っているんで すけれども、具体的に検討したときのアクションプランに次につなげていくとき、今の 行政の状況で出来るのでしょうか。連携というけれども縦割行政というのはひどいもの でして横につながっていかない。  それは皆さんもおわかりだと思うので、これは私は意見として出したんですけれども、 恐らくそれを少しずつやっていくというふうに読んで了解しているわけで、まとまらな いんですが、是非行き場のない、居場所のない、先ほども診断する前に待っている人た ちをだれがなだめるのかと言ったら、やはり保育所とか、そこに属しているところです ね。保健師さんとか、そういう関係を持っているところが実態としてあるのかどうかと いうようなことを考えると、余りないんですね。  だから、そういうことも織り込んだ上で文章を書き込んでいただいたと私は理解して、 別にこれは反対しているわけじゃないんです。ただ、ここで意見だけは述べさせていた だこうと思って申し上げているわけです。以上です。別にお答えくださらなくても結構 です。 ○市川座長 今のことは全般的な御発言かもしれませんけれども、例えば個別の支援計 画をどこでつくるのかとか、多分前から再就労の支援が非常に不十分だというようなこ とがよく言われているところですが、これについてもし何かあれば御発言いただければ と思います。 ○福島精神・障害保健課長 それを書かせていただくとすれば、逆に今の4の部分では なくて3ページから4ページにかけての「支援に関する課題」の中で青年期・成人期の 支援の課題のようなところにもう少し今のものを書き込むかどうかですね。  ただ、なかなかな就労につながっていかない人の話だけではなくて、多分それをいろ いろ考えますと、それ以外の二次障害でいろいろな問題行動になった部分の話だとか、 それに対する課題というものも本当は更に書き込まないといけない部分もあるんだろう とは思いますが、そこは書き込むとすれば今、石井参考人から御指摘のあった部分は多 分そこに書く必要があるんだろうと思います。  それで、実際にそれが具体的にどういう施策としてできるかという話になりますと、 これから確かにやらないといけない課題でありまして、そこは7ページの青年期、成人 期における社会生活の支援というようなところについてもう少し具体的に何ができるの かということを考えていく必要がある。課題として認識はしているのですが、そこはこ れくらいの書きぶりでさせていただければと思います。  それから、1点、先ほど支援センターで相談をしないというところがあるという御指 摘ですが、これはここの議論とは別に支援センターがまだ始まって間もないところでは 普及啓発のところにまず重点を置いて取り組んでいるところがあるように聞いておりま す。  ただ、実際は専門的なアセスメント、モニタリングということを支援センターの役割 として今後明確化していく。これは、先ほどの5ページの(ウ)でございます。そうい うところでいろいろ書き込んでいるところでもありますし、発達障害者支援センターが やはりそういう機能が担えるようにしていくべきだろう。単に普及啓発ではなくて今お っしゃった相談支援、更により専門的な相談支援ができる機関に育てていくというのが これからの課題だろうと思っておりますし、そういう方向で我々も施策を展開していき たいと考えておりますので、そういうことがないように我々も努力をしたいと思います。 以上でございます。 ○市川座長 よろしいでしょうか。ほかに御意見等はございますでしょうか。  支援等につきましては斉藤参考人あるいは太田参考人からも御意見をいただければと 思いますが、いかがでしょうか。 ○齋藤参考人 前に戻って失礼ですけれども、4ページの22,23,24の辺りです。文部 科学省と厚生労働関係省との話し合いの機会は増えているが具体的な事業や研究等につ いて更に共同で行うことについて検討が必要である」と書いていただいているんですが、 これは市の現場でいうと福祉行政と教育行政は連携しなければいけないということだと 思いますが、文科省と厚労省がこのような書き方だと都道府県、市町村という流れの中 で、仕事が市町村におりてきた場合、うまく連携体制ができるんだろうかと、少し気に なりました。  それと、国と都道府県、市町村の役割のところを何度か読み返すんですけれども、具 体的にどういうことなんでしょうか。役割と課題と書いてありますが、これは現状報告 のような気がします。これまでの3年を見直す中でこういう形でいいのかどうか。また、 市町村の役割として、児童デイサービス事業も含め、どういう支援をしていくのが望ま しいんだろうか。その2点をお願いします。 ○福島精神・障害保健課長 まず1点目の自治体、国レベルでもっと連携を強化しなけ れば自治体レベルでは難しいという御指摘でありますけれども、発達障害に関してはか なり文科省と私ども  の方での連携は、それなりに従前のいろいろな検討のことから すればかなり早い段階から協力をしながらやっているつもりではあります。  ただ、そこはもう少し明確にいろいろなものを連携してやると自治体が動きやすいと いうことであれば、その対応については私どもも反省をして対応しなければいけないん だろうと思っております。  ただ、個人的経験で言えば、国よりも自治体の方がフットワークは軽いという県の行 政と市の行政の経験もございますけれども、衛生、民生と教育委員会と、日ごろから顔 を突き合わせて仕事をしている関係の中では、かなりやりやすいのが実は基礎自治体だ という印象を正直言って持っているところでございました。そういう面では、国の方が フットワークが重いのかなという個人的感想でございます。  ただ、それをやりやすくするためのいろいろな手だてといいますか、いろいろな方法 論はあると思いますので、そこは実際のところはまたもう少しさせていただきたいと思 っております。  それからもう一点、4、5ページ辺りの書きぶりでありますけれども、これは字の支 援と相まってということになると思うんですけれども、やはり市町村の一般施策の中で 対応していただく部分というのは相当大きい部分がありますから、一般施策における対 応力というものをいかに向上させるか。そこに関わる人たちのレベルアップをどう図る かということ、それから関係者のネットワークといいますか、体制整備をどうしていく のかということが課題で、課題そのものは変わっていないというとおかしいのですが、 もともとあるものであって、そこにどれだけそれができるような具体的な事業として詰 め込んでいけるかということが大事なのかなと思っております。  それで、やはり都道府県はそれに対して市町村をバックアップする、より専門的な立 場での支援を市町村にすべきだということについては、発達障害に限らず障害者施策あ るいはほかのいろいろな保健衛生部分、あるいは福祉部分の施策全体として同様なこと が言えるのだろうと思っておりますけれども、そういう面で実際にやるべきことの中身 といいますか、具体的な中身がどれだけ充実できるかということと、特にどれだけちゃ んと人材育成ができるかということについて、これから国がいろいろな施策としてどれ だけ提供していけるか。都道府県が一緒になって市町村にどういうふうに提供できるか ということを考えていくということだと思っておりますので、表現ぶりはこういうこと で御容赦いただければと思っております。 ○齋藤参考人 ありがとうございます。今もお話があったのですが、どうしても私ども 現場では、マンパワー、人材ということになってまいりますので、是非、現場とかに出 かけていただき、研修等、都道府県の力を市町村に出していただけるよう連携をとって ほしいと申し上げておきます。 ○太田参考人 都道府県の方に期待をいただくような御発言をいただいたのですが、な かなか都道府県としてもそれほど専門性があるわけではないというのは皆さん御存じの とおりでございます。恐らく障害児施策にしても、発達障害児の対応にしても、法律は できたけれども、実際にどう取り組めばいいのかというのはどこも暗中模索なのではな いかという気はいたします。  そういう中で、三重県は小児診療センターあすなろ学園という専門施設を持っていた がゆえに早くからその課題に取り組めたという幸運はあったと思うんですけれども、そ れがすべての都道府県で一斉に同じように取り組めるのかというと、非常に課題は大き いのではないかと感じます。  それとともに、この検討会の報告がどこに焦点が置かれるのか。恐らく市町村におけ る取組みというものが非常に大事になってくるだろうと思うんです。都道府県が逃げる わけでは決してございませんが。  というのは、やはり地域で発見され、地域でフォローし、地域で育っていく子どもた ち、青年たちですよね。その子どもたちをずっとフォローし続けながら、その子に対し ての関わりが正しかったのか、正しくなかったのかというのは、その子どもを生涯見渡 せる地域だろうと思うんです。その地域というのは何なのかと言ったら、やはり国でも 県でもなくて市町村だろうと思うんです。そうすると、市町村の方で本当にその体制を どうつくったらいいかというのは、もう少し丁寧な示唆がなければ取り組めない。  さきほど、市町村は一般対策、一般事業の中で事業として取り組んでいくんだとおっ しゃったので、その辺りにサゼスチョンいただけるのではないかと思うんですけれども、 恐らく市町村の方でどういう連携体制が必要で、そこで中心になる人材というのはだれ なのか。どういう人なのかといったことが、本当にこと細かにモデルとしてというのか、 事業としてある程度こういう検討会の報告書の中でも書き込まれていかないと、実際に は取り組めないのかなという感じはいたしました。  地域の中で初めて関わった子どもたちがどう育っていくのかというのを見た保健師さ んや保育士さん、それから市、町の児童福祉、障害福祉の担当者というのは、やはりず っとその子の成長が気になるはずなんですね。そこでこそ実際の事例が蓄積され、力が ついていくものだと思いますので、そこへのサポートと、実際の本当に事業としてのサ ポートもお願いしたいと思います。  例えば、研修1つ取っても、研修が開かれる。でも、開かれる研修に出席するために は、保育士なり保健師なりはその職場を空けないといけないんです。実際には専門性を 高めたいと思っても、その後、1日2日なり1週間なりの専門研修に出席する間を埋め る人材がいなければ出席は不可能です。そういった非常に小さな市町村で困っている課 題については先ほど市長さんがおっしゃったように、現場の実態をよくごらんをいただ いて、そういったことがフォローできて実際に市町村の職員がやる気が出せるサポート 体制というものを提案いただけたらと思います。 ○齋藤参考人 この委員会ではなくて全体の流れのお話で是非皆様にも市町村の現状を 御承知いただきたいと思っていて、生意気ながら、少し述べさせていただきます。  実は、市町村の仕事がものすごく増えております。国の方で新たに制度を設けられた とき、現実に今、三重県さんがおっしゃっておられるように、子どものためとか、身近 なことになるとやはり市町村になってまいります。ですから、市町村がやらねばならな いということはよくわかります。しかし、最終的に市町村が実施することになっても、 一方で、地域では人口も減ってますし、職員も減らさなければいけないし、そしてまた その中で大きな課題は継続していかなければならないわけであります。いつまでたって も仕事が終わらないわけです。そして、国の立法で新しい仕事をいただいたら、また市 町村がやっていかなければならない。どこまでやれるのか。  私どもでも、5歳児健診というのを実施する計画があるのですが、さて支援が必要な 児童は何人になるか。何百人ならだれがどうして対応するの。現実の問題、どう解決す ればいいのか。一旦始めたら止まらない問題で、財源のこと、人のことも考えなければ いけない。すべてのことに対応していかなければいけないが、本当に大丈夫なのか。私 の決断だけで選択できるような問題ではないぞということを実は担当かには言っている わけであります。ですから、発達障害の子どもに対してどう支援できるか。これは、我々 にとっては本当に大事な問題です。  しかし、バランスというものも大事でありまして、発達障害だけでなく、高齢者やそ の他の問題をどうしようか。実は、どこも市町村はバランス、バランスの中でやりくり をしているわけでございます。今日的な課題として、地方分権の中で分権、分権と言う けれども、もう分権は結構だ。それ以前に、お金と人を回してほしい。そうしない限り、 にっちもさっちもいかないというのが、実は市町村の立場であろうと思うわけです。  ですから、新たにこういう形でお進めいただくのは結構ですけれども、現実にその中 でやりくりする市町村の立場も、一定国都道府県も考えていただいてはおりますが、是 非ご理解いただきたい。そうでないと、中途半端になってしまい、結果として発達障害 のために市町村は役割を果たせなかったということになりますので、是非それを御理解 いただきたい。  生意気なことを言いましたけれども、よろしくお願いいたします。 ○市川座長 それぞれのお立場でいろいろ大変だということですが、障害の当事者や家 族のことをまず第一にということは皆さん同じ意見だと思います。ほかにはいかがです か。  それでは、山岡構成員どうぞ。 ○山岡構成員 それでは、細かい点からいきますと、7ページの13行目です。加我先生 も先ほどおっしゃっているのですが、発達障害に治療というのが合うのか。イメージ的 にどうなのかわからないんですけれども、ここでは診断と治療というふうに言っていた だいております。  それで、今度は3ページにいきまして、使い分けていただいているのならば何をどう 使い分けていただいているのかお教えいただきたいんですけれども、18行目は診断と診 察になっていて、19行目は診断と診療になっていまして、三者三様になっております。 これはどういうふうに使い分けていらっしゃるのか。あるいは、何か意味があるのかが わからないので教えていただきたいのがまず1点です。  2点目ですけれども、先ほどの「はじめに」と同じなのですが、今度は「おわりに」 にちょっと文句をつけさせていただきます。終わりよければすべていいんですけれども、 ここもちょっと違和感がありますので、すみません。18行目からですが、「発達障害は、 適切な対応を行うことで状態像が改善し、一人一人の持つ能力を十分に発揮することが できるものであるという視点」とおっしゃっているんですけれども、これはどういうモ デルを念頭に置いて書かれたのか、全然理解できないんです。  加我先生もおっしゃいましたけれども、発達障害は知的障害に伴う自閉症の方から、 有名国立大学まで入ってしまうような高機能の方、あるいはLDやADHAと非常に幅 広いわけですけれども、基本的に発達期に一人ひとりのニーズに応じた支援を行い、ラ イフステージに応じた適切な支援を行うということが大事だと思っています。  また、基本的に発達障害については完全治癒できない。要するに、発達障害を伴いな がら、その困難を抱えながら、その困難を克服したり、対応能力を付けることによって 最終的に自立や社会参加できるような支援を行っていくというのが、私は発達障害者支 援法に込められた基本だと思っていますので、こういう視点をちょっと書いていただき たい。ここでイメージされている状態像がよくわからないので、ここも書き直していた だきたいと思います。以上です。 ○福島精神・障害保健課長 すみません。診断治療、診療等については若干御指摘のと おりあいまいに使っていまして、もちろん診療が診断と治療の包括的な言葉であり、診 断と治療はその文脈の中で適切に使うべきものでありますから、ここはそれぞれの文章 において統一するなり、その文脈を踏まえて基本的には診断治療、診療でいいと思って おりますけれども、ただ診断と治療という形では置きたいと思います。  ただ、治療と言うと、その治療の内容はもちろんその病態に応じて、二次障害の問題 であったりいろいろしますので、そういうことを理解した上で治療という言葉を使わせ ていただけるならば診断と治療というふうにさせていただきたいと考えております。  それから、「おわりに」のところの御指摘は、先ほどの2の第1番目のところの御指摘 と同じことだと思っております。そこは先ほども申し上げましたように、御指摘を踏ま えてそこの表現ぶり、考え方については整理をした上で、座長とも御相談させていただ きながらもう少しきちんとした発達障害者支援の趣旨といいますか、ニュアンスが出る ような形で修文をさせていただきたいと思います。 ○市川座長 よろしいでしょうか。確かに診断だけしてそれっきりという非常に評判が 悪いことがあってはいけないわけで、療育も含めてやはり治療という側面は当然入って いないとまずいと思いますので、その辺はよく御配慮いただければと思います。  ほかにどなたか御発言いかがですか。では、石井参考人どうぞ。 ○石井参考人 何行目のどこということではなくて申し上げたいことは、これは精神障 害のところもそうだったと思うんですが、医療モデルがどうしても優先しちゃうんです ね。ですから、今の診断と治療の問題にしても、医療という言葉を使って済む部分と、 それからここで発達支援という言葉になってしまっていましたが、本来は療育という言 葉を使っていましたね。医療と教育というような意味で、そういうふうな領域というも のが具体的にあるわけです。  ただ、例えば特別支援教育という言葉が出てきて、障害児保育という言葉があって、 それと何か合体していくような形も保育所の中で少しずつ出てきています。そういうも のは無視できないと思うんです。ですから、具体的に赤ちゃんが生まれて発達障害とい う診断を受けたときに、それにはいろいろな種類の状況があるだろうと思うんですが、 その人たちにどういうふうなことをすればいいのかというところの情報の整理を情報セ ンターでなさっていく。それは現実に今やってきたいろいろな機関とか、そういうとこ ろの経験則のようなものを集めるということもさっき申し上げたわけですけれども、情 報センターの役割というのはそういうふうに理解することもできるかなと私は思ってい るのですが、その辺を確かめたい。  それでないと、さっきの市区町村の専門性と言っても隣近所の人が支え合って成り立 つというようなものではないと思うんです。そうなってくると、そこで居場所とか、そ ういうものを確保していくときに、市町村の範囲では及ばない圏域という関係が必要に なってくるとか、いろいろとそういう柔軟な技が必要になってくるのではないかと思う んです。  そういう読み込みを私はして、確かめたいと思っていたのは、療育論が消えてしまっ たんですけれども、そこで本当に委員の方々が現実感を持ってこういう障害の状態には こうすればいいんだというところの考え方を前提にして議論をされていたんでしょうか。 私は記録を読まないから不十分な質問ですが、いろいろな御意見があったと思うんです けれども、専門家の先生方が多いんですから、今の診断と治療論の辺りに発達障害の発 達支援で済ませられないところを分化して考えているということを何か1行でも入れら れないでしょうか。それは私が読んでいて感じたことなんですけれども、どんなもので しょうか。 ○市川座長 どなたか御発言ございますか。私は、医療とか福祉はどちらが優先という 発想はおかしいのであって、両輪でいかないといけないと思いますね。 ○石井参考人 そう思うでしょう。でも、実際にそうなっていないですね。 ○市川座長 そういう御発言もあるんですけれども、これについて事務局の方はいかが ですか。 ○福島精神・障害保健課長 医学的な診断の部分と、実際の問題性のアセスメントの部 分というのはわざわざ使い分けているんですけれども、両方が必要なわけであって、医 学モデルでという発想で我々は考えているわけではもちろんありません。基本的にはど ういうふうな支援をするか。つまり、発達を外部から支援していくのか。あるいは、更 には本人が自らの育ちをどうやって支えるかということかもしれませんが、そういう意 味で療育という視点というのは従来から発達障害支援についてはあるんだと思っており ます。  ただ、一方で、例えばきちんとした診断基準がないであるとか、そういう別のベーシ ックな道具だてそのものがまだできていない部分もあって、それについてはやはり充実 する必要があるということで書いているつもりなんです。前回も、実はそういう医療モ デルではいけないんじゃないかという御指摘がありましたけれども、医療モデルという 発想では私どもももちろんおりませんので、そこは是非そういうスタンスでは立ってい ないということについては御理解をいただきたいと思っております。  ただ、書きぶりのトーンが伝わらないということであれば、それは表現ぶりの我々の 稚拙さなのかもしれませんが、多分それは先ほど言ったように最初の基本的な考え方で すね。そこのところでどういうふうに書き込むかでそこが伝わるように書けるのではな いかと思っておりまして、それは最後の「おわりに」のところも同じことだと思います けれども、今の御指摘のところはそういうことで基本的な考え方ですか。本人自体がど う育っていくかということをサポートするんだということについての視点は入れていき たいと考えております。 ○石井参考人 余計なことですけれども、保育指針が改定されたときの前提として「本 人の育ち」が入っているんですね。今日の社会情勢の分析ですが、これはやはり当然前 提として出てきていいと思いますから、一言申し上げました。 ○加我構成員 前回も申し上げたんですけれども、発達障害の方の医療をやっている立 場から言うと、医療も医学も福祉も社会的なことも教育も、全部がないと本当にどうし ようもないということを日々感じさせられているわけで、どちらがどうということはな いんですけれども、前回までの表に出てきた様子が余りにも社会モデルの方に寄り過ぎ ていて、医学、医療が必要な方たちへのサポートが十分書き込まれていないという感じ を持ちました。ですから医療モデルの立場も入れてくださいということを申し上げまし た。  社会モデルも医療モデルも必要だということは当然、考えた上でというか、両方考え ないとどうにもならないということは、特に専門的にそういうお子さんたちや、そうい う方たちとつき合っている方はよくわかっていると思います。これを上手に表現してい ただければいいのではないかと思います。 ○市川座長 よろしいでしょうか。いろいろなところが一緒にやっていかないといけな いというニュアンスが入ることが一番重要だと思いますし、診断がなくても最近は気づ きとか、あるいは必要性があればということで、それはこの中にも盛られていると思い ますので、その辺りは石井参考人よろしいでしょうか。  ほかにはどなたかいらっしゃいますか。まだ御発言がない方で、田中参考人から何か あればどうぞ。 ○田中参考人 特に今日は結構です。 ○市川座長 よろしいですか。ほかには御発言はございませんでしょうか。 ○石井参考人 1つ質問をしていいですか。これは発達障害者支援法の改定の一つの意 見、土台になる報告書というふうに理解して、まだ理念は細かくなっていますけれども、 アクションプランはこれからというふうに理解してよろしいんですね。例えば、いろい ろな手帳の問題とか具体的なことがございますよね。 ○福島精神・障害保健課長 これは、先ほど冒頭に申し上げました「はじめに」のとこ ろでこの検討会の検討の任務といいますか、範囲はどうするかということとも絡むわけ ですが、先ほども少し申し上げましたけれども、このもともとの法律自体、発達障害者 支援法自体が議員立法によってつくられたものということでございますので、この法改 正については国会議員の先生方の御議論を待ちたいと思っております。この報告書をご らんになって法改正をどう考えるかというのは、そこはそれで議論がされるだろうと考 えておりますけれども、私はこれに基づいて具体的な施策としてどういうことをしてい くのかということを施策の方向性についてお示しいただきたいと思っておりまして、そ れに基づいて私どもは施策を進めていくというふうに考えております。  それで、それ以外の制度上の問題は自立支援法における障害者の範囲の問題であると か、それ以外のいろいろな問題についてはまた別の議論の場で御議論いただくべきもの、 例えば障害者の範囲であれば障害者部会の方での御議論になるだろうと思っております し、それはそれぞれのテーマごとにふさわしい場で議論されることになると考えてござ いますが、この場はまずその施策の中身についての現状と評価、今後の方向性をどう強 化すべきかということについての御議論をいただいたものと理解しております。 ○市川座長 よろしいでしょうか。時間はまだございますけれども、ほかに特に御意見 がないようでございましたら、取りまとめの文章の修正につきましては本日、皆様から いただきました御意見を踏まえて行うということにしたいと思っております。修正につ きましては座長である私の方に御一任いただきまして、本検討会の論点の取りまとめと していただければありがたいですが、それでよろしいでしょうか。  それでは、すみませんが、そういうふうにさせてください。それでは、そのようなこ とで報告書として作成していきたいと思います。  今日はお忙しい中、参加していただきまして、今日は5回目ということなのですが、 もしあれでしたら参加したことについて感想でも言いたいことでも、先ほど大分現場の 大変な意見というものも少し伺いましたけれども、何かあれば加我構成員からどうぞ。 ○加我構成員 第4回、第5回と、それまでの3回までの検討会と大分内容が変わりま したので、連続性が欠けて、ちょっと戸惑った部分もありました。発達障害の方たちと 接している立場としては、この法律ができてからも当事者の方には大分大変なことが続 いてはいるのですが、それなりによくなった部分もあると感じています。今の状況を生 かして更に皆さんが暮らしやすくなるようなところで応援できることに少しでもお手伝 いができればいいのかなと考えています。  もう少し会議がこの時期でないとよかったなと思いますけれども、これは余分でござ います。 ○氏田構成員 私も自閉症の息子がいるんですけれども、家族の立場から後輩のお母さ んたちの相談を受けることが多く、私の息子はもう30歳を過ぎましたが、息子を育てた 頃と余り変わっていないなという現状を相談の中から受けることがまだまだ多くありま す。  ただ、アンケートを団体としてJDDネットなどで取ったりしたとき、まだ今は結果 を最終的にまとめているところなのですけれども、その中では地域の中で発達障害の相 談窓口が大分整備されてきているとか、早期のときの支援の在り方みたいな、1歳半、 3歳の健診の話が先ほど出ていましたけれども、5歳児健診が導入されたりすることと か、発達障害のことが啓発されていく中で健診の在り方が少しずつ変わってきているよ うに思うというふうな御意見もたくさんいただいているので、啓発をしたこの3年間の 意味はとても大きかったと思っているのですが、先ほど成人期の方の話もありましたよ うに、成人期の方の居場所の問題であったり、思春期を迎えた発達障害の方の状態の悪 さであったり、あるいは本当に早期の段階ではお子さんが生まれておかしいなと思った ときになかなか相談窓口につながれないのがようやくつながって診断はされたけれども、 市町村格差がとても激しくて、そこから先にフォローされて支援してくれるところがな いままとても悩まれている方など、まだまだたくさんいらっしゃると思うので、この検 討会の報告書が先ほど石井会長がおっしゃったようなアクションプランにどういうふう に結び付いていくのか。  ここに出てきていることの責任を改めて深く強く感じているので、是非支援法の見直 しに当たって子どもたちの願いがかなえられるように、親もパワーアップしてというふ うに先ほどおっしゃっていらっしゃいましたが、エンパワーメントされて自分を肯定し て健やかに生きるように、自分たちの願いがかなうような支援が展開されるようにとい うふうに強く願っています。いろいろとありがとうございました。 ○中川構成員 私は徹底的に現場の人間で、地域で仕事をしているものですから、「発達 障害者支援法の定義の枠の中で」という、この縛りがどうしても居心地が悪いのです。 目の前に困っている子が来たら、その子は発達障害じゃないから対象ではないとか、あ るいは場面緘黙はちょっとうちの領域外だ、とはとても言えません。特別支援教育が言 っているような“children with specil needs”つまり、ニーズがある子どもはすべ て対象という仕事の仕方をしておりますし、私の地域ではそれが許されているので、こ の「定義の中で」という限定に、とても歯がゆい思いがしていましす。  この定義にあてはまらないこの子はどうするのという思いを持っているので、ついつ い無口になってしまうというようなことがあります。  一方、私は教育の方にも入っていますので、特別支援教育開始の試行段階から含めて の3年間での学校の本当に大きな変化を自分の地元と周辺で感じています。コーディネ ーターの全校配置とか、校内委員会全校設置ということで、最初は確かに動きは鈍かっ たですが、通常の学級の先生の名かにも発達障害の子どもへの理解がみるみるうちに広 まってきています。それおを見るにつけても、文科省はトップダウンで、やれと言われ たら一斉に動くというやり方でしたから、たくさんの欠点はありつつも、とてもうらや ましいなというのが正直なところです。  こちらの療育の分野の方はそういう一般化されたものがないだけに、逆に地域の特色 を生かしていけるという意味もあります。発達障害者支援法は最終的には地域の助け合 いを再生していく試みでもあると思っています。今、行政の側は本当に今、大変である ことはよくわかりますが、だからこそペアレントメンターの話のように、地域住民の人 が皆で支え合っていくというところをめざしていけると、いいんだろうなと思っていま す。  そういうわけで現場的な感覚からするとここでの議論はとても歯がゆいものではある のですが、多分ここで出すのは一番色の濃い芯みたいなもので、余り具体性はないかも しれないですが、そういう濃い色のものを氷をつくっている。それをだんだん広げて薄 めて少しずつ周辺に色がにじんで、都道府県、市町村まで届いていくように、とそんな ことをここでは目指しているのかな、というのがこの5回目に参加させていただいての 感想です。やはり地域が頑張らなければいけないということを改めて思っています。 ○山岡構成員 この発達障害者支援法が施行されるというか、法律ができる前は、全国 LD親の会でちょっと動いたりもして非常に思い入れが強い法律であります。平成17 年に施行されて、世の中はかなり変わりました。確かに厚生労働省や文部科学省の方で 新しく実施していただいた事業は3年間で20を超えています。すごい数のものが出てき ています。  ただ、さっきどなたかもおっしゃったように、結構モデル的な事業であったり、地域 限定であったりというものが多くて、日本全国のどこに住んでいても発達障害のある一 人ひとりの方にある程度の支援が行き届くということを目指すとすると、まだまだ緒に 就いたばかりと言わざるを得ない状況にありまして、これからやらなければいけないこ とはたくさんあるんだと思っています。ですから、発達障害者支援法が施行されて3年 を経て見直しをときには何か新たなものを加えたいなと考えていたことが1つです。  それから、今回検討いただきました事業の今までの成果に関する見直しを検討いただ いて、新たな展開ということで今回、構想の中にはいろいろな新たな事業が織り込まれ ていますので、これらが清々とにきちんと実行されていくことを望みます。  それから、発達障害は今、中川先生がおっしゃったように恐らく障害者基本法とか、 いろいろな法律の中でいくとまだ蚊帳の外に置かれていまして、自立支援法の検討の中 でもまだ位置付けがはっきりしない状況にあります。基本的には総合福祉法というよう な議論もありますけれども、障害の種別で限定列挙的にいくのではなく、あらゆる障害 や困難を負っている方がそれなりに支援や社会的利益が得られるような社会になってい くようなことが望ましいと考えています。発達障害者支援法は、そこに行き着くまでの 一時的な法律のようにこの法律は考えていますので、早くそのような世の中になるよう に私自身は、取り組んでいきたいと思っています。以上です。 ○石井参考人 私はこの前の会は都合が悪くて休んで、今日が初めで最後なので1回だ けなのですが、文章を読みましてとても深く書いてあるなというふうに感じました。  それで、これはすばらしい検討会をなさったなと思っていますけれども、日本自閉症 協会としては御承知のように親たちが苦労をしてつくり上げてきた歴史があるわけで、 私どもも40年余り前から関わっていて感じましたことは、社会福祉政策が施設から地域 へというキャッフレーズがあったようですが、日本の場合にはもう少し慎重に移行を考 えていかなければいけなかったのではないかと思っております。  施設の問題というのはいろいろありますので一概には言えませんけれども、私どもは そこへ親たちが子どもを預けることによって家庭生活が成り立ってきたという事実があ って、親子関係も損なわれないように面会とか送り迎えをしながら過ごしていきますと、 大人になっても親子関係が崩れない。先ほど氏田さんが言われましたけれども、親元で きちんと生活ができるというのは最高ですが、できない人の場合の入所の体系というも のは是非御検討いただきたいと思います。  それからもう一つは、やはりあの人たちが非常に難しいのは自分の健康を守れないと いうところにありますので、そういう点での医療の配慮というものが必要であろうとい うことを痛感します。ですから、早死にする子どもの場合には薬を多く飲んでいていろ いろな内臓の疾患にかかりやすいというようなことなどもこれから考えていただきたい ことの一つです。  それから、知能が高いと言って高機能で軽度だということを一時は言っていたのです が、もうだれも言いませんが、私が忘れもしないことは、最高学部を出るようなすばら しい高い知能の人が小さいときにおかしいというので我々の自閉症の幼児グループに来 たんですけれども、小学校1年のときに、私は障害者じゃないからこことは決別します という宣言をしました。  そこからずっと親とは連絡があったのですが、最高学部を出ていい会社に勤めていま したけれども、結局学校ですごいいじめに遭って親が苦労をしたということと、それか らもう一つはその人が会社でどんどん窓際方向へ追いやられて休職にされているという 状態があった。これも聞いてみると、やはり社会性が育っていかない。ですから、この 辺のところはさっき言ったような共通の療育の検証ということを非常に重視していただ きたいと思います。  それから、なぜ厚生労働省と文部科学省と2つに情報センターができたんだろう。や はりこれを統合していかなければきちんとした情報は集まらないのではないかと思って、 ちょっと意見書を書いたんです。よけいなことかもしれませんし、なかなか時間のかか ることですけれども、実際に今まで体験してきたことは縦割り行政のために現場の者が 動きがとれないような状態に追い込まれるんですね。  その具体的な例としては、例えば簡単に施設が利用できない、施設は満員な場合があ るとか、それと言ってみれば適切な医療機関がない。これもおかしな話ですけれども、 精神科病院とか精神科の医師はいるんですが、発達障害についての関わりが大分違うん ですね。そういうところもありますし、実際には年を取って50代になってやってきた人 が、この人の人生はどうだったのか。何も我々はできなかったねというふうなことで、 このごろは自分も年を取りましたから一緒に嘆いているような状態であります。  ただ、痛切に感じるのは自閉症の人や家族は社会とコミュニケーションがないんです。 そういう意味では、特に本人とコミュニケーションを持ってくれる人が少しでもいたら、 随分この家族も子どもも違うんじゃないかと思っております。  そんな点は最後ですから申し上げておきまして、これを基にしてそうした人たちがよ くなるように、私の持論としては政府は大変な思いをしている人から手を差し延べて救 っていただきたいということであります。家の中で暴力ざたでどうにもならないという 状態のときに警察に110番を自分でするんですけれども、それでやっと収まって、あと はどこへも頼れないという状態では本当にみじめだと思っております。そのような現場 の事例を集めていただくということを是非お願いしたいと思います。どうぞよろしくお 願いいたします。 ○田中参考人 前回は途中で話を終えてしまいまして、今日は話はありませんと言って しまってすみません。  アスペ・エルデの会も、今は社会人のグループも50人と増えてきていて、やはり就労 して何年かずっとやっている人と、今、新しく社会人になっていった人の違いは、ハロ ーワークとか就労の機関でも発達障害と言って門前払いされることもなく、ちゃんとそ こを理解して窓口などでの応対が本当に大きく変わってきたと思います。また、学校な どでも発達障害ということを先生方もわかっていて、ちゃんと配慮して支援をしていた だいているところもあります。  ただ、まだ具体的にどう支援をしていいかというところは、やはりここの支援手法と か、そういったところの開発もまだまだ必要かなと思っています。ちょうど今うちの会 も子どもたちが親元を離れてキャンプ、合宿というものをやっていて、そこで実際に子 どもに支援をして、それをちゃんとプログラムしてパッケージ化しようということもや っているんですけれども、やはりどうしたらいいんだろうということから今も会として も自己理解とか、感情の理解とか、兄弟の理解とか、ペアレントトレーニングというよ うないろいろなメニューがあるので、そういったものでどうしようから、どれとどれと どれを選んで支援していこうかというようなことを選んでメニューを組み立てていける ような支援もつくっていけたらと思っています。  今こうやって発達障害者支援法というものができて、発達障害者についていろいろな 支援などが受けられるようになってきたのですが、ただ、そこでその課題とかニーズと いうものは、よりもっともっと明確になった部分もあると思います。今ちょうど見直し の時期で検討されてきていて、やはりいろいろな分野でいろいろな専門性とかが出てき ている中で、この時期にハードの面でもソフトの面でもちゃんと形にしていかないと、 もうちょっと後で、ではまたやろうと言ってもそこは労力や予算がもっとかかってくる と思うので、やはりこの時期に発達障害児者とか、その家族のためになるものをちゃん と形にしていきたいと思っています。以上です。 ○太田参考人 私ども三重県で前回御紹介をいたしました発達障害児支援の取組みとい うのは、障害福祉室でやっているわけではないんです。子ども福祉政策の中で進めまし た。それで、実は発達障害支援センターの方は障害福祉室の方で取り組んでいます。こ れをねじれていると見るか、分断されていると見るかは私どもの考え方次第だろうと思 っています。  障害児を支援する施策というのは、恐らく今まで都道府県では割と弱い部分だったの ではないかと思うんですけれども、この発達障害児支援ということをきっかけに児童福 祉の中で子育て支援を豊かにふくらませることによって発達障害児の支援が行い得るん だということを私どもも感じましたし、そのことで障害福祉室、障害福祉政策との連携 というのも見えてきたように思うんです。  何事も上の方にいけばいくほど専門分化いたしますけれども、実際に取り組む市町村 なり、都道府県という自治体にあっては、極めて総合政策にほかならない。発達障害児 の支援政策というのは本当に子どもの発達総合施策だと思っています。これがきっちり できることが一般の子育て家庭の支援にも必ず役立つことになると思ってこれからも取 組みは進めたいと思っております。 ○齋藤参考人 発達障害を抱える皆さんは日々の暮らしに頑張っておられるわけですけ れども、その環境を更に強めていかないと、なかなか本人も、また親御さんも大変だろ うと思います。  それと、1つ事業を打ち出しますと、やはりそれに対する親の期待、家族の期待はも のすごく大きいです。それをしっかり受け止めていかないとだめだろうし、打ち出すか らにはそれで成果を出していかないとこれからは許されない時代に入っていくのではな いかと思っています。そういう面では、発達障害者支援は、障害児支援の一つとして捉 えるのではなくて、すごい可能性があるんだという認識を大きく広めるぐらいのパワー を持って取り組まないと、発達障害者支援施策の前進というのは厳しいんじゃないだろ うかということを個人的に思っております。  そういう面では、目標、ビジョンというか、理想をしっかり掲げてやっていかなけれ ばならないんじゃないかと、自分自身の気持ちの中では思っているわけでございます。 市町村の現場から、いろんなことが提案できるようになれば、という感想を述べて終わ らせていただきます。ありがとうございました。 ○市川座長 それでは、座長の方からも申し上げたいと思います。  3年たってまだ普及啓発に追われているのは残念だなという気もちょっとしますけれ ども、ただ、長い歴史を考えてみたら時間がかかるのは当たり前だと思わなきゃいけな いだろうと思います。  それから、先ほど参考人のお話を伺っていてもそうなんですけれども、厚労省の中で 発達障害者支援法をつくるときの検討会で私はメンバーでした。加我構成員も一緒にい らっしゃいましたが、たしか省令を決めるときはなるべく広くしないといけないという ことで、これは多少マニアックな話になりますけれども、ICD10のF8とF9に合 致すればほかに何があってもいいということまでしているはずなんです。  ですから、厳密に言いますと先ほど中川構成員がおっしゃったようなことは本当は起 きないはずなんです。あとは確かに知的障害があってもなくてもいいということにして あるはずなんですけれども、福祉の現場の方にいくと知的障害がある人は関係ないとい うようなことを言われたという話も聞きます。せっかく文部科学省とも一緒に発達障害 の関係は皆やっているのに、下の方にいくと結局また別になってしまっているのかなと 思って、それもちょっと残念だなということで聞かせてもらいました。  それからもう一点、今日の報告書の中に当事者に対する支援と保護者に対する支援と いうものが出ていました。これはやはり両方まとめて支援していかなければいけないと いうニュアンスをちょっと入れていただければという座長からのお願いです。それは、 要するに発達障害というのは最近の教育で言えば不登校や、からかいや、いじめに全部 つながっているという話もあります。それから、虐待の対象にもなりやすいということ で、青年になってからの引きこもりやニートとも全部関係してくる。  医療現場で見ていますと、なおかつ発達障害の対象者は増え続けているという現状が あるということは、恐らく社会問題的に考えていかないといけないので、先ほど一つの セクションだけでは無理であって、幾つかのセクションがなって、厚生労働省も横断的 にいろいろ対応していただいているとは伺っておりますけれども、そういう時代にきて しまったんだなと思います。以上、私の感想を述べさせていただきました。  皆さんの御協力によりまして、本日最終報告書の取りまとめに向けました具体的な議 論を行うことができました。それぞれの立場で熱心な御議論をいただいたことに私の方 からも心からお礼を申し上げたいと思います。  それでは、今後の進め方につきまして事務局の方から御説明をお願いいたします。 ○事務局 今後の進め方についてですが、本検討会における議事概要につきましてはで きるだけ速やかに作成いたしまして、資料を含めてホームページ等で公表することとい たします。  なお、議事概要については御出席の構成員、参考人の皆様に御確認いただいた上で公 表することといたしますので、御協力をよろしくお願いいたします。  また、本日御議論いただきました報告書案につきましては、指摘いただいた部分につ いて市川座長と御相談させていただいた上で修正し、まとめた後に公表とさせていただ きたいと思います。  また、こちらにつきましても構成員や参考人の皆様にも事前にお送りさせていただき たいと思います。事務局からは以上です。 ○市川座長 ありがとうございました。  それでは、以上をもちまして第5回発達障害者施設検討会を終了させていただきます。 各構成員の皆様あるいは参考人の皆様におかれましては、いろいろと精力的に御議論い ただきましてありがとうございました。  私の方からは以上ですが、部長の方からごあいさつがございます。 ○木倉障害保健福祉部長 市川先生を始め、構成員、参考人の皆様、夏の暑いさなかで 大変御無理な日程をお願いしましてありがとうございました。  今回の検討は、大きな課題と大きな方向性ということでございましたが、これを踏ま えて実際の施策の見直し、予算に反映させる。それから、法律体系を見直していくとい う作業はこれからでございます。また、それぞれの段階で御指摘をちょうだいしていき たいと思っております。  それから、この報告書はまた御相談の上で最終的なものにさせていただきますけれど も、障害者施策全般を御検討いただいております社会保障審議会、障害者部会の方にも 報告をさせていただき、またさらなる御議論をいただきたいと思っております。  今後ともよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。 【照会先】 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課 電話番号 03−3593―2008(内線3027)