08/08/08 平成20年度第2回化学物質による労働者の健康障害防止に係るリスク評価検討会議事録                 平成20年度第2回       化学物質による労働者の健康障害防止に係るリスク評価検討会                   日時 平成20年8月8日(金)                      10:00〜                   場所 厚生労働省18階共用第9会議室 ◇データの累乗を、以下のように「^」で表記しておりますのでご了承ください。  10^-6 10^-4 10^-2 10^+2 ○大淵化学物質評価室長補佐 ただいまから「平成20年度第2回化学物質による労働 者の健康障害防止に係るリスク評価検討会」を開催します。本日は、お忙しい中また非 常に暑い中をお集まりいただきまして、ありがとうございます。 本日の出席者ですが、今回から追加ということで予定をしていました小西委員、名古屋 委員は、残念ながらご都合により欠席というご連絡をいただいています。以前から入っ ていただいています本間委員も所用によりご欠席ということで、今日は6名の委員の方 ということでよろしくお願いします。  以下の進行につきましては、櫻井座長にお願いします。 ○櫻井座長 議長を務めますので、よろしくお願いします。議事に先立ちまして事務局 から資料の確認をお願いします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 確認をします。配付資料1枚目が議事次第となっていま して、2枚目に配付資料一覧がありますので、配付資料一覧に沿って確認をお願いしま す。資料を項目で見ていただきますと、2-1から2-9までと、参考1、参考2がありま す。資料2-1は第1回議事概要となっています。資料2-2はリスク評価検討会の下に小 検討会を設けることになったということで、その関連の開催要綱、名簿、検討内容、検 討予定などを付けています。資料2-3はニッケル化合物に対する規制対象について、と いうことで、前回の議事に関係する資料です。資料2-4は「リスク評価の手法」の改訂 (案)です。資料2-5は平成20年度リスク評価対象物質の評価値関係資料で、こちら は第1回でお配りしたものを修正したバージョンです。資料2-6はコバルトのリスク評 価について(案)です。資料2-7はインジウムのリスク評価について(案)です。資料 2-8は平成20年度ばく露実態調査の調整状況です。資料2-9は平成21年有害性ばく露 作業報告の対象物質(案)です。参考1は本年度のリスク評価対象物質の有害性評価書 ですが、今回、酸化プロピレンの関係で説明の必要がありますので、資料をお付けして います。参考2は各物質の提案理由書です。資料は以上です。 ○櫻井座長 皆さま、不足の資料はありませんか。大丈夫のようですので、次に今日の 議題に入ります前にもう1つ、事務局から前回の議事概要の説明をお願いします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 資料2-1をご覧ください。前回は6月10日に開催をし ました。出席者は説明を省略し、「3.議事概要」から説明を申し上げます。最初に座長の 選任ということで、櫻井委員が座長に選任されました。  (2)としまして、平成20年度リスク評価事業のスケジュールについて説明をしまし た。今年度、開催要綱の変更点があり、健康診断に関する小検討会が設置されましたの で、、これについて説明をし、また平成19年度に評価を行っていただいた物質について の今後の検討予定についても説明をしました。  (3)としまして、ホルムアルデヒドを用いた燻蒸作業における労働衛生対策につい てということで、こちらは平成18年度に評価をしていただいて、すでに関係の法令の 改正が済んでいるものですが、追加で改正すべき事項ということで燻蒸作業の規制内容 について事務局から説明し、了承をいただいています。  (4)はニッケル化合物の規制対象についてということで、平成19年度にリスク評価 をいただいたニッケル化合物ですが、規制をするにあたりましてアクション・プログラ ムという手続を行って、その中で規制対象とするニッケル化合物の粒子サイズについて ご意見、ご質問等がありましたので、それについて前回の会議の場でご検討をいただき ました。事務局からは、ニッケル化合物の粒子サイズについて、「一般的な作業環境にお いて吸入可能なサイズなものとし、おおむね流体力学的粒子径0.1mm以下のものとする」 という提案をしました。基本的には了承は得られたということですが、0.1mm以下とい う部分について、「以下」という表記が適切か「未満」という表記が適切かということで、 事務局で検討することになりました。これについても後ほど本日の議論の中でご報告を します。  同じアクション・プログラムの関係ですが、「ニッケル化合物の種類に応じた規制をす べき」とのご意見もいただいていましたが、これに関しては事務局から、「予定している 規制は金属ニッケルを除外していること、ニッケル化合物については複数のものを取り 扱う事業場もあることから同一の規制で適当である」旨の回答案を説明し、了承をいた だいています。  同じニッケル化合物の関係ですが、この中の1つの種類、ニッケルチタンイエローに ついてもご議論いただきました。こちらは業界団体から、ニッケルチタンイエローをニ ッケル化合物の規制対象外にしてほしい、除外してほしいという要望がありまして、団 体から提出された資料を基に検討をしていただきました。その結果、ニッケルチタンイ エローについては発がん性試験のデータがないと。関連するものとして、酸化ニッケル の発がん性試験のデータから、そのデータをニッケルチタンイエローに外挿するという 考え方ですが、外挿する際の考え方が不適当(不確実係数を考慮していない)という問 題があること、長期間残留する場合の健康影響については不明である、そういうことか ら現段階ではニッケルチタンイエローを規制対象から除外することはできないという結 論をいただいています。  (5)ニッケル化合物、砒素及びその化合物の特殊健康診断項目についてということ ですが、この特殊健康診断の項目につきましては、6月3日に「健康診断項目に関する 小検討会」、これを「労働安全衛生法における特殊健康診断等に関する検討会」と同時開 催し、その検討結果についてリスク評価検討会に報告をし、了承をいただいています。  (6)平成20年度リスク評価対象物質のばく露実態調査についてということで、事務 局より平成20年1月から3月に実施した有害物ばく露作業報告の提出状況について説 明をしました。本年度は44物質についてばく露作業報告の提出を求めましたが、結果 的には44のうちの25物質について報告を得られたということで説明をしまして、今後 のばく露実態調査、現場での測定ですが、こちらの調査の予定数等についてもご説明を 申し上げました。  (7)平成20年度リスク評価対象物質の有害性評価及び評価値についてということで す。アとして「平成20年度リスク評価における考慮事項について」ということで、(1) 事務局から、評価値を検討する際にACGIH又は日本産業衛生学会の許容濃度が設定さ れていない物質について、二次評価値を設定する場合にどう考えたらよいかについて説 明を申し上げ、委員からご意見をいただきました。事務局提案の1つとして、一般環境 に関し策定された管理濃度等を適用するという考え方を提案をしていたのですが、本年 度の評価候補物質についてということで見ると、一般環境の数値が定められていないた め適用困難というご意見をいただいています。本件につきましては次回(今回)、リスク 評価の手法(改訂案)として検討するということとされました。  (2)として、事務局からばく露作業報告の提出がない場合のばく露評価のあり方につい て説明を申し上げ、委員からご意見をいただきました。本件については、別途検討の場 を設けることが適当とされました。これに関連して新しく立ち上げた小検討会について は、後ほど事務局から説明をします。  イの「評価値について」ということですが、リスク評価予定物質の一次評価値及び二 次評価値について検討をしました。二次評価値については、ACGIH又は日本産業衛生 学会の提案理由書も考慮して検討をしていただいています。  次の頁に前回検討したところを述べていますが、前回は時間の関係もありまして、No. 1の物質から始まりましてNo.10の物質のところまで書いていますが、No.10はまだ検討 途中です。こちらについては後ほど別の資料でまた詳しくご報告をしますので、この場 では一応ここまでということでご報告は終わります。  次回日程ということで書いていますが、こちらが今回の8月8日ということです。以 上が第1回議事概要です。 ○櫻井座長 議事概要について何かご質問、追加等はありますか。特にないようですの で今日の議題に入ります。最初の議題ですが、「少量製造・取扱いの規制等に係る小検討 会」の設置についてですが、事務局から説明をお願いします。 ○島田化学物質評価質長 資料2-2に基づきましてご説明します。「化学物質による労働 者の健康障害防止に係るリスク評価検討会の開催要綱」をお示ししていますが、今回、 新たに「少量製造・取扱いの規制等に係る小委員会」を設置することになりました。こ れにつきましては先ほど大淵からご説明を差し上げましたように、6月10日の検討にお きまして少量の取扱い規制に関する検討が必要とのご判断いただきまして、この小委員 会を設置したものです。  具体的には3の「構成等」の(1)に記載しておりますが、こちらのリスク評価検討 会のもとに少量製造・取扱いの規制等に係る小委員会を置くことといたしました。、その メンバーにつきましては別紙の3で、4頁です。この場にご出席いただいています櫻井 座長、大前委員にもご参加をいただき、合計5名の方で検討を始めています。  その他の方としては、労働者健康福祉機構東京労災病院産業中毒センター長の圓藤陽 子先生、労働衛生コンサルタントの唐沢正義さん、早稲田大学理工学術院教授の名古屋 先生にも入っていただいています。事後になりまして申し訳ありませんが、別紙1のリ スク評価検討会の参集者として日本作業環境測定協会調査研究部長の小西先生、早稲田 大学理工学術院教授の名古屋先生にも併せて入っていただきました。、これは特に少量取 扱いの検討において、測定技術についても併せて検討が必要であるということで新たに 入っていただいたものです。  現在の検討の状況ですが、5頁をご覧ください。これは前回ご説明をしましたので簡 単に振り返りたいと思います。検討の趣旨ですが、有害物質の規制が、特にハザード評 価からリスク評価ベースに移行しているため、リスク評価検討会と立ち上げて検討いた だいておりますが、そのばく露評価の手法につきましては、これは労働安全衛生法に基 づく有害物ばく露作業報告として、実際に事業者から化学物質に関する作業、量等につ いて報告をいただいた上で実際のばく露について調査を行う仕組みになっています。  ただし、この作業報告は年間500kg以上の取扱い、あるいはその製造される事業場が 対象ですので、少量を扱っているものについては把握ができないという仕組み上の問題 が出てまいりました。特にその過程で問題となったのが、医療現場におけるホルムアル デヒド使用ということで、取扱いが500kgには満たないけれども特殊な作業であるため、、 特殊なばく露があるのではないかということが疑われたわけです。このため、合計3つ の検討項目を挙げました。  それが2の「主な検討事項と検討スケジュール」の中に示してあります。(1)の医療 現場におけるホルムアルデヒド使用に係る規制のあり方につきましてはリスク評価検討 会で平成18年度にホルムアルデヒドの評価をいただき、それに基づく規制の本格施行 が平成21年3月ですので、それに関する精査を早急に行って、事業場である医療現場 におけるホルムアルデヒドの規制が効率的に導入されるように、平成20年秋口までに 結論を出したいということで検討を進めているところです。  (2)につきましては、500kgの裾切り値があることを前提としまして、今後どのよう にばく露評価を進めていったらいいかということで、ばく露調査の手法を本年度中にと りまとめたいということです。  (3)として、特に少量製造なり取扱い作業等の適切な規制のあり方ということです が、これについては少し時間を取って検討をいただく必要があると思います。このため、 来年夏ぐらいまでに検討を終えたいという段取りです。  それらに先立ちましてホルムアルデヒドにつきましては、6頁ですが、ヒアリング等 を始めていますのでその状況をご報告申し上げます。7月22日に第1回小委員会を開催 し、「医療現場におけるホルムアルデヒドの使用実態」として2つの使用実態について ご報告をいただいています。  1つは歯科医療ですが、これにつきましては日本歯科医師会産業保健委員会委員長で ある森岡医師にヒアリングをしました。もう1件、病理検査・標本作製につきましては、 日本病理学会剖検・病理技術委員長の谷山医師からヒアリングをしています。  また、一昨日ですが、第2回として、解剖実習でご遺体の保存に使われるホルムアル デヒドに関する実態ということで、東京大学の岡部教授からそのご報告をいただいてい ます。併せて循環型の換気装置ですが、、最近における解剖実習台の改良の技術開発につ いてのご説明を興研株式会社からいただいています。このように、ここまで2回の小検 討会でヒアリングを終えたところです。  今後の予定ですが、8月8日の本検討会で中間的な状況報告をした後、第3回小検討 会につきましては、8月28日に医療現場のホルムアルデヒドに関するヒアリング結果を 踏まえた論点整理をしたいと思っています。ご検討を深めていただきまして、ホルムア ルデヒドの使用に関する規制のあり方を秋口までに検討をとりまとめたいということで す。リスク評価検討会につきましても小検討会の進捗状況、とりまとめの状況をこちら にご報告をし、併せてご検討をいただいた上で最終的なとりまとめをするつもりです。 以上が少量・取扱いに関する小検討会の状況です。 ○櫻井座長 ただいまの説明の内容につきまして何かご質問はありますか。よろしいで すか。いまのところ特段のご質問はないようですので、次の議題に入ります。2の「ニ ッケル化合物の規制対象について」です。事務局から説明をお願いします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 資料2-3をご覧ください。ニッケル化合物に対する規制 対象についてです。読み上げますと「ニッケル化合物については、平成19年度化学物 質による労働者の健康障害防止に係るリスク評価検討会において、粉状のニッケル化合 物(ニッケルカルボニルを除く。)の製造・取扱い作業について管理措置が必要とされた。  その際の具体的な規制対象については、ニッケル化合物(ニッケルカルボニルを除く。) のうち、一般的な作業環境において吸入可能な粒子サイズのものとし、おおむね流体力 学的粒子径0.1mm以下のものとする」ということです。  こちらの資料は前回お配りした資料で、いま読み上げた部分については前回とは変わ りません。それ以下で関係する国際機関、民間団体等で定められているというか定義を 記載していたわけですが、前回の資料では、100μm「以下」という表現と「未満」と いう表現が混在していましたので、最終的に国として定義付けをするときにどちらが正 しいのかというご議論をいただいていました。事務局で確認をしましたところ、こちら の資料に誤りがありまして、ACGIH値は「100μm以下」でそのままですが、EUにつ きましては、当初、100μm未満と記載をしていましたが、もう一度原文、英文を確認 しましたところ、「以下」という表現が正しいということがわかりました。次のISO(国 際基準機関)についても同様でして、前回は未満と書いていましたが、正しくは「以下」 ということです。ということで、これら3つとも100μm以下ということで定義がなさ れていましたので、私どもとしてはそれを踏まえまして「0.1mm以下」という範囲で規 制等をしたいと思っています。 ○櫻井座長 ただいまの説明内容について何かご質問、ご意見はありますか。特にない ようですので、これはご了解いただいたということで次に進みます。次の議題は3の「ニ ッケル化合物、砒素及びその化合物に係る作業環境測定基準等の検討状況について」で す。事務局から説明をお願いします。 ○奥村環境改善室副主任 本リスク評価検討会における評価の結果、粉状のニッケル化 合物と砒素及びその化合物をそれぞれ労働安全衛生法に基づく作業環境の測定対象とし、 また、局所排気装置の設置等の措置が必要であるとされました。併せて作業環境測定に 係る測定分析手法及び管理濃度、局所排気装置の性能要件につきましては、別途専門技 術的な検討を行うべきであるという報告をいただいたところです。環境改善室では、学 識経験者等による管理濃度等検討会を開催し、新たな物質についての管理濃度、測定方 法等の設定、また、すでに規制の対象になっている物質につきましても、新たな知見等 による管理濃度の見直し、測定方法等の設定について検討を行っているところです。  昨年度から開催している管理濃度等検討会におきまして、粉状のニッケル化合物、砒 素及びその化合物を含め15物質につきまして管理濃度の設定、その測定方法につきま して検討、また28物質につきまして局所排気装置の性能要件を検討いただいてきまし た。本日、8月8日午後、またこの同じ会議室で開催する検討会におきましては、これ までの検討結果をまとめて確認いただくこととしています。その中で粉状のニッケル化 合物、砒素も扱われますが、事務局としてはニッケル化合物につきましては管理濃度が 0.1mg/m3、試料採取方法はろ過捕集方法、分析方法は原子吸光分析方法、局排の抑制濃 度は0.1mg/m3になるのではないか、さらに砒素及びその化合物につきましては管理濃 度が0.003mg/m3、試料採取方法はろ過捕集方法、分析方法は吸光光度分析方法、又は 原子吸光分析方法、局排の抑制濃度は0.003mg/m3となるのではないかと見込んでいる ところです。以上、環境改善室より検討状況をご報告申し上げました。 ○櫻井座長 口頭でのご説明でしたが、いかがですか。何かご質問はありますか。特に ないようですので次に進みます。議題4の「リスク評価手法の改訂について」です。事 務局から説明をお願いします。 ○大淵化学物質評価質長補佐 資料2-4をご覧ください。リスク評価の手法の改訂(案) です。リスク評価の手法については、平成18年度に初期のものの作成をいただきまし て、平成19年度に1度改訂をしていますが、今回、再度改訂の提案をしたいと思いま す。その趣旨としては、本年度、特に評価値を決める際の参考としていたACGIHや日 本産業衛生学会の許容濃度の提案されていない、勧告されていない物質は相当数あると いうことで、今後、その評価値を決める上での方針をもう少し細かく詰めておく必要が あるのではないかということでのご提案です。改訂案につきまして、改訂をしたい箇所 に限ってご説明をします。項目だけを追っていきますと、(1)リスク評価手法の概要、 (2)リスク評価手法の詳細。リスク評価手法の詳細の中で3頁に(3)ばく露状況の把握 があり、こちらはいま述べた問題ではなくて別件の問題ですが、先ほど島田室長からも 申し上げましたが、アの中の括弧書きで(なお、少量の製造・使用におけるばく露状況 の把握方法については、「少量製造・取扱いの規制等に係る小検討会」において、別途検 討する。)ということの追加をしています。  実際の評価値の決定の仕方についてですが、資料の5頁に進んでください。特に二次 評価値の決め方についていろいろ検討すべきという所で、今回の変更箇所を申し上げま すと、(ア)二次評価値の決定となっていまして、大きくは2つに分かれていますが、 i許容濃度又はTLVが設定されている場合。両者の値がある場合で両者が一致していれ ばその値を、また、両者の値が異なっている場合にはいずれかの値を最新の知見を考慮 して決めるということで、こちらについては従来と変更はありません。今年度、特に問 題となるのは、もう1つの場合、iiの「i以外の場合」(許容濃度、TLVが設定されて いない場合)。こちらのほうが問題になるわけですが、従来ここで書いていましたのが米 国のREL、ドイツのMAK、こういったものが定められている場合には、これを最新の 知見を考慮していずれかの値を用いることが(i)で書いていましたが、参照するもの としては、これに限らずもう少し幅を広げるのはどうかということで、今回追加をしま したのが英国のWEL(Workuplace Exposure Limit)、その他外国機関において職場環 境に関する濃度基準が定められている場合については、こういったものも考慮してはど うかが1つ目のご提案です。  (ii)、これは新しく追加の項目ですが、(i)の値が設定されていない場合には、一 般環境に関する濃度基準が定められている場合、最新の知見を考慮してその値を用いる ということで、これはすべての物質について環境関係の濃度があるわけではありません が、もしある場合にはそちらの値も参考にできるのではないかと思っています。  (iii)で、(i)(ii)の値が設定されていない場合につきましては、発がん性以外の 毒性試験で得られた無毒性量(NOAEL)から外挿した値を用いるものです。ここも新 規の追加です。  (iV)、これは内容的には従来と同じでして、(ii)(iii)が付け加わったために少し修 正をしたものですが、いま述べた(i)〜(iii)の値が設定されていない又は得られな い場合については、構造的に類似した化学物質で有害性等の性質も類似していると思わ れる物質について、いまありましたものの中でイ(ア)i、イ(ア)ii(i)〜(iii)、 その優先順位で二次評価値を決定するものです。  (V)につきましては、構造的に類似した化学物質の許容濃度がない場合については、 個別に検討を行って二次評価値を決定するということで、ここの部分については従来か らあるものです。そのあと追加でご提案したいものとして、個別に検討を行う場合の方 法として、たとえば次の方法が挙げられるということで、職場での定量下限値、工学的 対策の最大設定時の管理可能な最低値などfeasibility(実行可能性)のある最低値を用 いるという方法もあるのではないかということでご提案します。  以上、ご提案した事項は、第1回の議論の際にこちらで別途ペーパーをお作りしお示 しした事項をこちらの手法の中に織り込んだものと、委員からご意見として出ていたも のについても織り込んでいます。特にいま最後に述べました職場での定量下限、工学的 対策から求める管理可能な値、こういったものについては委員からご意見をいただいた ものです。こちらの改訂案の提案としては以上です。 ○櫻井座長 いかがですか。評価の手法について改訂箇所が主な論点になるかと思いま すが、どうぞご自由にご意見をいただきたいと思います。 ○和田委員 イの二次評価の(ア)のii(i)はいいですね。(ii)で「一般環境に関す る濃度基準が定められている場合には、最新の知見を考慮してその値を用いる」として いますが、この場合、かなり低い値になる可能性があり、実際には適さないと思います。 「その値を考慮して」としたほうがよいと思います。(iii)もNOAEL、すなわち実験値 に対して値そのものを用いるとなると、これもまたかなり低くなる可能性があるのです ね。だから、それを参考にして用いるということにしたほうがいいのではないかと思う のです。(iV)は本当に化学的に正しいと考えていいかどうかですが、類似化合物の値を 用いることに少し疑問に思うところがあります。したがって、とりあえずは(V)あた りをきちんと見て、feasibilityでとりあえず最低のものを用いておくと、このあたりに したほうがやりやすいという感じがします。 ○江馬委員 いまのご意見と関連しているのですが、発がん性以外の特性試験は、発が ん性をエンドポイントと、先ほど委員がおっしゃったように発がん性試験は長いので、 NOAELはものすごく低くなる可能性があるのです。だから、発がん性以外のエンドポ イントの無毒性量か、発がん性以外のほかの発がん性試験は使わないという意味か、ど ちらでしょうか。かなり2年でやると、例えば体重低下でエンドポイントを取るとかな り低くなってくることは事実で出てくると思います。 ○島田化学物質評価質長 こちらで意図しているものにつきましては、基本的には発が んのデータがまずないという状況の中で、ほかのものをどうしても使う必要が生じた場 合に、他の毒性を考慮したいと思っています。委員がご指摘されたとおり発がんにおい ては長期のがん原性試験という形でやっておられますので、かなり低い値を取るのはそ のとおりだと思いますので、たぶんそれよりも低いものを見出すのはなかなか難しいか と思いますが、委員の方々からご意見を伺った中では、場合によっては生殖毒性、発生 毒性といったものの中に長期の試験をやられるものがあるということもお聞きしていま すので、そういった中からもし有効な基準値としてに使えるものがありましたら、考慮 したいという趣旨です。 ○櫻井座長 ほかにはいかがですか。先ほど一般環境に関する濃度基準が定められてい る場合、最新の知見を考慮して、その値そのものを用いるのは確かに先ほど和田委員が ご指摘のとおり私もそう思いますので、たぶん皆さまも同様ではないかと思いますけど、 「参考にする」と、その言葉はご検討いただきたいと思います。  (iii)の外挿の仕方にもいろいろすると思いますが、この表現はその「値」とはっき り書くよりは、「参考にして」や「考慮して」と、「考慮」という言葉は上には2つぐら い重なってしまう恐れがありますが、ここでは「考慮」でもいいのかもしれません。そ のようにしてはどうかと、これは私の意見です。  (V)それまですべて情報がない場合に相当するところは個別に検討を行って二次評 価値を決定するというのでいいと思うのですが、「たとえば」ということで例示が「定量 下限値」と「工学的対策の管理可能なfeasibilityのある最低値」、これも一般論として 常に成り立つことではなくて、そういった考え方が妥当な場合もあると思いますが、一 般論としてはやや難しいかと。特に「工学的対策」は一体、では本当にどこまで工学的 対策をやるのか。要するに費用との関係が常に発生してくると思います。そういう問題 点はあり得るという気がしています。  なお、ドイツのMAKを勧告している委員会では、長い間TRKという、発がん物質 については技術的に達成可能な濃度という意味で、そういう勧告値を出していましたが、 2004年までありましたが、2005年以降それを廃止しています。いま言った数値を決定 すること自体がなかなか難しい。これはMAKを勧告している委員会ではなくて、ドイ ツの国の有害物委員会でずっと勧告していたのですが、2005年に新しく有害化学物質に 関する規制が改正された時点でいまのような数値を出すことはやめて、それ以前にあっ たのを廃止ということになっていますので、やや問題点が大きいという認識があったの だと思っています。 ○和田委員 ただ、測定できない値で決めても管理できないですよね。実際にやってみ て判断できない値を決めてもしょうがないということです。これは実際に値がわからな いですが、客観的に見てこういった実測できる値で、通常の環境対策が可能で、しかも 今まで問題がなかった値は、このぐらいの値であるということを提示すればいいと思い ます。実際に客観的にやってみて普通にやれる値はここですということで、その値を決 めておけばいいのではないでしょうか。 ○櫻井座長 相場感というものがたぶんあって、要するに定量下限値がどれぐらいかと。 これが定量の方法もいろいろ進歩して、下限といったらサンプリングの量を増やせばい くらでも低くなるということもありますのでね。 ○和田委員 現在、通常に対策し、しかも測れる値を提示しておけばいいわけです。た だ、最低の値は、このように低くなりますと言っても仕方がなく、、普通に客観的に考え てここだったらできそうであると、そういう値をきちんと示しておけばということです。 また、そうしなければ決めるのは全くナンセンスで、測れなければ対処も取れないとい うことです。 ○櫻井座長 要するに全くハザードに関する情報がない段階であえて数値を決定して、 仮の数値でも決定して、何らかの規制の方向へ持っていくかいかないかの判断をするか どうかというのと、あるいは少しハザード情報がないならば、それをつくるとか、ある いは出てくるのを待つとか、少し時間を置くという手もあるだろうと。 ○和田委員 それでいまやっている状態で、ハザードはないということですね。それで 決めるということであって、もしそれで報告が出ればまた考えを直さなければいけない と思うのです。だけど、実際にハザードの報告もないし、客観的に普通の方法でできる 範囲でとりあえず決めておいたらどうかということです。いま現在、自分でやっている ところでハザードが出てないわけだから、そのぐらいでいいのではないでしょうかとい うことを意味しているのですがね。 ○櫻井座長 実際に当委員会では定量下限値を使って判断した例があります、去年でし たか。 ○和田委員 それはあくまでもいまの値でハザードが起きてないということで。 ○櫻井座長 ですから、その数値とか個別の状況を当然十分考慮した上で判断している わけです。ですから、定量下限値のほうが使いやすいと私は思っていますが、工学的対 策も参考資料として使えるとは思いますが。「NOAEL最低値を用いる」というよりは「そ れを参考とする」と。「用いる」というのは少し弱めて表現したほうがいい。いかがです か。 ○内山委員 MAKのことはよくわからないのですが、アメリカのMAKとの場合は、 たぶん我々は10%ぐらいのところだと、最低値ではなかったと思うのです。いろいろな ところは測ってみて、それでカーブを取って、カーブというかどういうところはこうだ ということで、それもたしか下から10%ぐらいのところが、ここらぐらいならできるだ ろうと、このぐらいの値なら、最低値ではなかったと思うのです。最低値だとこちらに 非常に経費がかかったり何かしたりしたので、たしか先進的なところをいくつか測って みて、それの下から10%ぐらいの値のところは、ここぐらいまでだったら行くのではな いのと、最低値だと少し厳しいといえば厳しいし、不可能なことも出てくるだろうと。 ○和田委員 「参考にして」でいいのではないかと。 ○内山委員 「参考にして」でよろしいのではないかと思います。 ○和田委員 そして10%ぐらいにしたい。実際に値を定めるときはそうやればいいでは ないですかね。10%がいいのか20%がいいのかわかりませんが。 ○内山委員 それはなぜ10%に決めたかは書いてありませんでした。確率的な計算をし ていたと思うのですが、そこら辺でしたら。 ○和田委員 「参考にして」としていて、最悪のときは10%ぐらいで、としておけば。 ○島田化学物質評価室長 事務局から質問したいのですが、内山委員のおっしゃられる 10%という意味はどのようなことでしょうか。 ○内山委員 たぶん何社か、いくつか先進的なところを測っていって、ヒストグラムで きますね。ある会社はこのぐらいの値で、ある会社はこのぐらいだったと。下から10% ぐらい。ですから、大体10社か、いちばん先進的にやっているトップランナーから10 社か20社ぐらいがやっている所は。大体床レベル、フロアレベルではない、何とかで、 ここら辺が大体少しこうなって、それから悪いところが上がっていく形になるみたいで すね。それで下から大体10%ぐらいの会社ができる所だったら達成可能ではないかと。 しかもそれも新しい技術を導入するのではなくて、現在ある技術を利用してこのぐらい までは行くでしょうという大体目安をたしかつくっていたと思います。 ○櫻井座長 それは結局、実際使用している事業場の数も多い場合ですね。 ○内山委員 そうですね。 ○櫻井座長 その場合、また改めて調査も必要になりますが、そういったある意味でフ ィージブルなレベルを決定することは可能だということですね。 ○内山委員 最低値だと非常に厳しくなると思いますので、そこまでやる必要はないか と思います。 ○櫻井座長 ですから、いまおっしゃっておられることを全体的に考えますと、ばく露 の状況の調査の結果を見た上で個別に考えるということだとは思っています。一般論と してはここに書いてある表現だと思います。いかがですか。そのようなところでよろし いですか。 ○島田化学物質評価室長 いまご議論いただいた趣旨を踏まえまして、事務局で修文を しまして各委員にお諮りします。 ○櫻井座長 次に進みます。5「平成20年度リスク評価対象物質の評価値について」、 これも事務局から説明をお願いします。 ○大淵化学物室評価室長補佐 資料2-5以降の資料で少し順番が前後するものもありま すが、それを使いましてご説明をします。最初に、資料2-8「平成20年度ばく露実態調 査の調整状況」をご覧ください。こちらについては前回もこれと似た資料をお配りして いますが、今回、今年度ばく露作業報告の対象となった44物質について、いくつの事 業場から報告が上がってきたかということ、今回につきましてはすでに事業場と調整を して現場の実態調査に協力してもらえるかという調整をしましたので、協力をいただけ るとなった事業場についても今回は数字としてお示ししています。前回の資料のときに はまだ調整をしていませんでしたので、「実態調査の予定数」という形でご報告をしたか と思います。  前回からの進捗状況として、調査協力をいただいた事業場について委員の方々にご報 告をしなければならないことがあります。3「ウレタン」につきましては、ばく露報告 では3事業場から報告をいただいたのですが、それぞれの事業場に改めて確認したとこ ろ、扱っている物質が、こちらが当初示していたのが、カルバミ酸エチルの趣旨でウレ タンの報告を求めていたのに対し、実際に報告されていたのはポリウレタンを扱ってい る事業場からのものでした。3事業場ともそういう状況でしたので、ウレタンについて はこれ以上ばく露実態調査を進めることはできないということで中止になっています。  事業場の都合の関係でということでは、20「1、2-ジブロモエタン(別名EDB)」、こ ちらについてもご報告をします。こちらはもともと報告のあった事業場が1事業場です が、こちらでは現在は生産していませんで、次回は来年2月なり3月以降ということで ご連絡を受けていますので、今年度中の実態調査はなかなか難しいということで、平成 21年度に調査をしたいという考えです。こちらが事業場の関係での都合ということです。  それ以外でそもそもの調査対象物質を見直すべきということで考えるものとして、10 コバルト化合物、2頁の43りん化インジウム、こちらについて少し詳しくご報告をしま す。コバルトは資料2-6コバルトのリスク評価についてをご覧ください。1の「有害物 ばく露作業報告の経緯」ということで説明します。今回、平成20年度につきましては、 コバルト化合物のうち「塩化コバルト」、「硫酸コバルト」、この2つだけがEUの発が ん性評価で区分2(ヒトに対しておそらく発がん性を有する物質)ということで評価さ れていますので、これを理由に平成20年につきましてはばく露作業報告で「コバルト 化合物(塩化コバルト及び硫酸コバルトに限る。)」ということで対象を絞った形で、年 間500kg以上製造ないしは使用している事業場に労働基準監督署への報告を求めていま す。その結果、42の事業場から報告がされたわけです。  2の「リスク評価の対象について」ということで、前回、コバルトについては評価値 を決めるときに委員の方々から、なぜこの2物質だけ塩化コバルトと硫酸コバルトだけ に限ったのかというご意見をいただきましたので、それを踏まえての事務局としての再 度検討した結果について説明をします。本年度につきましてはいま申し上げた物質だけ を報告対象としたわけですが、一方、IARC等での発がん性の評価で見ますと、「コバル ト及びその化合物」として評価をしまして、(グループ2B)という評価がIARCでなさ れています。また、アメリカのACGIHまた日本の産業衛生学会、こちらのような専門 機関においても同様にコバルト及びその化合物という区分でその許容濃度を示している ということです。ACGIH、産衛学会、それぞれ、ACGIHにつきましては「コバルト及 び無機化合物」ということで0.02mg/m3(コバルトとして)という値、日本産業衛生学 会につきましては「コバルト及びその化合物」という形で0.05mg/m3という値が示され ています。こういうことを踏まえまして少し軌道修正という形になりますが、リスク評 価の対象物質につきましては、塩化コバルトと硫酸コバルトに限るということを改めて、 「コバルト及びその化合物」を対象とするのが適当ではないかと現段階では考えていま す。  これを受けて3の「リスク評価の進め方」につきましては、平成20年度につきまし てはすでに塩化コバルト、硫酸コバルトの事業場を有害物ばく露作業報告で把握してい ますので、この中から選んだ事業場について、今後、ばく露実態調査、作業環境測定や 個人ばく露測定を実施したいと考えます。  平成21年度につきまして、今度は有害物ばく露作業報告の範囲を広げまして「コバ ルト及びその化合物」と変更した上で、改めて作業の報告を求めまして、その報告の上 がってきた事業場の中から事業場をまた選びまして実態調査を行いたいと考えています。 そのときには平成20年度で選んだ事業場と重ならない配慮は当然必要かと思っていま すが、そのような形で平成21年度のばく露作業報告実態調査を行いまして、平成20年 度、21年度の調査結果、両方を併せた形でコバルト及びその化合物のリスク評価を行い たいと思っています。以上がコバルトの関係の事務局からの変更の提案です。  資料2-7はインジウムの関係です。まず、1の「有害物ばく露作業報告の経緯」です。 インジウム化合物のうちの「りん化インジウム」のみがIARCにおいてグループ1(ヒ トに対する発がん性物質)として評価されていることを踏まえまして、平成20年の有 害物ばく露作業報告では、りん化インジウムに限定した形で事業場に報告を求めていま す。しかしながら、事業場からの報告は結果的にはなかったという状況でして、このた め新たに設けた「少量製造・取扱いの規制等に係る小検討会」で、少量のばく露調査方 法の手法の検討を今後行う予定であり、ばく露調査の方法を見直す必要があるという考 えです。  また、少し違う切り口ですが、インジウムの関係では、過去に健康障害が問題になっ て、行政として対応した経緯がありますので、そちらについても2としてご報告をしま す。「インジウム・スズ酸化物等による健康障害防止対策の経緯」ということで、こちら はインジウム化合物のうち液晶ディスプレイの透明電極等の材料に使用されるもので、 酸化インジウムと酸化スズの混合物で(インジウム・スズ酸化物)と言われるようなも の、「ITO」という略称も使われていますが、これについて焼結体の切削・研磨作業に従 事していた労働者が重篤な肺疾患を罹患するというような労働災害が発生しました。こ れを受けまして、平成16年7月13日付けで「インジウム・スズ酸化物等取扱い作業に おける当面のばく露防止対策について」という行政の通知を発出しまして、作業環境管 理・作業管理、労働衛生教育の実施といったものについて、関係する事業場に対して指 導を行っています。指導項目の中には、この段階ではまだ健康診断については診断基準 が確立されていなかったために記載されていませんが、他の作業環境管理や測定といっ たものについてはこの時点で指導をしていまして、3頁以降に実際の指導内容について は当時の通知文書をお付けしています。こういった、過去にインジウムが問題になった という事例がありました。  これまでの経緯を受けまして、3番目のリスク評価の対象についてということですが、 本年のりん化インジウムのばく露作業報告を取ったところ、有害性の観点からいきます とインジウムやインジウム化合物の発がん性については、詳しい情報が得られているの はいまはりん化インジウムだけになるかもしれませんが、発がんの機序から考えて、不 溶性のインジウム化合物に発がん性を有する可能性が高いのではないかということがあ ります。  一方アメリカのACGIH、日本産業衛生学会については、濃度の評価値のほうはイン ジウム及びその化合物として値を定めています。ACGIHの場合は、インジウム及び化 合物ということで0.1mg/m3、産業衛生学会においても3μg/Lという空気中の濃度では ありませんが、生物学的許容値としてこういったようなものが定められていまして、り ん化インジウムに限定した形ではなく、幅広い対象でこのような許容濃度が提案されて います。こういったことを踏まえまして、事務局としてはリスク評価の対象をりん化イ ンジウムに限定せず、これを含めたインジウム及びその化合物を対象とするのが適当で はないかと現時点では考えています。  その場合のリスク評価の進め方は2頁です。平成20年度については先ほども申し上 げましたが、対象とする事業場は現段階では把握されていないので、実態調査はできま せんが、もう一方の有害性評価について平成19年度の委託事業では、有害性の評価書 を作成するときにりん化インジウムに限定するような形で作成しています。しかしなが らリスク評価の対象を広げることになりますと、当然ですが有害性評価書の作成につい ても改めて「インジウム及びその化合物」ということで、範囲を広げて作成する必要が あるかと思っています。平成21年度については、有害物ばく露作業報告をもう一度や るという形で、その際には「インジウム及びその化合物」と範囲を広げて改めて作業報 告を取りまして、報告のあった事業場の中からばく露実態調査を行ってということを考 えています。最終的に新しく作る有害性評価書と、来年度に行うばく露実態調査の結果 を基に、「インジウム及びその化合物」ということでリスク評価を行わせていただければ と考えています。  説明は続きますが、ここで一旦区切ります。 ○櫻井座長 いままでの説明内容について、ご質問、ご意見がありましたらどうぞご発 言ください。 ○大前委員 コバルトの件で、参考2の27頁にACGHIの提案理由書があります。そ の右側の一段目にIARCの評価のことが書いてありますが、それの真ん中辺にThere was sufficient evidence that cobalt metal powder was carcinogenic to experimental animals.とここにも明らかに書いてありますので、塩化コバルト、硫酸コバルトだけに 限定しないで、コバルト及び化合物にしたほうが妥当ではないかと思います。 ○清水委員 私も、コバルトに関してはこれでいいかと思います。また、インジウムに 関しては大前委員がいちばん詳しいかと思いますが、いまは学会でもどんどんいろいろ なデータが出てきているわけで、まだインジウムの毒性に関しては評価が定まらないと ころがあるかと思います。ですから、こういった事務局から提案したインジウム及びイ ンジウム化合物という形で扱ったほうがいいかと思います。 ○櫻井座長 ほかにご質問はありますか。 ○和田委員 1頁にあるACGIHと産衛学会のものは、りん化インジウムの発がん性を 考慮して定めた値ですか。インジウムのリスク評価の1頁の下のACGIHと産衛学会の 報告の方が。 ○櫻井座長 1頁というのは、どの資料ですか。 ○和田委員 インジウムの2-7の下に2つの値が示されていますが。 ○櫻井座長 ACGIHと日本産業衛生学会。 ○和田委員 これは、りん化インジウムの発がん性を考慮して決めた値ですか。 ○大前委員 このりん化インジウム自体の発がんの報告は2001年で、ACGIHは全く情 報が入っていません。産衛学会もりん化インジウムを使っている作業者はほとんどいな くて情報がなく、生物学的許容値、血液の中の値で決めています。そういう意味では、 りん化インジウムのデータを使っては決めていません。 ○和田委員 いまは別に議論することでいいと思いますが。これからの問題がどうかを 聞きたかっただけのことです。 ○櫻井座長 ほかには何かありますか。それでは、いままでのところは事務局からのご 提案は、そのとおりでお願いしたいと。 ○大前委員 インジウムの件ですが、2頁のリスク評価の進め方で、平成21年度であれ ばばく露実態調査を行うという予定が書いてあります。もちろん、これはこれで当然や るべきだと思いますが、実際上はインジウムを吸入しますとなかなか肺から出ていかな い状況がありまして、現在の作業環境の状態と障害が起きたときの状態が随分違います から、いまの数値が直ちに影響評価の数値に結び付かないところがあると思います。も し可能でしたらその影響が起きた時点に近い作業環境情報が取れれば、そちらを取られ たほうがより実態に近い因果関係という意味では、ばく露濃度と影響に近い関係が取れ ると思いますので、可能でしたらそういう情報を集めていただければと思います。 ○島田化学物質評価室長 承知しました。いま大前委員からお話を伺ったので、過去に おけるばく露状態については大前委員からご指導をいただきつつ、資料を集めてまたご 報告をするようにします。 ○櫻井座長 ほかにはよろしいですか。先へ進みたいと思います。 ○大淵化学物質評価室長補佐 いまの評価値の続きになります。資料2-5を中心に、参 考1、参考2を適宜見ていただく形で説明します。  資料2-5は、平成20年度リスク評価物質の評価値関係資料ということで、前回お配 りしたものの修正バージョンになっています。1〜8頁は評価値の候補、9〜13頁は産衛 学会の許容濃度やACGIHのTLVで、それを決めるときに、発がん性の考慮等がされて いるかどうかを説明しているペーパーです。14頁からの資料は各物質の評価値の関係、 一覧表にしたものです。  まず資料の1頁をご覧いただきまして、前回の検討状況の報告、先ほどの冒頭の議事 概要の報告では省略しましたので、ここの頁で改めて確認したいと思います。  1のアルファ、アルファージクロロトルエンは、実態調査を行う予定がない。対象と なる事業場がないということですので、いちばん右側の欄ですが、こちらについては一 次評価値、二次評価値とも検討する必要はないということが前回の結論です。  2のイソプレンについては、一次評価値は適当である。二次評価値は提案理由を確認 する必要があるというご意見をいただいています。というのは、二次評価値でAIHA、 アメリカの産業衛生関係の団体が定めている値について、前回の会議の際にはまだ提案 理由書を入手していませんでしたので、改めてその後入手しまして委員方にも事前にお 送りして見ていただいていますが、本日の資料の参考の2の中で、こちらは1頁からイ ソプレンのAIHAの提案理由書をお付けしています。  その中のいちばんエッセンスになる部分については、事務局で別途資料の中に日本語 で書きましたが、資料2-5の9頁になります。許容濃度TLVにおける発がん性の考慮に ついてという資料です。この中の2のイソプレンをご覧いただきたいと思います。AIHA の2ppmを決めた根拠ですが、マウスにおいて220ppm以上の濃度で発がん性の明確な 証拠がある。ラットの2年間吸入試験において、LOAEL200ppm以上のばく露によっ て発がん性の明確な証拠があるということを基に、AIHAでは2ppmという値を定めて いたということです。ここのイソプレンの二次評価値は、前回の段階ではペンディング になっていましたが、いま簡単に説明しましたがこのような根拠になっているというこ とを踏まえて、今日はこの場である程度確定をさせていただければと思いますが、いか がでしょうか。 ○櫻井座長 2番目のイソプレンについて、ご意見をいただきたいと思います。AIHA が2004年に2ppmというのを勧告した。ほかでは、イソプレンについてこのような数 値を提案しているものが見当たらない。一方、AIHAは一応このように明確に根拠を示 しているということです。動物実験のデータから来ています。 ○大淵化学物質評価室長補佐 データについては、参考資料の2の中では6頁の項目番 号でいくとVI.RATIONALEで総括的なことが書いてありまして、その冒頭で発がん性 の動物実験の結果が書いてあります。 ○櫻井座長 いかがでしょうか。NOAELに相当する数値は全然なくて、神経学的な変 化が70ppmでLOAELになっていまして、それの大体30分の1ぐらいの数値にしてあ ります。 ○和田委員 これから、これを1つずつ検討するということですか。 ○櫻井座長 どうも、いまそれを求められているような感じで。 ○和田委員 まずは意見で決められるところは決めて。 ○大淵化学物質評価室長補佐 決められないものは、場合によってはばく露実態調査の 結果を待ってというものもあるかとは思います。決められるものは、ある程度のライン で決めておいていただければと思っています。 ○櫻井座長 決めにくいですね。どうでしょうか。 ○和田委員 これは、皆さんの意見を大体集約されたのですね。 ○大淵化学物質評価室長補佐 そうです。この資料は第1回目と第2回目の今回の間に、 先生方のに予めご意見を伺っていますので、そのご意見を集約したのがこちらの資料に なっています。 ○和田委員 皆さん根拠を持って提案されているわけだから、提案はこれで了承してい いのではないかと思います。これからやらなければいけないことを、どれをやるかとい うことで、やっていかれたらどうですか。 ○内山委員 問題になっているのは、一次評価値より二次評価値が高くなったけれども ということだと思います。一次評価値が1.7だったのに、二次評価値が2で高いので提 案理由を確認しようと言われたのですね。だから、これは二次評価値の2ppmの発がん をエンドポイントとしていて、1.7というのはそれ以外の神経学説ですか。それで評価 ポイントが違うので、どちらを取るかということになると思います。より2ppmで出た もののほうが信頼性のある実験であれば、こちらを取って二次評価値が高くなっても、 それは構わない。新しい知見ですし、これでいいと思います。 ○櫻井座長 ちょっと確認しますが、2ppmにするという案についての提案理由書を皆 さんにお送りして、それを基に意見を求めて、ありましたか。 ○大淵化学物質評価室長補佐 提案理由書はメールでお送りしていまして、それで意見 を求めて、この理由書についてどうだという具体的なご意見は結果的にはこちらに頂戴 しなかったので、今日この場で伺えればと思っていました。 ○櫻井座長 そうすると2ppmでいくかということですが、どうでしょうか。 ○和田委員 事務局の発がん性の根拠になっているというのは、どちらのことを言って いるのですか。一次、二次。 ○大淵化学物質評価室長補佐 一次評価値のところも、ここは発がんの閾値で求めた値 です。 ○和田委員 二次のほうはどうですか。事務局が書かれているのは、発がん性が根拠に なっているという意味ですか。 ○大淵化学物質評価室長補佐 事務局の資料の読み方が十分ではないかもしれませんが、 先ほどのAIHAの勧告値は発がん性を根拠にしているのではないかと資料からは理解し ましたが、最終的に2ppmを出す外挿の仕方をAIHAは具体的に資料の中で説明してい るわけではないので、どういう理屈で先ほどの220ppmから2ppmが出てくるのかはわ かりません。 ○島田化学物質評価室長 いま櫻井座長がご紹介いただいたように、6頁のいちばん最 後の部分に神経毒性を70ppmから外挿して2ppmに決められ、その際、併せて発がん についてもそのデータを考慮したとの記載がありますので、発がんだけできめたのであ れば間違いがあると思いますが、その両者を考慮して2ppmが決まったと理解したいと 思います。 ○和田委員 一次評価値というのは、どこが出した値でしたっけ。ACGIHあたりから 出していましたっけ。見ていなかったですが。この委員会の基本として、一次と二次と 出ていた場合は、どちらを取るのが基本でしたっけ。 ○櫻井座長 大体において二次評価値を取るわけですが、それを基本としています。 ○和田委員 そんなに値が違うわけではないから、二次評価値をきちんと取ったという ことでいいではないですかね。 ○櫻井座長 よろしいですか。一次評価値1.7の根拠のご質問がありましたが、これは 後ほどということで、基本的に2ppmでよろしいですか。それでは、この件はそれで進 めたいと思います。その先をどうぞ。 ○大淵化学物質評価室長補佐 続きまして、3のウレタンについては先ほどご報告した とおり、実態調査の予定がありませんので、事務局としては一次評価値、二次評価値と も検討不要になろうかと考えています。  4の2、3-エポキシプロピル=フェニルエーテルは、第1回でご検討いただきまして、 一次評価値、二次評価値ともこれで適当だろうというご意見をいただいています。  5のオルト-ニシジンについても第1回でご検討いただきまして、一次評価値、二次評 価値とも適当であろうというご意見をいただいています。  6のオルト-ニトロアニソールは、一次評価値については閾値がなく、ユニットリスク で参考になる値もありませんので評価値なし。二次評価値については、第1回のときに はまだ決定はできず、今後要検討であるというところで第1回は終わっています。  似たような状況が7のオルト-ニトロトルエンで、物質としては一次評価値は6と同じ ようなことで評価値なしですが、二次評価値はACGIHが出している2ppmという値で 適当であるというご意見を第1回でいただいています。  8の2-クロロ-1,3-ブタジエンについては、一次評価値の基になる有害性評価書の作成 がまだ行われていませんので、ユニットリスクの関係は未確認ということで、現段階で は一次評価値の候補になるような値はありません。二次評価値については、ACGIHで 10ppmというものが示されていますが、前回のご議論の中でこの二次評価値という 10ppmが高すぎる懸念があるので、次回で検討すべきというのが第1回の結論になって います。  一応第1回で議論したところまでを進めますと、9の4-クロロ-2-メチルアニリン及び その塩酸塩についても、一次評価値の関係では有害性評価がまだ済んでいないというこ とで、候補になる数値は未確認ということです。二次評価値については、参考となる ACGIHや産衛学会その他のものがないということで、二次評価値については今後要検 討というところが第1回の結論になっています。  10のコバルトについては先ほど申し上げたとおりですが、今後評価対象を広げていく ことになりますが、評価値の関係で申し上げますと、一次評価値の関係ではいままで調 べていたデータでは、閾値なしで評価値というのはない。二次評価値関係ではACGIH、 産衛学会がそれぞれ0.02mg/m3、0.05mg/m3と示されていますが、前回は二次評価値に ついて詳しい議論まではいっていません。  先生方から事前に、コバルトは評価対象物質を広げるべきというご意見をいただいて いまして、それについては先ほども皆様方からそういうお話でした。それ以外の指摘は、 二次評価値の関係でACGIHあるいは産衛学会についての提案年、提案理由書を見て決 めるべきであろうというご意見をいただいていましたが、こちらについては資料の9頁 のいちばん下にある10のコバルト化合物でACGIH、産衛学会のそれぞれの提案年、提 案している濃度、提案の根拠ですが、提案年はACGIH、産衛学会とも2006年です。提 案の背景は、ACGIHのほうでは動物で種々の経路を通じたコバルトばく露試験で腫瘍 形成が認められているが、ヒトへの発がん性は不確実。それから、コバルト及びその無 機化合物についてぜんそくの進行や肺機能変性、心筋への影響を最小限にする意図で TLVを設定したとなっています。  産衛学会は、動物試験では発がん性が認められている。平均コバルト0.06mg/m3ない し、それ以上で気道の不可逆的な閉塞が認められることから、許容濃度として0.05mg/m3 を設定しています。コバルトについては前回は議論が途中になってしまいましたので、 今回決めていただければというところです。  ですので、前回検討してまだ検討途中になっているものとしては、イソプレンを除き ますと、6のオルト-ニトロアニソール、9の4-クロロ-2-メチルアニリン及びその塩酸塩、 10のコバルト化合物であり、これらについては、本日検討の続きを行えればと思ってい ます。  11以降は、本日から新しく検討する部分になりますので、まずはここで一区切りとし たいと思います。 ○櫻井座長 6のオルト-ニトロアニソールからですね。 ○大淵化学物質評価室長補佐 はい。 ○櫻井座長 これは参考とする値がないです。 ○和田委員 1、2、3で決めた順番でチェックするより、しょうがないではないですか。 そこで、何か値が出るかどうかということでやるよりしょうがないのではないですか。 ○櫻井座長 いまこの場で、あれこれという具体的な回答は出てこないですね。 ○和田委員 出てこないです。 ○櫻井座長 先ほど決めた原則に従って。 ○和田委員 原則に則って順番にチェックしていく。 ○櫻井座長 世界各国のいろいろな勧告。 ○大淵化学物質評価室長補佐 こちらで比較的に入手しやすいものについては確認をし たのですが、その中では数値が見当たらないというところでした。次の一般環境の関係 にもないということで、それ以降の発がん性以外の毒性試験で得られたようなNOAEL から外挿するそれ以下のところで、今後検討することになろうかと思います。 ○櫻井座長 そうなるだろうと思います。そうすると、まず類似の化学ですが、使える ようなものはあるかどうかということで、事務局としては何か少しご検討になったので しょうか。これは、作業としてはなかなか苦しい作業だと思いますが。 ○大淵化学物質評価室長補佐 今日、先ほどのリスク評価手法の改訂の状況を待ってと いうところもありましたので、事務局では具体的な数字の持ち合わせはありません。 ○櫻井座長 では、次回以降にしましょう。 ○大淵化学物質評価室長補佐 わかりました。 ○和田委員 化学構造の専門家に聞いてみて。我々は、そちらはよくわからない。 ○櫻井座長 プラクティカルな構造活性相関の見識の高い人。我々は本当に、あまり責 任を持った答えはできません。特に、毒性については難しいところです。毒性の種類が 多いものですから。分解性とか蓄積性といったほうがやりやすいかもしれませんが、毒 性については一般論として極めて難しいとは思います。でも全然できないわけではなく て、一部可能かもしれません。 ○大淵化学物質評価室長補佐 事務局で、もう少し検討をしたいと思います。 ○清水委員 化審法のほうで、経産省がいまQSARということで、内部構造活性相関、 特に分解性、蓄積性、エームス試験等を調べて毎回報告をくださるのですが、縦割行政 でそういう情報はもう少し用いるべきではないかと思います。厚生労働省の3省合同の 委員会ですから、そちらのほうとご相談されて、構造活性相関も当然類似化合物として 調べていただければ入るのではないかと思いますが、もう少し風通しを良くして、情報 を入手していただけるといいのではないかと思います。 ○島田化学物質評価室長 承知しました。そこは確かに先ほどご議論いただきました評 価手法にも、構造活性相関も当然考慮に入れることになっていますので、そのあたりを 含めて情報は入手したいと思います。 ○櫻井座長 変異原性ぐらいまでは、かなりいけますか。 ○清水委員 なかなか難しい。でも、きれいに合うものもありますね。ニトロ基を持っ ているとかというのは、きれいに出てきますね。 ○櫻井座長 6については、また事務局のほうでできる範囲内で情報収集して、次回以 降にまた検討とします。  8も次回検討となっていますが、二次評価値が高すぎる懸念がある。これはどうしま しょうか。ACGIHの10ppmというのが高すぎるのではないかということで。 ○大前委員 これは、前回私が発言して10ppmにしたらどうかということだったと思 いますが、比較的に最近発がん、ヒトのもデータが出てきたと思いますので、それを平 成20年度に有害性評価をやるときに見ていただいて、その結果を見てからでもいいの ではないかと思います。 ○櫻井座長 平成20年度の有害性評価の結果を見て。 ○大前委員 それで、10ppmが高いかどうかという判断を。 ○櫻井座長 そういうことにしたいと思います。それでよろしいでしょうか。9も同様 ですね。平成20年度に有害性評価がありますので、その結果で判断する。10のコバル トについても有害性評価をやり直すのですか。 ○大淵化学物質評価室長補佐 こちらについては、有害性評価は最初から幅広で取って いますので、有害性評価は既にやったデータが使えるかと思います。 ○櫻井座長 塩化コバルト、硫酸コバルトに限定していませんよね。 ○大淵化学物質評価室長補佐 限定しない形で。 ○櫻井座長 一次評価値はない。二次評価値は、ACGIHと日本産業衛生学会とがある。 どちらを取るかということでしょうか。 ○和田委員 二次の回答で、発がん性を根拠に設定されているというけれども、先ほど の説明だとその根拠に腫瘍形成が認められているがヒトへの発がん性は不確実で、ぜん そくとか肺機能や心筋への影響を最小限にするということでTLVを設定したと書いて ありますよね。だから、発がん性は考慮していないということではないですか。 ○櫻井座長 そうですね。 ○和田委員 ACGIHは何年ですか。 ○大淵化学物質評価室長補佐 2006年です。 ○和田委員 最近だから、発がん性が考えてないけれど、その危険性はあるから低いほ うを取るということで0.02でいいのではないですか。 ○大前委員 これは2006年ですか。提案理由は2000くらいと思いますが。 ○和田委員 産衛学会はいつですか。 ○大前委員 産衛学会は2006年と書いてありますが、そんなに昔ではなかったと思い ますが、2006年かどうかに自信がないです。 ○櫻井座長 これは最初の提案年度で、その根拠を出したときの年度が問題で。 ○和田委員 その後改訂されていないということですね。 ○大淵化学物質評価室長補佐 その対象年度ではなくて。 ○櫻井座長 それが改訂された年度。つまり、そのときまでの一般的な情報が考慮され ているということになります。改訂云々というのを毎年きちんと見ているわけではない から、どうしてもあれですが。 ○和田委員 これは一般にデータがないわけだし、低いほうを取っておきますかね。 ○櫻井座長 低いほうでいいのかなとは思います。産業衛生学会の0.06mg/m3で気道の 不可逆的な閉塞が認められる。それに対して0.05mg/m3を採用して、非常にギリギリの 線で採用していますね。よろしいでしょうか。これは0.02mg/m3という線で。 ○大淵化学物質評価室長補佐 わかりました。それでは、前回にペンディングになって いた事項等については確認しましたので、今回から新たにご検討いただく部分です。2 頁の11の酸化プロピレンです。この会議の前に先生方からいただいていたご意見では、 こちらの資料で一次評価値のところで閾値ないしユニットリスク0.057ppmと書いてあ るけれども、0.057ppmというのは正しい値かということのご意見等をいただいていま すので、そちらから説明します。こちらについては、参考1で酸化プロピレンの資料を 付けていますので、こちらで説明をします。  有害性評価の委託事業で、評価に関係する資料は2種類作成しており、今回お配りし ている表スタイルのものと、前回お配りしたは文書スタイルのものがあります。前回の 文書スタイルの資料では、一般的な市民に対するとユニットリスクの値をお示ししたの ですが、通常このリスク評価においては労働補正をかけたユニットリスクで数字を使っ ているということで、今回は参考1として、表スタイルの資料を配っています。  こちらでユニットリスクに関係するのは2頁です。GHS区分の発がん性というとこ ろですが、発がん性がない場合の考え方で、カリフォルニアEPAの資料によりユニッ トリスクを用いて算定した場合は次のようになるということで、ここではURのところ ですと3.7×10^-6perμg/m3とか、その上のRL(10^-4)=27μg/m3と載っています が、これの下に労働補正をかけたところが「なお、当リスク評価事業における前提条件 (呼吸量10m3/日、ばく露日数240日/年、労働年数45/75)に基づいて換算しますと、 ここで労働補正のRL(10^-4)が出てきますが、μgでいきますと1.4×10^+2μg/m3 で、これをppmに換算しますと5.7×10^-2ppm。10^-2を繰り入れますと、0.057ppm になろうかと思います。この労働補正の数字は今回初めてお出しする数字ですが、資料 2-5の7で0.057ppmは、この参考1の労働補正による計算結果を用いて書いたもので す。  資料2-5に戻ります。一次評価値のユニットリスクに基づいた数値は、以上のような 背景で0.057ppmを提案しています。二次評価値は、参考となる値がACGIHの2ppm がありますので、本日はその2ppmが妥当かどうかというのを提案理由書を見ながら確 認していただきたいと思っています。事務局で整理している資料は、資料2-5の10頁 の上から2つ目の11の酸化プロピレンですが、ACGIHが2004年の提案で2ppm。こ の値が発がん性に関係するかどうか提案理由を見ますと、こちらは皮膚の感作、眼・粘 膜・皮膚の刺激、細胞増殖の増大の可能性を最小とする意図でTLVを設定していること が書かれています。酸化プロピレンについての事務局からの説明は以上で、これらに基 づいて先生方でご検討いただければと存じます。 ○櫻井座長 いかがでしょうか。 ○大前委員 ここに書いてあるユニットリスクではなくて、10^-4の過剰発がんに対応 する濃度ですよね。 ○内山委員 誤解を生むと思いますね。一般の方から見ると、これだというふうに取ら れてしまいます。 ○櫻井座長 そういう意味ですね。ユニットリスクではない。 ○大淵化学物質評価室長補佐 そのものではない。 ○櫻井座長 みんなそういう表現になっているけれども、誤解を招くか。 ○大淵化学物質評価室長補佐 表現ぶりについては、今後検討します。 ○櫻井座長 ACGIHの2ppmはどうでしょうか。特段問題ないですか。ほかに、特に 問題とすべき点がなければ。 ○和田委員 2頁のいちばん下の発がん性の評価で、NOAELが200でUFが100とし て、評価レベル1.5ppmと出していますよね。2頁のいちばん下の発がん性の評価の参 考閾値がある場合ですね。 ○櫻井座長 参考資料1の2頁のいちばん下の閾値がある場合、1.5ppm。 ○大前委員 これは閾値があると仮定して計算しただけの参考値ですので。 ○櫻井座長 そうですね。一応大体このようにしてあるわけですね。参考値として。ほ かの物質でも、そういう書き方になっていましたか。 ○大前委員 この年度はこうなっていたと思いますが、また別の年度は違った形式にな っています。判断としては閾値がないという判断で、その下に10^-4に相当する措置の 計算がしてありまして、もし閾値があるとしたらというのが参考のところに書いてあり ますので、これは見ていただかなくてもいいと思います。 ○和田委員 考慮しなくていいということですか。 ○大前委員 はい。 ○和田委員 3頁の「ケ」のところも考慮しなくていいということですか。特定標的臓 器とか、区分することは適切でないと書いてあるけれども、一応値としては0.23ppmと 出していますよね。これも、あまりあてにならない数と考えていいわけですか。あとは、 その上の「キ」の生殖毒性でも0.87ppmという数値を出していますよね。あくまでも参 考ということで、いいということですかね。一応そういうことを考慮してのACGIHの 値を採用したという形で、それはいいということですが。 ○櫻井座長 「ケ」の動物実験のデータのLOAELに、不確実性係数100を使って労働 補正をする。ただし、この労働補正はばく露時間だけの補正になっていますね。一般に このように動物実験のデータ、これはLOAELからスタートしていますが、NOAELか らスタートしたとしても、ばく露時間だけ考慮すると個体差と種差の両方が入っていま すので、通常の労働のばく露限界値よりも低い数値になる傾向が常にありますね。これ は、参考にするということになろうかと思います。ただACGIH、産業衛生学会等が示 すばく露限界値がある場合には、それを優先するというスタンスは変わらないので。 ○和田委員 一応参考値も考慮したけれども、それでいいでしょうかということになる ということですね。 ○櫻井座長 そうですね。内山委員、どうお考えですか。 ○内山委員 このやり方でいろいろやってみて、閾値がない場合だったらこう、閾値が あると仮定するとこうで、総合評価としては4頁の最後に書いてある1がない場合でや る。 ○櫻井座長 酸化プロピレンについては2ppmでよろしいですか。時間が10分しかあ りません。もう1つぐらいやりますか。今日は6のテーマもありますので、個別の物質 の問題はどうせ大部分がペンディングになりますので、あえてもう1つということはし ないで、議事の6に移りたいと思います。 ○大淵化学物質評価室長補佐 議事の6の「平成21年の有害物ばく露作業報告の対象 物質(案)」の説明をします。資料2-9です。平成21年についても、いまのところの予 定としては1月から3月にかけて事業場からばく露作業報告を提出していただきたいと 思います。その対象物質の考え方ですが、前提となる平成18年から平成20年について どう選んだのかを報告して、その上で平成21年の考え方を説明します。  平成18年から平成20年にかけては、まず化学物質の中で労働安全衛生法でMSDS の対象となる物質をベースに考えまして、その中で発がん性物質あるいは発がん性の可 能性が高い物質ということで選んでいます。具体的にはIARCでグループ1または2A、 EUの発がん性の分類でいくと区分1または区分2というものから選びました。これに 引き続いて平成21年はどうかということですが、平成18年から平成20年までで発が ん性の可能性の高い物質IARCの2A以上、EUの2以上については一通り評価対象と なったということで、その次のステップとして事務局としてはIARCのグループ2Bか ら選ばせていただければと思っています。かつ、2Bの物質の中でも評価の際の参考と なるACGIHのTLVあるいは日本産業衛生学会の許容濃度といった勧告値のある物質を ターゲットとしたいと考えていまして、そのような考え方で整理をすると、ここに書い てある1から21までの物質がその報告対象の候補と考えています。先ほどの説明の中 で行いましたインジウムの関係やコバルトの関係もこの表に入れています。それも含め た形での21物質です。MSDS対象の物質から選んだということは、平成18年度から平 成20年度までと変更はありませんで、ベースとしてはそこからグループ2Bを選び、か つACGIH、産衛学会の値のあるものを選んだということが平成21年の表です。もし先 生方で何かご意見がありましたら、それを踏まえて修正もさせていただければと思って います。以上です。 ○櫻井座長 いかがでしょうか。 ○大前委員 りん化インジウムは1ではなくて2Aです。IARCの評価です。 ○大淵化学物質評価室長補佐 りん化インジウムは2Aですか。失礼しました。 ○和田委員 幸いにして、ACGIHか産衛学会の値が必ずありますから、これは新しい 用法がないかをチェックすれば、そんなに難しい仕事でもないではないですか。一応い いではないですか。 ○大前委員 質問をよろしいですか。12のDDVPのIFVというのは、インハラブル粒 子及び蒸気の両方を足したものという意味ですか。 ○大淵化学物質評価室長補佐 正確なところは不勉強ですが、ACGIHの物質リストに、 IFVというマークがあり、IFVの定義が別表のようなところにありまして、「インハラ ブル粒子及び蒸気」という記載がされています。 ○櫻井座長 2つありますね。キシリジンもそうですね。方向としては、事務局のこの 案で結構ではないでしょうか。 ○島田化学物質評価室長 いま和田委員から「幸いにしてACGIHなり日本産衛学会が あると。」いうことですが、事務局としてはあえて産衛学会とACGIHのデータがあるも のを選ばせていただいたということです。今年の44物質については、結果的に評価の 対象とできないものがありますので、データがあるものを優先してやらせていただき、 ないものについては、そのデータが入手でき次第また評価をいただく考え方になります。 ○和田委員 今日やったものとの違いというのは、両方ともなかったものを今日一応議 論しましたが。 ○大淵化学物質評価室長補佐 平成20年は、ACGIHや産衛があるというのは物を選定 するときの基準には入れていませんでしたので、ああいう形になっています。結果的に 見ると、産衛なりACGIHが何か濃度を決めているというのは、職場である程度の量を 使っていて問題が起きているような物質ですので、そういう物質は有害物ばく露作業報 告をやっても国内で取り扱っている事業場がある可能性も高い物質かなと思っています。 そういう意味で今年は44物質をやって25物質しか報告がない状況でしたが、せっかく 報告を求めても上がってこない状況をできるだけ避けるためにも、これらの数値がある 物質を選んだほうがよろしいのかなと思っています。 ○和田委員 その考えを適応していけば、非常に簡単ではないですかね。上がってきて いないということは、最後のいまの定量のところぐらいでもないということですか。実 際にfeasibilityのあるところ。客観的にですね、値でもいいということをある程度意味 しているわけですよね。 ○大淵化学物質評価室長補佐 平成21年はこのような考え方でやらせていただきます と、平成21年まででMSDS対象になっている物質の中で発がん性関係の物質はある程 度目処がつきます。平成22年以降どういう考え方で物を選ぶのか、発がん性以外の毒 性、有害性に目を向けた形で平成22年からはやっていかなければならないかなと思っ ていますが、平成22年以降の物質については少し中長期的に考える必要があるかと思 いますので、先生方にご審議をいただく場を今後設けていく必要があるかなと思います。 ○櫻井座長 その点については、既に若干のご意見をいただいていますね。 ○大淵化学物質評価室長補佐 はい。そういうことを踏まえて、また検討の場を持たせ ていただきたいと思います。 ○櫻井座長 ちょうど予定の時間になりました。今日はあまり個別の物質について進め ることができませんでしたが、次回以降ということで今日はこれで終了します。事務局 からはよろしいですね。どうもありがとうございました。 - 照会先: 労働基準局安全衛生部化学物質対策課                            化学物質評価室                電話03-5253-1111(内線5511)