08/08/06 平成20年度化学物質による労働者の健康障害防止に係るリスク評価検討会の第2回少量製造・取扱いの規制等に係る小検討会議事録 第2回 少量製造・取扱いの規制等に係る小検討会 日時 平成20年8月6日(水)    17:00〜 場所 厚生労働省(16階)    労働基準局第1・第2会議室 ○大淵化学物質評価室長補佐 ただいまから、第2回「少量製造・取扱いの規制等に係 る小検討会」を開催いたします。本日は、お忙しい中、このような遅い時間にお集まり いただき、ありがとうございます。  進行については、座長の名古屋先生にお願いいたします。 ○名古屋座長 本日は「少量・取扱い規制等に係る小検討会」の2回目です。前回の検 討会では、「医療現場におけるホルムアルデヒドの使用実態」ということで、歯科医療 におけるホルムアルデヒドの使用実態について、日本歯科医師会の森岡産業保健委員長 に、病理検査におけるホルムアルデヒドの使用実態について、日本病理学会の谷山剖検 ・病理技術委員長から発表いただきました。  本日は2回目として、解剖実習についてのヒアリングを行いたいと思っています。  事務局より、本日の議次予定及び出席者の紹介をお願いいたします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 本日の議事予定ですが、本日は、ヒアリングを2つ予定 しています。前回に引き続いて、「医療現場におけるホルムアルデヒドの使用実態」と いうことで、まず最初に、解剖実習について、東京大学大学院医学系研究科の岡部繁男 教授にご説明をお願いしています。2つ目のヒアリングは、解剖実習室の換気装置等の 開発状況について、興研株式会社の岩崎様、横野様にご説明をいただく予定となってい ます。  本日の出席者は、委員の先生方につきましては、2回目ということで、ご紹介は省略 させていただきます。本日は、唐沢委員は所用により遅れていらっしゃるという連絡を 受けています。  次第、出席者については以上です。 ○名古屋座長 続いて、事務局より、本日の資料の確認をお願いいたします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 資料の確認をさせていただきます。次第の後ろに「配布 資料一覧」がありますので、それでご確認いただければと思います。  資料1-1「解剖実習におけるホルムアルデヒドの使用実態」、資料1-2「解剖室にお ける循環型プッシュプル型換気装置によるホルムアルデヒド対策」、資料2「医療現場 におけるホルムアルデヒドの規制に係る今後の検討予定」。最後は、参考「循環方式の ホルムアルデヒド発散抑制装置付き解剖実習台の開発状況」です。以上が本日の資料で す。 ○名古屋座長 ありがとうございました。お手元の資料は大丈夫でしょうか。  それでは、早急に議事に入ります。まず、議事次第(1)として解剖実習におけるホ ルムアルデヒドの使用について説明をいただきたいと思います。説明者は、東京大学大 学院医学研究科の岡部教授に来ていただいていますので、ご説明を20分程度でよろし くお願いいたします。 ○岡部教授 東京大学医学部の岡部と申します。私に与えられた役割は、あまり馴染み のない、大学における解剖実習というものがどういうものであるのかということをご理 解いただくことだと思います。 (パワーポイント開始)  解剖といっても、いくつか種類があります。我々が使うのは、正常解剖とよばれるも ので、法律的には死体解剖保存法という法律に準拠して行う行為です。その中には3種 類ありまして、正常解剖、病理解剖、法医解剖と呼ばれるものです。それは、それぞれ 大学の解剖学、病理学、法医学の教授又は准助教授が行う行為になります。私どもが扱 っているのは、このうちの正常解剖(系統解剖)と呼ばれるもので、医学部・歯学部の 学生が、その解剖教育の対象になります。  実際、解剖に当たっては、献体と呼ばれる篤志の方からのご遺体の提供が必須ですの で、それに関する詳細を決められた法律も存在しています。この中に「正常解剖」とい う言葉も出てきますので、正常解剖を行うのが、大学における医学部・歯学部の学生に 対する教育の1つであるということになります。  実際、正常解剖がどのように行われるかを簡単にご説明します。手順は大きく3つに 分けて考えてください。最初にご遺体(解剖体)に対する防腐処置、保存、実習室への 移動という作業があります。2番目が、実際の実習室における教育です。最後が、実習 が終わったあと、解剖体の処置を、また技術員が行います。この3つの過程に分けて考 えてください。  初めの解剖体の防腐処置、保存の部分ですが、これは、先ほど申しましたように、各 大学に献体の会が存在しています。これは、献体の希望者が実際に作っておられる団体 で、篤志の方のご遺体をこちらに寄付していただき、それを解剖体として実習に利用さ せていただきます。これは全くの無報酬の篤志の行為で、その方のご遺体を使って、医 学部で解剖の教育を行うことが、ひとつ、医師に対して、患者さんに対する献身的な気 持を養う意味でも、非常に意義があると考えています。  実際には、亡くなられた方のご遺体は処置室へ移されて、ホルマリンによる防腐処置 を施されます。このような作業は、献体の会のサイズにもよりますが、1年間に大体40 〜50回程度の防腐処置を行います。これは技術員が作業を行います。防腐処置を施さ れた解剖体は、実習時期まで保管庫で保存されます。  実際の作業風景の実態をお見せすると、これは東大の非常に古い解剖実習室ですが、 技術員がこの作業台の上で、ご遺体に対してホルマリン液の注入作業を行います。これ は大体1時間程度の作業で、そのまま固定が完全に進行するまで、1-2日待った後、頭 蓋骨を開けて脳を摘出する作業があります。その後、ホルマリンを除くために、60%エ タノールで、少し温度を高めにして、3週間程度処理をする作業をして、それから更に 解剖体を保管庫に移すという形になります。実際、作業をしている時に、この解剖実習 台の近くで測ったホルマリン濃度ですが、この場合は0.14ppm程度であったということ です。これは平均値になります。  これがエタノール処理をするための処置槽です。この中にご遺体を3週間程度保存し て、エタノールになるべく置換して、ホルマリンを除きます。  最後に、その保管庫ですが、このような装置で、この中にご遺体を、1つの保管庫当 たり8体から10体程度保管します。この状態で、一年に1回行われます解剖実習まで、 ご遺体を保存するということです。  次に、実際の実習室における教育ですが、医学部の学生が学部に上がって来るのが、 たいてい4月ですので、多くの大学で、4月頃から解剖実習を始めるのが古典的なカリ キュラムです。ただ最近は、医学教育のパターンがだいぶ変わっていまして、必ずしも これが守られていません。入学後1年、2年という早い時期に、この解剖実習を始める 場合も存在します。  実際の解剖のカリキュラムですが、医学部では、平均的に月曜から金曜まで、平日の 午後いっぱいを使って実習を行うことが多いです。40回程度の実習を行う必要があり ますので、週に5日行ったとしても、8週間かかります。休日・祭日がありますので、 2カ月から3カ月の構成になります。  規模ですが、医学部・歯学部の入学定員は大体60-100名であり、解剖体1体を大体 4名の学生で実習を行うことが多いです。2名あるいは6名の場合もありますが、平均 的には4名です。したがって、100名の学生が参加する場合には、25体程度の解剖体を 解剖実習室に準備することになります。  これが東大での現在の肉眼解剖実習のカリキュラムです。結局、要点としては、身体 のさまざまな部分を順番に解剖していきます。出だしがくびおよび体幹、それから上肢 にいき、体壁、胸腔、腹腔の内臓、それから下肢にいって、最後に骨盤、あたまという 順番で解剖を進めていきます。全体としては、肉体的にも非常に作業量の多い実習で、 学生さんは、それで非常に疲れるということをよく言われます。  実際の実習室のレイアウトですが、これは東大の現在の実習室で、横30m、縦10m程 度の非常に大きな部屋です。この中に全部で28台の実習台が置いてあります。これは、 今年春の実習の際に、実際、ご遺体を出した状態で測ったホルマリン濃度の平均値です が、大体この程度の値であったということになります。この部屋は全体換気をしていま して、大体この程度の換気量が毎時あります。  これは実際の実習室の風景です。ここに排気口が並んでいるのがお分かりだと思いま す。これが一つひとつの実習台ですが、このように並べられて、学生全体が1つの部屋 で実習を行います。  実習終了後の解剖体の処置ですが、実習期間中に、先ほど申しましたように、上肢か ら始めて、胸部、腹部の内臓を解剖して、また下肢に移っていくという形で進んでいき ますので、解剖の終了した臓器・器官は密閉できる容器に別途保管することになります。 実習終了時に、全ての終了した臓器・器官を棺に納めて、1週間程度の短期間保管しま す。最後、火葬場にお運びして、お骨はご遺族へお返しします。最後に、お骨をお返し する時に慰霊祭を行う場合が、各大学で多いと思います。  我々の実習室は、いまお話しましたように、非常に古典的で、まだ何も局所排気設備 などは設けていないわけですが、一部の大学では、既にホルマリン濃度の問題を検討し て、局所排気装置を設けているような所もあります。一例として、産業医大での実習室 の風景の資料をお借りしてきました。産業医大の場合には、部屋全体の換気技術は非常 に余力があったと伺っています。そのために、各実習台にそれぞれ局所排気の装置を付 けると。排気ダクトがあって、1つずつの実習台から送るという形の実習室をデザイン することができたそうです。これは部屋がかなり大きくて、かつ、もともとのそういう 換気装置に余力があるということが、たぶん、こういうレイアウトの条件だと思います。  どの程度ホルムアルデヒドの曝露が低下したかということですが、2001年、2002年 は導入前で、2005年は導入後です。導入前はかなり高かったわけですが、導入後は 66ppbという値まで下がったという報告をしておられます。これが実習室の中のホルマ リンの低減策です。  技術員が実際にご遺体のホルムアルデヒドを注入する場合ですが、これも産業医大で の例ですが、以前の方法は、こういう容器の中に柄杓でホルムアルデヒドをすくって入 れていたために、非常に高い濃度を記録していたのですが、これはすべて密閉容器で行 うようにしたという報告をいただきました。これは点滴バッグを利用して、ホルムアル デヒド容液を調合する場合も密閉できるような容器に入れて、ホースで直接この中に注 ぎます。この形で、こういう物を使わずに、この点滴バッグで実際に管理を行いますと、 劇的に空気中のホルムアルデヒド濃度が下がったということですので、こういう比較的 簡単な装置でも、処置室の中のホルムアルデヒド濃度は下げることができる例だと思い ます。  もう1つ、考えていただきたいということで、解剖実習の際には、3種類の異なった 人間がホルムアルデヒドに曝露される可能性があるということで、1つ目は技術員、2 つ目が教員、3番目は学生です。それぞれどういう形で接触するかと言いますと、技術 員・教員の場合には、例えば採用されてから約40年間、毎年その可能性があるわけで す。学生の場合には、入学して2年目か3年目に、1年のある特定の期間だけホルマリ ンに曝露する可能性があります。これは年のオーダーの考えです。  一方、1年間でどういう形になるかと言いますと、技術員は、毎週なり隔週なりに、 ご遺体が必ず搬入されてきますので、その際に処置をする必要があります。一方、教員 ・学生は、非常にある一定の期間、4月という場合が多いわけですが、4-6月ぐらいの 一定期間にホルマリンに触れることになって、かつ、濃度というのは、おそらく、最初 は完全なご遺体が実習台に載っていますから、その時期が非常に高くて、実習が進むに 従って解剖の操作が終わっていって、だんだんとホルマリンに対する曝露の量も減って いくだろうと考えられます。  以上のようなことがありますので、教員、技術員、学生それぞれに対して適切な対応 が必要と考えられます。技術員は長い年月にわたって繰り返し扱う。一方、個人での作 業が多いわけです。処置室の中に入っておられる方は、おそらく技術員だけで、1人、 2人で作業することになります。危険性についての知識も豊富で、作業についても熟練 することが可能であると。  対応策としては、先ほどの産業医大の例のように、防腐処置のときには、注入容器を 密閉化する、あるいはマスクを着用することが、いちばん対応しやすい方法だろうと考 えられます。  脳出しに関しては、やはり、その際に局所的な濃度がかなり上がる可能性があります ので、局所換気、マスク着用が必要かもしれません。  解剖体の移動、ライヘパックによる被覆も、作業としては非常に移動距離も大きいで すし、特定の場所の換気を良くしたとしても、これはホルムアルデヒド濃度が下がらな いと思われますので、マスクを使うのが、おそらく、いちばん実用的な改善策だと思わ れます。  次は教員ですが、教員も長い年月にわたってホルマリンを扱います。単年度で見れば、 比較的短期間だけホルマリンを扱うことになります。学生とともに作業をします。危険 性についての知識が豊富であって、熟練することも可能です。  対応策としては、教員が主に実習室でホルマリンに触れるわけですので、実習室の全 体換気と局所換気。解剖体をなるべく被覆して、むやみなホルマリンの蒸散を抑えるこ とが必要です。ホルマリン固定後のアルコール置換も非常に重要になってくると思われ ます。マスクについては、またあとで触れたいと思います。  学生ですが、学生がいちばん困ると言いますか、毎年新しい方が来られるわけですか ら、作業に熟練することは困難で、危険性についての知識は、こちらが教育しない限り 不十分です。教員の指導下で作業を行います。  対応策は、教員と大体似ているわけです。実習室での全体換気、局所換気をする。解 剖体をなるべく覆う。アルコール置換を行う。マスクについてはまたあとでお話します。  もう1つ重要なことは、学生というのは何のために実習をやっているかと言いますと、 教育としてやっているわけです。篤志者の献体を用いて必要な基礎知識を学んで、「献 身的態度」を養成する必要があります。ここで考慮しなければいけないのは、解剖体を 「危険物」と位置づけることが、果たして教育的かどうかという問題がありますし、実 際、実習が始まりますと、やはり初めて亡くなった方の身体に触れるわけですので、心 理的なストレスがそれ自体大きいわけです。それに加えて、これはホルマリンで処理さ れているので「危険物」であるというと、さらに心理的ストレスを大きくするという可 能性もあります。また、実習の際、先ほど言いましたように、非常に肉体的にも辛い作 業ですし、刃物としてメスを使ったりノミを使ったりという作業が続きますので、そう いう危険性についても配慮する必要があります。ですから、総合的に、実習の教育的効 果がどうなるのかを判断して、ホルマリンについての対応も行う必要があります。  ホルマリン濃度の測定に関しても、解剖実習は非常に問題があって、普通、実習自体 は一年に1回だけ行われます。しかも、解剖期間中、ホルマリン濃度は一定ではありま せん。実習の初めには必ず高くて、進行するに従って減少していきます。したがって、 濃度測定が可能なのは、一年のうちの非常に決められた、限られた期間に限定されて、 例えば実習室の設備を改変して、その効果があるのかどうかを検証すること自体、次の 年の実習まで待たないといけないことになりますので、非常に中長期的な改善計画で、 だんだんに向上させていくということが必要で、一気に変えることは非常に難しいと思 われます。  実際、こういう非常に大きな問題として、解剖実習室でのホルマリン対策というのが ありますので、今年7月に解剖学会で、各大学の現在の対応についてのアンケート調査 を行いました。大体90%程度の大学から回答が得られています。  A測定置、B測定値がありますが、それぞれ測ったと言っていただいた大学で、クリ アできた大学というのは非常に数が少ないです。まとめて書いてありますが、A測定値 でクリアできた大学が9%、B測定値が7%という結果を得ています。もちろん、これ は大学からの自主的な報告ですので、本当にそれが正しい測定かというのは、我々は把 握しておりません。あくまで、アンケートをしたらこういう結果が返ってきたとご理解 ください。  どういうような設備を現在使っておられるかということもアンケートをとりまして、 いちばん多いのは全体換気設備を使っているという形です。プッシュプル型の排気シス テムを使っている大学は、まだ数は少ないということになります。  実際、ホルマリンの対策で、新たにいろいろな低減設備を導入された大学というのも アンケートでお聞きして、いろいろな大学からお答えをいただきました。この1番から 7番はさまざまな新しい対策の導入例です。それぞれ大学によって、1つの対応だけで 済ませている大学もあれば、複数のものを組み合わせてという大学もあります。経費に ついても、非常にばらつきがありまして、高額の費用をかけて改修された大学もありま すし、そうでもない所もあります。  実際にA測定値、B測定置がどう変化したかがここに載っていますが、概ね、改善は されています。ただ、0.1という基準をクリアできている大学は、こういう低減設備を 新たに導入しても、比較的数が少ないということですので、先ほど申し上げたように、 1回の改修で何かを導入して、それで基準値がクリアできるかといいますと、なかなか 厳しいところもあると。ある程度の時間をかけて、繰り返し毎年改善していかない限り は、なかなか0.1ppmという値は到達できないのではないか、と私自身は考えています。 (バワーポイント終了) ○名古屋座長 ご説明、どうもありがとうございました。ただいまから、ご説明に対す る質疑応答に移りたいと思います。何か委員の先生方からの質問等は、ありますでしょ うか。 ○大前委員 先ほど、ホルマリンを60%エタノールに置換するということを東大はや っていらっしゃるということですが、ほかの大学はいかがなのですか。 ○岡部教授 ほかの大学でもされている所が多いと思います。アンケート結果を見ます と、いまホルマリン単独という所は、非常に少なくなっていまして、その後エタノール 置換。あるいは、最初に固定するときから、ホルマリン+エタノール、あるいはフェノ ールといったものを使っている大学もあります。 ○圓藤委員 先生の大学では、特に局所排気をなさっていないと伺ったのですが、それ でこれだけの濃度に抑えられるのに、ほかでは、皆さんすごく高いのはどういうような ことが考えられますか。 ○岡部教授 私どもの大学は全体換気のシステムで、換気量が比較的多いのではないか と思います。ほかの大学の場合には、必ずしもそれだけの換気量はない可能性がありま す。あと、エタノール処理をしていない大学の場合には、直接高濃度のご遺体が出てき ますので、それで高くなっているという可能性もあります。 ○圓藤委員 標準法としてエタノール置換するというのは、ごく普通に考えてもいいわ けですか。 ○岡部教授 今回のアンケートで、実際どういう形で処理されているかということをお 聞きしたのですが、これはもう本当に大学ごとに、みんなバラバラでして、なかなか1 つの方法が主要な方法であるというふうに申し上げることができないですね。注入液中 のホルムアルデヒド濃度平均値というのを出しますと、大体3.9%という値が出ていま すので、そのレベルの所は大体そのぐらいの濃度で注入されています。低い大学は、一 桁低い所もあります。ほかのものを併用して、0.3%というような所もありますし、非 常に高い所も存在しています。 ○圓藤委員 エタノール置換は寒い地方ではできるけれども、南のほうでは使えないと いうふうな記載が何かでありましたが、それはあるのですか。 ○岡部教授 それは部屋の条件にもよると思います。部屋自体の空調がどの程度きちん としているかによるので、南のほうでも可能だとは思います。 ○圓藤委員 ただ、ご遺体の傷み方は早いのですか。ある程度の期間、実習しますね。 そのとき、一度出したご遺体は、一体一体遺体ケースには入れるけれども、保管庫には 戻しませんよね。 ○岡部教授 戻さないです。 ○圓藤委員 要するに、3カ月とか2カ月そこに置いた形になりますね。 ○岡部教授 はい。 ○圓藤委員 それでも、大丈夫ですか。 ○岡部教授 普通は大丈夫です。それはどの程度、こまめにきちんと覆ってというよう なことも関係しています。あと、乾いてしまうと、逆にそれで黴が生えやすくなったり することもあります。きちんとケアしていれば、通常の解剖実習期間中は大丈夫です。 ○圓藤委員 どうもありがとうございました。 ○名古屋座長 ほかに。 ○大前委員 いまの質問の続きなのですが、乾くためにかけますよね。その成分は何な のですか。 ○岡部教授 それはフェノールが多いです。 ○大前委員 ホルムアルデヒドはほとんど使わないのですか。 ○岡部教授 大学によるかもしれませんが、私のところではホルムアルデヒドは使って いないです。 ○大前委員 フェノールのみですか。それから、先ほど、先生の大学の実習室の縦横は お伺いしましたが、高さはどれぐらいあるのですか。 ○岡部教授 高さはきちんと測っていないので、正確な値はわかりません。3m程度だ と思います。 ○大前委員 気積が900立米くらいだと、1時間に10回換気ですか。10回換気して、 先ほどの0.14でしたか、0.24でしたか、そのぐらいになると。 ○岡部教授 はい。 ○大前委員 先ほど、先生がお見せになった写真の、横にルーバーの付いた装置があり ましたが、あれは空気を吸うほうですか、入れるほうなのですか。 ○岡部教授 吸うほうだと思います。 ○大前委員 そうすると、その解剖台の上、ちょっと高い所に口があって、そこから空 気を吸っているのですか。 ○岡部教授 そうです。 ○大前委員 床のほうには、あまり溜まらないですか。 ○岡部教授 いや、やはり溜まっていると思います。ですから、本当はもうちょっと低 い位置にもあったほうがいいのだと思います。 ○大前委員 どうも大学によって、実際に解剖をするやり方というか、それが随分違う ようで、非常に整然と特定の場所だけ、先生の指示に従って時間内にやるという学校と、 ある程度自由度をもたせまして、この期間内に自由にやりなさいという所とあると思う のです。そうすると、やり方によって出てくるホルマリンの濃度が随分違うと思うので すが、そこら辺の情報はアンケートの中にあるのですか。 ○岡部教授 実際の実習時間ですとか、どの程度規則を設けてやっているかということ は、今回は聞いていません。あくまで、ホルマリン関連の実習中の濃度ですとか、そう いうことを主に聞いていますので。確かに、比較的長時間、学生に実習を許している大 学もあります。例えば、夜の7時、8時までやっても構いませんよといっているところ は当然あるのですね。ただ、以前に比べますと、医学部のカリキュラム自体が非常に密 度が高くなっていまして、なかなかそういう長時間の実習自体ができなくなっています ね。ですから、全国的な傾向としては、決められたカリキュラムどおりの時間の中で実 習が進行している、という大学が増えているように思います。 ○大前委員 でも、実習のやり方は、例えば慶應の場合を見ていますと、必ずしも解剖 台の上だけではなくて、横の台にご遺体の一部を持ち出して解剖をしている所もあるよ うですが、そうしますと、おそらくだいぶ濃度が違う。先生の所のこの0.14というの は、どういうようなタイプの解剖のやり方なのですか。 ○岡部教授 我々の所はごくオーソドックスな方法で、ただ、あまり実習台以外の所で のいろいろな処置はさせていないです。ただ、例えば内臓を解剖して、取り出した臓器 の重量を測るといったことがありますし、中をもう少し詳しく実体顕微鏡で見たいとい うような学生の希望もありますので、そういった際は、当然、実習台からほかに移動さ せるということが必要になります。 ○名古屋座長 エタノールに置換していますが、そのときに残留ホルマリンというのは どのくらい残るのですか。それはわからないですか。 ○岡部教授 それは非常にわかりにくいと思います。それは我々も知りたいのですが、 実態としてはよくわかっていないです。 ○名古屋座長 先ほど、先生の所の実習室のところの中で、0.24と0.14なのですが、 換気のところは周りにある所が吸引口になっていて、という形の考え方でいいのですか。 「正常解剖の流れ(8)」というところにありますが、そこが吸引口であって、供給が あって、そこから全部吸引していて、それで全体換気と。全体換気というと、どちらか というと、風を右から左に流して、全体換気というイメージがあるのですが、これは、 四角の所が吸引口と考えてよろしいですか。 ○岡部教授 四角の所は実際には柱の位置だと思います。 ○名古屋座長 そうすると、どういう形の全体換気をされているのですか。 ○岡部教授 吸引口は確かに柱に沿って上からダクトが落ちている形になります。部屋 の上のほうというか、この図で言うと上側と下側にそういう空気の出口があるわけです ね。 ○名古屋座長 供給するのは、その柱の横に付いているダクトからであるとすると、出 てくるのはどこから出すのですか。 ○岡部教授 出てくるのも、その柱のほうだと思います。 ○圓藤委員 24時間換気ですか。 ○岡部教授 実習期間中は24時間換気しています。 ○名古屋座長 例えば、このときには当然0.24くらいですから、マスクはさせるとい う形はされなくて、普通の状態で解剖されていると考えてよろしいですか。 ○岡部教授 ええ、これは4月に測定したわけですので。初めて実際に測ってみたとい う状態です。 ○名古屋座長 これだと、心理的なものもあるかもしれませんが、例えばホルムアルデ ヒドが原因で気持が悪くなったという、そういう学生さんはいらっしゃるのですか。 ○岡部教授 いわゆるシックハウスのような形で、アレルギーのある方というのがたま におられます。それは毎年ではないです。数年に一度ということですので。 ○圓藤委員 お測りになった機械は何ですか。 ○岡部教授 私、測定のときに立ち会っていませので、どういう形の機械で測ったかは 知りません。 ○圓藤委員 これは何カ所かの平均濃度なのですか。 ○岡部教授 いえ、これは、この1カ所です。 ○圓藤委員 1カ所1回ですか。 ○岡部教授 ええ。実習をやっている最中に1回測ったという値になります。 ○名古屋座長 実習のどの時間帯というのはわからないのですね。 ○岡部教授 実際に解剖を始めてすぐだったと思いますので、予想としては、比較的濃 度が高そうな時間帯に測っています。 ○名古屋座長 ほかにお気付きの点ありますか。 ○大前委員 技術員の処置室には、そういう局所排気装置、あるいは全体換気装置等は あるのですか。 ○岡部教授 処置室も同じような排気をしています、全体換気で。 ○大前委員 処置室のほうの濃度はまだ測定結果はないですか。 ○岡部教授 処置室のほうも大体同じような。「正常解剖の流れ(3)」という所で、 0.14という値が出ていますが。 ○櫻井委員 先ほど、マスクのことは、また後ほどというふうにおっしゃったのですが。 ○岡部教授 マスクをしながら実習をするというのは、「危険物」というような認識を 学生にかなり強く与える可能性がありますね。ですから、教育的な効果ということを考 えると、少し判断する必要があると思います。もちろん効果は非常にありますし、安価 な方法ですので、導入するというのは1つの可能性だと思いますが、導入する際には、 それが学生にどういう教育効果を与えるのかということを少し考慮する必要があると思 います。 ○大前委員 いま先生がおっしゃった教育効果というのは、悪いほうに出るという意味 で教育効果とおっしゃっているわけですね。 ○岡部教授 まあ、そうですね。学生がストレスを感じる可能性がある要因が、また1 つ増える、それを大きくさせる可能性があるという意味です。 ○大前委員 ちなみに、そのアンケートですと、マスクをやっている大学というのはど れぐらいあるのですか。 ○岡部教授 このアンケートでは、マスクをしている大学の直接の割合がわからないで すね。複数の大学から「マスク着用」という回答は返ってきていますので、既に行われ ている大学はあると思います。 ○櫻井委員 技術員がマスクをやっているのか、あるいは学生なのか。 ○岡部教授 いまのは学生ですね。 ○圓藤委員 個人的なことになるかもしれませんが、ご遺体への尊厳とホルマリンとい う有毒ガスのためのマスクというのは、もともとは違うと思うのですが。どうもそこを 学生に。 ○岡部教授 もちろん、そうです。それは明らかに違うことで、学生の視点で、そうい う教育ができれば問題がないと思います。ただ、やはり教育というのはいろいろなファ クターがありますので、どの程度徹底できるかということだと思います。 ○名古屋座長 あとは技術員の曝露している時間と、学生さんはかなり短時間、短期間 ですよね。使用する場所は、この場合は同じ場所を使用するのですか。 ○岡部教授 いえ、処置室は全く別の部屋で、実習室とは離れている場合も多いと思い ます。 ○名古屋座長 実習室は、本当に限られた期間だけの所ということですね。 ○岡部教授 はい。 ○名古屋座長 臨時の作業とは言いませんが、そういう形で。技術員は意外と、定期的 な形の仕事はあるねということですね。 ○岡部教授 東大の場合ですと、建物の1階に処置室がありまして、技術員はそこで作 業をされています。実習室は3階にありまして、それはエレベーターで移動するような 形になっています。 ○櫻井委員 先生のお感じだと、それを同じに扱うのはどうかと、それはやはり分けた ほうがいいですか。 ○岡部教授 そうですね。かなり内容が違いますし、作業時間、期間も違いますし、そ れは当然分けるべきだと思います。 ○櫻井委員 気温の影響はどうなのでしょうか、濃度ですね。6月頃お始めになるとい うと、夏にかかりますから。 ○岡部教授 当然よくないですね。 ○櫻井委員 でしょうね。 ○岡部教授 ですから、我々本当は冬にやりたいのですが。ただ、やはり学生さんが4 月に来られて、まず人体の基本を勉強するという形で、4月に始まるのがオーソドック スな実習期間になっています。 ○大前委員 先生は正常解剖のご専門なので、病理のことを聞くのはちょっと筋違いか もしれませんが、病理の実習のことを思い出しますと、結構肉眼病理で、ずぶずぶに濡 れた病理の臓器を持って来られて、私は直接ここにある状態で処理をしたのですが、病 理のほうはどうなのですか。時間はおそらくもっと短いと思いますが、濃度は相当正常 解剖よりも高いか、あるいは設備がちゃんとないような気がしますが。 ○岡部教授 病理の場合は、ご遺体に対する病理解剖のときにはホルマリンはないわけ です。臓器を摘出した後の処置としてホルマリンを使うということになりますので、比 較的局所排気台ですとか、そういうもので対応は可能だと思います。 ○大前委員 学生の実習もありますよね。肉眼実習ですね。そのときも、やはりそれな りの設備が。 ○岡部教授 学生の実習も、全体教育としての病理の実習は、たいていはもう出来上が ったプレパラートを用いた、顕微鏡の実習なのですね。マクロのほうの実習は、むしろ 今は少人数教育でやっている所が多いと思います。ですから、5、6人の学生を相手に そういうものを見せるということですので、規模はかなり小さくて、局所的な実習台が あれば、対応はやり易いと思います。 ○櫻井委員 ついでに直接の話ではないのですが、司法解剖の場合、やはり保存のため に臓器をどこかに取り入れるとか、ホルマリン、ということもあるでしょうね。 ○岡部教授 それは当然あり得ます。顕微鏡の検査のために組織を固定してということ もあると思います。 ○名古屋座長 そういうものを保存するときに、二重袋にして保存するとか、そういう 意味での対策はされているのですか。それとも、あまりされていないですか。 ○岡部教授 私どもの所では現時点では、それはしておりません。 ○名古屋座長 というのは、先ほど、技術員の所と学生の実習との主な違いというのは、 確かに技術員のやる所のほうが常置はしているのですが、これを見ている限り、結構対 策が取れるような形になっています。ただ、実習室の場合は期間は短いのですが、対策 がなかなかしにくいという意味での違いはありますね、 ○岡部教授 はい。 ○名古屋座長 その辺、ちょっと考えてみないといけないのかなと思います。 ○岡部教授 そうですね。そう思います。 ○名古屋座長 わかりました。あと、ほかにどなたか。よろしいでしょうか。そうしま したら、先生、どうもありがとうございました。  次に、解剖実習室における換気装置等の開発状況についてということでお願いしたい と思います。説明者といたしましては、興研株式会社労働衛生コンサルタントの岩崎所 長と、本部マネージャーの横野さんに来ていただいております。説明はやはり30分ぐ らいでよろしくお願いいたします。 ○岩崎所長 興研労働衛生コンサルタント事務所の岩崎と申します。 (パワーポイント開始)  私に今日与えられたテーマとしては「解剖室における循環式プッシュプル型換気装置 によるホルムアルデヒド対策」ということでお話をします。解剖室における換気装置を 設置する上では、いろいろと課題がありまして、まず、実習室内における換気装置の設 置スペースに限度があるのではないかということです。また、実習をなるべく妨げない ということもあるかと思います。そして視野を妨げないとか、あるいは、必ず定期的に 掃除をしなければならないとか、こういった課題が換気装置を設置するときに考えなけ ればならない点ではなかろうかと思います。  もう1つ、換気装置を設置して、それを屋外へ排気する場合の課題として、解剖室が 地下室にあったり、あるいは高層建物の場合には、ダクトの配管で屋外へ排気すること は非常に困難になってくるということではないかと思います。それから、ホルムアルデ ヒドのガス処理をせずに、屋外へ排気した際の近隣の影響も考えなければならない。そ して、屋外排気した際に排気量と同量の給気量を入れて、かつ、献体管理上の低温湿度 に維持された空調でなければならない。したがって、CO2の排出量が多くなったりもす るのではないかというような課題等があるのではないかと思います。  そこで、私どもはそのような観点からプッシュプル型換気装置の開発をしまして、そ の特長として、まず1つは風量・風向が制御された、すなわち一様な気流を保持し、そ の気流によってホルムアルデヒドを拡散せずに換気して、実習生への曝露防止を実現で きるようなものを開発したということになります。また、解剖室の空調への影響が少な い、循環方式を採用したということにもなります。さらに、循環式ですので、プッシュ プル換気のプル側には、高性能のFAフィルターが設けられてありホルムアルデヒドを 除去して排気をするということになります。  この循環方式のプッシュプル換気は、全体換気や局所排気装置と比べますと、消費電 力を抑えることができて、それによって温室効果ガス、CO2の排出削減に貢献できる装 置ではないかと思います。それから、既存の解剖台をはさんで設置することが可能であ り、また、PUSHフード、PULLフードは独立したセパレートタイプで、レイアウト変更 にも対応が可能であります。したがって、このような特長等を持ったプッシュプル型換 気装置を開発したわけであります。  これがプッシュプル型換気装置ですが、こちら側がPUSHフードで、こちら側がPULL フードです。このPULLフードにはFAのフィルターが8枚入っておりまして、PUSHフ ードの送風量は5立米/分、PULLフードの排風量は12立米/分ということで、非常に少 ない送排風量で効果が得られるシステムであります。  実際の設置例ですが、このように既存の解剖台をはさみまして、こちら側がPUSHフ ードで、この中にファンが組み込まれております。それから、PULLフードにもファン が組み込まれておりまして、この下の所にFAのフィルターがあり、このタイプは水平 流のタイプのプッシュプルであります。  また、大学によっては下降流のタイプを希望される所もあるのですが、それに対応し て、我々はこの図に示されるような下降流についても開発をして、実際に大学へお持ち して、デモを行った経験があります。この場合ですと、非常に設置面積が広くなってし まう。また、送排風量も、PUSHフードの送風量がたしか13立米/分ぐらいで、こちら のPULL側の排風量が47立米/分、トータルで60立米/分の空気量が使われるというこ とで、なかなかこれが実現に至らないということであります。  そこで、先ほど示しました水平流の基本的な設計と、気流のシミュレーションとをご 紹介します。この設計の条件としては、ここに示してありますが、先ほどの課題を考慮 に入れながら、周囲を見わたせるような高さ、あるいは設置スペースを考えてあります。 それからダクト等の工事も不要であります。また、ホルムアルデヒドの除去では、高性 能のフィルターが8枚内蔵してあり、このフィルターの交換目安は運転時間を積算する 積算タイマーを内蔵しております。それから50サイクル、60サイクルの地域でも風量 が変化しないような方式を採っております。さらに、フードの固定及び移動が可能なこ と、そして高さが異なる解剖台にも適応できること等が盛り込まれております。  ここにシミュレーションをした図がありますが、このグリーンの等速線は、PUSHフ ードからPULLフードまで0.4m/sの一様な気流をずーっと保っております。このPULL フードの近傍にきますと、0.4m/sよりも少し大きくなり、0.45m/sから0.5m/sぐらい の気流の速さになります。ですから、PUSHフードから流れた一様流が漏れるようなこ とは一切ないわけですね。シミュレーションによりその送排風量は、気流の状態を見な がら、PUSHフードの送風量が5.4立米/分、PULLフードの排風量が12立米/分、この状 態で、このシミュレーションを見て、流れが必ずPULLフードに吸い込まれていること、 それから、もちろん実験も併せてやっております。プッシュプルの場合には、PUSHフ ードとPULLフードの流量比というのが非常に重要なわけですね。性能を評価する上で は、この流量比というのは、非常に重要な点でもありまして、今回の場合には実験結果 から2.22という流量比を使っております。  また、プッシュプル型換気装置の性能要件として、告示では捕捉面の平均風速が 0.2m/s以上、ここに捕捉面を取りますと、そこを通過する速度が0.2m/s以上であり ます。また、捕捉面のばらつきなのですが、捕捉面平均風速の±50%以内。もう1つは、 換気区域と換気区域以外の区域との境界におけるすべての気流が吸込み側フードの開口 部に向かうこと。この3つが告示で示されている性能要件なのです。その性能要件等に ついて実際に測定をして、十分に一様性というものを確認しております。  次に動画を見ていただこうかと思います。こちらのPUSHフードからトレーサーとし ての煙を出しております。こちらがPULLフードなのですが、こんなふうな一様な気流 が流れまして、PULLフードにすべて吸い込まれていく状態がおわかりかと思います。  実際の設置例としては、ここに示すように、既存の解剖台の両脇に設置して使われて いるということになります。  この特長の1つとしては、使用している期間はこのようにして使うわけですが、あと、 レイアウトを変更することも可能ですし、実習が終われば、このように隅のほうに並べ まして、この部屋の中の掃除をしたり、そういったことが容易にできるように考えてあ ります。  次に解剖台のホルムアルデヒドの濃度の測定ですが、実際に解剖台上のご遺体がここ にありまして、ご遺体の真上、ここが発散源ということになりますが、その点((1))と、 それからプッシュプル換気の上部の所の3点((2)、(3)、(4))を取って、濃度を測っており ます。平成18年度の濃度と19年度の濃度では、発散源((1))の濃度はそれほど変わって おりません。また、この発散源の濃度というのは、ここでホルムアルデヒドが発散して いるわけですから、PUSH側からプッシュ気流がずーっと流れていきますが、やはりこ この濃度は上がったり下がったりということで、低減は見られないのですが、プッシュ プル換気の上部の2番((2))、3番((3))、4番((4))のこの近傍の濃度は、プッシュプル換 気が稼働時というのは非常に落ちている。例えば、18年度の2番((2))目の濃度は1.21 から0.37。あるいは1.28から0.30というふうな形で低減しているということが見ら れております。  解剖実習室内の気中濃度の測定ですが、一応9点を取っておりますが、それもここに 平均値が示されているように、稼働時は停止時に比べると、かなりの低減が見られます。 それから、平成18年度はプッシュプル換気装置9台の導入だったのですが、そのとき には0.96ppmから0.4ppm、0.86ppmから0.48ppmぐらいまでの低減だったのですが、19 年度にプッシュプル換気装置17台に増加しまして、その濃度を見ますと、やはり増や したことによって、1.38ppmから0.27ppmまで低減ができ、プッシュプル換気装置を8 台増やすことにより、気中濃度を約2分の1ぐらいまでに低減することが可能になった ということであります。  しかし、管理濃度である0.1ppm以下にはなかなかならなかったという測定結果であ ります。その理由としては、解剖台にこんなふうにプッシュプル換気装置が設置される のですが、実際に学生さんが使われているのを見ますと、プッシュプル換気装置の配置 が乱れてしまうのですね。また、解剖台の上ではなくて、プッシュプル換気の流れ以外 のところで解剖していたということがわかったわけです。ですから、そういう問題点が あって、0.1ppm以下にならなかったのではないかということでもあります。  ですから、そういう意味では、解剖実習室の解剖台の脇に、実習で使われた臓器だと か、そういうものを入れるようなバケツがございましたが、そのバケツの蓋をきちっと 閉めるだとか、そういった作業管理ということが同時に行われないと、0.1ppm以下に することはできないのではないかという印象を受けております。  次に、解剖準備室についての測定結果ですが、これは注入と抜脳の作業です。この写 真に示すような形で作業が行われております。その注入作業に対して、両サイドにプッ シュプル換気装置を設置して、測定をしております。抜脳の作業では、頭のところの両 サイドにプッシュプル換気装置を設置しております。これは解剖実習室で使っているプ ッシュプル換気装置を移動してきて使用しているということです。  その測定結果ですが、注入作業時ではプッシュプル換気が停止しているときの濃度も、 実習室よりかなり低い値を示しておりますが、プッシュプル換気を稼働すると0.1ppm 以下になったという結果です。ですから、解剖準備室では非常に管理が行き届いている ということでもあると思いますが、0.1ppm以下に低減することが可能であるというこ とです。  もう1つは、準備室の気中濃度を測った結果です。これも大体プッシュプル換気稼動 前の濃度は、0.13ppm〜0.38ppmぐらいの値だったのですが、プッシュプル換気を稼働 すると、ほとんど0.03ppmとか0.08ppmですから、0.1ppm以下に低減することが可能 です。ここに0.2ppmというのがありますが、但し書きがありますが、測定点(3)の近く で開放した容器を少し移動したという経歴があります。そのことによって0.2ppmにな ったということです。  これまでが解剖実習室における、あるいは処置室における結果ですが、このプッシュ プルの解剖実習用のPULLフードにはFAフィルターが内臓されております。これは8枚 内臓されているわけですが、このフィルターはホルムアルデヒド専用の活性炭を使って おります。  その除毒能力ですが、こちら側が有機ガス用の活性炭を使った場合、こちら側がFA ガス専用のフィルターを使った場合です。例えば試験濃度が3ppmですと、有機ガス用 では3分しか持たないわけです。FA専用のフィルターですと、およそ100時間ぐらい 持つという結果が出ております。もちろん濃度が高くなって、10ppmぐらいになると、 有機ガス用は即破過してしまいますが、FA用は47時間ほどの長時間使用できるという ことです。  FAフィルターの性能ですが、上流側が30ppmで下流側が0ppmになる状態が1時間以 上可能なのですが、上流が30ppmで0.1ppmの破過時間は3時間以上、上流側が1/30の 1ppmでテストすると、0.1ppm破過時間は92時間以上という長時間持つという結果が得 られております。実習時間は、先ほど岡部先生がおっしゃったように医科系では20日 間ぐらい、歯科系では16日間ぐらいと言われておりましたので、我々の使用実績から すると、このフィルターが大体2年ぐらい使用できるのではないかという試算をしてお ります。  フィルターの管理方法ですが、ガスモニターで常にモニタリングをすること、検知器 を使うこと、あるいは検知管を使うという3通りがあろうかと思います。これは常に監 視をして、排出の濃度を常に管理するということです。検知器や検知管は常時モニタリ ングすることはできませんが、解剖実習あるいは処置室では濃度も数ppmですから、検 知器や検知管で1日数回PULLフードの排出口の濃度を測ることもできるのではないか と思っております。  FAフィルターの監視モニタリングも、こういった解剖実習室のプッシュプル換気装 置5台ぐらいずつの排出口濃度を、ガスモニターまで配管により導き、常に監視をしよ うということです。  実際には、連続監視モニタリングシステムは処置室でやっております。この結果は解 剖学会の総会で発表されております。  これは常時監視するガスモニターです。これは検知器ですから常時監視はできません が、こういったものも使って測定も可能ではないかということです。  FAフィルターの検証結果ですが、室内環境を悪化させないために、FAフィルターの 下流側のFA濃度を連続的に監視して、設定濃度に達した際に、警報によりフィルター 交換時期を知らせてくれるものです。その検証結果ですが、未稼働時には設定したFA 濃度値(例えば、管理濃度0.1ppm)で警報を発することが確認できております。また、 抜脳作業時には連続測定して、プッシュプル換気稼働時には0ppmの値を示し、基準値 以下のFA濃度値が維持されたということで、この結果も解剖学会で発表しております。  次に屋外排気の問題点ですが、2つほどあろうかと思います。通常、解剖室では献体 管理上、低温湿度に維持管理するために、空調設備が設置されております。屋外排気を 増設する場合には、同時に空調設備を増設する必要があります。したがって、増設に多 大な費用がかかり、CO2の排出量も増えるのではないかということになります。また、 ホルムアルデヒドを直接屋外に排出すると、近隣地域への問題も生じてくるのではない かということです。  プッシュプル型換気装置稼働時に必要となる、屋外排気方式の空調設備の増設費用で すが、実習台を17台としてプッシュプル型換気装置を設置すると、全体の風量は204 立米/分になります。これを実際に屋外排気するとなると、空調設備、ダクトの工事、 その他の費用等がありますが、試算しますと、合計で約4,800万ほどかかってしまいま す。  屋外排気と還流する場合の消費電力及びCO2の排出量の対比ですが、実際に屋外排気 すると30kgのCO2が排出され、還流すると約3kgとなり、還流することによりCO2の 排出量が10分の1になるのではないかと計算しております。  したがって、これは想定ですが、解剖実習室に25台の換気設備を設置した場合、1 時間に20回の換気回数の全体換気をした場合を計算した風量が約200立米/分で、この 値から消費電力を計算します。局排の場合には、ここに書いてありますが、この条件で 処理風量を計算すると325立米/分、今回開発したプッシュプル型換気装置ですと消費 電力に非常に違いがあり、実際にCO2の排出量を比較すると、83%ほど削減可能ではな いかということです。  最後に、これまでの話をまとめますと、実習室内と解剖台近傍のホルムアルデヒド濃 度はかなり低減することができたということです。また、準備室内のホルムアルデヒド 濃度は0.1ppm以下に低減することもできたということです。しかし、実習室内のホル ムアルデヒド濃度を0.1ppm以下にするためには、実習生へのプッシュプル型換気装置 の性能の確保に関する換気設備の取扱いの教育や作業管理が不可欠ではないかと思いま す。  また、全体換気や局所排気装置に比べて、電力消費及び温室効果ガス(CO2)の排出量 を最大83%削減できたということでもあります。さらに、高性能のFAフィルターの使 用が可能で、費用対効果の観点からも合理的な対策が可能ではないかと思っております。 今後、実習生への換気設備の取扱いの教育や作業管理を行った上で、実習室内のホルム アルデヒド濃度の測定を行う予定としております。ご清聴ありがとうございました。 (パワーポイント終了) ○名古屋座長 ご説明ありがとうございました。それでは、ただいまのご説明に対する 質疑に移ります。何かご質問等ありますか。 ○櫻井委員 先ほど、実際に測定したデータをお見せいただきましたが、その際、各献 体から発生する単位時間当たりのホルムアルデヒドの量が問題だと思います。それがい ちばん利いてくると思うのですが、先ほど岡部先生がご紹介になった方法で発生を少な くする処置は、この場合はされていたのでしょうか。 ○横野マネージャー エタノール処理はされていません。 ○櫻井委員 そのポイントは非常に重要ではないかと思います。何らかの方法で発生量 を抑制する、それプラス、プッシュプルであったら、もっと期待した数字が得られるか なと思います。 ○圓藤委員 櫻井委員と同じことなのですが、実習室のご遺体と、測られた準備室のご 遺体の濃度がものすごく違うのです。ですから、もう1つ考えられるのは、実習室の濃 度が下がらなかったのは、プッシュプルが破過しているのではないかという気がしたの です。これがよくわからないのですが、プッシュプルのフィルター性能は、11頁の除 毒能力では3ppmで100時間と書いてありながら、12頁では1ppmで92時間。 ○横野マネージャー 前段の比較は、防毒マスクの吸収缶の中に入れている剤で比較し たもので、防毒マスクに入れている活性炭の剤と今回の装置の剤が同じだということで、 その辺は整合性がないのですが。 ○圓藤委員 11頁のFAガス専用というのは、フィルターとは違うという意味ですか。 ○横野マネージャー フィルターに入っている中の剤のことです。 ○圓藤委員 実際は、フィルターの性能で測るわけですね。 ○横野マネージャー 次の頁のものが、実際の今回の装置の性能になっております。 ○圓藤委員 これは温度は何度でやった実験ですか。20度ですか。 ○横野マネージャー はい。温度が20度で、30L/分、湿度50%の設定になっています。 ○圓藤委員 それはFAフィルタの性能のとき。実際に、これはどれだけのエアーを流 したのですか。おたくが設定している状態でやったということですか。 ○横野マネージャー はい。FAフィルターの性能による試験条件なのですが、試験温 度は20度で、試験流量が1.5立米/分、使用ガスが30ppmのホルマリン濃度でやったデ ータが別にあるのです。 ○圓藤委員 これとは違うということですか。ここに出された性能は、1.5L/min。 ○名古屋座長 11頁の下ですか。 ○圓藤委員 12頁の上の性能は、12立米のプッシュプルではないのですか。 ○横野マネージャー これはFAフィルター自体の性能になっていますので、FAフィル ター自体を測定した破過試験結果があって、それから求めたものになっております。 ○圓藤委員 それが20℃で1.5立米/分で流したということですか。 ○横野マネージャー そうです。1.5立米の試験流量で、30ppmのホルムアルデヒドの 濃度で流したものです。 ○圓藤委員 92.5時間というのは、このフィルター1枚がということですか。 ○横野マネージャー そうです。 ○圓藤委員 ということは、実際はもっと流量が多いのですよね。 ○横野マネージャー 実際の装置の流量とは、整合性が合っておりません。 ○圓藤委員 ですから、ここに書かれている実習期間が持つというのは、少し考え方が 違いますね。 ○名古屋座長 11頁の下に書かれている破過時間と12頁の上に書かれている実験条件 が違うから、違うと考えていいのでしょう。 ○横野マネージャー はい。 ○圓藤委員 もう1つ、実際に使うときとも違いますよ。 ○横野マネージャー たぶん、そうです。実際の現場も違います。 ○名古屋座長 捕捉面のスピードが違うのだから、当然流量が違いますね。 ○櫻井委員 7頁のデータですが、これだけでは満足しない要因として、いまおっしゃ ったような点プラス、どちらがどれだけ利いているかは、当然手を入れたりして流れを 妨害する行動を取りますよね。それが大きいかなと思ったのですが、どうなのですか。 どれがどれぐらい利いているのですか。私はあまりよく考えないで、この段階では十分 破過していないのだろうと思ったのですが、最初から破過しているようではしようがな いので、そんなことはないだろうと思ったのです。 ○圓藤委員 やはり横だと、人の動きでかなり妨害されるのではないですか。 ○櫻井委員 それは大きいと思います。プッシュプルは当然妨害されれば。 ○岩崎所長 当然流れがありますから、そういう中に手を入れたり、もちろん手を入れ て実習をやるわけですが、手を入れたときに一様な気流が手に邪魔されて、リバースフ ローという渦ができます。しかし、周りに一様な気流が流れていると、あるところまで いくと、流れに沿って、また一様な気流に復元してくれます。その現象を実際にシミュ レーションしたり実験をして、球などを入れると、球の直径分ぐらい離れると、周りの 一様な気流の影響で一様流が戻ってきます。その現象を我々は「流れの復元性」と言っ ております。ですから、手を入れた時点のその周りでは少し乱れがあると思いますが、 750mmほどの気流の流れの幅の中で手を入れた200mmから300mmぐらいのところのスペ ースですから、実際に現場で実習をしている学生を見ていますと、それほど影響は出て こないと考えております。 ○名古屋座長 でも、それでなかったらプッシュプルになりませんから。それだからこ そプッシュプルなのですから。要するに、手が入ろうが何をしようが、妨害によって出 てはいけない。それが性能要件ですから間違いないと思います。 ○圓藤委員 ただ、実習のときは4人の学生がかかるわけですよね。そうすると、頭が 入ったり、動きが大きいので、準備室みたいな1人のときは想定が可能としても、実際 の場面ではかなり乱気流が出ているのではないですか。 ○岩崎所長 我々としては、実習をやるときには手だけを入れて、解剖台は大体600mm の幅で、その中にご遺体があって、向こうとこちら側の両方で実習をやっているわけで す。手を入れる所も、解剖台の端から大体200mm〜300mmぐらいの位置でやっているわ けです。ですからよほどでなければ、学生によっては頭を入れる場合もあろうかと思い ますが、このプッシュプル換気の開発としては、手を入れて実習をやっていただくこと で、頭を入れるところまでは想定していないのです。もし頭を入れる場合には、イレギ ュラーという形でマスクをしていただくことが必要になってくるかもしれません。 ○岡部教授 いちばんホルムアルデヒド濃度が高いのは、実習の初めです。実習の初め は60kgぐらいの物体が実習台の上に乗っていて、例えば体の前面だけではなく背面も 解剖するわけですので、当然60kgの物体をある程度持ち上げて裏側を解剖する際に、 手だけを実習台の上に入れろというのは、プロレスラーか何かでないと不可能だと思い ます。女子学生もおりますので、そういう方たちにそれをしろというのは難しいですね。  また、頭頸部をやるのであれば頭の部分1カ所に4人が集まりますので、4人が集ま ったときに頭と足の所に置いてある装置を全くその位置で使用することも、実際問題と しては少し難しいと思います。 ○名古屋座長 6頁では流量比が全部出ていましたが、7頁のときの捕捉面や流量比は わかるのですか。ここで解剖の濃度を求めたときの流量比と、ここで実際に測定された ときの流量比と捕捉面の測度と同じなのですか。 ○岩崎所長 全く同じです。捕捉面風速は0.4m/sで流量比は2.22でやっています。 ○名古屋座長 もう1つ、プッシュプルの場合、当然プルのほうの大きさを大きくすれ ば、いまみたいな形でイレギュラーがないですね。それは自由に変えられるのですか。 要するに、いまは既存のものでしかないから、献体に対する大きさが不十分かもしれな い。あるいは、もう少し大きくしたら、封鎖してもいろいろなものが漏れてこないとい う形のものができるのではないかと思うのですが、その辺りはどうですか。 ○岩崎所長 それを改善するとなると、例えばプル側のほうにフランジをつけるといっ たことも可能です。プッシュ気流は少し広がってきますので、広がっていきながらプル のほうに行って、プルフードの吸込み力によってフードの中に入っていくわけです。で すから、それがもし吸込み力がないとすると、外側に出やすくなります。そういう場合 には、フランジをつけて、それをカバーするようなことも可能ではないかと思います。 ○名古屋座長 これは、あえて流量比を2.2にしないで、3にしてもいいわけですね。 ○岩崎所長 かまわないと思います。 ○名古屋座長 そう考えると、2.2がいちばん理想という形で。 ○岩崎所長 できるだけエネルギーを少なくして効果を得ようということで、流量比が 2.22になったということです。3にすればそれだけ吸い込み側の量が多くなりますから、 プルフードの開口面からかなり先まで気流の速度が速くなります。ただ、それをやると ご遺体の乾燥という問題も出てくるので、その辺も考慮に入れながら、この流量比が決 められたということです。 ○名古屋座長 ということは、例えば溶接のときは0.5を超えると溶接不良が起こるか ら、プッシュプルはいけませんと。ということは、このときも0.4にしているのは、そ こも考えて捕捉面を0.4にされていると考えてよろしいのですか。 ○岩崎所長 そのこともありますし、解剖台のプッシュプル間距離が2m以下の場合に は、大体0.4m/s前後あれば一様な気流が到達できるという実験もやっております。こ ういった実験結果から流量比が求められております。 ○名古屋座長 もう1つ、6頁のときのホルムアルデヒド濃度の測定のところで、(2)、 (3)、(4)を取っていますね。先ほどの一様量の動画を見たときに気になったのは、(4)の部 分ではなくて、プル側の上から漏れている感じがするのです。ということは、たぶん(4) ではなくてプッシュプルの壁で取っておくとどうなのでしょう。ホルマリンですから、 大きいから上を取れば濃度が低くなるのは当たり前なのです。そうではなくて、漏洩の ところですから、漏洩しているので、枠の近傍を取って評価しないと、(2)、(3)、(4)を取 ってもあまり意味がなくて、漏洩濃度をちゃんと把握した評価をしないとまずいのでは ないかと思うのです。 ○岩崎所長 プル側のフードの周りですね。 ○名古屋座長 そうです。プルの周りのほうを取らないと、上は当然濃度が低くて当た り前の話で、そこではなくて、問題は、そこから出てくるからこそ換気濃度が高くなっ てくるのかなと思ったのです。そこはやられたほうがいいのかなという気がします。 ○岩崎所長 おっしゃるとおりだと思います。 ○圓藤委員 それもフランジをつけたらよくなるのですか。 ○岩崎所長 もちろんフランジをつければ。いま名古屋座長が動画を見たときに少し漏 れているのではないかとおっしゃいましたね。それは、周りにフランジをつけることに よって、吸込み側のフードのほうに捕捉することが可能なのです。このわずかに漏れて いる気流は、捕捉面以外の気流ですので問題はないと思います。 ○圓藤委員 1つ教えてほしいのは、1部屋に1台だけで動かすときと、例えば実習室 は20台ぐらい一斉に動かすのですね。それは同じ流れをすると考えていいのですか。 ○名古屋座長 プッシュですから、その中で動いています。たぶん、それは大丈夫です。 ○圓藤委員 そこだけでいいのですか。 ○岩崎所長 空気の流れは、換気区域という流れ場がありますから、その中だけで流れ ていますから、ほかの実習台に影響することは全くないと思います。 ○大前委員 これは前から少しお願いしているのですが、実際に実習をするほうから見 れば、きれいな空気がほしいのです。きれいな空気が流れておりますが、部屋全体が汚 れているので、すでにプッシュの空気が汚れているのです。したがって、プッシュの空 気のほうをきれいにする何らかの対策をしていただかないと、実習をやっているほうの 曝露レベルは下がらないのです。どこで取ってもかまいませんから、部屋の環境はよく なるでしょうけれど、実習をしているほうの曝露レベルは下がらないので、これは何と か考えていただきたいと思うのです。  もう1つは、工場などで見ているプッシュプルと比べると面積が小さい気がするので す。それは解剖台が60とすると、あれに合わせた形なのだと思いますが、普通はプッ シュもプルももう少し大きいですね。その分だけ能力が足りていないところがあるので はないかという気がするのです。 ○岩崎所長 大体製造業などで使われているプッシュプル換気は、発散源があって、発 散源に対して数百mm余裕を持って換気区域を形成できるプッシュ気流を流すよう計画し ています。ですから、非常に効果も高いのだろうと思いますが、解剖台の場合にはどう してもスペースの問題などいろいろな問題があって、大きくすると20何台すべてそう なってしまいますので、ぎりぎりのところでこの大きさになったということです。これ をカバーする上では、先ほど名古屋座長がおっしゃったように、フランジをつけること も効果を高くするだろうと思います。  また、いま大前委員がおっしゃったように、確かにプッシュ気流は、バックグラウン ドが高かった場合にはPUSHフードのほうにフィルターを入れて、きれいな空気を換気 区域に流せば、もちろん、いまの測定点(1)、(2)、(3)、(4)という発生源近傍の濃度もかな り低くなるはずです。ですから、そこにいる実習生も曝露が低減できるのではないかと いうのはおっしゃるとおりだと思います。 ○名古屋座長 一点教えてほしいのですが、これは解剖実習のホルマリン用のフィルタ ーを使っていますね。これは通常の活性炭をメーカーが加工してホルムアルデヒドを取 れるようにされているのですか。 ○岩崎所長 その通りです。 ○名古屋座長 一点気になるのは、普通、ホルムアルデヒド単体でやったときにはこの ぐらい精度が上がるけれど、メタノールなどのアルコール系と、要するに2成分系でや ったときは全然違う結果が出るはずなのです。吸着特性のいいものが入っていって、折 角取られたものが出ていってしまう。1成分系で実験すると、みんなそうなのです。1 成分系でされると必ず捕捉量は上がるけれど、2成分系でやると、活性炭の特性によっ て全然捕集効率が違って、折角取れたものがあとから吸着率のいいものが入ってきて、 全部追い出してしまうことがあるのです。ここはアルコール系が多いので、特にセンサ ーなどは無毒性のものがあってアルコール系に弱いから、ある程度1対1あるいは25 対75に変えて、2成分系でやった実験結果を出さないと、破過時間の予測がつかない のではないかと思います。是非それをやっていただけるとありがたいと思いますが、そ の辺りは実験はされているのですか。 ○横野マネージャー そこまでは用意していません。 ○名古屋座長 センサーがあって監視すればいいのですが、フィルターの管理をすると きにどうしてもセンサーをつけられないとなると、入ってきた濃度がどのぐらい取れる か、ある程度破過時間予測をしますね。そうすると、どのぐらいの予測ということの中 で、それよりも前で交換する時期が来ると思うのです。そういうことを考えると、2成 分系である程度実験しておかないと、管理をする形にしたときにはデータとしてほしい なということになると思います。 ○大前委員 実際にどこかの大学で測ったときには、もちろんホルムアルデヒドも出ま すが、蟻酸が出たり、エタノール、フェノールなどが全部出てくるのです。場合によっ てはアセトアルデヒドも出てくるので、単純にホルムアルデヒドだけ測っていていいの かなと。これはプッシュプルとは関係ないのですが。エタノールは本当に大丈夫かとい うのが、非常に疑問なのです。 ○名古屋座長 センサーも、私はグルタルのときに経験しているのです。イギリスで開 発された機械なのですが、グルタルアルデヒドはアルコール系妨害ガスで使えないので す。実際にグルタルアルデヒドを使っている工場で管理するときにはいいのですが、医 療系に持ってくると、アルコール系が全部センサーにいたずらするのです。結果的には 使えないというデータがいっぱい出ているので、そういう意味で考えると、アルコール がセンサーの邪魔をしたり、活性の捕集特性にもいたずらをするので、その辺りは早め にメーカーとしては自分の所でつかまえておいたほうがいいのかなという気がします。 ○櫻井委員 素人っぽい質問ですが、プッシュプルに全体換気を併用することはいかが なのでしょうか。効率がいいのではないかと思いますが。 ○岩崎所長 非常にいいと思います。いま実際にプッシュプルが設置されても、全体換 気は1時間当たり8回から9回ぐらいの換気をやっております。ですから、非常にいい 方法と思います。 ○名古屋座長 結果的には吸気する空気をきれいにするという意味では、全体換気をし たほうが負荷がかからないし、メンテナンスは持つということですね。 ○櫻井委員 フィルターをつけるよりも、そちらのほうがいいのかなという感じですね。 ○名古屋委員 あと、お気づきの点はよろしいでしょうか。どうもありがとうございま した。もう1つ、資料の中で興研さん以外でも、いろいろ換気を開発された情報がある と思うので、それを事務局からお聞きしたいと思います。 ○島田化学物質評価室長 あくまで私ども事務局が解剖実習台関係の開発状況をヒアリ ングした事例ですので、その例としてご説明します。参考資料があるかと思いますので、 それに従ってご説明します。実際には数社から、特に循環方式の発散抑制装置について のヒアリングをしました。外部排気型のものについては、これらのメーカー以外でもい ままでかなり広く使われておりますので、ここにお示しする以外にもかなりのメーカー が開発していますので、今回はあくまで循環型のもの、解剖実習に利用ができるものに 限って載せております。上の2枚が、合計6社のヒアリング結果です。また、それぞれ に関する補足のデータが別添の形でついておりますので、それに従ってご説明します。  A社の例ですが、これはいま興研株式会社からご説明いただいたタイプのものですの で割愛します。  B社ですが、これは「局所排気」となっておりますが、換気装置の部類で、解剖台の 辺縁部分の吸気グリルという所からホルムアルデヒドを吸収して分解する換気装置と聞 いております。別添2にその概要がついておりますのでご説明します。この解剖台につ いては、発生するホルムアルデヒドを解剖台の吸気グリルから吸収し、ホルムアルデヒ ドを分解処理する解剖実習台ということです。解剖台の下の部分に吸気を処理するスク ラバー装置が付いていて、ホルムアルデヒドの水に溶けやすい性質を利用し、特殊な薬 品によりホルムアルデヒドを分解するということで、吸収した水については、約3日か ら1週間程度の期間の中で交換をすることにより、除毒ができるということです。併せ て光触媒の分解も使っていまして、二酸化チタンにより酸化による分解をしているとい うことです。ただ、分解過程で発生してくる生成物については、特にデータを持ち合わ せていないとお聞きしております。  C社のものですが、これはプッシュプル・タイプの換気装置のものです。別添3でご 説明しますが、解剖台に送風装置と吸引装置を装備するプッシュプル・タイプのもので、 特に解剖台の両端に送風装置と吸引装置を設置し、両装置の間に水平の気流を発生させ るものです。オレンジの矢印ですが、これは解剖台の下に処理装置がついていて、そこ に吸引をするものです。吸引の中には、1つは脱臭フィルターがついていて臭いを取り、 その後ガス吸着分解フィルターがホルムアルデヒドを吸着分解します。そのほか光触媒 を使っていて、臭気物質を除去した空気を再び同じ解剖台の上に水平気流として排気す るタイプです。吸気風量は5〜7立米/分です。  試験濃度については、カタログ値ですが、1ppmのものに対して吹出し口では検知管 で検出されていません。検知管の精度は0.1ppmで、0.1の濃度に達していないと理解 できます。  その周辺で行われた気中濃度の測定結果については、処理前の平均濃度が3.1ppmで あったものに対して、この機械を単独で稼働した場合の幾何平均値は0.52ppm、また、 同じ部屋の中に設置型の循環式ガス吸着分解装置、これは次の頁にF社の製品として載 っているものを同時に稼働した場合には、0.08ppmという試験結果が出されております。  次に、解剖台関連装置の技術開発についてご説明します。2頁にD社とE社の製品を 載せています。E社の製品については、先ほど興研株式会社からご説明いただいたガス モニターと同じものですので割愛します。  D社の製品については、別添4についております。先ほどエタノール置換というお話 もありましたが、これについてはホルマリン中和液で、献体保存のために使用するホル マリンを中和した形で、ホルムアルデヒドの発散を抑制する目的で、米国等では使用さ れていると聞いております。献体は、ホルマリンで一旦固定をして、たんぱく質とホル ムアルデヒドが反応していますが、反応せず残ったホルマリン、あるいはホルムアルデ ヒドが問題となるので、これをホルマリン中和液で中和してしまうということです。こ の中和液を注入することによってホルムアルデヒドの中和が可能で、解剖実習時に揮発 するホルムアルデヒドの濃度を低減し、健康被害の防止が可能だというお話を伺ってお ります。  使用方法としては、固定液の注入後24時間又は48時間後に、中和液約450ccに対し て水9.5Lの中和溶液を作成して血管に注入します。これにより、ホルムアルデヒド及 びグルタルアルデヒドによる固定液の殺菌作用を減じることなく中和することが可能だ ということです。  F社の部分ですが、これは設置型循環式ガス吸着分解装置です。解剖台に直接設置す るものではありませんが、室内設置型の循環式のホルムアルデヒド分解装置です。別添 6に資料を付けております。原理自体は、C社のプッシュプル・タイプのものと同じと 聞いておりますが、箱型の装置前面下部の吸気口から吸引した空気を、ホルムアルデヒ ド吸着用の専用フィルターで吸着して、きれいな空気になったものをエアフィルターや 脱臭フィルターで除じんを行った上で、処理済みの空気が排気口から室内に排気される ものです。これについても、試験濃度0.5ppmについて処理をした排気口の吹出し口の ガス濃度を測った結果、同じ0.1ppmを測れる検知管法では不検出であったという結果 が示されております。以上が、私どもがお聞きしたいくつかの例です。 ○名古屋座長 委員の方々から何かありますか。いまF社の説明で、カタログを見ると、 入気の濃度が0.5で排気が0.2以下となっていますが、その辺りはクリアできないとい うことですね。 ○島田化学物質評価室長 伺っているところ、別のデータかもしれませんが、0.5ppm のときに不検出となっているとお伺いしたのですが、カタログ値と違っておりますので、 これについてはカタログ値が優先されるのではないかと思います。 ○名古屋座長 もう少し高い濃度で出るのは0.1を切らないと、置く意味がないのでは ないかという気がして、カタログを見ると気になったので、確認していただければあり がたいと思います。 ○島田化学物質評価室長 承知しました。 ○圓藤委員 産業医大が入れている解剖台は、これとはまた違うやり方なのですか。 ○島田化学物質評価室長 いま岡部先生からご説明をいただいたものだと、私どもは理 解しております。そうであれば、外部に排気をするタイプのものです。 ○圓藤委員 循環式ではないということですね。 ○島田化学物質評価室長 はい、違います。 ○名古屋座長 産業医大の岡部先生がやられたときのものですから、ダクトが外に行っ ているものですね。だから、循環式ではありませんね。 ○櫻井委員 外へ排気したとき、どれぐらいの距離でどれぐらい濃度が拡散して低くな るかという計算があればと思うのですが、どうでしょうか。近隣への影響が心配だとお っしゃったのですが、その辺、敷地境界でどれぐらいになると思いますか。 ○名古屋座長 ソフトはあると思いますが、計算した結果がないでしょうね。 ○岩崎所長 我々は、シックハウスの実態調査でメッキ工場やいろいろな所の実態を調 べたことがあるのですが、例えばメッキを取り上げて言いますと、室内の濃度がメッキ の場合は非常に低い濃度から高い濃度まであって、作業によっては数10ppmぐらいにな るときがあります。そのときに屋外に行って濃度を測ると、大体4、5ppmぐらいで排出 口から出ています。それが1mぐらい離れるとほとんどなくなって、感知できないぐら いの濃度になってしまいます。 ○櫻井委員 ですから、排気された濃度が0.5ppmぐらいだったとして、あってもほと んどゼロになるのではないかと私は思いますが。 ○圓藤委員 それでもいいのですか。 ○櫻井委員 それでもいいのではないかと思うのですが。 ○岩崎所長 環境確保条例ガス規制基準ではその排出濃度は52ppmです。想像がつかな いほど高い値です。 ○櫻井委員 これは全く参考になりませんね。 ○島田化学物質評価室長 いまの件に関しては、環境省の大気汚染防止法にホルムアル デヒドについても規制の対象物質ということで挙がっているのですが、その際には特に 濃度基準は設定されておりませんので、個別に対応すると伺っております。 ○名古屋座長 あと、何かお聞きしておくことはありませんか。解剖実習と循環型のも のと、ほかのメーカーの話を聞きましたが、よろしいでしょうか。 ○圓藤委員 C社のプッシュプル・タイプも、結局はクリーンエアーが出てくるかどう かが問題になるわけですね。 ○名古屋座長 難しいのは、ガス吸着フィルターがどんなものを使っているのかですね。 個人的に言うと、光触媒はあまり効果がないだろうと思っています。光触媒は接触触媒 であると同時に、分解時間がかなりかかるので、すぐ通ったからといって分解するもの ではないのです。それは一般ユーザーが、光触媒があると分解するなと思って買われる のと同じことで、あまり効果はないと思っています。自分が光触媒を研究しております ので、たぶん効果がないと思っています。ただ、循環させていると接触しているときは 分解しますので、濃度を下げることはできますが、瞬間的に濃度を下げるのは無理かな と思います。 ○圓藤委員 高い濃度はそんなに下がらないですね。接触面積が大きくないと。 ○名古屋座長 と思います。瞬間には光触媒は分解しませんので。 ○圓藤委員 プラチナを入れてもなかなか。循環式は難しいと思うのですが、排気した ほうがいいのではないかと。 ○名古屋座長 Bも、結果的には原理的に考えると、そのまま置いたときに上方気流が 発生して取ればいいのですが、献体があったときに本当にそこから出てきた蒸気をうま く巻いて取れるか、それをプルだけで取れるかというと、なかなか難しいかもしれませ ん。多くの場合は難しいのでプッシュを入れている部分があるので、これは実験データ がないのでわかりませんが、こういう形のものもあるということで参考にされたのでは ないかと思います。 ○圓藤委員 この風量は多くはないのですか。30立米/分というのは。 ○名古屋座長 あまり多くしてしまうと、スクラバーの性能などとの関係でできないと は思うのです。 ○圓藤委員 うるさいでしょうね。 ○名古屋座長 その辺りは、メーカーに聞かないとわかりません。いずれにしても、こ ういうことができるということですので、あまりダクトをすぐ出せるような場所ではな い所にあるので、どうしてもその中で運用するためには、このような形のものが開発さ れているのではないかと推測されます。 ○圓藤委員 病院の病理室みたいな所はこれでいいのでしょうね。 ○名古屋座長 よろしいでしょうか。ありがとうございました。それでは、解剖実習に おけるホルムアルデヒドの使用に関するヒアリングをこれで終わりたいと思います。  医療現場におけるホルムアルデヒドの使用に係る今後の検討予定について、事務局か らご説明をお願いします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 それでは、資料2に基づいてご説明します。今回、第2 回ということで開催しましたが、この小検討会の親検討会に当たる「化学物質による労 働者の健康障害防止に係るリスク評価検討会」が8月8日に予定されております。その 際には、第1回目、第2回目の小検討会の検討状況等を報告する予定になっております。  第3回目の小検討会は、8月28日(木)14時から開催を予定しております。場所は、 第1回目を開催しました九段の第3合同庁舎の会議室を予定しております。第3回につ いては、第1回、第2回で関係者からヒアリングを行いましたので、そのヒアリングの 内容を踏まえて、今後の医療現場におけるホルムアルデヒド使用に対する規制のあり方 に関して論点整理をしたいと思っております。  第4回以降は、そういった論点整理を踏まえて規制のあり方の具体的な検討というこ とで、本年秋を目処に取りまとめを行う予定としております。 ○ 名古屋座長 それでは、定刻になりましたので閉会させていただきます。本日はど うもありがとうございました。 照会先: 労働基準局安全衛生部化学物質対策課       化学物質評価室     電話03-5253-1111(内線5511)