08/07/30 第8回新型インフルエンザ専門家会議議事録 第8回 新型インフルエンザ専門家会議 議 事 録 厚生労働省健康局 第8回 新型インフルエンザ専門家会議 議事次第             日時:平成20年7月30日(水)9:59〜12:02             場所:KKRホテル東京11階 孔雀の間 1.開 会 2.議 事  (1)各部門からの報告    1)公衆衛生対策部門    2)ワクチン及び抗ウイルス薬部門    3)医療部門    4)サーベイランス部門    5)情報提供・共有部門  (2)与党鳥由来新型インフルエンザに関するPTの提言について 3.閉 会 ○三宅補佐 定刻となりましたので、これより「第8回新型インフルエンザ専門家会議」を開 催させていただきます。  初めに、委員の交代がありましたので御紹介させていただきます。  公衆衛生対策部門で藤井紀男委員と角野委員が退任され、同じ名前でございますが、藤井充 委員と山口委員が新たに就任されております。  済みません、ごあいさつのほど、よろしくお願いします。まず、藤井充委員から。 ○藤井委員 今回、成田空港検疫所に参りました藤井でございます。前任者も藤井でございま すが、引き続きよろしくお願いいたします。 ○三宅補佐 済みません、本日、山口委員は、初回ですが、御欠席という御連絡をいただいて おります。  続きまして、本日の委員の出欠状況でございますが、大日委員、川名委員、山口委員、染谷 委員、田代委員、田中委員、丸井委員、吉川委員から、御欠席との御連絡をいただいておりま す。  それでは、本年7月に新たに就任いたしました上田健康局長よりごあいさつを申し上げます。 ○健康局長 健康局長の植田でございます。おはようございます。  この7月11日より、前任の西山の後、健康局長を拝命しておるところでございます。  まず、今回の会議の開催は、前回から3カ月を経ておりますけれども、この間も鳥インフル エンザのヒトへの感染は続いておりまして、依然として新型インフルエンザがいつ発生しても おかしくない状況だと考えております。私ども、危機感を持って仕事に当たっているところで ございます。  政府といたしましては、この一刻の猶予も許されない危機的な状況において、さまざまにこ の間も新型インフルエンザ対策を強化しているところでございます。  まず、第1といたしまして、さきの国会で、5月でございますが、感染症法と検疫法が改正 されました。鳥インフルエンザを4類感染症から2類感染症に位置付け直し、また、新型イン フルエンザのために新たな類型を設けまして、これによって当該患者の入院措置や疑いのある 方に対する外出自粛の要請について法的根拠ができたところでございます。  また、検疫法の改正におきましては、停留を行うために医療機関以外の宿泊施設なども利用 できるようになったところでございます。  次に、6月30日、新型インフルエンザ発生時における厚生労働省の省内の初動体制を確認す るために参集訓練を行ったところでございます。300名を超える厚生労働省職員が、省内の講堂 に参集いたしまして、それぞれの役割分担を確認したところでございます。  更に、6月20日でございますけれども、与党PTから、新型インフルエンザ対策に対しての 広範な提言をいただいたところでございます。我々も今それをかみ砕いて、順次施策に移して いくことを検討しているわけでございます。  一方、海外の状況でございますけれども、WHOにおきまして行動計画の見直しが検討され ているとも聞いております。  これらのさまざまな動き、進展を見据えながら、私どもといたしましては、最新の知見を踏 まえたガイドラインの見直し、医療提供体制の具体的な整備の推進、また抗インフルエンザウ イルス薬の備蓄・供給の体制整備、更に、ワクチンに関する研究開発・備蓄の体制整備、この ようなさまざまな問題につきまして、専門家会議の先生方の御意見を踏まえながら政府の施策 の推進に更に努めてまいりたいと考えております。  本日の会議は、これまで構築してまいりました新型インフルエンザ対策を更に充実させる上 で、また、基本戦略の見直しという観点からも極めて大事な会議であると認識しております。 先生方には、専門的、また大局的な見地から活発な御議論を賜りますようお願いいたしまして、 御礼とごあいさつにかえさせていただきます。  どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○三宅補佐 事務局におきまして、結核感染症課長が本年7月に新たに就任いたしました。梅 田課長となりましたので、よろしくお願いいたします。  以降の進行につきましては、岡部議長にお願いいたします。 ○岡部議長 おはようございます。ただいま御紹介いただきました感染症研究所の情報センタ ー長、岡部です。この会の進行役というようなことをさせていただいておりますけれども、ど うぞ御協力をよろしくお願いいたします。  それでは、前回のときにも申し上げたんですけれども、決してこの会は、何かもう決まった ことを追認したり、それでよしとする会ではなくて、この会に提案されたこと、あるいは今ま でまとめてきたことを議論する会で、そこから決定が出て、あるいは物によっては議論を続け ていくということがあると思います。いろいろ資料が出たり、発表したりすると、今朝の新聞、 あるいは来るときにテレビ、ラジオなんかを聞いたりしていたんですが、もう既にあたかも決 まったことかのごとく報道がなされているというようなことがありますが、あくまでここの会 でそういうようなことを議論してから決まるということですので、よろしくお願いいたします。 そうでないと、パンデミックワクチンのときも、世の中に少し誤解が出てきてしまったような ところがあるので、その辺、是非、報道される方々におかれましてもよろしくお願いいたしま す。  それから、私が理解しているところでは、今回のこの会の目的は、各ワーキンググループが それぞれできているので、その中で、これまで検討したことについて紹介をしてレポートをす る会と思っています。したがって、そこである程度固まったものについては了承したり、場合 によっては問題点が提起されるので、それについてはもっと議論が必要だということを述べた り、あるいはタイムライン、それから、先ほど健康局長からも御紹介がありましたけれども、 WHOでも以前に出したガイドラインについて、今度はガイドというような名前で今年いっぱ いでそれを修正するので、私は、先々週のWHOの会議に出ていたんですが、WHOについて も、そういうリコメンデーションを見て、改定案を見て、各国メンバーステーツも、今までの ものを見直したりするようにというようなリコメンデーションになっています。したがって、 今日が議論のスタートだと思いますけれども、場合によってはそういうようなものを見ながら 再度練り直しというようなこともあると思います。これはひっくり返るとかそういうことでは ないので、今日の会議ですべてが決まるということではないということを、まず、今日の会議 の性格として御了承いただきたいと思います。  あちこちでいろいろな議論が出てきて、専門家だけの会議だけではなくて、いろいろな分野 に広がって対策の状況が進んできたというのは非常に喜ばしいことであると思います。これは メディアの方の力もありますし、国会というようなところでも議論が行われていますが、ここ で私たちの役割としては、いろいろな議論を重ねて、余り燃え過ぎてしまって燃え尽きること なく、適度なところはきちんと押さえながら、より現実的な策をつくっていきたいと思います。  ちょっと前置きが長くなりましたけれども、会議が始まりまして、ちょっと確認と印象とい ったようなことを申し上げたかったので、お許しください。  それでは、非常にタイトな時間であり、また内容が濃いので、一つひとつ要領よくやってい かなくてはいけないと思うんですが、活発な議論もまた是非よろしくお願いいたします。  それでは、事務局から本日の資料の確認をよろしくお願いします。 ○三宅補佐 カメラ撮りはここで終了させていただきますので、取材の方は御協力のほどをよ ろしくお願いいたします。 (報道関係者退室) ○三宅補佐 それでは、お手元の資料を確認させていただきます。  議事次第を表紙といたしまして、資料1から9、別添、参考資料、座席表、委員名簿となっ ております。  もう一度確認させていただきます。  まず、表紙、その次に配付資料一覧がございます。その次に資料1−1、1枚ものです。資 料1−2でホチキスどめ。資料1−3で1枚もの。資料2で1枚もの。資料3−1で少し厚い ホチキスどめのものでございます。資料3−2が、やはりホチキスどめの少し厚いもの。資料 4は1枚ものでございます。資料5が1枚もの。資料6が5〜6枚のホチキスどめのもの。資 料7が1枚もの。資料8が1枚もの。資料9が1枚もの。そして、別添で少し厚いホチキスど めのものと、それから参考資料、また座席表と委員名簿を配付させていただいております。  資料の不足、乱丁等がございましたら、事務局までお申しつけいただきますようお願いいた します。よろしいでしょうか。 ○岡部議長 途中で気がつかれましたら、不足がありましらどうぞおっしゃってください。  それでは、今御紹介いただいたように、手元には議事次第がありますので、それに沿って話 を進めていくことになります。  先ほど申し上げましたように、各部門からの報告ということですので、それぞれの部門、こ れは、お手元にいろいろな部門の専門家会議委員リストというものがありますので、ここのワ ーキンググループで行われた議論について御紹介するというところから始めたいと思います。  公衆衛生対策部門からの最初の御報告ですけれども、これは、私がワーキンググループの取 りまとめ役ということでしたので、一部については私から、それから、一部につきましては、 非常に濃密な内容でもあるので、事務局の方から資料の説明ということにしたいと思います。  一番最初には、資料1−1をごらんいただければと思います。「新型インフルエンザ対策に おける基本戦略の策定」ということですけれども、今までの新型インフルエンザ対策ガイドラ イン、フェーズ4以降というようなところのこの冊子を見ても、基本戦略ということは概念的 にはあったんですが、それが明確にされていないということは、いろいろなところで議論する ときに、一体何を目標にしたらいいのか、何を最大限、あるいは最小の目標にしようかという ようなことがどうもはっきりしていないということがありましたので、この基本戦略の策定が 重要だろうというようなことの議論がありました。  それで、この資料1−1には、趣旨として書いてあるのは、新型インフルエンザ対策につい て、その知見の集積等により、各国も基本戦略の改定を進めている。我が国においても、新型 インフルエンザ対策への備えの強化のため、先ほど健康局長がおっしゃいましたように、感染 症法の改正、あるいは政党側においても各党のプロジェクトチームでいろいろな活発な議論が 進められているというところで、我が国の条件ということも勘案しながら、地理的な条件、交 通機関の発達度、受診行動の特徴などをもとに、更に人的被害を最小限に抑え、社会機能への 影響を最小限に抑えるべく基本戦略を策定するという趣旨を置きました。  その到達目標でありますけれども、その目的とするところは、新型インフルエンザの流行を できるだけ遅延させて、流行は必ずあるであろうけれども、そのピークにおける患者発生率及 び死亡者数を可能な限り抑制する、これを最大の目的とするということですが、それに伴って、 医療体制及び社会機能の破綻をできるだけ阻止していく、ミティゲーション(軽減、緩和)と いうことがこれの目標であろうということで、これをまず最初に書き出しました。  それから、資料1−2のところでありますけれども、「基本戦略の概要」として、国内で未 発生あるいは国外でも未発生の現在の状況、新型インフルエンザがまだ出ていないというとき の状況で行うべきこと、それから国外で発生したけれども国内で未発生の状況の事柄、それか ら国内で発生の極めて早期の段階、それから国内で少し感染が広がり始めて、更に広がり、や がては回復に戻ってくるわけですが、それぞれの時点において、医学的な介入といいますか、 医学的なものとしてでき得ること、それから非医学的介入、これは、いろいろな社会の御協力 が要るわけですが、それを行うこと、それから公衆衛生対策等々というようなことが書いてあ ります。  これは、一覧表にはなっているんですけれども、今後、ガイドラインあるいはガイドといっ たようなものが出る中で、お手元に参考資料として一番最後に書いてあるんですが、これは一 つのこれからの提案として、基本的戦略についてペーパーとしてまとめておいた方がいいので はないかということで基本的戦略を紹介してあります。ただ、これはドラフトとしては国立感 染症研究所感染症情報センターとなっていますが、ワーキンググループにおいてすべてディス カッションしているわけではないので、東北大学の押谷教授初め、何人かの方と御相談しなが ら、一応の案というようなものを書いてございます。  例えば、参考資料の3ページ目ぐらいのところから、基本的戦略案としては、「社会的距離 (Social dictancing)」と書いてありますが、それの重要なことで、社会の機能を途絶するわ けにはいかないけれども、広がりやすい学校あるいは、学校というのは包括的な言い方ですか ら、大学、高校、中学、小学校、幼稚園、保育園等を含んだ学級閉鎖、それに伴う社会的な影 響ということも考えていかなくてはいけないのですけれども、そういう問題点。それから、予 防投薬、今まで私たちは治療投薬ということが中心だったのですが、その予防投薬をどこまで 進めていくか、あるいはどこから治療に切り替えるかというようなことであったり、患者さん については、早期発見・早期治療、これについては、医療部門としては、発熱外来という言い 方が適切かどうか、今まではそういう言葉を使っていますが、患者さんの早期発見をするよう な場所の設置とかというようなことについて、幾つかアイデアとしてまとめてあります。  こういったようなことについて、次の会議までにポジションペーパーというような形でまと めたいと考えたのが、公衆衛生部門の基本的戦略に対しての一つの提言です。  それから、今の資料1−2に続いて資料1−3というものがあります。これについては、 「予防投薬についての論点の整理」として、検討例を、予防投薬するときに、家庭内だけなの か、あるいは濃厚接触者に投与するのか、あるいは施設内全体に投与するのか、またそれは、 最初の段階から最後の段階までやるというのは多分不可能だと思うんですが、どこの時点での 適否を行うというようなマトリックスをつくり、また、これについて、まだこれはでき上がっ ていないんですけれども、本当に予防投薬をするとすればどのぐらいの薬剤量が要るか、これ について実際にある程度の数字を出した上で可能なものかどうか。それから、現在の治療投与 についても適切な量と言えるかどうか、あるいは、しようがないからこのぐらいの量なのかと いったようなことについても議論を進めていくというようなことが書いてあります。  それから、資料2のところには、「早期対応戦略ガイドライン」というものがあります。早 期戦略については、一番最初の封じ込めというような形でこのフェーズ4以降のところにも、 水際作戦、あるいは本当に最初の患者さんが地域で出たときに、早期の段階としてはできるだ け、封じ込めという表現になっていますけれども、それ以上の拡大を防止しなくてはいけない ということが中心なわけですが、そこから漏れて社会に入っていったときにどれだけ抑えられ るかというようなことの議論を行いました。  そして、現ガイドラインに対する公衆衛生ワーキンググループからの課題、これから検討す べきこととして出てきたのは、タイトルの変更とありますが、これから出てくるガイドライン はフェーズ4以降というようなことではなくて、全体の国内発生時に起きたときの行政対応ガ イドラインというような形がいいのではないかと考えられました。これは、WHOもそのフェ ーズ分類は1、2、3、4、5、6と分けていますけれども、その中の、特に4、5、6、4 が非常に狭くて、あとは5、6が同一の形というような包括的に見ているような方向性にもあ りますので、そういったようなところも見ながら、連続性のある対策である、どこかで切れて 不連続でくるっとひっくり返るのではないけれども、発想の転換も必要な部分がありますので、 そういったようなところを今後のガイドラインでは変更していくというようなことであります。  それから、2番目については、これは戦略の全容の明確化ということですけれども、一番最 初、冒頭に申し上げましたような、どういうことを基礎戦略にするかというようなところのポ ジションペーパーをこれからきちんとしていくということがあります。特に、感染拡大防止に 必要な薬剤、これはワクチンも含めてになりますが、薬剤による感染拡大防止策に加えて、公 衆衛生対策、特に、事業所の方は後でより具体的な案ができ上がってきていますが、学校の臨 時休業、それから外出の自粛の要請などを時系列に記載し、特にフェーズ5、6となったとき の戦略も明確化するというのが今後の課題になります。  そして、全体の戦略の「地域封じ込め」、ここは発想の転換の部分になるんですけれども、 地域封じ込めの記載は、そこの部分として取っておいて、それがずっとつながるものではなく て、その後は、ミティゲーションの方で拡大を少しずつ抑えていくというようなことになると 思います。  あとは細部の決定になりますけれども、特に予防あるいは治療、それからその実施機関、発 熱外来、あるいは新型インフルエンザスクリーニング外来といったようなところでの問題点、 それから、そこを全部の患者さんが通らなくてはいけないのかどうか。一部といいますか、米 国などが取らんとしているのは、多くの方に予防投薬用の薬をあらかじめ与えておいて、それ で、できるだけ外に出ないで、むしろ外来といったようなところに集中すると、そこから感染 のもとになるから、それを防ぐといったような考え方もあります。これについてはもう少し議 論を深めておかないと、我が国の医療と日常の診療というものに対する国民の考え方といった ようなこともあるでしょうから、しかし、これについて検討していかなくてはいけないといっ たようなことが、公衆衛生部門での今後のガイドラインの方向性について議論しました。  もう一つ、資料4を先に御紹介したいと思いますが、これは、「職場における感染リスクに おける感染予防・防止対策と保護具」ということで、これは医療ワーキンググループと共同で 出したものですけれども、職場の中の一つの対策の参考資料ともなっていますので、この資料 4については、資料3と一緒に事務局の方から説明をしていただくというふうにしたいと思い ます。  一応、先に公衆衛生部門としての全体の御紹介をしておきたいと思いますので、続きまして、 資料3について事務局から説明をお願いいたします。 ○感染症情報管理室長 それでは、資料3をごらんください。これは、「事業者・職場におけ る新型インフルエンザ対策ガイドライン(改定案)」をお示ししたものでございます。  まず、改定の背景でございますけれども、我が国の人口の約半数が何らかの職業に従事して おり、職場における新型インフルエンザ対策の実施が、日本全体の新型インフルエンザ対策に 与える影響が非常に大きいということがございます。  また、新型インフルエンザが発生した場合、事業者に次の2点が要請されます。まず第1に、 感染拡大のスピードを抑えるため、事業者が不要不急の事業を自粛すること。社会機能維持に かかわる事業者は、感染予防策を講じつつ重要業務を継続し、社会機能を維持するということ でございます。  また、各企業でも対策に取り組む機運が高まっていますが、現時点で新型インフルエンザ対 策を実施している割合は1割程度であると言われております。新型インフルエンザの対策を検 討するためには、企業が直面するリスクの全体像や事業活動を継続、縮小、休止するために留 意すべき具体的な方法が不明であるという指摘もございまして、参考となるガイドラインの作 成が望まれております。  そこで、ガイドラインの改定の今回の主目的といたしまして、新型インフルエンザ発生時の 職場で想定される状況や取るべき措置を提示し、合理的な感染予防行動を促すことで、感染予 防と被害の最小化を図ること。社会の機能を維持し、国民生活の安全・安心を確保することを 目的としております。  それでは、事業者ガイドラインにおける新型インフルエンザ対策で、今回の大きな柱となっ ているのは、感染予防の知識を拡充するという点が1点ございます。これは、事業者が対策を 検討するために必要な感染予防知識を拡充するという点でございます。例えば、それで具体的 にお示ししたところといいますと、資料3−1の7ページから8ページにかけまして、感染経 路を具体化してここで御説明させていただいております。更に、9ページから15ページにわた りましては、飛沫感染、接触感染に対する具体的な感染予防策をここに詳細に記載させていた だいております。  次に、改定の特徴の2点目ですが、新型インフルエンザ行動計画の立案ということがござい ます。これは、事業継続計画を策定するために必要な項目を提示させていただいております。 例えば、20ページ、21ページの表4に代表されますけれども、職場における感染リスク評価の 方法やリスクを低減する方法ということをここで例示させていただいております。  また、事業継続計画における新型インフルエンザの特徴というものがございます。これは24 ページの表5をごらんください。このように、地震災害等における事業継続計画と新型インフ ルエンザ対策で留意すべき事項というものをここに抜き出してお示ししております。  更に、次ですが、26ページからにわたりましては、新型インフルエンザ発生時の業務量の時 系列のイメージ、あるいは人員計画というものを例示させていただいております。例えば、31 ページの図2でございますが、このように示されておりますのが、新型インフルエンザ発生時 の感染予防策、事業継続の時系列のイメージでございます。  また、33ページの表10、ここは、感染予防策を取り入れた人員計画の例というものをお示し させていただいております。例えば一番上ですと、全般的なことでありますが、在宅勤務ある いは職場内等での宿直といったような事項以下に記載しているようなことが、人員計画の例と してお示しさせていただいております。  こういったものをお示しすることで、全体的に社会活動が低下する、業種によっては需要が 大幅に減となることもございますが、そういったことを明示しております。また、計画的に従 業員を自宅待機させ、班交代制(スプリットチーム制)等を取り入れることについて例として お示ししているものでございます。  更に、3点目の特徴でございますが、これは、参考A、資料3−2でお示しさせていただい ているものでございます。この資料は、「新型インフルエンザ発生時の社会経済状況の想定」 というものを一つの例として提示させていただいているものでございます。  この資料をお示しした目的でございますけれども、新型インフルエンザ発生時の社会につい て事業者の共通認識を得るということで、事業継続計画策定を推進することを目的としており ます。  例えば、これでどのようなことが示されているかといいますと、資料3−2の4ページの表 1をごらんください。例えば、欠勤率20〜40%、欠勤日数10日程度と数字を例示でお示しして います。こういったことをお示しすることで企業リソースを重要業務に集中する必要がある。 そうしなければ重要業務の継続が危ぶまれるということを理解していただくことになります。  また、資料の12、13ページにおきましては、想定される社会機能の状況とその維持に当たり 企業地に期待される対策・目標ということがお示ししてあります。これは、基本的な社会のイ ンフラ、電力、水道、ガス等を維持するレベルというものの想定する状況がここに示されてい るわけであります。これによりまして、社会機能維持にかかわる事業者への期待がどのような ものであるか、要請レベルがどのようなものであるかというのを一つの例としてお示ししてい るものであります。  資料3−1と資料3−2につきましての御説明は、以上でございます。 ○岡部議長 どうもありがとうございました。以上が公衆衛生部門からの報告になります。か なり煮詰まった部分もあれば、更に議論を続けなくてはいけないところもあるんですが、まず、 公衆衛生対策部門にかかわっていたワーキンググループに入っている委員の方から、何か追加 あるいは補足の御意見がありましたらお願いします。押谷先生どうぞ。 ○押谷委員 ありがとうございます。私もこの基本戦略、先ほど岡部先生の方から紹介しても らったように、いろいろなディスカッションに参加させていただいているんですが、今までフ ェーズ6で何をするのか、アメリカなんかが言っているミティゲーションストラテジーみたい なものが日本になかったので、そういうものをつくっていかなければいけないと思うんですが、 その中で幾つか基本的な問題点というか、まず1つは、日本の基本的なデータが不足している ということがあると思うんですね。アメリカなんかは、非常に大規模なシミュレーションをス ーパーコンピュータを使ってここ2年ぐらいやり続けてきて、その中から出てきたエビデンス をもとに基本戦略を作成しているわけですが、そういった基本データというものが日本に今の 時点でない。これをどうやって集めていくのかというのが、まず一つの課題だと思うんです。  もう一つは、これもこの会議でも何回か、特にワーキングなんかでは議論になったところな んですが、被害想定をどうするかと。今の25%の発症率という、その被害想定でこの基本戦略 も作成していくのかどうか。これが40%とかそういう値になると、かなり戦略も見直す必要が あるんだと思いますので、そういう中で、日本にとって本当に実施可能で、先ほど、発熱外来 の話とかも出ましたけれども、そういう発熱外来のあり方とかということを含めて、日本で本 当に実施可能で、しかも有効なミティゲーションストラテジー、被害を最小限に抑える、フェ ーズ6になったときに被害をどうやって抑えるか、そういう基本戦略をつくっていくのはかな り難しい作業だと思うんですが、それを早急にやる必要があると思うんです。  その中で、やはり医療体制の問題もありますけれども、今までワーキンググループ個々に 別々に議論をしてきたんですが、こういう基本戦略という話になると、抗ウイルス薬の問題と か、ワクチンの問題とか、医療体制の問題とか、それぞれに関連していくので、この全体会議 とか、いろいろなそれぞれのワーキンググループからの代表の人に参加してもらうとか、そう いう形で全体で議論していく必要があると思っています。  以上です。 ○岡部議長 ありがとうございます。  それから、公衆衛生ワーキングではないんですけれども、実際にドラフティングなんかにか なりかかわっていたんですが、安井先生、何か補足的に説明がありましたらお願いします。 ○安井委員 今、押谷先生がおっしゃられたとおりだと思うんですけれども、国内において、 今まで早期対応ガイドラインはありましたが、それ以降のものがはっきりしていなかったとい うことが非常に大きな、それ以降で具体的に検討あるいは計画立案がなかなかなされなかった 大きな原因ではないかと思われますし、提案のところに書いてありますが、投薬量、備蓄量が 本当にこれで十分なのかということと、予防投薬を主にしていく場合にどの程度患者が減るか ということと、総投薬量がどれくらいになるのかということを勘案して、今までの備蓄量でい いかどうかも含めて再検討が必要だし、そのためにはきちんとしたデータというか、シミュレ ーション等をしていかなければいけないとは思います。  あと、今回書かせていただいた中に、我々がずっと危惧していたのは、ソーシャルディスタ ンスをするときに、学校、保育園、幼稚園を全部閉めるんだ、それが大前提ですけれども、そ うなったときに労働力が非常に落ちてしまう。特に、医療機関の看護師さんは、それだけでも う30%、40%働けなくなるのではないかと思うんですが、そうなってしまうと、新型インフル エンザが流行する前に、もう医療体制が破綻してしまいかねないという現状を、いかに早くこ れを周知して対策をしていくか。恐らくそういったノウハウが市町村等にはあると思いますし、 そういったところにつなげていければと思います。 ○岡部議長 ありがとうございます。  全体から御意見、あるいは、今後のディスカッションの中でこういうことも含めておくべき である、あるいはここは要らないというような意見がありましたら、どうぞよろしくお願いし ます。谷口委員。 ○谷口委員 これまでの御意見のように、やはり基本戦略というものはすべてのワーキンググ ループにかかわってきますので、それできちんとしたペーパーをつくっていただかないと、そ れぞれのワーキンググループが、最終的に何にゴールインしたらいいのかわかりませんので、 それについては強くサポートします。  2点目として、押谷先生が言われた被害想定25%ですけれども、これはあくまで想定ですか ら、アジア風邪、香港風邪なんかのデータをもとにしているわけですね。ただ、先生方がみな さん御存じのように、例えば2002年、2003年にアフリカのマダガスカルあるいはコンゴの興味 深い事例があります。いわゆる香港風邪、通常、我々が毎年経験しているH3N2型のインフ ルエンザが初めてマダガスカルあるいはコンゴに入ったときの上気道感染症、つまりARIの アタックレートが何%であったか。たしかマダガスカルは67%、コンゴは47%ですね。これは WHOのWERに公表されており、パンデミックの際の参考にあるのではないかと考えられていま す。すなわち、普通のインフルエンザであっても、今、我々が経験しているインフルエンザで あっても、それまでそれらを経験していない初めてのところに入ればそのぐらいのアタックレ ート、つまり症状が出る人がいるわけですから、やはり危機管理としては25%だろうではなく て、最大このぐらい来るということを考えて今後の戦略を考えていくべきだろうと思います。  以上です。 ○岡部議長 25%は、とにかく仮に置いた数字である、仮にというのは、いい加減に置いたわ けでは決してなくて、この新型インフルエンザ対策専門家会議の前身のような形で行われた平 成14年の結論でしょうか、その辺を出すときに、やはりインパクトとしてどういうものがある かという、まず数字の設定がないとなかなか進まないので、そのときにCDCが当時モデルと して発表し、また諸外国も一番最初に取り入れたメルツァーのモデルというものを利用して、 それを日本に置き換えた場合にこのぐらいの被害の想定があるということで、それをクリアす れば全部オーケーだということで置いた数字ではないというのがあります。ただ、それより被 害が少なければそれに越したことはないんですけれども、そこをある程度目標にして設定した ら、次の来るべきもうちょっと大きいスケールに対して備えるというようなことも、当時ディ スカッションされたと思います。  ほかに、どうぞ御意見がありましたらお願いします。  今のは戦略に至るところですけれども、これについては、後でもう一回ポジションペーパー みたいなものを出していくというのもあります。  それから、後で、もし時間がありましたら、ここのところは更にディスカッションいただけ たらと思うんですが、次には、1つは、新型インフルエンザ発生初期における早期対応戦略ガ イドラインというのが、フェーズ4以降というのであったわけですけれども、今後行っていか なくてはいけないというところでは、先ほど、この資料2に基づいて幾つかの課題があったと いうことを御紹介したんですが、今はフェーズ4以降ということで全部ひっくるめて考えられ ているような誤解も生じがちなんですが、これは一つ早期戦略として必要な部分であって、そ れと別に、これは今までも押谷委員を初めいろいろな委員の方々から指摘もいただいていたと ころですが、実際に進入した新型インフルエンザが、残念ながら我が国で発生して患者さんが 多数になった。個々の対応ではなくてマスの対応になったときにどうするかという、ガイドラ インという名前がいいかどうかは別にして、こういったようなものについて、今後、改定して いくんだという方向性、その中に先ほどの戦略なんかも含めますが、そういうことを今後進め ていきたいという公衆衛生ワーキンググループの提案ですが、これについて御意見がありまし たらお願いします。  資料がばあっと来たわけで、なかなか整理しにくいかもしれませんけれども、是非遠慮なく 御意見をいただいて、いろいろな参考にしていきたいと思うんですが、いかがでしょうか。  改定の方向には、多分、御異論はないだろうとは思うんですけれども、それでは、もうちょ っと具体的な部分の提言がありました。これは、厚生労働省の結核感染症課の中にもインフル エンザ対策推進室というものができて、いろいろな部門の人が集まってきたので、今までの一 部の、本当によく表現する、鉛筆なめなめちょこちょこやっていたというところから随分進ん だのではないかと思いますが、これも一つの提言でありますので、これについて、なかなか全 部まで目が行き届かないかもしれませんが、御意見がありましたら、どうぞお願いします。  事務局の方で、これの補足説明は何かありますか。調整官どうぞ。 ○感染症対策企画調整官 事業者・職場のガイドラインのことをおっしゃっているのでしょう か。 ○岡部議長 済みません、資料3、4ですね。 ○感染症対策企画調整官 資料4の説明がちょっとなされていなかったと思います。 ○岡部議長 資料4は含まれていると言ってしまったので、では、資料4を改めて少し話をし た方がいいですか。資料4の表というのは資料3の中に入っていることなんですよね。 ○感染症対策企画調整官 確かに資料3の中にも同じものが入っているんですが、特別に出し たのは、この資料4はいろいろなガイドラインに今後も使えるので特出ししています。 ○岡部議長 では、資料4を少しごらんになってください。この資料4というのが、この中の 一覧表として出ていることですけれども、いろいろな職場において、この職場と一律にといっ てもいろいろな職場があるだろうと思うんですが、どこでも一律に、全部マスクをつけたり、 あるいは簡便なマスクからN95、N95の中でも弁付とかいろいろなものがあるわけですけれど も、すべてがエビデンスに基づいているわけではないのですが、一つの目安として、感染リス クの比較的少ないところであるとか、あるいは中程度のところ、リスクの高いところと分けて、 そこで最低限必要なことといったようなことで表分けをしてあるのがこのものです。  ただ、例えば、実際に新型インフルエンザは全く空気感染がないのかというと、必ずしもそ うは言えないわけで、空気感染もある程度想定はしなくてはいけないんですが、空気感染を中 心にして考えた場合には、これは物すごい、医療機関並みのことをやらなくてはいけないとい うことで、そこら辺は実際的ではないのではないかというようなところも含めてこの中には入 っています。  それから、もう一つの考え方は、極めて初期の段階ですと、やはり広がりが心配なので、手 袋、マスク、あるいはフェースシールドといったようなところも行われることになりますけれ ども、感染が拡大して、本当に患者さんが広くなったら、大きくなってきたら、一斉にどこで も全部重装備をするということも、これまた実際的ではない。それから、中には当然回復して くる人もいるので、そういうようなことも含めてこの表ができ上がっています。  そして、言い訳がましくありますけれども、すべてのことについてこれ、エビデンスができ 上がっているわけでは決してないということです。先ほどの空気感染、あるいは飛沫感染とい うことであったり、あるいは、実際にもうちょっとコンベンショナルなもので防げるのではな いかというようなことが、今後の知見の中では出てくる可能性がありますから、やはりこれも、 この委員会でいつも申し上げているように、そこら辺は柔軟に考えていきたいと思います。  今まででは、感染研の情報センターの方で幾つかの個人防具についてというようなことでは 提言を出しているので、それも参照していただければと思うんですけれども、全体のところで、 こういったような説明の中で何か御意見がありましたら。あるいは補足ということで、森兼委 員、何かありますか。これは、かなりかかわっていただいたということで、補足説明をしてい ただければ。 ○森兼委員 情報センターの森兼です。  こういった表を作成したいということを本省の方からお伺いしまして、私も、多少作業に加 わらせていただきました。先ほど岡部議長がおっしゃいましたように、わからない部分がまだ まだたくさんある。しかし、こういった表による目安といいますか、ある程度割り切って、何 かを今示していく必要がある、そういう前提でこういった表をつくりました。ですから、括弧 になっている部分、あるいは注釈がついている部分、合間の部分はたくさんあるかと思います けれども、そのあたりは、そういった背景があるということで御理解いただければと思います。  私からはそれだけです。 ○岡部議長 ありがとうございます。  どうぞ御意見がありましたら。これは、医療ワーキングの方もかかわっていたということで、 今、森兼委員からも御意見をいただいたんですけれども、医療ワーキングの先生方で、もし何 か更に付け加えることがありましたらどうぞ。  和田委員、特にマスクや何かのことにもいろいろ議論があったと思うんですけれども、もし 補足意見がありましたらどうぞ。 ○和田委員 今回は、リスクに応じた中でどうしていくかということだと思うんですが、今回、 一番この中のメッセージとしてあるのかなと思うのが、やはり症状のある人に2メートル以内 に近づかないということとか、あと流水や石けんによる手洗いをきちんとやりましょう、その 上での保護具であるということで、保護具を前面に押すわけではなく、むしろそうした感染予 防策に携わる側の保護具、そういったところがまたメッセージにもなるのかなと思っておりま す。  今後またサージカルマスク、不織布製マスクのガイドライン等もまた話に出てくるかと思い ますが、こういった段階分けをしながら、現場においてどういうものを準備すればいいのかと いうものが示されていってよいのではないかと、私個人的には感じております。 ○岡部議長 医療の現場での防護と、それから、不特定多数の人がいっぱいいるところでの漠 然とした予防あるいは感染拡大防止で少しニュアンスが違ってくるので、求めるものが当然違 ってくるというニュアンスが、この中にはその差が込められていると思います。  もし御意見がありましたらどうぞ。大久保先生。 ○大久保委員 大久保ですが、マスクと一口に言いましてもいろいろな性能があります。例え ば、咳をする患者さんに装着していただくマスクであれば、これはかなりろ過効率の悪いもの でも、口から出る粒子は5ミクロン以上の飛沫ですので十分対応できるわけですが、例えば健 康な人がそのウイルス感染を守るということになると、非常に細かい粒子まで対応しなければ いけないから、これはもうN95マスクということになってくるわけですので、どの目的で装着 するかということをまず考えていかなければなりません。 ○岡部議長 ありがとうございました。  それから、この事業所の中にもたしか書いてあったと思うんですが、どんなにいい道具があ っても、それを使いこなせないと何も意味がなくなるので、逆にかえってそれが災いをすると いうようなことがありますので、簡単なものでもきちんと装着がいつでもできるというような、 これはトレーニングということ、あるいは習慣というような形で、是非、簡単な方法から始め るということが重要ではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。  どうぞ、谷口委員。 ○谷口委員 時々問い合わせがあるんですが、サージカルマスクとは何ぞやというご質問です。 基本的に不織布でできたものとおもいますが、不織布でできたものはすべてサージカルマスク かという質問を時々いただくんですが、これは、感染対策のワーキンググループで何らかのコ ンセンサスが取れているのでしょうか。 ○岡部議長 和田委員どうぞ。 ○和田委員 和田でございます。  サージカルマスクといったものが一体何なのかというのは、実はまだ日本では十分な定義が なくて、アメリカでは、いわゆるFDAの中で検定を通ったものがサージカルマスク、いわゆ る医療の中で、手術をする人が、術野に自分の唾液が飛ばないようにということがあるんです が、日本では、その検定をやる技術が一応あるにはあるんですけれども、規則上まだないので、 今後、将来的にはそういったものが日本でも行われるようになれば、そういった呼称が出てく るのかなと思います。  ただし、基本的にはサージカルマスクでできているものは、ほとんどすべてが不織布ででき たマスクでございますし、今後また国民向けのガイドライン等が出てくる中では、不織布製と いうものがきちんと商品名に記載されるような形で、国民にも誤解がないようにという形が出 てこようかなと思います。  いずれにせよ、サージカルマスクが、いわゆる不織布製のマスクの中でも特段感染予防の効 果が非常に高いということではなく、どちらかというとある程度三角がつくようなレベルであ るという形になるのではなかろうかと考えております。 ○岡部議長 大久保先生お願いします。 ○大久保委員 サージカルマスクについてちょっと補足しますけれども、マスクの性能を規定 するものは、これはいわゆるパーティクルの濾過効率を基準としています。細菌ろ過効率を基 準にしているものはではありません。  それから、もう一つは、言葉の問題で恐縮ですけれども、マスクというのは、患者さんが装 着して飛散するのを防ぐのがマスク、あるいは術者が自分の飛沫が飛ぶのを防ぐのがマスクで、 外からの感染を防御するのは、国際的にはレスピレーターという表現をしています。正確には レスピレーター・アンド・マスクという、両方を防御するときにはそういう言い方をします。 ○岡部議長 どうぞ、永井委員。 ○永井委員 先ほど岡部先生がおっしゃった、マスクの装着がしっかりできているかどうか非 常に大事な問題だと思いますが、N95マスクをつければ安全だという話は当然出てくるんです けれども、うちも結核病床を100床抱えておりまして、スタッフのN95マスク装着はもう日常的 な出来事ですが、スタッフの装着がしっかりしているかどうかというのをテスターではかって みますと、10%以下の漏れ率を維持している人は最初6割ぐらいだったんですね。それを訓練 して、漏れ率を10%以下に全員高めて今に至って、定期的にN95マスクがしっかりできている かどうかテスターでチェックしながら仕事をしているわけです。ただ、箱に入ったN95が職場 にあっても、それをつければいいんだろうとすかすかに漏れているのであれば全然意味がない ので、その辺の訓練といいますか、それは日常、ある程度のシミュレーションで訓練をして、 装着感がどういうものであるかというのは日常的にしっかり把握しておかれた方がいいと思い ます。 ○岡部議長 ありがとうございます。  ちょっと余計な話かもしれないんですけれども、鳥インフルエンザが日本で発生して、養鶏 場に対策を取る、処分に当たる人たちが、必ずしも専門家ばかりではないので、寄せ集めの人 たちに、寄せ集めというのはちょっと失礼ですが、いろいろな人に来ていただいて、すぐマス クのつけ方を教えて、ガウンのつけ方や何かをやって現場に行って、大体正確に装着している のが60%〜70%だったというのが私たちのスタッフが見ていた評価なんです。その60%〜70% もつけていたというのが、ほかの国から見ればどっちかというとびっくりすることで、ただ、 我々の専門家から見れば、60〜70%では安全性は守れないぞというようなところがある。  これは、いかに日常的にそういうものがどういうもので使えるのか、それからきちんとつけ ることが行き渡っているかどうかの差だと思うんですね。我が国でも、すぐにぱっとつけるわ けにはいかないけれども、日常的に使う場が幾つかあるということが想定されると進んでくる のではないかと思います。  そのほかに御意見はいかがでしょうか。どうぞ、事務局の方から。 ○三宅補佐 事務局でございます。  今、厚生労働省のワーキンググループの方では、同時に国民向けのマスクのガイドラインの 策定もお願いしているところだと思いますので、これに合わせて情報を提供していただくとあ りがたいと思いまして、その話を少しいただければと思ったんですが。 ○岡部議長 それはどなたに御意見をいただけばいいでしょうか。 ○三宅補佐 いや、そういうことをしているということが、情報としてほかのワーキンググル ープに提供されればと思いまして。 ○岡部議長 大久保委員がちょっとおっしゃったように、マスクって、完全に予防というより は、むしろ欧米なんかでは拡大予防のために使うのであると。そこからレスパイラトリーエチ ケットというような言葉も出てきているんですけれども、できるだけのことをやっておくとい う意味で、欧米でも予防的に使う場合もあり得るというようなことがあります。日常的に使う ということも重要ではないかとは思っているのですが。  時間もあれですので、今まで御紹介した資料1、基本戦略にかかわることでもし御意見があ れば、もうちょっと後で全体を見ながら御意見があれば繰り返したいと思いますが、一つは、 これまでのガイドラインについて改定を加えて、もう一つ、全体に通せるフェーズ4以降とま とめてありますが、そうではなくて、本当に拡大したときのガイドラインといったようなこと を包括的に行う。そして、やがては収束に向かっていくわけですけれども、その辺のことを含 めてガイドラインを改定するという提案と、もう一つは、先ほどちょっと、資料3の中にある んだと言いましたけれども、資料4のような、現在考えられるところでできている感染予防防 止対策と保護具といったようなものについては、できれば御了解いただきたいんですが。勿論、 字句の修正その他は出てくると思いますが、もし御了解いただければ、この委員会としては、 その方向を了承したということでよろしいでしょうか。  それから、もう一つの資料3というのは、「事業者・職場における新型インフルエンザ対策 ガイドライン(改定案)」というものですけれども、これについてはいろいろな御意見もあり ましょうし、あるいは職場では、これでは足りないという声があったり、こんなことできない という声があるかもしれませんので、事務局の方、これはパブリックコメントを求めるという ような方向でよろしいですか。 ○感染症対策企画調整官 はい、可能です。 ○岡部議長 そうすると、広く御意見を求めながら、これを更に、必要な意見を取り入れなが ら策定していくというような方向性にしたいと思うんですけれども、そういう方向はよろしい でしょうか。  では、一応これ、いわゆるパブコメでしょうか、もし御意見があればいろいろな方面から入 れていただいて、事務局が整理をし、必要があれば、それをワーキンググループの方で、ある いは専門委員の先生方の方に相談をしながら最終的に決めていきたいと思います。  少し話を進めていきたいと思うんですけれども、この次は、大分いろいろ話題になったりす るところも多いんですが、ワクチン及び抗ウイルス薬部門というところからの御報告をいただ きたいと思います。これは、田代委員が部門長ということになっているんですが、今日は海外 出張で御欠席ですので、庵原委員お願いいたします。 ○庵原委員 庵原ですけれども、資料5と資料6です。資料5は、「今年度に新たにつくるプ レパンデミックワクチンの製造に用いるウイルス株について」ということですが、今年度は、 クレード2.2の青海株を用いたワクチンを製造するということで、3年間をまとめまして3,000 万人分を備蓄するという計画になりました。クレード2.2というのは、世界中で鳥の間で広がっ ている株ですので、そういう意味からも2.2がいいのではないかということです。もう1点は、 ちなみにベトナムがクレード1でインドネシアがクレード2.1で安徽がクレード2.3というので、 そのクレードも違うという、この2点から青海株でつくるという形にいたしました。これが報 告事項の1です。  資料6を見ていただきますと、これが今年度、現在進行中の臨床研究で3つあります。3枚 に分かれています。  1枚目が、3,000人プラス3,000人、合わせて6,000人規模で行う安全性試験の研究様式です。 これは、接種して安全性を確認するということなんですけれども、ただ、ベトナム株は300人規 模の安全性は認めていますけれども、安徽及びインドネシアは新しい株ですので、ステップ・ バイ・ステップで安全性を確認していこうという方向で今進めています。  1枚めくっていただきまして、この次が安徽とインドネシア株の免疫原性と交叉免疫性と持 続性に関する研究です。これは、あくまでもベトナム株と同じつくり方でつくった安徽株、イ ンドネシア株においても、ベトナム株と同じレベルのホモの抗体反応があるかどうかというこ とを見るという、要するに水酸化アルミのアジュバントを加えた全粒子インフルエンザワクチ ンが、株が変わっても同じ免役原性があるということの確認と、持続性の確認及び交叉免疫性 を確認すると。マウスレベルでは当然認められていますけれども、ヒトのレベルではというこ とで行うというのが2枚目の試験です。  3枚目は、ベトナム株でプライミングを受けていた人に、安徽株ないしはインドネシア株で ブースターをかけることによって、ブースター効果が認められるかどうかということと、それ から、できた抗体が交叉免疫性があるかというところを見ていくという試験です。  こういうことをすることによって、H5N1を想定したときに、前もってワクチンを打つこ との必要性がよりはっきりしてくるのではないかと。問題なのは、H5N1が本当に出てくる のかという、そこの議論はさておきまして、H5N1が出てきたときに困るなと心配している 人へのワクチンを接種していく一つのメリットないしは判断材料を提供することができるので はないかということで、今年、この研究を今現在スタートしたところです。  以上です。 ○岡部議長 ありがとうございました。これは医学的介入の重要な部分であって、また、ワク チンに対する、こういうときにはワクチンに対する期待というのは非常に大きくなるんですが、 実際にはステップアップをしながらいかなくてはいけないのと、ワクチン株の次の選定、これ も、もしこれで安全性等々が確認されてくれば、もう1,000万ドースを備蓄として行うという前 の段階のことですね。 ○庵原委員 いや、備蓄は青海までやりますから。ですから3,000万分は備蓄すると。そこから 更にもっと備蓄するかどうかは、また次のディスカッションかと思います。 ○岡部議長 今の件について御質問その他がありましたらお願いします。  特に、臨床研究のところにどうしても誤解があったり、あるいは過剰な期待があったり、あ るいは過小評価があったりということが両方あると思うんですけれども、このワクチンの臨床 研究の進め方、あるいは現在のワクチンに対してどういうスタンスであるかというようなこと について、御意見がありましたらどうぞ。河岡先生、何かワクチンのコメントがありましたら。 ○河岡委員 今、議長が言われたように、このワクチン、一般新聞というか、新聞報道、メデ ィアによる情報、一般市民が得ている情報というのは必ずしも正しくないところがあって、こ れはあくまでも試験研究で、これだけの数の人たちに、今できているワクチンの安全性を確認 するということで、これは必ずしもすぐ1,000万人にプレパンデミックの状態でワクチンをする のだというのではないということは、明確に国民が知っていないといけないことではないかと 思います。 ○岡部議長 重要な点ありがとうございました。ただ、安全性を確認するというのは、不安だ からやるのではなくて、委員の多くの方々は御存じで、全体に向かっての話ですけれども、ど んな医薬品でも、どんなワクチンでも、必ず小規模からスタートして、中規模で行って、つま り対象を広げて、その中での効果あるいは安全性を見て、そしてだんだん広げるというステッ プがあるので、本当の大緊急時ならばそういったようなことがなくて、かつてのポリオのよう にばんと導入するということがあるかもしれませんが、今はそういう意味で、ステップを踏ん でやっているという認識でいていただければと思うんです。  どうぞ、庵原先生。 ○庵原委員 おっしゃるとおりです。要するに、段階的に安全性を確認していこうという段階 です。  もう一つは、ちょっとこれ、新型インフルエンザワクチンというような言葉が使われていま すけれども、そうしますと、新たに出てくる新型インフルエンザすべてに効くかと言われたら、 それではなくて、あくまでもこれはH5N1を想定した新型インフルであって、ですから、H 5N1に対して、そうしたら本当に効くのかと言われると、はやってみないとわからない。す べてそういうクエスチョンマークが後ろに1つ、2つ、3つついた段階での話であると。ただ、 抗体反応から見ると期待されるのではないかというところまでです。  ですから、あくまでもこれは効果を見ているのではなくて、免役原性を見ているのだと。効 果と免役原性という言葉は、要するにワクチンの効果を見るときに、普通は免役原性を見るの と、それから、本当に流行にばく露されたときに、そのワクチンで対症予防効果ないしは重症 予防効果を見るんだという2つの見方がありますので、今回は、あくまでも効果といいまして も免役原性を見て効果があるだろうということを言っているという、そこの誤解がないように。 ばく露されたときに予防する効果まであるかと言われると、それは流行をかぶらない限りはわ からないという、そこの線引きもお願いしたいと思います。 ○岡部議長 それは、今、流行がないから臨床効果がわからないという部分でありますよね。 置き換える部分としては抗体で見ていくわけですけれども。  押谷委員どうぞ。 ○押谷委員 そのあたりのところですけれども、このプレパンデミックワクチンに対して、一 般の国民もかなり大きな期待、過剰な期待をしているところがあって、これは、河岡先生もお っしゃったようにメディアの影響もあるんだと思うんですが、これはそもそも、パンデミック は私は必ず起こるものだと思っていますが、これが本当にH5N1で起こるかどうかというこ とは、現時点ではわからないわけですね。もしもH5N1でなければ、このワクチンはまずほ とんど効かないということになりますので、そのあたりの説明がきちんと国民に現時点でなさ れていなくて、国民が過剰な期待をこのワクチンに対して持っているのではないかというよう なことが感じられます。  そういう問題も含めて、先週の土曜日にインフルエンザ研究者交流の会というところが主催 して、庵原先生とかにも参加していただいて、このプレパンデミックワクチン、特に今、大規 模に接種することが妥当なのかどうかという議論がありました。まず、そもそもH5N1が今 パンデミックを起こす危険性がどの程度あるのかという観点から、このワクチンということも 考えなければいけないんだということが出て、あと、参加者の中から出た意見をすべて紹介す るわけにはいかないですが、いろいろな意見が出ました。その中で、今、日本で開発、製造さ れて備蓄されているワクチンが本当に効くのかというような意見を言っている専門家もおられ ました。特に抗体反応だけを見た限りでは、かなりよくない。本当に効くのか。とても効くと は思えないというような意見を言っておられる方もいて、これは評価している方法が違うので 直接比較することはできないんですが、ほかの国で開発されたワクチンと比べるとかなり抗体 反応が悪いのではないかという意見もあって、ほかの国のワクチンと比較して臨床試験をする ようなことも必要なのではないかというような意見もありました。  特に最初の、このワクチンがどういうもので、どういう効果が期待されていてというような ことをきちんと国民に説明していく必要があると思います。  以上です。 ○岡部議長 前回の委員会のときに、そういうデータがどこにあるかという質問も、たしか押 谷先生はおっしゃっていたんですけれども、少なくともデータについては、医療機構の方のホ ームページであったり、それから、現在これは薬事法上認可されているので、添付文書という 形で、ワクチンに関する説明は、これはどなたでも入手可能であろうと思いますので、必要が あればそういうところを見ていただいて、その評価をどうするかというのは、そこから見方に よって違ってくると思いますけれども、その点が1つ。それから、H5N1ではなかった場合 に技術的な応用ということも考えておかなくてはいけないので、あるものがぽしゃったから全 部だめというわけではないということ。それから、現在、幸いにしてほかの方法等に関する、 ほかの方法というのは、研究として更に発展、開発に関する、これは長期的な意味での他の方 法による開発も進められているということも御紹介しておきたいと思うんです。  庵原先生、済みません、今止めてしまいましたけれども、どうぞ。 ○庵原委員 いや、いいです。ちょっと今、押谷先生の意見で、ワクチン及び抗ウイルス薬部 門のところで出てきた資料の中の一部を紹介したいんですけれども、1つは、現在、抗体測定 方法にHIとNDが行われていますけれども、スタンダードな方法がない。ですから、どこか の施設がはかって数字が高い、どこかの施設がはかって数字が低い、それが本当に比べて正し いのかと言われたら、それは正しいとも言えないし、正しいとも言えると。ですから、ただス タンダードがない以上は、数字が勝手にひとり歩きしたら誤解を招きますよということをひと つ理解していただきたい。これはWHOがはっきりと書いています。  2つ目は、感染症の防御に働くのは中和抗体であってHI抗体ではないという、そこの御理 解もいただきたい。これは、もう感染症、ウイルス感染をやっている人の基本は、抗体は中和 なんですよね。ただ、HIの方が便宜上はかりやすいからHIではかっているだけであって、 要するに、それは中和をようはからんからではないかと僕らはうがった見方をしています。  もう一つは、一般的にスプリットワクチンと全粒子ワクチンだと、全粒子ワクチンの方がカ バーできる株間の範囲が広いというのが、インフルエンザでは一般的に言われていることです。 ですから、あくまでも現行の季節性のインフルエンザワクチンだと、免役原性も低くて、しか もスプリットで範囲が狭いので、できるだけ広い範囲で抗原性を高めようという、免役原性を 高めようということで、新たにつくった形としての新型ということは、そこへ当てはまるわけ です。要するに、新型インフルエンザウイルスという、そこまでの新型もありますし、新型イ ンフルエンザワクチンの新型はワクチンにかぶってくる。すなわち、どういうことかというと、 スプリットワクチンではなくて、全粒子でアジュバントを加えたという形が新型であるという、 そこの御理解もいただきたい。  ですから、話をしていますと、皆さんそれぞれ勝手に誤解して話をしているところがありま すので、要するに、逆に言うと、田代先生に、なぜこの型のワクチンを日本がつくり出したか というところをどこかでしっかりとまとめて、ポジションペーパーでもいいですから何か書い ていただけると、後のこのディスカッションが進みやすいなという気はしています。 ○岡部議長 それはいい御提案だと思いますので。ちょっと専門的な方では、僕らの方で病原 体検出情報というのを毎月発行しているんですが、その中には庵原先生に書いていただいた原 稿とか、今のようなことは公表にはなっていますけれども、なかなか表に出にくいのと、それ から、ワクチンをやるに当たっては、やはりポジションペーパーみたいなものが要るでしょう から、このワクチン、それから薬部門、そこでは部門長の田代先生に、ポジションペーパーで 今のところのワクチンの状況といったようなことを少し前書きで書いていただくというのは、 いい御提案だと思います。  小田切先生、開発の方から何か補足意見あるいはコメントがありましたら。 ○小田切委員 今、いろいろ議論が出ましたけれども、この押谷先生のところから出ている効 くかという話ですが、これは、現時点ではヒトでの経験というのはどこの国もないわけで、マ ウスとかそういう実験動物でやってみる、そういうデータしかないわけです。だから、今回こ の試験研究の中で、交叉反応とか持続性、そういうもので初めてヒトでやってみるということ で、これはそういう意味では新しい試みなんですね。今、平時でこういう研究をやって、そう いう情報を得ておくと、どれぐらいワクチン自体に交叉して幅広く効果があるかどうかとか、 ブースターというかプライムしておけば、それである程度、今度はパンデミックが起こったと きに速やかに抗体を上げることができるかとか、そういう基礎データをそろえられるのは今し かないと思うんですね。それを押さえるという意味では、これは非常に重要な意義のある研究 だと思っています。 ○岡部議長 どうぞ、飯沼先生お願いします。 ○飯沼委員 今、少しポジティブな御意見がありましたけれども、ワクチンに対するネガティ ブな意見、僕もかなりそういう意見もありますが、現時点でH5N1が流行するという前提、 それから抗原性も安定性もあるということが前提であれば、これしかほかに方法がないんです から、しかも、やがて、あとタイム的には、備蓄してあるワクチンが使えなくなる可能性も時 間的にあるわけです。不活化してしまうといいますかね。そういう抗原性がなくなるような状 況に追い込まれる可能性もあるので、現時点では、やはり安全性や抗原性が保証されるのであ れば、希望者には打つというような体制に是非とも持っていくべきだと、私は個人的には、日 本医師会の考えではありませんが、そのように思います。  そういうような物の考え方の人もあるということをお話しだけしておきます。 ○岡部議長 ありがとうございました。  では、押谷先生と河岡先生。 ○押谷委員 今、ワクチンしかないという表現を飯沼先生がされましたけれども、今、我々の 公衆衛生ワーキンググループで議論している話は、ワクチンがなくても何とかミティゲーショ ンできるのではないかと。少なくともアメリカ等の疫学モデルの結果によると、そういう可能 性もある。だから、ワクチンに必ずしも頼らなくても、かなりの程度パンデミックの被害を抑 えられるのではないかという視点で、公衆衛生ワーキンググループの戦略というものが考えら れてきています。  やはりH5N1が本当にパンデミックを起こすのかどうかということ、そのリスクがどのく らいあるのか、そういう広い議論をした上で、この今あるプレパンデミックワクチン、H5N 1ワクチンというものをどういうふうにするのかということを考える必要があるんだと思いま す。先ほどちょっと言い忘れましたけれども、先週のインフルエンザ研究者交流の会でも、備 蓄をするで臨床試験をやるということに関しては、ほとんどの人が賛成しています。もっとデ ータが必要だし、もしもパンデミックがH5N1で起きた場合に備えて備蓄をしていくことも 必要だろうけれども、では、これを今、本当に接種することが妥当なのかどうかということは、 かなりの人が疑問を感じて、専門家の間でも疑問を感じている意見が出ていました。私個人と しては、これはきちんと、H5N1のリスクというものをどういうふうに評価するか、それで ワクチンがどのくらい効くのかという議論、そういうリスクとベネフィットの関係で議論をし ていく必要があると思っています。 ○飯沼委員 話としてはわかりますけれども、アメリカで3億人分のワクチンを既に備蓄して 打とうとしているという話もある、そういう現実も片一方にはあるわけです。 ○岡部議長 今ここで是非を議論するわけにもいかないのですが、どうも両極端に行きがちで、 今のも、ワクチンしかないのではないか、ワクチンがなくても何とかなるのではないかと。必 ずしもそそうではなくて、両方使いながらうまくやっていくということと、ワクチンに関して は、ほかのものもそうですが、不明の部分もある。これは事実ですから、そこを解明していか なくてはいけないけれども、私の意見としても、ではワクチンが要らないから開発をストップ するのかといったら、大事な方法を一つなくすわけですから、そこはきちんと科学的な検証を 続けていく必要があると思いますし、今はその段階だと思うんですね。  今後、この専門委員会でも、ワーキンググループの方でも、先ほども申し上げましたように、 小規模から中規模に広げて、ステップで一つひとつ評価をしていき、それから、その対象とし てはだれをするのか、あるいは希望者には接種が可能にするかどうか、そういう議論は今後も 引き続きやっていきたいと思います。  済みません、河岡先生、途中で入ってしまいました。 ○河岡委員 一つ非常に恐れることがあって、ワクチンが効くか効かないかという先ほどの話 が出てくると、それが物すごくマスコミで取り上げられて、ワクチン対策が進まなくなる可能 性が非常にあって、そういう歴史が日本にはあるわけですよね。インフルエンザのワクチンで もあり、抗ウイルス薬でもある。今、先生が言われた公衆衛生学的な方法でパンデミックの拡 大を抑えたり被害を少なくするという方法は勿論可能で、ワクチンがなくても可能かもしれな いんですけれども、ワクチンを導入すれば死ぬ人の数が減るのは明らかなわけですね。どの程 度減るかという問題であって、そこを考えると、ワクチンというオプションを捨ててしまうと いうのはあり得なくて、そこはマスコミの人に是非お願いしたいんですけれども、これがいろ いろな副作用の問題とか、効果の問題が、そこだけを取り上げられると歴史を繰り返すことに なるので、そこは是非気をつけてやっていただきたいと思います。 ○岡部議長 この委員会の基本的な方針としては、オール・オア・ワンではないということは 確認しておきたいので、きちんとした検証をしながら、評価をし、どの程度のスケールでやる かということをやっていきたいと思います。  最後に、では、谷口委員。 ○谷口委員 現在のいろいろな公衆衛生戦略で患者数を減らす、ピークを下げる、遅らせると いう戦略のもとにあるのは、その後ワクチンができるという前提のもとに時間稼ぎをするわけ であって、もしワクチンがなければ、その次の年、また同じことが起こるわけですよね。だか ら、時間稼ぎを何のためにするかというと、ワクチンを打って基礎免疫を作って感受性者を減 らすことによって、国民を守るということに続いていくものです。新型インフルエンザといえ ども。いずれこれはシーズナルになってくるわけで、つまり、その次の年も、その次の年も、 その次の年もはやるわけです。最初のファーストウエーブで一生懸命公衆衛生対策をやって、 感染者数、患者数、死亡者数を減らす。何のために減らすかというと、その次にワクチンを打 つためであって、ワクチンというのはどうしてもこれは捨てることのできない戦略の一つだろ うと思います。  以上です。 ○岡部議長 では、最後にどうぞ。 ○押谷委員 1点だけ短く。谷口先生がおっしゃるのはそのとおりだと思います。だれもワク チンが必要ないとは思っていなくて、パンデミックが起きたときには、ワクチンは基本戦略の 一つで、ワクチンは非常に有効な手段の一つであることは事実で、今議論になっているのは、 それを今の段階でプレパンデミックワクチンとして接種することが妥当かどうかということな ので、そこのところの議論とパンデミック期にパンデミックワクチンとして使用する話とは、 これまた別のものだと議論を分けて考える必要があると思います。 ○岡部議長 大体共通のところに話は行っているように思います。過剰な期待をすることなく、 過小評価をすることなく、我々の持っているツールというものを有効に利用していきたいと思 います。  ちょっとまとめておくといいますか、この資料5、プレパンデミックワクチンの製造につい ては、今の庵原先生のまとめられたワーキンググループのことを委員会としては了承しておき たいと私は思うんですが、引き続き、勿論幾つかの検討事項がありますし、飯沼委員から提案 された、では、いつ、だれにということも引き続き、公衆衛生とも一緒にやりながら議論しな くてはいけないと思います。  それから、ワクチン及び抗ウイルス薬部門でありますが、抗ウイルス薬についても、これも もう最初の方に話がありましたが、予防、治療というようなことにも絡んでいくので、公衆衛 生部門、あるいはここのウイルス薬部門、それからほかの部門でも、引き続き検討事項でいき たいと思います。ただ、今の状況としては、我が国では治療用として2,500万人治療分、それを 備蓄している。ただ、幾つかのアンケートでは、まだ100%達成していないというのがあります が、今のところの目標はそういうことになると思います。  資料5については、一応、委員会としては了承いただいたということでよろしいでしょうか。 資料5及び資料6ですね。臨床研究も含めてということになると思います。御異論がなければ、 次に進めていきたいと思います。  それでは、この次の問題としては、順番でいって資料7になると思います。これについては、 資料7は医療部門ですけれども、川名先生が残念ながら今日は御欠席なので、これは事務局の 方から御説明をお願いします。 ○感染症対策企画調整官 川名先生御欠席で、川名先生から、事務局の方から説明をしてほし いと御依頼がありましたので、簡単に私から御説明したいと思います。  医療体制の部門では、大きく3つのテーマについて御議論いただきました。一つは、都道府 県における医療体制について、もう一つは、人工呼吸器について、もう一つは、医療機関を受 診する、そのことによる感染拡大をいかに防止していくか、大きく3つのテーマについて御議 論いただきました。  まず、1つ目の都道府県における医療体制の整備については、いろいろ調べたり、あと各都 道府県の状況などを聞いていますと、なかなか思ったほど進んでいないのではないかというこ とが指摘されています。理由は幾つかありますけれども、まだまだ十分な情報が伝達されてい ないのではないのかとか、関係の部局間での連携が不十分であるとか、幾つか挙げられていま す。  それに対してどのように対応していくかということで挙げられたのが、例えば二次医療圏ご とにおける取るべき対応策の抽出、役割の明確化、ネットワークの構築、それから体制整備の 進捗状況の把握、訓練、人材の養成・確保、予算の確保等々といったものです。  それに対して国としてはどういう支援か考えられるかということで、まず1つは情報の収 集・提供、それから具体的な先進的な実例があったら、それを提示していくとか、人材の養 成・確保の関係で、例えばワークショップを開催する、あるいは研修会を開催するといったよ うなこと、それから、医療機関に対する人口呼吸器、PPE等のニーズの調査、それから予算 の確保、そういったことが挙げられました。  次に、資料8、人工呼吸器についてですけれども、これもいろいろ御議論いただいて、仮に 新型インフルエンザの患者が多数発生した場合、その人工呼吸器が不足するおそれがあるとい う認識で、部門の先生方は共通の理解、コンセンサスが得られています。それを今後確保する に当たって、次の点について留意してはどうかということが議論なされました。  1つは、必要台数の推定については、きちんと調査をする。現在、人工呼吸器が何台あって、 それから、人的資源にかんがみて何台使用可能なのか、そういったことについてきちんと調査 をする。それから、種類については、ふだん使っているようなタイプの人工呼吸器が誤操作を 防ぐために必要ではないかとか、保管場所については、入院医療を担当するような医療機関で 保管できることがいいのではないか。その方向で検討したらどうかとか、備品についても、エ アロゾル等を吸入したり等々ありますので、十分なPPEを確保することについても検討する 必要があるだろうというようなことをペーパーとしておまとめいただきました。  3つ目の医療機関における感染拡大防止については、まだ議論の途上でありまして、例えば、 いかにして在宅診療を進めていくかとか、一つ法制的な問題なんかもありまして、その辺はま だ事務局で十分整理できていないところもあり、まだまだ議論の途上にあるということを御報 告したいと思います。  以上です。 ○岡部議長 ありがとうございました。  医療部門も、抗インフルエンザ薬とか、ワクチンも医療ですけれども、そのほかに、実際は 患者さんが入ったときの呼吸器の問題、あるいは点滴の問題、注射器の問題、消毒薬の問題と いろいろ具体的には出てきますので、これも話を詰めていっていただきたいところですが、今 の幾つかの対応策というようなことが問題点として医療ワーキンググループの方で話し合われ たという報告ですが、御意見がありましたらどうぞお願いします。あるいは、医療ワーキング の先生の方で、何か補足的な意見がありましたらお願いします。どうぞお願いします、永井委 員。 ○永井委員 院内での感染拡大防止の点ですけれども、インフルエンザの院内における感染対 策は、ある程度、教科書的にいっぱい出てきているんですが、ふだん外来にいらっしゃってい るほかの患者さんたちも物すごく多数いらっしゃるわけで、その慢性の方たちが通院している わけでして、その人たちが、パンデミックの状態で病院に来られるのかどうかということをち ょっと心配しています。お薬を、例えば今、3カ月の長期処方ができますけれども、すべての 薬剤がそうであるわけではないし、そういった方たちが重なる場合にどうしたらいいかという ところは、現場は結構悩ましいところでありまして、その辺のお話がもう少し具体的にいろい ろ出てきたら助かりますということですけれども。 ○岡部議長 ありがとうございます。どうぞ、笹井委員。 ○笹井委員 私は大都市部で仕事をしていますので、ちょっと状況だけ言いますと、パンデミ ックになると、やはりすべての医療機関でその施設の状況に応じてやらないと、とても発熱外 来とか、拠点とか、ある病院とかというレベルではもうもたないと考えています。したがって、 我々は、都道府県と市町村との役割が少し明確になっていないので、医療部分のワーキングで も議論したいんですけれども、市町村は、やはりいわゆるプライマリーケアを、それから市民 に対するいろいろな情報提供あるいは相談とか、やはりパンデミックのときに、そういう機能 をきちんと持ってもらわないといけないのではないかと思っています。  今のところ、都道府県とか保健所の機能というのは結構議論されているんですけれども、や はり市町村サイドの議論が非常に少ないのが少し問題だと思っています。そこは、先ほど説明 がありました協議会とか、そういう組織を早くつくってやっていきたいと思います。市町村レ ベルでは、やはり市町村医師会と市町村と、それから病院と、その3者、それから、物によっ ては保健所も入ってどうするのかという議論をしたいと思います。  それと、特に都道府県の役割として考えているのは、重症患者を受け入れる病院をしっかり 確保しなければならないんですけれども、先ほど人工呼吸器の議論がありましたが、重症患者 を受け入れる病院を法制度的にどうするのかという、例えば都道府県知事の要請というところ はできるとは思っていますが、果たしてそれだけでやってもらえるのか。やってくれるところ がボランティアとしてやるということでは、とても内部の職員も説得できませんし、転院をさ せるとかそういう手段も取れないので、少しやれそうな病院あるいはやっていただけそうな意 識を持っている病院の制度的な位置付けをきちんとしないと、少し心もとないなという感じが しております。 ○岡部議長 ありがとうございます。今の制度的な問題もあるので、これは国の方でもこれか ら工夫していただかなければいけないところだと思います。とにかく、重症の患者さんをどう やって救命あるいは救急医療としてやるかという一方と、日本の場合だと、軽い患者さんでも 医療機関に殺到するというところで、重症の医療機関がそれでつぶれてしまっては何にもなら ないし、さりとて救急医療でわかるように、ある程度の心配なところは受け入れなくてはいけ ないけれども、そこも多くの患者さんに対する説明というところで、今後ますます重要になっ てくると思います。  林先生。 ○林委員 今の笹井先生の御意見は主として行政の立場で言われたと思うんですけれども、私 は、実際に医療を担当しているということで、その中で、今もお話があったように、新型イン フルエンザばかりではなくて、がんの患者も診なければ、心筋梗塞も診なければということで、 医療側も医療機関ごとにどういう役割を読んでいるのか。新型インフルエンザ発生初期、中期、 後期、そういうところがまだ十分に地域ごとに役割分担ができていないということもございま すので、また地域差もございますよね。だから、そういうことをこれから行政の方たちと一緒 に体制づくりを早くやりたいと思っています。 ○岡部議長 庵原委員。 ○庵原委員 庵原ですけれども、これは「呼吸器が不足する恐れがある」と書いていますけれ ども、「呼吸器が不足する」とはっきり書いた方がいいのではないかというのが1点ですね。 というのは、この発症者数からすると、しかもスペイン風邪タイプならばはっきりと足りない のだろうと。そうすると、これは呼吸器の回しをやらないといけないというか、重症度に応じ て呼吸器をつけている人は外すということが出てくるのではないかと。要するに、もう足りな いということが前提になりますから、そういう倫理的な面の危険性が出てくるんですよね。そ うすると、そういうところまでちょっと検討していただく必要があるのかなと。脳死移植の問 題で外すかどうかという、それで一遍外したら、裁判で訴えられてということが起こってきま すので、その点まで詰めていただけるとありがたいという希望です。 ○岡部議長 よろしいですか。呼吸器自体というよりは、扱える人員の数ということもあると 思うんですよね。ですから、呼吸器だけ増やせばいいというものではないので、的確に扱える 人をいかに確保できて、それで、なおかつピーク時の患者を予想して、先生のような配慮も必 要になるかと思いますけれども、また準備が必要かと思います。 ○岡部議長 ありがとうございます。  レスピレーターの問題がここでようやく登場してきたんですけれども、今後それの取り扱い の人のトレーニングなんかもあるでしょうし、それも含めたり、受け入れ体制、いろいろな協 力をいただかなくてはいけないと思うんですが、この医療部門においてももう少し議論を進め ていただいて、更に具体的なところまで踏み込んでいくよう、議論を是非進めていただきたい と思います。  まだ幾つかの議題が残っていますので先に進めたいと思います。後で、もしできたら問題点 をもう一回話そうと思いますが。  それでは、次はサーベイランス部門ですので、資料9に基づくことになりますか。谷口委員 お願いします。 ○谷口委員 サーベイランス部門ですが、せんだってワーキンググループが行われまして、こ れまで、前回ガイドラインの中にどういったシステムでサーベイランスを動かすかということ が記載されておりますが、実際には、先生方もよく御承知のように、十分な議論かできて、い ろいろなところでコンセンサスが取れてでき上がったものではないというのが1点。そして、 まだ書いてはあるものの、そのシステム自体は存在しない、あるいは稼働できないというもの もあります。  7月のワーキンググループでは、この進捗状況とともに、今後どうやっていくかということ をメインに議論をしました。  2番の課題と書いてありますが、これが、我々のワーキンググループが今日のこの全体会議 に最も期待するところですけれども、サーベイランスというものは、もともとゴールがあって、 そのゴールを達成する戦略があって、その戦略のために必要な情報をどう集めて、どういうふ うに使うかというのがサーベイランスですので、戦略がないとこのサーベイランスは存在しな いわけで、そのデザインができないという状況があります。それゆえ、先ほど委員長がおっし ゃられました、この戦略ペーパー、戦略をきちんと確定していただく。多分これはほかのワー キンググループでも同じだろうと思いますが、戦略が確定しないと、当然のことながら、それ の必要な情報が何であるかというのはわかりませんので、それをしていただく必要がある。そ の上で各システムをデザインして、システム樹立というところに行かねばならないというのが 大きな課題です。  個別の課題としましては、これまでいろいろな地方自治体様におきまして、H5N1の疑い 奨励が出ていますが、実際にはほとんど電話連絡とかそういったところで行われて、実際には すべてネガティブでしたのでコンタクトトレーシングまで行くことはなかったわけですが、現 在のシステムが余り使用されていないという現実。あと、実際にパンデミックフェーズ4、5 となった際に、ひょっとすると大量の検査検体が殺到するかもしれない。これはSARSのと きにもあったわけですが、要するに疑い検体ですね。そうしますと、大量の検体依頼をきちん と処理できるようなことが必要になるわけですが、現在のところ検査システムという形にはな っていないので、そこを併せて考えておかねばならない。  もう一つ、多分、パンデミックが始まった際に、ある、例えば東京で最初アウトブレイクが 起こって100人の患者が出ました。そうすると、その患者において、重症度がどれぐらいか、入 院率がどのぐらいか、肺炎発症数がどのぐらいか、タミフルが効くのか、迅速診断が陽性なの かというすべての情報をそこで即座にまとめて、日本全国に発信しなければならないわけです。 その情報が即座に全国に発信されないと、ほかの都道府県は対応できないわけですね。その後 も重症度とか臨床情報とかは変わりうるものですので、その後も継続してこの種のデータを収 集する必要があります。何が言いたいかというと、すべてデータの発信元は医療機関なわけで す。そうしますと、ただでさえ大変なパンデミックの最中に、かなり負担がかかるということ です。  例えば、イギリスではパンデミックの最中にサーベイランスを、患者がどのくらいいるかと いうのを毎日集めて公表するということを計画しています。なぜこのようなことができるかと いうと、国立の医療機関でネットワークができていて自動的にデータが収集できるからです。 ひょっとして日本でも、国民の皆様は毎日のデータが必要と言われるかもしれません。大体、 パンデミック自体は、全体で8週間しかないわけですので、1週間に1回のデータだったら8 回でおしまいですね。それで、1週間前はこうでしたといったような情報提供で効率的な対策 が出来るのかということですね。毎日のデータが必要であれば、医療機関に負担のかからない ような形でその毎日データが収集できるものを考えなければいけない。  これについては、当然のことながら、オートマチックに収集するとか、あるいはいろいろな 電話会社が考えられてみえるように、患者さんから電話でもらって、その電話番号を解析して、 どこにいるということをする。あるいは、医療体制によっては、タミフルのディスペンサリー のデータをもとに把握する。いろいろなことが考えられますが、これもすべて戦略に基づきま すので、それについて今後やっていく。  それともう一つ、これは多分、ほかのワーキンググループもすべて同じだろうと思いますが、 いつ来るかわからないという前提に立っていますので、いいシステムを1年、2年かけてつく れば、それはいいんですが、そうしているうちに来るかもしれないということがありますので、 短期プランと長期プラン、つまり、すぐ来るかもしれないという前提でシステムを準備してお くこととともに、ひょっとして3年後、4年後であれば、そのころのために考えておかねばな らない。この二本立てでプランを策定していきたいという形でまとめさせていただきました。  以上です。 ○岡部議長 ありがとうございました。  今、サーベイランス部門で、基本的な戦略のところは冒頭に話したところで、公衆衛生部門 とともにディスカッションしていくわけですが、個別のシステム策定の部分であったり、短期 あるいは長期プランで今後立てていくということが必要であるというサーベイランス部門から のレポートですけれども、御意見がありましたらどうぞお願いします。あるいは、部門の方で 補足の御意見があれば。どうぞお願いします、笹井委員。 ○笹井委員 今のお話の中で、パンデミック8週間という御発言があったんですけれども、も う少し詳しく教えていただきたいんですが。 ○谷口委員 一応、想定として、パンデミックのファーストウエーブは6ないし8週間といろ いろなところで書かれていますよね。 ○笹井委員 第6フェーズで。 ○谷口委員 ファーストウエーブ、すなわち患者さんが出始めて、ピークを打って下がるまで の期間です。 ○笹井委員 そうですか。ありがとうございます。 ○岡部議長 想定というか、今までの経験では、半年もだらだら続くのではなくて、こういう ふうに来ると。 ○笹井委員 なるほど。 ○岡部議長 では、神谷先生、何か補足に御意見ございますか。 ○神谷委員 神谷でございます。  ワーキンググループの方で少しお話をさせていただいてはいるんですけれども、基本的には、 医療機関からの報告ということが今ありましたが、あとは、やはり保健所を含めた地方自治体、 あるいは地方衛生研究所の検査が膨大になるというお話もございました。そういうような数、 それをきちんとサーベイランスのデータとしてこのパンデミック期に収集できるような仕組み、 人の問題ですが、ここらをきちんとまたワーキンググループの中で考えていかないことには、 システムはあっても、それをきちんと収集して、データが上がってこなければ意味がなくなり ますので、医療機関から自動で上がるような仕組みも必要ということもありましたが、あるい は保健所、あるいは地方衛生研究所でもそういうような仕組みをどう導入できるか、あるいは どういう仕組みを用意すればいいかということを今後ちょっと検討したいと考えています。 ○岡部議長 荒田委員どうぞ。 ○荒田委員 保健所として流行期を迎えますと、相談対応であったり、積極的疫学調査であっ たり、早期対応戦略であったりと人手が取られます。サーベイランスの部分も非常に重要で、 対策の根本になるものと考えており、なるべく協力していきたいと考えていますが、今後、保 健所でサーベイランスを十分続けていくためには、自治体としての事業継続計画を検討し、自 治体の中でほかの部門が保健所に協力する体制を取る必要があると考えています。 ○岡部議長 貴重な御意見ありがとうございます。  どうぞ、小田切委員。 ○小田切委員 資料9にもありますけれども、このサーベイランス部門のポジション、一番欠 点というか問題は、この基本戦略の目的がはっきりしていない、何のためにこのサーベイラン スがこの時点で必要か、次のステップではどのサーベイランスが必要かという目的がはっきり していないんですね。だから、ここの議論をきちんとしていかないと、今、人出が足りなくな るとかという話が出ましたけれども、当然そういう検査の部分においても、最初のフェーズ3 からフェーズ4に行って、それからフェーズ4からフェーズ5に行ってとどんどんフェーズが 進んでいったときに、どのサーベイランスをどこの時点に重点的にやっていって、そのサーベ イランス、例えば検査が必要なサーベイランスをいつまでやるのか。それから、もっとフェー ズが進んでいって、周りが患者であれば、感染診断をするというサーベイランスは必要ないわ けですね。次に必要になってくるのは、今度は通常のウイルス学的なサーベイランス、いわゆ るどういうウイルスがワクチン株とどれぐらい抗原性が違うかとか、そういうサーベイランス が必要になってくるわけで、そこに移行していくためにどういう方法で移行していくか、そう いう目的の明確化と基本的な戦略がはっきりしていない。そこをもっと議論して明確にしてい く必要があるかなと思っています。 ○岡部議長 御意見ありがとうございます。おっしゃるとおりで、感染研の中でも、ある程度 は検査を引き受けるけれども、それ以上になったら、これは全体を検査する意味はなくなるわ けで、感染研の中でも誤解があって、何万検体来たらどうしよう、そういうことはあり得ない ので、途中で切りますというようなことも議論されているわけです。切りますというのは、検 査が途中で要らなくなるわけです。そういうようなことも想定しながらやるので、先ほどの戦 略で、どこでどうやっていくかということが重要な部分になっていくと思います。  どうぞ、前田委員。 ○前田委員 今の戦略にもかかわるんですが、インプットの方はかなりいろいろなものを入れ てという話ですが、アウトプットがどういう形で出てくるのか。特に今回、公衆衛生のワーキ ンググループの方では、ある程度医療体制も含めて、都道府県単位でその状況を見て体制を変 えていくというお話がある中で、例えば、都道府県単位でこれがどういう形で戦略に結びつく ような形でこの情報が還元されていくのかというところが、その姿が見えないということが非 常に不安です。  特に、恐らくは地方感染症情報センター、8割方は中央衛生研究所がされていますが、そこ でこの全体を集約されたものがどういう形で出されて、それをどう政策決定部門等に提供して いくのかというあたりの姿が見えないので、全部感染症研究所の方に集まるんでしょうけれど も、それをまた再配布されるという形では、恐らく戦略上間に合わないと思いますので、その 辺のアウトプットがどういう形で行われて、それが戦略にどうつなげられていくかというあた りも是非サーベイランス部門と公衆衛生の部門とでいろいろ検討していただければと思います。 ○岡部議長 ありがとうございます。  どうぞ、谷口委員。では、サーベイランス部門はこれで最後にしましょうか。 ○谷口委員 前田先生のおっしゃるとおりで、まず戦略がないと、我々もデザインができない のはあります。あと、例えば台湾のように、各地域で病院の空き病床数とか、患者数とか、あ るいはPPEとか、タミフルのストックがあるとか、そういうものを全部ひっくるめたサーベ イランスネットワークをつくっている国もあるわけですね。これも戦略です。もしも我が国の 戦略として、医療体制と一緒にした方がよければ、そういう形にしていけばいいだろうと思い ます。  あともう1点だけ、大日委員が今日欠席ですので、今いろいろなシステムが必要ですけれど も、人手が必要なんですね。いろいろなことで保健所の負担もかかる、医療機関の負担もかか る。そうしますと、例えば現状の処方のデータベースがみんなオンラインになっている、そう いうものが実際に存在しますので、そういったところから集めるというのもやはり考えておく。 いろいろな、いわゆる症候群(syndromic)サーベイランスですけれども、そこも考えていくの が必要だろうと思います。  以上です。 ○岡部議長 幾つか試行されているものもあるわけですけれども、それがもし有用なものであ れば、なるべく早く導入して、必ずしもそれはパンデミック対策だけではなくて、いろいろな 感染症対策に結びついていくと思うので、そういう議論を繰り返しながら、現実になれるもの をできるだけピックアップしていただきたいと思います。  それでは、もう一つが最後の部門なんですが、リスクコミュニケーションといったようなと ころで議論も重ねられています。今日は、丸井先生が御欠席なので、これは前田先生、御発表 をお願いします。 ○前田委員 では、リスコミ部門について経過報告をさせていただきます。済みません、まだ 議論が途中ということで特にペーパーをつくっておりませんので、口頭でお話をさせていただ きます。  広告部門につきましては、一応4点について検討しております。1点目は広報対応というこ とでございまして、パンデミック等が発生いたしますと、いわゆる報道を通じた一般の国民の 方あるいは関係機関の間でのリスコミが非常に重要だということで、この広報対応について現 状を確認いたしております。その中で、やはり的確にその発生状況をお伝えして、冷静に対応 していただくためには、ある程度、その発生状況に応じた自治体等あるいは政府等の広報の考 え方をある程度整備していく必要があるだろうということで、これについて今後も検討してい くという予定でございます。  2点目は、電話対応センターということで、これは、発熱ステーションですとか、いろいろ な言い方がされて、これについてはまだ、一応、統一的な見解というのはこの専門家会議でも 示されていないと思っておりますが、こうした問題が発生しますと、国民の方から電話による 相談等が殺到するだろう。あるいは、医療機関を受診する際も、場合によっては、こうした電 話相談センターで受診先を相談してから具体的な受診につなげる、そういう対応も考えられる ということで、いわゆるコールセンターのような電話相談センターを各自治体等で設定してい くべきではないかということが議論されています。ただ、これは、どういう形で設置するか、 あるいは国、自治体、医療機関あるいは保健所等々がどういう役割分担をするかということに ついて、今後、マニュアル化等することも含めて検討していきたいと考えております。  なお、この電話相談センターをどういう形にするかということにつきましては、今後、公衆 衛生部門ですとか医療部門での議論を踏まえながら検討していきたいと考えております。  それから、今までは発生時の問題ですけれども、発生前から、やはりこの問題について、発 生した際に国民の方に冷静に対応していただくためには、事前にこの新型インフルエンザにつ いての国民的な議論を推進する必要があるだろうということが考えられております。ですので、 この国民的議論の推進の方法というのが3点目の検討テーマでございました。  ワクチン接種につては、与党チーム等からも御指摘があって、是非この国民的議論をという ようなことの要請がございましたということで、そういう点もございますけれども、それ以外 にも、例えば医療機関の受診の問題、あるいは外出の自粛ですとか、さまざま事前にやはり国 民の方々に議論していただいて、そのあり方を検討しておくという点もございますので、こう いう問題について、どのような方法で議論していくのか、どういう方々に参加していただくの か、そういうことの可能性や方法等も含めて今後検討していきたいと考えております。  先ほど、基本戦略の中では、国民の90%の方が新型インフルエンザの流行発生時に、医療機 関か発熱外来を受診するというお話もありましたけれども、場合によって、必要であればこう いう行動について少し行動変位をしていただくというような形でのリスクコミュニケーション も必要かと思っておりますので、こちらにつきましても、今後それぞれの戦略等に沿った形で の内容を検討していきたいと思っております。  最後は、コミュニケーションツールの制作ということで、これはさまざま、リーフレット、 パンフレット、あるいはポスターですとか、場合によってはテレビコマーシャル等もあり得る かと思いますけれども、そういうコミュニケーションツールの制作について、今後、発生段階 等に応じた形でどのようなコミュニケーションツールが必要かということについて検討してご ざいます。それぞれの段階でのメッセージ、どのようなメッセージを発信するか、あるいはだ れがそういうメッセージを発するか、あるいはそれぞれの段階に応じてどういう対象の方にど のような形でこうしたメッセージを発信していくかということにつきまして、今後具体的な検 討を進めていきたいと考えております。  以上です。 ○岡部議長 ありがとうございました。  先ほど、ワクチンや何かの部門でもちょっと話が出ましたけれども、決して非公開でやって いるわけではないんですが、そういう情報がなかなか伝わりにくいということがありますので、 このワクチン接種に対しての国民的議論とか、是非いろいろな面で進めていただきたいと思う んですが、実際に起きたときの電話対応とか、そのツールといったようなことが今議論されて いるという報告をいただきました。時間も迫ってきているんですけれども、どなたか御意見、 一つ、二つあればどうぞ。コメントがありましたら。どうぞ、お願いします。野口先生。 ○野口委員 先ほど、医療のところで永井先生からも、非感染者への安全な医療の提供という 話があったと思うんですが、やはり病院の入り口でのトリアージというのが絶対必要になって くるんですが、そのためには、今言われたような国民のコンセンサスというか、国民が協力し てくれないとどうしようもないので、やはりここは、リスコミの人たちにいろいろその辺も検 討していただければありがたいと思います。 ○岡部議長 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。  なかなか時間のかかるところではあると思うんですけれども、一つひとつ説明して、あるい は状況を話していかなくてはいけないだろうと思いますので、継続して話し合いと、それから それが実現に向くように、例えば電話対応センター設置なんていうのは早くからやっていかな くてはいけないだろうと思いますので、是非どうぞよろしくお願いします。  大分時間が迫ってきたんですけれども、総合的な議論というのは今の中で随分御意見をいた だいたように思いますので、最後になりますが、いわゆるPTというのがこのごろよく躍って きますが、プロジェクトチームですね。与党あるいは野党でもこういうものがあると聞いてい ますけれども、それの提言についてどういうようなものであったか、事務局の方から、これの 御紹介も併せてお願いします。 ○感染症対策企画調整官 時間があと2分しかありませんので簡単に。  最後の方に別添という資料をつけています。「鳥由来新型インフルエンザ対策の推進につい て」という、谷垣政調会長と斉藤鉄夫政調会長、自民党、公明党の政調会長のサイン入りのペ ーパーですが、本年1月に与党の方でプロジェクトチームが立ち上がり、計14回にわたり御議 論を重ね、6月20日に取りまとめが行われました。内容としては、もう水際対策から、医薬品 の備蓄、研究開発、それから地方自治体独自の医療体制の整備、国際協力等と非常に多岐にわ たり、かつ、かなり詳細に御提言をいただいております。  中身については後で御一読いただけたらと思いますが、私ども政府としては、この提言も踏 まえて、これからも対策を前に進めていこうと考えております。  以上です。 ○岡部議長 ありがとうございました。  まだまだ議論はあると思うんですけれども、限られた時間の中でやらなくてはいけないので、 一応、今日の会議としてはこれでおしまいにしたいと思います。ただ、今、事務局の方で、次 回の開催は9月ごろですか。 ○感染症対策企画調整官 また文書でお知らせしたいと思います。 ○岡部議長 何カ月も放っておくということではなく、近々、今のような御提言その他、ワー キンググループの方では逆に、ほかのところからあった意見を持ち帰って話を進めていただい て、それから特に基本戦略にかかわるところについては、ポジションペーパーというような形 で、これは公衆衛生部門が中心になってやりますので、それに御意見をいただきながら次回ま でに提案をすると。  それから、幾つか了解事項をいただいています。例えばパンデミックワクチンに関する株の 選定のことであるとか、防護具の一覧表であるとか、幾つかありましたけれども、事業所にお けるガイドラインというようなものについては、冒頭に申し上げましたように、必ずしもすべ て決定しているわけではありませんが、基本方針ができてきているので、これについてはパブ リックコメントというような形で広く御意見をいただいて、それを集約し、最終的なものをつ くるという方向に行きたいと思います。  委員会は一応終わりになりますけれども、引き続きいろいろなところで活発に議論をしてい ただいて、今日からまた何カ月かたてば、その分少しはプラスになるという形でステップアッ プを図っていきたいと思います。  それから、幾つかのところで結論がもし出たり、あるいは変化がありましたら、これも意見 交換ということでしていきたいと思います。  少々時間が遅れて申し訳なかったんですけれども、いろいろな御議論をいただきましてあり がとうございました。  事務局の方へお渡ししますので、あとお願いします。 ○感染症対策企画調整官 特にありませんので、これで終わりたいと思います。 ○岡部議長 それでは、どうもありがとうございました。 照会先:健康局結核感染症課特定感染症係(内線2379,2386)