08/07/30 「「安心と希望の医療確保ビジョン」具体化に関する検討会」第2回会議議事録 「安心と希望の医療確保ビジョン」具体化に関する検討会 第2回会議          日時 平成20年7月30日(水)          18:00〜          場所 厚生労働省専用第21会議室(17階) ○高久座長  それでは、ただいまから第2回「『安心と希望の医療確保ビジョン』具体化に関する研討会」を開  催させていただきます。本日はご多忙のところ、また暑いところご参集いただきましてありがとう  ございました。まず事務局から、委員の出欠状況と追加の資料について説明をしていただきます。 ○間企画官  本日はすべての委員の方にご出席をいただいておりますが、前回ご欠席された方々についてご紹介  をさせていただきます。まず、丹生裕子県立柏原病院の小児科を守る会の代表です。 ○丹生委員  ありがとうございます。よろしくお願いします。 ○間企画官  続きまして西川厚生労働副大臣です。 ○西川副大臣  西川でございます。第1回は失礼いたしました。よろしくお願いたします。 ○ 間企画官  なお本日、松浪政務官は所用で欠席をさせていただいております。   それでは、お手元に大変多くの先生方から資料のご提供いただいておりますので、確認をさせてい  ただきます。資料ナンバーがついているものが1から9まで。そして本日テーブルにいくつかお配り  してあります。  まず資料1が事務局提出のものです。資料2-1は臨床研修の見直しの「議論のためのたたき台」。そ  れに関連して全国医学部長病院長会議から関連する要望書が出ております。資料3は、昨日、政府  として公表いたしました「5つの安心プラン」の主な点を抜き出したPR版です。資料4は、松江病院  院長の岸本先生からの資料です。これは後ほどご説明申し上げます。資料5は、折れ線グラフの入っ  た海野先生からご提供いただきました資料です。  資料6はいくつかございます。嘉山先生からで、6-I-(1)「医師の処遇改善に係る制度設計」、資料  6-I-(2)は日米の国旗の書かれたもの、6-I-(3)全国医学部長会議(富山市)「裁量労働と処遇につ  いて」。資料6-IIは「卒後臨床研修制度の光と陰」。6-III、これも嘉山先生から実際の取り組みの  実例として「山形大学地域医療医師適正配置委員会規程」と「村山地域の産科医療を考える会」が  ございます。  資料7は、土屋先生からご提供いただいております「医師確保のための提案」です。資料8は、吉村  委員からご提供いただいております「我が国の専門医制度に関する提言」です。資料9は、日本学  術会議の要望「信頼に支えられた医療の実現−医療を崩壊させないために−」です。ここまでがナ  ンバーの書いてある資料です。  その他に、先生方のお手元には土屋先生から「後期研修医数の試算」という資料、「『後期研修の  あり方に関する研究班(仮称)』設置に関する要望」。もう1つ、吉村先生から追加の資料で「医  師の地域偏在、診療科偏在への対応」という資料です。なお、メインテーブルの先生方にはその他  に、前回の嘉山先生の資料と「日本専門医認定制機構」の報告書もあります。大変大部で恐縮です  が、以上でございます。  ○高久座長  それでは議事を進めてまいります。本日の議論の進め方ですが、事務局から資料の1から4、事務  局提出の臨床研修制度の見直し、5つの安心プラン、岸本先生提出の意見について説明をしていた  だいたあとに、前回ご議論のありました医師不足と医師の偏在・医学教育を中心のテーマとして、  皆様方からご自由なご意見を伺いたいと思います。まず、舛添大臣から一言ご挨拶をいただきます。 ○ 舛添厚生労働大臣  皆さんお暑い中全員出席ということで、ありがとうございます。しかもこんなにたくさん資料をい  ただきましたので、これだけで2日間ぐらいのシンポジウムを持てるんじゃないかなと。こう暑い  時期ですから、私は昔、学者の端くれでしたので、大体こういうときは避暑を兼ねて、どこか1泊  あたりでやるブレイン・ストーミングもいいかと思ったりしていますけれども、本当に皆様ありが  とうございます。  いつも申し上げておりますけれども、完全に白紙の状態からというか、新しい発想を生み出すため  には、既存の今までの既成概念から離れてやったほうがいいと思います。今日は高久座長がおっし  ゃるような、臨床研修制度の見直し、その他医師の偏在、医学教育を中心としたテーマですけれど、  例えばお医者さんではない立場から見ると、要するに教育をするというのと、派遣をしてそこで働  かせるというのというのはどうなのか。  実は私は労働大臣でもあるので、日雇派遣を禁止するとか、働き方を厳しくやってやろうというよ  うに思うのですが、教育の一環として派遣させる、だけどそこでは実際は働かせている。お医者不  足なんですね。そうすると日雇派遣とは言わないけれど、労働の問題から見るといいんだろうか。  教育とうまい具合にミックスさせているけれど、常識、つまり、医療の現場じゃないところから言  って、いいのかなという疑問には答えられますかと。  それから、基本的にはやっぱり現場重視ということを申し上げたいので、厚生労働省が旗振ってど  ういう方向でやれというより、現場の皆様方が、例えば教授の皆様方がこういう形で研修制度を変  えるんだと。したがって、自分たちでルールを決めて自分たちでこういう規制をするんだというの  は、それはいいんだと思いますけれども、例えば、昭和大学はどうするとか、慶應大学はこういう  方針でやる、それは我々がやっちゃいけない、いいということじゃないと思う。だけど、政府が旗  振ってどの大学もこういう形でやれというのはいかがなものかなと、そういうようなことも思って  おります。  それから医師の不足の問題ですが、どうしてもコメディカルのほう、介護士、看護師、メディカル  クラークその他の分野の方々についてもこれは議論をしないと、お医者さんの数の話ばっかりして、  ちょっと若干忘れても困るなと。だからこれはスキルミックスをやるときに、看護師さんは全然増  えないでやったってできるのでしょうか、というような話もあるのです。  少しこれも勝手なお願でございますけれども、医療の現場にいない者の立場、今日は丹生さんがお  見えになっておられますので、是非そういう立場からもご発言願って、医療の現場にいないお医者  じゃない人から見て不思議だなと思うことに対して答えが出なければ、やはり前に進まないという  気もしますので、ちょっと問題提起をしておきたいと思います。本当に忌潭のないご意見を賜って、  さらに今日の検討会を進めたいと思います。以上です。 ○高久座長  ありがとうございました。それではカメラはここで退室をお願いいたします。事務局より資料の説  明をお願いいたします。 ○ 杉野医事課長  医事課長です。私から資料1番と2番について説明いたします。1番は主として医師の需給のベース  になるような資料です。前回いろいろご指摘をいただき、資料を集めてまいりました。十分ではな  いかもしれませんが、説明申し上げます。  まず1頁、2頁については前回もお示しした資料と同じものです。3頁からですが、細かな表になり  ます。前回、産婦人科と小児科については個別に概要資料を出しましたが、さらに全体の診療科動  向についてお示しする診療科別の従事医師数の推移です。4頁は病院、5頁は診療所となっています。  生データで、適宜ご参照いただければと思います。これをわかり易くグラフにしたものが6頁以降  になります。  6頁は「診療科別医師数の推移」について、平成6年を1.0とした場合の指数で、その伸びなどをお  示したものです。パッとご覧いただきますと、いちばん上のほうに伸びているのがリハビリテーシ  ョン科、その下が形成外科です。順次いろいろな科が並んでいます。逆に、平成6年以降下降線を  たどっているのが、いちばん下から産婦人科、その次が外科となっています。この産婦人科、外科  については卒後臨床研修の必修科の影響が18年に出ているわけですが、それ以前からの減少傾向が  示されています。なお、上のほうのリハビリテーション科や形成外科、いろいろな要因があると思  いますが、そもそもこの両科などについては、母数が小さいことも大きな影響があるかと思います。  さらに病院と診療所に分けたものが、7頁と8頁です。これらについても前回、たしか嘉山先生から、  病院勤務医と診療所に分けて議論する必要があるというようなご指摘がありました。分けてみたも  のが7頁と8頁です。低いほう、減っているほうに目を向けると、7頁の病院ではいちばん下が産婦  人科、その次が耳鼻いんこう、その次が外科、その上の薄いブルーは眼科、こういった診療科が若  干減少傾向を示しています。  他方、8頁の診療所で見ると、減っているのはやはり外科、産婦人科です。つまり、外科や産婦人  科は病院、診療所を問わず減少傾向にあることが示されています。他方、病院では減っていた耳鼻  いんこう科、眼科、大きな伸びではありませんが、それぞれ診療所では逆に伸びています。病院と  診療所で違った変化をみせていることが、このグラフでわかる状況です。  9頁は、小川先生からご指摘いただいた「都道府県別にみた人口10万人対医師数」です。まず全県  的に見て、黄色でマークしていますが、総医師数あるいは従事医師数ともに平成18年度で最も少な  いのは埼玉県、最も多いのは京都府で、その差は約2倍という開きになっています。  これを、もう少し詳しく病院と診療所に分けてグラフに落としたものが、10頁です。このグラフは、  縦軸に人口10万人当たりの病院医師数、横軸に同じく10万人当たりの診療所医師数でとっています。  例えば、右肩に京都府などがありますが、右肩のほうは病院で見ても、診療所で見ても医師数が相  当豊かにある、日本国内では比較的多いということになります。逆に左下のほうは、病院で見ても、  診療所で見ても医師数が不足しているという地域です。これもまた前回、小川先生からご指摘があ  りましたが、例えば、茨城、千葉、埼玉といった東京周辺の地域。あるいは、ちょっと理由は違う  と思いますが、岩手とか青森といった東北地方。こういった所が、病院で見ても診療所で見ても、  医師が不足していることが現れているグラフです。  11頁からは、産婦人科関係などの個別の診療科についてです。分娩件数1,000当たりの分娩取扱い  医療機関数を、都道府県別に見たものです。たくさん線があり大変見にくくなっていますが、上の  ほうの県はいちばん上が長崎、2番目が徳島、次が佐賀と並んでいます。一方、少ないほうの下の  ほうは、下から順番に神奈川、埼玉、東京、大阪です。都道府県によって相当幅というか、差があ  るわけですが、全体として見ると、右肩下がり、減少傾向にあることが見てとれると思います。  12頁は、小児人口1万人当たりの小児科医師数を都道府県別に見たものです。上のほうには東京、  鳥取、京都が並んでいます。下のほうは、下から順番に石川、埼玉、千葉と並んでいます。全体と  して増加傾向といえるのかもしれませんが、県によるばらつきが相当大きいデータだと思います。  13頁は外科医についてです。外科医は、先ほど紹介したように、全体として減少傾向にあるわけで、  このグラフでもそう見えますが、上のほうは長崎、徳島、滋賀と並び、下のほうは埼玉、神奈川と  いった県が並んでいる状況です。いずれにしても都道府県によって相当の幅というか、差がある状  況です。  14頁は「専門医数の推移」を示したものです。さらに関連して15頁は「基本領域18学会新規入会者  数の推移」について示したものです。この辺り、前回、海野先生あるいは吉村先生から専門医の問  題についてご議論がありましたので、参考になればと思い資料を用意しました。14頁は専門医数の  推移ですが、各学会において専門医の資格要件を見直したり、整理したりということが行われてい  ますので、単純な比較がなかなか難しい面があります。注にも書いておきましたが、平成14年以降  は医業に関する広告規制緩和の一環で、専門医の広告が可能になったという要因もあります。生デ  ータですが、参考にしていただければと思います。15頁は、先ほど紹介したように、新規入会者数  の推移を示したものです。  さらに関連して16頁は、卒後臨床研修の後に専門としたい診療科を、卒後臨床研修の2年次の者に  調査した結果です。さらに参考ということで、17頁は平成14年の卒後臨床研修の必修科の前の状況、  当時20代の医師の方々の診療科別割合についてです。16頁と17頁は単純には比較できませんが、参  考として用意しました。  18頁は、年齢階級別の、さらに病院と診療所別の割合を示したグラフです。これも前回、たしか嘉  山先生から医師の高齢化の問題についてご指摘がありました。ブルーが病院、紫色が診療所で、そ  れぞれ各年代別、しかも過去30年間の推移を示したものです。地域によって差があるとは思われま  すが、全体を見ると、過去30年間で、特に40代〜50代、そして60代にかけて、年を追うごとに病院  従事者の割合が増加しているところが見てとれると思います。このデータだけでは一慨には言えま  せんが、特に病院の勤務医の方々の高齢化ということがある程度推定できると思います。  19頁は、医師の勤務時間についてです。前回、この辺りの実態についてご議論がありました。土屋  先生、小川先生、その他多くの先生方からご指摘いただきました関係のデータを用意しました。こ  れは上が業務時間、下が滞在時間です。業務時間は、医師が各医療機関で過ごす時間のうち診療、  教育、そういったものに当てる時間で、滞在時間はそれに加えた休憩時間、自己研修、研究といっ  たものを加えたものです。さらに左側が病院、右側が診療所、ブルーが男性、紫色が女性です。  これではっきりしているのは、左側、病院の場合では業務時間で見ても、滞在時間で見ても、特に  若い世代の方々は相当時間が長くなっていることです。これに対して診療所のほうは、病院に比べ  ると勤務時間、滞在時間ともに、基本的に短く、また世代間でそれほど差はないことが言えると思  います。ただし、診療所のほうもよく見ますと、女性医師の場合は若干変動が見てとれますが、そ  れを除いたところは大きな世代間の変動は見られない状況です。  20頁は「日本の医療における人材育成コストについて」です。たまたまですが、昨年11月に日本私  立医科大学協会さんから「医学教育経費の理解のために」というパンフレットを渡され、それを基  に作成したものです。「私立大学における医師の育成コストと授業料」ということで、医師1人当  たりの育成コストが6年間合計で約1億円という費用がかかるということと、6年間で授業料は約3,0  00万円余りがかかっていることを示したものです。  最後に21頁、22頁は医療事故関係、あるいは訴訟関係のデータです。21頁が刑事関係、22頁が民事  関係です。前回、川越先生あるいは大熊先生、和田先生からご指摘のあった医療訴訟関係のデータ  です。まず21頁の刑事関係を見ると、平成11年まではともかく、それ以降急激に件数が増え、16年  以降は比較的90件ぐらいで安定していますが、たしか横浜市立大学における患者とり違い事件とか、  あるいは都立広尾病院の事故、こういった事故が平成11年だったと思われます。前回も議論になり  ました大野病院の事故が、平成18年だったと思います。ご覧のように、平成11年ごろから急激に増  え、平成16年以降は前回和田先生がご指摘のとおり、90件台で推移している状況になっています。  22頁の民事ですが、ブルーの縦棒は医療訴訟以外も含めた全分野における件数の推移です。紫色が  医療関係訴訟の推移です。全分野のブルーのほうは多少の変動はありますが、比較的横ばいの状況  です。その間にあって医療関係は概ね増加傾向にあったことが言えるデータかと思います。以上が、  資料1についての説明です。  続いて資料2については、2-1と2-2に分かれています。これは報告ですが、前回のこの検討会の翌  日、18日に医道審議会の臨床研修部会において、2-1のような資料で議論がありました。卒後臨床  研修の見直しが進められていますが、今回、まず(1)として、大学病院における研修プログラム  を弾力化するためのモデル事業、弾力化した形でのモデル事業をやってみてはどうかということが  1つです。(2)はマッチング制度です。これについては研修医の地域定着という観点から、例えば  就職先を限定した地域枠、あるいは奨学金を受けている医学生については、全国的なマッチング制  度の対象外としてはどうかという取扱いの変更。さらには、臨床研修病院の質の向上の観点から指  定基準を見直してはどうか。こういったことのご議論をいただいたものです。  概ねこれで進めてはどうかということになっており、この点については従来から全国の大学関係者  のご意見などを伺いながら進めていましたが、資料2-2にあるように、全国医学部長病院長会議の  ほうから要望書がこの点について出されています。7月30日、今日付けですが、要望書の中でいろ  いろ書かれていますが、要はすべての事項について、大学関係者と今後とも十分に協議をしながら  進めていただきたいという要望を承っていますので、そのような方向で進めていきたいと考えてい  ます。私からは以上です。 ○ 間企画官  続きまして資料の3番です。この横表のもの、「5つの安心プラン」についてです。皆様ご案内かと  思いますが、昨日政府として公表したもので、社会保障に関して国民の皆さんが抱く不安や不満に  対して、この1年間に緊急にこういうことをやらなくてはいけないものをまとめたものです。その  主なテーマは資料3の1枚目にあるように、高齢期の安心、2番目が医療、3番目は少子対策、4番目  は派遣、働き方、そして5番目は厚労省のあり方、こういうテーマで公表したものです。本日お配  りしている資料は、その中でもたくさんやらなければいけないことがあるということで、その中で  特にというものを抜粋したものです。  3頁は医療の関係です。医療の関係も課題は多いですが、その中でも特にということで、ここでお  示しているのは、大きく言いますと、救急あるいは産科・小児医療をはじめとする地域医療を、き  ちんと守っていかなくてはいけない。これをどうするか。そして国民の医療に対する不安を解消し  なくてはいけない。これが大きな1点です。もう1つは、この検討会でもいまご議論いただいている  医師不足問題にどういうふうに対応していったらいいのかについて、示しています。  大きくそれぞれ項目があり、救急の関係は、救急患者が医療機関に確実に受け入れられる体制をつ  くるということです。そして、もう1つは地域の産科・小児科医療を守るということです。もう1つ  は、医師の養成数を増やす。それから大変過重労働になっている勤務医の労働条件を改善しなけれ  ばいけない。対遇、処遇を改善しなくてはいけない。もう1つは、医師確保が困難な地域などへ医  師派遣を進める。  これらについては、これまでいろいろ多くの方のご意見を伺いながら進めてきた施策に加え、これ  まで特に、いまこうした救急とか産科・小児科とか、あるいはへき地を中心とする地域でご苦労い  ただいている勤務医の方々に対して、どういう応援ができるのか。主に、診療報酬などを中心にや  ってきたわけですが、特に今回は必要が高いだろうということで、何らかのですね。 ○岡井委員  座長、ちょっとよろしいですか。総論の説明みたいな話ばかりで時間を取ってしまうと、本当のデ  ィスカッションができないので、もう少し。申し訳ありませんが、折角ご準備いただいたのに。 ○間企画官  短く、申し訳ありません。 ○岡井委員  今日ディスカッションするポイントになるところをお願いできればと思います。 ○ 間企画官  いまの手当の関係は、実際の地域の柱として、苦労されている勤務医の方々などに対して病院から  手当を出されている、分娩手当を出されたりということもあるので、そういったものを応援できな  いかというようなことを考えているわけです。これらについては今後、概算要求などに向け、さら  に中身を詰めて、地域の方々のご努力を応援させていただきたいと思っているところです。資料3  は以上です。  資料4です。先ほどちょっと紹介した東京松江病院の院長の岸本先生から提出いただいています。  実は岸本先生は、本来この検討会の委員にお願いをしていたのですが、いろいろなご事情がござい  まして、この夏は難しいということでご辞退されました。ただ、ご意見があればと申し上げたとこ  ろ、このようなご意見をいただいています。ごく簡単に紹介します。  まず1「医療従事者等の数と役割」についてです。ア)として、医師養成数の増加。これは医学部  の定員数を増加回復させることも必要だが、それに加えて、より緊急性があり、かつ即効性のある  こととして、「後期研修医の専門分野別定員数」を設定すること、あるいは専門医取得後の勤務地  の規制・誘導策を立てることが必要ではないか、というご提案です。イ)として、コメディカルの  雇用数の増加についても、職種間の移動あるいはスキルミックスというものを進めていくべきでは  ないか、ということが提案されています。ウ)として、総合的な診療能力を持つ医師の育成という  ことで、総合医の位置づけをきちんとすること、総合医の育成を医学部に対して国が助成する際の  条件とすること、をご提案されています。  (2)医師の勤務環境の改善ということで、種々ご提案いただいているところです。事務局からは  以上です。 ○高久座長  それでは前回の会議で、医師の養成数を増加させるという方向性は、皆さん方のご意見の一致をみ  たと思います。同時に、診療科における医師の偏在とか、あるいは地域における医師の偏在を解消  するための方策も考えないと、医師数を増やすだけでは駄目ではないかというご意見も出たと思い  ます。本日は、事務局から診療科とか、地域における偏在についての資料を出しているので、診療  科とか地域における医師の偏在をどのように解決するのか、あるいはそれに合わせて医学教育、こ  の中には初期研修と後期研修、両方入ると思いますが、そういう問題についてもご議論いただきた  いと思います。  前回、大臣からも現場の知恵を借りたいというお話もございましたので、現場で実際にいま働いて  おられる先生方の積極的なご意見をいただきたいと思います。また先日、先ほど説明がありました  ように、「5つの安心プラン」がとりまとめられたところですが、このプランについても委員の皆  さん方からいろいろなご意見をお伺いしたいと思います。どなたでも結構ですから、ご意見を早速  お伺いしたいと思います。 ○ 土屋委員  前回、偏在のことを申し上げたので、今日お示しいただいたデータを基に、少し追加の資料を出さ  せていただきました。「後期研修医数の試算」という、追加の少し厚いものです。これは、ちょっ  と間違えて、医師、看護師、いつも看護師のことが頭にあるので、歯科医師の代わりに看護師と書  いてしまいましたが、同じデータで2006年の分を、これは縦型にやったわけです。左の欄を見ます  と、2006年の総数から内科、ここにありますように、病院、診療所、いま言われた数が出ています。  心療内科とか呼吸器科、消化器科というのはSubspecialtyですので、これを横軸でいきますと、合  計の次の専門分野のところに書いてあります。ですから、内科は内科の合計7万プラス、このSubs-  pecialty3万人、合計約10万の方が内科として活躍しているということで、あと、その他の科をや  ってあります。  そのいちばん上の行に「徐数36.6に設定」というのは、左下を見ていただきますと、26万人の医師  を初期研修の方、研修医が1万4,000某がありますので、1学年7,200ということになります。これを  徐数として36.6というのを設定しますと、初めて卒業した方がどの科にどの割合で行ったら現在の  医師数が維持できるか、という形で計算したのが徐数36.6に設定した基本診療科、あるいはSubsp-  ecialtyの専門研修に書いた数です。  ただ、これですと合計が7,000になってしまいますので、いちばん右側に「徐数を35に設定」した  ときに、例えば内科であれば新卒が約7,000某あるのが、2,875という方が内科の研修を受ける数と  いうことになります。外科の場合は、ずっと下にいきますと745というような、こういう数が出て  きますので、これに則って、専門医が多いとか少ないとか、あるいは今年の学会の入会者が多いと  か少ないという判断をしないといけないだろう。過去に比べて多いとか少ないとかだけではなくて、  実際に年度末に、一斉にこれは2年に1回調査をしているわけですから、実際に修養している数をど  う維持するか。あるいは、これが偏在があるのであれば、どう直していくかというのを、こういう  数を基に考えていくべきではないかと考えます。  それについては、1枚紙の「『後期研修のあり方に関する研究班(仮称)』設置に関する要望」を  追加で出しました。これは、第三者機間というのが書いてありますが、「背景」があって、2つ目  に「調査研究」があります。「調査研究」のマルの3つ目に、「卒後研修(専門医制度)委員会の  設立」というのがありますが、これは以前から上のほうのマル3つ目もそうですが、日本医師会、  日本学術会議、今日の和田先生のお出しになった資料9の中にも、これは明確に書かれているわけ  です。資料9の3頁、3「要望の内容」(3)専門医制度認証委員会の設置ということが、日本学術会  議で6月26日付けで既に出されています。また、医師会からも別の機会に要望が出されています。  ということは、この後期研修について専門医・家庭医の教育の質の担保とともに、人数のコントロ  ールを含めて、医療者が自律的に自浄的に担う第三者機関が必要であるというのが、医師の総意で  あると私は考えます。是非この機会に研究班を立ち上げて、どのような第三者機関が必要なのかと  いうのを年度内に結論づけて、来年早々にでも第三者機関が立ち上がるような努力をすべきではな  いかと考えます。そうしませんと、いつまで経っても、偏在偏在と言っても、数字の根拠に基づく  議論ができないだろうと思いますので、是非その設置を大臣にお願いしたいと思います。  そして、ただそれには、これが出来たところで、時間がかかりますので、当面の対策として、いち  ばん下に書かせていただいた、「有効なインセンティブの実行」ということがあります。これはい  ろいろなドクターフィーとか言いますが、現実に当直料あるいは待機料、特に麻酔科の先生方は待  機をしていますけれども、これが的確に払われていないということがありますので、まずその辺の、  先ほど労働省という言葉が出ましたが、払うべきものは払う。世間一般では信じられないような、  働いているにもかかわらずお金を払わないということを、まず是正すべきだろう。それによって医  師の離職の防止、職務遂行に対する意欲の発揚ということを、まず図るべきではないか。その間に、  制度を整備するというような順番でやっていただきたいと思います。以上です。 ○ 舛添厚生労働大臣  いまご要望がありましたので、基本的に、これが現場の方々が自発的に作りたいということである  わけですね。そういうことを是非、私はとしては先ほど申し上げたように、現場の声を大事にした  いということなので、おやりいただきたい。それはどういう形でご支援できるか、ないしは法的な  枠組みが必要なのか、ちょっと詰めてみたいと思いますけれども、是非現場でそういうことをやっ  ていただくと、いちばんいいのだろうと思います。  それから、そのただ働きのようなことについても、これも医政局長、何らかの形で。これは厚生労  働省として1つになったことの利点をこういうときに利用しないといけないので、旧労働省関係の  チームと組んで、例えば、こういう実態調査というのはやる必要があると思いますので、ちょっと  やってみたいと思います。以上です。 ○ 土屋委員  ちょっと追加させていただきます。先ほど初期研修の見直し、小川先生座長でやられたの出ていた  のですが、事務局の説明で、大学の先生方に聞いた聞いたとおっしゃるのですが、私のこの試算の  頁を開けていただくと、心臓の手術の全国ランキングとか、心臓カテーテルのランキングが出てい  ます。これは週刊朝日が毎年出しているものですが、これを見ていただくと、こういう頁です。い  ま申し上げた「後期研修医数の試算」の頁をめくっていただくと、例えば心臓の手術、これは榊原  記念、国立循環器、小倉記念病院、そして4番目にやっと東京女子医大、小川先生の順天堂大学も8  位に出ています。これらはいずれも、どちらかというと市中病院化した大学であります。  即ち、初期研修の大学の先生方に聞いたとおっしゃるけれども、一般の総合病院に聞いていただか  ないと、実態はわからないのです。そういう所だけで相談した、決めたと言われても、我々は従う  わけにはいかないことを強く申し上げたい。小川先生の所は、看板を見ていただければ、順天堂医  院といまだに書いてあります。そういうふうに病院として機能している所が、いま患者を診断して  いる。心臓カテーテルに至っては、大学病院の名前、全く見ません。乳がんの手術、あるいは肺が  んの手術、大学病院ではいまやないのです。医療の実態を踏まえて、事情を聴取していただきたい  ということです。  それから、医師の偏在がまるで臨床研修医制度だと言いますけれども、最後のほう、後ろから2枚  目を見てください。慶應義塾医学部新聞、これは医政局長の出身校、私も出身ですが、ここで副題  に「専修医制度開始から3年目、239名の専修医を受け入れた」。慶応病院は900ベッドです。1,000  ベッド欠けているのですね。それが239名やって、後期研修、専修医を4年間教育する。4年間全部  大学病院から1,000人です。1人の医者が1人しか患者を診ない。そんなことで臨床の勉強ができる  はずがない。それを医学部長に言ったら、半分の2年間は外へ出しますよ。これは以前のあっせん  業と一緒じゃないですか。  医局制度の復活のために、大学病院、高度医療人養成プランとか言って、28億円文科省が持ってい  っているのです。これは、医局制度復活のために各大学に1億円ずつ配るようなものです。こうい  うことをしっかり市中病院のことも調べた上で、医師の偏在は、この3年目の戻るところで慶応が2  50弱、東大が300、これは戻っているのですね。ですから、2つの大学から臨床研修医制度について  の不満は、今後出てきません。この辺をよく見ていただきたい。  最後の頁には、大変厚生労働省の方には申し訳ないけれども、1年前のことを蒸し返すようですが、  AERAの記事です。これは、根室市立病院の医者が、外科医が足りない。ですから、がんセンターか  ら2人医者を出せということを、厚労省から言ってこられた。私は、20年間胃がんを切っている医  者が、急性負傷の多い、盲腸だとか胆のう炎が多い所に行っても役に立たないということで、お断  りしたわけです。ところが、マスコミが面白おかしく、私がまるで事務局の政調会長を蹴とばした  ように書いてあるのですけれども、そんなことはないわけであります。  これは、やはり一般消化器外科医というものの専門医、そしてこういう3万人の人口の町には家庭  医が必要なのです。総合的に診療ができる、今日の副題に書いてあるとおりです、そういう者をど  れだけの数育てるかというのを、先ほど言った3師調査のデータを基に試算をしていただきたい。  以上です。 ○高久座長  どうもありがとうございました。続いては嘉山先生。 ○ 嘉山委員  まず、土屋先生のお話は十分よくわかるのですが、現時点でやはり医療のサプライとデマンドから  大きく方針を決める必要があると思うのです、この委員会で。それで大臣がこういうヒジョンの会  を作られたと思うので。前回の資料を見ていただければおわかりのように、それで労働のところも  出てくるのですけれども。前回の21頁と22頁と23頁を見ていただければわかるように、結局医師の  数の概数を決める事が本委員会の役目だと思います。また、先ほどの事務局のお話は何を表してい  るかというと、ただ単にハイリスク・ローリターンに逃げたというだけです。医師が少ない中で、  つまり小児科も増えてはいるが、開業が増えているのです。それは、基本的にやはり医師が全体と  してabsolute numberとして足りないから楽な方に移動しているのです。  それで、いま全国の医学部長病院長会議ではどのくらい医師が必要かということを調査しています  が、まだ全部終わっていません。北海道地区では倍増というようなことを言っています。私個人の  意見では、この21頁、22頁、23頁から推察しますと、やはりサプライとデマンド両方考えますと、  欧米並みにするには倍増で11年かかります。先ほど医師1人を育てるのにいくらかかるかというこ  とが出ていましたが、私学が1,000万なのですごく安いなと思ったのですけれども、自治医大はた  しか、先生、県は各県は1人6,000万ぐらいですか。 ○高久座長  桁が違う。1億です。たしか各県で1億ちょっとですから、やはり6,000万近い。3人の県は4,000万  です。 ○嘉山委員  それで計算しますと、大体2,000億ぐらいは、大臣がおっしゃった患者さん国民が受ける医療の内  容と、それから、あと働く医師側の、先ほどの労働条件ですか、そういうものを両方合わせますと、  大体倍増で11年かかって、2,000億ぐらいから2,400億円。この中身はまだ詰める必要があると思う  のですけれども、例えば私学に何人ぐらいにするとか、国立に何人ぐらいにするとか。あとは地方  に行かせる仕組みもいろいろと考えなければいけません。まず、大きなマスとしてはそのくらいが  必要だというふうに、全国医学部長病院長会議でも考えています。以上です。 ○高久座長  どうもありがとうございます、他にどうぞ。 ○ 吉村委員  土屋先生のおっしゃることは全くもっともなことと思います。専門のセンター病院の臨床のアクテ  ィビティが高いことはもちろんそのとおりなのです。ただ、地域の問題を考えますと、これはほと  んど首都圏といいますか、大都市圏のセンターが多いのではないか。日本全体のことを考えないと  いけないと思うのです。その前に、いま先生がおっしゃったように、専門医のことが出ましたので、  ちょっとお話させていただいてよろしいですか。  資料8を見ていただきたいのです。現在専門医については、この6月から社団法人になりましたが、  日本専門医制評価認定機構という組織が出来ております。2頁を見ていただき、ちょっと日本の専  門医がどうなっているかということを話したいと思います。  1「専門医の現状」です。この機構に69の学会、これは配布されている慨報ではまだ66になってい  ますが、現在69の学会が所属しています。そして、65の専門医と4つの認定医が制定されています。  それで先ほどありましたように、このうち広告可能な専門医が45になっております。これはどうい  うことかといいますと、平成14年に「専門医の広告に関する外形基準」というのを厚生労働省が定  めました。すなわち、専門医を広告出来る学会の基準として、法人格を有すること、会員が1,000  人以上、8割が医師である、5年以上の研修プログラムを有し、試験制度とか更新制度があることな  どで、こういう学会が認定した専門医は広告してよろしいということになりました。それまでは、  認定制機構が第三者機関として専門医をしっかり認定していこうというようなことで、我が国の専  門医制度確立の機運が盛り上がっていたのですけれども、外形基準の制定により、機構と無関係に  外形基準を満たした学会による専門医の広告が可能となり、機構の意義が大きく低下いたしまして、  混乱が起きたことは確かでございます。  ただ問題点としまして、この外形基準が出来ましてから、多くの学会が独自にどんどん専門医を認  定しています。実は、この外形基準の補足として、「認可にあたり、学術団体の意見を聞く」とい  う項目があります。実際には機構から意見をもちろん出すのですけれども、この外形基準だけでど  んどん専門医の広告が認可されているというような状況がございます。ですから、先ほどありまし  たように、権限のある専門医の認定をする機構が必要である。実は、この専門医認定機構というの  は各学会から成っている機構でございます。もちろん専門医の認定はそれぞれの専門学会以外の組  織が認定するなどということは、実際問題としてできませんので、その夫々の学会が集まった「専  門医認定制機構」という組織は、非常に大事なわけです。この機構にしかるべき権限がありますと、  専門医の質とともに量のコントロールができるということになります。  もう1つ、是非私が強調しておきたいのは、専門医といいますと、そこに(2)と書いてありますよ  うに、人によって描くイメージが異なるのではないかと思います。私どもが考えているものの一つ  は、(1)標準的な医療、Standard Acceptableな医療を担うことのできる医師、すなわち、それぞれ  の診療科で、例えば外科とか内科とか耳鼻科とか、その領域における標準的な診療を、一定のプロ  グラムに則って修練を受けて、一通り行える医師、いわば、その診療科のジェネラリストとしての  専門医のイメージが1つございます。  それからもう1つは、(2)多くの方々が持っておられる、非常に特化した特定の技術や特殊な技量を  持った医師、例えば、肺がんの専門医であるとか、バイパスがうまいとか、カテーテルがうまいと  か、そういう非常に狭い領域の熟達医としての専門医のイメージの2つがあると思うのです。この2  つがどうも混同して、専門医をどうするということになっています。これを大きく2つに分ける必  要がある。  もう1つやはり問題点は、専門医を取ってもインセンティブがいまのところないということになる  と、学会でも、どうせ専門医の質は問われていないのなら、数を絞るどころかどんどん専門医を作  ろうということになってしまいます。そこで3頁を見ていただきたい。専門医としては、意義を4つ  挙げております。これは未だ私的な私案と考えてください。専門医認定制機構でもかなり議論が進  んでおりますけれども、まだ決まったわけではありません。  専門医の意義は、(1)医師として、自ら修得した知識とか技術、態度の認定を受けて、それを社会に  開示できること。「私はこういう修練をしましたよ」という証を社会に示すことができます。(2)一  方患者のほうは、診療を受けるに当たって、医師の専門性がわかる。こういう修練を受けた先生な  んだなと。(3)この専門医のプログラムをしっかりと確立することによって、医師全体のレベルを均   一化したり、あるいは上げることができる。(4)先ほど話題になりました、医師の役割分担。すなわ  ち、専門医の量とか質のコントロールを含めて、将来の医療制度のあり方に役立てる。この4つの  役割があると思うのです。  専門医の認定は、当然専門の医学会でないと、誰が専門医だということはわからないわけですね。  ですから、専門医の認定は学会がやるのですけれども、評価認定制機構が、専門医制度全体の評価  とか認定をしっかり行う。そして実はこの評価認定制機構というのは学会の集まりですから、第三  者の組織が必ず入っている必要があるというふうに考えております。  そして4頁ですけれども、先ほど言いましたように、専門医の役割を2つに分けまして、まず基本的  な専門医の資格、米国でいうGeneral Certificateというのがございます。すべての医師がどれか  の専門領域を選択して、ある診療科ごとに修得することが望ましい基本的なもの。いわゆる、各診  療科のジェネラリストですね。これは広く国民に対して、診療の窓口となる基本的な診療を担う専  門医の資格です。いわゆる認定医に当たるものかもしれませんけれども、そういうものと、この基  本的な資格を取得後に、さらに特定の技術や技能に関する修練を経て取得する、より特化した領域  の専門医の2つに分けて考える。そして3番目に、この最初の基本的診療科の専門医制度をまず充実  することで、医師の量とかその領域のコントロールができるのではないか。それからまた全体的な  医療のレベルも上げることができるのではないかというふうに考えております。  例えばです、これは全くの私案です。私の案なのですけれども、その基本専門医資格というのは、  既に機構の中で基本的な学会というのが定められています。内科とか外科、小児科とか皮膚科とか、  基本的な診療科ですが、それぞれの診療科のジェネラリストをまず育てる。この中に、総合診療医  とか総合医とかというのがあれば、よろしい。そして全員がいずれかの基本診療科専門医を選んで  トレーニングを受ける。どれかを受けるということになっていれば、初めて量とか質のコントロー  ルができる。  その他に問題となるのは、いま内科とか外科とかいっても臓器別に診療科が分かれておりまして、  消化器とか循環器とか、たくさんございますが、これを専門医の基本診療科に入れるか、あるいは  Subspecialtyとして位置づけるか、これはまだ決まっておりません。外科も、消化器、呼吸器、心  臓などと分かれております。それから内科系の診療科として、リウマチとかアレルギーとか感染と  いう診療科もございます。  その他に、先ほど専門医の種類が64あると言いましたけれども、ここに示したように、非常に狭い  領域であるとか、あるいは特定の技術とか技能に特化したたくさんの専門医があります。内視鏡専  門医であるとか、あるいは透析専門医であるとか、がん化学療法専門医であるとか、あるいはペイ  ン専門医であるとか。また病名もございます。脳卒中専門医とか、あるいは頭痛専門医、いろいろ  ございます。こういうものを先ほど述べた診療科の専門医と全部一緒に考えてしまうと、なかなか  厄介ではないかなと思っております。  6頁に「参考」と書いてございます。米国では専門医は、まずどれかを取るのです。American Boa-  rd of Medical Specialtiesというのがございまして、24の基本領域でレジデンシーのプログラム  がございまして、これはもう非常に厳しいトレーニングに基づいて、まず24の基本的な専門医のど  れかを取る。どれかを取ると、初めてドクターフィーがもらえるということになります。それを取  った後、さらにフェローシップとか、いろいろな SubspecialtyのCertificateをもらうと、さらに  ドクターフィーが上がるとなっているわけです。そして、このGeneral Certificateに総合内科と  か一般外科とか家庭医とか、そういうコースもあるわけです。  米国ではそれを大体1人、年間1,000万円ぐらいかけて、3年から5年のプログラムの下にしっかり  と養成しているということです。ですから、我が国でも、このドクターフィーはともかくといたし  まして、まずGeneral Certificateに当たる基本専門医資格の制度を充実しなくてはいけない。そ  のGeneralを取った後に、それぞれのさらに特化した技術とか技能に関する専門医を作っていって  はどうか。  7頁には、米国の24領域のGeneral Certificateが載っております。そして、この内科インターナル  メディスンだけのSubspecialty Certificateとして18領域が認定されているわけです。大体各科を  合わせますと、130ぐらいのSubspecialtyがあると言われております。  1つ申し上げたいのは、9頁をご覧いただきたいのですが、医師の養成というのはもちろん学部の教  育から始まります。これは医学知識ゼロで入ってきた学生を、最初の4年間で、教養教育、基礎医  学の講義と実習、臨床医学の講義、さらに5年次、6年次の2年間で臨床実習をやります。そして卒  業させる。それから現在、初期臨床ということで、基本的な臨床が2年間入っております。その後  に、初めて専門研修が始まるわけです。この専門研修の中で、いま申し上げた基本的な資格をまず  取るようにしてはどうか。そして問題の内科と外科はご覧のように診療科が臓器別に分かれており  ますので、内科は、先ず内科の認定医を取ってからそれぞれの臓器別の内科系の診療科専門医を取  得する。一方、外科も外科専門医をを取得してから臓器別の外科系の診療科専門医を取得する。  そして、その後に、それぞれの診療科の中で細分化した、より特化した領域の専門医を取っていく  という仕組みにすればよいのではないか。まずこの基本的な枠組みを確立しないと、各学会が独自  に、専門医の認定を行っている現状を是非改める必要がある。  そして、この専門医の研修をする施設を、各地域ごとに配分をしていく。これは、大学だけに限り  ません。土屋先生のおっしゃったように、非常にActivityの高い所がございますので、そういう施  設がグループを組んで修練を行う必要があります。ただ、どこかにコントロールする所がないと困  るわけです。コントロールを大学が担えばよろしいのではないかということを提案しているわけで  す。以上です。 ○嘉山委員  先生、よろしいですか。まず私はグロスをちゃんと決めて、その中で科の偏在をどうするかという  ふうに、話のステップを持っていかないと。一遍にこう、ちょっと話がいま散慢になっているので  はないかと思うのですが。 ○吉村委員  専門医と、いま話が出ましたのでね、現在専門医がこうなっているということを申し上げたところ  です。 ○嘉山委員  ええ、わかりました。 ○ 高久座長  実は科の偏在の問題がいちばん重要な問題だと思います。偏在のまま放っときますと、いかに医師  が増えても、そのままになりますから。先ほど土屋委員からお話がありましたが、その1つのモデ  ルとしてアメリカのレジデンシーのモデルがあると思います。そういうような形の後期研修を制度  化するという考えがあると思うのです。  ただ、その場合にかなり大きな問題がある。この数が、例えば、土屋委員がおっしゃった内科に何  人、外科に何人と決めますね。それは、標榜の自由化とは相反することになりますから、そこのと  ころはかなり慎重に、委員会を作って議論をしないと、非常に混乱する可能性があると思います。  私自身はこのアメリカのレジデンンシーをモデルとしたような体制を作る必要があると思っていま  す。日本の専門医の場合、全部専門医になって、基本領域も専門医、各分科会も専門医になってい  て少し混乱をしている。外科はもともと認定医と専門医制だったのが、外形基準で専門医の広告が  できるようになって、みんな専門医にしてしまった。ですから、私は基本領域は認定制にして、そ  の後にspecialtyを作って、基本領域の数のドクター、そこは初期研修終った後になると思います  が、その後期研修に行く医師の数をどこかで決めないと、みんなが特定の領域に集中して行かない  ところに、行かないということが出てくるので、この後期研修をとるドクターの数を、どこでコン  トロールして、どこで決めるのか。その議論をする必要があると思います。嘉山先生、ご意見あり  ますか。 ○ 嘉山委員  まず、ただ基本的にいまなぜ科の偏在が起きたのかということがいちばんの問題で、それはやはり  少ないからだと私は思います。絶対数が少ないから自由に医師としてやっていく。例えば、昔はそ  ういうところへ我々は行かないというか、それは医療ではないなどと認めてないようなところへ行  くかと、いますごく増えているのです。ローリスク・ハイリターンだからです。  アメリカの場合は、私のカラーの資料を見ていただくとわかりますが、28頁に科の偏在をどうやっ  ているかは、レジデンシーから行くのもありますが、もう1つは、ドクターフィーまではいかない  までも、インセンティブをきちんとつけています。外科系にはこの前お話をしましたように、ハー  バード大学がある指数を使って、ある同じ医者の時間の労働がこれだけ危険性だとか肉体的なもの  とか、いろいろなものを勘案して4.98倍違うとか、ここでもってバースコントロールをしているの  です。  後で舛添先生のお話になったことも出てきますが、「卒後研修制度の光と陰」に資料がありますが、  アメリカではハーバード大学の脳外科でも、200人ぐらい希望者がいても、2人しか研修させないと、  それがアメリカではマッチングなんです。ですからそういうインセティブのことを、医者が多くて  さらにインセンティブがそれに加わると、科の偏在は自然に解消できるのではないかと考えていま  す。それが人間の性だと思っています。欲望もすべて誠意も含めてです。 ○ 高久座長  おっしゃるとおりだと思います。アメリカの場合に、少し問題があるのが先生の28頁にありますが、  確かに家庭医や一般内科には希望者はほとんど100%近く入れます。それが皮膚科とか、眼科とか、  希望者が多いところは希望した者の60%ぐらいしかいけない。ですからアメリカの医学生は、学生  のときに良い成績を取らないと自分の希望した科には入れない。それで猛烈に勉強する訳です。日  本はそういうものがなくて、医師国家試験だけですから。  それからおっしゃったように、脳神経外科や心臓外科など、非常に収入が多いのですが、同時に彼  らは裁判のための費用をずいぶんストックしなければいけない。自分は出なくても弁護士に払う費  用がかなり高いということは、ご存知のとおりです。 ○海野委員  いまのアメリカのレジデンシーのことですが。アメリカの医学部の卒業生は1万6千人程度で、それ  でレジデンシーのこの未経験1年目のプログラマーに2万3千ポストありますから、実際にはその分  を誰が埋めているかというと、外国の医学部の卒業生が輸入される形で入ってきているということ  があります。日本の実状を考えますと、日本でもし医学部の卒業生の数に合わせてレジデンシーの  数を決めるようなことがあると、ものすごく厳しい選択を研修医たちはしなくてはいけなくなりま  す。それは職業選択の問題も含めて、非常に事情が違うことを含めて制度を考えなければいけない  のではないかと思いました。 ○高久座長  おっしゃるとおりだと思います。 ○ 土屋委員  私の資料の4頁目に、いま海野先生が言われたことが書いてありますが、「米国の専門医・専門分  野別ACGMEプログラム数・レジデント数」。ここにありますように、米国では年間、昨年では6万  9,721人のレジデントがいますけれど、これは米国出身で、他の国の医学校を出たのが2万8,176名  参加しています、おっしゃるとおりです。ところが、その1頁後を見ていただくと、ここに各科の、  未経験1年目というのが、新卒のレジデントの数です。これはかなり厳格に決まっています。  先生がおっしゃるように、日本は少ないですから厳しいですが、日本でも医者以外は職業選択の自  由と言っても、経済原則でなれるかなれないか決まってしまうわけです。電車の運転手になりたい  と言っても、東急電鉄に雇ってもらえなければなれないわけです。それは医者だけ、自分が手を挙  げたら内科になれると、これは世の中に通用しないと思うのです。私も医者で選びましたが、競争  の原理が全くないというのは、これは一般社会から見たら異常だと思います。やはりそこのところ  があって初めて、先ほど言ったようにdermatologyなどの入り方が楽であるというアメリカの現実  があると思うのです。だから私ども医療関係者がある程度厳しさをもっていかないと、社会一般か  らの信頼は回復できないと私は思います。 ○ 舛添厚生労働大臣  先ほどの他の世界から見たときに、常識と違うのではないかとは、まさにそういうことを申し上げ  たかったのです。先ほど土屋先生がおっしゃった専門医制度委員会というのが設立をする。吉村先  生がおっしゃったようなことは、例えばそのような委員会で議論ができますかというのが1つです。  それからもう1つは、いま確かに競争原則は働かないということですが、それを働くシステムに変  えるとしたときに、国の制度のどこを変えないといけないか。法律事項ならば国会で法律を通さな  ければいけません。ですからここはまさに具体化の委員会なので、こういうことをやってくれと、  こういう法律を変えてくれと、そうすると例えば吉村先生の案が実りますよと。法律がなくてもで  きることは何か、そういう方向づけの答えを出していただきながらやっていただくとありがたいと  思いました。 ○ 土屋委員  私が第三者機関を提案したのですけれども、これはある程度いまの人数制限をめぐる権限を持たせ  ないとコントロールはできないと思います。実際、いま吉村先生が言われたアメリカの専門研修の  制度は、日本でいう専門認定機構だけではありません。これはアメリカでは5つの団体の代表がこ  の委員会を作っています。政府が認定している。  そのうちの最初が専門医による専門医の団体、いわゆるAmerican board of specialitiesという、  いまで言う専認協です。2番目が病院協会です。いわゆる病院長の代表がでてくると。3番目がAme-  rican medical association医師会の代表者。4番目は、Association of American medical colle-  ges医学部長の代表です。最後に学会の代表が出てきます。それぞれ5つの同じ医療関係者という違  う立場の人が集まっています。  いまは先ほど吉村先生が強調しているように、学会の代表ばかりで話をしているわけです。学会の  代表というのは理事の90%は大学教授です。一般の病院からはほとんど出ていません。もう1点、  吉村先生が私に反論するのは、先ほど主都圏じゃないからと。心臓の手術を見ていただくと、この  赤線で引いたのは全部首都圏以外の病院です。倉敷中央病院とか、静岡とか、地方でもそういうし  っかりした病院はたくさんあるということを強調したいです。 ○ 小川座長代理  ちょっと違う話をいたしますが、まずスペシャリストと総合医、GPです。一般の人が誤解すると困  りますので申し上げたいのですが、GP、総合医というのも立派な専門医であると、これがポイント  だと思います。  もう1つ、科の偏在の問題を、アメリカ、イギリス等と日本と同じようにはなかなか解決できない。  それはアメリカの文化圏、イギリスの文化圏というのがあります。アメリカが危機に陥る、あるい  はイギリスが危機に陥るとイミグラント、あるいは大英連邦の諸国から、あるいは英語というのは  コモンワードですから、どんどん駆けつけて来て、米国も外国から優秀な人は受け入れて、native  の米国人医師の嫌がる救急とか、麻酔とか、そういうところにどんどん入っていって、スマートな  GPとか、dermatology・皮膚科、脳神経外科などはものすごく成績の良い人しか入れない、こうい  う現象が起こります。それでバランスがとれてきます。  日本の場合には将来はともかく、現制度ではそういうことは望めない。そうすると海野先生がおっ  しゃるように、あるいは土屋先生も先ほど申されましたが、プラティカルにこの科の偏在をどうす  るかというのは、やはり何らかの合理的特典を与えることが即効性がある。大変過激な労働があり、  そして危険な、いろいろな訴訟のリスクにも耐えながらやっていく人たちを国民として、社会とし  てニーズのある方向に向かわせるために、特別手当とか、地域手当を含め、労働対価に合わせたも  の、そういうもので考えていくことが即効性があると思います。 ○ 海野委員  いまどういうふうな偏在が進行しているのかを是非知りたくて、調査していただいたのが、今日集  めていただいた資料1の15頁の「基本領域18学会新規入会者数の推移」です。これをいただいて、  資料5でもう少し詳しく解析をいたしました。まとめてあるのは4頁目に、それぞれの科について全  体の傾向をまとめていますが、わかりやすいのは3頁のグラフだと思います。  これは2004年と2005年に、臨床研修で新規が導入されて2年間空いたわけです。そのときに入会者  数が激減しているのは、普通の臨床科の学会では当たり前ですが、その後2006年、2007年で2年過  ぎたのですから、また同じ数だけにもどってくれれば、2年間大変だったねというだけのことです  が、実際にはどうだったかです。3頁目は外科系です。外科は2頁目で、3頁が外科系で、そのまと  めてあるのが4頁の2段目です。要するに戻れないのです。大体20%内外が前の状況よりも入会者数  が減っているという現実があります。  もちろんこれから偏在をどうやって解消していくかを議論してくわけですが、いままさに進んでい  るという認識で、とにかく臨床研修が善し悪しの問題もありますけれど、これにより現場が変わっ  ていますとご認識いただいた上で、この施策も考えていただかないといけません。 ○ 嘉山委員  結局私がいちばん最初にお話したように、結論は、ハイリスク・ローリターンのところに子供たち  というか、若い人が、パンドラの箱が開いたために自由に行ったということです。それをどうする  かというと、小川先生がおっしゃったように、前回も私も言いましたが、少ないお金でも認めてあ  げると、医者はお金のために全部働いているわけではありません。例えばハイリスクのところでも  行きたいという人はいます。ただしそのときに社会が何も認めないと、何科に行こうが同じインカ  ムであると、片方はすごくリスクが高いと、ときには裁判になると。そこをまず補ってあげないと  科の偏在は、まず日本人のメンタリティーではできないと思います。  私の資料の6-I-(1)を見ていただくと、先ほど大臣がおっしゃった、何かここを変えてくれという  ところがあるとすれば、医療費です。医療費の仕組みが技術料がほとんど認められていません、医  師の診断も含めて。ほとんどがお薬をどのくらい使ったかとか、心臓ペースメーカーだけとか、ア  メリカでは20万のものが日本では120万ですから、そういう物でしか医療費が上がってこないとい  うところを、医師の技術料とか、リスクを医療費の中で制度として設けていただければかなり違っ  てくると思います。 ○舛添厚生労働大臣  例えば今度の診療報酬改正でハイリスク分娩の加算をしました。こういうことはどうですか。 ○嘉山委員  日本の場合は、医療費はホスピタルに行くだけで、個人の収入にはならないのです。アメリカの場  合は、医療費がホスピタル以外に、医師個人にリスクに応じてドクターフィーがいくのですが、日  本でも仕組みとして個人にいくような形で制度を作らないとなりません。うちは分娩は2万円出し  ています、病院の収入から。そういうことをするだけでモチベーションが違います。 ○高久座長  病医院長の判断で、そっちのほうの給料を増やせばいいわけです。先生がやられているように。 ○嘉山委員  我々のアドミスターの日本医師会はその技術料をなかなか認めていただいていないので、そこを医  療費の中で認めていただければインセンティブとして先ほど小川先生がおっしゃったような、科の  偏在はかなり解消できると思います。 ○高久座長  現実的な解決の方法だと思います。おっしゃるとおりです。 ○ 舛添厚生労働大臣  ただ問題は、ちゃんと勤務医に払ってくれる大学の理事長ならいいですけれど、そうではない人に  首に縄付けてやらせるわけにはいかない。ではそのときにどうするかというのは、1つは診療報酬  体系を根本的に改めて、個人個人の勤務医にいくような形にできるかどうか。これはまたいろいろ  議論があると思います。  それからもう1つは、例えば分娩手当のような形で出すこと、それの分配の仕方を、例えば1万円ず  つ産科医と麻酔科医と誰々にという形で、直接的な財政支援をするか。「5つの安心プラン」の中  にもそれは念頭に置いてやりたいと思っています。実効性のある形でやるにはどうすればいいか、  ドクターフィーのような形にできるのかどうか。それがいちばんいいと思います。若いお医者さん  の勤務医の皆さんの最大の要望がそうなので、わかっているのですが、ではどうするかということ  のアイディアをいただきたいのです。 ○和田委員  1点だけ。外側からなのでよくわかりませんが、経済的なインセンティブということは、まさに非  常に重要な問題であり必要なことだと思うのですが、身近にいる産科のお医者さんとかにお話を聞  いているかぎり、経済的なインセンティブはもちろん必要条件ではあるのですが、大臣がおっしゃ  ったように、それがいちばんの要望ではないように思います。お医者さんたちが働いている、産科  のお医者さんを取り巻いているさまざまな問題、例えば訴訟リスクであるとか、労働環境とか、そ  こら辺りにも何らかの形の手当をしていかないと、経済的インセンティブだけでは、多分限界があ  るだろうと。次回以降の議論かもしれませんけれど。 ○ 岡井委員  いま言っていただいたとおりで、私も同じことを発言しようと思っていたのですが、その中で労働  条件です。科によっては医師が少ないから過重労働になり、その過重労働を見て学生がまた入って  こないと。ですからどこかで強制的に過重労働を止めさせなければいけない。  私が考えているのは、それを止めさせるのは当直の次の日の勤務を緩和する。これを多分外の病院   では、医院長がそうしたくても、医者が足らないから働いてくれとなるのですが、それを労働大臣  の立場として、それはまずいのでちゃんと休ませろと、あるいはせめて午後から帰せと。そうやら  ないと何らかの形で、その病院に対してマイナスな、それこそ経済的にマイナスなインセンティブ  が働く。あるいはちゃんとやればポジティブなインセンティブが働くような対策をやれば、病院長  はいやでも帰りなさいと。そうするとある程度人を集めなければいけなくなり、ある程度病院の、  場合によっては切られるかもしれませんが、統廃合も自然に進んでいく形になる。それをやっても  らえればありがたいと思います。そうすると、いちばん当直の多い産婦人科はいちばん休みが多い  科になりますから、大逆転で、学生がみんな入ってきます。 ○ 高久座長  そのお話はよく出まして、特に医療安全の立場から。私のところに航空業界からいま医療のほうに  移られた方がおられるのですが、その人に言わせると、当直したあとまた勤務するというのは、ち  ょうどロンドンから東京に飛行機を操縦してきて、それからまたすぐワシントンに飛んで行くよう  なもので危険極まりない。他の業界では信じられない。それが現実にずっと行われてきたというの  が大きな問題だと思います。  だから和田委員がおっしゃったように、病院から辞めている人は結構QOLを求めています。ご本人  と家族のQOLが悪すぎるので辞めたい。そういうことですから、そこのところも十分に考える必要  があると思います。しかし具体的な方法としては、お金をもう少し付けて、ドクターフィーのこと  を考えないと難しいと思います。 ○土屋委員  具体的なのは労働条件の、今日は話題でなく、2回先のコメディカルです。この充実がないかぎり  労働条件はよくならないと。去年の12月28日に医政局長から医者の本来業務ではないのは周りに譲  れると。しかし看護師も足らない、薬剤師も足らない、ましてや事務員がいないと、譲るところが  ないわけです。私ども国立ですから外注するかといっても、外注する調費もないわけです。お題目  だけで終わるわけです。やはり経済的な補償がないのに通知を出されても困る、というのが現場だ  と思うのです。医師あるいは看護師の本来業務でないのを誰が受けるか、それをどうやって手当を  するか。あるいは事務ですから派遣でもいいわけですね。そういうことを現実に考えていく必要が  あると思います。 ○ 大熊委員  いま、お話しの出た当直について申し上げます。6月28日に「あなたを診る医師がいなくなる」と  いうシンポジウムが開かれました。これは中原利郎さんという、あまりの勤務の激しさにくたびれ  果てて、自殺をされた方の死を無駄にしないために開かれたものですが、そこで2つの提言が出さ  れましたので、読み上げます。  「病院で当直と呼ばれている業務の多くは労働法規にいう当直ではなく、夜間労働であり、このこ  とは厚生労働省労働基準局が2002年に出した通達にも明記されている。病院は医師のいわゆる当直  を正しく夜間勤務と位置づけ、当直という呼称を廃止し、交替勤務の体制を早急に整える。」  2つ目。「夜間勤務、いわゆる当直の翌日も医療に従事する行為は―さっきおっしゃったとおりで  すが―、医療事故、医療ミスに直結し得る危険な行為であることを行政、病院、医師、患者が共通  認識とし、これを禁止する。ただちに禁止することで弊害が大きい医療現場では禁止処置をとるま  でに必要な行動計画をただちに策定する。」  こういう非常にはっきりした提言がされておりますので、ここをきちっとやることを決めてしまえ  ば、それに対して対応がとれるのではないかと思います。 ○ 嘉山委員  いちばん最初に戻りますが、結局すべてのことは医師の絶対数が足りないということに帰結するの  で、いまの問題を解決するためには例えば厚労省の推計値だと、いま大熊先生がおっしゃったよう  な状態にするのに22年かかります。これはとんでもない。22年間だったらここにいる我々は皆死ん  でいるでしょうから、後輩の国民に申し訳ないので、早くするために倍増にする。倍増というか50  人ぐらい年間各大学が増やすとすると、11年でやっと追いつくと。11年間は労働基準法違反でやり  ますと、我々日本の医者は真面目ですから、頑張りたいと、そうすると患者さんにも返っていくの  です。医療事故も少なくなり、エラーも非常に少なくなりますから。  先ほどお話したように、1人1千万だとすると倍増で2千万から2千400万、億ですね。それぐらいか  かるということを、全国医学部長病院長会議でこれから出しますけれど。東京大学の学部長にお聞  きをしたら、やはり大増員が必要だろうと。それは基礎研究者も、法医学者も、いろんな細かい部  分で日本は遅れていますので、ある意味倍増ということで、この委員会の意見として大臣に言えれ  ばと思っています。 ○高久座長  倍増とは、具体的に何人ぐらいですか。 ○嘉山委員  倍増は、50人増で15、6年、そのあと下げてくる。ですから100人の定員だと150人にして。私学と  か、国立をどうするかという問題は、また別の問題になりますが、要するに総数としてです。私の  第1回目のときに配ったデータの中に入っています。 ○和田委員  大学にいる者として素朴な疑問ですが、学生の数を増やす、当然それで教える側の負担も非常に大  きくなりますね。それで例えば岡井先生とか、海野先生が逃げ出してしまうというふうなことにな  ると、本も子もないわけで。その辺りのシステムには問題はないのでしょうか。 ○ 嘉山委員  それは山形ではやっているのですが、座学はいいのです。座学は文化系も先生の法学もよくお解り  のように200人ぐらいできますよね。結局問題は実習です。実習は大学病院を使うのと、市中病院  を使うと可能です。山形大学がやっているような大学病院と地域の中核病院が連携して行う卒後研  修でも組んでいますから、それは可能だと思います。 ○ 大熊委員  既存の医学部の定員を、例えば1割、2割増やすのは非常に難しいと思います。アメリカだけではな  くて、ヨーロッパの多くの医学部は、まず良い病院があって、そこに医学部がついてくるという形  になっています。いまある非常に優れた病院の方々を教授とし、病院付属の医学部を新設して、医  師養成定員を増やすということも念頭に入れたらどうかなと思います。  これまでの日本の医学部は高校から出て6年ですけれど、これも他の国々では大学4年出て、よくよ  く考えて医者になろうかという人が志願するシステムがふつうです。大学評価機構の委員として高  知医大とか、群馬大学とか、いろいろな所へ視察みたいなことで行ったのですが、社会人入学の学  生さんが大変優れた人間性を持っている。そういう人がいることで、高校卒業してすぐに入ってき  た子たちもいい影響を受けていました。まず医学部受験をする人たちの幅を広げることと、さらに、  既存の医学部以外に、すぐれた病院を基盤にした医学部を新設して枠を広げるという、その2つの  ことを提案したいと思います。  形だけの臨床教授というのがありますが、特に家庭医を育てる上では、診療所におられる先生方を  本格的に臨床教授にお願いすることが大事だと思います。  先ほどアメリカの例で、GPの上に専門医がいるというような仕組みが紹介されましたが、私が1985  年から「寝たきり老人のいる国、いない国」というキャンペーンをしましたとき、「いない国」で  は、家庭医が他の専門医と同等に収入が保証されるとか尊敬度が高いことに気づきました。そのこ  とが社会全体にとってプラスになり、医療費的にも馬鹿げた支出をなくすことにつながっているこ  とを知りました。  鹿児島の診療所のお医者さんがメーリングリストの管理人になっている「在宅ケアネットワーク」  というのがあります。500人ぐらいの質の高い在宅ケアを志す医療福祉関係者が日々、少なくとも  何10通、実際の例を基にして、こうしたらいい、ああしたらいいのではないかと話し合っておりま  す。日本でも本当のいい意味の家庭医が育つ素地は十分にあると思います。 ○岡井委員  いまの流れでは、医学部の学生を増やそうという方向にいくと思うのです。そのときに1つ是非考  えてもらわないといけないのは、地域格差です。都市と地方の問題。これは外国でも、どこの先進  国もだいたい同じ問題を抱えています。いままでいろいろなことを試してきて1番効果があるのは、  そこの地域出身者を大学に入れるという、これがいちばん効果があるということは、報告書にも出  ています。ですから、奨学金を出したりするよりは、今度増やすのならば、その増やした分はそこ  の山形だったら山形出身者を取りましょうとか、そういう格好にもっていくのがいいと出ています。  何パーセントかですけれど。 ○嘉山委員  うちでは調べたのです。自治医大出身者は、丁稚奉公を終わったあとはかなりの数が他県に出て行  きます。 ○岡井委員  それは対応が悪いのですよ。 ○ 土屋委員  いまの大熊委員のご指摘は、アメリカでは家庭医学のレジデントは9,400、内科が2万2千。1年目、  家庭医学が3千、内科が8,400ということで決して上下という関係ではないということです。  医学部の定員を増やすことと医学部の数は増やすのは別問題になります。1970、1980年代にかけて  アメリカも日本も定員を増やしました。ただアメリカは数を増やさなかったのです、多少は増えま  したけれど。定員を増やしました。日本では各県1医大でやった結果が何かと言うと、基礎の教室  も臨床の教室も10人とか8人ずつ定員をつけて、ほとんど基礎は埋まらないようなことです。です  から私は医学部の数を増やすことは反対です。むしろ医学部の定員を増やして、臨床の教育をベッ  ドサイトの大きな病院を使って、虎ノ門とか、聖路加とか、そういうところを学生教育にも使うと  いうのが正しい道ではないかと。  最後に医政局に聞きたいのですが、この「安心プラン」の中の3頁目に医療のがありますが、コメ  ディカルが一言も入っていないのです。これは厚生省ではコメディカルの担当とはどこでなさって  いるのですか。 ○舛添厚生労働大臣  本部には入っていません。 ○土屋委員  問合せはどこにしたらよろしいですか。 ○高久座長  コメディカルの問題はまた次回にやっていただき、時間が過ぎましたので、大臣に最後にお話いた  だいてよろしいですか。 ○土屋委員  わかりました。 ○舛添厚生労働大臣  次回コメディカルをやると土屋先生のお話ですけれど、介護士とか、メディカルクラークも含めて、  誰か担当の方はおりますか。いなければ誰か担当を決めてください。 ○外口医政局長  医政局総務課でいたします。 ○舛添厚生労働大臣  総務課の誰か、人間を確保してください。 ○外口医政局長  わかりました。 ○ 舛添厚生労働大臣  これは小川先生とは個人的にお話したことがございますが、できれば具体的に予算を付けてどうす  るか、ということにもっていかないといけないものですから、例えば順天堂でも慈恵でも慶応でも  どこでもいいのですが、北里も含めて何人定員を増やせるか。例えばいまうちは100人の定員で、  実際90人まで減らされていると、しかしこれを100まで戻すどころか110までできる、120まででき  るということで無理のない形で。ちょっと無理していただく形のほうがいいのですが、では東大は  どうなのか、山形医大はどうなのかと、その数字を、至急積算していただきたい。渡海文部科学大  臣と話をしておりまして、こちらの言うことは全部聞いてやるということですので、あとは渡海さ  んと私と組んで、財務大臣と闘うことになります。しかしこれは特別枠である程度できている話な  ので、それがどれくらいの数字にいくのか。そして無理があってはいけません、ということがある  と思いますので、具体的なデータをいただいて予算編成に活かしていければと思います。  新木君は来ていますね。その数字をもらって、どういう形で文科省の中でやれるかは、君らのレベ  ルでできることをやってもらいます。それから労働大臣としては、労働現場当直の翌日は休めと言  いたいのですが、言うと医療崩壊にもっとなり、患者の皆さん方は、俺たちを殺すのかという声が  起こると思いますので、そこは非常に難しいところです。2つの省に分かれているのではなく、今  は1人の大臣ですから、こっち側でAと言って、こっちがBとは言えませんから。そういう苦悩があ  りますよと、いろいろな所で私は申し上げていまして、それを1つのきっかけとして変える。ただ  これは、数が絶対的に足らないから起こっているのは周知のとおりですので。  嘉山先生いろいろグロスのお話をなさいましたけれど、これは皆さん方で議論をしていただき、長  期的な目標としてどれくらい、1.5倍になるか何倍になるか。ただ当面はできるところから来年度  予算で後付をしたいと思っています。シーリングが決まりました。その上でシーリングのお話を一  言させていただくと、2,200億円、これは新たなる歳入が入る。例えばタバコ税が入り、700億円う  ちが手に入れることができると、具体的には圧縮幅が1,500億円に、抑制幅が減るということです。  それに加えて、昨日テレビで3,300億円のうちできたら1,500億円はぶん取りたいと申したのですが、  できればそういう方向で努力をしたいと思いますので、その根拠となるデータをいただければと思  います。以上です。 ○高久座長  小川先生、その私立医科大学を。 ○小川座長代理  医学教育をいかにするか、卒前、卒後教育。高久先生と私どもで、高久先生が理事長でおやりにな  っているのです。いろいろな検討をしましたけれど、医師数をなんとか増やさなければいけないの  は間違いないと思います。しかしその為に新しいメディスクールを作るか、ノウハウがちゃんとあ  る既存の大学の定員を増やすかでは、私はやっぱり土屋先生のおっしゃるように、後者のほうだと  思います。アメリカの例を見てもそうだと思います。医学教育・医師教育に関してノウハウがあり  ますから。土屋先生そして大熊先生がおっしゃるようにたくさんの有力な病院には優秀な臨床医は  いっぱいいます。だから多くの大学医学部は、アメリカの大学、イギリスの大学、そして日本のい  くつかの大学はその人たちを既に臨床教授にして医学教育を充実させていますが、その方向性でス  タッフを増やして定員増に対応する、こういう対応がいいと私は思います。  ○高久座長  私立医科大学協会では320人は増やせる。それから国立大学のほうは文科大臣とよくお話をしてから。 ○嘉山委員  数字はあります。ここにあるのですが、今日はちょっと外圧がかかっているので出せない事情があ  りまして。出せないというのは、アンケートの取り方に問題がありましたので。東京大学は現時点  では110で考えておられますが、総体としては、大幅に増やしたほうがいいというご意見。今日清  水医学部長とお話しました。北海道大学は150、私学は320出ていたのでいいと思いますが、大臣が  おっしゃったように現実にどのくらいできるのかは、全国医学部長病院長会議でほとんどのデータ  が揃っているのですが、もう少し経ったら出します。 ○舛添厚生労働大臣  はい。そういうのをいただいて、あと間に合います。 ○ 高久座長  次回に是非固めていただきまして。本日はどうもいろいろとご意見をいただきまして、ありがとう  ございました。 (照会先)  厚生労働省医政局総務課  松淵、丸茂 (代)03−5253−1111(内線2516、2548)