08/07/18 平成20年度第7回介護労働者の確保・定着等に関する研究会議事録       平成20年度第7回介護労働者の確保・定着等に関する研究会 日時 平成20年7月18日(金) 10:00〜 場所 厚生労働省共用第8会議室6階 ○大橋座長 ただいまから第7回介護労働者の確保・定着に関する研究会を開会します。 本日の研究会におきましては、前回の研究会で提示しました骨子案を基に、これまで委 員の皆様方からいただいたご意見、ヒアリング内容等を踏まえ、事務局のほうで中間取 りまとめ案をご用意しております。本日はこの中間取りまとめ案についてご議論をいた だきたいと思いますのでご協力いただきますようお願い申し上げます。それでは、資料 1の中間取りまとめ案について、事務局からご説明をお願いいたします。 ○佐藤介護労働対策室室長補佐 取りまとめ案の説明の前に事務局から若干の説明をさ せていただきます。本日ご用意しました資料ですが、「中間取りまとめ案の概要」。資 料の1として、本日ご報告申し上げる「中間取りまとめ案」、資料2として「参考資料」、 これは取りまとめ案の本文の中に入り込んでいる資料を図表化したものです。資料3とし て、付属資料ですが、介護労働者の現状について、これは7月14日に財団法人介護労働 安定センターから実態調査が公表されましたので、それの最新のデータを更新しており ます。また、職種別賃金カーブ、有効求人倍率等の関係の資料を付属資料として用意し ております。  また、委員の皆様以外にこのテーブルにお座りになっている方で人事異動が最近あり ましたので、事務局からご紹介させていただきます。老健局の土生振興課長、社会・援 護局の藤澤福祉基盤課長、職業能力開発局の福味主任職業能力開発指導官、当介護労働 対策室長の志村でございます。よろしくお願いします。  引き続きまして、中間取りまとめ案についてご説明いたします。資料1をお願いしま す。また、お手元に用意していただきたいのは参考資料の中に本文に入り込んだ図表が ありますので、こちらでその際に頁数を申し上げますので一緒にご参照していただけれ ばと思います。  それでは、中間取りまとめ案についてご説明いたします。「はじめに」で、この研究 会の位置づけについて述べております。少子高齢化あるいは今後の国民の介護サービス のニーズがさらに増大していくという状況、あるいは2000年より開始された介護保険制 度の導入により、利用者に対してより高い質のサービスを提供することが求められてい るという状況、こういった背景があります。また、中ほどですが、介護サービスの特徴 として、労働集約的な産業であること、あるいは地域密着型産業であることということ があります。最近、社会保障国民会議の中間報告においても、介護サービスの質の向上 が重要であること、あるいは第169回通常国会で成立した「介護従事者等の人材確保の ための介護従事者等の処遇改善に関する法律」におきましても、介護従事者の賃金水準 等を勘案し必要な措置を講ずるものとすることとされているところです。このような状 況の中で、国民のニーズに十分応えるよう機能するためには、介護サービスの担い手の 確保・定着が不可欠であること。こういった背景と現状認識があるところです。さらに、 この介護分野に従事している方の特徴としまして、入職する際に、やりがいや希望を抱 きながら職業生活をスタートする者が多く見られること。2頁ですが、一方、離職率を 見ると、全産業の平均離職率よりも介護全体の離職率が高くなっており、特に、施設系 では介護職員の定着が進まない状況となっている。後でも特徴としてご説明いたします が、初めにこういうことを書いております。  また、このように、介護分野では介護サービスの基盤が揺らいでいるとともに、労働 環境や処遇の在り方を決めた総合的な人材確保対策が最重要課題となっている。このた め、国民各層からこの介護という職業が魅力的な職業として理解されていくためには、 基本的な雇用管理や処遇等を改善し、安定的な人材確保に努めるとともに、国民に対し 介護サービスが今後の少子化・高齢化を支える働きがいのある仕事であることについて 理解を求めていくことが重要であるという、この研究会のスタンスを述べているところ です。こうした考え方の下この中間報告書として取りまとめた、ということで結んでお ります。  3頁、第1章です。第1章は介護労働者の現状と課題についてまとめております。1.介 護労働の特徴。(1)として、介護サービスの特徴を述べております。介護保険制度導 入前につきましては、この介護サービスは老人福祉と老人保健の2つの異なる制度の下 で提供されたところです。そのうち、訪問系サービスは市町村、医療法人によって提供 され、施設系サービスは地方公共団体、社会福祉法人及び医療法人によって提供された ところです。また、純粋な民間の事業としては家政婦による家事サービスが行われてい た。  一方、介護保険導入後のところですが、増加傾向にありますが、特に訪問介護の中心 の担い手であるところでは、株式会社、NPO法人等につきましては小規模な事業所が多 く、また、事業開設後の経過年数が間もないというところから、雇用管理がなかなか不 十分な事業所の割合が高くなっているという状況でもあります。  次に、介護サービスの特徴を述べておりますが、介護サービスは究極的には人間同士 のふれあいによって始まるという点を踏まえますと、介護サービスというのは人が人に 対して直接提供するサービスであります。また、サービスを受ける高齢者側のことを考 えると、住み慣れた地域によってサービス提供を望むことが多い。訪問系のサービスの 特徴としましては、利用者宅までの移動距離が短いということ。施設系では、家族のつ ながりという観点から、需要のあるところでサービスが発生するということを踏まえる と、地域密着型の産業としての性格も併せ持っているということがうかがわれます。  今回のヒアリングにおいても、人材の異動に関しまして、訪問介護に携わっている方 は訪問系だけ、施設介護に携わっている方は施設系だけに従事する場合が多いという特 徴も受けているところです。その理由としまして、介護保険制度導入の理由の1つは、 高齢者の多くはできるだけ住み慣れた環境で送ることを願っており、こうした希望に応 えるため、24時間対応を視野に入れた在宅支援体制の確立を目指すという思想の下に導 入された側面がありますが、実際は、夜間介護は仕事として難しい面が多いこと、ある いは介護サービスにおける人材の異動が少ないということがあり、結果として介護労働 者が異なる介護サービスに従事することを阻外しているのではないか、という委員から のご指摘もあったところです。  4頁です。次の5頁に図表1として、職種別従業員数の就業形態別、勤務形態別の割合 を載せていますが、そこから引用しているところです。介護労働者の構成の特徴として は、さまざまな就業形態の労働者が見られ、その大きな特徴として、非正社員の占める 割合が増加傾向にあり、介護労働者全体では約5割、訪問介護については約8割を占めて いるということが挙げられております。また、女性労働者の割合が多いということから、 女性への就労支援対策を求める指摘もあったところです。  さらに、就業形態別を見てみると、訪問系では正社員は26.9%となっている一方、施 設系、入所型ですが、正社員は64.2%ということで、訪問系では正社員割合が低く、登 録ヘルパー等の非正社員の割合が多い形で事業がなされているといった特徴があります。  以上より、訪問系においては主婦層を中心とする短時間労働者が多いこと、施設系に おいては常勤者によって対応される夜勤業務が不可欠な特徴があるということで、考え 方としまして、確保・定着を考えるときには、主婦パート層を中心とした訪問介護と正 社員層を中心とした施設介護はその属性が大きく異なっていることに留意する必要があ るのではないかというところです。また、先ほども述べましたが、短時間労働者が多い 訪問介護の特徴とか介護サービスの地域特性を考えると、介護労働者の需給というのは、 基本的には比較的狭い労働市場で完結している場合が多いといった特徴があります。  また、就業意識の特徴を見てみると、現在の仕事を選んだ理由としまして、働きがい のある仕事だからということが55.9%、現在の仕事の満足度におきましても55.0%とい うことで、入職時には、あるいは在勤中には満足度も高いこと、あるいはやりがいを持 って入職しているという状況があります。しかしながら、悩み、不安、不満等を聞いて みると、仕事内容のわりに賃金が低いが49.4%、社会的評価が低いということが38.4% ということで、入職時と現在の仕事内容に関しては相当のギャップがあり、特に賃金や 社会的評価に対する不満が高まっているという状況が見られるところです。  5頁2.の介護労働の現状と課題。(1)介護労働者数の動向です。図表としましては7 頁の図表2、介護職員数の推移です。  本文では合計数を述べていますが、この図表ではそれぞれの常勤・非常勤別あるいは サービス別になっていますので、合算すると本文中の合計数になるところです。介護労 働者数の動向ですが、全体では平成12年の約55万人から平成18年度は約117万人、 約2倍に増加しております。介護サービス別に見ると、居宅サービス事業所では平成12 年当時で約31万人でしたが、平成18年は約85万人となっています。また、介護保険施設 におきましては、平成12年当時が約24万人のところ、平成18年では約32万人と、毎年1万 人ずつ増加しており、居宅サービス事業所に従事する介護労働者は、施設に従事する労 働者に比べて大きく増加している状況です。  さらに、潜在的有資格者の動向ですが、介護福祉士の国家資格を取得している者約47 万人のうち、実際に従事している方は約27万人にとどまっており、いわゆる潜在的有資 格者が多数存在しているところです。今後、介護福祉士だけでなく、ホームヘルパー2 級等においても、潜在的有資格者の動向とか就業意識の検証を実施し、再び働くことが できるよう対策を講ずる必要があるのではないかと、このような特徴から言えると思い ます。また、将来必要となる介護保険サービスに従事する介護職員数につきましては、 平成16年の約100万人から平成26年には約140万〜160万に増加することが見込まれてい るところです。  次に、地域別の介護労働者数ですが、参考資料の3頁です。その中の図表7「都道府県 別介護職員数の推移」というのが都道府県別に数値がありますので、その数値を用いつ つ本文では述べております。地域別に見ると、平成18年の都道府県別の介護労働者数で は、東京都では9万5,000人、大阪府は8万8,500人、神奈川県が7万9,200人となっており、 少ない所では山梨県、福井県、鳥取県というところです。また、右のほうに増減率の平 成16年との比較が書いてありますが、各都道府県においても総じて増加しているものの、 この増加率を見ると上位3都府県の増加率は20.5%であるところ、下のほうの下位の3県 は15.7%で、約5ポイントの増加率の差が見られるところです。  続きまして、学校関係、養成施設関係の推移を述べております。若年人口の減少、介 護労働者の厳しい労働条件あるいはマイナスイメージ等を背景として、介護福祉士等の 養成施設は定員割れが相次いでおります。7頁にある図表3-1、8頁にある図表3-2で定員 充足率の推移と卒業生と就職者数の図表をここで掲示していますが、そのことを本文で 述べております。介護福祉士等の養成施設におきましては定員割れが相次いでおり、私 立大学の平成19年の定員充足率は、健康福祉学部で98.8%、社会福祉学部では98.6%と、 100%は切っているものの、おおむね定員を確保できている状態ですが、私立の短期大学 では定員充足率が平成19年69.7%というところで、平成16年と比較すると約26%低下し ているところです。また、ヒアリングにおきましても、専門学校が定員数を大きく下回 っており、最も深刻な状況となっているという指摘を受けたところです。  図表3-2で就職率の動向も図表としてお示ししていますが、介護福祉士養成校から介護 関連分野の就職率の動向を見ると、平成16年88.3%でしたが、平成19年には86.4%とな っており、就職率は減少傾向となっているところです。また、ヒアリングにおいて、本 人が介護分野を志しても高校の先生や親が反対するとの指摘がありました。そこで、ハ ローワークにおける特別調査をやりましたところ、参考資料の後ろのほうにハローワー クの特別調査のヒアリング調査の結果を載せておりますが、その最後の頁から2枚目の 後ろのほうに問4に、生徒の介護専門学校への進学や介護業界への就職についてどのよ うに考えていますか、という設問に対する回答数を載せておりますが、そこのところを 本文には書いております。ハローワークにおける普通高校の進路指導教員に対するヒア リング調査において、「介護分野を希望する生徒には積極的にサポートする」が63.4% である一方、「適性を見て進めることもあるが、介護分野の現状を十分説明する」が61 .4%、「介護分野を希望しない生徒、迷っている生徒にあえて進めることをしない」が 33.1%となっているところです。また、委員からは、介護福祉士等の養成施設を卒業す る段階ではなく、高校から進路を選択する段階での介護分野への誘導が重要であるとい う指摘があったところです。  続きまして、取りまとめ案の8頁です。(2)で人手不足感の動向を述べておりますが、 同時に、参考資料の図表8から11までを参照していただきながら本文を見ていただけれ ばと思います。最初に、介護職種別の労働者の過不足状況を見てみると、不足している とする事業所が訪問介護員では75.2%、介護職員では55.7%となっており、訪問介護員 で約20ポイント高くなっているところです。さらに、人手不足の実態に関する調査研究 というものを昨年度末にやったところですが、「社会保険、社会福祉・介護事業」では、 人材が不足しているという所が79.0%と不足感が強くなっており、さらに、3年前との 状況を比較したところでも、特に中小企業及び医療・福祉で不足感が強くなったとする 企業の割合が大きくなっているところです。  続いて、有効求人倍率の状況を述べているところですが、本文の10頁、図表4の所で介 護関連職種の有効求人倍率の推移と全職業との比較の図表を載せておりますが、そこを 文章化したものです。また、平成19年度都道府県別有効求人倍率を見ると、平成15年か ら全体の雇用情勢が改善している中で、東京及び愛知が介護関連職種で3.52倍と最も高 くなっている一方、沖縄が0.78倍で最も低くなっており地域差が大きくなっている状況 になっております。  さらに、介護関連職種常用の全国平均では、平成16年1.14倍、平成19年2.10倍と、3 年間で0.96ポイントの上昇。また、常用的パートタイムでは、平成16年2.62倍、平成19 年3.48倍と、3年間で0.86ポイント上昇というところで、人手不足感が相当高まっており、 特に非正社員等の人手不足感は深刻な状況となっているところです。  9頁に移りますが、ヒアリング等における指摘事項というところで特に重要なコメン トを本文に載せているところです。ポツの1ですが、訪問介護員の短時間労働者におけ る1カ月の実労働時間を見ると、80時間未満の割合が73.1%となっており、その背景と しまして税・社会保障の制度上の問題等の労働時間の調整を行っている者もいると考え られるが、これらの者の対策、労働時間を増加させることで労働力の確保につながるの ではないかという指摘もあったところです。また、一方、そういう働き方については、 そもそも短時間の就労しか希望しない方がいること、あるいは働きたいと思っていても なかなか働けなくなっている、そういった阻害要因を取り除く必要があるのではないか という意味からのご指摘もあったところです。  また、その不足状況を各団体から聞いておりますが、不足をしており、募集をしても 応募者がいない(特に大都市圏においては)、それと募集コストが1人当り50万円ぐら いかかったという指摘もあったところです。特に、大都市圏では常用労働者が離職した 場合、即座に人員を確保できず、派遣社員を利用せざるを得ないという指摘があったと ころです。  派遣労働者の受入れにつきましては、参考資料の7頁の図表14をご覧ください。派遣 労働者の受入れを介護センターの実態調査から引用していますが、「派遣を受け入れて いる」が9.3%、「派遣を受け入れていない」が88.5%と、まだ派遣を受け入れていない のが多い状況ですが、サービス別に見ると、訪問系が3.5%であるのに対し、施設系、入 所型では21.8%と多くなっているところです。また、事業所規模別で見ると、4人以下の 0.4%から100人以上の23.0%まで、段階的に増加している傾向が見られるところです。  本文の10頁に移りますが、(3)として常用労働者の賃金等の動向を本文で述べてお ります。図表としては本文の11頁から13頁にかけてそれぞれの賃金カーブを図表化して いますが、それを本文の中に文章化しております。賃金水準というものは、その高低に ついて一概に比較・解釈することは困難ですが、賃金構造基本統計調査によると、常用 労働者の平均賃金は福祉施設介護員(男性)の所定内給与額は21万3,600円であるところ、 全産業の男性労働者平均の給与は33万6,000円と、約12万円の差が見られるところです。 また、女性の福祉施設介護員の所定内給与額は19万3,700円で、全産業の女性の22万5,2 00円と比べると約3万円の差が見られるところです。さらに、訪問介護についても同様の 傾向が見られ、勤続年数の差はありますが、常勤の介護労働者男性、女性ともに低い水 準にあると言える。  ヒアリングにおきましても、現在生じている問題として、やりがいを感じているもの の、将来、家族を養っていくことができないという理由から、結婚を機に退職する男性 労働者が増加している、という指摘も受けたところです。また、委員のほうからは、そ うは言いつつ、男女にかかわらず能力やキャリアに応じた賃金制度が必要なのではない か、という指摘もあったところです。また、年収ベースでは、男性労働者の賃金カーブ を見ると、賃金上昇率が他の産業に比べて低くなっている動向が見受けられます。  11頁の上のほうで、ヒアリング等における指摘事項を囲みで入れております。訪問介 護では、他人の家庭に入って仕事をする困難さなど、負担が大きいわりには賃金が低い という指摘もあったことから、女性の介護職種賃金を他の産業と比べると必ずしも低く はないが、医療分野の他の専門職と比較すると相対的に低くなっている。賃金の低さを 強調することは、かえってマイナスになりかねないではないかという指摘と、専門職と してはかなり低い水準であると言わざるを得ないという指摘があったところです。  本文の13頁に移りますが、(4)として入職理由を整理したところです。介護労働者が 現在の仕事を選んだ理由として、「はじめに」でも述べましたが、「働きがいがある仕 事だから」というのが55.9%、現在の仕事の満足度においても、「仕事の内容・やりが い」に満足している介護労働者の割合は55.0%と、高い水準にあるところです。しかし ながら、労働条件等の悩み、不安、不満では「仕事内容のわりに賃金が低い」が49.4%、 「業務に対する社会的評価が低い」が38.4%と高くなっており、入職時及び現在の仕事 の内容に関しては、やりがい等に満足しているものの、賃金や社会的評価に対する不満 が高まっている状況となっております。このため、そのような賃金に対する不満を解消 し、やりがいを失わないような賃金制度等の雇用管理改善を図っていく必要がある。ま た、社会的評価が低いということにつきましては、国民各層から魅力的な職業として社 会的評価が得られるよう仕事に対する理解を進めていく必要がある。  このような取組を通じてハローワークにおけるヒアリング調査を見てみますと、先ほ どの特別調査の所でも書いておりますが、介護職が実際に働いた結果のギャップ感を調 査しているところがあります。そのギャップを感じたと回答した者は68.6%となってお ります。良い実感としましては「自分のイメージしたとおり、やりがいのある仕事であ る」という方がある一方、良くない実感としては「精神的・体力的にきつい」「仕事内 容のわりに賃金が低い」というところでそれぞれ高くなっているところです。また、現 在の希望就職先を聞いたところ、再度「介護分野に就職したい」という方が51.9%、「 条件次第では介護分野に就職したい」という方が24.6%となっているところです。  (5)では離職率等の動向を整理しております。中でも、アとして「介護分野全体」、 イとして「訪問系」、ウとして「施設系」、エとして「離職理由とその背景」という分 け方にしております。介護分野全体ですが、離職率を比較する場合、正社員、非正社員 の定義が異なるため、一概に比較・解釈することは困難ですが、全産業の平均離職率と 介護職員及び訪問介護員の離職率を比較すると、全産業の平均離職率が16.2%であると ころ、介護全体では21.6%、約5ポイントの差が見られるところです。また、離職者の うち、勤続1年未満で退職した割合は約40%、勤続3年未満だと約75%となっているとこ ろです。  離職率の分布ですが、本文の17頁の図表7-1をご覧ください。これは離職率階級別に 見た事業所の割合を、全体、訪問介護員、介護職員ごとの状況を見たところですが、こ のような離職率の分布を見ると、事業所単位の離職率が10%未満で安定している事業所 と30%以上となっている事業所の割合がそれぞれ高くなっており、離職率の高い事業所 と離職率の低い事業所が併存している状況が見られるところです。  このため、離職率が安定し質の高いサービスを提供している事業所においては、魅力 ある職場づくりを実現できる現場管理者の育成が重要としているということから、情報 収集、好事例の周知に努めるとともに、離職率の高い事業所に対する雇用管理改善対策 が求められるところとなっております。  続いて、それぞれのサービス系ごとの特徴です。イの訪問系ですが、全産業の平均離 職率が16.2%であるところ、訪問介護員は16.9%と、ほぼ同水準であり、勤続1年未満 の離職は29.6%となっているところです。男女の割合が明らかに異なっているため、一 概に比較・解釈ができませんが、本文15頁の就業形態別を見ると、全産業の正社員の離 職率13.1%に対して訪問介護員は18.2%と高くなっております。また、非正社員の離職 率では、全産業が26.3%のところ、訪問介護員は16.6%となっており、約10ポイント低 くなっているところです。  次に、定着状況ですが、これは本文18頁の図表7-2を参照してください。  介護労働者の定着について見ると、定着率が低くて困っているというのが訪問系の事 業所では19.3%となっているところです。訪問系では、他の産業と比べて非正社員の離 職率が低いですが、これは短時間労働者の離職率が低いことを反映し、一方、正社員に ついてはさまざまなニーズに応じた時間帯の対応を行わなければならず、その結果とし て正社員の負担が大きくなり、労働時間も長くなっていることから、他の産業と比べて 離職率が18.2%と高くなっていることがうかがわれます。また、ヒアリングにおきまし ても、利用者の家庭に入って介護サービスを提供することから、施設系とは異なるスキ ルが必要であるという指摘も受けたところです。  ウの施設系に移りますが、施設系におきましては全産業の平均離職率16.2%に対しま して25.3%と、約9ポイント高くなっており、勤続1年未満の離職が43.9%、訪問介 護員と比べ介護職員のほうが早期離職する割合が高くなっているところがうかがわれま す。また、就業形態別で見ると、全産業の正社員の離職率は13.1%なのに対しまして介 護職員は20.4%、非正社員の離職率では、全産業は26.3%に対しまして介護職員は32.7 %と、約6ポイント高くなっているところです。先ほどの訪問介護と同様に定着を見ると、 定着率が低くて困っていると回答した事業所は施設系が34.0%となっており、介護施設 においては介護職員の職場への定着が大きな課題となっているというところがおわかり になるかと思います。また、介護施設に関しましては、夜勤の人員配置では夜勤を卒先 してやりたいという非正社員もいるとの指摘がヒアリングにおいてあったものの、基本 的には常勤労働者が対応していることなどから、特に非正社員の常勤労働者の離職率が 34.0%と高くなっているところです。  エとしまして、離職理由とその背景を述べております。離職理由を見ると、「待遇( 賃金、労働時間)に不満があったため」、本文16頁ですが、「自分・家庭の事情のため」、 「法人や事業所の経営理念や運営のあり方に不満があったため」、「職場の人間関係に 不満があったため」、などによる離職が大きくなっているところです。具体的には、労 働環境への不満、入職者に対する研修・教育体制の整備不足、夜勤での人員配置過少に よる精神的・体力的負担、重労働による腰痛などが原因として挙げられているところで す。また、介護職員の腰痛と健康問題にかかわる福祉用具利用調査におきましても、現 在、腰痛などがあるとする者は69.9%となっており、そのうち、腰部の痛みがあるとす る者は90.1%に上っているところです。この現状を踏まえ、早急に労働環境の改善を図 り、介護労働者の意欲低下を解消することで早期離職を防ぐこと、早期離職者の防止、 定着促進の方策としましては職場内の交流を深め、コミュニケーションの円滑を図るこ とが有効であるということがヒアリングにおいて指摘がなされているところです。  ヒアリングにおける指摘事項を囲った所がありますが、その中では正社員に過重に負 担がかかり、オーバーワークやバーンアウトを理由に離職する者が少なくなく、(1)から (4)まで状況を整理しましたが、将来的には介護労働をやっていきたいと考えながらも、 なかなか正社員への道を進もうとしないという指摘があったところです。  (1)としては、訪問系においてはサービス提供責任者になった場合、事務的業務の負担 が伴いまして、その結果として恒常的に残業が発生してしまう。(2)としては、訪問系に おいては早朝や夕方の介護ニーズの需要が集中する一方で、登録ヘルパーのシフト面や 人材確保の観点から、正社員に負担が集中してしまう。(3)として、施設系においては夜 勤が好まれないとされている中で正社員に負担が集中すること。共通ですが、土日や祭 日に負担が正社員に集中すること。17頁ですが、夜勤の人員配置の問題で、看護職が常 駐できる体制になっていない事業所もあり、介護職員がやむを得ず医療行為をしなけれ ばならない状況があり、大きな精神的負担になっていること。最後のポツですが、管理 職に対するマネジメントの養成研修がないことなどから、事業所の中核を担う介護労働 者の離職が見られるという指摘があったところです。  続いて、本文18頁ですが、(6)として地域別分析を、19頁と20頁のそれぞれの分布 図を用いながら、地域別の状況を本文で説明しております。都道府県別の有効求人倍率 と都道府県別の全産業平均賃金を比較して分布図を探ったところが図表8-1、図表8-2で す。その特徴で見ると、パートタイムを除く・パートタイムともに、強い正の相関が見 られ、全産業の平均水準が高く、有効求人倍率が高い都道府県においては、市場賃金が 高い都道府県において人材確保が困難になっているということがこの分布図からわかる ということとしております。19頁の中ほどの図表9-1、図表9-2では、都道府県別平均賃 金と過不足感の相関を見ております。介護職員では中程度の正の相関が見られ、訪問介 護員では強い相関が見られる状況がこの分布図でおわかりになるかと思います。  本文20頁に移りますが、離職理由と賃金の関係の相関図が図表10-1、図表10-2です。 都道府県別の全産業平均賃金と介護分野の平均賃金の比較と離職率の相関を見ると、介 護職員については中程度の負の相関が見られ、また、訪問介護員についてはほとんど相 関が見られないことから、賃金以外の雇用管理や人間関係での離職が考えられるのでは ないかということを述べております。以上のことから、介護労働者の確保のためには、 他の産業との賃金比較が重要な要素となっているが、介護労働者の定着においては賃金 以外の要素もあることがうかがわれ、雇用管理改善等の介護労働者の定着に求められる 要素を分析し対策を講じる必要があるというふうに結んでおります。  (7)雇用管理等の動向です。雇用管理につきましては、いままで述べてきたとおり、 賃金及び処遇に関することを含めまして、本来、事業主自ら積極的に取り組んでいかな ければならない問題がありますが、研究会における委員のご指摘では、福祉業界全般と して見ると雇用管理の取組が弱く改善の余地があるのではないかという指摘があったと ころです。  21頁に移りますが、事業所における人材育成の取組みとしまして、参考資料10頁の図 表21から、人材育成の取組みと介護センターの調査結果を示していますので、それを本 文化したものです。事業所における人材育成の取組みとして、「自治体や業界団体が主 催する教育・研修に積極的に参加させている」というのが52.6%と最も多くなっている ところです。しかしながら、「能力向上が認められた者は配置や処遇に反映している」 と回答した事業所は27.7%であり、約7割の事業所が能力向上が認められた場合でも処 遇等に反映されていない状況となっており、事業所規模別においても、規模が小さいほ ど能力向上が処遇等に反映されない状況となっているところです。  さらに、参考資料の11頁、早期離職防止や定着促進を図るための方策を図表22で示し ていますが、その状況を本文化しております。さらに、早期離職防止や定着促進のため の方策として、「職場内の仕事上のコミュニケーションの円滑を図っている」が60.1% と最も高いものの、「能力や仕事ぶりを評価し配置や処遇に反映する」は33.2%であり、 約3分の2の事業所が能力や仕事ぶりが処遇等に反映されない状況であり、介護サービス 別においても訪問系が29.5%であるのに対しまして施設系(入所型)では39.6%と、約 10ポイントの差が見られ、事業所規模別においても、規模が小さいほど能力や仕事ぶり が処遇等に反映されない状況となっております。  続いて参考資料の図表23「就業規則の明示」の所を本文化しております。非正社員を 対象にした就業規則の作成状況を見ると、全体では「作成している」が69.2%、「作成 していない」が16.1%となっております。また、サービス別に見ると、訪問系は「作成 している」が66.3%、「作成していない」が16.0%なのに対しまして施設系(入所型) では「作成している」が79.4%、「作成していない」が14.1%となっているところです。 規模別に見ると、規模が大きくなるに従い「就業規則を作成している」とする事業所が 段階的に増加しているところです。その他の項目におきましても、研修への積極的参加、 コミュニケーションの円滑化等については半数以上の事業所で実施しているものの、な かなか処遇等に反映されない事業所が多く、適切な評価による賃金やキャリアアップ等 の仕組みの構築がこの状況から必要であるのではないかとうかがわれるところです。  また、運営上の課題を調査した数値を見ると、経営が苦しく、労働条件、労働環境改 善ができないとする事業所が介護分野全体で41.5%あり、特にNPO法人では社会福祉協 議会以外の社会福祉法人、医療法人などと比べ事業所規模も小さく、経営が苦しく、な かなか改善したくてもできないとする割合が4割を超えている状況です。  ここまでは状況と課題を分析したところですが、22頁からは第2章として「今後の介 護労働対策の方向性」として整理しております。1.では、介護労働者が意欲と誇りを持 って働くことができる社会の実現。(1)として、基本的な考え方を述べております。今 後、介護労働者の需要がますます拡大し、介護サービスの質もより高いレベルが求めら れている。これらに対応していくためには、質の高い人材を安定的に確保していくこと 及び定着させることが求められる。介護サービスでは利用者のニーズが一定の時間帯に 集中するなど、また、1日のうち時間単位や必要人員が大きく変わること。施設系の特 徴では、夜勤が必須であるとの特徴を見ると、正社員として長期間にわたっての就労を 希望する者、短時間労働者としての就労を希望する者など、自らのライフスタイルに合 わせた多様な就業形態を選択する介護労働者の活用が必要であるとの基本的な考え方を 述べております。  また、介護サービスは対人サービスという観点を見ると、今後の少子高齢化の進展、 あるいはサービスの需要のますますの増大の中で、生産性の向上や事業所数、事業の種 類、労働者数という観点を踏まえて検討を進めていく必要があるとの指摘があったとこ ろです。このため、これらの課題に対し適切な対策を講じていくためには、介護分野に おける人手不足や離職率を改善し安定的に人材を確保及び育成する仕組みの構築が重要 となっているという基本的な考え方として結んでおります。  次に、介護報酬の考え方です。ヒアリングでさまざまなご意見をいただいたところで すが、1番として、約4割が経営難により労働条件及び福利環境の改善は困難としている こと。2つ目として、介護報酬が低すぎるために、能力、資格や貢献に応じた賃金がな かなかできないといった問題が指摘されております。人材の量的・質的確保、その定着 及びそのための効果的な雇用管理のためには適切な介護報酬の改定が必要であるという 意見が数多く寄せられたところです。また、2度にわたる介護報酬のマイナス改定で経営 に深刻な影響を与え、賃金を高くできなくなった結果、職員の流出を招き、新規職員も 採用できないとの指摘があったところです。  また、事務的業務が増加しているため、事務職員を配置できるような介護報酬にする 必要があるとの指摘も多くなされたところです。一方、委員の中からは、介護報酬が切 り下げられる前も介護労働者の賃金は現在とほとんど変化がなく、労働市場の逼迫が賃 金引上げ及び雇用管理改善につながる契機になるのではないかという指摘もあったとこ ろです。  このように、介護労働については現状の賃金等の労働条件にさまざまな課題がありま すが、今後の介護報酬の改定に際してはいかにして安定的に人材を確保し専門職と処遇 し、その能力を高めていくかという観点を考慮して検討がなされることを望みたいとい う意見で結んでおります。  2.としまして、「介護労働者の定着・育成に向けた雇用管理改善」、副題として「雇 用管理改善を通じて、魅力ある仕事として評価、選択されるための対策」として整理し ております。介護事業主は、賃金制度、キャリアパスの設定や適正な人事評価、夜間に おける人員配置等、幅広く雇用管理改善を行う必要があり、その際にはさまざまな就業 形態の働き手がいることから、その適切な組合せを考える必要があるということを基本 的な考え方としております。  (1)としまして、雇用管理の認識・必要性について記述しております。1つは、歴史 的な経緯としまして、介護保険制度導入前は措置制度、医療保険制度、一部はボランテ ィアによって介護サービスが提供されてきましたが、その関係上、介護事業主、特に経 営者のトップにおきましては、雇用管理、労働関係法令の十分な理解に欠けているとと もに、雇用管理の重要性の認識、理解が不可欠であるという指摘があったところです。 また、第1章で見ましたとおり、人材育成の取組やコミュニユケーションの円滑化等の 雇用管理については、早期離職防止等の観点から有効であること、また、非正社員を対 象とした就業規則の作成率が低いなど、基本的な雇用管理がなされていない事業所も少 なくないところとなっています。  このため、労働基準法をはじめとした労働関係法令の遵守がなされることは当然であ りますが、雇用管理についての普及啓発を図るとともに、事業主やサービス提供責任者 等をはじめとした現場管理者、管理職に対する雇用管理等の研修の実施、各種支援体制 の強化を図っていくことが求められる。特に、中小企業におきましては、基本的な雇用 管理の周知・徹底に力を入れる必要があると考えられるが、その際には事業主団体を通 じた中小企業の雇用管理の共同化等を行い、併せて事務の効率化もする必要があるとい うふうにまとめております。  (2)ですが、介護労働者の処遇改善とキャリア管理の促進のところです。介護労働 者の現状におきましては、やりがいがあるものの賃金等の処遇等の問題により、将来的 にはなかなか希望や誇りを持って働き続けていくことが困難であるということがヒアリ ングにおいても指摘されております。賃金については労使間の話合いで決定される事項 ですが、介護事業主にとって安定的に人材の確保・定着を図り、その能力を高めつつ、 介護労働者にとっては意欲と誇りを持って働き続けることをできるようにするためには、 キャリア、能力、資格及び職責に見合う賃金制度及びキャリアパスの構築を図り、地域 や他の分野における労働者の賃金水準等を踏まえ、適切な賃金水準が確保されることが 望ましいというふうに記述しております。  さらに、的確な人事評価や職務に応じた処遇等を基に、個々の介護労働者のキャリア 管理を行っていくことがやりがい・誇りにつながり、将来に展望を持てる意欲となり、 介護労働者の定着に結びつくものと考えられるところです。また、委員の佐藤博樹先生 からの「ヘルパーの能力開発と雇用管理」から引用させていただいていますが、「ヘル パーの能力開発と雇用管理」によれば、介護業務通算経験年数が長くなるほど、介護能 力得点が上昇するという結果が得られており、その観点からも早期離職を防ぎ、経験年 数が長期化することでサービスの質の向上につながるものと考えられるところです。ま た、ヒアリングにおきましても、そういった課題の解消のためにはコミュニケーション の重要性、キャリア管理の重要性も併せて指摘されたところです。  このため、重ねて申し上げますが、キャリア、能力、資格及び職責に見合う賃金制度 を構築し能力や仕事ぶりを的確に評価することが必要である。具体的には、これらの実 現のためにはマネジメント能力を高め、また、個々の介護労働者の賃金、キャリア管理 に反映させていく必要性について、事業主団体等の講習会を活用して啓発していくこと が求められるというふうに結んでおります。  25頁では、ヒアリングにおいてこのような処遇改善あるいはキャリア管理の促進につ いての指摘を受けているところですが、時間の都合で割愛させていただきます。26頁で すが、(3)として、介護労働者の安心・安全・働きやすい労働環境の整備としてまとめ たところです。介護サービスは、そのサービスの特徴により、訪問系では基本的に一対 一の介護サービスであること、そういう観点から利用者に対して適切な介護が行われて いないのではないかという不安があること、施設系では夜勤時に何が起こるのかという 不安があることなど、さまざまな精神的負担あるいは重労働による腰痛等の身体的負担、 事務的業務への負担が大きくなっていることから、その解消のためには安心・安全・働 きやすい労働環境の整備が重要となっている。  また、ヒアリングにおきましても、その不安等のためには、介護事業主と介護労働者 とのコミュニケーションの充実はその定着に大きな効果があるとの指摘を受けたところ です。また、介護労働者のさまざまな就業形態があることから、それらの就業形態を希 望し、特に女性の割合が高いという特性を併せ考えると、仕事と子育ての両立と安心・ 安全・働きやすい労働環境の整備、具体的には育児休業・介護休業の取得等、女性が働 きやすい職場にしていく必要があるという指摘があったところです。  さらに、健康診断の徹底や腰痛対策のほか、感染症対策、メンタルヘルス対策が求め られるところですが、腰痛対策に関しましては、介護補助器具等の積極的活用を図るた めの助成とか、腰痛予防の講習、腰痛発症者に対する支援等を推進していくことが必要 である。また、精神的負担に対しましても、その軽減のために介護事業主等に問題を認 識させるとともに、相談体制の整備・充実、メンタルヘルス対策等を促進する必要があ る。また、現場管理者がシフト管理等を通じて本来の業務に専念できるよう、事務的業 務等の簡素化・合理化を図りつつ労働時間の短縮を促進することが求められるというふ うに結んでおります。  27頁ですが、いままでは雇用管理を通じた定着についてまとめたところですが、3.で は介護労働者の確保及びマッチング、人材確保の点で述べている章です。副題としまし て「必要なサービスを提供できる介護労働者を安定的に確保するための対策」です。ま ずは、介護という職業につきまして、その国民各層から選択される魅力的な職業として 社会的評価を得られるようにすることが先決であるということ。続いて、それに伴って、 専門職としての社会的評価を高めるとともに、国民に対する正確な情報提供を行うこと により、多様な人材の介護分野への参入を促し、マッチング機能の強化により人材の確 保を図ることが必要であるという基本的な考え方を述べております。  (1)として、教育機関・養成施設等の連携による人材確保。第1章で述べましたが、 介護福祉士等の養成施設におきましては、若年人口の減少、厳しい労働条件、人手不足 等のマイナスイメージの報道等を背景として定員割れが相次いでおり、介護福祉士等の 養成施設へ進学する学生が確保できなければ将来における介護労働者のさらなる不足を 助長する恐れがある。このため、ハローワーク・福祉人材センター及び関係団体等と各 教育機関・養成施設・福祉施設との連携を密にし、介護の職場へのインターンシップや 合同説明会等を通じ、求職者及び将来の進路の選択段階で若年者に対して介護サービス の実態、仕事に対するやりがい及び社会的意義等、介護の職場への理解を深めていくこ とが求められている。また、進路選択段階におきまして、若年者から魅力ある仕事とし て評価されるよう努めていくことが必要であるというふうに結んでおります。  28頁に移りますが、(2)としまして、潜在的有資格者の掘り起こしです。第1章にお きましても、潜在的有資格者が多数存在していると述べたところですが、このため、こ の潜在的有資格者に対しましては介護分野への就業意識の阻害要因等について調査・分 析を行い、有資格者に対する情報提供等、有資格者が再び介護の現場で働くよう適切な 対策を講じることで、安定的・効果的に介護労働者を確保することが重要である。また、 福祉人材センター等において、潜在的有資格者に対して就職説明会等を実施し、介護分 野への入職を促進するということが求められる。  (3)ですが、多様な人材の参入・参画です。潜在的有資格者のみならず、広範にわ たる人材確保の観点から、次世代の介護を担う人材として介護関連業務未経験者等を受 け入れ、養成していくことが求められる。そのためには、介護事業所における雇用管理 改善等を行うとともに、介護の仕事や多様な働き方についての社会的理解を高め、介護 関連業務未経験者から選択してもらえるような業種となることが重要である。このため、 このような介護関連業務未経験者を受け入れ、介護を担う人材を育て、活用していくた めには事業主に対してさまざまな人材育成にかかる負担軽減のための助成措置が求めら れるというふうに結んでおります。  (4)としまして、ハローワークを通じた人材確保機能の強化です。介護分野につき ましては、近年の景気回復に伴う他の産業分野における採用意欲の高まりとか厳しい労 働条件の認識が広まる中、離職率の高さとあいまって都市部を中心に慢性的な人手不足 が広がっている状況です。このような状況の下、ハローワークは、介護分野での人材確 保に向けて、人手不足の深刻な都市部を中心に、新たな拠点の設置や全国規模での体制 の整備、機能の強化を図ることとしております。そこで、介護分野の経験者等を配置し、 人材を求める求人者に対して求人充足に向けての助言・指導等を含めた支援を行うとと もに、雇用管理改善・人材確保に関するセミナー等を開催する。また、就業を希望する 求職者に対しましては、担当者制によるきめ細かな職業相談・職業紹介を行うとともに、 就業に関するセミナー、社会福祉施設等への見学会を実施することにより、多くの求職 者に対して介護分野での就業についての理解の促進を図ることとしております。  また、ハローワークは、研修あるいは雇用管理に関するコンサルティング等を実施す る関係団体と日頃からネットワークを構築することにより、介護分野に興味のある方、 就業を希望する方、人材を求める事業主を対象に各機関の有するノウハウ、情報を活用 した合同説明会、合同就職面接会の開催を通じて多種、多様なサービスを効率的、効果 的に提供し、以て安定的な福祉人材の確保の実現を図ることが求められるということで 結んでおります。  (5)として、社会的評価の向上です。第1章でも述べましたが、介護分野は介護保険 制度導入前、基本的には措置制度に基づく公的サービスの提供であり、サービス供給側 が主体的にサービスを提供する場所、時間を決定することができたところです。一方、 導入後、介護は契約制度によりサービスを受けることとなり、利用者の中には、契約に よる料金を払っているのだから何でもやってもらわないと困る、という決められたサー ビス行為以外のことを要求する利用者も存在しているところです。また、ここ最近の報 道により、厳しい労働条件、人手不足、虐待、コムスン問題と、マイナスイメージが先 行しており、ネガティブイメージが社会的に植え付けられてしまっておりますので、そ のようなネガティブイメージが介護労働者の仕事に対する不安・不満を助長し、仕事に 対する満足度が下がっているのではないかと考えられるところです。このため、改めて 介護保険制度について国民から正しく評価されるよう努めるとともに、介護・福祉分野 に対する国民の関心を高め、介護労働者が専門職として誇りややりがいを持って一生涯 働き続け、社会的評価を高める取組として「介護の日」を設定する。また、各教育機関・ 養成施設と連携しつつ、国民に対する正確な情報提供が行われれば人材の確保に資する ものと考えられるということで結んでいるところです。座長、以上でございます。 ○大橋座長 大変丁寧にご説明いただきました。この中間取りまとめ案につきまして、 ご意見をいただきたいと思います。どうぞご自由にご発言ください。 ○佐藤委員 非常によくまとめていただいて、私としてはそれほど追加はないのですが、 中間の最後ということなので、細かいところも含めてでもよろしいですか。まず、1頁 目の下から2つ目のパラグラフの真ん中の所の「担い手の確保・定着」で、育成も入れ てほしい。「はじめに」の所なので、後ろのほうはそうなっていますので、「確保・定 着・育成」ということです。  10頁の下から4行目で、「一方、男女にかかわらず、能力やキャリアに応じた賃金制 度で」とありますが、ここは「仕事や能力、さらにキャリアに応じた」と、能力の前に 仕事も入れていただく。この「応じた賃金制度」は、当然、賃金水準も入っているとい う理解だということでいいですね。制度は評価していても水準が低いと困るので、この 「制度」は制度と水準の両方込みだという理解でというふうにさせていただければとい うことです。  22頁の「基本的な考え方」も先ほどと同じように、「今後」の所の最後「安定的に確 保及び定着・育成」と、育成を入れていただければと。下のほうは「育成」があるので、 初めの3行の所に育成が入ってないので。  22頁の下の「介護報酬の考え方」は書いていただいた内容が非常に良くて、基本的に はこれで追加とは言いませんが、23頁のこの介護報酬の考え方の「このように」の所の 最後の所の趣旨で、事業主の雇用管理の改善の中に、当然、法律上守らなければいけな いこともちゃんとやるということも、例えばヘルパーの人の一定の条件を満たせば有給 休暇が取れるわけですよね。有給休暇を取れば当然給与を払うわけですから、そういう ことも想定した報酬単価の算定にするという趣旨だというふうに理解させていただけれ ばと思います。ですから、変えろということではなくて、そういうものも入っていると いうことだということです。  23頁の2.の(1)の「雇用管理の認識・必要性」は、認識というのはタイトルがわかり にくいので、「雇用管理整備の必要性・重要性」ぐらいでいいのかなと。ちょっと言葉 だけです。  26頁の「ヒアリングにおいて」という所で、女性の割合が多いと。それから両立支援 と書いて、次に「安心・安全」と書いてあって、「安心・安全・働きやすい」というの は女性だけではないと思うので、もちろん、両立支援も男性も含めてなのですが、「安 全・働きやすい労働環境整備」の後に具体的に「育児休業」と来てしまうので、ここは 「安心・安全・働きやすい」を取って「さらに」の前辺りに持ってきたほうがいいかな と。  最後に、結構、まとめが大事だと思うので、まとめの所の2頁目で、いまのことにも かかわるわけですが、横の左側の下の「安心・安全・働きやすい労働環境の整備」の所 に、「育児休業・介護休業の取得等、女性が働き続けやすい職場にしていくことが必要。 具体的に」という続きを見ると女性のためだけにやるように読めるので、たぶん、後ろ の文章に引っ張られてしまっているのです。「具体的に」というのはすべてですよね。 ですから、「とりわけ、女性については両立支援」という書き方でいいと思うのですが、 両立支援も基本的には男性も含めてだと思うので、その辺は基本的には全部、とりわけ 女性が妊娠・出産しながら働き続けられるという、ちょっと特出しするような、後ろと 前をそろえていただけるとありがたいということです。  あと、まとめの1頁目の左の上の「職種別に見た賃金」、これはすぐ使われる可能性 が高いと思うのですが、本文は詳しく整理してあるので本文を見ていただければいいの ですが、これはフルタイム常用ですね、一般労働者ですね。ですので、これを見るとホ ームヘルパーの人が20万円台後半をもらっているなんていう。ですから、月収というこ とと、一般労働者、フルタイムだということがわかるように賃金の括弧か何かにしてい ただく。残念ながら、たぶん、まとめしか読まない人もいるので、お願いです。 ○大橋座長 これは対応はできますね。 ○佐藤介護労働対策室室長補佐 はい。 ○北浦委員 私も細かいところばかりですが、全体は本当によくまとめられているので はないかと思います。本当に細かいところになりますが、4頁2パラのいちばん最後の所 に、「介護労働者の需給は基本的には比較的狭い市場で完結」という、確かに特徴点と してはそのとおりだと思いますが、例えば新規の学校を卒業して入職される場合は地方 から結構来まして、その方に対して例えば社宅とか住宅の確保をしなければならない、 そこまでなかなか手が回らないというような施設の声も聞くのです。福利厚生でそうい うところを完備していない。ですから、あえて直さなくても結構ですが、「場合が多い」 ですからいいのですが、その点は念頭に置いていただきたい。これは要望だけです。  それから、これも細かいところなのですが、これも直せという意味ではないのですが、 ちょっと確認的に申し上げたいと思うのですが、22頁の(1)の基本的な考え方の3パラ の所で「一方において」ということで、このとおりなのですが、「介護サービスは対人 サービスという特性があり機械化が難しい」と。それはいいのですが、後にも出てきま すが、介護の補助機器あるいは介護補助器具の利用によってかなり改善する部分もある のです。そっちのほうは本旨ではないのですが、それはそれとして、科学技術の活用は 否定はしてはいけないと思うのです。ただ、それがあまり一方に走って、介護の本来の 人間的ふれあいとかサービスというものを損なう形になってはいけないので、その意味 ではここに書いてあるのは正しいのですが、機械化が困難ということにしてしまうと、 後の叙述でも例えば腰痛対策といったところでは配慮すべきだと書いてありますので、 そこのところは念頭に置いていただきたいということです。  あとは意見として聞いていただきたいのですが、対策の部分です。具体的に24頁とい いますか、あるいはその前後と申し上げますか、前の課題との関係で整理されていると 思うのです。ただ、前段の所では、かなり専門職としての専門資格を育成するというよ うな、能力を高めていくとか、佐藤先生のキャリアのところのあれによってそれが処遇 改善にもつながるのだと思うのですが、そこの能力開発や教育研修は自力ではなかなか やりきれないのが現状だと思うのです。ですから、政策提言ですから、その辺の重要性 を指摘していただいて、雇用管理というのは、どう定義するかによっていろいろあるの ですが、そういったような教育訓練的なものも入れていくべきかなと思うのです。その 点が1点です。  もう1点は、28頁です。多様な人材の参入・参画の問題の所なのですが、これはいろ いろ意味があるのだとは思うのですが、はっきり申し上げまして、ここの所の叙述がち ょっとわかりにくい。何を考えているのかということが読みにくいなという感じがした のです。例えば、多様な人材というのは、ここに書いてあるのは未経験者ですね。未経 験者の場合であれば、能力開発とつなげて入れるという。つまり、未経験のまま入れて 中で養成しようとしてもなかなか難しいので、例えば専門学校でも何でもいいのです。 あるいは、団体の講習会でもいいのです。そういうものとセットでいくような、例えば 厚生労働省の施策で言えばデュアルシステムという制度もあるわけですが、そういうも のも含めて、教育訓練とつなげながら、外部での養成とつなげながら中へ円滑に引っ張 り込んでいく。これは中での人材育成がかなり書いてあるのだと思うのですが、そうい ったような点が少し触れられるといいのではないかと思いました。これは要望です。  最後に、これはどこということではないのですが、29頁に関連して申し上げますと、 社会的評価のところとか、ほかのところにもつながるのですが、これはなかなか微妙で、 委員の皆さんで評価が分かれるのではないかと思うのですが、介護のボランティアの位 置づけが難しいなと。これは労働力の問題で、本当は違うのですが、実は、中に出てく るのは介護サービスという、いわゆる本来求められるサービス外のことが求められると いうことが結構出てくるのです。これは例えばレクリエーションの問題とか、いろいろ なところにあって、そういうところにおいて例えばボランティアが活用されることによ って結構軽減されるという問題もある。これは、もともと、ボランティアの扱いという のはなかなか難しいので書きづらいとは思うのですが、それで、私は、あえてこのいち ばん最後のところでと言ったのですが、そういったようなボランティア活動的な形で、 例えば学生であるとか、そういうような人たちが参加するということが、ある意味では 社会的な意識の啓発にもなりますし、ある意味ではそういったような幅広い形での支援 ということにもなるのかなという感じは少しいたしました。  この辺のところは議論も分かれるところですが、私としては、例えばこの福祉の世界 は、医療とか、いろいろな面においてボランティアが活発になっています。これに対し て評価も分かれています。かえって手間暇がかかって大変だという声を聞いているのも 事実なのですが、そういう福祉ボランティアの位置づけというものが、この福祉介護の 労働問題を考えるときには無視はできないのだろうという感じがいたします。これは私 の意見ということで、意見だけで結構です。 ○大橋座長 ただいまの点ですが、最初の4頁は、「比較的狭い労働市場で完結」とい う言葉が少し強いのかもしれませんので、そこのところを少し柔らかい表現にする。そ れから、「機械化が困難であること」と。機械化が困難というのはちょっとあれですか ら、「機械化に限界がある」というような少し柔らかい形にする。あと、28頁はもう少 し具体的にというご意見だと思うのです。これは少し考えてみたいと思います。それか ら、ボランティアのところはどういうふうに。 ○北浦委員 それはいろいろ分かれるところだと思いますけれども、意見で結構です。 ○大橋座長 では、駒村委員。 ○駒村委員 まず、まとめ案の中で少し気になっているのですが、1頁目の真ん中の「介 護報酬の考え方」なのですが、何か、「注」みたいになって下のほうに付いている。そ れで、本文のほかとのバランスは、みんな青抜きで真ん中にあるのに、なぜこれだけ下 に付いているのかなというのがやや違和感があって、「質の高い人材の安定」の下に来 るべきなのではないかと思います。要約というのは重要だと思いますのでそういうふう にお願いしたいのです。  これに関連して、22頁から23頁で、まさに、そこまでの分析で明らかになっているの で、確保については賃金も大事であって、定着については賃金と処遇、雇用管理が重要 である。最後に、この23頁の上の所でこの指摘がある。これはこの指摘で「このように」 から「望みたい」はもう少し強く言いたいところですが、部局が違いますのでこの程度 に押さえられているのだと思うのですが、この分析で資料3の6のほうでもいろいろ地域 間の状況の違いがドットで入っていて、本文のほうもその一部が載っているのですが、 できれば、どういう地域で需給が逼迫しているのかということを、上位何都道府県か全 部入れていただく。都市部で逼迫感がつよい。当然、それは介護報酬で工夫をしなけれ ばいけないわけですが、それがまた介護財政にどう跳ねるかということは、都市部の地 域的な問題であることも考慮すれば、財政的な工夫もいろいろな選択肢が出てくると思 いますので、その辺は、資料の中でも、地域性みたいな、都市部のかなり集中している 問題であるということをわかるように、資料3の6とか資料3の4に上位3つか5つぐらいを 示していただければなと思います。  あと、これは細かい点ですが、20頁の図表10-1は一時点ですよね。青森が2つある。 修正しておいてください。お願いします。 ○大橋座長 県を入れるというのは、全部入れるのは大変でしょうけれども、それは可 能ですかね。それから、まとめのこれについても少し強調の仕方を工夫してください。 ○小川雇用政策課長 先生がおっしゃられるように、介護報酬のすぐ下にというのは、 まさに、これが真ん中にきてしまって、見出しているのかなというのも気になったもの ですから、できれば、その次の頁にしっかりと書かせていただくということで。青抜き のものも、具体的なものを次の頁にという整理になっていますので。 ○駒村委員 真ん中でも問題ないのではないかと思います。青抜きは、解説があるもの が青抜きということですね。わかりました。 ○大橋座長 ただ、字が小さいことには同じでしょうから、その辺は少し考えてくださ い。河委員、どうぞ。 ○河委員 各委員がおっしゃったように、全体的に非常にご尽力いただいて、ある面で はこれまでこういう議論があまり幅広く行われていなかったのがこのような場で幅広く なされたのがよくまとめてくださったということで、まず御礼申し上げたいと思います。 2点、これはここに入れたほうが我々委員の本意につながるのではないかということを 言わせていただきます。1つは、いまの報酬のところもそうなのですが、職員の給料の どうのこうののために介護報酬をどうするかというような議論になっているのですが、 ひいてはというか、そもそもサービスの向上のために介護報酬をどうするかという議論 だと思うので、こういう問題を考えるのはサービスの向上のための議論なのであって、 特に介護報酬との関係ではですが、そこをどこか1カ所でも入れておかないと、報酬イ コール給料みたいな議論になってしまうと、介護報酬論としてもやや別に逸れてしまう のではないか。もちろん、職員の処遇管理みたいなことは大事なわけですから、それに つながっていることは間違いないわけですが、どこか1カ所でもいいですから、そのコ メントだけはどこかに入れておいたほうが、いまの駒村先生との関係も含めて、まとめ やすいのではないか。  もう1点は、私、こういう分野は不得手な分野だったので、私みたいな者から見ると、 キャリアとかキャリアパスというのが、ある面では、雇用の世界では通常用語なのかも しれないけれども、福祉をやってきた者たちから言うと、どういう意味かがちょっと伝 わっていないところがあると思います。最初に出てきたのは10頁ぐらいなのですが、こ れが少し難しいのですが、私の理解したところで言うと、先ほどのほかの分野からとい う話も絡むのですが、1回申し上げてこだわったことにつながるのですが、障害の福祉 施設に勤めてきた経験みたいなものは私はいろいろな意味で役に立つと思うのです。と ころが、そういうような移動がほとんどないのがいまの社会福祉の世界だとするならば、 そういう経験も大事にするべきではないかというのがキャリアの1つの議論です。在宅 と施設のことは書いていただいているのですが、何か、そこの部分を私はどうしても残 したいと思うのですが、それをあえて明確に書けというつもりはありませんから、その キャリアというのがどんなことなのだろうかというのが、実は、普通用語なのかよくわ かりませんが、その中にそんなことも入るのだよという思いでいらっしゃると思うので、 それこそ、いまの話ではないですが、「注」でもいいですから、言っていただけるとあ りがたいなと。そこの2つがあります。  それから、先ほど北浦委員がおっしゃったボランティアのところは、私は非常によく わかるのです。ただ、もしボランティアに触れるとするならば、結局、ボランティアの 代替論と、ある面でサービスの付加論みたいな、例えば芸術とかですが、その2つがよ く混線するので、北浦委員は全部おわかりの上で気にしながらおっしゃってくださった のですが、私はそのサービスの付加論とか社会の目が入るという意味でのボランティア と。いまの学校教育の中でも、教員になる人たちに、ある面では一定の経験をしてもら おうとしているわけですから、それ自身の価値を何か言っていただくのは全然構わない と思うのです。ただ、代替論みたいなところに跳ねるのを気をつけたほうがいいという ご指摘だと思いますので、それももっともだと思うのですが、何か入れたほうが代替論 の話ではないということがわかるのだったら、それを入れられたほうがいいと思うし、 あえて、私も、その代替論問題はここでは議論しなかったわけですので、扱いは事務局 のほうにお任せしていいのではないかと思います。 ○佐藤委員 確認ですが、先ほど、介護報酬のところの改定を、利用者のサービスの質 の反映というのを、一応、雇用管理の改善ということですから、基本的には、働く人た ちが安定的に働き続けられて、その人たちが能力を高められれば、当然、サービスも安 定的に供給されて質が高くなるという、大体その部分での議論だというふうに。直接、 報酬を上げてサービス自体をもっといろいろなことをやるということになってしまうと 大変なので、一応、そういう趣旨でよろしいですか。 ○河委員 目的はサービスの向上ではないかと。目的は給料の改善、それはいわば方法 論としては非常に大事なことだということだと思います。 ○佐藤委員 それは、働いている人たちの働きがきちんと評価されるということにもな るけれども、当然、そういうことは利用者の方に提供される介護サービスが安定的に供 給され、質も高くなってくるということだと。 ○小川雇用政策課長 ご指摘の点につきましては、介護報酬とサービスの向上について は、たぶん、23頁の介護報酬のところで触れるということなのかと思います。それから、 キャリアとキャリアパスにつきましては、例えば10頁のキャリアを、介護へ応じた過去 の経験とか、そういった意味だと思うので、そこはわかりやすく書くとか、キャリアパ スの場合は、河委員がおっしゃるような、要するに続けていくことによってどういうふ うなことをやっていくかということも含んだ概念ですので、そこがわかるように「注」 を付けるなり、叙述に気をつけたいと思います。 ○皆川委員 私も、全体については特に申し上げることもない、大変よくまとめられて いる報告だと思います。私も労働法制のことぐらいしかよくわからないのですが、佐藤 委員からもご指摘があったのですが、23頁の「雇用管理の認識・必要性」とまとめられ ておられる所なのですが、確かに、タイトルの(1)の所の「雇用管理の認識・必要性」 だとわかりにくいなと私も思いました。「雇用管理の重要性・必要性」だと落ち着きが いいのかなと思いましたが、雇用管理の認識・普及の必要性とか、そういう感じでご検 討いただければよろしいかと思います。  1点、これも特に大幅に直せとかいう話では全然ないのですが、こちらのほうで書か れているのは、特に強行法規を中心とした労働法令の遵守を雇用主に遵守させる。それ が前提で、その上で適切な雇用管理等をという指摘がこちらで書かれていると思います。 それで、まずは事業主に雇用管理の必要性を認識させて、その上で改善を図るという方 向性で書かれていると思うのですが、一方で、人材育成の取組みやコミュニケーション の円滑化等という、従業員相互のコミュニケーションを通じた雇用管理の改善というこ ともこちらに書いておられると思います。  そこで、これは私の意見なのですが、働かれる従業者についても、労働法令と労働関 係上の権利・義務の基本的な考え方、理解というものを、事業主への周知徹底と併せて 何らかの形で、理解を促進するような措置とか方向性というものをここに書かれたらい かがかなと思います。そうしますと、自分がどういう労働関係上の権利、あるいは契約 上の義務を負っているかということの基本的な認識があった上で、その内部で例えば正 社員と非正社員の働き方とか、どのように仕事を分担するかとか、そうしたことについ てお互いに労働契約上どういう権利・義務を自分は持っているかという認識の上でコミ ュニケーションが図られると、雇用管理全般についての改善といいますか、コミュニケ ーションの円滑化ということにも資するかなと考えました。労働法令というと、どうし ても法律に書いてあることだけというイメージになってしまいがちなのですが、労働関 係上の権利・義務というのは契約とか就業規則等を通じた一種の私的自治の分野でも発 生してくるものですので、そうした法令だけではなく、基本的な労働関係上の法的な権 利・義務という感じの知識普及を従業員についても図るという視点を少し入れていただ ければなと感じました。 ○佐藤委員 雇用管理の改善の所をいろいろ見て、こういうことをやってほしいとか支 援といっても、考えてみたら、すでにいろいろな支援策があるのですね。例えば、パー ト労働法改正絡みで、この分野というのは介護分野を想定しないのだけれども短時間労 働者たちがいて、その短時間労働者の雇用管理の改善の支援策があるわけです。あるい は、有期契約でもこれだけあるわけです。両立支援でもあるわけです。ですから、そう いうものが使えるのだということをどこに書くかなのですが、例えば就業規則が整備さ れていないとありましたが、今度、有期契約の中小企業が始まるのがありますね。これ は、中小規模企業では有期契約が多いわけですから、使えるわけです。そのことがどこ かにあってもいいかなとふと思ったのです。意外に、福祉分野というふうに思うと、介 護労働安定センターとか、福祉分野を対応としたものを探しがちなのですが、そうでは ない分野でいろいろ支援策があるので、そういう情報提供も結構大事かなと思いました ので、可能であれば載せていただいて。 ○太田職業安定局長 今回、有期もいま取りまとめ中ですし、パート労働者、派遣労働 者、それぞれ労働者向けのものがありますので、労働者もこういうことできちんと雇用 管理なりが必要なのだと。労働法令も含めて、どこかにわかるように整理したいと思い ます。 ○大橋座長 皆川委員と佐藤委員から少しお話がありましたが、「雇用管理の認識・必 要性」という所は非常に大事なところで、これは雇用管理の重要性を認識するというよ うな意味の節だと思うのです。私、特に、これまでのヒアリングでいただいた資料の中 の介護クラフトユニオンさんとか社会福祉士会さんのアンケート調査を見てみると、「 なぜ前の職場をやめたのですか」という所で「賃金が低いから」と。これは普通の調査 でも、賃金が低かったからというのはよく出てきます。2番目に、「人間関係に問題があ ったから」というのが出てきますが、通常だと「前の仕事が合わなかった」というのが よく出てくるのです。そういう意味で、人間関係というのが2番目に出てくるというのは、 雇用管理が非常にこのところでは大事だという認識で、雇用管理の重要性というのはそ ういうところにも現れていると思いますので、そういう点では大変重要だなとは思って います。  それから、報酬と介護報酬の問題なのですが、これは1つ悩ましい問題がありまして、 人手不足だから介護報酬を上げろという議論をやると、これはいつもその議論をやって、 結局、適切な介護報酬はどういう水準なのという非常に悩ましい問題にぶち当たるわけ です。そういう点では、雇用管理と、研究会の当初のところでは生産性という考え方が よく出てきていたと思うのですが、ここには生産性というのがほとんど出てきていない。 いま河委員のほうから質の向上ということと雇用管理という組み合わせのご指摘をいた だいたのですが、生産性の向上と雇用管理というのもあってもいいのかなと思うのです。 ただ、これは非常に議論が難しそうだなと。特に、これまでの枠組みというか、この分 野の枠組みのあり方というのは、何とか質を維持、確保するというのがいろいろな制度 の基本としてとらえられていたのですが、これが質と量ということになると、例えば1 人のヘルパーさんがたくさん利用者を扱うというような、そういう量の問題と質という のはどこかでバッティングするところもあるのではないかと。これは、経済学者ですか らそういう意識が非常に強くなるのですが、これはこの研究会の趣旨ではないのですが、 そういった点についてどのようにこれから考えて頭の中を整理したらいいのかなという ことはまだ私の頭の中では整理されていませんが、雇用管理の重要性という点について はこれで報告書として大変よく書かれているなというのが私の認識です。 ○河委員 いま先生がおっしゃった部分の論点というのは、基本的には在宅サービス論 なのですね。在宅サービス論でいま先生がおっしゃったような部分の議論が不足してい るというのは、そもそも、そこはこれから議論していかなければいけないポイントだと 思うのです。それと、先ほどのサービスとの関係で言うと、私が特に意識しているのは、 施設の夜勤の問題はいまのサービス水準でいいのだろうかということを指摘すべきなの ではないかと思うのです。施設の夜勤の問題は雇用管理の世界から書いていらっしゃる のですが、むしろ、私が意識しているのはいまの施設の夜勤の問題はサービス水準とし ていいのだろうかと。そのサービス水準で考えるとしたら、当然、職員のこういうよう な問題も踏まえて併せて考える必要があるということだと思っているのです。だから、 そこの部分というのは、先ほどの介護士の話で意識していたのは2つありまして、施設 関係の夜勤の問題と、在宅関係のどういう効率性とかどういうような巡回の仕方とか、 その2つがポイントなのではないか。そこは先生のご指摘のとおりだと思うのです。 ○北浦委員 別の点なのですが、24頁のいちばん上の行の所で、先ほどの重要性といい ますか、必要性の所の最後ですが、「事業主団体を通じた中小企業の雇用管理の共同化 等を行い、事務の効率化を推進する必要がある」と。これは何か具体的にどういうこと をお考えになっているのか。これはサラッと書いてありますが、なかなか大変なことで あるので、そこを教えていただきたい。 ○小川雇用政策課長 これは、どちらかというと、今後21年度に向けた考え方ですので、 どうなるかまだわからないのですが、このようにできればいいなということで、事務の 効率化につきましては、どちらかというと、老健局のほうでやられているようなことが あるのではなかろうかなと。 ○北浦委員 共同化とか事務の効率化というと、一般論としてはわからないではないの ですが、経営の問題とかなり絡んできますので、何か具体的なものがあればということ でお聞きしたのですが、まだそこまではいっていないということでいいですか。そうい う一般的な考え方として書いたということですね。 ○小川雇用政策課長 いまの段階ではそうです。 ○太田職業安定局長 確かに、共同化というのは強いかもしれないです。21年度の政策 なり予算要求の中で、事業主団体を通じて、特に中小企業を中心に雇用管理改善のモデ ル的な取組みをやっていただこうかなという趣旨なので。 ○河委員 それならば、実際は「協」にしたほうがイメージと合うのではないですか。 ○太田職業安定局長 むしろ、雇用管理改善の取組みとか、そういう形でもう一度整理 したいと思います。 ○皆川委員 私は高年齢者の再雇用に関する雇用安定に関するワーキンググループで千 葉のほうでお世話になったことがあるのですが、そのときにも、事業者団体を通じて、 中小企業連合会とか、そういう所を通じて一種のモデルプランのような、こういう60歳 定年以降の賃金モデル例とか、働き方をどうするかとかいうところを普及徹底といいま すか、共通理解を中小企業主の皆さんに普及する。それで、自分の所で全部考えるので はなくて、そういう一種の雇用安定協会のような所から知識を得て、それによって事業 主の経営上の負担を軽減するというような取組みのイメージがこれを読んだときにあっ たのですが、そうしたものであれば積極的に進められるべきではないかと感じました。 ○太田職業安定局長 基本的にはそういう趣旨ですので、そういう趣旨に合ったような 表現に少し整理したいと思います。 ○皆川委員 雇用管理の共同化と言うと、経営権をどうするのかとか、そういうふうに とられかねないような気がいたします。 ○佐藤委員 本文ではなくて、資料3の所の賃金、地域別のものがありますよね。この データではなくて、絵の中に相関がメチャクチャ低いにのにも傾向線が入っているのは どうなのですか。0.0いくつというので傾向線が入っているというのは、引かないほう がいいのではないかという気もするのです。 ○大橋座長 でも、フラットですから、いいと思います。 ○佐藤委員 意味はあるのですか。 ○大橋座長 要するに、フラットということは相関がないという意味だと思います。 ○佐藤委員 そういう意味ですね。では、これは経済学者から見てもおかしくない。 ○大橋座長 おかしくないと思います。 ○佐藤委員 傾向線を引くということは関係があるのかと思ったら、関係がないことを 意味する傾向線だと。 ○大橋座長 いや、有意性から言うと、この図のどれも有意性はないのです。一応、罫 線は引いていますけれども。 ○佐藤委員 わかりました。 ○大橋座長 先ほどの雇用管理の共同化の所ですが、どういう文章になりそうですか。 情報交換とか、そういうことですか。 ○太田職業安定局長 中小企業の雇用管理改善の取組みとか、もう少しフワッとした形 です。いずれにしろ、それは全体を整理する中でまたご相談します。 ○北浦委員 改善の取組みを共同化するのはいいのですけれども、管理を共同化すると いうのは経営も統合になってしまいますので。 ○大橋座長 そういう意味ですね。わかりました。その他いかがでしょうか。では、ま た後でお気づきの点がありましたら事務局のほうにご連絡いただきまして、そろそろ時 間になりましたので、本日いただきましたご意見等を踏まえて中間報告書を取りまとめ ていきたいと思います。その修正内容の点につきましては座長である私にご一任くださ ればと思います。 (異議なし) ○大橋座長 ありがとうございました。今後につきましては7月中に中間報告書の公表 に向けた作業を進めていきたいと思いますが、公表の際には事務局から委員の皆様に対 してメール等も活用しつつご連絡することにいたしますので、よろしくお願いいたしま す。委員の皆様には、お忙しい中、この4月から7回にわたってご参集いただきましてど うもありがとうございました。それでは、事務局に進行をお返しいたします。 ○佐藤介護労働対策室室長補佐 委員の皆様、本当にありがとうございました。閉会に あたりまして、太田職業安定局長よりご挨拶申し上げます。 ○太田職業安定局長 一言御礼を申し上げます。本研究会におきましては、少子高齢化 が進展していく中で、介護サービスの担い手の確保・定着・育成を図っていくことが不 可欠な状況になるという認識の下に、介護という職業が魅力的な職業となり、働く人に とっても意欲・誇り・やりがいを持てる職業となるような政策の方向性につきまして、 4月から7回にわたりまして大変熱心なご議論をいただきました。心から御礼申し上げる 次第でございます。  いま全体をまとめていただいたわけですが、この報告書では、特に介護労働者が意欲 と誇りを持って働き、将来にわたって安定的に人材を確保していくためには雇用管理を 通じて処遇を改善し定着させること。また、介護サービスについて、国民的理解を求め 安定的な人材確保に努めていくことが重要であるというふうにしていただいたわけです。 その中で、今後の介護労働対策の方向性としましては、介護労働者の定着・育成に向け た雇用管理の改善、さらには介護労働者の確保及びマッチング等につきまして具体的な ご提言をいただきまして、それぞれの施策の方向性についてお示しをいただいたわけで ございます。  本日いただいたご意見を踏まえて、中間報告につきまして、いま大橋座長からもお話 がありましたように、座長と相談の上で、今後の公表手続、7月中を目途としておりま すが、手続を進めてまいりたいと考えております。また、この中間報告につきましては、 今後、厚生労働省におきまして実施する介護労働対策関連の施策の実施、予算要求も含 めて、十分に活用させていただきたいと考えているところでございます。皆様方には、 短期間の間に大変精力的なご議論をいただいたことを改めて御礼申し上げましてご挨拶 とさせていただきます。どうもありがとうございました。 ○佐藤介護労働対策室室長補佐 これにて研究会を終了させていただきます。どうもあ りがとうございました。               連絡先                職業安定局 雇用政策課 介護労働対策室係                Tel:03−5253−1111(内線5785)                Fax:03−3502−2278