08/07/10 第8回社会保障カード(仮称)の在り方に関する検討会議事録 第8回社会保障カード(仮称)の在り方に関する検討会 1.日  時:平成20年7月10日(木)10:00〜12:00 2.開催場所:はあといん乃木坂 地下1階「フルール」 3.議事次第:   (1) 開会   (2) 議題        作業班における検討状況等について(中間報告)   (3) 閉会 4.出席委員等   (委員)    池上秀樹委員、稲垣明弘委員、岩月 進委員、大江和彦委員、大山永昭座長、    後藤省二委員、駒村康平委員、田中 滋委員、中川俊男委員、樋口範雄委員、    堀部政男委員、南  砂委員、山本隆一委員 (五十音順、敬称略)   (オブザーバー)    山内 徹 内閣官房情報通信技術(IT)担当室内閣参事官    井上知義 総務省自治行政局地域政策課地域情報政策室長    望月明雄 総務省自治行政局市町村課住民台帳企画官   (厚生労働省)    薄井康紀 厚生労働省政策統括官(社会保障担当)    黒川弘樹 厚生労働省社会保障カード推進室長 5.議事内容 ○大山座長  おはようございます。  出席予定の委員の皆様方がお集まりのようですので、ただ今から第8回社会保障カード (仮称)の在り方に関する検討会を開催いたします。  委員の出欠状況について報告いたします。本日は、高山委員、辻本委員がご欠席です。  また、今回より、新たに5名の委員の方々にご参加をいただいておりますので、事務局 からご紹介いただきたいと思います。お願いいたします。 ○事務局  資料3という形で名簿を配布させていただいておりますけれども、新たに参加される委 員の方をご紹介させていただきます。  50音順で、健康保険組合連合会理事の池上委員でございます。 ○池上委員  池上でございます。よろしくお願いします。 ○事務局  日本歯科医師会常務理事の稲垣委員でございます。 ○稲垣委員  稲垣でございます。 ○事務局  日本薬剤師会常務理事の岩月委員でございます。 ○岩月委員  岩月でございます。よろしくお願いします。 ○事務局  三鷹市企画部ユビキタス・コミュニティ推進担当部長の後藤委員でございます。 ○後藤委員  後藤でございます。よろしくお願いします。 ○事務局  日本医師会常任理事の中川委員でございます。 ○中川委員  中川です。よろしくお願いします。 ○事務局  また、オブザーバーのほうにも異動がございまして、これまで総務省大臣官房の塚田参 事官にご出席いただいておりましたけれども、今回から総務省自治行政局地域政策課地域 情報政策室、井上室長にご参加いただきます。本日は、遅れてご参加ということでござい ます。  以上でございます。 ○大山座長  新しく委員にお入りいただいた皆様方には、よろしくご協力のほど、お願い申し上げた いと思います。  それでは、議事に入ります。  まず、議事を進める前に、事務局から資料の確認をお願いいたしたいと思います。お願 いします。 ○事務局  本日の配布資料ですけれども、資料1が「社会保障カードの在り方に関する検討会 作 業班における検討状況について」という縦紙でございまして、16ページございます。  また、続きまして、資料2「社会保障カードの在り方に関する検討会 作業班開催結 果」というもので、縦紙で2枚、付いております。  また、先ほどご紹介したように、資料3という形で、検討会の委員名簿を配布させてい ただいております。  また、参考資料という形で、これまで作業班で行ってきた検討の状況をご報告させてい ただくということで、参考資料1から8まで。また、参考資料9ということで、1月に取 りまとめていただいた報告書を付けております。  以上でございます。 ○大山座長  過不足等はございませんでしょうか。  それでは、議事に入らせていただきます。  前回は、作業班からカードの発行・交付方法について報告をしていただき、議論を行い ました。本日は、カードをどのように利用するかについて、作業班から検討状況の報告を していただき、議論したいと思います。  作業班の方には、いろいろとご苦労をおかけしたことを、厚く御礼申し上げたいと思い ます。  それでは、資料の説明をお願いしたいと思います。お願いします。 ○山本委員  それでは、報告をさせていただきます。  資料2にございますように、前回の検討会以降、計7回の作業班並びに作業班の分科会 を開催いたしました。資料2の裏面に、ご検討いただいた作業班の構成員のお名前がござ います。この作業班以外の時間も、この作業班の構成員の方には、資料の検討等を精力的 に進めていただきました。ご説明は、資料1を中心に行いますけれども、適宜、参考資料 1から8をご参照いただくようにお願いいたします。  まず、第7回検討会、4月22日開催で、カードをどのように発行・交付するかというこ とに関しまして、検討の結果をご報告し、ご議論をいただきました。簡単に、前回、作業 班の報告のポイントを申し上げますと、カードの発行主体を厚生労働大臣、カードの交付 主体を市町村と、仮に置いております。  それで、カードのICチップに収録する「本人を特定する鍵となる情報」は、差し当た り「制度共通の統一的な番号」又は「カードの識別子」を基本として検討して、ご報告申 し上げました。  それから、更にこの2案によらない方法として、公開鍵基盤、電子的な鍵ペア及び証明 書の仕組みを用いる方法も検討し、ご報告を申し上げました。  以上の仮定の下に、カードの発行、交付フロー、それから出生時に交付をする場合のフ ローと、それからカードを切り換える場合のフローについて、検討してご報告を申し上げ ました。  本日は、発行・交付されたカードをどのように利用するかについて、中心にご報告を申 し上げます。  資料1の2ページ目をご覧ください。  大まかに、(1)から(7)までの項目を記載しておりますが、まず最初に、医療機関 におけるカードの利用シーンということで、一つ目が、オンラインによる医療保険資格の 確認、二つ目が、医療保険資格情報のレセプトへの自動転記。それから(2)として、カ ードが利用できない状況下や現行の被保険者証等からのカードへの移行期の対応。それか ら(3)として、年金・介護保険の資格確認方法。(4)として、年金記録等の情報閲覧 の方法。(5)として、属性、保険者が変わった場合、変更時の手続等ですね。そこには、 カード紛失時、破損時の対応方法、それからカード自体を更新する方法も検討いたしまし た。それから(6)として、保険者間の情報連携の仕組み、これは必要に応じてというこ とになりますけれども、この仕組みに関しても検討しております。それから(7)番目に、 ICチップが搭載されている媒体の利用、要するにカード以外のチップ搭載の媒体を使用 する場合のことについても検討をいたしております。  3ページ目をご覧ください。  今回、7回の作業班を行いましたけれども、差し当たり、今から申し上げることの仮定 を置いて検討を行っております。  (1)が、カードのICチップには、医療保険の資格情報そのもの、それから年金記録等の 情報そのものは収録されていない。ICチップには、「本人を特定する鍵となる情報」だ けが収録されており、これを用いてデータベース等にアクセスすることを想定しておりま す。  それから、(2)番目の仮定として、カードの券面には、医療機関の窓口等において取り違 えが起こらないようにするために、最小限、氏名、生年月日が印字されているという前提 を置いております。  それから、(3)番目として、オンラインによる保険資格の確認については、医療機関等と 各保険者の間で、医療機関等からの資格確認の要求を中継する機能を持つデータベース ―この作業班の中間報告書の中では、「中継DB」という言葉を用いております。この データベースにアクセスすることで行うものと仮定しております。この中継データベース ―中継DBは、最小限、「本人を特定する鍵となる情報(本人識別情報)」、それから 「各制度の被保険者番号等」を保有すると仮定しております。  それから、(4)番目として、カードのICチップに収納する「本人を特定する鍵となる情 報」をカードの券面に記載した場合、制度・本人の意図しないところで名寄せに使われる などのリスクが高まるために、「本人を特定する鍵となる情報」はセキュリティに優れた ICチップ内にのみ収録し、できる限り券面には記載しないという運用を仮定しておりま す。  4ページ目で、本日のご報告の本文に入るわけですけれども、この第2章は、社会保障 カードがあまねく行き渡って、なおかつ、社会保障カードを利用する医療機関等が、この 社会保障カードのリーダー等が、必要に応じてといいますか、全ての医療機関に装備され ており、データベース等の整備、保険資格のデータベース、中継データベース等を含めて、 これが全て整備して稼動しているという前提で検討しております。それ以外の以上の前提 が壊れた場合、ないしは、それぞれの設備が普及する中間段階、カードの配布が終了して いない、それから医療機関において、リーダーが存在するところと存在しないところがあ るというふうな状況に関しては、以降のご報告の中で述べたいと思います。この2章に関 しては、それらが全て整っているという状況下で検討しております。  まず最初に、医療機関におけるカードの利用なのですけれども、オンラインによる医療 保険資格の確認方法で、参考資料9にあります報告書中、「医療保険に関連する現状の課 題」として、レセプトへの資格情報の転記ミス、医療保険の未加入状態での受診、資格喪 失後の受診等により、保険者・医療機関・審査支払機関に医療費請求における過誤調整事 務が発生しているとされております。  この点について、医療機関窓口でカードのICチップを読み取り、保険者の資格情報の データベースにオンラインでアクセスし、即時資格確認を行うことで、手続の漏れによる 医療保険に未加入の状態、それから二重加入の状態の発生を容易に把握することが可能に なり、医療機関の窓口でオンラインによる即時資格確認が可能となり、医療保険の資格喪 失状態であることがその場で分かるために、保険者・医療機関・審査支払機関における過 誤事務調整が減少するとされています。  この中で、オンラインによる医療保険資格の確認とは、この報告書においては、医療機 関の端末から医療保険資格情報にオンラインでアクセスし、医療機関の端末画面上に当該 情報を表示させて、医療機関職員が確認する行為を言っております。  図1に、その実際の行われることのスキームが書かれております。  まず、患者さんが医療機関を訪れた場合に、社会保障カード(仮称)を提示します。医 療機関は、提示された社会保障カードを読取機にセットして、中継DBに問い合わせると。 それから中継DBは、各資格内容を保険者等の資格データベースに問い合わせて、その結 果を医療機関に返すということを想定しております。  5ページに参りますけれども、この作業班においては、主に安全管理、セキュリティの 観点から、四角内にある三つの要件を整理いたしました。  なお、プライバシー保護の観点から、カードを使わず、医療機関の端末から本人確認情 報を入力すること等の手段を用いて、オンラインで資格確認を行うことをしないというこ とを前提としております。つまり、カードがない状態では、資格確認はしないという状態 を前提にしております。  要件(1)として、正しいカードが、正しい持参者によって利用されることが担保できるこ と。(2)として、正しい資格情報が確認できること。(3)として、悪意のある者や不正な機器 からの攻撃や、情報漏洩等の事故に対応できること、この三つの要件を整理いたしました。  この要件を満たす方法として、(1)−1として、正しい持参者であることの確認、他人の カードを持ってきていないという確認ですけれども、これには持参者が、その本人だけが 知っている暗証番号をその場で入力し、照合する方法、それから持参者の指紋や静脈パタ ーン等の生体情報による照合を行う方法も考えられます。  しかし、医療機関の現場でこれを行いますと、まず救急医療、意識がないとか動けない 状態で運ばれていった場合に、照合ができない。それから、そうでなくても、受付で毎回 1人ごとに暗証番号を入力するとか、静脈等の生体情報をリーダーにかけてもらうという ことは、かなり時間がかかりますので、窓口業務に支障を来す可能性が極めて高いと。そ れから、暗証番号を用いる場合は、ご本人が忘れてしまう可能性がある。生体情報を用い る場合は、生体情報識別は完全ではありませんので、本人なのに本人でないと判定する可 能性がありますし、それからハンディキャップを持つ方への対応が別途必要となるという ことが考えられます。  したがって、正しい持参者であることの確認は、作業班では、現在、医療機関で実施し ている本人確認、つまり、ご本人が持ってきていて、氏名、それから生年月日等でご本人 を確認するという以上の措置は、多分、困難であるというふうに考えております。  それから、正しいカードであることの確認、これは偽造されたカードでないということ の確認は、カード券面にホログラム等の特殊加工を行うことによって、見た目で確認する。 それから、ICチップの偽造に関しましては、読み取り端末が確認することができます。 それから、中身の情報に関しましては、正しい情報の管理者の電子署名を付加することに よって、それを確認することができる。  それから、正しい資格情報が確認できることということは、資格情報を管理している保 険者のデータベースが何者かによって、不正アクセスされるとかという場合が考えられる。 それから、その途中の伝送で書き換えられるというようなことが考えられるわけですけれ ども、この場合は、いわゆる一般的なネットワークのセキュリティデータベースのセキュ リティの管理によって、一定の対策が可能である。それから、アクセス履歴を一定期間保 存しておくことによって、不正アクセスを早期に検出できるなどの方法が考えられます。  それから、悪意のある者や不正な機器からの攻撃や情報漏洩等の事故に対応できること という要件に関しましては、カードに不正アクセスし、カード内情報が改ざんされること や漏洩することの防止については、カードが正当な読み取り端末であることを確認する方 法が考えられます。つまり、カードが正当な読み取り端末でなければ読み取れないという ふうな仕組みを持たせるということですね。それから、カードから読み出した情報が改ざ んされることの検知については、これはカード内情報に電子署名を付しておくことで防止 が可能だと考えられる。それから、カードから読み出した情報が漏洩化することに関しま しては、読み出した時点で暗号化する方法等の対策、技術的にはそうですし、制度的、運 用的な対策もこれに加わるだろうと思います。それから、カード読み取り端末、これがウ イルスに汚染されること等によって、情報が漏洩することについては、カード読み取り端 末に一般的にコンピュータに行われるウイルス対策ソフトの導入や、安全性に問題がある ところを修正するセキュリティパッチの適用等を定期的に行うということが考えられます。  それから、PKIを使って資格確認を行う場合、前のページの(1)−2の項目ですけれど も、(1)−2については、証明書には発行者による電子署名が含まれるため、追加のICチ ップの中の情報の偽造対策は不要になると。それから、(3)については、カード内情報の改 ざんは電子署名の検証によって検知されます。  参考資料1には、2ページ目から、表の形で要件を少し砕いた形で書いておりますけれ ども、要件に対して想定される脅威と、それに対する考え得る対策、この対策が技術的な ものなのか運用的なものなのかという分類と、対策をとった上で、残る残余リスクが書か れております。多くの残余リスクは、対策が可能ないしは、例えば(1)番のPINを忘れる 場合があるようなことに対策するためには、もうPINを使わないしかないわけですけれ ども、そういったことで、この残っている残余リスクに関しては、費用対効果の観点も含 めて、これから総合的に考慮して資格確認方法を決定する必要があると考えております。  それから、以上述べましたような主に技術的な課題のほかに、資格取得届が提出されて から、その内容が各保険者のデータベース等に入力されるまでのタイムラグというのがど うしてもございます。これが、データベースに入力するという動作は、カードを導入した ことによって生じる新しい動作ですので、カードを導入したことによる新たに発生する運 用面の課題や留意すべき点と考えます。このような新たに発生する運用面での課題や留意 すべき点については、今後、更に検討する必要があるというふうに考えております。  それから、7ページ目で医療機関の利用の二つ目、医療保険資格情報のレセプトへの自 動転記です。  これは、参考資料9の報告書にありますように、資格情報のレセプトへの自動転記によ り、レセプトへの転記ミスによる医療費の過誤調整事務がなくなるわけですけれども、平 成18年9月の医療保険被保険者資格確認検討会が取りまとめた報告によりますと、年間約 900万件発生している返戻レセプトのうち、約4割が転記ミスであるというふうにされて おります。この4割をなくすことができるというわけですけれども、今回の作業班では、 前項と同じように、7ページの四角内の二つの要件について検討を行っております。  一つは、レセプトに自動転記される情報については、参考資料3に項目のリストが出て おりますけれども、診療報酬の請求に必要となるこの情報が転記されるということを要件 としております。  それから二つ目は、受診の都度、毎回、カードを提示して資格確認を行うけれども、シ ステムへの負荷を低減する観点から、自動転記される情報の取得は、原則、「初診時」及 び「再診時に前回から情報に変更があった場合」にのみ行うものとすると。変更が無かっ た場合は、情報の取得は行わず、医療機関の端末画面上で資格確認のみを行うということ を条件としております。  こういったことが機能するためには、運用上といいますか、実際上、その下に黒ポチが ありますように、医療機関の窓口業務に支障を来さない速度で、レセプト転記情報をダウ ンロードできるようにしなければならないと。それから、各保険者のレセプト転記情報の フォーマットに関するルールを設定するという必要があるということになります。  それから、オンラインによる医療保険資格の確認と医療保険資格情報のレセプトへの自 動転記を実現するためには、これ以外に、保険者、医療機関のシステム整備・改修、それ から安全なネットワークの構築等にかかる費用等の課題が存在することから、次回以降の コストを勘案した検討も必要となると考えられます。  次の8ページに移りますけれども、ここ以降は、主に医療機関で利用するシーンですけ れども、2項で述べました前提である、あまねくカードが普及して配布されており、全て の医療機関でカードリーダーが存在して稼動するという前提でない場合、カードを配布し 始めて配布し終わるまでの移行期間、それから配布をし終わっても、停電、ネットワーク のトラブル等、それからカードの破損、その他一時的にシステムが使用できない状況、そ れから訪問看護や往診、訪問診療の場合に、現地でカードが利用できないという状況が想 定されます。このようなカードが利用できない状況下について検討をいたしております。  オンラインによる医療資格の確認・レセプトへの自動転記についてなのですけれども、 医療機関においては、トラブルによりカードが使用できない場合であっても、何らかの形 で資格確認とレセプトの作成を行われなければならない。したがって、少なくとも現行の 健康保険証と同等の運用が継続できる必要があります。それから、カードに対応した環境 が整備されていない医療機関の場合や往診、訪問診療、訪問看護、この場合も同様である と。  以上のことを考えますと、以下の次に述べる(1)、(2)の場合には、後で述べるいずれかの 対応が必要と考えられます。  (1)、カードの故障、破損等によりICチップ内の情報が読み取りできない場合です。こ れは、医療保険の資格情報を記載した別紙を交付しておく。それから、またはカード券面 ―裏面でもよいわけですけれども―に、本人を識別し、資格確認やレセプト請求が可 能な情報を記載しておく。  (2)つ目、カードに対応した環境が整備されていない場合、読み取り端末の故障やネット ワークシステムが停止した場合も同じですけれども、この場合は医療保険の資格情報を記 載した別紙を交付しておく。前項と同じですけれども、それから、同じくカード券面又は 裏面に、本人を識別し、資格確認やレセプト請求が可能な情報を記載しておく。ネットワ ークが止まっているだけである場合は、ネットワークを利用しないで、携帯電話等の携帯 端末でカードを読み取り、資格確認を行うというふうなことが考えられます。  ここで、参考資料4に詳しく分類した表が載っておりますけれども、このような検討か ら移行期間―移行期間というのはカードを配り始めて配り終わるまでですけれども、そ れから全員が持っている状況でも、何らかの理由でカードが使用できない状況においては、 現行の被保険者証と同等の運用を継続するためには、保険資格情報を記載した別紙を交付 することや、カードの券面、裏面に、本人を識別し、資格確認やレセプト請求が可能な情 報を記載しておくといった措置が必要となると考えられます。  ただし、別紙を交付するとなりますと、交付主体の事務が増加いたします。それから、 利用者は常にカードと別紙を携帯しなければならないといった利便性を損なう面があり、 また、カードに本人識別情報を記載することについては、仮に、各制度共通の統一的な番 号等を記載する場合には、制度・本人の意図しないところで名寄せに使われるなどのリス クが高まる可能性があります。  よって、制度的な対応、又は技術的な開発による代替手段の確立(携帯電話等の携帯端 末の活用)も含めて、具体的な対策を更に検討する必要があるというふうにしております。  それから、4項目ですけれども、これは年金・介護保険の資格確認方法です。  社会保険事務所での年金資格確認については、医療保険と同様の仕組みで行うこととな ると。  それから、介護保険の資格確認については、現行の介護保険の被保険者証は主に、要介 護認定時の資格確認、ケアプラン作成時の被保険者情報の確認(被保険者資格の有無、要 介護認定区分、有効期間、限度額、審査会の意見等)、それから介護サービス利用時の被 保険者の資格確認のために利用されます。これは、参考資料5にございます。  それから、医療機関における資格確認と同様、カードの券面には氏名、生年月日のみが 印字されており、カードのICチップには、介護保険の資格情報そのものは収納されてい ないと仮定しますと、在宅介護においては、医療保険での利用において検討を行いました 「カードの読み取り端末がない場合」に準ずる必要があり、カードとは別途発行される紙 により資格確認を行う。又はカード券面(裏面を含む。)に本人を識別し、資格情報や介 護報酬請求が可能な情報を記載しておく。又は、携帯電話等の携帯端末を利用した資格確 認を行うことが考えられます。  この点に関しましても、更に検討を進めていく必要があるというふうに考えております。  それから、年金記録の情報閲覧ですけれども、11ページです。  これは、参考資料6を同時にご覧いただきたいのですけれども、年金記録等の情報閲覧 については、参考資料9の報告書において、利用者にとっての効果として、自宅のパソコ ン等から常時、安全かつ簡便に自分の年金記録を確認することができ、その内容に疑問が 生じた場合には、別途、社会保険事務所等に照会することにより、年金記録に対する疑問 が解消される。オンラインでの年金の裁定請求等、年金関係の手続が利用しやすい環境に なる。  それから、事務面での効果として、ユーザーID・パスワード認証方式により年金記録 を提供することについて、今やっていることですけれども、ユーザーID・パスワード発 行等の事務負担が軽減される。  それから、医療保険に関連する効果として、利用者にとっては自分の健康情報、レセプ トや特定健診結果等も含めての確認を安全にオンラインでできるようになる。  それから、介護保険に関する効果と、そして利用者にとっての効果としては、自分の介 護サービスの費用に係る情報をオンラインで確認できる。  その他の効果としては、行政機関への申請について、窓口申請ではなく電子申請が行い やすくなる。例えば、健康保険任意継続被保険者資格取得申請等、社会保障分野の各種届 出・申請が挙げられます。  この今日のご報告において、年金記録等の情報閲覧というのは、自宅の端末からオンラ インで保険者DBにアクセスして、自分の情報を端末の画面に表示して確認できる。それ から、その情報を取得することを言っております。  12ページに参りますけれども、基本的に年金記録等の情報閲覧についても、オンライン による医療保険資格の確認と同様に、セキュリティの観点から満たすべき要件、参考資料 6に、2ページ以降、要点を挙げて、想定される脅威、対策、その対策の分類と残余リス クを記載しておりますけれども、年金記録やレセプト情報等は、保険資格情報と比べて、 特に機微な情報であります。  したがって、自宅等の端末においてオンラインで本人確認を経て情報閲覧を可能とする ならば、暗証番号の入力による正当なカード所持者であることの確認を踏まえることが望 ましい。医療機関の窓口で資格確認をするように、本人が持っているだけという状態では、 これはできないというふうに結論が出ております。  一方、既存の仕組みを最大限に活用して、費用対効果に優れた仕組みとする観点から、 ネットワーク上での厳格な本人確認の仕組みとして、現在、電子申請において安全性と信 頼性が確認されている方法として認められている公的個人認証サービスの電子証明書を用 いる方法等を検討する必要があると考えられます。この場合も、PIN番号の入力が必要 です。  二つ目の丸ですけれども、利用者が情報閲覧を行うときに、情報の種類により、年金保 険者、医療保険者、介護保険者に個別に直接アクセスするということにしますと、利用者 にとっては、それぞれについてアクセス先を変更しなければならないとか、閲覧用データ ベースであっても、保険者のデータベースに直接、個人がアクセスすることは、データベ ース側にとってセキュリティ上の脅威を増大させる可能性がありますので、利用者と各保 険者の間に、例えば、中継DBの機能を利用することで、利用者の閲覧要求を中継する機 能を持つ仕組み、ここでは差し当たり「社会保障ポータル」と呼んでおりますが、このよ うな仕組みが必要であると考えられます。この社会保障ポータルを活用して、保険者から の情報提供が行われれば、利用者の利便性はより向上すると考えております。  なお、情報提供の具体的な内容に関しては、利用者の利便性、提供情報の機密性を考慮 して、今後、更に検討していくことというふうにさせていただきます。  この場合も、医療機関での利用と同じように、カードが利用できない状況下、移行期の 問題がありますが、カードないしはカードを含むシステムの部分的な不具合等によって閲 覧できない場合は、オンラインによる医療保険資格やレセプトの自動転記とは異なりまし て、一時的なものであれば、カードが使用できない状況で、無理に行う必要がある状況が あるとは考えにくいので、ネットワークが一時的に不具合がある場合は、回復するのを待 って行うことができますし、それから現行と同じように、社会保険事務所等に設置する情 報端末から情報閲覧する等の方法で対処できる。  それから、当然ですが、情報閲覧の仕組みを実現するためには、情報を出す各保険者の 環境整備(閲覧用データベースの整備、情報の標準化・可視化等)が必要です。  それから、レセプトの開示については、現行制度の下では非開示となるレセプトもある ことから、具体的な開示の仕組みについては、今後、更に検討が必要です。  14ページ、参考資料の7ですけれども、属性変更時、住所が変わる、氏名が変わる、そ れから勤め先が変わる、退職することによって医療保険者が変わる、それから引っ越しに よって介護保険者が変わるといった変更が生じるわけですけれども、この変更も含めて、 今回、作業班では、属性が変わった場合やカードを紛失した場合、カードを破損した場合、 それからICカードを用いると一定期間で更新する必要があるわけですけれども、このカ ードの更新方法等の事務について検討を行っております。  これは、非常に詳細に検討を行っておりまして、参考資料7には、2ページ以降、住所 変更の場合、氏名変更の場合、医療保険者変更の場合というので、フローを書いてお示し しておりますが、その中で、特に医療保険者の変更時については、四つの案について検討 しております。  一つ目は、これは参考資料7の4ページ目になりますけれども、旧保険者の発行する資 格喪失通知、これは今あるわけではありませんけれども、資格喪失通知を用いる場合です ね。それから、参考資料の5ページ目が、あらかじめ本人に本人識別情報を通知しておく。 これを利用して手続を行う場合。それから3番目が、参考資料の6ページですけれども、 券面にカードの発行年月日時分秒を記載し、これとともに氏名・生年月日を組み合わせて 用いて手続を行う。それから4番目に、参考資料の7ページ目ですけれども、住民票上の 基本4情報で手続を行う、この四つの場合について検討を行っております。  1の場合は、つまり、旧保険者が資格喪失通知を発行する場合、旧保険者が資格喪失通 知を発行するというか、新たな事務が発生してしまう。資格喪失通知を新保険者に提出す ることで、前の保険者を知られてしまうという、そういうことを望まない者にとっては不 利益をもたらす点で留意が必要であると。  2、本人識別情報をあらかじめ本人に通知する方法ですけれども、2については、本人 が知覚できる形式で本人識別情報を用いる場合、それが他人に渡された場合に、制度・本 人の意図しないところでの名寄せに使われるリスクが高まるおそれがあります。  それから3番、券面にカードの発行年月日時分秒を記載する場合ですけれども、タイム スタンプと呼んでいますが、タイムスタンプは氏名、生年月日と組み合わせることで、制 度共通の統一的な番号等とほぼ同等の精度で本人を特定することが可能になります。タイ ムスタンプのみでは、同一のものが存在する可能性があることから、本人が一意にすぐ特 定できないため、この場合は中継データベースに氏名、生年月日を記録しておくことが必 要となります。  それから4については、これは同姓同名同住所、例えば学生寮のような場合や、外字の 用い方による不突合が発生する可能性があると。さらに、この場合は、中継データベース に基本4情報を格納しておく必要があるという留意点があります。  これらを踏まえて、どのような仕組みにするかを検討する必要があると考えております。  それから、15ページに移りまして、保険者間の情報連携ですけれども、参考資料8です。  参考資料9の報告書では、「年金・医療・介護各制度にまたがる現状と課題」として、 各制度、各保険者で加入者を管理しており、制度や保険者をまたがって、個人を同定する ことが困難であるため、併給調整等に多くの事務負担が発生しているとされております。 カードを導入することで、制度や保険者をまたがった場合でも、個人を同定することがで きるので、制度間の併給調整等の事務負担が軽減されるというふうに報告書にも書いてお ります。  現在、併給調整を行うに当たっては、各保険者は加入者本人に対して、他の制度での給 付内容等に関する添付書類の提出を求めたり、氏名等の情報を元に他の保険者等に電話で 問い合わせたりする事務等が発生しております。加入者本人にも保険者にも、これは不便 な状態で、結果的に、本来もらえるはずの給付金がもらえなかったり、払わなければなら ないはずの保険料が払われなかったりする事例が発生しているようです。  こうした併給調整事務を、中継データベースを使った保険者間の情報連携により安全に 軽減する方法について検討を行っております。  この際、中継データベースは被保険者の資格・給付情報等は保有しない。各保険者は、 社会保障カードの本人識別情報や他の保険者の管理する被保険者番号は保有しないで、保 険者間をまたがった加入者の特定を行う仕組みを検討いたしました。  図3に簡単に書いておりますけれども、要するに、A介護保険者、B医療保険者ともに、 社会保障カードの本人を識別する情報は知らない。A介護保険者は、B医療保険者に聞け ば分かるということだけが分かるというふうな仕組みになっております。これによって、 不要な全保険者の確認とか、そういったことが行われず、本人識別情報も誰にも知られな い状況で運用が可能になっております。  それから16ページに、社会保障カードの媒体としてのICチップが搭載される媒体、こ れを検討しております。金融機関等により発行されるカード、既に民間で発行されている ICカード、こういったものが社会保障カードの媒体として利用できるか。それから、携 帯電話を媒体として利用できるか、これについて、一応、検討を行っております。  もちろん、技術的には可能ですけれども、媒体の提供主体、金融機関の場合はそれぞれ の金融機関が発行しておりますし、そういった媒体の提供主体ごとに媒体管理、システム が異なるために、サービスの相互運用性が確保されていない。それから携帯電話について は、現在の手続を前提とした場合、携帯電話そのものと本人の結び付きの厳格さがややあ いまいであると。一般に、民間カードにおいては、カード発行者がカード所有者となって おり、利用状況によっては、カード発行者がカードを回収してしまう場合があり、もしも このようなカードに社会保障カード機能を搭載した場合は、社会保障サービスを受けられ なくなることがある等が考えられます。このような問題点があり、そのまま用いることは できないということであります。  それから、現在市町村から交付されているICカードである住民基本台帳カードの利用 についても、既存のカードや市町村が有するカードの発行基盤を利用することで費用対効 果に優れた仕組みとすることができることは、もう明らかでありまして、今後、更に検討 を続けていきたい。進める必要があると考えます。  ただし、現在の仕組みを前提としますと、市町村をまたがる住所変更の際に住基カード の再発行が必要となる。それから、住基カードは、現在は希望者だけに交付することにな っている。それから、現在の住基カードは自治事務として市町村長が発行責任者となって いること等に留意する必要があるというふうに考えております。  少し長くなってしまいましたが、以上が前回の検討会でご報告した以降、作業班で検討 させていただいた内容です。 ○大山座長  ありがとうございました。  お聞きいただいた内容については、非常に多くのものを含んでいるので、一気に理解す るのは難しい点があるかとは思いますが、ここまでまとめていただいた作業班の方たちに は、「本当にご苦労さま」と感謝申し上げたいと思います。  順番に質問、項目別というやり方もありますが、どちらがよいですか。 ○山本委員  少しだけ追加させていただいてよろしいですか。  今回までの作業班の検討は、社会保障カードの機能を三つの保険、年金と、それから医 療保険と介護保険にあえて限定して、それだけを実現することを仮定して検討しておりま す。  したがって、本来、こういう社会保障カードが入った後の多くの利便性に関しては、今 のところ全く検討していなくて、これ以外にも、更に社会保障カードの有用性というのは たくさんあると思うのですけれども、それを検討するための前提として、この三つの機能 を実施する上での課題を、一応、仮置きしないと、それ以降、なかなか検討しにくいとい う意味で、まず、作業班では、この三つの機能に関しての検討をしていったということを 申し添えます。 ○大山座長  その意味では、今回も検討状況についてのお話で、何かまとまったといいますか、結論 的なものは出ているわけではないと判断していてよいのですね。  ということですので、まだまだたたき台ということになりますが、皆様方からご意見あ るいはご質問等をいただきたいと思います。  どうしましょう。これはいっぱいあるので、項目別にやるほうがよいという意見もある かもしれませんが、まずはご自由にご質問等をいただきたいと思います。いかがでしょう か。  それでは、まず、池上委員からどうぞ。 ○池上委員  健保連の池上でございます。  今、ご説明いただいた資料の3ページと8ページの関連で、ちょっと作業班としての見 解について、最初に確認させていただいて、その後、若干の意見を述べさせていただけれ ばと思っています。  3ページのカードの券面情報なのですけれども、一応、今回の検討での仮定ということ で、最小限、氏名、生年月日という仮定を置かれて検討を進められて、8ページから9ペ ージにかけてですけれども、カードが利用できない状況下等々で、移行期間という一つの 限られた時間の想定、それと、その少し下のほうですけれども、停電等々の、要するに、 今後、恒常的にやはり考えていかなければいけないパターンと二つのところで、裏面を含 んで資格情報等を記載するという案も併記されているわけですけれども、そういう意味で いくと、作業班として、まだこの券面情報に何と何を記載するかについて、必ずしもフィ ックスしたということではないという理解でよろしいわけですね。 ○山本委員  もちろん、フィックスはしておりません。作業班でフィックスするものでもないと思い ますので、検討結果をご報告して、この検討会でご議論いただければと思うのですけれど も、当面は、できるだけ券面にも記載しない。カード内にもできるだけ情報は置かないと いう、どちらかというと、一番極端と言うと変ですけれども、ストイックな方法をまず検 討して、その上で、例えばここに氏名、生年月日以外の情報を載せるのであれば、例えば その制度的にリスクを回避できるのであれば、運用はうんと楽になるとかという面は、た くさんあるだろうと思います。 ○池上委員  分かりました。  私自身の意見なのですけれども、ここのことに関してなのですが、一つの案として、利 用者の方々に、カードとは別の資格情報を記載した別紙を交付しておくという案も併記さ れているのですけれども、この案は、私自身はちょっととり得ない案なのかなと。  といいますのは、国民の視点で考えたときに、要するに、今回、三つの年金・医療・介 護という併用カードなのですけれども、とはいえ、やはり利用頻度等を考えると、一番利 用される人数、それから頻度を含めて多いのは、健康保険証としての機能かなというふう に思うのですけれども、その関係で、常にカード及び別紙という二つのものを持ちなさい というのは、どう考えても、要するに、今よりも便利なシステムをつくっていただいたと いうふうに、なかなか国民の方は理解していただけないのかなという思いがしておりまし て、そこはもっと違う―なかなか難しいところだというのは承知した上で言っているの ですけれども、やはりそういったところを、もう少し検討を深めなければいけないかなと。  例えば、カード券面に記載する内容を最小限にという発想も、ある意味、理解はしてい るのですけれども、どちらかに一律的にするのではなくて、本人の意思によって記載する 場合と記載しない場合の選択制という考え方もなくはないのかなと。それはそれで、また その選択をどういう手段でとるとか、その選択を、途中で意思を変えられる場合はどうだ とか、例えば生まれたての赤ちゃんなどは、そんな意思はないのにどうするんだとか、新 たな問題はあるにはあるのですけれども、やはりそういう選択肢も含めて、少なくとも今 よりも、今1枚で済んでいるものに対して別のものを持たせて、それこそ年に1回、別紙 が必要になるかならないかの状況の中で持たせ続けるというのは、あまりにも少し現実味 のない案かなと私は考えます。  以上です。 ○大山座長  多分、いろいろな議論がそこだけでもあると思いますが、被保険者番号が変わることか ら何回書けるかと考えると、印刷にしたら、多分、アウトでしょう。だから、そういうと ころも、考えておかなければとならないと思いますが、この件について山本先生、何かあ りますか。特に、受け止めていただいて、更に検討していただくということかな。 ○山本委員  別々に持つのか、一緒に持つのかという問題はあるのですけれども、作業班でよく使わ れる言葉は、「カードフォルダ」といいまして、要するに、カードとセットになったもの の中に読めるようにする。そうすると、外側だけ変えれば、保険者が変わったときにも使 えるというふうな、池上委員が言われるように二つ持つというのは、今まで1個であった のに比べると、明らかに利便性としても落ちる可能性があるので、決して望ましい解決法 というわけではありませんけれども、もしもそれを使うのであればそうすると。  それから、停電の場合とかは別として、自分が行く環境の中で、全てカードリーダーが ある環境であれば、もうそのフォルダは自宅の安全なところに置いて、カードだけ持って 歩けばよいというふうな状況になるだろうとは思うのですけれども、配り始めてからどれ くらいで配り終わるのかという問題もありまして、一定期間は何らかの方法で目視可能と いいますか、今までの保険証と同じように扱える対策をとらなければならないのだろうな というふうには考えております。その後で、停電とかカードリーダーの故障とかというの は、頻度的にはかなり少ないですし、ほかの代替手段というのは考え得るだろうと思うの ですけれども、移行期は悩みの多いところで、もしもこの検討会でよいご意見があれば、 それについても作業班で検討させていただきたいというふうに考えております。 ○大山座長  どうぞ。 ○樋口委員  どこから話したらよいかなと思いますが、では、今の問題から。  私は今日、伺っていて、懇切丁寧なご説明でもあったし、この資料にするまでにどれだ けの議論があったかということを考えると、本当にご苦労が忍ばれるというのか、大変な ことなのだと感じ入りました。その上で2点申し上げるのですが、まず一つは、こうやっ てやはり優秀なテクノクラートがこれだけ、多分、作業班の中に集まっていろいろ考えて おられる。それですら大変だという感じが、やはりありますよね、聞いているだけでも。  そのときに、その方たちは思っておられないと思いますが、やはりどうしても新しい制 度構築で、100点満点をねらいたい。場合によっては、110点というのかな、とにかく金メ ダルをねらっているわけですよね、多分。そんな感じがするのですね。  例えば、正しい持参者であることの確認、なりすまし受診でないかどうかの確認という のですが、こういう問題も含めて、やはり現状との比較のところから始めたほうがよくて、 例えば、私は紙の保険証を持っていますけれども、誰かに取られることもありますね。す ぐ落としたり、忘れたりというのは、もう粗忽な人間ですから十分にあります。私になり すまして、誰かが病院に行くとしましょう。簡単ですね。それ以上のチェックはあるわけ でもない。現状はそういうシステムで、我々は何とかやっているわけです。それから、私 が忘れていきますね。昨日、歯医者さんに行ったのですけれども、新しい月になったのに 保険証を忘れていきます。「まあ、樋口さん駄目ですね。次の回にはちゃんと持ってきて くださいね」というので何とかやっているわけですよ。だから、これがカードに変わった ところで、それと同じような状況で構わないのだというぐらいの気持ちでやっていたほう が、本当はよい。  ただ、今度、こういうような大きなシステムをつくると、例えばネットワークのトラブ ルとかというと、私1人が忘れたという話ではなくて、あるいは落としたとかという話で はなくて、何十万だか何百万だか分かりませんけれども、やはり非常に大規模な話という のが出てくる。それに対しては、どう対処したらよいだろうかという話はあると思います が、それにしたって、一定の時間内で何とかネットワークを再構築したり修理するという のだったら、例えば健康保険の代わりであれば、病気で来ているのですから、そんなカー ドがあろうとなかろうと診てくれるというシステムだけを置けば、別紙を持ってこないと いけないとかというような発想にはならない。だから、やはり現状との比較の中で、「今 よりは幾ら何だって悪くはなりませんよ」という話、つまり、今度、大きなシステムを構 築したので、リスクが増大する部分、顕著に増大する部分というのはあり得るので、それ に対するセーフティーネットというのですか、バックアップのシステムというのをどう考 えるかということを、いろいろな形であらかじめ考えておくことはよいと思いますけれど も、「どの道、100点は期待してもらっちゃ困るよ」と、これは居直りではなくて、それ は、だって人間がやることなのですから、大きな銀行のシステム変更でも、どんな場合で も混乱が起きていますよね。それで、初めは「一体、あんな立派な銀行でそんなことがあ るのか」とみんな思っていたけれども、だんだん慣れてくると、あれが本当は普通なので はないかということになる。それにしたって金融システムが全部混乱して、駄目になるわ けでもないわけですから、つまり、あれで全部システムが壊れて、日本国が崩壊するよう な話だったら問題ですが、そういう話ではないのですね。結局のところ、何とかするので すから。だから、そういうぐらいの気持ちでなさったほうが、努力しておられる方も楽だ し、聞いている方も楽な感じがするというのが1点です。これはもう、気休めにはならぬ のかもしれませんが、それから、報道される側は、マスコミその他、厳しい方が多いので、 私のような優しい人というか、甘い人はあまりいないのかもしれないのですが、それがや はりごく普通の社会なのではないかという感じがするのですね。これが第1点です。ちょ っと、本当に感想だけで申し訳ない。  もう一つは、もう少しまた、前から言っていることの繰り返しで、ここでは意味がない 発言なのかもしれない。だから、ちょっと、あまり時間をとって申し訳ないような気もす るのですけれども、今日の資料1で、この作業班、つまり、我々はここのところで何をや っているのかというと、まず、今、差し当たって、こういう社会保障カードができた場合 に、どうやって発行・交付するのか、それを前回やって、これはなかなか大変なことだと 実感しました。1億何千万人の人にカードを持たせるなんて、考えるだに恐ろしいという ことが分かりました。  今回は、発行・交付されたカードをどのように利用するかというので、これだけ丁寧な ご報告があったのですが、いずれもカードをどのように発行するかということで苦労して いるわけです。「どのように」というのは、英語で言うと「how」なのですね。それで、 今日のもそうですね。発行・交付されたカードをどのようにというのも。もっとも、ご説 明の中で一部は、本当は、聞いていると違う部分が私はあると思いましたけれども、たと えば最後の情報連携のあたりなどは、ちょっと違う話かなと思ったのですが、しかし、大 部分の報告の基本は「how」なのですね。「Why」と「What for」という話がないのです。 だから、つまりこのようなカードを作るのは「何のために」、とか「なぜ」という話がな いのです。もちろん、この検討会はそういうことを話すところではなくて、テクノクラー トが集まって、実際にこういうカードをつくった場合には、どんな問題、課題があり得る かということを一つ一つつぶしていく会議ですよというのがメインだろうとは思うのです ね。なぜこういうことをやるのかというのは、もっと上のレベルというのかな、そういう ところできっとちゃんとした議論が行われているのだと期待はしますけれども、「本当は そうなのかな」というような疑いも持っていますが、つまり、その話をもう一回、ちょっ とやってみたいと思っているのです。  すみません。ちょっと大山先生、参考資料9で、この前の報告書というのがあって、3 ページの基本的な考え方のところでは、一体、この社会保障カードというのはどういうと ころからできてきたのかという話が書いてありますよね。最初の1段落のところで―2 段落と言ってもよいのですけれども、キーワードは、「持続的で利用者に信頼される社会 保障制度を構築すること」が、とにかく必要なのだとあります。これは高らかな話ですよ ね。それで、1行、2行、元へ戻って、そのために「目覚しく進歩する情報通信技術を活 用」するのだと書かれています。これで、IT化という話と社会保障制度の維持あるいは 改善という話が結び付くという、これは一番遠くにあるというのですか、高い目標ですね。  それで、その一環として、本当のワンステップとして、今度、社会保障カードというの を考えてみましょうというのですが、あまりにも遠過ぎて、これがどうしてそこへ結び付 くのかが、やはり分からないですね。だから、「樋口に説明しても、何度言ってもおまえ は分からないのだ」ということなのかもしれないですが、それが常にあるものだから、今 日のようなご説明も、すごく努力されているのだけれども、その努力の結果がどういうと ころに結実していくのかというのが見えてこなくて―私にはということですけれども、 非常にそれが残念な感じがするのです。  つまり、今日の話は、「社会保障カード」というのは、一言で言うと、今日の報告の中 にも何度か「アクセス」という言葉が出てきて、これも英語でよいのかどうか分かりませ んが、「アクセスカード」なのですね、結局のところは。個人が持っていて、三つの分野 で、医療と介護と年金というそれぞれの個人の情報のところへアクセスするためのカード ですよというわけですが、何のためにアクセスするのか。そのアクセスしていった先の情 報がどういうものなのかというのが、「だって、おまえの情報なのだから分かるだろう」 と言われても、本当は分からないのですね、結局のところ。これにアクセスするというだ けの話で、これだけのことをやるのだろうかというと、きっとそんなことはないと思うの ですね。それで、個人情報保護は本当に大事ですから、だから、今日の話でもいろいろな 形で、中継データベースというのまで構築して、いきなりは行かないようにしますよとか、 やはりいろいろな懸念があるので、さまざまなしかけや工夫をしているのですけれども、 本当はもっと違う話があるのではないだろうかと思うのです。そのような議論は、もしか したら怖くてやれないのではないかという感じすらするのです。  つまり、例えば、介護と医療と年金で、私が今以上にどんどん年をとっていきますね。 それで、もうどんどん衰えていきます。介護の何級とかということになっていますね。そ れで、一方、病気も持っていますから病院に行く。そうすると、私としてはこういうふう に考えるかもしれない。病院の関係者、医者が、あるいは看護師さんが、あるいは事務の 人でもいいのですけれども、「この樋口というのはこういうような介護を受けているの だ」ということを、むしろ知っておいてもらったほうが、医療の在り方が変わってくるか もしれない。逆に、介護事業者のほうも、「この樋口というのはこういう薬を飲んでいて このような医療を受けている人だ」というそういう情報に、むしろちゃんとアクセスして くれて、情報を共有してくれたほうが、私としては安心だということもあるはずなのです よ。それは、だからそういう情報連携という話をして―個人のレベルでまず申し上げま すけれども、そういう形でまず新しいというか、社会保障制度の下で、樋口なら樋口、個 人なら個人ですが、「個人についていろいろな形での配慮がなされ得るようなシステムと いうのが、情報化によってできるのですよ」と言ってくれたほうが、私は安心するのです ね。  そうすると、一方で反論があって、それは個人が、いわば裸になっているようなものだ という議論です。あらゆることを知られているわけですから、「それは怖いではないか」 と言うのですけれども、大して怖くはないのです、私は、本当はその程度の話では。  逆に、キャッチフレーズとしては、うまいキャッチフレーズかどうか分からないのです けれども、社会保障制度で電子情報化、IT化を推進するということは、個人を裸にする ことになるのかもしれない、情報を連携すればですよ。しかし、逆に、それを統括すると ころの政府のあり方も裸になる可能性がある。国民から見えるようになるということです。 これが地方自治のところへ移行、それぞれ分権で分かれるのなら、地方自治の在り方も裸 になって住民に見えやすくなる。個人ばかりでなく、政府の在り方、自治の在り方も裸に なるという話であれば平等ですから、つまり、社会保障制度で、この情報連携で、今、最 後のところで資料8を使いながら、山本さんが、「もしそれを望めば」という条件付きで、 保険者間で情報の連携をしてとおっしゃっておられるのですけれども、そうではなくて、 やはりそれぞれの自治体で、例えば地域格差もできるかもしれない、社会保障制度という のは。つまり、ある地域ではこういうような社会保障サービスが行われていて、他では違 うことが、情報の連携が行われることで可視化されるかもしれない。社会保障制度のあり ようが、情報化で透明性を増すかもしれない。さらには、それぞれの自治体、政府全体で もよいのですけれども、こういう形で社会保障制度の在り方というのが今こうなっていて、 例えばですが、介護2級の人がこういう形で病院を使っていて、それに一定のパターンが あるとしたら、それに対する介護の在り方とか、診療の在り方などに何らかの工夫があっ てしかるべきだというようなことを研究し、検討してやってくれるという自治体なら自治 体があるとしますね。そうだとしたら、ほかの自治体も、それをまねざるを得なくなる。 比較検討の中で、「この自治体はこういうことをやっているのですよ」ということが透明 化して見えてくるという話があるのだったら、それは非常によい話だと思うのですよ。そ れは、情報の連携と活用以外にないのですね。  だから、そういう話に結び付けるために、その本当の一歩なのですよという話をしてお いたほうが、今やっておられる方々の苦労が実になるというのですか、「それだったら一 生懸命やってくださいね」と言って応援してくれる方が、もっと増えてくるのではないか という気がするのですね。何しろ、とりあえず、コストの問題がすぐに目に見えますから、 「こんなにコストがかかる、何しろこれは大変なことだね。大変な作業というのは全部コ ストがかかっている」と誰でも思うのです。今、委員の方々が、何度も何度もこうやって 検討しているのだってコストですから、それに意味があるということを、もう少し明らか にして、これをここで明らかにするのか、あるいはどこかで明らかにしてもらうのか。だ から、私は、こういうテクノクラートの作業班と並んで、こういう社会保障制度に詳しい 駒村さんとか田中さんとか、ここにもいらっしゃるわけだから、山本先生などと一緒にな って、そういうほうの作業班も一つつくってくださったら、もっとバランスのとれたこう いう検討会という形になるのではないかなと思うのです。  すみません。本当に長々と時間をいただいて感想を申し上げました。申し訳ありません。 ○大山座長  ありがとうございます。  それでは、堀部委員、どうぞ。 ○堀部委員  ただいまの樋口委員のご意見は、そのとおりの面があると思います。  そこで、いろいろこの種の議論をしてきた立場から、今、山本委員が言われた資料1の 16ページのICチップが搭載されている媒体の利用というところで、三つ目の丸の住基カ ードとの関連が書いてありますが、先日、ある新聞の一面トップで、この住基カードと社 会保障カードの一体化というのが報道されました。私は、両方いろいろ関わっているもの ですから、何人かの人から具体的に、どういうふうに今、話が進んでいるのかと聞かれま した。全く知りませんでしたので、先日、事務局に伺ったところでは、まだそういう話は ないということであります。  確かに、具体的には話が進んでいないのかもしれませんけれども、この検討会でも何回 か、どこが実際に発行するのかというようなことについて意見を述べてきているわけです が、今日の16ページのところでは、元々、目的が違う、これは前回のこの検討会でも、総 務省のほうからもありましたし、私も、両方関わっているものですから、目的が違うので、 そこをどうするのかということについて発言しました。現在、全国民を対象にして、この 住民基本台帳ネットワークシステムもありますし、大山座長といろいろ議論してきたわけ でありますが、そうなると、非常に現実的な問題として、それを仮に利用するとすれば、 どういうところに問題があるのか。ここに幾つか論点が上がっていますけれども、そこは どうなのか。住基カードのほうを、元々目的は違うのですが、何かこういう新たな社会保 障カードとの関係で変え得るのかどうか。そういう検討も、これは今度、総務省のほうで することかと思いますし、利用目的を変えるとなると、総務省のほうに、住民基本台帳ネ ットワークシステム調査委員会というところもあって、その場を利用することも考えられ ます。  今日の山本委員の説明で、かなり論点が明確になってきましたので、私は、いろいろ関 わっている立場からすると、具体的にそれとの関係をどうするのか。全く連携できないも のであれば、また別の方法を考えなくてはならないのですけれども、実際にある、しかも セキュリティや何かの面でもしっかりしたものにしているものをどう活用していくのかと いうことも、考えていただきたいと思います。  また、その際に、これも時々言っていることですが、住民基本台帳法の改正のときに、 住民基本台帳ネットワークシステムのプライバシー、個人情報保護については、その法律 それ自体でかなり手当てをしました。これも時々言っていますように、社会保障カード法 とかという仮称のものができるとしますと、いろいろな法律、条例が関わってきますので、 そこに明確に個人情報保護のシステムを構築しておかないと、実際に運用する側からする と、あれも見る、これも見るということでは大変ですので、何かそういうことも考える必 要があるのではないか。そうなると、それをどうするのかということについても、どこか でワーキンググループか何かをつくって、きちんと検討しておくということも必要なので はないかと思います。  とりあえず、今日の報告の議論を聞いての感想を申し上げました。 ○大山座長  ありがとうございます。  すぐにまた皆さん方のご意見を伺いたいと思いますが、その前に一つだけ、樋口委員が お話になった件に関する報告書も出ているので、ちょっと申し上げたいと思います。  実は、年金記録の閲覧の話がここにもありますが、これは何でやろうとしているかとい うと、私の考えで、年金業務・組織再生会議のほうの報告書に書いていただいたことです が、今後、今のような記録問題を起こさない、徹底してそれをなくす方法を考えています。  そのためには、届出を原則、電子化します。今回の年金記録の中で不備が出た原因とし ては、大きく三つ挙げられます。一つは、虚偽又は誤った届出があったことです。それか ら二つ目は、入力ミス、紙から電子的に記録を直すときのミスがあったことです。それか ら三つ目は、不正な改ざんが行われていたものがあることです。不正という言い方が正し いかどうか、言い方は難しいのですが、権限を持っている人が行った場合もあったので、 ここがシステム的にははっきり分かりません。具体的なものは、新聞等に出ていると思い ます。この三つ目の問題は、システム側の話なので、今度の新しいシステムでは、絶対に できないようにすることが可能です。変更等の記録を全て残すこともできると思います。  問題は、最初と二つ目で、最初のところは虚偽又は誤ったということなので、これにつ いては社会保険庁側、すなわち、年金記録を受ける、記録を持つ側は、基本的に分かりま せん。  例えば、標準月額というのがありますが、これを例えば30万円もらっている人を20万円 で届けられたら、社会保険庁側は「いや、30万円でしょう」と即座に見付けることは極め て困難です。事実このようなことが起きていたようです。  制度的には、間違い等を発見すれば訂正を求めることができるようになっています。と ころが、従来は、年金記録を確認するというのは、例えば二十歳から働いた人が60歳近く なってから見に行くということなので、40年近く前の状況を確認することになります。40 年前の給与額を覚えていますかという話になれば、それは無理な話と思うわけです。  したがって、訂正はできますが、1番目のところについては、本人に早く返して確認し てもらうことが必要になります。すなわち、自分が納めている、あるいはもらっている給 与と合っているかどうかを見ていただくという話がやはり必要なのだろうと考えます。  2番目については、入力ミスなので、電子的な届け出にすればミスはゼロになります。 このことから、原則、オンラインの届け、あるいは電子的に届出をしてもらい、ご本人に 速やかに確認いただける仕掛けをつくることは、きわめて重要になります。納付月や月報 等を確認いただくには、従来ですと年金特別便、あるいは年金定期便のような形で、電子 データを紙に打ち出して、それを郵送することになります。これにかかっている費用は、 聞くところによると、システムを合わせて、年金特別便は1億人対象で大体280億円とい う状況がありまして、これを何回も行うとなると総経費はとんでもない額になってしまい ます。これを避けるために、できるだけ電子データのまま速やかに確認いただきたいとい うことになっていきます。  この電子的な通知には標準月俸まで入りますから、下手をすると給与がネット上を流れ るということになるので、やはりかなりのセキュリティの確保が不可欠ではないかと思い ます。  こういうことを考えると、今回の社会保障カードは、アクセスして自分の情報を確認い ただく。それによって、年金の記録は、今後、一切ミスがないようにできる可能性を持っ ていると思うわけです。  今日は年金について報告が出たので紹介しますが、このような効果があるのではないか と期待しています。これが、樋口委員が言っていただいたことに対する回答の一つで、今 後は年金記録の問題を起こさないためということです。ご紹介までに。  どうぞ。 ○大江委員  作業班の大変な努力の成果物を、今日、ご説明いただいて、たくさん細かいところで分 からないところはあるのですが、感想として一つだけ、ここではお話ししたいと思います。  今回、カードを導入するのは、カードそのものを入れて、システムは幾ら複雑でも構わ ない、何とか情報技術で解決しましょうというのでは、何にもならないと思うのですね。 やはり、社会保障に関する情報で、必要な連携はきちんと確実に行いましょう、間違いな くできるようにしましょうということではないかと。  そうすると、情報、きちっと必要な連携をとるということは、やはりその連携をするた めのキー、つなぐための一つの共通のキーになる、結局は番号なのですね。それがないわ けにはいかないわけで、その議論を避けるわけにはいかないと思います。  今回の作業班のご提案は、そのキーとなるいろいろな表現が使われていますが、制度共 通番号、あるいは本人の識別情報というようなことがよく書かれていますが、要するに、 そのキーとなる連携のための番号というものが、カードには書かれているけれども、見せ ない、あるいは保険者では使わないということになっているがために、あらゆるところで そのキーとなる情報と既存の保険者番号、被保険者記号番号というようなものとを連結し ないといけない。あるいは、変更届を出すときには、どれが本人のものか分からないので、 タイムスタンプをくっつけないといけないとか、結局、いろいろな二次的な作業を行って いるわけですね。それでは何のために共通番号を導入して、シンプルな方法で連携を確実 にしようとしているのか分からない。こういうものは一般には、どう考えても複雑な連携 システムを、情報技術を駆使してつくればつくるほど、コストはかかりますし、導入する ために、時期はどんどん、それぞれの組織によって時間がかかってきてずれていきますし、 それから複雑にすればするほど運用は複雑になります。それに関わる人の数も増えるわけ で、結局、その情報が暴露される人の相手も増えるということは、私の経験ではほぼ確実 だと思います。  つまり、何が言いたいかというと、せっかくシンプルに連携するために共通な番号を導 入するということがもうほぼ必然なのであれば、もちろん様々なリスクや懸念はあるでし ょうけれども、それをうまくいかに使うかということを、もっと全面に考えるべきではな いかというふうに思うわけです。例えばレセプト一つとってみても、今はそういう共通の 番号がないがゆえに、保険者番号、被保険者記号番号というような、個人を識別する情報 をたくさん書いて送らないといけないわけですね。今回のようにシンプルな共通番号がで きたら、それを一つ書けばよいわけです。あとは取り違えがないように、せいぜい名前ぐ らいを書けば十分なわけで、従来の被保険者記号番号など要らないのではないかというふ うにも思うわけですね。そういうふうにシンプルにすれば、その番号を一つ医療機関が書 くだけで、レセプトは提出できて、保険者はそれを受け取って、すぐに使えるということ になるわけです。今回の制度をこれだけの時間と費用をかけて導入するのであれば、徹底 的にそこの部分は議論して、いかにシンプルにするのかを考えるべきで、従来の仕組みと、 いろいろな中継データベースを持ち込んで、何とかIT技術を駆使してやればできますよ というようなことをやるべきではないというふうに思います。 ○大山座長  では、田中委員、手が挙がりましたのでお願いします。 ○田中委員 作業班の報告内容については、勉強させていただいたことを含めて感謝いたします。中身 にはまったく異論ありません。  私は、樋口先生の言われたことをちょっと敷衍して、この報告の、少しメタレベルとい うか、もう少し外側からの意見を申し上げます。  この報告書の3ページに仮定が書かれていて、これは技術的な仮定ですね。けれども、 これ以上の、もう一つ上部の仮定があって、それは、さっき樋口先生が言われたことに近 いですが、日本の社会保障制度はちゃんとしているという前提と、それから社会保障制度 が住民のほとんどをカバーしているとの前提がないと、落ちこぼれた部分ができます。前 者の社会保障制度が―私もこちらの学者として、日本の社会保障制度は世界的に見ても 安定しているとは思うのですが、先ほど、前の報告書の3ページを樋口先生も引用されま した。「持続的で利用者に信頼される社会保障制度」、これは別に自分の記録が便利に見 られるとか、そういうことではなくて、国民にとってみると、社会保障制度が安定してい るかどうかは、社会保障制度の財政が安定しているかとか、将来見通しがどうかが大切で す。自分の記録があっても、実は年金会計にお金がなくなったら、これは記録だけしかな くなってしまうわけで、繰り返しますが、私は、日本の社会保障制度を信頼しており、大 丈夫だと思っていますけれども、不信感をもつ方にとってみると、自分の記録を見るとか、 健診データがわかる、そういうことだけではなくて、せっかくこういうカードをつくった ら、社会保障制度の会計もすぐ見られるとか、自分の属している国民健康保険の財政の見 通しが、別なところをクリックすると出てくるとか、そういうことも、まさにこの主目的 である「持続的で利用者に信頼される社会保障制度」にプラスになるので、自分の記録の 利便性だけを言うと、すごく話が小さく聞こえる感じがします。  2番目は、住民のほとんどが社会保障制度によってカバーされているとの前提が、実は 我が国では崩れつつあるわけですね。階層格差の話もあるし、それから外国から来て滞在 中の労働者、正規・不正規を含めて、これも増えています。ゆえに、特に医療の話ですけ れども、医療保険の皆保険に含まれない人の比率が増えている。恐らく、人口の何%か知 りませんが、急速に増加していることは間違いない。国保保険料を払えなくなってしまっ た人も含めてですね。  そうすると、これは先ほどの事故とか火災などよりはるかに高い確率で、医療機関にと っては、医療保険証を持っていない人が受診に来るわけです。これが、もう日常的に起き るわけです。そうすると、貧しい人の場合、国保だけ資格停止になっているけれども、介 護保険と年金は資格がある人の場合、カードをどう扱うかとか、そういう人はカードがあ りませんというのか、カードを見せろと求めるのか、いや、見せなくてよいとするのか、 瞬時に資格が分かるようになったことによって、医療機関では、お金をとれない患者であ ると瞬時に分かるようになったときに、医療機関は一体どうしたらよいかとか、この作業 班でお決めいただいたこと以上に、社会保障制度への信頼感は、そういう社会保障制度の 境目にいる人たちとか、落っこちてしまった人たちをどうするか社会の対応によって決ま ります。これは、割と大きな問題なので、そういうことも実は考えておかないと、誰が困 るかというと、医療機関が困る。国民も不満に思うことも、検討しなくてはならないので はないかとの意味で、樋口先生がご指摘になったような視点に、私は賛成でございます。 ○大山座長  ありがとうございます。  どうぞ。 ○池上委員  先ほどの樋口先生の情報の連携という関連で、ちょっとあれなのですが、この社会保障 カードの検討委員会とほぼ同じような日程で検討されてきた、もう一つの電子私書箱の検 討も委員会があって、たまたま私はそちらにも参画していた関係で、やはり先ほどおっし ゃった情報の連携は、このカードのほうよりも、むしろ電子私書箱構想のほうで、より生 かされる領域なのかなという感じがちょっとしたわけなのですけれども、そういう意味で やはり思いますのは、こういった制度を世にきちっと出していくときというのは、やはり 電子私書箱はこう、社会保障カードはこうというような形ではなくて、やはりセットの一 つのシステムという形でとらえてきちっと出していく。それから、願わくばそれを出すと きに、確かに今日のこの報告だけで、三つのカードが1枚になります。それと、病院に行 ったときに資格確認ができます。ただ、この資格確認ができる、できないというのは、ど ちらかというと保険者アンド医療機関のメリットであって、本人にとって、そんなことが 今存在していること自身は、あまり患者さんはご存じないという視点で考えると、「本当 に膨大なお金をかけて3枚のカードが1枚になっただけなの。」みたいな感じになるわけ です。  そうすると、やはり今の電子私書箱との関連、それから願わくば、例えば3年後、5年 後に、このカードを今回つくることによって、更に社会保障の領域でこんなことを考えて いくんだよという、結果として実現できないものも出るかもしれませんけれども、やはり そういうビジョンみたいなものも含めて示していくと。そういったことによって、今回や ろうとしていることが、非常に国の施策としてよいものなのだということをやはりアピー ルする。そういったことも、今後の議論の中で、やはり少し検討していくべきなのではな いかなというふうに、今、感じました。 ○大山座長  ありがとうございます。  どうぞ。それでは、稲垣委員。 ○稲垣委員  日本歯科医師会の稲垣と申します。今回から参加させていただいて、ありがとうござい ました。  作業班のご報告で、いろいろ参考になったのですが、今日は初めてなので、自分の意見 というより感想というか、少し質問もあるのですけれども、お聞きしたいと思います。  我々医療機関で、窓口で扱っておりまして、一番、利用者の視点から考えると、やはり 今回のこの制度が、利用者にとって前よりも不便なものであってはならないのだと思うの ですね。今、この社会保障カードで一番分かりにくいのは、やはり券面に何も書いていな いという形で、今、例えば病気になった方は、まず恐らく保険証をどこからか探し出して、 その中に、自分の健康保険証の種別はどれであるか、それから給付割合はどのぐらいであ るかと、これは結構厳しいのですね、1割とか2割とか3割と。それからあと、一部負担 がそれ以外にも生じるのかどうか。あるいは、有効期限はどうであるかということを確認 して受診される。あるいは、それ以外の注意事項も書いてございますよね。そういうこと を、この券には何も書いていない。ですから、そういうことを、それは全ての利用者が、 今、何かの端末で、診療、受診の前にそれをすぐ見られる状況ならいいのですけれども、 今、みんなそうではございませんので、そういう状況でないとすると、やはり利用者にと っては、非常に今回、不便な制度ではないか。そういうような対応が検討されたのかどう か、ちょっと後でお聞きしたいと思います。  それから、同じ利用のシーンで、今度は医療機関側に立ちますと、今、我々が健康保険 証で必要なのは、まず資格の有無であります。資格があるかないか、これは現状では、健 康保険証をお持ちの方は、資格がなくなると保険者が回収いたしますので、保険証を持参 されたということで資格があるのだなと。それで、あと必要なのは、請求上の保険者番号、 あるいはその方のナンバーです。これが分かればよいのであって、今の社会保障カードの ように、それは恐らくその個人の、どちらかというと今よりも、ID、その人自体の本人 確認というのが、多分、主体だと思うのですが、それはあまり医療機関では必要ない。  というのは、それから後、例えば受診の申込書、あるいは問診、いろいろなことをして いくことによって、その方のIDというのはおのずと分かるわけです。そういう意味では、 今、我々医療機関にとっては、このカードのシステムというのは、あまり必要でない。前 に検討された健康保険証にQRコードを付与するということで十分なのではないかなと。 そういう意味では、ちょっと今回の社会保障カードの医療における応用ということで、そ れほどの有用性というのは、今のところ感じていないということでございます。  以上です。 ○大山座長  最初の質問に対しては、どうしますか。室長のほうから。 ○社会保障カード推進室長  最初のご質問で、保険証に書いてある情報を見ることができるようにするか。これは、 1月までの検討会の検討の中でもそういう議論がございまして、この中に、今日の作業班 の中にもありましたけれども、別紙というか、何らかの形で本人にお知らせする必要があ るだろうということがその報告書の中に書かれております。  それから、今回の作業班の検討の中でも、カードというのは書き換えをできるだけ少な くするとか、今ご指摘いただいたような情報が他人に見られないようにするという意味で、 できるだけ表面に書きたくはないということで検討はしているのですが、一方で、本人に はお知らせするということで、別紙その他の方法を考えないといけないねと、そういうよ うな議論をしていただいているところでございます。 ○稲垣委員  別紙という考え方なのですけれども、それは、いわゆる別紙というのは、その方が、そ の資格があったり、同じ条件ならばそれでいいと思うのですが、ですから、それが変更さ れるたびに、それを一々変更していかなければいけないものなので、何かその辺で、例え ば別紙の情報とカードの情報に差異があった場合に、どちらかということも起こってくる と思いますので、あまり有効な手段ではないと私は考えます。 ○社会保障カード推進室長  カードの中の情報が変わった場合というのは、別紙そのものがやはり変わらないといけ ないということは、認識といいますか、念頭に置いていまして、そういうことを踏まえて、 結局、券面とか、そういうものをどうするかということを検討しているところでございま す。 ○大山座長  どうぞ、南委員。 ○南委員  私も、細かなところでは理解できていないところもありますが、原則的に、本当に丁寧 な検討をいただいて、感謝申し上げたいと思います。  その上で、樋口委員、田中委員が言われたことと似たようなことになりますけれども、 この制度が、なぜ今コストをかけてつくるかということの認識を、国民に説明するととも に、再確認しておかないといけないと思います。よく考えてみますと、カードによって非 常に手軽に閲覧できるなどの利便性を強調して―強調というわけではないのかもしれま せんけれども、今まではそれができなかったので、便利になる、ということを利点として 前面に出しているわけですが、最終的には社会保障のサービスを向上し、間違いのないも のにするのだという、社会保障の維持と向上という大きな目標につながるということは、 やはり外せない部分だと思うのですね。どうしても目先の便利さとかが、強調されてしま うのですけれども、年金の記録漏れ問題はなぜ起きたのか、そういうことを繰り返さない ためにどうしたらよいのかとか、そういった視点のほうが実は大事なわけです。自分で確 認できて便利になるということは、逆に、だからそれゆえ自分で責任を持っていただく、 確認はちゃんとしてくださいよという意味だともいえるわけで、そういうことをきちんと 説明していく必要があると思います。  その上で、このカードを持っていることによって、今後、例えば超高齢の方々がどれほ ど恩恵を受けられるのかといったことを、現実として考えなければなりません。私は話を 伺っていて、高齢者がカードのリスクも認識しつつ恩恵を受けるということは、一定の年 齢以上の方についてはやはり難しいのではないかと、正直なところ思います。カードによ って、受けられる社会保障のサービスが充実したり、社会保障そのものがよくなるのだと いうようなことは、そうした現実も視野に入れつつ再確認しないといけないと考えており ます。 ○大山座長  駒村委員、どうぞ。 ○駒村委員  ありがとうございます。  まず、作業班がこういう努力されたことに対して、本当にお礼を申し上げたいと思いま す。  おのずとこういう議論をしていくと、実現可能性についてのかなり細かい話に入ってく るのは仕方がないと思います。お聞きして、また幾つか完全に分かり切っていない部分も あります。それはまた、後々議論になっていくのだろうとは思います。  今日は、先ほど樋口先生がおっしゃった点や池上委員がおっしゃった点、あるいは田中 先生がおっしゃった点に少し加えていきたいと思いますが、1月に出た本報告の3ページ の部分です。先ほど、座長の議論もございまして、まず行政コストが非常に安くなってい くというのが、一つあるだろうと。その次に、これも大変重要なことなのですけれども、 国民と政府の間の社会保障に関するコミュニケーション、特に年金問題に代表されるよう に、双方向でチェックするという仕組み、南委員がおっしゃったような仕組みも入ってく るだろうと。  ただ、さらに3ページの上段に、先ほど樋口先生がおっしゃったように、今後の超高齢 化社会を迎える上で、あるいはITが一方で進んでいくという長い視点に立ったときに、 この制度が非常にいろいろな可能性を持つのだと。だから、この数年で便利になるか便利 にならないかというような議論だけではなくて、こういう可能性を今後持ってくるのだと。  例えば、先ほどの年金の話で、より付加価値を付けるような情報の使い方もあるわけで すね。これはポータルサイトをどういうふうにうまく使っていくなど。例えば、今、年金 が若い世代で不信があると。これは、自分がどのくらいもらえていくのだろう、今年の保 険料はどういうふうにつながっていくのだろうと、あとどのくらい貯蓄をすればいいのだ ろうかと。例えば、60歳以降の就業期間も、これから延びていくと思うのですね。ここで 繰り上げを選んだほうがいいのか、繰り下げを選んだほうがいいのか、選択によってどの くらいの差が出てくるのか。あるいは、今年1年、追加的にフルタイムで高齢者が就労し た場合に、どのくらいの年金が増えて返ってくるのだろうかと、これは大変複雑なのです ね。そういう付加価値情報まで入れていくことが、将来的には可能になってくるかもしれ ない。あるいは、特定健診のデータを集めていくことによって、自分の健康状態を常にあ る程度の間隔でチェックして、健康状態を意識していく仕組みも出てくるかもしれない。 それは、現在の高齢者の方がそこまでいけるかどうかというのは、また時間のかかるよう な話かもしれませんけれども、若い支える世代にとってみても、有益な付加価値を生む可 能性はあると思うのですね。  だから、技術的な話とともに、やはりさっき樋口先生がおっしゃったように、こういう ビジョンというか、可能性も持った制度なのだというところも発信していかないといけな い。目先の行政コスト部分だけ、あるいは技術的に今の所要の条件の中で何ができるかと いう議論は一方では大事であることは否定しませんが、一方では、やはり国民に向けて、 夢というか可能性というのを訴えていくという必要もあるだろうと思います。 ○大山座長  どうぞ。 ○山本委員  委員の先生方のご意見を、作業班の検討に対してありがとうございます。  今日、作業班の班長としては、まさに期待どおりのご議論をいただいたと思うのですけ れども、一つ、作業班としてお伺いしたいというか、今日ご議論を願うことではなくて、 この検討会として常にご議論を続けていただきたいことがあるのですけれども、樋口先生 のお話の中で、今日、ご報告の最初に申し上げましたように、今日のご報告させていただ いた作業班の検討内容は、かなり厳しい前提を置いたもので、どういう前提かといいます と、制度統一の番号、ないしは、そうではないにしても、その識別番号を本人でさえ知ら ない状態で、三つの保険制度を運用することを実現するという前提でお話をさせていただ いております。必然的に、仕組みは複雑になってまいりますし、それから、樋口先生が言 われたような、全てに透明性が向上するようなことは、この方法ではなかなか難しいとい うのも、これは明らかなのですね。  ただし、ではそうすればどうなるのかというと、いみじくも樋口先生が裸になるとおっ しゃいましたけれども、トレードオフがあるわけですね。やはり券面に制度統一番号が書 いてあれば、その番号をむやみやたらに集めて利用するような方がもしもいらっしゃれば、 それは例えば制度的に担保できるのであれば、それでも構わないでしょうし、アクセクタ ブルであるならば、そのほうがはるかに運用は簡単になって、なおかつ、社会保障カード を使ったよりよい社会保障を考えるというふうなことがより容易になるということは、作 業班の中でも常に議論がされているところであります。  ただ、我々作業班としては、そうしてよいのか、それともそれは隠すほうがよいのかと いうのは結論を出し得ないというか、結論を出すべき場でもないので、今日は出さない方 向のご報告を申し上げて、これでは複雑過ぎる。それから、もっと単純で、なおかつ、も っと将来につながるものとしては、これは、もう少しそこは考慮すべきであるというふう なご意見をいただければ、それはまた作業班としては、それを前提に技術的な解決といい ますか、制度面を含めて解決のご報告を申し上げる時期があろうかと思うのですね。これ はなかなか、得るものもあれば失うものもあるというトレードオフの問題ですので、そう 簡単に結論は出ないことだろうと思うのですけれども、できましたら今回の検討会、ない しは次回の検討会等で引き続きご議論を願えれば、我々作業班としては、検討する方向が 定まって非常に助かるということだろうと思うのですね。  あと、閲覧に関して電子私書箱というご意見がありましたけれども、電子私書箱は当然、 作業班でも検討はしておりまして、担当の方というか、検討に参加していただいておりま す。  ただ、現状、電子私書箱はまだ発展途上というか検討過程で、社会保障というユニバー サルなサービスを実現することができるものかどうか明らかでないということで、今日の 作業班の報告では、仮に社会保障ポータルという名前を付けております。そのユニバーサ ルサービスとして社会保障に応用できるものであれば、これは何も別々のものをつくる必 要は全くなくて、電子私書箱にしても、そういった健康に関わる情報を扱う場合には、か なり厳密なアイデンティファイアが必要にはなるわけで、それは当然ながら、整合性をと りながら、お互いに補完的に進めるものだろうとは思っておりますけれども、まだそこが 少し明らかでない。これから今後、その辺は明らかになってくるのだろうと思いますので、 作業班としては、継続的にその関係を模索しながら検討を続けていきたいというふうに考 えています。  それから、QRコードと変わらないのは、今日お話した内容は、QRコードと変わらな いのは事実でありまして、それはさっきも言いましたように、三つの保険機能を実現する ことだけを前提に検討してまいりました。ですが、社会保障カードの機能そのものは、本 来はそれにとどまるものではなくて、持続する社会保障サービスを充実させるものだろう というふうに考えていますけれども、その先を論じるに当たっては、先ほどの論点が整理 されないとなかなか進めないところがありまして、そこが今回、次回、何回目か分かりま せんけれども、この検討会で一定の結論、ないしは二つの選択肢ぐらいを絞っていただけ れば、それは、その後は、今日お話ししたようなこと以外の可能性についても、作業班と して資料をご提示することは不可能ではないと思うのですね。  ただ、現状は、そこまではなかなか踏み込めない状況ですので、引き続きこの検討会の ほうでご検討願えればというふうに思っております。 ○大山座長  ありがとうございます。  非常にご苦労が多いので、いろいろなご意見があるとは思いますが、ちょっと私からも 一つだけ確認させてください。  稲垣委員がさっきおっしゃった話の中で、QRコードの話が出ていました。資格確認が 必要と私は聞いてきていたのですが、あまりなくていいのですか。それによって、随分つ くり方が違うのではないかという気がしたのですが。今までは、そういう話をずっと伺っ ていて、当然、この中でも資格確認ができるようにすると思ってきたのですが、そこは違 うのでしょうか。 ○稲垣委員  資格確認は大変大事で、QRコードで出たような、あれは非常にハードルが低くてあま り利便性が落ちない、むしろ上がるやり方だったと思うのですね。  ところが、この社会保障カードになったら、その資格確認をするのに、さらに今度は、 逆にハードルが高くなってしまったと。ここが問題なのかなと。資格確認自体は非常に有 効です。 ○大山座長  申し訳ありません。  では、岩月委員。 ○岩月委員  おまとめいただいたこの報告書に関しては、本当にご苦労なさったと思いますし、今日 はいろいろご意見をお伺いさせていただきまして、私なりに理解ができたところもありま す。さて、今の資格確認に近い話なのですが、前提として、全ての利用者がカードを有し ており、かつ、医療機関等においても、カードに対応した環境が整備されているというお 話が最初にありましたが、それに加え情報がどれぐらいフレッシュなのかという前提も考 えていただければと思います。例えば公費医療ですと、申請してから承認されるまでかな りのタイムラグがあります。これは決して市町村の窓口の対応が遅いとかということでは なくて、現状の申請と審査と確認とかということを考えれば、当然そういった時間差は発 生すると思うのですね。そうすると、まさにカードにして、そういう内容が利用者に見え なくなってしまうと、そのことが余計分からなくなってしまうのではないかが懸念されま す。  それから、更新の期間が来たときに、現状でも、いわゆるアナログ的な、座長がおっし ゃったような紙で通知をして、でも忘れてしまう人がいっぱいいる。そうすると、特にそ ういったことについての改善も同時にやはりやっていただかないと、多分、医療現場の窓 口では、かえって混乱するのではないかという気もするのですね。  したがいまして、前提の中に、このようなこともぜひ工夫して盛り込むということを、 私としてはお願いしたいなと。今日の会議では、どう使うかという話になっていますから、 そこがわざと入っていないのかもしれませんけれども、そこは同時にやはりやっておかな いと、せっかく作っても、いわゆる有用性が低くなってしまうような気がいたしました。 ○山本委員  その点に関しては、公費の問題は地方によって変わっていて、非常に難しい問題がある のですけれども、保険者のデータベースの更新に関わる時間、つまり申請から実際にIC カードでアクセスしたときに、それが得られるまでの時間差というのは、今回のご報告の 中でも少し触れましたけれども、かなり場合を分けて検討しております。それで、それが できるだけ短くなるようにするための方策、これは社会保障カードだけの問題ではなくて、 公費の場合は自治体でしょうし、それから保険者さんの事務手続の問題も含めて、事情を お聞きしつつ検討を進めております。だから、それを考慮しなければいけないのは当然の ことだろうと思いますし、今後も検討させていただくつもりであります。 ○後藤委員  今回から参加させていただきました三鷹市の後藤でございます。  基礎自治体として期待されている役割というのが幾つかあると思います。今日、山本先 生からご説明がありました内容でいいますと、例えばカード交付を実際に行う窓口として の役割ということが一つですね。このあたりも、本人確認を厳密に行いつつカードを交付 するということになりますと、例えば類似の制度である住民基本台帳カードの場合、発行 するのに1人当たり10分から15分ぐらいかかります。これを仮に三鷹市で、18万人ぐらい の人口で計算いたしますと、年間で3万時間ぐらいかかるわけですね。これ専用の窓口を 15とか20程度つくりましても、1年かかってしまうという状況がございます。  健康保険証の更新の場合には、一括で作成して、配達証明等でお送りするわけですけれ ども、その場合には、どうしても本人確認の精度が下がってくるというような問題もござ います。このあたりは、社会保険の場合にも同じようなことが言えるかと思いますので、 申し上げておきたいということでございます。  それから2点目、市は、国民健康保険とか介護保険の保険者でもございますが、これは 社会保険もそうでしょうが、市の場合で申し上げますと、例えば国民健康保険のシステム というのが、外部からデータの照会を受けるようなことを想定したデザインにはなってご ざいません。仮にこういう仕組みをつくっていくためには、基礎自治体である市、これは 全国に1,800ほどあるのですが、まず間違いなく、全部の自治体について相当大きなシス テム変更を伴ってくるということがございます。  それから3点目、今日の作業班の報告の中で、名前での照合ということがございました。 これも過去、この検討会でもご議論があったかと思いますが、ご案内のとおり、人名には 規格に合わない文字というのがたくさんございます。結果的に、事務処理をするときに、 各自治体の中で字をつくって処理をしているところがたくさんございます。恐らく健康保 険組合でも、そういう処理がされているかと思います。ということは、健康保険組合なり、 あるいは医療機関でも登録されるお名前、それが例えば国民健康保険の方の場合に、レセ プトという形で市のほうに情報が来ても、漢字の名前では照合ができないことが多い。三 鷹市も、現に国保のレセプトの照合については、記号番号と生年月日と性別とで照合をか けていると。ですから、同一世帯で、例えば高齢のご夫婦が一緒の医療機関にかかられて、 たまたまそこで間違いがあったときに、ここでもう、すぐエラーになってしまうというこ とがあり得るわけでございます。  それから4点目、これで最後にいたしますが、恐らく名前という情報の中には、仮名の 氏名というものもあろうかと思うのですが、このあたりが少し揺らぎのある情報だという ことご了解しておいていただきたい。今日、この検討会にご出席の皆様がお生まれになっ た時点では、少なくとも、戸籍も住民基本台帳も、仮名氏名というのは記録項目にはなっ ていなかったはずでございます。それが今、多くの自治体で電算処理をする中で、仮名氏 名というものも重要な項目として持っているわけですけれども、これが必ずしもご本人か ら収集されたものとは限らない。行政内部で、事務的に便宜的に振っている場合も若干ご ざいます。それから、もっと厄介なのは、ご本人が途中で名前の読み方を変えられる方が いらっしゃる。そういう方も、現にこれはございます。  そういうところの中で、揺らぎのある情報を、確認する情報として使わざるを得ない。 私は、個人的には名前の情報は活用するべきであろうかと思いますが、そういうことが現 状としてあるということも、ぜひご理解を賜りたいと思います。 ○大山座長  ありがとうございました。 ○山本委員  我々の作業班にも、自治体の方に入っていただいて検討したら、1人30分以上というご 意見がほとんどだったので、10分、15分というのは早いなというふうに思いますね。  名前に関するご議論は、もうご指摘のとおりで、前回の作業、ここでも報告差し上げま したように、今日も医療保険が変わるときの話では、一応、選択肢には入れていますけれ ども、保険の場合はほとんど仮名で、住基の場合は漢字しか信頼できない、しかも外字が あるということで、極めて問題の多いという欠点があることは、ここにも書いてあります ように承知しております。 ○大山座長  どうぞ。 ○大江委員  今後の検討会で、毎回同じことを言い続けようと決めてきたので言いますが、今のまさ に氏名の照合の問題とか揺れの問題を解決するために、何らかの別の方式、つまり何らか の共通で連結できるキーをきちっとつくりましょうということだったのではないかと思う ので、その点をきちんとこれからも議論していく必要があるだろうと思います。 ○大山座長  ありがとうございました。  今日は非常に重要なことをいろいろ指摘いただきました。  作業班には、引き続きお骨折りをいただかざるを得ない状況で、山本班長にいろいろと お願いさせていただきたいとは思います。皆さん方にも多分、まだご意見があるのではな いかと思います。それにつきましては、恐縮ですが、毎回お願いしておりますように、メ ール等でご提出いただきたいと思います。  前回と今回の検討会で、カードの発行・交付方法と利用方法について、まだ十分ではな いとは思いますが、議論させていただきました。今日は、作業班から報告いただいたとい う段階で、具体的な方向性、結論が何か出たというわけではありません。まだまだ解決し なければならない課題がいっぱいあると思います。  そうは言いつつも、これでもう大体12時、予定の時刻になっていますので、今日はこれ で終了させていただきたいと思います。終わる前に一言、政策統括官のほうからお話をい ただきたいと思います。 ○政策統括官  今日は、作業班の皆様、本当にご尽力をいただきまして、それを受けて非常に有意義な ご議論をいただけたのではないかというふうに思っております。そういう意味では、今日、 山本先生がいらっしゃいますけれども、ご出席でない作業班の皆様にも、心から感謝を申 し上げたいというふうに思います。  先ほども各委員の方から出ました、私もお聞きしておりまして、感想的な話になります けれども、これは前回のまとめのときもそうでしたけれども、この社会保障カードは何を 目指すのか、国民に一体どういうメリットがあるのかということをやはりきちっとお伝え していくということが大事だろうなというふうに思っています。「当面これだけのことを やります」というのが与件としてあるわけですけれども、その中には、大山先生おっしゃ られたような年金での使われ方、あるいは年金・医療での適用漏れみたいなものを防いで いく、こういうふうな使われ方というのは当然あるわけでございますし、それから、医療 ・介護の高額医療費の合算ということで、今はそれぞれ申請をしなければいけないのです けれども、やはりこういうカードができてつなげるようになれば、情報の連携ができるよ うになれば、そこら辺の本人の手間暇もかからなくなる、こういったことも当面想定され ているところでございます。  さらに、ここから一歩進んで、今日もご議論が出ましたけれども、新しいニーズにいか に対応していくかという話があろうかと思います。各先生、それぞれお話がございました し、電子私書箱との関連というのもございます。  これからは、やはり社会保障の総合化、これは社会保障国民会議のほうでも議論があり ますけれども、医療・介護・年金ばらばらということでよいのかというご議論がございま すので、そういうふうなものを考えるときにも、こういったカードの仕組みというのは、 具体的なものは今ございませんけれども、多分、役に立つのではないかなというふうに思 っております。  もちろん、そういった中には、全員を対象にするものではなくて、個々人の方が選択し て、そういうふうなサービスが受けられるようにする、こういうふうなものもあろうかと 思っております。  ただ、ご議論を聞いておりまして思いましたけれども、一種のトレードオフみたいなと ころもございますので、そういうところも含めて、引き続きご議論いただけたらというふ うに思っております。これからまたご議論を深めて、まとめに向けてのご議論ということ になろうかと思いますが、引き続き、よろしくお願いしたいというふうに思っております。 ○大山座長  ありがとうございました。  それでは、次回の日程等につきまして、事務局から説明いただきたいと思います。お願 いします。 ○事務局  次回の日程でございますけれども、今回の開催はちょっと前回から間があいてしまいま したが、次回につきましては、あまり時間を置かずに開催させていただきたいと思ってお ります。現在、日程調整をお願いしておりますので、また決まり次第ご連絡させていただ くという形にしたいと思います。  以上でございます。 ○大山座長  今の事務局からの説明について、何かご意見、ご質問ございますか。  それでは、次回、また日程等が決まり次第ご連絡いただき、また、今日、皆さん方から 指摘いただいた重要な点についても、ちょっと事務局と相談させていただきたいと思いま す。  最後に、何かご発言ございますか。事務局側もいいですか。  それでは、これで第8回社会保障カード(仮称)の在り方に関する検討会を終了させて いただきます。  本日はお忙しい中、ありがとうございました。  閉会いたします。     (以上) 【照会先】   厚生労働省    政策統括官付社会保障担当参事官室    社会保障カード推進室      電話番号 03−5253−1111(内線2244)