08/06/19 第4回今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会 議事録 第4回 今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会(議事録) 1.日 時:平成20年6月19日(木) 14:00〜16:30 2.場 所:厚生労働省18階 専用第22会議室 3.出席構成員:  樋口座長、伊澤構成員、上ノ山構成員、大塚構成員、尾上構成員、小川構成員、門屋構成員、 坂元構成員、佐藤構成員、品川構成員、末安構成員、田尾構成員、谷畑構成員、寺谷構成員、長 尾構成員、長野構成員、広田構成員、町野構成員、三上構成員、安田構成員、山根構成員、良田 構成員、岩成参考人、高橋参考人、山岡参考人 他   厚生労働省:  中村社会・援護局長、中村障害保健福祉部長、川尻障害保健福祉部企画課長、蒲原障害福祉課 長、福島精神・障害保健課長、寺尾自立支援振興室長、名越課長補佐、野崎課長補佐 4.議 事  (1) 精神疾患に関する理解の深化について  (2) 精神障害者の方からのヒアリング  (3) 地域移行の実践に関するヒアリング  (4) その他 5.議事内容 ○樋口座長 それでは、定刻となりましたので、ただいまより、第4回の「今後の精神保健福祉 のあり方等に関する検討会」を開催いたしたいと思います。  構成員の皆様におかれましては、御多忙のところ、また今日はかなり梅雨のじとじとした気候 の中、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。  まず本日の構成員の出欠状況及び議事について、事務局よりお願いいたします。 ○名越課長補佐 本日の出席状況について、御案内をいたします。本日、中村障害保健福祉部長 につきましては、所用により欠席をさせていただいておりますので、あらかじめ御了承ください。  谷畑構成員、中島構成員、山根構成員より欠席の連絡をいただいております。中島構成員にお かれましては、事前に座長に御報告をさせていただいておりまして、全国自治体病院協議会の岩 成常務理事に参考人として御出席をいただいています。  佐藤構成員におかれましては、出席の連絡をいただいておりますが、間もなく到着をされるも のと思われます。本日の出欠状況につきましては、以上でございます。  続きまして、本日の議事進行について御説明をいたします。  本日はまず「(1)精神疾患に関する理解の深化について」というテーマで、事務局より資料に沿 って説明をいたしまして、その後、末安構成員から資料の御提出がございましたので、その説明 をいただきます。その後、構成員の皆様に御議論をいただきます。  次に「(2)精神障害者の方からのヒアリング」というテーマで、社会福祉法人巣立ち会からお越 しいただいております4名の方から、御自分の体験についてお話をいただき、その後、質疑応答 とさせていただきます。  机上に構成員の皆様方のところに紙を1枚置いております。お話ししていただきたいというこ とという紙でございますけれども、本日ヒアリングで来ていただいております方々には、これを 目安にお話をいただくことといたしておりますので、お話を聞くときに参考にしていただければ と思います。  最後に「(3)地域移行の実践に関するヒアリング」というテーマで、地域移行に御尽力をされて おられる4名の方から、おのおのの取組みについて御説明をいただきまして、その後、質疑応答 をさせていただくこととしております。  今日の議事進行につきましては、以上でございます。 ○樋口座長 ありがとうございました。本日は今の説明にもありましたように、大変多くの方々 にお話を伺うということがございますので、前半のところをできるだけ要領よく進めていきたい と思います。それから、岩成参考人の御出席につきまして、これは前回から続けてでございます。 皆様の御了解をいただきたいと思います。  それでは、議事に入りたいと思います。「(1)精神疾患に関する理解の深化について」というテ ーマから始めさせていただきます。  お手元の資料1「精神疾患に関する理解の深化(普及啓発)の現状と論点(案)」について、 事務局より御説明いただきます。 ○野崎課長補佐 精神・障害保健課の野崎でございます。私の方からは、資料1について簡単に 説明をさせていただきたいと思います。  資料でございますが、1〜3ページまでは、既に第1回の検討会でお示しした資料に若干の修 正を加えてございます。簡単におさらいいたしますと、1ページは、心のバリアフリー宣言の概 況となります。  2ページは、いわゆるビジョンで掲げた達成目標とその進捗状況をまとめた資料となってござ います。第1回の資料からの修正といたしましては、下の調査結果の部分で括弧書きを付してご ざいますように、第1回の資料はは「そう思う」「ややそう思う」を合計した割合となっており ましたが、そのうちより積極的に「そう思う」とお答えいただいた方の割合を括弧書きの中に記 しております。  ここで第1回のときに御紹介いたしました、精神疾患はだれもがかかり得る病気であるという 部分が82.4%とかなり高いと申しておりましたけれども、実際にそう思うと積極的に答えられた 方については46%でございまして、この辺りを踏まえた普及啓発方策を考えていかなければいけ ない。  3ページについては、疾患ごとの理解度を示す表となってございます。統合失調症で理解が 4.8%と遅れている傾向があるということに加えて、疾患ごとにいろいろとその理解の状況が異な っているということを踏まえまして、今後はその疾患についてもターゲットをある程度具体的に して、普及啓発を進めていく必要があるのではないか。そのように考えてございます。  4ページでございます。ここからが新しい資料になりますけれども、こちらは主に地域移行を 進めていく上での普及啓発に関する資料でございます。こちらをざっと見ていただきますと、内 閣府の調査あるいは学術会議の報告書等からは、実際に地域移行を行う際に精神障害者の方や精 神疾患に対する偏見がまだまだ残っていることを示しております。  例えば一番上の内閣府の調査でございますが、こちらで見ますと、やはりドイツ、アメリカな どに比べまして、日本の意識の状況は少し遅れているのかなと考えております。  5ページでございます。こちらは精神疾患の状況をまとめた資料でございまして、成人期以降 に何らかの精神疾患に罹患しているもののうち、約50%は既に十代前半までに何らかの精神科的 診断に該当している。あるいは約75%は既に10代後半までに何らかの精神科的診断に該当して いる。こちらはニュージーランドのデータでございまして、日本のデータではございませんけれ ども、一定の示唆を与えてくれるのではないかと思ってございます。  特に早期発見、早期対応という観点からは早い年代、要は学齢期等を中心として、そこに重点 的な普及啓発を行っていくということも効果的な手法としてあるのではないか。そのように考え てございます。  6ページでございます。こちらはデータではございませんが、地域移行を推進していくという 一連の流れの中で、厚生労働省として取り組んできた取組みの内容をまとめたものでございま す。  大きなところで申しますと、平成19年度に開催しました一番左の「4.地域移行支援ブロッ ク研修会」でありますとか、今年度からも課長会議を開催したりといったことで、つまりは単に 現場で地域移行を進める際の地域住民の方への普及啓発だけではなくて、地域移行に取り組む関 係者、行政も含めた関係者に対しても普及啓発を進めていくといったことに取り組んでいるとこ ろでございます。  以上がこれまでに明らかとなっているデータ、あるいはこれまでの取組みをまとめた資料でご ざいますが、7ページにおきまして、それを踏まえた論点として、我々が現時点で考えているも のを提示させていただいております。  最初の大きな論点でございますが、まずこれまで行ってきた普及啓発の取組みや、その効果に ついてどう評価するか。主にはその心のバリアフリー宣言の進捗状況であるとか、これまで我々 が厚生労働省として行ってきた研修会等の取組みということになりますが、それについてどう評 価するかということでございます。  2つ目の◎でございますが、こちらは以前お示ししております今後の議論の進め方にも記して おりましたけれども、効果的な普及啓発の実施については、我々といたしましては、まず本人や 周囲の正しい理解や行動を促し、早期対応につなげていくという側面、もう一つは、その精神障 害者の方々が、特に入院中の方ですけれども、地域生活に移行していくという時点でそれを円滑 にするという側面の2つを有しているのではないか、そのように考えておりまして、心のバリア フリー宣言の普及状況なども踏まえて、今後の普及啓発の在り方について、どのように考えるか という大きな論点を掲げさせていただいております。  その際の留意点というか、我々がここはポイントかなと思う部分を下の○で掲げさせていただ いておりますが、1つは先ほどから幾つか申し上げておりますが、ターゲット、つまり普及啓発 を行う際にどういうターゲットを念頭に置いて行うのかということをもう少し具体化する必要 があるのかなと考えております。  その1つの例は、一番最初にお示ししました疾患ごとの普及啓発の在り方をどう考えるか。  2つ目でございますが、年代、特に学齢期等を中心として、その年代ごとの普及啓発の在り方 をどのように考えるか。  3つ目といたしましては、対象者について、本人あるいは家族に対して行うのか。あるいは地 域住民に対して行うのか。あるいはもっと言えば広く国民に対して行うのか。そういった対象者 についても具体化する必要があるだろうと考えております。  次でございますが、効果的な普及啓発の手法、さらには、その次の普及啓発の効果を適切に評 価するための手法、あるいはその普及啓発を行う主体とその役割についてというものにつきまし ては、やはりまずターゲットをある程度具体化をして、それによっても応じて異なってくる部分 もあると思いますので、それぞれのターゲットに応じて、この辺りも検討していく必要があるの ではないか。そのように考えておりまして、構成員各位の御議論をお願いしたいと思います。資 料の説明は以上でございます。 ○樋口座長 ありがとうございました。  続きまして、末安構成員から資料の提出がございますので、その資料の説明をお願いしたいと 思います。末安構成員、お願いいたします。 ○末安構成員 ありがとうございます。日本精神科看護技術協会の末安です。  今、御説明がありましたことの補強意見というようなニュアンスが強いんですけれども、今も お話がありました資料の中で、精神疾患が早期の治療や支援で多くは改善するというデータが 91%、一方で学齢期の人たちの発病が多く、そこにターゲットを1つ持っていってはどうかとい うお考えだと思うんですが、私はその中でもお手元に、まとめてうまく言えるかどうかわからな かったので文章にしたんですけれども、特に学校で教育の場面を使って精神障害者のことを理解 していただくことが是非とも必要だと思っています。  そのことは一定程度恐らく進んでいくんだと思うんですけれども、その際に私たちはこれまで のことを踏まえて考えていかなければいけないようなこういう場所で、もう一つ視点が必要だと 思っておりまして、それが修学中断者の人たちの権利の問題だと考えております。  お手元の文章にも書いてございますけれども、先ほど来の説明にもありましたが、ほとんどの 精神障害の方の発病は修学期と重なるということは、もうあらゆる国のあらゆるデータが示して おります。  我が国においては、そのことについての学習支援についてですね。一番直近ですと、こちらの 省の方のプロジェクト研究の中でも諸外国の高等教育機関における障害のある学生に対する修 学支援状況調査とか、情報収集とかの研究も行われておりまして、これは1つの到達点だと思っ ているんですけれども、そのようなことが大学や高等学校にも生かされてきているとも思いま す。  一方で、この調査をやった研究の一環で出てきているんですけれども、大学とか短大において は、障害者の入学が1人もないと答えていらっしゃるところが40%もございます。つまり6割の 大学や短大では障害者を受け入れたというふうに実感を持っていらっしゃらないんです。それが 事実かどうかはともかくとして、学校はそのようにお答えになっております。  そうなってきますと、今、入ってくる学生や今いる学生のことは勿論これからの大きな課題と して前向きに考えていかなければいけないことなんですけれども、一方で後ろを振り向くといい ますか。今、精神障害者になっていらっしゃる方たちで学業を中断していらっしゃる方たちへの 復権をどのように考えていくかというのが国家が考えるというレベルのときには、どうしても必 要なのではないかと思います。  実はこのことは私が急に言い出したのではなくて、こちらの寺谷構成員も政府の委員会の中で 強くおっしゃっていることがございました。私もそれは全く同感でして、ここの中にも書いてあ りますけれども、今回、障害者自立支援法で就労支援が非常に拡大して、これは喜んでいらっし ゃる方も大勢いらっしゃいます。  ところが、実際にその就労支援を受けようとするときに、たとえ1週間でもアルバイトでも仕 事の経験のある方については、その自分の経験を基にして、新しい仕事のことを考えるんですけ れども、仕事の経験の全くない方については学歴だけが頼りということが現実にはございます。  それは一般競争社会ですから、それが当然なんだと言ってしまえばそれまでなんですけれど も、病気ということで自分が望んでいないのに学習を中断した方については公的に何らかの保 障。つまり入学資格を得ている人については、それを病気が理由で中断したんですから、病気の 回復によって再開することが公的認められていいのではないかと思います。と申しますのも、諸 外国ではそのようなことが報告されています。研究の成果も出されております。リハビリですか ら復活させていくということ。そのチャンスを持っていただくということですので、学歴もその 対象として考えていく。あるいは学習するということもその対象として考えていくということが 必要なんだと思います。  そのことを通して、そのことと学習中断者の方の復権という問題と一般的な教育の中で精神障 害のことを具体的にどう取り上げていくのかということも、ここですべての結論は出ないと思い ますけれども、それが課題であるということを明確にしていくべきではないかと思います。  これは私ども看護職の教育の中でもだんだんにわかってきたことなんですけれども、実際に精 神障害の方に講義に来ていただくとか、あるいはそれに類似した体験をするということがその後 の学生の教育の進路に非常に影響するということが大分わかってまいりました。ある意図をもっ て人をケアするという仕事をしようと思って学校に入ってきていても、その人たちにとっても、 直接に触れ合うとか、直接にお互いに理解し合うようなことがなされないと学習が深まらないと いうこともわかってきましたので、看護の教育の中のことがそのまま小学校の教育や中学校の教 育で使えるというふうには思いませんけれども、その可能性については、ここの場で是非考えて いっていただきたいことだと思っております。  以上です。 ○樋口座長 ありがとうございました。ただいまの資料1についての事務局の御説明。そして、 ただいまいただきました末安構成員の御説明に対しまして、この後、御意見、御質問をいただき たいわけでございますが、今日はその後の予定もございますので、おおむねここでは30分程度 の質疑ということでお願いをしたいと思います。  それでは、ただいまの事柄に関しましての御質疑をどうぞよろしくお願いいたします。○良田 構成員 家族会の良田と申します。資料1についてなんですけれども、全体的なことですが、今 後の普及啓発のターゲットの問題ということについて、一言述べさせていただきたいと思いま す。  バリアフリー宣言も児童期からの教育ということも、とても必要なことだと認識しております けれども、以前、私がアメリカのナミという家族会に行きましたときに非常に示唆を得たという か、重要な考え方を教わったわけなんです。ナミというアメリカの家族会は当時、親の育て方が 発病に非常に影響をしているアメリカの根強い社会の偏見に苦しんでいたわけなんです。  当時の偏見に対して、ナミはある計画を立てたんです。発病は親の育て方ではないという一大 キャンペーンを張ったんです。統合失調症のことなんですけれども、統合失調症は親の育て方が 原因ではないという、その一大キャンペーンのターゲットなんですが、社会においてある権力を 持っている人たち、指導的な立場にある人たちとか、あるいは影響力は非常にある人たちに対す る意識の変革を迫るというような運動をしたわけです。  それは一つは政治家であったり、一つは医師であったり、弁護士、教師あるいは警察関係の人。 ほかにも影響力のある人たちはたくさんいらっしゃるわけですけれども、そういう人たちに対し て、いわゆる要の人々の認識を変えていく試みは非常に合理的ですし、それを基に裾野を広げて いって、子どもだとか親たちとか、社会の人々に進化させていく考え方は非常に重要な考え方で はないかということを感じましたので、この場を借りまして、これを国の施策として、是非進め ていくようなことをしていただきたいという希望も含めまして、提案したいと思います。  以上でございます。 ○樋口座長 ありがとうございました。ほかに御意見はありましょうか。寺谷構成員。 ○寺谷構成員 心のバリアフリー宣言等にあります理解の深化について、実際にそういった必要 性はかなり理解が普及されてきつつあるとは思いますけれども、具体的にそれを日常の地域生活 支援のプログラムの一つとして規定していくなどというような制度上の整備も一つは必要なの ではないかと思います。  私どものJHC板橋の中でも、絶えず総合交流と地域貢献ということを課題の中心に据えて、 どうしても理解を求めたり、一緒に参加して共同していただく市民の人たちを必要としていま す。そういった人たちに先ほどの末安委員のお話しくださったエデュケーションサポートの機能 を地域生活支援の中の位置づけることも効果があるのではないかと思います。単に社会参加を当 事者に支援する一方で、もう一つはメンタルヘルスの教育力というようなところで、具体的な制 度上の整備を是非に検討していただきたい。  もう一点は、今の普及啓発のところと全くは無縁ではないと思う観点から申し上げますが、具 体的な支援者に対する支援がもう少し配慮をいただく必要があるのではないかと。いろいろな制 度をつくり上げますけれども、その制度と実際の援助が車の両輪になって実際の効果を促進して いくものと考えておりますので、その辺で担い手になったりする人たちの人材の育成等に関して も、是非ここの場で盛り込んでいただけるとありがたいと思います。  以上です。 ○樋口座長 伊澤構成員、どうぞ。 ○伊澤構成員 今の寺谷構成員の発言にかなりかぶる部分があるんですけれども、普及啓発、理 解の深化の進めていく経過の中で、病気とか疾患に対する理解は確かに困ったんだけれども、や はり私たちが追求すべきは、共生の思想という部分を実態として地域町中につくり上げていくと ころだと思うんです。  それを具体的につくり出していく中で1つのアイデアとして、寺谷構成員のお話にもありまし たけれども、いわゆる地域の中の拠点的事業所。これが例えば精神障害の方の場合だと、全国に 1,600くらいの日中活動系の事業所があるんです。地域生活支援センター、いわゆる在宅支援サ ービスの拠点的な事業体があります。そういうところがこぞって、まさにおっしゃったようにプ ログラムとして、広報、啓発といったものをしっかり織り込んでいけるような流れをつくってい くと、そこは市民生活に同化したような、同じような空気感の中で実践を進めているわけですか ら、やはり情報の伝達力は非常に強いのではないかと思います。  現に実際、いろんな地域のイベントや祭事にそれこそバザーのような形で乗り込んでいって、 ブースを構えて商品を売るとともに、そこの事業所のチラシを配ったりとか、あるいは相談に応 じますみたいなことを皆さんに呼びかけたりとか、そういう営みはあるんですけれども、更にそ れを大胆に進めていくような形を、財政措置を含めてお考えいただくと非常によろしいのではな いかと思っております。  その活動を進めていく中で、これも一つの考え方なんですけれども、各町々には社会福祉協議 会がございます。社会福祉協議会は御存じのように、まさに福祉コミュニティーの創造に向けて 実践の営みを重ねている団体です。まさに福祉コミュニティーですから、要支援者、援護者を包 み込むような社会づくりをしていくのが大きな目標の団体ですから、そことのタイアップ、共同、 連携を深めていくような形もつくり上げていく。  そうすると、社会福祉協議会の持っている幅広のネットワークを活用したりとか、そういう意 味で相互の力を出し合いながら、地域の土壌をつくっていくことにつながっていくのではないか と思っております。そこも一つ織り込みながらの圧倒的な情報宣伝というところが大事かなと思 っております。  以上です。 ○樋口座長 長尾構成員、どうぞ。 ○長尾構成員 先ほどから言われていますように、普及啓発が必要だということは非常に言われ てきているとおりですし、各事業所とか病院とかもいろいろな形でバザーをやったりとか、いろ んな地域のコミュニティーとの交流をやろうということはやっているわけですけれども、なかな か十分にそれが浸透していかないということがあると思います。それがもう少しきちんとやれる ような体制をつくっていかなければいけないということはあると思うんですけれども、是非とも これは行政がきちんと関われる状況というものを本当につくっていただきたい。  例えばこれはサンフランスシスコの例なんですけれども、ある町中の住宅を精神障害の治療居 住施設としてやろうということで提案されて、それをやりかけて、地域から猛反発が出た。サン フランシスコ市は何回も何回もそれに対して話し合いを持ったけれども、最終的には話し合いで 折り合いが付かなかった。  サンフランシスコは何をやったかというと、最終的に裁判にかけたんです。そこで、ひいては 今後の地域の活動がストップしてしまうという、覚悟を持って裁判にかけて、それを勝ち取った んです。そういう姿勢が日本の行政には今までない。行政自らがそういうことを進んでやってい くという姿勢を是非打ち出してもらって、実行していただきたい。そういうことは非常に必要だ と思います。 ○樋口座長 広田構成員。 ○広田構成員 皆さんの話とずれてしまうかもしれないんですけれども、私は横浜市南区という ところに住んで約20年経っていますが、多くの相談者が自宅に訪ねてみえます。そのときに待 ち合わせ場所は交番で、交番のお巡りさんは、私が相談を受けていることを知っていて、私が行 くまでの間、見事にお手伝いをしていただく場合もありますし、例えば町の中で、今、不審者不 審者と盛んにマスコミが騒いでいるんですけれども、不審者と呼ばれるような人が歩いていると 近所の人が、あの人はあなたのところに来ている人と聞くから、うちに来ている人だから優しく あいさつしてくださいねと言うと、それで終わるんです。  そういう町に暮らしていて、この間スーパーがつぶれたんですけれど、こういうふうな心のバ リアフリー宣言とかをしたときに、絶えず精神疾患のことを国民に理解してもらいましょうみた いな形になるんですけれども、それも大切なことかもしれませんが、寺谷さんも高齢化に差し掛 かっている。広田和子ももうじき高齢化になる。中村局長もそのうち定年になる。みんな高齢化 になるわけです。高齢化になるとともに障害も当然出てくる。  そういうときに町の中に、本当に身近に安心して買い物に行ける店が場所が今シャッター街に なってしまっているんです。車に乗っかって郊外に行けば安いものが買えるかもしれないけれど も誰もが行けるわけじゃない。85の杖をついたおじいちゃんやおばあちゃんがそういうところに 買い物に行けなくなるということを考えると、高齢者や障害者に優しいまちづくりということが まず第1点にあること。  それから、その普及啓発とかいろんな教育とかといったときに、絶えず精神だけを言う時代で はない。あの前総理の安倍さんも恐らくうつだったのではないかと思われるような、うつが厚生 労働省と言わず、警察庁と言わず、財務省と言わず、自衛隊と言わず、どこでも多発しています。 そういう時代に来ている今、もし啓発をするのであれば、私は去年、脳梗塞の疑いで医療機関に 行ったんですけれども、結局脳梗塞の相談場所がどこにもなくて、医療機関に行くしかないとい う状況です。  そこで『家庭の医学』という本を買ってきましたら、何と16ページにわたって、心の病気と いうのが入っていたんです。そういうところの文章を精神科医とか私たちが点検して、これは適 切な文章なのかということも一つの啓発だと思うんです。  また、いわゆる精神疾患だけを学校でやるとかではなくて、いろんな病気の中の一つのものと して知らせることが大事ではないかというのが2点目です。  今日は関係者がたくさん見えているんですけれども、私は自分が精神科の病院に25年前に行 って、今、25年間経って振り返ったときに、一番どこに差別偏見があるかというと、やはり患者 本人が持っている内なる偏見。  例えば精神分裂病が統合失調症という病名に変わっても、なおその病気にかかったということ に耐えられない内なる偏見を持っている仲間たちがたくさんいます。  また御家族。医者が息子さんには自律神経失調症と言ってありますが、本当は統合失調症なん ですよというようなインフォームドコンセントをされていない医療が厳然として、まだ存在して いる。そういうために家族関係を不幸にして、けんかしたときに、おまえは本当は統合失調症だ とか言って、子どもさんは暴れているというようなこともたくさんあります。  たまたま岩成先生が見えているからいいと思うんですけれども、25年前に岩成先生が今センタ ー長をやっている病院に行きましたときに、あるPSWがデイケアにいました。その方が、私が 精神医療で医療ミスの注射を打たれて、その副作用で入院し、退院して、患者会活動を始めたと きに、たまたま精神保健センターというところに転勤してきました。そうしましたら、昔の医者 が付けたそう状態だと、妄想だということを精神保健センターの職員に、広田さんは妄想だから、 広田さんはそう状態だからということを言っていました。  たまたま私は2001年の法務省と厚生労働省の重大な犯罪を起こした精神障害者の処遇に関す る合同検討会の参考人に招かれましたが、精神保健福祉センターの職員にいろいろ言われて疲れ てしまって、母が亡くなって間もないということもあって、参考人を断念したんですけれども、 そのときに本来は精神障害者を見守ってくれるはずの精神保健福祉センターの職員が一番足を 引っ張ったということで、私とか私の仲間の多くは、やはり自分の身近なところで足を引っ張ら れて、それが家族であったり、公務員であったり、医者だったり、PSWだったり、看護師だっ たり、と感じています。  だから、そういうふうに世間に対して精神障害者に正しい御理解をと言う前に、まず自分の足 元を見て、本当に精神障害者に対して理解をしているのか、応援をしているのか。していない人 たちが理解をしてくださいと言っても、何を理解したらいいんだということが起こっています。  安田さんもちょうど見えていていいんですけれども、やはりマスコミの報道が非常に偏見とい うか固定観念を撒き散らしている。この間の秋葉原の事件も、あれは騒ぎ過ぎですよと安田さん に言っても仕方がないんですけれども、読売の夕刊の一面に、犯人が、おれは精神病だと、取り 調べで答えたということをわざわざ見出しで出しているんです。  それを見ただけで、精神病というのはああいう怖い事件を起こすのかということがあって、結 果としていろんな社会資源ができるときに反対運動が起きるということで、これは本当に大きな 問題で、どこからどこというのではなくて、全体でマスコミも全部見直さなければならない。患 者は私たち自身も見直さなければならない。家族もそうですし、いわゆる関係の専門家もそうで すし、行政もそうです。  そして、国としてやっていただくのであれば、私はいろんな病気の中の一つとしてやっていた だきたいし、2001年に厚生労働省の精神保健福祉課の人たちが言っていました。精神障害者の啓 発のためにスポーツ大会をやりたいと。美術展をやりたいと言ったんですけれども、もうそうい う時代ではないから、これからは、私は精神科の患者ですということを普通に名乗って、逆に理 解を得られるということで、そういう意味で本人が啓発を受けるということは、本人が自信を付 けて前向きに名乗れる力をつける必要もある。  さっきの伊澤さんの話ではないけれども、何か御相談があったら、どうぞくらい言えるような ことをすれば、変わってくるのではないかと思っています。  以上です。 ○樋口座長 ありがとうございました。では、尾上構成員。 ○尾上構成員 先ほどの理解、普及啓発というところでは、長尾構成員のお話しと行政のところ では通ずるところがあるんですけれども、例えばグループホームを設置するときは住民の理解を まず得てくださいと。  確かにそれは必要なことではあるとは思うんですけれども、なぜ人がそこに住む、暮らすのに 住民の理解をえなければいけないのかというところとか、そういった住民の理解を得る中で、広 田構成員が先ほど言われたように、皆さんは理解は多分しているとは思うんですけれども、一旦 何か事件や事故があったりすると、すぐに住んでいるところから出ていけとか、いわゆるコンフ リクトというんですか。非常に住民の反発運動が起こって、住めない暮らしになってくる。  そのようなときに、本当はそこへ行政機関がきちんと入っていただいて、そこを調整していた だくということも大事ではないか。そうすると、例えば住めなくなってしまう。本当にそこで暮 らしたいと思っていても生活ができなくなってしまうということは、本人にとっては非常に大き な影響があると思います。  そういったところがまず1つ大きいところと、この在り方にも言えるところなんですけれど も、重点施策群の中で、「地域単位での施策の決定の場へ当事者の参画」と謳われておりますが、 第1回目のときに広田構成員の方から、本検討会に当事者が1人であるため、複数名の参加を、 事務局の方に多分意見を投げかけたと思うんですけれども、その辺りもどうなっているかという ところと、その施策の決定の場、地域自立支援行議会であるとか、そういうところに、本当に当 事者の方々が参画しているのか。  先ほど言ったコンフリクトなどというところも、本来だとそういう場で自立支援協議会の中で いろいろ協議できるようなことも必要なのかなと思います。そういうところに本当に当事者が参 画しているのかというところを、事務局の方に是非データを集めていただきたいなと思います。 各地域自立支援協議会は私自身、すごく評価できる部分だと思うし、その部分でいろんな施策が 決定していき、いろんな意見や、ニーズを吸い上げていくという非常に大事な場だと思っており ます。  そういったところで本当にきちんと参画できているのか。それも普及啓発だと思います。そし て実際にこういうことをしているよということがきちんと市民に伝わっているかどうか。そこも 今の現状では伝わっていないのではないかと思うわけです。  そういったところをまず行政の立場、先ほどの社会福祉協議会も出てきましたけれども、やは りそういうところから、まず理解を得ることが大事なのかなと思っています。 ○樋口座長 どうぞ。 ○安田構成員 広田さんから1つ御指摘があって、これまでもずっと指摘を受けていることで、 我々も考えなければいけないことと思うんですけれども、一つ御理解をいただきたいのは、以前 も精神科の通院歴があるとか、そういうことをいちいち書いたりということは確かにあったと思 うんですが、最近は恐らくどこの報道機関もこういった精神障害者、または疑いがある人が関わ った事件についての報道の一定のガイドラインみたいなものを設けているはずなので、徐々にそ こは改善されつつあるのではないかということ。  それと、この間の秋葉原の事件は、非常に日本全国を震撼させたような事件で、あの容疑者の 人となりですとか、警察の取調べにどう答えているかというのは非常に関心が強いということも あったと思うんです。  私は直接報道に携わっていませんので、正確なところは言えませんが、想像するに事の大きさ ということを考えて、ああいう報道になっているんだと思いますので、全部そういったもの一切 をなくすことは非常に難しくて、事実に目をつぶるようなことになりますので、我々もその事件 が起これば、ケース・バイ・ケースの対応でこれからもやっていくし、報道というものの持って いる根本的な部分にも御理解いただければと思います。  それと行政の関わりの話なんですけれども、取材をしていると必ず反対運動はかなりの頻度で 起こっていて、その多くの方がおっしゃるのは、もう少し行政に積極的に間に入って進める方向 で協力してほしいという声を聞きます。  しかし、実際には例えば自治体の幹部が反対派の人民側の支援をしたり、議員も反対する人が いるんです。先ほどアメリカのナミのお話がありましたけれども、議員も行政の人たちも影響力 のある人といいますか、本来であれば推し進めていく立場の人たちが全く理解をしていないケー スは結構見られます。  これは厚生労働省に要望なんですけれども、通知を1枚出せないかと思うんです。自立支援法 をつくった厚生労働省ですので、反対運動が起こっている場合には、行政が積極的に間に入って 進めるという通知を是非、中村局長名で出していただければ、これは相当効果があるのではない かと思います。  以上です。 ○樋口座長 ありがとうございました。では、長野構成員。 ○長野構成員 後も時間をいただいているので2点。この普及啓発、理解の深化というところは、 私たちもまちづくりをしていく中で、何よりも時間をかけているところですし、何よりも力を注 いでいるところで、何十年もかけても不十分であり、とても大切なところだと思うんです。  ずっと意見が出ている中で追随になりますが、まずはやはり施策としての位置づけ、財源の位 置づけ。これが精神障害に関して徹底的に弱いのではないかと。本当に見えないところにお金が かかるというか、そういう活動だと思いますので、財源施策というところをきっちりやっていく ことが大事ではないかと思います。地域交流とかがどの社会復帰施設の事業にも書かれていまし たが、何となく一番端っこで、やれたらやるというような位置づけになっていないかという心配 がありまして、ここをやらない限り地域移行は進まないと思いますので、ここは必要だと思いま す。  もう一つ、ターゲットを明確にしたという論点を挙げていただいて、これはとても大切なこと だと思うんですが、先ほどからちらほらと社協とか市の幹部さんとか議員さんとか、いろいろ出 ていますが、啓発のターゲットをかなりきめ細やかに絞っていかないと、例えば一般医療関係者 とか、逆に精神科医療関係者の偏見がとても強いと感じることがあったりとか、市町の公務員さ んとか、本当にそれぞれ置かれている立場のターゲットで啓発の戦略は全く違ってくるのではな いかと痛切に思います。かなりきめ細やかに10〜20年かけた戦略の中で、普及啓発をきちんと 施策化しながら進めていく必要があると感じております。  以上です。 ○樋口座長 まだ御発言があろうかと思いますが、本日はこの後の予定が大分たくさんあるよう でございますので、またこの課題に関しましては、取り上げていく議論の時間を設けていくこと になろうかと思いますので、とりあえずここでこのテーマについては終わらせていただきたいと 思います。  それでは、本日はお話を伺うということでお願いしております。これから社会福祉法人巣立ち 会よりお越しいただいております4名の方からお話をいただきたいと思います。  本日お越しいただきました4名の方をお名前を御紹介させていただきます。鳥谷敏さん、Aさ ん、横山朋子さん、加藤鞠子さんの4人の方でございます。  御質問等については、この4人の方全員のお話が終わった後でお時間を設けさせていただきた いと思いますので、よろしくお願いいたします。  それでは、鳥谷さんから、よろしくお願いどうぞ。 ○鳥谷敏さん 皆さん、こんにちは。私は調布市の柴崎という町のこひつじ舎という作業所に勤 めている鳥谷敏と言います。今日は余り時間がないんですけれども、私は北海道で生まれまして、 北海道の中学校、高校を卒業しまして、一旦川崎から今度は東京で営業員をやりまして、事情が あってB病院というところに入院したわけです。三十何年近く入院したんですけれども、その間 退院したのは2度ぐらいだったんです。  最後の退院のときに、結局どこか働く場がないかということで、こひつじ舎作業所があるので はないかということで、ケースワーカーから行ってみないかという話になりまして、1年ぐらい 通所したわけです。そして、退院してもうはや5年近く勤務しているんですけれども、作業所と いうのは非常に自分では気に入りまして、今、障害者自立支援法とかいろんな法律があると思う んですけれども、体に多少不自由があっても作業で何とかやっていけるから、是非皆さん、こひ つじ舎に参加してほしいと思うんです。  私の場合は、一応高校まで出ているんですけれども、大学は出ていないわけです。私の兄弟と 親がほとんど大学を出ていまして多少コンプレックスを感じるんですけれども、作業所ならば高 校卒業や中学校卒業で十分作業ができますから、是非皆さん、こぞって参加してほしいと思いま す。  退院促進事業ということなんですけれども、是非退院の方も皆さん、この中にいろんな病院関 係で退院に関与している方もおられると思うんですけれども、是非その面でも努力してほしいと 思います。  話していただきたいことと書いてあるんですけれども、退院してよかったことというのは、結 局、病院にいるより当然表にいた方が人間というのは自由ですね。そういう面でよかったと思い ます。  入院中と何が変わったかと言いますと、やはり退院した方が自由になっていいと思います。  退院して苦労したことはないですかということなんですけれども、私はアパート生活は高校の ころからやっていまして、高校、営業とほとんどずっとアパート生活と寮生活でしたから慣れて いるわけです。別に不自由はなかったです。  私は出張講演で日本中飛び歩いていると言うとおかしいんですけれども、新幹線などでよく行 くんです。病院で入院したら当然退院するのが理屈ですから、退院においては各自受け持ってい る部門もあると思うんです。そういうもので、是非皆さん、退院その他、当然退院の面において いろいろと尽くしてほしいと思います。  以上です。(拍手) ○樋口座長 ありがとうございました。それでは、続きまして、Aさん、よろしくお願いします。 ○Aさん 初めまして、Aと申します。私が心の病気になったきっかけは、私が中学校1年生の とき、突然友人の髪の毛を見てふけがあったので、私は自分の髪が気になり、その日から家に帰 って何度も何度もシャワーで髪を洗ったことでした。  それから、毎日学校に行くときにシャワーを浴びて中学校に通学するようになり、それがだん だんエスカレートして、夜の11時ごろから深夜3時ぐらいまで自分の部屋の掃除をし、物が置 いてある位置も気になり、それがうまくいかないといらいらしていました。  また、中学3年のときに、クラス全員に無視されたり、けられて、物がなくなると同じクラス の人がお前返せよと言われることがありました。クラスの物がなくなると、必ず嫌がらせをされ、 時たま生徒手帳が自分の家の庭先に落ちていたりして、毎日学校に行くのがつらかったです。  親に本当のことを言おうか迷いましたが、自分で解決しようと思い、親父とお袋には迷惑をか けたくないと思いました。それでも、1回だけ100円ライターで体温計の先をわざと熱して、熱 があるからと2日間休んだことがありました。しかし、親父に、A、甘えるなと言われ、次の日 から学校に行きました。  中学3年生の卒業旅行のメンバーを決めるとき、自分だけ仲間に入れず、学校の先生にお前友 達いないのかと言われ、そうではないんですと言ったのですが、結局卒業旅行には行きませんで した。  それから、毎日は顔を金属バットや包丁で脅したり、殴る、ける、家庭内暴力をしました。自 分でも精神不安定になり、C病院に入院しました。窓には鉄格子が付いていて、部屋には盗聴器 が付いていて、監視棟の中に入ると患者の声が筒抜けでした。  時は流れて、高校を2回中退し、16歳のとき、ひとり暮らしがしたくて建設現場で働いたこと がありました。30万たまったのですが、全部高級ブランド品を買うことに使いました。  私の主治医が入院しようと言ったため入院することになり、仕事を辞めました。その後、6回 精神病院に入退院を繰り返しました。  18歳のとき、私は社会で犯罪をして警察に逮捕されました。家庭裁判所を経て少年院に行き、 そこで反省の日々が1年2か月続きました。ものすごくつらかったです。  仮出所後、診断の結果、精神病院に入院することになりました。教官3人と医者、少年院の先 生方と車で病院へ行き、閉鎖病棟に入院しました。法務省の保護監察官の方が面会に来てくれま した。  保護観察中に病院を脱走してキセルをし、自分の家に帰って、親に退院させてほしいと言いま したが、無理だよと言われて、仕方なく自分が逮捕されて警察署の少年課に電話して、病院を脱 走して自分の家にいると事情を話して、刑事に向かいに来てもらい、病院の職員が来るまで警察 署で待っていました。  保護観察中に改めて非行してしまうと、戻し収容といって強制的に少年院に入れられます。そ のときは許してもらいましたが、それから丸5年間入院生活をしました。入院中はいろいろな言 葉が浮かび、自分の考え方が変わりました。うれしかったです。  私の親も引っ越しして、環境的にも恵まれました。入院後、主治医からこひつじ舎作業所の方々 があなたの面会に来ます。自分を飾らないで素直にしてと言われたのでうれしかったです。  その数日後、午後1時30分に田尾さんともう一人のスタッフの方が面会に来てくれて、いろ いろと話した結果、田尾さんからあなたを受け入れますと言ってもらい、うれしかったです。  病院の同じ病棟に入院していた患者さんと一緒にこひつじ舎に通所する日々が続きました。し まいには8か月ぐらい入院していましたが、施設長の林田さんからファミリーレストランの清掃 をしてみましょうと言われて、病院ではナイトホスピタルになり、昼間働いて夕方病院に帰って くるという生活が始まりました。  10か月ぐらいして、自分が住むグループホームのアパートを自分の親と見に行ったりして、認 知試験外泊を何度かしました。私はひとり暮らしが初めてなので、こひつじ舎に通所しながら近 くの援護寮で何度かショートステイをしてからの試験外泊でした。  何度かの試験外泊の後、病院での主治医と親とスタッフのカンファレンスをし、退院日が決ま りました。丸5年の入院生活にピリオドが打てました。  病院から通所していた1年は長く、退院した人を見て、本当に自分が退院できるのかなと思っ たりしたので、退院できてよかったです。退院してからは門限もなく、携帯電話も持てるし、す べてが自由です。生活がすべて変わりました。ただ、自由がある分、金銭管理が大変です。また、 すべて自由な中で、また自分が法に触れることをしないかという心配もあります。  今は週4日ファミリーレストランで、朝清掃の仕事をした後、こひつじ舎に行き、仕事をして 頑張っています。  私は「成せばなる 成せばならぬ 何事も」という言葉が好きです。  以上です。(拍手) ○樋口座長 Aさん、どうもありがとうございました。  それでは、続きまして、横山さんからお話しを伺いたいと思います。よろしくお願いします。 ○横山朋子さん 初めまして。私は、横山朋子と申します。現在、D病院に入院中ですが、今ま での入院を合計すると、D病院では15年ぐらいになります。  私が発病したのは、27歳のころだったと思います。当時、私は眠れず、食べれず、起き上がれ ませんでした。そのころは埼玉県に住んでいて、父も母も健在でした。親戚のおばの紹介で、E 医大の母と行き、そこの先生の紹介でF病院に入院しました。  当時、食欲がなかった私だったのですが、先生が薬の中に食欲増進剤を入れて、そのせいかや せていた私は見る見るうちに太ってしまいました。その当時は、この身長で60キロ以上太って しまいました。  母と父が面会に来てくれただけが楽しみだったと思います。外泊を繰り返して、病院に戻るの が嫌で嫌でたまりませんでした。そして、ある事情があって、G病院へ入院し、元気になって退 院したのです。それがうれしくて、母も父も兄も喜んでくれました。  薬を飲まないでも情緒も安定してきて、本当によくなったのです。それからが問題です。月日 が経って、母が病気になりました。祖父と同じがんになってしまったのです。母にとって苦しい 毎日が続きました。入院して手術をし、すっかり元気になったのですが、それもつかの間、私の 精神病が再発して、具合が悪くなってしまったのです。  そしてG病院に通うようになり、たしかH先生という方が注射をしてくれ、家に帰りベッド で休んでいたところ、兄からママが亡くなったと聞かされ、激しいショックを受けました。平成 元年のことだったと思います。大腸がんで母を亡くしてからもう20年になります。  私もG病院の精神科に入院しました。I先生という方が担当医になりました。そのときは自分 に合わない先生と薬で、朝、昼、夕と粉薬を飲まされ、その薬を飲むとすぐ眠くなりました。病 院には作業やOT活動はあったのですが、眠くなって参加できなくなる状態が続きました。  兄が会社の転勤ということになったため、兄の近くのD病院に転院をしました。そこでOT活 動に参加して、いずれは退院してデイケアに参加するようにと言われました。  今は女子病棟なので、看護婦さんも先生も優しくて快適ですが、H病院に来たばかりのころは 大変でした。人間関係は複雑で、OT活動、そのほかの活動に全部出席して頑張って10年ほど 経ったらやっと退院できました。  担当のJ先生に退院することができてありがとうございましたと言ったら、あなたが頑張った からとおっしゃっていました。でも、その先生の薬が合っていなかったせいか、わずか1年ぐら いでまた病院に舞い戻ってしまったのです。また私にとって苦しい毎日が続きました。  第3病棟、第2病棟と転々とし、気がついたら保護室にいました。そこで前に述べたH先生が 来てくれて、薬を調合してくれたのです。私は日々日々元気になり、H先生に感謝しています。  話が本題になりますが、去年の4月24日に、三鷹の作業所に見学に行きました。D病院のK さんというケースワーカーさんと一緒にバスで行きましたが、第一印象は汚いところで嫌でした。 そこでもう一つのところ、こひつじ舎はどうかなと思っていたところ、縁があり、スタッフのメ ンバーもよい方ばかりで気に入りました。そこで頑張ってみようと思いました。  去年の8月17日から週1日から通うことになりました。だんだん増やしていって、11月から 週2回、2月からは週3回と挑戦しました。ちょうど今年の8月17日で1年となります。  もうすぐ順調にいけば退院となります。こひつじ舎のスタッフの皆さんには感謝しています。 2月には退院の話が出て、林田さんの頑張りましょうの笑みが今でも頭の中に浮かびます。  いろいろな病院で生活保護で親がいない、帰るうちがない、そのような方たちが何百人といる と思いますが、その一人ひとりに、皆さんも病院にいてはもったいない、自分に合ったいい先生、 いいお薬、自分に合った作業所の3つを見つけて、1歩前進して頑張っていただきたいと思いま す。頑張り過ぎずにマイペースで退院してほしいです。  H先生もよくおっしゃっていましたが、神様が見ています。今の幸福をみんなに分けてあげた いです。  最後に、田尾さん、どうもありがとうございました。(拍手) ○樋口座長 どうもありがとうございました。  加藤鞠子さん、よろしくお願いします。 ○加藤鞠子さん 皆様、こんにちは。私はこひつじ舎に勤めている加藤と申します。私がこひつ じ舎さんと縁があったのは、平成13年8月、大切な母を病気で失ったことが原因です。  母を亡くし、L病院で2年間入院し、その後、おおつえんに通っているうち、先生とケースワ ーカーさんから、仕事をしてみませんかとお話をいただきまして、巣立ち会の理事、田尾先生の お力で、病院のすぐそばのグループホームに引っ越してきました。グループホームには常に世話 人さんがいて、私のことをケアしてくださいます。  私は、母を亡くした夏に弱く、平成19年7月7日〜9月20日まで、約2か月半、先生は暑い からもう少し涼しくなるまでとおっしゃって、入院してしまいました。  私の通っている作業所のモットーは、よく働き、よく遊ぶです。例えばお花見、バーベキュー、 旅行などです。今もこれからも、そしていつも心にとめて仕事をしていきたいです。私はこれか ら皆様方と一緒にできる限り長く働きたいと思っています。一番うれしかったのは、退院して妹 と交流ができるようになったことです。  今日は本当にお招きいただきましてありがとうございます。最後に、患者の私が申し上げるの もおかしいのかもしれませんが、皆様方の御健康を心から願っております。  以上です。(拍手) ○樋口座長 4人の皆さん、本当にありがとうございました。大変貴重な皆様の体験を基にした お話を伺わせていただきました。  ここに集まっている構成員、検討会のメンバー、みんないろんなことを今のお話から学ばせて いただけると思います。  この後、ただいまのお話について御質問がありましたら、どなたからでも御質問いただければ と思いますが、いかがでございましょうか。  広田構成員、どうぞ。 ○広田構成員 4人の皆さんが長いこと入院されているということで、そういう人のことを社会 的入院という言い方をしていることを知っていましたか。 ○加藤鞠子さん はい。知っております。 ○広田構成員 いつごろ知ったのでしょうか。 ○加藤鞠子さん 私がこの精神科にかかわりがあってから間もなくです。 ○広田構成員 退院してからですか。 ○加藤鞠子さん 入院中です。 ○広田構成員 入院中知っていたんですか。 ○加藤鞠子さん はい。ケースワーカーさんとか先生とかに教わりました。 ○広田構成員 出るときに、長いこと入院していたから、退院したら不安だなどというのはあり ましたか。 ○加藤鞠子さん 私の場合は社会生活が長かったんです。丸2年という期間はすごく短いような んですけれども長いんです。病院の中での生活ですから、やはり社会にいたころを思い出したり かいま見たりしていましたけれども、両親を失ってしまって、例えば自暴自棄になった時期もあ りまして、どうでもいいやという気にもなりましたけれども、先生とかケースワーカーさんが熱 心に社会に出てみませんかという、強制ではなくて、たまたま入院した病院がすごく明るい病院 だったんです。ですから、現在でも閉鎖病棟があって、どうしても退院したくても退院もままな らない病棟もあると思うんですけれども、たまたまラッキーに、私はそういう病院に恵まれまし たので、そういう不安とかといったものはなかったです。  田尾先生がお勤め先と住居を提供してくださったのが、一番の大きな外に出る原因となりまし た。 ○広田構成員 要するに、勤めるところと寝るところがあったから出れた。そういうものが見れ なかったら、出れなかったかもしれないということですか。 ○加藤鞠子さん 住まいがなければ、やはり無理だと思うんです。 ○広田構成員 ありがとう。横山さんはどうですか。 ○横山朋子さん 私も父と母を亡くしまして、D病院に入院しています。 ○広田構成員 今、入院されているんですね。 ○横山朋子さん そうです。 ○広田構成員 言えなければいいんですけれども、今、まだ退院されていない理由とかみんなの 前で言えますか。 ○横山朋子さん 今、順調に話が運んで、23日にアパートの契約があります。 ○広田構成員 よかったです。  あと何かありますか。 ○横山朋子さん 一番こういう病気の人は、ある精神科医が言っていたんですけれども、安心す ることとよく眠ることが一番大事。 ○広田構成員 そこを目指して今、退院の準備ですか。 ○横山朋子さん そうです。 ○広田構成員 ありがとうございます。  Aさんは、私はぼっとしていたからわからないんですけれども、犯罪を契機に入院したんでし たか。 ○Aさん 犯罪をして精神鑑定の結果です。 ○広田構成員 嫌ならばいいんですけれども、よろしければ、御自分の人生を振り返って、それ で入院されたことを今、どう思いますか。難しかったら、それで出られて今、どうですか。 ○Aさん うれしいです。 ○広田構成員 御家族との交流は今ありますか。 ○Aさん あります。 ○広田構成員 ありがとうございます。  新幹線で飛び回っているそうですけれども、30年間何で入院したと思いますか。 ○鳥谷敏さん それなんですけれども、結局、私の場合は親父が昔、教師をやっていたんですけ れども、司法書士の事務所を持っていたもので、大学に行って事務所のあとを継げということだ ったんです。一旦、東京で営業をやっていたんですけれども、大学に行こうと思って北海道に戻 ったんです。それでアパートを借りたところ、私のところは全学連とか学生運動がすごくて、ア パートに学生がいるわけです。3か月ぐらいで学生の後をつけていったことがあったんです。学 生運動に参加したわけではないんですけれども、アメリカ大使館に行って、中に入れろと、そし てパトカーが来て警察署に泊まりまして、Aさんと同じように精神鑑定を受けて、それで入院し たわけです。 ○林田輝子さん 何で32年も入院したんだと思いますか。 ○鳥谷敏さん それなんですけれども、最初に入院したときに親父が北海道から翌日迎えに来た わけです。そして先生は1、2日で退院しろということなんです。せっかく来たんだから1年や 2年ぐらい病院にいたいと話したんです。親父は最初、入院して2日ぐらいで来て、それから1 か月ぐらいで来て、また退院しろという話なんです。それを無視して、だらだら病院にいるうち に親父が死亡したわけです。慌てたのは私なんです。保証人がいないですからね。 ○広田構成員 保証人がいないから退院できなかったんですか。 ○鳥谷敏さん いや、親父がいたころは保証人がいたんですけれども、30年経って私も退院しよ うという気持ちになってきたわけです。保証人どうしようということで、弟に保証人になっても らって退院したんですけれども、三十何年病院にいたといっても別に病院で遊んでいるわけでは なくて、何て言うかな、興味本位だったですね。そんな感じでしたね。 ○広田構成員 加藤さんが入院していたときのような人がまだいっぱいいるんですよ。加藤さん は、退院できるのに入院していたわけでしょう。 ○加藤鞠子さん そうですね。 ○広田構成員 社会的入院というのは、退院できるのに入院している人のことをいうんですけれ ども、そういう人がどうしたら出てこれるか。 ○加藤鞠子さん そうですね。それは、先ほども申したとおり、医者と患者の心が一致したとき がベストだと思うんですけれども、それはちょっと難しいことかもしれませんけれども、今、こ ういう時代で世の中がどんどん変わってきていますし、受け入れ体制もよくなってきていると思 うので、場所によっては偏見があるかもしれませんけれども、今はそういうこともなくなってき ているはずなんです。  ですから、全く先生と患者さんとの心が一致して、あとケースワーカーさんと住む場所がなけ れば無理な話ですけれども、私は幸いにして調布に住んでいまして、調布と三鷹はグループホー ムがかなりあるんです。そういった福祉の面が、私はわかりませんけれども、結構恵まれている と思うんです。作業所も結構ありますし、そういった点で作業所も自分で選ぶことができますし、 嫌々作業所に通うということではなくて、自分の意思で今、務めている作業所を選びました。 ○広田構成員 よかったですね。行くところがあって、住むところがあって、いい先生に出会え て、田尾さんのような方に出会えて、人との出会いということでよかったですね。 ○加藤鞠子さん そうですね。ありがとうございます。 ○広田構成員 私も厚生労働省というところの委員をさせていただいているんですけれども、普 段はあそこに座ってメガネをかけている中村局長には会えないんです。この会議だから話ができ るので、会議以外では会えないぐらい偉い人だから、いろんな人たちが見えていますから、もし こういうことをお話ししておきたいということがあったら、一人ずつ、どうぞ。余り偉いという ことは意識しないで、どうぞ。 ○鳥谷敏さん やはり厚生労働省ですから病院でしょう。当然退院のことなんか、入院したら退 院するのが普通ですから、退院の面で努力してほしいと思います。  以上です。 ○広田構成員 ありがとうございます。  Aさん、どうぞ。 ○Aさん 精神病院でも、病気が薬を飲んである程度よくなっても、退院しても帰れるところが なくて退院できない人がいっぱいいるんです。そういう人のケアも今後は重要かと思います。  以上です。 ○広田構成員 ありがとうございます。  横山さん、何かありますか。 ○横山朋子さん この原稿だと、27歳のころだったと思うと書いてあったんですけれども、今か ら23年前、御巣鷹山の飛行機事故があったときに発病しまして、家で倒れたままで、起き上が れなくて、何も食べられなくて、とても苦しかったです。先生がすごいいい先生で、薬もルーラ ンという薬を4錠と、マグラックスという便をやわらかくする薬を2錠と、タスモリンという副 作用止めを1錠飲んで、夜はなかなか寝つきが悪くて、ベゲタミンAというのを2錠飲んでいま す。それがすごく自分に合っていて、今は特に支障を来たしませんけれども。 ○広田構成員 ありがとうございます。  加藤さん、何かありますか。 ○加藤鞠子さん お勤めのことも言っていいんですか。私は、中学で職業が決まっていたので、 厚生年金を32、33年かけているんです。今は、厚生年金の障害年金をいただいています。お陰 様で、皆さんのお力で。40代とか30代とかだったら、作業所からワンステップ進んで、そうい った仕事に就かなければならないんですけれども、どんどん職業を探して、スタッフさんにも協 力していただいて、でも、そういう年代を過ぎましたので、私は病気が病気なので、入院しない ように先生の指示通り薬を飲んで、もう3時ぐらいになると、お茶とかコーヒーとか、そんなの は一切だめで、今夜は寝られるかなと、現時点でも毎日が寝られるかなと思ってしまうんです。  そういう面で、こひつじ舎さんに、なるべく受診以外は休まないでお勤めさせていただこうと 思っている次第です。 ○広田構成員 ありがとうございました。 ○樋口座長 ありがとうございました。  それでは、大体時間になりましたので、今日の4人の方々、本当にいいお話を伺わせていただ きました。どうぞ拍手をして感謝したいと思います。(拍手)  ありがとうございました。  それでは、引き続きまして、地域移行の実践に関するお話をいただこうと思います。今回は、 4名の方にお話をいただくことになってございます。御紹介いたします。  本検討会の構成員であります、田尾構成員と長野構成員と、大阪府の茨城病院よりお越しいた だきました病院長の高橋参考人、同病院の事務次長をしておられます山岡参考人の4人の方でご ざいます。  こちらにつきましても、先ほどと同じように全員の方にお話をいただいた後、皆様で質疑の時 間を取ってございますので、そこでお願いしたいと思います。  それでは、早速、田尾構成員のお話を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○田尾構成員 よろしくお願いいたします。今日はメンバーの方がどんな話をするか全然聞いて いなかったんですけれども、聞きながら思わず胸が熱くなる思いで、メンバーの方の話もさるこ とながら、こういう人たちがまだ何万人も病院にいるんだという事実に非常に辛いものを感じて おります。  私の話はメンバーの話に比べると全然どうでもいいような話になりますけれども、一応実践の 報告をさせていただきたいと思います。  まず、資料についてですけれども、お手元の冊子は、昨年度のプロジェクトで行った報告書で す。御参考にしていただければ幸いです。資料3をごらんください。  巣立ち会は、1992年の発足当初から、社会的入院者を地域に受け、地域での生活支援をして いくことを目的に活動を開始しております。  2ページに現在の活動内容。  3ページに地域と精神病院の位置関係を示しています。  4ページは、通所の現状です。体験利用者のうち、括弧内は病院から通っている人の数です。  5ページは、グループホームやそれ以外の居住支援の状況です。  6ページ、私たちのやり方の特徴についてですが、まず1点目は居住確保に力を入れたこと。  2点目は、入院中から地域での活動、具体的には日中活動の場に通ってもらう方法を取ってい るということです。  3点目は、入院患者さんや病院職員への啓発的な働きかけを、利用者と一緒に行っているとい うことです。  4点目は、私たちは原則受け入れに対してNOと言わないことにしているということです。 ○樋口座長 すみません。資料を確認したいんですが、資料3を使って説明していただいている んですね。 ○田尾構成員 はい。 ○樋口座長 そこの中で1、2、3とおっしゃっているのは、ページのことですね。 ○田尾構成員 そうです。 ○樋口座長 そういうことだそうです。よろしくお願いします。 ○田尾構成員 5点目は、24時間365日対応できる窓口を、利用者にも地域の方にも設定して いるということです。  1点目について御説明します。25年の精神科病院勤務の経験から、住む場所と少しの支援があ れば、地域生活を遅れるのではないかと思われる人が、本当に大勢いることを知りました。その ために、グループホームを中心として、それ以外にも障害を開示して部屋を貸してくれる不動産 屋さんや大家さんに協力を求め、アパート確保に奔走いたしました。  結果7ページにあるような、居室を資源として確保し、新築のアパートも5度にわたって建て てもらうことができました。  先ほども話に出ていますけれども、よく偏見の問題とか、反対の運動のことなどを聞かれます けれども、私たちの経験からは地道に地域と連携し、広範囲に理解を求め、何かあったときに地 域住民に安心できる対応を行っていくことで、地域はより深い理解者になっていってくれている と感じています。現在は、地域の方から物件を紹介してくれるという関係ができています。  住民の支援者としての力を引き出していくということこそ、私たちの重要な仕事ではないかと 思っています。ただ、これは一朝一夕にできることではなく、粘り強く継続していくことが重要 かと思っています。  住居支援に力を入れた理由は、8ページにあるとおりです。この住む場所があるということは、 地域生活の見通しがかなり具体的に立てられることになります。生活のイメージがつきやすいの です。目標ができることで患者さん自身も大きく変わります。また、支援者や支援の方法が具体 的になることで、家族や病院も変わります。共同で住むことで、利用者同士の支援も引き出せま すし、利用者の生活状況がほかの利用者からの情報で確認できることも日常で起こってきます。  私ども職員も同じ地域に住むことで、まさに利用者とともに地域で生きています。そのため、 緊急時にすぐに駆け付けられる体制を取ることができています。  2点目の日中活動の場に通うことですけれども、9ページにもありますように、病院から数か 月日中活動の場に通ってもらい、その後、グループホームやアパートを探して退院となるわけで す。  10ページ、長期に入院して退院に不安を持つ患者さんは多く、通所中に少しずつ外の世界に慣 れていく。しかし、不安なのは患者さんだけではありません。何より病院が非常に心配します。 通所することで安心して新しい環境を受け入れていくことを本人だけでなく、病院が受け入れて いくという効果もあると思います。また、現在30名の方たちが病院から通所していますけれど も、退院の対象者を一度に多く持てるという利点もあります。患者さん側からも、ときどき訪問 してくれる地域のスタッフを待つより、自分自身に毎日課題を与えられるわけですから、目標も 明確になり、本人も変わってくる可能性も高くなると思います。  3点目は、今も申しましたが、11ページにもありますように、同じ経験をした利用者が仲間と して自分たちを受け入れてくれるというピアとしての大変の共有化が非常によい効果を生んで いきます。  12ページにあるような形で、病院の入院患者さんや職員に出張講演と称して、ピアの体験談を 伝えるんですが、これも意外なことに入院患者さんだけでなく、病院のスタッフに非常に効果が あることがわかってきています。  4番目として、私たちのモットーとしてNOと言わないということを努力しています。今まで 福祉サービスの利用者は、さまざまな条件をつけられて、サービス利用を断られることが多くあ りました。ほかによりふさわしいサービスがない場合は受け入れる方向で対応していこうという のが、今の私たちのやり方、考え方です。  5番目として、先ほど挙げましたが、24時間365日対応を挙げました。これは、地域で生活 していく上では、もはや当然のことだろうと考えています。  発足当初から、退院促進支援を行ってまいりましたが、病院に勤務している当初、病院中では かなり退院を促進する旗頭になっていたつもりでしたが、自分自身が病院を辞めて地域に出てか ら、病院時代に持っていた基準が間違えていたことに衝撃とともに気づかされました。当時は、 地域で一人暮らしをするのはとても難しいと思っていた人のかなりが、適当な支援と仲間がいれ ば地域生活ができるということがわかったんです。目からうろこが落ちる思いでした。  10年前、ある患者さんが、地域で一人暮らしを前提に退院の準備を進めていたところ、御本人 が退院したら薬をやめると明言したんです。そのため退院をやむなく中断したことがありました。 今ある患者さんが、地域移行を進めていて、御本人が日記に薬をやめたいと書いたんです。それ で病院から退院を延期されてしまいました。  今の私たちは、もう十分に通所の訓練はしたんだし、よしんば薬を中断して再入院になったと しても、一度退院してみるべきだし、再発・再入院の経験も御本人の今後に生かせる体験として 位置づけられると思っています。でも、私たちの考えを病院に伝えてもなかなかわかってもらえ ません。病院は、再発させることが病院の責任であるかのように、罪のように考えています。寺 谷委員がよくおっしゃっているように、だれにでもリスクにチャレンジする権利があるんです。 ただ、そのことを実感を持って理解するのに、私自身も何年もかかりました。今、病院と意見が 食い違うことで、病院を責めることは私にはできませんが、前回の長尾構成員の資料だとか、第 2回目の訪問看護に関わるアンケート調査の中でも、退院したいと望む本人に対して、家族や専 門家は退院ができないと考えているという実態があります。失敗は悪いことではなく、その経験 に寄り添って、次の成功体験に結び付ける支援の仕組みが重要なのだと思います。そこの準備さ えできれば、もっともっと多くの人たちを地域に受け入れられるということは必至だと思ってい ます。  13ページ、結果的にこの事業を通して、病院職員の意識を変えていくことが、先ほど申しまし たように大変重要なかぎになっていくと思われます。東京は、実質の入院患者さんの数でいうと、 精神病者の数は万対19以下になっています。その東京ですら、まだまだ退院できる人は大勢い るというのが実践者としての実感です。  14ページ、家族についても同様のことが言えます。家族は度重なる失敗の体験で気づいている 場合が多いです。家族が退院に反対なのは、家族自身が自分たちの身を守るための悲鳴だと理解 しています。家族に大きな負担をかけずに、地域で支援していくことができれば、多くの家族は ご本人とのよい関係を必ず復活させます。  15ページは、退院を妨げている理由として、医療機関の患者さんへの過小評価と過保護、本人 の意識を無視した入院継続の結果、本人は意欲を喪失し、家族は入院継続に甘んじて変化を好ま なくなり、地域との関係においては連携が必ずしもうまくいっておらず、それぞれの機関で双方 を批判し合っているという状況があります。  このそれぞれの壁にメスを入れていかなければ、社会的入院の地域移行は進まないと思います。  16ページは、過去3年間の退院促進事業の結果です。3年間で54名の方が退院しています。  17〜22ページは、巣立ち会を利用して退院した人たち139名のデータです。  時間の関係で飛ばしますが、私たちの実績をごらんください。1つだけ申し上げておきたいの は、年齢が高齢であろうが、入院期間が長かろうが、退院を妨げる理由にはならないというのが 私たちの実践の印象です。  23ページ、残念ながら、緊急で駆け付けなければならないこともときどきは起こります。しか し、私はそうしたことがあるから入院が長期化されていいという理由には一切ならないと考えま す。問題を予防する手立ては、今後努力しなければならないと思いますが、人は施設ではなく、 地域で生活してこそ人たり得るというのが私たちの信念でもあります。事故を最小限に抑えなが らも、地域移行をまだまだ続けていきたいと思っています。  24ページは飛ばします。  25ページ、最初に申しましたが、この17年間の経験を通して、この事業を始めた当初に考え ていた人たちよりも、もっともっと多くの人が地域で生きられると実感しています。このことに 大きくの専門家はまだ気づいていません。先ほどの広田構成員の話とつながるんですけれども、 どうやってそのことを伝えていったらいいのか、どうしたらわかってもらえるのかが、私たちの 今後の課題だと思っています。やればやるほど当事者自身に生きる力があるのだということで、 残念ながら力をそいでいるのは、専門家によることが多いのだということに気づかされます。利 用者、家族、専門家、市民の意識の変革等、環境整備がもっともっと進み、急性期の治療が済ん で自宅へ戻れない場合は、住居も含めた福祉サービスが、だれでも、いつでも、どこでも利用で きるような、そんな仕組みが全国で早急に展開されるようになっていくことを願ってやみません。  以上で報告を終わらせていただきます。(拍手) ○樋口座長 田尾構成員、どうもありがとうございました。大分時間をせかせてしまって申し訳 ありません。  続きまして、長野構成員、お願いいたします。 ○長野構成員 長野でございます。よろしくお願いいたします。資料4−1を中心に説明をさせ ていただこうと思います。パンフレットの方は、あと見ていただいたらと思います。  まず初めに、愛媛県南宇和群愛南町の精神保健医療福祉ということで、5点の点に絞ってまい りました。  2ページ、私たちの町、愛南町ですが、見てのとおり過疎・高齢化の進む、また産業が乏しく て雇用の場がない、非常に深刻な町です。また、JRが通ってない町で、JRの駅まで自家用車 で1時間ちょっと、普通バスでは1時間半かかるという、非常に隔離された地域にあります。  3ページ、その中で活動しているNPO法人なんぐん市場の設立趣意です。こういうさまざま な立場の住民が、障害の有無を問わず、もう町を興すのは、障害があろうがなかろうが、私たち しかないんだという思いで設立いたしました。地域振興型障害者就労支援というのは、就労支援 を通して町を振興しようと、もう町の産業を興せるのは福祉しかないんだという意気込みを持っ て立ち上げております。  4ページ、特徴としては、やはり多職種の理事、実質的に医療福祉も当然混ぜてもらっていま すが、当事者、町の産業の方々ががっちり組んだ方針であるということ。これからの日本でニー ズがとても多様化していく中で、市民自らが社会的問題を解決することそのものを仕事に、生業 にする仕組みであるソーシャルフォームという仕組みはとても大事だと思っていまして、それの 一つのビジネスモデルになり得るんではないかと思っています。  最後に、ニューツーリズムと書いていますが、人をキーワードとしたニューツーリズム、人と の交流そのものビジネスとして、私たちは就労支援始め、いろんなことをしていこうと考えてお ります。  5ページ、4事業部のうち2事業部が今、立ち上がっています。この2事業部のパンフレット をお渡ししていますが、エコショップも近々立ち上がる予定です。船の写真を載せていますが、 これは若干営業が入っております。是非愛南町においでください。  6ページは、指定管理で山出温泉というところを受託して運営しておりますので、その概要で ございます。  7ページは、今ここで働かれている障害を持たれている方の就労状況です。近々、もう一人入 られる予定ですが、11名の方が働かれております。時給としては、ほかのパートの方と全く同じ 660円をキープしております。  8ページは、平成19年の自立支援調査研究プロジェクトでさせていただいたものですが、や はり就労支援に指定管理者制度を活用することには、かなりメリットがあるのではないかと考え ています。  まず既存の公共施設を使って、ほとんど自己資金のない中で、初期投資を最低限に抑え、低リ スクに会社を起こしていける。また公共施設そのものが住民サービスを担う場所でありますので、 障害者自身も住民サービスを担う側に立てる、社会参加が随分推進されると実感しております。  行政と民間の協働は、言うは易しで大変なことだと思うんですが、指定管理者制度そのものが 官民で協働しなければ成り立たない制度です。実質的にがっちり組めたと感じております。  福祉から地域振興へということで、今まで福祉や医療ではどうしてもつながらなかったところ につながっていく実感。  これは全国で実践できるビジネスモデルだと思っています。  自治体側にもメリットがあるということで、これは愛南町側に書いていただいたものです。見 ていただいたらと思います。  格好いいことを言いながら、9ページは泣き言ですが、今、経営の確立に本当に必死です。特 に去年4月に始めた時点では予想していなかった重油の高騰がございます。冷泉を沸かしていま すので、コストとしては一番重油が高く厳しい状況です。ここを何とか乗り切っていきたいと思 っております。  10ページは、先ほどの啓発にもありましたが、ここまでの形ができるまで、先輩たちの昭和 40年代からずっと地道にかなりエネルギーを使って積み上げてきたネットワーク、住民活動とい う歴史があります。それも精神障害のみならず、三障害、高齢障害、子育て、さまざまな分野と 緩やかなネットワークを形成しながら積み上げてきたという歴史でございます。これは資料4− 2にありますので、また見ていただいたらと思います。  11ページは、その中で私たちの精神科医療はどんなふうに取り組んでいるかということで、私 の勤める御荘病院のことを挙げさせていただきました。昭和63年に149床、もともとベッドの 多いところでしたので、減床が特別な事ではございませんが、少しずつダウンサイジングを地域 とともにやってきましたので、その経過をお話したいと思います。  最後の1行に「専門性の向上が大きな課題」と書いてありますが、本当に各部門がむしゃらに 一生懸命やっていますが、専門性という点では特別な病院では決してなくて、平均的な精神病院 ではないかと自分たちでは思っております。  12ページは、先代の院長がつくられて、私たちの管理室にずっとあったものですが、平成8年 にダウンサイジングの計画を立てていたというものです。途中で数字が2、3とありますが、こ れはスタッフの再配置の計画で、少し生々しいものが残っていますが、これは平成8年に作成し て進めてきたということになります。  13ページです。これが今までのダウンサイジングの経過です。入院患者さんを積極的に地域に お返ししながら、かつ空いてきたベッドを閉鎖してきたという歴史になります。緩やかにやって きました。  14ページですが、ここ7年、8年でアウトリーチサービスの入院抑制に対する効果をとても感 じていまして、統合失調症の方に絞ってデータを出してみると、やはり年間の入院数がここ7年、 8年で半減しております。訪問看護の件数入院数が反比例の図を描いてきております。  15ページは、退院先についてです。詳細な分析ができていないんですけれども、先般の国のデ ータと併せる形で11年分を拾ってみました。余り特徴はないのですが、若干死亡退院が少ない 傾向があります。  また、転院先で死亡されている方が多いのではないかという推測もあったので、実はそれも拾 ってみたんですけれども、それほどではなかったと思いました。機会があれば、またデータを提 示したいと思います。  16ページです。これは18年のデータですが、大きくは変わっていませんので出させていただ いています。大体GAF50点以上の方は入院されていない状況になっています。  先ほど田尾さんが言われたように、17ページも見ていただけたらと思いますが、今の74人の 中に、御本人の希望と受け皿のめどが一致していない方が40人いらっしゃいます。決して皆さ ん退院できない社会的入院だとは思いませんが、GAFでいうと従来の社会的入院からは外れる のかもしれないんですが、まだまだ退院できる方がいらっしゃると実感しています。  この前から発言させていただいている認知症の方を中心とした入所待ちの方が28%という形 でいらっしゃいます。ここの課題があると思います。  18ページですが、これは小規模精神科病院だけではなくすべての病院にいえると思いますが、 1病棟単位の規模がケアの質、医療の質にとても影響すると考えてます。平成18年5月、試行 的に、ユニット単位の機能分化の取り組みが現行制度で何かやれないかとやってみたものです。 図のように3つを分割してみました。  19ページは、従来の3対1、15対1では看護配置が足りなくて、補助看護の方を入れて、ユ ニットごとにスタッフを配置して取組みをしてみました。  20ページです。ユニット単位の機能分化の効果としては、スタッフも患者さんも本当にいろん なことを実感しました。  医療事故としては、やはり患者さん同士の暴力みたいなものや転倒事故は激減しました。  長期保護室はやむなしだったと思っていた方で、2名の方が隔離解除できたりとか、食事も50 人一遍でせざるを得なかったと考えていたのに、3つに分けることで非常にゆっくりな雰囲気に なった。  あと、急性期の方と認知症の方の見守りで、どうしてもスタッフが集中してしまって、何とな く置き去りにされがちだった患者さんのところにきちっと責任を持ってスタッフを配置できた ことは大きかったのではないかと思います。  やはり精神科医療の質の向上には、まだまだ人の配置が必要だということを実感しております。  21ページは医療の取組みとして、アウトリーチサービス・地域生活支援の充実、地域の老人施 設との連携をかなり密にやっておりますが、12年という年月をかけて計画的・緩やかに病床のダ ウンサイジングを行ってきました。  退院促進ということは適切にやっていけば確実にできるという実感を持っていますが、職員の 再配置にはかなり頭を痛めてきましたが、何とかここ10年間でアウトリーチの訪問看護であっ たり、認知症ケアを切り口に再教育、再配置をしてきて、職員数としては維持をしております。 有資格者という点では若干減っております。  退院促進、減床を時間をかけて行うことで、受け皿の問題、また移行期の経営、これが一番大 赤字を出してしまうのではないかという不安を持ちながら、かなり綿密にやってきたんですけれ ども、不十分ではありますが、何とかクリアーをしてきたのではないかと思っています。  あと、ユニットによる機能分化の試行的取組みに関しては、とてもよかったと実感しておりま す。  最後22ページになりますが、地方の現場で特に感じていることを中心に課題をあげてみまし た。全国共通な部分はここでは省きました。交通不便、過疎高齢化の街で、ずっと医療に関わる 必要がある慢性疾患の患者さんがとてもたくさんいらっしゃるという況の中で感じていること です。  地域生活支援、少数のニーズに対する支援は、1人しかないニーズとか、3人しか求められな い。けれども、3人しかということではなくて、3人に必要だということだと思うんですが、今 の制度では人数がまとまらないサービスを一つひとつやるのはとても困難です。先ほどのソーシ ャルファームが必要だというのもこういうところだと思います。また、こういうところから、サ ービスの共用ということが必要なのではないかと思っています。  啓発、理解ということでは、講演活動なども、ずっと集会所を周ったり精力的にやっておりま すが、交流活動というのが一番効果的であると実感しています。  あと、医療ですが、小規模病院の問題は、やはり大きな単位でしか取り組めない機能分化の事 があります。また、資格者の確保は僻地にとっては本当に死活問題です。  また高齢化に伴って、認知症の方に対する精神科医療のニーズ、診断がございます。よく確定 診断と言われますが、それだけではなくて、ずっと経過の中で起きてくる状態像、幻覚、妄想な のか、せん妄なのか、身体疾患からくるものなのか、いろんなものがあります。状態像の診断で あったり、周辺症状、緊急対応ということでは、かなりニーズが大きくなっていると実感してお ります。  最後ですが、これは県が定めるものですのでどうかと思いますが、二次保健医療圏域、いわゆ る障害保健福祉圏域が、私たちの町の場合、ほかにも全国であるのではないかと思いますが、と にかく生活圏域と一致していない。宇和島までバスで1時間半といいましたが、半島部からそこ まで行こうと思えば、必ず4〜5時間かかってしまいます。そんなところで保健所も統合して宇 和島だけになりました。実際のサービスとしてほとんど使えない状況があります。  一般医療と同様に機能分化を推進する。これはとても大事なことだと思うんですけれども、結 局は人的資源、ドクターもナースもそうですし、病院機能もそうなんですけれども、中央に集約 してしまうおそれがとても強い。精神保健医療福祉というのは、まだまだ必要があればみんな気 軽に行く場所にはなっていません。何とかきていただいて、やっとケアがスタートできるという 状況の中で、アクセスポイントが更に遠くなってしまうと、ますます治療やケアにつながらない 方が増えてしまいます。これからの施策で絶対に気をつけていただきたいし、私たちも何とか打 破していきたいと思います。  私たちの町にある総合病院も、この春に27名いた医者が13名まで減って、地域医療、救急医 療、緊急の虫垂炎の手術さえ私たちの町でできない状況になってきています。  愛媛県の南予地方の病院でそうなった病院が3か所あります。どこも壊滅の状態です。精神科 医療でも同じことが起きたのでは、町に暮らす精神障害を持たれる方、認知症の方は暮らしてい くことがどうしてもできないと思っていますので、やはりここに配慮された計画ができていけば いいと思うし、私たち地域としても、これを打破していくような施策を自ら考えていきたいと思 っております。  以上です。若干延びました、申し訳ありません。(拍手) ○樋口座長 ありがとうございました。  続きまして、高橋参考人、山岡参考人からお話を伺うことになりますが、ここでお二人の紹介 をごく簡単にさせていただきたいと思います。  高橋参考人は、先ほど申し上げましたが、茨木病院の院長でいらっしゃいますが、大阪精神科 病院協会の副会長、そして、日本精神科病院協会の常任理事を歴任され、現在、清風会茨木病院 の院長でいらっしゃいます。  山岡参考人は、精神保健福祉士として、医療福祉相談室に勤務された後、デイケアセンターな どリハビリ部門の責任者を経て、コメディカル部門を統括され、現在は茨木病院の事務次長を兼 ねて、また法人の事業部長でいらっしゃいます。また、茨木病院は精神障害者の地域移行に精力 的に取り組んでいらっしゃると伺っております。  まず、山岡参考人から御説明をいただきます。その後、続けて高橋参考人から御説明をいただ きたいと思います。  それでは、山岡参考人よろしくお願いいたします。 ○山岡参考人 それでは、資料5−2を参考にして、お話させていただきます。地域移行という ことでございまして、私どもでは退院促進委員会をつくって、地域移行に取り組んだということ で、その経緯を簡単に御説明させていただきます。  2ページでございますが、平成16年に改革ビジョンが出て、ちょうどそのころ当院の方では 3年かがりで病棟の改築をしておりまして、その真っ最中でございましたが、改革後の病院の戦 略の中で、改革ビジョンは大きなインパクトがございました。  2ページにありますように、こういう改革ビジョンの時代で、茨木病院の医療はやっていける のかということでございます。法人の方向性を検討するために場を設けまして、時間をかけてブ レーンストーミングを行いました。  結論でございますが、これからの時代は茨木病院がもしくは茨木病院で患者さんを支援するよ りも、患者さんが住む地域が連携をして患者さんを支援する。そういう考え方をベースにして、 私どもの清風会は地域で連携をする、地域連携型の医療法人を目指していこう。そういうことの 実現のために、どういうシステムづくりをしたらいいかということに取組みをいたしました。そ ういう当法人のスタンスを明確にして、地域の対しても、法人内の職員に対してもそれを伝えて いく。特に職員に対しては、意識改革が必要だと考えました。  9ページでございます。まず福祉事業なんですが、地域活動支援センターを中心に地域、特に 自立支援法の後は、茨木市の委託事業になりましたので、人口28万人の茨木市全域にオープン な連携をしていこうということで、3か月ごとに地域住民を含めた当法人の福祉事業の連絡会議 を開催して、意見交換をしようということから始めました。この図にあるところです。  先ほどからもお話を伺っていて、私も同感するところなんですけれども、地域移行ということ は、地域生活への支援、在宅支援をすることでございますから、地域への啓発、地域交流という ことは並行して進めていかなければならない。これは以前からの課題であり、関心事でもござい ました。  医療の方から始めたわけでございますが、平成9年ぐらいから、私どもの病院は、ちょうど病 院を挟むように2つの小学校、1つの保育園、1つの幼稚園、1つの中学校がございます。  特にその中の1つの小学校は、病院の前と後ろの道を通らなければ通学できないように、でき ないこともないんでしょうけれども、大きな遠回りをしなければいけない。通学路に指定されて いるわけでございます。病院の中にも小学校の保護者がおりますので、何年か前から、ときどき 病院の前を通るのは嫌だという声があるという話を聞いておりましたので、何とかこの地域に関 わりを持てないかということを願っておりました。  ちょうどそういうときに、平成8年ぐらいに、私どもの職員に、小学校の先生から茨木病院の 前を通るのが危ないと言う保護者がいるんだけれども、小学校としては大丈夫と保証もできない し、かといってどうすることもできない。どうしたらいいかという話がきているということを職 員から聞きまして、是非その先生を紹介してくださいということで交流の機会を持ちました。そ れ以後、小学校の生徒さんへの啓発と相互交流、それから、教員の方々への啓発を続けさせてい ただいております。  こういう具体的な地域交流が大変力になるというのは、先ほどのお話にもありましたように、 具体的に関わることは大きいと思っております。  また本論に戻りますが、医療のシステムでございます。まず入退院についてです。資料の6ペ ージでございますが、院内的にも地域に向けてもわかりやすいシステムをつくろう。これはいわ ゆる病診連携とか病病連携ということを明確にしようと思いました。  入院については、地域医療連携室を設置して、入院相談、ベッドの調整などを専門に行って、 院内の風通しをよくしようと思いました。また入院処遇という意味では、急性期治療病棟を中心 に、どの病棟への入院も当院では原則3か月が入院ですということを方針にいたしました。  そういう入退院のシステムなんですけれども、最も困難を感じたものであり、また取り組むべ きは、当院も長期入院者が大変多いとうことでございました。長期入院者の退院をどうするかと いうことで、これは退院促進委員会というものを設けて、法人を上げて長期入院者の退院に取り 組むことにいたしました。  それでは、退院促進委員会について、一応この担当でもある高橋から御説明いたします。 ○高橋参考人 それでは、今、山岡が言いました茨木病院における退院促進委員会について、お 話いたします。  実はこの原稿は、今年の初め、大阪府で行われました退院促進強化事業の研修会でお話したも のになります。  まず、私のお配りいたしました資料の3ページです。2002年の病棟改築構想のときに、とに かく精神科急性期治療病棟を新設しようという計画が持ち上がりました。しかしながら、長期在 院者の院内比率が非常に高いことから、現在の状態では急性期治療病棟の運営に支障を来たすお それがあるということでした。  それと、常々厚労省から出ております退院促進施策への対応ということで、病院全体で退院支 援に取り組むことにいたしました。  4ページに移ります。当院の病棟構成はこのとおりでございまして、低床が350床。  今、山岡が言いましたように、2005年当初における入院患者さんの状況は、1年以上の長期 入院者は約72%ということで、長期入院者の割合が非常に高いことがわかりました。  退院促進委員会設置に至る経緯ですけれども、従来の退院支援というのは、ほとんど主治医と PSWの二人三脚で退院支援を行ってきました。だから、個々にばらばらで、余り成果を上げる ことができなかった。たとえ御家族にキーパーソンがおられても、それまでの精神症状によって、 家族との関係がこじれている場合、ついつい入院が長期化する傾向がございます。病院全体で退 院促進に取り組むためには、退院促進委員会の設置、いわゆるチーム医療についての働きかけと いうことでございます。  6ページです。第1回の委員会を2005年12月5日に開催いたしました。以降、現在に至るま で毎月1回開催しております。  「目的」は、ここに書いておりますとおりでございます。  「委員構成」ですけれども、医局から1名、6病棟ありますのでナースが6名、OTRが1名、 病院のPSWが2名、地域活動支援センターのPSWが2名、更にこういうふうにいろんな職種、 いろんな部門が集まっております。特徴といたしまして、圏域の保健所の職員の参加を依頼して おります。  後で言いますけれども、やはり医師が参加する場合、単なる一局員よりも、この病院全体で退 院促進に取り組む場合は、やはり院長もしくは副院長が委員の中に入ることが望ましいというこ とが、後でわかってきます。  「2.退院促進委員会の現状(2)」です。  「各職種の役割」は、ここに書いてあるとおりですので、割愛いたします。  「2.退院促進委員会の現状(3)」です。  「方法」といたしまして、まず入院患者さんの中で在院1年以上をリストアップいたしまして、 それらの患者さんの中から退院促進の対象となるケースを選定いたします。これは病状等を勘案 いたしました。  (3)に、退院を阻害している要因の検討をいたします。  (4)に、処遇を検討いたします。  (5)は実行でありますけれども、(1)〜(5)までの流れを委員会へ報告して、確認するということで ございます。  9ページです。  「実施内容」は、御存じのように2006年1月から開始いたしまして、最初各病棟から対象者 を10名リストアップいたしました。そのうち7名を支援対象ケースといたしました。3月に2 名追加し、6月に5名追加し、9月に委員会で長期入院者の底上げを検討いたしました。これは 主治医は入らなくて、各病棟のナースとOTRだけで対象者をリストアップしまして、計85名 です。  高齢者のケースは、どうしても退院先の選択肢の少なさから、支援体制が膠着化いたします。 そこで85名の各担当医にこの委員会に出席していただきまして、この患者さんの精神症状なり 治療なり、あるいは処遇方針、主治医から見た退院阻害要因について報告していただきます。1 か月に1回ですから、7名の常勤医で2007年6月で終わりました。  こういうふうに、退院促進委員会で各主治医がリストアップされた患者さんについて報告する ことによって、委員会でさまざまな意見が飛び出しまして、主治医から見た退院阻害要因が意外 に他の職種から見て発想の転換ということが生まれます。  10ページは「2.退院促進委員会の現状(5)」です。  過去2年間の実績ですけれども、この表にあるとおりでございます。  「平均在院期間」もかなり短縮されまして、5年以上の比率が下がってまいりました。  11ページは、2006年、2007年11月までの在院1年以上の退院患者さん33名の内訳がありま すが、このとおりでございます。10年以上の6名は、いわゆる介護付き高齢者賃貸住宅が多く見 られました。  12ページ。この退院促進委員会がもたらしました効果と課題についてお話しいたします。効果 といたしまして、まず役割分担の明確化。具体的に取組みですけれども、従来の退院支援ではど うもその支援目的が絞れなかった、効果的な退院支援に結び付いておらなかったと言えます。委 員会の設置によりまして、多職種の意見集約を図ることができるようになったということが大き な効果であります。  次に、チーム医療に対する気運の高まり。担当ケースに対する意識が高まってきまして、積極 的な取組みが行われるようになりました。チーム医療という言葉だけが先行して、具体的に実質 どういうことがチーム医療かというのがあいまいでありましたけれども、この退院促進支援を取 り組むことによって、チーム医療に対する気運が高まってきた。今までともすれば退院支援につ いて関心の薄かった病棟のナース自体から、病棟カンファレンスを開催しようということで、各 病棟で次々と退院支援に向けた病棟カンファレンスが開催するようになりました。退院支援を視 野に入れた処遇方針へ変わってきたわけです。  13ページです。「3.委員会がもたらした効果と課題(2)」の課題ですが、新たな長期在院 者を生み出さないための取組みが必要ではないか。いわゆる3か月以上の入院者の処遇を見直し て、長期入院に至る要因を分析するということが当面の課題ですし、処遇が進んでいないケース は個別的に各病棟でカンファレンスをもって処遇を再検討しようと。  (2)が病棟カンファレンスの見直し。目的の明確化で、病棟スタッフ、担当PSW、OTRだけ でなく、勿論薬剤師も加わりまして、更に退院支援に向けた働きかけを行うこと。これらの病棟 カンファレンスはこの退院促進委員会の方へ報告書を毎月提出しております。これによって委員 会による各病棟の動きとか、病院全体の動きを委員会が把握しています。こういうふうになって いますと、この委員会の中で各ケースの状況について、スタッフ間で共有可能な、いわゆる統一 評価尺度の必要が生まれてきました。それでこういうふうに実は入院時評価ツール、退院評価ツ ール、あるいは今までは医療者側から見たのがクリニカル・パスですけれども、今度は患者さん と相談しながら、患者さんが主体性を持ったクライエント・パスをしなければいけれないという ことになってきます。  この入院時アセスメント票は、もう省きます。  退院支援における作業療法士の役割。PSWの役割というのは退院支援について非常に大切で すし、勿論御存じだと思うんですけれども、やはり長期入院の方の退院支援に取り組むためには、 OTRの役割が非常に必要性が浮かび上がってきました。  当院は男性、女性の比率が3対5で、女性が多い。女性患者さんが退院復帰に踏み切れない、 ちゅうちょしている原因がいわゆる家事、特に調理に対する自信のなさということがかなりの事 例に見られます。御存じのように調理というのは認知機能障害のうちの同時進行の作業に対する 認知機能障害ということで、なかなか普通のOTRの活動ではいけませんので、こういうふうに 退院支援に向けての特別のプログラムが必要である。  18ページは今までの事例で、これも省きます。この事例は失敗例であるんですけれども、やは り余りにも病院スタッフ等、地域のそういうような支援員の思い込みが先走りますと、やはり患 者さんの思いと患者さんの考えをときどきは立ち止まって、やはりそのニーズを確認するという ことが必要ではないかと思います。  20ページは、このOTRの役割について、ここで書いてみました。  21ページもOTRについての役割を書いてみました。  22ページ、最後ですが、まずこういうふうな退院促進委員会の設置によりまして、3つの結合 ですが、チーム医療に対する気運が高まってきた。今までの病棟カンファレンスと言いますと、 ともすれば看護治療、こんな事例に対して病棟ナースから主治医が呼ばれてカンファレンスを持 つんですけれども、そうではなし、いわゆる退院支援に対する関心が薄かった病棟ナースが非常 に積極的な関わりを持ったということは非常に大きく、退院支援を視野に入れた処遇方針。それ が病棟全体へ浸透してきた。  (3)が長期入院者になればなるほどOTRの働きかけの重要性がわかってきたということでご ざいます。  退院支援のことにつきましては、やはり病院全体で取り組まなければいけませんし、ただ単な る医局員が委員に入っていましても、コメディカルが退院支援について取り組んでおりまして も、医局が横を向いてしまうと進みませんので、できるだけ病院を上げて取り組まなければいけ ないと思いますし、チーム医療の大切さがわかりましたし、それには地域との連携が大切である ということでございます。  以上でございます。(拍手) ○樋口座長 山岡参考人、高橋参考人、どうもありがとうございました。  以上、4名の方に今日はお話をしていただきましたが、残り30分前後でございます。この後、 御質問をいただこうと思いますが、余り時間がございませんので、お一人の御質問をできるだけ 簡潔に、多くの方から御質問をいただければと思います。  それでは、どなたからかありますでしょうか。長尾構成員、どうぞ。 ○長尾構成員 それぞれの方から、非常に有益なお話を承って感銘しました。田尾構成員にお聞 きしたいんですが、24ページで若干触れられなかった部分になりますけれども、障害者自立支援 法のポイントで、事業収入が出来高にあったということで、社会支援が増えて、その結果、経営 的にもつながるということが触れられているんですが、この点につきましては、私は田尾構成員 がやられている巣立ち会がある程度の事業規模を持っておられるのではないかと。私は十分なこ とを知りませんので、自立支援法では事業規模を相当確保しないと経営的にも困難であるという ことが言えると思います。  ただ、一般的に精神障害の作業所等、また自立支援法下のいろいろな日中活動にしても、どち らかと言えば小規模のところがまだまだ多いのではないか。そのときに小規模であればあるだけ 経営的にも困難であると。利用者を十分に抱えないとなかなか難しかったり、やはり休むことで あるとか、そういったことも含めてということと、逆に小規模であるがために利用者を確保する ために休むとなぜ来ないんだということで、逆に両者の人にプレッシャーをかけられるというこ とも、現在生じているようなこともあるかと思うんです。そういった部分をどう考えておられる のかということは1つ。  もう一つは、長野構成員が言われたことに関しての意見なんですが、最後に触れられたような、 医療福祉サービスの中央集約化ということが起こってくる。これは過疎化というか、大きなエリ アでなくても、1つは地方の小都市ですね。例えば姫路市なら人口約50万くらいですが、そこ も集約化しようとしているんです。都市部においても、そういった集約をすることがかえってい ろんなアクセス面が非常にまずくなってくる。相談支援事業等についても、細かいサービスを提 供するためには、いろんな拠点がたくさんある方が望ましいと思うので、その辺も意見として述 べさせていただきたいと思います。  以上です。 ○樋口座長 田尾構成員。 ○田尾構成員 自立支援法の事業は、どの事業もある程度スケールメリットがあるというのは事 実だと思います。私たちが実践法に移行する前から、こういう制度が全くできる前から通所に来 たいという人は一切断らないで、受け入れようというスタンスで来ていたんです。お蔭様でとい いますか、規定のランクよりも多くの人がいつも通ってくるようになったという状況がありま す。  なぜそうしたかというと、利用者の利用ニーズをあくまでもとことん汲み上げたいということ だったんです。かつてはそういう制度ではありませんでしたから、それは収入を得るためではな くて、通ってきたいという人がいるときに、定員だからお断りしますということは言えなかった んです。その結果、今は経営的に何とかなっている状況がある。  今は例えば病院は、患者様の時代ですね。私はまだ患者さんとしか言えないですけれども、要 するに利用してくださる方たちの利用ニーズに沿って、利用者の利用ニーズを掘り起こしていく という姿勢が新しい事業所側には、これからもっと必要になるのではないかというふうな考え方 を持っています。  ただ、確かに小規模のところで、地域的に非常に過疎の場所で非常に難しい場所というのもあ るかと思いますし、それはやはりそれぞれの地域特性に応じた行政とのやり取りとか、例えば私 どものところは市が独自の補助金を出してくれたりとかしていますので、そういうようなやり取 りをしていくということは必要かなというふうには考えております。 ○樋口座長 岩成参考人。 ○岩成参考人 田尾構成員と長野構成員の今日の発表を聞いていまして、私は還暦を過ぎたころ なんですけれども、還暦を迎えてようやくわかってきたことを田尾構成員と長野構成員はもうと っくにわかっていらっしゃって、それで実践されているということで、非常に感銘を受けました。  例えば私が若いときは、医療を一生懸命やってきたつもりなんですけれども、どうしても患者 さんを実際の能力よりも、それほどないような気がしていたんです。ある意味では、我々は守っ てあげるようなつもりで患者さんを見てきたわけです。  私は民間の病院も公的な病院も経験したんですけれども、いずれも勤めたところは家族的な雰 囲気だったんです。だから、患者さんもこれで満足していらっしゃるのではないかと錯覚してい たんです。今日のいわゆる患者さんの発表を聞いてみても、やはり病院よりも外の世界の方が自 由があるということを考えると、今まで自分のやってきたことは一体何だったのかという思いが あります。  今、茨木病院の先生方が発表されたんですけれども、私どもの病院でも同じようなことをやっ てきたんですが、私がこの人はとても退院できないのではないかと思う患者さんも一定の工夫を していくと、特に若いスタッフが私よりも余りそういう偏見も持たないで退院促進をやっていく と、できてしまうんです。そういうことを考えると、田尾構成員とか長野構成員がやっていらっ しゃることは、本当にそのとおりだという気がするんです。  私が一番気になっているのは、日本の精神科医療のマンパワーの少なさが一番問題だと思うん です。私も若いときには1人で40〜50名くらい持っていて、時期によっては70〜80名くらい持 つこともあったんです。そういうふうにしていますと、具合の悪い患者さんを治すことが精一杯 で、少しよくなった患者さんをどうして社会に戻していくのかというところはとても手が回らな いんです。  そういうことを考えると、今の日本の精神科医療で大学病院と一般病院の精神科はようやく1 対16になってきたんですけれども、今はまだ単科の精神科病院は1対48でいいことになってい るんです。看護の方も1対4、1対20でいいことになっている。これはやはり何とかしないと 日本の精神科医療は変わらないのではないか。  たしか前回、小川構成員の方から、精神科医療も普通の医療に早くしましょうという話があっ たと思うんですけれども、これは是非やっていかなければいけないのではないかと強く感じたと いうことを言いたいと思います。 ○樋口座長 佐藤構成員、どうぞ。 ○佐藤構成員 高橋参考人あるいは山岡参考人にお聞きしたいんですけれども、退院促進で病床 の回転はかなりよくなったと思うんですけれども、病床自体は350床は多少は利用率が減ってき たんでしょうか。それは余り変わらないレベルで維持しているんでしょうか。 ○高橋参考人 変わりません。非常に短期入院の人が一部でくるくる回っています。 ○佐藤構成員 そうすると、先ほどの長野構成員の病院では、ベッド数を減らしているんですけ れども、そのようなことは茨木病院さんにおいては可能なのか。可能にするためにはどんなこと があれば、可能になれるのかということをお聞きしたいです。 ○高橋参考人 やはり地域等の連携が非常に大切だと思うんです。地域との連携が進むことによ って、いわゆる病床を削減していく目的になるのではないかと思うんでけれども、今のところは かなり地域の需要といったらおかしいですけれども、希望者がありますので、まだそこまではい かないです。  やはり患者さんに退院していただくには、地域の社会資源の情報が非常に不足しております。 患者さんが退院しようと思えば、自分の地域での生活のイメージが具体化しなければなかなか進 まないので、そういうふうに患者さんにいろいろと地域の社会資源の情報を伝えることが非常に 大切だと思っております。 ○樋口座長 ほかにはいかがでしょうか。どうぞ。 ○長野構成員 ダウンサイジングに関して一言。私が実は赴任をしたのが平成9年です。今のと ころでちょうど12年やっているようになるんですが、先ほどの13ページのグラフを見ていただ くと、退院促進をしてダウンサイジングをしたころというのは、実は入退院はとてもたくさん増 えているんです。それから少しずつ退院促進を進めながらも、実は余り急速にダウンサイジング ができていなくて、それから地域でアウトリーチサービスをしながら、再発入院をどう抑制する かという取組みと重なってきたときに、5年以上かかっていると思うんですが、やっとダウンサ イシングがかなってきたという状況ですので、やはり緩やかにするということと、アウトリーチ、 アクトも今は取り上げられていますが、アクト的に訪問看護や往診をすることで入院が抑制でき る。例えば私が毎日往診に行く。そこに朝往診に行けば、昼と夜は訪問看護か通うというような、 1日3回通って、1週間通えば何とか急性期の症状が治まって入院しなくてもいいというケース が、在宅を強く望む方に関しては年間何例かあるんだろうと思うんですけれども、そういうよう な再入院の抑制のサービスと合わせたときに初めてダウンサイジングができると感じておりま す。  地域、高齢者の方も含めて行き場所のない方、精神療養ではなくて、一般療養で病棟削減の問 題がありますので、行き場所がない方もいっぱいいらっしゃるので、いろんな受け皿の仕組みを 時間をかけてつくらなければ、私たちもダウンサイジングはかなわなかったと感じております。 ○樋口座長 どうぞ。 ○佐藤構成員 そうすると、退院促進といいましょうか。病院においては入退院を少し速くして、 それと並行して、精神障害の方がその地域で生活できるような手段を構築していくということに よって、やがてはダウンサイジングができる可能性があると考えてよろしいでしょうか。 ○長野構成員 はい。 ○樋口座長 広田構成員。 ○広田構成員 私は自立支援法ができるときに、衆議院の参考人で出たんですけれども、そこで この国の隔離収容施策を謝罪してほしという発言をしたんですが、まさに今日4人の仲間が見え て、本当に涙が出る思いです。  ああいうふうに立派に発言できる仲間が、まだ何万人も何十万人もこの日本の中にいることを 思うと、本当にここにただ座っているだけで、じっとしているなり、1日中動き回ったり、寝た りしていますが、やはり国の責任だと思うんです。  出てきたときの日中活動という言い方が私は好きではなくて、日中生活をする場とか、住居の 場というところは、事業者とかいろんな方に考えていただければいいと思うんですけれども、出 る側の患者は国が責任を持って生活保護制度を使って出していただきたい。家族に負担をさせる のではなくて、負担できる家族がいる場合はいいけれども、いない場合、生活保護制度というの は、家を借りて、生活費がないというところからスタートするのが生活保護制度なんです。  ですから、出るお金がない人のために、是非国が責任を持って生活保護制度で出すことがこの 国の隔離収容施策の謝罪の一つだと私は思っています。入っていた人に裁判をかけて保障しまし ょうというのではなくて、現在入院している社会的入院の患者が、彼らたち、彼女たちみたいに、 自由になれてよかった。そういう一言をみんなが感じられるように、当たり前に地域で一人の住 人として暮らせるために国は責任を持って、夕張のようにお金のない市町村に対しては全部国が 持つくらいの意気込みでやらないと、私は社会には出られないと思います。是非国が責任を持っ て、そこのところは出していただく覚悟で皆さんにやっていただきたい。  それをたまたま昨日とおととい、安田構成員が読売新聞の夕刊ですけれども、社会保障部の方 に社会的入院を書いています。私もコメントをさせていただきました。国が責任を持って出して ほしい。国がお金を出してほしい。皆さんが大変だということはよくわかりますが、国がお金を 出しています。  さっきお昼のニュースで、国民社会保障会議が財政をちゃんとやらなければいけないと、その くらい大きな問題が出てきていますけれども、そういう話をしていると、広田和子は妄想になっ たかと思われますが、是非、中村局長も残り少ないですけれども、力を出し切って、この社会的 入院の患者を出すことについて、バックアップ体制とか主体的に取り組んでいただきたいと思い ます。それが国の責任です。退院できるのに入院している。そんな病気は精神以外にない。それ がこの豊かな世界GNP第2位の日本の実態です。その中で、おすしを食べていても、カラオケ を歌っていても、そういう仲間がいるということを思えば、やはり心穏やかでないと、私は精神 医療の被害者として思っております。国の責任で出していただきたい。  以上です。 ○樋口座長 どうぞ。 ○坂元構成員 先ほどの発言で、地域での退院促進の場合に、グループホームなどを設置すると きに、自治体の幹部と議員が一緒になって反対している、いわゆる設置反対者側についている場 合があるという発言がありました。私は自治体の保健医療福祉所管の責任者の集まりの会を代表 して来ている者ですけれども、そういうことが実際にあるのかどうかということは調査をしたわ けではないので分かりませんが、私としてはそういう話があるということはショッキングな話で す。年に2回、総会という集まりがありますので、この話はもしそういうことがあるならば、配 慮願いたいというようにとお願いをしてゆきたいと思います。以上でございます。 ○樋口座長 どうぞ。 ○安田構成員 今の御意見で、私の説明不足だったと思うんですけれども、私が取材をして知っ ている事例は、議員が反対しているケースと自治体の職員が反対しているケースは別の事例です ので、別にグルになってやっているわけではないです。ただ、両方ともあるという話は実際に取 材をした経験があります。 ○樋口座長 ほかに御意見はございますか。上ノ山構成員、どうぞ。 ○上ノ山構成員 普及啓発の件で一言。今日の資料の中にも、10代後半までに何らかの精神疾患 に罹患している可能性のある人は75%というデータを出されました。これを2回続けてされてい ますので、厚労省としてもこの点に関して、何らかの積極的な対策を取られるのかなと期待して います。  やはりこの集まりが今までの精神科医療福祉保健に関する厚労省の無策の尻拭いをするとい う、失礼な言い方かもしれませんが、それだけではなくて、積極的にメンタルヘルス全体を議論 するような場になりたいなと期待しているからです。ですから、このような予防的な観点も含め て議論になるなら、すごくありがたいと思います。そういうことで言えば、この場に文科省の方 がいてくださるとありがたいなと思うんですけれども、そういうことにはならないわけですね。  あとはそのほか、産業メンタルヘルスのことに関しても、自殺関連の問題にしてもそうですし、 語りたいことはたくさんあります。最近の大きな事件に関連して言えば法務省との関で、どのよ うな形で、どのような意見交換を行うことができるのかということは非常に重要なことかと思い ます。  この病気に対する理解という点で、病気を知っているかということ以外に、精神科の病気に関 しては、怖いか怖くないかという認識の問題があると思います。この点に関する質問もあったら いいかなと思うんです。怖いと思っているかどうか。  この点に関する啓発に関しては、かなり積極的に真剣にやらないと、大きな事件があるたびに、 精神障害との関連が議論されて、何らかのよけいな結論が引き出されてしまう可能性がありま す。  現実に医療観察法ができて役に立っているのかという問題があります。医療観察法ができた経 緯が池田小学校の事件をきっかけにできているわけですけれども、池田小学校の事件をきっかけ に医療観察法ができたにもかかわらず、その事件の被告に関しては、この法の対象外という、非 常にねじれ現象があるわけです。  だけれども、今回のような事件があったときに必ず精神障害者との関連が言われて、危ない、 怖いということが言われたりします。怖いと思っているかということと同時に、そういうことに 関して、新しくできた法律の医療観察法が役に立っているのかどうかということも聞いていただ きたいと思うんです。高いお金を出して、非常に莫大な額の予算を注ぎ込んで、大きな高い塀の 建物をつくって、逆に差別を助長するような形の施策になっていないかと思います。  私の近所で起こった殺人事件があるんですけれども、幼稚園の子どもさんをお母さんが送り迎 えの最中に刺してしまった事件がありますが、あのときは事件の最初の報道のときから、病名と 通院歴と実名とが全部明らかになって報道されました。  つまり最初の段階で、この方の責任能力がもう既に警察の段階で判断されて報道されて、しか も病名、通院歴、実名まで報道されて、非常に稀有なケースだと思うんですが、そのような形で、 現場判断で法が施行されるかされないかということが決められてしまっています。  この方は本来、もし可能なら医療観察法の対象であるかなと思うんですが、そのまま責任能力 ありということで裁判を受けています。裁判のたびに私は近くに住んでいますので、詳しい経緯 が報道されます。法廷で暴れて看守に噛みついて云々などということが報道されて、そのたびに 私たちの胸は痛みますし、通院している患者さん方の胸が痛みます。  以上のように啓発活動に関して、怖いかどうか。そして、それに対する新しくできた制度が役 に立っているかどうか。そして、現場の警察官等に関する啓発とか、それらのことはどうなって いるのか。そういうことも、もし議論できたらと思います。 ○樋口座長 ありがとうございました。 ○佐藤構成員 普及啓発に関して、知識のない方に精神障害者は怖くないものだと幾ら言って も、なかなか体験としてわからないところがあると思うんです。身近に精神障害者と触れ合う機 会をたくさんつくる、つまり地域移行をどんどん進めていって、精神障害者というのは、ここに いらっしゃる方みたいに、全然怖くないものだということを経験としてわかれば、更に普及啓発 が進むと思うんです。知識と同時にそういう経験を一般市民が体験できる機会をどんどん増やし ていくということに尽きるのではないかと思うんです。 ○樋口座長 ありがとうございました。それでは、時間になりました。 ○野崎課長補佐 1点だけ、文部科学省の方というお話がありまして、実は今回も少し覚書をし ておりまして、傍聴に来ていただいております。今回は第4回まで来ましたけれども、これまで の取組みのフォローアップが中心になっていますので、あえてメインの席には座っていただいて いませんが、今後は普及啓発ということについて中心的に議論させていただく回には、きちんと メインに座っていただくことも含めて、調整させていただきたいと思いますので、その点だけお 答え申し上げます。 ○樋口座長 それでは、次回の検討会について、事務局の方から日程等を含めて、お願いいたし ます。 ○名越課長補佐 次回の検討会につきましては、平成19年度に厚生労働科学研究で実施いたし ました、精神病者の利用状況に関する調査及び諸外国の精神保健福祉の動向をテーマとして行う ことを予定しております。  日程につきましては、来週6月25日水曜日の13時半から9階の省議室を予定しております。 お手元に次回以降の出席確認についての用紙を準備させていただいておりますので、いつもどお りこちらに御記入の上、御提出をお願いいたします。調整の上で、また正式な御案内は後日お送 りさせていただきますので、よろしくお願いいたします。  次々回の第6回の会議ですけれども、これは7月16日水曜日の15時から。  更にその先の第7回でありますけれども、7月31日木曜日の15時から予定をいたしておりま す。また細かい調整をさせていただきますけれども、御承知いただければと思います。  事務局からは、以上でございます。 ○樋口座長 本日はお忙しい中を長時間にわたりまして、ありがとうございました。いろいろな 立場からヒアリングでお話をいただきまして、大変有意義な会議であったと思います。  それでは、これをもちまして、第4回の検討会を閉会いたしたいと思います。どうもありがと うございました。 (了) 【照会先】  厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部  精神・障害保健課企画法令係  電話:03-5253-1111(内線3055、2297)