08/06/03 「第1回労働安全衛生法における特殊健康診断等に関する検討会」及び「平成20年度化学物質による労働者の健康障害防止に係るリスク評価検討会第1回健康診断に係る小検討会」議事録       第1回労働安全衛生法における特殊健康診断等に関する検討会       平成20年度化学物質による労働者の健康障害防止に係る       リスク評価検討会第1回健康診断に係る小検討会(合同会合) 日時 平成20年6月3日(火) 13:30〜 場所 厚生労働省2階共用第6会議室 ○石井専門官 定刻より前ですがお揃いになりましたので、ただいまより始めさせていた だきます。本日はお忙しい中、また足下の悪い中、お集まりいただきまして、誠にありが とうございます。ただいまから労働安全衛生法における特殊健康診断等に関する検討会及 び化学物質による労働者の健康障害防止に係るリスク評価検討会健康診断に係る小検討会 の合同会合を開催いたします。座長が選出されるまでの間、事務局で進行をさせていただ きます。  まず初めに、事務局を代表しまして、安全衛生部長の鶴田よりご挨拶を申し上げます。 ○鶴田安全衛生部長 ただいまご紹介いただきました安全衛生部長の鶴田でございます。 いま司会のほうからありましたように、大変お忙しい中、また足下の悪い中、本検討会に ご出席いただきましてありがとうございます。また、日頃から労働安全衛生行政につきま してご協力を賜っておりますことを、重ねてお礼を申し上げます。  今日は2つの検討会の合同会議でありますが、現在の化学物質の規制につきまして、基 本的な考え方を申しますと、従来は毒性の強い物質に対して、特定化学物質障害予防規則 等により、個別の規制をしてきたところでありますが、最近では事後規制から予防的措置、 リスクアセスメントの導入というものを推進しているところであります。  基本的には、職場において、化学物質による労働者の健康障害の防止を図るためには、 事業者が自らの責務として、個々の事業場における化学物質のばく露状況等を把握して、 その物質のリスクを評価し、その結果に基づいてばく露防止対策を行う等の適切な管理を 行うということを基本としているところであります。  また、国も必要に応じ、有害化学物質について、労働者のばく露状況等のリスク評価を 行い、健康障害発生のリスクの高い作業等につきましては、リスクの程度に応じて、特別 規則により特殊健康診断の実施等の規制を行っているところであります。  今回の検討会は2つあると言いましたが、まず、労働安全衛生法における特殊健康診断 等に関する検討会におきましては、特定化学物質障害予防規則等で規定された既存の特殊 健康診断項目について、規則が制定されて34年過ぎたということもありまして、その当該 化学物質の取扱いも変化しており、作業環境の改善も進んでいることから、最新の医学的 知見をもとに見直しを行うとともに、離職者の健康管理の必要性等について、検討をお願 いするものであります。  もう1つの化学物質による労働者の健康障害防止に係るリスク評価検討会の健康診断に 係る小検討会におきましては、昨年の検討会においてリスク評価を行いましたニッケル、 砒素等の健康診断項目について検討をお願いするものであります。  今後はその健康障害防止に係るリスク評価、特に有害化学物質に係る特殊健康診断項目 に関して、ご検討いただきまして、その検討結果を踏まえまして所要の改正を図ってまい りたいと思いますので、よろしくお願いします。  最後になりますけれども、いまクールビズを推進しておりますので、暑いものですから、 よろしければ上着を脱いでやっていただければと思います。よろしくお願いします。 ○石井専門官 第1回の会合ですので、各委員の先生方のご紹介をさせていただきます。 席順にご紹介させていただきます。大阪市立大学大学院医学研究科教授の圓藤委員です。 慶應義塾大学医学部教授の大前委員です。中央労働災害防止協会労働衛生調査分析センタ ー所長の清水委員です。中央労働災害防止協会労働衛生調査分析センター技術顧問の櫻井 委員です。国立がんセンター中央病院病院長の土屋委員です。東京工科大学片柳研究所所 長の柳澤委員です。松下産業衛生科学センター所長の山田委員です。産業医科大学学長の 和田委員です。  事務局の紹介をさせていただきます。金井労働衛生課長です。榎本化学物質対策課長で す。島田化学物質評価室長です。大淵化学物質対策室長補佐です。井上主任中央じん肺診 査医です。最後に私、中央労働衛生専門官の石井です。どうぞよろしくお願いいたします。  議事に入る前にお手元の資料の確認をさせていただきます。議事次第、その下に座席表 がありまして、資料1「労働安全衛生法における特殊健康診断等に関する検討会開催要綱」、 資料2がその参集者名簿です。資料3「化学物質による労働者の健康障害防止に係るリス ク評価検討会開催要綱」、資料4がその参集者名簿です。資料5「平成19年度化学物質に よる労者の健康障害防止に係るリスク評価検討会報告書の概要」。資料6「粉状のニッケル 化合物に係る特殊健康診断項目について(案)」。資料7「砒素及びその化合物に係る特殊 健康診断項目について(案)」。資料8「特殊健康診断の健診項目に関する調査研究委員会 報告書」ということで、中央労働災害防止協会の報告書です。資料9「職業性間接ばく露 者に係る健康管理についての報告書概要」で、資料10がその報告書となっています。参考 資料1「平成19年度化学物質による労働者の健康障害防止に係るリスク評価検討会の報告 書」で、今回ご議論いただくニッケルと砒素に関する抜粋です。参考資料2は、ご参考ま でに「労働安全衛生法における化学物質に係る特殊健康診断の概要」で、特殊健康診断が どのような法体系で規制されているかを簡単にまとめたものです。資料の不足等がありま したら事務局までお申し付けください。  続いて、本日は第1回ですので、本検討会及び小検討会の座長の選出を行います。事務 局からで失礼いたしますが、本検討会及び小検討会の主な検討事項は、有害化学物質に係 る特殊健康診断の取扱いですので、事務局としては、「化学物質による労働者の健康障害防 止に係るリスク評価検討会」で座長を務めてこられた櫻井委員にお願いしてはどうかと思 いますが、いかがでしょうか。                  (異議なし) ○石井専門官 ご同意が得られましたので、櫻井先生、どうぞ座長をお願いいたします。 以後の進行を座長の櫻井先生にお願いします。 ○櫻井座長 ご指名いただきましたので、座長を務めさせていただきます。どうぞよろし くお願いいたします。  議事に入ります。(1)「検討会の趣旨について」ですが、事務局から説明をお願いします。 ○石井専門官 資料1、資料3の2つの検討会の開催要綱を基に簡単にご説明いたします。 先ほど部長の挨拶でおおよその開催の趣旨についてはお話をさせていただきましたので、 簡単に済ませたいと思います。  まず資料1ですが、「労働安全衛生法における特殊健康診断等に関する検討会開催要綱」 ということで、こちらの「目的」に書いているように、化学物質によっては、その取扱量 や取扱い作業者数が著しく以前に比べて減ったものがあるということもありまして、健康 診断の項目についても、スクリーニング検査としての意義が低下する検査項目がある一方 で、医学の進歩ということがありますので、追加する必要のある検査項目もあるというこ とが言われています。さらにそれを踏まえて、離職者の健康管理の必要性についても検討 を行う必要があるということが考えられますので、これまで労働安全衛生法において規制 されている特殊健康診断について、既存の項目についての見直しを行うこと、その見直し の項目を踏まえて、離職者の健康管理の必要性についても検討を行っていただくというの が、こちらの検討会の趣旨になっています。  資料3をご覧ください。「化学物質による労働者の健康障害防止に係るリスク評価検討会 開催要綱」ということで、こちらの「趣旨・目的」に書いていますが、化学物質について、 国としても、労働者のばく露状況等の関係情報に基づきリスク評価を行い、その程度に応 じて特別規則等による規制を行う等リスク管理を行うことを目的としています。  2の「検討事項」の(2)に「リスク評価に応じた対策について」ということで、その対 策の中に「健康診断を行う」とあるわけです。  3の「構成等」の(1)で、「本検討会は、別紙2の参集者により構成する健康診断に係 る小検討会を開催することとする」となっていまして、本日は、まず、平成19年度の検討 会において、健康診断の必要性が指摘されたニッケル化合物並びに砒素及びその化合物に ついて、小検討会において、健康診断についての項目を検討していただくことを考えてい ます。簡単ではありますが、会議の趣旨としては以上です。 ○櫻井座長 ただいまのご説明に関して、ご質問等はございますか。                  (特になし) ○櫻井座長 引き続いて、関連して資料5の説明をお願いします。 ○大淵補佐 資料5は、平成19年度に開催したリスク評価検討会の報告書の概要で、1枚 紙にまとめたものです。これの詳しい中身については、本日の配付資料の参考資料1です ので、説明はこの1枚紙で説明させていただきます。  平成19年度のリスク評価検討会においては、10物質についてリスク評価を行ったとこ ろです。リスク評価の手法は、労働安全衛生規則に基づいて、事業場から有害物のばく露 作業報告、どのような物質をどのぐらいの量、どのような方法で取り扱っているかの報告 を出してもらいまして、それを基にいくつかの事業場を選定して、そこの事業場に対して ばく露量の測定を行います。その測定結果を日本産業衛生学会とか、米国のACGIHが勧告 している許容濃度を参考に定めた「評価値」と比較しまして、その数値と比べて高濃度の ばく露が見られた場合には、特別規則等により規制をしていくといったスキームを取って います。  平成19年度に10物質を評価した中で、実際に規制の強化が必要であると評価されたの が2物質ありました。1つ目が粉状のニッケル化合物で、2つ目が砒素及びその化合物です。 それぞれの物質の製造あるいは取扱いについて、設備対策あるいは作業のときの作業主任 者、作業環境測定、特殊健康診断といった対策が必要ということが、この検討会で提言さ れました。このうちの非常に専門的な事項である、局所排気装置の性能要件、作業環境測 定に係る測定分析手法及び管理濃度、特殊健康診断の項目については、さらに技術的な検 討を行うべきであるとされました。それを踏まえまして、今回、健康診断の部分について 検討していただく会合をもったというところです。  なお、今後まだ検討すべき事項のうち、局所排気装置関係あるいは測定関係、管理濃度 関係といった事項については、来週10日に開催される管理濃度等検討会で検討する予定と しています。以上です。 ○櫻井座長 ただいまのご説明にご質問等はございますか。                  (特になし) ○櫻井座長 議事に入ります。(2)「粉状のニッケル化合物、砒素及びその化合物に係る特 殊健康診断項目について」です。事務局から一括して説明をお願いします。 ○石井専門官 資料6、資料7、資料8を使って説明いたします。資料6は大前先生に、資 料7は圓藤先生に作成していただいたものです。資料8は、平成19年度に中央労働災害防 止協会委託事業である、「特殊健康診断の健診項目に関する調査研究会委員会報告書」とし て作成したもので、今回、本日検討していただく項目に関連する部分がありますので、そ の部分について簡単にご説明します。  まず、資料6「粉状のニッケル化合物に係る特殊健康診断項目について(案)」について ご説明いたします。1頁、1の「物理化学的性質」ということで、ニッケル化合物について 各種の物理化学的性質ということで、金属ニッケル、ニッケル合金、ニッケル酸化物及び 水酸化物、ニッケル硫化物、ニッケル塩について、それぞれの物理化学的性質について解 説をいただいています。  2の「用途」で、ニッケル化学物質の主な用途を簡単に解説をいただいていて、金属ニ ッケル・ニッケル合金であれば、純金属として、貨幣、家具、実験器具などの製造やメッ キなどに使われることとか、ニッケル酸化物及び水酸化物であれば、着色材等に使われる という用途について、解説をいただいています。  2頁の3の「吸収・代謝・排泄」ですが、ここでは、ニッケルの吸収と代謝と排泄につ いて、簡単に解説をしていただいていて、水溶性ニッケル化合物の吸入ばく露においては、 肺から速やかに吸収されて血中に移行し、主に尿中に排泄されること。それから、不溶性 のニッケル化合物の場合ですと、肺内に沈着し、肺から血液への移行は遅く長時間にわた り肺に残留するといったことを記載をいただいています。  4の「人への影響」です。ここは健康診断に関しては重要なところかと思います。ここ においては主に発がん性について、大きく紙面を割いていただいています。2頁の下から 「発がん性」から始まっていますが、ニッケルに関する発がん性の疫学の調査について記 載をいただいています。ただ、すべて1960年以前のものであるということで、これらの疫 学調査においてニッケル製錬工場の労働者において、肺がん、鼻腔がんの発生による死亡 率の増加が見られるということと、これは個々のニッケル化合物のばく露ではなくて、種々 のニッケル化合物の混合ばく露であるということが記載されています。これらの報告につ いては、3頁の「表1 事業所・工程別にみたニッケルの発がん性」で、個々の報告につい て詳細に記載をいただいています。  3、4頁ですが、表1が続いていて、5頁です。ここで国際的な疫学者から構成されたニ ッケル化合物の発がん性に関する検討委員会の報告書から、重要な部分を書いていただい ています。ここにあるように、過剰な呼吸器発がんリスクに関しては、比較的高濃度の二 硫化三ニッケル及び酸化ニッケルの混合ばく露と関連があったという報告とか、その工場 における肺及び鼻腔/副鼻腔がんの過剰発生は、二硫化三ニッケルのばく露に関連すると いう記載、同じように鼻腔、副鼻腔がんの過剰発生は酸化ニッケルの高濃度ばく露と関連 するといった記載をいただいています。  6頁です。上から3行目の6)ですが、こちらに「ニッケル及びその化合物のばく露が、 肺または鼻腔がん以外のがん発生を示唆する一貫性のある、また説得力のある証拠はない」 ということが記載されています。  4.2「遺伝子障害性」というところです。in vivoでは明確な結果は得られていませんが、 in vitroの研究において、培養細胞においては、高濃度でDNAの合成障害などが見られる と記載されています。6頁の下の「表2」で、それぞれの報告について詳細が記載されてい ます。  6、7頁と表2が続いていて、8頁です。真ん中に4.3として「がん以外の呼吸器毒性」 ということで、ニッケル製錬とニッケルメッキ作業者に、鼻炎、副鼻腔炎、鼻中隔穿孔、 鼻粘膜異形成の報告があること、ニッケル合金を使っている溶接工の肺浮腫の症例報告も しばしば見られるということが記載されています。  4.4の「感作性」というところです。ニッケル化合物はアレルギー性皮膚炎を誘発する。 呼吸気感作性(喘息)に関しては報告は20例程度と少ないが、可能性があることが記載さ れています。4.5「生殖発生毒性」ですが、これについては因果関係の確立が困難だと記載 されています。  9頁です。4.6「腎機能毒性」が書かれていて、高濃度のばく露によって、呼吸窮迫症候 群で死亡した作業者に、著明な急性尿細管壊死が観察されていること、尿中ニッケル濃度 が高い作業者については、尿中のβ2-マイクログロブリンの有意な増加が観察されている ということで、腎機能毒性について記載しています。  4.7は「その他の影響」ですが、心血管系、消化管、血液系、筋骨格系、肝臓、内分泌 系、神経系への影響の報告はないということで、人体の影響をまとめていただいています。  4.8は「職場のばく露限界値」ということで、日本産業衛生学会の評価値、こちらは2008 年度に改訂案審議予定というこで記載をいただいています。それからACGIHの限界値とし て、こちらの値を記載をしていただいています。  以上のヒトへの影響を踏まえまして、今回ご提案いただいた「健診項目に関する提案」 ということで、9頁の下にある一次健診については、こちらの5項目をご提案いただいて います。1つ目として、業務の経歴の調査、2つ目として、作業条件の簡易な調査、3つ目 として、ニッケル化合物による気道及び皮膚の自他覚症状の既往歴の有無の検査、4つ目 として、気道及び皮膚の自他覚症状の有無の検査、5つ目として、皮膚炎等の皮膚所見の 有無の検査、こういうものを一次健診の項目として提案いただいています。  10頁です。二次健診の項目としては、1つ目として、作業条件の調査、2つ目として、 医師が必要と認める場合には、(ア)尿中のニッケル量の測定、(イ)胸部のエックス線直 接撮影もしくは胸部CT撮影、喀痰の細胞診(肺がんを考慮した諸検査という取扱いです。 それから(ウ)皮膚のパッチテスト、皮膚の病理学検査、血液免疫学的検査ということで、 感作性皮膚炎を考慮した諸検査が必要であるということ。(エ)として、腎尿細管機能検査、 それから、(オ)鼻腔の耳鼻科学的検査が必要だということで、2次健診の項目についてご 提案をいただいています。  続いて資料7について簡単にご説明いたします。「砒素及びその化合物に係る特殊健康診 断項目について(案)」です。1.「砒素及びその化合物に係る毒性」ということで、砒素に 関する毒性について解説をいただいています。内容としては、一般に無機砒素化合物は毒 性が高く、有機砒素化合物の毒性は低いとされていまして、急性中毒の症状として、口腔、 食道の粘膜刺激症状、食道の疼痛、嚥下困難をきたす。その後悪心、激しい嘔吐、著明な 腹痛、水様性の下痢をきたすという記載があります。  2つ目の段落で、慢性中毒の症状ということで、脱力感、易疲労性、食欲減退、体重減 少、易刺激性があること、消化器症状として悪心や下痢、腹痛があります。特異的な症状 として、皮膚に接触性の皮膚炎、砒素黒皮症と呼ばれる色素沈着、色素脱出、手掌足底の 角化、皮膚潰瘍などがあると記載されています。  3つ目の段落で、砒素の発がん性について解説をいただいていて、発がん性のある砒素 化合物は特定されていないが、最近の研究で発がん物質はジメチルアルシン酸の還元型が その周辺物質と考えられるようになってきたと書いてあって、最後のところに、砒素によ り皮膚のBowen病、有棘細胞がん、基底細胞がんが多発することは多くの疫学研究で明ら かにされている。肺がんが経気道ばく露した労働者で多発しているということが記載され ています。  2番目として、「砒素及びその化合物に係る健康診断項目の考え方」ということで、先ほ ど資料5の説明で申し上げましたが、平成19年の検討会の報告書において、砒素及びその 化合物物について調査を行ったところ、2事業場・計22人に、二次評価値を超えるばく露 が見られる。そのため、作業を限定せず特殊健康診断の実施等が必要という指摘を受けて います。なお、その中でアルシン、ガリウム砒素については、個人ばく露測定値がいずれ も二次評価値以下であることから、リスクは低いと考えられますので、関係事業場は特殊 健康診断の対象外としたと、今回の考え方としてお示しいただいています。  無機砒素化合物については、亜砒酸、モノメチルアルソン酸、ジメチルアルシン酸の順 に代謝されますので、慢性毒性としては、三酸化砒素、これは現行の特化則の対象になっ ていますが、これと同じと考えていいため、同様の健康診断を行うことが適当であること から、砒素及びその化合物の中に三酸化砒素を取り込み、特定化学物質障害予防規則に定 める三酸化砒素の健康診断を、砒素及びその化合物に係る健康診断に改正して、必要に応 じて改廃を行うことが適当であるというご提言をいただいて、2、3頁に具体的な健診項目 のご提案をいただいています。3頁は新旧対照表のようになっていますが、現行の特化則 の中で、三酸化砒素の健診がすでに定められていますので、その三酸化砒素というものを 砒素及びその化合物と改正する。なおかつ、その中身についての見直しを行うということ で、2頁目に見直しを行う考え方を書いていますので、3頁目の表と対照しながらご覧いた だければと思います。  2頁の(1)に「一次健診」と書いていますが、その前に「健診の対象」という項目です が、その上に書いてあるように、肺がん、皮膚がんの早期発見、早期治療が健康診断の主 な目的となる。長期ばく露をした方に関しては、これが目的となると記載していて、一次 健診については、基本的には、三酸化砒素の健康診断を、砒素及びその化合物に係る健康 診断の項目として問題はないが、作業条件の簡易な調査を実施し、二次健診の必要性の判 断に資すること、それと、尿中ウロビリノーゲンの検査を削除することが、今回提案され ています。これについては、後ほど資料8で詳しく説明させていただきます。  (2)の「二次健診」についてですが、胸部の特殊なエックス線撮影ということは、肺が んの早期発見も目的としたものですので、ヘリカルCTによる検査が望ましいということを 今回ご提言いただいています。  現行の三酸化砒素の健康診断においては、医師が必要と認めた場合ですが、生物学的な モニタリングということで、尿中の砒素の定量を行うこととなっていますが、その砒素を 測定するに当たっては、尿中の砒素を形態別に分別定量することが適当だと今回ご提案い ただいて、ただ、日本人の場合は海産物を多く食べることがありますので、その日本人の 場合においては、ジメチルアルシン酸が多く検出されることがありますので、これを加え ないで砒酸、亜砒酸、モノメチルアルソン酸の合計で15〜20μg/l以下が望ましいという 提案をいただいています。  現行の三酸化砒素の健診項目の中では、「毛髪若しくは尿中」となっていますが、毛髪中 の砒素濃度については、化学形態別の分別定量ができないことから、食事由来の砒素のば く露が除外されないこともありますし、外部から付着する影響を除去するための洗浄が完 全でないことから、今回モニタリングの項目から除外してはどうかというご提案をいただ いています。資料7については以上です。  引き続いて、資料8の説明をいたします。いま申し上げました項目に関係のあるところ だけをまず簡単にご説明いたします。7頁をご覧ください。4の「現行の特殊健康診断項目 についての検討結果」です。(1)「作業条件の調査、又は生物学的モニタリングによるばく 露評価」という項目があります。こちらは現行の特殊健康診断の項目について検討をいた だいたところですが、真ん中のやや下に「現行の特別則では、作業条件の調査は第二次健 診で行うか、又は医師が必要と認める受診者に対して行うこととされており、受診者全員 に対して行うことは義務づけられていない」と記載されています。  8頁です。3段落目に、特別則の制定以来、作業環境は着実に改善され、明らかな健康障 害の発生が認められることは稀になっていることから、リスク管理は著しい成功を収めた と評価ができるという記載をいただいていますが、これらの化学物質にばく露する労働者 数は依然として多く、また近年における作業環境や作業様式の多様性の増加、競争的環境 の激化による作業密度の増加等の状況がある。それから、中・長期的には大きな健康リス クをもたらすようなばく露が依然として危惧されるという理由から、作業者ごとのばく露 評価のための健診項目として、すべての物質について、「作業条件の簡易な調査」を対象者 全員に実施することが必要であるという提言をいただいています。  この提言を踏まえまして、三酸化砒素の健診項目、それから粉状のニッケルについても 「作業条件の簡易な調査」を先行して取り入れることを、今回の見直しで行いたいと考え ていまして、そういったご提言を先生方からの資料でもいただいています。  17頁の真ん中に(6)の「特定化学物質に関する健康診断項目」で、特定化学物質に関 する健康診断項目について検討を行っていただきました。18頁では、尿中のウロビリノー ゲンの検査等について検討を行っていただきました。  現行の特化則においては、肝障害を起こし得ると考えられました物質について、尿中の ウロビリノーゲンの検査が一次健診または二次健診項目として設定されています。ただ、 この尿中ウロビリノーゲンですが、現在医療現場で使用されている機会は減少しているこ とから、これは削除することが適当とご提言いただいていますので、今回、三酸化砒素の 見直しにおいて、尿中ウロビリノーゲンを削除する案をお示しいただいているところです。 事務局からの説明は、これで1段落とさせていただきます。 ○櫻井座長 いまの説明に補足はありますか。 ○大前委員 資料6のいちばん最後10頁ですが、この案を作るに当たって使用した文献が 7つ書いています。いずれも二次文献です。オリジナルには戻っていません。いちばん新 しい二次文献が7番で、これは時間軸に沿って並べてありますが、いちばん最新のものが 2007年6月に経産省の仕事で、有害性評価書です。その上がATSDRで、これが2005年で す。その上が環境省で、指針値をつくったときの2003年のものです。その上がドイツの許 容濃度委員会の提案理由です。その上がACGIHの提案理由です。2番目がEHCでWHOのニ ッケル、これは1991年です。この辺から先ほどのDollのレポートの中に入っていると思 います。いちばん上がIARCのモノグラフです。  これらを使いまして、例えば表1とか表2、表1は少し字体を変えて書いてありますが、 これは環境省で得られた健康評価が非常にうまくできていて、中身に関してはそのままコ ピーしてきています。  6頁の4.2「遺伝子障害性」のところですが、遺伝子障害性があるかないかで閾値がある かないかを判断してやるわけですが、DFGはこの発がんのメカニズムとしまして、ここに 書いているような4つのメカニズムを挙げていて、いずれもDFGの判断としては、遺伝毒 性ではないだろう、「probably due to mechanisms that are not directly genotoxic」と ありますが、ニッケルに関しては直接genotoxicなメカニズムではないのではないかとい うことを記載しています。  このような記載のあるものと、ないものがありますので、一部はgenotoxicという判断 をしている機関もありますし、そうでないという機関もあります。  それから、発がん性に関して最初にありましたように、昔のニッケルの製錬工程で、鼻 腔のがんもしくは肺がんがたくさん出ていますが、製錬工程の改善が終った後、あるいは 製錬以外のニッケル化合物のばく露職場での疫学は、ほとんどがんの報告はありません。 したがって、他の二次もそうですが、発がんの証拠のある報告はみんな製錬工程であると いうところで、製錬工程になると、もちろんニッケルそのものはたくさんありますが、そ れ以外にカーボンとか、あるいはSO2とか、さまざまなばく露のものが同時に、あるいは 鉱石によっては砒素が入ったり銅が入ったりしていますので、そういうもののまとまった ばく露によって出てきたことが考えられると思いますが、どれが原因か、あるいはニッケ ルがどのくらい貢献しているのかに関して情報がありませんので、それに関しては何とも 申し上げられません。  3頁にニッケルの鉱物が2つ書いてあって、鉱石が2種類あるということです。(a)が 硫化鉱で、(b)がラテライト鉱です。硫化鉱とラテライト鉱の製錬工程の文献を見ますと、 硫化鉱のほうでほとんどがんが出ていまして、ラテライト鉱ではがんが出ていません。ラ テライト鉱は酸化ニッケルがメインなのですが、そこに差があるのではないかという議論 もありますが、一方、ラテライト鉱のほうがばく露レベルが低いので、これはばく露レベ ルで説明できるのではないかという説もあります。この辺はまだ結論が出ていないところ だと思います。  健康診断の件ですが、いちばん最後5番目に健診の項目も提案していますが、ターゲッ トは、肺がんと皮膚の感作性になろうかと思いますが、肺がんと言いますと、一次健診か ら胸部のレントゲンが思い浮かぶわけです。ただ、先ほど言いましたように、昔は濃度の 高い製錬作業なので、今回ここで含むのは製錬だけではなくて、他のいろいろな工程も含 まれるということでしたので、一次検査から全員に胸部のエックス線をやるのは非常に躊 躇いたしまして、一次検査からは外しています。以上です。 ○櫻井座長 続いて圓藤委員、砒素に関する補足はございますか。 ○圓藤委員 事務局によく説明していただいていますので、特に補足することはございま せんが、蛇足的に述べますと、砒素の場合はいちばん焦点になるのは発がん性かと思いま す。現在の発がん性の考え方は、無機砒素ばく露した人で、がんが多発している。ただし、 無機砒素ばく露した動物実験では、なかなか成功しない。しかしながら、ジメチルアルシ ン酸(DMA)を投与したラット等で、イニシエータ、プロモータとしての作用がある。in vivo、 in vitroの不足するミレン毒性等の所見から、DMAの還元体、あるいはモノメチルの還元 体、あるいはDMAの還元体に硫黄等が付いたもの等が、発がん物質ではないかというのが、 現在議論をしている段階でありまして、まだそこの結論には至っておりません。そこで、 それを意識しつつ健康診断等を行っていく必要があろうかと思います。もともとの三酸化 砒素の健康診断の項目というのはよくできていて、大幅に変える必要はないと考えていま す。  それから、生物学的モニタリングとして、砒素の代謝物を含めた無機砒素MMA、DMA等を 計ることが望ましいとアメリカのACGIH等はしていますが、我が国においては、DMA等が 多く含まれているので、DMAはモニタリングの項目から外しておくほうが、我が国の実情 に合致しているのではないかと思っております。それで、砒酸、亜砒酸、モノメチルアル ソン酸の合計というのが望ましいと考えております。考え方の違いによって、砒酸、亜砒 酸の2つだけでもいいという考え方もあろうかと思います。  それらの合計の値ですが、15〜20μg/l以下が望ましい。これも論文一つ二つのもの から類推しているのですが、分析法等の開発で、今後この値が少し変動する可能性はあろ うかと思います。当面15〜20を基準と考えるのは妥当だと考えています。 ○櫻井座長 ただいままでのご説明に関してご質疑、ご討論いただくわけですが、順番と して、健診項目のそれぞれのニッケル、砒素の具体的なものに入る前に、作業条件の簡易 な調査の導入、尿中ウロビリノーゲン調査の削除については、資料8の関連部分でご説明 いただいたので、その辺りについてのご質問、ご討議から承りたいと思います。 ○和田委員 1つは尿のウロビリノーゲンは入れるべきではないと思います。これは当然 常識ですので問題ないと思います。  簡易なというのは、結局環境測定の値を示すということでしょうか、十分読んでいない のですが。 ○石井専門官 先ほど少し端折ってしまったのですが、資料8の9頁にその辺りの記載が ありまして、9頁の3段落目ですが、具体的な調査方法についてのご提言もいただいてお りまして、ガイドライン等に明らかにすることが適当であると前置きがついていますが、 聞き取り調査を想定していて、前回以降の作業条件の変化ですとか、環境中濃度に関する 情報、労働者本人の作業時間・ばく露頻度、発生源からの距離、呼吸保護具の着用状況等 の聞き取り調査によるというのを想定しています。 ○和田委員 二次でやる場合は違うわけですか。 ○石井専門官 同じところの下の段落にありますが、二次健診の「作業条件の調査」です が、従来どおりの二次健診あるいは医師判断項目として残すことが適当であると。ここで は衛生管理者、作業主任者等も含めた関係者により、ばく露状況について詳細な調査を行 い、リスクの判定に供することとなるとご提言いただいているので、問診のみで済ませる という一次健診の項目と、そこで切り分けをしているということです。 ○和田委員 ばく露そのものを測定するという意味ですか、環境値の量を。そういうもの ではなくて、状況について詳細な調査というのは、何をやりましょうということになるの でしょうか。 ○櫻井座長 改めて検討する項目だと思いますが、通常考えられるものは。 ○和田委員 一次と二次で両方をやるのにダブっていてもおかしいし。 ○櫻井座長 そうですね。一次でできるだけ丁寧にやっていただきたいというのが本来の 趣旨ですが、いざ問題がありそうだとなりましたら、二次のほうで状況に応じて個人のば く露濃度の測定とか、その他さまざまにできるだけ詳しく、リスクの判断に役に立つよう な情報という趣旨でまとめられていると思います。 ○和田委員 生物学的モニタリングでやろうと思えば、ある程度できるわけですね。 ○櫻井座長 そうですね、生物学的モニタリングも二次のほうで入れてありまして、それ も入れてあると思います。ただ、一次には生物学的モニタリングは今回はあえて入れてい ない。 ○圓藤委員 はい。砒素及びその化合物の健康診断項目として、尿中の砒素化合物の分別 定量というのは考えられるのですが、この技術を現在有している機関は数機関しかないこ と、それから非常に高額である、かつ時間がかかりますので、大量に分析することは難し い、また、現行で二次に入れておりまして、その考え方の延長でいいのではないかという ことです。もちろん一次でできるなら越したことはありませんが、すべての砒素取扱者を 対象にして実施するには、コストベネフィット等を考えますと、時期早尚であろうと思っ ています。 ○和田委員 生物学的モニタリングを尿中のニッケルとか入れていますが、生物学的モニ タリングは健康影響を見ようとしているわけではないですよね。健康影響を見るのであれ ば、ちゃんとした両者の関係とか、閾値とか、明確であるか。一般のドクターが、こうい うのが入っていると、今回はどうだったと、危険があるとか、必ず気にするわけです。そ ういうことは、そのデータがないということであれば、全くいままでの生物学的モニタリ ングで、環境とか、作業条件の見直しをするためのということになりますよね。こういう ものを入れておくかどうかということですね。 ○櫻井座長 ニッケルも一次に入れるのを避けた理由は、その辺にありますね。 ○大前委員 1つはそれで、もう1つはニッケルの場合は水溶性と水溶性でない化合物と、 動態が違うようなので、ニッケルという形でまとめてしまった健康診断項目ですと、入れ られない気がします。水溶性の場合は比較的早く出てしまうので、急性中毒などの場合に は役に立つと思いますが、がんを考えた場合、慢性中毒と考えた場合は仕方がないかなと いうことで、一次健診には要らないと。もし必要だったら二次健診で。 ○和田委員 お金のかかるものを強制的にやらせるかで。医師の判断もありますから、き ちんと知っている医師であれば判断すると。金はかかるは、何のために測っているかもわ からないとなると。環境測定がきちんとあれば、それがある程度判断できて、それで指導 もできるかもしれないと思うのですが。 ○櫻井座長 これを取り入れた場合、管理濃度を決定したとして、通常の作業環境管理の プロセスで、単位作業場所を分類したら、その分類の項目も簡易な調査の項目として考え られると。ほかに何かございますか。「作業条件の簡易な調査」を導入すること、尿のウロ ビリノーゲン検査の削除の方向でよろしゅうございますか。                 (異議なし) ○櫻井座長 ありがとうございました。次に、粉状のニッケル化合物、砒素及びその化合 物につきましては、この「作業条件の簡易な調査」を先行して取り入れる、これはそのあ と特化物規則等に拡大していくという方向性が考えられているわけですが、この2つの物 質について先行して取り入れることにさせていただきます。  次に資料6「粉状のニッケル化合物に関する特殊健康診断項目について」ですが、何か ご質問はございますか。 ○大前委員 私はこれを書いたときに「粉状の」という言葉を全然頭に入れない状態で書 いています。通常のニッケル化合物という形で書いていますので、この資料6自体は粉状 ではなくても、例えば水溶液のような状態でも想定して書いています。粉状といっても、 水溶性の粉状物もありますし、不溶性も両方ともあるでしょうから、包含していると思い ますが、あえて粉状とする必要性はなぜあるのでしたか。 ○大淵補佐 粉状ということを入れましたのは、リスク評価において、いろいろな取扱い 形態でどのようなばく露があるかで調査をさせていただいたわけなのですが、その際に、 労働者に高濃度ばく露があったという作業を分析しますと、そのときの取扱状況が粉状の 取扱いの作業に限定されていて、それ以外の形態の作業については、高濃度ばく露は見ら れなかったということで、ニッケル化合物の中でも、例えば固まり状のものなどは除外し て、粉状のものについてのみ規制をかければ足りるのではないかという形で、ここに「粉 状」という言葉を入れて、先ほどの報告書にもその旨入れさせていただいているところで す。 ○大前委員 粉状というのは、通常のダストと、ヒュームとミスト、粒子状物質全部とい う解釈でよろしいのですか。一般的なイメージとしては、単なる粉で、ダストというイメ ージが言葉としては強いものですから、要するに粒子状のものということでしょうか。 ○大淵補佐 粉状のというのは、どこまでの範囲のものを考えるかにつきましては、議論 にもなっているところですので、来週10日に、このリスク評価の親検討会のほうで、粉状 のニッケル化合物とはどういうものを規制対象にすべきかというところは議題とさせてい ただきたいと思います。 ○櫻井座長 今日のところは健診項目というところに限定して。 ○大淵補佐 はい。 ○櫻井座長 その点は構わないということですね。 ○和田委員 後で砒素のときと絡んでくると思うのですが、どうしてニッケルと砒素で、 胸部レントゲンと所見が一次と二次とどうして分かれて、差があるのでしょうか、それと も重要であるからということなのでしょうか、よりたくさん出るということでしょうか。 一次と二次でこうなっているのを説明できるのですか。  例えば鼻の所見はニッケルでは二次、砒素では一次になっていますよね。砒素ではある 条件を課していますが一次で入れているわけです。ニッケルは二次で入れているわけです。 どうして、そういった差が。それだけ症状が強く出るから大きな所見であるということな のでしょうか。 ○大前委員 ニッケルの場合は、相当高濃度でないとこういう所見は出てこないと思いま すので、それで一次で全員鼻を見ることはないだろうということで、一次にはしませんで した。二次での判断でいいのではないかということです。 ○和田委員 二次にしたということはどういうことなのですか、一次では出ないから調べ る必要ないことを意味されているのでしょうか。 ○大前委員 先ほどがんと同じで、肺がんがターゲットだと思うのですが、ただ、あくま でも高い濃度で肺がんが出ているので一次でやらなかったというのと同じような理由で。 ○和田委員 出てくるばく露年限とか、そういうのはある程度わかっているわけですから、 肺がんの場合はそんなに初めから症状は出てこないわけですから、その前に見つけなけれ ばいけないわけですから、症状がないとか、低濃度ばく露だからいいというわけにはいか なくなるのではないでしょうか。目的は肺がんということで、肺がんがいちばん重要であ るということだったら、砒素みたいな、ある程度の年限とか、そういうものには課したほ うがリーズナブルではないかと思うのですが、どうでしょうか。 ○櫻井座長 いまおっしゃいましたのは、胸部エックス線の撮影を一次で取り上げるかど うかということですか。 ○和田委員 そうです。 ○和田委員 砒素の場合は、条件を課してレントゲンと言っているわけですから、ある程 度どのくらいばく露すると肺がんが出るとか、そういう所見があるのであれば、何年以上 ばく露した人についてはとか、条件を付けてでもいいですから。全員撮るというのはまた 考えものかもしれませんが。 ○櫻井座長 砒素の一次健診の7)で、「5年以上従事した経験を有する場合」というのは、 非常に興味が限定されているのですね。これは健康管理手帳交付の要件に一致しているの です。 ○金井労働衛生課長 座長のご指摘のとおり、この7ですが、令23条第5号、労働安全衛 生法施行令の23条で、これは三酸化砒素を製造する工程において、焙焼もしくは精製を行 う、または特殊な製錬をすると。特殊な製錬はすでに行われていないのですが、高濃度ば く露をする可能性のある業務に5年以上従事した場合は、健康管理手帳をお渡しすると、 それを引用して、こちらについても5年以上ばく露していた方で、一次健診で胸部エック ス線を撮るという整理です。  それに匹敵するものが、ニッケルでもそういうものがあれば、砒素のほうは参考になる と思います。先ほどの大前先生のご意見ですと、そこまでは想定されないということにな ると、ここまでは必要ないのではないかという考え方にもなります。 ○櫻井座長 リスクが高いと判断されたものに限定しているのです。 ○和田委員 三酸化砒素以外の砒素でもそういうデータがあるわけですか。 ○金井労働衛生課長 先ほど言いましたように、三酸化砒素を製造する工程において燃や すような場合には高濃度ばく露します。もう1つはポット法とか、グリナワルド法とか、 今は使われていない製錬方法をやると高濃度ばく露する。そういうものがわかったという ことで、それだけを特出しして、健康管理手帳なり、ここでの一次健診での胸部エックス 線を導入したということです。先ほど申しましたように、高濃度ばく露というのが、特殊 な製錬なり工程においてある、ということであればそういうものを特出しするというのは 考えられるところですけれども、そこまではまだ知見がないのではないでしょうか。 ○櫻井座長 年2回胸部エックス線撮影をやる、というのを全員にやるように義務づける かどうかということを考える場合に、かなり低いばく露の人も実際には入ってきますので、 それが妥当なのかどうか。つまり、二次健診で胸部エックス線撮影をやるかどうかは、ば く露のレベルを作業員の判断に依存するわけです。このようにするのが妥当なところであ ろうという考え方だと思うのです。 ○金井労働衛生課長 補足で申し上げますが、砒素のほうも高濃度ばく露を想定されるも のについては一次健診でやっています。その他の場合は二次健診のほうで胸部エックス線 直接撮影、もしくは特殊なエックス線撮影による検査ということですので、横並びにする とニッケルと同じになります。 ○土屋委員 私は、産業医として素人なので教えてほしいのですが、ニッケルの場合、一 次健診と二次健診の関係はどういう関係になるのですか。一次健診というのは、対象者全 員が受けるということですか。 ○金井労働衛生課長 基本的には、一次健診で所見が見つかって、さらなる健診が必要だ という場合には二次健診のほうで受診をしていただくという流れです。 ○土屋委員 肺の場合は、一次健診の4)の気道で症状があった場合には二次健診に行く ということですね。 ○金井労働衛生課長 症状だけではなくて、先ほど申しましたように。 ○土屋委員 ほかのものでも引っかかるとしてですね。二次健診の2)で「さらに医師が 必要と認める場合は」というのが、もう一回ここでかかるわけですね。 ○金井労働衛生課長 はい。二次健診に行った場合は必ずしていただくのは、砒素の場合 は作業条件の調査をしていただかなければいけないという整理です。ただ、実際には何ら かの検査が必要という場合ですが、そういう場合はエックス線なり肝機能検査なり、血液 検査とかいろいろなものが可能性としてはあるということです。 ○土屋委員 私は肺がんが専門なので肺にこだわってしまうのですが、症状があって二次 健診に回るとすると、肺がんの専門家としては、これはほかの疾患と区別がつかない、症 状があれば全部検査してしまうという頭なのです。ニッケルのばく露がどの程度かどうか は別として、肺がんという観点からいくと、これは撮らざるを得ない。 ○櫻井座長 そういう意味で、一次健診の項目の中で最も重要なのは、「作業条件の簡易な 調査」。それである程度のばく露があると判断したら、ほかの自覚症状の3)、4)、5)があ ろうとなかろうと二次健診に回すと。 ○土屋委員 いま櫻井座長がおっしゃった作業条件のほうを有意に取って、症状がないの で二次健診に行ったというときに、ある程度直線的に発がんとばく露量が決まっているの であれば、どこかに線を引いて、そこからの方はエックス線あるいはCTができると思いま す。その関係が明らかでないとすると、やはり全例撮ってしまうというふうに通常は判断 してしまうということですね。 ○櫻井座長 そういう場合にばく露限界値を援用し、それを超えたばく露がときどきある かと思われるような方は全部測る。 ○土屋委員 その辺は、どこで線を引けというのはわからないです。 ○櫻井座長 そのような具体的な判断はそうなるのではないですか。 ○大前委員 6頁のDollの委員会の報告の7番目に数字が書いてあります。「呼吸がんに よる死亡率増加のリスクは、1mgNi/m3濃度以上の水溶性ニッケル化合物または10mgNi/m3 濃度以上難溶性ニッケルばく露に関連する」という指針があります。非常に粗っぽい目安 ですけれども、これが1つの目安になるのかと思います。 ○櫻井座長 あるいは、これに10分の1の安全率を掛ける、その10分の1を超えていた ら全部、という判断になるのかと思います。 ○大前委員 今度は症状があった場合、多くは中枢気道のがんが考えられるので、エック ス線やCTではつかまらないです。全例喀痰細胞診は症状があればやりたいです。逆に言う と、無症状者の喀痰細胞診は徒労に終わる可能性があります。 ○和田委員 二次健診の場合に、「医師が必要と認める」というのは、例えばエックス線を 撮ろうとか、尿細管の機能をやろうとか、耳鼻科的な検査をやろうというのを、医師は何 で判断するのですか。一次健診では、そういうことはやっていないわけです。 ○櫻井座長 作業条件の調査です。 ○和田委員 これは、高濃度ばく露を受けているから、腎臓が危ないのではないか、とい う推測で尿細管の機能をやるのか、最近酸が多いからレントゲンを撮りましょうというこ とでやるのか。あるいは、一次健診では腹の中は診ていないわけですから、これだけばく 露を受けていれば腹の中にもあるのではないかということで二次健診をやるのでしょうか。 医師が判断するというのは、何で判断するのですか。 ○櫻井座長 これは、ガイドラインが必要だと思います。作業条件の簡易な調査、さらに 詳細な二次健診を受ける作業条件の調査。それでリスクがあると判断されたらできるはず なのです。 ○和田委員 そういうことで、きちんと判断できるかどうかです。 ○山田委員 作業条件の簡易な調査というときに、いちばん大きいのは作業環境測定結果 がいちばん大きい要素になると思うのです。それを確実にやったときに、あとはマスクな どの保護具というのが話に出ました。ニッケルなどだと現実に着ている作業着の状況には ものすごく付着しているものもあったりするわけです。そういうのは、作業条件の調査の ところで、まずは作業環境測定結果というのをどのように判断するか、というのがいちば んの目的になります。そうなると、簡易な調査ではないのではないかと思うのです。その 簡易な調査と、二次の作業条件調査というようなところの差というのはどの辺にあるのか と思うのです。 ○金井労働衛生課長 あくまでもこの調査研究を読んだだけの話ですから、もうちょっと 別の見方があるかもしれませんが、私の考え方として、作業条件の簡易な調査というのは、 まず労働者本人に聞ける範囲である。ただ、そうは言っても先生ご指摘のとおり、作業環 境測定の結果がわかれば、事前に事業場のほうに教えてくれと。労働者ではなくて、衛生 管理者なり、作業主任者がその健診をする方に直接教えてくれと。それを事前に把握して おくというのも入ると思います。そういうことで、簡易な調査がやられます。  二次健診での作業条件の調査については、衛生管理者なり、作業主任者が、日常考えて いるような課題などを含めていろいろ教えていただくということで、基本的には労働者本 人に聞くのでそれほど時間はかからない、という意味で私は簡易な調査とイメージしてい ます。 ○山田委員 現実に、作業者によってものすごく感覚が違うのです。すごく高濃度の所で も大したことないと言う人と、そんなに出ていなくてもものすごく気にする人といるわけ です。そういうときに、健診する者としてはどうだったのかという条件があると、それで もそんな人なのかという判断もできます。それ以降の判断も、そこがいちばん重要な点に なってくるので、気になる人にとっては非常に低い濃度でもすごく言うわけです。そうな ってくると、簡易調査がそれで終わらなくなってくるから、全部二次健診に行かなければ いけなくなる。 ○金井労働衛生課長 すべてが二次健診ということではなくて、その作業場が良い環境で あるというのがある程度かわっていれば、少なくとも作業条件の簡易な調査の結果二次健 診に行くということではないと思うのです。 ○山田委員 やはり、作業環境測定結果というのが基本的なところで、簡易調査の中にも ないと非常に弱いのではないかという感じはします。 ○金井労働衛生課長 その辺は先ほどの調査研究報告にもありましたとおり、ガイドライ ンが必要ではないかという指摘がありますので、行政側としてもそういうのに取り組んで いかなければいけない。作業環境測定の結果がわかっていれば、当然産業医なり、あるい は健診機関の方に事前にお渡ししていくというルールは作ったほうがいいと思います。 ○山田委員 もう1つは、ニッケルの二次健診で、尿中ニッケル量の測定ということです。 先ほどから大前先生がおっしゃるように、insolubleなほうが非常に問題であるにもかか わらず、これはほとんどsolubleなものを診るわけです。それが、どれほどの意義がある かというか、どの程度の閾値をもって有効なのか、ということがもうひとつわからないの です。 ○金井労働衛生課長 二次健診の(ア)(イ)(ウ)(エ)(オ)は「or」なのです。ドクタ ーが、この職場はinsolubleなものが多いということになれば、(ア)は当然測らないだろ うという意味で、これは全部or綴りですので、and、andではなく。もしandでしたら、 先生がおっしゃるように意味づけがなかなかできないと思います。 ○山田委員 solubleなものの場合に、先ほど急性のところでは非常に有効だということ でした。そしたら、症状としてもっと出ているでしょう。尿中の生物学的モニタリングを やるよりは、症状が出ているという可能性があるのではないですか。 ○金井労働衛生課長 あるでしょうね。鼻などで刺激症状がある場合は、solubleなもの が多いかもしれませんから、そうすると尿中ニッケルを測る問題かもしれません。ただ、 半減期がとても短いので、そうは言ってもあまり意味がないかなという気がしないでもな いです。やたらたくさんばく露した、ということぐらい、判定では似たような形かと思う のです。 ○山田委員 うちでもやっていて、上がることは上がります。 ○金井労働衛生課長 なかなかその意味づけは難しいです。 ○櫻井座長 難しいです。何かやらないで役に立つ場合もあると思うのです。 ○山田委員 やはり上がっていますよ、ということでそういう指導はできます。 ○和田委員 二次健診で、医師が必要と認めるというのは、ガイドラインを出して、それ を産業医が理解してちゃんとできるかというのがちょっと心配なのです。我々は、いちい ち忠告のあれを見なければいけないというのはどういう判断で。 ○金井労働衛生課長 二次健診で医師が必要と認める項目というのは、砒素以外にも結構 あります。設定以来それで行政的には特段問題はなく実行されてきたわけです。その場そ の場で現場の先生方がご苦労されたとは思うのですが、それで大きな問題は聞いていない です。今回、砒素あるいはニッケルでそういう考え方を取り入れても、特段大きな問題に はならないだろうと。ただ、本当にそういうガイドラインが必要なのかどうかというのは ご指摘いただければ、また別途検討しなければいけないとは思っております。 ○山田委員 特化物の場合に、二次健診はほとんど医師が必要な場合というふうになって いることが多いと思うのです。そういう職場にいる人は、医師が必要である場合、という のを注意して見ていると思います。 ○和田委員 慢性の肺がんが出てくるものに対して、医師がそれはリスクがあると判断で きるかどうかです。 ○山田委員 長いですからね。 ○和田委員 長い間かかって出てくると思います。 ○櫻井座長 課題ではあります。 ○和田委員 症状はないと思います。それで環境も大したことないと。その環境も大した ことなければ肺がんは絶対に出ないかということなのです。それもないし、必要ないと判 断してしまうだろうと思うのです。それでいいかどうか、ということだけなのです。鼻聴 覚の関してもそうですし、腎臓の尿細管に関しても、医師は何で判断するのかと思ったの です。 ○櫻井座長 できる人はできる。 ○和田委員 この人は尿細管のLGを測りなさいと。 ○櫻井座長 そういう人を増やさないといけません。 ○山田委員 ただ、医師がやるときにこれはお金がかかりますから、事業者を納得させな ければいけないです。ここのほうが大きいのです。そういう意味では、ガイドラインをい ただいたらいちばんいいかもしれません。 ○櫻井座長 そうですね、サポートするような資料があったほうがいいですね。ガイドラ インが必要な理由を1つおっしゃっていただきました。 ○金井労働衛生課長 本検討会でご指摘いただければ、行政方としてもそういうことに取 り組まなければいけないと思うのです。ただ、すぐにできるかどうかとなると、1物質に 対して結構時間がかかるのではないかと思います。また、こういう検討会でいろいろご検 討いただくのか、それとも委託事業として、研究的なものとして委託のほうがいいのか、 いろいろ課題はあると思いますので、行政側としても考えてみたいと思います。 ○山田委員 ニッケルの場合、私たちが現場で最初に感じるのは皮膚所見がいちばん大き いです。皮膚所見が出ると、皮膚所見に対して、これは産業起因性があるのかどうかとい うのがものすごく出てくる。気道よりも皮膚所見のほうが最初に出くる。ばく露されると、 皮膚所見がものすごく出てくると思うのです。順序の問題ですけれども、私は皮膚所見が 1)に出てきたほうがいいのではないかと思います。5)ではなくて、最初に皮膚所見のほ うがいいかという感じがします。 ○櫻井座長 5)でなくてというのは。 ○山田委員 一次健診の5)ではなくて、3)に皮膚所見と。 ○櫻井座長 わかりました。3)は既往歴ですね。 ○山田委員 3)は既往歴ですから、4)と5)です。 ○櫻井座長 4)と5)の順番を入れ換える。しかも、「気道及び皮膚」と書いてあるのを、 「皮膚及び気道」にする。3)も、「皮膚及び気道の自覚症状の既往歴」。 ○山田委員 重症度はそうかもわかりませんけれども、見やすいのは逆だと思います。 ○櫻井座長 ご指摘ありがとうございます。 ○土屋委員 私の肺の立場からいっても、その順番のほうがいいと思います。いままで、 二次健診の、医師が必要と認める場合で問題がなかったというのは、肺がんなどは極めて 稀で、おそらくそういう事態がほとんどなかったのだと思います。逆に言うと、極めて稀 ですけれども、そのときに気をつけないといけないのは、二次健診の2)の(イ)のエッ クス線の直接撮影もしくは胸部CT撮影というのは判断に委ねられています。ここはかなり 微妙で、もし万が一肺がんが見つかったとすると、ここは後で裁判になる可能性がありま す。  というのは、定期的にやっていても、いま肺がんというのは半分が進行がんで、手術で きない状態で見つかりますので、その可能性が半分あります。そのときに、胸部直接撮影 でやったときに、CTを撮っていればもっと早い時期に見つかったのではないかという議論 が必ず湧き起こってきます。これは年2回は多すぎるだろうという話がいまや定着してい て、CTなら2年に1回でもという声があるぐらいです。  逆に言うと、単純写真で半年に1回やっていても、そこで見つかったときにはCTでかな り進行がんということがあります。この辺は、自分が産業医で任されるとすると、かなり 微妙な表現だという気がします。 ○櫻井座長 具体的には、これは少し変えたほうがいいのですか。これでは、医師の判断 に任されていますが、判断を助けるという意味で、胸部CTを前に置くとか。 ○土屋委員 いまのところ明確な早期診断のあれはないです。ただ、裁判になりますと医 学的な議論ではなくなるので、こういう表現だとなぜ撮らなかったのだ、というのが引っ かかる可能性があると思います。 ○櫻井座長 これは、基本的には全部6カ月に1回ですが、ただ医師が必要と認める場合 というのは、医師の判断で延ばすことが可能なわけです。胸部CTを1年に1回ぐらいとい うのがいいところなのでしょうか。 ○土屋委員 通常一般的な肺がん健診の場合には、大体いまは1年に1回です。試験的に 1年に2回というのを以前はやっていました。その辺が委ねられると、途中で1回開いて、 次のときに進行がんが見つかったら、どうして前のときにやらなかったのだという議論に なります。ですから、当然健診による被ばく量を減らしてあげようという行為があるわけ です。 ○櫻井座長 そうですね。 ○和田委員 実際に、健診の対象になるような労働者はかなり多いのですか。 ○大淵補佐 今回事業所から出していただいたばく露作業報告のところでいくと、ニッケ ル化合物については約600事業所から行政のほうに報告がありました。報告をいただいた 従事者数をトータルいたしますと約2万人になります。ただ、これはばく露作業報告の対 象が、1事業所当たり1年間の取扱量が500kg以上の所の数字ですので、それよりも少な い量の所も含めるともう少し多い事業所が対象になろうかと思います。 ○櫻井座長 この表現を変えたほうがいいですか。いままでは、ほとんどが「二次健診で 医師が必要と認めた場合は」ということで、胸部CTが入れられたものもありますが、もし くは胸部CTと。 ○土屋委員 必要と認めると、通常臨床上はいきなりCTを撮ってしまうのが多いです。一 次健診で有症状で上がってきたり、ばく露が高濃度であるとすると、いきなりCTをやった りというのが通常は臨床医の反応ではないかと思います。 ○櫻井座長 ニッケルと砒素ではちょっと違ってくるかもしれません。 ○土屋委員 ニッケルというのは、がんのことだけ書いてあるのですが、通常の肺の変化 というのはあまりないのですか。 ○大前委員 8頁の4.3のところに、「がん以外の呼吸器毒性」のことがあります。鼻腔な ども呼吸器上気道なのですけれども、いちばん下のほうに合金を使っている溶接工で肺浮 腫とかいくつかありますが、これが本当にニッケルかどうかというのは難しいという情報 しかいまのところありません。 ○土屋委員 その上の行の線維症というのは、肺線維症の意味ですね。 ○大前委員 はい、そうです。 ○土屋委員 その可能性があるのだとすれば、いきなりCTのほうがいいと思います。線維 症が少しでもあると、これは単純写真ではがんの診断はできないです。前に話題になった アスベストの場合には、単純写真ではまず一般的に発見は難しいです。  これもわからないのですが、タバコの影響がないかどうかです。タバコで倍化するかど うかです。タバコを吸っている人は、タバコだけでも肺がんの健診を受けないといけない のですけれども、この職場環境で喫煙のときにその可能性が上がるかどうかです。 ○大前委員 喫煙に関する補正をして出た情報はほとんどないです。多くの諸説が、喫煙 だけでは説明できないだろうと言っております。だから、当然喫煙との相互作用は必ずあ ると思います。 ○土屋委員 こういう職場にいて、かつ喫煙者であるというのは、一次健診でかなり引っ かかる条件ですね。 ○大前委員 ただ、がんの場合は比較的昔の高い濃度という限定がありますので、現在の ばく露がどのぐらいの量だか把握しているわけではないのですけれども、昔ほどのことは ないと思います。おっしゃるように、喫煙者はそれだけでも二次健診の対象になります。 ○櫻井座長 あえて「エックス線直接撮影若しくは」というのを入れておくことのメリッ トはあまりないような気もしますがどうですか。胸部CT撮影と。土屋先生のご意見を尊重 して。 ○土屋委員 お金のことは無視して発言して。 ○清水委員 現在の日本にはニッケル製錬工場はないのですか。 ○大前委員 伺ったところによると3カ所ぐらいあるそうです。それは、鉱石からの製錬 ではなくて、鉱石で一次製錬を外国のニッケル鉱山の近くでやり、それを持ってきて製錬 をやっているのだそうです。鉱石を持ってきてやっている所はないと聞いています。 ○清水委員 リスクは低くなる。 ○大前委員 はい。 ○和田委員 この前のニッケルを検討したときの評価値の基準は何で決めたのですか。 ○櫻井座長 ACGIHのTLVを使って0.1mg/m3。 ○大淵補佐 ニッケルの評価をさせていただいたときは、数字は0.1と、0.2の2種類お 示しする形で示させていただきました。先ほどの基準値を超えたという考え方でいくと、 0.1mg/m3を超えたという意味で、何人が超えましたという定義はさせていただきました。 ○和田委員 個人ばく露量で出していたと。 ○大淵補佐 はい、個人ばく露に対してです。 ○和田委員 環境濃度で評価値はあれしなかったのでしたか。 ○大淵補佐 環境濃度のときにも、基本的に同じ二次評価値を使っています。本日の配付 資料のうち参考資料1の3月17日付の記者発表の資料の中の、新しく付けた頁でいくと 10頁、もともとの頁数では33頁に、ニッケルの評価の値を書いております。 ○和田委員 環境濃度を評価する値は、根拠は何で出したのですか。 ○大淵補佐 評価するための根拠は、ACGIHの基準で示しているTLVを参考にさせていた だいております。 ○和田委員 TLVの根拠は何でしたか。 ○大淵補佐 そちらの意味の根拠ということですね、どの毒性でと。 ○和田委員 違うのですけれども、そのほかのあれですか。 ○大前委員 ニッケルのほうの9頁の4.8のところに、ACGIHの数字が載っています。こ の括弧の中が、ACGIHの使った発がんの分類です。A1がConfirmed Human Carcinogenと書 いてあります。これでいきますと、水溶性が0.2、二硫化三ニッケルが0.1ということで、 発がんのことも考慮してこれは決めていると思います。 ○和田委員 これだけの数字がちゃんとあるのであれば、これ以上の場合のCTを撮りなさ いということにしても構わないのではないですか。ちゃんと評価値があるということであ ります。 ○島田化学物質評価室長 ただいまのACGIHの根拠ですが、肺の損傷と鼻腔がん、それか ら肺がんということになっております。 ○櫻井座長 はっきりしてきた点があると思います。ニッケルの健診項目については、一 次健診では先ほどご指摘のとおり、皮膚の所見を優先して記載する。ただし内容はそのと おりとする。二次健診については、2)の(イ)胸部CT撮影、それから喀痰の細胞診と変 更することでよろしいですか。 ○和田委員 普通の胸部CTでいいですね。 ○鶴田安全衛生部長 ニッケルと砒素を比べたときに、このままいったときに胸部エック ス線写真を撮るときに、ニッケルについては砒素よりも著明にCTでなければならないとい う理由がないと、今度は砒素もそうなるし、ほかのいろいろなものもそうなってしまいま すので、産業医にある程度判断する材料を与えることは可能なのです。ガイドラインなど を含めてです。だから、その点も含めて議論されたほうがいいのではないかという気もし ます。 ○櫻井座長 いまのところだけペンディングにして、砒素のほうに移らせていただきます。 これも、いまの問題は胸部のエックス線直接撮影、もしくは特殊なエックス線撮影による 検査という表現になっております。 ○圓藤委員 従来、胸部のエックス線直接撮影、もしくは特殊なエックス線撮影による検 査で十分機能してきたということです。即ち、その特殊なエックス線撮影は何を指すかと いったときに、やはりCTを考えるというのは妥当なことです。産業医は、この文言で特に 問題なく特殊健康診断を実施してこられていたのではないかと思うので、あえて変える必 要はないと判断します。ただし、ほかの特殊健康診断も揃って変えていこう、より具体的 にわかりやすくしていこうというのであれば、変えることにいささかも問題はないと思っ ております。  特殊なエックス線撮影、CTというものを果たして年に2回実施していくのが妥当なのか ということも意識の中にありますと、現行のままでもそんなにおかしくはないと思ってい ます。これは、特殊健康診断ですので年2回実施します。 ○土屋委員 これは、年2回実施すると、低線量というのを頭に入れておいたほうがいい ですね。 ○圓藤委員 はい。そういう意味でドクターによっては、1回は直接し、1回はCTをされ るという産業医がおられてもおかしくはないと思っています。 ○土屋委員 CTないしヘリカルCTと書いてありますと、通常の診断線量で撮ってしまい ます。健診用の低線量で撮っておくのであれば2回やったほうがいいと思います。 ○圓藤委員 その辺になると、ガイドラインないし臨床の先生方はいろいろな論文を見な がら診察・治療をされていくわけです。産業医においてもそうであろうかと思いますので、 解説の論文等が我々の仕事ではないかと思います。  もう1つは鶴田部長がおっしゃられたように、全体の方向性、他の特殊健康診断全体を やっていくのか、それを無視してこの項目だけやっていくのかという、行政的な施策とも 関係しておりますのでご検討いただければと思います。 ○鶴田安全衛生部長 いまの医療現場の厳しい状況からすれば、見逃したことに対する批 判とか裁判というのは十分理解できます。しかしながら、労働安全衛生法上の定期健診は、 胸写についても結核と同じように、今後見直そうとしていることがあります。40歳以下の 人と、40歳以上の人では、その有所見率は変わります。そうしたときに、全部胸写を撮っ たときに、普通の胸写では駄目だという話になってしまうのです。見逃しの観点からいく と、みんなCTを撮れという話になってしまいます。そういうことも、現場を担当されてい る方にとっては、高いリスクに対する不安はあります。いわゆる健診には全部その不安が ありますので、そこをどう考えるかというのは議論していただければと思います。 ○櫻井座長 本日のところは変えないでおいて、相談しましょうか。 ○和田委員 直接撮影でも、プラスの面は全くないですか。ある程度後期にならないと見 つからないかもしれないけれども。 ○土屋委員 こういう作業のはわからないけれども、普通の健診ですと、直接撮影を年2 回やっていて、ステージ1で見つかるのは3分の1以下で、あとは全部進行がんです。 ○和田委員 少しでもプラスであればよろしいですね。 ○土屋委員 ヘリカルCTの低線量であっても、年2回ですと8割以上はステージ1で見つ かります。そのぐらいのパワーの違いです。 ○和田委員 少しでもプラスであれば、いままでどおり直接撮影若しくはとしておけばい いのではないですか。まったくナンセンスで、お金だけでということであれば考えなけれ ばいけないけれども、少しでもプラスがあれば入れておいていいのではないですか。この 整合性もある。  じん肺のときにCTをあれしたのは、対象が2万人ぐらいだろうと、そんなにお金はかか らないから使用者側からも文句は出ないだろうということが1つありました。そのときに は低線量のCTと限定して、1年に1回撮りなさいと。すべて撮りなさいとしたわけです。 ○金井労働衛生課長 いろいろ貴重なご意見をいただきました。基本的には全体の流れの 中で、例えばニッケルだけ突出したというか、違った取扱いもできないと思います。ただ、 現場の先生方が困らないようにどうしたらいいか。先ほどガイドラインのお話が出たので すが、我々のほうとしてもすべてガイドラインで網羅できるわけではないと思います。通 知の中には、こういう場合は検査が必要とか、その程度は書かざるを得ないのかと。  逆に言うと、二次健診でこういうことをする場合は、そういう場合が考えられるぐらい は載せておかなければいけないのか。次回ご議論いただいて、これから改正が行われた場 合には、そういう通知を基にガイドラインではないのですけれども、それと似たような説 明文書と申しますか、最終的なものを次回お示ししてご検討いただきたいと思っておりま す。また、圓藤先生と大前先生にはご指導いただければと思います。 ○櫻井座長 砒素について、それ以外の点でご議論はありますか。 ○山田委員 砒素化合物の場合はモニタリングの中で、砒素そのものだけでは、先生が言 われている物質の中の割合はどのように考えたらいいのですか。全体的ではなくて、どれ か1つだけ測ったらいいのではないか、という考え方は無理なのですか。 ○圓藤委員 どれか1つだけとするのは難しくて、砒酸及び亜砒酸に限定するという考え 方もあろうかと思います。この辺はいま分析法が急激な発展段階にあります。亜砒酸とい うのはごく微量しか測れなくて、MMAのほうが結構量が多く測れますので、MMAを足してい る形なのです。砒酸、亜砒酸に限定するという考え方も捨て難いと思います。  DNAは食品由来も結構あります。MMAも若干ありますので、そういう意味で砒酸、亜砒酸 に限定するというのもあります。手間は一緒です。即ち、すべての砒素化合物の中から、 砒酸、亜砒酸のピークが重ならないように分析しようと思えば、同じように測れます。減 らしたからといって、手間は変わりません、値段も変わりません。  ヒジキのような、無機砒素が多い食品を摂れば、砒酸、亜砒酸でも難しいということに なります。MMAを加えるメリット、デメリットはほぼパラレルだと思います。 ○山田委員 食品の影響というのは結構あると思います。 ○圓藤委員 山のようにあります。 ○山田委員 ニッケルも結構食品の影響は大きいです。うちなどでやっていると、ニッケ ルは食品によってヒトの最初のベースラインが違うのです。結構大きいです。砒素は、貝 類にもものすごく多いです。 ○圓藤委員 魚介類にいってしまいます。 ○山田委員 冬場だけものすごく高い従業員がいます。日本海側がうんと高いのです。ど うしてかわからなかったのですが、全部が冬場に貝をたくさん食べているのです。 ○圓藤委員 MMAを測るメリットというのは、いくつかの種類を測ることによって、分析 法の優劣をも考えることができます。 ○山田委員 そこでやってみて、それで良いものが出てきたらそちらへ移るということで すか。 ○圓藤委員 はい。例えば、砒酸、亜砒酸だけ測ってきて、高いとなったときに、果たし て食事由来で高くなったのか、分析法の問題で高くなったのかと考えていくときに、MMA の値があったほうがわかりやすい。 ○山田委員 そういう意味でということで。 ○櫻井座長 砒酸、亜砒酸及びモノメチルアルソン酸に限るという表現になっているのは。 ○圓藤委員 そういうふうな意味です。 ○櫻井座長 三価の砒素と、五価の砒素という表現のものもありますね。 ○圓藤委員 無機に関しては、砒酸、亜砒酸がそうなのです。 ○櫻井座長 それに該当しているわけですね。 ○圓藤委員 はい。それでは、三価、五価はどうなのかといったら、いくつかの条件で変 わるようです。もちろん三価のほかのもあるのですけれども。 ○櫻井座長 この表現でよろしいですか。 ○圓藤委員 この表現でいちばん無難であると思います。 ○土屋委員 先ほど、私が大前先生に質問した肺がんのは、5頁に引用していただけるわ けですね。追跡調査で、203人の肺がんが出て、リスクが期待値に対して3.0倍で、喫煙 の場合には5.1ということで、確かに1.1から5.1です。  肺がんから離れて、粉じんでの肺の障害というのは、通常は先ほど言った線維症とか肺 気腫でいきます。その辺は圓藤先生の1頁の第3パラグラフの下のほうに、経気道ばく露 の場合、粘膜刺激症状云々で、慢性気管支炎という所見があります。大前先生のほうにも、 線維症ということですので、我々が写真を撮る、あるいはCTを撮るとすれば、そちらが先 だろうと思うのです。  たぶん、それで呼吸器障害を起こしてと。アスベストの場合もそうですけれども、がん が云々というよりも、実際のポピュレーションとしては、アスベスト肺というか、石綿肺 のほうが大きな問題ではないか。こういう粉じんでというのは、そちらが有症状で、死に までは至らないけれども、職業病としてということではないか。これは、私は現場にいな いので想像です。 ○櫻井座長 そろそろまとめたいと思います。粉状のニッケル化合物に関する特殊健康診 断項目につきましては、一次健診については、先ほど合意いただいた皮膚炎を主とした書 き方に変更する。二次健診についてはいろいろご議論いただき、一旦「エックス線直接撮 影若しくは」を削除するという方向の案を私が申しましたが、いまの段階で、ニッケルに ついてそれを決めるのは早いというご意見が多かったので、当面はこのままにさせていた だくということで、本日はご了解いただけますか。 (異議なし) ○櫻井座長 ありがとうございます。なお、産業衛生学会が、ニッケルの許容濃度の検討 を行っているということです。それとの、記載ぶりの整合性の問題が若干発生することも 考えられます。そういう場合の判断等については、次回もあるのですけれども、その前に 座長預かりとして取り扱わせていただきたいと思いますがよろしいでしょうか。 (異議なし) ○櫻井座長 ありがとうございます。それから、「砒素及びその化合物に係る特殊健康診断 項目」については、資料7の原案どおりということでよろしいですか。 ○山田委員 気管支鏡検査という言葉は、あまりほかのところではないですね。ここだけ 出てきているのですけれども、これはどういうことなのでしょうか。まさに、ほかではあ まり気管支鏡検査、という言葉まで書いている物質がないと思うのです。 ○金井労働衛生課長 気管支鏡検査については、石綿の健診では、肺がんがかなり強く疑 われる物質については入っているという理解になると思います。 ○山田委員 石綿と砒素と同じぐらいの頻度、必要ですか。 ○圓藤委員 かなり疑う人がありますので、医師が必要としたというときです。また、そ う簡単にできる検査ではありません。 ○山田委員 このように書かれていると、すぐする人がいますから。 ○圓藤委員 いや、そう簡単にはできないです。 ○櫻井座長 これは、現行にも入っていたのです。 ○圓藤委員 現行にも入っていますが、それを削除する根拠がないということです。 ○和田委員 二次健診で、医療者の責任においてやりなさいということなのですか。 ○櫻井座長 医師が必要と判断するときですね。 ○圓藤委員 私が、指示を出していることもあります。 ○和田委員 精密検査とは違うわけですね。 ○圓藤委員 精密検査の意味合いでやっています。 ○和田委員 精密検査との区別とどうつながりましたか。こっちに入っていましたね。ヒ トの鼻腔の異常の有無を検査しなさいと言っただけで、それが何であるか、本当にがんみ たいなのがあるかどうか調べなさいなどと一切書いていないです。 ○圓藤委員 喀痰の細胞診の対応策などは実施しています。 ○和田委員 鼻のほうですね。 ○圓藤委員 喀痰の細胞診で陽性が出たというような場合は、気管支鏡を使っています。 ○和田委員 鼻腔のほうの一次健診で、粘膜の異常とか鼻中隔穿孔と書いてありますが、 これについてはある、なしだけを診ればよろしいというだけのことなのですか。 ○圓藤委員 実際は、二次というより三次でやっています。 ○山田委員 そうでしょうね。 ○土屋委員 保険診療に入ってしまうのです。 ○山田委員 より専門的精査です。 ○和田委員 だから、先ほどのあれも精査に入るのではないかと思うのです。 ○圓藤委員 保険診療というと、これは労災絡みですので、そちらの費用のほうでやって いただかないと困ります。 ○櫻井座長 それでは、一応案のとおりということで結論とさせていただきます。議題3 の「その他」について事務局から何かありますか。 ○石井専門官 2つほどご報告させていただきます。先ほど少しご説明させていただきま したけれども、資料8の冊子の特殊健康診断の健診項目に関する調査研究委員会報告書に ついて、その概要を簡単にご報告させていただきます。  23頁に「まとめ」があります。項目が多岐にわたっておりますので、本日は見出しの紹 介程度にとどめたいと思います。この報告書において、特殊健康診断項目のうち、見直す 優先度が高いと考えられるものについて、その医学的根拠、実現可能性、実施することの 有用性等を考慮した精査、検討を行い、以下の提言をいただいております。  1つ目は先ほどもお話いたしました、作業条件の簡易な調査によるばく露評価手法を導 入するべきだということ。「生物学的(ばく露)モニタリング」によるばく露評価手法の追 加導入ということで、これは全部をするということではありませんが、その意義と、その 検査としてやることのできるということが担保されているものについてはそれを導入して はどうかという提言をいただいております。  24頁のところでは、先ほどウロビリノーゲンのことも出てきましたが、それ以外のもの についても、いま現在の有機則における健診における項目ですが、わりと幅広い健診で取 っているところがあります。例えば、尿中蛋白の有無については、明らかに腎毒性が考え られないというような物質については外す方向で検討してはどうか。貧血検査についても、 造血器官の影響が認められないものについては健診項目から除外してはどうかということ で、肝機能検査についても同様の提言をいただいております。  4つ目については、有機則による健診における影響指標ということで、個別の物質につ いてご提言をいただいております。5つ目の特化則における影響指標についても、腫瘍マ ーカーの検査について、個別の提言をいただいております。6番においては、特化則の健 診における影響指標についても、血小板、肺活量検査といったようなことの個別の事項に ついてご提言をいただいております。7つ目として、行政指導による健康診断の対象物質 についても、同様に個別のご提言をいただいております。  内容が非常に多岐にわたっておりますので、次回以降の検討会で、この詳細については また検討をしていただき、今後の特殊健康診断の項目の改正等について議論をお願いした いと考えております。 ○櫻井座長 これについては、次回以降さらにご検討いただきますが、特にこれというご 発言があればお受けいたします。 (特に発言なし) ○櫻井座長 本日、この資料をお持ち帰りいただいてお読みください。次の報告をお願い いたします。 ○秋月中央じん肺診査医 平成19年度に、中央労働災害防止協会の委託事業として行って おりました、職業性間接ばく露者に係る健康管理についての報告書が取りまとめられまし たので、その概要を説明させていただきます。資料9です。  1番は「検討までの経緯」です。石綿等の取扱業務等に係る健康診断については、現行 法令においては、石綿等を製造し、又は取り扱う業務に限り、石綿健康診断が実施されて おります。一方で、専門家の先生方より、石綿等を直接取り扱う業務の周辺における業務 に従事していた方についても、胸膜プラークや石綿関連疾患を認めることが指摘されてお りまして、既に「周辺における業務」により石綿関連疾患を発症した事例が労災認定され ています。  具体的な作業としては(注2)を見ますと、船内や車両内で、石綿を取り扱う業務の、 すぐその隣で溶接の作業をやっていたであるとか、あとは、石綿等を取り扱う建築現場に 監督として入っていた方、このようなものが挙げられます。  厚生労働省としてはこれらを踏まえ、「周辺における業務」に従事する方の健康管理のあ り方等の調査を、中央労働災害防止協会に委託し、専門家による検討委員会を設け、検討 を進めてまいりました。今般その結果がまとめられました。  2番は、「報告書において示された方向性」です。(1)「周辺における業務」に従事する労 働者に対する健康診断。これは、労働安全衛生法66条に基づき、事業者が実施する健康診 断についてです。1つ目のポツの下線が引いてあるところを読ませていただきますと、「常 時、『周辺における業務』に従事する労働者及び常時『周辺における業務』に従事したこと のある労働者で現に同じ事業者に使用されている者に対し、石綿健康診断を実施すること が必要である」というような結論をいただきました。2つ目のポツは、健診の頻度、それ から項目については、現行の石綿健診と同様とすることが適当であるということです。3 つ目のポツは、「『周辺における業務』とはじん肺法施行規則における粉じん作業の『石綿 をときほぐし、合剤し、紡績し』」と、その後は省略いたしますけれども、包装する場所に おける作業」、これとほぼ同等であるという結論をいただいております。  (2)「『周辺における業務』に従事した離職者の健康管理」というのは、労働安全衛生法第 67条に基づいて、国が健康管理手帳を交付して実施している健康診断です。これについて も(1)と同様、健康管理手帳の交付対象者とすることが適当である、という結論をいただい ております。  健康管理手帳の交付要件についてですが、現時点においては「周辺における業務」にど の程度の期間従事することにより、肺がん・悪性中皮腫を発症するリスクが上昇するかと いう、その疫学的知見がないので、従事期間のみをもって交付することは難しい。このた め、石綿等にばく露したことを示す客観的な指標である両肺野の石綿等による不整形陰影、 又は石綿等による胸膜肥厚を交付要件とすることが適当である、という結論をいただいて おります。石綿健診の頻度・項目は現行と同様とすることが適当であるということです。  こちらの概要のほうには記載しておりませんが、報告書の中で石綿以外の有害な物質に ついて、現時点においては十分な知見がないということで、今後とも健康被害の報告等を 通じて知見の収集に努めることが必要であるとの指摘をいただいております。  3番目の「今後の進め方」についてです。本日、この検討会において特に大きな変更等 を要するご意見がなければ、この報告書の結果に基づいて、関係者の理解を得つつ、「周辺 における業務」に従事する労働者及び離職者を石綿健康診断の対象者に加えるため、所要 の改正を行ってまいりたいと考えております。また、施行までに、一定の周知及び準備の ための期間を設けることとしたいと思います。以上です。 ○櫻井座長 ただいまの説明について、ご意見がありましたらお願いたします。 (特に発言なし) ○櫻井座長 特段のご意見はないようですので、石綿取扱従事者への健診、及び健康管理 手帳による健診に、間接ばく露の対象者を加えるという方向で、必要な法令の改正を行う ための準備を進めてください。ほかに事務局から何かありますか。 ○石井専門官 本日は、お忙しいところをお集まりいただき、また活発なご議論をいただ きまして誠にありがとうございました。本日いただきましたご議論を踏まえ、粉状のニッ ケル化合物、それから砒素及びその化合物についての特殊健康診断の項目の改正のための 所要の手続を進めさせていただきます。  次回の開催については、事務局で日程調整をさせていただきます。次回は、第2回労働 安全衛生法における特殊健康診断等に関する検討会を単独で開催し、既存の項目について、 先ほどの報告書を踏まえたご議論をいただきたいと考えております。日程につきましては、 追って事務局から連絡させていただきます。 ○櫻井座長 本日は、大変活発なご議論をいただきましてありがとうございました。これ で終了とさせていただきます。 照会先:労働基準局安全衛生部労働衛生課 電話03-5253-1111(内線5495)