08/05/14 「安心と希望の医療確保ビジョン」第8回会議議事録 「安心と希望の医療確保ビジョン」第8回会議 日時 平成20年5月14日(水)    18:00〜 場所 厚生労働省9階省議室 ○ 小野看護職員確保対策官  ただいまより、「安心と希望の医療確保ビジョン」第8回会議を開催いたします。本日はご多忙  のところご参集いただきまして、誠にありがとうございます。本日、舛添大臣は途中からの参加  となります。カメラ撮りは、その際にまたよろしくお願いいたします。恐縮ですが、ひとまずカ  メラはここまででお願いいたします。  議事に入らせていただきます。本日は、資料の1「安心と希望の医療確保ビジョン」(骨子案)  について、議論をお願いしたいと思います。これまでのヒアリングでのご意見や、前回会議での  アドバイザリーボードの先生方の発表等を踏まえ、本日の議論のたたき台としていただくべく、  事務局にて骨子を作成しました。これまでの会議の経緯及び前回会議での先生方の発表用資料は、  ご参考までに資料2及び3として添付しております。それでは、事務局より骨子案のご説明をさ  せていただきます。 ○ 二川総務課長  資料1に沿って、骨子案の概略を説明申し上げます。ただいま小野対策官から申し上げたように、  これまでのヒアリング等で出た意見をまとめてみたものです。具体的な政策というところで、5  つの柱を立てております。1番目は、医師不足ということを盛んに言われているわけで、医師数  についてどうかということで、これは医師全体についてのことです。その1点目として、医師養  成数全体をどのように考えるのか。特に女性医師が増えているわけですが、女性医師が働きやす  くするための離職防止・復職支援をどう考えていくのか。  それから、特に勤務医の問題が挙げられていますが、医師の勤務環境の改善について、どう考え  ていくのかといったことについて、いろいろご意見があったと承知をしております。  医師全体のこともありますが、医師の配分ということで、地域の配分もありますし、診療科のバ  ランスといったこともあるかと思います。そういったことについて、地域バランスをどうやって  とっていくのか。診療科のバランスについて、どのようにとっていくのか。ある診療科の人はい  ないのだといったことについて、どのように改善していくのかといったことが議論になったかと  思います。  それから、特に総合的な診療能力のある医師の育成をどのようにしていくのかといったことにつ  いても、議論があったかと承知をしています。  3点目ですが、医師不足といっても、医師だけで対応ということではなかったかと思っており、  医療関係職種間の業務分担と協働・チーム医療の推進、チーム全体でどう対応していくのかとい  ったご議論だったかと思います。それを一つひとつ書いていくと、医師と看護師、医師と助産師、  医師と薬剤師といった形で、それぞれの職種ごとにどういった役割分担のあり方があるのかとい  ったことについても、いろいろなご意見があったかと思います。  2頁に入って、医師とその他のコメディカルとの役割分担もあります。また、医師・看護職とい  った医療の関係職と、それ以外の介護職、あるいはメディカルクラーク、事務職といった人たち  との役割分担によって、医療の内容を良くしていくことについても、議論があったかと思います。  4点目ですが、医療機関の分担・ネットワークということで、1つの医療機関ですべてを完結さ  せるのではなくて、地域全体で完結させるといいますか、地域の患者・住民の人について、地域  で支えるといった発想が必要なのではないかというご議論があったかと思います。それに関連し  て、在宅医療の推進をどのように進めていくのかといったことがあったかと思います。  また、地域で医療に従事する人について、どのような形でそういった地域医療従事者を確保して  いくのか、推進していくのかといった議論があったかと思います。併せて、救急医療、救急の現  場についてのお話もあったかと思います。そういったことについて、どういった形で充実させて  いくのか。また、遠隔医療についても、どのように推進していくのかといったことです。  5点目ですが、医療者のサービスの供給のほうばかりではなくて、患者なり医療を利用する患者・  家族といった人たちも、医療者とともにやっていかなければいけないことがあるのではないだろ  うか。患者の立場でもいろいろと考えていただくことがあるのではないだろうか、といったご指  摘が多々あったかと思います。特に夜間とか時間外での救急利用についての適正化、あるいは住  民運動で住民活動や医師会活動の中で、住民の意識啓発をやっておられるといった取組もあった  かと思います。そういった医療者と患者・家族との協働の推進行為について、今後どのように進  めていくのかといったことがあったかと思います。  大きな3点目で、これからの方向性ということで、「治す医療から支える医療へ」といったご指  摘もあったかと思いますし、いろいろな大きなご意見があったかと思います。そういったことに  ついて、項目だけ整理させていただきました。 ○ 小野看護職員確保対策官  まず、議論に入らせていただきます。本日は多岐の論点にわたりますので、大まかに3つに分け  て議論させていただければと思っております。1頁のIIの「具体的施策」の1)の「医師数につ  いて」および2)の「医師の配分バランスの改善について」、ディスカッションをお願いできれ  ばと思っております。どなたからでも、積極的なご発言をよろしくお願いしたいと思います。 ○ 矢崎委員  その前に、この会議が長期的な「安心と希望のある医療確保ビジョンを策定するため」というこ  とで、大臣の肝煎で始まったと理解しております。しかし、7回の会議を重ねている中で、産科、  小児科、救急医療など、喫緊の課題が課題としてクローズアップされてきましたので、この課題  も視野に入れた、すなわち速効性のある対策を含めた、今やらなければならない対策を含めた、  医療を取り巻く厳しい現状を改善するための提言も必要ではないか。ですから、「はじめに」に、  是非そのことを入れていただければありがたいと思います。  今回、事務局から、いまの具体的な政策で論点を5つに絞って、その上で今後の方向性をまとめ  るという骨子案が提出されたわけですが、よく論点をまとめていただいたと思います。私はアド  バイザリーボードのメンバーとして、病院の現場、医学教育の現場に立って、率直に私の意見を  述べたいと思いますので、それを大臣が取捨選択していただければよろしいかと思いますので、  よろしくお願いします。いま最も皆さんの関心がある医師養成数のことですが、いままで私が述  べてきたことの繰り返しになりますが、医師数を増加することが、いま喫緊の課題になっている  急性期病院の医師不足対策には、速効性がないということを繰り返したいと思います。  すなわち、その効果は10年、20年後にやっと得られることで、いまはまず限られた医療資源  をいかに効率的に配分するかを、次の事項で議論することになるかと思います。さらに、ただ数  を増加しても効果がないことは、例えば1970年以降、4,000名近い医師養成数が増加したのですが、  その中で働き盛りの40代、50代の医師が病院から去ってしまっている現状があります。  したがって、もし地域の病院医療の確保を担保するために増員するのであれば、今後は医学教育  の環境を整えるとともに、自治医大方式の医師養成システムなどを導入するような、大きな転換  が必要ではないかと思います。  それにしても、医師養成数の増加には教育費用はものすごくかかりますので、新たな大きな財源  の投入が必要であり、国民の皆様から受益負担をする覚悟が必要ですし、一旦増加した医師が、  それが過剰になって失敗するリスクも負わねばならぬ覚悟も必要ではないかと思います。  しかし、一方では、いままでの経緯で医師需給を検討するときに、医師数を削減すべしという閣  議決定が、確かにいつも呪縛になっているのですね。それが長期的な展望に立った変動する医師  需要を現状に即して議論する、あるいはそれを可能にする視点からは、閣議決定を見直す時期に  あることを提言に入れることが必要ではないかと思います。ただ、先に述べたように、医師の養  成方式を変えるということ、かつ、また新たな財源投入がない限りでは極めて課題があるので、  現状の状態を見ると、いまの医学教育のキャパシティの中でとどめる範囲内の増員は、いま考え  なければいけないのではないかと思います。  繰り返しになりますが、医師養成数を増やすのは、いろいろなファクターを考慮に入れないとい  けないということと、いまの時期では閣議決定を見直す時期に来ているのではないか。教育方針  を変えない限り、いまの医学教育のキャパシティの範囲内で増員を図るというように、私自身は  思いました。 ○ 松浪政務官  取りまとめに当たって、これは具体的な政策ということで、5つ並んでいるのですが、大体こう  いうものを並べるときは、重要なものから並べるというのが人間の心理かと思うわけです。今回  はこれは特にビジョンということで、中長期の本当に安心をしていただく、国民の皆さんにこれ  なら大丈夫だと言っていただけるビジョンを示そうというときに、私たちのビジョンの中の哲学  として何があるのかということを最初にもう一度確認をして、矢崎先生がおっしゃったように、  「はじめに」の所に入れていただかなければいけないと思います。前回、私は出られなかったの  ですが、前回の議事録を読ませていただくと、野中先生も「連携」ということをキーワードに置  かれていて、私もやはりこれは連携だろうと。この連携というのは何の連携かというと、例えば  これは1、2、3、4、5とありますが、まずは医師の問題が1つにあって、もう1つは周辺の  関係職種との関連、それから辻本委員に来ていただいているのですから、当然患者のあり方です  よね。やはり良い医療のために良い患者をつくり出していくという、この3つの連関をどのよう  にグルグル回していって、これが円滑に回っていくと、このトライアングルがグルグル回ると良  い医療ができるのですよという、何か視覚的なもの。別にこれはトライアングルでなくても同心  円でもいいですし、それにプラスして治す医療と支える医療をその図に入れていってもいいので  すが、まず何か目に見える形で、普通、会社などのマークを付けても、大体そこには何かの意味  があるのですね。ですから、私たちも国民の皆さんにまずわかりやすいイメージを持っていただ  けるように、簡単に語る。それにはやはり5つで、五角形よりも三角形などというもののほうが  見やすいので、取りまとめに当たって、そうしたところにアイディアをいただけたらと思うわけ  です。 ○ 野中委員  医師数不足の話の前に、現状の医療において短期的にいますぐやるべきことは、医師をはじめ、  さまざまな医療関係職種に連携をすることの大事さをあらためて訴え実践してもらう事が大事と  思います。医療機関に患者が来られた時、医療提供者としてのさまざまな医療関係者と患者との  協働作業ということが、私はいちばん大事と思うのです。また、当然の事として病気にならない  と住民は医療機関には来られません。その医療機関に来られない住民には、地域の安心・安全と  希望の医療確保は直ちには認識できない。そのため、行政が患者に代わって、あるいは住民・国  民に代わって、将来の病気に対してどうやって安心と安全を担保するかという視点を持って、例  えば地域医療計画において我が町ではこういう住民の安心と安全を守ることを、改めて考えてい  く必要がある。初めて病気になって医療にかかる人たちに、それをすべて理解と言ったって、実  際にはなかなか理解できない。ですから、地域の医療を確保することは、医療関係者や医療を受  ける人だけの話ではなくて、地域行政がどのように絡むかも重要です。  医師不足の話は、医師の労働条件遵守というか、1週間にどのぐらい働くべきかをまともに検討  もせずに、医師数だけを考えてきたことに問題があったのではないでしょうか。これからの医師  をどの様に養成するかという話は、いま矢崎先生がお話になったことで十分と思いますが、問題  解決として何が根底にあるかを検討する必要がある。医師の労働条件というか、あるいは労働の  状況を各地域でどう考えるか、いままで欠けていた視点の検討から始まっていかないと、医師の  必要人数は算出できず、目標数も算出できないと思います。  それから、医師数は、東京等の人口密集地とそれ以外の地域とでは、全く状況は違うはずです。  地域の住民の人口、あるいは土地の広さ、交通の便などが関係します。住民の安心と安全を守る  ためには、医師をはじめとする医療関係者も含めて医療の資源がどのくらい必要なのか。本来は  それらのニーズを適切に把握する必要があった。特に地域保健医療計画などは、今から約20年前  から作成しているにもかかわらず、実際にはベッド数や医療機関数や医師数等を把握して羅列し  ていたに等しい。  例えば、夜の10時に心筋梗塞の患者が発生したらあるいは脳卒中の患者が発生したら、この地域  ではどういう救急医療体制が整備されているという視点で、地域医療計画が作成されるべきです。  しかしこのような視点で作成されているとは、自分の経験からも全く思えない。現状の医療体制  において、確かに医師不足はあると思います。しかし、医師数は年々確実に増加している、一方  で人口あるいはお産は減っている。減っているにもかかわらず、なぜ産科医師の数が足りないの  か、同様に小児の数は少なくなったにもかかわらず、なぜ小児科医の数が少なくなったと言われ  ているのか。これらの原因を、きちんと検討する必要があると思います。  さらに、例えば人口80万人の地域で、お産や小児などに対する医療はどうあるべきだかの検討が  必要です、本当はそういう検討の積み重ねが大事と思います。これは国での検討だけではなく、  そして地方でのそれぞれの検討も必要です。いろいろな会議の場所で様々な人々の意見を伺いま  すが、地方の行政の方々のご意見は、公立病院では、従来のように医者が簡単に雇えないから医  師不足と言われているとしか聞こえない部分があります。それは必ずしも正しい判断とは思えず、  さらに検討が必要と思います。  話が長くなって申し訳ないのですが、いま私の診療所には毎月一人の研修医が来ています。1か  月間地域医療をラウンドして、当院の在宅医療も体験しています。研修医と話していますと、彼  らは自分が将来どういう医者になりたいかの目標を持っています。例えばへき地に行って医療を  体験したい等、それなりの夢は持っているのです。しかし、一方でへき地とか、あまり医療の充  実していない所に行くことになると、現実にそこで何年間やっていけるか、結局1人でやらざる  を得ないという部分が大きくなる。その結果リタイヤして、医療の充実している所にすなわち医  療スタッフの充実している場所に行きたいという話になる。医師や医療従事者だけに過酷な条件  を要求するのではなくて、地域住民の安心と安全を守る地域行政が地域のニーズ等を、地域医療  計画作成にも含めて、あらためて積み上げていくことが必要と思います。  それから、先ほど松浪さんが言われた連携が最も重要です。私は昭和47年に医師になりましたが、  その頃から連携が進んでいるかを考えると、どうも進展していない。医師も含めて、さまざまな  医療従事者、後ほどの話も共通しますが、研修を受ければ研修受けるほど、互いに連携すること  の意味が理解されるはずなのに、実体は逆で研修を受ければ受けるほど、連携できなくなってい  る。このような状況において、速効性のある医療の体制の充実には、あらためて医療連携を進展  させる必要があると思います。 ○ 辻本委員  先般、最後に大臣が具体的な数値目標とか、予算獲得のためにということをおっしゃって、何の  役にも立てないのではないかと、忸怩たる思いをいたしました。特に患者の側の問題は、数値で  表せられるようなものがあまりないものですから、その辺りは貢献できない申し訳なさを今も思  っています。ただ、この「はじめに」を読むことによって、国民一人ひとりが自分自身の問題と  して、医療にまつわる問題をいままで以上に一生懸命考える切っ掛けづくりになってほしいと思  っています。  何度も繰り返し申し上げますが、今日の医療を良くも悪くもしていく、その大きな力という、現  場の患者と医療者の関係性という問題において、患者の役割はいままで以上に大きくなってきて  いると思います。それだけに、患者がどう意識改革、行動変容するか、もっと言えば医療の限界、  不確実性ということをどう引き受け、それでもなお協働に参加していくために患者が具体的に自  分が何を努力したらいいのかということが、このビジョンの報告書を読むことによって見えてく  るような内容に是非していただきたいと思っています。  そして、喫緊の課題ということで医師不足の問題というテーマが挙がってきているのですが、い  まも野中さんがおっしゃったように、連携がなかなかできていない。と同時に、私たち患者は「  チーム医療」というキーワードは10年以上前から聞かされているのですが、病院に行って、何が  いったいチームなのか全く見えてこない。その現実を、現場がもう一度見直すためにも、チーム  医療とは何かというあるべき理想を現場はもちろん患者の側にも具体的に見える形で提案した上  で、医師数という問題に踏み込んでいく。この医師数の問題ですが、先ほど来、お話も出ている  ように、1人の医師を育てるのに税金がいくらかかるのかという具体的な数字を見せていただく  ことのほうが、ある意味では患者への説得力につながるのではないのか。いま私たちが払ってい  る税金で、医師1人を育てるのにどのぐらい負担をしているのか、あるいは将来増やすというこ  とが、次世代への負担としてどうつながっていくのか。国の資源としてどう利用・活用し、いか  に守っていくべきかを考えることにもつながります。そんなことも考える切っ掛けになるとすれ  ば、1人の医師を育てるためにかかる費用を、国民にも是非知らしめていただきたいと思います。  そして、女性医師の問題ということで、ヒアリングで女性医師のご意見もいろいろ伺ってきたの  ですが、どう見てもやはり男社会の中で働いている人たちというようにしか、私には見えません  でした。女性が働きやすい職場をつくることは、もちろん男性のドクターも働きやすい職場にな  るわけですが、むしろいま頓挫してしまっているこの男女共同参画の、ある意味ではモデルにな  るような職場ということでの構築を、ビジョンの中にはっきりと謳っていただきたいと思います。  ある女医が、学校の保護者会に行きたいと病院に言ったら、白い目を向けられたと。患者の命と  自分の子供の保護者会と、どっちが大事だと言われたときに、やはりやってられないなという気  持になったというお話、本音の部分で聞きました。以前は医者は聖職たる者、本音も我がままも  言ってはいけないという中に身を置いておられたのですが、いまは国民全体が本音を語り、我が  ままになってきているという中で、医者だって一緒だと思うのです。そういう意味では、むしろ  医者が我がままや本音を言っていただく中に、現場周辺の問題点が浮き彫りになってくることも  含めて大切なことでもある。ただ、いま足らないからと一気に医師を養成して、単に数を増やす  ことが本当に国民にとっていいのか、質の担保はだいじょうぶか。あるいはいまある社会資源と  いうことで、効率的配分というお話がありましたが、もっとうまく活用する方策がとれないもの  か。そういったことを具体的に国民にわかる形で問題提起をしていただく、そういう中身であっ  てほしいと願っています。患者の参画については、また後ほどのところで具体的に意見を申した  いと思っています。 ○ 西川副大臣  ありがとうございました。それぞれに大変示唆に富んだご意見を頂戴しました。私も今回、この  「はじめに」に「医療の未来の希望と医療確保のビジョン」ということで、キーワードは全体で、  みんなで支え守るということだと思うのですが、いまのそれぞれの医者のチーム医療、あるいは  地域の医療機関の連携、そして患者と医者との協働、これをすべて包含した中で、みんなで支え  る医療を守る。私はそれがキーワードだと思いますので、哲学を最初の「はじめに」の所に前面  に出してほしいなということがあります。  そういう中で、例えば医者の数にしても、医者のことだけ考えたら、これだけの数が出てくると  思うのですが、実はいまの連携と分担の中で、チーム医療の中で薬剤師のできること、看護師の  できることをお互いに少しずつ広げて、こうやったら実は医者の数をそこまで増やさなくてもい  いかもしれないということもあるかもしれないですね。その辺のところは、実はもうちょっと深  く検証すべきだという感じがいたします。  そういう中で、1つはいまのみんなで支えるという中でのキーポイントは、いわば医療機関ごと  の連携や患者と医者などという中で、要するに縦と横の連携、縦横に縦の連携と横の連携、これ  を密にきっちりしていくということだと思うのですね。厚生労働省がスタンダードのバージョン  をつくって、これでとやると、非常に現場での齟齬がある。いままでそれの繰り返しだったよう  な気がしますから、まさに先ほど先生がおっしゃったように、地域の行政。この地域の行政が本  当に本気でその地域の命を守る医療という問題に目を向けて、それなりの医療計画を立てた中で、  患者、住民と医者、そして各医療機関の一次、二次、三次の連携。お互いに話し合って、これを  きっちり構築していくと、かなり形が見えてくるような気がしますので、そういう連携の1つの  縦横の軸というのですか。その辺をきっちり出して、整理していったらいいのではないかと、そ  んな思いがありますので、よろしくお願いいたします。 ○ 矢崎委員  いまのお話も、これは7回の会議で今まで議論されたところであって、それを総括して初めにま  とめることは当然なのですが、私は研究者というか、論理的に考えないと気が済まないので言い  すぎかもしれませんが、アドバイザリーボードのメンバーとして提言をまとめるときには、具体  的にどうしたらいいかということにある程度踏み込んで議論しないと、こういう問題が未解決、  こういう問題が未解決だから、ちゃんとしてくださいではなくて、やはりここでしっかり提言し  なくては、どういう内容を詰めていくと。私は最初に医師数のことを申し上げましたが、もちろ  んこれは医師数を増やした場合にはこういう考えでやってくださいということで、どのぐらいと  いうのは、いま医師の配分のバランス、医療スタッフのお互いのシェアリングなどの基礎は必要  なのです。ですから、順序はともかくとして、ある程度具体的に、こういう問題はどのように提  言としてまとめていったらいいかということをやらないと、いつまで経っても明解は出てこない。  先ほど冒頭に申し上げたのは、病院の立場とか医学教育者としての立場で私見なので、気付いた  ことを申し上げながら、ポイントを一つひとつ踏んでいったほうが、具体的になると思います。 ○ 西川副大臣  そうだと思います。 ○ 矢崎委員  大臣も前回、頻りに「具体的にどうなのだ。何か良い提案を見つけてくれ」と言ったので、私は  一生懸命考えたので。 ○ 西川副大臣  いま矢崎先生のおっしゃったことも、まさにそのとおりです。ただ、最初にそういう1つの哲学  みたいなものをまずきちんと書いた上で、それを実現するにはということで是非そういう形で。  ですから、どの程度という数を出す1つのハウツーというのですか、その辺を是非、専門家の先  生からお聞きしたいと思いますので。 ○ 矢崎委員  例えば医師の勤務環境の改善ということで、チーム医療のスキルミックスなどでありますね。私  どもの病院で、いろいろアンケート調査や実態調査をした結果、やはり病院の医師は例えば伝票、  予約指示、あるいは保険の書類など、いわゆる書類を処理する、いわゆるクラーク、事務が仕事  の10%から20%ぐらいは占められていると。もう1つは、それでは医行為はどうかというと、例  えば外科の手術をしたあと病院で包帯の交換などは医師がやらないといけない。これは膨大な時  間がかかるわけですね。ですから、領域によって違いますが、周辺業務というと極めて誤解を招  きますが、患者の目線から見て、医者がやらなくてもいいのではないかと。むしろ看護師にやっ  てもらいたいという医行為があるのですね。それがどのぐらいあるかというので、私どもで病院  で調べると、それが時間的に20%から30%ぐらいある。そうすると、ひっくるめると40%ぐらい  がそういう仕事に占められていることが現実にあるのです。こういう仕事をそれぞれ業務分担し  ていただければ、病院の医師がいま16.4万人という統計がありますが、それができればこれは30  万人分ぐらいの仕事ができると。これは実現可能かどうかはわかりませんが、そういうことだっ  て考えられるわけですね。だから、先ほど野中先生が言われたように、医師数の増加というのは、  限られた医療資源をどう配分するかによって随分違ってくると。ですから、そういうことで一つ  ひとつ手を打っていくことが、いまドッと医者を増やせばいいという議論が大勢なのですが、そ  れはそれとしてやはり考えないといけない。だから、先ほども閣議決定は1つの方法で縛るので  はなくて、医療の需給のバランスを見ながら、正確に判断するには、野中先生がおっしゃるよう  にしっかりしたデータで算定するというのは必要なので、一方向に決めるということではないか  と思います。だから、そういう意味で、単に医師の数、何万人だからどうこうということにはな  らないということを、私は何回も申し上げているのです。  それから、医師の勤務環境の改善では、やはり医療リスクに対する支援体制ですよね。いま厚生  労働省で事故調、あるいは産科の保障制度など、環境整備をされておられますが、やはり一生懸  命、救急の現場でやる医師ほどリスクが高いということがあって、そういう環境を改善しない限  り、なかなか難しいのではないかと。医師の配分のバランスに関しても地域のバランス。これは  いままで大学の医局制度で、キャリアパスとして教室が医師を自治体病院などに派遣していたの  ですね。医局によって支えられていたキャリアパスとしての地域病院、勤務のシステムがもう今  なくなってしまったと。  そうすると、やはり野中先生が言われるように、地域で支える医療の中には、自分たちでキャリ  アパスを作らないと、地域の中で医師が育たない。それには、いままで病院が設置団体によって、  バラバラに個別的に運営されているのですが、地域で設立団体もバリアを外して、病院が点では  なくて面の展開でコンソーシアムをつくって、その中でキャリアパスをつくって医師を育成する  などという、いろいろな考え方があると思うのです。例えば臨床研修制度があって、これが地域  バランスを崩したと言われるのですが、地域医療制度の制度設計をしたときには、こういう状況  が十分予測されないで、良い臨床医、総合力を持った医師を育てようということで制度が発足し  たわけですが、結果としてこういうことになった。  だから、そのときにあまり重点を置いていなかった地域医療への貢献、これを臨床研修制度にし  っかり組み入れるなど、具体的に言えといえば、一覧表で出せるぐらいたくさんあるのです。も  し必要であれば項目別に提出しますが、私は病院の立場からやっていきたいと思います。  いま連携の話で、病院から見た連携は、野中先生の連携とはちょっと意味合いの違う連携が求め  られると思うのですね。そういう場合には、診療所の機能のレベルアップ、病診連携がしっかり  できるようなこともしないといけない、できるような状況にしないといけない。  ですから、旧来の1人医師の診療所ではなかなか対応できない時代になってきて、いままでのよ  うな診療所で診療時間を制限しながら、限られた患者のかかりつけ医になって、やっていくとい  う医療が今後続けられるかどうかは、非常に厳しい状況にあるので、高齢化社会で在宅医療をど  うカバーしていくかということを視野に入れると、私は診療所のドクターだけではカバーできな  いので、やはりそういうときには診療所のドクターがチーフになって、相当裁量権のある看護師  を配置して、チームリーダーとして医師がいるような感じでやっていかないと、なかなかカバー  できない。ちょっとたくさんありすぎてごめんなさい。この項目を全部言うと、私1人で1時間  話してしまうからすみません。 ○ 野中委員  私も矢崎先生が言われたことは大事と思います。多職種が連携するというのは、権限の話ではな  くて、むしろ患者を中心として、治療や生活を支えることをどうやって現場で実現していくこと  です。患者の地域での生活を支えるために適切にケアマネージメントを実施するなど、そういう  視点が大事です。そうしてきちんと連携するからこそ、お互いの権限が活きてくるわけです。た  だ単に個々の職種の権限を広げたらすべてうまく行くわけではありません。私はそこにはまだま  だ疑問があるところと思います。  それから、前回、矢崎先生が診療所の話をされました。そのなかで、グループで診療するという  か、複数の医師による診療の話をされました。私もこれからの診療所は1人の医師ではなくて、  複数の医師がいる、あるいは看護師もきちんといる医療機関の体制ができなければ、その役割は  果たせないと思います。しかし、現状の診療報酬では医師や看護師など様々な医療や介護の関係  者を雇い続けられません。例えば医師の1+1が2にあるいは3になればいいのですが、必ずしも1+  1が2にならない部分もあり、その辺は今後の努力や改善が必要と思うのです。しかし、医療機関  を受診される患者の安心と安全を守るためにも、また診療所で在宅医療を提供するためにも、複  数の医師という体制をつくることは必要不可欠と思っています。この問題も、診療報酬の問題も  ありますが、複数の医師・複数の看護師が連携できるかが大きな問題であって、その連携をどの  様に構築するかが鍵と思っています。  視点を変えますが、私の活動場所は東京という大都市です。東京の病院のあり方などを見ている  と、東京はある面で病院が過剰な地域です。そういう過剰な地域では、競争原理である程度、患  者の安心と安全を守れると思うのですが、地方に行って、例えば病院が非常に少ない所では、た  だ単に競争をする、例えば都会の病院と同様な競争をする事はできても、なかなか医療の質や量  を支えるスタッフを養成することには繋がらないと思います。繰り返しになりますが、地域の住  民の安心と安全を守るためには、地域の行政が住民のためにお金を注ぎ込むことは、今話題の道  路と同じように大事な話と思っています。これからはこのような視点も大事と思います。  つまり、医療は競争原理だけでは、守れない部分と守れるところがあるということは、是非ご理  解いただきたい。それから、ここに総合的な診療能力の育成という部分があります。ある面では  総合医などという話がありますが、医師がもっとそれぞれにスキルアップをして、総合的に診る  という能力を持つことは大事と思いますが、私はやはり個人の総合医という能力・資格よりも、  総合的に診る体制の構築が大事と思います。病院でも患者を総合的に診る、そしてそれが診療所  にもつながるということ、つまり地域として総合的に見る体制こそ、本当は大事と思います。  この何年協議されている総合医を、個人の医師の資格として考えると、どうもおかしな話になっ  てしまうと危惧しています。特にいま話題になっている後期高齢者医療における後期高齢者診療  料の話も、患者を総合的に診て、そして重複の検査や投薬をいかに防ぐか。それこそかかりつけ  医の役割という中で、この後期高齢者診療料は考えられている。またその診療報酬の点数だって、  1か月の点数としてではなくて、1年間の点数として考えるべきです。急性期の医療が必要でい  ろいろな費用がかかるのであれば、その場合は後期高齢者診療料を算定しなくてもいいようにな  っています。その点は個々の医療機関の裁量に任せています。  むしろ、私は後期高齢者診療料は、かかりつけ医として患者から選ばれる医者として、患者の不  要な投薬や不要な検査、そして例えば他科にかかっているなどを理解しつつ、患者の適切な受診  行動を患者と一緒に考えるというところに、本来の後期高齢者診療料の意義はあると思います。  さらに少なくとも13の疾病の中で考えるべきだと思いますし、患者に本日の診療内容を渡す、あ  るいは診療計画をきちんと渡すという話こそ、まさにこれは患者を総合的に診る話であり、患者  の主治医として、かかりつけ医としての使命としている話です。それを患者がほかの診療所に行  くことを抑制するなどと、医師が説明したり発言するから、患者は余計惑うわけです。  患者の適切な医療を保証するという視点で考えるべきと思います。終末期医療相談料の話にして  も、終末期をどうやって生きていきたいかをみんなで考えるために、多職種が連携をして考え作  成する計画書や行動を評価した筈です。あの計画書を作成して、人生の引導を与えるなどという  ことは、絶対に考えていない。私はそのように考えてしまうことがおかしいと思います。医者と  して、患者に対する本来のあるべき行動と考えます。総合医という資格や権限からこれらの医療  を考えると医療がおかしくなる。医療はやむなく病気を抱えた人に対して、医師としてどうやっ  て患者の人生、生活、医療をサポートするかという視点で考えるべきと思います。  この様なベースの視点がないと、医師数のバランスという話はなかなか難しいと思いますし、特  に総合的な診療能力の育成に関しては、前回も言いましたが、総合的に診る体制構築こそが課題  です。それこそ連携であり、病院と診療所との連携こそ重要と考えます。さらに総合的に診る体  制がより望まれているのは、私は診療所ではなくて、実は病院と思っています。病院が総合的に  診る体制こそ望まれます。すなわち「治療」だけではなくて「患者の生活を支える」ことを、ケ  アマネジメント等を通じて、すなわち退院調整をこまめに実施して、地域の私どもの診療所に逆  紹介して頂く、あるいは預けていたければ、地域の現場の診療所の医療従事者は、さらに総合的  に診る能力も研修できると思っています。しかしながら、現状の多くの研修は地域の医療システ  ムを作る研修ではなくて、個人の能力向上だけを考える研修になっている。  繰り返しになって申し訳ありませんが、これからは連携を通じて、みんなでこの地域を支える医  療体制構築する研修を考えるべきと思います。「はじめに」という部分から具体的な政策の2ま  での部分として、この連携を中心にご理解いただけたらと思います。 ○ 辻本委員  先ほど矢崎さんのお話の中で、働き盛りの医師たちが病院を離れている現状というお話がありま  した。なぜ嫌になってしまうのか、その辺がわかっているようで、実は国民・患者の側には漠然  としか情報がない。どうして病院を離れてしまうのかを明確に、国民にわかりやすく説明すべき  ではないのか。そして一方で、病院から離れた開業医の方幾人かのお話を聞いた中でびっくりし  たのが、週に24時間患者を診れば成り立つのだという話が出てきた。となれば、病院の過酷な勤  務から逃げ出したくなっても仕方がないのかと思う。そういう医療に特化してしまう、流れてし  まうというからくりを何か見せつけられるような思いがしました。  週に24時間というのは極端な例かもしれませんが、逆に言えば開業医の方はそれで成り立つのだ、  その辺のメカニズムは私たち国民・患者にはあまりよくわかっていない事実の1つだと思います。  特に開業した医者が、先ほど来のお話のかかえ込みということではないのですが、後期高齢者の  問題は後ほどにと思っていたのですが、やはり「月に1回、必ず来なければいけないんだよ」と  か、「うちしか来ちゃいけないんだよ」などということを、本当にそう思って言っていらっしゃ  るのか、あえてそうおっしゃるのかわかりませんが、その辺の問題も明らかにして解決していか  ないと、遠回りのようですが、勤務医の環境改善につながっていかないのではないかという思い  もしております。  そのかかえ込みが怖くて、患者は総合的な診療が受けられないのではないかという不安で、開業  医の所になかなか行けない、すぐに専門の病院に行ってしまう、大きな病院に行ってしまうとい  うことにもつながっていく問題かと思います。本当にぐるりと回って、どこも全部関係のある問  題で、どこから切り込んでいったらいいのか、本当に難しい問題だとは思いますが、その辺の根  本原因みたいなことを1つひとつ丁寧に明らかにしていくことも、安心と希望ということを見出  す1つの方策になるのではないのかなと思っています。 ○ 松浪政務官  先ほどから、ビジョンをどのようにするかという話に来ていると思うのです。本来、今日が中間  報告ぐらいで、3つぐらい今後新たに突き詰める問題を出してやっていくべきかという気もする  のです。さはさりながら、患者の側からこれからの医療の姿は、どういうものを作り上げていく  のか。いま特に後期高齢者の問題が出ているのですが、非常に誤解が多い部分がありますね。特  に終末期医療の問題など、これは言いすぎにしても、品位に欠ける議論があまりに多いのではな  いかと。私などは個人的に祖母が最後、経管栄養で、痴呆になって随分長かったものですから、  選択できるということが非常に大事だと思うのです。今回の後期高齢者も、最初から選択という  ことをもっと表に出しておけば、選べるのだということが逆に安心感につながるのではないか。  例えば在宅でもちゃんと最期を迎えられる体制、また最後、管だらけにならずに死ぬ権利などと  いうものを選べるのだというのを、やはり患者の側、そしてそれをやるにはやはり医者との非常  に突っ込んだ信頼関係が必要になってくるので、そこであれば、また信頼というキーワードが浮  かぶと思います。これは最初のころの議論にあったと思いますが、信頼というのは、名医より良  医なわけですから、その良医をどのように見つけるかなど、そういう視点に立った哲学を出して  いただきたい。  1点、これはちょっと広げすぎになるのですが、ここで語られてなかったのは、治す医療の部分  はかなり語られたと思うのですが、支える医療については社福法人の施設ですよね。老人ホーム  などとの連携も、私などは地元で政治家ですから、陳情が多いわけですね。陳情を受ける、おじ  いちゃんを入れてください。急に痴呆症が進んだので、受入先がない。施設のほうはみんな嫌が  るわけですね。そういう施設はどういう方が入っていらっしゃるかというと、施設をつくったと  きに採算性が怖いからと、軽度の人を入れている。本当に必要な人が入れなくて、軽い人が入っ  ていて、長く元気でいらっしゃるものだから、空きがない。  そういう矛盾があるわけで、これは地方分権の時代ですから、地方自治体などが連携して、極端  なときは各施設に待ちがこっちで300人、こっちが500人などという話も聞くわけですが、本当は  そういうのも全部一緒にすると、一括してやると、300人も何百人もいるわけではないのですね。  そういう新たな把握をする患者のニーズと医療、さらには大臣がよくおっしゃる医療と介護の線  引きの部分ですね。これからますますブラーになっていくと思うのですが、その辺りのことにも  視点に入れながら、この未来を描いていただきたいなと。ちょっと漠然とした話になって恐縮な  のですが、何か施設関係の話が抜け落ちたかなという気がいたしましたもので。 ○ 矢崎委員  全くおっしゃるとおりで、私のプレゼンテーションでも、これからの在宅医療ですべてというの  は無理ですので、中間施設は必要であって、いま療養型の病床をどうするかという大きな行政的  な、あるいは社会的な課題もありますよね。そういうものをどうするかは、3の「医療のこれか  らの方向性」で、とりあえず課題をちょっと仕上げていってしまったほうが。駄目ですかね。  あまり夢がないですか。 ○ 西川副大臣  皆さんのお話がほとんど全部にわたっていますので、ここの1、2に限らずおっしゃっていただ  いても、あとでスタッフのほうで整理してまとめたいと思いますからどうぞ。 ○ 矢崎委員  診療科のバランスというのがありますね。いま産科の医師が足りないということがメインで言わ  れていますが、もっと恐ろしいことが起こっているのは、外科医がものすごく少なくなっている  のです。10年後に本当に日本で手術できるかどうかという、大変な局面になると思うのです。や  はり診療科のバランスを考えた専門分野ごとの養成目標というのは、もうこれから必要ではない  か。いま専門医制度の検討が行われておりますが、これは学会の協議会であって、身内の話です  よね。欧米のように、専門分野ごとの養成目標をきっちり立てている状態ではないのですね。  これは少し診療科のバランスを考慮して、養成目標を視野に入れた、例えばこれは行政がコント  ロールするというよりは、第三者的な専門分野の医師、専門医の認証機構みたいなものをつくっ  て、単に規制という視点ではなくて、医療のニーズはこれだけ必要なので、これだけの分野の医  師がほしいというような、社会のニーズに適したバランスをとるような視点から、そういうこと  を考え、そうすると国民から納得が得られるのではないかと思うのです。これは学会から離れて  いるから言いやすいのですが、やはりそういうことも提案したいと思うのです。  それと前回、私は医師不足のポイントはスキルミックスで業務を分担し合うのだと。今日はまだ  大臣が来られないので、一言申し上げたいと思うのですが、それは医師法とか保助看法、法律を  直せば済む問題でというお話があって、医療の現場から欠いている視点は、先ほど野中先生が言  われたように、単に権限を拡張するというのは患者・国民から納得できないと思うのです。それ  だけのしっかりした教育と、ちゃんと認定するシステムを確立しない限り、業務の拡大などとい  うのは絶対できない。この辺でいいのではないですかということではないと思うのですね。  ですから、法律を見直すことは大前提ではありますが、そういう看護師、例えば正常分娩で会陰  切開・縫合ができる助産師。正常分娩だったら医師がいなくても大丈夫だ、現場にいなくても大  丈夫だという状況を整備するには、やはりしっかりした教育が必要なわけですよ。その教育は、  ものすごくお金がかかるというのが今欠いていると思うのです。法律を変えれば行われるという  問題ではないと思うのです。いま教育振興基本計画で、高等教育にかける教育費を、欧米、先進  国ではGDP比1%なのです。それが我が国では0.5%ですから、高等教育の投資は半分なのです。  医学教育も、そういう状況にあるわけです。  ですから、しっかりした看護師・助産師・保健師を、例えば在宅医療で高齢者の方をカバーでき  るような能力を、すべての看護師に必要ないのですが、ちゃんと高等教育ができるような看護師  を教育するにはものすごくお金がかかると、それがお金がないからできないので、医療に新しい  財源を是非投入してくれないと崩壊すると。でも、教育の部分だから医師を増やすときには、し  っかりした教育のシステムを作っていただかなければならない。それにはものすごくお金がかか  ります。例えばいま、教育振興基本計画で0.5%からOECD並みに1%、1%に持っていくには7兆  円という財源が必要なのです。そういう意味で、教育を整備する、医療の質を担保するのにはも  のすごくお金がかかるということを、皆さんに十分理解していただかないと単に法律を直すだけ  ではいかないので、その点、やはり大臣に予算を確保してほしいと思ったのです。 ○ 辻本委員  話は広がっていいのですね。地域のネットワークということですが、例えば、むつ総合病院のお  話をお聞きしました。下北半島の鉞の本当に一部というような、そこでの医療ということをお聞  きしたわけです。その後、たまたま私も実際にこの目で見せていただいて、やっぱり日本中いろ  んな地域があることを改めて痛感しました。例えば都会型もあれば、過疎地型もあれば、山間へ  き地がほとんどという所もある。とすれば、いくつかの繋がる安心のネットワークモデルのよう  なものを、具体的に示していただくことが地域の中で、私たちはこのモデルのようにやっていき  たいという具体的な提案として見える形で示されれば議論が深まっていくのではないか。そうい  うネットワークモデルのようなものを提示していただきたいということが1つです。  それから、地域の中で患者の協働で医療を支えていくというテーマで、例えば、私どもが160回近  く続けてきた患者塾で、4月に診療報酬の改定を問題提起して参加者と議論をしたのです。その  中で後期高齢者終末期相談支援料の問題が議論になり、そこで議論に参加している互いの意見を  聞きながら、ああ、この200点という点数は、要は、私がどういうふうにしたいかということをま  ず自分の中でしっかり考えなければいけないのだ、それがあって初めてお医者さんと相談ができ  るという意見が出ました。入院のときに、「1時間」ということが条件にあるが、その中ででき  る相談かどうかという意見、さらには患者がそのような状況に置かれている中で、自分の意見が  言えるかどうかという疑問も出てきました。やはり語り合うことが大切です。マスメディアが方  向付けるような、不安をあおり立てるような、そういうことに乗るのではなくて、自分たちの地  に着いた議論の中で、私の問題というように引き寄せて考えられるような語り合いの場、それが  やはり地域ごとにあってほしいと思っているのです。保健所機能などで、それが企てていただけ  る可能性があるのかどうかは私はよくわからないのですが、地域の中でみんなで地域の医療問題  を語り合うということが、一人ひとりの意識が高まっていくために非常に大切だということをあ  る意味、私たちは18年間の活動で、実験、体験させていただいてきました。  それともう1つ、病院探検隊という活動を通して感じたことは、その地域の病院独自に、患者を  交えた懇談会でもいい、協議会でもいい、年に2回ぐらい患者に病院の中を見てもらうとか。い  ま、この問題がうちの病院の非常に大きなテーマなのでそこを見てほしい、そういう実際に地域  住民の人たちが地域の医療を自分たちの手で育て、守っていくのだ、支えていくのだという意識  を高めるためにも、病院ごとにむしろそういう患者が声を出せるような、探検隊と言うのでしょ  うか、懇談会と言うのでしょうか、厳しい提言や提案をしてもらう病院のファンクラブ。そうい  うものを持った病院には、むしろインセンティブが働くぐらいの仕掛けづくりということがあっ  て初めて地域が活性化するし、病院も患者と協働しようという気持になれるのではないかと思う。  ささやかな経験の中で、やはりこれが大事だよなということを改めて確認させていただいている  次第です。  終末期医療の問題も、私たちの中で仲間たちと随分議論をしたのですが、そういう議論に出てく  る話はメディアの報道の中からは1つも見えてこないという、その現実があります。やはり肉声  で、自分の立場に身を置いて考える、そのことが今いちばん大事ではないかということを改めて  教えられているところです。 ○ 松浪政務官  ちょっと広がりすぎて恐縮ですが、辻本委員から地域でのお話もございました。私も、第3回の  視察で川越先生の所に伺ったときに非常な感銘を受けたのは、本当に患者が目の前で残り少ない  命を自分で実感しながら、それでも最期を全うするということを地域の方と共有していらっしゃ  る。また、助けていらっしゃる皆様も、自分たちは何よりもいいものを亡くなっていかれる方か  らいただいたとおっしゃっています。本当にいまの日本の教育に欠けているものは、こういう視  点ではないかと私は本当に痛感いたしました。  核家族化になり、子どもたちは、おじいちゃん、おばあちゃんが亡くなるのを見たことがない、  お葬式にも行ったことがない。亡くなっても、8割の方が病院で亡くなる。そして、弟、妹と言  っても、最近は少子化です。さらに、乳児死亡率が1,000人中2.8人ですか、そこまで落ちてしま  った中で死がどんどん遠くなるわけです。ですから、ゆとり教育などをやるより、私は最近、地  元では「ゆとり教育より看取り教育だ」と言っているのです。  例えば私なんかがもしガンで、あと、もう余命がないなと思ったときには、例えば地域の子ども  たちに「頑張って生きていけよ、おじいちゃんはあと3か月で死ぬけどな」という話ができたら、  ああ、子どもたちにいいものを残したなと思って、気持よく逝けることもあるのではないかと。  子どもたちも、いま目の前で残りの生が少なくなっているおじいちゃん、おばあちゃんが語った  言葉というのは、やはり命の大切さなどを教える面では、これは文科省だけに任せておくのでは  なくて、そういう新たな連携のあり方というのがあってもいいのではないかと。これはまだなか  なかいろいろたくさん、文科省との関連もあるかと思いますし、これからもう少し終末期医療が  進まないと駄目だと思うのですが、それぐらいの子どもたちに対する将来の視点などというのも、  本当に命の問題を織り込んだ冷静な議論をちょっと未来像の中に盛り込んでいただければありが  たいと思います。 ○ 野中委員  いま大事なことを言われました。実は教育に、そういう子どもたちの中から将来医師とか看護師  とか、医療従事者の仕事を選択する認識が生まれる、そういう部分での教育の果す役割は大事で  す。ですから、医療従事者に対する教育は医学部や医科大学から始まっているわけではないので  す、まさにそこは地域の安心と安全をどの様に作ろうかという話ですから。  実はその辺で残念なことは、患者になってみないと地域の情況が分からない。例えば認知症の人  を抱えてみないと家族や地域の人々にはなかなか理解できない。つまり病気や障害を抱えてみて  初めて社会保障制度としてのわが国の医療制度が、国民にとってどの様な意味があるかどうかを  理解できる。その立場にならないと理解できないという部分が、医療のいちばん弱いところと思  うのです。国民皆保険制度などの制度を支えるには、今病気や障害を抱えている人だけではなく  て、将来そうなるかもしれない人にとって、その医療がどういう役割をしているのかということ  を、きちんと理解していただく作業も必要です。これらの意義を理解しないと保険料を払い続け  る気持もなくなります。そのことがわが国の医療において非常に足りない部分と思います。  そういう視点から考えると、保険者こそ、被保険者に対してそういう医療がどういう役割をして  いるかということをきちんと説明できる団体と思うのです。後期高齢者医療制度にしても、保険  者である広域連合にも、実はそういう役割がある筈で、保険料を徴収するだけではありません。  そのような話が全く理解されていなかったことがやはり問題と思うのです。ですから、医療を提  供される人にとって、医療をどうやって実感していただくかということも大事と思いますが、医  療をいま受けていない、そして、保険料だけを払っている人たちに対しても、医療がどういう役  割であるかということをきちんと理解していただく、そういう作業があるから医療が患者とか国  民との協働作業になっていくわけです。いくら医師と医療従事者がいろいろ連携しても、一方で  国民の理解がないと、私は連携が生きてこないと思います。 ○ 小野看護職員確保対策官  申し訳ございません。間もなく大臣が来られますので、ここで一旦中断させていただきます。 ○ 西川副大臣  いま先生方がおっしゃっていただいたことで非常に印象に残ったことを申し上げます。いま、医  療教育にお金が非常に必要だと。これはすごく大事なことだと思うのです。それと。大臣がいら  っしゃいましたのでどうぞ。 ○ 舛添大臣  すみません、遅くなりました。 ○ 西川副大臣  網羅的にいろいろな意見をいただいています。 ○ 舛添大臣  どうぞ、いいですよ。 ○ 西川副大臣  では私だけ、一言喋ってしまいます。その中で個別の案件を徹底して追及して解決する、これが  結構全体の改革になる。私は、これは結構大事な視点だと思うのです。さっき辻本委員がおっし  ゃいましたが、その辺をしっかり押さえることと、いま地域医療のネットワークなどの病院探検  などがありますでしょう。本当に国民が医療の現状を知らないのです。医療の現状とその保険の  制度の現状を常に知らしめていたら、おそらく今回の後期高齢者医療はなかったと思うのです。  野中委員、辻本委員から今回の後期医療の本来の話をしっかり言っていただいてすごくうれしく  て、マスコミの方は是非聞いておいていただきたかったと思います。そういう中で本当に死を考  える中で、徹底したそういう教育の現場に医療の視点を入れ、そこから始まるということもすご  く大事だということで大変参考になりました。ありがとうございました。大臣がいらっしゃいま  したので一言と。 ○ 舛添大臣  すみません、委員会を2つも付き合っていたもので遅くなりました。今日は骨子案を皆様方にお  示しして自由な議論をいただいておりますが、医師の数は基本的に増やすという方向でいきたい  と思います。それから、医師の配分バランスも改善していきます。それから、コメディカル等の  間のチーム、協力関係もきちんとやっていきます。それから、やはりネットワークということが  必要ですし、住民の人たちのご協力も必要だと思います。  これから先ですが、これに肉付けをして、方向性をきちんと示した上で、できれば5月の終わり  か6月の初めに方向性を示したいと思っております。そこから先の数字の具体的なことは、財源  の裏付けも必要ですから最終的に総理とお話して、そういうことと高度な政治的判断をしないと  いけない問題もありますので、そこは最終的に政府全体としての具体的な政策という形に結実さ  せられればと思っております。  昨今の後期医療制度、長寿医療制度についても、いろいろなご批判もありますが、医療のサービ  ス提供を量も質も増やしてくれ、質を向上させ、量を増やしてくれという希望が非常に高いわけ  ですから、そのうちの財源的な措置がないとできないもの、財源的な措置がなくてもできるもの、  そういうことをきちんと細かく分けてやりたいと思いますので、この委員会では方向性を示すと  いう形で、そういう意味では少し抽象的になっても間違っていない方向性を示した上で、政治レ  ベルで具体的な数字の後付けをやりたいと思っていますので、まだまだ作業は続きますが、よろ  しくお願いしたいと思います。ありがとうございます。 ○ 小野看護職員確保対策官  ありがとうございました。カメラはこの辺でまた下がっていただければと思います。よろしくお  願いいたします。それでは、ディスカッションを引き続きよろしくお願いいたします。 ○ 辻本委員  すごく個別な話になるのですが、高齢の方がいわゆる心筋梗塞で家で倒れて救急車で運ばれた。  言ってみれば、そのときに既に助からない状況が見えた。しかし、家族の要請で、2時間、手分  けをして救急蘇生を続けて、最後、亡くなった。そうしたら家族がお医者さんの胸ぐらをつかま  えて、「何で殺したんだ、何で助けなかったんだ」と。そういう話を聞いたのです。  その話を聞きながら私がふっと思ったのは、いま街の至る所にある、AEDです。しかし、正直言っ  て私も、あのAEDを実際に見たことはありません、使ったこともありません。あれが普及したと  いうことは、言ってみれば、家で倒れたときにいちばん最初に誰が何をやるかというと、家族が  そこのところを一生懸命にやってもいいことではないかというような、何か原点を考えさせられ  るようなお話を伺わせていただいたのです。  いろいろ調べてみましたら、各地には、医師会とタイアップした地域のNPOがAEDを使う講習会や  人工呼吸の初期の対応というようなことを、いろいろなイベントと組み合わせて努力している地  域もあるかに聞いております。そういった身近な問題で、いま大臣がおっしゃったように、お金  のかからないことでできることもいろいろあるはずですので、その辺も例として具体的にいくつ  か挙げていくことが、さっきから何度も言いますが、私たち、患者、国民ができることって何な  のだろう、という方向づけになるのではないのかということを1つ、ごく最近聞いたお話という  ことでご紹介させていただきます。 ○ 矢崎委員  前回、医師を増やす・増やさないで、私はいま増やしても精神安定剤の効果しかない、と議論し  て大変失礼しました。真意は、もし医師を増やすということが、地域の病院の医療を確保するた  めの医師の増員ということであれば、やはり付帯条件があると思うのです。  1つは、安易に医師を即成するというのではなくて、やはり医学教育の環境を整えると。いま、  欧米諸国に比べると極めて貧しい環境で医学教育をやっているから、臨床研修プラス2年やらな  くてはならないという状況にあるわけです。ですから、法的整備もともかく、医学教育の環境、  それにはやはり費用がものすごくかかるのです。ですから、その財源が必要です。国民の皆さん  が医師を増やすということであれば、受益負担をする覚悟が必要でしょう。もし将来、大臣が「  俺が引き受けたから増やすんだ」と言われても、将来、過剰になった場合のリスクというのはあ  りますので、そういうリスクに対してやはり相当覚悟が要るのではないかということが1つです。  もう1つは、これからもし新しく医師を育成するのであれば、自治医大方式のような医師の養成  システムを抜本的に、何と言いますか、転換がないと、ただ医師を野放しにするといけないので  はないかということです。診療科のバランスで、いま産科の医師が足りないとかいろいろ言われ  ていますが、もっと恐ろしいことは、少し前に申し上げたのですが、外科の医師がものすごく少  ない。10年後にもしかすると日本の中でちゃんとした外科手術が受けられない状況があり得るか  もしれない。ですから、専門分野ごとの医師の養成目標を立てた上で医師の数を増やすかどうか  と議論しないと、ただ「増やしますよ」と言うといけないのです。やはり専門分野ごとの養成目  標がきちんと立てられるような、例えば、先ほど申し上げましたように、専門医制度というもの  が学会に任されていますよね。そういうものを社会の医療ニーズにマッチしたバランスを考えた  医師の養成、ということで専門分野の養成目標というのは第三者的な、これは規制と言うと規制  ですが、やはりそういう認証機構のようなものを作って、我が国の医療でこういう分野にはこの  ぐらいの人が必要ですよ、あまりにも眼科、皮膚科ばかりが多くなるというのはいけないのでは  ないかというような、方向性を立てないで医師数の増加をおっしゃると、非常に誤解されてしま  うところがあると思います。  それから、医学教育環境が整わないで増やすというのはなかなか、いろいろな条件があります。  いま増やすとすれば、やはり医学教育のキャパシティの範囲内で判断していただかないと、それ  を超えたものであるとなかなか現実的ではないのではないかということで、増やす場合にはお考  えいただきたいと思います。  それから、医師の需給のときに大臣がおっしゃっているのは閣議決定ですね。これは1方向に規  制していますよね。しかし、医師需給は、本当に実情に沿った医師数を適正に判断するというこ  とで、やはり閣議決定の見直しの時期にもあるかもしれないということを、先ほど申し上げたの  で繰返しになりますが。 ○ 舛添大臣  10年後にどうなっているか、ものすごいリスクはあります。もっと足りなくなっているかもしれ  ません。もっと増えているかもしれません。リスクをとるのが政治的な決断ですから、それはや  りますということです。  政府全体と申し上げたのは、まさに教育ですから、文科省のマターになります。診療科のバラン  スというのは、これもいろいろ考えないといけない。今日の厚生労働委員会でも議論があったよ  うに、麻酔科のお医者さんをどうするのだということもあります。そうするとこれは、各大学で  定員をかけるときに、医学部何人ということから細分化して、内科何人、小児科何人というふう  に枠まで決めてしまうのかどうするか。やり方はいろいろあると思いますが、バランスをとりな  がらどうするかというのは、これはまた考えないといけないのです。ただ、簡単に言えば、医師  はこれだけ激務であるわけですね。いま突然、医師の数が倍になっても、普通のノーマルな勤務  時間に戻ればそれで同じだということになるわけです、極論すれば。ですから、医者になってみ  て使い物にならなければ、国会議員になっている医者だっていっぱいいますから。使い物になら  ないからなっているかどうかは別として、いくらでも活用の仕方はあるし、保健所の所長になっ  てもいいですし、冗談ですが、そういうことも含めて考えないといけないと思います。だから、  リスクをとる分は政治がリスクをとります。  例えばこういうことがあります。池田勇人内閣で所得倍増計画、10年間でと打ち出しました。馬  鹿じゃないかと言われた。10年経ちました。それは倍増どころの話でなくなった。あのときの決  定は何だったかというのは、その前の岸さんの内閣で安保反対、安保、安保で世の中がtoo pol-  iticizedされたときに、鎮静化させるという、エネルギーを政治から経済に転換させるというこ  とで非常に大きな意味があったのです。あのとき専門家はみんな、馬鹿じゃないか、所得倍増な  んか、という意見だったわけです。だから、先ほど申し上げた、方向性をいただいて最終的に政  治の決断で政治がリスクをとるというのは、そういう意味なのです。ただ、もちろん先生がおっ  しゃるように、細かい点の配慮をしておかないといけません。それをやるために実は、先ほど申  し上げた「今後とも作業は続きますよ」というのは、そういう意味で申し上げたのです。  医師の養成は、予算にしても現実の動きにしても、ほとんど文部科学省マターになるので、これ  は渡海大臣とよく話をしたらと思っております。また、地方のレベルの話だと総務大臣も関わっ  てきますので、一度その関連の省庁の大臣と話をしてと思っています。それから、医学教育の環  境を整備する必要があればまた整備していかないといけないと思いますので、そういうことも含  めて考えたいと思います。  それから、いままでの閣議決定があってこの閣議決定を撤廃するのか見直すのかといったような  話になるのですが、閣議決定をしなければ動かないのかどうなのかということも、それはいろい  ろな形での政策の決め方があると思いますから、できれば野党も含めての大きなコンセンサスが  得られる形がいちばんいいと思うのです。時の政府の時の何とか内閣の決定だということよりも、  できるだけ多くのコンセンサスを得てそうしたときに、ということは国民全体のコンセンサスで  リスクをとるということですから、それのほうが、いまのような衆参ねじれ現象においては政治  的にはるかにクレバーかもしれない。いずれにしても、そこはまた少し判断の時間とお知恵を拝  借いただければと思います。 ○ 野中委員  その辺は本当に政治的に判断していただくのがいいと思うのですが、私は、例えば救急医療にし  ても、現場のニーズというか、地域のニーズを例えば東京のニーズと、先ほど言いましたが、地  方のニーズを現場で本当にきちんと考えていただかないと、そこの医師の数という部分は際限が  ないと思います。先ほども言いましたが、この何年間、地域医療計画が本当にその住民のニーズ  を基に立てられたかを考えると、私はその作成現場にもいましたが、作成された記憶は全くあり  ません。必要であれば、東京都の地域保健医療計画や、私の住んでいる台東区の地域保健医療計  画を見ていただければと思いますが、住民のニーズという部分ではその判断をきちんとしていな  いのです。むしろベッド数がいくつであるか、診療所の数がどうであるかということでした。一  方で医師や看護師になる人たちも、自分たちのニーズがどうであるかということを把握しないで、  医者という職業の中で科を選んでいるということもあると思います。もちろんそれは簡単にはで  きないかもしれませんが、やはり現場のニーズというか、その辺のニーズというものを具体的に  地域から積み上げて、そして、それをあからさまにしていくことは、医師がどこで働けば自分の  役割が適切に果たせるかを考えるためにも大事と思うのです。  若い研修医と話していると、やはり医師数の少ない中でも自分はこういう部門をやりたい、ある  いは、中には産婦人科をやりたいという人もいますし、小児科をやりたいという人もいます。で  すから、そういうニーズを全く知らない中で医療を見ていくという中では、やはりそのものがも  っと大きな力として出てこないのではないかと思います。医師の研修については矢崎委員のほう  が専門と思いますが、やはり地域医療の研修をやっていて実感します。この地域医療研修につき  ましては、地域の診療所がこの地域医療の研修に対して、もっと積極的に取り組む視点が大事と  思います。  ただ、そこでもう1つ言わせていただければ、先ほど言いましたが、医療の現場特に診療所では、  例えば看護師とかいわゆるクラークとか、医療や介護の関係者の人たちを容易に雇えるような状  況ではありません。大きな病院でもなかなか困難ですが、小さな診療所などでは適切な医療を提  供するための必要量としてもなかなか雇えないような現状もご認識いただきたいと思います。  もう1つ、思い出したので言います。医師不足だ、医師不足だと言いながら、医師が過剰なほど  存在する病院もあるわけです。その医師がたくさんいる病院と医師が不足する病院との差は何な  のか、その部分は検討してみる必要があると思います。  もう1つ、救急の部分です。先日厚労省であった救急対策の委員会でありましたように、私は、  例えば東京で言えば、救急医療を実施する上で、二番煎じというか、救急病院で収容した患者を  そのご受け入れて適切に治療していく医療機関の存在も重要と考えます。しかし、なかなかそう  いう視点で救急医療が検討されない。全部が救急という部分で、病院が患者を収容するためにむ  やみな競争をして、結局、みんな疲れきっているというような状況も生まれています。このよう  な現状にも医師不足の大きな原因があると思います。その辺についても交通整理が必要です。本  日は盛んに行政、地域行政と言いましたが、行政が地域を縛るのではなくて、行政が地域を活性  化するための行政本来の役割で行政に期待して発言しています。是非、そういう部分で地域行政  が地域の住民の安心と安全をどう守るのかという視点であらためて、地域医療計画作成を考えて  いただくことが長期的には大事と思っています。 ○ 西川副大臣  辻本委員。 ○ 辻本委員  話がまた広がりますが、よろしいですか。 ○ 西川副大臣  大臣がいらっしゃいましたからやはり。 ○ 辻本委員  私は、この安心と希望の医療確保ビジョンに取り組む厚労省にお願いしたいことがもう1つござ  います。それは、今回の後期高齢者の問題のときにもやはり説明不足、情報不足ということが今  日の混乱を招いていることから学んでいただきたいことなのですが、まず何よりぶれていただき  たくないということです。それから、地域、行政の人も、上からの通達を口を開けて待っている  ような状況があって、情報がなかなか一般国民の所に届いてこないということが、後期高齢者だ  けではない、これまでの問題の中でもいっぱいあるわけです。例えば、急性期医療と療養型とい  うことが大きく区分けされたときでも、患者の声は、病院から追い出されたとずっと言っていま  した。それはやはり厚労省が、なぜそのようにするのか、それぞれの病院がどういう役割なのか、  そういったことの情報提供が私はやはり不十分であったと今も思います。それはもちろん、後期  高齢者の今日のさまざまな問題というところにもつながっていることだと思います。患者が賢く  妥協し、賢く諦め、賢く選択し、自分がどうしたいかということを考えるためにも、まずはこの  ビジョンの取り組みも含めて、何度も申し上げていることですが、わかりやすく説明していただ  くというインフォームド・コンセントのその努力を厚労省も是非とも取り組んでいただきたいと  いうことをお願いしておきたいと思います。 ○ 西川副大臣  私、いろいろお話を聞いていてちょっと思ったのが、結局、各地方で、その地域でいろいろ連携  から1つの計画を立ててやりますよね。いままで地方自治体というのは、総じて本気で医療など  に向き合ったことがないと思うのです。各医師会に任せていた。各病院に任せていた。その中で  財政の問題だけを何とかやっていた。主体的に動いたことが少ないと思うのです。今回、これは  本当にいいきっかけで、各地方自治体が本気で自分の守っているエリアの医療の制度をどうする  かということ、これをここで明確に書いて、それをすると、私はかなり違ってくると思うのです。  そうすると、地域住民の人も単なる患者でなくて、自分たちと一緒に向き合って何とかしなけれ  ばいけないねと。はっきり言えば、国民中が何とかしなければいけないねというスタンスになっ  て今回の問題を受けてくれたら、全く違ったと思うのです。常にお客様で、スーパーで物を買う  ように、この医療制度体制から年金すべてでそうですが、要求だけをするのではおかしいと思う  ので、まずそのことを徹底してここできちんと出すべきだと思うのです。みんなで支える。そし  て、それは国レベルで、厚労省が責任を持ってある程度やる。そして、地方レベルでは、各自治  体のトップがその意識を徹底して持ってもらう。そのことは、私はものすごく大事だと思います。  さっき、研修制度でお医者さんがあふれている所とあふれていない所があると。それははっきり  言って、病院長の資質も大きいと思います。本当に意識が高くて魅力のある病院長の所に集まっ  てきますよね。ですから、病院側の先生たちの研修や医師会の研修でそういうことを徹底して言  ってもらう。そういう具体的なハウツーをここにきちんと書いたらいかがかなというのをちょっ  と感じました。 ○ 舛添大臣  矢崎委員、私、実はあまり悲観的に思っていないのは、あなたは産婦人科に行きなさいとか、あ  なたは外科に行きなさいとか、職業選択の自由もありますし、本人の好みもありますから、そこ  まではなかなか言えないと思うのです。  しかし、我々が自分の道を選ぶときにどうだったかというとやはり、医局などを見ていてもそう  ですが、最初から「俺も親父の跡を継いで産科をやらんといかん」、こんなのは別ですが、では、  あなたは何をやるかというときには、オリエンテーションで相当違ってくる。あの先生のように  なりたいというのは相当あると思うのです。それから、「どうしても新しい命の誕生に立ち会い  たい、だから俺はどうしても産科をやりたい」という人がいてもいいかもしれないし、好みもあ  るし、得手・不得手もあると思います。それはある程度どこかに偏るということよりも、大学教  育の中で先生方がきちんと指導すれば、そんなに悲観的に考えなくてもいい風が行くと思うので  す。  ただ問題は、いまのようなご時世になったときに、これほど過酷な勤務条件ならば、楽を取れば  皮膚科のほうがいいよとか、眼科のほうがいいよとなってくる可能性がありますね。ですからい  まの問題は、本人が例えば産科をやりたいという使命感や意欲や野心があるにもかかわらず、そ  れをつぶす条件の悪さがあることが問題なので、職場状況とかいろいろな社会的な条件を整える。  それは訴訟リスクを回避するというその問題もそうですし、そういうことを、これ、いろいろな  所に散りばめて書くことになると思いますし、既に我々がやってきているところですが、それの  上で医師の養成ということになると、まずは大学での教育ということに、指導者を含めてなると  思います。  それから、野中委員がおっしゃった、地域のニーズをどうして汲み上げていくかということです。  おそらく、各地で研修をやっていると、この前総合医療をやられる先生からお話があったように、  これだけのニーズがあったら自分はこっち側の方面へ行こうという若いお医者さんが出てくると  いうのも十分可能性があると思うので、そういう、まずは教育の場で、それから研修、地域の場  でそういう人たちをエンカレッジする、ディスカレッジしない。いまディスカレッジする要因が  あまりに多いので、要因を一つひとつ除いていく作業をやっているわけです。その上で、今度は  どうエンカレッジするかということを考えていきます。かつての問題は安心料みたいなものだと  のことですが、私から言わせると、それと同じような表現になるのです。要するに政治のダイナ  ミズムなのです、ほとんど意味を持たない。そういう意味で専門家から見たら、何を言っている  のだ、増え過ぎて困るではないかという意見もあります。しかし、世の中を動かすときにはそう  いうシンボリックな形で動かす政治のダイナミズムもある意味では必要になってくる。高度な政  治的判断をやるというのはそういうことです。せっかく道路を一般財源化するわけではないです  か。そうしたら、それはチャンスですよ。  というふうに私は、そういうこともあると思います。あと何か。 ○ 矢崎委員  それで、養成目標のお話をしましたが、大臣はそういうことで、そのようになれば非常に素晴ら  しいことだと思います。  もう1つは、医師不足対策は医師養成数の増加と、それからもう1つは、毎回申し上げているよ  うに、コメディカルの方のスキルミックスです。先ほど申し上げたのですが、我々、病院のデー  タでは伝票とか指示とか保険の請求書とか、そういうクラークの仕事が医師の10%か20%。それ  から術後の、要するに包帯の交換とか、患者から見てむしろ看護師にやってもらったほうがいい  ような医療が実は20%から30%。要らない外来も削るとそのぐらいなのです。そうすると、トー  タルすると、40%ぐらいは本来病院の医師がやらない仕事をやっているということ。だから、そ  こをきれいにすれば、病院の16.4万人が本当にあっと言う間に倍増する。  ただ、それをするにはやはり教育をしないと。国民が安心できる、看護師に任せても大丈夫だと  いう在宅医療の看護師が主治医的な働きをするとか、これから看護師に手伝ってもらわなければ  ならない領域がたくさんあって、その高度な教育をしないといけない。看護師全体にそういう教  育をする必要はないと思うのですが、看護師にもいろいろあるので。そのときは、またこれは文  科省の話になりますが、やはり教育費が結構大変ではないかと。だから、そこの財源を文部科学  大臣にしっかり伝えていただきたい。  もう1つ、先ほど野中委員から、急性期病院の崩壊、医師の立去り現象は救急が問題だと。昼間  手術をして、当直でまたやって、またあくる日手術と、そういう過酷な勤務状況を、リスクの問  題もありますし、そういう過酷な状況を解決するにはやはり救急部門の確立です。特に二次救急、  いま大きな問題は二次救急部門をしっかり。先ほど野中委員がお話になったように、これはやは  り機能的に集約しないといけないのではないかと。例えば二次医療圏を考えてみたときに、何か  所ぐらい必要かと。そういう病院にはやはり特化した院内システムを作る。勤務医対策として予  算が150億円出ましたよと言っても、我々勤務医からすると、そこが活かされるというか、身にし  みて感じるところがないのです。どこかに消えてしまう。だから、むしろ道路財源を一般財源化  したときに、新しい財源として厚労省に関係のない教育をしっかりしてほしいということと。そ  れから救急医療を、施設を集約して、そこに特化した院内システムを作って、そこは24時間、36  5日で交替勤務を原則にして、昼間働いて、夜も救急をやるということは絶対にしない。もちろん  病院医師が必要であれば手伝いに行きますが、救急を本務としない。そのための運営経費を病院  会計から独立したものにしないと。要するに、救急医療のためにと病院に行っても、全体の中で  薄まってしまう。だから、国民が医療費を負担したときに、どこに使われて、どういう効果が上  がっているかというのがある程度見える形にしないといけないのではないかと。だから、1つの  選択肢として、そういう救急をしっかりすれば急性期病院の医師の疲弊が少しは目に見えて軽減  される。その代わり、一方では医師会の先生方に、もし二次救急の施設があったら、そのときに  サテライトに一次救急のトリアージをするものを、サテライト診療所のようなものを病院のまわ  りに防波堤のようになって、そこでトリアージして、二次救急はそこの施設で一切、360日引き受  ける。三次救急は三次救急の施設に送る。ポイントはやはり二次救急医療機関の整備で、そこに  是非新たな財源を投入していただければと切にお願いする。  今後の医療の方向性というのは、私は、高齢者医療のあり方というのは、先ほど松浪政務官がお  っしゃったように、高齢者の医療を、特に高齢者の医療は、高齢者の視点に立って考えないとい  けないのではないかと。私は、病院にいたときに高齢者に対して。家族の方がものすごく要求さ  れるのです、うちの大切なおじいちゃん、おばあちゃんにはこうしてほしいと。しかし、高齢者  から見たら、それで大変痛い苦しい思いをして、それで元気になるかというと、高齢者はなかな  かならないわけです。おうちにもなかなか帰れない。病院にずっといて、「おうちに帰ってくだ  さい」。家族もそういう余裕がありません。結局、多くは病院で過ごすような、本当にQOLの悪い  状態になるので、看取りも必要ですが、高齢者医療のあり方というのを、これはやはり国民的コ  ンセンサスと言いますか、それを形成しない限り、後期高齢者医療制度を見ても、なかなか、や  はり高齢者医療の基本から考えていかない限り、なかなか難しいかなと思いました。 ○ 野中委員  いまお話で治す医療から支える医療として、いま矢崎委員は1つの例を挙げられました。私は専  門家ではありませんが、認知症の診療に地域の診療所としてずっと関わってきました。まさに認  知症の対応というで、まずは認知症の診断を的確に早期に診断することが大事なのです。そこで  認知症の進行はある程度は治すこともできますが、むしろ周辺の症状は、治すのではなくさまざ  まな人のケアである程度鎮めることが出来ます。このことに対する理解は、現状ではなかなか困  難です。私は認知症の診療体制の構築に関わって来ましたが、医師側の理解も不十分ですし、ご  家族や地域の人々にもまだまだ認知症に対する理解は不十分な状況です。地域でいわゆる認知症  の高齢者の方々を支えるためには馴染みの関係を大切にして、住み慣れた地域で生活することを  実現出来ます。この実現においても医療が大切ということをあらためて認識することが、医療が  国民にとって大事という認識になると思います。当然、そういう部分においてもさまざまなコメ  ディカルの人々との協働が必要です。  その前に、認知症の人たちをどうやって理解することがいま大事なのです。その方々を社会がど  うやって受け入れるかどうかは、いま矢崎委員がお話になったことと同じと思うのです。その様  な認識が広がるからこそ病院からも退院できて、そして住み慣れた地域で生活できるのです。地  域で家族だけが大きな負担を担わなければいけないのかと考えられますが、地域のとなり近所の  人々が支えてくれるからこそ実現できるのです。私の住んでいる地域は浅草ですから、例えば三  社祭とか隅田川の花火とか、そういう催しを認知症の方が見るだけでも、気持ちが落ち着かれま  す。そういう意義を理解してあらためて地域の医療を考えることこそ、やはり治す医療と支える  医療がドッキングできるということと思います。認知症に対する医療だけではなく、在宅医療に  も同様な課題があります。在宅医療も患者を抱える家族の負担が大きすぎては意味はありません。  ですから、やはり介護保険制度と医療保険制度が適切にドッキングすることが重要です。先ほど  松浪政務官も言われたように、例えば多様な施設の中での医療がどうあるべきか、今後、十分に  検討すべきことと思います。そして施設において多職種が連携して協働する事の実現が大切です。  今日、新聞で、特養でインシュリンが必要な人が、朝のインシュリンが打てる看護師がいないた  めに、その特養への入所を拒否されたことが報道されていました。この事実は今日に始まった事  ではありません。私も現場でやむなくインスリンを内服薬に変更せざるを得なかった事例を何度  か経験しました。このような事実も、患者の住みなれた地域での生活をどのように支えるかとい  う視点で考えいただくことも大切と思います。 ○ 辻本委員  これからの方向性の中で患者の自立をどう支えるかということが大きなテーマになってくると思  います。3)業務分担と協働、チーム医療の推進でいくつか挙げていただいている中で欠けてい  るものがMSW、あるいはメディエーターというような、これまでの議論の中にも入ってきたと思い  ますが、間をつなぐ役割。ここに挙げられている役割の方は、皆さん、臨床での役割を持った方  です。しかし、臨床だけではない、一緒に相談しながら患者とともに歩いて考えてくれる人、背  中を支えてくれる人、これからはそういう人の存在が安心と希望の医療の実現において、抜いて  語ることはできないと思います。アメリカでは既にペーシェント・ナビゲーターという職種が生  まれているそうです。ナビゲーションがいいのかどうかは別の議論が必要だと思い増すが、相談  するということで自分を見失わないで、自分自身の問題として捉えるということの自立の支援と  いう意味では、そうした臨床家でない人の支えが選べる、身近に存在してくれる、そうしたシス  テムを是非とも考えてご提案をいただきたいと思っています。 ○ 舛添大臣  その点は、2頁目のIIの4)−(1)の地域で支える医療の推進の中に先ほど来野中委員がおっしゃ  っている、例えば民生委員のような人とか、ボランティアで認知症のご老人を助けてくれる人と  かが入ってくる。今この医療機関の分担ネットワークの推進の中には医療機関しか入っていない  のです。だから、少しコミュニティの中でいまのナビゲーターのような話をするといい。メディ  エーターは医療機関の中のメディエーターだと思いますが、臨床の方にいく前に民生委員に相談  する。そうすると、介護保険のシステムがありますが、例えば成年後見制度、これはあまり利用  されていませんね。ですから、今回もリビングウイルのような話はいろいろ不評なのですが、そ  こを厚みを付ける形で地域全体の人的支援、いま言ったソーシャルワーカーとか、民生委員とか、  弁護士とか、ボランティア活動をやっている方とかの動員ということがいまの4)。5)も、「  医者と患者、家族の協働云々」となっていますが、メディエーターは実はここにも入ってくるわ  けです。だから、方向性の所で少し拾えるところを事務方でポイントに入れてもらえればと思い  ます。  あと、どうですか、皆様方、私は遅れてきましたが。まだ議論する機会はあると思いますので、  今日はあくまで目次だけのたたき台ですので、少し目次を変えることを含めてさらに議論を進め  たいと思います。事務方から、今後の予定、その他、やり方について説明してください。 ○ 小野看護職員確保対策官  次回は日程がまだ未定ですが、私どもから連絡させていただきたいと思います。では、本日はこ  れで閉めさせていただきますが、よろしいでしょうか。ありがとうございます。 ○ 舛添大臣  長い時間、どうもありがとうございました。 (照会先)  厚生労働省医政局総務課  松淵、加藤(憲) (代)03−5253−1111(内線2516、2517)