08/04/16 第7回新型インフルエンザ専門家会議の掲載について 第7回新型インフルエンザ専門家会議   日時:平成20年4月16日(水)10:00〜12:00                       場所:中央合同庁舎第7号館(金融庁)9階共用第1会議室 議  事  次  第   1)新型インフルエンザ対策におけるワクチンの製造・備蓄等のあ り方について   2)積極的疫学調査ガイドライン(フェーズ3)の改定について   3)政府における最近の動向について   4)その他 第7回新型インフルエンザ専門家会議配付資料一覧 1)新型インフルエンザ対策におけるワクチンの製造・備蓄等のあり方   について  資料1  プレパンデミックワクチンの製造及び備蓄の方針案  資料2  新型インフルエンザ対策におけるプレパンデミックワクチン      の方針(案)  資料3  平成20年度厚生労働科学研究 新型インフルエンザワクチ      ン臨床研究     (案)概要  資料4  新型インフルエンザワクチンの国家検定について(案)  資料5  パンデミックワクチンの製造期間短縮について(案) 2)積極的疫学調査ガイドライン(フェーズ3)の改定について  資料6  積極的疫学調査ガイドライン(フェーズ3)改定(案) 3)政府における最近の動向について  資料7  沈降新型インフルエンザワクチン(H5N1)における小児用       法・用量設定のための医師主導治験について  資料8  抗インフルエンザウイルス薬の備蓄等について  資料9 「新型インフルエンザ対策行動計画」改定の要点  資料10 新型インフルエンザ対策に関する政府の対応について  資料11 新型インフルエンザ対応総合訓練の実施について  資料12 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律及       び検疫法の一部を改正する法律案の概要  資料13 新型インフルエンザ対策ワークショップについて  資料14 新型インフルエンザ推進室の設置について  資料15 都道府県等における新型インフルエンザ対策の調査について  資料16 新型インフルエンザ発生初期の対応について(案) ○中崎補佐 定刻となりましたので、遅れていらっしゃる委員もいらっしゃいますが、こ れより第7回「新型インフルエンザ専門家会議」を開催いたします。 初めに、委員の交代がありましたので御紹介をいたします。 サーベイランス部門では藤本委員が退任され、荒田委員が就任されております。 予防と封じ込め部門の公衆衛生対策では、中島委員が退任され、砂川委員、藤井委員が 新たに就任されております。 予防と封じ込め部門のワクチン及び抗ウイルス薬では、泉委員が退任され、染谷委員、 河岡委員が新たに就任されております。なお、河岡委員は本日御欠席されております。  医療部門では野口委員と和田委員が新たに就任されております。 情報提供・共有部門では大西委員と石川委員が新たに就任されております。 その他海外情報収集部門では墨屋委員が新たに就任されております。 本日の委員の出欠状況でございますが、荒田委員、相楽委員、庵原委員、永井委員、笹 井委員、吉川委員、石川委員から御欠席との御連絡をいただいております。 それでは、西山健康局長がごあいさつを申し上げます。 ○健康局長 おはようございます。御紹介いただきました健康局長です。先生方には前回 の開催から1年経つということで、お目にかかる方も多いんでありますけれども、その後、 総理官邸の総理大臣を本部長とする対策本部の設置を閣議決定いたしました。また、行動 計画の改訂を行っております。更に、これは今日も来られていますけれども、成田の空港 の検疫所中心に訓練を実施いたしまして、これもテレビ報道されたわけであります。まさ に今、感染症等の改正案の国会審議が始まるわけですけれども、恐らく今週、来週ぐらい がその審議の山場ではないかと思っております。 現在、与野党でプロジェクトチームが立ち上がっておりまして、それぞれ非常に濃密な 議論を国会でしていただいています。特に昨今言われていますのは、新型あるいは鳥イン フルを一類感染症に指定すべきではないかというような議論が昨日から起こっていまして、 保安のことは御存じだと思いますけれども、新型は新たな法律体系をつくりまして、一類 〜五類に含まれない別体系で健康監視とか外出の自粛だとかそういう項目を法律に盛り込 んでいるものですから、なかなか一類にすんなりいかないだろうと思っておりますけれど も、そんな状況で来週辺り参考人質疑も入るわけであります。 いずれにしても、私どもの認識としては、先生方は非常に高い御見識をお持ちだと思い ますけれども、前はパキスタン等でも鳥インフルが発生していて、5名ほどの方が亡くな っているんです。その方々がひょっとしたら新型かもしれないということもあり得るわけ です。ですから、今、フェーズ3でありますけれども、いつ何どきフェーズ4Aになって もおかしくないと私どもは思っております。また、今日は先生方の方からいろいろ御意見 賜りたいと思います。 今月の1日ですけれども、今日もここに来られていますけれども、新型インフルエンザ 対策推進室というものを設けまして、青森県からドクター難波に来ていただきまして室長 になっていただいたということでございます。感染研の体制も含めてでありますけれども、 更に重視しなければいけないだろうと思っております。 今日は社会的関心の高いワクチンに関する議論をしていただくというようなことで、非 常に多くの方が出席されましたので、時間内に終わるかどうかわかりませんけれども、専 門的、大局的見地からの貴重な御意見を賜りたいというようなことをお願い申し上げまし て、あいさつとさせていただきます。 どうぞよろしくお願いいたします。 ○中崎補佐 以降の進行につきまして、岡部議長にお願いいたします。 ○岡部議長 この会は以前はパンデミックプランということをテーマでかなり濃密な会議 であったと思うんですけれども、今回しばらく間が置かれました。けれども、本会議とは 別にWGなどでいろいろな進行があったと思います。今日、これから主にワクチンについ てということの議論ですけれども、まず資料の確認というところで事務局からお願いしま す。 ○中崎補佐 カメラ撮りはここで終了させていただきますので、取材の方は御協力のほど、 よろしくお願いいたします。 (報道関係者退室) ○中崎補佐 それでは、お手元の資料を確認させていただきます。まず座席表が1枚、委 員名簿が2枚紙でございます。議事次第が表紙といたしまして資料1〜16まで66ページ の資料がございます。 新型インフルエンザ行動計画を配付させていただいております。資料の不足あるいは乱 丁がございましたら後ほどでも結構でございますので、事務局までお申し出いただけます ようお願いいたします。 ○岡部議長 資料はそれでよろしいですか。もし過不足があったら途中でどうぞおっしゃ ってください。それから、新たな委員も加わってメンバーもいろいろな分野の方が増えた と思いますので、これから議論を進めていきたいと思いますが、その前に1つ。ここ2〜 3日の報道で本会議で討議すべき幾つかのことが、既にリリースされていて、何かあたか も決定されているがごとくの報道もありました。誰がどういう説明をされたかわかりませ んけれども、私、この委員会というのは追認をする委員会ではなくて、それについて議論 をしてコメントを国の方に申し上げるという会だと認識していますので、決定がなされた ということではないと思います。報道機関によってはそれについて議論をするというよう なニュアンスを書かれていたところもありますし、正式決定はこの会を経てからというよ うないろんなニュアンスのものもがありましたけれども、報道の内容はともかくとしまし ても、十分な議論を尽くした上で更に議論をしなくてはいけないところはもっと重ねなけ ればいけないと思います。  ということで本日は御意見をいただきながら委員会を進めたいと思いますので、どうぞ よろしくお願いいたします。 それでは、この議事次第に沿っていくことになりますけれども、議題1「新型インフル エンザ対策におけるワクチンの製造・備蓄等のあり方について」ということについて、事 務局の方から資料の説明をお願いいたします。 ○感染症対策企画調整官 皆さんおはようございます。正林です。ごぶさたしております。 1年ぶりということで、今日は非常に議題が盛りだくさんでありまして、用意させていた だいた資料も大変多うございます。1ページをごらんいただきたいのですが、それぞれの 議題に沿って全部で16の資料をつけております。2時間しかありませんけれども、何とか 終わりまでたどりつきたいと思っております。 まず議題1の「新型インフルエンザ対策におけるワクチンの製造・備蓄等のあり方につ いて」は田代委員を中心としたワクチン抗ウイルス薬ワーキンググループで何回かにわた って御議論をいただきました。その関連のおまとめいただいた資料を付けております。 そういうことで、早速その資料の御説明をしたいと思います。 2ページ目、資料1。とりあえずワーキンググループで議論された内容ですけれども、 事務局の私がざっと概要だけ説明して、後ほど田代委員に補足説明をしていただけたらと 思っています。 まず資料1は「プレパンデミックワクチンの製造及び備蓄の方針案」であります。これ まで18年度はベトナム株とインドネシア株、合計1,000万人分の原液を備蓄しました。ま た、平成19年度には中国のAnhui株を用いて1,000万人の備蓄を行いました。 「2.ウイルスの変異等について」というところですが、Clade2.2に分類されるワクチ ンの製造用の候補株も今後我が国でワクチンの製造が可能となるような見込みが出てきま した。これまでもそうなんですが、変異に対応したプレパンデミックワクチンの備蓄をす ることは大変重要だということであります。 「3.プレパンデミックワクチンの製造方針について」でありますけれども、ウイルス 変異に対応したプレパンデミックワクチンを製造し、これを備蓄するべく、各製造企業に おいて製造準備を進められることが望まれる。Clade2.2が最も有力な方法であるが、ウイ ルス株を用いた製造が開始可能となる前に、それまでの間のウイルス変異とワクチン製造 用株の状況に基づき、ワーキンググループにおいて再検討するといった内容でおまとめを いただいております。 資料2「新型インフルエンザ対策におけるプレパンデミックワクチンの方針(案)」と いうところであります。今のところ合計2,000万人分の備蓄があるわけですが、19年度に おいて合計70万人分を原液から一部製剤化しております。 20年度でありますが、検疫所職員等水際対策に従事する者と感染症指定医療機関職員6, 000人を対象に、事前接種に関する有効性・安全性を評価する研究を実施するというもの です。 これは4ページをごらんいただきたいと思いますが、今までこの専門家会議では備蓄し たプレパンデミックワクチンはフェーズ4になったら、ヒトヒト感染が起きたら接種を開 始すると整理をしていただきました。それは昨年のことであります。フェーズ4であれば、 ヒトヒト感染を起こしている株が同定されますので、仮にインドネシアの株で流行があれ ば、Indonesia株をそのときにプレパンデミックワクチンとして使えばいいというもので ありましたが、昨今、フェーズ3の今の段階でも場合によっては打ってもいいのではない のかというような世論というか専門家の間でもそういう声も出てまいりました。 ただフェーズ3と言いますとまだ発生していない、どの株が果たして流行を起こすのか もわからない段階で接種をするとなると、フェーズ4とは相当話が違ってくると思ってい ます。かなりの高い安全性と確実にそれが効くという有効性がある程度わかっていない限 り、フェーズ3の今の段階で打つというのはいかがなものかということであります。 そのためにはしっかりとした研究が必要であろうと、一応、備蓄されているワクチンは 知見は終わっていますけれども、そこはきちんと臨床研究を行って、きちんと安全性と有 効性を確認して、その上で考える必要があるだろうということであります。 研究の内容でありますけれども、一応今日は仕事の都合でお越しいただいておりません けれども、国立病院機構の三重病院の院長先生、庵原委員に研究をお願いしたいと思って おります。 内容でありますけれども、まず御協力いただく被験者ですが、治験のときに対象になっ たベトナム株の既接種者、まだ接種をしたことがない検疫所職員等水際対策に従事する者、 感染症指定医療機関の職員、ベトナム株の治験に参加した施設の職員の中で、あくまでも 協力していただける、希望する方、そういった方々を被験者として考えております。 どうしてこうした方々に限定するかと申しますと。 (1)施設の性質上、研究の趣旨やリスクに対する理解が得られやすい。 (2)被験者と医師の距離が近く、接種及びフォローアップが容易である。 (3)施設を集約することで研究の水準が維持されやすく、検体搬送などの手続を効率化で きる。 そういった理由でこうした方々に被験者を限定しております。 研究の内容としては。 (1)安全性の調査。これは勿論であります特に重篤な副反応が出るのか出ないのか。 (2)交叉免疫性の調査。ヘテロ、株が違う場合にどれだけ有効化という交叉免疫性の調査。 (3)免疫持続性の調査。どのぐらい免疫が持続されるのか。 (4)ブースト効果の調査。2回接種して1年かどうかわかりませんけれども、ある一定の 期間を置いた後に1回接種したら抗体が少なくとも何も打たないときよりもぐっと上がる、 いわゆるブースト効果があるのかどうか。こうしたことを研究の内容としております。 研究でありますが、一応治験は通っておりますので、適正な目的で適正に使用したにも かかわらず副反応が出た場合、特に重篤なものについては、独立行政法人医薬品医療機器 総合機構法に基づいて個別の事例の判定を経て、仮に出たら副作用被害の救済の対象には なるだろうと思います。こうした整理をしております。 こういう研究を庵原先生を中心に行っていただいて、3ページに戻りますけれども、十 分な有効性、安全性が得られた段階で、更にここで一部の報道を見ていますと直ちに1,00 0万人に対して接種をするかのごとく報道されていましたが、そう一足飛びにいく話では なくて、きちんとこうした研究を行った結果を踏まえて、十分な検討、吟味を経た上でそ ういった医療従事者とか社会機能維持者に果たして打つべきなのかどうか、そうしたこと を御検討いただくといったことを考えております。 5ページ目、資料4でありますが、これはワクチンの国家検定についてであります。 「1 課題」は、通常、ワクチンは必ず国家検定を受けないといけないと薬事法で定め られておりますが、製剤化して出荷する、その製剤化の作業とかあるいは規格試験の期間 等々に加えて、検定に要する期間というものがあるので、ワクチンの迅速な供給に場合に よっては困難を来たすことが懸念されています。これが1つの課題であります。 「2 対応方針案」として 「(1) 平時(フェーズ3以前)」であれば通常通り原液の段階で検定を行う。 「(2) フェーズ4A以降」もし、ヒトヒト感染が起きている場合は、新型インフルエン ザ専門家会議の議論を経て直ちに国家備蓄しているプレパンデミックワクチン原液の製剤 化を行うよう、ワクチン製造会社に要請した時点をもって薬事法第43条の規定に関わらず、 当該新型インフルエンザワクチンの販売、授与を行うこととする。 下の方に参考までに図で示しておりますけれども、フェーズ4A以降の場合は製剤化・ 規格試験等の次の国家試験が省略されてすぐに出荷という図を示しております。もしこう いった方針で御了解を得られれば、パブコメ等の手続を経て、薬事法の施工規則等につい て必要な改正を行うといった方針であります。 7ページは「パンデミックワクチンの製造期間短縮について(案)」というものであり ます。現行のワクチンの製造の体制は、鶏卵の培養用の弱毒ウイルス株を製造する、これ で2か月ぐらい要する。 冬季の新型インフルエンザワクチンの製造を行わない場合には、その際、鶏卵調達のた めに最大6か月程度要する。そこに書いてありますけれども、国民全員分のワクチンを製 造するために、新型インフルエンザが発生してから大体1年半前後の期間を要することが 想定されています。 どういう形でパンデミックが起きるかわかりませんけれども、1年半というとスペイン インフルエンザのときは、もう第1波、第2波が終わってしまっているかもしれない。そ れではよろしくないのではないかということで、今後の方針として新型インフルエンザ発 生後、ワクチン製造用のウイルス株が同定されてから6か月ほどの間に国民全員分のワク チン製造が完了することが望ましく、そのためには、現行の鶏卵によるワクチン製造だけ ではなく、細胞培養など、資材の調達や製造開始までの期間において有利な手法によるワ クチン製造技術を確立することが必要であるということです。 以上を田代先生を中心にワーキンググループの方で御議論をいただいてまとめたところ です。この親会議、本会議にお諮りをしたいというところでございます。 とりあえず私からの説明は以上であります。 ○岡部議長 どうもありがとうございました。この委員会は久しぶりにとはいえ、ワーキ ンググループはこれに関連する議論を続けてきています。それを親会議に持ち出したとい うような形ですので、このワクチンおよび薬関係でのワーキンググループでとりまとめて いただいた田代先生、今のことで追加がありましたら、あるいは補足がありましたらお願 いします。 ○田代委員 正林さんから説明があったとおりですけれども、幾つか補足をします。現在 備蓄しているプレパンデミックワクチンは鶏のウイルスを基にしてつくったワクチンで、 実際にパンデミックが起こった場合、もしH5でのパンデミック、ヒトのウイルスで流行 した場合に、全く同じ抗原性のウイルスが出てくるという保証はないわけです。 それから、H5以外のウイルスによるパンデミックの場合には、H5ワクチンの効果は 期待できないだろうという、不確定要素があるわけです。しかし、パンデミックがもしH 5で起こった場合に、全くこういうものを準備していない、もしくは国民にあらかじめ免 疫を与えていない場合には、丸腰でH5ウイルスの感染を受けることになりますから、大 きな健康被害が出るということで、プレパンデミックワクチンの事前接種の可能性という ことを検討しました。 これのメリット、デメリットはいろいろあるわけですけれども、まず正林さんのお話し にありましたように、現在備蓄しているワクチンはバルクという原液として大量に備蓄し ているわけですが、実際にフェーズ4になって、それから小分け製品をつくりますと1か 月半くらいかかります。 更に順調にいって接種をしたとしても、免疫ができるまでに3〜4週間かかります。そ うするとこの2ヶ月半の時間の遅れというのは非常に大きいのではないか。それを短縮す るためには事前に接種する必要があるのではないかということが議論されました。 もう一つは現在の備蓄のワクチンの有効期間です。今、インフルエンザワクチンの原液 がどのくらい長期間備蓄可能かということは、今進行中で検討していますけれども、恐ら く3年程度であろうと想定されます。そうしますと、最初につくったバッチは来年に3年 を迎える可能性がありますので、これをそのままみすみす廃棄してしまうのか、もっと有 効に使えるのではないかという議論もありました。 また、一般の人も含めて国民に対して、事前に免疫をしておいて、免疫記憶を与えてお けば、H5が多少抗原性が違ったウイルスが出現してきても、基礎免疫があるから比較的 軽く済むのではないかという議論もありました。 現在のワクチンはアジュバントを加えていますけれども、交叉免疫によって、異なるク レードやサブクレードのウイルスに対してもかなり広い防御免疫を誘導できるということ が示唆されてきました。また、プライミングによる免疫記憶も、数年間にわたり、かなり 長期間持続させることも示唆されています。そういうことから、備蓄ワクチンによる事前 接種ということもある程度現実性が出てきたと考えています。  外国で出された数理モデルでは、国民全体の60〜70%の人にあらかじめ免疫を与えてお けば、パンデミックは回避できる。その結果、社会的な機能の低下、崩壊というのは避け られるというモデルが出されていまして、この場合には費用対効果を考えますと圧倒的に 安上がりであるというような議論もなされました。 一方、安全性については、臨床試験で製造承認を得たときの試験というのは大体1,000 人程度の健康な成人を対象にして臨床試験をやったわけです。しかし、これを実際にパン デミックが起こったときには何百万人、何千万人という方に接種したときに、今まで検出 されなかった、予知できない副反応、副作用というのが出る可能性があるわけです。そう いう可能性があるので、現在のフェーズ3において、出来る限り安全性を検討しておくこ とが必要であるとの意見が多数を占めました。いきなり大勢を対象として接種することは、 無理だろうという議論がありました。 先ほど検定の話がありましたけれども、現在の備蓄しているワクチンを平時に打つ場合 には、フルコースで国家検定をすることができる。それだけ安全性が確保できるというこ とがあるわけです。しかし、この同じワクチンを備蓄したまま実際にフェーズ4になって から緊急に使った場合には、時間を稼ぐために国家検定を最小限度に減らすわけです。そ うすると、かえって安全性の確保という意味では少し問題が出る可能性があるということ です。むしろ事前に接種をするという方針をとった方が安全性の確保という意味では、よ り高いのではないかという議論がありました。 最終的に小分け製品にしてしまいますと、保存期間がどのくらいになるかということは わかりませんけれども、原液で保存した場合に比べて短くなることが予想されます。そう しますと、最終製品にして備蓄しておきますので、小分け作業に必要な1か月半の時間は 稼げるわけですけれども、保存期間が短くなるということで、それならば事前に接種を進 めていった方が有意義だろうという議論もありました。 以上です。 ○岡部議長 どうもありがとうございました。いろんな議論を経て一応今の案が出ている わけですけれども、案ということですから先ほど申し上げましたようにこれから疑問点そ の他については議論をしていきたいと思います。御意見がありましたらどうぞお願いいた します。コメントでも御質問でも結構です。 ○押谷委員 東北大学の押谷です。このワクチンの効果、最初の臨床試験のデータという のはまだ公表されていないと思うんですが、諸外国でのほかのワクチンと比べて抗体反応 とかどういう状況なのかということをお聞きしたいんです。 ○岡部議長 では、事務局からの方でお願いします。 ○血液対策課長 手元にデータがございませんし直接の担当ではありませんけれども、医 薬食品局ですので、このプロセスをまず申し上げますと、4社、国内ワクチンメーカーが ございまして、そこで基本的な方法で開発をしました。いずれもH5N1のワクチンでア ルミアジュバントを使ったものということでございます。承認申請をして、承認にこぎつ けたところが2社ございます。阪大微研と北里、2社ございまして、それらについては医 薬品医療機器総合機構の審査を経ておりますし、最終的には医薬食品の薬事分科会での審 議を経ておりまして、正式に承認されておりますので、その間での当然審査に必要なデー タ等は出ておりますし、必要なものは公開されております。数字は手元にございませんけ れども、その評価プロセスを経て承認されております。 ○岡部議長 田代委員、どうぞ。 ○田代委員 今の課長からの説明を補足します。新型インフルエンザワクチンの承認審査 結果の要約は医薬品総合機構のホームページで公表されていますので、ごらんになること はできます。 その結果はヨーロッパ、アメリカの新型インフルエンザワクチンに対する承認の条件と ほぼ同じ条件で審査をされていまして、それに合致しているという結果が得られています。 ○岡部議長 私も詳細な数字を今手元に持っていないですけれども、たしか抗体反応では 70%ぐらいのテイクが見られて、副反応で発熱および腫張等の局所反応はあるけれども、 重大な副反応というものは見られなかった。ただし、突発性難聴が一例あって、多分それ はアクシデンタルなものだろうというような形での公表があったと思います。詳細はホー ムページに出ていると思います。また、資料などでも出ているとは思います。 これは神谷先生からたしか発表があったと思いますので、もし何か必要でしたら資料を またあとで追加して出していただければと思います。 ほかにいかがでしょうか。 ○谷口委員 国家検定のお話しでもよろしいでしょうか。ワクチンを通してというお話し でいいですね。 ○岡部議長 はい。 ○谷口委員 素人的な質問で申し訳ないんですが、6ページのインフルエンザワクチンの 検定試験項目で、最終段階にある試験項目というのは中間段階以前では全くされていない ということではないんです。これはどうしても最終段階でしないといけないものなのか、 例えば中間段階でやっておくことは可能なのかというテクニカルな質問なんです。 ○岡部議長 いかがでしょう。田代委員。 ○田代委員 原液の備蓄というのは、不活化したウイルス粒子だけを備蓄しています。最 終製品というのは、このウイルス抗原を希釈して一定濃度にして、それにアジュバントを 加えるというプロセスがあります。ですから、原液備蓄の段階ではアジュバントは加わっ ていません。ですから、アジュバントの濃度についての治験というのは最終製品を対象に してやる必要があります。 タンパク質含量試験も、最終製品のタンパク量というのは勿論原液から調整するときに 最終製品はこういうタンパクになるだろうという計算はできますけれども、実際にそれを 検証することは最終製品を使わざるを得ない。ここに最終段階が書いてありますが、これ は国家検定であって、国によるダブルチェックを行うなわけです。緊急時には時間を短縮 する必要から、これらの国家検定によるダブルチェックを省略しようとするものです。勿 論、各製造メーカーはすべての試験を緊急事態においてもすべてやるという、そこには変 わりありません。 ○岡部議長 私から質問でもいいですか。 プレパンデミックワクチンで治験のような形でお願いをするわけですけれども、そうい ったような場合のワクチンは、これは小分けしたものについては検定をしたものになりま すか。 ○田代委員 現在考えているのは、フェーズ3の段階で接種するワクチンには、すべての 国家検定を行ったものを使うことになっています。従って、先程述べたとおり、緊急時に 接種する場合に比べて、より安全性は確保されていると判断されます。 ○岡部議長 ありがとうございます。方法として速やかにやらなければいけない場合に備 えてスキップが可能な部分をあらかじめ決めておくのと、一方では現在使おうとするもの についてはできるだけ決められたプロセスを経たものについて使う、ということではない かと思います。 ○川名委員 治験のプロトコルについての質問ですが、全部で6,000人が対象になってい ますが、そのほとんどが安全性の調査対象です。抗体間の上昇ですとかブースト効果に関 しては200人ずつという非常に少ない数になっています。これで被験者数などは大体有意 差が出るという、十分であるということでこういう数になっているのでしょうか。 ○岡部議長 事務局の方から正林感染症対策企画調整官、お願いします。 ○感染症対策企画調整官 そのとおりです。一応、これは考えられるに当たっては専門の 人にいろいろ御検討いただいて数字を出していただいていますので、先生のおっしゃると おりです。 ○岡部議長 いわゆるメーカー主導型の治験というよりは、かなり行政的というか国の必 要に応じてやる治見だと思いますから、担当の中心になっていただく予定の庵原委員は今 日は欠席ではありますけれども、もしこういうような方針でいくのだとしたら、周りの人 は相当協力をしないとなかなか普通の治験のように進みにくいところがあるかと思います。  一方では一番最初の治験の段階でもかなり医療関係者の方はむしろ協力していただいて、 もしかすると丸腰でいくというよりははるかにいいわけですから、そういう意味での協力 は随分得ていただいたと話を聞いていますけれども、この6,000人の方の対象というのは なかなか完全に達することができるかどうかというのはそのときの様子になると思います。  対象数の案として出ているわけですけれども、例えば検疫所職員は1,000人いるという 中で、むしろ検疫所の職員の方からは我々は何かあらかじめ防護する方法はないのかとい うようなこともパブコメにも入ったりもしているんですけれども、その点、内田委員何か 御意見ありますか。あるいは藤井委員。 ○内田(幸)委員 神戸検疫所の内田です。ちょうど今、検疫所の所長協議会というのが あるんですが、その中でも何らかの形で事前にプレパンデミックワクチンも投与していた だきたいという要望があり昨日要望書を提出したところでもありまして、かなりの職員は 希望するのだろうと思います。ただ、強制的にはできない部分もありますので、それと検 疫所の職員数というのは食品衛生監視委員もかき集めても780名しかおりませんので、ど んなに集まってもせいぜいそのくらい。恐らく半数以上だと思っていますが、正確な希望 者数はまだこちらからの働きかけはしておりませんのでわかりません。 ○岡部議長 恐らく対象についてはもう少しどういうふうに広げるか、あるいは私などの ような研究職員も対象に入れるかもしれないので、むしろ研究職員も入れてもらえたらと 思っているんですけれども、そういうのは庵原委員の方でチームを組んだときに議論され ると思います。 ○藤井委員 藤井でございます。まさに4ページにも書いているように希望する者と書い てございますので、ここの会議での議論ですとかあるいはワーキンググループでの議論を きちんと職員にも説明して了解の下でやっていきたいと思っています。ただ、その上で資 料3の1に書いているように、まさにこの趣旨を理解するということについては非常に理 解が得られやすいグループだと思いますので、そこはきちんとやっていきたいと思います。 一方で、実際にフェーズ4を対応するときに私たち初期に優先して社会機能維持者とし てワクチンを打つ対象者になっていると思いますので、なるべく早く安全に使えるように と協力するのは当然ではないのかなと私は個人的には思っております。 ○岡部議長 ありがとうございます。指定医療機関ということ。野口委員、どうぞ。 ○野口委員 確認なんですけれども、株はベトナムの株を使われることになるんでしょう か。 ○岡部議長 これは小分けだと思うので、田代先生、事務局ですか。 ○感染症対策企画調整官 インドネシア株とアンフィー株を使う予定にしております。 ○岡部議長 前に接種を受けられた方、ベトナム株での治験に参加された方もプラスをし て、その場合はブースターその他も確認するということだと思います。所属が医療センタ ーではなくなりましたけれども、川名委員、その辺はいかがですか。 ○川名委員 施設ということですか。 ○岡部議長 はい。 ○川名委員 選択されている感染症指定医療機関や検疫所の職員というのは、適切な選択 ではないかと思います。ただ、しばしば誤解されるのは、例えば感染症指定医療機関が先 に打たれるということで、一般の人は後回しになっているのではないかという受け取られ 方をする場合があります。決してそうではなくて、今回のワクチン接種は、安全性の調査 が目的である。免疫を獲得することよりも安全性の確認が目的であるということを明確に してやるべきだろうと思います。 ○岡部議長 私もワクチンの治験とか安全性とかには随分関わっているんですけれども、 ある病気が発生して、例えばSARSのようなときには、もう何でもいいから早くワクチ ンをつくれ、できたらすぐに使えというような声が起こる一方、広く全世界で使われてい るようなワクチンであるにも関わらず、希でありかつ微妙な判定をしなくてはいけない副 反応疑い例が発生したものについてただちに非常に危険なワクチンであるといったような 表現をされることがときどき起きることがあります。 したがって、こういうパンデミックあるいはプレパンデミックワクチンも恐らく要望と しては多いと思う一方、やはりできるだけ落ち着いた時期にステップ・バイ・ステップで 研究を進め、副反応かあるいはアクシデントに加わる有害事象の可能性が高いのかなど、 そういったようなものも含めて検討していく方法をとることがいいのではないかなとは思 っています。余り議長が意見を述べてもいけないんですが、もう少し議論があればと思い ますけれども、田中委員、どうぞ。 ○田中委員 安全性なんですけれども、6,000人を対象にされるということは非常に安全 性に注意を払っているということの表れかと思うんですが、先ほど岡部議長がおっしゃっ た、どうしても紛れ込みに関しての評価が難しいと思うんです。その点、デザインに関し まして何か通常の治験等と比べて何か工夫はあるんでしょうか。 ○岡部議長 庵原先生は今日お見えになっていないので、細かいデザインのところまで多 分回答が出ないのではないかと思いますけれども、それはきちんとした形で評価すべきで あり、評価されるように持っていかなければいけないと思います。6,000人出ると紛れ込 みもあるかもしれませんが、しかし10万に1とか数百万人に1の割合で現れる希なものま で想定することはなかなか難しいとは思います。 ○田中委員 例えば接種後だけ観察するのではなくて接種前にも同じような期間を置いて 観察して、接種前に起こったものは通常でも何もしなくても起こる事象だというのを見て、 また前後を比較する方法もあるかと思います。 ○岡部議長 典型的だったのが、以前Swine型インフルエンザが出るということで、アメ リカで緊急にワクチンをつくって広範に使用し、ギラン・バレー症候群(GB3)という 疾患が現れ、それはその新しいインフルエンザワクチンによる問題ではないかという問題 が生じたことがありました。これについてはいろんな議論がありますけれども、通常起こ り得るGB3の発生範囲を結局は超えていなかったというレポートが今むしろ主になって いると思うんです。ですから、このようなことも含めて副反応として起こり得るものと副 反応ではなく通常起きるものなどとの比較も、淡々とやっていかなくてはいけないと思い ます。庵原委員にその辺をよく検討していただければいいと思います。 そのほかにはいかがでしょうか。 ○飯沼委員 5ページの製造の短縮という非常に大切な問題で、孵化鶏卵の話が出ていま すが、ティッシュカルチャーでやれるようになると一番いいと思いますが、今、進展具合 とか候補の細胞株などは確立されているんでしょうか。 ○岡部議長 田代委員お願いできますか。 ○田代委員 ティッシュカルチャーにつきましては、現行の発育鶏卵で製造したワクチン の問題点というのが幾つかもう何年も前から指摘されていまして、WHOでも1990年代の中 旬くらいから組織培養のワクチンに切りかえるよう勧告が出されていたわけです。日本で もそういう基礎研究は細々とは続いてきましたけれども、すぐに実用化にもっていけるよ うな株は残念ながら現実点では我々は手にしておりません。 一方、海外のメーカーでは3〜4社が既にインフルエンザのワクチン製造用に使える実 用的な細胞の開発を進めて既に承認を得たメーカーもあります。この数年先、今年から来 年にかけて大手の海外のメーカーがすべて組織培養の製造承認を取得するだろうという見 通しになっています。それに応じて海外では5年以内に卵のワクチンから組織培養のワク チンに切りかえていくというような方針を立てているところがほとんどです。それに応じ てWHOも、毎年のインフルエンザのウイルスのサーベイランスも、ウイルス分離プロセ スすべてから卵を用いない方向で検討をするということで、現在、我々も含めてその検討 をスタートさせているところです。 飯沼委員がおっしゃられたように、組織培養にしておくということは非常に幾つかの大 きなメリットがあるわけですけれども、特に卵の供給というのが卵のワクチンの場合大き なボトルネックになってくるわけです。何億個の高い品質の発育鶏卵を緊急に調達する、 供給するということは現実的には非常に難しい。ですから、組織培養に切りかえていく。 そうしますと、卵の供給に依存しない、季節に依存しないで、いつでも必要なワクチンが つくれる可能性があるということ。これにはウイルスの製造方法、細胞株の開発そのもの も不可欠ですけれども、それと同時にワクチンを大量に製造する施設の建設も同時に進め ていかなければいけない。これにもまた数年もかかりますし、膨大な予算が必要というこ となので、これについても政府の方で是非前向きに検討していただきたいと思っています。 ○岡部議長 現行のことでできることはできるだけやっておいて、まさか今日パンデミッ クが起きるとは思っていないわけですけれども、明日、明後日起きた場合に対処できるこ とと、少しでも粘ることによって2〜3年時間を稼げるのであれば、現行のよりもはるか にいいものができてくる可能性もありますので、そういうものに対する基礎研究、基礎的 なほかの方法も今、検討されているわけで、そういったようなことについても進めて行っ ていただければとも思います。現在のところは鶏卵由来ですが、次の世代のものも考えつ つあるというようなことだと思います。これで鶏卵由来の方も話がいったんですけれども、 全体にもしほかに御質問がありましたら。よろしいでしょうか。 そうすると、先ほどの治験の進め方等、少し細かいところにも御意見をいただいている わけですけれども、一応今ある備蓄のワクチン1,000万人分、アンフィーを含めた2,000 万人分があって、それを分注した形で治験というような形でスタートする。 一応対象は6,000人をめどにしているわけですけれども、プラスその他に以前治験に参 加していただいた方の協力も得て、プライミングの効果であるとかブースター効果である とかというようなことも含めて、これは庵原先生に苦労していただいて周りが協力をしな がら臨床研究を行うというようなことが1つ。国家検定もできるだけプロセスを経るよう な形で現在は考えられているけれども、急を要した場合には一部スキップする可能性があ るというようなことと、現行の鶏卵由来の通常使っているワクチンと同じような形での培 養系で製造する過程のものに加えての細胞培養型の新しいもの、あるいはその他の方法に ついての検討も続けていく、というようなことが今日提案されたワーキンググループでの 結論だったと思うんですけれども、これについて全体をこの会議ではこの方針でいいとい うことでよろしいでしょうか。 ○丸井委員 全体としてはこの形でいいと思いますけれども、臨床研究の部分で6,000名、 実際に現在水際対策などで働いている方とか職員の方ということは、ある意味では非常に バイアスの大きいグループです。健康な人々、現在健康に働いていらっしゃる方だけが対 象になるということで、実際には社会的にこのワクチンが使われてくる場合には、高齢者 とか子どもの問題というのが恐らく出てくると思うんです。ですから現在非常に健康な対 象だけで安全性をチェックしたということで、後々問題が起きないような形というのもど こかで必要かもしれない。例えば高齢者の方で自分がどうしてもこれに希望したいという ような方が出てきたときに、それは今回の対象ではないという形で非常に健康な人だけを 今回抜くというそれについての班での勿論安全性確認なので非常に難しいところではあり ますけれども、説明ができる体制は準備が必要なのではないかと思います。あるいは本当 に希望者がそれ以外の方から強い希望が出てきたときにどのように対応するかというよう なことも考えておく必要があるかもしれないと思います。 ○岡部議長 今の治験のシステムですと、ある程度対象を絞り込んでこの人たちだけを対 象にして、そのときにばらばらとやってしまうと御存じのように対象外というようなこと で治験そのものがルール違反であるというような問われ方をするので、多分最初はそうい ったような形での健康者を対象にするということになっていくと思います。しかしできる だけ余裕があればそれは臨床研究としての枠を広げていくというようなことは恐らく考え られるだろうとも思うんですけれども、一気に全部対象にはならぬと思います。 ○丸井委員 よくわかります。そういう意味で勿論いつ何が起こるかわからない状況です けれども、時間があれば臨床研究の次のステップとしてどんなことが想定されていて、こ の段階であるというような説明が必要かなと思いました。 ○岡部議長 この治験が終了したときにはこの会議でもその結果が恐らく発表されると思 いますけれども、次のステップとして枠を広げた形の臨床研究は必要か、あるいはその時 点でパンデミックがスタートしてしまえばそうはいかないわけですけれども、そういうこ とも含めてワーキンググループの方で検討を続けていかれればと思うんですけれども。課 長、どうぞ。 ○結核感染症課長 今の点非常にいろいろな御意見があるところだと思います。今回の研 究の1つの希望者を募るところが検疫所職員水際対策の人、感染症指定医療機関の人たち を対象に希望者を募ると言いますのは、やはり発生したときにまず感染した人と接するリ スクを背負った方々に限っている。それは常に先ほども副作用の話がありましたけれども、 予防接種は必要性、有効性等と副作用とのバランスを考えていかなければいけないという ことがありますので、今回そういう人たちを対象に希望者を募るというのは、そういう人 たちは発生したときに直ちにそういう状況になるだろうということで、そういう人たちを まずはこういう研究の対象にしてお願いして、ある程度のデータで積み重なっていったら 次のステップをという、先ほど岡部議長が言ったような段取りをとる。そのことについて は周りの先生が御指摘のように世間の皆様にもその辺は理解をしていただく努力が必要な んだろうと思います。 丸井委員にはリスクコミュニケーションの研究をお願いしておりますが、是非その辺で 御助力いただければと思います。 私の方から今回のデザインの中には入っていないんですけれども、こういう疑問を聞き ますので、そういうことが可能なのかどうかを専門の先生方にお聞きしたいんですけれど も、今回2つの種類の株の接種を予定していますけれども、これは不活化のワクチンとい うことでありますので、通常のシーズンのインフルエンザのように混合、株を合わせて接 種してみてああいう構成といいますか抗体の上がりを見るとか、その辺というのは今回の 中にあるいは今後検討する可能性というのはいかがなものでしょうか。 その辺、何か御意見あれば。 ○岡部議長 いかがでしょう。例えばアンフィー・プラス・ベトナムとかそういうような 形ですが、田代委員、何かありますか。 ○田代委員 今、3つのワクチン株を備蓄していますので、そういう選択肢もあるかと思 います。ただ、今後、この臨床研究の結果、十分な交叉免疫が誘導されるとか、長期的な 免疫が誘導されるとか、あと安全性が確保されるとかというようなことがより明確になっ てきた場合に、更に接種対象を広げていく可能性があるわけです。その際には新たにまた ワクチンを製造するわけです。そのときの製造効率を考えますと、一番最初につくったベ トナム株のワクチンというのは非常に製造効率が悪い。ですから、例えば同じ数の卵を使 っても、アンフィーとかインドネシアの株に比べて5分の1とか10分の1のワクチンしか 製造できないということがありますので、どの株を使っても同じような効果があるという ことがわかった場合には、製造効率のいい株を今後選択していくというような考慮も必要 かと思います。 ○岡部議長 緊急のときにはサイエンス重視という考え方が特に吹き飛ばされてしまうこ とがあるんですけれども、それだけに今のうちにきちっとサイエンスをベースにしたそう いう研究データも積み重ねて、できるだけ安全性の高いなおかつ有効なものを使いたいと いうのは当然だと思うんですけれども、そういう思いで進めていただければと思います。 詳細のところはそれではワーキンググループであるいは御意見いただきながら進めてい きたいと思います。一応今日の提案事項は委員会としてオーケーであるといきたいと思い ますので、よろしくお願いいたします。 それでは、もう一つの大きいテーマだと思うんですけれども、特にパンデミック初期段 階で、あるいはまだ鳥インフルの段階で患者さんが発生したときの積極的な調査といった ようなことがありますので、これについてまず事務局の方から資料の御説明をお願いしま す。 ○感染症対策企画調整官 8ページをごらんください。「インフルエンザ(H5N1)積 極的疫学調査ガイドライン−パンデミックフェーズ3『改訂版』案−」というものが示さ れております。 以前、もう2年前ぐらいになりますけれども、この委員会でこのフェーズ3のガイドラ インというものをおつくりいただきました。積極的疫学調査についてもおつくりいただき ました。その後、フェーズ4以降のガイドラインを昨年3月におつくりいただきましたが、 積極的疫学調査ガイドラインがフェーズ4をつくってみると、以前2年前につくったフェ ーズ3が若干古い情報というか、もう少しちゃんとした治験を集積して、むしろフェーズ 4のガイドラインに合わせるような形で直した方がいいのではないかという御意見があり ましたので、主に安井委員を中心にこのガイドラインの改訂版をとりまとめていただきま した。 以降は中心になって取り組まれた安井委員にお願いしたいと思います。 ○岡部議長 以前の会議でいろんなガイドラインを出したときも、必要事項あるいは新し い治験が入ってきたり、修正すべき点があったらこれは踏襲することなく、改訂を重ねま しょうということだったと思うので、そういう一環だと思います。公衆衛生対策グループ でまとめていただいた安井委員、お願いします。 ○安井委員 このフェーズ3のガイドラインですけれども、今、正林さんがおっしゃった ように、以前2年前にフェーズ3でまとめられた後、フェーズ4以降が出まして、本来2 つを合わせたものをつくるべきだったかと思うんですけれども、別々になってしまってい たということと、今、例えば自治体等の公衆衛生部門の方で調査票等を使われているのは フェーズ4のガイドラインのものを使われている。それをまたデータ入力となっているの で、今回、フェーズ3をフェーズ4にかぶせる形で少し変えたものを御紹介させていただ きます。 実際、今、現実に日本国内、鳥インフルエンザの症例というのはありませんけれども、 養鶏場で今、韓国に起こっているような鳥のインフルエンザが鳥に起こった場合、あるい は海外から帰国された方で、今までもそうではないかという実際違いましたけれども、そ ういう症例がありましたけれども、そういう意味では今すぐにこれが使われるガイドライ ンですので、自治体等で使いにくい等の意見もありましたので、かなり変えさせていただ きました。 8ページを見ていただきたいんですけれども、「はじめに」のところにその理由を書い ております。2つ目の段落で、「今回、このパンデミックフェーズ3におけるインフルエ ンザ(H5N1)積極的疫学調査ガイドラインを改訂することになったが、これはガイド ライン策定当初よりも高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)の浸淫地域や国内における 対策等の状況が変化することを踏まえ、本ガイドラインが保健所等の公衆衛生機関の調査 の実行に即したものとなることを主な目的とした」ということで、そのようにさせていた だきました。 変えたところを簡単に御紹介させていただきます。11ページは変えたわけではないんで すけれども、平常時の準備なんですけれども、5)の方に先ほどから議論がありましたけ れども、ワクチンをどのタイミングで打つか。公衆衛生担当者に対してということを書い ています。ここではフェーズ4の段階でと書いてありますけれども、これはまた方針等に よって変わっていくところではないかなと思います。今のところそのような表記になって います。 12ページの(1)の「3)感染源調査」です。これはフェーズ4にもない、新しくつけ 加えましたけれども、感染源が鳥かヒトか、または国の感染か国外における感染かを特定 するということで、フェーズ4の場合はヒトヒト感染ということがメインになりますけれ ども、鳥との感染というものがこちらの方にあります。 「(2)接触者調査」のところにもこれは感染した鳥と接触した場合ということで入れ ています。従来、フェーズ3のガイドラインを書いたときというのがヒトとの接触に関し ての積極的疫学調査のガイドラインでしたけれども、鳥との接触についてというのは入っ ていませんでした。今回、それを大幅につけ加えさせていただいています。後で紹介しま すけれども、13ページ〜14ページにかけて症例定義、要観察例、擬似症患者はフェーズ4 の場合はまだ新型インフルエンザが発生しておりませんので、フェーズ4以降、そういっ た定義の記載はありませんけれども、こちらはフェーズ3ですので症例定義というものを 記載させていただいています。 実際に現場の方々がこれ1冊ですべて調査ができるようにということでこういったもの も入れております。 後はフェーズ4とほぼ同じガイドラインになっています。 17ページが新しくなっていますけれども、16ページから患者との接触者に対する調査と なっています。これはフェーズ4と同じですけれども、17ページの3)のところで高病原 性鳥インフルエンザに感染しているかあるいは感染している可能性が高い鳥や他の動物も しくはそれらの体液・排泄物との接触者の定義ということで、これは新たに加えさせてい ただいています。 大きく(1)、(2)と分けていまして、概略で(1)というのは、例えば明日にでも起こるかもし れませんけれども、日本国内において養鶏場等のそういった鳥の飼育施設あるいは動物の 飼育施設において、H5N1、高病原性鳥インフルエンザが発生した場合に、その養鶏場 に関わっている方々あるいはその施設に関わった方々、鳥と接触した方々に対しての接触 者調査のための記載です。 (2)の方は、国内外を問いませんけれども、今、現実的に考えられるのは海外においてそ ういった浸淫地域に行ってオープンマーケットであったりあるいは実際に飼われている鳥 と接触された方、病鳥、死鳥といった方に対しての調査について記載をしております。こ れは新しく加わったところです。 19ページ以降というのはフェーズ4以降と全く変えておりません。これは感染対策ガイ ドラインにもともと記載されていたものを前回作成したときに調査に行った家庭等に実際 に説明ができるように入れてほしいということがあったのでそれをまとめたものをこちら の方に記載させていただいています。 21ページ以降、もともとフェーズ4以降のガイドラインをつくったときにフェーズ3も 調査できるようにと調査票はしておりまして、それをそのままこちらの方に添付しており ます。これで一応フェーズ3、フェーズ4は全く同じ調査票で一応調査が可能ということ になります。 以上です。 ○岡部議長 その共通性という非常に重要な問題もあったのではないかと思います。これ は実際に目下のところ少数例ではありますけれども、今後出てくる可能性がある、という よりは現在の韓国の状況からは、今までの2回は韓国の後で日本が発生しているわけなの で、近々日本でH5N1の鳥感染が出る可能性があるとなれば、ヒトの疑いも出る可能性 があるということで、すぐにでも使用される可能性があるわけなので、そういうことも踏 まえて御意見がありましたらお願いします。 ○感染症対策企画調整官 済みません。今、気づいたんですが、21ページ以降、添付1と ついているんですが、実はフェーズ4以降のガイドラインはこの後添付2、添付3、添付 4というものがついていまして、これは印刷上、添付1で切れてしまっていますが、今日 はこの添付1の後にフェーズ4の添付2、3、4がついているという、プリントアウトが できていなくて済みませんが、ついているという前提で御議論いただけたらと思います。 全く同じものを本当はつける予定だったんですけれども、印刷の都合でついていませんの で、済みません。 ○岡部議長 内容や何かのことは余り詳細なところは後で細かい訂正をするにしても、内 田委員、何か先ほど御意見が。 ○内田(幸)委員 この積極的疫学調査の中でちょうど1年前ほどに、海外で感染をして 帰ってきて国内で発見されたケース、要するに、検疫をすり抜けているかもしれないと思 われるケースに関してのことも疫学調査でわかるようにしていただきたいということで、2 2ページの中でこういう項目を入れていただいているんですけれども、ここにもう少し詳 しい項目を追加するということは可能でしょうか。もうこれはコンファームされていて変 えられないとかそういうことではないんでしょうか。 ○安井委員 フェーズ4のものをそのままこちらの方に持ってきましたけれども、これは 今回フェーズ3を変えるということだったので、このような形にしていますけれども、こ れは公衆衛生のワーキンググループ等で検討、意見があれば変えられるものであれば変え てもいいかなとは思います。ただ、今回はフェーズ4にフェーズ3をとにかく合わせる、 急いでつくっているので、今年の1月にまとめたものです。 ○内田(幸)委員 これはシステム的にもうプログラムが組まれているからフォームは変 えられませんというものではないんですか。 ○安井委員 プログラムに入れることであれば、これはデータ入力をするシステムという のは既にフェーズ4をつくったときにありますので、それはそのまま生きていまして今す ぐにでも入れるようになっています。 ○内田(幸)委員 だからこれを変更することは可能ですか。 ○安井委員 それも変えないといけません。 ○岡部議長 変更の内容によって細かい字句の修正程度であれば多分できると思うんです けれども、項目について表中の枠が増えてくるようになると、システムの変更にはお金が 絡んでくるわけなので、もし変更事項がありましたらそれをまず提案していただいて、そ れが実現可能かどうかというようなことをワーキンググループかあるいはこれは国側と公 衆衛生担当の方で検討するということにしたいと思いますけれども、よろしいですか。 ○内田(幸)委員 はい。 ○岡部議長 ほかはいかがでしょうか。この場合はフェーズ3でH5N1鳥の場合のヒト 感染というようなことが想定されているわけですけれども、検査そのものは一応一義的に は地方衛生研究所が行って、それの陽性例については感染研の方で確認をするというよう な作業手順となります。これについては、ここにも書いてありますけれども、かなり地方 衛生研究所で役割をお願いしなければいけないということになります。私、各地の地方衛 生研究所を見たり、衛生研究所の評価検討委員会などに出ることがあるんですけれども、 むしろ徐々に衛生研究所の役割が弱まりつつ低く評価されるところがあるという点は非常 に危惧するところなので、この辺は是非このH5N1に限らず、感染症全体に対する危機 管理をする場所としての地方衛生研究所をもう少しバックアップするようなことを是非お 願いしたいと思います。もし同意を得られましたらこれもこの委員会のコメントとして是 非付け加えていただきたいと思います。 地方衛生研究所のことの方では何か御意見がありますか。 前田委員、代表としてお願い します。 ○前田委員 今、岡部議長に御指摘いただきましたとおり、この検査の面につきましては 私ども地方衛生研究所一同、これに対しては徹底して対応したいという考えで行っており ますけれども、実際、本来的な発生も含めまして発生が起こった際にはかなり疑似に至ら ない疑いの症例等が発生してくる中では、いわゆるPCR等が数台あるというところはほ とんどの地方衛生研究所でございますけれども、例えばそれがそうした疑われる症例が重 なってきたときにどれぐらい試薬がもつのかといったところになりますと非常に心もとな いというところがございます。 私どものところでも、一定の備蓄はしておりますけれども、そういう試薬の備蓄という ことまで思い至られている自治体というのがどれぐらいあるかというところには非常に懸 念がございますので、そうした技術面あるいは設備面というところではなくて、そういう 広報体制、供給体制も含めて、あるいは検体の搬送等がどういう形で行われるのかという 全体的なロジスティックな面も含めて地方衛生研究所をいろいろ御支援していただければ 幸いだと思っております。 ○岡部議長 是非、その辺もよろしくお願いします。 ほかには御意見がありますでしょうか。実際にこれを使うような立場では、角野委員、 保健所等ではいかがですか。 ○角野委員 当然、保健所が中心になって積極的な調査をするわけですけれども、現在、 前回もそうですけれども、このガイドラインはあくまでもガイドラインで、ここから、今、 一番求められているのはそれぞれの現場がもっと具体的な行動計画を策定していくことで はないかなと思っています。 これだけが配られてすぐ動けるかというととても動ける話ではないので、その辺が今、 全国どこも認識が甘いところがあるかというか、ちょっと危機感が乏しいのかなという感 じがしております。 前回のガイドラインのときもそうでしたけれども、今ひとつ、主語がはっきりしないよ うなところがあったりするんです。当然、これは保健所を想定されているとは思うんです けれども、例えば10ページの「4.平常時における積極的疫学調査の準備」というところ で、疫学調査員の決定というのがあるわけですけれども、ここの1)を読んでも、これは 主語がいつも余り書かれていないです。そうすると、我々は想像の中で保健所がするだろ うと考えているわけですけれども、しかしこの「調査対応が必要となることが決定した場 合」という場合でも、どこがこれを決定して、疫学調査に着手していくのかということで すね。その辺りがあいまいな感じがします。 以上です。 ○岡部議長 ありがとうございました。ほかの議論でもよく出てくるんですけれども、こ ういうペーパーは主語がなくて、聞いてみるとそれは国だというような意見が出てくると ころがあると思うんですが、その辺、修正のときに注意をしてください。 ○安井委員 一応8ページのところに「2.調査の原則」で「(1)調査実施主体」とい うのが保健所を含めて衛生部局と書かせていただいているんですけれども、厚生労働省も 必要に応じて主体的に調査を行うというふうにも書いているんですけれども、これは実際 現場でいろんな御意見等もありまして、保健所と書ききってしまうと保健センターを入れ ろとかいろいろ言われてしまったりする部分もあって、ちょっと書ききれない。 場合によっては、都道府県の本庁が決めたりしているところもあるので、一応保健所と いうのを書いている部分を最小限にしている部分はあります。ただ、保健所の現場の先生 方がこれはちゃんとはっきり書いてほしいという御意見等があったら、それはまた参考に させていただければと思います。 ○岡部議長 あとバックアップする立場で私たち情報センターの方もよく問い合わせを受 けたりするので、砂川委員、何かこの積極的疫学調査にコメントがありましたらお願いし ます。 ○砂川委員 感染研の中にFETPという積極的疫学調査を支援するグループがあります。 それのグループとして自治体にどんなサポートができるかというような辺りをこれを見な がら考えているところなんですけれども、先ほど角野委員からも御意見があったように、 なかなかガイドラインとして示されたところが、現場の方々にわかりにくいところもある だろうと思います。FETPの立場でいきましても、それは我々はどの部分を担当したら いいのかというようなところもありますので、それは具体的なトレーニング計画を立てて、 トレーニングをしていってその中で適宜修正をしていくというような形でよくしていけば いいのかなと理解しております。 ○岡部議長 疫学調査に関するトレーニングコースというようなことも予定していますの で、鳥インフルだけではなくて、パンデミックに備えてはそういったようなことも準備と しては進んでおります。今日のところはこのH5N1、フェーズ3のときのガイドライン ということです。 ○神谷委員 先ほど岡部議長の方からも治験の機能強化ということをおっしゃられました けれども、検査は当然だろうと思うんですけれども、ここでやる疫学調査等も含めまして、 今、各地方衛生研究所に感染症情報センターというものができておりますので、こういう ところの機能を強化することで今の疫学調査機能を充実していくことになるのではないか と考えています。そういう意味でも、是非検査とか試薬の備蓄等だけではなくて、そうい う機能をきちんと地方衛生研究所あるいは地方感染症情報センターが担えるようなそうい うような仕組みづくりと言いますか、バックアップを是非お願いしておきたいというのが 1点。 もう一点、申し訳ないんですが10ページの今の疫学調査員の決定の中の3)ですが、公 衆衛生専門職者ということで「(医師、保健師、食品衛生監視員等)」という記載がござ いまして、その下に「一定の研修等を行った上で」ということで他の適切な人材というこ となんですけれども、この「等」というところをどういうものが想定されているのかなと いうことを思ったのは、例えばこういう点で薬剤師であるとか臨床検査技師みたいなとこ ろがこの「等」に入ってくるのか、あるいはこれは下の「一定の」というふうに入ってい く、その辺のところは今の段階で考えられているのか、あるいは何か指針みたいなのが示 されるのか、その辺をお聞きしたいと思いました。 ○岡部議長 安井委員、どうですか。 ○安井委員 もともとこれは「医師、保健師、食品衛生監視員等」と書いていたところを 「食品衛生監視員」を事務局に削られたんですけれども、今回黙って入れてそのまま通っ ているんですけれども、薬剤師とかも入れたい、臨床検査技師も入れたら全部削られたの で、今の議論は非常にすばらしいと思いますし、そういったことも含めて、保健所におい てすぐに動ける方々で普段疫学調査をされている方々はこのメンバーだと思いますので、 それをまず入れているということが1点と、薬剤師あるいは検査技師あるいは獣医師は食 品衛生監視員の中に入っておられますけれども、そういった方々も踏まえてそういった方 々も入れるべきかどうかというのは議論していただいた上でまた決めていければと思いま す。 ○岡部議長 その一定の研修というところに重きがあるんだと思うんですけれども、職種 を限定するわけではないけれども、研修を受けた方でないとなかなか疫学調査のときのイ ンタビューの要領とかデータのまとめ、先生も御存じのように難しいときがあると思いま すので、これは是非自治体の方でそういう研修を行う、あるいは研修を出す機会とかとい うのをつくっていただければ、例えば私の情報センターの方でやっている先ほどの2年間 のFETPのトレーニングコースでも、例えば薬剤師の方とか検査技師、看護師の方が加 わってきていますので、その方はまさしくここの文章には入っていないけれども、一定以 上の研修を受けたエクスパートことになりますから、そういう人材を増やしていただくと いうこともひとつ長い目で是非よろしくお願いしたいと思います。 それでは、一応これはお認めいただいたということで、ただ、字句の修正であるとか先 ほど内田委員の方から意見のありました調査票についての細かいところ、提案を事務局の 方にしていただいて、ある枠内で修正できるものは勿論修正をする。議論が必要にならば また更に議論を加えていくというふうにしたいと思います。その辺はワーキンググループ であったりあるいは事務局とワーキンググループの人と議長といったような形で続けてい ければと思います。 繰り返しますけれども、あるものができてももし更によいものをつくるという可能性が あったら是非そういう修正の方に向いていくという方向でいきたいと思います。 それでは、かなり報告事項と言いますか、これまでにも非常に流動的なものもあります ので、進んだ部分、あるいは今の問題点も含めて事務局の方から幾つか御紹介をお願いし ます。 ○感染症対策企画調整官 これから先は報告事項になりますが、非常に膨大になりまして、 1年間いろんなことがあったなと今つくづく思っていますけれども、25ページをお開きく ださい。 時間はあと45分しかありませんので、25〜66ページまで説明しないといけませんので、 はしょりながらいきたいと思います。 資料7、先ほど丸井委員からも御意見ありましたけれども、これは子どもに対する新型 インフルエンザワクチンH5N1株の医師主導の治験についてであります。 実はまだ治験が行われていませんで、そこにありますように6か月以上から二十歳未満 の小児を対象に例数120例で、一応今年の4月から12月にかけて治験を行うというもので あります。 26ページ、資料8、抗インフルエンザウイルス薬の備蓄の状況です。タミフルについて は政府備蓄1,050万人分治療用、300万人分予防投薬用、都道府県備蓄が1,050万人治療 用、流通が400で合計2,800万人分。 リレンザは政府備蓄で135万人分。これが一応現在備蓄が完了しているところです。 「2.抗インフルエンザウイルス薬の使用期限延長について」タミフルカプセル75につ いて中外製薬株式会社から備蓄品の使用期限を5年から7年に延長できるよう一部変更を 平成20年3月28日に申請したと伺っております。 27ページ、資料9、昨年の3月にこの専門家会議でフェーズ4以降のガイドラインをお まとめいただきましたが、非常にインパクトが強くて、関係方面に多大なる影響を与えて いただいております。 1つは政府の行動計画もフェーズ4以降のガイドラインをベースにして見直しを行いま した。そこにありますように、例えば内閣総理大臣を本部長とした新型インフルエンザ対 策本部をフェーズ4になったら設置するとか、国際航空機・旅客船の運行自粛等の要請と か、検疫体制の集約化とか、濃厚接触者に対する待機の要請。公共施設、公共交通機関に おける感染対策の要請等々、あとは発熱外来とかといったものも含めて行動計画の改定を 行っております。 28ページ、資料10は、行動計画の改定の際に、閣議を開いていただいて閣議決定を行 っています。内容としては今、申し上げました、もし新型インフルエンザが発生したら、 内閣総理大臣の判断によって、内閣に、内閣総理大臣を本部長とする対策本部を速やかに 設置するという閣議決定を行っています。 30ページ、資料11は訓練。昨年の段階でも2回ほど訓練は終わっていたと思いますけ れども、平成19年11月16日に3回目の訓練を行っています。そのときは千葉県とか成田 の検疫所にも参加をいただいています。内容としては、34ページですけれども、訓練の主 体は内閣官房でありますが、内閣官房からそこがコントローラーになって、そこから今回 は千葉県でしたけれども、関係省庁参加自治体等に対して課題が投げられる。その課題に 対して2時間以内に回答するという机上の訓練。 千葉県や成田の検疫所では実像の訓練。実際に患者さん、有症者に対する問診とか検体 採集、搬送、健康調査、航空機内の消毒等々、そういった実働の訓練を行っています。ま た、千葉県とも厚生労働省とのテレビ会議といったものも実施をいたしました。 32ページですけれども、幾つか訓練をやると課題が浮かび上がってきていろいろ大変勉 強になるわけですが、やったことによって関係の各省庁の意識がまず飛躍的に高まりまし た。 それをきっかけにまた各省庁でマニュアルをつくったり、現場に対してどういうふうに 情報伝達していくかといった新たな課題も出てきて、それについて検討がスタートしたり、 国際間の交通や出入国の制限等、権益の集約化とのタイミング等の在り方はどうするのか といった新たな課題も出て、その後、いろいろ鋭意検討をしております。訓練は今後も定 期的に継続して実施していきたいと思っています。 35ページ、資料12ですけれども、冒頭、局長のあいさつにもありましたが、この通常 国会に感染症法の改正案を提出しております。もう間もなく審議が始まるかと思っていま す。内容としては、真ん中ですけれども、感染症法に鳥インフルエンザH5N1を二類感 染症に位置づけて、鳥インフルエンザH5N1に対する入院措置との法的根拠を整備する というのが1つ。 発生直後から対策実施できるように、新型インフルエンザを新たに感染症法とか権益法 に位置づけて、入院措置や検疫措置ができるようにするという、法に基づいてできるよう にするというのが1つ。 併せて、感染したおそれのある者に対する健康状態の報告要請や外出自粛の要請規定の 創設、停留先施設に医療機関以外の施設を追加するといった、ほかにもいろいろあります けれども、等々の感染症法の改正案をこの国会に提出しております。 特に今まではインフルエンザ、H5N1は政令でしてきておりました。ちょうど2年ほ ど前に政令指定を行いましたが、政令指定は実は1年間が期限で、延長も更に追加で1年 まで、合計2年間しか政令の有効期限がありません。これが有効期限が6月12日までと期 限が近づいておりますので、このインフルエンザH5N1を有効期限が来たら法に基づい て入院措置等ができなくなってしまう。終わりが決められていますので、できるだけ早急 に国会で御審議いただけたらと思っております。 37ページ、資料13、ワークショップを実施しています。昨年3月にガイドラインをおま とめいただいて、関係各方面にあのガイドラインは配布をさせていただきました。関係各 方面にあのガイドラインをベースにしていろんな取組みが行われています。ただ、まだま だ地方自治体の取組みはそんなに物すごく進んだという感じはありませんでしたので、先 月3月21日に都道府県とか政令市とか特別区といったところの新型インフルエンザの担 当者を集めてワークショップを開いています。 先進的な自治体の事例発表、今回は医療体制というテーマを決めてグループディスカッ ションを行っています。必要な病床数をいかに確保するかとか、発熱外来とか発熱相談セ ンターというのをどういう形態で、どこに設置するのかとか、医療従事者の理解をどうや って得るのかとか、こういった個々の論点をベースにしてそれぞれグループ討議を行って、 各都道府県の担当者の知識の集積、何よりも意識の向上を図るという目的でこのワークシ ョップを開催しております。こういったワークショップは、これも訓練同様、定期的に今 後も継続して行っていきたいと思っています。 38ページ、資料14、これもマスコミ等で報道されましたが、厚生労働省の結核感染症課 内に新型インフルエンザ対策推進室をこの4月1日に新たに設置をいたしました。それま で職員も非常に限られた職員でこの対策を進めてきましたが、ここにきて一気に人員の増 強が図られました。 39ページをごらんいただけたらと思いますが、こちらにおります難波室長をヘッドにし て、その下に私も含めて次長が3人、その下に全体的な情報収集とか情報発信、全般的な こと、侵入阻止、早期対応、医療確保、社会機能維持、ロジ面、法令面、そういったそれ ぞれを担当するようなメンバーを少なくとも専従だけで10人、合計で29人の対策室がこ の4月1日からスタートしております。 特に民間からお入りいただいてこのメンバーに加わっていただいております。いろんな バックグラウンドの方が集まっていますが、今はまだみんな勉強中でありますけれども、 だんだんエンジンがかかってくるかなと思っています。 40ページ、資料15であります。いろいろガイドライン等を定めてきましたが、実際に 新型インフルが発生するのはまさに現場であります。特に地方自治体、その現場の準備状 況がどうなのかというのを今、調査をかけております。特に都道府県を中心に例えばガイ ドラインで発熱外来を御提案いただきましたけれども、発熱外来はどのぐらいの県が設置 しているのかとか、入院医療機関、別途どのぐらい用意できているのか。医療資材、マス クや手袋、ガウン等々こういったものが都道府県でどのぐらい準備できているのか、ある いは医療機関でどのぐらいあるのか、そういったことを今、調査をかけております。一応 4月の終わりを報告していただく期限にしておりまして、集まったデータの収集等は連休 明けぐらいになるかなと思っております。 41ページ目、ここからまた大量の資料でありますが、内閣官房を中心に政府部内で関係 省庁が集まって、それぞれテーマごとにワーキンググループを開き、それこそ週に2回ぐ らいのペースでワーキングが開かれてまいりました。 そこで新型インフルエンザ対策の体系とか水際対策とか地域封じ込め、実際に発生した ときにどういう体制で対処していくのか、こういったことについて幾つかワーキンググル ープである程度ドラフトができ上がりましたので、関係省庁対策会議に報告がなされてお ります。 これについては、内閣官房のホームページにその詳細な全文が載っていますけれども、 とりあえずパワーポイントでまとめた概要だけ簡単に御説明したいと思います。 42ページですが、全体の体系でありますけれども、ここでのポイントは、政府の体制の ところですけれども、真ん中辺に「関係閣僚会議(必要に応じ)」というのがありますが、 1つのポイントは、フェーズ3から4にかけて斜めに線が入っていますけれども、関係閣 僚会議は、場合によってはフェーズ3の段階でも立ち上がって、情報収集とかあるいは初 動体制の準備に取りかかるというのが1つのポイントであります。 初動の対応として、水際対策とか地域封じ込め等が行われるということもいろいろそこ に記されております。 具体的な内容については、43ページ目以降ですけれども、水際対策について、まずここ の注のところに記されていますが、これは4月9日の段階のものですけれども、現時点に おける政府内での検討状況を示したものであり、今後広く関係者の意見を聞いて見直しを 行う。 皆さん御存じだと思いますが、与党の中にも新型インフルエンザの対策のプロジェクト チームというものが立ち上がって、そこにもとりあえずこの政府でつくった案についてお 示しをしてさまざまな御意見をいただいたりしております。今後もいろんな御意見を聞い て今回まとめたものについてはどんどん見直しをしていくという性格のものであります。  ざっと簡単に内容について御説明します。44ページ「水際対策の基本的考え方」ですが、 大きな課題があります。まずウイルスの侵入防止を徹底して、国内でのまん延を可能な限 り防ぐということと、実際に海外には在留邦人がいらっしゃいますので、それの方々を速 やかに帰国させるというこの2つの大きな課題を両立させる、可能な限り両立を図ること を追求していくということが大きな課題であります。 対策の概要としては。 (1)在外邦人等への感染症危険情報を発出(渡航延期、帰国の検討等)。 (2)定期便が運航停止される場合、在外邦人の帰国手段を確保。 (3)邦人帰国を優先させ、発生国からの外国人の入国を制限(査証発給制限等)。 (4)検疫実施空港・港湾を集約化(4空港、3港等)。 (5)感染のおそれのある者を宿泊施設等で停留(10日間程度)といったものです。 45ページ「水際対策の概要」ですが、海外で発生したという前提で在外邦人に早期に御 帰国いただく。まず外務省が感染症危険情報を発出して、在外邦人は早期に御帰国いただ く。帰国いただいたら検疫においていろいろチェックをして、濃厚接触者等は医療施設や あるいは宿泊施設に停留をしていただく。外国人については、ビザの発給とかその辺の審 査を厳格化するなどしてできるだけ制限をかけていくというものです。 48ページ「感染症危険情報の発出」でありますが「WHOのフェーズ4の宣言前」では。 ○不要不急の渡航については、延期も含め検討してください。 ○あらかじめ今後の退避の可能性も含め検討してください。 「フェーズ4〜6」にかけては。 ○渡航は延期してください。 ○今後、出国ができなくなる可能性及び現地で十分な医療が受けられなくなる可能性も あります。退避については、これらの点も含め検討してください。 ○帰国に際しては、停留される可能性もあることに留意してください。 「例外的ケース(発生国当局が出国禁止措置をとった場合)」は。 ○現地の安全な場所にとどまり、感染予防対策を徹底してください。 こういったような内容の感染症危険情報を出すということが、対策本部の決定を経てこ ういうことが発出させることが考えられています。 49ページは「在外邦人への対応」、退避のオペレーションとか在外邦人への対応等がそ こに書かれています。 50ページに、在外の邦人の帰国手段として、できるだけ早く帰国してもらうことが望ま しい。そのために航空会社の臨時便の運行だとかということの検討も呼びかける。航空会 社当に対しては運行の自粛を要請するとか、代替的帰国手段の活用とかです。 51ページのところは、民間航空機等のチャーター便だとか、政府専用機、自衛隊の航空 機・艦船、海上保安庁の航空機・巡視船等、そういったことも帰国の手段で考えていくと いうものです。 52ページは「発生国から入国しようとする外国人への対応」ということで、先ほど申し 上げましたが、在外公館で健康状態の質問表や非感染証明証などを徴収して、書類上非感 染が証明できない場合ビザを発給しないとか、ビザ停止などを考えるというような内容の ものです。 53ページ、第三国経由いわゆるトランジットで入国しようとする者への対応として、す べての出国証印を確認するだとか、そこにア、イ、ウとありますが、質問表を機内アナウ ンスとともに乗客に配布して、発生国での滞在経験がある場合にその旨記載する等により、 検疫に申告するよう周知するとか、入管、税関において旅券の出国証明を確認するとか、 ウのところはすべての旅券について、一定程度以降の日付の発生国の出国証印の有無をチ ェックするといったようなことを考えております。 54ページはガイドラインで一旦整理しましたけれども、検疫実施空港の集約化、4空港 (成田・関西・中部・福岡)、3港(横浜・神戸・関門)に集約するというような内容で す。 55ページ、停留措置でありますけれども、個室管理、場所としては医療施設のほか、個 室管理のできる宿泊場所、現在も宿泊施設を交渉中であります。 場合によっては他施設の利用も検討するとか、一挙に帰ってくる場合も考えて、帰国の 量的・時間的な調整とか代替施設の確保なども含めて検討が必要だということも記されて います。 56ページ「感染者の出国の抑制」国内で感染が発生した場合に、国際的責任の観点から 出国の抑制も考えていく。まず出国を自粛するよう勧告をするとか、発症の疑いが濃厚な 者をチェックインしようとした場合は、そういったものを指針をつくって拒否すべきとい うようなことを航空会社、船舶会社に注意喚起をするとか、そんなことも記されています。 以上が水際関係でありまして、57ページ目以降は地域封じ込めであります。 58ページですけれども、この辺も昨年ガイドラインでおまとめいただいた条件そのもの ですけれども、人口密度が低くて交通量が少ない地域、離島や山間地域など自然障壁等に より交通遮断が比較的容易な地域でというようなことが書いてありますが、かなり地理的 条件がそろわないとこの地域封じ込めというのができないのかなというようなトーンで書 かれております。 59ページに図がありますけれども、海や川、山や森に囲まれていて、交通手段もそんな にないようなところ、その隣は東京都のようなところで発生したらその地域封じ込めなど というのはそもそも考えられないというようなトーンでまとめられています。 60ページ以降は「地域封じ込めの手順」これはほとんどガイドラインに書いてあったよ うなことをざっとまとめてあります。 64ページ目で新型インフルエンザ発生時の対応というのが、64ページは海外で発生した 場合、65ページは国内で発生した場合ですが、発生の疑いがある段階でもう関係省庁の対 策会議というものが開かれて準備を開始する。更に、その疑いが強まった段階では関係の 閣僚会議なども開かれる。いよいよフェーズ4になったら、本格的にどんどん対策が実施 されていく。そのための体制がそこに記されております。 対策本部のメンバー等は66ページに書いてありますが、総理大臣をトップとしたような 組織が考えられております。非常に雑駁な説明で恐縮ですけれども、昨年の3月に皆様方 におまとめいただいたフェーズ4以降のガイドライン、あれが非常にインパクトがあって、 様々な対策がこの1年間で進んだ。まだまだこれ以外にもいろいろあるんですけれども、 今日はざっと概要だけ御説明をしました。 以上です。 ○岡部議長 ありがとうございました。いろいろな内容がありましたが、15分ぐらい時間 が残されていますので、その中でこれに対する疑問あるいはコメントがありましたらどう ぞよろしくお願いいたします。 押谷委員、どうぞ。 ○押谷委員 今日は1年ぶりにこの専門家会議が開かれるということでかなり期待してき たんですが、かなり失望しました。 1年前にはかなり諸外国に比べて日本の対策・対応というのが遅れているのではないか という話が出たと思うんですけれども、この1年で各国はかなりまた進んできています。 そういう中で、かなり日本は取り残されているのではないかという気がします。 プレパンデミックワクチンとか検疫対応とか、全体の新型インフルエンザ対策という中 で、ごく一部のところは進んでいるということはわかりましたけれども、それ以外にたく さんの課題が残っているはずです。 医療体制をどう確保するのかとか、今、最後に封じ込めの問題が出ましたけれども、こ んなことを考えているのは日本だけです。東南アジアで第1例目が出たときにどうするか ということでガイドラインをWHOはつくっているわけです。アメリカなどでは国内で発 生したとき、非常にいろんな疫学モデルをつくったりして、いろいろな対応を検討してい ます。そういういろいろな対策をやってみると実際に本当に被害をかなり抑えられるかも しれないということがこの1〜2年でわかってきたわけです。そういう対策が各国は少な くとも欧米の先進国はとられてきています。 これに対して、日本はもうプレパンデミックワクチンと検疫対応の強化ということが中 心で日本に入ってきてしまったら実際には封じ込めはできないわけです。実質的には離島 でもなければできないと正林感染症対策企画調整官はおっしゃったけれども、そういう離 島で第1例目が起こる可能性というのは非常に低いと思いますので、そうなったときにど うやって被害を最小限に抑えるかということを真剣に議論していかなければいけないと思 うんですが、そういう議論が昨年度のこの会議でそういう詳細をいろいろ決めていかなけ ればいけないということが言われたと思うのですが、結局決まったのはプレパンデミック ワクチンと検疫の対応だけ。ほかのところは全く積み残しのままになっているというのが 私の理解です。この先、これをどうやっていくのか、だからこの会議というのは基本的な 戦略をどうするか、積極的疫学調査のガイドラインがどうかというのはかなりマイナーな 話だと思うんです。いかにして新型インフルエンザが起きたときに日本の被害を最小限に 抑えるか。フェーズ6Bになったときに、日本で起きたときにどうするかということを基 本的な戦略を話し合うべき会議だと思うんですけれども、そういうことがもうあと10分ぐ らいしかなくてきちっと話し合われないということに非常に失望しました。 予算の問題とかいろいろ厚生労働省も忙しい中でやってきているので、そういう意味で はやられてきたことに関してはある一定の評価をしますけれども、基本的な戦略がない。 具体的な対策が全く考えられていない。都道府県とか非常に困惑しているというのが今の 状況だと思いますけれども、今後どうやっていくのか、どういうふうにその基本戦略をつ くり出してそれを進めていくのかというタイムラインをきちっとつくって、その一つひと つの対策について、アメリカはそういうことで6か月ごとにプログレスレポートというの を出していますけれども、そういう形でやっていくというような対応をしない限り、日本 の新型インフルエンザ対策は進まないのではないかと私は思っています。 以上です。 ○岡部議長 ありがとうございました。正林感染症対策企画調整官、どうぞ。 ○感染症対策企画調整官 御批判は甘んじて受けたいと思います。是非、特に押谷委員は いろんな知見をお持ちだと思いますので、具体的にこうしたらいいのではないかというサ ジェスチョンを押谷委員はときどき本省にも来られますので、私も忙しくてゆっくり話が できなくて申し訳ないんですけれども、来られた際でもどんどん提案していただいて、必 要に応じて恐らくこの会議はまたしばらく定期的に続けて開いていきたいと思います。更 にワーキンググループでもいろいろ御議論をいただいていきたいと思っていますので、具 体的な内容を御提案いただけたらと思います。 ○岡部議長 どうぞ。 ○押谷委員 一言だけ。先ほども言いましたけれども、まず最初にやるべきことというの は、基本的な戦略をつくって課題を整理して、それに対してどういう対応・対策をこの1 年間にしていかなければいけないのか、タイムラインつきの整理をすることが最初にすべ きことではないかと思います。 ○感染症対策企画調整官 わかりました。 ○岡部議長 押谷委員はこれまでもときどきワーキンググループの中などでも今と同じよ うなことをおっしゃっていて、水際作戦ばかり集中しているのでは実際の現場に入ってき たときの対応がとれないではないかと言っておられます。それがなかなか実現しないこと にいらいらしておられると思うんですが、全くそのとおりです。これは議長である私も反 省しなくてはいけないところです。ただ、今度結核感染症課内に新型インフルエンザ対策 推進室ができたということは、今後期待をしているところなので、今までの少人数のとこ ろから一歩踏み出して、是非タイムラインとこんなに大きい会議ではなくてもいいですか ら、もう少し縮小した形でもいいので、実際のもう少し大きいスケールで起きたときのこ とに次の検討課題として移していく必要があると思います。 今のところですと、結核感染症課から来るメールのやりとりが午前2時〜3時などとめ ちゃくちゃなことをやっているわけで、それがせめてこの対策推進室の人数が増えて、解 決できればよいと思いますが、ただこの中には、兼務の方が多いのが気になるところです。 専従された方は大変でしょうけれども、今、押谷委員から指摘があったようなことも含め て、少なくとも夜の12時前にいろんな議論ができるようにと思いますけれども是非よろし くお願いします。 そのほかのことはいかがでしょうか。 ○田代委員 押谷委員の言われることは全くそのとおりで、今まで無駄に時間をつぶして きたのではないかと私は思っています。アメリカに比べて3年間遅れている。もう一つ大 事なことは、これは厚労省だけで解決できる問題ではないということ。これは前から申し 上げていることなんですが、これを早く国全体の危機管理としてこういうような検討する ところに持っていって、そこでオープンなディスカッションをしていただきたいと思いま す。それがなぜできないのかというのが非常に不思議なんですけれども、連絡会議がつく るということはよくわかります。毎週2回集まっていることはわかりますけれども、そこ で何が話されてどうなっているのかというのは全く国民に伝わってきていない。そういう ことが大きな問題だと思うんですけれども、そこを是非そういうように上に上げていくと いうことをお願いしたいと思います。 ○野口委員 千葉の方では医療体制の整備を考えていますけれども、そこで問題になって きたのは、患者さんの数が少なくなればなるほど我々は助かるんですけれども、それはか なり期待できないかなということで、特定の患者さんグループ、特に透析患者さんをどう サポートするかとか、精神科の入院患者さんをどうするか。また、妊婦さんとか子どもを どうするかというようなことは非常に具体的に問題として持ち上がってきています。 ですから、そういうところを本格的にその部署の人たち、例えば透析のグループの人た ちに検討してもらうとかということも必要だと思いますし、医療体制のマンパワーのサポ ートとして、例えばボランティアの活用とかということも出ていますけれども、そういう 人たちとか看護学生とかという人たちの資格をどうするのかと法的な整備も必要になると 思いますので、やはりそこも考えていただきたいと思います。 ○岡部議長 ありがとうございました。そのほか御意見がありましたらどうぞ。 前のパンデミックガイドラインに作成に当たったときも、例えば優先順位等々を決める 場合にも、ここにいる専門家だけではなくて、社会での全体の議論も必要だというような ことも意見が述べられていたと思います。そういうようなことも次の段階として是非取り 入れていただければと思います。そのほか御自由にどうぞ。あと5分ぐらいありますから。 角野委員お願いします。 ○角野委員 先ほども少し触れたんですけれども、パンデミックになったときというのは、 これは通常の感染症対策だけの話ではなくて、日本全体の大きな災害なんです。災害とい うことは我々保健医療分野だけの話ではなくて、これは各すべての部署が対応しなければ いけない話なんですけれども、どうもこのインフルエンザという切り口から最初ずっと入 っていっていますから、世間一般もいつまで経っても保健医療の話というところから抜け 出せないところがあるように思うんです。 自分自身がこの4月には県庁の方に移りましたけれども、県の全体の話、あるいは地域 の話をここで結構進めていこうとなったときに、単に保健医療の病院とか医療関係者だけ ではなくて、対象となるのが教育委員会であったりあるいは地域やコミュニティーだった りとか、公共交通機関であったりスーパーであったりとかいろんなところにわたってくる わけです。 ところが、そういうのは我々の部署においてはそこに対する権限というのは余りないわ けです。だから、今、滋賀県ではそういうので庁内で横断的なのをつくってそれぞれの部 局から話を進めてもらえるようにという今、手立てを考えているところなんですけれども、 やはり国におかれてもそういったこと、例えば先日、学校で休校にすればかなり感染率が 下がるのではないかという報告が今出ています。そういう判断、計画を教育委員会はどの 程度考えて意識を持ってやっているかという話です。 そうなると文科省の方がしっかりその認識を持ってもらって、それなりに研究あるいは 事業に対して指示するとかそういう体制が国の方でもどこまでできているのかなというよ うに、確かに総理大臣が本部長ということで立ち上がるようですけれども、それは現在平 時の中でそういう仕組みがあって、それぞれの関係省庁がいわゆる社会的な混乱に対する、 あるいは社会機能を維持するためにどうするかという視点でのさまざまな行動計画という のがつくられる必要があるのかなと思います。 ○岡部議長 どうもありがとうございました。ほかにもう一つぐらいどうですか。 森兼委員、どうぞ。 ○森兼委員 正林感染症対策企画調整官から先ほど関係省庁対策会議が週に2回ぐらいの ペースで開かれているという御報告をいただいたんですが、これと今この専門家会議ある いは各部門がありますけれども、その部門の関係というのはどうなっているんでしょうか。 と言いますのは、恐らくここでこの資料を拝見しますと、この専門家会議の各部門でま さにディスカッションすべきような内容がディスカッションされていると思うんです。こ ちらはこちらで別にディスカッションして、向こうは向こうでということだと、時間のむ だかもしれないということが1つ。 こちらは専門家が集まっている。あちらは恐らく行政、いろんな関係省庁の法的なこと とかそういうことを把握していらっしゃる方が集まっていらっしゃる。それぞれ違う意味 で知見のある方が集まっている。そういう方が集まって一緒にディスカッションした方が いいのではないかと思うんですが、その辺に関してお伺いしたくて発言させていただきま した。 ○感染症対策企画調整官 1つ、先ほど私、週に2回と言ったのは、関係省庁の対策会議 のメンバーでワーキンググループをつくって、それが週2回開かれている。対策会議の親 の会議はそこまで頻度は高くないです。 それは置いておいて、関係としてはやはりこの場は専門的なお集まりの場ですので、そ こで専門的な見地からの御意見、特にああいったガイドラインなどをおまとめいただいて、 我々政府の者はそういった専門的な知見の集積であるこういったガイドラインなどをベー スにして、実際に我々は業務を行わないといけませんので、具体的にはどういうふうに行 っていったらいいのかということを検討していくというそんな関係にはなっているかなと は思います。 場合によっては、確かに御指摘のとおり、政府部内でやっているときもできれば直接専 門家の意見を聞きたいというときもありますので、先生の御意見はこれから内閣官房にお 伝えして検討してみたいと思います。 ○岡部議長 どうもありがとうございました。ぴったり時間通りにやるのが一番いいわけ ではないんですけれども、ちょうど12時になったので、そろそろ今日の委員会としてはお しまいにしようと思います。最後に今後の予定も含めて事務局側の方から何かありました らお願いします。 ○感染症対策企画調整官 今日の意見の中にもまだまだもっと検討しなければいけないと いうような御意見を多数いただきましたので、早速スケジュールも調整していただいて、 特にワーキンググループでいろいろ御意見いただこうかと思いますので、また日程等決ま りましたら御連絡したいと思います。まずはワーキンググループを開いて、それからこの 親会議もまた開いていきたいと思っております。そのときはまたよろしくお願いします。 ○岡部議長 それではどうもありがとうございました。 紹介先:健康局結核感染症課特定感染係 (内線2386,2379)