08/03/19 「安心と希望の医療確保ビジョン」第5回議事録 「安心と希望の医療確保ビジョン」第5回会議 日時 平成20年3月19日(水) 18:00〜 場所 厚生労働省9階省議室 ○ 小野対策官   ただいまより、「安心と希望の医療確保ビジョン」第5回会議を開催いたします。本日は、ご多忙  のところご参集いただきまして、誠にありがとうございます。なお、本日、公務の都合によりまし  て、舛添大臣は途中からのご参加、西川副大臣は欠席、松浪政務官は途中退席されます。西川副大  臣より、先生方へのご質問をまとめました資料を席上配付させていただいておりますので、後ほど  の議論の際にご参照いただいて、議論をお願いできればと思っております。  本日は、医師以外の医療従事者の方々からのヒアリングということで、歯科医師、看護師、助産師  の皆様にお集まりいただいております。それでは、本日の説明者の方々をご紹介させていただきま  す。田上順次東京医科歯科大学歯学部長でいらっしゃいます。田上先生は、奥羽大学歯学部教授、  東京医科歯科大学教授などをご歴任され、う蝕治療にかかわる教育・臨床に従事されるとともに、  同大学の歯科器材・医薬品センター長として、研究開発にも取り組んでおられます。平成17年に同  大学歯学部長にご就任され、現在に至られております。  続きまして、坂本すが東京医療保健大学看護学科長でいらっしゃいます。坂本先生は、和歌山県立  医科大学、国立王子病院などで助産師として勤務された後、NTT東関東病院で副看護部長、看護部  長を歴任、病院経営、看護管理学をご専門として東京医療保健大学教授を経られた後に、平成17年  に同大学看護学課長に就任され、現在に至られております。  続きまして、堀内成子聖路加看護大学看護学部長でいらっしゃいます。堀内先生は、聖路加国際病  院に看護師として勤務された後、福岡助産院にて助産師として助産業務に携わり、母性看護学、助  産学をご専門として聖路加看護大学看護学部講師をご経験され、平成15年に同大学看護学部長に就  任され、現在に至られております。また、日本助産学会の理事長としてもご活躍されております。  それでは、まず田上先生からお願いしたいと思います。よろしくお願いします。 ○ 田上教授   今日は非常に貴重な機会をいただきまして、大変ありがとうございます。一般に歯科の内容という  と、社会になかなか知られていないことが多いので、そういったところも含めて、まず説明をさせ  ていただきます。  歯科医療の目標ということですが「食べる」「話す」という人間の根源的な機能を司る器官である  歯と口腔を、生涯健康な状態に保つということを我々の目標としております。  しかしながら、8020という80歳で20本の歯を残そうというキャンペーンがありますが、現実には80  10というのが現在の状況です。20本あれば、比較的健康な生活がおくれる、不自由なく暮らせると  いうのが基準ですが、それよりまだまだはるかに低いというのが現状です。どうして歯がなくなる  のかということですが、虫歯と歯周病がそのほとんどを占めております。「虫歯」と「歯周病」は、  歯科における二大疾患と言われておりますが、虫歯と歯周病を予防すれば歯はなくならないという、  非常に簡単な論理があります。  ただ、この「虫歯」と「歯周病」は国民病と言われるほど、非常に多くの方が罹患しているわけで  すが、実際にはその病原菌はもうはっきりしております。多くの方の口の中に病原菌が存在してお  りますが、それがリスクの高い生活習慣と一緒になって発症するということもわかっておりますの  で、実際には予防することはとても簡単なことです。予防法は、完全に確立されていると言えます。  どうしてそれが予防できないかというと、一般的に人々の歯科に関する関心が非常に低いことが原  因かと思います。これは受診率を示したグラフです。小学校に入るときに、母親に手を引っ張られ  て歯科を受診します。そういう意味で、小さい子供の虫歯は非常によく予防できるようになって、  効果を発揮しております。しかし、その後、学校生活、それから大学、就職と社会に出るに従って、  受診率はなかなか伸びてきません。この間は何か問題がないと、歯科医院を受診しないという時代  が続きます。そして、第2のピークが60歳前後でやってまいります。これはどうしてかと言うと、症  状なく進行した虫歯や歯周病、前に治した歯が駄目になってしまう、痛くなる、どうしようもなく  て来るというのがこのピークです。この健康寿命を過ぎてから、また受診率がガクッと下がるとい  うのが歯科への受診傾向です。  日米の受診率の比較ですが、15〜20歳、あるいは25〜30、40代、50代、非常に差が大きいです。ブ  ルーが米国の受診率ですが、米国では、歯が悪くなる、歯茎が痛んで受診するというよりも、定期  的な検診、あるいはケアに通院する人が非常に多いです。一方、日本では悪くならないと受診しな  いということで、その差が縮まってくるのは、高齢になってからという結果になります。  そうすると、問題点あるいは対策を考えるときに、やはり年代別に考える必要があろうかと思いま  す。幼児期では初めて歯が生えてきます。歯が生えて初めて歯の表面にしか定着できない、つまり  歯がないと生きていけない病原菌が外から入ります。つまり、感染するわけです。この感染という  ことをしっかりと両親に教育することで、かなり効果を発揮します。  それから、学童期には永久歯が生えてきます。生えたばかりの永久歯は非常に未熟、成熟しており  ませんで酸に弱い。虫歯になりやすいです。また、生活習慣をこれから確立していくという時期で  すので、非常にリスクが高いというので、対策としては、学校や家庭で予防対策を行う。そして、  かかりつけの歯科医に、しっかりしたケアをしてもらうことが重要になります。  青年期には、健康に関してはあまり問題がありませんので関心は低いのですが、その一方で、美容、  ファッション、口臭といった社会生活に関連したものには非常に関心が高いということで、こうい  った方面からアプローチすることが必要になります。この時期には、生活習慣に問題が生じやすい  という年代でもあります。また、この年代には体液性感染とか、防衛策の教育も含 めて、白い歯  や口臭をモチベーションにした口腔衛生指導が効果を発揮します。この場合には、学校や職場を通  じた健康支援が非常に効果的かと思います。あるいは、企業等の行うコマーシャルなども、この年  代には非常に効果的に作用します。この年代では、例えば虫歯の治療などがありますが、最近では  非常に高度な技術、先進的な材料もたくさん応用されております。従来ではこういった金属を詰め  るというのが一般的でしたが、こういう治療ではよくこの歯の周囲からまた虫歯になるということ  で、一生の間に同じ歯を何回も治療することが行われておりますが、現在ではこういった症例でも  悪い部分だけを取ります。歯の良い所を削ると、非常に痛くて大変なのですが、病巣だけを除去し  て、すぐに接着剤を使ってこういった丈夫な樹脂で、その場で治すことができます。患者には非常  に喜ばれる治療です。  従来の治療ですと、取れないようにするために、健康な歯をたくさん削って、はめ込むという治療  でしたので、当然歯を削ると痛いので麻酔の注射も必要でしたが。  接着剤を使うと、病巣だけを削って、その場で詰めますので、痛い所を削らないという無痛的な虫  歯治療というものも可能になっています。こういう治療は、実は日本の歯科材料は世界でも最先端  の技術でそういった材料が応用されており、これは日本で確立された治療法で、いま世界中で広ま  っております。日本で、こういった金属がたくさん奥歯に詰まっている人は非常に多いのですが、  こういった方も同じ口の中で先ほどの治療で置き換えていきますと、こういった形になって、非常  に喜ばれます。特に若い方はこういった治療を喜ばれます。残念ながら、医療制度の影響もあって、  日本でよりも諸外国でのほうが、こういった治療はよく普及しているという状況でもあります。  壮年期・中年期になってきますと、自分のことだけでなくて家族の健康を考える年代にもなってま  いります。その中で、今度自分はどうかというと、歯周病が無症状のまま進行する年代でもありま  す。同時に生活習慣病のリスクも増加してまいりますので、先ごろ特にエビデンスも出てまいりま  した歯周病と全身疾患とのかかわりなどの情報も、非常に効果的かと思います。対策としては、や  はり定期的な検診とクリーニング、あるいはかかりつけの歯科医院でのプロフェッショナルケアを  受けることが重要になってまいります。  ちょうどこの年代ですが、この年代の方に歯科に関する満足度調査を、ある企業がやりました。  その結果、口の健康について「満足している」と答えた人は半分に満たないという、非常に残念な  結果が出ております。こういった成人が、どんなところに不満があるのか聞くと、1位が歯の色、2  番目が口臭、3番目が歯並びと、何と上位3つの項目は虫歯・歯周病に直接関係するものではなくて、  生活に関連する不満になります。4位以下になって、歯周病あるいは虫歯、歯の痛みといったものが  出てくるわけで、ある年代にとっては生活医療としての歯科医療という側面をもっと重視していか  ないといけないのかと思います。  これは平成17年歯科疾患実態調査の結果ですが、この年代の方で注意すべきことは、非常に多くの  方が歯周病に罹患しているということです。この程度の診査法でスクリーニングされる歯周病は、  実際には症状がほとんどありません。したがって、無症状のまま進行していって、60を過ぎてどう  しようもなくなって、通院したときにはもう手遅れといった方が多くて、サイレントリジーズとい  われる典型的な疾患です。  もう1つ、この年代で注意すべきことは、虫歯、歯周病は非常によくコントロールされているわけ  ですが、歯がどんどん溶けてくるという現象があります。これは普段の生活の中で、歯を溶かすよ  うな酸性の食品、あるいは飲み物が氾濫しているということです。これがどんどん溶けてきますと、  歯神経のほうまで行って痛くなりますし、溶け残った周りの歯が割れてくるということで、また同  じような問題が生じてまいります。これは酸蝕症と呼びますが、高齢社会においては非常に重要な  ものとして、いま注目されております。  例えば歯はpHが5.4あるいは5.5で溶けると言われています。それよりもpHが低いものは歯を溶かす  わけですが、ここにありますように炭酸飲料、スポーツドリンク、あるいは柑橘系のジュースとい  うものは、歯を溶かすのに十分なほど強い酸であるということが言えます。  健康ドリンクもそうですね。  アルコールも、ほとんどが酸性です。こういうものを長時間少しずつ飲むというのは、いちばん歯  を溶かしてしまいやすいということが言われています。  そして高年期になりますと、これは人生の完成期で、収穫を得る時期と位置づけることができます。  しかし、発語や咀嚼、物を食べることに問題が生じる時期でもあり、唾液分泌も低下してまいりま  して、細菌感染の危険が増大してくる年代です。対策としては、やはりかかりつけの歯科医院でプ  ロフェッショナルのケアを受けるというのが最も効果的ですが、自身が健康に問題があると通院で  きなくなるということで、訪問診療や在宅ケアも、また有効な手段となります。  高齢の方でも、こうやって歯周病が良くコントロールされていると、非常に快適な生活をおくるこ  とができます。しかし、手の運動機能なども低下してまいりますと、上手に歯を掃除できないこと  になって、ここでまた新たに虫歯、歯周病のリスクが一気に高まります。  さらに、大体75歳ぐらいを過ぎますと、歯科の受診率は激減するわけですが、これはまず自分が通  院できないという問題があります。  次に考えられることは、入院しても病院には歯科がないという状況が、非常に深刻な問題となって  おります。病院内・施設内というのは無歯科医地区ということがよく言われますが、平成17年の厚  生労働省の調べでは、全国の病院総数9,026カ所のうち13.5%にしか、病院内の歯科がないという状  況です。これの1つとしては、いま産婦人科・産科、あるいは小児科の議論の中に隠れてなかなか出  てきませんが、それより以前から、病院内の歯科については、典型的な不採算診療科ということで、  真っ先に閉鎖される診療科であったということもあります。例えば保険点数、初治療にしてもそう  ですが、初診料、再診料は4月からの改定でかなり上げていただいてはおりますが、医科と歯科では  まだ大きな差があるというのが現状です。  入院した患者については、いま入れ歯がありましたが、周りにいる方が入れ歯を入れていることに  気付いていないということで、入院中ずっと入れ歯を入れっぱなしであって、非常に汚れた状態だ  ったということもあります。それから、部分入れ歯などですと、1回外してしまうと形が複雑ですの  で、周りの人が誰も入れることができない。そして、退院したときには、歯の位置が少しずつ変化  して、治ってから家で入れようとしても、もう入れ歯が使えないという状況にもなってまいります。  あるいは、ご自分の歯でもうまく掃除できませんので、どんどんひどくなった状態、細菌がべった  りくっついた状態で、いつ誤飲性の肺炎を起こしても不思議ではない、といった状況にもなってま  いります。  それから、ご自分の歯の場合には、非常に汚れた状態が続いて、17頁の上の写真のような状態にな  るとかなりひどいのですが、急性の痛みがなければ、病院内では放置されてしまいます。それでこ  のままなのですが、実際にはもう自分では物を食べることはできなくなっております。そういった  入院中の合併症を予防しよう、あるいは経口摂取できるようにしようということで、その下にある  のは長崎大学の病院で行われた摂食嚥下チームを介入させました。そうしたところ、経口摂取、つ  まり自分の口で物を食べたり飲んだりできるようになる患者が、介入前は約52%でしたが、介入後  は81%に向上したということで、非常に状況が改善されるということがありました。  以上のように、病院に歯科関係者を投入することで、病院全体の活性化につなげることができると  いうことが言えます。特に入院中の肺炎などの合併症の予防に歯科医師あるいは歯科衛生士を活用  することで、医師は本来の業務に専念できるようになります。歯科衛生士については、今年から4  年制の教育を受けた歯科衛生士も卒業生が出てきております。あるいは、過剰と言われております  歯科医師の中でも、国家試験に何度かトライしているような人も歯科衛生士の資格が得られるよう  にして活用していく、ということも考えていいのかと思います。  18頁の下にあるように、歯科医療の問題点はたくさんありますが、今日は全部を挙げることはでき  ません。まず、我々がいちばん苦労しておりますのは健康保険制度です。非常に安い治療費でたく  さんの治療ができるのは良いことかもしれませんが、低すぎる評価により十分な診療時間が確保で  きない、1人の治療は非常に短い時間になってしまうということで、結果的に質が低下することに  なります。いま申し上げたように、予防というのは非常に大切な部分、特に歯科においては大切な  部分ですが、原則保険適用外ということになっております。その保険点数の低い評価の裏返しとし  て、歯科で行われている自費診療が逆に非常に高すぎる、という指摘も受けております。現実には、  ほんの数パーセントの自費診療の患者から、90数パーセントの保険診療の患者の治療費を払っても  らっていると言っても過言ではないような状況が歯科のいまの状況かと思います。  需給問題ですが、確かに人口比では歯科医師は過剰と言えますが、一方、患者にとってはなかなか  良い歯医者に当たらないということも、よく指摘されます。したがって、単に数ではなくて、質を  合わせて考えていかないといけないということで、現在行われている学生定員の削減、国家試験の  合格基準の引上げということは、今後も強化徹底していかないといけない部分かと思います。それ  から、資質の高い人材を確保するためには、やはり歯科医師の生活が安定しないと、非常に難しい  ことだということが言えます。最後に症例、写真をお見せしたように、超高齢社会への対策の遅れ  ということも、大きな問題です。  こうした中で、これからできそうなこと、いまの状況で何ができるかということをちょっと考えて  みると、やはり予防とケアを義務化する。これだけ保険による統制の行われた医療ですので、もっ  と予防とケアを義務化するぐらいの政策があってもいいのかと思います。そのために、特別の財源  が充てられればいいわけですが、それはないという仮定で考えますと、平成18年の歯科医療費2兆  5,000億円のうち、どう使っていくか。歯科医院がいま約6万6,000施設あります。1施設当たりに全  国民を割り振っていくと約1,800人になって、1日当たり7人から8人の予防とケアを行っていけばよ  いことになります。この経費をどうするか。1年間で1人5,000円とすると6,000億円かかりますし、  それで難しいので1万円だということであれば、1兆2,000億円になります。それだけでも、口腔内、  口腔衛生環境は劇的に向上するはずです。残りの1兆9,000億あるいは1兆3,000億という予算で、そ  の他の治療を賄っていくことが考えられるかもしれません。  19頁の最後、下の所になりますが、このように限られた財源で考えていくとすれば、予防あるいは  高齢者の管理は、すべて保険で義務化していくことが考えられます。その際には、歯科衛生士を活  用する環境を整備することも必要かと思います。歯科衛生士が独立して、あるいは開業して予防処  置を担当する、あるいは単独で病院に赴くといったことも、非常に効果的かと思います。予防ある  いは保険診療のプログラムにしても、全国民同じプログラムではなくて、やはり年代別に非常に有  効なプログラムをそれぞれに考えて、適用することが必要かと思います。  その上で、本当に必要な治療について、もう一度見直して、それを保険で適正な評価を再度行って  いくということがあればいいのかと思います。当然、すべて保険で賄うということができませんの  で、先端医療等については民間保険の活用、混合診療の解禁を促進することで、患者の医療費の高  騰を抑制することが可能かと思います。同時に、革新的材料や技術の開発推進、これは日本は世界  の中では非常に強い部分です。あまりにも診療する現場での制約が強いと、こういった開発促進も  かなり鈍化してくるということが現実に起こっておりますので、そうした日本の技術を伸ばしてい  くためにも、もう少し制度面での改善が望まれるところかと思います。以上、現在私の思い描いて  いる理想的な歯科医療ということで、お話させていただきました。いろいろご議論いただければ、  大変幸いに存じます。 ○ 小野対策官   どうもありがとうございました。引き続きまして、坂本先生のほうからお願いしたいと思います。 ○ 坂本教授   私が与えられたテーマとしては、看護師の仕事のあるべき方向性というところで述べさせていただ  きます。  4つの視点というところで、私はNTT関東病院で急性期病院の経験をしましたので、その経験の中で  何を考えたか、これからどういうことを考えなくてはいけないかということで1点。2点目は、医療  制度改革の中の途中だろうと思っているのですが、やはりそこには疲労困憊している状況があるの  で、それについてお話をさせていただきます。3点目は、看護師の仕事はいったい何かということ  で、私自身が考えたことも含めてお話させていただきます。最後は、結論として、看護師をいかに  活用していくかということが、これからの医療のあり方の中で大変重要なことである、というよう  に述べさせていただきます。  看護婦長として10年弱なのですが、平成9年に在院日数短縮と紹介率に基づく診療報酬点数が付け  られたというところから、大変病院の中が変化し始めたと思います。それから現在まで、いろいろ  な加算がつくごとに、病院の中はそれに対応しなければならず、最後は平成18年、7対1の看護師増  に関して、またさらに大変大きな変化が起こってきていると思います。  これは関東病院から借りてきた資料ですが、平成11年、平均在院日数が19.2だったものが平成19年  には10.6になっています。この中の内容はどうなっているかというと、3分の1は3日以内、2分に1  は6日以内、7割は9日以内という患者です。そういう意味からすると、この中で働いている人たち  の仕事の仕方というのは、大変入れ替えが激しい状況と、若干残ってらっしゃる長い患者の対応  と、2つに変わってきたということになります。  これを図に表してみると、600床で19.2だったものが600床で10.6になったときは、ただ病棟が空い  てガラガラではありませんので、満杯になってくる状態からすると、約1,100床の病院を動かしてい  るということになります。そして、ほぼ同じ看護師数、医師数で、それではもうとても間に合わな  いので、少しずつ増やしつつありますが、そう大きく増やしていない状況で、いままでの患者のほ  ぼ倍を同じ医療職が病院の枠の中で見ているということが起こってきているわけです。  この入れ替えですが、例えば71人入って24人退院、73人入って42人退院といった、大変入れ替えが  激しい、いままでに看護師が遭遇しなかった状況がジワジワと起こっています。いままでゆっくり  患者と会って、いろいろなお話を聞いてあげたい、患者の看護をしたいと言っていた人たちが、実  は入れ替えのほうにシフトしてしまうということで、看護の仕事というのはいったい何なのか、疑  問を呈するナースも出てまいりました。そういう意味では、大変入れ替えが激しい病棟では、10人  ぐらいがローテーション希望してみたり、いままで経験にないことが病院の中に起こってきている  ということです。  一言で言うと何かというと、ドクターや看護師などが気忙しくなったといいますか、病院の中が気  忙しくなった。そして、いつも何となく大変忙しい状況があると。現場の医師やナースは、その数  値をいつも見ているわけではありませんから数を持っているわけではありません。そういう意味で  は、ただただ目先の仕事で忙しいという状況になっているのだと思います。  私自身が思いつくまま書き表してみたのは、新しいケア、システムの導入、限られた人員数、稼働  率をアップしなくてはいけない状況、重症度のアップ、記録時間が長い、医療ミスが多発している、  患者意識の変化、研修医制度、看護の質が目につく、病院評価への社会的関心がアップする。その  中でスタッフが疲労してくると、退職。退職すると、看護の質が良くないということで、患者に満  足されていないのではないか。それから、教育の問題が大変重要なのではないかというような、何  から手を付けていったらいいかわからない状況が一時あったというように思います。  これは、重症度の違うタイプの患者がすべて病院に来ると。救急を要する患者、紹介書を持ってく  る患者、持たずに来る患者。何らかの処置が必要だけれども、急性期病院で対応が必要ではない患  者。これらの患者が混乱している状況の中で働いている、ということがいままでの経験でした。  多種多様な患者をどこでも診るという方法では効果的な労働集約が出来ないと思います。従ってい  ま国が進めている機能分化は大変必要だと思います。このままではデパートのような何でもありと  いう病院の中で、いろいろ混在している状況で、おそらくスキルミックスというものがうまくいか  ない状況であると思います。そして、病院の外もそうですが、実は病院の中も必要な所に必要な看  護師を投入するという形をとらなければ、大変混乱してしまって、何をしていいのかよくわからな  い状況があるということです。例えば救急センターには救急センターのそれぞれの卓越したナース、  それから特定分野に卓越したナースなど、いろいろな所にそのスキルを持ったナースをミックスさ  せていくというような形で、中も機能分化しなければいけないのではないかというように感じまし  た。  いまは何となく病棟が忙しくて、何とかしなければいけない状況がありますが、果たしてそうだろ  うか。病棟もそうだけども、外来で調整していって、きちんと患者の状況に向き合って、患者がお  出でになる前までの大変悩んでいる状況をいかに受け入れて、スムーズに入院生活を経過するよう  な形に整えないといけないのではないか、ということが私が退職する前に考えたことです。そうい  う意味では、たくさん外来が来るということではなくて、外来の患者のトリアージとか、違う言い  方をすると、形を整えるといいますか、スムーズな入院生活でスムーズに治っていくためには、患  者さんの形を整えるところにある程度力を入れなければいけないと思います。例えば入院が決まっ  たときに退院まで見通せるように、ここに看護師を投入するというのが必要なのかと思いました。  しかし、いままでの状況の中では、患者も看護師もドクターを待たなくてはいけない状況がありま  した。急性期病院の中では、大変混乱した忙しい状況の中で、すべてがドクターの指示によって、  いろいろなことが動く。そうすると、患者も看護師も、医師を待たなくてはいけないというのが現  状です。  医師がすべての指示を出さなくてはいけない体制には、はっきり言ってもう限界が来たような気が  しました。患者数が倍増して入れ替えが増加する中で、すべての指示が医師に集中するのは、医師  も疲労困憊している。すべてが医師に集約されない状況に何とかしなくてはいけない。ただし、医  師の仕事をナースに全部分配しましょう、そういう区分けをしましょうということではなくて、や  はり急性期病院という患者ニーズが大変生命危機的な所には、医師増は絶対必要だと思います。し  かし、それだけでは駄目で、看護師業務の見直しと看護師の裁量権の拡大をしない限り、すべてに  医師が集中するような形では、おそらくいまの状況では難しいと思います。  次に看護師の仕事をどうしていったらいいのか、ということを考えたいと思います。一般的に思い  浮かぶ看護師の仕事は、与薬、点滴、注射、車椅子での移送、入浴介助、体位変換、体を拭く、こ  ういうことですね。これが世の中の皆さん、国民の皆さんたちが思ってらっしゃる看護師の仕事で  す。私は30年間近く看護師をしてきましたが、実はもう1つ看護師の仕事があると思います。  24時間ケアしながら、医師の説明補充、患者が気にかけていることを改めて説明する、患者と家族  との話し合い、相談に乗る、テレホントリアージする、テレホンメディシンする、ケアギバーする。  これらのことをしております。これをもう少し考えてみたいと思います。  実は看護師の仕事は、私の造語ですが、間隙手(かんげきしゅ)という役割が大変大きいのではな  いか。いままでこの会が3回行われてきましたが、その議事録を読ませていただくと、先生方がい  ろいろな提言をされている中に、例えば薬剤師は薬剤師、栄養士は栄養士というプロフェッショナ  ルという、あるエリアの仕事をするという方はたくさんいらっしゃいますが、その間で患者が困っ  たときに誰がどのように問題を解決するのかと言ったときに、わからない仕事、それをぬうのはい  ままで看護師が大変しておりました。そこを明確にして、強化していくという仕事をしなければ、  先ほどの一般的な看護師の仕事だけでは、おそらくこれからの医療というのは患者にとって良くな  いと思います。  間隙手というのは、これはいろいろ考えました。インターフェースに位置している。24時間みてい  るなどいろいろ考えましたが、間隙手という言葉を使わせていただきます。これはドクターの指示  を受けて、患者との間を仲介することではありません。独立して、目標に向けて患者と医師とがス  ムーズにやり取りができるように、両者に働きかける役割。医師と患者の間であったり、薬剤師と  患者の間であったり、家族と患者の間であったり、いろいろなところから受けて間隙というところ  をきちんと見て、何をすればいちばん患者にとって目標に向けていけるかということを見抜いて、  それに手当をしていく役割だと思います。  患者に対しての目標は全く同じで、医師、薬剤師、看護師、栄養師、職種は違っても、患者の最適  化という目標は同じであると思います。看護の目標、目的は何かというような言葉が看護界ではよ  く出ますが、それは部分であって、私はちょっとおかしいと思っております。すべてが集約された  患者さんの最適化の目標を持つということでプロとプロとのインターフェースに位置して、機能が  細分化したプロの集団の全体を見ている人が必要で、それをいかに看護師として意識して活動して  いくかということが、これからの看護師の役割だと思います。  看護師は、主体的に判断して行動するものであって、決して医師の配下ではない。これは法律的に  は医師の配下というようになっておりますが、実はしている仕事をよく見ていると、絶えず医師の  配下であるということではなくて、主体的に大変動いております。それを明確にしていくというこ  とが重要であり、何のためにそういうことをしているのか。例えば、あるレジデントが少し技術が  うまくなければ、部長の所に行って、「先生、あのレジデント、あのままだったら大変なミスを起  こすかもわからないから、何とかしないといけないですよ」と言っていくのは、やはりいつも見て  いるナースなのです。それは、リスクを起こさないように最適な方法を手配し、最適にケアを受け  られるように持っていく役割だと思います。  これから医師や他の職種、患者のパートナーとして、生活を支援しつつ、この「生活を支援しつ  つ」がなければ、間隙手としての役割は果たせません。だから、ある意味では、間隙手としての1  つのプロフェッショナルだけであるということはできないと思います。そして、予防、治療、在宅  のインターフェースに位置して最適を目指していく役割で、これは急性期病院だけではなくて、現  在在宅で行っていることも、結構その間隙手的な役割が多いと思います。  次は、看護師は表舞台に立たせる。いままでは看護師が患者のそばにいて何をしているのかがよく  わからないという意見が多いなかで、看護師は仕事をしてまいりました。これを他の職種や国民の  皆さん、それから患者さんに、看護師はこのような役割をしているのだということを明確に見せて  いくことが、大変重要であると思います。  間隙手が優れている病院は、安全である、安心であると思います。この1つの裏付けが。  これはアメリカの調査ですが、看護師の数と患者死亡率との関連ということで、受持患者が1人増  えると死亡率が7%増えると、そのようにナースの数と患者の死亡率というのは大変関係している  というデータが出ました。これはいったい何なのだろうというように考えてみました。それは看護  師がたくさんいて、いろいろなお世話をしているから死亡率が減るのだとか、看護できないから増  えるのだなどということではなくて、私はやはり間隙の調整機能が高いのだと思っています。リス  クを早く見つける、リスクになりそうな人は予防する、他の職種と組んで手を打つという役割があ  るからこそ、このようなデータが出たのではないかというように、私見ですがそのように思ってお  ります。  間隙手という役割をしている中でも、必要であるならば、看護界は認定看護師、専門看護師という  形でつくってまいりました。これはある病院の人工呼吸器関連性肺炎の発生件数ですが、認定看護  師がいろいろな改善をした結果、人工呼吸器回路を使い捨て回路へ変更したり、カフ圧管理の徹底  をしたり、このようなことをすることによって、平成17年度は21あった人口呼吸器関連性肺炎を3人  に減らしたというデータがあります。  もう1つは、がん性疼痛認定看護師のコンサルテーション件数で医師と比較したわけですが、実は  コンサルテーションを大変よくしております。このコンサルテーションは、エリアにとどまらず、  自分のエリアと決めていたとしても、そこから出ていって患者の相談に乗っていくということが大  変重要なことであるのだろうと思います。  これはNTT関東病院から借りてきましたが、これからの看護の力といいますか、一般的な看護だけ  では患者の目標を達成することができないということで、いろいろなスキルを持ったナースを増や  しております。スペシャリストですが大変たくさんいます。このようにいろいろな卓越したスキル  を持った人をナースの中にも入れて、その間隙でいかに早くリスクの対策をとっていくかというこ  とを考えたからです。  しかし、専門看護師、認定看護師が増え、病院の中で看護師がいろいろな改善をしても、やはり医  師の処方が必要というところの立場からは、何ともできないものがあります。  これからの医療は看護師を活躍させる仕組みが必要であり、間隙手のスキルアップのためには、看  護師に裁量権を明確にすることが必要だと思います。そのようなことで、例えば1つの例は褥瘡のケ  アに皮膚創傷の認定看護師がいて最近インタビューしてきましたが、その認定看護師は褥瘡の手当  はします。貼るテープも、患者に合ったテープかというのを一生懸命考えて、患者にいちばん合っ  た方法をつくり出します。しかし、その患者に必要な薬に対しては、やはりドクターの指示を待っ  て、その薬を出してくださいと言って待たなければ、完璧なるケアができないと言っていました。  ここまでやっていても、まだ処方は医師待ちで、お互いに大変効率が悪い現場です。裁量権を与え  て、必要なら薬理学の教育をしたり徹底した教育をしていけば、患者自身に大変早く薬が処方され  るということになると思います。もちろんどこまでの裁量かについては明確にしなければなりませ  ん。  これは、全国の認定看護師の数を表した図です。  裁量権の考え方ですが、いろいろなことでいま議論されていますが、医師が忙しいから看護師にそ  の業務をやってもらうという視点よりも、生活の支援をしつつ間隙手としての役割を果たして、ナ  ースがやることが患者にとっていちばんどうかという視点をきちんと持っていただきたいと思いま  す。巷には、忙しいからナースにという考え方が表面には出ていますが、基本的には患者にとって  どうかという視点で言っていただきたいと思います。例えばどのようなことをやらせてほしいかと  申しますと、がん患者の疼痛管理の認定看護師がいます。疼痛管理と言っても、疼痛管理をする薬  の処方はできません。この薬の処方をどのようにしてあげれば患者にとってはがんの末期の痛みが  軽減されると思っても、いちばんよく見ているナースがその指示を出すことは、できません。それ  から、医師の疼痛管理のばらつきが大変あるということでも言われています。うまい医師に当たれ  ば苦しまなくてもいいし、医師にかかれば、患者はがんの末期の痛みに苦しんでいる現状があると  いうのも、わかっていただきたいと思います。  提言したいと思います。「これから行うこと」は、コストがかからず今からでもできること、コス  トがかかることというように分けてみました。仕事を明確にして裁量権を看護師に与え、国からの  発信をする。それから「名前のある看護師」活動をさせる。いままでは一般的に看護師、あの看護  師、この看護師に言えばいい。このようなやり方では、これからは看護師というものが表に出ない  で、いつまでも誰かの指示を待って仕事をするという役割でしかない。それではこれだけたくさん  いる看護師がもったいないと思います。  是非責任を与えて、そして「名前のある看護師」活動をして、その責任はとる。責任をとるから、  例えば医師からの指示、静脈注射であったり、いろいろなことの裁量権が起きてきたときに、やり  たくないという看護師の声もわずかながら聞こえてまいります。しかし、私は責任をとるのは当然  であると思います。さらに、看護師といつも密着できるようなケア・ギバーの活用。患者や友人、  それから独り暮らしと言っても「あなたに何かあったときに、いちばんギバーしてくれる人はどな  たですか」ということを、病院はいつも明確に提携して、ケア・ギバーの活用をする。研修をする  などの教育は重要ですということは、やはり必要だと思います。  コストがかかることは、看護師を増やすことというのは少子高齢化になってきたときには、そう簡  単ではありません。巷では看護師を増やせという声が聞こえますが、本当にそれだけ増えるのかと  いうと、いま私は大学にいますが、そう簡単にたくさん看護師が増えるわけではありません。そう  いう意味では、新たな職種を作り分業させることのほうが優先であるなと思います。外国人看護師  のこともありますが、ただ看護師を単発的にいっぱい増やすのだということよりも、もっと分業さ  せるやり方をすればいいと思います。  これからの医療は看護師を表舞台に立たせる。それから、主体的に判断して実行する間隙手 の役  割を強化する。これだけプロフェッショナルの人たちがたくさん出てきた中では、その仕事は私の  所ではない、私の所ではないと拒否したらその間でいちばん困るのは患者です。そういう意味では、  24時間患者のそばで見守りつつ間隙をしながら位置して、リスクに早く手を打つという看護師の役  割を強化していくということがいいのではないかと思います。  誰かの仕事を誰かに任せて誰かが良かったという一人勝ちということではなくて、やはり患者を中  心にすべきで、医師も看護師もWIN-WINの関係というのがいいのではないかと思います。WIN-WINの  関係を1つお見せしますが、これはNTT関東病院で最近立ち上げた助産師外来です。これはドクター  が少なくなって、産婦人科のドクターが大変忙しかったわけです。そして助産師から、助産師外来  をやりたいと前から暖めていたものを是非やってみたいということを提案したときに、ドクターが  大変協力的に「やってみよう」ということで、実施できました。これに対していちばん喜んだのは  患者、2番目に喜んだのはドクターです。1日2時間のゆとりができた。そして、2時間の間に異常な  患者、婦人科の患者に対して、じっくりかかわることができた。それから、いろいろな文献の整理  もできたと聞いております。妊婦さんには、いままでドクターだったら長い時間診察にかけられな  かったものが助産師において30分、生活のことも含めていろいろな相談にのってあげることができ  るようになりました。  それからほぼ10人以上診れば、損益分岐点もクリアできるということで、経営側からも、妊産婦さ  んも、ドクターも、助産師も、WIN-WINの関係で終わった事例です。  最後ですが、ご遺体を最後まで見送る看護師の姿というのを、是非皆さんに分かっていただきたい  のです。私ごとですが私の夫の父親が昨日亡くなって、ある病院で夜、遺体を引き取って帰る間際  に、夜中の12時でしたが、病院の玄関で看護師が車が見えなくなるまで、頭を深々下げてくれまし  た。この感覚というものをいつも大事にすべきであり、これをしているということを、どれだけの  人たちが知ってくれているか。私はいままでは病院側でしたが、今度は自分が送られる側になった  ときに、大変感謝して、うれしいと思いました。以上です。どうもありがとうございました。 ○ 小野対策官   ありがとうございました。引き続き、堀内先生からのプレゼンテーションをよろしくお願いいたし  ます。 ○ 堀内教授   今回このようなプレゼンテーションのチャンスを与えていただきまして、ありがとうございます。  私の話は3つのポイントがあります。新たな家族の誕生を支える仕組みという中で、出産環境の変  化、2点目がマタニティ・ケアシステムで、集約化と分散化の話、3点目は助産師の活用ということ  で、裁量権の拡大を含んだ形で提案したいと思っております。  いのちの誕生をめぐる現代の課題としては、授かるいのち・つなぐいのちということで、命を育む  体づくりというものを考えたときに、現代の若者は妊娠をする体の準備というのが、以前とは変わ  ってきております。タバコやストレスが多い生活。それから、非常に便利な生活ですので、歩いた  りしゃがんだり、以前は普通に行われていたことができなくなってきております。また、若者の外  食を中心とした非常に貧しい食生活があって、妊娠、いのちを育む体づくりというのに重点を置か  なければならないと考えております。  2点目は、物質的な豊かさに対する価値は、我が国においては非常に大きいわけですが、それに対  して生命の尊さ、重さ、つまり目に見えない命を考えるという、命の重さというものを考える機会  が非常に少なくなってきております。一方、連日のニュースでは、子供の虐待や女性への暴力とい  った問題は顕在化してきており、その支援の必要性が高まっております。  そのような一方、我が国は生殖補助技術が非常に発展しておりますので、生命の選別ということが  できる社会になってきております。例えばダウン症の子供を妊娠していることを、女性が早い時期  に知ることができます。そして、ある特徴を持った子供を出産するか、あるいは出産を断念するか  を早い時期に決めるということに直面しております。そのように、以前のように授かった命を、自  然に与えられたものを受け取るということではなく、選択するという苦しさも味わなければならな  いという状況にあります。  また不妊治療に関しても、我が国は非常に進んでおり経済的なゆとりもあるためか、若干期待が大  きすぎる不妊治療というものがあると考えます。毎回の成功率は20%弱であるにもかかわらず、大  きく期待したり、急ぎすぎる不妊治療というような現状もあります。  一方、お産に目を転じてみれば、お産というのは非常に幅広く、一方では出産日も決め麻酔も決め  産み方も決めという管理分娩から、自宅で産むといった自然出産を望む方まで、非常にバラエティ  に富んだお産のスタイルがあります。出産に関しても、もうこりごりだというように体験する方か  ら、また生みたくなるような、女性にとっては非常に心地良い体験、人生の中で決して忘れること  のできない素晴らしい体験になる方まで、さまざまいらっしゃいます。  出産環境の変化については、研修医制度の変化と地域病院からの医師の引き上げということがあり、  産科医の集約化が起こってきております。そのときには助産師の活用というものが政策の中には明  示されてこなかったこともあり、また助産師の実践力の問題等があり、医師の引き上げに対して手  をこまねいているという状況がありました。地域医療に目を転じてみると、地域では医師の不在が  ある病院が非常に増えてきております。都会はいいのですが、地方では産科医療へのアクセスが非  常に悪くなる。何時間もかけていかなければならないという地域も出てきております。妊産婦の不  安は「お産難民」という言葉が表すように、近くに妊婦検診や出産の場がないということが起こっ  てきております。結局お産が二次・三次医療施設に集中することにより、ケアの質の低下も起こっ  てきているというように考えます。  お産について考えるときに、出産が10割、全体の8割は大体正常に経過すると考えられます。残りの  2割のうち、1割はもともと心臓に疾患があるといったような、あるいは双子・三つ子という、もと  もとリスクのある方が1割です。そして、もう1割は、お産の経過の中で突然にハイリスクな状態に  なるものというように考えております。  マタニティ・ケアシステムを考えるときに、向かって左端にあるのがTechnology modelで、ここは  ハイリスクの妊婦にとって必要なケアシステムです。第三次医療施設がちょうどこれに該当するの  であり、医師中心、治療中心の、そしてある面、女性たちは人に体を委ねて治療に依存しなければ  ならないという状況が起こるのが、いちばん左端のTechnology modelです。  そのちょうど対極にあるのがHealing modelと示しましたが、こちらはローリスクの妊婦であり、  非常に近くの地域に密着した形の助産所、あるいは自宅といった所で、ケアが重視される中で行わ  れるシステムです。しかし、ここではローリスクであると同時に、自分で健康づくりをしなければ  いけないということで、問われる自己責任ということがあります。しかし、ここで培われた健康づ  くりの効果は長期的につながると考えています。  圧倒的大多数の部分は、真ん中の人間性溢れるHumanization modelと示しましたが、二次、一次の  施設の病院あるいは診療所で行われているものです。ここではケアと治療の融合がなされるわけで、  リスクに関して言えば、ローリスクの者が圧倒的に多いのですが、若干グレーになる、先ほど言っ  た1割の、正常に経過していて突然ハイリスクになっていくというような人も、ここに含まれると  思います。このモデルを出して、いちばん起こってはいけないことは、リスクのある人がHealin-  g modelにかかったり、あるいはローリスクの妊婦がTechnology modelにかかったりする、そういう  ミスマッチです。ハイリスクの方はTechnology modelのケアを受けるべきであり、ローリスクの方  は真ん中のHumanization modelなりHealing modelなりを受けることが必要なのであって、リスクと  受けるケアシステムのミスマッチというのは起こってはいけないのではないかと思っています。し  かし現在、お産がローリスクであっても三次医療施設に行ったりというようなミスマッチが起こっ  ていることが現状ではないかと思っております。 これは、いちばん低いレベルの助産所での家族での出産や、右の写真はそれを見守る助産師という  ことです。これから助産師の話をしていくに当たり、助産師は長い間の時間をかけて、その家族と  付き合っていくということが特徴かと思います。  人間的なマタニティケアとして考えられる、先ほどのモデルの真ん中に該当するものですが、ここ  で言われているケアの考え方は、これは『Lancet』で、世界的な人々が読む雑誌ですが、女性を中  心にしたケアであって、その女性とケア提供者が相互に満たされエンパワーメント、その力を持っ  ていくというケアの特徴。それから、自分自身のケアに積極的に参加し、その意思決定をその女性  たちがしていくということ。3点目は、医師と医師でない者が、調和をもって協働することによっ  て、そのケアは提供されると考えています。コミュニティーのプライマリーケア、コミュニティー  を基盤にした第1次のケアを優先し、分散化された人の組織や施設が必要だということです。根拠  に基づくケアと技術が必要であり、それはとりもなおさず、経済的な効率にもつながっているとい  う考え方です。  この出生場所別の割合は皆様ご存じと思いますが、わが国の出産の場所というのが非常に特徴的で、  病院で50%強、クリニックで50%弱、そして現在は助産所、自宅というのが1%でずっと推移して  きております。  この出産場所の特徴に比べて、助産師はどこで働いているかということを見ると、約75%の助産師  は病院で働き、17%の人が診療所で働いております。したがって正常な出産は、半分は診療所で行  われるわけですが、その診療所でのケアは助産師、看護師、准看護師が医師とともに支えていると  いう形になります。  助産師はどのようにしてその仕事を続けていくのかということに着目して、私が今年1,000名の診  療所で働く助産師に調査をした結果では、診療所で働き続けたいと考えている者が8割おりました。  病院での調査では、継続意志というのは大体5割ですから、病院で働く人は次に変わっていこうと  いうようなことを考えているわけですが、診療所で働く助産師は長くその診療所で勤めたいと考え  ていると言えます。そして、どういうものがその継続意志を左右する要因になっているかというこ  とを調べますと、1番に助産師職としての尊重ということが挙がってきます。そして2番目に生活と  のバランスということです。この助産師職の尊重というのは、特に診療所の場合は開院している院  長である医師との関係や、業務分担ということが関わってきますが、それがうまくいっている所で  は助産師は長くその診療所で勤めたいと考えています。  助産師というのは英語ではmidwifeと言い、それは女性とともに、with womenという語源です。  「助産師の定義」はここにありますように、厚生労働大臣の免許を受けて助産又は妊婦、じょく婦  若しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子を言います。さらに助産師が行うことができ  る業務としては「医療行為の禁止」ということがあります。これは保健師、看護師、助産師みな同  じというのがその前段の所です。つまり、医師でなければ行ってはいけないことはしてはいけない  という医療行為の禁止です。そのただし文の所が特に助産師に絡んでいるところですが、「ただし、  臨機応変の手当をし、また、助産師がへその緒を切り浣腸を施し、その他助産師の業務に当然付随  する行為をする場合は、この限りではない」とあり、この「臨機応変の手当」と「助産師の業務に  当然付随する行為」が何かという解釈が問題となります。  これは助産師業務内容の国際比較です。以前のこの会議においても、ほかの先生方が提出した資料、  あるいは北里大学の海野先生がお出しになった資料に、より詳しく出ていたかと思いますが、私は  ここで特徴的なものだけを取り出しております。当然諸外国おいて、正常分娩は助産師の業務内容  として、独自の責任で行うことができます。会陰切開・縫合に関して言いますと、ほとんどの国が  独自の責任で行えるのに対して、日本では先ほど定義の所にありました「緊急処置として」という  ところで、会陰切開・縫合が行われると解釈されております。子宮収縮剤の筋注、静注に関しては、  医師の指示のもとに行うということですが、ほかの国では、独自の判断で行える国もあります。こ  れら私が選んだ国では、すべて独立開業する権限を持っている国々において、このような違いがあ  ります。もちろんこのほかに産科麻酔や胎盤のヨウシュ剥離、酸素、輸血等の業務に関しては、各  国で若干、原則としてはできないということもあります。  今回私が提案させていただきたい点は、助産師職の業務拡大ということですが、3つの骨子があり  ます。1点目は、正常な妊娠・分娩・産じょく経過にある母子の健康管理は、助産師が単独で行え  るということを考えております。2点目は、正常から異常への移行の徴候が認められる場合、つまり  グレーゾーンの所ですが、予防的処置によって異常への移行を阻止できる場合に関しても、ケアで  きるようにしたいと考えております。例えば、妊娠中によく起こる貧血といったような状況におい  ても、対応できることが必要かと思います。3点目が緊急時の対応です。  ここでいう臨機応急処置ということですが、これまでもある程度の裁量権は助産師に認められてき  ております。しかし具体的にその内容は何かというのが非常に不明瞭でした。そのため多くの病院  等の出産施設では、正常経過をたどる妊娠・分娩においても、すべて医師が立ち会うという形が常  態化していたというか、常になっていた、固定化しておりました。そのことが産科医師の労働条件  の悪化ということも招いてきたのではないかと思います。例えば、自然に経過して自然に赤ちゃん  が生まれた、しかし自然に裂傷ができた場合も、医師を呼ぶことが日常化していたということです。  そうしますと、医師はその産まれるぞというところに立ち会わなければならない、医師はそれが一  体いつなのか、まだなのかということがあって、仕事の調整ができないので、いつも分娩室を見に  来たりということがあり、時には待てないお産になったり、つまり、過剰介入したくなるというよ  うなこともありました。つまり、正常なのだけれど、縫合するがゆえに、そこだけのために医師を  呼ばなければいけないということが、現状としてはずっと起こってきました。 れはなぜかと考えると、やはりこの臨機応急処置ということの解釈が漠然としてわからないという  こと。もちろん本来の助産師業務を考えれば、助産師が十分それを行って能力を発揮することはで  きたわけです。例えば開業助産師を見ればそれは明白なのですが、病院の中にあってはそれを躊躇  してきたということがあります。つまり、病院の中においては、医師を呼べるのではないかという  ことを考えると、ここで自然裂傷の縫合をするのは違法ではないかという感じを持ってしまい、遠  慮していたというか、自立できていないということがこれまでの現状です。  助産師業務範囲の裁量権の拡大をお願いしたいと思うのですが、その1つのポイントは、異常の早  期発見のために、助産師が検査を実施することを是非拡大していただきたいと思います。例えば妊  娠期において現在でも一般血液検査、貧血検査、妊娠貧血に伴う鉄剤の処方といったものはできま  せん。また、新生児期において異常かもしれないという、異常判別のためのスクリーニグの検査と  してのガスリー検査や血糖検査、あるいは血清ビリルビンの測定をすることが、独立してはできま  せん。その異常発見のための検査をオーダーする、あるいは鉄剤等の、ある限られた範囲内での薬  剤の処方ができれば、もっと実践の範囲は広がると考えております。しかしこれはあくまでも異常  判別のためのスクリーニングだということです。  2点目は、例えばの例で分娩産じょくの所ですが、ここも、正常な妊娠・分娩経過の中でよく起こっ  てくる問題への対処として考えております。例えばGBS陽性の場合の抗生剤の静脈注射。これは、  静脈注射をすればほとんど正常な経過の中で経腟分娩できるわけですが、いまはこれができないた  めだけに、開業の助産師は医師の所に行くというようなことが起こっています。この限られた場合  の静脈注射、あるいは出血時の血管確保と輸液、あるいは子宮収縮剤の静注、それから、必要時の  会陰切開と縫合、縫合に伴う局所麻酔の使用ということです。現在は以前と異なりEBNの成果で、  切開はほとんど積極的には行わないというのが世界の常識になって、極力避けていく、抑制的に切  開を行うというのが主流です。自然に裂傷ができた所に関しては縫合したほうがいいというエビデ  ンスになっておりますので、自然に生じた会陰裂傷I度・II度の場合は縫合する。もちろんIII度以  上の場合は医師の縫合が必要だと思います。子宮収縮促進のための薬剤の処方や後陣痛の鎮痛剤、  貧血のための鉄剤処方といったものは、ある限られた状況での健康問題への対処と考えております。  これらのことは、例えばカナダの例ですと、産科医、家庭医、助産師、看護師といった他職種が協  働してこの正常出産をやるといったときに、ここまでの範囲は助産師がやってもいい、ここは医師  というように、ある業務範囲についてきちんと決められたプロトコールが出来上がっております。  そういう約束指示という中でも可能なので、限られたよく起こる範囲内での検査のオーダーや薬の  処方、会陰縫合といったものが裁量権の拡大には是非必要かと思っております。  いちばん大きいのは1割の、突然リスクが起こってしまうような場合の搬送システムを整えておいて  いただくということかと思っております。  特に1番は医師との円滑な連携協働ということですが、もちろん医師だけではなくて、他職種協働  のプライマリーケアというのを考えたいと思います。特に診療所で半分の出産が行われている場合  診療所では圧倒的に医師、助産師、看護師、准看護師という人々が協働しているわけですので、そ  の中でいかに連携を保っていくかということです。特に産科医、小児科医との連携においては約束  指示、あるいは助産プロトコールの作成と合意というのが必要だと思っています。また、コンセン  サスを得た助産ガイドラインというのを作成していく必要があると思います。これに関しては先ほ  ど言いましたカナダの例や英国の例で、助産ガイドラインを他職種が集まって作り、そして合意を  していくという実例もありますので、そういう例を参考にして連携が可能かと思っています。また、  日常的な情報の共有、スープが冷めない距離の関係や、実践技術に関しては相互評価が必要だと考  えております。助産に関する専門分野に関しては、現在助産評価機構というのが立ち上がっており  ますので、そういうものを活用していきたいと思っております  もちろん助産師も。助産行為をした者としての責任をきチンと取っていくことが前提です。これま  で、院内での助産師の責任の取り方というのが非常に不明瞭でしたので、そこら辺で、個人あるい  は機関としての責任を取っていくという姿勢が大前提となります。もちろんセーフティ・マネジメ  ント、リスク・マネジメントということでの相談、調停システム、現任教育や、訴訟へと発展しな  いプロセスも十分教育していかなければいけないことと思っています。現在日本医療機能評価機構  で検討されております、産科無過失補償制度の整備も非常に重要なことだと思っております。  裁量権拡大に先立って必要な教育の例として、教育内容のレベルアップや臨床薬理、新生児蘇生、  リスク管理、また現在、会陰切開・縫合は、助産教育の最終達成目標の中ではモデルでやるという  レベルになっているにすぎませんので、そこをもう少し、臨床実習あるいは新人研修の中に入れて  いく必要があります。それで急務の人材養成となっております。現在、助産師資格を取るための教  育課程というのは専修学校、大学の中での選択課程、大学の外での1年の専攻課程、大学院の2年の  修士課程、さらに専門職大学院でと、多様な所で資格を取ることが可能です。特に専修学校、大学  専攻科では助産師希望者が多く、受験生は大体6〜10倍ぐらいおりますが、その課程は少なく、希  望している学生がすべて助産師になれるわけではありません。  人材を育てていくという点に関して、非常に単純な計算で出生数と助産師数を考えると昭和30年、  地域に多くの助産師がいたときには、助産師1人当たり31.3人のベビーをみていたわけですが、平  成17年には助産師1人当たり42.1人の赤ちゃんをみているということになります。以前と同じよう  に手厚く、助産師1人ひとりの手が1人ずつの赤ちゃんのケアに届くためには3万3,000人の助産師が  必要で、人材育成は急務だと考えます。  これは助産のケアモデルで国際助産連盟(ICM)が出しているものです。相手を尊重し、個人的な  関心を十分に汲み取り、情報と選択、モニタリング、女性の体づくり、非常に自然な方法を用いて  の心地よい体験、そして、助産師が長くその女性のそばに寄り添うことが助産ケアの目的と考えて  おります。  世界的な出産についての変化として、一時は生理から病理としての取扱いがあり、圧倒的に帝王切  開が増えていく医学モデルであった時代から、いまは病理ではなく生理であるという見方も進んで  きております。特にこのEBM(エビデンス・ベースト・メディスン)ということで、生理であるな  ら、必要最小限の医療介入にすべきだということがあります。例えば英国には、助産に関するガイ  ドラインに非常にすぐれたものがありますが、持てる財源をいかに効率よく分配するかというあた  りの提言があります。そこを見ますと例えば、わが国では妊娠中の超音波検査というのはほとんど  毎回行われておりますが、英国や米国のガイドラインを見ると初期、中期、末期に1回ずつ、ある  いは初期と後期、トータルで2回という制限がかかっています。つまり、正常であることがその初  期と後期でわかるのであれば、それ以上は必要ない、それは過剰医療だという判断です。  もう1つ、分娩監視装置についても、わが国の病院の中には入院と同時にお産までつけっばなし、  連続してつけているということもありますが、いつつける必要があるのかということを判断し、必  要なときに必要なだけのモニタリングをするということが、エビデンスとしては現れております。  あるいは、特定のクリニックでは全例の会陰切開をしておりますが、そういう必要は現在はないわ  けで、正常ならばこそ、その根拠に基づくケアをすべきだという考えもあります。  女性の心を育み、母親としてスタートできるような、そういう心地よい、満足した出産にというこ  とで、その心理・社会的モデルも見直されております。お産の主人公は医療者ではなく、あくまで  もその女性であって、きめ細やかなケアが必要だと思っております。きめ細やかなケアの代表とし  て継続したケア、そして選択のあるもの、そして自分で自分の体をコントロールできるContinuit-  y Choice and Controlということが言われております。  これは出産直後の母子に関してですが、このようなゆったりした時間を、できるだけ多くのお母さ  んと赤ちゃんあるいは家族に持ってほしいわけです。  女性たちの「お産といのちの全国ネット」という所の請願では、いちばん多かったのは「身近な地  域で安心して産める場所がほしい!」ということでした。身近な場所でお産をしたい、産科医、助  産師の養成を増やしてほしい、助産師の力を活用してほしいということ。ローリスクの妊婦のお産  場所の選択肢を確保してほしいということや。連携を是非義務づけてほしいといった請願が出てき  ております。この写真は生まれて5分たった母親と赤ちゃんですが、静かで安心できる環境。ここ  からが家族のスタートですので、その安心できる環境をつくっていきたいと思っております。以上  です。ありがとうございました。 ○ 小野対策官  ありがとうございました。それではディスカッションに入りたいと思います。よろしくお願いいた  します。 ○ 野中委員   お三方、どうもありがとうございました。田上先生にご質問します。先ほどのご説明の中に、アメ  リカと日本の比較で、アメリカのほうがよく検診を受けるというお話があったのですが、それは費  用の問題なのか、国民の意識の問題なのか、その辺のところをお願いします。  坂本先生への質問は、私も医療の現場ではもっと看護師が活躍することが大事だと思っております。  そういう先生の考え方も非常によくわかりますが、私は、看護師のいわゆる「療養上の世話」が実  は大きな問題で、スライドに示された形以上の本来の看護としての独立性を持った「療養上の世話」  が、現場ではもっと期待されているものと思います。今後そのことをどうやって育むかどうかが、  先生も努力されていると思いますが、私も医師として、本当にそれが現場で大事と思います。そこ  には、先ほど先生も少し言われましたが、やはり責任の問題があると思うのです。例えば看護師が  そういう責任を本当に取りたいと思っているのか、取りたくないと思っているのか。久常看護協会  会長は、看護師のいわゆる領域を増やすよりも、指示待ちの看護師をもっと減らしたいと言われて  いると記憶しています。私は現状ではまさにそうだと思うのです。その辺のことについてもう少し  お願いします。  もう1つ、これは先生にお聞きするのが適当かどうかわからないのですが、先生のスライドに、入  院患者数がほぼ倍増したというのがありました。これはまさに、在院日数を従来の半分に短縮する  ということは、例えば600床が1,200床になるということです。すなわち病院の収益も上がるわけで  すから、医師や看護師の数を維持するのであれば、本来は600床をもう少し減らすことも出来る。  又反対に収入が増えるのであれば医師や看護師の人数を増やすという対応が、本来、在院日数の短  縮に課せられた意味と思うのです。そのことに対して先生は経営者ではないので酷かもしれません  が、その点に関してご意見をお聞きしたいと思います。  堀内先生には、国民がどういう所でお産をしたいと思っているか。私も在宅医療をやっていますが、  患者は、できることならば住み慣れた家で死にたいとおっしゃる。でも、本当の最期のときにはど  うなるか、それはなかなか割りきれない部分もあります。私がいま在宅医療をやっている目的は、  亡くなるまでの一定期間をどうやって自分らしく生きていただくか。それが在宅医療の大きな目的  と思っています。そういう中で実際には、助産師が活躍された時代と、いまの医療状況の中で、頑  張っていただくのは当然と思うのですが、一方で看護師と同じように、助産師がどこまで責任を負  えるのかという部分が大きな問題になってくるのではないかと思います。そのことについてもう少  しコメントをいただけたらと思います。 ○ 田上教授   米国では検診で歯科医院に行く人が多いということですが、費用の面と社会的な意識の両方あると  思います。一般的に、日本以外のいわゆる先進国と言われる所では、歯科の治療は、保険はあって  もカバーしている部分が非常に少ないですから通常の治療費はとても値段が高い。特にアメリカは  世界一高いと言われています。したがって、そうなる前に、保険ではできないけれど、美容院に行  くような感覚で自分のお金を払って予防処置を受ける、検診をする。そのほうが安くつくという考  え方もありますし、家庭でもそういう教育になっていると思います。そういう意味で米国では、あ  るいはヨーロッパの一部の国では、検診に定期的に行く人が非常に多い。日本では、まず1つは、  何かトラブルがあったときも非常に安く治療が受けられるということがあって、予防意識があまり  高まっていないということがあります。  社会的な意識ということで言うと、アメリカの人というのは若いころから笑顔をつくる練習をして  いまして、歯を全部見せて笑うという姿が、判で押したように高校の卒業アルバムでも出てきます  ので、歯をきれいにしておくというのが、1つの社会的な常識のようにとらえられている部分があ  ります。日本もだんだんそういうようになってきておりますが、まだまだそこまではいってないと  いうところです。  日本では受け入れる歯科医師の側にも、検診とか予防処置ということを、プログラムとして出して  いくというのが、あまりうまく機能していない部分があります。保険を使えないということで、個  々の歯科医院で保険外のプログラムを作るのが難しいのですね。ほとんどの治療が保険でできると  いうことで保険診療のガイドラインに乗っかった治療にパターン化してしまっていて、そういった  ものがあまり提供されていないということもあるかもしれません。そういった事情だと思います。 ○ 坂本教授  2ついただきました。1つは、どこまで責任を負う気になっているのか、本当に負うのかということ  ですが、これはにわとりが先か卵が先かという話になってきて、いつまでも責任を負わなければ、  いつまでもドクターの裏に隠れた仕事になるのだと私は思います。私も経験しましたが、ある病院  で副院長が、ナースが誤薬をしたときに、責任はドクターが取るからいいんだよと言ったことがあ  りました。私はそばにいて大変びっくりしました。そういうように、人がやったことを横で責任を  取る人がいるのかと思いました。いま厚生労働省の医道審議会に入っていますが、すべてナースの  責任になっています。そういう意味からしたらやはり、責任を取らなければ自立はありえないとい  うところから、責任は取るべき、それを受けていくべきと考えています。  もう1点は、病院が1,200床になってきたときに、ナースを増やせ、ドクターを増やせとなりますが、  私は実は看護師長でありながら経営の中の1人でした。そういう意味からすると、例えば外来の患  者数を減らして、連携する国の方針がありますが、1日に2,500万円ぐらい外来に入ってくるわけで  すね。それを一気に捨てられるかどうか。捨てて、いまは損をしておいて待って、あとでちゃんと  しようよという話に経営がどこまで持ちこたえられるかというのは、大変苦しい話です。そういう  意味では、若干政策誘導的なものがあれば少しそちらに動くのかなと思いますが、それでも、いま  はやはり目先の利益は大事です。そこは大変苦しかったです。理想は分かっているけれど、なかな  かそこに行けないということですね。  また、看護師とドクターを増やすことも、人件費のパーセント率からいくと、そう簡単に増やせる  ものではなくて、大変これも難しい。私は看護師長として利益代表をしながら、経営者の1人として  考えながら大変難しいところがありましたので、病院にもメリットがあるような形にしなければ難  しいのではないかと思います。 ○ 野中委員  ベッド数を減らすという感覚はなかったですか。 ○ 坂本教授  ベッド数を減らせば、それは例えば、患者数が増えれば入院単金がすごく上がって、すぐ目の前の  収益にくるわけですね。ベッド数を減らすという感覚はおそらく、長い間赤字をしながら、最後に  は黒字になっていくから、いまは赤字でいいんだよとできる病院はいいかもしれませんが、今日も  稼げと言われている病院にベッドを減らす、患者が来るのにベッドを減らすということは、それは  大変英断がいることだと思います。 ○ 堀内教授   助産師の責任のことについてですが、いま、産科医がいなくなったというところで、院内助産院を  建てたらどうかと言ったときに、あるグループの人たちはやはり腰が引けてしまって、自分たちに  はできないというグループはもちろんあります。しかし助産師には、開業助産師という自分で責任  を取ってきた、ある意味腹のすわったモデルがいるわけで、院内助産院を始めようという方たち、  あるいは助産科を建てようという人たちは、そういうモデルを見ながらだんだん、責任を取ってい  くんだということを学んでいってると私は思います。個人で何種類もの賠償保険に入ったりという  ようなことを見ながら、いわゆる施設内に行った1人ひとりの助産師も職能団体に入り、その保険  のことを勉強し、リスクマネジメントを勉強しというプロセスがあると思うので、やはりこれは業  務拡大をするには必ず責任を取っていくという覚悟が絶対に必要ですし、徐々にそうなってきてい  ると私は考えています。 ○ 辻本委員  いくつか重なるところは省きます。まず最初の歯科のところで、例えば5頁にありました学校教育の  中で、学童期にもう少し歯磨きということの大切さ、例えば給食を食べたあとに当たり前に歯ブラ  シということを教えていくような、そういうことがもう少しできないものかと思うことが1つ。  それから医療費に関してですが、歯科はすでに混合診療になっていることもあって、実は私どもの  相談の中にも、混合診療がゆえに不明瞭、説明不足というような問題がいくつか相談として、いま  も届いてきているのですね。そのあたりを、今後どのようにお考えになっているかお尋ねしたいと  思います。  坂本さんにお尋ねしたいのは、私はかねてから、組織の中のナースの位置づけという意味で、副院  長を兼任ではなく専任としてナースが担う。これを当然としていくようなことで組織が変わってい  く、看護そのものの位置づけが変わっていくということができないものかと考えていますが、その  あたりはどうお感じになっておられるかということ。それから、ナースがいま、いろいろな教育で  輩出されている人たちであるだけに、技術とか能力とか、もっと言えば意識とかが本当に幅広い。  どう表現していいのか難しいのですが、その中で、いまおっしゃられるようなことが本当に可能な  のかという一抹の不安が拭いきれないのです。そこのところをどうお考えかということをお話しく  ださい。  助産師の中で、現在、有資格であるにもかかわらず助産師の仕事をしていない人が結構いらっしゃ  るというようにも聞いております。その辺の現状に対してどうお感じになっておられるかというこ  とと、先ほど開業という先駆者をモデルとして責任の取り方を後輩が学ぶというお話がありました  が、昨今、その開業という中に、必ず協力医と言うのですか、いざというときに連携の取れる医師  が義務化になっていますよね。にもかかわらず私どもの所には、そういったことがちゃんとできて  いなかったという不満が届いているのも一方の現実なのです。その辺をピュアレビューと言うのか、  助産師の機構もできたというお話だったのですが、監視と言うのでしょうか、どのように機能して  いらっしゃるかということをお聞きします。  さらに、患者あるいはハイリスクの状況にいる産婦さんという方たちは、一般医療でもそうなので  すが、ドクターに対しての期待度というのが非常に大きいのですね。言ってみれば100%すべてを  ドクターに期待して、チームというものの姿が見えない。そういう現状の中で、お産で、しかもリ  スクが高くなればなるほど、例えば家族などが「ドクターがちっとも顔を出してくれなかった」と  いうようなことで、最後まで、助産師が対応していることに患者が納得できない不満の声もありま  す。そこにどう、啓発と言うのでしょうか、患者・家族の理解を求めていくかについてお考えにな  られているかをお教えていただきたいと思います。 ○ 田上教授   まず学校、特に小学校低学年のところできちんとした生活習慣の確立という意味で、歯磨き指導と  いうようなことは、現在かなりやられておりまして、特に学校歯科保健法ということで学校歯科医  もいて、学童におけるう蝕、虫歯の予防というのはかなり効果が上がっております。ここ数年で急  に減ってきていまして、そういった生活習慣を学校でもかなり教えてくれているということがあり  ます。もう少し努力できる部分があるとすれば保健体育、保健の中で歯の病気のこととか、自分の  将来、高齢者になったらどんなふうになるんだというような、教育面でしっかり教えていくという  ことが考えられると思います。  中学・高校、あるいは大学になってから急に生活習慣が乱れてしまって、そこで歯が悪くなる、そ  のあと、青年期・壮年期・中年期あたりのところで放ったらかしになってしまう。そこで無症状の  まま歯周病とか虫歯が進むというのが、現在の高齢者が陥っている原因ではないかと考えますので、  学校教育のところで、一生役に立つような情報をもっと教えていくということ、私は学校教育を離  れてからのほうが問題かと思っています。  歯科ではすでに混合診療が認められているということが、いろいろな場所でよく言われるわけです  が、実際に歯科の現場で働いていますと、非常に限られたものしか混合診療は認められておりませ  ん。それ以外のもの、新しい技術、材料というのはたくさんあるのですが、それをちょっと使うだ  けでほかの治療は全部、保険診療はできない、以前やっていた部分も元に戻っている、というよう  な指導がされるようになりますと、現場の歯科医師としては何をやっていいか非常に分からない、  特にここ2年ぐらいの指導のこともあって、現場は非常にビクビクしながら治療しているという状  況です。ですから、自分でもどこまで認められるのかわからない、その判断がつかない臨床家が多  いと思います。当然、患者にはっきりした説明も難しい状況になっているということもあります。  一般に、歯医者の説明時間が短い、よく理解できないと言われますが、歯科の保険診療というのは  歯を削って何かを入れていくらという算定になっていますので、しゃべっている時間は一銭にもな  らない、歯科医院としては、黙っていてもらわないと仕事ができないということもあって、医療費  のことを考えても、どうしてもしゃべる時間は短くなってしまうというところがあります。どんな  治療でも1人30分は時間を取ってゆっくり説明をしてきちんとした治療をしたいところですが、こ  の保険点数を考えますと、それだけ時間を費やしているとやっていけないということになるので、  かなり難しいところではないかと思います。自費診療になるとずいぶん愛想よく長いこと話をして  くれると思います。 ○ 坂本教授   1点は副院長の話ですが、看護師が病院の中でどのような役割を担っているかというと単なる部門  からですね。そして、病院全体がどのようなアウトカムを出していくかという部門に移行すること  は、私は大いに賛成です。そういう意味で、たくさんの職種を抱えている長が部門だけの視点で見  るより は、全体を見ていく方向に位置しているほうが、患者のところに還元できるものは大きい  と思いますので、是非これはどんどん進めていく、全体のアウトカムに看護部長という役割を持っ  ていく、副院長は賛成です。  もう1つは、ナースの意識。いろいろなナースがいて、そういうことが本当に可能かどうかという  ことですが、正規分布の中の端と端を語るよりも、やはり真ん中を語っていくべきだと思うのです。  悪いほうばかりを見ていたら、いつまでたっても何もできない状況なので、真ん中を見てできるか  どうかということですが、じゃあ、全員がそれをできるかどうか、いますぐできるかどうか。それ  はまだ大変疑問があります。アメリカのケースで例えば上級看護師や診療の看護師の発展性を見て  いると、やはりある程度の権限を与えていくことによってナース自身のモチベーションも高まって  くるという意味で、真ん中の最頻値のところの大半のナースが引っ張っていくような傾向にしてい  かざるを得ないのではないかと思います。ある意味では教育は大変重要ですし、何も教育を受けて  いないのに看護師に裁量権を与えることはできないと思いますので、それは可能か否かというより  も、これからの日本の医療を見ていく限りでは、あれだけたくさんの人数がいる団体に対して、そ  れだけのものを担ってもらうということのほうが重要だと考えています。 ○ 堀内教授  最初のご指摘事項は潜在助産師に関してでした。潜在助産師に関しては職能団体の日本助産師会の  ほうでその発掘をし、研修をするというプログラムが組まれておりますが、非常に少数が戻ってき  ているという活動だと思います。潜在助産師の場合、多くは家庭を持って小さい子どもがいてとい  うような状況等があるかと思うのですが、生活と仕事とのバランスで、希望の場所に就職はなかな  か難しいというあたりかなと思っております。  2点目は、連携医療機関が助産所には義務化されたけれど、まだ不十分だというご指摘です。義務  化に伴って職能団体が、とにかく連携機関を持ちなさいということで働きかけてはおります。東京  都ではネットワークも非常にしっかりしているので、そういう意味で容易ですが、地域によっては  そういう母体搬送のネットワークそのものがうまく動いていない所がありますので、そういう所で  は本当に努力しないととても難しいことがあるのではないかなと思います。東京のように、大きな  三次医療施設がオープンシステムのようなものを開いて、開業の助産院に対して学習会もやります、  顔の見える関係になって医療機関は引き受けましょうというように関係ができればいいのですが、  それがまだ全国的には難しいというところがあるのではないかなと思います。もちろん義務化とい  うことで連携医療機関は絶対に持つのですが、自動的にというわけではありませんので、やはりこ  れは顔の見える、信頼された関係の中での医療連携だと思いますので。これは病院側にも是非お願  いしたいし、行政のほうにもネットワークを組んで少し橋渡しをしていただきたいというのが非常  に、お願い事です。  3点目、ハイリスクの患者さんはもちろん医師への信頼が厚いということは理解しております。助  産師としてはハイリスクは、単独でやろうとはもちろん思っておりません。ハイリスクの患者に対  してはおそらく助産師、看護師がケアにあたるというようにできますので、医師でなければならな  いことは何かというあたりで、医師に会ってどういうところがいちばん聞きたいかという問題点の  整理を患者としたり、ときにアドボケートしたり、あるいは伝えたりというような役割が必要だと  思っています。私としては、全体の業務の中で医師がハイリスクの患者にかける時間を多くしても  らうためにも、ローリスクは助産師が単独でやりますよ、先生がいちいち顔を出してくださらなく  ても必要のないときはきちんとみますという、そういう棲み分けというか、そういうことをして、  むしろ医師にはハイリスクに専念していただけるようにつくりたいということです。 ○ 矢崎委員   大臣に是非お願いしたいことがあります。坂本先生のお話のときに大臣はおられなかったのですが、  お二人とも、先進国では当たり前に行われている病院での各医療職のスキルミックスが、わが国で  は業務独占とか名称独占の言葉のもとで、極めて分権的な体制で運営されている。これをなんとか  打破する。それを是非と、現場から強く言われています。これは数年前には、野中先生が言われる  ように責任問題はどうなのかとかいうことで、そういう声は現場から上がってこなかったのですが、  こういう勇気ある発言をいただいたので、是非サポートしていただきたい。  それにはやはり教育と研修の体制をきちんとしないと、国民の理解あるいは、質の保証と言います  か、そういうものが得られないので、やはり教育・研習のシステムの改革というのを、これからや  っていただきたいということを是非お願いしたいし、この二人のリーダーの動きを、私どももサポ  ートしていきたいと思います。  田上先生にお聞きします。先生は歯科医師としての社会的使命を話されたのですが、いま、看護職、  助産職の方が業務拡大と言ったときに、歯科医師がいまお話になられた内容よりもっと踏み込んで、  もう少し医行為と言いますか、そういうものに今後どれほど。先生は歯学部長でいらっしゃるので  オピニオンリーダーだと思いますが、今後どういう方向でそのような検討が、内から行われるとい  うことがあるのでしょうか。 ○ 田上教授  歯科の側からの考え方ということですが、医行為、医療行為を歯科の領域を越えてということで申  しますと、歯科の6年間の教育の中では隣接医学教育ということで、医科全般の単位も必須になって  いますし、もちろん歯科の中でも外科的な処置はあります。全身疾患を持つ患者も多いですから、  投薬等、あるいは歯科麻酔ということで、医科の先生方と同じような麻酔の研修もやるようになっ  ています。ですから、口の中に限られておりますが、医療行為ということでは、歯科の中では一致  して考えております。しかしいまのところですと、例えば口腔領域の疾患になりますと、どこまで  がその領域なのかという領域論になってしまって、なかなか話が進みにくい状況です。ただ私ども  歯科医師としても、そういった投薬をするということも含めて、全身的なところまで管理できるよ  うな教育ということはいつもやっております。  医科的な部分ということになりますと、高齢者入院患者のところでも申し上げましたように、摂食  ・嚥下というところが非常に我々の責任の重いところかと思いまして、紹介させていただいたのは  長崎大学でやっているような嚥下リハビリテーションチームで、医師・歯科医師・看護師・衛生士  ・栄養士・作業療法士等がチームを組んで、病院内でそういった入院患者へのアプローチをしてい  るものです。腫瘍などになりますと、口腔領域にあってもそこだけで済む話ではないので、医科と  の協働で行う治療というのも病院単位ではできていますが診療所単位ではなかなか難しい部分かと  思います。 ○ 矢崎委員  侵襲を伴った医行為はともかくとして、もっと全般的な例えば麻酔管理とか、そういう全身的なケ  アは、私個人的には歯科の先生が、もちろんそれは研修をしっかり積んだ上での話ですが、活躍で  きる場があるかなという感じもするのです。 ○ 田上教授  まさにそうかと思います。歯科医院の数も全国にかなり普及していて、おそらく全国の郵便局より  も普及しているぐらいかと思いますので、そういった役割を担えれば、真っ先に地域の人の面倒を  みるということでも、いい仕事ができるのではないかと思います。 ○ 舛添大臣  ちょっと遅くなってすみませんでした。田上先生のは残念ながら聞けなくて、坂本先生の途中で入  りましたので、このハンドアウトを見てのことになりますが、いくつか、いまのご議論も伺って問  題提起をしたいと思います。  まず、医師・歯科医師の数を含めて看護師・助産師、どのくらいの数が適正規模か、常にいま問題  になっています。医師不足と言わなかったじゃないか、私は医師不足だと思う、こういうことで閣  議決定を変えるのかどうするのかというところまでになっています。それから、歯医者の数は多す  ぎる。長野県の飯田で、歯医者にホームレスができていると人が言ったのを引用しておこられたこ  とがあるのですが、そういうことで適正規模、例えば堀内先生でしたか、助産師が3万人ぐらいいる  とどうだという。そういう数字をどういうようにして出されるのか。  矢崎先生がおっしゃったスキルミックス、私もこれをずっと考えていまして、何がそれを阻害して  いるのか。私が言うと大臣が言ったというので、必ずどなたかが何か書かれるけれど、これは自由  な立場で言いますので、それが厚生労働省の政策ということではないということをメディアの方も  前提にしていただかないと私は自由な議論ができません。その上で、要するに、それぞれの皆さん  が団体を持っていらっしゃる。ギルド。それとの関係をどうするのか。私はこのギルドが阻害要因  になっているような気がします。看護師さんの集まりのトップの方とこの前議論しましたら、不倶  戴天の敵は開業医である。医者がいるから私たちは駄目だみたいな話になってしまう。そうすると、  医師会って何ですか、歯科医師会って何ですか。だから、それぞれの職能団体の要望事項をまとめ  るのはいいのだけれど、やはり患者の視点から見たら、医師会と看護師会で対立している、その割  を食うのは患者ですから、坂本先生でしたか、win-winの関係を阻害するのがそれであるならば、  そのあり方も考えないといけない。医師会は参議院に1人も送ることができないわけです。そうい  う現実を見据えた上で。今度歯科医師会は送れました。毎回参議院選挙で、たった1人の代表も送  れるか送れないかというぐらいに、1つのアソシエーションとしての機能が落ちているときに、そ  れが阻害要因となっていまのようなスキルミックスができないとすれば、はなはだ不幸であるので、  私はそういうことはきちんと政治の場でも考えるべきだと思っています。診療報酬がどうして決ま  るかということで、いろいろな不満があったりすることもありますが、そこら辺まで言うとまた新  聞記事になりますから言いません。  次は予防。私は実は歯科医療について、予防の義務化というのはやるべきだ、保険適用もやるべき  だと個人的には思っていました。母親の介護をやっていたものですから、口腔管理がいかに必要か  ということ、特に嚥下性の肺炎にしょっちゅうかかっていたものですから、そういうこともわかっ  ています。いまでこそできるけれど、医者の往診というのはあったけれど、歯医者の往診というの  はなかなかなかった。痴呆になってものも言えなくなったときに、胃が悪いのかどこが悪いのか、  結局、入れ歯がよく合っていなかったという話だったりするわけですから、まさに高齢者のケアを  する病院の中に歯科がないという問題をどうするかなのですが、そこで予防の義務化、保険適用を  やったときに、それで飯が食えますかという話になるわけです。いまの診療報酬体制は、虫歯がで  きた、何か詰めた、それで点数が加算できるわけですから。そうしますと、さっきのアメリカの例  で虫歯になったら高いから少々金を出しても行くのではなくて、いま虫歯の治療に行ったほうが保  険だったら安くなる可能性だってあるわけです。私はある歯医者さんと会ってから、定期的に3度  の食事のあとは必ずレンタルフロスをやります。予算委員会が動かないのを利用して、ほとんど毎  月ぐらいきれいに掃除をするというケアに行っていたのです。それで飯を食えますかと。歯科医の  数ともかかわってくるのですが、そういうことを考えています。坂本先生、堀内先生の分野にもか  かわるのですけれども、私も産婆さんに取り出してもらった子どもなのです。子どものころ戦後す  ぐですから。  やはり国民の期待水準、医療技術の向上が極めて高くなっています。介護にしてもそうなのだけれ  ども何にしても一流の病院でなければ、8割は正常分娩だと言ったって何かあったときにはと。で  は産婆さんに頼んで、昔私が取り上げてもらったような形でやるかといったら、いまの国民の期待  水準からしてもやはり嫌だ、ひょっとして何かあったらどうなのですかとなって、クリニックに行  っちゃうということになる。介護もそうなのですけれども、例えばグループホームでも、いざ病気  になったらどうするのか。正常分娩であれグループホームであれ、その次に来るものとの連携がも  のすごく完璧に取れていない限りは、「大丈夫ですよ、万が一ここで正常から異常へと移ったとき  には、すぐ3分以内に来れますから、連携していますから」といっても、実はすべての問題がネット  ワークの連携プレーが欠けていることにかかってきているのかなと。そういうような問題をいまお  話を承りながら感じたわけで、もっといろいろな問題もありますけれども、大きな構造改革という  か、発想の転換を考えなければいけないかなと。ですからこれは一概には言えないですけれども、  労働組合のあり方にしても、日本の企業のすごさというのはハウス内の労働組合。トヨタならトヨ  タ、日産なら日産と、労使で両方で協調していかに生産制を上げるかということになっています。  だけれどもしょっちゅうストをやっています。これは先ほど言ったギルドの弊害みたいなものです。  そういうことも含めて、チーム医療をどういう形で組み立てていくのだろうか。そうすると地域で  のネットワーク、中核的な組織をやるので、やっぱりこれは、私は医療制度の改革というのは、本  当の意味での地方自治という感じがしていますので、勝手なことを申しましたけれども、それぞれ  お三方、お答えなりご意見をいただければありがたいと思います。 ○ 田上教授  まず歯科の状況からいきますと、現在大ざっぱに言って約10万人の歯科医がいるということで、人  口10万当たりにしましても、どの国よりもはるかに歯科医師の数は多過ぎるという数字になってお  ります。それが結果的に患者さんにとっては、歯科医師を選べるという時代になってきているとい  うことで、視点を変えれば、患者さんにとってはいい状況です。ただし、歯科医院が非常に経営が  苦しくなる場合も出てきているということで、歯科医師会としては非常に大きな問題として捉えて  います。ただ、歯科医師をやれば、みんなが経営がうまくいくという時代ではなくて、やはり患者  さんに本当に役に立つことをやりますと、よく通じるわけでして、その結果患者さんが特定の歯科  医師を選ぶということになって、結果的に良い歯科医院、良い歯科医師が選ばれて、ある意味で淘  汰が起きているという時代かと思います。ただ、そうなってしまいますと、せっかく高い税金を使  って養成した歯科医師の資源の無駄使いということにもなってしまいます。ですから適正な数とい  うことになりますと、いまの受診の傾向からしますと過剰ということになりますが、予防で定期的  に歯科医院に通うといったような形で受診率が上がったときを考えますと、どの数字が適当かとい  うのは一概には決められないところです。いまの約10万という数で大ざっぱな試算をしましたけれ  ども、国民全員義務化して1人に割り振っていけば1,000人以上を1年間に面倒を見るということにな  りますので、その経費として1年間1万円ということであれば、1人当り1,000万円の収入です。そこ  から経費等を引いていくことになりますけれども、患者さんが歯科医院を訪れることでは、予防以  外でも小さなトラブルが必ずあります。また、途中で、例えば歯を白くしたいとか、いろいろな要  望が出てまいります。チェックしていれば必ず問題はあります。そういった治療費、インプラント  を入れるほど高額な治療でなくても保険外のかなり庶民的な自費診療というものが、今後増える可  能性がありますので、各歯科医院で検診と定期的なケアをするということが、生涯にわたって快適  に暮らすためのまず第一の大事なことかと思います。そういうことで、数ということと予防で増え  るかという2つの質問をいただいたのですが、両方リンクしてくることでございまして、とにかく  歯がある以上、歯科医師は仕事があるということもありますし、歯がなくなっても仕事があるとい  うことで、それに応じて、我々は患者さんのためのプログラムはいくらでも準備しております。 ○ 舛添大臣  ありがとうございました。 ○ 坂本教授  看護師の数が多いのか少ないのかという話ですし職能団体とどうかという話なのですけれども、そ  れは置いておきまして、それよりも、看護師の数をどのようにするかということです。実はこれか  ら看護師の数を維持していくためには、高校生7人に1人が看護師にならないと維持できない状態が  きているわけです。それを看護師を増やせといっても、どこから看護師を育てるのかということを  踏まえなければいけないのではないかと思います。ではそれをどうするのかということですが、私  は何年間かずっと病院で見てきましたけれども、いまいろんな患者さんが来られていて、本当にす  べてに7対1の看護師がいる病院の中にお薬だけをもらいに来たり、入院している患者さんも、これ  は入院しなくてもいいのではないかという患者さんが入院していたり、混在している状況があるの  です。地方にお任せするならするで、もっと患者さんの形を整えないといけないのではないかなと  思います。変な言い方をするとどのような患者さんであるかということを、そして、その病院は何  を担うかということをはっきりしないと、それはそれで国が動いている方向とはある程度一致して  いるのですが、まだまだそこは発展途上中で、なかなかうまくいかない状況があります。例えば救  急の話ですけれども、ある院長に聞いたときは、8割がいま来なくていい患者さん、2割は本当に診  なければいけない患者さんというふうに言っていらっしゃいました。そういう意味ではトリアージ  を誰がしているのかというと誰もしていないわけで、患者さんが思ったようにご自分受診されてい  るわけです。最近アメリカのほうの話を聞いたときには、テレフォントリアージというのがあって、  病院が24時間いつも、この病気だったらかかったほうがいいかを救急車に乗る前にチェックしてい  るそうです。そこでだいぶ選択できると。そういう意味では、医療職をある意味では無駄使いしな  いというか、そのような形を整えるべきだというふうに思います。まだまだ病院の機能分化がきち  んとされていく段階にならないと、ナースの数が何人というのは、いまある病院の中で出すのは早  計かなという気がします。そういう意味では、もう少し機能分化というか改革を進めていただいて、  患者のニーズに応じて、きちんとスキルを合わせていくという仕組みを作っていかないと。いまは  混在している状況です。  もう1つは先ほど大臣が言われたように、私自身も介護をした中では、病気というのはお年寄りに  なってくると、生活重視といっても必ず出てきます。そういう意味では介護の人に任せておけばい  いというものではありません。看護士の活用というのは、そばにいていつリスクがあったか、例え  ば誤飲して肺炎を起こすというのを誰が見抜くかというのは、ある意味ではまだまだそこは介護だ  けでは手を付けられない段階です。そこに常時見張って早く手を打てるような看護師を置かないと  いけないというので、医療と介護の区分がはっきりできるのかできないのかというのは私も同感で  ございます。そのためには、看護師の配分をきちっと機能に応じて考えていかないといけないとい  うことです。 ○ 堀内教授  各職能団体の様々な主張が阻害要因だというご指摘でしたが、私は多職種協働のお産に関してはマ  タニティー・ケアというものを国のプロジェクトとしてできないかなと考えております。カナダで  は助産師による出産は全くできなかったわけですが、1990年後半で医師のグループ、助産師のグル  ープ、看護師のグループ、小児科のグループ、いろいろな女性団体のグループが集まって、その多  職種協働でケアモデルを作りガイドラインを作り、誰がどこまでできるというような、きちっとし  た業務範囲を決めていったという例があります。同じ土俵に集まって正常分娩に関してはどのよう  にしていくかというガイドラインをどうにか作れないものかなと思います。長い間の、医師が非常  に偉くて、その下に従属しているという関係ではなくて、多職種協働でやらざるを得ない、それが  いいというような事例を作っていけたらいいなと思います。  私は戦前にあったような開業の助産師が津々浦々できてくるというようなものを考えておりません。  昔のような形での開業助産院が復活するというようには考えておりません。圧倒的に病院半分、ク  リニック半分。しかし助産所が存在するというのは非常に重要で、我が国のきめ細やかなケアの特  徴だと思っておりますが、半分病院、クリニックというところで、ニーズの高い人たちがどういう  ケアを受けていくかということだと思うのです。連携が非常に重要ですので、クリニックでも異常  のときにすぐ連携できるような病院が必要です。なるべく病院がオープンシステムみたいなものを  とって、その傘にいくつかのクリニックとか、あるいは医療法人が助産所を開設する開設者になる  というような、傘のような形のシステムを全国に張り巡らせていって、集約化と分散化がうまく機  能できるようなシステができるといいなと考えています。 ○ 舛添大臣  いまの多職種協働というのは大変すばらしいと思うのですが、まず、例えば病院の中で医師がリー  ダーシップを取るのか、それからガイドラインをお作りになるということであっても、例えば我々  が行政のほうで何らかの制度を変えることによってできるのか、例えば診療報酬という武器を使っ  てやるのか、そこのところを具体的にしないと、あの病院は、お医者さんも看護師さんも、みんな  しっかりしているからできましたと。ところがここはお医者さんがそうでないのできませんとなる  となかなかできないのです。矢崎先生や野中先生の立場から見て、そういうことが可能かどうか何  かアイディアでもありますか。 ○ 野中委員  今日、坂本先生がお示しになった6頁に院内のスキルミックスという図があります。この図のように  これを病院の中できちんとやっていくということが大切です。適切に実施されれば、実は大臣が言  われるように、もっと言えば在宅の現場でもそういうことになっていくと思います。しかし、院内  の中で多職種が協働するということが、現状では治療という中に全く埋没してしまっている。本来  は治療とともに患者さんの生活を支えるという部分がドッキングするから、患者さんは安心して病  院から退院できるわけです。自分も大学病院に勤務していましたが、当時は院内の多職種が連携す  ることが全く少なかった。今回の診療報酬の改定では、特に後期高齢者医療にはそういう形を評価  することを入れていただきましたので、今後どうやって進展していくかを期待していきたいと思い  ます。 ○ 矢崎委員  先ほど坂本先生が言われた看護師というのは、一様に看護師ではなくて、少し名前のある 看護師  を育成していくべきだということなのです。私は認定看護師、専門看護師というのは、いまその方  向でいっているのではないかと思います。ですから、もう少し効率よく、臨床看護力の高度な能力  を持った看護師さんを早急に育成していくことが必要ではないか。あるいは研修を行ってそういう  資格を認定するということが必要ではないかと思います。これは、看護協会が独自にやっているシ  ステムだと思います。医師のほうも従来それが非常に大きな問題で、一様に医師でいいのかどうか  ということがあって、学会などが専門医制度というのをやっていますけれども、それが本当に国民  からわかりやすい医師の名称なのかどうかという疑問もありますので、やはり大臣がおっしゃるよ  うに少し議論を煮詰めて、スキルミックスをやる場合には、ある程度名前のある看護師さん、名前  のある医師の役割分担が医師と看護師の中でもある程度すっきりしないと、医師、看護師がスキル  ミックスと言ってもなかなか現実は厳しいのではないかと思っています。 ○ 堀内教授  いまのお話も大事なのですけれども、保助看法を変えることが難しいのであれば、その手前の半歩  前進ということで、例えばがんの認定看護師であれば限られた用法の鎮痛剤の処方はできるという  ような、あるいは公文があれば、助産師の場合でしたら緊急時はこういうことはできます、この検  査まではできますという限られた処方なりその権限を、保助看法を変えるまでもなく行政としての  通達があれば、会陰縫合も必要時の切開と縫合も違法ではないのだということが保証されることに  よって、もう一歩前進できると考えております。これは同じように看護師も看護業会全体で育てて  おります、CNSと言われている専門領域の、がんや小児いろいろなところで育てている特定の教育を  積んだ者に関しては、ある限られた範囲の薬の処方なり何か権限を与えるということが表明される  と、半歩進むのではないかと思います。 ○ 坂本教授  先ほど辻本さんが言われたように、どのナースでもそうですかという話なのですが、実は専門認定  看護師は病院の中で私も育成して、きちんとした役割を与えていましたけれども、彼女たちはドク  ターが大変認めて貴重がられています。がん専門看護師もそうですし、それから患者さんたちにも  大変頼られていて、例えばがんであると言われたときに、そのナースのそばに行けば、全部それを  話してくれます。カルテを見ながら先生がおっしゃったことを、そのときは目の前が真っ白だとし  ても、がん専門のナースのところに行けば必ずナースがこういうことだったと話します。最近あっ  たのが人工肛門を付けなくちゃいけないと先生に言われて人工肛門が大変不安で、あんなものと言  っていた患者さんが、がん専門のナースと話をすることによって、ものすごくよくわかったと言わ  れました。理解しました、積極的にこれから治療を受けていきますと言われたのを私は最近経験し  ましたけれども、ああいう役割のナースに、すべてドクターに指示を仰がなければいけない状況に  おいているところへ、若干もう少し権限を与えてもいいのではないかと思います。例えば先ほど言  った、じょく瘡の手入れをすごく良くして、いつもその患者さんのじょく瘡を見てあげているナー  スが、お薬を処方してもらうのはドクターを探して、先生この薬を出してくださいとを言わなけれ  ばならない。そうするとドクターが、そうかそうかと出す。この仕組みは大変もう疲労していると  思うのです。ある意味ではどこまで与えるかということは論議しなければいけないと思いますけれ  ども、卓越した人たちからでいいですから裁量権を与えてほしいなと思います。 ○ 舛添大臣  スキルアップを皆さんやっていただいたときに、キャリアアップにつながっているか、ペイのアッ  プにつながっているか、これがなければインセンティブはないんですね。例えば歯科医のほうも、  私はほとんど予防で行きますから9割は歯科衛生士さんがやってくれる。手先の器用さは女性の衛  生士のほうが歯科医より上じゃないかと思うぐらいです。ただ最後に、ほかに疾患があるのではな  いかというのは歯科医が見てくれる。そうすると衛生士さんも看護師さんも同じことで、複数のラ  ンキングを付けてキャリアとしてアップしますよと。それからアメリカのアシスタントフィジシャ  ンみたいなやつで、お医者さんと看護師さんの中間みたいな方がいて、場合によっては途中で医師  に転換するかもしれないスキルのある人がいて、これはキャリアアップのシステムと組合わせる必  要がある、ペイはアップしないといけない。それと、もう1つ難しいのはスキルアップとキャリアア  ップに加えて、権限をどうするか、これがいちばん、おそらくいまのシステムを打破しようとする  と難しい。これはもちろん厚生労働行政の中で、きちんと審議をして決めていかないといけないと  思いますけれども、やるならそこまで必要だろうという感じがします。 ○ 坂本教授  私も同感です。是非、権限を与えることと、相談ばかりしているのではなくて本当に前向きに、ア  クション的に患者さんに介入できるようなことまで権限を与えてくれれば、おそらくキャリアアッ  プにつながっていく1つになるのだろうと思います。 ○ 舛添大臣   すみません、8時30分で切りましょう。どんなことがあっても8時半に終わらないと遅くなり過ぎな  ので、それまでの間、私が勝手な事を言ったので反論とかありましたら何か。 ○ 辻本委員  認定ナースが広告できるようになりましたね。ところがホームページを見ても、看護のことがほと  んど出ていないのです。看護部長の名すら探せないんですね。さっきも副院長ということで私があ  えて申し上げたのは、顔の見える、名前のあるナースという見える形というのは、その辺から変え  ていただきたいなというふうに思います。 ○ 坂本教授  ホームページの研究でもして、公開してインセンティブを見せていくような形でやりたいと考えて  います。 ○ 矢崎委員  いま大臣が言われたことを私ども国立病院機構でも考えて、独自の権限を持ってスキルミックスで  きるような看護師を育成しようと。僕らが学校法人を作りたいのですが、厚労省がなかなかうんと  言ってくださらないので。いまホームページで、志を同じくする法人のプロポーザルをやっている  のですけれども、その場合には専門職大学院も作って、卒業した人には我々のディグリーを与えて、  国立病院機構の中の病院であれば1級上の看護師さんとして、それに基づいた給与を出していくとい  う、キャリアパスを作ってやっていこうと局長さんにもいろいろお願いして。ただ我々も独自でや  っていこうと。先ほどの話のように、あの病院だからできるのだということではなくて、それをモ  デル事業にして、それでうまくできれば坂本先生の病院もそういうふうにやってくださるでしょう  し、どこかでモデル事業をやらない限り、なかなか全国統一で一斉にというのは難しいので何とか  頑張っていきたいと思います。 ○ 舛添大臣  私どもをにらまないでちょっとやる方向で研究してください。 ○ 野中委員  しかし、最も大事なことは皆が連携することです。個人のスキルアップとか専門性も大切なことで  す。それは患者さんのことを思えば、みんな誰だって勉強しています。しかし、連携を理解しない  で、個人のスキルアップだけを強調されると、まさに患者さんが不幸になる。結局、個人の能力も  大事だけれども地域でどれだけその能力を発揮できるのか。大臣が言われた医師の数とか医療従事  者、介護の従事者が必要なのは、地域の現場の積み重ねと思うのです。地域で医療をどうすべきな  のか、病院の数だけではなく救急医療のニーズの把握など、もっと地域で積み上げ地域医療計画を  作成することが必要です。国から言われるのではなくて、現場から積み上げていくという作業が大  事と思いますし、今後医師会も、地域住民の方々の健康と安心と安全をどう守るか等いろいろ議論  し、現場のニーズを検討するなど地道な作業の積み重ねが必要と思います。 ○ 田上教授  歯科の中でもいまの看護師の方とか助産師の方の職域のこともありますけれども、歯科でも歯科衛  生士の業務というのは幅が広いのです。予防の専門のトレーニングを受けていますけれども、一般  の診療のアシストという業務もあります。非常に熱心な方が多く勉強をよくします。その中で、ど  んどん自分の特殊な技術を身に付けていく人もあります。制度的にも3年制、4年制というのがあり  ます。今年初めて4年制の卒業生が出ます。予防に特化した形で言うと、ヨーロッパの国では歯科  衛生士が開業できるようになっています。大体どの国でも患者が減るというので歯科医師会は反対  します。ただ、歯科衛生士が開業すると予防の窓口が広がって受診者が増えまして、その結果トラ  ブルが早く見つけられて、歯科医院に送られ、連携できるということで、結果的に口腔衛生は非常  に状況がよくなるということがあります。歯科でいま切実な問題としては、ここ数年国家試験の不  合格者が非常に増えてきているというのがあります。彼等を社会資本としてどう利用するかという  ことをちょっと考えないといけないのですが、歯科医師や歯科衛生士の資格の中でも、こういった  棲み分けを作っていただいて、予防だけに専念する職種を作るとか、そういったことでおおいに活  用できるのではないかと思っております。 ○ 小野対策官  西川副大臣からメモが届いているのですけれども、歯科と看護については大体いままでの議論でカ  バーされたかと思うので助産の箇所で、院内助産と助産所外来をさらに進めるためにはどのような  方策が考えられるかということが、まだ出ていなかったかと思うのですが、この点について一言お  願いできればと思います。 ○ 堀内教授  院内助産あるいは助産師外来ということが可能になるためには院内での産科医や小児科 医との話  合いや連携が必要になるのと同時に、やはり院内でローリスクの部分で助産師が独立するというこ  とになりますので、業務範囲を明確にすることが必要になってくると思います。助産師で業務範囲  を明確にするということは先ほど来言っておりますが、院内にいらっしゃる産科医との連携の中で  どこまでは助産師だけで単独でできてというようなプロトコールが必要になると思いますが、それ  らがクリアされれば、このことはできるというふうに思っています。モデル的になさっている病院  の例とかを聞きますと、まず妊婦さんに初めから、「もしあなたがずっとローリスクで何もなかっ  たとしたら、あなたのケアは最後まで助産師がやりますよ。会陰裂傷が起こったとしても助産師が  最後までやりますけれどもよろしいですか」ということを最初にインフォームド・コンセントを取  ってやった場合には、お母さんたちも、それを納得して最後までケアを受けますし、何と言っても  「気が楽になった」と言っていたのは産科医たちだそうです。産科医は正常分娩の場合は呼ばれな  くて、お母さんも納得している、ICも書いている。だから行かなくていいということで他の仕事に  専念できるということがありましたので、繰返しになりますが、先ほどの保助看法で指定されてお  ります緊急応変の手当とは、会陰裂傷や縫合までを含んでいるというのを、はっきりと打ち出して  いただくことによって、より独立した院内助産や助産師外来ができていくのではなかと思っていま  す。もちろん必要な教育が課せられていくというふうに思っております。 ○ 小野対策官  それでは本日の会議はこの辺で終了させていただきたいと思います。次回の会議、日程につきまし  ては、ご連絡させていただきます。どうもありがとうございました。