08/03/12 第13回「診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会」議事録について   第13回 診療行為に関連した死亡に係る死因究明等のあり方に関する検討会   議 事 次 第    ○ 日  時 平成20年3月12日(水)13:00〜15:00    ○ 場  所 TKP御茶ノ水ビジネスセンター(ホール2A)           (東京都千代田区神田駿河台4-6-1 御茶ノ水セントラルビル2階)    ○ 出 席 者      【委 員】  前田座長             鮎澤委員 加藤委員 木下委員 楠本委員 児玉委員 堺委員             辻本委員 豊田委員 樋口委員 南委員  山口委員 山本委員     【議 題】       1.診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方について       2.その他     【配布資料】       資 料 1   検討会における主な意見 ― 第二次試案以降 ―             参考資料   検討会における配布資料 ― 第二次試案以降 ― ○医療安全推進室長(佐原)  定刻となりましたので、第13回「診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り 方に関する検討会」を開催いたします。委員の皆様方におかれましては、ご多忙の折、 本検討会にご出席をいただきまして、誠にありがとうございます。  初めに、本日の委員の出欠状況等についてご報告をいたします。本日は高本委員か ら、ご欠席との連絡をいただいております。また、児玉委員、楠本委員から遅れると の連絡をいただいております。それから、オブザーバーの法務省刑事局の片岡課長よ り、ご欠席との連絡をいただいております。また、警察庁刑事局刑事企画課の北村課 長の代理として吉越課長補佐にご出席いただいております。  次に、本日のお手元の配布資料の確認をいたします。議事次第、座席表、委員名簿 の他、資料1といたしまして、「検討会における主な意見−第二次試案以降−」、参考 資料といたしまして、「検討会における配布資料−第二次試案以降−」、それから、参 考資料集となっております。以上ですが、資料の欠落等があればご指摘をいただきた いと思います。ないようでしたら、以降の議事進行について、前田座長、よろしくお 願いいたします。 ○前田座長  本日も非常にお忙しい中、年度末も近づいており、本当にご迷惑をかけたわけです が、お集まりいただき、どうもありがとうございました。早速議事に入らせていただ きたいと思います。  10月以降、5回に渡って、第二次試案で明らかになっていなかった論点を中心に、 各方面からのご指摘を踏まえた論点も含めて議論してまいりました。そこで、本日は これまでの論点ごとに、二次試案以降、つまり第8回から第12回の会ですけれど、 検討会において出された主な意見をまとめた資料を事務局に準備していただきまし たので、これを元に、これまでにご議論いただいた各論点について、さらに追加的な ご意見があれば出していただきたいわけです。やや確認的な作業です。もちろん新し いご議論があれば、それを出しては困るという趣旨ではありません。  それでは、事務局のほうから、準備していただいた資料を簡単にご説明していただ けるでしょうか。 ○医療安全推進室長   それでは資料1につきまして、15分ぐらい時間をかけて説明したいと思います。資 料1は検討会における主な意見ということで、10月に第二次試案を発表して以降、5 回の検討会をしていただきましたので、その中で出された主な意見について、事務局 の責任でまとめさせていただいたものです。  まず1番目、「総論的事項」ということで、順番に読ませていただきます。制裁型・ 懲罰型ではなくて、本当の意味での真相究明と再発防止策のための医療安全の旗を立 てる組織を作るべき。それを担う中核は医療界である。また、遺族と医療機関の信頼 回復のためには当事者同士の対話が重要であり、医療機関が遺族に向き合い、当該事 故に関する情報等をきちんと遺族に伝える等の対応ができるような体制が必要であ る。また、医療事故に関して、警察・検察は謙抑的であるべきだが、そのためには医 療界が自立的・客観的に同僚評価ができる文化に変わるということが大前提である。 それから、これまでの検討会における議論から、二次試案で説明不足が指摘されてい た部分について、既に明らかになった点もあるので、第三次試案として明文化し、提 示するべきである。そういったようなご議論がありました。  続きまして2頁目。「2.委員会の組織について」は、委員会は医療を主管する厚生労 働省に設置するべきであるというご意見があった一方で、委員会は行政処分の権限を 持っている厚生労働省に設置するのではなく、独立行政委員会として内閣府の下に設 置すべきであるというご意見もありました。また、委員会が原因究明だけでなく、再 発防止や組織の問題を考えるのであれば、工学的な観点からの事故分析や、安全対策 の専門家なども委員になると明記しておくべきではないか、といったご意見です。委 員会が担う原因究明の部分と再発防止の部分とは、異なるメンバーで行うのがよいの ではないかといった意見。それから、医療や法律の専門家ではない、一般の者から見 ても理解できる調査が実施されるような委員構成とすべきではないかといった意見。 それから、医療機関内における事故調査と連携しながら、委員会が広く再発防止策を 発信していくべき。また、委員会は内閣府に設置し、改善の必要なことについては、 厚生労働省を含め各省庁に対してきちんと建議・勧告が行える仕組みとすべきである、 といった意見がありました。  続きまして「3.委員会への届出について」ですが、まず、医療死亡事故に関して、 委員会に届出を行い、医療者が中心となった委員会において、責任を持って調査を行 うという方向性を明らかにするためにも、医師法第21条については何らかの見直し が必要である。診療関連死という概念を新たに定義するのは困難であり、これまでに 医療事故情報収集等事業に報告された事例を踏まえて、さらにその中身を議論するべ きである。また、事故から学んだ教訓を生かしていくためには、診療行為に関連し、 通常予期しない経過を辿り、患者が死亡した事例を届け出るべきであるといった意見。 また、医療安全の向上を目的とするならば、現在警察へ届出ているような事例だけで なく、医療安全に資するような事例をすべて届出対象とすることが望ましいが、組織 がきちんと機能するためには一定の限界がある、といった意見がありました。  また、将来的には、予期しない事例すべてを収集することを見据えながら、まずは 解剖を前提とした調査が行える事例を届出対象とすることが現実的である。また、医 療安全に関して、医療機関の管理責任者である院長のリーダーシップは極めて重要で あり、医療機関の管理者が同僚評価を踏まえて判断して、届出を行うのが適当ではな いか。それから、故意に届出を怠った場合や虚偽の届出を行った場合、その程度に応 じて何らかの形で適切な対応がとられなければならない、といった意見がありました。  続きまして「4.届出義務の範囲に該当するか否かを医療機関において判断する際の 考え方について」ですが、まず1番目は、医療の限界と不確実性について、国民にも 広く理解を求める必要があり、患者と医療者がわかり合えない1つの大きな要因がこ こにある。また、明らかな症状の見落としなどの事例についても届出範囲に含めるべ きである。それから、消化管内視鏡検査中の消化管穿孔の事例や、外科手術における 癒着組織の剥離中の止血困難な出血の事例であっても、死亡例は委員会に届け出られ るべきであるという意見があった一方で、消化管内視鏡検査中の穿孔の事例や、癒着 組織の剥離中の出血の事例は、院内の事故調査委員会で対応する事例であるという意 見もありました。また、医療機関が届出をする必要がないと判断をした事例であって も、遺族が調査を望む場合は、遺族から委員会へ調査を依頼するなり、あるいは、遺 族が医療機関に依頼し、当該医療機関から委員会に調査依頼ができる仕組みとするべ きである、といった意見がありました。  続きまして「5.届出・調査依頼に当たっての相談について」ですが、医療機関側か らの届出や調査に関する相談と、それから、遺族からの調査依頼や調査等に関する相 談は、内容が異なるものと考えられるので、それぞれにきちんと対応していくことが 重要である。遺族側の相談に関しては、委員会における調査の仕組みなど、基本的な 事項に対する質問にもきちんと対応する窓口を設置する必要がある。それから、マニ ュアルに沿った対応では相談機能は果たせないため、相談を受ける役割を担う人材育 成が必要である、という意見がありました。  また、「6.届出・調査依頼受付後の取扱いについて」ですが、慎重を期して多数の届 出がなされることが考えられるため、委員会が調査を受け入れる対象を決めて、調整 するスクリーニングの仕組みがなければ、委員会が機能することは難しくなるのでは ないか。また、スクリーニングの仕組みを動かすためには、豊富な経験に基づいて、 院内調査委員会に任せてよいとか、解剖は不要であるといった適切な判断ができる、 現在のモデル事業でいう、総合調整医のような役割を担う医師の確保・育成が必要で ある、といった意見がありました。  次は、制度が十分成熟して、十分なキャパシティを持つような組織になれば、解剖 が行えない事例の調査も行うことはあり得るが、最初の段階では、解剖ができるとい う条件の下で始めるのがよいのではないかというご意見。それから、長期入院の後に 死亡した事例については、院内の事故調査や学会での調査委員会を活用することもあ り得る。また、再発防止が本当に必要ならば、それなりの資源をきちんと投じて、解 剖ができない事例の調査も行うべきである、といったご意見がありました。  「7.院内の事故調査について」ですが、まず、医療機関が委員会に事故調査をすべ て委ねるようでは問題である。一定規模以上の医療機関においては、独自に院内で事 故調査委員会を開き、そこで、自律的に公正な調査を行うことを積極的に指導し、推 進するべきである。また、事故が起こったときに、一定規模の医療機関に対しては、 きちんと外部の評価委員を入れて、院内での事故調査を行うことを義務付ける必要が ある。院内の事故調査に外部の評価、意見を入れることは重要であるが、委員として 外部の者が参画するのか、事後的に調査内容を評価するのか等、その具体的な方策に ついてはさらなる検討が必要である。  それから、中小の病院や診療所につきまして、その事故調査については、地域の医 療機関や職能団体が連携して支援していくべきである。また、既に一部の県には、県 の医師会や自治体による事故調査の仕組みがあって、中小の病院や診療所に関しては、 それらの既存の仕組みを活用して事故調査を行い、委員会が報告書を評価するといっ た連携も考えられる。また、院内の事故調査を行った結果の遺族への説明は、当然の こととして義務付けていくべきである、といったご意見がありました。  それから「8.委員会から捜査機関に通知を行う必要がある場合について」ですが、 まずこれまでの議論で、医療事故と刑事司法との関係については、少なくとも二歩は 前進している。それは、まず1番目、医療死亡事故の届出は警察ではなく第三者機関 とすること。2番目、医療事故の場合には、重大な過失があった場合に限って警察へ 通知するという案を示したことである。それから2つ目、故意又はカルテの改ざん・ 隠匿は犯罪であり、当然委員会から捜査機関へ通知されるべきと。行政処分後の度重 なるリピーターは悪質ということで、委員会から捜査機関へ通知することに関しては、 医療者としても納得できる、というご意見がありました。また、「重大な過失」とい うのは死亡という結果をもって重大というのではなく、医療水準から著しく逸脱して いるかであり、わずかに手技が下手だった等の事例に対して刑事責任を問うことでは ないのではないか。また、医療水準の中で「重大な過失」であるかは、医師等の医療 者が中心となった委員会が専門的見地から判断することになる。専門家の目できちん と判断して、警察に通知することが行われていけば、かなり現状が打開されると期待 する、といったご意見でした。  最後の頁、「9.行政処分について」でが、まず、個人に対する処分のみではなく、医 療機関に対して改善報告を求めるなど、医療事故の実態に応じて膨らみを持たせるべ きである。それから、死亡事故の場合の行政処分は、一義的には制裁目的でなく、医 療安全に資するための処分を行うということをまず明らかにするべきである。また、 事故をきちんと受け止め、改善に向けた努力をしようとしている、事故の当事者であ る医療者には、きちんと再教育を受けるなどして現場に復帰してもらいたいと多くの 遺族は願っている、そんなご意見がありました。また、個人に対する行政処分は、戒 告と再教育を原則とすることを明らかにすべきである。それから、行政処分を行う組 織は委員会とは別の独立した組織とし、医療事故に対する行政処分の手続きが医療の 専門家によって自律的に行われることが望ましい。そういったご意見がありました。  最後に、「10.警察と調査の関係について」ですが、仮に遺族が警察へ届け出たとし ても、具体的な調査は委員会に任せるという仕組みが望ましい、といったご意見があ りました。事務局の責任で、これまでの主なご意見としてまとめさせていただきまし た。  なお、参考資料のほうは、これまでの検討会における資料である、「届出について」、 「医療安全委員会における調査について」、それから、「院内事故調査」、「行政処分に ついて」ということで、過去の資料を集めて、本日再度提出しております。よろしく お願いいたします。 ○前田座長   ありがとうございました。それでは、いまの資料1に沿ってご議論いただくわけで すが、最後にご紹介いただいた行政処分の部分について、前回の議論が途中で終わっ た面があるのです。初めにそこをご議論いただいた上で先に進みたいと思いますので、 参考資料の14頁に処分に関して載っていますが、特に(イ)の項目以降をご議論い ただきたいと思います。これについて特にご議論がなければ先に進みたいと思うので すが、まず行政処分に関連していままで論じていない部分がありますので、いかがで しょうか。どなたからでもよろしいのですが、急にここにというので議論しにくいか もしれませんが。 ○堺委員   行政処分という言葉の定義ですが、どうも2種類あるようで、法律の専門家でない 者たちは処分、処罰という意味で捉えておりますし、法律あるいは行政の専門の方に お話を伺うと、行政行為すべてを意味すると。例えば、医師免許を交付するようなも のを行政処分だという説明もあります。ただ、これはこれから広く一般に出ていくも のなので、ここで言っている行政処分とはどういう意味なのか。処分、処罰という意 味だと解釈していいように思えるのですが、いかがでしょうか。 ○前田座長    事務局のほうからお答えいただけますか。 ○医療安全推進室長   行政処分という言葉の意味は、いま堺委員がご指摘のとおり、むしろ後者のほうで、 行政としての行為すべてを指すものだと考えております。そういう意味での行政処分 の中で、どのようなことをやっていったらいいのかについては、検討会でご議論いた だきたいと思っております。 ○前田座長  広い意味の行政行為一般を指すのではなくて、ただ、刑事に送ることと分けている という意味では制裁ではありますが、我々で言うと懲戒処分とか免許の取消しといっ たものを、主としてイメージしているということでよろしいわけですね。 ○医療安全推進室長   前回の検討会でもご議論があったかと思いますが、医療安全に資するための処分を 行うといった観点で議論していくのも、1つの方向ではないかと思いますし、過去に 医政局で行政処分の在り方についての検討会をもったときにも、そのようなご議論が ありました。 ○前田座長   ですから、そのような定義を踏まえて、(a)の処分の対象となる事例の判断、(b) の処分の対象となる範囲も、案が1と2とそれぞれ示されておりますが、もしご意見 があれば出しておいていただきたいと思います。いかがでしょうか。 ○山口委員   もともと医療安全調査委員会のほうは、専門家が医学的な立場でその事例について 検討するところと考えます。その委員会が同時に処分にも関わるということはできる だけ避けて、処分を行うのは別の組織であるというのが原則だろうと思います。それ から言うと、処分の対象となる事例についてこの調査委員会から処分を取り扱う機関 へ通知する形ではなくて、どうせ調査結果はすべて公表されるわけですから、処分を 取り扱う機関は、それをレビューする形で見て、その中から指導なり処分なり必要な 事例を取り出していく形が望ましいのではないかと思います。  調査委員会のほうでも、医師は専門家ではありますが、いつも意見が一致するとは 限りませんし、場合によると多少偏った意見が出てこないとも限らないので、この調 査委員会と処分を行う機関が互いにレビューしてチェックしあうという関係にある ことはよいことだと思います。その意味で、調査委員会から処分機関へ一方的に通知 するという形ではなく、処分機関もレビュー機能を持つ機関として別に存在するのが よいと思います。 ○前田座長    (a)だけではなく、(b)も含めてでよろしいのですが、ご意見はいかがでしょうか。 ○木下委員   いまの山口委員のお話のとおり、私も賛成なのですが、実際誰が判断するかという と、ここの記載によると、医道審議会の意見を聞いて実施するとあります。山口委員 がおっしゃったように、医療の専門家が行政処分を判断する仕組みもあったほうがい いと思います。そのような分科会組織で、判断した内容を医道審議会に伝える、つま り直接医道審議会ではなく、その下に入る分科会的なものがあるという仕組みを、是 非考えていただきたいと思います。 ○前田座長   具体的なご提案をいただいたわけですが、ほかに、対象となる事例の範囲について も意見がありましたらいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○堺委員   (b)の案1のいちばん上のポツですが、「故意や重大な過失があった場合」とあり ます。この場合の重大な過失というのは、資料1の5頁の8の3つ目の○、「重大な 過失」とは、死亡という結果をもって重大ということではなく、医療水準から著しく 逸脱しているものを指す、ということがその後議論されております。そのような定義 ということで了解していますが、よろしいでしょうか。 ○医療安全推進室長   そのようにしていくべきではないかと考えております。 ○前田座長   少なくとも、この案は同じ言葉ですから、特に違う意味で使ってはいないというこ とでよろしいわけですね。 ○医療安全推進室長   はい。 ○樋口委員   先回申し上げたことの繰返しになりますが、(b)の処分の対象となる事例の範囲、 話の入口としてはここから入るのがいいかもしれませんが、この案1は非常に限定さ れた事例なのです。いま堺委員がおっしゃったように、医療安全調査委員会でそれは あまりにひどいではないかと言って、刑事司法へつなぐような事例がここに書いてあ るわけですから、そのぐらい非常に例外的な場合に行政処分を行うという考え方です が、案2のほうは、それよりももう少し広くという話になりますね。どちらがいいか は、行政処分をどういう性格のものとして捉えるのか、その性格のものを、今後どう いう形で使っていくかの話だと思うのです。  そのあとは先回申し上げたことの繰返しになるのですが、結局いま我々が問題にし ているのは、医療事故が発生するということです。ある意味では不可避的に発生する。 人間は過つものであって、別に日本だけではなく、どこの国でも、どこの時代にでも 医療事故はある。しかし、みんなの幸せのために、できるだけ少なくしたほうがいい に決まっている。そのためにはどのような工夫をしたらいいかという話ですが、1つ の工夫は刑事司法で警察に出てきてもらって、事故を隠蔽したり、とにかく逃げ隠れ するような話があってはいけないという話で、ごく簡単に言えば制裁型です。そんな ことになったら、かえってとんでもないことになりますよ、と脅して真っ当な道に戻 すということですが、それだけで医療安全が推進されるかというと、どうもそうでは ないらしい。だから、今回の話は制裁型ではどうもうまくいかないのでそれとは異な るアプローチをとろうというのが基本的な考え方になるはずです。  そうすると、今回は、医療安全を推進するためには、医療不信を払拭して、医療に 対する信頼の仕組みを作るのだということが最大の眼目となります。その中核の1つ として医療安全調査委員会を作り、これからやっていくのだということであれば、そ れに適合する形の、ほかの所のシステムもそのように考えるべきだということになる と、先ほど行政処分の意味についても繰り返しお話がありましたが、今回の行政処分 は医療安全につながる形のものにすべきだとなると、単純な制裁で懲らしめという話 ではない。そう考えれば、私はやはり案2のほうへ行くと思うのです。それだと一見 するとかえって行政処分の範囲が広がることになる。しかし、それは繰り返し説明し て、何よりも誤解をしてもらっては困るのであり、行政処分の中身はその人間個人を、 看護師であれ医者であれ捕まえて、お前は悪いやつだ、という形の処分ではないとい う話にしなければいけない。  元に戻って、そうすると、医療安全調査委員会で事故究明と真相究明と再発防止策 を取るのも医療安全への道、行政処分もそのための補助手段だということで、行政処 分の在り方も再発防止のほうへものすごく近づいていく手段になりますので、性格が 似てくるのです。こちらが制裁で向こうは再発防止とはっきりすれば、それは全然別 の所でやるべきであり、別の人間が判断したらいいことにもなるのですが、性格は似 ています。それでもあえて言うのですが、私は別の機関でやるべきだと思っています。 どうしてかというと、処分というのは、刑事処分もそうですが、いままでは結局個人 にだけしか焦点を当てないのです。今度は、組織に対する行政処分も入れようという ことなので、組織全体というのもあることはあるのですが、いままでの経緯からする と、どうしても個人について個人が再教育を受けて、もう1回やり直してもらうとい うのが中心になります。その後、再教育の成果が出て個人が本当にそうなっていくか を見ていくという話になりますが、医療安全調査委員会の仕事は、医者や看護師個人 がどうなっていくかも大事ですが、当然事故のほうに重点があるので、同じような事 故が同じような病院、あるいは診療所で繰り返されないためにはどうすればいいかと いう視点の違いが、どうしてもあると思うのです。  また、そんなことを言っても、処分を受けたいかと言えば受けたくはないに決まっ ているわけですから、どうしても不名誉な性格が残るので、これは別々の話にせざる を得ないし、そのほうがはっきりするだろうと思うのです。そういうことで、処分の 対象となる事例の範囲は、そのような行政処分であれば案2であってしかるべきでは ないかと考えております。 ○加藤委員   14頁の(b)の処分の対象となる事例の範囲ですが、案1、案2について、いま樋口 委員からご意見がありました。私も基本的に案2であるべきだと考えています。これ は、さまざまな事例を検討していく中で、案1ですと具体的な行為をした者の個人的 なところに関心が相当かかってくるわけですが、さまざまな事例の背景等を見ると、 医療機関としての改善すべき点が浮き彫りになったり、管理者のリーダーシップにさ まざまな問題が指摘できる場合もあったりするわけです。行政処分がどのような内容 になるかを考えると、例えば業務を改善しなさいという改善命令だったり、管理者を 変更しなさいということだったり、そうした指導もあり得るだろうと思います。そう いう意味で言えば、処分の対象となる事例の範囲については、より安全な医療を実現 するために必要な幅広い処分ができていくことをにらんで、案2を支持したいと思い ます。 ○鮎澤委員   私も、案2でいくのがいいのではないかと思っています。いま先生方のご議論もあ ったように、改善のために資する仕組みを作っていこうとするのならば、案2ではな いかというのが基本的な考え方です。  ただ、よりよくなっていくために何をすればいいかを考えていくときに、いまの既 存の行政処分だけでそれが果たせるかというと、もっと違う仕組みも考えておかなけ ればいけないと思っています。14頁には、「再教育を重視した方向で実施する」とあ りますし、既存の行政処分の適用の部分もこれからいろいろ議論されることになるで しょうが、ある過ちを起こした医師がよりよい医師になっていくための仕組みは、行 政処分だけの中で解決できる問題ではありません。事故調査委員会の中から出てきた 結果を使って、例えばプロフェッショナル・ソサエティがこれからどのように機能し ていくかといった大きな枠組みも考えておかなければいけないことなのだと思って います。今回の検討会の議論からは外れるのかもしれませんが、そこを是非考えてお かないと、本当に資する形に事故調査委員会の結果が使われていかないのではないか と、そこを心配しています。 ○前田座長   ありがとうございました。それでは、大体行政処分についてはご意見が出たと思い ます。もちろん、最後にもう1回戻ってくることになりますので、そういうことも併 せて、ここで資料1に戻りますが、項目に分けて従来の議論を整理していただいてお ります。1つひとつというのは細かすぎるかもしれませんが、初めの総論的事項に関 してはまとめて、1頁にまとめたことに関して自分の意見が反映されていないとか、 もう少し強調したい面があるとか、別の観点から発言したいことがあれば、1頁の関 連でご発言いただきたいと思います。どなたからでも結構ですので、よろしくお願い します。ここはいちばん長く議論してきたことですし、何回か整理してきたので、特 にご意見はないかもしれませんが、今回は第二次試案についての検討の1つの区切り ということで、ご意見があれば是非出していただきたいと思います。 ○山口委員   もちろん、いちばん下に書いてある第三次試案を是非作っていただきたいというこ とについて、私は前回いませんでしたので、改めてお願いしたいと思います。医療界 では、第二次試案のあとに検討されたことやいろいろ明らかになったことが、もうひ とつよく伝わっていないように思いますので、是非第三次試案をお願いしたいと思い ます。  また、先ほどの行政処分にも関係するのですが、各病院での事故調査委員会や医療 安全に対する取組みが評価されるような仕組みを、是非考えていただきたい。特に、 それがある程度行政処分になるのはやむを得ないとしても、いろいろなことに取り組 めば取り組むほど、かえって処分が重くなったり広くなったりするのでは、実際の現 場ではそういうことに取り組めなくなってしまうので、病院が積極的に医療安全に取 り組んでいることが評価される仕組みを、是非考えていただきたいと思います。 ○前田座長   今日は無理な日程をお願いしたので、中座される委員はもし可能であれば、ほかの 所に絡んでもよろしいので、適宜ご発言をいただければと思います。 ○樋口委員   まだもう少しおることができるのですが、私も今日は早退せざるを得ない事情があ るので、毎回同じことを繰り返して申し上げていますが、お時間をいただいてお話を します。先回も申し上げたのですが、私はある所でこの検討会でこのような動きがあ ると説明をして、それに対していろいろな批判、疑問が提起されました。私の理解で は、その反対された方は、職業は医者で、自分が遺族だったとか患者だったという話 ではないのです。その人たちはどのような点がいまいちばん不安なのかというと、3 つあるのだということです。これは私の理解なので、本当にそうかどうかはわかりま せんが、1つは第三者機関の医療安全調査委員会ができて、細々ではあるけれど、そ こからの通知が行って刑事処分へつながるという話になっているではないかという 点を問題にします。重大な過失と言っても、何しろ結果が重大ですから、患者は死ん でいますので、当然全部重大な過失だということになって、刑事司法へつながれてし まって、いまよりもっと悪くなる。少なくともいまと同じか、いま以上に悪くなると いう不安です。これは見せかけだけの調査委員会にすぎない。そこで、調査委員会が でてきてもそこに行って再発防止や真相究明のために協力できそうにない、心配でた まらないというのが第1点です。  これは、この検討会でも繰り返し、そうではないし、ここにオブザーバーとして出 てきている法務省の方も警察庁の方も、謙抑的ということを何度もおっしゃっていて、 どんどん出ていくという話はないのだからとおっしゃっているし、今後はそのような 制裁型中心ではなく、はっきりと別の方向性でいくということだと思うのです。話の 順番を間違えてしまいましたが、総論のいちばん最後に「第三次試案として明文化し」 とありますが、第三次試案を作るときには、いちばん初めの前書きに、このような構 想を立てたのは、こういう方向性をはっきり打ち出すためですというのを、もっとは っきり書くといいのかなと思っているのです。そういう種類の話をしようと思ってい るわけですが、刑事につなぐのは、何度も出てくるように、隠蔽や誰が考えても犯罪 に近い、ひどい場合だけだという話が第1点です。  2つ目は、「わかった、刑事司法につなぐのは本当に例外的だと納得することにしよ う。しかし、行政処分を拡大されて、医者としての業務を停止されたり資格を剥奪さ れたのでは、何のことやらというか、一生懸命調査に協力して、自分はこういうとこ ろは悪かったかもしれないと言ったらすぐパッと処分されて、もう医者でなくなって しまうというのでは、協力できないではないか」という話です。それが先回から始ま っているわけですが、行政処分も、厚生労働省のほうも含めて、悪い者を懲らしめる、 制裁型で広げようとしているのでは絶対にありませんと、もっと繰り返し言わないと いけないし、口だけではなく、それを何らかの形ではっきり制度化していく必要があ るだろうと思います。  3つ目は、何であれ新しい仕組みができると、医者の上に、担当官庁ですから厚生 労働省を中心とするのだと思いますが、そのような人たちの権限が増えて規制がかか る。いろいろな形の権限が増えて、自分たちのほうには監視の力が強まっていくだけ の話で、結局は規制増加のためにこの仕組みも利用されるだけだということです。む しろ、医者はそれぞれ専門家としての誇りを持っていて、自律的にちゃんとやってい こうと思っているのに、それを国が上から指図する仕組みをどんどん作っていくのは どうなのだろうか、という話もあると思うのです。制度を作れば作るほど上が重たく なって、自由がなくなるというか、非常に苦しい感じになる。今度の医療安全調査委 員会も、結局そういうものの道具になるのではないかという恐れも感じ取れた気がし たわけです。  今回新しい仕組みを作るというのは、現在の認識としては、国民の間に何らかの意 味で、自分がいまかかっている医者についてはそう思っていないかもしれませんが、 一般的に医療不信が漠然としてあるのだろうと思うのです。だから、警察に頼りたい という一部の患者や遺族の声も、当然出てきてしかるべきです。医療不信の現状を変 えて、医療への信頼の仕組みを作らないといけないということですから、どこまで危 機意識を持つかは人それぞれだと思いますが、ピンチなのです。医療はいろいろな意 味でピンチになっているということだと思いますが、誰にとってのピンチなのかとい うと2つあって、1つは医者にとってです。医者だけではなくて、医療従事者全体か もしれませんが、自分たちのやっていることが不信な目で見られるのは、気持のいい 話では絶対にないはずです。同時に、医者にとってのピンチだけかというと、それは 国民、患者にとってもピンチなのです。そんなこと(自らが医師を不信の目で見なけ ればならない事態)を喜んでいるわけがないのですから、両者にとって何とかうまい 方法を考える必要があるのです。ピンチをチャンスに変える、マジックみたいな話を 考えつく必要がある。  そこで、医者、あるいは医者を中心とする医療従事者にとっては、先ほど来出てき ましたが、専門家の自律と責任をもっと認めるという考えがあってよい。もちろん、 ピンチで不信の人にエンパワーメント、権限を与えていいのかという考えもあるかも しれませんが、私が関係しているモデル事業でも、医学界の人があれだけ手を挙げて、 ボランティアでこういうものをやってみようという動きが出てきているわけです。私 も法律家の端くれなのですが、日本では医者と並ぶ専門家の代表である弁護士会は、 自律的な組織で、自分たちで懲戒処分をやれる仕組みを持っているのです。自分たち で勝ち取ったのか、単純に与えられたのかはよくわかりませんが、いずれにせよそれ を持っていて、そのようなものとのバランスからしても、医者が自律して、その代わ り当然責任が発生するような専門家責任の仕組みを作る必要があって、それがいまま でにはないのです。だから、医師はチャンスだと思えばいいと思うのです。  先ほど来出てくる行政処分も、行政処分は役人がやるのではなく、同僚で、我々が やるのだと考えるべきです。同じ医者から見て、ある医療事故についてこれは何らか の処分という名前の再教育で再出発を図ってもらうというならそれを自ら決定すべ きです。再出発を図るためには、例えば樋口の講演を単純に1回聞いたって意味もな いので、もっと別な、ちゃんとその人がこういうことで失敗したのだから、それを繰 り返さないための研修計画をまさに医療界の中で作って、いまの仕組みは医道審議会 の最後の議を経て厚生労働大臣が処分するのでしょうから、処分権限まではいきなり 持てないとは思いますが、実際の中身の助言、勧告をする仕組みを医学界の中で立ち 上げて、そこで判断してもらう。それができるようだったら、医療不信の中からピン チをチャンスに変えて、医療者自身が自分たちで自律的に医療の安全を図っていく、 医療の向上を図っていく仕組みを作る意味で、好機なのです。  しかし、それを医者だけで、あるいは医療従事者だけでやってもらうわけにもいか ない。国民にとってもピンチなのですから、国民と一緒になってという話でないとい けないのです。ですから、いま反対している人の中には、医療安全調査委員会の中に 遺族や患者など国民が入ってくるのをいやだと思われる人もいるかもしれませんが、 それなら裁判員制度などやれるわけもないわけで、医者だって国民なのですから、国 民と一緒になってやる仕組み、国民の参加を得て、透明な行政処分のシステム、ある いは自律的な医療安全、医療向上を図るシステムを作る好機なのです。そのための本 当の第一歩で、この第三者委員会、あるいは医療安全調査委員会を作るのだという姿 勢を、第三次試案の冒頭で掲げていただけないものかと考えております。 ○前田座長   全般につながる話にならざるを得ないので、項目ごとに1つひとつやっていくのは 難しいかもしれません。どこの分野でもよろしいのですが、総論に関わるとまた前に 進まないかもしれないので、委員会の組織、委員会の届出の範囲、3〜5はつながるか もしれませんが、これも含めて各委員のご意見を出していただきたいと思います。 ○鮎澤委員   二次試案以降、現場の方の声を聞くと、先ほど樋口委員も大変懸念しているとおっ しゃっていた、医師法21条の問題が出てきます。この委員会が立ち上がった当初か ら、いくつか検討していかなければいけない大事な課題の1つだと認識して、私はこ の検討会に参加しました。新しく事故調査委員会が出来上がって、そこに届け出るこ とをもって、その問題がそれなりに解決されていく道が見えたとは思いますが、まだ 世に医師法21条の問題がどうなっているかが、明確に伝わっていないように思いま す。果たして21条が法改正されるのか、21条が残ったまま何らかの運用で変わって いくのか、その辺りがきちんとわかり、安心して医師法21条を解釈できるように、 どこかで整理をしていただきたいと思っています。それが第三次試案になるのかどう なのかを、これからご検討いただきたいと思いますが、是非そこをクリアにしていた だきたいと思います。いままで医師法21条についてはいろいろなガイドラインが出 ており、いろいろ言われているからこそ、ここで1回きちんと整理をしておく、大事 な時だと思います。 ○前田座長   それは3の「委員会への届出について」ですね。医師法21条について、いままでの ご意見としては、何らかの見直しが必要であるということがいちばん最初に書いてあ るわけですが、それをどうするかです。ただ、法改正になると、その法案をどう作っ ていくかという話になりますが、方向性はいま鮎澤委員がご指摘になったように、こ の委員会ができることによって、事実上21条に関する懸念が払拭される方向で解決 していくということですが、医師法21条についてはなお疑問が残るということであ れば、対応すべきであるということですね。 ○鮎澤委員   医師法21条については、いままでいろいろなガイドラインが出ています。それがい まなお活きているのかいないのか、どうなっているのかもよく分からないまま、現場 の方たちは事が起きれば21条の問題に直面するわけです。以前、児玉委員もそうい ったご発言をされていたと思います。1回きちんとこの委員会の中で整理をして、わ かる形で示していただくと、例えば第三次試案の中に織り込んでいただくと、随分と 心配もなくなるのではないかと思います。 ○堺委員   先ほどの山口委員、樋口委員のご意見と一部重複する所がありますが、第三次試案 という名前を使っていいかということもありますが、第二次試案に次ぐものを是非、 しかも、可能ならばできるだけ早い時期に出していただきたいと思っております。い まのところ、医療関係者の中でも看護の分野からは、あまり格別の反対意見が出てい ないように思いますが、医師の分野からは一部強い反対意見が出ております。これに ついては、先ほど樋口委員が3つのカテゴリーにまとめてくださって、私もそれに賛 成です。医師免許を持っている者たちが、全員というわけにはいかないと思いますが、 大多数が納得できる形を早く作りたいと思っております。そのためにも第三次試案を 作っていただきたい。  また、これも樋口委員のご意見と重なりますが、納得するのは医師だけではなく国 民だと思いますので、第三次試案ができたら、これは報道の方々にお願いするのだと 思いますが、それをできるだけ広く世の中へ出していただいて、世の中のいろいろな 意見が出てくる形を作っていただきたいと思っております。  最後に委員会の構成ですが、2頁の2の「委員会の組織について」の5つ目の○で、 前からいろいろ議論されていますが、医療の専門家以外の人も入るべきだろうと考え ております。 ○辻本委員   堺委員のいまのお話の流れの中で、2の「委員会の組織について」ですが、「一般の ものから見ても理解できる調査が実施されるような委員構成」と、随分持って回った 言い方になってしまって、先ほど樋口委員が提案くださったように、ともに患者の側 の立場も議論に参加するという意味合いが、ぼんやりと消されてしまっているように 読めました。もう少しその辺りを明確にお示しいただくことができないかとご提案し ます。 ○前田座長   2の「委員会の組織について」の5番目の書きぶりですね。要するに、国民から見 ても調査が実施されることがわかりやすいことだけではなく、国民の側も主体的に参 加しているという部分で、それが入る言葉をということですね。 ○辻本委員   そうですね。以前は、遺族を代表するというキーワードが、特に医療現場で誤解を 招いたとか、警戒されたという話も聞いております。ですから、そこをもう少し言葉 を尽し、説明を尽してということで、国民も同じテーブルにというところが明文化さ れることを望みます。 ○前田座長   言葉を捉えるときに、そういうニュアンスを込めていないのだけれど、遺族という 言葉に関してすごく強い反応が出たり、そこは実質的な思いが動いているわけではな いと思いますので、是非工夫していただきたいと思います。 ○木下委員   各論的なことですが、3頁のいちばん上と4頁の6番の○の3番目で、それは全く 同じことですが、届出をされたあと調査をしていくのに、原則として解剖を前提とし た調査であるということです。当初から現実的にはそれがいいという方向は考えます が、前にも議論があったように、解剖が行われていない事例では、調査委員会ではな く警察に届けるという問題が、どうしても残ると思うのです。樋口委員から再三お話 があったように、この仕組みができたあとは、そのような事例は、当初は、解剖しな いで、届け出ないような事例を、後で、届け出ることは、少なくなるだろうと思われ るだけに、解剖しなかった事例でも、調査の対象とするとしたほうが、よいのではな いかと思います。  例えば、解剖を前提としたときに、本当は調査していただきたい事例であっても、 解剖ができない、あるいはしたくないというのはあり得る話なのです。具体的にはお 子さんが不幸なことになったときには、解剖はあまり現実的ではありません。そうい ったときに、手法としては死亡時の画像病理診断、Aiというものがあります。この診 断方法は、決して解剖に代わるものではありませんが、そういう仕組みを入れていく ことはそれほど難しい話ではありません。すべて解剖を前提としなくても、いま言っ たような診断の仕方もありますので、そういった仕組みを入れた上で調査をすること も、現実的であると思います。 ○前田座長    ありがとうございます。これもあとの手順につながる非常に重要なことです。 ○豊田委員   私も、第三次試案をお願いしたいと思っています。私も樋口委員がおっしゃるよう に、行政処分に関しても、捕まえて懲らしめるといった気持で処分を受けなさいとい うことではなく、今後の医療安全のためにも受けなくてはいけない教育はあると思い ますので、そういった意味で誤解を招かない形での処分をお願いしたいと思います。  また、私も講演活動を通じて、多くの地域の医師の方々とお話する機会があって、 かなり本音でいろいろなことを言っていただいていますが、いまいろいろな委員の 方々が言われているように、心配でたまらないという声も多く聞いております。その 一方で、そうではないという意見もたくさん聞いております。よく言われることが、 患者や遺族の立場の人が入るのはどうかと思うということですが、患者側が入ってい かないと、医療者の大変な姿を見ることができない、証明することができないことも あると思います。また、もう少し医療の現場の状況を国民が知るべきではないかと思 うのです。相手の状況を知ることによって、いろいろな理解を得られることもあると 思います。いまの段階では、医療側が患者側を受け入れていないがために、中に入っ てきたらきっといろいろ批判をするだけではないかという思い込みになってしまっ ていると思うのです。私自身がそうでしたが、医療の現場に入るといろいろなことを 知らされて、いろいろな理解を得ることができるのです。そのような立場の人が入ら なくては、今後わかり合うことができないと思いますので、必ず入れていただきたい と思っております。  届出の範囲の問題に関しても、届出の範囲は広いほうがいいと私たちから見ると思 いますけれども、現実的にそこまで全部届け出られると、解剖の問題等で難しいとい うこともあると思いますので、届け出るべきかどうかというと「受け入れてください」 と言いたくなるのですが、ご事情もいろいろあると思いますので、そこはもう少し具 体的に話し合っていかなければいけないと思います。  ただ、木下委員がおっしゃったように、最初の段階できちんと相談窓口を作って相 談ができるような体制や説明ができるような体制、解剖の必要性やAiのお話など、 そういう相談を受け入れることがきちんと最初の段階で整っていれば、解剖を全くし ないとかAiを受けていないという事例が減ってくると思いますので、そこは木下委 員がおっしゃるように、届出の範囲をあまり狭めないほうがようのかもしれません。  私は病院の中にいますので、院内での取組みについて非常に気になるのですが、院 内で事故調査をしっかりと行わなくてはいけないと思います。事故調査を行った上で それを踏まえた対応を院内できちんと行うことが必要だと思いますので、メディエー ターという言葉が適切かどうかわかりませんけれども、メディエーターのような役割 の人材が、院内に配置されることが望ましいのではないかと思っています。当事者や 関係者がきちんと向き合えるように、そのために一緒に考えて、対話の場を作ってい けるような人材が院内に必要ではないかと思っていますので、ADRのことを文章の中 に入れていただきたいと思います。 ○前田座長    ありがとうございます。南委員、お願いします。 ○南委員   私も途中で失礼するので意見だけ述べさせていただきます。この検討会での議論に ついていろいろな声があるという話で、聞いていますと、この検討会で出ている二次 試案以降の修正点に関して、きちんと理解されていない側面が非常に大きいように思 います。ここは大事な議論ですので時間をかけてでも、第三次試案という形に私もし ていただきたいと希望いたします。  2つ指摘したいのですが、いま豊田委員も言われましたけれども、国民が医療の置 かれている現状を十分理解していないことが、大前提として非常に大きく全体の議論 に影響していると思われます。1つは、先ほど山口委員が、医療安全への取組みがき ちんと評価されるようなシステムということを言われました。山口委員が言われたの は、正直にきちんと取り組んでいけばいくほど、それがますます大きく責任を問われ る形になって、モチベーションにつながらないと言われたのです。それも大きいです が、それよりもっと以前に医療現場が医療安全に取り組むことが、例えば診療報酬上 全く評価されていない。実は医療安全の取組みというのは大変な人手や費用がかかる わけですけれども、それに対していくら一生懸命取り組んでも、マイナスからの出発 みたいなことになってしまっている。その矛盾ということを国民がきちんと共有して おかないといけないと思います。それを何らかの形で書き込んでいただくなり、共通 認識としてきちんと共有しておく必要が大前提としてあると思います。  もう1つは、聞こえてくる不満の中で、先ほど樋口委員がまとめられたことがすべ てだと思います。全く共感するのですが、特に最後の部分です。いまの制度の中では 結局、弁護士会に当たる医師会がないから、医師はどんなに職能的な自浄能力を発揮 しようと思っても、免許剥奪まで自分たちでできない。これもまた国民になかなか理 解されていない部分がありますので、これは本当に制度的にそういう改革ができるの かどうかわかりませんけれども、そのために医師がなかなか自分たちの力で自ら律す ることができないという、そこのところもある程度大きな問題になっていることに、 踏み込む必要があるかと思います。 ○前田座長    ほかに、いかがでしょうか。 ○山口委員   医療安全にお金がかかるということを書いていただけるのなら、それがいいと思い ます。いろいろ安全対策を行う場合には必ず費用が伴うものだということを強調して おきたいと思います。  届出範囲の話が出ましたので、もう一度確認したいと思います。この調査委員会の 入口である届出と、出口であるところの捜査機関への通知というところで、基本的に は同じ原則だろうと理解しています。捜査機関への通知というところで出てきたのは、 結果の重大性ではなくて、医療行為そのものが標準的な医療からどれだけ外れている かで判断するということ。届出のところも、基本的にそういう医学的判断でよろしい ということをもう一度確認しておきたいと思います。入口も出口も、基本は医療行為 が標準的な医療からすごく外れているかどうかで届け出る、あるいは捜査機関に通知 がいくという理解でよろしいかと思います。  それについて参考資料の2頁にある流れ図です。このもともとの流れ図と、ここの 定義にある「誤った医療を行ったことが明らかであり、その行った医療に起因して、 患者が死亡した事案」という言葉が、医療機能評価機構の医療事故情報収集等事業に 基づいているということは承知していますし、それから変わったことをやるものでは ないというところは非常にわかりやすかったと思います。しかし、この言葉自身はあ まりわかりやすくはないので、世界に初めての組織を作り制度を作るというのであれ ば、この際、もう一度これにとらわれないで、思い切ってもう少しわかりやすい言葉 に置き換えて、この流れ図ももうちょっと整理できるのではないかと思います。その 内容については、この間事例も挙げていただいて検討はしたと思いますが、何とかこ の文言がもう少しわかりやすくならないかと思います。それも含めて第三次試案では 検討していただければと思います。 ○前田座長   わかりました。全く異存はないのですが、参考資料は議論してこういうふうにして いますが、これをもう少しわかりやすいものに直す努力は必要だと重く受け止めたい と思います。いまのご指摘に関して一言、私のほうから申し上げさせていただくと、 いろいろなところで医療界から声が聞こえてくるというのは、私は医療界の外にいま すから聞こえてこなかったのです。ただ、ここのところ体調を崩してお医者さんのお 世話になるので病院にずっと行っていたら、ただで読めるロハス何とかという雑誌が 置いてあったのです。それを見たらここの会のことが書いてあるのです。ただ、明ら かに誤解というか言葉が伝わっていない。ものすごく大きなずれがある。いま山口先 生がご指摘になった重大な過失というのは、結果が重いものと言ったら死んだのを届 け出るのですから、全部重過失になってしまうのです。そんなことはもともとの大前 提で話していないのですが、議論される方は重大な過失に全部入ってしまうよと書い ているのです。これはとんでもない間違いで、医療の常識から言って、あまりにも医 師として外れているというのが重過失なのです。その辺のところを第三次案という形 にするのがいいかどうかですが、わかりやすくするということ。  我々にも責任があって、当然すぎるぐらい当然のことだと思っていたことが、必ず しもそう取られないのではないかということです。届出義務も、ペナルティが付いて いるのだから結局、医師が全件届けなければいけないと書いている人がいるのです。 これも明らかに議論をねじ曲げています。法律家から見たら非常にまずい議論の仕方 だと思います。ただ、医師の側から見たら、そう取られても仕方がないのかなという か、それに対してわかりやすく説明していく義務を、ちょっと怠っていたのかなとい う感じはしています。その意味で、各委員からご指摘があったことは私もよくわかり ましたし、その意味で書き直して三次案ということで最後にまとめさせていただきた いと思います。 ○木下委員   同じことですが、この制度の説明に私はあちこちに参ります。そこではいちばん心 配しておられる勤務医の先生方になるべく集まっていただき、ご説明するということ をやってきました。先ず、樋口委員がお話になったような新しい死因究明制度の理念 を説明し、具体的に、いま何故にこういう医療安全調査委員会を作る必要があるのか ということから、もちろん医療安全調査委員会への届出の範囲を含め、調査委員会か ら、捜査機関へ通知する限定された事例の問題等、わかりやすく話をいたします。そ れでもなおかつ心配なさることは、調査報告書は重大な過失だけでなく、ほかの事例 では警察に用いられないのかというようなことです。その様な解答は、既に書いてあ るにもかかわらず、疑念は、なかなか払拭されません。  例えば重大な過失というのはどういうことなのか、この検討会で、たびたびご説明 いただいており、大変わかりやすいのですが、なかなかそういうことが、すべての医 師には、伝わっていません。そのために深読みしすぎるということもあって心配して いるということはあります。しかし、私がここで先生方から聞いたいろいろなお話、 今後の方向というのをきちっと話しますと、最後にはわからなかった方たちですら、 これでいいんだ、是非頼むということのお話がございます。ごく少数ですが、どうし ても反対だという方もあります。例えば医師法21条はそのままでいいのだと、警察 の方は、日ごろから仲良くしているから何も怖くないのだという方も実はいるのです。 これはどうにもしようがないのですが、我々の取り組みは、制度上の問題を解決する ことであるからこそ、その新しい仕組みを考えているのだということを縷々説明しま すと、ほとんどの方にはご理解いただいています。  ただ、そこで最後に言われることは、私の話したことがそのとおりになるならよろ しい。しかし、それがどこにも書いてないではないかといわれます。そこで第三次試 案等は、いまのような疑問にきちっと答える形で是非書いていただきたい。我々がど んなに書いたり話しても、書いたものはなかなか読んでいただけませんし、最終的に は厚労省から出す公の文書がすべての基になるわけですから、その辺、いま申し上げ たようなことを踏まえた文書にしていただきたいというのが、第1の願いです。  具体的なことで1つお伺いしたいのは、8番目のところです。先ほど皆様方が心配 していらっしゃることの最大の問題ですが、8の最初の○で(1)、(2)ということで、こ ういうふうなものは届け出て警察に通知すると書いています。自民党案では、その後 に「通知したものに限るのだ」ということがきちっと明記されていましたが、今回、 あえて書いてありませんが今まで議論したことを明らかに文書に書いていただくこ とが、すべての解決策になるのではないかと思います。すべてのことを書くというの は難しい問題でしょうが、運用の問題も含めて書いていただきたいと思います。 ○前田座長    いまのはよろしいですか。ほかにいかがですか。 ○楠本委員  先ほど堺委員から、看護のほうは概ね何も意見が出ないというお話がありました。 先般、看護協会として見解をお出しして、概ね第二次試案に賛成の立場で意見を申し 述べました。大事なことは事故が起こった当該医療施設で外部委員を入れて、何故に 起こったかをきちんと分析していくこと。そのプロセスをちゃんと追っていくことで、 どこに、どういう不具合があったかということが本当に見えてきますので、それをし っかりやることを第一義的に取り組むべきです。いま、たぶん、しっかりともうやっ ていらっしゃると思われる規模の病院については、届出を義務付けたりする必要があ るのではないかと申し上げました。  なぜ義務付けかと言いますと、いま、日本  日本医療機能評価機構の事故防止センターのほうに報告されている事故情報の報告 の数字は、600以上の施設が報告しているということになっていますが、あまりにも 数が少ないと思えてならないのです。法令で定められている260施設でもきちんと報 告されていないものが、自律的というと上がってこないことが懸念されますので、そ こは報告すべきとするのがいいと思っています。その取組みができない所に向けて、 支援する体制をきちんとするということは盛り込まれていますが、そこを是非お願い したいということです。  先週、日本での医療安全の取組みのきっかけになった、横浜市大の当事者の行政処 分が発表されています。行政処分が当該看護師2人には各1カ月ずつの業務停止とい うことです。これまで9年かかっていて、今更の行政処分ということで受け止めてい ますが、このような事故が今の、解剖を中心とした報告だけということになると、と ても上がってこない。社会を震撼させたような事故が、本当に取り上げられなくてい いのかということを思いますので、是非、幅広い届出の窓口にして、そこでトリアー ジのようなことをちゃんとやっていくことが必要ではないかと思っています。  行政処分については、委員会からの報告を基に、たぶん医道審議会等々で行われて いくと思いますが、現在の医道審議会では、それぞれの資格・身分法に則った行政処 分という考え方だけですので、当該医療施設への勧告といった形での、処分という言 い方はしたくないのですが、そういう勧告ができるような体制にはありませんから、 そこのところを木下委員からのご発言もありましたが、何か医道審議会に告げるとし ても、それまでの段階での事務局での作業なり、そういうところの専門家なりといっ た仕組みが必要ではないかと思っています。  もう1つ、私どもにも一部の医師の方からアクセスがあり、ディスカッションをし たりしてきていますが、感覚としては、すごくしっかりと取り組んでいらっしゃる医 師の方々が怒っているというか、そういう状況ですので、このことがどういう意味な のか。警察や司法が限りなく入らないようにしていくための仕組みなのだということ を、どこかでしっかりわかるお話を、医師のサイドでやっていただけたらと思ってい ます。看護は、少なくとも起こったことをちゃんとテーブルの上に上げて、みんなで 共有していこうという文化で進んでいますので、そこのところは懸念は持っていませ んが、ただ、司法、警察に関しても別にウェルカムで、自動的に流れるようにしたら いいとは思っていません。これまで55年間に医療過誤による刑事の処分を受けた例 数は、私が知る限りでは医師が60例、看護師が40例ということで、医療行為の多さ に比較すれば看護は最終行為者である故に、かなり処分を受けています。  ただ、それを恐れるあまりに、真実をちゃんと追求して再発防止に取り組んでいけ ないという、そういう文化にしてはいけないと思っていますので、看護は本当にさま ざまな取調べの中で壊れていく人たちも多いわけですが、そういうことを置いても支 援はちゃんとする仕組みを作りつつ、警察も司法も含めた共有の場をちゃんと作って いく。この取組みがとても大事ではないかと思っています。 ○前田座長    ほかに、いかがでしょうか。 ○山本委員   これは繰り返し申し上げているところですが、私自身は民事紛争の処理の立場で、 そのような立場から見ても、このような委員会ができて適切に医療事故の真相が解明 されることは、非常に重要なことだと考えています。現在はそのような真相解明の場 が一部、民事訴訟の中に委ねられており、年間1,000件に近いような訴訟が提起され て、その中で、裁判官、弁護士を含めて法律家がその真相解明に当たっている。もち ろん鑑定手続等で、医療の専門家の援助を受けながら解明に当たっているわけですが、 それは非常に困難な作業であり、またそれは当事者の側から見ても、必ずしも満足の いくようなものにはなっていないとも思われるわけです。そういう意味では、このよ うな委員会で医療の専門家を中心とした真相解明の場が設けられるということは、非 常に重要なことであると思っています。  そのような紛争解決につきまして、先ほど豊田委員だったと思いますが、院内メデ ィエーションの話も出てきました。そのような医療機関内部で紛争解決を図るのは、 おそらく厳密な学問的定義ではADRという言葉は使わないのだろうと思います、しか し、そういうメディエーションの仕組みというのは非常に重要なものだと思います。  それとともに、外部で第三者が仲介するような形で行われるもの、これは学問的に はADRと呼ぶと思いますが、そういったものが相互に連携を取りながら、あるいは適 切な役割分担を果たしながら、紛争解決を図っていくことは非常に重要で、これは国 際的な潮流でもあると思います。ISOという国際的な規格を作る場がありますが、そ こでISOは現在、10000シリーズというものが作られています。紛争解決の国際規格 ですが、その中ではISOの10002というのが企業内部の紛争解決で、これはInternal Dispute Resolutionというふうに言いますが、これを医療の場に当てはめれば今の院 内メディエーションに当たるようなものだと思います。このISOの10002と、ISOの 10003というのは外部の紛争解決というので、External Dispute Resolutionと言い ますが、これは厳密な意味でのADRに当たるものだと思います。そういう国際的なス タンダードを確保するための規格が作られています。そういう内部での紛争解決、外 部での紛争解決を通して顧客の満足を図る。この場合、顧客と言うのが適当かどうか わかりませんが、患者さん等の満足を図っていくことは非常に重要なことだというの は、国際的にも認識されているところだと思います。  そういう意味では、院内メディエーションあるいは外部でのADR、さらに最終的な 紛争解決手段である裁判を含めて、医療事故の紛争解決システムとして、どのような ものが適当なのかということを考えていく作業は、これから非常に重要なものになっ ていくだろうと思います。第二次試案にもありましたようにADR機関や裁判所、ある いはこれは保険の問題も関わってくるだろうと思いますし、もちろん医療側、患者側 を含めて、そういう適切な紛争解決のシステムを作り出していく協議が、非常に重要 になってくるだろうと認識しています。 ○前田座長   あと資料1に関して、最後の10番というのは前から議論していました。私は刑事の 人間なのでちょっと気になるのですが、捜査と調査の関係について、仮に遺族が警察 へ届け出たとしても、具体的な調査は委員会に任せるように制度的に仕組みを作って しまうというのは、なかなか難しいのです。捜査の対象として警察に届け出たら、警 察は捜査しなければいけない義務があります。要するにこの委員会づくりで1つだけ はっきりしているのは、今まで産婦人科の学会からもお手紙をいただいたのですが、 今回のだとむしろ厳しくなるみたいなことが書いてあるのです。大野病院事件みたい なもので、産婦人科医から見て明らかにおかしい者が、逮捕されたり起訴されること をなくすために今度の委員会を作ったのです。  ただ、100パーセント、この委員会だけで判断できるかというと、そうはいかない というのは残るかもしれない。やはりこの委員会がうまく動くようになって信頼関係 ができてきたらば、ほとんどすべてのものがその委員会に乗っていくということなの だと思います。  先ほど樋口先生がまとめられたところは私も全く同じなのですが、曖昧な基準だと おっしゃるけれども、いまのやり方だと、医師から見たら全く関係ない素人が判断し て、逮捕したり起訴したりということでいってしまう可能性が非常に高い。ところが、 今回は原則として重大な死亡事故に関してこの委員会に投げれば、そこでフィルタリ ングして医師の目で、これはまずい、重過失だというものしか刑事に進まないという 制度なのです。それが、どこで取り違えたか逆転の発想になってしまっていて、これ は表現の仕方でこちらに責任がなかったわけではないかもしれませんが、説明を考え なければいけないと思います。  ですから、今度の制度ができることによって届出の範囲にしろ、刑事に送る範囲に しろ、そんなに無制限に広がるということはあり得ない。特に医療の世界みたいにい ろいろな意味でガイドラインみたいなものが発達していて、それを共有している社会 で、めちゃくちゃなことはあり得ないし、この制度ができたら、この委員会における 医師の専門家集団の基準を圧倒的に重視せざるを得なくなる。今までとはそこが決定 的に違ってくると思います。  ただ、そういうことが伝わらない構造というのは私は理解不能だったのですが、現 実に伝わっていない面があるのだとすると、説明をきっちりしていかなければいけな い。先ほど木下委員がおっしゃったように、厚労省の文書の中で、そういうものがわ かりやすい形で出ていることが大事だというのは、そのとおりだと思いますので、是 非、明確にする努力はしていっていただきたいと思います。児玉委員は遅れて来られ ましたので、もし何かありましたら、どうぞ。 ○児玉委員  私は個人的に紛争処理という言葉が嫌でして、紛争解決でありたいと思っています。 先ほど豊田委員、山本委員からご発言がありました点について、わかりやすい話が大 事かなと思います。もともとインフォームド・コンセントというのも横文字のままで すし、リスク・マネージャーも横文字でしたし、インシデンタル・アクシデントも横 文字で、もともと英語で使われている文脈と、日本に入って来てずいぶん変わってき ている部分もあります。  私も大変勉強になりましたが、学問的に厳密に言えば、内部の紛争解決(Internal Dispute Resolution)と、外部の紛争解決(External Dispute Resolution)の2つ に分かれて、そのうち外部のほうのExternal Dispute Resolutionが、いわゆるADR (Alternative Dispute Resolution)ということです、こういう話をしていても何と なく英語の講義のようで、ちょっとわかりにくい。やはり新しい横文字を使って議論 が混乱するよりは、おそらく紛争解決するもので、第1、第2、第3のファクターが あるのではないかと個人的に思っています。第1は事実は何かという認識を共有する こと。第2は医療者と患者が対話をすること。それでどうしても評価が分かれるなら ば、第3として公正な第三者的評価を行うこと。これについてはそんなに大きな異論、 議論が出てくるところではないと思いますので、そういう足場が適切に広がるような 委員会の活動になっていけばと思っています。 ○前田座長   ほかに、ありますか。もしよろしければ時間は若干残っていますけれども、昨年の 10月に厚労省が第二次試案をおまとめになって出されて以降、今日を入れると6回議 論をしてきたわけです。今日もたくさん出されましたけれども、第二次試案で説明不 足の部分もあったし、新たにここで議論いただいたことによって明らかになった部分 もあったということだと思います。これまで検討いただいたいろいろな論点、出され た意見、かなりの数のパブリックコメントも寄せていただいているわけです。その他、 さまざまな団体からも、厚労省にも意見が寄せられていると聞いていますが、いまの 段階として厚労省において第三次試案について、ここでの議論でいろいろ注文もあり ましたけれども、もちろん主体的には厚労省が作るということで、是非、作成をして いただきたい。今日の議論を聞いていて、委員の中で異論のある方は少ないと思いま す。ないと言ってもいいと思います。その意味で、僭越な言い方ですけれども、第三 次試案を是非お願いしたいということです。 ○総務課長(二川)  前々回の検討会で第三次試案を出すべきといったご意見がありました。その段階か ら私個人としては、そうだなと思い始めていたわけです。本日もそういったご意見が 強く出ていまして、いま座長からもそういったご要望をいただいたわけですが、私ど もとしてもご要望について受け止めなければならないと思っているところです。  これまでの議論の進み方をもう1回整理させていただくと、一昨年のあの事件を契 機にして、私どもとして何かこういった仕組みづくりを考えなければならないという ことで、昨年の3月に「課題と検討の方向性」というものを出しました。それは今か ら思うと一次試案ということですが、それで4月にこの検討会を発足させ、夏ごろま でにかなりご議論いただいて、「これまでの議論の整理」というものを出していただ いた。そういったものを参考にしながら、あるいは検討会以外のご意見もいただいた ものですから、それらを踏まえて10月に第二次試案という形で、一次試案よりもう 少し肉付けをしたものを出しました。  その後、自民党あたりでは議論がさらに進められたといったこともあります。そし てこの検討会でも議論を進めていただいて、明確でなかったところを明確にしていた だいたり、こういうところが誤解されているといったご指摘もいただいたわけです。 そして本日、二次試案以降について、今日いただいた意見もこれにプラスしていかな ければいけないわけですが、そういった形での意見の整理が進んできたという状況で す。私ども厚生労働省としましても、考え方をもう一度整理する時期に来ていると考 えている次第です。そういった形で私どもも考えてまいりたいと思います。 ○前田座長   それでは是非、よろしくお願いしたいと思います。先ほど申し上げたように時間が 少し残っていますが、本日はこれで閉会させていただきたいと思います。お忙しい中 を委員の先生方、ありがとうございました。 (以上) (照会先)  厚生労働省医政局総務課医療安全推進室   03−5253−1111(2579)