08/03/06 治験中核病院・拠点医療機関等協議会議事概要 平成19年度第2回治験中核病院・拠点医療機関等協議会 議事要旨 日時 平成20年3月6日(木)13:30〜16:00 場所 財団法人 がん研究振興財団 国際研究交流会館 国際会議場 ○ 開会挨拶 外口 医政局長   革新的な医薬品や医療機器を我が国の医療現場に速やかに導入し、世界最高水準の医 療を国民に提供するために、治験や臨床研究は大変重要なプロセスである。  厚生労働省と文部科学省で策定した「新たな治験活性化5カ年計画」を平成19年度よ り開始し、治験・臨床研究の実施環境の整備に向けて取組んでいる。中核病院、拠点医 療機関、橋渡し研究支援推進プログラムご参加の皆様と連携するこの協議会を設置した ことは成果のひとつである。  本日は、「新たな治験活性化5カ年計画」の初年度報告と、次年度の課題の整理が議題 となっている。1年間の取組みを振り返り、次年度以降も治験や臨床研究の迅速化と質 の向上を図り、国際的に魅力ある環境づくりに向け、活発な議論がなされることを期待 する。 ○ 協議会設置要綱改訂について  資料1に沿って、事務局より協議会設置要綱の改訂について説明(2月1日付で、文 部科学省内で、橋渡し研究事業の担当が、ライフサイエンス課から研究振興戦略官付に 変更したことに伴う改訂)。 ○ 会長挨拶  治験中核病院・拠点医療機関の皆様、楠岡先生をはじめ幹事会の皆様には大変お世話 をいただいており、厚く御礼申し上げる。  本日のプログラムの前半は、行政や治験促進センターからの報告、後半は医療機関に おける取組を発表いただく。 ○ 初年度の活動報告、次年度の課題 厚生労働省医政局研究開発振興課長 新木一弘  本日は、今年度の取組、また来年度の方針について説明する。 ・ 「新たな治験活性化5カ年計画」初年度報告  中核病院・拠点医療機関を指定し、協議会を開催した。治験の書式の統一化や、平成 18年度実績等のベースライン調査を実施した。この協議会全体、病院群のパフォーマン スを見ていく上で大変重要な資料が得られつつある。  治験や臨床研究を実施する人材(CRC、ローカルデータマネージャー、IRB委員)に対 する研修を行った。受講者数や研修内容について見直し、さらに良いものにしたい。日 本医師会治験促進センターや臨床研究基盤整備推進研究事業(教育型)研究班によりe ラーニング等が作成された。  国民への普及啓発として、臨床研究登録情報検索ポータルサイトの開設、製薬協によ るキャンペーンが実施された。  治験の効率的実施については、12月21日付で、治験の契約等に係る書式の統一につ いての通知を発出した。簡素化・統一化を図ったので、改変せず使っていただきたい。 治験全体の情報化、IT化については課題が多く、引き続きご協力いただきたい。  臨床研究に関する倫理指針の改定は今年の夏に向けて見直しをしている。倫理審査委 員会の在り方、被験者の健康被害の防止や救済制度、無過失補償の構築等について議論・ 検討している。  「有効で安全な医薬品を迅速に提供するための検討会」や「治験のあり方に関する検 討会」報告書を受けて、具体的な見直しやGCP省令の見直しが進められている。 ・ 来年度の課題について  さらに改善を要する事項として、手続期間の短縮、郵送での書類受付、情報公開、治 験実施のインセンティブ向上への取組、CRCのキャリアパス構築、治験に参加した被験 者への情報公開や、普及啓発活動等がある。  平成20年度に平成19年度の実績報告を得たい。5カ年計画は、中間年で見直しをす ることになっており、その一環として、中核・拠点についても入れ替えを含む見直しを する必要があると考えている。何を評価項目とするか検討中である。是非実績を上げて いただき、来年この同じメンバーと、同じようにここで会えることを期待する。  医師のキャリアパスについて、非常に悩んでいる。若い医師に臨床研究・治験にどう 興味を持ってもらい、将来展望が開けるような環境を構築していくかについては、医療 界・医学界の先生方と今後とも相談をしていきたい。  行政からの要望として、医薬品医療機器総合機構で、特に医師と生物統計家が足りな いと言われており、こことの人事交流にもご理解をいただきたい。審査経験者がいる医 療機関では、非常に活発な治験や臨床研究を行っているということも聞いている。  医療機器の治験や国際共同治験も進めていきたい。 ・ 平成20年度に達成していただきたい目標  新規治験課題数(30)、実施率(80%)、IRBの毎月開催、CRC総数(10〜20)、治験・ 臨床研究に関するセミナー開催(最低2カ月に1回)、質の高い臨床研究実施件数(5〜 10)、オーファンドラッグや特殊領域の治験等の実施、統一書式の導入等。 ・ 最近の治験の動向  国際共同治験も治験届出数も伸びている。ますます上向くよう引き続き協議会メンバ ーの皆さんの活動を行政としても支援したい。 ○ 革新的な医薬品の創出に向けた文部科学省の取組                     研究振興局研究振興戦略官 倉崎高明  文部科学省では、治験関連人材の養成を掲げた大学院の設置や、大学での人材養成の 取組への支援を実施している。研究開発としては、大学病院における治験関係の実施体 制の整備、科学研究費補助金における基礎研究の着実な推進、「橋渡し研究支援推進プロ グラム」の推進などを行っている。 ・ 橋渡し研究支援推進プログラム  実用化が見込まれる有望な基礎研究の成果を開発している大学等を対象に、その開発 戦略の策定、試験物の製造などの橋渡し研究の支援を行う拠点として6拠点(8機関) を選定。  他機関からのシーズの開発支援を行えることを目指し、開発戦略策定の支援を行える ような機能を整備するとともに、生物統計家等、必要な人材を確保・育成できる体制を 整備。  5年間で1拠点当たり2件ずつ治験の段階に移行できることが目標。各大学等から、 産学連携の強化、細胞・再生医療に特化した拠点、医工連携を強化する拠点等、特徴を 持った形で提案をいただいている(取組状況は資料3参照)。先端医療振興財団は、橋渡 し研究を支援するとともに、全体をサポートするという位置付けで採択されている。  本プログラムはプログラムディレクター、プログラムオフィサー、プログラム評価委 員により進捗状況の評価や助言を受けながら進めていく。  3月15日に東京国際フォーラムで、成果報告会を開催予定。 ・ 人材育成、環境整備  「臨床研究・研究支援人材の養成」として、臨床研究者や研究支援人材の育成に係る 優れた大学の取組を支援(平成19年度は7大学)。  大学病院連携型高度医療人養成推進事業で、医師不足の課題も含め、複数の大学病院 が連携し、高度な臨床研究者の養成など、多様な医療人養成の取組を支援予定(平成20 年度新規事業)。  大学法人の運営費交付金や特別教育研究経費として、各機関での取組を支援している。  また、環境整備として、様々な大学との連携でアライアンスを組む、ネットワークを 組む、寄付講座を設置する等の取組がある。 ○ 治験推進地域連絡会議等の報告             (社)日本医師会治験促進センター 研究事業部長 小林史明                             企画開発室長 田村典朗 ・ 治験推進地域連絡会議  昨年度まで医療研修推進財団が全国7地区で年1回開催していた治験推進協議会を、 大規模治験ネットワークや、中核・拠点、関連医療機関との連携、研修の推進をすると いう役目を担う治験促進センターの主催で実施した。   昨年11月の運営幹事会で、開催地と内容を決定し、1月から2月にかけて福岡、東京、 大阪の3カ所(医療機関)で開催した。特に対象者の所属等に縛りは設けず、製薬企業、 CRO等からの参加者も多数あり、3カ所で800名を集めた。  前半のプレゼンテーションは3地区共通で、厚労省、文科省、統一書式の話。業界か らはPhRMAとEFPIA 2つの団体が1つのスライドで、医療機関に対してのメッセージを もらう形で進めた。後半は、それぞれの地区の中核・拠点の方々から約20分ほどのプレ ゼンテーションをしていただいた。来年度の開催については運営幹事会でも議論したが、 秋以降に、東京、大阪他3カ所程度で開催する予定である。  今年度は山口、広島、岡山の拠点医療機関が中心となり、同様の会合が開かれた。来 年度も、このような取組が各地区で行われることに期待したい。 ・ 中核・拠点の協議会ホームページの活用  「開催予定会議の登録」欄にて会議の名称、日にち、場所、申込み期間、主催者等の 情報、開催案内等を掲載できる仕組を用意した。ある程度決まった計画は登録し、他の 研修・会議との日程調整に活用してほしい。 ・ 治験促進センターの活動報告  本日報告した会議の他、製薬企業と地域の治験ネットワークの合同フォーラムの開催、 浜松での国際共同治験推進会議の主催、CRCのあり方会議や臨床薬理学会でランチョン セミナー等を実施した。eラーニングを使った人材育成のプログラムの開設(2月中旬 本格オープン、ユーザー登録900名)、製薬協の「チーム・治験」キャンペーンの後援、 統一書式や支援ツール作成の事務局等も行った。 ・ 統一書式の入力支援システム  統一書式の通知に基づいて、文書を作る際の効率的な運用に資することを目的とした システムである。治験の電子化を目的としたものではなく、いわゆるワープロソフトの ようなイメージである。作成した各文書の電子的な保存はできるが、体系的な保存管理 までの設定はできていない(使用者による管理)。  治験課題名、責任医師名等の情報は複数回入力する必要はない。誰かが作成した文書 を保存して相手に送る(データの書き出し)機能は担保している。入力可能な情報範囲 以外には入力できない。枠のサイズは変更できない(自動的に文字が小さく表示される)。  ソフトウェアの入手方法は、治験促進センターのWebサイトからのダウンロードか CD-Rの準備を考え中。ファイルサイズがかなり大きいが、できるだけダウンロードをご 利用いただきたい。来週公開したいが、皆様からのご意見を伺い、機能追加(バージョ ンアップの情報公開)をしたい。 (質疑) Q Macでも動くのか。 A Macでは対応できず、いまのところWindows XP 2000を対象とするシステムとして公 開予定。  来年はブラウザ型のものでOSのタイプに依存しないものを公開したい。 パネルディスカッション(治験中核病院と拠点医療機関の活動紹介)  座長 協議会 副会長 / 運営幹事会 幹事長     (独)国立病院機構大阪医療センター 院長 楠岡英雄  協議会の活動を含め、治験及び臨床研究の推進へのご協力に感謝する。  治験中核病院・拠点医療機関等の実態、活動状況の紹介を、パネルディスカッション 形式で進めたい。それぞれの機関でいろいろな取組をされているが、今回は事務局から 4施設を選び、発表をお願いする。各医療機関で類似の取組例があれば後ほどコメント 等をいただきたい。 ○ 開業医・専門医との連携体制整備をめざして−治験対象患者紹介の事例−      (独)国立病院機構大阪医療センター 治験管理センター長 是恒之宏  大阪地区では治験連携の推進を図るため、中核・拠点の他、医師会や大阪医薬品協会 等によるワーキンググループ会議を発足した。  病診連携による治験推進を目指してモデルケースを走らせた。まずは患者さんが参加 しやすく、開業医が説明しやすい治験で、治験責任医師は経験豊富な医師を選定した。 大阪府医師会にもご理解、ご協力をいただき、比較的短期間に開業医の先生方へ依頼す ることができた。依頼者は、初めての試みでもあり戸惑いもあったが、最終的には、厚 労省からの見解もあり、了解を得ることができた。患者を抱え込むのではなく、これを 機会に、より病診連携、逆紹介が推進されることを期待したい。また、このシステムを 定着させるためには、開業医の先生方のインセンティブは何かということを今後考えて いく必要がある。 (質疑) Q 開業医にどれだけの情報を提供したのか。製薬会社名や開発コード名は出したのか。  守秘義務契約を結んだか。 A 依頼者との相談により出せる範囲で出した。「こういう疾患を対象とした新しい薬」と、  薬の種類は書いたが、具体的な薬剤名は記載していない。 ○ 治験業務の効率化・迅速化に向けた中核病院の改善報告                    慶應義塾大学医学部 教授 武林 亨  中核病院として治験業務の効率化・迅速化に向けて取り組んだ具体的報告をする。  件数と実施症例数は上がっている。これからは、国際共同治験や医師主導治験を実施 できる体制を構築するため、治験業務の効率化・迅速化、支援体制の整備が必要と考え た。臨床研究を含めた指揮命令の統一や、開発の経験を持つ医師やデータマネージャー をリクルートした他、期間短縮について、横断的な業務改善のプロジェクトチームを作 り、実際の期間を数値化した。依頼からIRB承認まで、4〜5週ぐらい短縮された。「事 前対応型から事後対応型へ」シフトすることと、IRBの本来の機能を発揮することで短 縮できた。遅くとも6月までには新たな統一書式を導入し、更に手続の簡素化を行いた い。  被験者保護の観点を守りつつ、事務手続の簡素化を図ることや、国際共同治験(英語) を審査できるIRBについて課題である。逆に依頼者側から「もう少し時間が欲しい」と 言われる例もある。  治験責任医師の依頼者との十分なコミュニケーション、あるいは治験責任医師の治験 の内容の把握ということがスピードにも大きく関わってくる。  実施期間と達成率をグラフでみると二極分化の傾向がある。治験担当医師や診療科の 理解や熱意にもよるが、今後、IRB承認からFPIまでの期間短縮を図りたい。  多忙な現場の中で、どれだけ治験に時間を割けるかは大きな課題であるが、患者が待 ち望む薬剤の治験は早く進んでおり、より良い治験を入れるような体質に変えていく他、 治験費用の見直しも重要であると考えている。  臨床研究費のポイント計算の見直しにより単価が6〜7%下がった例がある。さらに、 研究費算定や、臨床の医師に必要な費用についての見直しを行っていきたい。     ○ 国際共同治験の円滑な実施に向けた取組 新潟大学医歯学総合ちけんセンター CRC 小柳やよい  「院内調整」と「チーム構築」を図り、円滑に実施できた、腎領域の国際共同治験の 例を紹介する。  国際共同治験ならではの課題として、MRIの海外送付、国際貨物の送付、IVRS登録時 の数字の聞取り等に戸惑いを感じた。モニターによる海外送付や登録手順の紹介は実践 するCRCにとって戸惑いを軽減するものであった。また、世界同時進行に由来する安 全性情報や実施中の情報量が少ない中で、担当医師の役割と責任の大きさ、判断の重要 性を感じた。  その他、避妊の徹底、3週間連続の1泊2日の入院(ベッドの確保)等の困難に対し これらの課題への対策として、スタートアップ・ミーティングのときにベッド管理担当 医師の出席、すべての病棟師長への説明の実施、クリニカル・パスの作成、具体的なシ ミュレーション等を直接関わるスタッフに向けた院内調整を行った。  責任医師をリーダーに大きなチームを構築することを意識したことと、コーディネー ターとして、そのチーム員が疲労しないための具体的な対処を一緒に考え、喜びを共に していくことで、モチベーションも上がり、質の確保もできたと振り返る。そして、C RCには国際共同試験のみならず、被験者保護の視点、創薬ボランティアの安全を見守 る大切な役割を発揮する必要性も再認識できた。  今回、エントリーもスムーズに行えた要因に、医師のモチベーションが非常に高かっ たこと、地域の研究会参加医師も関心が高く、患者を紹介してくれたことが挙げられる。 遺伝性疾患ゆえに積極的な治療がなく、「自分の子どものために、将来のために」と受け 止めた被験者の思いを聞く機会に出会うたび、国際的に望まれる薬が、被験者に対し安 全に使用されているのかを見極められることがチームに求められていると感じた。   ○ トランスレーショナルリサーチの実践サポート            大阪大学医学部附属病院未来医療センター 准教授 松山晃文  科学技術施策・政策パッケージということで、ベースに「第3期科学技術基本計画」 があり、それを支える3本の柱として、「イノベーション25」、「新健康フロンティア戦 略」並びに「革新的医薬品・医療機器創出のための5か年戦略」がある。そして「革新 的医薬品・医療機器創出のための5か年戦略」の中に、世界最高水準の医薬品・医療機 器を国民に迅速に提供とあり、この中にTR、中核・拠点病院の施策がある。  前臨床からMega Studyまでの流れの中で考えても、厚労省の医療クラスター、中核・ 拠点病院の体制整備は一貫した流れになっている。文科省では、橋渡し研究支援プロジ ェクトと医療人養成プロジェクトが一貫した流れになっている。さらに経産省でも、NEDO が支援している研究がある。  未来医療センターには、細胞の採取から患者さんへのアプライまで一貫した形にでき るよう様々な部門がある。いちばん大事なのが教育人材育成部門ではないかという認識 を持っている。また、目標はTRが日常医療へ定着すること、産業化であるという認識を 持っている。  実際は、シーズを収集・評価し、研究企画とし、どうしたら科研費が取りやすいとか、 そういうコンサルテーションを含めた支援を行っている。  知財本部とカップリングして、比較的早期の段階からパッケージングとして知財をお さえられるよう、最終的には、シーズ収集の評価から医療への展開を目指している。  現在10個のシーズ(その下に20個くらいの待機)の支援をしている。  WT1ペプチドはもうすぐ治験に入る。癌遺伝子治療は臨床研究に入って3年後を目処 に治験に入ってくる。この拡大の部分は、今現在治験申請に向けて準備中と伺っている。 再生の部分は諸般の通知等があり難しいが、1つか2つぐらいは何とか持っていきたい。 いちばんうまくいっているのが、先日NHKのニュースで話題になった、澤教授が行って いる、重症心不全に対する自己骨格筋芽細胞のシート移植による治療法の開発である。  今はすでに知財資本主義の時代になっている。論文・学会などで発表する前に知財を おさえる必要がある。知財のパッケージ化やクロスライセンスも必要。TRの根幹は知財 という時代に来ている。将来的には研究開発部門と教育部門、知財部門、工学系、歯薬 理学系等との研究融合で「TRは本当に実現できたね」と言えるようなプラットホームを 作りたい。 (質疑) Q WT1ペプチド等の治験は大学発のベンチャーなのか、企業側の治験として売り渡して いるのか。また、産学連携のリエゾン部門として具体的にどのような活動をされている のか。 A WT1はパテントの問題で2系統ある。1つは企業側にパテントを渡している部分で、こ れは企業が企業主導の治験をされると伺っている。  WT1のペプチドは何種類もあり、企業が求めるのはブロックバスターである。WT1の中 でもすみ分けをして、日本で日本国民の健康・福祉に資するというようなものがあれば、 それを大学で積極的にサポートできるとよいのではないか。  リエゾン部分は非常に難しい。おそらく、かなり大上段なところからやろうとしても、 うまくいかないし、共同研究という形で始まると、パテントをほとんど企業が持ってい き、大学に知財が残らないという現実もあり、ヒューマンサンプルを使ったという病院 でしかできないところから我々は第1歩を、もう1回スクラップアンドビルドでさせて いただいている。 (パネルディスカッション)  発表者に 日本製薬工業協会 医薬品評価委員会委員長 中島 和彦 氏、日本医 療機器産業連合会 GCP委員会 委員 上崎 勇一 氏の2名を加えパネルディスカッ ションを進める。 ○西川(三重大学)紹介側、開業医の先生のインセンティブに非常に困っている。画期 的な新薬の場合、開業医の先生は一生懸命紹介してくださるが、それ以外の治験の場合、 非常に難しい。何かいい解決方法はないか。 ○是恒氏 いまのところない。金銭的なバックができればいいが、そういうシステムは 整っておらず、研究費から払うことはできない。今後の課題である。いま我々ができる のは、その開業医の先生方から、今度紹介していただいたときは、心よく引き受けると いう形でしか対応できてないのが現状である。 ○古賀(久留米大学) 医師主導の臨床研究は、患者への補償や治験保険のようなもの がないと思うが、どのようにクリアしているか。 ○松山氏 難しい問題である。いまのところ通常の医師保険で対応するしかないという ところが現状である。治験は、損保会社と直接交渉していると伺っている。保険料がか なり高く、1つのプロトコールで1,000万円かかっているという話を聞く。それをどこ から捻出するかで、医師主導型治験をしている所は苦しんでいると伺っている。 ○清水(京都大学) がんの臨床試験では、有害事象か原病の悪化で亡くなったかわか らず、その場合には保険自身が成立しない。これは企業治験でも同じ。そういうケース は医療補償以外はないと思う。逆にPMDAの申請・審査を通るだけのデータがあれば、結 局同じことです。そこで安全性の問題が確保できるので、いわゆる臨床研究のレベルは いま全く受け付けできないと伺っている。 ○松山氏 発言を訂正する。 ○楠岡座長 日本医師会の医師主導治験ではどうしているのか。 ○小林氏 保険料は、企業治験とは大差ないと思う。ただ、その金額としては先生方の イメージよりはたぶん高いという意味で松山先生もご発言なさったと思う。治験によっ ては1,000万円というものもあるし、数百万円単位というプロトコールが多い。治験で あれば、研究者の思い入れだけでは保険会社もなかなかリスク評価がしにくいという。 公立とまでは言わないが、第三者的な視点である程度の評価をしてくれるものであれば、 保険会社としても商品化しやすいということは聞いている。私どもは研究事業の中で外 部の委員会やPMDAの相談もクリアしたあとで実施という形になるので、保険会社も商品 化しやすい形を取ってきているというのが現状である。 ○楠岡座長 「臨床研究に関する倫理指針」の見直しの中で、保険の話が出ていたと思 うが、いまどのような状況か、差し支えない範囲でお話しいただけないか。 ○事務局(林) 専門委員会で補償の保険の話も含めて議論されているところである。2 月の専門委員会で損保会社の方々のお考えを聞かせていただいた。引き続き議論、検討 し、今年の夏ごろまでには結論を得たい。 ○中村(群馬大学) 治験を実施した医師の評価とかインセンティブとかに関して、何 か対策を検討されているか。 ○武林氏 実際そこまで行っていない。本来は治験の数等をカウントし、給与あるいは プロモーションに反映させるのがいちばんいいと思うが、いまのところ臨床医の犠牲的 な上に成り立っており、まだ仕組はない。次のステップとして、少し臨床の先生方の研 究費に踏み込めればと思っている。  もう1つ、「患者のために」というところがモチベーションとしては大きく、これは教 育から始める必要がある。そもそも薬が日本に入ってきてないことさえも十分には理解 されていないので、むしろそこも十分にアプローチをしないと、十分な臨床医のインセ ンティブ向上とはならないのではないか、と感覚的に思っている。 ○楠岡座長 5カ年計画においても医師のインセンティブは、非常に大きな課題になっ ている。うまくいった事例やうまくいかなかった事例を紹介いただけないか。 ○古川氏(金沢大学) 我々の大学では間接経費が30%あるが、「何のために使われて いるのかわからない」という依頼者からの指摘もあり、大学のブランドで試験を受ける わけだからと大学を20%に、80%を病院に持ってきた。そのうちの40%を治験をやって いる経費に合わせて分配をし、あとの40%が病院のいろいろな環境を整備するのに当て た。私の試算では、大体1.2倍ぐらい研究費は増えたが、一部自分の所で自由に使える 医師は満足するが、そうでなく大きな財布に入る所は満足しない。大学の事情かもしれ ないが、自分がやったわりに自分の所に返ってこないという仕組が問題ではないか。 ○質問者 お金の問題は、ある意味、医師からすると当然の報酬で、ピンハネするのが 論外という意識だと思う。インセンティブは、やったことによって大学の中でプラスア ルファとして何があるかという部分で、医局が取るのはそもそも論外の話で、それは当 然整備した上でもインセンティブはさらに必要だと思う。 ○楊河(徳島大学) 組み入れ効率は二極化しているという話は非常に興味深かった。 全体的な組み入れ効率とその病院の組み入れ効率があると思う。全国的に進んでいて自 分の所で悪いものは依頼されなくなってきた。全国的に組み入れが低いものは高くする とか、そういったことを今後考えていかないと、効率が全国的にいいものが少し減るこ とも場合によってはあると思うが、いかがか。 ○武林氏 非常に重要な点である。1つは、大学の中でやるべき治験は何かということ も随分議論した。単純に数を増やすことはやめ、比較的珍しい病気や、専門家の診察が 必要な疾患の治験は大学として、非常に効率もよくなっている。まずそこをいかにきち んとやるかが大学病院としての役目だと思っている。技術的には難しいとか、バックア ップ体制がないとできにくい治験にシフトをしながら効率も上げることを考えている。 ○楠岡座長 5カ年計画の今年が初年度といっても実際のスタートは夏ごろであり、今 年度は半年ぐらいしかなかったわけだが、この半年間で何か少し変わったかどうかとい うところをパネリストの方にお伺いしたい。まず小柳先生、CRCの立場からしてこの5 カ年計画に関していかがか。何か変わってきたという感触はあるか。 ○小柳氏 実は私はコーディネーター歴が半年ぐらいであり、5カ年計画での違いが正 直言ってよくわからない。スタッフの話を聞くと、かなり国際共同治験が増えてきたと いう。 ○楠岡座長 製薬協側から見てこの半年はいかがか。 ○中島氏 今日のご発表や資料から、かなり各医療機関においても積極的に取り組んで いただいていると思う。ただ、医療機関によってはだいぶ成果、取組み方にデコボコが あると思うので、こういったところは一層デコボコがないように積極的取り組んでいた だきたい。治験推進室や治験促進センターも、非常に限られた期間の中で積極的に取り 組んでいただいていると思う。  教育面で、個別の医療機関、大学等ではかなり高度なものを含めて取り組み始めつつ あるように理解したが、大学教育という意味で、特に医師に対して臨床研究、臨床試験 の基本的な教育がどうかは見えてないところがある。その辺がどうかを是非知りたい。  もう一方、生物統計家の育成について、新計画策定の検討会の中で、いま大学の中で 講座として持っている所はこういう所だという例示があったが、文科省として、足りて いるのかどうか、あるいは足りてないとすれば、どう取り組んでいこうとしているのか と、そういったところも製薬協としては知りたい。 ○楠岡座長 いま教育、特に基礎教育の問題が出ていましたが、文科省からもし何か、 いまの状況等に関してありましたら。担当外で恐縮ですが。 ○文科省(倉崎戦略官) 担当課長が不在だが、文科省としては基本的に大学の取組み を支援するということで考えている。各大学で是非いい計画を作っていただき、それに 対して支援していきたい。 ○楠岡座長 今回、5カ年計画の中で策定の段階でも医療機器の治験、臨床試験をどう するかはいろいろ議論があったが、医療機器は非常に幅広いものがあり、なかなかうま くまとまらなかったという経緯がある。医療機器に関して、5カ年計画は始まったとこ ろですが、少し進展を感じておられるかどうか、上崎さんからコメントはないか。 ○上崎氏 医療機器は非常に幅広く、それぞれの分野での捉え方というのもまちまちだ と思う。ただ、今日の会は初めて参加したが、こういったことを議論する場はいままで あまりなかったのではないか。例えば、いろいろな学会はあるが、なかなかこういった ことを研究したりあるいは発表し合ったりする場は少なかったのではないかと思う。特 に医療機器側の人間からしますと非常に強く感じた。ですから、こういう場を発展させ ていただいて、特に医療機器の場合ですと、今日ご参加の大学病院とか、そういう中核 になる病院にだけ被験者がいるとは限らないケースが多く、開業医や地方の民間の中小 病院辺りに患者が多いといったケースもあるので、こういった動きを徐々にそういった 所まで広げれば、医療機器にとっても大変いい環境になっていくのではないかという具 合に強く感じた。 ○楠岡座長 ほかに会場から聞きたいことはないか。 ○中村氏(国立成育医療センター) 武林先生の話のとおり、治験数はむしろ少し減る だろうと感じる。小児科領域でも治験数は減っている。例えば成長ホルモンの治験が終 わると、もとから30弱しかない数が6、7減るということもあり、関連している拠点の 小児病院はもっと打撃は大きいだろうと思っている。数を増やそうとしても、日本全体 の総数が増えないので、他の所から奪うしかなく、国内で奪い合っても仕方ない。特に 小児に関して治験の推進策を研発課に考えていただきたいし、特色を出していくことが 大事だと思う。いままでできないと言われた薬理病態試験をしようとか、グローバルに 入ろうかと考えているが、皆さんの施設でのねらいを伺いたい。 ○楠岡座長 よろしかったら是恒先生から順番に。 ○是恒氏 特にこれといった努力はしてないが、核になる医師が数人受けている治験が 半分以上であり、今後は、ほとんど治験に関心のない科でいかに治験を受けていただく かを広げていかないといけないと思っている。 ○武林氏 特別どの分野ということを決めていくのは、大学はなかなか難しいところが あり、人ベースだと思っている。先ほどのインセンティブの話にもかかわるが、国際共 同治験、それもただ受ける側ではなく、日本の医師がプロトコール、あるいはパイプラ インの所までアクセスをして一緒にやるというところまで行けば、それはそのまま多分 インセンティブにもなるし、日本の新しいパイを膨らませることにもなり、我々はそち らを是非目指したいと志は持っている。 ○小柳氏 私では答えられないので、吉澤先生にお願する。 ○吉澤氏(新潟大学医歯学総合病院) 医師のインセンティブの件がありましたが、例 えば教授選考で、科学研究費は何をいくら取ったか書く。素晴らしい治験に参加しても、 それを書くことはあまりない。そういう根本的な所が解決されないと、なかなか医師の インセンティブは上がらないのではないかと思う。金銭的なインセンティブは私たちの 大学は導入し進めているが、それ以上にアカデミックな好奇心で動いているところがほ とんどである。国の機関から積極的にそういうことを記入できる方向に持っていってい ただけると、根底からもう少し活性化されるのではないか。やはり、医師がやる気にな らないと上がっていかないと思う。少し話がずれているかもしれないが。 ○松山氏 我々の役目としては、治験に持ってくるシーズをいかに速く、しかも企業が 引き受けてくれる形でそのパッケージングをして、ビジネスプランまで考えて提案する かに尽きると思う。数は少ないと思うが、日本からそういう再生医療の技術が出れば、 国際的なインパクトということで非常に大きい。それを目指して鋭意努力したい。 ○楠岡座長 最初の新木課長の発表で来年もここでお会いしたいという強烈なメッセー ジがあったが、当然、実績調査はいま治験推進室でも考えておられる中で、数も大きな ファクターであるが、ただ単に数だけの問題ではないこともよく認識されておられると 思う。質のことも非常に大事なことである。  先ほど中村先生から奪い合ってどうするかという話があったが、言うならば、結果的 に中核・拠点に集中してくるという形が望ましい。だから、中核・拠点の病院が奪われ てしまっては意味がないことになり、そういう意味ではある程度数も問題にはなると思 う。その程度の意味とお考えいただき、それ以外のところは各医療機関で工夫をし、ユ ニークさを発揮した中で全体を推進していただきたいと思う。  予定の時間になった。矢崎先生のご配慮により十分ディスカッションの時間も取れ、 先生方のご協力でうまく進めることができた。ここで進行を会長の矢崎先生にお戻しし たい。 ○矢崎会長 パネリストの先生方、また楠岡先生、まとめていただき、感謝する。本日 は治験と橋渡し研究の推進に関して、貴重な情報とご提言をいただき、また最後にはご 熱心な討論をいただき、誠にありがとうございました。このたびの5カ年計画の事業は、 先ほど厚生労働省の新木課長からご説明があったように、運営幹事会を中心にいろいろ な問題、課題の整理、あるいは治験活性化計画の進み具合を見ていただき、その結果を この協議会、あるいはホームページなどで報告をいただくというスケジュールになると 思うので、今後ともご協力の程よろしくお願いする。最後に事務局から今後の説明をお 願いする。 ○事務(林) 本日は大変お忙しい中、また遠方からご参加いただき、どうもありがと うございました。矢崎会長の最後のお言葉のとおり、今後の予定は、運営幹事会で審議 後、各機関へご連絡したい。おそらく平成20年度の第1回協議会は、これから平成19 年度の実績調査を実施するので、その結果がまとまった後の秋ごろに開催したいと考え ている。具体的に決まったら、できるだけ早くホームページ等を通じて皆さまにご連絡 したい。 ○矢崎会長 第2回治験中核病院・拠点医療機関等協議会を終了する。どうもありがと うございました。                            ―了― 照会先  医政局研究開発振興課  TEL 03−5253−1111(内4165)