08/03/04 第7回自殺未遂者・自殺者親族等のケアに関する検討会議事録 第7回自殺未遂者・自殺者親族等のケアに関する検討会 平成20年3月4日(水) 厚生労働省共用第6会議室 ○上田座長 定刻となりましたので、ただいまから第7回自殺未遂者・自殺者親族等の ケアに関する検討会を開催いたします。構成員の皆様方におかれましては大変お忙しい 中御出席いただきまして、まことにありがとうございます。なお、西原構成員、平山構 成員、町野構成員につきましては本日御欠席との御連絡をいただいております。また、 川野構成員と斎藤構成員はまだいらっしゃっておりませんが、御出席ということで伺っ ております。それでは、議事に入ります前に事務局より資料の確認をお願いいたします。 ○名越課長補佐 資料の確認をさせていただきたいと思います。  議事次第  資料1、自殺未遂者・自殺者親族等のケアに関する検討会構成員名簿  資料2、自殺未遂者・自殺者親族等のケアに関する検討会報告書(案)  資料3、自殺未遂者・自殺者親族等のケアに関する検討会前回会議の議事録(案)  資料3の議事録(案)につきましては、再度御確認をいただきまして、確定をしたい と思います。  また、議事次第には載っておりませんが、清水康之構成員から「全国自死遺族総合支 援センターについて」という資料の御提供をいただいております。  落丁等がございましたら事務局までお申し出いただければと思います。  それから追加の資料で、本日清水康之委員から、インターネットの掲示板からとって こられた裏表の資料が来ていると思います。追加して御報告をさせていただきます。 ○上田座長 それでは、まず資料3の第6回検討会議事録(案)ですが、事前に提出を していただき、修正を反映させておりますので、皆様方、再度御確認をしていただき、 さらに修正等がございましたら本日中をめどに事務局までお知らせをお願いします。  本日は自殺未遂者・自殺者親族等のケアに関する検討会報告書(案)について御議論 をいただきまして、可能であれば取りまとめることで進めたいと思っております。  お手元にあります資料2の報告書(案)ですが、前回の検討会の後の経過を簡単に説 明させていただきます。前回の検討会で報告書(案)が事務局から提案がありましたが、 皆様方の御意見を踏まえて、本日の検討会でまとめたいと思いまして、恐縮でございま すが、私と伊藤構成員、川野構成員、そして河西参考人で協議しながら修正をいたしま した。そのまとめた案をメールで事務局から皆様方にお送りいたしました。限られた時 間でございましたので皆様方には御迷惑をおかけしました。それぞれ御意見をいただい た点について反映された箇所がありますが、限られた時間でしたので必ずしも十分詰め られていない箇所もあります。いずれにしましても本日の検討会で、皆様方から御意見 をいただきながらまとめたいと思っております。  この報告書(案)につきましては、それぞれの項目について事務局から説明していた だきます。また、できるだけ議論をしていただくために、事務局からは簡潔に御説明を していただきたいと思います。それから直前ではありますが、事務局からメールで皆様 方に報告書(案)をお送りしています。  それでは、最初の「1 はじめに」の部分を事務局からよろしくお願いいたします。 ○名越課長補佐 それでは説明をさせていただきます。大変恐縮ながら座って説明をさ せていただきます。  前回の会議では報告書(案)を提出させていただいたところではございますが、先ほ ど座長からお話がありましたとおり、全体の流れに関しては余り変化はないんですが、 項目や文章に関して多くの修正が入っておりますので改めて御確認をいただければと思 います。  報告書を1枚めくりまして、目次でございます。第1章はじめに、第2章自殺未遂者 のケアに関して、第3章自殺者親族等のケアに関して、第4章自殺未遂者・自殺者親族 等のケアに関するガイドライン作成のための指針ということで、こうした全体の構成に 関しては変更ございません。  それでは3ページ「はじめに」について説明をさせていただきます。  「はじめに」ですけれども、前回までは数ページに及ぶ分量でございましたけれども、 今回座長におまとめいただくに当たりまして、記載事項を絞り込んで、前回までは2つ あった小項目を1つにまとめて、内容がなるべく明快になるように工夫されております。 そして前回まで載せておりました概念図につきましては、最終的にこの「はじめに」か らは落ちております。重要な中身でもありますので、ここは全文を読ませていただきた いと思います。  「我が国では平成10年に自殺者数が前年に比べ3割余りも急増し、その後も3万人を 超える高い水準で推移しており、自殺対策が大きな課題となっている。  自殺対策については従来からうつ病対策や心の健康づくり対策を中心に取り組まれて おり、自殺未遂者や自殺者親族等に対する支援を含む総合的な自殺対策については、ほ とんど行われてこなかった。  このような中、自殺未遂者や自殺者親族等への支援については、昭和40年代に民間団 体によって電話相談が開始されて以来、民間団体の献身的な努力によって支えられてき たが、自殺者数の増加に対応するために厚生労働省に設置した、自殺防止対策有識者懇 談会の報告書「自殺予防に向けての提言」(平成14年12月)において、初めて自殺対策 の論点として認識されるところとなった。  その後、自殺未遂者や自殺者親族等に対する支援および自殺対策に取り組んでいる民 間団体からは、自殺未遂者や自殺者親族等への支援を含む総合的な自殺対策に取り組む べきであるという声が強く出された。  そのような声に応える形で、平成17年7月に参議院厚生労働委員会において、「自殺 に関する総合対策の緊急かつ効果的な推進を求める決議」が行われ、また、平成18年6 月に制定された「自殺対策基本法」では、自殺未遂者や自殺者親族等に対する支援が明 文化され、その重要性が明確化された。  さらに平成19年6月に政府の推進すべき基本的かつ総合的な自殺対策の指針として 閣議決定された「自殺総合対策大綱」の中でも、自殺未遂者や自殺者親族等の支援に対 する取り組みの重要性にも言及されている。  自殺は健康問題や家族問題だけではなく、失業、倒産、多重債務、長時間労働等の社 会的要因が複雑に関係していることを踏まえ、保健医療、福祉、心理、経済、法律等の 様々な視点からの支援が必要である。  本検討会は、自殺未遂者や自殺者親族等の支援について、自殺未遂者や自殺者親族等 に対して支援活動を行っている関係者、精神保健医療福祉に従事している関係者、支援 に関して研究を行っている関係者等、様々な立場の構成員および参考人により、○回の 議論を通じ検討を行い、現状と課題を整理し、基本的な考え方と今後の取り組みの方向 性を示すとともに、自殺未遂者や自殺親族等の支援を行っている関係者のためのケアに 関するガイドラインを作成する際に必要とされる指針を報告書としてまとめた。  一般にはケアという言葉は、医療的および心理的な狭い範囲の関わりを想起しやすい が、本報告書においては、保健医療、福祉、心理の視点からの支援という広い概念とす る。また、ケアを行う者からケアを受ける者に対する一方的な働きかけだけではなく、 ケアを受ける者の自立的、あるいは、双方向的な働きかけも含まれるものとして取り扱 うこととする。  今後、本報告書が広く活用されて、自殺未遂者や自殺者親族等に対する支援等、総合 的な自殺対策が、各地域で、国および自治体並びに民間団体等において鋭意取り組まれ ることを期待する。」  早口になりましたが、以上でございます。 ○上田座長 ただいま事務局から説明がありましたが、いかがでしょうか。何か御意見 はございますか。 ○渡邉構成員 渡邉でございます。この報告書をあらかじめ読ませていただいて思うの ですけれども、最後にこの報告書が広く活用されてと書いてありますが、これが実際に どのように活用されるのかということを考えるのです。前回の報告書はやはり何か手引 きのような印象を受けるのです。具体的なところが書いていない。例えば連携が必要で あると書いてあるけれども、具体的にどう連携をつくっていくかとか、その辺のところ が書いてありません。  これは今後行われるであろうガイドライン作成の中で多分取り上げられるのではない かと思うのです。それからイメージ図といったものも入れて、より明確にこのように取 り組めばいいということがわかるようになっていくのではないかと思うのですけれども、 その辺、ガイドラインをつくるに当たっても、例えば救命センターや医療機関のガイド ラインということで一つのチームが必要だろうし、あるいは地域での取り組みというこ とでも一つのチームが必要だろうし、何かその辺の今後の対策みたいなことがもしおわ かりでしたら教えていただきたいと思います。 ○上田座長 いかがですか。この報告書では、広く活用されて、とまとめられています が、渡邉構成員がおっしゃいましたように、これがどういう形で取り組まれるのか、何 か考えがありましたらお願いします。 ○名越課長補佐 今御指摘にありましたとおり、この報告書というものは、前半の部分 におきまして、未遂者へのケアそして自殺者親族等へのケアについて問題点と、ケアの 基本的考え方と今後の取り組みの方向性というものを整理していています。その後に示 しておりますガイドライン作成のための指針においては、今後、各現場で自殺未遂者対 策とケアにかかわる人がガイドラインを作成していくわけでありますけれども、その作 成に当たりましては、もちろん国としても研究班等を用いまして中身を示していくとい うようなことをしなければいけないと思いますし、この報告書を参考にしながら、現場 のケアに当たっておられる方そのものが新たなガイドライン作成に活用していただけれ ばという意味を含んでいるものというように考えます。 ○上田座長 よろしいですか。ただいまの渡邉構成員の御指摘については、皆様方も、 この報告書がどういう形で活用されるのか、今後の自殺対策はどうなるか、関心を持っ ておられると思います。最後の方で時間がありましたらその辺も論じたいと思いますが、 とりあえず報告書に関しましては4ページまではよろしいでしょうか。はい。それでは 進めさせていただきます。  次に「2 自殺未遂者のケアに関して」をお願いします。 ○名越課長補佐 5ページ目から始まります「第2章自殺未遂者のケアに関して」の説 明をさせていただきます。  前回と同じく(1)で自殺未遂者のケアの現状と課題、(2)といたしまして、自殺未 遂者のケアについての基本的考え方と今後の取り組みの方向性の2つの項目から構成さ れております。  御出席の構成員の皆様方にはあらかじめ何度かやり取りをさせていただいております ので御承知いただいていると思いますが、報告書の内容自体には大きな変化はないので すが、構成表現振りがかなり変わっておりますので御注意ください。  まず、(1)自殺未遂者のケアの現状と課題でありますが、自殺者の調査の中で示され た自殺企図歴のデータを示すなどして、自殺未遂者の重要性という点まで言及をいたし ております。  そして、前回の報告書(案)では、自殺企図直後から地域生活という時間軸に沿った 切り口での小項目の整理をいたしておりましたけれども、今回の報告書(案)では、医 療機関におけるケアから地域におけるケアという形の流れに改めております。  また医療機関におけるケアの内容ですけれども、精神科以外と精神科、そして退院後 の地域生活に向けての連携につきましては、この医療機関におけるケアの中に含む形で 再構成を行っております。  一方、地域におけるケアについては、相談体制と情報提供の2点から並びを変えてお ります。  そして個別のケアの視点とは別に、社会的な取り組みの視点で整理される問題点につ いて、人材育成、地域における支援体制、研究、普及啓発といった形で整理を行ってお ります。  少し流しますが、8ページからは(2)といたしまして、自殺未遂者のケアについて の基本的考え方と今後の取り組みの方向性について示しております。ここでも前回まで と違いまして、図の方は削除いたしまして、基本的考え方も整理をし直しております。 この基本的な考え方のところにつきましては重要なところでございますので、簡単に朗 読をさせていただきます。  「自殺未遂者は、それぞれに健康問題や家族問題だけではなく、失業、倒産、多重債 務、長時間労働等の固有の事情があり、多くの場合、精神疾患を抱え、これらの状況は 自殺企図後にも持続している。また、命を取り留めた直後の複雑な心境や地域生活を営 む上での困難等様々な問題を抱えており、多くの支援を必要としている。  自殺未遂者のケアについては、 (1) 自殺未遂者に対して、医療機関において心身両面でのケアを提供するとともに、 急性期の治療が終了した後も継続した精神科的治療を行うこと (2) 自殺未遂者の地域生活を支えるために、生活相談、法律相談等、多様な専門性を 持った公的機関や民間団体等が連携してケアを行うこと (3) 自殺未遂者の親族等も苦しみ、悩んでおり、自殺未遂者と同じようにケアについ て配慮することが重要であり、その上で、自殺未遂者の親族等も本人のケアが重 要な担い手であるため、その役割を果たせるように働きかけること (4) 医療機関での心身両面でのケアから地域生活のための支援までを総合的に実施す るために、相談体制の充実や人材育成等の社会資源の整備や連携の推進、調査研 究の推進による実態把握、一般国民向けの自殺未遂者およびその親族等のケアに 関する普及啓発等を進めていくこと  が必要である。  なお、これらの取り組みについては、公的機関や民間団体等が連携して進めることが 極めて重要である。  また、自殺企図のリスクが高いとされる自殺念慮を持っている人と自殺未遂者に対す るケアは一貫した課題としてとらえる必要がある。」  9ページ以降は個別の中身になりますので、朗読は割愛させていただきます。 ○上田座長 ありがとうございました。それでは自殺未遂者のケアに関してでございま すが、最初の方の現状と課題、それからただいま読まれました基本的考え方と今後の具 体的な方向性について、整理していますが、これまでの意見を踏まえながらまとめてい ます。特に、親族の役割について清水新二構成員から貴重な御指摘をいただいて、その ように修正されております。  この自殺未遂者のケアに関しまして、何かございましたらお願いいたします。いかが でしょうか。 ○清水(新)構成員 質問ですが、自殺未遂者ケアにおいては河西参考人からも指摘が あったと思いますが、ケースマネジャーのようなワーカーというんでしょうか、そうい う一連の資源をつないでどういうサポートが必要かというニーズの総合的な調整をする 役割を持つような人材というか、ポジションですか、そういった記載が前にはあったと 思うんですが、今回の場合はそこまで具体的には書き込まないということになりますか。 推測すると(ウ)に一貫したマネジメント体制が不足していると書いてありますが、こ こに吸収されたと理解していいのでしょうか。 ○上田座長 済みません。どこでしょうか。 ○清水(新)構成員 6ページ目に(ウ)というのがございます。退院後の地域生活に 向けての連携というところです。最後に一貫したマネジメント対策が不足しているとあ りますが、このことが実は、先ほど言ったように、ケアマネジャー的なポジションの必 要性について以前は記載があったと思うのですが、それの代用表現と理解していいかど うかということです。 ○上田座長 ただいまの6ページのマネジメント体制が不足しているということについ て、清水構成員、こちらは現状ですね。それで対策として、10ページの(ウ)の記載で は不十分ということになるのでしょうか。 ○清水(新)構成員 要するに、こちらの10ページの(ウ)も同じような一貫したマネ ジメントの重要性を指摘していると思うんですが、たしか以前にはもう少し踏み込んで 具体的なそういったポジションというんでしょうか、人材が必要だということが記載さ せていたように思うのです。私個人もその点が非常に大事だろうと思っておりましたの で、そこがどうも。私は、おっしゃるととおり、1日前にいただいたので十分に読めて いない部分が多いかもしれません。実はここに載っているということなのかもしれませ んが、それも含めて御説明をいただければと思います。 ○上田座長 どうですか。以前の記載した文言があればそれを加えますか。 ○名越課長補佐 前回の資料の場合、人材育成のところで、退院後の地域生活に向けて の準備段階でマネジメントを行う人材育成の必要性について記載が確かにございました。 ○上田座長 そうしましたら、できるだけ具体的にしたいと思いますので、清水構成員、 ここに何か具体的な記載をお願いします。 ○清水(新)構成員 はっきり覚えてはいないんですが、たしか以前はもう少しポジシ ョンの記載もあったような気がするのです。今言われてみると、退院後の地域生活に向 けての準備段階からマネジメントを行う者となっていますから、ポジションについては 書いてないけれども、そういう人材をつかさどる人が必要なんだということは確かに記 載されていると理解もできますので、このことをもって変えたというように理解してい いんですね。 ○名越課長補佐 そうですね。人材育成のところで落ちてしまったのは確かにそのとお りですが、10ページの(ウ)のところは、前回までの議論を踏まえまして、マネジメン トを行うことが重要であり、また当然そのマネジメントを行うための人材については必 要であるという意味を持たしているつもりですが、不足であれば。 ○上田座長 では、こうしましょう。清水構成員の御指摘を受けて事務局で議論を並行 的にチェックして、少し修正をしていただけますか。 ○名越課長補佐 わかりました。 ○清水(新)構成員 それで結構です。ここで一々行う必要はないです。またチェック ができればいいと思います。 ○上田座長 そのほかはございますか。 ○清水(康)構成員 清水が2人いて、清水康之です。私の方から2点あります。  1点目が、8ページ目の基本的な考え方の1段落目です。この文書の精神をより明確 にするためにも、最後のところで、多くの支援を必要としているというこの文の前に、 例えば「再企図を防ぐためには多くの支援を必要としている」とか、あるいは「生きる ためには多くの支援を必要としている」というような言葉を加えてはどうか。つまり、 自殺未遂者支援といったときには、自殺を実行することをとめるというだけではなくて、 それ以降、生きていくということを支援することも含まれるというのを明確にする意味 で、今、お伝えしたような「再企図を防ぐためには」とか「生きるためには」というよ うな言葉を入れたらどうかというのが一点です。  あともう一点は、この報告書の全体を通して言えることですが、やはり民間団体との 連携という視点が最初のうちは大分欠けていたのではないかという印象を受けました。 今回は、8ページ目の下から2段落目、民間団体と連携して進めることが極めて重要と いう文言を入れていただいて、これが全体にかかるということだろうと思いますのであ りがとうございます。  ただ、全体にかかるということはわかるんですが、あえて10ページ目のイの地域にお けるケア、(ア)相談体制のところでは、民間団体との協力にというのが1行目に入って いるように、必要に応じてしつこいぐらい入れても構わないだろうと思うのです。重要 なものは重複して載せても構わないと思うので、その意味で、ウの人材育成とオの研究、 カの普及啓発に関しては、国や自治体がという主語の後に民間団体等と連携してという こと、あるいは民間団体との協力によりという、この相談体制の記述にならっても構わ ないですけれども、そうした民間団体との協力というのを入れたらどうかと思います。  といいますのも、人材育成、研究、普及啓発、それぞれに関して言いますと、この報 告書の「はじめに」のところで、これまで民間団体が自殺者支援の現場を担ってきた、 民間団体の献身的な努力によって支えられてきたという文言が入っていますけれども、 現場の活動は実は研究よりも先進的な活動を行っていた部分もかなりありますので、そ うした民間団体の実務が常に人材育成や研究、普及啓発等に反映されるような担保をつ くっておく必要がある。そのためにも、民間団体との連携というのをぜひ加えていただ きたいと思うのです。以上、2点です。 ○上田座長 大きく2点ございまして、まず8ページの第1フレーズです。ここに、「抱 えており」とありますが、「再企図を防ぐため」、あるいは、「生きるためには多くの支援 を必要としている」を加えるとの御意見うです。「再企図を防ぐため」の表現はこれでい いですか。 ○清水(新)構成員 いいと思います。これは河西先生が前にお話ししたと思いますが、 再企図の問題が一番大きいのです。そして自殺対策ではある程度進んできた部分もある のですが、一番遅れているのは自殺未遂者の支援ということで、私も再企図防止という ことを強調するのは大変結構ではないかと思います。生きるための支援というのを入れ るかどうかについては、私は個人としては、こういう報告書にそこまで入れることはど うかと思いますが、再企図防止は重要な論点かと思います。 ○上田座長 河西参考人、今のところで何かございますか。いいですか。 ○河西参考人 はい。 ○上田座長 そうしますと、表現としては「再企図を防ぐため」でよろしいですか。 ○清水(新)構成員 私はそれでいいと思います。 ○上田座長 よろしいですか。では、再企図を防ぐために。  もう一つの「生きるためには」についてはいかがでしょうか。ただいまの清水康之構 成員の御提案の「再企図を防ぐために」に合わせて「生きるために」、「よりよく生きる ために」はいかがでしょうか。 ○清水(新)構成員 意味はとてもよくわかります。そのことが一番のポイントだと思 いますが、先ほど申しましたように、報告書という性格から考えると、少しあいまい過 ぎるかという感じもしますので、私はもっとフォーカスされた再企図の防止の方が効果 的かと思いました。 ○上田座長 いかがでしょうか。 ○清水(康)構成員 意味的には同じですので、それで構わないと思います。 ○上田座長 いいですか。そうしましたら、「抱えており、再企図を防ぐために多くの支 援を必要としている。」これでよろしいですか。ではそのように修正します。  それからもう一点は、民間団体等との連携について、8ページの下から2つ目のフレ ーズで、ここは非常に重要だという御指摘です。これは全体的にかかることは分かるが、 10ページの相談体制には、民間団体等の協力という記載がされているけれども、人材の 育成と、研究と、それから普及啓発、それぞれについて相談体制と同じように民間団体 等の協力にという記載をするとの御提案ですね。いかがでしょうか。基本的には、公的 機関と民間団体の連携は大切なキーワードでまとめられていますが、それぞれの項目に ついても記載するという御提案でございます。いかがでしょうか。 ○平安構成員 さっきのケースマネジメントの件ですが、やはり今のところだと、退院 後の地域生活に向けてケースマネジメントが必要だということになってしまうのですが、 実際に精神科以外にしても精神科にしてもやはり入院して治療を受ける段階からさまざ まなケースマネジメントというのは必要で、現実には医師にしても看護師にしても非常 に不足している状況で、これで精神科の医療あるいは精神科がいない医療の中で、医師 なり看護師が自殺未遂者の初期対応を一生懸命しなさいと言われてもかえってそれ自体 がマイナスの方向に働く懸念もあるのです。したがって、当然医師の協力は必要ですが、 その時点からきちんとケースマネジメントする者が入って対応するということを含ませ ていただいた方がより現実的に厚い対応ができるのではないかと思いますので、医療機 関におけるケアの冒頭の部分でもいいのですが、その中にやはりケースマネジメントが 重要だということを入れていただく方がいいのではないかと思います。 ○上田座長 それはどこですか。 ○平安構成員 9ページです。アの医療機関におけるケアのところで、冒頭に4行ぐら いがありますが、この中にぜひケースマネジメントを含めた体制の充実ということを入 れていただきたいのです。もちろん、その中で(ア)(イ)(ウ)の中の退院後のケース マネジメントが必要だということもそのまま残していただいて結構ですが、このままだ と退院後のケアをしなさいというだけになってしまうので、冒頭に入れていただいて、 全体にケースマネジメントの体制をつくるというようにしていただいた方が私はいいの ではないかと思います。 ○上田座長 これは、先ほどの清水新二構成員の御指摘と関連があります。 ○平安構成員 そうですね。もう少し全体の方に入れていただきたい。 ○名越課長補佐 10ページの(ウ)の冒頭のところでは、「自殺企図後早期から」とい う表現でマネジメントのかかわりについて表現をしていたというようにこちらでは理解 しているのですけれども、この早期からというよりさらに前の段階というイメージなの でしょうか。 ○河西参考人 私も平安委員の意見に賛成です。つまり、アの「医療機関におけるケア」 というところの小項目、(ア)(イ)(ウ)の内容を要約して最初のところに全部盛り込ん でおく必要があると思うのです。いま、大きなアのところには(ア)と(イ)のことし か書いていないのです。そうすると、読み方によっては、平安委員が言われたように、 治療と退院後の地域におけるケアが分断されているように見えてしまうと思うのです。 したがって、アの最後に、「引き続き精神科的治療及び地域ケアを提供できる体制を」と いう一言を入れておけば、医療機関から地域までがすべて最初からつながっているのだ というふうに読まれると思うのです。 ○上田座長 そうしますと、9ページのアは全体にかかりますね。これでいいというこ とですか。 ○河西参考人 全体にかかっているはずなのに、(ウ)の内容がアに盛り込まれていない ことが問題です。 ○上田座長 済みません、それではどうしたらいいですか。 ○河西参考人 ですからウの内容を要約したものを、たった1行ぐらいでもいいから、 全体のアの中に入れる、たとえば、「急性期の治療が終了した後でも引き続き精神科的治 療及び地域ケアを提供できる」というように入れればよいと思います。 ○上田座長 アの最後の行に加えてほしいということですね。 ○河西参考人 はい。私たちの現場の感覚でいえば、普通は退院したら地域ケアにつな がることなく、そこで終了になってしまうんですね。ここに地域のケアのことだけを書 いておけばつながるというものでもありません。ですから、書き方として、病院に入院 しているうちから地域ケアにつなげるためのマネジメントを、というふうに入れておか ないと実際につながっていかないと思います。 ○上田座長 そのように整理します。  先ほどの清水康之構成員の発言ですが、具体的には10ページの相談体制の最初の行の ように、人材育成と、研究と、普及啓発に民間団体等の協力によりという文言をそれぞ れ入れてほしいということですが、いいですか。特に問題がなければそのようにします し、御意見があればどうぞおっしゃっていただきたいと思います。いいですか。全体に ありますが、相談体制と同じように、人材の育成、研究、普及啓発、それぞれについて 民間団体等の協力が重要であるのでこの記述をするという御提案でございます。よろし いですか。 ○渡邉構成員 私も賛成です。やはり研究といっても今までは専門家だけというイメー ジがあったけれども、そこにやはり民間団体も一緒に取り組むという考え方は大事だと 思います。 ○上田座長 よろしいですか。では、事務局で具体的に考えていただきたいと思います。  そうしましたら、先ほどの平安構成員の御指摘についてはアのところで整理し、清水 新二構成員からの御指摘は事務局で確認して、わかれば教えてください。  ほかにございますか。 ○平田構成員 今の民間団体等の連携とは対極にある話なのかもしれませんが、10ペー ジ目の下の方に、自殺予防総合対策センター、これは国による情報発信の役割が書いて あるんですけれども、これはここで初めて出てくる言葉です。精神保健福祉センターと 既存のセンターはイメージがすぐわくんですけれども、この自殺予防総合対策センター というのはいきなり出てきて、少しイメージしづらいのです。後の方の記述の中にちり ばめられているのですけれども、国がつくると言っているわけですから、一言、注釈に するのか、項目立てにするのか、あるいは総論の中に入れるのか、配置はよくわかりま せんが、このセンターはどこの組織に設立するのか、どういうメンバーにするのか、役 割をどうするのかといったところを少しまとめていただいた方がいいように思います。 ○名越課長補佐 御存じの方はいらっしゃるかと思いますけれども、平成18年10月に 国立精神・神経センター精神保健研究所の中に自殺予防総合対策センターが設置をされ ておりますので、その旨解説をつけたいと思います。 ○上田座長 皆さんにわかるように、文言を少し工夫していただけますか。自殺未遂者 のケアに関してほかはございますか。よろしいでしょうか。全体でもう一度確認をいた しますので、次に自殺者親族等のケアに関してをお願いします。 ○名越課長補佐 自殺者親族等のケアに関しては13ページからになります。自殺未遂者 のケアと同様に、(1)自殺者親族等のケアと現状の課題、(2)自殺者親族等のケアに ついての基本的考え方と今後の取り組みの方向性の2つの項目からできております。  まず13ページの現状と課題ですけれども、前回の報告書(案)では、別の項目として 整理しておりました自殺者親族等の背景の多様性というものがありましたけれども、こ れを自殺者親族等の実態というものの中に取り込んで整理をいたしまして、自殺者親族 等の置かれた複雑な状況についての説明振りを充実させております。  次に自殺者親族等が必要とするケアは、未遂者へのケアと異なりまして、医療機関か ら地域へという流れではなく、地域の中において提供されるというものでありますけれ ども、その地域の中で提供される個別ケアといたしまして、相談体制、医療体制、情報 提供ということで、それぞれイ、ウ、エという形で、3点で整理をいたしまして、また、 社会的な取り組みの観点から、オ以降、人材育成、地域における支援体制、研究、普及 啓発といった形で再構成を行っております。  自殺親族等の中で、悲嘆が余りにも重く長期化していることなどの理由によって身体 症状や精神症状が続き、医療的ケアの必要性について改めてここに詳しく記載を加えて いるといったところが前回と違うところです。  続きまして16ページ目。基本的考え方と今後の取り組みの方向性であります。ここで も図の方は削除いたしております。それからここも前回の構成を改めまして、保健医療、 福祉、心理、経済等のさまざまな問題について側面的な支援を行いながら、自殺者親族 等の悲嘆からの回復というものを中心にケアを考えるという構成になっております。こ こも重要なところでございますので朗読をさせていただこうと思います。  「自殺者親族等は、自殺者に先立たれた後には深い悲嘆に見舞われる。多くの自殺者 親族等はこうした悲嘆を自らの力や周囲からの助けによって、乗り越えている。しかし、 中には、悲嘆があまりにも重<、長期化してしまったり、そうした悲嘆から、身体症状 を発症したり、精神疾患を患ったりして、医療による専門的なケアが必要になる親族等 もいる。  自殺者親族等のケアは、自殺者親族等が抱える個別の複雑な背景を十分に理解した上 で、保健医療、福祉、心理、経済、法律等の様々な問題に対して、多様な側面から支援 し、心理的影響等を緩和していくことが基本である。  こうしたことを踏まえ、自殺者親族等のケアについては、 (1) 社会生活の多様な側面からケアし、自殺者親族等が悲嘆の回復に専念できるよう にすること (2) 自殺者親族等が医療による専門的なケアが必要になった場合には、適切にケアを 行うこと (3) 自殺者親族等が必要とした場合には、分かちあいのための支援グループ、生活相 談、法律相談等、多様な専門性を持った公的機関や民間団体等が連携してケアを 行うこと (4) 自殺者親族等の悲嘆の回復のための支援を総合的に実施するために、相談体制の 充実や人材育成等の社会資源の整備や連携の推進、調査研究の推進による実態把 握、一般国民向けの自殺者親族等のケアに関する普及啓発等を進めていくこと が必要である。  なお、これらの取り組みについては、公的機関や民間団体等が連携して進めることが 極めて重要である。」  以下、個別の内容になっておりますので朗読は割愛させていただきます。 ○上田座長 ありがとうございます。それでは自殺者親族等のケアでございますが、前 段に現状と課題、ただいまの基本的な考え方と、これを踏まえてそれぞれの取り組みの 方向性ということで各論が記載されております。御意見がございましたらよろしくお願 いいたします。いかがでしょうか。 ○清水(康)構成員 2点あります。1点目は先ほどの自殺未遂者のケアに関してのと 同じように、「民間団体との連携」という文言を先ほどと同じ項目について加えていただ きたいということが一点です。  あともう一点は、17ページのウの情報提供の部分に関して、国や自治体は学校、病院、 警察等々と協力しながら、というように、もちろん警察は国ではあるのですが、あえて 警察、病院、学校等々と協力しながら、という文言を入れたらどうかと思います。遺族 が孤立する前に遺族が必要とする情報を提供するということが遺族支援においては非常 に重要だろうと思いますので、その意味でも情報提供する際のかぎを握る警察、学校、 病院といったところを明確にここで文言として盛り込んでおいた方がいいのではないか ということです。以上です。 ○上田座長 御意見が2点ございました。一点は、先ほどの自殺未遂者のケアと同じよ うに、17ページの相談体制のように、民間団体等の協力によりという文言を、エの人材 の育成と、カの研究(18ページ)と、キの普及啓発(19ページ)の3カ所に、記載して ほしいという御意見でございます。この点はよろしいでしょうか。はい。そのようにい たします。  次が情報提供で、学校、病院、警察ですね。具体的にどういう御提案ですか。 ○清水(康)構成員 「警察、病院、学校等と協力しながら自殺者親族等に対して」と 続くわけです。 ○上田座長 「国や自治体は、警察、病院、学校等と協力して」ということですか。順 番は別にして。それで、「自殺者親族等に対して」ということですね。いかがでしょうか。  これは国や自治体がパンフレット等を配布するということですね。あわせて警察、病 院、学校と協力して行うことを具体的に記載するという御提案ですね。いかがでしょう か。 ○清水(康)構成員 警察が情報を渡しているところもありますし、全く渡していない、 あるいは渡すものもない自治体もありますし、非常に格差があるというか。渡邉さんの ところでは先んじて警察からいろいろな情報を渡してもらうようなことになっています。 ○上田座長 病院、学校はいかがですか。 ○清水(康)構成員 どうですか。それは私よりも。 ○清水(新)構成員 そういう意味では今挙がった3つ以外に職域なんかも非常に重要 だと思うのです。ただし、ガイドラインとの関係があるかと思うのです。例えば21ペー ジに対象者という別項目があります。ここに、今、この報告書と別にガイドラインをつ くるときは対象者を明記する、はっきりさせなさいと言っています。したがってここと の関係、兼ね合いをどう考えるかによって、必要なのか、必要ではないのかという議論 もあります。  それから盛り込むのであれば、私は職域の関係も入れた方がいいと思いますが、ガイ ドラインとの関係でそれをどう位置づけるかということかと思います。 ○上田座長 基本的には「国や自治体は、警察、病院、学校、さらには職域等と協力し て」という文言でよろしいでしょうか。警察が取り上げられていますが、この辺も含め ていかがですか。 ○平安構成員 警察は問題ないと思うのですが、単純なことですけれども病院という表 現より、診療所等も含まれると思いますので、医療機関とした方がよろしいかと思いま す。 ○上田座長 「国や自治体は、警察、医療機関、学校、職域と協力して」でいいですか。 いかがですか。 ○西田構成員 最初の基本的な考え方の中に、遺族が非常に大きなダメージを受けて孤 立しがちだという基本的認識が書いてありますね。そうすると、自分から出かけていっ て情報を集めるというのは非常に難しいというのがはっきりしていますので、逆にここ で、そこと結びつけて、本当に遺族にどのように情報を届けるかということをきちんと 認識してもらいためにも、確かにガイドラインとの兼ね合いはあると思いますが、ここ に入れるというのが非常にいろいろな方にわかっていただくためにも必要だと思います。 ○上田座長 いかがですか。順番としては警察、医療機関、学校、職域でいいですか。 ○清水(新)構成員 今、気がついたのですが、21ページの対象者の中には警察は入っ ていないですね。 ○清水(康)構成員 それは自殺未遂者のところをごらんになっているのではないでし ょうか。自殺者親族のところには警察は入っています。 ○清水(新)構成員 入っていましたか。 ○上田座長 25ページに入っています。 ○清水(新)構成員 そうですね、入っていますね。はい、了解です。 ○斎藤構成員 それこそ江戸時代というか、昔からお寺というか住職は恐らく自殺問題 を抱えた人たちを事前にサポートしてきた。宗教という見方ではなくて、やはりお寺も 一つのサポートシステムである。最近はいろいろな教派で自殺問題に関する研究会を始 めていまして、私も講師としてお招きをいただいたこともあるのですが、非常に熱心に 行っておられる。私は、明記する必要はないと思いますが、大切な資源としてそういう ものが伝統的にあったし、大切にしていくという認識は必要ではないかと思います。 ○上田座長 そうしますと、「国や自治体は、警察、医療機関、学校、職域等と協力して」 となりますか。宗教の関係は今回はいいですか。この機会に入れた方がいいという御意 見であれば入れますが。今のところは「警察、医療機関、学校、職域等と協力して」で す。 ○斎藤構成員 私も宗教者ですけれども、宗教のことはネガティブな反応を示す人もお りますから、それも社会資源であるという認識が必要だということでいいと思います。 ○上田座長 わかりました。議事録に残っていますので、そういう扱いでよろしいでし ょうか。  そうしますと、ウですが、「国や自治体は、警察、医療機関、学校、職域等と協力して」 とします。よろしいですか。 ○名越課長補佐 済みません、事務局からですが、表現振りとして、今回の報告書(案) では出ていないのですが、前回、1月21日版では、自殺関係者のことについて、「自殺 者親族等に接する機会のある者として、その中に括弧して、そのときは(警察、消防、 葬祭業等)というのが入っていたと思うのです。この括弧の中身を今言われたような業 種の方を入れる形で整理をしていきたいと思いますが、よろしいですか。 ○上田座長 これに何か加わりますか。 ○名越課長補佐 いえ、並べ方として、自殺者親族等と接する機会のある者ということ で、そのくくりの中に、今御提案のあった業種の方々を入れる形で文言を整理したいと 思います。趣旨は変わらないと思います。 ○上田座長 ほかにございますか。よろしいですか。  次は、最後ですが、自殺未遂者・自殺者親族等のケアに関するガイドライン作成のた めの指針を一括して御議論いただきたいと思います。事務局、お願いします。 ○名越課長補佐 報告書(案)は20ページになります。おのおのの指針につきまして、 内容の大幅な変化はありませんが、対象者、ガイドラインに盛り込むべき事項、メンタ ルヘルス対策の重要性、プライバシーに対する配慮、その他、記載することが望ましい 事項という項目を整理いたしまして、そういう意味では、見かけは前回とはかなり変わ っております。  そのほか、各指針の前に、その指針を編集するに当たって解説を加えているところが 大きな違いであります。  また、先ほど項目の整理の話をしましたけれども、プライバシーに対する配慮という 項目が新たに加わっておりまして、その重要性を強調しております。  前書きのところも含めて、おのおのの指針の前段のところを朗読してみたいと思いま す。  「自殺未遂者・自殺者親族等のケアに関するガイドラインは、海外ではWHOによる各 種の自殺予防の手引き、および「遺された人たちのための自助グループの始め方」をは じめとして公的組織や専門組織の作成した多<のリーフレットやガイドラインがある。 また、国内では電話相談を行っている支援団体の研修資料や特定非営利活動法人自殺対 策支援センターライフリンクが作成中の「自死遺族支援のためのガイドライン」等があ り、様々な主体においてノウハウが蓄積されてきている。  さらに、平成18年度に厚生労働科学研究費補助金「自殺未遂者および自殺者遺族等へ のケアに関する研究」が始まり、「自殺未達者へのケアに関するガイドラインの開発」と 「遺族等へのケアに関するガイドラインの開発」を進めている。  自殺未遂者や自殺者親族等に対して適切なケアを行っていくためには、医療機関、公 的機関、民間団体等においてケアに取り組むそれぞれの関係者向けのガイドラインを作 成する必要があるが、現状は上記のようにガイドラインの整備が始まったところである。  本検討会では、種々のガイドラインを作成する際の参考になるように、ガイドライン に盛り込むべき内容や考え方を整理し、指針としてとりまとめた。  今後、この指針を生かして、自殺未遂者・自殺者親族等のケアに関するガイドライン が作成されることを期待する。その際には、本指針を基本にしながら、メンタルヘルス を始めとした様々な分野の専門家や現場で自殺対策に取り組む関係者の意見を踏まえて、 それぞれの地域や実施主体に合わせて作成されることが重要である。  また、自殺未遂者・自殺者親族等のケアに関するガイドラインは社会情勢の変化に合 わせて継続的に見直しを行っていくことが望ましい。  なお、本検討会報告書においては、自殺や自殺未遂により、遺族や友人等、周囲の少 なくとも数人が深刻な心理的影響を受けるとされていることから、自殺対策基本法と同 様に「自殺者親族等」等の表記を用いているが、個別のガイドライン作成の際には「自 死」、「自死遺族」等の表現が適切な場合もあり、状況に応じた表記を使用されたい。」  続きまして、自殺未遂者のケアに関するガイドライン作成のための指針の前文のとこ ろを朗読いたします。  「自殺未遂は、自殺の最も強い危険因子のひとつである。自殺予防のためのハイリス ク者対策として、自殺未達者のケアは特に重要である。しかし、自殺未達者の実態および 自殺未遂者のケアの意義やケアの方法等については、必ずしも自殺未遂者のケアに取り 組む関係者の間で知識や理解が十分とは言い難く、また、ケアの体制も十分とは言えな い。そこで、自殺未遂者のケアが効果的に、円滑に実施されるように、ガイドラインが必 要となる。  自殺未達者の自殺企図の背景は多様であるため、個人に応じた個別的なケアが必要で あり、その導入や留意すべき事柄は、その人のおかれた状況によって異なる場合がある。 したがって、ガイドラインは自殺未遂者のケアに取り組む様々な者を対象に、それぞれ の目的に合わせて作成されることが望ましい。  この指針では、今後それぞれの対象者のためのガイドラインを作成するにあたり、共 通して記載が必要な事柄、作成に際して留意すべき事柄を示した。この指針をもとに、今 後、社会の様々な領域において、ケアを行う者にとって真に有用なガイドラインが作成 されることを望む。  なお、ケアにあたっては、記載されている事項を基本にしながらも、個別的な対応が必 要であることは言うまでもない。  また、自殺念慮と自殺未遂については、同じようなケアが必要であることから、この 指針は自殺念慮をもつ人のケアに関する内容をも含んでいる。」  続きまして25ページです。自殺者親族等のケアに関するガイドライン作成のための指 針の前文のところを朗読いたします。  「自殺者親族等への支援では、社会生活の多様な側面からケアし、悲嘆の回復に専念 できるようにすることが基本である。悲嘆の回復においては、公的機関や民間団体の支 援グループ等によるケアが有効であるが、病的な悲嘆等で苦しんでいる場合には、より 専門的なケアを提供する体制が必要である。また、自殺者親族等が必要なときに適切な 支援が受けられるように情報提供し、あるいは、偏見や二次被害を除去するために普及 啓発に取り組む場合でも、その前提としては、専門性を有する相談事例が上がってきた 場合に対応できるように、相談体制を整えておくことが望まれる。  また、地域、学校、職域における支援活動の担当者には自殺者親族等が二次被害を受 けないようにするための配慮が求められる。  このように、地域で自殺者親族等へのケアの全体像を把握して総合的に取り組むため には、以下に挙げる対象に向けたガイドラインが作成されることが望まれる。」  個別の事項につきましては、朗読は割愛させていただきます。 ○上田座長 ガイドライン作成のための指針でありますが、まず基本的な考え方、そし て自殺未遂者のケア、自殺者親族等のケアと、それぞれの指針についての考え方を中心 に事務局から説明がございました。皆様方から御意見をいただきたいと思います。いか がでしょうか。 ○河西参考人 非常に細かい点、1点と、それから一つコメントをさせていただきます。  まず、21ページの(1)の最初の前文のところですけれども、この中の上から4行目、 「自殺未遂者のケアに取り組む関係者の間で知識や理解が十分とは言い難い」というの はそのとおりですけれども、そもそもこのガイドライン指針をつくろうとした目的はボ トムアップをすることにあったわけです。つまり、普段から対応している人で、必ずし も適切に対応できていない人、そして本来は取り組むべき立場なのに、してきていない 人に対して知識をもっていただいて、取り組み方の指針を示すという目的です。今の文 章ですと、いかにももう取り組みをしてきている人たちがいるという前提のような書き 方になっています。ですから、「自殺未遂者のケアに取り組む関係者」という文言は、「自 殺未遂者に対応している関係者の間で」というように変えた方がよいと思います。  それから対象者のところですけれども、先ほどライフリンクの清水康之構成員から出 ていた警察、消防の話がありました。ちなみにこの検討会と並行して動いている伊藤班 の自殺未遂者ケアに関する報告書においては、私は、警察、消防を書き込んでいます。 それから実は刑務官も対象として入れてあります。刑務所や留置所というのは非常に自 殺が多いところですので、刑務官もゲートキーパーたり得るということで、そういうも のも入れた方がいいのではないかという提案はしています。 ○上田座長 ありがとうございました。2点ありまして、一点は21ページの4行目です。 現に取り組んでいる方であれば、十分とは言いがたいという記述は論理的におかしいと いうことですね。むしろ「ケアに関係すると思われる」ということですか。文言はどう したらよろしいですか。 ○河西参考人 「自殺未遂者のケアに取り組むべき関係者の間で」と書いてもよいので すが、そうすると語感が少し強くなってしまうので、既に対応しているんだけれどもケ アというところまでは必ずしもできていない方々ということであれば、「自殺未遂者に対 応している関係者の間で」とすればよいのかと思います。 ○上田座長 「自殺未遂者に対応している関係者の間で」ということですね。 ○河西参考人 はい。 ○上田座長 「自殺未遂者に対応している関係者の間で」という文言でいかがでしょう か。いいですか。ではそのように修正したいと思います。  それから対象者について、河西参考人の御意見は、警察、消防、刑務官をできたら入 れた方がいいという御指摘です。いかがですか。 ○河西参考人 警察、消防に関しては未遂者と実際かかわることが多いです。あと、刑 務官に関しては法務省の管轄であり、そちらの方で既に自殺予防推進の動きがあるので あれば問題ないと思うのですけれども、そのあたりは私にはわかりません。 ○上田座長 今回は、対象者を明らかにして、その対象者に合わせたガイドラインを作 成することを考えています。そうしますと、ガイドラインの作成を一つずつ実現してい かなければいけません。一方、できるだけ多くの関係者に働きかけることも大切です。 前者であればできるだけ具体的に取り組んでいくことになります。どちらの視点で考え るかです。 ○清水(康)構成員 今の河西さんの御発言の点で言うと、警察も確かに未遂者のとこ ろにも加えた方がいいと私は思います。ほかの社会資源につなげずに緊急的に保護して、 そのまままた解放してしまって、自殺に至るというケースもあると聞いていますので、 警察もこの対象者の中に含めた方がいいのではないかと思います。 ○上田座長 わかりました。消防も機会が多いですか。 ○河西参考人 消防は救急車で自殺企図者や自傷の方を搬送します。 ○上田座長 そうしますと、警察、消防を入れますか。刑務官はいいですか。 ○斎藤構成員 米国は刑務所での自殺が多いです。日本の場合はどうもその辺の統計が 見えてこないです。あることはあると思います。警察・軍隊にもあるんですけれども統 計がわからない。刑務官は必要。 ○清水(新)構成員 刑務官については私もよく判断できないのですが、警察と消防は やはり入れていいのではないかと思います。というのは、要するに警察、消防が対象で あるという考え方もまだ確立していない。そういった意味でそれを知らしめるという意 味でも、先生がおっしゃるように、それを実際にガイドライン作成の対象として行わな ければならないというオブリゲーションの面もあります。ここの場合にはむしろそうい う部署も関係しているという明示の必要性の方が高いかという気がします。もちろん一 般的に報告書というのはなるべくシンプルではっきりと簡にして要を得るというやり方 がいいのでしょうけれども、今回の場合は少し違うかと思いますので、入れていいので はないでしょうか。 ○上田座長 警察、消防を入れましょうか。確かに警察や消防は自殺未遂者に接する機 会があると思います。どうでしょうか。 ○名越課長補佐 警察、消防とも取り組むことに関して御議論をいただいておりますけ れども、表現振りにつきましては、先ほども触れましたけれども、自殺者親族等あるい は自殺未遂者と接する機会のある者というくくりの中で御提案いただいた職種を取り上 げていくような形で記載を対応させていただこうと思います。 ○上田座長 そうしましたら、警察、消防ということでいいですか。刑務官も入れると いう御意見はありますか。 ○渡邉構成員 私も賛成で、やはり警察、消防の方が未遂者の方にどういう言葉かけを するかということもとても大事なことなので、ぜひ入れていただきたいと思います。 ○上田座長 警察、消防を加えます。ほかはございませんか。 ○平田構成員 基本的なことを確認しておきたいのですけれども、このガイドラインは 自殺未遂者と自死遺族とは別々のガイドラインをつくるのですか。それともセットにす るのですか。 ○伊藤構成員 今回、ガイドラインの指針ということでこの報告がまとまるということ でありまして、その後にこの指針を参考にさまざまなガイドラインをつくっていくとい うことです。今の先生の御質問からしますと、未遂者は未遂者の方でガイドラインをつ くって、遺族方は遺族のケアのガイドラインをつくっていく予定です。 ○平田構成員 私もその方がいいと思います。というのは、精神科の医療従事者の中に は自死遺族のケアについて知っている人はほとんどいないのです。自殺未遂者と接した り、その後のケアをしたりする機会は随分あるんですけれども、自死遺族の方は、患者 さんになってくる場合はもちろんありますけれども、情報が非常に不足しておりますの で、特に自死遺族ケアに関するガイドラインは精神科医療機関を対象に含めるべきだと 私は思います。 ○上田座長 ありがとうございました。そのほかはございますか。いかがでしょうか。 ○清水(康)構成員 25ページの(2)自殺者親族等のケアに関するガイドラインのと ころですけれども、2段落目、「また地域、学校、職域における支援活動の担当者には」 というくだりですけれども、二次被害ということでいうと、警察とのやり取りの中で二 次被害を受けたと感じられる遺族の方が非常に多いのです。したがって、そうした意味 もあって、ここはまた地域、学校、警察、医療機関、職域において自殺者親族等と接す る機会のある者はというような主語に変えたらどうかと思います。この文章のまま、警 察、医療機関というように加えてしまうと、警察や医療機関は決して支援活動の担当者 というわけではないだろうと思いますので、この主語全体を先ほど申し上げたような形 に変えたらどうかと。 ○上田座長 わかりました。ただいまの御意見は、地域、学校、警察、医療機関、職域 におけるということで、警察と医療機関を加えるという御指摘ですね。 ○清水(康)構成員 かつ、「における支援活動の担当者には」と続いてしまうとおかし くなってしまうので、つまり、警察は遺族を支援するわけではないですから、「地域、学 校、警察、医療機関、職域において自殺者、親族等と接する機会のある者は」と。 ○上田座長 はい。そうしますと、「地域、学校、警察、医療機関、職域において自殺者 親族等と接する者」ですか。 ○清水(康)構成員 「接する機会のある者」と、そろえていいと思います。 ○上田座長 そうしましたら、警察、医療機関を加えるということと、それから支援活 動では必ずしもないので、「接する機会のある者」というように、工夫してほしいという 御意見ですが、特に、二次被害という観点でいかがでしょうか。 ○清水(新)構成員 今の修正というか訂正のサジェスチョンには賛成です。ただ、報 告書というよりも私たちの理解として少し固めておきたいのは、実は、自死遺族からす ると警察というのはかなり二次被害の多く発生する場所で、時には標的として批判され ることが多いのです。しかし、一方では警察が行っていることというのは、対応の仕方、 言葉のかけ方等いろいろと問題があるのですが、言うならばいわゆる適正手続という面 がありまして、実は、自殺とされたものは他殺であるという、死体解剖を通して人権を 守るという主張さえもありますね。そういった意味で、実は、一方では警察の手続に対 する無理解から避けることのできた不幸な二次被害感情というものが発生しているのも 事実だと思うのです。その辺を私たち自身も必ずしも十分わかっていない部分があると 思うのですが、報告書に盛り込むということではなくて、私たちがやはりそういうこと もきちんと理解して、警察をただ攻撃の対象にするということだけでは連携ということ はなかなか生まれないと思います。やはり警察の方も非常によく仕事をしておられて、 その中で、それも今言ったdue processの中で行っていることであって、必要なことで す。そういうこともやはり一方では理解しないと不幸な被害感情ばかりが広がってしま うのではないかということは、議事録に残しておいていただけたらと思います。 ○上田座長 ありがとうございました。 ○清水(康)構成員 今の御発言ですけれども、当然警察は司法捜査のために現場に行 っているわけであって、遺族支援のために行っているわけではないので、その捜査の手 続をしっかり仕事としてやらなければならないということはあると思うのです。ただ、 それでも方法があるというわけであって、遺族の人権を踏みにじってまでそこで司法捜 査だからと断行するよりも、遺族支援という観点も持ちながら、可能な限り配慮しなが ら司法捜査をしっかり行うという方向に切りかえる必要があるだろうと思います。です ので、その意識をきちんと警察に持ってもらうためにも、警察とのやり取りの中で遺族 は傷つくことはあるという記述をしっかりと報告書の中にあえて盛り込む必要があるだ ろうと思っています。 ○斎藤構成員 犯罪被害者の支援センターというのがありますね。これは犯罪被害者の 権利というか、それこそ法廷に立てば二次被害を受けるということは明らかなところが 多いわけです。例えば女性のレイプなんかですね。そういう場合に法廷にも一緒に行く というような支援をする。これは実は自死遺族支援の組織もそういう役割も当然出てく ると思うのです。警察との仲介をするというか。これは問題が発生してからでないとな かなか実感として出てきませんけれども、やはり警察との間に入って何らかの支援をす ることが当然この業務の中に出てくるだろうと思います。 ○上田座長 はい。何かありますか。 ○名越課長補佐 昨年、自殺総合対策のあり方検討会という会議が内閣府で行われてお りましたけれども、その部分では同様の点が触れられておりますので、そのときの経緯 も踏まえましてまた修文をさせていただこうと思うのです。関連部分を読ませていただ きます。  「遺族の心のケアの観点からは、遺族に対し調査のためのインタビューを行う者、自 殺をした人の検視に当たる警察官や救急隊員等遺族に接する者の対応も重要であり、遺 族の心理等についてこれらの人々に対する研修が必要である。」  当時はこういうまとめ方をされております。現在、この文章を直すに当たりましては、 当時の経緯を踏まえて、また座長と検討委員の皆さんと調整をして最終的な文章を固め たいと思います。 ○上田座長 文章は先ほどの、警察と医療機関を加えて、そして担当者については表現 を工夫することにします。先ほど清水新二構成員から警察について、課題や連携の大切 さの御指摘等がありましたが、この点について議事録できちんと残しています。今後、 警察との取り組みや警察への働きかけがありますが、この議事録を踏まえながら、警察 と連携あるいは警察に対する期待や役割を考えながら取り組んでいくことでよろしいの ではないでしょうか。そして文言については、先ほどの清水康之構成員の御指摘のよう に修正することでよろしいですか。はい。ありがとうございました。  そのほかはございますか。 ○西田構成員 25ページの(2)の中で、病的な悲嘆というのが出てくるのですけれど も、これは多分ここで初めて出てくるかと思います。意味合いとすると16ページの基本 的な考え方の中にある、「中には、悲嘆があまりにも重く、長期化してしまったり、そう いった悲嘆から、身体症状を発症したり」というところの意味合いだと思うのですけれ ども、これはいきなり病的な悲嘆と出てくると、悲嘆に正常と病的というものがあって というように誤解を与えかねない。悲嘆というのはごく正常なものだと思うのですけれ ども、ただそれが混乱してくるといろいろな症状等として出てくるというところはあり ます。そして下に、イのガイドラインに盛り込むべき事項の中に、非常に簡単に正常な 悲嘆、病的な悲嘆と書いてありますので、ちょっとした誤解を招くのではないかと思う のです。してみると、(2)のところの病的悲嘆というのも、少し丁寧に書かないと誤解 を招くのかと思います。川野先生、この辺はどうですか。 ○川野構成員 病的な悲嘆という表現自体は、研究上は常に使われている言葉ではあり ます。ただここで大切なこととして、いわゆる悲嘆が複雑化したり、深くなったり、そ れから研究レベルでいうとトラウマティックな悲嘆ですね。自死であれば御遺体を直接 御遺族が触ったり、見たりという事態のときに専門的な治療が必要になる、あるいはセ ラピーが必要になるということを何とか担保したいという気持ちがあります。その意味 で、単に悲嘆と書いてしまって、全部まぜてしまうことも私は危険だろうと思うのです。 表現は西田構成員がおっしゃるとおりで、何か工夫した方がいいと思います。一番スト レートなのは、正常でない悲嘆というか、通常でない悲嘆ということだと思うのですけ れども、その言葉を使ってしまって果たしてその必要性というものが伝わるかどうかと いうところが少し気になるところではあります。  私の提案としては、交通事故で残された方たちの悲嘆を表現するときに、「複雑な悲嘆 (外傷性悲嘆を含む)」という表現を使っていた報告書がどうやら厚生労働省の方から出 ているようですので、これにならったらどうかということです。基本的には何かのカテ ゴリーを残しておく必要があるだろう。ただ、表現は何かいいものを工夫したいという 意味で同意見でございます。 ○上田座長 そうしますと、25ページの正常な悲嘆でよろしいですか。それから「病的 な悲嘆」を「複雑な悲嘆(外傷性悲嘆を含む)」ですか。 ○川野構成員 そうすればおおよそ問題になっている領域はカバーできるだろうと思い ます。単純に言えば、prolonged(長引いてしまった)、あるいはcomplicated(複雑化 してしまった)、それからトラウマによって強く印象に残ってしまったようなものをひっ くるめた表現が何か必要だということですので、犯罪被害者と交通事故被害の専門の方 に少しヒヤリングしてまいりましたけれども、今、基本的には複雑な悲嘆か外傷性悲嘆 で一番問題がないのではないかというお話でした。 ○上田座長 複雑な悲嘆だけではだめですか。括弧の中の外傷性悲嘆を含むも必要です か。 ○川野構成員 これはもしかしたら平田先生は御存じかもしれませんが、複雑性悲嘆と いってしまうと、PrigersonやHorowitzといった特定のPTSD関係の研究者が使って いらっしゃる概念だけになってしまう可能性があるかと思って、私としては(外傷性悲 嘆を含む)を入れた方がいいかと思いますけれども、先生方、ほかに何か御意見があれ ばとも思います。 ○平田構成員 余り詳しくはないですけれども、一般の人たちが理解し得るような表現 も必要だと思いますので、臨床的に一番わかりやすいのは、私は、医療を要する悲嘆と 要しない悲嘆というような分け方の方がすっきりするかと思います。 ○斎藤構成員 逆に、悲嘆そのものは正常な反応である。けれども、遷延化したりした 場合、あるいは何らかの身体症状が当然伴いますから、これらはやはり治療を要する悲 嘆である。今の御指摘にもありましたけれども、そういう仕切りは間違いでしょうか。 ○川野構成員 恐らく医療の側から組み立てるとそうなるのかと思います。そこは西田 構成員にお聞きしたいところですけれども、つまり、正常な悲嘆であればそのままでい いかというところです。正常なという言葉かどうかはわかりませんが、治療を要しない 悲嘆といってしまうと、そのままでいいかというと、それでも悲嘆を回復する過程の中 でより健全なあるいは健康なあるいはより豊かな回復の過程というのはあるだろうとい う話になってくると、何か、それぞれサポートと専門的な支援が必要なんだけれども、 その2つは分けておきたい。しかし医療だけが必要で、あとはもういいという話にもし たくないので少しジレンマがあるような感じがするのですけれども、いかがでしょうか。 ○西田構成員 おっしゃるとおりだと思います。いわゆる分かち合いの会なんかに出ら れる方で、医療的なケアは必要な方がいらっしゃいますし、そうではない方もいらっし ゃって、お話をしたり、聞いたりすることで、そのコンディションがよくなっていかれ る方もいらっしゃいますので、今、川野構成員がおっしゃるところはそのとおりだと思 います。 ○清水(康)構成員 専門的なことは全然わからない中で発言するのですけれども、病 的な悲嘆という言葉からは、遺族が患者というか、病人というような印象を強く受ける ので、少なくとも病的なというのは避けた方がいいのではないかというのが一点です。  それから悲嘆と気分障害とか外傷性ストレス障害というように分けて記載するわけに はいかないのでしょうか。気分障害とか外傷性ストレス障害というのは、悲嘆と絡めな ければいけないのですか。あえて、悲嘆はあくまでも悲嘆として記載し、あと気分障害 や外傷性ストレス障害というように記載するのではまずいのでしょうか。 ○川野構成員 今の点は、その考え方もあるかなと私も思います。ただ、近来の研究デ ータでエビデンスが出ているところは、悲嘆が複雑化した場合に希死念慮が高まるとい う話です。その複雑化という意味は、やはり深く、長く、重くなった場合に、うつ症状 などを省いてもなおかつ希死念慮が高まるというエビデンスが一応出ています。そのこ とを大切にしたいと思うのであるならば、何か悲嘆が重くなった状態について記載して おくことが全体の流れとしては適切だというようには思っております。 ○上田座長 そうしまと、25ページの病的な悲嘆をどうするかです。また、病的な悲嘆 に伴って精神疾患や身体症状があることについてはどう記載したらよろしいですか。 ○川野構成員 私の意見としては、病的な悲嘆という表現を複雑な悲嘆等、何か適切な 表現に変えることで、このままのカテゴリーではいかがでしょうかという提案でござい ます。 ○上田座長 病的な悲嘆については、複雑な悲嘆とする御意見や、斎藤構成員からは遷 延化した悲嘆のお話しがありました。また、16ページには、深い悲嘆に見舞われる、や 重く長期化してしまったり、という表現があります。 ○清水(康)構成員 こだわりたいのですけれども、悲嘆というのはそもそも重いもの ではないでしょうか。悲嘆が複雑化したときにということですけれども、悲嘆というの はそもそも複雑なもので重いものであって、それがもし複雑化したときに気分障害や外 傷性ストレス障害を招くということであれば、悲嘆から離した方が、悲嘆は悲嘆として それぞれ重く複雑なものだろうと思うので、それはそれ、しかしそれが度を超したとき に気分障害や外傷性ストレス障害を招くのであれば、それは悲嘆とは切り離して考えた 方が一般的にはわかるかと思います。研究の領域のことは本当に何もわかりませんが、 疑問に思ったもので。 ○上田座長 悲嘆はかなり重要なキーワードですし、これまでたびたび議論されていま すので、ここできちんと整理したいと思っています。 ○清水(新)構成員 先ほど斎藤構成員が指摘されましたけれども、悲嘆自体はむしろ 正常だととらえます。大切な人、物、関係を失ったときに悲しみのない状況の方がむし ろおかしいのですね。そういった意味で、多分川野構成員もそのいう理解を共有してい ると思いますが、一般に悲嘆という場合には、むしろ当然というのでしょうか、自然の プロセスととらえていて、その上でその悲嘆からうまく抜け出せない、いわゆる喪の作 業ということが完遂できなかったり、違う方向に流れていったりすると、やはりそこか らが正常から異常というか、そこで病的とか複雑とかいろいろな言葉は出ていますが、 むしろそういうケアが必要な悲嘆の性質を帯びてくる。でもその中でも分かち合いの中 で十分それが対処できる人もいっぱいいるわけです。これまではっきりしていたところ ですね。したがって、ごく当たり前の反応としての悲嘆と、少しサポートが要る悲嘆、 自分で何とか、みんなで対処ができるという悲嘆と、ここで言っているのはもう一歩進 んだ、先ほど医療が必要なという表現がありましたけれども、そういう部分だと思うの です。最初は確かに図がありましたね。悲嘆のプロセスというのは3つの段階に分けて 考えるという図があったと思うのですが、それはいつの段階かで消えたと思いますけれ ども、あの図はそれなりに、こういう悲嘆の複雑な問題を理解するのにいい図であった と思いますが、諸事情で削られたのかと思います。やはりこういうのは、先ほど言った 3つ目のタイプ、医療的なケアが必要なものを言っていると理解していますが、それで いいのでしょうか。そうするならば、医療的なケアを必要とするような複雑ではなくて 病的ですか、悲嘆で苦しんでいる場合にはとした方がよりフォーカスがはっきり合って くるという気がいたしました。 ○上田座長 ありがとうございました。医療的なケアが必要な、複雑な悲嘆ですね。正 常な悲嘆はいいですか。悲しみは正常というか、普通にありますので、正常な悲嘆はい いですか。 ○川野構成員 恐らく両清水構成員がおっしゃっていることの中には、一般の方たちが 読んだときに誤解のないようにということを重視されていると思います。その意味で言 うと、医療の必要な悲嘆と「正常な」を取った悲嘆という考え方もあり得ると思います。 それは研究的なカテゴリーということとは少し別問題として、まず1つ目のカテゴリー として悲嘆というものはこういうものであるという記載があって、その次に、医療が必 要となるような悲嘆としてこういうようなことがあり得るんだという書き振りにすると いう整理が読む側の誤解を少なくするということかもしれません。 ○上田座長 整理しますと、正常な悲嘆は、悲嘆にしまして、病的な悲嘆は、医療が必 要となる悲嘆、そんな表現でよろしいですか。医療が必要となる悲嘆か、医療が必要と なるような悲嘆、かなどの表現はあとで整理します。悲嘆については、悲嘆があり、ま た医療が必要となる悲嘆があり、そして、医療が必要となる悲嘆に伴う精神疾患という ことでよろしいでしょうか。そのように整理したいと思います。ありがとうございまし た。 ほかはございますか。 ○河西参考人 今の最後の言葉ですけれども、医療が必要というよりは、私は、治療が 必要とした方がいいと思います。つまり狭義の医療行為だけではなく、カウンセリング や認知療法といった、さまざまな非薬物的なアプローチもありますので。 ○上田座長 治療がいいですか。それとも治療的ケアはいかがですか。 ○河西参考人 「医療」とすると狭くなり、イメージとして薬物療法などに限定されて しまうので。「治療」とすれば心理療法なども入ってきます。 ○上田座長 ケアは使わずに治療でいいですか。 ○河西参考人 そこはどうでしょうか。皆様の。 ○平田構成員 一番広いのはケアです。 ○上田座長 ケアですね。 ○河西参考人 そうですね。ただケアはすべての悲嘆に必要という見方もあると思いま すね。 ○上田座長 それでは治療が必要でよろしいですか。確かに悲嘆はケアが必要ですね。 ○名越課長補佐 関連した用語ですけれども、16ページの1段落目をごらんいただきた いと思います。全体を通して使えるかどうかわかりませんが、医療による専門的なケア が必要となるという表現もこの場所では使っています。こういった表現はいかがでしょ うか。 ○河西参考人 でも先ほどの話からすると、正常な悲嘆があって、治療を要する悲嘆が あって、さらにその中に精神疾患あるいは身体疾患というのが派生した場合にはさらに 適切な診断に基づいて治療が必要ということで、そんなに矛盾がないというか、整合性 は悪くないのかと思って聞いていました。 ○上田座長 河西参考人がおっしゃったように、悲嘆があって、また治療を必要とする 悲嘆があって、そして、それに伴う精神疾患や身体症状につながりますね。 ○名越課長補佐 3段階ということですね。 ○河西参考人 そうですね。ある意味2段階目が抜けていると言えば抜けているのでし ょうけれども、そんなに無理もないかなという気がします。 ○上田座長 そうしますと治療が必要となる悲嘆ということで整理します。いいですか。 ○名越課長補佐 同じような用語が26ページの冒頭に、病的な悲嘆に伴う身体症状とい うのが出てきますが、ここも「治療が必要な」と修正いたします。 ○上田座長 ここも同じですね。ほかはございませんか。それでは、全体的にはいかが ですか。  事務局、先ほどの清水新二構成員からの御指摘は分かりましたか。 ○名越課長補佐 前回の報告書と比較してみたのですが、前回の報告書(案)のときに は、地域生活、社会復帰を目指した支援のマネジメントに関する記載がこのほかにござ いまして、それはポジションに関することではなくて、事例の収集を行って、それをガ イドライン等に結びつけるという趣旨の記載でありました。それを今回反映させるとい うことであれば、11ページ目のオの研究のところの下から3行目ぐらい、 ○上田座長 研究の中でではなく、清水新二構成員は、ケアについて工夫した方がいい という御指摘でしたね。 ○清水(新)構成員 言われてみると確かに事例の収集という文脈だったかと思います が、検討会の議論の流れの中で見ると、河西参考人も指摘していたと思いますが、ケー スマネジメント的な機能と人材が決定的に不足しているのが未遂者対策の大きな根幹に あるという指摘がありましたね。私もそれに賛同した経緯があります。そしてそこが一 番エアポケットになっているのだろうと思って、たしかあのときにそういう人材の確保 も盛り込みたいということを河西参考人もおっしゃったような気もして、私もその方向 を強く賛意を示した経緯があると思います。そういった意味で、先ほどは、何らかのそ うした人材の確保というのでしょうか、強化というか、それの必要性をもっと明瞭に出 した方がいいのではないかという趣旨でありました。 ○上田座長 そうしましたら、10ページに今後の取り組みが記載されていますが、10 ページの(ウ)のところにはマネジメントを行い、となっていますので、清水新二構成 員の御指摘をここに加えることでよろしいですか。 ○名越課長補佐 (ウ)に対応する形で、その下のウの人材の育成のところに清水先生 の御指摘の部分を入れようかと思います。入れるとしたら2パラグラフ目の、「国におい ては、地域での自殺未遂者のケアを含む自殺対策を企画する担当者のための研修や精神 科医をサポートする人材を養成する研修を実施し、」その後に、各種ガイドラインに呼応 する形で、支援のマネジメントに関する中身を入れようかと思います。 ○清水(新)構成員 研修程度のものではないような気がするのです。もっと強力にそ の辺の人材確保を必要とするというのが多分検討会で表明された意見かとも思いますの で、やはり研修という形では。 ○上田座長 体制の配置について考えるということですね。 ○清水(新)構成員 そういう意見だったと思います。そして私もそう思います。 ○上田座長 そうしますと、(ウ)では、マネジメントを行いという表現だけですので、 何かいい御意見はないですか。まとめたいと思います。 ○伊藤構成員 今の議論からしますと、9ページのアの医療機関におけるケア全体のと ころでケースマネジメントの内容を盛り込むという形になっていますので、趣旨として は清水構成員の内容も含まれているのではないかとも思います。 ○清水(新)構成員 私も最初この部分でいいと発言したつもりです。 ○上田座長 わかりました。ただいまの清水新二構成員の指摘を踏まえて、アの最後の ところで文言を工夫することでよろしいでしょうか。 ○清水(新)構成員 ただし、平安委員の発言はもう少し前からそれが必要だというお 話でした。ここはあくまでも急性期の治療が終了した後でとか、そういうようなことに なっていますが、もう少し前から必要だというお話が先ほど出た内容かと思います。そ こはいかがですか。 ○平安構成員 私が言ったのも、9ページのアの医療機関におけるケアのところでいい と思います。医療機関に患者さんとして来られた段階で即対応が始まるという認識が必 要です。もしポジションというか、役割をもう少し明確に規定するとすれば、やはり清 水康之構成員の方からもありましたけれども、8ページの上の方で、やはり失業・倒産・ 多重債務・長時間労働等の固有の事情ですね。だから健康問題、医療側と社会側を結び つけるポジションというものをもっと明確にしないとなかなか難しい。例えば精神保健 福祉士とか、ある程度そういった職種、精神保健福祉士などでもいいのですけれども、 そういった明確なポジションといいますか、役割を果たす人が必要だという形の方が、 やはり医療者は多重債務のことなどは全くわからない、それを研修してもなかなか追い つかないともろもありますから、そういったスペシャリストが現実には非常に不足して いるということが、清水康之構成員の文章も反映することができるのではないかと思う のです。 ○清水(康)構成員 そうでないと、自殺してからでないと支援を受けられないという ことになってしますのです。電話相談でもよく直面しますが、病院に運ばれればそこで 支援をしてくれるかもしれないけれども、まだ自殺する前の私には支援してもらえない のかという矛盾が生じてしまうので、医療機関におけるケアというところももちろんそ うですが、できればその前の、相談体制、地域で行う支援体制の中から、医療と社会資 源との連携、つなぎ役となる人材を育成し、ちゃんと確保するということが必要だろう と思います。 ○上田座長 今の話はどうされますか。 ○清水(康)構成員 先ほど一番初めに発言させていただいた再企図を防ぐためには多 くの支援をというところを、意味的にはここに人材育成等も含めてということです。 ○上田座長 はい。 ○清水(新)構成員 私が先ほども申し上げたように、例えば精神保健福祉士等という 具体的なところを言っているわけです。彼らもまた初めて自殺者があった段階で接する 機会を持つ人です。したがって今のものとは違うニュアンスだったと思います。 ○上田座長 そうしますと、精神保健福祉士やそのような人の問題をどこかに入れてほ しいということですね。 ○清水(新)構成員 入れるとするとアかなと思います。 ○上田座長 アに入れることでいいですか。 ○名越課長補佐 参考までに、11ページの研究のところに、下から3行目の精神保健福 祉士等の活用等の実践的なモデルを提示する調査研究ということで、精神保健福祉士が 現場で既に御活躍いただいているということはこちらもよく承知はしているんですけれ ども、まず指摘について明らかにするということが大事なのではないかということで、 今、現在は研究のところに示しているのですが、いかがなものでしょうか。 ○上田座長 11ページの研究にそのように取り上げていますが、今後の取組の方向性の 中にもそういう体制が望まれるとの表現を検討してほしいという清水新二構成員の御意 見について検討していただけますか。 ○平安構成員 はい。確かに今は研究段階にあり、まだエビデンスがしっかりあるとい う段階ではないです。ただ、そういった医療と社会を結びつける役割を持ったケースマ ネジメントをもう少し明確にしていただくことで、そういった人材をあるいは専門家を 養成するということであれば、明らかな、精神保健福祉士がどうだということではなく て、やはりそういった機能を果たす役割がいないと、今の複雑で非常に人材不足の医療 の中で、医師や看護師にこれをやれと言われてもなかなか難しい。まして地域の中でも そういった人材、医療のことをわかっていて社会活動をしている方が非常に少ないとい うこともありますから、それを結びつける人材が必要だということを少し明確にしてい ただくと一歩進むのではないかと思います。 ○上田座長 今、平安構成員がおっしゃったことを工夫してください。  ほかはよろしいですか。全体的にいかがでしょうか。そうしましたら、ただいまの点 なども含めて、事務局で作業をしていただく必要があると思います。きょうで7回目で すが、本日で報告書の取りまとめとさせていただいて、ただ、大事な修正箇所がありま すので、座長預かりにさせていただいて、事務局で作業して、もう一度皆さんにフィー ドバックし確認した上で、できるだけ早くまとめて公表したいと思っております。それ でよろしいでしょうか。したがって事務局で修正して、メールで皆さんにお届けして、 そこで確認して、まとめることにいたします。はい、ありがとうございました。  そうしましたら、議事次第のその他でございまして、実は、前回の検討会で、全国自 死遺族総合支援センターにつきまして、当初は清水康之構成員にお話しいただく予定で ございましたが、御都合で御欠席だれましたので、西原構成員からお話をいただいたと ころでございます。  本日、全国自死遺族総合支援センターの杉本脩子代表幹事さんから、この活動につい て御紹介されるというお話がございましたので、ここでお願いしたいと思います。はじ めに、清水康之構成員にお願いします。 ○清水(康)構成員 時間もないので手短にやります。きょう当日の配付資料として配 らせていただいたことを簡単に御紹介します。  今、ネット上で、「練炭自殺にかわる新しい自殺方法が開発されました。火を起こす必 要はありません。練炭よりも簡単です。」という見出しで、自殺の具体的な手法が書かれ ている掲示板があります。これは1月の上旬に載ってから既に3,000件以上の書き込み がなされていて、まだまだネット上で更新され続けているということです。  これがどれだけ影響しているかわかりませんけれども、裏面を見ていただくと、これ は新聞記事の検索をかけたものですが、1月以降、この有毒ガス、これと全く同じ手法 を使っての自殺というものが立て続けに起きています。これはもしかしたら、これ以降 も若者の自殺の一つの手段として、こういう情報が簡単に手に入る限りはもっと続いて いくかもしれないという危険性があります。  どういう対策があるのかということは議論していかなければなりませんし、何か実際 手を打っていかなければならないと思うのですけれど、こういうことが最近出ていると いうことを御紹介させていただきます。ぜひ皆様とも、こういう検討会に参加されてい るメンバーの方々ですから、報告書をまとめるというだけでなく、こういう実務的なこ ともぜひ連携して取り組めればと思います。  もう一点が、今御紹介いただいた全国自死遺族総合支援センターについて。代表幹事 の杉本さんにきょう来ていただいているので、御説明をお願いします。 ○杉本 杉本でございます。個人的なことですけれども、私は昭和59年に夫を亡くした ことがきっかけで、当時は本当に自助グループというような言葉も一般的でなかったと 思いますけれども、たまたま御縁があって遺族の当事者のグループに参加をし、その後、 スタッフとしてかかわらせていただいて20年以上たちました。長い間、遺族の悲嘆は個 人的に対処すべきこととされてきましたが、この自殺対策基本法の成立をきっかけに、 これだけ遺族支援について議論がなされ、対策がなされるということは本当に画期的で、 特別な感慨を持ってきょうのお話もずっと聞かせていただきました。  現在、遺族支援のグループが本当に次々と立ち上がって、多くの人たちが一生懸命活 動を始めています。そんな中で、これまでは心理的、情緒的な心のサポートということ で遺族が安心して胸のうちを語り分かち合うことのできる集いを考えていた部分がとて も多かったと思うのですけれども、実際に自死で家族や大切な方を亡くされた方に接し てみると、心の問題だけではなくて、さまざまな生活上の問題、経済的なこと、法律的 なこと、福祉にかかわること、いろいろな問題をたくさんお持ちでいらして、それらの ケアも必要としているということをとても強く感じるようになりました。  したがって、そういう支援がなされれば心の面でもパワーが上がって、両方が相乗作 用のようなことが期待できるのではないかと思います。私たち民間の団体もいろいろと 多方面の勉強をしなければいけません。経験を積みながら、参加する方何を必要として いるのかということを洞察力といいますか、察する力が運営側には求められているので はないかと思います。そして適切な支援が得られるようにつなげていくことが大切です。 支援にあたる人たちの研修も重要です。  そんなことで、私たちのセンターを1月に立ち上げたときには、さっき斎藤先生から もお話がありましたが、僧侶の方、法律関係の方、行政の方、御遺族の方、いろいろな 分野の方たちが集まりました。そしてお互いに情報を必要としているし、お互いに困っ ていることを何とかいい解決法が見つからないかというようなことで連携したい、学び あっていきたいと実務的な動きが始まっているということを御報告したいと思います。 しかし全国的に見ればこれはまだまだ点のようなものでしかないと思います。  たまたまきょうは、私は神奈川県横浜市の心の健康相談センターが主催している今年 度最後の遺族の集いに参加した帰りにこちらに伺わせていただきました。心の健康相談 センターの職員の方たち、精神科のドクター2人を初め、ケースワーカーや保健師さん たちに、民間から私ともう2人で最初から一緒に企画をし、話し合いながら進めてきて、 きょうで8回目の集まりを行いました。6回目、7回目ぐらいから、最初はとても警戒 感が強かった参加者の方たちから笑顔が出るようになりました。きょうは今年度最後だ ったのですけれども、こういう集まりが横浜だけではなくて、全国各地にできてほしい、 自分たちも必要だということはよくわかったので、一緒になって力を出し合って活動し たいというとてもいい話し合いができました。このような行政と民間、そして当事者で あるご遺族も含めた輪がもっと広がるといいと思っています。  ただ、民間と行政の連携は言葉で言うほど易しくはなく、それから民間同士の連携も いろいろな意味で難しいということも現実です。けれども、自殺がさまざまな要素が絡 み合って起きたことであれば御遺族が抱えている問題も当然そうであるわけですから、 どうしても縦割りの今までの考え方を何とか突き破って新しい流れをつくっていかなけ ればいけないのではないかと常に思っています。  遺族支援というときに、御遺族にとっては亡くなった方が戻ってこない限り根本的な 解決策というのはないのです。そこがやはり御遺族の支援の出発点であるということ、 安易な支援というのはあり得ないということを常に念頭に置かなければいけないのでは ないか、そして本当に御遺族が必要としておられる支援というのはどんなものなのかと いうことを常に御遺族の方たちから学ばせていただくというような姿勢も必要ではない かと思っております。  簡単ですけれども以上でございます。ありがとうございました。 ○上田座長 ありがとうございました。ただいまの杉本さんのお話につきまして、何か 御質問等はございますか。いかがでしょうか。 ○渡邉構成員 一つだけコメントさせていただきます。私は、むしろ青森県では一次予 防というか、住民の人が安心して気持ちを伝え合うことができるような仲間づくりとい うことで行ってきているのですけれども、今は御遺族の方たちもお互いに支え合ったり、 優しい気持ちを伝え合ったりすることで、笑いも出てきて、行き着くところは一つでは ないかと思っているので、ぜひ今後とも協力していただければと思います。ありがとう ございます。 ○上田座長 ほかの方はよろしいでしょうか。杉本さん、ありがとうございました。  それでは、これまで7回にわたりまして皆様方から大変貴重な御意見をいただき、そ してまとめることができました。皆さんが自殺者未遂者や自殺者親族等に対してのケア にこれまで大変熱心に取り組んでおられますことに敬意を表したいと思います。また、 そのような実際の活動を通して、この問題に関しての議論が熱心に行われたと思ってお ります。  きょうは中村部長も御出席されておりますが、これから国、地方自治体や関係機関・ 団体が、「はじめに」にありますように、この報告書を活用して、いかにこの取組を我が 国において展開するかが大きな課題でございます。そのためぜひ引き続き、皆様方には 御活躍していただき、また、御指導もいただきたいと思っております。ありがとうござ いました。  私からのお礼のごあいさつは以上でございます。最後に中村障害保健福祉部長からご あいさつをいただきたいと思います。よろしくお願いします。 ○中村障害保健福祉部長 きょうで検討会は最後ですので、一言お礼のごあいさつを申 し上げたいと思います。  皆様方におかれましては、一昨年の12月以来、計7回にわたりまして大変お忙しい中 御出席をいただき、熱心にこの問題について御議論をいただきましたことを厚く感謝申 し上げたいと思います。  この検討会では自殺未遂者や残された方々のケアについて、国や自治体がどんなこと ができるのかということについて初めて本格的な整理をしていただいたと思っておりま す。また、それによって今後の取り組みの方向性についておまとめをいただいたわけで ございます。  私どもといたしましては、今後、おまとめをいただいた報告書の内容を、一つは、関 係者の皆様方に知っていただく機会を設けたいと思っておりますし、また、御提言をい ただいた点について施策の展開もしていきたいと思っております。特にきょうも少し議 論になっておりましたけれども、本報告書で示されたガイドライン作成の指針を参考に いたしまして、厚生科学研究を活用してモデル的なガイドラインの作成に取り組んでい きたいと思っております。  皆様方におかれましても、ガイドライン作成指針の普及、あるいは皆様方それぞれの 場でこの問題にかかわっておられると思いますので、それぞれの分野でガイドラインを 作成する際にまた力を発揮していただければと思っております。  検討会が開始されまして以降、自殺総合対策大綱も策定されまして、自殺対策の取り 組みへの要請はいろいろとございます。私どもにつきましても、平成20年度予算案はま だ国会で審議されておりますけれども、14億円ということで、前年度に比べますと2億 円の上積みをしておりますし、また新たな施策にも取り組んでおります。また、4月か らの診療報酬の改定でも取り組むべきことは行えたのではないかと思っております。  いずれにしても大切なことは、人材の育成、普及啓発、民間団体への支援ということ を継続して行っていくことが必要でありますし、また、21年度の議論がそろそろ始まっ ていくわけですけれども、そういう点でも必要な事項については議論をしていきたいと 思っております。  また、こうした施策は国だけではなかなかできませんし、きょうも議論がありました けれども、民間団体の御協力も必要ですし、特に、厚生労働行政は地方で実施される局 面も多いものですから、1月の部局長会議でもかなり力を入れて自殺対策の取り組みに ついてお願いをしましたけれども、また、あす課長会議がありますので、取り組みを促 していきたいと思っております。  最後になりましたけれども、皆様方におかれましては、先ほども少しお話しいたしま したけれども、自殺の問題についてそれぞれの立場で取り組みをいただいておりますけ れども、今後とも、ぜひ、それぞれの場面で御活躍をいただくことをお願いいたしたい と思いますし、また、我々が進めようとしていることについての御協力をお願いしたい と思います。本当に、長い間ありがとうございました。 ○上田座長 ありがとうございました。 ○名越課長補佐 以上をもちまして、第7回の検討会を終了させていただきたいと思い ます。ありがとうございました。  (了)    照会先:厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課障害保健係   03-5253-1111(内線3065) 38