08/03/03 第2回看護基礎教育のあり方に関する懇談会 第2回看護基礎教育のあり方に関する懇談会 日時 平成20年3月3日(月)15:00〜 場所 厚生労働省5階共用第7会議室 委員 井部俊子、尾形裕也、梶本章、田中滋、寺田盛紀、矢崎義雄(敬称略 五十音順) ○石原課長補佐 ただいまより、第2回「看護基礎教育のあり方に関する懇談会」を開 催いたします。委員の皆様、有識者の皆様方におかれましては、ご多忙にもかかわらず ご出席いただきまして、誠にありがとうございます。なお、本日は、寺田委員よりご欠 席の連絡をいただいております。  まず最初に、前回出席できませんでした幹部の紹介をさせていただきます。医政局長 の外口、審議官の中尾でございます。文部科学省の三浦医学教育課長につきましては遅 れてまいります。それでは、座長、よろしくお願いいたします。 ○田中座長 皆さん、こんにちは。本日は、在宅あるいは地域において、医療と看護を ご専門としていらっしゃる3人の先生方にお越しいただきました。どうもありがとうご ざいます。3人のご発表をいただく前に、前回、委員の先生方からたくさん宿題が出ま して、その宿題となった事項について、事務局に調べていただきました。お三方の報告 の前に説明をお願いします。 ○小野対策官 追加資料を、順に説明申し上げます。後ほどスピーカーの皆様方のプレ ゼンテーションがありますので、ごく短くまいりたいと思います。1頁は、上は「女性 の年齢階級別労働力率の国際比較」、これは看護に限ったものではありません。下は日本 の「看護職員の就業率について」です。いわゆるM字カーブということですが、30歳 から34歳、35歳から39歳のところにおいて、両方のグラフで日本のデータについて それが見えるところです。  2頁は、「看護師の年齢構成別推移」を欧州と日本と比較したもので、年齢構成全部を 100としたときの割合です。ヨーロッパのものはEUROSTATのデータ、日本のものは 我々のデータです。ヨーロッパのほうは将来推計があります。ヨーロッパのものと比較 すると、真ん中の下の我が国のグラフは比較的フラットであって、特定の年齢層が2割 を超えていることはないということと、諸外国と比べると、比較的若いほうにあるとい う傾向があります。  3頁は「全産業と看護職員の離職率の推移」で、看護職員については日本看護協会で お調べになったものです。真ん中がトータル、青い所が新人看護職員に着目したもの、 2種類の数字となっております。  4頁と5頁が2つ同じ種類の資料ですが、「新人看護職員の離職理由」についてのデー タです。これも日本看護協会でお調べになられたものですが、4頁が大学や養成所の学 部長など、先生方に聞いたものです。5頁が病院調査で、雇っている病院に聞いたもの です。いずれも、新卒看護職員の職場定着を困難にしている要因は何ですか、というの が複数回答です。5頁の左右は、左側が病院に聞いたもの、右側が学校調査で、これは すべての種類の学校です。  6頁は「全産業の新規学卒就職者の在職期間別離職率の推移」です。これは看護職に ついて、1年目、2年目、3年目でどのぐらい辞めていくのかというもののご所望があっ たのですが、ありませんでしたので、全産業の全職種についてのデータを、参考までに 大卒と短大等卒という中に示しておりますが、短大等卒の等の中に、養成所を卒業され たような方も含まれることになっているものです。  7頁は「死亡場所の内訳・推移」で、前回お出しした病院・自宅というものに診療所・ 老人ホームを加えたものです。下のほうの緑とオレンジのものが、それぞれ老人ホーム・ 診療所ということになっております。  8頁・9頁については、前回、諸外国の制度について、新人看護職員の研修制度があ りと書いたオーストラリアとイギリスの例について、もう少し詳しいことはないかとい うことで、いただいたご質問に対してのものです。オーストラリアですが、まず欄外の ※の所で、実施する組織や期間は各州ごとに決められており、州のシステムだというこ とです。上の3つ目の四角で内容ですが、調査したニューサウスウェールズ州の例でい くと、期間は12ヶ月間となっており、内容は内科・外科・専門領域という3つの臨床 部門のローテーションシステムになっている。この専門領域は、個々人のコーディネー ターのような方々と相談をして決めるということだそうです。指導は、いわゆるプリセ プターシップというもので、特定の先輩職員が担当を決めて指導していくやり方です。 チェックリストに基づいて看護技術を評価し、※の所になりますが、処遇については新 採用者と同じような待遇として給料を支払うことになっているということです。  9頁はイギリスのほうです。これもいろいろ書いてありますが、上の四角の最後のパ ラグラフ、「これを受け」の所ですが、NHSの下で、これも各施設ごとに独自のプログ ラムで行われているということだそうです。今回調べることができたのは、マンチェス ターのNHSトラストという事例ですが、ここにおいてもオーストラリアと同様1年間、 施設のニーズに合わせた新人教育を行うということで、プリセプターシップで指導する ということです。プリセプターの指導に加えて、4ヶ月ごとに2日間ずつ、集合研修を 行うのだそうです。この例でいくと、最初の4ヶ月には輸液療法、次のものは自己効力 コース、直訳なのですが、英語で言うとセルフエフィカシーです。セルフエフィカシー のコースで、自分の業務に関する時間の管理などといったことを行う。その次には、自 分が指導的立場に立ったときの学生の指導のやり方について、セッションが行われます。 これらの研修については公費が出ているということだそうです。  10頁は、看護師の学校の先生の資格の部分です。これは専任教員といって、看護師の 養成所に必ず置かなければならない先生方の要件です。看護師の所ですが、(1)、(2)のいず れかの方ということで、(1)が5年以上の業務経験プラス必要な研修を経た方、(2)が大学 において教育に関する科目を履修した方で、専門分野の教育内容のうちの1つの業務を 3年以上やった方、いずれかの方が教員としての要件ということになっております。  11頁は、厚生労働省所管の養成所に当てはまる配置基準です。これは看護師3年課程 でいうと8人が基準となっており、学生総数が120人を超える場合には、学生30人を 目途に専任教員を1人増やしてくださいという指導をさせていただいております。  12頁・13頁、両方を見比べると、12頁が厚生労働省所管の養成所、13頁が文部科学 省所管の大学で、それぞれの専任教員の数の比較です。それぞれの下の段ですが、養成 所は看護師3年課程でいくと510校、4,924人、大学でいくと145校、5,175人が専任 教員の数となっており、大学のほうが圧倒的に1校当たりの教員の数が多いのは、わか るところです。  14頁は、2000年に日本看護教育学会がされた調査で、「看護教員の所属機関別教育経 験年数」を示したものです。これは、「あなたは何年間、先生をやっていますか」という ことで、種類別の学校の先生に聞いたものですが、3年以上5年未満で1回落ち込み、 さらに長い方がまた増えてくるということになっております。一方で、高校については、 そういった3年以上5年未満で1回落ち込むという傾向はあまりなく、年功的に増えて いくということになっております。  15頁です。しばらく看護師の業務範囲に関するデータが続きますが、15頁から20頁 までは、アメリカにおける上級看護師に関する資料です。15頁は、アメリカは州ごとに 看護師の免許が決まっているわけですが、アメリカの看護協会に当たる組織で、どうい ったものがあるかを概括的に整理した資料です。1つ目の○の2つ目のパラグラフですが、 Advanced practice registered nurseには、Nurse Practitioner・Clinical Nurse Specialist・Certified Nurse-Midwife・Certified Registered Nurse Anesthetistという 4種類があるということで、最初のNurse PractitionerとClinical Nurse Specialistに ついては、そこに掲げてあるように、全米中を探すと、それぞれ7つの専門領域がある という状況だそうです。それぞれの認定と登録、業務範囲は、州法によってまちまちで あるというのが現状だそうです。  16頁から20頁までは、それのカリフォルニア州における例示です。これは詳細にわ たりますので、後ほど先生方にお目通しいただければと思います。  21頁は、フランスと日本とを比較したものです。フランスについては免許は国1本で すが、一般の看護師とAdvanced/Specialistという2種類がおられるようで、 Advanced/Specialistの業務の範囲について、そこの言葉で説明したところが一般看護 師とは業務が違うところです。これも、詳細はまた後ほどご覧いただければと思います。  22頁は、いわゆる看護師の業務範囲がどこまでなのかというお話です。ちょっとコピ ーの線がわかりにくいのですが、これはどういう業務を独占的にやっているかというこ とです。いちばん大きな四角、青い影がかかっている四角の所が医者のやっていい医行 為で、ここは医者の業務が独占的になっている。一方で、看護師の所に書いてある「診 療の補助」という所からずっとあって、医者の長方形をはみ出た所に「療養上の世話」 という部分があります。この「診療の補助」という部分は、一般的に医者の独占行為で あるけれども、保・助・看の方々がやっていいと法律で書いてあって、看護師について は、「療養上の世話」も独占行為だというものを示したものです。その中で、理学療法士 などいろいろ書いてある職種の方々は、看護師がやっていいことになっている診療の補 助の一部をやっていいという法律の立て方になっているものです。これらはいずれも業 務独占ですので、あることをこれらの免許を持っている人以外がやってはいけないとい う法律になっております。一方で、保健師の所は保健指導となっておりますが、これは 「名称独占」と言って、「保健師です」と名乗ってこういう行為をやったらいけませんと なっているわけです。  23頁からまた学校の話に戻りますが、「看護学校養成所受験倍率」等に関するデータ で、23頁が学校類型別の受験倍率、24頁が定員充足率です。いずれも赤い線の4年制 大学が高いという状況になっております。  25頁は、「看護師学校養成所卒業者の就業状況」、平成19年3月です。これはいわゆ る3年課程、大学、短大、養成所で就業先を見たデータですが、平成19年3月ですの で、いわゆる7対1看護の影響を受けている年ではあるのですが、ほとんどの方が病院 に就職されているというのが見てとれるところです。  26頁は、「大学・短大等への現役進学率の推移」です。赤い線が女子再掲ということ になっております。  最後の27頁は、保・助・看・准看の方々の全体での位置づけを見るために出したデ ータですが、すべての医療で働く方、事務の方なども含めて、100床当たりの従事者数 でいうシェアを見ております。保健師・助産師・看護師・准看護師を足すと46.3%で、 すべての従事者の約半数ということになっております。以上、取り急ぎ説明を終わりま す。 ○田中座長 ありがとうございました。短時間でよく調べていただいたと思います。た だいまの説明について、何かご質問はありますか。あるいは、ご意見でも結構です。 ○矢崎委員 21頁に、看護師の業務に関するフランスと日本との比較がありますね。22 頁にそれぞれの業務独占で、法律的に守備範囲が決まっているというようになっていま す。例えばフランスの場合にAdvanced/Specialistというところで、相当医行為に近い ところまで行われていますが、法律的なことで行われているのか、あるいは日本みたい にきっちりした医師法、保助看法みたいなものが外国でもあって、それに基づいて行わ れているのでしょうか。 ○小野対策官 日本の法律ですと、「療養上の世話」と「診療の補助」という比較的抽象 的な言葉で書いてあるのですが、フランスの場合は、看護師の業務はかなり細かく法律 で列記されているような国ですので、ここで書いてある麻酔専門看護師のことも同じよ うに、こういうことができると細かく法令で決まっている、というように承知しており ます。 ○田中座長 ほかによろしいですか。細かい部分は、また後刻、対策官に直接お聞きに なるのも構わないかと存じます。本日の主な議事に入らせていただきます。今回から数 回にわたって、看護に関係する有識者の方々をお呼びいたします。それぞれのご専門の 観点から、将来求められる看護師像、看護師に求められる資質は何か、またそのための 教育に関するご提言などを伺いたいと存じます。本日お出でのお三方について、事務局 から紹介をお願いいたします。 ○小野対策官 本日、お三方にお見えいただいております。左の先生からご紹介申し上 げたいと思います。太田秀樹おやま城北クリニック院長でございます。太田院長は、栃 木県で在宅医療を核とした医療法人アスムス理事長として、診療所や訪問看護ステーシ ョン、老健施設などの経営をされており、一方でNPO法人在宅ケアを支える診療所・ 市民全国ネットワーク事務局長として、全国的に在宅医療の普及に取り組んでおられま す。訪問看護関係のシンポジウムなどでも、積極的に看護に関するご発言をされており ます。  真ん中の秋山正子先生は、白十字訪問看護ステーション所長でございます。秋山所長 は、臨床・教育の経験に加えて、新宿区で訪問看護ステーション所長、居宅介護支援・ 訪問介護事業の管理運営をされており、一方で市民ボランティアの育成や「30年後の医 療の姿を考える会」の会長でもあられます。急性期医療機関との連携や高齢者介護、在 宅ターミナルなど、幅広い看護の立場から、さまざまな専門家と交流され情報を発信し ておられます。  続きまして、永江尚美島根県健康福祉部健康推進課調整監でございます。永江調整監 におかれましては、島根県保健師として、保健所や県の行政において、母子保健、難病、 健康増進施策の推進に携わられ推進されてきました。また、保健師の地域・職域連携に ついても、厚生労働省検討会に参画され、全国保健師長会島根県支部長も務められてお ります。  それでは、太田先生のほうから、ご発表をお願いいたします。 ○太田秀樹先生 ただいまご紹介いただきました太田でございます。ご紹介にもありま したように、私は出前医療をやってまいりました医者で、看護教育とはあまり縁はなか ったのですが、地域で在宅医療をやっていく上で気付いたこと、感じたこと、何でも話 していいと言われたので、ここに登場させていただきました。  そもそも私のバックグラウンドですが、1979年に医師免許を手に、当初は麻酔科で研 修をやりました。当時(1979年)は医者が増え始めたころで、「スペシャリストになら ないと、医者は食べていけないぞ」と脅された時代です。何科をやろうか迷っている中 で、とにかく死にそうな人を救えなければ医者ではないだろうということで麻酔科に行 きました。麻酔を毎日かけている中で、どうも何か閉塞感といいますか、すっきりしな いものがありました。それは何かと考えますと、患者は寝ていますから、患者とコミュ ニケーションがとれないのです。それで、もうちょっと患者と接することのできる科に 行こうと、整形外科を始めました。  しばらく大学病院に勤務しておりました。ところが、あるとき、身体障害者と旅行に 行くチャンスがあって、そこで本当に医療を必要とする人たちに医療が届けられていな いという現実に直面しました。それでは、医療を運んでみるかと、全く発想を逆転させ て、在宅医療をやるための診療所を1992年に開設いたしました。「出前医療17年の実 践」とメモに書いてありますが、正確には16年です。17年目に入ろうとしているわけ です。そのような現場の私の経験から、今日は地域での看護の問題についてお話させて いただくということです。通常、在宅訪問看護を含めて、施設のほうから見て、いろい ろなご意見があるわけですが、私は逆に地域のほうから見て、病院看護の問題というか、 課題を浮き彫りにできたらと思っております。  まず、出前医療を始めた私自身に最初に振りかかってきたのが、「何で往診なんかやる んだ」という評価でした。「何で医者が在宅ケアなんかやるんだ」と、格下に見るわけで すが、その格下に見た連中が、今や「君は先見の明がある」と、手の平を返したような 評価をする時代がやってまいりました。 例えばIntensive Care Unit、ICU(集中治療室)をやるような所でもケアという言葉が 使われているわけですが、社会一般でケアと言うと、まるで看護というよりは介護とい うイメージが強くて、どうしてもケアというと格下に見られるようです。  看護師もそうかもしれません。看護師はヘルパーや介護福祉士など、ケアにかかわる 職種の人たちに対しては、地域の訪問看護師であろうとも、多少上からの目線で見ると いう傾向があるわけです。それがいちばん如実に現れている部分は、医者は看護師に対 して指導するということは、あまりないのです。もっとも、時にはあるかもしれません が、若いころは逆に看護師から指導されて、点滴の仕方を覚えたりするのが医者です。 医者と看護師というのは、車の両輪のような存在で、指示に基づいて動き合うというこ とで、職能というか、業務が比較的明確になっています。ところが、実際地域に出てみ ると、介護士と看護師のやっている仕事の具体的な内容に関して、あまり差がないとい うことです。どうしても看護師は、介護者あるいは介護士に指導するというような上か ら目線で、一緒に働くというよりは指導ということを平気で使う状況です。その辺に問 題もあるのですが、いずれにしてもケアというのがナーシングよりも格下であるという ような偏見は蔓延しております。  その理由を考えて見たいと思います。本来、看護の本質というのは、健康な暮らしを 支援するということです。法的には「療養上の世話」という言葉になっていますが、健 康概念も随分変わりましたので、たとえ障害があっても、健康な人はいっぱいいらっし ゃるわけです。ですから、より健康状態を高めた状況で暮らしを支援していくというの が看護の本質だと思うのです。ところが、急性期看護に関しては、臓器別であったり、 あるいは疾病別であったり、あるいはそれぞれの専門科別でいいでしょう。ただし、そ の先の障害とともに、あるいは治らない病気とともに生活していくような生活期の看護 になると、急性期の疾患だけ扱ってきた看護師たちには、馴染んでいけないようです。  その延長線上に在宅ケアがあり、そしていま話題になっている終末期ケアがあるわけ です。急性期看護の中で亡くなっていく人を看取るということと、寿命で命を閉じる高 齢者たちを看取るということは、全然意味が違うわけです。しかし、その辺がなかなか 理解されていない。命を助けることだけを考えていますので、看取りというのは医療の 敗北、医学の敗北というような見方が、看護学においても、同じような感覚があると思 うのです。 そういった現実から急性期医療をやっている者はレベルが高くて、地域に出て行って治 らないものを看ていくとなると、まさしく療養上の世話だけだから、大したことないな と看做すと想像されます。  ライフケアという言葉があります。もちろんライフとは命でもありますが、生活でも あり、人生でもあるわけですね。ですから、人生まるごとかかわれる在宅ケアというの は、非常にやりがいもあり、看護師たちにとっても職能を十分発揮できる領域であると 思われるわけですが、なかなか正しく理解されていないような社会の状況です。  「地域看護」という言葉は、看護師教育プログラムの中では、はっきり概念として位 置づけられていないと思うのですが、私はやはりコミュニティ・ベースド・ナーシング といいますか、地域で看護をするということは、非常に重要な領域だと思っております。 これも英語ですから概念が曖昧なのですが、コミュニティというのは単なるエリアでは ないですね。人と人とが絆で結ばれて、喜怒哀楽が共有できて、たまには迷惑もかけら れるような、また「個人情報保護だ」とか言わなくても、情報を共有し合っている、そ ういったエリアだと思うのです。  ですから、コミュニティ・ベースド・ナーシングというのは、地域で看護をする、要 するに提供する場所を表す言葉でもあります。最近特に考えなければいけないのは、地 域が主体となってケアをする、地域が看護をするということです。知育の社会資源とし て、多職種協働の一員として、看護師がいなくてはいけないということです。そして、 最終的にはそういった在宅ケアを通して、地域を再生させるような社会活動につなげる という意識を、是非コミュニティ・ベースド・ナーシングの中に盛り込んでいかなけれ ばいけないと感じています。  看護師の役割なのですが、在宅出前医療を長年やってきた私の立場から言いますと、 医者というのは最終的には裁判官で、いけないことはいけないと、最終判断を下す立場 です。看護師というのは病気や健康管理の代理人の役割、弁護士役を担っていただかな ければいけない。なぜならば、患者にしても家族にしても、医療に関しては素人ですか ら、やはりプロの立場で、医者と対等に話ができるぐらいの情報を患者・家族に与える と同時に、患者の立場も守ってやらなければいけない。医者と一緒になって、患者を責 めてはいけないわけですね。患者サイドに付くという役割が当然あるわけです。  一方、医師側から見ると、看護師は生活情報の提供者であって、諜報部員としては貴 重です。生活情報なしには医療ができない。とにかく看護師のほうが、いろいろ細々と したことを知っています。家庭の経済状況もそうだし、家族の関係性もわかっています ね。嫁と姑の関係などといったところの情報なしには、しっかりとした在宅ケアができ ないのです。看護師は、時には医者側に付き、時には患者側に付くという役割を担って いただきたいというのは、在宅医療をやる医者からのお願いでもあるわけです。  最近、在宅医療を推進させるための方策を考える議論の中でしっかり見えてきたので すが、多職種協働において、他の職種から医者と連携がとれないという苦言はたびたび 耳にします。確かに医者は敷居が高くて・・というのは反省すべきですが、実際、看護 師は必ず医者を介して動いているということがはっきりわかったのです。したがって、 例えば看護師と薬剤師が連携できるかというと、なかなか難しいのです。看護師が直接、 薬剤師に薬の情報を求めても、薬剤師もなかなか看護師にそれをどう伝えるのか、その 手続が明確化されていないのです。診療報酬上の問題もあるのですが、平成20年度の 改定で随分変わってはきましたが、看護師と歯科医師とか、看護師と歯科衛生士とか、 看護師とリハ職とか、そういった連携は意外に稀薄で、看護師は常に医者のほうをみて、 指示をもらっているのではないかと感じます。そういった意味で、協働の訓練は、医者 と同様、未熟なのではないかと感じております。以上、地域で私が17年近く出前医療 をやってきた中で感じた問題点をここで述べさせていただきました。  いよいよ実行可能な教育に何か結び付くかということで、夢でもいいからというお話 をいただきましたので、夢かもしれませんので、甚だこういう席では失礼かもしれませ んが、ちょっと語らせていただきたいと思います。私どもの施設にトレーニングに来る 若い看護学生たちは、ピュアで、在宅でお世話をしていく在宅看護に関しては、ほとん どの学生が感動して帰ります。言葉ではうまく伝えられないし、文章でも伝えられない けれども、現場を見て、一瞬の感動が彼女たちの意識を変えているのだというように私 は思います。  ところが、実際そういう人たちが看護師免許を手にしたあと、病院に就職しますと、 いつの間にか病院の看護が素晴らしくて、地域なんて大したことないんだよ、というこ とをすり込まれていってしまう気がしてならないのです。それを何とかしなくてはいけ ないのではないでしょうか。本当に夢を語らせていただくということになるのですが、 例えば医学部ですと、産業医大だとか、自治医大だとか、自衛隊の防衛医大だとか、卒 業したあと、ある程度目的が絞られたコースに行く医者を養成するような医学校がある わけです。特に養成校なのですが、私の地域にも養成校があるのですが、養成校を出て、 要するに本当に地域の中で育っていった看護師たちが免許を手にした途端、都会の大き な病院にみんな吸い込まれていってしまうのです。結局、地域の中で看護がいかに必要 かということを学んだ人たちが、みんな遠くの病院に行ってしまうという現実があるの です。  また、単独の養成校は人気もあまりないところでは、そんなに受験倍率も高くない。 倍率が高くないと、国家試験の合格率もさほど良くない。そうすると、人気があまりな くなるという悪循環の中にあるような、地域の中でひっそりとある養成校などを、訪問 看護師を育てる目的を持ったような看護学校にしてもらって、全国から志の高い人たち を集めて、訪問看護をしていく上で何が必要かということを教育できないかと思ってい ます。看護教員は、訪問看護の現場を体験していない者がほとんどですので、訪問看護 を想像で語るのです。ですから、在宅医療の本質的なところをなかなか伝え切っていな いと思います。  さらに、いま医療保険と介護保険が同時に提供されていますし、訪問看護は主として 介護保険の制度ですから、介護保険制度を理解していない者が教えるというのもいかが なものかと思うのです。せめてケアマネジャーぐらい取ってもらうと、介護保険の意味 がよくわかるし、医療保険もこれからどんどん介護保険に近付いていくだろうと思うの で、介護保険制度を理解するべきでしょう。そういった意味で、看護教員にも地域看護 への理解をいただきたいと強く感じます。  医師はライバルではないのですが、中にはまるでライバルのように教育されて出来上 がっていく看護師もいます。私は10何年大学病院にいて地域に出ましたが、地域に出 ると、医師が判断する内容の幅が広くなり、病院で毎日毎日、手術していたころのほう がはるかに楽でした。急性期の医療や看護は、マニュアル通りやれるわけで、マニュア ルにないその先の人生をどう看るかを教えていかなければいけないと。そして看護評価 だとか、看護診断が非常に重要であると。そしてまた、対患者、家族に主体性を持って 関わり、看護師が生き生きと活躍できる場が地域にあるということを、病院の師長クラ スが明言できなければいけません。でも、残念ながら、現実はそうではないということ です。  そして、看取りですね。人間の命を扱う医療の現場の看護師たちが身近な人の死を体 験していないのです。もちろん病棟で、不本意の中で亡くなっていく、治療の果てに救 命できずに亡くなる死というのは経験しているのですが、本当に人間が寿命で命を閉じ るという場面に接したことのない看護師がいっぱいいます。あるグループホームのオー ナーが看護師で、一緒に看取りを始めたときのことです。彼女は、マインドが高くて、 素晴らしいケアをする看護師でしたが、看取りというだけで腰が引けてしまう。どうし てかと、話を聞いてみると、看取ったことがないというのです。怖いと言うわけですね。 ですから、もともと死が不浄なものであるというような前提でケアをしているわけです。 看取ったことのない者が現場で看護をしているというのはおかしな話で、せめて看護学 校に入ったときには、要介護高齢者とかかわるようなチャンスをもらって、1ヶ月に1 回でも、2週間に1回でも、その人とかかわっていけば、在学中の3年なり4年のうち には看取りを体験するかもしれないですね。そのようなことを地域の現場で教えなけれ ばいけないと思っています。  それから、訪問看護師の中にも、消去法で訪問看護をやっている人がいます。「病院も ちょっとね。外来もね。じゃあ、訪問看護ぐらいなら」というのはよろしくない。そう いう人に限って、入浴介助は看護師の仕事ではないということを平気で言いますが、結 局、入浴介助は看護師の仕事ではないということを平気で言います。見方をかえれば、 入浴介助は、全身を隈無く観察する貴重なチャンスなのです。看護師が入浴介助をして いると、例えば乳がんを見つけるとか、陰部に湿疹があることがわかるとか、実は鼠径 ヘルニアがあったとか、看護師の視点で観察することで、医者が気づかないことを見つ けてきてくれるのです。何をするかというのではありません。看護師と介護者は、全く 視点が違うわけですから、入浴介助にも深い意義があるわけですね。そういったことは、 なかなか教えられていないような気がいたします。  こう言うと苦情になりますが、急性期病院でかなり有名な所から帰ってきた患者を診 ると、まず最初にうんこが出ていないということが多いです。在宅での初日は、まず浣 腸から始めるということは日常茶飯事で、看護師は全身を看ていないのです。これは医 者も看護師も同じなのだろうと、つくづく思います。ですから、療養上の世話というか、 お世話をどちらかというと格下に見ておきながら、現実はそれすらできていないという のが病院医療の問題の1つでもあるかと思います。  看護師がエンパワメントするフィールドは、地域にあると思います。最近新聞に通所 療養介護について、愛知県の当間麻子氏(看護師)がコメントしていましたが、看護師 が主体的に、判断しながら、医者そっちのけでいろいろできる制度が出来上がっている わけです。ただ、これはお金が安いからうまくいかないのではないかなどという批判も あります。しかし、要は看護師に自信もないのです。自信がないのはなぜか。その理由 には、医者の協力がないということもあるわけですが、やる気のある看護師がエンパワ メントできるフィールドを制度から誘導していただきたいし、これは医師会が反対する と思いますが、看護外来だってあっていいわけです。メタボリックシンドロームの対策 などは、看護師がじっくり話をするのもよいでしょうね。話をするだけですから、法に は引っかからないのではないかという気もします。  最後に、我々が地域でやっていることは、最先端医療の対極にある問題ではないとい うこと。つまり、最先端医療でも救えなかった人たちをどうするかという答えであって、 最先端医療のその先にあるようなケアだと思っております。これは自画自賛ですが、私 はこういった領域の仕事に生きがいを感じて、一生懸命やっております。以上、15分と いうことで、プレゼンをさせていただきました。ご清聴ありがとうございました。 ○田中座長 太田院長、どうもありがとうございました。地域看護のご経験に基づいて、 コミュニティ・ベースドの話を、将来展望までお話いただきました。お三方、続けてお 話を伺ってから委員の方からの質問を受けますので、次は秋山所長より発表をお願いい たします。 ○秋山正子先生 ただいまご紹介に与かりました、白十字訪問看護ステーションの秋山 と申します。太田先生の訪問看護へのエールを受けて、訪問看護の話から、先にさせて いただきます。 ☆スライド これが訪問看護の仕組図です。医療保険・介護保険、両方から行けます。 介護保険が6割、7割というところが多いのですが、どちらにしても医師からの指示書 をいただきますので、医師とのかかわりは非常に強いし、介護保険は関係ない方でも、 お子さんから、母性でも訪問看護指示書があれば出られるという制度です。 ☆スライド 実際に私どもの活動を紹介させていただきます。なぜかというと、いま在 宅の看護職員の数は、全体の2.1%です。増えてほしいのですが、全然増えていかない。 一旦減り、ちょっと増えたと思うと、また減るという、非常に少ない人員でやっていま す。でも、今後この在宅にいる方は増えてくるであろうと考えられる中で、いま行われ ている状況を皆さんに知っていただきたいと思います。 ☆スライド ここは歴史的なところをざっと流して書いてありますが、先ほど太田先生 が1992年とおっしゃいましたが、訪問看護ステーション制度の立ち上がりのところか ら、市ヶ谷の地で訪問看護を開始し、現在に至っております。 ☆スライド 目指していることはこういうことで、最初から地域での在宅医療・福祉の 連携の中で仕事をしてきたということですね。 ☆スライド 実を言うと、制度の中だけでは十分にカバーができません。それで、一昨 年、NPO法人白十字在宅ボランティアの会を組織して、横付けの形で、ボランティアと 協働し、ボランティアを育てるという仕事も今いたしております。 ☆スライド 実際にどういう内容かと申しますと、現在市ヶ谷と東久留米と2ヶ所あり まして、市ヶ谷のほうが本拠地です。1ヶ月の平均利用者数は130〜140人ぐらい、い つも登録されています。40人の病棟ですと、地域の中に3病棟持っているという状況で、 さまざまな方の所に伺います。毎日、訪問看護を提供する方から、月1回というような 方まで、さまざまです。お引き受けしてから2週間で亡くなるような方から、ずっと5 年も6年も、比較的穏やかにというような方までおります。その中で、スタッフが常勤 6名、非常勤9名(常勤換算7名)ですので、計15名という陣容です。このうち、保 健師資格保有者が9名、ケアマネの資格保有者が7名という状況で、プラス非常勤の理 学療法士を1名採用しております。それから、常勤事務が2名です。介護保険になりま して、非常に事務作業が多く、常勤の事務を雇わないと、とても回っていかないという 状況です。 ☆スライド 活動する拠点の地域特性です。都会の真ん中で、高齢化率はそこそこなの ですが、新宿の場合は外国人の方を除くと20%を超えると言われていて、これから高齢 化率が上がっていく地域です。その中に、高度医療機関というか、急性期の代表的な病 院がたくさんあり、それに比して中間施設としての老健が少ないという状況です。そう いうことは以前から同じ状況ですので、新宿医師会が在宅医療に非常に力を入れていて、 在宅を担ってくださる先生方がほかと比べて少し多いかなというところで、ステーショ ンがいま19ヶ所あります。 ☆スライド これは統計の取り方が図の下欄参照で少しずつ変わっていますが、人口10 万単位の支援診療所の数を、東京都、二次医療圏、新宿区と分けて、それにステーショ ンの数を合わせたものです。二次医療圏ですが、杉並・中野・新宿は、在宅に結構熱心 な先生が多いので、全国平均と比しても少し高い率かと思いますが、それよりも新宿区 は少し低いのです。ですが、1ヶ所、2ヶ所、非常に大型の在宅医療をする先生がおら れまして、1ヶ所で200人規模の在宅の患者を抱えています。それに比して、ステーシ ョンはやはりそこと一緒にやっていますので、平均値としてはほかの地域より数が多い という地域の中で仕事をしています。 ☆スライド 先ほど太田先生は看取りがなかなかということでしたが、当ステーション はがんの末期の方も含めて、高齢者、難病の方と、看取りを積極的に行っているという か、取り組んでいるステーションですので、このように在宅で亡くなる方も支えていて、 大体半分を超えるがんの方もお引き受けしているということです。最近の特徴は、自宅 というだけではなく、施設での看取りも、こちらから訪問看護が入れるように制度が変 わりましたので、そういうことも行っています。横に書いてあるPCUというのは、 Palliative Care Unit(緩和ケア病棟)です。地域にある緩和ケア病棟とも連携を持ちな がら、看取っているということもしています。 ☆スライド そんなことで、やはりがんの方が半分以上です。 ☆スライド 自宅と病院等々なのですが、2006年がちょっと病院が多いかなというとこ ろなのですが、病院の所のグラフの下にPCUがちょっと率が高く入っており、緩和ケ ア病棟との連携の中で、同じ病院なのですが、そういう連携をしながら、亡くなる方を 最後まで地域の中で支えていきたいというところです。 ☆スライド がんの方以外、後期高齢者の75歳以上の方の状況を、こちらのステーシ ョンでずっと、穏やかな老化に伴い、最後まで看るという形をとるための統計を見てみ たものです。30人の方の6年後の変化は、生存者8人、死亡者22人です。 ☆スライド 現在の居場所は、自宅が4人、施設が4人です。 ☆スライド 亡くなった人です。22人のうち、自宅が12人、54.5%です。つまり、後 期高齢者、高齢の方を訪問看護がずっと、付かず離れず寄り添いながら看ていくことで、 半分以上の方が自宅で亡くなることができたという、一応1ステーションの統計ではあ りますが、ご参考までに見ていただきました。 ☆スライド そのときの死因です。高齢者は穏やかに亡くなっていく。がんによるもの、 肺炎から呼吸不全、この辺は老衰と言って括ってもいいのではないかと思います。そう いう形で看取らせていただいていて、医療もあまり重装備にならずに、このように看取 らせてもらっています。もちろん、これは地域の在宅の先生と組ませていただきながら やっているということです。 ☆スライド どんな関係機関と連携をしているか。協働する力を持たないと、なかなか 地域では働けないということですが、130〜140人の利用者の指示書が出ている先は47 ヶ所です。大きな病院からクリニックの先生から、たくさんの所とこのように連携を保 ちながら、ステーションの連絡会だけではなく、介護支援専門員の連絡会や緩和ケアの ネットワークミーティング、難病の対策推進の所とも連携を保ちながら、仕事をしてお ります。 ☆スライド 実習生の受け入れ状況です。非常に多方面の実習生を受け入れており、訪 問看護ステーション自体は、ある意味教育の機関としては外せないという状況で、通年 にわたって誰かが来てくれているということをしております。 ☆スライド 半分ぐらい済んでしまったのですが、これからが本題です。看護の場がこ のように拡大をしてきています。急性期医療の場から地域というか、そういう所に私た ちからすると利用者がたくさんいらっしゃるわけです。なるべく在院日数を減らしたい と。それは全体の流れなのでしょうけれども、単なる経済的な理由だけではなくて、そ の方がいたい場所というか、住み続けたい場所で療養するために、私たちが支えること が必要ではないか。だから、さまざまな在宅療養の所に、訪問看護としてかかわってい るということです。 ☆スライド これはホスピスケアの三角形ということですが、緩和ケアの場合でも、い ままではほとんどが一般病院の中で亡くなっていかれました。そうではなくて、やはり ホスピス緩和ケア病棟、緩和ケアチームがいる所、そして、できれば在宅や在宅に近い 施設の中で、うまく連携を取りながら、ケアをしていきたいと思っているということで す。 ☆スライド 誰がその人の全体像を見るのか。地域は急性期の請負というか、下のもの ではなくて、もっと鋭い観察が必要ではないかと、いろいろなことを見つけてくるとい うことなのです。あるがんの患者が脳梗塞を起こしました。急性期の病院に運ばれまし た。急性期の病院は2週間、3週間で、ある程度の治療が済んだので、回復期リハビリ テーションの病院へ送ったわけです。 ☆スライド 真ん中の急性期の病院から、左下のリハビリ強化病院という病棟に転院し たわけです。そして、非常に目覚ましいADLのアップがあって、失語はあるのですが、 杖をついて、人が付いてゆっくりと外へ散歩ができるところまでいった。ところが、が んのほうは診ていなかったので、がんの勢いがついたわけですね。お腹が痛いと言われ ました。でも、リハ強化型では包括医療ですし、十分に診れないということで、再び急 性期の病院へ戻されました。急性期の病院で、がんがいろいろ広がっていそうなので、 治療をしないというご本人の意思もありましたので、検査だけをして、自分の所でずっ と診ることはできないと。  それで、転院の話が出ました。ところが、そこにかかわっているご家族と友人の方か ら相談を受けて、在宅に帰る道はないかということで、見に行ったのです。見に行きま したら、はっきり言って死にそうでした。誰も死にそうだということは言ってくれてい なくて、でも私は一概にそこで決定的なことは言えないので、「あまり時間がないように 思います。緩和ケアが最適だと思うけれども、早く緩和ケアへのアプローチをしていた だいたほうがいいんじゃないか」というように申し上げました。その方はその2日後、 転院するというその日に、転院のためにバイタルサインを測る人が、バイタル、血圧が 測れないということで、その日の夕方に亡くなられました。検査が主の病院の部所です。 在宅ですと、全体を見ざるを得ないので、「あれ、これは変だぞ」ということが経験知と してあるわけですね。 ☆スライド 病院の中の看護で見えてきたことと、私たちが病院から飛び出して、在宅 という分野で看護をやることで見えてきたことは、私たちは利用者や家族のそういう中 に、本当におそるおそる、小さくなって門を叩いていく。主体はあくまでも利用者家族 であり、その中で本当にたくさんの情報が見え、自分で判断をしなければいけないし、 さまざまな人と連携を取らなければいけない。そういう意味では、施設では患者が真ん 中にいるのですが、家族はどこか?なるべく引き込みたいのですが、なかなか姿が見え ず、そういう意味では医療者が線を割って中へ入る。そこの違いが非常にあって、だか らこそ、自分でものを考えることをせざるを得なかった。 ☆スライド そういうことで、在宅の経験知が役に立つということが結構ありまして、 特に私が経験の中で鍛えられたことは、自分で判断が難しいときには、問題の内容を分 析し、誰に、どこに発信していけばよいか振り分ける、そういう力が非常にトレーニン グされたと思っています。それから、多様化する価値観の中での家族調整の難しさにぶ ち当たりまして、それをケースカンファレンスしながら、トレーニングされたと思って います。 ☆スライド そういうことで、自立してものを考えることがすごく必要となってきて、 そういう意味ではフィジカルアセスメントも含めて、やはりそのトレーニングは要るぞ ということです。 ☆スライド 先ほど太田先生も、協働する力ということを言われました。これからは、 どこの場所においても、私はたまたま在宅にいて、在宅の中で協働する力というか、そ れを磨かざるを得ないですね。ですが、それを急性期であっても慢性維持期の外来のと ころであっても、さまざまな分野で、もちろん保健指導の部分、予防的な面であっても、 これは本当に多くの職種の方とある意味できちんとしたコミュニケーションができない といけない。上から下への物言いとかそういうことではなく、こういうことが必要では ないかなと思っています。 ☆スライド 先ほど太田先生は、薬剤師とあまり接点がないということがありましたが、 退院調整に私たちは出掛けます。誤嚥性肺炎で入院して嚥下訓練が始まって、少しずつ 物が食べられている。けれども、点滴が付いている。この点滴は、家に帰るに当たって はそれだけは外してもらえないだろうかと思って、「この点滴は抗生物質でしょうか」「い やいや、違いますよ。カリウムが低いので、カリウムを入れているんだ」と。カリウム がどうしても低くなる要因は何だろうか。カリウムをどうしても血管からというか、そ こから入れなければいけないのだろうか。在宅では生活がしやすいように考えますので、 薬剤師に聞いたら、口からとか経鼻の細いチューブが入っているところから入れられる もの、水薬があるということですので、点滴でなくても大丈夫そうだというような提案 を逆に在宅側からします。病院ではその薬剤を採用していないので、なかなか入れるの が難しいということでした。 ☆スライド 訪問看護論の導入10年が過ぎました。ちょうど今月号の『看護展望』の 中に、峰村さんという東京医大の看護学校の教務主任の方が書かれていますが、訪問看 護の実習も含めての人たちが、病院に出た方たちにさまざまなアンケートを取っていま して、以前と比べて予測や予防やケアマネジメントのところで、在宅看護の現場におい て他職種との連携が機能されていることを実際に見るということはとても大事で、その 辺は定着をしてきていることを研究レポートで書いておられます。 ☆スライド 看護の「場」の違いをきちんと認識して教えて、そういう視野を持った上 で病院の急性期やら在宅やいろいろな所で働けるように、少し角度を変えていくことも 必要ではないかなと。たしかバングラデシュかインドだったと思いますが、プライマリ ーヘルスケアのトレーニングをするために最初に地域を見せて、その中の1家庭を持た せて個人の病人を看るという見方の看護教育をしている所があるそうです。それを取り 入れるかどうかは別にして、大きな視野の中での個人という見方を教えるためには、人 間ということをどう教育するかという基礎教育の中のカリキュラムの中身の検討が少し 必要ではないかと思いますし、生活者としての看護の対象の理解には、急性期の病院の 現場の前に先ほど太田先生はずっと1人のお年寄りを訪ねて、3年なら3年、4年なら4 年フォローしていくことで、どう健康状態が変わっていくか、介護の問題があるかとい うのを見させるのも1つではないかというのがこの辺に絡んでくるかなと思いました。 ☆スライド 役割の見直しに向けて、柔軟に対応できる姿勢と実践能力の必要性があり、 それを基礎教育の中でどの程度までするかは一応これから議論をしていただくのだろう とは思います。 ☆スライド 柔軟な考え方ができる人を育てるのは、どういう基礎的な資質の条件が必 要かも議論になってもいいのかなと思います。つい最近、2ヶ所の看護学校の先生に受 験生が様変わりをしている。男性の比率が高くなり、訪問介護の経験者が社会人入学を してきている。4大生は偏差値で進路が決まるけれども、その動機付けがはっきりして いないのではないかなということが言われています。 ☆スライド 私は、すぐ近くの中高一貫校に非常勤というか、総合カリキュラムの中の 「いのち」の授業をやってくれと言われて戸惑いながら行ったことがありますが、現場 で「いのち」に関わる看護の仕事の場面を少し映像で見せたりお話をすることで、大変 興味を持ってくださいました。その中の何人かは看護の進路を選んでくださったり、福 祉の仕事に就いてくださったりしています。少しそういうことを看護側からも発信して いくことも必要ではないだろうかと思います。 ☆スライド 卒業のときには十分ではないかもしれない。でも、伸びていける人を育て るための基礎教育が必要なのではないかと思っています。 ☆スライド 私は、40年前に畳の上で父が亡くなるのを見てから進路を決めました。そ ういう意味では、それが動機付けになったかなと思います。ですが、看護実践そのもの への変わらぬ関心というのは、この動機付けもですが、看護の基礎教育のときに教えら れた賜物と思っています。だから、変わっていくものと変わらないものを併せて教育の 中に組み込んでいただきたいと思います。 ☆スライド 多様な価値観を持つ人々への、あらゆる健康レベルへの看護提供ができる ことを目指すのが、20年後の看護教育ではないか。そして、実践の科学であることには 変わりないが、医学モデルからの脱皮が進み、生活者としての対象者を見る視点、ケア の組み立てが変化に応じて考えられ、実践のためのイメージが湧く必要がある。そのた めには、実習場所の再検討を要するのではないか。看護提供の「場」の拡大に応じられ る人材の育成は、ますます必要となるであろうと思っています。 ☆スライド 最後になります。一応訪問看護は命に寄り添うケアを生活の場にお届けし ます。時間が押してしまいました。申し訳ありません。ご清聴ありがとうございました。 ○田中座長 秋山所長ありがとうございました。在宅看護の長い経験に基づく発表をい ただきました。  最後に、永江調整監よろしくお願いします。 ○永江尚美先生 私からは、現場の保健師という立場ですが、地域における保健福祉活 動を展開する上で具体的に10年後、20年後はどういった看護教育が必要なのかをお話 させていただきます。本日、私の資料が添付されていますが、先ほどの太田先生あるい は秋山所長のようにきちんと理論的にまとめていません。思い付くまま将来の姿なり、 そこの中での役割機能を列挙しています。15分という限られた時間ですので、ポイント 的な話になろうかと思いますが、少しお聞きいただけたらと思います。  10年、20年後を踏まえた社会環境の中で、保健活動を推進していく上に求められる ものを考えると、いままでもいろいろお話がありましたが、少子高齢社会が基軸になる ことは必至のところで、その中で求められる機能への対応が出てくるのではなかろうか と思います。第1点は、子どもを取り巻く変化に対して新たに求められる保健活動とし てどういうことがあるのかと考えますと、10年後、20年後に想定される社会環境の中 にも書いていますが、女性も男性も夜間就業も増加していくのではなかろうかと思いま す。女性も夜働く形になりますと、どうしても子どもを夜間保育してもらえる体制とか、 病気の子ども、障害のある子どもも保育してもらえる体制が必要になってきますし、そ れが充実されていく環境にあろうかと思います。  ただ、ここの中で考えたいのは父子関係とか母子関係、あるいは子どもの発達過程に おいて心理的な影響を踏まえた状況がどうであるのかを考えていかないといけないと思 います。そういった意味では、地域の保育士との連携した支援体制づくりが今後必要に なってくるのではなかろうかと思います。反面、子ども優先の生活スタイルというのも 現れてくるのではなかろうかと思います。子ども1人の家族がこれから先多くなってく ると思いますが、1人の子どもに愛情を注ぎ込んでしまう家庭があるのではないかと推 測されます。ゆえに、そういう状況であれば事故死とか病死をしたときに、子どもを失 ったときの悲観というのは大変大きくなると思いますので、そういう出来事に対応する グリーフケアなどが、今後はより重要になってくると思います。また、一方予防という 側面から考えますと、幅広い視点で、先ほどコミュニティの問題を太田先生がかなりお っしゃいましたが、そのあたりのコミュニティも含めて、安全・安心な町づくりとして 地域保健活動の展開が主流をなしてくると思います。現在も保健師は、地域診断の手法 に基づいて地域の健康な町づくり活動を進めていますが、今後は一層、安全・安心な町 づくりという幅広い視点からの地域を対象とした活動展開が必要になってくると思いま す。  第2点は、若者を取り巻く変化に対応した新たに求められる保健活動も生じてくると 思います。生活スタイルがかなり変化してくると思いますし、おそらくシングルライフ を楽しむ世代も増加してくるのではなかろうかと思います。シングルライフを楽しむと いうことは、少子社会に拍車を掛けていくところが、ますます大きくなるのではと思い ます。ただ、この場合懸念しているのが、若者が自立した生活を送るというのではなく て、おそらく両親の下でシングルをエンジョイするという生活ライフではないかなと、 これは私の個人的な見解ですが、そう感じられます。そうすると、若者に対して家庭を 持つことの良さとか、子どもを持つことの良さを思春期時代から学習活動の中で理解す る場を持つことが必要だと思いますし、保護者を中心とした社会教育活動としても必要 になっていくのではなかろうかと思います。そうしますと、地域保健の場で学校保健と 連携した教育活動の重要性がさらに出てくると思います。ただ、そこの中には単に結婚 することの良さ、子どもを持つことの良さ以外に、思春期ですから健康な体づくりとか 感染症の予防とか、ライフステージにおける社会での役割等も併せて学校保健現場と連 携した学習の場づくり。そこの連携の場に、地域の看護職の1人である保健師の活動の 役割というのも出てくるのではなかろうかと思います。  第3点は、高齢者を取り巻く変化に対する新たに求められる保健活動という観点から 考えていきますと、先ほど秋山所長から訪問看護を随分理論的にお話していただきまし た。私たちが地域で活動を展開していく形になりますと、高齢者が増加する、1人で暮 らすお年寄りが増加していく。そうすると、認知症を持っている高齢者も増加すること に合わせて、元気な高齢者、地域におけるボランティア活動をして活発に暮らしておら れる世代、生涯現役という方々も増えていくと思います。そういう社会環境の中で対応 できるように、現役社会を長く持続していただくためには10年スパンでの健康・長寿 な高齢社会に対応した疾病予防とか疾病管理とか、介護予防を重視した保健活動が必要 ではないかと考えます。これらの活動を進めていくためには、地域のボランティア団体 とか社会資源を発掘したり育成したりして、住民組織とか民間団体と連携した先ほども 申しました安心・安全な健康な町づくりを一緒に進めていかないといけないのではない かと思いますし、それが重要であると考えます。その中では人と人をつなぐ、あるいは 人と組織をつなぐ、組織と組織とをつないでいく役割が大変必要になってきますし、そ れを担うものがおそらく担い手としての看護職の保健師に課せられる役割、機能ではな いかと思います。  また、高齢者が増えるということは高齢者の死亡も多くなることが考えられます。そ うしますと、おそらく10年、20年後というのは同居というよりもスープの冷めない距 離に家族がいるとか、家族と同居しない孤独な高齢者ということが考えられるわけです が、人生の終末をどう生きていくのか・・・。その自分の生き方について考えていく、 あるいは共有していく仲間づくり、人づくりが重要であると考えています。これは80 歳になってからとか、85歳になってから考えるものではなくて、60代のときから自分 たちがどう生活を見つめていくのか、どういう終末を送りたいのか、人生を送りたいの かという人生の生き方を社会教育の一環として考える場づくりが必要で、そこに保健師 等の看護職員も関与していく必要性があるのではないかなと思います。  10年、20年先というのは、医療依存度の高い方々が地域で生活していらっしゃるこ とが多くなってくると思います。そういった意味では、訪問看護ステーションの役割と いうのはかなり大きいと思っています。ただ、そこの中で看護師の領域という形で分断 するのではなくて、保健師も地域ナースとしての視点を持つような教育というものをき ちんと担っておかないといけないのではないかと思います。こういった中で、看護職の 一員の地域の保健師が、どういった役割を担っていったらいいのか。私が思うのは、個 人とか家族とか地域を総合的に捉えていくことはいまでも行っていることですが、そこ に複眼的なアプローチというのが一層大切になってくるのではないかと思います。私た ちは、個別への援助活動を通して、地域の情報、課題の蓄積、捉えた課題を地域の関係 機関とか地域の住民と共有したり、そこの中でどういう町づくりが必要なのかというコ ーディネートを行ってきています。そういったコーディネートや仕掛けづくり、また解 決のための住民と協同した事業づくり等、より重要な役割になっていくのではと思いま す。私たち地域の保健師が行っている生活の場から暮らしの実態を見る、また当事者や 地域のエンパワメントづくり、先ほど太田先生がエンパワメントのお話もしてください ましたが、地域のエンパワメントの促進を支援し、そこの中で問題解決をしていく取組 みは、今後も大変重要な状況であると思います。  お手元の資料に、そういう状況の中で看護職の機能、役割を果たすために、どういう 資質能力が必要なのかをまとめています。私は保健師ですので、基本的にここは保健師 職としての資質能力の状況を記載しています。ポイント的に申し上げますと、地域で生 活する人々とのコミュニケーション能力や地域のアセスメント能力がいちばん重要であ ろうかと思いますし、先ほど申しましたが複眼的なアプローチができる能力であったり、 保健師は行政に働く立場にいる人たちが多ございます。そうしますと、ニーズを施策化 につなげていくための企画力も必要ですし、地域のさまざまな資源といろいろな看護職 の方々の持つ能力をつないでいくマネジメントも必要になってくると思いますし、包括 的な管理能力なり戦略的な能力なり、地域の中で医療と介護、福祉の連携とか、医療と 福祉と住民をつなぐコーディネートの能力とか、在宅緩和ケアのネットワークを生かし た地域連携推進の調整能力とか、医療現場と地域現場をつなぐ家族調整とか地域調整能 力というのが、これから先、より求められていくのではなかろうかと思います。  ただ、これらの能力を培っていくためには、看護の基礎教育の中で知識だけが頭の中 に入ってもいけないと思います。その知識を具体化するための地域実習が大きな要素に なると思います。地域実習も、現在、市町村や保健所で、例えば11、12時間という形 で組み込まれていたり、学校保健の現場での地域実習も組み込まれている所もあると思 いますが、健康な高齢者の生活や健康な子どもたちの生活状況を見ていく中で、在宅医 療の必要な人たちに対して地域で支えるシステムをどう作っていくかを、地域実習の中 で学んでおくことが必要であると思います。また、地域実習の中で、できれば社会資源 の発掘とか組織づくりを踏まえた連携のあり方とか、調整のあり方を獲得していく必要 があると思います。  医師もいろいろな地域での実習がありますが、看護職にとってもそれと同様な地域実 習のあり方というのはこれから先、ますます必要になってくると思います。何故地域実 習が必要かと思いますのは、私ども新任保健師の教育をいろいろ地域の中で行っていま すが、新任保健師が3年未満で離職する率も結構あります。なぜ離職をするのかといい ますと、本日最初の追加資料の中にもありましたが、看護の基礎教育の過程で習った状 況と地域の現場でのギャップが大きな要因でした。また、新任の1年から3年までの保 健師の具体的な悩みを整理してみますと、地域の中でどういうニーズを把握していった らいいのか。住民とのコミュニケーションや関係づくりをどうしていったらいいのか。 住民の主体的な健康づくり活動を保健師の役割として具体化していくためには、どうい う方法論があるのか。本来ならば、看護教育の中である程度知って出てきてもらいたい 内容が、地域の1年から3年の新任保健師の中では、それが悩みとして大きく全面に出 ていまして、そこが現場でのギャップというところで離職につながっている状況と思い ます。  現在、新任保健師の現場教育の中で、プリセプター等を配置しまして現任教育を行っ ていますが、改めて看護職として10年、20年後を考えたときに、知識を具体化するた めの看護の基礎教育としての地域実習というのは大きい要素があるということを再度押 さえて、私からの説明は終わります。 ○田中座長 ありがとうございました。地域の実習の重要さを最後にたくさん指摘して いただきました。ただいまの3人の専門家からのご発表に対しての質問、それに基づく ご意見をお願いします。 ○梶本委員 皆様どうもご苦労さまでした。在宅医療の中で医師と看護師の関係、それ ぞれについてお聞きしたいと思っています。太田先生によると医師と看護師の仕事の中 身はほとんど同じ。やっている内容に差はないということでしたが、ナースは医師から 指示をもらって動いているともおっしゃいました。医師と看護師は連携しながらもやっ ぱり医師が指示を出して動いているのかなという感じがしました。  その一方で、秋山先生のお話にはあまり医師の話が出てこなくて、看護師さんが独自 に仕事をされているような印象を持ちました。  たぶん私たちが在宅医療の実際をきちんと理解していないというか、在宅医療が我々 の想像以上に先に進んでいて、医師と看護師の役割分担をきちんとわかっていないので はないかと思います。我々が知っているのは、病院に医師と看護師がいて、医師の指示 の下に看護師が動いているというモデルです。他方で介護保険が始まり在宅ヘルパーが 介護をしているモデルも身近に見ています。在宅医療はそのちょうど真ん中付近にある のだろうと思いますが、病院モデルのように医師の指示のもとに看護師が動いているの か、それとも介護モデルのように看護師の判断が優先されてやっているのか、ハッキリ しない。秋山先生のお話では、現場に入っていくことによって見えなかったものが見え てくるということで、在宅医療、訪問看護の世界は医師と看護師が対等に仕事をしてい る領域なのかなという感じがしました。その辺はいかがでしょうか。 ○太田秀樹先生 私の説明が、一部正しくお伝えできなかったのかもしれませんが、ス トレートに言ってしまうと在宅医療はナーシングだと思います。医師は判断と責任とい う立場だと思います。ただ、訪問看護と訪問介護の差別化が図りづらいことは強調した のですが、本来役割分担をしにくい領域が訪問看護と介護ですね。しかし、医師の立場 というのはナースに指示を出す立場ですから、安心して任せられるナースがいれば医師 はとても楽であるということです。  訪問看護師は優秀です。本当に志の高い人がたくさんやっておられまして、医師より も正しく状況を把握してきて報告してくれる人はたくさんいます。具体的な例で、医師 よりも看護師のほうが偉いぞという話をしますと、おじいちゃんが脱水になります。脱 水になると、それで命を落とすことは結構あるわけですが、「脱水になっているから、熱 が出ているから、抗生物質よりも点滴をしてあげたい」とナースが言ってくることもあ ります。ところが、その報告を受けて、「それは俺が決めることで、あれは脱水じゃない から、今頃点滴してもしょうがない」ということを言う医師がいるわけです。そうする と、ナースはそこで何もできないわけです。ところが介護保険制度というのは素晴らし くて、気の利いたナースだとケアマネジャーを呼んできて、こっそりショートステイに 連れていってしまうわけです。そうすると、そこでたっぷり水を入れてもらって元気に なって帰ってくるわけです。そうすると、医師は「ほら見ろ。そうだろう。元気になる だろう」と、全然蚊帳の外にいるわけです。そういう状況が現場にはあるということで、 ナースが主体だと思っています。ところが、私が10数年やってきたとき、ナースと両 輪だと言ってきたのですが、最近はどう考えても歯科医も薬剤師も四輪駆動だなと感じ ています。 ○秋山正子先生 私の最初の資料で、訪問看護ステーションのいまの制度上は掛かりつ け医の指示書がないと動けないという仕組みです。ですので、ドクターとはパートナー シップで指示を受けるという立場ですが、1人で、なおかつ緊急で呼ばれていきますの で、そこでの判断というのはある意味で結構厳しい側面を判断して、ドクターに報告す る場面がたくさんあります。ですが、すべてのナースがそういう能力を備えているかと いうと、なかなかそうもいきませんし、さまざまなドクター側の立場というか、それぞ れのスタンスの違いもあって、地域ごとにすべてうまくいっているかとか、横並びであ ることを大きな声で言いたいところですが、そうはいかない側面ももちろんあります。  ただ、地域に出た者としてはそういうスキルを磨かざるを得ず、現場を踏むことで判 断能力も上がってきたのではないかなというあたりを強調したということですが、プラ スで太田先生がまさに言われて永江先生もおっしゃっていますが、多くの人を巻き込ん で地域の中でのチームを作る調整の能力は一方でとても必要で、それはさまざまなドク ターと一緒にチームを組んでやるためにも、この医師はどういう方向性を持っているか。 歯科医の先生はどうか。薬剤師はどうか。介護保険ではケアマネジャーが要ですから、 そういう方とどううまくチームを組みながら、なおかつその中で自分の専門性をきちん と主張していけるかのあたりは、これからの看護としては非常に必要な能力ではないか と思っています。 ○田中座長 この懇談会は基礎教育のあり方がテーマですが、今おっしゃたことは看護 師になって何年ぐらいで付く能力ですか。基礎教育の段階で不可能なことを言っていら っしゃると思いますが、どのぐらい経ったらその程度の看護師になってほしいというご 意見ですか。 ○秋山正子先生 3年ないし5年では。ただし、それは全くベースがなくて上乗せはで きないので、それがすべて基礎教育では難しいと思いますが、そういう考え方になれる ように、自立してものを考えられるとか柔軟な対応ができるとか、多くの方々とのある 意味エンパワメントというか、いろいろな人の能力を引き出す力とかは付けて出てきて もらって、OJTというか、そういうところで育っていくのではないかと思います。 ○田中座長 ありがとうございました。矢崎委員どうぞ。 ○矢崎委員 いま、高齢化社会を迎えて看護教育が必要とされるのは、高度な看護臨床 能力を有する看護師の養成だと思います。秋山先生は20年後と言われましたが、いま すぐ始めないといけないのではないかと思います。太田先生から急性期看護と生活期看 護の2つの点のお話があって、私は急性期看護は専門的で、疾病思考型の看護と看護教 育ではないかと思いますし、生活期看護は患者思考型の教育であるし、その内容、教育 と経験は、少し異なった視点から考えないといけないのではないか。ですから、基礎看 護教育のコースにおいては、基礎看護学プラスいまの急性期と生活期の看護教育の視点 を重点項目として是非入れないといけないのではないかということと、さらにマスター コースまたは専門職大学院で専門的な教育を行って、いまお話の自立的な活動ができて、 柔軟な考え方、強調した活動が可能となるような教育をしていかないといけない。  外国では、急性期看護にはClinical Nurse Specialist、在宅医療的な視点からはNurse Practitionerという専門的な看護師の資格というのが行われているのではないかと思い ます。そうした場合に、教育の目指す目標としては在宅医療に関しては、いまの業務内 容で主導的な役割を果たしていけるかどうか。非常に経験を積んだ素晴らしい能力の方 はできますが、私はもっと一般的に多くの有能な看護師がこの領域に入れるような環境 整備をしない限り、いまの状況ではなかなか。生き残った方が秋山先生の言われるよう な方になるので、もっと大勢の人にそこができるような環境、例えば薬剤師、歯科医師 とコミュニケーションを取って、先ほど自立的な判断や行動というお話をされましたが、 鋭い観察力で患者の状態を把握することは、それをある程度できるような環境がいると 思います。いろいろなことをすると、医師会との摩擦が起こるのではないかという時代 ではないと思います。ですから、有能な看護師がどんどん積極的にそういう部分に入っ ていけるインセンティブを持っていただかない限り、駄目ではないかと。  それがうまく機能した場合に、入浴介護は看護師のやるべき仕事の内容かどうかとい うことですが、高度な医師と協働で全体で患者をチーム医療、スキルミクスとしてやっ た場合は、果たしてそういうところまで看護師が実際に行う必要があるかどうか。当然、 そういう場合はしっかり患者を見ながら、看護師や介護士やいろいろなヘルパーと協働 でケアをして、そのときに看護師の立場で、先ほど鋭い観察とおっしゃられたけれども、 そういうものを発揮できるような状況を作り出すということで、業務を進化させた上で 業務分担を見直すことも必要だと考えます。それは、私たちの仕事ではないですよとい うのではなくて、お互いに話し合ってうまい関係を作っていくのが、これからの在宅介 護ではないか。その辺をうまく整理して、教育の中でも反映するような方式に持ってい けばいいのではないかという、私見ですが、是非急性期看護の我が国でのClinical Nurse Specialistと、在宅医療のNurse Practitionerの育成を視野に入れた基礎看護教育のあ り方の議論を進めていったら、いかがかと。いま、3人の先生方の大変素晴らしいプレ ゼンテーションをお聞きして感じました。 ○田中座長 ありがとうございます。3人のプレゼンテーションに基づいて、まとめを 言っていただきました。勝ち残った人だけができるのではなくて、普通の人でもできる ようにしないといけない。そのための基盤整備をしないと広まらない。太田先生も秋山 先生も勝ち残った方ですが、それだけでは足りないというご指摘です。 ○太田秀樹先生 お言葉ですが、6割は病院の看護をしています。訪問看護は2%です。 圧倒的に数が違います。それだけ数が違うものを基盤整備、もちろんそれは基本だと思 いますが、それだけ我々がマイノリティーなのです。そこをもう少しメジャーにしてい ただきたいというのは、非常に強く感じます。 ○矢崎委員 それをメジャーにするためには、環境整備して多くの方がそこに入れる状 況を作らないと。教育も大事だと思います。だから、そういう教育も重点項目として整 備する必要があるのではないかと思います。 ○井部委員 この懇談会は、看護基礎教育のあり方を考えるということがテーマのよう ですので、したがって勝利者の視点で、すぐに勝利者にはなれないわけです。まず導入 があって基礎的な教育を受けるわけですが、訪問看護の人たちのキャリアを見ています と、急性期で病院での経験、つまり患者をケアするというのはどういうことかというこ との基礎的なトレーニングを数年積み重ねた上で、訪問看護に行く自信を付けるといっ たような傾向にあるように見えます。太田先生がおっしゃるように在宅にもっと来てほ しいというのでしたら、基礎教育をどうしたら、卒業してすぐに在宅をやろうという力 が付くか、これは秋山先生にもお聞きしたいことです。 ○太田秀樹先生 長年の課題ですが、教育者が在宅を知らずに在宅の教育はできないと 思います。まずは、教える側が在宅を見てもらいたいというか、在宅を知った上で教育 をしてもらいたいというのは思います。卒業したてのナースたちが、在宅の現場で役に 立つか。私は、少なくとも命に関わる場で5年、10年というトレーニングの先に在宅看 護があると以前は思っていたのですが、いきなり経験の浅い者でも在宅に入ってきて、 在宅の中で磨かれていく例を体験しますと、マインドがいちばん大事なのだろうと。教 える側がしっかりしていると育つのだと、最近感じるようになりました。ただ、私は看 護教育に携わったことがないので、漠然と教える側が想像で教えていても駄目なのでは ないかということは思います。つまり、急性期病棟の看護師たちは、地域に戻すのに地 域に向けた指導をして返すのですが、その指導の内容はかなり的が外れていると感じま す。それは現場を知らないからではないかと思っています。 ○秋山正子先生 私自身も、ある程度の急性期というか周産期でしたが、かなりの現場 でさまざまな経験を経て在宅に行きました。長く病院で臨床経験を積んだ人が在宅がう まくいくかというと、そうでもないので、先ほど申し上げましたように3年ないし5年 という線を出しました。いまトライができるかどうかは別物として、今日いちばん最初 に資料の提示をしてくださったイギリス等で臨床研修制度というのがあって、4ヶ月間 いろいろな所へ行って研修医のようにトレーニングをした上でそれぞれの所に分かれる ときに、いまドクターたちがされているように在宅の現場も学生ではなくて、資格を持 った人としてトレーニングの1つのセクションというか部門としてそれもやった上で、 病院の中の急性期も見て在宅という線もあるのではないかなと思っていて、たくさんの 機関からの実習生を受けていますが、2年次、3年次で実習に来た人たちが、そこで面 白みを持ったら卒業研究とか卒業論文とかのテーマに在宅を選んで再び来てくれるので す。だから、そういう動機付けという意味で、興味のある魅力のある実践の場を見せる ことは、我々の現場としてもとても大事なことではないかなと思っています。もちろん ある程度フィジカルアセスメントがきちんとできる状態で来てもらいたいとは思います が、それをずっとやっていると少し違うかもしれない。卒後の初期の研修のあり方を考 えた上で基礎教育というのを組み立てていただいて、その先をどうするかを考えてもら うのは難しいことなのかなと。ただ、どこから給料が出るのだろうというのが「・・・」 と思っているところです。 ○田中座長 尾形委員どうぞ。 ○尾形委員 在宅医療あるいは地域の現場の体験に即した非常に貴重なご報告で、大変 勉強になりました。どうもありがとうございました。在宅医療そのものについてもいろ いろお聞きしたい点もありますが、この懇談会は看護の基礎教育がテーマということな ので、それに絞って質問します。  まずは太田先生にお伺いしたいのですが、大変興味深くこのメモを拝見しました。特 に医師が裁判官、看護師が弁護士役という比喩で、患者あるいは家族の代理人というこ とだろうと思いますが、こういう役割を果たすような看護職を養成するためには、特に 在宅医療においてこういう役割を担えるような看護職に求められる資質というのはどう いうことなのか。看護基礎教育という中では、どんなことを教えていくことが望まれる のかについて、何かご意見があれば伺いたいと思います。  秋山先生のプレゼンテーションも大変興味深く伺いました。特に地域を見る視点や大 きな視野ということを非常に強調されたように思いますが、その辺もう少し具体的に、 特に基礎教育の現状との関係で、どういう形で大きな視野とか地域を見る視点を考えて いったらいいのかというあたりについて、補足的にお話いただければと思います。  最後に永江先生のご発表ですが、知識の具体化ということで地域実習の重要性を強調 されましたが、全くそのとおりだと思いますし、現場とのギャップが大きいのもそのと おりだろうと思います。最後に、求められる資質能力ということで、たくさんの項目が 列挙されて、これは1つ1つごもっともなご指摘だと思いますが、現在の看護基礎教育 においてこういった点が十分に対応されているのかどうか。対応されていないのだとし たら、特にどこが弱いとお考えかについてお教えいただければと思います。以上です。 ○田中座長 では、お三方順番にお願いします。 ○太田秀樹先生 医師と対等に会話ができることはとても大事ですが、それには看護師 そのものがしっかり勉強しているということだと思います。医師が怖いという看護師は 結構います。なぜ怖いのかというと、自分の無知な部分を突かれたり間違っていること を指摘されることが怖くなるのです。ですから、本人が磨こうと思えば思うほど、より 良い医師と組もうと考えると思うので、あまりやる気のないナースは良い医師がいない と言います。やる気のあるナースは良い医師がいると言います。だから、自分たちが磨 かれていくと、それだけよりレベルの高い医師と組もうという努力があると思います。  教育の場では、教師になるナースが非常にトラディショナルな人だと、医師に物を申 してはいけないみたいなことを教える人がまだいます。だから、医療事故もみんなで見 れば防げるようなことでも、ナースは気付いていてもそれを医師に伝えることすらでき ずに、事故につながっている事例も現実にあるわけです。医師とナースは、医師の指示 に従ってナースは動くけれども、意見は対等に交わせるよということは教えておかない といけないし、対等に意見を交わすためにナースもそれだけ勉強してほしいと思います。 ○秋山正子先生 地域を見る視点ということですが、私はターミナルケアをずっとやっ てきまして、地域の中にそれぞれいる遺族というか看取ったご家族にグリーフケアとい うか、ご遺族へのケアが入ります。そうすると、最初はそれは診療報酬も付かないしボ ランティアだなどという、もちろんその側面はありますが、地域の中に種を蒔いてきた なと今すごく思っていまして、そこに在宅ケアに理解を示す人と私たちが今度は対等に 付き合いながら、その方たちの力を引き出して組織していくところにつながってきてい ます。そうなったときに、申し訳ないですが行政は縦割りで、「この話はこの人に聞いて ください」とたらい回しにされていく状況がありますよね。その中で、地域で本当に必 要なサービスというか福祉、医療、保健が、いったいその地域にどう組織されていくの かを手探りしながら網目を組み合わせていく力が、地域でずっとやってきて、ご遺族へ のケアまでしていく中で見えてくるというか広がっていくというか、そういうことを、 経験知をそのままにしないで、きちんと言語化するなりして伝えていくことで、私たち が時間をかけてやったのではなく、もう少し簡単に見えるような図にして示していくこ とで、もっと興味を持ってもらえるのではないか。そうして地域を見ると、ある意味で とても楽しいというか面白いというか、そういう職場ではないかなと。その辺をこちら 側からも積極的に情報発信していきたいと思っています。 ○田中座長 永江先生どうぞ。基礎教育において対応されているのは、どこかというご 質問です。 ○永江尚美先生 おそらく看護の基礎教育の中で、先ほどご指摘のあった内容は卒後の 到達度のところまでというので、教育はなされていると思います。学生も学んではいる と思います。ただ、学んでいることで実際にコミュニケーションをどう取っていったら いいか、アセスメントをどうしていったらいいか、地域でどうネットワークを作ってい くのかが、頭では理解されていても実際現場にそれがうまくつながっていかないのが現 状ではないかなと思います。そういった意味で、教育の中での実習といいますか、それ がかなり重要になってくるのではないかなと思いました。 ○田中座長 太田先生の言われたのは大変大切で、カリキュラムがどうできても教員の 質が低ければ、駄目だと言っていらっしゃるわけですよね。 ○太田秀樹先生 そこまでは。良い先生に出会うと、つまりその先生が医師と対等に話 をしていれば、そこの生徒たちも医師と対等に話ができます。 ○田中座長 どの分野でも同じことであって、カリキュラムをいかに立派に作っても担 当の教員が駄目なら駄目で、逆に良ければ学生が伸びる実態は看護に限った話ではなく、 実感です。もう1問ぐらいどうぞ。 ○矢崎委員 いま太田先生にしろ秋山先生にしろ、1つのモデル事業みたいなものです ね。それぞれが本当に、先生方がご自分で努力されながら良い方向に形作ってきて今日 があるわけですが、お2人の先生に今後1つのモデル事業ということではなくて、これ をもう少し広く波及するには看護教育も大事ですが、実際に、例えば、太田先生の場合 は医師ですね。これから専門医で開業する人が在宅医療に入らない。もう少し安易な道 に走ってしまうということを言われていますが、先生方の努力がもう少し波及効果をも って広げていくシステムとか、そういうものはご提案がありますか。 ○太田秀樹先生 貴重なご質問をいただきました。在宅療養支援診療所というのが制度 化されました。1万件ほどエントリーしています。日本の開業医は10万件ぐらいですか ら1割ぐらいがエントリーしたのですが、機能しているのは6,000〜7,000件です。在 宅での看取りが日本では10万件ぐらいありますが、そのうち2万6,000件か2万7,000 件ぐらいは在宅療養支援診療所が看取ったということです。日本の在宅医療を牽引して いくには、在宅療養支援診療所がもう少ししっかりしなければいけないだろうと思いま した。  国立長寿医療センターで在宅医療推進会議が組織されまして、そこでアンケート調査 をしました。それは何のためにしたかというと、在宅療養支援診療所でしっかり機能し ている所はどういう特徴があるのかを分析しました。その結果、わかったことは3つあ ります。1つ目は、うまくいっている所は薬剤師とか歯科医師とか、本来あまり在宅医 療の現場に登場してこない人たち、民生委員とも協力している関係にあること。うまく いっている所というのは、年間20例以上看取っている所です。2つ目は、教育に熱心で あるということです。つまり診療だけではないということです。3つ目、これが非常に 大きいのですが、在宅医療の啓発のための社会的活動が非常に熱心です。シンポジウム をやったり自ら勉強会を開催したり、テレビやメディアに積極的に声を挙げる。そうい うことをやっていることがわかったわけです。ですから、在宅療養支援診療所が牽引し ていけるように、是非在宅療養支援診療所を横につなぐような全国的な組織が欲しいと 思いまして、なんとかそれを立ち上げるところまでいま頑張ってきました。以上です。 ○秋山正子先生 私の所は先ほど少しスライドにも出しましたが、ボランティアの組織 を横で育てながら、そのボランティアの方たちからも私たちは非常に支えられて学んで いる状況です。そのボランティアの人の力を借りて、今年1年間は地域での特に看取り に関して、区民センターで3ヶ所、本当に地域に根差した啓蒙活動をしながら、そこに 看護学生も含めて私たちの仕事の中身の魅力を伝えていき、仲間を少しでも増やしたい と思っています。現実、私たちの所でもやめていく人はありますが、いまはやめていく 人の代わりに別の人が入ってくる状況ですので、人材育成をしてまた別の所で活躍する 人も、うちからも出ていき新しい人をそこで育てながら仲間づくりを増やしていき、市 民啓発もしていきたいと思っています。 ○田中座長 お2人が言われたから、永江先生もどうですか。島根県だけではなくて、 全国に地域看護を広げるにはどうしたらいいかをお答えいただきましょうか。 ○永江尚美先生 広めるといいますか、私が思いましたのは、いまはずっと在宅医療が 中心のお話だったのですが、在宅医療を支えるというのは地域ケアだと思います。その 地域ケアをどう考えていくのかといったときに、そこには健康な人たちも含めた住民参 加が一緒になっての地域ケアシステムでないといけないと思っています。そういうこと を考えますと、地域の住民が支えていけるための意識づくりをどう考えていくのか。そ こへ持っていくための看護の資質なり能力ということも必要になってくるのではないか と思います。 ○田中座長 ありがとうございました。大体時間になってまいりました。ほかにもまだ 質問があるかと思いますが、それは後日名刺を交わして直接お聞きください。本日は3 名の有識者の方にお越しいただきまして、それぞれ貴重な報告をいただき、またそれに 基づく活発なご議論をどうもありがとうございました。委員を代表して、お三方に改め て御礼申し上げます。  次回も同じように、別な有識者の方々からヒヤリングをすることになっています。そ の内容について、説明をお願いします。 ○石原課長補佐 次回は、急性期の医療を中心に有識者の方々をお呼びしています。日 程は、3月24日(月)15時から、はあといん乃木坂213号会議室で開催する予定です。 どうぞよろしくお願いします。  これで第2回看護基礎教育のあり方に関する懇談会を閉会します。お忙しいところ、 ご出席いただきまして誠にありがとうございました。 照会先 厚生労働省医政局看護課   福井 小紀子 (内線2599)   福井 純子   (内線2594)  ダイヤルイン 03-3591-2206 1