08/02/28 管理濃度等検討会  第3回議事録 第3回 管理濃度等検討会   日時 平成20年2月28日(木)   14:00〜   場所 厚生労働省2階共用第6会議室 ○古屋副主任 定刻より前ですが、先生方がお揃いですので、ただいまから、第3回「管理濃度等検討会」 を始めさせていただきます。初めに、本日お配りしている資料を確認いたします。まず、次第があります が、本日は議事にありますように、(1)として前回保留になった2物質、エチレングリコールモノメチル エーテルと二硫化炭素について、ご検討をお願いいたします。本日は、これに関する追加の資料を入れて おります。(2)が今回の新規検討物質ですが、アクリルアミド以下、粉じんまで、5物質についてご検討 をお願いいたします。(3)抑制濃度の考え方については、第1回目の検討会の検討事項の中に、管理濃度 と局排の性能要件である抑制濃度との間に大きな乖離が見られる物質については、見直しが必要であると されておりましたが、今日はこれの検討に当たっての考え方を整理するための資料を出しております。本 日は、ご意見をいただくということで、これについては今後、検討を重ねていきたいと考えております。 その他として、参考資料を準備しておりますので、若干コメントをさせていただければと思っております。  配付資料一覧の資料番号3から資料番号14は、これまでの検討会でお配りしたものと同じですが、資料 番号13および14については、本日ご検討いただく、前回保留になった2物質について抜粋した資料にな っております。  今回、新規の資料としてお出ししているのが資料番号15です。これは今回、新規に検討していただく5 物質についての産衛学会、ACGIHの提案理由になっております。  資料番号16ですが、今回見直しを予定されている測定の可能性についての資料です。3頁までが小西委 員からいただいた資料で、4頁以降が名古屋委員からご提供いただいた資料で、2つのものが一緒になって おります。  資料番号17は、抑制濃度をどうするかという検討をしていただくに当たって、抑制濃度と管理濃度を対 比した資料です。その中で、2頁の下のほうに検討課題を挙げておりますが、これを中心にご意見をいた だければありがたいと思っております。  資料番号18は、前回の検討会で保留になった2物質についての追加資料で、1頁から7頁までが前回の 議論の中にあった、ACGIHの中で出てくる文献についての資料です。8頁がエチレングリコールモノメチル エーテルと二硫化炭素の測定に関する資料で、小西委員からご提供いただいたものです。9頁以降は、二 硫化炭素に関して、名古屋委員からご提供いただいた資料です。  最後に参考資料は、前回トルエンについて、かなり管理濃度を下げるということで、そうした場合に実 際の管理区分がどのように変化するのかを、日測協でまとめていただいた資料です。今回、仮に20ppmに 下げた場合に、管理区分がどう変化するのかといった参考資料です。資料は以上ですが、よろしいでしょ うか。それでは、櫻井座長、よろしくお願いいたします。 ○櫻井座長 議事進行を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いします。まず、「前回検討会の保 留物質について」のエチレングリコールモノメチルエーテルの管理濃度についてです。これは、前回の検 討会で事実上5ppmから0.1ppmに下げると非常に大きなギャップがありますので、その根拠を少し丁寧に 検討しようということです。特に齧歯類で10ppmで生殖毒性がくるということ、あるいはPBPKモデルでは、 ヒトに対して13分の1ぐらいに考えなければいけないというような指摘がありましたが、そういった問題 等について、文献の信憑性を検討する必要があるということ、もう1つは0.1ppmまで分析できるかどうか という点の確認、その2つがありました。早速ですが、大前委員がいまの前のほうの問題、根拠の信憑性 について調査してくださったので、よろしくお願いします。 ○大前委員 資料13と18ですが、資料13の10頁、ACGIHの2-Methoxyethanolのドキュメンテーション の最後の部分です。この10頁の左側の欄の上から2段目の5行目の所に、「When airborne exposures were lowered to 0.55ppm」云々とあります。この、0.55にすると貧血が治ったというのが書いてあります。た ぶんこれを基にして0.1ということになったと思うのですが、それの基の文献が資料18です。  資料18の4頁のTable2ですが、これはどういうものかというと、この場合は純粋に2-MEのみのばく露 で、そのほかのばく露はない、単独ばく露の例です。これの濃度を測ったところ、Table2の所に、2月は 35.7ppm、2.5カ月後と書いてありますが、4月が2.65ppm、夏が0.55ppmということで、3回にわたって作 業環境を改善したというところです。8月の0.55ppmは、先ほどの0.55に相当します。  それに対して、Table3は、2月、つまり最初の時点におけるばく露群と被ばく露群の比較が書いてあり ます。例えば男で、Maleでいきますと、いちばん上のヘモグロビンの値がエクスポーズドグループが137、 これはg/lですので、通常で言うと13.7ということになります。それに対して、対象群は15.5、これは 差があるということで、この段階では貧血があったということです。環境を改善していって、4月が2.65、 8月が0.55になったときの数字は、Table5に貧血の変化が書いてあります。最初のときの13.7は2月で、 2.5カ月後の4月が15.2、8月が15.5ということで、ヘモグロビンが回復してきております。このデータ を見ると、赤血球は大体寿命が90日ぐらいありますので、最初の濃度の35.7ppmの段階では、もちろん貧 血があったことは言えるわけですが、次の段階の4月に2.6ppmに下がっている。この間に随分、環境改善 をしたのですが、そのときには既にヘモグロビンの平均が15.2となっております。それから8月、さらに その3カ月後の0.55のときは15.5ということで、もう既に4月の2.65のところでヘモグロビンは回復し てきているのです。だから、このデータは0.55で良くなったというよりも、むしろ2.65のところでもう 既に良くなっているということで、貧血に関しては2.65のところでもう既に十分といいますか、赤血球寿 命も考えると、この濃度で十分なレベルだと読むのが正しいのだと思います。したがって、ACGIHは0.55 と言っておりますが、ここはたぶん2.65で正しいのではないかと思います。それが1点です。  もう1つは、先ほど13分の1というお話がありました。それは資料13の10頁の左側の2段目のいちば ん下の所、「A PBPK model of EGME toxicity」云々の所に、動物とヒトとでは13倍違うということで、考 慮しなければいけないということが書いてあります。1つは、このPBPKモデルそのものを採用するかどう かということがあります。もう1つは、これは動物とヒトとの比較で、PBPKで13倍ということですが、 先ほどのデータは人間の単独ばく露で2.65等々という数字が出ていますので、これがある段階でこれを採 用する必要があるかどうかということも1つあります。もともとヒトのデータがあるので、あえて動物の データの13分の1を考える必要があるのかどうかということがありますので、ACGIHのこの0.1ですか、 これはちょっと厳しめに行き過ぎているかなという感じがします。  産衛の5というのは、これは確かに甘すぎます。この数字を見ても2くらいで回復しているということ で、5は甘くなるということなので、産衛の数字の見直しはしなくてはいけないと思いますが、0.1をいま 直ちにとるのは少し疑問だと思います。 ○中明委員 送られてきたこの論文を読んだら、排泄が意外に早いです。だから、要するにばく露が少な くなると回復してしまうという部分があって、私も0.1は厳しいのではないかと見たのです。いま大前委 員がご指摘のように、1カ月経って改善していくということでいけば、確かにまだ0.1まではと私も思っ たのです。 ○和田委員 むしろいま思ったのは、PBPKの論文で13分の1というのが本当かというのを私は知りたく て、でも今回その論文の提出がなかったです。 ○大前委員 論文は見つけたのですが、まだ読んでおりません。というのは、これがヒトのデータで出て いるので読みませんでした。 ○和田委員 13分の1ということでやっているわけですから、むしろそっちのほうが重要となったので、 それで本当にそうかなと思っただけです。ウサギでは3ppmで血液学的異常が来るなどと、いちばん初めに 書いてあります。3ppmで異常が来て、13分の1にしたら、かなり低いところをとらなければいけなくなっ てしまいます。血液学的異常であれば、それは人間では0.55でいいこととしてしまっているのか。 ○大前委員 もう1つは、ほかの論文の多くは単独ばく露でないのが多いのです。だから、両方、例えば エチレングリコールモノエチルエーテルとの混合等は、そういうのが結構たくさんあって、そこのところ の評価がなかなかうまくできないというところはあると思います。したがって、この論文は、むしろ単独 ばく露という珍しい論文で、N精度も悪くない、読んでみて少なくともあまり悪くない、Nはもともと少な いのは仕方がないので、まあ良い論文だと思いますので、この論文は結構使えるかなという気はしており ます。だから、最初の3からスタートするのは、ひょっとしたら混合ばく露の数字かなという気もします。 ○和田委員 貧血と生殖毒性という症状ですね。貧血に関しては、人間のデータを重視するということで あればこれでいいと思うし、2.5カ月で2.6に下がってしまっている。それで貧血がなくなっているとい うことは、もっと高い濃度で貧血がなくなるということだって考えていいのではないですか。 ○大前委員 そうです。そのとおりです。 ○和田委員 かなり高い濃度で貧血がなくなっていると考えていいのではないですね。となると、ぎりぎ り2.6というのは、かなり安全幅を持った値と考えていい。貧血のほうはそれでいいと思うのですが、生 殖毒性のほうはどう考えるかです。生殖毒性、本当に13分の1ということであったら、もっと考え直さな ければいけないし、生殖毒性だけのPBPKではなくて、貧血のPBPKだったら、貧血のほうを3の13分の1 にしなければいけなくなってしまうし、その辺があります。混合ばく露ということで、それは考えないと いうことであれば、貧血のほうは人間のデータで考えていいということですが、生殖毒性をどう考えるか です。1ppmで生殖毒性があったと言っているわけでしょう。 ○大前委員 先生がいまおっしゃった3ppmというのは、10頁の上の所ですよね。これはラットですが、 見ているのはhematologic abnormality、低いわけです。 ○和田委員 だから、それは3ppmで13分の1にしたら、もっと低い値をとらなければいけないけれども、 人間の値を利用してということで、それは無視していいだろうということで、貧血のほうはいいと思うの です。もう1つの10ppmで生殖毒性を含むというのを、それでもって2.6ということは、4分の1ぐらい と見ていいかということになってしまいます。13分の1というのは、毒性がある値です。10ppmで毒性が あったということですから、そうなると、もっとそれより低くして0.1ということを言っているのではな いかという感じがするのです。だから、13分の1というのが本当に信憑性があるかどうかを知りたいとい うことで、文献を見せて欲しいと言ったのです。 ○櫻井座長 折角ですから、それは検討しましょう。 ○和田委員 貧血のほうは、人間のデータがあるから、これでいいと思うのです。本当はもっと高いとこ ろで正常になっているはずであるわけですから。問題は生殖毒性がどうかだけです。 ○大前委員 PBPKモデルをどこまで採用するか。 ○和田委員 そうです。あれは理論的なものだけで、代謝とその相違によって計算するだけですから、あ まり当てにはならないとも思うのです。 ○松村委員 現在の産衛の提案理由は、5ppmというのは主に生殖毒性のほうから決めているわけですか。 ○大前委員 そうです。 ○松村委員 先ほどのは動物のデータのようですが、そのことに対しても、やはり新しいのが出ているの でしょうか。この生殖毒性に関しては、特に新しい知見がないのだったら、先ほどの貧血のほうが敏感に 効いてきているのかなという感じです。2ppmぐらいだったら管理ができそうですが、0.1ppmはちょっと大 変です。実際使えなくなるということだと思います。 ○菅野委員 最初にご紹介いただいた論文なのですが、最後の頁に最初のばく露調査のあと、作業者に保 護具を着けさせたと書いてあるのですけれども。 ○大前委員 どこですか。 ○菅野委員 134頁です。 ○大前委員 書いてありますか。 ○菅野委員 はい。これはコーティングルームでということみたいなのですが、それはどのぐらい全体作 業に関係するのかわからないのですが、呼吸保護具を着けているとすると、環境濃度の測定値とばく露が 違ってしまうのではないかと思うのです。 ○櫻井座長 どこに書いてありますか。 ○菅野委員 リファレンスがある頁の左側のいちばん上のパラグラフで9行目です。作業頻度が低いのか どうかわかりませんけれども。 ○大前委員 これはマシントラブルとか、何かそういうときだけではなかったですか。 ○菅野委員 それがよくわからなかったのですが。 ○大前委員 メンテナンス、それからトラブルシューティング、またはマシンクリーニングですから。 ○菅野委員 ごく一部だということですか。 ○大前委員 はい。別の作業だと思うのです。 ○櫻井座長 皮膚吸収のあった可能性もあります。 ○大前委員 はい。 ○櫻井座長 ですから、最初の空気中の濃度だけでなかった可能性もある。だから、貧血については、現 行の5ppmでは駄目だという根拠にもちょっとならないようなデータにも思えます。結局、安全サイドをと って下げるにしても、PBPKモデルをどう評価するか、もう1回ぐらい先へ延ばしてもよろしいですか。 ○岸係長 具体的には、どの文献を収集すればよろしいですか。 ○櫻井座長 PBPKモデルです。 ○田中委員 産衛の許容濃度は近々見直すのですか。 ○大前委員 ついこの間、担当者に連絡をしまして、できれば6月まで、遅くとも来年までにお願いしま すとは言ってあります。 ○小西委員 管理濃度は、許容濃度かTLVになっていますので、これらの結論が出た後まで少し延ばし、 もう一度見直したらどうでしょうか。 ○中明委員 大前先生、この辺は熊本で出てきそうなのですか。 ○大前委員 熊本は無理だと思います。早くて北海道だと思います。 ○櫻井座長 もう1年先延ばしかというところかと思います。PBPKモデルそのものは一応、次回検討して、 そのときに結論を出せるのなら出すけれども、そうでなかったら、許容濃度の産衛の動きを見てから1年 延ばしても、しっかり検討したものが出てきたものをその時点で採用するほうがいいのかもしれません。 そういうことでよろしいでしょうか。PBPKモデルの論文は、ここに引用したものを1つ、これは書いてあ るのでわかると思いますが、大前委員お願いします。 ○大前委員 PBPKモデルというのはあまり得意ではないのですが。わかりました。 ○櫻井座長 次に進んで、二硫化炭素です。これは現行の測定方法において、1ppmまで測定できるかどう かをさらに検討する必要があるということで、保留となりました。今日、追加資料18の8頁、これは小西 委員お願いします。 ○小西委員 前回のデータからあまり進展がないのですが、実際に私どもの所の委員会でいろいろ議論を しました。具体的に1ppmに対して、どこまで定量できるかということに関しては、いちばん右の欄の測定 の可能性の所ですが、実際に具体的に分析をして結果を出さないと何とも言えないというのがいまのとこ ろの結論です。ただ、特にこの二硫化炭素というのはFPDがディテクターということが多いものです。従 来から作業環境測定ではあまりFPDというディテクターは使われていないものですから、それによって二 硫化炭素を分析したデータを持っている所が少ないのです。ですから、実際にはデータをきちんと実験的 に集めてみないと、本当にできるかどうかの確認がとれないというのが、いまの現状です。 ○櫻井座長 これもちょっと今日は結論は無理ですね。 ○小西委員 ただ、名古屋先生のほうでやられた二硫化炭素のことが次に出ているので、それは名古屋先 生のほうでお願いします。 ○名古屋委員 前回ベンゾトリクロリドが分析できているにもかかわらず、資料を出せなかったために見 送った経緯がありましたので、分析はできるのだというのを実験で証明しています。いまの0.1になって も加熱脱着が十分できます。ただ、分析はできるが、加熱脱着装置が比較的限られた機関にあるかもしれ ません。1%から定量下限としては0.07ppm以下までは、十分定量はできますということの証明をしておか ないと、できないために見送られるのもどうかなと思いました。ベンゾトリクロリドの経験がありました ので、資料として出しました。 ○櫻井座長 結論として、二硫化炭素1ppmと決まったとしても、分析上、対応は可能であると。 ○名古屋委員 ただ、測定機関では、いまの方向でこのFPDではたぶん無理です。この方法だと、硫黄に 換算するから難しいかなと思っています。 ○小西委員 現行の方法については、本当にできるかどうかの確認データは、一応取る予定にはしており ます。いま名古屋委員の言われたやり方については、ガイドブックの中には採用していない方法です。現 行の方法としては採用していない方法なので、もしそれでやるとすれば、新しくその方法を採用するとい う形にしなければいけないのだろうと思います。 ○名古屋委員 いずれにしても、直接・液体はまず無理で、固体捕集に移っていかないと濃縮はできない かとは思います。 ○小西委員 液体捕集の場合、いわゆる吸収液がそのまま反応液で、反応量がもうその液で決まってしま うのです。ですから、ある一定の量を超えると、もうそれが横に寝てしまうという問題があるので、難し いかもしれないです。 ○櫻井座長 そうすると、方法としては1ppmに対応することになりますか。 ○小西委員 分析の方法を変えればできるということであれば、大丈夫だと思います。 ○中明委員 分析方法があれば、それでよかったのです。 ○小西委員 そういうことです。 ○田中委員 ガイドブックに載るか、載らないかは別なのですか。 ○小西委員 固体捕集のガスクロマトグラフという測定基準に付嘱するかどうかだけです。 ○名古屋委員 FIDだから関係ありません。 ○小西委員 固体捕集とその方法ですから、決め方としてはそういう方法です。 ○名古屋委員 固体捕集FIDという形には抵触しますが、ただ、そこに加熱脱着が入るだけで、それがど うかというだけの話です。 ○小西委員 方法論をそういう形に切り替えれば、そういうことになろうかと思います。ですから、その 方法論を逆に追加するということです。高濃度のところは、従来の方法でできるわけですから、低濃度と しては、そういう方法を追加していかなければいけないのだろうと思います。 ○中明委員 ただ、結局、管理濃度を下げたら、低いところまで測らなければいけないということになる のではないのですか。 ○小西委員 ですから、低いところを測る方法としては、そういう方法を追加しておかないとできない。 ただ、従来みたいに高いところは従来の方法でもできるわけですから、それは全部否定するのではなくて、 濃度段階別に応じて、やはり方法論も選択していかなければいけないということではないかと思います。 ○名古屋委員 たぶん捕集量を上げ、濃縮できれば大丈夫です。 ○小西委員 そういうことです。 ○名古屋委員 そうすると、それはある程度容量が決まっているから、少ししんどいのですが、下の固体 捕集は、いまの高い濃度を管理するためには問題ない。 ○櫻井座長 いずれにしても、測定方法が対応できないから、1ppm採用しないということにはならないの で、1ppmということで、今日決定してよろしいですか。 (了承) ○櫻井座長 それでは、この検討会としては、濃度については管理濃度1ppmということにします。 ○古屋副主任 確認させていただきます。現在の測定基準では、固体捕集方法の場合は吸光光度分析法と いうことになっていますが、この組合せを変えた測定基準に直さなければいけないということでよろしい でしょうか。 ○小西委員 固体捕集法のガスクロマトグラフという組合せです。それを追加する。直してしまうとまず い部分も出てくる可能性があるので、濃度の高いところは従来法でできるわけですから、低濃度用として はそういうものを追加しておかなければいけないのではないかと思います。 ○古屋副主任 固体捕集法でガスクロマトグラフの組合せを追加すれば、よろしいですね。 ○小西委員 はい、そういう形のものが入っていればと思います。 ○古屋副主任 わかりました。 ○櫻井座長 それでは、「新規検討物質について」のアクリルアミドです。 ○岸係長 私のほうから、アクリルアミドの基本的なデータを説明いたします。アクリルアミドは、白色 結晶の粉末で、融点は85度です。主な有害性の評価は、資料6の1頁にあります。発がん性としては、IARC が2A、ACGIHがA3、日本産衛学会が2Aと評価しています。また、許容濃度の設定状況としては、資料5 の1頁にあります。日本産衛学会は、許容濃度として以前は0.3mg/m3であったものを、2004年に0.1mg /m3を提案しています。一方、ACGIHはばく露限界値として、2004年にインハラブル粒子および蒸気に対 して0.03mg/m3を提案し、2005年に決定しています。管理濃度は、1988年に0.3mg/m3を設定しています。  また、用途としては、紙力増強剤・合成樹脂・合成繊維・排水中等の沈澱物凝縮剤・土壌改良剤・接着 剤・塗料・土質安定剤の原料、地下油層中の石油回収などがあります。ACGIHおよび日本産衛学会の提案 理由書については、資料15の1頁より掲載しています。このうち、2004年に許容濃度として日本産衛学 会より0.1mgが提案された提案理由書の「提案」と、2004年にばく露限界値としてACGIHより「インハラ ブル粒子及び蒸気に対して、0.03mg/m3」が提案された提案理由書の「推奨限界値」の箇所について、朗 読させていただきます。  まず、資料15の3頁です。「6.提案。以上の成績を踏まえ、平均曝露濃度が現行許容濃度付近の作業者 に軽度の神経影響が示唆されていることより、現行許容濃度を0.1mg/m3へ引き下げることを提案する。 今後、非曝露集団を対照とした低レベル曝露作業者における神経影響の疫学調査が重要である。なお、今 回の許容濃度見直しにあたっては、ヒトにおける知見が少ないため、発がんを考慮することができなかっ た。今後、ヒトを対象とする疫学データの蓄積が期待される。また、経皮吸収が無視できないため引き続 き『皮』を付す」。  続きまして、資料15の15頁です。「推奨限界値。アクリルアミドは、投与試験(吸入試験は未実施)の 全てのルートで容易に吸収され、類似の神経毒性作用が発生した。軽度の中毒の場合、ばく露が中断する と影響は急速に元に戻せる;しかしばく露が継続する時は、回復期間は大きく延長するかもしれない。最 も敏感な動物種(猫)における給餌試験の結果から、作業者が0.05mg/kg/日(0.30mg/m3相当)以上には 吸収しないことを勧告する。今日までに行われた二つの疫学的研究からは、このばく露レベルは神経障害 および癌の予防の為に実際的であると証明されている。しかしながら、職業曝露による発がん性に関わる 不確実性、アクリルアミドの生殖細胞変異原性を考慮すると、吸入性粒子と蒸気に対する職業上の8時間 TLV-TWAとして0.03mg/m3(0.01ppm)を勧告する。飽和蒸気濃度は、TLV-TWAレベルの曝露に貢献し、集 められた粒子状物質からの蒸発による損失がサンプリング中に発生するかもしれないので、全空気中濃度 は、粒子相と蒸気相の両者を考慮して加算し評価されるべきである。アクリルアミドは2.0mg/kg/日の慢 性ばく露量でマウスやラットに過剰の癌を起こしたが、しかし0.5mg/kg/日では起こさなかった。職業上 のばく露から人間に対する関連性ははっきりしないのでA3、動物発癌物質が確認されたが人体に対しては 関連性が未知、発癌性物質指定が割り当てられた。アクリルアミドは皮膚を通して容易に吸収され全身に 影響し、皮膚曝露がほとんどの人間の中毒の主な原因となるので、皮膚マークを付記する。SENマークあ るいはTLV-STELの勧告を行う充分なデータはなかった。読者は、例え8時間TWAが推奨する限度内であっ ても、TLV-TWAのガイダンスや超える管理手法の為のTLV/BEIハンドブックの最新版に記載された『化学 物質への紹介』の中の限度超えに関するセクションを精通することを期待される。アクリルアミドのヘモ グロビン付加物は、アクリルアミドの体内曝露量と推定されるが、本書の執筆時点ではBEIは存在しない」。 以上です。 ○櫻井座長 いかがでしょうか。産業衛生学会とACGIHが、2004年のちょうど同じころの時期に出された のです。オーダー的には、0.1と0.03、3分の1ではありますが、そう違わないです。原則として低いほ うを取るとすれば、特段の問題がなければ0.03ということにいたしますが。 ○田中委員 同じ時期に出たのは、何なのですか。取るデータが、要するに産衛とTLVで違ったというこ とになります。 ○櫻井座長 どれを重視したかという点で、違っているわけです。 ○大前委員 もう1つは、ACGIHは発がん性を考慮しているということだと思います。作業者が0.30相当 以上には吸収しないことを勧告するとありながら、数字が0.03になって10分の1になっていますので、 たぶんこれは発がんや生殖細胞などで、若干安全性を見たということだと思うのです。それに対して、産 衛は発がんに関して考慮することができなかったということで、その辺の違いではないかと思うのです。 ○田中委員 新しい知見で、「発がん性があった」などという文献が出てきたのでしょうか。 ○大前委員 ヒトに関しては、たぶんまだないと思います。 ○櫻井座長 IARCは2Aということですから、動物には間違いなく発がん、ヒトの疫学的データはやや限 定的であるということで、1にまではしていない。 ○田中委員 2になっているのですけれども。 ○櫻井座長 2Aです。probably carcinogenicと言われたら、発がんがあると考えておくべきなのだと思 います。産業衛生学会では、当時の許容濃度である0.5付近の作業者に軽度の神経影響が示唆された。ヒ トのデータで出ています。1992年のデータです。ですから、0.5辺りがもしLOAELだとすると、0.1にし ているというのはかなりぎりぎりの線ではあります。ACGIHの0.03というのは、非ばく露集団をコントロ ールとした低レベルばく露作業者における神経影響の疫学調査は必要であると言っていますので、0.1を 0.03に下げる。 ○中明委員 小西委員のデータでは分析できません。 ○名古屋委員 資料16を見ていると、現行法だと全部駄目です。 ○小西委員 いまのお話のとおりで、資料16のいちばん上にアクリルアミドがあります。0.03mg/m3にし たときに関しては、現行の2つの方法があるのですが、いずれも管理濃度変更後の測定としては不可能と いう結論です。ただ、備考に書いてあるとおり、これはOSHAのNo.21であるとか、OSHAのPV2004という形 で出されている方法を採用すれば、定量下限はそこに書いてあるとおりで、ただこれは120分捕集です。2 時間の捕集ということですから、いずれにしてもこのOSHAなどの方法は個人ばく露の測定法なので、時間 が長いのです。そういう意味で計測すれば、定量下限としては満足できるところはいきますが、現行の方 法と同等でいくということになると、ちょっと時間が長いので、そこをどうするかということだと思いま す。 ○松村委員 いま作業環境測定で、ガスマスというのは、ガスクロの一部として考えているのですか。 ○小西委員 測定基準上は特に区別がないので、いまガイドブックなどですと、GC-MSを使うという方法 も書いています。基本的には、GC-MSを使う所はものすごく増えているのです。増えていますが、作業環 境測定というのは、ターゲットが決まったものを測定するという原則があるものですから、必ずGC-MSを 使えということにはなっていないと。ただ、お使いになっている所はたくさんあると思います。 ○松村委員 環境測定をやっている所が多いので、あるでしょう。 ○小西委員 現行の方法は、必ずしもGC-MSのディテクターを使った方法ではないものですから、いまの ままでやられている方法として、やっていくことはできませんという結論なのです。 ○松村委員 このように軒並み管理濃度というのか、ばく露限界濃度が低くなってくると、分析をそのよ うに対応していかないと、もうとても無理という気がするのです。その辺も同時に考えていただいたほう がいいのではないかという気がします。環境測定のほうは、もうかなりGC-MSというのは使っていること ですし、先ごろから問題の農薬、食品の安全性でもGC-MSが使われているので、作業環境測定でも考えて もいいのではないかという気がします。そうでないと、本当に分析法でみんな頭打ちになってしまうよう な気がします。 ○名古屋委員 分析はできる所はいっぱいあるのです。ただ、ここに書かれている方法だとできないとい うことです。 ○小西委員 測定基準に則って、我々のほうで今までずっと作ってきたガイドブックで決めてきた方法で はできないということです。ですから、いま先生がおっしゃったとおりで、今後もそういう形で低濃度化 していくことになると、根本的な分析の手法の転換期に来ているのかという気はします。 ○松村委員 そう思います。 ○小西委員 そこは基準上はクリアしていても、分析のディテクターとか、手法そのものを1回きちんと 見直しをしないといけない時期に来ているのかと思います。桁がこれだけ違ってきますと、とてもいまの 現行法では難しいだろうということだと思います。 ○名古屋委員 いまここで見ると、グラスファイバーだけです。固体捕集ではなく、ろ過捕集です。でも、 ガスクロと書いてあり、これだとイレギュラーします。 ○松村委員 両方採取することと書いてある。 ○名古屋委員 そうすると、ガスも一緒に捕集しなさいとなっていて、やはりこの分析方法自体が合って いないです。 ○小西委員 下のものがそうなのです。 ○名古屋委員 フィルターの下は大丈夫ですが、フィルターの上のほうはどうですか。 ○小西委員 先ほどから何回も申し上げているとおり、管理濃度が下がってきても、環境がそれに連れて 全部その濃度になっているかというと、決してそうではないです。測定の手法の選択がすごく難しいのは、 濃度の高いところは従来法でできるではないかということと、濃度が下がった所はそれではできないでは ないかということがあるので、手法を濃度段階別に、この方法はどれからどのぐらいまでの範囲のときは これを使ってもいいですよという形の、いわゆる検知管を選定するのと同じような考え方にしていかない と、今度は1つのものすごく感度を上げたものが高濃度で出てきたらどうするのだと、逆の問題が出てく る可能性があるので、その本質的な考え方を変えなければいけないのかという気がします。 ○松村委員 いま小西委員がおっしゃったように、現実にはこのように低く管理濃度を設定すると、管理 濃度を超える所がたくさん出てくる状態になる。それは行政的には考えてもいいことなのでしょうか。だ から、管理濃度を満たさないというか、評価の悪くなる所がたくさん出てきてしまうという現実がどのぐ らいあるかということが、現状の作業場の状態のデータはないのでよくわからないのですけれども。 ○和田委員 現在の産衛の0.1mg/m3だと測れるのですか。 ○小西委員 現行のものだと測れるということです。 ○松村委員 これは粒子として採取しています。 ○小西委員 そうです。特殊なホルダーを使っていますから。 ○櫻井座長 これは昇華するのです。相当匂いはするものです。だから、本当はいままででも蒸気も一緒 に測るべきだったのかもしれないけれども、粒子だけ測っていた。 ○和田委員 資料15の15頁の左側の下のほうですが、作業現場において0.30mg/m3以上にはしないよう にと書いてあります。右側の上のほうへいくと、発がん性実験では0.5mg/kg/日では発がんがなかったと いうこと。これは3mg/m3に相当します。ということは、ACGIHは確実にがんがあるということで100分の 1をとっていると思うのですが、現在の日本の産衛からいけば、30分の1とると0.1になるわけです。で すから、測定の限界値などといったものを考えて、現在の産衛の値でいいのではないかという感じもしま す。現実性を考えて、そこまで下げなくてもいいのではないかということです。  15頁の右側の上のほうでも、0.5で起きないとしているわけですから。それから、これは先ほど言った 3mg/m3に相当するわけです。安全率で0.1だったら30分の1になりますから、係数30を掛けることにな ります。そうすると、0.1になります。しかも、ヒトに対する関連性ははっきりしないで、A3ということ をちゃんと明記しているし、確実にわからないわけです。ですから、がんに関しては30分の1ぐらいの安 全率で、とりあえず見ておいていいのではないかという感じはします。そうすると、0.1でいいのではな いかという感じがします。測定手法も考えて、いいかと思います。 ○櫻井座長 現行は、これはいくつでしたか。 ○和田委員 現行は0.3ですが、0.1にする。 ○櫻井座長 0.3を0.1にする辺りがいいのではないかというご意見です。 ○和田委員 はい、産衛の値とします。 ○櫻井座長 0.1ならば測れるのですか。 ○小西委員 現行は0.3で測れています。 ○和田委員 0.1はどうですか。 ○櫻井座長 改善の余地はたぶんあるのだろうと思います。これよりもう1桁下がってしまうということ になると、すごく厳しいです。 ○田中委員 先ほども出たように、測定方法はあることはあるのですから、そちらのほうも使えるように、 検討していかなければいけないです。いまの0.1という提案はよろしいのではないでしょうか。 ○櫻井座長 0.1というご提案でしたが、よろしいでしょうか。そういう結論にしたいと思います。 ○名古屋委員 ただ、このときに0.1はいいのですが、そのときはグラスファイバーでとるだけでいいの か、ガスも固体捕集も一緒に合わせてとった0.1なのかと決めておかないといけない。要するに、フィル ターだけでとった測定法なのか、それと合わせて固体捕集をとって、合わせた合算が0.1なのかどうかと 決めておかないと、たぶん測定された濃度と管理濃度が合わなくなってしまう。アメリカは、たぶん固体 とろ過捕集を併用しなさいとなっている。0.1を決めるのはいいのですが、そのとき測定法もきちんと決 めておかないとまずいような気がします。 ○古屋副主任 現在の測定基準では、ろ過捕集でガスクロ、この組合せ1種類しか規定しておりませんの で、それだけでいいのかどうかというお話だと思いますが。 ○小西委員 基本的には捕集方法の定義の中に、ろ過捕集プラス固体捕集などという定義の基準はないの ではないですか。 ○古屋副主任 はい、ありません。 ○小西委員 そういう形のものをきちんと作っていかなければいけない。 ○松村委員 ダイオキシンもそれをやっています。 ○菅野委員 アクリルアミドの所ですが、下に書いてある方法は私が作成しました。現在の管理濃度相当 のアクリルアミドをフィルターにつけて空気を吸引すると、10分間で蒸発してしまいます。つまり、昔、 管理濃度が高かったときにはフィルターでよかったのですが、現時点では駄目ですので、これを下げると なると、極論ですけれども実質的には蒸気の捕集だけで十分ではないかと思えるほどです。 ○櫻井座長 極論ですが、要するに蒸気を無視してはいけないということですか。 ○菅野委員 むしろ蒸気のほうを測定する。 ○名古屋委員 メンソクは30Lです。こっちは1分間です。ということは、メンソクの当たるところは早 すぎるから、たぶん揮発してしまうので、蒸気はなくなってしまって、粒子しかなくなる。だから、メン ソクも考えていくと、ろ過捕集でなくて固体捕集も入れておかないと、この0.1はイレギュラーしてしま いますよということになります。 ○櫻井座長 では、この場で蒸気も含めて0.1と結論してもよろしいですか。 ○名古屋委員 そう解釈してもらえればいいのでしょう。ダブルでとるよという形にして。 ○小西委員 ですから、いまの下の活性炭フェルトなら大丈夫ということなのです。グラスファイバーろ 紙だけだと駄目ですが、活性炭フェルトを付ければとれるということです。 ○名古屋委員 フェルトというのは、一般的なものなのですか。 ○小西委員 作っている所が少ないです。 ○菅野委員 4、5年前に問合せがありまして、探して1社が作っていることは確かです。 ○中明委員 あまりないわけです。 ○菅野委員 固体捕集でも、普通の固体捕集にフィルター付けるほうが、汎用性というか、入手も簡単で すので、そちらのほうがいいと思います。要するにフィルターと吸着剤が両方必ず必要だということです。 ○松村委員 フィルターを作ってもらえばいいわけです。 ○櫻井座長 そうですね。新しく作っていただいて。 ○小西委員 ですから、これは方法論としては可能性は十分にあるということを出していただいていいと 思います。 ○櫻井座長 数字としては、0.1mg/m3。ただし、蒸気相も含んで測定する。そのように結論します。 ○名古屋委員 2相にするのではなくて、やはり1相の活性炭フィルターのほうがいいのですか。 ○菅野委員 このときには、規則がろ過捕集になっていたので、活性炭は使えなかったのです。その規則 に合わせるために、このようにしただけなので、現実的には加熱脱着器具のチューブに、片方にグラスフ ァイバーを詰めれば、それでも十分です。 ○田中委員 現行にそういう測定法を加えればいいのではないですか。 ○小西委員 定義が固体というのと、そういうものの定義の中に入っていないということなのです。 ○名古屋委員 サンプリングとしては、要するに脱着用の活性炭とろ紙を入れておいて、あと脱着すれば、 全部出ていくという感じなのでしょうか。だから、それを固体捕集とは呼ばないとできない。 ○古屋副主任 測定基準の書き方については、またご相談しながら検討したいと思います。 ○櫻井座長 次に進んでよろしいでしょうか。PCBです。 ○岸係長 続きまして、塩素化ビフェニルの基本的なデータを説明します。塩素化ビフェニルは無色から 粘ちょう性液体または白色の結晶で、沸点は340〜375度です。主な有害性は、資料6の2頁です。発がん 性としてはIARCが2A、ACGIHが塩素54%がA3、日本産衛学会が2Aと評価しています。  また、許容濃度等の設定状況としては、資料5の2頁です。日本産衛学会は許容濃度として、以前は0.1 mg/m3であったものを、2006年に0.01mg/m3を提案しています。一方、ACGIHはばく露限界値として、昭 和57年に42%塩素含有物に対して1.0mg/m3、塩素54%含有物に対して0.5mg/m3を提案しています。管 理濃度は1996年に0.1mg/m3を設定しています。  用途としては、過去に熱媒体、絶縁油、複写紙、インキ溶媒、顔料塗料、合成樹脂の製造などがありま す。  ACGIHおよび日本産衛学会の提案理由書については、資料番号15の17頁より掲載されています。この うち、2006年に許容濃度として日本産衛学会より0.1mg/m3が提案された提案理由書の「6)許容濃度およ び生物学的許容値の提案」箇所について朗読させていただきます。資料番号15の26頁をご覧ください。 「6)許容濃度および生物学的許容値の提案。許容濃度については、低塩素化および高塩素化PCBの許容濃 度をそれぞれ0.012mg/m3および0.004mg/m3とするか、あるいは総PCBとして0.01mg/m3とするかの2 つの方式が考えられる。生物学的許容値を血中の総PCB濃度で設定したこと、および、今後、PCBに曝露 されるのは、PCB処理にかかわる労働者であり、低塩素化および高塩素化PCBのいずれも取り扱うことが 多いことを考慮すれば、別々に許容濃度を設定するよりも、総PCBとして設定する方が現実的と考えられ るため、総PCBとして許容濃度0.01mg/m3を提案する。なお皮膚吸収がある場合は曝露濃度をより低く管 理する必要がある。生物学的許容値については、血中総PCB濃度として25μg/lを提案する。採血のタイ ミングは特定しないが、食事および作業中に取り込まれたPCBは血中濃度を一時的に高め、時間とともに 脂肪組織等に移行する。したがって、血中PCB濃度が体内蓄積PCB量の指標となるためには、体内で平衡 に達していることが必要であり、作業終了から一定時間後(例えば、翌日の作業開始前)、かつ空腹時に採 血することが望ましい。また、血中PCB濃度の表示法として血中の脂質1g当たりのPCB量として表すこ とも多く、食事後の血清中性脂肪の増加による見かけのPCB濃度の変化を避ける点からも空腹時の採血が 望ましい。IARCではPCBを2Aに分類しているが、上記の設定では発がんについては考慮していない。Brown らおよびSinkらのコホート調査では、コンデンサー製造労働者に肝臓・胆嚢がん・胆管がん、あるいは悪 性黒色腫による過剰死亡が見られたが、曝露濃度は0.024〜2mg/m3および0.16〜0.094mg/m3であり、許 容濃度0.01mg/m3はこれらの曝露範囲より低い。また、MallinらおよびYassiらのコホート調査では、曝 露データは示されていない。わが国の食品衛生調査会は、PCBの暫定耐用1日摂取量(暫定TDI)を5μg/ kg/日と定めている。わが国における食物からのPCB摂取量は0.011μg/kg/日あるいは0.005μg/kg/日と 報告されているので、作業環境から取込みが許される量は4.99μg/kg/日である。経気道での取込率100%、 体重50kg、8時間の呼吸量10m3と仮定すると、曝露濃度0.01mg/m3の場合、1日摂取量は2μg/kg/日で あり、暫定TDI以下となる。冒頭で述べたように、市販されていたPCBにはダイオキシン類が含まれてお り、カネクロールの毒性等量は1,500〜18,000ng TEQ/g程度、保管PCB廃棄物の毒性等量は0.00029〜 30,000ng TEQ/g程度である。したがって、PCBの曝露濃度0.01mg/m3はダイオキシン類で0.0000029〜300pg TEQ/m3に相当する。取込率、体重および呼吸量を上記と同様とすれば、1日摂取量は0.00000058〜60pg TEQ/ kg/日となり、ダイオキシン類のTDI(4pg TEQ/kg/日)を超えるケースがありえる。したがって、同時に ダイオキシン類としての管理も不可欠である」。以上です。 ○櫻井座長 ACGIHのほうは比較にならない高い数字になっていますので、あえてここでは検討対象とは せず、提案理由を読み上げることは省略ということであります。そうですね。 ○岸係長 はい。 ○櫻井座長 いかがでしょうか。 ○和田委員 測定は可能であるわけですか。 ○小西委員 資料16の2番目に書いてあるとおりです。現行の測定法では測定は困難であり、バツが付い ています。ただ、備考にある固体捕集(PUF)-GC-ECD法、GC-MS法の捕集について名古屋委員のほうで資 料を出されておられますので、名古屋委員からご説明いただいたほうがよろしいかと思います。 ○名古屋委員 現行の方法というのは30年前に馬場先生がやられた方法で、現存する分析方法としてはも ともと出来ないのです。なぜかというと、PCBは分析しなくていい保存時間がずっとありました。だから、 誰も手を付けていない。要するに、30年前の分析がそのまま生きていた。  今度、解体をやるときにどうしても分析方法が要るので、ガイドブックを検討してみたら、とても現存 する分析方法ではないということがわかった。あえて、3年ぐらい前から新しい方法を変えようというこ とで、EPAの方法がPUFでポリウレタンをやっていますので、そこで分析するとここに書かれているとこ ろの定量下限かなり低くまででき、十分対応できます。  ただ、ECDを使うよりは、ガスマスを使ったほうが再現性の精度は良いということで、一応論文として 付けておきました。見ていただければと思います。下げてもこのポリウレタンフォームを使って捕集すれ ば十分です。  ただ、インピンジャーで、液体捕集でできないことはないのですが、厄介なのは時間が長くなると液量 が減ってくるので、いつもヘキサンを足さなければいけないという厄介な操作が入ります。それだったら、 EPAがやっているようにポリウレタンで取ったほうが濃縮が可能なのでいいかなと思います。もともと、 現場に行って測定していてもものすごく濃度が低いのです。要するに、グローブボックスの中でやってい て、環境に漏れてくるということが滅多になく、かなり低い濃度です。この方法がないときは、ハイボリ ュームを使ったダイオキシンの分析をそのまま適用してやっていました。それだと作業環境になりません ということで、あえてこの方法にチャレンジしてみましたということです。 ○小西委員 私どものガイドブックでも、現行の方法がうまくいかないということがわかっています。い ま、名古屋委員から説明していただいた方法も、変更しなければいけないという形で検討してきていると いうことです。 ○櫻井座長 名古屋委員の論文を資料15、16に付けていただいています。この内容をご説明いただいてい ます。PCBは非常に注意すべき物質です。0.01mg/m3総PCBとして、産衛も大変よく検討してこういう結 論にたどり着いています。それを採用するということでよろしいですか。                   (承認) ○櫻井座長 それでは、これはそのようにさせていただきます。次は臭化メチルです。 ○岸係長 続いて、臭化メチルの基本的物性等についてご説明いたします。臭化メチルは無色のクロロホ ルム臭のする気体で、沸点は4.5度、融点は-93度であります。  主な有害性としては、資料番号6の3頁をご覧ください。発がん性としてはIARCが3、ACGIHがA4と評 価しています。また、許容濃度等の設定状況としては資料番号5の4頁をご覧ください。日本産衛学会は 許容濃度として、2003年に新たに1ppmを提案しています。一方、ACGIHはばく露限界値として1996年に 1ppmを提案し、1997年に決定しています。管理濃度は1988年に5ppmを設定しています。  用途としては、食糧および土壌のくん蒸剤、有機合成、低沸点溶剤、飛行機エンジン火災の消火剤など があります。ACGIH、または日本産衛学会の提案理由書については資料番号15の43頁より掲載されていま す。このうち、2003年に許容濃度として、日本産衛学会より1ppmが提案された提案理由書の「許容濃度 の提案」について朗読させていただきます。資料番号15の46頁をご覧ください。「5.許容濃度の提案。臭 化メチルの高濃度曝露では肺の炎症、中枢性、抹梢性神経障害が生じる。神経障害はしばしば回復が困難 である。米国NIOSHは、身体・生命に即時性危険値IDLHを250ppmとし、ACGIHは、3ppm、29カ月間の長 期吸入曝露で、ラットの鼻腔に軽度の刺激反応を認めたとする研究に基づき、1997年にTLV-TWAを5ppm から1ppmに下げた。本委員会は、Kishiらの臭化メチル工場作業者についての研究から、臭化メチル曝露 のヒトでのLOAELは5ppmと考えられることから、許容濃度1ppmを提案する。また、臭化メチルは大部分 の材質の保護衣類を浸透する。保護衣を着用していても重症皮膚障害、血漿中ブロマイド濃度増加がある ことから、『皮』マークを付す」。以上です。 ○櫻井座長 ACGIHはいいのですか。 ○岸係長 ACGIHのほうは古いものですので省略させていただきます。 ○櫻井座長 数値は同じになっているのですか。 ○岸係長 はい、そうです。 ○和田委員 前回検討の5ppmというのはどういうことで取ったのですか。「05年に検討済み」と書いてあ りますが、これはどういう意味なのですか。産衛やACGIHが出たあとで、あくまでもまだ5ppmでいいと言 っているのですか。 ○岸係長 88年5ppmを設定して、05年に一度検討していますけれども、変更はないということです。 ○和田委員 どうして変更しなかったのでしょう、1ppmと出ているのに。測定が難しかったのでしょうか。 ○名古屋委員 そうではないと思います。 ○和田委員 そうではないですよね。いずれにしても、1ppmでいいのではないでしょうか。 ○櫻井座長 1ppmでよろしいですね。 ○古屋副主任 前回の検討概要をご説明します。「ACGIHは1ppmを勧告しているが、産衛学会は提案の段 階では勧告していない。ACGIHの勧告している1ppmはラットの鼻の刺激をもとにしたものであり、人間の データは使用していないので、管理濃度は現行のままとすることが適当である」ということです。 ○和田委員 今回は人間のデータでやっているわけだから1でいいのではないですか。 ○櫻井座長 では、これは1ということで。測定についてはいかがですか。 ○小西委員 測定については、現行の方法ですと直接捕集のガスクロマトグラフで1mL注入では不可能と いうことであります。液体捕集については実際にやっておられる方もいらっしゃらないので、これは要検 討で確認の必要があります。ただ、これもOSHAのほうの固体捕集-GC-FID法でいくと、時間が30分程度 で大体0.1ppmぐらいの測定が可能だということですから、方法論としてはできるだろうと考えています。 現行のところでは固体捕集の組合せがないものですから、新規に測定基準を改正する必要が出てくるので はないかと思います。 ○櫻井座長 分析のほうで対応していただくということで、臭化メチル1ppmというように決めさせていた だきます。 (了承) ○櫻井座長 次はフッ化水素です、お願いします。 ○小西委員 その前に、いまの臭化メチルに関しては検知管があります。いまのところ、使用が認められ ている検知管の範囲というのはなかったのですが、市販されている検知管では資料No.16の2頁目に書いて いますが、2社の検知管が出ています。ガステック製のものは1〜36ppmですから、1ppmになったときはち ょっと使いづらいです。北川式については、範囲としては0.4〜80とか0.5〜10ということなので、あえ て△を付けていますのは今後の可能性としては使える検知管が作れる可能性があるということであります。 ○櫻井座長 わかりました。高濃度用と低濃度用と、両方そろえておいてくれるといいです。 ○小西委員 ただ、現行では検知管が使えることになっていないので、良いものができればまた使えるよ うにしてもいいのかなと思います。 ○櫻井座長 次に、フッ化水素、お願いします。 ○岸係長 続いて、フッ化水素の基本的データをご説明いたします。フッ化水素は無色刺激臭のする気体 で、沸点は-19.9度であります。  主な有害性は資料番号6の4頁をご覧ください。発がん性としては特に評価はされておりません。また、 許容濃度等の設定状況については資料番号5の5頁をご覧ください。日本産衛学会の許容濃度としては、 2000年に天井値として3ppmを提案しています。一方、ACGIHはばく露限界値として、天井値で3ppmであ ったものを2004年にフッ素として0.5ppmを提案し、2005年に決定しています。管理濃度は2005年に3ppm であったものを2ppmに改正しています。また、用途としてはフロンガスの製造、ガラスの彫刻、電球・ブ ラウン管などのつや消し、フッ化物の製造原料、金属の洗浄、鋳造物の洗浄、フッ素樹脂の中間原料、半 導体物質のエッチング剤などがあります。  ACGIHおよび日本産衛学会の提案理由書については、資料番号15の67頁より掲載されています。この うち、2004年にばく露限界値として、ACGIHより0.5ppmが提案された提案理由書の「推奨限界値」の箇所 について朗読させていただきます。資料番号15の75頁をご覧ください。「推奨限界値。フッ化水素ガスは、 激しい呼吸刺激性があり、溶液では、皮膚および目に激しく痛い化学火傷の原因になる。ACGIHではフッ 化水素は一次刺激物質であると見なしている。0.6から2.4mg/m3(0.9から2.9ppm)曝露で症状が増加し、 気管支肺胞洗浄液が変化した健康人ボランティアにおける制御された吸入曝露試験に基づく結果から、フ ッ化物のTLV-TWAを0.5ppmとして勧告する。この限界値は、フッ化水素へのばく露に起因する細胞の変化 や刺激の様な症状を最小限にするであろう。この限界値は職業性フッ化水素ばく露に伴う歯および骨フッ 素中毒症の発生可能性をも最小限にするであろう。塩化水素および臭化水素と同様に、フッ化水素蒸気の 腐食性についても考慮する必要がある;それゆえに天井値として2ppmも勧告する。フッ化水素の腐食性お よび皮膚浸透性を考慮し、皮膚マークを付けることを勧告する。感作性および発癌性のマークを付けるこ とについては、データは充分ではない。読者はフッ化物の生物学的モニタリングおよび職業上ばく露に関 する更に詳しい情報についてはフッ化物のBEI資料を参照下さい」。以上です。 ○櫻井座長 いかがでしょうか。 ○和田委員 ACGIHが天井値で2ppm、腐食性のためであると言っているのは、一過性ではなく、天井値で 腐食が来るということを考えているわけです。その一過性が高くなって、腐食が来るというのは意味がよ くわからないです。あるいは、慢性ばく露0.5と天井値2ppmと相互性があると考えていいのですか。 ○田中委員 昔は、産衛も最大天井値です。ACGIHも天井値です。そうすると、やはり、急性を非常に重 視して付けたのではないでしょうか。 ○和田委員 そういうことだろうと思います。 ○櫻井座長 むしろ先に天井値を決めて、もし、平均値で管理するならば、その何分の1というような感 じで考えておりました。 ○田中委員 確か2ppmです。 ○和田委員 05年の管理濃度の改正のときはその天井値をそのまま取ってしまったということですか。あ るいはそれしかないとか。 ○田中委員 天井値を換算しませんでしたか。 ○松村委員 天井値で決まっているものは大体半分にしていました。 ○田中委員 半分とか3分の1とかにしましょうという約束になっていました。 ○松村委員 管理濃度が瞬間値をディテクトできないのです。 ○和田委員 そうです。大体半分ですか。 ○松村委員 大体半分です。 ○櫻井座長 このACGIHは2に対して0.5、4分の1になっています。 ○田中委員 4分の1になっています。 ○櫻井座長 ヒトのばく露実験のデータを使っています。ですから、信頼性が高い。 ○田中委員 0.9から2.9ppmということですから、その半分ということで0.5になっているのではないか と思います。 ○櫻井座長 安全サイドを見て、0.9では大丈夫だったのでしょうか。 ○田中委員 症状は「出ている」と書いてあります。 ○中明委員 そうすると、ぎりぎりです。 ○櫻井座長 ぎりぎりというところなのです。 ○田中委員 だから一応、安全を見て、0.5でいいのではないですか。 ○中明委員 測定が大丈夫であれば。 ○小西委員 測定のほうは先ほどのいちばん下の欄、「要検討」と書いてあるのは、ちょうど私どものとこ ろで総合精度管理事業ということでクロスチェックをやっています。フッ化水素をやっているのですが、 定量下限のデータが今回間に合わなくて、どれぐらいでやっているかをいま集計をしているところです。 それに応じて、ボリュームを変えるなどということが必要になってくる可能性はあるかと思います。  次の頁に検知管があります。これは従来から検知管の使用が認められています。現行で出ているのがガ ステック社が0.09〜72ppm、北川式が0.17〜30ppmということで、これが仮に0.5ppmに下がったとすると、 管理濃度の10分の1まで測定できるということで考えると、ガステック社のものについては0.05の可能 性は高く、測定できるのではないかというお話を聞いています。 ○櫻井座長 そうですか。 ○小西委員 分析についてはいまのところ、ほとんど吸光光度ですから、それにできるだけ対応できるよ うな方法で考えていければと思っています。 ○櫻井座長 それでは、分析のほうは対応可能であると想定して、フッ化水素の管理濃度として0.5ppmを 採用するという結論でよろしいでしょうか。                   (了承) ○櫻井座長 そのように決めさせていただきます。次は粉じんの管理濃度についてです。 ○岸係長 続きまして、粉じんの基本的データについてご説明いたします。粉じんのうち、シリカについ ては無色、または白色の結晶、または粉末で、石英としての融点は1610度であります。  主な有害性の評価は、資料6の1頁をご覧ください。発がん性としては、IARCが結晶質シリカとして1、 ACGIHが結晶質シリカとしてA2、日本産衛学会が1〜2Bと評価しています。また、許容濃度等の設定状況 としては資料番号5の1頁をご覧ください。日本産衛学会の許容濃度としては、2006年に吸入性結晶質シ リカとして0.03mg/m3、1980年に第1種粉じんのうち、吸入性粉じんとして0.5mg/m3、総粉じんとして2 mg/m3。第2種粉じんのうち、吸入性粉じんとしては1mg/m3、総粉じんとしては4mg/m3。第3種粉じんの うち、吸入性粉じんとしては2mg/m3、総粉じんとしては8mg/m3を提案しています。  一方、ACGIHはばく露限界値として、2004年に結晶質シリカとして0.05mg/m3であったものを0.025mg /m3を提案し、2006年に決定しています。  管理濃度は2005年、2.9÷(0.22Q+1)であったものを3.0÷(0.59Q+1)mg/m3に改正しています。用 途としては硝子原料、硝子繊維、鋳造砂、水ガラス、気泡軽量コンクリート、ほうろう、釉薬、研磨剤、 電気部品絶縁体、耐酸アスファルト、外壁吹き付け剤、溶接棒のフラックス、プラスチックの充填剤、コ ンクリート骨材などがあります。  ACGIHおよび日本産衛学会の提案理由書については資料番号15の77頁より掲載されています。このう ち、2006年に許容濃度として、日本産衛学会より0.03mg/m3が提案された提案理由書の「許容濃度の算出」 箇所について、および2004年にばく露限界値としてACGIHより0.025mg/m3が提案された提案理由書の「推 奨限界値」箇所について朗読させていただきます。  まず、資料番号15の79頁をご覧ください。「許容濃度の導入。初めに、産衛許容濃度委員会における粉 じん-じん肺の算定方式としては、過去に『粉塵曝露期間25年(勤続年数40年)、じん肺2型を5%以下 に抑える』を条件とした経緯がある。一方、前述のように、最近の疫学的知見に基づいて、肺がん発生を 防止できるための曝露評価値を求めるには現段階において合理的根拠が十分に存在するとは言いがたい。 そこで本提案理由では、胸写上の珪肺症を防止できる濃度を達成すれば肺がんの発生を実質的に防ぐこと ができるという立場をとり、珪肺症を防止するための曝露評価値を求めることとする。さらに本許容濃度 委員会ではHSEによる文献的考察がこのような目的を達成する上で最も合理的な根拠を提示していると判 断し、許容濃度を導入する根拠とした。Grahamらは、1988年に報告された米バーモント州花崗岩の置き場 と採石場労働者5,414名に関する死亡調査を延長した。1940年以前の石切り場は平均気中濃度が石英とし て0.2mg/m3、圧搾空気式のみを使った作業者は同0.6mg/m3に曝露した。この濃度は1940年以降は低下 し、1955年に石英として0.05〜0.06mg/m3付近で安定した。ここでの砒素等他物質による交絡はないが、 喫煙は一般的であった。1996年末でコホートの47%が死亡したが、1940年以降のみに曝露した者で珪肺 症死亡者はいなかった。すなわち曝露濃度低下の効果を示した。本研究の観察結果についてHSEは『0.06 mg/m3(8hTWA)の環境濃度に20〜40年曝露した労働者が珪肺症2/1を起こすリスクは低い』ことが示され たとの解釈を採用している。ここで、同研究結果を前述のスコットランド炭鉱夫研究に外挿することによ り、以下の関係式を導入できる。変更条件として、(1)曝露期間25ないし50年間、(2)発症率5%、(3)珪肺 症1/0+となる濃度を逆算する。(3)の条件を導入するために表2に示したリスク比を適用する。すなわち、 本観察結果はILO2/1に対するものであることからILO1/0に変換するためには前述の表2におけるR1と R2のリスク比を適用する。また0.06mg/m3は表で0.04〜0.1mg/m3の間に相当するから、2/1+→1/0+の変 換に際して36倍〜10倍の間の倍率を適用する。なお、一般に同じ数値であればILO分類のほうが日本の じん肺分類よりもじん肺症としての程度が強いことが知られていることを考慮する必要がある。ここで 0.06mg/m3に対応する期間(20〜40年)の中央値をとって30年とし、曝露期間25年間(勤続年数40年)・ 5%・ILO 1/0+に変換するため、0.06×(30/25)年×(5/1)×(1/10〜1/36)mg/m3=0.036〜0.010mg/m3 を導くことができる。この範囲を基に値を単純化する必要があるが、現行水準との比較および安全性を考 慮して、0.03mg/m3が珪肺症を防止できる濃度であると判断する」。  続いて、118頁をご覧ください。「推奨限界値。石英。上述したレビューの量反応関係から、結晶質シリ カのTLV-TWAは吸入性粉塵として0.025mg/m3を勧告する。0.05mg/m3レベルで防護された労働者の数編 の疫学的研究では、労働者の数パーセントに、ILO分類の1/0あるいは1/1と一致するX線写真変化があ ったが、寿命あるいは肺機能に変化を示さなかった。しかしながら、スチーンランドとサンダーソンは吸 入性のシリカで0.065mg/m3よりも高い平均ばく露レベルにおいて肺癌からの死亡危険率の有意な増加を 見出し、TLV-TWA0.05mg/m3は労働者の健康保護には十分ではないことを示している。グラハム等は作業場 のシリカばく露濃度平均が0.06mg/m3の退職者を研究した時に、珪肺症の危険率は退職時あるいは退職後 に検査した雇用者と比較した時に有意に大きかった。珪肺症の罹患率データのほとんどは労働者の退職時 の研究に基づいており、退職後の期間中の病気の進行については追跡されてはいないが、委員会は0.025 mg/m3のTLV-TWAは珪肺症の発症を予防し、肺癌の発症を予防するであろうと信じている。この勧告につ ながる、シリカばく露の結果による、先行する炎症性と線維症について、および、肺がんと炎症・線維症 との関連については関心事である。委員会は、この値は過去のばく露濃度測定と珪肺症の症例把握に関す る疫学上の不確実性を基にしていると認識している。これらの不確実性に直面して、インダストリアルハ イジニストはばく露のレベルをTLV-TWA勧告値以下に維持する為に利用出来るあらゆる手段を使用する事 を忠告されている。吸入性粉塵の濃度は、米国産業衛生専門家委員会報告書に指定された分粒特性と同等 の粉じんの分粒装置を装着した測定器により計測されなければならない。クリストバライト。動物実験研 究では、クリストバライトはα石英よりも一層厳しい線維化の反応と誘発された線維症が結節性よりむし ろび慢性のである事を示している。クリストバライトの影響と石英の影響との間の量的関係を示す唯一の 動物研究は、ヘメンウエイと同僚による急性のin vivo実験であり、気管支肺胞洗浄液中のマクロファー ジ、好中球数とリンパ球数の増加により示される炎症反応は180日の観察期間を通して増加し続け、最も 活性の高い石英試料による炎症より約3倍多かった。チエッコウエイと同僚等による珪藻土取扱い労働者 の研究では、石英ばく露労働者に見られたものと類似のリスクである非悪性呼吸器系疾患の量反応情報を 提供した。しかし、チエッコウエイと同僚等が指摘しているように、研究の全域にわたって、ばく露-反応 関係の直接的な量的比較は、病気とばく露測定基準のカテゴリーの違いによって困難であった。引続いて、 カリフォルニア珪藻土工業会からのデータの詳細分析では、X線写真上で診断された珪肺症に関してのば く露-反応危険性がα石英危険性と同じであると示した。人の観察研究に基づいて、クリストバライトの勧 告TLV-TWAは吸入性シリカとして0.025mg/m3であり、α石英と同様である。疫学データでは反映されて いないが、動物においてヘメンウエイと同僚により観察された石英-クリストバライトの関係は、クリスト バライトがα石英より炎症性および線維形成性が強いかもしれないと言う警告を与えた。レスピラブルと 言う表現は、職業環境では肺のガス交換領域と気道の遠位部が第一義的な標的部位であると云う事実認識 で割り当てられている。この委員会はα石英とクリストバライトについて、A2の発癌物質記号表示、ヒト への発癌性が疑わしい物質との表示を勧告する。線維症に至るシリカのばく露レベルがまた肺癌のリスク も高める関係があると言う疫学的な証拠がある。その結果として委員会は、肺線維症への進行を予防する ために、レスピラブル粒子として0.025mg/m3でのばく露の管理は、シリカ関連肺癌を予防するであろう。 毒物学および産業衛生データの不足によりTLV-STELの勧告値を認めない。しかしながら、新しく分解した 結晶質粒子の短期間高濃度ばく露は、珪肺症の急性で急速な進行を生み出す。読者は、8時間TWAが推奨 限度以内の時でさえ、TLV-TWAのガイダンスと逸脱の管理に関する『TLVsとBEIs』ブックの“化学物質へ の手引き”のExcursion Limitsの項をしっかり読むことを推奨される」。以上です。 ○櫻井座長 いかがでしょうか。産業衛生学会とACGIH、オーダー的には大体一致して、下げる方向です。 現在、シリカ単独だと0.05に相当する管理濃度です。 ○名古屋委員 そうです。 ○櫻井座長 ですから、それを半分にするのか、5分の3にするのか、どちらかということです。 ○和田委員 この前のときに0.05を決めた。その前に、例のじん肺の肺がんの検診の検討会があって、そ こでいろいろ論議しました。そのときの基本的な考え方は、シリカは直接の発がん性というのはよくわか らない。だけど、線維化が起こったものが発がん性が極めて高くなるということで、1型も2型も3型も 肺がんの発生率は同じなのです。線維化ということに注目した。シリカのばく露量よりもじん肺の所見の あるものに対して、肺がんの検査をやりましょうということにしたわけです。  だけど、今回の産衛のものは、じん肺の1/0を取っているわけです。1/0でも2/0でも発がん率は同じ ですから、1/0を取るというのは非常にいいことで、それで判断するというのは非常にいいことです。そ れで0.05という目安を付けて決めた覚えがあります。でも、当時は0.05でもOSHAが言っている1000分 の1の発がん率にはとても及ばなかった計算なのです。 ○櫻井座長 それよりもうちょっと高いのです。 ○和田委員 がんという立場を線維化で見るかどうか。ちょっと違う観点があるのですが、0.05ではまだ まだ肺がんを抑えるだけの濃度ではないという判断があったことは事実です。ですから、もっと低くして かまわないと思います。  だけど、0.025になって発がんのリスクがなくなるかというと、あるときの計算ではまだあるのです。 だけど、一応は0.025で線維化が起きないという段階で押さえておけばいいのではないですか。また、計 算式を考えないといけない。一生懸命、苦労して作ったわけですから。 ○名古屋委員 この前の例で、3と0.02もあの式の中に入れていけば良い。 ○和田委員 入れていけばいいのです。この前と同じ方法でいいのです。 ○名古屋委員 考え方はこの前と同じだと思います。 ○櫻井座長 両方とも線維化を防止することに成功すれば、発がんについても問題のないレベルに抑える ことができるというスタンスで決めていて、それが0.025か0.03かです。0.025のほうを採用するという 方向でいかがでしょうか。                    (了承) ○半田室長 お尋ねしたいのですが、いまの粉じんの管理濃度は「E=2.9÷」云々という式です。これは もともと、産衛学会がこれに類した数式を提案されていて、それを管理濃度を表すのに使った訳です。そ の後、一部の許容濃度が変わった際に一部の定数を見直して、いまの姿になっているわけです。ご案内の ように、その後産衛学会で数式での表現をやめたわけです。この時点において、今ただ単に定数を見直す ことでいいのか。要するに、数式を維持したまま、定数を見直すことだけでいいのかどうか。そこのとこ ろもご検討をお願いしたいと思います。 ○櫻井座長 ご意見をいただきたいと思います。要するに、この式はイナート(=不活性)な、結晶質シ リカ以外の粉じんの毒性も0ではないということから考えているわけです。 ○和田委員 日本は総粉じんの予防規則であり、シリカを対象にして決めていないのです。 ○櫻井座長 そうなのです。 ○和田委員 ですから、粉じんを対象にした式のほうが現実的なのです。 ○半田室長 産衛学会は総粉じんという考え方で式を立てていたのですが、いまは吸入性の結晶質シリカ とそれ以外ということで分けている。結局、それ以外の部分は数式で計算することをやめにして、遊離珪 酸10%未満とそれ以外のものと分けたのかなと理解しています。産衛学会はそういう考え方ではないので すか。 ○名古屋委員 産衛学会は各物質ごとにいっぱいあって、その物質に対して濃度が決まっています。例え ば現場に持っていったとき、その物質ごとに決められるかといったらなかなか難しい。たぶん、ACGIHも 石炭はいくつ、小麦はいくつと決めている。判定できなかったときには3mg、5mgにしなさいと決めてい るわけです。そうすると、分析する人たちは対象物質に応じていろいろな測定を考えなくてはいけないわ けです。石英以外のものを出して包含した方法のほうが現場的にも楽だし、管理もやりやすいのではない か。それで特段問題はないように思います。  例えば、今度シリカにして考えるとトリジマイトについてどうなのか、クリストバライトについてどう なのか、石英についてどうなのかという分析の方法をしなくてはいけなくなってくる可能性があります。 トリジマイトに0.025、クリストバライトに0.025と決めたときにどうなのか。 ○半田室長 産衛学会の考え方ですが、例えば、粉じんで見て、その中に遊離珪酸が10%未満であれば第 2種粉じんとして吸入性粉じん1mgを取ればいいのか、10を超えた場合は、2種ではなくて1種、滑石、 ろう石、アルミナなどのところで読んで、0.5ということになるのかなと考えたのですが、そういう考え 方を取ったわけではないのですか。 ○名古屋委員 たぶん、2種の粉じんというのは、シリカ10%未満のものはすべてシリカの入っていない 物質です。シリカ10%を超えていないときは、2種粉じんで扱う。 ○田中委員 いまのような測定法、ろ過捕集法とか、デジタル粉じん計で換算係数を求めてやるやり方は、 それぞれの物質についてどうこうという測定には向いていないのです。とりあえず、じん肺に対して最も 影響が大きいだろう結晶質シリカだけは取り出して、それの影響の大きさと残りの粉じんの大きさをミッ クスしたような形で管理濃度が決められているわけです。 ○半田室長 産衛学会も私どもが使っているような数式をもともと提案されていて、そのときには、遊離 珪酸分を勘案した総粉じん量の提案だったと思います。 ○田中委員 そうです。 ○半田室長 いま、何らかの格好で引き継がれていて、数式で現すことの表現を変えただけだと思ってい たのですが、そうではないのですか。 ○田中委員 ハザードを評価するならば各物質ごとに出したほうが楽です。ただ、いまの場合、いわゆる 作業環境中の粉じんというのはいろいろあるので、要するにそれを総合して測り、測った中で、非常に危 ない結晶質シリカだけを特別出して、それについては量を測ろうということです。 ○半田室長 つまり、産衛学会も総粉じん量で以前は提案されていたと理解しています。 ○田中委員 吸入性粉じん全体ということです。 ○半田室長 はい、そうです。その際に遊離珪酸ということもきちんと勘案しなくてはいけないからとい うことで提案がされていた。今回、数式が消えていますけれども、総粉じんに対して何らかの提案をしな くてはいけないというお考えはきちんとあるのです。ただ、数式で表現することをやめにして、総粉じん のものをいくつかに整理しまして、結晶質シリカだけの場合、1種粉じんの場合、2種粉じんの場合、3種 粉じんの場合と整理されたのかと理解していまして、総粉じんに対する許容濃度を提案しているというお 考えはあるのだろうと思っていたのです。 ○名古屋委員 たぶん、いま2種、3種は5μm50%のカットだし、今度0.03は吸入性粉じんが4μm50% で、カット特性を全部変えています。だから、同じ土俵には乗ってこないのではないかと思うのです。と 同時に、例えば、いま許容濃度で0.03はたぶん個人ばく露ですから、ろ紙に取ります。それを検量線から 見て石英の量が出てきます。そして吸引量で割ったときに0.03を超えているかどうかという判断の方法だ からできるのです。作業環境の測定の場合はそういう測定ではなくて、相対濃度計を使ってすべての粉じ んを測って、その濃度で評価しています。だから、たぶんそう個別に決められたときには、デジタル粉じ ん計を使った測定ができなくなってしまうのではないでしょうか。いま、ばく露濃度を測るときには、ろ 紙に取った粉じんの中のシリカは、X線で分析してパーセントがでます。そうすると、当然ミリグラムも 出てきますので、それに対して個人ばく露の吸引量を測るから、それを割ったときに0.03mgを超えている かどうかということで、これは許容濃度を超えるという形のものはできます。いまの作業環境ではシリカ を決めたときに、相対濃度計で測ったときに、シリカを測っているわけではなくて、いろいろな粉じんを すべてトータルで測っていますので、それを分けて測定する捕集法にはなっていないので、単独に決めら れたときにどう評価するか、少し違うかという気はするのです。評価として作業環境でやるとしたら、ほ かの粉じんに対する整理体系だったら、いまのやり方のほうが現場的には合っているかという気はします。 ○櫻井座長 産衛はどうであろうと今回同じような式を作るとしたら、シリカ以外の粉じんのレスパイア ブルな濃度を3にしていることの可否というのは、それはいま検討材料はないわけです。産衛学会はレス パイアブルダストはいちばん多くても2にしているのです。 ○田中委員 室長のご提案は、分けたらどうかということですか。 ○半田室長 提案ではなくて、素朴な疑問です。私どもは、産衛学会が総粉じんという概念で総粉じんの 中のシリカに着目したそういう式を提案しておられたので、それを踏襲していまの式を維持しているわけ です。産衛学会が何らかの理由でそういう方式を転換したということであれば、その転換したことをきち んと踏まえて反映させる必要があるのではないかと考えています。例えば、産衛学会が、結晶質シリカだ けだったら0.03、10%未満の遊離珪酸を含んでいるものだったら1mg、滑石などは0.5、それ以外は2と、 大きく総粉じんをこの4種類に区分したのかと理解していまして、何らかの理由があってそういう考え方 に変わったのであれば、私どももこの数式で表す方法を維持していっていいのか、変更する必要があるの かと考えたわけです。 ○櫻井座長 実際は日本の許容濃度、産業衛生学会はその前の式を提案していたときも、各種粉じんはこ のとおりで、同じものを出していたので、その式をやめたときに、これを新しく入れたわけではないので す。 ○半田室長 式をやめてこの方式に変えたわけではないということでしょうか。 ○櫻井座長 両方を並行して使っていたということです。 ○名古屋委員 たぶん前回のときもシリカだけで行こうという議論が第1回目に1案あって、それが否決 され、次に3mgで切るのでこういう式をかけて、それも否決され、最終的にはこの式に落ち着きました。 要するに、前回は3回、式の提案が変わっているのです。例えばシリカを単独でやったときに何が起こっ たかというと、例えば、いま0.05のときに、シリカで0.03、トリジマイトで0.03、クリストバライトで 0.03と、各物質についてはクリアしているけれども、シリカとして見たら、はるかにオーバーしています。 そのとき、生態系はどうなるのですか、そういうときはどう評価するのですかと話になったときに、そう したらほかの粉じんに対しても同じことが起こるので、トータルの式のほうが合っているだろうというこ とで、第1案は否決されたのだと思うのです。最終的には混合有機溶剤と同じ考え方でこの式がいいとい うことで、第3案として出てきて、最終的に決定したと思っています。室長が言ったように1セットで物 質ごとに行こうというのは1案として出ていると思います。 ○田中委員 ほぼ同じくACGIHもこういう式にはしていません。 ○半田室長 ACGIHは、総粉じんは問題にしてないで、結晶質シリカだけということです。これはこれで1 つの考え方だとは思うのです。 ○和田委員 産衛もそれに引き継がれてACGIHに一致するということで、シリカをまず考えましょうとい うことで、シリカは純粋な単位でいきましょうとなった。全体の粉じんとして見たときに、許容濃度みた いにいろいろ書かず、一括したほうがいいのではないかということでこうしただと思います。 ○半田室長 では、先生方のご意見としては、2.0と0.5、このあたりの数値を見直す必要はあるけれども、 この数式はどうしたらいいのですか。 ○田中委員 混合物質があったときの評価の方法は、これは非常にリーズナブルな評価方法です。 ○半田室長 この式は維持してよろしいということですね。 ○田中委員 はい。考え方はいいと思います。 ○半田室長 先生方のご指摘はわかりました。 ○田中委員 数値は変えなくてはいけないけれども、考え方は良い。 ○名古屋委員 考え方は維持してよろしい。前の議論は随分議論を展開しているので、たぶんこのほうが いいのではないかと思います。 ○櫻井座長 わかりました。 ○田中委員 これは混合有機溶剤と同じ考え方で、許容濃度割る濃度を足していって、1を超えたらいけ ないという式ですよ。 ○小西委員 合理性はあると思います。 ○名古屋委員 シリカだけ決めてしまうと、ほかの粉じんはどうかというときに、3mg、5mg超えても大丈 夫かというと、それはほかの粉じんに対しても生態系はあるわけだから、そこはきちんとする。これだと 包含できるから、こちらのほうが合っているのではないかと思います。 ○櫻井座長 その2つの相互作用は考慮してこういう式になっているので、合理性はあるのです。 ○田中委員 もう少しシリカに匹敵する厳しい粉じんが出てきたときには、それも足して何か考えなくて はいけないのではないですか。 ○岸係長 今回、ACGIHでシリカの0.025とそれ以外の3を取り入れたということになりますと、この資 料15の86頁のいちばん上に許容濃度の考え方の式があるのですが、この式に代入して計算しましたら、 M=3.0÷(1.19Q+1)という数字が出てきました。分子が3です。下が1.19×Q+1です。 ○田中委員 私が計算してもそうなりました。 ○櫻井座長 では、それでいいのではないですか。時間が予定の時間に来ていますが、まだ少しご検討い ただきたいことがあります。「抑制濃度の考え方について」の資料のご説明をお願いします。 ○岸係長 資料番号9をご覧ください。この資料は測定対象物質(93物質)ごとに管理濃度の設定・見直 し時期、管理濃度の値の変遷、現行の抑制濃度の値、規制対象区分、資料3における分類状況、管理濃度 と抑制濃度の乖離の有無について取りまとめた表です。抑制濃度とは、有害物の発散防止措置として設置 する局所排気装置について、フード周辺において備えるべき局所排気装置の能力で、濃度指標として示さ れたものです。現在、特化物、石綿、鉛の34物質と、今回新たに追加されましたホルムアルデヒド1物質 で抑制濃度が設定されています。そのうち23物質について管理濃度と抑制濃度との間に乖離が生じている 状況です。資料番号9の右端の欄の●印が記載されているものが、その乖離している物質です。  最近の改正状況としましては、平成13年にエチレンオキシドを改正しており、このときは管理濃度、抑 制濃度ともに1ppmとしており、また第1回当検討会において検討いただきましたホルムアルデヒドにつき ましては、平成19年12月28日に改正された管理濃度、抑制濃度ともに0.1ppmと同じ数値を定めている ところです。なお、有機溶剤、粉じん、特化物のうち管理濃度が決まっていない物質につきましては、抑 制濃度ではなくて制御風速を定めているところです。  続きまして資料番号17をご覧ください。この資料は、抑制濃度と管理濃度の測定方法および評価方法に ついて取りまとめた表です。作業環境測定に関する測定方法および評価方法につきましては、皆さまはす でにご存じのとおり作業環境測定基準および作業環境評価基準により定めているところです。ここでは、 抑制濃度の測定および評価方法が作業環境測定と比べてどのように異なっているかについて、ご説明しま す。  測定位置につきましては、囲い式や外付け式フードでは、フードの外側、開口面から一定距離、0.5〜1 メートル離れた箇所で測定を行っていますが、測定点はフードの形状により決められています。測定点に 関する図につきましては、3頁の図に示されているとおり○印が測定点となっています。  測定方法につきましては、測定は1日について測定点ごとに1回以上行い、また作業が定常的に行われ ている時間(作業開始後1時間を経過しない間は除く)の間に行うこととなっています。  評価方法につきましては、測定データの積をそのデータ個数(n)乗根にした数値を評価対象値として抑 制濃度と比較し、抑制濃度の値より高ければ局所排気装置の性能について改善が必要となります。  抑制濃度の評価指標は、基本的には昭和45年当時の日本産衛学会の許容濃度またはACGIHのばく露限界 値の値が採用されています。抑制濃度の定義は、発散源付近における有害物の濃度をその値以下に抑える ことによって作業者のばく露濃度を安全水準に保つよう意図して定められた濃度であり、工学的対策の指 標とされています。  その他、法令により外付け式フードであっても、フードはできるだけ発散源に近い位置でなければなら ないとされているところです。  このようなことから、抑制濃度と管理濃度を比較した場合、以下のような問題点や検討課題が出てまい ります。(1)としては測定箇所の違い、(2)としては評価方法の違い、(3)としては抑制濃度をどのようにして いくかという問題、(4)として実測データについては違いはあるのかどうかということ、(5)としては抑制濃 度を管理濃度に合わせる場合の考え方はどのようにすればいいかということがあります。このような状況 を踏まえまして、今後、抑制濃度の方向性につきましての考え方についてご意見をいただきたいと思って います。 ○櫻井座長 今日は別に結論を出すということでなくて、問題を提起していただいたということです。ご 意見を出してください。 ○名古屋委員 濃度自体は管理濃度にそろえたほうがいいのではないか。管理濃度も、時代の変遷ととも に変わってくるので、抑制濃度も変えたほうがいいのではないか、ただ、測定方法は違うが、抑制濃度の 測定点の決め方はもう少し検討し、もっと現実的な方法のほうがよい。濃度としては、管理濃度を採用す ることはいいかと思う。 ○櫻井座長 抑制濃度は、測定を1日について測定点ごとに1回以上、1日について1回以上と書いてあ りますが、事実上実行されてないと思います。 ○小西委員 測定していること自体を実際に見ません。 ○松村委員 これは作業環境測定の考え方から言うと、いちばん発散源に近い所の濃度だから、B測定が 普通の管理濃度の値より低ければいい。その評価1を得るための測定と同じ意味だと取ってもいいです。 そのために風量とかそういう設計が足りているかどうか、これはもともと排気の装置の能力のチェックと いう意味だと思うのですが、そのために作業環境測定と別のチェックの方法が要るのかどうか。設備を設 置したときに、いちばん最初に作業環境測定を義務付ければ、あとはそれが定常状態の作業状態になって いるときに測定すれば、この設備の能力は変わらないという証明ではないかという気はするのです。 ○櫻井座長 作業環境測定は多くても年2回です。 ○松村委員 年2回です。設備を設置した最初に測れと書いてないのです。だから、いちばん最初に設置 したときに義務付ければ、それからあとは半年に1回でもいいのです。この設備の能力チェックにはなる のではないかという気はするのです。 ○櫻井座長 制御風速がいちばん、いつでも簡単に測れるからいいと思っています。 ○名古屋委員 抑制濃度をなくすことはできないでしょう。作業環境に置き換えてやって、要するに、抑 制濃度は別段なくても、例えば作業環境管理の管理区分1ということ、それは漏えいしていないから管理 区分1なのだということなので、ダブルチェックしなくてもよいのかと思っているのです。こういうのは、 実際にやっていることを聞かないです。 ○櫻井座長 ダブルスタンダードになっている。 ○田中委員 私は抑制濃度の濃度で局排の性能を維持するよりも、風速で、風速要件はちゃんとあります から、それできちっとやっていけばいいのかと考えています。 ○小西委員 基本的には局排の定期自主検査はあります。局排の定期自主検査というものを定期的にきち んとやっていく。これは制御風速が主体になっていますが、それの一環として抑制濃度の計測はあるので すが、実際に現状で抑制濃度を計測されていることはあまり聞かないです。 ○名古屋委員 聞かないというか、見たことはないです。 ○小西委員 実際にこれを全部この点で、例えば鉛なら鉛で全部計測をすると、管理上すごく費用がかさ みます。 ○櫻井座長 現実的ではないです。 ○小西委員 ですから抑制濃度という形で計測をするよりは、先ほど松村委員が言われたようにB測定と いうものの考え方をもう少しこちらと合わせる形にして、定期自主検査のときにB測定点では濃度を測る というぐらいだったらまだいいのかもしれません。 ○松村委員 この設備がスタートしてから何週間以内とか早い時期に測るというのが必要ではないかと思 うのですが、作業環境測定のような方法でいいと思うのです。 ○小西委員 私はあまり意味を認めないです。抑制濃度を測定したら、基準値よりも全然濃度が低かった が、制御風速は全然クリアしてなかったとかという結果の矛盾が出てきたときにどう考えるのかという気 もします。どちらを取るのだということにもなりかねないという気がします。 ○中明委員 実際に現場に行くとその可能性は大きい。 ○小西委員 逆に言うと、風速はクリアしているのに濃度は高い。 ○中明委員 そういう可能性はあります。 ○名古屋委員 制御風速を外してほしいと前から主張しているのです。作業環境管理がきちんとしている のだったら、制御風速がなくても問題ないところはあるのです。そうすることによって制御風速を下げら れるということは、ローリスクマネジメントにつながってくる。そうすると、測定企業は、きちんと管理 していると制御風速を下げていいのだということになってくると、コストパフォーマンスができる。では、 もう少し測定をやろうではないかとなる。あるいは局所排気装置に対してきちっと管理すれば、そういう ことはできるのだということも考えてくると、測定のメリットも出るし、企業としてのメリットも出てく る。測定者の技術も上がる。そうすると、設置要件と設計要件としては1つの指標として制御風速はあっ たほうがいいのだけれども、作業環境管理できちっとうまくやれるという前提だったら制御風速も抑制濃 度もないほうが、よりマネジメントとか環境管理は進んでいくのではないかと思います。 ○田中委員 要するにその話は、いま第1管理区分が続いたら特例許可措置がありますが、あれをもう少 しきちっとやっていけば、いまの問題はマネジメントにつながっていいのではないですか。 ○小西委員 ただ、制御風速そのものをなくしてしまうのはどうか。 ○名古屋委員 それは設計要件としては取っておくということです。ただ、作業環境のときにあえてそれ を守らなくても十分対応できるのに、守らなくてはいけない部分があるわけです。そうすると、制御風速 だけを守っていて作業性を全然云々しないでOKをもらっているわけです。測ってみると、制御風速は満足 しているのだけれども、形状が合わなくてばく露濃度が高いところはいくらでもあるわけです。それであ れば、きちっとその作業性に合った局排をつくっていれば、制御風速を守らなくてもできるわけです。そ うすると、当然それだけのコストが下げられるわけです。 ○田中委員 第1管理区分にしておくことは大事になります。 ○名古屋委員 第1管理区分できちんと維持していれば、ほかのものはいいのではないかと思います。 ○小西委員 濃度をどんどん管理して、作業環境の規制濃度をどんどん下げていっても、もう1つ、制御 風速という規制があるということは、濃度を下げる努力をしても、制御風速を守っていかなくてはいけな い。規制を受ける側から言うと二重規制みたいな感覚を受ける可能性があるのです。ですから、いま名古 屋委員が言われたように、努力をしてやったものについては、それをきちんと認めていくという方向でや っていくべきだという気がします。 ○櫻井座長 ただ、年に1、2回で第1管理区分であると、それで安心してしまう恐れがあるのです。です から、中間において別に制御風速はこうでなくてはならないという数値を示すということではなくて、風 速で管理するのはいちばん賢明だと思います。 ○松村委員 局排の点検というのはもっと頻度が多いです。 ○小西委員 定期自主検査できちんと定期的にチェックするわけですから、そこをきちんとコントロール して、制御風速をきちんと測り記録しておく。 ○櫻井座長 自分の所はその風速でうまくいっているのだから、それだったらその風速を維持する。 ○名古屋委員 先生の言われることはよくわかる。ただ、例えばそのとき悪かったら、6カ月に1回では なく、2週間に1回ずつ測定し、かつ3カ月に1回という形で頻度を高く上げ、よかったらもう少し長く する。これは英国方式です。英国、ドイツもみんなそうです。そういう形で努力をしているのだから、い い所に対しては少し緩くしてあげる。 ○田中委員 悪かったら改善しなくてはいけない。 ○名古屋委員 そういうときは早く改善して、きちんと確認する。その確認は半年ではなくて、それを1 カ月とかそういう形できちんとする。要するに現場の理にかなった方法に運用していったほうが、事業主 も付いてくるし、測定の技術も上がるし、局排の技術も上がってくるのではないかと思います。 ○田中委員 私もそう思います。 ○櫻井座長 そのとおりになるかどうかは別ですが、大体落ち着くところは見えているのです。 ○松村委員 作業環境測定の結果は、報告義務はないのですか。 ○櫻井座長 ないです。 ○松村委員 それが少しもの足りないのでは。 ○櫻井座長 もらっても仕方がないでしょう。 ○松村委員 でも、健診結果は報告義務があります。 ○櫻井座長 時間がもう15分過ぎましたので、そろそろこの件の議論は打ち切りまして、あと何かありま したか。 ○岸係長 トルエンの管理濃度を前回見直ししましたが、見直しを50ppmから20ppmにした場合、トルエ ンを実際に取り扱っている作業場の作業環境測定の管理区分はどのように推移するかにつきまして、小西 委員のほうで資料を作成していただきましたので、ご説明いただけますか。 ○小西委員 「参考資料」という資料です。いちばん最後の頁です。ざっと概要だけご説明します。どの ぐらいの影響があるかということで、実は私の所で厚生労働省から委託を受けてやっていました統一精度 管理事業のデザインのクロスチェックのときに報告書を集めます。測定機関が測定した相手に出した報告 書の、名前を全部消したものを送っていただいています。その中に実際のデータが全部入っていますので、 その報告書の第5号に関する有機溶剤の報告書は437件あったのですが、その中からトルエンを測定して いるものを選び出しまして、これが201件ありました。トルエン単体の計測をしていたのが15件で、混合 溶剤としてのトルエンの測定が186件ありました。  最終的にそこの報告書には管理区分が書かれているのですが、それを20ppmに変えたときにどうなるか ということでやったものが2頁の表です。これを見ていただきますと、いちばん上の所でトルエン単体と して測定されていた15単位作業場所については、第1管理区分が14、第2管理区分が1、第3が0でした。 それが20ppmに変わったときにどうなるかということでやりましたが、これは全く変わりがなかった。特 に管理区分の変更にはならないということです。  次に3頁ですが、今度は混合溶剤です。混合溶剤は手間がかかったのですが、現行の50ppmの所で管理 区分が第1管理区分は171、第2が11、第3が4ありました。その中の内訳としてA測定の区分とB測定 の区分は合算で管理区分は決まります。第1管理区分になっていたものはAもBも1であった。第2管理 区分については、A測定の区分が第2で、B測定が2とか、この組合せになってきているものです。それが 20ppmにした場合には、報告書の第1管理区分の数としては171が167に変わっています。第2管理区分 は11が6、第3は4から13に増えています。  ただ、このときにどちらの影響で、管理濃度が変わったときに変わっていったかということですが、第 1管理区分については167になりましたが、それはAの区分もBの区分も1でした。第2管理区分につき ましては6件あったのですが、その内訳はA測定の区分が第1で、Bが1だったもの、A測定の区分が2で、 B測定の区分が2になったもの、これは上の表と比較をしていただくと、どう動いたかがおわかりいただ けると思います。第3管理区分につきましても、上の所では、Aの区分が3で、Bの測定区分で4の数があ ったのですが、これが5と11というふうに増えてきているということでして、具体的にはいちばん下の最 後の包括表ですが、171が167になったのですが、171から167になったときに、第1から第2に移ったの が3件、第3に移ったのが1件という形で、それぞれの件数の移り変わりがこれだけということです。で すから、それほど以前の粉じんのときのような大きなものではないのではないかという予想を立てたとい うことです。 ○櫻井座長 何かコメントはありますか。 ○名古屋委員 もっと影響があると思っていました。 ○中明委員 要するに現場はかなりきれいになっているということです。 ○小西委員 そうです。 ○櫻井座長 報告していただいてありがとうございます。 ○岸係長 次回は5月を予定しています。日程調整につきましては、またメール等でご連絡差し上げます。 抑制濃度の検討につきましては、進め方についてまたこちらから連絡させていただきます。 ○櫻井座長 これで終わります。ありがとうございました。