08/02/18 「これからの地域福祉のあり方に関する研究会」第8回議事録 第8回これからの地域福祉のあり方に関する研究会議事録             開催日:平成20年2月18日(月)             場 所:厚生労働省 共用第7会議室 ○大橋座長  定刻となりましたので、ただいまから第8回これからの地域福祉のあり方に関する研究 会を始めさせていただきたいと思います。まず事務局の方から、今日の委員の出席の状況 をご報告お願いいたします。 ○事務局  本日は全委員出席です。 ○大橋座長  本日の研究会は今までの論議を踏まえ、いよいよ3月の取りまとめに向けての論議に入 りたいと思っております。事務局の方で今までの論議を踏まえて取りまとめの構成案をつ くっていただきましたので、後ほどそれについてご論議いただきたいと思っています。既 にご案内のように、次回が2月27日、第10回目が3月14日で、最後の第11回目、3月 27日にまとめられればまとめたいと思っております。今日から本格的に実質3回にわたっ て論議をいただくことになりますが、どうぞよろしくお願いしたいと思います。  それでは、事務局の方で今までの論議を取りまとめた構成案をつくっていただきました ので、説明をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。 ○中村企画官  では資料1に沿いましてご説明させていただきます。大きく6つに分けてまとめてはど うかという案でございます。  まず最初の部分が「はじめに」でございます。ここでは検討の経緯、今、地域福祉を議 論することの意味、議論の前提として、これまで「地域福祉」がどのような位置づけだっ たのかといったことにつきましてまとめてはどうかと思います。  2つ目の部分が「現状認識と課題設定」でございます。ここにおきましては、例えば少 子高齢化の一層の進行。家族構造の変容による家庭内の見守り機能の低下。地域社会の変 化、例えば産業化・都市化、あるいは限界集落がふえてきているということ、そして地域 の連帯感の希薄化・コミュニティの脆弱化といったことに言及してはどうかと思います。  次が福祉・医療政策の動向ということで、ここでは近年の福祉制度改革について、例え ば措置から契約へ、あるいは市町村中心といった流れ、基盤の計画的整備、サービス量の 飛躍的な増大、在宅重視、施設から地域へという流れ、様々なレベルでの自立支援が行わ れている、こういったことについて言及してはどうかと思います。  次に地域の課題でございますが、地域における多様な福祉課題として、例えば制度では 想定していないニーズ、制度の谷間にある者への対応、複合的な課題、社会的排除の対象 となりやすい者への対応、こういった福祉課題があるのではないか。そして「地域でなけ れば見えない」ニーズがある。「地域移行」という要請もある。住民の自己実現ニーズの 高まりもある。例えば参加意識の高い団塊世代が退職期に入って、元気な高齢者が増加す るとか、住民のボランティア意欲の充足の必要性でございます。  そして制度的なサービスだけでは十分でなく、住民による支え合いが必要と。こういっ た現状認識と課題をここで述べてはどうかと思っています。  そのようないろいろな問題に対処する必要のあるものとして、その地域福祉の意義と役 割はどういったものがあるかと思います。いうのが大きな3つ目でございます。  まず地域福祉というのは、共助の空間を地域の中に位置づけるというものではないかと いうことで、共助のシステムを公のパブリックな開かれた空間として地域の中で設計する。 自助のシステムである市場、公助のシステムである政府、共助のシステムであるボランテ ィア、NPOなどがそれぞれの弱点を補い合うものではないかと思います。  意義・役割の2番目といたしまして、地域の生活課題に当事者として取り組むというの が出発点ではないか。そこでは幅の広い福祉概念があり、行うことや対象をあらかじめ決 めず、必要に応じ事業を組み立てる柔軟性というのが一つ地域福祉の意義と役割ではない かと思います。  また、関わる人が自己実現する場をつくるということもあるのではないか。いわば住民 主体でございます。地域を基本として住民活動ができる場の提供。自治会・町内会の助け 合い活動についてもここで言及してはどうかと思います。  また、関係者の連携によって福祉を推進、地域における人間関係の結合、ネットワーク としての地域福祉というものもあるのではないか。そこで地縁的団体と機能的団体の関係、 あるいは住民と専門家の関係、行政・事業者・住民の関係、それぞれいかにあるべきかと 思います。いうことをここで議論してはどうかと思います。  また、地域福祉というものの意義と役割といたしましては、コミュニティ再生の軸とし ての福祉ということもあるのではないか。地域福祉によるコミュニティの活性化、地域の 福祉化・まちづくり、地域全体の暮らしの質を向上させ、安心・安全の面でも高めると。 こういう意義・役割があるのではないかということでございます。  大きな4番目に、そのような地域福祉を推進するために必要な条件というのは何かとい うことを論じてはどうかと。まず住民が主体となり参加する地域福祉。ここでは決定にお ける住民主体、住民参加という側面と、活動における住民主体、住民参加という側面があ るのではないかと思います。  ニーズ発掘のための方策はどうあるべきか。  また、支援の実施の場面において、ここで支援の新たな概念を提示してはどうか。例え ば、人が生きるためのエンパワメントとしての支援。そこでは相手の動きを見ながら自分 の動きを決めるというやり方。そして支援をすることでみずからもエンパワーされ、自己 を実現するというものではないかといったことを論じてはどうかと。また、支援を実施す る際の関係者の連携と役割分担についても述べてはどうか。  次にその条件といたしまして、生活課題に応じた多様なメニューが実施できること。  また、住民が主体となり、参加する地域福祉を実施するための環境の整備。一つは活動 の拠点、一つは専門的な助言者(コーディネーター)、一つは活動資金でございます。  次に担い手の条件としてはどういったものがあるか。活動の核となる人材、様々な人材 の連携、後継者の養成といった点についてここで議論してはどうかと考えています。  また、適切な「圏域」の設定というものの考え方についてここで議論してはどうか。生 活課題やケアの専門性に応じ、身近なところから市町村に至るまで、重層的に圏域を設定 すると。こういう考え方をまとめてはどうかということでございます。  また、そこでの行政の役割はいかにあるべきか。例えば住民の地域福祉活動をバックア ップする。公共的決定に当たっての正統性の根拠となる。あるいは住民からのアクセシビ リティを保障するということで、制度的なケアを無差別・公平に適用、専門的なケアを必 要とする者に必要なケアを保障する、あるいは最低生活を保障するといった役割があるの ではないかということをまとめてはどうかと考えています。  5番目に「留意すべき事項」。例えば専門家主導としない。多様性を認め、画一化しな い。「圏域」はそれぞれのレベルに応じて役割分野を図る多層的なものであり、その役割 も固定されたものではない。あるいはリーダーの人材を確保する。「福祉」の範囲を限定 しない、例えば防犯・防災、教育・文化、建築・まちづくりといったものもあるのではな いか。そして個人情報の取り扱いでございます。  最後に既存施策の見直しについて。既存施策については、上記の方向性を踏まえた検証 と見直しが必要。検証・見直しに当たっての基準は次の3点かということで、ここで3つ 提示してございます。住民主体となっているか、新たな支援の概念に適合しているか、地 域福祉の推進のための新たなシステムの中に整合的に位置づけられるか、こういった基準 でどうかと。そして、これらを踏まえて、既存施策のレビューについて以下取りまとめて いくと。こういう構成案を事務局案としてお示ししております。どうぞよろしくお願いい たします。 ○大橋座長  ありがとうございました。私どもの論議をかなりきちんと踏まえて整理いただきました。 これから自由にフリートーキングいただきますが、改めて中村局長の方から、この辺を少 し論議していただきたいということなどがあれば、先にご挨拶を兼ねていただければと思 いますが、よろしくお願いします。 ○木原委員  局長、一つお願いしたいことがあります。これからまとめる報告書を、誰向けに一体何 を説いてほしいのか。この研究会の第1回目の冒頭で言われたことをもう一度おっしゃっ ていただきたいのです。私自身、この報告書の構成を見て、何を目指すのかがわからなく なっちゃったのです。全体を読んで何かが見えてこないのですが、そのあたりをもう一回、 こういうことを委員にお願いしたかったというのがあればお願いしたいと思います。 ○中村局長  地域福祉についていろいろな方面から議論していただいて、資料の方でも資料2や資料 3に、こちらはある程度、回を追ってご議論いただいたことについてそれぞれ項目別に整 理させていただいたものも入っております。これからご議論いただくわけですが、どうい うふうに取りまとめをしていただいたらよいのかなと思いまして、これにこだわるわけで はなく、一つのまとめ方としてこういう流れがあるのかなということで提出させていただ いたものでございますので、木原委員から今、誰に向けてかというようなお話もありまし たので、そういった点も含めてご議論いただければ幸いに思います。  そういった意味でございますので、構成案という形になっておりますが、資料2なり、 資料3なりのパーツがありますけれども、一つの流れとしてこういう構成が考えられない かということで提示させていただいたので、議論の材料としていただいて、またこれが十 分でないとか、これだとそれこそ報告書としてまとまりに欠けるということであれば、そ の点についてまたご議論いただきたいと思います。  私ども、この構成案を考えるときに、中でも議論していましたのは、一つ地域福祉の議 論というのは、ある意味では福祉の世界の人では割合歴史のある議論ではないかと思いま して、地域福祉ということで前回もいろいろなご議論が出たし、地域ということでどうい うことを意味しているんだろうか、福祉ということでどういうことを意味しているんだろ うかというご議論もこの場でもあったくらいですから、改めて、なぜ今この検討会をつく って報告するのかということも一つのポイントではないかと思いましたので、はじめにま ずこれまでの地域の福祉の位置づけというのは、これまでこういうことが言われてきたけ れども、今回改めて、それこそ福祉制度の動向や最近の地域の動向を踏まえた上で、これ からの日本全体が、福祉社会が望ましいというふうに考えたとして、これからの日本が福 祉社会として進んでいく上で地域福祉ということに関してどういう現状認識と課題がある んだろうかといったことを踏まえた上で、改めて3でございますが、地域福祉の意義と役 割を確認し、そういう地域福祉、いろいろな人がいろいろなイメージで地域福祉を語って いますが、これから必要とされる地域福祉の意義と役割がこういうものであるということ について確認されれば、それを実現していくためにどういうことが求められるのか、ある いは何が必要なのかということを整理してみてはどうかというふうに考えた次第です。  基本的にそういう流れになっていまして、その際、既存施策と書いてありますけれども、 現実問題として様々な地域福祉を構成する要素として取り組みもなされており、この研究 会でも、毎回毎回、それらについてレビューしていただいていますので、可能であれば既 存施策についても今言ったような観点から改めて洗い直してみて、何かご提言いただける ことがあれば、まとめていただけたら、ありがたい。そういうつもりで整理したわけでご ざいます。  誰に向けて書くのかということですが、できれば一般の方に読んでいただいてわかって いただけるように書けたらいいのではないか。したがって、例えば行政の福祉部局の方と か、地域で福祉活動をされている、ある意味でそういう方は当然読めばわかるのですが、 その人たちだけの暗黙の了解の前提で、その上で書くのではなくて、むしろ可能であれば、 そういうことについて普段考えたこともないとか、普段そういうことをあまりよく知らな いとか、極端な話、「社会福祉協議会」という言葉は聞いたことがあるけれどもよくわか らないという人が読んでも言っていることがわかっていただけるようにならないかと考え ています。これを読むとそれなりにわかって、一通りのことが普通の人に理解できるよう に書けないかなというのが、ちょっと欲張っているのですが、我々、資料1をつくったと きの気持ちでございます。 ○大橋座長  ありがとうございました。また最後にでもご挨拶いただきたいと思いますが、今の話で ありますが、この研究会として自由に論議をするということですが、全く空理空論の話を してもしょうがないわけでございます。具体的な実践に基づいて、これからの地域福祉の あり方の方向性を探っていこうということでございます。そのことは細かな地域福祉実践 のマニュアル的なものをここで固めて書くということでも決してないわけでございまして、 あくまでもこれからの地域福祉のあり方の方向性について整理をしたいということでござ います。  その際に、既存の従来の社会福祉行政という枠にあまりこだわらずに論議をいただいて もよろしいのではないかということも出てまいりますし、新しい社会システムというのは どうあったらいいのかという、そういう問題提起も少し投げかけてみたいということでご ざいます。行政がやるのではなくて、行政と一緒にやっていくという新しい社会の仕組み、 哲学、システム、そんなことを含めて少し問題提起をさせていただきたいということでご ざいます。  したがって、一方では既存の施策そのものを全面的に見直して、こうあるべきだという 行政施策のあり方を細かく規定する論議もしないといけない。必要があれば、こんな方向 で今後検討が必要ではないかというスタンスで見直しをするということなのではないかと 座長として受けとめさせていただいたわけでございます。  したがいまして流れは、現状から入りますが、ポイントは2枚目の「地域福祉の意義と 役割」と、それを進めていく「地域福祉を推進するために必要な条件」、この辺を今日は 中心にご論議いただければありがたいということでございます。細かなところに入ること や、個々の施策のここはどうだとかという話ではないということや、細かな実践の方法論 そのものをやるところでもないということを十分踏まえて、限られた時間でご論議いただ ければありがたいと思っております。どうぞよろしくお願いします。  それでは、主に3と4を中心にご論議いただくわけですが、はじめの方から、特に2の ところの「現状認識と課題設定」につきましてはかなり論議をしてきました。2について、 この場で細かなことを一々言う必要もないかと思いますが、どうしてもこういう項目は必 要だということであればご指摘いただいて、座長としては今日3と4を少し方向づけしま せんと、多分、事務局がまとめるにしても大変なのではないかと思っていますので、その 辺でご協力いただければありがたいということでございます。それではどうぞご自由に。 ○木原委員  そうなると、私はテーマをちょっと狭く考えちゃったのかなと思いました。ここに研究 会の開催要綱があるのですが、これに絞ってしまったんですね。こう書いてあります。 「…このように、地域社会で支援を求めている者に住民が気づき、住民相互で支援活動を 行う等の地域住民のつながりを再構築し支え合う体制を実現するための方策を検討するた め、本研究会を設置する」と。だから私は、住民の支え合いをどうやって掬い出し支援す るのかということが求められているのかなと思っていたんですけどね。ちょっと誤解して いたのかもしれません。 ○大橋座長  細かな部分は方法論的にもとても大事なのですが、なぜ住民のつながりが必要なのか、 それが今、どういう流れの中で求められているのかという、先ほど、これからの地域福祉 の基本的な方向として新しい社会システムとか、哲学とかと言いましたが、そういう流れ の中で今言われたところをきちんと受けとめていただければありがたいということでござ います。論議としてはそこがポイントになってくるとお考えいただければありがたいと思 います。それではどうぞご自由に。 ○和田委員  この議論をしていく上で、よくまとめていただいているのですが、一つ私が感じました のは、地域で暮らしていくということをサポートしていくということで、地域を基盤にし た市民の活動、あるいは住民の活動というのが非常に重要で、その仕組みをいろいろな形 でつくったり、サポートするという、ここはよくできていると思うのですが、自治体の役 割というのはやはり大きいのではないかと思います。一般的なことというよりも、自治体 が今やっているそれぞれの分野ごとのサービスの仕組みというものをもっと地域の中で組 み立て直して、そしてエリアごとにもっと今の盾を超えた形で福祉を組み立てていくよう なことというのを議論として提案していく必要があるのではないかと。自治体のそういう 施策が大きく変わることと住民が積極的にこの活動に参加していくことと両方がないと、 イメージとして、そちらの議論がこの報告書だと少なくなるのではないかと思います。  それは単に施策そのもののあり方というよりも、市民と共同してそういうものをどうや ってつくっていくのか、あるいは市民が日常的にそういう仕組みそのものにどう参画して いくのかということも含めて整理をする必要があるというのが一つ。  もう一つは、限界集落の話も出ていましたが、限界集落は過疎地だけじゃなくて、都市 部でもそういう問題がどんどん起きていますので、参加はもちろんするのですが、参加が 十分できないような地域というのがいろいろ出てきていますよね。ですから、地域の中に、 今の施策からいけば小規模多機能のような、自分が住んでいるところの生活と福祉サービ スがもう少し融合して、出たり入ったりというか、あるいはそちらの福祉サービスの方で 地域を支える機能をうまく持たせながらやっていくような、そういう新しいタイプの地域 福祉のサービスのあり方というのも中に入れておくというのが必要ではないか。この2点 です。   ○大橋座長  資料1の取りまとめの構成案は、一応整理をしていただきましたが、いざ報告書を書く 段階にはいろいろ前後する部分があるんだろうと思うんですね。今、和田委員が言われた のは、3ページの中ほどに行政の役割と書いてあります。この住民からのアクセシビリテ ィの保障だとか、こういうところに関わる部分と受けとめていいのでしょうかね。その際 に、行政の再編成機能だとか、あるいは行政への参加の問題、これは正統性の根拠と書い ていますが、そういうレベルのものなのか、あるいは2ページの3の「地域福祉の意義と 役割」の共助の空間を地域の中にどう位置づけるかという時、あるいは新しい共助システ ムを考える時に、行政がその中でどういう位置と役割を果たすか。この辺の書き込み方で 済むことなのか、もっと別に行政の役割みたいなものをと強く打ち出して再編成しろとい うところまでいくのかというところをもう少し深めていただいておくと楽かなと思います。  もう一つ。2番目の問題は、従来は施設などは、サービスを提供する側の論議がありま したが、住民が共同利用するという視点をもっと大事にしろというふうに受けとめてよろ しいのでしょうか。一種の共同消費財的に、自分たちでつくっていく、自分たちで相互に 出入りがもっと柔軟になるような、そんなイメージなのでしょうか。 ○和田委員  後者の方は今のようなイメージなのですが、そういうサービスそのものによって今非常 に弱っている地域を維持していくとか、あるいはそこでの生活が成り立つようにしていく という、福祉サービスそのものがもっている地域を維持したり、再生していくような部分 をもっと重視した形で地域福祉のサービスというのを打ち出していくということが必要で はないかということです。  前者の方は、委員長がおっしゃったように両方にかかってくると思うのですが、今、分 権化していく自治体が福祉を中心にやろうとしているわけで、自治体がどういう役割を果 たすのか、いわば地域福祉の企画経営という点では非常に大きな役割を果たすことになる ので、これは住民参加でやるにしても、そこのところについてもう少し大きな方向性をし っかり出しておいた方がいいのではないかという意味です。  大橋座長 そうですね。後者の方は、要するに行政のその地域の運営のレベルじゃなく て、もっと経営という視点からのアドミニストレーションというのはすごく大事だという ことなんでしょうね。  逆に私の方から今田委員にお聞きしたいのですが、共助の空間で、今の話のように行政 というのはそもそもいったいどういうふうに絡むのでしょうか。   ○今田委員  まさにそこのところの話をしたかったのですが、地域でそういうウェルビーイングがな えているところの一番の問題は、自助と公助というか、市場の原理でサービスを提供する のと政府・役所が提供する、これはどちらもいい面、悪い面があるので、ちょうどそのす き間がないんですよね。すき間でこぼれ落ちるところがとても大事なんですが、それがな かなかお金のあれで解消できない。政府のあまねく公平にやるというのでもうまくいかな い。そこらあたりにいっぱい種々な問題があって、福祉というのは政府の行政がやる施策 とか、市場がやるように一般化して普遍的に何かやれるものじゃない。やはり個別特殊な 事情を抱えた人がどうにかならないかというところが一番大事なんだと思います。  昔は互助があったんですが、それは町内会、古い意味のイメージではなく、共助の方が いいと思っているのですが、共助というのは、そういうすき間のところを相互に支援し合 いながら、自分たちで半分手づくりの福祉をやるということだと思います。  ただし、ノウハウや資源やそういうのはあまりもっていない。だから、そこはプロがお 手伝いできると思う。政府がやってもいいし、市場のシステムをうまく利用すれば、福祉 のために役立てるように市場を使えばいいのであって、市場が福祉を提供するというのは、 そんなのはお金がもうからないとやらないから、むしろ市場を利用して、これをうまく使 えば福祉のあれに利用できるよというアイデアを考えないとだめだと思っています。  結論を言いますと、前回、富士宮市の話がありましたが、あれはとてもいいアイデアだ と感心したのですが、要するに、一種の細かい福祉関係の種々な活動がバラバラでいろい ろあるものの、あれはあそこで一つのハブになるんでしょう。センターというのは、中心 なんていうのはあまりよくないと思うんですが、様々な福祉活動、地域の福祉活動のハブ になって、そこへみんなが来て、情報交換したり、こういううまい提案があるよとか、こ ういうときはこういうモデルでやるとうまくいくとか、そういう寄り合い所みたいなもの にして、そこに普通の住民も来られるのがいいと思います。もちろんソーシャルワーカー も、ケアワーカーも来る。そういう集いの場にして、そこを中心にして手づくりの福祉を 盛り上げていくといいのかなと思っています。  だから、ああいうハブをいくつつくるかですよ。小学校単位ぐらいでつくるのか、それ とももうちょっと大きくするのか。そういう共助のシステムをうまく地域の中に根づかせ ていく。あまり行政がそこへオーバーコミットしても、また昔風の福祉かという感じにな るので、そういうハブのセンターがうまく機能するように、黒子でうまくサポートすると いうのも自治体の重要な役割かなということで、そうすれば、みんな自分たちで本当に参 加してやっているんだという気になれるのではないかと思います。  注意しなければいけないのは、そういうふうにしてやる福祉と、本当に社会保障できち んとやらなければいけない福祉をちゃんと仕分けして、社会保障としてやらなければいけ ないのはちゃんとやらないとだめだと思う。国民所得でみれば、先進国に名立たる低い社 会保障費ですよね。だからそこはそこでしっかりやって、それに加えて、そういうところ で地域の福祉を活性化する。そういうシステムがいいのではないかと感じました。 ○大橋座長  それでは行政の立場で、清原委員、よろしくお願いします。 ○清原委員  私は、先ほど座長に方向性を示していただきましたように、「これからの地域福祉のあ り方」という研究会の名称に込められているのは、福祉のこれまでの取り組みを出発点に しながら、新しい地域を中心とした社会システムに関して、この研究会で何らかの方向性 というのを示せていけたらなと思ってこれまで参加させていただいてきました。ですから、 単なる既存政策の批判的吟味にとどまらず、むしろ新しいあり方について積極的に提案を していくという方向でのまとめ方に賛成です。  その上で、なぜ、これからの地域福祉ということが現状の様々な課題、あるいは新たに 台頭してきた少子長寿化の課題に対応できる切り口を与えることができるかというと、第 1点目には、様々な少子長寿化を巡る課題において、国がもちろん方向性を示し、そして 都道府県が広域自治体として考え、市町村も基礎自治体として考えているわけですが、国 がこのような研究会を発足したということは、国が取り組んでいくことに関して今まで以 上に、国が方向性を示すだけではなくて、都道府県や基礎自治体たる市町村と役割分担、 あるいは単に分担するだけではなくて、これは主として基礎自治体がすべきことに国が財 源的な支援をするのか、それとも国がガイドラインや方向性を示しつつ、窓口として市町 村、あるいは都道府県が何らかのかかわりをするのかというところなどについて、従来と は違う重みづけみたいなものを必要とするのではないかという時代認識があって、この研 究会が発足したのではないかと思います。  実態から申し上げますと、介護保険制度も、障害者自立支援法も、国が、あるいは国権 の最高機関たる国会が決められた法律にのっとって現場である市町村が対応しております が、介護保険の保険者であり、国民健康保険の保険者であり、そして障害者自立支援法に ついて様々な取り組みをしていくときには、基本的には市町村の役割というのがこの10 年ぐらいで、かなり重くなってきたと実感しています。  そして、それは全体としての財源も込みの地方分権への移行と必ずしも整合性を持って いないために、財源的な面でも、経営というキーワードを和田委員からも先ほど出してい ただいたのですが、経営の能力というのも、かなり自治体に求められてきました。そうい う意味で、地域福祉の中で、国と都道府県と市町村とで「経営の役割分担」、あるいは 「責任の所在」ということについて「地域」という概念を国も重視しなければ、全体とし てのスムーズな制度運用が困難になってきたという意味で「地域福祉」の「地域」の部分 がクローズアップされていると思います。  2点目に、高齢者対象の事業・サービス、障害者対象の事業・サービス、児童あるいは 生活保護対象者等に分類されて、異なる局が対応しておりますし、私たち自治体が法にの っとったサービスを現場でやっておりますときに、いずれの対象者に対してもサービスを 提供するときには、「地域」という概念を入れなければ適切かつきめ細かい福祉サービス ができなくなってきました。  特に三鷹市のような自治体では、「福祉の総合窓口」をどうつくっていくかが課題です。 つまり高齢者が相談に来たときに介護保険のことだけ対応していても、それだけでは対応 できない。子育て中の世代が来たときに児童手当の話や医療費の話だけをしていてもそれ はだめで、女性の自立の問題にも対応しなければいけないし、老親介護の課題があって、 困窮を極めているかもしれない。  つまり、「福祉の総合窓口」的な対応が一つと、もう一つは「地域ケア」という取り組 みで、高齢者であろうと、障害者であろうと、子育て中であろうと、そういう方たちに対 して、「地域」というキーワードで総合的に対応しなければいけないということは、いず れの自治体でも今まさに喫緊の課題として取り組んでいるものと言えると思います。  3点目に、どうしても従来から「自助・共助・公助」と並べて、今まさに「共助の時代」 だというふうに言われる傾向がないわけではないのですが、今回のこのこれからの地域福 祉のあり方に関する研究会も、「共助」のところだけ強調し過ぎるとバランスを欠くので はないかなと思っています。今まで欠けていたので、この点は市民の皆様の実態に即して、 共助についてどのような支援や条件整備があれば、よりそれが豊かになるかという提案を するのは必要不可欠だと思いつつ、先ほど今田委員もおっしゃいましたように、私は「公 助」というか、国の責任、あるいは自治体が国と連携しながら、しっかりと公としてしな ければいけないこともやはり明確にしなければいけないだろうと思いますし、「自助」で やっていただくべきところは尊重はしなければいけないと思います。  その上で、私たち自治体が求められているのは、「リーダーシップからコーディネート 機能」へと移行しているということを私たちも自覚し、市長ももちろんですが、職員にも 努力してもらっています。   地域にある多元的な資源、あるいは具体的な取り組みというものを、今目の前にある困 難に対して、あるいは生活課題に対していかに編集していくかという、そういうことが求 められています。  ただし、その専門性はいかがなものかと思います。どういう専門性を身につければその コーディネートができるのかということについては、今までの社会福祉士がやれるのか、 介護福祉士がやれるのか、あるいはケアマネジャーがやれるのか、いいや、そうではなく て、先ほど言いました福祉の総合窓口をやるための幅広い専門性が自治体に問われている のかということなど、「専門性のあり方」についても若干関連せざるを得ないのかなと思っ ています。  自治体の責任というのは大変大きくなっているのですが、どうしても国が求める法定計 画である障害者に関する「障害福祉計画」であるとか、「介護保険事業計画」であるとか、 「次世代支援育成行動計画」であるとか、そういう計画は一定の年次につくらざるを得な い。それをいかに義務的に考えることなく地域の自治体が主体となって様々な市民の皆様 や団体の参加を請いながら、自立的計画にしていくかというところにこの「地域福祉」と いうキーワードが入ってくると、私たち自治体の主体性というか、自主性がより出てくる のではないかと思います。国が強制するとか、枠をはめ過ぎるというのではなくて、いか に地域主体の、地域課題に即した地域福祉の計画等を策定していくか、それも負担感なく やっていくかというところで、ぜひいい意味での柔軟なガイドラインというか、マニュア ルというか、そういうものをつくりながら、自治体間で、このところはあまり無意味な競 争をすることなく、ユーザーたる、あるいは福祉の対象者の皆様が、どこの地域にあって も、いわゆる最低限の、あるいは最大限の恩恵に浴することができるような方向性を、こ の地域福祉のあり方に関する研究会では、少なくとも目指すべきところとして提案できれ ばありがたいなと思っています。 ○大橋座長  今回と次回は事務局でいろいろ作業もありますので、少し私の方から質問という形でさ せていただきます。今の清原委員の意見は、3ページの「留意すべき事項」の中で、「多 様性を認め、画一化しない」というのは一応確認しているんですね。これが地方分権とし ては大事だと思うのですが、しかし一方で、冒頭に言われた財源論だとか、そういう話に なっちゃうと、また一般的・抽象的な国と地方自治体との役割分担みたいになってしまう のではないでしょうか。  それはそれでわかっているけれども、今回我々が研究会として提案するのは、そのこと を踏まえながら、もう少し踏み込もうよと。こういうところを出したいわけですよね。そ うじゃなくて平板な報告書みたいになってしまう危険性があるのではないでしょうか。必 ずしも財政的に豊かでない自治体だって頑張れているじゃないか、なぜ頑張れているんだ、 財政的に豊かなところが全部やっているわけでは何もないじゃないかというところを、自 治体の工夫としてそこはどうしたらいいんですかね。手短に。 ○清原委員  本当に様々な地域が様々な福祉課題に関して、ユニークに、前例を気にせずというか、 前例がない中を切り拓いています。それらの取り組みについては、担当者は全国的な規模 で共有し、そしていいところは盗もうとしています。そして質を上げていこうと頑張って くれていると思います。そうした全国的なネットワークというものについて、国には、い い試み、あるいは、これだけ財源をかけなくても、こういうようなサービスによって市民 満足度が高かったというようなことについては積極的に共有できるような情報共有のため の支えということはやっていただきたいなと思います。  あとは「競争と協調」と私たちは言うのですが、協調して、協働して、いいものは共有 しながら、前例のない課題に陥ったときに、どうしても私たちは財源がないとき、国で何 かモデル事業はないかなとか、そういうのを気にしてしまいます。そのときに、使いにく いお金の出し方というのは今までどうしても国は多かったというふうに思いますし、そこ に税財源の移譲という問題が絡んできますし、ある意味で基準の柔軟な先駆的なモデルに ついては財源保障していただいて、その成功例について共有するというような循環をつく っていただくということが私たちのモラルを下げず、重要ではないかなと思います。  私たちはそういう先端的なところとか、財源が少なくて頑張っているところから結構情 報を得ます。お金をかけてやっているところを市民・国民の皆様が評価されると困るなと 思っていて、その辺は同じ東京都でも地域格差があるものですから、その辺は標準化をし ていただければいいなと思いますけれども、そうじゃないところは、ここにありますよう に多様性を認め、画一化しないという方向には賛成です。   ○大橋座長  今田委員が言われた国のレベルの社会保障の水準の問題と対人援助としてそれを地方自 治体がどう展開していくのか、その創意工夫の問題というようなことが今いくつかでまし た。他にはいかがでしょうか。 ○佐藤委員  少し今のことに絡むのですが、気になったのは、地元の住民の人たちだけが何かやると いうイメージになってしまわないようにしないといけないということです。それは、共助 という部分をどうとらえるのかということのような気がします。宝塚市社協の事例なので すが、民家を借りた小規模デイをやっています。運営委員会をつくって、住民の皆さんに 運営委員になっていただいて、いろいろなサービス事業の意思決定はその中でやっていた だくというような形態でお願いしています。運営委員の皆さんは、小規模デイは民家です から、そこを活用して、デイサービスの事業だけでない事業をいろいろ考えてやることを 工夫していただいています。現在、1日7〜8人ぐらい介護保険の利用者が利用されてい ますが、それ以外に、例えば精神障害の方が来られるとか、独居の高齢の男性が昼ご飯だ け食べに来られるとかという話があったり、相互保育ということで、子どもさんを連れた お母さん方が集まられて、育児の場に使われるとかというような空間になるという広がり が出てきています。  福祉サービスの専門職は社協が入れていますので、認知症のケア等の必要な部分につい ては、専門職がそこに必ずかかわってフォローします。例えば利用者が家に帰っていくと きにはボランティアの方が一緒に送られるという流れが出てきて、それが日ごろの地域の 見守りにつながるケースが出きたり、徘徊のケースが出てくると、そういうケースをつな いでいただいたり、周りで見守っていただいたりという流れが出てきています。介護保険 のサービスではありますが、住民の皆さんと共同してやっていくことで、地域の皆さんが 福祉について考える機会や実際に関わる機会づくりになり、そのプログラムが、その地域 の福祉の力を上げていくことにも役立ちます。ただ単に介護保険のサービスという枠組み だけではなくて、子育ての支援の活動であるとか、介護予防の活動であるとかということ もそこで展開していくというようなことが現実には起きています。  そういうことから言うと、ただ住民の活動、専門職のサービスというようなことでどう 役割分担していくのかということではなくて、新たにそういうものをうまく組み立てると 今までと違う展開が可能になるとか、少し違う効果が出てくるとかという可能性が出てき ていると思います。そういうことができる空間が地域の中にある、もしくはそういう資源 がうまくリンクできるような場があるということが地域の中でひじょうに重要なんだろう と思います。  だから住民だけがやるとか、専門職だけがやるとか、役割分担をしてやるとかというこ とだけではなくて、そういうものが協働してうまく組み立てられるような、新たなプログ ラムができないのかなと思います。そういう意味での共助という部分が、仕組み、サービ ス、行政ももちろんだと思いますし、住民の皆さんの知恵も入れてやることができれば、 全く違うものができていく可能性があるのではないかということを感じています。  もう一点気になっているのが、住民主体が必要であるというお願いと、住民が意思決定 をしていく多様性が必ず必要だというお話をしたのですが、そういう部分とそれに伴う責 任の部分は必ず出てくるわけです。  ずっと流れの中でみていますと、例えば公共的決定に当たっての正統性の根拠というよ うな話がでてきて、行政の役割としてどう関わるのかということと、住民が集まっていろ いろな物事を主体的に決めてやろうという話と、公共的な決定というのが具体的にどうい う関係になるのか、少しきちんとしたイメージが欲しいのです。そういうことが本当にう まく並び立っていくような仕組みとして考えられるのかどうか、整理がつけられるのかど うかというのは結構大事な話だと思うんです。金井委員も前回そういうお話をされていた と思いますので、公共的な決定と住民の主体性というようなものを、どういうふうにバラ ンスさせていくことが可能なのかということについて少しお聞かせいただけたらと思いま す。 ○大橋座長  今の問題は2ページの「地域福祉の意義と役割」の一番上の共助のシステムを公の空間 として地域の中で設計するという、なかなか言い得て妙な言葉なんですよね。地域の中で 設計をするということですよね。4つ目の丸のところに、地域における人間関係の結合、 ネットワークとしての地域福祉で、行政・事業者・住民の関係はいかにあるべきか。つま り、行政は計画の中でそういうシステムなり方向をきちんと示して、実際の運用はもっと 多元的にやってもいいかもしれないということもあるわけですよね。  先ほど今田委員が言われたように、実際のレベルでいくつぐらいのハブをつくるのかと いう話にも絡むわけですが、そういう設計だとか方向は行政が決めるかもしれないけれど も、運営はもっと住民がいろいろやってもいいのではないか。こういうようなところをも う少しこんな書き込み方をして欲しいと言っていただければありがたい。住民主体とは一 体何なのかと。そのハブになるセンターに住民が運営委員として参加するというのもある かもしれませんし、計画づくりのときに住民が参加するというのもあるし、参加自体は非 常に重層的ですよね。あるいは地方自治体で、条例でつくって審議会をつくるというふう なこともあり得るかもしれないわけですね。  そういう意味では、佐藤委員が社協としては住民主体の社協と言っていたわけだから、 本当に住民主体になっていたのかと。こういうところがまずかったからこういうふうにし ませんかという、逆に積極的に言っていただけると大変助かるんです。そうしないと、こ れからの地域福祉がみえてこないわけで。その辺はどうですか。 ○佐藤委員  そういう意味では、例えばいろいろなことについて参加の場と、意見を言って物事を決 定する場を保障していくということだと思います。サービス事業をやるということであれ ば、社協が事務局サイドで物事を決めてサービス事業をやるということではなくて、意思 決定についても住民の皆さんにゆだねると。そこを使って、実際に動いていただく方々に 意思決定をしていただくということで、起きたことについては、これは社協の事業になり ますから責任は社協が持つということで、場を提供するということも一つでしょう。もち ろん、理事会、評議員会という枠組みも同じ話だと思いますし、様々なところでそういう 場を保障していくことが、私としては社協という枠組みの今求められている部分だと考え ています。 ○大橋座長  この2ページの4の「地域福祉を推進するために必要な条件」で、住民が主体となり参 加する地域福祉で、ややもすると住民参加とか、ボランティアとかいうと、活動における 住民主体のところばかりに目が行きがちなんですよね。それをあえて分けて、決定におけ る住民主体と住民参加、活動における住民主体と住民参加、これはすごく大事なことをこ こで整理させていただいたわけです。  だから行政だけじゃなくて、社協の場合であれ、あるいはNPOであれ、こういう政策決 定における住民主体とは一体何なのかとか、そういうことはどうあったらいいかというよ うなことを少し知恵を出していただけると、私どもとしては共助のシステムを地域の中で 設計するということがみえてくるのではないかと思うんです。  それを従来、抽象的に住民参加とか、住民主体と言い過ぎていたと思うんです。だから 社協でそういう実践があれば、そういうことを教えていただいて、こういうことがあるよ というふうなことですよね。だから共同募金で出てきましたように、小学生や中学生が参 加しているなんていうのも一つ大事なことだったわけなので、そういうことも含めてご提 案いただけると、事務局としてはひじょうにこれからの整理がしやすくなると、こういう ことです。   ○小林委員  抽象的な議論で恐縮なのですが、いただいた構成案には、自助・共助・公助ということ が述べられているのですが、例えば共助でも、共助1と共助2というのがあってもいいの ではないかという気がします。具体的には、見守り活動みたいなものは近隣の住民が自発 的にやれるというか、やらなくてはいけないところだともいえますので、見守りネットワ ークみたいなものを共助1というような概念で整理しておきますと、これに対して、さま ざまな住民の活動をどこかで調整していくような共助の活動があるのではないか。これま での議論では校区社協の活動がとりあげられてきましたが、いずれにしても、近隣活動と はもうちょっと上のレベルのとことで共助2のような活動をサポートする仕組みがあると いうように考えてみてはどうかと思います。  そうしますと、公助についても自治体のように地域を全体として取り扱うレベルに対し て、地域の福祉行政区のようなものを考え、ここで「ワンストップサービス」ができるよ うな仕組みが今でき上がりつつあるわけで、同じ公助でもレベルが違うと思います。今、 清原委員からご紹介いただいた、地域包括支援センターがこれに当たります。もちろん、 高齢者だけではなくて、障害・児童も含めたワンストップの仕組みが必要だということで すが、これはいわゆる第3の分権化の議論で、事態はここまで進んできているのだと思い ます。  自助については、これを家族内部のことと考えるのか、市場サービスを利用した自助と 考えるかで違いがあり、整理が必要であると思います。  いずれにしましても、地域福祉における議論をする際に、自助・共助・公助というよう に、あまりクリアカットに分けて議論しないで、一応そのように分けた上で、相互の関係 を考える移行型を考えてはどうかと思います。その上で、それらのレベルをつなぐ仕組み がどうなるかを議論してみてはどうかというのが私の考えです。  なお、この場合、それぞれのレベルでの議論を、今、佐藤委員がおっしゃったような事 業につなげていくような方向で考えるか、そうではなくて、住民が比較的自由に参加でき るような、あるいは、立ち寄りができるような、そういうような方向でイメージするかに よって、違いが出てくるのではないかと思います。  繰り返しになりますが、整理の仕方としては、自助と共助と公助のレベルを、帰属性と 活動性という形で整理してみてはどうかというのが私の感想です。 ○大橋座長  とても大事なことだと思います。共助の中にもいくつかのレベルがあるという、それは 考えによっては、さっき和田委員が言われた、運営のあり方についての共助の部分もある かもしれない、財源的なこともあるかもしれないし、様々なレベルがあるかもしれないと いうことを少し柔軟に視野に入れて整理しましょうということだろうと。 ○木原委員  今の小林委員の第1共助、第2共助という発想ですが、同感ですね。先ほど今田委員が 言われましたね。小学校区あたりにハブをつくって、そこで関係者も企業も住民も参加し て一緒に考えればいい、と。そのときの住民というのは、関係者が把握しているNPOとか ボランティアと言われるそういう人たちだということでしたね。しかし地域には「もう一 人の住民」がいるのです。そこでいわば第1共助の世界が展開されている。  地域包括センターの相談活動にしても、じつは向こう3軒あたりでミニ世話焼きさんが 相談を受けている。50世帯あたりでも同様に相談を受けている人がいる。数百世帯単位で も超大物世話焼きさんが見込まれて相談活動をしているのです。その人たちはハブまでは 来ません。だから小学校区域あたりのハブで住民と一緒にやりましょうといったときの住 民、それは、住民全体からすればほんの一握りの「特異な住民」にすぎないんですよ。も う一つの大部分の住民は、それぞれのご近所からは出ないで、そこでうごめいているとい うと変ですが、そこで日々助け合いをしている。それにはほとんど関知しないで、とにか く素直にハブまでやって来た、人口全体からすればほんの一握りの人だけを住民と認知し て、その人たちについての「住民参加」とか「住民主体」とか言っているのは、どうも奇 妙な感じがするのですがね。数的に言えば間違いなく、住民不在の住民主体論と言います か。 ○大橋座長  今の木原委員の意見は2ページの3の4つ目の丸の2つ目ですかね。住民と専門家の関 係はいかにあるべきかという一般論のところをもう少し深めて言うと、住民の中にも、例 えばワーカビリティを強くもって専門家を活用できる住民もいれば、あるいはアクセシビ リティがあって、総合福祉センターなり、ワンストップサービスにつながる住民もいるけ れども、多くの場合にはニーズも表明できないでうごめいているという、そういう言葉を 使われましたけれども、うごめいている住民がいるはずだと。その方々のニーズをキャッ チしてどういうふうにつなげていくかという媒介者の役割がある。それは必ずしも専門家 じゃないかもしれないが、民生委員であったり、あるいはボランティアセンターの職員で あったり、あるいは町内会長のお世話役の方だったりするかもしれないという、この媒介 機能みたいなものをどういうふうに考えていくかということも大事だと。こういうふうに 受けとめてよろしゅうございますかね。それをすぐに専門家と言ってしまうとちょっと溝 があいてしまうよということで、木原委員は専門家と呼ばないけれども、隣近所の中にい らっしゃるよと。こういうことを一貫して言っているということですね。 ○木原委員  地域は非常に多層になっていまして、まず向こう3軒あたりでちゃんとニーズを誰かに は発信している。それを受けている人もちゃんといるんです。それはそこまでで、それ以 上は出てこない。問題は、向こう3軒の問題はご近所が引き受け、そこが今度はご町内ま で、そこから地区へつなげていく、ここの人材が今問題になっているんですね。 ○大橋座長  どういう名称にするかはまた考えますが、とりあえず媒介機能というのはすごく大事だ ということを注目しておきたいよと。こういうことですね。 ○三本松委員  今までの議論と関わってということもあるのですが、この報告書をつくっていくときに、 「地域福祉とは」という、定義のところへ入っていくのか、それとも、例えば2ページの 3の「意義と役割」というところを足し込んでいくと何か見えてくるものはあると思うの ですが、そういう書き方になるのかというところも確認しておいた方がいいのかなと思い ます。  和田委員の議論に若干関わるかと思うのですが、考えていく上で、社会福祉施設につい ての議論というのが必要なのではないかなと思うんです。施設は、従来の言い方で言えば 公私論で、公の役割も果たしてきた。もちろん民間なんだけれども、でも公の役割を果た してきたところもある。これまで施設の社会化とか、施設と地域を巡るコンフリクトの議 論とかというような、そういう形で施設と地域との関係というのは従来、議論も福祉の中 ではしてきているけれども、地域福祉というふうに言ったときに、この段階での施設と地 域との関係のあり方というのはどういうふうになるのかということです。  例えば、その場合に、ではどういう役割を果たせるのかというと、施設というのはひじ ょうに専門性を持っているというところでは、その地域の中でのコーディネート機能を果 たすこととか、拠点性を持っている場所があるという意味での役割を果たすことができる のではないかと思います。  今田委員の議論にかかわって、臨床性という特質を持っている福祉というのは、これま で身近な現場については、ひじょうに実践している人たちはよく知っている。ただ、その ことが一般の人にどう伝わっていくのかというと、どうしても何か自明なこととして次の 活動に入っていっているのではないか。その自明性になっているようなことを課題として もう少し共有化する、あるいは伝える技術みたいなことの議論が必要なのではないかなと 思います。  そういう部分というのは大きく分けたときにマクロ、ミクロ、その間のメゾというよう なところで言うとミクロの方の議論なのかもしれませんが、一方で、また福祉というのは マクロのあり方としての普遍性というか、例えば生活保護の役割みたいな、そういった議 論もあると思うのですが、今ここで議論していることは、その中間のメゾのあり方を考え ていくことなのではないかと思います。  小林委員がおっしゃっていた共助2に当たるようなところを考えていくとき、あるいは 座長がおっしゃっている媒介機能の問題なんかを考えていくときに、地域のハブをつくる というときに、ではそれを具体的にはどういう形で担ってハブというものが形づくられて いくのか。それが既存の町内会・自治会というものを含めたもの、でも町内会・自治会の 弱体化ということも事実として一方にある中で、では新たなNPOなどの役割というものが また期待されてくるわけですが、そういった中間集団への支援のあり方というのが今問わ れているのではないかというふうに思います。  最初の方で言いました自明性との問題で言うと、特にボランタリーな活動、ボランタリ ーセクターの持つ力というのは、課題の実践を通して問題を提起していく力、制度化する きっかけをつくる力になっているのではないかということ、その辺への支援のあり方とい うのが必要なのではないかと思いました。 ○大橋座長  ありがとうございました。大変大きな地域福祉の考え方、概念整理をどうするのかとい うことですが、地域福祉というものは必ずしも、学会も含めて、そんなにきちんと確認さ れているわけではなくて、法的には「地域の社会福祉を以下地域福祉という」というふう に言っているので、ここではどちらかと言えば演繹法的な形で考えるよりも、先ほど局長 が話をされましたように、国民に今、社会福祉が動いているよと。それは社会福祉だけじ ゃなくて、社会の新しい仕組みを考えないとならないところに来ているんじゃないかとい う、そういうメッセージを出すとすれば、あまり学問的に演繹でこうだとかというのでは なくて、機能的に、こういう状況の中で我々は少し動かなくてはいけないじゃないか、変 えなくてはいけないじゃないかという打ち出し方の方がいいのではないかと思うのですが、 どうでしょうか。  先ほど和田委員が言われたことは、要するに、施設の社会化論というのが一時ありまし たが、9万ヶ所ある社会福祉施設をどう考えるかという、一種の共同利用施設的に、社会 福祉法人も、施設も、もっと地域に目を向けて、住民の信頼に堪え得る共同利用的な資源 なんだということを自覚して欲しいみたいなことを書くかどうか、これは少しご論議をい ただければと思います。  3つ目の問題は、2ページの「地域福祉の意義と役割」の4つ目の丸の1番目ですね。 地縁的団体と機能的団体の関係はいかにあるべきかというこの中で、ボランティアだけが 突出してしまうのではなくて、市民活動とボランティア活動というのがそもそもどういう 関係にあるのかと。私の言葉でいけば、ボランティア活動をなくして、すべての人が市民 としてボランティア活動的なことをやればどうってことないんだけど、それができていな いところが問題なのであって、その辺の関係をどう書き込むかということですよね。そこ は多分、事務局はわかっていると思うので、忘れずにその辺は整理したいと思います。 ○榊原委員  恐らくこの場で唯一の一般国民の一人なので、この構成案について思うところをいくつ か述べさせていただきたいと思います。  今も地域福祉の定義のご指摘があったのですが、実をいうと、一般国民がこういったレ ポートを手にしたときに、パッとみてまずこの「地域福祉」という言葉に必ずつまずく。 誰もわからない。「福祉」という言葉は日本語でも、日本の国家が近代化するときに輸入 した概念でつくった言葉ですよね。大和言葉の中に実は根づいていない言葉で、私たちが 報道で使うときにもちょっと考えるわけです。どういうふうに使われている言葉なのかと いう意味で、こなれていないなと普段から実は思っていて、とても大事な概念なんだけれ ども、一般の人たちに、「あ、福祉、これね」と思えるところまで実は身近な概念になっ ていないのではないのかなと思います。  というのは、これまで福祉というのは施設の中にあって、措置のハードルをクリアでき て施設へアクセスできた人は福祉にたどり着いたけれども、それ以外の人は実は無関係で 過ごしているというような状況があったわけで、福祉は限られた、ある程度閉ざされた世 界の中に置かれていて、自分は必要ない人、あの人は必要ある人みたいなイメージでとら えられていたと思うんです。でもここで議論したい、メッセージを発したいのはそういう 福祉ではないはずで、だから違うんだよということを伝えるためのところの位置づけはと ても丁寧に必要だろうと思うんです。  この場合、「地域福祉」とあえて使っていらっしゃるのは、素人の理解でいくと、ナショ ナルシステムとしての福祉を議論するのではなくて、もっと住民に身近な暮らしの周辺に ある福祉という意味で言っていらっしゃるんだと思うので、そこのところを、例えばサブ タイトルか何かででもいいので置きかえて、暮らしの安心を支えるシステムをつくり直し ましょうとか、地域での支え合いをつくりましょうとかというようなみんなにわかる言葉 をもう一つ重ねた方が、専門家にはパッとわかるところを、一般国民にはもうちょっと引 きつけるための翻訳のようなことが必要なのかなという気が一つしています。  もうプロの方たちは多分、この2枚目、3枚目に早く行って深めなきゃという感じだと 思うのですが、素人的にはこの1枚目がとても大事だと思うんですね。そもそも福祉とい う言葉でつまずきそうな人たちがザーッと引きつけられていくためには、「ここにすごく 大事な課題があるんだよ」と気がついてもらうためには、今の日本の現状にどんな課題が あるのか、それは一人残らずみんなにとっても関係あるんだよということをきちんと伝え なければいけない。そこをいかにうまくやるかというところがとても大事だと思うんです ね。  その時に、例えば言い方として、戦後型の日本の暮らしの安心のシステムというものが あったんだけれども、実はそれは企業が随分福祉もやっていたり、親族ネットワークに支 えられた家族というものが結構やっていたり、企業や家族が強く、ある程度元気だった時 代につくられた福祉のシステムというもので日本の政策はやってきたんだけれども、今、 少子高齢化がここまで進み、企業も国際競争にさらされて大きな福祉までやっていられな くなって、福祉が相当放出し始めている。家族も小さくなった。  その中で、では一人一人、みんなが不安を抱えず、路頭に迷わずにやっていくためには どうすればいいか。その中で今、地域の中での支えがとても必要になっているんだという ような言い方だと伝わるのではないかなというような気が一つします。  もう一つは、みんな誰でもこれだけの長寿社会になったら、絶対に人生のどこかで困る でしょう。だから福祉というのは一人残らず全国民の課題になっていますよねというふう な持っていき方もあると思うんですね。老後ももちろんそう。子育てだってみんな困って いる。教育もそうですし、子どもが育ってきても引きこもりがあったり、今、家族の中で もさまざま問題を抱え込んでいる。障害になったとき。今、就業支援というのもとても大 事になっている。という意味で、様々なところですべての人が自分の人生のコースの中で は必ず人の支えを必要な状況になっている。そういったところで新たな支え合いのシステ ムは必要になっているんですよという呼びかけも一つあっていいのではないかなと思いま す。  これから人口減少が強烈にはじまっていって、かつて想像できなかったような社会の姿 になっていくという今、転換期にあるから、これからへの準備としても必要なんだと思い ます。企業や家族だけ、元気な人たちだけ頑張ってやっていってねというのでは、誰も国 民は安心して生きていけなくなっているから、これからの少子高齢化、人口減の社会の中 での新たな支え合いというものを早急につくっていきましょうというような呼びかけがあ ると、私にも関係あるのねというような感じになってくるかなというふうに思います。  1枚目の丸がずっとあるところの一番下に地域の課題とあって、地域における多様な福 祉課題とあるところの1つ目のポチのところで、制度では想定していないニーズが出てい るとあって、そのとおりなのですが、これは想定していないニーズというよりも、制度で 拾えないニーズがすごく増えているというふうに、マスコミなどでついつい危機感を訴え るところが過剰になり過ぎる嫌いはあるのですが、なぜみんなが今までの行動パターン、 発想パターンを変えなければいけないのかということに気がついてもらうために、どこに 問題があるのかということをクリアにしておく必要があると思うんですね。その後で地域 福祉の意義や役割というふうに展開していくと、みんなで考えようというような流れにな りやすいかなと思います。  その時に、共助・自助・公助という言葉。実はマスコミ関係者も福祉をちょこっと勉強 すると何かわかったような気持ちになってきて、この言葉を使うのが好きなのですが、こ の言葉もわかりにくいんですね。これも、例えば共助だったら「支え合い」とか、「お互 いさまの助け合い」というふうな言葉をちょっと添えてみるとか、自助も「自己決定と自 己責任」というふうに言いかえてみるとか、もうちょっと言葉を足しつつ展開していきた いなという感じがします。  これまでのここの議論で出ていたのかどうか、私も欠席があったのでちょっと不確かな のですが、先ほど今田委員からも話がありましたが、福祉が日本ではとてもスリムでコン パクトでやってきているという状況のままでいいのかという議論も、ナショナルシステム を議論するときじゃないときにはさわらない方がいいという判断が皆さんにはおありかも しれません。しかし、やっぱりちょっとこのままでは無理であろうと思います。今まで企 業であり、家族であり、出している人がいたわけですね。それは政府の予算の数字には乗 らなかったかもしれないけれども、どこかで社会の中の富、力としては回っていたものが あったものを別のところでつくって回さなければいけなくなっているんだとしたら、やっ ぱりそれは財源という形でも明示化していく必要があるのかもしれない。本当にみんなで 手弁当で頑張ろうねというだけで大丈夫なのかなと。そこをもう少し踏み込んで、研究会 の議論なので、出してもいいのではないかなという感じもします。 ○大橋座長  とても大事なことですね。多分、「はじめに」でその辺をやわらかく書くのかと思いま すが、最後は榊原委員に校閲をいただかないといけないかもしれない。私なども、NHKの社 会福祉セミナーというのは中学校を卒業した人がわかるように書きなさいと。はじめから 「社会福祉」というのが入ったらだめなので、やっぱり「社会福祉」のイメージ、貧困で すかとか、施設のイメージですかとか、そのところ、少し概念砕きをしながら説き起こし ていく必要があるんでしょうね。ありがとうございました。 ○小林委員  今の榊原委員の発言との関連で、やはり構成案の1ページの2のところについて申し上 げた方がいいかなと思うのは、ここの部分には地域の類型が全然書かれていないのではな いかということです。地域が、地域一般になってしまっているような気がします。地方と 大都市とやっぱり違うだろうと思います。自治会がしっかりしているところと、それがも う機能しなくなってきているところなど、いろいろなタイプがあると思います。  昨日、民生委員関係の会議に出席したのですが、典型的な問題として、オートロックの マンションがたくさんある地域の民生委員さんの活動の困難性が話題になりました。ここ では民生委員が中に入れないため、生活が完全に密室になってしまっている。助けを求め ようにも求められないという状況が出てきている。これは地域にとってはどういう課題を 提起することになるのか。これのような問題もやはり考えておいた方がいいだろうと思い ます。  常盤平団地の中沢会長にお話を伺いましたが、個別化・孤立化が本当に進んでしまって、 あるとき、というようなことはよくあると思います。これを地域の類型といってよいのか どうかよくわかりませんが、このような状況を2のところで書いていただくともに、これ に対する対応を3、4のところでどこか触れていただいた方がいいのではないかという印 象をもっています。 ○大橋座長  今の問題は、長谷川委員もずっと言われていますし、横浜の自治会の状況も言っていま すし、ちょっとそのことも触れて、どういうふうな書き方をするか。地域の類型なんて言 われると、また社会学的に類型化するのかという話をすぐに思い浮かべちゃうので、こう いう地域もあるとか、いろいろなことを言いながら、今日的に都市の中ではこんな問題が あるとかという、やや機能的に状況を説明していくということが大事なことなのかなとい うふうに思います。 ○長谷川委員  今日いろいろと各項目を拝見いたしまして、全くこのとおりだろうなと思いました。特 に今日、3番、4番ということでありますと、地域が今一番求められていることは地域の 求心力ではないかと思っております。その求心力は、それはどういう形で求めたらいいの かということになってまいりますと、今、地域住民が一番関心を持っているのは防災であ り、減災であり、防犯であり、子育てであり、そしてまた環境問題じゃないかと思うので すが、そういうことを考えると、私たち民生委員の立場として、密室云々というような、 オートロックの中に入れない、全くそのとおりなのですが、ちょうど民生委員制度創設90 年にあたり、「災害時の一人も見逃さない運動」をやってまいりました。そこではまず自 分たちが学習しながら、また、緊急連絡網をどうもっていったらいいのか、マップづくり をの実施、それをお互いに共有しながら連携をしていこうとしています。  実際にできたマップを地域の中でどうお互いに共有し、それをどう連携していくのかと いうことが一番大切なことであって、それは民生委員だけの問題ではないと私は思ってお ります。そういう意味で、これを地域の中で、地域全体としてお互いに勉強するというこ とはお互いに関心を持つことですから、お互いに関心を持ちながら、個人情報等の関係で 情報が入ってこない中で、隣の人がどういう方がいるかわからないというような、また、 町内会の名簿すらないというような状況の下での連携の仕方をどうしていったらいいのか と思っています。  それはマップづくり等についても、それらをいかに共有し、消防、あるいは社協、学校、 幼稚園・保育園などの教育機関等との連携をどうもつのかということは、民生委員は今ま でやってきたのですが、これからは地域全体として関心をもってやっていくということが 一番大切なことであると思います。そういうことをすることによって私は必ず地域の求心 力というものは増してくるだろうと思っております。  したがいまして、そうした防災・防犯、特にこれからは環境ということをお互いに関心 をもって対応していくことが地域での求心力を高める要因につながってくるのではないの かと思います。  また、木原委員は50世帯云々ということをおっしゃいましたが、それは本当の一部であ り、もっともっと広く地域というものは一つ拠点が違って、1,000世帯ぐらいが1つの地 域であるし、また3,000世帯、5,000世帯というものがもっと広い、いわゆる連合町内会 単位と申しますか、そういうことにもつながってくるわけです。一つ一つの積み重ねをい かに組み合わせて仕組みづくりをどうしていったらいいのかということがこれからの課題 になってくるのではないのかなということを思っております。 ○大橋座長  小林委員は地域の類型という言葉を使ったので、さっきそれが引っかかったのですが、 いろいろな地域のいろいろなタイプ、類型によって、出てきている生活問題の違いみたい なものを少し例示的にわかるようにしたらどうかという意見と受けとめてよろしいかと思 いますが、そうしたときに、今の密室の問題も1ページの地域の課題のところで、先ほど 榊原委員は制度では想定していないニーズ、それだけじゃなくて制度では拾えないニーズ ということを言われたんですね。3つか4つ下に地域でなければみえないニーズと書いて ございますが、逆に、地域でも制度でも拾えないニーズみたいなものがあるわけでしょう ね。  例えば、インターネットを通じて自殺志願者を募って集団自殺するなんていうのは、地 域でも制度でもなかなか拾えない問題ですが、ただ、そういう状況がありますと言ってい ると社会不安を煽るだけになってしまうので、どういう書きぶりにするかというのは難し いのですが、やっぱり我々は新しい社会システムで、本当に地域を基盤にして考え直さな いといけないというメッセージを出す上ではそういうことも含めて考えておかないといけ ないのかもしれないと思います。  そういう意味では、3ページの「留意すべき事項」のところで「福祉」の範囲を限定し ないという、防犯・防災とか、教育・文化とか、建築・まちづくりとか、一応例示的に挙 げてございますので、この辺を少し膨らませながら、あまりとらわれた福祉感だとか、制 度ではなくて、住民が置かれている生活課題、さっきの榊原委員の安心・安全のネットワ ークみたいな話ですが、そういうものをどう地域でつくっていくかみたいなことを考えた いと思っています。 ○木原委員  例えば神戸で、仮設住宅から、住宅としてはよく整備された復興住宅に移った途端に孤 独死がゾロゾロ出てきたと聞きます。つまりそういう、福祉とは直接関係がないと思われ ている住宅づくりというもののあり方1つで、福祉にストレートに影響してしまう。  日本女性建築士会が、高齢社会対応の建築を研究していたのですが、例えば一人暮らし 老人宅を必ず住民が通らざるを得ないような構造の集合住宅にするとか。だから、福祉部 局はただ自分の専門分野に取り組んでいればいいというのではなく、福祉とは直接関係の ない域内のさまざまな企業や公共機関に対して、やっぱり福祉と関係あるんだよというメ ッセージ発信をしていく役割があるのではないか。彼らもまた地域住民の一人として、自 分の専門領域から「参加」していく義務があるのだとね。 ○大橋座長  確かに国土交通省の高齢者の居住確保に関する研究会では、地域開発をするときにソー シャルワーク的な視点がないとだめだというのは大分気がつきはじめているので、この報 告書に書き込めるかどうかは別としまして、そういうことが論議になっているということ は意識して、特に「留意すべき事項」のところは触れられれば触れるということで取り扱 いはさせていただければと思います。だからそこは住宅は住宅で勝手につくって、高齢者 ケアつき住宅といっても、それを支えるボランティアが地域にいなかったり、人間関係が 全く絶たれて、移住してきてもそれはもたないという、そういう状況の注意を喚起すると いう方向でよろしゅうございましょうか。 ○河西委員  密室ということで、都会の中にも多々増えております。私どもの町でも740戸というマ ンションができました。個人情報保護法ということで名簿もつくれない事態が発生してお ります。そのままですと何の手立てもできないということで、いわゆる避難訓練、あるい は防災訓練を頻繁に行いました。それに参加する人の名前を書いていただいています。8 割ぐらいの名簿が集まったところです。  また、先ほどから出ておりますが、私ども町活動を行う中で、住民主体の決定、あるい は活動の決定とか、いろいろなお話が出ています。既にこれは地方行政の施策の中でも一 生懸命進めているところで、市長さんがお話しされたとおりなのですが、それが住民全体、 地域全体に広がっているかということが問題ではないかなと思います。  先ほど細かいルールだとか、制度だとかということはというようなお話もありましたが、 実は私どもが一番お願いするのは、いわゆる地域行政が、市区町村の中で地域の福祉をど う指導していくか、コーディネートしていくかというところが一番大切なところではない かと思っております。地域格差の生まれる、福祉の格差の生まれる原点は、地域住民の福 祉に対する意識が向上していないというところが問題ではないかと思います。  実は地域の中でも、自治会・町内会が衰退しているというお話がありました。防犯とい う切り口では全国で何万というボランティア団体が活動されていまが、実はこのボランテ ィアさんはすべて地域ボランティアなんですね。地域から立ち上がったボランティアさん です。こういうふうな形も成り立っているわけですが、福祉はもっと歴史がありますので、 もっと多くがあるわけで、その地域ボランティアという福祉団体がもっとたくさん出るべ きだというふうに思います。  自治会・町内会の連合会と並行して車の両輪のような活動で地域福祉協議会というのが ありますが、これがしっかりと、連合会と福祉協議会が手をつないで活動しているところ はすばらしい活動が今展開されています。今まである制度をどう充実させるかということ が一つ大切ではないかなと思います。それには、こういう席での皆さんの知恵を、地域ま でつなげるような方策をお願いしたいなと思っております。 ○大橋座長  河西委員の意見は2枚目の3の「地域福祉の意義と役割」の2つ目の丸ですかね。地域 の生活課題、防犯なら防犯、防災なら防災という、当事者として取り組むところから結果 的に福祉が出てくる、みえてくるということで、上から何かやるというよりも、こういう ことを大事にしようということにもつながりますし、そこでは幅の広い福祉概念だとか、 行うことや対象をあらかじめ決めずに、必要に応じて事業を組み立てる柔軟性だとか、あ るいはその一番下のところにコミュニティ再生の軸としての福祉ということで、地域全体 の暮らしの質を向上させ、安心・安全の面でも高めるとか、こんなところで深められれば と思います。こういうふうに受けとめてよろしゅうございましょうか。 ○今田委員  さっき自助・共助・公助という話で、ちょっと抽象的な言葉なのですが、それら三者が うまくトリプルシステムで社会の活力が出ていけばいいというのはあっていいと思ってい て、問題はそのイメージですが、先ほど榊原委員もおっしゃいましたが、これは頭で考え ている議論なので、具体的な現場におろすときは、例えば共助のイメージというのはNHK の番組「ご近所の底力」が近いのではないかと思います。あのイメージなんですよ。あの イメージが共助なのであって、みんな一緒に抽象的に支え合わなければいけませんよとい う意味ではないので、だからそういう感覚にピタッとくる言葉づくりみたいなものはとて も大事だと思っていました。  ずっとこの委員会で違和感があったのは、第1回目の研究会で既存の地域福祉に関する 既存の関係制度・施策というものでズラズラといっぱい出てきましたよね。僕ははじめて 聞いたものが結構あるんです。市町村社会福祉協議会、本当にこれは知らなかった。社協、 社協というけれども、何の話をしているのかなという感じでした。それから、共同募金は 知っていますが、生活福祉資金貸付制度とか、福祉サービス利用援助事業、権利擁護は知 りませんでした。民生委員・児童委員、これはある程度知っている。その他いろいろ。こ の制度ないし人たちはどこにいて、何をやっているのかというのが一般の人にわからない。 だからこそハブみたいなものをつくって、こういうものがみんな集まって、知恵を出し合 って、むだは省いて、一緒にうまく福祉を担う人たちだって相互支援しないといけないと 思うんですね。  もちろん一般の市民の方を支援するのが福祉というのでもあるし、一般の市民の人たち の間で相互に支え合って支援し合うということもあって、だからそういうのがうまく機能 して働くように制度づくりをちょっとうまく考えてみないと、今のままだとわけがわから ない。私レベルでわからない。半分ぐらい福祉のことをかじっている人がわからないんだ から、普通に聞いたらまずわからないというのが一つです。  それから、かなり福祉の概念が広くとらえられるようになってきたと思います。以前、 QOLとか、クオリティオブライフとかで、70年代半ばごろから80年代ぐらいまでいわれて きましたが、福祉指標とか、社会指標とか、OECDも主導になって結構はやったんですよね。 ところが80年代に入って以降、特にヨーロッパの方では廃っちゃったんですね。それどこ ろではありませんというような感じで、経済が不確定になって、そんなことは言っていら れませんというので、だめになってしまいました。それをもう一度、こういう福祉の観点 からやり直すというのはとてもいいことで、国が主導でやるよりは、そういう地域のご近 所さんの力でどうやってやっていけるかというのが一つの新しい視点だと思います。  それともう一つ、リスクに対して、リスク社会に対して応答的になるというのがとても 大事で、富に応答的になるのはもう十分これまでやり尽くしてきて、格差や富裕度はいっ ぱいあるので、リスクに対してレスポンシブルになってというのは、これは絶対に地域で なれる。連帯・結束は、リスクに対して安全・安心のためにと言ったら、みんな絶対に集 まりましょう、やりましょうとなりますので、むしろ今までは前向きなことをやるために みんなの連帯、つながりと言っていたけれども、自分たちの安全・安心を守るための連帯 とか、つながりというのはとてもやりやすいので、その辺の工夫も交えながら、そればか りではだめですが、政府もちゃんとそれに対応できるようにというふうにやらなければい けない。それも三者分担でやるべきだと思います。  先ほど企業をどうするかという話をしましたが、企業だって売名行為でフィランソロピ ーだとか、メセナとか、バブルのころにやっていました。景気が悪くなったらさっさとや めた企業はかなり多いのですが、そういうことをやるんだったら、ハブみたいなセンター をつくって、みんなもやるけれども、地域の人もやるし、行政側もやるけれども、そこに 企業も入ってやりましょうよという、何かそういう三者共同システムみたいなものができ るといいなと思います。  やっぱり企業も本当にまじめにメセナ、社会貢献をやっているところもありますけれど も、形式だけでやっているところもあったりするので、その辺、そうじゃないというのが 地域の住民にもわかるような、一緒にやっていたらわかりますから、本気でやっている企 業なのか、そうでない企業なのか、その辺、お互いよく確認し合いながらやっていくと、 もう少しましな福祉社会になるのではないかなという感じがしています。 ○大橋座長  なかなかきついですが、一つは確かに言葉の問題はありますね。昔でいけば駆け込み寺 みたいなものがあるわけですから、ワンストップサービスなんていうのは一種の駆け込み 寺かもしれません。   ○大橋座長  生活便利屋という言葉があったので、生活支援便利屋サービスというのもあるかもしれ ませんし、後半の部分の企業なども参加してというのは地域福祉プラットフォームなんて いうのを随分頑張ってやってきているところもありますので、そういう実践も踏まえなが ら少し考えさせていただきたいと思います。 ○金井委員  今日も本当は3と4を中心にしなければいけないとは思うのですが、やや素人になりま すと、どうしても1、2の方が大きな問題になってしまうのかなということで、いくつか 感想なり、コメントを述べさせていただければと思います。  1つ目は、地域福祉を説得するなり、社会に広げるという場合に、反対のシナリオと一 緒に提示していただければなと思うんです。これは報告書の書き方としてですね。  地域福祉がどういうふうに定義されるかわかりませんが、「地域福祉がないとどうなる んですか」ということを書いていただければなと思います。地域福祉を望ましいという人 の場合には、地域福祉がない状態はひどい状態だというシナリオになると思うのですが、 それはそう単純には多分行かない。座長がずっとおっしゃられている社会哲学と言います か、社会のあり方の選択を問うということは、どういう社会の像を求めるのかという議論 を巻き起こすことであり、そういう意味でも、今後、「地域福祉がないという状態はどう なのか」と。それでいいという人もいるかもしれませんけれども、それ自体について議論 を問いかけていただければなというのが1つ目のお願いです。  2つ目はそれに関連するのですが、6の方もありますし、あるいは各委員からの議論で も一番大きく出ているのが、地域福祉の範囲は、いわゆる福祉といいますか、厚生労働省 の所管領域ではおさまらないというのが普通の感覚なんだろうと思うんですね。ところが、 私前回も申し上げましたが、ここで既存施策というのは社会・援護局の領域さえカバーし ていない範囲であって、まさに各委員が感じているニーズと事務局サイドが書ける範囲が、 つまり、ニーズと供給能力のギャップかもしれませんが、そこに大きな乖離があるのでは ないかなと思います。それはぜひ突破していただければなと思います。  厚生労働省に他省庁の分野への詳細なレビューをしろというふうに言うつもりはないの ですが、やはりある程度広い範囲について議論を巻き起こす形を言わないと、やっぱり地 域福祉、あるいは、榊原委員がおっしゃる用法を使えば、地域の暮らしの問題について、 言及したことにはならないのではないかなと思います。そういう意味では既存施策が、今 田委員がおっしゃられたように、あまり知らないような各個別的な小さなものではなくて、 誰でも知っているようなかなり大きなものをどんどん入れていく必要があるのではないか なと思います。  そういう意味では、レビューは難しいと思うんです。詳細なレビューには多分ならない と思いますが、むしろ地域のニーズを発見した場合、どの制度につないでいくかという場 合に、厚生労働省の中の制度もありますが、その他、建物の話から、防犯防災から、色々 幅広い。深い内容は言及できなくていいと思うのですが、大きな方向としていろいろなも のがあるということをぜひ言及して欲しいなというのが2つ目のお願いです。  3つ目は、課題認識というか、現状認識なのですが、ここで書かれている産業化・都市 化というのは、若干これは一時代前の地域イメージなのかなと思っています。多分、農村 社会的な地域があって、その後、産業化ないし都市化、あるいは専門化ということで、専 門分化と経済・人口の右肩上がりの中で、しかし専門化によって何か対処できるという時 代が一応あったと。その2つの時代が終わって、村落共同体型の地域はもうないけれども、 産業化・都市化、あるいは成長社会におけるような活力も期待できないと。ではこれから の時代はどうなるのかということだと思うんですね。  そのときに、地域社会に簡単に期待できるはずはないわけでありまして、この研究会で はその先の成熟時代のビジョンというものを打ち出すことが必要なのではないかなと思い ます。そういう意味では村落共同体や成長時代のように、恐らく地域を担い手として期待 するというのはかなり無理なのではないかなと私なんかは率直に思います。  今回の骨子案でひじょうに評価できるのは「地域資源」という言葉を書いていないとい うことであります。これは私、ひじょうに高く評価したいと思います。通常、こういう類 の議論をすると、「地域における資源をつないでもっと活用して」という、国家総動員の ようなイメージになりやすいのですが、それはもう期待しないという方向がとられている のはいいと思うのです。最終的には国民負担率を変えていくというような、成熟社会にお ける国民負担のあり方に議論はつながらざるを得ないと思うのですが、その中でニーズを 発見するとか、あるいは制度につなげていくというような地域の役割というものが打ち出 せればなと思っているところです。  4番目は、最近の流れの中で都市化・産業化が終わって成熟社会になった段階でも、地 域社会が持っている負の面というものが解消されない限り、地域福祉的なものを幾ら説得 しても難しいのではないかなと思います。  具体的には、簡単に言えばオートロックマンションになるのは地域における相互関係が 煩わしいのではないでしょうか。簡単に言えば地域が福祉を増やすのではなくて、地域が 福祉を抑圧しているとか、あるいは地域社会でつき合うということによって我々の暮らし が悪くなり、あるいは不快なものが増えるというところが現実としてあるからではないか と思うんですね。  そういうようなものがある中でいくら地域福祉と言っても難しいのではないかと。だか らそこを超えるような報告書にして欲しい。それは第1点目に言った意味から言うと、そ ういう煩わしさがあるけれども、あえて地域福祉をとるのか、煩わしさを避けて地域福祉 は諦めるのか、という社会選択をするのかを問うのが一つ。もう一つは、煩わしいのを減 らす対策をとるから、こういう地域福祉のある社会があり得るんだと説く。2通りあり得 ると思います。ともかく、地域社会と言いますか、地域共同体と称するものの抑圧的な側 面というか、あるいはそれに対する危機感とか、煩わしさとか、そういうものを正面から 議論しない限り、やはり地域福祉を世に問うことは無理なのではないかなという気がしま す。  例えば防犯・防災問題というのは世間の関心も高いひじょうに大きな切り口だとは思い ますが、防犯・防災問題と称する無神経さや抑圧という問題は当然あり得るわけでありま して、これはかなり重大な問題なわけで、そこは不安を解消しない限り、社会像としては 問い切れないのではないかなと思うのです。まさに開かれた地域社会というのはそういう 事態を避けたいということだと思うのですが、そういうものをどういうふうにつくってい けるのかと思います。  恐らくそうやっている地域社会はたくさんあると思うんですね。だからそういう実践を ある意味で証拠としてみせつつ、村落社会的な意味の地域共同体ではないというようなビ ジョンをみせていかないと、やはりそういうのは煩わしいとか、あるいは面倒くさいとか、 無神経だとか押しつけがましいとか、あるいはかえって抑圧的であるということの懸念と いいますか、不安にこたえ切れないのではないかなという気がしています。 ○大橋座長  これもなかなか大きな問題を投げかけていただきましたが、確かに社会福祉関係者はや やもすると性善説的に考えている部分があるので、それを反対のシナリオ的に予想問答的 に考えてみるというのはとても大事な視点ですね。我々がやや独善的に陥りやすい部分を チェックするという意味では大事なことかと思います。  金井委員にちょっとお聞きしたいのですが、これから少子高齢社会になったときに、壮 年層を中心とした地域と、高齢者がいっぱい出てくる地域、あるいは子どもの育っている 地域、どうもどこに基軸を置いて地域を考えるかで随分違うのではないでしょうか。その 煩わしいというのは、ある意味で壮年層にとっては煩わしくてしょうがないかもしれない。 でも年老いてくると人恋しくてしょうがないとか、あるいは子どもというのはとても親だ けでは育たないとか、その辺の論議も一方でしておかないと、機能論だけの地域社会論で はどうもうまくいかないのかなと思います。  つまり、少子高齢化社会というのはそういうことなので、世界的にみてそこの老年高齢 者がふえてくる、物悲しくなってくる、人恋しくなってくるというところの生活をどう我 々は支えていくかということなんだろうと思うので、どこまで書き込めるかわかりません が、そんなこともあるのではないかということなんですよね。  社会サービスと社会保障と社会福祉、その中の地域福祉なんていうのをどう考えるか、 これも結構大きな問題で、どこまでこれを書き込めるか、大変難しい部分はあるかと思い ますが、私はやっぱり意識してそこはどこか言葉として書いておく必要があるのかなと思 います。社会サービスと社会保障と対人援助としての社会福祉、とりわけ地域福祉という ようなことの関係を考える時期に今来ているのかなというようなことは個人的には思って いるんですけどね。これはまた事務局も含めて少し整理をさせていただきたいと思います。 ○和田委員  4の(1)のところに、住民主体となり参加する地域福祉となっているのですが、さっきか らずっと出てくる共助の新しいイメージを打ち出して、一人一人ではもう難しいと。市場 やそういうものだけではというところを、もっとイメージをはっきりさせるために、いわ ば共同計画とか企画というのと活動というのが入っているのですが、共同出資と共同運営 というのを入れた新しいイメージを打ち出したらどうかなと思います。しかしそれはさっ きからお話が出ているように、地域すべてを巻き込んだというふうにならなくていいので はないかと思いますし、こういうものが生まれてきて、そこと地域との関係がうまくつな がってくるというふうな感じで考えていったらどうかなと思います。 ○佐藤委員  1点。私も含めてですが、どうしても都市部の議論になってしまいがちです。限界集落 という話は出るのですが、具体的なイメージとして中山間部の高齢化率が40%とか、地域 性の中で考えないといけないのは、かなり日本の中ではそういうところがたくさんあって、 そこに対する具体的な対応なり、今の生活ニーズなりということの具体的な議論をしてい かないといけないと思います。 ○大橋座長  さっき小林委員が、都市にも限界集落みたいなものがあるのではないかという、いわば そういう機能が失われてしまっているという、そういう意味での書き込み方というのはあ る程度共通性としてあるかなと思いますし、さっき和田委員が言われた共同利用というの は冒頭に言ったようなことですよね。 ○榊原委員  佐藤委員のご指摘をちょっと受けて私も思い出したのですが、福祉の範囲を限定しない というところに防犯・防災とか、建築・まちづくりとか、3ページ目のところにいろいろ 書いてあるのですが、ひょっとしてそこに就労も入っていいのかなという感じがします。 社会保障のカテゴリーで分けたときに、よく福祉の中で雇用政策も入っていますよね。限 界集落なんかは私、岩手とか、秋田とかに取材に行ったことがあるのですが、とても風光 明媚で伸び伸びとしていて、元気な高齢者の人たちもいっぱいいて、家も広くて、こんな ところで子育てできたらいいでしょうねと言ったら、若者はみんな首都圏に行っちゃいま すと、どこでも口をそろえておっしゃるんですよね。それは仕事がないから。秋田市にも 行けない。秋田市ですら、もう仕事がないということで、首都圏に行っちゃうというふう な悪循環を断つために、地域の福祉を維持していくためには、地方の方では就労も何かの 形で入れられないかなというような気がします。  もう一つ、今田委員がおっしゃっていた情報提供のところ、実は私も今回のこの研究会 で本当に知らないこと、多々勉強させていただいたという立場なのですが、厚労省の記者 クラブにも何度もいたのに、知らない制度だらけでした。これは今まで福祉はとても限定 された人にだけ提供するというものだったので、あまり一般国民に知らせる必要もないし、 知らせる努力もする必要はないということが前提としてあったと思うのですが、これから もっと普遍化してみんなでやっていこうというんだったら、情報提供のところは行政の方 の責任のすごく重要な柱になるのではないかと。だから3ページ目の行政の役割のところ に、ぜひその情報提供と入れていただく必要があるなという気がします。  例えばフランスで子育ての取材に行ったときなんかは、一般国民、それこそ数年前に日 本から行ったような人まで、みんな制度をものすごくよく知っているんです。セキュリテ ィソシアルってどういうシステムになっているのか、とてもいろいろな意味でよく知って いて、それは税を自分で払っているというところで関心が高くなっているのもあると思う のですが、とても使いやすいいろいろな冊子がダーッとあるんですね。妊娠した途端に、 こういう人にはこういう支援がありますよという、とても読みやすくてわかりやすいパン フレットがドンと来る。それがいろいろなシステムでどうもあるようで、そこにお金を使 う状況があるからそういうこともできていると思うのですが、最近、自治体の方でも情報 提供するようないろいろなホームページの取り組みとか始まっていますが、ここはもっと きめ細かく、もっと行政の最大の責任の一つみたいな感じでやっていただくと、アクセス したり、眠っていた地域の中のマンパワーが活性化されたり、つながったりとかというこ とにもなっていくのではと。  あと、清原委員もおっしゃっていましたが、コーディネート力、コーディネートする機 能というのは、専従で福祉ができる人だからこそできる仕事というのがあるはずで、そう いう人たちがつなげるところの専門性とか、コミットというのはとても大切だと思うので、 そこもぜひ行政の役割には入れていただきたいなと思います。 ○小林委員  地域の特徴については、先ほどの議論にありましたように、互酬性というのでしょうか、 お互いさまということが重要だと思うので、主体性はもちろん重要なのですが、これを自 己実現の方向だけでとらえるのではなく、貢献みたいな方向でとらえる必要もあるのでは ないかと思います。これまで、皆さんが地域でいろいろな活動をしておられるところを見 せていただきましたが、本当に一生懸命地域に貢献していらっしゃるという気がします。 先ほどの民生委員の場合もそうですし、先日佐藤委員の宝塚市を訪問させていただいたの ですが、地域の住民が本当に素晴らしい貢献しておられて、力を合わせて何かをつくって いるという気がしましたので、できたら地域貢献みたいな概念があるといいのではないか なと思いました。 ○清原委員  皆様のご意見を聞いていて改めて私の立場から1つ加えたいなと思いましたのは、2の 「現状認識と課題設定」というところなのですが、ただいま、三鷹市だけではなく、すべ ての自治体が来年度予算に向けて予算編成のさなかで、施政方針等、まだ議会に提案して いませんので概略のお話しかできませんが、例えば一般会計で約600億円以下の三鷹市の ような自治体でも、民生費と呼ばれる福祉等にかける予算をまとめますと4割を超えてい るのが現状です。様々な国の制度との関係もありますが、私たちがきめ細かく、市民の皆 様の、この地域で暮らし続けたい、よりよく暮らしたいというニーズに応えていると、一 般会計予算で4割、その他に国保会計とか、介護保険の会計とか、特別会計が他にあるわ けですから、いかに自治体の予算の中で、いわゆる福祉に広い意味で関わる予算が多いか ということが象徴的にわかると思います。  そういう中で、この現状認識と課題の中で、だからこそ私たちがいかにこうした財源を 有効に「選択と集中」で使いつつ、しかも先ほど榊原委員が言われたとおり、いずれか必 ずお世話になる、あるいは活用させていただくサービスがある福祉というものが潤沢にあ ることが、先ほど申し上げた、「この地域で暮らし続けたい」ということにつながるので はないかと思います。  私も市長になってから「セーフティネット」という言葉を、横文字をあまり使っちゃい けないのですが、使わざるを得ない。この地域でぎりぎり自治体が「セーフティネット」 でなければいけない。それは命の現場だから。だから暮らすということを相互的に支える 最後のとりでとして地域があり続けるために、自治体もぎりぎり頑張るけれども、しかし 地域全体が福祉マインドをもって様々な取り組みをしていかなければいけない状況にある というのが課題認識の2のところに補強されればよいと思います。  3のところ、先ほど座長がおっしゃって本当にそうだな、ここはいい言葉が皆様の意見 を集約して列挙されているなと思いました。この丸の5つというのは大変私は意味がある と思います。最初の発言でちょっと誤解があるといけないので、共助だけを強調されては いけないんだけれども、しかし、あえて「支え合い」というところを強調することで、私 たちが取り組んだ事例で、4の「決定における住民主体、住民参加」が「活動における住 民主体、住民参加」にスムーズに移行したいくつかの例がありますので紹介します。  障害福祉計画等をつくるときに、三鷹市でも公募市民や地域の代表の皆様に参加してい ただいて、住民の声で計画をつくるのですが、最近では計画をつくることだけでは皆様は 充足しない。それだけでは自己実現しない。むしろ今、皆様からの提案があって、地域福 祉の観点でいえば、障害福祉の「推進協議会」というのを昨年の秋につくりましたが、絞 り込んでも40名の委員の方にお願いすることになりました。その方たちはそれぞれの組織 やNPOや地域の代表なので、そのもとにはたくさんの市民の皆様がいて、計画づくりには 参加できなかったけれども、推進に参加できる、そしてそれを幅広く広げていくことがで きるということで、今や計画づくりから実際の実践へとまさに住民の主体が移っているわ けです。これは必ずしも障害者福祉だけにとどまりません。ごみ問題でも、環境問題でも、 三鷹市が典型的な例ではなく、他の自治体でも今や担い手としてのこういう組織をつくる ことはもう住民ニーズとして出てきています。  その中で、実はこういう事業を市から請け負うためには、NPOとか、社会福祉法人がそ れぞれ考え合って、新たなNPOをつくっていただいたおかげで障害者の就労をお願いする ことができる組織が生まれたとか、それぞれの組織の個別の利益だとか、団体益とかを超 えて、新たな組織をつくっていくというようなことも生まれています。そのときに私たち 自治体がお願いをするということで、先ほど和田委員が共同出資とか、共同運営とか、そ ういう発想も重要ではないかとおっしゃったまさにその実態は各所で兆しがみえているの ではないかなと思います。  最後に、私はこの4の「地域福祉を推進するために必要な条件」の中で、先ほど来、皆 様が異口同音に、そうは言いながら「行政の役割」ということがやっぱり明確に何項目か 示されなければいけないということでご意見をいただきました。私としても、地域の福祉 の担い手に、今まで以上に自己実現と社会貢献、地域貢献の意識を持った市民や団体の方 に台頭していただけていると思いますし、だからこそ、そのために私たちが基盤的な問題、 あるいはいい意味で「正統性」をそうした市民主体の計画づくりや実践に提供できるよう な仕組みを自治体としてもつくることが求められます。条例を制定する必要がある場合に はしたらいいと思いますが、そうでなくても、プロセスの中の透明性と公開性と説明責任 を持つことによってできるのではないかなと感じました。 ○大橋座長  榊原委員なり、あるいは和田委員が言われたのは、3ページの上から2つ目の、住民が 主体となり、参加する環境の整備の中の専門的な助言者(コーディネーター)とか、活動 資金だとかの問題でありますし、あるいはさっきの媒介の問題は、担い手の条件だとかが あります。この辺はまだ深め切れていない部分はありますが、また次回、論議できるかと 思いますので、もう少しイメージを膨らませていただければと思っております。  それにしても、大和言葉で言うとどう言うんですか。「相身互い」とかというのは大和 言葉なのでしょうか。「おかげさまで」というのもそうなんでしょうか。「おかげさま」 というのはなくなっちゃってきたんですよね。やっぱり社会貢献ですかね。そんなことも 含めて、どういう言葉で使うのか、ぜひ校閲をお願いしたいなと思いますが、それでは時 間がきましたので、中村局長、いかがでしょうか。 ○中村局長  どうもありがとうございました。大変たくさんご指摘もいただきましたし、いろいろご 意見、ご教授、ご示唆もいただきましたので、もう少し我々も次の回に向けて深めてみた いと思っております。  冒頭から、これは構成の問題というよりは行政の役割が不明確ではないかというような 感じのご議論が多かったように思います。例えば私どもは圏域の設定が必要ではないかと。 何となくイメージとして、そういう圏域設定をするのは行政の役割かなと思いながら、あ るいは環境整備も、今、清原委員からお話がありましたけれども、3ページの2つ目の丸 の環境の整備というようなことも基本的には行政の役割かな。3ページの上から4つ目の 適切な圏域の設定なんかもそうかなと思います。もっと申し上げますと、この報告書がま とまれば、こういう方向であるべき地域福祉の方向づけが出てくると、それができるよう にやはり努力するのが国、地方公共団体、とりわけ基礎的自治体である市町村かなと思っ ておりましたので、もう少し書き方を工夫するなり、行政の役割というのも、3ページの 行政の役割に書いてある以外に整理してみる必要があるかなと思いました。  また、金井委員から、少し既存施策にしても限定的に過ぎないかというお話があったと 思います。例えば、私どもの社会・援護局の所管の行政以外にも、福祉行政も制度として、 いわゆる議論の中では制度的なサービスというか、フォーマルサービスとか、あるいは事 業者が行うサービスというような観点で整理してまいりましたが、そういったものも委員 の皆さんからお話があった地域という概念を、清原委員がまた言っておられましたけれど も、概念を入れて整理してみるということになると、それぞれの制度でやっている相談支 援事業であるとか、地域包括支援センターであるとか、そういったものも土台である地域 を軸に考えると、各制度ではそれぞれに書いてありますが、実は一つの地域というくくり のもとで使えるのではないかと思います。  そうなると、それが総合相談窓口の有力な拠点になるとか、そういうことも考えられま すので、そういった意味では、もし地域福祉で地域というもののグリップをもう一回きか せようということで既存の施策を再構成するとすると、様々な面で既存施策の方でも考え なければならない問題が出てくる。これまで福祉制度は縦割りの制度で、法律が個別領域 ごとになっていますので、個別領域ごとにずっと進んできましたが、今もしここで地域と いうことで掌握できるのであれば、個別制度も地域という切り口でもう一回再整理する契 機にもなるのではないかと思っております。  この報告書で全部書けるかどうかは別として、この報告書をまとめること自体が、そう いう視点をこれからの福祉行政に提供していただけるのではないかと思っておりますので、 ぜひよろしくお願いしたいと思います。 ○大橋座長  ありがとうございました。今日は本当に活発なご意見をいただきました。次回が2月27 日ということなので、時間があまりなくて、今日いただいた意見をどれだけ事務局でこな して整理できるか、本当に申しわけないのですが、事務局に頑張っていただきまして、ま た次回、活発なご意見をいただければと思います。  それでは事務局の方からご案内をよろしくお願いいたします。 ○事務局  次回は2月27日水曜日、10時から12時、場所は新霞が関ビルの5階です。 ○大橋座長  それではこれでおしまいにします。どうもお忙しいところ、ありがとうございました。 (了) - 2 -