08/02/14 第1回今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会議事録 第1回今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会 1 日時  平成20年2月14日(木)14:00〜 2 場所  厚生労働省専用19・20会議室 3 出席者     委員 阿部委員、有田委員、鎌田委員       橋本委員、山川委員   事務局 太田職業安定局長、大槻職業安定局次長、       鈴木需給調整事業課長、田中派遣・請負労働企画官、       松原需給調整事業課長補佐、松浦需給調整事業課長補佐、       竹野需給調整事業課長補佐、飯郷需給調整事業課需給調整係長 4 議題  (1)今後の研究会の進め方について       (2)その他   ○田中企画官   皆様お揃いですので、ただいまから「第1回今後の労働者派遣制度の在り方に関する 研究会」を開催いたします。委員の皆様方におかれましては、ご多忙のところ、ご参集 いただきまして大変ありがとうございます。座長が選出されるまでの間、事務局で司会 を務めさせていただきますのでよろしくお願いいたします。まず、当研究会の開催に当 たりまして、職業安定局長よりご挨拶申し上げます。   ○太田局長  皆様方におかれましては、大変お忙しいところ、当研究会にご参集いただきまして本 当にありがとうございます。ご案内のとおり、派遣制度につきましては制度創設から度 重なる改正を経て、既に20年以上が経過していますが、この間派遣元事業主・派遣先あ るいは派遣労働者の数はそれぞれ増加してきていまして、直近の数字で申し上げますと、 平成18年度の事業報告集計結果では、派遣労働者数は321万人という状況まで来ています。 これまで何回か派遣法の改正が行われてきたわけでございますが、これは経済産業構造 の変化あるいは働く方の価値観の多様化など、企業と労働側のニーズを踏まえると同時 に、その中で労働者の保護に欠けることがないように留意して実施してきたものですが、 一方で最近は、いわゆる偽装請負の問題、さらには日雇派 遣の問題等々、いろいろな問題点が指摘されているところでもあり、制度全体の見直し が求められているという状況でございます。 このため、労働政策審議会の需給制度部会におきましても、平成17年5月からは15年 改正のフォローアップ、昨年9月からは具体的な課題について検討を行ってきました。 そのような中で、しかしながら登録型の派遣労働や派遣受入期間等の労働者派遣制度の 在り方の根幹に関わる問題につきましては、労使それぞれの根本的な意見の相違もあっ て、隔たりがかなり大きいという状況がございました。このため昨年の12月25日に取り まとめられました部会の中間報告で整理されたところでございますが、2点ありまして、 1点は日雇派遣あるいは派遣元事業者の情報公開、さらには、効果的な指導監督の実施 については、現行法制下における労働者保護の仕組みがより適切に機能するよう、必要 な省令・指針の整備について速やかに措置をするということで、いま準備を進めている という状況でございます。  2点目が当研究会に関わる部分ですが、労働者派遣制度の在り方の根幹に関わる問題 につきましては、厚生労働省に学識経験者からなる研究会を設けて、労働者派遣制度の 趣旨、登録型派遣の考え方、派遣先の責任の在り方、派遣労働者の処遇の在り方等々を 踏まえて、部会で出された検討課題を中心に幅広く法的、制度的な考え方について整理 を行う、このようなことでございました。このような経過の中、今般、労働法あるいは 労働経済の専門家である皆様方にお集まりいただきまして、今後の労働者派遣制度の在 り方について専門的な検討を行っていただくということでこの研究会を開催することと したわけでございます。  この研究会の検討結果につきましては、労働力需給制度部会へご報告させていただき まして、これに基づいて具体的な制度の見直しの検討をさらに進めていきたいと考えて いるところでございます。派遣制度の見直しにつきましては国会等々でもたびたび議論 になっているところでして、福田総理も働く人を大切にとの視点に立って検討を進めた いという答弁をしているところでございます。このような状況の中ですので、本研究会 では制度の根幹に関わる問題について十分なご議論、ご検討をいただきまして、実りあ る結果を出していただくよう是非お願いしたいと考えているところでございます。どう ぞよろしくお願いいたします。 ○田中企画官   続きまして、ご参集いただいております委員の皆様方を五十音順にご紹介いたします。 獨協大学経済学部准教授の阿部正浩委員です。専修大学法学部教授の有田謙司委員です。 東洋大学法学部教授の鎌田耕一委員です。学習院大学法学部教授の橋本陽子委員です。 慶應義塾大学大学院法務研究科教授の山川隆一委員です。併せて事務局のメンバーもご 紹介いたします。ただいまご挨拶させていただきました職業安定局長の太田です。職業 安定局次長の大槻です。需給調整事業課長の鈴木です。需給調整事業課長補佐の松原で す。同じく課長補佐の松浦です。同じく課長補佐の竹野です。担当課担当係長の飯郷で す。そして私、田中です。どうぞよろしくお願いいたします。  次に本研究会の開催要綱について、事務局より説明いたします。 ○竹野補佐   資料1は研究会の開催要綱です。1つ目の「趣旨・目的」を読み上げます。「労働者派 遣制度については、制度創設から20年以上経過し、派遣元事業主、派遣先、派遣労働者 の数がそれぞれ増加する中で、日雇派遣を含む登録型派遣について雇用が不安定である といった問題などが指摘されており、労働者派遣制度の見直しが求められている。労働 政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会においても労働者派遣制度についての議 論がなされてきたが、そこでの意見の相違については、労働者派遣制度を原則自由であ るべきと考えるのか、本来は限定的なものであるべきと考えるのかという基本的考え方 の違いに起因するものであり、今後の労働者派遣制度の在り方を考えるに当たっては、 根本的な検討が必要となっている。このため、学識経験者の参画する研究会を開催し、 労働者派遣制度の趣旨等を踏まえつつ、部会で出された検討課題や労働者派遣制度の適 正な運営に係る事項等を中心に、法的、制度的な考え方について専門的な検討を行う。」 とされております。  研究会の運営については記載のとおりです。3の検討事項として「登録型派遣の考え 方等労働者派遣制度の在り方の根幹に関わる問題について、労働者派遣制度の趣旨、登 録型派遣の考え方、派遣先の責任の在り方、派遣労働者の処遇の在り方を踏まえつつ、 部会で出された検討課題等を中心に幅広く、法的、制度的な考え方について整理を行う。」 とされております。資料2は参集者の名簿です。 ○田中企画官   ただいまご説明しました開催要綱のうち、2の研究会の運営の2点目ですが、「研究会 の座長は参集者の互選により選出する」とされておりますので、この要綱に従い、座長 の選出を行いたいと思います。これについては事前に事務局が各委員の皆様方にご相談 させていただいておりまして、鎌田委員に座長をお願いしたいと考えております。よろ しいでしょうか。   (異議なし) ○田中企画官   異議なしということで、本研究会の座長は鎌田委員にお願いしたいと思います。今後 の議事進行については鎌田座長にお願いいたします。   ○鎌田座長   研究会の進行役を仰せつかりました鎌田です。何卒よろしくお願いいたします。この 研究会は創設から20年以上経過した労働者派遣制度の在り方について根本的な検討を加 え、あるべき姿を探求するという大きな課題を与えられております。労働者派遣制度を 巡っては、創設当初からさまざまな意見が出され、いまなお制度の在り方、あるべき姿 について基本的な位置を見出せない状況にあると思います。参集されました皆様方には、 その学識経験等をいかんなく発揮して忌憚のないご意見をいただき、何とか意義のある 成果を目指したいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。議事に入る前に、 本研究会の開催に当たり、事務局から会議の公開等について説明をお願いいたします。   ○竹野補佐   資料3の議事の公開について説明いたします。これは本研究会の議事の公開に係る考 え方をまとめたものです。「研究会は原則公開とする。ただし、以下に該当する場合で あって、座長が非公開が妥当であると判断した場合には非公開とする。」としてはどう かということです。具体的には(1)〜(4)とありますが、1点目としては個人に関する情報を 保護する必要がある場合。2点目として、公開すると外部からの圧力や干渉等の影響を受 けること等により、委員の適切な選考が困難となるおそれがあるといった場合。3点目は、 公開することにより市場に影響を及ぼすなど、国民の誤解や憶測を招き、不当に国民の 間に混乱を生じさせるおそれがある場合。4点目として、公開することにより、特定の者 に不当な利益を与え、または不利益を及ぼすおそれがある場合ということです。1点目か ら4点目については、厚生労働省において定めている審議会等会合の公開に関する指針の 考え方に準拠しているものです。   ○鎌田座長   ただいまの説明について、ご質問、ご意見等があればお願いいたします。 ないよう ですので、そのように取り計らって行いたいと思います。ここで職業安定局長と需給調 整事業課長は、所用のため退席されると伺っております。   ○太田課長   どうしても出席しなければいけない会合が急遽入りまして、その後予算委員会にも呼 ばれておりますので、誠に申し訳ありませんがここで退席させていただきます。   ○鎌田座長   続きまして、本日の議題に入ります。本日は本研究会の今後の進め方について議論し ていただくことにしておりますが、まず労働者派遣制度の現状やこれまでの議論の経緯 等について、事務局に資料を用意していただいておりますので説明をお願いいたします。   ○竹野補佐   資料4〜8を説明いたします。資料4は「労働者派遣制度の現状等に関する資料」です。 制度の概要、各規定の内容等、データ等と大きく3つに分けた構成となっております。 2頁をご覧いただくと、「労働者派遣とは」として定義が記載されております。「労働 者派遣とは自己の雇用する労働者を当該雇用関係の下に、かつ他人の指揮命令を受けて、 当該他人のために労働に従事させること」と定義しております。左側の図にあるように、 派遣元と労働者が雇用関係にあり、派遣先と労働者が指揮命令関係にあるという三者関 係です。これと非常に似た形態として、参考1に「労働者供給」があります。これは供 給元と労働者が支配従属関係にあり、供給先と労働者が使用関係にあるものですが、強 制労働や中間搾取の弊害が生ずるおそれがあるので、それを排除するために職業安定法 の規定により、業として行うことが禁止されております。一方、労働者派遣については 従来の労働者供給の一形態に当たるものですが、労働者派遣法により、一定のルールの 下に適法に事業として行えることになったということです。  3頁は「労働者派遣事業制度の概要」です。まず規定の概略を一通り説明し、それぞ れの趣旨については後ほど説明いたします。1点目は適用除外業務についてですが、港 湾運送、建設、警備、一定の医療関連業務については労働者派遣事業を行うことができ ないとされております。2点目の許可・届出制として、派遣労働者が常用雇用の労働者 のみである場合については、特定労働者派遣事業として届出制、それ以外の場合につい ては一般労働者派遣事業として許可制としております。3点目は労働者派遣契約につい てですが、派遣元事業主と派遣先との間で結ぶ契約について、業務内容、就業場所、派 遣期間といった一定の事項を定めることとしております。下のほうですが、労働者派遣 契約の締結に際し、派遣先が面接、履歴書の送付を受ける等の派遣労働者を特定するこ とを目的とする行為(事前面接)を行うことを禁止しております。  4頁、4点目として派遣受入期間の制限です。派遣先が同一の業務に派遣を受け入れる ことができる期間は原則1年、最長3年に制限されております。一方で、派遣受入期間の 制限がない業務がありまして、4の(2)の(1)〜(5)に書いてあるような業務については、 派遣受入期間の制限がないということです。いわゆる「26業務」については、※に記載 してあるようなものですが、期間制限の適用がありません。5点目は雇用契約の申込み 義務として、次のア)、イ)の場合には、派遣先は派遣労働者に対する雇用契約の申込 みが義務づけられております。1点目として、期間制限のある業務については派遣受入 期間の制限の抵触日以降も派遣労働者を使用しようとする場合は雇用契約の申込みをし なければならないとされております。2点目の期間制限のない業務については、同一の 業務に同一の派遣労働者を3年を超えて受け入れており、その同一の業務に新たに労働 者を雇い入れようとする場合について、雇用契約の申込み義務が課せられます。  5頁、6点目として紹介予定派遣についてです。これについては派遣元事業主が職業紹 介事業者として派遣労働者・派遣先に対して職業紹介を行うことを予定するものとして おります。職業紹介と労働者派遣をセットで行うものとして位置づけられております。 ※の2点目は、紹介予定派遣の場合、派遣先は面接、履歴書送付要請等の派遣労働者を 特定することを目的とする行為、いわゆる事前面接を行うことができることとされてお ります。7点目は派遣元事業主・派遣先の講ずべき措置で、(1)(2)に記載があるよ うな措置についてそれぞれが講じなければならないことになっております。(3)は労働 基準法等の適用に関する特例で、労働基準法や労働安全衛生法等の適用については、原 則として雇用主たる派遣元が責任を負う立場にあるのですが、派遣中の労働者の保護に 欠けることのないようにするという観点から、一定の規定について責任の分配をすると いった規定が設けられております。8点目は相談・援助、指導監督等で、違法事案に対 する派遣労働者等の申告、公共職業安定所による派遣労働者等に対する相談・援助、労 働者派遣事業適正運営協力員による専門的な助言といったことが法律上位置づけられて おります。指導監督等については、都道府県労働局により行っております。  6頁は労働者派遣法の制定・改正の経緯についてです。労働者派遣法については昭和 60年に制定されました。当初は常用代替のおそれの少ない専門的知識等を必要とする業 務だけが適用対象業務とされておりましたが、平成8年の改正の際に、適用対象業務が拡 大され、平成11年、点線の囲いの中ですが、「労働力の多様なニーズに対応した需給の 迅速且つ的確な結合を促進し、適正な就業の機会の拡大を図るため」、また「ILO第181 号条約が採択されたことに対応するため」ということで、適用対象業務を原則的に自由 化しました。このときに建設、港湾運送、警備、医療、物の製造については禁止業務と されました。新たに適用対象業務となった26業務以外の業務については、派遣受入期間 を1年に制限するという規定がこのときに設けられております。平成15年の改正の時に、 26業務以外の業務について、派遣受入期間が1年から最大3年まで延長されました。また、 物の製造業務についての労働者派遣を解禁しました。派遣労働者への雇用契約申込み義 務も創設するという改正を行っております。  8頁以降では、各規定の趣旨等について説明を加えております。8頁は労働者供給で、 2頁にもありましたが、労働者供給を細かく表した図を付けております。1つは供給元と 労働者が雇用関係以外の支配従属関係にある、供給先と労働者が雇用関係または指揮命 令関係にあるといった形態。もう1つは供給元と労働者、供給先と労働者が双方雇用関 係にある場合で、このような形が労働者供給というものです。冒頭にも述べましたが、 元と労働者が雇用関係にあり、先と労働者が指揮命令関係にあるといった場合について は労働者派遣となり、労働者供給ではないとされております。参考として、二重派遣と いうことで下に付けております。派遣先が派遣を受けた労働者を、さらに別の者に派遣 することについては、雇用関係のない労働者をさらに派遣することになり、労働者供給 に該当することから、職業安定法に基づき禁止されております。  9頁は、適用除外業務に労働者派遣を行ってはならない理由についてです。1つ目、2 つ目の港湾運送業務、建設業務については業務の特殊性があり、それぞれ港湾労働法、 建設労働者雇用改善法に基づき、特別な労働力需給調整制度が設けられていることから、 適用除外業務とされております。警備業務については、請負形態により業務を処理する ことが警備業法上求められているので、適用除外業務とされております。医療関係業務 の一部については、チーム医療に支障が生ずるおそれがあることから、これも業務の適 正な実施の観点から難しいということで適当ではないこととしております。  10頁は許可・届出制、登録型・常用型の関係についてです。いわゆる登録型派遣、常 用型派遣という言葉はよく使われておりますが、法令上の用語ではありませんが、説明 を加えています。登録型派遣はあらかじめ労働者を登録しておき、派遣先の企業から求 めがあった場合、適合する労働者を雇い入れた上で派遣先に派遣するという形です。常 用型派遣は、派遣元事業主が労働者を常用雇用しておき、労働者を派遣先に派遣すると いう形です。一般労働者派遣事業については登録型のみ、常用型と登録型の両方を行う 労働者派遣事業、特定労働者派遣事業は常用型のみを行う労働者派遣事業として規定さ れており、特定のほうは届出制になっております。その理由がいちばん下に記載してあ りますが、派遣労働者が常用型のみである形態の事業については、すべての派遣労働者 の雇用の安定が図られているという点で、その他の形態に比べ、より望ましい形態であ ることから届出制としているところです。  11頁は欠格事由・許可基準についてです。一般労働者派遣事業、特定労働者派遣事業 ともに欠格事由があります。法律に違反し、禁固以上の刑に処せられた者等々、要件に 該当する者については労働者派遣事業を行うことはできないとされております。許可基 準についてですが、一般労働者派遣事業については、(1)〜(4)のような条件で許可基準が 設けられております。(1)専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的として 行われるものでないこと、(2)派遣労働者に係る雇用管理を適正に行うに足りる能力を有 する者であること、などといった許可基準があります。  12頁は派遣受入期間の制限です。先ほど原則1年、最長3年という期間制限が設けられ ていることを申し上げましたが、その趣旨として「労働者派遣事業は常用雇用の代替の おそれが少ないと考えられる臨時的・一時的な労働力の需給調整のためのシステムとし て位置づけられている」といった考え方に基づき、派遣先の常用雇用代替防止の実効を 期すという趣旨で、派遣先の受入期間の制限が設けられております。先ほど述べたよう に、平成11年改正において、ネガティブリスト化されたことに伴い、設けられた規定で す。一方で、下の囲みですが、期間制限を受けない業務として、いわゆる「26業務」等、 これは常用雇用の代替のおそれが客観的に低い業務として掲げてあります。  13頁は、いわゆる「26業務」の変遷です。平成11年のネガティブリスト化以前は、こ こに書いてある業務が労働者派遣事業の適用対象でしたが、平成11年の改正以後は期間 制限のない業務として位置づけられているというものです。改正につれて、業務がだん だん増加しております。  14頁は雇用契約の申込み義務についてです。期間制限のある業務とない業務とではそ れぞれ趣旨が異なっておりますので、別のペーパーにしております。1つ目の期間制限 のある業務については、一定の要件を満たす場合に、派遣先は派遣労働者に対し、雇用 契約の申込みをしなければならないとされており、要件としては、派遣元から期間制限 抵触日以降継続して派遣を行わない旨の通知を受けた、派遣受入期間の制限の抵触日以 降も派遣労働者を使用しようとしている、派遣労働者が派遣先に雇用されることを希望 する、といった要件があります。この趣旨は、派遣先に雇用契約申込み義務を課すこと で、派遣先による派遣受入期間の制限の違反を未然に防止するということです。期間制 限を超えて派遣を受け入れれば、当然法違反になりますので、それを 未然に防止するため、雇用契約申込み義務が課せられているということです。  15頁は、雇用契約申込み義務の期間制限のない業務についての説明です。期間制限の ない業務については、同一の業務に同一の派遣労働者を3年を超えて受け入れており、 その業務に新たに労働者を雇い入れようとするときに、雇用契約の申込みをしなければ ならないとされております。この趣旨は、先ほどのものとは異なり、派遣労働者の雇用 の安定を図るため、派遣労働者の希望を踏まえて、派遣先に直接雇用される機会をより 多く確保するということです。期間制限のある業務については法違反の未然防止、期間 制限のない業務については派遣労働者の希望を踏まえた直接雇用機会の確保ということ で趣旨は異なっております。  16頁は紹介予定派遣についてです。これは労働者派遣のうち、派遣元事業主が職業紹 介を行うことを予定しているもので、直接雇用に移行することを念頭に行われるもので す。初めのステップとして労働者派遣を行い、その後職業紹介を行い、最終的には直接 雇用といった図を付けております。先ほど述べましたが、紹介予定派遣の場合は特定目 的行為、いわゆる事前面接ができます。また、同一の派遣労働者の紹介予定派遣は6カ 月を超えてはならないとされております。  17頁は、労働者派遣事業に係る法違反の是正措置についてです。派遣元・派遣先それ ぞれにこのような法違反の是正措置が設けられております。派遣元事業主に対しては指 導・助言を行い、その後改善命令、事業停止命令、許可の取消し等といった規定が設け られております。派遣先に対しては、まず指導・助言を行い、それから勧告をし、勧告 に従わなかった場合はその旨を公表するといった規定が設けられております。  18頁に請負と労働者派遣と偽装請負についての説明を付け加えております。(1)の請負 については、発注者と請負事業主が請負契約を結び、請負事業主と労働者の雇用関係に 基づいて仕事をするというもので、発注者と労働者の間に指揮命令関係はありません。 一方、(3)の偽装請負は形式上請負契約ですが、発注者と労働者の間に指揮命令関係があ ります。これは安全衛生等の事業者責任の所在が曖昧となり、危険防止措置が十分に講 じられないといったことがあって非常に問題だということです。  19頁はILO第181号条約についてです。国際的には民間職業仲介事業所に関する条約が 批准されており、これに労働者派遣事業も含まれております。もともと営利目的の職業 紹介事業については厳しく規制され、その漸進的廃止や規制について定めたILO第96号 条約が定められておりましたが、民間職業仲介事業所の労働市場における役割の増大と いった状況の変化があって、1997年(平成9年)にILO第181号条約が採択されました。 我が国においても、労働者派遣法と職業安定法をそれぞれ改正し、平成11年に批准して いるという内容です。  20頁は海外の労働者派遣制度についてです。アメリカ、イギリスについては基本的に は規制があまりない状況であり、ドイツ、フランスについてはそれぞれ一定の規制が設 けられているといった状況です。21頁は海外の労働者派遣の実態として、収集している データ等を付けております。  23頁からはデータ等の説明です。まず、労働者派遣事業所数、派遣先事業所数の推移 ですが、左側が派遣元の事業所数、右側が派遣先の事業所数で、それぞれかなり増加し ているというグラフです。24頁は派遣労働者の推移で、左側はいわゆる非正規雇用者数 の推移、このうち丸で囲っている部分が派遣社員です。増加はしていますが、非正規雇 用全体で見た場合、派遣労働者数はこのぐらいであるということで示しております。右 側は派遣労働者数、登録者数、常用換算の派遣労働者数の推移で、これもそれぞれ増加 しているというグラフです。  25頁は、派遣という働き方を選択する理由です。左側は派遣労働者が派遣という働き 方を選択する理由ですが、いちばん多いのが「働きたい仕事内容を選べるから」で40.2 %、下から4番目の「正社員として働きたいが、就職先が見つからなかったため」が33.2 %と多くなっております。右側は派遣先が派遣労働者を受け入れる理由で、企業側から 見たものです。最も多いのが「欠員補充等の必要な人員を迅測に確保できるため」、2番 目は「経費が割安のため」となっております。  26頁は派遣労働者の年収についてですが、アンケート調査の結果等から集計している ものです。全労働者数がいちばん上のグラフ、短時間労働者がいちばん下のグラフ、派 遣労働者が真ん中のグラフで、派遣労働者の賃金は年齢が上がるとともに上昇はしてお りますが、全労働者と比較すると上昇度合いは低くなっております。  27頁は派遣料金と派遣労働者の賃金の差についてです。一般に、いわゆるマージンと いうことがよく言われておりますが、労働者派遣の場合、派遣料金は派遣労働のサービ スに対する対価ですので、マージンという言い方が妥当かどうかということはあります が、それに類似するようなものとして推計しており、派遣料金から賃金の平均額を引く と、一般については5,006円、特定については8,792円といった状況です。差額に含まれ る内容としては法定福利費、教育訓練経費、派遣元事業所のスタッフの人件費、派遣元 事業所としての利益が考えられます。  28頁は派遣労働者の現状で、常用型、登録型をそれぞれ分けて説明しております。常 用型の派遣労働者については、若年男性が多く、1日8時間、週5日労働で月給制が多い。 登録型の派遣労働者については、若年女性が多く、1日7時間、週5日労働、時間給が多 いといった形です。  29頁は日雇派遣等、短期派遣の実態についてです。派遣労働者の職業としてはフリー ター、学生の割合が多く、主な取扱業務としては倉庫・搬送、製造、店舗・量販店とい ったところが多くなっております。また、いちばん下の「今後の希望」のところで、今 後の就業形態の希望を調査しております。現在のままで良いとする人は45.7%、正社員 を希望している人が29.6%で、現在のままで良いとする人がかなりおりますが、右側の 囲いの中をご覧いただくと、男性の一定の年齢層では正社員を希望している人が多いこ とがわかります。  30頁は労働者派遣事業に係る指導監督の実施件数ですが、これも年々かなり増加して いるのでグラフと表を付けております。以上が資料4の説明です。  引き続き、資料5の説明に移ります。資料5はこれまでの労働者派遣法の制定・改正に 係る報告等で、審議会等における労働者派遣制度の位置づけに関する記述を抜粋したも のです。まず、制定時(昭和59年)の報告書の2頁をご覧ください。下線部ですが、当 時は労働者供給が禁止されており、労働者派遣制度はまだなかったという状況ですが、 請負事業の形態を取りながらも、派遣先の指揮命令の下に労働者が就業しているという 形態があったということです。そういった就業の実態に照らして見ると、派遣元、派遣 先のどちらが責任を負うのかが不明確であったと。「労働力需給の迅速かつ的確な結合 を図り、労働者の保護と雇用の安定を図るためには、労働者派遣事業を制度化し、必要 なルールを定める必要がある」といったことで、労働者派遣事業が制度化されたという ことです。その際、(5)にあるように、「我が国における雇用慣行との調和に留意し、 常用雇用の代替を促すこととならないよう十分に配慮する必要がある」とされておりま す。  5頁は平成11年改正に係る平成10年5月の小委員会の報告です。IIの2点目、「今回の 制度見直しにおいては、平成9年6月にILO第181号条約が採択されたことによって労働者 派遣事業についての新たな国際基準が示されたことを踏まえるとともに、社会経済情勢 の変化への対応、労働者の多様な選択肢の確保等の観点から、常用雇用の代替のおそれ が少ないと考えられる臨時的・一時的な労働力の需給調整に関する対策として労働者派 遣事業制度を位置づけることが適当」とされております。  9頁は平成15年の改正時における労働政策審議会の建議です。平成11年改正時に示さ れた労働者派遣事業制度についての基本的な位置づけについて、ここでも再確認されて おりまして、下線部分ですが、「平成11年の労働者派遣法改正の際の基本的な考え方で ある労働者派遣事業制度の「臨時的・一時的な労働力の需給調整に関する対策」として の位置付け、及び、これに基づく派遣期間の一定の限定は、いわゆる長期雇用慣行の我 が国における位置付けを踏まえると、今回の見直しにおいては、引き続き維持すること が適当」という形で整理されております。以上が資料5の説明です。  次に、資料6に移ります。資料6は6-1から6-4まで用意しておりますが、これは労働力 需給制度部会ではどのような議論が行われてきたかに関する資料です。労働政策審議会 労働力需給制度部会では、平成17年5月から平成15年改正のフォローアップということ で検討を開始しました。平成19年7月26日の段階で、資料6-1にあるような労働者派遣制 度に関する検討課題を取りまとめ、この検討課題に即して議論していくことで了承を得 たというものです。  大きな柱として4点あり、1点目が「派遣労働者の雇用の安定」として登録型の派遣労 働、日々雇用の派遣労働、常用雇用型の派遣労働、派遣受入期間、派遣労働者への雇用 申込み義務といったものをどう考えるか。2点目は「労働力需給調整機能の強化」で、 事前面接等の派遣労働者の特定を目的とする行為、紹介予定派遣といったことについて 検討してはどうか。3点目は「派遣元事業主、派遣先事業主の講ずべき措置」、4点目は 「適正な労働者派遣事業の運用の確保」といったことです。このような課題に基づき、 検討を進めていくこととされました。  しかし、ご案内のとおり、労使の意見が非常に分かれたという状況がありまして、資 料6-2の横表の「労働者派遣制度に関する検討課題に係る労働力需給制度部会における 公労使意見について」で、労使それぞれからどのような意見が出されたかについて示し ております。左側の項目は先ほどの検討課題に沿った形です。例えば派遣労働者の雇用 の安定では、登録型の派遣労働や日々雇用の派遣労働に関しては、労働者代表意見とし て「原則禁止」「当面は専門26業務のみに絞るなど、非26業務は禁止する方向で検討す べき」といったことが言われているのに対して、使用者側からは「登録型を多様な働き 方の1つとして尊重すべき」、日々派遣については「日々派遣というだけで全面禁止と いう考え方は不合理」といったようなことが意見として出されております。  2頁は常用雇用型の派遣労働、期間制限、雇用申込み義務の関係です。労働者代表意 見としては「雇用申込み義務が不要とは言えない」「派遣可能期間の上限は延長するべ きではない」「直接雇用とみなす制度を導入すべき」といった意見が出されているのに 対して、使用者代表としては「常用雇用型については雇用契約申込み義務などの諸規制 は撤廃すべき」「受入期間制限については撤廃すべき」といった意見が出されておりま す。  3頁は労働力需給調整機能の強化です。いわゆる事前面接については「労働者代表と しては事前面接を解禁する必要はない」、使用者代表としては「事前面接を解禁すべき」 ということで、考え方が非常に分かれている点を紹介いたしました。  こういった状況がありましたので、資料6-3で労働力需給制度部会(平成19年12月25日 開催)において中間報告としてまとめられております。労使の意見の相違については、 労働者派遣制度を原則自由であるべきと考えるのか、本来は限定的なものであるべきと 考えるのかという基本的な考え方の違いに起因するものであり、「労働者派遣制度の根 本的な検討を行うことなく、個別の制度の仕組みの議論を続けても、有意義な結論に到 達することは困難である」ということで、方向性として2点取りまとめられております。 まず、登録型派遣の考え方等、労働者派遣制度の在り方の根幹に 関わる問題については、学識経験者からなる研究会を設け、労働者派遣制度の趣旨等を 踏まえつつ、部会で出された検討課題を中心に、法的、制度的な考え方について整理を 行うということで、本研究会をお願いすることになったわけです。もう1点は日雇派遣、 派遣元事業主の情報公開、指導監督の実施についてで、これは一定程度労使の意見の一 致がありましたので、必要な指針や省令の整備について検討するとまとめられておりま す。  資料6-4は1月28日に労働政策審議会に諮問、答申をいただいた省令・指針の内容です。 資料6-4の参考として横置きのペーパーを用意しておりますので、そちらで説明いたし ます。日雇派遣については指針を定めるということで、派遣契約、雇用契約の長期化、 派遣元による教育訓練の実施、就業条件明示の徹底、労働基準法等の義務の徹底、派遣 料金などの情報公開、安全衛生教育の徹底といった内容を盛り込み、新たに日雇派遣労 働者に対する対応として指針を制定するということです。省令の改正内容として、日雇 派遣の報告を義務化する、日雇派遣であっても、派遣先責任者の選任、就業の記録を付 けることを義務化するなどといったものです。こういう形で省令・指針を整備すること が位置づけられており、審議会で諮問、答申をいただいたということです。  次に、資料7に移ります。資料7に付けておりますのは雇用政策基本方針案です。これ は労働政策審議会の職業安定分科会の資料より抜粋したものです。現在、厚生労働省に おいては雇用政策の基本的な方向性について、雇用政策基本方針として定める準備をし ておりまして、まだ正式には公表されておりませんので、案という形で分科会の資料か ら抜粋しております。2頁から3頁にかけて、雇用政策の基本的な方向性として大きく3 点挙げております。1点目として「誰もが意欲と能力に応じて安心して働くことのでき る社会の実現」、2点目として「働く人すべての職業キャリア形成の促進」、3点目とし て「多様性を尊重する「仕事と生活の調和が可能な働き方」への見直し」ということで 掲げられております。2点目の働く人すべての職業キャリア形成の促進の中で、第2段落 の所ですが、「労使の信頼関係に基づき、長期的視点に立った雇用安定機能と人材育成 機能を有しつつ、労働条件の調整に柔軟に対応する長期雇用を基本とすることが引き続 き重要である」としており、長期雇用を基本とすることが重要であることが位置づけら れております。  労働者派遣制度に関しては4頁の3の(1)の(6)の3段落目の後段で、「労働者派遣事 業については、偽装請負や禁止業務派遣など法違反に対する厳正な指導監督を行い、適 正な運営の確保を図るとともに、日雇派遣労働者など様々な問題が指摘されていること を踏まえ、労働力需給の迅速かつ的確な結合を図りつつも、派遣労働者の雇用の安定と 福祉の増進を図る観点から、労働者派遣制度を見直し、派遣労働者が安心・納得して就 業できるような環境整備を図る」という形で位置づけられております。  次に、資料8に移ります。資料8は労働者派遣制度に関する提言ということで、各方面 からさまざまな意見をいただいておりますので紹介いたします。1点目は規制改革推進の ための第2次答申で、規制改革会議から昨年12月25日に出されているものです。内容と しては、派遣、請負の区分の具体的当てはめの一層の明確化、紹介予定派遣以外の労働 者派遣における事前面接の解禁、派遣労働者に対する雇用契約申込み義務の見直しとい ったことが見直すべき項目として答申されております。3頁、4頁は連合と日本経団連そ れぞれについて、こういった形で意見として公表されているということでお付けしてお ります。5〜7頁は自民党、公明党、共産党からもいろいろなご意見をいただいておりま すのでお付けいたしました。  8頁以降は各種要請、要望等です。厚生労働省に各種団体からさまざまなご意見をい ただくことがありますので、一定のものを記載しております。規制強化に関する要望も ありますし、規制緩和に関する要望もあります。13頁以降は、昨年11月に派遣労働ネッ トワークと厚生労働省が意見交換を行ったのですが、その際お持ちいただいた資料で、 派遣法改正の具体的な内容についていろいろな提案をいただいておりますので、その内 容を付けております。このようにさまざまな意見があり、今後もいただくことが予想さ れますので、その際にはまた改めて整理し、お示ししたいと考えております。以上、資 料4〜8で説明したことに基づきまして、研究会でご議論いただければと考えております。 ○鎌田座長   少し駆け足の説明でしたが、派遣法が制定されてから現在に至るまでについて、まと まった資料が出されております。ただいまの説明について、ご質問、ご意見等があれば 自由にご発言ください。本日は第1回でもありますので、資料にかかわらず、広く検討す べき課題あるいは基本的な考え方について、そのほか感想でも結構ですのでご発言いた だきたいと思います。少し駆け足だったので、皆さんが発言しやすいように、私のほう で塊としてまとめたいと思います。まず、最初の資料では派遣法が成立したときから現 在まで数度の改正が行われておりますが、その中でいくつかポイントとなったような事 柄について説明していただきました。現状での派遣制度についても、概括的ではありま すが、かなり詳しい説明があったと思います。  次に、そもそもこの研究会が設立された経緯とも関わるのですが、厚生労働省の労働 力需給制度部会の中でどのような議論がなされていたか。とりわけ、労働者代表と使用 者代表で、基本的な論点についてどのような意見の違いがあったのかということについ て、表になっておりましたが、こういったものが出されております。現在の労働者派遣 制度に関するさまざまな観点からの提言がなされているということで、それについての 資料も出されております。一言で述べると、冒頭説明があったように、労働者派遣制度 については原則自由にするという方向、考え方からのさまざまな意見と、限定されるべ きであるという考え方からのさまざまな意見、提言がなされていると思うのですが、制 度の細部にわたってもさまざまな問題、あるいは指摘もありますので、何でも結構です からご意見をお願いいたします。 ○山川委員   資料4の14頁の雇用契約の申込み義務について、期間制限がある場合とない場合と分 けて説明していただきましたが、雇用契約の申込み義務そのものとは異なるのでしょう が、第40条の3の「雇入れ努力義務」の制度趣旨について伺いたいと思います。   ○田中企画官   第40条の3についても、1年以上継続して同一の派遣先に就業している場合、その業務 で新しく雇用するときに適用されるもので、第40条の5と類似した形で派遣先での直接 雇用の機会をなるべく与えたいといった趣旨からということです。   ○山川委員   そうすると、趣旨は先ほどの期間制限のある場合は違反の防止ということでしたが、 第40条の3は期間内の話ですから、むしろ第40条の5に近い直接雇用の機会を与えるとい う理解、整理でよろしいですか。   ○田中企画官   そうです。   ○山川委員   わかりました。   ○橋本委員   いまの雇用契約の申込み義務に関連してですが、指針ではクーリング期間と言います か、それが定まっているようで、3カ月間中断すれば、また同じ派遣労働者を受け入れ てもいいといった運用がなされているということで、これはかなり普及していると理解 していいのか、第40条の4の直接雇用の申込み義務の実効性というか、それに関連してど う考えていいのかを示していただければと思います。   ○田中企画官   クーリング期間などといった言われ方をしておりますが、継続して派遣を受け入れて いるかどうかを判断する基準となっております。継続して受け入れているとみなせるか どうかですので、仮に、雇用契約の申込み義務を逃れるために、そういったことを形式 的に置くということであれば、それは脱法的な行為として考えられるのではないかと思 います。   ○有田委員   これからの議論の仕方に関わることですが、まず、現状をできるだけ正確に知りたい というのがあります。例えば、いまの資料の24頁から25、26頁辺りに実態を示すような ものが出されていますが、26頁の年収の比較というのは、おそらく同じ年の平成17年の 比較でしょうが、経年的に見て、派遣労働者の収入が大きく変化しているかどうかとか、 その辺りも知りたいと思いますので、次回にでも出していただければありがたいと思い ます。   ○田中企画官   次回以降、そういった資料も準備させていただきたいと思います。   ○鎌田座長   ここで用意されていないものについても注文していただければと思います。   ○山川委員   たぶん審議会等ではいろいろ出ていると思いますが、日雇派遣等について、具体的に どのような事例でどのような問題が生じているのかといったデータや事例の資料があれ ばお願いしたいと思います。もう1つは、派遣法自体がシステムとしては行政法規とい う理解で、違反への対処というのも、結局は行政によるチェックないし取締りという発 想でできているのですが、最近の裁判例を見ていると、労働者派遣を巡る民事裁判が結 構増えている感じがするのです。労働契約法もできてきて、例えば雇用期間の設定等に ついては第17条の2項などが関わってくる可能性があると思いますが、そうした民事裁判 の事例も整理して資料として出していただけると参考になると思います。   ○鎌田座長   よろしいですか。   ○田中企画官   わかりました。   ○鎌田座長   最近は結構ありますね。そのほか何かあればお願いいたします。   ○有田委員   同じようなことですが、例えば是正指導や勧告がなされた事案を具体的に、例えばど のような類型のものが多いとか、具体的な中身がわかれば、そもそも派遣法違反という ものの基本的なタイプを類型化して考えたりすることがしやすくなると思いますので、 その辺の資料もお願いできればと思います。   ○田中企画官   指導監督をどのようなところで、どうやっているかといったデータ的なものというこ とですね。   ○鎌田座長   もちろん固有名詞が出るのは具合が悪いと思いますが、違反類型については、一応類 型化したようなものはあるのですか。   ○松浦補佐   条項別にどのぐらい違反があるかといったようなことは整理しておりますので、そう いった形で提供できると思います。   ○有田委員   それから、違反が監督行政機関へ挙がってきたルートですね。そのようなものの類型 化は可能でしょうか。   ○松浦補佐   申告という形で出てきたものはどうかといった程度の、ごく大ざっぱなものなら一部 把握できると思います。   ○鎌田座長   特にこの段階で他になければ、もう少し先に進んでよろしいですか。今後の進め方に ついてのところで、また戻ったような質問でも結構です。それでは、本研究会の今後の 進め方について議論していただきたいと思います。事務局で資料を用意しておりますの で、説明をお願いいたします。   ○竹野補佐   資料9、10について説明いたします。資料9は研究会で議論していただく論点(案)で す。このような形で議論を進めていただければ良いのではないかということで提案させ ていただいているものです。第1点目は派遣労働の雇用政策における位置づけで、労働者 派遣制度の基本的な考え方について整理をしてはどうかということです。ここでは、い わゆる雇用慣行との関係、現行の派遣法では常用雇用の代替の防止を図るという考え方 に基づいて制度設計されておりますので、こういったことについてどのように考えるか といったことを議論していただければいいのではないかと思います。また、派遣労働者 と一口に申しましても、多様な働き方があり、例えばアルバイト的な働き方をする人も いれば、いわゆる専門職として常用雇用型の派遣労働をしている人もいる。それから、 正社員を希望しているけれども、そういう希望がかなわず、やむを得ず派遣労働を選択 している等多様であるということに対して、どのようなことが考えられるかということ でご議論いただければと考えております。  2点目は、労働者派遣制度の在り方です。1で、雇用政策における位置づけということ で基本的な考え方を固めた上で具体論に入っていこうということです。1点目は派遣労 働者の雇用の安定で、例えば常用型、登録型という区分についてどのように考えるのか、 日雇い派遣の問題についてどのように考えるのか、雇用契約の申込み義務についてどの ように考えていくのか、こういったことが「派遣労働者の雇用の安定」というところで 議論されるべきではないかということです。2点目は、均衡処遇の考え方、派遣元と派 遣先の役割分担の在り方です。均衡処遇については部会においてもかなり議論があり、 均衡処遇を導入すべきではないかという意見もありましたので、これが派遣労働の場合 にはどのように考えられるのかといったことをご議論いただければと思います。3点目は 需給調整機能の強化で、派遣先が派遣労働者を特定することを目的とした行為、いわゆ る事前面接ができるのか、できないのかといったこと、それから、紹介予定派遣につい てどのように位置づけていくかご議論いただければと思います。4点目は、優良な事業主 を育て、違法な事業主を淘汰するための仕組みです。派遣元事業所数はかなり増えてき ている状況にもございますので、事業としてどのようにすればうまくいくのかといった こと。具体的には情報開示をどうするのか、指導監督の担保、すなわち法違反を是正す るための措置をどのようにするのかといったことをご議論いただければと思います。  3点目は、必要に応じ適宜論点の追加。これ以外にも何かございましたら適宜追加し ていただければということです。  資料10は研究会のスケジュール(案)ということで今後の進め方をご用意しておりま す。第1回の本日は今後の進め方についてですが、第2回目は、派遣労働の雇用政策にお ける位置づけについてということで、先ほど申しました基本的な考え方についてご議論 いただく。第3回以降には、派遣労働者の雇用の安定、均衡処遇の考え方、派遣元と派 遣先の役割分担の在り方、需給調整機能の強化、優良な事業主を育て違法な事業主を淘 汰するための仕組み等の各論についてご議論いただく。そして、夏頃を目途にとりまと めをしていただき、さらに検討を要する事項があれば引き続き検討していただければと 思います。説明は以上です。 ○鎌田座長   いまのご説明ですと、資料9の1、2、3の(1)(2)(3)(4)の中に、それぞれの部 会で議論されていたテーマがいくつか補足的に付け加えられているということでしたの で、資料6-1「部会での論点整理」と一緒に見ていただくと見えてくるのではないかと 思います。もちろん、必要に応じ適宜論点を追加ということで、ここに触れられていな いことでも結構ですので、自由にご発言ください。   ○阿部委員   先ほどの資料に戻ってしまうのですが、いまの論点をお聞きしながら、自分の中で整 理がつかないものがありますのでお聞きします。資料4の20〜21頁、海外の労働者派遣 の制度のところなのです。アメリカ、イギリスはかなり規制がないというか緩い。一方 ドイツ、フランスは規制がある。日本も、イギリスやアメリカに比べれば規制はあると いうことなのですが、派遣の実態のところで派遣労働者数などを見ますと、欧米での派 遣労働者数は日本に比べて相当少ないという印象を持つのです。ここの違い、日本はほ かに比べて派遣労働者が多いということの背景みたいなものが分かれば教えていただき たいのです。人数の違いがそもそも規制によるものなのか、そうではないのかというこ とを考える必要があると思ったわけです。   ○田中企画官   いますぐに明確なお答えはしかねるのですが、派遣労働者数についてはいろいろなデ ータの取り方がありますので、必ずしも日本で捉えられている数と他の所の数が、同じ 概念のものを同じだけ捉えているかという問題が1つあります。そのうえで、大体どのぐ らいの割合かと言いますと、アメリカで2〜3%、イギリス、ドイツだと1%、日本、フ ランスだと2.5%ぐらい、全体の労働者に占める割合はそのぐらいになっているようで す。それぞれの国の雇用慣行もありますし、業種によって、どのような慣行ができてい るのかという過去の経緯もあります。同じ規制がない場合でも、アメリカとイギリスで は派遣を利用している業種もかなり違ってきたりしておりますから、規制の在り方とい うところが1つはあるのですが、あとはそれぞれの国の雇用慣行や他の労働関係の法制、 それから、業務全般をどのように考えているかというような問題にも関わってくると思 います。規制イコール数ということにはならないかもしれませんが、それがどのような 影響を与えているのかというのを導き出すのは、正直な話、難しいのではないかと思い ます。   ○阿部委員   そうだと思います。でも、派遣労働の雇用政策の位置づけと言ったときに、派遣労働 だけの問題を考えてしまうと、なかなか解が見つからないような気がするのです。むし ろ、いまおっしゃったように、雇用環境や全体の労働法制、具体的には正社員の話、そ こまで踏み込みながら議論していかないと。派遣労働だけの議論をしても、ちょっと違 うところに行ってしまうような気がしたのです。私はまだ十分整理できていませんので 分からないのですが、そのように考えてよろしいのでしょうか。それとも、派遣労働に 絞っておいたほうがよろしいのでしょうか。   ○田中企画官   確かに派遣労働だけで考えていくと難しい部分があるということは事実だと思います。 そういう意味で、資料の中にも付けてありますように、雇用政策全体の方向として、長 期雇用を大切にしながら能力を発揮できるような社会を作っていこうという前提の中で、 派遣制度をどう位置づけるかということになるかと思います。議論をする過程の中では、 派遣に関係する制度がどういう形になるのかというようなことも資料などで示す必要が あるかと思います。ただ、この研究会自体は派遣制度の在り方について検討し、どのよ うな方向性で議論ができるのかを議論していただくことを中心に考えておりますので、 会の議論の中心はそこのところに置いて進めていただくのが事務局としてはありがたい と思っております。   ○鎌田座長   いま阿部委員がおっしゃったことはなかなか重要な質問です。とりわけ規制の在り方、 規制の仕方によって、派遣労働者数がどう変化するのか。あるいは、そこに置かれてい る派遣労働者の処遇だとか待遇がどのような影響を受けるのか、あるいは派遣先が派遣 労働者を利用するというインセンティブにおいてどういう可能性があるのか。それは解 雇規制との問題、あるいは有期雇用の規制の在り方などにも関係してきます。有期だと か、正期雇用の在り方についてここで本格的に議論するということではないのですが、 外国、特に先進国の契約法制の在り方に関するものも資料としてお付けいただければ、 それを中心に議論をするわけではないのですが、いいのではないか。阿部委員、まずは そういったことの資料を出してもらうということでよろしいですか。   ○阿部委員   はい。   ○鎌田座長   ドイツ、フランス、イギリス、アメリカを含めて、諸外国の規制の経年的な変化と派 遣労働者数の変化、あるいは派遣労働の利用順位の変化も参考資料としてあれば非常に よいわけですが、これがなかなか難しいのです。私の理解ですと、近年ドラスチックに 変わっているのはドイツです。専門家を前にして申し訳ないのですが、イギリス、アメ リカ、フランス、ドイツと、いつも比較するのですが、EUとの関連でドイツが非常に大 きな変化をしていて、派遣労働者数、あるいは派遣労働の利用の在り方も変わっていま すので、その辺のところについて最近の動向を示したような資料が何かないでしょうか。   ○田中企画官   探してみますし、むしろ専門の先生方に逆にいろいろお尋ねすることがあるかもしれ ません。調べてみたいと思います。   ○鎌田座長   橋本委員、いちばん新しいドイツの変化みたいなものは調べていらっしゃらなかった ですか。   ○橋本委員   派遣労働者の数が著しく増えたかどうかのデータまで確認できていないのです。   ○鎌田座長   ここ数年、かなり変わっていますよね。   ○橋本委員   ドイツの労働者派遣法の内容は、大幅に緩和されていると思います。   ○鎌田座長   本当に緩和されたのか、実際そうではないのか、なかなか微妙なところもあるのです が、もし、そういうデータがあればと思います。   ○田中企画官   探してみます。   ○橋本委員   派遣労働者数についてですが、日本の場合は同じ人が複数の派遣会社に登録している と延べ数で数えられると聞いたことがあるのですが、それで増えているということはあ りますか。   ○大槻次長   いま見ていただいた21頁の資料などでは128万人とありますが、これは労働力調査の データです。労働力調査ですと、全国4万人ぐらいを対象に、月末1週間の就業状態を調 べるわけです。一方に321万人というデータがありましたが、あれは事業報告として私ど もが派遣元事業主からご報告いただいたものを集計した数字です。登録派遣型の労働者 については、おっしゃったように、複数登録もありますし、そういう面で二重カウント などがありうるのです。また数え方として、登録されているだけではこの数にはカウン トしないのですが、登録されていて、たまたま年間に数日働きましたという場合でもカ ウントされます。そういう意味で多めになっているのです。   ○有田委員   今後の議論の仕方ということで、外国の法制をどれくらい組み込んで議論をする余裕 があるのか。根本的なところから検討するという設定ですので、そうすると各国が持っ ている法制度の立法趣旨なり何なりというところまで突っ込んでいって、先ほどから出 ているような労働市場の有り様や雇用慣行の中での派遣法制の位置づけをつかみながら、 各国の特徴を出して日本と比較する、ということができればいいと思うのです。時間的 な余裕等の問題で、そういうことをすることが可能なのか。そこまでやるべきだという ことであれば資料を相当程度集めなければいけないので、最初にその辺のコンセンサス を得ておいたほうがいいと思うのですが。   ○田中企画官   根本的なところから議論していただくということでお願いしておりますので、できる 限りの準備はしたいと思いますが、力不足になる場合もあるかもしれませんので、その ときはまた、いろいろなやり方を提案させていただいたり、していただいたりというこ とにしたいと思います。   ○鎌田座長   これは私の考えなのですけれども、これは研究会ですので、外国について詳しくリサ ーチする、最新のものを調べて出すというのが理想だろうとは思うのですが、夏をメド にということですので、外国のものについて、それを本格的に調査して研究会を設定す るというのは難しいのではないかという感じがしております。今後どういった資料が用 意できるか、事務局とも相談しながら、必要であれば外国の派遣制度の全体像をまとめ たような議論をどこかのパートでやることも可能かと思います。ただ、個々の論点につ いて外国と比較してこうなっているということであれば議論ができると思うのですが、 例えばドイツではどうなっているかと1回それを設けてやるのは難しい。何よりも日本に ついての基本的論点はかなり煮詰まっておりまして、諸外国に関する皆様の学識経験を 踏まえた上で、このような提言、見方あるいはやり方もあるのではないかということを お示しいただければありがたいと思っています。   ○有田委員   この検討課題の中に関わる限りにおいて参照するという議論の仕方なのですか。   ○鎌田座長   そうです。つまり、ドイツ・フランス・イギリス・アメリカについて、それだけを全 体としてやるというようなイメージではなかったのです。皆さんとのご議論の中で、必 要であれば時間をとってやってみるということはあるかなと思いますが。   ○有田委員   私はイギリスをやっているのですが、イギリスはこれだけしかない、ということはな いのです。実は規則のレベルで派遣業者に対しては一定の行為基準を定めて、基準に反 する逸脱行動をとった場合には最高10年間営業に従事できないという禁止明令を裁判所 に出してもらうようにする、というような実効性確保の仕組みがあるのです。ただ、イ ギリスでの問題の捉え方が日本と違うのでルールの設定項目が違う。だから、そういう 比較は少ししてみる必要がある。つまり、この論点だけでいいのか、ほかにはないのか という検討をするに際して、外国の制度を比較し、参照してみるという意味はあると思 うのです。どこかの段階で、論点追加という観点で少し検討してみるといいという気が しました。  これは最後の論点とも関わると思うのですが、それ以前に、制裁の仕方といいますか、 事業者としてこういう行動をとってはいけないという行為基準、要するに、実態的ルー ルとしてどういうものが法制度の中で、法律の条文そのものではないけれども、それを 受けた委任立法の形で行為基準として作られているのか、そこは少し押さえておく必要 があると思います。各国のルール設定の仕方の伝統的な違いもあるでしょうから、この 論点だけではなくて、それに付随するようなところまで検討が要るのではないか。漏れ がないのかどうなのかをチェックする意味では比較法的な検討が有用かと思います。 ○鎌田座長   いまは思いつきで言っているのですが、論点の追加で「専ら派遣」はどうするのだと 最近いろいろな人から言われています。いろいろなところから、専ら派遣というものの 実態とその在り方について議論してほしいという意見が上がっています。しかし、これ は部会の論点の中には入っていなかったので、論点として専ら派遣を付け加えるのはい かがですか。   ○田中企画官   「需給調整機能の強化」というところの論点の1つとしてありうる、という形でよろ しければ、論点の中に明示いたしますが。   ○鎌田座長   いま言った趣旨は部会の論点の中では扱っていないのですが、ここでの議論としては 扱ったほうがいいのではないかと思っていますので、もしよろしければ、そのように取 り扱いたいのですが。   ○大槻次長   是非ご検討いただきたいと思います。   ○鎌田座長    データをたくさんお示しいただいているのですが、失業者にとって派遣制度がどうい う役割を果たしているのか。需給調整機能という観点からどういう役割を果たしている のか。需給調整機能という観点から言った場合に、フリーター、これは失業者というよ りは定職を持たないということになるかと思いますが、そういう方たちが派遣制度とい うものをどう利用しているのか。そして、それに対してどのように認識しているのかと いうデータが何かあればいいのですが。日雇派遣についてのデータでそれが代替できる のだということであれば、それはそれでいいのですが、もしあれば。   ○田中企画官   ピッタリ合うかどうかということはありますが、派遣を選んだ理由や、派遣労働者が 登録する前にどういう状態であったかというようなデータはございますので、そのよう なところも次回見繕ってみたいと思います。   ○鎌田座長   もう少し私の意図を説明するように言いますと、資料4の25頁に、派遣労働者が派遣 を利用する理由というデータがありました。「正社員として働きたいが就職先が見つか らなかったため」が33.2%ありますが、これをどう評価するか。つまり、派遣との関係 で言えば、正社員として働きたいのに派遣という形態を選んでいるのだから派遣制度と いうのは問題だと考えるのか、正社員として働けない人に、とりあえずは雇用チャンス を与えているので、派遣というのはそれなりの意義を果たしていると読むのか。それを どのように考えたらいいのか。それをデータの上で、あるいは派遣労働者の意識の上で どう捉えているのかということが分かればありがたいのです、もしあればの話ですが。 ほかに何かありませんか。   ○山川委員   これは先ほどの阿部先生のお話とも関わりがあるのですが。進め方はここに書かれた とおり、あるいは座長のおっしゃられたとおりでよろしいと思いますが、非典型雇用全 体を視野に入れる必要があろうかと思います。パートとか契約社員とか、特にヨーロッ パと比較する場合に、契約社員と派遣社員との役割分担みたいなことが問題になるので はないかと思います。パートは、日本の「パート」の定義というか把握が特殊だったり しますので、その辺の違いも含めて、非典型社員の中でのそれぞれの役割、例えば、あ るところの規制を強くすると別の方向に行ってしまい、場合によっては労働者性、イン ディペンデント・コントラクターの活用に行く等いろいろな動きが出てきますので、正 社員以外の各制度の役割分担や各国での取扱いも雇用政策上は見ておいたほうがいいと 思います。  もう1つ。これは前半の話の続きみたいなことですが、法違反行為とかという話の中 に、派遣法違反だけではなくて、例えば職安法違反の労働者供給禁止規定に違反した場 合、それは視野に入れていると思いますが、労働基準法違反とか、どの法律の問題なの かがクリアになるようなデータがあるといいと思います。 ○鎌田座長   山川委員は今、諸外国との関係で言われましたが、日本でも派遣の問題、特に登録型 派遣の問題というのは有期雇用のルールと密接に関係しているかどうかは議論があるの です。例えばいよぎんスタッフ事件では、13年間反復更新していても、派遣の場合は雇 止めが有効である、一審と二審がそんな考え方なのです。つまり有期雇用ルール、判例 ルールは派遣について、まだ下級審ですからはっきりしていないのですが、裁判所は少 し違う態度をとっている可能性がある。そういうこともありますので、先ほど、判例に ついての基本的なまとめリストを作ってもらいたいということですが、そういうところ でも分かるようにしてもらうといいと思います。裁判所はまだ確定しているわけではな いとは思うのですが、有期雇用ルールと派遣のルールは違うのだというふうになるのか。 もし違うのであれば、それはそれでいいのかという問題が議論になってくると思うので す。資料のあるものと、ないものとがありますが、最初ですから、何でもどうぞ。   ○橋本委員   問題意識がずれてしまうかもしれないのですが。2頁で労働者派遣と類似した三者間 の労働関係について概念の整理がされていますが、いま派遣法が整備されてきまして、 労働者供給という職安法上の概念が必要なのかどうかという問題意識を個人的に持って います。例えば、偽装請負が、労働者と雇用関係にある請負業者が相手方の指揮命令関 係の下に実質的に労働者を派遣する形態に当たるから「法的には労働者派遣に該当」と 書かれているように、偽装請負は、派遣法の枠内で処罰がなされていくのだと理解して います。それを越える、より違法な形態が労働者供給と考えられているのかもしれませ んが、ここは区分が非常に曖昧な気もしておりますので、労働者供給概念と違法派遣の 概念の整理もできたらありがたいと思っております。   ○鎌田座長   概念の整理については、いま労働者供給事業との区分ということも出されていますが、 たしか出向についても、何か区分した定義がありましたね。   ○田中企画官   この資料には載せてありませんが、こういう場合は出向で、労働者供給事業には当た らないというような考え方は整理をして、要領のような形で公開はしております。   ○鎌田座長   いま橋本委員がおっしゃったのは労働者供給と労働者派遣でしたが、出向についても 少し関係しますので、その辺の定義があれば。教科書などには書いてあるのですが、あ れば欲しいのです。特に、偽装請負との関係でそういう定義があればということなので す。   ○山川委員   2頁の図で、労働者供給のところには「雇用関係と事実上の指揮命令関係」と書いて あります。労働者派遣の図には「指揮命令関係」と書いてあり「事実上の」がないとい うのは、それほど強い意味ではなくて、雇用関係がある場合には事実上でない指揮命令 関係が労働者供給には含まれている。しかし労働者派遣の場合には、むしろ事実上の指 揮命令関係で、法律上の指揮命令権が労働契約上のものであるとすると労働者派遣では ないことになりますから、これはむしろ事実上の指揮命令関係のことを念頭に置いてい るという理解でよろしいのでしょうか。細かいことを言うと、指揮命令権のみを委任す るとか、そんな議論もあるのですが。いずれにしても、労働者供給のところに「事実上」 とあって、労働者派遣のほうに「事実上の」がないというのは、特に事実上の指揮命令 関係を労働者派遣で排除するという趣旨ではないということでよろしいのでしょうか。 「事実上」という概念を使うとすると、事実上の指揮命令関係と法律上の指揮命令関係 に分けられるわけです。そうすると、労働者派遣のほうに指揮命令関係と書いてあるの は、法律上の指揮命令関係と事実上の指揮命令関係が含まれるのかどうかです。   ○鎌田座長   この表は、それほど厳密に分けているわけではないと思います。いま山川委員もおっ しゃったように、派遣先が労働者に対して指揮命令しうる根拠は何か。委任するという ことにすれば、事実上の指揮命令を行うというようなことになるとは思うのですが、そ れだけで派遣の指揮命令関係が基礎づけられるかということについては議論もあります。 ですから、いま先生がおっしゃったように、理論的には両方を含むということになる。  一方、労働者供給については事実上の指揮命令関係ということ。この「事実上」とい うのは何かというと、雇用関係は法的な指揮命令をここに含んでいるので、そういう意 味で使い分けているのではないかと私は考えます。しかし、そこまで踏まえてこの表が 作られているかどうかというのは、私には分かりません。 ○山川委員   座長のような理解でよろしいかどうかを確認したかったのです。   ○田中企画官   そうだと思いますが、いつも使っている図ですので。   ○鎌田座長   私はそういうふうに理解しているのです。山川先生のだと、派遣の指揮命令は法的な ものまで含めるかということについてはややクェスチョン、ということになるのですか。   ○山川委員   雇用関係に基づく指揮命令関係だったら外れる。事実上の指揮命令関係、それから委 任によるだけのものも「事実上」と言うかどうかという問題はあるのですが、委任を明 確にしていない場合も、明確に委任する場合も労働者派遣には入るのだと思います。あ まり争われることはないと思うのですが、仮に、その指揮命令が無効だと言うには、法 律上の指揮命令でないと法的評価ができないことになるのです。行政の取締りの関係で はそんなことは関係ないのですが、仮に裁判で、ある行為が無効かどうか争われた場合 には、事実上の指揮命令関係だと、そういう評価自体ができないことになります。いず れにしても全くテクニカルな話です。   ○鎌田座長   派遣というのをどう捉えるかというのは、法律議論としては一時議論がありまして、今 でもあるのかもしれませんが。   ○阿部委員   いまの点に関連して、私は法律はよく知らない素人なのでこんなことを聞いていいのか 分からないのですが、2頁の※の下のほうに「労働者派遣は従来の労働者供給の一形態に 当たるものであるが、労働者派遣法により、一定のルールの下に適法に事業として行える ことになったもの」と書いてあるわけです。もし、この「一定のルール」がどんどん削ら れていく、ルールがものすごく緩められていった場合には、限りなく労働者供給に近づい てくるわけです。そうすると、その場合には労働者供給そのものも適法としなければいけ ないように考えるのですが、そこを法学的にはどう考えるのですか。   ○山川委員   ええ、さっきのポイントもそれに近い発想です。   ○鎌田座長   私の考えですが、いま先生がおっしゃったように、労働者供給事業と労働者派遣とが ルールを拡大していって飲み込まれてしまうということはないのではないか。つまり、 どこまでも違う概念として残ってくるものはあるのではないか。それはなぜかと言いま すと、労働者供給事業というのは、いわゆる親方制度というのですか、当時の言葉で言 いますと封建的な労働関係、労使関係が根強く残っている分野において、この労働者供 給事業を廃絶しようとしたわけです。  ただ、その「労働者供給」というものをどう定義するかというところで、職安法の施 行規則4条みたいな区分基準があります。その書きぶりが、封建的な労働関係にとどまら ずに、労働する者と労働力を受ける者との間に介入するような形で事業を行う者につい て労働者供給事業と捉えると少し広げられてきた。そこら辺でこの派遣法との関係で整 理が難しくなったという経緯があったわけです。いま先生がおっしゃったように、ある 意味で就業に介入する側面があるような事業については、ルールの在り方をいろいろ考 えていけば、あるいは緩めていけば、労働者供給事業といわれるものが全部そこに組み 込まれて派遣と一緒になってしまうという可能性もあると思います。ただ、封建的な部 分は、どんな時代になってもおそらく認められない。それは労働者供給事業の本体です から、それが派遣という制度の下、一定のルールの下で緩められることはまずないので はないかと思いますので、その部分は残るのではないかと思っています。要するに、44 条が派遣法の議論の中で無くなることはないのではないかというのが私の考えです。事 務局のほうで、何かありませんか。 ○田中企画官   44条で労働者供給事業の禁止というのが出来まして、雇用関係があれば懸念された状 況は起こらないということを前提に、労働者派遣ということで切り出しています。切り 出す範囲がどうかということはあると思いますが、禁止された趣旨は、いまおっしゃる ように、派遣が拡大しようと、どうしようと特段変わるものではないと思います。そこ は議論していただければと思いますが。   ○松浦補佐   「労働者供給」の定義を法律上の文言で、文理的な意味合でおさらいをしておきます と、職業安定法の中に「労働者供給とは、供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令 を受けて労働に従事させること」となっています。誰かが労働者に対して、雇用関係で あれ、実力支配関係であれ、何らかの支配関係を及ぼしているときに、それを第三者に 対して「どうぞお使いください」という供給契約を結んで、その供給契約に基づいて 「どうぞお使いください」と言われた供給先が指揮命令をする。そしてその労働者は、 実力支配関係もしくは雇用関係に基づいて指揮命令に服して業務を処理する。こういう 関係になるものの一切を労働者供給とした上で、雇用関係がすべて供給元のほうにある ものであって、「どうぞ指揮命令してください」という部分のみが派遣先にあるもの、 これを労働者派遣として特別に取り出すという形になっています。  そこに限定して取り出されてきた経緯としましては、指揮命令するときに、本来であ れば雇用主が全面的に責任を負わなければならない中で、派遣先、指揮命令する人でな いと負えない責任があります。例えば安全衛生上、現場が安全な状態であるか確認する。 あるいは、どれだけ働いたかというのは指揮命令した者でなければ把握することはでき ないので、指揮命令のみを分離した上で、そこについては安全衛生法や基準法の特例措 置を講じた上で、特別に派遣先に責任を負わせて整理している。それによって1つの労 働者保護体系を従前と同じように、ここまで派遣先に負わせておけばできるだろうとい うことで、カバーされている。複雑にならないように、すなわち二重になったり欠ける 部分ができないように整理されているというのが今の派遣制度への労基法からの取り出 し方であるわけです。 ○竹野補佐   補足です。資料5の労働者派遣制度の位置づけに関する報告の中、制定時の考え方で 先ほどご紹介しなかったところがあるのです。資料5の1頁目の「1、はじめに」で労働 者供給事業の趣旨について書いております。職業安定法制定前に行われていた労務供給 事業においては種々の弊害が発生していたことに鑑み、職業安定法の立法目的に基づい て労働者供給事業を禁止している。この規定の有する歴史的意義や、その果たしてきた 役割は極めて大きなものがあり、今後ともその精神を堅持していく必要がある、と位置 づけられております。制度制定のときにも、労働者供給事業の位置づけについては基本 的に維持されるべきとされておりまして、座長が先ほどおっしゃられたような形で、こ こまで踏み込んでということではないのかと考えております。   ○山川委員   理屈っぽい話で恐縮ですが、いまのお話で、労働者供給に該当するもののうち、労働 者派遣に該当するもののみが一定の要件下で適法に行われることになり、労働者供給の 図の左のほうは「雇用関係を除く実力的な支配関係」ということで、実力的な支配関係 は派遣では想定されていないということになります。ところが右のほうで「雇用関係、 事実上の指揮命令関係をひっくるめて使用関係という」という場合には、指揮命令関係 だけがある場合が労働者派遣に該当しうるということです。これは事前面接と関わるの ですが、事実上の指揮命令関係プラスアルファがある場合は直ちに雇用関係があるとい うことになるのかどうか。つまり、事実上の指揮命令関係と雇用関係の2つしか概念上 存在しないのか、事実上の指揮命令関係と雇用関係の中間点というものが存在して、そ れもなお労働者供給になるのか。その辺りは何か整理されているのでしょうか。   ○松浦補佐   解釈とかその背景についてどこまで広がりを見るべきかという問題については別の場 に譲るとしまして、制度的、文言・文理上の整理としましては、まず労働者派遣は派遣 元が雇用し、派遣先は指揮命令するものだと書き切っています。その上で、労働者供給 の定義につきましては、労働者を、他人の指揮命令を受けて労働に従事させるもの全部 だと、まず言い切っています。そして然る後に、派遣は除くと書いてありますので、少 なくとも文理上、派遣については指揮命令しかない。それ以外のものが混じると労供と いうことになります。ただ、おっしゃられたような論点が指揮命令の範囲、あるいは実 際でここで規制している対象の範囲にかかってくるのか、また法令の適用を受けて禁止 される行為であるのか、ないのかとか、いろいろな議論は解釈の問題としてありますが、 文理的にはそういった整理がなされています。   ○山川委員   つまり「指揮命令を受け」というのは共通しているけれども、それ以上のプラスアル ファが含まれると「労働に従事させる」という方向に入るが、しかし労働に従事させた からと言って、供給先との間に労働契約関係がすべて生じるとは限らないという理解で よろしいのですか。   ○松浦補佐   それはむしろ逆で、指揮命令関係、つまり誰かと契約に基づいて指揮命令していいと いう契約を結ぶ、これは供給契約ないしは派遣契約ですが、そういう契約について「ど うぞ指揮命令してください」とやって、この人を指揮命令するものを派遣と言う。 それ以外のものは労働者供給という。   ○山川委員   労働者供給と労働契約関係の関係というのは、どうなるのでしょうか。   ○松浦補佐   先に労働契約関係が生じていて、こちらにも労働契約関係が生じている。先ほどの定 義に戻りますと、単なる指揮命令以外のものがここにあって、しかも、それを「どうぞ お使いください」という契約関係の下でこちらにも契約関係が生じているので、これは 労働者供給に該当すると整理されています。したがって、二重の雇用関係は労働者供給 と整理されます。   ○山川委員   供給先との間に労働契約関係がないけれども労働者供給であるという場合もありうる ということでしょうか。指揮命令プラスアルファを行っている。しかし、例えば労働契 約存在確認の訴えを起こしたら、それは認容されないというような場合もありうるけれ ども、それも労働者供給の概念には入る。出向までは至らないけれども、労働者供給で はあると。出向だと、相手方とは二重の労働契約関係になるわけですね。しかし出向と は言えず、労働契約関係がないけれども、労働者派遣における指揮命令を越えているの で労働者供給に当たる場合もありうるということでしょうか。   ○田中企画官   そこは解釈の問題になってくると思いますが。   ○松浦補佐   本来、まず1対1の雇用関係であれば、すべての雇用主としての権利を労働者に対して 行使しうるわけですが、行使しうるすべての権利のうち指揮命令関係だけが派遣先に移 されたという整理ですから、それ以外のものが加わってくれば、少なくとも指揮命令以 外のもの、「雇用関係マイナス指揮命令」の何かが入っているということです。それを 何と言うかはいろいろ議論があると思いますが。   ○山川委員   どんなものでも部分的な労働契約関係として「雇用関係」と呼ぶかどうか、そちらの 問題だと思いますが。   ○松浦補佐   本来雇用関係に由来して雇用主が有する権利、これのまず第1番として指揮命令、こ れだけは分離していいですよとなっているのだけれども、それ以外のものもこちらに行 ったときに、これはアウトなのだけれども、それを雇用という名前で呼ぶかどうか、そ れは別の問題ですね。   ○山川委員   わかりました。   ○鎌田座長   事前面接というか、特定を目的とする行為を行って、特にはっきりしているのは競合 面接の話で「この人」と言った場合にどういう法律関係が発生するのかという問題とも 結び付きますのですが、そこのところで少し細かい議論が出てくるかと思います。いま のお話は、おそらくそういったことを念頭に置いてのことだと思います。  進め方や論点について、ほかにいかがでしょうか。当初からすごく細かな議論が始ま ってしまいましたが、おそらく次回以降、常用雇用、代替とかという大振りの話がドー ンと来るのだろうと思います。ほかになければ、本日の議論はこれで終了ということで よろしいですか。データあるいは定義等についての宿題がいくつかありまして、それに ついては、次回あるいはそれ以降、あるものは用意していただければと思います。今後 の日程について事務局からご説明をお願いいたします。 ○田中企画官   次回の研究会の日程ですが、現在調整をさせていただいておりますので、委員の皆様 方には決定したら改めてご連絡をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願い いたします。   ○鎌田座長   これをもちまして第1回の研究会を終了させていただきます。皆さん、本日はお忙し いところ、ありがとうございました。 照会先    厚生労働省職業安定局需給調整事業課需給調整係    〒100-8916東京都千代田区霞が関1−2−2    TEL03(5253)1111(内線5745)